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2016年2月24日 第2回「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」懇談会 議事概要

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成28年2月24日 15:00~17:00


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○出席者

磯山事務局次長、大内氏(WEB参加)、金丸座長、小林(庸)氏、小林(り)氏(WEB参加)、中野氏、松尾氏、柳川事務局長、山内氏

○議事

○金丸座長 

それでは、定刻となりましたので、ただ今から第2回「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」懇談会を開催いたします。

  皆様におかれましては、大変御多忙の中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。

  本日、青野先生、浦野先生、冨山先生、御手洗先生、山川先生は、御都合が合わず、欠席される旨御連絡を受けております。

  大内先生と小林りん先生は、ご覧のとおり、WEBでの御出席となります。

  それでは、議事に入らせていただきます。

  小林りん先生は本日初めての御参加となりますので、まずは簡単な自己紹介と、働き方の未来についての御関心事項を述べていただければと思います。

  小林りん先生、よろしくお願いいたします。

 

○小林(り)氏 

よろしくお願いします。

  初回欠席したにもかかわらず、2回目もWEB会議で申しわけございません。

  私は今、インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢という、生徒の7割が海外から招聘されて、しかも7割の生徒には奨学金を給付するという全寮制のインターナショナルハイスクールを軽井沢で運営している者です。

  この会議では、働き方の未来ということなので、20年後、30年後に社会で活躍するであろう人材の育成を目指している教育者としての立場から、微力ながら発言させていただければなと思っています。

  問題意識なのですけれども、皆様も御案内のとおりかと思いますが、教育界ではここ数年すごく話題になっているのが、デューク大学のキャシー・デビットソン教授が、AIなど技術の進化に伴って、今から10年から15年後に社会に出る全米国人の65%が現時点では存在しない職業に就くであろうという予測をしています。65%という数字の真偽は別として、かなりの割合でこれまで人間が担ってきた職業がテクノロジーに取ってかわられて、逆に新たな職業が見出されるという、すごくエキサイティングな時代が到来するということは間違いないのだと思うのです。

  教育関係の国際会議などに出ると、もはや学校の存在意義というのは、いかにジョブシーカーを育てるかではなくて、ジョブクリエーターを育てるかということに移り始めていると思います。

  私たちの学校でも、卒業した後に社会に出て組織に所属する人間としてではなく、ピンでも生きていける人間になってほしいということを常日頃から生徒たちに話しています。来るべき時代がいかなる激動の変化を遂げていくのかとか、あるいはその中で自分がやりたいこと、得意なこと、それから社会のニーズを見極めて、柔軟に自ら仕事をつくり出していくことが肝要であるというふうに生徒たちには話をしています。

  翻って、こうした観点から考えると、労働市場という意味でいくと、転職という行為も今とは全く違うスケールと次元で当たり前になっていくのだろうなと思いますし、あるいは失業という概念についても、失業というのは何なのかという概念そのものが変わっていく時代なのかなと見ています。

  その中で国は何をすべきなのか、あるいは逆に何をやめるべきかということを根本的に考え直す時期に来ているのかなと思っています。

  ただ、私は教育の立場でしか仕事をしていないので、労働分野は全くの素人なのですけれども、これから皆様と勉強させていただきながらやっていきたいなと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

○金丸座長 

ありがとうございました。

  それでは、本日の議題に進めさせていただきます。

  まずは、2035年という未来がどうなっていくのかというイメージを皆様と共有させていただきたいと考えておりまして、AIの第一人者であります松尾先生に資料に基づきまして御説明いただきたいと思います。

  それでは、松尾先生、よろしくお願いいたします。

 

○松尾氏 ※()内はスライドに投影された資料等

よろしくお願いします。

(資料1 1枚目)
  AIの技術革新による社会への影響ということで、30分ぐらいお話しさせていただきます。

(資料1 2枚目)

  自己紹介ですけれども、人工知能の研究をしておりまして、日本人工知能学会というのがありますが、そこで編集委員長を2年ほどやりまして、今は倫理委員会というのができて、それの委員長をやっています。

(資料1 3枚目)

  今日の話は、ディープラーニングというのを中心にして、それが社会、産業にどう影響を与えるかという流れなのですが、先日ニュースがありまして、グーグルの人工知能が囲碁でプロ棋士を破ったということです。これは「AlphaGO」というプログラムなのですが、中国出身のプロ棋士と対戦して5勝0敗だったということです。

  これは結構驚くべきことでして、もともと思考ゲーム、囲碁とか将棋、チェス、オセロのようなものは、人工知能の分野でずっと研究されてきていたのですけれども、将棋がようやく勝てるようになってきたというのがここ数年でした。プロ棋士に五分五分か、あるいは若干上回るぐらいの勝率だったのですが、囲碁は将棋の10年遅れと言われていたのです。ですから、2025年ぐらいになって勝ち始めるのではないかと言われていたのですけれども、それをグーグルの研究者がいきなり勝ってしまった。

(資料1 4枚目)

  何をやったかというと、ディープラーニングという技術を使った。囲碁の場合は、局面を画像的に読み取る、この辺は優勢だとか、この辺は厳しいとか、こういう画像的に読み取る能力がかなり重要なので、ディープラーニングというのは画像を読み取れる力がすごい強いのです。それを使うことによって、10年かかるはずだったところを一気に数カ月でやってしまったということです。

(資料1 5枚目)

  そもそもコンピュータにとって画像を読み取るというのはすごく難しいのですけれども、それが何でかということを少し説明したものがこちらになります。「イヌ」「ネコ」「オオカミ」と書いていますが、これは人が見たら一目でわかります。これは人間にとっては非常に簡単なのですけれども、コンピュータにとってはこれがすごく難しくて、どういうふうにやるかというと、普通に考えると、例えば耳が垂れていて目が長ければイヌですねとか、それから耳がとがって目が長ければネコですね、耳がとがって目が長ければオオカミですねと。こんなふうにルールを書いていく。ところが、こういうやつがいて、これもイヌですねということになってしまうので、こういうルールを書いても書いてもどうしても例外が出てきてしまう。

  人間が、耳が垂れているとか目が長いとか、こういう特徴量を定義している限りはどうやっても無理なのです。例外がどうしても出てきてしまう。でも、人間はなぜかそれが上手くできるということで、どうやっているか。

(資料1 6枚目)

  それができるようになってきたのがディープラーニングです。これは今の特徴量を生成するというのをコンピュータ自らができるようになってくるという技術で、詳細は割愛しますが、人間の視神経の働き、脳の働きと非常に似たやり方をすることによって、視覚的な特徴量を取り出すことができるようになるという技術です。

(資料1 7枚目)

  それによって、今、画像認識の精度がすごい勢いでよくなっています。ここに4枚の絵がありますけれども、左からヒョウ、コンテナ船、プラネタリウム、コアラなのです。これを当てるというタスクがあります。これは4枚中3枚当たっていて、右の1枚だけをコアラでなくてウォンバットと答えているのです。ですので、1問間違えている。エラー率、間違い率が25%という例です。

2011年ぐらいはこのエラー率が大体25%、26%ぐらいで、1年間研究者が頑張って研究すると1%精度が上がるという分野でした。

  ところが、2012年のコンペティションではディープラーニングのチームが現れて、ほかのチームが軒並み26%台で戦っているところをいきなり16%というのを出してしまったということで、かなり衝撃的でした。ここでやったのが特徴量を自動的に生成するということです。

(資料1 8枚目)

  それ以降すごい勢いで画像認識の精度が向上していまして、2013年には11.7%になり、2014年には6.7%になりと。人間がやるとこのタスクは何%間違うかというと、5.1%間違うのです。それに対して、マイクロソフトは昨年2月に4.9%というので、初めて上回りました。それに引き続きグーグルも4.8%というのを出して、今のステート・オブ・ジ・アートだと3.6%まで行っているということで、人間の認識精度を上回ってしまっているのです。これはここ数十年、コンピュータができて以来一度も実現されていなかったことが実現されたということです。

(資料1 9枚目)

  人間を超える画像認識というのはどういう感じなのかというと、これがその一つの例ですが、顔認識の研究です。2枚の顔画像が同じ人なのかどうかを見分けるというタスクなのです。800万人の異なる人間の2億枚の顔画像という非常に膨大なデータで学習させると、同じ人かどうかの精度が99.63%というので、ほとんど間違えなくなります。

(資料1 10枚目)

  間違える例をこのページと次のページで示しています。

  左上にある2枚の顔画像は別人なのですが、コンピュータは間違えて同一人物だと判定してしまいましたというものです。

  真ん中の2枚も別人なのですけれども、同一人物だと判定してしまいましたということで、人が見ても相当似ているのです。間違えても仕方がないなという感じになっている。

(資料1 11枚目)

  今度は逆に同一人物なのだけれども別人と判定してしまったケースがこれでして、左上の2枚の顔写真、同一人物なのですが、別人と判定してしまったのは、恐らく後ろ側にレフェリーが写り込んでいるからです。左上から2番目は女性で、同一人物なのだけれども別人と判定してしまった。これは恐らく2030年前の写真なのではないか。2030年前の写真ですと言われなければ別人と判定してもしようがない。

