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2015年10月28日 第7回 医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ議事録

○日時

平成27年10月28日(水)13:30~15:30


○場所

厚生労働省共用第8会議室(19階)
     東京都千代田区霞が関1-2-2 


○議題

・関係団体等からのヒアリング
・その他 

○議事

○吉本医師臨床研修専門官 それでは、定刻になりましたので、第7回「医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ」を開催いたします。

 本日は、先生方には、御多忙のところ御出席を賜り、まことにありがとうございます。

 ここで、カメラをお持ちの方は撮影はここまででお願いいたします。

 続きまして、本日の御出席について御連絡させていただきます。

 大滝構成員と清水構成員から、本日は御欠席との御連絡をいただいております。

また、厚生労働科学研究医師臨床研修の到達目標とその評価の在り方に関する研究班からは、分担研究「人口動態や疾病構造、医療提供体制の変化等を踏まえた到達目標の在り方に関する研究」御担当の聖ルカ・ライフサイエンス研究所臨床疫学センターの大出幸子先生にお越しいただいております。

また、文部科学省医学教育課からは、佐々木企画官にお越しいただいております。

なお、医事課長の渡辺は、会議の終了前に退席させていただく予定でございます。

以降の議事運営につきましては、座長にお願いいたします。福井先生、よろしくお願いいたします。

○福井座長 それでは、本日もよろしくお願いいたします。

まず初めに、事務局より資料の確認をお願いいたします。

○吉本医師臨床研修専門官 それでは、資料の確認をいたします。

 まず、議事次第、そして座席表、その後にヒアリング資料といたしまして、神野先生からいただいた資料、そして田中先生からいただいた資料が2部、伊野先生からいただいた資料が1部、古谷先生からいただいた資料が1部ございます。

それから、事務局提出の参考資料といたしまして、先生方の名簿、そしてこれまでの検討状況、以前提出いたしました論点について、卒前教育・医師国家試験・臨床研修・専門医に関するスケジュールということで、4つ参考資料をつけております。

 また、先生方の机の上には分厚いファイルと、今回平成26年度の厚生労働科学研究の報告書から研修医のアンケートから目標達成率の推移をまとめたものを別刷りとして配付しております。

 また、伊野先生からは、クリアファイルに入っております資料を机上配付資料としていただいております。

 乱丁、落丁などございましたら御連絡ください。

 大丈夫でしょうか。

 では、先生よろしくお願いいたします。

○福井座長 よろしいでしょうか。資料に何か足りないものがございましたら、どうぞいつでも発言していただければと思います。

 本日は、四病院団体協議会のお立場から神野先生、全国医学部長病院長会議のお立場から田中先生、それから臨床研修の評価につきまして、聖マリアンナ医科大学臨床研修病院群における取り組みの御紹介を伊野先生、東京慈恵医科大学附属柏病院における取り組みの御紹介を古谷先生から、それぞれ御紹介いただきたいと思います。

15分程度の御説明で、10分程度の質疑応答ということで進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、神野先生からよろしくお願いします。

○神野構成員 神野でございます。いつもお世話になっております。

 きょうは四病院団体協議会の立場からということです。四病院団体協議会は日本病院会、全日本病院協会、それから日本精神科病院協会、日本医療法人協会、私は全日本病院協会の副会長という立場です。

PP

 では、話を進めさせていただきます。

 「専門医がそれなりに充実するとある総合病院にて、、、」という光景です。真ん中にお年寄りが歩いていらっしゃいまして、「せっかく町の総合病院に来たんやし、腰と、目と、耳と、かさかさ皮膚と、血圧を見てもらわなあかん!」と言った時点で、整形外科と眼科と耳鼻科と皮膚科と内科あるいは循環器科というところを受診しなければいけないわけであります。「ふーっ忙しい忙しい」と御本人はおっしゃっていますけれども、あなたを待っている専門医も忙しいのだということで、これが地域の医療で大変難しい問題になっているということになります。

PP

 ここでいきなり「オレゴン・ルール」であります。

 救急医の先生方でよく知られていますけれども、accessibilityqualitylow costのうちの2つはかなうけれども、3つともかなうのはなかなか難しいということです。オレゴン州の厚生局の前に張ってあるものだそうです。見たことはありません。

 ただ、この3つを何とかかなえようと私たちが頑張っちゃったので、疲弊して疲れちゃったのかなと思うところもあります。

PP

 さて、これはまさに先週の社会保障審議会医療保険部会、それから医療部会の資料で、これ改定に当たっての基本認識ということでありますけれども、特に「1.超高齢化社会における医療政策の基本方向」、「2.地域包括ケアシステムと効率的で質の高い医療提供体制の構築」は診療報酬だけではなくて、今まさにこの厚生労働省がいろいろ取り組む方向性なのかなと思われます。

 したがって、横割りで物事を見ていくならば、この方向性というのも私たちは見据えながら、医師の臨床研修、あるいは教育ということも考えなければいけないのではないかなと思うところであります。

PP

 地域包括ケアシステムの図は、もう御承知のとおりでありますけれども、この右側に日常生活圏域、具体的に「中学校区を単位として」と書いてあります。そうすると、どうも私たちは引いてしまうわけですよね。私たちの患者さんは、中学校区よりはるかに広い範囲からいらっしゃっているわけであります。

PP

 そういった意味では、もう一つこういう図が厚労省から出ておりますけれども、まさに高度急性期から慢性期の医療、それから患者さんがいて、外来があり、在宅があり、歯科があり、薬局等があり、あるいは右側に生活支援サービス、ここに老人クラブ・自治会・ボランティアと書いてありますけれども、株式会社等も見守りとか配食とか、いろいろな方がここにいらっしゃる可能性があると思われます。そして、これ全体で医療・介護・住まい・予防・生活支援サービスが身近な地域で包括的に確保される体制と書いてあるわけであります。もしかしたら、これが地域構想区域そのもので、この中でいろいろなことを統合していくというのが、先ほどの医療審議会、あるいいは医療保険部会という流れの一つの図柄ではないかなと思うところです。

 「ケアシステム」と言ったら介護みたいですので、私は勝手に「地域包括ヘルスケアシステム」と呼んだほうがいいのではないかなと思うところであります。

PP

 さて、佐々木前室長がいらっしゃるので、御専門のところですが、2025年の医療機能別必要病床数が出て、病床機能報告制度等とともに今、いろいろな話が各地域で進んでいるわけであります。回復期がたくさんふえて、それから高度急性、急性、慢性が少なくなって、だけれども、2025年の高齢化を盛り込んだときの医療需給を必要病床この右側にあるような介護施設や高齢者住宅でカバーしていこうというお考えだと思います。

PP

 さて、この病床機能報告制度で、各病院はどういうビヘービアをしたかと言いますと、まさに大学病院、特定機能病院はほとんど全部高度急性期だと御自分で宣言なさっておられます。それから一般病院は、高度急性から慢性、いろいろなところにあると病床機能を報告しているわけであります。とするならば、恐縮ですけれども、特定機能病院は高度急性を担うと御自分で宣言している、その中で、臨床研修は高度急性でやるという論理の筋道になってしまいますよねということであります。

PP

 中医協資料で、今、在宅療養支援診療所と在宅療養支援病院というのも随分ふえております。その中で、中医協の306回資料を見ますと、ここに病院数が書いてありましたので、既に約1,000病院程度が在宅療養支援病院として届けているということであります。

PP

 この在宅のそういった診療所数と、あるいはこういう在宅を見ているところと見取りの数というのはある程度相関するとも中医協で出ております。

PP

 また、もう一つ、今度は200床以上に関しまして、在宅療養後方支援病院、私どもの病院もなっておりますけれども、こういった基準があります。これにつきましても、先日の中医協資料で、200床以上で既に215病院が在宅療養をやっていらっしゃる診療所、あるいは在宅療養をやっていらっしゃる支援病院を後方支援するということで名乗り上げている、そして実行されているわけであります。とするならば、こういった病院は在宅療養に対してもいろいろな教育ができるような病院ということになるのかなと思います。

PP

 地域包括ケア病棟に関しては今、急激にふえておりますけれども、急性期からの受け入れ、あるいは緊急時の受け入れ、在宅からの受け入れということを機能として今、全国的に非常に広がっている病棟であります。これも多くの一般病院が持っている機能ということであります。

 地域包括ケア病棟を算定基準からいたしますと、総合体制加算をとっている病院は新たになることができないということでありますので、いわゆる大型病院、特定機能病院が地域包括ケア病棟を持つことはほぼ不可能とするならば、今の地域の一般病院がこれから地域包括ケア病棟としてこういった機能も担うということになると思われます。

PP

 さて、この「医学部教育のガラパゴス化」という言葉、これは私が書いたのではなく、下に出展が書いてありますけれども、東洋経済オンラインに載っていたのです。後ほど田中構成員の資料でECFMG2023年問題があると思われますけれども、そういった問題があって、臨床実習を拡大しようとする動き、それから御承知のとおり、前回話があったような2017年で新専門医制度ができ上がってくるということであります。

 各基本領域で複数のSubspecialtyを広く研修するような仕組みということになると思われます。そうすると、この間に入っている医師臨床研修制度は何を目指すべきかということをきちんとここで押さえておく必要があるのではないかなと思うわけであります。

PP

 さて、この基本理念はもうさんざんこの会で論議しているわけでありますけれども、これをちょっと分解して、もう一度原理原則にのっとって考えてみようと思います。すなわち、臨床研修は「医師が医師として」ということになりますので、かつ「臨床」でありますので、患者さんのかたわらで医師が医師免許を持った医師として研修をやるということであります。決して医師免許を持っていない方々がやるわけではないという大原則であります。

PP

 「将来専門とする分野にかかわらず」ということですので、いわゆる専門医教育ではありません。

PP

 それから「医学及び医療の果たすべき社会的役割」ということになりますので、これはまさに社会的適応として人口問題、あるいは少子高齢化、医療経済、地域包括ケア、医療介護連携、それから今、胃瘻をどうするのだ、DNRをどうするのだ、クオリティー・オブ・ライフからクオリティ・オブ・デスといったような人々の価値観の変遷云々も基本理念に含まれている、それを学習せねばならぬと私は思うわけであります。

