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2015年10月29日 第1回透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会 議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

10月29日(木)18:00~20:00


○場所

共用第8会議室


○出席者

委員

荒木 尚志 (座長) 石井 妙子 大竹 文雄 岡野 貞彦 鹿野 菜穂子
小林 信 高村 豊 土田 道夫 鶴 光太郎 徳住 堅治
斗内 利夫 中村 圭介 中山 慈夫 長谷川 裕子 水島 郁子
水口 洋介 村上 陽子 八代 尚宏 山川 隆一 輪島 忍

○議題

透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方について(意見交換)

○議事

○松原労働条件政策推進官 

時間より少々早うございますけれども、委員の皆様、おそろいでございますので、ただいまより第1回「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 委員の皆様方におかれましては、御多忙のところ、本日お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 本検討会の進行につきましては、座長が選出されるまでの間、事務局において議事進行を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず、本検討会の開催に当たりまして、労働基準局長山越より御挨拶を申し上げます。

○山越労働基準局長 

労働基準局長の山越でございます。

 委員の先生方には、大変御多用のところ、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。検討会の開催に当たりまして、一言だけ御挨拶を申し上げさせていただきたいと思います。

 本検討会は、本年6月に閣議決定されました「日本再興戦略改訂2015」及び「規制改革実施計画」に基づきまして、透明かつ公正、客観的で、グローバルにも通用する紛争解決システムなどの構築に向けた議論を行い、検討することを目的として設置されたものでございます。

 労働紛争解決システムにつきましては、個別労働関係の紛争が増加傾向にございます。そうした中で、民事訴訟などの一般的な司法手続に加えまして、個別労働関係の紛争解決制度でございますとか、労働審判手続なども整備されてきているわけでございますけれども、その一方で、さまざまな課題も指摘されております。

 本検討会では、人材の有効活用や個人の能力発揮に資するとともに、中小企業労働者の保護を図り、また対日直接投資の促進にも資するよう検討を進めていただきたいと考えております。

 具体的には、開催要綱にもございますけれども、次の2点について御検討をお願いしたいと考えております。

 1点目は、既に制度化されております雇用終了をめぐる紛争等の多様な個別労働紛争の解決手段がより有効に活用されるための方策でございます。

 それから、2点目は、解雇無効時における金銭救済制度の在り方、これは雇用終了の原因、補償金の性質・水準などでございますけれども、これと、その必要性についてでございます。

 委員の皆様方には、ぜひ闊達な御議論をいただきますようお願い申し上げます。

○松原労働条件政策推進官

 続きまして、御出席いただいております委員の皆様の御紹介でございますが、これにつきましては、大変恐縮でございますが、お手元に配付させていただいております参集者名簿をもちまして御紹介とさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 なお、本日、所用によりまして垣内秀介委員、小林治彦委員につきましては、御欠席でございます。

 続きまして、お配りしております資料の御確認をお願いいたします。

 資料といたしまして、開催要綱、参集者名簿と、八代委員より御提出いただきました資料でございます。その他は、参考資料となっております。参考資料No.1「労働紛争解決システムの概要と現状」、No.2が「議論の経緯」、No.3が「労働紛争解決システムに関する国内外の実態調査結果の概要」、No.4が「労働市場を取り巻く経済社会の動向等」、それぞれ資料ごとにとじさせていただいております。

 もし不足がございましたら、お申しつけください。よろしいでしょうか。

 次に、お配りしております本検討会の開催要綱について、私より御説明申し上げます。開催要綱をご覧ください。

 1.趣旨・目的につきましては、ただいま労働基準局長よりお話申し上げたとおりでございます。

 2.検討事項をご覧ください。検討事項につきましては、読み上げさせていただきます。

次の事項について検討を行う。

 既に制度化されている雇用終了をめぐる紛争等の多様な個別労働紛争の解決手段がより有効に活用されるための方策

 解雇無効時における金銭救済制度の在り方(雇用終了の原因、補償金の性質・水準等)とその必要性

でございます。

3.本検討会の運営でございます。

 本検討会は、労働基準局長が学識経験者及び実務経験者の参集を求めて開催させていただきます。

 また、本検討会におきましては、必要に応じ、参集される方々以外の学識経験者及び実務経験者等の出席を求めることがございます。

 本検討会の議事でございますけれども、別に本検討会において申し合わせた場合を除きまして、公開とさせていただきます。

 本検討会の座長は、参集者の互選により選出いたします。

 最後に、検討会の庶務でございますが、関係府省等の協力を得て、厚生労働省労働基準局労働条件政策課において行わせていただきます。

 要綱の説明は以上でございます。

 では、まず初めに、本検討会の座長についてお諮りさせていただきます。

 ただいま御説明いたしました開催要綱3.運営の(4)におきまして、本検討会の座長は、参集者の互選により選出するとさせていただいております。これに従いまして、座長の選出を行いたいと存じます。

 座長の選出につきましては、事前に事務局より委員の皆様方に御相談させていただきましたとおり、荒木委員にお願いしたいと考えておりますが、よろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○松原労働条件政策推進官 

ありがとうございます。

 それでは、荒木委員、座長席のほうに御移動をお願いいたします。

(荒木座長、座長席に移動)

○松原労働条件政策推進官 

それでは、座長に御就任いただきます荒木委員より御挨拶いただきたく存じます。よろしくお願いいたします。

○荒木座長 

東京大学の荒木と申します。御指名でございますので、司会役を務めさせていただきたいと存じます。

 今回の議題は、大変難しい、しかし日本にとって重要な課題だと考えております。幸い、各界を代表する皆様方に委員として御参集いただきましたので、皆様方の御意見を賜りながら検討を深めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○松原労働条件政策推進官 

ありがとうございました。

 それでは、カメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきます。

(カメラ撮り終了)

○松原労働条件政策推進官 

それでは、これ以降の進行につきましては荒木座長にお願いいたします。

○荒木座長

 それでは、本日の議題に入ります。

 本日の進め方ですが、3点ございまして、まず第1点として、この検討会の持ち方、進め方につきまして、委員の皆様に御確認いただきたいと思います。

 第2に、事務局が用意しました参考資料に基づきまして、事務局から労働紛争解決システムの現状や概要について説明いただき、その後、最後に皆様から御意見を自由に頂戴したいと考えております。

 それでは、まず第1点ですが、本検討会の持ち方、進め方につきましては、先ほど事務局から開催要綱について説明がございましたが、これについて何か特段御発言があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 村上委員、どうぞ。

○村上委員

 ありがとうございます。

 先ほど事務局から御説明いただきました開催要綱について、何点か確認させていただきたいと思います。

 1点目でございますが、検討事項です。検討事項においては、先ほどありましたように、「既に制度化されている雇用終了をめぐる紛争等の多様な個別労働紛争の解決手段がより有効に活用されるための方策」と「解雇無効時における金銭救済制度の在り方とその必要性」と書かれております。新たな金銭救済制度をつくるということが前提ではなく、その必要性の有無についてもこの場で検討していくということでよいのかどうかということです。そのように私たちとしては理解しているのですが、その確認をさせていただきたいと思います。

 それから、2点目でございますが、検討事項の上の趣旨・目的のところで、現行の紛争解決システムの課題が書かれておりますが、実際はこのような単純な実態だけではなく、さまざまな状況がございますので、紛争解決システムの現状について整理が必要ではないかと考えております。

 3点目でございますが、1点目の検討事項に関して、雇用終了をめぐる紛争といえば、解雇、雇止めに関する紛争処理だと思いますが、参考資料にもありますように、通常訴訟や労働審判、都道府県労働局のあっせんなどもありますし、簡易裁判所における民事調停などもございます。また、公的な制度ではないものの、労働組合による解決ということもございます。そのような現行制度において機能しているさまざまなシステムがあるので、実際にどのように機能しているのかという共通認識をつくることが必要ではないかと思っておりますので、ぜひそのような進め方をお願いしたいと思っております。

○荒木座長

 それでは、お尋ねのあった点について、事務局からお願いします。

○村山労働条件政策課長

 ただいま村上委員から御質問や御意見を頂戴しました点につきまして、お答え申し上げます。

 まず1点目でございますけれども、開催要綱の検討事項の2つ目のポツ、解雇無効時における金銭救済制度の在り方とその必要性となっているが、必要性と書いてある以上、これを新たに設けることを所与の前提とするのではなく、必要性自体についても議論するという前提でよいかということです。

 実は、この括弧で括った部分も含めた表現は、参考資料No.2にもつけている「日本再興戦略改訂2015」、先ほど局長から申し上げた閣議決定の文章をそのまま抜いているものです。その際、政府としても、委員からありましたように、必要性も含めて、この場で議論いただきたいということで決定したものでございます。一方、金銭救済制度の在り方について個別の論点も明記しており、その趣旨は、そうした点についても願わくば御議論いただきたいということです。

 それから、2点目でございますけれども、紛争解決システムの現状の整理をまず行った上での議論が必要ではないかという点につきましては、これはもとより座長の御進行のもとで、今後、議事の中で深めていただく点ではございますが、最初に座長からもお話があり、また先ほど資料の確認でも見ていただきましたように、この後、現行の労働紛争解決システムの現状がまずどうなっているのかということについて、若干の資料も準備しております。

 また、そうした現状について、本日御議論、御確認いただきながら、さらにこうした点も必要ではないかといった有用な御意見が出れば、それについてはまた十分に時間をとり、共通認識をしっかりとつくっていくということが重要であると考えております。

 それから、3点目でございます。雇用終了をめぐるということで、解雇と雇止めが中心という点がまず1点ございました。この点につきましては、趣旨・目的の2つ目の段落の2つ目の文で、「また」の後に「解雇等の雇用終了をめぐる紛争処理」と書いておりますので、委員おっしゃるように、解雇や雇止めといったことが、これまで政府内の他の会議でも提起されてきた中心的な関心事項でございますので、まずはそこに意識を置いていただきたいということです。

 雇用終了ということになれば、他に合意解約などのいろいろな局面の論点もあるだろうと思いますけれども、それらのうち、どこまでを議論するかということについては、まさにこの議論の場で議論を深めていただきながら、その外延を決めていただいて、その中でとりわけ私どもとしては、「解雇等」の部分について、よろしくお願いしたいという趣旨でございます。

 さらに、3点目の後段で、今、おっしゃいました労働組合による解決等もあるのではないかということ、そのとおりだと思いますし、また別途、企業内でのさまざまな自主的な解決とか、さらに行政の関与ですとか、いろいろな観点からの御関心をお持ちの委員もいらっしゃると思います。

 本日をキックオフとして、そうした幅広い観点から、何が重要な論点であるのかについても、この場で委員の先生方に詰めていただければと事務局としては思っているところでございます。雑駁ですがそういうことでございます。

