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2015年3月26日 厚生科学審議会疾病対策部会 第37回難病対策委員会 議事録

健康局疾病対策課

○日時

平成27年3月26日(木)15:00~17:00


○場所

厚生労働省 専用第22会議室(18階)


○議事

○小澤疾病対策課長補佐 定刻より若干早いのですが、委員の先生方にお集まりいただけましたので、始めさせていただきます。ただいまから「厚生科学審議会疾病対策部会第37回難病対策委員会」を開会いたします。委員の皆様方におかれましてはお忙しい中、お集りいただきまして、誠にありがとうございます。まず、出欠状況の確認をいたします。本日の委員の出欠状況ですが、金澤委員長、小幡委員、小池委員、千葉委員から欠席の御連絡を頂いております。

 それでは、カメラの撮影はここまでとさせていただきます。傍聴される皆様方におかれましては、傍聴時の注意事項の遵守をよろしくお願いいたします。

 なお、金澤委員長からは御欠席されるため、厚生科学審議会疾病対策部会運営細則第4条第4項に基づきまして、委員長の職務を行う者として、あらかじめ福永副委員長を御指名いただいております。このため、以降の議事進行につきましては、福永副委員長にお願いいたします。

○福永副委員長 それでは、まず資料の確認をお願いいたします。

○小澤疾病対策課長補佐 事務局から資料の確認をさせていただきます。お手元にお配りしてある資料を御覧いただければと思います。資料1「基本方針の検討について」、資料2「今若参考人提出資料」、資料3「三原参考人提出資料」、資料4「伊藤参考人提出資料」、資料5「萩生田参考人資料」、参考資料「障害者総合支援法における障害者支援区分 難病患者等に対する認定マニュアル」です。資料の欠落等がありましたら、事務局までお申し付けください。なお、事務局からは本日の御議論に関係する現状の施策について、資料1として配布しております。こちらの資料につきましては、意見交換の際に、現状の施策に議論が及ぶ場合に必要に応じて御説明をさせていただければと思っております。

 また前回、伊藤委員よりお話のありました難病患者等に対する認定マニュアルにつきましても配布しておりますので、適宜こちらも御参考とさせていただければと思います。

○福永副委員長 それでは早速、議事に入りたいと思います。本日の最初の議題は「基本方針の検討について」です。本日は、難病対策に係る施策のうち、難病対策地域協議会、相談支援などの療養生活環境整備事業、難病患者に対する福祉サービス、就労支援等について御議論いただくことになっており、これに関連する参考人の方々からのヒアリングを予定しております。次第としては、順次発表していただき、最後に質疑応答・意見交換をさせていただく形ということで話を進めさせていただきたいと思います。参考人の発表時間については、お一人15分程度を目安にお願いしたいと思います。

 それでは、最初に島根県出雲保健所の医事・難病支援課長の今若陽子様からお話を伺います。よろしくお願いします。

○今若参考人 島根県出雲保健所の医事・難病支援課の今若と申します。よろしくお願いいたします。それでは、私からは資料2に沿って説明をさせていただきます。8枚の資料を用意しておりますが、まず初めに、1ページは島根県及び出雲保健所管内の概況について御紹介します。島根県は、地図のとおり東西に細長い県土で、人口は昨年70万人を切りました。高齢化率も31.7%で高齢者の割合が高い県です。

 島根県は、県内に7つの二次医療圏を設定し、各圏域に1か所の保健所を設置しています。出雲保健所は、人口約17万人、高齢化率28.5%で、県内では2番目に多い人口を抱える圏域となっています。昨年末の特定疾患受給者数は1,509人で、圏域の特徴としては、大学病院や県立病院をはじめ、比較的医療資源等に恵まれた圏域です。難病療養に関しては、県内で最も在宅人工呼吸療養のALS等の患者が多い圏域でもあります。

2ページは島根県の難病対策の一覧ですが、2の難病相談・支援事業が、主に患者の療養支援の事業です。16の事業のうち、1難病相談・支援センター事業については、保 健所と、事業委託をしている難病相談支援センターが、分担して事業を実施しています。四角で囲った部分の患者・家族教室開催事業、ピアサポート養成・ボランティア育成事業、難病医療研修事業については、保健所で実施しています。3の難病患者地域支援対策推進事業については、主に保健所で事業を実施しています。2の重症難病患者入院施設確保事業は、難病医療専門員の配置が1名ありますので、そちらで事業を実施しております。4保健師専門研修事業、5難病患者等ホームヘルパー養成研修事業、6在宅重症難病患者一時入院支援事業については、県庁で実施しています。

3ページに「島根県難病患者等支援ネットワーク」を図で示していますが、これは先ほどの事業等で患者家族を支援する関係機関のネットワークとして示したものです。これは先ほどのものをネットワーク図にしたものですので、御覧ください。

4ページです。ここで出雲保健所の取組を紹介させていただきますが、特に平成14年度から実施している「難病患者在宅療養支援検討委員会」、いわゆる難病対策地域協議会に相当するものですが。この会を核として取り組んできた柱について報告いたします。出雲圏域では平成7年頃から患者会の組織化やボランティア育成に取り組んでいましたが、平成10年に初めて管内で人工呼吸器を装着した難病患者が在宅療養をされることになりました。地域での受入れについて、新たな体制づくりが必要となったことを機に、地域の関係機関が連携し、在宅療養患者の地域支援体制を検討し、その対策を推進する場として難病患者在宅療養支援検討委員会を設置しました。

 現在の開催状況ですが、開催は、年間12回、必要に応じて具体的な検討を行うときにはワーキングを開催しております。メンバーは、拠点病院・協力病院の医師、医療ソーシャルワーカー、かかりつけ医、医師会からもお出掛けいただいていますし、薬剤師、訪問看護師、ケアマネジャー、訪問介護、難病医療専門員、市の担当課、保健所等のメンバーで開催しています。検討内容は、難病療養支援の取組状況の共有、療養に関する地域課題の提示をして、ここで検討します。地域課題の提示は保健所からだけの提示ではなく、関係機関からの提示もあります。

 この会の中で中心に取り組んできたことは、1.人工呼吸器使用患者のスムーズな在宅移行支援、2.在宅人工呼吸器使用患者の安全対策、3.介護者負担の軽減、4.患者、家族の療養上のQOLの向上に取り組んでおります。次のスライドで、先ほどの2.在宅人工呼吸器療養患者の安全対策の取組を1例として詳しく紹介いたします。

 私たち保健所では、保健師等による個別支援を大切にしています。個別支援というのは、訪問やカンファレンスにより患者・家族の状況や療養上のニーズを把握し支援方針を明らかにするとともに、必要に応じて方針を評価し、サービスの見直しをしたり、調整することを個別支援の中で大切にしています。

 この図のように、平成18年から人工呼吸器の医療安全報告システムという出雲圏域で行ったものです。在宅での人工呼吸器のトラブルがあったとき、その情報を保健所に集約して、関係者にフィードバックすることで注意喚起を図るもので、これを実施していましたが、その下の課題のように年間のトラブルの、報告件数が減らない、訪問時に確認してみると点検や部品交換がいつ行われたのか支援関係者にも分からない、また、誰が、いつ、どこを点検するのか等が不明確であるなどの課題が、訪問や関係者のカンファレンス等や患者・家族の不安の声を聞いた結果、明らかになりました。

 その課題を右の「難病患者在宅療養支援検討委員会」に提案し、他圏域も含めた仕組みづくりが必要ではないかという検討結果を得て、県内の各保健所の難病担当保健師等関係者、難病相談支援センター職員、県庁担当部署が集まる「難病相談・支援センター事業関係者連絡会」を年に2回程度、設けています。その場で協議し、全県で安全対策の実態調査を実施することになりました。その実態調査の結果から、適切な保守点検の実施と日常点検の充実、トラブル事例を再発予防対策につなげる家族指導の充実、在宅での療養環境における緊急時等の事故予防対策という課題が挙がりました。この課題を踏まえて、県庁担当課が事務局となる「島根県難病医療連絡協議会」のワーキングで「在宅における人工呼吸器安全使用のガイドライン」が平成23年度に作成されています。これを現在も全県の保健所で活用しています。このガイドラインの中には、在宅人工呼吸療養を選択されたときの療養室環境の具体的な整備、家族への指導、保守点検の実際、災害時の備えなどが盛り込まれています。

6ページの図です。先ほど具体的な取組で紹介しましたが、島根県が実施している難病対策の事業で表したものです。特に、難病患者地域支援対策推進事業を活用し、患者・家族の訪問相談や訪問指導等の事業や、「在宅療養支援計画策定・評価委員会」、「ケース検討会」などで個別支援を実施しながら、そこで把握した圏域の現状や課題を「圏域版難病医療連絡協議会」、いわゆる難病対策地域協議会の場で共有し、地域の支援対策を関係機関とともに検討していくというフローです。また島根県では、圏域版難病医療協議会を地域支援対策推進事業に位置付けて実施しています。

