ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会> 第3回 特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会(2016年2月2日)




2016年2月2日 第3回 特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会

○日時

平成28年2月2日(火) 13時30分~15時30分


○場所

厚生労働省 6階 専用第23会議室


○議題

(1)特定健康診査の健診項目について(脂質・肝機能・代謝系)
(2)その他

○議事

○中田健康課長補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまから「第3回特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様には、御多忙の折お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 本日の出欠状況につきまして御報告申し上げます。本日は、門脇構成員と藤内構成員より、御欠席との御連絡をいただいております。また、磯構成員におきましては、所用によりまして1450分めど途中退席の予定ということで伺っております。福田構成員につきましては、おくれている状況でございます。

 配付資料につきましては、座席表のほかに議事次第、また、その裏に配付資料一覧がございますので、御確認いただければと思います。

 また、構成員の先生方にはパイプファイルにて、前回までの資料と健康保健指導標準プログラム改定版を用意させていただいておりますので、適宜御参照いただければと思います。

 落丁等ございましたら、事務局までお申しつけいただきたいと思います。

 失礼いたしました、武見構成員も途中退席ということでございます。

 それでは、撮影はここまでとさせていただきまして、以降の進行は永井座長にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○永井座長 それでは、よろしくお願いいたします。

 本日は、特定健康診査の健診項目(脂質・肝機能・代謝系)について御議論いただきます。事務局で前回の議論の整理と、その議論を踏まえて今回の資料をまとめていただいておりますので、資料1~3について、まず御説明いただき、その後、各研究班の成果として構成員からの御発表をいただくことになっております。その論点に沿って議論を進めたいと思います。

 それでは、最初に、事務局からお願いいたします。

○高山健康課長補佐 事務局でございます。それでは、資料1の御説明に当たりまして、まず参考資料1をごらんください。

 「議論の進め方について」でございますが、こちらは1月19日、「第2回特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」でお示ししたものでございます。前回の検討会では、こちらのうちの「1 特定健康診査・特定保健指導の満たすべき要件」「2 特定健康診査の健診項目等について」の御議論をいただきました。

 今回の検討会では「3 個別の特定健康診査の健診項目等の見直し」について、今回は脂質・肝機能・代謝系の御検討をしていただく予定でございます。

 また、1枚おめくりいただきまして「今後のスケジュール」ということで前回お示ししたものですが、このうちの2月分の第3回を本日、御検討いただく予定でございます。

 引き続き、参考資料2をごらんください。「特定健康診査・特定保健指導の満たすべき要件」をお示ししてございます。こちらは、119日の前回の検討会で合意いただいた内容となります。本日は、個別の特定健康診査の健診項目が、これら要件をどの程度満たすものかを中心に科学的に御検討いただく予定としております。

 では、資料1にお戻りいただきまして御説明させていただきます。

 第2回、「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」の概要をお示ししておりまして、以下のような御検討をいただきました。

 特定健康診査・特定保健指導の満たすべき要件については、健診項目は科学的なエビデンスに基づき、特定健康診査・特定保健指導の満たすべき要件や実施可能性を踏まえ検討を行う。

 続きまして、特定健康診査の健診項目については、「1.検討の進め方について」ということで、健診項目の判定値や健診項目は、厚生労働科学研究費補助金による研究班等を活用して、最新の科学的知見に基づき検討を行う。

 尿検査や肝機能検査等、保健指導対象者の選定に用いられない項目や、導入が見送られている血清尿酸や血清クレアチニンなどの項目についても検討を行うこととされました。

 続きまして、「2.健診項目の基本的考え方について」ですけれども、健診項目は虚血性心疾患や脳血管疾患等の危険因子もしくは生活習慣病の重症化の進展を早期に発見する項目で、かつ介入可能なものとされました。

 保健指導が必要な者を的確に抽出することに加えて、必要に応じて要医療者を抽出する検査項目も健診項目とすべきであるという御検討がされました。

 「3.質問項目について」も御討議いただきまして、標準的な質問項目は、生活習慣病リスクの評価、保健指導の階層化、健診結果を通知する際の「情報提供」の内容の決定に際し活用することに加えて、地域の健康状態の比較を行う観点も重要とされました。

 「4.詳細な健診について」は、生活習慣病の重症化の進展を早期にチェックするものであるが、医療で行うべき検査との違いを明確にして、必須項目に追加することで新たに抽出できる健康事象や生活習慣病予防への寄与について検討する必要があるという御意見をいただきました。

 「5.保健指導対象者の選定と階層化について」は、虚血性心疾患、脳血管疾患等の生活習慣病に対するリスクの程度に応じて行うことで御検討をいただきました。

 また、後ろに「第1回特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」の概要もおつけしておりますので、御参照いただければと思います。

 引き続きまして、資料2の御説明をさせていただきます。

 本日、御検討いただきます脂質・肝機能・代謝系について、参考資料2でお示しいたしました特定健康診査・特定保健指導の満たすべき要件のうち、検査、事後措置に当たります()()までの要件をどの程度満たすかについて、永井座長に代表研究者をお願いしております厚生労働科学研究補助金「特定健康診査・保健指導における健診項目等の見直しに関する研究」の検討班で御検討いただき、作成いただいたものでございます。

 網かけになっている部分がそれぞれの項目を特定健康診査として実施する際に、現状において課題が指摘されていると考えられている箇所をお示ししております。

 網かけ部分について御説明させていただきます。

 まず、脂質についてです。中性脂肪では、検査の実施体制のところに網かけがございますけれども、空腹時採血が望ましいですが、健診現場では必ずしも空腹時採血が実施できないことがあることが課題。

 また、LDLコレステロールでは、検査の精度・有効性について、LDLコレステロール直接法は測定精度に懸念があることが課題。

 また、総コレステロールでは事後措置、こちらは特定保健指導を指しますが、対象者について、日本人はHDLコレステロールが高いことが知られておりまして、保健指導対象者の選定に総コレステロールを用いると過大評価となる懸念があることが課題とされております。

 また、肝機能については検査の目的について、虚血性心疾患、脳血管疾患等の危険因子の評価を行うという目的ではなく、肝機能異常の重症化の進展の早期の評価であるとの整理でよいかどうかが課題とされております。

 また、目的によって検査の対象集団をどう考え、また、事後措置について介入可能な保健指導等があるのか、要医療とすべきなのかを整理する必要があるとされております。

 代謝系ですけれども、空腹時血糖では検査の実施体制につきまして、中性脂肪と同様に空腹時採血が望ましいとされておりますが、健診現場では必ずしも空腹時採血が実施できないことがあることが課題。

 また、尿糖では、検査の精度・有効性について、精度では、濃縮尿や希釈尿では過大あるいは過小評価する可能性があることが課題であり、有効性では、糖尿病の診断基準に位置づけられていないということが課題ではないかとされております。

 また、お手元の参考資料4をごらんください。今指摘のありました代謝系に関係しまして、メタボリックシンドロームの診断基準と、その裏に糖尿病の臨床診断のフローチャートをおつけしておりますので、適宜御参照いただければと思います。

 引き続きまして、資料3の御説明をさせていただきます。

 以上を踏まえまして、資料3に脂質・肝機能・代謝系の健診項目についての論点をお示ししております。

 中性脂肪の測定については、本来は空腹時採血が望ましいが、虚血性心疾患や脳血管疾患の発症予測の観点からは、空腹時でなくても健診項目として活用可能としてはどうかとさせていただいております。

 また、LDLコレステロールと総コレステロールの測定についてですが、LDLコレステロール直接測定法は、測定精度が安定しないことが懸念されているため健診項目から廃止して、検査の精度・有効性とも確立しているnon-HDLコレステロールを保健指導対象者の選定に用いることとしてはどうかとさせていただいております。

 また、non-HDLコレステロールは総コレステロール及びHDLコレステロールから算出されることから、健診項目としはて総コレステロールを追加することとしてはどうかという論点とさせていただいております。

 また、肝機能についての論点ですけれども、肝機能検査は、糖尿病等の生活習慣病、虚血性心疾患や脳血管疾患等を発症する可能性の高いハイリスク者を抽出しているかどうかを論点にさせていただきました。

 また、肝機能検査は、虚血性心疾患や脳血管疾患等の該当者・予備群を減少させるためではなく、肝機能障害の重症化の進展を早期にチェックするためのものであるならば、健診項目を整理することとしてはどうかということを論点にさせていただいております。

 代謝系についての論点ですけれども、血糖について、本来は空腹時採血が望ましいが、虚血性心疾患や脳血管疾患の発症予測の観点からは、空腹時でなくても健診項目として活用可能としてはどうか。

 また、尿糖は糖尿病の診断基準に位置づけられておらず、濃縮尿や希釈尿では過大あるいは過小評価の可能性が指摘されていることから、健診項目とすることを見直してはどうかという論点を挙げさせていただいております。

