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2015年9月8日 社会保障審議会障害者部会(第69回)議事録

社会・援護局障害保健福祉部

○日時

平成27年9月8日(火) 15:30~


○場所

TKPガーデンシティ竹橋ホール10E
(東京都千代田区一ツ橋1-2-2住友商事竹橋ビル10F)


○出席者

駒村康平部会長、朝貝芳美委員、阿由葉寛委員、石野富志三郎委員、石原康則委員、伊藤建雄委員、伊豫雅臣委員、大濱眞委員、小澤温委員、河崎建人委員、菊池馨実委員、菊本圭一委員、久保厚子委員、佐藤進委員、竹下義樹委員、橘文也委員、藤堂栄子委員、中板育美委員、中村耕三委員、野澤和弘委員、樋口輝彦委員、日野博愛委員、広田和子委員、本條義和委員、阿部一彦参考人、片桐公彦参考人、今村早人参考人

○議事

○駒村部会長

 こんにちは。定刻になりましたので、ただいまから第 69 回社会保障審議会障害者部会を開会します。委員の皆様方には雨の中、更に御多忙の中お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 久しぶりの会議ですが、議事に入る前にいつもお願いしていることを改めてお願いしたいと思います。事務局におかれましては、資料説明はできるだけ簡潔に、要点を押さえた説明になるようにお願いいたします。各委員におかれましても、より多くの委員の発言の機会を確保するため、できるだけ簡潔に御発言いただきたいと思います。引き続き、円滑な議事運営に御協力をお願いいたします。それでは事務局より、委員の出席状況、資料の確認をお願いいたします。

 

○川又企画課長

 企画課長でございます。はじめに、本日初めて御出席される委員の方がいらっしゃいますので御紹介させていただきます。特定非営利活動法人日本相談支援専門員協会の菊本圭一様です。

 

○菊本委員

 どうぞよろしくお願いいたします。

 

○川又企画課長

 本日の委員の出席状況です。永松委員、松本委員から、御都合により欠席との御連絡を頂いております。また本日、北岡委員の代理として片桐参考人、小西委員の代理として阿部参考人、山口委員の代理として今村参考人に、それぞれ御出席いただいております。

 続きまして、本日の資料の確認をさせていただきます。資料 1-1 は「障害者の意思決定支援・成年後見制度の利用促進の在り方について」、資料 1-2 は関係団体の意見、資料 2-1 2 つ目のテーマですが「手話通訳等を行う者の派遣その他の聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方について」、資料 2-2 は関係団体の意見をまとめたものです。また、参考資料として、本日、時間の都合上、御説明はできませんが、来年度の障害保健福祉部の概算要求の概要の資料を配布しております。御参考にしていただければと思います。

 このほか、後ろに、本日、御欠席ですが、北岡委員と橘委員からの提出資料がございますので、御確認をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

 

○駒村部会長

 ありがとうございます。それでは、本日の議事に入りたいと思います。「障害者の意思決定支援・成年後見制度の利用促進の在り方について」事務局から資料説明をお願いいたします。

 

○田中障害福祉課長

 障害福祉課長、田中でございます。私から、資料 1-1 、資料 1-2 について御説明させていただきます。まず、資料 1-1 です。本日の議題の 1 つ目としまして、「障害者の意思決定支援・成年後見制度の利用促進の在り方について」の資料です。

 まず意思決定支援ですが、ここにありますとおり、論点の整理案といたしまして、障害者に対する意思決定支援についてどう考えるかということです。検討の視点 ( ) として、意思決定支援の定義、支援の具体的な内容や仕組み、人材育成といった視点を挙げているところです。次のページとその次のページが、現行の関係法律等々におきまして、意思決定支援についてどのように規定されているかということをまとめたものです。

 まず一番上ですが、障害者総合支援法です。平成 24 年に新たに追加されました基本理念におきまして、下線を引かせていただいておりますが、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保されるといったようなことが規定されています。また、その下が障害者基本法、ほかの法律になりますが、国、地方公共団体が、これも下線を引いておりますが、意思決定の支援に配慮しつつ施策を行うことというようなことが規定されております。次のページ、今度、障害者総合支援法ですが、障害者総合支援法におきましては、実際のサービスを行う事業者が意思決定の支援に配慮するといったようなことなどが規定されているところです。

 次のページは障害者総合福祉推進事業で、平成 25 年度から実施しております関係する調査研究の概要をまとめたものです。この事業につきましては、平成 25 年度から平成 26 年度、平成 27 年度と、現在、 3 か年にわたって実施しております。事業の実施している内容といたしましては、団体や事業者へのアンケート、海外の文献調査、御家族へのヒアリング、こういったことを行い意思疎通支援等に関しての実態や課題を整理し、支援場面に応じた具体的な意思決定支援方法の研究を行い、有識者の方に参加をいただき、支援のガイドライン案をまとめてまいりました。平成 27 年度には、今年度ですが、実際にこれを使った試行的な支援を行って、更に課題などを整理していくことにしております。

 その次のページからがガイドライン案の概要です。このガイドライン案ですが、障害福祉サービスの事業等におきまして、知的障害のある方、精神障害のある方などで意思決定に困難を抱えておられる利用者の意思を尊重した支援を行うための考え方、仕組みについてまとめるというようなことをしているものです。まず大枠のイメージといたしましては、日常の支援場面においての行動の選択については、サービスを提供する職員が利用者の意思に配慮して丁寧な支援を行って、また、施設からの地域移行や住まいを変えるといったような大きな選択に関する場合には、本人、関係者、本人をよく知る方などによって会議を開いた上で、本人の意思について過去の記録や事実に基づいて判断し、最善の利益にかなうように支援をしていこうと、こういった考え方によっているものです。意思決定に困難を抱えておられる利用者の意思を御本人以外の方が完全に理解するようなことはなかなか難しいので、なるべくたくさんの情報を集めて、少しでもそれに近づけるように謙虚に努力するプロセスというように言えるかと思います。

 内容といたしましては、 7 ページにありますように、まず考え方としまして、意思決定支援の定義、構成する要素、基本的原則といったようなこと、意思決定支援における合理的配慮・留意点について示しているところです。これは、後ほどのページで御説明させていただきますイギリスの意思能力法なども参考にしながらまとめているものです。

 次に、意思決定支援の仕組みで障害福祉サービス事業所等で実際に意思決定に取り組む際の仕組みについてまとめており、利用者の代弁者、日常生活場面における意思決定支援、大きな選択に係る意思決定支援といったようなことになっております。意思決定支援の責任者の配置と意思決定支援計画の作成、アセスメントから計画、評価とフォローまでのプロセス、意思決定会議の開催、職員等の知識・技術の向上、研修機会の提供、説明責任、相談支援事業者や学校その他の関係機関との連携、リスク管理等というようなことで一連の支援をまとめているところです。

 先ほども言及しましたイギリスの例はその次のページになります。イギリスにおいては 2005 年に意思能力法という法律が作られており、意思決定を行うことができない人たちのための保護の仕組みを提供しているところです。具体的には法定原則を定めた下で、その次のページになりますが、意思決定能力法行動指針ということで行動指針が作られております。行動指針におきましては、序章にありますように、特定の意思決定に係る能力を欠く成人と行動を共にする人又は介護する人の全てに対する指針というようなことで、意思決定能力を欠く個人に代わって行動し判断する場合の責任を明らかにする、特に提供される介護への同意能力を欠く人に対して介護義務を負う人々に焦点を当てているとされており、医療と社会ケア専門職に一定の法的義務を課し、支援者の手引き、情報提供というようなことになっております。

 ここの具体例として、シナリオ 23 、シナリオ 30 10 ページの右にあります。シナリオ 23 の中には、いわゆる「イムカ」と言っておりますが、独立意思能力代弁人 (IMCA) というのが出てきます。これは、この法律の中で意思能力を欠く人の中で適切な相談相手のいらっしゃらない方が長期にわたっての住まいの変更等々の大きな決断をするようなときに派遣されて本人の代弁をする、というようになっている制度です。
 11 ページからが成年後見の関係です。最初のページが論点の整理案で、成年後見制度の利用支援についてどう考えるかということを論点の整理案として挙げております。検討の視点 ( ) としまして、さらなる利用支援、適切な類型の利用に資する利用者への支援、意思決定支援との関係、障害者権利条約を踏まえた対応との関係の 4 点が挙がっております。

 そこで 1 枚めくっていただきまして、まず成年後見制度の概要です。成年後見制度そのものは民法上の制度で法務省所管となっておりますが、認知症、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない方につきまして、本人の権利を守る援助者、これを成年後見人等と呼びますが、これを選ぶことで本人を法律的に支援する制度となっております。障害者だけを対象にした制度ではありません。これを利用するに当たりましては、「法定後見制度」という所にありますように、家庭裁判所に審判の申立てを行い、裁判所が援助者として成年後見人等を選ぶというようなことになっております。

 類型は 3 つありまして、ここに「後見」「保佐」「補助」とあります。それぞれ、本人の判断能力に応じてその 3 つの類型が準備されております。それぞれ、こういった類型を取った場合に成年後見人等ができる行為、これを利用された場合の御本人の資格の制限等について差があるというような制度になっております。

 具体的にどれだけ使われているかというのが 13 ページからです。利用者数ですが、棒グラフで平成 22 12 月から平成 26 年としておりますが、徐々に増加しており、平成 26 年末で 18 万人の利用となっております。これも、「総数」と「成年後見」「保佐」「補助」「任意後見」とありますが、内訳ですが、成年後見が大半を占めるということになっております。先ほど御説明した 3 つの類型の中では左側の一番厚い形の利用というようなことになっております。
 14 ページが成年後見を付けられた方の年齢の割合ですが、圧倒的に高齢者が多くなっており、 65 歳以上の方で 8 割弱となっております。
 15 ページが申立件数です。近年は、年間、大体 2 8,000 件程度で推移しております。
 16 ページですが、先ほど申し上げましたとおり、このような成年後見は申立てによってスタートするというようなことになりますが、では、どういった方が申立てをされているかということを御本人との関係でまとめたものです。一番多いのが子供となっており、次が市区町村長です。子供さんが多いというのは、先ほど高齢者が多いというようなデータもお示しいたしましたが、認知症の高齢者の方が多く利用されているということが考えられますので、このような傾向にあるものと思います。

 なお、近年、市区町村長申立件数については割合が増加しておりまして、その傾向を 17 ページに載せております。最近は 16.4 %に達しているということです。

 このようにスタートした成年後見ですが、どういう方が成年後見人になっているかということをまとめたものが 18 ページです。配偶者とか親とか、資料では青で書いてある所ですが、いわゆる親族後見のケースが 35 %、弁護士、法人、市民後見人といった、親族以外の方の第三者後見が 65 %となっております。この成年後見については利用を促進する旨の規定が総合支援法ほかにありまして、 19 ページに掲げておりますとおりです。
 20 ページが障害者の権利に関する条約です。権利条約の第 12 条におきまして、「法律の前にひとしく認められる権利」という条項ですが、障害者が生活のあらゆる側面においてほかの者との平等を基礎として法的能力を享受することを認めること、法的能力の行使に当たって必要とする支援を利用する機会を提供するために適切な措置を取ることなどが定められております。
 21 ページ、総合支援法で利用の促進です。具体的にやっております事業、地域生活支援事業の中でやっておりますが、以下、その事業について御説明させていただきます。
 21 ページ目、成年後見制度利用支援事業です。平成 18 年度から市町村事業として実施している事業ですが、成年後見の利用に要する費用のうちの登記手数料などの申立費用、後見人等の報酬等を援助するというような事業です。平成 18 年度に創設以後、平成 24 年度からは必須事業化をしており、次のページ、右下の円グラフになりますが、「実施」「 H26 年度中に実施予定」を合わせますと、 8 割超の市町村で実施をいただいているというようなことになっております。
 23 ページです。 2 つ目の事業としまして成年後見制度法人後見支援事業を、これも市町村の必須事業として行っており、法人後見実施のための研修などを行う事業です。法人後見は個人ではなくて、例えば社会福祉協議会とか、 NPO 法人とか、そういった法人が後見人になるものです。こちらの事業につきましては、 5 にありますように、実施状況は 62 市町村となっております。