  右の行の下から2番目は女性ですけれども、女優さんで、よく見ると鼻の形が違うのです。どうやらつけ鼻をしているようで、つけ鼻をしている女性を別人と判定しても、これはいいのではないかなという気もする。そのぐらい正解データのほうがどうなのというところまで来ている。

(資料1 12枚目)

  ここまでが画像認識の話だったのですけれども、今、もっと面白いことが起こっています。練習をして上手くなるという技術ができてきているのです。「強化学習」と言いますが、例えば人間だと、サッカーボールを何回も蹴っているうちに上手になります。ゴルフボールを何回も打っているうちに上手になります。これは何で上手になるかというと、たまたま上手に打てたら、今の打ち方はよかったなと思って、そのやり方を繰り返すわけです。これは強化学習の用語で言うと、報酬がもらえると、その前にやった行動を強化するという仕組みで上達するというふうにされています。

  強化学習ということ自体は100年ぐらい前から知られていることなのですけれども、これをコンピュータでどうやるかというと、ある状態でこういう行動をするとよかった、悪かったというのを学習していくわけです。

  ある状態というのを定義しないといけないので、今までは人間が定義した特徴量を使ってやっていたのです。ところが、今、ディープラーニングを使って特徴量をつくり出して、それに基づいて状態を定義して強化学習をするということができるようになってきます。

  言ってしまえば、そこだけしか違わないのです。強化学習自体は昔からあった技術ですので、そんなに大した変化ではないのですが、かなり面白いことがいろいろ起こっていまして、幾つか動画をお見せしたいと思います。

(動画)

  まず、グーグルが2014年の初頭に買収したディープマインドという会社がやったことなのですけれども、こういうブロック崩しのゲームを学習する人工知能をつくりました。先ほどお話ししたような強化学習を使っていまして、これはブロックが崩れると上側のスコアが上がるのです。これを報酬にしています。したがって、点が上がると、その前にやった行動を強化するという仕組みです。

  だんだん上手になっていくのですが、今までのやり方だとどうやるかというと、ボールがこれだよとか、自分が操作しているバーがこれだよというのを教えていたのです。でも、ディープラーニングと組み合わせると、画像を入れているだけなのです。画像を入れると、そこから何か丸っこいものがあるとかそういうのを認識して、この丸っこいものと自分が操作している動くやつがX座標が合っていると点が入りやすいとか、そういうのを学んでいって上達していくのです。

  そうすると、何をやるか。最終的には左端を狙うというのをやり始めます。通路をつくってしまうと、すごい点が入るのです。こういうふうにすごい点が入るのですけれども、要するに、画像を入力にしているだけなので、右端とか左端に通路ができた状態というのが点が入りやすい状態なのだという、そういう特徴量をつかんでしまって、それで上手になるということです。

(動画)

  今と全く同じアルゴリズム、全く同じプログラムで全然違うゲームを学習させることができます。こういうスペースインベーダーゲームも今と全く同じプログラムで上手になるのです。これは従来からすると信じられないことで、今までだったら、インベーダーゲームをやらせるのだったら、これがインベーダーだよとか、これがミサイルだよというのを定義しないといけなかったので、プログラムを多少は変えないといけなかったのですけれども、これは全く変えないでいいのです。

  これは昔のアタリのゲームなのですが、60種類ぐらいあるアタリのゲームのうち半分以上、人間のハイスコアを上回るぐらい上手くなります。残り半分は下手なのですが、パズル系のゲームとか冒険系のゲームとか、こういうのは下手なのです。記憶とか思考を必要とするものは下手なのですが、運動神経、反射神経だけでいけるやつは上達するということなのです。

(動画)

  実はこれができていたのは2013年の後半で、ここまでできていたら、あとはこれをロボットに適用するといろいろできますねというのが半分自明だったのですけれども、それを昨年の5月にUCバークレーがやりまして、こういうロボットがおもちゃの飛行機の部品を本体に組みつけるという作業をやっているのです。最初は下手なのです。ですけれども、だんだん試行錯誤を経て上手になってきます。入力は画像なので、上からカメラで見ているのです。ですから、実は先ほどのブロック崩しのゲームと設定は全く同じなのです。最初は下手なのだけれども、だんだん報酬をもらえるやり方を学んでいって上達していく。

  そうすると、こういうふうに上手く部品をはめ込めるようになるのですが、これは見てわかるとおり、結構荒っぽい。子供っぽいというか、適当に入りそうなところに当ててぐじゃぐじゃと動かして、入ったら押し込むということをやっている。だから、およそ今までのようなロボットぽくない動きをしているのです。

  こういうレゴを組みつけるとかいうのも従来はすごく難しいことで、位置も角度も合わないといけなかったので、ロボットにやらせるのはすごく難しかったのですけれども、これも報酬の設定を変えてあげるだけで上手になるということです。

  ほかにもいろんなタスクを学習させることができます。これはふたを締めているのですが、よく見ると1回逆方向に回してから締めるということをやっています。

(動画)

  これとすごく近いことを日本のプリファードネットワークスという会社も昨年の5月にやっています。これは運転を学習するAIという設定でして、こういうレーシングサーキットみたいなところで運転を学習するのです。入力は、放射状に線が走っていますけれども、これが32方向に視野を飛ばしていて、どの距離に障害物があるかというのが分るというものです。ハンドル、アクセル、ブレーキがあるのですが、最初操作の方法は一切教えないのです。前に進むと報酬がもらえて、壁とかほかの車にぶつかると報酬が減るという設定です。そうしますと、学習開始当初は全然動けずにもぞもぞしているのですね。前に進みたいのだけれども、進み方が分からない。それがしばらくしますと壁にぶつかりながら前に進めるようになってくる。でも、後ろに進むやつがいたり、ぐちゃぐちゃになってしまいます。

  これをずっとやっているうちにだんだん上手になってきて、最終的にはこういうふうにすごく上手に運転できるようになります。コーナーの曲がり方もブレーキのかけ方もすごいうまい。こういうヘアピンカーブもすごくきれいに曲がっていきます。

  こんなに数が増えても大丈夫なのですけれども、実際にこういう小さいミニカーみたいなのをつくって学習させる。そうすると、最初は上手くいかないのです。ぶつかったりしてしまいます。でも、だんだん試行錯誤して練習するうちにだんだん上手になってくるということが起こります。

  最終的にはこういう小さいコースを非常に器用に動くことができまして、こういうふうに動くことができるようになります。

  ぶつかりそうになっているのですけれども、かなり微妙にこういうふうにかわしています。これも従来のやり方でやろうとすると、ほかの車がこのぐらいの距離に近づくと右にハンドルを切るとか、こういうのを一生懸命書いていくしかなかったのですが、これをディープラーニングと強化学習という仕組みでできるということです。

(動画)

  これを今年の年初のCESというところでプリファードネットワークスはトヨタさんと一緒にデモをしていますけれども、今と同じで、自動運転の車が交差点でこういうふうに走っていてもぶつからない。

  変な赤い車がいるのですけれども、これは人間が運転している車でして、人間が結構むちゃくちゃな運転をしてもぶつからない。自動運転のほうがよっぽど大人な運転をしているのです。こうやって無理やりぶつけるとぶつかるのですが、上手くいくという感じです。

(動画)

  昨年、DARPAのロボティクスチャレンジというのがあって、こんな感じだったのです。ロボットたちがこけまくるというのがお笑い動画みたいになっていて、本当に悲惨なことなのですけれども、これで日本チームは惨敗したとかいって、日本のロボット技術がどうだこうだと言っていたのですが、僕は、これはビフォー・ディープラーニングなのだと。だから、ディープラーニングと強化学習を入れたらこんなことは絶対起こらなくなるし、一気にイノベーションが起こりますよと。一、二年したらロボットが走っているかもしれませんよと言っていたのです。そうしたら、今日、グーグルが買収したボストン・ダイナミクスというところが新しい動画を出しました。衝撃的でして、かなりブルーなのですけれども。言っていたとおりのことが起こりました。

(動画)

  これを見ていただくと面白いのです。完全に歩いているのです。

  ちょっと前は犬型のロボットをつくっていたのですが、こんな二足歩行で、よろけ方もすごい人間ぽい。

  こういう荷物を置くというのもそれっぽいのですね。

  特に手の戻し方とかがちゃんとしている。だから、強化学習、先ほどのやり方をやっているのだと思うのです。

  従来のロボットだと、研究室環境だと上手くいくのだけれども、こういうことをされると、すぐに変な動きをしていたのですが、こういう妨害にも負けず、取れなかったらもう一回取り直すのですね。

  完全に使えるレベルに来てしまっているなという感じでして、本当にこのまま街に行きそうな感じです。これが今日出ていた動画です。

  すごいのですけれども、考えてみれば当たり前と言えば当たり前で、犬とか猫でもこういう運動の習熟、練習して上手くなるということが起こるわけです。人間のように高い知能が必要なわけではない。でも、何でできなかったかというと、認識ができなかったから、こういう状況でこういう行動をしたらいいのだ、悪いのだという学習ができなかったというだけなので、今、認識ができるようになったので、こういうことも普通にできるということです。

