ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 保険局が実施する検討会等> データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会> 第1回データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会議事録(2016年4月25日)




2016年4月25日 第1回データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会議事録

○日時

平成28年4月25日(月)15:00~17:00


○場所

全国都市会館3階 第1会議室


○議題

1 本検討会の開催目的、検討の方向性等について
2 各委員の御紹介
3 意見交換
4 その他

○議事

○保険課長 まだ定刻には若干ございますけれども、大体全ての構成員の先生方がおそろいですので、始めさせていただきたいと思います。

 ただいまから、第1回「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」を開催いたします。

 本日は、大変お忙しい中、御参集をいただき、まことにありがとうございます。

 なお、本日は、塩崎厚生労働大臣に出席いただくことになっておりますが、塩崎大臣は所用により1640分ごろに会場に到着する予定となっております。

 また、塩崎大臣が会場に到着した際は、一旦御議論を中断させていただくことになりますが、あらかじめ御了承のほど、お願い申し上げます。

 それでは、本日の会議の構成員の皆様の御紹介について、お手元の資料1の別紙に名簿をつけさせていただいております。本来であればお一人お一人御紹介すべきところですが、お時間の関係上、この名簿をもって御紹介にかえさせていただきます。

 名簿の肩書について1点修正をさせていただきます。名簿の一番初めに載っております飯塚正史構成員につきまして「明治大学大学院客員教授」とありますが「元明治大学大学院客員教授」と訂正をさせていただきます。

 次に、本日の出欠ですが、本日は葛西構成員、金丸構成員、林構成員から御欠席の連絡をいただいております。また、林構成員は規制改革会議健康・医療ワーキング・グループの座長代理でございますが、本日は林構成員の代理として、同ワーキング・グループの座長である翁様に御出席をいただくことにしたいと思いますが、御異議ありませんでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○保険課長 ありがとうございます。

 また、神成構成員につきましては、少しおくれて16時ごろの御到着という旨の御連絡をいただいております。

 次に、座長の選出に移ります。

 あらかじめ各委員に御相談させていただきましたが、本検討会の座長は西村構成員にお願いしたいと思いますが、御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○保険課長 それでは、西村構成員に座長をお願いしたいと思います。

 今後の議事運営につきましては、西村座長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。


○西村座長 西村でございます。

 余り詳しい専門家ではございませんが、たまたま私、専門は医療経済学でございますが、今いる機構で戦略研究というものをさせていただいておりまして、東京大学さん、京都大学さん、あわせて筑波大学さん、そして、私どもの機構で「健康医療研究分野における大規模データの分析及び基盤整備に関する研究」ということをさせていただいております。そういう御縁で恐らく座長の御指名にあずかったというように思っております。ふなれでございますが、どうかよろしくお願いいたします。

 それでは、最初に事務局からの説明。その前に座長代理をお願いするのですね。座長代理を決めないといけないと伺っておりますので、この件については国立社会保障・人口問題研究所所長の森田先生にお願いしたいと思いますが、よろしゅうございますか。

(「異議なし」と声あり)

○西村座長 それでは、最初に、事務局からの資料の説明をお願いしたいと思います。

 課長、よろしくお願いします。


○保険課長 事務局でございます。

 まず資料1、資料2について、御説明をさせていただきたいと思います。

 資料1は、本会議の設置要綱でございます。

 本有識者検討会においては、大きく2つのことの御議論をしていただきたいというように考えてございます。

 まず第1点は、現在、レセプトデータと特定健診データを集積いたしましたナショナルデータベースの活用がどんどん進んできており、また国保のデータベースあるいは協会けんぽシステム、健保連のシステムなど、保険者ごとのデータベースも充実してまいってきております。一方、支払基金や国保連といった審査支払機関には、年間20億件のビッグデータが蓄積してきております。こうしたビッグデータを活用することによって、保険者機能の強化を支援する新たなサービスをつくり出せないか。また、そのサービスを的確に受け取ることができるような保険者の体制強化をどのように図るかということでございます。

 参考資料1の11ページに保険者機能ということをまとめております。保険者機能が公的医療保険の保険者の果たすべき役割ということで11~6までの機能が書いておりますけれども、ここで念頭に置いている保険者機能とは、そのうち5保健事業等を通じた加入者の健康管理、あるいは6医療の質や効率性向上のために医療提供体制側への働きかけ、こういった保険者の機能についての強化ということが課題になっております。

 もう一つの検討会で御議論いただきたい論点ですが、これは規制改革会議からも具体的な御提案をいただいている、ICTを最大限活用して、今の審査支払機関の業務をゼロベースで見直して、医療保険の審査業務の効率化をするとともに審査基準の統一を図るという論点でございます。本日も翁様を初め規制改革会議の委員である有識者の先生にも御出席いただいておりますので、後ほど補足をしていただければと思います。

 この2つの論点を合わせて議論いたしますのは、後から直接、塩崎大臣からの御挨拶の中でも触れられるかもしれませんが、現行の審査支払機関は審査業務の専門機関にとどまっているわけですけれども、その業務についてはICTを使って最大限効率的で質の高いものとした上で、さらに一歩進めてビッグデータを活用した新たな保険者機能の支援サービスについても、その一翼を担えるような存在に変えていけないだろうかという問題意識でございます。

 また、御案内のように、現在、審査支払機関のデータは、被用者保険は支払基金、地域保険は国保連と分かれて蓄積をされておりまして十分な連結がされておりませんが、マイナンバー制度のインフラを活用してこれらを連結していくことについても考えていきたいと考えております。

 資料2をごらんください。

 資料2は、本会議で御議論をいただきたい論点の案でございます。

 まず1つ目の論点でございますが「保険者機能の強化と医療の質の向上について」ということでございます。3つ目の○までは、今、資料1のところで御説明したとおりでございます。

 具体的に御審議していただきたい点というところに進みたいと思います。

 まず、第1点は「保険者機能強化のために求められる新たなサービスの在り方」です。具体的な例としては、レセプトデータを地域別・業態別・世代別に分析して、保険者の健康度や疾病管理の状況を診断するようなサービス。医療・介護データと健診データの連結による生涯を通じた健康、疾病管理といったサービス。これについては既存のデータもありますけれども、それをさらに使いやすくしていくための方策も含めて議論していただければありがたいと思います。

 次のページ、受け手である保険者に対して、こうしたデータを分析できる人材の育成であるとか、あるいはコンサルティング、こういったサービスも期待をされているところでございます。

 次に、医療の質の向上という観点からのビッグデータの活用については、健診や医療機関選びについて、被保険者の選択を保険者が支援できるようにするため、保険者に対する情報分析を提供するサービスであります。ビッグデータで地域医療の全体像が把握できるようになってきておりますので、それを活用したサービスということになります。

 また、医療計画や医療費的適正化計画を地域の関係者が議論する際に、地域医療の全体像を踏まえて、保険者がそれに対して有益な提言を行えるようなデータや情報を提供するといったコンサルティング機能というサービスも考えられます。

 また、これは一歩進んだ話でありますが、電子化が進んでいる韓国の審査支払機関であるHIRAをモデルとしたビッグデータを使った医療機関の質の評価、あるいは審査分析のソフトウエアの開発など、こういったこともHIRAが行っておりますので、日本の中でも参考にできることがないか、ヒアリング等も行って御検討いただければと思います。

 次に、こうしたサービスを受け取る保険者側の体制についても御検討をお願いしたいと思っています。

 保険者機能を支援する新たな使いやすいサービスを考えると同時に、どのようにすればこうしたサービスを保険者に使ってもらえるようになるのかということを考える必要があると思っております。

 具体的な例でございますが、企業においては、企業の生産性の向上や、あるいは企業価値を高めるという観点から、現在、健康経営というものが注目をされております。企業を母体として設立される健康保険組合については、そういった事業主との連携を強化することで健康保険組合の人材の確保等が進む可能性がございます。

 また、先進的なヘルス事業に取り組む組合もたくさんある一方で、人材や財源など保健事業に熱心に取り組む条件がまだ整っていないというところもありますので、こうした組合には集約的なデータ分析を活用していただく。また、効果の高い保健事業を複数の健保組合協働で取り組んでいただくというようなことで、効果的な保健事業の実施率を高めていくということなどが考えられると思っております。

 3つ目は、こうした保険者機能の強化を支援するためのサービスを実施するためのインフラのあり方を御議論いただきたいというように考えております。

 例として挙げておりますのは、先ほども申し上げましたように、現在、社会保険と地域保険に分かれているレセプト情報をマイナンバーのインフラ等を活用して連結をすること。現在、保険局で管理をしておりますNDBデータにつきまして、審査支払機関が活用できるようにすることで、保険者もこういったデータを使いやすくすることなどが考えられるというように思っております。

 次に、2つ目の論点にまいりたいと思います。3ページをごらんください。

 2つ目の論点は、先ほど申しました「審査の効率化・統一化の推進と組織体制について」ということでございます。これは規制改革会議の健康・医療WGから具体的な提案をいただいております。その御提案につきましては、参考資料3にございますので、適時御参照を願いたいと思います。

 基本的に規制改革会議から御指摘いただいた論点を引っ張ってここに列記をしているところでございます。御議論していただきたい点の第1点は「ICTを活用した審査業務の効率化や民間サービスの活用方法」という点でございます。

 規制改革会議からは、現行の仕組みにとらわれることなく、医療保険の審査のあり方をまずゼロベースで見直すということが提言されております。特に、現在の審査支払機関については、電子レセプト化がほぼ達成できたにもかかわらず、コンピューターの審査のほかに職員の審査がかなりの業務量を占めているという点について御指摘があるとともに、審査基準が都道府県にある支払基金の支部ごとによって異なっている点、同じ診療報酬基準を使いながら受けられる医療の範囲が異なっているという点について、これは古くからある問題ですけれども、なかなか是正できていないという点が御指摘いただいている点でございます。こうした点を改善するために、ゼロベースから審査のあり方を見直すことの提言をされております。

 現在の審査の仕組みについては、参考資料2でその概要を示しておりますが、本日お集まりの先生方につきましては、審査支払機関の業務については、既にもう一定の知識はお持ちでありますし、また現行の業務については、別にじっくりと説明する機会を設けたいと考えておりますので、本日は時間の関係もありまして、現行の業務の説明は省略いたしまして、まずは論点についての御紹介をしたいというように思っております。

