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2016年2月24日 平成27年度第2回血液事業部会安全技術調査会議事録

医薬・生活衛生局血液対策課

○日時

平成28年2月24日(水)
17:00~19:00


○場所

航空会館5階 501+502会議室
(港区新橋1-18-1)


○出席者

出席委員:(10名)五十音順、敬称略、○委員長

内田 恵理子 大戸 斉 岡田 義昭 白阪 琢磨
長村 登紀子 新津 望 ○濱口 功 溝上 雅史
山口 照英 脇田 隆字

欠席委員:(1名)敬称略

横田 恭子

日本赤十字社:

佐竹 正博 豊田 九朗 平 力造

事務局:

武井 貞冶(血液対策課長) 近藤 徹(血液対策課長補佐)

○議題

・シャーガス病に対する安全対策の変更について
・HEV感染実態調査について
・ALT検査による製品除外の見直しについて
・その他

○議事

○近藤血液対策課長補佐 それでは、定刻より少し早いですけれども、委員の先生方にお集まりいただきましたので、「平成27年度第2回血液事業部会安全技術調査会」を開催いたします。

 なお、本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。

 昨年10月付で異動がありましたので、初めに事務局の御紹介をさせていただきます。

○武井血液対策課長 大分前のことで、今さらながら大変挨拶がおくれて恐縮でございます。課長の武井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○近藤血液対策課長補佐 また、今回より御出席いただいている委員がございますので、御紹介いたします。

 独立行政法人国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター長の溝上雅史先生です。よろしくお願いします。

○溝上委員 よろしくお願いします。

○近藤血液対策課長補佐 本日の出欠状況ですが、安全技術調査会全委員11名中10名の御出席をいただいております。

 本日は、日本赤十字社血液事業本部より佐竹正博血液事業経営会議委員、豊田九朗製造販売総括管理監、平力造安全管理課長、以上3名に参加いただいています。よろしくお願いいたします。

 カメラの頭撮りはここまででお願いいたします。

(報道関係者退室)

○近藤血液対策課長補佐 それでは、以降の進行を濱口委員長にお願いいたします。

○濱口委員長 皆さん、こんにちは。

 まず、事務局から審議参加に関する遵守事項についての御報告をお願いいたします。

○近藤血液対策課長補佐 本日、御出席いただいた委員の過去3年度における関連企業からの寄附金・契約金等の受け取り状況を報告いたします。本日の議題に関して「薬事分科会審議参加規程」に基づいて、利益相反の確認を行いましたところ、岡田委員から関連企業より一定額の寄附金・契約金等の受領の申告がなされておりますので、議題1~3に関しましては、意見を述べていただくことは可能ですが、議決に加わらないこととさせていただきます。

○濱口委員長 ただいまの御説明につきまして、委員の先生方から御質問はございますか。

 特にないようですので、御了解いただけたものとさせていただきます。

 それでは、初めに、事務局より資料の確認をお願いいたします。

○近藤血液対策課長補佐 事務局から資料の確認をさせていただきます。お手元の資料をごらんください。

 まず、1枚目が議事次第、次に座席表、委員名簿、設置要綱があります。

 その後に、議題1に関しての資料1が5枚あります。

 議題2に関しては、資料2が1枚。

 議題3に関しての資料が4枚、8ページまであります。

 その後に、議題1に関して参考資料1が1枚。

 議題2に関して参考資料2-1が3枚ありまして、その後、参考資料2-2が1枚。

 最後、議題3に関して参考資料3が6枚、12ページまでございます。

 資料の確認は以上です。不足等がございましたら、事務局までお知らせください。

○濱口委員長 ありがとうございました。

 それでは、早速議題1に入りたいと思います。日本赤十字社より資料1の説明をお願いいたします。

○日赤・平安全管理課長 資料1をごらんになってください。「シャーガス病に対する安全対策の変更について」でございます。

 「1.経緯」。

 日本赤十字社では、シャーガス病に対する安全対策として、平成241015日採血分より、献血時の問診で中南米滞在歴等があると申告された献血者、以下「対象者」と呼ばせていただきます。その血液につきましては、血漿分画製剤用の原料血漿として利用する安全対策を行い、ここは輸血用には使用しない、原料血漿として使用するという安全対策、製造制限を行い、あわせて対象者の中でT.cruzi抗体検査に同意された方への検査を平成25年1月8日より一部の地域でまず開始し、同年4月23日より全国展開をしております。

 その調査結果等から、「平成26年度第2回血液事業部会安全技術調査会」、平成261021日の開催において、恒久的なシャーガス病に対する安全対策案が示されております。

 めくっていただきまして別添1の「安全技術調査会の対策案」をごらんください。

 こちらの考え方といたしましては、検査対象についてはT.cruzi抗体検査の陰性履歴のない方で問診該当者検査対象ということで指定されております。

 まず、問診内容でございますが、次のいずれかに該当しますかということで1番、中南米諸国で生まれた、または育った。2番、母親または母方の祖母が中南米諸国で生まれた、または育った。3番、中南米諸国に連続して4週間以上滞在または居住したことがあるかという質問項目を聞くこととなっております。

 初回献血者の場合を想像していただければと思いますが、「はい」と答えられた方はT.cruzi抗体検査結果が当然ありませんので、そのまま下に進んでまいります。そうすると、問診内容3、該当地域を離れてから6カ月間以上経過していますかというクエスチョンに変わってきます。この6カ月というのは、T.cruzi感染自体の潜伏期間等はわかっておりませんので、最大限の安全性をとらえた期間ということで以前のこの部会で決められております。

 そこで、「はい」と答えられた方、リスクが低い方、6カ月以上たって潜伏期を超えられた方については採血をさせていただく。そのとき、その血液につきましては抗体検査をさせていただいて、陽性の場合は採血は永久不可、陽性の通知をさしあげて、遡及調査を行う。

 陰性の場合は、陰性血液ということで書かれておりますが、当該血液については原料血漿として使用させていただいて、輸血用、いわゆる赤血球部分等については品質管理用試験等に使用するとしております。

