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2015年12月2日 ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォース第2回議事録

厚生労働省 大臣官房厚生科学課

○日時

平成27年12月2日(火)13:00~15:00


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○出席者

【委員】

鎌谷委員、小森委員、斎藤委員、佐々委員、末松委員、
鈴木委員、高木委員、高田委員、辻委員、堤委員、福井委員、
藤原委員、宮地委員、武藤委員、山本委員、横田委員

○議題

(1)改正個人情報保護法におけるゲノム情報の取扱いについて
(2)その他

○配布資料

資料1 これまでに出された主なご意見
資料2 個人識別符号を規定する趣旨及びゲノム解析結果の個人情報保護法上の整理
資料3 委員からご指摘のあった事項に関する事務局補足資料
資料4 改正個人情報保護法における検討に当たっての論点整理(案)
参考資料 第1回タスクフォース開催後にいただいた委員からのご意見

○議事

○厚生労働省椎葉厚生科学課長

 ただいまから、第2回ゲノム情報を用いた医療等の実用化推進タスクフォースを開催いたします。まず、本日初めて御出席いただいた委員を御紹介いたします。東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センター客員教授の鎌谷直之委員です。新潟大学法科大学院教授の鈴木正朝委員です。東海大学医学部基盤診療学系臨床検査学教授の宮地勇人委員です。なお、本日は横野恵委員、別所直哉委員は欠席です。事務局のほうに厚生労働省から、鈴木技術総括審議官が出席されております。

 次に、本日の配布資料について確認いたします。議事次第、座席表、資料1「これまでに出された主なご意見」、資料2「個人識別符号を規定する趣旨及びゲノム解析結果の個人情報保護法上の整理」、資料3「委員からご指摘のあった事項に関する事務局補足資料」、資料4「改正個人情報保護法における検討に当たっての論点整理()」です。参考資料ということで第1回のタスクフォース開催後に頂いた委員からのご意見と、第1回のタスクフォースの資料や様々な関連する法律・指針などをまとめたドッジファイルを、委員のみに机上配布しております。そのファイルは、会議終了後には机上に残していただければと思います。また、本日御欠席の横野委員から本日の議論における意見を頂きましたので、こちらも机上配布させていただきます。以上、資料に不足・落丁などがありましたら、事務局にお申し付けくださいますようお願いいたします。これより先、福井座長に議事進行をよろしくお願いいたします。

○福井座長

 それでは前回に引き続き、改正個人情報保護法におけるゲノム情報の取扱いについての討議をお願いします。最初に第1回会議の御意見とその後にメールで寄せられた御意見を、事務局から紹介していただきたいと思います。

○厚生労働省椎葉厚生科学課長

 資料1と参考資料を御覧いただければと思います。参考資料のほうで各委員から出されたご意見をまとめておりますが、資料1はその中からこれまでに出された主な意見ということで、事務局で整理させていただいたものです。全体に関するご意見ということで、まず3つに分けております。それぞれマルが付いており、個人情報保護法との関係、ゲノム研究における関係、患者・国民・研究者の関係について整理をしております。2ページが論点1、ゲノム情報と個人識別符号との関係について4つに分けております。1が個人識別符号に位置付けるべきゲノム情報に関するご意見、2が個人識別符号に該当することの必要性に関するご意見、また34ということで、別途検討の枠組みの必要性に関する御意見というように分けております。最後のページが論点2、ゲノム情報と要配慮個人情報との関係について、123と分けております。

○福井座長

 前回、内閣官房IT総合戦略室から、改正個人情報保護法の内容についての御説明がありましたけれども、議論を進める上で改正の経緯や背景を、もう一度共有するほうがいいのではないかということで、再度、内閣官房IT総合戦略室から、改正個人情報保護法についての御説明をお願いしたいと思います。

○内閣官房IT総合戦略室山本内閣参事官

 私から、資料2に基づき御説明申し上げます。前回、向井内閣審議官から御説明した内容と重複する所が多いのですけれども、ポイントを捉えて再構成しておりますので、そういう前提でお読みいただければと存じます。

 まず、1「情報通信技術の進展に伴う個人情報該当性の明確化及びゲノム解析結果の個人情報該当性」についてです。(1)の個人識別符号を定めた趣旨については前回の御説明のとおり、情報通信技術の進展に伴い、個人情報該当性判断が困難な情報というのが世の中に増えてきました。これについて明確に個人情報に当たることを示す枠組みとして、個人識別符号という制度的な枠組みを作ったというのが(1)です。

(2)が、皆さん御案内のとおり進展について文字にしたものです。

(3)として「小括」とありますけれども、この御説明に入る前に、1つ例を申し上げてから御説明したいと思います。例としてお考えいただきたいのは、指紋情報のデータです。技術の進展に伴い、日常生活の中で指紋データに基づく認証というのが、普及してきたものの例として皆さんも容易に御理解いただけると思います。指紋データは、ある特定の個人を当該本人だということで識別できる、同定できるものとして、この点も皆さん御理解いただけると思います。ただし、指紋データといっても当然ながら、その精度においては識別性を伴わないものもあり得るわけです。しかし社会的な通念として指紋情報というのは、やはり当該特定の個人を識別できるものとしての情報であるという理解をしていくべきではないかという考え方を、私どもとしては取っていきます。そういった考え方に即してゲノム情報について考えてみると、やはりこちらも同様の整理が考え得るのではないかというのが(3)の小括として書いてあるものです。

 次に2として、国際整合性の切り口での情報をお示ししております。無論前回のタスクフォースの議論でもありましたとおり、外国で規制していることをそのまま日本でやらなければいけないという筋はありません。我が国としてどのように判断するかということではありますけれども、我々が保護を図っていくものについて外国との整合性が図られていることも、また望ましいことだと思います。我が国が属しているOECDにおいては、OECDのプライバシーガイドラインの中で、「ゲノム解析結果の該当性は解釈に委ねられている」ということでお示ししております。このゲノム解析結果及び試料の取扱いについてのガイドラインということで、英文でお示ししておりますけれども、このガイドラインにおいてはバイオバンク等の利用者に対して、遺伝情報を含む個人情報を保護することを求めており、この中で「遺伝子型データは個人を識別し得る情報である」という記述があります。

 また、EUにおいてはEUのデータ保護指令において、ゲノム解析結果を個人データであると位置付けていると解されております。それが具体的に見えているのが、「指令を踏まえて」という2行目です。EUデータ保護規則案というものがEUの議会関係者、行政関係者、各国関係者の間での検討に付されております。これは国内法、EU加盟各国にも適用される位置付けのものです。この案の内容を見ますと個人データの定義規定において、ゲノム情報はこれに含まれていると考えられる案が示されているという状況です。

 こういったところを踏まえますと、国際整合性の観点からの小括ということですが、先ほども申し上げたように、一般的に国際的な保護の整合性を図っていくというのは、我が国としても当然取っていくべき姿勢ではないかと考えます。加えて、EUとの間での個人情報保護の対象についても、整合を図っていくことが求められているのではないかというのが、今回の改正個人情報保護法の一般的な考え方でもあり、ゲノムに視点を下ろしても、そのように理解することが適切ではないかということで、(2)の小括として書かせていただいております。

 以上を踏まえ、私どもとしては、ゲノム情報は個人識別符号として明確化することが妥当ではないかと考えており、これは前回お示ししたとおりです。ただし、考え方については前回お示ししておりますけれども、ゲノムの解析結果については、ある部位の解析結果が個人の特定に結び付かないこともあるという皆さんからの御指摘も含め、そういうことがあるということもこの場での共通認識ではないかと思っております。そのような論拠に基づき、個人情報に該当しない取扱いについてガイドライン等で明確化し、個人情報保護法の運用を図っていくという考え方を取るべきではないかと考えます。

 最後に参考の部分です。前回、向井審議官から御説明した個人情報の該当性について、第三者にどんどん提供されていくときに、どの段階でデータの突合に着目して容易照合と考えるのかを、簡単に図にしたものです。現行の個人情報保護法の一般的な考え方として今までも、これからもこの考えによっていくと思いますが、提供元Aという段階に着目しての判断になっているということをお示ししております。理由にもありますように、そこから先へ提供されることによって、提供先の情報の内容によっては御本人に対して同意が必要になる、この場合は同意が不要であるという運用は制度的に不安定ではないかといった観点を、ここで1つの例としてお示ししております。このような考え方であるということを、参考として記載いたしました。その後数ページにわたっては、前回のタスクフォースにおいて御説明した資料で、そのまま再掲しておりますので、本日の御説明は割愛させていただきたいと思います。

○福井座長

 これまで資料の説明を頂き、委員の先生方からは事務局や内閣官房IT総合戦略室に御質問があるかと思いますが、資料34の説明を最初にしていただいて、その後に御質問、議論をお願いしたいと思います。前回の会議での説明を補う目的で、事務局に補足資料を作成していただきました。事務局から説明をお願いいたします。

○厚生労働省椎葉厚生科学課長

 それでは資料3を御覧いただきたいと思います。次のページがタスクフォースにおけるゲノム情報の検討範囲のイメージを図示したものです。このタスクフォースでは、個人情報保護法との関連、年明けからは「ゲノム医療」等の検査の質の確保、「ゲノム医療」等の実現・発展のための社会環境の整備など、夏まで議論するわけですが、その検討範囲をお示ししたものです。

 真ん中に赤いラインを引いております。タスクフォースの検討範囲は右下に※で書いておりますが、ここで言うゲノム情報は、まずDNAに関する多型情報や変異情報などの生殖細胞系のゲノム、後天的に生じるゲノム変化、がん細胞に生じた体細胞変異などの体細胞ゲノム関係、マルが付いている一部のゲノム情報、左のほうにあるゲノム修飾や健康に影響を与える微生物群のゲノム情報を指します。また、ゲノム情報をはじめとした各種オミックス解析情報を含めてゲノム情報等と言うということで、先立って開かれた推進協議会の中間取りまとめを参考に、まず真ん中の赤いラインの所が検討範囲で、点線部分も含めて検討するというイメージです。

