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2015年4月17日 第5回東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会  議事録

○日時

平成27年4月17日(金)   
15:30~16:50




○場所

厚生労働省専用第12会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事


○前田室長 本日は、大変お忙しい中を御参集いただきまして誠にありがとうございます。定刻より少し早いのですが、ただいまより第5回「東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会」を開催いたします。初めに、本検討会では、全議事カメラ撮影を認めさせていただきますが、議事進行の妨げとならないよう、指定の場所から撮影いただきますよう、報道関係者の皆様へ事務局よりお願いいたします。以降の議事進行は森座長にお願いいたします。
○森座長 本日は、委員全員がお揃いで、議論を進めていきます。円滑な議事の進行に御協力をお願いいたします。議事に入る前に、事務局から資料の確認をお願いします。
○安井室長補佐 資料の確認をさせていただきます。本日の次第と、1ページから資料1。3ページから資料2「前回検討会議事録」。37ページから資料3「被ばく線量と造血機能低下に関する文献のレビュー結果」。47ページから「報告書第2次案」。参考資料として、第1回から第4回の検討会資料があります。1ページから第1回資料17です。5ページからが第3回資料5です。13ページからが第3回資料6です。23ページからが第4回資料3ですが、これは若干の修正が入っています。2の(1)の丸1、丸2の所の一番下の行は、それぞれ第4条第4項の所に号数が書いてありますが、前回よりも号数の所をよりきちんと書いたということです。25ページからが第4回資料4です。メインテーブルの方については、関連の文献のコピーを置いております。以上です。
○森座長 資料の不足等はありませんか。よろしいようでしたら議事に入ります。事務局で、前回までの議論の内容、その後、お寄せいただいた意見を反映させて、本日第2次案を示していただきました。この第2次案をたたき台にして、本日は議論を進めていきます。論点ごとに、前回から変更のあった所を中心に説明していただき、その後に意見を頂くという流れでやっていきます。52ページからの、IIIの第1「長期的な健康管理について」を事務局から説明をお願いします。
○安井室長補佐 52ページです。「緊急作業従事者の健康診断等、離職後も含めた長期的な健康管理」の部分です。前回からの変更のあった部分について御説明いたします。第1の2のがん検診等の対象者の所の注書きです。前回は、国がどういう運用をしているのかについて御説明がありましたので、それに関する記述を入れております。注の「さらに」以下ですが、「国は、全ての緊急作業従事者の被ばく線量記録及び健康診断結果を保存するためのデータベースを運用している。さらに、全ての緊急作業従事者に対して保健指導等を実施する支援窓口を設置するとともに、(2)及び(3)の者に対して、被ばく線量記録や健康診断結果が記載された『特定緊急作業従事者等被ばく線量等管理手帳』を希望者に交付している」という記載を追加しております。
 53ページの3です。ここは、2の(3)のがん検診等の項目について変更すべき事項です。前回の御議論で、そもそもどういうポリシーでこの健康診断の内容を選んでいるのかという御指摘もありましたので、それを記載しております。がん検診等の項目については、一般住民に対して実施されているがん検診等に加え、100ミリシーベルトを超える被ばくをした者に対する追加の検査として妥当なものを選択している。最新の知見を踏まえて、がん検診等について以下の点を変更すべきであるということです。
 注1で、健康増進法第19条の2に基づく健康増進事業としての市町村が行っているがん検診をやっているということが書いてあります。具体的には胃がん、子宮がん、肺がん、乳がん、大腸がんですが、これは特定対策型検診として有効性が認められているものですので、大臣指針では取り入れています。この中から女性特有の疾病を除いております。174人は全て男性ですので、それを除いたという観点です。
 53ページの(1)に戻ります。前回、がん検診とその他の検診を分けてほしいという御指摘がありました。がん検診等の変更点ということで整理しております。前回と変わっているのは、イの「医師が必要と認めた場合」の所に、「これらの検査の結果及び被ばく線量等から医師が必要と認めた場合には」という、より詳しい記載を入れた上で、「胸部X線検査及び喫煙者に対する喀痰細胞診に加えて、低線量胸部CT検査を実施する」と入れております。大腸がん検診については、「便潜血を実施するとともに、この検査の結果及び被ばく線量等から医師が必要と認める場合には、大腸内視鏡を実施する」と入れております。
 その他検査に関する変更点では、甲状腺の検査として、「頸部超音波検査を実施する」ということに加え、「この検査の結果及び被ばく線量等から医師が認めた場合には、甲状腺刺激ホルモン等々の検査を実施する」ということです。感染症検査については肝炎検査ということですが、これも「その検査結果を踏まえ、適切な治療を勧奨する」としております。保健指導に関する変更点としては、喫煙者に対する禁煙指導について、別の形で入れております。
 こういうことをまとめたのが、74ページの別紙1です。表の形で胃がん検診、肺がん検診、大腸がん検診、甲状腺の検査、その他の検査ということで、先ほど申し上げたものが一覧表に入っております。可能であれば御検討いただきたいのは、肺がん検診のウで、「上記アの検査の結果及び被ばく線量等から医師が必要と認めた場合には、胸部CT検査」と書いてありますが、この頻度についてコメントとして、医師の判断の目安となるべき何かがあれば入れたいと考えております。大腸がん検診については「10年に1回」と書いてありますが、もしこういうものがあれば入れていただければと考えております。
 54ページに戻り、4番のストレスチェックの実施については、前回特にコメントはありませんでしたので変更はしておりません。以上です。
○森座長 第1の長期的な健康管理について、御意見、御質問等がありましたらお願いいたします。
○祖父江委員 御指摘のあった胸部CTの頻度に関してですが、その前に54ページの肺がん検診に関する注3について、非喫煙者に対しては推奨されないことになっています。確かに欧米の最新の知見で、NLSTというトライアルがあって、それの対象者で認められている死亡率減少効果は、確かに喫煙者に限られます。頻度は年1回です。それを厳密に適用するとこのようなことになるかもしれませんが、実態として、今の日本においては非喫煙者も含めて胸部CT検診がされています。日本における特殊事情としては、非喫煙者にも比較的高頻度というか、欧米に比べるとノンスモーカーの肺がんの罹患率が若干高めであるということがあります。非喫煙者を含めてやっているのが実情です。
