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2016年3月11日 医療保護入院等のあり方分科会第1回議事録

社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課

○日時

平成28年3月11日(金)9:58~11:58


○場所

厚生労働省 専用第22会議室(18階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○出席者

太田構成員、柏木構成員、吉川構成員、久保野構成員、澤田構成員
白川構成員、中原構成員、平田構成員、本條構成員

○議題

○占部課長補佐 それでは、定刻より少し早いですけれども、皆さんおそろいですので、ただいまより「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会第1回医療保護入院等のあり方分科会」を開催いたします。
 構成員の皆様方におかれましては、ご多忙のところ、ご参集いただきましてまことにありがとうございます。
 初めに、お手元の資料の確認をさせていただきます。
 資料1「「医療保護入院等のあり方分科会」の進め方(案)」でございます。
 資料2は「医療保護入院制度について」でございます。
 また、机上にお配りをしております資料が幾つかございます。日本精神保健福祉士協会からいただいております精神保健福祉法の見直しに関する意見書、これまでの本検討会における皆様からのご意見の概要を整理した資料、参照条文として精神保健福祉法の条文をつけさせていただいております。適宜、これらの資料についてもご参照いただければと思います。
 以上について、足りない資料がございましたら事務局までお申しつけいただければと思います。よろしいでしょうか。
 本日の出欠の状況を申し上げます。江藤構成員、太田構成員からご欠席との連絡をいただいております。
 本分科会の座長につきましては、検討会の座長代理である山本構成員に務めていただきます。ここからの進行は山本座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○山本座長 山本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入りたいと思います。カメラにつきましてはここでご退席をお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○山本座長 本日はまず、本分科会の進め方及び医療保護入院に関する現状について、事務局よりご説明をお願いいたします。
○占部課長補佐 それでは、事務局からご説明をさせていただきます。まず、資料1をごらんください。
 本分科会におきましては、第1回の検討会資料でもお示しをさせていただきましたとおり、主に平成25年の改正精神保健福祉法の附則に掲げられている検討事項であります「医療保護入院における移送及び入院の手続等の在り方」、「医療保護入院者の退院を促進するための措置の在り方」、「入院中の処遇、退院等に関する精神障害者の意思決定及び意思の表明の支援の在り方」を中心に検討を進めていくこととしております。
 これらの検討の進め方でございますけれども、事前に事務局で座長ともご相談させていただきまして、このような形で進めてはどうかということで整理をさせていただいたものがこの資料1ということになります。差し当たり、先ほどの附則の検討事項につきまして、2つに分けて順次議論を行ってはと考えております。それぞれを大くくりの論点グループに分けまして、こちらにございます1、2の順に、順次おおむね2回程度議論を行いまして、その上で、全体の検討会で議論を行っていく際の論点の整理を行うことを想定しております。よろしければ、分科会についてそのような形で議論を行わせていただければと思います。
 資料1については以上でございます。
 続きまして、資料2をごらんいただければと思います。
 本日は、このテーマに関する初回となりますので、まずは事務局において、これまでの経緯も含めまして議論の前提となる基本的な資料を用意させていただきました。こちらについてご説明をさせていただければと思います。内容につきましては、既に皆様ご承知の点もございますけれども、ご容赦をいただければと思います。
 早速ですけれども、3ページをお願いいたします。
 現在の精神保健福祉法における入院形態の一覧でございます。任意入院、措置入院、医療保護入院、応急入院の各制度がありまして、措置入院については自傷他害のおそれがある方、医療保護入院については入院を必要とし、自傷他害のおそれはないが、任意入院を行う状態にない方が対象となっております。
 続いて、4ページですけれども、近年の精神保健福祉法の改正経緯でございます。ごらんをいただきますと、平成17年改正の際に、真ん中の「保健福祉分野」に記載されている地域の福祉サービスや左側の「医療分野」のところの一番下の○の通院公費負担医療に係ることに関しては、障害者自立支援法の福祉サービスないし自立支援医療という形で整理をされておりまして、現在の精神保健福祉法は左側の「医療分野」、いわゆる入院制度を中心に規定している法律ということになります。
 5ページ、6ページをごらんいただければと思いますけれども、その入院制度及び前回改正の際に廃止をされた保護者制度について、これまでの経緯をまとめたものになります。
 大きな改正事項といたしましては、おめくりいただいて6ページですけれども、平成11年のときに保護者につきましては、保護者の保護の対象から任意入院者及び通院患者を除きまして、保護者の自傷他害防止監督義務を削除するなど、保護者の義務の軽減を行いました。その後、前回の平成25年改正におきまして、保護者制度そのものの廃止を行ったところでございます。
 一方で入院制度につきましては、昭和62年に精神保健法となって以降、順次手続の明確化あるいは具体化をしていくということで、昭和62年改正の際に入院制度の創設及び医療保護入院における指定医判定の要件化、それから真ん中あたりにございますが、平成11年改正におきまして、移送制度の創設や医療保護入院の要件の明確化を行っております。続いて、前回の平成25年改正におきましては、保護者制度の廃止に伴いまして、家族等同意の創設を行うとともに、医療保護入院者についての退院促進措置が導入されているということでございます。
 続きまして、7ページをごらんいただければと思います。障害者の権利に関する条約について整理をした資料でございます。同条約につきまして、我が国におきましては平成26年1月に批准をしております。前回の検討会のヒアリングにおいても、障害者権利条約と精神保健福祉法上の入院制度との関係性についてのご指摘があったところでございます。
 障害者権利条約におきましては、障害者と他の者との平等性や身体の自由及び安全についての自由を不法に奪わないこと等について規定をしているところでございます。これに対して、精神保健福祉法における入院制度、例えば下にございます「医療保護入院」について言いますと、精神障害者であることのみをもって直ちに入院させるという制度ではなくて、精神障害者がその疾患の状態に鑑みて任意入院が行われる状態にないということについて、精神保健指定医の診断によりまして、精神保健福祉法の規定に基づいて指定医の判断によって医療の必要性等について確認をした上で、家族等に対する十分な説明及び同意を確保して、所要の手続により行うというものでございます。こういった手続によって行われる入院制度でございまして、障害者権利条約との整合性につきましては確保されていると考えられます。
 続いて、8ページ及び9ページにつきましては、現行制度における措置入院及び医療保護入院の流れを整理したものでございますので、随時ご参照いただければと思います。
 引き続いて、10ページからは入院者数等のデータでございます。10ページの左側をごらんいただきますと、全体の在院患者数につきましては趨勢的に減少傾向にあります。右側のとおり、平成25年6月30日現在で申しますと任意入院の方が全体の構成比で52.8%、医療保護入院の方が46%、措置入院の方は0.6%という構成になります。
 11ページをごらんいただきまして、医療保護入院について新たな届け出があった件数につきましては、ここのところ趨勢的に増加傾向にあります。この資料におきまして平成25年改正法の施行前後の数字を比較しますと、医療保護入院の届け出件数そのものは増加をしております。ただ、これにつきましては、下の※のところにも記載をしておりますけれども、平成25年度以前の数値につきましては、法改正前の保護者として選任されていない扶養義務者の同意による入院制度による入院者数を計上していないという統計上の制約もございまして、そのような数字であるということについては留意が必要かと思います。
 次の12ページは「医療保護入院の退院届出数の推移」でございます。こちらも趨勢的に伸びていますけれども、先ほどの11ページの新規の医療保護入院との件数と単純に比較しますと、近年では、退院届け出数が新規の入院件数を上回っていることがわかるかと思います。
 続きまして、13ページからは前回の法改正で導入されました家族等同意についての資料でございます。
 14ページは、平成25年改正の全体像でありまして、赤枠の中に囲っているとおり、保護者制度の廃止にあわせまして家族等同意制度が導入されております。
 その内容については、次の15ページのとおりでございまして、保護者制度の廃止に伴って、改正前の保護者同意にかわるものとして家族等の同意が要件になっております。「家族等」の範囲につきましては、従前の保護者の範囲と一緒ということで、後見人または補佐人、配偶者、親権者、扶養義務者ということになっております。ただ、これらの間に順位はないということが従前の保護者同意との違いということになるかと思います。
 この家族等同意制度につきまして、前回改正のときに制度を創設した趣旨を整理したものが16ページの資料になります。
 その趣旨といたしましては、第1回の検討会でも少しご説明をさせていただきましたとおり、一つには一般医療においてインフォームド・コンセントがますます重要とされる中で、精神障害者を本人に同意なく入院させる医療保護入院につきましては、患者の身近に寄り添う家族等に十分な説明がなされた上で、入院の是非を判断する手続が必要ではないかということ。それから、こういった入院制度について、精神保健指定医1名の診断のみで行う仕組みは、患者の権利擁護の観点から見て適当かということ。自傷他害のおそれがある措置入院の場合に、精神保健指定医2名の診断が必要とされる一方で、自傷他害のおそれがなく、より症状が軽い医療保護入院の場合には精神保健指定医1名の診断で入院させることが適当か。これらの観点から家族等のいずれかの者の同意を要件とすることとされたという経緯がございます。
 続いて17ページ、18ページにつきましては、改正法の施行に当たりまして、家族等同意についてその制度の趣旨を明らかにするとともに、実際の運用のあり方についての考え方を示した通知でございます。先ほど申し上げましたとおり、家族等同意については、同意を行い得る家族等の間に順位がないということから、個々のケースにおいて家族間の意見が異なる場合、あるいは親権者とその他の家族の意見が異なる場合も想定されますので、そういった場合の取り扱いについて、通知において整理をしているということでございます。