 次のページは、ゲノム情報を医療・研究・産業において、今後どのように利用していくかという現状のイメージについてです。研究についての御意見がかなり多うございましたけれども、研究と、一番上に医療での実用化ということで、遺伝性疾患の診断や予防・治療、がん等の診断や治療、医薬品の効果、副作用の予測などの医療現場で使う場合と、研究の場合は病態の解明とともに、創薬研究、個別化治療法の研究、診断法・予防法の研究、産業のほうでも様々なデータ収集が行われており、こういった様々なデータのやり取りを通じて、最終的に医療の分野で活用していくというイメージです。こういった観点から御議論いただければと思って示しております。

 次のページです。前回のタスクフォースにおいて、個人情報保護法では学術研究機関が行う学術研究は除かれているのに、なぜ三省指針があるのかという御質問があったと思いますが、それについての回答です。まず、この絵を御説明いたします。真ん中にマルがあり、コアの部分に点線で囲っている所があります。これが研究部分で、医療や産業で使われている部分が外側のマルです。個人情報保護法がカバーしている範囲は左上の4分の1程度で、私立大学や私立の病院・診療所、プライベートな製薬会社、民間の衛生検査所といった解析事業者で、この中の学術研究機関が行う学術研究、赤い所が除かれるというイメージです。しかるに隣の国立大学や国立病院機構、ナショナルセンターなどの独法関係については別の法体系です。左下の各省庁においては、例えば国立の研究所がありますが、そこも別の保護法になっております。また、県立のいろいろな研究機関や病院などもありますが、こちらは自治体の条例によって管理されています。

 こういったことから、個人情報保護法が制定される際に、附帯決議が示されております。平成15年に衆議院のほうからは、「医療等、国民から高いレベルでの個人情報保護が求められている分野について、特に適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある個人情報を保護するための個別法を早急に検討すること」という附帯決議を頂いております。また、参議院のほうからもより詳し目で、例えば医療については「研究や開発、利用も含んだ医療、そして個別法を早急に検討し、本邦の全面施行時に少なくとも一定の具体的結論を得ること」という附帯決議を頂いているわけです。

 これに対する対応方針ということで、平成16年に閣議決定された基本方針を抜粋しております。この中で「適正な取扱いを確保すべき個別分野において講ずべき施策」で、各省庁において個人情報を保護するための格別の措置を、医療等の各分野ごとに早急に検討し、法の全面施行までに一定の結論を得るものとするということです。その結果、これまであった三省指針の中を改正し、個人情報保護法の内容と大体同等の内容の取扱いを行うという内容にしたわけです。こういったことで、各主体によって変わる学術研究や研究についての共通の指針ができて、決して研究に支障があるわけでなく、逆に研究をきちんとやっていただくための指針という位置付けです。

 次の4ページでは、個人情報保護法改正に伴う同意の有効性に関する考え方をお示ししております。いろいろと先生方の御意見を頂いておりますが、実際に研究をなさっているタイプの先生方の中で、バンクをやっている方々からいろいろな御意見を頂いております。それらを類型化して同意の例(1)(2)に整理し、今回の個人情報保護法が改正された後、こういったものにどういう対応が必要かということを簡単にまとめたものです。

 まず(1)についてです。「○○センターにおいて、バイオバンクに関して担当者から口頭・文章による説明を受け、バンク用の採血、質問票情報、診療・研究に由来する試料や診療情報・予後情報を研究のためにこのバイオバンクに保管し、医学研究に利用されることに同意します。その医学研究の中には第三者に提供することも含みます。また、医学研究においては、遺伝子解析や他の民間企業による研究開発を含めます」と書いております。上にありますが、の利用目的は、医学研究であるということで明示されております。では民間企業に提供を明示し、第三者に提供しているという明示をして同意を頂いております。

 これについて、まずは法改正後の対応です。個人情報を取り扱うに当たっては、第三者提供の際には本人同意と、オプトアウトによる提供が可能です。同意においては医学研究の利用に伴い、第三者に提供することについて既に同意が取得されており、この場合、同意は有効であると考えられます。それから、要配慮個人情報になった場合の考え方です。要配慮個人情報に位置付けられた場合は第三者提供の際に、本人同意が必須ですけれども、左記の同意においては医学研究への利用に伴い、第三者に提供することについて同意が取得されており、この同意は有効だと考えられます。

 次に下のほうです。(2)ですが、これも読み上げます。「個別化医療実現のための研究は、できるだけ多くの研究機関・企業が幅広く研究することで効率よく研究を進める予定であります。そのため、外部の研究機関や企業にあなたのDNAやデータや一部を提供することがあります。しかし、あなたの名前や個人を特定できないようにし、個人情報は決して漏れることのないように、最先端の技術を使って厳重に保護した上で提供いたします。この研究から得られた成果は、雑誌などに発表されることがありますが、この場合もあなたのプライバシーは守られ、個人情報が外部に漏れることは一切ありません。提供に当たりましては科学的・倫理的に妥当な使用計画を持ち、提供元が求めるセキュリティ基準を備えていることが確認された機関に限りますので、どうぞご安心ください。」ということで、かなり丁寧に御説明している例です。の利用目的では個別化医療実現のための研究のためということと、では第三者への提供、外部への研究機関や企業に提供することを明示しております。また、提供の方法についてもで明示し、かなり親切に書かれたものだと思います。

 これについての対応ですが、法律の改正後、まず個人情報の場合、第三者提供の際は本人同意やオプトアウトによる提供が可能です。左記の同意については第三者提供を含む利用目的の変更がないため、個人情報保護法上において同意は有効ですが、個人が特定できないようにして提供する旨が示されており、これについては改めて別途通知等を行うことが望ましいと言えます。また、要配慮個人情報に位置付けられた場合は、第三者提供の際に本人同意が必須です。ただ、同意においては第三者提供を含む利用の目的の変更がないことから、個人情報保護法上では同意は有効ですが、個人が特定できないようにして提供する旨が示されており、この場合においてはこの旨を別途通知等によって周知することが望ましいと言えます。こういったことで今あるバンクについて過去に取った試料、同意の代表的な例を示しましたけれども、こういった手続により対応できると考えています。

○福井座長

 それでは、これまでの御意見等を踏まえ、事務局より論点の整理をお願いしたいと思います。

○厚生労働省椎葉厚生科学課長

 資料4を御覧いただければと思います。「改正個人情報保護法における検討に当たっての論点整理()」です。論点が2つあります。1点目が個人識別符号に関する論点です。まず、この法改正の趣旨については先ほどIT戦略室から御説明がありましたが、技術の進展に伴う個人情報該当性の明確化、国や地域を越えた個人情報の流通に伴う国際整合性の担保を踏まえ、遺伝情報を個人識別符号として政令に指定する際に生じる課題について、以下のとおり対応してはどうかということです。

 これには2つあります。1つ目ですが、科学技術の進展により、一部の遺伝情報を含む特定の遺伝情報の持つ特定個人の識別性については、変化し得るものだと考えられることから、海外の動向や科学的な観点を踏まえ、継続的に精査し、政令指定の考え方を示すこととしてはどうかということです。2つ目として、実際に研究の現場において、いろいろと支障があるという御意見を頂いております。そこで、研究の現場において過度に慎重な取扱いがなされて、法改正の趣旨に逆行することがないよう、過去に取得された遺伝情報も含めて、必要な同意取得の具体的な方法について示すこととしてはどうかと。この2点です。

 それから2番目が、要配慮個人情報に関する論点です。こちらについても法の改正の趣旨並びに要配慮個人情報の政令指定の考え方を踏まえ、遺伝情報を要配慮個人情報として政令に指定することとした上で、医療や研究などの実際の現場において不都合が生じないよう具体的な事例を踏まえ、別途対応を検討することとしてはどうかということです。

○福井座長

 討議に移ります。論点整理()を踏まえて御発言をお願いいたします。最初に、個人識別符号の所について、御意見を伺えればと思います、いかがでしょうか。

○末松委員

 資料4、個人識別符号に関する論点の(2)、上にもありますが、「遺伝情報」という言葉が出てきます。資料1ですと「ゲノム」とか「ゲノム情報」という言葉で、資料4は「遺伝情報」となっています。ここで対象とする「遺伝情報」というのは、社会通念としてどういうものなのかを教えていただきたいと思います。この「遺伝情報」というのは、いろいろな意味を含むというのは皆さんよく分かっていて、血液型とかお酒が飲める飲めないとか、そういうのも遺伝情報というように取れなくもない。ここでいう「遺伝情報」というのは何か、用語として政令に書く場合には、本当にこの「遺伝情報」という言葉を使うのかどうかも含めて慎重に検討をする必要があるのではないかと、指摘させていただきました。これが1つ目です。

 もう1つ、「要配慮個人情報」という所があるのですが、これも資料4の下になりますので、これは後でお話をしておきたいと思いますけれども、まずこの「遺伝情報」という用語について。

○福井座長

 事務局から、いかがでしょうか。

○厚生労働省椎葉厚生科学課長

 これにつきましては根本的なものですが、社会通念上の遺伝情報で、例えば耳あかとか血液型といったものは入らないのではないかと解析をして、これは戦略室のほうに。

○内閣官房IT総合戦略室山本内閣参事官

 私から補足させていただきます。この「遺伝情報」とありますのは、こちらはゲノムに関するタスクフォースですので、ここにおいて念頭にあるのはゲノム情報だということで私としては理解しております。ただし、今、委員からの御指摘もあったように、政令でどのように表現するか、書けるかという話はまた、立法の問題として必要な検討を別の角度からもしていかなければいけませんので、政令にこの遺伝情報とかゲノム情報とかをどういう形で書くかというところで、立法の作業の結果としてどのようになるかというところについては、少し検討を待っていただく必要があると御理解いただきたいと思います。念頭にありますこの「遺伝情報」については、こちらで議論していただいているゲノムということで、私としては受け止めております。

