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2015年2月20日 第3回東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会  議事録

○日時

平成27年2月20日(金)
14:00 ~ 16:00


○場所

厚生労働省専用第12会議室(12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事

○前田室長 それでは、定刻より少し早いですけれども、皆様お集まりでございますので、開始したいと思います。

 本日は、大変お忙しい中、御参集いただきまして、まことにありがとうございます。ただいまより、第3回「東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会」を開催いたします。

 初めに、本検討会では全議事カメラ撮影を認めさせていただきますが、議事進行の妨げとならないよう、指定の場所から撮影いただきますよう、報道関係者の皆様へ事務局よりお願い申し上げます。

 本日は、明石委員、杉浦委員、道永委員の3名が欠席とのことで御連絡をいただいております。

 それでは、本日も議事進行は森座長にお願いいたします。よろしくお願いします。

○森座長 それでは、本日も円滑な議事進行をよろしくお願いいたします。

 まず、議事に入ります前に、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○安井室長補佐 それでは、資料の確認をさせていただきます。

 表紙になっておりますが、次第でございます。

 1ページおめくりいただきますと、資料1となってございます。

 3ページが資料2で、前回の議事録でございます。

19ページは、資料3「検討会の進め方」でございます。

21ページは、資料4といたしまして電離則の健診項目。

23ページは、資料5といたしまして「有識者ヒアリング結果取りまとめ」。

31ページは、資料6ということで原子力規制庁からの資料でございます。

37ページが資料7ということで「報告書の骨子」でございます。

 その後ろに参考資料という形でつけてございます。

 まず、参考-1ページが第1回資料4-1、指針でございます。

 参考-6ページが「検査項目の比較表」。

 参考-7ページが第1回資料17でございます。

 参考-11ページが第1回資料18ICRPStatement

 参考-13ページが同じくIAEAの資料。

 参考-17ページがOECDからの資料でございます。

 飛ばしまして、参考-37ページが「線量限度を超えて被ばくした作業者の線量管理の諸外国の状況について」という資料でございます。

 最後に、参考-41ページが除染等業務特別教育の規程でございます。

 以上でございます。

○森座長 それでは、よろしいでしょうか。資料に過不足ありませんでしょうか。

 よろしければ議題に入りたいと思います。

 事務局から前回のまでの議論と、前回議論が終わった後に皆様からかなり多くのコメントや意見をいただきまして、それらを全て踏まえまして骨子(案)を示していただいております。資料7が骨子案に当たります。この骨子案をたたき台にして本日も議論を進めていきたいと思っております。

 この検討会は非常にたくさんの項目を検討させていただいておりますので、今回も幾つかの項目に分けて議論をしていく予定でございます。よろしくお願いいたします。

 まず、項目1から3について事務局から御説明ください。

○安井室長補佐 それでは、御説明をさせていただきます。

 説明に入ります前に、先ほど説明し忘れた点がございまして、19ページの資料3「検討会の進め方」でございます。第4回の時間が変更になっておりますのと、未定となっておりました予備日が「5月13日(木)15301730」と入ってございます。一応これだけ追加で御説明いたします。

 それでは、骨子(案)のほうに移りたいと思います。37ページでございます。

 まずは「1 健康診断等、離職後も含めた長期的な健康管理のあり方」でございます。38ページから前回の御議論がございます。振り返りで簡単に御説明させていただきますと、がん健診につきましては、有効性が確認されているものに限定すべきであるということで、大腸内視鏡検査、胸部CTといったものを追加する。同様な考え方として、感染症検査として、ヘリコバクター・ピロリ、肝炎ウイルス検査も推奨されるのではないかという御議論があったということと、感染症検査の頻度は基本的に1回でいいのではないか。それから、胸部CTにつきましては、被ばく線量について留意する必要があるという御議論をいただいております。

 これにつきましては、日本CT検診学会は、受診者に低線量CTによる肺がん健診を提供する際には、検診の限界、利益・不利益の可能性について、また、肺がん死亡率を減少させるには検診以上に禁煙が重要であることなどについて十分なインフォームドコンセントが必要であるという御指摘がございます。

 それから、放射線被ばくと被ばくにつきましては相互作用が観察されているということもございますので、禁煙を積極的に指導すべきである、禁煙外来の治療も視野に入れるべきだという御意見。

 それから、腎機能検査につきましては、放射線との因果関係が確立されているわけではございませんが、慢性腎疾患を監視するために、肝機能検査(クレアチニン)を加えることを検討すべきという御議論をいただいております。

 ストレスチェックにつきましては、緊急作業従事者につきましては、厳しかった職場環境を踏まえてできるだけ全員を受検させるべきであるという御意見。集団分析については、ほかの職場とのかけ持ち等もあり難しいということでございますが、元請の役割として、関係請負人の作業者に受けさせるような支援をすることが望ましいという御議論がございました。

 これを踏まえまして「骨子案」という形で四角く囲ったところに案をまとめているところでございます。

 まず(1)でございます。指針に基づく健診の対象者でございますが、ここにつきましては特段変更する必要はないという御議論でございます。

 (2)でございますが、現行の指針のがん検診について追加すべき項目は以下のとおりということで並んでおります。

 まず、1つ目が、肺がん検診として100ミリシーベルトを超える被ばくをした者に対する検査として、胸部CT検査の追加ということを入れてございます。ただ、通常のCTは被ばく線量が大きいために低線量CTの使用を推奨することにしております。ここでちょっと御確認いただきたい点は、胸部CTは現在の一般住民向けの検診では対策型検診に分類されていないところでございますので、全員に実施する必要があるか、あるいは医師が必要と認めた場合に限定すべきかなどについて御意見をいただきたいと思います。

 大腸がん検診につきましては、同様な理由で、大腸内視鏡ということでございます。これにつきましても対策型検診には分類されてございませんので、全員に実施する必要があるのか。あるいは、便潜血はやることになっておりますので、これを有所見者に限定すべきかどうかというところで御検討いただきたいと思います。

 感染症検査といたしましては、ピロリを入れるということでございますが、これは位置づけとして肺がんとの関係なのかどうかということ。

 もう一つは、肝炎検査がございますが、これにつきましても、肝臓がんに関する検査という位置づけなのか。位置づけにつきまして御意見をいただきたいと思います。

 それから、非がんの項目でございますが、疫学調査の知見を踏まえて、現行の指針の非がん検査の検査項目について、追加すべき検査ということで2つ挙げてございます。

 1つは、放射線被ばくとの因果関係が確立されているわけではないが、幾つかの文献で、放射線被ばく線量に有意な関連が見られる慢性腎疾患の検査として、腎機能検査。これは、尿素窒素とクレアチニンを考えてございます。「要検討」でございますが、例えば尿酸とか電解質といったところの検査は必要ないかどうかについて御検討いただきたいと思います。

 それから、放射線被ばくと喫煙には相互作用が観察されているということで、保健指導項目に喫煙指導を追加するということでございますが、希望する者に対しましては禁煙外来を紹介することにしております。この禁煙外来というのは、保険診療という理解でいいのかというところを御確認したいと思います。

 それから、現行の被ばく線量を踏まえまして、削除すべきというところでございますが、現在、甲状腺の検査で、甲状腺刺激ホルモン(TSH)とか、free T3 free T4 について、放射線エコーより前にこちらをやることになってございます。これは、そもそも、放射線による急性影響、甲状腺機能低下症を調べるという趣旨で入れているということでございますが、現時点で通常被ばく限度の中でこういったものの検査をする必要性は低下してございますので、こういったものにつきましては削除すべきではないかと考えているところでございます。

 それから、ストレスチェックの運用でございますが、労働者個人に対してストレスチェックを実施し、結果を本人に通知するとともに、高ストレスであって面接指導が必要とされた者から申し出があれば面接指導を行い、必要に応じて就業上の措置を実施する。これはいわゆる個別対応ということでございます。これは当然やる。

 その上で、ストレスチェックは、法令上、労働者に受診義務は課されておらないわけですけれども、特別な理由がない限りは全員が受けることが望ましいとされてございます。特に緊急作業従事者の事故当時の職場環境を踏まえますと、全ての事業者ができるだけ労働者全員に対して実施するように働きかけるべきであると。その際、関係請負人に対する働きかけについては、東京電力及び元請事業者に協力を要請することも考えられる。

 もう一つ、原発での作業の特徴といたしまして、作業員の出入りが激しいこと、それから、ほかの職場とかけ持ちすることもございますので、発注者または元請事業者が別途関係事業者の労働者も含めてストレスチェックを行って、その結果を集団的に分析するといういわゆる集団対応を実施することは難しいということでございます。関係者が実施する集団対応、関係請負人が独自に実施する集団対応について、必要に応じて元請事業者が関係請負人の支援を行うことは望ましいということでございます。これが1点目でございます。

 続きまして「2 緊急作業従事期間中の健康管理のあり方」でございます。

 こちらにつきましては、前回の議論を簡単に御紹介いたしますと、健診項目につきましては、急性障害を起こすような可能性のあるレベルの被ばく、300400ミリシーベルトを超える被ばくをされた方とそうでない方に分けて考えるべきであって、急性障害の可能性がある方については、染色体異常分析を行う。また、リンパ球数を6~12時間ごとに数日間検査するという高い検査頻度が必要。

 一方、緊急作業従事者全員を対象とする検査としては、一般健診に加えてリンパ球数が考えられる。この検査の頻度につきましては一月に1回程度。

 それから、緊急作業が長期化したときの健康上のリスクとして、睡眠不足、食欲減退等々ございますが、これに対する健診としては問診しかありませんので、ほかの検査を実施時に実施するということでございます。

 これを踏まえまして、骨子案が42ページでございます。

 まず「(1)放射線急性障害に対して必要な健診項目」でございます。緊急作業期間中に放射線による急性障害を起こす可能性のある線量、300400ミリシーベルト以上の線量を受けた者とそうでない者を分けて考えるということでございますが、放射線による急性障害を起こす可能性のある線量以上の線量を浴びた者につきましては、染色体異常分析及びリンパ球数検査。具体的には白血球数及び白血球百分率になるわけでございますが、これを実施する。

 ここでちょっと御検討いただきたいのは、ちょっと飛ばしまして21ページの資料4でございますが、電離則のいわゆる特殊健診という項目の中には、白血球のみならず赤血球。これは造血細胞の関係だと思います。それから、当然、白内障と皮膚。これは急性障害ということでございます。これが入ってございます。42ページへ戻っていただきますが、こういった検査をする必要はないのかどうかというところで御検討いただきたいと思います。

 それから、実施頻度が6~12時間ごとに1回、数日間実施することになってございますけれども、実施頻度の始点というのは、当然、一定以上の被ばくを受けた直後と考えていいのかということ。あと、300400ミリシーベルトとなりますと、基本的に被ばく限度を超えている状態になりますので、これは電離則44条に「被ばく限度を超えた場合の医師の診察」となっておりますので、そういった位置づけで行うことでいいのかということでございます。

 それから、ウでございます。一般の緊急作業従事者につきましてはリンパ球数検査を行うわけですが、これにつきましても同様に、赤血球関係、それから目と皮膚の検査も必要ではないかということでございます。

 「(2)緊急作業が長期化した場合の健康管理に必要な検診項目」でございます。緊急作業が長期化したときの健康上のリスクとしては、睡眠不足、食欲減退、疲労の蓄積、熱中症が挙げられるわけでございますが、これに対する検診項目としては問診しかないということ。それから、実施頻度につきましては、余り頻回に行っても効果がないということでございますので、血液検査等の実施時。先ほどの御議論であれば一月に1回に合わせて実施することが適当だということでございます。

 説明は以上でございます。

○森座長 3についても、お願いします。

○安井室長補佐 失礼いたしました。「3 緊急作業中の原子力施設内の医療体制のあり方」でございます。

 これにつきましては、前回の御議論といたしましては、予防対応の専門人材の配置について労働衛生の観点も位置づけてほしいと。

 それから、関連会社の産業医というのは重要な専門資源でありますけれども、必要な予防的措置を統括的に推進できる外部の専門家を入れるべきではないかという御意見。

 それから、予防対策の推進には、事業者や国の意思決定との関係が重要であるため、予防対策を行う組織の危機管理体制全体の中の位置づけを検討すべきだという御意見。

 それから、米国では9.11のテロを受けまして、National Response Planですから、危機管理関係の計画の中に作業員等の安全衛生が位置づけられて、関係学会でも支援体制づくりが行われているということでございますので、これを参考に防災基本計画上の位置づけも検討すべきであるという御意見をいただいております、