○荒木座長

 村上委員、よろしいでしょうか。

 ほかにいかがでしょうか。輪島委員。

○輪島委員

 ありがとうございます。開催要綱について、一言事務局に質問させていただきたいと思います。開催要項3番の運営の(5)でございますけれども、「関係府省等の協力を得て」と書いてあります。関係府省というのはどういう範囲なのかということと、協力を得てと書いてありますが、具体的にどういう御協力をいただけるのかということを少し御説明いただければと思います。

○荒木座長

 では、事務局、お願いします。

○村山労働条件政策課長

 輪島委員からの御質問にお答え申し上げます。

 「本検討会の庶務は、関係府省等の協力を得て」となっているが、まず関係府省等の範囲でございます。これも今後の道行によって、より広がることもあり得るだろうと思いますが、一義的に私どもとして考えている、あるいはまた関係の皆様にお願いしているところといたしましては、まず最初にもございましたように、産業競争力会議と規制改革会議がそれぞれいろいろな御議論を深められた上で、この場の設置ということになっている経緯もございますので、それぞれの事務局の庶務もお務めでございます内閣府の規制改革の御担当のセクション、あるいは内閣官房において競争力会議の事務を担当されているセクションの御協力も得ながらというのが、まず1点目でございます。

 そして、よりサブスタンスにかかわるところといたしましては、裁判制度あるいはまた裁判所で行われる手続等も今後の中心的な課題になってくるということでございますので、法務省の民事局の全面的な御協力を得ながら進めていきたいと考えているところでございます。実際、本日、事務局席も、事務局に誰が、どう並んでいるかを座席表にあえて明記しておりませんけれども、内閣官房、内閣府のしかるべき方々にも御一緒に御参席いただき、この議論を見守っていただいているということでございます。

 なお、法務省の民事局の皆様につきましては、御了解いただいているのですけれども、1回目、本日に関しましては、どうしても事前からの都合があって出席は難しいということでございまして、次回からは民事局の法制管理官に基本的に毎回御出席いただきながら、議論をお聴きいただき、御発言もいただければと考えているところでございます。

 なお、提出している資料等につきましても、そうした関係府省の御確認を得た上で提出しているということは申し添えさせていただき、また、個別の論点になれば、厚生労働省では一義的に十分お答えしにくいようなことも含めて、委員の皆様から御質問なり御意見なり頂戴する局面もあるかと思いますが、そうしたところでまさに協力をいただきながら、政府一体としてしっかりと対応させていただきたいと、このように考えているところでございます。

 以上でございます。

○荒木座長

 よろしいですか。

 ほかにはいかがでしょうか。

 それでは、この検討会の持ち方、進め方については御了解いただいたということで、先に行きたいと思います。

 次は、参考資料の確認ですが、事務局から資料の紹介を簡潔にお願いしたいと思います。

○松原労働条件政策推進官

 それでは、事務局のほうから参考資料No.1からNo.4につきまして簡単に御説明申し上げたいと思います。資料のほう、大部になっておりますので、駆け足で説明させていただくことをどうぞお許しください。

 資料No.1でございます。全体的な「労働紛争解決システムの概要と現状」ということでございます。

 3ページをご覧ください。

 労働紛争といった場合、集団的労働紛争と個別労働関係紛争に分かれまして、集団的労働紛争といいますと、労働組合と企業との間の労働関係において生じる紛争で、個別労働関係紛争につきましては、労働者個々人と企業との間の労働関係において生じる紛争でございます。

 4ページをご覧ください。本検討会で特にフォーカスされるであろう個別労働関係紛争につきまして御説明申し上げます。

 右の肌色っぽくしておりますけれども、個別の紛争が発生した場合でございます。もちろん、企業内におきまして自主解決、企業内紛争解決システムがある会社もございます。一方で、個別労働紛争解決制度、労働審判制度、民事訴訟という形で解決するパターンもございます。これは、順番は特段決められているものではございません。訴える方々、または申し出する方々がそれぞれの制度を選択可能という形になっております。個別労働紛争解決制度につきましては、都道府県労働局におきまして、総合労働相談、助言・指導、あっせんという形で対処いたしますし、またこれは地方自治体の自治事務でございますが、都道府県におきまして、労働委員会の場合が多うございますけれども、労働相談、あっせんという形で対応しているということでございます。

 次に、真ん中でございますけれども、労働審判制度につきましては、後で御説明しますが、原則3回以内の期日で迅速、適正かつ実効的に解決するというシステムでございます。裁判の前の非訟制度という形の扱いになってございます。この中で、調停と審判という形で解決を図っていくシステムになってございます。

 最後に、いわゆる訴訟、民事訴訟でございます。民事訴訟に入る前に、下の※2に書いておりますけれども、簡易裁判所または当事者間で合意で定めた地方裁判所におきまして、民事調停という形の手続を利用することも可能でございます。また、地方裁判所の訴訟の過程で調停に付すとされた場合も可能でございます。民事訴訟の場合は、基本的には和解もしくは判決ということで、最終的な解決を図っていくという形が全体像でございます。

 続きまして、5ページをご覧ください。現在の紛争の数でございます。

 集団的労働紛争のほうにつきましては、昭和49年あたりがピークでございまして、その後減る傾向にございまして、25年におきましては全体で500件程度という状況でございます。

 一方、個別労働紛争のほうでございますけれども、こちらのほう、右側の24年、25年あたり、まさに近年がピークでございまして、全体で7,500件程度という形になってございます。

 雇用終了に関する紛争もトピックで書いておりますが、労働審判の45.4%、民事訴訟の28.2%が雇用終了に関する紛争であるということでございます。

 6ページをご覧ください。先ほども申し上げましたけれども、個別の労働関係紛争解決制度の中の、労働局のほうにおいて行っております制度をより具体的に記載したものでございます。

 下の枠の中でございますが、都道府県労働局のあっせんの特徴でございます。あっせんの特徴としましては、2つ目でございますが、弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家が担当するということ。

 一番下でございますが、あっせんという性格上、紛争当事者の一方が参加の意思がないことを表明したときは、手続は打ち切りとなるということでございます。

 続きまして、8ページでございます。

 こちらは、先ほど申し上げましたが、平成11年の地方自治法改正におきまして、都道府県労働委員会の事務が自治事務に位置づけられましたことによりまして、地方自治体の御判断で個別労働紛争の解決サービスを行うことが可能になっております。その都道府県労働委員会のあっせんの特徴でございますが、2つ目のポツ、労働問題の専門家で経験も豊富なあっせん委員が三者構成、公益、労働者代表、使用者代表という形であっせんを行う形になっているのが特徴でございます。

 9ページ、労働審判手続でございます。

 この労働審判につきましては、平成16年に労働審判法が成立いたしまして、18年4月から実施されております。

 特徴でございますが、労使各側の専門家である労働審判員2名が手続に関与し、非訟事件でございまして、調停の話し合いを円滑に行う必要があることから、手続は非公開という形でございます。

 それと、先ほど申し上げましたが、原則3回以内の期日で審理し、実情に応じた柔軟な解決を図るという特徴がございます。

11ページでございます。こちらは、裁判の民事訴訟でございます。

 特徴は、法廷での公開の手続ということと、厳格な手続による紛争解決の最終手段であり、主張や証拠に基づき判断され、判決のほか、和解も試みられるということでございます。

12ページでございます。ここからは個別労働紛争の紛争解決システムに係る取組件数等でございます。

 都道府県労働局で行っております総合労働相談件数をご覧いただくと、100万件オーダーで大体推移しているという状況でございます。そのうち、助言・指導、あっせん申請件数などは、ご覧いただいているとおりの件数でございます。

13ページが個別労働紛争解決制度・労働審判手続の新規係属件数と解決率を示させていただいております。

 次に、14ページでございます。労働関係民事通常訴訟の終局事案の解決状況ということで、新規受け付けと終局事案件数というものが、そのまま対の同じ年度で出されておりますが、新規の受付をしたものが終了ということではございません。終局事件件数のほうをご覧いただくと、この解決状況は和解が50%程度ということで、和解の解決が多くなっているという状況でございます。

15ページが各制度利用者に関する雇用形態別の割合でございます。各手続とも正社員が多くなってございますけれども、都道府県労働局のあっせんにつきましては若干傾向が異なりまして、パート・アルバイト、派遣労働者など、いわゆる非正規の方々の利用が多くなっているという特徴がございます。

 続きまして、16ページでございます。

 労働局のあっせん、労働審判と裁判上の和解におきまして、最終的にどういう形で解決が図られているかということでございますが、各仕組みとも90%以上が全て金銭解決によって解決が図られているということでございます。

 6がいわゆる金銭解決の金額の傾向でございます。あっせんは低額で解決する傾向がある一方で、審判・和解は高額で解決する傾向がございますが、分布は非常に広くなっているというのがご覧いただけると思います。

 月収表示が7でございます。御参照ください。

 次に、17ページの8、制度利用期間の傾向でございますが、労働局のあっせんにつきましては、2カ月以内、審判は6カ月以内で解決されるケースが非常に多くなっておりまして、一方で和解については6カ月以上の期間を要するケースが多くなっているということでございます。

 9が民事訴訟の労働事件の平均審理期間の推移ということで、右の図をご覧いただくと、一般的な民事訴訟全てでは、対席判決で終局した事件というのが12.4月かかりますけれども、一方で労働関係民事訴訟は14.3月ということで、長く時間がかかるという形になっているということをご覧いただければと思います。

18ページでございます。ここから、雇用終了に関する紛争にフォーカスさせていただいたデータをつけさせていただいております。

 先ほど申し上げた個別労働紛争、労働審判、裁判における新規受付、また相談件数などをご覧いただくとともに、右のほうには解決金額の中央値、あとは制度の利用期間の中央値がどのぐらいかかっているかにつきまして、示させていただいております。

19ページでございますが、労働委員会や都道府県におけるあっせん、労働審判、民事訴訟全体に占める解雇・雇止め事案の割合でございます。2割から4割程度の割合が占められております。

 続きまして、20ページでございます。こちらが月収表示による解決金額の分布を示させていただいております。

 一番上の個別労働関係紛争解決制度のあっせんにつきましては、左側のほうの山が高くなっておりますが、労働審判、民事訴訟の和解につきましては、分布が広くなっているということがごらんいただけると思います。

21ページからが、企業内における自主的な紛争処理の状況でございます。まず苦情処理のための機関があるのが大体5割程度というのが21ページでございます。

 次に、22ページでございますが、実際にその5割ぐらいある苦情処理機関の利用があったというものが2割から4割弱ぐらいございます。

23ページ、事業所サイドが答えた苦情の内容でございますが、人間関係、人事、日常業務の運営に関することが多くなっているという状況でございます。

24ページですが、外部の機関を利用したことがあると答えた事業所は8.4%という状況でございます。

25ページは、今後、外部を利用したいかと聞いたときに、わからないという回答が多くなっており、利用したいというのが17%程度でございます。

26ページからが、労働者のほうに聞いたものでございますが、不満などを伝えたことがあるという方が16.5%で、上司に伝えた方が8割ぐらいとなっている状況でございます。

