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2015年1月23日 障害福祉サービスの在り方等に関する論点整理のためのワーキンググループ

社会・援護局障害保健福祉部

○日時

平成27年1月23日(金)9:30~12:30


○場所

TKPガーデンシティ竹橋ホール10C
(東京都千代田区一ツ橋1-2-2 住友商事竹橋ビル10階)


○出席者

佐藤進座長、吉川隆博構成員、田村綾子構成員、寺島彰構成員、野沢和弘構成員、山下幸子構成員

○議事

○福井企画課課長補佐 

それでは、全員お揃いになりましたので、ただいまから第 2 回ワーキンググループを開催いたします。佐藤座長が少し遅れて来られますので、それまでの間、事務局が進行させていただきます。構成員の皆様方には御多忙のところ、お集りいただきましてどうもありがとうございます。

 まず、前回御欠席でした構成員を御紹介いたします。聖学院大学人間福祉学部准教授 田村綾子様です。

 

○田村構成員 

田村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

○福井企画課課長補佐

 構成員の出欠状況ですが、本日は大塚構成員から御都合により欠席との御連絡をいただいております。また、前回のワーキンググループにおいて、当面、 3 つの作業チームを設置することとされましたが、その検討メンバーにつきまして、前回の座長からの御指示を踏まえ、各作業チームの議論のまとめを担当される野沢構成員、寺島構成員、大塚構成員と御相談の上、本日お配りしている資料 1 のとおりとなりました。座長とも御相談した結果、この作業チームの構成員にも関係団体の御意見を聞いていただいたほうが、今後効率的、効果的に議論が行われるのではないかということで、本日は作業チームの構成員の皆様にも御同席いただいています。

 本日、御出席の作業チーム構成員を御紹介いたします。埼玉県立大学社会福祉子ども学科准教授 新井利民様です。

 

○新井構成員

 新井でございます。よろしくお願いいたします。

 

○福井企画課課長補佐

 東京大学先端科学技術研究センター特任研究員 大沼直紀様です。

 

○大沼構成員

大沼でございます。よろしくお願いいたします。

 

○福井企画課課長補佐

 名古屋市健康福祉局障害者支援課長 木村剛様です。

 

○木村構成員

 木村でございます。よろしくお願いいたします。

 

○福井企画課課長補佐

 札幌市障がい保健福祉部障がい福祉課自立支援担当課長 高橋誠様です。

 

○高橋構成員

 札幌市の高橋でございます。よろしくお願いいたします。

 

○福井企画課課長補佐

 和光市健康福祉部長 東内京一様です。

 

○東内構成員

 東内と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 

○福井企画課課長補佐

 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター司法精神医学研究部室長 藤井千代様です。

 

○藤井構成員

 藤井でございます。よろしくお願いいたします。

 

○福井企画課課長補佐

 続きまして、資料の確認をさせていただきます。資料 1 は、作業チーム構成員、資料 2 は、団体ヒアリングのスケジュール ( 予定 ) 、資料 3 ~資料 12 までが、本日おこしいただいている団体の皆様からの御意見をお配りしています。以上、過不足等がありましたら事務局にお申しつけください。

 続いて議事に入ります。本ワーキンググループで論点整理を行うに当たっては、関係団体の意見を聞きながら検討することが必要だと考えますので、本日から関係団体のヒアリングを行いたいと思います。資料 2 に、団体ヒアリングのスケジュールをお示ししていますのでご覧下さい。本日 1 23 日から来週 1 30 日、 2 2 日、 2 4 日の 4 回にわたりまして、団体ヒアリングを実施したいと考えています。 1 回当たり 9 団体あるいは 10 団体に来ていただきまして、合計 38 団体からのヒアリングを予定していますので、よろしくお願いいたします。作業チームの構成員の皆様には、今後のヒアリングにも是非御出席いただいて、意見交換に参加していただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、本日お越しいただいている関係団体の方々を御紹介いたします。社会福祉法人日本盲人会連合様、一般財団法人全日本ろうあ連盟様、一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会様、社会福祉法人全国盲ろう者協会様、全国手をつなぐ育成会連合会様、一般社団法人日本発達障害ネットワーク様、一般社団法人日本 ALS 協会様、特定非営利活動法人日本失語症協議会様、特定非営利活動法人日本脳外傷友の会様、公益社団法人日本精神科病院協会様、以上 10 団体の方々です。

 本日の進め方は、 3 団体又は 4 団体ずつ、 3 つのグループに分けてヒアリングを実施いたします。 1 団体 10 分以内で御発言をいただき、そのグループ全体の御発言終了後、 25 分程度、あるいは 4 団体の場合は 30 分程度を質問等の時間とさせていただきます。各団体の御発言が 8 分を超えた段階で事務局から一度合図をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。これを繰り返し、全体で 3 時間程度を見込んでいます。長時間のヒアリングとなりますので、時間配分に御理解をいただきまして、円滑な議事運営に御協力をお願いできればと思います。

 それでは、最初のグループのヒアリングを始めます。

 

○日盲連竹下会長

 進行上の質問がありますので、ヒアリングの前にちょっと確認させていただきたいと思います。日盲連の竹下と申します。よろしくお願いいたします。今、冒頭で司会者から、第 1 回のワーキンググループで作業チームを設定することが決まったという説明がありました。その作業チームは、付則第 3 条の特定の項目について作業を行うと聞いています。その場合に、今日ヒアリングを行うことと、作業チームにおいて作業を進める上での進め方とがどのような関係になるのか、申し訳ないのですけれど理解できません。

 端的に言えば、作業チームが特定の項目について作業を進める場合のテーマについての団体ヒアリングは別途でやるのか、その点についてまず 1 点お聞きしたいと思います。 2 番目に、作業チームを設定しない項目については、ワーキンググループが直接論点を整理するとされていますが、今日のヒアリングのみで終了なのか、その点について質問させてください。

 

○川又企画課長

 障害保健福祉部の企画課長です。今の御質問ですが、本ワーキンググループと作業チームとの関係ですが、作業チームは 3 つのテーマについて、より深く御議論いただこうということで、作業チームの作業を行うこととしていますけれども、ヒアリングをするときに、いろいろな団体が恐らくいろいろなテーマについて御意見をお持ちなのではないかということで、それぞれのチームはある意味で特定の常時介護を要する障害者とか、かなりテーマが特定されてしまいますが、それぞれの団体がそれぞれのテーマ、あるいはもっと広いテーマについて御意見をお持ちであろうということで、このワーキングで特定のテーマに絞らず、まずは各団体様から幅広にいろいろな御意見をお聞きしたほうがよろしいのではということで、今回、今日から 4 回にわたって多くの団体の皆様から特定のテーマに絞ることなく、御意見をいただこうと、このヒアリングを設定させていただいています。したがいまして、作業チームのほうでは、より深くその特定のテーマについて、別途その関係の方々も交えて御議論などで、より深く議論をいただく場が作業チームであると考えています。

2 点目の、特定の 3 つのテーマ以外の部分については、ワーキングのほうで直接議論をするということですので、ヒアリングではいろいろなテーマ、この作業チームのあるテーマ以外のものについて、団体の方々から御意見をお伺いできると思いますので、その御意見を踏まえ、ワーキングチームのほうで議論を、論点を整理する作業を進めていこうと考えています。

 

○福井企画課課長補佐

 よろしいでしょうか。

 

○日盲連竹下会長

1 回のみでしょうか。

 

○川又企画課長

 現在のところは、何回もお呼びするのは申し訳ないので、それぞれの団体に、今回から 4 回にわたってお聞きする中で、論点を整理する題材を御提供いただけるかと考えています。

 

○日盲連竹下会長

 質問の答えになっていないと思うのですが、要するに、例えば我々日盲連ですと、意見を述べる機会、ヒアリングの機会は今日のみしかないということでしょうか。

 

○川又企画課長

 全体のテーマについては本日を考えていますけれども、恐らく日盲連はコミュニケーションを意思疎通支援事業の作業チームのテーマと深く関わる御意見がいろいろあるかと思いますので、そのようなチームにおいて御意見を述べていただいたり、議論をする機会はあるだろうと、設けられるだろうと考えています。進め方については、作業チームの先生方、あるいは座長の先生方とで、今後相談をさせていただければと思います。

 

○日盲連竹下会長

 分かりました。

 

○福井企画課課長補佐

 それでは、最初のグループのヒアリングを始めます。社会福祉法人日本盲人会連合様、よろしくお願いいたします。

 

○日盲連竹下会長

 おはようございます。日盲連の竹下です。発言を 1 人に絞るということですので、やむを得ず私が代表して意見を 10 分以内で述べさせていただきます。時間の制限もありますので、 4 点に絞ってこの場では意見を述べさせていただきます。まず、第 1 点目は意思疎通支援です。意思疎通支援の見直しに当たっては、視覚障害者の特性に応じた意思疎通の支援というものについて、その制度の確立をお願いしたいと思っています。我々は正に情報障害がその特性です。そのために点訳・音訳、これは録音したもの、更にはこちらからの意思表明をする場合において代筆というものも必要になってくる、これがコミュニケーションの場面では極めて重要です。しかし、現在のところは地域生活支援事業のコミュニケーション支援事業として、一部の自治体では実施されていますが、それらの内容自体も極めて不完全であり、自治体によっては実施されてない自治体のほうが圧倒的に多いのが実態です。しかし、我々のコミュニケーションの手段としての点字それから録音物、更には代筆が確立されてこない場合には、視覚障害者が十分な情報を前提とした意思疎通を図れないという事態になります。このことを解決するためには、十分な点訳・音訳・代読・代筆の制度化が必要になります。しかも、専門的な点訳・音訳に至っては、これらを熟練した技術を要する方によって、そういう点字化又は音訳化されることが必要であります。しかし、現在はボランティアの手によって、すなわち無償ボランティアの手によってこれらが一部担われているというのが日本の実情です。取り分け、この点を点訳や専門音訳を中心に十分な技術者を養成していかないと、視覚障害者のコミュニケーションというものが、あるいは意思疎通というものが図れないことを御理解いただきたいと思っています。

2 点目は弱視者に対する情報です。意思疎通支援の中の弱視者の問題です。弱視者に対する支援としては、拡大文字を含めて様々あるわけですが、ここではテキストデイジーと呼ばれるソフトについて説明をさせていただきます。テキストデイジーというのは、それ自身がそのあとで加工することが容易なデータです。そのために何ポイントに拡大するのか、あるいは字体をどうするのかを自由に変更したり、音声と視覚の両方で同一場所を特定して標示することができるという利点を持っているために、様々なハンディの現れ方をする弱視の方々にとっては極めて重要な情報源となる媒体となっています。これらについてのボランティアを養成することも、現在、極めて重要な課題となっていることを御理解いただきたいと思っています。