 次に、また戻りまして問診内容1で「はい」と答えられた方が2回目に来られました。この方が、前回履歴が陰性であった場合、問診内容2に進みます。ここで前回の採血日以降、中南米諸国に連続して4週間以上居住しましたかという問診を聞くこととしております。そこで「はい」と言われた方は、さらにその後に行かれたということになりますので、以前の陰性の検査結果の履歴を削除して、またその初回と同じ流れに入っていきますので、6カ月というキーワードが出てきて物事としては進むことになっております。

 一方、陰性履歴があって、それ以降に連続した居住または滞在をしていなければ通常採血に流れるということで御了承いただいております。

 このとき検査施設につきましては、その当時調べてみますと、各検査所当たり一日0.39.7本の検体、8カ所の製造所ですので、そのぐらいの数しかないものですから、検査施設を1カ所に集めて検査をやらせていただくと。輸血用としての出荷のタイミングにはまず間に合わないという観点から、このような対策で先生方の御承認をいただいていると理解しております。

 戻っていただきまして、これらの対策案を実施するには、日本赤十字社が使用している血液事業情報システムの改修が必要です。その際に要件等を整理して準備をとり進めてきましたが、問診票への追加や、シャーガス病の検査履歴の照合、さらには先ほどあった4週間の渡航という情報、またさらには、帰国後の期間を考慮して採血適否の判断等をシステムに行わせる必要がございますので、システム改修が相当以上に範囲が広く、多額の費用と、期間としては1年くらいを要することが判明したところでございます。

 現行の製造制限、輸血用を使用しないというところに関しては、輸血用血液製剤の安全性は担保されておりますが、年間に換算しますと1万2,000献血血液について、原料血漿とし輸血用血液製剤を製品化できないことになっております。そういう観点から申しますと、こういう血液について有効活用できず、献血者の意志を尊重できていないと考えております。そして、この対策案を用いますと、システムが改修するまでの間及び改修後も初回献血者の場合、検査未実施の場合には、製造制限が継続されることで輸血用血液製剤として活用することができないと考えます。

 そのため、現時点ではシステムの改修を最小限に抑え、かつ、安全性を維持したまま、輸血用血液製剤の原料血液として活用できるシャーガス病対策移行案を提案させていただきたいと思っております。

 「2.シャーガス病対策移行案」でございます。

 別紙は後から御説明させていただきますが、まず、問診内容につきましては当然のことながら前回の審議会で恒久的なシャーガス病に対する安全対策案と同様とさせていただきたいと考えております。

 そして、2番目が大きく変わるところでございます。問診に該当する献血者、対象者については全て全数検査を行うことで、輸血用血液製剤の製品化を可能にしたいと考えております。

 それと、対象者を毎回検査することで、過去の検査履歴の確認や、当該採血以降の再渡航歴調査に係る調査が不要となり、献血者の利便性が向上すると考えております。

 めくっていただきまして、別添2を御確認いただければと思います。

 まず、問診内容につきましては同じでございます。その観点からいくと、まず「はい」と答えられた方は6カ月以上たっていますかということをお伺いさせていただいて、「はい」と答えられた方については、採血をさせていただきます。そして、その血液については抗体検査を実施いたしまして、陽性の場合は採血永久不可、通知、遡及調査。陰性の場合は、輸血用血液製剤等に使用させていただきたいと考えております。

 そうした場合、今私どもが想定しているのが、検査実施施設2カ所ぐらいに機器を設置させていただいて、採血後速やかに検体を送付して早急な検査を行って、献血者の期待に応えるということも含めて、こういう対策で進めさせていただきたいと考えております。

 お戻りいただきまして2ページでございますが、「3.シャーガス病に関する問診対象者への安全技術調査会対策案とシャーガス病対策移行案における対応の相違点」、相違点のみを挙げさせていただいております。別添3を御確認ください。

 考えられるケースは3つでございます。まず、ケース1は、初回献血、検査履歴がなく、かつ、当該地域を離れて6カ月以上経過された方と、ケース2、2回目以降で前回検査結果が陰性かつ前回検査以降4週間以上の滞在歴あり、かつ、当該地域を離れて6カ月以上経過している、この2つのケースに関しましては、安全技術調査会の対策案では検査を実施した上で原料血漿のみに使用する。これは、検体の搬送とまた検査施設を1カ所ということで検討しておりましたので、原料血漿のみに使用と。移行案でございますと、検査を実施した上で、陰性ならば輸血用血液製剤等に使用させていただく。陽性ならば全ての製品に使用不可と考えております。

 ケース3でございます。こちらは2回目以降で前回検査結果陰性、かつ、前回検査以降4週間以上の滞在歴なしの方。こちらは前回陰性でその後滞在歴がないということで、恒久的な案では検査不要として通常の全ての製品に使用するという案でございましたが、一方、移行案では、こちらについても検査を実施した上で、陰性ならば輸血用血液製剤等に使用、陽性ならば全ての製品に使用不可というのが相違点でございます。

 お戻りいただきまして2ページですが、一応私どもとしては最短でこういう対策を進めていきたいと思っておりまして、「4.シャーガス病対策移行案の導入時期」ということで、検査機器整備等の関係から平成28年8月を目途に導入を考えております。

 一応、もともとこの安全技術調査会で示されております恒久案、これでワンステップ踏ませていただいて、しかるべき時期にシステム改修や大規模なものをやるときにあわせてやるとか、そういう対策を今考えているところでございます。

 私からの報告は以上でございます。

○濱口委員長 ありがとうございました。それでは、委員の皆様からの御意見をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

 では、私から。移行案と安全技術調査会の案との大きな違いというのは、献血者にかかる負担というのがかなり変わってくると思われます。毎回履歴がある方に関しては、場合によっては陰性履歴であってもいいのに、それを考慮できないという不都合が生じるようです。それについては、現状においても基本的には同じような形で対応されているということなので、新たな負担がかかるということではないと考えてよろしいでしょうか。

○日赤・平安全管理課長 そうでございます。

○濱口委員長 では、山口委員どうぞ。

○山口委員 大規模な改修時期はいつごろ、要するに5年も10年もこのまま続けるのか、それとも8月にこれを実施して、その後できるだけ早急に前回の安全技術調査会案でいけるようになるのか、その辺の見込みをまず教えてください。

