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2016年1月27日 第95回労働政策審議会職業能力開発分科会議事録

○日時

平成28年1月27日(水)16:00~18:00


○場所

厚生労働省職業安定局第1・2会議室


○議題

(1)雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(2)平成28年度予算案の概要について
(3)第10次職業能力開発基本計画について
(4)その他

○議事

○小杉分科会長 定足数に達しておりますので、ただいまから第95回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催いたします。本日はお忙しい中、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。本日の出欠状況ですが、原委員、高倉委員、大隈委員、諏訪委員、中村委員が御欠席です。

 それでは議事に移ります。本日の議題は、「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)」「平成28年度予算案の概要について」「第10次職業能力開発基本計画について」「その他」の4件です。

 まず最初の議題、「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について」です。内容について、事務局から説明をお願いいたします。

○藤浪企業内人材育成支援室長 議題1に関して、資料1-1及び資料1-2に基づいて御説明いたします。まず資料1-1が、雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱の諮問文です。次のページに省令案要綱をお示ししております。この改正省令案は、職業能力開発関係部分の抜粋となっております。内容は、キャリアアップ助成金制度の改正です。

 具体的な内容については、資料1-2に基づいて御説明いたします。キャリアアップ助成金の人材育成コースについては、まず資料1-22枚目を御覧ください。表の左側は助成内容で、助成額は現行制度です。キャリアアップ助成金は、有期契約雇用労働者などの非正規雇用労働者の正社員化、処遇改善といった事業主が講じる非正規雇用労働者のキャリアアップのための様々な取組を支援する助成金です。このうち職業能力開発局においてはキャリアアップのための教育訓練を実施する事業主に対する助成として、人材育成コースを所管しています。

 今回、この人材育成コースについて拡充を予定しております。資料には記載しておりませんけれども、その背景としては、昨年11月に取りまとめられた「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」において、非正規雇用労働者の正社員転換、処遇改善の推進が盛り込まれ、これを受けて編成された平成27年度の補正予算を踏まえ、キャリアアップ助成金を拡充するものです。

 拡充の具体的な内容については、1枚目に戻ってください。事業主が有期実習型訓練を行った後に正規雇用等、この「等」の中には無期契約雇用労働者、あるいは短時間正社員等の多様な正社員を含んでおりますけれども、これらに転換した場合に、転換した訓練対象者全員のOFF-JTに要した費用に対する助成の上限額を引き上げて支給するものです。引き上げる上限額は、訓練時間に応じて資料のとおりです。

 具体的に申し上げますと、例えば中小企業において有期契約労働者に対し、100時間未満のOFF-JTの訓練を実施する場合、1人当たりの経費が仮に12万円掛かったとします。その場合、現行では上限額が10万円ですので、まずは10万円を支給し、その後、正規雇用等へ転換した訓練対象者について、1人当たり残りの2万円を追加して助成するものです。今回の措置により、有期契約労働者等の非正規雇用労働者の正社員転換等に向けた、より効果的な訓練の実現が図られるものと考えているところです。

○小杉分科会長 ただいまの説明について、皆様から御質問、御意見はありますか。

○板垣委員 職業能力開発局の所管外ですが、資料1-22ページの表の中段「多様な正社員について」、「マル2無期→多様な正社員」、「マル3多様な正社員→正規」、「マル4正規→短時間正社員、短時間正社員の新規雇入れ」という正社員と非正規労働者との間に限定正社員という、従来の正社員に比べたときに格下とも受け取られかねない存在を設けることを認めるかのような記述があります。こちらについては違和感があります。勤務地や職務を限定した正社員は、既に各企業労使での検討・協議を経て導入されていますが、それは労働者個々人の生活や事情に応じた多様な働き方を保障していこうという趣旨によるもので、正社員を降格するという、格下げにした存在ではないと認識しております。今後ともキャリアアップ助成金における「多様な正社員」は、あくまでも労働者の生活や事情などに応じた、働き方の選択肢を増やすためのものであって、決して正社員からの格下げという趣旨ではないことを確認させていただきたいと思います。

○藤浪企業内人材育成支援室長 今の御指摘ですが、内容が職業安定局所管のものですので、私のほうからこの場でお答えするのは、なかなか難しいかと思うのです。伺った趣旨については、安定局のほうに伝えておくことといたします。なお、キャリアアップ助成金については、多様な正社員も含めて、また平成28年度に向けて制度改正が予定されています。併せて今後、今の御意見も含めて安定局のほうに、きちんと伝えていきたいと思います。

○村上委員 必ずしもこのキャリアアップ助成金そのものに関する質問ではないのですが、キャリアアップ助成金に関連した質問です。厚労省におかれては、「正社員転換待遇改善実現プラン」を策定されるというように側聞しております。その中身には恐らく人材育成関係、能力開発関係も入ってくるのではないかと思います。1月末というのはもうすぐですけれども、正社員転換待遇改善実現プランについて、この分科会で議論することがあるのか、御報告いただけるのかについて、確認させていただければと思います。

○木塚総務課長 そのプランについてですが、安定局と一緒に作成しており、どういう取扱いをするかについては、今後、安定局とも相談して、検討した上で対応したいと考えております。

○高橋()委員 先ほど板垣委員がおっしゃったことは、私も本当にそのように思っております。企業側としてはいわゆる正社員の中で、勤務地限定正社員とか職務限定正社員というような労務管理はしていないですよね。みんな正社員になるのです。それがなぜか知らないけれども、政府側が正社員とは違うかのように扱うのは、やはり実態と遊離している部分があるのではないかと思うのです。この助成金自体は大変結構なことだと思うのですけれども、本日配られている要綱を改めて見ますと、もちろんこれはここで初めて出てくる話ではなく、恐らく安定分科会で検討している要綱で同じような表現が出ているから、ここでも出てくると思うのですが、通常の労働者のほかにいろいろ書かれていますよね。通常の労働者には「正社員」という言葉が使われず、勤務地限定とか職務限定には「正社員」という言葉が使われている。これはもともとのいろいろな歴史の中から生じている文言だと思いますが、もう企業の実際の労務管理とは、だんだん遊離しているのではないかという感じがして仕方ないのです。

 ですから、この助成金制度はよろしいのですけれども、中長期的な課題として厚生労働省でも、あるいは労働政策審議会全体の共通課題としてでも、是非検討していくのがよろしいかと思います。「通常の労働者」とか「何々限定正社員」という言葉の在り方について検討を深めていただければ行政としても有り難いと思いますし、我々能開分科会以外の安定分科会や基準系の分科会も含めて、検討するときにきているのではないかというのが個人的な印象です。

○小杉分科会長 この点は、テイクノートしていただくということでよろしいですか。

○木塚総務課長 頂いた御意見を関係部局にお伝えします。今後検討を進めていくことになろうかと思います。

○小杉分科会長 あとはよろしいですか。それでは、この案についての御意見はもうないというように伺いました。当分科会としては、「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱について」について「妥当」と認める旨、私から労働政策審議会会長宛に報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(了承)