(資料1 14枚目)

  ディープラーニングというのは50年来のブレークスルーだと言っていまして、こういう特徴量をつくるというところが一番難しくて、人間がやるしかなかったのですけれども、これをコンピュータができるようになった。これによって、こういう認識の問題であるとか、運動の習熟というのが一気にできるようになってきたということです。その背景にあるのはコンピュータのパワーが上がってきたということです。

  このアイデア自体は昔からあって、日本発と言っても過言ではないと思うのですけれども、1980年にNHKの放送技術研究所にいた福島邦彦先生が「ネオコグニトロン」という名前で提案しているというのがもともとです。

  「初期仮説への回帰」と書いていますが、人工知能という分野は、もともと人間の知能をコンピュータで実現することができるのではないかという仮説からスタートした分野です。何でかというと、人間の脳というのはある種の電気回路で、やっていることは情報処理でしょと。そうだとすると、全ての情報処理はコンピュータで実現できるということは、アラン・チューリングという人が「万能チューリングマシン」という概念で言ったことですので、人間の脳がやっていることが情報処理なのだとしたら、コンピュータでできない理由がない。そう思ってやってきたのですけれども、60年研究してもいまだにできない。

  それは何でかというと、要するに、認識ができなかったからだ。ここは計算量が高くて難しかった。今、それが乗り越えられたので、その先の変化というのが一気に起こるというふうな仮説をとったほうがいいのではないかということだと思っています。

(資料1 15枚目)

  今後どういう風に発展していくかというと、大きく言うと「認識」「運動」「言語」という順番で発展してくると思います。今、「認識」から大分「運動」のところまでできるようになっている。そのうち「言語」に行く。ここで「言語」と書いているのは、言葉の意味理解ができるということです。今でも例えばグーグル翻訳とかあるではないかと言うかもしれないのですけれども、今の言語処理というのは、基本的には全然意味を理解せずに、単に文字列の操作をしているだけなのです。ですから、日本語のある文字列が英語のある文字列に置き換わる確率を統計的に計算して、それが高いものを選んでいるだけで、意味が分かっているわけではないのです。

  ですけれども、ここで言っている「意味理解」というのは、言葉から思い浮かべるということです。映像をつくり出して、そこからまた言葉を生成する。要するに、言葉と映像の相互変換ができるようになるというのが「意味理解」だと思っています。恐らくそこに至るのではないか。

(資料1 16枚目)

  ここで○1から○6と書いていますけれども、この○1から○6の変化が大体2030年ぐらいに起こるのではないかと予測しています。

  それに伴って画像認識ができるようになると、医療における画像診断、レントゲンの写真を見たり、そういうこともできるようになりますし、防犯・監視ができるようになりますし、自動運転、物流、農業、家事・介護、翻訳、教育、秘書、こういうのが順番にできるようになるだろうということです。これを予測したのが2014年9月なので、今から1年半ぐらい前なのです。

(資料1 17枚目)

  ところが、そこから昨年末になりますと、赤いところがその時点で技術的に進んでいるところです。この赤の領域がいきなり広がっているのです。今、すごい勢いで進んでいます。

  今お見せしたようなロボティクスもほぼ実用化レベルまで大分近づいてきてしまっている。特に5番と書いているシンボルグラウンディング、先ほどの言葉の意味理解ですが、ここも昨年末ぐらいにはもう手がかかり始めています。

(資料1 18枚目)

  どういう技術かといいますと、お見せしているのはAutomated Image Captioningという技術なのですが、画像、写真を入れるとそれをディスクライブしてくれるという技術なのです。ですので、左の写真を入れると、「man in black shirt is playing guitar」という文が生成されます。左下の写真を入れると、「girl in pink dress is jumping in air」という文が生成されます。

  このぐらいだったら、まだ画像認識のちょっと高度なバージョンかなという感じなのですけれども。

(資料1 19枚目)

  昨年末にはGenerating Imagesというのができるようになっていまして、逆ができるのです。つまり、「A very large commercial plane flying in blue skies」と入れると、こういう絵が出てくるのです。さらに、これを「rainy skies」に変えると、レイニーっぽい絵が出てくるのです。これは画像を検索しているのではなくて、描いているのです。

  ですので、例えば「Stop sign flying blue skies」と入れると、止まれ標識が空を飛んでいる絵を描くのですよ。それはまさに我々が物語を聞いて、それを頭の中に思い浮かべながら理解しているのと全く同じで、そうすると、この画像を今度日本語で表現すると翻訳になります。ということができるようになっている。

  今、解像度が非常に低いのですけれども、まだこのぐらいしかできないのです。ただ、これも恐らくあっという間にできるようになるのではないかと思っています。

(資料1 20枚目)

  変化の本質は、要するに、認識というところは超えられた。それによって、世の中には画像認識ができないから人間がやっている仕事が沢山あるけれども、そこが自動化される。これは監視員の仕事だったり、警察官の仕事だったり、製造業の生産ラインで最後チェックをする工程だったり、こういう認識の機能を使っている仕事というのはすごく沢山あります。これが自動化されます。

  それから、運動の習熟というところで言うと、機械も習熟するし、ロボットも上達するということが起こるようになります。

  そうすると、何が起こるかというと、例えば農業とか建設、食品加工、こういった分野というのは自然物を相手にしているので、認識をして上手にやらないと、なかなか操作、処理できなかったですね。ですから、例えばいまだにトマトを上手にもぎ取るロボットとかイチゴを摘み取るロボットはないのです。これはどのトマトが熟れているのかというのを認識しないといけないですし、その枝ぶりを見て上手に摘み取らないといけない。これは人間しかできなかった。これが自動化できるようになるということです。そうすると、日常生活、掃除とか家事とか、この辺も全部認識が必要な仕事なので、これも自動化されるということが起こってくるということです。

(資料1 21枚目)

  農業、建設、食品加工というのは人手がかかっていて、しかも、認識、運動の習熟によって自動化される非常に大きな巨大な産業領域ではないかと思っています。

(資料1 22枚目)

  ここを日本が取りに行けるのではないかなと思っていまして、そのためにはハードウエア、「運動路線」と呼んでいるのですが、このハードウエアの強みを生かすことによって、ここのディープラーニング、認識技術を乗せていくことによって戦えるのではないか。

  情報路線と言っているのは、グーグルとかフェイスブック、アマゾン、アップル、マイクロソフトのように情報だけでやっている企業。これはメールの管理をしてくれたり、スケジュール管理をしてくれたり、便利なのですけれども、それと運動系が合わさった世界がやってくるはずなので、日本は運動路線で行った方がいいのではないかとずっと言ってきたのですが、先ほどのボストン・ダイナミクスを見ると、ああ、これはもうだめかもという感じがしてきています。

(資料1 23枚目から25枚目まで)

  最近のシリコンバレーのベンチャーの動きを幾つか載せていますので、参考にしていただければと思います。時間がないので、ここは飛ばしますけれども、こういう企業がどんどん出てきています。ですから、スピード感で日本は完全に負けているなという気がしています。

(資料1 26枚目)

  僕は、日本のいろんな社会課題が人工知能で解決できるのではないかと思っていまして、農業分野に「習熟したロボット」を適用すると、休耕地が耕せる、無農薬化ができる、収量が増える。要するに、農家の収入が増えるということが起こると思います。

  介護の分野に適用すると、介助も楽になったり、高齢者の方が自分で移動したり、トイレに行けたり、そういう自立的な行動ができるようになる。

  廃炉に適用すると、危険な状況で人が作業をしなくてよくなりますし、廃炉の工期も短縮できる。

  災害の予防です。河川とか火山を見張ることで早期に発見できる。

  こういった技術を展開していくことで新たな輸出産業になるということが起こるのではないかと思っています。

(資料1 27枚目)

  労働力が不足している、特に肉体労働が不足しているので、農業、建設・物流、介護、廃炉、熟練工の後継者、こういったあたりはディープラーニングによる認識、あるいは行動の習熟ができる機械・ロボットを使っていくことによって解決できるのではないか。

  ものづくりと相性がいいですから、ここを日本のチャンスと捉えてやっていくと、再び経済成長するということも夢ではないのではないかと思います。

(資料1 28枚目)

  ここから先が今回のテーマに合わせた働き方ということで、個人にとってどういう変化があるかということを述べたものになります。ここに書いてあるのは字がちょっと小さいかもしれませんが、先日野村総研が出した今後1020年で人工知能やロボットによって代替される可能性の高い職業あるいは低い職業の一覧になります。これはオックスフォード大のオズボーン先生の研究がもとになって、野村総研がそれの日本版をつくろうということで、日本のデータをとってやってみたものがこれなのです。