○日赤・豊田製造販売総括管理監 大規模な改修といいますのは、次期システムを更新するときと考えております。ですから、もう4~5年はかかるかと。

○山口委員 そのシステムの費用面とかそういうことがあるのは、ある程度理解いたします。

 1点関連する話として教えていただきたいのですが、今までは検査すること自体に応諾を求めていたのですけれども、今度からは検査を全例でするので検査をしますということは申し上げるわけですが、その場合に検査をしたくないという人は献血できないという話になるかと思いますが、もう一つ関連して、検査で陽性だった人に連絡するのは、御本人が望んだ場合にのみということでよろしいですか。確認のためです。

○日赤・平安全管理課長 こちらについては、その他の通知の項目と同じようにやらせていただきたいと考えております。

○濱口委員長 ほかにいかがでしょうか。

 特に反対意見はないようですけれども、移行案の対応で進めるということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○濱口委員長 それでは御異議ないようですので、この移行案で進めていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 それでは、議題2「HEV感染実態調査について」、日本赤十字社から御説明をお願いいたします。

○日赤・平安全管理課長 資料2をごらんください。「HEV感染実態調査について」でございます。

 「1.概要」でございます。

 平成17年度の「薬事・食品衛生審議会血液事業部会安全技術調査会」において、輸血用血液製剤に係る受血者へのHEV感染防止対策を検討するに当たり、日本赤十字社の基幹センターで採血された血液について、HEV抗体陽性率を調査し、陽性率が高い地域でHEV-NATを実施し、今後のHEV-NAT拡大の必要を検討することとされております。

 各都道府県のHEV抗体陽性率を調査した結果、東京地域が8.6%と最も高くございました。さらに、この同地域で採血されたALT正常かつ血清学的検査陰性の献血者検体合計4万4,332本について、20本プール検体によるHEV-NATを実施した結果、3本が陽性となっております。こちらについては、全て3本とも遺伝子がジェノタイプ3ということでございました。陽性頻度が1万4,777本当たり1本ということについて、平成18年度の同調査会において調査をさせていただいております。

 しかし、北海道の試行的HEV-NATの陽性頻度が7,717本に1本より低かったこと、並びに検出されたHEVのジェノタイプは全て3であったことから、病原性の高いジェノタイプ4が散見される北海道に限定し、試行的にHEV-NATを継続し、その感染実態等を継続して調査することとされております。

 一方、HEV-NATにつきましては、試薬の標準化を進め、機械化・自動化に取り組み、平成26年度にはノバルティス社のパンサーシステムを導入し、北海道の試行的HEV-NATも個別検体によるNATに切りかえております。このシステムの95%検出限界感度は7.9IU/mLであり、以前の方法、約20プールで比較すると130倍程度感度が向上し、北海道の試行的HEV-NATの陽性率が0.011%から0.030%へ上昇していることを「血液事業部会運営委員会」に報告しております。

 日本赤十字社では、前回の調査より10年程度経過しており、今後の輸血用血液製剤のHEVへの安全対策について検討するために、再度HEVの感染実態調査を実施することとしております。

 今般、同調査に係る準備等が整ったことから、検査精度が向上した同システムを用いた個別検体によるHEV-NATを、前回の調査と同様に東京地域を対象に実施することとさせていただきたいと考えております。

 なお、この調査を行うに当たっては、当然のことながら輸血用血液製剤の安定供給に影響を及ぼさないように、スクリーニングNATの検査状況や検査機器の稼働状況等を確認しながらやらせていただきたいということを考えております。

 「2.調査実施施設」としては、関東甲信越ブロック血液センターでございます。

 「3.調査方法」でございます。

()個別検体によるHEV-NATでやらせていただきます。

 使用機器については、現在のスクリーニングNATで使用しているノバルティス社のパンサーシステム。試薬については、この機会にノバルティス社のProcliex HEVでやらせていただきます。

()調査地域でございますが、前回と同じということで東京地域を対象としてやらせていただきたい。

()調査対象と調査予定数でございますが、当然のことながら、この検査を入れることによって血液の出庫が止まるということは非常にゆゆしき事態と考えますので、200mL400mL及びPPP採血の献血者で、かつ、スクリーニングNATが既に陰性の結果が出ている血液を対象としてやらせていただきたいと考えております。調査実施予定数につきましては、現在約1万5,000検体程度と考えております。こちらの検体数の試算につきましては、北海道の試行的HEV-NATにおける陽性頻度の推移と平成18年度当時の東京のHEV-RNA陽性状況から、今回の調査における陽性数は3,0005,000本に1本と試算しております。そういう観点から1万5,000検体程度と出しております。

 「4.検査陽性例への対応」でございます。

()陽性献血者への対応。陽性結果の通知、当該採血日から6カ月間の献血自粛のお願い、HEVは豚等の生肉等からの感染が一番疑われておりますので、喫食歴の調査をやらせていただきたいと考えております。

()当該陽性血液への対応については、当然のことながら輸血用には使用せず、研究用等への有効活用をさせていただきたいと思います。

()遡及調査への対応でございますが、「血液製剤等に係る遡及調査ガイドライン」に基づき、遡及期間を6カ月間としてさかのぼって、もし献血があれば保管検体によるNATをやらせていただいて、その結果を医療機関に情報提供するということをやらせていただきたいと考えております。

()当該陽性検体への追加検査といたしましては、遺伝子型検査とウイルス濃度検査、ウイルス抗体価検査、IgGIgMの抗体価検査を実施したいと考えております。

 「5.調査開始時期と終了時期(予定)」でございますが、平成28年3月末より開始させていただいて、終了するまでに4カ月程度を要する見込みと考えております。

 説明は以上でございます。

○濱口委員長 御説明ありがとうございました。ただいまの御説明に関しまして、委員の先生方から御意見ございますか。

 溝上委員お願いいたします。

○溝上委員 御説明ありがとうございました。まず、現在日本でHEVが一番多いと思われるのは北海道地域だと思うのですが、北海道では既にHEVの検討はなされているのでしょうか。