PP

 そして「一般的な診療において頻繁にかかわる負傷または疾病に適切に対応」ということですので、まさにCommon Diseaseでありますし、単にCommon DiseaseではなくてCommon Diseaseの中から適切に鑑別診断できる能力、普通の病気のように見える中から宝物を探す能力というものが求められていると思うわけであります。

PP

 そして、基本的な診療能力は、まさにここで専門の先生方がいっぱいいらっしゃいますけれども、コンピテンシーであるかもしれないし、あるいは臨床推論、それからチーム医療というのも基本的な診療能力として極めて重要なものであると思うわけであります。

PP

 さて、特定機能病院と一般病院のミッションということを考えると、もちろん特定機能病院は臨床だけではなくて、研究、教育が大きなミッションであります。そしてまた、多数の専門医のもとでの高度専門医療、よその病院、一般病院ができないような治療をやるというのがやはりミッションではないかなと思います。

 そして、一般病院は、もちろん研究あるいは教育というところもありますが、やはり臨床が大きなミッションになると思いますし、もちろん専門医療、総合医療もやります。それから、可能性としては、先ほどの高度急性期から急性期、回復期、慢性期、あるいは在宅といったところまでの幅広い可能性を持っているということです。また、昨今では高齢化に伴って、医療と介護の連携ということ、あるいは機動的な多職種チーム医療ということが、やはり一般病院の強みではないかなと思っております。

PP

 さて、このiPS細胞、万能細胞がどこで分化していくかという話でありますけれども、この医学部卒業後すぐの段階で分化させてしまうのか、それとも臨床研修が終わってから分化していくのかといった考えに立つならば、先ほどの今までの基本理念からするならば、私は後者のほうではないかと思うところであります。

PP

 医師のキャリアパスには、もちろんいろいろな形態があるわけであります。大学病院、大学病院、大学病院から一般、一般、一般もあるということでありますけれども、ここで一つ大きく書いたのは、まず臨床研修はCommon Disease、それからいろいろな機能から見ると、あるいは今後の医療、介護の連携、地域包括ケアを見ると、一般の病院が適切ではないか。しかし、専門医研修は大いに大学で行かれる方がたくさんいてよろしい。その後は、また大学に残られる方、一般に行かれる方という形が、私は美しい姿ではないかなと思いますし、昨今はわかりませんけれども、以前の名古屋大学方式がまさにこんな形であったのかなと思うところであります。

PP

 そして、まとめです。高齢化社会に対応するために、研修医は将来専門とする分野にかかわらない広い診療能力を身につけるべきである。そして、さまざまな病態、あるいはチーム医療、在宅介護との連携ということになりますと、繰り返しますけれども、高度急性と名乗り出ていらっしゃる病院ではなくて、一般の高度急性から慢性期、あるいは在宅まで診る医療機関のほうがよろしいのではないかと思います。

 そして、見直しに当たっては、スーパーローテーションを見据えた必須科目をしないと、本当にこういった広い知識は身につかないのではないかなと思っております。

PP

 おまけでありますけれども、これは私の恵寿総合病院であります。426床です。296ベッドがHCUと7対1の一般病棟で、あとは回復リハとか地域包括ケア病棟等があります。

 その中で、私どもは初期臨床に家庭医療コースとキャリアビジョン対応コースという2つのコースをつくっております。このキャリアビジョン対応コースは、選択できる科目を増やした、どちらかといったら専門医的なコースであります。そちらは今回、省略しておりますけれども、実はこちらの家庭医療コースほうが人気がある。その中で、私たちはこの通年、半日の家庭医療科外来研修というのを取り入れております。通年ですので、少なくとも私どもの病院の中にいる間は、何科の研修をしていても、1週間に半日は決まった日に外来研修を行うということであります。

 したがって、この外来研修の場で、例えば今やっているのは、診察の場面を患者さんの許可を得た上でビデオ撮りしておきまして、終わってから指導医とともに診察態度や問診の仕方などについて振り返り学習をしています。こういった外来研修というのは、一般の診療、広いコンピテンスあるいは臨床能力、あるいは臨床推論の能力をつくるためには私は非常に大事なものだと思いますし、これを魅力に集まってくれる研修医もいるわけであります。

PP

 最後でありますけれども、小森先生がいらっしゃいますけれども、2013年8月8日の日本医師会・四病院団体協議会の合同提言書に、私、四病協としてかかわっておりましたので、改めて出させていただきます。

 「かかりつけ医」の定義と「かかりつけ医機能」であります。これはそのままの文章ですけれども、赤いところは今、私の独断でつけたところであります。やはりかかりつけ医等に関しましても、総合的な能力を有する医師が必要でありますし、地域の医療機関とも協力して解決策を提供する、お互いに協力して休日や夜間患者も対応できる体制、それから保健・介護・福祉関係者との連携、在宅医療との推進といったようなことを2年前の提言書で書かせていただきました。

 こういった思いをかなえるためには、やはり広くスーパーローテートして、そしてまた広くいろいろな能力をつけるような研修が私は必須であると思いますし、その研修の場は、繰り返しますけれども、多様な病期を研修できるような一般病院が適切ではないかなと思っております。

以上でございます。

○福井座長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明につきまして、質問や御意見がございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

高橋先生、どうぞ。

○高橋構成員 丁寧な御説明ありがとうございました。

今の先生のお話の中では、幅広い経験が重要であるというのは、それはもちろん皆さん納得すると思うのですが、地域医療という必修が現在ありますので、その地域医療を1カ月以上、拡大するという考え方でも対応できるとお考えでしょうか。それとも、やはり幅広いいろいろな症例、ごく一部の高度急性期の患者さんだけではなくて、多くの患者さんを診られるような病院を基幹型として設定すべきというところまでお考えを広げていらっしゃるのでしょうか。

○福井座長 どうぞ。

○神野構成員 これはもちろん地域医療で多くをカバーされることは間違いないと思います。主張としては、もう一回スーパーローテート式というのは、やはり私はここで必須なのかなと思います。そのスーパーローテートできるならば、それが地域の一般病院であろうが、大型病院であろうが構わないと思いますけれども、その中で、もしこれから必要な地域包括ケアとか、介護との連携等を学ぶならば、たすきでも結構ですから、地域の病院にもう少し長い時間来ていただくほうがよろしいのではないかなと思います。

○高橋構成員 それに関連してまとめますと、地域医療というのは今後も必須であるべきであって、しかもその期間は今後の論議が必要であるけれども、1カ月ではもしかすると短いかもしれないとお考えであると理解してよろしいでしょうか。

○神野構成員 そういうふうに理解していただいてよろしいと思いますし、地域医療の場というのもいろいろな種類があると思いますので、僻地の診療所等もあるかもしれないし、地域の一般病院という手もあると思われます。

○福井座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 はい、小森先生。

○小森構成員 ありがとうございました。

先生のお話の中で、特定機能病院とそれ以外の病院もひっくるめてお話しになりました。先生のところは400床以上あって、能登中部地区において比較的高度な医療もやっていらっしゃるし、また在宅医療までやっていらっしゃる、そういうところは比較的本当に広い分野の研修ができると思うのですが、現在の臨床研修制度では、もっと小さな分野のところも基幹型になって、なおかつそこでだけ研修が回ってしまうというのもあるのですが、そういったところをやはり問題があって、広くさまざまなものを学べるように、病院群をより広くつくるべきだという主張にもとれるのですけれども、そのように考えてよろしいでしょうか。

○神野構成員 今の臨床研修基幹病院には外形標準がありますので、それにのっとるのがやはり原則かなと。それが症例数をきちんと確保できるものではないかなと思います。

したがって、おっしゃるように外形基準に合わない病院があるならば、どちらかの病院と一緒に連携してやっていただくというのが一番いいのではないかと思います。

○小森構成員 もう一点だけ。私ども、さまざまなところで臨床研修医の方々とお話を聞く機会がございます。アンケートもいろいろとらせていただくと、現在の弾力化プログラムのほうがいいとお答えになる研修医は大体3分の2あるのですね。さまざまな事情があると思うのですけれども、きょうは時間が限られていますけれども、その実態について、先生の印象、感想はいかがですか。

○神野構成員 何をこの臨床研修に求めるかで、研修医がやりたいことだけやらせていいのでしょうかということになりますよね。途中で挙げましたこの基本理念にのっとって、国民が何を求めているのかといったら、やはり広く診ていただけるようなお医者さんを求めているとするならば、御本人たちの希望とは別に、国家財政をつぎ込んで医師を育てたわけですから、国民が求めるところをまずやって、それから好きなことをやっていただくという道筋もあるのではないかなと思います。

○小森構成員 そこのバランスがやはり非常に難しいということなのだろうと思います。どうもありがとうございました。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

 先に田中先生から。

○田中構成員 医科歯科大学でも、地域の病院あるいは医療過疎地域の診療所とか、小さな病院に研修に派遣しているのですけれども、その際に問題になるのは、交通費とか宿泊費とか、そういうインフラ部分の費用なのですね。結局それは研修医の自己負担というのはなかなか難しくて、かといって国の助成ではちょっと足りないという現状があるのですけれども、そういう問題についてお考えがありましたら教えていただきたいのですけれども。

○神野構成員 いろいろな方がいらっしゃると思うのですけれども、もし医師として、医師免許を持っている方が2~3カ月いらっしゃるとしたら、やはり相手方の病院がそれなりのお仕事に対する対価はお支払いすべき問題ではないかなと。それを出すほうの大学に求めるのは、私は、一般病院としては随分強気だなという気がしております。だから、相手方にお給料はもっていただいて、やはり仕事したところでお給料が出るということから考えれば、それが筋かなと私は勝手に思っておりますけれども、一般的にどうなのでしょうか、ちょっとわかりません。

○田中構成員 少なくとも、医科歯科大学でお願いしているところは、逆に指導料が払われるべきであろうという御指摘でありました。

○神野構成員 済みません、もう一回。受けたほうが給料を出すけれども、臨床研修の国からの補助金は、引き受けた何カ月分は後ほど大学からいただければよろしいのではないかなと思います。

○福井座長 前野先生、どうぞ。

○前野構成員 質問の前に、今の会話に関しての感覚なのですけれども、受ける側が給料は払うということは逆に受ける受けないの判断もできるということですね。診療所は、その自分の身の丈で診療圏を決めて動いていますので、2カ月だけ研修医が来て、その前も後ろも来ないという状態のニーズがないのですね。だから要らないと。一年通して来てくれるなら、しかも、ある程度能力のある人が来てくれるなら、その分診療所の規模を拡大して給料を払うということが選択肢になると思うのですけれども、そういうふうにぽっとお願いして、向こうにお金を払えというのはとても頼めない状況があります。