○末松委員

 この「遺伝情報」という言葉は明確にしておかないと、実際に政令でどういう文章になるのかをほかの方面と検討してということではあるのでしょうが、例えば資料4を下まで見ますと、論点の検討の場と言うのでしょうか、そういうものを設けることが示唆された文章があるのです。例えば政令の中に個人情報保護委員会が定める遺伝情報の検討の仕組み、そういったものを別途書いていないと、中身が明確にならない状態で議論をしているので、非常に混乱を招くので、そこは十分な留意が必要ではないかということで御指摘させていただきました。

○鎌谷委員

 今言われたとおり、実は国際的に読まれているメディカルジェネティクスのテキストブックには、日本は遺伝医学と人類遺伝学が極端に弱いと書かれてあるのですね。医学とかテクノロジーは非常に進歩しているけれど、遺伝医学とヒューマンジェネティックスが極端に弱いと。多分それは今言われた情報というものを捉える力が強くないということだと思うのです。ゲノミックデータというとシーケンスなわけですね。DNAは物ですよね。でも、インフォメーションとかそういう情報になると、もう少しデータよりも高度なものを含んで、そこは結構分離すべきだと思うのです。つまり、個人識別で問題になるのはデータのほうです。でも、倫理問題になるのは実は情報のほうです。それは具体的なものとしても違って、個人識別するためにゲノミックデータが多少出ても絶対できません。全部出ても絶対できないです。100%それはあり得ないので。だから、ゲノムというのは個人識別能力としてはすごく弱いし、しかも悪用がものすごく難しいことがあって、これが個人情報という中でくくられると、ものすごく遅れることになると思います。ただ、断片的なゲノムの情報であっても、やはりその情報であると、例えば表現型との病気との関連であると、これは倫理問題があるわけです。今出ている遺伝の問題は、倫理問題はあるけれども、実は個人識別能力はすごく弱いということだと思うのです。是非その辺を議論にして、ここには「ゲノムデータ」と書かれている所と「情報」と書かれている所があるわけですが、その概念が、それは1900年ぐらいに日本に遺伝学が入ってきてからの問題で、概念がきちんと捉えられていないために、すごく遅れている部分があるわけです。その辺も、ここで言ってもしょうがないですけれども、そういう問題があることを是非認識していただきたいのです。だから、例えば外国の、ヨーロッパやアメリカの情報、規制とかをそのまま持ってくるときも、中を理解せずに持ってくると、いつまでたってもこの問題は解決しないと思います。

○武藤委員

 先ほど末松委員がおっしゃったこととも関連して、気になった点としまして、資料21番ですが、一体我々は何について議論をしているのかが未だによく分からないのです。それで、1の「情報通信技術の進展に」という囲みの(3)の所に、個人情報かどうかというような、「社会通念上」と書かれているのですが、先ほどの末松委員の御質問は、その下にある「科学技術的な厳密性」の所に力点が置かれていることで、やはり医薬研究をされている方々は、科学技術的な定義としてこれは何なのかということが理解できないと、ちょっと難しいと思います。ですので、先ほど血液型は入らないのではないかという御指摘もありましたけれども、研究者から見れば、いや、入るでしょうということがあるわけで、この科学的な厳密性というのは是非、そもそも論で間に合わないのかもしれませんけれども、御検討いただきたいと思います。

 その点で関連して、本日、横野委員から出された資料番号のない1枚紙があるのですが、こちらで横野委員が指摘されている、2番に個人識別符号の定義に関しての2ポツで、「本タスクフォースでは現在までのところ、ゲノム情報と個人識別符号との関係について、主に特定の個人を識別することができるか否かという観点で議論が行われ、特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号、その他の符号に該当するかどうかについては論点になっていない」という指摘があります。私はこの違和感は共有しておりまして、今我々が議論しようとしている「ゲノム情報」というものは、身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換したものなのかというのが、やはりしっくりこないところもあります。ですので、間に合わないかもしれませんけれども、一応、何の議論をしているのかについて、もう一度御精査いただけたら有り難いと思います。

 もう1点だけ、資料2の先ほどの2番で、国際的な整合性の話がありましたけれども、確かに御指摘のとおりOECDにしてもEUにしても、いろいろな議論がなされていて、あちらでもまだ喧々諤々やっているということは事実だと思いますが、こうした国々でも様々にゲノムデータを流通させる研究、データシェアリングのことがあるわけです。その点が何も書いていないので、潮流としてそういうこともあることも是非事実としてお含めいただきたいと思います。

1点感想だけですけれども、先ほど具体的な同意書に関して、資料33枚目で、説明文書の例(1)と例(2)があって、例(2)は私も関わって作ったものなので、そうですか、通知を何かしなければいけないですかということで、ちょっと衝撃を受けているのですが。これは質問ですが、通知を行うというのは、個人が特定できないようにしてという趣旨が今度の法律では、特定し得ることになるから特定し得ると書きなさいという御趣旨でよろしいのでしょうか。もし間違っていたら御指導ください。

○福井座長

 事務局から何かありますか。

○厚生労働省椎葉厚生科学課長

 そのつもりです。

○福井座長

 藤原委員、どうぞ。

○藤原委員

IT総合戦略室の方に2点お伺いします。1点は、先ほど少し立法上の話が出ていましたけれども、個人情報改正保護法案は、遺伝情報について個人識別符号にするかどうかは政令で定めると法律の中に書いてあるので、多分、内閣法制局とかと調整が必要になるのだと思いますけれども、この時点でこの会議でいろいろなことが議論されたところが、タイムスケジュール的にそこにちゃんと間に合って、政令の中身として、個人識別情報に遺伝情報をどのように取り込むか、反映できるかどうかという点です。

 もう1つは、先ほど武藤先生もおっしゃっていました、OECDとかEUの例示ですが、ここの会議は研究もそうですけれども、将来の実用化、医療のところでどのように活用するかというところも論点に入っていますので、学術研究に加えて医療がこのOECDとかEUの動向としてどのようになっているかを把握されているかどうか、という2点です。

○福井座長

 山本参事官、いかがでしょうか。

○内閣官房IT総合戦略室山本内閣参事官

 藤原委員の1つ目の御質問にありました政令の策定作業において、このゲノムタスクフォースの議論、これはしっかり反映させていただいた上で、適切に政令及び下位法令としての様々なガイドライン、またQA、いろいろな法形式でお示しをしていくべき、我々として発信をしていくべき情報にしっかり受け止めて対応してまいりたいと思います。

 医療につきましては、当然ながらヨーロッパにおきまして、基本的にはセンシティブなデータという形での扱いが一般的になっています。これは現行の各国の法令でもそうですし、資料の2で引用させていただきましたEUデータ保護規則のドラフトにおいても同様の整理と認識をしておりますので、この点についてはお詳しい委員がこの中にもおられますので、この程度に留めたいと思います。

 あとは、お許しいただいて、先ほどの武藤委員の御指摘との関係ですが、まず国際整合性のところで、EUにおいてゲノムのデータシェアリングみたいなものは当然の動きとしてあるということについては、我々も当然認識をしておりますし、ここで前回、熱く議論がありましたように、ゲノムに関する研究を進めていく上で、国内でも、また国境を越えても、しっかりとデータのシェアをして、これを活用していくということが必要だという現状認識に立った上で、制度上どのような対応が筋も通っており、また合理的なものになるかという観点で、私としては考えていきたいと思っております。

 武藤委員の冒頭の御発言でありました、また末松委員からの御指摘とも絡みますけれども、何についてどう議論しているのかということについては、これは当然ながらしっかり定めていく必要があると思っておりまして、私の認識ではこの出発点として、ゲノムの倫理研究指針が現にありまして、そのスコープというのがまず出発点だと思っておりますけれども、科学的な情報、科学技術の進展に伴いまして、どのような形で整理されるかにつきましては、個人情報の観点からの対応と、委員の御指摘の中にもありました倫理的な側面からの対応と両方あり得ると思いますけれども、私のところでは個人情報の観点からの整理についてしっかり今、現に関係しておられる3省及び健康・医療戦略室とよく擦り合わせをしながら、先ほど申しましたように、個人情報保護法の観点から筋が通っており、また個人情報としての利用が合理的に図られるというような形での制度になるようにしたいと考えております。

○福井座長

 辻委員、どうぞ。

○辻委員

 先ほどから議論になっているところで、ゲノム情報から個人を特定すると、何となく社会通念上、非常に短絡した記述になっているのですが、実際にゲノム情報から個人を特定するためには、比較対象とする個人情報を含んだデータベースが存在しないと理論的にできないわけですね。だから、全ゲノム情報であっても、その配列情報をハードディスクで渡されて、どの研究者にとってみてもそれがどういう個人であるかを特定することは、私は科学的にできないと思います。そういう状況にあって、個人識別符号とするという前提は、どういう根拠に基づくのかを明らかにしていただきたいと思います。

○福井座長

 いかがでしょうか。

○内閣官房IT総合戦略室山本内閣参事官

 正にその点につきまして、辻委員の御指摘もございますし、また今日、事務局で御用意いただいた資料にも、個人の識別の可能性のあるゲノムについては多々御記載を頂いている所もありますので、その点について私の現時点での認識としましては、今、辻委員がおっしゃったように、個人識別符号に該当すると整理することが妥当ではないかという認識ですけれども、今は正にその点については皆様の英知を、また私どもとしても受け止めさせていただいて、そのような役回りかと思っております。

○斎藤委員

 先ほど末松委員の御指摘になった「遺伝情報」という言葉と「ゲノム情報」という言葉を一緒に混ぜ合わせて使うのは非常に問題だと思うのです。今ここで議論するのが当面のタスクフォースの検討範囲ということを先ほどお示しになったことからいきますと、論点の所にある「遺伝情報」というのは、「ゲノム情報」に書き替えないと、ゲノム情報の議論をしながら政令としたときに、遺伝情報とまた置き換えられると、非常に議論が無駄になってしまうことがありますので、そこは明確にしておいたほうがいいと思います。

