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2015年3月5日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録

○日時

平成27年3月5日(木)15:00~


○場所

航空会館702+703会議室


○出席者

出席委員(12名)五十音順

○新 井 洋 由、 川 上 純 一、 川 崎 ナ ナ、 菊 池 嘉、
清 田 浩、 関 水 和 久、 田 島 優 子、 田 村 友 秀、
中 島 恵 美、 前 崎 繁 文、 増 井 徹、◎吉 田 茂 昭
(注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(9名)

庵 原 俊 昭、 大槻 マミ太郎、 奥 田 真 弘、 鈴 木 邦 彦、
濱 口 功、 半 田 誠、 森 田 満 樹、 山 口 拓 洋、
山 本 一 彦

行政機関出席者

神 田 裕 二 (医薬食品局長)
成 田 昌 稔 (大臣官房審議官)
森 和 彦 (審査管理課長)
宇 津 忍 (安全対策課長)
俵 木 登美子 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
山 田 雅 信 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
武 田 康 久 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 定刻よりは若干早いのですが、先生方お揃いになられましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を開催させていただきます。本日はお忙しい中、先生方に御参集いただきまして誠にありがとうございます。

 本日の委員の出欠ですが、庵原委員、大槻委員、奥田委員、鈴木委員、濱口委員、半田委員、森田委員、山口委員、山本委員より御欠席との御連絡をいただいています。現在のところ、当部会委員数21名のうち、12名の先生方の御出席をいただいています。若干きわどいのですが、定足数に達していますことを御報告いたします。

 それでは、吉田部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 本日の審議に入りたいと思います。まず、事務局から配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告をお願いします。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日は議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しています。議事次第に記載されています資料1~9をあらかじめお送りしているところです。なお、事前に送付しました資料の中に、資料7-2として、再審査に係る資料を送付していましたけれども、こちらは後日改めて御報告させていただきたいと考えていますので、恐れ入りますが、あらかじめ御了承くださいますようお願いいたします。そのため今回、資料7-2は抜番の形になっています。このほか資料10「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料11「専門委員リスト」、資料12「競合品目・競合企業リスト」を配布しています。

 続いて、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて、御報告いたします。資料12の1ページです。「シンフロリックス水性懸濁筋注」ですが、本品目は、肺炎球菌による侵襲性感染症及び肺炎の予防にかかる予定効能・効果となっていまして、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 2ページを御覧ください。「ノボサーティーン静注用2500」ですが、本品目は、先天性血液凝固第XIII因子Aサブユニット欠乏患者における出血傾向の抑制を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 3ページを御覧ください。「ソバルディ錠400mg」ですが、本品目は、セログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 4ページを御覧ください。「コペガス錠200mg」ですが、本品目は、ソホスブビルとの併用によるセログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 5ページは、「オルドレブ点滴静注用150mg」ですが、本品目は、各種感染症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。

 6ページは、「サイラムザ点滴静注液100mg、同点滴静注液500mg」ですが、本品目は、治癒切除不能な進行・再発の胃癌を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しています。以上です。

○吉田部会長 ただ今の事務局からの説明に、特段の御意見等はありますでしょうか。ないようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものといたします。

 それでは、委員からの申出状況についての報告をお願いします。

○事務局 各委員からの申出状況について御報告いたします。議題1「シンフロリックス水性懸濁筋注」、退室委員:なし、議決には参加しない委員:清田委員、前崎委員。議題2「ノボサーティーン静注用」、退室委員:なし、議決には参加しない委員:なし。議題3「ソバルディ錠及びコペガス錠」、退室委員:なし、議決には参加しない委員:田村委員、前崎委員。議題4「オルドレブ点滴静注用」、退室委員:なし、議決には参加しない委員:清田委員、前崎委員。議題5「サイラムザ点滴静注液」、退室委員:田村委員、議決には参加しない委員:川上委員、清田委員、前崎委員。以上です。

○吉田部会長 ただ今の事務局からの説明に、特段の御意見等はありますでしょうか。ないようですので、説明につきましては、皆様の御確認をいただいたものとし、議題に入りたいと思います。

 本日は、審議事項6議題、報告事項2議題、その他事項1議題となっています。委員の申出状況等を踏まえまして、議題の進行は、議題1、2、4、5、3、6の順に審議をしたいと思います。なお、本日は定数がぎりぎりという状況ですので、審議進行上の御協力方もよろしくお願いしたいと思います。それでは審議事項の議題1に移ります。議題1及び議題6の本品目に関わる部分について、機構からの概要説明をお願いします。

○機構 議題1、資料No.1、シンフロリックス水性懸濁筋注の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤は、肺炎球菌による侵襲性感染症及び肺炎の予防を目的とする乳幼児用のワクチンであり、10種類の血清型の肺炎球菌莢膜ポリサッカライドに、キャリアタンパク質を結合させたものを有効成分としています。本剤は、200812月にカナダで承認されて以来、201312月時点において、123か国で承認を取得しています。本剤の専門協議では、資料No.11にお示しした6名の委員を指名いたしました。

 審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。肺炎球菌による侵襲性感染症の発症予防効果については、審査報告書29ページの表4-10を御覧ください。本剤に含まれる血清型の肺炎球菌に起因する侵襲性感染症の発現率について、本剤群と、プラセボ群に相当するB型肝炎ワクチン接種群を比較した結果をお示ししています。侵襲性感染症の発現率について、年間1,000人当たり本剤群では0であり、プラセボ群では0.564と、本剤群のプラセボ群に対する優越性が検証され、本剤による侵襲性感染症の発症予防効果が示されました。また、肺炎に対する有効性については、審査報告書32ページの表4-13を御覧ください。細菌性と考えられる肺炎の発現率について、本剤群と、プラセボ群に相当するB型及びA型肝炎ワクチンを接種した群を比較した結果をお示ししています。肺炎の発現率について、年間1,000人当たり本剤群では12.30であり、ブラセボ群では15.78と、本剤群のプラセボ群に対する優越性が検証され、本剤による肺炎の発症予防効果が示されました。

 安全性については、審査報告書4144ページを御覧ください。国内臨床試験において、本剤接種後に臨床上問題となるような副反応は認められませんでした。また、海外の臨床試験や製造販売後において、本剤に特有と考えられる事象はなく、本剤の安全性は忍容可能と判断いたしました。

 以上の審査の結果、機構は、本剤に含まれる血清型の肺炎球菌による侵襲性感染症及び肺炎の予防を効能・効果として、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも劇薬に相当し、生物由来製品に該当すると判断いたしました。なお、薬事分科会には報告を予定しています。また、生物学的製剤基準に、資料No.6の別紙1にお示しした基準の追加を予定しています。併せて御審議くださいますようお願いいたします。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生からの御質問、御意見をお願いします。

○清田委員 適応についてお尋ねしたいのですが、確か私が感染症学会のワクチン委員会で委員をやっていたときに、中耳炎の適応をどうするのかという話が過去のワクチンでありまして、そのときそのワクチンはエビデンスはあまりないけれど、可能性としてはあると。適応となる可能性があるということで、添付文書にそのことを書いたらというように記憶しているのですが、このワクチンの場合はどうなのでしょうか。

○機構 機構よりお答えいたします。審査報告書の4041ページを御覧ください。本剤について急性中耳炎に対する有効性について評価を行った試験成績について、表の4-23にお示ししています。本剤については、急性中耳炎に対する発症予防効果を検証した結果は示されていないことから、本剤の急性中耳炎に対する有効性は示されていないと判断しています。

○吉田部会長 よろしいですか。

○清田委員 ちょっと素人で恐縮なのですが、後ろの51ページの表1を挟んだ文章をチラッと見かけまして、これだと上から5行目ぐらいですか、「AOMに対する発症予防効果は明確ではないこと、及び資材等で当該結果を適切に情報提供すべきとの意見が出された」と書いてあるのですが、具体的には何か資料提供のようなことはする予定なのでしょうか。

○機構 今、御質問いただいた審査報告書51ページには、無莢膜型インフルエンザ菌に起因する中耳炎について記載しており、これは、キャリアタンパク質として本剤中に含まれる無莢膜型インフルエンザ菌由来のプロテインDにより、無莢膜型インフルエンザ菌に起因する中耳炎に効果を示すことはないと結論したものです。当該情報については、資材等で情報提供を予定しています。一方、本剤の本体である肺炎球菌ですが、本剤に含有される肺炎球菌に起因する中耳炎については、予防効果が示されなかったことから効能から除外しており、特に情報提供する予定はございません。

○機構 ちょっと補足させていただきます。専門協議では、本剤が無莢膜型インフルエンザ菌の中耳炎に効く可能性があるとプロモーションをされるのは問題があるのではないかということで、資材等を作って、適正に情報提供しましょうという議論を行ったところです。

○清田委員 それは明らかに記載する必要もないということですね。

○機構 そうですね、添付文書等で記載する内容ではなく、間違った情報は流してはまずいので、それは企業に対しては指導する方向で、専門協議では結論が出たということです。

○清田委員 前のワクチンでちょっと話題になったものですから、伺いました。ありがとうございました。

○吉田部会長 今のお話は、今回のワクチンが10価で、以前と価の数が違うことも含めてということですか、資材等で。

○清田委員 ちょっと記憶が、私が委員をやっていたころ、曖昧なのですが、確か同じような感じでエビデンスがないですけれど、今後の可能性としてはそのような中耳炎にも予防があるかもしれないみたいな記載が添付文書に載ったということが、感染症学会の中で話題になったものですから、今回どんなものなのかなと思いましてお尋ねしました。

○吉田部会長 ほかにありますでしょうか。あと、資料6の生物学的製剤基準の変更について、特に川崎先生の御意見はありませんか。

○川崎委員 ありません。

○吉田部会長 よろしいですか。御意見もないようですので、議決に入りたいと思います。なお、清田委員、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可とし、併せて本品目に関する生物学的製剤基準の一部改正を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、併せて本品目に係る生物学的製剤基準の一部を改正することとし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは議題2に移ります。機構からの概要説明をお願いします。

○機構 議題2、資料No.2、医薬品ノボサーティーン静注用2500の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。

 本剤は、カトリデカコグ(遺伝子組換え)を有効成分とする遺伝子組換え血液凝固第XIII因子Aサブユニット製剤です。本剤は、先天性血液凝固第XIII因子Aサブユニット欠乏患者を対象とし、希少疾病用医薬品に指定されております。現在、本邦では、血液凝固第XIII因子製剤として、ヒト血漿由来の製剤が承認されています。本剤は、製造工程において、ヒト又は動物由来の原材料が使用されておらず、感染症リスクのない遺伝子組換え製剤として開発されました。なお本剤は、201412月現在、米国及びEUを含む九つの国又は地域で承認されています。本剤の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料11にお示しした7名の委員です。