 そして、むしろ今の先生のお話からすると、そういうところこそ行ってほしいところなのですよね。ですから、大体そういう方は使命感を持っておられるので、教育のために少し時間をとられても、それはいいと。だけど人件費は困るというところが多いと思うので、それがある程度公的にサポートできるようになると、本当に行ってほしいところに行ってもらえる体制になるのではないかなと思っています。

○神野構成員 わかりました。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ。

○片岡構成員 地域医療の件に関しては、我々の大学では、地域医療の期間は1カ月~3カ月なので、給料はその分は大学が全て出して、そのかわり宿舎等はできるだけお願いするといった形で、特に問題なくできていると思います。

 神野先生、ありがとうございました。私も地域医療が大切で、幅広い研修が大切というのは本当に全く同意です。ただ、大学としては教育資源、あるいは学生の連続した教育を見せていくということから考えると、やはりたすきがけは非常に有効なのではないかなと思うので、そういったコーディネート機能をしっかりと果たしていきながら、学生からも目に見えて理解しやすいキャリアパスを示すという役割もあるのではないかなと思いました。

 以上です。

○福井座長 前野先生、どうぞ。

○前野構成員 質問ではなくて、もう一度先ほどの追加です。

 あともう一つ問題になるのが保険の問題です。1カ月を前提だと、雇用した場合、社会保険に入れられないのですね。ですから、それまで研修病院に入っていて、いわゆる社保に入っていて、その1カ月だけ国保に移って、また1カ月後に社保に戻らなければいけないという問題もあります。

 私の意見なのですけれども、今までの議論の中で外形基準という話がよく出てきましたけれども、大きな病院だからできない、小さい病院だからできないというものは、やはりそれぞれの工夫とか特色を出すとか、あるいはその研修医のプライオリティーを考えた場合に、門前払いという形になってしまうのはどうかなと思っておりまして、それこそまさにこのワーキンググループで議論している目標で縛るべきではないかなと思います。

 例えば大学病院でも、これができるというならやってみなさいと。そして、本当にできるならそれでいいではないかと。ですから、何ベッド以上とか、こういう病院であるないというよりは、ではこの2年間の中で地域医療に関しては何を学ぶべきか。特に、外科だったら症例数とか、ある程度明確な数字規準があるのですけれども、地域医療をどう学んだかという目標設定がすごく難しいのですが、そこの知恵を絞ることで、選択肢と学んでほしい研修が両立できるのではないかなと思いました。コメントです。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

 重要な視点についての質疑応答だと思います。

 1点、私も気がついた点ですけれども、小森先生と神野先生の間でお話になった研修医が希望していることと、社会や患者が必要としていることの優先度は、やはり社会というか患者さんが必要としていることを優先して我々はプログラムをつくるべきではないかと、私は個人的にはそのように思います。

 ほかにはいかがでしょうか。

 よろしいですか。

 それでは、続きまして、田中先生からプレゼンテーションをお願いしたいと思います。

○田中構成員 それではよろしくお願いいたします。

 全国医学部長病院長会議の立場からお話しするのですけれども、本当はコンピテンシーとかそういうお話をするのがいいのかなと思ったのですけれども、それは前に大滝先生が少しまとめておられたということと、それからまだ最終的にコンセンサスは得られていないということと、それから佐々木企画官がお見えですけれども、コアカリキュラムガイドラインの見直しが近く検討されていることもございますので、きょうはそれ以外の卒前臨床実習の改革とか、そういったことをお話ししていきたいと思います。

PP

 お話しする内容はこれだけですけれども、まず臨床実習前の評価というので、最近の動きを御紹介いたします。Student Doctor制度というものです。

PP

 御存じのとおり、こういう共用試験があって、全部の学生が受験しているわけですし、OSCEもやっているわけですけれども、これは臨床実習に出る前に行われます。ここでCBTに合格して最低点を報告する。OSCEの実施もちゃんと行われましたと報告すると、全国医学部長病院長会議の事務局から推奨最低合格ラインというのが公表されまして、そして証明書が発行される。これは大体平均点の-1.5SDと御理解いただければよろしいかと思いますけれども、その数字は国家試験の合格率とかそういったものを考慮して決定されたものです。

 そうしますと、後で御紹介しますけれども、Student Doctorという証書が与えられる。これでいよいよ診療参加型臨床実習というわけなのですけれども、ここでやはり強調しておきたいのは、国民及び患者の理解と協力ということで、ちょっと学生さんだけは勘弁してくださいというのは成り立たないということであります。

PP

 ですから、この学生は信用できるのですよということで、こういう認定証が発行されるということになりました。全国医学部長病院長会議が保証しますという意味です。

PP

 次ですけれども、その臨床実習前の評価が終わって、臨床実習に参加した後、途中ではどんな評価をするかということですけれども、これは推奨されているものにmini-CEXというものがございますので御紹介します。これは後で伊野先生がお話しになられますけれども、簡単にお話しいたします。

PP

 これはミラーのピラミッドと医学教育の分野でよく言われていますけれども、知っているかどうかというのはMCQMultiple choice、で、知っていることをどのようにやるかという論述問題、それに対して、やっていることは見せられるという意味ではOSCEという評価になりますけれども、本当にできるということはパフォーマンス評価で、mini-CEXPost-CC OSCEPost-CC OSCEは後でお話しさせていただきます。

 これは医科歯科大学でやっている風景ですけれども、この人が患者さんです。学生。こちらは病室ではなかなかできないので、医科歯科では処置室を使っていますけれども、処置室に患者さんに来ていただいて、学生がいろいろ質問をする。それで、問診をとって診察をする。それを主治医が横で見ていてチェックをする。終わってから、病棟の面談室などを使ってこうだった、ああだったというフィードバックをするということで、評価といっても、基本的にはいわゆる形成的な評価、つまりアドバイスをする。それで、パフォーマンスを上げていくという評価の方法です。

 医科歯科大学では、2013年度からやっております。臨床実習は7週ぐらいございますけれども、内科と小児科を回っている間に、卒業までに3~4回受けて、評価を受けるということになっていますが、問題点は、全部のプロセスをやるのに40分ぐらいかかるのですね。それで結構教員の負担にもなるし、あとは患者さんも御協力いただくということを御理解いただかないといけないので、そこが問題ということになります。

PP

 次ですけれども、Post-CC OSCE、これは外国ではCSAclinical skill assessmentとか言われていますけれども、日本英語みたいな感じですけれども、Post clinical Clerkship OSCEということですけれども、これは臨床実証の修了時に行うということです。

PP

 これは医科歯科大学でやっている風景ですけれども、まず患者さんが医療面接で模擬患者さんの話を聞きます。普通のOSCEはそこで「次のステーションに行ってください」ということなのですけれども、ここではステーションは変わらずに、その模擬患者さんに裸になってもらって身体診察を開始する。同じ病気という設定ですので、今度は所見をとるわけですね。その後、今度は鑑別診断をカルテに書くということになります。

 書いた後でどんな検査が必要かということを問うわけですね。そうしますと、この学生が必要だと言った検査のデータだけが開示されて、この検査の解釈をする。そして、最終診断に至るという形です。医科歯科大学の場合はもう総括評価ですので、これに通らないと卒業はできないという形になっています。

PP

 このような試験をどのぐらいの大学が実施しているかといいますと、現時点では54大学が実施していますが、実施していない26大学のうち、19大学は近く実施する、あるいは検討しているとなっていますので、もう間もなくほとんどの大学がこれを実施する形になるだろうと考えています。

PP

 それから、先ほど神野先生のお話がちょっとありましたけれども、国際認証の話がもう一つのトピックスです。米国国家試験受験のための資格試験(ECFMG)、日本の医学部の再来年の入学生から適用されるのですけれども、アメリカの医科大学協会、または世界医学教育連盟が決めた基準に認定された医学部の卒業生に限ると。

PP

 もともとこれは、アメリカによく来る、ちょっと国のレベルに達していない学生たちのレギュレーションをかけるために意図された改革だと言われていますけれども、それは日本にも適用されるということです。

PP

 それに対して、では日本の医学部はどう対応するかというと、全国医学部長病院長会議の下に医学教育質保証検討委員会というのをつくって、あと文部科学省の調査研究費もいただいて、結局、JACMEと呼ばれますけれども、日本医学教育評価機構というのができていて、設置母体は検討中ということになっていますけれども、これは一応全国医学部長病院長会議のもとに設置されるとなっています。間もなく本格的にスタートしますが、今、トライアルをやっていまして、医科歯科もそのトライアルを受けたところです。

PP

 このJACMEが、これから全部の日本中の大学をこういうふうに認証評価をするということですけれども、大学の認証評価は、大学全体としての認証評価は、大学基準協会とか学位授与機構がやっていますけれども、学部、学科の評価というのは、ごく一部の法学部とかそういうところでしか行われていなくて、医学部としては最初の評価になります。

PP

 この評価は、世界医学教育連盟(WFME)のグローバルスタンダードの日本版みたいなところで行われて、やはりアウトカム教育をやっているかどうかとか、学生がプログラム評価をしているかとか、教育資源についてとか、ありとあらゆる観点からいろいろな評価が行われています。

PP

 最後に、臨床実習の週数というのは、結局一時72週と言われましたけれども、これはカリフォルニア州の規定だということになっていまして、それほど今言われていませんが、結果的にはどこの大学も非常に週数を延ばしていて、長くなっています。長くなった分、大学病院ではなくて、地域の中核病院とか、診療所に出る期間が長くなっていることは事実で、そういう意味では、先ほどの神野先生の研修と同じように卒前教育も地域に広がっているということは言えると思います。

 以上が臨床実習の改革です。

PP

 最後に、私はEPOC委員会の委員長をしていますので、全国医学部長病院長会議の依頼状をもとに、EPOCで集計した臨床研修到達目標の達成度評価を御紹介いたします。

PP

 これは実は、2008年に一度研修医でやっています。これは発足当時のプログラムです。弾力化プログラム前の4,000名です。

 その後2010年は、弾力化プログラム直後の研修医です。

 今般、もう一度調べるということで、2013年、つまり直近の研修医の状況ということで、どちらも4,000人前後で大学病院と臨床研修病院はほぼ半々ぐらいの数で調査しています。本当は指導医がちゃんと評価したものを見たいのですけれども、指導医が評価したものが低くなってしまうので、自己評価でできたかどうかということを基準にしています。

