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2014年12月18日 第86回労働政策審議会職業能力開発分科会議事録

○日時

平成26年12月18日(木)10:00~12:00


○場所

厚生労働省職業安定局第1・2会議室


○議題

(1)職業能力開発施策について
(2)キャリア・パスポート(仮称)構想研究会における最終とりまとめについて
(3)職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律施行規則の一部を改正する省令(震災特例措置の延長)案要綱について
(4)その他

○議事

○小杉分科会長 定刻少し前ですが、この時間に出席御予定の方は全てそろいましたので、ただいまから第86回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催いたします。本日はお忙しい中、お集まりいただきましてどうもありがとうございます。

 本日の出欠状況ですが、原委員、水町委員、大隈委員が御欠席です。また、大久保委員は遅れて参加いただく御予定になっております。

 本日の議題は議事次第にありますとおりですが、「職業能力開発施策について」、「キャリア・パスポート(仮称)構想研究会における最終とりまとめについて」、「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律施行規則の一部の改正をする省令(震災特例措置の延長)案要綱について」の3件です。

 ではまず議題1の職業能力開発施策についてです。内容について事務局から説明をお願いします。

 

○宮下総務課調査官 資料1-1です。前回の分科会では論点の整理案を提出し、御議論いただきましたが、前回の議論を踏まえ分科会の報告案としてまとめたものです。「労働者の職業能力の開発及び向上を促進する労働市場インフラの戦略的強化」というタイトルを付けています。

 「1はじめに」の部分ですが、まず冒頭で我が国の経済社会をみると、産業構造のサービス経済化、技術革新、顧客ニーズの変化等のスピードが加速される状況にあり、労働者はこれらの変化に対応しうる職業能力を身につけることが求められていること、また、日本経済を持続的に成長軌道に乗せていくためには、多様な人材がその能力を高め、能力を有効に発揮できるようにすることが必要であり、職業能力開発の重要性が増しているとしています。

 続いて2つ目の○ですが、職業能力開発については、職業訓練などの充実の強化や、その実施の円滑化のための施策などを総合的、計画的に講ずることが求められており、これまで第9次職業能力開発基本計画に基づき、成長が見込まれる分野の人材育成や、雇用のセーフティネットの強化が進められてきたこと、更に法改正により本年10月から専門実践教育訓練による中長期的なキャリア形成の支援を強化するなど、個々の労働者に対する職業能力開発の支援が行われてきた旨、記述しています。

3つ目の○は、教育訓練の実態に関する記述です。企業の支出する教育訓練費や自己啓発に取り込む労働者の割合は減少傾向にあり、これは景気の動向、産業構造のサービス経済化など様々な要因が考えられるほか、積極的に職業能力を高める動機が企業側も労働者側も弱くなっており、職業能力開発施策が十分に機能していないことが要因として考えられるとしています。

4つ目の○は若年層に関する記述です。ニートやフリーターの数がそれぞれ高止まりしており、非正規雇用労働者として最初の仕事に就く者が4割近くを占めること、特に不本意に非正規雇用となっている割合が高くなっていること、このことは将来を担う人材の人的資本の質の低下や、労働力人口が減少する中での経済社会への影響が懸念されているとしています。

 これらを受け2ページの2つ目の○ですが、このような課題に対応し、若者を始めとした人材の最適配置を図り、その能力を最大限いかしていくことが求められていること、「日本再興戦略」でも若者雇用対策や職業能力開発施策全体の在り方について検討を進め、必要な法案の提出等の措置を講ずることとされるため、当分科会においては職業安定分科会の検討と併せて、若者の職業能力開発を更に促進させるとともに、職業訓練や職業能力評価制度、これらを機能させる労働者の主体的なキャリア形成を支援する仕組みの整備等の労働市場インフラの戦力的強化が必要であるとの観点から議論を行い、以下のとおり取りまとめるとしています。

 また、この部分でこの報告を受けて、厚生労働省において、法的整備を含め所要な措置を講ずることが適当と考えること、その際、施策の効果の把握やその検証を行い、不断の見直しを行うことが重要であること、3ページになりますが、中高齢期の労働者や障害者に対する職業能力開発等、その他の課題は引き続き検討を行う必要があることを盛り込んでいます。

 続いて2の見直しの方向性ですが、3ページ以降4つの柱でまとめています。まず(1)ですが、若者に対する職業能力開発です。後ほど、若年労働者部会報告の内容を御説明しますが、若者が安定・安心して働き続けられるよう、職業訓練、職業能力評価、個人の主体的なキャリア形成支援、ニート等の若者に対する職業的自立支援等を更に促進していくことが適当であるとしています。

 次に(2)です。産業界のニーズや労働者の置かれた多様な状況を踏まえた企業内訓練を含む職業訓練の推進です。まず職業訓練を通じて、産業界や地域のニーズを踏まえた職業訓練を実施することが重要であり、都道府県と都道府県労働局が職業訓練も含めた包括的な協定を締結すること等により、公共職業訓練と求職者支援訓練等の一体的な訓練計画の策定等を推進していくべきであること、その際には地域訓練協議会等の合議体を更に活用し、企業団体、労働組合など関係者のニーズの継続的な把握の強化、また、国も公共職業訓練と求職者支援訓練の効果的な実施に向けて、総合的に取り込むべきであることが示されています。

 続いて4ページ、1つ目の○ですが、職業訓練が必要な人に情報が届くよう積極的な情報提供の方策の検討を進めること、働きながら職業訓練の受講が可能となるよう、夜間・土日に開講する訓練コースや通信で受講できる教育訓練給付の対象講座の充実、公共職業訓練施設への託児施設の設置の促進等の取組を進めるべきであることが挙げられています。

 次の○は企業内の人材育成に関してです。景気の動向などに関わらず事業主が中長期的な視点で人材投資を行うことができるよう、引き続き助成金の活用促進等の必要な支援を行うこと。企業内の人材育成に関わる好事例の収集・周知を行っていくことが重要であること。その際、特にキャリアアップの機会に恵まれにくい労働者に対して、キャリアアップ助成金の活用等により職業訓練機会の確保を支援する必要があること。キャリア形成促進助成金などについて制度の周知広報を進め、支給要件の分かり易さや手続きの簡素化を進める等の取組で、企業内の人材育成を促進していくことが必要であることが示されています。

 さらに雇用型訓練については、ジョブ・カードと有機的に接続を図りつつ、更なる実施を推進するべきであることや、大企業においてその実施が広がっていくことが期待されること。認定職業訓練制度については、人材が不足している産業での若者の担い手を確保する観点からも有効な施策であることから、拡充を検討していくことが適当であることが指摘されています。

 そのほか、都道府県労働局を職業能力開発行政の拠点として位置付け、ハローワークにおいても職業能力開発に関する機能を強化すること、民間教育訓練機関の育成、職業訓練の質の担保・向上を図るための取組を更に進めることが適当であること、学校等関係機関と連携し、学生・生徒等に対するものづくり体験や技能講習会等の実施により、就業意識の釀成、技術・技能の向上を図る取組等をより一層進めること、文部科学省と連携し、キャリア教育を推進していくことが必要であることが示されています。

 次に(3)新たな職業能力評価制度の構築等です。冒頭、職業訓練と職業能力評価は車の両輪であり、連携を強め、労働者の職業能力の向上とその「見える化」の相乗効果により、企業の労働生産性の向上や労働者の処遇の改善が促進され、ひいては企業価値も向上するという好循環を生み出し

ていくことが重要であると記述しています。

 続いて6ページですが、技能検定制度について、外部労働市場での活用が進むよう、産業活動の変化・高度化等に即応した職種・作業の追加などを進めることが必要であること、若年層を始めとする労働者のモチベーションの向上やキャリアアップに資するよう、若者を主な対象とした技能検定3級の積極的な設定を進めること、若者等に対する技能検定の積極的な活用促進を図っていくことが重要であること、技能検定の更なる受検促進のため、会場設営等の運営面の工夫、訓練時間の確保、中小企業の労働者を含め幅広い労働者が受検しやすい環境の整備が求められることが示されています。

 続いて次の○ですが、現行の技能検定ではカバーできていない対人サービス分野を重点に、業界団体が設計、運営の主体となるなど、産業界で活用される実践的な職業能力検定を整備していくべきであること。その際には職業能力評価の手法にバリエーションを設けるなどの工夫をすることが重要であることなどが示されています。

 次の○ですが、加えて、職業能力開発施策の更なる推進のため、国民各層に広く職業能力開発や技能に対する関心を高めていく必要があること、このため、技能競技大会やその出場選手に社会の関心を集め、社会的な評価を高められるよう、周知広報を積極的に行っていくことが重要であること、ものづくり技能の魅力発信を一層強化し、技術革新に対応したものづくり人材の効果的な育成の在り方について検討していくべきであることが示されています。

7ページ、(4)最後の柱となりますが、職業人生を通じた労働者の主体的なキャリア形成についてです。冒頭、労働者の主体的なキャリア形成を図ることが職業能力開発に対する意欲を高め、豊かな職業人生をもたらすなどの効果があること、このため、職業人生を通じて労働者本人が自ら自覚を持ってキャリア形成に取り組むことが必要であり、離職者については国と都道府県、在職者については事業主が職業能力開発の主要な担い手となることに留意し、関係者が労働者のキャリア形成を支援していくことが重要であるとしています。

 次の○ですが、求職者だけではなく在職者も含めた労働者の主体的なキャリア形成を促進するため、専門実践教育訓練等の各制度を活用することのできる環境整備に取り組むとともに、労働者の主体的なキャリア形成を支援し、機能させる仕組みとして、ジョブ・カードの見直しを行い、労働者の置かれた状況に応じたキャリア・コンサルティングの機会の整備が必要であるとし、次の○以降で具体的な方向性が示されています。

 まず専門実践教育訓練についてですが、ユニバーサルサービスとしてより効果的に実施していくこと、ホワイトカラー層等より多様な層において受講が可能となるよう、文部科学省とも連携しつつ、プログラム開発等を行っていくことが必要であることが挙げられています。また、諸外国における教育訓練休暇制度の状況について研究を行うとともに、キャリア形成促進助成金制度等による教育訓練休暇制度の企業への普及、自己啓発を行う時間を確保できるような様々な環境整備を図っていくことが必要であるということが示されています。

