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2015年4月23日 歯科医療の専門性に関するワーキンググループ(第1回) 議事録

医政局歯科保健課

○日時

平成27年4月23日(木) 10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 専用第12会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議題

1.歯科医療の専門性をとりまく現状について
2.新たな専門医に関する取組について(医師)
3.その他

○議事

○和田歯科保健課長補佐 

それでは定刻になりましたので、ただいまより歯科医師の資質向上等に関する検討会 歯科医療の専門性に関するワーキンググループ ( 1 ) を開催いたします。構成員の皆様におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。

 本日は第 1 回目ですので、はじめに本ワーキンググループの構成員を御紹介いたします。なお、本ワーキンググループの座長は、開催要綱の第 4 条第 3 項により、「検討会の座長は、作業部会の座長をあらかじめ指名する」とされており、本年 1 16 日の検討会において、江藤座長から九州歯科大学の西原構成員をワーキンググループの座長に御指名をいただきましたので、西原構成員に座長をお願いしております。よろしくお願いいたします。

 以降、名簿順で御紹介させていただきます。医療法人伊東会伊東歯科口腔病院理事長の伊東構成員、日本歯科医学会の総務理事の井上構成員、日本歯科医学会の副会長の今井構成員、医療法人社団健功会理事長の鴨志田構成員、日本医師会常任理事の小森構成員、高梨滋雄法律事務所の高梨構成員、日本歯科医師会副会長の富野構成員、読売新聞東京本社取締役の南構成員、日本歯科医師会常務理事の中島構成員、 NPO 法人ささえあい医療人権センター COML 理事長の山口構成員、なお、本日はオブザーバーとして、文部科学省高等教育局医学教育課の平子企画官に御参加いただいております。

 続いて、事務局の紹介です。歯科保健課長の鳥山です。医事課臨床研修推進室長の田村です。歯科保健課長補佐の川畑です。歯科口腔保健専門官の大島です。歯科医師臨床研修専門官の高田です。最後に、私は歯科保健課の和田と申します。よろしくお願いいたします。それでは、事務局を代表して、鳥山歯科保健課長より御挨拶を申し上げます。

 

○鳥山歯科保健課長 

改めまして、医政局歯科保健課長の鳥山でございます。本日は、委員の皆様方には、御多忙にもかかわらず、御出席いただきましたことをお礼申し上げます。また、平素から何かと、私ども、厚生労働行政に御尽力いただいていることを改めてお礼申し上げます。

 さて、本年 1 16 日に第 1 回歯科医師の資質向上等に関する検討会を開催し、「歯科医師の需給問題」、「女性歯科医師」、更に「歯科医療の専門性」の 3 点について、それぞれワーキンググループを設置することとなり、既に、需給及び女性歯科医師のワーキンググループについては、第 1 回目を開催したところです。最後ですが、本日の専門性のワーキングの開催に至った次第です。

 このワーキンググループは、歯科医療の専門性としておりますが、内容的には大きく 2 つのことが含まれております。 1 つ目は、歯科医療がそれぞれの学会により、専門が細分化され、専門医や認定医の制度を独自に設けられておりますが、このことについて、どうお考えいただくかということ。

 もう 1 つは、医療安全対策や適切な医療広告など、患者が安心・安全な歯科医療を受けることができるよう、全ての歯科医師に求められる内容について、どう考えるかということです。いずれにしても、非常に難しい課題ですが、委員の皆様方におかれましては、忌憚のない御発言をお願いをして、冒頭、私の挨拶とさせていただきます。本日は、よろしくお願いいたします。

 

○和田歯科保健課長補佐 

なお、今回のワーキンググループについては、公開となっておりますが、カメラ撮りはここまでとさせていただきます。

 続いて、資料の確認です。お手元に議事次第、座席表、構成員名簿のほか、資料 1 4 、また参考資料 1 5 、なお、参考資料は、青いファイルに綴っているものです。資料の乱丁、落丁がありましたらお知らせください。それでは、以降の議事運営について、西原座長、よろしくお願いいたします。

 

○西原座長 

冒頭で紹介いただいた九州歯科大学の理事長、学長を務めております西原でございます。定めに従いまして、このワーキンググループの座長を務めさせていただきます。この問題、歯科医師教育から始まって、そして、研修医、さらには、生涯研修という流れのなかで、非常に大事な意味合いを持ったワーキンググループというように十分理解しております。そのときに、いろいろな構成員のメンバーの先生方から、やはり、国民目線で納得のいく結論を導き出せるような提言をするという方向で、取りまとめていきたいと思っておりますので、積極的な御意見、御指導を賜ればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、議事に移ります。先ほど案内がありましたが、事務局から資料の準備をしていただいていますので、まず、そこから始めたいと思います。資料 1 の説明及び 2 3 まででよろしいでしょうか。では、お願いします。

 

○高田歯科医師臨床研修専門官 

資料 1 3 の説明をいたします。まず、資料 1 は、本ワーキンググループの概要について示しております。本ワーキンググループの目的は記載のとおりですが、「医師の専門医」については、平成 25 4 月に専門医の在り方に関する検討会、この報告書が取りまとめられたところです。平成 29 年度を目途として、取組を進められているというように伺っております。また、歯科においては、昨今の「国民が求める歯科医療ニーズの多様化」を踏まえて「歯科医療の専門性」について議論をしたいということで考えております。

 想定される主な検討内容ですが、 1 点目は、安心・安全な歯科医療を提供するために、全ての歯科医師に対して、必要とされる歯科医療における専門性とは何かということ。その上で、 2 点目は、高度化、専門化された専門領域における専門医にどのようなものが求められるかということ。

 次に、ワーキンググループの位置付けです。歯科医師の資質向上等に関する検討会、この下部組織として設置されたものです。

 そしては、スケジュールです。平成 27 4 23 日、本日、第 1 回目を迎えておりますが、以後、 3 か月に 1 回程度で開催を進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 1枚めくっていただいて、第 1 回の「歯科医師の資質向上等に関する検討会」で提供させていただいている資料です。検討会全体で、何を議論をするかということを 1 枚にまとめたものです。

 この検討会がもたれた背景としては、1点目として、小児のう蝕の罹患率の低下、また、 8020 達成者の増加などによって、歯科全体における疾病構造の変化が見られているということで、今後、歯科医療を提供していく上で、どのような技術、知識が求められるかということ。

2 点目として、歯科口腔保健の推進に関する法律、これが公布・施行されておりまして、これを踏まえて、どのような歯科医療、歯科保健を提供していくかということ。

3 点目は、歯科医療機関を受診する患者像については、高齢化や多様化しておりまして、例えば高齢化していると、基礎疾患を有する患者さんが増えておりまして、歯科医療提供の場やその在り方、又はそれを提供できる歯科医師の資質の向上が求められているということです。

 下の絵を見ていただくと、今、背景としてお示しさせていただいたものは、主に歯科医療に関することだったと思いますが、その他、国民が求める歯科医療ニーズの変化として、国民は、安心で安全な医療を選びたいという時代になってきているということ。その背景として、歯科医師そのものが増えているということ。その中でも、特に女性の歯科医師が増えているということ。などが挙げられます。これに基づきまして、「歯科医師の需給に関すること」、「女性歯科医師に関すること」、「歯科医療の専門性に関すること」という、 3 つのワーキンググループを設置することとなりました。

 それでは、各論に入ります。資料 2 を御覧ください。本日の第 1 回目の歯科医療の専門性に関するワーキンググループの論点として、事務局でお示しをさせていただいているものです。

1 つ目の論点として、「国民が求める歯科医療の多様化に対応しつつ、安全・安心な歯科医療を提供するために、全ての歯科医師に求められる要件についてどのように考えるか」ということ。例えば、法律で定められたものというのは臨床研修までですので、その臨床研修修了後も生涯を通じて自己研鑽を積むことによって、十分な知識や経験を持ち続けることができ、それによって初めて患者に適切な安全な医療を提供できるのではないかという論点です。

2 つ目の論点は、「その手段としてどのようなものが考えられるか」ということです。1点目として、歯科医療の中で、既に位置付けられている専門医については、各学会が認定していただいている専門医というものがたくさんありまして、それについては、類似する名称又は近似、重複する専門性が混在しており、どれがどのようなものなのかというのが、国民から見ても難しいですが、同様に、歯科医師にとっても難しい難解なものではないのか。複雑化しているのではないかということ。

2 点目は、その専門医の養成・認定・更新について、各学会において、認定基準が統一されておらず、歯科医師の質の担保の観点から、技術能力評価、又は経験症例数などをこの養成・認定・更新の基準として入れてはどうかということ。

3 点目は、これは医師とは違って、歯科医師特有の問題になってこようかと思います。約 9 割の歯科医師は歯科診療所で働いていることから、診療所等で働きながら、自己研鑽を積む研修方法というものを検討してみてはどうかということ。

4 点目は、これも歯科医師に特化されている問題かもしれません。専門医を取得しても、当該専門領域に専ら従事するのではなく、一般歯科診療に従事する歯科医師が多いのではないかということ。

 最後に、5点目として、歯科医師にとって有用な専門医制度について、歯科医師同士のつながりの中で、どのような専門性が必要とされているかということ。

 3つめの論点は、専門性についての情報の在り方です。 1 点目は、広告可能な専門性。通常、広告可能な専門医と呼ばれるものですが、歯科には 5 つあります。これについて歯科医療の専門性の観点からどのように考えるかということ。 2 点目は、広告できる診療科名。通常、標榜科と言われるものです。歯科、小児歯科、矯正歯科、歯科口腔外科基本的には 4 つあります。これについて歯科医療の専門性の観点からどのように考えるかということ。事務局からは第 1 回目の論点としてこのようなものを挙げさせていただいております。

 続いて、資料 3 です。歯科医療の専門性を取り巻く現状については、資料 2 の論点を整理する際の議論のたたきとして使っていただけたらと思います。まず、 2 枚目のスライドで、医療施設数の年次推移として、歯科診療所の施設数、歯科診療所については、えんじ色の折れ線グラフです。平成 2 年に 5 2,216 あったものが、平成 22 年には 6 8,384 と増加を続けております。近年、この伸びについては鈍化している状況です。