 次がこの実績ですので、 2 枚飛ばしていただきまして最後です。任意事業ですが、成年後見制度普及啓発という事業も実施しております。

 これまでが障害のほうの地域生活支援事業の中で実施している事業でしたが、 27 ページ以降につきましては、高齢者の関係で実施している事業について御紹介させていただきます。

 まず 27 ページですが、高齢者の関係で成年後見制度利用支援事業というような事業が地域支援事業、交付金の事業として行われており、成年後見制度利用促進のための広報、利用に係る費用助成などの事業を高齢者のほうでもやっております。

 市民後見人の育成及び活用ということで 28 29 ページです。高齢者の関係では、市民後見人の育成と活用の観点ということで養成研修の実施などを行っているところです。
 30 ページ以下は参考資料で、成年後見の利用促進に向けた事業の中での説明会の状況とかエンディングノートの例などの添付をしております。併せまして、資料 1-2 ですが、意思決定支援、成年後見制度の利用促進に関しまして、これまでのヒアリングで頂いた御意見を項目ごとにまとめさせていただいたものですので、適宜、御参照くださるようにお願いいたします。説明は以上です。

 

○駒村部会長

 ありがとうございました。資料 1-1 に関連して皆様から御質問、御意見がありましたらお願いいたします。なお、御発言はなるべく簡潔にお願いできればと思います。どちらかというと、今日はやはり委員の御意見を聞きたいと思っておりますので、御意見を中心にと思っております。よろしくお願いいたします。もちろん、内容についての事実に関する確認は御質問も結構です。

 

○石原委員

 全国就労移行支援事業所連絡協議会の石原でございます。働く障害者が職場で労働問題に遭遇した場合、苦情処理や個別労働紛争解決等の場面において意思決定支援が適切に行われているのだろうかと、そういう問題意識から 2 点について発言させていただきたいと思います。

 厚生労働省の発表では、民事上の個別労働紛争は、平成 25 年度 25 万件、労働審判の新受件数は、平成 26 年、これは歴年ですが、 3,000 件に上っております。これだけの紛争が世の中にあるということですが、障害者の雇用の現場におきまして一たび紛争が起こった場合、働く障害者が自己の意思に基づき相談や申立てがなされているのだろうか、泣き寝入りすることなくこのような仕組みが活用されているのだろうか、また、必要な意思決定に対する支援が行われているのだろうか、そういった点にやや不安を感じております。

 先般、法整備されました改正障害者雇用促進法では、苦情処理、紛争解決援助について、事業主は苦情処理機関を設ける等によって自主的解決を図る努力義務規定を定めていますが、そもそも、意思決定を不得手としている障害者が多く、自主的解決を図ることが困難なことから、意思決定のための支援が重要と思われます。自主的解決が強調される余り、障害者 1 人が事業主や労働者代表で構成される苦情処理委員会と向き合うことになり、これでは力関係が不均衡で、障害者の苦情が正確に受け止められているのだろうかという懸念を感じます。そこで、このような場面におきまして、自主的解決を理由に、職場定着支援を行っている私ども事業所の職員やジョブコーチといった支援者が排除されることのないように配慮すべきだという意見が 1 点目です。
 2 点目は、自主的解決を相談、助言、あっせん等の場で成立すればいいのですが、整わなかった場合に、訴訟ではありませんが、裁判所の手続といたしまして労働審判制度があります。私は横浜地裁の労働審判員ですが、私はこれまで 24 件担当してきましたが、障害者が申立人と思われる事案が 2 件ありました。もちろん代理人はいらっしゃるのですが、障害のある申立人が職場での事実関係について、その背景も含めうまく語れない、主張できない、そういったことや、調停の場面で、もう嫌な体験を思い出したくないから相手側から示された解決金で結構ですと、十分納得しないまま調停に応じていると思われる事案がありました。労働審判手続は口頭主義で、非公開が原則です。私の体験では、障害のある申立人に支援者が寄り添うということは裁判所は、認めてくれないといいますか、認めない、私の体験では認められたことがない。申請すればその道はあるように思うのですが、そのような意思決定支援が許されるということはどこにも書いていないものですから申請されない、そういう現実があるのではないかと思うわけです。そこで労働審判手続にあっても意思決定のための支援といったものは用意される必要があるのではないか、というのが 2 点目の意見です。

 以上、私は連絡協議会の代表ということで出席しているのですが、連絡協議会のまとまった意見ということではありませんが、働く障害者の現場での苦情処理や紛争解決についても、必要で求められる意思決定支援は仕組みとして担保される必要があるのではないかという問題を指摘しておきたいと思います。以上です。

 

○駒村部会長

 ありがとうございます。働く場での議論は、後ほど、また少し議論ができればと思いますが、ほかの委員の方。では、本條委員から手前にいきたいと思います。お願いいたします。

 

○本條委員

 資料の 7 ページ、意思決定支援の定義、これは非常にいいことだと思いますが、その中で、要望といいますか、ちょっと留意していただきたい点を申し上げたいと思います。

 イギリスの基本的原則が恐らく参考にされていくと思うのですが、それの 4 番目に「最善の利益」とあります。「最善の利益」となりますと、通常、客観的に、また第三者的に見て、いろいろな選択の中から最善というように普通は捉えられると思うのですが、本人にとって最善の利益、これがやはり優先されるべきではないかと、このように思っております。本人に意思決定能力あるいは意思表明能力が欠如しているといえども、本人がその能力が失われていなければ選択したであろう、そういう選択肢を選択すべきであり、それを最優先にしていくべきだと思います。

 もう 1 点は、ここにも書いてありますが、変な選択肢あるいは意思決定をしたからといって、その人に意思決定能力がないのだという見方は決して行わないようにしていただきたいと思います。

 それから成年後見制度について、 11 ページぐらいですか。成年後見制度というのはやはり、財産管理とか、そういうことが中心になってくる制度だと思いますが、財産管理におきましても、不動産の処理とか、人生において何度あるだろうかという、極めて少ないものに対する制度ですから、それより、それも非常に大切な制度ではありますが、むしろ、意思決定支援ということになりますと、日常生活あるいは、民法にも書いてありますように、日用品の購入とか、日常生活の判断は被後見人の判断ですることになっておりますのでそういう、成年後見人というより、あえて言えば、現在実践されていると思いますが、市民後見人制度、あるいは福祉職の意思決定あるいは意思表明支援、こういうものをより充実させていくべきではないかと、このように思っております。以上です。

 

○駒村部会長

 ありがとうございます。では、手の挙がった日野委員、野澤委員の順番で、日野委員お願いいたします。

 

○日野委員

 身体障害者施設協議会の日野でございます。 3 点ほど意見というか、 1 つはお願いです。今、この成年後見制度利用促進の在り方については 3 つのテーブルで、多分、議論がされていると思います。 1 つはこの障害者部会で議論されている。もう 1 つは障害者政策委員会の中でも議論の俎上に上っています。もう 1 つは国の法律の見直しというところで、この後見制度の在り方が議論されているわけですが、やはり、 3 者で議論する場合に齟齬が生じないような整合性を図っていく必要があるだろうと思っています。
 2 つ目は、先ほど田中課長の説明の中でもありましたように、この後見・保佐・補助という 3 類型があるわけですが、ほとんどが後見人、被後見人という実態が示されています。本人に判断能力があるにもかかわらず後見人と。要するに、被保佐人・被補助人でもいいはずなのに、被後見人ということになっているということについて、原因をしっかりと突き詰めて、それに対策を講じることは、やはり重要だろうと思います。恐らく、申立人が安易に後見人ということについて申立てをしている。多く私の所に入ってくる情報では、やはり申立てする人が安易に後見人ということを申し立てているというところにも 1 つ原因があると思うのです。やはり、利用者の方の権利が侵害されないような仕組みが必要ではないかと思います。
 3 点目は医療同意です。例えば利用者の方が生命に関わるような手術の施行が必要なときに、成年後見人については判断に限界があり、これは家族がいない場合、あるいは家族がいてもなかなか判断しないケースもあるわけですので、施設を利用されている方は、最終的には今、医師の判断によるものが非常に多いわけです。そういったことについて、やはり医療に関わる意思決定支援の在り方については、法的な整備を図る必要があるのではないかと考えております。

 

○野澤委員

 野澤です。 2 つのことをお話したいと思います。 1 つは成年後見との関係なのですが、今というか、権利擁護が必要な、つまり成年後見が必要な方は増えていくわけです。認知症の方などはものすごく増えている。障害の分野も増えてきております。それとともに不祥事が非常に多くなっている。一方で、なり手が不足している。いろいろな問題があると思うのです。

 それとはまた別に、その成年後見法そのものに改正すべき点というか、今の法律そのものにいろいろな問題もあるということが指摘されていて、 1 つは差し迫った問題としては、国連の障害者権利条約に抵触するのではないかと。これは、日本の成年後見は代行決定や取消権があるので、これは各国、このことについては国連の権利委員会から指摘されて、今、苦労しているところだと思います。そのほかに、今もおっしゃったような医療同意をどうするのかとか、身近なところで言うと、利用料です。後見人を付けると、年金しか収入がない人も利用料を払わなければいけないのかなどということが出てきます。これはよく聞くのですが、後見人を付けても、財産管理はやってもらえるけれども、余りというか、身上監護の面でやってくれていないじゃないかという意見をよく聞きます。専門職の後見人を付けても、年に 1 2 回しか顔を見に来てくれないなどという話も聞くわけです。

 このいろいろな問題をどうするかということなのですが、この法律そのものを変えなければ解決できないということについては、私はここで幾ら議論しても何かむなしい思いをするのです。やはり法務省のマターであって、法務省がちゃんと動いてくれないと、間接的にここで出た議論を法務省のほうに伝えて、何らかの形で法改正につなげていくというのはあり得ると思うのですが、だけど、その法律を変えなくても、運用を変えたり、運用を工夫したり、また別の方法で、後で言いますが、意思決定支援というものの手続を使うことによって、かなりいろいろなことが改善できるのではないかというのが 1 つ考えられるだろうと思います。

 法改正で言うと、今の国会に議員立法でこの成年後見の利用促進の法案が出たのか、出るのか、これは内閣府の中で設置して考えていこうというようなことはあるので、少しこれをにらみながら、本格的な法改正はやるとして、もう 1 つは運用です。これは厚労省の利用促進事業の中でもいろいろな法人後見や市民後見を育てていくだとか、あるいはこの意思決定支援によって、これからの議論ですが、身上監護の部分を、かなりこの意思決定支援を組み込むことによって、今空洞になっているものを埋めていくことができるようにも思うのです。なので、ここの議論はやはりかなり手厚く、優先的にやるべきだろうと私は思っております。