 3ページの「審査の在り方」というところをごらんください。ICTの最大限の活用により、人手を要する事務手続を極小化し、審査業務の最大化の効率化、審査の高精度化、審査の透明化の向上、並びに医療機関及び保険者の理解の促進を図るため、以下の11~88について具体的に検討する。

 1医師の関与のもとで、全国統一的かつ明確な判断基準を策定すること。

 2上記の判断基準に基づく精度の高いコンピューターチェックの実施を可能とすること(医学的判断を要する審査対象を明確化すること)。

 3コンピューターチェックに適したレセプト形式の見直しを行うこと。

 4レセプトの請求段階における記載漏れ・記載ミスなどの防止措置を構築すること。

 5審査結果の通知及び審査基準の情報開示をICTの活用により効率的に行うこと。

 4ページ、6医師による審査における医学的判断を集約し、継続的にコンピューターチェックに反映する仕組みを構築すること。

 7医師による審査及び合議のオンライン化や、審査結果等のデータ蓄積を自動化し、統計的な分析結果の参照や過去事例の検索や人工知能の活用などにより、医学的判断を要する審査の手続を効率化、高度化を行うこと。

 88医学的な判断が分かれるなどの理由から、審査結果に疑義がある場合について、医療機関及び保険者からの請求に基づく医師による再審査の仕組みを効率化、高度化することということでございます。

 次に、そういった審査の見直しをした上で「組織・体制の在り方」ということで、現行の支払基金を前提とせずに診療報酬の審査のあり方をゼロベースで見直すために1~3の検討を求められております。

 「組織・体制の在り方」というところを読み上げます。医療費の円滑で適切な審査・支払を維持し、社会全体で効率的な組織体制のあり方を追求するという観点から、現行の支払基金を前提とした組織・体制の見直しではなく、診療報酬の審査のあり方をゼロベースで見直すため、以下の1~3について、具体的に検討する。

 1上記の審査のあり方に対する検討を踏まえた上で、現行の支払基金が担っているとされる上記の各種業務(特に職員による点検事務及び適正な診療・レセプト請求のための審査結果やルールの説明・指導)の要否を検討し、不要・非効率な業務を削減すること。

 2、1で必要とされている業務のうち、効率的な運営を図るため、支払基金以外の者(民間企業を含む)を保険者が活用することが適切な業務の有無を検討し、当該業務がある場合の具体的な活用の仕組みを構築すること。

 3、1で必要とされている業務のうち、2の検討を経て支払基金が担うことが適切である業務がある場合には、その具体的な組織・体制等のあり方(業務拠点も含めた職員及びシステムなどの体制、業務範囲、法人形態、ガバナンス体制、事務費負担のあり方等)を検討することとなっております。

 5ページの(2)でございます。これは規制改革会議から提示されたものではございませんが、審査の地域間格差を解消するために、ビッグデータのインフラを活用した新たな審査システムというものが考えられないかという論点を立てております。

 考えられる例としては、現在、支払基金の47支部で審査の地域間格差があるということに加え、支払基金と国保連の間でも審査基準に格差がございます。現在は連結されていない支払基金と国保連のレセプト情報を連結した上で、職員の協働により統一的な審査のシステムをつくっていくということなどを例示しております。

 論点案の説明は以上でございます。

 引き続きまして、資料3について御説明をいたしたいと思います。

 資料3はこの検討会の進め方の案をお示ししております。規制改革会議の御意向も踏まえまして、この検討会については、まずこの第1回で議論すべき論点について御議論をいただいておるところでございます。また、第2回目は、本日の議論を整理するとともに、審査支払機関の取り組みや韓国のHIRAなど諸外国の状況についてのヒアリングを行ってはどうかと考えております。審査支払機関のヒアリングについては、場合によっては1回では終わらないかもしれませんが、丁寧に御説明をさせていただければと思います。

 その後、夏前には中間的な議論の整理ということで、それまでの議論を整理し、さらに検討を進める事項や、議論の今後の進め方というものについて整理をしたいと考えております。その上で、議論全体につきましては、この年末を目途に取りまとめをしたいと考えております。

 資料3の説明は以上でございます。

 時間の関係がございますので、参考資料については、目次だけごらんをいただければと思います。まず、1ページ表紙をめくっていただきますと目次がついてございます。

 初めの医療保険のオンライン資格確認とございますのは、マイナンバーのインフラを活用して医療機関でICTを使って被保険者の資格情報を確認できるオンライン資格確認の仕組みというものを今、これは支払基金と国保連が共同してつくっておりますので、それの御紹介でございます。

 2つ目は、医療等分野における番号制度の活用等に関する検討会というものが厚労省の内部に検討会ができておりますので、その報告書の概要をお示ししております。

 3つ目は、先ほどお話をいたしましたNDBデータの現状についての資料。

 保険者の機能やデータヘルスをめぐる議論についての資料。

 また、参考といたしまして、先ほど見ていただきました公的保険者の「保険者」の果たすべき役割。保険者機能についての説明。あるいは保険者のデータ分析のための現行の各種のデータベース。あるいは保険者機能・データヘルスの現状と課題といったものを資料につけさせていただいております。

 それが参考資料1でございます。

 参考資料2のほうでございますけれども、これは今の審査支払機関、支払基金と国保連の概要について、ごく簡単なものにつきましてつけさせていただいております。

 また1枚紙で恐縮でございますが、韓国のHIRAについても簡単な資料をつけておりますので、適時御参照をいただければと存じます。

 私からの説明は以上でございます。


○西村座長 どうもありがとうございました。

 説明時間は比較的短かったのですが内容は本当に多岐にわたっておりまして、保険者機能のあり方、あるいはその中の人材育成、健康経営という話題と、さらに今回、規制改革会議から斬新な論点、例えば基金の行うべき業務といった内容を含めた大変新しい詳細にわたる御提案をいただいております。そういう内容を先ほどお話があったように、何とか年末をめどにまとめないといけないということで結構大変な作業ではないかと思っております。

 恐らく後で大臣が来られてひょっとしたら発破をかけられるかもしれませんが、それはよくわかりませんが、そういうことで、実は従来こういう会議ですと、今の事務局の説明内容について質疑応答等をするということが通例かと思いますが、実はもうごらんのように、きょう、委員の先生方、構成員の皆様、大変多くのさまざまな御専門にわたる先生方がお集まりいただいて、さらにこれから深い議論をする必要がございますので、これからお一人ずつ、最初の会議でございますので、この会議に望む御意見を伺いたいということで、そういう方式でやらせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。質疑応答、事務局は何を考えているかという質問がございましたら、その御意見の中でおっしゃっていただくとよろしいかと思いますので、どうかその点、よろしくお願いします。

 それでは、僭越でございますが、座長を申し受けましたので、最初に私が少し意見を申し上げ、さらに先ほど指名させていただいた座長代理の森田先生もこの分野は大変詳しくございますのでお願いして、その後、こちら、飯塚構成員から順にお話をいただいて宮田構成員まで行く。そして、今度、こちらの森構成員から順番にお話をいただくという順序でそれぞれ3分ぐらいのイメージでお話を伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。さらに途中で恐らく大臣がお見えになると若干中断ということもございますので、その点は御容赦いただくとありがたいと思います。

 私は実は医療経済学というのを40年ぐらいやっておりまして、古いだけが取り柄の研究者でございますが、もともと医療保険制度での研究をしておりまして、先ほどあった社会保険診療報酬支払基金、そして国保の審査ということについてもかなり勉強させていただいておりました。

 ところが、大体御承知のように、そういう制度的な問題に加えて、最近、ICTの活用というものが大変大事なテーマとして掲げられまして、しかし、実は先ほど申した私どもが属する機構でビッグデータ解析を始めようとすると、このレセプトデータあるいはカルテのデータ、そういったものが大変複雑で、そもそもデータのクリーニングそのものに相当時間がかかる。以前はレセプトのデータさえちゃんと見ることができたら、そこで例えば極端な場合、不正と不正でないのはぱっと切れると思っておりまして、実際、一部のデータを収集して拝見しておりますと、実はそんな簡単にはいかない話である。今、私どもの機構では、各専門の医療系の学会の各種疾病の皆さんにお願いして、それぞれの学会の分野のレセプトの解析をどのように進めるかという準備作業を始めているところでございます。そういう意味で、結構大変な作業がこれから伴うと思いますが、同時に、恐らくこういう表現を叱られますが、このことの費用対効果は大変大きいと思っております。相当お金はかかるかもしれませんが、それに伴う医療の質の向上ということに関しては、大変効果があるという予感を感じております。

 そういう意味で、大変失礼な言い方で恐縮ですが、きょう、いろいろな分野の委員の先生方、それぞれの分野の先生方がお集まりいただいていると思います。特に私はデータ解析については素人でございまして、そういう分野に関しては勉強をしたいというように思っておりますが、それぞれの分野のお考えを入れていただきながら御意見を賜れるとありがたいと思っております。

 以上、私の最初の発言でございます。

 次、森田座長代理にお願いしたいと思います。


○森田構成員 座長代理の御指名をいただきました森田でございます。よろしくお願いいたします。

 座長に次いでなぜ私が次なのかという気もしますけれども、多分そうなりましたのは、この同じ審査支払いのあり方につきまして、数年前に研究会が持たれまして、そこで座長を務めたということから、そのときの状況について報告といいましょうか、最初に情報提供をするというのが私が2番目に発言させていただく理由かと思います。もう数年前になりますし、会議の名前も正直申し上げて忘れてしまいました。そのとき、そこにいらっしゃる吉田審議官が保険課長で担当されておりましたので、正確な名称等はまた後で補足していただければと思います。

 そのときに問題になりましたのは、きょうの論点から言いますと同じでありまして、審査の基準が地域によってばらばらである。また、内容においても必ずしも統一性もない。具体的に申し上げますと、それぞれの都道府県で支払基金系統と国保連合会系統がある。したがいまして、それだけで47掛ける2の94通り、プラス全国レベルでもそういう基準を持っているということで、全部で96通りの基準によって審査がされているのではないか。しかも、その内容については必ずしも透明ではないというのがそもそもの出発地点でございました。

 その後、実際に審査のあり方を視察したり、今でもまさにここで議論されますようなICTの活用のあり方についても、いろいろな意見が出て検討したところでございます。ただ、あの時点での現実的な改革の方法としましては、いろいろと解決しなければならない組織的な問題あるいは審査体制のあり方。きょう論点で挙がっておりますけれども、そういうことを急激に変えるというのは非常に難しいので、とりあえずはそれぞれの両機関の間、あるいは地域間における審査基準のすり合わせというものをもっと頻度を上げて行うということで当面答えを出したと思います。