 今後の議論の御参考としていただければと思います。

○永井座長 ありがとうございます。

 質疑は、また後ほど構成員からの資料説明の後にあわせてお願いしたいと思います。

 それでは続いて、寺本構成員から構成員提出資料1につきまして、資料2、資料3の論点と関連させて御説明をお願いしたいと思います。

○寺本構成員 それでは、私どもの研究班で議論したことについて御発表させていただきますが、先ほども御指摘がございましたように、特定健診におきましてLDLコレステロールに関しましては直接法が用いられている。この経緯に関しましては、日本動脈硬化学会が2007年にガイドラインを出しておりまして、そのときに直接法も容認するというような形でされたことを受けて、特に空腹時採血が難しかろうということを思って直接法ということになったわけですが、資料2にございますようにLDL直接法に関しましては、2009年の「クリニカルケミストリー」において、ミラーらにより精度に問題があるという論文が発表されたわけです。そのことに関しましても検証すると同時に、それにどう対応するかということに対して検討するというのが私たちの研究班の大きな目的です。

 もう一つの大きな目的は、もし、non-HDLを用いるとすると、それがどの程度、脳・心血管疾患に関して予測性を持つのかについて、LDLとの比較に観点を置いて議論をさせていただいたというのが、私たちの流れでございます。

 そのことで、これから先のことは岡村構成員から予測能について大きくまとめていただきましたので全体を含めて、場合によっては直接法に関しては私が補足いたしますけれども、御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○岡村構成員 それでは、お手元の資料に基づきまして、お話ししていきたいと思います。

 2ページに、基本項目各論ということで脂質異常症となっておりますけれども、まず、脂質の測定では、総コレステロールとHDLが基本的に世界共通でよくはかられているものということになります。

 それから、メタボリックシンドロームの構成要素としては、前にも言いましたけれども、スタチンでLDLを下げてもイベントを起こす人はどんな人かという探索から始まっているのがメタボリックシンドロームということになりますので、ここには当然LDLというか総コレステロールが入っていなくて、メタボリックシンドロームの構成要素はHDLかトリグリセライドということになりまして、ただ、実際は随時で行われている保険者も多いのではないかというのが先ほど言われたとおりかと思います。

 それから、日本のみで使用となっているのがLDLコレステロールとなっていますが、日本のみでというのは誤解があるのですが、臨床現場というか病院の管理に入ると、欧米でも全部LDLでやっているということになります。しかし治療の際には最も重要な指標なのですが、スクリーニングには用いていません。

 あと、LDLも国際的にはフリードワルド式で計算して求めるということで、これは総コレステロールからHDL、そしてトリグリの5分の1を引き算する。ただし、空腹かつトリグリセライド400未満でしか使えない。そうしないと、カイロミクロン等の影響が乗ってくるとかいろいろなことがありますので、そういう制限があるということです。

 今よく使われている直接測定法というのは、ほぼ日本でしか使われていないということと、その測定精度については疑義が出されたというのは、先ほど寺本先生が言われたとおりかと思います。

 3ページに直接測定法の問題点を書いていますが、そもそも特定健診ではLDLをはかることとなっていますが、測定法の明示はなかったはずなのですが、特に第1期の標準プログラムに判定値の検査方法の記載欄に直接法しか例示がなかったということがありまして、どうも直接法を使わなければならないということでみんな動いてしまった経緯があるのではないかと思います。ちなみに、現在の第2期の標準化プログラム改定版では、フリードワルドの欄も追加されておりますので、もともと禁止されていたわけではということなのですが、ただ、2010年、すなわち制度が始まってからすぐ測定精度の正確性に疑問を投げかける論文が出されたということになります。

 もう一つ、これはWHOの統計等で国別でいろいろ比較をするときに基本的に使われるのは総コレステロールであって、LDLの世界統計みたいなものは普通はございませんので、国際的に広く測定されている総コレステロールというのがなくなってしまったことになります。ただ、国民健康・栄養調査では総コレの測定は継続されていると思いますが、そういうことが今までの状況かと思います。

 4ページですが、各国ではスクリーニングとしては総コレステロールが使われているのですが、日本人はHDLコレステロールが高いので、総コレステロールだけでは過剰スクリーニングの危険性があるということは以前から言われているとおりかと思います。

 それから、今回出ておりますnon-HDLコレステロールは、総コレステロールからHDLを減じた簡便な指標であるということと、両方とも測定精度が安定している上に、空腹でも食後でも大きな値の変化が生じないということになります。

HDLコレステロールの測定も直接法で行われておりますけれども、こちらは国際的にも国内的にも特に精度に疑義は出されておりません。

 次のページは、サンプルは何でもよかったのですけれども、たまたま同じラボではかって、日米でHDLがどのくらい違うかという例示で持ってきたものですが、日本人と米国白人40代男性のデータで、HDLコレステロールはそこに示したとおりです。ちなみに、LDLだとほとんど日米の差が今はないということは、これで見るとわかるのですけれども、HDLは日本人のほうが高いので、再計算してnon-HDLコレステロールを出すと、アメリカ人のほうが高いというのがきれいに出てくることになります。これは女性だとさらに差が大きく開いたりすることがありますので、基本的に日本人は諸外国よりもHDLが高いことが確認できるということになるかと思います。

 そのような背景を踏まえまして、次のページで今度は寺本班でやりました文献レビューの結果を御報告させていただきます。

 文献レビューは1990年以降の内外の前向きコホート研究、コホート内症例・対照研究、無作為化比較対照試験、要するにデザインが全部前向きのものということになりますが、それを選びましてnon-HDLLDLと脳・心血管疾患との関連を見た研究をレビューいたしました。1990年以降とさせていただきましたのは、いわゆる治療薬としてのスタチンが出たのが大体このあたりの時期で、スタチンがあるときとないときでは脂質に対する管理状況が全く異なってまいりますので、それ以降のものにさせていただいているということになります。

 研究班で、平成25年度と平成26年度で合計1,300件ぐらいの文献を当たりまして、それから最終的に健診対象者、これは糖尿病患者さんの集団や心筋梗塞を起こした人の研究を見ると健診集団とかけ離れるので、今回は健診の検討ですので、健診対象者に近い一般集団における検討で、しかもLDLnon-HDLの比較ができるものを選びますと、35件の論文が該当しました。地域の内訳は日本が4件で、東アジアが1件、欧米が30件ということになります。

 このうちnon-HDLの脳・心血管疾患の発症予測能がLDLよりもすぐれるという論文が21件、このうち日本人集団の論文は1件です。両者の予測能が同等であるというものが14件で、このうち日本人集団の論文が3件です。LDLのほうがすぐれていたという論文はございませんでした。ただ、スタディークエスチョン自体をnon-HDLの意義ということで論文を書いているので、恐らくパブリケーションバイアスみたいなものがあるので、これをもってnon-HDLのほうがいいとは言えないと思いますが、少なくとも同等ではあろうというのが研究班としての結論でございます。

 7ページは、先ほどの日本から上がってきました論文をアブストラクトテーブルしてまとめたもので日本からの4件になります。要するに、LDLnon-HDLの比較ができる論文ということで記載させていただいたとおりでございます。

 続きまして、今度はカットオフ値の話になるのですが、8ページのコホートデータ解析ということで、これも寺本班の研究班として行いましたが、今まで述べたように文献的にはあるのですけれども、実際のデータで発症予測能を再検討してみようということで、non-HDLLDLの心筋梗塞発症予測能の比較をやりました。日本の4つのコホート、吹田研究、CIRCS研究で、これは磯先生が中心になってやられている秋田とか大阪とか高知等を含めたコホートです。あと、岩手県北コホートとNIPPON DATA90のメタアナリシスを行いまして、予測能を比較する検討を行いました。

 時間が限られておりますので9ページにいってください。男性の心筋梗塞発症リスクの例として示しておりますが、4つのコホートのそれぞれのハザード比がどうなるか。要するに、カットオフ値を下にありますように日本動脈硬化学会のスクリーニング基準で、LDL140non-HDL170、総コレステロールは220としたときに、それ以下と比べてどのくらい発症リスクが上がるかという検討をさせていただきました。

 そのページにLDLサマリー、non-HDLサマリー、トータルコレステロールサマリーというのがあるかと思いますが、集団によって若干ばらつきが出てくるのですけれども、大体LDL2.01non-HDL1.87、総コレステロールが1.62ということになっておりますので、総コレが少し落ちる感じになるのですが、予測能としてはLDLnon-HDLについては差はないという検討で、どちらの優劣がということではなくて、差がないという結果を得ております。

10ページをお願いいたします。non-HDLコレステロールの場合は、基準値をどこに置くかという問題点が今度は出てまいりますけれども、動脈硬化学会のnon-HDLコレステロールの管理目標値はLDLプラス30という値になっておりますが、これは治療でLDLがコントロールされている人の二次目標値という扱いになっていますので、基本的にこのプラス30というのはトリグリが高めの人の目標値ということになります。そうなると、一般集団でどうなるかということになると、それについては余り検討がされていないのですけれども、班に入っています複数の一般集団でLDLnon-HDLの比較を行いますと、一般集団との差は30よりも小さいということがわかりました。