○小杉分科会長 ありがとうございます。それでは事務局から報告文()を配布してください。

(報告文()配布)

○小杉分科会長 では、お手元に配布された報告文()により、労働政策審議会会長宛に報告することとしてよろしいでしょうか。

(了承)

○小杉分科会長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。次に議題2、「平成28年度予算案の概要について」です。内容について、事務局から説明をお願いいたします。

○木塚総務課長 それでは資料2に基づき、予算案の概要について御報告させていただきます。1ページが職業能力開発局の予算の総括表です。総額は1,747億円となっており、対前年度比で46億円の減額となっております。主な減額要因としては、企業内人材育成推進助成金が今度キャリア形成促進助成金に統合するわけですが、これを合わせたものが実績ベースを踏まえ、マイナス90億円程度となっております。また、離職者等の再就職訓練についても、実績見合いで23億円の減額です。一方で、キャリアアップ助成金については31億円、地域創生人材育成事業については27億円の増額となっております。

2ページが、能開局の主な施策の柱を示したものです。3本柱から成っております。1つ目として「未来を支える人材力の強化」、2つ目として「『全員参加の社会』の実現加速」、3つ目として「人材育成を通じた国際協力の推進」となっております。具体的には3ページ以降に内容や額等を記しております。

 第1の大きな柱である「未来を支える人材力の強化」では、249億円を計上しております。このうち1番の「職業人生を通じた労働者のキャリア形成支援」については、労働者のキャリア形成における「気づき」を支援するための年齢、就業年数、役職等の節目において、定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を設定する仕組みとして、今後、「セルフ・キャリアドック」を推進していきます。それから、人材育成の課題を踏まえた実践的な職業訓練の実施を推進するための座学と実習を組み合わせた雇用型訓練を行う事業主等への支援のための経費ということで、157億円を計上しております。

2つ目の「産業界で活躍される実践的な職業能力評価制度の構築等」では、対人サービス分野を中心とした技能検定の開発の推進、社内検定の普及を図るための支援、それから技能検定について、人材ニーズに応じた職種・作業の設定見直しや、若年者が技能検定を受検しやすい環境整備等に取り組むための経費として、25億円を計上しております。

3つ目は「建設技能労働者の人材育成強化」として、人材不足が顕著な建設技能労働者の人材育成を強化するために、訓練から就職まで一貫した支援を行う事業について、対象職種を拡大するなどの経費として、9.2億円を計上しております。

4つ目の「地方創生に向けた取組の推進」では、企業や地域の多様なニーズに対応した人材育成プログラムの開発等を支援する「地域創生人材育成事業」について、地域数を9都道府県追加して19都道府県に拡充することなどにより、60億円を計上しています。

 第2の大きな柱である「『全員参加社会』の実現加速」については、1,314億円を計上しております。このうち1つ目の「女性の活躍推進・ひとり親に対する就業対策の強化」については、育児等で離職した女性の再就職が円滑に進むよう、求職者支援制度において、育児等と両立しやすい託児サービス支援付きのコース、あるいは短時間訓練コースを新設することで、家庭的な制約を抱える求職者の訓練に資することとします。また、職業能力開発ツールとしては大変期待が高いわけですけれども、現段階では公的職業訓練と位置付けて実施する状況が整っていないeラーニングについて試行的な実施をします。これらのための経費として9.1億円計上しています。

2つ目の「若者の活躍推進」としては、ニート等の職業的自立への支援ということで、地域若者サポートステーションに係る経費を38億円計上しております。

5ページですが、3つ目の「障害者の職業能力開発支援の推進」については、必要な訓練機会を確保する経費として52億円を計上しております。

4つ目の「非正規雇用労働者の人材育成の推進」については、職業訓練の実施を通じた正規雇用労働者化を推進するためのキャリアアップ助成金などの経費として81億円を計上しているところです。

5つ目の「公的職業訓練等によるセーフティーネットの確保」については、安定した就職の実現につなげるため、地域ニーズに対応した公共職業訓練及び求職者支援訓練を実施する費用として1,134億円を計上しています。

6ページをお願いします。3つ目の大きな柱として、「人材育成を通じた国際協力の推進」では20億円計上しています。「技能実習制度の適正かつ円滑な推進」については、外国人技能実習機構に関する経費として18億円を計上しています。以上が職業能力開発局の平成28年度予算の内容です。

○小杉分科会長 ただいまの説明について、皆様から御質問、御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。

○河本委員 今、御説明いただいた中で、女性活躍推進とか若者人材育成について、これまで以上に予算を倍増していただいていることについては、議論の反映があるということで評価させていただきたいと思っております。特に私自身が、女性の活躍推進というところで育児との両立が図りやすいように、公共職業訓練の中でeラーニング等を推進していくべきではないかという意見を申し上げていたわけです。そういったところも反映していただいたことに、感謝申し上げたいと思います。是非形だけでなく、ずっと言っていますけれども、eラーニングが全ていいと言っているわけではなく、状況に応じた中で新しいことにチャレンジしていくことが非常に必要だといった観点で申し上げておりましたので、反映していただいたということで評価したいと思っております。以上、意見です。

○小杉分科会長 ほかに御意見、御質問はいかがでしょうか。

○浅井委員 今回のダボス会議のときにも取り上げられた点でもありますが、2020年までに先進・新興合わせて15の主要地域で、約700万人の職が失われる一方で、200万人分が創出されるという試算が出ております。今の技術革新の動き、産業構造の変化というのが、持続可能な成長という方向へつながる動きとなるかどうかという一方で、格差拡大をもたらすというシナリオも考えられるわけです。そのためにも職業訓練・再訓練をして、技能向上をしていくことが極めて重要になってくると思います。

 また、1「未来を支える人材力の強化」の3で「建設技能労働者の人材育成強化」というのがあります。2020年に向けて極めて大きな人材不足が指摘されると同時に、ドローンをはじめとするスマートコントラクション等々、技術革新の力によって、この問題に対して新たな解決策も出てくるかもしれない。そうなりますと厚生労働省、経済産業省、国土交通省が一体になって、今後の方策を考えていくと、より有効に機能するのではないかと考えております。よろしくお願いいたします。

○小杉分科会長 これは技術革新というものを、しっかり捉えるようにという御意見ですね。ほかに皆様からありますか。特にないようでしたら、この議題はここまでとさせていただいてよろしいでしょうか。