○堤委員

 先ほどからのお話をお伺いして、私も意見書でアンケートできたときに答えたのですが、個人識別性と到達性という2つの観点がありまして、到達性のところはデータベースの構築とかがいるのではないかと。例えば親子鑑定で使うとか、犯罪捜査で個人を同定しているということに関しては、識別性があるという認識で、識別性があるものとないものと分けて整理して、どう置くかという議論をしたほうがよろしいのではないかと思ったのです。遺伝情報はどうしよう、ゲノム情報はどうしようというよりは、ちょっと側面が分かれているように思うのです。そこら辺の整理ができればもう少し、研究で使う場面であればこうであろう、医療であればこうであろうと、識別性のあるものはこうであろうというのが煮詰まっていくのではないかなと思いました。

○鈴木委員

 新潟大学の鈴木です。先ほど来から御意見をお伺いしていましたら、まず結論から言えば、個人情報保護法の一般法の適用があるという前提に立てば、医療等研究や創薬等事業等への影響は甚大であることは確実です。したがいまして、個人識別符号等の適用回避の理論や解釈を施行する議論になるのもこれまた当然です。ただし一方、個人情報保護法は医療分野だけを特別扱いにはできません。1つの個人情報の定義に関して1つの明確な解釈基準を維持しなければならない。マイナンバー単体が個人情報だと言えば、それ相応の理論で、全ての事象に対して1つの基準で当てはめていかなければならないと。これはそのとおりだと。

 結論からして、どうすればいいかということになりますと、経団連に行ってもジャンプに行っても方々の研究会に行っても、ほとんど目標は一緒です。4つあります。医療安全を確保すること。このためにはトレーサビリティの確保が絶対必要です。連結可能匿名化は今回の改正で使えなくなります。したがって、連結可能匿名化をやめにするという話ではなくて、それに代わる制度が絶対に必要だと、これは譲れないと。それから、ドナーのプライバシー保護も重要だと。ゲノムの場合は、一定範囲の血族等、多数当事者のプライバシー保護の問題と、生まれてくる子孫の保護もありまして、単純な個人情報と異なるのは周知のことです。

 それから、学術研究の自由を確保しなければならないというときに、既にお示しいただいたこの円グラフがありますが、今議論をしているのはこの4分の1だけの議論です。条例に至っては47都道府県、1,700有余の条例があって、それぞれの個人情報審査会等の御判断等が影響して、今日おくすり手帳1つ、オールジャパンの電子化が図れないという惨状にあることも皆、周知のことです。この中で学術研究の自由の確保をどう図るかがここでの論点です。

 それから、遺伝子創薬等産業振興も絶対に必要だと。そのためには、世界中から検体等の遺伝データ等を日本国内に集める必要があるという点で、国際的ルールの整合とか執行・協力体制は絶対に必要だと。でないともう、一部の製薬企業等が保護水準の高い、すなわち世界からデータを集めやすいEU等に移って、産業空洞化が生まれているということですから、目標としての医療安全、ドナーのプライバシー保護、学術研究の自由の確保、遺伝子創薬等産業振興の4点は、どれも落とすことなく4点とも全部クリアするというのがここの目標です。

 したがいまして、元に戻るならば、条例等の問題も含めて、個人識別符号は私立大学の私企業だけの話ですから、ここの問題をここでうまく解決しても、その他多数の公立大学、国立大学は全部この議論から落ちるわけですから、結論は1つです。立法しかないです。立法以外に今言った目標を達成することはできないと。しかも納期があります。これも森田先生の人口問題研究所がもう既に推計を出しているように、団塊の世代が後期高齢者になるまでです。そこまでに至るまでに一定程度の政策を全部総出動する必要性があるということで、既に政府は線表を引いていますから、こんな議論を続けていたら絶対間に合わない。したがいましてここでの議論は、どう立法するかです。個人情報保護法は個人情報として粛々と単一の基準でしっかり押さえてもらう。それは、ゲノム法から漏れたものをカバーしていただければいいと。ゲノムに関しては特別法がなければ、例えば削除請求権はどうすればいいのですか。本人だけが削除請求ですか。勝手に自分と関わり合うゲノムを公開されてしまって、その血族はそれに一切関与できないのかという問題も、個人情報保護法単体ではどうしようもない話です。

 したがいまして、小田原評定を続けるよりも、まずは法を作るかどうかが先行議題です。それで立法するとなれば、どう作るかの建設的な議論ができますので、議論の速度も上がります。立法に反対される方がいたら、むしろ挙手して御意見を頂きたいと思うわけですが、いかがでしょうか。

○福井座長

 まだそこまではいかないと。

○鈴木委員

 いや、駄目です。第2回で決めなければ34回で現実的な議論はできません。実は私はパーソナルデータ検討会に出ておりましたが、パーソナルデータ検討会の第1回では、法改正は決めておりませんでした。第2回でするべきだといって議論が加速しました。加えてパーソナルデータ検討会では、医療分野を見ておりませんでした。見ていない法律を当てはめて妥当な結論は絶対に出ません。これは議論の余地がない。また逆に言えば、医療分野の特性をもって基本法の解釈基準をゆがめてもならないと。結論は特別法しかないです。これに関しては議論の余地がないというのを私は意見として今申し上げていて、これは後にゆっくり決めるではなく、特別法有りか無いかは前提問題だという意見です。したがいまして、ここで決めてほしいのです。

○福井座長

 今の御意見について何かありますでしょうか。

○堤委員

 私は鈴木先生のお話に大賛成です。ただし、ここはゲノム医療を進めるという大前提がありますので、ゲノム法というよりは、例えばの話として、ゲノム医療を推進するための法律の枠組みの中で研究がどうあるべきか。指針に委ねるのであれば指針に委ねる。ゲノム情報をどう取り扱っていくのか、それから、前申し上げたとおりで、差別を禁止するのであれば、その中で情報の取扱いで差別が起きないような仕組みを考えるというのが一番ベストではないかと思います。

○鈴木委員

 今、ゲノム法と先走った言い方を申しましたが、実は連結可能匿名化等の論点は医療データ一般の話です。ゲノム固有の話ではないと。そうするとゲノム法を作る何らかの立法措置を一応、ここの議論の土俵に入れなければならないということだけを申し上げたいわけで、どう作るかはむしろ役所のほうが分かっているわけですから、こちらで言うべきは、何をやらせろという要求事項です。連結可能匿名化を、無ければゲノムの研究ができないとか、何々を絶対死守してくれという要求事項を明確化して、それを確認すれば足りると。それを立法上どう実現するかは、医療等IDが入るかどうかは分かりませんが、マイナンバーに加えて、医療等IDが入るという政府方針であれば、医療等IDの根拠法が必ずや来年立ち上がってくる。そこに医療等の特別法をどうマッピングするか、それで救われるゲノムの研究もあれば、救われないものもあると。そういった、どこにどう法律を作るかはお役所が決めるべきことでありまして、こちらとしては何をやらせろと、何をやりたいのだということを明確にすれば、それはきっちり引き取っていただけるのではないかなと思います。

○佐々委員

 今の鈴木委員の御意見で、今までもやもやしていたものがすっきりしてきた気がします。それで、消費者の立場から申し上げます。この論点整理ですけれども、現状を見ながら政令を与えていくというようなやり方は、やはり透明性に欠けるところがあると思います。消費者には今、鈴木委員が言われたような非常にすっきりした論法がないと、研究者の方や企業の方への不信とかが重なっていくと思うので、やはり枠組みをすっきりしていただきたいです。

 それともう1つ、ここでは研究に支障を来すということがすぐ出てくるのですが、やはり検体を寄付された方の貴い意思を大事にするということを前提にして頂きたいです。何か物ができること、新しい研究ができることが先行していて、みんなの幸福や健康が後に置かれているように見えるので、先生方が思っていらっしゃる、みんなの幸福や健康、それを前面に出してすっきりした法律の仕組みを作っていただきたいと思います。

○福井座長

 鈴木先生がおっしゃった方向で議論をしたいのですが、その前に1点だけ。「遺伝情報」という言葉と「ゲノム情報」、これは取り替えてもいいのか、それともまだ議論をしないと駄目な話なのか。今まではゲノム情報でずっと議論を続けてきたように思いますけれども。この点だけちょっと確認した上で、鈴木委員がおっしゃった方向での議論に移りたいと思いますが、いかがでしょうか。

○堤委員

 検討範囲の中の絵にも出ていましたように、藤原先生御専門の、がんの領域でのゲノム解析とかも入ってまいりますので、ソマティックミューテーションが入ってくるという認識ですので、ジャームラインとソマティックミューテーション両方が対象になるという意味でのお考えであれば、ゲノム情報と言ったほうがきれいに整理できるかなと考えております。

○宮地委員

 遺伝情報とゲノム情報の前に、冒頭に鎌谷先生が指摘された、情報とデータは切り分けないと混乱していく可能性があると思います。データに関しては個人識別につながるところですが、情報に関しては必ずしも識別能は高くないという前提でいくと、非常に混乱していきますので、個人識別の話をするのであれば、やはりデータと情報と切り分けるべきだと思います。倫理の話は、プライバシーや医療におけるカルテの記載とか、そういうところは情報として取り扱っていくことになると思うのです。そこはしっかり切り分けて、先に議論を進めたほうがいいと思います。