7ページです。これは、保健所において地域支援対策推進事業を活用し、県庁と連携して対策や施策につながったものを年度経過で一覧にしたものです。難病患者を地域で支える仕組みづくりにおいて保健所が果たす役割として5点を枠の中に記載しています。1患者や家族の療養ニーズを個別支援を通して把握。2在宅支援関係者と難病療養に係る課題を共有化。3具体的な課題と対策を検討する場として難病患者療養支援検討委員会や難病地域対策協議会等の設置と運営。4各関係機関、団体の役割の明確化。5課題や取組を他の圏域に波及し、県全体の施策化に協力していくことが重要と考えています。

 最後に、これまでお話してきた難病対策地域協議会は、会議の設置や開催だけではなく、活動体制の確保や整備、人材育成の体制などの基盤があって、その上で難病保健活動が効果的に実施でき、難病対策地域協議会を活用することで、地域課題への施策や、もっと広く全県の施策化につながると考えています。効果的な難病保健活動継続のために必要なこととして、特に私たちが難病支援に活用できる地域支援対策推進事業を含めた難病特別対策推進事業の拡充、保健所や県庁担当課等の行政組織の活動体制と人材育成。また地域の支援関係者である訪問看護師、介護支援専門員、訪問介護等、ここには書いておりませんが、介護保険の使えない若年難病患者を支援するための相談支援専門員等の人材育成が必要と考えます。それから、介護保険サービス及び障害福祉サービスとの有機的連携を図るためには、市町村との積極的な連携と協働が必要だと思います。以上です。

○福永副委員長 難病対策地域協議会の1つの立派なモデルになるかと思います。次は佐賀県難病相談支援センター所長三原睦子様からお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

○三原参考人 佐賀県難病相談支援センターの三原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。センターはまさしく患者さんたちのための拠り所でなければならないと私は考えます。実は私自身も20代のときに難病を患い、かなり落ち込み、家族や周囲の方々に大変迷惑をかけました。そのときに難病相談支援センターがあったら、何年も孤立せずに済んだのではないかとつくづく思います。難病のために孤立されている方々を何とか救っていきたいという思いでセンターの指定管理を引き受けております。ですから、このセンターは患者、家族に寄り添った、何でも気軽に相談できる、ホッとする温かい場所でありたいと考えます。

 佐賀県難病相談・支援センターは、平成16年から現在まで指定管理者として、患者の声に耳を傾け、課題解決のための活動をより身近な所で展開をしてきました。平成12年より相談事業を実施していたNPO法人佐賀県難病支援ネットワークに指定管理方式で委託されました。佐賀県難病支援ネットワークの理事は、元行政職員、大学准教授、NPOの中間支援組織団体、介護職員、患者団体等、志を同じくする多職種で構成されており、理事会でセンターの今後の活動内容等を決定しています。1ページにありますように、いろいろな展示物がありますが、これは患者さんたちの手づくりの作品です。

2ページの「佐賀県難病相談支援センターの設置目的」に、難病患者等の療養上、日常生活上における相談・支援・地域交流活動の推進及び就労支援などを行うと書いてありますが、様々な相談者に対して、面接、訪問、他機関との連携調整など、一人一人に合わせた丁寧な支援を行い、相談件数は年々増加しています。また、難病患者が利用しやすい時間や、休日のセンター開館、患者のニーズに対応し、行政の枠に縛られない支援等を行っています。

 平成25年度の相談件数は7,332件、平成26年度はそれをさらに上回る件数になる状況です。月平均611件、関係機関とのケース会議も年間126回ですが、ケース会議が1日何回もあることがかなり多くなってきております。来館者数4,775名、相談員2名、就労支援員2名、事務職員1名で、この数だけでは対応に当たるのがなかなか難しい状況です。

 次ページは佐賀県難病相談支援センターの活動内容です。1番目は相談です。患者等からの相談により当事者のニーズを聞き、課題を把握します。またピアサポートによる相談が主体です。相談員は臨床心理士に依頼して相談員研修等でスーパービジョンを受けています。2番目の支援においては、ドクターとの連携により手帳等の支援、社会保険労務士との連携により障害年金の支援。3番目は企業においての支援ですが、就労支援と関係機関との連携です。これはハローワークや障害者職業センター、就業生活支援センター、企業や行政機関等との連携により、年間20名が一般就労に決定しています。患者団体との交流会、講演会、研修会等を開催し、センターに来られない方々のために患者宅を訪問したり、患者育成のためのピアサポーター養成講座を開催しています。

 このように相談を受け、相談者のニーズから地域の課題を共有し、解決のためのケース会議を何回も開催して、施策に反映し、それを患者たちに還元しています。施策の内容としては、就労支援シンポジウムや災害時要援護者の避難訓練、地域防災計画への反映、大規模災害時における難病患者の行動・支援マニュアル、緊急医療・支援手帳の作成と配布等を行っています。

 次ページは、センターの目的です。支援の対象、センターの在り方ですが、私たちは地域で孤立している難病患者を救いたいというミッションのもと、3本柱を掲げています。1番目は特定の疾患に偏らない相談・支援体制の構築、2番目は相談者のニーズに応じた事業の展開、そのためには3番目の関係機関との連携は不可欠です。難病と言っても、その範囲は広く、小児から成人、医療費助成の対象とならない疾病、希少疾病と、まだ研究がなされていないものまで多岐にわたっており、その全てに門戸を広げ対応しています。

 このような取組は私たちだけでできるわけではなく、どのように関係機関とネットワークを構築していくかというところが、このセンターに問われているところだろうと思います。一定の基準を設けて支援せざるを得ない行政の対応の隙間を埋めるように県民や企業等に理解を求め、現時点で考えられる最善の方法を選択して支援を行っています。

 続いて、地域の課題を施策に反映していく活動です。就労支援シンポジウムを開催しています。テーマは大体決まっており、「あなたの働きたいを応援します」です。難病を明かして就労する方々は少なく、急に病気を発症することによって、どこに相談していいのか、どのような支援があるのかを知らない方が多いのが実情です。また、治らない疾患と診断をされて退職をされている方々の多くは、これ以上、職場に迷惑をかけられないということで、使える制度を知らないままに自己都合で退職をしている方がほとんどです。もし、その方が生計中心者であれば、家族は路頭に迷ってしまいます。その後、病気を隠して就労するために必要な通院への配慮ができなければ疾患が悪化してしまい、就労を継続できずに悪循環を起こしてしまいます。難病に対する社会からの理解はまだまだできていないのが実情です。

 難病相談支援センターでは疾患に配慮をしていただきながら、患者を雇用している企業や、病気を明かして就労している患者当事者に具体的な取組を話していただき、難病があっても普通に働けることをPRしています。この取組はセンター開所からほとんど毎年のように継続して実施をしており、メディアからも多く取り上げていただくために広く周知をされ、地域において難病患者が安心して働ける環境整備を進めることができています。更に関係機関とのネットワークにより一般就労に結び付いた方々のアフターフォローも行っています。

 次に「一般市民が中心となった組織の結成」です。センターが就労支援の取組を行う中、一般企業で働く専門家集団の方々が、私たちも難病患者を支援したいという志で平成25年に病気を明かしても就労できる環境づくりを目指して「難病サポーターズクラブJAPAN」が全国で初めて結成され、ともに活動を展開しています。サポーターズクラブJAPANは難病患者を理解したいという企業を登録し、現在65社の企業が登録をされ、企業開拓やシンポジウムの開催等を側面から支援していただいています。

 次ページは「レッツチャレンジ雇用事業」です。これは障害者手帳を持たない難病患者が多く、法定雇用率にカウントされないために進んで就労しようという企業がなかなかありません。そのために佐賀県の単独事業で、疾患に配慮をしていただきながら本人の強みを生かした就労支援の取組の1つです。疾患に配慮をしながら雇用したいという企業と患者とのマッチングにより、6か月間の人件費を県が企業に支給して、併用して教育プログラムを導入しています。これには佐賀県就労支援室、就労支援員が企業開拓を行い、佐賀県難病相談支援センターとの連携協力のもと実施しています。

 次ページは「佐賀県難病患者支援企業登録制度」です。これはサポーターズクラブJAPANの取組に呼応するように、佐賀県においても難病患者の就労支援を地域で支えていこうという企業が佐賀県及びサポーターズクラブに登録をして、就労支援シンポジウムや様々な活動を側面から支援をしていただいています。また、佐賀県のホームページに配慮のある企業として掲載されています。現在、同じ65社が登録しています。

 次に、ちょっと変わった取組ですが、「1qトリソミー(モノソミー)症候群の奏汰さんを助けたい募金活動」です。これは希少疾患に関する支援では、NPOの中間支援組織である公益財団法人佐賀未来創造基金との連携による募金活動を提案して、県民へ協力を呼び掛けるなど大きな原動力となりました。その活動により疾病の治療研究の着手、患者会発足や希少疾病に対する理解を深めることにもつながりました。佐賀で開催されたキックオフ大会では、参加した患者家族の強いきずなと、関係者のネットワークの構築を確認することができました。これは1人の患者家族の声が大きな成果をもたらすことを証明する事例となりました。

 更に、この希少疾患が平成271月から小児慢性特定疾患に追加されたことは、他の希少疾患を持つ患者家族にとっても、大きな希望につながりました。県の担当課からは、このような関わりができたのは難病相談支援センターの範囲を限定せず、悩みや不安を抱える患者家族に対応したいという姿勢と、フットワークの軽さ、関係機関とのネットワークのお陰ですと言われています。