 市民後見というものを、いろいろな賛否がありますが、これをうまく育てて、このシステムに組み込んでいくことによって、なり手不足の解消にもつながりやしないかということで、この辺りは、この厚労省のマターで検討できることだと思いますので、どちらかというと、ここに絞って議論していったほうがいいのではないかと思っております。

 もう 1 つが意思決定支援のことなのですが、日本のガイドラインは今いろいろと研究会で何年かにわたって作られているとの説明がありましたが、この下敷になっているのはイギリスの Mental Capacity Act だと思います。私も 3 月にイギリスに行って、この辺りのことをいろいろと話を聞いてきました。やはりかなり緻密にいろいろなことが考えられている制度だなということを考えました。今、意思決定支援というと、いろいろな方がそれぞれの定義で言っているのですが、やはり、このイギリスの MCA 辺りを下敷にするのが現実的な議論だなと私は納得しているところなのです。ただ、実際にイギリスで話を聞いてみても、非常にデリケートで深い問題です。基本的にはエンパワーメントして障害のある方に自分で意思表明してもらえるようにしていくということなのですが、それでもやはり、なかなか自分で意思表明できないというか、判断能力にハンデがあってなかなか決めきれない人は現にいるわけです。これは私もそういう子供を持っておりますので、もう 30 年近く毎日そういう問題に直面しているから分かります。やはりここはきちんと現実として押さえないと、なかなか議論が進まないのではないかと思います。

 その上でなのですが、イギリスの場合も、やはり最後は代行決定せざるを得ない人もいるのだということ。では、この代行決定をどうやるのかということです。その手続をきちんと定めていく。更に、代行決定した上でも、これは本当に本人のベストインタレストなのかどうなのかというのを、その後もチェックしてフォローして修正していくという、ここをどういうふうに組み立てていくのかということがこれから必要なのだろうと思います。

 私も以前、知的な障害を持った方たちと一緒に、分かりやすい情報ということで、新聞作りなどを 10 何年やっていたことがあります。彼らも付き合いが長くなると、結構、言いたいことを言ってくれます。バンバン言います。抗議もしてくれます。でも、注意深く考えてみると、彼らなりに必死になって、支援者である我々の意思を忖度して、我々が望むようなことを必死になって探して言っていたりする場合も中にはあるわけです。判断能力にハンデのある方たちの意思をこちら側がきちんと酌み取っていくのは非常に難しいなと思います。しかも、それが言葉もない人の場合には、こちらもそのチェックのしようがなかなかなかったりするわけで、ここをどうするのかというのは、もっともっと継続的な研究と制度の改正が必要だろうと思っています。

 もう 1 つは、イギリスの MCA を見てみますと、やはり照準は、誰とどこで暮らして、どんな人生を歩んでいくのかということです。イギリスでは、グループホームでも、自由を束縛するリスクがあるということで、このチェックの対象になっているわけです。本人が嫌だと言っていない人に限っても、全てグループホームで暮らしている人は、自由が剥奪されているのではないかという前提の下でチェックされているわけなのです。やはりそこにきちんと照準が向いていることが大事だと思います。

 では、それを日本に引き写した場合に、もちろんグループホームもそうですが、やはり入所施設だと私は思います。本当に彼らが自分の意思で入っているのか。今は嫌だと言っていない人でも、本当に彼らの本心からの意思でそこで暮らしているのかということを、やはり問わなければいけないと思います。これまでは、ほかにないからということで、しょうがなくて、親の意向を中心に、入所やグループホームを選択してきたわけですが、では本当にそれが本人の意思なのかどうなのかというのは、やはり見直す時期に来ていると思うのです。そういうことを考えたときに、この意思決定支援というのは、非常に大きなテーマをはらんだ、極めて重要なものだと思います。

 

○駒村部会長

 非常によく整理していただいたので、最近の動向がよく分かりました。

 

○橘委員

 私ども、日本知的障害者福祉協会においては、意思決定支援は支援の入口の部分であり、非常に大事であるとの考えから、第三者を含めた特別委員会を設置して検討を重ねてまいりました。事前に、協会としての意見を駒村部会長へ提出させていただきました。本日は皆様のお手元にも配布させていただきましたが、その中からピックアップして少し発言させていただきます。

 まず、意思決定支援に対する前提として、どんなに重い知的障害があり、意思の表出・表現が困難であっても、それぞれの人に意思があり、意思決定能力があることは、日常支援の中で支援者が経験的によく知るところです。意思決定の支援については、どんなに重い障害があるとしても、意思の表出・表現が困難なだけであり、どの人にも意思がある。意思決定能力があることを原則とする必要があります。

 そこで、私どもの協会は、その定義として、「意思決定支援とは、障害者本人の意思が形成されるために理解できる形での情報提供と経験や体験の機会の提供による『意思形成支援』、及び言葉のみならず様々な形で表出される意思をくみとる『意思表出支援』を前提に、生活のあらゆる場面で本人の意思が最大限に反映された選択を支援することにより、保護の客体から権利の主体へと生き方の転換を図るための支援である」ということではないかと、このような考えに至りました。

 また、具体的には、意思決定支援を実行していくために、まず 1 つ目として、決定を行う本人に必要とされる情報が提供されているか。 2 つ目は、情報の提供にあたっては、その内容や提供の仕方を工夫し、本人が理解し、決定できるように支援者が適切な配慮をしているか。 3 つ目として、本人が自らの意思決定を表出・表現できるように、具体的に支援されているか。このようなことが重要と捉え、更に、チームによる支援を促進していくことが大事であるということが、委員会で話合われました。

 障害者総合支援法の文言の中に「配慮する」とありますが、「配慮」だけでは何か心細いという感じがするのです。「配慮し、取り組む」という文言も付け加えていただきたいと思います。

 それから、成年後見制度についてですが、現行の成年後見制度は財産管理に重点が置かれていて、本人の生活支援や意思決定の支援についてあまり求められておりません。後見人の価値観や意見が被後見人に押し付けられてしまいがちで、被後見人の希望が取り入れられない例も見られるのではないか。成年後見を使用しなくてもよい事例もたくさんあるのではないか等々、成年後見制度の利用促進に向けては、障害者総合福祉推進事業で取り組まれていることは理解しておりますが、その促進に向けた更なる検討と見直しが必要ではないかと私ども協会としては捉えました。雑ぱくではありますが、以上です。

 

○佐藤委員

 佐藤です。いろいろな意見が出て、原則的には私も同じように考えていますが、意思決定支援ということに関しては、実は我々は 2000 年に社会福祉基礎構造改革というものを経験して、そのときに、措置制度は原則廃止された。これからの福祉は様々なサービスを活用して、その人らしい生活を実現していくことを支援するのが福祉の仕事だというふうに位置付けて、様々な法改正も行われた。以来、当事者主体の福祉サービスや、利用者中心の福祉サービスなどが、我々にとって大きなテーマであったと思います。

 それは、言わば福祉という仕事全体が、どうしてもパターナリズムを避け難く付きまとってくるものだという認識の中で、恐らくイギリスで社会福祉事業が始まったそのときからパターナリズムといかに対峙していくかということは大きな課題であっただろうと思います。福祉と言いつつ、その人の権利を制限していないか。我が国の歴史でも、例えば劣等処遇の原則などということで直面してきたことがたくさんあると思うわけですが、そうした文脈で考えると、私は当事者主体や利用者中心などということをもっと考え続けていく、それを模索し続けていくことが非常に重要なことではないかと思っています。

 先ほど橘さんの御意見もありましたが、法律の中に、「意思決定支援に配慮しつつ」という書きぶりがあります。それから、研究報告の中に、「本人の意思確認を最大限の努力で行うことに加え」と。これは配慮するというのと同じようなことだと思うのですが、「配慮する」ということはどの程度の配慮なのか。あるいは「最大限」といった場合に、これは何を意味しているのかという疑いがどうしても出てくるわけです。だから、私の意見としては、いろいろなことを余りガイドラインという形で決めすぎないことのほうが大事で、基本的に問われるのは、それぞれの障害のある方と向き合ったときに、その人の充実した生活をどう支援するかということを、お互いに模索し合うというような関係性の中で、初めて意思決定支援なるものがかろうじて成立する可能性はあると思いますが、実は文言にすると非常に浅薄なものになりかねないのではないか。「もう十分に配慮しています」とか「最大限配慮しています」とか、一体それを誰が言うのだということになると、ますます疑わしいものになる危険性があるということを確認しつつ、この議論を更に進めていく必要があるだろうと思っています。

 

○片桐参考人

 全国地域生活支援ネットワークの片桐です。本日は北岡が欠席ということで、皆さんのお手元に資料を配布させていただいておりますので、成年後見制度と意思決定支援について御説明させていただければと思っております。私ども全国地域生活支援ネットワークとしても、この意思決定支援、成年後見制度の更なる活用については大変重要なポイントと思っております。大変申し訳ないのですが、私はこの後、新潟にすぐ帰らなければいけないのですが、本日これを何とか読み上げるためにやってまいりまして、それぐらい大事だと思って来ました。

 まず、課題の整理として 3 点あります。課題としては、保佐・補助の場合の同意権についてということで、保佐や補助類型での申立ての多くは、同意権や取消権の付与も同時に行っております。同意権については、御存じの方もいらっしゃると思いますが、例えば御本人が 30 万円の浄水器が欲しいといった場合に、その金額が妥当か、不利益な契約になっているかどうか分からない場合に、同意を得て商品を購入することで、不利益な契約をすることを避けることができるといったものです。しかし、同意権の設定に関しては、 1 件当たりの金額で設定されており、設定された金額以上の購入は効力が発生しますが、それ以下のもの、 10 万円で設定した場合に、 9 万円の商品購入については同意権の対象ではなくて、日がまたがって違う日の場合には、 5 万円、 7 万円、 8 万円のものを購入した場合には同意権の対象にはなっていないといった課題があります。
 2 番目です。専門職後見人に関して、余力、担当力の減少及び不足についてということで、特に司法書士や弁護士の受任件数が増加していますが、これは滋賀県の大津家裁ですが、専門職団体に後見人の推薦依頼を行っても、候補者を推薦してもらえないといった事例があり、専門職団体の中では会員数が限られている中で非常に人手が不足しているということ。仮に選任された場合にしても、その人の財産に応じて月に 2 6 万程度の後見報酬が発生します。年金のみの生計を立てている場合は非常に難しい。更に、いわゆるボランティアで実際は行っている事例もかなり多いということも、これは皆さんの御発言の中からもあるかと思います。
 3 番目は医療同意と死後事務についてです。後見人には医療同意の権限がありませんが、そのことをドクターの方もなかなか御存じなくて、同意を求められる事例があります。求められる医療同意については、注射や胃潰瘍・胃ろうの手術や、経管栄養、足の切断、骨折手術などの同意等があります。さらに、医療従事者は緊急時を除き、本人の同意なく医療行為を行うことは違法となっていますが、本人に判断能力がない場合は、家族や親族より同意を得ることとされています。身寄りがないなどの親族から同意が得られない場合は、病院内の倫理委員会に代行決定を求めるなどとなっていますが、実際は親族がいても後見人に同意を求めたり、親族に聞く前に後見人ということが実際には起こっているということです。死後事務においても、後見人にそれを行う義務はありませんが、遺体の引き取りや、葬儀、遺骨の処理までを実際には後見人がボランティア的に行っているという実態も現場では起きています。以上のように、後見人等が、権限や義務はないが実際に行っていることがあり、専門職団体の中では、後見人に医療同意権や死後事務の権限を与えるよう働き掛けを行っているという動きもあると伺っています。