3 ページの歯科医師数については、平成 24 年の医師・歯科医師・薬剤師調査によると、歯科医師の総数は 10 2,551 名、そのうち医療施設で従事する人は、 9 9,659 名、全体の 97 %の方が臨床現場などで働いてらっしゃるということです。

 人口 10 万単位の歯科医師は、昭和 45 年に 35.2 人だったものが、今現在は、 80.4 人ということで、2倍以上と大きく増加しております。医療施設に従事する歯科医師数の伸びについても、医療施設数と同様に鈍化しています。

 また、この鈍化している理由の 1 つとして、 4 ページの歯科医師の需給問題への対応が挙げられます。平成 18 8 31 日に文部科学大臣と厚生労働大臣が、確認書を取り交わしております。その内容として、文部科学省では、各大学に対して、更に一層の定員減を要請する。厚生労働大臣に対しては、歯科医師国家試験の合格基準を引き上げるということで、対応を取っているところです。

 厚生労働省の対応の枠の中に、平成 26 年の歯科医師国家試験が最新のデータとなっておりますが、今、現に行われているものの最新は、平成 27 年第 108 回の歯科医師国家試験です。こちらの全体の合格率は、 63.83 %、新卒は 73 %となっております。

5 ページです。先ほども申し上げましたが、女性歯科医師が増えているということで、女性歯科医師数の推移を示しております。これは年齢階級別ではなく、歯科医師数のうち、女性歯科医師がどれぐらいいるかを示したものです。全年齢階級において示したところ、 21.7 %が、今現在、女性です。

6 ページは、年齢階級別の歯科医師数の推移です。歯科医師全体のものを、これは 10 年ごとの医師・歯科医師・薬剤師調査で調べておりますので、枠に従って進んでいただくと、その年の推移が分かるグラフになっています。これを見ていただくと、 49 歳以下の年齢階級で、歯科医師の数が減っていくという形の推移になっています。

7 ページは、年齢階級別の男女別歯科医師の割合の推移です。こちらを見ていただくと、男女の推移が分かりやすく示されております。平成 24 年の 29 歳以下の所を見ていただくと、若い歯科医師の年齢階級においては、 42.1 %が女性であるということです。

8 ページは、歯科医師のキャリアパスについてということでイメージ図を示しております。既に皆様御承知いただいているかと思いますので、共用試験を経て、臨床実習を経て、国家試験を受けて、歯科医籍登録後に、 1 年以上の臨床研修を行う、これが全ての歯科医師に課せられているものですが、臨床研修が終わった後というのは、多様な歯科医師としてのキャリアパスが想定されるわけです。例えば、専門医取得を目指そうと思うならば、多くの場合、歯学部附属病院、若しくは大学院に残って目指す、又は、専修生という形で、お金を支払って大学病院又は大学に籍を置いて、専門医取得を目指すということです。

 過去の歯科医師が少なかった時代と比べると、 1 年目からできるアルバイトというものもかなり減っている、又はその診療所を開業するにおいても、これまでの開業の在り方というものでは難しいという指摘もされています。

9 ページは、歯科医師の就業場所です。年齢が高くなるにつれて、相対的に管理・開設の割合が多くなっているものですが、ターニングポイントとしては、 35 歳から 39 歳及び 40 歳から 44 歳の枠です。ここで、歯科診療所を開設される方が増えるという年齢階級となっています。

下の 10 ページを見ていただくと、これは男女別に勤務先の歯科医師の割合を示したものになります。例えば男性では、 35 歳から 40 歳ぐらいで勤務する歯科医師が減っていき、代わりに開業する歯科医師が増えていくというグラフです。そして、 65 歳から 69 歳以降は、診療所に勤務する人が増えてくるということです。

 女性については、おおよそ生涯を通じて、半数が管理、半数が勤務となっています。

 なお、勤務をしている人の内訳や状況について、例えば男性では、 65 歳以降に増えていくというのは、御子息に歯科診療所を譲られて自分が勤務に移ったのだろうか、又は女性で勤務している歯科医師は、例えば御主人なり御家族なりが経営される所に就職されただろうか、又はご自身で就職活動をされていたのだろうか、などの状況は、現時点では分かっていません。

 次ページは、勤務先別の歯科医師の割合です。先ほど資料2の論点でも医師と歯科医師については、バックグラウンドが少し違うということを説明させていただきましたが、医師のほうは、 65.1 %の方が病院又は医育機関で勤務していて、その残りが診療所管理・開設、又は勤務をされている方です。これに対して、歯科医師については、約1割の方が病院で勤務されていて、残りの約 9 割の方は、診療所で管理又は勤務していらっしゃるということです。ですから、専門医制度を考えるときに、全ての歯科医師に求める専門性というのは、この 9 割の歯科医師について必ず押さえなければならないということが言えるかと思います。

14 ページから、歯科医療の需要について説明いたします。小児のむし歯の状況ですが、 3 歳児の 1 人平均むし歯の本数は右肩下がりに減っています。むし歯のある人も 20 %以下ということで、子どものむし歯はかなり減っていることを示しています。

15 ページは、歯周病の罹患率です。一般的に歯周病は、深さ 4mm 以上の病的な歯周ポケットがあることをいいますが、赤い点線で囲んだ所が増加しています。歯が無ければ、歯周ポケットが無いため歯周病にもならない訳で、歯の残った数が多くなっているからこそ歯周病の数が増えているとみることができます。

16 ページは、 20 歯以上の歯を有する者の割合の推移です。平成元年に 8020 運動が提唱されて以来、幼い頃から歯を残すような生活習慣を身に付けることによって、 80 歳になっても 20 本以上の歯を有するように努力しようという運動が行われてきたところですが、平成 23 年の歯科疾患実態調査によると、 8020 の達成者は、 40 %を超えております。

17 ページは、歯科口腔保健の推進に関する法律と基本的事項についてお示ししております。平成 23 8 月に、途切れなく歯科保健に対する施策、これを取組みやすくするようにということで、歯科口腔保健の推進に関する法律が公布・施行されております。こちらは、口腔の健康というのは、国民が健康で質の高い生活を営む上で、つまり、全身的にも非常に有効であり、重要であるということを提唱されたということによりますが、この法律で注目すべきは、責務のです。

 国、地方団体、歯科医師、事業実施者に加えて、国民の義務というものも示しています。

18 ページは、歯科口腔保健の推進に関する法律において、設定されている目標値を示しております。

 さて、 19 ページでは、日本の人口の推移を示しております。日本の人口は近年、横這いであり、今後、人口減少の局面を迎えます。ですから、今後は歯科医師についても全力でその労働力を有効活用するというような視点も必要かと思います。

20 ページは、歯科診療所を受診する推計患者の年次推移です。一番右のグラフを見ていただくと、歯科診療所の受診患者は 3 人に 1 人が 65 歳以上になっています。そうなると、歯科診療所を受診する人も高齢者が増えるわけですが、受診できない方も今後増えてきます。

21 ページは、歯科訪問診療を実施している歯科診療所の割合を示しております。歯科訪問診療に対するニーズは、近年、著しく増加しており、これに対応できる歯科医院も増えてきているということです。

22 枚目を御覧ください。歯科医療サービスの提供体制の変化と今後の展望ということで、昔、今、未来ということで、 3 つ並べています。 1980 年代ですが、その前からむし歯がものすごく多かったとか、歯周病がものすごく多かかったということで、歯科診療所は痛い歯の治療をするために通うというものでして、 1 1 つの治療はその診療所で完結するものでした。現在は、 1 つの歯科診療所では手に負えないような症例、又はほかの医療機関や診療所と連携を取りながら進めないと難しい症例というのが疾病構造の変化の上で増えてきており、近年では、診診連携、病診連携、医科歯科連携などと、多職種と連携するというようなものも増えてきたものです。

 将来のイメージですが、今後、労働力であるとか、社会の対応できるもの、人、お金など、限られた資源の中で、地域全体でバックアップしていこうと。身近なところで全てのサービスを受けられるように、全てのサービスがその地域を取り巻くように設定されるべきではないかといわれております。

23 ページは、歯科医療の需要の将来予測、イメージです。こちらの下に、高齢者型という赤い枠で囲っているものですが、高齢者の方であれば、自立度が低かったり、基礎疾患をお持ちで、ほかのお薬を飲んでいらっしゃったり、又は血圧が高かったりと、配慮すべきことが増えてまいります。治療そのものの内容は同じであっても、治療全体の難度が高くなるというわけです。これまでであれば、う蝕治療に対してむし歯の治療をして、また、それが酷くなれば、根っこの治療をして、クラウンなどのかぶせ物などをするというような、歯の形を治すという、歯の修復をするという治療が中心できたが、高齢化がさらに進めば、今後、噛む、飲み込むなどの口腔機能を回復させるというような治療も必要になってくるのではないかということを示したものです。

24 ページは、これは国民に対して、歯科医師会が取ったアンケートを引用させていただいております。歯科医師に求めていることとして、優れた治療技術、費用の負担、又は痛くない治療、分かりやすい説明といったことが挙げられています。

25 ページは、全ての歯科医師に求められている要件の一例として挙げさせていただいております。医療法で全ての医療機関に対する義務として規定されています。管理者が確保すべき医療安全の体制として、診療所であれば、医療安全管理のための指針、職員研修、医療事故を報告・再発防止するための制度などが求められています。

27 ページ、歯科医療の専門性にかかる情報については、まずは歯科治療がどれぐらい専門領域に分かれているかというものの一例をお示ししております。むし歯の治療をしている例ですが、むし歯の部分を器具で削って除去して、レジンという修復材料で、削った部分を補うことで、歯の機能を元どおりにしているということです。

 また、次の右側ですが、歯内療法と書いてありますが、歯の神経の治療、いわゆる歯の根っこの治療をしている例です。次に歯周治療と呼ばれているのは、歯周病などの治療をしている例です。特に口腔外科であれば、例として抜歯を挙げていますが、その他、口腔がんの治療等も挙げられるかと思います。