 次ページです。難病があっても地域で尊厳を持ち、暮らしていける社会、そのためには難病相談支援センターが存在し続けることが必要であると考えます。新しく就任された山口祥義知事が就任後、間もなく、難病相談支援センターを訪問され、患者の声を聞いてくださいました。そこで佐賀県知事からの言葉を紹介させていただきます。

 佐賀県においては、難病を抱えた職員が相談や支援に当たり、患者の気持ちに寄り添ったピアカウンセリングが行われている。様々な相談者に対して面接、訪問、他関係機関との調整など、一人一人に合わせた丁寧な支援を行い、相談件数は年々増加している。センター運営に関する取組は難病対策の関係者からも注目を浴び、毎年全国から視察に来られるほどである。また、その活動はメディアに取り上げられることも多く、難病に関する様々な情報提供につながっている。

 このように様々な関係機関とのネットワークが構築されているこのセンターは、地域における難病対策への貢献度は大きい。難病に関する法制化が行われ、難病の患者に対する総合的な支援が求められている中、このセンターの運営主体である難病支援ネットワークの役割はますます重要になってくると思われる。この団体の活動を評価するとともに、今後の活動への期待は大きいと言われています。

 最後に「難病相談支援センター今後の展開」です。1つ目に、就労支援、災害時支援、希少疾患に対する支援を継続してまいります。2番目に、難病対策法制化により、対象とならなかった難病や成人以降(トランジット)など、残された課題も多く、地域で普通に尊厳を持って生きられる社会の構築に努めてまいります。3番目に障害者総合支援法による福祉サービスが円滑に利用できるよう、認定の在り方も含めて、行政への働き掛けをして、必要な患者が利用できるよう支援してまいります。4番目に、保健所や難病拠点病院が開催している難病対策地域協議会等に当事者団体の患者家族が参加できるように働き掛けるとともに、当センターを運営している法人の協力体制も強化してまいります。5番目に、佐賀県難病相談支援センターが第三者機関として十分にその役割を果たすことができるよう組織体制の強化を図るとともに、他の障害者団体や市民活動団体との連携体制を充実してまいります。6番目に、全国の患者会や難病連、難病相談支援センターや日本難病疾病団体協議会等との連携を充実させ、特に九州ブロックにおける難病連、難病相談支援センターとの連携構築を進めてまいります。7番目に、行政や企業に対して難病患者の課題解決のための事業を提案し、協働して実施することを目指してまいります。以上です。ありがとうございました。

○福永副委員長 どうもありがとうございました。難病相談・支援センターは御存じのように、各県によって設置主体が違います。佐賀県の場合はNPO法人が担っていることになるわけです。ありがとうございました。次に介護サービス事業所りべるたす代表で、相談支援事業所「こすもす」の相談支援専門員である伊藤佳世子様からお話を伺います。よろしくお願いいたします。

○伊藤参考人 私は千葉市中央区にある「相談支援センターこすもす」の伊藤と申します。介護事業所もやっていて、福祉の立場からでの発言にさせていだきたいと思います。私は普段相談支援専門員として、障害のある方のケアプランの作成をしております。大体、今持っている件数が50件ぐらいですが、そのうち3分の2の方が難病を持つ方という状況です。

 今日はこの資料を読みつつ、補足をしながら難病患者に対する現場での現状と、今後の展望についてお話をしたいと思います。

 難病支援については、難病の方が障害福祉サービスを利用される際に、そのニーズは2通りあると感じています。1つは、手帳を所持しておらず比較的障害が軽度であり、就労の際の働きにくさや体調が悪いときなどに何らかの支援が必要な方々です。もう1つは、手帳を所持しているか、手帳所持ができるような状態で、進行性の病状や医療的ケアを必要としている超重度の障害がある方々です。難病支援と言っても、ひと括りにできないなと感じております。

 千葉市の例を挙げますと、千葉市は人口100万人の都市です。難病の方が障害者総合支援法に入る以前の平成253月時点では、千葉市難病ヘルパー事業での手帳未所持者の利用者は1名でしたが、平成273月時点では、手帳未所持者の障害福祉サービス利用者は8名に拡大しました。

 また、平成263月の千葉県相談支援事業所連絡協議会のアンケート調査によりますと、これは相談員向けにアンケートしたものですが、難病の相談を受けたことがあるというのは、相談支援事業所全体で3割。全相談件数のうち、難病に関わる相談は1割未満と回答した事業所が58%という状況でした。難病に関して、ほかの相談と比べて難しいと感じている相談員は84%。難しく感じる部分は、「難病に関する知識がないこと」がトップで、「社会資源不足」「医療との連携の困難さ」が続いています。相談員が難病に関わる相談で困っていることは、「家族支援」「支援内容」「体調・病状」「本人のメンタル面」「社会資源がないこと」が多く挙げられていました。就労に関しては、障害者就業・生活支援センターに相談が上がってくるタイミングが遅く、退職後の支援になっていることが多く見受けられるそうです。

 希少疾患であるが故の事例の少なさのため、ノウハウの蓄積につながらず、関係者への周知や連携が進まず、苦手意識が解消できていない現状が明らかになったのではないかと思います。アンケートから1年たちましたが、今年度は相談支援専門員に向けて、難病の相談支援の研修を千葉県で幾つかやっていて、それはいずれも満席で、多くの相談員が研修を受けているということがありまして、この辺がだんだん変わってくるといいかなというところです。

 事例の少なさについてです。従来、手帳所持者については、障害福祉サービスなどを利用可能でしたが、医療的ケアなどのニーズに合った社会資源が不足しているという現状があります。不足している社会資源の内容としては、喀痰吸引等が可能な介護職員、医療的ケアに対応できる短期入所事業所などであり、医療的ケアも含めて重度者に対応できる重度訪問介護事業所は、地域によっては事業所自体がない所もあります。また、重度者は移動が困難で、特に通院が遠くて、難病の相談専門の病院がほとんど千葉市にあって、そこに行くまでが大変遠いという方が多く、そこまでの移動手段と、その際の介護者をどのように確保するかという課題があります。これは相談員のアンケートのところで、こういう相談を受けて困っているということが多くあったのですが、病院まで2時間半とか3時間かかるような方がいて、そういう方の支援をするヘルパーさんを探すのが大変とか、タクシー代が非常に高くかかるという相談が多く寄せられているそうです。

 社会資源を増やす工夫として、こういった地域の課題に対して、地域独自で対応しているところがあります。千葉市では、喀痰吸員等が可能な介護職員を増やすため、千葉障害福祉サービス事業所に対し、喀痰吸員等研修に関する要する費用の一部を助成する事業を行っております。これは、なかなか喀痰吸員等研修を受けてくれる事業所が少ないということで、千葉市がなぜそれをしないかというアンケートをしたところ、ヘルパーステーションの負担が大きいということがありました。また、難病の方の利用がそれほどないのに、受けることのリスクが高いという話があったので、ヘルパーステーションに対して助成を行っております。それによって、今年度はかなりヘルパー事業所で喀痰吸員研修をやれる所が増えたという実績があります。

 レスパイトについては、千葉県においては、医療型短期入所を行っている病院が6か所しかなく、千葉市より南の地域には全くありません。その6か所も重症度判定がないと入れないとか、人工呼吸器が付いている方に関しては難しいとか、いろいろ条件があって、一部の病院に限られて殺到している状況になっております。なかなか短期入所の利用ができないということがあるのですが、私はよく難病のお子さんのケアプランを書いたりもするのです。そこに入っていますと、重症度判定を受けることに関しては、すごくデリケートな問題があります。お母さんたちが、お腹にいるときからお子さんの難病が分かっていて、そこでショックを受けていて、更に短期入所を使いながら何とか在宅をしていきたいということで、難病支援医療を受けようという方もいらっしゃるのです。その際に、重症度判定がないとレスパイトが難しいという、もう1つの問題があって、そこでまたお母さんたちが苦労するというようなことがよく見受けられます。

 千葉市より南の地域に全くないので、県内の幾つかの市町村では、医療的ケアを必要とする方を福祉型短期入所でお受けした場合、条件付きで助成を行っています。医療型短期入所で短期入所を利用できない方を福祉でどううまく受けていくかということで、福祉型短期入所と医療型短期入所のお金の差が大きくあって、医療型的短期入所を利用すると125,000円ぐらいの介護給付費が出るのですが、福祉型で受けると8,800円ということで、医療型対象の方が福祉型で受けるというのは非常に困難ですが、それを何とかうまくやってもらおうと思って、幾つかの市町村では、そこに補助費を出しております。

 また、ALSのようなコミュニケーションが困難な重度障害者については、コミュニケーション支援事業がセットで入らないと、医療機関でのレスパイトが困難と言われております。本来は治療を行う場所である病院では、短期入所で入っても入院患者と同等、あるいはそれ以下の対応となり、生活を支援する視点や余裕もないために、本人や家族の満足度は低い状況になるのではないかと思います。広域部では、千葉県で人工呼吸器装着者向けのレスパイトベッドを4床作ったのですが、それは大変望まれて、患者会の願いがあって、4床作ったのですが、実はそれがなかなか使われなかったということがあって、どうしてそれを使われないかというアンケートをしたときに、コミュニケーションが難しい人が知らない病院に行くとか、マンツーマンで人がいたほうがいいと感じている方が、重度の障害の方では多く、レスパイト先が病院というのが必ずしも良いと思われていないというアンケート結果が出たので、そういうことを書いております。