○福井座長

 となると正しい言葉は、ゲノムデータとなるのでしょうか。

○鎌谷委員

 指すところが違うのではないかと思うのです。実は私は、データと情報が区別できないことが、今の日本の産業に大きな影響を与えていると考えているのです。ITとかそういうものが進まないのも、情報とデータの切り分けができていないと。また淡泊であっても淡泊の中にゲノムのデータが反映されていればそれは、ゲノムのデータなのですね、物としてはDNAではないけれども。データも情報を含むこともあるけれども、データと情報と、その辺をはっきり定義していただきたいのと、あとは、先ほどの遺伝とゲノムというのを明確に定義しないと。日本でジェネティクスを遺伝学と訳したのですが、実はそれは間違いなのです。それがもう100年ぐらい、遺伝学がすごく衰退した1つの大きな要因ではないかと思うので、是非その定義を明確にして。私は、ここで問題になっているのは、やはりゲノムデータではないかと思います。そのようにして議論していくと一番はっきりしていくのではないでしょうか。

○内閣官房IT総合戦略室山本内閣参事官

 ありがとうございます。個人識別符号として、それ単体で特定の個人が分かるものについては、今、鎌谷委員、また、先ほど武藤委員から御指摘いただきましたように、それはデータですので、電算機で処理されたデータが私どもの念頭にあるものになるということを、まず1点お伝えした上で、政令上どういうふうにこの記載ができるのかというところは内閣法制局とまたよく御相談をしながら、これは鎌谷委員の御指摘のとおり。日本が遅れているからかどうかは知らないのですが、ゲノムデータというような形での法律上の用語というのは余り見当たらないのが現状であったりもするのですが、少し工夫をして対応してまいりたいと思います。念頭にあるものだけは、今、こちらで明確にさせていただきたいと思います。個人識別符号としてはゲノムに関するデータということです。

○鎌谷委員

 それは是非限定しないと。やはり、理解していないことは、分からないものは怖いので過剰な規制をするようになっているのではないかと思うのです。それを分からないままに通してしまったり。だから、やはり概念をはっきり捉えて、明確にコミュニケーションできることによって次に進めるのではないかと思います。是非これはゲノムデータという。

 また、ゲノム情報という場合は、やはりそれに別のものが含まれますよね。例えば、ある病気に非常にかかりやすいとか、薬に副作用が出やすいなどというものを含むと、これはゲノムデータではなくて、情報を含んだものだと思います。

○福井座長

 その点についても十分に配慮いただくということで、できましたら次回の会議のときにでも見解を教えてもらえればと思います。

 それでは、先ほど鈴木委員から御指摘がありました、この論点の整理のところで、基本的には資料4の中で、とりわけこの医療及び研究等の現場について不都合が起こらないように、また、過度に慎重な取扱いがなされないようにということで、最も重要な点はどういう点なのかということを、例えばここで確認してもらうということも可能かと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。

○鈴木委員

 この個人情報保護法に拘泥する限り、何が今後起きるかというと、個人情報は個人情報のままもう出来上がっていますから、法解釈として単純に当てはめていきます。そうすると、今後、顔認証、テロ対策等で、肖像を写した後、特徴量情報を取りますが、顔写真が個人情報であることは全く議論の余地がない。顔は瞬時に捨てるわけです。そうすると、身体的特徴をもって電算処理を前提とした特徴量情報単体を今後は個人情報、個人識別符号とする。これが前提となって、そのアナロジーで、類似するものをみんな拾おうという動きが出てきます。

 ここで今、バーッと皆さんから現場で、それでは動かなくなるという話ができると、遺伝情報を残そうという動きと合わさって何が起こるかというと、小さく遺伝情報を定義して、できるだけそぎ落として、皆さんに影響がない形の定義が採用されることになる。結果、遺伝情報も個人識別符号に、指紋、顔認証等生体情報の一部として残りましたということが個人情報保護上、整理される。でも、それによって、果たしてゲノムの研究、医療安全、学術研究の自由確保、遺伝子創薬に一体何が資するのか。また逆に、今の医療従事者中心とした世界では、法的担保のない、強制力の伴わない指針でも十分に現場は、過度なくらいしっかり守られている。ところがこれからは、新たなプレーヤーが入ってくるわけです。そういったモラルが担保されて、また、医師法などで担保されている人たちだけで使う世界ではないというところを前提に考えていかなければならないときに、単なる法の適用、1個の法律の一部だけの、理論上2,000分の1だけのルールについて精査して、小さく遺伝情報が残ったとして、目的は何ら達成されない。だから、正に大局的にゲノムをどう扱いたいのかという正面からの議論をして、それについて法律を作っていただくという議論のほうが極めて真っ当。

 個人情報保護法の議論は、特別を作るとなれば、こういう細かい議論に頭を悩ます必要性は一切なくなるわけです。だって、特別法が先に適用されるわけですから。個人情報は個人情報保護法として粛々と走ってもらえばよろしいのではないかという気がいたしました。

○辻委員

 まず最初に1つ質問ですが、新たなプレーヤーというのをちゃんと説明くださいますか。

○鈴木委員

 新たなプレーヤーというのは、ゲノムが法規制から逃れれば、万人が使えるということになって、それに対して政府、国は一切関与しないというゼロ規制を既決するということで、それで大丈夫ですかと。誰かと言われれば、1民間企業、様々な企業がゲノムを使った様々なサービスをする。これに対して、最近は産業振興が非常に望まれていますから、過剰に暴走するリスクもある。やっていただくのは結構だが、やってはならないことを明確化するというのが法律の役割ですので、まずはブレーキを設計してからアクセルを踏んでくださいということであり、むしろ、ゲノムになじまない新たなプレーヤーが出てきたときにどうするかが論点の1つであろうと思うのです。

○辻委員

 ゲノム医学研究について新たな立法化が必要であるかどうかというのは、これは最初の個人情報保護法ができたときからある議論だと理解しています。一方で、今、鈴木委員が御指摘のように、研究者コミュニティでは参照指針と言われているような指針を作り、非常にしっかりした研究倫理審査委員会の下に研究を行うということをやってきているわけです。それで特に大きな問題は生じていないと私は理解しています。そういう研究倫理をどういうふうに達成して推進するかということ。それと、立法化によって保障するということをどういうふうにバランスを取るかということは、一方で、私は必要な議論だと思うのです。法制化すれば全てクリアになるという問題ではないと思うのです。

 だから、法制化の議論はもちろんすべきだし、きちんとできるなら私も賛成ですが、ただ、研究倫理審査委員会で行ってきたそういう自主規制的なものを、法律の目から見て存在意義がないと言われることに関してはいかがなものかなと思います。

○鈴木委員

 それは誤解です。全く言っておりません。法律は。

○辻委員

 私が言いたいことは、今回の議論の上でも、IT戦略室から出されている資料に関しても、全てEUの規制に関する提案などということばかりなのです。一方で、研究者コミュニティの中では、NIHのポリシーが非常にはっきりしていますが、公的資金で得られたバイオリソースやデータは公共財として、国民の財産として、また、研究者コミュニティが積極的に有効に、安全に共有することによってこそ、研究は進むということがあります。それが現在の国際動向です。そういう国際動向を、この一連の資料の中に私は1行たりとも、一言も見ていないです。ですから、そういうことに対して、きちんとした視野を持って作られてきたとは思えないと私は思っています。

○鈴木委員

 今、誤解があるようですので。法規制と言うと、何か医療現場を縛るとか、倫理規定の今までの蓄積をちゃらにして一から立ち上げるというような誤解があるかもしれませんが、むしろそうではなくて、医療研究の自由を確保するための法律が必要であろうと。

 例えば、先ほどお示しいただいたこの円グラフですが、民間部門の個人情報保護法については適用除外条項が明確に定められているのに対して、他分野はないのです。そうすると、せっかく法の適用を除外するという法律の根拠をもって、正に倫理の問題にお預けしているのにもかかわらず、ほかの分野は明確な、研究分野は研究コミュニティにおいて、その自主規制に委ねるべきだという、その適用除外条項がないまま走っている。そうなると、条例等が2,000個近くある中で、高い基準を自ら選択して、自らに必要以上に縛るところもないですかというところはある。

 過剰な文章、書類が多いとか、目的的に合理的かというところも、実はかなり安全サイドに倒してはいまいかということは懸念されるところですが、法制度はむしろ倫理に委ねるための根拠法を用意し、そこは医療研究者等の責任に委ねる。その研究コミュニティから漏れている人たちの悪しき使い方については、こういうことはやってはならないということを明確にしなければならない。そこは法が担保しなければならない。

 越境データ問題については、既にこのパーソナルデータ検討会でずっと検討していたように、そういった患者とドナー本人の保護水準が低いと、EUはデータを渡さないと言っているわけです。ですから、法律によってドナー・患者本人の権利保護を条文で見せてあげない限りは欧州と協議ができない。結果、日本にデータが入ってこない。そうすると、研究拠点も、製薬の開発拠点も、欧州に展開せざるを得なくなり、産業空洞化、研究の空洞化を招きかねない。そこを懸念しているということです。

 一方で、法規制がなければ、今日、データは、本人の同意の下に中国へ、安い所に流れていきます。それに対して、バックドアが開いている状況で、米国、欧州が果たして日本に渡してくれるのかという問題も一方である。だから、ゲノムにも特化した、医療データにも特化した法制化は、もはや議論の余地がないということを申し上げているわけです。

○鎌谷委員

 それに関してですが、現状は、やはり創薬及び遺伝子検査において、日本はものすごく遅れていて、そのために、多分、日本人の税金や資産がどんどんアメリカとヨーロッパに行っているという現状です。それはますます拡大しつつあって、このまま放っておくと、日本がほかの国に比べて、少なくともゲノムあるいは遺伝子検査の分野と創薬の分野で、ますます後退するであろうということが確実だと思います。是非それは避けていただきたい。

○堤委員

1点よろしいですか。これはどなたか教えていただければと思うのですが、先ほど辻先生がおっしゃられた、ゲノム指針に沿ってゲノム研究が進められていると。それは、よく言う話ですが、法律に基づいたガイドラインではありませんよねというので、法律が出てきたら、そっちのほうが強いでしょうみたいな話でずっと来ている。今度は新しい法律を考えるときに、そういうゲノムの研究というのは、そういうガイドラインに委ねますよということを何か盛り込めるようなことはできるのでしょうか。鈴木先生でも、何かお知恵があったら教えていただければ。

