ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(特定保険料納付申出等に係る承認基準専門委員会)> 第四回特定保険料納付申出等に係る承認基準専門委員会議事録(2015年9月30日)




2015年9月30日 第四回特定保険料納付申出等に係る承認基準専門委員会議事録

年金局事業管理課

○日時

平成27年9月30日(水)10:00~11:30


○場所

厚生労働省12階専用第12会議室


○出席者

喜田村委員長、片桐委員、白石委員、高橋委員、嵩委員、柳委員、山口委員

○議題

(1)特定事由の証明について
(2)申出に係る事務処理の流れについて
(3)その他

○議事

○大西事業管理課長 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第4回「特定保険料納付申出等に係る承認基準専門委員会」を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、御多忙の折、お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 まず、委員の出欠状況でございますけれども、全員が御出席でございます。なお、事務局の樽見年金管理審議官は、おくれて到着の予定です。

 続いて、資料の確認をさせていただきます。まず、議事次第、次に資料1「特定事由の証明について」、資料2「申出に係る事務処理の流れ」、それから、参考資料1「参考条文」、参考資料2「行政側が持ちうる証拠の例」をお配りしています。過不足等ございませんでしょうか。

 それでは、議事進行につきましては、喜田村委員長にお願いをしたいと思いますが、カメラはここで退室をお願いいたします。

 それでは、よろしくお願いいたします。

 

○喜田村委員長 皆さん、おはようございます。

 この委員会も4回目となりまして、本日は、議事次第に記載されておりますけれども、「証明について」ということで、具体的にどのような資料等があれば今回の流れに乗るのかというようなことを御審議いただくわけでございます。これは皆様方もそうだと思いますし、私どももそうですが、事実認定というのが一番難しいところでございまして、それのある程度のよりどころをつくろうということですので、非常に難しいところになろうかと思っております。

 それでは、議事次第1「特定事由の証明について」ということでございますけれども、この点につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。

 

○大西事業管理課長 それでは、お手元の資料1「特定事由の証明について」という資料をごらんください。まず、事実認定の基本的な考え方を御説明した上で、具体的な事例等について、資料に沿って御説明したいと思います。

 まず1ページ目「事実認定の基本的な考え方」です。特定事由に当たるかどうかということを判断する前提といたしまして、事実認定をする必要がありますが、他の制度などで事実認定をする際にどういった基準があるのかということをまず事務局のほうで調べたものです。1ページ目の表は訴訟などで用いられている基準ということでございまして、具体的には、まず一番上のほうですけれども、「高度の蓋然性」というものがございます。最高裁の判例によりますと、通常人なら誰でも疑いを差し挟まない程度に真実らしいという確信を得られたということで、証明ができたというふうに捉えるとのことです。あるいは「訴訟法上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的な証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を持ちうるものであることを必要とする」という民事事例における判例もあります。こういった形で高度の蓋然性が証明された時点で認めるというのが判例の立場ということかと存じます。

 これに対して、学説などでは、「優越的蓋然性」という議論がございまして、証明責任を負わない当事者の反証活動等を充実させて、適正な事実認定を実現する上でも、証明責任を負う当事者の事実主張が相当の蓋然性をもって認められる場合には、必ずしも疑問の余地がないとは言えないときであっても、事実認定をしてもよいというのがこの優越的蓋然性という考え方でございます。

 あるいは「証拠の優越」という議論もあります。証拠上、いずれの側の証明度が優越しているかということによって、原告、被告それぞれが証明を尽くした限りで、どちらがまさっているかということで判定をしていくということで、相対的に証明度が高いほうが優越している事実だというふうに認定するという考え方です。

 表の一番最後ですが、民事訴訟などの手続において用いられる基準として「疎明」の基準というのがございます。実体的な権利義務関係の確定の場合には高い蓋然性が必要という先ほどの判例がございましたが、実体的権利義務関係を対象としない場合には、より低い蓋然性の程度、「一応確からしい」というふうな形で表現されるということですが、「一応確からしい」ということであれば、それに基づいて裁判を行うことができるということで、「疎明」という基準は、迅速性が要求される手続において、証明によっていたのでは制度の趣旨が実現されないという場合に採用されるということです。あるいは、80%以上の心証を得なければならないのが証明で、55%ぐらいでよいのが疎明というような説明もあります。

 2ページ目です。今回の制度に比較的近いものとして、「年金記録訂正手続き」というものがございます。年金制度に加入して保険料をきちんと納めていたけれども、後々年金受給の段階になって、記録がどうも違うようだということがわかって、受給者の方からの申出に基づいて第三者委員会で認定を行うというのがこの記録訂正手続きでございます。記録訂正手続きにつきましては、厚生労働省の告示がございまして、表にあるとおり、「厚生労働大臣は、訂正請求の内容を十分に汲み取り、国民の信頼に応えるように努める」という基本姿勢のもと、積極的に関連資料、周辺事情の収集を行い、その上で、公平かつ公正な訂正決定を行うということにされています。その際の判断基準として、「訂正請求に理由があると認める判断の基準は、訂正請求の内容が社会通念に照らして明らかに不合理ではなく、一応確からしいものであることとする。その判断を行うに当たっては、関連資料、周辺事情、関係法令等の取り扱いを踏まえて、総合的に判断する」ということにされています。したがって、年金記録訂正手続きにおける判断基準は、先ほどの諸説で申しますと疎明という程度の証明が必要であるということで、疎明に準じた考え方に立って年金記録訂正の可否を判断しているということになっているわけでございます。

 3ページ目でございますが、今回の私どもの特定保険料の納付制度において、特定事由があるかないかということの事実認定の基準について、どう考えるかということです。この基準を定めるに当たりましては、まず、この制度が設定された趣旨といたしまして、事務処理誤り等があったにもかかわらず、現行法のもとで救済が困難な事案というものについて、訴訟によらず簡易な手続で救済の道を開くことを目的に制度が設けられているということ。それから、制度の効果といたしまして、過去に遡及するものではなく、申し出を受けて、それ以降に特定保険料を納付いただき、年金の受給権が発生したり、年金額がふえるという仕組みをとっていること。それから、第3に、保存期間や事務処理誤りの内容によって、行政側がその証拠を文章の形で保存しているという場合は、一定の限界がどうしてもあるということで、常に行政側がきちんと証拠を残し切れていないということも多かろうというふうに考えられるということであります。これら3点を考え合わせると、裁判上で使用されている「高度の蓋然性」という基準ほど厳格に事実認定をしなくてもよいのではないかと考えられます。この制度は被保険者のほうに責任がなく、事務処理誤りなどによって保険料が納められないということで、将来の年金額が減額になるということが、結局、制度への信頼を損なう、あるいは事務処理誤りに遭った人と遭わない人の公平性の問題が損なわれるということで創設されたものであるということに鑑みますと、この特定保険料の納付制度は、年金記録訂正手続きと共通点があるということで、記録訂正手続きで用いている、社会通念に照らして明らかに不合理ではなく、「一応確からしい」という疎明の基準というものをこの特定事由の事実認定に当たっても用いることが適当なのではないかと考えられるのではないかということでございます。