 このような重度障害を持つ難病者が、地域で暮らすことを想定した制度が不安定、報酬の低さなどがあり、現在は市町村の単独事業で穴埋めを行っている状況がある中で、今後、重度障害を持つ難病者の地域生活を支援する制度の更なる充実が必要と思っております。

 行政の障害固定の概念については、従来の障害福祉支援策においては、障害固定の概念が強く、進行性、あるいは日内変動等の概念が薄かったと思いますが、障害者総合支援法施行後は、障害は必ずしも固定したものだけではないとの概念が浸透したことは、難病者にとって一歩前進と言えます。しかし、進行性の疾患であることは知っていても、制度の運営上、介護用のベッドや痰吸引器や意思伝達装置を早めに支給するなどの配慮が行えていない市町村がまだ多くあります。また、難病の患者さんの進行と制度のマッチングの難しさも感じています。

 例えば、進行が早いALSの方などでは、車いすやマットを1度作っても数か月でそれが使えなくなって新たに購入し直すということもあり、介護保険が使えない若年難病患者にレンタル制度がないのは経済的な負担が大きいと思います。

 在宅重度難病障害者の支援についてですが、重度の難病支援は、医療者と家族で生活を組み立ててきた歴史が長く、喀痰吸引等のケアなどをはじめ、そこに福祉職が関わっていく違和感は、当事者にも医療者にもまだ残っています。そのような中、医療型短期入所では受け入れ先が限られるため、医療型対象の方が福祉型になだれ込まざるを得ない状況です。福祉型でどのように医療型短期入所の対象の方を受けるのかが喫緊の課題と言えます。難病の方に関しては、この件はすごく大きな課題と私の地区ではなっております。

 最近、常時マンツーマンの介護が必要な方をグループホームでお預かりするに当たり、「体験入居」の支給決定を受けて、区分4以上の特例措置として外部ヘルパーを利用する形で対応しています。本来、医療型短期入所の対象の方を福祉型でお預かりする上で、市とも協議して、このような形であればお受けすることになりました。通常の福祉型短期入所ではマンツーマンの対応は不可能です。ただし、その際の課題は、御本人についての最新の医療情報が病院から在宅に共有されないことです。その橋渡しが御家族に任されていたり、病院に入院しないことは自己責任とされ、本人にリスクを説明するにとどまるケースもあります。病院と在宅、医療と福祉の連携は相談支援専門員にかかっていますが、病院サイドへの周知も浅く、病院が相談支援専門員に積極的に情報提供するということもまだまだ進んでいません。様々な機関や事業所の多職種が複数関わる上で情報共有は欠かせませんが、そこに課題があり、それが大きなリスクを生む面が否めません。しかし、それは医療的ケアが必要な方を福祉で支援することが難しいというわけではないと思います。今後、どのようにしたら福祉型で安全に受けられるかの検討が必要だと思っています。医療ではマンパワーが足りなく、難しいから福祉で難病支援をするという状況なのか、それともあくまで生活支援は福祉でやっていくということなのか、この辺がはっきりしないと、なかなか連携がうまくいかないのかなというのを感じています。今日はこのような機会を与えていただいて、どうもありがとうございます。

○福永副委員長 どうもありがとうございました。伊藤参考人には福祉の視点から報告をしていただきました。それでは最後に、渋谷公共職業安定所統括職業指導官の萩生田義昭様からお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

○萩生田参考人 御紹介をいただきましたハローワーク渋谷の専門援助第二部門統括職業指導官の萩生田と申します。本日はよろしくお願いいたします。

 最初に資料1により、難病患者に対する雇用支援策について御説明いたします。資料119ページをお開きください。こちらに難病患者に対する雇用支援策が挙げられております。まず、難病患者を対象とした支援施策としては左側です。(1)発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金。(2)難病患者就職サポーターの配置。(3)難病患者の雇用管理に関する情報提供の実施があります。また、難病患者が利用できる支援施策としては右側になります。(1)ハローワークにおける職業相談・職業紹介。(2)障害者試行雇用(トライアル雇用)事業。(3)職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業。(4)障害者就業・生活支援センター事業があります。詳細は限られた時間の中ですので、全部は説明できない状況ですが、この辺りの詳細については、この後の20ページから26ページに出ております。今回は、この中で先ほどの左側に(2)難病患者就職サポーターの配置というところがありますが、これについては資料5で御説明させていただきます。

 資料5の表紙をめくって1ページをお開きください。難病患者就職サポーターについては、就職を希望する難病患者に対するきめの細かい就労支援や、在職中の中途発症した難病患者の雇用継続に向けた支援等を行うために、渋谷所へ平成259月から配置されました。これは全国15か所のみということもあり、関東圏では東京、埼玉、神奈川のみの配置です。渋谷区の広尾に東京都難病相談・支援センターがあるので、就労支援に向けて連携の取りやすい近隣ハローワークということで渋谷所の配置になりました。

2ページ、難病患者就職サポーターは、勤務日数が月10日です。うち1日は難病相談・支援センターでの出張相談を行っています。サポーターとの相談は基本予約制としており、1枠相談時間は1時間で、14枠の相談を受け付けています。相談の予約状況として、現在は大体2週間待ちで、混雑しているときなどは1か月以上先でないと予約が取れない状況です。

 難病相談・支援センターでの出張相談は、毎月第3金曜日に設定していて、こちらも予約制で、11時間弱の相談時間として5枠の相談を行っております。こちらの出張相談も毎回、予約相談枠は埋まっていて、翌月まで空きがない状況が続いております。

3ページ、難病患者就職サポーターの支援対象者は、症状が不安定であることや職業生活と治療の両立等で課題を抱えている方や難病による症状等によって、就業面で特別な配慮が必要な方で、難病特有の疾患の故に働くにも課題が多く、専門的な支援を要する方を支援対象者として支援をしております。

4ページ、ここからはサポーターが支援した支援者の状況について説明したいと思います。配置された平成259月から昨年12月までの取扱い状況になります。支援した方の総数は全部で153人になります。基本は都内在住者ですが、関東圏では、例えば近隣の千葉県では、難病患者就職サポーターがいない状況なので、サポーターとの相談をしたいということで頼って来る方もいらっしゃるので、他県からの利用者もいらっしゃいます。全体で153名のうち5分の1が多摩地区在住者の方であったり、都内といっても、ハローワーク渋谷から遠い江東区、江戸川区、足立区という地域にお住まいの方もいらっしゃって、遠方からでもサポーターを頼って相談にいらっしゃる方がいます。

 遠方から相談に来られる方の中で、例えば潰瘍性大腸炎の方などは、渋谷まで来られる間でも交通機関の利用中にトイレの配慮をしなければならないとか、それ自体がストレスになるということもあって、近隣で支援ができないかという相談も受けていて、遠方から相談に来所される方の支援については課題でした。この状況については、来年度から難病相談・支援センターに難病患者就労支援コーディネーターの配置が決まったということで、こちらが機動的に出張相談による就労相談を行うということで、都内でも渋谷から遠方の場合や、多摩地区にお住まいの方などはコーディネーターと連携しながら、これから支援を行おうと検討しております。

5ページ、難病患者の性別については、ほぼ同数となっています。一般の求職者の方であれば、通常男女比を見ると、男性の方が多い状況ですが、同数となっているのは、サポーターの支援を受けて就職をしたいと考える難病患者の疾患の中では、次のページの資料にありますが、女性特有の疾患が多くあるというところがその理由かもしれません。年齢構成図もこの図のとおりになっており、30代の方を山として、30代、40代の方が支援を多く希望しております。就業の状況については、お仕事をされていない方の相談が124名で、圧倒的に多いところですが、在職中の方や休職中の方の相談もあります。例えば在職中の方であれば、現在フルタイムの勤務で残業もある中、疾患を抱えたままでは身体的に辛くて、転職を希望しての今後の働き方の御相談等があります。休職中の方であれば、例えば病状の悪化に伴って今は休職しているのですが、復職時を前に今後の働き方についての御相談があります。

6ページ、支援対象者の疾患の状況については、この表のとおりになっております。相談件数の上位の病名は、やはり難病患者の総数に比例して、相談者も多いと言いますが、サポーターは様々な難病患者の方の就労支援をしている状況が分かると思います。この後は、サポーターが支援した主な相談内容について挙げてみたいと思います。