 その上で提案ですが、同意権の取扱いについてですが、現行の 1 件当たりの設定プラス、例えば 1 か月の合計金額が幾ら以上というふうな 2 段階設定ができるように、保佐・補助類型の活用を図ってみたらどうかということです。 2 番目は、法人後見の取組として、専門職後見人不足を解消する 1 つの手立てとして、先ほど市民後見の話もありましたが、法人後見もあると考えております。しかし、社会福祉法人の場合、特にサービス提供を行っている場合は、利益相反の可能性が高いとありますので、 NPO を作るといったことで取り組むことがありますが、人員の確保あるいは運営基盤に課題があり、 NPO や一般社団もありますが、設立に取り組めない状況もあります。そのため、利益相反の危険に対する取組を 1 つの社会福祉法人のみが行うのではなく、相互の監視システムで構築するということで、社会福祉法人が法人後見に取り組みやすくなるということが後押しできないかと考えております。例えば、相談支援専門員は後見人等受任とは別法人の者とするといったことです。また、弁護士や司法書士事務所でも法人として受任することはできないだろうかと考えております。

 医療同意権については、成年後見制度のみで論ずることではないと考えており、成年後見制度のみの検討では医療側に広がらないと考えております。後見人の権限を拡大し、医療同意権を付与するとか、付与する形も包括的なものか予防注射等に限定するものにするのか、後見人等の権限はそのままとし、病院内の倫理委員会で決定を進めることになるのかなど、医療関係者の協議が必須になってくると思います。さらに、後見人の権限を拡大することは、その分重責を担うことになりますので慎重に対応するべきだと考えており、専門後見人といっても個人後見であり、責務が重くなりすぎると受任する者の抵抗感が増えるということで、受任後の心労等が増えることが懸念されます。

 後見人等の権限拡大については慎重に対応するべきだと考えており、医療同意については今お話したとおりです。死後事務については、たとえ権限を付与したとしても、その方のお墓の管理まではできませんので、そうであれば、現行どおり、身寄りのない方については行政の義務として取り扱って行うという形が適当かと考えております。また、医療同意や死後事務に関することは、代行決定で済むというよりも、先ほどから出ております意思決定支援に関する課題として取り扱い、意思決定支援の在り方を検討する中で協議していくべきだと考えております。

 さらに、対象者をより限定的にするということで、こちらで最後になりますが、将来的には、後見人の対象については、後見、財産管理、虐待対応 ( 一時的なもの ) に限定するべきであり、現行の保佐や補助類型、身上監護に当たる部分は意思決定支援の枠組みで行うべきではないかと考えております。そのため、意思決定支援の在り方を協議するとともに、現行の成年後見制度の維持又は縮小の方向で検討することができないかと考えております。

 

○駒村部会長

 片桐さんは何時頃出られますか。

 

○片桐参考人

 そろそろです。

 

○駒村部会長

 そうですか。今、片桐さんの御発表されたことについて何か確認したいことなどがありますか。委員のほうから特段ないですか。では、菊池委員、小澤委員の順番でお願いします。

 

○菊池委員

 早稲田大学の菊池です。法律にかなり関わるテーマなので発言させていただきます。先ほどから委員の皆さんからお話がありました件で、もともとの問題というのは成年後見制度をどうするかということなのですが、これについては、民法、あるいは成年後見法という分野で、かなり最近は法学研究者の間で、現在の制度の根本的な問題について研究されてきているようです。しかし、ここでは成年後見制度自体をどうにかするということではないということで、現行の法の枠内でどのように運用を改善していくかということで、先ほど来、委員の方々からいろいろな建設的な御意見があるところだと思っております。

 私から 1 点ですが、なぜ意思決定支援が尊重されなければいけないのかというと、先ほどから条約のお話が出ていますが、これは当然ですが、国内法的に言えば、これはやはり憲法によって保障されている基本的人権に関わると。具体的には 13 条と 25 条だと思います。 13 条というのは幸福追求権、あるいは自己決定権。個人の自己決定あるいは自立が尊重されるべきというのは、恐らくこの 13 条から出てくる規範的価値です。さらに、 25 条と申し上げるのは、国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有すると。この健康で文化的な最低限度の生活の中身として、経済的なものだけではなくて、判断能力が不十分な方にとっての意思決定というのは、まさに生活を営む上での最低限必要な部分である。そういう立場に立つと、経済的理由によって、この意思決定支援が受けられない、具体的には成年後見制度が利用できないというのは、やはり 25 条の保障する価値に関わってくる問題だという見方もできなくはないわけです。私はそう考えていますし、憲法学の中でもそのように考えておられる研究者はおられます。そうすると、そういった経済的な支援、利用支援というのは、言わばナショナルミニマムの一環として保障する必要がある。

 そうすると、 21 ページにありますが、現状において、補助事業があって、支援事業があって、それが地域生活支援事業として位置付けられているというのは、やや法的な基盤として弱いなという印象があります。しかし、各自治体の自主性を尊重するということであれば、それもそうかもしれません。ただ、 22 ページにありますように、実施している自治体が 78 %、最近やや頭打ちのようにも見えまして、そういう点からすると、現状、現行の枠組みを前提としても、更に実施自治体を増やしていく、その取組を是非お願いしたい。それぐらい重要性のある問題ではないかということです。

 

○小澤委員

 小澤です。橘委員が御紹介された資料に、実は私はこの特別委員なものですから、ちょっと補足をさせていただきたいのです。 1 枚目に 5 点ほどの提案、提言をさせていただいていて、橘委員のほうで主立ったことは御紹介していただいたのですが、実は、今回は総合支援法の見直しなので、表紙の 2 点目を御覧ください。

 要するに、計画作成及び支給決定の問題です。これは多分、明日やるだろうと思われるのですが、もともとは私の記憶では、実は骨格提言のときに、本人中心計画を実行に移すといった流れの中で、単に後見だけではなくて、その問題との絡みで意思決定支援が重要だと、確かそういう意見や審議をしたことを覚えております。その流れで考えますと、こういう計画の議論に本人参画をきっちりと位置付けるというのが、今回の総合支援法の見直しの重要なポイントになるのではないかということが強調したい点です。

 もう 1 つは、先ほどイギリスの法制度が紹介されましたが、私たちも実は、諸外国の状況を調べているのですが、例えば、最近非常に情報を取っているのがオーストラリアの取組です。これなどは、私たちが骨格提言のときに本人中心計画と言ったものとほとんどそっくりな手続なのです。御本人の思いをいかに具体化していくのかと。ですから、そういった流れを考えていくと、この表紙の 2 番目の所を、是非、十分勘案していただき、基本的には障害者総合支援法の議論と私たちは理解しているので、そこのところを見直しに十分反映させていただきたい。これが橘委員の補足ということでもありますが、よろしくお願いしたいと思います。

 

○伊藤委員

 日本難病・疾病団体協議会の伊藤です。難病の場合は、神経起因疾患だけではなくて、脳の疾患等も含め、コミュニケーションというか意思の表出が非常に困難な病気がたくさんあるわけです。この計画の中では、コミュニケーション支援機器の普及というようなことが書かれていますが、それだけでは全く不十分で、現在、人工知能と呼ばれる分野の開発が大変進んでおりますが、そういうものを積極的に進める、福祉機器分野でもそれを積極的に進めるという姿勢が必要なのではないだろうかと思います。

 また、もう 1 点懸念しますのは、途中から障害になる方々に多いことで、福祉の制度がよく分からないということもあって、本人の意思決定支援というものを強調する余り、本人の申請主義による制度利用の制限のような現象が拡大されないかという懸念もあります。イギリスの意思能力法行動指針などを見ますと、最善利益ということが書かれていますが、本人の最善利益を保障するようなシステムの開発も必要なのではないか。つまり、本人の決定だけでは十分に本人の最善利益は保障できないのではないかということも考えております。是非、先ほどの人工知能の福祉機器への利用、開発というものも含めて、御検討をお願いしたいと思います。

 

○広田委員
 7 24 日にこれが終わりまして、本日初めて開かれたのですが、9月1日に日本精神科病院協会のアドバイザリーボードに行って来ました。この社会保障審議会障害者部会の去年の 10 31 日、 58 回から 68 回までを資料として提出しています。小泉元総理秘書官の飯島さんなどが出席していて、オフィシャルな会が 2 時間。その内容については日精協さんのほうでまとめられて文章化されるそうですので、できたときにここで、またお話ます。お食事中はオフレコということで、私は、今、日本の国内外で起こっている関心のあること、飯島さんに答えてもらいました。日頃から非常に日本が大変な状況だということを私は認識しています。それは、横浜の目抜き通りを歩いていると、日本人は元気がなくて、「インターナショナルストリート」と言っている外人さんが元気がある、ということで、移民の問題は日本は将来どうなるのかなと最近ヨーロッパの移民問題と合せて考えています。

 アドバイザリーボードに行ってきて、「・・・飯島さんや丹呉さんが来てた」という話を各社に電話したら、さすが日本のマスコミ、精神のことは全く質問なく、「安倍さんが元気だった」と。私はそのことは質問しなかったので、「何で」と言ったら、「安倍さんが国会中に何度もお手洗いに行くけど、その説明責任がない」と言うから、「それは、日本のマスコミがたたきすぎるんだから、上杉謙信が武田信玄に塩を贈ったように、安倍さんに塩を贈りなさい」と言ったら、ワーッと笑っていた記者がいました。

 その話をなぜしたかというと、この国の委員に入ってたたかれています。 6 年前に厚生労働省が絡む 3 つの不祥事のときに、全精社協の不祥事で「○○記者の紹介で」と私になぜか取材が来て、記者たちが言ったのは、「全精社協という団体の中のヘゲモニー争いを東京地検に持ち込んだ人たちがいて、東京地検が蹴って、大阪地検に持ち込んだら、大阪地検は反民主党の考え方の人たちがいた」そうです。「それに乗っかって、結局ああなって、気がついたら相談支援が突出しているんですよね、広田さん」ということでした。そういう話でも少しは出てくるのかなと思って今日は楽しみで後半戦に来たけれど、相変わらず厚生労働省が乗っかったエスカレーターにみんなが乗っかっているなという感じで、真実はいつも闇から闇に葬られて出てきませんが、本当に相談支援というものがそんなに必要なのか。いつも言っていますが。

 その流れの中で、意思決定などが出てきますが、私は精神の仲間から「・・・信頼できないので保佐人(弁護士)をかえたい」とたのまれて体験できた 1 人、この資料の個人の保佐人 108 人、そのうちの 1 人に入るのでしょうが、辞めさせていただきました。理由は、結婚されている方で、御本人の意思と配偶者の意思があって疲れ果てたということが 1 点です。それから、御本人が裁判に持ち込んで、そのときに「お金がないので貸してほしい」と言われ、私が研修の目的でアメリカに行くため積み立てていたお金を用立てしないで、“ピアサポート”と受けとめてグループのお金を用立てしようとしたら、仲間たちが「貸すことがおかしい」と騒ぎだして、「精神障害者って優しい」とか言うけれど、「愛がない」ということ等でまた疲れ果ててしまい、それで辞めさせていただいた。