 19ページですけれども、こちらは市長村長同意につきまして、平成25年の改正法の前後で比較を行った資料ということでございます。改正内容については「保護者がないとき又はこれらの保護者がその義務を行うことができないとき」について、本人の居住地を管轄する市町村長が保護者となる旨が規定されております。
 改正後におきましては「その家族等がない場合又はその家族等の全員がその意思を表示することができない場合」について、本人の居住地を管轄する市町村長の同意があれば、医療保護入院を行うことができるという規定になっております。下のところにございますけれども、ここで言う「その意思を表示することができない場合」につきましては、心神喪失の場合等のことを言いまして、家族等が反対している場合あるいは家族等が反対もしないが同意もしない場合、いわゆる意思表示を拒否している場合については含まれていないという整理になっております。
 ここまでが、平成25年改正法の家族等同意制度の内容でございます。
 20ページは、施行後の平成26年度に厚生労働省の障害者総合福祉推進事業として、日本精神科病院協会において実施していただいたアンケート調査の結果概要です。改正法の施行後の状況につきまして、入院数の変化については、数字としてはあくまで平成26年度の上半期分の数値をベースにして、前年度の数値と比較をして単純計算をしたというものでございますけれども、右側の「前年度比」というところをごらんいただければと思いますが、全入院者数あるいは医療保護入院数については前年度から微増にとどまっております。一方で、市町村長同意の数につきましては、上から4つ目のところにございますけれども、前年度比で54.6%という数字になっております。
 その下の「(2)同意」「(3)その他」という部分ですけれども、若干資料の見方としてわかりにくいかもしれませんが、これの見方としましては、ここにあります個別の内容の事例が各施設においてあったかなかったかということについて、一件でもそのような例があったと回答した施設がどの程度あったかということでごらんをいただければと思います。例えば電話で同意を得て、後日来院して、サインしてもらったケースがあった施設が784施設中410施設あったということでございます。先ほどの通知の中で想定されていたような場合についても、個々の施設における件数として必ずしも多くはないものの、例えば家族間で意見が分かれる事例などが一定程度あるということがわかるかと思います。
 続いて、21ページ以降でございますけれども、医療保護入院における移送制度についてでございます。
 22ページをお開きいただければと思います。
 移送制度については、緊急に入院を必要とする状態にあるにもかかわらず、患者本人が入院の必要性を理解できないために、結果的に入院が遅れて自傷他害の事態に至る場合や、家族等の依頼を受けた民間警備会社が強制的に精神障害者を移送するといった事例を踏まえまして、患者の人権擁護の観点から、平成11年改正において医療保護入院のための移送の規定が新設されたということでございます。
 移送制度につきましては、前回のヒアリングにおいても幾つかご意見がございましたが、その件数が全体として少なく、先ほど申し上げたような制度趣旨を実現できていないのではないかという指摘もありまして、平成25年改正法の施行に当たりまして、通知において移送の対象者の明確化を図っております。
 こちらが23ページの下の部分ですけれども、この通知におきまして、医療保護入院あるいは応急入院のための移送の対象者の病状の例としまして「当該精神障害による幻覚、妄想等の病状の程度が重篤であること」「自己の健康若しくは安全の保持に深刻な困難が生じていること又は直ちに入院治療を行わなければ状態が更に深刻な悪化をする可能性が高いこと」「入院治療によって当該精神障害による病状について一定以上の治療効果が期待できること」といった内容を新たに記載しているところでございます。
 一方で、移送による医療保護入院の件数について、24ページ及び25ページをごらんいただければと思いますけれども、24ページが全体の移送の件数ですが、件数そのものはかなり年によって波があるということがわかるかと思います。
 25ページをごらんいただきますと、この件数につきまして、平成24年度~平成26年度の3カ年の数字をお示ししておりますが、自治体間でかなり件数については差があるということが見てとれるかと思います。
 次に「4 退院促進措置について」ですけれども、27ページ以降をごらんいただければと思います。
 平成25年の改正法におきまして、精神科病院の管理者に医療保護入院者の退院促進に関する措置を講ずる義務が新たに課されております。これは医療保護入院が本人の同意を得ることなく行われる入院であることを踏まえまして、本人の人権擁護の観点から可能な限り早期治療、早期退院が実現することを目的としたものでございます。
 その内容としては、27ページにありますとおり退院後生活環境相談員の選任の義務、本人や家族からの求めがあった場合などに地域援助事業者の紹介を行う努力義務、病院内における医療保護入院者退院支援委員会の開催等の義務、これらの義務が前回の改正において規定をされているということでございます。
 次の28ページから30ページまでが、これらの3つの退院促進措置の具体的な運用のあり方について定めた通知から主な部分を記載したものでございます。これらについては随時ご参照いただければと思います。
 続いて、31ページ以降が先ほどの20ページでも引用させていただきました、施行後の平成26年度に日本精神科病院協会において実施したアンケート調査の結果のうち、退院促進措置の運用状況に係る部分を記載しているものでございます。施行後半年間の状況ということになりますけれども、退院後生活環境相談員の受け持ち患者数や、あるいは次のページをおめくりいただきますと地域援助事業者との連携の状況、さらに後ろに行きますと退院支援委員会の開催状況、あるいは関係者の参加状況等について記載をしておりますので、こちらも随時ご参照いただければと思います。
 駆け足になり恐縮ですけれども、事務局からの説明としては以上でございます。
○山本座長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明いただきました状況を踏まえまして、これより意見交換をいたしたいと思います。
 本日は分科会の第1回目でございますので、今後、検討会で議論していくべき内容の整理を行うのが当分科会の役割ですので、そのような観点も踏まえてご意見をいただければと思います。なお、時間が限られておりますので、ご発言をされる際にはなるべく簡潔にお願いいたします。
 先ほどの事務局の資料1で、主に想定される論点グループが1と2に分かれておりまして、本日はこの1についてご議論いただきたいと思います。そのうち○が2つございまして、検討すべき事項が2つに分かれておりますので、最初に「医療保護入院における移送及び入院の手続等の在り方」という事項についてご議論いただきまして、その後に「医療保護入院者の退院を促進するための措置の在り方」という事項についてご議論いただくという順番で、ご議論いただければと思います。
 どなたからでもご意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 澤田構成員、どうぞ。
○澤田構成員 その前に、医療保護入院を含む強制入院の是非をまず議論したいのです。障害者権利条約に反していると言われておりますし、それよりもっと昔から精神科にだけ本人の同意がないのに無理やり入院させる特別な制度といいますか、法があるというのは差別であると言われておりますので、まずそこから議論したいと思います。
○山本座長 これにつきましては、先ほど障害者権利条約との関係で事務局からご説明があったのですが、これについて事務局からもう一度ご説明いただけますでしょうか。
○占部課長補佐 障害者権利条約との関係性につきまして、先ほどもご説明させていただきましたとおり、基本的には障害者に対して他の者との平等を基礎として、例えば障害者権利条約の第14条におきましては、身体の自由及び安全についての権利を享受すること、あるいは不法に又は恣意的に自由を奪われないこと、自由の剥奪が障害の存在によって正当化されないことといったことで規定をされております。
 精神保健福祉法における措置入院、あるいは医療保護入院といった入院制度につきましては、基本的に先ほどもご説明をさせていただきましたが、精神障害者であるということのみをもって入院をさせるという制度ではございませんで、精神障害者がその精神障害のために任意入院が行われる状態にないという場合につきまして、医療を提供するために入院をさせることができる。これにつきましては精神保健指定医の診断に基づいて、医療保護入院であれば精神保健指定医から家族等に対して、適切な情報提供に基づいて家族等の同意の確保を要件として行われるというもので、これらは精神保健福祉法という法律に基づく手続にのっとり実施されるというものですので、障害者権利条約に反するものではないということで条約批准時に整理をさせていただいているところでございます。
○山本座長 どうもありがとうございました。
 いかがでございますか。
○澤田構成員 例えば、がん患者の中にかたくなに治療を拒否する人が時々いますけれども、そういう人を奥さんや子供の同意を得て、若い男性看護師数人で押さえつけて注射を打って意識を失わせて、無理やり入院させるということはありません。でも、精神障害者だけはそれが行われていて、障害の存在によって正当化されています。それから法律に基づくと言いましても、この精神保健福祉法自体が悪法、適切な法律ではないという意見も多くあるわけです。ですから、現行の法律にあるからいいのだとは言えないのではないか。法律を見直さなければならないのではないかと思います。あと、家族とありますけれども家族は関係ありませんから。それと「入院措置を採る旨」は当たり前です。
○山本座長 今、医療保護入院の要件についての問題もちょっと含まれていたと思いますが、その議論をいたしますと本来の論点についての議論ができませんので、今は意見をいただいたということにいたしまして、本日は載っております論点について議論を進めさせていただきたいと思いますので、その点についてご了承いただければと思います。
 それではまず、「医療保護入院における移送及び入院の手続等の在り方」についてという事項に関しましてご意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 平田先生、どうぞ。
○平田構成員 千葉県の精神科医療センターの平田と申します。
 私は、特に大きな一枚看板を背負って参加しているわけではございませんので、何枚かの看板は背負っていますけれども、精神科救急学会と精神医療審査会の全国連絡協議会の理事を務めているという立場、それから自治体病院の所属である。3つぐらいの看板を背景としてはいますけれども、個人の立場で参加しております。