  代替可能性が高いものは、単純労働とか余り判断を必要としないようなもの。機械系に置き換えられるものもあると思います。一方で、代替可能性が低いものは、アートディレクターとかアナウンサーとか、創造性とか人に触れ合うようなこういったものは代替可能性が低いと出ています。

(資料1 29枚目)

  重要になるのは、恐らく対人間のコミュニケーションで、例えばお医者さんでも診断をするという行為そのものは、データに基づいてやった方がいいと思うので、それは機械化、人工知能になるかもしれないのですけれども、それをわかりやすく説明してあげるとか、その上でどういう治療法を選択するか決めるという、患者さんと話し合うような機能いうのは、お医者さんのすごく重要な役割になってくるのではないか。

  それは学校の先生についても同じで、教材を教えるということは、恐らく人工知能にやらせたほうがいいのかもしれないですが、その生徒をモチベートするとか、新たな課題に挑戦させるとか、そういった対人のコミュニケーションのところは人の仕事としてすごく重要になるのではないかと思っています。

  人工知能・ロボットを使う仕事も増えていくと思います。特に先ほどのどういう仕事をすればいいか悪いかという報酬の設計です。例えば農業用ロボットでも、こういう風に葉を剪定するのがいいのだ、悪いのだというのを教えるというのはすごく重要な仕事になってくると思います。

  創造性とか価値に関する仕事。売れている曲を真似してそれっぽい曲をつくるとか、そういうことは人工知能でできると思いますけれども、本当に創造的な、誰もつくったことのない曲をつくるとか、こういうのは人間の価値判断とか感性、本能に由来しているところなので、そこはコンピュータで代替しにくいと思います。

  そういう意味では、人のニーズを捉える、こういうのがいいのではないかという新しい事業をつくり出すようなところ、経営したり、企画したりしていくようなところ、ここら辺も人の重要な仕事だと思います。

(資料1 30枚目)

  労働環境の変化ということでは、ロボットとかAIによって実質的に人口が増えたのと同じような効果になりますから、企業数が増えるのではないか。そうすると、より細かいニーズに対応した事業が生まれてくるのではないかと思います。

  掃除や調理などの家事とか介護もある程度ロボット化、自動化できるはずなので、女性も含めて、みんな働きやすい環境になっていくのではないかと思います。

  結構重要かなと思っているのは、ホワイトカラーの労務管理がやりやすくなるはずで、今だと、机の前に座っていても、ネットを見ているのか、真面目に仕事をしているのか、なかなか区別しにくいですね。だけど、こういう認識の仕組みができると、本当に頑張ったのだけれども上手くいかなかったのか、努力しなくて上手くいかなかったのかというのを見分けられるので、もっと労務管理がやりやすくなる。そうすると、これを含めてですけれども、より個が独立して働くよう方向に変化が進むのではないかなと思います。

(資料1 31枚目)

  これが最後のスライドですけれども、2つの大きな変化がやってくる。1つは、先ほどお話ししたように、認識・運動能力が向上した機械・ロボットがふえてくる。これが現実化する。そのときにこういった産業を日本から生み出して、これを競争力にすることができるのかどうかが大きな鍵ではないかなと思います。

  2つ目に、自動翻訳というのができるようになります。これは研究レベルでは5~10年、実用化レベルでは1015年と思っていますけれども、このぐらいの間に日本語を喋ると英語になって出てくる、ドラえもんの「ほんやくコンニャク」のようなものが実現される。そうすると、世界が日本語になるのと同じですから、僕は東京にいますが、明日からニューヨークで働きたいなとかパリに行きたいなということも可能になる。言語的には全く障害がない。そうすると、職場環境も学校も選択肢が広がる。個人にとってはすごいいいことですけれども、逆に言うと、競争力のない組織というのは外にどんどん人を取られるということになると思います。

  それから、日本独自の変な制度、日本のローカルルールみたいなものもどんどん淘汰されていくはずだと思います。

  自動翻訳の波が来るというのは、日本全体にとってすごくいいことだと思っています。なかなか情報が読み取れない、あるいは理解されないので損をしている面がすごくあると思うので、非常にプラスだとは思うのですが、個人個人あるいは組織によってはすごく不利益を被る人も出てくるかもしれない。特に日本の中でナンバーワンとかいう商売をしている人はなかなか厳しいのかもしれない。ここをどういうふうに備えていくかということも非常に重要な点かなと思います。

  以上です。

 

○金丸座長 

ありがとうございました。

  いろいろ衝撃的なシーンとか、あるいは松尾先生自身がボストン・ダイナミクスの動画を見て一番衝撃を受けておられるような感想を持ちました。この間までは松尾先生は、日本は運動系は大いに可能性があると仰っていたので、今日はそういう話、聞けるかなと思ったら、1回目から運動系も危機だというようなお話でございました。

  さて、松尾先生の御説明をお聞きになられて、皆様から御質問なり御意見なり自由な御発言をお願いしたいと思います。では、小林りんさん、お願いします。

 

○小林(り)氏 

松尾先生、ありがとうございました。聞くたびに色々アップデートされて進化されていくのを本当にドキドキしながら楽しく拝聴しました。

  コスト面の質問なのですけれども、先ほど介護とか家事とかがリプレースされると仰っていたのですが、今はロボットみたいなものがすごくコストがかかるように思うのですが、これは一般の家庭にも普及するようなコストまで量産されて普及していくということなのですか。

 

○松尾氏 

すごく重要な点でして、恐らく調理に関しては、まず外食産業からだと思うのです。特にファストフードとかファミレスとか、そういったところから技術が進んでいって、だんだん低価格化していって、そのうち家庭に入るという順番だと思います。掃除とかもホテルとか大型の施設から先に入っていって、だんだん家庭用が出てくるということかなと思います。

 

○小林(り)氏 

ありがとうございます。

 

○金丸座長 

それでは、他にどなたかいらっしゃいますか。では、柳川先生、お願いします。

 

○柳川事務局長 

2点あるのですけれども、1つは、30ページのところで「ホワイトカラーの労務管理が、よりやりやすくなる可能性」という御指摘をされていて、これはそのとおりかと思うのですが、では、ホワイトカラーというのがどれだけ必要になるのかというと、先ほどのような話でかなり人工知能やロボットにできてしまうと、ホワイトカラー自体が労務管理をするほど要らなくなるのではないかという気もするのですけれども、そのあたりをどんなふうにお考えなのかというのが1点。

  それから、先ほどのロボットの動き、私も衝撃的だったのですが、あの会社の話なのでよく分からないのかもしれませんけれども、人に対してもかなり柔軟に対応できそうな感じで、もともとの車の運転のときもそう思ったのですが、よく言われる話は、ロボット同士の動きだと制御ができるのだけれども、人は予測不可能な動きをするから、例えば自動運転などでも人と混同させて動かすと危ないのだという議論をよく聞いたことがあるのですが、そこはそんなことはなくて、結構人の動きにも対応できそうに見えたので、そのあたりがよく分からないので、人とロボットの関係、制御の関係をちょっと教えていただければと思います。

 

○金丸座長 

先生、お願いします。

 

○松尾氏 

ありがとうございます。

  確かに仰るとおりで、ホワイトカラーの労働というのはどのぐらい必要なのかというのはあると思いますけれども、おそらく時期により違ってくる話だと思います。当初は、言葉を扱うような仕事だとか、普通に帳簿をつけたりとか、いろんな複合的な仕事が沢山ありますから、急に人工知能に代替するというのはすごく難しい。ただ、先ほどのような自動翻訳ができるぐらい言葉の意味の理解ができて、さらにその先に算数とか理科みたいなところまでできるようになってくると、数字を扱ったり、あるいは研究者のような科学的発見をするというところまでできるのかもしれない。ただ、それは割と先なのではないかなとは思いますけれども、ただ、今のペースで行くと2035年ぐらいに起こってしまってもおかしくないかなという気もします。そういう意味では仰るとおりかと思います。

  2つ目の人に対しても柔軟なのではないかというのは、恐らくそうだと思います。逆に言うと、自動運転とか非常に過酷なハードルを課されているというか、運転が下手な人間のほうがよっぽど危ないはずなのですが、相当上手でないと世の中から許してもらえないので、相当変な運転をする人がいても上手に対応できるということが現実的には起こっているのではないかなと思います。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  それでは、どなたか御質問とか御意見ありますでしょうか。山内社長、お願いします。

 

○山内氏 

非常に興味のあるお話をありがとうございました。びっくりしました。

  私たちは物流を担当していて、そういった意味では労働力不足の将来に対して可能性があるお話かなと思いました。

  特に役務関係が取って代わっていけるような方向性が見えてきた中で、先生が考える、そうなったときに法的に必要になってくるルール化というものが、どういった面で必要になってくるのだろうか。今の段階で考えていらっしゃるようなものがあれば、御示唆いただけるとありがたいなと思います。

 

○金丸座長 

お願いいたします。

 

