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2014年10月29日 第15回労働政策審議会勤労者生活分科会議事録

労働基準局勤労者生活課

○日時

平成26年10月29日(水)


○場所

中央合同庁舎第4号館 1214特別会議室(12階)


○出席者

公益代表委員

宮本分科会長、権丈分科会長代理、井上委員、岩本委員、小野委員、高木委員、内藤委員

労働者代表委員

安藤委員代理、大塚委員、須田委員、山本委員

使用者代表委員

池田委員、塩野委員、豊田委員、布山委員

(事務局)

谷内大臣官房審議官(賃金、社会・援護・人道調査担当)、松原勤労者生活課長、瀧原勤労者福祉事業室長、山口勤労者生活課課長補佐、田川勤労者生活課課長補佐

○議題

(1)財形制度をめぐる状況について
(2)当面の課題及び対策について
(3)平成26年度税制改正について(報告)

○議事

○宮本分科会長 定刻となりましたので、ただいまから「第 15 回労働政策審議会勤労者生活分科会」を開催します。

 まず、前回の分科会以降の委員の交代と本日の出欠状況について事務局より報告をお願いします。

○田川勤労者生活課課長補佐 労働基準局勤労者生活課課長補佐に就任しました田川と申します。よろしくお願いします。私から委員の交代について報告をします。

 公益代表高木伸委員の後任として、一般社団法人全国銀行協会理事の岩本秀治委員が就任しておられます。

○岩本委員 岩本でございます。どうぞよろしくお願いします。

○田川勤労者生活課課長補佐 労働者代表齋藤憲夫委員の後任として、一般社団法人全国労働金庫協会常務理事の安藤栄二委員が就任しておられます。

○安藤委員代理 安藤栄二の代理として参加しております。よろしくお願いします。

○田川勤労者生活課課長補佐 同じく、労働者代表瀬尾進委員の後任として、日本ゴム産業労働組合連合本部中央執行委員長の山本昭二委員が就任しておられます。

○山本委員 山本でございます。よろしくお願いします。

○田川勤労者生活課課長補佐 同じく、労働者代表早川順治委員の後任として、全国生命保険労働組合連合会中央書記長の大長俊介委員が就任しておられます。本日は御欠席です。

10 月に御就任をされました委員の皆方におかれましては、大変恐縮ながらお手元に辞令を置かせていただいています。よろしくお願いします。

 それでは、続きまして本日の出欠状況について報告します。公益委員の柴田委員、労働者代表の袈裟丸委員、安藤委員、大長委員、使用者代表の上原委員、三原委員が御欠席です。労働政策審議会令第 9 条の規定、全委員の 3 分の 2 以上又は、公労使委員の各 3 分の 1 以上の御出席により定足数を満たしていますので御報告します。

 先ほど御紹介を申しましたが、安藤委員の代理として一般社団法人全国労働金庫協会営業企画部部長の関山順様が御出席されておられます。

○宮本分科会長 ありがとうございました。事務局も人事異動があったようですので御紹介をお願いします。

○田川勤労者生活課課長補佐 それでは、事務局の御紹介をさせていただきます。大臣官房審議官 ( 賃金、社会・援護・人道調査担当 ) の谷内です。谷内審議官により御挨拶を申し上げます。

○谷内大臣官房審査官 ただいま紹介いただいた当分科会を担当しています谷内と申します。本日はお忙しい中、皆様、本分科会に御出席いただきありがとうございます。勤労者生活分科会においては、かねてより勤労者財産形成促進制度について御審議をいただいています。

 今回、新たに委員に御就任された方々もおられますが、委員の皆様におかれましては、今後とも審議のほどよろしくお願いします。近年、国民が資産を形成するための選択肢は広がっています。勤労者の自助努力を事業者や国が支援し、計画的な財産形成を促進する財形制度は引き続き重要であると考えています。

 このような中で、本日の分科会においては、財形制度をめぐる状況について御報告をさせていただくとともに、従前より本分科会から御指摘をいただいていた中小企業への普及促進についての取組状況、及び今後の対策について報告をさせていただき、委員の皆様の忌憚のない御意見を賜りたいと考えています。今後とも財形制度がより一層、勤労者の生活の安定に役立つものとなるよう努力していきたいと考えていますので、よろしくお願いします。

○田川勤労者生活課課長補佐 続いて事務局を御紹介します。労働基準局勤労者生活課長の松原です。

○松原勤労者生活課長 松原でございます。よろしくお願いします。

○田川勤労者生活課課長補佐 同じく、労働基準局勤労者生活課勤労者福祉事業室長の瀧原です。

○瀧原勤労者福祉事業室長 瀧原でございます。よろしくお願いします。

○田川勤労者生活課課長補佐 その隣です。労働基準局勤労者生活課課長補佐に就任した山口です。

○山口勤労者生活課課長補佐 山口でございます。よろしくお願いします。

○田川勤労者生活課課長補佐 どうぞよろしくお願いします。

○宮本分科会長 ありがとうございました。それでは議事に入ります。本日の議題は 3 点あります。 1 つ目は、財形制度をめぐる状況について、 2 つ目は、当面の課題及び対策について、 3 つ目は、平成 26 年度税制改正について。以上 3 点です。それでは、議題 1 「財形制度をめぐる状況について」、事務局から説明を頂きます。

○松原勤労者生活課長 勤労者生活課長の松原です。私から資料を説明します。それでは、資料 1 です。「財形制度をめぐる状況及び平成 25 年度の業務実施状況について」という資料です。まず、目次があります。始めに 1-1 1-2 として制度の概要について簡単に御紹介した後に、 2 番、 3 番と勤労者の貯蓄や持家をめぐる現状などをお示ししながら財形貯蓄と財形持家融資の状況の説明を申し上げます。

 まず、財形制度です。主に財形貯蓄制度と財形持家融資制度から成り立っています。資料 1 が貯蓄の資料です。右の図にあるように、勤労者の方が事業主、会社を通じて給与等の天引きにより積み立てていくという点に特徴があります。

 左側にあるように、大きく分けて 3 つの種類があります。使い道を限定しない「一般財形貯蓄」、 60 歳以降の年金支払いを目的とする「財形年金貯蓄」、住宅の取得・増改築等を目的とする「財形住宅貯蓄」の 3 つの貯蓄があります。このうち「財形年金貯蓄」及び「財形住宅貯蓄」については併せて 550 万円までが利子非課税ということになっています。

 続いて、資料 2 ページです。こちらは財形持家融資制度の概要です。この制度は、財形貯蓄を行っている勤労者のための住宅ローンです。各財形貯蓄取扱機関にある財形貯蓄残高を原資として融資を行っており、いわゆる還元融資の仕組みを取っています。