 それでは議題3に移ります。議題3は、「第10次職業能力開発基本計画について」です。内容について、事務局から説明をお願いいたします。

○尾田基盤整備室長 資料3-13-23-3について、関連して御説明いたします。前回までは、たたき台という形で御議論いただきましたが、今回は資料3-1で基本計画の素案ということで、かなりボリュームを増やした形で御用意させていただいております。目次では、第1部「総説」、第2部「能力開発をめぐる経済社会の変化と課題」ということで、背景となるデータ等を第2部のほうで述べさせていただいた上で、第3部で「方向性」、第4部で具体的な「基本的施策」という構成にしております。本日、私のほうからは、第1部と第2部の資料について、特に御説明させていただきたいと思っております。

 第1部「総説」の1「計画のねらい」です。まずは、今後「日本経済を持続的な成長軌道に乗せることが求められる。そのためには、一人一人の働く者の生産性を向上させる取組が不可欠」とさせていただいております。その上で、グローバル化の進展、IoT、ロボット、ビッグデータ、AI、あるいは経済のサービス化、国際化、こういったことで、人材ニーズが変化する中で、それに機動的に対応する能力開発施策が求められる。その対応としては、企業労使の能力開発の取組を基本としつつ、事業主及び労働者の努力を支援するための施策の強化を図る。また、諸々のアクターを有機的に結び付けて、一体的に能力開発施策を実施していくことが重要である。最後の段落で、こういった視点を踏まえて、「生産性向上に向けた人材育成戦略(仮称)」といった位置付けで、本計画を推進していくべきではないか。こういうことを書かせていただいております。

 続いて第2部の「職業能力開発をめぐる経済社会の変化と課題」です。こちらについては資料3-2「職業能力開発をめぐる経済社会の動向」を御覧ください。まず「近年の労働市場の現状」ということで、最初は「完全失業率と有効求人倍率の動向」です。直近では平成2711月の状況になりますが、有効求人倍率が1.25倍、完全失業率が3.3%ということで、近年のアベノミクスの進展に伴い、雇用情勢は改善が進んでいるという状況にあります。

3ページです。こういった状況の中で、産業別には労働者のかなりの不足の状況が出てきており、特に卸売、小売、宿泊、飲食サービス、建設、運輸、郵便、医療、福祉といったところでは顕著になっていますし、また、製造業でも最近は不足の状況が少しずつ出てきているということです。

 次の「職業別の有効求人倍率」で見ますと、これは職種ごとにばらつきが見られており、建設や看護、保育、介護、サービス、水産加工、運輸・機械運転、保安といったところでは、特に有効求人倍率が高くなっています。

 次のデータは経年的なデータで、景気回復に伴って雇用情勢が改善する時期には、全体の賃金が上昇することに伴い、自発的な転職が増えるということが過去のデータで分かります。ですから、今回の景気が改善している時期に、その時期を捉えて成長産業等への能力開発を強化することが重要ではないかということが、こういったデータから見て取れるかと思っております。

7ページは、労働市場の構造的な変化ということです。これも経年的に産業別の就業者割合を見たものですが、御覧になればお分かりのとおり、経済のサービス化の進展ということで、一次から二次、二次から三次ということで、産業構造が年々変化してきているということです。

8ページは、職種ごとに職業構造の変化を見たものです。IT技術が雇用に及ぼす影響を見たところ、比較的定型的作業が多いと考えられる生産工程・労務、事務といったところは、労働需要が減ることが予想される。一方で、機械に代替されることが考えられない専門・技術、介護などのサービス業といったところの需要が高まることが予想されるということです。

 次のデータは、正規雇用者の変化を2007年と2012年の「就業構造基本調査」で比較したものです。赤で囲んでいる情報処理・通信技術者、保健師、助産師、看護師、社会福祉専門職業従事者、介護サービスといったところでは顕著に正規雇用労働者の増加が見られるという状況です。

10ページからは生産性というところですが、我が国と諸外国との比較で、左は上昇率で、右は水準です。上昇率については、さして遜色がないという状況ですが、水準で見ますと、欧米の諸外国に比べて我が国の労働生産性は低い水準にとどまっているということです。

 次のページが、これを産業ごとに見たものです。赤の点線が米国の平均ですが、ほぼ全ての産業で米国の水準を下回っている。特に非製造業を中心に低くなっています。また、IT資本投入の状況も米国の水準より下回っていますが、こちらも非製造業が中心ですが、それ以外も含め、かなり米国に比べて低い水準にとどまっているということです。

12ページは、近年の生産性分析で注目されている無形資産を考慮した労働生産性の要因分解というものを見たものです。左の図は諸外国との比較で、労働生産性にどういったものが寄与しているかということを見たものです。青の部分が無形資産なのですが、無形資産の寄与が、諸外国に比べると0.2%ポイントということで低くなっています。また、その無形資産はどういった要素で構成されているかを見たのが右ですが、この中で「経済的競争能力」というのが一番上ですが、日本の場合は付加価値に占める投入割合が2.1%ということで、ほかの国に比べてかなり低くなっています。

 この「経済的競争能力」というものには、また次のページですが、ブランド資産・組織改編、人的資本投資、革新的資産、情報化資産といったものが含まれていますが、特にこの中でも人的資本投資の比率が我が国ではかなり低くなっており、改めてここで米国とドイツと比較しても、人的資本投資の比率が低い。更にそれも年々、比率が低下しているということで、将来の人的資本の蓄積に懸念が生ずるのではないかということが見て取れるかと思います。

14ページは「企業の支出する教育訓練費の推移」ということで、三角の折れ線グラフが労働費用全体に占める企業の教育訓練費の割合です。これについては、80年代は、額も含めて一貫して上昇していましたが、近年これが低下、横ばい傾向にあり、企業の教育訓練への取組が、こういった費用面で見ても低下していることが見て取れるかと思います。

15ページは、正社員と非正規社員で分けて、企業がOJTOFF-JTに取り組んでいるかどうかというものを聞いたものです。OJTOFF-JTいずれも正社員と非正規社員で比べると、大体21の割合になっています。すなわち、非正規社員の場合は、企業がOJTOFF-JTに取り組む割合が正社員に比べると2分の1にとどまっているということです。また後ほどデータが出てきますが、非正規雇用化が進んでいることと、こういった、正社員と非正規社員で企業の能力開発の取組が異なっているということが、先ほどの教育訓練費用の低下に反映されているのではないかと思っております。

16ページは、企業に今後強化すべき事項を尋ねた結果、「人材の能力・資質を高める育成体系」に取り組むといったことが競争力を高めるために必要だという回答が最も多いということです。

 続いて「労働市場の構造的な変化」ということで、次の「日本の人口の推移」です。これは皆さん御存じかと思いますが、我が国の人口は、平成20年の12,808万人をピークとして、既に人口減少局面に入っています。すなわち、労働投入量の増加による経済の供給量拡大はもう既に限界がきているということで、労働生産性の向上を図らなければ、経済の拡大は見込まれないという状況です。

 次のページが男性の「就業率の推移」です。年齢別で見ると、25歳から54歳までの各層で、男性の就業率は低下傾向にあります。次のページの「高齢者の就業率」で見ると、欧米諸国と比較して、特に男性で見ると高水準にあるということが見て取れます。