○日赤・平安全管理課長 北海道地域につきましては、感染実態調査をやるという目的で継続的にやらせていただいております。

○溝上委員 もうやっているわけですね。

 2つ目に、4の()ですが、ウイルス抗体価検査につきまして、試薬は日本ではIgAしか保険で通っていないと思っていたのですが、IgGIgMはどういう抗体ですか。

○日赤・平安全管理課長 こちらは多分そういう試薬ではなくて、特殊免疫研究所から出された試薬を使ってやらせていただきたいと考えております。

○溝上委員 血液の供給に使うのは、保険に通っていなくても検査試薬として認められていればいいのですか。

○日赤・平安全管理課長 これは検査試薬です。

○溝上委員 それは国からアプルーブドされている試薬でしょうか。

○日赤・平安全管理課長 一応こちらは輸血のときには当然使わない検査で、あくまでも研究の中でやらせていただくと。今、先生が言われたとおり、IgAのところが確かに保険適用品になりますので、その辺も考慮させていただきながら検査項目追加等も含めて、あくまでもRNAが陽性になった検体の解析で使わせていただければと思います。

○溝上委員 了解しました。よくわかりました。ただ、抗体価検査の中にIgAも入れていただくともっとクリアーになって、臨床的にIgAの抗体を使う医者にもサポートできますので、それも入れていただければと思いました。

○日赤・平安全管理課長 追加させていただきます。ありがとうございます。

○濱口委員長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

 山口委員どうぞ。

○山口委員 これは前からお願いしていた検討をやっていただけるということで、非常にありがたいと思っています。

 ただ、気になることがありまして、前回の調査のときに東京が高かったということと、この資料にもありますけれども、東京のポジティブな方が高齢にいくほど多かったと。このことが非常に気になって、実際にこのデータは今もこの状態なのか、それとも既にこのパターンは右へ寄っている、要するに10年たったので陽性率の高い人は右側に寄っていってそれ以上ふえてこないのかという、その辺の検討をするためには、NATで陽性になった方だけをIgGIgMで検査するので、陽性率が恐らく推定だと1万5,000ですと3~4人ということになりますから、その3~4人をIgGIgMをはかるということになるのでしょうか。そうすると、前の東京だけがなぜこんなに高かったのか、本当にこれが現在もそうなのかという解析はちょっと難しい。

○日赤・平安全管理課長 今回は、あくまでも速やかにRNA検査をやらせていただいて、HEVの安全対策をまず優先させていただきたいということで、このような形にしました。

○山口委員 可能であれば、東京だけが高かった理由というのはわからないと思いますけれども、高い抗体陽性率に対応しないといけないかどうかを考えないといけないところがあるのだろうと思うんです。10年たって高齢者を履行していくのであれば時期的に変わっていくのだろうと考えられるのですけれども、陽性率が東京は相変わらず高いのであれば、東京での食の仕方とかそういうことも考えられるので、その辺の評価というのはもう少しきちんとやったほうがいいのかなとちょっと思いました。

○濱口委員長 どうぞ。

○日赤・佐竹経営会議委員 全く御意見のとおりでありまして、要するに、HEVの陽性率はコホート効果があるのかどうかという観点ですね。これは、よくHAVとの対比で言われますので、10年たっていますので、この機会にそういった内外でHEVについてはコホート効果があるというものと、ないというものと両方の意見がございますので、そういったことについても何らかの調査は考えていきたいと思っております。

○濱口委員長 ほかはいかがでしょうか。大戸委員からお願いします。

○大戸委員 はっきりした数字はわかりませんが、東京都のいろいろな血液センターで献血される方の恐らく2~3割は東京都民ではない人たちだと思うんです。居住地と職場で全部東京都としてくくった場合に、先ほど山口先生も指摘された習慣とか食生活を考えた場合に、居住地のことも少し考えておかなくてはいけないのではないかと。文化的に千葉県のこちら側や埼玉県のこちら側というのは東京都とほぼ同じ環境と考えていいかもしれませんけれども、その2~3割のコンタミという言葉を使ってはいけないですけれども、東京都民ではない人のデータを解析するときは配慮していただければと思います。

○日赤・平安全管理課長 ありがとうございます。

○濱口委員長 岡田委員お願いします。

○岡田委員 1万5,000検体ですけれども、年齢の分布などは全く考えずにアットランダムにサンプリングして検査をするということでしょうか。

○日赤・平安全管理課長 今のところスクリーニングNATが終わったものからを考えておりまして、アットランダムな形になろうかと思っております。

○岡田委員 そうすると、今の献血をされる年齢の頻度になりますね。それを一応考慮して、どの世代が高いとか換算して評価するのでしょうか。

○日赤・平安全管理課長 検査の後に、そのあたりについてもデータ等を確認しながら追加できればと考えております。それについて先生御指摘のとおり、年齢分布がどこに入るか、そこは検査が終わった段階で調査させていただきたいと思っておりますので、そのうちに御報告させていただければと思います。

○濱口委員長 ほかにいかがでしょうか。長村委員どうぞ。

○長村委員 この検査なのですが、スクリーニング検査NATHBVHCVHIVが陰性の血液にスクリーニングでHEV-RNANATするということですが、これは同時にはやはりまだ難しいのでしょうか。それとも将来的には、プライマーの問題かとは思いますが、同時に全部できるようになるのでしょうか。

○日赤・平安全管理課長 先生の言われているのは、HBVHCVHIVのマルチのものに1つHEVのプライマーを加えてやれないかということかと思いますが、なかなか現実的には厳しいように伺っております。流れとしては、そういう形ができれば一番よろしいとは思うのですけれども、開発を含めてなかなか進んでいないのが現状だと思います。

○濱口委員長 よろしいでしょうか。ほかはいかがでしょうか。

 特にこれ以上御意見はないようですので、東京地域における実態調査を日本赤十字社の提案どおりに進めていただくということでお願いしたいと思います。ただ、幾つか委員の先生から御提案がありましたように、後で解析したデータが今後の安全対策に有用なものになるように、地域や年齢のことも十分に加味して検討していただきますように、よろしくお願いします。