 厳密に言うと確かにこのとおりなのですけれども、余りここを厳密に適用せずに、非喫煙者も含めて胸部CTはやっていくこともありかもしれません。その点を、頻度について厳密に適用すると、年1回ということになります。年1回と言われるのは、やはり喫煙者に対して年1回であって、非喫煙者に対してはもうちょっと長くてもいいということになったりします。今の研究成果をどれだけ厳密に適用するかによりますけれども、ハイリスクの人に対して、半ば先進的な検診を試みている立場から言うと、余り厳密に適用せずに、日本の実情に合ったような形で、非喫煙者も含め、頻度は年1回に限らず、もうちょっと間を開けてというほうが私は適当ではないかと思います。
○森座長 今のことに関連してでも、それ以外のことでも結構ですけれども、御意見をお願いいたします。
○安井室長補佐 確認ですが、結論としては喫煙者と非喫煙者を区別することなく、数年に1回ぐらいでいいということですね。
○祖父江委員 はい。
○森座長 肺がん検診とか大腸がん検診というのは、主にアについて陽性だった場合に精密検査という部分と、医師が必要と認めたという2つの選択肢があって、CT検査とか大腸内視鏡があります。「医師の判断」というのが入っているにもかかわらず、これの頻度を示す必要があるのですか。
○祖父江委員 大腸の場合は、「10年に1回」と書いてあるガイドラインがあります。アメリカのがん検診のガイドラインではそのように書いています。それの厳密な証拠があるかというと実はなくて、単に言っているだけです。それなので、ここであえて言わなくても医師の判断で。ただ、医師が判断する際の目安というのが、大腸内視鏡も頻回にやる必要はないので、ちょっと抑制的なというところを踏まえる意味で、頻度を目安として書いておくというのも、頻回にやらないということのエクスキューズになるかと思います。
○森座長 事務局のほうは、肺がんの喫煙者と非喫煙者の取扱いというのは、ただいまいただいた意見でまとめられそうですか。
○安井室長補佐 明確に御指摘いただきましたので、そのラインで修正したいと思います。
○森座長 分かりました。第1について他にはいかがですか。
○前川委員 言葉を直していただければと思います。肺がん検診の所ですけれども、確かに通常のCT装置では被ばく線量は大きいのですが、今はやりの低線量CT装置では、それこそ10分の1ぐらいで済むので、これを推奨するのは良いことだと思います。「低線量CT装置」というように言っていただければ正しいと思います。
 同じく言葉の問題で私は分からなかったので教えてください。甲状腺の問題で、「健康影響」となっていますけれども、はっきり言って甲状腺機能低下症というのは、確定的影響です。これは、確定的影響というわけですよね。注5です。放射線による健康影響とありますが、これは甲状腺機能低下症ですから、当然これは確定的影響ということでよろしいのですね。
○前田室長 確定影響ということです。
○前川委員 確定的影響ということでよろしいのですね。確率的影響ではなくて、確定的影響ということでいいのですね。
○森座長 確定影響という。
○前川委員 確定的影響。
○森座長 確定的影響。
○安井室長補佐 そのように理解しております。
○前川委員 そうですよね。もう1つ教えていただきたいのですけれども、次のストレスチェックの実施で、「関係請負人」というのはどういう人を言うのですか。
○安井室長補佐 関係請負人は法令用語で、いわゆる数次にわたって負請が、いわゆるピラミッド構造になっているときの一番上の元請を除いた全てを関係請負人と言っています。これは、労働安全衛生法における法令用語です。
○森座長 通常では下請とか、そういう言葉で呼んでいるものを、法律では関係請負人と言っていて、一般用語と法律用語の違いだと理解いただければと思います。
○伴委員 今の前川先生の御発言に対してですが、低線量CT装置とおっしゃいましたけれども、特定の装置があるというよりも、プロトコールだと理解しています。だから、撮影条件の問題だと思います。
○前川委員 いや、今は装置なのです。
○伴委員 だから、それでなくても、要はプロトコールでできるということはないのですか。
○森座長 ここは、確認をお願いします。
○安井室長補佐 伴先生のおっしゃるように、要は出力を変えられるX線装置があって、それを使って撮る場合もあるようです。低線量CTの専用機械でない機械もあるようです。
○森座長 その趣旨に合った形でということで。低線量CT撮影装置。
○伴委員 ですから、誤解のない形で表記していただければ結構です。
○安井室長補佐 例えば、「低線量CTによる撮影」といいますか、「それができる装置」とか、そういう表現にさせていただきます。
○森座長 修文をお願いします。他にはよろしいでしょうか。よろしいようでしたら、第1については今の点の修正を検討していただくということ、用語的なことですのでよろしくお願いします。第2の「緊急作業従事期間中の健康管理」についての説明をお願いします。
○安井室長補佐 56ページから御説明いたします。緊急作業期間中の健康診断の所で前回から御説明しております、2の(2)に、どういうときに行うかということです。前回は1か月以内に1回ということで書いてありました。それ以外に、現状の作業を、緊急作業自体から離れて他の作業に配置換えをしたときにもやる。それから、当然仕事自体を辞める、離職する場合にもやることを明確にしております。
 検査の項目ですが、前回は皮膚の検査を入れておりませんでした。これは、場合によっては高濃度に汚染された水などに触れる可能性も否定できないということですので、健康診断の科目としては皮膚の検査を入れることで追加しております。
 (4)は、健康診断を行うときに、それまでにどれぐらいの被ばくをしたかどうかという情報が、診断をする医師に入らないと診断ができないこともありますので、当該労働者が前回の健康診断後に受けた線量を、事業者が医師に示すという規定を入れております。
 あとは、注書きの所を若干修正しております。注2は、緊急被ばく限度を超えてしまって、例えば300ミリシーベルトとか400ミリシーベルト程度の被ばくをした方に対する検査の内容が書いてあります。丸1から丸4まであります。この丸2から丸4の白血球、赤血球、血色素量とヘマトクリットに関しては、大量被ばくがあった直後から6時間から12時間ごとに1回、数日間実施するということです。染色体異常の検査については、大量被ばくの直後に1回だけ実施すればいい、ということを明確にしております。