 次に女性の就業率ですが、近年、いずれの年齢階層でも就業率が高まっている状況です。他方で、22ページですが、諸外国と比べると、いまだに潜在的な労働力、すなわち、働きたいのだけれども働いていない人も含めた潜在的な労働力と実際の就業率には差があり、諸外国よりも女性の就業率は低くなっているということです。

 次のページは、全体の年齢階級別の勤続年数を見たグラフです。男女とも平均勤続年数は長期化する傾向にあります。他方、年齢階級で見ると、高齢者層、55歳以上では年々長くなっていますが、2044歳の所では、勤続年数が短くなっているということです。

24ページは「正規雇用と非正規雇用労働者の推移」ということで、全体の雇用者数は拡大していますが、正規雇用は減少して、非正規雇用者比率が高まっているということで、現在37.4%ということになっています。

 次のページが、ニート・フリーターの数です。直近ではニートの数が低下しており、この主な要因としては、新規流入が減ってきているということです。他方で、年齢階層を見ると、年齢の高い所では余り変化がないということで、高止まっている状況です。

 次が障害者の職業紹介の状況です。障害者の新規求職件数は年々増加しており、障害者の多様なニーズに応じた環境整備が必要になってきているということです。

 次のページが「自己啓発を行った労働者の割合」です。これも先ほどの企業の取組と似たような状況ですが、正社員と正社員以外とでは自己啓発を行った方の割合が異なっており、正社員のほうがかなり高く、半分ぐらいの方が取り組んでいらっしゃる一方で、正社員以外の方は余り取り組んでいらっしゃらないということです。

 次に、自己啓発にどういう問題があるかとお聞きした場合に、多くの方が、余裕がないことや、お金がないということを問題とされていますが、自分のキャリアにとって適切な訓練コースがどのようなものか分からないということを挙げられている方もいらっしゃいますので、こういったことへの支援も重要ではないかと思います。

 次は「新入社員の会社の選択理由」の推移を見たものです。長期的に見ると、個人の能力や技術、仕事の興味に関連する項目が増加していますので、会社を選ぶという意識から、職業を選ぶという意識に少しずつ変化が見られているのではないかということが見て取れるかと思います。

 続いて「最近の動き」として幾つか資料を御用意しております。3133ページの昨夏の「日本再興戦略」の抜粋については以前もお出ししているので説明は割愛させていただきます。

34ページですが、これは経済産業省の産業構造審議会の資料です。IoT、ビッグデータ、人工知能といった新技術により、産業構造、就業構造等の変革がもたらされる可能性があるということを図式化した資料です。

 その次の資料では、こういったことにより、就業構造の変化がもたらされるということで、IoTAIといったものにより、定型業務が代替され、人手不足は、そういった分野では解消に向かう一方で、創造的な業務などの非定型業務については人材ニーズが高まるのではないかということが書かれている資料です。

 次のページは、政府の一億総活躍国民会議での配布資料ですが、一億総活躍社会の実現に向けた「新・三本の矢」の中における「第一の矢」の中で、生産性革命ということが位置付けられているところです。また先日、産業競争力会議で「成長戦略の進化のための今後の検討方針」という資料が出ていますが、こちらの中では、生産性革命や第4次産業革命の実現、あるいは成長を担う人材の創出といったものが、今後の方針としてうたわれております。

 以上が第2部に関連するデータということで御説明させていただきました。第3部、第4部については、前回のたたき台をベースに、委員の皆様から頂いた意見を踏まえて膨らませたものですので、説明は割愛させていただきたいと思います。

 あと、今の資料3-2の最後に「前回の議論に関する資料」ということで、前回御議論がありましたセルフ・キャリアドックについて1枚資料を付けております。セルフ・キャリアドックとは何かということですが、これは労働者のキャリアの節目において、定期的にキャリアコンサルティングを受ける機会を設定して、自分のキャリアを今後どうしていくかとか、どういう能力開発が必要かという「気づき」の場を提供するというのがセルフ・キャリアドックです。先ほど、予算の中でも若干触れましたが、こういった事業者での導入等を支援するための予算措置等も、今後講じていきたいと考えております。以上です。

○小杉分科会長 ただいまの説明について、皆様から御質問、御意見を伺いたいと思います。

○田口委員 教えていただきたいのですが、23ページの勤続年数が短くなってきているという所の、全体では長期化傾向ですが、2044歳で短くなっている。これは転職ということなのでしょうけれども、1981年から2014年ですから、傾向としては定着しているということだと思うのです。これをどういうふうに評価するかということで、その要因なり、どういう理由によるものが多いのか。これが、いわゆるキャリア形成という点にとって、ある点ではいろいろ自分に合った職業を選択するという意味で適切かもしれませんが、ある意味では長期間の技術、技能を身に付けるという点ではどうなのかというところもあります。こういう点について、少し補足の説明を頂ければと思います。

○尾田基盤整備室長 この勤続年数は、恐らく非正規化の影響が出ているものと思われます。先ほど非正規労働者の比率が37.4%とその次の資料で御説明しましたが、やはりこの影響がこちらの勤続年数でも出ているということかと思います。ですから、そういう意味で全部連動するわけですが、非正規労働者が増えていく中で、どういうふうにその方のキャリア形成を支援していくかということが、能力開発分野でも課題になっているかと思います。

○荘司委員 最後にも御説明いただきましたセルフ・キャリアドックについてです。資料3-2の最後のページに掲載されておりますが、質問と意見です。1つは、この第10次計画の中で、大体、1人の労働者がその職業生活において、こういうものを何回ぐらい、どのような時期に、どのような場で実施されるのか、厚労省としてのお考えをお聞かせいただきたい。

 もう1つが、中高年での職業能力再開発ではなくて再就職が目的なのではないかということもあるのですが、この仕組み自体が、本来の意図とは別に、違う使われ方がしないかというところが懸念されるところです。例えば、リストラや人員削減、あるいは、そういったものの素材として使われるのではないかという懸念があるというところは、意見として述べさせていただきたいと思います。

○小杉分科会長 最初は御質問ですので、よろしくお願いします。

○伊藤キャリア形成支援課長 キャリア形成支援課でございます。ただいまの質問にお答え申し上げます。1点目、このセルフ・キャリアドックに関わる間隔というか頻度についての私どもとしての考え方ということです。先ほど総務課からも説明した38ページの資料にもありますように、このセルフ・キャリアドックは「日本再興戦略」の方向性などを踏まえて、ここにありますように、労働者のキャリア形成の節目、具体的には年齢、就業年数、役職などといった幾つかの着眼点のパターンもあり得ると。また、頻度に関しても、それぞれの企業ごとのキャリアパスの実態等に応じた様々な形態があり得るということで、私どものほうで固定的に、例えば頻度として何年以内といった考え方をあらかじめ持っているというわけではありません。