 しかし実際に発症との関連を見たらどうなるかということにつきまして、カットオフ値を変えて検討したのが、11ページのスライドになります。ここはLDLと比較した場合のnon-HDLの冠動脈疾患発症予測のカットオフ値の検討をやっておりまして、AICBICでモデル評価をして、どこが一番いいかということをやっておりますけれども、non-HDLでいきますと、発症から見ると190以上が、LDLだと160相当ということになりますけれども、統計学的に最も当てはまりがよいということになりまして、LDLについても同じく160以上が当てはまりが最もいいのですが、LDLについては前後との差は余り大きくなくて、例えば、ハザード比の大きさ自体を見ると170が最大になるということで、もうちょっと差が小さいほうに振れる可能性はありますけれども、基本的にLDL non-HDL の差は30くらいということで、検出力には大きな差はないのではないかというのが研究班で議論したところでございます。

 続きまして、測定精度のほうで、これは寺本先生にもっと詳しいことをお聞きしないと、私の言っていることで全部かはわからないのですが、LDL直接法試薬の再検証ということがありまして、下に番号1の論文がありますが、これでそもそも直接法の試薬について疑義があると出されてしまって、アメリカで直接法の試薬がほぼ使えなくなってしまうというエポックをつくったのが、この1番の論文でございます。

 それを受けて日本でも検証を行ったのが、2番と3番の論文ということになりまして、これは寺本先生を中心に順天堂の三井田先生がお書きになった論文で、私もメンバーとして入っておりますけれども、やはり日本でも、ミラーの論文ほど大きくずれてはこないのですが、トリグリセライドが高いと、これはBQ法、アベルケンダール法という方法ではかるわけですけれども、真値とのずれが大きくなることが判明しております。一方、HDLの直接測定法には大きな問題がないということは、最初述べたとおりでございます。

 あと、班においては検証結果を受けまして、再度試薬の再検証をしまして、その結果、幾つかの試薬には改善が認められたが、いまだ精度が不十分な試薬も存在しているというのが現状でございます。

13ページが国内でやりました検証結果で、左のNon-diseased Groupというのは、全く正常な方です。右側のDiseased Groupというのは、トリグリセライドが高い方とかリピッドプロフィールが悪い方等が入っています。例えば、正常だと結構安定しているように見えるのですが、ここで言いますと7番のところなどは、正常者で見ても大きくばらつきが出ているということになるので、ここまできますと何をはかっているかわからないという状態になってまいります。逆に、右のほうのトリグリが高い集団みたいになってきますと、かなりばらつきが大きくなっていることがわかりますので、もともとトリグリが高くても大丈夫という売りのところが、これを使っていると担保されていないのではないかということが出てきていることになります。

14ページをお願いいたします。順序として、こちらが先のほうがよかったかもしれないのですが、随時採血のトリグリセライドがどうかということについて、急遽今回に間に合わせるように、班として日本人集団のコホート研究のレビューを行いましたけれども、動脈硬化学会の2012年のガイドラインでの引用論文から持ってきていますが、空腹のトリグリセライドと冠動脈疾患の発症を見た論文というのが、Aにあります1)と2)です。それから、空腹はもちろん基準として使っているものですが、随時のトリグリセライドと冠動脈疾患の発症でどうかということになりますと、Bの1)は磯先生が筆頭著者になっていて、私も共著者になっている論文なのですけれども、随時のトリグリでも有意差が認められるという論文がありまして、さらに、これは多分茨城県のデータだと思いますが、2)のコホートでも随時150以上でリスクの上昇を認めるというデータが出ております。

 今のは脳・心血管疾患についてということになりますが、次のページで実は糖尿病との関連も報告されておりまして、空復時のトリグリの上昇が糖尿病の発症と関連するという論文、それから、Bの1)の論文は、随時も空腹も両方検討しておりますので、こちらでは随時のほうでも糖尿病の発症と関連するということと、Bの2)も随時のトリグリが糖尿病のリスクと関連するという論文で、これは勤務者の集団ですけれども、そういうものが最近、論文として報告されているという状況でございます。

 以上です。

 寺本先生、済みません、あとお願いします。

○寺本構成員 先ほどちょっとございましたけれども、LDLの直接法に関しましては、いわゆるBQ法というのはβ-Quantificationで、いわゆるLDLを沈殿させて、その後のものをはかるということでございますので、世界的な標準法になっています。それにあわせて我が国がどうなっているかを見ているということで、これはミラーたちのやり方と全く同じです。

 ミラーたちとの違いというのは、我が国の測定の精度はかなり細かく見たということがあって、検体の取り扱いなども違って多少よく見えている。

 それから、最近になりまして、こういった論文を最初に書いた後に、一部のキットに関しましては取り下げということも起こっていて、かなりいいものが今残ってきているということも事実なので、そのこともつけ加えさせていただきます。

 以上でございます。

○永井座長 ありがとうございました。

 もう一つ報告がございます。それは私どもの特定健診・保健指導における健診項目等の見直しに関する研究班からの報告です。お手元の構成員提出資料2をごらんください。

 私が研究代表者で、健診項目等の検討を岡村先生を分科会リーダーとして6人の方、施策実効性の検討を尾形先生をリーダーとして2人の方に検討いただきました。ここでは、国内外の疫学臨床研究等の文献調査あるいはガイドラインの調査をいたしまして、今のところ何がわかっているのか、項目についてどういう問題があるのかを洗い出しました。詳しい内容は再び御登場で申しわけないのですか、岡村先生からお願いいたします。

○岡村構成員 それでは、たびたび済みません。私のほうから報告させていただきます。

 今の資料を1枚めくっていただきまして、「発症予測能の検討」というスライドがあるかと思います。これは、今回の見直しに際しまして、どういうものを健診項目とするか、がん検診と違いまして、病気そのものを見つける検診ではなくて、将来のハイリスク者を見つける健診だということになりますので、将来の発症リスクを予測できるかどうかという点が一番の選定のキーとして考えたところでございます。

 もちろん、そういう観点で文献レビューをするのですけれども、その前に、まず内外の診療ガイドライン及び国内の脳・心血管疾患発症・死亡予測ツールを検証しまして、共通して用いられている項目を確認しました。

 ここに基本項目と書いていますけれども、例えば、高血圧がリスクでどうかということを今さら検証したら、いまさらそれは何だという話になりますので、確固たるものは確固たるものとしていきましょうというのが1番でございます。

 2番は、上記に該当しない検査項目については、予測能について文献をレビューすると。これはいろいろありますけれども、少なくとも国内の一般集団を対象とした健診ということになりますので、今回の場合は国内のコホート研究で一次予防のセッティング、要するに患者さんの集団ではないということです。だから、脳・心血管疾患の既往者や糖尿病患者ではない地域住民または職域集団の前向き研究というもので、国内のものをレビューしたということを指しております。

 次のページは、アメリカ、欧州、イギリス、日本のガイドライン等の発症予測に用いられているツールをリストアップさせていただきました。一番上は、NIPPON DATA80という国民健康・栄養調査というか循環器疾患基礎調査を受けられた方のフォローですけれども、これはリスク予測に動脈硬化学会のガイドラインで使われております。

 それから、NCEPは最近までアメリカのガイドラインとして使われていたものですけれども、ここではフラミンガムスコアというのが使われておりました。

 それから、2013年にアメリカのガイドラインが改定されまして、そこでNew Pooled Cohort ASCVD Risk equations、これはアプリか何かで簡単にダウンロードできますけれども、こういうものがACC/AHAから出されています。

 それから、ヨーロッパではSCOREというリスクチャートが出されておりまして、あと、ヨーロッパと言うときにはイギリスが入らないことが結構あるのですが、一番下はイギリスのQRISK2というものになりまして、こういうものを調べさせていただきました。

 その結果、評価に用いている危険因子で赤く塗っているところは共通している部分になりますが、要するに、血圧と糖に関することと、コレステロールとたばこというのがどこにいっても出てくる指標だということです。基本的に、これらの項目を抜きにリスク予測をつくるということは余り考えられないだろうということになります。あと、欧米では、ほとんど総コレステロールとHDLを使っているというのが全体の構成になっているかと思います。

 それから、糖尿病が入っていないのが時々あったりするのですが、例えば、動脈硬化学会とSCOREでは糖尿病はそれだけでハイリスク扱いということになっているので、評価因子には含まれない。だから、糖尿病の評価をするなと言っているわけではなくて、糖尿病があるとそれ自体でハイリスクなのでリスク評価には含めないという場合もありますので、NCEPでも同じような扱いです。ですから、糖尿病が入っていないということではございませんので、そこだけは御注意いただければと思います。ただ、血圧と糖尿病とコレステロールと喫煙というのが基本的なリスク予測項目であって、これは余り揺らぐものではないだろうということがわかりました。