 その上で、今、澤田さんがおっしゃられたような原則をきちんと確認しておく必要があると思います。1番目に確認しておかなくてはいけないのは、非自発入院が成立するための条件をきちんと確認しておく。これは法的にも、制度的にも確認しておく必要があるのではないかと思います。非自発入院というのはご本人の同意なしに市民権の剥奪を伴う行為なわけですから、それに見合う対価がなくてはいけないわけです。あるいはそれを制限するための制度というのも必要だと思います。
 そのための条件というのは、私はいろいろあると思いますけれども、4つぐらいに絞り込んで頭の中で整理しています。
 1つは、非自発入院の対象を厳密に絞り込むことです。単に精神障害者であって、例えば措置入院であれば自傷他害のおそれがあるとか、医療保護入院のほうは、消去法的な定義で対象限定がなかなかうまく表現できていないのですけれども、一般的には病気の症状のために現実的な判断能力を失っている、あるいは著しく低下しているという法的な概念もかりますけれども、そういう状態にあることのほかに、例えば入院以外に治療の手だてがないと明らかな論証ができることといった形で、対象をまず絞り込むことです。安易に非自発入院の対象にしないということです。
 もう一つは、非自発入院が必要な期間というのは、病気の長いステージで行けばほんの短期間に限られるわけですから、ちゃんと治療すれば数週間から数カ月で入院の必要がなくなってしまうことが大いにあり得るわけですから、非自発入院の期間をできるだけ短く切り詰めることです。これが2つ目です。
 3つ目に大事なことは、それだけの市民権の剥奪を伴うからには、その対価として良質な医療を提供すること。例えを挙げれば、入院患者48人に対して医師1人でよろしいというような環境で、今は非自発入院が強要されるわけですけれども、一方でまた、医療費に若干の差はあるかもしれませんけれども、16対1以下の医師密度の高い医療機関でも同じ制度のもとで非自発入院が強要されるという現実を何とかしなくてはいけません。
 4つ目は、一旦非自発入院になった後に、外部審査をできるだけ頻度を高く、多面的に入れることです。
 この4つの条件が、近代国家の非自発入院制度の法的な基礎として非常に重要ではないかと思うのですけれども、いろいろな条文の中にちりばめられてはいるが、なかなかまとまった形では出ていませんので、そこをまずは押さえておくべきかと思います。
○山本座長 どうもありがとうございました。
 今の平田先生のご議論もございましたが、最初の○につきましては、医療保護入院における移送と入院手続と2つ入っておりますので、これは別の問題ですので分けてご議論いただくということで、今、平田先生からご意見をいただきましたけれども、まずは医療保護入院の入院手続についてご意見をいただきまして、その後にまた移送についてご議論いただければと思いますので、今の平田先生のご議論を踏まえて、この医療保護入院の入院手続についてのご意見をいただければと思います。
 久保野先生、どうぞ。
○久保野委員 先に失礼いたします。
 民法を研究している研究者でございます久保野と申します。本体の検討会のほうを1回目、2回目と失礼いたしましたので早目に発言させていただきました。
 冒頭のご意見で、医療保護入院というのが本人の同意に基づかないという点で、一般の同意に基づくのが基本であるはずの入院という前提との関係で問題があるのではないかという根本的なご指摘がありまして、ただ、その問題は精神疾患の場合でなくとも、身体疾患の場合でも、自分では意思表示ができない状態だけれども、客観的には入院治療が必要なときにどうするか。恐らく一般の医療の現場で直面されているような問題と通じるところがあるのだろうと理解しております。
 ただ、そのような場合に、一般的な本人の有効な意思表示によって身体の自由ですとか、先ほど出たような市民権の制限を伴うような状況を招く決定を自分でできないというときにどうするかということですけれども、これが法的に見たときにもなかなか難しいという認識を持っております。
 未成年者については親権者ということが考えられるわけですけれども、未成年者ではないときにどうかというと、意外ではないかもしれませんが、実は曖昧なところがあるわけでして、成年後見人の制度がありますが、成年後見人についてでさえ、身体の自由にかかわるようなことができるのかということについては、法学界においてもなお激しい議論が続いているという状況だと思います。配偶者についても、何もできないというのはおかしいのではないかという問題意識は恐らくあるとは思いますけれども、かといって、何ができるかというのは、これも入院だったら当然できるでしょうという話ではないということになっていると思います。
 その辺の話が長くなりましたけれども、そのような一般的な考え方を出発点にしますと、そのような問題について現行法は扶養義務者が入るような形で家族等の同意となってしまっておりますので、そこは前回の検討の経緯もありましょうし、それを前提にしてというよりはその現行法がどうしてそうなっているのか、適切なのかということをしっかり考える必要があると思います。
 一方で、措置入院のように行政措置にしていくということがあり得るのだと思いまして、それを前回の検討会で医師の判断だけでと、基本的にはそういう方向だったと思っていますが、一方でそういう方向についても、検討の選択肢には挙げながら考えていくべきだと思います。
 あと一つだけつけ加えますと、また、現行法において、法律の条文の問題と通知でどうなっているかということがあると思いますので、通知のほうは拘束力がないというのはもちろん前提とされてはいると思いますが、現実にどのぐらいそれに従っているかという点では、ヒアリングなどで市町村長同意の問題が多々指摘されているように、検討の余地があることが明らかになっていると思いますので、通知の内容についても検討が必要だと考えます。
 以上です。
○山本座長 どうもありがとうございました。
 今の久保野先生のご意見をいただきまして、幾つか論点があったと思うのです。
 1つは、そもそも本人の同意がなくても、どうして強制入院ができるのかということについてきちんとした論拠が必要なのではないだろうかということ。さらに医療保護入院について、今回の改正では家族といずれかの者の同意でいいということが要件となったのだけれども、これは果たして正当な根拠があるのだろうかということについてもう一度検討すべきではないだろうか。さらに、法律の通知の問題について、これをどういうふうに考えるべきなのか。3つぐらい論点をいただいたと思うのですが、それでよろしいでしょうか。
 今、きちんと整理していただいたと思いますので、それについてご意見いただければと思います。まず、本人の同意がないにもかかわらず、強制的に入院させるということについてきちんとした正当化根拠があるのか。先ほども澤田先生のご意見とも通じるのかもしれませんが、ここは踏まえておく必要があるだろうと思うのです。これについて何かご意見をいただけますでしょうか。
 どうぞ。
○本條構成員 恐らく事務局のご判断は、強制入院であっても措置入院については自傷他害という明確な理由がある。医療保護入院については非自発的状態であるというところに論拠があると思うのです。一般医療あるいは恐らく外国などが捉えている非自発的という意味と、今回の非自発的という意味は少し違うのではないか。確かに一般医療においても、本人に意思表明あるいは判断能力が全くない意識不明の状態であるとか、そういう状態であるならば、当然代諾を求めるということはあり得ると思います。
 しかしながら、インフォームド・コンセントというのは、確かに応諾する能力もない状態では必要としませんが、それは同時に留保する(拒否する)能力もないという状態でなければいけないと思うのです。ところが、意思に反してということは、意思は留保するあるいは拒否するという能力はあるわけですから、そこはちゃんと整理しておくべきではないかと思います。
○山本座長 ありがとうございました。
 今のご意見ではいかがですか。特にございませんか。
 どうぞ、野沢先生。
○野沢構成員 野沢です。
 本人の同意がないのにどうして強制入院できるのかという一般的な論拠みたいなものは言えるかもしれないのですけれども、ケース・バイ・ケースで判断せざるを得ないですよね。そのときに病状に関して言うと、お医者さんの判断というものになってくるのでしょうけれども、その一方で本人の人権擁護とか患者の権利というものを考えたときに、お医者さんの判断だけではなくて、もう一歩そういった本人の権利のほうから見た判断というものがあってしかるべきで、双方が対立するかもしれませんけれども、その中からケース・バイ・ケースで答えを見つけていかざるを得ないだろうと思う。しかも、多分緊急の場合が多いでしょうし、その場で判断しなければいけない場合が多いと思うのです。
 これまでもというか現在もそうですけれども、患者の側の権利擁護といいますか、立場の人というのは家族であり得るのか。家族である場合もあるけれども、そうではない場合のほうが多いかもしれないですよね。そのときにここの部分が今は空白になっているのだろうと思うのです。なので、どういう方法でここを埋めていくのかというのを具体的に考えていく必要があるのではないかと思うのです。
 前回のあれのときに、日精協さんだったですか、公的保護者制度で私がちょっと質問させていただいたのは、これはどんなことが想定されているのかとちょっと知りたかったのですけれども、成年後見とはまた全然違う。
○山本座長 先生、今、論点としてはどうして強制入院が正当化されるのかということです。それと、それが認められたときに権利擁護のシステムをどうするのかという問題が出てくると思いますので、分けてそれを議論していただければと思うのですが、久保野先生からの問題提起で正当化根拠といいますか、これについて何かございますか。
○久保野委員 問題提起の初めはそのように言わせていただきましたけれども、その点について、まさに前回の法改正の検討会のときに、そのような措置入院にも任意入院にも当たらない入院の形態というのを残すべきかということは相当議論されたと記憶しておりまして、繰り返しは避けますけれども、先ほどは私が曖昧な言い方をいたしましたが、法的によるところの意思、判断能力というものとは違うというのもこれまた言われているところでして、しかし、そうでありながらいわゆる同意ではなく、入院するという制度が必要かというので具体例なども挙げてかなり検討したのではないかと思っております。私自身はそれを前提に発言したつもりですけれども、その点について議論する場合には、前回の検討会でこうこうこういう理由で必要とされたというのを前提にしているということで、進めるのがよろしいのではないかと存じます。
○山本座長 どうもありがとうございました。
 一応、その点を今の久保野先生のご意見で、あれは前回の作業班ですか、議論がかなりあったというのを私も記憶しておりますので、その点についての議論を踏まえて、今度はご検討いただきたいということで、この点はこういう論点があるということでこの場をおさめさせていただきます。
 続きまして、先ほど出ました家族等いずれかの者に改正したという点です。これについてご議論いただければと思うのですが、問題点等です。
 医療保護入院の制度として保護者の廃止に伴いまして、今度は医療保護入院の要件として、家族等いずれかの者の同意で入れるということに改正しましたということなのだけれども、これが果たしていいのかどうかということですよね。