 左側に概要が書いてあり、まず下から 3 つ目の融資限度額、財形貯蓄残高の 10 倍までの最高 4000 万円。また、償還期間については最長 35 年の返済期間を設定できます。また、貸付金利は 5 年固定金利となっており、この 10 月現在の金利は 0.90 %となっています。

 次、 3 ページです。貯蓄をめぐる状況について説明します。こちらでは、国民全体の金融資産の状況について取りまとめています。左側の円グラフですが、日銀の統計から保有資産の内訳を示したものです。様々な金融資産がありますが、現金・預金が全体の半分を超えているということです。

 右側は、勤労者以外の方々も含めた 2 人以上の世帯における金融資産の保有額の推移を見たものです。預貯金の占める割合、折れ線グラフで預貯金の占める率は近年の商品の多様化により、やや減少傾向にありますが 50 %を超える水準で推移しているところです。

 また、下に財形貯蓄の占める割合も書いてます。こうしたことからすると、国民の貯蓄志向は依然高いというふうに考えられるところです。

4 ページです。こちらでは世帯主の職業別に貯蓄額の現在高の推移を見たものです。一番下の黒い折れ線が勤労者世帯です。また、勤労者以外の世帯のうち、現役の稼働世帯でございます個人営業の世帯について見たものが中ほどの細い細かい点線の折れ線です。

 依然として、勤労者世帯の貯蓄額は勤労者以外の世帯と比べて低い水準にあり、その差はなかなか縮まっていないということが読みとれるかと思います。

5 ページです。左のグラフです。貯蓄額から負債額を差し引いた純貯蓄額の推移を見ています。勤労者世帯は減少傾向にあります。これは負債の増加、主に住宅ローンが増えたことによるものと考えられます。

 右側は、勤労者世帯の実収入と実支出、可処分所得の推移をそれぞれ見たものです。実

収入については、近年、向上が見られるものの中期的にはやや減少傾向にあります。これに対して、実支出が底堅い動きとなっていることから、実収入と実支出の差である家計の黒字というのは相対的に減ってきていることになります。

 また、中ほどの可処分所得を見ても減少傾向にありまして、これらを考え併せると、勤労者世帯が貯蓄に回す経済的な余力が低下していると考えられます。

6 ページです。企業規模別に給与水準と貯蓄額を見たものです。左のグラフのとおり、規模が小さいほど給与水準が低く、また右のグラフにあるように、規模が小さいほど貯蓄額も少ないという状況にあり、企業規模が小さいほど勤労者の貯蓄を取り巻く環境が厳しいということが見て取れます。

7 ページです。こちらからは財形貯蓄です。その実績なり、各貯蓄の契約件数と貯蓄残高の推移を載せています。相対的に契約件数、残高とも減少が続いている状況です。この要因については、様々な複合的な要因があると考えています。

 金融商品の多様化、あるいは長期間の低金利情勢等により、財形貯蓄の優位性が薄れ、財形貯蓄の存在感が相対的に低下したこと等により、財形貯蓄制度の認知度が低下していることが考えられます。この点、中小企業に焦点を当てたのが次の 8 ページです。

 まず、財形貯蓄制度の導入率を左側のグラフで見ています。まず、左の上のグラフです。企業規模が小さいほど財形貯蓄制度の導入率が低くなっています。また、横向きの下側の棒グラフで、こちらは中退共に加入している、いわば中小企業の中での財形貯蓄制度の未導入状況。導入してない状況を見たものです。

 やはり、中小企業の中でも企業規模が小さくなるにつれて、財形貯蓄制度を導入していない企業の割合が高くなっています。また、右側のグラフで同じく機構で調べていただいたもので、中小企業が財形貯蓄制度を導入しない理由をお尋ねしたものです。これを見ると、「財形制度をよく知らない」というのが右側に出ています。あるいは左下の「必要性を感じない」というのが 3 割程度ずつあるということで、これが大きなウエイトを占めています。

9 ページです。こうした財形貯蓄をめぐる状況をまとめると、このように整理ができます。まず、勤労者の貯蓄をめぐる状況ですが、勤労者世帯の貯蓄額は相対的に低い水準にあり、また貯蓄に回す余力も低下していることが考えられます。特に、企業規模が小さいほど厳しい環境にあることが考えられます。

 また、財形貯蓄です。これをめぐる状況については契約件数や貯蓄残高の長期的な低下傾向。また、特に中小企業における普及の遅れ。その要因として、中小企業の労使に財形制度が十分に知られていないこと等が挙げられると考えています。

 このような状況を踏まえると、厳しい貯蓄環境にある中小企業勤労者にとって、計画的に財産形成を図る自助努力が必要である中で、長期にわたり無理なく貯蓄を増やせる財形貯蓄制度の周知を図り、普及を促していくことが必要ではないかと考えています。以上が財形貯蓄制度をめぐる状況です。

 以下、 10 ページからは、財形持家融資制度をめぐる状況についてまとめています。まず、勤労者世帯の持家率を 10 ページで示しています。年々、持家率が上昇しているということです。徐々に伸びているということが見て取れると思います。

 ただ、自営業世帯との差を折れ線グラフで示しています。少なからず開きがまだある状況です。また、右側の円グラフですが、これは土地問題に関する国民の意識調査によるものですけれども、「土地・建物ともに所有したい」、「建物だけでも所有したい」と答えた人を合わせると約 8 割となっており、引き続き国民の持家志向は高いと考えられます。

 続いて、 11 ぺージです。こちらは住宅ローン全体の新規貸出額と貸出残高の推移を示したものです。住宅ローン市場の規模は縮小傾向です。ここ数年、新規の貸出額がやや増加している状況です。

 こうした住宅ローン市場全体の動きの中で、財形持家融資がどのような状況にあるかを見たものが次の 12 ページです。新規貸付件数、貸付額とも近年減少が続いておりましたが、平成 24 年度、 25 年度は連続して上昇しているということです。

13 ページです。こちらは財形持家融資の全体に占めるシェアをお示ししています。平成 25 年度は前年度より僅かに上がって 0.11 %です。最近の状況については、 14 ページでここしばらくの状況を示しています。この棒グラフは、四半期ごとの財形持家融資の利用件数を示しているものです。平成 24 10 月から件数が増加しているのはこの時に貸付金利の引下げを実施しておりまして、これが融資実績の向上に効果を上げています。

 他方、新設住宅着工数が折れ線グラフであります。これを見ると今年に入ってから若干低水準になってきています。これに伴い、財形融資の利用件数も伸び悩んでいるところです。

 次は、 15 ページです。こちらでは中小企業における財形持家転貸融資制度の導入状況を見ています。貯蓄と同様、企業規模が小さいほど導入率が低いという傾向が見て取れると思います。以上のような状況をまとめたものが 16 ページです。