 大きな 2 点目です。同行援護支援というものが今から約 3 年前に自立支援給付に位置付けられてきました。これは大きな前進であり、ありがとうございます。ただ、同行援護事業がこの間の施行される過程で大きな課題が出てきています。その 1 つが、通学・通勤にこの制度が利用できないということです。視覚障害者の多くは、鍼灸マッサージという自営業者であったり、あるいは雇用される形で就労している場合もあるわけですが、通勤や往診時における困難というものが極めて重要な課題となっています。この問題が労働行政の中では解決できないというように跳ね返される中で、福祉行政のほうで議論をすると、それは労働行政の問題ではないのかという形で谷間にもっていかれているという実情があります。ここを突破しなければ視覚障害者が自営であろうが、あるいは雇用される形での社会参加であろうが、その役割を果たせないという事態が起こっています。ちなみに、つまらぬ私の個人的な経験ですけれども、私自身もかつてマッサージの業務をしているときに、 1 人歩きをしていて 1 メーター半から 2 メーター近い側溝に落ちて非常に困難な目に遭遇したことがあります。こうした体験をしている者、命を落とす者も、駅のホームからの転落も含めて珍しくありません。通勤やそうした自営業者の外出時におけるあるいは通勤時における保障というものをしなければ、せっかくの社会参加の機会が、あるいは自分の能力を発揮して、社会に貢献しようとする機会が奪われてしまうということを十分御理解いただきたいと思っています。

 同行援護に関する 2 点目は、自動車の利用の問題です。中山間地域においては、公共交通機関がほとんど撤退していることもあって、移動手段は自家用車でしかできないという実態があります。この説明は多くは要しないと思います。しかし、同行援護事業においては、自動車によって移動している機関は、同行援護事業としては認められておりません。そうすると、山間地域でヘルパーさんを利用して、外出しようとする人たちが、結局のところ、同行援護事業そのものが利用できなくなるか、あるいはその自動車での移動期間はヘルパーさんのボランティアの形になってしまって、極めて矛盾した状態が生じてきています。この点で自動車の利用というものを含めない限りは、山間地域における同行援護事業の普及は望めないと考えています。

 大きな 3 点目、就労支援についてです。当然、就労支援の制度の見直しに当たっての主眼は、就労支援事業と呼ばれる A 型、 B 型であることは承知していますが、この部分についても、視覚障害者の働く場を確保する事業所開設が非常に困難となっています。それは他の障害者と一緒に作業を行うということ自身が視覚障害の特性からその作業項目上、困難があるために、鍼灸、マッサージといった、視覚障害者が就労可能な作業内容によって、就労事業所を成り立たそうとすることが考えられるわけですが、そうなってきますと、視覚障害者の人数確保そのものが困難な場面が出てきます。特に山間地域、都心部以外の所でそれは顕著に現れます。そのためには人数制限を含めた緩和がないと、せっかくの鍼灸、マッサージの職業を活かした就労支援事業が成り立たないことを御理解願いたいと思っています。

 就労支援の 2 点目は、就労支援事業の外側になりますけれど、自営事業者に対する職場の介助者ともいうべき支援です。多分この部分については見直しの項目で言えば、 3 条の 1 号と言いますか、特法のその他必要な措置の部分に入るのかと思うわけですが、雇用されている場合では、職場介助者が確立されています。しかし、視覚障害者が鍼灸マッサージや、お琴などで自営をしている場合に、自宅における事務処理上の問題、それから訪問マッサージや音楽教授で言うと稽古で出掛ける場合、これらについては同行援護事業が使えないために、晴眼者に比べて事業展開ができないという事態が生じています。この部分を解決するためには、是非同行援護事業がそうした自営業者に適応されるだけではなくて、その事業所内においての支援、カルテ、レセプト処理や衛生面の管理などを含めた支援というものの必要性を御理解いただきたいと思っています。

 最後に、 65 歳以上の高齢者に対する支援の問題です。国の統計推計上は 31 万人余りの視覚障害者。日本眼科医会の統計推計上は、 150 万人余りの視覚障害者が我が国に暮らしています。そのうちの 65 歳以上は約 70 %です。高齢化が進むに連れて、高齢視覚障害者が急増することは明らかであり、そのことはこの間の数字が示している事実です。にもかかわらず、 65 歳以上の高齢者に対する障害福祉サービスが行き届かないという今の制度には極めて重大な欠陥があると言わざるを得ません。例えば典型的なのは、東日本大震災で、 65 歳以上の中途視覚障害者が、音声時計を現実には使えないという矛盾が出てきます。すなわち、皆さんが 1 日の時間を自分の時計によっても確認することができないまま、 24 時間、 365 日間が過ぎていくことを想像してみてください。これほどの人間にとっての極めて困難な状況はないわけです。自ら時間を確認できることすらが 65 歳以上の高齢者にはできない事態が起こっているわけです。介護保険の給付に音声時計などはありません。あくまでもそれらが支給可能なのは補装具の利用であったり、日常生活用具の利用によってでしかそうした人たちの生活の質を確保することができないわけです。それらの典型的な事例で示されるように、高齢視覚障害者に対する福祉サービスの支援というものを可能にしていただかないと、これから急増してくるであろう、しかも現時点でも 7 割の 65 歳以上の高齢視覚障害者に対する生活の質が確保できないことを十分に御理解いただいて、この面での制度改革や改正をお願いしたいと思っています。

 

○福井企画課課長補佐

 どうもありがとうございました。続いて、一般財団法人全日本ろうあ連盟様、よろしくお願いいたします。

 

○ろうあ連盟小中副理事長

 全日本ろうあ連盟の副理事長をしております小中と申します。よろしくお願いいたします。意見の機会をいただきまして、ありがとうございます。資料に合わせてポイントのみに絞って説明をさせていただきます。

まず、意思疎通支援に関して。基本的な姿勢に関して、大切な部分として 3 つ。「専門的な養成機関」、「国家資格制度による質の担保」、「正職員として採用される設置手話通訳者が核になる制度設計」、この 3 つが柱になると思います。聞こえる人と聞こえない人の意思疎通が手話通訳で全て解決できる訳ではありません。手話通訳の技術のみならず、倫理的な面、聴覚障害者の主体的な社会参加、つまりエンパワーメント ( 促進する ) ということへの関わり方。また社会環境の整備への働きかけ等々、多々あります。これらを学び実践していく専門性が必要です。その部分を現在、登録手話通訳者が有償ボランティアという形で担っているということには限界があり、大きな問題となっています。ですから、きちんと専門性を担保できる資格つまり国家資格を基にした雇用された手話通訳者が核となる制度設計について、ぜひ議論をしていただければ幸いに存じます。

 もう 1 つ、意思疎通で困っているのは聴覚障害者だけではありません。様々な方々がおられます。全日本ろうあ連盟は、平成 25 年度、様々な障害者の方々の意思疎通の実態について調査をいたしました。例えば発音が難しい方、難聴者の方、知的障害の方など様々な障害者の団体 13 団体にご協力いただき、 87 人の方の実態を調査しました。制度の谷間におかれ意思疎通の支援がないと困っている方が多々おられます。個別に様々な支援が必要となり、なかなかまとめにくい部分がありますが、制度として確立していく必要があります。共通的な部分を包括的な制度として構築し、個別に活用できる柔軟性を持った事業として実施できる整備が必要だと考えています。また、専門職についても、個別の障害者に対する専門性、例えば聴覚障害者に対する手話通訳者。もう一つが、全ての障害者の意思疎通に関わる専門職が必要です。例えば都道府県に一箇所、様々な障害者の意思疎通支援についての基本的な理解、知識、関わり方、情報提供の在り方、相談支援、研究、研修等を担うセンターが設置されることも提言しています。そういうことも含めて、私たちは現在、情報・コミュニケーション法、また手話言語法の制定が必要と取り組んでいます。福祉サービスの枠を越えた制度の必要性についても議論して頂ければと思います。

 次に、基本的な課題として、平成 28 年度から障害者差別解消法がスタートします。その中で合理的配慮というものが位置付けられています。それを勘案して見ますと、福祉サービスとしての意思疎通支援事業、手話通訳等の事業に加えて、合理的配慮の考え方からの意思疎通支援の人的支援、この 2 点の在り方、役割分担も重要な課題としてクローズアップされると思います。合理的配慮に基づく意思疎通支援は、医療、労働、教育、司法、様々な社会サービスを担う機関において実施すること、そのための財政責任の在り方についても検討して頂きたいと思います。

次に、制度実施についての課題について、手話通訳事業におきましては、幾つかの課題があります。総合支援法において、意思疎通支援事業は、各都道府県、区市町村の必須事業という位置づけの強化で一歩前進はいたしましたが、まだまだ実施していない地域があります。派遣事業の実施率は 70 %を超えていますが、設置事業においては、 30 %の低い実施率に留まっています。手話通訳設置事業の在り方について取り上げるべきと思います。地域の状況に合わせて実施できる部分は良い面もあると思いますが、財政的な裏付けが十分ではないという課題があります。手話通訳を依頼しても派遣できる内容に制限が設けられて、手話通訳を受けられないという地域も多々ありますので、必要な予算をきちんと確保していくシステムを作っていただきたいと思います。また、先ほども申しましたが、ボランティア中心の体制でよいかどうか。これは決して望ましいことではありません。また、雇用されている場合であっても、正規職員での雇用が少なく 20 %程度に留まっています。 80 %は非常勤、嘱託という形で、非常に身分保障が不安定な状況にあるというのが手話通訳の現状です。コミュニケーションの重要な役割を担っていくということから、介護職と同じような雇用計画、雇用契約の進め方、賃金の在り方等も議論いただきたいと思っています。また、様々な業務を専門的に担うというのは個人では限界がありますので、例えば、聴覚障害者情報提供施設、あるいは手話通訳事業所などが担える制度に整備することも必要です。利用者負担については、聴覚障害者のみならず、これは聞こえる人も手話通訳は必要になります。共に生活していく基盤を支える手話通訳事業として、現状では利用者に負担を求めることはないと思いますが、それを法制度で明記していただきたいと思っています。また、ワーキンググループ及び作業チームの今後のヒアリングにおいては、意思疎通支援事業の当事者でもある手話通訳団体、要約筆記団体等も呼んで頂ければと思います。

 時間がありませんが、その他の見直し項目については、雇用について、社会的雇用のモデル事業に取り組みが行われていますが、現状は、一般就労ができない場合には、福祉的就労という、二者択一のような形になっています、もっと障害者の特性に合わせた働き方、働く場、雇用の場を増やしていくという議論も必要ではないかと考えています。移動支援についても、広域的な利用ができるような条件の整備が必要です。障害支援区分においては、聴力に加え、「言語」について、手話も含めた調査項目の追加の検討をお願いします。生活する上で様々な場面、例えば服薬の場合でも、コミュニケーションができないまま服薬では適正な健康管理ができません。生活の様々な場面にコミュニケーションが付随しています。コミュニケーションの扱いについて見直しをお願いしたいと思っています。また、相談支援事業所を積極的に開設していくための報酬単価の見直し、成年後見人制度にかかる当事者の費用負担について、家族がいない方も多々おられますので、公的な助成制度の充実・拡充についても検討をぜひお願いしたいと思っています。

 

○福井企画課課長補佐

 ありがとうございました。続いて、一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会様、よろしくお願いいたします。

 

○全難聴新谷理事長

 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の新谷です。本日はヒアリングの機会を与えていただき、どうもありがとうございます。

 このワーキンググループの検討項目は、障害者総合支援法の付則事項についての論点整理と伺っておりますが、障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会が克明な報告書を出しております。そこで挙がっている課題も、是非このワーキンググループの中で議論いただきたいと思います。そういうことで、意見としては、全体的な課題の問題と、付則記載事項の 2 つに分けて、お話をしたいと思います。