PP

 ちょっと見ていただきますと、行動目標ですけれども、例えば達成率が低いのは、医療の社会性というところで、こういったものが低い、低いといっても、縦軸は90%ですので、そんなに低くはないのですけれども、必修ということを考えれば、終わっていないよねという人たちが実は終わっているということなのですね。

 この数字は、臨床研修病院のほうが若干低いのですけれども、厚生科学研究で行われた表、きょう配られていると思いますけれども、福井先生が班長でいらっしゃいましたけれども、こちらのほうで似たような項目というのがあって、それを調べてみると、そちらでは臨床研修病院のほうがちょっと高いという感じですので、そう大きな差があるとはちょっと思えないです。

PP

 こちらも、例えば生殖器の診察というのはちょっと低いとか、あとは核医学や神経生理がちょっと低いということは言えますけれども、これも出発点を85%で切っているので差が強調されて見えますけれども、大きな差はないかもしれないというところです。

 ですけれども、本当は100%終わっていなければいけないけれども、そういう状況にはないということであります。

PP

 それから、経験目標ですけれども、やはりちょっと経験率が100%のはずだけれどもちょっと低いというところは、やはりいわゆるローテーションだと漏れてしまうような部分はそうなるかもしれません。あとは2010年の弾力化以降、産婦人科が選択必修になりましたので、そういう意味ではだんだん出産が下がってきているということは言えると思います。

PP

 それから、年次にかかわらずいつも低いというのは感染症のうちの寄生虫疾患です。これは、なかなか経験する場がないとも言えるのですけれども、60%と以下と著しく低いので、経験すべきなのか、これはもう許容すべきなのかという議論は恐らく行われるべきだろうと思われます。

 同じように経験率が80%以下で低い病気としては、白血病や副腎不全、性感染症、それからSLE、先天性心疾患、こういう病気があります。

PP

 必修だけれども、まだ低い点がやはり眼科の疾患、そういったものがある。それから、先ほどお話しした妊娠分娩生殖異常というのが低いということが言えます。

PP

 こういったことが傾向としてありましたので、御報告させていただきます。こういった方々のデータを使ってお話をさせていただきました。

 御清聴ありがとうございました。

○福井座長 ありがとうございます。

 ただいまのプレゼンテーションにつきまして、御質問、御意見等をお願いいたします。

 どうぞ、伊野先生。

○伊野構成員 田中先生、ありがとうございました。

 先ほどの医科歯科のPCC OSCEは大変すばらしいと思ったのですが、あのステーション1回で何分ぐらいかかると考えればよろしいでしょうか。

○田中構成員 45分です。

○伊野構成員 ありがとうございました。

○福井座長 ほかにはいかがですか。

 はい、小森先生。

○小森構成員 先生のお話の中で、72週というのはカリフォルニアだけということで、一時は重視したけれども、最近は余りというお話がございましたけれども、ずっとこういう議論の中で、国立はこうで、私立はこうで、一つの目標値としてあったのですが、これはもう目標値としては設定しないと切りかえられたという考えなのでしょうか。それとも、当面まだまだ足りないのでふやしていくというお考えでしょうか。

○田中構成員 これは佐々木企画官にお答えいただいたほうがいいかもしれませんけれども、72週とは一度も正式な目標として掲げられたことはないと思います。要するに、国際認証ということになったときに、カリフォルニア州が72週だったので、それが目安になると言われたのですね。

 ただ、そのカリフォルニア州の72週というのは全米で通用する数かというと、そうではないのですね。しかも、それこそ中身は、精神科はどれぐらい回るとか、ファミリーメディスンをどれぐらい回るかという規定もあって、それは全部省かれて、72週という数だけがひとり歩きしたということは事実です。

 以上です。

○福井座長 はい、金丸先生。

○金丸構成員 先ほどの神野先生との接点なので、関係しての話なのですが、今72週の話がありました。広がった結果、より大学を離れて地域に行っている研修の場がふえたという御説明でした。これはすごく大事なことかなと思っているのですね。先ほど国民のニーズというところの話があって、まさにそこを学生のうちから捉えて、それを感じて、それに沿って自分の修練をしていき、医師として成長していく。そういう意味においても、大学を離れて幅広く自分の足元で学生のうちから研修をし、そしてさらに初期臨床研修の中でできるだけ広く研修していく。まさにそれが地域医療の現場で医師を育てていく大変大事な姿とも思っているので、卒前と卒後がこのような形でシームレスに流れるのは、現場としては大変なところもたくさんあるかもしれませんけれども、より多くの地域医療の現場で研修が広がっていくことはとても望ましい姿ではないのかなと思ったところでした。

 以上です。

○福井座長 伴先生、どうぞ。

○伴構成員 ちょっとこの委員会の本題から外れるかもしれないですけれども、誤解が広がっているみたいなので、繰り返し確認しておきたいのですけれども、今、田中先生が言われたみたいに72週というのは、全くそんな数字は示したことがないと、ECFMGCEOCassimatisもはっきり明言しています。臨床実習は日本で少ないのは事実なので、それを増やすということは必要です。だけれど、数字を目標にする根拠は全くないというのが1点。

 それから、田中先生の発言で気になったのですけれども、2023年の基準にひっかかる人についてのことです。2023年に基準が始まった時、USMLEを受験しようとする人が、その大学が認証を受けていない時代に卒業した人だったら資格がないかといったら、そんなことは全然ない。受験生が受験する段階で卒業した大学が認証を受けていたら、それで全く問題ないですよと、これもCassimatis本人が言っているのですね。「日本でどうしてそんなに大騒ぎしているのだ?!」と言われていますので、それだけはちょっと確認しておきたいと思います。

○福井座長 質問ですけれども、どうして大騒ぎになったのですか。

○伴構成員 一番引っかかるのは臨床実習だというのは事実なのですね。だけど、それは数字がひっかかるのではなくて、見学型だとか模擬的にやっているので、いわゆるクリニカルクラークシップになっていないというところが一番ひっかかるだろうということなのです。その辺が混同されて大騒ぎになったのでしょう。

○福井座長 田中先生、どうぞ。

○田中構成員 大騒ぎになった理由は個人的なあれで、全国医学部長病院長会議ではないのですけれども、2つあると思うのですね。

 1つは、各大学でもっと臨床実証を何とかしなければいけないと考えていた教育担当者の人たちがいたので、それはちょっと外圧としてうまく活用したかったという背景があったと思います。

 もう一つは、各大学の医学部長たちが、うちの大学は卒業してもECFMGを受けられないのだとなると、数は少ないかもしれないけれども、そういうものを目指している学生が来なくなるのではないか、そういう医学部の差別化みたいなことが起こるのではないかということを懸念されたということがあると思います。

 その2つではないかと思います。

○福井座長 実際今、1年間に何人くらいアメリカでプラクティスをやっているのか、やるための試験を向こうで受けているのかというデータはあるのでしょうか。

○田中構成員 非常に少ないです。私もそれを調べたことがあるのですけれども、非常に少なくて、何十人のオーダーだと思います。

○福井座長 そうですよね。

 ほかにはいかがでしょうか。

 高橋先生、どうぞ。

○高橋構成員 今の話題にもちょっと関係するかもしれないのですけれども、共用試験が施行されて、Student Doctor制度は普及してきていると伺っております。まだ完全に取り組んでいない大学もあるかもしれませんが、私は市中病院にいるもので大学の状況は詳しくはわからないのですが、大学から見学に来た学生さん等のお話を聞くと、見学型臨床実習と何ら変わっていないというお話がありました。全国医学部長病院長会議では、なるべく参加型クリニカルクラークシップになるように、推奨等、されているのでしょうか。

○田中構成員 Student Doctorの免許を発行するというのはまだスタートしたばかりなので、その次のステップというところにはまだ至っていないと思います。ただ、私も全国医学部長病院長会議がその次のプランをどういうふうに考えているか把握していないので、調べてまた次回お答えさせていただきたいと思います。

 それから、どれぐらい診療参加になるのかということは、私の大学、つまり医科歯科大学については言えるのですけれども、各診療科で終えた学生たちの調査をしますと、診療科によって結構差があるのですね。比較的診療参加の度合いが高いのは内科とか小児科ですけれども、やはり外科は低いですし、産婦人科に至ってはもうほとんど見学型という状況がありますので、診療現場の実情によってということがかなり大きいのではないかと思います。

○福井座長 伴先生、どうぞ。

○伴構成員 先ほどの福井先生が言われていた情報は、お手元のファイル資料の102ページに載っています。

○福井座長 これはジャパニーズシチズンズというのはどういう意味ですかね。その数とグラジュエートの数が並んでいますけれども、ちょっとわかりにくいですね。

○伴構成員 日本国籍で日本以外の外国(米国以外の国)の医学部を卒業している人、海外から留学していて、日本の医学部を卒業してという人もいますよね。このようなことを勘案して、ジャパニーズシチズンズという表現で統計を出しているのだと思います。

○福井座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 よろしいですか。到達目標についてこれからディスカッションして行く上で、田中先生が示されたWFMEにのっとった日本版による認定をしていくと、今までの卒前教育で学生が身についていなかったようなものも卒業時には随分身につくようになって、今、研修で行われているプログラムに入っている項目をかなり省くことができるのでしょうか。つまり、今の到達目標をかなり卒前に落とし込める、そういうふうにお考えでしょうか。

○田中構成員 診療参加型認証実習は、医科歯科では10年ぐらいやっているのですけれども、どんどんレベルを上げようとしているのですけれども、研修の部分が落とし込めているかというと、常に立ちはだかるのは処方権がないということなのですね。薬が出せないというのは、医療行為のプロセスとしては最終段階ができないということになりますので、例えば診察手技とか、そういう部分については下におろすことはできるけれども、なかなか難しいのではないかなと思います。例えば、糖尿病の診療をするといっても、糖尿病の治療の部分が欠落した状態だと、それは研修と同じ内容とはちょっと言いがたいのではないかと私は思います。