○鈴木委員

 だから適用除外条項を。今の個人情報保護法だと、立て付け上、民間部門でしか適用がない。条例については放置するしかない。指針に拘束力はない。それを拘束しているのは医師と研究者の良心によって担保されている。それは貴いので、それは維持しましょうと。ただし、公立病院や国立大学についても、条文を書けるのであれば、「学術研究分野は適用除外にする」という民間法と同じ文言でそろえることができる。何しろ法律によって、マイナンバー法同様に、条例も全て上書きするわけですから、

 「2,000個問題」と私は言っていますが、条例がばらばらだという状況については、特別法によって一気にカバーできる。個人情報保護法制に拘泥する限りは、条例問題を永遠に引きずらなければならなくなる。そうすると、おくすり手帳1つ、オールジャパンのものが作れないという状況が永遠に続く。だから、医療情報保護法か3階建てのゲノム法かは分かりませんが、そこの法の立て付けはお役所にお任せするとしても、そういうことをやめてくれと。

 あとは、遺伝子創薬すると未知の領域に入りますから、薬害の問題もあるということになり、やはりトレーサビリティを確保しなければならないということになると、皆さん誤解しているのは、個人情報に該当すると研究が止まるとか、手続が増えるとお思いでしょうけれども、利用目的の範囲内で適切に個人情報を個人情報のままビッグデータとしても、医療としても使っていいので、むしろ使っていいというお墨付を入れていくということも重要で、連結可能匿名化は、言わば現行改正法によっては個人情報に入りますので、連結可能匿名化は医療安全のためにやっているのであって、個人情報ではあるが、トレーサビリティを確保しろという根拠条項を付ければ、現場は萎縮することなく使える。そういう形に法律はいろいろ作りようですから、そういうことを求めていくということであれば、むしろ医療の発展に資するところが大きいのではないかと思います。

○厚生労働省鈴木技術総括審議官

 私は前回欠席させていただいたものですから初めての出席で、自分の頭の整理も含めて、今、頂いた御議論を若干整理をさせていただくと、2つあると思うのです。1つは言葉の使い方で、まさに議論になっていたように、遺伝子なのかゲノムなのかデータなのか情報なのかというのは、やはり違ったものをお互い議論してもしょうがないので、おおむねおっしゃったことは、ターゲットを明確にした上で、誤解がないようにこれは何だと定義をしてきちんと使いましょうということですので、それは相談させていただきたいと思います。

2点目はまさに鈴木委員がおっしゃったことで、私は非常に大事なことが2つあると思うのですが、1つは、異なった政策目的、これは個人の保護であって、医療の安全の確保であって、研究や産業の振興であるという、3つか4つかの異なった政策目的を同時に追求すべきだということは、恐らく多くの方が合意されると思うのです。

 それから、この丸の同心円のグラフにある4つの異なった事象で、今のところ個別法なり条例なりで異なって規定されているけれども、違う所に入ったがゆえに異なったルールが適用されるということではなくて、むしろ同じような目的であれば、どの事象であっても同じような取扱いをすべきだということだと思うのです。

 特にその2点目から敷衍化すると、その上で、それを実現するために、一般法がいいのか、特別法がいいのか、既存法の改正がいいのか、新法がいいのか、本当に法律でなければいけないのか、政省令若しくはそれ以下なのかというところは、御意見を承った後、我々行政の担当の者が、他の法律、制度との整合性の上で最もなじむのかということは考えさせていただきたいと思います。

 ちょっと私の誤解かもしれませんが、先生方の御議論が、大きく食い違っているというよりは、むしろ違った側面を違ったふうにおっしゃっているということではないかと思いますので、また次回までに事務局のほうで整理させていただけたらと思います。

○山本委員

 鈴木先生の御意見は誠にもっともだと思うのです。私も前回、要するにこれ以外の、個人情報保護法というのはプライバシーの保護に対しては、必要条件かもしれないのですが、これで十分とは多分言えないことが、もう分かっていると思うのです。したがって、プラスアルファの法規制があることを前提に議論するのか、そうでないのかで随分結論が変わってくるということを申し上げたところです。

 その上で、これから措置のほうは6月まで考えるということですので、今、その政令の論拠に関して少し意見を申し上げたいのです。先ほど、EU等の諸外国の規制と合わせる意味で、ゲノム情報を個人情報として取り扱う、ないしは要配慮情報として取り扱うべきだというお話があったのですが、確かに現在議論されているEU保護規則も各国法も、ゲノム情報を含む医療情報をセンシティブデータとして扱うということが規定されている法が多いというか、多分それが一般的だと思うのです。

 一方で多くの法の中には、守秘義務を持つ医療・介護の従事者が、御本人の医療・介護のために扱う場合、それから、公益的な研究、公衆衛生という言葉を使っている法律もありますが、これは例外であると。要するに、センシティブのルールを適用しないと書いてあるのがほとんどだと思うのです。ところが、現在の我が国の改正個人情報保護法には、そういう記載がないのです。ないにもかかわらず、本文のほうで病歴が明確に例示されている。この論点ペーパーの2番の、「要配慮個人情報に関して、遺伝情報」、これはゲノム情報と言い換えたとして、「要配慮個人情報と政令に指定する」とあるのですが、ここも文章的に少し疑問があるのは、病歴に含まれる遺伝情報と病歴に含まれないゲノム情報とを区別して指定するという考えだと思うのですが、その場合、一体何が病歴に含まれて、何が病歴に含まれないのかということも再定義が必要だと思うのです。

 その一方で、病歴として明らかに例示されている改正個人情報保護法では、法律の23条の2項ですか、オプトアウトによる取得を禁じられていて、明確なオプトインによる同意だというふうに規制されています。我々医療従事者の何人かに聞いてみたのですが、医療の面で同意とはどういうものがあるのかというと、「オプトインとオプトアウトの2つだけです」と答える人が圧倒的に多いのです。今の現行法の厚生労働省の医療・介護事業者のためのガイドラインがありますが、その中に、その23条の第三者提供の対応の所に「黙示の同意」というのがあって、この黙示の同意というのは、現場の人からすると、御本人から何も書いてもいただいていないし、聞いてもいないのだと。ただ、何もおっしゃらなければ同意したとみなしているということですから、多くの人がこれをオプトアウトだと思っているのです。それを黙示の同意というふうに再定義するのはそれで結構だと思うのですが、その場合、要するにオプトアウトと黙示の同意の違いを明確にしておかないと、最近は患者さんの中にもプライバシーに非常に関心の高い方がいらっしゃいますので。わざわざ改正個人情報保護法で要配慮情報と定義されなくても、医療機関は、医療情報は全てセンシティブなデータだと思って今までやっているのです。これはもう世界的にそうですし、そのことに異論を挟む人はほとんどいない。それに対して、何もおっしゃらなければと、医療に本当に必要な事項の第三者提供に関しては了解を頂いているとしてやってきているのですが、それが、いわゆる232項で否定されてしまったオプトアウトと、今のガイドラインで規制されている黙示の同意というものを、そういうふうに言うのであれば違いを明確にする必要があると思うのです。そうしないと、恐らく現場の窓口で、「これは禁止されているのではないですか」というふうにおっしゃる患者さんが結構出てくると思うのです。それは、別に我々はプライバシーの侵害をしているわけではないので、説明すれば分かってもらえますが、説明する時間が相当なものになってしまって、現場に相当な負担がくるだろうと思います。ですから、その辺りを少し整理していただけると助かると思うのですが、いかがでしょうか。

○福井座長

 現場では恐らく、黙示の同意とオプトアウトを余り区別してこなかったのが多くの医療機関又は研究施設での実情ではないかと思いますが、そのことについて何か事務局のほうから説明していただければ有り難いのですが。

○内閣官房IT総合戦略室山本内閣参事官

 私から、この改正法の関連の御質問ということでお答えいたします。現行の、今、山本委員が御指摘になった医療についてのガイドラインについては、これは厚生労働省さんが現行個人情報保護法上の主務大臣としての責任をお持ちなので、不足があれば補足いただきたいと思います。

 今、山本委員が御指摘になった点については、まず、座長からもありましたが、現行ではどういう理解なのかということについての現場理解とガイドラインとの、ある種の齟齬があるとの御指摘のように私は理解いたしますが、そこのところについては、しっかりこれを埋めていただく必要があると思います。先ほど委員からもありましたように、貴重な検体を提出されるというような形での、また、医療にかかられるということでの国民の皆様との関係で、高い倫理感と良心に基づいて向き合っていただいているということを踏まえれば、ここについての理解を、この際しっかり皆さんで十分に共有されることが必要なのではないかと思いましたというのが、まず1点目の感想です。

 今後の対応としましては、私としては先ほど申し上げましたように、ゲノム又は医療全般についても、現行の問題のない取扱いでの対応については、できる限りそれを合理的に受け止めて、個人情報保護法、これは鈴木委員がおっしゃるように一般法なわけなのですが、この分野についての適用について解釈をし、運用するというのは適切な態度だと思っております。その観点で申し上げますと、これからも基本的には、黙示の同意という運用がこれまでもなされてきていることを踏まえ、今後についても、これは個人情報保護委員会が来年11日に立ち上がりますが、改正個人情報保護法下においても、これを受け止めていくということではないかと考えます。これは現行法もそうなっていますが、改正法においてもこの部分は特に改正しておりませんで、今までも、これからもということではないかと思っております。

 他方、オプトアウトとの違いについては、そこの適用される条文が違うということも含めて、もう一度改めて認識を整理、共有という側面で、この改正個人情報保護法の施行というものが必要なのではないかという問題意識を私自身は持っており、また、関係省庁とよく連携しながら、また、ここにお集まりの皆さんの御理解も賜りながら進めていくべきものと思っております。いずれにしても、この際、しっかり明確に整理、共有をはっきりしておくということだと思っております。