 ただ、その中の議論では、オンライン化がかなり進んできていたときもありますし、さらにそれを進めていくならば、当時のHIRAの情報も大分勉強をいたしましたけれども、HIRAの当時の方式、すなわち全体の平均から外れる標準偏差の範囲内では自動的に承認するけれども、それを超えたものについては、機械審査ではなくて専門家がきちっとチェックをする。その場合に、プラスのほうといいましょうか、外れた中にもそれが新しい治療法であるとか、そうした新しい技術に結びつくようなものについては、それを評価して審査基準の中に入れていくという方式というのが考えられるのではないか。それに近づくことがその当時は当面の課題であろうかと思っておりました。

 さらに申し上げますと、現在のビッグデータを活用するような時代になりますと、データに基づいて最善の治療法というようなものをガイドラインとしてつくっていく。そうしますと、それを基準にして審査をするという方法もあり得ると思っておりまして、現在、ヨーロッパでこうしたデータの活用を進めているところでは、向こうは保険システムが違いますけれども、そうした方向での、評価というものを進めていこうとしていると思っております。

 私自身はこの問題に関心を持っておりますけれども、医療もICTも必ずしも専門ではございませんので、これまでの経験とか、このときに調べたことでお役に立てることを情報提供をさせていただきたいと思います。原則として座長代理ということですので、中立的な立場で発言させていただきたいと思います。

 以上でございます。


○西村座長 森田構成員は、御承知のように中医協の会長をずっとやっておられて、さらに今おっしゃったようにヨーロッパのこういう状況について大変視察されて詳しい方でいらっしゃいます。

 それでは、飯塚構成員からよろしくお願いします。


○飯塚構成員 飯塚と申します。

 私は、皆様のようなハイグレードな人間ではありません。以前は会計検査院の官房審議官をやっておりまして、ハイグレードではありませんけれども、ただ、皆様と違う点が2つばかりあると思います。

 1つは何かというと、私は20年間、検査院で医療費の検査をしてきました。その間、私が見たレセプトの数を数えた部下がいます。その数が200万を超えていました。霞が関のキャリア公務員やノンキャリも含めて、レセプトを200万枚見た公務員はいないです。1万枚だっていないでしょう。なぜそれができたかというと、それは検査院だからです。検査院には守秘義務がありませんので、それを見たいと言ったら何でも見せなければいけないということで積もり積もって200万枚。もう吐き気が出るほどレセプトは見ております。

 例えば皆様は大学の附属病院の入院のレセプトと言ってイメージがちゃんと湧くかどうかです。大学の先生は当然湧くでしょう。要するにどういうものかというと、勧進帳みたいなものなのです。昔は紙を折っていましたので、蛇腹と言っていたのですが、それを伸ばすと5mとか10mぐらいに簡単になる。なおかつ、その字がきれいなのです。これは特に順天堂大学の書き屋さんのレベルはもう芸術的なものだったと記憶しております。それがなくなってしまってみんな電子レセになったなどというのは、文明は進んだかもしれないけれども、文化としてはどうなのかな。それは冗談です。そんな時代から私はレセプトを見ておりますので、皆様と見た枚数は全然違う。

 もう一つは、20年間、支払基金と国保連とつき合ってきていますので、彼らがどういう発想なのか、どういうにおいのする人たちなのかというようなことまでわかっています。この会議は、その支払基金や連合会についてどうしようかということが1つのテーマであるときに、そういうにおいがわかっている人が一人もいなくて、こうしよう、ああしようということを決めるというわけにもいかないだろうという意味では、私はそういう体験を20年もしておりますので、お役に立つであろうと思います。

 最後に1点だけ。この資料2の要するに2つのテーマというのは、特に保険者機能強化云々と書いてある1番、これはビッグデータが集積していることが前提である議論になると思います。しかし、いろいろなデータは確かに保険課長が言ったようにありますが、ビッグデータとしてのものはまだ日本にはありません。支払基金に半分あって、国保連合会に半分ある。ですので、この1番の議論をするよりも、その論理的な前提としては2番の審査の統一化をどうするのか。それは先ほど座長代理の先生がおっしゃっていたように、厚労省としても、あるいは有識者の方たちの知見を得て長い検討結果があるわけですので、規制改革会議のこともありますので、もうこの辺で具体的な案を示していく時期だろうと思います。

 私はつい最近まで保険局の参与をさせていただいていて、保険局にテーブルを持って、この問題についてのプロジェクトチームにも参画させていただいて、一番わいわい言っていた者でありますが、結局前回の有識者検討会で、後はちゃんと厚労省は検討しなさいと言われた流れを引き継いで、保険局は保険局なりに結構議論を重ね、具体的な姿が見えつつあります。私は、できたら早い段階で、きょうでもあるいは次回の冒頭でもいいのですが、どういう出口があるのかということを1つのたたき台としてお示ししたい。それで行けるのか行けないのか。もしも行けるのだったら、ではこれでビッグデータが我々の手元に来たねということになるし、それはだめだよということならば、また考えなければいけない。いずれにしても、この1番を論じる前提として、どうやって支払基金と国保連合会をつなぐのか。その2つの団体をつなぐ橋のイメージと、そして、その橋をつなぐためには具体的に何と何と何が必要で、それについてどのぐらいの時間を見込めばちゃんと橋がつながるのかということについて、私もペーパーを用意いたしますので、ぜひ御説明の時間を賜れればと思っております。

 以上でございます。


○西村座長 ありがとうございます。後者の御議論、ぜひ次回には事務局が対応するように伺いたいと思います。よろしくお願いします。においのことは大変重要で、よろしくお願いします。

 では、次は尾形構成員、よろしくお願いします。


○尾形構成員 尾形です。

 名簿にもありますように、私は、現在、大学で健康経営の研究に取り組んでおります。本日の資料を拝見しますと、データヘルスの推進とか保険者機能の強化、さらには健康経営といったような言葉も掲げられているので、恐らくそういった視点から構成員に選ばれたのだろうと思います。

 健康経営については、日本でも、いわゆるアベノミクスの中で、最近、健康経営銘柄が東証で2年間連続して指定されるというような動きの中で、ようやく市民権を得つつあるのではないかと思います。

 健康経営というのは、英語で言うと恐らくHealth and Productivity Managementという言葉がそれに当たるのだろうと思うのですが、人々のHealth、健康とProductivity、生産性の両方を同時にマネージしていこうという考え方です。

 その場合、やはり保険者が持っている医療費のデータ、健診データ、さらには企業や組織の生産性のデータ等を活用して、健康経営の可視化あるいは見える化といったことを図っていくことが重要だと考えています。東大ではここ数年、そういった実証研究を実施してきておりますが、幸い、既に幾つかのフィールドで国際比較可能な分析結果が得られてきています。

 こういう健康経営を推進するためには、何よりも保険者と母体企業、母体組織との協力・連携、まさによく言われるコラボヘルスということが非常に重要だと考えています。このうち保険者については、資料にも出ています保険者機能の強化ということだろうと思います。保険者機能の強化というのは長年議論されてきましたけれども、率直に言って、従来は理念のレベルにとどまっていたのではないか。理念としてはわかるが、なかなか現実には動いていなかったというのが残念ながら実態だろうと思います。ただ、最近、ようやくそれが現実化できる基本的な前提条件あるいはインフラが整いつつあると考えています。そういう中でも、やはりレセプトの電子化や電子化された健診情報の蓄積といったことは、今後、非常に大きな可能性を秘めていると思います。

 冒頭、座長がおっしゃったように、本検討会においては、ぜひ将来につながる大きな構図を描くというような視点から検討していただければと思いますし、微力ながらそのお手伝いができればと思っております。

 以上です。


○西村座長 ありがとうございました。

 それでは、佐藤構成員、お願いします。


○佐藤構成員 よろしくお願いいたします。一橋大学の佐藤です。

 私の専門は財政学でありまして、ひょんなことから医療経済というか医療財政にかかわるようになりました。現在、私、経済財政諮問会議の経済・財政一体改革の推進委員会とか、あと内閣官房さんの医療・介護情報の専門調査会とか、そういったところで社会保障の仕事にかかわっております。そのどちらの委員会、調査会におきましても共通して言われている言葉が見える化です。実際、さまざまなデータが利用可能になることによって、地域間での違いというものが見えるようになってきました。例えば医療・介護情報の専門調査会などでは、地域間での、つまり年齢構造も全部調整した上での病床数の違いであるとか重複受診の違いとか、あと介護であれば認定率の違いであるとか、こういったものがわかるようになりました。もちろん地域差があるというのがいけないと言っているわけではないのですが、ただ、それが説明できる地域差かどうかということが今度は問われてくるということになってくるわけです。

 恐らく今回、どこまで行くかわかりませんけれども、規制改革会議のほうの要望は、全国統一的かつ明確な判断基準をつくることということがありますけれども、まずそこに行くための入り口としましては、この見える化が必要でありまして、実態がどうなっているのか。先ほど96通りというお話がありましたけれども、その審査基準は違うのではないか。でも、それは一般論であり、ではどのぐらい違うのか、何か違うのか、どこが違うのか、どう違うのか、これをまず見える化させないと議論は進まないと思います。その上で、説明できないものについてはちゃんと是正しましょうという方向で働いていくのかなと思います。

 あともう一つ、専門調査会のほうで話題になるのは業務改革です。私、地方財政のほうが本当は専門でありまして、今、地方自治体もどこも人手不足でありまして、何とか業務量を抑えないと仕事が回らないのです。そういう意味におきまして、恐らく支払基金につきましても業務改革、仕事の仕方を変えていくということがもう一方で問われてくる。もちろん、それができるための前提条件が審査基準における地域差の是正、必要な是正であるということだと思いますし、もちろんICTの活用なのだと思いますが、やはり1つは支払基金の中での業務改革がちゃんとできるかどうかだと思います。

 きっかけは恐らく規制改革会議のほうに言われたからということなのだと思うのですが、ただ、これを契機にして、では支払基金において、あるいは国保連合会において、新たな役割というものが担えるのではないか。それが恐らく一番最初に出てきた保険者機能の強化と医療の質の向上に向けたビッグデータの活用とか、データヘルスの提供とか、こういった話が恐らくこれから支払基金ができることにつながるのではないかという期待なのだと思うのですが、まず新しいことをやる前には古いことを整理しなければいけませんから、まずは規制改革会議から与えられた宿題にどこまで応えられるかということが問われてくるかなと思います。