 後で知りましたが、保佐人というのはとても守られていて、交通費も何とか費も裁判所に申し立てると頂けるということです。その代わり、後任が決まるまで辞められない。私は「もう辞めたい」と申し立て、「お話を伺いたい」ということで裁判所の人にお話をしましたが、後任が決まってからということで待ちました。いろいろあっても夫婦でなんとか意思決定できるのだったら、保佐人って必要なのかと時間をかけて振り返った時に感じました。家族がいる人も意思がぐらつく場合はグジャグジャになりますよ。私の彼はたまたま東大法学部卒業だから、これから一緒に暮らすと、私という元相談員と2人で、有能な成年後見カップルになるのかもしれないけど、あれだけ疲れることはやめたほうがいいと思っています。そういう点を、ここは当事者が少なすぎますが、本人が不在でどんどこ行って、「仕事にしたい」「したい」というハローワークの障害者部会だと感じています。そうならないように、誰のための意思決定なのか。

 そして、何度も言っていますが、全国の精神病院を泊まり歩いて、保護室に入っている人にもお会いして、 1 人も私が意思が分からなかった人はいなかった。今日も午前中に新聞記者と話していましたが、「日本人の今の最大の弱点は危機回避能力と、相手が何を訴えているかということが受け止められない」。受け止められない人たちが相談支援などという形で入っているから、物事を余計ややこしくしているということで、問題提起させていただきます。

 

○駒村部会長

 ほかの委員はいかがですか。今日は意思決定の 1 周目ということですので、今日の御議論を踏まえて 2 周目の議論に反映したいと思います。いろいろ重い議論が多くあって、しかも多岐にわたっていますので、この話は野澤委員がおっしゃったように、かなり深い議論が必要だと思います。今日の時点でこれ以上の御意見がないようでしたら、次の議題に入りたいと思います。

 それでは、議題の 2 つ目「手話通訳等を行う者の派遣その他聴覚、言語機能、音声機能その他の障害のための意思疎通を図ることに支障がある障害者等に対する支援の在り方について」、事務局から資料説明をお願いいたします。

 

○道躰自立支援振興室長

 自立支援振興室長の道躰でございます。よろしくお願いいたします。資料 2-1 と資料 2-2 につきまして、御説明いたします。

 まず、資料 2-1 です。論点の整理案として 5 点挙げさせていただいたと思いますが、まず前半で 2 ページにある内容・運営、財政的措値の在り方、人材養成についての資料を用意しており、後半の部分、 38 ページ ( 点字の資料は第 2 分冊 ) に支援機器の活用、開発普及、他施策との連携についてということで資料を用意しております。
 3 ページは、意思疎通支援事業の全体像です。 3 ページと 4 ページで障害種別ごとに現行制度においてどのように意思疎通支援のサービス提供が行われているかをまとめております。御覧のとおり、主に地域生活支援事業において、視覚障害、聴覚障害、盲ろうの方への支援が中心となっております。
 4 ページです。一方で近年では失語症の方に対する会話支援者の養成や派遣に取り組む自治体が見られるなど、新たなニーズに対応する取組も進んでおります。また、障害福祉サービスの提供を行う際には、意思疎通支援については、そのサービスと一体的に提供されており、報酬上の配慮措置も講じられています。

 このほか、一番右の覧ですが、補助事業などということで、意思疎通を図るための補装具等の支給も行っております。後ほど障害種別ごとに詳しい御説明をさせていただければと思っております。
 5 ページです。地域生活支援事業を中心とした意思疎通支援事業の全体の絵となっております。下から上に見ていただくのですが、国で自治体が実施する支援者養成研修の指導者を養成して、自治体で養成した手話通訳者や要約筆記者などを派遣したり、設置したりするという構造になっています。
 6 ページです。このように現行の意思疎通支援は状態像に応じて、自立支援給付とされる障害福祉サービスと補助事業の地域生活支援事業によって主として実施されていますが、この両者の比較を行ったものです。障害福祉サービスは指定基準に基づき、都道府県等から指定を受けた事業者が全国一律の基準に基づいてサービスを提供します。支援区分による対象者の限定がある一方で、義務的経費ということで国費の負担の裏付けが確保されています。地域生活支援事業は、地域特性に応じた柔軟な実施が可能である一方、いわゆる裁量経費ということから、個別給付に比べると、予算上の制約が大きいと言えるかと思います。
 7 ページです。ここからは障害の種別ごとの状態像と現行の支援内容について、まとめた資料が続きます。 7 ページは、まず視覚障害者についての資料です。人数は直近の平成 23 年の調査では 23 万人、 5 年前の平成 18 年の調査でも 23 万人でした。それぞれの調査はサンプルとなる自治体を選定して、そのデータから全数を推計するという方法で数値を導いています。実感として増えているのではないかという御意見もあろうかと思いますが、サンプル自治体がそれぞれの調査で異なっておりますので、推計値ということで捉えていただければと思います。

 年齢構成では、平成 18 年調査に比べて、平成 23 年調査の方が高齢者の割合が大きくなっています。また、障害の程度は 1 級の方が全体の約 4 割、 2 級の方も含めると、全体の 7 割近くになっています。障害の原因は疾患が 57 %、加齢が 19.2 %と続いています。また、 1,200 人からアンケート調査をした結果、複数回答ですが、情報の入手方法を見ますと、「パソコンによる」と答えた方が 7 割超、「音声による」と答えた方が 6 割超、「点字による」と答えた方が 5 割弱となっております。
 8 ページは、視覚障害の方に対する支援機関や支援者の状況、コミュニケーション手段をまとめています。支援機関としては点字図書館が全国に 76 か所あって、情報提供等の中核施設となっております。旧来の点字図書の貸出しだけではなく、パソコンボランティアにも御協力いただき、いわゆる情報通信技術の機器の活用・操作を修得していただくための支援にも取り組んでいただいております。また、具体のコミュニケーション手段ですが、点字による新聞や図書のほか、機器、 ICT 技術の活用も進んでいます。 9 ページは、その点字図書館についての設置基準等をまとめたものです。
 10 ページは、視覚障害者情報総合システム「サピエ」がありますが、このサピエの説明資料です。点字図書館をコンピューターネットワークでつないで、各点字図書館の図書目録をデータベース化して、貸出しを相互に融通するとともに、点字データ等のダウンロードを可能としています。視覚障害の方がインターネットを通じて図書情報等に自由にアクセスができる仕組みづくりを進めているところです。
 11 ページは、聴覚障害の方についてです。人数について見ますと、平成 18 年調査の 36 万人から平成 23 年調査では 32 万人に減少しています。これも実感とは異なるとの御意見もあろうかと思いますが、先ほどと同様サンプル自治体の選定の影響を受けていると考えられますので、推計値として捉えていただければと思います。障害の程度は 2 級の方が全体の 5 割弱となっています。高齢者の割合は平成 18 年調査に比べますと、平成 23 年調査のほうが、 65 歳以上で +2 ポイント、 70 歳以上で +3 ポイントとなっております。障害の原因は加齢や疾患による割合が高く、情報入手やコミュニケーションの方法としては、複数回答ですが、サンブル数 338 で、「補聴器・人工内耳による」が 7 割弱、「要約筆記による」が 3 割弱、「手話による」が 2 割弱となっています。
 12 ページは、聴覚障害の方に対する支援機関や、コミュニケーション手段などについてまとめたものです。全国に 51 か所設置されている聴覚障害者情報提供施設は、字幕入り DVD 等の作製・貸出しだけではなく、手話通訳者の養成と派遣、相談支援にも取り組んでいただいております。聴覚障害のある方への支援の中核機関として位置付けられています。また、全国手話研修センターと、聴力障害者情報センターにおいては、自治体が実施する手話通訳者等の養成に係る指導者の養成などを行っています。

