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2015年9月16日 第6回雇用仲介事業等の在り方に関する検討会 議事録

職業安定局派遣・有期労働対策部需給調整事業課

○日時

平成27年9月16日(水)
10:00~


○場所

厚生労働省 職業安定局第1・2会議室


○出席者

委員

安藤委員、大久保委員、水町委員

事務局

坂口派遣・有期労働対策部長、代田企画課長、富田需給調整事業課長、
戸ヶ崎主任指導官、手倉森派遣・請負労働企画官、木本需給調整事業課長補佐

○議題

(1)諸外国の法制度等に関する有識者からのヒアリング
(2)労働者団体からのヒアリング

○議事

○木本補佐 定刻になりましたので、第 6 回雇用仲介事業等の在り方に関する検討会を開催いたします。需給調整事業課、課長補佐の木本です。よろしくお願いいたします。本日は阿部委員、松浦委員、竹内委員、水島委員が所用のため欠席となっております。なお、座長である阿部委員が御欠席となりますので、座長代理を水町委員にお願いしたいと思いますがよろしいでしょうか。特に意見なしとして本日の座長代理は水町委員によろしくお願いいたします。

○水町座長代理 本日の検討会の座長代理を務めさせていただきます水町です。よろしくお願いいたします。本日の検討会は労働者団体からの求職者・労働者側に係るヒアリング、有識者からの海外の制度に係るヒアリングということで、それぞれの方々に御出席いただいております。それでは、資料の確認と併せて御出席いただいている方々の紹介を事務局よりお願いいたします。

○木本補佐 まず、ヒアリングに御対応いただく方々の紹介に先立ち、事務局に異動がありましたので紹介いたします。手倉森企画官です。

 それでは、本日の公開部分のヒアリングに御対応いただく労働者団体、有識者の方々の紹介を申し上げます。日本労働組合総連合会非正規労働センター総合局長の村上様です。西南学院大学法学部教授の有田様です。労働政策研究・研修機構国際研究部主任調査員補佐の北澤様です。名古屋大学大学院法学研究科特任助教の徐様です。

 それでは、お手元の配布資料について御確認をお願いいたします。議事次第、座席表、こちらは本日の欠席状況を反映させておりませんので、御留意ください。続きまして、資料 1 は、日本労働組合総連合会非正規労働センター様から御提出いただいている資料、資料 2 は、西南学院大学の有田様から御提出いただいている資料、資料 3 は、労働政策研究・研修機構の北澤様から御提出いただいている資料、資料 4 は、名古屋大学大学院の徐様から御提出いただいている資料の以上 4 点です。資料に不備等がありましたら事務局までお申し付けください。

○水町座長代理 それでは議事に入りますので、カメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。先ほど事務局から紹介いたしましたが、本日は労働者団体及び有識者からのヒアリングということで、それぞれの方々に御出席いただいております。皆様、本日は大変、御多忙のところ本検討会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。検討会委員を代表いたしまして、私からお礼を申し上げます。

 議事の進め方ですが、まずは労働者団体から 15 分程度お話を頂き、委員からの質疑応答、その後、有識者の皆様からそれぞれ 15 分程度お話を頂き、全員からお話を伺った後に委員からの質疑応答といたします。有識者からの説明の順番については、勝手ながら資料番号の若い順にいたします。御了承、お願いいたします。

 それでは、労働者団体からお話を頂くこととして、まずは、日本労働組合総連合会非正規労働センター総合局長の村上様より、お願いいたします。

○村上様 御紹介いただきました連合非正規労働センターの村上です。本日は機会を頂きまして、ありがとうございます。資料に沿って私ども求職者の立場からの考えを紹介したいと思います。連合では、 1990 年から全国で、主に組合のない職場で働く労働者からの労働相談を受けるという活動を行っております。年間 1 6,000 件程度の相談を受けており、そのほかメールでの相談などもあります。

 まず、募集内容をめぐって、どのような相談があるのかを紹介いたします。相談件数は、この募集内容関係だけでは集計できなかったのですが、どのようなものがあるかという傾向を見てみますと、募集内容をめぐるトラブルとしては、ハローワークの求人票の関係が数としては多いです。ただし、ハローワークだけではなくて民間の職業紹介事業者の関係や求人広告、また、直接募集に関わるものもあります。

 募集内容と実際の労働条件が異なっているというトラブルが多いです。その中で、どのように中身が異なっているかで言えば、「雇用形態」、正社員だと思っていたが、そうではなかったですとか、「試用期間」の問題、それから「賃金」、「残業代」、中でも固定残業代の問題などが多く寄せられます。そのほか、「労働時間」や「業務内容」が違ったという御相談が寄せられています。

 具体的な相談について幾つか抜き出してまいりましたので、ざっとご紹介いたします。 1 つは、雇用形態・試用期間をめぐる相談です。ここで求人票と書いてあるのは、ハローワークと明示されていなかったので、恐らくハローワークではないだろうと思っているものを持ってまいりましたが、ひょっとしたら中にはハローワークのものもあるかもしれません。「正社員、期間の定めのない雇用」と書いてあったのですが、実際は「試用期間 1 年」と言われて 1 年後に「更新しない」と言われた。求人票に「正社員 ( 交通費有 ) 」となっていたが、入社してみたら非常勤と言われたという御相談です。

 また、有料職業紹介会社を通じて外資系の会社に入社して、その後、 1 か月の試用期間の最終日に「会社に合わない」として、本採用を拒否された。地元紙の求人広告では、「正社員登用制度あり」と大きく書かれていたので入ってみたが、正社員になれたのは 3 年後だったという御相談です。

 次に賃金に関するものです。賞与支給と書いてあるが、働き始めたら「賞与はなし」と言われた。 WEB の求人広告を見て転職したけれども、金額は読み上げませんが、書かれていた額と実際に働き始めた雇用契約書の金額が大きく違っていた。求人広告を見て応募したが、時間給が減額されていた。 WEB の求人広告を見て請負契約だと思っていたが、実際は派遣に近い形であったということです。一番下が、固定残業代の問題です。「残業なし」と書いてあったけれども実際は残業があり、「技術手当」があって残業代が付いていないという御相談です。

 次に労働時間・休日や業務内容に関わるものです。求人広告では、「年間休日 117 日」となっていたが、実際は 105 日だった。折り込みチラシの求人広告を見て、勤務時間が 9 18 時となっていたので応募したが、実際は深夜遅くまで残業が続いている。また、 1 年契約の嘱託社員で「土日休み」となっていたが、休日出勤を求められて、それに対応するのが難しいという問題。タウン情報誌の「経理募集」の採用広告を見て面接に行ったが、実際には営業を募集しているということを何度も経験したという御相談です。

 これらのほかに様々な相談はありますが、私どもとして何が課題と考えているかといえば、 1 つは、実際何が労働契約の内容になっていくのかということがよく分からない、明確でなくなってしまうということが課題であると考えています。求人広告を見て面接に行って、その後、労働条件通知書なり雇用契約書なりが多くの場合は提示されるのでしょうが、相談が寄せられるような中小・零細企業では、なかなかそういうものは提示されない中で、労働条件の内容がどのようになるのかが明確になっていかないということです。そのような場合には働きながら交渉していけば良いのではないかということもあるかもしれませんが、それは実際上なかなか難しいという課題があります。

 また、労働者の救済ということでいえば、求人広告を見て信じて応募した後、実際には労働条件が違ったというトラブルに際して、労基法 15 条では即時解除の規定がありますが、辞める自由があるということだけでは労働者の救済にはならないのではないかということです。労働者にとっては、どこで働くかということは、自分の生活にも関わり、その後の人生にも大きく関わってくることですので、実効性のある労働者の救済策が必要ではないかと考えております。

 また、求人者に対するペナルティもどうなっているのかという部分があります。資料にも記載しましたが、職業安定法の 65 条では虚偽の広告や虚偽の条件を呈示して直接募集した場合には、求人者に対してもペナルティがあります。しかし、職業紹介を介してしまうと求人者に対するペナルティが、この規定では掛からないのではないかと考えており、これについても実効性あるペナルティが必要ではないかと考えております。

 こうした求人票・求人広告トラブルの防止策として、十分ではないかもしれませんが、一定程度の考え方を私どもはまとめております。「求人票・求人広告トラブルの改善に向けた連合の考え方」というもので、昨年の 11 月に組織として確認したものです。 1 ページに書いてあるのは今申し上げた話です。防止策としてどのようなことが考えられるかといいますと、労基法第 15 条で、「労働条件の明示」の内容については「事実と相違するものであってはならない」という旨を規定することが必要ではないかということ、また、施行規則第 5 条第 1 項の中で、時間外労働に関する計算の方法や支払いの方法についても明示すべき労働条件に入れていくべきではないかと考えております。

 また、職業安定法第 5 条の 3 でも同様の規定を入れるべきではないかということです。先ほど職業安定法第 65 条の話をしましたが、第 42 条で募集内容の的確な表示についての努力義務はありますが、こちらについても努力義務にとどまらず、配慮に努めるということではなくて、もう少し強い義務的なものにしていくことが必要ではないかと考えております。