 どうぞ。
○柏木構成員 日本精神保健福祉協会の柏木ですけれども、現場のソーシャルワーカーなので、あくまでも自分のところの病院の現状からお話しさせていただきます。
 家族等同意につきましては、以前のときにもお話しさせていただいたように、とてもがっかりいたしました。保護者制度をなくして、家族同意を残すという何とも言えない、感覚から言うと逆転劇みたいな感じを持って改正に臨みましたけれども、現実に本当に寄り添って暮らしていらっしゃる方ばかりのご家族では決してありませんので、そういう方に関しては当然入院に関しても丁寧な説明が要ると思いますけれども、実際に私どものほうにご家族が連れて来られるというよりは、むしろもう世界の果てまで家族を探せみたいなことを言われてしまうので、とにもかくにも手続のときだけ、一瞬だけ同意してくださいみたいなことを電話で話をしたりとか、それで市長同意をお願いしても市長同意を断られてしまったりしますので、家族にとにかく同意してくださいと。
 実際に同意していただいたご家族が1週間後に電話をかけてきて、私、実は離婚したのですけれどもいいのでしょうかという事例もありました。実際には入院時に同意をしていれば、同意者の変更も必要がないという制度で、実際に家族同意というのが単に強制入院をさせるために医療側の一つのセーフティーネットではないですけれども、安全策のためにつくられた以外に本当に患者さんの権利擁護になっているのかというのは非常に疑問に思います。
 疑問に思うので、実際には、今まではご家族が拒否をする、あるいは本人が家族を拒否する、あるいは本人が家族にとっては加害者になっていた、逆に家族が本人の加害者になっていたと、さまざまな事例はありましたけれども、そういう事例は結構公的なところの市町村長同意で今まで何とかケース・バイ・ケースで対応してきていただいたと思うのですけれども、そういうことが一切認められなくなりまして、現場的には非常に困った制度になっているというのが現実でございます。
 以上です。
○山本座長 ありがとうございました。
 ほか、いかがですか、平田先生どうでしょう。
○平田構成員 家族同意の意味といいますか、意義というのは、私、前回の検討会の作業部会に出ていませんでしたので詳しい経緯はわかりませんけれども、きょうのお話を伺っている限りは幾つか意味がある。
○山本座長 この資料の16ページです。
○平田構成員 この資料を拝見すると、幾つか意味があって残されたのだと思うのです。
 私の考えでは、今、お話を伺った限りでは幾つかあって、要するにご本人のインフォームド・コンセントが成立しない場合の代諾同意という意味が一つあります。本来はインフォームド・コンセントすべきなのだけれども、それができない状態にあるというときの代諾的なインフォームド・コンセントを家族が行うという意味が1つ。
 それから、現実的な場面では例えば医療費の支払いであるとか、治療契約をするときにご本人ができない場合は、家族が本人にかわって契約を取り結ぶ。これは医療一般も皆そうです。2つ目がそれです。
 3つ目は、精神保健指定医とはいえ、医師一人だけの判断で非自発入院が成立してしまうことの危うさに対する法的な担保といいますか、セカンドオピニオンというわけにいきませんけれども、とにかく医師の判断に対して同意を与えるものが必要なのではないかという議論から出たことかな。
 3つぐらいの意味があるのではないかという気がするのですけれども、現実の臨床場面では家族とご本人との利益相反が起こり得る可能性もあるわけですよね。そんなに数は多くないのですけれども、少数例ではあるが、いざ起こったときにどうしたらいいか、対応する法的な制度がないのです。そこの今回の家族等の同意によるという法改正の規定は非常に曖昧になっているわけです。家族間で意見の不一致があった場合は現場にお任せしますという表現しか書いていないわけで、これは何とかしなくてはいけないということで、私どもは精神医療審査会の連絡協議会の中で公的保護者制度というものを検討しまして提言させていただいたわけです。2月26日の全国会議で、その提案に対して、ご家族、当事者、法律家、精神保健福祉士関連の4者の方からいろいろ意見をいただいて、検討の入り口にようやく立ったかなという印象がありますけれども、必要であれば公的保護者制度についてもう一回説明いたします。
○山本座長 どうもありがとうございます。
 今の公的保護者制度について、また後でご説明いただければと思いますので、もう少し家族等同意の意味についてご議論いただければと思うのですが、千葉先生、いかがですか。
○千葉構成員 千葉でございます。
 まず、この資料の16ページに創設の経緯について書いていただいているのですが、今、柏木構成員からもお話があったかと思うのですが、前回の検討会の構成員だった者たちにとって、多分このまとめは違うのではないかと思わざるを得ません。確かにここに書いてあるように指定医1名でいいのかというのは、幾つかの意見の中で出てきたことではあります。ただ、それは出てきた意見の中の大半を占めたような印象でここに載せられているのですけれども、一つの意見だったと認識しています。その他にもいろいろな意見もたくさん出ていた。
 何よりも最後の段ですが、「家族等のいずれかの者の同意を要件とすることとされた」のは、少なくとも検討会の中で一つとして触れられなかったことであるはずです。これは議事録等をご確認いただければよろしいかと思うのですが、全くと言っていいほどこの件については検討会の中では話がなかった。私が聞き漏らしたかどうしたかはちょっとわかりませんですけれども、私の知る限り、そのお話はなかったように記憶していますが、なぜこれが検討会が終わり、法の改正になったところの段階で家族等の同意になってしまったのか。そこのところについての詳しい経緯と言ったら何ですけれども、その辺はどうなっているのだろうかという部分はやはり教えていただかないとわからない。
 こうなった理由というのは少なくとも検討会ではないです。家族等同意にしたのは検討会ではありません。それが検討会の見解やまとめの中になかったものが法の改正のところではついてくる。それはそれなりに必要な理由があって、どこかでつけられたものだろうし、そう判断をされたものだと思いますので、それについては大変申しわけありませんが、一度ちゃんと教えていただきたい。つまり、全てのいろいろな方々がクエスチョンマークのままでこの論議をしていかなければならないと思います。ちょっとそこに戻ってお話をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
○山本座長 どうもありがとうございます。
 一応、16ページにご説明がありますが、その点については事務局のほうで何かご説明いただけますでしょうか。
○占部課長補佐 今ほど千葉構成員からご指摘のありました点について、第1回の検討会でも少し触れさせていただきましたけれども、前回の法改正の前に検討会において検討された報告書の内容と、最終的に現行法の中で規定をされている家族等同意制度につきましては、確かにご指摘のとおり報告書の中で家族等同意制度の提案をしたものではないということでございます。
 これにつきましては、前回の検討会取りまとめ以降に、政府内部で検討を行った結果、最終的に家族等同意という制度創設に至った理由としては、こちらの16ページの資料に記載のとおりでございますけれども、法制化の過程で精神保健指定医1名の判断のみで入院を行うということがなかなか難しいのではないか。これはあくまで政府内部の検討において、最終的に法案を作成する過程においてそのような見解に達して、前回の法案の提案をさせていただいたということでございます。
○山本座長 どうもありがとうございました。
 千葉先生。
○千葉構成員 別に責めてどうするという気があるわけではないので、教えてほしいとお願いしているだけなのですが、法制化の中で指定医1名ではというところがなぜだめで、つまり、それは今いろいろ論議をしている人権擁護の観点からなのかとか、なぜ指定医1名ではだめだったのか、何をするために同意者が必要だったのかということがなければそういう話になってこないと思いますし、その上で、なぜ家族になったのかという2つの段階について教えていただけると、ここで論議をするのにさらに進めやすくなるのではないかと私は思ってお聞きしているのです。
 今のお話を聞いても、ブラックボックスの中からころんと何かが出てきてしまったという印象しかなくて、そこのエビデンスというか根拠を法制化の過程でどうだったのか、何が法制化で問題になり、どの部分に、それをそのほかのものではなく、なぜ家族になってしまったのかという部分です。ぜひ教えていただきたいと思うのはそこの部分なので、わからなかったらわかりませんで結構なのですけれども、そうであればそこの部分からもう一度我々はその時点に戻ってここで議論すればいいと思いますし、もし、それがはっきりした政府内で検討したところにエビデンスというのがあるのであれば、その後について話をしていくということになると思うのです。なので、おわかりになるのでしたら、済みませんが、教えていただければと思います。
 担当者がみんなかわっていらっしゃるので、皆さんにどうということはないのですけれども、もし、引き継いでおられるようなことがあれば教えていただきたいし、なければないでそれはそう言っていただければいいと思います。
○占部課長補佐 前回の法案作成過程において、最終的に何が最もハードルになったのかということかと思います。
 結論から申しますと、精神保健指定医1名の判断のみでということについては、身体の自由を奪うことになる入院について、一定程度その是非を判断する手続が必要なのではないかということで、16ページの資料に3点お示ししておりますけれども、この3点の総合的な観点から、もともとの検討会の結論のとおり指定医1名の判断のみで入院を行うことについては、法制的な他法との均衡の観点も踏まえると、なかなか難しいのではないかという結論に達したということでございます。
 そういう意味で申しますと、ややそこに判断要素として幾つかの要素が含まれておりますので、どれか一つが最もハードルになったということを申し上げるのはなかなか難しいところもございますけれども、検討の観点としては、今、こちらにお示ししている3点ということになるかと思います。
 それから、なぜ対象として家族等であるのかというところですけれども、これにつきましては、17ページの資料のところにも少し趣旨について記載をしておりますけれども、対象として従前の保護者と範囲については同じということになりますけれども、その趣旨としては2番目のところにございますが、「適切な入院医療へのアクセスを確保しつつ、医療保護入院における精神障害者の家族等に対する十分な説明とその合意の確保、精神障害者の権利擁護等を図るものである」と書いておりまして、要は十分な説明と合意の確保を行うに当たって、精神障害者の最も近しい家族等の判断を行うことが適切ではないかということで、結果として、その従前の保護者と同様の範囲について、法の中では家族等と規定をしているところでございます。