 これにつきましても骨子案ということになってございますが、原子力施設内での緊急作業中の労災被災者対応のあり方に関して有識者ヒアリングを行ったところでございます。その取りまとめ結果を資料5のほうに入れてございますが、これは後ほど前川先生から御説明いただきたいと考えております。

 以上でございます。

○森座長 ありがとうございました。

 引き続き、資料5につきまして前川委員から御説明いただいてよろしいでしょうか。

○前川委員 この有識者ヒアリングを過去3回催しまして、原子力施設内で一旦事故が起こったときの被ばく医療体制をどうしたらいいか、つまり、オフサイトではなくてオンサイトの問題をどうしようかという話の取りまとめでございます。

 背景としてありますのは、原子力施設内の緊急作業中の労災被災者に対する医療体制というものは一義的に原子力事業者の責任であるとなっています。しかし、現実には、今回の福島の事故でも、緊急作業期間中、東電自体が被災者に対して当初の初期被ばく医療、すなわち初期被ばく線量の評価とか、除染、救急処置、トリアージ等々の対応を行うような医療スタッフを独力で確保することができませんでした。

 こうしたうちに、急性心筋梗塞を発症した作業者が死亡するという事件が起こりまして、労災被災者への対応が不十分だということが判明しましたものですから、官邸指導と厚生労働省の派遣要請等がありまして、ERの整備、それから産業医大、労災病院からの医師の派遣等が行われて、医療スタッフの24時間常駐が発災後約4カ月後に実現いたしました。その後も、継続的に、広島大学が事務局になって、医師等による東電福島第一原発救急医療体制ネットワークを構築して、原発内へ医療スタッフの派遣支援を行っております。

 課題としましては、防災基本計画の中では、原子力事業者が汚染・被ばく患者の応急処置及び除染を行う設備の維持管理、あるいは被ばく医療を行える体制の整備を求めておりますけれども、なかなか難しい。今回の原発事故の教訓を踏まえまして、26年1月に改正された防災基本計画では、原子力事業者が関係官庁と「緊急時の医療に精通した医師等のネットワーク」を活用した医療従事者の派遣またはあっせんについて、地域の地方団体、あるいは関係官庁とともに緊密な関係を維持することが盛り込まれております。

 これに応えるためには、このネットワークというのは理解がなかなか難しかったのですけれども、全国の原子力施設で起こった事故に即応するような「緊急時の医療に精通した医師等のネットワーク」を新たな形で構築する必要があるのではないかという議論が出てまいりました。今までの被ばく医療体制のほとんどがオフサイトの問題、地域住民の健康被害に対する対応でありますが、オンサイトのことに関しては一切触れてないということからこういう議論が出てきたわけであります。この原子力防災マニュアルの規定にもそのように書いてありまして、実際には(4)のイに書いてありますように、施設内での医療対応については、災害対策本部ができた現地医療班が医療従事者の派遣あるいはあっせんに協力することになっておりますけれども、現実に具体的にどうするかということは決まっておりません。

 それから、防災基本計画では、規制委員会の役割として、汚染・被ばく患者を受け入れる医療機関に対して研修、教育を行うことになっておりますけれども、事故時に原子力施設内に派遣されて、緊急作業中の労災被災者の被ばく患者や汚染患者さんの被ばく線量の初期評価、除染、救命処置、全身状態、あるいはその他合併損傷・疾病の初期治療のための医療スタッフの育成、研修は盛り込まれておりません。

 それから、防災基本計画では、国、地方公共団体、原子力事業者等が住民の参加を考慮した防災訓練を共同で実施するとなっておりますために、原子力施設内外での連携、あるいは労災被災者搬送に関する訓練が十分でない原子力施設も見られます。

 ということで、この課題に対する対応としては、まず調査を行いまして、その結果がそこにありますが、各原子力施設の現状として、地域医療との連携について見ますと、緊急時に原発構内に派遣される医療スタッフの育成については、現時点ではどの原子力事業者においても行われておりません。

 それから、原子力施設内外の連携を強化するための協議会の開催については、ほぼ全ての原子力発電所において地域医療機関等との何らかの連絡協議会が開催されております。この場合、道府県が事務局になっている場合もありますが、また別のケースの場合には公益団体が事務局となってこの地域連携協議会を開催しているところもございます。

 それから、搬送訓練に関しては全ての原子力発電所で実施されておりますが、汚染負傷者の搬送訓練については原子力発電所間で幾分相違が見られるようであります。

 この協議組織の永続性の確保については、全ての原子力発電所におきまして、地域医療機関との間に汚染傷病者受け入れの覚書等が締結されております。

 それから、原子力施設における医療設備、体制について見ますと、全ての発電所において、診察室あるいは緊急医療処置室は確保されております。また、全ての発電所で除染室が管理区域出口付近に確保されております。

 医療スタッフについて見ますと、医師については5つの発電所で常勤の医師が勤務しておりまして、他の発電所でも非常勤の医師が配置されております。その他のスタッフとして、全ての発電所で看護師または保健師が常勤で雇用されております。

 訓練等の状況を見ますと、社内医療スタッフが、当然のことですけれども、全ての発電所で訓練に参加しています。搬送訓練では、協定を締結した医療機関においては汚染傷病者の受け入れを行った訓練を実施しております。

 このようなことから課題等が浮き彫りになりました。1つは除染室。いわゆる全ての発電所にあります除染室は、管理区域での通常作業での汚染に対応するために設置されておりまして、いわゆる診察室とか救急処置室に近接して位置しているわけではありません。診察室は、主に風邪あるいは腹痛など内科的な処置に対応するものでありまして、例えば創傷の処置とか救急処置ができるような設備がないケースがほとんどであります。事故が起きても、放射線防護上、安全な場所に、臨時に医療対応ができる応急処置室及び設備を準備しておく必要があるだろうという指摘がございます。

 対応時の基本的な考え方でありますけれども、事故時にも放射線防護上の安全が確保できるように、原子炉から十分な離隔距離がある建屋内に、事故後、医療対応ができる医療資材・設備を持ち込み、応急処置室を設置できる場所を確保しておくことが望ましいと考えております。

 この応急処置室の設置場所は、以下のような条件。つまり、換気施設があること。二重扉等があって放射性物質の流入を防止できること。温水シャワー等を備えた前室。これはまさに除染のための部屋でありますが、前室があり、汚染傷病者の除染措置ができるような設備があること。それから、空調設備を備えて、水・電気が使用できること。汚染物及び排泄物の回収ができること。

 こういうことを考えますと、必要な医療資材、医療設備の整備に当たっては、専門医の意見を聴取し、事故後に持ち込むものを特定して事前に準備、確保しておくことが必要であろうと思われました。

 それから、一番重要なことでありますけれども、こういう緊急時に原子力施設内に派遣される登録医療スタッフ等の募集・育成のあり方が大いに議論になっております。

 求められる人材像としては、緊急時の医療に対応できる人材のみならず、緊急作業の状況に応じた医療ニーズに応じて、事故予防の観点から、労働衛生管理や産業保健にも対応できる人材も必要だろう。医師のみならず救急救命士、看護師その他の人材も必要だろうと考えております。

 それから、原子力施設内では一体どういうことをやるかということになりますが、救急処置だとか合併疾病・損傷の初期診療、重症度の判断、搬送の優先順位の決定、搬送先医療機関の選択、被ばく線量の初期評価、汚染の有無、汚染の程度の判断、除染を行う必要がありますので、こういうことが行える必要があります。

 それから、対応すべき傷病の類型としては、墜落事故などの外傷とか、熱中症や心筋梗塞のような疾病なども想定されます。それから、長期化する場合、緊急作業の状況に応じてメンタルサポート、あるいは季節によっては熱中症予防等の健康管理を行う必要もあります。

 ここに派遣される医療スタッフ等に対する教育として必要な事項としては、例えば次のようなものがあります。つまり、各原子力施設の仕組みあるいは過酷事故のシナリオに対する理解、それから地域の防災計画など、各原子力施設で実際に災害が起きたときの原子力防災システムに対する理解が必要だと思います。

 対応の基本的な考え方としては、事故が発生したときに直ちに原子力施設内へ派遣され、緊急作業期間中にそこに常駐することを前提とした医療スタッフを募集し、その育成を行うことが基本的なスタンスです。被災地の医療機関は、恐らく、一般住民を含めた災害対応に追われること、原子力災害に対する医療提供能力が低下することが予想されるために、被災地以外の地域から原子力施設に医療スタッフを派遣することが賢明だろうと考えています。それから、実地研修を含む複数回の研修によって、資格を維持するために、また能力を維持するために定期的な講習の受講を求めております。

 求められる知識・技能に関しては、ここに書いているような非常に広範囲な、いわゆる被ばく医療に対する知識のみならず、救急医療に対する知識等々、それから、労働衛生管理に関する知識、そういうものが必要だろうと考えています。

 それから、これも課題として積み残しておりますけれども、医療スタッフ等の募集及び養成に向けての対応としては、医療スタッフ等の募集は、行政機関から医療機関など関係機関に呼びかけるなどの方法が考えられると思います。それから、導入研修、フォローアップ研修の参加を義務づけようということが考えられています。

 次は「原子力施設内外の患者の搬送、受入れ等の連係を強化するための協議組織の開催」。地域によっては、既に原子力施設と地域医療との連携が強いところもありますし、また、まだ不備なところがございます。もちろん、地域医療のバックアップなしでは原子力施設内での医療対応は不可能でありますので、ぜひこういうものには何らかの形で関与する必要があるだろうと考えています。既存の被ばく医療に関して複数の協議組織が存在する場合もありますが、主に地方公共団体が主導するものは、周辺住民の対応に特化する方向であります。

 それから、もう既に他の省庁の事業によって複数の連絡会議とか地域医療ネットワーク会議がさまざま存在しております。今回、私たちが問題にしているこういう協議組織というものは、原子力施設からの患者さんの搬送と受け入れ医療機関の特定に特化した対応について協議する。ですから、既存の協議組織に加わる形でも構わないし、それに乗っかる、あるいはそれを支援するという形でも構わないだろうという議論でありました。それから、担当者の人事異動があっても継続できる仕組み。こういう協議会を考えても、地域の防災計画とか、地方公共団体の計画と整合していない場合には困りますので、整合している必要があるだろうと。それから、広域搬送についても、広域の連携も図る必要があるだろうということ。それから、ネットワーク事務局自体がこういう全ての協議組織を賄っていく、あるいは組織していくのは非常に難しいので、既存の組織、あるいは原子力事業者と連携して、周辺の医療機関、消防部局、保健部局、労働局を含めた協議組織の開催に向けて協力していくべきではないかと考えています。

 それから、訓練については、特に労災事故でオンサイトに発生した事故の患者さんをできるだけ地域の医療機関に搬送するという原子力施設内外での患者搬送の訓練もやるべきだろうということ。それからまた、もちろん広域の搬送も考えたほうがいいということをここに書いております。つまり、いわゆる昔の三次被ばく医療機関まで搬送することも想定して訓練を行うべきだろうということをここに記載してあります。

 それから、28ページですが、一番問題になりますのは医療スタッフの契約・身分保障であります。派遣される医療スタッフには適切な契約・身分保障を提示すべきだろう。あるいは保険についてもちゃんと明確にすべきだろう。それから、円滑な派遣のために関係者の間で事前の了解とか契約等。例えば派遣元の医療機関から了解を得て、ネットワーク事務局と派遣されるスタッフとの関係の整理、それから派遣先となる原子力施設との契約等についても課題として積み残してあります。

 その対応の基本的な考え方としては、原子力施設内における派遣医療スタッフ等に対する放射線防護及び管理は一義的に原子力事業者の責務。身分保障についても、必要な費用も含めて派遣先となる原子力事業者の責任とすると考えています。ネットワーク事務局は、事前にこういう医療スタッフの名簿を登録しておくものとする。一旦事があれば、このネットワーク事務局から登録された医療スタッフに派遣養成をするという形になるわけであります。

29ページにまいります。この医療スタッフ等の契約・身分保障関係についての基本的な考え方については、医療スタッフというのは基本的に異動が非常に多いために、確実に連絡先を追跡できる仕組みをつくっておこう。それから、ネットワークの運営主体は医療スタッフが公務として事故対応ができるように公的な団体であったほうがいいのだろうということ、同時に、既存の放射線被ばくに関する技術、人材、機材の活用を図る必要があるだろうと考えています。

 運営主体というのはどういうところか。公的な団体であるとしても、どういうことが業務内容かといいますと、医療スタッフ等の継続的な名簿管理、技能維持に関する調整、研修履歴の管理、先ほど申し上げた地域連絡協議会に関する調整、搬送訓練に関する関係機関との調整、原子力事業者側との連絡調整窓口の特定、研修内容の基本方針の検討等が必要であろうと思われますし、運営主体というのは基本的には公的な団体であるべきだろうと。事務についても、今申し上げたような業務内容についても十分に検討する必要があるだろうと考えられました。