 それでは、議題3に移りたいと思います。「ALT検査による製品除外の見直しについて」、日本赤十字社から御説明をお願いいたします。

○日赤・平安全管理課長 私からまた御説明させていただきます。資料3をごらんください。「ALT検査による製品除外の見直しについて」。

 日本赤十字社血液センターでは、現在ALT61IU/L以上の献血血液は、輸血用血液製剤や原料血漿に使用しておりません。これによって年間約500万献血中12万~15万の献血血液が廃棄されております。

 日赤のスクリーニング体制は、感度及び特異度の高い検査法を導入しており、ALT値は肝炎ウイルスを初めとする病原因子の代替マーカーとしての意義がなくなったと考えられるため、ALT値による製品化除外の自主基準を廃止したい。なお、献血者への生化学検査サービスとしてのALT検査は継続したいと考えております。

 昨年9月4日開催の「平成27年度第1回血液事業部会安全技術調査会」において、なお一層のデータや資料の集積、段階的な廃止が可能かどうかの検討等を求められました。日赤内部で検討した結果、最終的にはALT値による製品化除外の全廃を目指すものの、まず、除外基準を101IU/Lに設定し、その安全性に対する影響を見ながら段階的に廃止に移行していくのが適切だろうという考えに至りました。この件に関連する過去の研究論文や資料を整理して、ALT検査に対する考え方をまとめさせていただきました。

 「1.献血者と血液の選択の基本的な考え方について」。

 血液センターにおいて、献血で得られた血液を取捨選択する際の基本的な考え方は、医薬品としての血液製剤の原料として適格である血液を選ぶことにあります。これはすなわち、患者へ感染症の伝播や免疫反応などが起こらないこと、また、十分な品質を保っていること、これはヘモグロビン濃度や血小板数を確認することでございます。この目的のために、ALTの基準がどの程度寄与しているかを検討することが重要でございます。

 原料となる血液は、献血者からの採血によって得られます。検診医師による採血可否判断の際の基本的な考え方は、感染因子を持つ可能性のある人を排除することと、採血によって健康上の被害ができるだけ起こらないような人を選択するということでございます。これは健康な人からのみ採血を行うという考え方とは異なります。献血での検診が一般の健診センターのような機能を備えて、健康な人からの血液のみを選択することは、血液センターの業務の範囲を超えるものでございます。そして、健康の定義も曖昧ではございますが、ALTのみによって健康を保証できるものではなく、ALTが健康を表す最適な検査法でもないと考えております。

 「2.スクリーニング検査とALT検査の現状」。

 日赤の血液センターでは、血清学的検査に加えて2014年8月に個別検体によるNATスクリーニングを導入し、また、2012年よりHBS抗体価200mIU/mL以下のHBC抗体陽性血液を全て排除しております。これらの措置によって、2016年1月現在、20142015年の2年間で輸血によるHBVHCVHIVの感染例は1例も確認されておりません。

ALT検査は、現在61IU/Lを除外値に設定しております。検査結果の通知を拒否しなかった献血者へは、ALT値を8~49IU/Lを基準値として通知しております。また、101IU/L以上を示した献血者へは「基準値からはずれていますので医療機関での受診をお勧めします」との文言を添えて受診勧奨を行っております。この受診勧奨は、その血液に問題があるとして行うものではなく、献血者の健康管理のために行うものでございます。

 「3.ALT値と肝炎ウイルスについて」でございます。

ALT値は肝細胞の障害の程度を表すものであり、ALTと輸血感染症の関連の考察は、病原因子の中でも肝炎・肝障害を惹起するものについて重点が置かれるべきと考えます。

 1番目、HCVHBVにつきましては、ALT検査は、当時不明であったnonA nonB肝炎ウイルス(HCV)の代替マーカーとして、1980年代に日本を初め各国で導入されております。その後、HCV抗体検査の導入によりその意義はなくなったとされ、米国FDA1995年にALT検査を中止しております。その後、多くの国でもALT検査は中止され、WHOも安全性に関してALT検査を推奨しないとしております。現在ALTを検査項目に入れていることが確認されるのは、欧州46か国中ではロシアとルーマニア、アジアでは台湾と韓国でございます。

 前回の調査会の中で、こちらについては御理解いただいていると思いますので、文献は飛ばせさていただきます。

 現在、アメリカ赤十字の感染症部門のチーフであるSusan Stramer博士によれば、ARCにおいてはALT検査を中止した後、高感度検査法の導入後はHCVのすり抜け感染事例や、予期せぬ肝炎の伝播は1例も起きていないということでございました。

 2番目、HEVについでございます。北海道血液センターにおける2014年8月から201512月までの個別NATによれば、献血379,421本中、HEV RNA陽性数は124件、0.033%でございました。このうち、ALT61以上は10件、HEV陽性例124件中の8.1%でございました。

 前回お示しした資料では、ALT検査に閾値を設定した場合と、しない場合で、HEVウイルス血症献血をとらえる確率に有意差が認められないこと、ALT値によるHEV検出効率はHBC抗体のオカルトHBV検出の8分の1以下であること、検査法としてのALTによるHEV的中率(0.0008)は、HBC抗体による個別NAT陽性的中率(0.0194)の20分の1以下であることで御説明させていただいております。

 3番目、HAVについてでございます。日本を含め先進国では、国民のHAV抗体陽性率が極めて低くなっており、HAV感染のアウトブレイクが危惧されております。しかしながら、輸血用血液製剤によるHAV感染確定例は、日本では2010年の1例のみであり、また、その感染の原因となった血液のALT値は60以下でございました。患者は感染が確認されているものの発症はしておりませんでした。世界でも輸血によるHAV感染の報告は極めてまれでございます。

 下のところに、まず、トランスフュージョンから塩基配列の一致によって証明された初めてのHAV感染例が報告されておりますが、こちらについては原因となった血液のALTは正常域であった。

 あと、一番下の中国を見ていただきますと、HAVの抗体陽性率が50%前後のendemic areaで献血700本余りのサンプルでHAV RNA陽性は1本も出ていないことが報告に載っておりました。

