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2016年2月4日 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第2回)議事録

医政局医事課

○日時

平成28年2月4日(木)10:00~12:00


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○出席者

構成員

荒川 哲男 (全国医学部長病院長会議会長)
一戸 和成 (青森県健康福祉部長)
今村 聡 (日本医師会副会長)
小川 彰 (岩手医科大学学長)
片峰 茂 (長崎大学学長)
神野 正博 (全日本病院協会副会長)
北村 聖 (東京大学大学院医学系研究科附属医学教育国際研究センター教授)
権丈 善一 (慶應義塾大学商学部教授)
小森 貴 (日本医師会常任理事)
平川 淳一 (日本精神科病院協会常務理事)
平川 博之 (全国老人保健施設協会副会長)
福井 次矢 (聖路加国際病院院長)
本田 麻由美 (読売新聞東京本社編集局社会保障部次長)
松田 晋哉 (産業医科大学医学部教授)
森田 朗 (国立社会保障・人口問題研究所所長)

参考人

相川 直樹 (MEJ 理事)
藤田 伸輔 (千葉大学予防医学センター教授)
山本 紘子 (日本女医会 会長)

○議題

1.医師需給推計についてのヒアリング
 ・女性医師についてのヒアリング
 ・国際分野で活躍する医師についてのヒアリング
2.医師需要数の推計方法について
3.医師偏在に係る課題について

○議事

○海老名医事課長補佐 定刻となりましたので、ただいまから第 2 回「医療従事者の需給に関する検討会医師需給分科会」を開催いたします。

 構成員の先生方におかれましては、大変お忙しい中お集まりいただきましたこと、御礼申し上げます。

 ここでカメラは退室をよろしくお願いいたします。

 まず初めに、本日の御出欠について連絡いたします。本日は山口構成員から所用により御欠席との連絡を頂戴しております。また、本日の会議には参考人として日本女医会会長の山本紘子様、 MEJ 理事の相川直樹様、遅れていらっしゃるようですが千葉大学医学部附属病院地域医療連携部教授の藤田伸輔様にも御参加いただくこととしております。

 以降の議事進行につきましては座長にお願いいたします。片峰座長、よろしくお願いいたします。

○片峰座長 早速議事を進めたいと思います。本日も盛りだくさんですので、議事進行に御協力をお願いいたします。最初に、事務局より資料の確認をお願いいたします。

○海老名医事課長補佐 資料の確認をさせていただきます。まず、お手元に議事次第がございます。議事次第に続き資料がございます。まず資料 1 「女性医師の労働力について」という資料です。それから資料 2 A4 横ですが「医療の国際展開推進と医師の需給」という資料です。資料 3 は同じく A4 横の資料、「必要医師数の推計について ( ) 」という資料です。次に資料 4 、同じく A4 横の資料、「医師偏在に係る課題 ( ) 」という資料です。資料 5-1 は「医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言」、 A4 縦の資料です。資料 5-2 、同じく A4 縦の資料ですが「医師の地域・診療科偏在解消の緊急提言」。これは全国医学部長病院長会議が出しております。

 次に参考資料が A4 横、「医師の需給に関する基礎資料」です。なお、こちらの資料を補足させていただきますと、第 1 回、前回会議で御指摘を頂いた事項について、こちらでデータ等をお示ししているところです。前半の所は、平成 26 年の医師・歯科医師・薬剤師の調査を踏まえ、 21 ページまでは前回と同様の資料の時点修正をかけております。 22 ページ以降は、先生方から御要望のありました資料をお示しさせていただいております。 34 ページ以降につきましては、厚生労働省で行っております「医師偏在対策の取組」についての資料を添付しております。

 本日、先ほど座長からお話がありましたとおり議事が大変多く、詳細の説明については割愛させていただきたいと存じます。不足している資料、また落丁・乱丁がありましたら事務局にお申し付けいただければと思います。よろしいでしょうか。

 以上です。

○片峰座長 早速議題 1 「医師需給推計についてのヒアリング」に移ります。本日、女性医師については日本女医会会長の山本参考人から、国際分野で活躍する医師については MEJ 理事の相川参考人からお話を伺います。それでは、山本参考人からよろしくお願いいたします。

○山本参考人 御紹介にあずかりました山本です。非常に急なことで、準備する時間が十分ではありませんでしたが、一応、今までずっと長いこと印象として考えてきたことを粗々まとめた、ということで御了解いただきたいと思います。

 将来的な医師需給について考える場合、現在の状況を把握することが不可欠です。将来、女性医師が 30 %を超し、つまり、現在の 1.5 から 2 倍近くになるわけですから、このときの女性医師の労働をどの様に換算するかです。現在の女性医師の労働の状況と、今、かなり短縮しているのですが、その要因が将来解決されるかどうかによって、推定はずいぶん変わってくると思われます。

 女性医師の年齢別や配偶者の有無、子供の有無などを分けた労働時間の調査は、大規模なものはありません。小規模なものが数個ある程度です。このうち信頼性があると思われるのは、先生方のお手元にございます『就業構造基本調査』の二次利用分析です。

この時も医師に関しては平成 14 年と平成 19 年のデータしかないのですが、医療関係者の調査に基づくものです。

 もう 1 つ、大規模なデータとして三師調査があります。この調査では家族形態やライフコースの項目がほとんどありません。従って今回の資料としては余り利用価値がないという感じです。将来、もし確実なデータを取るならば、三師調査で家族形態や現在の勤務状況をきちんと調査する必要があると思われます。

 中村先生の論文では、平成 14 年度は 1,965 人の医師の中で 270 人が女性医師で、 13.8 %、平成 19 年度は 1,962 人の医師に対し女性医師は 329 人、 17.0 %でした。やはり年度が新しくなるにつれ、女性医師の割合が増えています。

 このデータでは、私もお示ししたのですが、結婚前は男性も女性もほとんど変わりなく働いているようです。従って常勤形態で、男女ともに 50 時間ぐらい働いているということになります。女性のほうが少し短くて 45 時間というような値も出ておりますが、同等とみなしてよいのではないでしょうか?

 非常勤の男性もいらっしゃるのですが、そう多くはありません。非常勤の医師の場合、男の方は 40 時間程度、女の方は 30 時間程度の就労時間になると計算されています。ここで、最初の「同年代の男性医師の労働力を 100 %とした場合」という横に長い表を見ていただくと、女性医師の就労時間が少しずつ減っていくことが分かります。

 男性が非常勤になる理由は、健康上や家庭の事情ですが、最近は奥さんが女性医師ですと、配偶者の男性医師が非常勤になるという場合が見受けられます。女性医師の労働力が 100 %でない上に、男性医師の就労時間の短縮も生じているということです。

 女性医師の非常勤化の原因は、家庭形成期にはどうしても夜間当直や夜間の呼出しに対応できないために非常勤化し、中には休業してしまう方もいます。日当直や救急のない科へ転科する方もでて、このときには専門医が取り難い場合が結構あり、キャリア形成に大きな障害になります。

 非常勤勤務の形態に関しては外来など、非常に多忙な時間帯にのみ非常勤医師が欲しいわけですから、午前中だけ働くという形態が結構多く、午前中のみの勤務が週 2 から 3 回という方が多く見受けられます。そうすると、 1 回が 4 時間ですから、週に 2 回というと 8 時間、 3 回ですと 12 時間、 4 回働いても 16 時間程度で、なかなか週 30 時間には届きません。

 また、一度女性医師が非常勤になると、配偶者の仕事がどうしても優先になり、育児・家事を女性医師が引き受ける側に回りますので、時間の短縮が定常化してきます。また、短い就労時間でも収入はかなり確保できますので、時間的、経済的にゆとりの生活が可能になり、これに甘んじて、モチベーションがちょっと下がってきます。女性医師の間では「お惣菜医者」という言葉が聞かれております。週 2 日ぐらい午前中だけ働いてある程度の収入を得て、後の時間は自由に子供の教育や自分の趣味に使う女性医師を指しています。

 この方たちの話を聞きますと、長時間一生懸命働いて、救急なども精力的にやり、新しい技術を会得する同僚たちを見ていると、少し寂しい気持ちがするとも感じておられますので、その気持ちを汲んで、今後第一線に復帰する道筋を用意する必要があると思います。非常勤化で医局との縁が疎遠になりますので、キャリア形成とか新しい技術から取り残されていくことをどのように防ぐかという課題です。

 労働時間を規定する要因としては、女性医師の短縮幅が最も大きいのですが、やはり、先ほど申し上げたように夜間の当直や呼出しなどへの対応が困難ということで、短縮して非常勤になるのですが、配偶者の就労時間が延長しますから、それをプラスマイナスして考える必要があると思います。女性医師は子供への教育に非常に熱心で、子供への教育に経済的のみでなく時間的な投資も行われています。これを嫌々ではなく、結構価値観に基づいて確固たる信念で行っていますので、 15 歳未満の子供がいる方は、そうでない方よりも更に 6 時間ほど就労時間が短縮している形になっています。

15 歳以上でもかなり短縮はありまして、例えば高校生でも夕食の仕度や子供の行動を把握したいということで早く帰宅したいという希望があり、なかなか常勤に復帰できない状況です。これは、非常に根本的な問題で、学校教育、あるいは幼児教育から見直しが必要です。海外で女性医師が常勤で働いている割合が高い国の子供の教育を見ますと、かなり早期から自立させています。家庭の中で子供の役割をきちんと与えて、親に頼らず自分たちでするという教育をしないと、一定の期間の後、常勤として復帰できないのではないかと考えます。子供の教育はその一端で、父親の役割、地域の役割なども認識されていて全体として女性が長時間就労できるという環境を作っていくことがですが不可欠と感じています。

 非常勤になる要因というのは様々あります。正確ではありませんが、大まかに見積もってみました。例えば結婚前の女性医師は男性医師と同じ勤務時間で 100 %と考えますが、女性医師の何パーセント程が独身状態にあるか、配偶者があり子供がない女性医師は何パーセント程であるかという正確な数字は把握できておりません。この中村先生の論文の 64 頁に非常勤の女性医師は常勤の女性医師の 6 割の労働力で考えていいのではないかという記述があります。 0.6 というのは実感として結構近いのではないかと思います。