29 ページは、その他でこれは、先ほどのものは技術内容別に分けたものですが、対象者によっても領域が分かれます。例えば、訪問診療をしている例として、障害者に対する治療例を示しております。

31 ページは、ここから専門医に特有の話が始まります。広告可能な診療科名ということで、いわゆる標榜科については、医療法で規定されておりまして、医療法施行令第 3 2 項では、歯科医業については、イ、歯科、ロ、小児、矯正、口腔外科があり、その組合せについても使うことができるとされております。また、補足ですが、歯科医師1人当たり、標榜できる診療科は 2 つまでという規定もあります。

 では、実際、その標榜科名の中で、主にどのような業務に従事しているかを示したものです。これは、 2 年に 1 度行われている医師・歯科医師・薬剤師調査の結果です。従事している主な診療科名を 1 つだけ示してください、というアンケートを取ったものです。歯科医師総数、約 10 万人ですけれども、そのうち約 8 7,000 人が、一般歯科診療に従事していると回答しています。

33 ページ、広告が可能な医師等の専門性に関する資格名等については、歯科領域のものを示しています。これは、いわゆる広告できる専門医ということですが、歯科においては、口腔外科、歯周病、麻酔、小児、放射線の 5 領域の専門医が求められています。参考までに、医師については 55 、薬剤師については 1 、看護については 27 の専門医が広告できる専門医として認められています。

 次に、広告できる専門医について、歯科医師数や男女比について、示しております。歯科医師数では、口腔外科専門医が最も多く、男女比では小児歯科専門医では女性の占める割合が比較的高くなっています。

 35枚目に、広告できる専門医についての規定を示しております。広告が可能な医師等の専門性については、医療広告ガイドラインで示しているもので、として、当該医療機関に常時従事する医師等の医療従事者であれば、また、非常勤の医療従事者であっても常勤と誤認されないよう、その旨を明記すれば、専門性の資格を広告可能とされています。ここで広告していい専門医が先ほどの 5 つということで示されています。

 次に、どういう専門医であれば広告可能とされているかというと、平成 19 年の厚生労働省告示第 108 号で示された外形基準を満たした団体であり、かつ医学医術に関する団体をはじめとする当該医療従事者の専門性に関する職種に関する学術団体から意見を聴取するし、適当とみなされたものです。例えば、歯科の関係の専門医が上がってきますと、日本歯科医師会、日本歯科医学会又は日本医師会、日本医学会、その領域にもよりますが、この 4 団体などに意見をお伺いするということになっております。

 最後のページは、日本歯科医学会に所属する専門分科会、認定分科会の学会を示しています。細分化された領域の中で、その学問を究めるととともに、歯科医師の免許を取った後、自己研鑽を積む場にもなっています。

 今年、 4 1 日に、もう 1 つ認定分科会として承認されたものがあり、現在、 43 の日本歯科医学会、専門分科会、認定分科会の学会が歯科にはあります。

 補足すると、下の※にありますが、大部分が学会独自に認定制度を持っており、広告できる専門医のほかにも、ここにある学会で、幾つもの専門医制度が設立されています。実際のところ、日本歯科医学会に認定されていない学会、専門医が多数存在し、厚労省のほうでも把握しきれていないということを申し上げて、私からの説明は、以上とさせていただきます。

 

○西原座長 

ありがとうございます。今、高田専門官から資料の説明をしていただいたところですけれど、冒頭、私が少し区分けして御案内したほうがよかったかなと、少し反省をしております。と申しますのは、この構成員の中で親会議に当たる「歯科医師の資質向上等に関する検討会」の構成員の方もいらっしゃいますが、それ以外の方が、私が知る限りで 3 名ほど、今日出席されているということもあり、今、高田専門官から説明のあった資料 1 は親会議の基本的な考え方ですよと、御案内すればよかったかなと思っております。

 資料 2 は、 1 16 日以降、私と事務局で少し議論をしながら、このワーキンググループの論点として挙げさせてもらいますということを説明させていただきました。

 残りのホチキス止めの資料 3 に関しましては、これは先ほど申し上げた親会議では、もう既に情報提供をさせていただいたところでございますし、今日の正に議論になるところは、スライドの 31 36 になってくるかとは思っております。ただ、このスライドを具体的に 31 36 を見ていただきますと、専門性、歯科医師の専門性そのもの、あるいは標榜科というものに資料が限定されておりまして、まず、今日のこのワーキンググループでは、それを念頭には置くものの、少し広い視点でこれまでの専門性にかかる議論を整理しながら、これから先、国民にとって、あるいは患者にとってでしょうか、あるいは将来歯科医業を務める歯学生にとってでしょうか、そのような視点で、広く御意見を賜ればと、冒頭、私の御挨拶の中にも申し上げたところにもつながってくると御理解していただければと思っております。

 さて、もう 1 つ、本日、資料 4 として「新たな専門医に関する仕組みについて」というのを御用意させていただいております。これは、この検討会でも親会議でも議論になっている医科の先行事例を、少し御案内していただくという意味で、医事課臨床研修推進室の田村室長にお越しいただいておりますので、説明をお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。

 

○田村医師臨床研修推進室長 

はい、かしこまりました。それでは医科のほうで、今、専門医の仕組みが変わりつつあるところでございますので、その検討に至った経緯から現状について、私から説明をさせていただければと思います。

 資料 4 を御覧ください。これは、平成 23 10 月から厚生労働省で立ち上げました専門医の在り方に関する検討会の報告書の概要でございます。平成 23 10 月から検討いたしまして、平成 25 4 月に報告書が出されました。その検討の目的ですけれど、最初の視点の所にありますように、専門医の質を高めて良質な医療を提供していくと、そのようなことを目的として、この会が設けられました。その背景ですけれど、その下の現状の所にありますように、まず 1 つ目といたしまして、専門医については各学会が独自に基準を作って認定をしていくという形を取ったわけですけれど、特に平成 14 年から厚生労働省の告示によって、広告が可能になったということもありまして、以降、どんどん専門医が増えていくという状況にありました。その結果、認定基準はそれぞれの学会でばらばらですし、専門医の質についても非常に差が出てきていて、その質の担保に懸念があったというところがあります。

 その結果といたしまして、 2 つ目に書いてありますように、実際のその専門医それぞれの能力についても、医師、国民の捉え方についても、非常に大きなギャップがあると、患者の受診行動にも有益な制度になっていないのではないかという懸念がありまして、この会で検討を行いました。

 そして新たな専門医については、どういう仕組みにしていくかという点ですけれど、左真ん中辺りのマル 1 です。認定を各学会で独自にやっていきますと、やはりばらばらになってしまうので、第三者機関を設立いたしまして、専門医と認定養成プログラム、このような評価・認定を統一の基準で行っていくという形にしていこう、という形で動いています。その際には、その下にありますように、専門医の養成・認定・更新に当たりましては、必ず経験症例数等活動実績を要件としていこうと、そのような形で質を担保していこうと考えております。

 それからこの報告書の 1 つの目玉なのですけれど、マル 3 番です。医科の所でも領域別の専門分化の傾向がどうしても強いと、どんどん分化していった専門医が増えていくという傾向にありますので、新たに総合診療といったもの、その専門性を評価して、基本領域の専門医として新たに加えていこうと、このようなことも述べられています。

 そして、これらの基準については、全て第三者機関で上の真中にありますけれど、プロフェッショナルオートノミー、専門家の自律性に基づいて基準等を作っていこうという形で動いています。

 それからマル 4 番ですが、右側の所、医科のほうでは、今、まだ地方で医師不足などということが大きく問題になっておりますので、新たな仕組みを作っていくのが、そして質の向上を目指していくことはいいことなのだけれど、地域医療の安定的な確保に影響があってはいけないだろうということが言われておりますので、そこの配慮といたしましては、大学病院と基幹病院だけでこのような専門医を集中して養成していくということではなくて、ちゃんと地域の協力病院と病院群を組んで、養成をしていくと、そのような構成にしていこうという配慮がなされています。

 新たな専門医の養成ですが、今後、平成 29 年度を目安に養成を開始していこうという形になっております。ここにありますように、基本領域では 3 年間を基本としていこうと思っておりまして、そうすると平成 29 年から養成を開始していって、初めて新たな仕組みでの専門医が認定されていくのは、平成 32 年度以降という形で流れています。

 この報告書に基づいて現在どのように動いているかということは、もう少し詳しく見ていきたいと思います。 2 ページです。報告書に基づいて、昨年の 5 7 日に一般社団法人日本専門医機構が設立されております。社員についてはこれまで学会だけでやっていた所に、日本医学会連合、日本医師会、全国医学部長病院長会議、それから四病院団体、それに 18 の基本領域の代表者が入りまして専門医機構を構成しています。

 その下に機構の構成図が載っていますが、一番核となる部門は、やはり下の所にあります専門医の認定・更新部門の関係の委員会、それから専門研修プログラム、研修施設の評価・認定部門の委員会です。ここにありますように、更に下の所に基本領域の委員会とサブスペシャリティの委員会と 2 つに分かれております。これはどういうことかといいますと、基本領域とサブスペシャリティという、専門医を 2 段階に分類して、今後養成を行っていこうということです。

 この点について、次の 3 ページを御覧いただければと思います。医科の初期臨床研修を修了後に、まず専門医といたしましては、基本領域のいずれかを選んで取っていただこうと考えております。一番下の所にありますように、これまでは内科から臨床検査まで 18 の領域があったのですが、これに総合診療を加えて計 19 、このいずれか 1 つを取得するということを基本としていきましょうと。その上で、更に細かいサブスペシャリティの専門を取っていくという 2 段階制を取っていこうということです。サブスペシャリティは幾つかの例示しかありませんが、現在、 29 まで認められています。基本領域については、基本的に 1 つを取ってもらうという形を考えておりますが、サブスペシャリティについては、複数取っていくという形もあるだろうという形で動いています。