 あと、私は経済学者をやっていますので、ビッグデータは非常に重要だと思うのは、それを出すことによってさまざまなアイデアも出てくるということです。これはぜひ公開していくということを前提に、もちろんいろいろと留意するべきことはあるでしょうけれども、その上で、さまざまな検証が外部の研究者によって行われる、そこから生まれてくる知見というのも大きいと思いますので、もちろん保険者の方や自治体の方が自分たちの住民や加入者の健康増進のために使うという面ももちろん大事ではありますけれども、広く公開することによって新たな知見というものを得る、そういう契機にもしていただければと思います。

 以上です。


○西村座長 ありがとうございました。業務改革の話もぜひ議論をしたいと思います。

 次は神成構成員なのですがまだお見えでないので、次は林構成員の代理で、規制改革会議健康・医療ワーキング・グループのお仕事をなさっている翁構成員代理にお話を伺いたいと思います。よろしくお願いします。


○翁構成員代理 今、御紹介いただきました健康・医療ワーキングに所属をしております翁と申します。日本総合研究所の副理事長をしております。

 本委員会には森下委員と金丸委員も健康・医療ワーキングから加わらせて議論に参加させていただくということになっております。規制改革会議の健康・医療ワーキングといたしましては、私どもの活動が始まりました3年ぐらい前からさまざまな医療関係の課題に取り組んでまいりましたが、このレセプト審査の効率化と審査基準の統一化につきましては、ずっと問題意識を持ってさまざまな角度から取り組んできた課題でございまして、今回、早急に今度こそ抜本改革を進めていただきたいというように思っております。

 昨年秋に健保連のほうから審査の効率化と地域間の審査基準の統一化について御要望をいただきまして、それをきっかけに支払基金からもヒアリングをさせていただきまして、また、河野大臣にも何度か御参加いただきまして、厚生労働省の谷内審議官、宮本課長とも何度も議論をさせていただきまして、先ほど御紹介いただきました参考資料3のようなゼロベースでの見直しということにつきまして、厚生労働省と合意にたどり着いたということでございます。

 私どもといたしましては、まず、この支払基金について議論を進めてきたわけでございますが、こういった支払基金についての審査のあり方について、先ほど8点について御紹介いただきましたが、これについての検討の議論というのは、もちろん国保についても共通して検討しなければならない点だと思っております。

 規制改革事項といたしましては、先ほど御紹介いただきました8点に加えまして、国保も含めて、国保と健保の情報の共有化、そして、審査基準の統一化につきましても盛り込む方向で議論を進めていきたいと思っております。

 私どもといたしましては、支払基金法の改正につきましても踏み込んでいただきたいというように思っております。基金法では紙ベースの審査を行っていた時代からの名残として、各都道府県に支部を置かなければいけないというような規定になっておりますけれども、このICT化、AIを活用できるというような時代になって、そういったものが今でも本当に必要なのか。また、基金法ではかかった費用をレセプト枚数で割り算して手数料を決めるというようなことが規定されております。しかし、こういった審査の効率化や質の向上のインセンティブということを考えますと、こういった法律も見直していく必要があるというように考えております。

 レセプトのオンライン化が進みました今、やはりICT化の活用の徹底やAIの活用というのは、日本社会や日本経済全体への課題にもなっております。そういった中で抜本的にこうしたやり方を変えていく機会としていただきたいというように願っております。

 審査支払機関のガバナンスや組織のあり方についても先ほど御紹介いただきました。この点につきましては、規制改革会議だけでなく、行政改革や国会などでもいろいろ議論が繰り返されてきた問題であると思っております。しかしながら、まだ大きな改革には結びついていないと思っております。今回、こうした審査のあり方を見直すということで、こういった組織の見直しにつきましても、ぜひ議論を深めていただきまして、審査の効率化、そして統一化で保険者機能の発揮、そして医療費の増加抑制といったことにぜひつなげていただきたいというように思っております。

 どうぞよろしくお願いいたします。


○西村座長 私、この構成員をお受けするに際して、局長及び審議官からいろいろ話を伺って、相当の気合いが入っているということを確認してここに座らせていただきました。ぜひ今の御提案の細部にわたって協議がされることを期待しております。

 と言いながら、この論点は審査に関して大変御苦労なさっている医師会の方々もたくさん御関心をお持ちでございますので、次はぜひ松原構成員にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。


○松原構成員 日本医師会の副会長の松原でございます。

 この基金の問題、私どもも以前から随分議論しているところであります。まず、その基金のデータ、国保のデータでビッグデータをつくってICT化していろいろなことを国のために役立ている。これはまさに私ども大賛成であります。速やかに早くこれをやることによって無駄なものがなくなるのであれば、私どもも相当な覚悟を持って協力してまいりたいと思っております。

 ただ、その前提となるのは、やはり個人の情報の安全であります。全体の利益から見れば個人は軽く見られることもあります。しかし、私ども一人一人の患者さんを診ているときに一番大事なのは、個々の患者さんの幸福であります。個々の患者さん、一人一人がいろいろな病気を持っているのがもしデータが流れてしまえば、その人の不幸の深さというのははかり知れないものがあります。そこのところを踏まえた上で、個人情報が確実に守られるようなことを条件にして、そういったビッグデータをつくって、それを国の中できちっと見ていくというのは大事なことであります。基金と国保と合わせたデータを国がお持ちになる、あるいは基金に置く、あるいは両方の中間地点をつくることによってこれを利用していけるようになることは大変よいことだと思っております。

 2つ目は、なぜ地域でばらばらであるか。これはいろいろな要素があります。日本国は非常に南北が長いところでありますし、そして、交通網も所得も違います。人口の比率も違います。簡単に言えば、世界の国々においての日本の国のことを考えればおわかりいただくように、各国はばらばらであります。日本で、例えば東京の医療を全て北海道と同じようにしろとか、逆に北海道の医療を東京と同じようにしろと言われると、恐らくそこにおいて個々の人たちが幸福でなくなることが多くなります。そういったことを統一するために何かの方法をとるというのは賛成でありますが、強制的に何かの1つのルールをつくって当てはめることによって、これが全てうまくいくとは私ども思っておりません。

 なぜ、基金にしろ、国保にしろ、いろいろなばらばらの結果になるのか。そこのところは一番最初の保険が成り立ったところからの歴史にあると思います。私どもは、日本の国が大変いい保険制度になったのは2つの理由があると思います。1つは、保険者が全て非営利であるということ。非営利であるということは、アメリカの保険者のように、株式配当をしなくて済む。株式配当で3割、4割配当していることを思えば、日本の国の保険者さんが事務費13%前後で頑張っていらっしゃるというのは大変大きなことであり、あとの87%は国民に戻るわけでありますので、そういった非常によい仕組みができているということであります。

 例えば保険者さん同士の中でいろいろなバランスの崩れがあれば、今回の総報酬制の導入などによって、その一部から他へ渡せる。つまり、簡単に言いますと、被用者保険から国民健康保険にお金を厚生労働省さんと財務省さんの意見で移せる。なぜこれができるかといいますと、それは全部が非営利の保険者だからであります。もしそこに株式会社が入っていれば、当然訴訟になります。そういったこともできるというのが1つ。

 もう一つは、これは保険者さんと医療機関との間のお金の話を議論している中医協であります。この中医協という仕組みがあるからこそ、アメリカのように各保険者と個々の医療機関が交渉して、その患者さんにその検査が使えるかどうか、治療が使えるかどうかということを議論しなくて、1つの大きな目安を持って私どもも治療ができるという点にあります。そこのところで、韓国においてほとんどは看護師さんがその判断の業務についております。また、アメリカにおいても、保険者においては、看護師さんあるいは事務員が全ての審査の対象をしています。日本だけが、なぜか不思議なことに医師が審査します。日本の医師はなぜそこに協力するのかとよく世界の中で言われます。それは医師である私どもが私どもの判断によって国のためになるべく余計なもの、あるいは間違ったものが入らないようにすることに協力しているという、つまり健康保険の国保と社保がある中で基金と国保連合会で医師が審査しているということであります。

 簡単に言いますと、審査する医者は一生懸命自分の仕事をして、その後で、夜、夜中まで土日も潰してほとんどバイトのような、それぐらいの低い金額で一生懸命審査をやっております。それをなぜするのかというと、私たちは私たちの誇りがあって、そして、これによって医療費を適正化しようと思ってやっているわけでありますから、そこのところを十分理解賜りたいと思います。

 なぜ医療に差ができるのか。まず治験を持って、これが有効性・安全性が確立されますと、厚生労働省の薬の例でいいますと薬品局で審査されて、この薬は有効性・安全性がある。次は中医協で値段を決めます。そのときの決め方とのデータは、もともと治験でありますので、治験というのは、例えば症例数は200とか300とか1,000を超えることは普通余りないように聞いております。また、薬品によりけりであります。私ども医師は、1人で1,0002,000ぐらいの症例を見ることは多くございます。専門によってかなり固めて見ることがあります。そういった見た中で、やはり治験の中の統一されたある程度規格されたデータと実際に一人一人の国民のデータは違います。例えば1錠でいいか、2錠でいいか、常に議論をします。そこのところで2錠が極量、つまり、それ以上を出してはいけないということが証明されているものではなく、むしろ中医協においては、5mgがいいか、10mgがいいか、20mgがいいか、それは世界のデータを見ながら普通量として認可されます。逆に言えば、体重が非常に大きい方、重い方においては、当然脂肪の量も多いので大量に薬を使わないと有効にならないこともあります。そういったことを個々に判断するのが私たち医師の仕事であります。

 そういった面で見ますと、もともとのデータが規格化され、また体重などもそれほどバラバラではなく、むしろ規格化された余り正常値から外れない人、肝機能障害や腎機能障害のない人、そういったデータをもとに治験のデータが出ておりますので、最終的には実際に医療として使ってみれば、そこのところでもっと多く使える、あるいはもう少し使ったらその薬が有効になるということはお任せいただきたいとの考え方。手術にしても、検査にしても、いろいろな個々の皆さん方が、患者さん方がばらばらの状態であるのを多くの目で見て、その結果として診療をしているということであります。