 続いて、またパワーポイントの資料に戻ります。求職者 ( 労働者 ) の立場から見た雇用仲介事業等の課題です。 1 点目は、今、申し上げたような求人広告・求人票募集に関するもので、募集内容に関する実効性のある規制を行っていただきたいということです。繰り返しになりますが、学校を出て初めて就職する人たちだけではなくて、転職する方は前の仕事を辞めて転職していくことになると、募集内容と実際の労働条件が違ったということで、生活や人生に関して大きな影響があります。求人広告の内容と実際に雇用契約を結ぶときの内容が全く一致するということではなくて、多少、交渉の中で調整していく部分はあるとは思いますが、求人広告が過大な表示をしてだますようなものであってはならないと考えております。

2 つ目は、情報提供事業者の関係です。就活サイトや転職サイトがありますが、求職者の目から見ると職業紹介事業との違いが大変分かりづらい部分があります。あっせんをしているかどうかということが大きな違いなのだという御説明は伺うのですが、実際には求職者から見ると違いがよく分からない部分があります。そういう中で、適正なルール・規制が必要なのではないかと考えております。就活中の学生の声を聞くと 1 日に何通ものメールが届く、過大な情報が来るということもあったりしますので、運用に関しての適正なルールが必要ではないかと考えております。

 このような点については、フィルターを掛ければよいではないかというご意見もあるのですが、そうすると情報が全く来なくなってしまうという問題があります。その辺りは事業者サイドで、特に若い人たちに向けた事業であるということであれば、その若い人たちにもう少し優しい運営をしていただけないかと考えております。

 また、この部分はさほど詳しいわけではないのですが、フェイスブックでの仕事の募集やクラウド・ソーシングなどで仕事のあっせんをされていることもあります。個人事業主とされているようですが、実際は労働者に近い働き方をされている方もいるのではないかと思います。相談は、まだ余りたくさんは寄せられていないのですが、契約の料金に関する相談も来ております。実態が分からないので、ここは是非、実態把握をしていただけないかと考えております。実態把握をした上で、仕事のあっせんと職業のあっせんの違いがよく分からない部分がありますので、その辺りを見極めて規制すべきものは規制するというルール化をしていくことが必要ではないかと考えております。

4 点目は、これは全体に関わる話ですが、個人情報の保護があります。ネットの時代になってきて大量の個人情報が集積されていくということで、ほかの様々な分野でもありますが、大量の個人情報が流れていってしまう危険性があります。その辺りもきちんとやっていただきたいということです。

 それから、 5 点目は 3 に近いところではありますが、会員制で求職者の情報と求人者の情報を仲介する事業もなされております。それも求職者から見ると職業紹介に大変近いと思っていて、職業紹介であれば採用の条件まできちんと詰めてもらえるところを、詰めてもらえないままに当事者間の交渉になっていて、結局、内定したと言っているのだけれども、本当に内定したのかどうかわからないというトラブルも見られるところです。

 職業紹介なのかどうかということを求職者がきちんと分かるようにしていただかないとそういうトラブルは、なかなか減っていかない、むしろこれから増えてしまうのではないかと懸念しております。以上です。

○水町座長代理 ありがとうございました。ただいまの御説明に対する御質問、御意見、御感想など何でも結構ですので、よろしくお願いいたします。

○安藤委員 今、教えていただいた内容について、大きく分けると 2 点あると感じました。まず、求人広告や求人票において虚偽の記載と言えるものがあるのではないかということが 1 つ目の論点です。もう 1 つは、契約を実際に締結する段階において契約書や労働条件通知書が明確に取り結ばれていないことによって、聞いていたのと違う労働条件になっていると。これをどうにかしたいというお話だと理解しました。

 求人広告や求人票の段階で、やはり少し幅があるのは仕方ないとお考えなのか、それとも、この頂いた資料の中で募集内容に関する実効性ある規制と書かれているのは、内容を規制しろと言っているのか虚偽記載の規制なのか、この辺りをもう少し教えていただければと思います。

○村上様 ありがとうございます。契約、求人票、それについてなかなかお一人お一人お答えしづらいのですが、求人票の内容には、実際はある程度幅があって、その幅の中で当事者間で交渉していくというケースがあるということは事実です。そのことによって、マッチングができているという現実もあるということは承知しています。求人広告をそのまま労働条件にしなくてはいけないとなると、それは、求人の段階で大変厳しいものになりかねないという悪影響もあると思っております。ただ、幅を持たせて交渉してうまくいくケースもあれば、そうでもないケースがあって、そうではないケースをどのように規制していただけるのかということが、私どもの問題意識です。

○安藤委員 それを実効性を持つ形で、虚偽記載をどのように証明するのかというのはとても難しい問題な気がするのです。契約書をきちんと手交しろとか、労働条件通知書を渡せという話は、とても分かりやすいと思います。求人広告とかで、例えば、労働条件に幅があったときに、下限だけではなくて上限のようないい条件もきちんと提示されているということを立証するのは、やはり難しいですよね。なので、実効性ある規制と言ったときに正直私はなかなか難しいとイメージしてしまいます。何か具体的にこういうことは最低限、規制してほしいという具体案のようなものがあれば教えていただきたいと思いました。

○村上様 先ほど申し上げたように求人広告で規制するのか、実際の労働契約締結のときに規制するのかということがあると思います。労働契約を締結する過程での規制でいえば、労基法第 15 条で、先ほど申し上げましたが、事実と相違するものであってはならないという旨を規定することで、明示された条件と実際の労働条件が違う場合も規制ができます。きちんとした所が求人広告を出して、その後、面接をして労働条件について当事者間で交渉もして、契約書を交わすのがスタンダードなケースで、そういうときは余りトラブルはありません。求人広告が過大なものであって、その後、交渉自体が曖昧で採用面接も曖昧で、働き始めてから労働条件が書面で提示されたり、提示されない場合もありますが、事実働いてみると中身が違ったというトラブルが多いのです。

 その過程の中で何が労働条件になっているのかというものを、どこで明らかにしていくのか、何が合意だったのか、何が労働条件なのかということの課題であると思っています。裁判例などもありますので、そういうものを整理しながら、求人広告を規制するのか、安定法の中でやるのか、契約法的な感じでやっていくのかということで、様々、方法はあると思うのですが、そういう中で最適な方法を選ぶべきであるということが趣旨です。

○大久保委員 求人票に書かれている条件が実態、事実と違っているというときは、理由が幾つかあるのではないかと思います。つまり、 1 つは、求人者が意図的に悪意を持って事実と違う表記をすることによって応募者を集めようとしているケースです。 2 つ目は、それ以外に求人する側がきちんとした知識を持っていないがために非常に不正確な書き方をしているとか、そういうことも相当にあると思います。

3 つ目は、私はずっと気になっていることなのですが、特に求人をする中小の事業者に関して言えば、そもそも人を募集するときに詳細条件をそこまで明確に決めていないケースが多くて、実際には応募して来た人見合いで、そもそも社員か社員ではないかも、その面談の結果として決めるというケースが大変多くて、事前に詳細のことが決まっていないケースが余りにも多いのだと思います。

 実際に現実の問題として、そういう企業が求人の相当比率を占めているということを考えると、それを全部、最初の段階で正確に書くというのはなかなか限界があって、そういうことに対して具体的にどういう対策があるのかということが気になります。 1 つ目の質問は、そういうことをどう考えていますかということです。

2 つ目は、今おっしゃった事実との相違のお話は、正しく表記すること自体は一義的には求人をする側、求人企業の責務だと思います。今日は雇用仲介事業のお話なので、要するにハローワークなり民間なりが仲介事業者として、その問題の解決のために何ができるのかということについて包括して、もう 1 つ御意見をいただきたいと思います。その 2 点です。

○村上様 御指摘どおり、 1 点目ですが、中小事業主が労働条件の内容まできちんと確認しなくて、どのような人が来たかによって労働条件を考えていこうというケースは多いと思います。ただ、求職者の側から見れば、正社員かどうかとか賃金の水準とかは、転職するしないを決める大きな大事な条件ですので、そこはある程度、明確にしていただかないと、求人広告で正社員と出しておいて非正規、契約社員で採用するということでは、求職者にとっては非常に厳しいものがあるのではないかと思っております。

 ハローワークと職業紹介事業者の皆さんにということであれば、曖昧なトラブルになりそうな求人広告に関しては受け付けない、あるいは少し明確にしてもらう等の対策が必要ではないかと思います。トラブルが多い求人企業も繰り返し求人広告出しているのではないかという感じがするのですが、そういう場合には少し「こういうものでは受け付けられない」ということをきちんと言っていただく。ハローワークでこれから相談窓口を作っていただくというお話がありますが、民間の職業紹介や求人広告の企業、団体などもトラブルをきちんと受け止めて仲介事業として間に立つというのでしょうか、求職者の側の相談にきちんと対応していただきたいと考えております。

