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2016年2月19日 第2回 健康診査等専門委員会(議事録)

健康局

○日時

平成28年2月19日(金)15:30~17:30


○場所

厚生労働省 6階 専用第23会議室


○議題

(1)特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会での経過報告
(2)健康診査等の満たすべき要件について

○議事

 

○高山健康課長補佐 それでは、定刻より少し早いですけれども、委員の先生方全員お集まりになりましたので、ただいまから、第2回「健康診査等専門委員会」を開催いたします。

 委員の皆様方には、御多忙の折お集まりいただき、御礼を申し上げます。

 厚生労働省健康局健康課の高山でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日の出欠状況について御報告いたします。

 本日は、井伊委員、春日委員、鎌田委員、橋本委員、本田委員、村上委員から欠席されるとの御連絡を受けております。

 また、本日の検討に当たりまして、参考人として、自治医科大学、永井良三学長、山梨大学、山縣然太郎教授に御出席いただいております。

 続きまして、配付資料につきましては、座席表のほか、議事次第の裏に配付資料の一覧をおつけしておりますので、こちらにより御確認をお願いいたします。

 また、委員の先生方には、パイプファイルで、参考資料として前回の専門委員会の資料、また第1回から第3回までの特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会資料などを配付させていただいております。

 もしお手元に配られていないもの、あるいは落丁等ございましたら、事務局までお申しつけください。

 では、撮影はここまでとさせていただきます。

 それでは、以後の進行は辻委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○辻委員長 それでは、よろしくお願いいたします。

 本日の議題は、(1)といたしまして「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会での経過報告」、(2)といたしまして「健康診査等の満たすべき要件について」ということであります。

 では最初に、議題(1)につきまして、本日は参考人といたしまして、特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会の永井良三座長に御出席いただいておりますので、永井先生のほうから、検討会の経過について御報告いただきたいと思います。

○永井参考人 御紹介いただきました永井でございます。

検討会につきまして、資料1をごらんになりながらお聞きいただければと思います。これまでの経過報告がまとめてございます。

 第1回の特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会では、これは保険局と合同で開催いたしまして、辻委員長にも参考人として御出席をいただいております。この資料のページ1と2でございますけれども、そのときに辻先生から、第1回健康診査等専門委員会における、健診・検診の考え方及び評価の考え方についての検討や諸外国の検診の要件について御報告をいただきました。また、特定健康診査・特定保健指導についても、これらの考え方に基づいて検討することになりました。

 3ページ目でございますが、第1回検討会の概要です。第1回の保険局との合同検討会では総合的な意見交換が行われました。主な意見は、このページ3にまとめてあります。特定健康診査・特定保健指導の在り方、生活習慣病対策の一部と捉える必要があるということ。科学的エビデンスに基づいて検討することが原則であるということ。将来の疾患のリスク、現在の疾患自体の確認に対する評価だけではなくて、システム全体としての評価を行うことが重要であるという意見が出されました。

 4ページ目でございますが、1月15日の第2回検討会の要点です。ここに掲げられているような要領で議論を進めることになりました。

5ページ、6ページをごらんいただきますと、スケジュールが掲載されています。左が専門委員会、右が特定健診検討会の予定であります。現在、3回まで開催されております。今後は、この資料の6ページの予定で検討を進め、平成28年半ばに保険局検討会と合同の検討会を開催し、健診項目の大筋について中間取りまとめを行う予定です。

 7ページ目に幾つか重要なことが掲載されております。第2回の検討会で諸外国の健診の要件等を参考として、特定健康診査・特定保健指導の満たすべき要件について検討を行いました。この7ページ、14項目について合意をいただいております。特定健康診査では、健康事象は最終エンドポイントとしての虚血性心疾患、脳血管疾患等であるということ。健康事象の(1)から(3)までは一応満たされていると考えております。

 4の健診・検診のプログラムでありますけれども、これについては今後研究を重ねながら、検討を進めていくことにいたしました。

 以下の要件に関するエビデンスに基づくということが重要です。検査は、目的と対象集団が明確であるということ。公衆に受け入れられる検査であるということ。それから、検査が簡便・安全で、精度や有効性が明らかで、適切なカットオフ値が基準として合意されているということ。それから、検査が実施可能な体制が整備されていると。このあたりのことが非常に重要です。

今のが(4)(5)のことでありますが、事後措置、治療と介入についてです。精密検査、事後措置の対象者選定、方法について科学的知見に基づく政策的合意があること。これが(6)。(7)は、事後措置を実施可能な保健医療体制が整備されている。これらが重要であるということです。

 それ以下については、さらに今後検討してまいります。

 8ページ、9ページは第2回検討会の概要です。主な意見はページの8から9にまとめてあります。

 ページ10をごらんください。A3の横の紙です。第3回の検討会、2月2日の資料です。第3回からは健診項目について具体的に検討を開始しております。まず、脂質、肝機能、代謝系の健診項目について検討を行いました。縦軸が健診の項目です。横軸が特定健康診査・特定保健指導の満たすべき要件のうちで、2、検査、3、事後措置をとって、それぞれのエビデンスについて検討した資料です。この黄色く塗った部分は課題があると考えられている部分です。これらについては、11ページ以降に示しますように、論点として取り上げております。

15ページに飛びますが、第3回検討会の概要です。検討結果をページ1516にまとめてあります。健診項目について、脂質について、肝機能、代謝についてということでございます。

16ページに「その他」とありますが、ここにも重要なことが記載されています。「健診項目は基本的な項目と医師の判断に基づき選択的に実施する詳細な健診の項目に区別されている」ということです。健診項目に対応する主たる介入方法の違いに着目して、主として保健指導が必要なものを的確に抽出するための項目と、主として要医療者を抽出する項目に分類してはどうかという意見が出されております。

 報告は以上です。

○辻委員長 ありがとうございました。

それでは、永井参考人の御報告に対して御質問あればいただきたいと思いますが、この本委員会では健診制度共通の課題について扱うこととしておりますので、御質問、御討議いただく際は、この検討の進め方の面から御検討いただけばと思います。

 では、委員の皆様から何か御質問、御意見ございますでしょうか。

 祖父江先生、どうぞ。

○祖父江委員 恐らくがん検診に関してちょっと紹介してからの議論のほうがよろしいかと思うのですけれども、特定健診・特定保健指導の場合は、危険因子を抽出すると、検出するというようなことが主目的であるということで、そうしますと、健康事象として危険因子ということをターゲットにするということになりますけれども、がん検診の場合はこれが疾患ですね。特に無症状の疾患であるというところ、これを検出可能かどうか、その検査があるのかどうか、それの介入があるのかどうかというところがポイントになると。そこのところの記述が、ですから、特定健診とちょっと違ってくる、健康事象のところも違ってくるだろうと。その点ですね。議論、後でするのですね。

○辻委員長 はい。

○深井委員 2点ほど質問させていただきたいのですけれども、今、永井先生の御説明だと、特定健診・特定保健指導の最終的なトゥルーエンドポイントというか、アウトカムというのは、循環器病である脳血管疾患と心臓血管疾患の予防に寄与するようなという説明だったと思います。これまでの特定健診・特定保健指導は、内臓脂肪型肥満に着目して、そのリスクファクターに対する保健指導を重視という考え方だと思うのですけれども、考え方を変えるということでしょうか。

○永井参考人 その延長に脳血管疾患や心臓病があるということをしっかり見据える、と理解いただければと思います。糖尿病の予防、メタボの防止ということは当然視野に入っており、エンドポイントとしては脳血管疾患、心臓病等を見ていくということです。

○深井委員 わかりました。

それからもう一つは、7ページの健康事象の(1)はかなり重要なことだと思うのですけれども、1回目の会議でも私も発言したように、「公衆衛生上重要な健康課題」というと、疾患量が多いとか、予防可能かどうかとか、特にグローバルバーデンという観点もあります。そう考えたときに、先ほどの永井先生の御説明の6ページのところで、エビデンスの整理をする際に、これまでの健診項目を脂質から腹囲まで、5回目であり、腹囲のところに「その他」という記載があります。この特定健診・特定保健指導の第3期に向けて、例えば新たに、歯の数が生活習慣病とか循環器病のリスクファクターとなるなど、文献的にはかなり出てきて、エビデンスが蓄積されてきています。このような新たな健診項目、特に歯科疾患の場合には公衆衛生上の重要な課題と思いますので、そういうことを第5回目の「その他」のところで議論する余地は残っているのでしょうか。

○永井参考人 検討させていただければと思います。

○深井委員 ぜひそういう新しい、今のこの5年間で新たに積み上げたエビデンスに基づいた新たなリスクファクターの議論ということもぜひしていただきたいと思います。

○今村委員 新たに特定健康診査等に入れる項目についてのその選択の基準という議論を進められているのは特に異論ないのですが、従来項目として実施されていたものを、この基準に基づいて排除するとなった場合、現場で健診を実施している立場から申し上げますと、健診項目が変わることによって、受診者から相当に様々な御意見が出てくると思います。特に項目が減ったとなると、尚更です。それは科学的な話ではありませんが、現在、受診率の向上という命題がある中で、あえてその項目を外すだけの積極的な理由があるのか、この基準で厳格にがちがちにやるのか、その辺の考え方はいかがでしょうか。

○永井参考人 現場の混乱を避けるのは大事だと思います。一方で科学性も重要ですし、新しい項目を加えるのであれば財政的な課題が入りますので、全体を統合して勘案したいと思います。

○辻委員長 よろしいでしょうか。

 それでは、今の永井先生の御報告もまた、今の御討議を踏まえまして次に移っていきたいと思うのですが、この資料2と資料3について私から御説明した上で、2番目の議題に入っていきたいと思います。

 まず、これまでの検討の整理なのですが、先ほど永井先生にも御紹介いただきましたけれども、昨年の1116日にこの健康診査等専門委員会第1回が開催されたわけであります。そのとき、福井参考人、それから磯参考人をお招きいたしまして、諸外国の健診・検診の要件について、WHOの基準でありますとか、さまざまな御報告をいただいたわけでございます。