 次の○はジョブ・カードについてです。ジョブ・カードは職業能力の形成機会に恵まれない人等の就職支援ツールとして創設されましたが、その後の見直しにより広く求職者などを対象として普及を図ってきたところです。本人のキャリア形成上の課題等が記載されていることなどから、職業訓練受講者を中心とした活用に留まっている現状にあることが記載されています。

 また、労働者に求められる職業能力の変化、労働者の有する職業能力の「見える化」や個々人のキャリア・プランの作成及びこれに基づく職業能力開発などが求められていることから、ジョブ・カードを、生涯を通じたキャリア・プランニングや職業能力証明のツールとして見直しを行うことが適当であり、周知・活用を促進するため、国が活用のモデルを示すとともに、労働市場の中で認知、活用されるよう位置付けを明確にした上で企業や業界団体への周知・活用を促進することが必要と指摘しています。

 その他、なお書き以降で、見直し後の名称は「ジョブ・カード」の文言を使用しつつ、見直しを行ったことが分かるものとすべきこと、学校卒業段階でもジョブ・カードの活用が有効な場合もあるため、文科省との連携を更に進めることが適当であること、登録キャリア・コンサルタントについて、有資格者との差別化を図るため、例えばジョブ・カード作成アドバイザー(仮称)という名称に見直すべきであること、現在の登録キャリア・コンサルタントのスキル、知識の向上を図るとともに、将来的な在り方について検討を進めるべきであることが、それぞれ示されています。

 残り2つの○ですが、キャリア・コンサルティングの機会の整備に関しての記述です。求職時における機会の確保のため、就労支援機関、職業訓練機関等へのキャリア・コンサルタントの配置を推進することが必要であること、企業内における機会の整備に向けて企業の取組を尊重しつつ、企業内でのキャリア・コンサルティングに係るマインドやスキルを更に広めるため、国が企業に対して活用のモデルや好事例の周知等の支援を行っていくことが求められること。

 上記の機会整備のため標準キャリア・コンサルタントについて、資格としての性格付けを明確にした上で、質や専門性を確保するとともに、養成を促進していくことが必要であるといったことが示されています。

 続いて資料の1-2です。930日以降の当分科会での主な意見をまとめたものです。前回の論点整理に対する意見については、4ページの(6)にまとめていますので、適宜参照してください。

 続いて資料1-3です。若年労働者部会の報告です。1枚おめくりいただき、本日付けで若年労働者部会の宮本部会長から、当分科会の小杉分科会長宛てに報告するという形で取りまとめています。具体的な内容は次のページの別紙となりますが、第1はじめにで、若者は将来を担う貴重な人材であり、フリーター、ニート数がそれぞれ高止まりする中、若者本人やその家族だけでなく、社会全体で支援することが重要であること、支援を行うに当たっては「個別的」、「持続的」、「包括的」に、それから「恒常的・安定的」に支援することが必要であるとまとめています。

 具体的な対策については第2項以降、6つの柱でまとめています。第1は職業訓練で、日本版デュアルシステムや実践的人材育成コース等の若者向けの訓練メニューや雇用型訓練を引き続き推進すること、学校中退者や卒業後に不安定な職に就かざるを得ない者等に対して、職業能力開発施策が進路の選択肢として有効に活用されるよう、学校に対する積極的な情報提供・発信や公共職業能力開発施設と学校等との一層の連携などが示されています。

 第2は職業能力評価に関するもので、対人サービス分野を重点に職業能力検定の整備等を進め、技能検定3級などエントリーレベルの積極的な整備を図ること。

 第3は個人の主体的なキャリア形成の支援に関するものですが、若者を支える人材としてキャリア・コンサルタントの資質の向上を図り、その養成を促進すること、またジョブ・カードについて所要の見直しを行った上で、その普及を促進すること。

 第4はニート等の若者に対する支援ですが、地域若者サポートステーションについて、より効率的、効果的な事業となるよう必要な見直しを行い、安定的に事業を運営することや各サポートステーションが有するノウハウや経験の普及、研修体制の整備や好事例の周知などを通じて機能の強化を図ること。

 第5は勤労青少年福祉対策についてですが、勤労青少年福祉法を若者の充実したキャリア形成や雇用のために必要な法律として発展的に整理する方向を含め検討すべきであること、ただし、現在実施されている施策については、その必要性に応じて継続できるよう一定の配慮が必要であること。

 第6はその他となりますが、若者に対する職業能力開発は、関係府省、地方公共団体、産業界・経済界等との連携の下、推進していくことが必要であり、また各施策が一体的、有機的に実施されるべきであること、最後、4ページですが、真に情報を必要とする者に対し、必要な情報が届くよう、利用者の目線に立った広報や情報発信が重要であるといった内容となっています。

 資料1-4ですが、今、申し上げました若年労働者部会の報告の概要になっています。資料の説明は以上です。

 

○小杉分科会長 それでは、ただいまの説明について御質問、御意見をお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。

 

○大野委員 では、最初に2点、私から意見と質問があります。まず、資料1-11ページの下から2行目の所の表現で、積極的に職業能力を高めるという動機が、企業側、労働者側にも弱くなっていると書いてありますが、動機が弱くなっているということまでは言えないのではないかと思います。少しここは違和感がある所です。

2点目は、質問です。同じ資料1-18ページで、下から2段目の段落の中で、また周知・活用を促進をするため、国が活用の好事例を示すとともに、労働市場の中で認知され、活用されるよう位置付けを明確にした上でとありますが、これの意味を確認したいのですが、何か法律でジョブ・カードの発行を義務付けるようなこと、例えば、高齢者雇用安定法にあるような求職活動支援書のような、45歳以上は本人が希望したら発行を義務付けるようなことを想定されているのかどうか。これは質問としてお伺いしたいと思います。以上です。

 

○小杉分科会長 質問ですのでお願いします。

 

○吉永総務課長 御質問からお答えいたします。ジョブ・カードの発行を義務付けるというよりは、今、ジョブ・カードは、ある意味、単に様式を通知レベルで定めているものです。これを可能であれば、法律上、様式といいいますか、制度という形のものを位置付けていくということは、1つ考えられるかというように思っています。ただ、一方で、ジョブ・カードというものがその成り立ちからもありますが、全ての人が等しく必要なものとは必ずしもないであろうというように思っておりますので、御指摘のような形で、何らかの形で義務付けるという形にはならないので、逆に言うと、企業の中で、もしこういうものを使っていくということが雇用管理の中で必要だということであれば、積極的に使っていただければ有り難いと思います。正にそういう趣旨の好事例というものがあれば、周知をしていく。雇用管理の制度がなかなか整っていないような中小企業などであれば、こういうものは当然考えられるのかというように思っています。

1点目の部分で、動機がというところは、御議論があるかとは思っています。ただ、全体として、意識としては、教育訓練費の支出が低下している部分、あるいは自己啓発に取り組む労働者の割合が減少しているという、最近の流れの中で、例えば企業の中でも、コアになる正社員に対する教育訓練は全く落ちていないというように思っていますが、そこの選抜が強まっているとか、そういうような要素があるのではないかということです。先ほど申したとおり、教育訓練費や自己啓発に取り組む労働者の割合が減少するということに反映する意味で記載させていただいています。

 

○小杉分科会長 よろしいですか。

 

○新谷委員 まず、報告書案全体について、意見を申し上げたいと思います。9月から4回にわたって、職業能力開発に関する諸施策の見直し論議を進めてきましたが、その内容について、この分科会での論議を踏まえた報告書の原案をまとめていただいた事務局に、まず感謝を申し上げます。

 報告書案の中身については、当初示された枠組みから肉付けされ、全体が俯瞰できるような形でまとめていただいたと思います。ただ、今後、報告書の最終文案を検討するにあたって事務局にお願いしたい点があります。大野委員が御指摘された点に関連しますが、日本の職業能力開発、特に企業における職業能力開発は、バブル崩壊を契機として長い低迷期に入り、またリーマン・ショックの発生によって企業の構造改革やリストラが進む中、二の次になってきたことは事実です。最近20年は、雇用維持をするということが労使ともに重要課題と位置づけて、取り組みを進めてきました。その結果、能力開発基本調査でも見られるように、企業の能力開発投資が減少傾向にあることが事実です。こうした点は、使用者側委員も異論はないと思いますが、企業において、「人」こそが重要な資源です。最近では、人材は、人の財(たから)と書く企業も増えてきています。「人」に対する能力を開発し、引き上げていくことは、企業にとっても重要な経営戦略である、この思いは労使ともに共通であると思います。

 こうした点を考えれば、仕事に必要な能力の開発は、OJTを中心とした企業を中心とする能力開発であるべきです。もちろん労働者の自己啓発も重要ではありますが、それはあくまでも補完的なものとして位置付けられるべきです。

最近は、過去最高益を更新するような企業が多い状況にありますが、そうした今こそ、「人」に対する投資を積極的に行うべきです。仕事に必要な能力の開発の主体は企業を中心としたものであって、補完的に自己啓発を行う。こうした考えを、報告書に記載いただきたい。どこに記載するかはお任せいたしますが、工夫していただきたい、ということが1点です。

 続いて2点目です。先ほど大野委員が御指摘された点とも共通しますが、報告書案には必要な法的措置を取るべきと書かれていますが、どの部分が法改正が必要な事項であって、どの部分が政省令、指針の事項なのかということが現状では分かりません。また、予算措置で行う事項もあると思いますので、次回分科会において、報告書のうち法改正事項、政省令や指針に関する事項、予算事項の別を明らかにしていただきたい。そうすれば、一層理解が進むのではないかと思いますので、資料の提出をお願いします。以上です。

 

○小杉分科会長 ありがとうございました。事務局は対応できますか。

 

○吉永総務課長 1点目については、7ページの(4)の最初の○の所で、若干、記載をさせていただいております。書きぶりを変えることが可能かどうかは少し検討したいと思います。

2点目のそれぞれの改正の考え方については、次回、資料等で御説明させていただければと考えております。

 

○小杉分科会長 ほかに御質問、御意見はありますでしょうか。

 

○板垣委員 分科会報告案の3ページの1行目に関する御意見を申し上げたいと思います。中高齢期の労働者や障害者に対する職業能力開発等の職業能力開発に関するその他の課題への対応については、引き続き検討を行う必要があるという整理となっています。この部分ですが、高年齢者雇用安定法や障害者雇用促進法の改正によって、働く高齢者や障がい者が増加しています。そうした状況を踏まえれば、高齢者や障がい者に対する職業能力開発についても早急に対応を図る必要があると思います。そのため、報告書の記述については、「引き続き検討を行い、早急に結論を得ることが適当である」といったより積極的な表現に変更して、職業能力開発行政を担う厚労省の姿勢を示すべきではないか。また、高齢者、障がい者の能力開発は、そもそもいつから見直しの議論をスタートさせようとしているのか。この点を確認をさせていただきたいと思います。2点です。