○大久保委員 もちろん求人広告に書かれている条件は正しく事実が書かれていることは絶対的に大事なことで、そこに対する疑問は何もないのです。そうではなくて、実際にはどのようにしたら問題を解決できるのかというのが大事で、今、御提案いただいているものでは余り現実的な感じがしないわけです。つまり、中小事業者が労働法の細かい所まで全部理解していない状態で実際は求人を行っているときに、仲介事業者には何ができるのかということがテーマであり、例えば、今のお話であれば、まだ社員で採るのかパートタイマーで採るのかをはっきり決めてない、いい人が来たら社員で採りたいみたいな状態でしている企業に対しては、その状態で求人をしてはいけませんとして、仲介するハローワークなり民間事業者が具体的に何かその説明をして、こういうことなのですという説明をして、では、それを取りあえず決めてくださいという話をする。あるいは、先ほどの固定残業代の問題に関しても非常に細かく賃金の構造に関するケースを分けていって、どれに該当するかを 1 個ずつ確認していって、それを求人票に載せるみたいなことをおっしゃっていますか。どういうことをおっしゃっているのか、いまいちよく分からなかったのです。

○村上様 すみません。どの話についての御質問だったのでしょうか。

○大久保委員 要するにどのようにしたら解決できるかというときに、前提として正しく書かなければ駄目だということであれば、実際には募集主、企業に対して仲介事業者が、それについて関与してコミットしなければどうにもならないです。要するにトラブルが起こった後の相談を受け付ける話ではなくて、それはごく氷山の一角でしょうから、現実の問題として正確に書かれるようにするために、どういう対策があり得るのだということが知りたいのです。何か御意見があるのであればお聞きしたいということです。

○水町座長代理 具体的に職業紹介の場合と求人広告の場合は少し違うと思いますが、その両方でどのようにお考えになっていて、違いがあるのか同じなのかというところにも関わってくるかもしれない。

○村上様 私どもとして、求人広告と職業紹介の場面での区分けを現段階で明確に考えているわけではありません。一緒になって相談が来ているので、基本的には両方できるだけきちんと書いていただきたいということに尽きてしまうのですが、書いていない所については書いてくださいということを職業紹介事業者の方や求人広告の事業者の方にも言っていただくということを。どこまで書けるかということはあると思うのですが、やはり基本的な事項は書いていただきたいということです。

○大久保委員 別の質問を 1 個いたします。今、最後のほうにお話をされた中で、クラウド・ソーシングを通じた個人事業主のマッチングの話がありました。クラウド・ソーシングサービスは日本でも随分、今、出始めてきていて一部の会社は株式公開までしている所も出てきているわけです。実際に個人事業主の人に業務委託で仕事をマッチングするということと、その人に継続的に仕事を発注して、プロセスの状態で指示していることに近くなれば、いわゆる雇用者に近くなっていくわけですが、その辺の境界線は非常に曖昧だと思います。

 アメリカは、日本の 10 倍ぐらい個人事業主で仕事をしている人がいるわけですが、いわゆる雇用者とみなすのか、インディペンデント・コントラクターとみなすのかというのは、常に議論があって、内国歳入庁とか米州の労働省とかが繰り返し基準を改定したりストに乗り出しているということもあります。このニューエコノミーとか言われている新しい動き、実はその仲介企業がどんどん世界的に言うとベンチャーとして進化しているところもあって、日本においても当然それは同じような問題がこれから発生していくのではないかと思います。

 いわゆる、これからクラウド・ソーシングが広がっていくと思いますが、個人事業主か若しくは雇用者なのかという非常に曖昧なところでのマッチングに対する対策として、連合は何を考えておられるのかということをお聞きしたいのです。

○村上様 ここは問題意識を持っている部分で、対策として何が考えられるのかというところまでは、まだ検討しておりません。ただ、今までも労基法上の労働者性の問題や労組法上の労働者性の問題は、ある程度固まってきたものがありますので、それを適用して当面は考えていくことになると思います。諸外国の実態はあるのかもしれませんが、日本の実態はまだつかめていないのではないかと私どもとしては考えております。まず、どういう状態になっているのかということは把握していただき、把握した上でどうしていくのかということを、検討していかなければならないのではないかと考えております。

○水町座長代理 質問する時間が余りないので、感想だけ言わせていただくと、職業紹介か直接雇用かとか労働法一般に関わるところの問題として、例えば、労働条件をどこまで明示するかというのは、職業紹介だけではなくて労基法 15 条の問題としてどこまで明示するか、そこが決まれば職安法でどうするかという問題とか、そもそも労働者なのか個人事業主かというところは、クラウド・ソーシングだけではなくていろいろなところで問題が生じているので、そういう問題は、またきちんとやらなければいけないと思います。

 その中で、職業紹介なのか求人広告なのかというときに労働条件を明示するということが労基法 15 条等ではっきりすれば、職業紹介の場合はハローワークでなるべく具体的にやってくださいという、民間事業にどこまでそれを及ぼすことができるのかというレベルの問題だと思います。しかし求人広告の場合、 WEB サイトの場合は比較的何でも書けるので、なるべくたくさん書いてくださいということが言えるかもしれませんが、雑誌や新聞になってしまうと枠が限られているので、どこまで明示しなければいけないのかというところとの関係で、どこまでたくさん書かせてうそがないように書かせるかというのが、政策的に微妙なところという気がいたしました。またいろいろ御意見を頂きながら我々としても検討したいと思います。

 それでは、まだ聞きたいこともたくさんありますが、有識者からのヒアリングもありますので、日本労働組合総連合会非正規労働センター様に対する御質問はここまでといたします。続きまして、海外の制度に係るヒアリングとして、まず、西南学院大学法学部教授の有田様よりお願いいたします。

○有田様 本日はお招きいただきましてどうもありがとうございました。私からはイギリスにおける雇用仲介事業等の法規制ということで、配布資料に基づいて説明いたします。イギリスの場合、ここには現行法と書いていますけれども、 2 つの法律が中心となっております。中心というよりもこれしかないということです。

 まず、 1973 年職業紹介事業法というように私は訳を付けていますが、 Employment Agencies Act というのが制定されています。これは一部改正を受けながら、今日の現行法として存続しているものです。ただ、大きな改正がありました。すみません、この「 1999 年」は「 1994 年」が正しいと思います。規制緩和及び適用除外法という法律によって、従来こういう事業を行う場合には、事前のライセンスの取得が義務付けられていましたけれども、この許可制、ライセンス制度が廃止されるという大きな改正を受けています。その代わりにどういうものが入ったのかは後ほど出てまいりますけれども、法令に違反した事業者に対してはその監督行政機関によって、裁判所、雇用審判所と言いますけれども、そちらに申立てがなされ、判決が認められると、 10 年間事業従事が禁止されるという制度に変わりました。つまり事後的な排除の方式に大きく移行して、これは今日もその制度が維持されております。ただ、イギリスは御承知のように、保守党政権と労働党政権が政権交代するたびに、特に労働法制については規制の在り方が大きく動いております。そういった影響が現在出ていることについては後で触れたいと思います。

 それでは、この法律は何を定めているかというと、基本的には 2 つの規制対象ということで見ていただくと、職業紹介事業と我が国で言えば労働者派遣事業に相当するものの事業者に対する規制を定めた内容になっています。

 もう 1 つ、 2004 年に「ギャングマスター ( 許可 ) 法」という法律が制定されました。この「ギャングマスター」という言葉がなかなか日本語に置き換えが難しいので、このまま片仮名書きにしております。このレジメの所に書いていますように、外国人労働者が圧倒的に多く、特にアジア系の外国人労働者が従事している場合が多いということで、貝とか農作業とか漁業関係で、労働者供給事業のようなものが行われていて、その元締がギャングマスターと呼ばれるようです。 2003 年か何年かに、このギャングマスターの下で貝の採取に従事していた中国人不法滞在労働者が溺死するという不幸な事件が起きて、こういう形態については厳しい規制をかける必要があるということで、こうした業種に限り適用対象とする法律ができました。そういう意味では、 73 年法に対する特別法的な性格を持つものとして、先ほど廃止された許可制の下において、一定の要件を備えて法令をちゃんと遵守する者でなければ許可をしない、無許可で営業する者に対して罰則が課せられるという形になっております。

 ということで以下の説明では、中心となるのは 1973 年法になります。先ほども少し議論に出ていましたけれども、実はイギリスの特徴として、職業紹介においても派遣事業においても、ここで雇用という言葉が使われるのですけれども、ここでいう雇用関係とか雇用というのは、請負契約の下において就労する者も含むと定義されております。そこで法令上の用語としては求職者等ということで、 1973 年法を受けて具体的な行動規範を定めた規則がありますけれども、 1976 年に最初の規則ができ、これが現在、全体的に見直されて、 2003 年に新しい規則が制定されましたが、その規則の中で求職者等、 work-seeker という言葉で定義されています。

 以下の説明においても、 work-seeker という言葉を「仕事を見つけるサービスの提供を受ける者」とし、定義の文言をそのまま直訳したようなものですが。したがってここには派遣で働く人と紹介を受ける人の両方が入っていると御理解いただければと思います。なおかつ、派遣の場合についても、日本のような派遣元、派遣先、派遣労働者との三者の関係を定義付けるというか、規制するような形がとられておりません。あるいは先ほどの定義の所でも請負でもオッケーというようなことが入っていることもありまして、派遣の場合も請負の形態の自営の形で、あるいは場合によっては、ここは私もよく理解できていないのですが、派遣されるものが会社の形態を取って派遣をされていくような形態を取ることまで、イギリスでは認められているということです。かなり日本とは異なるものであるという留意が必要かと思います。なお、適用除外ですが、退役軍人への紹介と、一部の事業部門については、適用対象にしないことになっております。