 昨年 5 月に立ち上がって以降の機構の動きですが、 4 ページです。領域ごとにそれぞれの基準、やはりそれぞれの診療領域ごとに特徴がありますので、統一化していくといっても若干の違いは出てくるという所がありますが、やはり共通するようなコアな部分の指針を、昨年の 7 月に専門医機構で作って出しています。ここは目次だけを掲載させていただいているのですが、1の 2 番目、専門医制度の概要という所では、基本領域とサブスペシャリティ、 2 段階制を取っていこうと、基本領域の研修では 3 年間を基本とすると、そのようなことが書かれています。

 また、 2 番目の専門医の育成という所では、 3 に専門研修のプログラムと書いてあります。これまでの専門医は学会によってはプログラム制を取っておりませんで、例えば 10 年間の間に 3 年間ぐらいその診療領域にいたら、経験を積んだということで試験を受けてもいいよということがありましたけれど、今度はきちんと 3 年間でプログラムを作ると、到達目標、経験目標をそれぞれの領域ごとに作った上で、そのプログラムを取ったら、それを修了した人に対して試験を行っていくと、そのような仕組みにしていこうということが述べられています。

3 番目の専門医の認定と更新の所では、そのような認定の際には、評価に当たって知識の評価では必ず試験をやっていこうということが書かれております。また、専門医の更新については、基本 5 年ごとにそれぞれの領域で更新を行うと、その際には診療実績を見ていくということが共通指針で書かれています。

 最後に質の担保ということに関しまして、専門医のプログラム、認定を機構で行うわけですが、 5 年間の間に 1 回はプログラムを認定した病院の施設、病院群の調査をサイトビジットという形で行って、きちんと行われているかどうかの調査も行って、質を担保していこうと、そのような指針が出されています。

5 ページです。 1 つの目玉になっております総合診療専門医についてです。これが作られた背景については、やはり専門分化が進んでいってしまうと、今後の高齢化を考えると、複数疾患を有するような高齢者に対しては、それぞれの専門領域のいろんな専門医に当たるというよりも、総合的な診療能力を持った医師に診てもらうほうが、より効率的、有効であろうということから設けられることになりました。

 一番下ですが、総合診療については、やはり主に地域の診療所や病院での活躍が期待されるところでして、地域を診る医師としての視点が重要と書いてありますけれど、当然、総合診療ということですので、大病院の総合診療部門や、そのような所でも活躍するということも合わせて両方の場面で期待されているという形で考えられています。

6 ページです。地域医療との関係という所です。先ほど申し上げましたように、病院群を構成していこうという形で、これはそれを図示化したものです。やはり地域医療の安定的確保というところについては、国としても大きな課題ですので、上から○の 2 番目にありますように、これから研修施設を機構が基準を出しますと作っていくという形になりますけれど、地域医療に配慮した病院群の設定などを作ってもらうことは大事なことですので、公的な支援を検討と、報告書では述べられていますが、それに添いまして平成 27 年度の予算でも、もし地域医療に配慮したプログラムを作る場合には、研修病院になろうとする所に対して、補助するといった予算を設けています。

 地域医療の配慮に関しまして 7 ページです。先ほどちょっと御説明をいたしました、専門医制度の機構が作りました整備指針でも、その点が書かれているところです、下の 3 のマル 2 にありますように、専門研修施設群の地理的範囲という所で、病院群を組んでもらうのは大前提ですけれど、特に基本領域においては、地域性のバランス、当該医療圏における地域医療に配慮して、病院群を組んでいくことが重要であるということが述べられています。また、上の 2 のマル 3 ですが、専門研修のカリキュラム、経験目標の所で、基本領域においては必ず病診・病病連携や地域包括ケア、在宅医療、地方などでの医療経験、これを含むようなカリキュラムにしてくださいということが共通指針で述べられています。

 最後ですが、 8 ページです。今後のスケジュールの詳細です。真ん中にありますように、昨年 5 7 日に第三者機関として、日本専門医機構が設立されました。そして共通指針を出した上で、現在、領域ごとの専門医認定のための基準の検討が急ピッチで進められていて、もうすぐ、それが出される予定になっています。それが出されますと、各病院で群を組んで研修プログラムを作って、それを機構に提出した上で認定を受けていくと。平成 28 年、来年の秋には新しい仕組みでの研修医の募集を、初期研修 2 年目の人に対して行っていきたいと考えておりますので、それまでの間に、機構で病院群の認定を行うというスケジュールになっています。そして平成 29 4 月からは、新たな仕組みの下で研修を開始して、 3 年後の平成 32 年度以降に、新たな仕組みにおいて専門医の認定が始まっていくと、そのような流れになっています。

 これが実をいいますと、初期研修修了後の新たな専門医という形についての流れなのですが、なお、注意書きで一番上です。今、既存の学会の認定している専門医などはいるのだけれど、その人たちはどうなっていくのだろうかというところです。これについては、今、もうすぐ新たな認定のための基準などが出ますが、その後に、速やかに移行基準を設けまして、更新の段階が来た専門医ごとに、新たな仕組みの下でも認定できるなということであれば、更新の際に、新たな専門医として認定していくというのを始めていこうと思っております。

 したがいまして、本当に新たな仕組みで研修をした人たちは、平成 32 年から生まれてくるという予定ですが、移行で新たな専門医として認定されていく人たちというのは、もっと早い段階から生まれてきます。そのような人たちが、恐らく指導医として、新たに専門医の研修に入った方たちの指導を行っていくと、そのような流れになっていくかと思っています。

 大まかな流れについては以上です。よろしくお願いいたします。

 

○西原座長 

田村室長のほうからアウトラインをお話しいただいた「医科における新たな専門医に関する仕組み」ですが、これは、御案内にありましたように、長年の現状把握とともに、長年の問題を解決するために機構を設立したのが平成 26 5 7 日、そして、最後に御案内があったように、平成 32 年度に向けて移行期への対応も含めて組織的に動いているということを伺いますと、本ワーキンググループは、その前段階として、今、皆さんに御意見を賜って、形づくっていく一歩を踏むというところにあるのかと思っています。したがいまして、この医科における動きについては、我々は、より的確に動きを捉えながら、医科から良い情報を提供していただくということも、ワーキンググループの方からお願いしていきたいと思っています。

 さて、今、お手元に配布させていただきました資料についての説明は一区切りついたわけですが、少し残された時間、 1 時間ほどですが、私の方からは先生方の御意見をお伺いしたいと思っています。それは、歯科医療という、ある部分では、医療と異なる視点での専門性の捉え方が必要なときに、それぞれ所属する組織、あるいはそれぞれのお立場からの判断を頂きながら御意見を賜ればと思っています。なにせ、今回、第 1 回目ですので、私ども、先ほど申し上げたお手元に資料 2 をお持ちいただきますと、そこで歯科医師の資質向上等に関する検討会第 1 回歯科医療の専門性に関するワーキンググループの論点を 3 つに大きく分けていますが、この論点に従いながら少し議論を展開させていきたいと思っています。その点をまず御理解いただき、順次論点 1 から進めていきます。よろしいでしょうか。御協力よろしくお願いします。

 まず、これはもう、高田専門官のほうからありましたが、大事にしたいこと、これは、「国民が求める歯科医療の多様化に対応しつつ、安心・安全な歯科医療を提供するために、すべての歯科医師に求められる要件等について」ということが書かれています。下のマル 2 つで各論が書かれています。私から 1 2 つ例えで申し上げますと、御承知のように、昨年度でしたか、滅菌という操作 1 つについても、オートクレーブで滅菌する、しないということの問題が出てきて、その問題を解決すべく厚生労働省委託事業(事業名:歯科保健医療情報収集等事業)において調査研究を行い、今の歯科診療室での滅菌に対する基本的な考え方、すなわち、安心・安全の医療ということでは極めて原則的であり基本的なことなのですが、そのことについての調査研究を見ても、まだまだこの安心・安全の歯科医療を提供するために全ての歯科医師に求められる要件としてはかなり厳しい状況であるということが分かっています。

 さらに、マル 2 つ目を見ていただくと、自己研鑽の手段としては、いろいろな組織体があるわけですが、 90 %以上が開業して地域歯科医療に従事すると言われている歯科医業において、御自分の診療所のみで考えがとどまっている、作業がとどまっている先生たちへの情報提供並びに評価をどのようにしていくかということも、国民目線で全体像を考えるときには、やはり、重大な論点になってくるのではないかとも考えています。そのような観点を踏まえて、今から、少し御議論を頂きたいところです。

 先ほど来、私は国民目線という発言をさせていただいているということも踏まえて、冒頭、恐縮ではありますが、南構成員のほうから、何か広い範囲で御意見を頂ければと思うのですが、よろしいでしょうか。急に申し上げて誠に申し訳ございません。   

 

○南構成員 

確認ですが、この歯科医師の専門性の全体について、国民目線でどういうようなことが望まれているかという話でしょうか。

 

○西原座長 

はい。少し 1 2 事例も含めながら御案内いただければと思っています。

 

○南構成員 

分かりました。私は、先生方の議論をある程度伺ってから感想なりを申し上げるほうが適当かもしれませんが、ここまでのところで一応お話させていただきます。

最初に、国民目線ということがなぜ言われるようになったかと申しますと、元々、遡ると随分古い話になりますが、民主党政権に代わる前の自民党政権の最後頃。そもそも、医療事故安全元年と言われたのが 1999 年の横浜市大事件のみですので、その頃から、医療安全がしきりに言われるようになり、いわゆる医療事故の報道が非常に増えたということがあります。これは事故が増えたのか報道が増えたのか厳密には分かりませんが、少なくとも報道が問題にするような医療安全の問題がものすごく増えたのは 2000 年くらいの時期からということです。

 いろいろな話が出てきた結果、国民として安心・安全な医療を望むという立場と、一方で、そもそも医療というのは安全なものなのかと医療提供者側からの疑義ともいえる声が上がりました。歯科医療もそうでしょうが、新しい技術を導入するときには、当然のことながら、光と影がありますよ、という専門家の中から出てきた声です。簡単には申し上げられないのですが、なぜ国民の目線から見て、よく分かるような専門性の表示が望ましいのかという議論は、そもそも、「専門医」であると名乗っているけれども、果たしてその専門医たるクオリティはどうなのかということが問題になる事例が医療事故の報道などで幾つかあったためなのです。人口当たりの医師数や、専門医の数等を議論した結果、専門医、これは医療の世界のことですが、複数の専門医を取得している医師が存在するため、各学会の認定している専門医の延べ数が医師数を上回るような専門医が存在したという現状がありました。このような専門医制度の状況は、本当に適切なのかという議論になった結果、各専門医のクオリティをきちんとしてほしいという御意見があって、この専門医機構の話になっていったわけです。