○松尾氏 

ありがとうございます。

  法的な面、かなり必要なのではないかなと思っていまして、法律自体の考え方も相当工夫していかないといけないのかなと思うのですけれども、例えば防犯・監視ができるようになると、変なことをしている、人が殴りそうだとすぐ分かると。交通違反も厳格に捕まえることができるといったときに、例えば時速40キロの道路を45キロで走っている人を捕まえるのですかとか、それから夜中、車が通っていない非常に細い道で、赤信号なのだけれども渡ってしまうと、これは信号無視と言うのですかとか、今まで運用でカバーしてきたところを厳密にできてしまうので、厳密に適用しないというのも含めて、何かの合意をつくる必要があるのではないか。

  そうすると、そこはいろんな状況判断が含まれますから、今までの法律的な書き方で書き得るのかどうかというのも含めて、ちょっと工夫が必要なのではないかなと思います。

 

○山内氏 

そうすると、今仰ったように、ある一定の運用幅とか人間の判断という幅があったものが、デジタルになるがゆえに、それがなくなってしまう。ぎすぎすした世の中ではないですけれども、そのような形になって、今仰った状況判断というのは、今後求められることになってくるのでしょうか。

 

○松尾氏 

そうですね。今までだと本音と建て前のところがあって、建前としては違反は違反ですよというところなのだけれども、現実には捕まえませんよということだと思うのです。別にそういう運用にするというのは、やろうと思えばできるのです。人工知能にこういう場合は別にいいのだよと教えればいいのですが、ただ、明示的にそういう教え方をしてしまっていいのですかみたいなところはあるかなと。

  それから、別の話になるかもしれないのですけれども、例えば防犯・監視、交通違反などを取り締まるためにいろんなカメラをつけて、それによって街全体の治安が非常に良くなりますと。これは全体として見るといいことなのですが、個人から見ると、ずっと監視されているのは嫌だと。そうすると、人は本来見られない権利を持っているのではないかとか、自分のいいところだけを見せる権利を持っているのではないか。今までの仕組みだと明示化されなかった、顕在化されなかったような本来持っている権利というのがよりたくさん出てくるのではないかなというふうにも思います。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  では、小林庸平さん、お願いします。

 

○小林(庸)氏 

先生、どうもありがとうございました。

  最初は余談ですけれども、2年ぐらい前にまさにオズボーン先生たちの研究が出たときは、たしかエコノミストの仕事が消える確率が5割ぐらいあったのですが、今回、日本の研究だと低いということで、私は余り働き方を変えなくていいのかなとちょっと安心しました。というのは余談です。

  3つ質問で、2つはシンプルな質問なのですが、今のロボットの動きというのはとても自然だなと思ったのですが、ディープラーニングというものが人間の脳の構造に近い学習構造になっているのかというのが一つ。

  もう一つ、報酬を定義されていたインベーダーゲームとかアタリのゲームは、どちらが望ましいかという目的みたいなものを人間が定義していたのだと思うのですが、それは人間が与えなければいけないものなのか。何が望ましいのかというのは局面によって違ってくるのかなという意味合いでお聞きしたい。

  3つ目が、社会が変わることを恐れない。AIなり機械が進化してくると、それに伴って人間側の構えというか、心構えとして何が必要になってくるのかなと。最近、まさに労働市場はどんどんタイトになっていると思うのですけれども、そうなると、賃金が上がるというのは、機械化にとってはとてもプラスだと思うのですが、その一方で、もしかしたら硬直的な仕組みというのはマイナスかもしれなくて、日本はプラスもマイナスもあるのかなという気がするのですが、教育とかも入ってくるのだと思うのですが、そのあたりの構えというか、準備というところを教えていただければ。その3点お聞きできればと思います。

 

○金丸座長 

よろしいでしょうか。

 

○松尾氏 

ありがとうございます。

  1点目は、仰るとおりで、人間の脳に近いということですけれども、大まかには認識の部分だけです。認識の部分でディープラーニングというのを使っていて、強化学習というのは昔からあった仕組みなので、これは割と工学的な手法として定着しているということだと思います。

  人間の脳も実は50個ぐらいの部品が組み合わさってできている。逆に言うと、わずか50個ぐらいのパーツの組み合わせでいけているということなので、そんなに難しくないのかもしれない。認識のところができなかったので、今、そこが乗り越えられたというのはすごく大きいところかなと思います。

  2つ目の報酬の定義というのは、人間がやります。

  よく知能の話と生命の話というのが混同されるのですけれども、知能というのは、基本的には目的を与えたときに、それをいかに達成するかという問題解決の力なので、どういう報酬の設計にするかによって、どんな報酬の設計であっても、それにフィットするように最適化しますよというのが知能の力です。一方で、生命というのは目的を持っていて、例えば自分を守りたいとか、仲間を助けたいとか、子孫を残したいとか、こういう目的を持っていて、それを持たないものは滅んできたので、長い進化の過程の中で今、生き残っている人は、そういう生命としての目的を持っています。

  人間の場合は、生命としての目的を知能を使って達成しているということだと思うので、知能の話と生命の話は根本的に違う。目的の設定というのは生命由来の話なので、人間がやらないといけないということだと思います。

  そうすると、何が起こるか。これは3番目の話にも関係するのですけれども、目的の設定こそがすごく重要になってきて、目的さえ設定すると、手段というのは人工知能が提供してくれる。目的の設定自体は簡単なものかというと、そんなことはなくて、すごく難しくて、悪い目的に設定すると、当然軍事利用とか犯罪とか、そういう目的に最適化されてしまうので、人を殺すこととかできてしまうわけですし、そんなに善悪をはっきりしていなくても、微妙なのがすごいたくさんありまして、例えば自動運転で事故を起こすではないかという人がいると思うのですけれども、事故を起こすのが嫌だったら制限速度を10キロにすればいいのです。そうすると、誰も死にません。そのかわり利便性は著しく落ちます。そんな車に乗りたいですかと言うと、多分乗りたくないと思うのです。

  これは何かというと、結局、安全性と利便性のトレードオフの中でどれを選ぶのですかという問題を社会として解かないといけない、決めないといけないということだと思うのです。今までは法定速度60キロでと言って、あとはその範囲でみんな安全運転しましょうよということである種ごまかしてきたと思うのですが、これからはそういうごまかしでなくて、そもそもトレードオフなのだと。その中で何キロにでも設定できますよと。でも、それのどこを選ぶのかと。要するに、人の命と経済の合理性をどこでバランスをとるかということを決めないといけない。それは先ほどのグレーな部分を明示化しないといけないというのとすごく似ているのですけれども、こういうことが多分社会のいろんなところで発生してくるだろう。

  これは昔から人文社会学系で議論されているものなので、政治学とか哲学、法学、社会学、経済学、こういった分野の議論というのはますます重要になってくるのではないかなと思います。

  最終的にはここに行き着くと思うのですけれども、要するに、我々はどういう社会をつくりたいのかと。これさえ決まれば、それを人工知能で達成するというのはそんなに難しくないですね。職を奪われると言いますが、本当に仕事をすることが人の幸せなのだったら、こういう仕事は人工知能がしてはいけないという法律をつくればいいだけなのです。

  では、どういう仕事をすると人はハッピーなのかとか、結局、どういう社会をつくりたいのというところをみんなで合意できると幾らでもできる。ここの議論が一番大事だということだと思います。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  それでは、磯山事務局次長、お願いいたします。

 

○磯山事務局次長 

先生、ありがとうございました。

  びっくりしました。ここまで進んでいるのかというのは恐ろしくもあるのですが、「個人にとって:職業の変化」の中で、なくなっていく代替可能なものとそうでないものとありますけれども、代替可能か可能でないかということよりも、むしろ人が減っていく中で積極的に置きかえていくべきなのか、そうでないのかという議論は多分必要になってくるのだと思うのですが、その時に、例えばもうこの業界はギブアップして、この仕事は全部ロボットに置き換えようというふうにする方がいいのか、あるいはロボットに勝てる働き方みたいなものを人間が追求して、ロボットと常に競争して、それぞれの中で負けたところがロボットに置き換わっていくということなのか、どちらになるのでしょうか。

 

○金丸座長 

どうぞ。

 

○松尾氏 

いろいろ論点があるかなと思うのですけれども、経済合理性に任せていると、人件費、単価が高くて、人手がすごいかかっているところから先に代替されていくのだろうなと。そうすると、当然弁護士とかお医者さんとかになるのですが、仕事として結構難しいので、なかなかやりにくいから、そうすると、もうちょっと簡単な仕事からなのかなということかなと思います。

  そうすると、特に単純労働というのが一番置き換えやすい。点検をずっとし続けるとか、警備員でずっと見張り続けるとか、こういったある種の単純労働で、言い方が良いかどうか分からないですけれども、割と機械的な仕事を人間が仕方がないからやってしまっているという側面があると思うのです。だから、あまり人間的でないというか、ずっとやり続けないといけない。そこはロボット化、機械化していってもいいのではないかなと。