 それを受けまして、1月8日の第1回の特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会に私が参考人として出席させていただきまして、1116日の専門委員会の報告をさせていただきました。それが先ほどの永井先生の資料のめくってすぐの1ページ目の「健診・検診の考え方」ということになっております。

 それを受けまして、1月19日に行われた第2回の特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会におきまして、先ほど永井先生が御紹介されました、特定健康診査・特定保健指導の満たすべき要件について検討が行われまして、合意されたということでございます。

 そこで、本委員会のミッションでありますけれども、これは特定健診だけでなくて、健診制度全般に共通するものとして、健康診査等の満たすべき要件というものについて検討するということが本委員会の最大のミッションであると理解してございます。

そこで、資料2をごらんいただきたいのですけれども、「健康診査等の満たすべき要件を検討する際に踏まえるべき事項(案)」につきまして、事務局と相談の上で私のほうで出させていただきたいと思います。一番上に書いていますが、「健康診査等の満たすべき要件を考えるにあたっては、個人の健康増進や疾病予防に関する科学的知見及び実施主体や国から見た事業としての実施目的を踏まえる必要がある」ということがまず大前提としてありまして、その下をごらんいただきますと、この目的として、健康診査等を提供する目的、国としての目的、あるいは実施主体の目的です。国としては、国民の疾病予防、あるいは健康寿命を延ばすということ、それから社会保障費を適正化する、そういった目的のもとで健康診査等を提供するわけでございます。

 また、実施主体の目的といたしましては、例えば自治体では、住民の健康増進を図るでありますとか、あるいは医療保険者では加入者等の健康増進や医療費の減少ということも含めた目的があろうかと思います。また、事業主といたしましては、労働者の健康確保、それを通じた生産性の向上ということがもちろんございますし、また学校としては、児童生徒等の健康の保持増進ということが目的として行われているのではないかと思っているわけです。そういった意味で、制度として健診、健康診査等を考えるときは、事業としての実施目的が明確であることが要件として必要ではないかと考えております。

 また、健診を受診する個人といたしましては、スクリーニング、あるいはヘルス・チェックアップということになるわけですけれども、スクリーニングといたしましては、疾病の早期発見、早期治療に有効である。それから、発症予防とか重症化予防に有効である。そういった科学的な知見、エビデンスがちゃんとある。あるいは個人のヘルス・チェックアップとしては、健康増進を通じた発症予防にとって有効である。あるいは、ヘルス・リテラシーの向上に有効である。そのようなことを示す科学的な知見、エビデンスというものが基盤としてなければいけないのではないかと思います。

そして、一番下に書いていますが、ライフコースで見ていきますと、乳幼児健診、妊産婦健診から始まりまして、就学時健診、それから学校健診。若干順番は行ったり来たりしますけれども、一般健康診断や特定健康診査、がん検診、そして歯周病検診とか骨粗鬆症検診、さまざまな健診・検診がある訳です。それから人間ドックというものはもちろん個人が受けるものですけれども、このような形で、制度としての健診・検診というものを踏まえることができるのではないか。

 もう一回繰り返しますと、制度として存続するための要件としては、1つは、事業としての実施目的が明確であって、さらに個人にとっては、その健診・検診を受けることの利益がある、あるいは最近のがん検診の議論を踏まえますと、検診を受けることによる不利益よりも利益のほうが上回っていることについての科学的な知見、エビデンスがきっちりあると。こういったことが要件として考える一つの大きなその枠組みではないのかなと考えております。

 その上で、先ほど永井先生のほうから御報告いただきました特定健康診査・特定保健指導の満たすべき要件、これは先ほどの資料1の7ページに書いてございますけれども、これにつきましては、実はこの特定健診に限らず、健康診査全般に適用できるのではないのかなと考えております。

 そこで、改めて資料3「健康診査等の満たすべき要件(案)」として、これはこの委員会のほうでお認めいただく、そのための議論をこれからいただきたいと思いますけれども、もう一度読み上げますと、「健康診査等の満たすべき要件(案)」といたしましては、この健康診査を導入する前に、以下の14項目全ての要件を満たすことが望ましいということで、「1 健康事象」として、繰り返しませんけれども、先ほどと全く同じ内容ですが、公衆衛生上重要な健康課題であるとか、健康事象の自然史が理解されていること。3番として、早期に治療・介入するほうがより良い予後をもたらすことに対するエビデンスがあること。「2 検査」として、(4)目的と対象集団が明確、公衆に受け入れられる。(5)検査が簡便・安全で、精度や有効性が明らかで、適切なカットオフの基準が合意されている。「3 事後措置(治療・介入)」として、精密検査や事後措置の対象者選定や方法について政策的な合意がある。事後措置を実施可能な保健医療体制が整備されているということ。さらに「4 健診・検診プログラム」として、これは事後措置、プログラム管理も含めてですが、以下の7つの要件が必要ではないか。制度として健康診査、健診と検診、それを導入する際には全てのこの14項目の要件を満たすことが望ましいと。この特定健診の要件をそのまま健康診査全般に当てはめていってはいかがかなということを考えているわけでありますけれども、これにつきまして、まず(案)として私のほうから提示させていただいたということでありまして、その議論をこれから皆さんにしていただきたいと思うのですが、検討するに当たりまして参考としていただきますために、きょうは3名の有識者の先生から、実施主体の異なる健診・検診の立場から、資料2、資料3についてヒアリングを行った上で御議論いただきたいと思います。

 また、保険者が実施主体の健診となりますと特定健康診査・特定保健指導になりますけれども、前回の委員会で永井先生のほうから御発表いただいておりまして、また、その資料2、資料3については御同意いただいているということを御報告申し上げたいと思います。

 ということで、今度はヒアリングに移りますけれども、まず森委員、それから山縣参考人、それから祖父江委員の順に行いたいと思います。

それでは初めに、「職域における一般健康診断の位置と活用」ということにつきまして、森先生、どうぞお願いいたします。

○森委員 それでは、先ほどの実施主体という意味では事業者に当たりますが、「職域における一般健康診断の位置と活用」についてお話をしたいと思います。資料めくっていただいて2ページから入りたいと思います。

 現在、職域において行われている健康診断は、大きく分けると労働安全衛生法令に基づく健康診断と任意の健康診断がありまして、労働安全衛生法令の中にも、基本的に全ての労働者を対象とする一般健康診断と、曝露している有害要因別の特殊健康診断があります。関連して、長時間労働者に対する面接指導、それから、昨年の12月から施行になりましたストレスチェックと面接指導というのが関連として行われているということであります。

 このうち一般定期健康診断に関しましては、3ページにありますように、事業者の責任として全ての労働者に対して行わなければならないという罰則つきの義務規定になっておりまして、さらに義務として、その結果に基づいて、有所見の方に対しては事業者が医師又は歯科医から必要な措置について意見を聞いた上で、六十六条の五にあるように、何らかの就業措置を行うかどうかを検討して、必要があれば行わなければならないまでが義務になっております。

 一方で、六十六条の七にありますように、保健指導に関しましては、最後が「努めなければならない」となっておりますように、努力義務になっているという、こういった位置づけになっています。

 次に、4ページ、5ページを見ていただきますと、現行の健診項目でありますが記載されています。そこにありますように、既往歴、業務歴から始まりまして心電図検査までございまして、このうち血液検査、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、そして心電図検査に関しましては、35歳及び40歳以上については義務でありますが、それ以外の年齢に関しましては医師の判断で省略できる項目となっています。ただし、入社したときに実施する雇用時健康診断は省略ができないことになっています。

 それを特定健診と比較しますと、赤字の部分が特定健診にはない項目でありますが、このうち貧血検査と心電図検査に関しましては、特定健診においても詳細な健診項目として位置づけられているという関係にございます。

 6ページを見ていただきますと、一般定期健康診断の項目は時代とともに変化しています。労働安全衛生法の制定・施行が昭和47年でございますけれども、当初は、それまであった労働基準法に基づいて行われた健診に血圧測定、尿糖検査、尿蛋白検査が追加になり、さらに平成元年、平成11年という形で健診項目が追加されてきた。この背景に働く人の年齢高齢化というものが要素にあると理解しています。そして平成20年の改正は、特定健診との整合化ということが基本的な理由でございました。

この流れを図示しますと、全労働者に対して一般健康診断を行い、必要に応じて精密検査を指導し、その結果に基づいて医師が総合判定する。その医師は、産業医がいる事業所においては産業医が行うことが望ましいことになります。総合判定では、就業上の判定と医学的判定のそれぞれ別の判定をつけることになっており、医学的判定に基づき保健指導、医療指導をするわけでありますが、一方の就業上の判定については、事業者の義務として就業措置を行うことが前提になっています。左にありますように、一般健康診断は職務適性の評価を行って就業措置をするという流れと、ヘルス・チェックアップの結果、保健指導を行うという2つの流れがあるという位置づけになります。

 このうち職域における特徴であります就業措置に関して続いてお話をしたいと思います。8、9ページをごらんください。現行では、国の指針に基づいて就業区分は通常勤務、就業制限、要休業という3つの区分でつけることになっております。要休業というのは就業禁止でございますので、働く権利を奪うということになりますから、かなり慎重につけるものになっておりまして、就業措置としては、就業制限をつけるということが基本になっています。

 それでは、就業制限、この下では就業措置と書いてありますけれども、どんなことを理由につけているのかということですが、実際に産業医活動を行っている産業医の事例を集めて分析したところ、主に一般健康診断との関係においては3つに分類できることが分かりました。第一が、就業が持病の疾病経過に増悪因子になるような場合、悪影響を与えるような場合。第二が、何らかの健康状態、健康課題があって、それが原因で事故につながるような場合。これは転落とか運転上の問題も含めて。第三が、例えば長時間労働のようなものがあって、勤務実態が、その方が健康課題を抱えているにもかかわらず、適切な受診行動とか生活習慣確保の妨げになっていて、生活習慣を何らかの形で整えないと現在の健康状態がさらに悪化して、近い将来、就業上の問題が発生するような類型に分かれるということになります。

10ページ、11ページに行きますと、そのような判断はどのような情報に基づいて判断しているかということでありますが、類型1に関しては、多くの場合、臓器障害等がありますので、主治医、つまり、治療を既に行っていることを前提に、主治医との病状に関するコミュニケーションが必要になってきます。