 次のページは、先ほどはガイドラインに使われているものということでNIPPON DATAだけを取り上げましたけれども、国内の脳・心血管疾患発症・死亡予測のための予測ツールの一覧を挙げております。他にも英文でパブリケーションされていませんけれども、例えば、ウェブサイトか何かで発表されているものや、いいものが幾つかあるのですけれども、ここは検索でパブメドで引っかかったものを掲載させていただいておりますが、一番上のNIPPON DATA80は再掲となっています。それから、久山町研究、あと、自治医大がやっているコホート研究になりますが、JMSコホート。それから、JALS-ECCJPHCはがんセンターのコホートになります。それから、吹田研究ということになりまして、この辺が発症予測ツールをパブリケーションしていまして、評価に用いられている危険因子はそこに示したとおりでございます。これは基本的に今までお示しした国際的なものと変わるところが余りないと御理解いただけるのではないかと思います。

 次のページからはまとめになりますけれども、結局、各国で共通して用いられているのは血圧、糖尿病、コレステロール、これは総コレステロールもしくはLDLということになりますが、あと喫煙ということになりまして、欧米ではHDLが含まれていることがほとんどです。

 それから、国内で開発された予測ツールも、ほぼ同様の危険因子を選定しているということになります。

 あと、ここに挙げられた項目ですけれども、高血圧と糖尿病、高コレステロール血症に対しては、治療介入、これは薬剤を使ったものがほとんどだと思いますけれども、薬を使ったランダム化比較試験で、イベントが予防できるということもきれいに示されているということなので、発症予測がきちんとされていて、かつ、予防手段が明確だということになりますので、これは非常に重要なものだということになります。喫煙についてはランダム化比較試験というのは無理なのですが、喫煙については、ほぼ全てのコホート研究でリスクとして出るということと、禁煙期間に応じてリスクが低下するというのが確固たる事実として出ておりますので、基本的にここについてのリスクの予測と介入の有効性については、詳細にどんな評価をするかということはあるかもしれませんが、揺るぎがないだろうということで、同時に確認しましたけれども、健康日本21の循環器分野の目標にもこの4つがきれいに入っているということになりますので、これらについては健診項目としての是非を今さら議論する必要はないだろうとさせていただきました。

 次のページは、先ほどの脂質の各論で、寺本先生からの御報告に含まれておりますので割愛いたします。

 7ページが、今度は糖尿病等ということになりますが、これは基本的な項目として必ず含まれる。別格のハイリスク状態とみなされている場合も多いということです。ただ、検査法については明示されていない場合があって、何をもって糖尿病としますかということについては、リスク評価チャートの段階では、多分、糖尿病の専門学会に投げて任せているということになるかと思います。

 それから、メタボリックシンドロームの構成要素ですけれども、オリジナルの基準では空腹時血糖を用いることになっています。

 それから、特定健診での現状では、空腹時血糖かHbA1Cのいずれかになっていますが、実際は価格がかなり違いますので、血糖値でやっていて、原則は空腹なのですけれども、実際は随時になっているところがあるのではないかということと、今言ったように単価に差があるということです。もう一つは、日本人を対象とした一般集団のコホート研究で、空腹時血糖とHbA1Cと随時血糖について、脳・心血管疾患イベントとの関連がどうなっているかということがありまして、これは今回にあわせてレビューさせていただきましたので、後で御報告させていただきます。

 それから、尿糖ですけれども、いずれかの血液検査で糖尿病の判定がされるのであれば、この検査を実施する意味があるのかどうかということは、やはり問題になってくるかと思います。

 次のページは、糖尿病と脳・心血管疾患の発症・死亡について、日本人の一般集団、健診と同じような集団ということですけれども、そのコホート研究のレビューをさせていただきました。糖尿病の判定に用いた指標というのが研究ごとに異なっていまして、例えば、75gの糖負荷試験を用いた論文というのが、久山町研究と舟形町研究の論文。それから、空腹時血糖を用いたものが吹田研究。随時血糖を用いたものがCIRCS研究とNIPPON DATA80から出ております。

 次のページがHbA1Cを使ったもので、これが2013年以降に3つ論文が出ているわけですけれども、HbA1Cについてもそこにありますように、大体論文が出てくる研究はほぼ共通ですが、そういうところから報告が出てくるということになっておりまして、いずれの指標も結論的にいうと、糖尿病領域であれば有意な脳・心血管疾患リスクの上昇を認めているというのが共通の結論で、あと、境界域のところは、サンプルサイズや研究によって若干有意差が出たり出なかったりというのがあります。少なくともどの指標でやっても糖尿病領域であればリスクは上がることが明らかであることがわかりました。

 次のページは、肝機能になります。肝機能は先ほどの条件で文献レビューをいたしまして、国内の研究についてレビューをしました。そもそも法律の趣旨がありますので、脳・心血管疾患と関連があるかどうかということ、それから、糖尿病と関係あるかどうかについてレビューをいたしました。

ASTALTにつきましては、107件がヒットして3件が該当する論文だろうと。あと、余りにもなかったので医中誌も検索したのですけれども、こちらも1件のみ該当したということになります。

 あと、γ-GTPのほうが、実は脳・心血管疾患や糖尿病から見るとはるかに論文がたくさんありまして、1,034件がヒットして10件が該当し、これが糖尿病をエンドポイントとした場合で、脳・心血管疾患をエンドポイントとしても137件がヒットして3件が該当するということになりました。

 そこに示したとおりで、検査項目別の最終的にチェックした文献数がそこに入っておりまして、アウトカムが何を見た論文であるか。あと、実際の論文の数が幾つあって、アウトカムと有意な関連を認めたものが幾つあるかを示しております。

 次のページから、実際にASTALTについて検索した論文のエビデンステーブルというものが11ページ、γ-GTPのほうは12ページ、13ページにかけて記載させていただいております。

 結論的に言うと、この肝機能の3項目で脳・心血管疾患や糖尿病から見るときには、γ-GTPが一番予測能が高くて、次いでGPTであって、GOTの予測能が余りないという順序になったということが全体的な結論でございます。

14ページは、実際に永井班に入っていただいている幾つかの地域のコホートのデータを解析して、現在の基準でASTALTの組み合わせ、両方高い場合、片方だけ高い場合、両方正常な場合がどのくらい分布しているかを見たものですが、これで見ますとASTだけが単独で異常値という人が一番少ないということがわかります。

 次の15ページでは、メタボリックシンドロームから見たらどうなるかと。要するに、肝機能で異常所見があったときにメタボリックシンドロームの有病率は高くなるのかどうかという分析をしておりますが、これはALTが高い場合は一般集団よりもメタボの有病率は当然高くなるのですが、ASTだけ高い場合というのは、一般集団と比べてメタボの有病率は高くなくて、オレンジで示したところは、むしろ一般集団よりもメタボの有病率が低いという状態で出てきていることになりまして、代謝性疾患、要するに肝機能をそう評価するのはお門違いではあるのですが、もともと法律が脳・心血管疾患と糖尿病ということから考え合わせると、肝機能検査についてはこのような評価ができるということを出させていただきました。

 最後のページも、実際に永井班のコホートに入っておられるフィールドのデータを用いて、飲酒の習慣とどの肝機能所見が関連するかを示したものです。要するに、非飲酒、禁酒、現在飲酒となって数値が上がってくるか。それから、飲酒と禁酒で数値の差がないと、禁酒しても下がってこないということになるので、それも困るのですけれども、という観点での検討をしておりますが、緑の棒の右端が各フィールドのγ-GTPですけれども、要するに、当たり前ですけれども、γ-GTPは飲酒習慣と関連を示すのですが、GOTAST)やGPTALT)はそうでもないというところがありまして、アルコールを飲むと直線的に関連があるのはγであって、ASTALTはいまいち鈍いというのがデータとしては出ていることになろうかと思います。

 長くなりましたが、以上でございます。

○永井座長 ありがとうございます。こちらも後ほど御議論いただきたいと思いますが、もう一つ提出資料がございます。津下構成員から、構成員提出資料3について御説明をお願いいたします。

○津下構成員 あいち健康の森健康科学総合センターの津下です。

 私は、保険者の検討会にも属しておりまして、実際の事業にどのように影響を与えるかを考えておりました。今、ご説明いただきました資料を拝見しまして、LDLコレステロールからnon-HDLに切り替わることでどのような影響が想定されるかなとか、いろいろなことを考えるわけです。その際に現状、つまり健診受診者の検査値の分布がどうなっているのかを見ることも大切と思います。特定健診のデータがどのように分布しているのかや平均値の状況について、御確認という意味で資料を提出させていただきました。

 これは、特定健診のナショナルデータベースが発表されていた2010年度のデータから、性・年代別の平均値と有所見率を見たグラフを並べているのと、研究班で平成25年度に行った結果などもあわせて資料としております。

 まず、健診データの全国の平均値の状況がどうなっているかですけれども、中性脂肪の状況でございます。中性脂肪については、男性1,200万人、女性1,000万人のトータル2,240万人のデータが特定健診のデータベース分析で公表されております。