 家族等の中で、保護者のときと違う点としては順位がないというところでございますけれども、この点については、入院医療へのアクセスの確保という観点から、従前は最先順位の保護者ということだったわけですけれども、最先順位の保護者1名の判断というよりは、アクセスの確保の観点から家族等の中でのいずれかの者の同意という形の規定としたという経緯がございます。
○山本座長 余りこういう議論をしているとあれですので。
○千葉構成員 済みません。
 今ので大分絞れたかなと思っていまして、基本的にはお考えになったのはアクセスの確保ということで、家族の順位をつけず、どの家族でもいいからサインしてくれれば入院できるよねになってしまったとも考えられるし、一方で、ここで市町村長同意が随分と縮小したのも、逆に言えばアクセスの確保が悪くなってしまったということの弊害をもたらしている原因にも、ここの部分のものが家族等にしたところにあるのだろうと思うのです。よって、アクセスの確保という問題はとても大切で、緊急に治療を早くすることが障害者ご本人のための利益なのだということを前提として、これらのものが行われるスタイルをつくろうという体をつくろうとしているわけなのでしょうけれども、そこのところがそごを来しているように思います。まず、その点が一つあります。
 もう一つ、これも確認と言ったら何ですが、前回の検討会のときには指定医2名は話が出ていて、だけれども現実的に不可能ということで、これだけの医療保護入院が全国にあって、指定医2名にした場合にそれこそアクセスができないだろう。非常に遅延する。あるいは全国的に指定医2名を、今の措置入院でさえ大変な思いをして、鑑定云々まで行くのにとても大変な人選をしているところで、実際には非現実的であるということで、この話はもう結論が前検討会で出ていたはずなのです。その部分をまたここにお持ちに出されているので、論点というか、ここの根拠としてはこれではなかったと思いますと、これは私の印象というか捉えていたことなので、ほかの構成員の方々がどう考えているかはちょっとあれですけれども、私はそのようにこれはもう結論済みの話だと認識しています。
 以上です。
○山本座長 ありがとうございました。
 家族等いずれかの者についての今の整理だと、一応、アクセスの確保ということがあるということでこのために一つ入れた。だけれども、次の論点の移送との関係もあると思いますので、それはちょっと置いておきまして、もう一つの根拠としては権利擁護を図るということがあったのだろうと思うのですが、この権利擁護の件についてはいかがでございましょうか。
 どうぞ。
○岩上構成員 千葉構成員がおっしゃっていただいたので、大変私も共通の認識を持っているのですけれども、ここでの議論をまた一から始めるというよりは、前回の積み残した課題をきちんと議論していくということにしたいと思うのです。
 前回の議論の中では、国際的な基準から言って、自由を剥奪する際に何が必要かとなったときに、法的な裁判所等の関与が必要ではないかといった議論があり、日本の考え方としては精神医療審査会をそれに充てています。しかし、精神医療審査会自体も形骸化している問題を解決しなければいけない。そこは整理をされていたところだと思っています。
 千葉先生がおっしゃったようなアクセスの問題についても、もちろん治療を受けるためのアクセスと、その権利擁護というのは両輪にしなければいけないという話でありました。市町村長同意の話も出ましたけれども、市町村長同意もまだその時点でも課題があって、同意はするけれどもそのままにされてしまって、ご本人に対しての支援がなされていないといった課題があり、その中で先ほどの話で現実的には指定医が判断せざるを得ない。それに対して入院時の代弁者制度を考えるべきではないかというところで、しかし、代弁者制度の考え方がまとまらないまま、でも、報告書では必要であろうというところで整理をされていたわけです。そこが多分、当時の厚労省の中で進めるに当たって、家族同意というほとんど議論されていなかったことが同意事項として使用されたということだったと思うのです。
 ですから、当時のみんなねっとの方々ともお話ししましたが、家族同意は多分、家族の方も大変不本意であったと思うのですけれども、何よりも家族の責務をきちんと外してもらおうというところで、法律を施行するに当たっては家族の方も大方同意をされたのかと思っているので、そこの時点の権利擁護の部分としては、当時は外部の公的な関与が必要ではないかということも議論になっていたので、そこはもう一度ここでも議論する必要があるのではないかと思います。
○山本座長 わかりました。その点を論点として整理したいと思います。
 今の権利擁護の点について、先ほど野沢先生が少し言われていたので、今の点について何かございますか。
○野沢構成員 患者本人の権利擁護と家族の責任というか義務というか、これは表裏みたいなものだと思うのですけれども、法的な議論は、私はよくわかりませんけれども、何というか今の社会を見ていて、実態としても、あるいは国民感情としても、もう家族だけにそういうものを求めていくというのも無理になってきているのではないかと思うのです。そもそも今は一家族平均何人で同居しているのかというと、全国平均で2.46人ぐらいしかいなくて、東京都内なんて1.99人で、これからもっともっと独居がふえて、特に高齢者の独居は非常にふえていくわけです。
 すると、同居していればいいということではないと思うのですけれども、むしろ家族の機能といいますか、それがかなり弱まってきている。分散してきているときにそういうものを家族に求められるのか。一緒に住んでいるからこそ利害相反が出る場合が多いとも思うのです。そういったことをいろいろ勘案してみると、そろそろ家族というものの立場といいますか、これを見直す時期に来ているだろう。先ほどに戻りますけれども、その空白のところを何でどうやって埋めていくのかということに尽きてくると思うのです。
○山本座長 そういうことだろうと思うのです。家族としての権利擁護ということが妥当ではないということであれば、それでは、この権利擁護の点についてどうすればいいかということが論点として一つあるだろうと思うのです。
 これについて、もう少しでこれは終わりたいと思うのですが、平田先生、公的保護人の制度というのはその一つとしてお考えになられたと思うのですが、それについて簡単にご紹介いただけますでしょうか。
○平田構成員 文章を用意すればよかったのでしょうけれども、次回用意させていただきます。
 アウトラインを申し上げますと、公的保護者制度というのは3つの機能を持っていると想定しまして、1つは医療保護入院に対する同意を与える。これは権限ということになる。2つ目は、その権限に対応する責務ということになりますけれども、入院者の権利擁護に当たる。支援することです。3番目が退院の促進です。できるだけ短期間で退院させるという3つの権限と責務を負う立場にあるものです。
 具体的なイメージとしては、精神保健福祉に一定の経験を有していること、一定の研修期間を経て国家に認定されていること、3点目は医療機関との雇用関係にない。3つぐらいの要件を満たす職種です。具体的に言うと、地域で仕事をされている精神保健福祉士、保健師、看護師さんたちという人たちを想定しています。もちろん公的な行政機関に属する人も含めてですけれども、こういう方々が、仮称ですが、精神保健専門医という国家資格を得て、その人たちが入院同意に当たる。
 具体的には、医療保護入院が必要であるとご家族ないし医療機関の側で認定した場合に、保健所等を窓口にして申し出るというところからスタートするのです。相談を受け付けた窓口の保健所等の行政機関が先ほど言った精神保健専門医のリストをつくっておいて、地域ごとにどういう人がいるかを窓口で把握しておいて専門医に相談する。その専門医の方がご家族なり状況を調査して、医療保護入院の可能性が高い、あるいは必要そうだという場合には、医療機関をその人が確保する。どこの病院で診察を受けるべきかということを調整することです。そういうコーディネートをしてもらう。その上で、診察場面に立ち会ってもらう。その間、どうやって移送するかという問題を省きますけれども、診察場面に立ち会って、1名の精神保健指定医が医療保護入院を必要だと判断した、その判断に対して同意を与える。セカンドオピニオン的な意味があります。これが1つ目の同意という役割です。セカンドオピニオンまではいかないかもしれませんけれども、ある程度の外部評価を与えるということが1つです。
 家族と違うのは利害関係がないということです。ご家族の同意というのは、プラスマイナス両方でしょうけれども、患者さんとの間に強い絆があるものだから、医師の判断に対してニュートラルな判断はなかなかできないわけです。そういうところからフリーであるというのは公的保護者制度の同意の意味の1つです。
 その後は、先ほど言いましたように、入院中の権利擁護は公的保護者だけでは無理です。患者さんは公的保護者を選べないわけですから、信頼関係を最初はつくらないわけです。そういう人に権利擁護をしてくれと言ったって無理な話なので、権利擁護に関しては別立てのシステムが必要だと思います。ただ、それを保障する。支援するということは必要です。例えば精神医療審査会に対して処遇改善請求、あるいは退院請求をする権限を公的保護者が持つということです。
 3番目の退院促進に関しては、入院中の病院に所属する生活環境相談員と連携して、退院促進の橋渡しの支援をする。それから、長引いた場合には退院支援委員会に参加する義務を負うといったものを想定しております。
 ただ、現実問題として、年間17万人以上の医療保護入院が新規に発生しているわけです。横断面で見ても相当数の医療保護入院者がおりますので、そういう人に対して全て一遍に公的保護者制度の対象としようとしても現実問題としては厳しい。試算もしたのですけれども、人口5万人に対して1人ぐらいの先ほどの専門員、公的保護者が選任されていれば、何とかかんとか月に一遍ぐらいの面接ができるかなという感じです。あるいは入院時に何とか立ち会える。ただ、ほかの業務をしながらの兼務は無理ではないかという計算がありまして、最初は公的保護者の対象を市町村長同意の対象になるような人からスタートして、徐々に広げていったらいかがか。あるいは医療保護入院をもう少し減らすようなプロセスと並行して、その制度を普及していったらいかがなものかという提案です。
○山本座長 どうもありがとうございました。
○本條構成員 家族の立場で。
○山本座長 簡単にお願いいたします。
○本條構成員 先ほどの関係で誤解を招いているかもわかりませんので、私たちは家族に対する説明、同意といいますか、承諾そのものに反対しているのではなくて、それは大いにやっていただかないといけないし、また、入院手続だけではなくて、入院中の医療という説明もしていただきたいという気持ちは十分あるわけです。
 ただ、それが本人を抜きにして「家族だけが」が、要件になっているということを問題にしているわけであって、決して家族は本人と同体ではありませんので、ときには利益相反関係にもなりますから患者の権利擁護をできる能力もありませんし、そういう立場にもないということであります。その点を了解いただきたいと思います。
○山本座長 どうもありがとうございました。
 いろいろご意見があると思いますけれども、時間も限られております。
○白川構成員 一言だけ言わせていただきたい。
○山本座長 簡単にでよろしいですか。