それから、事故とか公衆災害のリスクの予防という類型2に関しましては、そもそも意識消失とか突然死というのがどんな頻度、確率で発生するかというエビデンスとかガイドラインが基本になってくる。

そして類型3が、これは将来の健康という問題も含めて考えていますので、過剰な制限を加えればその方々の仕事上のいろんな能力を失わせることになるため、何らかの慎重な対応も必要ということが背景にあります。しかし、エビデンスでどこかで切るということが非常に難しい領域でありますので、産業医のコンセンサスがあれば一つのエビデンスになるだろうと考え、11ページから始まりますように、コンセンサス調査を我々のほうでいたしました。

 今月号の日本産業衛生学会の英文誌であります『Journal of Occupational Health』にちょうど掲載になったところでありますが、この研究は、83名の専業、すなわち主に産業医だけ行っている産業医を対象に、それぞれの項目について、単項目であっても、就業制限、その値が極めて異常であれば就業制限をかけることがあるかということをまず聞いた上で、かけるとしたら、どのぐらいの数字になったときに就業制限を検討するかという聞くといった調査を行いました。さらに、その調査を、毎回集計結果を参加者に開示したうえで、3回繰り返すことによってコンセンサスを得ていくというデルファイ法という方法を用いました。

 その結果、クレアチニンだけ、現行の法定項目でありませんけれども、ここにあります8つの項目については、単項目でも就業上の措置を検討する。異常であれば。ただし、その場合に、値としては最頻値のところにありますように、収縮期血圧180mmHg、拡張期血圧110mmHg、クレアチニン2.0mg/dlALT200IU/L、空腹時血糖200 mg/dl、随時血糖300 mg/dlHbA1c10%、ヘモグロビン8.0g/dlが最頻値になりまして、つまり、ここに50%以上の回答者が最終的に同意をしたという形になります。

12ページを見ていただきますと、最頻値といっても、例えばHbA1cの場合は、最終的に10.0%8.0%の2峰性の形になりました。おそらく職種などによっても多少変わってくると予想され、例えば運転業務のあるような職場でありますと、8.0%で早目にかけるということもあるようでございます。そのことによって果たして健康管理上どのようなプラスになるのかということについて、介入研究が何らかの形で必要だということを考えましたが、なかなか職場において特定の集団だけ介入するのが難しいということがありました。

そこで、たまたま製造会社の全国規模の販社で地域ごとに段階的に産業医活動、つまり、小さな事業所も含めて全て産業医がカバーして健康管理を充実するという機会がありまして、対応が行われた地域とそうでない地域で比較を行いました。上の介入なし群というのは2,653人、介入群は、九州地区だけが対象で522人です。この介入群に対して、先ほどのような値になった場合に就業措置を職場と就業措置を検討しながら、本人にも説明しながら、積極的な健康管理を促したということをやりました。

血圧やHbA1cの値を中心に行ったのですが、14ページにHbA1cへの効果を示してあります。左側、非介入群はHbA1c8.0%以上の人間が全体の0.7%いた集団でありますけれども、2013年においても、その0.7%は変わってございませんでした。そして、介入群である九州地区においてはHbA1c8.0%以上が1.4%いたわけでありますけれども、それが介入によって0.4%まで減ったという形の効果がありました。集団の中のほんの一部なので、なかなかこういった数字を有意であることを示すことは困難ですが、一定の効果があったと考えています。

15ページを見ていただくと、法律では一般健康診断に基づいて、産業保健では職務就業配慮を行うことが基本になっていますが、実はそれ以外の仕組みでも、就業措置を行う機会があります。というのは、一般健康診断というのは健診項目が限られていて、かなり目の粗いざるで振り分けている状態ともいえるとともに、年に1回しか行わないという頻度の問題もあるためです。

そこで、運転業務とか海外勤務者、長時間労働者といった特別な適性が必要な業務または負荷がある方に対しては、その都度、健康状態を評価するというようなことを行っていますし、それから、法令ではございませんけれども、長期に休んだ方が職場に戻ってくるとき、また男女雇用機会均等法に基づいて妊娠時に何らかの症状等があった方が職場に申し出ることによって、そのときに健康状態に基づいて配慮するというような、ある意味、特別な健康状態のときに配慮するという仕組みをあわせて持っていることになります。

一般健康診断を全員に行い就業措置をかけることを事業者の責任としている国は、欧米ではむしろ少なくて、欧米では左側をきめ細かに行うということが主流になっております。

16ページは、もう一つのほうの保健指導であります。特定保健指導との関係で少し特徴を整理したいと思います。産業医や保健師の確保については、企業規模によって大きく異なるという実態があります。保健師の確保に関して義務ありませんが、一定規模になると保健師を雇用することが多くなるため、1人当たりの産業保健サービスが、主に規模とか、企業によっては大きく異なってくることになります。そのためにどのぐらいの健康状態の方にまで保健指導を行うかについて、義務でないから全く行ってないところから全員面接を行っているところまで企業によってかなり幅があります。また、実施方法についても、何らかのガイドラインがあるわけではないため、企業や専門職によって、時間だけではなくて、異なってきます。

一方で、保健指導の後の受診行動とか健康行動の把握というのは、実際にそこに働いている方が対象であるため、かなりフォローアップがしやすいという特徴が職域にはあります。

話は少し変わりまして、現行の一般健康診断の項目について、今後どのような見直しが必要か、または現在どのような有用性があるのかということについて検討した結果をお話しします。日本産業衛生学会の産業衛生専門医を持っている13名を対象に、2つのフォーカス・グループインタビューを行いました。フォーカス・グループをつくるときに、主に労働衛生機関で中小企業を含めて産業保健活動を行っている産業医と大企業において専属産業医を行っている産業医の2つのグループに分けてフォーカス・グループインタビューを行って、質的にまとめました。今後、さらにデルファイ法に基づいて、結果の妥当性を検証する予定になっています。

18ページが「インタビューガイド」でありまして、そもそも一般健康診断の意義や目的は何か。それから、一般健康診断の項目で必要だと言うためにはどんな有用性あることが必要なのか。質問3で、メタボリック症候群に関する項目群とそれ以外に分けて、それぞれの項目について有用性を聞きました。そして最後に、職場においては経済的な問題も重要ですが、企業として、主に産業医の立場ですが、幾らぐらいまでであればお金が出せるのかという意見を聞きました。これは事業者のインタビューでないのでどこまで正しいかわかりませんが、おおむね1万円が上限だろうというのがほとんどの方の意見でございました。

19ページにありますように、一般健康診断の意義や目的というのは、法令では事業者に義務がかかっていて、真ん中にありますように、安全配慮義務の履行とか生産性の低下を防ぐことが目的ですが、あわせて、労働者の視点とすれば、これはヘルス・リテラシーを向上するツールや機会になるし、それから、何らかの理由で健康教育を行うとしても、健康診断があることによってコミュニケーションを図ることが容易になるということを述べておりました。国の視点では、先ほどありましたように、生涯健康管理の基盤となるのではないかということです。

20ページにございますように、そのようなことを考えたときに、健康診断の項目に必要な有用性というのは、結局、先ほどからありましたように、早期発見・早期介入によって有効であるということとか、保健指導で何らかの効果があるというほかに、産業保健または職域保健においては、一番上にありますように、就業制限や適正配置を検討する際に必要であるということが大きな特徴なのかなと思います。

そういったことを考えますと、個々に詳細な議論はしておりませんけれども、現在の健診項目はほぼ必要最低限をカバーしているということで、追加するとしても、先ほどありましたクレアチニンという項目が挙がってきたにすぎません。

それから、むしろ現行の項目をいかに有効に活用できるか、事後措置で活用できるかということが重要であろうということです。さらに、健康診断というのは、先ほども申しましたように、労働者と健康管理のスタッフが接する機会ということの一つの大きなきっかけになりますので、健診項目をふやしたからといって直ちに健康に寄与するというわけではなくて、むしろ現行の範囲で質の高い問診と事後措置、保健指導が必要だろうというような意見が大半を占めました。

最後に「まとめ」として、健康診断の歴史の話で、段階的に追加・見直しが行われてきたこと。それから、職務適性と健康リスクの評価が行われて、保健指導に加えて事後措置が行われていること。就業措置が行われるときには、おおむね3つの類型で考えていること。それから、職場の保健指導というのは明確なルールがないために実施状況も内容も企業によって大きく異なること。日本産業衛生学会の産業衛生専門医と呼ばれる集団は、現行の健診項目は必要最低限をほぼカバーしていると考えていて、むしろそれをどうやって有効に活用していくか、特に従業員とのかかわりを深めていくかということが重要だと考えていること、という内容となります。

以上です。

○辻委員長 どうもありがとうございました。

 では続きまして、母子保健、学校保健における健康診査につきまして、山縣先生、お願いいたします。

○山縣参考人 山梨大学の山縣でございます。

資料5をごらんください。母子保健、学校保健における健康診査であります。資料、2ページ目、母子保健法でございますが、昨年、50周年を迎えたものですが、この第十二条、(健康診査)というところで、「健診を行わなければならない」。市町村の義務になっておりまして、満1歳6カ月を超え満2歳に達しない幼児。それから、3歳から4歳ということでありまして、これはちょっと幅がございまして、特に「3歳を超え4歳に達しない幼児」とありますので、現状では半分の市町村が大体3歳、それから、半分の市町村が3歳半をやっていると、ちょっと開きのあるものでございます。

 第十三条に、「前条の健康診査のほか、市町村は、必要に応じ、妊産婦又は乳児若しくは幼児に対して、健康診査を行い、又は健康診査を受けることを勧奨しなければならない」ということであります。

 3ページ目をごらんください。その妊婦健康診査でございますが、これは子ども・子育て関連法の中で、市町村が実施する「地域子ども・子育て事業」として、母子保健法に基づく妊婦健診を位置づけております。

それに伴い母子保健法の改正があり、厚生労働大臣が、妊婦健診の実施について「望ましい基準」を策定するものとされており、現在は、課長通知で、公費負担回数14回というのが実施時期の考え方、妊婦健診の内容等について示してあります。