7ページ、主な相談内容の例ですが、この中で、相談者の皆様が一番悩まれているのが、就労するに当たって応募先、就業先で難病を開示していくのか、開示せずにいくのかということです。この相談は一番多くて、そして難しい問題だと思います。この相談に対しては、開示、非開示のどちらが正しいかということはないので、サポーターはその相談者の過去の体験だったり、今後の働き方だったり、選んだ仕事内容だったり、病状に対するセルフケアの可否だったり、本人を支える回りのサポート体制の状況、今後の就労先の環境等を伺いながら、開示していくのか、開示しないのか、それぞれについて支援者と一緒に考えています。また、開示しての求人への応募に当たっては、応募の際に企業の人事担当者に、本人が難病の状況をうまく伝えることができないこともあるので、サポーターが本人に代わり、企業の人事担当者に疾患の状況、配慮してほしいことなどを伝えるという支援をしております。

 ほかに利用可能な公的支援制度についてとか、難病を発症されて職種転換を余儀なくされた場合にどのような仕事を選べばいいのか、同病者はどういう仕事に就いているのか、難病を発症されて、治療との両立が難しいので、仕事はやめたほうがいいのかとか、難病患者を優先的に採用してくれる企業の求人情報はないのかといった相談があります。

8ページ、こちらには難病患者を支援する中でサポーターが考える課題です。個人的な課題については、完治しない疾病と寛解を繰り返す症状との共存の難しさ、あと学齢期に発症し、就業可能年齢までに治療が長期化した場合などには、就業経験がなく社会性が乏しいといった社会的な未熟さ、難病の治療のために職歴にブランクがある、難病の発症に職業転換が必要となった場合の職業の見直し、などが挙げられます。

 企業の課題は、例えば求人への応募の際などですが、サポーターが支援者と一緒に選んだ求人先に、疾患の状況などからは問題なく就労できるということで応募して、そのことを難病サポーターが説明し、理解を求めた場合ですが、企業から難病というだけで健常者と同じように仕事ができないと思われて理解が得られなかったり、難病と言うだけで特別な配慮が必要と考えて、雇用管理に不安があるという理由で、応募を検討してくれないというような、企業側の難病に対する理解が進まないところで、偏見や無理解などがまだまだあるように感じます。

 制度的な課題は、地域の就労支援機関との連携をする中で難病患者の就労支援を行える所がまだまだ少ないように感じています。医療機関や他機関との連携先、連携方法について模索している状況があります。

 続きまして、9ページです。最後に、支援の事例を1つ挙げたいと思います。相談者の状況については、Aさん40代の女性の方です。20代の頃にネフローゼ症候群と診断されました。体のむくみとだるさからくる体調不良があって、状態が悪化すると安静を要する状態でした。発症を契機に鬱病を併発されて、メンタルヘルス外来に通うようになり、現在は週1回のカウンセリングを受けています。今までの就労経験は短期のアルバイトのみでした。長期で働ける仕事を探したいと、難病相談・支援センターでの出張相談で初回の相談を行い、その後、渋谷所で継続的に支援をすることになりました。

10ページ、このAさんの課題ですが、初回で把握した課題については、やはり寛解を繰り返す症状もありますが、それ以外にも精神面でのコントロールの難しさ、社会的経験の未熟さ、人間関係が不得意であったり、日常生活のリズムが崩れているといった就業するための準備に多くの課題があったので、この課題をクリアするために、まず最初に東京障害者職業センターと連携を取って、支援をすることになりました。

11ページ、東京障害者職業センターの支援メニューにある職業準備支援という8週間の訓練メニューを利用して、Aさんは職業センターに通い訓練を受けました。Aさんはここに記載した1~4の訓練内容を通して、8週間の訓練を修了した後に、Aさんの自己評価ですが、自分を見つめ直す機会となった、人間関係の構築に自信が付いた、事務・パソコン技能が身に付いた、4番が一番大きかったのですが、規則正しい生活リズムが確立できたと、難病の症状と向き合いながら、就職をする上での大きな自信を身に付けることができました。

12ページ、職業準備訓練を通して、職業準備性が整ったことを確認できたので、今後の支援策としては、やはり具体的な仕事探し、開示・非開示の整理、あとメンタル面のサポート、少し先の話になってしまいますが、就職後の定着支援を考えています。

仕事探しについては、まず難病患者就職サポーターによる求人選択時のアドバイスと、求人応募時の開示・非開示の整理を行いたいと思っております。

 メンタル面のサポートについては、精神障害者雇用トータルサポーターという、精神障害のある方を専門に支援する相談員がおりますので、そのサポーターとの面談の支援を行おうと思っております。これらの支援を受けながら、これから具体的な企業の求人応募について検討していくところです。また、このAさんの場合は基本的に難病を開示しての就職を希望しておりますので、就職後に課題があれば、ジョブコーチによる定着支援の利用も視野に入れております。ここに記載はないのですが、日常生活のフォローが必要であれば、障害者就業・生活支援センターに登録をして、生活面のフォローを含めて、継続して支援ができるような体制が作られればいいなと考えております。

 このように難病患者の就労支援は様々な課題を抱えている場合が多いので、その支援の用途に合わせて支援機関と連携しながら本人の就労支援を行っております。以上で、難病患者就職サポーターの支援について説明を終わりたいと思います。ありがとうございました。

○福永副委員長 どうもありがとうございました。本日のヒアリングも踏まえ、基本方針の検討に関して、委員の先生方から御発言、御意見を頂きます。参考人の方々に時間を守っていただきましたので、時間は予定どおりあります。順序として、1人の参考人に10分ぐらいずつ質問をお受けしたいと思います。10分をめどに質疑をしていただき、次の参考人に移ります。最初に、今若参考人の御報告に関して質疑をお願いいたします。

 島根県の場合には、出雲保健所以外でも、こういう形で保健所を中心とした取組をやっている所はあるのですか。

○今若参考人 島根県の7保健所のうち、6保健所が出雲保健所と同じような、難病対策地域協議会のような会を持って難病対策を展開しております。

○福永副委員長 保健所の保健師が主なコーディネーターというか、中心になってやっておられるのですか。

○今若参考人 私は、医事・難病支援課にいるのですが、各保健所に医事・難病支援課という、難病という名称の付いた課を持っていて、そこに難病担当の保健師がおります。難病対策地域協議会のようなものは、保健所として所長も参加し、全体で保健所の事業として実施、展開しています。保健師としては、担当して企画したり、会の運営をしたりというのは担当の者が実施しております。

○福永副委員長 ただ、保健師の場合には異動があるでしょう。

○今若参考人 はい。

○福永副委員長 そういう場合には、どのような形でカバーしているのですか。転勤で、難病だけ担当するわけではないでしょう。

○今若参考人 はい。難病だけが担当ではないのですけれども、島根県の場合、引き継ぎの手引きみたいなものを作っていて、難病の対策をするときには、必ずこういう引き継ぎをしましょうみたいな申し合わせをします。必ず、前任者が、難病対策地域協議会で出てきた課題がどこまで進んだかを、転勤のときにはきちっと後任の者に伝えます。転勤によって、難病対策の施策が減退しないというか、できるだけ上へ積み上がるような形になるように工夫しています。

 また、島根県の場合の難病対策は、保健医療計画、いわゆる法定の計画の中に難病対策を入れております。そのような形で、計画自体を進める中で、難病対策は落とせないという位置付けもあるということは強みかと思っております。

○春名委員 難病対策地域協議会の話に関連して。先ほど伊藤参考人からも、重度障害をもつ難病者の「地域生活を支援」する制度が必要なのではないかというお話がありました。今までの保健医療中心の難病対策を超えて、障害者総合支援法だとか、就労支援も含めて生活を支えていく、社会参加を支えていくというのが、これからの重要な方向性なのではないかと思っています。本日のお話では、まだ保健医療が中心でしたが、何か今後の方向性だとか、今後の課題だとか、そういうものがあったら教えてください。

○今若参考人 おっしゃるようなことは、島根県の今後の課題だと思っています。難病対策地域協議会のほうには、難病相談支援センターも参加しております。難病相談支援センターは、就労支援の部分とか、うちは県型保健所なので、県の業務と市町村の業務ということで、市のほうで介護保険サービスとか、障害福祉サービスを実際には展開していただいて、難病患者さんに提供していただいていることがあります。

 そういう所から出てきていただいて、同じ協議をする場で、今後は具体的に市町村であるとか、難病相談支援センターの就労支援という部分からの課題もどんどん出て、そこで検討できるような協議会にしていく方向にしたいと思っております。

○伊藤委員 3点教えてください。島根難病相談支援センターの委託を受けている「公益財団法人ヘルスサイエンスセンター島根」というのは、どういう組織というか、どういうことを目的にして作られたのかを教えてください。2点目は、人工呼吸器の医療安全報告システムというのは素晴らしいと思うのです。ただ機械が難しいので、技術的なことはどこが担当して情報を集めたり、修理・点検とか交換というような情報に結び付くのかをお伺いします。3点目は、保健所の役割の中で、「団体の役割の明確化」と書いてありますが、この「団体」というのは患者団体のことなのか、具体的にはどういうことを目指しているのかを教えてください。

○今若参考人 ヘルスサイエンスセンター島根は公益法人なのですけれども、もともとは島根難病研究所と言って、当初は島根大学医学部が出来たことに伴い大学の附属研究機関を有する財団法人として設立されましたが、今は公益財団法人に移行しています。ヘルスサイエンスセンター島根は、現在脳ドック等の各種健康診断を実施したり、地域医療支援のための臨床検査をしています。県としても難病相談支援センター事業の委託だけではなくて、移植医療の啓発推進のための「しまねまごころバンク」などいくつかの事業の委託をしている機関です。