 具体的な規制内容として、 1973 年法で直接定められているものは、これは我が国でもそうですけれども、料金規制です。取り分け求職者側からは手数料を取ってはいけない、料金を徴収してはいけない。例外は、我が国でもそうですが、一定の許可を認められた範囲となっています。ただ、ここでもう少し細かいことは時間的に説明できませんので、後のやり取りの中でということにしたいと思います。

 最後のイギリスの特徴点と併せて御覧いただければと思いますが、料金規制の所でいきますと、 5 ページの規制内容の特徴の2 (2) の最初の○のところですが、求職者等への仕事を見つけるサービスについて料金を取ってはならないとの、原則規制に対する脱法行為を防止するためだと思われますが、料金を取ることができるサービスの利用条件について、原則規制との関係で細かな規制を置いています。例えば、そういうサービスについて料金を徴収するのではあれば、それは別の契約をきちんとして、本体の契約との関係を明確にしておくと。つまり本体の職業紹介とか派遣のサービスを提供する条件として、「このサービスの利用をしなければこの紹介をしない」というような契約の仕方は基本的には違法で禁止されると、そのような規制がかけられているという点に 1 つ特徴があろうかと思います。これが 2003 年規則で言えば、2の reg.5 の所でそういった規制がかけられています。細かいところはまた御覧いただければいいかと思います。大体問題となるようなレギュレーションの内容については、若干訳がまずい所もありますけれども、書いていますので。

 特徴の所も兼ねて先ほどの実効性確保、そういった法令違反について、その逸脱行動があった場合の実効性をどのような形で担保しているのかということですが、先ほど触れましたように、禁止命令、 prohibition order というものを、大臣の申請ですけれども、一応監督官制度がありますので、そこが調べた上で大臣の名で申請をして、雇用審判所という、一審の労働民事の裁判所と言っていいかと思いますが、そこに申立てをし、その法令違反が認められますと、法人自体あるいは個人を単位として事業を行うことが最高 10 年間禁止されます。その仕組みを当然維持するために特別な監督行政制度が設けられており、 Employment Agency Standards Inspectorate というものですけれども、これが実はロンドンにおかれているだけで、しかも現在は議会報告書等を見ると、たった 1 人に減らされていて、果たしてこれは機能しているのかということがよく言われております。そういうことで、専ら申告に基づいてあるいはこの間違反が多い業種に対して、集中的に取締りを行うというようなことのようです。

 もう 1 つは、現政府は財政的な問題等、あるいは規制緩和の全体としての流れということもあるのでしょうけれども、一番弱い立場にある人、取り分け派遣で働いている人で一番弱いところ、つまり最低賃金以下のような働き方をしている人に集中的にこの取締りをするということで、最低賃金についての取締りは、イギリスの場合には内国歳入庁の部署がやっているのですが、そこの担当部署と一緒になって最賃法違反を見つける。そういったことで一緒にこういった事業者の法令違反行為を摘発し、先ほどの禁止命令を発して事業従事をさせないようにするという形で、事業の適正化を事後的に図っていくような運用が現在なされているようです。ひょっとするともう少し先には、この監督官制度自体が廃止になってしまって、最低賃金の取締りの部署が併せてこの取締りを行うというような方向になっていくのではないかと予想されます。現政府の基本的な政策方針として示されているような文章を見ますと、そのような方向になるのではないかと思われます。

 それからもう 1 つ、規制の特徴点として、もう一度戻ってしまいますが、規制対象ということで、請負契約の下に置く者を紹介あるいは派遣する事業も広く規制の対象にしていることを指摘できます。しかし、これは、逆に言えば曖昧だと、特に派遣労働者の保護という点では非常に問題だという議論も当然あります。ただ、見方を変えれば、請負契約の下で仕事を受けて就労しているような在宅就業者に仕事を仲介するような事業者も、この法律の規制対象となり得るのではないか、実際、こういう形でどのような制度の摘発があったのかは把握しておりませんけれども、法令の仕組みを見る限りはこのような可能性があるのではないかと思います。

 それから規制手法の特徴で言いますと、職業紹介事業者又は労働者派遣事業者はこの 73 年法・ 2003 年規則の違反から生じた損害について、賠償請求の訴求が可能であるという規定はありますけれども、基本的にはこの法令の性格としては、行政的な取締りとその違反に対する罰則の適用によって事業を規制するという手法を取っている、そういう性格の法律、法規制になっているのであろうかと思います。

 ただ、 2003 年規則にもろもろ定められている規範ルールに違反する契約条項は、法的拘束力を有しないというような趣旨にも取れる規定が設けられておりますので、そのような一部私法的な効力のようなものも認められることにはなろうかと思います。

 規制内容の特徴としましては、先ほど料金規制については触れましたので、もう 1 点指摘しているところを御覧いただければと思います。それは、求職者等の職業経験とか資格等の不適合ゆえに、対応できないようなことを仕事としてしなければならないといった中で労働災害等が起きてしまう、そういうことによって、求職者並びに紹介先、派遣先の利益が損なわれないようにするということで、一定の措置を取ることを職業紹介事業者並びに労働者派遣事業者に対して義務付けているというものです。つまり一定の仕事の内容に応じて、どういう資格を有していなければいけないのかとか、能力としてどういうものが求められるのか、あるいはどれぐらいの経験が必要なのかということについて、その情報を事業者は的確に把握し、相手側、それは労働者、紹介される側、派遣される側と、紹介あるいは派遣を受ける側、その双方に対して情報を的確に提示をすることによって、こういったことが生じないようにするということを規則として要求しております。ただ、当然のことながら、情報の開示について秘密の保持ということで、具体的なルールで言えば 18 で書いてありますように、秘密保持についてのルールも設けられてはおります。

 また先ほど広告についての話が出ていましたので、ここだけは具体的なところを御覧いただければと思います。 4 ページの 17 ですが、職業紹介事業者又は労働者派遣事業者によって出される広告についての規制が設けられております。最初の段落では分かりやすい言葉で、テレビ等の媒体もありますので、聞き取りやすい言葉でということが出ていますけれども、その事業者がきちんと特定されるような、あるいは広告されているサービスが当該職業紹介事業なのか、派遣事業なのかについて明確になるようなものにしろということです。それから先ほどの労働条件に関わる問題でもありますけれども、賃金率について、広告の中に記載されるとかあるいは広告されるのであれば、その賃金率をちゃんと労働者あるいは求職者が受け取るためには、最低限どれぐらいの経験が要り、どういう訓練を受けている必要があり、あるいはどういう資格を持っている必要があるのか、その賃金が実際にその人に支払われるために必要とされる条件について、広告で明確にしろということが規制内容として書かれています。

 イギリスはヨーロッパの大陸諸国と比べますと、こういう部門についての規制内容において非常に緩い国ではありますけれども、先ほどのギャングマスターのように、いざ何か弊害が具体的に生じると、その弊害を具体的に防止するためのルールを制定していくという対応の仕方を、この間取ってきたのではないかと思います。なお、外国に対してというようなことが、今回のヒアリングの要望の中で出ていたかと思いますが、実は現行法の最初の所にありますように、規制内容が、政権が替わるごとに見直しを受けています。その中で規制緩和の内容の 1 つですが、かつての規則の中には、外国での雇用を探して職業紹介事業者等を利用する労働者及びイギリスへの雇用を探して職業紹介事業者等を利用する外国人の労働者の保護を図るための義務に関する規定があり、先方の領事館からの、ちゃんとした人だという証明を得ておく必要があるとかといったような具体的な規制が設けられていたのですが、それがその後、 2003 年の規則に 76 年規則が改正される際にそういった規制は削除をされております。

 このように 73 年以降、具体的な事業者に対する規制ルールが設けられ、それが規制の強化の部分と緩和の部分を織り込みながら、今日、一連の改正を受けた現行の形になっているということでございます。ちょっとあっちいったりこっちいったり分かりにくい説明になっていたかと思いますけれども、一応私からの説明はこれで終わりたいと思います。

○水町座長代理 ありがとうございました。続きまして、労働政策研究・研修機構国際研究部主任調査員補佐の北澤様より、お願いいたします。

○北澤様 本日はお招きいただき、どうもありがとうございます。私からはフランスの雇用仲介事業に関する制度について説明いたします。ただ、本日の配付資料を拝見しますと、イギリス、韓国等々、制度の全体概要を資料でまとめておられますけれども、今年度、私どもの機構が厚生労働省需給調整事業課から要請を受けて調査をしていますのは、事業主が雇用仲介事業を行うに当たって、どういう規制になっているのか、事業を開始するに当たっては届出制等がどのようになっているのかの概要を把握する、ということを着眼点としてやっている調査であり、その調査の報告が中心になりますので、時間も限られていることもありますけれども、かなりコンパクトにまとめているということを御了承願います。

 まず、フランスの雇用仲介事業についての区分として、労働者派遣、職業紹介、労働者の委託募集、募集情報提供に区分して、概観してみますと、労働者派遣のみが届出制を取っており、一定の規制がありますけれども、職業紹介、労働者の委託募集等については規制はありません。