 時代による変化では、昭和の終わりから平成の初め頃は、今のように育休を当たり前に取れる状況ではなく、時間短縮勤務や日当直免除も一般的ではありませんでした。両親若しくは親類が近隣にいる場合はかなり頑張って就労継続できたのですが、一旦仕事を辞める人もかなりいまして、私の同級生などでも 4 割ぐらいは中断しましたが、彼らはまた直ぐに復帰しました。

 正確な数字はなく、オフィシャル発言ではありませんが、国公立卒業の女性医師と私学卒業の女性医師の話を聞いてみますと、国公立卒業、あるいは古くからある私立卒業の女性医師は、やはり仕事をするのが当たり前という感覚がより強くあります。新設私学出身の女性医師は、割と簡単に出産・育児で一度辞めるあるいは非常勤になるという方が多く、その後なかなか復帰ができないでいる状況が見えてきます。私学卒の女性医師が御自分や同級生をみてもそういう場合が多々あると述懐されていましたので、そう間違ってはいないかと思っています。

 最近は平成の初め頃までと違い、育休や時間短縮勤務、あるいは時短で常勤という形態があり、院内保育や院外保育なども充実してきておりますので、女性医師が「そろそろ常勤で働いてくれないか」と言われたときには、戻られる率も少しずつ上がってきているように思います。今までの女性医師が家庭と両立して働けるような施策がなされておりますが、その効果が出てきているのではないかと考えています。

 非常勤になって子供を丁寧に見ていくことと常勤で頑張るということを天秤に掛ける問題です。私の経験から言いますと、やはり患者さん優先で子供が後になっていまして、いろいろと話そうとすると、今頃そんなことを言われてもと言われました。やはり、今、考えれば子供にもっと密着することも重要であったと思います。

 非常勤でも良いので、医師として就労継続することは非常に重要であると折に触れてお話をしています。医局に繋がっていなくてもいいですが、医療に繋がっていることがその後の就労にとても重要だと思います。

 復職支援のプログラムというのは各施設で計画されており、非常にきめ細かく、丁寧なものもありますが、教育のために人員を投入する割には、実際就労していく人は多くなく、費用対効果が疑問視されるような場合が多いと思います。

 私は、中断してもすぐに復職できる場合があると確信している方法があります。外来の非常勤医師の需要が非常に高いということは、外来診療ができる医者が求められているわけですから、中断するまでに、診察技術をマスターしておけばよい訳です。 OSCE に合格すればよいというのみではなく学生時代から努力をして基本的な診療技術、ヒポクラテスの言うベッドサイドの「 Art 」を自家薬籠中のものにしておけば、すぐ外来診療に復帰可能で、そこを手掛かりに新しい薬剤や技術を習得していくことは余り難しいことではないと思います。

 外来診察ができるという自信ができる以外に基本的な診察技術というのはインターナショナルです。アメリカでの外来診察を始めた時は、訛りがあって病歴が上手く聴取できませんでしたが、診察はでき、異常を指摘できましたし、中国語は全く知りませんが、診察は可能で、 ALS の診断は容易でした。大学では、全ての患者さんを系統的に診ることを徹底的に実行することを教えることであると考えています。

 医師が不足しているということもあり、女性医師に是非可能な限り長時間労働をしてもらうことが望まれています。また今後、女性医師が増えますので、短時間勤務が多くなれば人的資源が無駄になります。やはり、就労時間を延長することができる状況を作る方策を考えることだと思います。

 地域の格差というのは、かつての医局派遣に代わるシステムができないと解消は困難で、これは病院長会議などで提案されておりますが、一定期間の義務付けなどを考えていく必要があると思います。専門科の偏りについても、女性医師は、救急呼び出しがない、重症患者さんの少ない皮膚科、麻酔科、眼科などを希望する場合が多いのですが、複数主治医制等を導入するなど考えていかなければならないでしょう。

 現状として私が提示できるのは、今、女性医師がどのように働いているかを実際に把握するためには、オフィシャルな調査は個人情報の関係で難しいので、同窓会を通して調査するということを考える必要があります。各大学で決まった学年や世代を決め、 3 世代ぐらいで同窓会を通して、同時に現在の就労状況、家庭環境などの聞取り調査を行えばかなり正確なデータが出るのではないかと考えています。今回の聞き取りは、私学は私が教授をしておりました藤田保健衛生大学の卒業生の女医さんたち、国公立の場合は名古屋市の市立大学と母校の名大卒業生に協力を得ました。御参考になるかどうか分かりませんが御報告させていただきます。

○片峰座長 ありがとうございました。 1 つか 2 つ、御質問やコメントを頂きたいと思います。

○荒川構成員 全国医学部長病院長会議の荒川です。 52 ページで、診療科の偏在の問題とも関係すると思うのですが、女性医師で皮膚科や眼科、麻酔科が多いということでした。男性医師の同じようなデータはないのでしょうか。

○山本参考人 あると思います。今、手元にありませんが、女性医師ほど皮膚科や眼科、麻酔科に偏っているということはありません。

○荒川構成員 というのは、私は内科なのですが、外科系が特に人材不足になっています。地域の偏在の問題とともに、診療科の偏在というのは非常に大きな問題だと思います。もし、男性医師との違いがかなり顕著にあるとすれば、女性医師で診療科の偏在を解消するような方法を模索するということも、 1 つの大きなポイントになるかと思いお聞きしました。

○山本参考人 中村先生のデータでは、専門科の女性医師比率ですから、皮膚科は 70 %が女性である、男性は 30 %しかいないということです。

○荒川構成員 そういうように見るわけですね。

○片峰座長 ほかにありますか。なければ次に移ります。次は、相川参考人お願いします。

○相川参考人 一般社団法人メディカル・エクセレンス・ジャパン (MEJ) の相川です。本日は「国際分野で活躍する医師について」という課題を頂戴しました。事務局とも御相談しまして、私ども MEJ で行っている医療の国際展開の推進に関連したことについてお話したいと思います。

 資料を用意しました。まず 1 ページです。平成 25 年に「『日本再興戦略』 -JAPAN is BACK- 」が安倍内閣で提示され、この中に「医療の国際展開」が記載されています。 MEJ を活用し、官民一体となって、日本の医療技術・サービスの国際展開を推進する。それから、新興国を中心に日本の医療拠点について 2020 年までに 10 か所程度創設し、 2030 年までに 5 兆円程度の市場の獲得を目指す。その際、国際保健外交戦略との連携、 ODA 、政策金融等の活用も図り、真に相手国の医療の発展に寄与する持続的な事業展開を産業界とともに実現する。その実現に向け上記の取組とともに、日本の良質な医療を普及する観点から、相手国の実情に適した医療機器・医薬品、インフラ等の輸出、それから外国人が安心して医療サービスを受けられる環境整備等に関して決められています。

2 ページです。これを推進する推進体制として、内閣総理大臣を本部長とする健康・医療戦略推進本部ができまして、副本部長が内閣官房長官と健康・医療戦略担当大臣、これは現在は石原大臣に当たりますが、その下に推進会議が設けられていて、その中に幾つかのタスクフォースなど、協議会などがあります。一番右に「医療国際展開タスクフォース」があります。私どもは、この医療国際展開タスクフォースの下で国際展開を進めるお手伝いをしていまして、私どもの理事長である、元日本病院会会長の山本理事長が医療戦略の内閣官房参与として、左側の政策的助言の会議に参画しているところです。

3 ページです。この「日本再興戦略」は 2 年後に改訂されて「日本再興戦略— 2015 」になりました。その抜粋です。「国民の『健康寿命』の延伸」のために、「健康寿命国日本」のブランドを確立し、新興国等における健康・予防サービスの展開を図るため、日本貿易振興機構や MEJ と協力して、海外での展示会等の開催を通じた認知度の向上を図る。これは主に官民ミッションとして、いろいろな国でのミッションで、講義あるいは展示会を行っているところです。

 また、医療国際展開タスクフォース、先ほどの 2 ページの右下の赤い所ですが、そのインバウンド・ワーキンググループで策定した考え方に基づいて、外国人の患者受入れ等を組織的にサポートする企業の認証、それから、外国人患者の受入れに関して意欲と能力のある国内医療機関を「日本国際病院 ( 仮称 ) 」のグループとして海外に分かりやすい形で発信することを通じて、外国人患者のインバウンドに関する広報・集患に取り組むということです。特に注意しなければいけないのは、「医療ツーリズム」という言葉も使われるようになりましたが、一般のツーリズムと多少異なりまして、医療ですので、商業主義が優先しないような配慮で行っていく必要があると私は考えています。

4 ページはアウトバウンド、つまり日本から外国に出て行くところのサービスの概念図です。私ども MEJ は、官民連携のオールジャパン事業の民間側の事務局を務めて、日本の医療政策、体制、それから国民皆保険で実績をあげてきた医療を世界に展開し、更には、日本は世界の名だたる健康長寿国ですので、それを基に、外国に、世界の医療水準の向上、高度先進医療の拡大、日本の医療圏の拡大と世界成長市場の獲得を求めているところです。

5 ページが、そのアウトバウンド推進のイメージです。経済産業省、厚生労働省、外務省など、それから JICA JETRO JBIC(Japan Bank for International Cooperation) その他を使って、私どもと協力して、先ほどのような施策を進めています。

 まずアウトバウンドに関して、どのような医師数が必要あるかはなかなか難しいことで、 6 ページに示されていますが、左上ですが、主に医療界では、新興国において医療を提供したいという病院がある、あるいは新興国で医療技術を教えたいという医師がいる、それから若手医師を新興国で研修させたいというある病院がある。実際にこのような病院があり、あるいは医師がいまして、それを進めているところです。かつまた産業界としても、これに伴って医療事業に出資・参加したい企業や、新製品の試行を新興国でしたい、あるいは医師と二人三脚で医療機器の販売を拡大したいという企業があります。このようなことを、私どもが民間の一般社団法人として、日本政府と相手国と協議して進めていくということです。事業化を目指して国際展開するアウトバウンドですね。医療機関・医師・企業を様々な形から組織的に側面から支援して、医療機関・企業が事業を行いやすくする「プラットフォーム」を提供するのが私どもの使命です。