 まず、全般的な課題の 1 番です。障害者に関する実態調査と調査結果の施策への反映の問題です。平成 23 年に生活のしづらさなどに関する調査というのが実施され、その中には手帳保持者と、手帳非所持かつ自立支援給付等非受給者の 2 つに分けて調査が行われておりますが、総合支援法に非手帳保持者の調査結果が、施策としてどのように反映されているのかが極めて分かりにくくなっております。障害者総合支援法の支援対象者は、読み込む限り障害者手帳保持者を対象にしているという現実があると思いますので、非保持者に対する調査というのは非常に大切な調査だと思うのですが、それの施策への反映について、是非このワーキンググループの中で議論いただきたいと思います。

 それから、サービス体系全体の問題です。骨格提言においては、全国共通で提供される仕組みと、地域の実情に合わせて提供するサービスと、大きな 2 本立ての提案をしているわけであります。特に私たちの関係の深い意思疎通、コミュニケーション支援事業に関して言いますと、これは 1 1 人の基本的な人権に関わる部分の支援であって、地域の実情によって水準が上下するものではないと理解いたします。そういう意味で、全体的な地域生活支援事業の在り方を見直す中で、意思疎通支援事業につきましては、全国共通の仕組みとしてシステムを組んでいただきたいということです。以上が全般的な問題です。

 それから、付則記載事項に入っていきます。資料の 2 番です。障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方の問題です。聴覚障害に関して言いますと、支援区分の判定項目は、ここに書いてあるように、 1 6 を調査します。それに提供されサービスとしてア~オというサービスを結び付けております。ところが、聴覚障害者は現実に、補装具の給付とか、日常生活用具の給付とか、意思疎通支援事業については、支援区分の判定ではなく、障害者手帳を持っているか、又はその等級によってサービス体系が決まっております。そういう意味で、障害支援区分認定に関わる支給決定の仕組みと、手帳によるサービスの仕組みというのは、非常に大きな論点でありながら整理されていないと思います。この論点についても、是非ワーキンググループで議論いただきたいと思います。

 次のページです。 3 番目は手話通訳等を行う者の派遣、いわゆる意思疎通支援事業に関わる付帯事項の問題です。この問題は、現在、市町村の事業と、都道府県の事業と大きく 2 つに分けて実施されておりますが、市町村の利用目的制限、利用時間制限等で、地域格差が非常に広がっている。それから、都道府県は専門性の高い意思疎通支援者を派遣するとなっているのですが、利用目的、利用時間、利用条件の制約は、市町村以上に厳しくなっております。そういうことで、意思疎通支援事業の個別課題として、 4 点述べさせていただきます。

 まず、 1 番目は意思疎通支援事業の利用者の範囲の拡大です。これは手帳保持の問題とも密接に関係するわけですが、意思疎通支援を必要としている人は、手帳保持者には限定されないということを、是非議論いただきたい。それで、コミュニケーションの性質上、時としては健聴の方、聴こえる方も意思疎通支援事業が必要であるということを理解いただいて、利用者の範囲の拡大をお願いしたい。また、参議院の付帯決議では、意思疎通支援の利用については「個人利用にとどまらず、複数市町村の居住者が集まる会議等での利用も問題になる」という付帯決議が挙がっております。これは、意思疎通支援の利用者は個人に限らないで、団体主体で利用することも非常に多いということです。そういう意味で、総合支援法はあくまでも個人対象のサービス体系ですが、団体としての利用をどのようにその仕組みの中に織り込むかということを、是非検討いただきたいと思います。

2 番目は利用目的の問題です。これは区市町村の利用においても、例えば民事調停に要約筆記者の帯同は派遣目的としては認められないとか、マンションの説明会に要約筆記者を頼んだら駄目だとか、買い物に要約筆記者の帯同を頼んだら、それは個人の趣味に類する部分だから支援事業の対象にならないとか、目的又は利用時間の非常に厳しい制限が課されております。基本的に意思疎通支援事業、コミュニケーション支援は、毎日の日常生活で必ず必要とされるものなので、公序良俗に反さない限り、犯罪目的などにならない限り、基本的には幅広く利用を認めるべきではないかと思います。

3 番目は、都道府県の意思疎通支援事業利用の拡大です。総合支援法は都道府県の地域生活支援事業に専門性の高い意思疎通者の派遣を加えましたが、現在の都道府県の利用条件は、市町村の利用条件に比べて、はるかに厳しい運営がされています。一部自治体においては、広域性及び公益性を有する集まりにのみ派遣を認めるということで、例えば私たちの団体のような組織運営に関わる理事会に対しても、役員会に対しては派遣を認めないと。障害者権利条約は障害者団体の積極的な役割を正面から認めているのですが、現在の都道府県の実施状況は障害者団体はサービスの対象ではないということで、公益性を有さないから派遣を認めないといった運用がなされております。

 最後の 4 番目は、全国レベルの団体の活動というのは非常に活発になってきております。全国レベルの集まりはいろいろな都道府県から参加者がいるわけなので、こういう場に対する意思疎通支援の費用を誰が負担するのかという仕組みが整っておりません。東京都では非常に開催が広いので、もし実施自治体が開催するとなれば、東京都の負担というのは非常に重くなる。そういうことは、やはり都道府県の在り方として承服されない面がありますので、是非全国団体の集まりに対しては国の事業として、実行を都道府県の開催自治体に任すとか、そういう工夫をもって障害団体の全国的な活動を支援していく仕組みを整えていただきたいと思います。以上、全難聴からの意見を述べさせていただきました。

 

○佐藤座長

 ありがとうございました。ここで進行を替わります。私は座長の佐藤と申しますが、よんどころのない事情のために今日は遅参いたしました。初回のヒアリングから遅れ、申しわけありませんでした。

 引き続き、ヒアリングを進行してまいりますが、私のほうでバトンを受けたいと思います。続いて、社会福祉法人全国盲ろう者協会より意見発表をお願いいたします。

 

○盲ろう者協会福島理事

 全国盲ろう者協会の理事の福島と言います。本業はというか、仕事は東京大学でバリアフリー関係の教員をやっていまして、その関係もあって、これまで審議会などでは盲ろう者のことはあえて発言しないで、障害者全体のことをなるべく発言しようと試みてきましたが、本日は盲ろう問題に限定してお話します。

 ワーキングのメンバーの先生方や作業チームの皆さんの中には、盲ろう者のことにお詳しい方もいらっしゃると思いますが、余りなじみのない方もいらっしゃるかもしれませんので、最初に基本的なことを御紹介したいと思います。

 盲ろう者とは何かということで、見えなくて聴こえないという状態です。私自身、以前は見えなかったのですが聴こえていて、盲ろう者ではなかったので、耳が聴こえなくなって盲ろうになったときは非常に驚きましたし、それまで生きてきた人生と変わってしまったなと思ったのです。

 例えばテレビを見ていた、テレビを見るということを考えたときに、目が見えない状態だと、画面が消えて、スピーカーで音だけを聴いている状態が盲の状態ですが、耳が聴こえない状態だと、スピーカーの音が消えてしまって画面だけが残る。それぞれ非常に不自由なことだし、不十分な情報しか入ってきませんが、大体の内容を推測することはできます。ところが、盲ろうとなって 2 つ重なってしまうと、画面を消してスピーカーの音も消してしまいますので、要するにテレビのスイッチを切ったのと同じになりますので、心のテレビには何も映らない。そうなると、これはもう劇的な差があって、どうすればいいのか。

 人による支援、コミュニケーションや情報提供あるいは移動ということを支える、私たちは「通訳介助者」と呼んでいます。通訳者であり介助者であるといった、人による支援がないと世界とつながることができない。自分がこの世界の中に生きているという実感が持てないということがあるのです。例えば御飯を食べるとか、トイレに行くとか、風呂に入るということは、自分でできる盲ろう者は多いわけです。家の中で暮らしていく分にはさほど不自由はないのですが、人間はそれだけでは生きていけない、コミュニケーションや情報がないと生きられないのです。

 象徴的な事例があります。東京の真ん中のある自治体で暮らしておられる 60 代の男性なのですが、もともと耳が聴こえなくて、だんだん目が見えなくなってきて、御家族と暮らしていたのですが 30 歳ぐらいから実質的に 1 人で暮らすようになって、ホームヘルパーさんなどが来てくれるから御飯は何とかなる、買い物は何とかなる、風呂は自分で入るし、掃除などもするけれども、コミュニケーションが取れないから情報が入ってこない。それで、たまたま私たちはこの方とコミュニケーションを取れるつながりができたのですが、驚いたのは、その人は昭和天皇が亡くなって平成に時代が変わったことを御存じなかったのです。私もすごくショックを受けました。こういう人が都会の真ん中にいたのかということ。新聞が読めない、テレビが見られない、ラジオが聴けない、外に出られない、人と話ができないということにつながるのだということです。

 そういう盲ろう者が何人ぐらいいるのかというと、大体 1 4,000 人と推計されています。資料 6 です。 1 4,000 人が全国にいますが、通訳介助者の派遣制度を利用しているのは 1,000 人ぐらいで、あとの 1 3,000 人は福祉制度とうまくつながっていない人たちなのです。先ほどの例で出した男性のように、そもそも福祉制度があるということが分からない、何をどうしていいか分からないという状況です。一部の福祉事務所の人とか、ヘルパーさんとかつながっているけれども、盲ろう者ということが理解されていないので、ニーズが理解されていないと、このように孤立してしまう。 1 4,000 人中の 1 3,000 人は、通訳者の派遣制度を利用できていないのですが、制度的には現在も地域生活支援事業の中で、全都道府県で通訳者の派遣制度は実施されています。ところが、実態としてはいろいろと問題があって、添付してある資料に各自治体の制度の状況、例えば通訳者の派遣時間、謝金単価といったもののデータを載せていますが、「格差が大きい」という生易しい表現ではなくて、ものすごく差があります。

 例えば、ある所では、 1 か月に 1 時間ぐらいしかサービスが利用できないとか、一番多い所でも 44 時間です。大体 10 時間以下が多いです。盲ろう者の場合は自分で努力すればいろいろなことができて、足りない部分を誰かに補ってもらうということではなく、自分 1 人では、にっちもさっちもいかない、何も進まないという状況なので、月に 1 時間や 2 時間や、そんな時間のサポートがあったところで人間らしい生活はできないのです。しかも、 1 1 人コミュニケーションの手段が違ったり、背景が違ったり、抱えている障害の状況が違ったりで、すごくバラエティーに富んでいるので、個別的な丁寧な支援が必要なのですが、なかなかそういった個別的な支援を展開するのが、人材の面、制度的な面、予算の面など、いろいろな意味で難しいのが現状です。

 今後どうするかということについて、私どもでもいろいろ検討しており、例えば昨年 6 月から外部の有識者を交えて勉強会を開いて、これまでに 5 回検討してきました。そこで出てきた論点を、幾つか資料に書いています。

 個別給付の事業がなじむのではないかということです。非常に個別的な支援なので、個別給付の事業が相応しいであろうと。だけれども、人数がすごく少ないし、都道府県の中には、東京はいいですが、地方では盲ろう者の数が余り把握できていないから、事業所の事業としてはまだ難しいので、地域生活での薄く広くという、今の制度も残す必要はあるだろうと。では、具体的にはどうするのか、幾つか考えられることを挙げています。