 まず、勤労者の持家をめぐる状況です。国民の持家志向が高い水準にあることをお示ししましたが、自営業者と比べて今なお勤労者の持家状況については立ち遅れが見られる。また、財形持家融資をめぐる状況ということですが、民間の住宅ローンへのシフトが進む中で、中長期的には減少傾向にあります。

 特に、中小企業においては融資制度の導入が低調ということです。こうした状況に鑑みて、勤労者の持家取得を促進する上で長期・低金利で住宅資金が調達できる財形持家融資制度の役割が、引き続き重要であると考えます。

 こうした認識のもと、特に普及の立遅れが見られる中小企業勤労者にとって、財形持家融資制度の魅力を高めながら制度の周知・普及に取り組んでいくことが必要ではないかと考えているところです。

 以上、資料 1 の説明です。よろしくお願いします。

○宮本分科会長 今、事務局から詳細な資料を使って、議題 1 について説明がありました。しばらくの間、このことについて意見交換をします。どなた様からでも御意見、御質問を挙げてください。いかがですか。口火を切っていただければ。

○高木委員 財形貯蓄制度を中小企業に普及することが大きな目的になっているのだと思います。資料 8 ページに中小企業が制度を導入していない理由があるのですが、この制度をよく知らないから導入していないというのはよく分かるのです。ですが、例えばここにある「従業員から要望がない」、あるいは「必要性を感じない」というのは、この制度を知っているけれども、要望がない、必要性を感じないことによるのか、あるいは、これは制度をよく知らないがゆえに、要望がない、もしくは必要性を感じないことによるのでしょうか。

○田川勤労者生活課課長補佐 これは財形融資をやっている勤退機構のアンケート調査によるものですが、アンケートの項目がそこまで細かく設定していないものですから、必要性を感じないという方と従業員から要望がないという方が、どういうことでそういったことになっているのかまでは把握できていません。

○宮本分科会長 この件について、使用者代表の委員の皆様、いかがですか。また何かお気付きの点があったら、お出しください。そのほか、いかがですか。

○小野委員 質問させていただきます。財形制度を導入し、普及していくことを考えた場合に、二つの局面があって、一つは企業に制度を導入していただくことと、導入された企業の中で従業員が契約すること、この二つの局面があるのではないかと思うのです。前者については、どんどんアプローチをしていただければいいかと思います。従業員個人がこの制度に入るか入らないかについては、例えば全体の契約件数が減っていることも、いろいろ要因があるのではないかと思うのです。例えば、就労世代の人口がそもそも減っていることもあると思いますし、昨今言われている非正規の方々が増えている現状、そういったことが影響しているのかといったことをある程度分析された上でアプローチをするのがいいのではないかと感じたところです。

 もう 1 点は、非課税貯蓄制度のほかに、少額投資非課税制度、最近、 NISA と言われているものですが、これがかなり華々しい宣伝があって、残高も伸びていると伺っているわけですが、ある種 NISA と財形貯蓄との間の住み分けができているとすれば、それはそれでいいのかもしれないのですが、もし、それなりに重複する話になると、ひょっとしてその財形貯蓄の目的に関して、ある種のクラウディングアウトみたいな話があり得るのかということです。要するに、契約者のどういう方々が対象になっているかを比較された上で検証することをされていたほうがいいのかと。この二つを感じました。

○宮本分科会長 今のことについてお願いします。

○松原勤労者生活課長  1 点目です。制度発足から情勢がいろいろ変わっていることも踏まえた御指摘かと思います。小野委員からは、就労人口、あるいは就労形態が変わってきているのではないかと。

 一例を挙げて申し上げますと、おそらくだんだん就労人口が少なくなっていくにつれて、財形制度の利用者が減っていくのは、相対的にはおっしゃるとおりかと思います。また、財形制度自体が正社員に限った制度ではなく、非正規も含めて、制度的には広く利用できるのですが、実態的には利用しにくいのではないかという声があることも聞いているところです。そういったものも多面的に影響しているのではないかと考えられますが、今後、社会情勢の変化に伴ってどうなっていくかよく考えていく必要があると思っています。

2 番目の NISA との関係です。当然、 NISA も含めて金融商品が多様化してきて、利用者、消費者の方々の選択肢が増える点では、一般的にはよろしいかと思いますが、そういった中で財形貯蓄の相対的な存在感は薄れているという認識は私どもも持っています。

 ただ、一方で財形貯蓄は、勤労者の方々が計画的に無理なく、天引きという形で積み立てていって、着実に財産を増やしていける制度であり、貯蓄をベースにして融資を受けられるという点で、ほかの金融商品にはなかなかない特徴を打ち出せる点もあると考えているところでして、そういった特徴なりメリットをきちんと整理して、普及推進に使っていくことは大切な視点と考えています。

 

○高木委員 先ほどの御発言と少し関係するのですが、まず、目的として中小企業を対象に普及率を上げていくことがあるということですが、もう一つの柱として、中小企業に勤める若年従業員に対するアプローチが非常に有効ではないかという点です。ここでは年齢別の貯蓄、あるいは金融資産の状況が示されていないのですが、明らかに若年層、ここで若年層というのは 35 歳前後、仮に 40 歳未満と考えた場合、その方たちの貯蓄率が低いと考えられるわけです。中小企業における所得率、所得税等の違いが出ているのですが、大企業と比べて中小企業は所得率が低く、非常に厳しい経済情勢もあって、そういった方たちであるからこそ、将来に向けて確実に貯蓄をしていく必要があるわけであり、中小企業へのアプローチとともに若年層へのアプローチが非常に重要になってくるのではないかと考えています。

 もう一つには、今、 40 歳未満の従業員は、学業を終えて労働市場に出ていくときに、バブルが崩壊して、就職氷河期という中にあったわけです。その中で以前なら大企業に入社していた人も中小企業に入社していったということで、そういった方たちも含まれているわけです。そういった中で、非常に厳しい経済情勢になった世代があるのであれば、それを国が助けるという意味でも、若年層への積極的な呼び掛けがとても大切になってくるのではないかと考えています。

○松原勤労者生活課長 若年層へのアプローチという視点も非常に大切だというご意見は、おっしゃるとおりだと思います。財形貯蓄の利用者の年齢については、データがなかなか取りにくいところもあり、推測になってしまうのですが、恐らく上の世代よりも利用率が低いのではないかとも考えられまして、まずはそうした観点からの分析もしてみる必要があると思います。その上でどういうアプローチが可能であるか、一般的な普及推進のほかに加えて、その中で特に若年層にどう訴えかけていくかという視点も、よく勤退機構とも調整して検討してまいりたいと思います。