 具体的なコミュニケーション手段として、補聴器や人工内耳による方法あるいは手話や筆談・要約筆記などによる方法、近年においては情報通信技術の活用も進んでいるところです。
 13 ページは、聴覚障害者情報提供施設についての設置基準です。御参照いただければと思います。
 14 ページは最近の民間の取組として、テレビ電話の機能を用いて手話の遠隔通訳を行っている JR 東日本の例を御紹介したものです。コールセンターに手話のできるオペレーターを置いて、 JR の窓口とインターネットでつなぎ、手話の通訳を遠隔で行うという仕組みです。
 15 ページです。視覚と聴覚の障害が重複する盲ろう者についてまとめた資料です。人数は平成 24 年度の全国盲ろう者協会による調査では、全国で約 1 4,000 人強がいらっしゃるという推計になっています。このうち全盲で全ろうの方が全体の 16 %とされています。年齢構成を見ますと、 65 歳以上の方が全体の 8 割近くを占めているという推計になっています。
 16 ページは、盲ろうの方のコミュニケーション手段についてですが、触手話、指点字、指文字など、障害の程度や重複の仕方などにより様々で、個別性の高い支援が必要とされています。
 17 ページです。盲ろうの方に対する現行の意思疎通の支援としては、自治体において通訳・介助員の養成と派遣の事業を地域生活支援事業により実施しております。平成 25 年度末時点で、約 5,700 人の通訳・介助員が養成されており、都道府県等が派遣を行っているところです。
 18 ページは、失語症の方の状況です。全国失語症協議会の推計では 20 50 万人がおられるだろうとされております。障害の発生時期は 50 歳代が 38 %で最も多く、次に 60 歳代の 24 %と続いています。情報入手・コミュニケーション方法を見ますと、家族との簡単なコミュニケーションは 47 %の方が言葉で可能と答えておられますが、家族以外の人ですと可能な方は 31 %に減少します。また、パソコンがもともと使えていた方も失語症になって使えなくなったという方が 60 %おられます。
 19 ページと 20 ページは、地域生活支援事業の枠組みで、失語症の方の意思疎通を支援する失語症会話パートナーの養成と派遣を実施している自治体の例を御紹介したものです。言語聴覚士が養成研修の講師を務められ、その研修を修了した失語症会話パートナーを、失語症の方が参加する会議や催し物に派遣するといったことが進められています。
 21 ページは、 ALS 患者などの構音障害と運動障害のために意思疎通支援が必要な方の状況です。データは ALS 患者のデータですが、平成 25 年度で把握されている人数は、全国で 9,200 人となっています。年齢構成は 70 歳代が約 41 %で最も多く、次に 60 歳代の約 35 %と続いています。情報入手、コミュニケーション方法を見ますと、会話補助装置などの福祉機器を活用されているほか、介護ヘルパーが文字盤を介して言葉を読み取る方法なども知られております。
 22 ページからは平成 27 3 月末時点の各都道府県ごとの意思疎通支援に関する事業の実施状況をグラフにして並べています。まず、 22 ページは手話通訳者派遣事業です。全国平均で 93.4 %の市町村が実施体制を整えています。
 23 ページは、手話通訳者設置事業です。実際に手話通訳の方を福祉事務所等に配置している市町村の割合を示していますが、先ほどの派遣に比べますと、実施割合は低く、全国平均で 38.4 %の市町村が配置しているというデータになっています。
 24 ページは、要約筆記者派遣事業です。全国平均 75.1 %の市町村が実施体制を整えています。
 25 ページは、手話通訳者派遣事業について、都道府県ごとに平成 27 3 月期の利用者 1 人当たりの利用時間数をグラフにしたものです。全国平均で見ますと、 3.8 時間となっていますが、都道府県別では最大で約 7 時間、最小で 1.5 時間と幅があります。
 26 ページは、同じく手話通訳者派遣事業について、各都道府県ごとに人口 10 万人当たりの実利用者数をグラフにしたものです。平成 27 3 月期の全国の実利用者数は 1 3,621 人で、これを人口 10 万人当たりの実利用者で見ますと、全国平均で 10.6 人となっています。
 27 ページは、要約筆記者派遣事業について、同様に平成 27 3 月期の利用者 1 人当たりの時間数をグラフにしたものです。全国平均は 6.4 時間で、都道府県別に見ますと、最大で約 13 時間、最小で約 2 時間と、こちらも幅があります。
 28 ページは、同じ要約筆記者派遣事業について、都道府県別人口 10 万人当たりの実利用者を示したものです。全国の実利用者数は 1,296 人、人口 10 万人当たりの実利用者は全国平均で 1.0 人となっています。
 29 ページは、盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業についてまとめたものです。全国平均は 25.6 時間、都道府県別は最大で約 52 時間です。このグラフは平成 27 3 月期のものですが、 3 県が同月においては実績なしとなっています。
 30 ページは、盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業について、人口 10 万人当たりの実利用者数をグラフにしたものです。全国の実利用者数は 829 人、人口 10 万人当たりの実利用者数で見ますと、全国平均で 0.6 人という結果になっています。
 31 ページは、重度の視覚障害のある方に対する障害福祉サービスとして、同行援護がありますが、その関係の資料です。同じ平成 27 3 月期のデータですが、実利用者数の全国平均は 17.5 人、月利用時間数の全国平均は 20.9 時間となっています。
 32 ページは、地域生活支援事業の意思疎通支援として実施されている手話通訳者派遣事業、要約筆記者派遣事業等について、利用者負担の状況をまとめたものです。大半の自治体が利用者負担を求めずに実施しております。
 33 ページは、複数市町村で意思疎通支援事業を共同で実施する場合のイメージ図です。小規模な自治体ですと、単独で実施は困難な場合がありますので、複数市町村で共同実施することも可能となっています。
 34 ページからは意思疎通支援の担い手の養成についての資料をまとめております。 34 ページにありますように、手話通訳士、手話通訳者、手話奉仕員等について、研修や登録試験を都道府県等において実施しております。
 36 ページに進みますと、都道府県で実施する研修の指導者を養成する事業を、関係の 3 団体に委託して実施しているという資料です。
 37 38 ページは、介護職員初任者研修や、介護福祉士の養成カリキュラムには、コミュニケーション技術についての科目が設定されておりまして、障害の状態像に応じた意思疎通支援について学ぶこととされています。
 39 ページ ( 点字資料では第 2 分冊 ) からは意思疎通支援の在り方に関する論点の整理の残りで、支援機器の活用、開発普及、他施策との連携についての論点に関する資料を並べております。
 40 ページは、障害保健福祉部において実施している、障害者向けの福祉機器の実用化のための費用助成についてです。その開発テーマには障害者のコミュニケーションを支援する機器も位置付けられています。
 41 43 ページは、この助成事業を活用した開発中の事例や、商品化につながった事例を御紹介しております。近年は視覚障害や聴覚障害の方向けのものだけではなく、知的障害の方や発達障害の方向けの機器開発も多く見られるようになってきております。
 44 45 ページは「シーズ・ニーズマッチング事業」をまとめたものです。障害のある方のニーズを的確に捉えて、機器開発が進むように、昨年度から障害当事者と企業、研究者等が一堂に会して、試作品の体験や意見交換を行う交流会を実施しております。
 46 ページは、意思疎通支援と他施策との関係に関する資料として用意したものです。我が国においては障害者基本法に基づいて、政府は障害者基本計画を策定し、障害者の自立及び社会参加の支援のための施策の総合的かつ計画的な推進を図ることとされております。
 46 ページでは、現在、進行中の第 3 次障害者基本計画の概要を示しております。この右側を見ていただきますと、IIIで「分野別施策の基本的方向」の 6 として、情報アクセシビリティの分野があります。分野別施策が、やや詳しくまとめてあります。 47 ページに情報アクセシビリティの意思疎通支援の充実などが記載されております。
 48 50 ページについては、「障害者差別解消法の概要」と同法に基づいて、本年 2 月閣議決定された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」の合理的配慮の記述の抜粋を付けております。基本方針におきましては、政府の施策の総合的、かつ一体的な実施に関する基本的な考え方を示すとされておりまして、 49 ページの最後の段落の辺りに、行政機関や事業者が取り組むべき合理的配慮の例示として、筆談、読み上げ、手話などによるコミュニケーション、分かりやすい表現を使って説明するなどの意思疎通の配慮が掲げられています。 51 ページ以降は参考資料で、地域生活支援事業の実施要綱等を添付しております。

 資料 2 2( 点字資料では第 3 分冊 ) は、団体ヒアリングにおける意見のうち、意思疎通支援をまとめたものですので、参照していただければと思います。説明は以上です。よろしくお願いいたします。

 

○駒村部会長

 それでは、資料 2-1 を中心に、皆様から御意見、御質問がありましたらお願いいたします。先ほどに引き続き簡潔にお願いできればと思います。いかがでしょうか。竹下委員からお願いします。

 

○竹下委員

 竹下です。意思疎通支援の中で、今日の資料等からも正確に分かるわけですが、 2 つ特徴があると思います。 1 つは、点訳・音訳は基本的には全てボランティアによって担われているということです。すなわち、その養成は正に奉仕員の養成ということで位置付けられておりますし、現に我が国の教科書の作成の分野でさえ、ボランティアの力なくしては点訳・音訳が成り立っていないという現実があるわけです。この状態のままで意思疎通支援が十分なものとして制度化されたことにはなっていかないのではないかということが気になるわけです。

 それから、意思疎通支援に関する派遣の分野で、皆さん見ていて分かると思いますが、要約筆記、手話通訳の派遣は、 1 つの支援としてはごく当たり前の位置付けです。同行援護事業は移動支援事業であることは、今さら私が言うまでもありません。ところが、現実には外出した際に、一部の意思疎通ないしは情報提供があるのは当たり前ですが、それをもって意思疎通支援として位置付けて、ここに報告せざるを得ないということからも分かりますように、先ほどの点訳・音訳とも絡むわけですが、現実には視覚障害者の場合には意思疎通支援としての制度化がされていないことがはっきりしているのではないかと思います。

 ただ、 1 つだけ前回でしたか、私が申し上げたことが、私が見ている限り、今日も見付からないのですが、地域生活支援事業の意思疎通支援事業、かつてのコミュニケーション事業で、代筆・代読を自宅にいる視覚障害者にサービス提供を行うために支援員を派遣するという制度が、自治体によっては幾つかの所で実施されているはずです。 1,700 の自治体のうち、私の認識では、 100 300 まで行ったか分かりませんが、自治体で一部実施されているかと思います。その部分は今後、個別給付化する場合においても、極めて有用で重要な制度であり、それが現実に実施されている自治体は、大いに参考とすべきものであると思われますので、これについての数字の把握ができているのであれば、私の見落としでない限りは見付けられなかったので、教えていただければと思います。

 最後に、機器の開発は、視覚障害者の分野も非常に進んでいます。私などは 64 歳の年寄りのせいもあるのでしょうが、使い切れないほど、非常に有効な機器が開発され、あるいは一部の視覚障害者が利用しているわけです。

 ただ、問題はそうした開発が、先ほど道躰さんは 23 万とおっしゃったのですが、資料を見たら 32 万ですので、念のために。 32 万人の視覚障害者のうちの重度と言われる約 7 8 割の視覚障害者の中で、そうした先端機器とも言うべき補助機器を使いこなせない視覚障害者が圧倒的多数です。そのために開発とともに、それを使いこなすための訓練、研修も制度化することを併せて実施されることが必要だろうと思っております。以上です。

 

○駒村部会長

 事務局に数字の確認があったと思いますので、お願いいたします。

 

○道躰自立支援振興室長

 自立支援振興室長です。すみません、データの読み違いをいたしました。失礼いたしました。自宅での代筆・代読の支援をする方の派遣について、地域生活支援事業で実施している自治体はどれくらいかという御質問だったかと思います。元データは取れていると思いますので、それを集計いたしまして、きちんとした数字を後日御報告させていただければと思います。以上です。

 

○駒村部会長

 では、次に藤堂委員からお願いします。

 

○藤堂委員

 初めに質問ですが、情報アクセスに関しては、また別個にあるのですか。それともそれの中に情報アクセスも入っていますか。

 

○駒村部会長

 事務局からお願いします。

 

○道躰自立支援振興室長

 特に情報アクセスということでの回はないと思っております。

 

○藤堂委員

 ない。では、そこから話させていただきます。発達障害ネットワークの藤堂と申します。まず、ヒアリングのときに、私はこのことを随分申し上げたはずなのに、 1 行も入っていないということで非常に寂しい思いをしております。というところから始めさせていただきたいと思います。

 それから、数ですが、 4 ページの発達障害という所に、小中学生の 6.5 %程度と書いてあります。発達障害は子供だけではなく、一生続くものです。それを考えますと、今、計算しましたら、間違っていなければ 845 万人いてもおかしくありません。 6.5 %という数字も私は信じられなくて、もっといます。この人たちはコミュニケーション障害を持っていると言われている人たちです。この人たちのことを全部カバーするとなると、福祉がパンクするのは目に見えているというところで、早いうちにまず情報にアクセスする方法をきちんと位置付けてほしいなと思います。それは権利としてで、障害以前の問題としてインクルーシブな社会を目指しているというところで、誰でもがいろいろな方法で情報にアクセスできる状態を作っていただきたいと思います。

 次に、意思疎通支援の対象となっているのが視覚障害、聴覚障害、盲ろうだけであるということがどうなのかということで、論点の所にも書いてあるので、次のページにある障害の方たちも、是非入れていただきたいと感じます。知的障害もそうだろうし、高次脳機能障害で後から言語機能を阻害された方たちも入ってくると思います。

 先ほど失語症の定義の所で、読み書きも入っているということでちょっとショックを受けたのですが、つまり、私たちは生まれながらの失語症というのと同じなのです。福祉のお世話になるような、すごくシビアな方というのは、その中の 1 %です。だったとしても、何パーセント。 6.5 %の中の 1 %であったとしたら、計算はすぐにできませんが、半分ぐらいだったとして、 200 万人ぐらいいてもおかしくないわけです。そういう人たちに対してどういうサービスを提供できるのかという視点を是非持っていただきたいと思います。