7 ページです。次にアウトバウンドについてです。実際のところを申し上げますと、今までに幾つかの所が海外拠点として検討調査されまして、既にここに「開設」と書いてあります 4 拠点が開設されました。ロシアの循環器病画像診断トレーニングセンター、ベトナムの内視鏡医療センター、ミャンマーの乳がん検診センター、インドネシアの内視鏡医療センターです。そのほかに現在、調査あるいは開設を準備している所が、中国の先進医療センターをはじめとして、インド、インドネシア、カンボジア、タイ、ロシア、トルクメニスタン、フィリピン、ブラジル、ベトナム、ミャンマーなどで、種々の医療拠点の設立を推進しているところです。

 実際に、これに伴ってどれほどの医師が必要であるかということが本分科会からの質問事項だと思いますが、これは具体的な数をお示しするのは難しいのですが、例えば、既に開設したインドネシアの内視鏡トレーニングセンターについて、具体的な数を申し上げますと、ここの資料にはありませんが、神戸大学医学部の御協力を得まして、インドネシア人医師への技術指導や、日本での研修受入れを実施しております。

 まず、平成 26 年度で現地の研修をしました。これには日本人の医師が 1 週間程度現地を訪問しまして、神戸大学の内視鏡医が 9 月には 5 名、平成 27 2 月には 2 名が現地訪問しております。実際にこの業務量がどうかというと、現地での指導は 1 週間程度ですが、具体的にはその準備や旅行のために、 2 週間程度の医師のワークロードがあります。これを常勤換算すると、非常に少ない数なのですが、 14 / 人ということになります。これは常勤ですと、年間大体 0.3 人に相当するということです。これが実際的なところですが、私どもそれをサポートする MEJ の医師とか、その他の医師の業務量を含めると、インドネシア内視鏡トレーニングセンターで、常勤換算で少なくとも 1 人の医師が必要になるかと考えております。また、平成 27 年度の研修でも、更に 4 名が 1 週間程度現地に行きましたが、その後の 4 名の派遣は、治安状況の悪化のために研修実施を中止している状況です。

 これは内視鏡トレーニングセンターの例ですが、ほかに現地で手術のトレーニングとか、トレーニングによっては多少多くの医師が必要になるかと思います。大まかには、アウトバウンド事業は 2020 年までに 10 拠点ということですが、そこでは 10 20 人程度の常勤換算の医師が必要になるのではないかと、私は個人的には推察しております。先ほどのように、治安情勢が悪化したり、将来の日本の予算その他の環境変化によりまして、これはまた変わると思いますが、少なくとも、「医師の需要が多少増える」というのが、このアウトバウンド事業に関することであると思います。

 一方、インバンド事業は 8 ページに書いてありますが、これはまだ始まったばかりでして、まだ調査段階が主です。平成 26 年から平成 27 3 月の 6 か月間を日本病院会で調査しました。調査対象約 2,400 の施設の中で、外国人患者を受け入れたと回答した施設が 669 施設ありました。外国人と言ってもなかなか難しくて、この中に、在留の外国人、在日ですね、それと、外国から医療のために訪日してくる外国人とがあり、厳密に区別できにくいところもあります。例えば、在留の中国の方が家族として患者さんを中国から一時的に呼んで治療するということも実際にありまして、この一番左の棒グラフ、縦の全国の所を見ていただくと、一番上の 90 というのは、 80 人以上を 6 か月間に受け入れた病院数です。 69 20 80 人未満、それから、 20 人未満が 114 ということで、約 273 施設がこの 6 か月の間に在留を受け入れております。

 一方、今回のインバウンドに直接関係する施設としては 77 施設ですが、実際にはインバウンドのほうは 20 人未満の施設が 63 と多く、 20 人以上の施設は 9 施設、あるいは 80 人以上の施設は 5 施設と、現時点ではそのようになっております。ただし、これを組織化して、外国に発信することにより、受入れの患者数、特に訪日して診療を受ける外国人患者数は増えていくと思います。

 このような患者受入れに必要な医師数というと、後でまた申し上げますが、具体的な数字を申し上げるのはなかなか難しいかとも思います。

9 ページに、もう 1 つ資料があります。これは私どもの MEJ が関わった外国人患者の受入れ概況です。この資料の調査は古いのですが、 2011 1 月から 2014 12 月の 4 年間ですけれども、これは外国から、日本で治療してほしい、日本で診断してほしいという問合せが 4,211 件、合計 104 か国・地域からありました。実際にいろいろお話をして受入れに至ったのは、 45 か国、 567 人でした。主に、がんの治療が 318 、それからいろいろな検査希望で来日する。診療科としては、循環器内科、眼科、脳神経外科、消化器内科、整形外科等となっております。がんの治療は、対応する外科などの診療科が担当しています。

 図でブルーで示されている国は、問合せがあったが実際には来なかった国です。それから、グリーンで示されているのは、実際に患者が来た国です。

 参考資料として、外国から医療のために来る場合には、正式には「医療滞在ビザ」を申請する必要がありますので、これはある程度調べることができまして、 2014 年の 1 年間では、約 550 件のビザが出されています。

10 ページはインバウンドの全体像ですが、左に書いてありますが、渡航受診の希望者があると、渡航支援企業、現在は 2 つの企業が認証されていますが、外国での問合せを受けたり、ビザのアレンジ、あるいは通訳や見積のこと等の連絡をして、それを渡航受診者受入医療機関、グレーの「 HOSPITAL 」と書いてある所ですが、これの受診支援をします。これはどこの病院、医療機関でもよいということではなくて、 MEJ が推奨基準を作り推奨基準に合格した医療機関をリスト化して、近い将来、海外に発信するのが MEJ 1 つの事業になっております。

 最後はまとめです。医療の国際展開、特に MEJ が行っている国際展開と医師の需給に関することです。アウトバウンドに関しては、新興国を中心に日本の医療拠点を、当面、 2020 年までに 10 か所程度を創設する。この事業には、開設前に、現地医療者の教育・研修を現地あるいは日本で行う医師が必要となる。拠点開設の後には、主に現地の医療者が医療に従事することとなる場合が多いが、現地に駐在、あるいは定期的に現地を訪問して、拠点の運営・管理や研修・医療の実務に従事する日本人医師が必要となるということです。これに関しては、現在も進めているところです。

 インバウンドに関しては、現在 10 病院を対象として、渡航受診者への対応や実態について調査中です。この調査は本年度 3 月には終了します。これを基にして、 MEJ が推奨する「日本国際病院 ( 仮称 ) 」のリストを海外に発信することで、近い将来には海外からの渡航受診者を組織的に受け入れられるようになり、受診者数は増加すると考えております。渡航受診者の医療が、日常の日本人の医療の障害とならないような配慮が必要であるという観点からも、この推奨なども行っているところです。

 また、内的・外的民族的要因の違い、これは人種だけではなくて、環境とか食物とか、宗教とか、いろいろな違いがあり、また、言語が違いますので、通訳を介した診療など特殊要因を考慮すると、医師の業務量は日本人の診療時よりも増加するというので、幾つかの病院でお聞きしたところによると、やはり日本人の診療をするよりは 1.5 2 倍程度の時間なり努力が必要であるという意見も伺っているところです。

 また、 MEJ 関連事業以外にも、地方公共団体、大学、医療機関、 NPO 、個人などが、様々な医療を国際展開する機会が増加すると推察されます。また、海外からの観光客の増加や、東京オリンピック・パラリンピック時の来日者への対応。これは主に、本来健康である人が、日本に滞在中に急に発症した、あるいは事故に遭ったというようなこと、もう 1 つは、例えば慢性腎不全で透析が必要なので海外には行けないという方に関しても、その透析施設などを整備すれば、安心して日本である程度の期間滞在できることもあるかと思います。それに関わる医師などの医療者も増加すると考えられます。

 重ねて、具体的な数字を現時点で御提示することがなかなかできませんので、以上で私の発表とさせていただきます。

○片峰座長 ありがとうございます。何か御質問はありますでしょうか。

○小森構成員 日本医師会の小森でございます。 2 点御質問させていただきます。まず、インバウンドに対する対応として、正に人道的見地から診察・診療に当たる。これは医師として当然のことです。営利ではなくというお話を最初にされたことに、大変敬意を表したいと思います。

 質問は、なかなか予測しがたいということですが、医師養成数という観点からすると、中期的にも、そのことについてはほぼ影響がないと考えてよろしいかということが 1 点です。

 もう 1 つはアウトバウンドですが、最終的には現地の医師が主体となる。それが国際貢献の本質だと思っております。したがって、新しく国家戦略特区において計画をされている大学等については、前回も申し上げましたが、 7 31 日の内閣府・文部科学省・厚生労働省の文章には、「養成された医師が、当初の目的に反して、一般の臨床医として勤務するようであれば、長期間にわたり社会保障制度に影響を及ぼす可能性もある」というように明記されております。こういった大学において、もしも認可がされるということであれば、そういった諸外国の方々を入学させ、我が国の高度な医療レベル、そして、国民皆保険制度といったようなものを学んでいただいて、アウトバウンドで現地で診療に当たられる、そして日本人医師が、場合によってはその指導に当たる、というようなことが、正に本来の国際貢献の姿ではないか。その大学がそういったことに特化すると、一層良い効果が表れるのではないかと私は思っておりますが、そのことについての御意見、この 2 点をお願いします。

○相川参考人 ありがとうございます。一番最初に御指摘がありましたように、私ども、特に私は医師ですので、国際展開に関して、やはり基本的には日本人の医療が障害されないような形で粛々と進めていくべきであって、繰り返しになりますが、商業主義に陥らないようにという観点で仕事を進めていかなければいけないと思っております。

 御質問ですが、まずインバウンドに関しては、必要な医師数はやはり増えると思います。しかしながら、そのマグニチュードがどのぐらいかということは難しいのですが、現在、幾つかの病院で聞き取りましたところ、診療患者さんの 1 2 %は、外国から来ている患者さんに既に対応しているという病院もあります。その病院では、現在の医師数で対応できているわけですけれども、その病院でも、外国人患者をこれ以上増やすかというと、ある病院では現在の患者数が限界であると感じているという施設もありました。