 ただ、一般的に考えるに、本日御説明しました様々なデータなどに表れています我が国の労働者のキャリアパスの実態などに鑑み、また、およそ一定の節目において職業生活設計について考える機会を提供し、それを能力開発の行動などに結び付けていくということを考えますと、典型的に申し上げればという意味では、10年に1回以上ぐらいの頻度でこうした機会を設けるということが、一般的には期待されるのではないか。そういう考え方の下で、具体的に予算などにも出ていますような、企業がこうした仕組みを導入した場合の支援の仕組みの要件という観点で、今申し上げたような考え方をどこまで反映するのかというのは、必ずしもイコールではありません。この能力開発計画に関わる審議の場での御意見なども踏まえながら、そこは更に詰めていきたいと考えております。

 もう1点、セルフ・キャリアドックに関して、「日本再興戦略」の方向性を踏まえての私どもの考え方は今ほど申し上げたとおりですが、そういった意図と別の形で使われるおそれがあるのではないかということでの御意見、御指摘として頂戴したところです。

 私どもとしましては、このセルフ・キャリアドックについて、資料にもありますように、労働者の主体的なキャリア形成、先ほどデータでも御説明しましたように、自らの職業生活設計について悩みを持っている労働者が、正社員又は非正規雇用労働者を含めて相当数いる。そういった中で、定期的に企業が主体となってキャリアについて考える機会を提供し、具体的な行動に結び付ける。そうした取組を全社的に行っていくことが、それぞれの企業の立場での従業員のキャリア形成、企業の立場で見れば人材育成の課題を発見し具体的な改善に結び付けていくという意図で、こうしたセルフ・キャリアドックといった仕組みの整備の普及を図っていきたいという考え方です。意図として、今ほど委員から御指摘があったようなことを助長するという考え方は全くありません。

 ただ、具体的な運用の中でそのようなことを防止、回避するためにどのような取組を進めていくかということに関しては、1つには、このセルフ・キャリアドックという考え方、また、今後具体化をしていく今回の平成28年度予算案に盛り込んでいますモデル開発のための事業推進、あるいは、導入する企業に対する支援の仕組みといった具体的な制度・事業の普及の中で、このセルフ・キャリアドックの考え方、理念というものも併せて、しっかり説明していくということ。また、先ほど申し上げましたように、具体的な要件については今後更に精査をする事項ですが、こうした仕組みを整備するに当たって、具体的な制度設計、考え方に関して、企業の側から労働者の側にも、しっかりと具体的な説明をするといったことを、何らかの形で要件上押さえる。こういった幾つかの対応の組合せにより、今ほど御懸念があったような使われ方、このセルフ・キャリアドックについて政策意図と違う運用がなされることがないような工夫を私どもとしてもしっかりしていきたいという考え方です。

○小杉分科会長 御懸念に対しては十分留意するということですね。ほかに皆様から御意見はありますか。

○高橋()委員 資料3-1について2点申し上げたいと思います。1点目は9ページです。第4部の1番の(1)「生産性向上に資するIT人材育成の強化・加速化」の箇所です。この第2段落に「専門実践教育訓練給付制度等においてIT分野の講座拡充に向けた検討を行う」とあるわけですが、この専門実践教育訓練の対象をIT分野に広げていくことについては、労働側から主張してきたことですので、これは評価したいと、まずは思います。

 この専門実践教育訓練は、平成26年に始まり、平成29年に見直すことになっています。すなわち、来年また見直しが行われるわけです。来年の平成29年というのが、今回の第10次職業能力開発計画の対象期間に入りますので、ここのところで1つ申し上げておきたいことがあります。この専門実践教育訓練の最初の議論の入口に立ち帰り、対象分野をIT分野に広げるのも結構なのですが、それだけではなくて、非正規の労働者が会社を辞めることなく、要は在職しながらキャリアアップが図れるようなプログラムについても御検討いただければと思います。これが、まず1点目です。

 それから、12ページの(3)「中高年齢者の職業能力開発」の所です。上から4行目には「円滑なキャリアチェンジ」、一番最後の段落には「中高年層の早期再就職」などという言葉があります。中高年になるまでに獲得した技能、技術をもって転職しろよというような、転職狙いのような感じを受けるわけです。もちろん、労働者本人が自分の意思で転職することについては何も言うことはないのですが、国の政策として進めるべきは、転職の勧めではなくて、現在の職場に在職し続けながら受講できることを前提にした職業能力開発、言わば職業能力の再開発ということであって、再就職の勧めということではないのではないかと思います。「キャリアチェンジ」や「早期再就職」という文言についてはちょっと違和感を覚えますので、この件についても御検討いただければと思います。

○伊藤キャリア形成支援課長 まず、1点目、専門実践教育訓練給付制度の在り方、今後のいわゆる見直し検討も含めて御意見を頂戴しましたので、それについて、現時点での考え方等を申し上げたいと思います。

 まず、この素案の中にもありますように、IT分野の資格取得を目標とした専門実践教育訓練の位置付けについて、一定の研究をさせていただいております。これに関しては本日、「その他」の議題の中でもともと御報告しようと思っていた事項ですが、昨年の7月、9月の本分科会において専門実践教育訓練給付制度の当面の見直し課題として、文科省と連携した職業実践力育成プログラムの位置付けについてお諮りするのに併せて、再興戦略における方向性等を踏まえた当面の課題として、今ほど御指摘いただいたIT分野の民間資格取得を目標とした教育訓練の本制度の位置付けについて、まずは専門的観点から検討する必要があると認識しているという御報告を申し上げます。その上で、昨年9月から先日までの間、本分野の専門家の方々による検討の場を設け、ヒアリング等を通じて、実は先般、122日までにその成果を検討会の報告書という形で一定の取りまとめをしております。この取りまとめの考え方を踏まえ、専門実践教育訓練制度における具体的な指定基準の在り方等を私どものほうで考え方の整理をし、分科会長とも御相談の上、次回以降速やかに、これは別途、また御報告をし、御議論いただければと考えております。

 その上で、今お話いただきました、いわゆる3年後の見直しに向けて、非正規雇用労働者等のキャリアアップにも資するような専門実践教育訓練制度の拡充、運用という観点での御指摘と受け止めさせていただいております。この間のこの分科会の中でも、3年後の見直しに向けて、専門実践教育訓練は現在、適用ベースという意味では3プラス14つの課程類型があるわけですが、これらの教育訓練、また、受給者の実態などについて、私ども能開局と職業安定局とで今、分担連携をしていろいろな分析作業も行っているところです。結果としては新年度になってからという可能性が高いわけですが、そうした現行の専門実践教育訓練の各課程類型、あるいは分野ごとの教育訓練の実施、あるいは受講の実態なども分析、御報告申し上げることとします。その中で、今御指摘がありました非正規雇用労働者を含めた、いわゆる中長期キャリア形成支援という本制度の目的に鑑みて、課題があると思われるような労働者層における活用可能性といった観点からも、是非とも本分科会でも御議論いただく中で、今申し上げたIT分野に限ることなく、この専門実践教育訓練制度の在り方について御審議いただいた上で、今、正に御議論いただいておりますこの計画の方向性に即した形で、それぞれの課題に本制度がより有効に対応できるようにといった観点で、順次見直しを行っていきたいというのが私どもの考え方です。御議論いただくためのデータ等については、また順次まとまったものからお示ししていきたいと考えております。