 各事業ごとの規制について説明いたします。労働者派遣を企業が開始する際についての規制ですけれども、会社設立の届出を各県の労働局に提出する必要があります。これは労働法典の L.1251-45 条に規定されております。また、派遣労働者の賃金や社会保障、保険料等の支払いの保証のための措置として、信用保証機関や金融機関等から、その事業を始める企業が財務保証を得る必要があるという規制があります。財務的保証というのは派遣元企業が経営的に悪化に陥った場合に、派遣労働者に支払うべき賃金や手当、社会保険料を確保する目的としてとられている措置です。

 こうした事業を開始する際に必要な手続についての規制のほかに、派遣をすることが禁じられている職種、業種もあります。それは極めて危険な業務、つまり化学物質を扱うような業務については、派遣労働者や有期雇用契約の労働者を配置してはいけないという規定です。危険物質として具体的には、アスベストや塩素ガスやクロロメタン、カドミウム等が列記されています。このほかにも、資料には記載しなかったのですが、派遣禁止をされている事項として、ストライキ中の争議参加者等の代替や、あるいは経済的解雇の実施後の 6 か月間、そういう事由に対する派遣労働は禁止されています。派遣利用の理由は正規従業員の代替として一時的に認めているにとどまり、フランスでの雇用形態は基本的には無期雇用が主であって、派遣労働の場合には期間等の定めもあり、原則として 18 か月と定められているような派遣労働の利用の規制があります。

 次に、職業紹介について、原則として規制無しとしておりますが、最近まで規制がございました。 2010 年になって規制がなくなったものですが、 2005 年までは職業紹介事業は公共職業安定所が独占しておりました。 2005 年の規制の改正で緩和された結果、民間事業が参入できるようになり、届出制となりましたが、続く 2010 年の法改正によって、届出制の規制もなくなったという経緯があります。この経緯については後ほどまた説明いたします。併せまして、職業紹介について、一部の職種については例外がありまして、これは先ほどイギリスのご説明でも触れられていましたが、舞台芸術関係者やスポーツ選手に関する職業紹介については届出を必要としているということです。このほかの雇用仲介事業についてですが、表に挙げましたように採用活動を外部に委託する場合や、募集情報の提供については、基本的には規制はありません。

 次に規制緩和の経緯についてですが、最近、職業紹介事業について規制緩和が行われましたので、この点について若干説明いたします。その背景には 2005 年法以前にも、実際には民間の職業紹介事業者やヘッド・ハンティング業者が存在しており、 ANPE と呼ばれている公共職業安定所があったのですが、実態としてはその独占は崩れていたとされています。また、求人情報を ANPE に提出することが義務付けられていたのですが、実際には従業員を募集することは ANPE に登録せずに行われているということもあったということで、そういった実態に合わせる形での法改正が行われたと、法案の提出理由の中にもそのように記載されております。そうした中で、 2005 1 18 日法、社会統合計画法とも呼ばれますけれども、その法律と 2010 7 23 日の法によって、職業紹介事業の規制緩和が実施されました。まず、 2005 年の法律によって公共職業安定所 ANPE の職業紹介事業の独占が終了し、届出制となり、民間企業が事業に参入できるようになりました。ただ、その時点ではまだ職業紹介を専業とする業者に限られており、つまり労働市場に関する知識や、採用や就職に対する助言のノウハウがある業者に制限されておりました。ただ、続く 2010 年の法律によって届出制が廃止されて、職業紹介事業に関する規制が原則としてなくなりました。この 2010 年の法律の改正の背景には、補足的な説明になりますけれども、 EU のサービスに関する指令に即する形で国内法を改正されたとも言われておりますし、 ILO 181 号条約との関係で、その批准の障害を取り除くという意義が結果的に 2005 年法と 2010 年法にあったのではないかとも言われています。

 職業紹介事業を行うに当たっての禁止事項ですが、イギリスのご説明でも触れられていましたけれども、直接、間接的に事業者が求職者に対して費用を求めることは禁止されております。それは先ほどの例外規定にもありましたけれども、舞台芸術関係者やスポーツ選手に関しては、報酬の授受も、例外として行われているという状況です。

 職業紹介サービス業に関する規制緩和を行った 2010 7 23 日法に関して、この法律を改正することによってどういった効果、影響があるのかということについてですが、政府が法案を提出する際に、報告書をまとめております。フランス政府としてはこの法改正によって、職業紹介サービス事業が自由に行われ、民間事業主が自由に参入することができることになり、その障害が取り除かれて職業紹介事業の業界の企業間の競争が高まり、サービスの提供の質が向上するとして、産業の新たな発展につながるというように前向きに評価しております。以上、簡単ではございますけれども、フランスの制度についての報告とさせていただきます。ありがとうございます。

○水町座長代理 ありがとうございました。続きまして、名古屋大学大学院法学研究科特任助教の徐様より、お願いいたします。

○徐様 名古屋大学大学院法学研究科の徐と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 本日、私が報告いたしますのは、韓国の職業紹介などに関する法制度についてです。韓国の労働力需給調整に関わる民間の雇用サービス事業としては、韓国の「職業安定法」に基づく職業紹介事業、職業情報提供事業、労働者の募集、労働者供給事業、そして「派遣労働者の保護等に関する法律」に基づく労働者派遣事業などが挙げられます。以上の 1 5 の韓国の労働力需給調整に関わる事業全般を指して、本日の私の報告では「雇用サービス事業」と称しております。以下、これらの韓国の民間雇用サービス事業に関する法制度について概観した後、民間雇用サービス事業に関わる韓国の最近の法改正の動きなどについて、若干述べたいと思います。なお、資料は欲張ってしまって若干長くなっておりますが、時間の関係上、所々端折りながら進めていきたいと思います。

 それでは、まず職業紹介事業についてです。韓国の職業安定法上、「職業紹介」とは求人若しくは求職の申請を受け、求職者若しくは求人者を探索し、又は求職者を募集して、求人者と求職者の間に雇用契約が成立するようにあっせんすることと定義されております。このような現在の定義規定は 2009 年法改正によるもので、従来は求人若しくは求職の申請を受け、求人者と求職者の間に雇用契約が成立するようにあっせんすることと定義されておりました。 2009 年法改正のときに下線を引いた部分が加わったわけですが、このように職業紹介の定義規定を改正したその理由としては、民間に現れている職業紹介と募集が結合した形態の職業紹介など、多様な形態の新しい雇用サービスを法の規制対象とするためと説明されております。

 さて、以上のような職業紹介を行う職業紹介事業は、韓国の法制度上では、手数料などを受けるか否かによって無料職業紹介事業と有料職業紹介事業に区分されており、更に、これら無料及び有料職業紹介事業は、その紹介対象となる労働者が就業する場所を基準に国内と国外の無料及び有料職業紹介事業に細分されております。

 この職業紹介事業に対して、韓国では無料職業紹介事業については申告制を、そして有料職業紹介事業については登録制を採っております。このような現在の法制度は 1999 年の法改正によるものであり、それまでは無料及び有料、いずれの職業紹介事業についても有効期間 3 年、更新ありの許可制を採っておりました。しかし、 1997 年末のいわゆる IMF 経済危機を背景に 1999 年に法改正が行われますが、その際に「職業紹介事業の活性化のため」との理由で従来の許可制から申告制又は登録制に変更され、それに合わせて 3 年ごとの許可更新制度も廃止されました。したがいまして、韓国において国内の無料又は有料職業紹介事業を行おうとする者は、その主たる事業所の所在地を管轄する地方自治団体の長に申告又は登録をし、また国外の無料又は有料職業紹介事業を行おうとする者は、雇用労働部長官に申告又は登録しなければなりません。

 しかし、この職業紹介事業は誰でも申告又は登録できるわけではなく、すなわち無料職業紹介事業の場合には、法が定める一定の要件を満たす非営利法人又は公益団体のみが、また有料職業紹介事業の場合には、法が定める資料 2 3 ページにかけて書いてある 2) (a) (c) の人的・物的要件を満たす者のみが、職業紹介事業の申告又は登録をすることができるとされております。

 そして、職業紹介事業において紹介の対象となる職業についてですが、求職者保護の観点から、ほかの法律において禁じられているもののほかは、職業紹介事業者が求職者に紹介できる職業に特段の制限はありません。これは無料職業紹介事業、そして有料職業紹介事業についても同じです。

 さらに、有料職業紹介事業者がその利用者から徴収する手数料についてですが、有料職業紹介事業を行う者は雇用労働部長官が決定、告示した料金以外の金品を受けてはならないとされております。そこで国内の有料職業紹介事業については、「国内有料職業紹介料金等の告示」において、国外については「国外有料職業紹介料金等の告示」において、有料職業紹介事業者がその利用者から徴収できる手数料について定めております。

 これら雇用労働部告示によりますと、まず国内の有料職業紹介事業者がその利用者から徴収できるのは紹介料金と会費です。紹介料金は求人者と求職者との間に雇用契約が締結された後に、求人者又は求職者から徴収することができるとされております。ただし、求職者から徴収する場合には、事前に求職者との間で締結した書面契約によらなければならず、その際の紹介料金の総額は、求人者から徴収する料金と求職者から徴収する料金を合わせて、求人者から徴収できる限度額を超えてはなりません。

 また、家政婦、看病人など日雇労働者を会員制で紹介し運営する場合には、紹介料金に代わって求人者及び求職者からそれぞれ月 3 5,000 ウォンの範囲内で会費を徴収することができるとされております。そして、この場合には会員の日雇労働者から月の会費のほかに紹介料金を徴収することはできないとされております。