 それから、新たに「日本国際病院」というリストを出すときに、今までに外国人患者を受け入れていない病院を急にリストに出すということはありません。ある程度受入れ経験のある病院をリストに出すということですから、今受け入れている数は、現在の医師数で足りているわけです。ですけど、リストに出せば確かに増えると思います。これがどのぐらい増えるかということを、我々が推測しなければいけないのですが、現時点では難しくて、なかなかお答えにはなりませんが、増えるということは間違いない、しかし、そのマグニチュードがどれぐらいかということは、もう少しお時間等を頂き、またこの推移を見てから、お答えさせていただきます。

 今、特定の医科大学のお話が出ておりますが、 MEJ の理事としての発言というよりは、私の医師としての個人的意見でよろしいでしょうか。なぜならば、 MEJ として、その大学に関して意見は統一されていませんが、それでよろしいでしょうか。

 では、私個人的には、特定の大学の方針を見て、少し難しいこともあるのではないかというような印象も持っているところです。お答えになりませんが、そういうことです。

○片峰座長 では、ここまでとします。今、小森先生から言われましたが、国際医療に関しては、日本人医師のニーズとともに、外国籍医師のニーズですよね、ここをどう考えるかが 1 つのポイントになりますね。

 それでは、次に移ります。次は、今の参考人の先生方からの御意見を踏まえて、今後の需給推計についての検討を進めたいと思いますが、「医師需要数の推計方法について」という議題に移ります。まずは資料 3 に関して、事務局から説明をお願いします。

○木下地域医療計画課長補佐 資料 3 を御用意ください。「必要医師数の推計について ( ) 」という資料です。 1 ページで、今回の医師の需要推計の考え方について、大きく考え方を整理しています。今回の医師の需要推計については、1臨床に従事する医師と、2臨床以外に従事する医師とに大きく分けて推計を行っていくことを考えています。臨床に従事する医師には、介護・福祉分野に関する医師の数も含めていくことを考えています。

 下に移り1ですが、臨床に従事する医師数については、地域医療構想との整合性を図る観点から、地域医療構想策定で用いた医療需要の推計方法を踏襲することとしたいと思っています。詳細について、後ほど松田構成員から御説明をお願いします。

 2ですが、臨床以外に従事する医師については、様々な分野で広く活躍されることを想定し、各分野ごとに推計を行っていきたいと思います。具体的な推計方法については、次回以降、御検討をお願いします。

 ここで想定している臨床以外の医師に関しては、 13 ページに「参考」としてお付けしている所を御覧ください。臨床以外に従事する医師としては、そちらにありますように、研究機関、産業医、行政機関、製薬会社等の民間企業、国際協力、こういった分野の医師について、今後、検討を進めていきたいと考えています。事務局からは以上です。

○片峰座長 続いて松田先生、お願いします。

○松田構成員 臨床に従事する必要医師数の推計方法について御説明します。 3 ページは「医師の需要推計の考え方」ですが、医師需要に対する医師数については gold standard もありません。したがって、現状分析を基に一定の幅をもって単位当たりの医師数を設定する方法が、現実には一番実際的だろうと思っています。ただ、この必要数については、大きく 2 つの考え方があると思います。 1 つは、各地域の現在の受療率を前提とした方式、要するに現状追認方式です。もう 1 つは、それぞれの地域の年齢構造等から推計される標準的な受療率に基づいて推計する方式です。この 2 つがあるだろうと考えています。

4 ページは、今回の必要医師数の推計方法のざくっとした姿ですが、一応、入院と外来を分けて推計しようと思っています。入院については、この後少し簡単に御説明しますが、地域医療構想の中で病床を、高度急性期病床、急性期病床、回復期病床、慢性期病床に分けましたので、それぞれの病床数、それぞれの機能区分ごとに、 100 床当たりの必要医師数を一定の幅をもって計算して推計しました。例えば、高度急性期であれば、 a1 a2 で幅をもって推計し、それを必要病床数に掛ける形で、これを病床機能別に全て立ち合わせる形です。ここで求めるのは、常勤換算の入院患者分の医師数という形で求めたいと考えています。

 ここで問題になるのは慢性期病床数ですが、慢性期に関しては、今、地域医療構想等でもいろいろ議論があるところですので、取りあえずは現行ベースでの推計を行ってみたいと考えています。

 では、 a1 a2 b1 b2 c1 c2 d1 d2 とどういうふうに推計するかということですが、これは一応病院報告と NDB のデータがありますので、それを用いて、それぞれの所でどのぐらいの幅をもって推計できるかということでやってみたいと思っています。

 続きまして外来ですが、外来は機能区分はありません。その中で初診・再診が一応患者数になりますので、この 1 日当たりの初診・再診のレセプトを用いて、これを医師 1 人当たり・ 1 日当たりの平均的な診察患者数、これも幅をもって推計したいと思っていますが、これで割ることによって、それに何らかの補正係数を掛けまして、これで常勤換算の外来患者分の医師数にしたいと考えています。

 この辺のα 1 、α 2 とか、そういう補正をどう考えるかということですが、これは三師調査とか、そういうデータがありますので、そういう所から実際の常勤換算の医師数との関連で、この辺のところは推計していきたいと思っています。ただ、まだデータがありませんので、これは実際の作業をやりながら、この値を決めていきたいと思っています。あと、精神科入院については、後で述べたいと思います。

5 ページです。今回の推計のポイントになりますのは、病床機能別の病床推計ですので、では、この病床機能別の病床推計をどうやったか簡単に御説明します。まず、病床機能別病床推計ですが、これは実際のレセプトを使いました。平成 25 年度 1 年分の DPC 及び NDB のデータを全て使ったということになります。悉皆調査になります。

 まず、ここで DPC 調査について御説明しますと、今現在、 DPC に関しては全国で約 1,900 の病院がデータを出しています。病床数のネットは大体 55 万社ぐらいになると思うのですが、年間で 1,100 万件の退院患者のデータベースになっています。スミダの日本の急性期医療のかなりの部分をカバーしているだろうと思います。

NDB は、御存じのとおり、これは高確法に基づき、厚生労働省には全てのレセプトを集め、誰かということは分からないのですが、同じ人をずっと追い掛けることができる形でのデータベース化を行っています。これが医科レセプトだけで年間 17 億件という、そういう膨大なレセプトデータになっています。

 これを研究目的で使うことができるようになりました。また、政策分析で使えるようになりましたので、今回の厚生労働省の研究の中では、このデータベースを使って病床数を推計するロジックを考えました。

 この中では、高度急性期、急性期、回復期、慢性期をどう区分したかということですが、高度急性期は少し置いておきますが、急性期、回復期、慢性期をどう区分したかと言うと、まず、一般病床レセプトについては、今回は医療資源投入量に基づいて区分をするということで作ってみました。急性期は、恐らく資源投入量が日々変化する時期と考えると、これが落ち着くまでの時期を急性期、落ち着いてから退院準備ができるまでを回復期、それで一般病床の場合には、その退院というものが、恐らく慢性期に相当するだろうということで区分を作りました。

 高度急性期は、急性期の中でも患者の病床を状態によって移ることを前提に考えれば、 ICU HCU 、無菌室の利用頻度などに着目して、それを分離することが妥当だろうということで、高度急性期を分離しております。

 回復期リハビリについては回復期病床、療養病床については医療区分 1 70 %を入院外で対応できるというデータがありましたので、これを除いた上で、残りを慢性期病床に割り付ける、こういう考え方になっています。

 障害者病床は慢性期病床に割り付けるという考え方になっています。

6 ページは「推計の考え方」ですが、全体の推計は 3 つの仮定を置いています。 1 つは機能分化を進める。先ほど申しましたように、医療区分 1 70 %は入院以外で対応する。すみません、 1 つ言葉が抜けているのですが、療養病床の有病率の都道府県格差を縮小する。この 3 つの仮定に基づいて推計をしています。

 私たちが行った推計ロジックは、あくまでも患者数を推計するロジックです。その患者数の推計をするロジックに対して、病床稼働率をガイドライン検討委員会等で話し合っていただき、高度急性期 75 %、急性期 78 %、回復期 90 %、慢性期 92 %と仮定し、この病床稼働率で推計された患者数を割り戻すことによって病床数を推計すると、こういう建て付けになっています。ただ、ここで注意していただきたいのは、慢性期とは、あくまで療養病床の入院と介護施設と在宅の足し合わせたものになるということですので、この実際的な分布がどうなるかということは、この後少し検証が必要だろうと考えています。

7 ページが実際の DPC のデータを分析した結果です。 1 本の線が DPC だと思ってください。例えば、肺がんの全摘術とか、肺がんの肺切除術とか、胃がんの全摘術とか、そういうものです。これを見ていただきますと、どの DPC も大体 500 点ぐらいまでの所をずっと下がってきて、そこからプラトーになります。それで見ていただきますと、大体 300 点ぐらいの下の所は、ほとんど点数が発生しないことが分かります。そうすると、この左側の赤で示す所辺りに、多分、急性期と回復期の区分点 ( 変曲点 ) があるだろうと。右側の一番下になりますが、この幅の所に、多分、回復期と慢性期の区分点があるだろうということで、一応この辺の所に幅をもって、ガイドライン検討委員会のほうに提案をさせていただきました。

 検討委員会で設定されたのが、 8 ページの点数になります。高度急性期と急性期を区分する所が 3,000 点、急性期と回復期を区分する所が 600 点、回復期と慢性期は、ここに 225 点と書いてありますが、一応調整等を行う期間を見込んで 175 点という形で推定しています。