○白川構成員 白川でございます。よろしくお願いします。
 単身者にとっては市町村長同意の問題というのは非常に大きく、今回、非常に厳しくしたことによって、かなり医療に対してのアクセス権を奪っているということがあると思うのです。それが如実にあらわれているのが20ページの市町村長同意の半減ということだと思うのです。だから、このあたりのところをもうちょっときちんとしていただかないと、単身者の方たちにとっては、医療アクセスという面では困る問題ではないかと思っています。
 以上でございます。
○山本座長 ありがとうございます。
 市町村長同意の件も少しまた議論する必要があるだろうと思うのです。
 少し簡単にお願いします。
○久保野構成員 先ほども千葉構成員から出ました、現行法がなぜこうなったのかという点に関連して、今の市町村長同意のこととも関係して、扶養義務者というのがなぜ入っているかという点が、先ほどの一定の説明はあったのですが、ほかの法制と比べたときにどうなのかということに私は個人的には疑問の余地があると思っていまして、その点をどう考えられたのかということについて、次回まででも結構ですのでわかることを教えていただければと思います。
○山本座長 家族等いずれかの者の中に、扶養義務者がどうして入ったのかということですね。そういうことでよろしいですか。
○久保野構成員 はい。
○山本座長 それについては、次回。
○久保野構成員 ほかの法制において扶養義務者というものは一般的にどう考えられているかですとか、ほかの法律で扶養義務者がこうこうこういうことをやっているものがあって、それと整合的だからということがあったのか、なかったのかというあたりを教えてくださいということです。
○山本座長 それはよろしいですか、次回まで。
○占部課長補佐 少し整理をして、次回ご説明させていただきます。
○山本座長 きょうは、第1回目で論点を出すという作業でございますので、こればかり議論しているわけにはいきませんので、医療保護入院の入院手続についての論点というのは今いろいろご意見をいただきましたので、どうもありがとうございました。
 先に進ませていただきまして、先ほどのアクセスの確保ということとも関係すると思うのですが、移送の手続のあり方についてというのも一つの論点だろうと思うのですが、これについてご意見いただければと思います。
○澤田構成員 その前にどうしても納得がいかないことがありますので、一つだけお願いします。
 措置入院と応急入院は百歩譲ってやむを得ないとしても、医療保護入院は自傷他害のおそれもなく、急速も要していないのに、なぜインフォームド・コンセントを怠って、無理やり入院させていいのかというのがどうしても納得がいかないのです。医療保護入院は廃止すべきです。任意入院を行う状態にないというのも思い込み、決めつけではないかと思うのです。病識、病識と言われますけれども、どの科でも病気と認めない、十分理解できない、納得できない患者は幾らでもいるのに、精神科だけ差別だと思います。そして、精神科の患者で病識がしっかりあっても、入院は嫌だという患者さんも幾らでもいます。
 入院の同意が得られるかどうかというのは、医師との信頼関係も大いにあると思うのです。医師の態度も大いにあります。そして、たとえ夢幻状態であったり、幻覚、妄想で論理的な説明と同意というのが難しい状態だとしても、精神障害者や統合失調症などの患者も認知症の患者と同様だと思うのです。何もわからなくなっている人はいないと思うのです。
○山本座長 先生、それは先ほどもご議論いただきましたので、それは一応意見として承りましたので、時間も限られていますので、済みませんがその議論はあれしまして、移送のほうの手続もちょっと。
○澤田構成員 あと一言だけ。
 そして、認知症の患者の場合に、言葉は理解できなくても感情は伝わるし、忘れないと言われています。精神障害者もそうなのです。医師の態度といいますか、そういうのは伝わりますし、忘れませんし、その後の人生に影響します。
○山本座長 どうもありがとうございました。意見として承っておきます。
 移送について、先ほどの事務局からのご説明も踏まえて、論ずべき点を出していただければと思います。いかがでしょうか。
 平田先生。
○平田構成員 私ばかり口数が多くなってしまっていますけれども、この問題は精神科救急学会でもかなり議論していますので、結論はまだ出ていませんけれども、まとまった意見を言わせていただきます。
 まずは、移送制度がつくられたいきさつです。これを私はよく覚えているのですけれども、1999年の法改正です。動機は、精神科の医療の質を担保するというか、入院中の適正な医療の確保と権利擁護に関しては精神医療審査会がある。それから、退院後のアフターケアについては精神保健福祉法の中で、在宅ケアの整備ということが語られている。ただ、医療へのアクセスのところだけが制度的に空白地帯であるという議論からスタートした話だった思います。
 ただ、その背景には、1つは医療保護入院等の移送に関して、実際に医療アクセスの手段として、民間の救急車がかなり利用されているという現実があったのではないかと思うのです。しかも、質に非常にばらつきがあって、基準が何もない。足元を見ていると言わざるを得ないですけれども、会社によっては1件当たり300万円ぐらい請求するような会社もあるわけです。それから、必ずしも資格がはっきりしない人たちが有形力をもって移送対象者の行動を制限する。身体拘束等も含めて行動制限が行われているという事態に対して、権利擁護という観点からも批判があった。それが一番大きかった理由ではないかと思います。かんかんがくがくの議論があって、かなり対象を絞り込む、手続を厳密にするという条件をつけて、この移送制度が何とか成立したわけです。
 ところが、ふたをあけてみますと、制度が成立する寸前に総務省、警察庁のほうから要望がありまして、医療保護入院、応急入院に関する移送制度だけではフェアではない。措置入院の移送制度についてももう一度見直すべきであるという意見がありまして、措置入院の場までの移送というものがこの移送制度の中に入ってきたのです。我々は俗に29条の2の2と呼んでいるのですけれども、従来までの法律の中でも措置入院が決定してから入院先までの移送は行政責任という規定があったのですが、措置入院を行う場までの移送、具体的に言うと例えば警察が保護して、措置診察が行われるまでの移送は専ら警職法を根拠とする警察官に依存していたわけです。そこのところをこの移送制度に盛り込むべきだという警察庁の要望があって、そこも入ってきたのです。
 そういういきさつがあって、実際にふたをあけてみますと、現実の移送制度というのは29条関連の移送が95%以上を占めるに至ってしまったのです。桁が2桁違うのです。先ほど数字がありましたけれども、34条の移送制度は全国でも100件に満たないです。一方で29条関連の移送は1万件近いのではないかと思います。警察官通報がそれぐらいありますので、それぐらいの差ができてしまった。
 結果論から見ると、移送制度創設のもう一つの法的根拠は、現実には移送は警察とご家族と民間救急に依存していたわけです。これを行政の責任で行うべきである。そういう依存からの脱却というのを目指していたはずなのだけれども、現実問題としては、警察への依存を若干緩和したというだけで終わってしまった。迅速、安全な医療へのアクセスという法の設立趣旨を外れてしまっているという現実があるのです。これをどうすべきかというのが一番大きな論点ではないかと思います。
 つけ加えておきますと、移送制度の実績が24ページ、25ページを見ますと34条関係の移送が100件前後で推移していますが、年によって、地域によって物すごくばらつきがあるのです。最新年度の京都府、京都市が34条関連で一番多いのですけれども、全体の3分の2を京都府市で占めています。ところが、現地でお聞きしますと、実際の34条はほとんどなくて、いわゆる措置流れと我々は業界用語で呼んでいるのですけれども、措置診察をして不要措置になってしまった。措置入院になれば29条関連の移送制度になるのですけれども、不要措置になってしまうと法的論拠がなくなってしまうわけです。例えば不要措置になった人を医療保護入院のために病院へ移送するというときの根拠がない。そのためにこの法律で穴埋めをしている。質流れと言ったら悪いですけれども、それに類似した措置流れという事例に対する補完的な制度として、これが利用されているにすぎないのだという現実をお伝えしておきます。
○山本座長 どうもありがとうございました。
 ほかに、実態を踏まえていかがでございましょうか。今の平田先生のご意見だと、結局制度としてはあるけれども、実際上は非常に使われていないということで、これについて実際に移送に携わっておられる自治体とか。
○白川構成員 実際、なぜ非常に少ないかということなのですけれども、現実的には調査をきちんとできない状況にあるということなのです。調査の権限として立ち入ったりするということが全然できていないので、実際のところは拒否されてしまうと入れないという事態があって、それで現実的には非常に少ない数になっているということなのだと思います。ですから、そのあたりのところをきちんと担保していただくということが、34条をきちんと成立させていくことになっていくのではないでしょうか。
○山本座長 ありがとうございます。
 医療保護入院のほうは、結局、立ち入り権が規定されていないわけですよね。その点についても補充が必要ではないのだろうか。
 それ以外にどうでしょうか。
○中原構成員 今の白川構成員が言われたとおりで、そういうお話があっても、保健所としても家庭訪問に行っても、患者さん自身にお会いができない。中には引きこもっていて状態すら把握が全然できない状態で、これは適用できるのかというところがまず一つ大きな問題になっています。
 あとは、別のほうから言うと、逆にそうやって患者さんがお会いできるような場合については、保健師さんとかが相談に対応したり、面接をしたり、あるいは保健所でお願いしてある精神保健指定医の相談員の先生に同伴をしてもらって、ご家族も含めて話をすると、逆にこういう強制的な移送ではなくても医療につながっていくという形で、本来、この移送制度に乗せなければいけない人については、事前調査というところの壁が結構大きくてなかなか運用できないという状況があります。そこの見直しをするとしたら、そこら辺をもう少し、確かに権利擁護の部分がまた入ってくるから非常に難しいところであると思いますし、そこで保健所のほうもかなり慎重に事前調査をというところでさせていただいていますので、どうしても運用というところでは難しさが残っているというのが現状だと思います。
○山本座長 やはり、実際上の問題としては事前調査が難しいというのが一番ネックなのでしょうか。
○中原構成員 だけれども、事前調査をしないと結局権利擁護の話だとかがあります。
○山本座長 一緒に入っていけないのですからね。
○中原構成員 いけないから、そこがネックになっています。
○山本座長 わかりました。ありがとうございました。
 千葉先生。