 次をごらんください。学校保健にございましては、学校保健安全法で、健康診断が第三節、第十一条から規定されておりまして、これも教育委員会が、まずは就学時の健康診断として健康診断を行わなければならないという条項でございます。それから第十二条に、それに基づいて治療を勧告し、保健上必要な助言を行い、及び学校教育法第十七条第一項に規定する義務の猶予若しくは免除又は特別支援学校への就学に関し指導を行う等適切な措置を行うというように、学校の入学に関して、この結果を用いた指導を行うということになっております。

 それから、(児童生徒等の健康診断)としては、第十三条に、「学校においては、毎学年定期に、児童生徒等の健康診断を行わなければならない」とあります。また、必要に応じて、臨時に、健康診断を行うということで、第十四条には、その健診に基づいて「疾病の予防措置を行い、又は治療を指示し、並びに運動及び作業を軽減する等適切な措置をとらなければならない」というように、これに基づいて学校で行う事業に対しての制限等を措置として加えるといったようなものになっております。

 次、5ページ目でありますが、学校保健安全法の中には職員の健康診査というのもございまして、それに基づき職員が健診を受けるというのが第十五条、十六条でございます。

第十七条からは、健康診断の方法及び技術的基準等について、「健康診断の方法又は技術的基準については、文部科学省令で定める」ということで、別個に定められているということであります。

 第十八条には、(保健所との連絡)という項目がございまして、「学校の設置者は、この法律の規定による健康診断を行おうとする場合その他の政令で定める場合においては、保健所と連絡するものとする」ということでございます。

 次の6ページに、その健診の実施に当たっては、母子保健法施行規則、それから学校健診に関しては学校保健安全法施行規則というもので規定されております。

これに関しましては後ろに資料をつけておりまして、今回の資料のパワーポイントの後に、また1ページとして、「参考資料 母子保健法施行規則」というのがまずございます。この中に、健康診査に関しまして何を見るのかという、これは満1歳6カ月を超え2歳に達しない者について、身体発育状況、栄養状態から11項目、それから、3歳を超え満4歳に達しない幼児に関するものとして、一から十三というものが決められております。

さらに2ページ目、学校保健安全法の施行規則におきまして、就学時の健診についての方法及び技術的基準、栄養状態に関して、皮膚の色等、細かく基準が示されております。

 それから、次の3ページに(検査の項目)がございます。

それから、5ページ目には、先ほどもありましたが、こういった健診に関しまして、(健康診断票)というのが第八条にございますが、その2で「校長は、児童又は生徒が進学した場合においては、その作成に係る当該児童又は生徒の健康診断票を進学先の校長に送付しなければならない」とありまして、これによって、義務教育の中では、少なくとも中学3年生の子は小学校1年生からのデータを全部有しているというような状況になっております。

 それから(事後措置)、これは繰り返しになりますが、これによって、例えば六、七のように、学習、運動・作業の軽減、停止、変更や、七のように、修学旅行、対外運動競技等への参加を制限するといったようなことがこれによって定められております。

 それから、少しめくっていただきまして、この細則、8ページで終わるのですが、また1ページとありまして、「母性、乳幼児に対する健康診査及び保健指導の実施について」という厚労省の児童家庭局通知というのがございまして、この中に実はかなり詳しくその実施要綱というのが定められております。

最初に母性から始まりまして、2ページ目に1で、「母性の健康診査及び保健指導要領」というのがございまして、「総則」の中に、3ページ、5で、いつの時期に何回行うかという規定。それから、その一番下から「思春期の母性保健」についてはどのようにするのか。それから、4ページ目から、「成人期の母性保健」についてはどうするのか。そして5ページ目には、第四として「妊娠時の母性保健」に関してどういった方針で行うのか。6ページには、「健康診査」についての内容、保健指導等がございます。次の7ページが「分娩時の母性保健」というふうに続きます。

10ページ目からは、「乳幼児の健康診査及び保健指導要領」ということで、ここから、子供に関しましてどういう健診をしていくのかということが決められており、例えば12ページ、「新生児保健」として、次の13ページのところに、「健康診査」で具体的にどういった内容を見ていくのかといったことが記載されております。

14ページから「乳児保健」、それから、「疾病又は異常」について何を見るのかというのが15ページにございますし、それから16ページ、「幼児保健」といったように細かく決められているという状況でございます。

 また7ページのパワーポイントに戻っていただきたいのですが、実際にどのようにするのかということが示されているわけですが、項目のみの記載、あとは通知で詳しくは書かれておりますが、各自治体でこういったマニュアル類というのがつくられておりまして、それに基づいて健診が行われていると。

ただ一方で、市町村がこういった健診を行う義務というのはございますので、そういう意味では、標準的な健診というのは必ずしも現状で行われていないということが「健やか親子21」の最終評価でも出されまして、そこで「乳幼児の健康診査と保健指導に関する標準的な考え方」という山崎先生の研究班が立ち上がり、そのあり方について検討されております。

 次、8ページであります。この乳幼児健診に関しましては、従来、集団健診という形で、昔は保健所でやっておりましたが、市町村に移ってからは市町村の保健センターで行われる集団健診、それから、各医療機関で行われる個別健診というのがございまして、これは市町村によって異なっています。

例えば山梨県では、甲府市が乳児健診を個別にしておりますが、ほかは、乳児健診、幼児健診とも集団健診で行っています。これも本当に自治体によってすごく大きな違いはございますが、例えば先ほどの研究班の報告書では、乳幼児健診の事後の保健指導の観点からは集団が望ましいのではないかという意見がございますし、一方で、小まめに健診を受けるという意味では診療所で受けるということが望ましいのではないかといったようなことがあります。

 余談になりますが、例えば米国ではかなり頻回に健診を行うことになっておりまして、生後10日以内に1回、それから1カ月から1歳までの間に6回、それから2歳になるまでに3回、それから2歳半、3歳、4歳と健康保険を使ってかなり頻回に健診を行っております。個別でございます。

 次、9ページをごらんください。そのような背景で、特定健診等と比べるとこういった乳幼児健診の受診率は非常に高いという結果でございまして、地域保健・健康増進事業報告の中にございますが、乳児健診、3~5カ月を多くやっておりますが、受診率95.3%でございますし、それから、1歳6カ月、3歳児健診に関しましてはいずれも90%から95%といった受診率でございます。

 次をごらんください。10ページ目でありますが、「乳幼児健診、学校健診の特徴」といたしまして、まず共通点としては、対象が未成年であると。なので、保護者の保護責任でこういった健診を受ける、もしくは所属している学校等の責任でそれが行われるということでありますし、それから、対象者が発達段階にあるということで、単に疾患だけではなく発達を見ていくといった側面がある。広い意味での健康管理といったところは、乳幼児健診、学校健診の共通部分だと思います。

 相違と言えるかどうかわかりませんが、乳幼児健診は、目的の中に、障害の早期発見早期指導というものが入っておりますし、それから一次予防の指導というように、要するに生活習慣等を指導していくといった側面が強く出されております。

一方、学校健診の中では、学業の支障の有無の視点からの健康管理ということで、先ほども授業や運動等についての制限を加えるといったような、それの必要に応じた健診項目が中にあるという側面と、あともう一つは、児童生徒に対する健康教育というのがその学校健診の中で位置づけられているということでございます。

 次のページでございます。先ほどもここのところを行いましたが、「乳幼児に対する健康診査の実施について」は細々と書かれておりますし、それから、12ページに関しましては、文部科学省の今後の健康診断の在り方等に関する検討会で、先ほどお話しした、どういう役割でこれを行われているかということがここに書かれております。

 最後のページですが、これは私見で、準備の段階で、例えば乳幼児健診の受診率がどうして高いのかということがございましたので、考えてみたところ、まずは対象が乳幼児で、要するに保護者の意思で受診する。大切な子供のための健康管理であるということで、受診をさせている。それから、そういった意味では、自分自身の健康管理よりも親としての責務が高いということで、母子健康手帳というのは非常に活用されているわけですが、老人保健法や現在の法律でも、健康手帳というのがございますが、余り活用されてないといったようなことの違いにもあらわれているのかなあと思います。

 それから、もう一つが重要でして、未受診者対策の実効性の点で母子保健というのは非常に有利と。それは何かといいますと、切れ目のない支援というのが我が国の母子保健の中では非常に重要なところで、妊娠届出時から常に保護者との継続的なかかわりというのを市町村が行っておりまして、顔の見える関係にあると。つまり、受診に来なかった人に対する声かけ等々ができるといったような点が非常に要因としてあると思われますし、もう一つは、これは最近特に声高に言われておりますが、児童虐待対策の一環として、この未受診対策をきちんと行っているということからも、非常に受診率が高いということになっているのだろうと思っております。

 私からは以上です。

○辻委員長 ありがとうございました。

では、最後になりますけれども、「がん検診の考え方」につきまして、祖父江先生、お願いいたします。

○祖父江委員 「がん検診の考え方」の資料をごらんください。

 ページめくっていただきまして、冒頭の議論からもありましたように、検査の検診と健康の健診と2種類あるという観点があります。がん検診の場合は、あくまで死亡を防ぐために疾患の早期発見を目的としているというところでありまして、がんの発症を防ぐわけではない。

一方で、循環器検診は、高血圧、高脂血症等を早期に発見することで、それを改善し、ひいては脳卒中、心筋梗塞の発症を予防すると、こういう違いがあります。

 ただ、やや中間的なものもありまして、がんの領域でも、ピロリ菌の除菌によって胃がんを予防するとか、あるいはC型肝炎の治療によって肝がんを予防する、これは割と一次予防的な感じでありますけれども、大腸に関して、大腸ポリープを切除すると大腸がんの罹患率は減ります。あるいは子宮頸がんの場合の前がん病変のようなものを円錐切除すると子宮頸がんとしてのカウントは減ります。ですから、この点では疾病の予防にはなっているのですけれども、前がん病変の治療ということで中間的な存在であるという感じがします。

 その点を確認した上での話ですけれども、4つのことについて説明したいと思います。まずは「がん対策の中のがん検診」ということで、ページめくっていただきまして、主な経緯という表をごらんください。がん検診の場合は、国の施策として本格的に施行されたのが老人保健法以降でありますけれども、その後、胃がん、子宮頸がん等々、順次導入されていきました。