○権丈委員  8 ページに「就労条件総合調査」より、平成 21 年の企業規模別の財形制度の導入率の調査結果が示されています。まもなく平成 26 年の調査結果が発表されると思いますので、次回にでも企業側の制度の導入率に加えて労働者側の適用状況も資料としてお示しいただければと思います。

 また、財形制度に関する直接の詳細な調査ではないのですが、正規・非正規労働の問題については、「就業形態の多様化に関する総合実態調査」で、財形制度の適用対象になっている労働者の属性などに関する調査があるので、そういったものも参考資料として頂ければもう少し実態を確認しやすいのではないかと思います。

 私が見たところでは、やはり正社員のほうが非正社員に比べて適用者の割合がずっと高くなっていますが、正社員以外でも適用になっている方たちもいます。企業側としては正社員以外の方への適用はなかなか難しいところもあると思いますが、今後、そのあたりも課題となるのではないかと思います。また、高木委員が若者について指摘されましたが、企業側の対応の難しさを考えると、労働者側へのアプローチも重要になると思います。今後併せて検討していただければと思います。

○松原勤労者生活課長 御指摘ありがとうございます。「就労形態の多様化に関する総合実態調査」は今私の手許にあるのですが、それを見ていると、おそらく一般的な財形制度の普及状況は少しずつ下がっているのではないかという感じがまずいたします。また、正社員とそれ以外の社員とは格差があること、正社員以外の中でも、就労形態により差があるという数字が見て取れるかと思いますので、そういったものもよく分析した上で、どういう対応をしていくか検討課題としていきたいと思います。

○宮本分科会長 私から伺いたいのですが、 2 ページの左下に貸付金利が出ていて、 5 年固定で年 0.90 %ということですが、財形とその他の商品とで、この金利を比べたときに、どのようになりますか。

○松原勤労者生活課長 財形持家融資の金利の状況ですが、 0.90 %という数字をお示ししています。フラット 35 なり、あるいは民間の住宅ローンと比較すると、実質金利を考えなくてはいけないと思います。ここに出ている名目上の金利に加えて、例えば団体信用保険料などを加えた実質金利で見ますと、財形持家融資制度は民間のものより若干高く、フラット 35 よりは少し低いといったところです。金利の設定と申しますのは、財形法の施行令第 36 条で、一般の貸付金利を見ながら、適切なものとなるように設定することとされています。金利だけではなくて、その他のいろいろなメリットもあるので、そういった総合的なメリットという形で打ち出していくことが必要かと思われますが、金利の引下げが貸付件数の増加につながった事実も見て取れますので、今後とも民間の金利情勢を見ながら適切に設定していく必要があると考えています。

○池田委員  5 ページを見ても、基本的に実収入と可処分所得が大きく出てこないと、貯蓄に回らないことになりますが、ここにある勤労者の実収入は年齢的には何歳ぐらいの人でしょうか。

○田川勤労者生活課課長補佐 勤労者世帯全体で取っているのですが、平均で見ると、大体 48 歳前後になると思います。

○池田委員 国の政策を見ている限り、政策的に貯蓄に回そうという方向性はあまり見られないと思うのですが、若い人たちの中には自分の老後を心配している方も多いと思います。老後のためには、貯蓄に回せる実収入と実支出との間の差額が出てこないと、貯蓄に回せないわけですから、若い世代のうちから貯蓄に回せるような政策的なものが出てこないと、なかなか財形の方にまで回せる余裕がないのではないかと思います。持家制度にしても、若い世代が少なくなってきている今、空き家も増えてきていますので、そういうところを改修した際の持家融資や、親と同居をする方に融資をしてあげるとか、そのような方向性の政策もあっていいのではないかと思います。

○松原勤労者生活課長 今、政府全体として、若年者も含めて収入を上げていくように経済のいろいろな改革を進めている状況の中で、勤労者の方々の収入、特に賃金になろうかと思いますが、そういったこともどう向上させていくかは、全体的な問題意識として持たなければいけないと考えています。

 また、財形の持家制度について申し上げますと、今、池田委員のおっしゃった、例えば中古住宅のリフォームということになろうかと思いますが、そういった需要にもお応えできるように融資制度を準備していますが、よりきちんと皆さんに周知していくことが大切かと思っています。

○池田委員 もう一つ、若い世代がお金を借りるなり、貯蓄をするとしても、国の政策として若い世代がこういうものを勉強したり、相談できる対応窓口の時間帯の幅を、土・日・祭日でも対応するとか、そのような環境を作っていかないと、若い世代はそちらのほうの勉強がなかなかできないのではないかという感じもします。

○布山委員 財形貯蓄の件数を増やすというターゲットで話をするとしたら、今まで先生たちがおっしゃっていた、いろいろな働き方や、若年者をどうするかという問題は大きい問題だと思います。ただ、そのほかにそもそもいろいろな貯蓄の仕方がある中で、あえて財形制度を使うメリットをもう少し前面に出さないといけないのかなと。仮に貯金をしようと思っても、財形を使うかどうかはまた別の話という意味で、ここで議論するのは、財形貯蓄というか財形制度をどれだけ利用してもらえるかというターゲットと、この制度そのもののメリットと、あと対象になる方をどうするかということもあるかもしれませんが、ここがまずあるのかと思います。

 先ほどの説明の 3 ページで、「種類別金融資産の保有額の推移」ということで、これは全体のものと、そのうち財形に入れる人が雇用者ということで、単純に比較はできませんが、預貯金がこれだけ占めている中で財形がこれだけということは、この制度そのものの魅力も少し議論しないと、これをどう運営していくかという中で大きな論点になるのではないかと思いました。

○宮本分科会長 先ほどの金利の問題も結構微妙で、非常にいいというわけでもないと、給料天引きであるという点では計画的にはできるということですが、計画的にできる方法として天引き以外もないかといえば、ないとも言えないとか、あったりするのですが、財形を是非広める意味があるものは何か、そのあたりでこういうものがあると、御意見をいただけるといいかと思いますが。

○井上委員 次の議題に時間があるかと思っていたのですが、使用者のほうのデータで「必要性を感じない」という所ですが、これぞまさに使用者に対するメリット、勤労者に対するメリット、両方をもっと主張しなくてはいけないのではないかという感じがするのです。前回のときにお配りいただいたパンフレットにも、社員思いの会社になるとかということでのお話がありますが、例えば企業にとって離職率は低いほうがいい、あるいは持家率は高いほうがいいとかいうのがあるとすれば、財形制度を導入している企業の社員はこういうものです、こういう状態ですということを実際のデータとして示した上で、何かそれぞれの企業の方にアピールしていったら、もう少し現実味がある気がするのです。