 この中であえて申し上げたいことが 1 つあります。視覚障害の地域生活支援事業の所にデイジー図書という言葉があります。デイジーというのは、今は絆創膏のことをバンドエイドと呼ぶようなもので、いろいろある支援機器、又は支援方法の技術の中の 1 つであると認識していただいて、もっと穏便な音声図書とか、先端技術を使った方法というように、表現を変えていただきたいと思います。そうしないと iPad を使って Microsoft のワード機能に読み上げ機能があって、それにもう 1 つ拡張子を付けると、スムーズに日本語として読んでくれる状態になってきています。

 先ほど教科書のお話もありましたが、国民の最初の権利であるはずの教科書へのアクセスが非常に限られています。それはどうしてかというと、障害者のために著作権を放棄して形を変えていいですよと言われているからなのです。ただ、 6.5 %いる全員がきちんと診断を受けて手帳を取るわけではないので、障害者かどうかが見えないわけです。その人たちのために私もボランティアで教科書を全部音声化して無償で提供しております。そういうことをもっともっと。多分、合理的な配慮が来年 4 月から始まったら、それは当たり前の本来普通にあるべき配慮になっていくと思います。その辺は、もう法律中に齟齬が出ているわけです。インクルーシブな社会を目指します。ニーズに応えていきますと言ったときに「障害者じゃないから、あなたはニーズがあっても、それは使えませんよ」という状態が今あるということを理解していたただきたいと思います。

 それから、先ほど支援機器のお話がありましたが、本当にいろいろな支援機器が出てきておりまして、使える人と使えない人がいます。子供だと保護者が使えるか使えないかによってディバイドが出てきております。それは親の知的レベルとか、生活の状態に準じている部分があると思いますが、本当に誰もがアクセスできる環境を作るためには、点字図書館ではなく、地域の図書館で普通に手に入れられるものにしていっていただきたいと思います。私の言いたかったことはそれだけです。

 もう 1 つ、赤いヘルプマークというのを国ではなく、東京都が出しておりまして、ほかの自治体でもいろいろ作っているようですが、私はこれを持ち歩いています。これには「席を譲ってください」と書いてあるのですが、私は席を譲ってもらう必要はありません。足腰はしっかりしておりますが、頭が緩いだけです。後ろに自分のニーズを書く所があります。それに書ける人に育ててほしいのです。セルフ・ヘルプです。自分が自分のことをきちんと言えるようにしてあげる。

 この前、三菱東京 UFJ 銀行の窓口で口座を作るときに、「私はちょっと読み書きが大変なので」とだけのことを言ったら、「あっ、こちらに用紙があって、このとおりに書いてください」と言われたのです。名前の所に三菱太郎と書いてあるので、私はそのとおり三菱太郎と自分の名前を書いてしまいました。そういうことがあって、これはいかんなと思って、これを見せてお話したら、すぐに代わってくださって、ゆっくりと「ここの欄にお名前を書いてください」「ここの振り仮名は片仮名で書きますよ」ということとか、説明も丁寧にお話いただきました。本当に社会を柔らかくするために、私たちがここの制度を作っているのであれば、こういうものをもっともっと普及して、それを本人たちがもっと気楽に使えるように指導できる人たちを。機器も同じで、使えるということがすごく大事であって、持っているだけでは意味がないのです。だから、使えるような、コーディネーションができる人たちの人材育成は是非組み入れていただきたいと思います。以上です。

 

○駒村部会長

 日野委員、お願いいたします。

 

○日野委員

 入所施設の方たちの中にも、視覚障害者、また聴覚障害者がいらっしゃいます。それから、失語症と言っていいのかどうか分かりませんが、重度の脳性麻痺の方で発語ができない方、重度の言語障害の方がいらっしゃるわけですが、その方たちに対してのコミュニケーション支援というのが、瞬きで意思を表出させる方法、あるいは口文字でいろいろな意思の表出を導き出す。そういうのを施設のスタッフが本当に時間をかけて、それこそ 30 分は短いほうで、 1 つの言葉を引き出すのに 1 時間ぐらいかけてやっている実態があるということをまず御承知していただきたいのと、それを評価して、更に体制作りを拡充していただきたいというのは、専門性を更に高めるための研修体系というか。実は今日、資料を見せていただいて、いろいろな養成研修を行っているのですが、都道府県からそういった専門性を高めるための研修の案内が身障の施設になかなか届かないので、そういったことも含めて全ての障害に関わる研修事業についての周知を行っていただきたいということを 1 点だけ申し上げたいと思います。以上です。

 

○駒村部会長

 阿部参考人からお願いします。

 

○阿部参考人

 日身連の阿部と申します。「意思疎通支援のニーズ」ということで、ここにいろいろなニーズがありますが、受信というよりも発信することであれば、喉頭摘出の方々の発声訓練はとても大事なことではないのかと思います。そのようなことも含めて、喉頭摘出の方に関しては、発声の仕方を食道で行う場合と、電気的な機器であれば発声できますというのもありますが、その機器の位置付けが補装具にはなっていないので、日常生活用具でも市町村によって、それが日常生活用具と認められていたり、認められていなかったりということもあるようにもお聞きしています。このような大事な検討ですので、発信・発声ということから、喉頭摘出の方についても検討していただければ有り難いと思いました。
 ALS などの方は、本当に先端技術、パソコンの利用で個別に応じて瞬きということもですが、脳波でも信号を出すという工夫とか、様々な開発と実践が行われているところです。そのような機器は先ほどから出ていますように、委員の皆様から御指摘がありますように、使い方がすごく大事なことだと思いますし、またそのメンテナンスはすごく大事なことだと思います。手話とか要約筆記は支援員の方々の充実ということで人数が書いてありますが、重度意思伝達装置の使用又はメンテナンスに関わる方の養成というのも、今すごく大事なことだと思いますし、またこれは補装具になって、それほど長い時間はたっていないだけに、現状が見えづらい。ただし、これからの将来的にはすごく大事なことだと思いますので、 ALS の方々などを含め、重度意思伝達装置、パソコンなどを利用して個別的な発信の方法などを工夫している場合についても、機器の開発とともに、その実践応用のための地域の支援員の確保ということでお願いしたいと思います。以上です。

 

○駒村部会長

 石野委員、お願いします。

 

○石野委員

 全日本ろうあ連盟の石野です。現在意思疎通支援事業は地域生活支援事業の位置付にあります。市町村又は各都道府県の自治体の裁量によるので、地域格差が出て、問題になっております。データの見方について、例えば 25 ページのグラフは今年 3 月における通訳の派遣時間、利用時間等、具体的に書かれておりますが、これだけを見るのではなく、年間における各月別の調査も必要だと感じております。また、具体的に申しますと、個人的なことで申し訳ないのですが、先般、地下鉄の乗換え時に転倒して小指を骨折してけがをしました。複雑骨折のために、医療的ケアが必要になりました。大津市の意思疎通支援の制度を利用して、大津市の手話通訳派遣で病院に通院しました。計算してみますと、 33 時間ほど通訳を利用しました。手術も 2 回受けて、また治療し、そしてリハビリという経過を踏みました。そうすると医師のほか作業療法士、看護師、薬剤師等々のコミュニケーションも必要になってまいります。

 このデータでは滋賀県は利用率が低くなっておりますが、実態はそうではありません。大津市の手話通訳、要約筆記をやっておられる、コーディネーターに聞きますと、例えば昨年 8 月のお盆の 12 日から 15 日までの派遣件数と今年の 8 13 日から 16 日まで、去年と今年と比較しますと、昨年の場合には 0 件でした。たまたまお盆だったからかもしれませんが、今年は 9 件も通訳依頼が入りました。たまたま時期的に熱中症が多発しましたので、データだけでは計れないところがあります。また、生活支援の必要なろう者も多々おります。病院においても対応が必要になり、通訳派遣が派遣されました。これは通訳派遣で済まされることだけではなく、意思疎通支援事業というのは、ただコミュニケーションをするというだけでなく、生活支援という視点も非常に重要になります。これが 1 点目です。

2 点目について、今、問題なのは聴覚障害者にとっての社会資源が非常に不足していることです。手話通訳者、要約筆記者等々、人的な支援はまだ十分ではありません。ただ、施設の場合を考えますと、例えば聴覚障害者情報提供施設、これは全国にも 51 か所設置されております。私は 4 年間、情報提供施設の協議会の理事長をやっておりました。各施設の現状を見ますと、非常に厳しい状況下にあります。正職員が 2 人だけという施設もあります。多くても 5 人、あるいは地域によっても差がありますが、全体的に見ますと、数によっても差が出てくる。情報提供施設の職員配置の基準に曖昧になっているという点もあります。「施設長、事務員、その他必要な者」という書きぶりになっていますが、現状は非常に苦しいという状況にあります。それも考えなければいけない課題の 1 つです。障害者手帳を持たない聴覚障害者も多数います。そういう方に対して、どのような支援をしていくのか、これも課題ではないかと考えます。

 

○駒村部会長

 野澤委員、お願いします。

 

○野澤委員

 今日は珍しく時間があるようなので、少しお話をさせていただこうと思います。コミュニケーションの支援、意思疎通支援、これはいかに重要で可能性があるかという話をしたいのですが、私は去年から、東京大学で学生たちの自主ゼミのお世話をする係をやっていまして、その 1 つが「障害者のリアルに迫る東大ゼミ」といって、毎回、障害当事者に教室に来てもらって、ゲスト講師で学生たちとディベートをしてもらうのです。ここにいらっしゃる広田和子さんにも来てもらって、大変な盛り上がりを見せたのですが、その 1 人として前にここにヒアリングにも来ていただいた ALS の岡部さんにも来ていただいたのです。彼はずっと動けなくて、わずかに目と口がちょっと動くぐらいで、それを介助者が「あいうえお」「あかさたな」の五十音で読み取って、最初は学生たちはどうやって受け止めていいか分からなくて、どん引きしていたのです。 100 分のゼミがあって、その後、懇親会にまで行って、学生たちは飲み食いしますが、岡部さんは胃瘻と人工呼吸器なので、ただその場にいるだけです。 2 3 時間いたのですが。
 5 時間ぐらい一緒にいて、どんどんどんどん学生たちの空気が変わってきて、最後のほうに 1 人の学生が岡部さんに対して、こんな質問をしたのです。自分は東大に入るのが目標で、一生懸命勉強してきて、東大生になったら目標を失ってしまって、今、何のために生きているのかよく分からないと言うのです。岡部さんを最初見たとき、びっくりしたけれども、彼は海外旅行も行くし、札幌辺りまで飛行機で日帰りで行ってきますから、アイス・バケツ・チャレンジといって、氷の水をかぶったりする映像まで見せたりして、どちらが幸せなのか分からないと言い始めたのです。「もしも岡部さんが今、病気が治って、自分たちみたいになったとします。ここにボタンがあって、このボタンを押したら今の自分に戻れるとしたら、あなたは押しますか」と、 1 人の学生が質問したのです。岡部さんはすぐ、目でこうやっているのです。介助者の方が通訳したら、「絶対に押します」と言ったのです。「どうしてですか」と学生が聞いたら、「体の動かない不幸よりも、心の動かない不幸が私には耐えられない」と言ったのです。学生たちは 5 分、 10 分、言葉を失って、ずっと凍り付いて立ち尽くしていたのです。
 体は見た目ではほとんど動かなくて、人工呼吸器に胃瘻を付けたその方のコミュニケーション
1 つによって、このように社会に対していろいろなものが影響力を発揮し得る。コミュニケーションというのはもちろん一方通行ではなくて、つまり意思疎通支援とかコミュニケーションの支援というのは、障害のある方たちのためだけではなくて、障害のある方たちからの社会に対する発信ということも考えると、この支援の重要性が分かるのではないかと思うのです。これは先ほどのところで言うべきかと思ったのですが、意思決定支援、特に言葉の話せない重度の知的な障害があって、判断能力もないのではないかと言われている人たちにとったって、彼らの意思決定支援の核心中の核心はコミュニケーション支援だと思っております。ヨーロッパの議論でもそうですよね。コミュニケーション支援というものを中核に置くのだと。意思の形成とか意思の決定というのは、本人のその中にだけ完結してあるシステムではなくて、外部の人とのコミュニケーションによっていろいろなものが刺激され、そこで意思が形成され、決定して、また表出して、そのやり取りを通して意思が確定していくわけで、それを考えたときに、コミュニケーション支援というものは知的の人たちや発達障害の人たちにとっても極めて重要な支援で、意思決定支援の本当に中核的なものであるはずなのです。デバイスももちろんそうですが、論理的にも方法論は非常に深まってきているので、この場は意思疎通支援という事業をテーマにしたものですが、意思決定支援の中に知的障害の方たち、重症心身障害の方も含めて、こういう方たちの意思決定とかコミュニケーション支援というものを、研究としてでも重点を置いて、これからやっていかなければいけないとか、是非やっていただきたいとか、やらせていただきたいと思っております。以上です。