 

 

○小杉分科会長 今後どういう予定かということも含めて分かる範囲でお願いします。

 

○吉永総務課長 板垣委員の御指摘のとおり、高齢期における能力開発とか、障害者の能力開発は非常に重要な課題です。また、それぞれ御指摘のとおり、高年齢者雇用安定法の改正であるとか、障害者雇用促進法の改正とか、非常に重要な改正が行われたという状況で、特に障害者については、合理的配慮というような考え方が入ったということで、それに伴って、様々な諸施策を見直していく必要があるというように認識しております。

 一方で、全体として、特に障害者について施行はこれからというような状況もありますし、これらの状況を見ながら考えていく必要もあると思っています。そういう意味で諸処の状況を見ながら可能な限り速やかに検討を開始するということだろうと思っておりますが、現時点において、直ちにというところまでいくのかどうかということについては、また委員の皆様とも御相談させていただきながら進めていきたいと考えています。

 

○小杉分科会長 よろしいですか。ほかに御意見、御質問は、では、順番にどうぞ。

 

○田口委員 資料1-12の一番上で、若年層のことについて記述がされております。ニート、フリーター、あと、最初に非正規が4割と、初職で。それに対応して、その3ページの若者に対する職業能力開発にという所で、2ページの現状認識に対してどうなのかという点で言うと、余り具体的なことが触れられていないのではないか。先ほど企業内人材育成の費用とか、そういう意欲の低下ということが指摘されておりましたけれども、むしろ2ページに書かれているようなその人たちというのは、正社員になれないというか、そういうところの人たちで、そういう人たちを受け入れる職業訓練、職業能力の開発ということになると、企業内訓練、能力開発というよりも、産業とか、業種とか、そういう方向の部分をもっと重点的に投資をして開発していくようなことをしないと、なかなか解決はしていかないのではないかというように思います。私は建設業なので、建設業は既にそういう非正規雇用というか、そういうようになっていますので、そこの部分をもうちょっと長期的に検討しないと、今後、非正規労働はもっと増えると思うのですね。今、4割と言われていますが、そうした点について検討いただけないかということです。

 

○吉永総務課長 御指摘の点については、若年労働者部会報告と併せて御覧いただければと思います。今回の本体の報告書案の方でもいろいろ記載していますが、正に産業界、あるいは地域のニーズに応じた形での訓練というものが必要ではないか。訓練のための訓練はあり得ませんので、やはり最終的には仕事に就いていただいて、その中で可能な限り、いわゆる正社員型の形で安定的に働いて能力をいかしていただくということが必要なのであろうと思います。

 そういう意味で、今回の報告書の中で幾つかあって、訓練コースについては、正に地域、あるいは企業、産業界のニーズを踏まえた形の訓練メニューをどういう形で開発していくのか。それに伴なって、現状であれば、公共訓練についても、民間への委託が8割ぐらいになっていますが、そこの部分について、あるいは施設内訓練についても都道府県が行っている部分と、国が機構にお願いしている部分、また求職者支援の部分、それぞれが一体的に動いているかどうかというところがあります。そういうところを含めて一体的な計画を作っていくということで、正に地域において必要な訓練というものを若年者を中心とした方に提供していくことが、重要ではないかという形で記載させていただきました。

 更に言えば、そういうものを強化するために、現在、都道府県労働局では、職業能力開発の事務はほとんど行っていないという状況にありますが、そういった事務についても労働局を中心に展開し、ハローワークにおける公共訓練への受講指示であるとか、訓練ニーズを一体的に把握して、効果的に実施していくようなところで、おっしゃられたような形の枠組みというものを、何とか作っていけないかということが今回の報告書の中で、全体的な流れの中で記載させていただいた部分です。

 もとよりその非正規の方々がどういう形で正規化していくのかということが、非常に重要な課題だというようにも思っています。様々な統計を見ても、3年を超えて非正規の方、特に5年を超えてしまうと、その後、正規化する率は非常に低く、やはり3年なり、ぎりぎり5年ぐらいまでが正社員としてその後の職業人生を送っていただくための、その期間ではないかと思います。その期間に何とか、そういう機会を増やしていくということで、若年者部会報告の中では、そのためのデュアルシステムであるとか、雇用型訓練というものを積極的に活用できないかということも提起いただいているところです。職業能力施策をこれまで展開する中で、非常にウィークポイントになっている部分でもあるわけですが、そういったものを今回の見直しの中で、可能な限り、改善をしていきたいという形で整理をさせていただいています。

 

○小杉分科会長 よろしいでしょうか。思いは同じだということだと思います。では、続いて、どうぞ。

 

○高倉委員 報告案の4ページの下段に雇用型訓練に関する記述がありますが、ここに記載されているように、雇用型訓練の実施企業の99%が中小企業であって、大企業ではほとんど実施されていないことが現状です。報告書案では、「大企業においてもその実施が広がっていくことが期待される」という記載になっていますが、期待だけしても広がるわけがなく、何らか手を打たないと増えるわけがありません。そのため、例えばこの箇所の文章を、「大企業を含め確実に広く実施されるよう施策を検討する」といった1歩踏み込んだ記載にすべきであると思います。

もう1点。6ページの中段の、新たな職業能力評価基準の整備に関する記述の中で、業界団体が主体となって制度設計することは必要ですが、国として、どのようにサポートするかという記載が一切無いので、その辺を記載していただきたいと思います。以上です。

 

○吉永総務課長 1点目については、雇用型訓練は非常に正規化率も高いですし、特に若い方にとって、非常に有効なツールであるというように考えています。一方で、どういう形で展開すると、様々な企業で受けていただけるのかという辺りについては、まだ検討が進んでいないという状況でこういう記載となっています。記載については、少し検討させていただきたいと考えています。

 検定制度の重要性については、多分、余り異論がある方はいらっしゃらないと思っています。ただ、一方で、検定制度を作ろうというときに、なかなかそのノウハウを持った方が少ないということと、その制度設計について、あるいは試験問題を作るということについても、やはりコストが掛かるというところの負担が問題としてあって、そういうこともあり、なかなか広がりに欠ける部分があるのかというように思っています。御指摘のとおり、制度についての記載が少し欠けていたかもしれませんので、その辺りについて、国として何かできるかどうかということについては、記載は事務局のほうで検討させていただきたいと考えています。

 

○高橋()委員 7ページの(4)3番目の○にある、専門実践教育訓練について意見を申し上げたいと思います。専門実践教育訓練は今年10月からスタートしましたが、実態を把握・分析して、3年後を目途に本分科会で必要な見直しを検討することになっています。この点、労働側からは、専門実践教育訓練が雇用保険を財源としていることから、まずユニバーサルサービスになるように全国的に講座を開拓すべきであるを申し上げてきました。また、講座内容についても、幅広い労働者が受けられるような講座の選定をすべきであるということを、再三申し上げてきたところです。今、申し上げたことは7ページの3番目の○に書き込まれていますが、前回の分科会でも申し上げたとおり、厚生労働省として、より1歩踏み込んだ積極的な姿勢を報告書に盛り込んでいただきたい。具体的には、「3年を待たずとも、質の確保を前提とした上で、厚生労働省が主体となって講座開発と指定に積極的に取り組む」という積極的な文言を、報告書に記載いただきたいと思います。以上です。

 

○吉永総務課長 専門実践教育訓練については10月から始まっていますが、事実上、来年の4月からキックオフになるような形の指定の状況ではないかと思っています。その中で先般にも御報告させていただいたとおり、来年の4月からは少なくとも幾つかの講座については、全ての都道府県で受講が可能な体制までは整ったのではないかと考えております。ただ、一方で、もともと地域によっては教育訓練の資源が偏っていますので、多くの訓練コースがあるかというと、なかなかそういう状況でもないというのは御指摘のとおりであろうというように思っています。

 こういった問題については、かねてより御指摘があるとおり、雇用保険制度の中で運営しやっている以上、やはり必要な訓練について、希望があれば受けられるような体制を確立していくことが、1つの課題ではないかというように思っております。

 あとは、今、ホワイトカラーを中心とした職種がやや弱いのではないかというところもありますので、その意味での講座のプログラムについて、いろいろ考えていくということが重要ではないかと思っています。

 制度の発足当時、時間的な問題もあったということで、文部科学省が指定する職業実践のコースをそのまま指定するという形でやってきたわけですが、そもそもそこの段階でも、やや偏りがないわけではないというようにも考えていますが、そういう意味で、講座についてはどう考えていくかということは、積極的にと思っております。

 また、見直しの議論は、やはり講座を指定して、それが効果的かどうかということを見ていく必要があるということで、3年後の見直しになっているというように理解しています。実際に、大体、23年のコース、資格系は3年、それ以外は2年という形になっています。その後、受講された方がどういう形で行動しているのか、非正規で受けられた方が、どういう就職をしているのか、そのような就職の状況を見るには、やはり一定の期間が必要になるということで、3年で足りるかということもありますが、おおむね3年ぐらいのタイミングで見直していこうということではなかったかと思っております。大きな見直しとなると、やはり一定期間が経過しないと、効果的な見直しはできないのではないかと思っていますが、一方で、プログラムについては、現行の枠組みの中でも考えていく部分は当然あります。そこは委員の皆様にも御意見を頂きながら必要なプログラムの開発をやっていくことではないかと思います。

 

○新谷委員 高橋()委員の質問に対する今の答弁は、物足りないと思います。専門実践教育訓練は、もともと労使のニーズに基づくものではなくて、官邸主導で導入の方向性を決めたものです。また、財源についても、一般財源を投入すべきという労使の声を踏まえずに、労使の保険料を財源とすることとなりました。その上、時間がない中で指定基準を決めざるを得なかったため、10月のスタートを迎えた段階では講座の指定が業務独占・名称独占資格であって養成施設がある講座などに限るということでスタートしたのです。我々の主張は、制度が創設された以上は、非正規労働者を中心として、職業生活を送る上で生計を立てていけるような能力が身につく職業資格を、このシステムを使って身に付けさせる仕組みとするべきであると主張してきました。また、費用の額を見ても、専門実践教育訓練は、これまでの能開行政の年間予算の半年分近くに匹敵する巨額なプロジェクトです。