○小杉分科会長 十分受け止めて対応するというお話ですね。では、2番目の点についてお願いします。

○尾田基盤整備室長 確かに、改めて読んでみますと、この3つ目の施策が「早期再就職」ということで、これ全体が転職に向けたような記述と受け止められかねないというのは御指摘のとおりかと思います。そこは、受ける施策を、他のものも含め、在職中の支援というものを盛り込んだ上で、表現を工夫するということで考えたいと思います。御指摘ありがとうございます。

○木塚総務課長 中高年齢対策といった場合に、中高年の方というのは、1回離職されると再就職が極めて難しいというのが一般的に言われており、私どももそういう問題意識です。通常、高年齢者雇用対策というのは、雇用維持で定年を延長するなど高年齢者雇用確保措置をやるということでこれまでやってきております。ただ、一旦離職すると再就職が難しいので、そのときは再就職援助をしっかりやるということで対応しており、そういう意味で、我々もそういう方々に対しては再就職の援助のための職業訓練をしっかりやっていくというのが私どもの趣旨ですので、御理解いただければとは思っております。

○小杉分科会長 では、この部分はこれから加筆していただくということでよろしいですね。

○木塚総務課長 はい。

○小杉分科会長 ほかに御意見はありますか。

○大久保委員 第10次の計画を作る第1回目の議論で幾つか申し上げたことがあって、そのことを改めて今回の原案のほうにどのように反映していただいているかを確認したのですが、気になっていることは、8ページに掲げてある「人材の最適配置を実現するための労働市場インフラの戦略的展開」という所です。具体的な中身は14ページから書いてあります。全体の中で、とても大きな位置付けを占めているメッセージだと思うのです。

1回目の議論のときに、今まで能開局でやってきた事業は11個の事業についてそれぞれ別々に説明されていて、全体として何を目指して何をやっているかというストーリー感がないと。キャリアコンサルティングといってもキャリアコンサルティングの話をしているだけで、何でそれを追求するのだと。ジョブ・カードもジョブ・カードの話だけで、何のためのジョブ・カードなのかが見えないというのは気になるので。せっかく「労働市場インフラ」という言葉を使い始めたので「労働市場インフラ」とは何なのか。要するに、どのようにして何を実現しようとしているのかということを、もう少し伝わる形で第10次ではまとめていただけないかということを申し上げたのです。8ページを見ると分からないというのが、改めての感想です。更に分かりにくくなっていて、「労働市場インフラの戦略的展開」の「戦略的」というのが、どういうことを伝えようとしているのかもよく分からないです。

 私なりに整理すると、ここ12年の議論の中で、全体のフレームは職業訓練と職業能力評価というのが、車の両輪であるという議論があって、今回はそういうことが書いてあると思うのです。その根底はすごく大事なことだと思うのです。全体を整備していくわけで、プレイヤーとしては国と地方があり、公共部門と民間があり、対象者としては個人と企業があるということで、その人たちに対して、労働市場インフラ全体で何の実現を目指していくためのインフラなのか。

1つは、この中にも出てきますが、労働参加を増やしたり、技能の向上によって全体的な生産性を高めていくというのはあるのだろうと思うのですが、その目的を置いたときに、どのインフラの部分を強化するために、業界検定、キャリコン、ジョブ・カードがあるのか、その全体観というのはどこかで説明されていてほしいと思っています。

 今、総論を書いていただいている8ページの4だと、それは相変わらず伝わらないし、14ページ以降は課別に書いている感じもあるのです。そこは、この中で言うと、物足りないというのが1点目で、考えていただけないかという要望です。

 それ以外に若干確認させていただきたいのですが、2つ目には、ずっと職業訓練に関してはITとか技術的なテクノロジーを使わずにやってきたので、職業訓練の生産性を上げたり、もう少し効率的に届いていない人たちにも職業訓練を届けようではありませんかと、そのための仕組み作り、生産性向上にも取り組みませんかということに関しては、8ページの下から2つ目のパラグラフに「訓練サービス提供の効率化の観点からも」という一言が入っているのですが、これはそういう方向性だと受け止めてよろしいのかどうか。反映していただいたのか、スルーされたのかが分からなかったもので、確認させていただきたいということです。

3つ目は対象者の話です。これまで非常に広く職業訓練を展開してきている中で、上のほうの年齢層の人たちが、今までは余りフォーカスしていなかったのですが、どうしても需要が上がってくるのではないかと。企業の中でも、団塊ジュニアのような比較的人口ゾーンのボリュームの大きなところが50代に入ってこようとしている中で、もちろん法律によって定年後再雇用制度は整備されましたが、そういう人たちのキャリアの側面というのはすごく基盤が脆弱で、今までやってきた経験に少し新たな技能を付け足すことによって、職業機会を広げていくということの支援がとても大事なのではないかと思い、何回か前にそういうことを申し上げさせていただいたのですが、今回確認すると、それが12ページの(3)に、「中高年齢者の職業能力開発」というのが、それに該当する所なのだと思うのですが、全体的なバクッとした形で書かれていて、余りその辺のところについてのメッセージがよく分からないことと、「意識の見直しが必要という視点から、経験交流会などの再就職に向けた準備支援を含めた」うんぬんということで、どちらかというと、意識の見直しのほうにすごく強調的に書かれていて、その世代向けの特徴的な職業訓練という方向には、余り書き込まれていないような気がするので、その辺のところは意識のほうに行き過ぎているのではないかという感じがしました。

○小杉分科会長 この意見に対して、ここで特によろしいですか。

○村上委員 今、大久保委員が最初に指摘されたのと同じような印象を持っておりまして、この第10次の目玉というか、国としてどういうメッセージを出していくのかというところは、やや弱いのではないかという印象を持っております。また、全体像というところでは、もう少し見える形にしていただいたほうがいいのではないかと考えておりました。

 ただ、その中でITについては、社会全体の産業構造、在り方が変わっていくというところはありますが、その部分は余り厚くはなく、むしろ手段としてのITの部分があちこちに出ています。ITはあくまでも手段であって、もう少し違う角度からの書き方が必要ではないのかなという感じがしております。