 例えば同行援護と同じように、盲ろう者通訳介助の制度を個別給付の中に入れたり、同行援護の中の 1 つのプログラムとして入れたり、あるいは重度訪問介護の対象者として拡大していくとか、そのように幾つかの制度を組み合わせるなど、幾つかの可能性があるかなと検討をしてまいりました。

 盲ろうという障害の特殊性、個別性、多様性、だけれども数が余り多くないという状況を踏まえ上で、いろいろと今後とも御検討いただければと思います。以上です。

 

○佐藤座長

 ありがとうございました。今の意見表明をもって、このグループの 4 人の方々の表明が終わりましたので、ただいまの御意見について、御質問や御意見がありましたら、これから約 25 分ぐらい討議の時間が取れますので、どこからでもよろしくお願いいたします。

 

○寺島構成員

 寺島です。日盲連さんにお聞きします。デイジーのことについてですが、今回御意見を出されたのは主に弱視者に対するテキストデイジーの話だったのですが、もともとある全盲者というか、弱視者でない方たちに対するデイジーについては、何か御意見はありますか。

 

○日盲連竹下会長

 ありがとうございます。竹下です。今の御質問について、まず答えとしましては、全盲者が情報処理として用いるデイジー形式のデータ処理につきましては、今日は特に要望は持ち合わせておりません。現在のデイジーが更に普及することに尽きるわけでありますから、コミュニケーション支援の中では、現在の制度の一般的な意味での普及なりが求められるという考えでおります。

 それに対して、このテキストデイジーの分野につきましては、これまで余り意識されてこなかったデータ処理形式であり、弱視者というのは十人十色ほどの見方の違いがある関係で、文字のポイント数をその人によって大きさを変えることが必要になるわけですが、これがテキストデイジーの場合は非常に処理が簡単であったりとか、音声と画面での確認が同時にできるということからしても、このデータ処理方式の優位さが指摘されています。ただ、このテキストデイジーのデータを作ること自体に技術が要るのだそうで、私は技術は分かりませんが、そのためのボランティアの養成までをしないと、テキストデイジー化ができないというところに、弱視者に対するサービスが遅れている部分があると認識しています。

 

○日盲連藤井部長

 追加で説明させていただきます。日盲連の組織部長の藤井と申します。全盲者に対してもテキストデイジーの提供というのは非常に重要です。例えば現在提供されている音声デイジーは録音物ですので、例えば文字についても、どのような字が書いてあるかは音では分からないので、理解ができない書物がかなりあります。それを音声で文字を確認できますので、そうすると例えば資料に当たったり、辞書を引いたりということが可能になりますので、テキストデイジーというのは視覚障害者全体に有益な方法であると思っております。

 また、知的障害者や精神障害者の中で、両方の情報を提供いただければ読書環境が改善するという方がたくさんいらっしゃいますので、こういう面でも幅広く理解していただいて、対応を考えていただきたいと思っております。

 

○野沢委員

 野沢です。今日は貴重な御意見をありがとうございました。

 コミュニケーション保障というのは、私も最重要の課題だと認識しております。今日も竹下先生や福島先生がいらして、これは障害をもった御本人にとっていいというだけではなくて、コミュニケーション保障することによって、それぞれが有意義な社会活動をして、むしろ社会全体の利益にも還元するというようなことを是非、国民の多くの方に知っていただきたいなと私は思っております。

 それぞれの方がそれほど高名じゃなくても、それぞれがお仕事や日常の生活圏域を通してそういう活動がなされているわけで、やはりここは最重要に位置付けたいと思っております。

 ただ、その上で避けて通れないのは財源の確保ということだと思うのです。コミュニケーション支援そのものは、一体どのぐらいの財源が要るのかは分かりませんが、多分この後の相当な方々、いろいろな団体のヒアリングを通して、それぞれがとても貴重なニーズというものを表出されるだろうと思います。それを考えると、細かいことかもしれませんが、その辺を避けて通れないと思います。

 先ほど、ろうあ連盟でしたか、予算の確保のシステムを構築してほしいというような御意見があったのですが、例えば団体の中で、そのためのシステムというのはどのようなものがあるのかという御議論、御提案がもしあれば、教えていただきたいと思います。

 この春からの報酬改定でも、介護はマイナス 2.27 で、かなり厳しい減額がなされて、障害については辛うじてプラスマイナス 0 ということで、これも相当な財務省からの圧力といったらおかしいですが、姿勢の中で、藤井部長をはじめ関係者の懸命な努力で、何とかゼロまで押し戻せたというのが実情かと思います。予算の確保のシステム、厚生労働省に求めてできる範囲と、あるいはそれを超えて、財務当局を含めた国家全体、ひいて言えば国民なのですが、全体に負担なりあるいはどこかから削って持ってくるなり、そういうことをしなければ現実的な解決にならないかと思うのですが、何か具体的な御意見があれば教えていただきたいと思います。

 

○盲ろう者協会福島理事

 はい。

 

○佐藤座長

 とりあえず、今の御質問はろうあ連盟のほうに出ていますので、まず、ろうあ連盟から御意見をいただいて、その上で福島さんにも御意見を伺いたいと思います。

 

○ろうあ連盟小中副理事長

 ろうあ連盟の小中です。予算の確保、財源確保についての考え方ですが、以前から提案申し上げていることは、地域生活支援事業という枠組みがあります。これは包括的な補助事業という形になっていますので、市町村によって非常に財源に制限が出てくることになります。ですから、義務的な経費に変えてほしい、義務的な経費のシステムに変更することを検討していただきたいということが 1 点ございます。

 もう 1 つは、現在は登録手話通訳者が 1 時間当たり幾らかという謝礼支払いによる、有償ボランティアとして手話通訳をする制度が中心になっています。そのままでは問題が大きくなっていること、むしろ雇用された正規職員が中心の制度に転換していくことにより、専門性を担保する手話通訳が提供されることに繋がるとともに、費用対効果という面でもメリットがあると考えています。雇用の部分をきちんと中心に据えて制度設計をしていただければと考えております。

 

 

○佐藤座長

 続いて、盲ろう協会からどうぞ。

 

○盲ろう者協会福島理事

 福島です。野沢さんのおっしゃったことは大きな文脈での問題提起だと思いますので、盲ろうということに限らず、一言申し上げます。

 コミュニケーション支援というのは、人による人への支援、人によって人が支えられることですので、国全体が、国民の皆が安心して生活できるということのインフラ整備だろうと思っています。

 だけれども、インフラではあるけれども、道路をつくったりするような、物をつくる公共事業ではなく、いわば人をつくる、人の生活を豊かにする公共事業であって、私たち障害者が求めている支援というのは、その支援をしてくださる皆さんにとっても仕事になりますので、雇用の創出にもつながりますので、道路をつくることにって公共事業ができても、どこまで継続した雇用が続くのかという問題がありますし、社会保障関係では医療費の問題、薬価の問題、薬の問題などが非常に大きいと思いますが、薬だったら幾らでも使ってしまうということはできますが、私たちが求めているコミュニケーションや様々なサポートというのは、上限がはっきりしているのです。どこまでも無限にコミュニケーションの支援を望んでいる、移動の支援を望んでいるわけではないのであって、人らしく生きるための適正な量というのは決まっていますので、この辺りは青天井ではないのだ、上限があるのだということと、障害者関係の支出というのは、結局は回り回って社会を活性させるのだということ、人を対象とした公共事業なのだということ、この辺りを先生方にも御検討いただいたり、野沢さんをはじめ、マスメディアの皆さんにも頑張っていただいて、国民的なコンセンサスを高めていっていただければうれしいなと思っています。

 

○佐藤座長

 今の御意見については、ここにいる関係者は全員、同感の思いがあろうかと思いますが、逆に言えば、それぞれの立場でそうしたことを、なお強く発信していくことがあるのだろうと思います。引き続き御意見を伺います。

 

○日盲連竹下会長

 野沢委員の御指摘は非常にごもっともだと思っております。私はコミュニケーション支援、意思疎通支援というのは、厚生労働行政にとどまるものではないと、結論的には思っております。

 すなわち、例えば放送分野における情報保障であったり、その他の交通機関における意思疎通を図るということ、福島さんが指摘したように、国民の日常生活全般における意思疎通を考えるとすれば、所管としては内閣府におけるコミュニケーション支援法なり、そういう基本法的なものの発想をもって取り組まないと、国民への理解あるいは社会資源の確立、あるいは制度の広範な広がりという形での発展はできないのではないか。

 そういう形での発展をすることにより、財源的な問題をも克服していく必要があるのではないかと思っております。

 

○全難聴新谷理事長

 竹下さんの御意見に少し補足するわけですが、コミュニケーション支援の考え方というのは、ろうあ連盟からも指摘がありましたが、福祉サービスが担う領域と差別禁止法の合理的配慮が担う面と、特に私たち中途失聴の難聴者は文字情報が大事なので、環境整備として整理される部分と、大きく 3 つがあると思うのです。それぞれでどのように負担していくかということが、本当の大きな論点になってくると思うのですが、ここのワーキンググループでは総合福祉法の範囲、総合支援法の範囲の議論だと思いますので、資料 3 に書きましたが、要約筆記について言えば、全国の実施率が 5 割強にとどまっていると。だから、財源問題にいくよりも、まず要約筆記の事業を始めている自治体が、最低限度で 80 90 %ある。それから、利用範囲、利用条件についても、非常に柔軟に考えられているという環境があって、本当の利用ニーズというのは出てくると思うのです。

 待っていても利用ニーズは出てこないわけで、私たちの団体としては、要約筆記を使おう使おうというようにやるわけですが、団体外の本当に聴こえに困っている人まで、その声が届いて、その人たちが要約筆記に代表される意思疎通支援事業を使うところまで結び付くかというと、随分ステップがあるわけなので、まずは自治体を中心に、そういう要約筆記ということが使えるという普及活動。それから、それはいろいろな所で使えるのだ、いろいろな目的で使えるのだという利用目的の広がり。それと、いろいろな時間制限などをまず緩和していくという形で、本当のニーズの捉え方というのは、全般的な条件緩和の中から出てくるのではないかなと思っております。

 

○野沢委員

 野沢です。福島先生から「マスコミ頑張れ」というエールを頂きましたので、頑張りたいと思います。

 何と言いますか、我々が福祉の現場で話している言葉と、財務当局とか経済界の言葉はかなり違うと思うのです。こういうことをここで話すと、本当にナンセンスで馬鹿馬鹿しいと言われるかもしれませんが、コミュニケーション保障をすることでいかに経済効果があるのかというような、そういうことも同時に発信していかないと、広い共感というのは得られないかなと思っています。

 財務当局との折衝は厚生労働省に頑張ってもらうしかないのですが、国民全体への理解というのは、厚生労働省にお願いしても効果が余りないような気がしているのです。むしろマスコミとか、マスコミより先に、元は当事者の方々の存在というものが大きいし、情報発信というのは大きいので、いろいろなチャンネルを使って、みんなで目指している方向は同じだということは間違いないと思いますので、総合力で取り組んでいけたらなということを私からは発言したいと思います。

 

○佐藤座長

 まだ少し時間が残っていますので、それぞれ 4 つの団体の方からの意見表明について、いかがですか。

 