○松原勤労者生活課長 おっしゃるとおりだと思いますので、どういうデータの取り方ができるか、勉強させていただければと思います。

○豊田委員 先ほど御意見があった財形貯蓄の魅力みたいな所で言うと、計画的にということにつながるかもしれないのですが、いろいろな金融商品があるとしても、非常に専門的で分かりにくいのだけれども、国の制度で何もしなくても積み上がっていくというあたりとか、安定的な利率が保障されているみたいなところが魅力かと思うのですが、そういったところにアピールをしていったらいいのではないか、と思うところが 1 点です。

 あと、 30 年前とかだったら、企業に入ったら財形貯蓄をやりなさいとかなり大きくアピールしていたと思うのですが、それが今は本当にないのです。勤労者に向けてそういったアピールをしていない。それは貯蓄の選択肢が広がったことがあるのと、労働力が流動化して囲い込みをしなくなったこともあって、企業自体がその存在意義を低めているところもあると思うのです。

 だからといって財形貯蓄が要らないか、魅力的でないかというと、そういうことではないと思っていて魅力はあると。社員を見ていても、若年層ですごく将来のことを考えて計画的にやっている人とそうでない人が二分化している気がしています。全体的な意識を高めていくためには、「制度に入れ」というより、将来のライフプランを考えるところから、財形貯蓄の魅力みたいな、時間的な積み上がりの魅力みたいなものが、もう少し何かアピールできたらいいのではないかと思っています。

○宮本分科会長 大変いい御意見だと思いますが、今のことについて関連して何か御発言はありませんか。

○小野委員 私は専門が年金なので、そちらの立場から関連したお話をしたいのですが、こういう考え方の好き嫌いはあると思うのですが、例えばアメリカで 401k という年金の確定拠出型制度があります。アメリカの制度は日本と違って、まず本人拠出があり、それに企業が補助をする制度です。それがなぜ企業に普及したかということの説明の一つとして、将来のことを考えて、計画的に貯蓄をする人は、従業員としてみても堅実な人だと。そういう人は往々にして優秀な人が多い。そういう人に対して補助をするということで、補助は結果的には報酬を上乗せることになるので、そういう選別機能が結果として出てくるのではないかという話です。財形をやっている人とやっていない人が、そういう区分けが可能かどうかは非常に議論のあるところかもしれないのですが、そういう意味では事業主にとってそれなりの意義は、情報としてということかもしれないですが、あるのかもしれないと思いました。

○須田委員 それぞれの委員の皆さんがおっしゃることはごもっともだと思うのですが、ポイントは二つですよね。チェックオフが要ると。チェックオフは、会社が勝手にできないのですよね。組合又は従業員代表との協定が要る。そのときに組合があればいいですが、組合がない場合に、使用者側はそこまでの手間ひまかけてその制度を入れると思うか思わないかが一つ。

 それから、チェックオフ対象が仮に従業員となっているか組合員となっているか分かりませんが、就労形態が多様化する中で、その範疇に入る人がどうなのかと。だから、この分科会の議論ではないのですが、財形制度を取り巻く様々な環境が変わっている中で、これをどう有効に活用していくのかという視点が、これは環境認識としてはもう少し必要だと思っています。ですから、中小企業の若手は我々も重々知っているし、我々の努力不足でもあるのですが、組合の組織率が 18 %を切っているという状況の中で、事業主の皆さんにこの制度のメリットをどう主体的に活かしていただくか。

 住宅財形融資でいくと、昔は企業の福利厚生の一環で自社の融資制度、これを持てるのは大企業しかなかった。そうでない企業もこの財形貯蓄をやることで、転貸融資をやっていこうではないかということで入ってきたはずですが、企業側もだんだん余裕がなくなって、福利厚生はどんどん切っていく。いろいろな事情はあると思うのですが、そういう中でせっかくあるこの制度をどう活かしていくのかという観点での議論が必要ではないかと思います。

 商工会議所を含めていろいろな団体がいろいろ PR 活動をやっていただいているのは承知しているのですが、特にそれを受ける中小、地域の経営者の皆さんが、そこまで余裕のないのも事実だと思うのです。そうだとすれば、どういう PR の仕方、どういう人たちを巻き込んで制度への加入、あるいは、就業形態の多様化、働く側から言えば、雇用が不安定な中で将来設計をどうやって描くのだという話になるわけですから、全体の中でどう位置付けて、どう考えていくのかという深掘りをもう少ししたほうがいいのではないかと思っています。

○宮本分科会長 大変いい整理をしていただいたと思います。ということで議題 2 へつないでいくのがいいかと思いますが、私もこの間、新宿で単身世帯は非常に多いという問題意識があって、区役所で新宿区の単身世帯は 30 80 歳代まで全世帯の 65 %だということで、聴取調査をやることになりました。そのときに感じたことですが、中年から初老くらいの単身の方たちの過去の生活費と現在の貯蓄とか、年金とか、そういうのを聴くと、貯蓄がない、年金もないとか、あっても、本当に僅かで、このまま高齢になれば食べていけない人が非常に多いと思ったのです。離・転職をしながら貯蓄をきちんとやっていくことができないことと、また若い時には貯蓄することを意識していなかったということも本人たちは仰っていたのです。。先ほど出てきた計画的な貯蓄を何とか作っていくことは、こういう流動化が進む中で非常に重要なことで、そういうポイントでこの財形の問題も考える必要がある感じがします。

 ということで、今いろいろ大変重要な御意見を頂いたので、それを受けた形で次の議題に行きます。事務局から、御説明ください。

○松原勤労者生活課長 議題 2 について説明申し上げます。ここでは、当面の課題なり対策、当面どういうものを取っていくかについて、資料を整理しております。まず、資料 2 1 ページを御覧ください。先ほど財形制度をめぐる状況の説明でも触れましたとおり、勤労者が貯蓄に回せる経済的余力の低下がうかがわれ、家計をめぐる環境は厳しいと推察されるということですが、やはり計画的にコツコツと無理なく財産の純増を図ることができます本制度は、特に引き続き重要な役割を持っていると考えていることを、 1 つ目の○に書いております。特に、中小企業の勤労者にとって、財形制度は様々な面で有益なものと考えられますが、なかなかその普及が遅れている現状の中で、先ほど申し上げたとおり、課題の 1 として財形制度の認知度が低いこと、課題の 2 として財形制度の魅力が相対的に低下していることが存在していると考えております。

 こうした課題を踏まえて、どういう対策が取れるかということについてです。課題 1 の認知度の問題については、普及・広報活動の充実が一般的に言えるのですが、現在財形普及促進事業を実施しておりますが、これを更に拡充するということです。また、財形普及推進員を今年の下半期から機構で設置しておりまして、こうしたことで対応していきたいと考えております。