 逆に言えば、中医協で決めた数字自体が一番その方に適切なものとして治療できるわけではございません。そういったいろいろな積み重ねを何十年にもわたって重ねて、判断します。中医協で決めるときに附帯事項やその他通知、告示で例外事項が多用できるように出しておりますが、それでも対応ができないものがございます。それを加算やその他でいろいろと追加したために非常にわかりにくいものになっております。理解していただきたいのは、患者さんのために薬を投与している医師が何を考えているかでございます。そういったことにおいては、やはり医者でなければ判断ができないところだと私どもは思いますし、これを簡単に数字だけで、1までは正しくて1以上は正しくない。コンピューターというのは簡単にそれができますが、それで全てをやるのは恐らくまだまだ人工知能が完全にならないと無理だと思っております。

 また、大変基金の人数が多いという御指摘もございます。もしコンピューターが10年、20年先に完全なものとして完成すればもっと人員を減らすことができると思いますが、しかし、判断というものはかなり専門的な知識が要ります。大体基金に来られている事務官で5年は役に立ちません。5年以上たってみると、大体医者が何を考えてどのような方向にいるのかを理解された上でそこのところを手助けてしてくださって、余り時間をとらないようにして下さいます。先ほど申しましたように医師はほとんどボランティアでやっておりますので、審査している医者が嫌気を差さないように支えてくださっているということを踏まえた上で、ぜひ効率化を考えていただきたいと思っているところであります。

 今のところ以上でございますが、最後に、医学的なものと医療的なものは異なります。医学的に正しくても医療的には正しくないこともございます。そういったことも含めて、医学的・医療的な判断は医師に任せていただきたいと思います。

 以上でございます。


○西村座長 大変インフォマティックな情報提供をしていただきました。ありがとうございました。

 最初のお話の個人情報も当然話題になります。御承知と思いますが、オバマ政権が昨年、プレディシジョンメディスンという話を1月に提起して、個人情報の話をことしの1月、ちょうど1年後に1年かけてかなり慎重な検討をしてやって方針を出しました。そういうことを踏まえて、もちろん松原先生がおっしゃったように、アメリカ的な医療に対して批判的な目で見るということも大変重要でございますが、しかし、同時にデータが利用の可能性がかなり変わってきておりますので、ぜひそういうことを踏まえた一歩前という方向で議論していただくとありがたいと思います。


○松原構成員 個人情報さえきちっと守っていただければ、これは前へ前へ、ぜひ私どもも協力を申し上げます。


○西村座長 今、神成構成員がお見えになりましたが、申しわけありませんが順番に回っていまして、後でお願いしたいと思います。

 それでは、宮田構成員、よろしくお願いします。


○宮田構成員 慶應義塾大学医療政策・管理学の宮田と申します。

 私は、現実を改善するための科学の方法論、医療政策、政策評価、社会科学方法論、そういったものを専門にしております。今まで医療にかかわる現場の方々と連携しながらいろいろな取り組みをしてまいりました。専門医制度と連携したナショナルクリニカルデータベース、これは4,500施設が参加していますが、こういったものから広島県を中心とした地域医療政策とか、あるいは産官学連携の産業創出、そういうようなことを根拠に基づいて連携して取り組んでいるというところです。

 今回、趣旨の中にもありますが、先ほどから話題に上がっているICTであったり、ビッグデータであったり、これはもうIT革命、ICT革命、情報爆発と、言葉をかえながら、医療だけではなくて社会システム、さまざまな分野を変えてきたイノベーションのストリームで、これを抜きにして我々これから考えることはできないであろう。お金、リソースのアロケーションとか、空間、時間、専門性、こういったものを今、外科だけではなくて内科領域もこれを活用して、やはりどのような形で医療、専門性を考えていくかということが非常に過渡期にあります。

 一方で、そんな中でも、私自身も1年前と今の自分でこのICTに対する考え方は変わってはいるのですが、ただ、変わらないものとしては、先ほど松原構成員がおっしゃったように、患者さんのために、あるいは社会のために医療を使っていく。ここはもう大原則でして、ここを外さない限り、このICTの技術が進歩していったとしても、本質に基づいたものをしっかりすることができるのではないかなと。なので、今回、タイトルとしてもデータヘルス時代の質の高い医療の実現に向けてと非常にいいテーマをいただいて大変感銘を受けました。

 もう一つは、私自身、保健医療2035、きょういらっしゃっている山本さんと一緒にその構成員をさせていただいたのですが、やはり医療は2025年問題と言われていますが、需要がピークに差しかかる10年後だけを考えるとかなり厳しい時代になる。その後、人口減少、これはすぐ解決しないですし、高齢化と経済成長も鈍化しているということもあるので、確実に2025年に何とかなるモデルでは、その先は間違いなく真っ暗闇です。それを我々今の段階で10年先の最適解がもうその先の最悪の解答になり得る状況でもあるので、やはり長期展望の中で現在、これから踏み出す一歩一歩をいかに位置づけるか。そのときには、非常に長いようで短いというのか、今もうすぐ着手しないと手おくれになることが山ほどございますので、今回の保険者のあり方も含めて、どういうタイムスケジュールで何を実現するかということも非常に重要な問題かなと考えております。

 以上です。


○西村座長 ありがとうございます。今のこと、将来のこと、両方分けてという御指摘は大変大事。

 では、次はこちらで、森構成員、よろしくお願いいたします。


○森構成員 日本薬剤師会の森でございます。

 現場の薬剤師の立場で、資料2のほうに論点をお示しいただいていますので、論点に従って少し幾つか意見を述べていきたいと思っております。

 まず、保険者機能強化と医療の質の向上ということで、保険者機能強化のために求められる新たなサービスのやり方についてですけれども、保険者もレセプトデータを活用した事業が始められています。薬局、薬剤師が今、データヘルス事業に協力しているものとして、重複投薬患者等への訪問指導や後発医薬品の使用促進事業があります。そういう何か保険者が積極的にレセプトデータを活用していくことにより、保険者機能強化にはつながるというように私どもは思っています。

 ただ、今後データヘルスを進める上で、保険者自身が保有するデータの活用はもちろんなのですけれども、審査支払機関などが保有する、いわゆるビッグデータを活用していくことは有効だと思っております。そうした中、審査支払機関としては、各保険者が共通して活用できる情報については、あらかじめ例えばサンプリングデータセットをつくって提供することや、保険者の個別オーダーに応じたデータの作成、提供をすることが考えられるのではないかと思っています。

 また、医療の質の向上のところですけれども、医療機関選びに必要なデータ提供、医療機関の質の評価等についてということの記載がありますけれども、レセプトデータに関してはあくまでも請求データであるということに留意をして進める必要があるのではないかと思っております。

 また、ビッグデータの活用を初めとする保険者のガバナンスのあり方についてですけれども、さまざまな保険者の規模がございます。また、ある意味では共同で実施できることもあるのではないかと思います。そうした中、後発品の使用による差額通知を出すためには、差額を計算するためのシステムを構築する必要があり、このシステムは各保険者共通で例えば利用できるものではないか。こういうものに関しては、共同で開発して利用することが効率的なのではないかというように思っています。

 2番目の審査の効率化・統一化の推進と組織体制なのですけれども、審査のあり方に関しては、業務の効率化・統一化ができるところは統一化のためにコンピューターを使うというのはそのとおりだと思います。ただ、先ほど松原先生のほうからもありましたけれども、コンピューターで判断できるもの、できないものがあるのかなと。先ほど医薬品の話がありましたけれども、保険診療では薬機法で承認された用法・用量で使用することが原則になっていますが、用量を例にとれば、年齢、体重、生理機能や併用薬、過去の使用状況によって適切な用量というのは必然的に異なってきており、適宜増減の範囲を超えることも少なくありません。用法も同一で一概に判断できるものではないというように思っております。また、調剤行為という点では、調剤行為がルールに適合するのか、どの項目で算定するべきかということに関して、全て機械的に判断することは困難です。そのため、職員による点検であったり、審査員による審査が必要になってくると思います。

 組織、体制のあり方ですけれども、職員による点検業務はそれまでの知識と経験に基づいて行われており、今後必要になってくるのかなと思います。また、審査の地域間格差を解消するためにビッグデータのインフラを活用したことですけれども、効率的で統一的なシステムのためには、審査支払機関の職員が持っている知識、経験は生かしていくべきではないかと思っております。

 以上です。


○西村座長 それでは、森下構成員、よろしくお願いします。


○森下構成員 私のほうは、規制改革会議の委員と健康・医療戦略室の戦略参与ということでも務めておりまして、どちらもICTの活用というのは非常に大きなテーマになってきております。

 今回の議論は、規制改革会議の1つは提言といいますか、きっかけづくりというのは非常に大きかったと思うのですが、ぜひ皆様方お願いしたいのは、やはり国民目線に沿った議論を今回していただきたい。国民の方が思っているのは、やはり少ないお金で最大限の効果を出したいなと。そのためには何をすればいいか。せっかくゼロベースで今回見直すという話になりましたので、ぜひこれから先、先ほど来、話に出ていますように、少子高齢化で支払うべきものは多くはできない。その中で漫然とお金をここへ使うというのは当然ながら非常に矛盾した話だと思うのです。残念ながら支払基金の議論というのは、保健医療システム全体の中で言うとどちらかというと後ろ向きの議論であって、前向きに国民の医療を改善するというお話では本来ないと思います。しかしながら、その中からビッグデータ等を利用して国民の健康・医療システムを前向きに変えていく。こういうことができれば、国民の方がお金を払うことのメリットが見えてくるでしょうし、逆に言うと、これぐらいお金を使ってもいいという議論が初めてできるのではないか。

 ですから、ぜひ、従来の議論にこだわらないといいますか、従来の議論とは別の目線で1つは議論していただきたいというように思います。その中で、全国統一でできることがどこまで可能なのか。これは各都道府県の事情等があるのは十分わかりますが、一方で、専門の方を含めて、これはどんどん人が減っていくのは事実でありますので、当然ながら集約できる部分は集約する。逆に何を地方に残すべきなのか。これも当然ながら地方ごとの機能というのは必要だと思いますので、それぞれの視点を先ほど来お話がありますようにゼロベースで考えていただいて、あるべき姿というものをまずは考えていくべきだろう。その中で、急にそこにいけないというのであれば中間的なポイントもあろうかと思いますが、しかし、最終的な姿というものをまず見せないことには、国民の方がこれだけの費用負担をしているということに対して、私は納得できないだろうというように思っております。ですから、ぜひそういう目線での議論というのをお願いしたいと思っております。