○福井座長 どうぞ、古谷先生。

○古谷構成員 クリニカルクラークシップを導入していく中で、今、田中先生のおっしゃったような教育システムを構築するためには、研修医が教育スタッフ、教育のメンバーとして後進を育てるという意識がないと、なかなか難しい部分があると思うのですけれども、そういうことに関しての目標設定も今後必要になってくる可能性があるのかなと思うのですけれども。

○福井座長 いかがですか、田中先生。

○田中構成員 それは本当にそう思います。結局、先ほどの神野さんのお話にもつながるのですけれども、医師を、あるいは医学生をみんなで育てるという意識が大事で、それは地域のドクターももちろんそうだし、ちょっと先輩のドクターもそうだという意識がやはり大事なのではないかと思います。

○福井座長 どうぞ。

○古谷構成員 例えば今の研修医が学生教育にもし参加するとすると、それは研修のプログラムの中に明記されていないと、場合によってはそれは業務外という判断をされてしまうのではないかという危惧が多少あるのです。別に普通にやっていいのですよということであれば、それでいいのですが、現状がどうなっているのかどなたか御存じでしょうか。

○福井座長 田中先生、どうぞ。

○田中構成員 法的な見解となると、こちら側にいらっしゃる方にお伺いするしかないのですけれども、現実的には、医科歯科大学では、研修医が例えば8人の患者さんをもっているとしますと、学生がそのうちの2人ぐらいの患者さんをもちますが、その退院サマリーは学生が書きます。書いたものを研修医が直して、研修医の名前で退院サマリーとして電子カルテに搭載するという形をとっていますし、入院のプレゼンテーションも、学生がやって研修医がコメントするみたいな形をとっていますので、研修医にとってみると、少し仕事を肩がわりしてくれるのでありがたいみたいなところがあって、その分教えてほしいわけですけれども、研修医のほうで教えるスキルというのが十分身についていないので、研修医のオリエンテーションなどで学生の指導法ということで少し時間をとっているのですけれども、まだまだ十分なレベルには達していません。

○福井座長 小森先生、どうぞ。

○小森構成員 ありがとうございます。

 卒前教育に主に携わっておられる方々の中で、医師国家試験を改善して診療参加型臨床実習をどんどん濃密といいますか、よくしていくのであるので、現在の医師臨床研修制度の2年間の到達目標のうち相当数は整理でき、それを極端と言っていいのかどうかは別ですが、1年でも十分ではないかと主張される方もいらっしゃることは先生おわかりだと思いますが、そういう形で整理でき得るものなのか。同時に、専門医制度についても、よりゼネラルなトレーニングの期間を長くしようということになると、何かゼネラルな研修をする期間がすごく長くなってしまうということがいいのかどうかという問題もあろうかと思うのですけれども、その卒前教育を充実させることによって、初期臨床研修制度の2年間のうちの整理できる部分、特に到達目標等についてはそういうことはあり得るのかどうかというのは、先生の私見でも結構ですから。

○田中構成員 これは本当に私見になりますけれども、そもそも臨床研修の到達目標をどうするかというのがこのワーキングの課題だと思うのですけれども、今のまま全く修正しないで、それを1年に短縮するというのは非常に難しいと思います。国家試験のあり方を変えて、例えば全国共用試験をミニ国家試験みたいにして、それに合格すれば一定の条件下で処方権も認めるとか、そういうふうにすればできると思いますけれども、それをしない限りは1年にすることは非常に難しいと思います。もちろん到達目標を大幅に整理すれば、それはまた別の話だと思います。

 それから、ゼネラルな期間が随分長くなるようだということなのですけれども、それも含めて、要するにこれからの医療制度の中で、ゼネラルな範囲というのはどこなのかということが議論されて、それでその長さが決まってくるのだろうと思います。非常に幅広い医療基盤をみんなが持っていなければいけないという議論になるのであれば、十分な長さが必要ですし、いやそれは本当にミニマムでいいのだという話になれば、この医療資源が非常に少なくなっているので、ゼネラルな期間を短縮する方向で議論が行われるべきだろうと思います。

 ただ、個人的には、これだけ高齢化が進むと、一定程度のゼネラルな基盤は誰であっても必要であろうと思っています。

○福井座長 高橋先生、よろしいですか。

○高橋構成員 先ほどの話に戻るのですけれども、臨床研修のチーム医療研修は非常に重要だと思います。チーム医療のチームの相手は指導医と研修医だけはなくて、看護師も患者さんの家族も、あるいはそのほかのスタッフも入っておりますので、学生もその診療チームの一員としての学習、いわゆるクリニカルクラークシップをやるのであれば、それが入っているような記載方法、そういったものをすると全然問題ないのかなと、古谷先生のお話では感じました。

 あと、今のお話なのですけれども、一般市中病院で臨床研修をやっている者とすれば、卒前教育がどんどん改善されて、現在ある到達目標が卒前のほうに移行するのであれば、それは非常にいいことだと私は思います。そうなれば、さらに上のレベルの目標、コンピテンシーと言ったほうがいいのかもしれませんが、それを掲げることができます。これは卒前のほうでどの程度取り込めるかによって変わってくるものではないかなと思います。

○福井座長 よろしいですか。

 伊野先生、どうぞ。

○伊野構成員 先ほどの古谷先生のお話に戻るのですけれども、そもそもDoctor is A Educatorという視点が日本の指導医のレベルから薄いのではないかと思っています。ですから、後進を教えるのだったら教育手当を出せみたいになっていらっしゃって、何かプロフェッショナルの中にそういう教育者としての医者という目標があれば、それを到達していくというところで研修医さんにも勧められるのではないかと考えました。

○福井座長 中島先生、どうぞ。

○中島構成員 時間過ぎていますが、根本的なことは幾らでも言いたいのですけれども、1つだけ枝葉末節なことを申し上げます。処方権がないことがいろいろな障害になっていると言われましたけれども、この処方権がStudent Doctorなりクリニカルクラークシップに与えられると、患者さんはその病院に行かなくなりますよ。自分が行くことを考えてください。学生に処方なんかしてもらいたくない。きちっとしたmini-CEXですか、こういうものが機能している中で処方について関与をするのはいいでしょうけれども、「権」はだめですね。その点、よろしくお願いいたします。

○福井座長 臨床実習のことで、だんだん当時の関係者がいなくなってきているものですから、ここで発言させていただきます。平成3年に臨床実習検討委員会の報告書が出ていて、4つの項目を満たせば、医学生は手技的なことも含めて臨床実習をやっていいという報告書が出ています。その4つの項目というのが当時はほとんどの大学でクリアされていなかったのですけれども、今はかなりクリアされてきています。

 1つは、一般の人と違って、医学生が医学知識を十分持っていることを担保すること、これはCBTでクリアされました。2つ目が、患者さんに、医学生が診療に加わるということをインフォームすること、これも当り前のようにやられています。3つ目が、危険な手技でないこと、これも当然です。4つ目が、必ずスーパーバイザーがつくこと。

 この4つ目が現場では当時から結構問題になって、何かあったとき自分が責任をとらなくてはならないというのは嫌だとか、いろいろ現場からの反発もあり、当時CBTもなかった状況で、報告書が出されて10年以上たって、これが臨床実習をよりクリニカルクラークシップの方向に促したかどうか調査もやったのですけれども、全くだめでした。クリニカルクラークシップのほうに動いていなかった。

 でも、最近は随分状況が変わってきて、あとは指導医というか教官のマインドセットではないかなと思っています。そうすれば、今の到達目標をもっと卒前教育に落とせるのではないかと個人的には思っています。

 それでは、時間のこともございますので、続きまして、評価等の取り組みといたしまして、最初に伊野先生からプレゼンテーションをお願いいたします。

○伊野構成員 ありがとうございます。

 今日は、私たち聖マリアンナ医科大学の評価ということで、ポートフォリオを紹介させていただきます。皆さんのクリアファイルに、ポートフォリオに入れるmini-CEX、図解したポートフォリオの活用、修了評価、あとはポートフォリオの用紙、これはダウンロードするものですけれども、それらを見本としてお配りしました。

 平成16年から制度が始まりまして、いろいろな御意見があると思うのですが、神奈川の小さな医学部としてはそれ以前からすでに研修医数の減少は始まっていました。何も臨床研修が始まったから大学から研修医がいなくなったわけではなく、もう大学の制度疲労なのか、医局制度の問題なのかわかりませんけれども、年々減っていました。そこで、研修センターという研修医を中心に回っていくようなシステムをつくって、何とか若いお医者さんたちをバックアップしようという取り組みが始まりました。

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 そこで、研修医の質をどう考えるかということでどのように評価をするのか、ということを考えました。到達目標として症例数と必修期間がありますが、それをクリアしましたということは、何を評価しているのだろうかという議論がありました。

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 そして、修了に至るプロセスや、普段の態度やスキル、成長の過程を評価したいという熱い思いがございまして、そしてどんな評価法が妥当かといったことを勉強しまして、ポートフォリオにその当時、1213年前ですが、行き着いたという経緯がございます。

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 ポートフォリオには3つのタイプがあるそうで、私どもは基準準拠型ポートフォリオという、評価対象とするパフォーマンスの種類と数と評価基準を決めて、それに沿ってポートフォリオを評価する形をとりました。

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 先ほど、ミラーの三角はもう出ましたので、そこ(dose)にエビデンスがある評価法として紹介されているところに、mini-CEXとポートフォリオがありましたので、それらを導入しました。

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 プロフェッショナルというのは「振り返り」が大切です。経験のしっ放しではなく、それをどう振り返って、どう次に生かしていくか、そういったことでプロフェッショナルは育っていくのだと言われております。その「振り返り」をぜひ強化したい、そういう気持ちもございました。

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 そういった学習ツールとして、自分で計画を立てて、自分で自分をモニターする、自己分析をする、それから経験を食い散らかさない、そういったことを研修医さんと共有してポートフォリオを作って行った、そういう経緯がございます。

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 こういったもの、いろいろな挟み込む証拠も収集していきます。ポートフォリオはそれ自身は「紙挟み」という意味ですので、そうやってどんどん記録を挟み込んでいきます。

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 卒前ではPBLや、一部の臨床実習でポートフォリオを活用しております。

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 では、研修ポートフォリオの実際として、まず大きく分けて目標、省察、それから評価、証拠というところでどういうものがあるか説明します。