 次に、27ページ、労働者がどういうことを相談、伝えましたかというデータでございますが、先ほどの事業主側と同じようなデータになっておりまして、日常業務、人事、賃金・労働時間、人間関係ということになってございます。

 続きまして、28ページでございます。不平などを伝えた労働者のほうで、企業内の手続において納得できましたかということを聞いて、納得した結果が得られたというのが2割程度という状況でございます。

29ページでございますが、企業内の早期退職優遇制度、すなわち定年前に退職する従業員に対しまして退職一時金の上積みを行ったり、定年退職として取り扱うなど、退職一時金の支給に対して、定年前退職者を特別優遇する制度がありますというのが11%ぐらい。適用条件は、年齢が9割5分程度でございます。

30ページが、今、申し上げました早期退職優遇制度を使った場合の割増率を書かせていただいております。全体計で45歳の場合は80.6%の割増、50歳の場合は56.1%の割増、55歳の場合は35.2%の割増という形になってございます。

31ページが、希望退職制度でございます。早期退職優遇制度と非常に紛らわしいかもしれませんが、こちらにつきましては割増等の優遇措置を示した上で、期間を定めて時限的に退職者を募る制度でございます。

 こちらのほうは、18年1月以降、5年間でやったことがあるというのが9.9%、1割弱という状況になっております。

32ページが、今、申し上げました企業の希望退職制度につきましては、9割弱、退職一時金の割増を行っているというものでございます。

33ページ、34ページは、希望退職の場合の在職中の求職活動を認めている企業等ございます。

35ページが、希望退職の場合の割増率でございます。45歳で89.250歳で68.155歳で59.5という形になっておりまして、早期退職よりは高い割合になっているというものでございます。

36ページでございますけれども、早期退職優遇制度と希望退職制度、両方あるという企業ですが、全体の2.2%になっているということでございます。

37ページは御参考でございますけれども、いわゆる国家戦略特別区域法というものに基づきまして、労働関係の裁判例の分析・類型化する「雇用指針」というものを26年4月から定めております。

 総論のところに書かせていただいておりますが、いわゆる「内部労働市場型」と「外部労働市場型」の人事労務管理をしっかり理解していただくために、判例等も踏まえた形でつくらせていただいているものでございます。

 駆け足で申し訳ありませんが、続きまして、参考資料2「議論の経緯」でございます。

 本検討会の検討事項でございます、いわゆる雇用の終了に係る議論というのは、平成15年の労働基準法の改正時より議論されているという経緯が3ページでございます。

 7ページをご覧いただくと、平成15年の労働政策審議会において諮問され、答申された要綱の内容を書かせていただいております。いわゆる解雇権濫用法理というものを、当時は労働基準法のほうに書かせていただいたというものでございます。

 その後、8ページでございますが、国会等で御審議いただいたことも踏まえまして、「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」が平成16年から17年にかけて開催されまして、17年9月15日に報告書が出ております。

 報告書の内容をつけさせていただいておりますので、御覧いただければと思います。

 次に、19ページでございますが、労働契約法ができた時点におきましても同じような御議論がございましたが、この時点におきましては、労働基準法に書いております解雇権の濫用の規定につきましては、労働契約法に移行することということが書かれてある一方で、(3)でございますけれども、解雇の金銭的解決については、労働審判制度の調停、個別労働関係紛争制度のあっせん等の紛争解決手段の動向も踏まえつつ、引き続き検討することが適当という形になっております。

20ページ、21ページが、先ほど御説明させていただきましたけれども、まず、「日本再興戦略改訂2014」、これは平成26年の閣議決定でございますが、ここで透明で客観的な労働紛争解決システムの構築ということがうたわれておりまして、一番直近の平成27年の閣議決定でございますが、「予見可能性の高い紛争解決システムの構築等」ということで、真ん中より下のあたりでございますか、「解雇無効時における金銭救済制度の在り方とその必要性を含め、予見可能性の高い紛争解決システム等の在り方についての具体化に向けた議論の場を直ちに立ち上げ、検討を進め、結論を得た上で、労働政策審議会の審議を経て、所要の制度的措置を講ずる」ということが記載されている状況でございます。

22ページの平成27年の閣議決定の「規制改革実施計画」におきましても、「論点を整理した上で検討を進める」という形で同様の記載がなされておりまして、本検討会の開催に至っているという状況でございます。

 資料2は以上でございます。

 続きまして、資料3でございます。こちらは「労働紛争解決システムに関する国内外の実態調査」でございますが、3の前半は先ほど資料No.1に盛り込んでおりますので、省略させていただきます。

16ページあたりから海外の状況をつけさせていただいておりますが、非常にコンパクトにまとめさせていただいております。ですから、これで全てではございませんし、要件、労働市場、各国の賃金体系等々、異なりますが、その前提を置いた上でコンパクトな形でまとめさせていただいておりますので、御参照いただければ幸いに存じます。

 次に、参考資料No.4でございます。こちらは最近の労働市場を取り巻く現状というものを、事務局のほうでまとめさせていただいたものでございます。

 後ろのほうに、よく用いられますOECDのデータをつけておりますが、雇用保護規制の状況や、それがどのような形で算定されているか、OECDが判断しているかということを10ページ、11ページあたりに記させていただいております。

 また、12ページは、いわゆる労働法規制というものと失業率というものの相関があるかどうかを見たものでございますが、ご覧いただければと思います。

 非常に早くなりましたが、説明は以上でございます。

○荒木座長

 ありがとうございました。

 ただいまの事務局の説明の中で、資料No.2「議論の経緯について」の紹介がありましたけれども、これに関しては、鶴委員におかれましては規制改革会議の雇用ワーキング・グループの座長を務めていらっしゃいます。鶴委員から規制改革会議の議論の経緯等について、何か補足すべき点があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○鶴委員

 発言の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。慶應大学の鶴です。規制改革会議の委員、また雇用ワーキングの座長ということで、2013年からほぼ3年にわたりまして、この雇用終了の問題を規制改革会議で議論させていただいています。

 それで、きょう、実は資料No.2の23ページ以降に規制改革会議が出しました意見というのを載せていただいています。それで、この場で3点ほど、会議の最初の出発点ということで、私のほうから申し上げさせていただきたい点がございます。

 最初の1点につきましては、ここにありますように、雇用終了の問題は、私が改めて申し上げるまでもなく、非常に利害が対立する分野の問題だと思います。そうした中で、労使双方が納得するということを、常にこの雇用終了の問題を取り上げるときに、この枕言葉をつけています。

 これは、この場においても非常に重要ではないかと思っていまして、こういう議論になると、ここはある意味で四角いですから、リングに見立てると、議論が始まると、すぐ場外乱闘が始まって、椅子が飛んでくるようなことがなきにしもあらずということで、私はいろいろな立場の方々が、違う立場の方々を思いやりながら、生産的な、よりよい制度をつくるにはどうしたらいいのかという議論を積み上げていくことが非常に重要ではないかと思っています。

 それから、2番目の点は、よく規制改革会議で、報道がそうなのですけれども、この問題、金銭解決の話だけ議論しているととられがちなのです。ただ、この意見も見ていただきますと、そもそもこの問題は、紛争が起こらないように未然防止することが一番大事ですし、もし紛争が起こっても、その紛争を非常に早期に解決する。そして、最後、その紛争の解決の仕方をどうするのかということを考えていくということなので、金銭解決の話も3番目の話であるという枠組みというのは、私は非常に重要なのかなと思っています。

 その3番目の金銭解決の問題なのですけれども、これもこの場で申し上げたいのは、何も解雇しやすくするとか、日本の労働市場をもっと流動化させるということではなくて、規制改革会議は、紛争解決の選択肢をいかに多様化するか、いかに多様な働き方を実現するのかというのを今、規制改革会議の非常に大きなテーマとして掲げております。労働者の選択肢を増やしていこうという形から、この問題を規制改革会議が取り上げているという御理解をいただければ大変ありがたいと思います。

 そして、最後、資料No.2の25ページをご覧いただきますと、これは非常に重要なポイントとして、金銭解決の問題になったときにどちらが申し立てをするのか。労働者に選択肢を与えるという観点から、「この制度は、労働者側からの申し立てのみを認めることを前提とすべきである」ということを、この意見でははっきりうたっています。先ほど申し上げたように、労使双方が納得するような形で、我々がこの制度を考えていくのには、入り口として、こうした縛りも非常に重要でないか。これが規制改革会議の結論でございます。

 ということで、少々長くなりましたけれども、3点、私のほうから申し上げさせていただきました。どうもありがとうございました。

○荒木座長

 ありがとうございました。

 それでは、引き続いて八代委員から資料を提出していただいておりますので、まず八代委員から、この点について御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○八代委員

 発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございました。

 私の資料は「解雇に関するルールの明確化について」ということです。日本的雇用慣行は、時代おくれで古いものだから変えなければいけないという議論がよくあるわけですけれども、それは間違っているのではないか。特に長期雇用保障というのは、労働者の熟練形成のために必要な仕組みであり、現にそれによって労使の円満な関係というものを培ってきたわけですから、重要なものである。ただ、それはあくまでも過去の高い経済成長というものを大きな前提としたわけで、環境が変化すれば、別の合理的な形にある程度、修正する必要があるというのが大前提であります。

 それから、何よりも今、規制緩和という言葉が、解雇の問題についてよく言われるのですが、実は緩和すべき規制というものがないことが大きな問題ではないか。労働組合法には、組合運動をしたことを理由とした解雇の禁止等の解雇規制がある。しかしそういう特殊な場合でなければ、使用者はでは解雇手当さえ払えば解雇自由という法律になっており、これでは労働者の保護に欠けるのではないか。

 きちんとした解雇ルールがないことによって、使用者の解雇自由を前提とした上で、その権利の濫用を防ぐという、あくまで民法の一般原則に基づく判例法によって、今の労働者の雇用が守られている。こうした状況では、何が社会的相当性のない解雇であるか、合理的でない解雇であるかの具体的なルールが明確にされていない。そこにいろいろな個別労使紛争が起こる原因があるのではないか。ですから、大事なのは、きちんとした解雇のルールをつくるということであって、それを今まで怠ってきたことが問題ではないかということです。

 金銭補償の是非はどうかということですが、既に事務局からお話がありましたように、あっせんとか労働審判では既に金銭補償が行われている。それから、民事訴訟においても、事実上、和解を通じて金銭補償というものが存在するわけであって、今さら金銭補償の是か非かと言っても仕方がない。もし金銭補償を否定するなら、それにかわる、より良い紛争解決手段があるかという、あくまで相対的な観点から考えなければいけないのではないか。