2点目も大久保委員と同じような指摘なのですが、資料3-1の「全員参加」というところです。「女性・若者・中高年齢者・障害者・非正規」と、幅広く取り上げているかと思うのですが、就職氷河期世代で、40代に差し掛かっている非正規、いわゆるフリーターの方々の問題というのが、どこで取り上げられているのかというと、やや記載が薄いのではないか。「中高年齢層」というのは、幅広すぎて、50代をイメージする場合もあるし、40代をイメージする場合もあります。非正規というと、もう少し若い世代のことを書かれているのではないかと思ってしまいます。就職氷河期世代の皆さんというのは、別に男性だけではなくて、女性で派遣で働き続けてきた方々もいらっしゃるのです。ここでいう「女性の活躍推進」の部分では、主に妊娠、出産、育児でキャリアを中断された方を主に対象にしているようなのですが、そこでも拾いきれない方々がいて、そういう人たちに何が必要なのかということをもう少し書き込むべきではないかという印象を持っております。

 資料3-228ページにある「自己啓発の問題点」のアンケート結果を興味深く拝見しておりました。必ずしも自己啓発だけではないかもしれないのですが、どのようなコースが自分の目指すキャリアに適切なのか分からないという回答が非正規の方では多いですし、また、自分の目指すべきキャリアが分からない、どのように、どのような経験を積み重ねていけば、どういった職種での正社員転換ができるのかというようなことが分からないと言っている方が、現実に私の周りにもいるのですが、そういう方々にとっては、働きながら、どんな仕事に就いていけば正社員になりやすいのか、戦力的にキャリアに役立つ仕事を選んでいくというようなことをアドバイスしていただくような施策も必要ではないかと考えておりますので、そのようなことも是非検討いただければと思います。

○尾田基盤整備室長 まず、大久保委員と村上委員から御指摘のあった、能開施策の全体的な、有機的なつながり、それをどう打ち出していくかのメッセージが足りないということについては、確かに個別施策、第3部「方向性」、第4部「個別対策」ということで、だんだん細かく分かれてしまったきらいがありますので、繰り返しになる部分は当然ありますが、全体として能開行政をどのように展開していくかというところを、第3部か第4部で、まとめてメッセージとして伝えられるような形で工夫してみたいと思います。それは次回までにやってみたいと思います。

 また、ITについては、御指摘の部分で、職業訓練サービス提供の効率化、eラーニングをやる、あるいは職業訓練の提供方法というところで、大久保委員から重ねて、「職種としてのITだけではなくて訓練の提供でITを使う」ということを御指摘いただいておりますので、そこを含んだ形で書いております。御指摘の部分はおっしゃったとおり、委員の御指摘に対応していると御理解いただければと思います。

 また、大久保委員が御指摘の高齢者向けの、経験を生かした、そこに新たな技能を付与することで転職を可能にする訓練ということですが、そこに具体的にどう対応できるかということも含めて、記載について検討させていただければと思います。

 また、村上委員から御指摘のあった就職氷河期フリーターについては、非正規というところで我々としては、例えば求職者支援訓練で対応するなどのところで、バクッと言いますとそこで拾えている部分はあるのかなと思いますが、そこに着眼点を置いてという記述は、どういう形でできるかは検討してみたいと思いますし、どういうキャリアを目指すべきか分からないという点は、我々としてはキャリアコンサルティングというところかと思いますが、そこを御指摘も踏まえて、また改めて表現を追加する等の検討をさせていただければと思っております。

○木塚総務課長 村上委員から御指摘のありましたITについては、手段でもあるという点も十分に踏まえて、ITのよさとITではどうしてもフォローできない部分もしっかり踏まえて対応していきたいと思っております。

○小杉分科会長 ほかの御意見をお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○三村委員 ずっと私が主張させていただいた11ページの若者の職業能力開発のところで、具体的には2段落目の「初等中等教育」ということで、学校教育との関連を記載していただいており、非常にうれしい次第です。

 昨今から、いわゆる生産性の向上ということで、2060年問題ということで、3-2では18ページに有名な表がありますが、このときの生産年齢、産業労働人口に当たる者が今は小学生、中学生であるわけです。そのキャリア形成というのは、これまでどおりの形でキャリア形成をやっていけばいいのかということで、議論はそれ以上は進まないのだと思いますが、非常に危機的状況であるということを紹介させていただきたいと思います。

 ある東京都区内の小学校ですが、就学援助が6割という小学校で、その多くが生活保護を受けているわけです。その御家庭の保護者に当たる人たちというのは、非常に労働意欲がないわけです。そういう家庭の中で育つお子さんたちが小学校に来ています。どうしてこの子たちに職業意識あるいは職業観、勤労観を育てていけばいいのだろうかということです。もともとそうした生活保護世帯に入っていく人たちというのは、様々な形で仕事はしていたのです、親たちは。それが、病気あるいはリストラとかいろいろな事情でそうした生活保護という状況を迎えるわけですが、その子供たちは、そうした経験もないということで、やはり学校教育以外に、その子供たちの職業意識を形成する場というのは、失われているという時代の中で、いわゆる生産性の向上というのは足元から揺らいでいると私は思います。

 そういった意味で、学校教育、初等中等ということで、なかなか初等までは、「児童」という言葉がなかったということで避けられているわけなのですが、いわゆる生産性向上の基盤というのは、今の小・中学生がこれから生産労働人口として成長していくのだということの意識というのは、もう少し強く持っていただきたいということで、意見ですが言わせていただきます。

○小杉分科会長 これは「学生・生徒等」ではなくて、「学生・生徒・児童」まで入れてほしいということですか。

○三村委員 そうです。

○高橋()委員 意見を申し上げます。10ページのグローバル人材育成の観点で、(3)3段落目に、今回「グローバル人材育成等のため」というのが入っています。これは前回の指摘を踏まえて入れていただいたのだと思いますが、この文脈を見ると、グローバル人材育成のためには、結局助成金等を活用して企業内あるいは業界単位での人材育成を促すと読めますので、国としては助成金を整備するだけで、積極的にグローバル人材育成には取り組まないと解釈することも可能な文脈になっているように感じて、少し残念だなと。積極的に能開行政として、グローバルに戦っている我が国の企業に資するように、グローバル人材育成を国としても行っていくというような観点が出せないのかなというのが1点です。

 もう1点はつまらないことです。資料3-2です。見ていて違和感があるのが10ページから13ページまでの4枚だけ、その前後と見出しなどが違うのです。そして、10ページの所に「第2章」と書いてあって、ほかは「第1章」などはないのに、何でここだけと。異質なものが入っていて、資料として統一感がなくて気持ち悪いなと思ったので、何なのか分かれば教えていただけますか。

○小杉分科会長 これは白書ですね。

○尾田基盤整備室長 まず2点目から申し上げますと、これは労働経済白書からということで、労働経済白書の今年のテーマが労働生産性ということで作ったものでして、そちらからそのまま取ってしまったということです。修正が足りずに申し訳ございませんでした。