 審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。有効性については審査報告書4041ページを御覧ください。本剤の定期的な投与について、臨床試験において年間出血率を評価した結果が記載されています。血液凝固第XIII因子の定期的な投与を行わなかった場合の年間出血率である1年当たり2.91回が、閾値として事前に設定されました。一方、本剤を定期的に投与した場合の年間出血率の推定値は、1年当たり0.048回であり、95%信頼区間の上限値は、事前に設定された閾値と比較して、約10分の1と極めて低い値が得られました。したがって、本剤の定期的な投与による出血率の低減効果は期待できるものと判断いたしました。また、出血時の投与については、限られた臨床試験の情報及び本剤の作用機序から慎重に使用する場合に限り、出血時に本剤を投与することも可能と判断いたしました。

 安全性については、審査報告書4245ページの()「安全性について」の項に記載されています。提出された資料から本剤の安全性上の懸念はなく、忍容可能と判断いたしました。

 製造販売後調査については、審査報告書54ページ、表3に骨子をお示しております。本調査は本剤の安全性及び有効性の情報収集を目的とした全例調査方式の調査を予定しております。本剤は、国内で治験症例が極めて限られていることから、当該調査を承認条件として設定することが適切と判断いたしました。

 以上の審査の結果、機構は、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。また本剤は、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、原体及び製剤はいずれも毒薬又は劇薬に該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断いたしました。なお、薬事分科会には報告を予定しています。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。

○菊池委員 今のところで、中和抗体のことを全然触れられなかったのですが、資料の43ページには中和作用のない抗体が出てきたというような感じですが、それで臨床的には問題ないという説明がされていますけれども、ここら辺のことはいかがなのでしょうか。

○機構 中和作用のある抗体が発生しているかどうかということでしょうか。

○菊池委員 はい。

○機構 臨床試験においては、中和作用のある抗体は発現しておりません。ただ、発現するリスクはありますので、市販後調査の中で情報収集をさせていただきたいと考えております。

○菊池委員 しっかり見てないのですが、添付文書には出現の可能性については書かれてはいるのですか。

○機構 はい。添付文書の重要な基本的注意の()を御覧ください。資料2のモジュール1.08になります。添付文書の「重要な基本的注意」の所に「インヒビターが発生するおそれはある」と記載しています。

○菊池委員 はい、ありがとうございます。

○吉田部会長 治験の例数が少ないので、ご指摘にあったようなリスクをきちんと書いておいた方がいいと思います。よろしくお願いします。

○新井部会長代理 関連して、中和抗体というのはどういう定義で中和抗体と言われているのですか。反応を、次の活性化を抑制するという、活性を中和しないというそういう定義でしょうか。

○機構 中和抗体というのは。

○新井部会長代理 できないという意味は、でも抗体はできているケースもあったと。中和抗体というのは活性を抑制する抗体が発現しなかったという意味でしょうか。

○機構 はい、そのとおりです。活性を抑制する抗体は発現しておりません。

○新井部会長代理 でも、抗体が基本的にできるとFcリージョン、活性には影響がなくても、長い間、要するに抗体が使っていると消費されてしまうと言いますか、Fcを使ってどんどん取り込まれていってしまう可能性もあると思うので、半減期というのは段々悪くなっていくとか、このタンパクを打ったときの抗体ができている場合とできていない場合で、試験管内で混ぜて反応性が落ちてないというのは分かるのですが、抗体が体内にあるわけですから、Fcの方を介してどんどん半減期が早くなっていってしまうというような議論と言いますか、検討というのはどのようになっているのでしょうか。

○機構 臨床試験の中で中和作用のない抗体が発現した患者さんにおいて、臨床試験の範囲ですけれども、薬物動態の変化はなかったということが確認されております。ただ、御指摘のとおりより長期に使った場合に、どのように影響してくるかという情報はないので、市販後の課題になるかと考えています。

○新井部会長代理、一応、半減期みたいなのが自己抗体ができている場合とできてない場合で、どのくらいの半減期になってくるのかというのは、ある程度追っていた方がいいのかなという気はするのですけれども。

○機構 はい、現在では治験の中での情報しかないので、また今後の課題とさせていただきます。

○吉田部会長 市販後の調査をやるときには、中和作用のない抗体が出たとしても、それをちょっとフォローしてほしいとか、ある程度注文つけることはできるのではないかと思うのですね。漠然とやるのではなくて、目的、そういうようなことにも留意してほしいとか、あるいはそういうことを注意した計画にしてほしいというように注文をつけておいたらいいのではないかと思います。とは言え、市販後でどのくらい使えるかというと、多分10例か20例、年間に数例ですから、9年やってもどのくらいのものが出てくるか分かりませんけれど、いずれにしても注文だけはさせてもらいたいなと思いますので、よろしく、申請者に伝えてください。

○機構 はい。

○新井部会長代理 100%抗体ができるのではないかとは思うのですが、中和抗体ができるかどうかは別として。

○機構 1点補足させていただきます。中和作用のない抗体の検出はなかなか難しく、その理由は、臨床症状が現われないため、検査をしない限り抗体が発現しているかどうか分かりにくいということがあります。中和作用があるものについては、薬理効果が下がってくるなどの症状がありますので、予想がつきやすいと思われますが、一方で、中和作用のない臨床症状の出ない抗体の発現を検出するのはなかなか、方法論として難しい現状があります。市販後に何かできるか、まだ検討中です。

○新井部会長代理 効果がなくなってきたときは中和作用が出てきたと思うかもしれませんし。

○吉田部会長 その辺については、中和作用があってもなくても抗体の動向に十分留意した形で市販後調査を行ってほしいというような注文にすればいいのではないかなと。

○機構 はい、申請者に伝えます。

○関水委員 タンパク質製剤の純度について伺いたいのですが、8ページの2.の、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動83kDaのバンドが認められたと書いてありますが、不純物に関する記載がありません。タンパク質製剤の純度は、例えば95%以上であると示すべきだと思うのですが、いかがですか。

○機構 純度につきましては、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動ではないのですが、クロマトグラフィーなどで原薬、製剤とも純度の規格を立てておりますので、それに適合したもののみ出荷されます。

○関水委員 具体的な数値がここには書かれていないように思うのですが。

○機構 □□□□%以上という規格を立てています。

○関水委員 89.0%以上のピークであるというのは、どのような方法で調べたのですか。

○機構 □□□□□クロマトグラフィーによって、純度を規定しています。審査報告書の中ではなく、承認申請書に記載がありまして、資料の1.02承認申請書の19ページになります。19ページの一番上に「純度試験」という項が立っているのですが、その()「純度及び不純物」の項の4行目に%という規格を記載しています。

○関水委員 書いてあることというは了解しました。液体クロマトグラフィーでタンパク質の純度を医薬品に関して検定するということに対して、私は問題を感じます。なぜ非常に一般的に確実であるとされるSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で純度を明らかにしないで、わざわざ液体クロマトグラフィーというあまり研究領域では使われない手法が使われるのですか。

 タンパク質の液体クロマトグラフィーによる分析において、溶媒は水を使って行われるのが普通です。タンパク質の溶解性は常に保たれる、ということは限りませんので、一般にはSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動というのが非常に重要視されるわけです。実際にこの文書にはSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で、目的のバンドが見られることが書いてありますね。このSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により純度の検定をするのが合理的だと思うのですが、なぜわざわざ液体クロマトグラフィーという特殊な方法で純度を検定しているのでしょうか。

○機構 不純物の中には、多量体や、ポリマーのようなものも含めて存在していますので、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動ですと、多量体など、凝集している場合に検出が難しいこともあり、この品目では液体クロマトグラフィーで検出した方がよろしいということで、そのような設定になっています。

○関水委員 一般的に分子量が数万というタンパク質については、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による検定というのが最も標準的であると私は考えます。

○機構 SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動に関してはもちろんタンパク質製剤ですので、チェックをしております。このものがどういうタンパク質であるかという特性を解析するという初段階があるわけです。その段階で解析された内容を用いて、このほかの高速液体クロマトグラフィーや□□□□□クロマトグラフィーできちんと検出できることをバリデートして確認し、こういう規格を設定しています。ルーチン性の高いやり方によって判断を簡便にできるというようなやり方が一般的には取られていると理解をしていますけれど、このやり方がまずいというわけではないと機構は認識しているのですが。

○関水委員 タンパク質の生化学でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動というのは最も標準的な方法であって、それをやらないというのは少し手落ちではないかと私は思うのです。何かSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動をやると今御指摘されたように、多量体は見られないという問題はあるのですが、それを考慮しても一般的な不純物の検定手段としては、この液体クロマトグラフィーよりも、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動の方がよいということが一般的だと私は思います。

○機構 先程も述べましたが、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動も特性解析として実施されております。その上で、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動よりもクロマトグラフィーの方が本薬に関しては検出の感度もよく、不純物を検出できるということです。

○関水委員 そのような説明は、間違っていると私は思います。タンパク質について、液体クロマトグラフィーの方がタンパク質の純度の検定手段として優れているということが認められれば、今の御説明は納得できるのですが、逆であって、液体クロマトグラフィーではむしろ純度が見かけ上高く出るということは大いにあり得るわけです。よりよい方法が用意されていて、しかもこの製剤にはそれが適応できるということが明確に示されているのに、わざわざ純度検定は違う方法でやられているというのが、問題があると私は感じるのですが。

○川崎委員 今回の品目では、純度試験として□□□□□□□□□□HPLCが設定されています。先生御指摘のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動は確かに分子量が異なる不純物の検出に優れているのですけれども、HPLCの方が定量性ですとか、再現性などがよいことから、最近では多量体のようなサイズが異なる不純物の検出には□□□□□HPLCのような方法が取られるのが一般的ではないかと思います。それから、機構さんが先ほど純度%と答えられたのですが、これは□□□□□での純度で、恐らくここで検出しているのは分子変化体ではないかと、つまり、アミノ酸残基の一部が変化したような□□の異なるものを検出しているのだと思われます。そのような□□の異なるものはSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動では検出できないので、□□□□□□□□□□を組み合わせておられるのだと思います。

○吉田部会長 要するに、タンパクだけではないと。

○関水委員 一般的なタンパク質の製剤に対する純度の検定の方法として、分子量が2万~10万の間のタンパク製剤については、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動よりも液体クロマトグラフィーの方が勝るというのは私にはちょっと賛成できない御意見です。これはタンパク質の純度検定という一般的な問題なので、もう少し考えていただければと思います。

○吉田部会長 タンパク製剤はこれだけではないし、いろいろな検定方法でやられているとは思うのですが、一応、液体クロマトグラフィーを使うときの基本的な考え方について整理してもらうのと、本薬について、申請者はどうしてこのやり方をしたのか関水委員の方に説明していただくということで、よろしいですか。