 ただ、この中で、一体このがん検診というのは何のためにやるのか、死亡を減少させるということが目的であれば、それが本当に証明されているのかという議論がかなりありました。

 実は胃がん、子宮頸がん、肺がん等は、導入後にそういうことが確認されたという検診であります。大腸がんのときは辛うじて導入前にそうした評価がされて導入されたわけですけれども、そういう議論を通じて、がん検診というものが死亡減少を目的として行うのだということはかなりコンセンサスを得られるという過程であったと思います。

その集大成として、2001年に、久道先生、辻先生も深く関与されておられますけれども、「がん検診の有効性に関する報告書」というものがまとまって出ました。これで一応有効性に関する議論がけりがついたというような位置づけであります。

 さらに、がん検診の場合は、2006年にがん対策基本法というのができまして、がん対策全般の中におけるがん検診の位置づけというものがかなり明確に定義されています。

 ページをめくっていただいて、「がん対策推進基本計画」の中の全体目標として、がんによる死亡者の減少というものが書かれておりまして、これを達成するための一つの施策としてがん検診を行うのだということがはっきりと意識されていると思います。

 ページめくっていただいて、厚労省として、健康局長の予防指針として、がん検診の内容が規定されておりまして、ここに掲げた5種類が検査項目と定義し、対象者と受診間隔というものがこのように規定されています。

ただ、このような形のものが拘束力を持つといいますか、ターゲットとしているのは、健康増進法に基づく市町村事業としてのがん検診に限られます。先ほど森先生が御説明になった職域におけるがん検診というのはあくまで任意でありまして、こうした指針にも縛りを受けるものではないということです。あと、人間ドック等で自主的に行われるものに関しても特にきちんとした縛りがあるわけではありません。

このようなことで、次のページですけれども、死亡減少を目標とするがん対策の一環としてがん検診というものが位置づけられているというのが特徴的かなと思います。

ページめくっていただいて、次はガイドラインということですけれども、診療ガイドラインの定義というのは、幾つかあるのですけれども、ここに書かれているIOMという組織が2011年に定義を提唱しています。それには、このガイドラインというのは種々の研究結果をまとめて、この治療法、あるいはこの検診を推奨すべきかどうかということを一般の方々、あるいはクリニシャンに提示するという役割を果たしているわけですけれども、そのガイドラインには必ず、これをすべきかどうか、リコメンデーションというものをきちんと含むということ。そのリコメンデーションは、研究結果をまとめたシステマティックリビューを通じて決定されるものであること。その過程においては、ベネフィットとハーム、利益と不利益の評価で決定するということが明確に規定されています。

さらにガイドラインというのは、誰がつくってもいいといえばいいことなので、一つのテーマ、例えばがん検診、胃がん検診を行うということに関して、複数の機関がガイドラインをつくったりします。学会ですとか公的な機関とかいうところが同じガイドラインの推奨であればいいのですけれども、えてして違ったことになったりします。そのときに、信頼される診療ガイドラインを作成するための基準というものを設け、これに照らし合わせて、作成の手続によってガイドラインの出来不出来を判断するということで対応するというようなことが言われています。

このようなことで、手続的なことがグローバルスタンダードとして規定されつつあり、そのような形でのガイドラインの作成を、次のページへ行っていただきますと、久道先生が書かれた報告書以降、できるだけ国際的な手続に基づいてガイドラインをつくっていこうという試みを我々もしてきました。

がん検診のガイドラインを作成するに当たって、手続、手順をまずは一定のものを取り決め、各部位のがん検診、大腸がん、胃がん、肺がん等々についてこういうガイドラインを作成してきました。

その次のページですけれども、ガイドライン作成手順の定式化ということで、このような手続で、対象となるがん検診の選定ですとか、Analytic Frameworkというのがありますけれども、これは分析の枠組みというものですが、次のページを見ていただくと、こういう図をつくって、各イベントはどんなロジカルな関係にあるかを図示することによって、どこの関係性を見た論文であるかということを系統的に検索することによって、システマテックレビューを効率的に行うためのツールです。

また前のページに戻っていただくと、文献の選択、個別研究の評価、証拠のまとめの作成、それから推奨への翻訳と、こういった過程を踏むということでのガイドラインの作成というのがグローバルスタンダードとして提示されています。

このようなガイドラインに基づいて、今、研究班がつくったガイドラインをがん検診の在り方検討会というようなところに上げ、さらにそこから出てくる中間報告書等に基づいて予防指針を改定する。こういう研究成果をまとめて、そのまとめに基づいて施策導入していくという過程ががん検診の場合はある程度道筋ができているということかと思います。

それから、がん検診にちょっと特有の話かもしれませんが、利益と不利益という問題があります。ただ、がん検診のほうではかなり常識的に議論されていますけれども、恐らくほかのがん検診にも適用可能なことがあるのかと思います。

ページめくっていただいて、「がん検診のもたらす利益と不利益」というものがあります。利益というのは目的とするところですから、主としてはがん死亡の減少ということです。不随的にQOLの向上ですとか医療費の削減ということもあるかもしれません。

不利益、余り耳ざわりのいい言葉ではありませんけれども、何らか間違って判断がされる方にとって不利益が生じるということです。間違って判断というのは、スクリーニングというのは100%正しいわけでないので、どうしても偽陽性ですとか偽陰性という方が出てきまして、その方々に関しては治療の遅延ですとか、あるいは不必要な検査が行われるといったことが生じます。検診そのものが合併症をもたらすこともあります。

その3つ、偽陰性、偽陽性、あるいは合併症ということとちょっとレベルが違う話が、「寿命に比べて臨床的に意味のないがんの診断治療(広義の過剰診断)」と書いていますけれども、この過剰診断というものは、全く間違った判断というものは関与していませんで、全部正しいことをやっている。だけど、その結果生じてくるというようなところで、ややほかの3つとは違います。

「がんの過剰診断とは?」というスライドを見ていただくと、がん検診を行うに当たっては、無症状の間に検診発見可能な時点があり、放置すると症状が出てくるという経過をとりますけれども、その間に検診を受けて発見すると。しかも、その治癒可能分岐点の前に検診で発見すると、これで救命ができるということなのですけれども、こういう流れの中で、滞在時間というのが、検診発見可能から症状発現までの時間、これが長いとゆっくりしたがんであり、短いと早く進むがんというものなのですけれども、この滞在時間が寿命を超えてしまうようながん、一番下ですね、があり得るだろうということですね。ですから、その方が亡くなるまでには症状の出ないというか、悪さをしないがんというものがあって、それを検診で見つけてしまうということです。

見つけたときは、寿命がどうとか症状発現されるまでどれぐらいの時間がかかるかなんていうことはわからないわけですから、早期発見をし、早期の治療をし、ああ、よかったねという、全く間違いはなく行われるわけですけれども、結果的にはどうかなというところですね。こういうことが発生するためには、まずは寿命がある程度限られている。滞在時間が非常に長い、こういう2つの条件が必要だということです。

次、ページをめくっていただいて、ですから、過剰診断というのは、言葉の上から、何となく病理学的にがんでないものを診断したという意味合いにとられがちですけれども、そうではありません。はっきりしたがんです。がんの成長速度と個人の余命の長さ、この両者で決まるものです。個々のがんについて、過剰診断かどうかを判断することはほとんど不可能です。

ではなぜ過剰診断のことを言うのかというと、集団としての罹患率が期待以上にふえているということを証拠としています。1つは、検診評価のための無作為割付、ランダム割付試験があります。もともと、ランダム化試験をするということは、2群に分けた場合に、罹患率が両群で等しいということを保証するためにランダマイズするわけですけれども、これまで行われた多くのがん検診、評価試験において、検診群が対照群よりも罹患率において上回るという事例が多く見られます。

最近では、胸部CTとレントゲンのRCTで、CT検診群のほうで、単純レントゲン群に比べると1.21.3倍ぐらい、罹患率が高いということが報告されていますし、あるいは前立腺がん、PSAの検診というものでも同様のことが確認されています。これをどう説明するかということにおいて、放置しても症状を呈さないようながんを早期に見つけることによって、検診群の罹患率が対照群よりも上回っているのではないかということが一番自然な説明としてなされています。

あと、罹患率の年次推移というのがありまして、ページめくっていただいて、これは前立腺がんの罹患率の国別の動向を年齢別に見たものですけれども、アメリカが非常に特有な動向を示しておりまして、1990年代前半にピークがあって、また減少しているということになっています。このとき何が起こったかというと、PSAが急速に普及したという事象が起こっています。同時期の死亡率は、多少は変化していますけれども、これほど急激な変化はしていません。このことが国レベルの罹患率に影響するような形で、やはりPSAの検診というものが影響したのではないかということが考えられています。

ほかの事例として、次、ページめくっていただきますと、これは韓国の女性の部位別のがんの罹患率ですけれども、赤い色、乳がんはいいですけれども、ダントツで上がっているのが甲状腺がんです。このとき、また何が起きたかというと、甲状腺を超音波で検査をするということが、乳がん検診で超音波をするプローブと同様のものが使えますので、そういうものが韓国では急速に普及したということが原因ではないかと推察されています。

現在、韓国では、甲状腺がんというものは超音波では見ないということを専門家のほうが推奨し、ようやく手術件数は頭打ちになって減少傾向になったということが『ニューイングランド』に出ていたと思います。このようなことが過剰診断ということを示唆する背景にあります。

こういう不利益の中で過剰診断を含め幾つかのコンポーネントがあるわけですけれども、次、ページめくっていただくと、これを「利益・不利益バランス」で推奨を決めていくということを、2つの視点がありまして、1つは集団のレベルで判断するということと個人のレベルで判断するということです。がん対策として行うということについては、やはり集団レベルで多くの人で利益が不利益を上回る、だから政策導入しようということであり、任意型というところでは、比較的新しいがん検診の手法などもある程度不確実なところで判断しても、利益が不利益を上回ると判断できるのであれば、個人のレベルで導入しましょうと。こういうところを区別すべきではないかと考えました。