 そのときに、注意しないといけないのは、国民の目で分かる専門医とか専門性というが、医師や歯科医師は、もうそれ自体が十分専門家、プロフェッションなわけです。医師や歯科医師そのものが既に専門性のある職業なわけです。専門家として専門性を求めていろいろなことを追求していきたいと思われるのは当然のことですし、研鑚を積んでいくというのも当然のことですから、その専門家の集まり、それが学会とか研究会とかそういうものが星の数ほどできたとしても、それはそれで別によろしいのではないかと私は思うのです。ただ、それは、医師や歯科医師の専門家の中での議論としてはそういうものが存在して構わないと思うのですが、国民の目から見たときの専門性というのは、やはり、医師や歯科医師という専門家の中でのさらなる専門性と完全に同一である必要はないのではないか、むしろ両者はおのずと違うのではないか、という気がしています。とはいえ、両者をある程度、分けると言ってもそう単純ではないとは思います。繰り返しますが、医師、歯科医師ともにプロフェッションなわけですから、その中でいかようにも専門性を追求していただいてもいいと思うのですが、国民に対しては、やはり、全体で安全性とかクオリティを担保していただきたいということではないかと思います。山口さんなどがもう少し平たい目線でおっしゃられるのかと思いますが、私はそのように思います。

 

○西原座長 

南構成員に今のような形で少し総論的にお話しいただいて、 2 つそこから展開させていただけるかと思います。 1 つは、今、最後に御案内があった山口構成員ですが、では、患者の立場からどういうような思いがあるかというのをお話しいただけますか。

 

○山口構成員 

私は、 25 年間活動してきている NPO を運営していまして、これまで 5 4,600 件を超える電話相談を全国の患者家族からお聞きしてきています。その中で、歯科の相談というのは比較的多くあります。一番多いのは、科で言うと精神科で、 5 年ほど前までは全体の 10 %程度だったのが、今は 20 %近くになっていますが、歯科は全体の 5 %ぐらいを占めていまして、他の細分化している医科の中で言いますと、どちらかと言うと歯科の相談というのは比較的多いのではないかという印象をもっています。

 そのような中で、歯科というと、先ほど資料の御紹介にもありましたように、ほとんどが開業医さんということもありまして、まず、どこに行けば自分の期待する歯科医がいるのかわからない、選ぶ情報がない、行ってみなければ分からないけれど、行ってみたけれど分からない、というところも確かにあるということで、安心してかかることのできる歯科医をどうやって見分けるのかということに非常に困っている方が多いという現状があるように感じています。

 そのような中で、今日、たくさん私は申し上げたいことがあるのですが、まずは、論点 1 に絞ってお伝えしてもよろしいでしょうか。 

 

○西原座長 

はい、どうぞ。

 

○山口構成員 

まず、国民が求める歯科医療ということで、自己研鑚のことが書いてあるのですが、先ほどの資料 3 2 のスライドにあるように、やはり、約 9 割が一般歯科ということからしますと、臓器別に細分化している医科と比較して、歯科の場合はそこまで細分化して専門化する必要があるのかということは正直感じていまして、どちらかと言うと、医科で今、 19 番目の専門ということで位置付けられた総合診療医のような存在の歯科医が、一般の人たちの多くが求めている歯科医ではないかと思っています。

 ということからすると、一般の歯科医が、どれだけ自己研鑚を積んでいるのかということが見えるような形になるのが国民としては安心できることなのかと思います。先ほど、滅菌の話もありましたが、確かに、私たちの相談にも、きちんと消毒・滅菌されていないように感じるという衛生面での苦情もありますし、あるいは、歯科衛生士にここまでやらせていいのかという職域についての具体的な苦情が届くこともあります。そのため、まず、どのような問題点が歯科の中でクリアしないといけない問題点なのか、その問題点をどこの歯科医院ではクリアしているのかが患者側に見えるような仕組み作りがまず必要になってくるのかと思いました。

 それから、自己研鑚ということで言いますと、患者側からは、この歯科医がどのような自己研鑽を積んでいるかなどということは全く見えません。ということからすると、一体どのような研修をどれくらいしているのかということも、やはりある程度知らせていただく必要があるのかと思います。今、拝見していると、独自のアピールしたい部分の、「私はこういう専門ですよ」とか、「このような研修をやっています」ということをアピールされていることを見て、「へえっ」と思うぐらいのことしかなくて、それが信頼できるものかどうかということの判断もできないというところに、選ぶ基準がないと考える理由の 1 つがあるのではないかと感じています。そのため、まず研修として、例えば、義務化までいかなくても、認定を受けているような、しっかりした自己研鑚の場での研修を受けているという、マル適マークというふうに申し上げていいのかどうか分かりませんが、そういうものに参加している歯科医であると患者でも判断できるものが一般歯科の自己研鑚のところにあれば、受診の際の選ぶ基準のひとつになるのかということを感じています。 1 番の論点では以上です。

 

○西原座長 

今、患者にしてみると情報過疎で、更に、情報が確かかどうかの担保がないということの御指摘なのですが、これは、事務局のほうから何か分かるところがありますか。

 

○鳥山歯科保健課長 

今の山口構成員からの御質問に対して、直接、私ども客観的なデータとしては持ち合わせてはいません。

 

○西原座長 

そうしますと、歯科医業を営んでいる歯科医師の団体である日本歯科医師会、あるいは、この専門医制度の基になっている学会を包含している日本歯科医学会、それぞれのお立場から何か御発言があれば、今の山口構成員の発言に対する回答などについて、御発言があれば助かるのですが、いかがでしょうか。どなたかいらっしゃいますか。

 

○中島構成員 

座長、よろしいですか。

 

○西原座長 

お願いします。

 

○中島構成員 

今の話の方向性が、私がこのワーキンググループに参加するに当たっての考え方と少し食い違っているので、私が違うのか、方向性が違うのかも少し質問しておいたほうがいいのではないかと思うので、最初に発言させていただきます。

 

○西原座長 

お願いします。

 

○中島構成員 

基本的に、論点 1 に、安全・安心な歯科医療を提供するために云々というのがありますが、これは、本来、医科もそうだと思いますが、歯科医師として免許を与えられた以上は、臨床に携わる者だけではなくて、要するに、その生業については一生涯を通じてそういう研修をするというのは責務であると考えます。我々、日本歯科医師会としても、会員に対しては当然そのような対応をしていますし、残念ながら、ある方面においてはそれが少し足りなかったりする事例がないとは申しませんが、自ら研鑽を行うのが正しい姿ではないのではないかと思います。本来はそういうのがあって当然なので、これが例えばないからと言って、専門医制度を作ってその人を担保しようという方向性の論点というのは、少し違うのではないかという気がします。

 ですから、今、もし現状、安全・安心な歯科医療が提供できていないという事実があるならば、このワーキンググループではなくて違う場で話合いをすべきだと思いますし、逆に、新たな専門医制度を作れば解決されるということでもないと思います。患者さんが理解をしやすい、専門性とはどのようなものかいうようなところに的を絞って話し合うべきではないかと思うので、その辺を少し整理していただければ有り難いと思います。

 

○西原座長 

冒頭申し上げたように、この会議はこの論点 2 3 を最終的にはまとめていくということに相成ると思います。ただ、ここのワーキンググループの中で構成員として出席している先生方は、歯科医師だけではなくて様々な分野の方がいらっしゃいます。先ほど来、国民ということで言えば、まず、ここのメンバーの構成員の中で、思っていることを語り合いながら一つ一つ回答を出せるものは出して、これからのワーキンググループを進めていく上での温度合わせをしたいと思い、論点 1 での時間を取らせていただきました。ですから、先生がおっしゃっていることの方向性に私は異を唱えるものでもありません、その方向で動く予定でいますというお答えでよろしいでしょうか。

 ただ、例えば、これは私がこの検討会に入っていて分かってきたことなのですが、弁護士は弁護士のグループである弁護士会に 100 %加入していて、その中で運営されている組織であるということに対して、今、日本歯科医師会の加入率はどれぐらいと考えたらよろしいのですか。

 

○中島構成員 

加入率は場所によって違うものですから一概にお答えできません。

 

○西原座長 

私が申し上げるのは、全ての歯科医師の自己研鑽の場を、この厚生労働省のワーキンググループでは担保しておかなければいけないということで言いますと、日本歯科医師会の会員で自己研鑽のための研修を受けられる先生もいらっしゃれば、非会員でそのような機会すらもてないような地域、あるいは環境にいる先生もいらっしゃるとしたら、それは国民にとって、不幸であるので改善していかなければいけないという考え方も出てくるかと思います。そのため、各界からお集まりいただいている構成員に今日は意見を頂きたいという趣旨で、加入率を伺った次第です。

 

○中島構成員 

いや、私が言いたいのは加入率ではなくて、私は、日本歯科医師会から来ていますので、歯科医師会という観点で発言を求められたのかもしれませんが、そもそも、歯科医師として免許を得た者は生涯を通じた研修を受ける責務があるだろうというのが大前提だと思います。

 

○西原座長 

はい。

 

○中島構成員 

日本歯科医師会の会員については、日本歯科医師会がある程度責任をもってそれを担保しますという努力をしているという事実もありますが、それ以外の人が研鑽を怠ってよいなどということは当然思っていません。ただ、残念ながら、日本歯科医師会としてはその人たちに手を差し伸べるという術がありませんので、現状の中では少しそこが滞っているところもあると思います。歯科医師全体として対象を見たときに、本来あるべき姿として安心・安全な歯科医療を提供するのはもう責務ですから、そこは今、現状、それが非常に問題になっているというのであれば、またそれは別の論点で話さなければいけないと思います。逆に言うと、専門性を作るとか作らないとか、専門性を議論する前の段階の話だと思いますので、そこを今回この議論の場でするかどうかというのがとても大事だと思っています。先生がおっしゃるように、日本歯科医師会の加入率であるとか、日本歯科医師会の会員がどうだとか、そうでない人がどうだとかという議論は、今回は控えたほうがいいのではないかと思います。