○機構 はい、申請者に確認をいたします。

○吉田部会長 ほかに御意見はありますでしょうか。ないようですので、議決に入りたいと思います。先ほどの条件はありますけれども、本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可として、薬事分科会に御報告とさせていただきます。

 それでは議題4に移ります。機構から概要説明をお願いします。

○機構 議題4、資料No.4-1及び4-2、医薬品オルドレブ点滴静注用150mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明します。本剤の有効成分であるコリスチンメタンスルホン酸ナトリウムは、複数の抗菌薬に耐性を示すグラム陰性桿菌に対して抗菌活性を示し、注射剤以外の製剤が国内で既に承認されています。近年、既存の抗菌薬では効果が期待できない緑膿菌、アシネトバクター属等の多剤耐性のグラム陰性桿菌による感染症が国内外から報告されており、国内外の成書及び診療ガイドラインで、多剤耐性のグラム陰性桿菌に対する治療薬として、コリスチン注射剤の使用が推奨されていること等から、「第3回医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での検討の結果、注射剤である本剤は、医療上の必要性が高いと判断されています。

 なお、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムは、平成2210月の当部会にて御審議をいただき、多剤耐性のグラム陰性桿菌による各種感染症を予定する効能・効果として、希少疾病用医薬品として指定されています。本申請の専門委員としては、資料No.11に記載の5名の委員を指名いたしました。

 審査内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。審査報告書2526ページの表13を御覧ください。この表に記載のとおり、国内外の診療ガイドライン及び成書において、多剤耐性のグラム陰性桿菌に対する治療薬として、コリスチンの使用が推奨されています。また、審査報告書3033ページの表1718を御覧ください。こちらはコリスチンを使用した海外臨床報告及び国内症例報告の概要を示しています。検討例数が限定的である疾患も認められるものの、敗血症、呼吸器感染症、尿路感染症等に対するコリスチンの有効性は示されていることから、多剤耐性のグラム陰性桿菌による感染症患者に対して、本剤の有効性は期待できると判断しました。

 次に、安全性について、審査報告書24ページの表12を御覧ください。この表は、国内第I相試験で認められた全ての有害事象を示しています。認められた有害事象はいずれも軽度であり、特段の問題はないことを確認しました。ただし、コリスチンに特徴的な副作用として知られている腎機能障害及び神経毒性が発現し得ることについて、適切に注意喚起を行う必要があると考えており、投与中は腎機能に関する検査を頻回に実施することで、腎機能障害の発現を注意深く観察し、発現時には減量等の適切な処置を行うことを前提として、本剤の安全性は許容可能と判断しました。

 なお、本邦におけるコリスチンの静脈内投与経験は限られていること等から、本剤を使用した全例を対象とした製造販売後調査を実施することが必要であり、承認条件とすることが適切と判断しています。

 以上の審査を踏まえ、機構は、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本剤は希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、また、原体及び製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会には報告を予定しています。以上、御審議のほど、よろしくお願いします。

○吉田部会長 ありがとうございました。それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。

 前崎先生、これはよく分からないのですが、公知の割に国内で使われていないというのは、どういうことなのでしょうか。

○前崎委員 現実に個人輸入で使っているのですが、対象菌種は多剤耐性緑膿菌や多剤耐性アシネトバクターです。日本で恐らく緑膿菌の中の1%以下ぐらいが対象となり非常に少ないという状況です。

 申請者は多剤耐性緑膿菌や多剤耐性アシネトバクターを適応菌種として挙げているのですが、添付文書では、コリスチンに感性でその他の抗菌薬に耐性を示した菌株と記載されていますが、多剤耐性緑膿菌や多剤耐性アシネトバクターは、新聞にも載るぐらい一般的な言葉になっています。審査報告書からは、現時点で多剤耐性の定義がはっきりしていないと書いてありますが、新聞にも載るぐらい普通の言葉になっているものを、なぜ適応菌種の中から外したのかやや疑問です。2012年に化学療法学会から、既に個人輸入がされている状況で、指針を出しているのですが、その指針にも適応菌種は多剤耐性緑膿菌や多剤耐性アシネトバクターを挙げてあり、その指針とも違うので、添付文書と、指針の齟齬が、少し現場で問題になり、混乱するのではないかと思うのですが、適応菌種を変更されたかと理由はいかがでしょうか。

○機構 多剤耐性という言葉が、一般的に広く使われているのは確かだと思いますが、判断基準というものが定着しているかというと、そうではないのではないかと機構では考えています。審査報告書39ページの表24で、学会等が提唱している定義を記載していますが、必ずしも統一されておらず、具体的な判断基準等のコンセンサスは得られていないのではないかと考えています。

 「多剤耐性」と適応菌種に記載してしまうと、この薬剤を使用するときの基準が曖昧になり、もう少し具体的に書き下す必要があるのではないかと考え、適応菌種の項では「ただし、他の抗菌薬に耐性を示した菌株に限る」とした上で、効能・効果に関連する使用上の注意の項で、本剤の使用が推奨されるべき状況というのを具体的に記載させていただいています。

○前崎委員 逆にこの適応菌種を明確にしない方が曖昧になる気がするのですが、例えばこれは2剤耐性の緑膿菌も対象にしようという書き方ですよね。

○機構 2系統の薬剤に耐性で、かつもう1系統の抗菌薬の臨床効果が期待できない場合に、推奨できると考えています。この文言の適切性については、専門協議でも議論させていただきました。特に委員の方からコメントを頂いたのが、アミノグリコシド系抗生物質に関しては、感受性検査で「耐性」となる基準が、MICとしては高値であるので、感受性検査では「感性」と判定されても、実際に投与すると耐性菌に対して効かないこともあり、必ずしも3系統に耐性という基準が適当ではない場合もあり得るので、2系統に耐性かつもう1系統の抗菌薬の臨床効果が期待できない場合とすることが適当ではないかとの御意見を頂いています。

○前崎委員 例えば2剤耐性緑膿菌にどれぐらい効いたかという臨床試験のデータは全くありません。もし、この薬剤が2剤耐性菌に使われると、韓国や米国のようにコリスチン耐性菌が増加することが懸念されます。

 そのような理由から3剤耐性であるということを確認した上で使用する方が、日本においてコリスチン耐性菌が増加することを抑制すると考えられるため3剤耐性を示す多剤耐性緑膿菌、あるいはアシネトバクターを適応菌種にした方が良いかと考えます。

○機構 恐らく何系統に耐性の場合に本剤が効くというような、詳細な検討をしたデータというのは、報告等はされておらず、2系統がいいのか、3系統がいいのかというのは、非常に判断が難しいところだと考えます。ただし、2系統と規定すべきと判断したもう一つの理由としては、3系統全てに耐性を示すことを確認しなければ投与できないと規定すると、医療現場で投与開始の判断が遅れてしまうということも生じ得るのではないかというところも考えて、2系統以上に耐性としたというのも、理由の一つとしてはあります。

 なお、先ほどコリスチンの適正使用の指針と少し齟齬があるのではないかという御指摘ですが、学会側と少しお話をさせていただいた際に、承認審査の内容を踏まえて、適正使用の指針の改定を検討したいと御意見を頂いているところです。

○前崎委員 この適応菌種で使ったときに、どういう使い方がされるかというのは、きちんと確認していただきたいと思います。

 それから、症例数が少ないので仕方ないですが、呼吸器感染症には、コリスチンは移行性が悪いので、海外では吸入薬として使用されています。呼吸器感染症や中枢神経感染症には、静注では無効とも考えられます。体内動態からも臓器移行性は不良であり、多剤の選択肢がないので仕方ありませんが、呼吸器感染症や中枢神経感染症には、有効性が期待できないこともというか、述べておく必要があると思うのですが、どうでしょうか。

○機構 おっしゃるとおりだと思います。ただし、移行性の観点だけから、本剤が推奨できないと注意喚起をすることも、非常に難しいと考えているので、ご指摘の点に関しては製造販売後調査の全例調査で情報収集が必要と考えます。製造販売後調査では、様々な感染症に使用された場合の、安全性と有効性のデータを申請者が収集し、その情報は速やかに、企業のホームページ等で公開される予定としていますので、製造販売後の課題の一つと考えています。

○前崎委員 他の選択肢がないのでしょうがないと思いますが、是非その辺を確認しないと、無効な症例に使用されることが発生すると思います。

○吉田部会長 ありがとうございます。

○清田委員 待ちに待ったお薬で、個人輸入でこそこそ使っていたような薬なのですね。前崎先生の御意見に全く同感するのですが、この適応菌種が非常に分かりづらいです。定義が曖昧だというのがありますが、コリスチンに感性という定義も、まだこれは判断が難しいのではないかと思うのです。

 ですから、やはり表現は使いやすい、でも使いすぎないような表現というか、難しいのですが、逆に多剤耐性緑膿菌がどうなのか、日本の定義、ほかの定義を踏まえて、ある程度の指針をここで出していただいて、あくまでも定義ですから、使いやすい形でゴーサインが出るような感じを望みます。曖昧なのは分かっていますが、ですからあえてこのぐらいの基準で使ってほしいというような、具体性がある基準が好ましいと思います。

○機構 その点に関してはこちらも同じ意見で、明確な基準があることが望ましいとは思います。ただ、先ほどの話にもありましたが、どういうときに効いて、どういうときに効いていないのかというデータも、そこまで明確なデータがない以上、そこの判断をするのは非常に難しいと考えているところです。

○吉田部会長 今の議論を聞いていて不思議に思ったのですが、この薬を承認するかしないかの唯一の資料は、要するに公知だからということです。つまり、世界中で使っているから認めますよという話になっているのに、やれ2系統だ3系統だと揉めるということになると、逆に公知の範囲とは一体何なのかということが疑問に思えてきます。公知だといっても、みんな漠然とは分かっているが、本当はもっと詳しく分かっていなければいけないというような話であれば、公知だと言っておいて内容が漠然としているのは一体何だという話になります。逆に、公知申請なのに、公知であることの内容をややこしくすることに何か根拠があるのかという話になると、そんなに適応があやふやなら、認めることはできないのではないかというような議論にも発展しかねません。ですから、その辺をすっきり整理して、公知だというのであれば、世界中でどういう使われ方をしていて、どういう解釈がなされているというところまでを明らかにする。そうすることで、唯一の根拠になると思うのですが。委員の先生方の個人的な意見はともかくとして。

 ですから、世界一般でどう使われているかということに視点に置いた上で、適応というものを考えた方がいいのではないでしょうか。それしか根拠がないのですから。

○関水委員 先ほどから議論されているように、今のご説明ではMDRP、すなわち多剤耐性緑膿菌に対する新しい薬が出来たという誤解が生じると懸念されます。単に緑膿菌感染症とするのでは問題があるのですか。