「対策型検診と任意型検診の比較」ということで、次のページですけれども、これは完全にオリジナルではありません。英語としては、対策型というのはオーガナイズド・スクリーニング、組織化された検診というもの、それから、任意型検診というのはオポチュニスティック・スクリーニング。オポチュニスティック、日和見的とかそういうものですけれども、それを直訳するといまいちフィットしないので、かなり意訳的であったのですが、こういうことを提唱しました。がん対策の中では割と人口に膾炙するというか、対策型検診という言い方が割と使われています。

次のページを見ていただいて、研究班におけるガイドラインのまとめとして、大腸がん、胃がん、肺がん、前立腺がん等々、対策型としては推奨する、しない、任意型としては推奨する、しない。これのポイントは、やはり対策型検診として推奨する場合は確実に利益が不利益を上回るということが言えるものについて推奨する。Cというのは、利益と不利益が近接しているようなものについては、任意型としてはグレーという感じですけれども、対策型としては勧めないということを白黒はっきりさせるために、対策型、任意型を分けて考えようということを提唱しています。

次のページは、子宮頸がん、乳がんというものです。

ですから、まとめとしては、がん検診の利益、不利益という点について、このバランスに基づいて推奨の決定がなされるべきであります。ただ、不利益の部分に関しては非常に情報が不足しています。さらにバランスの決定のロジックも未成熟です。比べるものが余りに質が違うというところもありますし、不利益の場合は、複数のイベントといいますか、違ったものを合算して考えないといけないというところです。ですから、こういう基本的な考え方はあるのですけれども、実際の個々の例に関して言うとかなり工夫が必要であるということはあります。

お時間ですけれども、「がん検診の課題」として幾つか挙げています。1つは、受診率が低い。母子保健の中の受診率とは全然違いますが、ただ、計測システム自体も余りきちんとしておらず、一部の市町村のがん検診のみが計測されていて、職域のほうは全く野放しであるということもあります。それから、がん検診の検査ということが一般の診療の中でも行われているのではないかということもありまして、そのあたりをきちんと包括的にカウントするような計測システムというのも必要なのかもしれません。

それから、高齢者と書いていますが、下の対象年齢の範囲ということが、特に下限、上限あるわけですけれども、下のほうは余り見つからないという、期待数のところで決められるところはあるのですけれども、上限というのは非常に難しいです。今のところ、我が国では上限というのは設定していないわけですけれども、利益・不利益バランスですね。

次のページを見ていただくと、ある意味、利益が不利益を上回る範囲というのは限られていて、高齢者ですと、これはイメージですけれども、非常に急速に不利益の度合が強まって、むしろ受けることによって個人のレベルでも不利益が利益を上回るから検診を受けないほうがいいということが判断できる可能性があります。あるいは若年のほうでもそのようなことがあります。ですから、利益・不利益バランスで適切な年齢範囲に対して確実に検診を行うことが必要になってくるということがあります。

現に、次のページを見ていただくと、US Preventive Task Forceというアメリカの半公的な機関が出しているガイドライン、リコメンデーションですけれども、幾つかのがんについてはDと。前立腺がんとか卵巣がんについては全年齢に対して不利益が利益を上回るので、受けないほうがいいというリコメンデーションを出しています。さらに高齢者に限って言いますと、子宮頸がんですとか大腸がんでもD、また子宮頸がんの21歳未満でもD、不利益が利益を上回るから検診を受けないほうがいいと。ですから、検診を受けるということが常に善であるということではないということをはっきりと認識すべきですし、それに見合った対象年齢の設定というのも必要だということが言えると思います。

次に検診間隔ですが、毎年やる、あるいは2年に1回やるということですら、ちょっとやり過ぎということもあります。例えば大腸がんなんかですと、大腸内視鏡を行えば5年に1回、あるいは10年に1回でオーケーであるというようなことも言われていますし、子宮頸がんですと、国際的には3年に1回でも十分であると。こういう検診の間隔をあけることに関してのエビデンスがある際に、あけたほうがいいということを説明するのは結構難しい話です。

特に医師会の先生方にこういうことを説明申し上げると、ではあけて見落としがあったらどうするのだと、君は責任とれるのかというようなことが出てきます。医療者の中でもそうですし、それから受ける側に関しても、受けたい人は毎年受けたいというところがあって、ここはなかなか難しい問題です。

それから、精度管理ですね。精度管理は、今、全国がん登録ができて、これを利用した患部の測定などが恐らく将来的にはできるでしょうけれども、それプラス、レセプトのデータなんかを利用して行うということも可能かもしれません。それから職域のがん検診。それから、研究は開発偏重、AMEDで開発ばかりやっていると、政策的な研究がちょっと追いついてないのではないかなという、これは愚痴ですけれども。

それから最後、個別化と統合化ということがあります。今、遺伝子情報なんかを駆使して個別対応というのがはやっていますね。個別化予防ですとか。ただ、政策として展開していく際に、余り過度な個別化というのはむしろ政策を展開する際の阻害要因になる可能性があったりして、先ほどの対策型、任意型という考え方でいけば、対策型検診、施策として行う検診に関してはある程度統合した形で行うほうがよいのではないかと個人的には思っています。

以上です。

○辻委員長 ありがとうございました。

実は祖父江先生に検診の利益・不利益についてきっちりと説明してくださいと私からお願いしたのですけれども、これは、今お話もありましたように、がん検診の利益・不利益という問題は国内外でかなり幅広く議論されております。ただ、その一方で、ほかの臓器の検診、特ににんべんの健診のほうでは、不利益という議論が余りされてないのではないかと思ったのであえてお願いしたわけですが、実は資料3の満たすべき要件の中でも、(9)で「健診・検診プログラムは危険性を最小限にするための質の保証がなされており、起こりうる身体的・精神的不利益よりも利益が上回ること」ということがありますので、そういったことも含めて御議論いただきたいと思います。

 では、今の3名の先生方のヒアリングを参考にいたしまして、資料2「健康診査等の満たすべき要件を検討する際に踏まえるべき事項(案)」及び資料3の「健康診査等の満たすべき要件(案)」について、先生方から御質問、御意見をいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 どうぞ。

○今村委員 森先生の御発表と今の祖父江先生の御発表の中で、先ほどございましたがん検診について、いわゆる事業所で行う検診については個人の判断によるという話がありました。検診の手法についてもさまざまな手法がとられているというのが実態だと思っていて、この場では検診等はどうあるべきかということを議論するのであれば、少なくとも国が対策型検診として挙げている5つのがんについては、例えば事業所で行う検診であっても指針に則って同様の手法で行っていただく必要があるのではないかと思います。そうでなければ、例えば事業所で行った検診がどういう精度管理が行われて、どのような結果があるのかというエビデンスが全くとれないのではないかと思っております。PSAのように対策型検診の対象になってないものについてはある程度任意の考えでもいいと思いますが、少なくとも事業所だから自由にやっていいですよという制度にはしないほうがいいのではないかなと思っております。先ほどのご発言に、少しそういうニュアンスを感じたものですから。

○祖父江委員 いや、そんなことは決して言っていません。現状においてはそういう縛りがかかっていないということですね。むしろ職域のがん検診のほうががん対策上非常に重要なわけですね。働き盛りのがん死亡を減らすという意味では。そこをきちんと精度管理をして、あるいはどの程度の受診率かという普及の度合に関してのデータもきちんとモニタリングするという仕組みが早急に構築されるべきだと思います。

○今村委員 全く同感なので、それなら結構です。

○森委員 おっしゃるとおりです。集団に対する対策で侵襲が多少とも伴うようなものはかなり慎重になります。一方で、健保の費用や企業の費用で人間ドックを受けさせることが多いのですが健診機関側の全く侵襲は伴いませんといって腫瘍マーカーを進められたときに担当者が簡単に乗ってしまって、余分な精密検査が必要になっているケースがあるので、項目を増やすと不利益が生じることがあることが明確なほうが、職域においてもそういった問題が生じにくいのではないかなと思います。

○今村委員 そのとおりです。現在、がん検診の受診率というのも推定のような数字を基に議論されておりますので、きちんとそういう統計的なものも整備できるような形の中でこの検診を見直すべきだということ、全く先生方と思いは同じだと思います。

○辻委員長 ありがとうございます。

これは私の個人的な考えですけれども、私は実は、がん検診、特に対策型で認められているがん検診については保険者が実施主体になるべきだということを、かなり前から申し上げていたのですが、そうしているうちに、がん検診でなくて特定健診で先に保険者が実施主体になったのですけれども、制度によって健診受けられるかどうかが変わってくるというのはおかしい話ですので、そういうこともまた考えなければいけないと思います。保険者ががん検診を実施すれば、データヘルスとの関係で、その後の事後管理が非常に正確になりますし、精度管理がかなり明確になるわけですね。ですから、そういったことも含めて、対策型については保険者が主体となるということも今後御検討いただきたいなと私は思っています。

 それともう一つは、先生も同感だと思いますが、任意型になると何をやってもいいみたいな感じが、さっきの腫瘍マーカーの話も含めて、余りに縛りがかからないというのはどうなのかあということを、いつも私は任意型を見ていて思うのですけれども、祖父江先生いかがですか。

○祖父江委員 いやいや。ガイドラインの中で任意型で全く有効性に関して証拠がないものは勧めないというか。だけど、証拠不十分という扱いをすると、態度の表明としてはちょっと曖昧にはなっていますね。ただ、やはり任意型であっても、きちんと有効性の証拠というのは確認すべきだし、そのことをきちんと情報として伝えるということは絶対に必要だと思いますね。

○辻委員長 ありがとうございました。

 弓倉先生、どうぞ。

○弓倉委員 がん検診と離れてもよろしゅうございますか。

 学校健診のちょっと補足をさせていただきたいのですけれども、私は3つほど出させていただきたいのです。1つは、学校健康診断は集団健診であるということです。欧米は、先ほどお話があったように、乳児のころから、ワクチン接種ですとかそういうので小児科に行く回数ですとか行く月とか、大体決められておりまして、その流れの学校の健診という形もいきますので、欧米、特に米国とかは個別健診で学校健診はやられております。