 課題 2 の財形制度の魅力低下への対策です。広く中小企業勤労者にメリットを享受していただけるように、持家制度において、現在実施している貸付金利の引下げ特例措置の実施期間を延長することを調整していきたいと考えているところです。以下、これらの対策について個別に説明を続けさせていただきたいと思います。

2 ページを御覧ください。普及・広報活動の取組です。地方公共団体なり、事業主団体と連携を図り、制度説明会や事業所訪問等を機構が実施しております。これまで当分科会の委員の皆様から様々な意見なり、アドバイスを頂戴いたしました。例えば、 2 つ目の○の「広告媒体の活用による制度周知に向けた取組」の 1 つ目のポツの財形制度のメリットについて専門家のインタビューをホームページに掲載するといったことなどを行いまして、アクセス数が大幅に増加したという成果が挙げられています。

2 つ目のポツですが、今日追加資料でお手元にあるかと思います、中小企業庁でやっております中小企業向け情報提供 Web サイトの「ミラサポ」のホームページにこのように載せているということです。これは昨年度の分科会において、委員の方から御提言をいただいたものを早速やらせていただいたものです。また、「中小企業施策利用ガイドブック」にも、財形制度の情報を掲載しております。また、一般向けの住宅雑誌への広告ですが、 2 枚目の色刷りのものは広告の原稿です。これを広告として機構で出しております。こういった取組を徐々に拡充している状況です。

(2) は従来より委員の皆様方から御指摘をいただいている、勤労者退職金共済機構ということで、中退共のやっている組織と一緒になっていることのメリットを生かした連携による普及広報ということです。こういった周知活動を合わせてやる。あるいは、中退共既加入事業所など把握できておりますので、これを中心とする多くの事業所に対して財形事業に関する資料も送付しております。

3 ページ、財形普及促進事業です。これは、機構の第 3 期中期計画に基づき、中小企業なり中小企業団体が構成する事業主団体について、傘下の財形制度未導入中小企業への各種活動を通じて、財形制度の普及を図る事業の委託を昨年 10 月から実施しております。事業内容としてはここにあるとおり、説明会、個別訪問、相談、財形制度に係る各種情報提供ということです。 (2) に実績を掲げております。都道府県単位の事業主団体の 2 団体に委託をして活動しているということです。○3のとおり、様々な意見、要望を吸い上げることができるといったメリットも期待できるところです。

 こうしたところで得られた意見なり要望をもとにして、 (3) 今後の方針にありますとおり、 10 月から新たに市町村単位の商工会 5 団体に本事業を委託しました。また、事業マニュアルみたいなものがあったほうがいいという話もありましたので、こうしたツールの充実等を進めていくことにしております。今後、説明会参加事業者へのアンケート調査等により、財形制度の導入・利用に係る意見、要望等の情報を把握し、今後の事業展開に生かしていきたいと考えております。

4 ページ、財形普及推進員です。これは新規の取組みです。貯蓄なり住宅ローン等に係る知識・経験を有する方を非常勤職員として機構が 1 人採用し、財形普及推進員という肩書きで関係機関、団体への各種説明会などに参加し、制度の内容あるいは手続についての説明、 PR 活動を行ったり、個別事業所を直接訪問することで、きめの細かい普及活動を行うということです。この財形普及推進員については今年 10 月から活動を開始しておりますが、若干試行的な面もあり、今 1 名で動いているわけですが、今年度下半期の事業実施状況を見た上で、来年度以降の展開に反映していくことを考えております。

5 ページ、中小企業勤労者貸付金利引下げ特例措置の実施についてです。これは、 300 人以下の中小企業の勤労者が、財形持家融資制度を利用する場合には、通常の金利から 0.2 %引き下げた金利を当初 5 年間適用する特例措置です。現在、今年度末、平成 27 3 31 日までの時限措置として実施しているところです。

 この実績については (2) の表のとおり、貸付件数、 4 月以降 369 件のうち 5.7 %が、この特例を利用しております。住宅市場が低迷する中で、財形持家融資の借入申込件数自体も実は半減している状況で、中小企業勤労者の利用も伸び悩んでいる状況です。○2、○3のとおり、評判は総じて良好と考えております。また、実施期間の延長を望む声も多く見られるところです。こういったユーザー層の反応に加え、制度的に見ますと、財形持家融資を受ける要件が、財形貯蓄を始めてから一定の貯蓄期間が必要であること。また、融資額は財形貯蓄残高の 10 倍までですので、ある程度のお金を貯めるまでには相応の期間を要することも考慮し、 1 年、 1 年というよりは、 3 年間やることを前提として延長することで進めたいと、関係機関と調整を行っていきたいと考えているところです。こうした対策により、当面の課題であります財形制度の認知の向上と魅力の向上に努めてまいりたいと考えております。これらの対策について、皆様の御意見を頂戴し、今後の制度の運営に活用させていただきたいと思いますので、御審議のほどお願いいたします。

○宮本分科会長 財形制度の当面の課題、対策ということで具体的な話になりますが、御意見いただければと思います。須田委員、追加して発言いただくことがあったらお願いします。

○須田委員 当面という時間軸は、私の理解は足元でという理解をさせていただきたい。もう少し当面という時間軸は、 3 年とか 5 年ぐらい考えて、今日決まらなくともいいのですが、考えたほうがいいのではないか。

 その要因の 1 つが少子、高齢化、人口減少の中で、住宅の問題あるいは貯蓄の問題をどう考えるのか。また、税制ともからむのですが、チェックオフということでないと、勤労者だと、要するに税の優遇が受けられる人だという認定方法がないのかどうかも考えたほうがいいのではないか。先ほどもいろいろな金融商品等の話が出ましたが、加入の手続が面倒くさいのです、財形のほうが。その前段を揃えるための、仕掛けを作るための手続が大変。 1 回できると入りやすいのですが、その仕掛けを作るまでの手間が掛かる。ここが多分企業側も、労働者側も考えるところなので、その辺を補助するという考え方と、どこまでを自己責任でやるかというところのバランスの問題ではないかと思っています。財形の発足当時とは今はちょっと社会が変わりすぎたので、その辺も少し考えて、そういう意味で当面というのは、足もとではなくて、 3 年とか 5 年ぐらいを見た課題整理も議論していかないと、気がついた頃にはもうどうにもならない状況に陥るような気がするのです。良い、悪いは抜きにして、様々な働き方がある。正社員であっても短時間正社員みたいな議論もあれば、いろいろな議論がある中で単にパート・非正規という今の人たち、あるいは派遣とかそういう形だけではなくて、いろいろな働き方が出ることをもう少し柔らか頭で考えておかないと、この入口規制のところでどんどん幅が狭くなっていくような気がする。