 人工呼吸器の医療安全の点検等のことについては、人工呼吸器業者に、ガイドラインを作成するときのワーキングのメンバーの中に入っていただいています。人工呼吸器の点検については、業者による定期点検と、日常はドクターだったり訪問看護師、主には訪問看護師です。もちろん家族の方にも点検に協力していただかないと、ずっと安全は守れません。日常点検の部分のようなことを具体的にガイドラインの中に載せて、皆で役割分担をして、皆で見ていきましょうというものを作成しました。専門的な点検というのは、業者による定期点検がされています。

○福永副委員長 私も最近びっくりするのは、私たちがやっていた頃とは違って、人工呼吸器について、メーカーが速やかに対応してくれるようになったという気がします。地域によって多少は違うのかもしれませんが。

○本間委員 本日はありがとうございます。出雲圏域の対象になっている方は約1,500人という数字を出されているのですが、主に普段から面倒を見ている患者さんは、このうち何割ぐらいいて、主な疾病としてはどんな患者さんが多いのかが分かったら教えてください。

○今若参考人 実際に私たちが支援するので一番多いのは、神経難病の患者さんです。どうしても重症化しやすい、刻々と状態が変わる。支援関係者も、いろいろなノウハウや技術が必要ですし、患者家族の方も随分大変な思いをされていますので、そういう所の支援を主にやらせていただいています。

 多い病気として、潰瘍性大腸炎のような腸疾患、パーキンソン病、膠原病といった患者さんへの支援は、患者会を通じながらやっています。島根県の場合は、全県の患者会もあるのですが、圏域ごとにも患者会を作っています。その支援も保健所が一緒に役員会をしたり、このような活動をしたいというときには、その勉強会の企画をしたり、お手伝いをしたりという形でやらせていただいています。1,500人のうちの何人の方々を支援しているかは分からないのですけれども、会としては、ある程度のカバーはできています。個別支援となると、神経系の難病の患者さんが主になります。

○福永副委員長 まだあるかもしれませんが、次は三原参考人の難病相談支援センターに関しての御質問をお願いします。

○宮城島委員 大変優れた相談でびっくりしました。特徴的なことは、相談件数が我が静岡と比べて大変多いです。違いは夕方の相談(1719)に相談をしていることと、土・日に相談をやっていることが大変特徴的だと思います。相談件数というのは、どういうときが一番多いのか。日中なのか夕方なのか。それから、企業との就職の取組も大変素晴らしく取り組んでいます。どういうことで、こんなに素晴らしいことができたのかを、もう少し詳しく教えてください。

○三原参考人 相談の件数が多いということなのですが、いつ相談が多いかというと、月曜日が休館日なので、火曜日の相談が多いです。それから何時に多いかというと、この時間帯が多いというのは全く関係なく、患者さんが本当に困ったときに相談が来ます。時間に分け隔てなく、多いときには電話が通じないぐらい、何回電話しても電話がずっと話し中になっていることが多いようです。

 どうやってこのような取組になったかというと、これは私たちというか、周りにいる関係機関の方々が、難病相談支援センターのことを、マスメディアを通して、これだったら私たちも何とか支援をしたいということで、具体的な取り組みでは「サポーターズクラブの発足」とか、市民団体の人たちとの協働になってきているのかと思います。相談の中で、ニーズから地域の課題をしっかり明確にして、それを分析しながら施策に反映していく。その施策に反映した部分が、患者さんに還元されている。そういう部分で、患者さんからの相談が多くなっているのではないか。患者家族、企業、メディアを通して、市町の方、総合相談窓口の方々からの相談も結構多いです。

○益子委員 素晴らしい御報告をありがとうございます。教えていただきたいのは、年間で20名の方が一般就労に結び付いているという紹介がありましたが、就労に結び付きやすい職種があるのでしょうか。もう1つは、サポータークラブの登録が65社ということですが、こういう所に登録してくださるような職種で特徴があるのでしょうか。その種類ではなくて、何か特徴があったら教えてください。

○三原参考人 どういう就労かというと、その個人個人によって違ってきます。その方のキャリアでやってこられた部分を、強みというか、その部分を生かしての就労、若しくは重労働が難しい場合はパソコン関係、IT関係にと。どちらかというと、その人の強みを生かした就労になります。例えば英語ができるとなると、英語を生かしてとか、その人それぞれに合わせて違ってきています。今までやってきたことができなくなった方もいます。

 網膜色素変性症で、今までは見えていたものが見えなくなってしまった。これも自己決定なのですが、一旦盲学校へ行ってマッサージの国家資格を取って、自分で開業している方もいます。ALSのように制度はなかったけれども、自分が起業して、いろいろな所に訪問をされている方もいます。サポーターズクラブの65社は、様々な方の人脈を活かして、顔の見える関係の中で、登録が進んでいます。また、難病サポーターズクラブの方々は普通の一般企業に就職されている方々です。その方々の人脈とか、こちらのネットワークを通して、就労のシンポジウムに参加されたり、その後にサポーターズクラブに自分も入りたいということで入っていただいたりしています。それをバックアップしてくださっているのが行政機関で、そこがバックアップしているということで信頼もすごく強いところがあって、自分も登録しようという所が増えてきています。

○春名委員 佐賀では、難病の方の社会参加を支えようという、一般の方の意識や雰囲気が違うと、いつも感じています。萩生田参考人のお話にもありましたように、全国的には、企業の就職を支えるにしても、企業の無理解や一般的にも難病の人は働けないだとか、そういう無理解が多い中で、佐賀では以前から就労に関して毎年のようにシンポジウムを開催したり、新聞やテレビ、書籍などでの取り上げ方も大きく、市民の理解が深まっていくというのがそのベースにあるのではないかという気がしています。そういう経験とか、今後の難病の普及・啓発に関して参考になるようなことがあれば教えてください。

○三原参考人 春名先生には、シンポジウムには毎回御参加いただいて大変ありがとうございます。これといった取組というよりは、今、就労されている方々が、一生懸命その企業で働いて、その姿を見せる。働いている姿を見ることにより、就労支援のシンポジウムに登壇していただき、その姿を見ることにより、企業側が、これだったら就労継続できると思っていただくことができる。地域の中でも難病の患者さんは、先ほどサポーターズの中で言われていたように、クローズで就労されている事例が佐賀県でも多いのです。そういう方々が、クローズではなく、明かして配慮を受けながらできるにはどうしたらいいのかというのが、社会的にきちんと難病を理解できないと、難病を理解できる環境を作らないと明かせない状態が続いていくと思うのです。それを明かせる社会を、もっともっと全国に広げていければ有り難いと思います。今後とも、協力・応援を頂ければ有り難いと思います。

○葛原委員 私がお聞きしていて、非常に積極的な課題に取り組んでいるという感じがしました。そのことに関して2つ教えてください。お聞きしていると、社会参加に非常に積極的に取り組んでいる感じがしています。例えば、医療サポートとか、とかく出ているレスパイト入院とか吸痰という種類の医療サポートのことは余り出てこなかったように思うのです。医療サポートは、この協議会の中でやっているのか、それともそういうチームは別にあるのかが1つ目の質問です。

2つ目の質問は、ピアサポートというのも非常に有効だと思うのです。普通はこういう役所的な所とは別に、患者会などでやっている所が多いと思うのですが、佐賀県では、患者会とか、そういう方たちがボランティアか何かでピアサポーターになっているのかどうかを教えてください。

○三原参考人 1つ目の、医療的なサポートなのですが、これは難病医療コーディネーターという人が、佐賀大学の中に1人います。その前までは、レスパイト等をこちらでもさせていただいておりました。医療的な吸引といった相談はありますが、まず、それは保健所であるとか、難病医療コーディネーターに役割分担していただいて、その部分はそちらでお願いしています。ただ、こちらのほうで受けることもあります。スイッチ等のコミュニケーション支援関係も、病院に行かせていただいたり、施設に行かせていただいたり、患者さんのお宅に訪問させていただいています。

 ピアサポートなのですが、これは研修を受けた当事者がピアサポートをやっています。患者団体の育成については、ピアサポーターの養成講座で、傾聴の技術であるとか、患者会の中での個人情報保護の観点からどうなのかとか、そういうところにもきちんと入り込んだ研修のプログラムをさせていただいております。難病相談支援センターの相談員は、介護とか福祉の制度というものと、医療の制度等にある程度衆知している者を相談員として配置しております。

○駒村委員 包括的な生活の支援・相談をやっていたので大変勉強になりました。御意見を頂きたいのですけれども、資料12ページで関連する施策を書いていると思うのです。どうしてもこういう審議会というのは、制度・政策から見てしまって、生活の視点から落ちる部分があると思うのです。相談を伺っていて、大事なのだけれども、この中には落ちてしまっているようなことがあるのではないか。例えば、どうしても難病そのもののほうに目が行ってしまって、御本人の他の健康診断・健康管理が手薄になってしまうとか、家族の健康管理が手薄になってしまうとか、あるいは働き盛りに病気が発症して仕事を失うことにより、例えば住宅ローンが残ってしまったままで辞めてしまって生活が厳しいとか、そういう部分でより政策的に支援するような視点が、この中以外にもあるかどうか。もし、あれば御指摘いただければと思います。