 では、実際にこれを使ってどのように病床数を推計したかということを、 9 ページの簡単なポンチ絵を使って御説明します。右上から説明します。これは何かと言うと、各 DPC ごとに 1 年分の患者を全て集めました。例えば、これが肺がんの肺切除術だと思ってください。 1 年分のそのレセプトを集め、入院 1 日目から最後の患者が退院するまでの 1 日ごとの点数別の患者の分布を、このような箱ひげ図で書きます。一番左が 1 日目になるわけですが、この中で C1 、この 3,000 点以上の所の人数を 1 年分全部足し合わせるわけです。そうすると、これが肺がんの肺切除術の高度急性期に相当する 1 年分の延べ患者数になります。これで年末年始の調整を行い、 365 で割ると、 1 日当たりの肺がんの肺切除術の 1 日当たりの高度急性期の患者数が何人いるかという、こういう推計になります。これを急性期・回復期・慢性期それぞれにやって、これを全ての DPC ごとにやる形で、 DPC ごとに高度急性期・急性期・回復期・慢性期それぞれの患者数が何人いるのかを推計したと、これが今回の建て付けになります。これを病床稼働率で割り戻すと病床数になるわけです。

 多分、ここで御質問があるだろうということが、これは DPC だけのデータではないかとなるのですが、今回、 NDB が使えることになりましたので、 NDB は、先ほど申し上げましたように、 1 人の患者をずっと追い掛けることができます。ということで、今回の NDB のデータを全て 1 入院当たりに再加工するロジックを開発しました。 1 入院当たりに再加工した上で、その患者に対して行われている医療行為から DPC を発生させるという、そういうロジックは、 DPC 研究班のほうで開発してきたので、それを適用し、非 DPC のレセプトについても、全て DPC コーディングを行って、それで同じような手続で DPC ごとの高度急性期・急性期・回復期・慢性期の患者数を推計したと、そういうことをやったわけです。

 「将来推計の方法」を 10 ページにまとめています。これをやることによって何ができるようになったのかと言うと、これは悉皆データであることは非常に重要なことですが、 DPC 別・病床機能別・性年齢階級別・患者住所地別・医療機関住所地別の患者数がまず求められます。これが平成 25 年度ですので、これを平成 25 年度の患者住所地別・性年齢階級別の人口で割ると、これは受療率になります。この受療率を求めることが一番のポイントでして、この受療率に推計年度、例えば 2025 年度の患者住所地別・性年齢階級別の人口を掛けると、例えば 2025 年度、推計年度の DPC 別・病床機能別・性年齢階級別・患者住所地別・医療機関住所地別の患者数になりますので、これを病床稼働率で割ると、これが病床数になると、こういう建て付けです。すみません、朝からこういう細かいロジックで非常に不興を買っているだろうと思いながらも、申し訳ありません。でも、一応こういう割と細かい推計をちゃんとやったところです。

 実際、これで何が分かるのかと言うと、例えば、私は福岡に住んでいますので、 74 歳の女性で北九州医療圏に住みながら、福岡医療圏にある病院に入院する、くも膜下出血の患者、その総体について、例えば高度急性期の病床数が何床要るのかと、そういう推計ができるわけです。要するに、人口構成・傷病構造・受療動向の地域差を反映させた上での病床推計を行うことが、今回可能になったということです。これを医療患者住所地別で集めれば、これが患者住所地別の病床数になるし、医療機関住所地別で集めれば医療機関住所地別の病床数になると、こういう建て付けになっています。ただ、ここでポイントになるのは、あくまでこれは現在の患者の受療の動向・平均在院日数・受療率、そういうものを前提とした推計です。

12 ページです。こういう形でそれぞれの機能別の病床数を推計して、そこに一定幅の必要単位当たりの、 100 床当たりの患者数を掛け合わせることによって病床数を推計しようと。レセプトについては、 1 人のドクターが大体 1 日に平均どのぐらいの患者を診るのかを、初診・再診のレセプトから推計して、それに掛け合わせることによって、実際の医師数を推計しようと、これが今回のやり方になります。

 ただ、推計に関して幾つか残された問題があります。 1 つは、外来については、実は生活保護・自賠責・労災といった社会保険診療以外が NDB から入手できないため、その分について何らかの対応が必要だろうと思っています。それから、 MEDIAS 等で補正する方法もあると思いますが、これをやらないといけない。

 精神科の入院医療については、今回の地域医療構想の推計に含まれていません。将来的には同じような方法でやらなければいけないのですが、一応時間もありませんので、 MEDIAS を使わせていただいて、そこで全国値での病床推計を行い概算値を推計すると。その後、関係部局との調整の後、 NDB を用いて他の診療科と同様の推計を行うことでよろしいのではないかと思っています。

 介護・福祉分野については別途、施設当たりの医師数は大体決まっていますので、それを用いて立ち合わせるということでよろしいかと考えています。

 一応、簡単ですが、これが今回の私の研究班で考えている必要医師数の推計方法になります。以上です。

○片峰座長 ありがとうございました。それでは、御審議をお願いします。

○神野構成員 どうもありがとうございます。地域医療構想の必要病床数の推計は、地域医療構想の中で動いているし、地域によっていろいろな悶着がありながらも動いているので、これについてとやかく言う話ではないのですが、 4 ページの、実際これから検討を加えるための必要医師推計方法ですが、 a1 a2 b1 b2 c1 c2 等々に関しては、病院報告と NDB の推計結果を基に一定の幅をもって推計するわけですね。正に係数がどうなるかによって、必要医師数は随分変わってくることになると思うのですが、今のこの流れからしたら、現状追認というか、現状で高度急性の病院ではこれぐらいの医師が必要である、あるいは急性期ではこれぐらい必要だから、それを掛け算するという流れのように見えてしまいます。例えば、前回のこの分科会資料、あるいは今回の参考資料の 20 ページ、前回も私はお話しましたが、医師の労働時間等はブラック企業並みに、特に若手の男性医師に関してはブラック企業並みに労働時間が多いと示されています。そういうことも補正しないと、今のブラック企業並みの労働時間のままでの現状追認で医師数を決めていいものかどうか、先生の御意見をお聞きしたいと思います。これは 1 点目です。

 もう 1 点は、今度は外来ですが、ここにまた、これからいろいろ三師調査等のデータを参考にすることだと思うのですが、今、増えているのが在宅、あるいは介護保険施設とかの医師数というところで、その辺のところを何らか入れ込む要素があるのかどうか。特に、在宅に必要な医師等であるのではないでしょうか。その 2 点です。

○松田構成員  1 点目ですが、高度急性期・急性期・回復期・慢性期というところで、診療密度を少し考えていって、重み付けの係数を作ろうと思っています。あと、現状の医師数という形で、その重み付けでこの係数を作っていくことになると思います。その上で、実際に今 20 ページに出ているようなものがありますし、私たち DPC の研究班で過去に、 1 人の医師がどのぐらい働いているかという、総労働時間の調査もやっていますので、そういうものも踏まえながら、関係部局ともいろいろと話し合いながら、合理的な数字を出していきたいと思っています。当然、今の長い労働時間を前提とした推計は少しゆがんでしまうと思いますので、そういう意味で、ここに書いてありますが、常勤換算での医師数を推計するのは私たちの仕事だろうと思っています。その常勤換算の医師数が推計された上で、例えば実際の労働時間の補正とか、あるいは総労働時間の補正には長いという補正もあると思いますが、先ほど女性医師の問題でありましたが、パートタイムの医師の問題もあるだろうと思います。これは前回の藤田先生の推計等がありますので、それはこれまでの研究成果を踏まえながら、ここのところは合理的な説明ができる係数を設定していきたい思っています。

2 番目の在宅ですが、一応 NDB の中で在宅のレセプト数は分かっています。一応、現状追認でやらなければいけないのですが、これが正に病床機能報告ではなくて、今回の推計と絡んでくるのですが、仮に慢性期療養病床の数、機能分化をしたときに外に出せるという、その外に出した患者を、実際にどのぐらい訪問診療で診ていくのかを、多分幾つかパターンを作って推計しないといけないだろうと思います。当然、外に出た患者で見るという形になると、それがもしかすると医師数を少し増やさなくてはいけないことになるかもしれません。いずれにしても、そのところについては、少しシナリオを幾つか書いて推計する形で対応したいと考えています。

○神野構成員 お願いします。

○北村構成員 東京大学の北村です。先生もおっしゃっていたように、これの推計は現在のものであって、医学教育は長いので、 6 年間プラス研修の 2 年間、場合によっては専門研修の 3 年を入れると 10 年以上先、あるいは 15 年ぐらい先の医師の需給を先生のデータからどの程度的確に想定できるかと。これに対する要素はたくさんあると思います。人口動態もあるし、人口の地域別偏在も変わってくるとは思うのですが、この推計から 15 年後あるいは 20 年後の日本の必要医師数は、かなり正確に推計できるのでしょうか。

○松田構成員 実際の現在の医育課程を踏まえた上での医師数がどうなるかは、前回の委員会で藤田先生がお出しになられていますので、私たちが実際にここのところで参考にさせていただくのは、多分、その将来推計になるだろうと思います。そのときにいる医師数で実際に按分するような形、配分するような形でやることになると思うのですが、一応そういうほかの医師数、医育のどのぐらいの医師がその時点でいるのかを、もちろん必要数はこれで推計しますが、それと実際のそのときに存在する医師数との整合性をちゃんと見ていく必要があるとと思います。一応こちらのほうで推計は行いますが、実際にそのときにどのぐらいの医師数が必要なのかも参考にしながら、議論すべきと考えています。

○平川 ( ) 構成員 日精協の平川ですが、精神科の入院医療について質問というか意見を述べます。精神科医療は今、地域医療構想の推定には含まれていないわけですが、それに対して MEDIAS を基にということでお話いただきましたが、精神科医療は今、大変大きな変革期にあり、入院中心から地域生活支援という形で、ハコモノから機能に移動しているところです。一方で診療報酬は、ほとんどが入院基本料で占められていて、収入の 9 割が入院基本料ということで、実際の医療の技術についての評価が非常に低い状況にあります。そういう中で DPC についても、精神科の DPC についてはなかなか進まないのが現状で、これは松田先生とも一緒にやらせていただきましたが、精神科では DPC は今のところなかなか難しいところにあります。そういう中で、この MEDIAS を基に他科と同様な形で話を進めていくことでは、正確な精神科の必要医師数を想定することは難しいかと思うのですが、いかがでしょうか。