 そういう意味では、欧州の主要国のように、紛争が起こったときに使用者と労働者が納得できるように金銭補償の上限と下限を法律で定めて、その範囲内で裁判官が個々の事情に応じて具体的な補償金額を定める。これを速やかに行う。ちょうどこれは離婚訴訟と同じで、金さえ払えば離婚していいのかという議論がないように、労使紛争解決にも金銭補償でやるしかない場合が多いわけです。もちろん、もっと良い方法があれば、それを使えば良いわけです。

 そういう意味において、これまで実定法で怠ってきた具体的な金銭救済の手段を設ける。これは、特に裁判に訴える余裕のない中小企業の労働者にとっては非常に重要なことであるわけです。その意味では、従来の労働者対企業との対立関係というだけではなくて、裁判に訴えられる資力のある労働者と、そうでない労働者の利害対立という面も十分に考えた上で、この問題を考えていただく必要があるのではないか。そういう意味では、私は解雇の金銭補償のルールの法制化というのは、速やかに進めるべきではないかと考えております。

○荒木座長

 ありがとうございました。

 それでは、先ほどの事務局からの説明も含めて、今、御発言もありましたが、皆さんから御意見を伺いたいと思います。どうぞ御自由に。

 水口委員、どうぞ。

○水口委員

 弁護士の水口です。私は、労働側の弁護士として解雇事件等にたくさん関与してきました。

 まず、この資料に関係するのですけれども、開催要綱の趣旨・目的の中の第2段落で、現状の労働訴訟・労働審判の概要が書かれております。

 この中で、例えば「雇用終了をめぐる紛争処理に時間的な予見可能性が低い」ということも指摘があると書かれておりますが、労働審判の実態は、もう皆さん御承知かと思いますが、年間35003600件、労働審判が申し立てられております。申し立てから平均審理期間約76日で解決しています。労働審判のうち、7割ぐらいが調停で解決して、残り労働審判に出ても、異議申し立てをしない、訴訟に移行しないで解決するということで、8割が申し立てから約76日で解決しているという実態があります。その意味では、紛争処理の期間、時間的な見通しも、労働審判の運用の中で一定見通しができているという点が重要だと思います。

 民事訴訟についての指摘もありました。確かに最近、民事訴訟については14.6カ月の平均審理期間になっています。ただし、先ほどの資料の中にも触れられた労働関係事件というのは、裁判所では集団訴訟、複雑な事案、不当労働行為事件、さらには労災絡みの安全配慮義務関連の医学的知見や技術的知見が必要な事件、複雑な事件もあります。実際、子細に見ますと、最高裁事務総局が平成25年6月に裁判の迅速についての報告書を出しています。その中で、労働事件についても医療過誤事件と同じように取り上げています。実際見ると、1年以内で解決している事件が45.6%を占めているということになっています。

 ですので、我々が検討していく中では、一般論ではなくて、今までそのような最高裁の事務総局あるいは労働審判の運用実態。これは、東大社研での利用者の調査もあります。我々弁護士、実務家にとっては、常識なのですけれども、この場においては、そのような現状の実態、紛争解決手段がどのように利用されて、どう機能しているのかについての共通認識を踏まえて議論すべきだろうと思いますので、先ほどの資料だけを見ても、本当の実態というのが私はまだ出ていないと思いますので、裁判所の協力なども得て実態を見るべきだろうと。

 1つつけ加えますと、私は中小の労働者の労働審判や民事訴訟をやっています。民事訴訟や労働審判を選択するについて、現状ではアクセス障害がありますね。まず、何よりも労働審判がどういう制度かということが一般の人たちに知られていません。情報提供されていない。もう一つは、労働審判や訴訟をやるときには弁護士を依頼しなければいけない。そのときに弁護士費用など経済的なハードルがある。これを中小企業の労働者でも、そのハードルを超えて利用できるように援助することこそ、中小企業労働者のことを考えるのであれば検討されるべきだと思います。

 最後に、日本の解雇ルールが一般法で解決されているわけではなくて、もはや労働契約法16条という特別法があります。しかも判例法でルールができて、恐らく経営側の弁護士さんも労働側の弁護士も、一定のルールの明確化、安定した判例法があるということは多分異論のないことだろうと思います。もちろん、事実認定の争いは残ります。ただ、それを一般の労働者や使用者に、労働法の教育を通じていかにわかりやすくするのかという課題が残っているというのも現状だろうと思います。そういう労働法、判例法理などの解雇ルールを労使にどのようにわかりやすく提供していくのかというのも、この検討会での議題に本来はすべきだろうなと思っております。

 長くなりましたが、以上です。

○荒木座長

 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。土田委員。

○土田委員

 今の解雇の話でなくてもいいですか。

○荒木座長

 はい。

○土田委員

 今回の検討事項の1点目、「既に制度化されている雇用終了をめぐる紛争等の多様な個別労働紛争の解決手段がより有効に活用されるための方策」。これは非常に重要だと思うのですけれども、この観点からの質問と意見ですが、労働委員会におけるあっせんについてのデータというものは、今のところ集積されていないのかどうか。例えば解決金額とか、そういった点についていかがでしょうか。

 先ほど資料1のほうで、件数、解決率についてのデータはありましたけれども、労働局のあっせんのような解決金額の水準とか分布といったデータはないのでしょうか。もしないとすれば、私は必要だと思います。なぜかといいますと、私は京都で労働局、労働委員会の双方であっせんに従事しています。先ほど資料No.2の24ページから25ページにかけて規制改革会議の紹介があり、24ページの3の(2)に労働委員会の機能活用がありますが、これを書いていただいたことは画期的だと私は思っています。

 と言いますのは、労働局のあっせんと労働委員会のあっせんを比べると、労働局は非常に件数が多いのに対して、労働委員会は数が少ないです。そのためか、労働委員会のあっせんにどのようなメリットがあるのかということについては、実は余り知られていません。労働局については知られています。労働局のあっせんについて、大体言われることは、最も身近な紛争処理機関で、簡易迅速な解決が行われているけれども、反面、使用者の参加率が低く、全体の解決率が低い。もう一点は、先ほどの資料にありましたけれども、解決金額の水準が低いということです。

 労働局あっせんのこういったデメリットを改善していく上で、言いかえれば、今回の検討事項である、「多様な個別労働紛争の解決手段がより有効に活用されるための方策」を考える上で、労働委員会におけるあっせんの制度設計と運用は参考になると私は考えています。ただし、今から言うことは全てデータがありませんので、私の経験則に基づくものであることはお断りしておきますけれども、だからこそデータがほしいという趣旨もあります。

第1に、使用者側の参加率を高める上で、労働委員会の事務局がやっておられる仕事、すなわち事業所事前調査というものは、直接事業所に出向くものですから、労働局のあっせんよりも丁寧にされている可能性があります。あっせんの入り口段階での使用者側参加への働きかけが違う可能性があるということです。

 第2に、これは先ほどの資料にありましたけれども、労働局のあっせんと労働委員会のあっせんの大きな違いは、労働委員会の場合には労使委員が参加するということです。規制改革会議でもその点が指摘されていますし、資料No.1にもあります。

 私は、この点は非常に大きいと思います。ただし、基本的にあっせんというものは、公益委員がリーダーシップをもって行うわけですから、労働局のあっせんと、その限りでは違いませんが、とりわけ使用者側・労働者側を説得する際に労使の参与委員が果たしておられる役割は非常に大きいと思います。これが第2点。

 第3点は、これも大きい点かと思うのですが、労働委員会は、労働局と比べてあっせんに時間をかけるということです。労働局は、基本的に1回の期日で、いわばその日に終えます。一方、労働委員会の場合は、あっせんの考え方を提示して、双方に一度持ち帰ってもらいます。

 そうすると、どうなるか。全て私の経験則で恐縮ですが、労働局のあっせんについては、労使双方とも1回で終わるということを知っています。そうしますと、使用者は低い金額を提示しても、労働者はそれを受諾するだろうと考えて提案している可能性があります。もちろん推測の域を出ませんが、そういう可能性を経験則上、私は感じています。

一方、労働委員会の場合は、当事者があっせん素案を一度あるいは二度持ち帰ります。それで2カ月程度で解決するわけです。そうすると、金銭解決においてある金額を提示された場合に、労働者側はそれを持ち帰って検討する、家族と相談する、あるいは法曹関係者に相談する機会を持つことができます。その上で、もう一度出てきてあっせんする。使用者側についても同じことが言えます。要するに、労使双方にとって考慮期間があるということです。もちろん、考慮期間を余り長く置いては、紛争の迅速な解決という点からすると問題があるのですが、労働局のあっせんの問題点、解決金額の低さの一つの理由は、ある意味迅速な解決を急ぎ過ぎているというところにあると思いますので、そこは労働委員会のあっせんに学ぶべきところがあるように思います。

 ただし、何度も言っていますが、これは私の経験則で、印象批評に過ぎないので、労働委員会のあっせんについてのデータの集積があるようでしたら、ぜひ御提供をお願いしたい。現場であっせんの仕事をしている立場からすると、個別労働紛争の解決がより有効に活用されるための方策を考える前提として事実を発見する段階で、労働委員会のあっせんに関する事実は重要な意味を持つと思いますので、お願いできればと思います。

 以上です。

○荒木座長

 ありがとうございました。

 事務局から何かありますか。

○長岡労政担当参事官室長補佐

 労政担当参事官室でございます。

 今、土田先生から御指摘いただきましたが、おっしゃるとおり、件数などのデータはございますけれども、その中身、例えば解決した件数は幾らで解決しているかといったことなどは、データがないという現状でございます。今あるのは、件数と、どのような事件の内容であったのかという2点であり、その他のものについては課題と認識しておりますので、今後の検討とさせていただきたいと思います。

○荒木座長

 はい。

○大塚室長

 大臣官房地方課の大塚と申します。

 土田先生の御指摘の1点目、使用者側への事前の働きかけについてでございますが、私ども、労働局のあっせんの仕組みを所管しておりますけれども、労働局のあっせんの仕組みにおきましては、先生御指摘のとおり、今までは積極的な働きかけというのを行っているところと行っていないところがございました。これは、きょうの参考資料2の24ページですか、規制改革会議の御指摘にもあるのですけれども、あっせんへの参加率が低いがゆえに合意率も低くなっているということがございますので、まずはあっせん申請した他方当事者である、多くは使用者ですけれども、そちらに対するあっせんの参加の働きかけが重要だと考えています。

 このため、ことし3月26日に全労働局に対して指示をいたしまして、従来であればあっせんの開始通知書にリーフレットをつける程度の参加勧奨しか指示していなかったこともありまして、積極的な参加勧奨を行っている労働局とそうでない労働局があったのですが、あっせんの参加の働きかけが重要であることから、事務方のほうから使用者側に対しまして、電話による参加勧奨、あるいは訪問による参加勧奨を積極的に行っていくように改めて指示したところでございまして、今年度はその取り組みを強化しているところでございます。