 これらが、ヒアリングを3回行って、実際、原子力施設で一旦事があったときに、緊急作業に従事している方々の労災対応に対する医療を実施するためにどうしたらいいかという議論の取りまとめでございます。

 今後の進め方については、平成27年度にモデル的な取り組みを実施していって、実際にこれがどういう形になるかということをさらに議論を深めていただいて、28年度以降、こういうことができればいいなと考えています。

○森座長 ありがとうございました。

 非常に広範囲に詳細に検討いただきましてありがとうございました。

 それでは、ただいまから項目1から3につきまして具体的な議論に入りたいと思います。全部同時でもいいのですけれども、確認してほしいという細かい項目もございますので、最初に、項目1「健康診断と離職後も含めた長期的な健康管理のあり方」。38ページから40ページにかけての骨子案の項目について御意見をいただきたいと思います。特に要検討事項、要確認事項がございますので、このあたりをお願いできればと思います。

 祖父江先生、特に。

 お願いします。

○祖父江委員 多数の項目にわたるので、ちょっと混乱するかもしれませんが。

 まず、38から始まる骨子案の中で、39ページに「要検討事項」と。まず、低線量CTの話がありまして、それから便潜血検査に加えての大腸内視鏡の話ですね。これらは一般の人に対策型検診として進められているわけではないと。ちょっとリスクの高い人に関してつけ加えるような検査となると思いますけれども、基本的には、こういうものをきちんと選択できるように設定しておくことが重要なのではないかと思います。

 低線量CTにしても大腸内視鏡にしても、利益は大きいということがあるのですけれども、加えて不利益が相当分ある。大腸内視鏡に関しては、ある一定程度の穿孔ですとか出血とかいう合併症がありますし、CTに関しては過剰診断等の問題もありますので、医師が必要と認めたというか、本人の判断も加味した上で、全員に行うというわけではなくて、ある程度選択された人に行うということのその選択肢を用意することが重要なのではないかと思います。大腸内視鏡については、かなり間隔をあけて10年に1回程度ということ。アメリカなどですとそのような推奨がされておりますので、そういったことも一応目安として書いておくべきかなと思います。

 それから、感染症の検査ですけれども、これは単に検査をするというわけではなくて、陽性者に対して除菌をするとか、ウイルスの駆除をする、積極的にリスクを減らすということが重要ではないかと私は思います。ですから、陽性者に対しての続く行為、ここをきちんと担保しておくことが必要ではないかと思います。ただ、除菌にせよ、特にC型肝炎のウイルス駆除に関しては、保険で見る、プラス、それを補填するような制度もあると思いますので、そことの兼ね合いを整理しておく必要があるかと思います。

 加えて、喫煙に関しても同じように、リスクを減らすという意味からは非常に重要なことなので、喫煙者に対しての禁煙治療に関する指導なり補助なり、そういうものが積極的に必要ではないかと思います。

 それから、非がんの検査で、腎疾患については、尿素窒素、クレアチニンというのが腎機能に直接かかわるものですけれども、尿酸、電解質等々の検査は、多くの場合、既に安衛法の一般検査などで行われているものだと思うので、ここであえてつけ加えるか。

○森座長 安衛法の健診項目には入っていないです。

○祖父江委員 入っていないですか。

 では、腎疾患のスクリーニングといいますか、検査ということで広目に考えたほうがいいのではないかと思います。

 あと、禁煙外来がそうですね。

 それから、甲状腺に関しては、100ミリ以上の方に関して甲状腺の検査をするということですか。確かに、急性障害に関しての機能低下症についての懸念はどんどん減っていくのだと思うのです。ですから、提案どおりでいいかもしれません。

 あと、超音波のほうです。これは、たしか医師の必要に応じてというような書き方だったと思うのですが、ここも一定程度の基準を決めてやったほうがよくはないかと思います。余り過剰にすることも頻回にすることもない。ある一定程度の感覚でやるということが重要なのではないかと思います。

 というようなところです。

○森座長 ありがとうございました。

 そうすると、またアとイは選択肢として示すということがいいと。ウとエについては基本的に指導する、または検査するというところまで検診でやって、その後、それぞれ問題がある部位、陽性の場合はしっかり治療に結びつける。治療自体は多分保険という形になると思うのですが、そういう形にする。あと、腎機能、甲状腺についても、頻度とかはまた別にして、これはやったほうがいいのではないかと。そういう御意見だったということです。

 今、いただいた意見につきまして、ほかの先生方、委員の方から何か。

 お願いします。

○児玉委員 まず最初に、肺がん検診とCTなのですけれども、普通のCTはかなりの被ばく線量になるというのは、私、よく理解しているのですが、この低線量CTというのはどれぐらいの線量ですか。

○祖父江委員 おおむね1ミリシーベルトぐらい。

○児玉委員 わかりました。線量がもっと多いということであれば、そのことによる余分な被ばくということなので、御本人の了解をきちんと得て同意を得るべきと考えたのですが、1ミリシーベルトということであれば、当然そのことも説明した上で、肺がん検診のためにCTを受けてくださいということになるのでしょうから。

 それから、これもどうしようかなと思ったのですが、腎機能のところで、電解質、ナトリウム、カリウム、クロール、カルシウム、リンですが、先生、これは広目に考えたほうがいいという意見でしたか。

○祖父江委員 はい。

○児玉委員 ここで私がひっかかったのはカルシウムのところです。頻度は非常に低い病気ではあるのですけれども、副甲状腺機能亢進症があります。甲状腺の裏にある副甲状腺が腺腫になったり、過形成になったり、中にはがんという珍しいのもあるのですが、これは放射線の影響として確立されたものなのです。本症では、血液中のカルシウムのレベルが高くなるということで、病気が診断されるということがよくあります。ただし、先ほど言いましたように、たしかこれは女性に多いのではなかったかなということと、頻度が非常に低いのでどうしたものかとちょっと迷いながら、今、発言をしています。

 広く健康管理をしてさしあげるという観点からすれば、放射線の健康影響でカルシウムのレベルが上がる病気として副甲状腺機能亢進症があるということは頭に入れておく必要があると思います。

○森座長 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

 伴委員、お願いします。

○伴委員 甲状腺機能低下症ですけれども、放射線で甲状腺機能低下症が起きるのは線量が相当高くないと起きないと思います。ですから、100ミリシーベルトで本当にそれが必要なのかどうかという議論はあります。ただ、ヨウ素を相当吸入して、甲状腺が集中的に被ばくしたという状況においては、すぐに出てくるとは限らないので、5年、10年たってから出てくるということもありますから、やはりこういう長期の観察というのは必要になるのかなと思います。

○森座長 ありがとうございます。

 前川委員、お願いします。

○前川委員 ちょっとこの書きぶりなのですけれども、がん検診の中では、例えばヘリコバクター・ピロリと胃がんというのは原因と結果と非常に密接な関係があると同じように、非がん検査の項目の中で、喫煙について、例えば禁煙指導を追加するというところまで述べていながら、先ほどちょっとおっしゃったように、ヘリコバクター・ピロリが陽性であれば、やはり治療するというところまで述べておかないと片手落ちのような気がします。片方では禁煙を盛んに言っておきながら、C型肝炎の抗体陽性の場合でも放っておくのではまた片手落ちになるので、検査するのみならず、やはり陽性の場合には治療を指導するとか、そういう書きぶりにしたほうがそろっていいのではないかという気がします。

○森座長 ありがとうございます。

 では、意見はどうでしょうか。よろしいでしょうか。

○安井室長補佐 ちょっと追加で確認したい点が何点かございます。

 選択肢として示すというのは現場では実行がなかなか難しい。例えば医師が判断するのか、あるいは医師がこういうことを説明した上で御本人に選んでもらうのかとか、いろいろオプションがあるのですが、そのあたりはいかがでしょうか。

○祖父江委員 「本人の意向を確認した上で医師が判断する」で私はいいと思います。余り頻回にする必要もないと思って、毎年、胸部低線量のCTを撮る必要は恐らくないでしょうし、内視鏡もする必要はないと思うのです。

 ただ、胸部CTに関しては、今のところ、エビデンスとしては、喫煙者に関してはオーケーだけれども、非喫煙者に関してはよくわからないというか、過剰診断が大きいのではないかということがあるので、そこのところの情報提供もあっていいのかなと思います。

○安井室長補佐 もう一点ですが、超音波検査について何らかの基準を定めたほうがいいと言われたのですが、この基準というのは被ばく線量なのか、それとも別な基準ですか。

○祖父江委員 やはり頻度だと思うのです。毎年するというのはちょっとやり過ぎなので、ある一定程度間隔をあけて。所見がある人に対しては間隔を調整するようなことがあってもいいと思いますけれども、毎年行うとか、そういうことは余りないような形が適切ではないかと思います。

○安井室長補佐 あともう一点です。

 甲状腺機能低下症に関して、今、やめてもいいという御意見と続けたほうがいいという御意見があったような気がしたのですが、これは超音波検査を数年に1回やるという前提のもとでも続けなければいけないということでしょうか。

 伴先生、いかがですか。

○伴委員 その超音波検査もあるのでしょうけれども、機能低下ということであれば、TSHをはかるのが一番確実だと思うのです。

○安井室長補佐 そうすると、現時点では100ミリ超えの方が原則として血液検査のほうが前提になっていて、エコーのほうが一種の「必要に応じて」になっていて、ちょっとひっくり返っているのですけれども、例えば、エコーを原則にして、医師の必要がある場合に血液検査をするとか、そのようにひっくり返すとか、そういうのはいかがですか。

○伴委員 それもありだと思います。だから、100ミリというのは甲状腺機能低下に関しては余りにも低過ぎるので、その辺は必要に応じてという考え方はあると思います。

○安井室長補佐 ありがとうございました。

○森座長 よろしいでしょうか。

 あと、ストレスチェックに関しては、私自身が何名かの元請事業者の産業医等に確認をして、どこまで実施できるのだろうかということ確認して、それを前提に意見を出させていただいております。基本的にできる範囲で行う、推奨するということはいいと思いますが、これを義務として実施するというのは恐らく難しいだろうという趣旨でまとめていただいています。これについてよろしいでしょうか。

 考え方としては、個々の事業者の責任で実施する。50名以下が、今回、義務にはなっていませんが、状況を考えると、そういったところがきちっと実施するように、少なくとも個別対応ができるようにする。集団の評価、集団の改善については、これも元方に全て任すということは難しいが、それぞれの関係請負人が実施できるように元請事業者が支援をするという範囲内が現実的だろうと、そういう基本的な考え方です。

 よろしいでしょうか。

○前田室長 1点、先ほどの大腸内視鏡の種類の確認ですけれども、1回目の会議のときに、直腸は放射線の影響というのは弱いのですが、結腸がんがあるということでいきますと、全大腸内視鏡でいくか、S状結腸鏡でいくかというと、全大腸内視鏡のほうがふさわしいということでよろしいでしょうか。

○祖父江委員 今、日本で検診で行われているのは、ほとんどの場合、全大腸内視鏡だと思います。理由はちょっとよくわかりませんけれども、S状結腸鏡は日本では余り行われないです。

○森座長 ありがとうございました。

 それでは「2 緊急作業従事期間中の健康管理のあり方」に移りたいと思います。これについても、42ページの骨子案のところに「要検討」と書かれた項目が幾つかあります。

 まず、全般的に前川委員からコメントをいただければと思います。

○前川委員 この300400というのは単回の線量値の高い被ばくということですので、いつやるかということ、例えば被ばく限度を超えた場合にやるということではないと思うのです。最初の300400と分けたのは、累積の300400ではなくて、急性障害が出るかどうかということについては、単回の高線量率での被ばくという場合には、この辺で分けたほうがいいと考えたのであります。ですので、それを引き継いで、いつやるかということに関しては、これはやはり直後にやるということに尽きるわけで、被ばく限度を超えた場合の医師の診察時という形にはならないと思います。そこをちょっと直していただければと思います。

 それから、白血球と白血球百分率をやって、赤血球数あるいはヘモグロビン、ヘマトクリットを検査しないということをすること自体が非常に難しい。今の計算機は簡単に両方ができるので、これはやるべきだと。除くほうが難しいのです。一旦採血をして、スピッツという試験管に入れたら、もうすぐに自動的にできることになっていますので、これも入れて当然だと思います。まして、急性障害がそれ以上であった場合、300400ミリシーベルト以上であれば、一過性に影響があるかもしれないので、やっておいたほうがいいと思います。つまり、ずっとやるかどうかに関しては、まず直後にやっておいたほうがレファレンスレベルといいますか、それが御本人の基準値になりますので、これはやっておいたほうがいいと思います。