○機構 適応として緑膿菌感染症とすべきということでしょうか。

○関水委員 そうです、そのようにできないのですか。このままでは、多剤耐性緑膿菌(MDRP)に効くのだというように錯覚されると思いますよ。それは、意図ではないですよね。MDRPには効かないと予想されますので。

 私から提案させていただきたいのですが、イミペネム、シプロフロキサシン、アミカシンに対して、耐性なものについて、本剤が効く場合があるというデータが示されるべきだと思います。そういうデータがあれば、医師の方も使ってみようかという可能性があると思うのです。

○前崎委員 理論的には、これはイミペネム、アミカシン、シプロフロキサシンに耐性の菌を集めて毎週計ると、コリスチンだけが感受性があるという菌株がほとんどなのです。

○関水委員 では、そのデータを出しているのですね。

○前崎委員 多分この申請書の中に記載されていると思うのですが、日本の菌株でも数は少ないのですが、100株ぐらい対象として、コリスチンのみ感性で他の薬剤は耐性ということは分かっています。

○関水委員 それがあれば、本剤の有効性について、広く受け入れられることとなると思います。

○前崎委員 もちろん感受性の緑膿菌にも有効ですが感性の緑膿菌に使用すると唯一の耐性菌に有効な本薬が耐性になってしまうと、いよいよ使用できる薬剤がなくなるため多剤耐性のみに限定していただきたいということです。

○関水委員 それは、よく分かりました。一般に緑膿菌に対して使われては困るということですね。

○前崎委員 そうです。もちろん感性の緑膿菌に効きますが、そういう適応菌種では困ると思います。

○機構 先ほどの部会長からのお話で、海外でどう使われているのかというお話があったのですが、資料1の1.6の外国における使用状況等という所があります。御覧いただければと思うのですが、英国と米国の効能・効果、用法・用量というのが書かれているのですが、こちらの方では特に「多剤耐性」という表現は用いられていなくて、「コリスチンに感性」という表現で、日本とほとんど同じ書き方をしているという状況です。

○関水委員 イミペネムの耐性菌には効くというデータが実際にあればいいと思うのですが。

○機構 審査報告書の8、9ページに感受性試験のデータを記載しているところです。表6の方を、まずは御覧いただきたいと思います。こちらはコリスチンと、先ほど挙げられたイミペネム、シプロフロキサシン、アミカシン、いずれも感受性のデータを記載しています。イミペネム、シプロフロキサシン、アミカシンに関しては感受性率という所、一番右端の数値ですが、そこは低いのに対して、コリスチンは感受性率が非常に高いというデータがありますので、これら3系統に対して耐性を示すものに関しても、本剤は感受性を示しており、有効性が期待できると考えています。

○関水委員 この表6、私には少し不思議に思われるのですが、イミペネム、シプロフロキサシン、アミカシンについて感受性率が3.3というのはどういうことなのですか。感受性率が3.3というのは、非常に低いということですか。

○機構 低いということです。

○関水委員 分かりました。

○吉田部会長 前崎先生、若干議論が分かりにくいのですが、先生の御意見だと、審査結果に書いてあるように、「ただし、他の抗菌薬に耐性を示した菌株に限る」ということが問題なのですか。

○前崎委員 そうではなくて、3系統の薬剤に同時に耐性を示すことが多剤耐性菌であり、それが少し拡大解釈されて、例えば2系統に耐性を示す菌にも使用できると解釈されると少し問題があると考えます。

○吉田部会長 であれば、何か添付書類で、安易に使ってはいけないとか、3剤以上の耐性のものに対して使うというような指針を書くことは、できるのではないかと思うのですが。

○機構 お手元にある資料の1.8、添付文書()を御覧いただきたいのですが、1ページの左側の中段より少し下、点線で囲ってある効能・効果に関連する使用上の注意の一つ目です。「ベータ-ラクタム系、フルオロキノロン系及びアミノ配糖体系のうち2系統以上の抗菌薬に耐性を示した菌株であり、抗菌活性を示す他剤が使用できない場合にのみ本剤を使用すること」と記載されていますので、一定の使用すべき条件は記載しています。

 前崎委員から御指摘があったのは、2系統以上という点だけで使用されるべきではないのではないかという御指摘だと理解していますが、ここの注意喚起は「2系統以上に耐性を示して、かつ抗菌活性を示す他剤が使用できない場合」というように、更にもう一つ条件を加えていますので、おっしゃるように幅広く使われてしまうという状況にはならないのではないかと思います。

○吉田部会長 ほかになければ、これを使うしかないという言い方なのだろうと思います。前崎委員、いかがでしょうか。それでも、まずいですか。

○前崎委員 現実的に個人輸入で使っているのは、この3系統の薬剤に耐性を示す多剤耐性緑膿菌や多剤耐性アシネトバクターを対象としています。例えば2系統の耐性菌でコリスチンを個人輸入して投与することは行われていません。そのため現時点で3剤耐性菌に使用されている本薬が承認後に2剤耐性菌も適応となった場合にその根拠はどこにあるか疑問があります。どうしても、アナフィラキシーなどの理由から感受性がある他の1系統の薬剤が使用できないことも考えられますが、そのような状況は極めて稀と思います。

 そうすると残りの1系統の薬剤に感受性があれば、その薬剤を投与することになります。しかし、そのような治療は無効でコリスチンの投与が有効というエビデンスはありません。こういう状況で2剤耐性菌も適応菌種として、なぜ多剤耐性菌を適応菌種としないのかというのが理解できません。

○吉田部会長 分かります。

○清田委員 前崎先生のおっしゃることはもっともで、多剤耐性でいいではないかと普通は思うのです。

○吉田部会長 ですから、申請書が多剤耐性になっているのに、結果が変わってるのです。

○前崎委員 そこの変わった過程が。

○吉田部会長 そう、変わった理由がよく分からない。

○清田委員 2剤耐性のパターンは、アミノグリコシド感受性のパターンが一番多いのですが、その中でもいろいろなアミノグリコシドがあって、全部のアミノグリコシドが使えないというパターンはあまりないのですよね。

○前崎委員 そうです。

○清田委員 ですから、実際はその中のアミノグリコシドを使って急場をしのぐという、臨床の場ではよくある話なので、多剤耐性の方が分かりやすいのではないかと、私は思います。誤解もありませんし、今までそう使ってきましたので、それでよろしいかと思うのですが。

○機構 繰り返しになってしまうかもしれないのですが、我々の方もいろいろな議論の中で、この議論はタイガシルのときもやはり同じような議論があったと思うのですが、そのときの議論も踏まえて、やはり定義がはっきりしていないというところで、承認事項の中にその文言を入れるのはなかなか難しいだろうということで、今回はこういう書き方をさせていただいていると。

 「多剤耐性」という表現が使われていることは、我々も重々承知はしているのですが、それが承認事項の中でどういうものですかと言われたときに、少し答えづらいということで、今回のような形にさせていただいているということです。

○吉田部会長 でも、逆に言うと多剤耐性と書いておいて、それを説明してあげればいい、ということでもいいわけで。

○関水委員 私は多剤耐性とすると、MDRPに対する薬が出来たという誤解を生じることを危惧しています。多剤耐性なのだから、これはコリスチンでとにかくやってみようという、そういうことが起きる事は押さえた方がいいのではないかと思います。機構がおっしゃる点について、私は同意いたします。

○吉田部会長 さて、困ったな。割れてしまいました。どうしましょうか。その辺の使用上の注意の書き方を、もう少し明確な形で、安易に使うなということを徹底すればいいわけですよね。要するにリーサルウェポンではないけれど、そういう薬として使いたいと。たとえば、「安易に感受性のあるうちに使ってはいけない」みたいなことを上手に書けるような、使用上の注意なり、ユーザーに回すコーションとかペーパーに書いておくようなことはできないのですか。

○機構 前崎委員にお伺いしたいのですが、「3系統に耐性」と制限した場合、医療現場で本当に投与したいときに使えないという状況は起こり得ないと考えてよろしいですか。現場における幅広い医療機関においては、抗菌薬に対する知識が豊富な先生もいらっしゃるし、そうではない先生も恐らくいらっしゃると思うのです。「3系統に耐性」とすると、本来使用されるべき患者さんに対しても本剤は投与できないという解釈を与えかねないのではないかという懸念もあるのですが、その点はいかがでしょうか。

○前崎委員 これまで個人輸入で使用したときは、専門医のみ本薬を投与してきました。しかし、承認後は誰でも使えるという状況になりますので、必要がない状況で使われることには耐性化の懸念があり、それは危惧しております。

 ただ、現実的にはチゲサイクリンも承認後は専門医しか使っていないという状況を見れば、本薬も同じことと考えますが、チゲサイクリンは緑膿菌に無効ですが、本薬は有効であり、日本で多い多剤耐性緑膿菌や多剤耐性アシネトバクタ-では使用する機会も多くなり、チゲサイクリンに比べてより適正に使用すべき薬剤と考えます。

 そのためにも適正使用をいかに担保するかは、チゲサイクリンより本薬ではより厳格に行う必要があると考えます。

○機構 適正使用の徹底に関しては、申請者にも指示させていただきたいと思います。添付文書の注意喚起に何か新しい文言を加えるとなると、非常にいろいろな御意見があって、どう書けばいいのかというのが難しいところがございます。

○吉田部会長 2を3にすればいいだけではないのですか。

○機構 私どもが何を懸念しているのかを申し上げると、専門協議のときに「2系統以上」にするか「3系統」にするかというのは当然議論になりまして、3系統にしてしまうと制限しすぎていて、これは現場で使えないのではないかという御意見もありました。それを懸念して、ここは単に2系統とするのではなく、2系統に耐性があって、更にほかのもう一つが使えないという条件にすることで、現場では使いやすいのではないかと。

○前崎委員 それは、2系統の耐性菌にも有効であるエビデンスがあればいいですが、現実にはありません。現実的には多剤耐性菌に本薬が投与されている現状から今後そのようなエビデンスが出てこないことからも、2剤耐性菌にも有効ですと言い切ってしまうことはやはり問題ではないかと思います。

○吉田部会長 今までのお話で論点の所在はわかりましたが、また堂々巡りになってしまいましたね。どうしましょうか。

○清田委員 ごちゃごちゃになっていますが、前崎先生のおっしゃっている御意見と噛み合っていないのです。先ほどの委員長の御指摘のように、ラストチョイスだというようなニュアンスの文章を載せて、安易に使うなと。ファーストチョイスでもないです。MDRPだからといって、即コリスチンに行ってもらっても困って、ほかの感受性もよく見て、現実的には他の薬剤も選択肢に考慮しなければならないです。ですから、ファーストチョイスとしないで、ラストチョイスにしてほしいようなニュアンスの文章は、付け加えることはできないのでしょうか。