 4番目、CMV(サイトメガロウイルス)でございます。サイトメガロ初感染は肝炎を起こすことがございます。サイトメガロ肝炎を起こしながら無症状の人が献血した場合、その血液をALT基準で排除することにより、予期せぬサイトメガロ感染を防ぐことができる可能性がございます。しかしながら、平成16年度以降、順次導入した保存前の輸血用血液製剤から白血球を除去する(保存前白血球除去)を行うことで、ほとんどのCMVが除去されることから、現体制下でのサイトメガロ感染の確率は極めて低いことを前回示させていただいています。また、輸血によるサイトメガロ感染を事前に防ぐには、サイトメガロ抗体陰性血を供給する体制ができてございます。

 なお、日赤の調査によりますと、ALT60以下の2,400名、ALT61以上100IU以下の300人のドナーのCMV DNAの陽性率は、それぞれ1.71%と0.67%ということで、高いところが陽性率も高いということではないという結果でございます。

 次に5番目、EBVでございます。EBV感染も肝炎を起こすことがございます。前回、輸血によるEBV感染が問題となった例はないということで御報告をいたしましたが、その後これに該当する論文が見出されたので追記させていただいております。

 まず、最初の論文でございます。15カ月前に伝染性単核球症に罹患したドナーからの血液を輸血された肝移植患者において、ドナーに由来するEBVLymphoproliferative diseaseが認められた。輸血血液が白血球除去されていたかは不明でございます。これ以前に輸血によるEBV感染の報告は複数ございますが、詳しい解析はされてございません。

 その下も輸血による伝染性単核球症の報告でございますが、これらの報告においてもドナーの血液のALTが異常値であったかどうかの記載はございませんでした。

 次のスタディーでございます。後方視的スタディーで、EBV未感染の患者の臍帯血移植後のEBV-viremiaの率が経時的に上昇していく様子から、輸血によるEBV感染が存在することを予想した。実際には製剤は保存前白血球除去されており、また、少なくとも成人患者はほとんど既感染で抗体を持っているので、臨床的に問題となることはまれである。

 次でございますが、臓器移植のドナー/患者98ペアのドナーの22%でEBVの増殖が見られたが、患者でのEBV増殖に影響はなかったという論文でございます。

 次に、赤血球製剤16本についてEBVを調べると、14本が陽性であった。白血球除去すると13本でPCR陰性となった。減少率は1万分の1以上。1本で極めて微量のEBVが白除以後も検出された。血小板製剤でも同様の報告があり、そこでは白血球除去後はEBVは検出されておりません。

 これらのことによると、輸血によるEBV感染を問題とした論文は近年ほとんどなく、またCMVと同じようにEBVも保存前白血球除去によってほとんど除かれており、現体制において十分安全性は担保されていると考えております。また、日赤の調査では、ALT61以下の16人のドナーを無作為に抽出してEBV DNAを検査したところ、14人が陽性でありました。成人はALT値に関係なく高い割合でEBVを末梢血に有していることが示されております。

 6番目、TTVにつきましては、下の3つの論文を含めて肝炎を起こすウイルスとしてのTTVの臨床的な意義はないとされております。

 7番目、GBVについても下の2つの論文等から、現在は肝炎を起こすウイルスとして臨床的意義はないとされてございます。

 これらを総じまして、ALT高値の血液を排除することによって、肝炎・肝障害をおす病原因子の伝播は防ぐ意義はないのではないかと考えております。

 「4.その他の疾患とALTとの関連について」でございます。

 既知の感染性因子とALTでまとめさせていただきました。上述した肝関連の感染症と、特異的検査を施行しているHIV、梅毒、伝染性紅斑(ヒトピルボウイルスB19)以外に、輸血感染症あるいはその可能性のあるものとしては、マラリア、デング熱、ウエストナイル熱、チクングニア熱、シャーガス病、バベシア症、エルシニア菌、サルモネラ菌などによる感染性胃腸炎などが挙げられます。このうちマラリアとデング熱については肝障害の起こることが知られております。マラリア患者では約4分の1に肝障害が見られますが、多くはALTまたはAST100IU/L以下の軽度のものでございます。デング熱でもしばしば肝障害が認められますが、障害の程度は軽くございます。いずれも発症後の検査所見であり、発症前に肝機能障害が見られるか否かは不明でございます。しかしながら、日本ではこの30年間マラリアの輸血感染は報告がなく、デングウイルスの輸血感染も全世界で十指に満たないことから、これら感染性疾患の輸血感染の防止をALTに期待することは現実的ではないと考えております。

 ウエストナイルウイルス感染で肝障害が起こることを示した文献は見当たりませんし、チクングニアウイルスの輸血による感染はまだ報告がございません。バベシア症においては軽度のALTの上昇が見られることがございますが、これはかなり消化器症状が強い時期の所見でございます。また、黄疸がしばしば観察されますが、これは溶血によるものと考えております。日本で輸血によるバベシア感染が証明されたものは1例のみでございます。

 シャーガス病とALTの関連については下の論文で示しております。

 2番目、未知の感染性因子とALTでございます。未知の感染性因子の感染リスクをALT基準によって減らすことができるかについては、その感染因子がALT上昇をもたらすかどうかが不明であるので、評価は非常に困難でございます。

 一方、ALT高値の献血血液の中で既知の病原因子がどのような頻度で分布しているのかについては探る意義がございます。その意味において前回、合計300本の検体についてウイルスの網羅的解析の結果を示しております。その結果、検出されたものは病原性のないものばかりで、ALT値との関連も認められませんでした。また、未知の病原因子の存在を示唆するような結果も得られませんでした。

 そこで、さらなる検査の追加の示唆をいただきました。しかしながら、輸血感染を起こす新たな感染症は現在、全世界でも数年に一度の頻度で、その候補が挙げられるような状況でございます。ここで数百人の健康な献血者群の中からそれを見つけるのは極めて困難であろうと考えております。

 次に、「5.献血者におけるALT上昇の原因について」でございます。

 日本の1,590万本余りの献血血液を調べた結果、ALT値が60IU/L以下または61IU/L以上であることと関連したものは、γ-GPTBMI及び年齢であり、特にBMIALTの間に強い正の相関があることを前回示しております。献血者における同様の調査結果は、下記に示しておりますが、海外においても同じように報告されております。