 注3は前回御指摘があった所です。問診以外の検査については省略を可能にしています。その省略の目安といいますか、考え方として、「緊急時の被ばく限度の範囲内に被ばく線量が管理されていれば、急性の放射線影響は発生する可能性が低いことに留意する。一方で、緊急作業従事後に、他の放射線業務に従事する者への健康管理に活用するため、緊急作業から離職する際には全ての項目を必ず実施する」といった注意書きを付け加えております。説明は以上です。
○森座長 第2の論点について、御質問、御意見があればお願いいたします。
○前川委員 注2の検査の対象はここの注1で言っている、300ミリシーベルトから400ミリシーベルト程度以上の線量を受けた者については、注2の検査をするということですよね、そのように書いてあるのですね。
○安井室長補佐 そうです。注1を見ていただくと分かりますけれども、「300ミリシーベルトから400ミリシーベルト程度以上の線量を受けた者については、直ちに注2に定める検査を実施する」ということです。
○前川委員 そうすると、300ミリシーベルトから400ミリシーベルト以上を「大量被ばく」という表現でどうかという気がするのです。つまり、「上記の線量以上を受けた者」というのだったらいいのですけれども、「大量被ばく」と言うと、我々は当然1グレイ以上と考えてしまうのです。そういう誤解を受けないように、「上記注1の線量以上を受けた者は」というように、具体的に言ったほうがいいのではないでしょうか。
○安井室長補佐 分かりました。そのようにいたします。
○道永委員 大したことではないのですが、2の(2)です。項目として「皮膚の検査」とありますが、検査というのは皮膚に対してどういうことを想像されているのかが分からないので、「皮膚の観察」だと思います。アの「自覚症状及び他覚症状の有無の検査」ではなくて「確認」。「検査」ではないと思います。
○安井室長補佐 先生のおっしゃるとおりだと思うのですが、法令用語でこの用語を現に使っておりますので、この言葉にさせていただきたいと思います。
○森座長 他との整合性ということだそうです。
○伴委員 56ページの2の(1)で注2を引いていて、それから57ページの注1で注2を引いています。注1の中で注2が出てくるのは分かるのですけれども、56ページのここで注2を引くのはどういう意図なのですか。
○安井室長補佐 (1)は「通常被ばく量限度を超えて」ということになっています。通常被ばく量限度を超えた場合は、医師の診察は必ず受けないといけないのですけれども、そのうち特に300ミリシーベルトから400ミリシーベルトを超えた方についてはこの検査をしてくださいという2段書きにしたという趣旨です。
○伴委員 そういうことであれば、注1があれば、注1の中に注2が入れ子になっているので、56ページで注2を引かなくてもいいのかなと、なくてもいいのかと思います。
○安井室長補佐 分かりました、整理いたします。
○森座長 書きぶりの所が議論の中心になっていますけれども、それでよろしいですか。第2については、書きぶりを今の御意見を参考に修正していただくことでお願いいたします。第3の「緊急作業中の原子力施設内の医療体制確保」について説明をお願いします。
○安井室長補佐 58ページから御説明いたします。緊急作業中の原子力施設の医療体制確保ということです。1Fの事故時の経験を踏まえ、全国の原子力施設に、事故に即応する医師等によるネットワークを構築し、そちらから事故時に医師などを派遣する仕組みを作ろうということです。こちらについて、前回は特段の御意見はありませんでしたので、意味のある修正は行っておりません。59ページの注の所は、単に表現を分かりやすくした程度であり、コメントがあったから直したわけではありません。以上です。
○森座長 第3についてはいかがでしょうか。第3について、前回は予防系の人材について注書きをしていただくというお願いをしていたと思うのです。議事録にもそういう形になっています。つまり、「医療系全体」と代表しているけれども、それについて範囲を、もともとあったそれ以外の人材も含むのだということを書いていただくという話でした。
○安井室長補佐 分かりました。大変失礼いたしました。注書きを追加いたします。
○森座長 お願いします。ここについてはかなりインタビューもしていただいて、それに基づいて作っていただいた所ですので、今後具体化することが一番大変ですけれども。それ以外は、この方向でよろしいでしょうか。よろしいようでしたら、第4の「通常被ばく限度を超えた者に係る中長期的な線量管理」について説明をお願いします。
○安井室長補佐 61ページから御説明いたします。2の生涯線量の考え方につきまして、前回、御指摘がございましたので修正しています。2の(1)は、90年勧告で毎年、ほぼ均等に被ばくしたとして全就労期間中に受ける総実効線量が1シーベルトを超えないように、防護体系を構築することと、この実効線量の制限により、ほとんど全ての組織・臓器に確定的影響を及ぼさないとしつつ、眼の水晶体と皮膚の等価線量限度を勧告しているという記載を追加しています。その上で、ICRP声明で指摘されている白内障及び循環器疾患に関する組織反応による健康影響については、健康診断及びその結果に基づく事後措置を適切に実施することで管理すべきであるとしています。
 注1に下線を付けるのを忘れていましたが、ここも変更しています。循環器疾患しきい線量が0.5グレイ程度であるかもしれないということが指摘されているが、科学的な信頼性が十分でないため、同声明は注意を喚起し、最適化による線量低減を強調するにとどまっていると表現の適正化をしています。
 61ページ、3の事故発生時の次の線量管理期間以降に、生涯線量を超えないように管理する方法のところです。これについては前回、御指摘がございましたので、ここで計算で設定された被ばく上限はあくまで上限であって、被ばく線量を可能な限り少なくすべきであるという記載を追加しています。
 62ページ、(2)のエですが、これも線量限度の管理の実際のやり方の中で、被ばく線量をできるだけ少なくするように努めるという記載を追加しています。
 63ページ、4の事故発生時を含む線量管理期間内での通常被ばく適用作業での放射線管理の方法です。前回、検討事項ということで一般的な御議論をさせていただいたものですが、それを踏まえて案を作っています。(1)は東電福島第一原発での対応ですが、緊急被ばく線量と通常被ばく線量の合算の考え方について、通常の被ばく限度である5年当たり100ミリシーベルトを超えない範囲で管理するよう指導した経緯があります。これについて今後、どうするかというところですが、基本的考え方として入れています。ICRP Pub.75は、緊急被ばく後の通常被ばく線量限度について、線量限度の法的位置づけを理解しつつ、柔軟なやり方で扱われるべきであるといった記載があります。一方で、ICRPの大原則である被ばく限度については、均等に分布した線量を前提にした推計モデルということがありますので、基本的には5年間の管理期間ごとに、その平均が20ミリシーベルトになるようにというのが一般的なベースになっています。これらを踏まえ、今後、仮に緊急作業を実施する事態となった場合において、(1)と同様の考え方を採用することが困難な場合、これは65ページの注4に書いていますけれども、運用する原子力施設の数が少ない原子力事業者の場合で、緊急作業により原子力施設の基幹要員の多数が100mSvを超えてしまった結果、それら基幹要員を放射線業務から外してしまうと、原子力施設の安全な運転等に支障がある場合など。こういったことがあり得るということですので、こういった場合については、63ページの(2)のイに戻りますが、原子力施設の安全な運転等を担保するためにやむを得ない場合に限り、緊急被ばく線量と通常線量を合算した線量に対する通常被ばく限度の適用に関して、必要最小限の裕度を与えるという考え方を採用すべきである。