 4ページ目以降が具体的な証拠の例ということでございます。まず、行政側が持ちうる証拠の例というのが4ページ目の表でございます。例えばマル1の顛末書など、行政内部での事故報告、本人から行政機関のほうに届け出があった資料や申請書など、年金相談や手続を受け付けたときの受付の記録、受付票や受付処理簿、受付進捗管理システム上の記録、あるいは職員のメモ、録音データ等々というものがございます。これらにつきましては、申出者の側でどういうものがあるかというのは、行政機関内部のことなのでわかりません。一方、証拠の持つ信用性は高いと考えられますので、これらについては、行政側のほうで積極的に存在の有無を調査して、特定事由の認定の際に用いていかなければならないと考えられます。

 お手元の参考資料2として、行政側が持ちうる証拠の例を幾つか、様式などがあらかじめ定まっているようなものを選んでお配りをさせていただいています。

 まず最初の1ページ目が、事務処理誤り等が発生した場合に、発生部署から日本年金機構のブロック本部へ報告する際の様式「事件・事故・事務処理誤り様式1号」です。この様式をごらんいただきますと、いつ、どういう事件があり、担当者はどういう方で、具体的な内容、お客様にこういう対応をしましたということをかなり詳細に報告するようになってございます。

 4ページ目は、事務処理誤り等があった場合に、年金事務所から本部に対応を協議する際の協議書のひな形です。こちらも案件と協議の対象者、つまり、お客様の氏名、基礎年金番号、生年月日、どういう事案だったかということの概要や経緯、あるいは原因、対応案というものを記載するようなことになってございまして、こうした資料が残されていますと、何があったかということを、後日、把握することができます。

 5ページ目は、年金事務所の窓口で年金相談の際に被保険者に御記入いただく相談・手続受付票でございます。こちらにはどういう方が御相談に来られたというところを、氏名、住所等を御記入いただくようになっています。チェックボックスがありまして、どういった内容で相談に来られたかということがこの資料を見るとわかります。ただし、具体的に例えば職員からどういう説明があったとか、事務処理の具体的な内容までは記載するようになっていませんが、何の件でいつどういう相談に来たということは、こういうものが残っていれば把握ができるというふうに考えられます。

 7ページ目は、電話で年金相談を受け付けたときに、年金事務所の職員が記載するものですが、記入欄などを見ると、どういう方からどういう件について相談があったということは把握できます。

 9ページ目は納付書の再交付リストということで、委託業者さんから年金事務所に納付書の再交付を依頼するための用紙です。これまで第2回、第3回の当専門委員会でも、納付書の発行期間を誤ってしまったという事例があったということお示ししてまいりましたが、9ページの様式をごらんいただきますと、どういう方にどういう期間の納付書を発行したということが記録としてつけられているということがおわかりいただけるかと思います。

10ページ目は、委託業者が個別訪問を行ったときの活動実績の報告書というもので、これは年金事務所のほうに提出される資料でございます。10ページ目ですと、どういう訪問員さんが、いつ、どなたのところへ訪問に行って、訪問結果はこうでしたということを記入するようになっています。訪問先での説明内容を詳細まで書くことはないかもしれませんが、いつどういうところに行ってどういう話をしたということは、こういう資料があれば把握できるということでございます。

 もとの資料1のほうにお戻りいただきまして、以上が行政側が持ちうる証拠の例でございましたけれども、5ページ目では、申出者のほうで持っているかもしれないという証拠の例を掲げさせていただいております。例えば届書を提出したときに窓口で受け取った控えですとか、相談票の控え、あるいは自分で録音したデータ、それから窓口の職員がつくって、それを交付された手紙とかメモといった記録、あるいは御本人が当時、文書なり、最近ですとブログに記入するというような場合もあるのかもしれませんが、何らかの形でメモを残しているということもございます。これらの証拠に一定程度の特定事由に当たる事実が記載されているという場合に、承認のための証拠として用いることができるというふうに考えられます。これらの証拠につきましては、行政側のほうでは、申出者がこれらのうちどれを持っているかということは必ずしもわからないわけでございまして、例えば相談に来られたときに、先ほどの行政側のほうの持ちうる証拠ですと、受け付けた側、すなわち日本年金機構が中心となって証拠資料の有無を確認する必要があるわけですが、こちらの申出者が持ちうる証拠のほうにつきましては、年金事務所において、例えばこういうものをお持ちではないですかということを申し出に来られた方にお聞きして、そういうものがあったら出していただけませんかと働きかけることによって、より認定がスムースに行えるという形になるのではないかということでございます。

 これらの証拠については真正なものであるかどうかという点の確認が必要ではないかということでございまして、例えば加筆修正の形跡などがあって、最近つくったものではないか、昔、特定事由に当たるような事務処理誤りがあったときのものではないのではないかというものだと、証拠として用いることができるか疑問が生じることになりましょうし、例えば外見で、紙が劣化しているとか、日付が書いてあって、当時の日付になっているとか、そういうもので当時作成されたというふうに認められれば、そのメモが真正なものだということが確認しやすいというふうに考えられます。

 6ページ目ですが、証拠のパターンとして第三者の証言というものも考えられるというわけでございます。第三者の証言につきましては、例えば年金記録訂正などでも、同僚の方に、この人も確かに同じ会社で勤務していましたよということを証言していただくなどという形で使用される場合がございます。今回の私どもの特定事由の認定に当たっても、第三者の証言というものは、偽証ではなさそうだということを一応確認した上で、証拠として用いることができると考えてはどうかと思っております。