 次に、国外の有料職業紹介事業者がその利用者から徴収できるのは紹介料金と実費です。この紹介料金と実費は求職者の出国手続が完了して、客観的に就業が確定したと見ることができる日以降、求人要請書又は求人協約が定めるところによって、求人者と求職者の一方、又は双方から徴収することができるとされておりますが、その際の徴収総額は、紹介料金と実費、それぞれの限度額の合計を超えてはなりません。

 このように韓国の法制度上、有料職業紹介事業者は、雇用労働部長官が決定、告示した水準を超える手数料を、求人者又は求職者から徴収することができないのが原則です。ただし、このような手数料の上限規制にも例外があって、雇用労働部令、すなわち職業安定法施行規則が定める高級、専門人材を紹介する場合には、当事者間に定めた料金を求人者から徴収することができるとされております。このような内容の例外規定は 2009 年法改正の際に加わったもので、民間の有料職業紹介事業者の専門化・大型化を図るためのものとされております。

 以上、職業紹介事業に関わる韓国の法制度について見てきましたが、以下では、引き続き職業紹介事業以外の雇用サービス事業について簡略に見ていきたいと思います。

 まず、職業情報提供事業についてですが、「職業情報提供事業」とは、新聞などにおいて求人、求職情報など、職業情報を提供する事業のことを言い、この職業情報提供事業に対しては申告制が採られております。このような現在の申告制は 1995 年の法改正によるものですが、それまでは登録制を採っておりました。 1995 年の法改正のときの改正理由は、次のようなものです。要するに、新聞、雑誌、放送など職業情報提供事業における職業情報提供手段の多くが、ほかの法律において登録又は許認可の対象となっていることを勘案して、それまでの登録制を申告制に変更し、職業情報提供事業者の便宜を図ろうとしたとのことです。

 このように韓国では職業情報提供事業について、申告制が採られておりますが、ただし、これについても例外があって、前述の無料及び有料職業紹介事業を行う者は申告することなく職業情報提供事業を行うことができるとされております。このような規定内容の始まりは、 1995 年の法改正に遡りますが、それまでの韓国の法制度上では、職業情報提供事業と職業紹介事業は兼業が禁止されておりました。しかし、 1995 年の法改正の際に、職業情報提供事業と職業紹介事業は相互補完的な関係にあるとされ、両事業の兼業禁止規定を廃止し、その後、 2007 年法改正の際には無料及び有料職業紹介事業を行う者は、別途職業情報提供事業に関わる申告をすることなく、職業情報提供事業を行うことができるというように明文化され、現在に至っております。

 次に労働者の募集についてです。労働者の募集とは、労働者を雇用しようとする者が就業しようとする者に被雇用人になるように勧誘し、又は他人をして勧誘させることを言います。この労働者の募集は、国外に就業する労働者を募集した場合、雇用労働部長官に申告することが必要であるほか、労働者を雇用しようとする者は、原則として多様な媒体を活用して自由に労働者を募集することができます。しかし、労働者を募集しようとする者、及びその募集業務に従事する者は、いかなる名目でも応募者からその募集に関連して金品などを受けることはできません。ただし、これについても例外があって、有料職業紹介事業を行う者が求人者から依頼を受けて、求人者が提示した条件に合う者を募集し、職業紹介をした場合には、応募者から金品などを受けることができるとされております。

 このような規定内容は、 2009 年法改正の際に加わったものですが、前述のように、職業紹介の概念に求職者などを探索し、又は募集することが加わったことに合わせて、募集応募者からも、その対価を受けることができるようにするために、以上のような例外規定を設けることになったと説明されております。

 さらに、労働者供給事業についてですが、労働者供給事業とは、供給契約に基づき、労働者を他人に使用させる事業を言います。労働者供給事業も職業紹介事業のように、その供給対象となる労働者が就業する場所を基準に、国内と国外の労働者供給事業に区分されております。労働者供給事業に対しては、許可制が採られており、その有効期間は、新規 3 年、延長 3 年となっております。

 この労働者供給事業の許可を受けることができるのは、国内の労働者供給事業の場合は労働組合であって、国外の労働者供給事業の場合には国内で製造業などを行っている者とされておりますが、その中でも芸能人を対象に行う国外労働者供給事業の場合には、非営利法人となっております。また、国外労働者供給事業の許可を受けようとする者は、法が定める一定の物的要件を満たさなければなりません。

 最後に、労働者派遣事業についてですが、韓国の派遣法上、労働者派遣とは、派遣事業主が労働者を雇用した後、その雇用関係を維持しながら、労働者派遣契約の内容に基づき、使用事業主の指揮、命令を受けて使用事業主のための労働に従事させることと定義されております。このような労働者派遣事業に対して、韓国の派遣法では、許可制が採られており、その有効期間は新規 3 年、更新 3 年となっております。

 労働者派遣事業の許可を受けるためには、法が定める資料 6 7 ページにかけて書いてある (3) 1) 2) までの許可基準を満たす必要があります。また、労働者派遣事業の対象となる業務についてですが、韓国の法制度上では、原則として製造業の直接生産工程業務を除き、専門知識、技術、経験又は業務の性質などを考慮して、適していると判断される業務として、大統領令が定める業務、すなわち 32 業務に対してのみ労働者派遣が許容されております。ただし、これについても例外がありまして、出産、疾病などによって欠員が生じた場合、又は一時的に人材を確保しなければならない必要がある場合には、製造業の直接生産工程業務、又は大統領令で定めていない業務であっても、労働者派遣を行うことができるとされております。しかしながら、資料 7 ページの 3) に挙げている 1 10 までの業務は、絶対禁止業務とされており、いかなる場合でも労働者派遣事業を行うことはできません。

 さらに、派遣期間について見ますと、派遣対象業務に労働者派遣を行う場合、その派遣期間は原則として 1 年を超えることはできません。しかし、派遣事業主、使用事業主、派遣労働者の三者間に合意がある場合には例外的にその派遣期間を延長することができますが、この場合においても延長した期間を含めた派遣期間の総期間は 2 年を超えることができません。また、欠員代替などの理由によって労働者派遣を行う場合、その派遣期間は出産、疾病など、事由が客観的に明白な場合には、その事由の解消に必要な期間とされており、一時的に人材を確保する必要がある場合には 3 か月以内の期間とされています。ただし、この場合においても、その事由が解消されず、三者間に合意がある場合には、 1 回に限って 3 か月の範囲内で派遣期間を延長することができます。

 以上、韓国の民間雇用サービス事業に関する法制度について概観してみましたが、最後に韓国の民間雇用サービス事業の現状、それを踏まえた韓国の最近の法改正の動きについて若干述べたいと思います。

 韓国の民間雇用サービス事業の現状としてまず言えるのは、韓国の民間雇用サービス事業の量的成長です。表 -1 を御覧いただくとお分かりになると思いますが、 2000 2012 年までの間、韓国における民間雇用サービス事業者の数は 2 倍以上増加しております。その背景としては、韓国社会を取り巻く経済環境の変化、それに合わせて行われてきた民間雇用サービス事業に関わる規制緩和を挙げることができると思います。しかし、このように韓国では、ここ 10 数年で民間雇用サービス事業者の数が大幅に増加している一方で、表 -2 と表 -3 のデータが表しているように、職業紹介事業者の零細性と、その偏った紹介職種などが問題視されております。民間雇用サービス事業者の量的成長に伴った質的成長が問われていると言えると思います。

 そこで韓国では、 2007 年法改正で政府と民間雇用サービス事業者が共同して事業を推進し、政府の事業を民間雇用サービス事業者に委託したりすることができるように、その根拠規定を設けたり、雇用サービス優秀機関認証制度を導入するなど、民間雇用サービス事業者の競争力を向上させられる契機を作りました。それとともに、 2009 年法改正では前述のように、「職業紹介」概念を拡大することによって、職業紹介事業などが総合雇用サービス提供事業へと発展できる法的土台を作り、高級、専門人材の職業紹介に関しては、求人者から徴収する紹介料金の制限を緩和することによって、雇用サービス事業者の専門化・大型化を図り、雇用サービス事業者の多様化、その提供する雇用サービスの水準向上を期待しているところです。少し長くなりましたが私の報告は以上です。

○水町座長代理 ありがとうございました。それでは、これまでの説明に対する御質問、御意見、御感想など、何でも結構ですので、何かありましたらお願いいたします。

○大久保委員 イギリスとフランスの 2 国について、私の理解を話させていただいて、もし違っていたら修正していただきたいです。イギリスについてですが、ブレア政権のときに、長期失業者対策などで国の公共職業紹介機関と民間の職業紹介とか派遣事業者が連携したり、あるいは一部、国が出資して、民間と共同で仲介会社を作ったということをやって、いわばマッチングの問題に関しては官民連携で取り組んできた歴史があると理解しています。そういうこともあるのかもしれませんが、全体として職業紹介の民間事業者に対する規制については、 Employment Agencies Act がありますが、余り強くない、余り強くは規制をしていないということです。ただ、ずっと一貫して手数料の問題については、割と国の視点としてもこだわりがある。また、この中でも御紹介がありましたが、今、請負も含めて仲介事業というようにくくっているわけですが、個人向けのサービスが多岐にわたって開発されていて、手続代行であるとか、あるいは社会保障に関連するようなところについても、個人に代わって提供するサービスをして収入を得るという仲介事業者が増えてきています。ただ、それを Employment Agencies Act で規制するのではなくて、税金のほうの課金課税を調整することによってコントロールをしているというのが現状なのかと思うのですが、そういう理解でよろしいでしょうか。