  ただ、そうすると、そういうもので生計を立てている人はどうするのという社会保障的な側面が出てきて、ここもちゃんと考えないといけないと思うのですが、どういう仕事が出てくるかというと、例えば人間の生命に由来するところというのはコンピュータに代替できないので、例えばおいしいかどうかを見るとか、面白いかどうかを判断するみたいな、そういうテスター的な仕事というのは今後すごく残るし、テスターが多ければ多いほどおいしい商品をつくれますから、そういう仕事が今までの単純労働に取ってかわるのではないか。そうすると、いい感性を持っている人はいいということなのですね。というふうになるのかもしれないと思います。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  では、WEBで御参加いただいている大内先生、何かございますでしょうか。

 

○大内氏 

松尾先生、どうもありがとうございました。非常に興味深い話で、勉強になりました。

  幾つかお話ししたいことがあるのですけれども、まず、感想です。法的な問題の整理というところについての話があったと思いますが、仰った監視の問題というのは非常に重要で、プライバシーという概念を使うべきだと思うのですが、コンピューターの監視能力が高まったときのプライバシー侵害の問題について、もちろん法律で何かルールを決めていくということが必要となるのかもしれませんが、まずは技術的にどれぐらいのことが可能になるかということを十分国民に教えていただいて、その上での検討ということが必要になるかと思います。その辺の知識が我々は不十分で、是非、先生たちからの情報提供をお願いしたいということです。

  それから、先ほどの安全性と利便性のトレードオフの問題をどう考えていくかということについても仰るとおりで、もともと鉄道とか自動車が出てきたときも非常に危険だとおそれられたのですが、利便性があるということで、そこでどう折り合いをつけるのかということを決断して、そうするなかで人類社会というのは進歩してきたので、同じことが今後ロボットのところでも起きてくるだろうということなのでしょうが、ただ、ロボットに固有の問題としては、何かあったときの責任をどう考えていくのかということがあります。法律で何か決めるということはもちろん可能なのですが、根本理念というか、理論というか、現在の法体系では個人の過失責任というものがあって、そういうのをベースに責任を問うていく。あるいは刑事事件に関しては故意があるというところを重視する。意思の問題です。

  ロボットについては、ロボットと共生していく覚悟を私はできていますけれども、起こり得るトラブルについて、どういう観点でルール化して、紛争解決の筋道というか、責任の取り方を決めていくのかというのが重要なのかなと思っています。

  この辺は、ロボットに意思があるのかという問題で、おそらくないという結論なのでしょうけれども、意思というものをベースにして作られてきた法律の世界にとっては大きな課題になるのだろうなという気がします。

  もう一つ、代替可能性のある職業のところのデータを見て、大学の教員が低いほうに入っていたので、良かったなと思ったのですが、私は全然楽観はしておりませんで、先ほど弁護士の仕事のことが出てきましたが、弁護士の仕事も今、人工知能が判例検索などでは非常に精度の高い仕事をしていると言われていますし、あるいは作曲家なども、作曲、音楽というのは周波数の問題で、組み合わせのようなところもあるということで、割とコンピュータになじみやすいのではないかという気もしておりますし、定型的な仕事というのは、現在知的と評価されていても将来的には人工知能に置き換えられる危険性が高いと思っているのですが、その辺、先生のお考えがあれば教えていただければと思います。

  最後に、さきほどの意思の話とも関係するのですが、人工知能、脳の話をするときにはおそらく心の問題というのがあって、心というのは一体どこにあるのだろうという議論があると思うのです。デカルトの時代から心と身体は別だという議論がありましたが、おそらく今はどちらも物理法則に従うという一元論が多くて、そうなると心と脳は一体化するのであり、この脳が人工知能になるとすると、その人工知能も心を持つことができるのだろうかということが問題となってくるのだと思います。この点について、先生のご意見があれば教えていただければありがたいと思います。

  以上でございます。

 

○金丸座長 

では、お願いします。

 

○松尾氏 

ありがとうございます。ちょっと正しく理解できているかどうか分からないですけれども、プライバシーのところは割と重要な概念が何となく抜けているのかなと思っていまして、それは何かというと、知能の仕組みというのは、結局、少ない情報から正しく予測することなので、プライバシーだからといって、個人の情報を落としても、知能の技術が進展すると予測できてしまうのです。そうすると、イタチごっこになってしまって、ほとんどの情報を出せませんというふうになるわけです。

  そうすると、考え方を変えて、この目的に使えるような情報だけはもらう。情報を抽象化した上で、目的と合わせて使うということをやらないといけないのだろう。プライバシーの議論の中に情報の抽象化とか目的とか、そういうところを多分入れていく必要があるのかなと思います。

  2つ目ですけれども、ロボットに責任を問うというのは難しいというか、無理だと思います。責任を問うためには、「死ぬ」みたいな概念を導入して、ロボットが死にたくないみたいなところから始めないといけないので、結構難しいかなと思っていまして、そうすると、責任主体は人間なのだと思うのです。ただ、人工知能の機械が世の中の色んなところで使われるようになってくると、それを製造者に問うというのも過酷な面があるかもしれない。そうすると、保険でカバーしましょうとか、そういったことを議論していくようなことになるのかなと。でも、責任の主体はあくまでも最後は人間だということなのだと思います。

  3番目の質問ですけれども、知的だと思っていても危ない仕事というのはあると思います。例えばインターネットができて、記憶を必要とする仕事というのは大分重要性が減ってきているという面はあると思いますが、そこに今回の認識とか言語理解というのができてくると、割と問題がきっちり定義できて、その中で解決すればいいようなものは、知的であったとしても置き換え得る。ただ、総合的な判断とか人間の生命線に関わるような判断をしないといけないものについては、人間の仕事として重要になってくる。そういうふうに考えると、どちらかというと単純な仕事とか定型の仕事というのは機械がやるようになって、人間の仕事はそちらの生命的なものとか価値判断のほうにより寄ってくると思うので、仕事がなくなるというよりは、仕事の質が変わるということなのではないかなと思います。ただ、それに伴って、今、尊敬されている職業が余り尊敬されなくなって、逆のこととかも起こるかもしれないと思います。

  最後、心の問題はすごく重要で、「強いAI」「弱いAI」という言葉があるのですけれども、最近誤解されて、「強いAI」は汎用性が高いとか、いろんな誤用が見られるのですが、もともとサールという人が言ったのは、人間の知能を正しくプログラミングすると、そこに心が宿るはずだという主張を「強いAI」と言って、そんなことはないというのを「弱いAI」と言っていたのです。ですから、心を持つかどうかというのは、まさに「強いAI」か、「弱いAI」かという問いとイコールなのですが、僕は、心というのがいろんな理由でできていると思っていまして、その理由を踏襲すると、ロボット、人工知能も心を持つ可能性は十分あり得るなと。

  それは何かというと、一つは、自他の区別をすることによって学習速度を上げるということは多分あるはずだと。つまり、自分がやった経験だけでなくて、人がやった経験もこれが自分だと仮定して学習すると、多分人の失敗を自分の失敗だと考えて学ぶということができるわけなので、そうすると、自他の区別をした上でそういう情報を利用することによって学習速度が上がるという効果があります。

  もう一つは社会性。社会的な心で、自分という心が一貫していることによって、契約主体になり得るというか、言ったことがころころ変わらないので、社会を構成し得るわけです。きのう、あれを言ったよねと言って、覚えていない、ノーと言ってもいいわけですけれども、そう言わないようにできていて、そのほうが社会を構築しやすいという面があるので、対他人に対する利便性のために一貫した心があるように見えるのではないか。そういう考え方もあって、いずれにしても、そういう機能的なもので心というのが説明できるのではないかと思っていますし、そうだとすると、それが良いことかどうかというはさておき、ロボットも心を持ち得るのではないかと思っています。

 

○金丸座長 

ありがとうございました。どうぞ。

 

○大内氏 

今の最後のところがとても重要だと思います。心の理論という話のところだと思うのですが、心というものを本当にロボットが持つと、人間の仕事を奪う力というのはすさまじいものになるのではないかという気がするのです。我々は、今、先生が仰ったようなことも視野に入れながら今後の働き方というか、仕事がどうなっていくのかということを考えなければいけないのかなということを感じさせられた次第でございます。

  どうもありがとうございます。

 

○金丸座長 

ありがとうございました。

  中野さん、お願いします。

 

○中野氏 

仕事領域の話が多かったのですが、生活領域のところで、先ほど小林りんさんの質問に対するお答えで、まずは産業のところからという話があったのですけれども、こういうことが進んで、家事とか調理とかが自宅でもできるようになるというふうになったときに、ライフスタイルそのもの、例えばいわゆる集合住宅みたいなところに住んでいた方がみんなで共通して入れるというのがやりやすいわけですが、そういう住み方とか暮らし方自体が変わっていくような予想があるのか。街ごと設計するみたいな動きにつながっているのかというのを一つお伺いしたいです。

  あとは、家庭で使うようになっていくと、市場原理でやると、使える人と使えない人でものすごく格差が開いていってしまうと思うのですけれども、厚労省の会議ということもあって、例えば介護とかを大々的にこれでやりましょうみたいになった時に、国の役割というか、どういうふうに導入していくのがいいのか。もしアイデアがあれば教えてください。