 総じて、こちらにつきましても、感染性因子との関連を記載した文献はほとんどないというのが現状でございます。

 「6.新たなALTの製品除外基準について」でございます。

 特異的な高感度検査法が導入された今日、HBVHCVの代替マーカーとして、またその他の感染性因子のマーカーとしての意義もないと考えます。非感染性疾患によってALTが高値となった血液が受血者に被害を及ぼすメカニズムは考えがたい。

 新たな基準をどこに置くかについても、明確な指針を見出すことは困難でございます。従来61IU/Lを基準にしてきましたが、これも何らかの根拠に基づいたものではございません。その意味では、基準は任意に設定せざるを得ないと言えると考えています。

 ここではリスクを評価しつつ基準を上げていくために、一足飛びに高いレベルに設定することを避け、また現在101IU/L以上を示す献血者に医療機関の受診を勧奨していることを考慮して、101IU/L以上の血液を不適格とさせていただきたいと考えております。

 現在、年間12万の献血血液(全献血の2.3%)がALT自主基準によって不適となっております。このうちALT61以上100以下の献血は9万9,000献血でございます。全体の2%と見積もっております。製品化除外基準を101IU/L以上とすると、年間約10万の血液が適格とされ、新たに製品化されることになります。この10万の血液を在庫に含めることが出来れば、献血者数が減少の一途をたどりつつある今日、極めて有効な対策となると考えております。

 なお、さらに、何よりもこれは献血者に御協力いただける献血者の善意に応える重要なステップであると考えてございます。

 説明は以上でございます。

○濱口委員長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの御説明に関しまして、委員の皆様からの御意見を承りたいと思いますが、いかがでしょうか。白阪委員どうぞ。

○白阪委員 大坂医療センターの白阪でございますけれども、前回の9月にも私はどちらかというとALTはお示しいただいたデータから、検査という意味で、肝炎除去等の意味での感染症を除くという意味では、もう必要ないのではないかという御意見を申し上げたと思いますけれども、今回さらに詳細なおまとめをいただいた中で、やはりそうではないかと思います。各肝炎の可能性について厳密に現在得られる資料の中で御検討いただいて、これが最良かと思いました。

EBウイルスについては、ほとんどの日本人が既に幼少時に感染している、いわゆる既感染の状態、これはCMVと同じで、最近ではキッスィングディジーズとか言われることもありますけれども、ほとんどないことなども含めて、それでいいのではないかと。一番最初に現状の中で言われていたように、明らかな肝炎ではないのに、ALTが高いということだけで除かれる方が12万~15万ぐらいあると。これは全体の2~3%の数になってございますけれども、私は献血推進の研究もさせていただいていますが、1%上げるのがどれだけ大変かということもよくわかってございますので、そういう意味でも本当にALTで除外することに説得性がなければ、ここにお示しのように念を入れて101という設定を新たにされておられますので、私としては、これで精いっぱいギリギリの最善の提案をしていただいていると。

 将来はさらにデータが集まれば、ALTによる外すというのはなくしていいのではないかと思っています。ただ、将来いわゆる新興肝炎ウイルスが出ないという保証はもちろんないので、そういう仮定はどれだけ意味があるかわかりませんが、そのときはサービスのためにやっておられるALTの動きの中で読めるかもしれませんので、ALT自体は健康サービスで使えるのであれば、自主基準としてのALTは外されていいのではないかと。そういう意味で、101でよろしいのではないかと思います。

○濱口委員長 ありがとうございます。

 ほかはいかがでしょうか。溝上委員どうぞ。

○溝上委員 今のお話に賛成いたしますが、現在、年間2,000万人が海外から日本にお見えになる。その人たちが新しいものを持ってくる可能性は高いということも考慮し、ALTの検査というのはぜひ続けていただきたいと思います。

 それから、おっしゃいましたように、ALTを献血血液の除外基準から外すというのは賛成しますが、今後も新しいものが出ないという保証はございません。また、オリンピックを開催しますと世界中からたくさんの方がお見えになりますので、ALTの測定検査だけは続けていただたいと思います。

○濱口委員長 ありがとうございました。

 脇田委員どうぞ。

○脇田委員 私も、ALTを外すと言っても101までに設定するということですので、その点については賛成いたします。今まで歴史的な意義というものはあったのだろうと理解しています。新しいウイルスが入ってくるところでの敷居としても重要かもしれないという考えもありますけれども、実際には肝臓に炎症を起こすようなウイルスというのは、それほど入ってこないだろうと今のところは考えています。ジカ熱にしましてもデング熱に比べると非常に症状は軽いというところで、それほど肝機能障害を起こすということではないと理解しています。

 以上です。

○濱口委員長 ありがとうございます。

 山口委員どうぞ。

○山口委員 前回の私の意見は、ALTを今の基準から変えるというのは賛成して、ただし、今回示していただいているのが101以上ということで、天井をなくすということ自体は慎重にやるべきではないかという意見でございました。今回もそれに対応ということではよろしいのかなと思っております。

 ただ、1点気になるのは、これを導入した後、エンドユーザーへの情報提供をどうするべきか。もう一つは、つくられた原料血漿、例えば、先ほどALTBMIの関連が非常に高いという話があって、それがどれだけ影響するかわからないですが、中性脂肪が高いということも可能性はあります。そうすると、これを製造メーカーが使われる場合の原料血漿としての品質もエンドユーザーの立場になって、そういう情報を提供していかないといけないだろうと思いますし、将来もし青天井にしてしまうという話のときには、またさらに慎重な対応が必要になるかなと思います。

○濱口委員長 ありがとうございます。どうぞ。

○日赤・佐竹経営会議委員 もし、きょうこれがお認めいただければ、早速、血症分画メーカーに御連絡して、しかるべき対応等が必要であればしていただきたいと思っております。