 一方、ICRP Pub.75は、年実効線量が5~10ミリシーベルトを超える場合には、必ず外部被ばく線量をモニタリングすべきであると勧告している。放射線審議会では、これを踏まえて被ばく線量測定が義務づけられる放射線管理区域の設定値(下限値)として、年5ミリシーベルト(3月あたり1.3ミリシーベルト)を意見具申している。これが法令に取り入れられています。
 こういった全体像を踏まえると、通常被ばく限度に対する裕度は、年5ミリシーベルトを超えない範囲であるべきである、と書いています。もちろん、ここで追加的に受けた被ばく線量については、3に定める方法により、生涯線量が1シーベルトを超えないように管理されるべきであるということです。
 (3)具体的運用方法として、アですが、通常被ばくと緊急被ばくを合算した線量が、5年、100ミリシーベルトを超える者について、原子力施設の安全な運転等を担保するために必要不可欠な基幹要員に限り、追加的に、年間5ミリシーベルトを超えない範囲で通常の放射線業務に従事させることができる。アの取扱いにより、通常被ばく線量のみの累計が通常被ばく限度を超えることは認められない。事業者は、アの放射線業務に従事する者に対して、あらかじめ、医師による診察を受けさせるとともに、法令に基づく線量管理及び健康管理を行う。アの放射線業務において受ける線量を、3に定める次の線量管理期間以降の被ばく限度の設定時の計算に算入するとともに、被ばく線量をできるだけ小さくするように努める。
 注書きですが、ここはICRPの記載を基本的に入れているところです。注7ですが、5ミリシーベルトは、通常被ばく限度の1年当たりの平均である20ミリシーベルトの25%に相当し、裕度の範囲としては適当であるとしています。説明は以上です。
○森座長 ありがとうございました。第4の通常被ばく限度を超えた者に係る中長期的な総量管理について、4は新たに前回から議論を始めたところですので、3までで何か御意見があればお願いしたいと思います。生涯1シーベルトの範囲内で管理をするというところですね。ここまではよろしいでしょうか。線量被ばくを少なくするように努めるというところを追加いただいたという範囲です。よろしいですか。それでは続いて、4の事故発生時を含む線量管理期間内での通常被ばく適用作業での放射線管理の方法、5ミリシーベルトという裕度を設けることに関して、内容、記述も含めて御意見があればお願いしたいと思います。
○杉浦委員 63ページの一番下のアですが、「原子力施設の安全な運転等を担保するために」と書かれていて、これは事故を起こした別なサイトで働くことが前提ですから、ここで急に「事故を起こしているのに、何で運転」という感じになってしまうので、そこが読める形で少し追記が必要なのではないかと思います。
○安井室長補佐 分かりました。
○森座長 ほかに、いかがでしょうか。よろしいですか。小さな話ですが、注7で20ミリシーベルトの25%に相当するというのは、そのとおりですが、25%に相当するから適当であるという論旨はどこからくるのですか。
○安井室長補佐 明確な根拠があるわけではありませんが、例えばJISとかで、要するに測定の誤差などで認められている裕度が大体20~30%ですので、それと比べて大きな乖離はないという程度で書いています。
○森座長 ありがとうございます。それでは、よろしいでしょうか。伴委員、よろしいですか。
○伴委員 まだ頭の中の整理ができないので、むしろ先に行っていただいたほうがいいかなと思います。
○森座長 ここは大きなところであり、前回から出てきたテーマですので、少し慎重に議論を進めたいと思います。最後まで行った後で、もう一度振り返りたいと思います。第5の「緊急作業従事期間中の被ばく線量管理」について、お願いします。
○安井室長補佐 67ページから御説明いたします。1の福島第一原発での経緯ですが、原子力緊急事態宣言があった後に、労働者の健康リスクと、周辺住民の生命・財産を守る利益を比較衡量し、特別な緊急被ばく限度として250ミリシーベルトを設定しました。これについては原子炉の安定性を確保した段階で廃止されたということです。
 今回、仮に緊急事態が発生した状態を想定した場合、どのように考えるかですが、2の基本的考え方として、(1)のICRPの正当化原則ですが、通常被ばく限度である5年、100ミリシーベルトとの関係を考えると、これを超える緊急被ばく線量限度を設定するためには、その線量を受けてまで緊急作業を行わなければならないことを正当化する理由が必要である。これで国際基準に規定されている内容を見ると、最も当てはまるのは、「破滅的な状況」の回避である。このような被ばく限度の適用は、原子力施設が破滅的な状況に至ることを回避することを主たる目的とする作業のために、必要な知識・経験を有する者に限定するということが書いてあります。
 (2)が今回修正した部分です。アは、複数の原子炉の炉心が溶融する過酷事故であった東電福島第一原発においても、緊急被ばく限度250ミリシーベルトで緊急対応が可能であった経験を踏まえると、今後、仮に、緊急作業を実施する際に、これを超える線量を受けて作業をする必要性は現時点で見いだしがたい。前回は「想定できない」と書いていましたが、想定をするということでなく現時点で見いだしがたいということです。イは、ヒトに関する急性被ばくによる健康影響に関する文献のレビューを行っています。これについて前回、250ミリシーベルトについて根拠を十分に調べてほしいという御指摘がありましたので、それを資料3にまとめています。
 資料3は37ページです。まとめ方としては文献をレビューしていて、ICRP関係の文献はオリジナルというよりはレビューに近いと思いますが、いろいろ文献が引用されていますので、それをまとめています。その後でオリジナルな文献、あるいは我が国の放射線生物学のテキストといったものをレビューしていて、最後に考察をしています。