 また、御指摘の3点目の中にございましたけれども、労働局のあっせんの仕組みは1日、大体1回の期日、2時間程度で終了するものでございまして、確かに先生御指摘のとおり、その考慮期間がないということは事実であります。私どもといたしましては、この裁判に至るまでのADR制度はいろいろな仕組みがあっていいのではないか。それを利用者の方々にわかりやすく周知することが大事なのではないかと考えております。

 私ども労働局のあっせん制度は、簡易・迅速が売りでありますけれども、ほかにじっくりと考慮する期間のある労働委員会などの仕組みもあるわけでございまして、私どもは、労働委員会とか弁護士会とか裁判所などと連絡協議会を構成しまして、双方の仕組みがわかりやすく、特徴を述べたリーフレットを本年度作成いたしました。全労働局でそれぞれの各地に沿ったバージョンのものをつくって、周知・配付を始めたところでございますので、労働者側・使用者側に対しまして、わかりやすく、それぞれのテーマの特徴を周知していくといった取り組みを進めていこうと考えております。

 以上でございます。

○荒木座長

 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。中山委員。

○中山委員

 弁護士の中山でございます。きょうは、こういう機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 先ほど来のお話に関係するかと思って発言させていただきますが、1つは、検討事項の「個別労働紛争の解決手段がより有効に活用される」かという点で、有効という意味合いですけれども、これはアクセスが問題であれば、それをよくする。あるいは、時間、手間、費用をより省力化するということはあろうかと思いますが、先ほど労働局のあっせんと労働委員会のあっせんの違いの御指摘もありました。

 要するに、本来の訴訟と訴訟外の紛争解決制度というのがあるわけですが、そのうち訴訟外の、例えばあっせんで見ますと、基本的にいろいろなアクセスとか時間短縮という部分も有効ですけれども、さらに本来の解決の在り方としては、これが民事訴訟でなされた場合に、裁判所の解決基準あるいは実定法の個別解決紛争の要件とか、そういうものに即して、裁判基準でいけばこうなるけれども、それはもっと早い手続で実現しますよと。それこそがADRの一番必要かつ有効な要件だと思います。

 その点では、これは済みません、土田委員のお話で労働局と労働委員会のあっせんとの比較がありましたが、労働委員会自身のメンバーの中で、個別労働関係の実体法の要件あるいは判例基準、判例の実態をよく咀嚼してなされているか。これは、私、資料も全然ないのでわかりませんが、もしその辺の資料を含めて検討するにしても、今、有効だと言っても、裁判基準を反映する適切な解決というものも当然頭に入れて、いいのか、悪いのかを検討していただきたいと思うのが1点です。

 それから、先ほどこの開催要綱で予見可能性が低いということで、実際にはそうではないのではないかという御意見もありました。私も、現在の個別労働紛争についての各制度、訴訟と、それ以外の労働審判も含めた制度、おおむね一通り、以前と比べると、紛争解決機関として整理されたと大変評価しております。その中で、見通し、予見可能性について、ほぼわかったのではないかという点では、これは勝敗の見通しとか、その辺につきましては、実際に労使双方の弁護士をやっているのでわかりますけれどもね。

 例えば解雇についても、和解で幾らという場合にははっきりしませんが、勝ち負けは全てイエス、ノーですから、事案として5149であっても、51のほうに勝ちということで、いわばオール・オア・ナッシングになるわけで、その辺の予測というのは非常に困難です。したがって、制度の中で、例えば金銭解決でその辺を反映したものを裁判所が提示して解決するというのも、大いに必要性があろうかと思いますので、現状の中でおおむね予測・予見可能性が出ているという点については、必ずしも全部そういうわけではないという認識を持っておりますので、発言させていただきました。

○荒木座長

 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。高村委員。

○高村委員

 先ほど鶴先生から、「紛争の未然の防止が大事だ」という御発言がありました。私もそのとおりだと思います。

 私は、連合東京で日々さまざまな方から労働相談を受け、それに対応するという仕事をしています。日々さまざまな方から労働相談を受ける中で、「紛争が生じている現場にはどういう問題があるのか」ということについてお話をさせていただこうと思うのですが、まず紛争というのは、労働者・使用者にとって大きな負担を伴うものだと思います。労働者側で言えば、紛争に対処するために時間や収入を奪われる。さらには、使用者との関係悪化によって、労働に対する意欲を喪失するということもあるわけです。一方、使用者側からすると、本来であればより積極的なことに用いることができたはずの時間的・人的・金銭的コストを紛争に削がれてしまう。紛争内容によっては、企業の社会的評価も落ちるという問題があるわけです。

 その意味では、確かに「発生した紛争をどう迅速に解決するか」という議論は大事ですが、それ以前に、「その発生をどう防ぐか」という議論も必要ではないかと私は思っております。私が日々相談を受ける中で、なぜこんなに紛争が起きるのかを考えてみますと、その大きな要因として、使用者側に正確な知識が欠如しているという問題があります。使用者側が正確な知識を持っていれば、このような紛争が起きるはずがないという事案がたくさんあるのです。あとは、知識があってもルールを守らない。団体交渉の中で、「法律など関係ない、俺が法律だ」と豪語する使用者もいるのです。

 全国の労働局が1年間受ける労働相談が100万件を超えるており、そのうち、民事上の個別紛争は24万件前後にも上るという実態があります。これらの全国の労働局が受けている年間の相談も、恐らくはその相談の背景には、使用者に正確な知識が欠如しているという問題もあるのではないかと私は思うのです。そうだとすれば、正確な知識を周知するということも必要ですし、ルールをわかっていながら無視する人がいるのであれば、その規制をどう強めるかという議論も私は必要ではないかと思っております。

 とにかく、先ほど申し上げたように、紛争が一旦生じれば、労働者・使用者双方が大きな負担を負います。事前に紛争の防止、紛争の発生を抑えることができるのであれば、そのことにも大きな力を注いで、取り組みに当たるべきではないかということを、日々さまざまな労働相談を通じて感じております私の問題意識を含めて、発言させていただきました。

○荒木座長

 ありがとうございました。

 斗内委員。

○斗内委員

 ありがとうございます。私、UAゼンセンという産業別労働組合で仕事をしている立場からお話をさせていただければと思います。

 先ほど事務局から御提示いただきました参考資料No.1で、例えば35ページに希望退職の水準交渉の平均値等々が紹介されております。私どもの加盟組合で、不幸にして会社を閉めざるを得ないとか、また事業場を閉めざるを得ないということが往々にしてございます。そんな中で、私どもは労使の交渉を通じて、それぞれの退職条件等々を詰めていっているという状況でございます。

 ただ、そんな中で、私どもの経験から申し上げますと、一つとして同一の解決内容というのは見当たりません。背景も解決内容もそれぞれ全部異なります。そういう意味で申し上げますと、先ほど事務局から参考資料の御紹介があり、「平均値がこうこう、こうなのだ」という御説明がありましたが、これだけある紛争解決を参考資料で示されているようなデータ等の平均値等のみで一概に語ることはちょっと危険なのではないかと思っております。

 もう一つ、参考資料No.128ページにある「不平や不満の伝達で得られた結果別労働者割合」では、不平不満を伝えたことによって、その後納得の行く結果が得られたという回答が20%というデータが示されております。ただ、これも2割だから低いという受けとめではなく、「何の不満に対しての納得が得られることがなかったか」という観点から見ることも非常に重要だと思っております。基本的には、労使で争うことが往々にしてございますし、それぞれの立場の違いもあります。紛争解決においては、その中での妥協点を見出していくわけですから、100%納得する解決というのはなかなかに難しいのではなかろうかと思います。

 集団的な労使関係の中に私どもも参加させていただいておりますが、一方で個別労使紛争ということで、労働審判員も経験させていただいております。先ほど、「解決金額にばらつきが大きい」という御発言もございましたが、労働審判の中では、それぞれの事案につきまして、よくよく双方の主張を聞き取った上で最終的に和解・調停という結論を出している状況です。そのため、金額それ自体というよりは、それぞれの実情に応じた解決を目指した結果の解決金額としての数字がそこにあらわれているのではなかろうかと思っております。

 発言の機会をいただきまして、ありがとうございました。

○荒木座長

 ありがとうございました。

 では、大竹委員。

○大竹委員

 資料の金銭解決に関する今までのデータについて、もう少し細かいデータが欲しいと思っています。今、斗内委員からもご指摘がありましたとおり、個別労使紛争の解決金額は事情によって違うというのは事実だと思いすけれども、それぞれが全く違うというだけではルール策定にもなりません。それでも、なんらかの共通の決定要因があるはずです。そうした個別紛争の金銭解決についての共通の特性を明らかにして、何らかのガイドラインに使えるようなデータが欲しいと思います。

 例えばヨーロッパ各国の制度がありますけれども、その中で勤続年数とか年齢とかということで範囲が定めてある例がたくさんありますから、少なくとも勤続年数や年齢等でどういうふうに金銭解決の額が違うのかという実態把握が第1だと思います。

 しかし、そうした現状分析に合わせた額をそのまま金銭解決のガイドラインにすればいいのかというと、それでは問題があると思います。それは、現状の金銭解決の金額そのものが、現在の日本の雇用制度の問題を反映している可能性が高いからです。日本の労働問題は正規と非正規の二極化が進んでいることにあります。こうした二極化は、正規社員と非正規社員で解雇のルールが違っている、あるいは雇止めのルールが違っているということが原因の一つで生じています。そのもとで現在の金銭解決の額が決まって来ているのです。本来、正社員と非正規社員の解雇規制・雇い止め規制はどうあるべきかということを考えて、その理想に近づけるようなルールを考えるべきです。まずは実態把握した上で、もし勤続年数の大小で大きくジャンプがあるところがあれば、それは恐らく制度を反映しているわけですから、ルールを変えれば非常に大きな二極化というのは変わるかもしれない。

 ですから、まずは実態把握をした後で、次に制度は本来どうあるべきかということが議論できるようなデータをつくっていただければと思います。

○荒木座長

 ありがとうございました。

 ほかには。徳住委員。

○徳住委員

 私は、労働側の立場で弁護活動をしてきましたので、その立場で発言させていただきます。

 先ほどから意見が出ていますように、多様な紛争解決システムが現在あります。これは、1990年代に個別労使紛争が大変増加して、それに対処するために個別労使紛争解決促進法が制定されたことにより、都道府県労働局のあっせん制度、労働委員会のあっせん制度が創設され、労働審判制度が設けられました。その後、裁判所では民事調停制度も利用できるのではないかとその活性化が図られ、これらの各制度の運用・改善などについて労働者側も協力してきました。労働者側からみると、個別労使紛争解決システムの多様性は得ることができたと評価していますし、紛争解決制度は多様であっても良いという立場をとってきました。