 

○駒村部会長

 広田委員、お願いします。

 

○広田委員

 東大で、広田さんが盛り上がったのは、彼の話をしたら、野澤さんが、「ここはインタビュー」ということと。中国人の留学生が出席していて、私が「 3 6,000 億出しているから返してもらいたいぐらい。『中国に来ますか』とよく聞かれるけど、『行かない』と言うと、『何でですか』、『それは日本人が行って、被害に遭ったって愛国無罪と言って弁償もしない。そんな怖い国は行けません』と言っているのよ。「それにチベット等の人権とか考えると私は中国を超大国だと思わない。人口大国だと思っている」と言ったら、「又、お会いしたいので、電話番号教えてください」と言うから、「私の電話は教えられないのよ」と断ったら、残念がっていました。韓国の人には、「漢江の奇跡というけど、奇跡でも何でもない。日本も人手を出してお金も出したのよ」と言った。彼女も「電話番号教えてください」と言うから、「いや、教えられないのよ」と。私の電話はサイバー、盗聴の対象だから、とは言いませんでしたが、彼女たちを巻き込めないのでおことわりしました。そして「学生の皆さん、このぐらい率直に外国の皆さんと話をすることが平和だとか友好ですよ」と言った。

 日頃から障害者の意思がないとか意思決定がないという前に、冨ちゃんの夫婦はどんな会話をしているの。藤井さんの夫婦はちゃんと成り立っているの。江浪さんも。田中さんもそうですよ。いわゆる健常と言われる家庭があって、そこに精神障害者が 1 人いたという話で、全部、精神障害者を悪者にして、入院させたり、注射を打たれたり、昔なら魔女狩りだったり、座敷牢だったかも知れない。

 ところが、今、町の中で「気をつけて」「だいじょうぶ」と多くの人に言われ、私が地域で起こっていることを話しても、「広田さん、それは妄想でしょう」と言う人は 1 人もいなくて、「大変な時代になったわね」と。なぜかと言えば広田和子が国の委員だからです。たかだか国の委員という肩書きがあるから理解されて、駒ちゃんだってそうよ。そこに座っているから慶應大学の駒村で通るけれど、その辺で行き倒れて何にも身分証明書がなければ、「何だこの黒眼鏡男は」と、そのぐらいなのよ。

 そういう日本国民が問われている。障害者が問われているのではない。生活困窮者特別部会で「家庭の中に母性がない」と言ったら、西村さんというタレントのような女性副大臣も出席したり、津田弥太郎さんという私のこと「全体の流れからすると、はずれているみたいだけど、明るい女性で物事の本質を・・・」と「お別れ記者会見でも言っていた」政務官も出席していましたが、 TBS の解説員が飛んできて、「広田さん、あなた、たたかれんのあそこよ」と。「どこ」と言ったら、「家庭の中に母性がない」と。それが、この間私は日経か何かの 1 面を見てぎょっとしました。皆さん、日本の愛情表現のない夫婦の家庭に、何と外国人のヘルパーさんが入るそうですよ。そのとき、どうなると思いますか。外国の女性の多くは永住権がほしい。そうすると、夫婦の間に波風が立つどころの騒ぎじゃない。いろいろなことが起こって夫婦別れも想定される。まずは妻は出ていく。男が残る。そうすると、「何だ俺、外国人にもてたのかな」と思う。それは甘いわけ。そういう場合もあるかもしれないけど。

 場合によってはその女性が永住権とか家までもらって、めでたしめでたしになるというぐらい大変な問題を、日本のマスコミはさも女性の輝くとか、あれは安倍さんではないと思う。前も発言してますが、アッキーが『文芸文春』に書いていた。ああいう女性輝くの源は横浜市長の林文子さんだと思う。一昨年、総理官邸での、消費増税のときに彼女は隣にいて「働きたい女性はいっぱいいる。」それは分かります。働きたい精神障害者はいっぱいいるから。「女性のキャリアがいっぱいいる」と言った。私は「主婦も大切よ」とひじ鉄を。働きたいというのはキャリア?田中さんは肩書きはキャリアかもしれない。でも、どの程度働くか、私は分からない。私も。「広田さんってすごい!」とかほめられ、肯定的に同意する人もいれば、「あの人って、精神障害者手帳3級の人よと言いふらしていた」人。「あんたのこと『偉い人』って言っている人がいるけど、私は単なるおばさんとしか思わない!」と怒鳴り込んで来た人。街役員のおじさんに「孤立死対策」のアイデア話に行ったら、又聞きした人が「ぶりっ子!言っている意味わかるでしょ!」と怒っていた人。その人が、そのおじさんと私をくっつけようと福祉事務所まで巻き込んで大騒展開中。近隣であってもこの様な捉え方。国のキャリアが「広田さんの最強の敵」と形容し、私は「社会の敵でしょ」と答えたけれど、こういう近隣に巻き込まれないようにしている。何の関心もない。

 今、日本が問われている、日本女性が問われている、パンツ丸見え、胸丸出しです。それで外国の人に聞きます。「なぜ、あなたはそんな胸出してんの」と言ったら、フィリピーナが「日本は安全だから」。私が「あなた、フィリピンの田舎でそれ着て歩いてる」と言ったら、「フィリピンは治安が悪いから着てません」。それで、「日本が安全だから、日本の男がターゲットで来て結婚した」という、ルーマニアのお姉さんたちも「幸せです」と言うから、「一生幸せでいてね」と言ったら、「でも、日本はもう危ないですよ」と言っていた。それは当たっていると思います。

 だから、何でも外で働く女性が輝くんじゃなくて、家庭で未来の納税者等育ててる主婦が両輪で輝かなきゃ。少子化と騒がれながら、若い女性が「主婦は肩身が狭い」と感じている。働く女性も輝き、主婦も輝く、これは櫻井よし子さんの本に出ていました。それから、曽野綾子さんの本には、子供が小さい頃は女は家庭にいるのがいいわねと書いてあって、広田和子も同じような考えです。そういう意味で日本社会が問われているから、いかにも女性が輝くというと、女性の能力が引き出されて、サッチャーの再来。ヒラリーみたいな人が日本にいるのかというと、今はいない。櫻井よしこさんがいいと、佐々淳行さんは本で書いていた。でも、櫻井さんはそういう話に乗らないと思う。私も「議員になって」と、よく言われてる。昔から。秘書候補者の男性もいっぱいいるけど、「私は、彼のために、おいしい御飯、ラーメンでも作って一緒に食べるほうが合ってる」と、これからの生き方も決めている。家庭が温かく、家庭が明るく、家庭がホーッとできれば、制度は少なくて、税金も減らせるかもしれない。子供にとっても良い環境になりますよ。それを何でも制度だ、隣近所がどうのこうのと、他力本願でイギリス、アメリカ、それからスウェーデンどこでもいいけれど。野澤さん、あなたの本すごくいいわよね、奥さんとの関係が。奥さんに感謝したほうがいいわよ。

 

○野澤委員

 どう発言したらいいか分からない。

 

○広田委員

 私がお会いした神奈川県警本部長、歴代の中で多くの部下たちが「厳しい」と言っていた人に、「何々さん、家帰って、アイ・ラブ・ワイフと言ってんの。日本の男性はそれが足りないけど」と言うと、「毎晩言ってるの、俺だけだよ、神奈川県警でアイ・ラブ・ワイフって言ってんの。サンキュー」といつも笑顔でした。そこにずらっと並んでる男性。今日、家に帰ったらアイ・ラブ・ワイフ。それから、恋人にはアイ・ラブ・ユー。フクちゃん、今日来てるんだ。よろしくお願いしますということで、アイ・ラブ・ユーとか、アイ・ラブ・○○○ということをスナックに行って言っているんじゃなくて、自分の奥さんに言うことで、どれだけ日本社会が明るくなり、税金を使わないで済むかということで、もう一度よく考えて、女性輝くというのは何なのか。働きたいという意思があるからキャリアじゃない。働けてない女性はいっぱいいます。日本社会はどこもレベルダウンです。まず、是非、自分の家庭を見直そうということで、それが全ての人にとって幸せです。当然、本人たちのコミュニケーション能力は上がります。夫婦の会話がない中で、子供が 1 人、どうやってコミュニケーション能力が上がるのと私は聞きたい。それから、マスコミはもうたたく報道をやめないと、教師、神奈川県警はじめ、都道府県警、鬱が課題。毎日新聞も、朝日も、霞ヶ関、あらゆる職域。ということで、日本が今問われているのは、マスコミ報道と、家庭の有り様と、女輝くという安倍さんではなく、私の直感では林文子さんの考えに乗っかった菅さんとか麻生さんではないかと。菅さんは私の選挙区ですが、かつて区公会堂での国政報告会で、私は、「日本の議員は、市会議員も県会議員も国会議員も、現実を知らない。」と。消費増税の時は「議員もマスコミも現実を知らない。給料が高いから」と発言しています。ということで、皆さん、私に続いてもっと面白い話を。今日は風邪声ですから。早く帰ろうと思ったけど、さっき野澤さんを毎日新聞へ私が呼びに行ったから、最後までいなきゃ悪いかなと思って。女輝く、そして家庭が問われているという問題提起とマスコミは本来のジャーナリズムを!

 

○駒村部会長

 ほかの委員の方で御発言がなければ、少し早めですが、今日の議論は以上とさせていただきます。最後に事務局から予定をお願いいたします。

 

○川又企画課長

 次回の日程は、連日で恐縮ですが、明日、 9 9 ( )14 時より、場所は TKP ガーデンシティ竹橋ホール、この場所で開催します。議題としては、障害児支援について、障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方、この 2 点について御議論いただきたいと思います。よろしくお願いします。

 

○駒村部会長

 20 時間後ということですが、またよろしくお願いいたします。今日はこれで閉会としたいと思います。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

【社会保障審議会障害者部会事務局】
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課企画法令係
TEL: 03-5253-1111(内線3022)

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