○辻委員

 議論がすごくすれ違うところが多いと思うのですが、医療倫理あるいは研究倫理の場で私たちも、自分もその中に含まれますが、その同意取得あるいは同意の範囲というものをどう捉えているかということと、それから、こういう場で個人情報保護法の、どちらかというと法律解釈、適用の場で語られる同意取得、その内容、範囲というのが余りにもずれているのです。つまり、ブロードコンセントと言われているものは、研究倫理の場合では、日本では伝統的になるべく避ける形になってきていますし、黙示的同意というのは、これはある意味では「ありあり」みたいな形ですから。だから、こういう場で、個人情報保護法の場で語られる同意の範囲、適用と、それから、医療倫理、研究倫理の場で実際に行われている、私たちが捉えている同意の範囲、適用とが余りにも違うのです。それはやはり、その倫理を法律で規定するかどうかという問題にもなってくるので、そこは非常に大きなずれがあるということは、是非認識いただいて、そこを一致させることはやはり必要だと思うのです。極端に離れていると私は思います。

○小森委員

 日本医師会の小森でございます。鎌谷先生、辻先生が語られる危機感は大変重要な観点だと思っていまして、我が国が大変この分野において遅れている。これは極めて重い問題だと認識しています。したがって、日本医師会としましても、この分野の研究は推進したい。しかし、ブレーキというお話がありましたが、私はあえてルールと申し上げたいと思いますが、アクセルを踏む、道路交通法と同じで、ここは40キロで走る場所と120キロで走る場所というのがあって、当然そこには設計があるわけです。そこのところの適用除外とか、そこを明確にするというのが、やはり作業なのだと思うのです。

 鈴木審議官がまとめられたことは私も同意をしていますし、鈴木委員がおっしゃられたことも、非常にそのとおりだと思います。ですから、この言葉の定義も、もう一回明確にした上で議論しないと、お互い、OECDNIH等の話も、それぞれの都合のいい所を持ってきて議論しても、これは全く意味がない話です。今申し上げましたように、我が国のIT戦略をどう振興させるかということが、まず目的です。そのためにはどうしても外せない、つまり弱者をいかに保護するかという観点ですので、そこのところは明確に切り分けて定義の上に議論をしていくことが大事だということを改めて感じました。

○堤委員

 資料34ページの「個人情報保護法改正に伴う同意の有効性に関する考え方(事務局案)」というものをお見せいただいているのですが、私もこの前のゲノム指針の見直しのときの委員をやらせていただいて、そのときにすごく思ったのですが、再同意の場面はどういうものが出てくるのかというのが、余りコンセンサスが得られていないのではないかと思うのです。こう書いてあればいいですよというのはよく分かるのですが、では、こう書いていない場合は再同意が要るのではないですかという例示こそ必要なような気がしていまして、何かここは知恵を出して固めておいたほうがいいのではないか。必要がないものは必要がないでいいと思うのですが、必要な場面がどうなのかというのは、多分、具体的な事例としてあったほうが、やはり考えやすくなるのではないかと思いましたので、ちょっと具体的な提案として申し上げさせていただきました。

○斎藤委員

 本日の議論を伺っていて感じていることは、やはりゲノム研究という領域を推進したいというのは、皆さんここで同じように考えていることだと思うのです。一方で、ビジネス的に展開して、広くそれをもうけるネタにしたいという事実もあって、特に海外から日本に、例えばNIPTといった状態で、外国から見て非常に大きなビジネスチャンスと思って日本に押し寄せてくるというような状態が、もう現状、日常の診療で始まっているのです。ここで、立法するかどうかということはきちんと議論しなければいけないと思うのですが、やはり研究をきちんと推進するというのは、もうとにかく特に、例えばNIPTをやるにしても、海外にどんどんたれ流して、2万人の血液が外国に出ていっているというような現状があると、非常に日本にとっては損失である。

 一方で、研究をきちんとしていかないと、どんどん立ち遅れるという、そこのバランスのところをきちんと論議しておかなければいけない。対象がちょっと違うものを同じ土俵で、ゲノム情報ということでやっていくと、推進すべきものなのか、それともレギュレーションをきちんとすべきものなのかが、少しここでごっちゃになっているのではないかと感じました。

○武藤委員

 まず最初にIT室の皆様には、法律が決まってしまった後ではありますが、いろいろと研究の現場について、いろいろな検討をされて、御配慮いただいているということは、まず、私は御礼申し上げたいという気持ちはあります。それは記録に残したいのでお伝えしておきます。ただ、先ほど鈴木委員がおっしゃったように、また、私も前回冒頭で申し上げたのですが、この法律ができる前に、こうした議論の場がなかったことは非常に残念だという気持ちがあります。ですので、先ほど鈴木委員がおっしゃられた、どういうことがないと研究が成り立たないのかという観点で言うと、今の個人情報保護法の枠組みの中には、研究の世界で非常に大事にしてきた連結可能匿名化の情報の使い方が入っていない。それから、代諾という考え方が入っていない。代諾が難しいときや、御同意いただけないような状況の場合に、何とかカバーしてきた倫理審査というファンクションが入っていない。これがないと、やはり、研究はできなくなりますし、あるいは、研究と言っても今はゲノム研究の話ばかりをしていますが、今度、要配慮個人情報に入った病歴を扱う、もっと医師会の先生方なども非常に関わるゲノムを使わない医療、健康の研究にはすごいインパクトを与えると思いますので、やはり斎藤委員がおっしゃったような、ビジネスの規制も急ぐのですが、同時に皆さんの現場へのインパクトが、診療と研究の両方とも重なり合って進んでおりますので、是非御配慮いただきたいと思います。

 それで、具体的にゲノムなしの病歴を扱うような研究の事例が今まで出てきていなかったので、この場では議論されないのかもしれませんが、例えば、健診のデータ、医療機関ではなく、健診の情報や市町村、企業が持たれていたり、ドックが持っていたりする健診の情報を使って、生活習慣などの研究をすることは非常によくあるタイプのものですし、コホート研究でカルテの情報を使って、それは研究者が出て行って、カルテから再録することもありますし、データだけもらうこともありますが、それが必ずしも病院にあるわけではない。あるいは、既に採取して保管してある検体を使って何か新しい物質を測定する。それはゲノムを使わないバイオマーカーを見付けるということでも、そうだと思いますが、異常値の中から特定個人が推測できる可能性はゼロではないわけです。特に古いコホート研究は非常に価値があるデータがありますが、古いコホート研究こそ同意がない。今求められている水準の同意はないので、何とか倫理審査委員会などを使って、あるいは広報して、水準を倫理的に保っているということがありますので、すみません、ゲノム医療の場だということは分かっているのですが、ここよりもっとインパクトが大きくて、多くの人たちが関わるものとして、病歴を扱う研究について懸念を話しました。以上です。

○鎌谷委員

 先ほどのデータや情報の違いを明確にしておいたほうがいいと思うのですが、例えば、DNAというのは物なわけです。でも、配列というのはデータです。でも、それだけではほとんど役に立たずに、表現型との関連を含んだものが情報だと思うのです。暗号などが分かりやすくて、電波は物というか、物理的存在ですよね。でも、暗号符はデータです。でも、それでは何にもならずに、意味が分からなければいけなくて、その意味を含むものが情報だと思うのです。日本は、その情報の捉え方が非常に弱くて、そのためにジェネティクスや、あるいはIT産業などの進み方が遅れていると私は考えているのですが、是非その辺を考えていただいて、情報とデータ、あるいはゲノムと遺伝子、あるいは遺伝的、遺伝学などの言葉の持つ意味を、同じであるといえば、それでもいいのですが、私は違うと思うので、認識していって議論を進めると非常にいいのではないかと思います。

○高木委員

 私の申し上げたいことはいろいろな方がおっしゃったので、繰り返しになるので、申し上げません。今後の進め方について質問したいのですが、先ほど鈴木委員がおっしゃったゲノム法を作るというのはもっともだと思うのですが、ただ、それにしてもタイムラグが大分あると。一方で、政令がいつ決まるのか分かりませんが、それがいつ決まるかということと、それから、資料4の中に政令指定の考え方を示すこととしてはどうかとか、あるいは別途対応を検討すると。この辺り、政令を決めるということと、具体的な中身を決めるということのタイムスケジュールなり、考え方、それから仮に特別法を作るなら特別法、その辺りの全体の進め方を教えていただきたいと思います。

○厚生労働省椎葉厚生科学課長

 個人情報保護法上の政令のスケジュールなどは。

○内閣官房IT総合戦略室山本内閣参事官

 では、そこからまず私が申し上げた上で、事務局に渡したいと思いますが、改正個人情報保護法については、本年9月に成立・公布しており、ここから2年以内で、この義務規定等々が発効することになります。改正された規律が適用される施行時期というのは、今年の9月から2年以内となっていますが、これはしかるべきタイミングで対応することになると思いますので、我々としては、政令については、施行より事前に、相当程度の御理解や周知を頂くための期間を置いた形で示していきたいと思っております。それについては、恐らく、来年間近ですが、来年前半のどこかでは、しっかり案として示していくことをやらないといけないのかなというのが、私自身の現時点でのスケジュール観です。ただ、様々な事情によって少し変更があり得ることは御容赦いただきますが、現時点での私の目安としては、来年前半に、例えば、政令案についてはお示しする必要があるという認識です。あとの点はお願いいたします。