 現在、確かに水口委員が指摘されるように、アクセスの問題とか国民の中に知られていないという問題があります。さらも、現在問題になってきているのは、各制度の牽連性、関連性が不十分だという点だと思います。この問題については、東京都では、各個別労使紛争解決制度の連絡協議会が年1回開かれていまして、私も弁護士会の代表として出席したことがあります。都道府県労働局のあっせんで、うまく利用すれば相当な割合で解決しており、最近ではこれをもっと重視しようという弁護士会内部の見解もあり、弁護士会もあっせん委員に弁護士を推薦するなどの協力を行い、それなりに制度評価をしています。使用者側の弁護士は、都道府県労働局のあっせんで解決するのであれば、積極的に参加する立場をとるようになっています。労働者側も、都道府県労働局のあっせんを重視する必要があると思っています。問題は、あっせんで解決しなかった場合、労働者の次の手続にステップする流れがとまってしまう問題があります。私が出席した連絡協議会では、都道府県労働局はあっせんで解決しなかった事案約3,000件ほど法テラスに紹介すると報告されていました。

 法テラスでは、弁護士に法律相談に行い、改めて司法手続きをとるかどうかが検討されることになります。都道府県労働局のあっせんで解決しなかった場合に、次のステップとして、司法制度による労働審判・仮処分・本訴・調停とかの手続があるのですが、そこにステップアップする関連性付が制度保障されていないのです。

 私は、各国の紛争解決制度を見ていると、イギリスのACASなどもそうですが、調停、あっせんがうまくいかなかった場合に次の手続としてどこにいくのか、制度的に解決していると思います。先ほど行政のほうでも、あっせんがうまくいかなかった場合に次にどのような手続があるのか、パンフレットをつくって周知を始めたということをおっしゃいました。そうした努力も大切ですが、さらに制度的にどう関連性をつけるかということを、できればこの検討会で検討するべきだと思います。これは労働者側にとっても、使用者側にとっても非常に助かる問題ではないかと思います。

 私は、労働紛争解決システムの、各制度をブラッシュアップするとともに、その関連性を解決することが大切だと思います。

○荒木座長

 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。山川委員。

○山川委員

 まず、労働委員会における個別紛争処理、あっせんのデータの件ですけれども、全国労働委員会連絡協議会というものがありまして、現在、そこで個別紛争処理制度委員会というもので検討を行っております。そのデータの収集等につきましては、この1119日、20日に全労委の総会がございまして、その中で、中間報告で一定の方向性が示されるのではないかと思います。データを示すものではなくて、データの集計に関する方向性を示すであろうということです。これが第1点。

 あと、金額の水準についてのコメントですけれども、先ほど大竹先生からもありましたように、いろいろなファクターを考慮する必要があるということがございます。1つは、データの中に若干含まれていますが、利用者の賃金水準とか雇用形態もかかわるかもしれませんが、そういうことが影響している可能性があるのと、あと、審理期間です。金銭解決をする場合には、解雇されてから、判断というか解決するときまでの過去分と、それから雇用を終了させるかわりにお金を払うという、いわば将来分のお話がありまして、少なくとも過去分については、それまでの審議期間が影響するということがあるかと思います。

 あと、これはもっとより本質的なことですが、心証といいますか、解雇が有効かどうかの判断、ある程度心証が形成できる場合には、そういうことで説得するのですけれども、あっせんの場合、なかなかそういうものができない場合がありますので、そのあたりは個々のケースによって違うという御指摘も先ほど来ありますが、実はそういうファクターがかなり重要な意味を持つ。裁判所の和解でも、解雇無効とされる可能性が高い場合の和解と、そうでない場合の和解で全然違うと思いますので、そのあたりも考慮する必要がある。これがデータに出てくるかどうかは、ちょっと難しいかもしれません。

 それから、紛争の予防のお話ですが、今回のテーマに直接なるかどうかわかりませんが、紛争の予防と解決は実は相対的な面があるような感じもします。つまり、いきなり紛争ということで出てくるのではなくて、主観的な不満が表明されて苦情になって、両者の言い分が対立すると紛争になるというふうに発展していくものですので、紛争予防の中には、もしかしたらまだ紛争とは言えないかもしれないけれども、苦情とか不満とかへの対応というのも含まれるかもしれないということで、そういうものも視野には入るのではないかと思っております。

 あと、単なる情報提供的なことで、全然関係ないようなお話ですが、TPP協定、最近大筋合意がまとまったようですけれども、その中に1章がありまして、私もつい最近、報道で知ったのですが、労働者の権利に関連する締約国の法律等を執行することとか、98年のILO宣言の権利を法律等において採用する、これは、日本の場合は余り問題ないと思います。それから、労働法令についての啓発促進。あと、意味がよくわかりませんけれども、公衆による関与のための枠組み、協力に関する制度について定めるというものも、TPP協定の中に入るようです。まだ、ちょっと確認していないですけれどもね。

 その中で、労働法令についての啓発の促進ということがありますので、今回の議論の経緯では、グローバル化といいますか、国際経済的なお話が一部意識されているようですので、このあたりもちょっと情報としては把握しておく必要があるかなと思います。

 以上です。

○荒木座長

 ありがとうございました。

 ほかにはいかがでしょうか。村上委員。

○村上委員

 ありがとうございます。

 先ほど土田委員から京都の労働委員会のお話を伺いまして、大変勉強になりました。私は労働審判員を10年ほど務めておりますけれども、労働委員会の実務は携わったことがございませんので、実際の様子をお伺いすることができて大変勉強になりました。

 それで、先ほど大竹委員からは「資料の金銭解決に関する今までのデータについて、もう少し細かいデータが欲しい」とのご発言がございました。しかし、データや資料だけではなくて、実際に紛争処理にかかわっている機関の皆さんや当事者の皆さんから、ぜひヒアリングをさせていただければと思っております。例えば労働局であればあっせん員の皆さん、労働委員会であれば公益委員の先生方や労使の委員の方もいらっしゃいます。あと、民事訴訟や労働審判で言えば、最高裁や各地裁の裁判官の方がいらっしゃいます。さまざまな当事者の方から、ぜひヒアリングをさせていただければと思っております。

 また、本日は多岐に渡る参考資料が一括で出されております。今後、様々な論点について議論していくということですが、委員の現状認識を合わせていくためには、各回で少しずつテーマを分けてヒアリングをさせていただいて、その上で共通認識をぜひつくっていただきたいと思っております。

 以上です。

○荒木座長

 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。長谷川委員。

○長谷川委員

 長谷川です。私は、現在、中央労働委員会で労働紛争解決の仕事をしています。

 本日、参考資料として様々な資料を多数ご用意いただき、非常に参考になりました。その資料に関する要望なのですが、個別労働紛争の解決を実施している機関の実態がもう少し見えるといいかなと思いました。例えば、裁判所と行政があって、裁判所のADRがあって、行政のADRがあって、それとは別に民間的な機関もあるというところを整理したうえで、そこはどういう人たちが、どのように紛争解決しているのかというのが生き生きと見える資料があると良いと思います。そのためには、村上委員より意見があったように、紛争解決に携わっている当事者の話を少し聞いてみたいと思います。

 もう一点は、労働紛争の端緒として、まず労働相談があるわけですね。労働者が解雇された時には、「どうしよう」と思い悩み、大体1週間ぐらい悩んでから一番近いところに労働相談に行きます。一般的に、労働基準監督署はとても信頼があり、また全国に300署以上あるので、解雇された労働者は、労働基準監督署に総合労働相談に赴き、「解雇されたのだけれどもどうしようか」と相談することになります。相談者の話を相談員が丁寧に聞きとり、「その件は労働局のあっせんや労働審判といった紛争解決手段があるよ」など、事案に応じていろいろなことを紹介すると思うのですね。

 その辺のことを、もう少し詳しく聞いてみたいのです。この点は、先ほど徳住委員もおっしゃったように、どうも紛争機関間の連携がうまくとれていないと感じます。私自身も、実際に、「総合労働相談所にも行ったし、法テラスにも行ったが、どこも満足が得られなかった」という人たちに会ったことがあります。

 また、労働組合に相談するということもあるのです。労働組合に労働相談に来た人に対しては、「労働組合に入ったら団体交渉で何とかするよ。」と説明します。労働組合に入りたくないという人に対しては、「紛争解決機関としてはこういうところがあるよ。」「労働局はこういう紛争機関だよ。」「労働審判は弁護士が必要だけれども、費用としてはこのぐらいだよ」ということを説明しています。

このようなことから、労働相談ではどのように対応しており、紛争解決機関としてはこのような機関があり、その機関では何を行っているのかということを、もう少し生き生きと分かるように、ヒアリングを実施していただきたいです。

 先ほど土田委員より、労働委員会の中でも、京都労働委員会は非常に熱心に個別紛争の解決に向けて取り組んでいるとのお話があり、私もその取り組みに期待しています。

 それから、ADR法に基づく法務大臣の認証と社労士法に基づく厚生労働大臣の指定を受け、都道府県の社労士会が「社労士会労働紛争解決センター」で個別紛争解決を行っていますけれども、その点が今回の参考資料からは全然見えてこないので、実際にどのような手続きを踏み、解決を図っているのかを見てみたいと思います。

 さらに、紛争解決機関として評判が良いのは、労政事務所、現在の労働相談情報センターのあっせんです。ここがどこよりも評判が良い理由は、対応が親切だからだと思うのです。実際にどのように対応しているのかを、一度ヒアリングしてみたらどうでしょうか。

 話しは変わりますが、以前、イギリスのACASを訪問した際に、行政機関であるACASのあっせんと雇用審判所の関係について話を伺いました。ACASを担当する専門あっせん員に、「どうやってあっせんを行っているのですか」と聞いたところ、「1人で担当する」と言うのです。使用者と労働者に対して、「あなたは解雇されたけれども、解雇とはこういうことだよ。」「相手方がこのように言ってきたら、対応としてはこうだよ」などと夜間にも電話をするなど何回か調整を行い、紛争処理を進めていると言うのです。あっせん前置主義ですので、その結果をファクスで雇用審判所に事件報告を送るということでした。このようにACASと雇用審判所がどのように連携を取っているのかも話を聞いてみたいと思います。

 以上のように、個々の紛争解決機関について、私たちは誰かから何となく話を聞いて知っているのですけれども、実際の担当者から直接話を聞いたことがありません。2001年の個別紛争解決促進法の制定以降、いろいろな個別労働紛争の解決システムが設置されてきましたので、担当者からのヒアリングを行い、我が国の紛争解決がどういう状況になっているのか、何をどのように改善しなければいけないのかということを検討していくべきだと思います。せっかくこれだけ各方面の委員が参集しておりますので、ぜひさまざまな当事者からヒアリングを行い、そのうえで委員の知恵を出し合って、現行制度をより良いものにするためにはどのようにすればいいのかを、ぜひ議論していきたいと思います。