 ICRPの文献については、2007年勧告で、造血機能の低下のしきい値として0.5Gy(1回の短時間被ばくで受けた総線量)を示している。これは実際、ICRP Pub.41を引用していて、そこに引用されている表現ぶりとしては、「骨髄には再生能力があるので、職業被ばくの場合検出可能な造血機能の低下に関するしきい値は、おそらく年当たり0.4Svを超えるところにある」といった記載や、ここに書いていますけれども、1Gyを超える全身照射による、白血球数の減少等々についての論文が書いてあります。ICRP Pub.118、これは割に新しい2012年の文書ですけれども、ソビエトのマヤック事故の追跡調査の中で、年間被ばく線量が0.25Gy未満かつ累積線量が1.0~1.5Gyの健康な若い男性については、造血機能低下の証拠はないという記載があり、結論として、急性被ばくのしきい値である約0.5Gyと慢性被ばくの線量率0.4Gy/年は、造血の抑制に関する推奨値として維持されるといった記載があります。
 ヒトに関する文献ですが、ある放射線医学のテキスト、これは明石先生のテキストですけれども、一般にリンパ球の減少は500mSvで起こるとされているが、その根拠が何であるかをはっきり示している文献はないという御紹介があり、米国のエネルギー省により運営されている訓練センターの判断ということで、リンパ球減少のしきい値を500mSvとしたとしています。この文献に引用されているものは幾つかあり、1958年のオークリッジのY12プラントで起きた事故で、高い被ばくをした方と低い被ばくをした方がおられますが、低線量被ばくの3人について68.6rad、これは686mGyに相当する方ですが、リンパ球数は2,000を超え続け、特に放射線影響はなかった。もう一人、同じく685mGyの方についてはリンパ球数が減少したというデータがあります。228mGyの方については、被ばく後2~4週間後に緩やかなリンパ球増加症が見られた。そういった程度で終わったと。
 実験室での事故、核実験でのマーシャル諸島などの被ばくに関するレビューがありますが、総じて全身被ばく線量が1,000mGy以下の場合において、医学的に注意すべき臨床徴候を示すことはないが、実験室での実験においては、500~1,000mGyの被ばくにより、穏やかなリンパ球の減少があると書いています。実験室での事故は幾つかの事故がありますが、そういったところでは血液検査の顕著な変化は認められなかったとしている。一方、マーシャル諸島核実験でのグループのうち、780mGyを受けた方々については、最初の数日間にリンパ球数が基準値の75%程度まで減少したとしています。
 放射線治療を受けた者を対象とした文献があり、これはかなりコントロールされた線量ですので、かなり詳しいデータが載っています。600mGyの全身被ばくにより、血液の一つ又は複数の細胞要素に際だった影響があったとし、特にリンパ球数は全員一致して下がりました。被ばく線量が270mGyであった方を除き、リンパ球数の減少があったとしていて、270mGyの方については影響はなかったと書いてあります。
 動物に関する文献ですが、ラットに関する文献があり、最も低い線量のデータである250mGyを含めて、照射24時間後に、全ての線量について際だった減少が見られるとしています。250mGyの照射直後のリンパ球数の減少率は約30%で、1週間程度で戻るということですが、500mGy照射直後には、リンパ球数の約60%の減少が認められ、通常レベルに戻るためには、1か月必要であったという結果があります。リンパ球数の減少の程度については、ラット、サル、イヌについて同様であるとしていますし、霊長類も入っていますので人間とそれほど変わらないことが示唆されます。
 我が国の放射線生物学テキストについては、複数の文献を調べましたが、斉一的に250mSvをリンパ球の減少が観察される下限値と、かなり明確に記載しています。かなり具体的に250mGy程度の照射でも、既に照射15分後ぐらいからリンパ球の減少が認められるという記載があり、直接的に文献が引用されていないので分からないのですが、放射線治療を根拠にしていることがうかがわれる文献が多数ありました。
 考察ですが、ICRPで引用されている文献の多くは急性被ばくに関するものではなく、1Svを下回る線量での急性被ばくによるヒトの造血機能の低下に関する実証的な研究は、非常に限られているということが1つと、その中で総じて見ますと、ヒトに関するデータは250mGy程度の被ばくでは明確なリンパ球の減少は見られない。一方、600mGy程度の被ばくでは際だったリンパ球の減少、あるいは一定程度のリンパ球数の減少を認める文献があります。ラットにおいては250mGyの照射直後にリンパ球が30%減少し、500mGyの照射直後にリンパ球は60%程度減少するというデータがありますので、リンパ球数の減少のしきい値は、この250mGy程度から500~600mGy程度の間にあることが考えられますが、この間のデータが全然ないということなので、何ミリグレイということを明確に決めるのは極めて困難です。ICRPはどのように判断したかは推察するしかないわけですが、例えばリンパ球数が30%減少することと、造血機能低下症という臨床所見の違いがあったのではないかという予想は書いています。
 これら知見を踏まえた上で、厚生労働省としては、東電福島第一原発事故時に、緊急作業における被ばく限度として、250mSvを採用したことは妥当であると考えています。緊急作業においては、短時間に被ばく限度までドカンと被ばくすることを念頭に置く必要がありまして、造血機能によるリンパ球数の減少は、一定以上になると、免疫機能を低下させ、細菌又はウイルスによる感染症のリスクが高まるので防止すべきであること。東電福島第一原発事故の経験を踏まえると、緊急作業期間中は、狭隘な場所に多人数が長時間滞在すること。シャワー等が十分に使用できないこと。食事が十分でないことなど、感染症のリスクを高める要因が多いことについても留意する必要がある。
 このため、緊急作業中のリンパ球数の減少による免疫機能の低下を確実に予防するという観点から、同原発事故時に、250mSvを緊急被ばく限度として採用したことは、保守的ではあるが妥当といえる、と考えているところです。
 68ページのウに戻ります。さらに、既存の緊急作業時の眼の水晶体の等価線量限度(300ミリシーベルト)及び皮膚の等価線量限度(1シーベルト)については、いわゆるγ線による均等被ばくを前提にした場合、250mSvという線量限度が守られていれば、これを超えることは基本的にないことと、保護具が着用されれば、いわゆるβ被ばく等が事故的に起こらない限り、これを超えるおそれはないため変更する必要はないと述べています。
 69ページ、3の(2)の特例緊急作業従事者の限定です。これは先ほど御説明したとおり、この特例緊急作業の対象者は、原子力防災計画で定める原子力防災組織の要員として指定されている者に限るとしています。原子力防災要員は、原則として原子力事業者の労働者であるが、法令に基づき、原子力災害の発生又は拡大を防止するために、必要な業務の一部を委託することができるとなっていますので、委託された場合は、同じように原子力防災要員に含まれます。この委託業務の決定に当たっては、東電福島第一原発事故の教訓を踏まえ、必要十分な範囲とする必要があるとしています。