○厚生労働省椎葉厚生科学課長

 このタスクフォースの検討スケジュールですが、前回のタスクフォースでもお示ししましたが、年内に改正個人情報保護法上でのゲノム情報の取扱いについて、一定の結論を得たいということです。それからその次に、来年の1月から3月までは、ゲノム情報の質の確保で、遺伝子関連検査の精度の確保だとか、結果の伝え方について整理をし、そして、年度を超えて4月から夏までには、ゲノム情報に基づく差別の防止やデータの管理、2次利用についてまとめていただき、夏までにこの3つについて報告書を取りまとめ、それから行政的な対応をするというスケジュールです。資料4に出ている個人識別符合の科学的観点を踏まえた継続的な精査の方法などは、別の所で行いたいと考えております。それから(2)必要な同意取得の具体的な方法も別の所で並行して行いたいと考えています。以上です。

○堤委員

1点確認させてください。今日始まって今までの議論ですが、少なくとも、遺伝情報かゲノム情報かは別として、それは個人識別符合に当たるというのでオーケーなのか。それから、要配慮個人情報に遺伝情報が当たるということで了解なのかということについては、余り明確なお話をお聞きしていないように思うのですが、その点はいかがでしょうか。

○福井座長

 いかがでしょうか、一応当たる方向で、規制を掛ける部分としてはあって、それから医療や研究等の推進する部分との住み分けをどうしようかというテクニカルな部分とに分かれるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○小森委員

 今、定義の問題がありましたから、一律に論ずることはできませんが、これは最初から当たらないとするのは、いささかやはり無理があるのだと思うのですね。だから、当たる、しかしながら除外をどうするかということをクリアにすることだと私自身は認識しています。

○鈴木委員

 ここも単に作り方の問題で、理論的に大体のところの相場観は決まると思うのですが、微調整は裁量的、政策的な余地があろうかと思うのですが、これは全体の立て付けの話であり、特別法ができることが確認されるのであれば、一般法はきつめに作っても、ここにいらっしゃる皆さんは何ら影響がない。そのように特別法を作る。むしろ、そこを対象にしていない所から漏れた人は一般法でゲノムに関しては、ややきつめな拾い方をされるという設計にするのか。それとも、特別法がどうなるか分からなくて不安だから、一般法に落ちても傷を最小化するために、極めて小さく遺伝情報を定義するのか。こういうことでぶれて本来目的を見失うので、それゆえに特別法を先に作るのだということが前提問題だと申し上げていると。全体設計を見失う議論はやめたいということです。

○福井座長

 特別法を作る方向でというのは、例えば事務局あるいはIT戦略室のほうとしては、いかがですか。これについて、何か約束というか、その方向で進めたいというようなお話はありますか。

○厚生労働省鈴木技術総括審議官

 私が適任者かどうかは別ですが、先ほど申し上げたように、鈴木委員のおっしゃったような異なった政策目標を同時に追求する必要があることは間違いないので、全体的な目標を達成するために何が一番優れているのか、それは行政的にも他方との関係でも何がいいのかというのは、この場では一言では言えないとは思います。ただし、それを除外するわけではなくて、その中で一番何が優れた方法かというのは、やはり検討していく必要があるかとは思います。

○末松委員

 私も鈴木先生の意見にほぼあれですが、明確に申し上げると、遺伝情報を単に政令で指定することには私は反対です。単に政令で「遺伝情報」という言葉が独り歩きしないあれがありませんので、特に配慮を要するものとして、何か条件を加える必要は間違いなくあるだろうと思います。

 それから先ほども申し上げましたが、例えば、政令を作るにしても、個人情報保護委員会が定める遺伝情報とか、何かそういう文章がないと、そのまま100%「遺伝情報」という言葉が政令に入ったときのインパクトが非常に大きいだろうということで、私は反対です。

○厚生労働省鈴木技術総括審議官

 これは、山本参事官に向けての質問かもしれませんが、指紋にしろ虹彩にしろ、このゲノム情報というものにしろ、その中にはいわゆる要配慮に当たるものもあれば当たらないものもあると。つまり、識別のほうでいけば、同定できるものもあれば同定できないものもあると。ただ、それを政令に細かく書くのではなく、一応全体に政令としては網を掛けておいた上で、お作りになる個人情報保護委員会等々、若しくはガイドライン等々を踏まえた上で、具体的に、では何が当たるのか、当たらないのかというのは、凡例的なものを含めて示していかれるという理解でよろしいのですか。

○内閣官房IT総合戦略室山本内閣参事官

 今、審議官の御指摘のとおりであり、今、末松委員からのお話もありましたが、政令の言葉として、どこまで微細に書き込めるかというところについては、立法上の検討が必要です。ただ、そこに政令上、十分に表現できない場合にあっては、この対象とされているものを明確化する手段としては、先ほど、末松委員からもありましたように、例えば、規則といった更なる下位法令にもう少し落として、更に明確化していく。この場合に、技術進歩なども柔軟に対応するというケースもあり得ますし、ガイドラインというような形で、基本的には個人情報保護法の、これまでのプラクティスはどちらかと言いますと、民間の実際のプラクティスを踏まえる形でガイドラインを作るのが一般的なアプローチにはなっており、ガイドラインのような形でこれを示していくことも含めて、様々にあり得ると思っております。ですから、先ほど来の御指摘の部分については、基本的には政令で指定し、個人情報保護法としての法益を有する情報だということは、私としては、皆さんに御理解いただいたような気がしておりますので、作業を進めていく一方で、先ほどの、どのような倫理的な側面も含めて、辻委員がおっしゃったような全体の対応については、個人情報保護法だけの部分から更に広がったところで、また、事務局においてしっかり検討すべきものと認識しております。以上です。

○辻委員

 先ほど、鈴木委員がおっしゃいましたように、例えば、ゲノム医療基本法のようなものを改めて定めるのかどうかによっても、実は政令の書きぶりや哲学も違ってくるように私は思うのです。ですから、そういう全体のグランドデザインというものを共有しないと、政令の書きぶりだけを議論するのでは、非常に議論がしにくいのではないでしょうか。

○鈴木委員

 繰り返しになりますが、この個人情報保護法の議論は私立大学と私企業だけの話であり、もし、ここの政令の書きぶりの議論によって解消されると誤解しますと、直ちに今、総務省で議論している行政機関個人情報保護法及び独立行政法人等個人情報保護法の改正にも、我々は意見を入れなければ、国立大学とNISC、理研、産総研といった大きな組織の取扱いと齟齬が出てしまいます。そこには個人識別符合なるものは、まだ存在しておりませんから、ということで、あと、1,700の条例に逐一、地方議会に改正を要請していかなければならないという問題が待ち構えております。したがって結論は、何らかの立法化の作業が必要だと。ゲノムに特化する話ではないです。先ほどから言っているように連結可能匿名化は拾ってもらえなかったので、それは医療データ全部の話ですから、それはゲノムの外側の話なので、ここでは要望だけ出して、やっていただきたいことをとにかくこれからの連続の会議の中で、現場からこれだけは死守してくれという要求事項を明確化することが、一番重要であって、それを事務局にお預けして、立法・政策的な解決策の素案を作っていただきたい。ただ、議論するにしても、大きなグランドデザインは示していただかないと、どういう意見を入れていいか、少し惑うところはあろうかと思います。

○辻委員

 もう1つ、ゲノムと臨床情報全てという話もあるのですが、一方で非常に大事なことは、やはり遺伝子差別などによって不利益を被ることを防ぐなどの考え方も大事なので、そこは、立法化するのであれば、非常に重要な柱としても織り込んだ形で議論する必要があるので、やはり、ゲノムに関するところの重さというのはあると思います。

○厚生労働省鈴木技術総括審議官

 事務的なスケジュールの確認みたいなものですが、先ほども参事官からも申し上げましたが、改正個人情報保護法が9月に成立して、2年後には施行されるということです。ということは、どのようなルール若しくは政令の書きぶりになろうとも、正に参事官がおっしゃったみたいに、それよりかなり、一定前に政令の具体的な書きぶり若しくはその下位規定の書きぶりが明らかでないと、それに研究機関、医療機関が適応して施行の日を迎えられないという具体的な問題があります。もちろん何が引っ掛かるか、何が駄目になるかはこれからの問題でもありますが、それらを考え合わせると、2つの、ある程度、相矛盾するとはいいませんが、難しい課題を同時に、つまり1つは全体像を見ながら政令なり下位規定の規定ぶりも考えなければいけないし、一定以上の十分な準備時間を企業なり研究機関に与えなければいけない。この2つを同時並行的に成立させるような仕組みで進んでいかなければいけないのだと思います。

○鈴木委員

 おっしゃるとおりで、仮に立法化の流れが決まったとしても、スケジュール観から言えば、必ず谷間が出ます。現行個人情報保護法が2年内の政令で定める日に施行されたとして、追い掛けていく特別法は、多分間に合わない。そうすると、一旦は一般法で拾うというときの、1年かそれ前後の谷間の時期をどうするかというのは、実務上問題になると。それに対しては、共通利用目的などのガイドラインで、プレイヤー全員が同じフォーマットで利用目的を整えるところで、2,000個問題をクリアするなど、何らかの措置はあり得ると。あと、もう1つ法律を作らねば、過去分にわたって蓄積されたデータベースについての処理の根拠法がないという問題が出てまいります。そうすると経過措置規定などを、やはり作り込んでもらって、過去に遡って現場に無駄な同意が求められるといったことのないように手当も必要なので、やはり立法に向けた全体設計の整理が、これから待ち構える難題のためには、この程度の工数はやむを得ないと腹をくくることが正に重要で、先送りすればするほど、様々なスケジュールに影響を与えると思います。

○福井座長

 ありがとうございます。大分時間も押し迫ってまいりましたので、本日の議論をもう1回まとめた上で、次回の会議で、この委員会としての結論を出すという形にしたいと思います。事務局から連絡などをお願いします。

○厚生労働省椎葉厚生科学課長

 次回の日程ですが、1225日金曜日を予定しております。正式に決まり次第、委員の先生方に改めて開催場所を含めて、御連絡を申し上げます。

○福井座長

 本日は活発な御意見をありがとうございました。これで閉会としたいと思います。


(了)

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