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 目標としてはローテーション表と行動目標、それから診療科別の研修目標を最初に立てて、それからここにあります評価、後で評価については全部御説明しますが、いろいろな評価も挟み込む。それから、その間で起こる自分の振り返り、省察のものも共有したり、自分で振り返ったりする。あとは証拠となるもの、患者さんの記録用紙、レポート、それから教育的な行事への参加記録、CPCレポート、あとは学会など自分が参加したものなど、どんどん、まずはそこに挟み込みなさい、それがあなたたちの歴史だよと言ってまいりました。

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 こういったものが入って、紙挟みに一つにまとめられる。それで実は何冊もできてしまうのですけれども、後でこれは凝縮ポートフォリオとして1冊にまとめるという作業を最後にいたします。

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 研修医ルームにラックがありまして、自分たちのものが入っています。ここは研修医と指導医だけが入れるスペースで、自由に人のポートフォリオも見られるし、お互いに評価し合ったり、そういうこともできるようにしましょうね、という環境を整えました。

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 まずオリエンテーションのときに自分のキャリアやデザインを描きましょう、ということで、グループワークをして、このように指導医たちをつけています。多分どこでもやっていらっしゃることだと思います。

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 各診療科から、ここに来たらこういう目標が達成できるよというのをまず作っていただいて、それをもとに研修医さんたちが自分に合ったキャリアデザインで、自分のスケジュールを決めていきます。できるだけ自分が考えたスケジュールで研修できるようにと、オルガナイズが大変なのですけれども、出来るだけ希望に沿っているつもりです。ここで必ず自分が将来どんな医者になりたいのか、そのためには2年後にどんな医者になっているべきか、つまり2年後のゴール、そういったものを自分の言葉で書いてもらうということをしています。そして、それを指導医と共有します。

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 それから、経験目標と達成度を、これは診療科ごとに評価していくのですが、ちょっとこれは古いので、現行の表ではここに日にちを書くのではなくて、形成評価を2回と自己評価と、最後に総括評価が書かれるようになっています。今はエクセルでプルダウンでネットからとれるようになっておりますので、もうちょっと簡便なものになっていると思います。

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 これは患者さんの記録用紙です。これにサマリーをつけてもいいし、しっかり書いてくださいという用紙です。こちらは自己の振り返り用で、適宜自分が気がついたときに書き留める用紙として自己ポートフォリオの用紙があります。

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 あとは、mini-CEX、先ほど田中先生が御紹介くださいました。皆さんのお手元にありますようにポケットに入る小さい複写版で、現場で1520分ぐらい、手技や患者さんの面接などを研修医が実践して、それを指導医がチェックして、それで2人で後でフィードバックをして共有する。1枚は指導医に、1枚は研修医が自分のポートフォリオに挟み込む、そのようになっております。年に4回以上としてあります。実は各診療科で1回以上と思っていたのですが、なかなか温度差があって、研修医に負担がかかってしまうので、少し緩めにしております。

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 それから、研修医の成長段階です。RIMEモデルを使っております。ReporterからInterpreter、それからManagerEducatorと研修医は成長していきます。2年間に4回RIMEモデルに沿って評価をしてもらいます。今、自分がどのレベルにいるのかというのを指導医と一緒に評価してもらいます。これは逆に言えば、レポーターのレベルである人に、マネージャーの能力を求めたりなど、そういったむやみに多くを求めないような指導医になってくださいねという願いも込めています。

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 つまり、成長段階にある人たちなので、最初はReporterで、情報のよしあしもわからず全部持ってくるようなところがあるかもしれません。でも、Interpreterになってくると、情報をまとめて、そして自分で解釈をして持ってこられる。このように成長を見える化します。割合エデュケーターのレベルまでいける研修医も多く見てまいりました。

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 これがRIMEモデルの到達度評価表で、配付資料に実物の用紙がございます。

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 そして、これは省察の部分です。セルフアセスメントの用紙です。これは個人的な情報ですので、皆さんの資料には入れていません。実際私たちがセルフアセスメントを読んで、指導医側が教育されたということも多々あります。非常にいいアセスメントを書いてきて、例えばこれは在宅の研修医の振り返りなのですが、実に私たち指導医は在宅へ行っていないのです。ですから、ここから学んだことはとても多いです。私たちは襟を正した覚えがあります。

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 それからSignificant Event Analysisと申しまして、日々の臨床の中から特に自分の臨床にとって重要だと思うものを振り返る。自分にとって意味のあったイベントを自分で解析する。これも振り返って次の学びになるようなシートの構造になっておりますので、そこに書き入れて、そして共有するということをしております。

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 これは年に1例以上として、自分で振り返って、指導医からフィードバックをもらいます。ちょっとしんどい思いをした研修医には、指導医が寄り添って、気をつけてフィードバックをしているようです。

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 あとは、一般評価としてこのような評定尺度でいろいろな方から360度でやってほしいのですけれども、指導医や同僚評価になってしまうということが今の現実です。

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 それから、これは指導医評価、必ずローテーションが終わった後に指導医も評価してくださいということで、これ専用のボックスがセンター内にございます。

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 このように、ポートフォリオを節目で必ず評価する、それから自分のテューターとはもう少し小まめにポートフォリオを使いながら振り返りをします。経験して、それを整理して、そして評価して、自分の経験を再構築する、自分の成長を確認していく、そういったことになります。

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 これはちょうど検討会とフィードバックをしている状況です。

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 すみません、お時間が来てしまいました。

 ポートフォリオはそうは言っても問題点もございます。各研修医の意識の違いやレディネスの違い、レディネスが低いと目標設定が低くなってしまいます。それから指導医の負担、十分に時間が持てないことがあります。

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 それから、研修医側の不満としては、時間をかけて作成したポートフォリオをちゃんと読み込んでくれているのか、評価基準が指導医によって違うのではないか、適当に作成しても修了するのだったら、時間をかけて作成する気がなくなる、そういう意見も確かにいただいております。

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 これは指導医のポートフォリオ読み込みのために24時間開けてある部屋です。ポートフォリオを置いておいて、例えば当直帯だとか、時間のあったときに指導医が読み込みに来る、ある期間こういった場所も作っております。

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 以前は5段階の尺度評価をして、ポートフォリオを評価してまいりました。

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 この15項目においてです。後ほどご覧ください。

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H24年からはルーブリックを使って評価基準を作っております。ちょっとここは飛ばします。

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 以下の6項目で評価をしておりまして、評価表に指導医が丸をつけていくという形で、どのレベルにあるのかということを評価しております。

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 この評価表が煩雑だということで、今、係の者が新しいものに改訂しております。それから一つ一つに対して重みづけも必要ではないかということで、評価のパーセンテージを変えようと動いております。指導医の役割は後ほどお読みください。こういったことで、研修医の意見を参考にしたく、フィードバックをぜひ小まめにお願いしたいと考えております。

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まとめです。ポートフォリオをとおして省察の深さを問われていることが伝わって、指導医も共に育っております。研修医のレディネスの差や指導医の温度差が影響します。ルーブリック等の基準を指導医と研修医に明らかにして、共有することが教育的だと考えております。

また、ワークプレイスアセスメント、Mini-CEXなどとの組み合わせや重みづけなど、評価のデザインが必要だと考えております。

 以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 それでは、ただいまのプレゼンテーションにつきまして、何か御意見、御質問はございませんでしょうか。

 高橋先生、どうぞ。

○高橋構成員 丁寧な説明どうもありがとうございました。

 特に自己の振り返り、セルフリフレクションには非常にいいと感じております。

 指導医が研修医を評価する場合に、これを例えば全国的に展開することが労力的といいますか、時間的に可能とお思いでしょうか。実際の経験から教えていただきたいと思います。

○福井座長 どうぞ。

○伊野構成員 きっと原理的に厳密に言えば、大変難しいところもあると思います。ただ、これを簡便にして、わかりやすくして、できるだけ振り返りだとか、そういったところに焦点を当てたものを幾つか組み込むというのは可能ではないかと思っております。

○福井座長 これはスタッフとしては、どれくらいの人数で、教育の評価、研修の評価をされているのですか。

○伊野構成員 スタッフとしては、研修委員会と指導医全員なので、60名に対して100名以上います。ただ、テューターと各科の指導医がいまして、テューターとなる、コアになる方々は20名程度でございます。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

 それでは、テーマもちょっとオーバーラップしているところもありますので、古谷先生からプレゼンテーションをいただいてから、またまとめて質疑応答の時間をとりたいと思います。

○古谷構成員 今回は私が所属する東京慈恵会医科大学附属柏病院の研修教育と評価について、紹介させていただきます。

 当院は、研修医42名が所属しておりまして、先日のマッチング等で来年は32名の研修医が新規採用予定となっています。大学附属病院ではあるのですけれども、地域中核病院でありまして、市中一般病院としての位置づけが強い病院となっています。

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 今回は、ポートフォリオ評価の実例を中心に御紹介したいと思います。

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 当院のポートフォリオは、このようなバインダーです。ペーパーコンテンツを追加していくスタイルが基本となっております。

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 沿革ですが、新臨床研修制度の開始とともにEPOCを採用しておりましたが、より実効性の高い評価が必要ということで、平成20年よりポートフォリオシステムを開発し、導入いたしました。

 翌年からデータベースソフトを用いたe管理システムを併用しまして、また、労災病院等、多くの他病院からもこのポートフォリオシステムを採用したいということで、採用または部分採用をされております。

 平成24年にはEPOCは中止いたしまして、その後e-Portfolioを採用しまして、当大学の、柏病院以外の葛飾医療センターや、第三病院というところも包括的に採用いたしました。

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 ポートフォリオ採用の背景としては、まずEPOCへの不満が挙げられておりました。研修医からは、ABC評価をされても、どうよかったのか、もしくは何を改善すればいいのかが見えてこないという意見が多数あり、パフォーマンスの改善に寄与しないということでした。

 指導医からも指導の改善、研修システムの改善に役立たないのではないかという意見がやはり多くありまして、労力に見合った成果が得られないから、何とかならないかということがありました。

 また一方、管理業務に関しても、例えば32通の症状疾患外科剖検レポートが、1学年25名とすると800通のレポートが研修医と指導医の間でやりとりされます。そのために遅延であるとか紛失というトラブルが続いたりして、評価が難しくなるということで、そういうことも踏まえて新しくこのポートフォリオシステム導入に至ったことになっております。