○三原参考人 家族の健康管理ですが、例えば重症の患者家族の方々についてはレスパイト事業であったり、どちらかというと家族全員をサポートする体制をやっていかないといけないと感じております。家族療法と言っておりますが、そのような観点から、家族全体を支えていくような体制に対する支援をさせていただいています。

 それから、働いている途中での住宅ローンについても、様々な制度、住宅ローンを払わないでもいいような制度があります。そういう制度を知らせるとか、個人個人で相談の中身も違ってきます。そのような住宅ローンを抱えた方々についても、関係機関との連携の中で、本人の承諾を頂いて、プロの方にも入っていただき、私たちはケース会議に始まり、ケース会議に終わるのですが、ケース会議の中でそういう部分の解決を行っている状況です。

○福永副委員長 ありがとうございました。まだあるかと思いますが、一応、次に進ませていただきます。伊藤参考人のことに関して、いかがでしょうか。

○本田()委員 お話の中でレスパイトのこととか、かなり苦労されている状況をお伺いしました。福祉型というところで、福祉の中で見ていくというのはかなり難しいと思うのです。地域で支えていく中で、訪問看護や療養通所介護や小規模多機能とか、いろいろな複合的なものを組み合わせて、人工呼吸器を付けているような重度の方でも見られるような制度が少しずつ広まっているとは思うのですが、特に千葉市の場合、こういう施設を使ったり、制度を活用できるようなサービスはいかがでしょうか。なかなか難しいとは思うのですが。

○伊藤参考人 訪問看護は充実していると思います。人工呼吸器の方の在宅に関しては、レスパイトにはなかなかないのですが、御本人支援は割とできています。レスパイトは家族支援になってくるのかもしれませんが、そこの充実が難しいというのと、療養通所介護のようなものに関しては、人工呼吸器がある場合は、千葉市では通所の送迎はないです。ですから長時間の場合は、日中はヘルパーが支援するというのが一般的だと思います。

○本田()委員 療養通所介護は、人工呼吸器を付けている人でも行けるようなサービスということになっています。私は千葉市の住民なのでよく分かるのですが、すごく地域差がある所だと思うので、その辺りがこの中での難しいところかなと思いました。ありがとうございました。

○本間委員 どうも今日はありがとうございます。今の本田さんの質問と関連します。特に「医療と福祉のチーム支援」という所です。大変御苦労されているというのは敬意を表しますが、この問題というのは、今やっている高齢者中心の地域包括支援センターの抱える課題と、かなりダブっているところがあるのです。ですから場所がないということを考えると、支援センターあるいは訪問看護ステーションとの連携という形で、難病患者の世話も取り入れていくという方法も考えられると思うのです。例えば地域ケア会議なり市役所の会議なりで、そういった話あるいは提案というのはないものなのでしょうか。

○伊藤参考人 高齢者と障害者の相談員、地域包括の相談員と障害の相談員が一緒に話をする機会がまだ少ないというのが、現状としてあると思います。大人と子供の支援の仕方の連携とか、病院と地域というところで、話合いがまだまだ進んでいないのではないかと思っています。

○伊藤委員 1点お伺いしたいと思います。今日も資料で配布されましたが、「難病患者等に対する認定マニュアル」というのがあります。これはまだできたばかりですから、そう簡単には浸透しないと思うのですが、これができるまでの間の案の時代もあって、地域の中でどの程度浸透していないのかをお聞きしたかったのです。もう1つは、身障と介護保険の併用と言いますか。特に進行していく病気で介護保険のサービスだけでは足りない人というのは、身体障害者手帳もかなり取れていて、それをダブルで使うことが可能だと思うのです。そういうことは今、どのようにお考えになっているかをお聞きしたいと思います。

○伊藤参考人 「認定マニュアル」については案の時代も含めてだと思うのですが、相談員に難病の研修をするときなどに、こちらから利用して話を聞いたりしているので、少なくともそういう研修では使われているという感じです。

○伊藤委員 去年までのではなくて、今年の新しいものは。

○伊藤参考人 まだ浸透していないかもしれません。ごめんなさい。私が不勉強なのかもしれません。それと、障害と介護保険の併用については、40歳を超えている難病の方に関しては介護保険が優勢になっていて、それで足りない場合は障害福祉サービスとなります。その辺を柔軟に使える市町村と、介護保険を使うか障害福祉サービスのどちらかにしてくださいという感じで分かれている市町村があって、そこは課題になっているかと思います。

○福永副委員長 ほかにいかがでしょうか。では、また後であったらお願いいたします。最後に萩生田参考人に関してはいかがでしょうか。

○伊藤委員 難病も今日お聞きしたように、様々な段階でまだ支援が十分でない病気から、更に就職サポーターのところまで行っているのですね。これがもっと広がると思うのですが、その中で1点。これは患者がみんな苦しんでいることだと思いますが、開示か非開示かということです。つまり、病名を開示していく、いかないということに悩んでいるのです。三原さんの所では、これはある程度開示するように指導していると思うのです。「整理」と書いておりましたけれども、具体的にはどのような形で患者さんにアドバイスをされるのですか。あくまでも本人が決めるように、様々な情報や資料を提供していかれているのか。ここで具体的なお考えや進め方がありましたら教えてください。

○萩生田参考人 いろいろな支援をする中で、基本的には本人が選択するような形になっております。難病を開示するか非開示にするかというのは、御自分の中でいろいろな思いがあって決断されている場合が多いです。

先ほど潰瘍性大腸炎の話が出ましたが、例えば最近された相談の中であれば、幼少期に潰瘍性大腸炎を発症された方の相談があります。その当時は幼少期なので、学校でトイレに多く行くことでいじめに遭ったことがあって、それがすごくトラウマになっていて、難病については、絶対に開示したくないという思いがある方でした。

 このような場合、最初に難病サポーターが過去の状況を細かく聞き取りをする中で、その過去のトラウマを踏まえて、今後、開示・非開示どちらでいくかというのが大きな課題になります。今後について、どうするかということで、開示しないのであれば、就職先として、トイレの近い事務所を選ばなくてはいけないから、そうするとどれだけ仕事の選択肢が狭まるとか、いろいろな不利な材料もあったりしますから、そういう意味で、考えなくてはいけないことについての情報提供をします。あと、トイレの話になってしまいますが、通勤なども含めて、例えばどんな仕事を選ぼうかという場合、割とトイレが自由に行けそうな清掃系の仕事だと、「御自分1人で仕事をするような清掃だったらトイレが自由になりますね。」とか、仕事を選ぶときに考える選択肢を提供したりします。いろいろな情報提供をする中で、これからどうしていきましょうか?ということで、相談した結果、本人が「では、今回は開示でいきます」とか、「こちらについては非開示で」というように、やはり本人の意見を尊重しながら、本人に決めてもらうような支援を行っています。

○春名委員 難病患者就職サポーターのバックグラウンドや研修の体制、専門援助部門の中での指導、連携などでは、どういう感じで育成されているのかということをお聞きしたいと思います。

○萩生田参考人 ハローワークでは、やはり就労相談が大事になってくるので、就労相談のできる方が基本になってくると思います。ただ、私も採用に携わったのですが、就労相談ができて難病の知識も持った方というのは、正直言ってなかなかいない、かなり厳しい状況だと思います。では、どうするかということでハローワークの選んだ選択肢は、やはり医療面に強い方を採用し、うちで育てようという考え方になりました。今回採用した方は、バックグラウンドは救急医療の看護師で、保健師の資格を持っている方でした。ただ、これは本当に偶然なので、ある意味ではラッキーだったのかもしれません。そういう方が相談窓口にいらっしゃったときに、職業紹介窓口の職員が、求人情報を提供した結果、応募したという経緯があります。

 ですから、その方は正直言って就労に関する知識はないので、それについてはハローワークのノウハウを、そこにはいろいろな研修がありますので、専門援助第二部門で、就労相談のプロセス、またOJTを通して、技量を培ってもらいました。

難病を踏まえての就労に向けた相談については、難病患者就職サポーターが支援するのですが、具体的な求人探しから、応募に向けての就職活動全般になってくると、なかなか難しかったりします。その場合には、専門援助第二部門には、就職支援ナビゲーターという職員が、他におりますので、そのナビゲーターと連携し、この難病患者の方には、こんな配慮が必要なら、こういう仕事があるとか、応募には、こういうスタンスからアプローチしたらどうか?というように、サポーターにナビゲーターがアドバイスを行い、連携しながら相談をしています。

○山本委員 個々と全体について、よく分からなかったところが少しあります。今日は非常に素晴らしいお話を聞かせていただいたのですが、我々は難病対策ということで、割と疾患が限定されて議論できますよね。法律によって決められた行政サービスについては、もちろんそれが当てはまるのですが、逆に言うと患者側としては、自分の病気が難病か難病でないかということではなく、困っているということが全面に立つわけです。特に佐賀県のように積極的に取り組まれている所だと、どうしても自分もそこに入って是非サービスを受けたいとか、サポートを受けたいと思うわけです。そうすると、こんなに患者さんが広まるわけです。そうするとどういうようにするのか。少し線を引くのですか。それとも引かないのでしょうか。その辺を皆さんに教えていただきたいと思います。