 

○西原座長 

分かりました。各論で承知いたします。では、もう少し歯科から離れて恐縮なのですが、論点を広くさせていただくということで、今、私、例えば弁護士会なのですが、高梨構成員から少し、今、歯科の現状も踏まえながら御意見を頂ければと思うのですが、いかがでしょうか。

 

○高梨構成員 

日本弁護士連合会のほうで、論点 1 に関することで弁護士の世界がどうなっているかを御紹介した上で、私自身が、事件等の経験で論点 2 3 に少し関連するところでお話をさせていただきたいところがあります。

 まず、弁護士会は、弁護士が全部入らなければいけないのではなくて、弁護士会に入らないと弁護士になれないというのが正確な表現になると思います。そのため、弁護士会は当然強制加入団体です。そして、弁護士会では研修を実施していまして、研修を受けないと、例えば、弁護士会は法律相談を開催しているのですが、離婚、相続といった家事事件の法律相談など特別な法律相談の担当者になれません。あと、裁判所から指名される破産管財人に就任できないというようなシステムになっています。それがインセンティブなって働いて、研修を受講しないと仕事を受任できない、生業として弁護士を続けられないという状況をそれなりに作れていますので、多少功利的ですが、比較的研鑚が積みやすい状況にあるのだと思います。

 ただ、非常に残念で、昨日も少し弁護士会の会議で話が出ていたのですが、弁護士の研鑚にとって一番妨げになっているものは何かと言うと、実は弁護士は資格業であるため横並び意識が強いのです。自分は弁護士だ、お前も弁護士だ、みんな弁護士ではないか、同じ資格をもった弁護士ではどこが違うのだと。これに加えて弁護士の業界でよくないのは、登録年数という弁護士登録をしてからの年数と弁護士としての能力が比例関係にあると思い込まれている方がいまだに多いのです。弁護士としての能力が問題になっているときに、俺は弁護士を何十年もやっているのだ、お前は何年やっているのだとおっしゃる方が少なくありません。でも、実際の弁護士としての能力は、登録年数の長さで決まる訳ではないのです。実際、そういう変な横並び意識をもっていて研鑽を怠っている方を外部に派遣すると能力不足からトラブルを起こして弁護士会に苦情が来るということがあります。今後どうするかというのが非常に大きい課題になっています。このような問題は弁護士の業界だけの問題なのか、弁護士以外の資格業に当てはまる問題なのかよく分からないのですが、資格があるのだから能力があるという思い込みで研鑚を怠っている方がどうしても出てきてしまうというのが、研鑚についての悩みどころです。ただ、他方、今、申し上げたとおり弁護士会は、強制加入団体で、研修を受けないと特定の業務を受任しにくい状況というのを作れているので、その点について、研鑚について、今、インセンティブが働いているところがあるというところだと思います。

 あと、国民目線のほうでということで少しお話させていただきます。国民が、特に近年、専門性を求めているのは、私自身の経験から言うと矯正とインプラントの問題だろうと思います。ところが、そこで国民が何を基準に選んでいるかというと、結局、ホームページの宣伝なのです。ホームページの宣伝とかを見てみると、「私は矯正を何件やっています」と、「何とか学会の専門医です」と、と宣伝しています。よく調べていくと、でもそれは一体どういう学会なのかよく分からない。非常に申し訳ないけれど、そういう所でトラブルを起こされている方が少なくありません。中島先生がおっしゃっている趣旨は、私には理解できるところで、一般的な歯科医療が、安全・安心ではない状況にあるとは思っていません。ただ、国民が特に専門性を求めている領域において、その専門性を持っていない人が、「私は専門性があるのです」というような宣伝をして、そこで誤解によって不幸な結果が起きて、他の病院に行って、本当に専門性を有する歯科医師に出会って、「始めからこの先生に会っていればとか、こういう所に行きたかった」というトラブルが非常に多いというのも事実だろうと思います。ですから、どちらかというと、歯科医療一般というよりは、矯正とかインプラントとか全部入れ歯とか、そういうものに関して専門性があると称されている、だけれど実際は専門性がない方がいらっしゃるということが、私から見ると、一番国民サイドから見て専門性に関する大きな課題ではないかと考えています。

それについてどう克服するかということに関して、 1 個は、国民サイドがリテラシーを上げていく工夫をしないといけない。では、国民はリテラシーを勝手に上げられるのかと言えば、それは難しいから、専門家である歯科医師が、こういう治療を受けたい方にはこういう歯科医師を紹介できるという情報発信、または、こういう歯科医師を選べばいいと案内できればいいと思います。先日もテレビで矯正のトラブルに関して、「こういう矯正歯科医を選んでください」という放送をやっていたのですが、そういう形で情報発信をしたり、それでは限界があって専門性の広告に起因したトラブルが起きるのであれば、広告を、現在のようなガイドラインではなくて法的な規制にもって行く必要性というのはあるのではないかと考えています。すみません、長くなりました。

 

○西原座長 

山口構成員と高梨構成員から、まずそれぞれお立場が違いますが、歯科の医療における問題点が出されてきていますので、この辺りからは、私としては、先ほど中島構成員からもありましたように、専門性を有する歯科医師の問題点に移っていけるのかと思っています。今日は、本当にいろいろな所、いろいろな方からの発言を聞きながらまとめる作業ですので、少しお許しを願いながら、論点 2 のほうに移っていきたいと思っている次第です。

 論点 2 は、事務局から御案内していますが、論点で申し上げますと、歯科医療の中で既に位置付けられている専門性について、様々な、ここに○印を付けて、 5 つ課題とか質問事項などが挙げられています。このようなことは、今日御出席の方々は参考資料の御説明を受けてお感じになっているところかと思いますが、実際、歯科医業を営んでいる先生方にとって、歯科医師が歯科の専門医に求めている要因、何が患者さんに、あるいは国民にとってメリットがあるのか、例えば、いいドクターが紹介される、あるいは、もう少し別の観点から言うと、歯科医師のキャリアパスとして有効なのかどうかという視点で、現在、地域で開業されて活躍されている鴨志田先生、あるいは伊東先生から、専門性についての基本的な考え方について何か御発言があれば助かるのですが、いかがでしょうか。

 

○伊東構成員 

患者さんの目線で見た専門医制度と、我々歯科医師の仲間同士でいう専門医制度とどうもかみ合わないような気がいたします。患者さんからすれば、歯科医に行って、痛い所、腫れている所、あるいはそれを噛めるように治すことが基本で、その担保ができないといけないのです。今の新しい卒業生を見ていると、まず国家試験対策に追われて、知識は増えているけれども、技術が身に付かず、そういう段階で国家試験を通ってきます。

 それを補完する意味で 1 年間の臨床研修制度があります。これも、必ずしもうまくいっているとは言えない。 1 つは期間が非常に短いことと施設に問題があります。歯科のいろいろな分野を経験するには少し足りないのではないか。そういう意味で、今の新しい卒業生、新しい歯科医師を見ていると、歯科医師としての資質の担保が非常に難しいというのが先ほどもありました。専門性の前に、まず歯科医師としての安心・安全な医療を提供できることの担保をしなくてはいけない。そこが非常に大事なところがあるのではないかと思います。

 さらに、その先生たちが、スライド 8 に「キャリアパスについて」と書いてありますが、いろいろなところに更に研修を積んで、そして歯科医師の場合は開業している、管理者になることが多いわけです。研修制度が終わって、今度は行く所が大学であったり、病院歯科であったりすると、またそこで非常に狭い領域の勉強をしてしまう。そして 30 代、 40 代で開業するときには、一般歯科というドンとまた広い間口の仕事をしなくてはいけないということで、これをどう補正していくかは非常に難しいと思います。

 私の経験でいえば、そういう若い先生に対して、歯科の中で基本的な学会に入ることをまず勧めて、そして全身的な見方、あるいは外科処置、そして咬み合わせを回復するという、その基本的な学会の会員になって、そして研鑽を積んでいく。どの学会も専門医制度を持っていて、それも 2 段階構造になっています。最初の入門編である認定医のようなものもあれば、いわゆる専門医というのもあります。入門編の部分を 3 つの分野ぐらい取ると、国民の目線から見れば非常に安全な歯科医師が生まれる。専門医とはいえませんけれども、歯科医師として安全な医療が適時行える歯科医師の担保というのは、現状ではそういう形でしか確立できないような気がします。医科の総合診療医につながるものかと思います。

 私どもは歯科に特化した病院という形でやっていますが、熊本県には歯科大学がありませんので必要ではないかと考え、始めました。歯科大学があれば、大学病院の中では矯正科があります、インプラント科があります、いろいろな科がありますというように、歯科大学があることで専門性の表示がその地域に浸透していきます。歯科大学がない県のほうがむしろ多くて、 30 県ぐらいは歯科大学がありません。そういう都道府県では、ほぼすべての歯科医師の専門性はフラットな世界として捉えられていて、誰は何が専門かということは分かりにくい状態です。

 私たちの方でセカンドオピニオンとか、トラブル後始末をするときに、その患者さんの経路をたどると、やはり未熟な歯科医師が処置したのだなという事例が非常に多いです。専門医制度があれば、こういう不幸は免れたのではないかというのが、矯正とかインプラントとか、咬合の回復の症例においては非常に多い傾向があります。ですから、専門医制度については、国民の視線から見たら、歯科大学のある所とない所では、情報の周知度がかなり違っていますので、できれば全国津々浦々と専門性を示す制度があったほうが、国民から見たときに、同じような情報が手に入れやすいのではないかと思っています。

 

○西原座長 

鴨志田先生お願いいたします。

 