 続きまして、7ページ目からが具体的な事例ということでございます。第2回、第3回の当専門委員会で御議論いただきました具体的なケースを念頭に、そういう場合にこういう証拠があったら認められる、認められないということを考えたものが7ページ目以降の資料となっております。

 まず、7ページ目の「(1)処理誤りにおいて届出書等の証拠書類が存在しないケース」です。被保険者の種別変更届が提出されたけれども、日本年金機構で資格取得日の入力を誤ったため、一部期間の納付書が作成されず、結果的に保険料を納付できなかったという事例でございます。行政側で持ちうる証拠、あるいは御本人のメモ等の証拠があればいいわけですが、そういう証拠がないという場合であっても、このような種別変更の事実、すなわち、いつ会社をやめて、第2号被保険者から第1号被保険者になったという事実関係につきましては、届け出時に行政側が確認すべき事項になるということでございます。こういうものにつきましては、入力内容と事実関係というものが異なっていれば、御本人から申し出があるときには、入力処理を誤ったということが一応確からしいのではないかというふうに判断できるのではないかということです。

 8ページ目の(2)ですが、被保険者の方がコールセンターに納付書の再作成を依頼したけれども、そのコールセンターでは年金事務所に納付書の再作成期間を誤って伝えてしまったために、納付機会を逸したという事例です。行政側に証拠がないという場合であっても、実際に再発行された納付書の期間とその当時の未納期間がずれているということが、客観的な事実関係として確認できて、一方で、その方が発行された納付書については実際にきちんと納付されているという場合には、この方は納付書の再発行を依頼したときに、未納期間を全部納めるという意思があったことが推測されるということで、この方の納付期間について間違って納付書が発行されていたという可能性が高い、一応確からしいというふうに認められるということで、この場合も特定事由ということを認定してよいのではないかということです。

 2つ目の○でございますけれども、御本人からメモが出てきた場合も、それに具体的に納付書の再発行に関して、どの期間について発行を依頼したということが明確に記載してあれば、もちろん、かなり確からしいわけですが、そうではなくて、納付書の再発行の期間までは記載されていないけれども、いつコールセンターにこういうことを依頼したというようなことが何らかの形でわかる、推測されるようなメモが残っていて、行政側でそれを特段否定する材料もないというときには、一応確からしいということで、やはり特定事由があったということが認定できるのではないかと考えております。

 9ページ目「処理誤りにおいて届出書等の証拠書類が存在しないケース」の3番目ということで、世帯主である被保険者が口座振替をやめた際、金融機関のほうで間違って、その被保険者の方と同一の口座で引き落としている配偶者の口座振替まで解除してしまったために、配偶者が付加保険料の納付機会を逸してしまったという事例でございます。顛末書などの直接的に事務処理誤りがあったことを示す証拠がなくても、日本年金機構のほうで、口座振替辞退申出書が提出されていないにもかかわらず、口座振替が停止されているということが確認できれば、特定事由に該当するというふうに認められるだろうということでございます。また、間接的な証拠として、マル1世帯主の口座振替と同時に配偶者の口座からも引き落とされなくなったということが通帳の記録からわかる、マル2引き落とされなくなった月から一定期間後に付加保険料の申し込みがあって、その後、未納期間はなく、付加保険料がきちんと納付されている、そして、マル3行政側に事務処理誤りがなかったということを否定する材料もないという場合には、これらのマル1、マル2自体は、直接金融機関で誤ったということがわかるわけではないですけれども、間接的な証明として御本人が申し出られているような事態があった、結果、こういうことになったのだろうということが一応確からしいというふうに言えるのではないかということでございます。

10ページ「処理漏れにおいて届出書等の証拠書類が存在しないケース」ということで、1、2、3と3つの例があります。1つ目が、市場化業者に納付書の再発行依頼を行ったけれども、市場化業者から再発行依頼を伝えられた年金事務所が事務処理を失念してしまったために、納付書が再発行されなかった事例。例2ですが、市町村のほうで付加保険料の申し出を提出しましたけれども、市町村から年金事務所への送付が行われなかったという事例。例3ですが、金融機関で口座振替の申し出をしたけれども、金融機関のほうで必要な事務処理が行われなかったために、付加保険料が納付できなかった事例を挙げています。いずれの例についても共通ですが、行政側のほうで証拠が見つからないという場合であっても、本人の当時のメモなどがあるということと、行政側に一応確からしいということを否定するものがないということがあれば、これらについても一応確からしいということで、特定事由が認定できるということになるのではないかということです。

11ページ目は、説明誤りの事例です。被保険者が年金事務所に後納制度の納付期限について相談に行ったときに、誤った説明を受けて、被保険者が未納期間について納付することができなかったという事例です。これも、年金事務所に訪問して相談を受けた日付や内容がわかるメモが残っている、その中に直接的な説明誤りの記載があれば確からしさが増すわけですけれども、そのような記載がなくても、説明誤りがあって納められなかったという期間以外の期間については、きちんと納付されているということが事実関係として確認できる。そして、行政側に否定する材料もないという場合であれば、御本人の申し出が一応確からしいということで、特定事由を認定できるのではないかということです。

12ページ目「説明誤りにおいて届出書等の証拠書類が存在しないケース2」ですが、10年前に市町村で免除の相談をしたときに、免除に該当しませんよと言われて、免除申請書を提出しなかった。10年後に改めて免除申請をしたら認められたので、10年前の説明は間違っていたのではないかという事例です。これも、市町村職員による説明についてのメモ、もちろん直接説明内容が詳しく書いてあればいいわけですが、それがなくても、いつ市町村にこういう件で説明を受けに行ったというようなことが書いてある、そして、当時の世帯構成ですとか所得情報について、それがわかるような資料があるということ、また行政側にも否定材料がないという場合には、御本人の申し出が一応確からしいということで、認定できるのではないかということです。これも間接的に証明するパターンということかと思います。

13ページ目は、説明誤りのケースの3番目です。被保険者が付加保険料を世帯主の口座で納付していて、その世帯主が亡くなったので口座を閉鎖した。そのときコールセンターに照会をしたら、他の手続は必要ありませんと言われて、手続をしなかったために、結果的に付加保険料の納付ができなかったという事例です。この事例についても、間接的な証拠としてコールセンターに問い合わせをしたということが何らかの形でわかるメモがある。御本人の納付状況を見ると、説明誤りがあって納められなかった月から一定期間後に付加保険料の納付が再開されていて、きちんと納められている。それから、行政側に否定材料もないという場合には、これらの間接的な証拠から、御本人の申し出が一応確からしいというふうに認定できるのではないかということです。