こうした点を踏まえ、現行の指定基準はあくまでも第1段であって、今後更に指定講座を広げていくということで第1段の基準を了承したわけです。今の総務課長の答弁は、3年たたないと見直さないような印象で聞こえましたが、そうではなく、第2段の講座の拡大に向けて、厚労省能開局として3年を待たずに精力的に取り組むという思いで答弁いただきたい。そうでなければ納得できないと思います。以上です。

 

○吉永総務課長 すみません、私の説明が十分でなかったかと思いますが、プログラム開発については、積極的に見直す必要があるというように考えております。その意味で、必要な講座はどういうものなのかというところ、ニーズ調査も含めた形で考える必要があるというように考えています。

 

○三村委員 中長期的なキャリア形成支援や人材育成においては、学校教育段階からは外せないと思います。まず5ページの上から3つ目の○の「さらに」からの部分について、お伺いしたいと思います。

 まず、この1ですが、この「さらに」を上からずっと読んでくると、(2)3ページの産業界のニーズや、労働者の置かれた多様な状況を踏まえた企業内訓練を含む職業訓練の推進については、中の○になっていますね。それは、どちらかと言うと、3ページの(1)の若者に対する職業能力開発の所にくるべき○ではないかというように考えます。

 それと、学校段階ということで、前回も指摘させていただきましたが、5ページの先ほどの○の所で、学生、生徒等と考えていて、この「等」が文科行政においては、小学生は児童と言うので、そこまで含めるかどうかというところが、まず1つです。

 二つ目は、ここに書いてある目的としては、就業前段階で適切な職業意識を持てるようにとなっていますので、ものづくり体験や技能講習会の実施も重要ですが、文科省との連携で考えれば、職場体験やインターンシップにおける支援というものも、非常に重要なものではないかというように考えております。今、中学校の職場体験は98%行っており、どちらかと言うと、職場体験をする事業所がなくて困っている部分で、支援がこちらのほうでできるのではないかというように考えます。

 三つ目は、若年労働者部会の報告では、学校中退者について、かなり早い段階で記述されています。ニート、フリーターの高止まりとありますが、こうしたものの1つの要因となっており、特に高校中退者に対する対応というものも、ここに何らかを盛り込んでおくことが必要ではないかと考えました。これが学校段階からです。

 もう1点は、キャリア・コンサルタントについてです。9ページに言及がありますが、キャリア・コンサルタントの最初の所の9行目の将来的な在り方についてです。前から指摘していますが、キャリア・コンサルタントにつきまして専門性の分化を含めた将来的な在り方などを入れておいていただければと思います。以上です。

 

○小杉分科会長 三村委員からコメントがありましたが、いかがでしょうか。

 

○吉永総務課長 記載の場所については少し検討させていただければと考えております。

 学生生徒等の「等」については、一応、児童を含んでいると考えております。もちろん、職業意識という意味で、小学生がどこまでの意識が持てるかというのがありますが、個人的な経験から言いましても、小学生のときに自動車工場に行ったり、近くのお菓子工場に行ったりというのは非常に鮮烈な印象として残っておりますので、非常に重要な部分ではないかと思っております。

 職場体験とインターンシップの辺りについてどこまで書き込むかということですが、ここで考えているのは、基本的には文部科学省と連携した支援の中に入ってくる話ではないかと思っております。そういう意味で記載しております。

 中退者の問題は非常に重要な課題だと考えております。若年労働者部会の報告書の中でも、1ページの一番下にありますが、中退しそうな人を中退しないようにとどめるのは、労働行政の中でどこまでできるかという課題ではありますが、少なくとも、中退せざるを得なかった方が、その後の職業選択を誤らないようにという意味で職業訓練というものを意識していただくことは、極めて重要ではないかということです。中退者などについて、公共訓練がその後の選択肢になるような形での情報提供がなされるように、少なくとも学校がそういう意識を持って積極的に対応していただくことが重要ではないかという形で、若年労働者部会の報告書の中では、記載しているということです。中退した方が、そのまま何となく暮らしていくということではなくて、最終的な生活、あるいは職業意識を持っていただくということを、中退する局面でも意識してもらうような形に誘導していくことが重要ではないかと考えております。

 キャリア・コンサルティングの御指摘ですが、キャリア・コンサルタント自体が、まだ必ずしも定着しているものではありませんので、どういう機能を期待されるかということは、それぞれの方で少しずつ違う部分があります。正に、学校あるいは就職の支援機関でのキャリア・コンサルタントのサービスと、あるいは、訓練で誘導するためのキャリア・コンサルタントの機能など様々になってくるわけです。そういう意味で、将来的には、御指摘のとおり、そういう形で特化していくことも重要ではないかと思っておりますが、まだ、現状では分化するというところまでは行っていないのではないかと思っております。まずは、全体としての質を高めていく。専門性を高めていって、その専門性が高まれば、自ずから分化していくということではないかと、個人的には思っております。以上、検討させていただきたいと考えております。

 

○大久保委員 長く議論をしてきた内容ですので、一つ一つの内容に関しては、もう十分まとめていただいているのだと思います。今回、タイトルに「労働市場インフラの戦略的強化」というものを出しているのですが、インフラとか戦略的という言葉がボンと出てくるのですが、このタイトルを受け止めているメインの文章がどこなのかというのが少し分かりにくくて、例えば「見直しの方向性」も、いきなり各論から入っているので、何かこれ全体をどこかで一回、総論的に書いていただいたほうがいいのではないかという気がするのです。この報告書の内容をどこかでサマリー的に引用しようとすると、どこを引用していいのかよく分からないという感じがあるのです。

 もともと今回は、離職者訓練の話ではなくて、どちらかというと、長期継続的な、もちろん企業内人材育成を軸としながら、労働者の職業能力の開発や向上をどう促していくのかという全体感みたいな話だと思うのです。そうすると、企業の人材育成を、当初、促進する方向で、企業内の人材育成を更に進めたりとか、評価の仕組みを作ったりとか、あるいは、企業が提供する人材育成と個人の自己啓発という両面性を取ったりとか、あるいは、今までやっている助成だけではなくて、様々な新しいルールを作ったりなどという、それはインフラとして長期的に機能させるために、法的な整備もしていくのだという、そんな全体感みたいなものが、どこかにまとまっていたほうがいいと思っています。それは、「見直しの方向性」の頭の所か、若しくは、直前の「このため」以下の所か、どちらかは分からないのですが、その辺りに何かうまく、一回、整理をしていただくというのはどうかなと思います。

 

○小杉分科会長 是非受け止めて、引用しやすいようにしていただけるようお願いします。

 

○豊島委員 報告書案5ページに、「(3)新たな職業能力評価制度の構築等について」とい項目があります。

この見出しを読むと、以前本分科会でも報告をいただいた既存の4つの職業能力評価制度とは別に、もう1つ新たな制度を設けるとも読めます。一方で、その中身を見ると、産業活動の変化や高度化等に即応した職種、作業の追加というように既存の技能検定の見直しや補強を企図しているとも読めますが、、6ページ目の2つ目の○ように、新たな職業能力検定を整備するということも記載されています。

 この間の本分科会の議論を受け止めてまとめていただいたことには感謝しますが、職業能力評価制度については、「新たに作る」のではなく「改良」「追加」「再構築」を意図しているのではないか。そうであるならば、報告書案についても、もう少し分かりやい記述としていただけないかということが1点です。

 それから、6ページの○の2つ目にあるとおり、サービス業を中心とする第3次産業従事者が労働者の70%を超す状況になっている状況を踏まえれば、まさに対人サービス分野を重点に、産業界で活用される実践的な職業能力検定を整備していくことは大変重要であると思います。ただし、以前も申し上げましたが、職業能力評価制度を整備するだけではなく、評価を通じて、労働者の能力が適正に評価され、キャリアアップや処遇改善につながっていくことが大事だと思います。その好循環をきちんと書いていただきたいと思います。

5ページの(3)のすぐ下に、「企業の労働生産性の向上や労働者の処遇の改善が促進され、ひいては企業価値も向上するといった、好循環を生み出していくことが重要である」とあるのですが、これを実現するために以下の記述があるということなのか、それとも、このことは次に続く記述の結果として実現されるのか。いずれにしても、この好循環を生み出していくサイクルこそが重要であり、好循環を実現していくために以下の施策を実施するという政策意図が明確となるようにしていただきたいと思います。

 最後に、先ほどの発言を補強したいと思います。例えば、6ページの○の2つ目にある、対人サービス分野を重点に新たに職業能力検定を整備するということについては、それは例えば、認定社内検定として既に整備されている対人サービス分野もあると思います。また、職業能力評価基準を参考に社内検定を整備しているケースに該当するものもあると思います。さらに、技能検定の中に振り分けられるケースもあるかもしれません。つまり、報告書案に書いてある「新たな職業能力評価制度」とは、既存の仕組みと比較してどのようなイメージになるのかということを教えていただきたいのです。イメージが整理できる資料を提出いただきたいと思います。以上です。

 

○伊藤能力評価課長 能力評価制度全般について御指摘いただきました。はじめに、最後のお尋ねのイメージですが、御案内のように、現行の能力評価制度に関しては、業種・職種共通の能力を評価する国家検定制度として技能検定制度があり、それを補完するものとして認定技能審査、あるいは、今も御紹介がありました社内検定認定制度といったものがあります。ここでの案文の整理の前提としては、サービス分野も含めて、業界あるいは職種共通の能力を整備していくといったことが極めて重要であると同時に、6ページの2つ目の○の最後にも少し触れておりますが、実践性を確保する上では、企業特有の技能についての評価の仕組みといった要素も必要であるということです。したがって、全体の設計としては、この技能検定制度の目的・機能に応じたブラッシュアップに加え、社内検定制度などの技能検定を補完するものとして、今、位置付けられている様々な他の能力評価制度についてもブラッシュアップしていく。更にそれらを、より有効に組み合わせていくといったアプローチが念頭に置かれるものと思っております。最終的な制度の絵姿に関しては、本日の御審議も踏まえ、また、次回以降、何らかの形でお示ししていくことになるかと思いますが、考え方としては、現行の技能検定制度の対象分野を広げ、その広げることに応じた、ここでも書かせていただいているような評価手法の見直し、プラス、社内検定とそれ以外の仕組みを有効に組み合わせるといった方向性を、私どもとして考えているわけです。