○鴨志田構成員 

いろいろなお話を聞いていて、非常にうなずく部分も多かったです。私は、横浜で 30 年ほど開業していますが、ちなみに専門医は持っていないので、普通の開業医です。先ほど南構成員がおっしゃった中で 2 つの面があろうかと思います。一般医の研鑽という部分と、専門医の専門性の部分と、 2 つの面が提示されたと思うのです。私はこの見方について賛成します。私の周りは 90 %が開業医ですので、開業医が現代社会の高度な医療を要求される、安心な医療を要求される中で、専門性を追求するうえでの動機付けとして何か良い工夫があればいいとは思っています。

 ただ、中島先生がおっしゃるように、日本歯科医師会としては立場上そう言わざるを得ないのでしようがないのですが、それにしても一般開業医が努力して、ある意味の総合診療医なりを取っていくことが、全体としてのボトムアップにつながるのではないかと思っています。 COML の山口構成員がおっしゃったように、 5 %の苦情があるということは事実として受け止めなければならないとは感じています。

 それから、今やっている専門医制の問題は、先ほどの学会の数を見て驚いたのですが 42 あります。これらの学会が、それぞれ独自にまた専門医を恐らく目指していくと思うのです。それは、専門医の中で趣味の世界と言っては恐縮なのですが、専門医の中の専門医ということでいいと思うのです。その学会の専門医の対象は誰かということです。専門医の対象は、もしかしたら患者ではなくて、我々一般医であって、一般医が、あの先生はこの専門だから患者を送ろうという対応になるのではなかろうかと思うのです。患者さんは先ほど来お話がありましたように、いろいろな名前があってもどんな専門医だか全然分からないのです。そういう意味では少し整理をする必要があろうかと思います。

 特に一般医の医師の制度は長年検討されて、非常にいいところはあるし、取り入れるべきところが多いと思うのです。そういう意味でも、総合診療専門医という概念は歯科のほうにも入れていただきたい。それはなぜかと言うと、 1 つには我々が教わってきた時代と違って、今は超高齢社会ですから、これに対応するような一般歯科医を、これからは意識的に養成していかないと、 2025 年になる超々高齢社会に対応できない。我々歯科医師がどうやって対応するかを真剣に考えていく。私は神奈川県で歯科医師会の仕事をしています。特に神奈川県は、これから爆発的に高齢人口が増えるということで、今大慌てでいろいろな体制を作っている状況です。そういう意味も含め、医科の制度の中で総合診療医が取り入れられたのであれば、歯科のほうでも是非前向きに総合歯科医の導入を考えて、それが 90 %になる一般医が、歯科という専門を極める、研鑽をする動機付けになればいいかと感じております。

 

○西原座長 

後段に出ていた、専門医という日本歯科医学会の専門分科会と認定分科会に関しては、 32 ページと 36 ページのパワーポイントで、現存する学会が 43 、一方でパワーポイント 32 ページの資料で主な診療科別の歯科医師の数が書かれております。このような実態を踏まえてまとめている日本歯科医学会の基本的な考え方のこれまでの経緯を、ここの構成員の方々に御案内いただけると助かるのですが、井上構成員、あるいは今井構成員からいかがでしょうか。

 

○井上構成員 

日本歯科医学会は 43 学会になりましたが、もちろんこれに加盟していない学会は全ては把握できません。恐らく 100 を超えるものと思います。そちらのほうでも、もちろん専門医を作っております。我々歯科医学会のほうで担保しておりますのは、ここに書いてありますように、専門分科会と認定分科会、これは日本医学会とは異なる分け方です。専門分科会は 36 ページのオレンジ色のほうに書いてあるような形です。認定分科会のほうは黄色です。分かりやすく言うと、ややハードルが低いのが認定分科会で、ハードルをかなり高くしたのが専門分科会です。専門分科会の意見は日本歯科医学会としては、ある意味で強く受け止めているといった解釈でよろしいかと思います。

 それにしても、すべての学会が専門医を持っているわけではありません。我々歯科医学会としては、現状としては、各学会にしっかりした認定基準を作ってくださいというところまでです。それを、先ほど山口構成員が言われたような、どのような講習会が開かれていて、その結果どうなったのかというようなことも提出させて、専門分科会の 5 年更新をしていって、そこの分科会の専門医であれば、ある程度専門医として担保はできるだろうという方向に持っていこうとしています。また、先ほどから話されているような、専門医の認定基準としては、いわゆる基本領域の担保が非常に薄いという意見もあるといことから、鴨志田先生がおっしゃったようなことがすごく大きな問題になっているのだろうと思います。

 唯一矯正というのは、私は大学に残っておりますので大学の人間として言うと、卒業して 1 年間の研修をするのですが、その研修も各大学で結構まちまちです。どのぐらいの患者さんを診たかというデータも平成 28 年からやるらしいのですけれども、どのぐらいの患者さんを手掛けて、どのぐらいの患者さんを治療して、どのぐらいの症例をこなしたかというのも、もちろん大学単位では出しているのですけれども、それが公になることはもちろんありません。それを終わった人たちが、矯正やインプラントの講座にそのまま残ってしまうのです。つまり、十分な歯科医療ができない中で、自分が憧れている矯正歯科医であるとか、インプラント科に残ってしまうという問題も克服しないといけないと。

 ただ、唯一矯正歯科に残った人は、一般歯科治療はほとんどやりません。矯正歯科以外はやらないという特徴があります。ただ、例えばインプラントは、どうしても一般の治療をやらざるを得ない現状がある。やはり、基本領域の歯科の医療担保をしっかりしなければいけないという上に、各学会での専門性を更に高めていく形になっていかなければいけないのかと思っています。

 私は、アシアナ航空の事故があったときに、これは歯科医と似ているかと思いました。ロサンゼルスや、今回の広島空港の事故もありましたが、某社のパイロットになる基準は、他の航空会社よりも少し時間数が少ないと聞いています。あれは、我々乗るほうとしては全く分からないわけです。

 日本航空の御巣鷹の事故でも、事故が起こってから、「この機長はすごく優秀な機長で、 5 万時間の運行何とかがある」というように、初めてそこで明らかにされます。そういう意味から言うと、あなたが乗る飛行機の機長は 3,000 時間しか乗っていませんとか出たら降りますか。そういうのと同じような気がしてしようがないのです。この歯科医は 3 年目で、 150 本の歯を削ったことがありますという表示があったら行くのかと。その辺も含めて、そういうところから一歩ずつ進めなければ、いわゆる歯科総合医としての担保が取れないのかと思います。

 歯科医学会としては、各学会の認定医としての担保はしっかりするようにということは、もちろん義務付けていっていますが、その基になっている所がまだあやふやであろうと思います。

 

○西原座長 

今井構成員お願いします。

 

○今井構成員 

井上先生が話されたことが、おおむね歯科医学会の立場です。 36 ページにある分科会と認定分科会のことで若干混乱があるといけないので申し上げます。これは、あくまでも分科会であり、専門医とイコールではありません。ですから、これが多いからどうというような論点になると、いささか方向性が違ってくる危惧があると私は認識しております。すなわち、これは純粋なアカデミアとして、研究をするために作られた学術組織であるということが前提にありますので、その点だけきちんと認識をしていただきたい。その中で専門医というか、学会認定が作られているとお考えいただかないと、この分科会そのものが認定医だとか、そのようなイコールになると混乱を招くということですので、ここだけ御説明させていただき、御理解をまずいただいておきたいと思います。

 それから、歯科医学会の中の細かいことを申し上げても、これから先に進むことが難しいと思いますので、今までの先生方のお話をお聞きした中での私の感想を少し申し上げます。南構成員が冒頭に言われた、「専門家の中の専門性と、一般国民向けの専門性は異なってもいいのではないか」というのは大変重要な御示唆だと思います。そういうことを、まず基本に置いてこの委員会をきちんと運営していただきたいというのが私の 1 つの希望です。

 また、山口構成員から非常に厳しい内容のお話がありました。これは、真摯に我々が受け止めて、これに対応しなければいけない。そのためのワーキンググループであって然るべきだというのが私の感想です。そして、高梨構成員からは、評価にはきちんとした客観性が必要だというご指摘がありましたが、そのためには質の担保が重要であること、国民がどのような歯科医を求めているか、ということが非常に重要であると理解しました。

そして、高梨構成員が言われたことで、私が大変感銘を受けたのは、専門職として自律性を持って検討するということです。これは歯科医という専門職として自ら襟を正し、国民に理解の得られる歯科医療の構築をこれからこの委員会で少し具体的に検討していただければと思います。

 ただ問題は、議論は現状認識によるものばかりなのです。ところが、この現状認識にやや問題があるわけで、この点を正確に理解しなければなりません。例えば、歯科の場合、診療報酬が極めて低いということもあり、不採算部門として病院歯科がどんどん閉鎖されている事実があります。総合病院の 2 割しかないわけです。そこには研修する場をどうやって提供できるのだろうかという問題もあります。具体的には現状認識だけで議論するのではなく、問題点を洗って将来の歯科医療のパラダイムシフトにつながるように、ある程度展開していただきたいと希望致します。

 なお、「安心・安全な・・・」と言うにはやや抵抗があります。安心というのは、受ける側が感じるものであって、我々が安心を提供するわけではないのです。我々は安全な医療を提供するというように私はいつも言っており、そのような研修の場は作るべきだと思います。そして、その基準をきちっと作った上で質の担保を行う。また、従来からある学会認定の専門医、認定医にもある一定の質の担保が必要で、そこに既存の広告可能な専門医と、どのように整合性を持っていくか。この辺をきちんとまとめていくのが今後の方向性があるのではないかと感じました。

 

○西原座長 

1 点確認させていただきます。日本歯科医学会が法人化していく作業の中で、この専門性については何か議論を展開していますか。

 

○今井構成員 

もちろん専門性についてはかなり細かく検討しております。

 

○西原座長 

それは、これからの会議で機会を見てお伺いします。ここまで進めてまいりますと、一般医あるいは専門性を有する歯科医師の色が、だんだん皆さんの中に浸透してきたかと思います。本日御案内いただいた医科の動きの中で、新たな専門医は長い時間を掛けながら、そしてある意味ここに来て急ピッチに進められている機構を設けての活動なのです。この活動の中にも、やはり現状の理解と視点をどこに置くかということが語られて、いろいろ議論が重ねられて、進められてきたのだと理解しております。