 

○金丸座長 

では、松尾先生、お願いします。

 

○松尾氏 

ありがとうございます。

  仰るとおりで、例えば調理ができるようになると、セントラルキッチン的になるというか、調理場があって、自動でロボットがあって、そこからすぐ運ばれてくるという形にもなり得るのではないかなと思いますし、それから物流路みたいなのができて、買うと、そこから運ばれてくるということになるのかもしれないと思います。

  移動なども自動運転ができるところまではみんな想像しているのですけれども、ちょっと極端なのですが、僕は椅子の物流になるのではないかと思っています。車に乗ったり降りたりするのもだんだん面倒くさくなるので、そうすると、椅子が運ばれていく。そうすると、ここからパリに行こうとすると、普通に椅子がどんどん動いていって、車に乗って、空港に着いたら今度は飛行機に乗せかえてくれる。その間、寝ていてもいいし、仕事をしていてもいいし、こういうプライベートな空間が移動していくみたいな感じになると、可処分時間みたいなものがまた増えることになって、そうすると、多少遠くても、椅子に座って寝ていればいいし、仕事をしてもいいとなると、ちょっと遠くてもいいから自分のライフスタイルを楽しみたいとか、そういうことも起こり得るのではないかなと思います。

  それから、国の役割、こういうのを導入できる人、できない人がいると思うのですけれども、ロボット・機械の一番いいところは、一律に安価なサービスを提供できるという方向に多分進むはずで、そこは人手をかけると高付加価値化していくと思うのですが、料理をつくるだけだったら、ロボットがつくったほうが安くできることになるので、最低限の生活を保障するという意味では、今までより低コストでできるのではないか。

  さらに、そこに人手をかけて人が出してくれますよとか、そういうことになってくると、そこは高付加価値化していくのではないかなと思うので、最低限の生活を維持するという意味では、よりやりやすくなるのではないかなと思います。

 

○金丸座長 

よろしいでしょうか。

 

○柳川事務局長 

感想なのですけれども、例えば松尾さんのスライドの16ページ、17ページ、タイムスパンというのは、動きがすごく速いというイメージなので、2030年の○6知識獲得のあたりは相当遠い将来というイメージをされているのだと思うのですが、2030年というのは今から14年ぐらいの感覚なのですね。そうすると、働き方という話でいくと、例えば僕の学生とか、今、就活したりしているところでいくと、36とか37とか、そういうころの時代なので、普通の社会でいくと、まだ若手と言われるような時代だとすると、今、就活している学生が描いている若手のときの仕事ぶりのイメージとここで描いていらっしゃる変化とが物すごく大きなギャップがあるなという感想なのですけれども、このギャップを埋めていかないと、働き方がかなり大きな矛盾というか、大きなトラブルが色んなところで起きるのではないかなという気がいたしました。

 

○金丸座長 

何かありますか。

 

○松尾氏 

仰るとおりだと思います。ここで書いている2030年までに起こるような変化が起こったときに、社会全体でどういうことが起こるかというのはなかなか予測しづらいですし、それを今の若い人が踏まえて生きるというのもすごく難しいなと思いますけれども、技術として予測できるところは予測できるところとして多分あると思うので、そこはしっかり出していきたいなと思います。

  全体としては、一番最初に小林りんさんが仰ったように、個が活躍するような方向には行くと思うので、社会がどう変わってもいいような生命力をつけるというか、問題解決能力をつけるというか、そこら辺はすごく重要な能力になってくるのではないかなと思います。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  一番最初に発言された小林りんさん、何かありますか。

 

○小林(り)氏 

どうもありがとうございます。

  一連の議論を拝聴していて、これは私の感想なのですけれども、冒頭にも申し上げたとおり、人間が転職するというのは一生に何回かの出来事だったところが、もっともっと頻繁であり、かつ今まで転職というと、同じ業界の中で会社がかわるという感じだったのが、全く思ってもみなかった職についたりする時代が来るのだろうなと思いながら拝聴していました。

  かつボーダーレスで移動が行われていくということになると、ますます予測不能な時代になっていくだろうなと思いますし、技術が人を置き換えるかどうかというのは、労働の賃金等にも関係すると思うので、移民がどれだけ入ってくるかとか、日本の賃金はどこがどのぐらいかとか、いろんなことに左右されていくのだと思うのです。だから、そういう時代の中で、今までみたいに失業したら失業手当で守ってあげましょうという考え方が通用していくのかとか、あるいは学び直し、今までは国が例えば助成金とかを出して学び直しましょうということをやっていたこともあったと思うのですが、果たして何を学び直すのかさえも分からなくなってくるような時代において、そんな政策は果たして有効なのかなとかいうことを思いながら聞いていました。

  なので、スピード感が速くて、相当予測しにくい世の中になっていく中で、国が果たすべき役割というものを抜本的に考え直していく必要があるのかなと思って聞いていました。

  感想です。

 

○金丸座長 

ありがとうございました。

  それでは、以上でフリーディスカッションを終了させていただきます。

  松尾先生、どうもありがとうございました。

  続いての議題ですが、本懇談会の当面のテーマについて、資料2のとおり案を作ってまいりました。内容について、私のほうから説明させていただきます。

  「2035」、20年後というタイトルがついておりますので、今日は松尾先生からこの技術革新が起きている現状と将来の予測等についてお話を伺ったところでございます。これが1番目の「技術革新の視点から考える」というものでございますが、今日これを終了させていただいて、皆さんの中で多少でも共有させていただいた上で、もう一つ、現状もテレワークの進展から在宅で仕事ができるような時代にもなっていますし、一方で、省庁の幾つかは地方に移るみたいな話も出ているわけですから、テレワークの現状と個人の状況に合わせた未来の働き方等について。

  全体は、皆様に一度ずつぐらいはお話をいただきたいと思って、こんなテーマも設定させていただきます。ここは青野さんに御了解いただければ、お話をいただこうかなと思っています。

  一方で、きょうは技術革新からの社会の変革についてお話があったわけでございますが、そもそも労働法制の現状がどうなっているか、そして労働法制の未来についてもう既にお考えをお持ちの山川先生とか大内先生からお話を伺った上で、またその後の議論に移っていきたいと思ってございます。

  それから、現状も課題設定が我々の社会にあるわけですけれども、継続的にずっと存在する課題から未来を考えたいと思っておりまして、子育てとか、介護と仕事の両立の現状と未来。これは勝手ながら中野さんをイメージしています。

  その次は「都市と地方の雇用の現状と未来」ということで、これは御手洗さんにお話をいただきながら、みんなで議論できればと思っています。

  次は「グローバルの視点から考える」ということで、今日のお話の中にも出てきたのですけれども、色々時代の変革につれ付加価値が変わってきて、その付加価値に企業経営の立場から対応なさっておられたと思いますので、このあたりは山内社長にヤマトのこれまでの戦略と、今日のようなお話もあったわけですが、20年と言うといきなり遠く離れてしまうのですけれども、20年後と言っても1年ずつあるいは5年ずつ、5年計画が4回ぐらいあるわけですから、そういう中でどうお考えになっていらっしゃるのか。だから、ここのテーマは、企業経営のお立場から山内社長にお話をいただきたいと思っています。

  私どものコンピュータ業界は、ハードウエアからソフトウエアに付加価値が変わった80年代。我々は、90年代にハードウエアからソフトウエアに変わったという認知が遅れて、ようやくソフトウエアに付加価値が移ったなと分かったときにはもうネットサービスに付加価値が移っていて、その組み合わせでビジネスモデルを考えていた。昔のAIというのは、なかなかそういう時代は到来しないと言われていたところ、先ほど松尾先生からお話があったとおり、CPUが劇的に進化したわけでございまして、小さいCPU、今はスマートフォンのCPUにトランジスタが10億個を超える個数が入っていまして、昔できなかったことが随分できるようになったということで、業種・業態によって付加価値が変わってきたわけでございます。

  それから、「組織運営と人の役割」ということで、これはコマツの浦野様にコマツの組織運営と人の役割をどう考えていらっしゃるのか。議論は、コマツさんの事例あるいは御説明を聞かせていただいた上で、できれば産業、業種別、職種別の視点などに展開できればなと思っています。

  それから、「未来を担う人材のための教育」は、小林りんさんの御都合のよろしいときに御登場いただいてプレゼンをしていただきたいと思っています。

  お名前が出なかった小林庸平さんには御自身でテーマを考えてほしいなと思っています。何でもできそうだというふうにお聞きしております。

  それから、事務局長の柳川さんと磯山さんも、是非、話したいというテーマがあれば論点を提示いただければと思っています。

  このテーマについて、皆様に今日御意見をお伺いした上で、今後の進め方を決めさせていただきたいと思っています。

  あえて「当面のテーマ」とさせていただきましたのは、議論していく上で、新たなテーマ設定が出てくるかもわかりませんし、深く掘るべきだという論点が出てくるかもしませんので、当面のテーマということにさせていただきます。

  それでは、皆様から御意見を頂戴できればと思います。私のテーマをこれに変えてくれということでも結構でございます。

  どうぞ。

 