 それによりますと、有所見率ですが、青の男性が150300mg/dL未満、これが保健指導判定値、受診勧奨判定値が300以上でございます。男性の40代、50代の5%の方がトリグリセライドが300mg/dL以上ということで、先ほど寺本先生、岡村先生からもトリグリセライドが高いと実測値と乖離が起こるのだという話がありました。LDLnon-HDLからさらに5分の中性脂肪を引いた数ということになりますので、300mg/dL以上ということは60mg/dL以上を引くことになります。LDLの判断が難しくなる人300mg/dL以上の人が男性の5%程度に存在するということがわかります。

 中性脂肪のの有所見率でいうと男性の約3割、女性の12%が該当しているという状況で、男性は若年期に高く、女性は更年期以降に高くなるという傾向になっております。

 次は、HDLコレステロールです。単位が右上の平均値がmg/dLなので御修正いただきたいと思うのですが、先ほど岡村先生から日本人はHDLが高いと。男性のデータでも欧米のデータより高いという話がありましたが、女性はさらに高く、女性の40代、50代は平均値がおおよそ70です。HDLが平均値でも非常に高いということは、ひいては総コレステロールで評価すると、どうしても総コレステロール異常の割合が高くなってしまいます。総コレステロールをそのまま評価に使うというのは難しいだろうと思われます。

 下は、受診勧奨判定値が34未満、保健指導判定値が39未満の低いほうの値を示したものです。

 次のページは、LDLコレステロールにつきましては、現在120mg/dL以上が保健指導判定値、140mg/dL以上が受診勧奨判定値になっております。下の有所見率のグラフを見ていただきますと、男性の5割、女性の55%が有所見となっております。実は120140ぐらいで保健指導判定値といっても他にリスクがない人には余り何も指導することがなく、そして、受診勧奨判定値が140mg/dL以上になっておりますが、140mg/dLで受診されますと、どうして来たのということになる。医療の基準と健診データの判断との若干の乖離があるということが現実に起こっております。現場からの声ですと、LDLコレステロールの基準値が少し厳し過ぎるというか、低過ぎるのではないかという声が聞かれているのが現状でございます。

LDLのグラフを見ますと、上段にありますように、男性は40代、50代、肥満度が高い年代が一番多いということで年齢とともに下がってくるのですけれども、女性の場合は40歳代から50歳代の間に大体20 mg/dLぐらいLDLが高くなっています。性差を加味して検討する必要があるのではないかと思います。

 次のページ、空腹時血糖は現在100以上を保健指導判定値、126以上を受診勧奨判定値としております。糖尿病学会の境界型は110以上ということで、100110の2つの基準があり、ややわかりにくいということが課題としてあるかと思います。

 次に、HbA1C2010年度のデータですのでJDS値で示しておりまして、NGSP値では0.4足して見る必要がありますが、青と緑色が合わせたもの、今のNGSPで言うと5.66.5未満の保健指導判定値に該当する部分になりますが、これらが年齢とともに非常に増えています。特に5.66.0未満の軽度の異常というのがHbA1Cでスクリーニングしたときにかなり多くの方が該当してしまうと。これで保健指導判定値ですから特定保健指導の対象に上がってくるわけですけれども、保健指導しても保健指導判定値を切るぐらい改善するというのは難しく、ずっと動機づけ支援が続いてしまうという課題があります。

LDLの場合は、保健指導の階層化判定に使われていないので該当率が高いということはあっても、特段、保健指導の現場に大きな影響はないのですけれども、HbA1Cの場合は5.6でスクリーニングをかけている以上、65歳、70歳のあたりでも該当率が非常に高いということがあります。

 これを愛知県のデータでもう少し深掘りしたのが次のデータになります。これは、70万人ぐらいのデータで見ておりまして、赤の点々が保健指導判定値の領域、今でいいますと5.66.4までという状況になっておりまして、年齢とともに治療中の方がふえてくるという状況です。

 次のページですけれども、これをさらに細かくどのくらいの数字の人が高いのかということで、性・年代別に分けてグラフを書いておりますが、年齢とともにふえてくるのは、保健指導判定値の軽度の方々が多く該当しているという実態があります。逆に、治療中の方でコントロールが悪い方は若年者に多いという結果になっております。

 次に、保健指導して効果があるのか、これは後の議題になるので紹介は軽くしますけれども、若年者のほうが肥満の状態で入ってきている。ほかのリスクが少ないということです。高齢者になると肥満の状態が軽くてもリスクが多いために対象になるという現実があります。最後のページにGPT、つまりALTとγ-GTPについて、医療費適正化室のWGで効果分析をしたものでございますが、積極的支援の該当者においては、若年期においてGPTが平均値や有所見率か非常に高い。腹囲で保健指導の対象者になるのですが、腹囲は科学的には信頼度はあるわけですけれども、一般の方にとっては腹囲だけで異常と言われたと、信頼度がやや低い印象を持たれるわけです。GPTに異常があると、内臓脂肪がたまって脂肪肝の傾向があるからこの数字が上がっているのですよ、と説明できます。内臓脂肪型肥満の説明にはGPTはよく使われている数字でもありまして、腹囲だけで本当に自分はメタボなのかという疑いを持っている方にとっては、肝機能障害まで出ているんだよということは説得力があり、実際に保健指導の場面ではよく使われていることではないかと。そして、減量に伴い検査値が改善しやすい特徴もあり、GPTというのはメタボリックシンドロームとの関係、それから、岡村先生がおっしゃいましたように、ASTGOT)よりはかなり保健指導にも使える指標ではないかと感じております。

 以上です。

○永井座長 ありがとうございました。

 それでは、事務局と3人の構成員からの資料につきまして、この時点でお聞きになりたいことがありましたら、御発言をお願いしたいと思います。

 津下構成員どうぞ。

○津下構成員 今、LDLにつきましては脂質異常者の診断基準がLDLになっていたり、治療の目標値がLDLで設定されているのですが、今後、健診を受けて医療機関に行かれたり、そういう行き来が往々にしてあるわけですけれども、non-HDLが診断基準に入ってきたりとか、治療目標値になるとか、そういう臨床の場面と健診の場面のコミュニケーションがうまくとれるかどうかということが若干気になっているのですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。

○寺本構成員 non-HDLに関しましては、2012年のガイドラインから診断並びに管理目標値として加えられております。その位置づけはどういうことかというと、LDLコレステロールを達成した後の二次的な管理目標という形で表の中にも記載されておりますので、先生方も一応読み込んではいらっしゃるだろうと思いますので、一応、管理目標値の一つになっているということだと思います。

○永井座長 ほかにいかがでしょうか。

 その後の議論でもいろいろ細かい点の御質問が出るのではないかと思いますので、よろしければ、資料3をごらんいただいて、この論点ごとに議論を進めていただきたいと思います。「健診項目についての論点」です。こちらに事務局に整理していただいた論点、脂質・肝機能・代謝系について3つの論点がございます。

 最初に、中性脂肪の測定について、あるいはLDLコレステロールと総コレステロールの測定について、脂質関連の議論をお願いしたいと思います。

 上からまいりますが、中性脂肪の測定について、本来は空腹時採血が望ましいが、虚血性心疾患や脳血管疾患の発症予測の観点からは、空腹時でなくても健診項目として活用可能としてはどうかということでございます。

 寺本構成員どうぞ。

○寺本構成員 数値として一番信頼度が置けるというのは、やはり12時間以上の空腹というのが一応皆さんが一定の状況で測れるということなので、それはそれでいいわけです。ですから、一応、空腹時採血が望ましいというのはそういう意味で考えていただければといいと思いますが、実際にそれが疫学的な場でもいいのですけれども、心血管疾患との関係を見れば、むしろ食後の高中性脂肪血症のほうが関連するという論文も幾つもございますので、そちらで予測因子として使うには特に大きな問題はないと。ただ、食べたものによって多少動きがございますので、個人によっても変化がございますので、何度か確認する必要があるというのが状況だと思います。

○永井座長 そうすると、問診で食事した後かどうかを記載しておかないといけないですね。

○寺本構成員 基本的には、中性脂肪は大体3~4時間くらいで高くなってまいりますので、食後どれくらいの時間がたっているのかは本来聞いておくことが、血糖値も全く同じだと思いますけれども、それは必要かなという気がいたします。

○永井座長 ほかにいかがでしょうか。岡村構成員どうぞ。

○岡村構成員 したがって、単体で例えば脂質で中性脂肪がどうかということになると今おっしゃるとおりで、ただ、この精度の場合メタボリックシンドロームの判定というのが絡んできて、あれは多分、原則的には空腹でと書いてあるので、要するに随時で判定したメタボリックシンドロームの意味がどうなっているかというのは別に問題点が恐らく残ってくるかと思うのですが、個々の検査については中性脂肪については、先生方が言われたとおり予測能にも使えますし、高い方は何かあるので、慎重に判断した上でということになると、非常に意味が深いだろうと思います。