 そういうところでしょうか。

○森座長 あと、目の水晶体と皮膚の検査というところについてはどうでしょうか。

○前川委員 これはどうでしょうね。作業者の目に関してはどうでしょう。今、かなり低いところでも起こるということが言われていますので、そういう意味では、100ミリシーベルトを超えた人全部にということではないだろうと思いますけれども、どこで線引きをするかは難しいのですが、この場合も、先ほどお話ししたように、直後のレファレンスとしてやっておいたほうが、後々、1年、2年、3年後に白内障が発症したときの比較ができるという意味では水晶体検査も必要になるかもしれないです。どのレベルでやるかということに関しては、私自身、今のところ数値は持っていません。

 皮膚に関しては、恐らく、このレベルでは何の変化も来ないだろうと思うので、必要ないと思います。ましてや、ベータ線熱傷などはこのレベルでわかるわけがないので、皮膚に関する検査は必要ないのではないかと思います。

○森座長 ありがとうございました。

 ほかの委員の方々はどうでしょうか。

 伴委員、お願いします。

○伴委員 今の前川先生の御発言ですけれども、レファレンスとしてということであればわかるのですが、赤血球とか血色素量が短期間で減るというのは考えにくいと思います。これは緊急作業に従事する比較的短い期間の話なので、その間の変化という意味では意味がないのではないかと思います。

 同じように、白内障に関しても、従来から言われている後嚢下混濁でも、発症するのは被ばくしてから数年ぐらいです。今問題になっている皮質混濁に関してはもう10年以上という話ですから、この緊急作業従事期間中の項目としては必要ないのではないかと思います。

○森座長 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

 そうすると、この染色体異常及びリンパ球数の検査で短期間的にはレファレンスとして追っていって、短期間の影響としては、ほかのものというのはすぐに出てこないものであり不要である。ただし、血色素、ヘマトクリットは白血球を測定する際に同時に測れてしまうので、この取り扱いをどうするか。そんな話ということですか。

 事務局、いかがですか。よろしいですか。

○安井室長補佐 レファレンスではかるということであると、頻度の問題が出てくると思うのです。例えば、月に1回とか、そういうことではなく、緊急作業が終了した時点とかそういうことでしょうか。

○森座長 そういう考え方でよろしいですか。

 お願いします。

○前田室長 項目として、急性障害としてTSHの話がございますが、甲状腺のホルモン検査はこの項目に入れたほうがいいかどうか、御意見をいただきたいと思います。

○森座長 伴委員、お願いします。

○伴委員 そこまで短期間で浴びるかということと、すぐに出るわけではないので、緊急作業期間中としては必要ないのではないかと思います。むしろそれは前川先生にお聞きしたいです。

○前川委員 それは基本的にどう考えるかということだと思うのです。緊急作業中の影響を後々まで長期的に見ていくための元資料とするのか、あるいは緊急作業中に変化がなければそれでいいとするのか。そういうことによっては、不必要だという考え方もあるし、これだけはやっておいたほうがいいと。例えばTSHにしても、恐らく、この程度の線量ではまず急性障害は出てこない。となれば、不必要だということになる。甲状腺の場合は不適応かもしれないけれども、水晶体の場合はそうだと思いますが、後々起こったときのために、そのときはどうだったのかと基準値としてやっておくのか。どちらかということを明確にしたほうがいいような気がします。

○森座長 どうぞ。

○安井室長補佐 緊急作業というのも実は一体どれぐらいの長さなのかがわからないというのはあるのですが、それほど急速に進展することがないという議論であるならば、レファレンスということになるのだろうと思います。そういった観点では、例えば緊急作業を終了するときとか、そういったときに1点とるのかなという議論になるのかなと考えております。

 以上です。

○森座長 それでは、2はよろしいでしょうか。今のところを次回までにちょっとまとめていただくということで、よろしくお願いします。

 次「3 緊急作業中の原子力施設内の医療体制確保のあり方」につきましては、先ほど資料5でかなり詳しく御説明いただきました。これがそのもので、今後もさらに具体的にどのように実践できるかというのを継続的に検討していくというフェーズに入ってはどうかという御意見だったと思います。

 私から2点確認させていただきたいことがあります。

 1つは、福島の場合、女性の医療者を当初は入れなかったということがありますけれども、今回は、線量限度の範囲内であれば、女性の医療者も基本的には使っていくという趣旨でよろしいですか。

○前川委員 これも実はヒアリングのときに議論になりました。当初は、緊急作業者の対応のために派遣される医療スタッフはできるだけ男性であるほうが望ましいとはあったのですけれども、そうでなくてもいいのではないかという議論も出て、その文章は割愛されました。でも、それについても課題として議論はしていただいたほうがいいかなと考えています。

○森座長 あと、26ページの「求められる知識・技能の内容」のところにアからサまであります。これはかなり幅広い範囲で、救急をやる専門の先生と労働衛生から入る先生と保健師と、それぞれ全員が全部身につけるというのはなかなか簡単ではないと思うのですけれども、職種に応じて研修をすることを前提に、トータルで見るとこういう機能が必要だと。ここはそういう理解でよろしいでしょうか。

○前川委員 そうだと思います。フェーズによる医療ニーズというのは変わってくると思いますので、それに応じた人材が必要だと思います。

 基本的な考え方は、例えば、原子力施設内で何か事故が発生したときに可及的速やかに地域外からチームを送り込んでそこに常駐させる、緊急作業継続中にも継続してそこにいる、何か事があれば対応するという意味です。間髪を入れず何か起こるわけではないわけですので、発災直後から入り得る医療チームをオールジャパンでやろうという非常に画期的な考え方です。

○森座長 ありがとうございました。

 3の、特にこの資料5に関して、ほかの委員の先生方から何かありましたらお願いします。

 実際に検討されるときのメンバーは、事業者の方もかなり入っていただいて、現実性とかいろいろ一緒に議論いただいているので、今後、具体的に進めていく上で、この内容は非常に重要な土台になると理解しておりますが、何かございますでしょうか。

 事務局、ここについてはよろしいですか。今後ここの範囲でさらに検討していくということで。

○安井室長補佐 ええ。まだ成立してはございませんけれども、27年度に予算を確保してございまして、これで一部の原子力施設についてモデル的に実施することになっております。前川先生からも御指摘ございましたが、課題として残っているものはたくさんございますので、それは27年度中に検討していくことになると考えております。

○森座長 ありがとうございました。

 それでは、さらに検討が必要だということでもありますし、非常に重要なポイントをかなり詳細にまとめていただいていますので、本日は、3についてはこの範囲でということで次に移りたいと思います。

 続いて、項目4と5にいきたいと思います。事務局より説明をお願いいたします。

○安井室長補佐 45ページでございますけれども、「4 通常被ばく限度を超えた者に係る中長期的な線量管理のあり方」でございます。前回の議論の振り返りがございますが、46ページ、まず基本的な考え方として実効線量でございます。ICRPは生涯1シーベルトを50年と考えて、それを10分割した上で5年で100ミリとしておりますので、その考え方に基づけば、長期的な線量管理は生涯1シーベルトに基づかざるを得ないということでございます。

 一方、等価線量でございますが、これは議論が必ずしも1つの見解にまとまっておりませんで、例えばICRPの声明で0.5グレイという数字が出てございます。これは循環器系と目と両方ございますけれども、これにつきましては、線量限度という規制のあり方まで考えが及んでいないのではないかとか、0.5グレイというのは局所の組織反応(tissue reaction)という概念でございますので、実効線量という概念とは合わないのではないかという御議論もございます。

 それから、追加意見といたしましては、循環器疾患の扱いが気になるという御意見もございまして、これにつきましては本日御議論いただきたいと考えてございます。

 それから、基本的考え方のところで、雇用との関係につきましては、働く機会をきちんと考えて、そこで安全を確保という御意見。それから、厚生労働省の見解を一応説明してございます。通常作業においては、緊急作業と合算した線量が5年で100ミリを超えることは認めないというスタンスを前回の事故ではとったということでございますが、雇用の確保という観点から言うと、100ミリを超えた方が東京電力等の大企業の社員であったということを当然考慮していますという説明をしてございます。

 具体的な線量管理の方法につきましてはいろいろやり方がある中でございますが、ICRPPublication 75の引用で「線量限度が関係する残りの期間に比例して」という記載もございますので、基本的には生涯線量1シーベルトから累積線量を減じた残余線量を残りの線量管理期間の長さで除するといった形で管理するのが基本ではないかという御意見が出ております。

 あと、等価線量につきましては、目の等価線量を測定すべき3ミリメートル線量が現状ではかられていないという問題も提起されてございます。

 こういった議論を踏まえまして、骨子案の「(1)生涯線量の考え方」でございます。実効線量の生涯線量につきましては、ICRP1990年勧告の通常被ばく限度の前提となる1シーベルトを採用する。

 それから、ここからは要検討事項でございますが、等価線量あるいは組織反応としては、ICRP声明の0.5グレイの取り扱いについても考え方を整理していただく必要がございます。実効線量は実効線量として管理した上で等価線量の制限を別につけ加える必要があるか。それから、ICRP声明の循環器疾患のしきい値0.5グレイを採用すべきか。同じように、目の水晶体のしきい値0.5グレイを採用すべきか。目の水晶体の等価線量につきましては、3ミリメートル線量を測定していないときにどうするのかという議論がございます。

 (2)でございますが、100ミリシーベルト超の者の生涯における被ばく線量が生涯線量を超えないように管理する方法でございます。これは、福島第一原発で緊急被ばく限度が100ミリシーベルトを超えた方が174人おられますけれども、このうち150人は東京電力の社員でございまして、残りも、プラントメーカー、もしくはそのプラントメーカーの子会社のレベルでございまして、雇用事業者は明確でありまして、作業者ごとに累積被ばく線量を厳格に管理するということが担保できますので、作業者ごとに累積被ばく線量の最適化を行うという方法がいいのではないかということでございます。

 ここも先ほどの要検討事項でございますが、実効線量のみの管理とするのか、等価線量も含めるのかということで計算方法が変わってまいります。

 具体的な計算方法といたしましては、生涯線量1シーベルトから緊急線量と通常線量を合算した累積線量を減じたいわゆる残余線量を、残りの線量管理期間の長さ、これは年齢によりますが、長さで除して、それを5年ごとの線量限度に個別に設定することを提案してございます。これも、1ミリシーベルト、5ミリシーベルト、10ミリシーベルト、どういう単位を使うかということがございます。

 例1でございますが、緊急線量が500ミリシーベルトで、通常線量が100ミリシーベルトで、累積被ばく線量としては600ミリシーベルトの方が45歳の場合は、1,000から600を引きまして400ですが、400ミリシーベルトを68歳引く45歳の23年間で割ると、1年当たり17.4ミリシーベルトという形になります。これを5倍しますと87ミリシーベルトになりますので、この方は5年間で87ミリシーベルトを超えないように管理すれば、生涯1シーベルトを超えることはないといったことになります。

 例えば、これを5ミリで丸めるのか10ミリで丸めるのかという議論になろうかとは思います。

 以下、例がついてございますが、特徴的な例としては例2でございます。緊急被ばく限度が200、通常被ばく限度が100で、年齢45歳の場合になりますと、こういった計算をいたしましても、5年当たりの数字が100ミリを超えてくる場合もございます。こういった場合は、当然、特別な線量管理は不要であって、通常の被ばく限度5年100ミリを適用することになろうかと思います。

 ここで検討としては、生涯の就労期間を18歳から50年間と仮定して68歳にしてございますけれども、例えばICRP65歳を使っておりますし、このあたりをどうするのかというところは若干検討が必要かと考えてございます。

 続きまして「5 緊急作業従事期間中の被ばく線量管理のあり方」でございます。これにつきましては、前回の議論の振り返りというところでございますが、49ページ、追加意見でございます。ICRPの参照レベルは、緊急作業立案時のいわゆる計画線量の縛りであって、そのような数値基準であれば内部被ばくや水晶体被ばくを含めたものにするのは可能である。ただ、限度とすると、リアルタイムにモニターできない線量については安全上の余裕を見込まなければなりませんということがございます。

 それから、50ページでございます。そもそもどういった作業が100ミリシーベルトを超える作業に当たるかという議論があったところでございますが、ICRPなどで記載されている救命作業、ライフセービングに関しましては、救急救命士や医師、警察、消防といった人たちを対象としたものではないという御議論。それから、大規模住民の保護も同様に消防、警察、自衛隊の担当ではないか。価値ある財産の保護も緊急作業従事者の仕事ではない。人命救助も先ほど言ったような特殊技能者でございますので、残るものとしては、破滅的状況の防止というところについては緊急作業従事者の職務として考えられるのではないかという御議論がございました。