○高橋()委員 ああ、なるほど。分かりました。

○尾田基盤整備室長 1点目につきましては、具体的にキャリア形成促進助成金でグローバル人材の育成に関するコースがありまして、そこを念頭に置いた形でやや具体的に直結した記述になってしまっております。おっしゃるとおり国としての姿勢について記述が不足しておりますので、どういった書き方ができるかは工夫させていただきたいと思います。

○小杉分科会長 ほかにございますでしょうか。

○大久保委員 言い忘れたことを1つよろしいですか。

○小杉分科会長 どうぞ。

○大久保委員 「自己啓発」という言葉は、例えば9ページの(2)の「労働者の主体的なキャリア形成の推進」という項目はあるのですが、全体の中で「自己啓発」という言葉がほぼ出てこなくて、自己啓発の位置付けはどうなっているのかというのが気になっています。自己啓発の目標、KPIの取り方が適切ではないので目標からは外したほうがいいという議論をしたのですが、自己啓発が重要ではないという議論ではないので、きちんとした形で自己啓発が10次計画に出てきてないように見えることが気になっていたのですが、それはどうでしょうか。

○宮川職業能力開発局長 この文書の中では、実は「自己啓発」という用語は余り使わずに、「自発的な職業能力開発」「主体的な職業能力開発」という用語を使わせていただいております。

 というのは、一部「自己啓発」というワーディングが別の意味で使われるということで、自己啓発という意味が、いわゆる職業能力開発に結び付かない形での自己啓発と言われたこともあり、最近は行政の用語として自己啓発を使っているところもありますが、余り使わない形でこの文書は作られています。その辺のところについては皆様方の御意見を承ればと思っております。

○大久保委員 意図的に言い換えて、伝わりやすい言葉にしているということですね。

○宮川職業能力開発局長 はい。

○小杉分科会長 そういうことでしたら問題はないですね。

○大久保委員 分かりました。

○小杉分科会長 いかがですか。

○田口委員 資料3-116ページの「技能検定の活用促進」の所です。建設関係の事例として、1級技能士の現場常駐制度というのがあり、それは特記工事において使われるものですが、そういうものの紹介について厚労省のホームページにも出されておりますが、その活用の普及をするために地方公共団体等で、どのぐらいそういう制度が取り入れられているのか分かっていたら教えていただきたいと思います。

 それと、そういうものが普及していくような方向を、この技能検定の活用促進の中に考え方、方向性として取り入れていただけたら、そういう意味での活用促進ということにさせていただければと思います。

○宮本能力評価課長 1級技能士現場常駐制度についてですが、地方公共団体発注の営繕工事の取扱いについては、地方公共団体の判断によるところですが、国としても地方公共団体において当該制度が広がることが技能士資格の価値の向上の観点から重要だと考えております。

 そのために、国土交通省との相談を今年度より開始したところであり、今後も関係行政機関と連携を図り、当該制度の普及推進に努めてまいりたいと考えております。

 御指摘のございました導入状況ですが、現時点では網羅的に把握してございませんが、技能検定試験の適正な実施のために都道府県に対する訪問ヒアリングを行っております。この中で、当該制度の導入状況についても聴き取り調査を行っております。平成26年度、平成27年度に訪問した29道府県ですが、このうち25道府県において、1級技能士現場常駐制度と同様の制度を導入していることが確認できたところです。

 今後、地方公共団体の導入状況については更なる把握に努めていくとともに、技能士の価値の向上のための有効活用に必要な取組を進めていきたいと考えております。

○小杉分科会長 ほかにございますか。御意見、御質問は、今日のところはここまでとしてよろしいですか。それでは、この議題についてはここまでとさせていただきます。

 次に、「その他」です。「その他」として、まず「技能実習制度推進事業等運営基本方針の一部改正について」です。内容について事務局から説明をお願いいたします。

○高橋海外協力課長 海外協力課です。お手元の資料4を御覧ください。今、座長から御指摘がありましたように、外国人技能実習制度に関して、技能実習制度の推進事業等運営基本方針を一部改正させていただきましたので、その御報告です。今回、職種、作業の追加等で、2点の改正点がございます。

 資料1枚目の1(1)です。座席シート縫製職種を追加しました。どういう職種かと言いますと、自動車の製造過程において座席をはじめとして、車内用のパーツのカバー類を製造するというもので、具体的には曲線等を含む複雑な形状、また厚みや材質の違う素材を工業ミシンを活用し、正確に縫い合わせる。また、定められた強度、強い所は強く、絶対に破れない所は破れないようにする、あるいはエアバッグが飛び出す所は日常強度は保ちながら、万が一のときにはコンマ1秒でそれが飛び出すように、強度も含めて正確に縫製を行うという職種、作業です。これを新たに追加させていただきました。

2点目、(2)です。これは漁業の職種のうちの4作業について、名称の変更をさせていただきました。具体的には、最近の海洋条件をはじめ漁業環境の変化等があり、それを踏まえて効果的な実習を行うために、これまでここに掲げたような同じ漁法、網の種類あるいは漁の対応についても基本的には同じなのですが、網を入れる水深を変えることにより、漁獲する魚種の拡大を図ることにしたもので、これに伴って漁法の名称を一部修正させていただきました。

 これらについては、昨年12月に開催させていただいた技能実習評価試験の整備に関する専門家会議において御審議いただき、第1点目については必要な要件を満たし、かつ特に適切な技能評価制度が構築されたと認められております。第2点目についても、必要性、その他の問題はないことをお認めいただき、専門家会議で了承を受けました。それを受けて上記の基本方針のうちの対象職種の所、具体的には次のページに別表がありますが、その該当部分を変更あるいは追加させていただいたことになります。これに伴い、現在の技能実習の2号移行対象職種が72職種131作業となっています。

 これらの変更について、昨年1228日に官報に記載し、公布させていただいたところです。以上です。

○小杉分科会長 この件について、御質問、御意見はございますか。特にございませんようでしたら、この議題についてはここまでとさせていただきます。

 最後に事務局から報告が1件あるということです。

○伊藤キャリア支援課長 キャリア形成支援課です。結果的に先ほどの議題3の質疑の中で御報告申し上げたところですが、先ほども御指摘いただいたIT分野の資格取得を目標とした教育訓練の専門実践教育訓練制度に関して、この間別途の専門家による議論の場の取りまとめに至ったところですので、その報告です。また、それを受けての具体の指定基準の在り方等について整理の上、次回以降速やかに御報告また御議論いただければと考えているところですので、よろしくお願いいたします。

○小杉分科会長 そのほかに、皆様から何かございますか。ないようでしたら、本日の議論は以上とさせていただきます。また、次回の日程等については、改めて事務局から連絡させていただきます。本日の議事録署名委員は、労働者側は荘司委員、使用者側は島村委員にお願いいたします。皆様、進行に御協力いただきありがとうございました。


(了)

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