 そういった中身、考え方と、最初に御指摘がありました見出しに関しては、内容をできるだけ正確にという部分と、率直に言って、やはり訴求力といった部分もありますので、そういった両面から、また、本日の御審議を踏まえた上で、この見出しに関しては、ふさわしいものになるよう、更に検討もさせていただきたいと思っております。

 

○小杉分科会長 「新たな制度構築」だけ取ると、確かにちょっと誤解を招く表現ではないかと思います。

 

○伊藤能力評価課長 この点に関しましても、正に御指摘いただきましたように、この原案でも5ページの下の○の中に、訓練、評価が両輪であって、それぞれのブラッシュアップと両者の連携強化により、その目指すところは、企業の立場からすれば生産性の向上であり、労働者の立場から言えば、処遇の改善促進でありというのが、この(3)の能力評価制度の構築あるいは見直しの考え方です。全体の目指すところに関してはここで明確に記述させていただいた上で、そのための具体的な取組、とりわけこういった取組は重要ではないかというポイントについて、下の3つの○で書かせていただいているという意図です。ですから、(3)のコンセプト、意図としては、今、正に御指摘のとおりで、これに関しても、もし誤解を与えるおそれがあるということであれば、その書きぶり、構成については少し見直しを検討してみたいと考えております。

 

○浅井委員 今までの議論を伺っていて改めて思ったのですが、先ほど大久保委員からも、「戦略的強化」と、非常にチャレンジングなタイトルが付いていると指摘されましたが、改めて思いましたのは、今回の焦点の一つ、メッセージは、抜本的に大きく変わるためにこそ、継続的に人材育成に力を入れたいということではないかとは思うのです。それを踏まえて全体を読んでいると、どちらかというと、桁違いの変化に対して、漸進的に対応する、大きくは変わらないための訓練をしようというふうなトーンが読み取れてしまって、それで、せっかくの最初のところの趣旨がうまく伝わってこないのではないかという気がしました。

 現在、足下の業績が良い企業であったとしても、従来の成長の軌跡の延長線上ではもう太刀打ちできない。この従来の成長の軌跡の延長線上から離れて、構造転換であるとか、新事業に挑戦していかないといけないという危機感を非常に強くお持ちだと思うのですが、その危機感があるのだけれども、人の心というものを考えてみると、労働者全てが、新たな動きに対して極めて大きな不安感を持っている。今後、新事業、構造転換をしなくてはいけないと思いつつ、そうした場合に、自分の居場所がなくなってしまうのではないかと、極めて深刻な不安があって、そういった深層心理があると、企業の中で転換をしようと思ったときに、企業内の抵抗でうまくいかない。難しくなっていく。方向転換に対してブレーキを掛けてしまう傾向が出てしまうのではないかと思います。ですから、今回はそういう意味でも、大きく変わるためにこそ、継続的に人材育成に力を入れるのだということがはっきりメッセージとして伝わることが必要、というのが1点目です。

2点目は、企業内にかかわらず、若者、学生も含めた職業訓練、職業能力評価ということですが、資料を読んでいると、全体のトーンとして、受け止め側には、安定した大規模組織で、安定して働くことを目標にしていると読み取れるのです。例えば、昨日の日経新聞でも出ていましたが、現在、若者が起業、ベンチャーにチャレンジしていく。そして、学生時代に企業にチャレンジしていくことが、人生における良質な経験となり、必ずしもうまくいかなかったとしても、学生時代ならではの経験として、そうしたベンチャーにチャレンジしたことも職業訓練といえ、卒業後にマネジメント能力として活かす、という動き、評価が高くなっているようです。そういった形で若者の動きを捉えると、従来の職業訓練、職業能力とは、また1つ違う新しい職業訓練、そうした起業、ベンチャーのようなものを通じてマネージング能力を養っていくような形も考える必要があるのではないかと思いました。

3点目はニートの問題です。今、ニートが60万人もいる。今、日本では少子高齢化で、労働力人口が不足していく、これをどうするのだということが議論されています。現状は、現在、ニートが60万人もいて、このままいけば社会保障という問題でも、極めて大きな問題が、今後、どんどん深刻化していく。働く、という方向に大きく舵を切ることができれば、これは日本の経済を救う意味でも極めて大きい問題ですので、是非その部分に力を入れる必要があると思われます。ニート、聞く戸、若い年齢層の印象がありますが、このまま放置すれば、ニートの高齢化が深刻化していく、労働力人口の問題、そして社会保障の面でも、力を入れていく必要があるのではないかと思っております。以上、3点です。

 

○吉永総務課長 1つは、戦略的という形で大上段に構えている部分もありますが、全体として、この労働市場インフラをどういう形で考えていくかということに、正に戦略的に対応するというような思想で書いております。大きく、様々な企業経営も含めて変えていく状況にある場面もあるかもしれませんが、能力開発は、大きく変わると言っても一朝一夕に身に付くわけではありませんので、そこについては地道な仕組み作りが重要ではないか。そういったものを含めた地道な仕組みがきちんと働くようにするという形でインフラ整備を行う。正に産業界、地域のニーズを反映するものをくみ上げるための労働局の対応といったもの、あるいは評価制度を通じた形で、本人や企業でそういうものを活用していく。積極的に人材をいかしていくフレームワークがコンセプトになっていると思っております。

 もとより、急速に変わる場面において、公共訓練がどういう形で役割を果たすべきか。変わった先が明らかであれば、そういうメニューを作ることも可能なわけですが、変わった後の絵姿を現時点で私どもが把握し、それを積極的に誘導するのはなかなか難しいのが現状です。そういう中で、一定程度、先ほど、若者の起業の話もありましたが、そういう機能は、学校教育との連携の中でやっていく。そういう意味で、専門実践のような取組がある。ベンチャーを起こすと言っても、新たな発想で何かやるというよりは、企業経営のいろはのようなところももちろんあるわけですし、そういったものは、最近では大学教育の中でもやっている所もあります。そういうものを専門実践のフレームワークの中で支援していくこともあろうかと思っております。そういう中で、全体としての労働市場のインフラを整備し、大きな変革にも対応できるような環境を作っていきたいというのが、事務局の考え方です。

 もう1点のニートについては、非常に重要な課題だと思っております。社会保障の問題もそうですし、あるいは労働力人口が非常に減少していく中で、全員参加型社会を目指すことが日本にとって喫緊の課題だろうと思っております。そういう中で、若年労働者部会の報告書にいろいろな施策が書いてありますが、地域若者サポートステーション事業というものを展開していますが、これは一定の成果を上げていると思っております。特に若い方について、いろいろな障害を抱えておられる方もいらっしゃるので、なかなか全てというわけにはいきませんが、それなりの形で社会に戻ってきていただいております。こういったものを更に後押ししていくこと。現状では予算的にもなかなか不安定な状況がありますが、これをきちんと、若年労働者部会の報告書の最初にあります個別的・持続的・包括的・恒常的・安定的と。これは玄田先生の言葉をそのまま記載させていただいている部分なのですが、正にニート対策は、個別的・持続的・包括的・恒常的・安定的にやっていくことが重要だということで、地域若者サポート推進事業は展開していこうという発想です。そういう中で、御指摘のような面も踏まえて対応していくということではないかと考えております。

 

○小杉分科会長 ポイントはちゃんと受け止めているということですね。

 

○新谷委員 6ページの下の所に、「我が国の職業能力開発施策の更なる推進のためには、国民各層が広く能力開発や技能に対する関心を高めていくことが必要である」という記述があります。この記述を受けて、「このため、技能五輪、アビリンピック等の競技大会の出場選手の社会的評価が高められるように、周知広報を図っていく。」とありますが、能力開発に関する国民の意識を高める施策はこれだけではないはずです。能力開発は、我が国にとっての重要な施策であり、これを高めていくことは大事であると思うのですが、「このため」を受ける具体的な方策が「技能五輪」と「アビリンピック」しかないというのは、違和感があります。例えば「日本版マイスター制度」や「現代の名工」といった仕組みもありますので、記載については工夫いただきたいと思います。

 もう1点。報告書案には、ものづくりの大事さについても言及いただきたい。我が国の国際収支を見ると、資本収支などは増える一方で、財の輸出ウェイトが下がっていますが、ものづくり産業が外貨を稼いでいるわけです。ものづくりは、正しく我が国の経済社会の基盤を支えている。その人材をどう育てるかという視点からも、報告書の記述は大きく構えて記載いただきたいと思います。

7ページの後段には、技術革新に対応したものづくり人材の効果的な育成の在り方を検討する旨が記載されています。この記述はそのとおりです。しかし、先日JAVADAが職業能力開発基準の関係で日本機械工業会と連携するという報道がありましたが、まさにこうした産業界や業界団体との連携強化が重要であると思います。公共職業訓練施設は、予算制約もあるかもしれませんが、カリキュラムも含めて、最新の技術動向を取り込んでいって、指導員の再訓練も含めて、もっとキャッチアップしていくべきです。そうでなければ、技術の陳腐化などが起こり、ものづくりの動向に遅れてしまうのではないかという懸念があるのです。国には、産業界との連携強化を取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、職業訓練指導員についてです。新卒者の訓練や在職者の訓練について、職業訓練指導員の方が本当に頑張っていただいていると思うのです。ただし、社会的にはなかなか脚光を浴びない分野です。例えば、高齢・障害・求職者雇用支援機構のポリテクセンターの就職率は、ハローワークにおける就職率に比べて3倍から4倍と極めて高い。また、新卒者向け訓練を実施している県の訓練施設でも、学校の指導では就職が難しい子もきちんと訓練して社会に送り出していくといったことをしているのです。そして、こうしたことをやっていただいているのが、職業訓練指導員なのです。こうした職業訓練指導員も頑張っているということを是非、厚労省としても社会的にアピールしていただきたいと思います。以上です。

 

○伊藤能力評価課長 1点目に関して、新谷委員から御指摘がありましたように、今日、ものづくり技能振興、ものづくり技能者養成の重要さが一層高まっているということは、私どもも全く同様の認識です。この案文では、言わば象徴的な取組として技能五輪等を中心に書かせていただいておりますが、もとより、ここ数回の分科会でも御報告申し上げていますように、また、今も触れていただきましたように、ものづくりマイスター表彰制度等、総合的な取組を展開しておりますし、それらに関連する取組について相乗効果を期すことは一層重要だと思っております。せっかくこのような御指摘を頂きましたので、今申し上げたような現在の取組や私どもの考え方が、よりしっかり反映されるような表現を工夫させていただきたいと思っております。