○寺島構成員

 盲ろう通訳者の派遣についてです。かなり高度な専門性が必要になるのではないかと思うのですが、先ほど福島先生が言われましたように、地域が広く、その地域で養成するということについて、相当難しいところがあるのではないかと思うのですが、それについて何か御意見がありましたら教えていただけますでしょうか。

 

○盲ろう者協会福島理事

 おっしゃるように、通訳介助者。通訳者だけでも大変ですので、そこに介助が加わってきて、しかも盲ろうというハンディは、例えばコミュニケーションが難しいと、ボキャブラリーも少なくなってきたり、御本人のコミュニケーション能力自体が、根っこの部分で制約を受けたり、精神的にもしんどい部分を抱えたりというように、すごくいろいろなことが重なってきますので、専門的なトレーニングと言いますか、専門的な支援というのが必要になってくるのです。

 それで、私たちもどうやって適切な支援を提供できる人たちを養成するのかということに、いつも心を砕いています。

 今の地域生活支援事業の中でも通訳者の養成事業は組んであるのですが、資質が向上していくためには、仕事を通してある程度の収入を得て、支援する側の皆さんが生活ができるぐらいの最低限のものがないと、なかなか打ち込んで、全力を尽くすということはできませんので、そうなってくると、やはり事業全体の制度的な基盤、あるいは財政的な基盤というものが、地域生活の支援事業だけですと限界があって、結局は片手間のボランティア的な支援でしかなくなってしまうということ、これは盲ろうだけではなくて、ほかの障害者についても言えると思います。

 ボランティアはすごく重要なのですが、ボランティアだけでは賄えないところがある、やはり専門的な支援が必要な部分があるので、そこは障害者向けの制度とコインの裏と表です。同時に支援者をきちんと確保するための財政的な手当をしていただくことが、密接不可分かなと思っています。

 

○佐藤座長

 ほかはいかがでしょうか。それでは、一応この 4 つの意見表明については、御意見や御質問が出尽くしたようですので、次のグループに進んでいきます。 4 人の皆さん、ありがとうございました。御苦労さまでした。

 

○佐藤座長

 よろしいでしょうか。それではヒアリングを再開します。では最初に全国手をつなぐ育成会連合会よりお願いします。

 

○育成会連合会田中総括

 はい、それでは「全国手をつなぐ育成会連合会」から意見表明いたします。どうぞよろしくお願いします。まず、常時介護を要する障害者等に対する支援ということで、「移動支援、就労、その他」となっていますが、基本的には常時介護を要する方の支援を考える際には、知的障害、精神障害の分野では家族同居の課題を避けて通ることはできないと思っております。自立を促しつつ、地域での暮らしの継続を図ってきた今までの流れがあるわけですが、現状では家族との同居生活が長く続いております。超高齢化が今年から 10 年間、急激に進んでいくという状況においては、特に団塊の世代である親御さんがその真っ只中にいらっしゃいますので、同居する家族への支援を行っている状況が御自身の高齢化によって薄くなっていく状況に具体的な策を講じる必要があると思っております。ですから具体的には家族同居であっても、サービスが利用できるような環境づくりを進めていかないと、家族がギリギリの所まで追い込まれて、支援が届かなくなったところで手を差し延べるということは、予防的な視点も欠けておりますし、あまりにも家族に負担を押し付け過ぎているという考えで、常時介護を要する方の支援については取り組んでいきたいと思っております。具体的な改善策としては、計画相談として始まった「サービス等利用計画」は大変重要な仕組みなのですが、残念ながら十分機能しているとは言い難い状況があると思っております。そのため国が制度をたくさん作って位置付けていても、自分が住んでいる町で活用できない状況になっていれば、制度の改正もしくは新しい法の下による資源の創出が行われても、自分の住む所になければ意味がない。もしくはサービスがあっても使えない状況のまま放置されると意味がないことになります。これを十分に確認をしつつ、利用できる状況につなげていくというのが計画相談のサービス利用計画の大変重要な役割だと認識しておりますので、この好循環を生み出していくような関わりを常時介護を要する家庭に対応させていくことによって、まだまだ家族の支援によって地域での暮らしが継続され、またそこから自立に向けての対応が見込めるのではないかと思っております。特に家族同居のうちでもホームヘルプ、また行動援護が室内での環境調整で活用できるようになった点を見極めていくためには、訓練事業の位置付けの中で、就労移行と自立訓練に分かれておりますが、就労に関しては就労継続 B 型から始めないということも含め、かなり積極的に展開されていると認識しております。一方で生活訓練については、まだまだ取組みが十分に行われていないと認識しております。特に日中活動を起点に、引き籠っている方の昼間の活動参加をゴールに定めた支援がありますけれども、家の中でのサービスを充実させるための訓練事業が現状ではありませんので、ホームヘルプや行動援護などの訪問系のサービスにおいて、訓練期間を経て、長い期間の実践的なアセスメントというように、これを捉えて活用できるようにしていただく必要があると思っております。このことによって、御本人には暮らしに対して必要な支援の見通しが持てるようになりますし、行政が懸念する支給量が多くなりすぎるのではないかということについても、適正な対応が整っていくのではないかと期待しています。その中では今、余り話題にならない状況に置かれていますが、重度包括支援の在り方についても検討する必要があるかと思っております。

 また昼間の活動ですが、まずは生活訓練、就労移行支援の訓練事業に融通さを持たせて、 3 年という限りを一律に課すのではなく、サービス等利用計画に基づいて個別の対応が整うようにしていくことが必要かと思います。その視点において就労移行支援事業においては、就労に結び付くと一時的に報酬が下がる部分に関しては、何らかの策を設けつつ、 A 型事業における短時間の課題については、必要性を踏まえての短時間であることが分かるような関わりをしていく必要があるかと思います。

 また現在、就労 B と生活介護という形で区分によって分かれておりますが、名称の表記も含めて、就労では働く場で、生活介護はただ支援される場だと言葉が決めつけすぎている部分もありますので、これに関しては生活介護の就労型、社会参加型など、例えばですが、そのような名称変更も含めて、本人に見合ったプログラムが提供されるような関わりが持てるように、この図の中では幾つかそういったイメージを書かせていただいておりますけれども、プログラムありきで事業所の枠組みから入るのではない関わりが持てるような検討が必要だろうと思っております。

 次に障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方です。障害支援区分に切り替わったことにより、知的・精神の割引かれ状態が取り戻されたと理解しておりますが、一方で発達障害の方については、盛り込んだ内容だけでは日常の困り感を反映していない状況があると捉えております。判定の方法においても、日常を 1 つの場面で切り取るような聞き取りの方法だけではなく、 1 か月や事情によってはもう少し長い期間の困り感を把握できるうにして、支援が届くような工夫が必要たろうと思っております。また児童に関しては、成長とともに変化がある状況という故に区分判定をせずにきておりますが、先ほどの発達障害の方への対応なども含め、長い期間の見通しの中で区分を見出すことはできるのではないかと思っておりますので、是非、御検討いただければと思います。

 次に意思決定支援と成年後見の在り方についてです。意思決定支援に関しては、まだ用語の整理が十分にされていない、用い方がどのような状況かが分かりにくい状況ですので、具体的には計画相談、個別支援計画、モニタリングと個別の対応を進めていく中で位置付けていくものだと認識しておりますので、相談支援専門員研修やサービス管理責任者研修と同等の研修に位置付けられるような段取りで内容を詰めていっていただければと思っております。併せて成年後見制度に関しては、代行性が高すぎるということで、本人の権利主体が損なわれやすい部分を意思決定支援の整理とともに、引き上げられるようにしていただければと思います。

 次にコミュニケーション支援です。知的障害の方に関しては、言葉の整理という形で片仮名や平仮名で表記することが多いわけですけれども、まだまだ工夫の余地があるということで、研究をされているグループがありますので、機器の開発も含め、是非、検討していっていただければと思います。

 最後に加齢の問題による対応です。知的障害の場合には、加齢による支援の必要性が 50 歳ぐらいから顕在化するといった研究成果があり、そこでは特に認知機能の問題が課題になります。知的障害の方でも認知症になることを十分に把握していかなければ、加齢による支援を見過ごしてしまうという課題になっております。

 そして制度の問題ですけれども、例として谷口さんという方の図式で整理をさせていただきました。障害者総合支援法と介護保険法の谷間で落ちてしまう部分が特に 50 歳ぐらいから顕在化する高齢化に対しては、知的・精神の方の場合には陥りやすい課題がありますので、是非、新しい課題として高齢になった障害者、特に知的障害・精神障害のコミュニケーション障害の方の対応を認知症との整合性も求めつつ、整理していただければと思っております。以上になります。

 

○佐藤座長

 はい、ありがとうございました。それでは続いて発達障害ネットワークからお願いします。

 

○発達障害ネットワーク市川理事長

 日本発達障害ネットワークの市川でございます。よろしくお願いいたします。資料 8 を元にお話いたします。いろいろな障害がある中では、一番新しく出てきたようなこともありまして、言葉は知られるけれども、中身がまだ不十分ということが最近よく言われておりますけれども、その一方で、どうも裾野はどんどん広がってきておりまして、最近はチックやトゥレット、あるいは吃音もこの中で何とかできないかという話まで出てきております。それだけ当事者団体からの要請があるということかもしれません。私自身、発達障害と 40 年ぐらいお付き合いしていて、もともとは医療関係者なのですが、やはりほかと比べてみると外見上分かりにくいことが非常に大きな問題だと思います。一見したところでは分からないというのがございます。このことは本人が困難さを持つだけではなく、周囲から非難を浴びることも現実に起きることです。発達障害、例えば自閉症の子どもさんを連れて電車に乗って、途中でパニックを起こしたりすると、連れている親が非難されるのです。「何やっているのだ」ということです。しかしよく考えてみると、それはおかしな話なのですけれども、十分分知られていないからかもしれません。それからやはり私が感じているのは、生まれついてからずっと続いている方が多いために、もちろん周りが気がつかないだけではなくて、本人も気がついていなくて困難を抱えている方がいらっしゃるということを感じております。これは最近、発達障害の中の 1 つの注意欠陥・多動性障害については、治療できるというか、ある程度ですが、治療可能な薬が発売され、全員ではないのですが、一定の数の方に効く場合があります。そうすると普通、私たちの世界では、薬を飲むと「先生、元に戻りました」「楽になりました」という話が多いのですが、効いた方の発言というのは、「先生、こういう人生ってあったんですね」と言われるのです。ということは、ずっとそれできているわけだから、ある意味では周りの人たちも自分と同じだと思って育ってくる中で、困難さを抱えたり、非難される状況が続いていたと私は考えております。ここに誤解が多いということを書きましたが、一言で発達障害の人はどう言ったらいいのかと私は考えておりますが、なかなか説明しにくいのですが、最近はモジュレーター機能がうまくいっていない人たちなのかなと思います。何事もほどほどにすることができないので、うるさければそのまま具合が悪くなってしまう人たちであるかもしれませんし、暗い所へ行くと、もうそのままそこが嫌になってしまう人たちかもしれません。きっと我々はどこかでそれをある程度緩和する機能が付いているのでしょうが、それが付いていない人たちなのかなと考えたりしております。最近は異なるソフトを積んだ人たちだと私は言うようにしておりまして、学校の先生たちなどはちっとも言うことをきかないというので、一生懸命怒鳴りまくっていても、それはソフトが違うのだから無理だよという話でお話しております。これは一部のマスコミで受けたのですが。やはり互換性ソフトを我々は作れるかどうかが、きちっと支援できるかどうかだと思います。そのためには発達障害者が持っているソフトをきちっと解析して、それに見合った交換ソフトを利用する必要、作る必要があるのだろうと思います。それができる方がいい支援者になっているのかなと思っております。