14ページ目は、納期限の説明漏れで納付できなかったという事例です。これも間接的な証拠として、いつこういう件について年金事務所等に相談に行ったということで、説明漏れがわかる記載があれば、もちろん確からしさが増すわけですが、記載がない場合でも、いついつ相談に行ったというようなことがわかる。それから、納付をできなかった期間以外のところの納付状況としては、きちんと納められているということがわかる。そして、行政側に特定事由がなかったことを否定する材料もないという場合には、特定事由を認定するということが可能なのではないかということで、間接的に証明されるという例です。

 以上のような形で間接的な証明、状況証拠については、総合的に考えて、直接的に事務処理誤りがあったことが証明されていなくても、一応確からしいという基準に沿って判定して特定事由を認定してもいいという考え方でございますが、一方で、やはり何らかの物証というか、本人のメモなり、行政側の資料があればベストですが、そういうものがあるということは一応必要とするということです。本人のメモ等の記録も一切なく、単に本人が主張されているというだけで、何も出てこないという場合には、逆に言うと、一応確からしいというところまでの証明はできていないということで、不承認という形にならざるを得ないだろうということです。今回の資料においては、一定程度の間接的な証明も含めて、何らかのメモ書き等の証拠が必要だという考え方に立ってまとめさせていただいています。

 私の説明は以上です。

 

○喜田村委員長 ありがとうございました。

 事実認定の基本的な考え方ということで、一応確からしいというようなある程度の判断基準をお示しいただいて、その上で、具体的な個々の事例について、こういう場合はこのように考えられるのではないかといったことの事例による説明ということであったかと思いますけれども、総論的な部分、あるいは各論的な部分、いずれでも結構ですが、委員の先生方から御質問なり、あるいはお考え等ございましたら頂戴いたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。山口さん。

 

○山口委員 何点か質問させていただきます。

 まず、総論的な部分で、今回の制度趣旨に照らして証明のレベルを余り厳格に高くしないというのは妥当であろうと思います。それを前提に、1ページで「疎明」ということになっているのですが、例えばこれが不承認なりの結果となって、事後の不服申し立ての手続に行ったときに、この制度の中で行われている証拠というのは、その後の手続に使われることがあるのかというところをお伺いしたいと思います。

 2つ目は、2ページで年金記録訂正手続きに近いものとしてということで挙げられていますけれども、「第三 判断の基準」で関連資料と周辺事情と関係法令等というふうになっていて、周辺事情というあたりは、今後の手続の中でこれに類するようなもの、あるいは反映される部分があるのかということをお伺いしたいと思います。

 3点目は具体的な事例についてなのですが、事例の中で行政に一応確からしいことを否定するものが存在しないということで、本人の出したもの、あるいは行政側の持っている証拠も含めてということですけれども、行政の側で否定する部分というのがあるとしたら、どのぐらいのウエートというか、それがこの手続の中でどう効いてくるのかということをお伺いしたいと思います。

 4点目ですけれども、13ページ、コールセンターの事例です。コールセンターは、恐らく電話をとるときに録音などをしていると思うのですが、そういった持っている情報は、どのくらいまでさかのぼって使えるのかをお伺いしたいと思います。

 最後に、最初に参考資料2として示された様式についてなのですけれども、1と2で事務処理誤りの様式と協議書というふうになっていて、これは恐らく様式に記載するのだろうと思うのですが、記載内容が、行政側が証拠とするものの例ということで、誰が書いても一定した内容で情報が得られるような書き方がされるものなのかということをお伺いできればと思います。

 以上です。

 

○喜田村委員長 ありがとうございました。

 5点ほどあったかと思いますけれども、年金局あるいは機構のほうで今の段階でお答えできるものがございましたら、お願いいたします。

 

○大西事業管理課長 最初のほうから順番に参りますと、不服申し立ての手続に移行したときに、最初の段階での不承認・承認に用いた資料というものを使用できるのかということですが、これは本当にケース・バイ・ケースということになるので、一概には申し上げられないと思いますけれども、社会保険審査官、審査会などにおける不服審査請求の事務の流れを念頭において考えますと、保険者の側から意見を言う機会もございまして、そういう場において行政側が持っている証拠に照らせば、原判断は妥当だとか、原判断は見直したほうがいいということを申し上げる機会は与えられていますので、もちろん、審査官、審査会の側から資料を出しなさいと言われればお出しするわけですけれども、保険者の側からも自分たちが手持ちの材料というのは積極的にお示しする機会が与えられているというふうに理解をしております。

 周辺事情ということについてですが、具体的なものとしてどういうものがあるか、にわかに思い浮かばないのですけれども、先ほど来の説明の中での例で申しますと、その方のこれまでの納付状況を見ると、ほかのところはかなりきちんと納められているのに、そこだけ穴があいていて、そこは実は納付書の発行期間が間違っていた部分だと言われると、ああ、そうかなということが類推されるという意味で、例えばそういうものがここで言っている周辺事情としてあるのではないかと思います。

 それから、一応確からしいことを否定するものがないということをどの事例にも書いてあったわけですが、率直に申しますと、否定材料がないのが普通であろうということで、むしろ材料があるのであれば、それを積極的に私どものほうからお出しするわけですから、認定が難しいような事例においては、そういう否定材料がないほうが原則だというふうに思っております。私からは以上です。

 

○町田日本年金機構国民年金部長 日本年金機構国民年金部の町田でございます。

 コールセンターの録音のお尋ねがございましたけれども、コールセンターについては直接調べてはいないのですが、同様の事例といたしまして、市場化テスト事業者も電話録音をしております。一般的に個人情報保護との関係で、6カ月を超えて録音の記録を残しておくと個人情報保護法の該当になるということで、通常これらの業者さんは大体6カ月未満で消去している。6カ月近くまで持つのですが、6カ月を超えますと個人情報保護法の対象になりますので、その前に消去している。それと、相当な量になりますので、それ以上のデータを持つのはなかなか厳しいというような話は聞いております。