○永井座長 磯構成員どうぞ。

○磯構成員 今の中性脂肪の話ですが、先ほどの岡村先生のレビュー以降に、我々のCIRCS研究からも、非空腹と空腹に分けて検討した結果が、Atherosclerosis誌に公表されております。男性では非空腹も空腹も同様な虚血性心疾患と脳梗塞のにリスク予測を、女性ではむしろ非空腹のほうが強い予測をすることが示されています。そういう意味で、予測因子としては、非空腹の中性脂肪も無視できない項目ではないかと思います。ただ、寺本先生がおっしゃったように、食後3時間過ぎてから中性脂肪が上昇してくることや、食事をたくさんとるか、とらないかでまた違ってきますし、前日のアルコール摂取の影響も出てきます。やはり採血時に、食後経過時間を聞くということが実際的かと思います。

○永井座長 津下構成員どうぞ。

○津下構成員 食後採血で中性脂肪が高いことがリスクだというのは、よく理解できます。ただ、実際に先ほどのメタボは150以上と、随時で300以上だったらそれは絶対に高いので入ってもいいだろうとは思うのですけれども、随時の場合、食べた時間帯と食べたものの種類によって影響を受けるので、150で保健指導判定値ですよと判断してよいのかということについて明らかにする必要があると思います。どこの時間までその数字を使っていいのかというのは、現場で非常に混乱が起こるのではないかと思うのですが。

○磯構成員 一般集団で我々が出したデータでは、随時の中性脂肪に関しても、3分位、4分位での区分や、絶対値で100 mg/dL未満、100149 mg/dL 150 mg/dL以上での区分を用いていますが、先生がおっしゃるように3005001,000 mg/dLといった方は一般集団では少数で分けて分析することは困難です。随時の中性脂肪に関しても150 mg/dLでカットポイントすると100 mg/dLに比べて虚血性心血管疾患の発症リスクは2~3倍になりますので、現在の150 mg/dLという基準を随時にも適用しても、そこでのリスク上昇はみられると結論できます。

○永井座長 よろしいでしょうか。

 それでは、これは健診項目として活用可能であるということにしたいと思います。

 次に、先ほどのnon-HDLの問題があります。まず、LDLコレステロール直接測定法は測定精度が安定しないことが懸念されているため、健診項目から廃止し、検査の精度・有効性ともに確立しているnon-HDLコレステロールを保健指導対象者の選定に用いることとしてはどうか。総コレステロール-HDLコレステロールです。

 これは寺本先生から御意見いただけますか。

○寺本構成員 ちょっと書き方とか表現の仕方の問題もありますが、non-HDLコレステロールは先ほど岡村先生も報告されたように非常に安定した項目であり、しかも、心血管疾患の予測因子であるということは確かです。しかしながら、LDLコレステロールも同様にそうなわけです。ですから、きちんとLDLコレステロールが測れるような環境、例えば、先ほどの空腹時で測れるというようなことであれば、判定基準としてLDLコレステロールが残っていても何ら問題はないわけで、一応私たちの班研究でもLDLで判定もできるようにとは考えているわけで、先ほど岡村先生がおっしゃったように、その値は今考えなければいけないのですけれども、LDLでいうと大体160ぐらいがカットオフになるし、non-HDLでいうと190ぐらいがカットオフになるということが出ていますので、それを参考にしながら、これから受診勧奨等に関して検討していこうと思っています。

○永井座長 その場合のLDLは、フリードワルド式を使うことになります。

○寺本構成員 原則として今考えているのは、診療現場では、もし食事をしてきたら次は空腹で来るということになりますけれども、いわゆる健診という場合になると、どうしてもLDLが出せない場合はnon-HDLでやるという形になるかと思っています。

○永井座長 今の点はいかがでしょうか。どうぞ。

○武見構成員 先ほどの岡村先生の御説明はとてもわかりやすい説明で、ありがとうございました。あれを伺うと、なぜLDLコレステロールなのかなと思ったりもしました。でも、一方でこの10年間、特定保健指導される一般住民の方もようやくそういうものを見て自分のこととして考えることに慣れてきた10年間だと思うので、それがいきなりまたなくなって違うものへの置きかわりは結構混乱をすると思います。そこで、今、寺本先生がおっしゃったように、計算式による算出でもよいということであれば、あわせて使っていくということは重要かなと思います。

 あと、もう一つは、岡村先生の中で総コレステロールのデータがなくなったというか、それが国際的な問題、グローバルなということはすごく大きなことなので、それも含めて検討していただければと思います。

○永井座長 つまり、総コレステロールを加えるということですね。一番下の○ですけれども、あわせて考えていく。

 津下構成員どうぞ。

○津下構成員 今、武見先生がおっしゃったように、LDLが悪玉ということでようやく定着してきました。non-HDLって一体何だと。LDL以外にも悪いやつがいて、そういうものも引っくるめてnon-HDLと言っているんだよとか、non-HDLが意味することをわかりやすく皆さんに知ってもらわないと保健指導の現場でなかなか難しいところがあると思います。では、LDLで見ているものと、VLDL等も含んでよりざっくりとだけれども悪いほうを見ているんだとか、その辺の理解を項目が変わるまでにどれだけ浸透させられるかというのが非常に気になるところです。

 それから、計算式でいうとnon-HDLからさらに中性脂肪を5で割った数を引けばいいというフリードワルドですけれども、なぜ5分の中性脂肪を引くのだということが、なかなか難しくて説明がしにくいので、HDLを引いた残りが悪いほうだよというのは、式だけ言うとわかりやすさはより出てくるのだろうとは思います。食後の中性脂肪が高い人がこれで計算すると、引く分が多くなるだけLDLが過小評価になるので、LDLの過小評価が今まであったのではないかという点ではnon-HDLはメリットがあると思うのですが、変えることのメリットをどれだけ医療保険者も含めて、国民がこちらのほうがわかりやすいと言ってもらえるのかなというのも気になるところかなと思っています。

○寺本構成員 その点は、今後の健診がどういうふうに続いていくかにもよると思うのですけれども、今後の大きな流れを考えていったときに、先ほど岡村先生がおっしゃったように、グローバルな意味で世界発信ができるということからすると、総コレステロールが抜けるというのは非常に問題があるということなので、総コレステロールはある程度国民全体の値としてとっておきたいということが、まず第一にあるわけです。

 結局そういうことでやっていったときに、もちろんLDLも測れればいいのですが、今の状況ではそれまで測ることはできないので、総コレステロールからHDLを引いたnon-HDLが出てくるというのは、そういう話でいくと演繹的ということになってくるわけです。問題は今先生がおっしゃったように、今まで皆さんに定着したLDLがなくなるというのが問題だろうと思っていて、LDLは一つの判断基準として、しかも、科学的にいえばLDLは非常に悪者であることは間違いない。しかしながら、non-HDLというのはLDLプラスそれ以外のちょっとした食後の高脂血症を表すようなレムナントといったものも全部足したものなので、それらは全て悪玉なので、それらが全部ですよという表現はどこかである程度解説は必要だろうと思っています。

 今度、幾つかの場所で講演会を開こうと思っているので、皆さんの意見を聞こうと思っているのですが、そこではこれをどういう表現で説明したらいいかということも聞いていきたいと思っているのですけれども、実は「悪玉」という言葉が完全に一般化しているのですけれども、科学的には本当はだれも認めていない言葉で、いわゆる新聞用語というか何用語と言ったらいいかわからないですけれども、そういう言葉なんです。それを表立って、ここでも特にLDLで悪玉と書いてあるわけではなくてLDLなわけです。ですから、説明するときの言葉としてどう使ったらいいかというのは一応考えています。今のところ何となく我々が思っているのは、総悪玉なのかもしれないという感じではあるのですけれども、これは私見に近いと思います。

○永井座長 あと、保健指導の判定値をどちらでするのかということがありますけれども、いかがですか。これはnon-HDLなのか、計算したLDLなのか、あるいはLDLの正常上限はどこのなのかですね。1つの案は、基本的にはnon-HDLで保健指導する。LDLを使う場合には計算式を使うのと、LDLプラス30non-HDLを定義する。

 岡村構成員どうぞ。

○岡村構成員 今のLDLの基準値は、動脈硬化学会の当時のガイドラインのスクリーニング基準をそのままポンと持ってきているんです。だから、診断基準とか治療基準とは一言も書いていないので、そもそも140でいきなり要医療となっているという、要するに、ロジックがそれでいいのかというのがあります。実際は140というのは疑い出すところで、あとはその人のリスクを見て管理目標値を決めましょうとなっているので、例えば、今で言うところのステージ1というか、普通の集団でリスクがなければ管理目標値はそもそも160なんです。なので、何もせずに140でいきなり医療機関に送ってこられると、多分それを受け取ったほうがかなり混乱するだろうというのがあります。

 それから、今の標準プログラムを改訂したときに、一応文例集としては入れさせてもらっているのですが、例えば、LDLの話ですけれども、180を超えると家族性高脂血症が混じってくるので、要医療の強弱は必要でうす。一律の要医療になっているところに若干問題点があって、軽い人も重い人も全て要医療で混じっていますので、当然その優先順位づけはしておかないと、そのうち本当に重症な人も受診してくれなくなるのではないかという危険性はあるのかなと思います。