 その中で、ICTの活用、これはビッグデータが常に話に出てきますし、日本は皆保険なので、ある意味、世界でも一番いいデータがあるはずなのです。なかなかそのデータが活用できない。これは1つの大きな理由としては、私自身が思うのは、病名が統一されていないというのが非常に大きな問題だと思うのです。例えば高血圧で病名をとっても保険病名だけでも何十種類もある。明らかに重複しているようなものもあるわけでして、こういうものを整理していくことによってビッグデータの質は上がってくる。今のシステムというのは、既存のデータをベースにしてビッグデータを活用しようとしていますので、これはある意味、非常に無駄も多いですし、質が悪い。ですから、今回の議論の中で非常に重要なのは、質がいいデータをとるためにはどのようなシステムをつくるべきか。

 そこには従来の支払い基金だけではなくて、先ほど松原さんも言われましたけれども、医師会も入って、あるいは薬剤師会等も入って、実際の医療の現場に合わせた議論をしていただいて、できるだけそうした国民の目線から見ておかしくないような、正しい医療を受け入れるような形での支払基金のシステムをつくっていく。これが一番重要なのだろうと思います。その意味では、クローズな議論ではなくて、オープンイノベーションが今はやりですけれども、ぜひオープンな目線での議論をしていただいて、皆さんが納得できるものをつくっていく。今回、非常にいい場になったのではないかと思いますし、その議論に積極的に私も加わっていきたいと思いますので、ぜひ皆さん、よろしくお願いいたします。


○西村座長 ありがとうございます。病名の見直しまでいくと多分大臣の御指示がというような気がします。アメリカはかなりそれをやっているようです。ただ、日本はまだそんな雰囲気はないかなというように感じていますので、ぜひ大臣に訴えていただくとありがたいかなと思います。


○森下構成員 一度、規制改革会議の一番最初のときに病名の整理という議論を厚労省さんに持ちかけたのですけれども、学者で反対している人が多いというお話も出たのですが、それは学者の意向がどうこうという話ではなくて、やはり国民のためになるような議論をしていかなければいけないと思うので、必要であればぜひ大臣の御発言をいただいて、根本からやり直さない限り質のいいデータがとれないことは明らかですから、そうした観点でもぜひお願いしたいと思います。


○西村座長 ありがとうございます。

 それでは、山口構成員、よろしくお願いします。


○山口構成員 日本歯科医師会の山口でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、保険者機能の強化と医療の質の向上についてでございますけれども、ビッグデータの活用については大賛成でございます。医療を提供する側としてもビッグデータの分析から得られる疾病の地域特性であるとか、疾病構造等から適切な医療の提供であるとか、地域包括ケアシステムの中での活用を検討することができるだろうと考えております。

 例えば歯科では、歯周病等と糖尿病との関連であるとか、がん患者等の周術期口腔機能管理など、歯科医療による重症化予防の効果に関するエビデンスが示されておりまして、実際に医科の先生方との連携も進んでおり、将来的にはそうした医科と歯科の疾病の相関などを分析して、医科の先生方と連携しながら治療であるとか保健事業に役立てることができれば理想的だと考えています。

 少し資料で気になったところがございまして、資料2の2ページに記載がございますけれども、医療機関選びに必要なデータを提供する、あるいは韓国のHIRAをモデルにした医療機関の質の評価ということでございますが、提供されるデータを国民が正しく判断できなければ、外面的なデータだけがひとり歩きをする危険がありまして、フリーアクセスの阻害であるとか誤った患者誘導になることが危惧されますので、具体的な例を示していただきながら、慎重に議論を重ねるべきだと考えております。データの出し方については相当な工夫が必要だろうと考えております。

 審査の統一のことでは、現場で16年間私も審査をやっていましたので現場のことをいろいろ申し上げたいのですけれども、話が長くなりますのでまた別の機会にしますが、1点、審査委員会の判断基準の統一ということであります。日本の国民皆保険を維持するためには、制度の統一性と柔軟性の微妙なバランスが必要だというように考えております。その中で国民一人一人への適切な医療の提供は最優先されるべきだと考えております。審査会を集約して1か0であるとか、イエスかノーかでばっさり決めてしまうということではなくて、地域の特性であるとか医療機関の特性に配慮しつつ、きめ細やかな審査をするということが個々の患者さんにとって適切な医療が確保されることにつながっていくのだろうと思います。

 そういった意味では、全国統一的かつ明確な判断基準を策定するということには、医療を画一的に硬直化させる可能性もあるということで極めて慎重な議論をお願いしたいと思います。基準という以上、統一されたものがいいに決まっております。ただ、殊、医療に関しては、基準としての許容範囲も必要だということであります。いろいろ御異論もあるところでございましょうけれども、あえて申し上げます。審査の結果が医療提供方にもはねるということが非常に大事な視点だと思いますので、一言申し上げます。

 以上です。


○西村座長 期せずして、医師、薬剤師、歯科医師の方々から順番に国民目線という話が出ました。このことは厚労省もこの後、検討するときに留意していただきたいと思います。

 それでは、山崎構成員、よろしくお願いします。


○山崎構成員 山崎でございます。

 これまで、年金、医療保険、介護保険、時には子ども・子育て支援についてもいろいろと発言する機会を与えていただいてきました。医療保険では、昭和50年代半ば、老人医療が問題になり始めたころから国保の制度運営に長くかかわってきました。そういったことで御指名いただいたのだと思っております。

 事務局が用意してくれました資料2でございますが、これは規制改革会議の指摘を踏まえたものであって、ここで示唆されている方向性というのは理解できるものであります。その中で特に審査業務の効率化・統一化だとか、あるいはデータヘルス事業におけるデータの集積等について、支払基金と国保連が連携し、保険者機能の強化に向けて協力し合うということが重要だと考えております。あわせて、改革を着実に進める上で実現可能性という観点も重視するべきだと考えておりまして、具体的な検討に当たっては、医療者や保険者の意見にも十分配慮する必要があると考えております。

 ところで、規制改革会議で直接的な検討の俎上にのせられたのは、社会保険診療報酬支払基金のようで、資料2でも実際に固有名詞としては支払基金しか登場しておりません。しかし、先ほど来の構成員の御発言にもありましたように、審査支払機関としては、支払基金と並んで国保連も大きな役割を果たしているわけでございます。したがって、審査支払業務の共通性に着目した国保連の充実、機能強化に向けた検討も必要になりますが、その際には支払基金と異なる国保連の独自の役割についても十分な理解が必要だと思います。

 支払基金が保険者及び保険医療機関から独立した中立的な第三者機関であるのに対して、国保連は市町村等の保険者が共同で設立した保険者団体であって、保険者の基本的機能の一つである診療報酬の審査支払いを共同で行っているわけでございます。その他、国保連は介護保険の審査支払いや関連業務を共同で実施し、KDBによるビッグデータ分析を行い、それをもとに保険者のヘルス事業の推進をサポートしているわけでございます。

 また、今回の熊本震災において、既往歴や服薬の情報が得られないまま避難している方について、国保連から罹患情報を提供し迅速な対応を行っておりますが、これは保険者が保管するレセプトを効率化の観点から国保連が管理している。そのレセプト情報を活用し、情報を提供しているわけでございまして、そういった独自の役割を担い、実績を上げているわけでございます。次回ではヒアリングが予定されているようでございますが、その際には支払基金だけではなくて国保連からのヒアリングもお考えいただきたいと思っております。

 その他、最後になりますが、実は平成5年以来、横浜市国保の運営協議会委員をしておりまして、平成12年からは会長をしております。国保制度の運営の難しさというのは身に染みて感じてきておりますが、そういった観点から2点留意していただきたいと思います。

 1つは、やはりシステムの検討に当たっては、費用対効果というお話がありましたが、費用面についても十分配慮していただきたいということでございます。

 もう一つ、保険者としては、医療者との適度な緊張関係は必要だと考えておりますが、同時に市町村というのは、国レベルで考える以上に医療者の協力を得て保健事業を推進しているわけでございまして、そういった医療者との間でこれまで築き上げてきた信頼関係を損なうことのないよう配慮していただきたいというように思っております。

 以上でございます。


○西村座長 ありがとうございます。大変忘れがちな重要な論点を御指摘いただいたと思います。

 最後、山本構成員がお二人おられて大変最後で申しわけございません。山本雄士構成員でいらっしゃいますか。お名前はこれでよろしいですか。よろしくお願いします。


○山本(雄)構成員 ありがとうございます。山本雄士でございます。

 私、今、ソニーの研究所でリサーチャーをしています。レセプト情報とAIを使って医療がどう見えるのかの研究や、別の企業で健康保険組合や国民健康保険様向けのデータヘルス事業の実践支援などをしております。今日は、タイトルが非常にいいこの検討会に呼ばれてとてもありがたく思います。ここまでの内容をいろいろ伺っていると、業務効率化の話と保険者機能の強化の話という似て非なる話があり、分けて議論しなければいけないと思っています。保険者のあるべき機能というものが見えてくれば業務内容が決まりますので、順番としては保険者機能としてどういったものが必要なのか、今、何が足りていないのかというものをまず考えるべきだと思います。

 また、業務の効率化はいいのですが、先ほどどなたかの意見でもございましたように、そこだけにフォーカスしてしまうと、審査支払基金と健保の間の内部コストの削減だけに終わってしまいます。せっかくこれだけの検討会で、国レベルでの健康保険のあり方について話ができないのはもったいないので、単に審査業務を効率化できたからよかったねという話で終わらせるわけにいかないなと思っています。

 一方で、国レベルの話と言っても余り大言壮語して逆にうやむやになってもいけないので、今後やらなければいけないことと、まずこれに取り組むべきという両方の視点を持つべきだろうと思って発言していきたいと思っています。

 その観点でまず、保険者の機能のあり方に関して、今の医療水準、医療技術から考えるには大きく2つ機能があると思っています。1つは、健康を守る保健事業という機能、それから、保険の給付事業という機能です。今、公的保険者さんは予防から介護や終末期までを医療機関や健診機関、介護機関などに委託しています。つまり、保健事業のポートフォリオマネージャーのような立場にありますので、その機能が本当に果たされているのかという健康管理のガバナンス評価という目線と、もう一方で、公的保険として加入者の保険料を集めてそこから医療費を支払っているので、金融資産のマネージャーであるという意味でのガバナンスの評価目線の両方が最低限なければいけないだろうと思っています。