 2つ目の行政側が持ちうる証拠の例ということで、資料の事件・事故・事務処理誤り様式等でございますけれども、基本的にこれは再発防止をどうしていくのかというのが一つの大きな観点としてございますので、そこにどういう原因があったのかとか、どういう事象であったのかというのは、より具体的にわかる範囲で書き込まれておりますので、おおむねどの方が書いてもきっちり内容が読み取れるような内容になっている状況でございます。

 以上でございます。

 

○喜田村委員長 山口さん、よろしいですか。

 

○山口委員 はい。

 

○喜田村委員長 ありがとうございます。

 ほかに先生方。では、白石さん。

 

○白石委員 ちょっと確認させてください。6ページの(3)の「申出者が第三者の証言」ということで、先ほど同僚などというお話が出ましたが、厚生年金でしたら、同僚というのはわかるのですけれども、国民年金は、同僚に確認しても始まらないですし、例えば厚生年金に加入していない会社に勤めていて、同僚に確認しても、納めるのが個人なので、私は納めていましたという発言しか聞けないと思います。そうすると、多分家族とか身内が証明の対象になりますが、本当にそれでよいのかという部分もありますので、「第三者の証言」という部分は、もうちょっと具体的に詰めていただければと思います。

 もう一つは9ページ、付加保険料の引き落としができなくなった期間があるということで、マル2のところに「一定期間後に」ということで、先ほど気づいた時点でというお話でしたが、この一定期間が数カ月なのか、数年なのかによって相当変わってくると思うのです。例えば気がついたけれどもそのまま放置していて、後になって、いや、今、気がついたという事例も出てくると思いますので、この「一定期間後」というのもある程度は明確にされたほうがよろしいかなと思います。

 

○喜田村委員長 ありがとうございます。

 9ページのほうでいきますと、「一定期間」と書かれていますが、一定期間と言うと、何か決まった期間、あるいはある程度の基準があるかのように思えますけれども、ここで言っている一定期間というのは、必ずしも一定していないのかなという気もいたしますので、書き方はいかがかなと思いますし、きのう事前説明のときに私も言いましたが、ある程度期間がたった後に再度付加保険料に申し込むということがあれば、なぜこのときに再度申し込んだのですかというのは必ず聞くと思うのですね。だから、このところをどういうふうに実際のところはやっていくのかなという問題があろうかなと思います。

 それも含めて白石委員から2点ございましたけれども、事務局のほうでいかがでございましょうか。どうぞ。

 

○大西事業管理課長 いずれも委員の御指摘のとおりかと思いますので、これを踏まえて、次回以降、具体的な基準の中で、一定期間や第三者の範囲について記載しなければいけないかなと考えた次第です。例えば家族や身内ですとか、利害関係が濃い方からしか証言がないという場合には、確かに「第三者の証言」とまでは言えないようなケースもあるのかなということで、記録訂正の取り扱いなどを確認した上で、整理をしたいと思います。

 それから、一定期間につきましても、どういう理由で再開したのかということを確認することが委員長からも言われたとおり必要なわけですが、現段階では、間がたたずにすぐ再開していて、一部だけ穴があいていて、そこが納付書の作成漏れにかかった部分だろうということが容易に推察されるような、非常に短期のうちにすぐ納付が再開しているというようなイメージで考えていましたが、その点も整理したいと思います。

 

○喜田村委員長 ありがとうございます。

 ついでに言いますと、6ページ、今の第三者の証言のところですけれども、「偽証とは認められない」ということで、偽証というのは宣誓してからというのが我々法律家の考えなので、「内容虚偽とは認められない」とか、そういう御趣旨のことをおっしゃっているのだろうというふうに思います。

 ほかに委員の先生方。片桐さん、お願いいたします。

 

○片桐委員 先ほど山口委員の御質問に回答いただいた中で否定材料という話があったと思うのですが、この否定材料というのをどの程度積極的にどこまで探すのか。担当者の個人判断になってしまうのか、それともここまでやりなさいというルールを示すことができるのか。いかがなのでしょうか。

 

○喜田村委員長 いかがでしょうか。では、大西さん、お願いいたします。

 

○大西事業管理課長 後の資料で御説明する部分とも関係があるのですが、今回の申し出の受付は年金事務所で行います。年金事務所で実際の関連の機関、具体的には市町村、金融機関、市場化テスト事業者などの関連の機関も含めて確認をして、証拠があるかどうかを調べるということですので、積極的な証拠を探していく中で逆に否定する材料が出てきてしまったという場合には、この申し出は事実ではないなということがわかったというふうになるわけですけれども、そうでなくて、否定材料を最初から探しに行くということを積極的にやるということは、実際上も難しいし、そういう感じにはならないのではないかなと思います。積極的な証拠を探してみて、たまたま否定材料のほうが見つかってしまったという場合にはともかく、そうではなしに、積極的に否定材料が出てくるということはなかなか難しいのではないかと思います。

 

○片桐委員 では、逆に積極的に肯定するための材料を探すというところなのですが、行政のほうに証拠を探しに行くときには、行政側の管理のやり方によってしまう部分があるのではないかと思うのですけれども、そこも例えば行政のほうに電話で聞いて、あります、ないです、はい、終わりというケースと、実際にいついつの期間の何を調べてくださいねとか、行政のほうもこういう対象でこういう調査をしたけれども、なかったですとか、ありましたとか、ある程度水準を均一化するといいますか、何かそういうルールみたいなものがないと、担当者によって、電話でちょっと聞いて終わりなのか、どうなのかなというような疑問があります。

 

○喜田村委員長 いかがでしょうか。大西さん。

 

○大西事業管理課長 まさに御指摘のとおりだと思います。承認基準案において、この程度は最低限探しなさいというラインは具体的に書き込みをできるように検討したいと思います。

 

○喜田村委員長 先回りになりますけれども、承認基準案というのは、どの程度のものを今、お考えなのですか。

 例えば一応の確からしさというのは総論的なことだから、これは入るのだろうと思いますが、その下の具体的な事例として御説明いただいたので、これは非常にわかりやすいのですけれども、これを全部書くのかどうなのか。今、どの辺のお考えなのか。もちろん、次回以降の話になりますので、今、ここで確定的なことをお示しいただかなくても結構ですが、今のところどのようなことなのか教えていただければと思うのですが。大西さん、お願いいたします。

 