○三原参考人 こちらで線を引くことは全く考えておりません。相談件数は増加傾向にありますが、相談支援員は皆さん本当に親身になって一生懸命対応しておりますし、患者さんたちも、そこで元気になった患者さんたちが、今度は支援のほうに回っていただくような循環ができているという状況です。それは県民・市民の人たちも一体となって、難病の支援を支えているチームになっているという状況です。

○山本委員 渋谷区のほうはどうですか。就職支援のほうも線を引かずに、皆さん支援をするという立場ですか。

○萩生田参考人 線を引くというのは。

○山本委員 我々が今考えている難病という中に限定してお仕事をされているのか、それとも自分が難病と考えられている方も、皆さんサポートされているのかということです。

○萩生田参考人 そのような線を引くことはないです。先ほど、私の説明のなかで、支援対象者の話がありましたが、当然、支援対象者というものはありますが、相談に見える方については、初回の相談は、受け入れています。相談をする中で、難病サポーターでなくても就労支援ができる場合もあるので、そこについては逆に難病サポーターではなく、就職支援ナビゲーターが支援をするということで、基本的に、最初の受入れは、線なくやっております。

○福永副委員長 今日は基本方針の検討ということで、幾つかの重要な課題に関して議論が深められたと思いますが、委員の中で何か他にありますか。

○伊藤委員 感想を含めてです。1つは今、山本委員がおっしゃったように、ここでは難病対策をやっているわけですが、では、それぞれの福祉サービスや様々な行政サービスが難病というように限定しているかというと、福祉のほうでも基本法や様々なものの中で言っているのは、それを限定していないのです。「手帳を持っている人にしか障害者福祉サービスは提供しませんよ」とは言っていないのです。また、総合支援法の中で、難病の指定をいろいろと進めていますが、それもここで討議した指定難病の定義でないものを用いてやっています。私は、そういう相談を受ける側はこのことだけをやっているのでは駄目で、様々なことをやっている中で、難病も入っているというのが理想だと思うのです。

 そういう意味では、前回からずっとうるさく言って資料で出してもらったのですが、「難病患者等に対する認定マニュアル」の平成273月版というのは、大変よくできていて、病気を持っている、あるいは難病で症状が様々に動く患者さんをどう支援するかということが、かなり細かく書かれております。認定に当たって何を注意すべきか、あるいは審査会もどうすべきか、医師もどのように書くべきかということも書いてあります。私は難病対策の議論を進めてきた中で、これは福祉サービスに関する中では1つの領域まで行っているというか、1つの高みまで行ったのではないかと思っております。この「認定マニュアル」を是非お読みいただいて、それぞれの福祉サービスや行政サービスで、ここに書かれている精神を参考にしていただければというのが感想の1つです。

 もう1つ、佐賀の御相談は本当に皆さん倒れるのが心配なぐらい、土曜も日曜もやっていて、なお動いているというのはすごいなと思います。そこで感じたことです。私たちが言っている難病対策の中での、難病相談支援センターの役割とは何かということです。少なくとも行政サービス機関ではないということです。どのような人がどのような悩みや相談で支援を求めてやってきているのか、やっている中で難病患者には難病患者の制度を用いた支援をやっていると思います。ですから、これは特定疾患の人の数ではないのです。相談に来られた人の数になっています。

 私は今日ご報告いただいた中で、改めて相談支援センターの役割とは何かというのを、是非今後検討していただきたいと思います。保健所には保健所の役割、医療機関には医療機関の役割、自治体には自治体の役割がありますが、わざわざ難病相談支援センターを作ったということは、それぞれ今まで持っているものとはまた違う、しかもそこでサービスまで含めて関係するのではなく、相談と解決のための支援、アドバイスをしていこうということだと思いますので、そういう形で三原さんは動いておられると思います。それについて、大変良い御報告をしていただいたという感想を言っておきたいと思います。ありがとうございます。

○福永副委員長 ほかに全体を通していかがでしょうか。

○本田()委員 今日の御報告、ありがとうございました。私も今、伊藤委員がおっしゃったことを感じています。難病相談支援センターというものの役割の中で、そこで何もかもが全部解決されるということは、まず難しいと思います。実は、がんの人の相談支援センターを立ち上げるときに、私もいろいろ勉強させてもらいました。やはり患者さんは生活のこと、仕事のこと、治療のこと、療養上の不安、様々なことが頭の中でぐるぐるになって、何が不安になっているかが分からない。何か不安だけれど、そういうものが自分の中で全然整理ができていないわけです。そういうものをいろいろ傾聴して話を聴き出して、それはここがいいよ、それはここでもできるよというものを整理して解決につなげていく役割を、是非持っていく形がいいのかなということを、今日のお話を伺っていて思いました。もちろん、そこで解決できるものもあるでしょうから、ある資源を上手に使うための役割というのがとても大事なのかなと、今日のお話を聞いて感じました。感想までです。

○福永副委員長 私も難病相談支援センターの所長をしている関係で、一言だけ言わせてもらいます。鹿児島県の場合は県の組織の中で行われていますが、県の行政でやっているのですが、管理課と相談課の2つに分かれています。管理課に関しては6人いるのですけれども、今度制度が変わったものですから、一時は朝から電話が鳴りっぱなしで、それこそ「電話がつながらない」と言ってクレームがファックスで来るぐらいの多忙さでした。相談課に関しては、「難病」と突然告知されてどこに相談すればいいのか途方にくれた人にアドバイスして、孤立させないことがたいせつだとおもう。言われた人がどこに行ってどうすればいいか分からないときのアドバイザーというか、孤立させないことが大切かと思います。センターで全部解決できるわけではありませんので、そのつなぎをしてくれるのが相談支援センターの大きな役割ではないかと思うところです。大体予定した時間に近づいているのですが。

○宮城島委員 難病の患者を地域で支えていくことになると、今紹介されたように、介護保険サービスや障害者福祉サービスですけれども、障害者福祉サービスや介護保険サービスを実施するのは市町村です。実際に難病は大変専門的なところがあって、保健所や県、特に専門的なドクター。専門的な知識がないとやれない。ところが実際にその生活を支えていくのは、市町村やいろいろな介護事業者です。我々は障害者のサービスでも十分に行き渡らないもので、できるだけ介護事業者に障害サービスも取り組んでいただけるようにお願いしているのですが、難病になるとハードルがますます上がってきます。実際にはいろいろなメニューがあるのですが、市町村レベルでやっていくことが大変難しい。これは感想ですが、我々も今大変悩んでいるところです。これから医療と介護の一体ということで、医療サービスに関して市町村は余り強くないですから、そことどうつなげていくかというのが今の実際の課題ではないかと思っています。

○葛原委員 先ほど就労のときの開示・非開示の話がありました。萩生田さんのほうは患者さんに任せるとおっしゃっていましたが、雇う側から見ると、実際に就労していただいてからいろいろな問題が起こるよりも、病気のことをきちんと言ってくれていたほうがいいということがあるわけです。我々も患者さんに入院してもらうときにどういう患者さんかによって、入院するベッドがトイレに近い所が良いか、洗面所に近い所か、ナースステーションかを考えて入院していただくぐらい、病院でも考えているわけです。特に就労だと、周りは健康な人ですから、そのことがもっと大事になるのではないかと思うのです。私自身、患者さんの気持ちは非常によく分かるのですけれども、基本的には開示する、又は事業者が開示ということに関して差別をしないとか、偏見を持たないという形の活動でやっていったほうがうまくいくのではないかという具合に、個人的には思っているのですが、いかがでしょうか。

 もう1つは、三原参考人のほうにですが、佐賀では就労に関して、開示・非開示はどうしていらっしゃるのですか。そのことについて簡単で結構ですから、お答えいただきたいと思います。

○三原参考人 佐賀でも開示・非開示は本人の決定が主です。しかしながら開示・非開示の前に、もっともっと社会が難病をしっかりと理解して、社会参加をしていくような社会にならないといけなくて、開示・非開示の問題ではないと私は思うのです。社会が包含してサービスを一元的に理解していくことが、すごく必要になってくると思います。

○福永副委員長 萩生田さんはどうですか。

○萩生田参考人 私も同意見です。企業の方の難病に対する理解が得られれば、開示・非開示などという話は必要がなくなることだと思います。私もその辺りが今後の課題だと思っております。

○葛原委員 私もそう思って、質問をさせていただきました。

○福永副委員長 それでは、本当にありがとうございました。では今後の予定について、事務局からお願いいたします。

○小澤難病対策課長補佐 委員の皆様方、ありがとうございました。また参考人の皆様方におかれましては、本当に貴重なお話を頂きましてありがとうございました。次回の難病対策委員会では、引き続き基本方針の検討について御議論いただく予定です。御議論いただく分野、日程等については、また追って御連絡させていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

○福永副委員長 それでは、本日の難病対策委員会はこれで閉会といたします。御出席の皆様、本当にどうもありがとうございました。


(了)

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