○審査管理課長 審査管理課の方で今日の御議論を踏まえて、調整をさせていただきたいと思います。感染症学会のガイドライン、この審査報告にも書かれていますが、これは明確に3剤耐性で、MICの値まで書いてあるのですが、それがある前提の中で、専門協議でも学会の専門家の先生にも加わっていただき議論した中で、今の格好になっているというところがあるものですから、審査部としてもなかなか「はい、分かりました」と言って御意見通り変えるというのがやりにくいというところはあるわけです。しかし、この薬を本当に耐性菌に対する切り札として大事に使おうということの、今日の御議論をもう一度踏まえて、専門協議に参加された専門家にも御相談をして、調整をして、今の添付文書の、特に効能・効果に関する使用上の注意の所が、今は2剤プラスその他が使えないという記載ですが、それを3剤で効かないというように変えてもいいかどうかということについて、もう少し調整をさせていただきます。その上で改訂案を前崎先生、清田先生に御覧いただき、部会長と御相談させていただく。その点を調整させていただくという前提で、この薬はやはり早く世に出したいということについてはいかがでしょうか。

○吉田部会長 皆さん、大きく頷いていらっしゃるので、問題はないと思いますが、今日の意見を反映していただいて、最終的なことについては、また後日見せていただくということを条件にして、一応今回の議決に入ればと思いますが、よろしいでしょうか。

 それでは、今の議題4について議決に入りたいと思います。なお、清田委員、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくこととします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので、承認を可として、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは、議題5に移ります。議題5に関して、田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議題5の審議の間、別室で御待機いただくことといたします。

                                 ( 田村委員退室)

○吉田部会長 それでは、議題5について、機構からの概要説明をお願いします。

○機構 議題5、資料No.5、サイラムザ点滴静注液100mg他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。本剤の有効成分であるラムシルマブ(遺伝子組換え)は、ヒト血管内皮増殖因子受容体-2に対する免疫グロブリンG1サブクラスのヒト型モノクローナル抗体であり、ヒト血管内皮増殖因子受容体-2シグナル経路を介した血管新生を阻害し、腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。今般、本剤は、治癒切除不能な進行・再発の胃癌を効能・効果として承認申請されました。本剤は、平成2611月時点において、胃癌に係る効能・効果にて、米国で承認されています。本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料No.11にありますとおり8名の委員です。

 以下、臨床試験成績を中心に承認審査の概要を説明いたします。今般の承認申請では、主な臨床試験として、治癒切除不能な進行・再発の胃癌を対象とした二つの第III相試験、すなわち、本邦を含む国際共同試験として実施されたRAINBOW試験と海外試験として実施されたREGARD試験の成績が提出されました。

 有効性については、審査報告書40ページ上から10行目以降、及び82ページ上から13行目以降を御覧ください。RAINBOW試験において、対照群とされたパクリタキセル群と比較して、本剤とパクリタキセルとの併用投与群で主要評価項目とされた全生存期間の優越性が示されたこと、及びREGARD試験において対照群とされたプラセボ群と比較して、本剤群で主要評価項目とされた全生存期間の優越性が示されたことから、本剤の有効性は示されたと判断いたしました。

 安全性については、本剤の使用において注意すべき有害事象としては、審査報告書42ページ上から7行目以降、及び82ページ下から15行目以降に示しますように、高血圧、タンパク尿、出血、infusion reaction、血栓塞栓症、消化管穿孔、うっ血性心不全、好中球減少症/白血球減少症、可逆性後白質脳症症候群、瘻孔、創傷治癒障害、肝障害が認められております。これらの有害事象については、がん化学療法に十分な知識と経験を持つ医師による有害事象の観察や管理と、休薬・減量・投与中止等の適切な対応により、忍容は可能と判断いたしました。ただし、日本人における検討症例は限られていることから、製造販売後調査の実施が必要と判断しています。以上のような審査の結果、機構は、本剤を「治癒切除不能な進行・再発の胃癌」を効能・効果として、承認することは可能と判断いたしました。

 本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断いたしました。薬事分科会には、報告を予定しています。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。

○関水委員 今41ページのグラフを見ているのですが、要は2か月から10か月の間を除くと、これはこの薬による治癒効果は全くないと考えてよいのですか。

○機構 機構より御説明いたします。今、御提示いただいた点は、日本人集団の結果ですが、本試験の全体集団の結果につきましては、35ページにあります。

○関水委員 いずれにしろ2か月から10か月の間を除くと、全くサバイバルに影響することはないと理解してよろしいのですね。そういうものであるというのは仕方がないのですが、そういうものについて、これは実際に、がんに対処せねばならないという現実があるから仕方がないと思うけれども、こういうものががんの薬の実態なのかということを知って、私は驚くのですが、何か私が誤解しているのでしょうか。

○機構 今、御質問いただいた点は、投与初期のKaplan-Meier曲線が重なっている所でしょうか。

○関水委員 要するに、プラセボと薬剤を投与したときに差が出るという所がありますよね。

○機構 はい。

○関水委員 それは2か月から10か月の間だけであるという認識で、間違っていないのですね。

○機構 本剤若しくはプラセボを投与した後に増悪化を認められた場合には、ほかの薬剤を投与することが可能となっていましたので、そちらの影響もあるかと思いますが、全体としてはそのような結果です。

○吉田部会長 おっしゃる意味は、中膨れと私たちがよく言う現象なのですが、初期の死亡例が減るだけで、長期の生存は変わらないではないかということですね。おっしゃるようにこれはその典型みたいなものですが、この場合は統計学的にぎりぎりで有意差になっています。というのは、黒い方がわずかですが、全生存期間にわたって上になっています。ということで、一応、統計学的にみれば上乗せ効果があることが証明されてしまったと。されてしまったという言い方は変ですが、されたということになります。

 これが一部ででも重なりますと、有意差が出なくなったりしますので、同じ中膨れで有意差が出ないということも、もちろんあります。また、よくこうなる場合として、二次治療の影響も知られています。後になるに従って同じ治療法が選択されてしまうので、ほとんど差が出なくなってしまうのです。今回の場合は非初回治療の患者を対象としているので、後治療の影響はそれほど出てこないかとは思いますが、がんの場合は難治ですので、こういうぎりぎりの有意差でも有効性の判断基準にしています。ことに、本薬の場合はOSで差が出ているので、一応評価はできるのではないかと思います。

○川崎委員 品質についてお伺いしたいのですが、本製品はマウスミエローマ細胞で製造しているということもあり、α-ガラクトースとN-グリコリルノイラミン酸がCQAとして選ばれて、試験及び試験方法が設定されているのですが、これがCQAとして選ばれたのは、臨床データがあったからなのか、それとも一般的に言われているのでCQAとして選んだのかを教えていただきたいと思います。

 規格がそれぞれ%、%と設定されているのですが、これはほかの抗体医薬品と比べると高いのではないかと思いますが、この値と安全性の関係などについて、機構さんではどのような議論があったのかを教えていただきたいと思います。

○機構 すみません、先生、今、御指摘の資料の箇所を示していただけると。

○川崎委員 審査報告書の6ページです。4行目、「重要品質特性として、α-ガラクトース含量、N-グリコリルノイラミン酸含量」と書かれています。承認申請書を拝見いたしますと、糖鎖試験が設定されていまして、%、%と設定されているのですが、これは一般の抗体に比べて高いのではないでしょうか。

○機構 今、回答にお時間を頂いていますが。

○吉田部会長 では、ほかに御質問、御意見はありませんか。

○菊池委員 この前から添付文書にこだわっていて申し訳ないのですが、これは全般的なお話ですが、今日審議した幾つかのものでもそうですが、例えばオルドレブ点滴のときの、先ほどもお話しにありましたが、感染症の治療に十分な知識と経験を持つ医師又はその指導の下で行うとか、あと、ノボサーティーンの所には、「緊急時に十分対応できる医療施設において十分な知識・経験を持つ医師の下で使用すること」、そういった記載がすごく多くて、言葉の記載といいますか、そういうのが出てくる場合と出てこない場合があって、今回の場合も「知識は要します」ということが検討されていながら、ここの添付文書の書き方は少し甘めで使っているような感じに捉えているのですが、これは今回に限ったことではないのですが、経験のある人の下でなければ使えないとか、経験のある施設でなくてはいけないということの定義、これを前のどこかの部会でも聞いたことがあるのですが、経験的にそういう言葉を書くのか。

 例えば、先ほどのコリスチンのときもそうですが、前崎先生とかが悩まれるような症例は感染症の一般的な、私らも専門家とは自負していますが、そこでも難しいわけですよね。体制と言ったときに、MICがどこまでになったか、そういうことになったときに、全然分からない状況であって、そういう限られた施設でまず使ってから国民に使ってもらうと。少し言い方は悪いかもしれませんが、かなり専門の病院で使ってからではないとできない、抗がん剤とかもそうですが。誰も一般のクリニックでやろうとは思っていないと思うのですが、そこら辺の考え方というか、それが全体でどう捉えていいのかと、そういうことを見ると、感受性という言葉一つ取ってもそうですし、この特別の言葉についての、機構といいますか添付文書的な考え方は、どう捉えられていらっしゃるのでしょうか。

○審査管理課長 かなり広汎にわたる話でもありますので、審査管理課の方で少し御説明をさせていただきたいと思います。これにはいろいろ歴史がありまして、主に抗がん剤の領域でこうした記載をせざるを得なくなったという事情があります。我が国において、抗がん剤で新しいものが登場するのが比較的活発になり始めた時代が、大体今から20年ぐらい前でしょうか。そのぐらいの頃から新しい構造、作用機序の非常に強力な抗がん剤が登場するようになりました。塩酸イリノテカンという薬などがよく思い出されるのですが、日本で生まれた新しい抗がん剤です。これが使われるようになりました。あるいは、ほぼ似た時期にタキサンというパクリタキセルやドセタキセルといったものが登場してきて、これが現場に出たときに激しい副作用で患者が亡くなられるというケースが、なかなかコントロールできないことがありまして、この際、こうした薬は「十分な経験のある施設で本当に専門家の先生に使ってください」ということを警告欄に書くようにしたというところが、主に発端になったところかと記憶しています。

 それ以降も特殊な感染症の領域の薬、例えばHIV感染の治療薬、エイズ治療薬、こういったものについても、エイズの治療、診療に対して十分な体制と経験をお持ちの施設でお使いいただくべきものであると。ウイルスの耐性化を防がないといけなければいけないといったこと、あるいは、副作用のコントロールにかなり慣れていないと、患者は苦しむと。こういったことで、薬の特性から見て専門施設で相当注意して使っていただきたいという薬だということが、審査の過程、あるいは治験の段階の様々な成績を見ると懸念されますものの添付文書に、こうした記述を加えてきているのが経緯としてあります。