 最初の移動支援については、なかなか発達障害の方の中では友達を作れないとおっしゃる方が多いのですが、実は欲しいのだけれども、作り方が分からないというのが厳密な言い方なのです。友達同士、数少ない友達と出掛けるとしても、なかなかうまく会話が弾まない、どうしたらいいか分からないということで、これについては例えば、複数の発達障害者に対して 1 人の支援が付けられるというような柔軟なサービスがあるとありがたいというのは、そういう意味で書いておきました。就労については、障害特性であるコミュニケーション上の課題については、残念ながら、まだ企業でも十分に知られていないところがございまして、私も産業医としていろいろお手伝いすることがあるのですけれども、日本の超一流企業と言われる所で、超一流大学の大学院を卒業した人でも結局、職場の雰囲気を乱すという理由で自主退社を求められているという現状があります。これはもちろんその逆でうまくやっていただいている会社も最近は少しずつ増えてきているのですけれど、まだこの辺りのところは、どうしてこの人が持っている良い面を利用しないのかなと思うところがございます。この辺りもまだ我々が、やっていかなきゃいけないところだなと思います。 CSR の中の一環に入れていただければなと思っております。

 それから就労生活支援センターの職員の方々に発達障害に対する生活面の相談や助言のための知識、技術の普及を徹底してほしいということは、ある意味で言うと、そういう職員の方々のスキルを少し高めていただきたいことになるのかなと思います。例えば、本人が気が付かないうちに処遇法に関わるような行為に巻き込まれるようなことは、決して珍しいことではないわけで、あまり良い例かどうか分かりませんが、先日も私の外来に来ている患者さんが電車に乗っておりましたら、ちょうど反対側に乗っている女性がうとうとしておりまして、ハンドバッグが開いていたらしいのです。彼は実は光るものに非常に興味がある発達障害者で、ハンドバッグの中に何か鏡か何かが入っていて、それを覗き込みに近付いて行ったところで女性が目を覚して大騒ぎになりまして、警察に突き出されたという、こういう方です。ある程度は物事の分かる方で、警察にお金を取ろうと思ったのだろうと言われて「はい」と言ったので、そのまま 1 か月間勾留されました。後で本人に「何でそんなことを言ったのだ」と言ったら、「だって俺、光るものに興味があるなんて恰好悪くて言えなかったよ」という話なのです。ただ女性のハンドバッグにはお金が入っていなかったので 1 か月後には出されたのですが、現実にはそういうことが平気で起きてしまっているというのもございます。

 それから都道府県や発達障害者支援センターが中心になって、いろいろな離職・失業後にも当事者が相談できる機関の周知、失業保険の手続、あるいは求職活動等に関する行動を支援する体制作りを整備してほしい。これは厚労省が中心になって発達障害者支援センターはずいぶんたくさん出来てきて、非常によく活動してくださっている所もあるかと思いますけれども、これを前提として、やはりその中にこういうものを入れていただき、彼らはリカバリーが非常に下手な人たちで、一度つまずくと、リカバリーができないために再就労で非常に時間がかかったりすることがあります。

5 番目に就労の継続を考えた際に、就労場面だけでなく、生活面の充実もお願いしたいということです。現在、非常に就労についてはいろいろ進んできまして、ジョブコーチなどが付いて何とかという話になっておりますが、彼らは非常に気分転換が下手な方で、余暇活動ができませんので、疲れ切ってしまうというようなことが現実にございます。就労センターなどに金曜日の夕方になると、大勢集まってきまして、別に何をするわけでもないのですが、ただみんなで顔を見て、お茶を飲んで、また家に帰っていく。 1 週間疲れているのだろうなと思いますけれども。そういうようなことがあって、やはり気分転換できないというのは 1 つの特徴なのですが、できる所を作ってあげればありがたいなと思っております。

 先ほど「手をつなぐ育成会」からありましたが、やはり障害支援区分の場合に、なかなか発達障害というのが十分に反映されないことが以前から言われておりまして、この辺りは当事者あるいは保護者から何とかならないかというお話をよく伺うところです。これは 1 つにはやはり外見的に分かりにくいというので、そういうことになっていることがあるのかもしれません。それから以前は、やはりどうしても知能指数というか、 IQ を中心とした支援がございましたが、現在、 IQ が非常に高くても社会適応が不可能な方が珍しくなくなってきております。したがって発達障害の立場から言うと、適応評価尺度等を使っていただけたらと思います。これは昨年の秋に日本語版が出ております。標準化もできておりますので、いずれはそういう方向でいっていただくとありがたいなと思っております。

7 番目、意思決定支援の在り方等について、やはり同じですけれども、障害者の意思をはかるためには専門の知識が必要で、人材が必要ということについては、育成していく段階でレベルアップを図っていただきたいと思っております。その延長上にありますが、関係省庁である法務省、消費者庁などにおいても適宜、必要な措置を講じてほしい。これは発達障害についても法務省に対しては誘導尋問に非常にかかりやすいというような言い方がいいかどうか分かりませんが、実際以上に罪が重くなってしまう方が多いということで、科し方を含めていろいろお願いしておりまして、最高検も考慮しましょうというところまでいっていただけたのですが、その後は全然反応してくれない状況でございますが。知的障害が先ですというお話がありましたけれども、実際は重なっている方もずいぶんいらっしゃるのが現実です。

 最後の問題ですが、これは恐らく人間というのは、やや視覚優位に作られているのですが発達障害の方は視覚が非常に優位な方が大体 8 割から 9 割。聴覚優位の方が 1 2 割と統計的には言われているのではないかなと思います。いろいろなところで、先ほど出ておりましたが、電子デバイス等の活用、現在は大学センター試験などでも考慮されるようになってきておりますが、公務員試験や国家試験にも広げていただければありがたいなと思います。特にディスアビリティ等、学習障害系の発達障害については、これらは一定の有効性を持っているのではないかと考えております。

 最後に、ここには付記しなかったのですが、高齢者の問題もありまして、実は発達障害の方が高齢になったときにどうなるかについては、医学的な知見の積み重ねがまだ不十分なのです。まだ分からないところがあるのですけれども、今、当事者が 40 代の半ば以上の方については、育った過程で発達障害という言葉がございませんでしたので、当事者は怠け者であって、親御さんは育てられない、困った親というようなことで世間から攻められているという状況があり、ときどきマスメディアに中年の方と老年の方が親子心中したなどという例の中にも混じっておりまして、この高齢の部分をどうするかについては、まだ不十分なのですけれども、今後非常に重要な問題になってくるかなと思います。時間が過ぎてしまいましたが、以上で私の話を終わらせていただきたいと思います。

 

○佐藤座長

 ありがとうございます。続いて ALS 協会から御意見をお願いします。

 

ALS 協会岡部副理事長

 いきしちに、おこそとの、ほんエイエルエスいき、おこそとのほもよう、あかいおこそとのお、あかえけせてねべ、えけせでうくす、おこそとのほもよ、おこそとのほもよろいきしく、お願いします。

 日本 ALS 協会の岡部と申します。よろしくお願いいたします。今のこのような口文字というコミュニケーション方法で、岡部の要望を読み取ったものを代読させていただきます。

 日本 ALS 協会の岡部です。本日はよろしくお願いします。具体的な説明は理事の川口からさせていただきますが、私は患者当事者として、私たちの要望は命に直結しているものということを御理解いただきたいと思います。例えば、入院時のヘルパーの付き添いなどは、病院内なので安全だと思われていますが、実はコミュニケーションが取れる特殊な技術を持ったヘルパーが付き添っていないと大変危険なことが発生してしまうのです。つい最近も、患者の呼吸器が外れているときに、ドクターとナースが気づかずにヘルパーが気づいて大きな事故を防いだということがありました。このような事例はたくさんあるのです。是非このようなことを御理解していただき、御検討をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。以上です。

 

ALS 協会川口理事

 本日はありがとうございました。 ALS 協会の理事をしております川口と申します。岡部さんは今 ALS 協会の副会長をなさっているのですが、 ALS を発症してから 8 年目です。 8 年前は自分で会社を経営して普通に、普通にといったらなんですが、 ALS を発症する前は普通に会社の社長をなさっていました。 ALS は発症すると非常に早く障害が進行して、あっと言う間に全身が麻痺して、呼吸器も麻痺します。そのときに人工呼吸器を付けないと亡くなるのですが、人工呼吸器を付けることによって 20 年とか、長い方だと 30 年というふうに、ほとんど不動で何も身体が動かないまま呼吸器で生きていくという過酷な病気です。

 私の母も ALS 患者だったのですが、呼吸器を付けて在宅で 14 年間ほとんど家族で診て看取りました。大変希少な疾患で、 10 万人に 3 4 人ぐらいの発症率ということで、私は中野なのですが、今在宅で療養している方は 5 人か 6 人ということで、本当に僅かな方しか呼吸器を付けてという選択もできないし、地域にいないということなので、余り障害が理解されないという面があります。

ALS 協会の理事会のほうでメールを回して、一応本当にたくさんの要望があるのですが、 6 項目についてまとめて持ってまいりましたので読み上げます。

 一番最初に、やはり介護保険と障害者の制度は、両方介護の制度なので使えるのですが、介護保険が優先ということで、介護保険から使っていくのですけれども、介護保険にないサービスは障害のほうが使えるということで。ただ、障害のサービスのほうが使い勝手が良いものが、実は重度訪問介護という長時間の付き添いと見守りが入る制度がありまして、本当にそれを一番最初に使いたいのですが、介護保険優先ということで使えないということで、両方とも利用させてほしいと、併用させてほしいという件が大変多く挙がっております。

 それから、重度訪問介護の単価がやはり非常に低いということで、事業者の参入が少ないと。事業者が重度訪問をやりたがらない。介護保険の身体なら単価が高いから、身体なら行くよと言ってくれるのですが、身体で使えるのは大体長くても 1 時間ぐらいと。 1 時間で帰ってしまうということでしたら、こういう読み取りの技術は、やはりヘルパーは個々に習得していくので、とても習得できません。ですから、患者が言いたいことがあっても、ヘルパーが来てくれても、介護保険のヘルパーでこういうコミュニケーションができる方はほとんど、ほとんどというかゼロなので、重度訪問のヘルパーだったら長時間いる間に訓練をしますから、それで何とか読み取れるようになるという、ナガヤマさんもインノさんも、 2 人とも重度訪問のヘルパーなので口が読めるという状況です。

 それから、やはり重度訪介支援ということになるのですが、岡部さんは呼吸器気管切開で呼吸器を付けて、経管栄養で胃ろうから食事を取っているということで、一番障害程度区分は重いところにいるのですけれども、やはり国庫負担基準の額がもう少し頂けると、市町村のほうで時間数を上乗せしていけるのかなと思います。ですから、介護保険の利用者であっても国庫負担基準額を減額しないで満額払っていただきたいということは、ずっと申しております。