 少し各論になりますが、今の医療技術ですと、かつてのように万が一の病気やケガのための保険というよりも、ほぼ間違いなく誰もに起きるであろう、だけれども、いつ起きるかわからないというリスクに対応する保険が必要な時代になっています。この中で、今の保険のあり方で時代に即しているのか、あるいは保険者機能として次に持っておかなければいけない機能は何だろうかという視点を忘れてはいけないと思います。

 それらが見えた上で、ようやく支払基金や国保連さんのような中央の組織で管理、運用したほうがいい機能と、各保険者あるいは地方の組織で分権的にやったほうがいい機能が何であるのかという話をしなくてはいけないと思います。前者に関しては、私もレセプトデータとか毎年数百万人分を扱っていますが、一番困るのが用語の統一です。レセプト関連のマスターの管理が非常によくないです。

 保険者のあり方に続いてもう一つは、ビッグデータを解析しようと思っても、出てくるレセプトデータの審査のルールがばらばらであっては、それらを集めたところで本当の意味でいいデータとは言えません。したがって、中央で審査のやり方を統一する、さらには実際の臨床の様子をレセプトからトレースできるぐらいに審査を標準化しておくことが間違いなく重要です。また、時代時代によって臨床のプロセスは変わってくるので、どの程度の診療の幅が標準的な許容範囲で、どの程度はもう現場で都度判断してもらうかというカットオフラインを時代に合わせて決めていくというだけでも相当重たい業務のはずだと思うのです。

 審査の業務効率という点では、たとえば審査業務で3割方標準化しているけれども、7割ぐらいが地方の判断に回っているとします。それを、7割方ぐらいまで標準的なルールで詰められるのではないかという議論をするべきだと思います。どの程度標準化されているかがわからないこと自体大きな問題ではないかと思っています。一番あり得ないだろうと思うのは、中央で審査ルールを決めて、これなら通す、通さないというのを100%事前に決めようとすることです。各保険者に分散してもいいだろうと思うのは保健事業です。例えばデータヘルス計画もそうですけれども、ビッグデータがないとデータヘルスができないか、保健事業ができないかといったら全くそんなことはありません。例えば、日本全体に比べてこの保険者さんがいい悪いと幾ら言ったところで、我々医療職の感覚からすると、10人血圧が高い人がいたら10人に対応しよう、それだけなのです。これは平均よりいい悪いという話ではなくてリスクがあれば対応するという話なのです。こうした、ビッグデータがなくても対応可能な業務、特に個別に丁寧にやったほうが良い業務は各保険者でやるべきです。むしろ、現場で何が一番問題かというと、いざやろうと思ったときに手元にデータが使える状況にないということと、仮にデータが使えるとなっても先ほど言ったように審査基準や用語が統一されていないので使いにくいことです。こうした、データの可用性とかユーザビリティーはよくしてほしいですし、そのルール作りは国でやったもらったほうがいいです。そして、その先の業務は個別にやるほうがいいだろうと思っています。

 3点目になりますが、現場の感覚を持つことが非常に重要だと思っています。例えばデータの見える化をすれば取り組みが始まる、というのは、それなりに専門知識がある方同士で成り立つ話であって、問題点はこれで解決策はこうだなどという話はできると思います。でも、現場ではそんなことはできなくて、データを見える化しても見ないか、見てもそれきりになってしまうのが実態です。ですので、やらなければいけないのは、あなたにはリスクがありますよと幾ら見せても患者さんは動かなくて、そのリスクをこうやったら解決できますよというのを教えたり見せないと患者さんはついてきてくれないわけです。データヘルスの保健事業でも全く一緒で、動くための根拠とするべき何かを出す、現場の業務の指針だとか方針になるようなものを出すのだったらともかく、中央で管理する、監視する、あるいは納得するための見える化を現場と共有してもほとんど意味がありません。現場で本当にこれが使えるのか、必要とされているのかという点に留意して進めるべきと考えています。これは臨床でも健康づくりという意味の保健事業でも一緒だと思います。

 長くなりましたが、以上です。


○西村座長 ありがとうございました。済みません、私が言うのは変ですが、今のお話は大変新しいお話で、重要なポイントと思いながらまだ理解できていないところもございまして、ぜひ彼のお話を厚労省の事務局のほうでかみ砕いて提供していただいて、現場感覚も含めたいいあり方を考えていただきたいと思います。

 それでは、山本先生、よろしくお願いします。


○山本(隆)構成員 山本隆一です。よろしくお願いいたします。

 私は、一応医師免許は持っているのですけれども、もう医療情報のプロパーの研究者を20年以上やっていて、今は殆ど臨床にはタッチしていないのですが、専門は医療情報のプライバシー確保とセキュリティーでございます。実際に何をやっているかというと、このお話に関係あるところでは、NDBの有識者会議の座長も5年以上やっておりまして、パーソナルヘルスレコードの導入というのも結構真剣に取り組んでいて、その中で保険者さんの立場から、一体何が情報として足りないのかというようなことも調査してまいりました。

NDBのほうはいろいろ評判の悪いところもあって使いにくいとか申請してもなかなかデータがもらえないとかと言われるのですけれども、やはりこれは一旦個人情報につながるような事故が起こるとデータベース自体が崩壊するということがあって、どうしても最初は慎重にやらざるを得ないため、少し厳しいことを研究者の皆様に申し上げて、データが盗まれる可能性があるのならデータは出さないというような方針でまいりました。最近は研究者の方々も安全管理の意識をしっかり持っていただくようになりましたし、あとは一方でオンサイトセンターというセキュリティーを確保した環境を整備して、そこに来ていただいて研究をするというようなことで、少しハードルが下がっているのだと思います。

 さらに、まだオープンにはなっていませんけれども、今年度にNDBオープンデータといいまして、かなり安全性を高めた状態で都道府県別のさまざまな医療行為の一覧表や、性・年齢階層別のさまざまな医療行為、これは医薬品も含めたもので、これらを一覧にした大量の表、テーブルがオープンになります。つまり誰でも見られる、海外からも見られるという状態でできるようになっています。これで全体として見ることに関してのNDBの貢献というのは相当進むのではないか。むしろそのデータをどのように利用していただけるのか楽しみだというところであります。

 これらを利用してデータヘルスに取り組んでいただくのが最もいいと思うのですが、先ほど言いましたパーソナルヘルスレコードの普及を目指していろいろな保険者様に意見を聞くと、それぞれ非常に熱心にデータヘルス計画に取り組んでらっしゃる保険者さんが多いことは多いのです。ただ、なかなかこういう生活習慣病や鬱病などを中心にしたデータヘルスの比較的軽い状態を扱っていると、数字として患者さんまたは加入者の数字としては減るのですけれども、実際の経済効果が出ないのです。最も効果が出るのはいわゆる3次予防であり、重症化直前でとめる、例えば透析に入るのを手前でとめるというのは最も効果が大きいです。

 ところが、透析に入る人の側から分析をすると、3分の1ぐらいは特定健診も受けているし、通院もしているけれども何かの事情でどんどん悪化していく。あとの3分の1ぐらいは、特定健診は時々受けて、通院も時々するけれども、途絶している。残り3分の1は、特定健診も受けないし受診もしていない。ブラックボックスで、いきなり救急車で運ばれて透析に入ってしまう。これは非常に扱いにくいところで、2番目の例は保険者さんなり臨床医が努力をすれば何とか改善できる。1番目は個人の体質といいますか、特質はどうしても悪化する人はいらっしゃいますからなかなかとめられないのですけれども、この2番目、3番目を何とかすることによって、保険者としては極めて明確な医療費適正化が行える。そうすると、インセンティブとして相当強いものになりますので、そこからデータヘルスを拡張していけるというようなことが望まれるのだということをお聞きしていますし、そのとおりだなと思います。

 そうすると、特定健診とレセプトだけではできないです。それ以外にわずかですけれども、臨床データが必要で、これをどう集めるのかが非常に多くの保険者が苦労されているところだと思います。例えば制度的に担保をしてあげるなどによって、あるいは地域の医師会と保険者が協力をするなどによって、ある程度はできるのだろうと思います。そういうことを少し議論できればと思っています。

 支払基金あるいは国保連合会の審査に関しては、レセプトオンラインが始まったころから私はしばらくIT総合戦略本部の評価専門調査会の医療調査会の副座長、座長をしていたのですけれども、そのとき、本日もお見えになっている情報政策担当参事官も出ておられて、点数表の電子化をかなり強く要求をしておられました。それは、中医協で決められる点数表をベースにこれを電子化することによって、審査側だけがやるのではなくて提出する医療機関も同じ基準で判断ができるようにするためです。これが実際は審査業務の合理化に結構つながるのではないかと考えています。

2006年当時と今と比べますと、コンピューターのパワーは恐らく100倍ぐらいになっているのです。電子カルテではなく医療機関のレセプトコンピューターであっても現在は相当なロジックの処理ができることになってきているのです。この論点のメモにもありますように、ある程度は自動的にコンピューターで処理できるようにすることは恐らく可能だと思います。もう一つは、レセプトの審査の恐らく9割以上、もう99%かもしてませんが、これは医療機関と審査側が協調して適正化できる部分で、恐らく1%ぐらいはある意味対立的になるところだと思うのです。この協調してやれるというところに、医師としてのある意味誇りをかけてやっているというようなお話が松原先生からございましたが、ここは非常に大事なところで、審査支払を医療機関と審査機関が協調して行う。つまり、コンピューターで開発したロジックをお互いにそれを議論して最適なロジックをつくって、審査自体を医療機関でやっていいと思うのです。それを通過したレセプトを改めて医学的な審査を行うのはごくわずかになりますから、それによって審査業務自体は相当合理化されるのではないかと思います。今すぐはできなくても、そういう方向性を明確にして進めていけば、決して不可能ではないというように思っています。そういうことも含めて審査の効率化の議論ができればと思っています。

 以上です。


○西村座長 ありがとうございました。

 ここで大臣がお見えになりましたので、神成構成員、後回しで済みません。

 では、大臣、御挨拶を賜りたいと思います。


○塩崎厚生労働大臣 大変おくれて参りましたことをまずおわびを申し上げたいと思います。

 委員の先生方には、第1回目のデータヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会議ということでお集まりをいただきまして、まことにありがとうございます。