○千葉構成員 直ちに入院させなければならない人なのに、事前調査があるというとても矛盾を抱えていますけれども、そのとおり矛盾で、直ちにと言いつつ、事前調査にしっかりと時間をかけなければならない。そうしている間に別の入院形態で入院をさせてしまうということ等もあるかと思います。もう一つは、病気かどうかわからないのに行って、実際にその場で往診という形で診察をするということがどの程度環境的に、指定医師として十分な診察に足りることができるのか。結局は、事前調査の情報等をかなり信用していかざるを得ないだろうなということはあろうかと思います。
 もう一つですが、この移送が少ないとだめですか、多ければいいのですか。
○平田構成員 そうではない。
○千葉構成員 私が言いたいのは、この辺のところが少ない理由は、今、中原さんがおっしゃったように、そうしている間に別な形で決まってしまうこともかなり多いし、ここのところの適正に行われるということはとても大切なことだと思いますけれども、数が多い少ないのところで論じる問題ではないのではないかということを提示したいだけです。
○山本座長 どうぞ。
○平田構成員 数の問題ではないと思うのですけれども、これが活用されていないということは別のところにしわ寄せがいっているということになるわけで、当センターの統計でいきますと、初診患者に限ると実際の搬送は大部分が家族に依存しているのです。2番目が消防・警察、いろいろな機関が複数絡むことも多いですけれども、その次が保険福祉法の受診勧奨です。受診援助活動という精神保健福祉法の46条を根拠にした受診勧奨です。それから、数は少ないですけれども、民間救急が若干まじってきます。本来機能すべき機能が全部そちらのほうにシェアされてしまっているという現状だと思います。
○山本座長 その結果、数が少なくなっているということですね。
 ご家族の立場からはいかがでございますか。
○本條構成員 確かに数の問題ではないですけれども、例えば先ほど平田先生からもご指摘がありましたけれども、少なくとも数十万円、数百万円を払って民間の移送業者に頼まざるを得ないということがあってはならないと思いますので、これは必要悪かもわかりませんけれども、何らかの公的な規制をかけて、民間の業者も低料金とは言いませんけれども、合理的な範囲で移送していただく。問題がある点は規制を何らかの形でかけないといけないとは思います。
○山本座長 ご家族の立場からすると、移送の制度というのは極めて使いにくいといいますか、そういう印象もある。
○本條構成員 家族が連れていける状態であればいいのですけれども、病院とか保健所さんに依頼しても、やはり連れてきなさいと言われますから、何とか家族が連れていかないといけないという状態であります。そうなりますと、先ほどの問題に戻るのですけれども、本来はご本人と家族は一体で連れ添って生きていくべきでありますけれども、そういうところから利益相反が生まれ、相克が生ずるわけでありますから、これは医療的な判断によって公的な機関に病院へ連れていっていただくというのが筋であると思います。
○山本座長 どうもありがとうございました。
 どうぞ、柏木構成員。
○柏木構成員 私、大阪の堺市というところにいるのですけれども、大阪市と隣接しておりまして、特に大阪市は精神科の病院がほとんどない地区でございますので、堺市と周辺のところに精神科病院の入院を依頼しているという方がほとんどだと思うのですけれども、私たちは入院相談というのを精神保健福祉士が受けておりますので、それをすると、やはり病院のほうにどうしても連れていけない、迎えに来てほしい、往診してほしいという依頼もたくさんございます。ただ、民間の精神科病院としましては、権利侵害の問題があって、受診に来られないとなかなか迎えには行けないので、とにかく保健所に相談に行ってくださいというのが大体決まり文句なのです。
 保健センター、保健所については大阪市と堺市ではかなり違っていまして、堺市は保健センター、保健所に精神保健福祉士が複数配置されていまして、非常にフットワークが軽く動いてくださるということがありまして、とにかく移送まで使わなくても、精神保健福祉士が訪問をして、自分たちで何とかアセスメントをして、それなりに入院が必要と判断すれば嘱託医等を使って移送に結びつけるまでもなく、受診に連れてきたりということをしてくださっているので、堺市の市民の方から相談を受けると非常に私も気が楽なのです。堺市の何々さんに相談してくださいと言えば、話がすっと流れていくのです。
 ところが、逆に大阪市は、連絡してくださいと言って、後で家族からかかってきたら、とにかく1回は保健センターに来てくれないと対応できません、行けないから言っているのではないですかみたいな感じでやりとりしているうちに消耗してしまって、家族の方が結局は恐らく民間業者であるとか、とにかく家族、親族一同が男性を使って、それこそもう無理やりに連れてくるということをしていると思っています。
 ですので、PSW協会のあれを読んでいただいたらわかると思うのですけれども、必ずしも入院に結びつけなくてもいいとは思うのです。必要に応じてアウトリーチでやっていける場合もあると思いますし、丁寧にかかわることによって本人が近くのクリニックにつながっていくということもありますので、最初のかかわりを誰がどういう形でするかというのは非常に大事だと思うのですけれども、緊急性を要する場合になると、今の移送制度というところで対応するのはとても難しいと思いますので、その判断も確かにファーストタッチでおやりになるところが、公的機関で判断をする能力を持った人たちを最前線にぜひ置いていただきたいと思っております。
 以上です。
○山本座長 要するに、最初の窓口になるのは保健所とか保健センターということになるわけですね。
○柏木構成員 精神保健福祉センターでもいいと思います。
○鈴木座長 それは職員の方が調査に行くという形ですか。
○柏木構成員 そうです。
○山本座長 保健所の観点からいかがですか。
○中原構成員 先ほどもお話しされたように堺市の保健所と大阪市が違う。多分、全国の保健所でかなり対応に温度差があるのだと思います。今は精神保健業務そのものも余り取り扱っていないような保健所もある中で、電話があっても、それはまず家族がどうにかしなさいという対応をされている保健所も実際にあります。
 ただ、先ほどのお話のように、福岡県のほうでは、基本的には精神保健福祉士、PSWさんがおられないのですけれども、もうずっと保健師さんのほうが精神保健担当ということで保健所に何人もおりますので、一報あったときには家族だけにまず来てもらうというファーストチョイスもあるのですけれども、お話を聞いて必要だったら家庭訪問をして、またそれで専門の先生にと言えば、相談医に一緒に、診察ではないのですけれども、同行相談みたいに一緒に行っていただいて医療につなげるという形でやっています。だから、ファーストチョイスとしてまず保健所にアクセスをしていただくというのは確かに大事なことで、その後、この移送制度を使うかどうかというのはその次のお話でいいのではないかと思います。
○山本座長 わかりました。ありがとうございました。
 白川先生、今の点で何かございますか。
○白川構成員 横浜ですと、各区の福祉保健センターのほうに医療ソーシャルワーカーがいますので、そちらでまずご自宅へ入っていって、それで入れる方はいいのですけれども、最終的に拒否という形になると移送を使わなければいけないという事態が出てくるのです。ただ、そのときに実際に自宅に入るという権限がないものですから、これを使っていくことが非常に難しいという形になってまいります。
○山本座長 ありがとうございました。移送についてはいろいろ問題もある。
○岩上構成員 国として制度はきちんとあるのだけれども、かなり都道府県によって考え方が違うという状況なのだと思うのです。ですから、数字は見せていただいても仕組みがきちんとできていて、制度も活用している都道府県でなかなか数字が上がらない場合と、実は、都道府県では非常に消極的で仕組みすらぼやけているということがあると思うのです。そこの実態はきちんとまた少し出していただいて議論をここでしないと、それをうまく活用するためにはどうすべきかで、それが出てくることによって、各都道府県で実際に回していくということを考えていったほうがいいのかと思います。
 以上です。
○鈴木座長 どうぞ。
○平田構成員 議論を整理するために提案をしたいと思うのですけれども、移送制度というのは医療へのアクセスの手段としてのほんの一部にすぎないわけです。そこをまずきちんと押さえておく必要があって、なぜこの移送制度がホットな議論になりつつ活用されないかというと、やはり非自発入院を前提とした制度ということである。こういう宿命を負っているのです。
 かつて、医者が患者さんを集めるために地域へ出て行って、無理やり注射をして集めてくる。言葉は悪いですけれども、患者狩りなんて呼ばれた時代があるわけです。そういうトラウマは利用者の側にも医療者の側にもあって、なかなか外へ入院のためのアウトリーチができない。それは我々の心理的な抵抗になっています。もうちょっとその抵抗から解放するためには、医療アクセスという枠組みで捉えるべきであって、入院を前提としたアウトリーチというのは最後の手段であると考えるべきだと思います。柏木さんが言われたように、入院を前提としないアウトリーチ活動が基盤になって、その中の最終的な選択肢として、この移送制度がとられるべきだろうということをきちんと押さえておく必要があると思います。
 実務的な議論としては、未治療の患者さんというか、要するに病気かどうかわからない人の評価のためのアウトリーチと、医療中断であるとか医療を継続している人の再発、危機介入的な医療がもう既に行われている人に対するアウトリーチと全然意味が違いますので、前者は医療がサポートしますけれども、医療の対象かどうかわかりませんから行政が責任を持ってやるべきだろう。後者の場合は、医療が主体になって行うと2つに分けて考えたほうがいいと思います。
 もう一つは、緊急性が高い場合には警職法のサポートがどうしても必要になってくるのですけれども、そのときの行政や医療のかかわりです。一方的に警察にお任せではまずいわけであって、権利擁護にしろ、安全かつ迅速な移送をするにはどうしたらいいかという条件を議論するための論点といいますか、3つぐらいに分けて議論しないと混乱してしまうのではないかと思います。
○山本座長 今、整理していただきまして、どうもありがとうございました。
 移送制度につきましては、今、1つは医療アクセスという中での位置づけの問題です。それから、現在の法の仕組み自体に問題があるのかということです。仕組みはいいのだけれども、その運用自体にどういう問題があるのか。そういう観点で、今度は少しご議論いただいて論点を整理していきたいと思いますので、それでよろしいでしょうか、いかがでしょう。
(「はい」と声あり)
○山本座長 それでは、この移送制度につきましては、今、ご議論いただいてありがとうございました。残った時間でもう一つの○の「医療保護入院者の退院を促進するための措置の在り方」ということについて、残った時間で論点をご議論いただきたいと思うのですが、これについてはいかがでございましょうか。
 どうぞ。
○吉川構成員 日本精神科看護協会の吉川です。