 あとは、志願という御議論も若干ございました。例えば警察や消防といった組織でみずからの意思で職務を選ぶのは難しいということで、これはそういった組織の方には適用できないのではないかという御議論。

 それから、特別教育の対象者としては、破滅的な状況を抑制するために役立つ人材ということで、設備を知り尽くしている者や熟練作業員などが対象になるのではないかということがございました。

 それから、緊急作業の正当性、あるいはその適用に関しましては、いろいろな意味で100ミリシーベルトというのは、従来、我が国では認められた数字であって、それを超えるということにはそれなりに正当化されるきちんとした理由が必要である。諸外国では理由に応じて限度が違うということでございます。

 それから、特例を適用する緊急作業の範囲をある程度規定するにしても、逐一、当局の許可を得なければならないような運用にすべきではない。事後に速やかな報告をすることも考えられるという御意見。

 それから、緊急被ばく限度の対象とする緊急作業の中身につきましては、規制当局である原子力規制庁にたたき台をつくっていただくべきではないかという御議論もございました。

 こういった御議論を踏まえまして骨子案をつくってございます。

51ページに「(1)福島第一原発事故時の緊急被ばく限度設定及び適用の経緯」を書いてございます。まず、原子力緊急事態宣言があった後に、労働者の健康リスクと周辺住民の生命・財産を守る利益を比較衡量して、原子力災害対策本部全体として特別な緊急被ばく限度として250ミリシーベルトを電離則の特例省令として規定することが決定されて、そのように引き上げられたということでございます。制定当時は、同原発内の全ての緊急作業を対象といたしましたが、被ばく線量の低減を踏まえまして段階的に適用作業を限定。これは平成2311月1日にやっております。それから、原子炉の安定性が確保された段階、これはステップ2の完了ということになってございますが、平成231216日をもってこの特例省令を廃止してございます。

 続きまして「ICRPの正当化原則を踏まえた緊急被ばく限度の考え方」でございますが、100ミリシーベルトというのは、従来、緊急被ばく限度として採用された限度であり、通常被ばく限度5年100ミリシーベルトとの関係も考えると、これを超える緊急被ばく線量限度を設定するためには、その線量を受けてまで緊急作業を行わなければならないことを正当化する理由が必要である。

 国際基準で規定されている100ミリシーベルトを超える緊急被ばく限度が適用される緊急作業の内容を踏まえますと、緊急作業における一般作業者、特殊技能者を除いた一般作業者に最も的確に当てはまるのは破滅的な状況の回避ではないか。

 それから、被ばく限度が100ミリシーベルトを超える緊急作業に従事する者はこういった破滅的な状況を回避するために必要な知識や技能を有する者に限定されるべきであるということでございます。

 それから、原子力発電所でどういった状態になれば破滅的な状況と判断するのかということにつきましては、原子力災害発生時の危機管理を定めました原子力災害特別措置法がございます。これにつきましては後ほど原子力規制庁から御説明いただく予定でございます。

 それから、福島第一原発事故対応では、放射線の急性障害が発生するおそれのない上限値といたしまして250ミリシーベルトを特例の緊急被害限度として採用してございます。この事故の経験を踏まえますと、250ミリシーベルトを超える限度を設定してまで行う必要のある緊急作業は現時点では想定されないと考えてございます。

 それから「ICRPの最適化原則を踏まえた緊急被ばく限度の考え方」でございます。緊急被ばく限度とは別に、事業者に対して、事故の状況に応じて労働者の被ばく線量を可能な限り低減することは当然求めるべきであるということ。

 それから、事業者に対して定期的に緊急作業従事者の被ばく線量分布などを報告することを求めまして、状況の把握に努める。

 そういった状況を踏まえまして、被ばく線量の最適化の観点から、作業の進捗状況、作業員の被ばく線量の推移等に応じて、行政において適用作業の限定(ある時点以降の入場者の適用除外を含む。)や、線量限度の段階的な引き下げを速やかに行うことが必要である。

 それから、原子力緊急事態宣言の解除前であっても、原子炉の安定性が確保された時点、例えば福島第一原発のステップ2の完了時を想定してございますけれども、速やかに100ミリシーベルトを超える緊急被ばく限度を廃止する必要があるということでございます。

 ここに書いてある事項は、基本的には、福島第一原発で行われた対応を、そのままと申しますか、それをさらにきちんとした形で実施するということを念頭に置いて作成してございます。

 私からの説明は以上でございます。

○森座長 ありがとうございました。

 それでは、先ほど事務局からの説明もありましたし、2回目以降の意見で、緊急作業の被ばく限度の対象となる緊急作業の中身については、原子力規制庁が危機管理の観点からたたき台をつくるのが現実的という意見もいただいております。この件につきまして、原子力規制庁から、原災法で定める仕組み、特に今議論がありました破滅的な状況というものの判断基準とか、その場合に適用すべき被ばく限度はどう考えるのかということについて御説明をお願いいたします。

○佐藤課長 原子力規制庁の原子力規制企画課長の佐藤でございます。本日は、このような形で説明する機会をいただき、ありがとうございます。きょうは、本検討会において今御検討いただいています「緊急作業に従事する間の被ばくのあり方」を検討する上でぜひとも参考にしていただきたく、危機管理の観点から、我が国における緊急事態への対応について御説明させていただきたいと思います。

 資料のほうは31ページに資料6を御用意させていただきました。

 まず、スライド2でございます。原子力災害への対応につきましては、基本となる法律でございます原子力災害対策特別措置法というのがございます。こちらは、JCOの核燃料加工施設で平成11年に発生いたしました臨海事故をきっかけとして制定されたものでございます。その後、福島の原子力発電所の事故での教訓を踏まえて改正されたところであります。

 本法律におきましては、そこの第二条に定義がございますけれども、まず、原子力災害というのは「原子力緊急事態により国民の生命、身体又は財産に生ずる被害をいう」ということであります。また、原子力緊急事態というものの定義につきましては「原子力事業者の原子炉の運転等により放射性物質又は放射線が異常な水準で当該原子力事業者の原子力事業所外へ放出された事態をいう」ということになっております。

 この法律に基づきまして、原子力災害対策にかかわります専門的・技術的内容を定めたものとして、原子力災害対策指針というものが原子力規制委員会により作成されているところでございます。

 本日は、特にこの福島の事故の反省で改正されました点を中心に原子力災害の対応について説明させていただきますとともに、それに関連する事項として、この緊急作業の被ばくに関する規制について私ども規制委員会の取り組みを少しだけ御紹介させていただきたいと思います。

 それでは、スライドの3ページ「原子力災害対策重点区域」でございます。福島原子力発電所事故以前では、防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲というのは、発電所を中心とした半径10キロということで定められておりました。しかしながら、福島事故時には、発電所を中心とした半径20キロの範囲で地域住民の方を対象に避難指示が出されたところであります。この教訓を踏まえまして、新たな原子力災害対策の重点区域が設けられたところであります。

 重点区域としては2種類ございます。PAZというもので、日本語に訳すと「予防的防護措置を準備する区域」ということで、発電所からおおむね5キロということであります。この区域は、急速に進展する事故を考慮し、重篤な確定的影響を回避するために、即時避難を実施するとか、そうした放射性物質の環境への放出前の予防的防護措置を準備する区域であります。

 その外側にUPZというものがございます。こちらは「緊急時防護措置を準備する区域」でございまして、おおむね半径30キロ圏内であります。こちらは確率的影響を最小限に抑えるために避難とか屋内退避、安定ヨウ素剤の服用などの緊急時防護措置を準備する区域と定められております。

 これらの区域で避難などを行う際の緊急事態の段階区分というものを設定しております。スライドの4ページをごらんいただきたい。福島の事故以前では、原子力施設で万が一事故が発生し、最悪の場合、原子力施設から放射性物質が放出したとしても、事故の進展は遅く、放出するまでには相当の時間的猶予があるものとして従来は考えられてきたところであります。そのために、あらかじめ時間の推移とともに実施すべき防護措置を管理するという考え方がなくて、事故が起きたら、例えばオフサイトセンターに設置される合同対策協議会などで連携して、その都度、どのように住民避難を実施していくかという住民防護策の実施、あるいはその否かを判断するという流れで考えられてきたところです。福島の事故においては、御承知のとおり、事故の進展が非常に早く、放射性物質の放出までに時間的猶予が少なかったことや、事故発生からの時間経過により防護措置に関するニーズが変わってくることがわかったということでございまして、これらの教訓から、一貫した共通の意思決定戦略を策定するために、緊急事態管理の時間的推移と緊急事態の各段階を設定したところであります。これが緊急時管理のタイムラインの基本的な考え方でございます。

 次に、このタイムラインに応じた個々の段階についてスライドの5で御説明させていただきます。

 時間とともに、準備段階、初期段階、中期段階、復旧段階とございます。まず、初期対応段階では、放射線被ばくによる確定的影響を回避するとともに、確率的影響を最小限に抑えるため迅速な対応を行うということでございます。次に、中期段階では、環境放射線のモニタリングや解析により放射線の状況を十分に把握した上で、防護措置の変更・解除・あるいは長期的な措置についての検討を行うということ。さらに復旧段階では、被災した地域の長期的な復旧策を開始するための計画を策定し、通常の社会的・経済的活動への復帰の支援を行うということでございます。したがいまして、特に初期段階においては迅速な対応が必要でございまして、この初期段階の防護措置の考え方として、緊急事態区分と緊急時活動レベルというもので、私ども、いわゆるEALと呼んでいますけれども、そうしたものを設定しております。

 それらについて、スライドの6をごらんいただきたいのですけれども、福島の事故の際には住民避難を迅速に行うための判断基準がなかったために住民避難に関しまして混乱が生じたところでございます。この福島事故の教訓を踏まえると、放射性物質の放出の開始前から必要に応じた予防的防護措置を講じることになっております。この初期対応段階においては、施設の状況に応じて緊急事態区分を決定し、予防的な防護措置を実行いたします。

 この施設の状況と該当する緊急事態区分を判断する基準として、緊急時活動レベル(EAL)を設定しております。この緊急事態の初期段階においては、まずは情報収集により事態を把握し、原子力施設の状況や施設からの距離などに応じて防護措置の準備や実施を適切に進めることが重要です。そのために、緊急事態区分につきまして、警戒事態、施設敷地緊急事態及び全面緊急事態という3つに区分して、それぞれの区分で原子力事業者、国、地方公共団体のそれぞれが果たすべき役割を明らかにしております。

 また、その緊急事態区分において避難などの防護措置の実施内容が決められておりまして、これによってEALに基づく判断から迅速な防護措置を実施することが可能となっております。

 このスライドでは、一例として、住民避難の関係についてEALの各段階で行動すべき事項を記載しております。例えば、EAL2の段階から、括弧書きになっておりますけれども、「PAZの要支援者の避難や屋内退避を開始」ということで、一部住民の避難がEAL2の段階から始まるということであります。

 次に、これらのEALと原子力施設の状況の関係についてスライドの7で御説明したいと思います。

 まず、EAL1ということで、「警戒事態」という言い方をしておりますけれども、その時点では緊急に至る前段階としての施設における異常の発生またはそのおそれがあるという状況でございます。

 施設敷地緊急事態であるEAL2につきましては、原災法第10条に規定する事象に該当しております。これは、基本的考え方にありますとおり、公衆に放射線による影響をもたらす可能性がある状態でありまして、事故の状況といたしましては、こちらの「該当事象一例」に記載しているとおり、具体的に一定水準の放射線量が測定される場合や、通常とは異なる放射線の漏えいの蓋然性が高い事象が該当しております。そのほかにも、満足できる対処ができなければ、放射線の大量の漏えいが起きる事象も対象になっております。

 次に、全面緊急事態であるEAL3でございますが、こちらは原災法第15条に規定しております原子力緊急事態に該当しております。これは、事態がさらに進んで、公衆に放射線による影響をもたらす可能性が高い状態でございまして、事故の状況としては、「該当事象一例」にありますけれども、明らかに大量の放射線の漏えいが検知、あるいは漏えいしていることが想起される事象というものが該当しております。

EAL2の該当事象とこのEAL3の該当事象とのかかわりにつきまして少し御説明しますと、そこの「該当事象一例」の10条と15条のところに○1、○2、○3という書き方をしております。それぞれ○1同士が関連するとお考えいただきたいと思います。例えば○1の原災法10条事象、EAL2でございますけれども、全ての交流電源喪失というものでございます。非常用の装置の中には、もちろん電気で駆動するものもありますけれども、タービンで駆動するものもございまして、そういうものが動けば当然のことながら非常用の措置として対応ができるわけでございます。これがEAL3になりますと、全ての電源喪失ということで、これは交流だけでなくて直流も含めて電源がなくなるということでございます。