 原子力防災要員の選定に当たっては、若干の注意書きを追加しています。事業者は、特例緊急作業に係る労働条件を明示します。つまり、あなたは何かあったときに特例緊急作業に従事していただく可能性があるということを明示した上で、双方合意の上で労働契約を締結するとともに、人事異動に当たっては、労働者の意向に可能な厳り配慮すべきである。これは一般的に言えることですが、そういったことを記載しています。
 70ページの注5は、できる限り被ばくを少なくするというところの注ですが、こういった努力の中には当然、線量計や保護具等の事前準備を含めて、特例緊急作業時の適切な放射線管理、線量測定(内部被ばく線量測定を含む)や保護具の着用等の措置を確実に実施することが求められる、ということを追加しています。説明は以上です。
○森座長 ありがとうございました。250mSvという数字の根拠を示すために、かなり詳細に調べていただいて根拠を示していただいた形になっていますが、いかがでしょうか。
○明石委員 250mSvではないのですが、68ページの先ほどの「適切に防護具が着用されれば」というところです。外部被ばく線量の防護具というのは一体何を指すのでしょうか。これは内部被ばくのことを言っているのかよく分かりませんが、例えば消防が持っているプロテクターは、セシウムやコバルトにはほとんど効果がないですよね。皮膚の等価線量、つまり皮膚に汚染しないということなのでしょうか。一般的に防護具と言うと、いかにも鉛のプロテクターを着なさいみたいなイメージを持ってしまい、かえって間違ったイメージを植え付けることになると思いますが、いかがでしょうか。
○安井室長補佐 まず眼の水晶体に関しては全面マスクを想定していて、それによってβ被ばくを相当程度下げることができると考えています。皮膚の等価線量限度については汚染水に直接触れないようにする。いわゆる長靴やタイベックといったものを想定しています。
○森座長 よろしいでしょうか。ほかに、いかがでしょうか。
○杉浦委員 39ページの放射線生物学テキストで、揃いも揃って250という小さな数字を使っているのですが、数多ある中、私の本も引いていただいていますけれども、診療放射線技師や放射線取扱主任者の試験で250という数字が出題されている関係で、250というのをこの世界で使っている背景があり、もちろん幅があることは知りつつも、250という値を使わせていただいているという補足説明をさせていただいています。
○伴委員 37ページのPub.118でマヤック事故とありますが、これは事故ではないと思います。マヤックの核施設のフォローアップのデータだと思います。精力的に調べていただいたのですが、私が思うに、500mGy以下、500mSv以下でもリンパ球が若干減るということはあり得るだろうとは思いますが、それが臨床的にどれだけ意味を持つのかと考えたとき、いわゆるclinical significanceを考えたときに、どうなのかというところが難しいのだろうと思います。ですから、現在、ICRPのしきい線量として造血機能低下が500mGy、それからいろいろな国際的基準もそこに合わせているのは、その辺も含めての考え方だと思います。
 250という数字がどこから出てくるかというと、ネズミ等で実験するときに1,000、500、250というふうに半分ずつに区切って、250というデータが存在しているだけであって、ただ、マウスやラットの場合は白血球のうち、リンパ球が7割方占めていますので、ヒトはそこで根本的に違うという状況もあります。ヒトのデータに関して言うと、250という2桁の精度は恐らく持っていないと思います。ですから、今、我々が科学的に言えるのは、ヒトの造血機能低下のしきい線量は、数百ミリグレイぐらいでしょうねという程度のところが現実なので、ここまで250というものがしっかりとした根拠を持っていると言っていいのかどうかというのは、若干、私は疑問を感じます。ただ、この検討会は労働者の保護の観点からやっていますので、そのときに、250をあえて上げろという話にならないことは理解しています。
○森座長 ありがとうございました。
○前川委員 伴先生と同じ考え方ですが、250mSvが妥当であるという根拠にリンパ球数の減少、しかもリンパ球数の減少によって感染のリスクが高くなるという論理になっているわけですが、科学的には「そうかな」というところはあると思います。我々の常識としてリンパ球数というのは、例えば1mm3当たり1,000を切ると、アレルギーという言葉がありますけれども、アネルギーという言葉があって、これは栄養管理とか感染防御の立場から言えば、リンパ球が1,000を切るとまずいというひとつの予後の推定のインディケーターでもあるわけですが、そこまで下がった場合に、一般の臨床現場では恒常的に下がることが危ないわけですし、一過性に少々下がってもそんなに悪くないよねとなってしまう。リンパ球数の減少が、いろいろな感染を起こしやすいリスクを抱えている緊急作業者といえども、一過性に下がっても感染のリスクが高くなる、だから250mSvは妥当だろうという論理はちょっと無理があると考えます。ただ、安全という立場から、緊急作業者の安全側に立った数値として、250mSvを取り上げるのは一向に構わないと思いますが、その説明として、今言ったようなことをずっと並べるのはかなり無理があるという気がいたします。
○森座長 そうすると、幅はあるということを認めた上で安全サイドに立って、ここという労働者保護の立場から250という書き方のほうがいいと。250が絶対という話ではなくてということ。
○安井室長補佐 我々も実は結論は同じです。例えば40ページにありますように、これらの文献からリンパ球数の減少のしきい値は、250mGyから500mGyの間だと思いますが、分からないということで、伴先生がおっしゃったように数百というのが多分真実だろうとは思っています。我々は250mGyがしきい値だとは考えていませんが、250mGyであれば、しきい値は確実に下回っているということで採用したということですから、そこは慎重に250がしきい値であるということは、あえて書いていないところです。そういったことで前川先生と伴先生の御指摘は、そのとおりだと思っています。そこに関する見解は一致していると考えています。
○森座長 ほかに、いかがでしょうか。私から、69ページの(2)のイの一番最後、「必要十分な範囲とする必要がある」というところですが、これは委託業務の決定に当たっては、その委託する業務の範囲を必要不可欠な範囲にするという意味でしょうか。必要十分という意味はどういう意味でしょうか。
○安井室長補佐 必要不可欠でも差し支えないと思います。要はリスクの議論ですので、おそれがあるからと言って、ものすごく幅広く指定してしまうと非常に安易に被ばくさせることになりますし、といって、少な過ぎると事故の対応ができないということですので、大き過ぎず小さ過ぎずということで必要十分と。