 そういう意味では、個々の薬ごとに治験で得られたデータ、臨床使用経験、あるいは、そのものが海外で使われている中で起きている事象、こういったことを見ていく中で、こういった注意をして使っていただきたい薬ですと、そういう思いをこのような形で書かせていただいているところです。

○吉田部会長 だからといって菊池先生がおっしゃるように基準Aとか、基準Bとかいうものがあるわけではないのですね。

○審査管理課長 はい、残念ながらそれを一律の基準でこう示せるほど分かりやすい世界ではありませんし、抗がん剤の所が一番そうなのですが、臨床腫瘍医というがんの専門家の臨床の先生という定義をしても、これも今なかなか難しいところがあるので、できればそういう客観的な具体的な基準を示せるものは、なるべくそうしたいとは考えていますが、現状はそういった実情があります。

○吉田部会長 また、第二部会では、抗がん剤、抗菌剤、生物学的製剤という格好で、いろいろ有害事象とか難しい薬剤が多いので、そういう注文が付くケースが多いのだろうと思うのですが、よろしいですか。

○菊池委員 ですから、この薬は難しいという議論がされているのにもかかわらず、添付文書には書かれていないので、あまりそういうふうに専門施設の上の方にうんぬんという文言がないですよね。そういうあたりのが。

○審査管理課長 これは警告欄に書かれている。

○菊池委員 いや、横並びでそれを見てみると、専門施設で緊急性に対応できるとか、いろいろな文言が幾つかあって、定形文書としてあるのですが、それを調べていくと、なぜこれには付いていて、これには付いていないのか。例えば、報告書の82ページで「がん化学療法に十分な知識と経験を持つ医師によって」と書かれていますから、当然そういったことも書かれるべきかとは思うのですが、そういう意味での統一性がいろいろなものにないのではないかと私は思うのです。

○審査管理課長 添付文書の案は、1.8のタブの所に入っていまして、その中の赤枠で囲われている「警告」という所の一番最初が、「緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとで」ということで書かれています。

○菊池委員 ですから、ここら辺のがある程度市販されて年数も増えたら、もう少し拡大していいとか、そういう形で先ほどのコリスチンもそうですが、難しいときには限られた所で使われて、その経験が公表されるとかして、そこから本当に一般に使える形にするという流れにして、添付文書を書きっぱなしで、それっきりで、結局その昔の抗生剤をひもとくと、多剤耐性菌に使うというのは書いてあるのですが、今では使えなくなっている薬もあるわけです。そういうのが放置されているのがあるのでという意味で、申し上げています。

○審査管理課長 はい、おっしゃるとおりだと思います。今までは市販後にそういう課題の何をいつまで、どうやるかということを明確に示してなかったものですから、RMPというリスク管理計画と言っているものは、有効性も含めて市販後にどういう課題を抱えて、どのようなデータを取っていって、それを公表していくのだというグランドプランをきちんと立てて、承認条件として課すようになりましたので、そういう意味ではそこはかなり前進したと思います。

 おっしゃるようなそうやって計画してやったことに基づいて、添付文書が今後も改訂されていくようにということも、新しい薬事法が改正されて、添付文書の届出制が義務化されたことに基づいて、最新の科学的知見を反映して添付文書をアップデートしていくようにということも義務化されましたので、そのような方向に持っていくようになると思います。我々もそのように努力したいと考えています。

○機構 先ほどの川崎委員からの御質問の件ですが、回答の用意ができましたので、担当者から回答させていただきます。

○機構 先ほどの御質問に回答させていただきます。CQAとされた根拠ですが、これにつきましては、モジュール2.3.S.298ページに「本薬及び本剤の重要品質特性」の一覧表がありまして、ここにありますとおり、「免疫原性の原因となる可能性あり」と、ポテンシャルが高いということでCQAとされています。この規格値が比較的高いということにつきましては、私どもの方も懸念をしてしまして、照会で確認をさせていただきました。その結果、臨床で使われて特段の問題がなかったことが回答されています。

 含量につきましては、モジュール2.3.S.491ページ、表2.3.S.4.5.1.7-1に開発後期に製造されたロットの含量の一覧表がありまして、恒常的に管理されているという結果が示されています。

○川崎委員 α-ガラクトースにつきましては、セツキシマブにおいて安全性とのことで問題になったことがあると思います。今回、結合している場所がFc部分ではあるのですが、機構さんの方で安全性との関係でどのような議論がなされたのか教えていただきたいと思ってお聞きしました。

 また、添付文書の「有効成分に関する理化学的知見」には、最近は本質記載が書かれることが多いのですが、この品目に関しては本質記載が書かれていません。「マウスミエローマ細胞で製造した抗体である」と記されれば、細胞と糖鎖の関係を御存知の方にはα-ガラクトースや、N-グリコリルノイラミン酸が含まれる可能性があることがわかると思うのですが、今回は記述がないので、非ヒト型の糖鎖があることがこの添付文書から分かりにくいと思ったのですが、それについてはいかがでしょうか。

○機構 ただ今の御質問について、回答させていただきます。マウスミエローマ細胞との情報につきましては、添付文書の組成、性状の所に記載はされていますので、情報は提供されていると考えています。

○川崎委員 それは確認いたしました。ただ、本質記載を見る場合と不純物を見る場合では目的と違うのではないかと思いまして、本質記載を今回省略された理由をお聞きした次第です。

○機構 すべての抗体製剤について、本質の記載があるわけではありませんので、本品目についても必ず書かなければいけないというものだとは理解しておらず、今回の品目についても現時点では記載しておりません。記載を必ずした方がいいという御意見でしょうか。

○川崎委員 私の懸念は、この添付文書からα-ガラクトースや、N-グリコリルノイラミン酸のような非ヒト型糖鎖が含まれる可能性が想像できないのではないかということです。

○機構 今、御指摘いただいた点につきましては、対応できるように検討させていただきます。

○吉田部会長 では、よろしくお願いします。

○新井部会長代理 知識がないので教えてもらいたいのですが、これは恐らくCHO細胞か何かで作ったリコンビナントですか、培養細胞で作ったリコンビナントだと思うのですが、培地とかを見ていたら大体は理解できるものばかりだったのですが、最近あまり聞いていなかったのですが、□□□□□□□液体濃縮物を加えるのは、昔から結構やっていたのですかね。その辺は知識がなかったもので、これは何だろうと思った。組成を見るとすごくリーズナブルな感じはするのですが、常識なのか、最近ではこういった培養細胞を使って作る場合は割と常識的に使われているのか、そこだけ教えていただきたいと思ったのですが。

○機構 ただ今の御質問に回答させていただきます。御指摘の□□□□□□□ですが、最近の無血清培地には使用されている場合もあります。

○新井部会長代理 これは確か血清は入っていますよね。血清アルブミンはどこかに入っているのではないですか。「血清アルブミンの由来」とか書いてあったと思うのですが。ウシ血清ではなかったですか。

○機構 生産培養工程等では無血清培地が使われており、その成分の一つとして牛血清由来アルブミンが使われています。

○新井部会長代理 なるほど。そういうのは一般的にこれを加えるということですか。

○機構 はい、そのような御理解で結構です。

○新井部会長代理 分かりました。あと、先ほどのリコンビナント製剤ので、なぜ電気泳動しないのだという話があったと思うのですが、今回のこちらはきちんと電気泳動しているのですよね。一番心配される点は、例えば先ほどXIII因子のAサブユニットを、あれは確かバクテリアで作っているのではないかと思うのですが、もしFCSみたいなものが入っているところで作ると、13Aは13Bとコンプレックスを作って、13Bは普通は血清中に大量にあって、それで13Aが入って来ると、コンプレックスを作って、安定化して存在しているというのは、AA、BBというコンプレックスで、もし仮にFCSみたいのを培地に使ってやっていると、ウシのBサブユニットとリコンビナントのヒトのAサブユニットが結合したコンプレックスとして取れてきてしまう可能性も本当はあるわけですよね。

 コンプレックスは、結構ゲル濾過でもHPLCでも均一な集団として出てくることも多いので、なぜ意地を張ってSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動ぐらいはやらないのかなというのは、リコンビナントに関しては今後といいますか、例えば我々がきちんと取ってゲル濾過でもHPLCでも純正だから、では注射してもいいかと言われたら、ちょっと電気泳動してから注射されたいと。要するに、何が本当にあるかというのは、正直に言うと、HPLCとゲル濾過だけでは、本当のことはタンパクの組成は分からないと思うのです。今回こちらはしているのに、あちらはしていないと、何かその辺の基準はどうなっているのかというのを、少し。将来的な観点で全然いいのですが、ゲル濾過で大体サイズがぴったり合うとかいうことからも、不均一性は排除されるケースもあるのです、必ずしもゲル濾過が分子量を反映するわけでもありませんし、その辺は、先ほどの意見なので、今の意見を聞くべきところではないと思うのですが、今回は電気泳動していますよね。

○機構 回答申し上げます。今の点について、コメントをさせていただきます。タンパク質性医薬品に関しては、すべからくこの試験をやらなければいけないという考え方ではなくて、それぞれの医薬品の特性に応じた管理戦略、どのような試験をやるべきかというところを審査の中で判断しています。本品目につきましては、抗体医薬品になりまして、サイズの異なる、例えば分子量の大きい凝集体などの管理がより重要だというところで、サイズ排除とか、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動などの管理が通常のルーチンの試験として入っています。先ほどの品目については、製造工程の規格試験だけではなくて、製造管理も含めて全体の品質の管理を考えているところもありますので、恐らく先ほどの品目でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動が入っていなかったのは、製造の管理も含めて全体の管理としてそのような管理で一定の品質を担保できると判断されたのではないかと考えています。

○新井部会長代理 むしろ答えにならなかった気もするのですが、なぜしないのかと。製造の品質の管理の段階では、恐らくされているのではないかと思うのです。全然しないことはないのではないかとは、途中で思うのですが。

○機構 もちろん開発の過程では、特性解析として解析されていると思います。先ほどの議論にもあったのですが、それはルーチンの出荷試験の中でやるかどうかは、それまでの開発の中で得られた知識を踏まえて、その特性をルーチンで管理すべきかどうかを判断されていますので、タンパク質性医薬品だからこの試験があるべきだと一概に言えないのがなかなか難しいところで、それは個別に審査している状況です。