日本の場合は全部集団でやられているのですが、これは歴史的に、明治維新という時代の混乱があって、明治4年に文部省ができて、明治5年に学区制ができて、あの時代でしたので、非常に病気退学される児童生徒がふえたので、西洋体操をたしか導入して、そして活力検査というものを国が入れて、そして明治11年にそれを制度化した。それがそもそもの始まりと言われています。それが身体検査、それから昭和33年の学校保健法による健康診断に変わってきたわけで、そういう形で国が子供たちの健康診断に責任を持つという形で集団健診となったわけでございます。どちらがいいかということは、それぞれの国のやり方と、それから歴史があるということです。

 次にもう一つ大事なことは、健康診断をした後の事後措置があるのですが、その事後措置が途絶えてしまうということですね。中断してしまう。先ほどお話ありましたように、小学校のデータは、このまま公立のほうに行けば中学校のほうに行きますけれども、私学に行ってしまった場合ですとか、それから大学のほうに行ってしまいますと、なかなかデータが行かないということがございます。

 例えば学校管理下の中の突然死というのがございまして、それをカウントしてみますと、学校管理下による死亡は結構突然死が多くて、それを減らすために、昭和48年に「心臓の疾病及び異常の有無」というのが入れられて、その後、かなりの勢いで学校管理下の突然死が減って、平成6年に全国で心電図の検査を義務化された後、かなりまたさらに減少して、今、1年間に、日本スポーツ振興センターが統計をとっておりますけれども、大体30人台だろうと思いますが、そこまで減少している。

 ただ、健康診断を受けた児童生徒たちは学校生活管理指導表というものを受けて、いわゆるE可とかE禁とか、そのような形で事後措置を受けて、どこまでの運動ならしていいという運動制限であるとか、そういうものを受けているのですが、そこがやはり高校卒業した時点で途切れてしまう。例えば不整脈でずっと毎年フォローアップしている生徒さんたちがその時点でとまってデータが消えてしまう、あるいはその後のフォローがどこからもされていない。そういうブラックボックスのようなところができてくる期間、これが学校卒業して、特に高校卒業してから就職するまでの期間というのは、雇用時の健康診断がされるまではほとんどブラインドになってしまうだろうと思いますし、心電図に限って言えば、次は35歳、その次は40歳以上になりますので、かなりその間フォローされなくなるというところが課題かなと思っております。

 あと3番目が侵襲的検査の問題で、子供たちの学校健康診断は基本的に侵襲検査をやらないのですが、地区の教育委員会によっては、地区の医師会の先生方と相談して、小児の生活習慣病予防健診ですとか、あるいは貧血健診などで採血検査など入れている、そして事後措置の指導などもしているところがあるのですけれども、まだこれについても、どこで正常値を区切るかとか、どのような形で、どのような項目がよろしいのかというその辺の整理がされていないという課題がございます。

 以上、ちょっと補足です。

○辻委員長 ありがとうございました。ほかにどなたかいらっしゃいますか。

○清水委員 ちょっと質問でございます。自治体の立場からでございますが、山縣先生にちょっとお聞きしたいのですけれども、私ども、福祉保健の所管でございまして、1歳

6か月児、3歳児健診を実施しております。また、教育委員会のほうでは就学時健診、6歳児でやっております。その間、3歳から6歳までの間にちょっと期間があいているのではないかという懸念がありまして、私どもは独自に5歳児健診というのをやっているのですけれども、主に発達を見るということで実施しておりますけれども、そういう観点からの健診の実施は有効であるかどうかということをちょっとお聞きしたいのが1点でございます。

 それからもう一点が、森先生と祖父江先生にもお聞きしたいのですけれども、自治体のほうでは、今、PSA検診というのが、ポスターもつくって、これは厚労省でつくっているのでしょうか、推奨しているというふうには認識しているのですけれども、ポスターが張ってありまして、幾つかありまして、自分自身の子供含めて、例えば50歳以上の男性についてPSA検診を実施したらいいのではないかとはちょっと思っていたところですけれども、余りこれは推奨できないよということだったので、ちょっとその辺のところをお聞きしたいのですけれども、2点、よろしくお願いします。

○山縣参考人 おっしゃるとおり、幼児健診で、5歳児健診というのは比較的やっているところがあります。ただ、制度としては入っておりませんので、本当に市町村独自でされていると思います。恐らく経緯としては、その期間があくということと、発達障害の早期ということが当初はあったと思うのですが、現在ではその発達障害に関しては、むしろもう2歳とか1歳半の健診で早く見つけていくということのほうが主流になりつつありまして、そういう意味で、5歳児健診の位置づけといったようなものは以前より、どちらかというと曖昧になっている可能性はあると思います。

○清水委員 そうすると、2歳から2歳半ぐらいでも発達障害というのはかなり見分けることができるということですか。

○山縣参考人 技術的な問題で、今、3歳というのが1つ区切りであるのですが、3歳は言葉が出てくる時期で、言葉が出てくることによってその発達障害がカバーされてしまう、それを見つけにくくなってしまうということで、むしろ言葉が出る前にというのが今の専門家の先生方の一つのある程度の共通の認識と理解しております。

○祖父江委員 ポスターは誰がつくったか、ちょっとよくわからないのですけれども、日本の現状としては、泌尿器学会は確かに住民検診として推奨するというようなことを言っているはずです。今現在確認してないのでわからないのですけれども、ちょっと前まではそうでした。

ですから、言っていることがガイドラインをつくる作成者でちょっと違うというところですけれども、世界的には、先ほどのUS Preventive Task Forceというところが、不利益が利益を上回るのでやめたほうがいいということを言ったのが2012年です。それに反応して、直後は多くの団体が、何でそんなこと言うのかと。アメリカの実情は、50歳以上の男性はほぼ、100%とは言いませんけれども、かなりの割合でPSA検査を受けている状態です。日本に比べてもっと普及しているという状態でそういうことを言ったのですね。受けないほうがいいと。だから、物すごく混乱しました。

 ただ、その後の経緯を見てみますと、科学雑誌なんかでの対応も比較的サポーティブなのですね。US Preventive Task Forceが言ったことに。さらに米国の泌尿器科学会がこれ以降にガイドラインを改定しまして、相当、このUS Preventive Task Forceの言っていることに沿った内容に変えました。かなり抑制的です。50歳代、60歳代ぐらいは相談して決めましょうという、シェアード・デシジョン・メイキングというような感じですけれども、70歳以上とか50歳以下のところはもう受けないほうがいいとはっきり書いています。

ですから、世界的な傾向としてはかなり抑制的に考えるということが大勢を占めていると思いますし、ただ、日本の実情として、一方で、かなりの割合の市町村が、市町村の事業としてPSAの検診をしているという実態も、これは厚労省の調査でも把握されていると思います。ですから、プラクティス・エビデンス・ギャップというものがあるいい例だと思いますけれども、きちんとこの実情を説明する努力をもうちょっとしないといけないと思いますし、市町村のほうも、同意するに当たってはきちんと情報を得て判断していただきたいと思います。

○福島健康局長 がんに対しましては、第2期の今のがん対策基本計画がございまして、それの死亡率低下がなかなか目標達成厳しいということがございまして、がん対策加速化プラン、12月に公表を私どもいたしました。その中で検診に関しましても、従来は推奨する対策型検診の話だけを扱うというふうにしておったわけですが、推奨しないものについても言及していこうということも書いております。また、従来、もちろん市町村事業としてのお話だけをしておったわけですが、先ほど来の御議論があるように、職域でのがん検診のあり方というのは非常に重要でございますので、これについても、目標値、あるいはどういうものをやっていけばいいかと、あるいは保険者によるインセンティブ、ディスインセンティブというのをどのように考えていくのかということについてさらに議論していくという方向で加速化プランの中でも書いております。御参考になればということでございます。

 ちなみに、PSAについては、もちろん、私ども、今のところ、推奨するがんの中には挙げていないということでございます。

○森委員 今のお話を聞きながら、今議論になっているこの資料3に関しての健康診査等の健康診査と、例えば職域で言うと、法律で公衆衛生的なこともあるから全部事業者にさせるというレベルの推奨の範囲なのか、個人として選ぶことを前提とした推奨の話なのか、どの範囲の話を前提とするかによって、幾つかひっかかりが出てくるのではないかと思いますので、そこが同意できていると大体決まるような感じがするのですが、いかがでしょうか。

○辻委員長 それにつきましては、資料2の方で制度としての検診となっておりまして、ですから、例えば先ほどの祖父江先生の議論で言いますと、がん検診は対策型と日ごろ言われているものが今回議論する対象になっております。それ以外のものについても、今、制度として行われるものについての要件ということで御理解をお願いします。

○今村委員 資料3について確認なのですが、前提になっている健康診査の導入前という話は、この健康診査、項目も含めてという理解でよろしいでしょうか。

 それを踏まえて、一番最後の14番なのですが、健康診査というものを、新しい項目を導入する前に、この健診・検診間隔の短縮、または延長もあり得るわけですが、そこまでを健康診査の導入前に満たさなければいけない条件というのが少し違和感があり、もし書くのであれば、そういった見直しを一定のルールのもとに行えるようにしておくという話でいいのではないかと思いました。特に「公共の圧力」といった意味深な表現になっておりますので、14番の書きぶりは少し考えた方がよいと思いました。

 以上です。

○辻委員長 確かにこれは、私どもも議論させていただいたときに、かなり英語的な言葉でございまして、「公共の圧力」、要するに、人々が求めるというような話でしかないわけですけれども、その辺ちょっと検討させていただきたいと思います。

 それから、導入前だけでなくて、常にエビデンスが出るたびに、この基準に沿って、検診そのもの、あるいは検診のテスト項目を続けるかどうかということも含めての議論だと思います。