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 ポートフォリオとは、先ほどもありましたように、このような紙挟みのことを言います。そして、ポートフォリオ教育とは、ポートフォリオの中に入れられた多くの情報を省みることによって、学習者自身が発見し、成長するものを意図した教育手法のことを言っております。

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 したがいまして、「眺める」「まとめる」「発見する」「改善する」といった学習段階があります。しかしながら、研修医が日々忙しい業務であるとか学習を行っていると、このまとめるという作業、先ほどの伊野先生のは凝縮ポートフォリオという名前がつけられていましたけれども、まとめるという作業が非常に煩雑で、これが難しいということになっています。こういったことが、このポートフォリオ教育の実はボトルネックになっている例もしばしばあります。

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 そのため当院では、このまとめる作業を省略するために、まとめなくても眺めるだけで発見できるコンテンツデザインを採用し、それからポートフォリオ面談というのも実施することによって、発見と改善を促すことといたしました。

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 研修医が成長し、改善していくためのステップとして、まず目標を持つこと、それから学習をすること、そして評価されることがあります。それを踏まえて、次のようなコンテンツといたしました。

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 まず、目標のコンテンツですが、研修開始のオリエンテーションで目標とする医師像を記載していただきます。もちろん学習の進捗によってこういうものは変化していきますので、その都度書き加えていくというふうにしております。

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 また、各年度の初めに、この1年間の目標、年間目標というものも立てるようにしています。

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 さらに、診療科配属ごとに短期的な目標を記載していきます。

 これは、各科の所属長も見ていただくようになっています。

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 次に、最も重要なコンテンツであるフィードバックです。研修医自身が書く自己フィードバックで、最初の考えと思い、うまくいったこと、うまくいかなかったこと、こんなふうにすればよかったかもしれないこと、行動計画、そして科への要望という記載欄を設けて記載してもらっています。

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 さらに、これは指導医からのフィードバックレポートです。これからも続けてほしいところ、もう少し努力してほしいところ、気になったところ、改善したほうがよいところ、次のステップへの具体的なアドバイスといったものの記載欄となっています。

 これらの2つのレポートは、研修期間の長短にかかわらず、毎月提出されることになっております。

 もともとは看護師からとか360度を目指していたのですけれども、適切な評価が必ずしも得られないということで、現在自己評価と指導医評価に絞っている状況です。

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 さらに、先ほども紹介がありましSignificant Event Analysisなども重要なフィードバックとなっております。

 これをもとに、時々SEAの会なども研修医の間で開いたりすることもあります。

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 また、当院では毎週このような研修医による研修医のための勉強会を行っております。(PP

 そのため、発表研修医に対する参加者全員からの評価アンケートというものをこういうふうにつくっており、重要なフィードバックコンテンツとして収載されます。

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 次に、手技に関するものです。これは、当院の手技実施基準となっています。こういったものも載せておりますけれども、ここにありますような習得記録、こういったものも重要なポイントとなっております。

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 このレインボーカラーの部分が必要見学回数となっていて、例えば白内障の手術では、30回見学したら、次は豚眼でトレーニングしましょうねというスタイルになっています。

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 診療経験の集積も重要なコンテンツです。主に患者サマリー、それから症状疾患外科剖検レポート、これは32個の必修目標というところですけれども、こういったものが対象になっています。

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 これが現在の症状疾患外科剖検レポートであって、ウエブ上で入力して提出されることになっています。

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 それに対して、このような形で指導医から評価、フィードバックを受けます。これもウエブ上で指導医が入力して、レポートとともに印刷されて、研修医に印刷物が返却されるという形をとっています。

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 そのほかとしては、このような資料、紙コンテンツがどんどん追加されていく形になっています。

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 そして、このようなポートフォリオが研修医の手元にあることになります。

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 さて、当院のポートフォリオは、紙媒体にこだわってきました。ポートフォリオで最も重要なポイントは閲覧性でして、ぱらぱらとめくるたびに、また新しいコンテンツを紙でぱっと挿入するたびにめくれて、ぱらっと見えてくるということが非常に重要なことです。情報が目に飛び込んでくるということが重要になっています。

 例えば、パソコンのデスクトップであると、その資料を何年も開かないでいるファイルとかが皆さんも多分あると思うのですけれども、意外と開かないものですので、この紙ファイル、紙媒体にこだわっています。

 また、手書きであること、これも重要な伝達要素と考えております。

 紙であるため、年度ごと、施設ごとに容易に構成を変えられたりできます。

 一方、保存性、それから再現性、管理機能、搬送中の紛失など、そういった問題点も挙げられます。このため、現在はe-Portfolioを併用しております。

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e-PortfolioMasterといわれるものは全て研修医が紙媒体で持っている。これがMasterということになっています。しかし、病院等で保存すべきもの、それから紙媒体の管理が難しいもの、こういったものをKey Contentsとして、e-Portfolioで保存・管理することとしています。

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 まず、目標とフィードバック、これが重要な設定したKey Contentsです。これらは、スキャナーにより登録されて、ウエブ上で進捗管理が研修医自身、もしくは管理者ともにできるようになっております。

 次に、症状疾患外科剖検レポートは、先ほど提示しましたように、研修医による記載・登録・進捗管理、そして指導医による評価など、これは全部ウエブ上で行って、最終的にプリントアウトしたものが研修医のところに返却されていくことになっています。

 さらに、研修医カレンダーというものも実装しております。

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 これは、研修医の目標とフィードバックのウエブ画面です。進捗状況がわかるように、このようになっております。

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 これは、研修医の症状疾患外科剖検レポートの管理入力画面です。一番上に、今どれぐらい進捗しているか、何通レポートが出て、何通合格しているかというのが出ています。

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 これは、研修医カレンダーです。カレンダーなので、研修医に必要な予定とか、この会に出てくださいねというのが書かれているのですけれども、これがあることによって、研修医が毎日このe-Portfolioを開けて、自分の進捗管理が自然に目に入ってくるという仕掛けをつくっています。

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 さらに、研修の改善のためには、ポートフォリオ面談というのとポートフォリオによるシステムフィードバックが重要と考えています。

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 ポートフォリオ面談は、年1~2回定期的に行われます。

 まず、研修上の問題点の把握と解決が最も重要で、そして、進捗状況の管理やアドバイスなども行っています。それから、当直回数や労働時間などの過重労働や医療安全に関する話し合いなどもその場で行っています。

 さらには、研修改善の提案、それから研修科の問題点などについても意見を聞いています。

 指導医や上級医になかなか言えないこともいっぱいありますので、また科の評判が悪くなるポイントというのは、研修医だけではなくて研修科にとっても重要な問題にもなりますので、これは重要です。

 また、任意面談では、迅速に対応すべき問題が挙がってくることがしばしばあります。

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 これは研修医のフィードバックレポート、先ほどの自己記載のフィードバックのところに書かれていた内容です。結構ひどい内容ですけれども、これを見た瞬間、緊急対応が必要と考えまして、当該研修医に連絡の後に、所属長と話し合いをして、原因を追究しました。当該指導医の過重労働が原因だったようですので、所属長と話し合って、労働状況の改善をすることで、一応48時間で解決に導いていったという例です。

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 このように、緊急性の高い内容の早期解決にも非常にインパクトのあるものでした。

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 この2つの記載は、例えば緊急性はないのですけれども、解決すべき問題点として所属長に連絡をして、解決に導いていっております。

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 こういうふうな対応をしておりますが、このような問題点を丁寧に解決すると、最初導入した数年で激減していくという成果を見せています。

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 その他、研修改善のためには、ここにありますような研修協議会、これは研修医全員と院長、それから指導医などが集まる会を2カ月に1回つくったり、あと研修医だけで研修改善のためのワーキンググループという研修医ユニオンみたいなもの、こういったものを毎月開いたりとか、それから2年目の修了時には、研修修了試験、やはり病院としてちゃんとした研修医を送り出すための責任がありますので、研修修了試験を行って、特に医療安全に関する項目に関しての試験を行って、認識を促したりしております。

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 まとめですが、従来評価への不満解決、それから管理業務への軽減ということを目標に、ポートフォリオを導入いたしました。

 研修医、指導医、それから事務、管理者の全てにとって負担が軽くなる、そういう効果を狙っております。

Master contentsは研修医自身の紙媒体として全てを保管することになっておりますが、Key contentsは病院が電子化により保存し、管理性を強化いたしました。

 研修医のパフォーマンス改善や、システム改善にも十分寄与することが期待され、実績を上げております。

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 ポートフォリオの導入は簡便でした。特に紙ポートフォリオは簡便です。病院ごとの実情に合わせて構成の変更等が容易なため、実情に合わせてつくっていくことができました。

 他病院への導入も非常に簡単に行うことができました。

 また、e-Portfolioは、Key contentsの保存性のみならず、研修医の進捗管理、自己管理の簡便化にも役立っており、インパクトがありました。

e-Portfolioは多施設統括、一つの病院にセンターを置いて全体で管理をするということが可能であり、管理業務のさらなる軽減が可能と思われました。

 以上です。御清聴ありがとうございました。

○福井座長 ありがとうございます。

 それでは、古谷先生のプレゼンテーションと伊野先生のプレゼンテーション両方につきまして、残り10分くらいで質疑応答をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 高橋先生、どうぞ。

○高橋構成員 伊野先生にお伺いしたのと同じような形になりますけれども、古谷先生にお伺いしたいのは、ウエブ上でe-Portfolioの進捗閲覧をされて確認をされているそうですが、いつ何人ぐらいのどなたがやられているのか、決まってなされているのかどうか教えてください。

○古谷構成員 閲覧を誰がするかですか。

○高橋構成員 そうです。

○古谷構成員 閲覧は研修医がやりますので、ほぼ毎日見ています。

○高橋構成員 指導医、あるいは指導者が時期を決めて閲覧するということはないのですか。

○古谷構成員 指導医は時期を決めては閲覧をしません。これは、研修医が回ってくるときに、その研修医がどんな目標を書いているのか見られるようになっていたり、もしくはレポートを書くときに、前回この研修医にどんなフィードバックレポートを書いたかがわかるようになっていたりというふうになっています。ですので、必要なときに指導医が自分のパスワードでログインして、そこを見ていくという形をとっています。