 

○藤枝能力開発課長 新谷委員、ありがとうございます。指導員の地位向上とスキルアップは非常に重要だと考えております。今御指摘がありましたように、機構において、今、産業界との連携協定を結んで、それぞれの産業に合わせた訓練のカリキュラムや在職者訓練の実施とともに、また、逆に産業界からいろいろな技術や講師の派遣を受けたりという取組を進めております。更には、総合大で各都道府県から指導員を送っていただいて、そこでスキルアップ訓練をやっております。そういった、総合大で実施する訓練の内容にも産業界のニーズをしっかりと対応させてスキルアップを図っていくとともに、訓練を実施するのは正に指導員ですので、そういった方のなり手もまだ少ない状況がありますので、指導員の役割のPRも積極的に考えていきたいと思っております。

 

○小杉分科会長 案外、やっている本人が気が付かないことを御指摘いただいたということで、どうもありがとうございます。

 

○上原委員 今のこととの関連です。5ページの○の2つ目に、公的職業訓練の8割が民間教育訓練機関だということで、質の担保が重要だと書いてあるのですが、今の話と同じで、残りの2割は公的部分になるわけですから、その辺りの変化対応なり質の担保ということも書いておいたらいいのではないですか。それが1つです。

 ニート、フリーターが出ているのですが、ここで議論しているのはどちらかというと施策を実行する側の立場での議論なのですが、実際に求職者の側の意見も拾う必要があるのではないかと思うのです。ハローワークに来れば、キャリア・コンサルタントという入口があるわけですから、例えばどういうものを希望しているかとか、どういう職業に就きたいのだとかというのは多分あるのだろうと思います。

2ページの○の一番上の56行目に「職業能力を習得すべき時期に習得できない」と書いてあるのですが、原因はこれだけなのか、本音が書いていないような気がするのです。やはり個人の能力なども非常に大きいのだと思うのです。なかなか難しい話なのですが、その辺りを、努めて向上しようということではない人もいるわけです。多分、親が連れてこないと、ハローワークなどにも来ないのだと思うのです。ですから「個別」と書いてあるのですが、その辺りの個別も整理する必要があると思います。今のジョブ・カードも、スタートは何とか会社で働かせて、職業訓練を通して向上させていこうというスタンスなのですが、出てこない限りは、そういうところもつかめない。その辺りをどうしたものかというのは、ハローワークに来ればキャリア・コンサルタントがいるわけだから、その辺りの意見を聞くなり、場合によってはアンケートをやるなり、イギリスの一部でやっているみたいに訓練施設に連れてきてやるような、強制的なことも、場合によってはしなければ本質的な解決にならないような気もするのです。ところが、そんなことは余り書いていないわけです。全体で言っていることはきれいに書いてあるのだけれども、需要側の課題というのも整理する必要があるのではないかと直感的に思います。

 

○豊島委員 上原委員がおっしゃられたとおりだと思います。4ページの上の○の2行目に、「職業訓練が必要な人に情報が届くよう積極的な情報提供の方策の検討を進めるとともに」とありますが、行政から何とか伝えようという姿勢は必要です。しかし、情報が必要な人に情報が届かないということが、一番悩ましい。「情報が届く」ということ、そして「訓練制度がある」という訓練の存在自体が余りにも知られていない。報告書は、この現状とそれを変えるための施策が、1つのセンテンスの中で結び付くような書き方ををしていただきたい。そうした方が、読んだときにもっと分かりやすくなるのではないかと思います。

 

○小杉分科会長 それぞれ非正規の話でやっているけれども、別々の所で書かれているので、なかなか難しいところです。

 

○吉永総務課長 やはり大きな課題は、必要な方に情報が行っているかどうかということで、それが十分にできていないところがあって、そこはやらなければいけない。一方で、上原委員の御指摘は、仮に情報が行ったとしても、それを相手が認知していただけるかどうかと。そこは、幾らこちらで送っても受け止めていただけないという問題はある。これをどういう形でクリアしていくのかというのは非常に大きな課題です。そういう意味で、先ほども若干触れましたが、地域若者サポートステーション事業というのはアウトリーチ型で、ともかく連れてくるという。イギリスは、雇用保険のような給付がずっと出るので、それを出さないことで誘導する。来なければ給付を出さないという制度の中に誘導することができるのですが、日本の制度の場合はそうなっていないので、給付でコントロールするのはできないので、かなり任意性がどうしても高くなってしまうという問題はあるのです。

 ただ、サービスを受けることで、実際に就職したらこれだけ良いことがあるということを理解していただいて、その上でサービスを受けていただければ、一定の支援、サポートをしてあげることで、社会の中に戻ってきていただけるということがある。もちろんいろいろな方がいらっしゃるので、障害を持っていらっしゃる方などは多少の支援でどうかなるかという問題はあるわけですが。そういう意味で、個別的あるいは持続的な支援をすることで、そういうものを解消していくということではないかと思っております。

 そういう意味で、記載が少しばらけている部分もありますし、特にニートのところの記載は、むしろ若年労働者部会の報告書のほうに少し手厚く書いてある部分もありますが、その辺りをくみ取っていただければと考えております。

 

○小杉分科会長 ニート問題について少しだけ発言させていただきます。今、国際的にはニート問題の一番の対応策としては、やはり学校との連携がかなり大きな要素になっています。情報が届かないということですが、学校在学中も含めて、社会との関係が築けないという大きな課題があって、それは本人個人の問題というよりは、家族背景など様々な問題があって、実は本人が働きたいと思っていても、家族の何らかの形の世話をしなければならないとか、そういう様々な背景を持って就職活動に動けないなど、いろいろなことが明らかになっているのです。そういうところは個別的に対応しなければならないということは、本人の意識だけの話ではなくて、その背景にはたくさんのものを抱えている。ですから、個別的対応で、かつ、それがある一時期で起きたことではなくて、かなり1個ずつ解決しなければならない問題を抱えているということで、持続的な対応が必要だという話になっていて、それはアウトリーチという形で捉えなければ、本人が捉えられないのです。そのアウトリーチの一番の効果的なポイントはどこかというと、学校在学のうちにアウトリーチをかけるというか、本人の課題を抱えた若い人たちの状況を学校在学中に把握する。そこで就業支援の学校との連携が、国際的な方向としては、そこが大事なポイントだと言われるようになっています。若干、司会の役割を超えた発言をさせていただきました。

 

○三村委員 こちらのほうは学校段階と大学が中心かと思うのですが、大学においてはもはや悉皆で何事を行うことは不可能です。やはり小中高の中で、こうした基礎的な情報というものを周知する必要があるように思われます。そして、自分が何かクライシスに直面したときに、その情報を復活させて活用していくといった道筋を作っていくには、やはり学校段階との連携は非常に重要だと思うので、是非とも、小も含めて、小中高との連携をお考えいただければと思います。

 

○高橋()委員 4点ほど申し上げたいと思います。1点目は、先ほど大野委員が御指摘された1ページの3番目の○の記述です。能開基本調査等から教育訓練費あるいは自己啓発に取り組む労働者の割合が減少傾向にあることとして、「これは」以下で幾つかの要因が複合的に絡んでいるということを述べること自体には違和感がないのですが、そうした複合的な要因のほかに、「積極的に職業能力を高めるという動機が企業側、労働者側にも弱くなっており」というのは非常に違和感がある記述です。そもそも動機が弱くなっていることに関するエビデンスを私は見たことがないので、この「積極的に」から「弱くなっており」までの1文は削除が適当なのではないかと思いますので、御検討いただければと思います。

2点目は、5ページの(3)の○で、先ほど豊島委員がいみじくも御指摘をされていたことと関連するのですが、「見直しの方向性」以下、書かれている○には、必ず施策の方向性、どういう施策をするべきかということが書かれているのですが、この5ページの(3)の○だけは、どういう施策を打っていくのかということが全然書いていないのです。ですので、先ほどの大久保委員の御指摘を踏まえて見直しの方向性の総論を書かれていくとするならば、その総論に含まれてしかるべき文章ではないかと思いました。

3点目は、これは質問にも絡むかもしれませんが、6ページの2番目の○の最後の3行の意味がよく分からないのです。「職業能力評価制度全体として、企業特有の技能についても適切に評価し機能するような設計とすることが重要である」と。私の理解力がないのかもしれませんが、何を言っているのかが全然分からなくて、企業特有の技能が機能するというのはどういうことなのか。企業特有の技能は、その社内で機能しているのではないかと思いますので、私の理解が不足しているのかもしれませんが、御説明いただくとともに、残すのであれば、もう少し分かりやすい記述にしていくべきではないかと思いました。

4点目です。8ページの下から4行目にジョブ・カードの見直し後の名称についての記述ぶりがあります。9ページに、ジョブ・カードに関連した登録キャリコンについては、仮称という形で新しい名称を提唱しているところ、この8ページでは、「『ジョブ・カード』の文言を使用しつつ、見直しを行ったことが分かるものとすべきである」というのは、何となく物足りないなと思っております。「ジョブ・カードの文言を使用しつつ、例えば○○など、見直しを行ったことが分かるものとすべきである」というような記述ぶりとすることが適当ではないかと思います。以上です。

 

○吉永総務課長 まず、御質問のほうからお答えします。「企業特有の技能について適切に評価し機能する」というのは、考え方としては、企業で既に認定社内検定かどうかは別にして、社内検定制度を持っていらっしゃるということが1つあります。企業特有の技能というのは、正に社内検定の中で評価していただいているという部分があるのだろうと思っております。ただ、一方で、サービス業などにおいては、それぞれの社内で、それぞれ少しずつ違う、企業特有のことをやっていただいても、業界全体で見ると、かなり近いものをやっていただいている部分があるのではないか。そういうものについて評価できるような制度設計を考えるべきではないかという趣旨で書いてあるものです。記載が少し分かりにくいところもありますので、記載については少し考えていきたいと考えております。

 ジョブ・カードの名称ですが、例えば「新ジョブ・カード」や「ジョブ・カード2.0」などと、ジョブ・カードということをコアにしてどうするかというところが、まだ少し思い悩んでいるところがあり、こういう少し曖昧な記載になっているところがあります。

 

○高橋()委員 持って回った文章よりは、何か例示したほうが分かりやすいのではないかということです。

 

○吉永総務課長 そこは検討させていただきたいと思います。 その他、記載の部分がありますが、少し整理をした形で御相談させていただきたいと考えております。

 