○大西事業管理課長 現時点で確定しにくいお話なのですが、イメージとしては、先ほど申し上げました記録訂正手続きのほうでも認定要領とか基本方針とか、そういったものを告示あるいは通知で具体的に定めて、それに基づき記録訂正手続きが進められています。それらの内容を見ますと、こういうものが出てきたら認めるとか、こういうのがあっても認めないとか、かなり詳しく書かれています。したがって、こちらの方でも、基本的な考え方はもちろんですが、これまでの第2回、第3回、そして今回の議論で出てまいりましたような具体的な事例というものも極力基準として盛り込む方向で考えております。

 ただ、厳密に申しますと、基準というのは、法律上、厚生労働省令で定めるとされているのですが、厚生労働省令で定めるべき内容と、厚生労働省令では全部書き切れないので、それより下のレベル、すなわち行政の通知レベルで書き込むことも出てくるのではないかと思います。今後、内容の精査をして、このことは省令で規定し、このことは通知に書こうということの仕分けが必要だと思いますが、省令部分、通知部分を合わせると、これまで御審議いただいたようなことをそのまま盛り込んでいくようなイメージで今のところは考えております。

 

○喜田村委員長 ありがとうございます。

 それ以外の点も含めまして、委員の先生方、いかがでございましょうか。では、高橋さん、お願いいたします。

 

○高橋委員 11ページ、13ページ、14ページあたりのところでございます。マル1、マル2、マル3がそろえば、一応確からしいと言えるのではないかというところで、全般的にマル2のところなのですが、ある一定期間以外の保険料が納付されている、あるいは申請が行われている、そういったケースはすごく明快なものですから、わかりやすいと思います。ただ、事務処理誤り等があって、それをきっかけに、以後納付しない、あるいは申請をしていないというようなケースの場合については、どのように考えられるのかなというところで、お考えをお聞かせいただければと思います。

 

○喜田村委員長 ありがとうございます。

 なかなか難しい御質問。ただ、実務としてはよくあるのではないかというような気もいたしますけれども、現段階でもしお考えがございましたら、お示しいただければと思いますが。どうぞ。

 

○大西事業管理課長 例えば11ページの例などで見ますと、マル1の年金事務所での訪問・相談の内容について、記載があるメモや日記等と書いていますけれども、例えばこれらのメモや日記における記述がかなり具体的で、説明誤りがあったことが推測されるというような内容がもしメモの中に残っていれば、マル2がなくても、マル1だけで説明誤りの存在を一応確からしいというふうに推測ができる場合もあろうかと思います。

 そうでなくて、マル1のほうのメモを見ても、何日、年金事務所に行きましたということだけが書いてあって、それ以外には何も手がかりがなく、マル2のようなことも事実関係としては確認できないというふうになりますと、一応確からしいとまでは言いにくくなってまいります。そういう感じで、メモとかの記載内容と客観的な周辺事情というものを総合勘案して、一応確からしいかどうかということを判断するのかなというふうに考えております。

 

○喜田村委員長 ありがとうございます。

 マル2は、結局、再開しているか、していないか。再開したとすれば、いつからしているのかと。これは客観的な話でわかるわけですね。あとはマル1と合わせて総合的な判断ということになるのだろうと思いますので、マル1が強ければ、マル2が、再開していないというようなことがあっても、一応確からしいということがあり得べきと。個別の判断は、当然個々の事例ごとになろうかと思いますけれども、マル2は客観的な事実ですが、総合判断としては、マル1、マル2、マル3が全部なければいけないということではなくて、恐らく1、2、3といったそれぞれの判断要素、まずこの点には着目しなさいよということでチェックをして、その上で総合的な判断と最終的にはなるのではないかというような気がいたしますが、その辺の書きぶりは、またおまとめの際によろしくお願いいたしたいと思います。

 ほかに先生方。では、嵩さん。

 

○嵩委員 それとの関係ですけれども、10ページのほうの事案でマル1、マル2、マル3というのですが、事案の例の中にも一定期間しか納められなくて、その後、納めたということまでを前提に、下の論点、マル1、マル2の証拠があればということなのか、そうでなくて、ひょっとしたら全然納めていないのだけれどもという場合でもマル1、マル2だけなのか。これはどちらという想定なのでしょうか。

 

○喜田村委員長 いかがでしょうか。

 

○大西事業管理課長 一応「一定期間分の」と例には書いておりますけれども、そこは制約を設けずに考えた上で、確からしさのほうについては、先ほどの御議論でありましたが、全体、いろいろ組み合わせて確からしいかどうかを判断するということになるのではないかと思います。

 

○嵩委員 そうすると、マル1とマル2の間に先ほどの一定期間、その後、納付しているとかがひょっとしたら加味されるということですか。

 

○大西事業管理課長 そうですね。

 

○嵩委員 わかりました。ありがとうございます。

 

○喜田村委員長 ありがとうございます。

 ほかに先生方。では、柳さん、お願いします。

 

○柳委員 今回いただいた資料を前提にして考えてみたのですけれども、基本的な考え方としては、この手続というのは、裁判によらずに、簡易な手続で救済の道を開くことになるので、また、効果も限定的ですので、今回年金記録訂正手続きと同じような判断基準で「一応確からしい」ものであることということを採用されるというのは妥当だと思っております。

 その前提で、再度確認なのですけれども、先ほど山口先生からも御質問があったところなのですが、2ページの関連資料及び周辺事情の積極的な収集というのは、年金記録訂正手続きの中での判断というか、基本的な姿勢、行為基準みたいなところだと思うのですけれども、判断の基準ではなくて、収集するのだという姿勢自体もこの手続で全く同じように採用されるということなのかどうかということ。

 仮にそうだとすると、これも確認ですが、5ページで「申出者が持ちうる証拠の例」みたいなものについては、申出者が自分で持ってくるのを待つのでなくて、行政側のほうでこういうのがありませんかと声かけをして、積極的にこういうのを探していくということになるのではないかと思うのですけれども、その辺、確認のためにちょっと御説明いただければと思います。

 

○喜田村委員長 ありがとうございます。

 では、大西さん、お願いいたします。

 

○大西事業管理課長 2ページ目のほうにあります記録訂正手続きのほうの判断基準で判断を行うに当たって、関連資料、周辺事情などを収集して、総合的に判断するということになっているわけですけれども、年金記録の訂正手続きにおいては、第三者委員会が設置されており、その第三者委員会において、具体的な当時の事業主の状況や証言などを収集するということをかなり積極的に行っております。