 それと、先ほどありました高齢化の中で、本当に一戸建ての新築持家ニーズがどれだけこれから出てくるのか。リフォーム融資みたいな、さっき中古の話ありましたが、そういう融資の使途の問題や財形年金だってどう考えていくのかも含めて、いろいろな観点で議論していったほうがいいのではないか。今日提案された事自体、ノーと言っているわけではなく、これはこれで必要だと思います。加えて、もう少し足の長い議論も始めていかないと、ちょっと禍根を残すような気がするので、次回までにそういったテーマをもう少し整理して、議論されたほうがいいと思っております。

○宮本分科会長 もう少し御意見いただいたほうがよろしいですか。

○布山委員 今、須田委員がおっしゃった構造的なことというのは、確かにそう思います。合わせて、先ほども御意見あったのですが、この制度を使う企業だけでなく、労働者のニーズ、意識みたいなものも一緒に調査をしないと、結局どんな設計にし直すのかどうかの議論のときに、あるのかなと思っています。

 先ほど委員から、単に貯蓄をするということでなく、将来的にどうするかという視点は非常に重要だと思うのですが、ただ、いわゆる若年者をもしターゲットに置いたときに、その方が将来的なことを見込んで、どこまで若いときに意識をするかどうかという問題もあると。なかなかこの制度だけの話ではなくなってくると思っています。そういうことも含めて議論をしていくことで、進めていく形が必要かと思っています。

○内藤委員 これは法改正が必要になり、今ここで議論できる問題ではないのですが、例えば、先ほどから多くの委員がおっしゃったとおり、昨年秋の統計で既に 38 %が非正規の形になっている。非正規であっても財形は使えるというお話がありましたが、恐らくそれは非正規、例えばパートタイマー等の名称であっても、 1 社に所属するような方々を対象として考えてきたと思うのです。ただ、雇用市場の流動化を政府自身が推奨し、雇用市場がさらに流動化していくとするならば、先ほど井上委員からか御意見があったような形でのポータビリティであるとか、あるいは年金と持家ということに関してのみ非課税で、一般財形は課税されるといった課税対象の話も考慮する必要が生じます。それを、例えばどういう方々をターゲットとして、いかような使い方を考えるのか。何のための制度かを、今一度考え直す必要が出てきているのではないかというのは、私も同感です。

 あとは労働者側委員からお話がありました、かつてはいわゆるチェックオフ協定の対象としてこれを大いに発展させてきたという歴史は、もちろんよく理解しております。ただ、逆に申せば、いわゆる賃金の全額払い原則に触れるかどうかのところだけ取り上げるのならば、労働者側の個人個人の同意がありさえすればできるわけです。そういったことを考えますと、では労働者の同意を取って、どれほどの事務作業をして、なおこれをどうやって、若年の、あるいは中小企業にお勤めの労働者の方々にアピールできるか。反対に中小企業の使用者の方々への対策ということで考えますと、今、中小企業は、社員を採用する場面で非常に困難を感じておいでだという話をよく聞きます。そうしますと、その福利厚生というもののアピールに資するならば、中小企業側でも使えるのではないか。つまり、使用者側としても使えるのではないか。そのように感じました。

○宮本分科会長 そのほか、いかがでしょうか。

○高木委員 この制度の普及・広報活動の先なのですが、恐らく事業所への説明とか、そういったものがあるかと思います。その時に説明会に出てくるのは当然企業の中の担当者ということになるかと思います。ただ、先ほどから話が出ているように、労使関係も変わってきている。例えば、流動化が広まっていく中で、   企業側が従業員 1 1 人の生活を考えていく、またそのライフサイクルに合わせた賃金保障をしていくというものの考え方が変わってきているということ。あるいは、将来に向けて長期雇用をある程度保障するというものの考え方自身が変わっていく中で、従業員をきちんと企業の中にとどめたいが故に福利厚生をきちんと整える。その一環として、財形貯蓄を利用してもらう。そういったものの考え方が、ゆらぎ始めているのではないかと思います。

 とすると、本当にこれを欲する、自分が欲することをまだ気が付いていない、つまり、制度の存在を知らないし、分かっていない人たちがいるわけですが、その人たちに直接この制度の仕組みについて、そしてその有意義性について直接的に説明する機会をより設けていったほうが良いのではないかと。企業の担当者にいくら伝えても、それがきちんと本当にその制度を欲している人に伝わっているのかどうか、ちょっと壁があるのではないかと思うのです。

 企業にとっては、その手続をすること自体が面倒くさい。コストがより多くなるわけですね。そして従業員 1 1 人に生活保障を考えていく余力はない。またその中で、大企業以上に流動性が非常に高いのは、中小企業なのです。とすると、確かに従業員の採用というものにいつも悩まされているのは確かなのですが、実際流動化していく者に対して、本当に雇用をきちんと考えて生活を見ていこうという考え方はかなり薄れてきているというのが実態だと思います。故に、その従業員に直接呼び掛ける仕組みを、普及活動の 1 つとして取り入れることは必要なのではないかと考えます。

 

○池田委員 この制度自体が、要するに、貯めるほうと借りるほうと両方あるわけです。認知度が低いということは興味がないのだろうから、興味があれば、どんどんネットでも使って探してくる。何で興味が無いのかなというと、要するに、財産が増えていかないと全く興味がない。では、どう増やしたらいいのか、極端な話ですが、どんどん国債を買わせるとか、単に貯めておくよりも運用して、もっとお金を増やそうということ。それを積み重ね、若いときから貯めていき、それを将来のため備えなければならないのです。今の状態では置いておいても利率は0.何パーセントしか付かないのだから、貯めても仕方がないし、一度バブルを経験している世代は、株を買っても、またいつ落ちるか分からないと不安で、投資もできない。精神的にも前向きに出られない状況があると思うのです。だから、貯めるほうは貯めるほうで、そこにどうやって魅力的な純増を図ってあげることができるのか。やはりこれは、銀行が専門ではないかと思いますが、いつ職場が変わるかも分からない、いつパートタイムの労働者になってしまうかも分からないところ、お金を借りることはとても度胸が要るし、その前提がないと借りていけないわけです。だから、ある程度の貯蓄が増えるという前提がないと、借りるまでの切り換えができないと思います。やはりその点を相対的に興味あるものにしていかないと、この制度自体が非常にもったいないような気がします。若いときはそんなにお金を貯めなくとも何とかなるのではないかとも考えがちですが、年を取ってくると、もっと貯めておけば良かったなということは現実皆感じます。何か 1 つ安定した債券でも作って、そこに勤労者が少しでも貯蓄を行っていって、 20 年で倍になりますよと言うぐらいの魅力ある商品が開発できるといいなと思っているのです。