○関水委員 タンパク質の国際的な生化学における純度検定という問題ですが、医薬品を度外視でと考えれば、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動を記載しないで純度を議論することは、分子量が2万から10万のタンパク質に関してはあり得ないのです。そのときに、いやいや、医薬品だから別に製造で歴史があるから、ヒストリーがあるから、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動はやらなくてもいいのではないかという御意見は、いかがなものかと思うのです。もし、それについて明確な不純物があるのに、旧来の方法では見えなかったものについて事故が起きたときは、これは一般的には責任は逃れられないと思います。

○機構 タンパク製剤の品質規格、管理戦略という点での御質問だと思いますが、審査をする過程とか開発する過程の中で、先生が御指摘のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動も含めて様々な試験をして、実際の品質のキャラクタリゼーションをしていくのは当然です。ただ、一方で申請書に書かれている規格、純度試験は、製造の際の出荷試験として見ていくものであって、ルーチンで、要するにロット間でロットを出荷していくときに検査をするための試験でして、全て基礎的に確認している事実をルーチンの出荷試験の中で毎回やっていくかどうかという観点で規格試験は設定されて来ます。その過程において、先ほどの例と今回の私どもの事例とありますが、それぞれ品質管理、出荷試験をやっていくという中で、ルーチンでやっていく中で最も効率的なものを選んでいくという形で規格試験は設定されていくわけなので、必ずしもサイエンティフィックな部分でベストなものを最終的に品質管理戦略の中で採用していくかという部分については、個別の製品ごとに考えていかざるを得ない問題ということです。こういう形で製品ごとにいろいろな管理などの違いが出てくることだろうと思っています。

 ですから、そこはサイエンティフィックな部分と実際の製造管理という部分で少し議論を切り分けて考えていただいた方がよい課題だと認識しています。もし川崎先生から何か補足があれば。

○川崎委員 タンパク質製剤の場合、不純物には大きく2種類ありまして、抗体医薬品の場合は抗体医薬品が分解するなどしてできたもの、もう一つは、例えばCHO細胞などに由来する不純物の2種類です。恐らく先生方が御懸念されているのは、CHO細胞や培地などに由来する不純度ではないかと思うのですが、そのようなタンパク質につきましては、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動では検出できないほど純度が高くなっていますし、製造工程の段階で、CHO細胞由来タンパク質に対する抗体などを使ったELISAによって純度を確認していますので、そのような製造工程由来不純物に対してSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動のような試験法は設定せず、工程で管理しているというのが現状ではないかと思います。承認申請書等で記載されていますのは、主には目的とするタンパク質が分解したもの、あるいは凝集したものであって、そのようなものになりますとSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動では定量性や特異性の問題から試験ができないこともありまして、イオン交換とかサイズ排除のようなものを使って検出しているのが最近のタンパク質医薬品の品質管理の傾向であろうと思います。

○吉田部会長 本題からずれているところもありますので、本薬に関しては取りあえず今の議論は関係ないということで整理をさせて頂きます。あと、今後、この第二部会では生物学的製剤、抗菌剤、抗がん剤、抗体もと、いろいろ出てきますので、もしタンパク由来の新製品が出たときには、申請者側から、どうしてこういう方法を使ったか、もう少し詳しく聞いていただいて、委員の先生方に納得していただきながら議事を進めていければと思います。ということで、その辺の御指導をよろしくお願いします。

 時間もかなり過ぎていますが、ほかに御意見はありますか。ないようであれば、議決に入りたいと思います。なお、川上委員、清田委員、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいですか。御異議はないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 別室で御待機されている田村委員をお呼びください。

                                 ( 田村委員入室)

○吉田部会長 議題3につきまして、機構からの概要説明をお願いします。

○機構 議題3、資料No.3-1及び3-2、医薬品ソバルディ錠400mgの製造販売承認、及び医薬品コペガス錠200mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否等について、機構より御説明いたします。

 ソバルディ錠の有効成分であるソホスブビルは、C型肝炎ウイルスのNS5Bポリメラーゼを選択的に阻害する抗ウイルス剤であり、ソバルディ錠は、昨年12月時点で38か国で承認されています。コペガス錠の有効成分であるリバビリンは、DNA及びRNAウイルスに対して抗ウイルス活性を示す核酸誘導体であり、本邦では、ペグインターフェロンアルファ-2aとの併用レジメンで、C型慢性肝炎等に対する治療薬として承認されています。

 今般、ジェノタイプ2のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変患者に対する、ソバルディ錠とコペガス錠の2剤併用レジメンとして申請されました。本申請の専門委員としては資料No.11に記載の各委員を指名しました。

 なお、本申請は、2剤併用レジメンの申請ですので、審査報告書を一つにまとめさせていただいています。審査報告書は、資料No.3-1のソバルディ錠の資料を御覧ください。以下、審査内容について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。

 有効性について、審査報告書49ページの表25を御覧ください。この表は、ジェノタイプ2のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変患者を対象とした国内第III相試験における主要評価項目である、投与終了12週後のC型肝炎ウイルスのRNAの持続陰性化率、SVR12率の全体及び部分集団解析結果を示しています。左側「背景因子」の上から1段目「全体」のSVR12率は、未治療患者97.6%、既治療患者94.7%でした。同じ表の左側「背景因子」の上から3段目「肝硬変」の項目の肝硬変ありとした、代償性肝硬変患者のSVR12率は、未治療患者100%、既治療患者85.7%でした。以上より、ジェノタイプ2のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変患者に対するソバルディ錠とコペガス錠の2剤併用レジメンの有効性は期待できると判断しました。

 次に、安全性について、50ページの最下段から51ページにかけて御覧ください。国内第III相試験において、5%以上の発現が認められた有害事象を記載しています。2剤併用レジメンにより鼻咽頭炎、貧血等が認められていますが、これらのうち、貧血以外で重篤な有害事象は認められていません。貧血についてはコペガス錠の減量や休薬に至った患者が認められるものの、全ての患者で2剤併用レジメンの完遂が可能でした。貧血は、コペガス錠の既知の副作用であり、2剤併用レジメンにおいても投与中は血液検査を行い、貧血関連事象の発現時には、コペガス錠の減量、休薬等の適切な対応がなされるのであれば、安全性は許容可能であると判断しました。

 ただし、海外の製造販売後の安全性情報において、ソホスブビルを含む併用レジメンが施行された重度の腎機能障害患者又は腎不全を伴う患者で、重篤な有害事象や死亡例が複数報告されており、これらの患者で認められた有害事象は、併用薬剤による影響が否定できないものの、重度腎機能障害等を有する患者では、ソホスブビルの代謝物の曝露が増加しており、安全性に影響を及ぼす可能性もあることからこれらの患者はリバビリンと同様に、ソホスブビルの投与も禁忌としています。

 以上の審査を踏まえ、機構は、ソバルディ錠及びコペガス錠を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。ソバルディ錠は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、コペガス錠はソバルティ錠と併用されるものであることから、コペガス錠に今回追加される効能・効果等に対する再審査期間も8年としています。ソバルディ錠の原体及び製剤については、毒薬、劇薬、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。なお、薬事分科会には報告を予定しています。

 以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 ありがとうございました、委員の先生方から御質問、御意見をお願いします。菊池先生、何かコメントはございますか。

○菊池委員 今日もしょうもないことを思いついてしまったのですが、ソバルディ錠とコペガス錠の専門委員のリストが重複しているのですが、ソバルディの方にしか載っていない先生がいらっしゃるのはどういうことなのでしょうか。

○機構 コペガス錠は既に本邦で承認されていることから、品質・毒性に関する新たな資料は提出されておらず、品質・毒性の専門委員は指名しておりません。一方、ソバルディ錠は新有効成分含有医薬品ですのでソバルディ錠のみ品質と毒性の専門委員も指名しております。

○菊池委員 そうですか。一緒にやったような感じだから不思議な感じがしたのですがそういうことなのですね。分かったような分からないような。

○吉田部会長 併用療法としての意見をあちこちからいただいたということなのでしょう。

○菊池委員 分かりました、期待できる部分がたくさんあると思いますので。ただし、使われている数がどうしても少ないですから、リスクマネジメントプランをしっかり立てていただいて、恐らく非代償性の人などに使ったら危ないことが起きると思いますので、そこら辺、しっかり厳重に見ていただくことが必要かと思います。

○吉田部会長 市販後調査を1,000例やる予定のようですので、しっかり見ていただければと思います。よろしいでしょうか。

 御意見がないようであれば議決に入りたいと思います。なお田村委員、前崎委員におかれましては利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について承認可、としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので承認可、とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 議題6に移ります、議題6について事務局から概要説明をお願いします。

○事務局 議題6、生物学的製剤基準の一部改正につきまして、事務局より御説明させていただきます。お手元の資料No.6、2枚目を御覧いただきたいと思います。生物学的製剤基準は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第42条第1項に基づき、保健衛生上特別の注意を要する医薬品につき、その製法、性状、品質、貯法等に関し、定めた基準です。具体的には、ワクチン及び血液製剤等の生物学的製剤について、その基準を定めています。

 御覧いただいているページの2、改正の概要の項以降に記載していますけれども、まず1.につきましては、本日既に、議題1と併せて御審議いただいています。つきまして、ここからは2.の医薬品各条「インフルエンザHAワクチンの」一部改正について、御説明いたします。

 1枚めくって裏面を御覧ください。インフルエンザHAワクチンは、いわゆる季節性インフルエンザの予防を効能・効果とする医薬品です。このワクチンの製造に用いるインフルエンザの株につきましては、従来3株が選定されてきておりますが、国際的な動向を踏まえ、平成27年度から、つまり来年度以降は4株を選定することが計画されています。この変更を踏まえ、お手元の資料6、一番最後に添付しております別紙2の新旧対照表にあるとおり、小分製品の規格を変更することが生じましたのでタンパク質含量試験及び力価試験について必要な改正を行うというものです。

 事務局からの説明は以上です、御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

○吉田部会長 ありがとうございました。委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。よろしいでしょうか。

 御意見がないようですので議決に入りたいと思います。本議題について改正を可としてよろしいでしょうか。御異議がないようですので改正を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 それでは報告事項に移ります、報告事項について事務局からの説明をお願いします。

○事務局 資料No.7-1及び7-3を御覧ください。報告事項議題1、医療用医薬品の再審査結果について、御報告いたします。資料7-1は、一般的名称は「モンテルカストナトリウム」、販売名は「シングレア細粒4mg及びキプレス細粒4mg」の再審査に係る資料です。また、資料7-2は、会議冒頭でも申し上げましたが、今回、机上配布は行っておらず抜番となっております。後日、改めて報告させていただきますので、御了承よろしくお願いいたします。