○松田構成員 多分、何らかの形で補正はしないとと思うのですが、そうはいっても、やらなければいけない。精神科のデータがない状態で、今できることを考えなければいけないわけです。そうすると、一応 MEDIAS のデータを使えば、どのぐらいの患者が 1 日にいたのか分かりますので、現時点では全国ベースの推計だけですので、それで概算値を出していって、それをやりながら実際のデータをまた集中させていただく。というよりも、多分、関係部局との調整の中で NDB を使って同じような分析ができるという合意さえ得られれば、同じような推計ができると思いますので、その上で、精神科の入院のグラデーションをちゃんと補正するための別途調査を、丁寧にやらせていただくことになるのだろうと思います。

○平川 ( ) 構成員 精神科医の不足ということで、精神科特例という歴史があり、これが大変偏見の原因になっています。今後、 16 1 という一般化並みの医師配置を実現しながら、精神科医療の質を向上していこうというところですので、現状のままのベッド数だけで話を決めていただかないように、日本精神病院協会も協力しますので、是非よろしくお願いします。

○片峰座長 最後にまた総合討論の時間があると思います。時間が押していますので、次に進みます。次は、「医師偏在に係る課題について」ということで、まずは資料 4 について事務局から御説明をお願いします。

○木下地域医療計画課長補佐 資料 4 「医師偏在に係る課題 ( ) 」という資料を御用意しております。今後、医師偏在に係る課題について御検討いただくに当たり、現状考えられる課題について、網羅的に御検討いただくに当たって、そのたたきとなるような資料として事務局で整理しております。今回挙げている課題については、これまでの審査会・検討会等で御指摘いただいたこと諸々を集めて、事務局で整理したものです。これをたたきにして、各委員から様々な御意見を頂き、この課題を更にブラッシュアップしていきたいという趣旨で、今回御用意させていただいております。

 1ページは、医師のサービス・分野別配置のイメージです。こちらにおいては、主にどの場所で医師が働いて、どういうサービスを行っているかという観点で整理しております。一番左の医学部から臨床研修に行き、次に医療サービスとして大きく病院・診療所があろうかと思います。2以下で介護・福祉サービス、産業保健、行政機関、研究機関、民間企業、その他というカテゴリーに分けております。それ以降の過程の中で、それぞれ1~7においてどういう課題があるかという整理をしております。

2 ページでは、医療サービスにおける医師のキャリア形成のイメージをお示ししております。左から右に行くにつれ、医師の年齢が高まっていくというイメージです。まず大学の医学部を卒業した後、大学病院若しくはそれ以外の病院で 2 年程度の臨床研修を経て、後期研修がおおむね 3 年程度あろうかと思います。その後、いろいろなパターンに分かれるかと思います。大学院や留学に進まれる方、大学病院で常勤若しくは非常勤で働かれる方、それ以外の病院で同じように常勤・非常勤で働く方もあろうかと思います。その後、女性に関しては妊娠出産、また男性も含めて子育ての時期もあるでしょうし、 40 歳前後で開業を選択される方も考えられるかと思っております。この課題の中で、どの部分、どのようなキャリア形成と関連があって議論を進めていくか、ということを念頭に置きながら、 a m までの時期と合わせて、後ほど御説明していきたいと思っております。

3 ページでは、まず 1 つ目の課題として、医療サービスにおける課題を御提示しております。これを患者・住民・自治体の視点とサービス提供者等の視点というように、大きく 2 つに分けております。その中を順に御説明していきます。

 まず地域に関する課題として、 (1) 僻地等における医療へのアクセスが困難という課題については、中山間地域や僻地においては、日常診療・救急医療へのアクセスが困難、地域によっては曜日・時間・診療科の制限がある、専門医療や周産期医療などが確保されていない地域があるということです。 (2) として、都道府県間の格差があろうかと考えております。

2 つ目が診療科に関する課題です。1として、産科や小児科といった特定の診療科へのアクセスの確保が困難なもの、2として、多くの地域において救急医療の確保が困難という御指摘もあろうかと思います。

3 つ目がサービスニーズに関する課題です。 ( ) が特定の施設、特に大規模施設 ( 大病院 ) へ患者が集中して、待ち時間や診療時間に不満が生じる ( 相対的な医師不足 ) です。 (2) が専門医療や特定のサービスへのアクセスです。例えば小児科などで、 24 時間体制の専門医による診療を希望する場合が考えられるかと思います。2として、先進的な医療に関しては、やはり大都市部に限られ、身近な所で専門的な医療が受けられないといった課題もあろうかと思います。

4 ページでは、サービスの提供者側の視点で整理しております。 1 つ目の地域に関する課題としては、医師の赴任に関する課題を挙げております。1として、個人の意思として地方に赴任したがらないという課題もあろうかと思います。その背景としては、本人の意向もありますが、家族の意向や子供に対する教育環境といった課題も考えられます。そういった課題の背景としては、医師のキャリア形成に有利・不利の判断も影響しているかと思います。

(2) の都道府県間の格差に関しては、都会に研修医や研修後の医師が集まる傾向が指摘されています。2として、都会出身の地方医大生の多くが地方に残らず、地方において医師確保や医師の派遣が困難という御指摘もあろうかと思います。また、経営上の課題としては、僻地においては経営困難な小規模自治体病院が多いことから、必要な診療科・医師数を集めることが困難という課題も御指摘があろうかと思います。

2 の診療科で見た場合の課題としては、ハードな科ということで産科や外科、小児科、救急等の特定の診療科による医師の不足です。また、特に産科で御指摘があろうかと思いますが、安全なサービス提供のための医師の確保が困難ということがあります。続いて3、特定の診療科については夜間や休日に受診が増え、過重な労働があって確保が困難ということもあろうかと思っております。小規模施設においては少人数スタッフということで、麻酔科等の特定の診療科に業務の負担が集中しているということもあろうかと考えております。

(2) では、サービスの受益者からは直接見えにくい課題も少し挙げております。例えば病理診断科、放射線科といった診療科においては、一定規模以上の病院機能としては必要不可欠な診療科と考えておりますが、こういった診療科においても、医師の確保が困難という御指摘もあろうかと思っております。

 続いて 5 ページの 3 は施設に係る課題です。 (1) として、特定の施設への集中と医師派遣機能の低下です。この間、都会や一部の病院に集中した医師が、必ずしも不足地域に派遣されていないこと。 (2) として、病院と診療所では診療形態等に大きな違いがあります。例えば、病院の勤務医と診療所の医師とで労働時間の違い、2として、地域の中核病院で標榜診療科全てに常勤医がいない、3として、平日の日中以外は診療しない体制の診療所が増えているといった御指摘もあろうかと思っております。 (3) の新たな専門医の仕組みの中では、こういった仕組みを活用して、医師偏在の改善につなげていくことが必要という御意見も頂いています。

4 が就労環境に関する課題です。まず、持続的に勤務できる環境の整備が必要であろうという御指摘も頂いており、現状の医師不足・過重労働によって生じている不人気若しくは離脱という悪循環を回避するためには、就労環境の改善も必要であろうと。指導医にとっては、専門医の資格を維持できる環境が必要であるし、専攻医にとっても、十分な指導医を確保した環境が求められております。また、現行の多様化する働き方や、医師の価値観を踏まえた環境の整備も求められているところです。 (2) については、女性医師の割合が年々増加していることもあり、女性医師の増加に応じたライフステージに対応する就労・復職の環境整備も必要という御指摘を頂いております。

6 ページ以降では、診療以外の分野に係る課題を整理しております。まず2介護・福祉サービスに係る課題として、 3 つ挙げております。1介護分野に精通している医師の育成が必要であろう、2医師不足地域における介護老人保健施設等の医師の確保が更に困難になっている、3介護老人福祉施設においても、配置医師の確保が困難という御指摘を頂いております。

 3の産業保健 ( 産業医 ) に係る課題については、現在、「産業医制度の在り方に関する検討会」において、別途議論が進められているところです。そこにおける検討事項としては、 (1) 産業医の職務範囲をどうするか、 (2) 保健師等の医師以外の産業保健スタッフとの役割をどうするか、 (3) 小規模事業場における労働衛生管理体制をどうするか、 (4) 事業者と産業医の関係といった点について、今、課題の整理が進められているところです。

7 ページに進んでください。それに加え、4として行政機関における課題です。現在、保健所の所長の確保も困難な状況があるという御指摘を頂いております。それ以外に、過度な感染症の発生等に対応すべく、検疫所といった場における医師の確保、3として、全国の矯正施設の矯正医官の確保も困難という御意見を頂いております。4ですが、保健・医療・福祉施策の企画・立案を行う医師の確保も課題であろうという御指摘を頂いております。

 次に5の研究機関における課題です。特に大学の医学部等で基礎研究を志す医師が減少しているという御指摘を頂いております。

 6の民間企業における課題としては、医療関連産業の進展に伴い、創薬や医療機器の開発に係る医師の需要が増加しているという現状もあります。

 7の、その他 ( 国際協力等 ) の課題としては、1グローバル・ヘルス・リーダーとして世界の保健医療を担う、人材の育成・確保、2薬事規制の国際調和推進のための人材育成・確保、3諸外国で医療活動を行う際の資格取得等に係る課題というものも御指摘いただいております。

 最後が 8 ページ、今後御検討いただきたい論点として 3 つほど整理しております。 1 つ目が、今挙げたような医師の偏在に係る課題についてどう考えるかというところです。私どもで整理した課題以外にも、更に追加すべき課題等を御指摘いただければと思っております。また、従前から頂いている課題について、今、状況はどのようになっているかという御認識等も共有できればと思っております。論点の 2 つ目としては、これらの課題についての背景や、どういった要因で起こっているのか、今後検討していくに当たって、どういう点を留意すべきかという点についても、御検討いただきたいと思っております。さらに論点の 3 では、これらの課題の対応策を今後検討していく上で、どういう点に留意していくべきかという点についても、御意見を頂ければと思っております。