○永井座長 いかがでしょうか。津下構成員どうぞ。

○津下構成員 先ほどのグラフにも出しましたように、現在は120で保健指導判定値ですが、リスクチャートを見てもほかのリスクがなければ、ほとんど低リスクです、という話になってしまうので、どのあたりから保健指導というマンパワーを使っていくのか。また受診勧奨判定値については本人にとって受診してよかったと思える数値でないといけないので、先ほどのnon-HDL190LDL160、このあたりの数字であれば、管理をしていく意味も医療側としてもきちんと説明ができますし、送る側としても安心して送れるのではないかと思います。

○寺本構成員 先ほど岡村先生もおっしゃったように、160というのは一応ほかにリスクのない方の管理目標値になっているので、LDLの場合160というのは受診勧奨でもいいのかなという気がします。ですから、それプラス30non-HDL190ぐらいというのが大体基準になるのかなという気がしています。

○永井座長 福田構成員どうぞ。

○福田構成員 戻って申しわけないのですけれども、先ほど津下先生が御質問になった件で、当初からLDLでやってきたので変更するに当たってはある程度説明が必要になってくると思いますが、科学的な根拠から言うと、今御説明にあったとおり、直接測定法自体の精度の問題があるというのがその後わかったという説明をすればいいのでしょうかというのが1点。

 もう一つ、岡村先生に御説明していただいた中で、治療法では使われているということだったのですが、治療のときにやる測定方法は全く別のもので、それは到底健診には適用できないということなのでしょうか。治療のほうではLDLを使うという御説明だったので、その測定方法は精度に問題があるので、治療の場合には通常別の方法をとっていて、それを健診に応用することは難しいという説明になるのでしょうか。

○寺本構成員 治療で使っているのもLDLでやっているのが多いのですけれども、それはフリードワルド式でやっているのが治療のエビデンスなんです。今、直接法でそういうエビデンスのあるものはないと言っていいと思います。ですから、実際にはそういうものはないわけです。ただ、非常に簡便であるということで直接法が使われたということだと思います。世界的な論文はほとんどフリーデワルド式であり、最近はnon-HDLが出始めたということなので、トレンドとしてはnon-HDLに世界的にも動いているというのが現状だと思います。

○永井座長 よろしいでしょうか。要するに、まず項目の議論ですけれども、LDLコレステロールは測定せずに総コレステロールにする。ただ、フリードワルド式でLDLコレステロールを計算で求めるのは問題ないということですね。

 また、将来もう少し議論が必要かもしれませんが、保健指導対象者の選定は基本的にはnon-HDLで行う。説明として、計算したLDLを使ってもよい。そのような理解でしょうか。

 では、そのようにまとめたいと思います。

 続いて、肝機能検査についてです。資料3の2ページです。ASTALT、γ-GTP。肝機能検査は、糖尿病等の生活習慣病、虚血性心疾患や脳血管疾患等を発症する可能性の高いハイリスク者を抽出しているかという問題です。肝機能検査は虚血性心疾患や脳血管疾患等の該当者・予備軍を減少させるためではなく、肝機能障害の重症度の進展を早期にチェックするためのものであるならば、健診の項目からは整理することとしてはどうかということですが、岡村先生、追加していただけますか。

○岡村構成員 この項目については結局、ここで整理しておかなければいけないのは、何のためにはかっているのかと。例えば、肝機能障害の重症化を見るということが目的に入っているのであれば、それはそれで有用性についてだれも疑義を挟む人はいないでしょうし、そもそも脳・心血管疾患や糖尿病を見るということであれば、先ほどはそういう視点でのレビューをしていますので、先ほどのようにγとGTPGOTという順番になりましたということになるので、まず何のためにやるかというのが1点です。

 もう一つあるのは、有所見者が出たらその人にどういうことができるのか。重症化で例えば肝臓を見るというのであれば、どのくらいだったら病院に送らなければいけないかということが一つと、あと、保健指導があるのかどうか。実際に生活習慣病を見るのであれば、例えば、脂肪肝やアルコールを見るのであれば、それをどう活用して指導に使えるか、その2つ方向の整理が必要だろうと思います。

○永井座長 いかがでしょうか。寺本構成員どうぞ。

○寺本構成員 心血管疾患との関連というと、先生からあった御説明は非常にわかりやすくて、恐らくある種の脂肪肝の指標を見ているのかなという気がするんです。そうすると、例えば、脂肪肝を起こし得るほかの因子がありますよね。耐糖能異常であるとか脂質異常といったもので調整しても、γ-GTPは一応出てくるということですね。

○永井座長 津下構成員どうぞ。

○津下構成員 それと年齢というのがありまして、50代後半になってくると血糖や血圧の異常が高頻度に出てきますので、メタボのリスクが集積しているのですけれども、40代前半、また今は30代のメタボ対策をやっているところがありますが、そういうところですと血圧や血糖の異常がまだ出てくる前の段階で、その段階で動いてくるのがGPTであり、γ-GTPもそうです。内臓脂肪蓄積そのものを反映しているという意味やより若年期の保健指導を重視するという観点でいうと、GTPがあったほうが対象者に減量する必要性を十分御理解いただける上では重要な項目なのかなと思っています。

○永井座長 確かに、現場ではGTPまで上がっていますと言うと、非常に説得力があるということですね。

 磯構成員どうぞ。

○磯構成員 GOTは元来肝疾患のマーカーですので、例えば肝がんや肝不全の死亡リスクをコホートで見ると数十倍から100倍近くのハザード比となります。GOTについては循環器疾患の予測としては肝疾患に比べて非常に小さいと判断されます。γ-GTPについては保健指導には確かに使えるのですが、これを毎年全員にやる必要があるかは、議論が必要かと思います。例えば、40歳代、50歳代男性の飲酒者など対象者を絞って測定するなど、整理して検討する必要があるかと思います。

○永井座長 岡村構成員どうぞ。

○岡村構成員 今のこととも少しつながるのですけれども、あと、保健指導に使えるとか、自分が実際に診療しても、データを見て説明したり使うときはもちろんあるのですが、実際にプログラムの中に、例えば、GPTとかγが高い人の場合には、こういう保健指導をしましょうという利用法がある程度入っていないと、使われ方が自由裁量になっていて、ひょっとしたら測っているだけで何も使っていないところもあるのではないかという気がしないでもないので、そうなってくると、これを利用した保健指導がどういうふうにするかということも多分セットで出していかないといけないのかなと思いました。

○永井座長 津下構成員どうぞ。

○津下構成員 おっしゃるとおりで、特にγ-GTPはアルコールとの関係も明らかなことでもありますので、プログラムの中にしっかりとデータの活用方法やこういう項目が高いときにはどう指導するかというようなことについて、プログラムのほうでの対応を考えていかなければいけないのだろうなと思います。

 一方、GPTですけれども、磯先生がおっしゃったように、非メタボの人に毎年はかる必要はないのではないかとも思います。内臓脂肪減少の効果が割と早く出やすいというのもGPTの特性としてみられるので、保健指導の中でなかなかやりにくいのですけれども、GPTが下がっていると、内臓脂肪が減少して、血液データもきれいになって、肝臓も元気になってよかったねということが納得いただけます。臨床の場面で減量指導するときには使えるのですけれども、特定保健指導だと血液データを保健師さんたちはとることができないので、そのあたりの頑張った効果をどう見せるかということが課題で、例えば、前年度、特定保健指導を受けた人は翌年GPTを詳細健診で測定していただいて、そうではない人はしないとか、そういう使い分けで効果を見ていくということが可能であればよいかなとも思います。

○永井座長 どう使うかというのは引き続き議論になると思うのですが、まず位置づけとしては、肝機能検のγとGTPGPTはメタボの状態を反映するけれども、GOTについては肝機能検査に当たるという振り分けはしておきたいと思います。どういう名前をつけるかというのは、もう少し議論が必要だろうと思います。使い方を含めて、あるいは検査の間隔、対象者を含めて、これから議論をさらにしていきたいと思いますが、きょうのところはそういう位置づけを振り分けたということにしたいと思います。

 ただ、ここでもう一つ御確認いただきたいのは、ASTGOT)を削減してよいのかどうかです。この点はいかがでしょうか。先ほどの岡村先生のデータですと、ほとんど反映していないということですが、岡村先生、いかがですか。

○岡村構成員 これは結局、先ほど言いましたように、検査としてはもちろん多ければ多いほどいろいろ判断ができるということにもなるのですが、目的が何かということになってくるかと思います。健診項目を今後考えていく方向性として出てくるかと思いますが、保健指導に適した健診と、どちらかといえば要医療者を見つけるために適した健診、両方かぶっているところもおそらくあるのですが、そういう分類をするとなると、例えばγとGPTは保健指導の対象者もいる、もちろん要医療の人もいる健診になりますし、GOTはどちらかといえば要医療の人だけを見つけることになりますので、今は必須項目と詳細健診みたいになっていますけれども、保健指導向けの項目と詳細で追加する項目みたいな形になると、それぞれの分類というのが2つは保健指導向けに入って、GOTのほうは詳細で追加する項目に入るか、もしくはまとめて要医療者を発見するための項目に入るのかもしれないのですけれども、そういう位置づけになるのではないかと思います。ただ、法の趣旨からすると、GOTはすごく遠いということは言えるのかなとは思いました。