 特に、新たな仕組みの概要の中にあるプロフェッショナルオートノミー、専門家による自律性、これは医師としての専門化という言葉に置き換えられると思うのです。私どもこの会議の構成員は、この動きをもう少し勉強したいと思います。私としては小森先生にお話を伺いながら、また小森先生に 2 回目以降少し御案内いただければと思っているところです。本日の議論を受けながら、その点も含めて御発言いただけますか。

 

○小森構成員 

ありがとうございます。本当に勉強させていただいております。次回お話をさせていただく機会を頂けるということですので、今日、詳細にわたってお話することは避けたいと思います。参考資料 2 は、「専門医の在り方に関する検討会報告書」ですが、 2 年前の 4 22 日に公表されたものです。この中身は 17 回にわたって議論しました。たった 9 ページと 9 行しかありません。その中には、プロフェッショナルオートノミーという言葉が 5 回も出てまいります。非常に特異なのです。これは、医師集団としての決意を、国民の方々に示すものだと私どもは理解して作成いたしました。

 幾つかお話がありましたけれども、医師としては透明性と説明責任の 2 つが、国民の方々に対してプロフェッションとして示すべき一番大きな課題だと思っております。本日の議論の中にも歯科の特殊性というのがあろうかと思います。患者さん、あるいは住民の方にとって、「どの歯科医を選ぶか」という基準を、何らかの形でプロフェッションとしては示す責任があるのだろうと思っています。

 専門医ということに関しては、医科の特殊性がありますので、ここで申し上げることはいたしませんけれども、先ほど安心・安全ということがありました。 1 ページの一番下の○を御覧ください。「検討に当たっての視点」ですが、「この新たな専門医の仕組みについては、専門医の質を高め、良質な医療が提供されること」が目的としてあります。安心・安全な医療の提供ではないのです。これを高質とするか良質とするかというので随分議論した記憶が、ついこの前のようにあります。

 それから、全ての医師がという意味で、 6 ページの一番上の○を御覧ください。「専門医の認定・更新に当たっては、医の倫理や医療安全、地域医療、医療制度等についても問題意識を持つような医師を育てる視点が重要であり、日本医師会生涯教育制度などを活用することも考えられる」としております。これまで医科においては専門医の認定・更新は、ほぼ技術認定でした。医の倫理は、先ほど中島先生のお話もありましたが、歯科医師のみならず医師についても、こういう問題は最低の責務である。したがって、自発的な動機において行うのが当然である。それは、根底の理念なのですが、それだけではいけないだろうということで、新しい制度においてはこれをデューティといたしました。

 日本専門医機構の立上げに関する組織委員会並びに日本専門医機構でも、理事という役職を頂いて仕事をしておりますが、新しい専門医制度の認定・更新に当たる整備基準においては、医の倫理、医療安全、感染対策は必須項目で、認定及び更新についても、この講習を受けなければ更新できないこといたしました。これは、医科の制度においてはこれまでなかったことです。そういう形で国民の方々にお見せすることをやるということです。

 また、この報告書には「国」という言葉は 2 か所しか出てまいりません。これが、プロフェッショナルオートノミーと別に担保しているところです。本日は詳しく述べませんが 2 点お話します。 1 点は、プログラムの認定に当たる部分、作成です。そのことについて 2 8,000 万円という予算措置を頂いております。それは、プログラムを作る病院、施設群等に対して支払われる対価です。もう 1 つは、日本専門医機構に払われるもので、これはあくまでデータベースを構築する、そのソフトウェア、管理・運営並びにハードウェアにかかる経費です。大変大きな組織ですが、本体の運営経費について、国は一銭もお金を出すなという宣言をしました。どのような成果を出していくかは、今後の課題ですが、詳細についてはまた時間を頂けるということですので、その折にまたお話をさせていただきます。ありがとうございました。

 

○西原座長 

2 回を予定させていただきますので、その時に御案内をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。本日論点を整理していく中で、もう 1 つ標榜科の論点 3 を挙げていましたが、これに関しても小森構成員からありましたプロフェッショナルオートノミーということでいうと、極めて社会的にも混乱を極めているところだと私は認識しております。したがって、その辺が少し整理されないと、またここもいろいろな議論を呼んで、時間を取ってしまうことになるでしょうから、少し先に置かせていただきます。

 

○山口構成員 

論点 2 と論点 3 の所で、 1 つの意見と 2 つの質問があります。先ほど論点 1 に絞ってお話をしました。高梨構成員がおっしゃったように、私たちの所には専門性という意味からして届くのが、どちらかというと矯正歯科治療、インプラントとなっています。資料を拝見すると、広告可能な専門資格には両方ともなっていません。ですから、インプラントも矯正歯科も専門医だということを広告することができないのだということを、改めて今回これを拝見して思いました。

 一般的に、こういうときに「ちゃんと診てくれるお医者さんがいればいいな」と、相談を聞いていて感じるのは、先ほどの矯正歯科であり、インプラントであり、あるいは歯周病とか顎関節症です。それから、妊娠しているときの歯科のメインテナンスをしてくれる歯科医、あるいは訪問歯科はどういう所でしてくれるのか、また、比較的多いのが歯科心療科を必要とする相談者や、歯科医療に対して不安を抱えている方からの相談が、私たちの相談対応では一番苦慮するところでもあります。

 そういうことを考えると、今回資料を拝見していて少し分からなくなったのが、一般的には標榜可能な歯科、小児歯科、矯正歯科、歯科口腔外科という標榜を専門だと受け止めがちではないかと思うのです。でも、これは標榜であって専門ではない。広告可能な専門という所を拝見すると、スライド 33 にあるような 5 つの領域に分かれています。

 歯周病専門医、小児歯科というのは一般的にも理解できるかと思います。しかし、口腔外科専門医と言ったときに、具体的にどんなときに診てもらえるのか理解できる人は果たしてどれぐらいいるか、さらに歯科麻酔専門医と、歯科放射線専門医というのは、どういうことが専門で、他の歯科医と何が違うのか、どういうときに受診するべきなのかが全く分かりません。もしよろしければ、専門の方から教えていただきたいと思っているのが 1 点目の質問です。

 そういう混乱をする中で、先ほどここにある専門分科会と認定分科会が 43 あって、これは専門医を作っている所ではなく学会だというのは承知いたしました。ただ、それぞれが認めている専門医があるのだとしたら、それぞれどのような条件で認定しているのかということを、例えば次回の検討会の中で拝見するような資料が頂けるのかどうか。そういうものが分からないと、どのような基準で認定されているのか、それが患者にとって必要な情報かどうかも判断できないかと思いましたので、そういう資料を用意していただくことが可能かどうかを 2 つ目の質問としてお伺いします。

 

○西原座長 

分かりました。それに関しては座長の私からお答えいたします。 1 点目の、広告可能な専門医に関しては、医療法上の問題から端を発しています。次回までに事務局のほうで整理をして、今の質問にお答えできるような資料等の整えを私から依頼いたします。 2 番目の、それぞれの専門医がどのような基準でということに関しては、現在認定制度を束ねている日本歯科医学会の御協力を得ながら、でき得る限り事務局で取りまとめるよう私のほうから手配いたします。

 

○今井構成員 

その点についても、既に歯科医学会から、厚生労働省のほうへ資料提出しております。

 

○西原座長 

分かりました。事務局のほうで用意ができると思いますので、お待ちいただければと思います。それを踏まえて、議論を展開させていただきます。時間が迫ってはおりますが、富野構成員から御発言がなかったのですが、何かお考えはありますか。

 

○富野構成員 

全般的な話ですけれども、歯科医療の質的な問題が問われる発言がありました。これは、歯科医師会の立場で発言するわけではありませんけれども、私は日本の歯科医師はかなりのレベルで、頑張って歯科医療を行っていると認識しています。それを踏まえたうえで、更にステップアップさせるということで、今回の会議が設定されていると、前提としてはそのように捉えております。全く低いものを底上げしていくというような、スタートの議論にはならないだろうと思います。

 「国民が求める歯科医療の多様化」とありますが、これは超高齢社会を迎えたということで、基礎疾患を持っている患者さんがたくさん増えていること。国の医療・介護の一体改革の方向性もそこに絡んでおりますので、歯科医療が今までは歯科固有の技術を中心として評価されてきましたけれども、歯科を専門とする医療職としての在り方がこれからは問われてくるだろうと思います。

 大事なことは、治療の目的がはっきりしていて、術式もはっきりしていて、患者さんの同意を得てということで、麻酔をしたり、削ったり詰めたりしているわけですけれども、これは本来は傷害罪だと思います。ところが、医師・歯科医師というのは、傷害罪からは違法性阻却事由ということで認められております。ですから、この違法性阻却事由を狭まらないようにするためには、プロフェッションとして自律性を持たなくてはいけない。そのためには、研ぎ澄まされた専門家集団、専門医制度が必要なのではないかということを基本的には考えております。

 歯科医療の発展のためには、今まで漠然としていた標榜科名をより専門性を持った組織として、国の経済的理由などを理由に、違法性阻却事由が狭められる、そのようなことがないように、専門性の議論を深め、その結果として国民にわかりやすいものにする、またそのガードをする必要があるのではないかと考えておりますので、是非歯科における専門医制度を進めていただきたいという希望を申し上げておきます。

 

○西原座長 

そろそろ時間ですので、本日の会議を終わらせていただきますが、今後本日の構成員からの意見を踏まえてこれから進めてまいります。私は、日本歯科医学教育学会の副理事長を務めております。ここ 6 年ほどぐらい前からプロフェッショナリズム、あるいは歯科医師教育におけるプロフェッションとはという議論が始まっております。それ以前に卒業した歯科医師は自分で勉強してきたことを考えると、やはり組織としてしっかりとした評価も含め、機構を作った上で、小森構成員からの発言のように、歯科医療においても教育研修に見合う組織を構築する時期が来ているのであろうという思いを強くいたしました。その方向性で、これから先このワーキンググループを動かせていけたらと思います。

本日は、有難うございました。


(了)

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