 その次です。制度的なところはいろいろあるのですが、今岡部からも申し上げましたけれども、入院中の事故が非常に多いです。呼吸器が外れるとか、ナースコールを一所懸命押そうとしてもずれてしまっていて、押せないまま我慢していたとか。やはり病院の中で、看護師やお医者さんは、岡部さんみたいな方が入院してくると、難病に慣れている病棟ならいいのですが、そうではないと、あたかも終末期というふうに見られてしまって、放ったらかされてしまうのですね。呼吸器が付いているから取りあえず生きているだろうということで、全然見に行ってくれないと。本人は一所懸命言いたいことがあって、コミュニケーションを求めているのだけれども、それを読み取ってくれないので、放ったらかされるわけですね。そういうことがあって、本当に患者たちはレスパイト入院が大嫌いです。もうレスパイトに行くぐらいなら死んだほうがましという方が本当に多いくらいです。家族にとっては、ずっと家で寝ないで夜もほとんど眠ることができなくて、 1 時間半に 1 回くらい寝返りとか吸引とか、お下の世話などがあるので、私もやっていたのですが、ほとんど 1 時間半以上は熟睡できないのですね。そういうことをしているから、やはりレスパイトをすごく楽しみにしていて、でもレスパイトに入れるというのは家族のためですから、拝み倒して患者に行ってもらうのですが、患者は地獄に行くような感じです。そこでレスパイトに行く行かないですごくトラブルがあって、行ったら行ったで、行くと患者がずっと泣いているとか、かわいそうだから、私はよく母をレスパイトに行かせても、 2 日くらいで引き取ってしまって全然レスパイトにならなかったという状況があります。それはやはりヘルパーの付き添いを認めていただけていないからですね。

 ここ数年、コミュニケーション支援ということで、市町村によっては、そのコミュニケーション支援をやりますという独自の事業をしてくださっていることもあるのですが、たった 3 時間とか 4 時間とかでコミュニケーション支援と言われても、 24 時間の間 4 時間だけコミュニケーションして、あと 20 時間は黙っていろということなのかというのがありまして、これでは全然駄目だと。自分の読み取りができるヘルパーを、岡部さんの場合はこの2人がきちんと病院について行って付き添わない限りは、岡部さんの命は保証できないと思っています。確かに入院中に亡くなるようなことも本当にあるのですね。そういうのは、なぜか表に出ません。家族が訴えないからだと思うのですが、そういうことがあります。ですから本当に、この 6 項目の中で一番患者たちが何とかしてほしいと言っているのは、治療とかレスパイト中の入院時のヘルパーの付き添いを、どこでも見つけて見届けていただきたいと。それからコミュニケーション支援というだけではなくて、見守りも入れていただきたいということだと思います。

 それから 3 番のコミュニケーション支援についてです。こういうコミュニケーションの訓練は非常にお金も時間もかかるのですが、それを普通のサービスの中でやっておりますので、たいていの事業所は持ち出しでやっています。で、算定できないのですね。利用者から半人前のヘルパーを派遣して算定するというか請求するのかと言われてしまうので、しないで持ち出しで半年とか、もうほとんどボランティアに近い感じで重度訪問の介護事業所がやっております。そこを何とか支えていただかないと。この 6 番なのですが、重度訪問事業の介護をする事業所がもう増えないということになっています。今、やはり重度訪問介護の事業をやっているのは CIL など、障害当事者がもう本当に自分たちの経験を何とかしようということで、もう商売でなくてやっているような所しか重度訪問介護の事業をしないと。そうなると、やはり 1 市町村にある所と無い所とありますし、すごくその介護保険の事業との格差がありますので、この重度訪問介護の事業者、それから医療的ケアをやっている事業者を支える何らかの方策がない限りは、やはり事業所は増えないというのが、これは本当に深刻です。事業者がないので呼吸器が付けられないと、すごく言われているのですね。私もおととい同じことを言われて、東京の四谷に住んでいる、最も恵まれている環境の中の患者でさえも、そういう状況がありますから、もう東京でさえそうなのに、地方に行ったらどれだけ酷いのかということがあります。地域間格差の是正については本当にいつもお願いしているのですが、やはり少しずつは改善されてきているとは思いますけれど、それも当事者の努力によるものでして、やはりそれは全国どこに住んでいても生きられる、頑張れば自立できるという制度にしていただかないと、やはり命は守れないのではないかと思っております。

 それから、最後に重度訪問介護の内容なのですが、いろいろあります。見守りだけのものもあれば、こういうコミュニケーション、それから医療的ケアをやらなければいけないと。夜中でも全く一睡もできません。 ALS のヘルパーは、ずっと顔を見ていないとナースコールが外れてしまったり動かせない場合が多いので、ずっとまっ暗にしていても、当人の顔を見て、目が覚めたときに、いつでも読み取るというのをしなければいけないので、そういう見守りと、後ろで読書をしていてもいいような見守りを分けていただかないと、事業者としてはやる気がなくなるというか、 ALS をやるよりはそっちをやったほうがいいだろうという話になるので、その辺は加算や処遇改善などで少し手を貸していただかないと不公平かなと思っております。

 では、岡部さん最後にまとめてください。

 

ALS 協会岡部副理事長

 どうぞよろしくお願いいたします。

 

○佐藤座長

 ありがとうございました。それでは、このグループの意見表明、 3 つの団体からお願いしましたが、ここでこれまでの意見について御意見、御質問等、意見交換をしたいと思います。約 20 分ぐらい時間を取っております。なお、意見表明に関しては、それぞれたくさんの思いがあるかと思いますが、基本 10 分ということで遵守していただきますように、改めてお願いいたします。

 それでは、御意見、御質問よろしくお願いします。

 

○山下構成員

 山下です。全国手をつなぐ育成会連合会の方に質問をさせていただきます。私の理解が及ばなくて、もう少し具体的な説明をしていただきたいと思った所があります。資料 7 2 ページ目、訓練事業の活用という所についてです。こちらには「ホームヘルプや行動援護等の訪問事業でも、訓練事業を活用することで」とあるのですが、この訓練事業の活用というのが、具体的にどういう形を想定すればいいのかということについて、もう少しお話をお聞きしたいと思いました。先ほどの口頭のお話では、自宅の中のサービスの充実のために訓練期間を経てという表現をなされたかと思うのですが、どういう形で訓練を活用するのか、特にホームヘルプの利用においてというところでお願いいたします。

 

○育成会連合会田中総括

 それでは、説明させていただきます。訓練事業という表現に少し抵抗がある方もいらっしゃるのですが、訓練という言葉で、御本人の障害状況が改善されるのではなく、関わりがどのように必要かということのアセスメントというふうに捉えていただくと、この訓練事業の意味合いを理解していただけると思っております。

 アセスメントがなぜ必要なのかということになりますが、家族同居の場合、特に知的や精神の方の場合は、親御さんが見ていることが大前提になっているということで、先ほど ALS の方からもレスパイトでという言葉がありましたが、このレスパイトという語源には、親が見なければいけないという罪の意識を押し付けられている状況を解放するという意味があって、介護からの解放ということなのですね。そういったことを前提に考えると、親だけがみつづけるということを、このアセスメントが今いる親御さんの状態を捉えることが十分でなく、そして本人がどのようにサービス利用していったらいいかの見通しがないまま、今現在の状態で支給決定がされるというのが現状なのです。そうすると非常に薄い関わりになって、結果として本来アセスメントする部分の深いところまで関わりが持てないということです。この訓練事業がそのアセスメントという代わりになる位置付けを持つと、訓練期間がまずは 1 年間ということで、 1 年間で見通しが持てれば、そこで訓練が終了で本利用になっていくということです。就労移行の場合には、その流れにおいて関わっていく関わり方の結果として、ゴールに就労や雇用があるということになります。同じような位置付けで、ホームヘルプの本利用が始まるためのプレ利用という形で、過不足の状況も含めて 3 か月に 1 回見直しをかけるということになっています。サービス利用計画も今モニタリングで同じような位置付けがあるのですが、薄い関わりのままのモニタリングですと、本当に必要なところが見えてこないということで、あえてこの訓練事業という関わりを前提にして、きちんと必要な状況にたどり着けるというゴールに向けて訓練を施してはどうかという提案になっております。

 

○佐藤座長

 よろしいですか。それでは、そのほかに御質問がありましたらお願いします。

 

○野沢構成員

 野沢です。常時介護を要する障害者の支援ですね。重度訪問介護の適用拡大ということで知的、精神のほうにも拡大になって、ワーキングチームの課題の大きな 1 つがここなのですが、判断能力やコミュニケーション能力にハンディがある知的障害のある方たちにとって、いつ必要で、どのくらい必要なのかと。もし、そのヘルパーと相性が悪くて嫌だったら、誰がそれを意思表明するのかと、いろいろなことが考えられるのですね。この辺りが、私はとても前から考えていても答えが出てこないところです。

 去年か一昨年だったか、育成会主催で国の虐待防止研修をやったときに、あえて言いますが、これはとてもいい研修だったのです。それで、最後に福岡から身体障害の当事者の方に来ていただいて、当事者の声を聞こうではないかと。彼は頭もいいし、コミュニケーション能力も長けているし、非常に意志の強いというか自己主張の強い方なのですが、その方でもこんないう話をしたのですね。ヘルパーを頼んでしまったんだけど、今日は風邪をひいてしまってどうも身体がだるくて断りたいなと思ったと。でも、キャンセルしてしまったら相手も困るだろうなと思ったし、次回から使いにくくなるな、嫌な思いを持たれるのも嫌だなと思って、なかなかキャンセルできないと。それで、ぐったり疲れながら一緒に出掛けて行ったと話をしたときに、ああ、こういうタイプの方でも、やはりそういう遠慮があるのかなと思ったのですね。

 そうすると、ますます判断能力やコミュニケーション能力にハンディのある方への利用というのを、我々はどういうふうに考えていったらいいのか。もしそういうことが起きたときに、例えば生活の質をそれによって落としてしまったり、あるいは自立を阻害してしまったり、権利擁護にもいろいろな問題が出てきたりすると、公的なお金、貴重なお金を使いながら、そういう非常に深刻なミスマッチが起きている。起きる可能性がある。しかも、それをなかなかチェックできないし、一旦利用し始めると、なかなかそれを修正したりストップすることも難しいとなると、一体どんな制度設計が考えられるのだろうかと、いつも悩むのですね。全国手をつなぐ育成会、あるいは JDDnet 、こういうタイプの障害者への常時見守りをどんなふうに考えたらいいのかと、一言ずつコメントを頂けたらと思います。

 

○佐藤座長

 では、育成会からお願いします。

 

○育成会連合会田中総括

 今、意思決定支援と常時介護が必要な方への支援がかなり錯綜して御質問があったのですが、特に意思決定支援については、諸外国の文献調査をしたところでは、意思表明ができることを前提に、ことが進んでいて、表明しにくい、若しくは今の現状では関わりが難しいという方についての対応が、まだ十分に確立されていないということで、同じようなことが日本でも引きずっているかなと思っています。やはりコミュニケーションを取れないことを諦めずに、どのようにコミュニケーションしていくのかということについて、今、幾つかの実践事例などを集めて、その集積において複数の選択肢を複数の目で見ていくというのが一番いい、取りあえずの段取りかなと思っています。いずれにしても、選択肢を暮らしの中での日常の関わりと人生の選択、例えば家を引っ越すとか職を変えるとか、若しくは財産をどのように使うかということにおいての選択が、大中小というようなイメージでも分けられるかなと思いますので、そういった場面場面での設定の仕方においても工夫が必要で、現状ではまだそこが未成熟だということですので、積み上げていく必要があるだろうと思っています。コミュニケーションが取れない人はいないという前提で取り組んでいく必要があるだろうと思っています。