 フランスなのですが、最近目にした転職の入職経路を見ると、 ANPE の比率が余り高くないのです。もともと長く ANPE が独占をしていたのですが、独占をやめて民間に開放することによって、 ANPE が取り扱っていたような業務がかなり民間の競争の中で吸収されることになって、結果的に ANPE のシェアが落ちていったということの理解でよろしいのでしょうか。それとも、もともと職業紹介による入職の比率が低くて、以前からそういう状態であったのか、その辺りはどのように把握をされているのか教えていただければと思います。

○有田様 今の第 1 点の失業対策の中で官民連携が進められていたということは、恐らくそうだと思います。ただ、 73 年法ができたのは、日本もそうでしたが、もともとこういう事業者をめぐる様々なトラブルというか、弊害がある中で、弊害を防止するためにはルールを作るのが必要だということのためで、実はこの法律は珍しく議員立法で成立した法律です。日本もそうでしたが、もともと条例等で規制があったところに、初めて国の法律として事業全般を規制するものを作ったというのがこの 73 年法です。ただ、イギリスは恐らくずっと ILO の条約も、この部門について批准しておりませんので、基本的には原則自由なのですが、先ほども申し上げたように例えば求職者等に対するなにがしか社会的に問題となるような弊害が生じている場合には、その弊害を防止するための規制は必要だと。そういう考え方なので、恐らく規制内容もその範囲にとどめる、最小限の規制ということに、この間もずっとなっているのではないかと思います。

2 点目に多様なサービスが展開される中で、その規制の在り方の問題ということで御指摘いただいたかと思います。この点については求職者に代行して何か手続をとるなどということに関して、実は私の作成した資料の 3 ページの 7 にありますが、派遣事業者は駄目なのですが、職業紹介事業者に限っては、法定の手続要件の充足があるということを条件に、求職者等の代理人として、あるいは求人者等の代理人として、相手方との間で契約をするという代理行為ができることを認めています。ここでは細かいルールを書くのが難しかったので書いていませんが、法定の手続要件の充足というのは、これが一定の規制にはなるのですが、その条件を満たせば適正に行えるものとして、そういう代行を代理契約みたいな形で受けて、委任を受けて、本人に代わって契約締結までできるということをルールとしても認めました。恐らくこういうルールをレギュレーションの中に入れたのは、御指摘のようなサービス事業においてサービス提供が多様に展開する中、なにがしか適正化を図る上で、こういう規定を盛り込む必要があると考えられたのではないかと思います。

○北澤様 経路についてですが、細かな数字は私も把握していませんし、フランス政府からも、主だったものは発表されていないと思うのですが、例えば参考になることとして職業紹介をする会社の数ということで言いますと、 2005 年の政府による独占がなくなったことによって、それほど伸びていない状況にあるようです。今、手元にある数字で、 INSEE (国立統計経済研究所)が出しているものでいうと 2011 年に 1,777 社あって、それ以前は 1,500 とか 1,400 ぐらいで推移していたと思いますので、劇的に変わったようには思われません。ただ、 2005 年以降、 2010 年までのところで把握しているものですと、 ANPE から Pole emploi になった時点も含めてですが、 Pole emploi が扱っているものの一部が、民間に委託して職業紹介させるようなプログラムもありましたので、そういうもので増えていることはかなりあるのではないかということは言えます。実際に直接民間の会社が扱っている職業紹介とともに、 Pole emploi から委託されて行っているものもあると思いますので、それだけでも 18 万人規模のものがされているということです。ただ、職業紹介の範囲が広域にわたるものであれば公的機関のほうが強かったり、地域限定になってくると民間のほうが強かったりと、そういう特徴が見られますし、失業期間が長い失業者の職業紹介については公共職業安定所のほうが達成率が高いなどという違いがあると把握しております。

○安藤委員 まず、イギリスについて有田先生にお伺いしたい点が 2 点あります。資料 3 ページ目の最後のほう、 14 で紹介や派遣の条件として、派遣先での仕事について必要とされる職務経験・訓練・資格・許可証等を有していることなど、 reg.19 があるのですが、これの資格や許可証はいいとして、職務経験・訓練の辺りはどうやって実効性が実現されているのかということが気になったので、この点について教えていただければと思います。

 次は 4 ページ目の 17 広告についてです。先ほど御説明もあったとおり、当該賃金率の賃金を得るためには、どういう条件を満たしていないといけないのか。これについても述べなければならないとなっていますが、具体的に例えばどのような形で広告に条件が書かれているのか、それは日本で同様のことが実現可能な水準のものなのかを教えていただければと思います。よろしくお願いします。

○有田様 まず、第 1 点の経験・訓練について、どのように確認をするのかということです。申し訳ないのですが、次の広告もそうなのですが、条文で定義されている内容以上に、具体的に実際どのように運用されているのかについて、なかなか書かれているものが見つけられなくて、ここで申し上げることができません。この後、何かそういうものを見つけられましたら、また何らかの形で御紹介したいと思います。

 実はイギリスで労働法をやっている方でも、この分野を主として研究されている方はそんなに多くないというのが正直なところで、基本的には役所から出てくるような資料に依存せざるを得ないというところが実際にはあります。私も知り合いの先生に伺ったのですが、一応こういう法令があるということを教えてもらっただけで、それだったら知っていますということ以上のことはなかったのです。ただ、恐らく向こうはジョブの観念が日本と違って強固なので、一定のジョブに対して紹介するなどということなるため、職務経験というときに、例えばこのジョブについて、この間あなたはどのぐらいのキャリアがあるのですかということで、履歴を確認することになるのではないかということが推測されます。

 あとは、私も詳しく調べたわけではないですが、イギリスの場合にはいろいろな職能資格の訓練の制度があって、格付けというか、ランクなどを持っている可能性がある。そうすると、そういうものを示してもらって確認することが可能なのではないかと思います。この辺は恐らくイギリスの職業訓練の制度を細かく見ていくと、証明の仕方等についても分かるのではないかと思いますので、これはまた今後調べたいと思います。

○安藤委員 今度、フランスについて北澤先生に教えていただきたいのですが、先ほど簡単に御説明がありましたが、 ANPE と民間の職業紹介事業者、この住み分けについて、例えば公的なものは ANPE が強いとか、そういうお話がありました。例えば技能の水準であったり、年収であったりという点で、公的機関と民間の住み分けというか、強い・弱いなどがあるのでしょうか。日本ではイメージとして、ハローワークと民間ではそのような住み分けに近いようなものを感じることがあるのですが、そういうものがあるのかどうか。また、労働者や使用者、それぞれの視点から、どういう場合にはどちらに頼むのかということについて教えていただけたらと思います。よろしくお願いします。

○北澤様 まず、私の資料で ANPE と表記していましたが、公共職業紹介所は失業保険の支払も含めて 2009 年に行われた改革によって、今現在は Pole emploi という組織になっておりまして、そこが職業紹介を行っております。 ANPE というのは当時の名前ということを、まず説明させてください。

Pole emploi と民間との住み分けについてですが、先ほど大久保先生からのご質問に対するのお答えは、同じような職業内容に関するサービスを公的機関と民間の間でどのようにしているかという形で説明したのですが、恐らく技能とか年収がかなり高い労働者について言うと、 ANPE が独占状態にあった当時でも、ヘッド・ハンティング業者とか民間の仲介業者があったとされていて、そういうところから成功報酬的なものを取るということでやっている業者があったと思うのです。だから、技能と年収というのを安藤先生がどの程度のことをおっしゃっているのか、かなりグレーなところがあると思うのですが、高い技能で年収の高いところは、民間業者が直接、企業と人材を結び付けるということをやっているのではないかと思います。ただ、中技能、低技能的なところになってくると、公的機関と民間が共存というか住み分けがあって、募集している人の地域で住み分け、あるいは失業期間で再就職困難な状態の求職者なのかどうかで住み分けをしているのかなというのが私の把握しているところです。以上です。

○安藤委員 ありがとうございました。最後に韓国について徐先生にお願いしたいのですが、最後のデータも見てやはりちょっと驚いたのが、国内無料の職業紹介事業は 2012 年で 1,100 ぐらいあるという話なのですが、どちら側からも手数料、会費等、いかなる金品も受け取ることなく行われているというのは、ではこの事業者はどうやって生活しているのかということが気になるのですが、この無料と有料、それぞれ事業者としてどういう特徴があるのか。また、自分が求職者の場合、どういう場合には無料の、またどういう場合には有料の所に行く傾向があるのかということについて教えていただければと思います。よろしくお願いします。

○徐様 国内の無料の職業紹介事業者などについて、その内訳がどうなっているのか、きちんとしたデータなどはまだ見たことがないのですが、ほかの研究者が書かれた論文などによりますと、地域に集中した、その地域をよく知っている NPO 団体、あるいは障害者を対象にしたり、女性を対象とする団体などが職業紹介事業をなさっているということで、そういった団体は NPO であることから、基本的にはお金などを取らず、ほかの支援団体から支援してもらったり、あるいは政府から何か支援を受けたりして賄っているようです。