○小林(り)氏 

テーマ自体はすごく面白そうだなと思って拝見しているのですが、最終的なアウトプットのイメージというか、この会議が終わったときにこういうものができているといいなというのはあるのですか。

 

○金丸座長 

アウトプットイメージも皆様とともに徐々につくっていきたいと思っています。よろしいですか。

 

○小林(り)氏 

はい。ありがとうございます。

 

○金丸座長 

今日の話ですが、社会の変革を及ぼすエンジンみたいなものにコンピュータの技術というのは結構大きいものですから、今、コミュニケーションのスタイルも変えてきていたりしますので、我々は2035という未来を見据えたような提言ができればと思っています。今、私が解を持っているわけではございません。よろしくお願いします。

 

○小林(り)氏 

ありがとうございます。

 

○中野氏 

今の質問とちょっとかぶるかもしれないのですけれども、先ほどの松尾先生の議論のところで出てきたどんな社会を目指すかみたいなところで、皆さん、何を考えているのかというのを一回シェアしたいなという気がします。経済成長なのか、先ほど私がちらっと言った格差みたいなものをもうちょっと縮めた社会なのか、何がゴールなのかというのを少しすり合わせたいなという気がします。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  小林庸平さん、いかがでしょうか。

 

○小林(庸)氏 

私もあまりイメージがあるわけではないのですけれども、私自身、どちらかというと産業政策というか、産業構造みたいな視点から働き方を見てくることが多かったのですが、今の中野さんの御質問にあまり答えていないのかもしれないのですが、今まで産業政策はどちらかというと経済産業省がやるようなイメージだったと思うのですが、より働き方と産業政策、今日の松尾先生のお話はまさにそうだと思うのですが、関連性が強くなっていて、もしかしたら労働市場政策みたいなものが究極の産業政策みたいな時代が来るのではないかなという気がしています。ラッダイト運動というのは、変わりたくないからみんな機械を壊したのだとしたら、ボストン・ダイナミックスさんですか、みんなロボットを壊すみたいなことをしたくなってしまうのかもしれないのですけれども、結局、それはあまり幸せになっていないのだと思うのです。どうやって自分が適用していくのかということを社会としてサポートしていくのか。

  先ほど柳川先生からもありましたが、今、就職活動して来年働き始めた人が見ている30代と自分の30代が違うとしたら、そこの変化を社会としてどうやって上手くサポートしてあげるのか。そこにもしかしたら労働市場政策みたいなものがかかわってくるのではないか。私がどうしても政策みたいな立場で見てしまうので、現場というよりは政策という形になってしまって恐縮なのですが、個人的にはそんな視点が少し入れられるといいなと思っております。

 

○金丸座長 

そうすると、小林さんは、最後の「グローバル視点から考える」というところに幾つか書かせていただいているのですが、その中の幾つかで、あるいは産業、業種別、職種別視点から労働市場政策を考えるみたいなプレゼン、御説明とか御意見を御披露いただければと思います。

 

○小林(庸)氏 

はい。

 

○金丸座長 

松尾先生から何かありますか。要するに、今、結構未来が見えている感じになるのですけれども、こういうことを議論しておいたほうがいいのではないかというのが何かありますか。

 

○松尾氏 

ここでやるのが良いのかどうか分からないのですが、現実のものとどう接続していくのというところもあるのかなと思います。2035年がこういうふうになるとすると、今こんなことをやっていたらだめだとか、そこと若干リンクさせると、次のアクションというのが見えやすいという側面もあるのかなと思います。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  大内先生、何かございますでしょうか。

 

○大内氏 

ありがとうございます。

  これからのことを考えていく際に、これは厚労省の場なので労働者の視点というのが大切かと思うのですけれども、労働者にとって何か自分でコントロールできることと、所与の前提としておかなければならないことをできるだけ的確に分類して議論していくことが政策を考えていく際には大切かなと思っています。

  きょうの松尾先生の話は、我々にとってコントロールできないような技術の進歩ということについて未来像を描いていただいて、こういうものは、例えば今からロボット打ち壊し運動をやっていくとかそういう話ではなくて、こういうのが今後の世界だということをまずは前提にした上で、我々はどういうことを考えていくべきなのかというのを議論できたらなと思っています。

  さらに、短期的な問題と中長期的な問題があると思うのですけれども、大きな変革が起きると、40代とかミドル以上の世代にとっては、ついていくのが大変だということになる。そのためのセーフティーネットの問題は一つあるだろう。

  それから、先ほど柳川先生が仰ったような、これから労働市場に入っていく若者、今の私の学生も含めてですけれども、そういう者にとって適切に情報提供して導いていくということも同時に重要で、これはどちらかというと教育の問題ということになってきますが、そういうように局面をしっかり分けて、それぞれに適合的な政策を考えていければなと思っております。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  磯山さん、何かありますか。

 

○磯山事務局次長 

これは、私が何か言うとか、ここのメンバーでという話ではないのですけれども、働きがいとか生きがいとか、何のために働くのかという一種の目的だけでなくて、生きがいみたいなものを少し議論しておかないと、すごい空疎な、ただ単純に労働力を提供するという話になってしまうかなという気もしていますので、もちろん、ロボットに置き換わっていくとか、ロボットを活用するというのはいいと思うのですが、では、人間というのは働くときにどこに生きがいみたいなものを見出すのかという議論がどこかで必要かなと思います。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  山内さん、お願いします。

 

○山内氏 

私も今の磯山さんの御意見と同じ観点で、働き方を考えたいなと思っています。働くことがなくなってしまうというお話でなくて、働くことの意味合いだとか、これから働くことがどういう形でその人の幸せとつながるのだろうかというのをどこかで踏まえながらいかないと、経済合理性だけを求めてどんどん行ってしまう議論になるリスクがあるかと思います。そういった中で、例えばこれからの教育のあり方がどうあるべきだとか、設けなければいけないセーフティーネットをどうしていくべきだとか、法的な見方をどう変えるべきだとかという議論ができてきて、それが整うと、働くことの中での意味合いというのをより明確にしていけるのではないかという気がします。そういった点は、働く人たちのことを考えると必要なのかなという気がしております。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  柳川先生から何か御意見ありますか。

 

○柳川事務局長 

今の働き方ということに関して言うと、普通働いていると、ずっと会社にいて、平日は朝から晩まで働いているというイメージですけれども、恐らくもっと多様な働き方というのがあり得て、ワーク・ライフ・バランスの話も含めて、あるいは場合によると、もう少し地域貢献をしながら働いているとか、その意味では、テレワークのような話も働き方のバリエーションだと思いますし、将来を見据えたときに、きょうはコンピュータとかロボットの発達が人間の仕事を奪うか、奪わないかという話だったのですが、そういうのを上手く活用しつつ、今までなかったような働き方というのができるかもしれないし、仰ったような働き方というのを議論するのだとすると、完全には将来が見えないのですが、今あるバリエーションとか、これからあり得るバリエーションとか、幾つか具体的な働き方の新しいパターンみたいなことが少し議論できると、そういう意味では具体的なイメージが膨らんでいいのではないかなと。

  そのかわりに、例えばそういう働き方がしたいのだけれどもできないという話があれば、では、それをどう改善するかという議論ができると思いますし、そのあたり、全体を通して少し具体的な話題を出しながらやれると、抽象論に陥らずに議論ができるのではないかと思っています。

 

○金丸座長  

ありがとうございます。

  それでは、よろしいでしょうか。

  懇談会のメンバーの方々の御出欠状況は皆様のお手元にありますか。実は私たち事務局サイドで自分たち3人が出席できそうな日を列挙しているものがお手元にあるのですけれども、きょうWEBで御出席の小林りんさんと御手洗さんの御出席がかなわない日が結果的に多くなっておりまして、後半は山内社長が全部御都合が悪いということなので、当面はこの予定で進めさせていただいて、御出席がかなわない方用に皆様の御都合を改めてお伺いさせていただくか、あるいは御手洗さんの御意見を、限られた人になるかもしれませんけれども、また別の機会を設けてお話をお伺いするということを考えようかなと思っております。

  それでは、本日皆様からいただきました御意見を参考に、今後の進め方について事務局長、事務局次長とも相談の上、決定させていただきたいと思います。

  今日は、申し上げましたとおり、会議の冒頭にはメンバーの皆様からプレゼンテーションをいただくということもありますので、ぜひよろしくお願いいたします。

  それでは、事務局から何か御連絡がありますでしょうか。

 

○鈴木労働政策担当参事官 

次回の日程でございますが、3月10日木曜日、14時から16時までの開催を予定してございます。それ以外の詳細につきましては、また別途皆様に御案内させていただきます。

  以上でございます。

 

○金丸座長 

ありがとうございました。

  それでは、これをもちまして本日の懇談会は終了させていただきます。

  本日はお忙しい中ありがとうございました。

  大内さん、小林りんさん、ありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省政策統括官付労働政策担当参事官室

03-5253-1111(内線:7992)

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