○森座長 小さくするという趣旨ではないですね。
○安井室長補佐 とにかく最適にということです。
○森座長 最適に。
○安井室長補佐 一言で言えばですね。
○森座長 ほかに、いかがでしょうか。それではよろしいでしょうか。250という数字に関しても対象についても、基本的な考え方は一致していたように思いますので進めたいと思います。第6の「特例緊急作業に従事する者に対する特別教育の在り方」について、御説明ください。
○安井室長補佐 それでは、72ページを御説明します。こちらについては、まず、前回、そもそも特例緊急作業と緊急作業、どちらに教育をするのかという御指摘もありましたので、検討した結果、緊急作業、いわゆる一般の緊急作業でありますと、エックス線とかラジオアイソトープを使った場合での緊急作業ということですが、そういう場合においては、従来行っている特別教育の中に異常時の措置というのが、応急の対応というのが書いてありますので、そちらで対応できると考えています。やはり、大きな原子力施設で非常に苛酷な事故が起こったという特例緊急作業従事者に限定した形で、教育を組み立てるという形で整理をしています。そういう意味ですので、教育の対象者については、原子力事業者が原子力防災業務計画で定める原子力防災要員を対象とするということで、かなり限定的にしています。
 ウですが、ここは注意書きのような記載になっています。緊急作業の実施中には、特例緊急被ばく限度を適用する必要はないけれども、サイトに入っていただかないといけない方というのはたくさんおられまして、例えば、瓦礫の処理などで建設重機を運転するオペレーターというのがあります。こういった方については、別に250ミリシーベルトなどを適用する必要はないわけですが、そういう方については、そういう特殊技能者が放射線業務に従事する場合については、通常の放射線業務従事者の特別教育を実施した上で作業に従事させるということでして、当然、適用される線量限度は通常被ばく限度ということが書いてあります。
 教育の実施内容について、前回は羅列的に書いてありましたが、主従関係を整理して科目を整理しています。こちらについては、別紙2を参照していただきたいと思います。75ページです。まず、学科として、原子力施設で特例緊急作業に使用する設備、そういうものの取扱いに関する知識ということでして、ここでは、当然のことながら、炉心損傷の防止に係る設備などが当然、もともと緊急作業マニュアルなどで位置づけられているものがありますので、そういう内容について教育をすると。
 2番目が、具体的な作業の方法という所です。こちらについては、緊急対応マニュアルのようなものも十分に教育すべきだという御指摘がありましたので、緊急連絡体制、あるいは新規制基準に基づく審査の際に想定された重大事故の概要、その対応とか、そういう背景事情と言いますか、そもそもどういう事故が起きてこういう対応が必要なのだという、大きな話から入っていただくということにしています。具体的には、放射性物質の濃度の監視とか、汚染の検査、そういうものも当然必要になりますので、そういうところの教育と、重要なポイントとしては、保護具の使用ということです。それから、これも御指摘がありましたが、傷病者に対する応急手当の方法というのも付け加えたところです。
 電離放射線の生体に与える影響及び被ばく線量管理の方法、方途については、従来から行っていますが、より詳しく電離放射線が生体に与える影響について教育するとともに、詳しい被ばく線量測定、あるいは、被ばく線量の結果をどのように解釈するのかということも含めて教育をするということです。
 それから、関係法令ということです。学科だけで7時間ということですので、おおむね1日は掛かるという教育を考えています。
 実技です。実技については、設備の取扱いと作業ということですので、そこで列記した、学科で勉強したことを実際に体を動かしてやっていただくことになります。これは3時間、3時間ということで6時間で、おおむね2日間程度はやることを想定しています。それ以前に、放射線業務従事者になるための特別教育は7時間半必要ですので、少なくとも3日間の研修は受けないといけないと考えています。
 その頻度です。73ページです。まず、学科については、同じことを何回も教えてもしょうがないということですので、教育実施後に変更が生じた場合には当該変更箇所について特別の教育を行うと。それから、実技に関しては、当然、物理的に体を動かさないと忘れてしまうということもあるので、1年以内ごとに1回定期に特別の教育を行うことを書いています。法令上は、特別の教育というのは作業に就かせる前に行うというのが原則ですので、法令上の義務つけはそちらだけになりますが、それ以外に、努力義務として能力の向上を図らなければいけないという条文がありますので、その能力向上を図るための教育という形で、1年ごとに1回定期に特別の教育を行うことを規定したいと考えています。説明は以上です。
○森座長 ありがとうございました。それでは、6番の特別教育について、御意見がありましたらお願いします。すみません、私から1点なのです。実技教育をやる中で、保護具の取扱いという所があって、前回、前々回でしたか、特にフィットテストのような、マスクを着用した状況で漏れがあるかないかという実習は非常に重要で、そういったところまでやるかやらないかというのはこの項目だけでは読めないのですが、何か標準テキストとかそういったもので、具体的にどこまでやるのだということは何らかの方法で示されるものなのでしょうか。
○安井室長補佐 標準テキストについては、委託事業が幾つかありますので、その中で何とか作れないかと今、少し検討しています。
○森座長 項目だけでなく内容に踏み込んだものも少し必要ではないかと思いますので、その辺りを少しお願いしたい。
○安井室長補佐 できる限りやりたいと考えています。
○森座長 ほかにいかがですか。
○佐藤原子力規制企画課長 原子力規制庁の佐藤です。少し用語の話で恐縮ですが、75ページの別紙2、学科教育の課目の丸2です。新規制基準に基づく審査の際に想定した重大事故の概要とその対応の方法とありますが、ちょっと括弧書きで「再稼動基準」と書いてあるのは、私どもそういう用語は扱っていないということで、大変細かいようですが、私どもの哲学と言うのですか、その基準に対することを考えると、少しこの用語は省いて消していただけると助かります。ちょっと細かいようですが。
○安井室長補佐 法令用語など根拠のある用語を使いたいと思います。
○森座長 それでは、ほかにいかがでしょうか。
○伴委員 法令等で教育について定めるときに、常に実施義務として定めますね。ですから、これだけやりなさいと、やればいいのかという、教育の効果は問わないのかということを常に思います。それで、この特例の緊急作業というのは本当にスペシャルなので、やはり教育をした効果というものが然るべく担保されるべきではないかと思うのですが、その辺に関して事務局はどうお考えなのでしょうか。