 資料7-3は、一般的名称は「乾燥濃縮人活性化プロテインC」、販売名は「注射用アナクトC2,500単位」の再審査に係る資料です。

こちらの2品目につき、製造販売後の使用成績調査等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号に掲げております承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について、変更の必要はない「カテゴリー1」と判定をしております。

○事務局 続いて報告議題2、医療用医薬品の承認条件について、事務局より御説明します。資料No.8、スプリセル錠20mg及び同錠50mgに係る「承認条件に係る審査報告書」の1ページを御覧ください。ダサチニブ水和物を有効成分とする医薬品スプリセル錠20mg、同錠50mgは、平成21年1月に慢性骨髄性白血病と再発又は難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に係る効能・効果で承認されたものの、承認時までに国内での治験症例が極めて限られていたことから、全症例を対象とした使用成績調査に関する承認条件が付されています。

 今般、承認取得者であるブリストル・マイヤーズ株式会社から当該調査の結果の報告書が提出され、機構において審査されましたので、御報告いたします。2ページの1)「調査結果の概要」を御覧ください。報告された調査は本剤を使用した全症例を対象に目標症例数800例、観察期間最長3年間とされており、登録された905例のうち調査票が回収された898例の調査結果がまとめられています。

 安全性については、3ページの2.「安全性」を御覧ください。安全性解析対象897例のうち、副作用が86%、重篤な副作用が37%に認められました。また、4ページの上の表にお示ししたように、本調査で重点調査項目とされた骨髄抑制等の6項目について、調査結果及び承認審査で検討された主な臨床試験での発現状況がまとめられております。承認取得者は本調査結果と臨床試験の比較において、新たな注意喚起を要すべきリスクは示唆されていないと説明しています。

 続いて、有効性について、5ページ上の「有効性(血液学的効果及び細胞遺伝学的効果)」の表を御覧ください。本調査及び承認審査で検討された主な臨床試験での血液学的完全寛解率及び細胞遺伝学的完全寛解率がまとめられています。承認取得者は、本調査と臨床試験との間で明確な差異は認められておらず、有効性の欠如を示す結果は得られていないと説明しています。

 以上を踏まえ、本剤の安全性及び有効性に係る情報が収集されていること、収集された情報に基づき本剤の適正使用に必要な措置が講じられていることから、本剤の全例調査に係る承認条件の内容につきましては確認できたものと判断し、本剤の承認条件である「製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、全症例を対象に使用成績調査を実施することにより、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な措置を講じること」は対応されたものと判断しております。

○事務局 報告事項は以上です。

○吉田部会長 カテゴリー1の再審査結果が2件、承認条件の解除が1件ということでした。委員の先生方からの御質問がありましたらお願いします。

○菊池委員 大変細かいことを申し上げて申し訳ありません。先ほどの3ページの2.「安全性」の所、「本剤との因果関係が否定できない有害事象(以下、「副作用」)は」となっています。有害事象と副作用はやはり明確に言葉が違うはずなので、ちょっと奇異に思えてしまいました。研修医などには有害事象と副作用は全く違うものだと教えているのですが、このような公文書的なところに書かれると何となくびっくりして聞いていました。いかがですか。

○審査管理課長 有害事象と副作用は確かに違います。ここでは「因果関係が否定できない有害事象」というものを「副作用」と扱います、ということを書かせていただいております。若干分かりにくいかと思うのですが意味はそういうことです。

○菊池委員 当然、意味はそういうように使っているなと思います。ただ、国語として一人歩きした時にはこれがそのように取れないと思いますので、言葉は厳密に使った方がいいかと思います。

○吉田部会長 因果関係があろうとなかろうと有害事象は有害事象でしょう、ということを言いたいのですよね。

○菊池委員 そうです。その中で副作用は別として扱わないといけないと思います。

○審査管理課長 分かりました。その辺、定義関係がこうなっているということを別立てできちんと明示するなり、なるべく誤解がないように今後対応させていただきたいと思います。

○吉田部会長 ほかにございますか。ないようですので報告事項については御確認いただいたものといたします。それでは、その他の事項に移ります。その他の事項についての説明をお願いします。

○事務局 資料9を御覧ください。その他事項1、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請を行うことが適当と判断された適応外薬の事前評価として、パクリタキセルについて御説明いたします。1ページを御覧ください。今回の要望は、日本臨床腫瘍学会より提出されたもので、胃癌に対する1週間間隔の投与に関する用法・用量を追加するという要望です。医療上の必要性につきましては、同じく1ページにございます。適応疾病の重篤性については、胃癌は致死的な疾患であることから、「生命に重大な影響がある疾患」に該当すると判断されました。また、医療上の有用性については、欧米の診療ガイドライン及び教科書にある記載内容、また海外臨床試験成績から、「欧米において標準的療法に位置付けられており、国内外の医療環境の違い等を踏まえても国内において有用性が期待できると考えられる」と判断されました。

 効能・効果については27ページを御覧ください。効能・効果につきましては、既に承認されている胃癌から変更はありません。用法・用量につきましては28ページを御覧ください。成人における用法・用量について、国際共同第III相試験及び国内第III相試験での用法・用量、並びに国内外の教科書、ガイドラインの記載内容等を勘案し、既承認のA法に加えて、新たにE法として「通常、成人にはパクリタキセルとして、1日1回80mg/m2(体表面積)を1時間かけて点滴静注し、週1回投与を3週連続し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとして、投与を繰り返す」と設定することが適切であると判断いたしました。

 なお、要望時の用法・用量は、既承認薬の乳癌の用法・用量である100mg/m2(体表面積)を週1回6週連続投与、2週休薬とするものでしたが、今回御報告いたしました80mg/m2(体表面積)の週1回3週連続投与の追加によって、要望内容が満たされる旨の回答を要望者よりいただいております。

 安全性につきましては、27ページを御覧ください。こちらにありますとおり、国内臨床試験における安全性プロファイルは、胃癌に対する既承認の用法・用量である210mg/m2(体表面積)の3週間間隔投与及び乳癌に対する100mg/m2(体表面積)の週1回投与と比較して明らかな差異は認められなかったことから、国内外の臨床試験成績等を熟知し、がん化学療法に精通した医師により、適切に安全管理されるのであれば、胃癌患者に対する本薬の80mg/m2(体表面積)の1週間間隔投与は忍容可能と判断いたしました。

 以上より、日本人成人胃癌患者におけるパクリタキセルの有効性及び安全性は、医学薬学上公知であると判断いたしました。説明は以上になります。

○吉田部会長 ありがとうございました。適応は既にあって、用法・用量を追加したいということのようです。田村先生、何かコメントはありますか。

○田村委員 よろしいと思います、是非肺癌も認めてほしいくらいです。

 他の固形がんでは、ウィークリーで100mgまで認めていて、胃癌では80mgと、似たような疾患で用量が異なるのはどうなのかなという気がします。例えばドセタキセルの場合には、世界の情勢に合わせて各固形がんとも後から75mgに統一したことがあったと思います。いかがでしょうか。

○吉田部会長 お願いします。

○審査管理課長 用量の設定の問題に関して、かつてウィークリー投与についてタキサン系薬剤について次々と開発をしていた過程で、例えば予想以上に間質性肺炎発生が多く見られるということが場合によってあったりしました。そうしたことが途中で起きたことがあって、今回、100mg80mgと修正することになったことについても、実は検討会の中でも少し曝露レベルが高いという御指摘があり、検討し、要望された学会側に御相談した結果として80mgに用量を下げたというようなことがありました。

 基本はやはり同じになるべく揃えたい、現場における取り間違え等を少なくするためにもできるだけ揃えたいということではあるのですが、どうも忍容性の問題が個々に出てくることが現実にはあります。それを踏まえて設定がされたという経緯があります。そういう意味では、なるべく揃えたいというところが気持としてはあるのですが、実際のデータの中で安全性上の問題が出てくると、少し下げてという話がどうしても起きています。

 もともと3週1回とウィークリーの話、あるいは24時間と3時間という時間の話もちょっとした違いなのですが、副作用発現率がだいぶ違うというスタディの結果があって、それによって用法・用量が変化してきているという経緯があります。その点、いずれは最適なものに収束していくようにと私どもも願っております。そうした途中過程にあるのかなとも思われるところがあり、先生がおっしゃることについて私どもも同じ思いをしているところです。ただ、データがそう簡単にはいかなかったなというのが背景としてはあります。

○吉田部会長 結局、国内のデータとしてWJOGとかが80mgでしてしまったので、それしかエビデンスがない。公知とはいえ、国内的に一応忍容性を考えた時、大きな試験をこれでやっているのでこれでいいだろうということなのでしょうか。

○審査管理課長 実際に臨床試験を実施された先生方から、100mgだとちょっと多いという声がこれには出ていたというように聞いております。それが一番の理由ということで今回80mgにしたということです。

○吉田部会長 では、田村先生がおっしゃったように、臓器によって80になったり70になったり、100になったりするというのは、同じ日本人が使っていてどうなのだろうか、というのは確かに疑問に思います。多分乳癌の100はもて余している可能性もあって、実際は80位で使っているのだろうと思うのですが。その辺も統一を図るよう、日本腫瘍学会に我々の方からの意見があったということを伝えていただければと思います。

○審査管理課長 お伝えします。

○吉田部会長 ほかにございますか。ないようであれば、これも御確認いただいたことといたします。本日の議題は以上です、事務局から何か報告はありますか。

○審査管理課長 前回、2月26日に御審議いただきましたポマリストカプセル、ポマリドミドについて、当日御確認し損なった部分がありました。これはサリドマイドの誘導体の薬、催奇形性の問題がありますので、安全管理を市販後きっちりやらなければいけない。そのため、同系統のお薬でレナリドミドというお薬があって、既にそれはレブメイトという安全管理の手順によって胎児曝露を防ぐことを確実にするようにしています。それを手直しをして、このポマリドミドについても妊娠可能な女性患者にもし使うような場合は、非常に厳重に管理をするというところを中心としたシステムでカバーする。こういうことを予定していることは御説明していたのですが、その後、今週の月曜日に安全対策調査会の方にも改正案をお諮りし、基本的な点は御了解いただいたという話にはなっております。ただ、前回の会議の時にはそこがまだ一応予定ということで御説明しておりました。その点の取扱いについては、部会長に御一任いただくことで確認申し上げておくべきところでした。それが漏れておりましたので、遡ってではございますが、安全管理のやり方については26日の時点では部会長に御一任いただいていたということで御了解いただければと思います。事務局に不手際がありまして申し訳ありません。

○吉田部会長 よろしいでしょうか。本日の議題は以上です、事務局から何か報告があればお願いします。

○事務局 次回の部会につきまして御報告させていただきます。次回の部会は、4月24()、午後3時から開催させていただく予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 本日はこれにて終了させていただきます。長時間、御苦労様でした。

 


(了)

備 考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

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