○片峰座長 関連して、荒川構成員から資料が提出されております。荒川構成員から、資料 5 の御説明をお願いいたします。

○荒川構成員 全国医学部長病院長会議の立場から御報告したいと思います。資料 5-1 は、日本医師会と全国医学部長病院長会議の合同会議を重ねた結果の緊急提言で、 12 月に厚生労働省と文部科学省に提出したものです。医師不足の解消に関しては、医師数をこれ以上増やすことでは解決できないということで、偏在地域と診療科の偏在を解消することが最も重要なポイントであるというのが骨子です。次のページですが、構成委員はそこに書かれているメンバーです。

 内容ですが、「はじめに」を見ていただいたら医師不足に至った経緯が分かります。 2004 年度に新医師臨床研修制度が創設されて以降、大学病院以外の病院を選ぶケースが多くなったことで、大学病院では医師が不足したために、地域の医療機関への医師の派遣に困難を生じるようになったことが、医師不足の 1 つの大きな原因です。そういったことで都市部、特に大都市を持つ府県では、マッチングの制限が加えられましたけれども、なおかつ、各都道府県の中での都心部と非都心部の医師数の格差がどんどん拡大しているということが、地域における非常に大きな医師不足の原因になっています。

 第 2 段落目ですが、このような状況を踏まえ、医学部入学定員は、 2008 年度から暫定的な増員が行われております。 2010 年度以降は地域枠を中心に引き上げられて、 2016 年度には総数が 9,347 人となっており、従来の入学定員から 1,642 人上回る増加が達成されております。これは、医学部 16 校の新設にも相当する増員です。

3 段落目ですが、こうした中で、医学部を新設して、医師養成数の増加を図るべきだとの意見もありますが、現状の医師不足の本質は、医師の地域・診療科偏在であるので、これ以上医師数を増やすと、社会保障制度の問題も生じてきますし、それでは地域における医師不足は解決できないということで、医師臨床研修制度の抜本的な見直し、特にマッチング制度の見直しが非常に重要ではないかと考えております。

 私は大阪の大学ですから、大都市を持つ地域ですけれども、そこでも 2 つの自治体病院が廃院に追い込まれているという現状があります。全国的に、都心部以外の地域では医師が不足している状況が、かなり大きいのではないかと思っております。昨年 2 月の総務省の調べにおいても、各都道府県の都心部に非常に医師が過剰になっていて、都心部以外の地域では非常に不足しているという現状がどんどん拡大している、という調査結果も出されております。

 こういう提言に関しては、大学自体が復権を狙っているのではないかといううがった考え方をされる方もおられるのですけれども、私の大学では 6 割ぐらいの方が他学から研修に来られています。したがって、その私がこういうことを申し上げるのは、私たちの大学にとっては非常に不利なことでありますけれども、日本全体の医療を考えれば、こういう医師不足を解消するためには、卒業した大学にとどまって研修することが、偏在を解消するうえで非常に大事です。

2 ページに「医師の配置と養成についての提言 ( 大きな柱 ) 」があります。 1 つは、医師キャリア支援センター構想というものです。これは出身地の大学、あるいはその地域で、卒業した者が、できるだけ根付いて医療に携わってほしいということの提案です。

 一番下に、「医師キャリア支援センター構想」というのがあります。これは各大学に医師キャリア支援センターというものを設けて、そこで医籍番号の登録をして、卒業した医師がどこで働いているか、医師の異動を把握するという仕組みをきちんと作るべきではないかというものです。これによって、卒業生がどこで働いているかが把握できます。各都道府県には、既に「地域医療支援センター」というものがあります。府県によって違いますが、余り機能していない地域もあります。ですから、こういった事務機能と調整するような、「医師キャリア支援センター」を作っていくというのは、非常に大きなことではないかと考えております。全国ネットワークとして、「全国医師キャリア支援センター連絡協議会」というものを設置し、医師の不足する地域においては相互にカバーし合うような制度設計も必要ではないかと考えております。

4 ページですが、出身大学のある地域での臨床研修に関しても、積極的にスクールアイデンティティと地域への愛着を進めていくことが必要ではないかと。あと、医師不足の地域において一定期間就労することが、医院を開設する条件とすべきではないかということも、提言として入れております。

9 ページは、医師養成数の見直しも図っていかないといけないということで、医師の定員増については、 2019 年度 ( 一部は 2017 年度 ) に見直しを行うことになっておりますが、情勢の変化を踏まえ、早急に定員削減を行っていくべきではないかということも提言しています。資料に関しては「背景」に、その根拠を示しています。医師の養成には 1 人につき 1 億円掛かるので、無意な医師の増員をこれ以上続けるべきではないというのがその提言で、偏在の解消に精力を注ぐべきであるという考えの提言です。

 資料 5-2 に関しては、その付随資料ですので、またお目通しいただければと思います。

○片峰座長 それでは御質問、御意見等をお願いいたします。

○今村構成員 厚生労働省の御説明に対して 2 点あります。 1 点目は、 1 ページにある矢印に紫と緑が付いておりますね。この矢印の意味合いというのは、このサービスを提供するという意味だと思いますけれども、例えば、行政機関が予防接種、検診というのは、もちろん実施機関ではあっても、実際上、現場でサービスを提供しているのは、恐らく病院や診療所等です。そういう意味では、矢印の付き方がどうなのかということがあります。これはちょっと工夫していただければと思います。

 もう 1 点はお願いです。 5 ページの「医療サービスにおける課題」の「病院・診療所の違い」という所です。論点としてこういうことがあろうかとは思いますので、今後議論すればよろしいかと思いますが、極めて断定的なものの書き方がされています。例えば、診療所医師とで労働時間等に差があるということを前提に書かれています。公の文章なので、そういう課題があるということは結構だと思いますが、診療所の医師というのは、診療している以外に、学校医とか経営者としての仕事とか、様々な業務があるわけです。それを公の文章で一律にこういう書き方で書かれるのはいかがかと思うので、是非書き方を検討いただきたいと思います。

 また、4に「有床診療所では」と書いてありますが、実は地域では、普通の無床診療所でもかなり高齢化し、様々な制度のために継続できないことがあります。私どもは都市部で診療しておりますが、診療所も偏在します。従来、地域の中で開業していた高齢の先生が辞めて、新しく開業する先生は駅前のロータリーでビル診で開業するということで、診療所ごとの全国的な偏在もあるわけで、病院対診療所のような対立構造では書かないでいただきたいと思います。

○一戸構成員 詳細に課題をまとめていただいてありがとうございました。今後の議論の方向性として、私は、衛生部長会を代表して出ているのですけれども、課題のレベルが国レベルの医師の問題と都道府県レベルの問題、二次医療圏レベルの問題というように、様々に関わってくると思っています。地域偏在の是正とか診療科偏在の是正などの議論を、どこまでここで行うべきなのか。少なくとも我々としては、都道府県レベルの是正を図っていただいた上で、やはり都道府県の役割として地域医療構想といったもので、都道府県の中は都道府県が責任を持ってやるべきだと思っているのです。どの辺のレベルまでの地域偏在を是正するという検討の方向なのかを、確認させていただければと思います。

○迫井地域医療計画課長 需給の関係の中で、需要の部分については地域医療計画課が担当しておりますので、私のほうから事務局としての考え方をお答えしたいと思います。

 今回、この資料を作成した背景として、医師の偏在や不足という御指摘を多々頂くわけですが、正に一戸構成員がおっしゃったように、いろいろな切り口のものが種々雑多に混ざった形で指摘されております。資料 4 の最後の「論点」に書きましたけれども、今後必要な対策、あるいは必要な要因分析から始まって、どういったことに対応していくべきかということを議論していく際には、その背景にある要因とか、どういったレベルでものを考えていくのかという整理が必要だという問題意識です。したがって今回、こういった課題を網羅的に書かせていただきました。

 先ほど今村構成員から御指摘がありましたが、基本的に、これは前回、平成 17 年・ 18 年に検討された報告書で示された内容等、過去の審議会等で指摘されたものを中心に記載しております。その時点で、そのような記載がありました。それを記載したものです。これらも含め、課題を整理させていただき、その後にどういった対策、どういった対応が可能か、どういった対応を考えていくべきかという議論の中で、国レベル、全国レベルで対応すべきことかどうか、あるいは二次医療圏まで含めて考えるべきことかどうか、こういったことも含めて、この検討会の中で御相談しながら対応していきたいと考えております。

○片峰座長 座長としてですが、確かに偏在問題は重要な問題ですし、医師の需給あるいは医学部の定員を考えるというのも、重要な課題だとは思います。しかし、この検討会の最大のミッションというのは、平成 29 年度で終了する暫定的な医学部定員増をどうするかというのが、最大のポイントですよね。その観点から言えば、先ほども言われましたけれども、現状の医師数というのをきちんと分析した上で、もう 1 つ御発言がありましたように、この 10 年、 20 年で、恐らく世界の状況、医療の状況というのはドラスティックに変わっていくわけですから、そういった想像力も駆使しながら、今の若者たちが医師になる頃にはどうかという議論がまずあります。その中で偏在問題というのを、適正医師数あるいは医学部定員の問題とリンクして議論しなければ、私は非常に散漫になるのではないかと思うのです。

 先ほども議論がありましたけれども、医師の数を増やせば偏在問題が解決できるのかどうかという議論が 1 つありますし、そこに関わるとすれば、今までのように全ての医学部を増やすというやり方ではどうなのかとか、いろいろな問題や観点があると思うのです。そこは少し絞り込んだほうがいいのではないかと、私は座長として思うのです。そこら辺はどうですか。第 2 回まではいろいろな問題が網羅的に全部出てきましたが、次からは余り機会もないし、ある程度絞り込んだ議論をしたほうがいいのではないかと思うのです。

○一戸構成員  1 回目に神野構成員からもお話があったと思うのです。マクロベースで見た医師の供給量を見ても、衛生部長会の中の議論を見ても、ミクロベースで充足しているという意見は、どこの県の担当部長からも出てこないわけです。ですから全体の需給を決める上では、やはり地域偏在をどうやって是正するかということがあった上で、定員の議論をしたほうが、衛生部長会というか、都道府県のレベルからすると妥当ではないかと考えています。