 医療保護入院者の退院を促進するための措置として、スライドの27に「1.退院後生活環境相談員の選任」であるとか、あとは委員会といったものが設置されています。医療現場といいますか、例えば医療のほうは患者さんの治療計画とか、医療制度といったもので、いろいろ患者さんの治療、退院を考えていくというスキームがあるのと、さらに、精神保健福祉法によって早期退院というか、そういった退院の措置というのが重層的になっているところがあります。まだ数年しかたっていませんが、実際に医療の中で精神保健福祉法における退院促進の措置というものが、どれぐらい機能しているのかというところをもう一度考えていただく必要があるのかと思っています。
 特に最近は、新たに入院される患者さんの6割ぐらいは3カ月以内で退院されるようになったという状況があります。そういう状況を考えると、一般医療と同じように入院医療でやるのはここまで、あとは継続医療で支えるという考え方になっています。したがって、必ずしも精神保健福祉法による規定というか、考え方がそのまま医療の現場になじまないところもあるのかと思います。ですから、医療制度で行う退院支援の役割、機能と、精神保健福祉法における退院促進の役割、機能というものを少し分けて考えるのか、明確にする必要があるのかと思います。
 今日の議論を踏まえて考えますと、精神保健福祉法による医療保護入院者の退院促進の措置は、非自発的入院の患者さんの人権擁護といった観点から、入院期間をできるだけ短くして、地域で生活していただく、そこを支えるというところがありますので、そこがより明確になるといったものにしていくのがいいと思いました。
 以上です。
○山本座長 ありがとうございました。
 今のご議論を踏まえていかがでございましょうか。
 どうぞ。
○白川構成員 白川です。
 やはり地域の人材不足というのが非常に大きいのではないかと思うのです。そのあたりのところをきちんとしていかないと、幾ら退院を促進するということがあっても、なかなかうまくいかないと思います。そういう面からすると、医療から福祉への人材とか、あるいは財源のスムーズな移行が必要なのかと思っております。
 以上でございます。
○山本座長 ありがとうございました。
 ほかは、これについてはいかがでございましょうか。
 どうぞ。
○本條構成員 「2.地域援助事業者の紹介」は非常に重要な視点ではないかと思います。入院直後から地域の相談支援事業者とのかかわりというものを義務づけるぐらいの思い切った措置というか、そういうものが必要ではないかと思います。ある程度医療的な判断から、退院間際になってから進めるのではなく、例えば入院生活そのものも地域の相談支援事業者の職員の方とか、そういうかかわりが必要ではないかと思います。
○山本座長 ありがとうございました。
 先ほど、吉川先生のほうからのご議論で、退院促進に2つの側面がある。1つは精神保健福祉法上の退院促進ということで、これは権利擁護の問題を主に論じなければいけない。もう一つは医療実務でよろしいですか。
○吉川構成員 医療制度というか医療提供体制です。
○山本座長 提供体制の観点からも退院促進の問題というのは分けて、絡むところもあるでしょうけれども、それについてもうちょっと。
○吉川構成員 そこで非常に複雑なのが、今も退院促進というのは入院時からというご意見だったのですが、今はもう領域に限らず、例えば身体科領域では入院時から退院が困難になるといった患者さんのスクリーニングを必ず行っています。入院される患者さんの中には治療が終わっても、それ以外の理由でなかなか退院ができなくなる方、例えば高齢の方であるとか介護が必要な方、いろいろ経済的なものを含めてそういった方が絶対にいます。そこは精神科も身体科もさほど変わらないのです。
 ただし、例えば入院時のスクリーニングを精神保健福祉法で規定するということではないと思うのです。そうなると、そこはきちんと精神科医療の中でそういった機能をもう少し手厚くしていくという考え方が必要になると思いますので、そこをちょっと分けないと、病院の中、特に医療スタッフに精神保健福祉法による措置が十分まだなじんでいないのかなといったところがあります。
○山本座長 大変貴重な意見をいただきましてありがとうございます。
 これについて、今の吉川先生のご意見を踏まえていかがですか。ほかの論ずべき点というのはございますでしょうか。
 どうぞ。
○中原構成員 今のご意見に付随する話なのですけれども、全国保健所長会で全国の保健所を対象に改正精神保健福祉法の調査をしています。その結果の中で、資料のほうでも医療保護入院患者さんの退院数がかなりふえてきているという話もあったのですけれども、確かに今回の法改正で原則1年未満という縛りが出てきたところで、1年以上たつといろいろと退院支援委員会の開催がどうだといったところの縛りは出てきたところで、早目に退院されているように見た目はなってきているのですけれど、実際、退院後の処遇というところでどこに、要するに、その病院での入院継続あるいは自宅、施設、死亡だといったことで、医療保護入院患者さんが退院した場合の退院届を調べてもらうと、正確な数字を忘れたのですけれども、4~5人に1人ぐらいはそのままその病院での入院継続ということになっておりました。ですから、実際は医療保護入院としては退院されているので、あくまでも退院患者さんという位置づけではあるのですけれども、医療としてはまだ必要なので、それが本当に精神疾患としての任意なのか。認知症の患者さんが非常にふえておりますので、どちらかというと認知症患者さんの療養的な意味での入院なのかというところの実態をきちんと把握しないと、実際、どこにターゲットを絞って退院支援をするのか。
○山本座長 医療保護入院としては退院したけれども、実際は退院していませんということですか。
○中原構成員 退院しておりません。それが、精神疾患の治療がまだ必要だから1~2カ月任意ですと言うのだったら精神保健の範疇だと思うのですけれども、認知症の患者さんで療養が必要でずっと任意入院を1年していますという方に対しての退院支援というと、またアプローチの仕方が変わってくると思います。そこの実態をもう少し把握してから議論が必要ではないかと思います。
○山本座長 制度としては、医療保護入院についてしかないのですよね。任意入院のほうの制度としてはこれが入っていないわけで、そちらのほうをどうするかという問題もあるだろうと思うのです。今の先生のご指摘、どうもありがとうございます。そうしますと、そちらのほうも少し議論する必要があるかもしれません。
 どうぞ。
○岩上構成員 任意入院等も議論は必要、措置入院もそうですけれども、そのときに財政的な裏づけをきちんと考えるという方向で進めたほうがいいと思うのです。実情から言うと、地域援助事業者を紹介というお話も先ほどありましたけれども、本人、家族の求めに応じて紹介という形になっていますので、入院時にきちんと地域援助事業者を利用できるという告知等も必要になってきますし、あるいは今の規定ですと地域援助事業者は指定特定の相談支援事業所として、一般の相談事業所と居宅介護の事業所という形になっていますので、認知症等であれば、居宅介護の事業所が出向いて介護保険の対象にするので、行くだけの根拠というのがあるのですけれども、指定特定と指定一般の事業所が呼ばれるだけですと、必ずしも行く根拠がない。結局、福祉サービスを使う人のための事業所としての位置づけになっているので、一般的な相談支援事業者が呼ばれて行くとなると、それは市町村の委託等を受けている事業所であれば、地域援助事業者が行くことができるのです。ですから、これも地域援助事業者だけでいいのか、きちんと市町村とか保健所等もきちんと明記をしていただくと、もう少し地域の事業者もご本人支援に出向きやすくなるといったことはあると思います。
 それから、1年以上については、退院支援委員会については管理者が認めるときに限りとありますけれども、国の方針としては、重度かつ慢性でない方は1年未満に退院していただくという方向も出ているわけですから、1年以上の方こそきちんとした支援の方法、そこだけあればいいわけではないのですけれども、もちろんこれから病気になって入院される方のための手だてと、もう一つは1年以上の方のところは、医師の判断だけ、管理者の判断だけでなく、ある程度の強制性を持たせたほうがいいのではないか。その辺も論点かと思います。
○山本座長 ありがとうございました。
 簡単にお願いいたします。
○平田構成員 簡単にお話しします。
 精神保健福祉法だけの議論にとどまらない問題ですよね。ですから、この法の文言で言えば、退院促進と言うと医療保護入院から任意入院に切りかわっても退院とみなされてしまう現実がありますので、地域移行という言い方が一番正確かと思います。それを阻んでいる要因というのは幾つかありますけれども、制度的には、例えば急性期の医療というのは3カ月という規定があって、この間調査しましたら、重症患者で3カ月でおさまらない人は15%ぐらいいるのです。そういう人たちは3カ月過ぎると途端に医療費も下がるし、サービスも低下してしまう。場合によってはほかの病棟に転棟したり、半強制的に転院させられたりしてしまうというケースも出てきているわけです。そこの3カ月という規定の中でおさまっているものをもうちょっと例外規定をつくっていただく必要がある。
 それから、3カ月~1年の間の回復期リハビリ的な機能が、今、制度的には本当にすっぽり抜けてしまっているのです。ここを何とかしなくてはいけない。1年以上たって、どうしても治り切らない人に対する医療もきちんとやらなくてはいけないというところがあると思うので、3カ月、1年という区切りは一応つけますけれども、その制度の抜け穴といいますか、脱落した部分を補完する必要があります。
 地域移行、地域定着事業というのがあるのですけれども、これは1年を超えないと発動できない制度です。これもおかしな話であって、3カ月~1年ぐらいの間にも使える制度にすべきだと思うのです。そんなことを考えました。
○山本座長 単に退院支援ということではなくて、地域移行という観点から議論しなければ本質に迫れないのではないかというご意見ですか。
○平田構成員 入院形態関係なしに必要だと思います。
○山本座長 どうもありがとうございました。
 そろそろ時間でございますので、きょういろいろご意見をいただきまして、本当にありがとうございました。
 きょういただいた論点を今まとめることはできませんので、次回までに私と事務局のほうで、きょう出していただいた議論を踏まえてもう一回論点を整理しまして、これは次々回になりますか。
○占部課長補佐 はい。
○山本座長 次々回までにまた論点を整理させていただいて、またご議論いただきたいと思います。
 本日は、どうも本当に長時間にわたってありがとうございました。
 最後に、事務局のほうから次回の分科会の日程等について説明をお願いいたします。
○占部課長補佐 次回の当分科会の開催につきましては、4月28日を予定しております。今後の日程につきましては、日程が決まり次第、事務局からまたご連絡を申し上げます。
○山本座長 どうもありがとうございました。
 本日は、大変皆様にお忙しい中、長時間にわたり活発にご議論いただきまして本当にありがとうございました。
 それでは、これをもちまして「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会第1回医療保護入院等のあり方分科会」を閉会したいと思います。
 皆様、どうもありがとうございました。

(了)

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