 何を意味しているかというと、機器の制御とか計器の測定などを行うときには、必然的に直流の電源が必要となるということでございます。したがいまして、交流電源のみならず、直流電源まで失われる、全電源が失われることになると、いわゆる機器の制御そのものの機能が失われる可能性が高いということでございます。

 同じように、○3については、10条では使用済み燃料のプールの水位が維持できないということで、維持できなくて下がっていくと、15条のところで、使用済み燃料のプールの水位が基準値まで下がることになりますが、いわゆる使用済み燃料がむき出しになると当然放射線が空中に発散するということでございますので、そういった意味でも問題ということでございます。

 これらのEALの区分につきましては、この福島事故の後に導入されたということは先ほど御説明いたしましたけれども、参考までに事故当時のことの時間的進展を振り返りたいと思っております。

 スライドの8をごらんください。この福島第一原子力発電所事故の初期段階の進展を政府事故調の報告書から抜粋いたしました。ごらんのとおり、平成23年3月11日の1446分ごろにまず地震が発生したということでございます。ここでは、立地県の福島県、県庁の所在します福島市においては震度6弱を観測いたしましたので、この1046分をもって、現状であればEAL1の警戒事態に相当しております。

 その後に津波が来たわけでございますけれども、その1時間後の1542分ごろには福島第一原子力発電所で、外部からの送電によるもの、あるいは発電所内の非常用発電機によるものも含めて全ての交流電源が失われたということでございまして、原災法第10条に規定するEAL2の施設敷地緊急事態になったということでございます。

 さらにその1時間後の1645分には、非常時に原子炉に水をかけて冷やす機能が失われたということであります。このままの状態では、当然、炉心の燃料が溶け、放射線が大量に放出されるおそれが高い状態でありますので、この時点で原災法第15条に規定する原子力緊急事態に該当し、EAL3の全面緊急事態になるということであります。

 以上のように、EAL1からEAL3までほぼ1時間ごとに進展しておりまして、こうした急激な事態の進展に備えるために、今回、これまで御説明しました緊急事態区分やその活動について整備してきたところでございます。

 なお、この資料で1750分ということで、当直の線量計が300cpmになって引き返したという記載がありますけれども、これは何を意味しているかというと、実際に現場で働いている作業員の線量が高いということについて検知したので、この報告書の中での記録が残っている最も早い時間のものであります。場所が「原子炉建屋二重扉付近」と書いてありますけれども、これは場所的には原子炉を納める格納容器というものがあって、それの入り口ということであります。炉心からは離れた場所でありまして、一概には言えませんけれども、通常の値から比べると数十倍から100倍程度ではないかと推測されるわけであります。このように、作業員の環境も十分な猶予がなく急激に悪化していったというのがこの福島の事故でございまして、その後の緊急作業時の被ばく限度が250ミリシーベルトに引き上げられたのは御承知のとおりかと思います。すなわち、緊急事態区分の考え方では対象になっておりませんけれども、オンサイトにおける事故収束のための作業員の事故進展に合わせた防護措置に関する課題はまだ残されたままであるというのが私どもの認識でございます。

 最後のスライド9でございます。私ども原子力規制委員会におきましては、今後、100ミリシーベルトを超えるような事故が起こる可能性を完全に否定することができないという観点から、昨年7月の規制委員会の定例会において委員長の指示を受けて、緊急作業時における被ばくに関する規制について検討を行ってまいりました。昨年の12月には、委員会で主な論点が示されて検討を行ったところであります。特に具体的な線量限度の値につきましては、委員長を含め複数の委員から、国際基準や福島の事故などを踏まえると、まずは250ミリシーベルトを軸に考えてはどうかというような意見が出されました。また、論点の○8にございますけれども、緊急時被ばくと計画被ばくについても、国際的な考え方に合わせた運用を図るべきではないかという意見も出されたところであります。この場では、引き続き検討を行うために、事務局である私ども原子力規制庁に対して具体案を作成するよう指示を受けているところでございます。

 緊急作業時の被ばくに関する規制につきましては、私ども規制委員会の所管する原子炉等規制法と、厚生労働省さんの所管します労働安全衛生法で重なる部分がございます。私どもは危機管理と安全確保の立場、また厚労省さんは労働者保護の立場から規制を行っているところでございまして、そのため、制度を変更する際には両省で納得のできる調和のとれたものにすることが重要であると考えておりまして、当庁としても、案を作成するに当たり厚労省さんとも調整を進めさせていただいているところでございます。

 今回、厚労省さんで本件を扱うこの検討会におきまして、私ども規制委員会の原子力災害への備えについて皆様方に説明できる機会をいただいたことについて改めて感謝申し上げたいと思います。

 危機管理の観点につきましても、御理解、御配慮をいただき、関係する制度について調和のとれたまとめとなりますよう御検討していただけることをお願いする次第でございます。

 少し長くなりましたけれども、以上でございます。

○森座長 ありがとうございました。

 それでは、今の5番の項目から1つ前に戻りまして「4 通常被ばく限度を超えた者に係る中長期的な線量管理のあり方」について御検討いただきたいと思います。骨子案としては47ページからでありまして、生涯線量に関しては上限を1シーベルトとして考えて、具体的にそれをどう計算するのかというのが検討課題になっていて、等価線量に関しては、そもそもそれを対象にするのかというところから検討課題としてまだ残っているという状況であります。ここについて御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。

 まず、等価線量のほうでよろしいですか。

 では、伴委員、お願いします。

○伴委員 いろいろ難しい問題があって、等価線量で確定的影響について考えるときに、やはりいろいろな状況が考えられるだろうと思うのです。全身がほぼ均等に被ばくするような状況もありますが、今回の事故で最も高い被ばくを受けた作業者は甲状腺が集中的に被ばくをしています。ですから、いろいろな状況を考えたときに、全て数値で規制しようということを考えるよりも、確定的影響ということに関しても医学的見地からしかるべき配慮をするようにという表現のほうが柔軟性が保たれるのではないかと私は考えています。

 もう一つは、今、循環器疾患の0.5グレイという数字が非常に不確かといいますか流動的なところがあります。追加意見としても書きましたけれども、将来的にこれが確率的影響として、いわゆるデトリメントの計算に含まれないとも言えないので、そういう状況でこの数字を単純に入れてしまうよりも、今言ったような、多少定性的ではありますけれども、そういう形で縛りをかけるほうが現実的なのかなと思います。

 ただ、ICRPの考え方として、原則は、確定的影響は防止するということになっています。そうすると、しきい線量より低く被ばくを管理するのだということになります。そのときに問題になるのが、眼の水晶体の線量です。眼の水晶体、すなわち白内障のしきい線量が0.5グレイとなっていまして、それをそのまま額面どおり受け取れば、生涯で水晶体の線量が0.5グレイを超えないようにということになります。これをこの緊急作業に従事した方に対してそのまま適用すべきなのかどうかというのは相当議論が必要ではないかと思います。白内障というのは年をとれば誰でもなります。80ぐらいになればほぼ100%なるわけですから、放射線によってその発症が早まるということです。当然、本人の意思は確認されなければいけませんけれども、そのために就労機会を奪われるということが単純に決められていいのかどうか、かなり議論の余地があるのではないかと思います。

○森座長 ありがとうございました。

 ほかにいかがでしょうか。

 お願いします。

○児玉委員 比較的低いレベルの放射線被ばくと循環器疾患ですが、リスクの側から見ますと、実はこれはまだ確立されたレベルまで行っていません。幾つかの報告はあるのですが、結果が同じとも限らない。それから、ICRPの言うしきい値というのと、私たちのリスク屋から見るある程度の線量から有意に疾患の死亡率あるいは罹患率がふえるというのと恐らく違うとは思うのですが、唯一、原爆被爆者の調査で言えることは、心臓病、いわゆる心疾患の死亡率が線量とともに直線的に増加するという傾向があり、それが有意になるのが0.5グレイあたりです。ただ、ICRPのいう0.5という数字はどこから出たのだろうというと、該当する数字にはそういうものがありますが、多分、ICRPの言うしきい値と1対1に対応するのではないだろうと思います。

 さらに問題は、一番気になる心疾患は心筋梗塞のたぐいの虚血性心疾患だと思いますが、実は、心筋梗塞が原爆被爆者の方で有意にふえているかというと、そこまで言い切れる段階にもない。不確定要素がたくさんあるというのが現状なのです。それが1点です。

 2番目に、さらに追加的に言いますと、ずっと前、例えば1960年代に放射線治療を胸に受けた方、実際に心臓に何十グレイという被ばくをしたような人の場合には疑う余地はありません。心筋梗塞等が放射線治療の後で起こってきます。それから、比較的最近わかってきたことは、乳がんに対して放射線治療を受けた人を、左の乳がんへの放射線治療を受けた人と右の乳がんへの放射線治療を受けた人で比較すると、左側の乳がんの治療を受けた人に治療後の心筋梗塞の罹患が有意に高いというのがあります。ですから、今の段階で放射線治療を受ける、それによって心臓に当たる線量は恐らく5グレイあたりになるのですが、そのあたりでは心筋梗塞が起こるというのはわかります。これは、組織反応によるもので、それの後遺症ということで恐らく説明がつくのでしょうが、それより低い線量ではまだはっきり物が言えないという状況です。しかも、ICRPが明らかに0.5と断言している状況でもないので、そのあたりも勘案しながら、どのようにしてさしあげたらいいかということを考えるべきだろうと思います。

 ただし、この答えが出るまで待つと何年も先になるかもしれませんので、そこまで待って、いや、もっと前から対策をしておけばよかったということにならないように配慮は必要だと考えます。

 以上です。

○森座長 ほかにいかがでしょうか。

 そうすると、脳、心臓、特に心臓に関してはまだ確定的なエビデンスという段階ではないので、もう少し慎重にということと、あと、水晶体に関しては、少し柔軟な対応が必要ではないかといったことですね。伴委員の今の発言に追加質問ですが、これは具体的にどのように管理をしたらいいと考えられるのでしょうか。

○伴委員 私も具体的な案を持っているわけではありません。ただ、今言っているこの0.5グレイぐらいで水晶体が濁る、白内障が出るというのは、すぐに出てくる影響ではないのです。10年、15年以上たってから、どうもそうなる人が多いようだというのが、原爆被爆者を中心に、そのほかの疫学調査でも出てきているわけです。ですが、先ほども申し上げたように、放射線被ばくがなくても人間は必ず白内障になるわけですから、言ってみれば、それが多少早まるということです。そのことと就労機会が失われるということをはかりにかけたときに、単純に0.5グレイを超えたからというように切ってしまっていいのかどうかというのは難しい問題ではないか、という意味で申し上げました。

○森座長 この点について、事務局、はっきりこの方法がいいというところまで行かないということなのですが、いかがでしょうか。

○安井室長補佐 目の水晶体につきましては、ベータ被ばくとガンマ被ばくがあると思いますが、ベター被ばくについては、マスクをかぶることで、ほぼとは言えませんが、かなり劇的に減少できると思います。ガンマにつきましては有効な遮蔽方法はございません。要するに、全身均等被ばくをしてしまうと線量計の数字そのままになってしまうことになります。もし0.5グレイということになりますと、実効線量についても0.5シーベルトになってしまいますので、そこは非常に劇的に影響があるというところでございます。

 私もちょっと確認したいところがあります。例えば医学的見地とかいう御発言もございましたが、これはどういうことを念頭に置かれてどういう医学的管理なのか、ちょっと教えていただければと思うのです。

○伴委員 緊急医療に携わった先生方、あるいは産業医など、いろいろな局面で必ず医師が関わるわけですから、緊急作業に関するいろいろな情報は全てその医師に提供されるはずです。線量評価が行われて、それもかなり不均等な被ばくになるのであれば、重要な臓器ごとに線量が提示されて、それで最終的に医師が判断するというシチュエーションは絶対必要になるはずですので、そういう中で対応していくという意味です。

○森座長 よろしいですか。

○安井室長補佐 ちょっと検討させてください。

○森座長 十分な情報と優先順位も含めての問題なので、なかなか簡単ではない、難しい問題だと思います。

 ほかにいかがでしょうか。

 今回は、等価線量に関してはそのような範囲内で置いておくとして、一方で実効線量の計算式まで出していただいていて、このような方法で管理すれば生涯線量が1シーベルトを超えないだろうということになるわけです。先に、この「要検討事項」のほうから潰しておきたいと思います。生涯就労期間を18歳から50年間と仮定して設定しているけれども、それでいいかということですか。何歳まで働くのかは難しいということだと思いますが。