 一方、今回の特定事由につきましては、それを担当するのは、当事者である日本年金機構の年金事務所ということなので、第三者委員会が資料を収集するというのと比べると、当事者の立場に立ってしっかりと収集しているのかということについて、疑念を招きかねない部分もあるわけです。先ほど片桐先生からまさに御指摘いただきましたが、どういうことを年金事務所で収集するのかということについては、なるべくルールをこの基準の中に書いておいて、年金事務所で最低限やるべきことを明確にしておかないと、疑惑を持たれかねないということになってしまうのではないかということで、第三者委員会と同程度にはならないかもしれませんけれども、客観性を極力担保するような形で周辺事情とか関連資料の収集をしっかり行うということにしなければならないのではないかと思います。

 その上で、先ほどの申出者が持ちうる証拠の例につきましても、柳先生から御指摘があったとおり、年金事務所のほうで、こういうものをお持ちではないですかということを申出者のほうにお尋ねして、きちんと確認して、そういうものがあったら、ぜひ持ってきてくださいというようなことを促すということ。年金事務所がそのお宅を訪問して、実際にたんすのなかを探してなどということまではしないわけですが、そういうことを促すということについては基準の中に明記することが、この制度がうまくいくためには必要なことかなと思っております。

 

○喜田村委員長 ありがとうございます。

 せっかくよい制度をつくるわけですから、それが十全に機能するように、きちんとした基準をつくっていきたいと思っております。

 ほかに先生方、ございましょうか。白石さん。

 

○白石委員 1点確認させてください。12ページの免除申請の場合ですが、当時の書類を本人が持っていれば別に問題はないのだと思います。ただ、もし当時の書類がなくて、これから本人や配偶者の所得情報がわかるものというと、多分7年間しかないことになります。7年前の状況で認定基準に該当すれば、10年前にさかのぼって一応確からしいということになるのかどうか教えていただきたいです。

 

○喜田村委員長 いかがでしょうか。なかなか個別の事案に近いことになりますが。

 

○大西事業管理課長 確定的なことは申し上げにくくて、個別の事例によると思いますけれども、7年前の所得がこうだったから、10年前も同じだというのは、なかなか言いにくいのだろうと思うのです。10年前は7年前と同じ職業であったのかどうかとか、商売の状況はどうだったのかお聞きして、もし何かいい材料が見つかって、7年前も10年前も同じですねと確認できればよろしいわけですが、実際上は7年前のことだけで10年前の事実を認定するというのは難しいのではないかと思います。

 

○喜田村委員長 実際問題としたら、どこに住んでいるかとか、どの仕事をしていましたかとか、そういう話をいろいろ聞いて、それで7年前のあるものを10年前までさかのぼるという推定が合理的になし得るのかどうかということだろうと思いますので、7年前があったから、いきなり3年さかのぼれるかというだけでは実際のところはなくて、それこそ周辺事情なりということを十全に確認していくということになるのではないかという感じはいたします。ただ、これはもちろん個別の判断ということになろうかと思います。

 ほかにいかがでございましょうか。とりあえずよろしゅうございましょうか。

 それでは、いろいろ大変なところだろうと思いますけれども、特定事由の証明につきまして、委員の先生方からいろいろな観点からの御質問あるいは御見解を披瀝されたところでありますので、これを踏まえまして、事務局のほうで承認基準案への反映ということに役立てていただければと思います。

 それでは、議事2「申出に係る事務処理の流れについて」ということでございます。この点について、事務局からお願いいたします。

 

○大西事業管理課長 資料2をごらんください。「申出に係る事務処理の流れ」でございます。

 ページの左のほうから手続きがマル1、マル2、マル3・・・という順で流れていきます。まず、被保険者または被保険者であった方から特定事由があったのではないかということの申出書と、それに必要と思われる関係の証拠等を添付いただいて、年金事務所のほうでこの受付を行うということで考えております。年金事務所のほうで受付をしまして、証拠の収集あるいは調査書の作成などをした上で、それを日本年金機構内でブロック本部を経由して本部のほうに提出する。機構本部では内容を確認し、認定基準に照らして承認・不承認の決定を行うということでございます。

 大抵事務処理誤りというものが現場である年金事務所で発生しているということがありますので、年金事務所限りで承認・不承認の判定をするのではなくて、機構内でも一定の客観性を保つという意味で、当面は、直接の当事者ではない機構本部のほうで判断をするということで考えております。ただ、※印にありますけれども、しばらくこの制度を実際に運用していって、将来的にということですが、ある程度事例が蓄積していけば、ブロック本部限りで承認・不承認を決定するということも検討したいということで考えております。

 年金記録訂正手続きにつきましても、第三者委員会で判定するのが原則ですけれども、事例が蓄積しているものについては、年金事務所段階で記録訂正ができるという道が開かれていまして、そのほうが迅速な決定ができて、申出者にもメリットがあるということで、そういうふうにしているわけですが、この手続においても当面は本部で処理していくということですが、状況を踏まえて、この事務の流れを見直すことがあり得るということでございます。

 承認・不承認を本部で決定しましたら、それを年金事務所へ連絡し、年金事務所から不承認通知あるいは承認通知を御本人に交付するということでございます。この決定の内容につきましては不服申し立て、すなわち行政不服審査あるいはその訴訟手続に移行することが可能となります。

 最後に、ページの右側のほうにありますけれども、機構本部で行わる承認・不承認の決定については、まだ具体的に決めておりませんけれども、月次ですとか、あるいは四半期とか、一定期間ごとに処理状況の報告を厚生労働省のほうに提出していただくこととしています。厚生労働省は報告を受けて、それを年金事業管理部会に報告をするということで、この報告の内容を見て、事業管理部会で必要な御意見もいただけるのではないかということでございます。また、承認・不承認の決定に際して疑義が生じた場合も、機構本部から厚生労働省に適宜照会をしてもらって、それに対して回答するということを考えております。

 この承認基準につきましては、当専門委員会で作成について、今、御議論いただいているわけでございますけれども、将来、事例が蓄積してまいりますと、承認基準を改正したほうがいいということも出てくるかと思います。そういった場合にも事業管理部会のほうでの諮問・答申という手続が必要になっておりまして、基準改正についての諮問・承認手続につきましては、年金事業管理部会で手続をとらせていただくこととしています。この専門委員会では最初の承認基準づくりのところまでをお願いしているわけでございますが、その後の更新については、年金事業管理部会のほうでお願いをしたいと考えています。