○安井室長補佐 おっしゃるとおりと認識しています。法令上は実施義務を掛けているだけでして、監督指導でも実施結果の記録を見るだけで、御本人がどれぐらい頭に入っているかというのを調べるのはなかなか難しいのが現状です。ただ、今回の場合は、能力向上教育ということで、比較的繰り返し行いますので、その部分で、従来の特別教育よりはより厳しく教育効果というのを把握できるのではないかとは考えています。
○伴委員 それは、研修の後に修了試験みたいなのは、例えば、作業環境測定士の実技研修のときは必ずそういうのがあったりとか、ほかでもあると思うのですが、そういうものというのは考えられないのでしょうか。
○安井室長補佐 現実問題としては、電力業界では確認テストというのをやっていまして、やってはいるのですが、それをまた法令で義務づけるというのはちょっとまた筋が違うと思いますので、そこは自主的な取組としてやっていただきたいとは思います。我々としては、先ほど申し上げましたように、繰り返し教育をするというところで教育効果を担保したいと考えています。
○森座長 伴委員、よろしいですか。
○伴委員 ですから、法令で全て規定すべきだとは思わないのですが、実質的に効果が担保されるようなやり方というのは模索すべきだろうと思います。
○森座長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。それでは、よろしいでしょうか、第6の「特例緊急作業に従事する者に対する特別教育の在り方」については。では、あと1つ、先ほど、かなり細かく読んでいただく時間を設け、あとで振り返るという扱いをした63ページからの「事故発生時を含む線量管理期間内での通常被ばく」の所、第4の4の所ですが、ここについて、追加で何かコメント、意見がありましたらお願いします。伴委員、いかがですか。
○伴委員 そもそもが、緊急作業の被ばくと通常の被ばくを合算すべきなのかどうかという難しい問題があるので、これは何が正解かというのは必ずしもないとは思うのです。そういう中で、ある程度合算してやるということであれば、これも1つのやり方なのかとは思います。何で5ミリシーベルトなのかという根拠が厳しいところはありますが、ただ、ICRPの言う公衆の線量限度、通常の状態において年間1ミリシーベルトですが、ライフタイムを通して年間1ミリシーベルトは担保されるのであれば、一時的に年間5ミリシーベルトまではあり得るというような記述もありますので、そこに従えば、言ってみれば、公衆の特殊な状況に相当するレベルということでこれを根拠付けるのかとも思いました。
○森座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、1番から6番まで、原案をもとに大枠で御理解を頂きまして、ただ、書き振りとか用語、その他追加すべきこと等の御意見を頂いたという形になっています。したがいまして、議論としては出尽くしたということにさせていただき、事務局には、報告書(案)について本日の御意見を踏まえまして修正を頂きたいと思います。修正後については、報告書の最終案を皆様にメールで配信させていただいて、本日の議論の内容と比較して確認を頂くという作業を踏まえて完成させるという手順でいきたいと思います。ただ、最終的にこれで完成というのは、何らかの形で御一任いただかないとできないことでありますので、それについては座長に御一任いただければと思いますが、よろしいでしょうか。
                                     (了承)
○森座長 それでは、最終的には座長一任という形にさせていただきます。まだ時間がかなり余っている感じではありますが、今日、本当に細かいところまで御議論いただいた結果、この議論が出尽くしたというところまで来ましたので、これで本日の検討会は終わりたいと思います。本検討会はこれで一区切りという形になると思います。
 それでは、最後に、土屋安全衛生部長より御挨拶いただければと思います。
○土屋安全衛生部長 それでは、今、座長から、最終的には皆さんにお諮りをしながら、座長一任でおまとめを頂くというお話でございましたので、一言、御挨拶を申し上げさせていただきたいと思います。
 委員の皆様方には、昨年末の第1回の検討会から、4か月弱という短い期間の間に5回のかなり内容の濃い検討会で御議論をいただきまして、このような形で取りまとめまで運んでいただいたことにつきまして、まずは厚く御礼を申し上げたいと思います。
 この機会の検討によりまして、当然、福島の第一原発の事故の緊急作業者に対しての新たな健康管理であり、健康管理であるという方法についておまとめを頂きまして、また、当初の検討課題には入っていなかった、今後、仮に緊急事態が発生した場合の管理……仕組み等も含めまして、幅広い課題について考え方をお示しいただいたというふうに思っております。
 今日、こういう形でおまとめを頂いた報告書を基にいたしまして、私どもとしては、今後、関係省庁との連携を図りながら、関係法令や、あるいは大臣指針などの改正作業を行いたいというふうに思っておりまして、その作業の中では、パブリックコメントであるとか、あるいは審議会での御意見であるとか、そういう各方面からの御意見も伺いながら進めていきたいと思っています。その上で、今年の秋頃までには関係法令の制定をできるように作業を進めていきたいというふうに思っております。
 改めまして、これまでの御協力に心から御礼を申し上げますとともに、今後とも、是非御指導を賜りたく、よろしくお願い申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
○森座長 それでは、私からも一言御挨拶させていただきたいと思います。毎回、福島第一原発の事故に係る検討会というのは、答えがない中で様々な文献を皆様に検討いただきながら一致点を見いだすという、非常に大変な作業になっています。事務局も十分に準備していただきながら、御議論いただいているというように思います。
 今回に関しましても、労働者保護という立場から、また、現実的な事故対応という立場から、皆さんに御議論いただきまして、いい方向の結論がまとまったのではないかと思います。座長の不手際もございましたけれども、皆さんの御協力で取りあえず一区切りというところに漕ぎ着けることができました。御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。それでは、事務局のほうにお返しいたします。
○前田室長 御挨拶ありがとうございました。以上で、第5回、東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会を閉会いたします。御多忙の中、5回にわたる検討会での活発な御議論、誠にありがとうございました。


(了)

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