○前田室長 実際、3.11以降に福島第一原発で働かれている方が4万1,000人程度いらっしゃるのですが、10歳刻みで年齢が発表されていますけれども、70歳以上の方が196人というのが現状でございます。

○安井室長補佐 先ほどのは最高年齢でございます。18歳から間断なく70歳まで働いたという方はほぼいないとは思いますけれども、そういうのはございます。

 あと、ICRPがリスク係数に使っている65歳という数字がございます。68というのはそれより保守的なので、国際基準の考え方から乖離はしていないかなと考えております。

○森座長 例えば、最初の5年の実効線量、実際に浴びた量が少なかった場合に、5年ごとに見直しをしていくこともあり得るということではないですか。100ミリシーベルトになるまでに。

○安井室長補佐 論理的にはあり得ると思うのですけれども、線量管理というのは現場で扱いますので、シンプルなほど望ましいという観点から言うと、余り複雑な計算をするのは望ましくないのではないかとは考えております。

○伴委員 その残りの期間に対して均等に割らなければいけないのですか。普通に管理をしても1シーベルトに達するようなことがあれば、そこでストップという考え方もあるのではないですか。

○安井室長補佐 そういう考え方ももちろんございます。ただ、何事も急激な変化というのはよろしくないということなので、十分な予告を与えた上で均等管理するという観点からは、ある程度均等に割り振るほうがわかりやすいというのがある。あと、現場が非常に管理しやすいというのがあります。

 この方々については、複数の電力会社を渡り歩くことは多分ないと思いますけれども、渡り歩く場合、管理しなければいけない要素がふえればふえるほど複雑になりますので、そこはできるだけシンプルにするということであれば、あなたはこの50年間で何ミリですという1つの数字だけ持ち歩けばいいようにしたほうがわかりやすいとは考えております。

○前川委員 実際、現場の作業者の方々、例えば事業所の定期点検などに入る人たちは、あくまでも年度限度で動いているのです。自分たちで、例えば5年間で100ミリシーベルトを超えないように、均等にすると1年間で20ミリシーベルトですけれども、それを目安に働いているわけです。それが、例えば1シーベルトを超えたときに入ってきてもいいようだと、終身雇用はもちろんのこと、途中でその職場を離れなくてはいけないことになる。東電の場合、別でしょうけれども、そういう専門職の人たちは年度で被ばく線量を管理しながらずっと就業を続けているというのが現状なので、突発的に1シーベルトを超えたからそこでやめるというような上限を決めておいて管理するのは逆に非常に難しいのではないかと思うのです。特に緊急作業などの場合、あっという間に行ってしまったときには、そこから先、一切就業できなくなるという事態になってしまうので、長期的に就業可能な人口を維持するという意味では、年度限度で管理したほうがいいのではないかと私は思うのです。

○伴委員 いや、このやり方を否定しているわけではなくて、多分、こういったやり方をとるかどうかというのは事業者のほうで決めればいいのではないかと。今、先生がおっしゃったような、そのほうが都合いいということであれば、恐らく事業者はそういうやり方をするのではないか。そうしないと、お尻を何歳ととるかというところが不確かなので、それが当初の想定よりも延びてしまうと、逆に生涯線量を超えてしまう可能性もあるではないかということになるので、規定する側としては、余り細かく縛りをかけるよりも、むしろ柔軟性を持っておいたほうが効率的な管理ができるのではないかと思います。

○森座長 今回、非常に限られた人が対象なので、しかも、例えば600ミリシーベルトを45歳で浴びた人も、5年で87、もう10年ぐらい働くと100シーベルトでオーケーになるわけですから、100ミリシーベルトでオーケーに早くしたほうが単純と言えば単純でもあるとも言えます。そのあたりのことを事業者が選択できる、または考えられるように、事業者の意見をきちっと聞いた上で決めたほうがいいのではないかと私は思います。

 幾つか選択肢があると思います。

○安井室長補佐 事業者の意見は聞く予定にしてございます。

○森座長 ほかにいかがでしょうか。

 では、ここのところは、特に等価線量の部分がペンディングのままでありますけれども、選択肢がたくさんあるという中で、また次に議論をすることにしたいと思います。

 続いて「5 緊急作業従事期間中の被ばく線量管理のあり方」の部分に行きたいと思います。

 今ございましたように、基本的には、破滅的な状況において、先ほど250という数字が出てきましたけれども、原災法の中で、恐らく緊急被ばく限度を上げる方向で検討する一方で、労働者保護という立場からは、最適化原則を踏まえて、きちっとそれを管理。その対象が広がっていくとか、長くだらだらと被ばく限度が高いままでいるということをきちっと管理していく。そういったバランスで、恐らく2番、3番のところをやりたいという趣旨だと思いますけれども、これについていかがでしょうか。御意見をお願いいたします。

 では、済みませんが、1人ずつ。

 児玉委員から御意見をいただけますか。

 では、祖父江委員、いかがですか。

 判断が非常に難しいことであるということはわかるのですが。

 破滅的な状況を何とか回避しよう、そのためにということと、労働者保護とバランスをとりながら管理していこうと、そういった連携だと先ほどお話がありましたけれども。

 では、伴委員、お願いします。

○伴委員 原子力規制庁の方に伺いたい。

 こういう破滅的な状況を回避するためにやむを得ず通常の限度を引き上げなければいけないことがあり得るという認識ではあるわけですけれども、その具体的な中身、すなわちこういう作業とかこういうことに従事するこういう範囲の人とかというのを原子力規制庁のほうでは議論する予定はあるのですか。

○佐藤課長 こうした緊急時においては、どのような事態が想定されるかというのはなかなか難しいことかと思っています。そういう意味においては、1つの目安としては、先ほど説明の中にございましたけれども、原災法で10条事象、いわゆる第10条において定めることで、例えば原子炉の状態が使用済み燃料のプールの水位が下がっていきそうだとか、そのような事故の進展に合わせて、それを防ぐためにはどうしても被ばくというのが避けられないであろうという観点で、その際には250なりの上限で作業をするということでございます。リンケージとしては、作業内容を定めるというよりは、原子力施設がどういう状態になったらということで、1つ目安として考えているところでございます。

○伴委員 作業を具体的に規定するのは難しいというのはわかるのですけれども、今のお話だと、炉の事象、どういうベントが起きたらということをある程度明確にして、その異常事象と言いますか、それをコントロールするための作業を、それに該当するものと考えようということでしょうか。

○佐藤課長 少し補足させていただきますと、そういう事故が起きて、放射線量とか放射性物質が明らかに放出されているというような状態、あるいはそのおそれが非常に高いというときには、当然、作業をするときにはその線量が高い環境下で何がしかの対応をしなくてはいけないのではないかということですので、その事故においても、線量が高いという環境を基準の1つの目安として考えたいということであります。

○森座長 伴委員、よろしいですか。

 ほかにいかがでしょうか。

 どうぞ。

○安井室長補佐 仮定の話で恐縮ですけれども、例えばこの10条事象、15条事象が起きたときに、その収束がうまくいかなかった場合というのは一体どういう状況になるというのは何かありますでしょうか。

○佐藤課長 事故の収束がうまくいかなかったということについては、ある意味、福島の事故がそれに相当すると言えるかと思います。結局、事故の全容はまだ解明できておりませんけれども、いわゆる炉心溶融が起きていたということの意味では最悪に近い状態であったということであります。

 私ども、作業環境が全てとは申し上げませんけれども、これは政府の事故調でも私どもは確認しておりますが、当時の作業員の線量の上限がまだ100ミリシーベルトであったときに、それを守るがゆえに、ベント作業という、いわゆる圧力を下げるための作業に向かったところ、100ミリシーベルトになりそうだったので引き返しましたというような記述がございます。そういう意味においては、そうした緊急事態というのを、まさに事故の状態の中での作業をするときには、ある程度、線量を引き上げておく必要があるかと思っています。

 きょうは御説明しませんでしたけれども、私どもは、これとあわせて、こうした作業に従事する者については事前の意思確認と、当然のことながら、教育・訓練というのもやりたいと思っています。そうすることによって、自分の身を守る方策、あるいはどういうことが起こり得るかということを十分承知した上で作業に従事する。その中での上限を引き上げるということを今考えているところであります。

○森座長 どうぞ。

○安井室長補佐 先ほど御説明がございましたが、教育ということでございます。仮にそういう事象が起きて対応しなければいけないときに、対応できる人間というのは必ずしも多いとは思わないという理解がございます。例えば、まさに想定外のことが起きたときに想定しなければいけない人材というと、逆に言うと、そういうところに想定できる人材はそんなに多くないわけです。例えば電力会社のベテラン作業員とか、そういった方に限られるということもあると思うのです。基本的に、こういうコア業務といいましょうか、100ミリを超えるような被ばく限度が適用される人間というのは、本当にベテランで、その人しかできないような高度技能を持っている人間というイメージでよろしいのでしょうか。

○佐藤課長 実際にこれも福島の事故のときがそうでありましたけれども、事故の対処をして、250ミリシーベルトを超えて被ばくされた方の職種みたいなものが出ていますが、当直とか保全と言いまして、まさに原子炉の運転に携わっている。あるいは機器のメンテナンスを日ごろからやっている職員ということでございます。そういう意味では、ある特殊な専門知識を持った職員についてのみ、当然、その事故は、きょう御説明させていただきましたけれども、初期の段階での対応を迅速にする必要があると考えておりますので、その点については、そうしたある程度限られた人たちに対して事前の同意を求めて、その上で作業をしていただくことになろうかと思います。

○安井室長補佐 何度も恐縮です。

 明確には事故が起きてみないとわからないところはあるかもしれませんが、実際にプラントを所有しているというオペレーションの責任も考えて、基本的には電力会社の社員という理解でよろしいのですか。

○佐藤課長 私どもが現在考えているところは、まだまだ事務局案ということではございますけれども、こうした原子力施設に対して運営の責任を持っているのは当然のことながら事業者でございますので、私どもは今、電力会社で言えば、そういった電力会社の職員ということを念頭に置いております。

○安井室長補佐 済みません。一問一答みたいになって恐縮です。

 我々としては、被ばく限度は被ばく限度としてあるように、実際にその被ばくについてはもちろん最適化していただかないといけないわけで、もちろん不要な被ばくは絶対許さないということですけれども、そういったところを事業者に任せることがいいのかというと、これは非常に問題であると考えております。事業者が被ばく限度の現実的な管理をきちんとしているかとか、そういったところについて報告を求めるとか、作業の計画線量みたいなものについて事前にチェックするとか、そういったところは必要だと思います。そういったところはいかように考えておられますか。

○佐藤課長 きょうは危機管理の観点からいろいろと御説明をさせていただきましたけれども、私どもも、いわゆる作業員に対する被ばくについては、粗々の原則に基づいてできるだけ低く抑えることについては何ら異議を挟むものではございません。そういう意味においては、事態の推移を見極めながら、状況に応じてそうした引き下げにも取り組んでいくことは大事かと思っています。そういう意味において、事故直後でどこまでできるかというのは、福島の事故などを考えますと、そんな簡単ではないかとは思いますが、そうした報告などもできる範囲でやっていくというのはそれなりに意義のあることだと思っております。

○安井室長補佐 済みません。しつこくて恐縮です。

 先ほどの引き下げという話もございましたが、緊急作業というのは、私の理解では、破滅的な状況ということでございますので、いってみれば、福島第一原発のステップ2のように、原子炉を中長期的に一定の安定した状況に置けば、もちろん、こういった特別な被ばく限度は要らないという理解でよろしいでしょうか。

○佐藤課長 そこについては、事態がある程度落ちつけば、きょうの資料でも御説明しましたけれども、中期的あるいは収束事態の段階に移行すれば、当然のことながら、そうした限度というのは見直すべきだと思っております。簡単に申し上げますと、そういった専門的な知識の要らない作業であれば、例えば放水をするとか、機器の操作をマニュアルどおりにやるとか、そうしたものであれば、ある意味、人海戦術での対応でございますので、人数をかけることもできるかと思います。私どもは、この初期の対応について、特にそういった専門的な知識を持った者については、ある程度線量限度を上げてでも、事故の収束のために、本人の意思を確認した上で従事していただきたいと考えているところでございます。

○森座長 ありがとうございました。

 時間が来ていますけれども、非常に重要なところですし、あと6も残っていますので、このまま少し延長して続けたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○森座長 今、厚生労働省と規制庁の間で熱い質疑応答がされましたが、基本的には、非常に速いステップで破滅的な状況になっていく、判断を途中で入れるのは非常に難しいということがあって、それを前提で250ミリシーベルトという、まだこの数字は確定していませんが、そういったところまで上げるけれども、一方で、最適化原則をきちっと踏まえるために、いろいろなことをきちっとやっていこう、バランスをとっていこうという質疑だったと思います。委員の先生方から、今の質疑応答を聞きながら御意見があればお願いしたいと思います。