○宮本分科会長 大変真に迫った問題で、非常に大きな話になってくるわけですが、それのできない悩みの中で、財形をどうするかという議論になっているかと思います。

○小野委員 度々年金の話で、しかも海外の話なので恐縮です。やはり年金の世界どこの国でも、老後の生活のための資産形成は非常に大きな課題になっているわけです。特に、貯蓄率の低い国というのは結構あるわけですね。その中で、最近よく議論されているのは、企業年金にしても、そういった制度の設立が任意ということであると、なかなか一般の全従業員をカバーするというわけにはいかない。そういう中で、いかに労働者を資産形成に向けていくかという方策の 1 つの中で議論しているのが、いわゆる柔らかい強制、ソフトコンパルジョンという言い方をするのですが、そういうことがアメリカとか、イギリスとかでも結構議論されております。これは日本の労働法制を完全に無視した話ですが、例えば、アメリカでオートエンロールメントと言いまして、会社の従業員になりましたら、拒否しない限りその制度に入るというようなやり方ですね。そういうことによって加入率を上げるというような動きも、今度イギリスでもちょっと前にできました。そういうような仕掛けでもって、結果として若年の従業員も含めて資産形成のほうに方向性を持っていくというやり方があるというような、単に情報ということで申し上げます。

○宮本分科会長 小野委員に伺いたいですが、それで転職するときはその蓄えたものはどういうふうに動かされるのですか。

○小野委員 例えば 401k でしたら、転職先の制度に移管する、いわゆるポータビリティ。あるいは個人退職勘定、 IRA というのがありまして、そこにロールオーバーするとか、そういう形で対応しているようです。資産を使ってしまう方も当然いらっしゃいますが、そういう受け皿を用意していくことはまた別の問題として、非常に重要な施策だと思います。財形制度も退職して、お金を引き出したらそのまま使ってしまうということだとちょっと問題ですよねということですね。

○宮本分科会長 大変重要な御意見がたくさん出ましたが、厚労省から何かあるでしょうか。まとめてお願いします。

○松原勤労者生活課長 いろいろな貴重な御意見、どうもありがとうございました。財形制度もかなり古い制度でして、その時々の情勢に対応して制度改正を重ねてきたわけですが、当然社会を成り立たせているいろいろな実態が大きく変化する中でどう対応していくかという問題は大きいのだという、いろいろな御意見と受け止めさせていただきました。また、我々もデータの収集から始めなくてはいけないのですが、いろいろ勉強させていただきまして、この分科会の場でどう進めていくかを御報告申し上げたいと思っておりますが、今日、個々について、我々も対応策を持ち合わせているわけではありませんので、ここしばらくの課題としてよく勉強させていただければと思います。

○宮本分科会長 まだまだこれからこのテーマを続けていかなければいけないような大きな問題なのですが、一応議題の 3 に進めていきたいと思います。それでは、平成 26 年度の税制改正について事務局から御説明お願いいたします。

○松原勤労者生活課長 資料 3 を御覧ください。昨年度の本分科会において、途中段階ということで報告させていただきましたが、平成 26 年度の税制改正において要望しているという話をさせていただきました。内容はこの紙にあるとおり、非課税の財形貯蓄、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄について、育児休業等を取得する場合に、預け入れ中断期間の特例措置を拡げたいという要望をしていると紹介いたしました。これが認められましたので、平成 27 4 月より施行されるということでしたので、その後の経過なり、今後の取組を報告したいと思い、資料を準備いたしました。

 これについては一番下の「要望の背景」ですが、昨年 6 月に「日本再興戦略」が閣議決定され、この中で、 3 歳までの子どもを持つ男女が希望すれば、育児休業なり、短時間勤務を選択しやすいように環境を整備することが必要であるということが決められております。これを踏まえて、中ほどの図にありますが、育児休業等を取る方については所定の手続を取ることにより、休業期間中の中断は現行上限 2 年ですが、これを超えて非課税財形貯蓄への積立てを中断することを可能にしようというものです。現在、先ほど申しましたとおり、平成 27 4 月の施行に向け、各金融機関の協力をいただきながら、実務面の調整を進めているところです。

 手元にリーフレット案、イメージ案があります。このように、できるだけ分かりやすいイメージも示しながら、活用して、制度の周知を進めていきたいと考えております。これについては紹介というか、その後の報告です。よろしくお願いいたします。

○宮本分科会長 今の説明に関しまして御質問、御意見ありましたらお願いします。よろしいでしょうか。

 それでは、本日の議題は以上ですが、何かそのほかのことで御発言はありますか。

 ないようですので、私から 1 つ質問させていただきます。先ほども 2 回ほど委員の御発言の中に出てきたことですが、 8 12 日の日経新聞に、フラット 35 について出ておりました。中古住宅を買ってリフォームする場合に、購入費と改修費を一括借入れできるようにするといった記事が出ておりました。先ほどの御発言の中にもありましたように、財形貯蓄をためて、新築住宅を建てるというようなことが次第に、従来これまでのような形では進まない。中古住宅はかなり余っているところもあって、中古住宅を低廉な価格で購入しながら、それをリフォームして住めるようにするということは非常に重要なことだと思いますが、これに関して、財形ではどのようなことを検討されるのか。その辺りのことを教えていただければ、ありがたいです。

○松原勤労者生活課長 これについては、先ほど、例えば親と一緒に住むときに改修してというようなパターンもあるのではないかとおっしゃいました。このとき、現行制度においては、中古住宅を買うというのと、リフォームするというのは、実は全然別のメニューとして成立していて、手続を 2 つしなくてはいけない現状になっているということです。フラット 35 について、それを一括して貸し付けることができるようにということを検討していると、私ども聞いております。

 同じように、財形持家融資についても、用語としては住宅リノベーションと申しますが、この資金ニーズに対応して、正に利用者の方々の利便性を高める観点から、中古住宅の購入資金とリフォーム資金を一括して貸すことができないかという検討は、私どもも行っているところです。これについては委員の皆様に対しては、内容がある程度固まった段階で、何らかの形で情報提供あるいは説明したいと考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

○宮本分科会長 この点について、何か御発言ありますか。よろしいでしょうか。

 それでは、本日の議題は以上です。たくさんの重要な御意見をいただきまして、大変ありがとうございました。事務局におかれましては、本日の各委員からの御意見を踏まえて、引き続き勤労者財産形成促進制度の適切な運営に努めていただくようにお願いしたいと思います。最後に、本日の議事録の署名委員ですが、須田委員と豊田委員にお願いしたいと思いますが、よろしゅうございますか。

 それでは、これで閉会にします。どうもありがとうございました。


(了)

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