○高橋構成員 進捗状況というのは、今までの経過と今後どういうプログラムを調整しようかなというときに、指導医が確認すると。

○古谷構成員 そうですね。新しく来る研修医をどうしようかとか、そういうときにも使っていきますので。

○高橋構成員 そうすると、進捗状況が、例えば必修項目とかの到達状況、あるいはレポートの提出状況が足りないという判断はどなたがされるのですか。

○古谷構成員 レポートの提出状況に関しては、研修医が自己管理をしておりまして、毎回の研修医も出席する研修管理委員会の中で、誰がどれぐらい進捗しているかという紙はちゃんと出るようになっております。

○高橋構成員 わかりました。ありがとうございます。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

 田中先生、どうぞ。

○田中構成員 古谷先生にお伺いしたいのですけれども、EPOCをやめて負担軽減になったのですかね。

○古谷構成員 かなり軽減されました。まず、一回の紙を書くのを指導医は10分程度で書けますし、しかも担当した指導医が直接書いていって、自分の指導医の名前で書いていきますので、一度も見たこともない診療部長が書くということかがなくなりました。そういった意味では、診療部長が困って書くということもなくなりました。負担としてはすごく少なくなったと思います。いわゆるABC評価のAはよくできたこと、Cは余りできなかったこととして、ちゃんと研修医にフィードバックされますが、Bの、真ん中のことは余りフィードバックされない傾向があることは確かですけれども、そういったことで研修医も見て楽しめて、自分で解決をしていきながら、自分のステップアップができるという点では、教育的でもありますし、負担軽減にもなっているということになっています。

○田中構成員 例えば、今、臨床研修は必修項目というのがあります。そういうものが本当に修了しているかどうかというのは、どうやって確認されるのですか。

○古谷構成員 必修項目はレポート提出を義務づけておりまして、一つ一つのレポートに関しては全て専門指導医をうちで決めています。例えば、感染症だったら感染症内科のドクターというふうにして、その人が専門家の目で見て、ある一定のレベルに到達しているかということで、何回もリバイスを出して、そして評価していく。すなわち、その必修項目に関しては、少なくともある一定のレベルをキープしようという病院の責任としてやっているという感じです。

○福井座長 高橋先生、どうぞ。

○高橋構成員 その必修項目についてなのですけれども、B疾患とか、その他の手技、実技で経験することの必修になっているものもレポートで出されているのですか。

○古谷構成員 それはレポートでなくて、例えば手技に関しては、各手技の勉強会とかがあるたびに、例えばちょっと実技試験という形で評価したりということはあります。それは、フィードバックレポートの中に入ってくることはあります。

○福井座長 評価のことについてですので、前野先生、いかがですか。

○前野構成員 お2人ともすばらしい発表で、うらやましいなと思いながら聞いていたのですけれども、ちょっと現実的な質問をさせていただきたいのですが、聖マリアンナと慈恵医大のほうで、何度促しても書かない研修医というのはいないのですか。なかなか書こうとしない人とか、あるいは何度促しても書こうとしない指導医はいらっしゃらないのでしょうか。

○古谷構成員 何度促してもというところまでいくといないのですけれども、やはり書くのが遅い指導医、書くのが遅い研修医というのはいます。ただ、定期的にリマインダーメールを事務のほうから送るようにしておりますので、余り出ないと、病院全体の会議、診療部会議でその人たちが指名されますので、そういう恥ずかしい思いもしないようにということで、意外とちゃんと皆さん書かれています。

○前野構成員 あと、院外研修といいますか、基幹型でないところで研修する期間の場合はどういう扱いになるのでしょうか。

○古谷構成員 慈恵では同じです。そこの機関にレポート用紙を送って書いてもらって、むしろそちらのほうが返却が早いという感じになっています。

○伊野構成員 地域医療も、私どもも同じで、研修医がポートフォリオを持っていて、自分の目標と、そこでやりたいことを先生と相談し評価をしてもらいます。おっしゃるとおり、先生方はとても熱心に書いてくださいます。

○前野構成員 ちょっと後ろ向きな質問で申しわけないのですけれども、全国的に展開可能だと思われますでしょうか。ちょっとその辺コメントをいただきたいなと思います。

○古谷構成員 私は可能だと思っています。e-Portfolioを導入してセンター管理をすることで、複数の病院を一元的にある程度e-Portfolioを導入することができますし、紙媒体は簡単ですので、導入そのものは可能です。

 あとは、運営の問題ですので、運営のいろいろなチップスもこちらに蓄えておりますので、そういうものは惜しげもなく公開していっていますので、実際にうちのスタイルで、例えば労災病院とかで幾つか採用してもらっているところには、そういう形で提供させてもらっています。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

はい、どうぞ。

○伊野構成員 先生と前にMini-CEXのことでお話ししたときに、質を問うものでは、やはりどんどん表面的になって形骸化するのであれば、意味がなかったり、悪いほうにいくのではないかというお話もあって、私はすごくそれを考えました。それから、古谷先生がおっしゃるように、eポートフォリオなどで展開するのであれば、e化は有用だと思います。私たちはお金がなくてできないだけで、あればやりたいことは幾つかあります。

 それと、もう10年以上たっていますので、私たちの中でも同じようなことが起こって、「何でうちはこんなポートフォリオを出すのか」という不満がでました。それで、大ディスカッションになって、やはり黎明期は皆とても熱かったのですけれども、だんだん2代、3代となるうちに、その意味だとかそういうものがすごく薄れてしまい、ディスカッションをしました。

 そうしたところが、彼らが煩雑だと思っているのは実はこのABCDの評価表であって、ポートフォリオのSEAや、そういった省察するものに関しては残してほしいと言ったので、そこはちょっと希望が持てるかなと思いました。ちょっとお答えになっていないかもしれませんが。

 それで、この評価表を各科にワーキングチームをつくって短くしました。その科に特化したものだけがプルダウンで出てくるようにして、できるだけ研修医の負担感を、指導医の負担感を少なくしましたが、それでも先生がおっしゃるように、お尻を叩いて叩いてやっとする人もいます。ただ、そういう方々は評価点で1がつくのですね。1がつくと未修了になります。ですから、それを未修了のままとするのかどうするのかというのはあなた次第よということになるかと思います。それで未修了のままになった方はいらっしゃいません。

○福井座長 はい、古谷先生。

○古谷構成員 実は、症状疾患外科剖検レポートは32通ありますが、これはこういうシステムを導入したときに、研修医からひどいブーイングがありました。というのは、ほかの病院はサマリーを出すだけでオーケーなのに、何でうちは評価されるのだと。こんなの32個も書くのは大変だと言われました。

 でも、研修医には、研修医のオリエンテーションのときから、評価されないレポートなら提出しないほうがいいのではないかと。だったら、ちゃんと評価することを前提としたものをやっていかなければいけないし、君たちのレベルを担保していくことが僕らの病院としての使命だからそれは必要なんだよということで説明をしていきました。最初は抵抗も多かったのですけれども、そのうち皆さんちゃんと書くようになりました。

 ただ、2年で32通は確かに研修医にとって結構負担で、最初の半年はちょっと書けないとしても、1年半で書くと月2通書かなければいけなくなります。怠惰な研修医だと、1年以上書かない研修医がいるとすると、もう週に1通ずつ書かないと間に合わなくなる。そうすると、研修どころではなくなってくるので、本当に計画的にそれを進めていって、研修医にアドバイスをしたり、今これを書くようにしていったらどうかということを、ちょっとアドバイスしたりとかということをやっている状況です。

○福井座長 ありがとうございます。

 はい、神野先生。

○神野構成員 先ほど聖マリアンナの例で、このポートフォリオを特別なところに置いてという話があったのですが、私のところは小さな病院だし、研修医の数も少ないのであれなのですけれども、一応私どももポートフォリオシステムでやっていて、逆にほかのドクターたちにさらされる場所というか、医局のラウンジみたいなところに全研修医のポートフォリオを置いてあって、ドクターたちは誰でも自分のところの研修医が何をやっているか見るというシステムにしているのですけれども、個人情報の話なのか、特別な場所で特別な管理をされるというのは何か意味があるのでしょうか。教えていただきたいと思います。

○伊野構成員 ありがとうございます。

 それほど深い考えがあったわけではなくて、研修ラウンジをつくったときに、研修医がリラックスできるところにしようということで、一応テューターと研修センターとして登録している医師、指導医たちと研修医しか入れないラウンジを作った、そこにポートフォリオが置いてあるということで、先生がおっしゃるように、ほかの方がいてもいいのではないかとも思います。ただ、SEAの扱いだけ気をつけて欲しいと思います。

○福井座長 はい、どうぞ。

○古谷構成員 ポートフォリオはうちの病院では個人情報として扱っておりますので、公共の場には置かないというのが基本になっております。個人でちゃんと管理して、自分で公開したい場合は、他人が見られるところに置いておいてもいいですよという形で置いてありますので、どちらかというと、公共のみんなが見られる、他人が見てしまうということは余り好ましくないかなと思って、うちは管理しています。

○福井座長 ありがとうございます。

 はい、中島先生。

○中島構成員 このポートフォリオというのは、卒後の研修にもうまく使えば使える方法になるのではないかと思うのです。どういうふうに使うか、どうやって全国でみんなが使えるようにするか、そして使う以上は何かを落とさなければいけないということですね。ここまでの検討が今後必要なのではないかと思いました。

○福井座長 慈恵医大の本院で使っていない理由は何かあるのですか。

○古谷構成員 本院で使っていない理由の一番は、導入がやはり分院より本院の方が慎重なためです。本院は一番研修医の数が多い施設なので、実験病院としての性格の強い柏病院で初めに導入して、そこからうまくいったら他の分院に導入しましょうと。そのうまくいくという前提が、実はEPOCを外してできるかどうかというところだったので、EPOCを外してうまくいったこともあり、導入をすすめ、次の段階として本院で導入する予定になっております。

○福井座長 導入する予定だそうです。

 ありがとうございます。ちょうど時間になりましたので、本日はこれで予定したヒアリングを終了としたいと思います。

最後に、事務局より今後の予定等について説明をお願いします。

○吉本医師臨床研修専門官 次のワーキンググループにつきましては、12月2日で先生方に御相談しているところですが、詳細につきましては、また近くなりまして改めて御連絡したいと思います。

 本日はありがとうございました。

○福井座長 それでは、これで本日の会議は終わりたいと思います。

 ありがとうございました。


(了)

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