 そのようなヒアリングを行うことで、本日の参考資料がより生きてくるのではないでしょうか。労働紛争は、特に解雇事件は「生もの」であり、「生もの」は日々生きているもの変化するものですから、きっちりといろいろな実態を把握し勉強していきながら、皆さんとの認識を一緒にするということが必要なのではないでしょうか。

 本日はとても勉強になりました。ありがとうございました。

○荒木座長

 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。土田委員、どうぞ。

○土田委員

 ずっと議論を聞いてきて、この検討会をどう進めるのかに関連すると思うのですけれども、1つは、現状の紛争解決システムをどう有効にしていくかという、いわば現行法制度を前提にした議論と、もう一点は、解雇の金銭解決もそうですし、先ほど徳住委員が言われたADRと裁判手続のリンク、関連性といった点を制度的・政策的にどう考えていくかという問題があると思います。後の方は、現行制度を前提とする議論ではないので、したがって、立法政策なり今後の制度設計について議論することになります。恐らくその2つあると思います。

 例えば現状の制度を前提にした解決の議論ですと、先ほど来の現場当事者へのインタビューといったものが出てきます。一方、今後の立法政策まで視野におさめて議論する必要がありますから、そうなると、先ほどの解雇の金銭解決政策やADRと訴訟の手続との関連性などは重要論点となります。これは半分質問なのですけれども、その2つがあることを念頭に置いて議論を進めていくべきなのだろうと思います。

 第2に、先ほど私が言いました労働委員会のあっせんとの関係について、事務局から、もちろん労働局のあっせんもあり、労働委員会のあっせんもあり、そこは多様であっていいというお答えがありました。それは、私も全くそのとおりだと思います。私は、別に労働委員会のあっせんが全ていいなどと言っているわけではなくて、当然ながらそれぞれのメリットがあるわけです。そもそも、労働局のあっせん件数は圧倒的な数ですから、労働委員会ほど丁寧にできる環境にはありません。

ただ、労働局のあっせんで、ここがちょっと問題だという点があり、そこでは、労働委員会のあっせんが参考となる場合があると思います。端的に言えば、困っている労働者に10万円提示したら応諾してしまうという問題です。そのときに何か工夫がないかというときに、労働者に一度持ち帰ってもらって検討してもらうという方法を採用している点で、事案によっては、労働委員会のあっせんは参考になるということを言っているわけです。ADRについては、多様な選択肢を認めながら、それぞれの制度のメリットというものはそれぞれ吸収すればいいのではないかと思います。

 3点目に、ここまでは無理かなと思うのですが、きょうの資料1にもありました企業内の紛争処理という点は非常に重要だと思っていて、例えば解雇とか雇用の終了であれば、これは外部機関に行くでしょうけれども、パワーハラスメントとか人事考課とか、たとえば人事考課でAと思っていたのにDと評価されて賞与が据え置きという場合、それで裁判所に行っても、裁判所はそれを評価する能力は本来ないと思います。そういう問題は企業内で解決すべきです。

 これは10年も20年も前から言われている割には、企業も労働組合も私から見ると、きちんと取り組んでいないと思うのですが、今回のテーマである透明かつ公正な紛争解決システムの中では、私は企業内の紛争処理システムが実は必須だと思っていますので、そういう検討ができれば非常にいいのではないか。むしろしていただきたいと思います。

 以上です。

○荒木座長

 ありがとうございました。

 第1点はよろしいですか、事務局のほうから。

○村山労働条件政策課長

 土田先生からも半分は投げかけであるがということでございましたけれども、そもそも、先ほど鶴先生からも規制改革会議の意見書なり、あるいはそれに至る議論の経過の御紹介もありました。先ほど鶴先生から御説明があった3月25日の意見書も、考えてみれば、(1)、(2)のところは、先ほど事務局からもお答えしましたように、直ちにその御提言を受けて運用の開始に着手している点もあるし、まだまだ十分ではなく、今後、ほかの制度など参考にして改善していく点もあると思います。

 他方で、これは先ほど八代先生から当初御提起のあった点も含めて、新たに立法的に対処しなければできない部分もあるということです。ここをどういう仕分けにするかは、座長の御進行のもとで、よく委員の先生方とすり合わせていく必要があると思いますが、運用の改善と立法政策との両方をにらみながら御議論を深めていただければ大変ありがたいと、私どもとしては思っているところでございます。

 あと、重要な御指摘を幾つかいただきました中で、特に大竹先生から御提起いただいて、山川先生から深めていただきました属性別の比較分析についてです。また追って、機会をみて詳しく御説明したいと思いますけれども、参考資料No.3の5ページ目以降で、解決金額に関する属性別の分布に関しましては、若干の分析をしております。山川先生から御指摘がありましたように、あっせんについてはそもそも解決金水準が低い一方で、勤続年数についての傾向は9ページに割にクリアに出ている面があると思います。

 一方で、特に民事訴訟の和解等に関しましては、ちょっと俗な言葉で言えば勝ち筋、負け筋ということかと思いますけれども、そうしたものにまで立ち入っての分析というのは、この調査のやり方では限界があるのも事実であったということは、とりあえず御報告申し上げておきたいと思います。

 その上で、このもとになっているデータ自体、非常に浩瀚な報告書が出ておりますので、その中できょう両先生からいただいた御示唆も含めて、今後また適切に御紹介なり議論の素材として挙げさせていただければと思っていることだけ申し上げておきます。

○荒木座長

 ありがとうございました。

 ほかにはいかがでしょうか。水口委員。

○水口委員

 二度目の発言、お許しください。

 いわゆる労働審判や民事訴訟での解雇事件での和解や調停で、9割は退職するではないかということですが、1つあるのは、日本では民事訴訟であっても、賃金支払いが認められても、地位確認をしても、就労を強制する就労請求権がないというのが、残念ながら日本の裁判の前提です。ですから、私は依頼者に、最高裁まで行って勝ったら、使用者が何と言おうと復職できるのですねと聞かれても、制度的には限界があるということを説明するしかないわけですね。つまり、就労請求権がないということを前提で、みんなあきらめて、金銭解決に応じざるを得ないというのが日本の実態であるということは、ぜひ頭に入れていただきたいと考えています。

 一審に勝ったら就労請求で戻れるような制度があればいいですが、ありません。それで最高裁にて確定するまで4年とか5年と長期間かかり、それで復職はなかなか難しいという事情があるということを念頭に置いてデータを見ていただきたい。

 もう一つは、先ほど山川先生のほうから御指摘あったように、解雇事件についても、実務家は労働審判委員会なり裁判所がこの解雇を有効にするのか、無効にするのかということを、弁護士は労使ともども慎重に考えます。その心証を見通した上で、解決金あるいは和解金をどうするかということを考える。決定的なのは、解雇が有効と認められるのか、無効と認められるのかの見通しです。100かゼロというわけではなくて、先ほど中山先生がおっしゃったように、6、4なのかもしれない。高裁や本訴に行っても維持されるかどうか。そういう事情も踏まえて、我々実務家は判断する。

 その後、解雇が、これは勝てそうだなとなったときに、勤続年数とか、その人の月額とか、そして会社の支払い能力ということも含めて、複雑な事情要素を考慮して和解ないし、調停するわけです。そのプロセスの中で、いわば先ほど冒頭に鶴先生が御指摘されたような、当事者が納得する解決がされている。これが今の紛争の実態だと私は思っていますので、いわゆる納得するかどうかは金額だけではないですね。解雇の有効か否かの判定機能を踏まえ、主張立証活動のプロセス、当事者が納得するのはこのプロセスが大事ということも、ぜひ念頭に置いていただきたいと思います。

○荒木座長

 ありがとうございます。

 山川委員。

○山川委員

 済みません、1点だけですが、もし解雇の金銭解決に関する制度設計の議論をする場合には、かなりテクニカルな議論にならざるを得ないという面があるので、そのあたりの資料ないし検討の素材を出していただければと思います。手続的にどうするかとか、あるいは現在も解雇が不法行為となったら損害賠償が認められるかとか、現在の判例をどう理解するかとか。特に手続のほうは相当マニアックな議論にならざるを得ない面もあるのかもしれませんけれども、そのあたり、もしそういう議論をする場合には御留意いただければと思います。

 以上です。

○荒木座長

 ありがとうございます。

 ほかに。輪島委員、お願いします。

○輪島委員

 ありがとうございます。

 今の議論を聞いていると、その課題についていろいろ整理しなくてはならないことがいっぱいあることがよくわかります。実務家の立場からすると、参考資料No.2の19ページにありますように、平成181217日に労働政策審議会で、特に(3)につきまして、解決方法について引き続き検討するということになって、今日に至っていると理解しております。

 その観点からいきますと、ほぼ10年弱の時間が経過しておるわけでございますので、この間、何が変わってきているのか、何が変わっていないのか、課題として何があるのかということについて、私のレベルでもわかるような資料を御提供いただきたいというのが事務局へのお願いでございます。

 以上でございます。

○荒木座長

 ありがとうございます。

 八代委員、どうぞ。

○八代委員

 2回目の発言で恐縮ですが、先ほど土田先生から、この委員会の役割として、現行制度前提で考えるのか、立法政策を考えるのかという御指摘があったわけですけれども、私は現行制度を前提とした手直しであれば、厚生労働省には立派な労働政策審議会というものがあるわけで、そこで専門家がきちんと議論されれば良い。労政審があるのに、あえてこの検討会をつくったかといえば、先ほど事務局から御説明があったように、日本再興戦略でグローバルにも通用する紛争解決システム等の構築に向けた議論を行ってほしいということがあって、それを踏まえた上での検討事項であるわけですので、ある意味で立法政策に踏み込まないと、そもそも労働政策審議会とどこが違うのかという議論になるのではないか。

 だから、山川先生がおっしゃったみたいに、非常に細かい手続的なことは無理かもしれませんけれども、労働政策審議会で細かいところが議論できるような大枠をちゃんと考える必要があるのではないかということであります。

 それから、先ほど中山委員がおっしゃいましたけれども、ADRであるいろいろなあっせんとか、そういうものをどれだけ良いものにしたとしても、最後にある民事訴訟というものの中身が相変わらず判例任せでよいのだろうか。裁判官の間である程度合意があるといえども、実際にはかなり極端な判決もあるわけでして、それではADRのほうも当然影響を受けるわけです。先ほどどなたかが、10万円提示されたら、困っている中小企業の労働者は飛びつくということがあって、だから、そういうわずかな補償金で我慢せざるを得ないのだと思います。

 だから、きちんと民事訴訟で明確な補償金額の下限と上限が決められていれば、ADRでも当然それに引っ張られて、今のようなわずかな金額で解雇されるということはなくなるのではないか。だから、きょうは立法政策に踏み込むのだということでないと、この会議をする意味がないのではないかと理解しております。