○本田構成員 私自身は前身の 2006 年・ 2007 年の医師需給検討会に委員として参画させていただきました。そのときの議論の際に、やはり今と同じような議論がありました。当時は、女性の医師の増加などが余り勘案されていなかった点と、勤務医の厳しい労働時間の問題もありましので、世の中も「医師を増やせ増やせ」という雰囲気がありました。ただ、「増やしさえしたら、この地域偏在や診療科偏在は解消できるのですか」という質問を何度もしたのですけれども、「まずは増やすことだ」ということで、何だか押し切られたという印象が残っています。

 確かに、ある一定の数は増やす必要があったのでしょうけれども、その際に、数を増やしていけば解決できる課題もあるというようなこと言われましたが、何が解決できたのか。また、偏在解消の対策として挙げられた事業などがありましたが、それが実際にどのように機能して、解決につながったのか、つながっていないのか。その辺りをきっちり見ていかないと、同じことを繰り返し続けても意味がない。数を「増やします」「減らします」ありきではなく、行った対策によって問題が解消される方向に動いたのか否か、若しくはこれから動こうとしているのかという点を、ある程度示していただかないと、議論の繰り返しになると思うのです。ですから今後の議論の中で、そういう点についても整理していただきながら、議論を進めていただければと思います。

○荒川構成員 それに関しては平成 26 年度卒で、やっと地域枠の卒業生が出ているのです。まだ 2 年しかたっていないのですが、全国医学部長病院長会議では文部科学省からの事業として、今それを調査しているところです。地域によって違いますけれども、少なくとも、 5 年とか 10 年などの縛りを設けて奨学金を出している所もあります。その間はその地域で医業をしてほしいと。ですから 5 年、 10 年たたないと、結果は見えてこないと思うのです。それにはもう少し時間が掛かると思うのです。

1 つデータとして不足していると思うのは、いわゆる「フリーター医師」と呼ばれている、どこにも所属していないような医師の数が、感覚的に増えていると思うのです。そういった医師は、労働力としては余り機能していない可能性が高いので、データとしてそういう方の人数がどのぐらいあるのかということを、一つ押さえておいていただきたいと思います。専門医制度が発足すれば、そういう医師は減るとは思うのですけれども、現状の認識という意味で、その調査を是非していただきたいと思っております。

○小川構成員 座長の御意見はごもっともで、余りに議論が広がってしまうと散漫となってしまうから、絞ったほうがいいのではないかという御議論はあろうかと思うのですが、医師需給に関しては、もともと非常にマルチファクトリアルなのです。今まで議論をした中で、地域医療構想をベースにして話をするということに関しては、時間軸からすれば 2025 年の 1 つの時間軸のある 1 点を取って議論をしているわけです。ところが、例えば医師養成を考えたときに、現在の入学定員が妥当かどうかということではなく、医師養成をしていって、その医師がきちんとした仕事ができるのは 10 年後であり 15 年後なのです。ですから 15 年後のことを前提にして議論をしないと、話は始まりません。

 もう 1 つは、時間軸が変数になっているのです。というのは、現在の人口構成はこうですというものがあったとしても、 15 年後に日本の人口構成がどうなっていて、医療需要がどういうように変化してくるかという変数もここにはあるわけです。更に、先ほど来いろいろ議論されている地域偏在等々の問題もあるわけです。そういう意味では多変量解析のようなもので、単変量で議論をしても意味がないわけです。

 もう 1 つ、議論の中にどうしても入れていただきたい問題があるのです。というのは、先ほど、全国医学部長病院長会議会長の荒川先生から緊急提言の御説明があったわけですが、この緊急提言をまとめるときに、愕然としたことが 1 つありました。国民の健康と命を守っている医療専門職である医師について、そのキャリアパスと、卒業してどういう所でどういう技術を磨いて、どういう所でどれだけの診療経験を積んで知識を担保しているかということ自体が把握されていないのです。

 皆さん「医師、医師」と言うわけですけれども、医師がみんな同じモノトーンで、同じ技術レベルを持っていることを前提に話をしているからおかしくなってくるのです。そういう意味では、医師がどういうキャリアパスで、どういうトレーニングをして、どこでどのぐらいの診療技術を磨いて、現在どうなっているのかという質の担保と言いますか、質に関しても件数として入れ込まないと。ただ単に「医師の数がこれだけあればいい」と言っても、ろくでもない、いてほしくないような医師までいるわけです。そういういてほしくない医師には退場していただきたいわけです。そういうものを、同じ医師だという前提で議論をしていけば、変な結論に達します。

 確かに座長がおっしゃっているように、余り議論が多岐にわたると、散漫になってしまう可能性はあるのです。しかし、もともとこの問題に関しては多変量で、ものすごく大きな変数の中で議論をせざるを得ないということを前提にして、是非そういう認識でやっていただきたいと思います。もし、それで大きな委員会として時間が足りないというのであれば、この中で何人かずつグループに分けて、「これはお前の所で検討しろ」ということもあり得る話ではないかと思います。よろしくお願いします。

○権丈構成員 先ほどから皆さんで議論されている将来の話、総数の話、偏在の話というのは、資料 3 の方法でやっていくと、相当部分は補正係数の問題に還元されてくる話になります。まずは必要な患者数をある程度決めていき、その地域ごとにどの程度の医師が必要かをカウントしていき、その医師がどの程度の時間を費やしてくれるだろうかという補正係数で調整していくという議論に落とし込むことができれば、議論はかなり収束するのではないかと思っております。

○迫井地域医療計画課長 座長からの今後の方向というお話と、私どもがもともと第 1 回に御提示したものと、本日の議論も含めて、我々なりにこのような方針でいかがかというところはありますけれども、神野構成員のほうが先のほうがよろしければ、御発言いただければと思います。

○神野構成員 県庁所在地ではない地方の病院の管理者の立場からすると、一番の仕事は医師の確保です。しかも、拝み倒して何とか確保した医師が、またわがままを言い始めるということで、大変苦労をする。そういう中で、先ほどの厚生労働省の資料の「医師偏在に係る課題 ( ) 」も、都会の施設の集中以外は全部不足の文脈です。全国医学部長病院長会議の資料の初めの辺りも、不足の文脈です。恐らく、今いっぱいではなくて不足している地域、不足している分野に、どうやったら医師が増えるかという議論は必要だと思います。ただ、もしその議論がなかなか進まないのならば、やはりまだ総数を増やすことしかないと思います。

○小川構成員 今のお話には大反対です。先ほどから申し上げているように、時間軸の中で考えなければいけない。今足りないのは当然ですよ。今足りないのは、国が医師養成を一番絞った時期の卒業生が、まだ卒業していくからです。緊急医師確保総合対策あるいは医師確保総合対策で、「定員を増やしてもいい」と言ったところの卒業生が、やっとこの 4 月に臨床研修医を終わって現場に出てくるわけですから。 10 年前あるいは 20 年前と同じように、今が医師不足の状況であることは当たり前なのです。ですから今の養成は、 15 年後の医師だということです。

○神野構成員 よく理解します。ただ、もう 1 つは、先ほど来、いろいろお話のあったことで、また新たな専門医制度ができるというのはいいことですけれども、プラス 3 年間のモラトリアムというか、卒業できない方が増えてしまうということも加味すると、時間軸としては延ばさざるを得ない。そうすると、ここで削減するのはまだ早いのではないかと思います。

○片峰座長 もうそろそろ時間となりました。今幾つか推計に関するマルチなファクターが、将来予測も含めて推計に入れ込むことができるかという議論もあったと思うのです。松田先生、どうでしょうか。

○松田構成員 推計は所詮推計ですので。言っている意味は、その都度その都度きちんと見直すという、 PDCA サイクルをきちんと入れることが、一番大事だろうと思います。今までのいろいろなものは作りっぱなしになってしまっているのです。先ほど本田構成員もおっしゃいましたけれども、作ったものをきちんと検証しながら、定期的に調整をやっていくという作業さえすればいいのではないかと思います。結局、人口の移動や傷病構造の変化というのは、いろいろな不測の事態が入ってきますので、そういうものを全て入れて推計することはまず無理です。そうすると、やはり定期的に見直しを入れていくという形で微調整をしながら、より良い方向に持っていくということで、私はいいのではないかと考えています。

○迫井地域医療計画課長 この議論の冒頭で座長から、絞り込んだ議論をという御指摘がありました。初回に我々は資料をお示しして、スケジュール感もお示ししているところですけれども、その後にいろいろな御意見を頂きました。現時点での私どもの受止めとしては、やはり当面の課題として、平成 29 年度末に切れる医学部の定数の問題があります。これをまず基本的なプライオリティーとして、議論をしていただきたいと考えております。

 その上で、先ほどから御議論がありましたように、中長期の偏在対策というのも、一体不可分的なところもありますので、やはりその方向性での御議論をしていただく必要はあるかと思います。しかし、あまり各論に入ることになりますと、当然エビデンスが必要、御案内のとおり、今手元にあるデータは、どちらかと言うとマクロ、オールジャパンのデータが中心になっております。そういった意味でも、原則的には、平成 29 年度に切れるであろう暫定定数の問題を御議論いただきながら、一部並行してということになるかもしれませんが、中長期的な課題の方向性について御議論いただければと思っております。それを一定程度踏まえた上で、更にどこまで何ができるのか、何が必要なのかということを次のステップとして、議論として取り組んでいただければ、事務局としても有り難いという受止めです。

○片峰座長 時間となりましたので、そろそろ終わりにしたいと思います。今日出た御意見を踏まえ、今後のこの会の進め方等も含めて検討させていただきたいと思います。それでは事務局、どうぞ。

○海老名医事課長補佐 ありがとうございました。御連絡です。次回の「医師需給分科会」の日程は、 3 3 日木曜日の午前 10 12 時を予定しております。会場については調整の上、また御連絡させていただきたいと思います。また、机の上に青い紙ファイルがありますが、これは事務局のほうで資料をどんどんつづっていきますので、机上に残していただければと思います。どうぞよろしくお願いします。

○片峰座長 それでは、どうも御苦労様でした。


(了)
<照会先>

厚生労働省医政局医事課
(代表) 03(5253)1111(内線4127)
(直通) 03(3595)2196

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