 昨年6月に私ども厚生労働省で20年後を見据えた保健医療システムの長期ビジョンとして保健医療2035というものを策定していただきました。その中のメンバーも何人かおられるようでございますが、この従来のいわば量の拡大から、あるいはインプット中心からアウトカム中心、そしてまた患者の価値を大事にする。そしてまた質を改善していくというようなことを目指す保健医療のパラダイムシフトを提言していただきました。

 この実現のためには、ICTの活用と保険者の機能強化によって、患者主体の選択を支援していくということが大事なのではないかというように思っております。支払基金を初めとする審査支払機関には、レセプト電子化によって年間20億件のビッグデータの集積が進んでいるわけでございますけれども、現状では審査支払いの実施自体を存在意義といたします業務集団にとどまっているのではないか。必ずしも保険者の信頼を得るチェック機能を効果的・効率的に行って、その保有するデータを十二分に活用して役割が果たせているとはなかなか言いがたいのではないかというように思うわけでございます。

 昨今、医療をめぐる状況や、あるいは技術の進展を考えますと、審査支払機関がビッグデータとICTを最大限に活用することで、保険者と協働しながら医療の質の向上に寄与する、いわば頭脳集団としてその役割を再定義すべき時期に来ているのではないかと考えているところでございます。折しも規制改革会議から支払基金における診療報酬の審査のあり方をゼロベースで議論して、ICTを活用した業務の効率化や組織の見直しを求められているところであります。このような指摘をむしろ私どもとしてはチャンスと捉えて、単に業務の効率化にとどまらないで、国民の、あるいは患者のため、そして医療全体の発展のために未来志向の議論を行うことが必要ではないかと考えます。そうした中で、支払基金だけにとどまらず、これからの審査支払機関に求められる真の役割を再定義してまいりたいというように考えておるところでございます。

 このため、医療の質向上、持続性の強化に向けて、保険者と審査支払機関が協働して保険者機能をより一層強化して加速化をいたしまして、まさに医療の質をつくる。そのためにICTとビッグデータを最大限活用した新たな役割を描き出す。このために皆様方にお集まりをいただいたというように思っていただければ幸いであるわけでございます。

 そして、何よりも大事なことは、ビッグデータ化をする、あるいは標準化をするということだけではなくて、その上でデータを活用して医療において何をするのか。そして、それが患者の価値の向上にいかにつながるのかということをぜひ問いかけていただきたいと思いますし、そのことによって、最善の医療の実現に向けて現場で御努力をいただいている方々や、あるいはコミュニティーの価値を向上しようと思ってらっしゃる方、魅力的なライフスタイルをみずから構築しようと思ってらっしゃる方々のために役立てば大変ありがたいなと思っているところであります。

 諸外国でも例えば韓国のHIRA、去年、私も行ってまいりまして、そこの院長に話をつぶさに聞いてまいりましたけれども、診療報酬の審査支払いにとどまらないで、医療機関の評価あるいは投薬情報、献血の情報に至るまで、リアルタイムで一元的かつ継続的に管理をする中で、医療の質向上に資するさまざまなサービスを実現させているということを見てまいったところでございます。

 こうした事例も参考にしながら、もちろん、他に大いに参考すべき事例は世界に幾つかあると思いますので、国民や患者にとってよりよい保健医療を実現するという観点から、皆様方にはぜひ忌憚のない御意見を出していただきまして、建設的な御議論の中から国民の医療の質の向上、そしてまた、もちろん財政的にも持続可能な日本の医療制度の再構築に皆様方のお力添えをいただければ大変ありがたいなと思っているところでございますので、お集まりをいただいた皆様方もそれぞれいろいろな分野でのエキスパートの皆様でございますので、英知を結集して、今、私が申し上げたようなことに関してぜひ御意見を賜って、私どもの新しいことが前に進むように、そして、それが国民の生活の豊かさが増していくようにお願いを申し上げて私からの御挨拶とさせていただきます。

 どうぞよろしくお願いいたします。


○西村座長 大臣はこの後も御所用があるということで御退席されます。


○塩崎厚生労働大臣 それでは、よろしくお願いいたします。

(塩崎厚生労働大臣退室)

○西村座長 神成構成員、済みません。では、よろしくお願いします。


○神成構成員 慶應大学の神成でございます。

 本日は授業だったので、おくれて申しわけございません。大学が藤沢なのでここまで1時間以上かかるので、3時には到底間に合わなかったのですけれども、失礼いたしました。

 専門は本来コンピューターサイエンスと情報システムでございますが、医療系の情報システムの話も幾つか議論に加えさせていただいております。

 ソニーの山本さんは久しぶりなのですけれども、お話ししていた2つの意味があるということも踏まえて私も割と2つの意味で踏まえて申し上げたいと思います。

 まずは、効率化という話で幾つか議論されていますが、支払基金と国保連合とばらばらな状態があって効率化とありますが、私は途中から申しわけないのですが、今までの話をお伺いしていて感じるのは、人工知能あるいは現在の情報システムということが、言葉だけがひとり歩きしていて、何ができるのかということがよく把握されていないままに、あるいは何ができないのかということも把握されていないままにいろいろな議論がされている気がします。

 例えば今、資料を見ていて、韓国のHIRA、韓国と比べて日本のレセプトの電子化が98.6%と1.3%差があるわけですが、その1.3%の差を99.9%に埋めるよりは、現在の人工知能、ディープラーニングというものを使えばはるかに容易に手書きの電子化が安くなされるわけです。それに類されるように、恐らく現在やらなければいけないのは、情報システムを単に連携すればいいという話ではなくて、一度業務プロセスをきちんと抜本的に見直して整理した上でつなげるものはつなげるということをまずやらなければいけない。それがなくて、現状であればほかの保険者に関しましても単に一緒につなげればいいというのは、最終的には余計なコストを招き、あるいはその後の利活用が悪いものになると思うのです。

 そういった意味で、まずやるべきことは、何が人のやるべきことなのか。あるいは審査のレベルを保障するためにこそ、人がやるべき仕事と人がやらなくてもそれを支援できる情報システムのあり方というものをプロセスをきちんと見直して、その上できちんと効率化すべきことは効率化して統合していく。やっていけないことは、今の手順というものを前提として、それを単に統合するというのは過去の例から見ても一番失敗することだと思いますので、まずやはり何が価値があるのか。私は今の現在の人工知能で人が要らなくなると思っていません。人が必要なことは事実です。しかし、今、人がやっていること全てを人がそのままやるのかというと、それは見直すべきだと思います。

 それをそういった意味で何を人がやるべきなのか。先ほどのお話の中で審査に5年、7年の審査、経験を持つのは非常に重要な話だと思います。逆に言うと、5年ない人がやっているのであれば、レベルに達していないという話もあるのだと思います。そういった意味では、何がレベルを要する作業なのか。これは先ほど山本さんもおっしゃっていましたね。そういった話を見直した上で、きちんとレベルを維持しながら抜本的な効率化を進めるということが十分可能だと思いますので、そういった観点からプロセスそのものの見直しも含めて、見直した上で連携するなり統合するなりを考えていくというのが最初に申し上げたいところでございます。

 その上で、その際には、先ほどボキャブラリーの話もありましたが、やはり医療IDなどを含めて統一的なIDがないとそれぞれのシステムの連携が不可能でございますので、そういった意味ではそういうデータ管理をきちんとして、情報が連携、統合できる足並みをきちんとつくるということ。そういったもので初めて、いわゆるビッグデータと言われますけれども、ビッグデータの素地ができるという話だと思います。それを使ってきちんと国民に結果をどうやって返していくのかという意味で、その解析にさまざまな人工知能の手法が使えますが、それは具体的に例えば地域の医療格差がどのようにしてなくなっていくのかというような話にきちんと人工知能等の知見を使ってやることでさまざまな業務改革もできるのではないかと思っております。

 やはり最終的には、先ほど何人かの方がおっしゃっていましたけれども、国民の健康寿命の延伸がどうできるのか。山本先生が先ほど最後におっしゃっていた話につながると思いますが、そういうように資するためにどのようにデータを利活用するのかということをきちんと議論した上で、支払基金や国保連の改革というものを抜本的に見直した上で、どうデータを利活用するかも見据えて情報システムを設計して、そしてそれを必要に応じて連携していくというような形で、まず見直しから利活用までを含めてやっていくことができればと考えております。

 以上でございます。


○西村座長 ありがとうございました。神成構成員は介護のほうをやっておられて大変頼もしい限りでございます。

 一通り御発言いただきました。あと数分で事務局に返そうと思っておりますが、大変恐縮ですが、どうしてもとおっしゃる方があればと思いますが、私、あと追加の発言をさせていただきたいと思います。

 先ほど誰かが、少子高齢化が進む中で人材の話が余り出ませんでした。この後、こういう作業は今、神成構成員あるいは山本構成員がおられるように若いこれからの今盛りの研究分野が伸びていくことによって、これからいろいろなことができると思います。ただ、少数の人間ではなかなかできないものですから、この分野の人材をどうやって育成するかということも大変大事で、AIが発展すると恐らく人が少なくてもAIと少ない人間でいろいろなことをやっていくことができると思いますので、その点もぜひ御検討いただきたいと思います。

 最終的には、山本隆一構成員がおっしゃったように、この会議はもちろん規制改革会議の提言を真剣に検討するわけですが、できたら協調、つまり医療提供者、そして医療保険者あるいは国民あるいは審査機関、みんなが協調していい方向に向かうことができるような議論にできないとどうしても実りが少ないような気がしますので、そういう観点から、ぜひこの後、また御意見を賜りたいと思います。

 一部、森下構成員の話は難しいというようなニュアンスを申しましたけれども、これから恐らくかなり長期にわたってこの問題はいろいろ展開する分野だと思いますので、皆さんのお知恵をおかりして、何とかいい報告を年末にはやりたいと思っております。

 これで事務局にお返ししたいと思います。よろしくお願いします。


○保険課長 ありがとうございました。

 時間はまだ少し余裕がございますけれども、これで終わりということにしたいと思います。次回の検討会の開催日でございますが、5月中に開催すべく調整中でございまして、追って御連絡をいたしたいと思います。

 事務局からは以上でございます。


○西村座長 それでは、以上をもちまして第1回「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」を終了いたします。少し早くて恐縮です。申しわけございません。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 保険局が実施する検討会等> データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会> 第1回データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会議事録(2016年4月25日)

ページの先頭へ戻る