○濱口委員長 ほかにはいかがでしょうか。新津委員どうぞ。

○新津委員 EBVについてお伺いいたします。EBVDNAが陽性だからALTが上がるとは考えていないので、ALTを外すことは問題ないと思います。しかし、EBVは肝炎だけではなくて、リンパ腫やリンパ増殖性疾患を発症するということが言われていますので、EBV-DNAが残っていても、その点に対しては大丈夫なのでしょうか。最近EBV初感染症は、20代、30代前半でも結構いらっしゃいます。また、EBV-DNAは高齢になると再活性化して上がってくると言われていて、そのときにリンパ腫やリンパ増殖性疾患を発症します。CMVの場合は、CMV陰性の血液を供給していただけるので、そこは安心して使えると思いますが、EBVに対してもEBV陰性血液の供給が同じようにできるのでしょうか。高齢となり免疫が低下している状態で輸血によりEBVが少量入ったときに再活性化してリンパ腫やリンパ増殖性疾患が発症しないかをALTとは関係ない話で申しわけないのですが、教えていただければと思います。

○濱口委員長 お願いします。

○日赤・佐竹経営会議委員 そのことにつきましては、いろいろな論文等でも非常にディベートのあるところでございます。現実には、そういった事例が輸血で起こったということは、先ほどのような個別の事例はございますけれども、血液疾患でEBウイルス、例えばドナーのほうで口腔内のスワブから増殖可能なものが検出されて、その血液が患者さんに入った場合、その患者さんのほうで増殖可能なEBウイルスがどのくらいの率が出たかを調べると、ほとんど差がなかったというのが1つの論文に載っています。実際に数字でそういうことを挙げたのはこの論文だけではないかと思います。一般には輸血では極めて起こりにくいと言われています。

 幾つかの理由がございますけれども、1つは、当然ながらドナーがウイルスを持っていても中和抗体も同時に持っているということ。それから、輸血を受けた患者さんのほうでも、年齢が若くなればもちろんネガティブが多くなりますけれども、多くの場合は成人の場合には陽性であるということ。それから、実際に輸血用血液に入っているEBウイルスは、ほとんどが陽性になりましたが定量不可能のレベルです。白血球除去してどのくらい残るかをやって、1例残ったものがあったわけですけれども、これは論文を何度読んでも残った量が1.25と書いてありまして、こういうものが本当に定量できるのか不思議ですけれども、そうとしか読めませんのが極めて微量であるということ。

 それから、もう一つは、血液製剤はほとんどのものが、少なくとも赤血球の場合には冷蔵あるいは冷凍で保存されます。これはBセルですので、御存じのようにBセルは非常に保存に弱いですし、2日たてば大体死んでしまいますので、そういった意味でも入っていたとしても、少なくとも赤血球等での感染というのはほとんどあり得ないだろうと一般には言われていますので、起こったとしても大体は血液ではないほうのドナー由来、あるいは本人がもともと持っていたもののリアクティベーションが通常だろうというのが一般的には言われていると思います。

○濱口委員長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。

 岡田委員どうぞ。

○岡田委員 このEBVが陽性になったというのは、献体そのものはバフィーコートから検出されたのか、それとも全血で検出されたのか、どちらなのでしょうか。

○日赤・佐竹経営会議委員 血漿は陰性で、細胞分画が陽性ということです。

○岡田委員 わかりました。そうすると、感染細胞がバフィーコートにいるということですね。わかりました。

○濱口委員長 長村委員どうぞ。

○長村委員 私も前回、山口委員と同様に青天井にするのではなくてということで、100で現在も通知しているというところなので妥当だと思います。今後どうするかですが、世界的な動向を見ながらというよりは、日本がアジアという考えでいろいろな感染症が入ってくるということと、将来的には先ほどのHEVのような核酸検査もどんどん進めていただければ、さらに安全性の高い製剤になっていくのではないかと思いました。

○濱口委員長 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。岡田委員どうぞ。

○岡田委員 このALTの規格を緩和するということで、緩和した後の副作用がどうなったか、その辺はフォローしたほうがいいと思います。

○濱口委員長 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 では、さらに御意見はないようですので、日赤から御提案いただきました製品除外基準を101IU/Lとすることで、安全技術調査会としてはそのようにしたいと考えます。ただ、条件として1つは、使う側のもしくは製造側、血漿として使われる側への必要な情報提供をきっちりやってもらうということと、その後の影響についてのフォローを、何らかの調査を行うなどして緩和が大きな影響を与えていないかどうかを見ていただくと。それから、ALT検査自体は今後のことを考えると、輸血の除外基準からは緩和するけれども、引き続き続けていただきたいという意見だったと思いますけれども、そういうことでよろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○濱口委員長 御異議ないようですので、そういうことで進めていただきたいと思います。

 本日の議題は全てこれで終了いたしましたけれども、ほかに何か御意見ございませんでしょうか。

 山口委員どうぞ。

○山口委員 先ほどちょっとEBの話があったのですけれども、HEVの免疫不全のときに持続感染した事例があって、その点で関連して今回もE型肝炎のことがあったのですが、サイトメガロウイルス検査を行った血漿と同じように、そういう特殊な患者さん専用にE型肝炎を検査した提供というのが今後可能か検討していただくことは可能でしょうか。

○日赤・佐竹経営会議委員 御意見どうもありがとうございます。全くごもっともな御意見です。HEVの安全性に関しましては考えなければならないファクターが極めて多く複雑に絡まっておりますので、先ほど議題2でお示ししましたような調査をしまして、それは非常に有力な情報になるかと思いますので、それをもとに総合して先ほど先生が言われたような方法も、当然その中の一つの考え方になりますので、それも含めて考えていきたいと思っております。

○濱口委員長 非常に重要なポイントだと思います。HEVに関しましては、疫学調査のデータをもとに、さらに安全対策をどうするかを引き続き検討していきたいと考えますので、よろしくお願いいたします。

 ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、きょうの議題はこれで終了ということになりますので、事務局に議事を戻したいと思います。

○近藤血液対策課長補佐 濱口委員長、ありがとうございました。

 次回の安全技術調査会の日程は、別途御連絡さしあげたいと思います。

 本日は、委員の皆様、本当にありがとうございました。これにて「平成27年度第2回血液事業部会安全技術調査会」を終了いたします。


(了)

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