○小杉分科会長 よろしいでしょうか。時間も来ておりますので、よろしければこの議題はここまでとさせていただきます。

 次に議題2についてです。内容について事務局から説明をお願いいたします。

 

○塚本実習併用職業訓練推進室長 では、資料2の「キャリア・パスホート(仮称)構想研究会報告書」について、御説明申し上げます。ジョブ・カードについては、本年5月より研究会において、見直しの検討を行っており、本年10月の分科会においても、中間とりまとめを御説明させていただきましたが、その後、研究会で様式などの更なる検討を行い、先般研究会の最終とりまとめを行っております。

1ページ目の1のジョブ・カードを取り巻く状況です。下から2つ目の塊の辺りですが、個々の労働者の状況に応じた能力開発、キャリアアップ、多様な人材の希望に応じた、必要な分野への円滑な就職等を実現するためには、個人主導のキャリア形成、職業人生を通じた職業能力開発とともに、職業能力の「見える化」を図ることなどが重要である。このような中、産業競争力会議、「日本最興戦略」において、ジョブ・カードを学生段階から職業生活を通じて、活用できるものとすることなどの見直しが求められたことなどを記載しております。中間とりまとめからの変更はありません。

2は主な課題等です。(1)の現行の目的・構成では、求職者と求人企業とのマッチングや、実践的な職業能力の取得を促進し、安定的な雇用への移行などを目的としていること。

(2)は主な課題です。一番下の塊ですが、ジョブ・カードはこれまで職業訓練受講者を中心に交付され、訓練効果の向上等に寄与しているが、目的到達が遅れ、広く求職者・在職者・学生等に普及していない。この背景として、マル1としてジョブ・カードは求職・求人時において、外部に出しにくいキャリア形成上の課題等の情報、JIS規格の履歴書と異なる様式による情報などのシートを分離せず、まとめて提出することを求めている。マル2として、様式は必ずしも在職労働者のための様式ではないことなどがあるとしています。中間とりまとめから変更はありません。

3ページ目の3のコンセプト等です。(1)のコンセプトでは、個人のキャリアアップや、多様な人材の円滑な就職等を促進するため、ジョブ・カードが「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担うツールであることを明確にし、労働市場インフラとして、キャリア・コンサルティング等の個人への相談支援の下、求職活用、職業能力開発などの各場面において、一層活用されるよう、活用方法、様式等を見直すべきであることなどとしております。おおむね、中間報告からは変更がありません。

5ページ目の(2)は情報の管理等です。各個人が職業能力証明などの関係情報を、様式ごとに独立させて蓄積・保存し、自ら抽出・編集して活用することから、情報を原則、電子化し、蓄積するとともに、労働者も容易に活用できる様式とすることが必要であること。加えて最終取とりまとめではマル3電子化及び情報の管理方法、この部分を追加しております。具体的には「新ジョブ・カード」は個人が所有し、どの情報を提示するかは、個人の意思にゆだねることが必要である。これらから、電子化情報の管理は、国が、電子化のためのソフトウェアの開発・提供を行った上で、個人自らが、個別に自らのパソコン等に情報を、管理する方式が考えられる。また、サイトには使用方法とともに、情報提供を行う機能を持たせることが重要である。これらのソフフトウェア・サイトはセキュリティが確保された使いやすく、分かりやすいものであることが重要であることなどを追加しております。

 なお、これらのソフト開発、運用、また情報提供等のためのサイトの開設、運営に係る経費としては、現在平成27年度予算として、約2億円を財務省に要求しております。この予算の大部分については、平成27年度のみに必要なソフトの開発経費です。また、これらの事業の財源ですが、「新ジョブ・カード」の活用が能力開発、また雇用の安定に資することから、労働保険特別会計、雇用勘定の雇用保険2事業による対応をお願いしたいと考えております。

6ページ目の3(3)のは様式の構成等、この部分を追加いたしております。様式1のキャリア・プランシートです。サイトで示す質問を参考に、必要に応じて、キャリア・コンサルタント等の支援も受けながら、個人がキャリア・プラン等を記入するシート。また、様式2職務経歴シートですが、キャリア・プランニングのための職業経験の棚卸しの際に、個人が記入するとともに、「職業能力証明」のツールとして活用するシート、3-1の「職業能力証明」(免許・資格)シートですが、キャリア・プランニングのための自己理解の際に、個人が記入するとともに、応募様式としても活用する。3-2の「職業能力証明」(学習歴・訓練歴)シート、自己理解の際に、個人が記入するとともに、応募様式としても、活用するシート。また、3-3の職業能力証明(訓練成果、実務成果)シートですが、教育訓練の成果の評価、また仕事振りの評価を担当者が記入し、応募書類として、また自己理解などの際にも、活用するシートとしております。

7ページ目の4(1)は、活用の概要としては、「新ジョブ・カード」は生涯を通じたキャリア・プランニングのツールとして、個人自らが質問などを参考に自己理解、キャリア・プランの作成等を行い、記入いたします。その際、必要に応じて、キャリア・コンサルティング等の支援を受ける。また、キャリア・プランを踏まえて、必要に応じて、公的職業訓練等の支援を受けるなどにより、職業能力開発を行い、この訓練の成果などの評価を記入いたします。さらに、訓練の成果等の評価、また職業経験等を記載いたしました「新ジョブ・カード」の職業能力証明の機能を活用いたしまして、求職時の応募に活用するなど、労働者などが中長期のキャリア形成にそって、効果的に活用することが重要である旨を追記しております。

4(2)は在職労働者を含めた職業生涯を通じた活用です。マル1個人自らがキャリアの振り返り、キャリア・プランの検討を行うことを含めましたポートフォリオ型のキャリア・プランニングでの活用。マル2在職労働者の実務経験を通じ発揮される職業能力評価での活用。また、マル3「業界検定」等に係る活用。マル4専門実践教育訓練における活用。マル5非正規雇用労働者の正社員化をも目的とした離職予定者を対象とした活用。マル6「新ジョブ・カード」を活用したキャリア・プランニングなどの中小企業の職業生活設計に即した取組への相談支援があります。中間とりまとめから主な変更はありません。

10ページ目の(3)は求職者に特化した活用です。マル1活用の基本的な考え方の部分ですが、キャリア・プラン関係情報は、原則個人情報として活用する。また、求職活動等においては、個人自らが選択して必要な情報を抽出し編集した一般の履歴書などに、必要な職業能力証明の関係情報を追加して、応募書類として活用する。特に、フリータヘー歴の長い方、高年齢者などの活用の促進も重要などとしております。

 以上に加えまして、11ページのマル3です。この部分を追加しております。「新ジョブ・カード」のSNSでの活用においては、個人が閲覧される方の範囲などを考慮して、情報の掲載の可否の判断を行うことが必要であるとしております。

(4)は教育訓練の場面に特化した活用です。これまでジョブ・カードを活用することが必要とされております職業能力形成プログラムとともに、これ以外の教育訓練についても、活用を促進するとしております。中間とりまとめからはおおむね変更はありません。

12ページ目の(5)は学生を対象とした活用の部分です。「新ジョブ・カード」を学生のキャリア・プランニングのツールとして活用することが重要であるなどとしております。

13ページの(6)は、周知広報・普及促進の部分です。広報周知の強化、またインセンティブの付与とともに、「新ジョブ・カード」の役割、活用方法などを分かりやすく広範に周知広報することが重要。また、普及においては、様々な関係者に対して、役割、活用方法などを説明し、理解を求めることが重要であるとしております。

5のその他の部分です。(1)登録キャリア・コンサルタント相当者については、資質向上のためのフォローアップ講習、標準レベル以上の資格の取得の勧奨等重要である。(2)職業能力評価については、(訓練成果・実務成果)シートの対象分野の拡充・整備、「業界検定」の整備を図ることが重要である。(3)教育訓練については、引き続き、職業能力形成プログラムの推進とともに、在職労働者などのニーズに応じた教育訓練の推進も必要であるとしております。

(4)は先ほども議論がありましたが、見直し後の名称は「ジョブ・カード」の認知も進みつつあることなどから、引き続き「ジョブ・カード」の名称を使用した、見直したことが分かるものとすることなどが望ましいとしております。以上です。

 

○小杉分科会長 それでは、ただいまの説明について、御質問、御意見を伺いたいと思います。

 

○大野委員 私のほうから1点、意見を述べたいと思います。これはまだ研究会のとりまとめの報告書の案だ思います。これからこれを活用する際には、具体的な議論が進んでいくとは思います。そして、前提として、いわゆるキャリア・マッチングというのですか、在職労働者のキャリア形成の目的だとか、それから求職者の求人企業とのマッチングを行うためにということの中で、ここに今回出ているような様式が非常に具体的に書くようになっています。それは確かに目的からすると、そのとおりだと。具体的に書かないといけないなとは理解をしました。

 ただ一方で、具体的に書いていきますと、企業側にとりましては、いわゆる営業秘密は技術情報だけではなくて、販売あるいは生産方法、ノウハウも含めて、公知の事実以外のものは、営業秘密ということで、不正競争防止法等でも保護されている権利だと思いますし、産業力を強化するためには、非常に重要だと私は理解しています。

 例えば、様式2の職務経歴シートなどは、これを見ますと、非常に詳細に書くようになっています。これはこれで、私はキャリア形成やマッチングのためには重要だとは思っているのですが、一方で、書いた内容が営業秘密に抵触する可能性があると思います。これはやはり、企業側のほうで、何らかの防御措置を取る必要があると思うのです。この様式は個人が書くようになっています。ただ、これは公開される可能性があるから、それを前提として書きなさいという注釈もあります。それから、会社側がこれを承認する欄がありますが、これも任意といいますか、承認する場合と、承認しない場合が両方あってもいいと書いてあると思うのです。そこは何らかの形で、営業機密に関する情報が書いてあれば、防御措置が取れるかもしれないと思います。

 一方で、この本論のほうの9ページの所にマル5があります。離職予定者を対象とした活用という中で、この「新ジョブ・カード」の様式が高齢者雇用安定法に言う、先ほどお伺いしました求職活動支援書、これは書式は任意だと思うのですが、そこの中にこの「新ジョブ・カード」の様式というか、中身を活用して作成するとなると思うのです。

 そうすると、この高齢者雇用安定法の求職活動支援書のほうは、労働者が求めれば、企業が発行する義務があります。義務があるときに、やはり書く内容については、営業機密の観点は、かなり神経質に見ないといけないと思うのです。ですから、少し営業機密上の懸念される面があるということは申し上げたい。