 前川委員、何かございますか。

○前川委員 この場合、議論の中身として、一般論としての議論なのか。例えば、福島原発のこれから廃炉に取り組む工程は一切考慮に入れないで議論はしないということになりますか。線量限度が適用されるのはこれからの将来的な作業者についてのみですか。

○安井室長補佐 私どもの理解といたしましては、1Fに関しましては既に通常被ばく限度に戻しておりますので、この議論は1Fの議論ではない、新たに起きる緊急事態のことだという理解でございます。

○森座長 伴委員、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 皆さん、よろしいですか。

 それでは、今の議論の方向で次までに整理いただいていて、(3)の考え方も、規制庁からはしっかり踏まえるという御意見をいただきましたので、この方向で次回にさらにまとめていければと思います。

 それでは、最後の6について御説明いただければと思います。

○安井室長補佐 続きまして、53ページ「6 緊急作業従事者に対する特別教育のあり方」でございます。

 前回の議論の振り返りでございますけれども、ここで検討している特別教育は、新たに緊急事態が発生する事態を想定したものでございます。また、特別教育の項目として危機管理を入れるべきであるということで、具体的には緊急対応マニュアルの内容などが必要だと。それから、前回の福島第一原発事故の教訓を踏まえますと、マスクのフィッティングについてきちんとした実技教育が必要だと。また、熱中症教育なども必要であると。それから、特別教育の頻度は知識ベースのものと訓練的なものによって異なりますけれども、訓練的なものというのは定期的に実施すべきだと。それから、教育の対象者としては、破滅的な状況を抑制するために役立つ人ということで、設備を知り尽くしている者や熟練作業員などが緊急作業員の資質としては考えられるという御意見でございました。

 これを踏まえまして骨子案が54ページにございます。まず「(1)で教育対象者の選定プロセス」でございます。これは、被ばく限度が100ミリシーベルトを超える緊急作業に従事する者は、破滅的な状況を回避するために必要な知識や技能を有する者に限定されるべきである。それから、従来の緊急被ばく限度100ミリシーベルトというのがございますので、これが適用される緊急作業者とは別に対象者を選定すべきであるということでございます。

 ここで要検討事項といたしまして、従来の緊急被ばく限度100ミリシーベルトが適用される緊急作業従事者の選定基準をもう一つ考える必要があると考えてございます。これにつきましてはどういう方が対象になるかということをよく聞かれますけれども、我々が想定しておりますのは、例えば、エックス線装置とか、ラジオアイソトープを扱っているような方であるとか、いわゆるインベントリという放射性物質の量が少ない加工施設、使用施設といったものでの緊急事態対応につきまして、100ミリということで行われる可能性も十分にあると考えてございます。

 それから「教育の実施時期」でございますが、知識に関する教育と実技教育によって異なりますけれども、実技教育につきましては定期的に実施すべきである、また、知識に関する教育は教育内容に変更があった場合に実施するべきであるということでございます。これにつきましては、教育内容を被ばく限度100ミリあるいはそれ以上で分けるかどうかというのは検討内容でございます。

 「教育内容」でございますが、放射線被ばくによる健康影響に関する知識。それから原子力施設の危機対応マニュアルといったものに対する作業内容、そういったものの知識と実技。それから保護具。特にマスクのフィッティングに関する知識と実技。それから、高線量下での放射線測定の知識及び実技。応急手当の知識と実技。そういったことがこれまでの議論では挙げられてございます。ほかに必要な項目がないか、お知らせいただければと思います。

 以上でございます。

○森座長 今の6の骨子案につきまして何か御意見がありましたらお願いします。

 恐らく、教育内容とか教育実施時期について、100ミリと250ミリとそれぞれ分けて検討するといっても、多分、学ぶべきことは同じようにいます。それ以外のことはもちろん、先ほど作業そのものの習熟とありましたが、作業内容そのものは違いますが、放射線防御に関しては基本的には同じことではないかと私は思います。いかがでしょうか。

 ほかの先生、何か御意見ございますでしょうか。

 伴委員、お願いします。

○伴委員 ここで言っている緊急作業者というのはかなり幅広い、破滅的状況を回避するための作業、場合によってはその限度が引き上げられて行われる人も含まれていれば、消防とか警察とかそこまでも含んでいるということですか。

○安井室長補佐 これにつきましては、いわゆる年50ミリが通常被ばく限度でございますので、それを超える方全員を基本的に想定してございます。ですので、50から100の間で緊急作業に従事される方も含まれますし、今議論しております100ミリシーベルトを超えるような方も含まれますので、そういう意味では、事態としては段階的に分かれているのかなと考えてございます。

 それから、消防、警察につきましては、労働安全衛生法の基本的な適用の対象者が一般事業者でございますので、現時点ではそこまでは考えてございません。

○森座長 ほかにいかがでしょうか。

 お願いします。

○伴委員 例えば、電力事業者などであれば、実際に用意周到に教育をしておくことはできるとは思うのですけれども、どういう状況があるのかわかりませんが、契約で行われる者に関しては突如必要が発生して、急遽教育が必要になるという状況もあるのではないかと思うのです。だから、教育は必要だとは思うのですけれども、常に準備できているわけではないのではないかと思います。

○安井室長補佐 そういった場合は想定されると思いますが、例えば、正直なところ、今まで緊急被ばく限度100ミリというのを定めてございますが、緊急作業従事者に対する教育というのは特段定められておりませんでした。これは、ICRPでもございますように、100ミリシーベルトを超える、例えば250500の方については、十分なリスクを理解してとか、そういったただし書きが出てきますので、今回、そういったところまで踏み込んで議論しているという理解になりますと、突発的だからといって教育を省略していいということはないのではないかというのが我々の理解でございます。

○佐藤課長 補足ですけれども、原災法の世界では、こうした原子力事業者として、原子炉だけではなくて、燃料加工施設もありますし、それこそ輸送とかいうのも対象になっています。そうした事業者に対しては、そういった災害に向けた訓練というのは義務づけておりますので、そういう意味では、労働者保護とはまた別の側面ですけれども、そうした面からの対応はできているのではないかと私ども感じております。

○森座長 ほかにいかがでしょうか。

○前川委員 もう少し、骨子案について。この教育対象者のイメージが非常に描きにくいのですが、その原子力事業所で働く作業者の人たちで、この緊急被ばく限度が100ミリシーベルトを超えるかもしれない緊急作業者に対して、前もってそういう人たち全員に教育をしましょうというスタンスなのですね。それでいいのですね。

 そうすると、対象者というのは、例えば原子力事業者でフル雇用されている人たちだけなのですか。それとも、例えば臨時にそこに投入される人材も含めて対象となる事態もあるのでしょうか。先ほどの先生の質問とよく類似しているのですけれども、イメージとして非常に。

 定期的にやるのだということになると、一定の人材を対象としているわけですね。そういうことですね。そうすると、例えば、破滅的事態を回避するために臨時に投入された人材については教育を受けていないということになってしまいますね。こういう教育は。そういうときにはどうするのですかという質問だと思うのです。おっしゃることは非常に美しいのです。美しいのですけれども、本当にそれが危機管理の基本なのですかと私はあえて言いたいのです。予測しないことが起こるから危機管理なので、前もってできるのは危機管理でも何でもないです。当たり前のことなのです。

 福島原発のような突発的な想定外の事象が起こって過酷事故が起こるような場合に、それを回避すべき人材というのは常に用意された人材ではないのではないかと私は思ってしまうのです。もちろん、大多数はそうかもしれませんが、そこに投入される人材というのは外部からかもしれない。そういう意味で、非常に美しいのですが、本当にできるのですか。

○森座長 では、規制庁。

○佐藤課長 済みません。これは私どものほうがお答えしたほうがいいかも思います。

 先ほど私がお話ししましたとおり、原災法では、事業者に訓練を義務づけておりますし、それについて、今、内閣府防災のほうかな、そちらのほうが国が評価することにもなっております。ですから、訓練する際に、今、委員がおっしゃったように、どういうことが起きるのかということについて、ありとあらゆることを想定した訓練というのは限りがあるとはもちろん思っておりますけれども、間違いなく申し上げられることは、誰がそういった緊急時の要員であるかということについては、あらかじめ決められているとなっております。国の仕組みとしては。

○森座長 今、この緊急作業員の訓練はないわけですから、これをやりましょうという話は非常に前向きの方向です。では、これを受けていないと破滅的な状況で何もできないかという話になると、それは違うでしょうと。先ほどの臨機応変にどう対応するかという話になるので。その2つのことは少しバランスをとりながら考えるという感じなのでしょうか。

○安井室長補佐 逆に考えておりまして、臨機応変に対応できる人材というのは限られているのです。これをやりなさいと言われてできる人は幾らでもいるのですけれども、何が起きるかわからないときに対応できる人材というのは極めて限られていまして、外部の人材を突然持ってきて、あなた、原発の収束をやりなさいと言っても、例えばどこどこに行きなさいと言っても、その場所にたどり着かないです。それは先ほど佐藤課長も言われましたけれども、そういう本当の予期できない事象に対応できる人材というのはむしろ限られてくるのではないかというのが我々の理解です。

○前川委員 この教育内容というのは、我々がこれをどうですかと言われても、現場の人間で判断しないと、必要か、不必要かということが判断できないのではないかと思うのですけれども、どうなのでしょう。

 例えば、電力のフル雇用の社員がこんな個人防護に関しての知識を知らないなどということはあり得ないかと私は思うのです。

○安井室長補佐 1点目の御質問につきましては、事業者からヒアリングをして、どういった教育項目がふさわしいのかということについては御意見を伺う予定にしてございます。

 2点目の質問に関しましては、100ミリシーベルトを超えた東電社員が150人ぐらいおられましたが、多くの方のマスクのフィッティングがうまくいっていなかったという実態がございます。電力の社員といっても、例えば、ふだん、現場に入りなれている方と、運転員のようにふだんマスクをかぶったこともないような方もおられましたので、そういう意味では、教育が全ての方について行き届いていた状態ではなかったとは考えております。

○森座長 伴委員。

○伴委員 先ほどの事務局の御発言に対して。臨機応変に対応できる人間は限られる、それはそうだと思いますし、実際に通常の限度を超えて被ばくしなければならないかもしれない人たちというのは、原子力発電所の事故であれば、恐らく電力の社員であろうと思います。実際、国際機関等が想定しているのもそういう状況です。しかし、通常の限度を引き上げてまでの緊急作業ではないかもしれないけれども、緊急の現場に投入される可能性のある人で、非常に特殊なスキルを持っている人がいます。その人はもともと放射線業務従事者ではなかったと。ただ、そういう人を投入する必要があるということになれば、かなり急に教育をしなければいけないわけですね。そんなことが念頭にあったので、最初に、かなり幅が広いのですかと伺いました。

○安井室長補佐 おっしゃるように、今回の1Fでも、いわゆるクレーンの運転士とか、そういった特殊技能の方については、社外の方でも炉に非常に近いところに行かれた方もおられますので、そういった可能性は否定できないと考えております。ただ、これも非常に高度技能者に限られるとは思いますので、それに限った特別な対応というのはまた考えたいと考えております。

○森座長 そうすると、あらかじめ準備しての対応と、その場において教育をするというのと、両方考えるという理解でよろしいですか。

○安井室長補佐 極めて限られた高度技能者に対してはそういう可能性もあると思います。

○森座長 ほかにいかがでしょうか。

 よろしいでしょうか。

 それでは、今いただきました意見をもう一度整理いただいて、次回につなげていただければと思います。

 今日はもう20分オーバーしておりまして、座長の不手際で申しわけありませんでした。今回はこれで終了させていただきたいと思います。

 前回追加でいただいた意見が非常に貴重でございましたので、追加で御意見のある方は、今回もぜひ提出をお願いしたいと思います。再来週の3月2日月曜日までに事務局までメール等で提出をお願いいたします。

 事務局は、次回までに報告書案をつくっていただいて、次回の検討会で議論ができるようにお願いしたいと思います。

 次回の予定について事務局から御説明ください。

○前田室長 次回の予定でございますが、第4回検討会は3月13日金曜日、午後3時30分から開催予定でございます。よろしくお願いいたします。

 では、以上で第3回「東電福島第一原発作業員の長期健康管理等に関する検討会」を閉会いたします。どうもありがとうございました。

○森座長 どうもありがとうございました。


(了)

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