 以上でございます。

 

○喜田村委員長 ありがとうございました。

 「申出に係る事務処理の流れ」ということでございますけれども、これにつきまして、先生方、御質問あるいは御意見等ございましたら、頂戴いたしたいと思います。では、山口さん、お願いします。

 

○山口委員 3点ほどあります。

 まず、事務処理の流れということで、申出をしてから結果がわかるまでにどのぐらいの期間がかかるかというところをお聞きしたいと思います。申出た後で機構のほうで証拠を集めて事実確認、認定をするということで、一定期間かかると思うのですが、申し立てた側からは、どのぐらいの基準を目安として結果がわかるのかというところは知りたいところだと思うので、そのあたりの基準なり目安があるといいかと思います。

 それにかかわって2点目です。そのときに、先ほどの御意見にもありましたように、数年単位とか10年とか、過去にさかのぼっての事案が出てくる可能性が考えられるということで、最近のものですと、機構のほうでもいろんなチェック体制が出てきていて、比較的確認はしやすいのかと思うのですけれども、過去にさかのぼってのものだと、いろいろ探したけれども事実確認に至らなかったということも考えられなくもないというときに、申出の段階で、この制度がどういう趣旨で、どういう手続で、どのぐらいの期間で結果がわかって、ただし、場合によっては確認できない可能性もあるというところは、申出の段階で申し立てた方にきちっと説明をしておいたほうが、申し立てる方にとっても納得できる部分があるかと思います。

 その説明に関してなのですが、例えば不承認に仮になったとして、不服申し立てに移行する場合に、結果がわかって、そこで不服申し立てがある場合は、こういう手続がありますよという書き方をしている場合が通常であると思うのですけれども、こういう手続に不慣れな方が申し立てられると思うので、この制度で納得がいかない場合はこういう手続もありますというところに触れるなり、何かの説明が最初の段階であってもいいのかなと思います。

 最後の一つは、マル7の承認・不承認の結果が出た段階でそれを伝えます、通知をしますということなのですが、この場合は、不承認でしたあるいは承認されましたということのみが記載されている書面になるのか、理由は記載されるのか、もうちょっと説明とか話を聞きたいという場合に、結果の説明はしていただけるのかというあたりをお伺いできればと思います。

 以上です。

 

○喜田村委員長 特に不承認の場合に、行政処分で理由をどこまで書くのかというのは、裁判でしょっちゅう争われるところでもありますけれども、あるいは教示の有無というのをどの段階でどの程度のものをするのかということは、非常に実践的な問題になろうかと思いますが、今の点、いかがでしょうか。

 

○大西事業管理課長 処理日数につきましては、記録訂正の手続きについては、事例ごとに100日から25日ぐらいまでかなり幅があるようでございます。

 特定事由の場合、この根拠についても一定の目安みたいなものは少なくとも定めなければ。標準処理期間みたいなものについてはちょっと検討したいと思いますが、2点目あるいは3点目の先生の御指摘とも関連しますけれども、最初受け付けた窓口において今後の見通しといったものについてきちんと説明をする。これだけだとこうなってしまうかもしれませんねとか、そういう場合、不服があれば不服申し立て制度がありますよとか、今後の手続の流れについての見通しを説明するということは、やはり必要なことだと思いますので、そういうことができるような工夫を事務処理上は考えなければいけないかなというふうに思いました。

 また、通知書のほうのお届けする際の結果の内容についての御説明ですが、これも文章のほうにどれぐらい書き、あるいは窓口のほうで説明する部分をどれぐらいにするかというのは、まだ具体的に決めているわけではございませんけれども、なるべく親切丁寧な行政ということで、この制度の趣旨に照らして必要な説明をしないといけないのではないかなということで、そこはちょっと工夫を考えたいと思います。

 

○喜田村委員長 ありがとうございます。

 新しい制度ですから、これを実際にどこまで生かすのかという趣旨で御検討をお願いいたしたいと思います。

 何かございますか。では、審議官。

 

○樽見年金管理審議官 おくれて済みません。今、ここでごちょごちょ話していたのですけれども、例の記録訂正手続きのほうも、それの手順とか要件とかを議論しました分科会の席で、前の総務省でやっていたときに比べて、総務省との間で行ったり来たりする分の日数が何日程度短くなるので、大体何日程度ということになりますみたいなことの説明を手順にあわせてやったという経緯がございますので、今、それを手元に取り出すことができないのでありますけれども、この会でもこの次とかそういうところでこの辺の標準取扱期間的な、これに何日程度要するみたいなことについての目安を御説明するようなことはできるのではないかなというふうに思っております。

 

○喜田村委員長 ありがとうございます。

 ほかに委員の先生方、いかがでございましょうか。

 ※印のところでブロック本部で承認・不承認を決定することもあり得ると。承認はいいのだろうと思うのですが、ブロック本部で不承認というのもあり得るということなのでしょうか。事例の蓄積次第だろうとは思うのですけれども。その辺はきちんとやっていただくということで、それはそれでよろしいかと思うのですけれども。

 ほかに先生方、いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。

 では、委員の先生からの御意見もございましたので、そういった点も含めまして、事務処理の流れにつきましても事務局のほうで御整理をお願いいたしたいと思います。

 それでは、(2)が今、終わりましたので、「(3)その他」でございますけれども、この機会に事務局あるいは委員の先生方から何かございましょうか。よろしゅうございましょうか。

 それでは、今後の流れにつきまして、いよいよまとめというふうな段階に入っていこうかと思いますが、次回の予定、期日、あるいは内容も含めまして、事務局のほうから御説明をお願いいたします。

 

○大西事業管理課長 次回の日程ですが、事前に委員の皆様方に御連絡申し上げていますとおり、1020日火曜日、13時半から開催を予定しております。

 議題といたしましては、これまでの4回の審議で承認基準に記載すべき事項は一通り御議論いただいたと考えておりまして、具体的な承認基準の案についての御審議をお願いする予定でおります。場所につきましては、改めて御連絡をいたしたいと思います。

 以上です。

 

○喜田村委員長 委員の先生、ほかに何かございましょうか。よろしゅうございましょうか。

 それでは、本日の会議はこれで終了とさせていただきます。

 先生方あるいは事務局、ありがとうございました。


(了)

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