○荒木座長

 ありがとうございました。

 土田委員。

○土田委員

 今、前半でおっしゃった箇所ですが、私の問題提起は、現行制度を前提に議論するのか、それとも立法政策に踏み込むのか、どちらなのかという問いかけをしたのではないのです。両方議論する必要があるのではないかということを確認したという趣旨ですので。

 それから、後半に言われた、10万円提示したら労働者は応諾してしまうという点ですが、そういう状況を前提にすると、現行制度を前提とする議論では、先ほどの労働局のあっせんでは、その場で決めさせることに問題があるので、労働委員会のあっせんなども参考にして改善する必要があるという議論になります。一方、立法政策の局面で言えば、今、先生がおっしゃったように、解雇の金銭解決の水準というものが法定されれば、それはいい影響を与えるかもしれない。その点は、さらに議論すべき点だと認識しております。

○荒木座長

 鶴委員、どうぞ。

○鶴委員

 この集まりがあるというのは、当然、新たな立法措置ということも検討していくという、私自身もそういう理解でございます。

 ただ、このあっせんとか労働審判とか裁判の訴訟というところと、私は非常に有機的につながっているのだと思うのです。それで、裁判の訴訟において、新たな解決金制度ができると、ほかの既存の制度にもそれなりに非常にいい影響が出るのではないかという思いを持って、この規制改革会議でもこういう一体的な議論をしてきています。ということで、今、既存なのか、新しいのかというと、全部制度がばらばらになっているのではなくて、それぞれが非常に補完的に結びついている。そうした中で、全部の制度をどう、よりよくやっていくのかという総合的・包括的な視点が私は非常に求められているのではないかと思っております。

 以上でございます。

○荒木座長

 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ、石井委員。

○石井委員

 弁護士の石井でございます。使用者側で弁護士をしておりますが、水口先生の1回目、2回目の御発言を聞いて、労働審判に対する評価は、ここは労使、同じかと考えています。労働審判及び労働審判導入後の訴訟の裁判所の在り方については、私だけかもしれませんが、使用者側としては積極的に評価しております。裁判所も、新しい制度導入ということで頑張ったし、労使の審判員も努力されたし、自分たちで言うのも何ですが、労使の弁護士、かなり努力したという自負はございます。

 透明な解決かどうかというのはありますけれども、柔軟で事案に応じた、当事者の納得する、不満を抱えつつの納得ですけれども、落ち着きのいい解決というのが実現されてきているのではないかと思います。しかし、公開のものでもないし、結果もオープンにされない。調停ですと、第三者には開示しないという守秘義務条項を入れるのが通常ですので、知られることがなかなかなくて、法曹関係者だけで満足と言ったら何ですけれども、そういうところがあるのかなと思います。

 それから、データや情報がなかなか出ていなかったのではないか。その辺、この場でもう少しアピールできるところがあればいいなと思っています。法曹関係者としては、ここまで育ててきた制度なので、ますます充実させていきたいと思っていますし、統計を見ると、全国全体では年間数十件という裁判所もありますので、まだまだ広げていく余地はある、使いやすい制度にしていく余地はあるのではないかと思います。

○荒木座長

 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。水島委員。

○水島委員

 大阪大学の水島でございます。大阪労働局であっせん委員を務めさせていただいております。

 いろいろな御意見を伺いまして、1点気になったことがございます。解雇が問題となった場合に、全てが不当解雇であるという前提でお話が進められ、資料がつくられているように思いました。もちろん、不当解雇でない事案は割合からすれば多くないのかもしれませんが、例えば規制改革会議、資料No.2の23ページで、「労働局のあっせんは利用しやすいが解決率が低いため、不当な解雇でも解決金すら得られないことが珍しくない」との指摘があります。こうした事実は、私も認識しておりますが、しかし使用者があっせんに参加しなかったケースにおいて、不当解雇であったかどうかは判断できないはずです。

 また、資料1の16ページで金銭解決の金額の傾向をお示しいただき、先ほど土田先生から、中小企業の労働者が低額でのまざるを得ないといったご指摘がありました。そうした事案があることは事実ですが、他方で、あっせんの場合は主張、立証を細かく検討するわけにはまいりませんし、解雇が不当であり無効であるとの認定は不要ですので、場合によっては不当な解雇ではないと思われる場面でも、解決するケースがあります。そうしたケースでは、おのずから解決金額は低額になります。

 それが審判あるいは和解になりますと、解雇の不当性、有効・無効がきちんと判断されますので、そこでの解決金額は当然高額になると思います。

 こうした不当でない解雇が争われ、解決してしまう事案は、全体からすればとるに足らないものかもしれませんが、少し気になりましたので述べさせていただきました。ありがとうございます。

○荒木座長

 ありがとうございます。

 どうぞ。

○岡野委員

 経済同友会の岡野と申します。よろしくお願いいたします。

 今日お話を伺い、大変勉強になりましたし、ここでいろいろなデータとか事実関係を少し調べていただき、それらが公開されて、普通の方々が現状はこうなっているのだということの理解が進むような、情報公開の場になることをぜひとも進めていただければ大変ありがたいというのが、まずの感想です。

 そこで、私のスタンスだけを申し上げておいたほうがいいかと思いますので、申し述べさせていただきますが、私ども経済同友会では、簡単に言えば、1985年のプラザ合意以降、日本の経済はグローバルな領域に入っていったわけです。90年以降、少子化とか高齢化とか社会の変動が大きく進む中で、これまでの日本のシステムが立ち行かなくなった。

 そのために経済構造改革があり、司法改革があり、行政改革があり、政治改革があって、それぞれの改革は制度的に補完されているので、1つだけを単独でやれば実現できる改革ではない。したがって、さまざまな改革をグローバルな観点及び少子化・高齢化に対応できる仕組みに変えていくことが必要だというのが、私どもの基本的なスタンスです。したがいまして、アベノミクスと通常言われている日本再興戦略の最初の3本目の柱の中に、この労働法制の改革が組み込まれて、それで議論することになったということ。特に、今回の問題については、特別なチームをつくって労政審にその結果を上げるというのは、それ自体に特別な意味のある会合だと思って参加させていただいております。

 ただ、この労働紛争解決システムについては、従業員、働いている人、一人一人の人格ともかかわりがあるものですから、これまでの蓄積とか実態をしっかり把握した上で、それを世の中にもきっちりわかる形で発信していくことが、この会合の一つの役割だと冒頭申し上げたことにつながります。その上で、これから日本の社会がある程度成長していくためには、例えば外国の企業とかグローバルな企業の存在というのは欠かすことができないわけです。

 そういう意味では、社会的風土は違いますが、若干の国際比較とか国際的なつり合い、先ほどTPPの話も出ていましたけれども、そういった観点からの議論をしていかないと、外国企業をアトラクトして日本の再生をするという一つの柱があると思いますが、それ自体も実現できなくなってしまうというところがあると思います。どこで折り合うかは議論の結果だと思いますが、きっちりとした方向性だけは私どものスタンスとして、きょう御披露させていただきました。

 どうもありがとうございます。

○荒木座長

 ありがとうございます。

 それでは、もしよければ御発言いただいていない委員からも御知見を伺えればと思いますが、いかがでしょうか。お願いいたします。

○小林(信)委員

 全国中央会の小林でございます。

 私どもの会員企業、団体でも個別の紛争が起きております。裁判の事例もあれば、いろいろ伺っていますが、特にわからない点が、労働審判制度というのがわからないところでございまして、どのように行われているかも含めて、今後、知りたいと私も感じているところでございます。できましたら、先ほど村上委員や他の委員の方からもヒアリングというお話ありましたけれども、ぜひともそういう機会を設けていただきたいと思いますのでお願いいたします。

○荒木座長

 ありがとうございます。

 鹿野委員、いかがでしょう。

○鹿野委員

 鹿野と申します。慶應大学に勤めております。

 私は、労働法の専門ではなく、民法を専門としております。現在、中央労働委員会で、公益委員として労働紛争の解決に少し携わってはおりますが、それは集団紛争についてです。そういうことですので、きょうは皆様の御議論を聞いて、その問題点を把握しようと考えてまいりました。

 個人的には、先ほど八代先生がおっしゃり、またペーパーも出されている考え方に共感を覚えるところもあるのですが、私自身はその前提の状況といいましょうか、現在がどのような状況になっているのかということについて、必ずしも十分把握できていません。私が民法だからということもあるのかもしれませんけれども、把握できていないところがあります。そこで、先ほどから何人かの方々から出されましたように、ヒアリング等をして、この資料の表や数値で出ている以上の現場の状況をまずは把握し、その上でこの問題を考えていく必要があるのではないか。少なくとも私はそういうことで考えてみたいと感じた次第です。

○荒木座長

 ありがとうございます。

 中村委員、どうぞ。

○中村委員

 最後になりますが、僕はまだ発言していなかったのですけれども、法政大学の中村と申します。

 僕自身は、地域での労働相談とかコミュニティ論、そういうことを調べているので、そこで聞いたことと、ここで話されていることのギャップが大きいので、ちょっと戸惑っているというのが事実です。解雇無効の訴えをする労働者はほんの一握りで、ほとんどは泣き寝入りしているので、その人が裁判に行くとは思えない。もっと有効なシステムをつくったほうがいい。労働相談でコミュニティ・ユニオンに行っても、水島さんの意見と違うのですけれども、だめな、つまり労働者に非があるような相談の場合は、彼らは上に持っていかないことが多い。これは、必ず使用者のほうが悪いと思ったときだけ言うのだけれども、労働者がうんと言わないと上に行かないというか、相談に行かない。

 だから、そういうことを考えると、ここで大きな議論をやるよりも、今のシステムをどう変えたら、もっと救える人がふえるのだろうというスタンスで議論したほうが、僕はいいかなという気はしています。ほんの一握りしか労働審判とかあっせんには行っていません。ほとんど泣き寝入りしているので、その人たちが救えるようなシステムをどうつくるかというほうが、日本の社会にとってはいいかなと、そういう調査をしていて、そう思っています。

○荒木座長

 ありがとうございました。

 そろそろ時間になりました。私は労働法を専門にしておりますけれども、きょうの御議論から大変多くのことを学ぶことができました。必要なデータについての御指摘もありました。そのデータについては、それをどう評価するか、どう読むのか、それについても非常に貴重な御指摘をいただいたと思います。

 また、制度を動かしている人たちの目から見て、何が問題かということも、今後ぜひ聞いてみたいなという気がいたしました。

 もちろん、これからどういう政策を考えるかということになりますが、現状について、まずは委員の皆さんと理解を共通にして、それでさらに考え方を深めていきたいと思います。

 それでは、次回の日程について、事務局からお願いいたします。

○松原労働条件政策推進官

 次回、第2回の日程でございますけれども、11月下旬を目途としまして調整中でございます。確定次第、開催地とあわせまして御連絡させていただきます。御了承ください。

 以上でございます。

○荒木座長

 それでは、第1回の検討会は以上といたします。

 本日はどうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局労働条件政策課

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