○今村委員 ですので、最初に確認した導入前という言い方が適切かどうかということも含めて考えていただければと思います。

○辻委員長 深井委員、お願いします。

○深井委員 資料2と3について別の観点からコメントしたいと思います。そもそも生涯にわたる健診はどうあるべきかという議論だと思いますけれども、これまでも生涯にわたる健康づくりのために、あるいはセルフケアとか場であるセティングも含めて、健康管理のために健康診査はどうあるべきかという議論だったと思います。その中で、ライフステージ別の対応というのは、どうしても疾病ベースになれば年齢特性ありますし、発達課題等があれば年齢も当然関係するので、今までライフステージごとに行っていたものをライフコースに沿った考え方に統合できないかという議論が前回りました。このライフコースの場合には2つ考え方があって、1つは、生涯にわたる連続したという意味もあるのですけれども、もう一つはリスクが蓄積していく、すなわち子供のときのリスクが中高年以降にまで蓄積した結果、疾病が発見するというのがライフコースの大きい考え方ですので、それも踏まえて、リスクの蓄積の観点から、各ライフステージでどういう健診が必要かという議論がまだ、きょうは疾患ベースになるとその話が出てこないので、ぜひ次回以降していただきたい。

 また、1回目の辻先生が示してくださったにんべんときへんの健診・検診の考え方のところです。1回目の資料で、辻先生のほうから、健診のほうは、健康づくりの観点から経時的に対応することが望ましい検査群と。検診のほうは、疾患自体を確認するための検査群という切り分けをしてくださって、ここで問題となるのは、この検査群の群とは何かということを言いたいと思うのです。

というのは、きょう資料で挙がっている資料2のところを見てみると、個人のスクリーニングというところが、この図から言うと、疾病のスクリーニングに近い考え方になっているように思えます。個人のヘルス・チェックアップと言うと、もっと健康づくりとか健康オリエンテッドなものと理解したとすると、そもそもこのヘルスの定義は何かといえば、病気があるとかないだけではなくて、その人の日常生活に支障を来していたり、きょう冒頭の議論であった公衆衛生上の健康課題というのは疾病に対する負荷で、痛みだとか、日常生活が制限されているとか、困っていることがあるということも含めて、あるいは保健行動も含めてヘルスというふうに考えることができます。ここには当然、ヘルスアセスメントの議論にもあるように、主観的な評価というのか、それはほとんど質問紙だとか問診の形で今まで聞かれていたので、先ほどの検査群の中に質問紙とか問診の扱いをきちっと入れておかないと、疾患ベースだけの健診・検診になってしまうのではないか。

 そんな観点からすると、きょうの議論をずっとお聞きしていて、資料3の検査のところになると、疾病を発見すると、客観的な検査というところがどうしてもフォーカスが当たりがちなのですけれども、むしろ健康づくりということになると、健康度アセスメントとか、あるいは質問紙の扱いだとかいうことも検査群の中に考え方として入れないといけないのではないかと思います。

○辻委員長 ありがとうございました。先生のおっしゃるとおりだと思います。特に問診とか、例えば高齢者で考えますと認知症についてはそういうテストが必要になってきますし、介護予防の観点からしますと、基本チェックリストというものが今も使われていますけれども、それも問診というか、聞き取りですね。そういったことで現在もしておりますので、この検査の中に問診とか調査票といったことも含めているという御理解でお願いします。

○深井委員 1回目の先生の検査群という群の中には、そういうものも含むというのがどこかに書いてあったほうがいいのではないかと。考え方として。

○辻委員長 文言として明記されていませんけれども、そのような御説明をさせていただいたと思います。そういったつもりで、この資料3の検査という中にもそういったものも含まれるということで御了解いただきたいと思います。

ほかにどなたかございますでしょうか。

○祖父江委員 先ほどちょっとフライングで、資料3ですが、健康事象のところの検出可能な危険因子プラス、がん検診等、症状を発見すると。しかも無症状であるというところを加えていただきたいというのが1つです。

 それから、これは全般的に一個の項目の中に複数の事象が入っていますね。例えば「検査」のところで、5番目、簡便・安全、有効性で、適切なカットオフ基準が合意されているはいいのですけれども、その検査実施可能な体制が整備されていることというのはまたちょっと違うフェーズの話だと思うのですよ。それは「事後措置」のところにも書いていますけれども、そういうものはちょっと分けて項目立てをしたほうが、必ずしも検査そのものの特性ではないですから、むしろ政策の中でそういうものの体制は整備すべきというところは別な話だと僕は思うのです。だから、ちょっと項目を分けて記述したほうが、項目数はちょっとふえるかもしれませんけれども、わかりやすい構成になるのではないかと思います。

○辻委員長 ありがとうございました。確かに先生おっしゃるとおりで、(5)で見ると、前段2項目は検査の性能に関するもので、3つ目が資源配分に関することですね。ですから、確かにそういうところはあるかと思います。ただ、余り項目をふやし過ぎるのもまたどうかなというところがありまして、ちょっとその辺は検討させていただきたいと思います。

ほかにどなたか、御意見ありますでしょうか。

 弓倉委員、どうぞ。

○弓倉委員 私、学校保健のことをやっているものですから、3の「事後措置」を見ますと、治療と介入しかないのですね。これ、教育という文言が抜けておりまして、学校保健ですとやはり、例えば虫歯の著しい減少とかございますように、いわゆる教育的効果というのは非常にございます。これからまたがん教育等も全国的に発展していくと思うのですけれども、やはりこれを生涯教育という形で捉えた場合には、治療と介入だけではなくて、教育、指導というようなところの部分が必要ではないかと思います。

○辻委員長 私どもとしては、教育、指導もその介入の一環ということで考えておりました。ですので、そういったところで御理解をいただければと思います。

 先生、どうぞ。

○迫委員 ありがとうございます。

 栄養指導という観点からちょっと申し上げたいと思っております。1点は、子供のとき、乳幼児から、そして生涯を通じて栄養問題は最近両極化してきている。肥満とやせに両極化してきています。そういう状況の中で、乳児期は、行政で健診の事後指導の中で問題のある方に対してはかなりの栄養指導がされている。未受診者の中には相当な栄養不良の人が含まれているだろうと思われ、そこへの栄養介入が非常に重要なものになってきます。

それから、学校は栄養教諭がいますので、管理はある程度できているのではないか。職域になりますと、保健指導が努力規定というところがあって、特定保健指導における保健指導、栄養指導も、これもある意味、任意的でうけていただくことになってしまう。一番対象数の多いところでの保健指導がどうしても十分行われない。先生がおっしゃいました介入の部分が十分ではないというところを考えますと、やはり生涯の健康づくりという中で、この健康診査と事後の指導の部分を、これは事後措置の中の介入というところになるかと思いますが、そこのところをつないでいくという形での整備。それは(7)の「実施可能な保健医療体制」という言葉の中に網羅されているのかとは思うのですが、その辺を、もう少し着目した形での整理があるとありがたいと思いました。

 以上です。

○辻委員長 ありがとうございました。

きょうの資料1をごらんいただきたいのですけれども、資料1の2ページの「評価の考え方」というところで、これは1118日の本委員会の第1回で議論、確認させていただいたものですが、評価の考え方としては、「個々の検査に対する感度・特異度などの精度の評価だけではなく、事後措置を含めたシステム全体を通じて目的の達成度」等々ということで、この事後措置を、下のほうをごらんいただきますと、治療ですとか保健指導、あるいは自己管理等による生活改善で予防という話になっていますので、こういったところがきょうの資料3では少し表現として薄いかなということはあるわけですけれども、実際、我々の気持ちとしては、こういったもの全般について、先ほどの弓倉先生の御指摘も含めて検討していこうということでございます。よろしくお願いします。

 ということで、大分時間迫ってきましたけれども、ほかにどなたか。

 市原委員、お願いします。

○市原委員 どちらかというと自治体のほうには、とにかく検診の受診率を上げろというようなことを言われているわけですが、先ほどの話の中に、必ずしも受ければいいということではなくて、やはり疾患であるとか、年齢であるとか、そういう特性をきちんと踏まえた上で、利益と不利益、その辺をはっきりさせながらというお話があったと思うのですが、その中で、検診をこれだけ受けて、受診率はこれぐらい上がったら財政上どれぐらい軽減されるかというその辺のことがもう少しわかると、私ども、非常に考えやすいのかなと思うのですが、今、自治体で非常に困っているのは、国保が大変危機的な状況にあるということで、検診を上げろ上げろと言っても、ではどういう疾患がどれぐらい早く見つかって治療受けることによって財政的な負担がどれぐらい軽減されるかという一つの目安みたいなものがわかると、なお一層頑張って受診率を上げることができるのかなあということをちょっと考えていたのです。

○辻委員長 ありがとうございました。全く市長さんのおっしゃるとおりだと思います。ただ、今まで日本ではそういうことをきちんと評価できる素地がなかったのですね。というのは、個人情報保護等々ありまして、データを移転していくことが難しかったことがあります。ですから、難しかったのですが、ただ最近になりまして、特定健診で受診した人としなかった人でこれぐらい医療費が違うとか、あるいは保健指導になってから改善した人がどれぐらい医療費変わってくるとか、そういったデータが今出始めています。それから、今度、マイナンバー等々でデータをつなげやすくなっていきますと、あるいはがん登録とデータをつなげていくのが簡単になっていきますと、市長さんが求めておられるエビデンスも今後は出てくると思いますね。ですから、それも含めて調査研究の推進、あるいは評価する体制整備が必要だということを本委員会として提言することはとても大事なことだと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

○市原委員 事業をつくるときに費用対効果というのをいつも考えながらやらなければいけないわけですけれども、そのときに、意外と、こういう事業、例えば保健指導しますよね。検診の結果によって。そのときに、こういうことをやったらこれぐらい財政的に改善するというところをいつも探しているのですけれども、意外とデータがないというのがちょっと私ども困っているところでもあるので、ぜひともお願いしたいと思います。

○辻委員長 ありがとうございました。

それでは、大分時間迫っていますけれども、もしほかに御意見なければ、ただいま先生方からたくさん御意見いただきましたので、資料2と資料3につきましては、若干文言の修正あろうかと思いますけれども、これにつきましては私と事務局にお任せいただいて、大筋としてお認めいただくということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○辻委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、本日の議論はここまでとしたいと思います。

最後に、今後のスケジュール等につきまして事務局から説明をお願いいたします。

○高山健康課長補佐 事務局でございます。

 今後の日程について御案内申し上げます。第3回専門委員会の日程等については、日程調整の上、後日改めて正式に御連絡を差し上げます。

以上です。

○辻委員長 それでは、本日は以上をもちまして閉会といたします。どうもありがとうございました。

 


(了)

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