○永井座長 よろしいでしょうか。では、そのように整理したいと思います。GOTは削減可であるということです。

 最後に、代謝系について御議論いただきたいと思います。空腹時血糖、HbA1C、尿糖の測定について。最初に、血糖について、本来は空腹時採血が望ましいが、虚血性心疾患や脳血管疾患の発症予測の観点からは、空復時でなくても健診項目として活用可能としてはどうか。これは最近もいろいろ論文が出ています。岡村先生、いかがでしょうか。

○岡村構成員 これも単独として見たら、結局随時だったら全部使えないということではなくて、現実はいろいろ多分使われていますし、そもそも糖尿病学会も随時で200であると、診断のフローチャートに入るといますから、そんなに抵触しないのかなと。きょうは門脇先生がおられないので、どうかわからないのですけれども、そういう意味では随時でも使えるのではないかと。これも逆に言うと、メタボの判定基準のときはどうなるかという、先ほどのトリグリと同じ問題が恐らく出てくるかと思います。

○永井座長 津下構成員どうぞ。

○津下構成員 血糖のほうが中性脂肪よりも上がるのが早くて、正常であれば下がるのが早くて、2時間たてばほとんど正常に戻ってくるというのが普通なので、健常者では朝御飯を食べてお昼を抜いて午後に採血をしたとしても、影響が余り出ないだろうと思うので、その時点まで高いということは、何らかの耐糖能障害が始まっていると考えられるのではないかと思います。

 ただ、その場合に空腹時血糖は今100の基準で、それが60歳の方も70歳の方も100の基準というのが少し厳しい気がします。どこにカットオフを持ってくるとより的確な対象者が把握できるのか、が課題です。糖尿病は予備群から糖尿病になり、循環器リスクのほかに糖尿病合併症になる経過を考えますと、10年かかって糖尿病になって、合併症までまた10年ぐらいかかるということから考えると、若い人はやはり厳し目のコントロールで、高齢者は少し緩くするとか。治療でも高齢者のほうが若干緩くするというようなことになってきているので、例えば、高齢者では空腹時血糖の100という基準で随時血糖をそのまま持ってくると、かなり対象者がふえてしまうことが想定されるので、カットオフ値を少し検討していただくということであれば、よろしいのではないかと思います。ただ、幾らなんでも食後すぐにはかるということだけは避けていただきたいと。影響がかなり強く出るので、随時といっても4時間は開けてほしいというのが実際のところではないかと思います。

○永井座長 カットオフはまた改めて議論ということになると思いますが、とりあえず随時とHbA1Cの両方を使うという整理にしたいと思います。

 最後に、尿糖は糖尿病の診断基準に位置づけられておらず、濃縮尿や希釈尿では過大あるいは過小評価の可能性が指摘されていることから、健診項目とすることを見直してはどうかということですが、この点はいかがでしょうか。最近は、糖尿を誘導する糖尿病の薬もあるわけで、なかなか難しいところなのですけれども、いかがでしょうか。

 杉田構成員どうぞ。

○杉田構成員 逆に教えていただきたいと思うのですが、当初スタートするときにこの項目を入れた経緯があったのかなと思うので、もし、御存じの先生方がいらしたら教えていただければと思いました。

○高山健康課長補佐 事務局でございます。お手元の参考資料3に「特定健康診査の健診項目に関するこれまでの検討について」ということで資料をおつけしております。こちらの5ページ、6ページが代謝系のこれまでの議論なのですけれども、平成19年2月の特定健診導入時の議論の記録がございますので、こちらに挙げさせていただきました。「第5回標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会」の資料からの抜粋ですが、6つ目の○なのですけれども、当時の議論ですが、「ヘモグロビンA1C検査、通常の血糖検査において、糖尿病有病者・予備軍をある程度把握することが可能であるが、血糖検査を補完するために、老人保健事業における基本健康診査と同様に、尿糖検査を実施することも考えられるのではないか」。

 それを受けてになりますが、「労働安全衛生法における定期健康診断等に関する検討会報告書」というのが平成19年3月に出されておりますが、こちらの該当する部分は3行目になりますけれども、「簡便な尿糖検査を血糖検査とともに実施することで、血糖検査だけで把握できない糖尿病の疑いのあるものや耐糖能異常者を把握することも可能となることから、現在省略可能なら尿糖検査を、ヘモグロビンA1Cの替わりとして必須項目とすることが妥当である」という書き方がありまして、当時の議論はこういうことになっているのですが、その後の知見を踏まえて今回御議論いただければと思います。

 以上です。

○津下構成員 空腹時血糖は低いけれども食後血糖が非常に高くて、前日の夕食で血糖が高くて、それが尿糖に残っている場合に出ることがあるぐらいの話だったかなとは思うのですけれども。実際には尿糖検査を当てにして診断しているということは今は全くと言っていいほどないのではないかと思いますし、HbA1Cも広く行われている現状から考えると、尿糖検査は、名前は糖尿なのですけれども、そろそろ卒業してもいいのではないかと皆さん思っていると思います。

○永井座長 いかがでしょうか。磯構成員どうぞ。

○磯構成員 我々の秋田県民の疫学調査では、1960年代当時から血糖値はそれほど高くなくても、多分米の大食等が原因と考えられますが、尿糖が陽性という人が多く見られました。それでも糖尿病の有病率はそれほど高くありませんでした。

○永井座長 それはA1Cをはかれば、ある程度は除外できるということですか。

○磯構成員 はい、除外出来ると思います。

○津下構成員 尿糖をはかることの弊害になるかもしれないのですけれども、空腹時血糖が正常範囲で尿糖が陽性の場合、念のためにブドウ糖負荷テストをしましょうということで腎性糖尿、血糖値は上がらないけれども尿糖の排泄閾値が低い、普通は160とか180にならないと尿糖は下りないのですけれども、120ぐらいで下りてしまう体質の方が見えて、それを確認しているだけということにもなっているのではないかと。余分な手間もかかっていますので、余り必要ないのではないかとは思います。

○永井座長 福田構成員どうぞ。

○福田構成員 先ほどの参考資料を拝見すると、前回入ったときの経緯では、費用対効果という言葉もあるので、HbA1Cの検査が高価であるからということがあるようですが、今も高いのですか。余りそういう印象ではなかったのですが、どのくらいかかるものなのですか。このころと違うのかもしれませんが、余り高価という印象がないので今と状況が違うのではないかと思いますが。

○寺本構成員 それは尿糖と比較したら圧倒的に高価だと思います。ただ、要するに確実な診断基準として用いるとすれば、やはりHbA1Cが世界的にオーソライズされていることなので、それを除くということは考えられないので、尿糖の持っている補完的な意味が今はほとんどないというのが現状だと思います。

○岡村構成員 尿糖の場合、高いか安いかというのは、検査自体は大したことないのですけれども、例えば、判断料で高く取られたりする場合があるんです。血液検査は機械が出すのですが、尿の場合はつけて見てやりますよね。それは大した判断はしていないと思うのですけれども、例えば、判断料で単価が高くなっているというのが、契約の仕方によっては多分出てくるだろうと思います。だから、どちらがというのはなかなか。健診会場でそのための場所を構えなければいけないというのもあるかもしれないですが、そういうことはあると思います。

○津下構成員 でも、尿タンパクは必須ではからなければいけないので、それで余分にかかるのですか。

○岡村構成員 それは一緒になっています。

○福田構成員 お尋ねしたかったのは、今でも各保険者がやっていく上でHbA1Cは高価だからやめようみたいな考え方があるのかというのが気になったところなのですが。

○岡村構成員 血糖値と比べた場合ですけれども、A1Cは血糖値と比べたら高いかなというところはあると思います。

○永井座長 津下構成員どうぞ。

○津下構成員 これは2010年度なので、最近はまたA1Cを測定するところがふえてきたと思うのですけれども、2010年度は空腹時血糖が1,754万人、A1C1,681万人。全体では2,200万人ですので、どちらかしかはかっていない人たちはいるのですけれども、A1C1,680万人されているので当たり前の検査になってきたのではないかとは思います。労働安全衛生法等の健診で単価を少しでも安くというところだと、A1Cは高いという声は今でもあるかとは思います。

○永井座長 そういたしますと、尿糖は今後、測定しないということで整理したいと思います。廃止ということにしたいと思います。

 全体を通していかがでしょうか。もし、御発言がございましたら、お願いします。もし、ございませんでしたら、本日の議論は以上といたします。

 今後のスケジュールを事務局から御説明お願いいたします。

○高山健康課長補佐 今後の日程について御案内申し上げます。次回の検討会ですが、3月11日金曜日を予定しておりますので、後日改めて正式に御連絡をさしあげます。

 以上です。

○永井座長 それでは、本日はこれで閉会といたします。どうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会> 第3回 特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会(2016年2月2日)

ページの先頭へ戻る