 また、そのままこれを求職活動支援書に持ち込むということに関しては、会社が発行するものは、どんな仕事をされたかの内容は、会社が書くべきものではないかと思っています。その辺がこのジョブ・カードの所はまず個人が書くようになっているので、少しそこがずれているのではないかと思いました。以上です。

 

○小杉分科会長 これに関してはいかがですか。

 

○吉永総務課長 営業秘密については、非常に重要なテーマだろうと思っています。一般的には就職時等で、個人について義務をかけ、退職後についても、一定の秘密の保持の義務がかかるという制度の中、あくまでその枠の中で、個人が記載する場合にしていくというのが原則だと思っております。

 その上で、離職予定の中高年者の場合の就職活動支援書の様式としても、使えるという形ですので、企業が問題がなく、これを使うということであれば、それを使っていただいても構わない。この様式が適当でないということであれば、通常の任意の様式の中で対応していただくということだと思います。

 御懸念のような、営業秘密の関係があって、そもそもジョブ・カードの中に、営業秘密のようなものが書き込まれるということは、どのくらいあるのかというのはありますが、仮にそこが御懸念であって、それを使わないということであれば、それについて様式を固めるということではありません。そこはどういう様式を使うかは、企業の御判断だと考えております。

 その上で、既にジョブ・カードを活用している企業であれば、それをそのまま使うということは可能でありますので、そもそもジョブ・カードを活用していただけるかという問題もあります。仮に活用していただいても、就職活動支援書においては違う用紙を使うということも、当然可能であるという形になっております。

 

○塚本実習併用職業訓練推進室長 補足させていただきますと、離職予定の方については、これは現行も職務経歴が長い方向けのジョブ・カードという形で運用されております。これを新たに「新ジョブ・カード」になった場合においても、同じような形で運用する。当然のことながら、キャリア・パスポート構想研究会の中でも、やはり企業秘情報、この取扱いについては、かなり議論されました。

 おっしゃるとおり、この部分については、外部に出す場合に、企業秘情報に抵触しないのか。これを十分に確認しながら書いていくことが必要です。書いて良いものでないと、会社サイドは、これをもってして、支援書にしていただけないということになります。ここは十分留意しながら、書いていくことが必要になってくるかと思います。

 

○小杉分科会長 ほかにありますか。

 

○高橋()委員 今後の進め方について、教えていただきたいのです。今日は構想研究会のほうで、正式にまとまったと説明を受けました。これから、新しい制度の始動に向けて、能開分科会がどういう関わり方をするのか。もう報告書がまとまったので、この報告書どおりに進めていきますということなのか、それとも先ほど来、御議論もあった、様式の在り方も含めて、この分科会でオーソライズというか、ファイナライズして、制度の始動に向けていくのか。そもそも論をもうちょっと教えていただければと思います。

 

○吉永総務課長 法制的な検討については、現在部内で行っているところです。新しい職業能力開発促進法の改正の中で、1つジョブ・カードという考え方を法令上位置付けるということも法制度上あり得ると考えています。

 そうした場合については、現在のジョブ・カードの様式のようなものを、法令上に位置付けられた、例えば省令でありますとか、そういった様式にしていくということになろうかと思います。その際については、改めて分科会にお諮りして、御議論いただくということだろうと考えています。

 

○高橋()委員 ではあと、細かい質問をさせていただいてもよろしいでしょうか。報告書の6ページの一番下の様式3-3では、「職業能力証明」という記述振りの出だしで、教育訓練の成果の評価、職場での仕事振り評価を記入していくという形になっています。

27ページの所に、様式3-3に関わる具体的なシートがあります。これを見ますと、訓練の職務、訓練参加者氏名などという形で、訓練用のシートのように見えます。仕事評価みたいな形ではないシートなのか、よく分からないのです。私が質問したいのは、在職者についても、こういう形で評価をするようなものを考えているのかどうか。もし、OJTとか言いましたら、要するに社員の方は入社してから、退職するまでがOJTです。それをずうっと書き続けていくのは、ちょっと違和感があります。

 細かい企業評価というのも、企業独自の評価を持っているところが多いと思います。必ずしもここに書かれたようなものには、なじまないものもあるでしょう。企業の評価としても、公表を必ずしも望まない企業の方々もいるでしょう。実務的にどうなのかという疑問を抱かざるを得ないと感じています。

 シートそのものについても、この分科会でしっかりと議論をさせていただければと思います。以上です。

 

○塚本実習併用職業訓練推進室長 実務経験の評価のシートのほうです。別途、28ページ目の上段に設けております。例えばですが、雇用型訓練を実施した会社、これは一番最初の3-3-1-1のシートで訓練が行われております。その会社が雇用型訓練を行った方だけでなく、例えば3年とか5年の一定程度勤めていらっしゃる方にも、同じような評価基準等を作り、目標を明確にして、ここまでできているというような評価をするということも、今現在独自にやっていらっしゃる会社もあると聞きます。そのような形で、正に在職労働者向けのシートを、今現在の雇用型訓練のシート辺りを準用した形で作成して、実施していくことが想定されるのではないかと考えております。

 

○高橋()委員 では、例えば、人事異動などで、仕事が変わったりした度に、書いて評価していくということなのですか。

 

○塚本実習併用職業訓練推進室長 例えばですが、区切り区切りに、今どこまでうまくできるようになっているか。本来あるレベルで求められているのは、この辺である。今、現在はここまでできて、ここまではできていないというところを明確にして、今後の例えば訓練の方向性を決めるなどの使い方もあるかと思います。

 

○高橋()委員 では、例えば、人事異動などで、仕事が変わったりした度に、書いて評価していくということなのですか。

 

○塚本実習併用職業訓練推進室長 例えばですが、区切り区切りに、そこで今どこまでうまくできるようになっているか。本来あるレベルで求められているのは、この辺である。今、現在はここまでできて、ここまではできていないというところを明確にして、今後の例えば訓練の方向性を決めるとか、そういうときに使うようなイメージの使い方もあるかと思います。

 

○吉永総務課長 いずれにしても、法制的に整理がつくという形であれば、改めて分科会のほうで御議論いただくということだと考えています。その立場で詳細について、御意見等を頂戴できればと考えております。

 

○小杉分科会長 ということで、ここはよろしいですか。それでは、この議題については、ここまでとさせていただきます。

 それでは、次に議題3、「職業訓練の実施による特定求職者の就職の支援に関する法律施行規則の一部を改正する省例(震災特例措置の延長案要綱について」です。これは本日付けで厚生労働大臣から、労働政策審議会会長宛てに諮問がなされたところであり、これを受けて本分科会において、審議を行うものです。内容について、事務局から説明をお願いいたします。

 

○藤枝能力開発課長 資料3です。求職者支援制度において、被災地特例を設けております。これについての期限の延長をお願いするものです。

 概要、ポンチ絵を付けさせていただいておりますので、そちらで御説明させていただきます。東日本大震災特例措置の延長についてです。この特例措置は今年度末までの措置になっておりますので、これの1年間の延長をお諮りするものです。特例措置の内容についてです。大きく2つあります。1.災害復旧に必要な人材育成を図るという観点から、震災対策特別訓練コースを特例で設けております。通常の求職者支援訓練は3か月から6か月の訓練ですが、その囲みにありますように、復旧・復興事業に必要な整地等、こういったものに対応する訓練ということで、車両系建設機械あるいは小型移動式クレーン、玉掛け、フォークリフトの技能講習等を含む訓練について、10日から1か月以内で設けています。参考で過去の実績を掲載しています。例えば平成25年度は、受講者406人、就職率59.1%と一定の効果を上げているところです。

 特例措置の2番目が認定に係る措置です。求職者支援訓練の就職率に係る特例で、通常ですと、過去のコースにおいて、2コース以上が一定の就職率を達成していない場合については、求職者支援の認定を受けられないというルールですが、これについて1コース当たり0.5コースと扱うという特例を設けております。これについても、延長をお願いするものであります。簡単ではありますが、私からは以上です。よろしく御審議のほど、お願い申し上げます。

 

○小杉分科会長 ただいまの説明について、御質問、御意見がありますか。

 

○新谷委員 諮問案件ですので、労働側として意見を申し上げたいと思います。

震災特例措置については、震災復興事業に必要な人材の育成の観点から、一定の施策効果があると認識しています。今回の諮問内容について、被災地にある連合の地方組織にも意見の照会したところ、特例措置の再延長を望む声が寄せられました。

そもそも建設関係を中心とする復興事業は、建設資材の高騰、人材不足等によって、復興事業の遅れが出ているのが現状です。また、労働市場全体を見ても、求人倍率も大幅に改善しているもののすが、その求人は建設事業に集中しています。一方で、求職は事務系職種が多く、結果雇用のミスマッチが発生しています。このミスマッチを解消するためには、訓練の充実が重要です。

 一方で、震災復興事業は、あくまで建設を中心とする臨時的・一時的な仕事が中心であるということにも留意すべきです。現在は震災復興事業で働いている方も、将来的には従来やっておられた沿岸部での水産加工業に戻る意思をお持ちの方も多いようです。この点は、訓練だけの問題ではなくて、被災地、沿岸部での産業をどう復興するかという大きな問題でもあると思います。

 震災復興については、職業安定行政、職業能力開発行政を担う厚労省もその一翼を担うと思いますが、経済産業省等のより広い省庁と連携し、国全体で地域の産業復興をどうするのかという問題ですので、能開局長としても是非、関係省庁との連携を深めていただき、訓練の在り方を見すえて対応をお願いしたいと思います。

 以上の点を申し上げ、労働側としては、諮問内容について了承申し上げたいと思います。以上です。

 

(異議なし)

 

○小杉分科会長  ありがとうございます。それでは、事務局から報告文案の配布をお願いいたします。

 

(報告文()配布)

 

○小杉分科会長 では、お手元の案でよろしいでしょうか。

 

(異議なし)

 

○小杉分科会長 ありがとうございます。それでは、そのように報告させていただきます。

 これで本日の議題はおしまいですが、その他、委員の皆さんから何かありますか。特にないようでしたら、本日の議論は以上といたします。また、次回の日程等については、改めて事務局から連絡させていただきます。議事録の本日の署名人は労働側豊島委員、使用者側諏訪委員にお願いします。それでは、本日はこれで終了します。どうも御協力ありがとうございました。


(了)

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