○安藤委員 労働者の視点から、今の御説明だったとすると、普通は有料のほうに行くと考えてよろしいのでしょうか。自分がどういうタイプの労働者だったら有料の、どういうタイプだったら無料のみたいな住み分けがあるのかということをお伺いしました。

○徐様 求職者の立場から、どのようにアプローチしているのかについてはよく分かりませんが、韓国の特徴は先ほどもちょっと申し上げたように、パーセンテージは少ないですが、求職者からも手数料を取るような形になっていることですので、基本的には無料で使えるものであれば無料のほうに先に行くのではないかと思います。また、先ほども申し上げたように、無料の職業紹介事業を行う団体の色があるので、それに合わないというように御本人が判断したり、あるいは団体側が判断した場合には有料のほうに流れるのではないかと思います。

○水町座長代理 私のほうからもそれぞれ。まず有田さんに対しては、確認みたいなものですが、イギリスについてはそもそも ILO 条約を批准していなくて、こういう雇用仲介事業に対してどういうアプローチで規制をしているかというやり方なのですが、そもそも日本で、雇用仲介事業での例えば強制労働とか人身売買とか中間搾取という、雇用仲介事業固有の法的なリスクについては、イギリスではそもそも明確に意識されず、むしろ一般的な法令遵守、労働安全衛生とか、最低賃金は最近のことだと思いますから、そういう一般的な法令遵守のほうをより意識しながら考えられてきたのか。ただし、特に職業紹介のときに、気を付けなければいけない規制として今残ったりしているのは、求職者から料金を取ったらいけないということと、仲介業者として適切な情報提供をしなくてはいけない。特に職務とか賃金等について、適切な情報提供をしなければいけないということが基本になっているという理解でいいのかというところを少し、背景も含めてお教えていただければと思います。

 北澤さんについては、今のこととも関係してくるのですが、職業紹介事業に対する禁止事項として、最後のほうで求職者に費用を請求することは禁止されているというようにお書きになっていて、その点はイギリスとか日本とも基本的には同じような気がします。イギリスであった適切な情報提供義務、虚偽の情報を提供してはいけないとか、この情報はちゃんと仲介業者として責任を持って提供しなければいけないですよという規制があるのかどうかという点を教えてください。

 徐さんに韓国についてですが、 2 つあるのです。 1 つは登録制と許可制がどう違うのかということで、登録も許可も、登録条件、許可条件があるので似ているのかという気もしますが、許可の場合は許可更新というのがあるかもしれない、登録の場合は更新がなくて、 1 回登録したらずっとという意味での違いなのかというのが 1 つです。もう 1 つ、派遣と職業紹介の所でちょっと興味深かったのは、建設工事現場については労働者派遣が絶対禁止。それに対して、有料職業紹介を見てみると、半分以上が建設人材となっているので、建設現場については基本的には派遣ではなくて、職業紹介でやってくださいということなのかなという気がするのですが、それに対する違和感というか。職業紹介といっても、例えば日々紹介とか、有期の短期の紹介で、その都度お金を取るというのだったら、派遣とほとんど変わらないのではないか。派遣で絶対禁止しているのに、職業紹介で有料でこんなにやっていいのかという議論はないのか教えてください。

○有田様 歴史的に見ると、先ほども申し上げましたように、 73 年の法律ができたのは、こういう仲介事業者に端を発するいろいろなが社会的に問題だと認識され、そうした弊害を防止するという観点から、規制をかけるためでしたしたがって、同法は、その範囲内で必要最小限の規制にとどめるという発想で作られているのであろうと思われます。全般的な法令遵守の観点とかというよりは、むしろ雇用を仲介するような事業者のもたらす固有のトラブルというか、弊害を強く認識して、ルールが設定されていると私は認識しております。ただ、それが全体の政治状況等の中で、規制の在り方を強化する方向に労働党政権で流れていく場合と、保守党が政権を握って、市場のメカニズムをということで自由化を進めるというか、規制を緩めるという場合と、動きはありますが、先ほど御指摘があったように、料金規制は揺るがず、ずっと続いている。これは正に歴史的にも求職者にとって一番問題になってきた点であるから、大原則としてここを外すということにはならないということであろうと思います。

 それに加えて、今日、先ほどの情報に関わるところで申し上げれば、恐らく現場での事故ですね。日本でも例えば日雇派遣が問題になったときに、労災隠しの問題が議論になったように、恐らく同じようなことで、無理な仕事に無理にそこに持っていかれて、その中でトラブルに遭う、事故に遭うということ。それは紹介されたり派遣されたりする求職者等の側も、それを受け入れる使用者・派遣先の側も、双方にとって非常によろしくないことなので、仲介する事業者なのだからこれは双方に対して適正な情報を把握して、ある種防止に寄与しなさいと、そういうことが考えられているのではないかというのが私の見方です。

○北澤様 直接答えになっているかどうかはちょっと疑問があるのですが、まず虚偽の情報を記載すること自体を禁止することは規定されております。それとともに、求人情報はフランス語で記載しなければならないという規定もございます。例えば職務上フランス語以外の外国語を必要とする職種に関する求人であれば該当しないのですが、そうでない一般的な求人の場合はちゃんとフランス語で表記しなければならないということになっており、それは外国語ができないことで差別されないように。その差別という意味では、人種や政治的な思考、宗教、性的な思考、年齢等を含めた、差別に当たるような求人広告をしてはならないという形での適切な広告をするようにということはされています。そういったことでしょうか。

○徐様 最初に韓国の登録制と許可制の違いについてですが、登録要件、あるいは許可要件が定められているのは 2 つとも同じで、そういった点では違いはないと思うのですが、許可制と登録制の大きな違いは、その間で政府の政策的な判断が入る余地があるということです。だから、要件を満たしても、許可制の場合はそれを踏まえて、更にその地域では業者が多いからということで許可しない可能性がある点で違いがあります。また、先ほど先生がご指摘をなさったように、期間が定められているのと、定められていないという点でも違いがあります。このような点から韓国では許可制から登録制に変わったことは規制緩和として考えられております。

 また、派遣と職業紹介事業における建設現場の日雇労働者についてですが、確かに違和感はありますが、それについてどんな議論があったかということに関しては、把握しておりません。ただし、今まで建設現場で日雇労働者は職業紹介を通じて働いてきて、それをなくすというのは現実的に難しかったように思われます。その人たちの生活という点では、そういったやり方も生活をするための 1 つの方法であるからです。それが労働者派遣になると、労働者派遣の事業主が継続的にそれを業としていくものであるから、そういった点で労働者派遣に関しては厳しく見ていたのではないかと思います。

 日々の労働者が職業紹介を利用して働くというのは、自分のために自分がそのように働いて行くということなのですが、労働者派遣の場合はそうではなくて、事業として人を雇うことになるので、そういった点でちょっと違いを設けているような気がします。

○大久保委員 今のに関連してなのですが、韓国の制度の中で申告制があるではないですか。これがちょっとよく分からないのですが、この「雇用労働部長官に申告する」というので、すごくいっぱいあって、企業の人事管理上も何だかんだと全部、申告しろと書いてあって、それこそ女性の管理職比率も申告しろとかなっていますよね。つまり、この申告制とは何なのだろうか。許可制とか登録制ほどの重さはなくて、いわば日本におけるニュアンスが情報公開に近いような感じで、とりあえず一旦申告は義務付けられているというものなのか。その辺、申告制というものの位置付けがちょっと知りたいのですけれども。

○徐様 申告制の場合は、基本的にその事業に関しては自由にやれると。自由ではあるけれども、政府としてはある程度把握していかなければならないものに関しては申告制。何々をやりますということを申告しないと、それは罰則付きの規制対象になります。しかし、その事業を開始するためには申告はしなければならないけれども、許可制のように申告が下りるとかそういったものではないということで、ちょっと違いがあります。また、登録制と許可制の場合なのですが、登録制も許可制も日本でいう許可制に近いと思うのですが、先ほど申し上げたようにその間には少し違いがあります。また、申告制と登録制や許可制では、日本でいう届出制に近いのが申告制というように考えていただければいいのかなと思います。

○大久保委員 申告制というのは、許可とか登録よりも大分軽い位置付けになるのですか。

○徐様 そうです。また、許可制の場合は、それは禁止されているものであって、許可が下りた場合だけできるということで違います。登録制の場合は、禁止されてはいないけれども、でも登録要件を満たさないと始められませんということでまた違いがあります。

○水町座長代理 議論も尽きないところではありますが、時間もありますので、本日は以上といたします。御協力いただいた 4 名の皆様におかれましては、お忙しい中、大変ありがとうございました。大変勉強になりました。それでは、事務局から連絡事項をお願いいたします。

○木本補佐 次回の日程は、決まり次第御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。傍聴の方々に御連絡いたします。傍聴者の方々は、事務局の誘導に従って御退席ください。また、御協力いただいた事業者の皆様、ありがとうございました。事務局の者が御案内いたしますので、今しばらく御着席のままお待ちください。以上です。


(了)

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