 

○佐藤座長

 では、発達障害ネットワークからお願いします。

 

○発達障害ネットワーク市川理事長

 育成会のに比べると、意思表示はできるのですが、その質問の意味ができないとか、おかしなことを言ってしまうということは実際にありますし、逆に、うまくコミュニケーションを取れないので行動上で表すと。それは例えば、仕事に行かなくなってしまうとか、学齢期だけれど学校に行かなくなってしまうとか、そういう恰好で示してきます。その辺りのときに、何かそれを拾えるというか、この場合、子供の場合は保護者というふうになるかもしれませんが、選択できるような方法、あるいはそれをもう 1 回チェックできるような機能が付いているといいのかなと思っているのです。その点については、少しずつできてきているのかもしれませんが、まだまだ不十分だなと思っています。

 それから私が考えているのは、最終的には、やはり支援のスキルアップ等が十分になってくれば、そういうことがなくなってくるのかなと思いますし、コミュニケーションそのものは、ある程度は改善できると思いますが、完全になるかというとなかなか難しい問題があるなと思っております。よろしいでしょうか。

 

○佐藤座長

 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

 

○新井作業チーム構成員

 埼玉県立大学の新井と申します。 ALS 協会にお聞きします。 1 番目の併用できない介護保険と総合支援法の関係で、先ほど重度訪問介護のことをおっしゃっていただいたのですが、それ以外のデメリットと言いますか、重度訪問介護以外で、この 2 つの制度の狭間になってしまっているところのデメリットというのはどういうことがあるのかというのを、もしよろしければ教えていただきたいというのが 1 点です。

 それから、 3 番目のコミュニケーション支援で、補装具とは別の地域支援事業の必須事業にしてくださいということなのですが、これは手帳によるものではなくということだと思うのですけれども、これはなぜなのか。タイムスパンが結構あるからということなのか、どういう理由でこうしたほうがいいとおっしゃっているのかを教えていただければと思います。

 

○佐藤座長

 よろしいでしょうか。では、 ALS 協会からお願いします。

 

ALS 協会川口理事

1 つは、介護保険のほうは自己負担の問題があります。やはり最重度を一番、あっという間に一番重いところにいってしまうので、 4 万円かけるぐらいの自己負担が発生するということと、とてもそんな額は払えないということで、家計の中で、患者のためには介護保険は 1 万円までしか使わないと決めてしまっているお宅が非常に多いです。そうすると、介護保険を、本当だったら全額使わないといけないのに途中までしか使わないで止めてしまっているので、障害の制度が使えないというお宅が結構あります。そういうことで、介護保険ではなくて障害の制度のほうがいいねと皆言っています。あと事業所は、やはり介護保険しかやらないという所が多いということですね。重度訪問はやりませんということで、介護保険のヘルパーにもっと長くいてほしいのにと言っても、引き上げられてしまうということで、もう少し制度を柔軟に、両方一遍に使えるといいなということがよく言われています。

 それから、コミュニケーションに関してなのですが、地域支援事業の必須事業にしてくださいと書いてありますけれども、これはスイッチの作成や調整は今、訪問でボランティアの人たちがやっています。これは制度化されていないので、本当に善意に頼っている部分なのですね。岡部さんは、今日はスイッチを持ってきていないのですが、お宅ではオーダーメイドというか手作業で作って、岡部さんの動くところを探して、そこにスイッチをくっ付けていくという感じで、本当にその場で作っていただかないと使えないのですね。買ってきたものを、ではこれを使ってと言っても使えないので、そういうボランティアや、あとは家族の中で一番器用な人が作っているという状況で、こういうボランティアを見つけられない人は諦めるしかない状況になっています。先ほど言いましたが、一昨日行った四谷の患者はそういうサービスを使えていなくて、まだ指は動くのにもうパソコンをいじれなくなっているのですね。それで、メールが来なくなっているからどうしたのかなと、私が見に行ったらそういう状況でした。それなので、やはりきちんと独立したサービスとして、コミュニケーションの訪問のサービスを作ってほしいということだと思います。補足はよろしいですか。以上です。

 

○佐藤座長

 よろしいですか。まだ少し時間がありますが。

 

○吉川構成員

 吉川です。私も作業チームでは常時介護を要する障害者の支援を担当させていただきますので、理解を深めるために ALS 協会の川口さんにお尋ねします。先ほどのお話の中で事業者の参入が少ないといった人材のこと、あとは時間数が足りないといったお話があり、その辺は、私もそうだろうなという理解をしています。お聞きしたいのは、特に意思伝達などに関した現場でのヘルパー育成といったことに関してです。私としては、それまでに教育を受けてきた方が、いきなりその対象者の担当になっても、なかなか意思伝達はかなり個別性が高いのだろうなと思います。そういったところを実際、その事業所の中で、報酬の評価も含めて、育成に関する期間や努力などをどのようにされているのか教えていただければと思います。

 

ALS 協会川口理事

 ありがとうございます。いい質問を頂きました。お二人もそうなのですが、まずベテランのヘルパーの入っている所に行って、見て学びます。すぐに自分でというふうにさせてもらえません。ずっと見ていて、それを何週間かやって、そのうちに読み取りの練習をし始めて、大体岡部さんの所だと、覚えの早い人は週 3 回ぐらい入って 2 か月ぐらいで大分読めるようになると思いますが、 1 年かかる人もいると言っていますね。その間はやはり 2 人体制で入っていきますので、その人の分は請求できないということで持ち出しになります。

 それから、こういう方の場合、 1 人のヘルパーで基本 1 人しか見られません。よく重度包括で、 2 人のヘルパーで 5 6 人の ALS の患者、吸引だけだったら、ずいずいずっころばしみたいにして、吸引して歩けば死なないだろうという安易な考え方で言われるということもあるのですが、御覧のとおり、読み取りには 1 人がもうずっと張り付かないといけません。ただ生きてるだけというのだったら、例えば 2 人寝かせておいて吸引だけしていればいいのかもしれませんが、読み取りをしないと、はっきり言って生きていたって意味がありません。読み取ってもらえないということでは。なので、やはり 1 1 が絶対に必要不可欠だと言っておきたいと思います。

 

○吉川構成員

 ありがとうございました。

 

○佐藤座長

 時間になりましたが、ほかによろしいでしょうか。それでは、お三方どうもありがとうございました。では、引き続き残りの 3 団体ですね。

                        

( ヒアリング団体入替え )

 

○佐藤座長

 それでは、お揃いのようですので、ヒアリングを再開します。まず、日本失語症協議会から意見表明をお願いします。

 

○失語症協議会八島理事長

 理事長の八島三男です。日本失語症協議会です。この病気は、話す、書く、聞く、それから、読む、計算する等が難しくなり、個人によってそれぞれ千差万別です。全国で 50 万人と言われています。つっかえつっかえ、私がしゃべっていたのではいつ終わるか分からないので、園田と交代します。

 

○失語症協議会園田副理事長

 日本失語症協議会の副理事長をしている園田と申します。私の夫が重度失語症で、もう 13 年目になります。今回の意見書は理事会だけではなく、支援者、専門家、いろいろな御意見を頂戴し、まとめさせていただきました。長いので、割愛しながら読みます。

 失語症とは、脳機能の損傷を起因とする言語機能の障害であり、失語症者は、言語理解、言語表出といった言語に関わる全ての機能に障害を有しております。国においては、障害者総合支援法における都道府県及び市町村の障害福祉計画における失語症対策の実行確保の状況を把握し、必要な措置を講じていくとともに、失語症を含む高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業に、各都道府県の普及啓発活動等の一層の推進確保をお願いしたいと思います。

 まず、失語症に対する就労支援ですが、失語症者は 30 50 歳の働き盛りの男性が多い。働盛りの家族の大黒柱が突然倒れ、家族全体の生活に大きな影響を及ぼします。失語症者の就労率は、他の障害の 12 %と比しますと 8 %と非常に低く、これは失語症という障害の特殊性が就労に困難を来たしているものです。現代のように、多量の情報交換やコミュニケーション能力を必要とする仕事の多い社会の中では、失語症者は就労が非常に困難であることが多いのです。特に失語症者の就労支援にあたりましては、失語症の特性とその者の生活実態等を踏まえた体系的な対策が必要であり、国においては、失語症において求められる就労支援の在り方を早急に検討していただき、各自治体や支援機関における適切な取組みの普及を行っていただきたいと存じます。言語機能支援と就労支援が一体的に提供されるような仕組みの構築や、その下で、支援機関は当事者の身体的・心理的状況を見極めながら雇用者と連携し、疑似体験などを設けるなどして、失語症者の職場復帰、就労を図っていくことをお願いします。

 移動支援に関しまして、失語症においては、言語理解における障害等のため、移動において大きな障害を受けます。世田谷区におきましては、失語症者に対する移動支援が障害福祉サービスとして総合支援法の中で制度的に位置付けられ、必要なサービスの提供を確保していただきたいと思います。

 相談支援についてです。「高次脳機能障害及びその関連障害に対する普及事業」における各都道府県の相談事業であっても、失語症及びその家族等からの相談に対しては対応が困難なため、他の機関を紹介するといったことが生じております。相談内容に応じて、失語症の障害の特性を理解した適切な支援が行われますよう、また、相談機関における相談員に、失語症に関する講習を受けさせて失語症を理解した相談員の配置を確保する取組みをお願いしたいです。また、相談機関に言語聴覚士等の失語症の専門職を配置することや、また、配置には至らなくても連携を図る仕組み、また、法律や心理学等の専門家との連携を図る、また、これは大きいのですが、失語症者を家族に持ち、その日常生活に経験のある失語症者の家族を配置する等の人的相談体制の充実も必要だと存じます。また、失語症においてはコミュニケーションが困難なので、自死や離婚に至る事例が私どもの相談例でもとても多いのです。失語症への支援は本人のみならず、広く家庭にまで及ぼさなければ、この支援を全うしているとは言い難いと思います。失語症者とその家族に対するケアと、失語症者とその家族を含めた支援体制の充実を図っていただきたいと存じます。

 障害福祉サービスに関して、今回の制度の見直しにあたっては、附則第 3 条に規定する「障害福祉サービスの在り方」の検討事項として、これら「障害福祉サービスの受給の前提となる社会保障制度の問題」についても対象としていただき、並行した制度見直しを行っていただきたいです。

 リハビリ制度の確立。失語症は、長期間にわたってリハビリを継続することにより回復の効果があるとの医学的見解が示されております。ただ、完治することはありません。医療機関で改善が予想される場合の医療機関におけるリハビリの継続の期間制限を設けない、実効的な仕組みを構築していただきたい、また、国において、失語症者が日常生活を送る際に必要な限度の取得を支えるリハビリデイサービス等の施設の充実、また、現在あるそれらの施設に対して制度的な配慮をいただきたい。介護保険対象にはならない若年層、あるいは外傷その他を起因とした若年の失語症者が大変多くなっております。介護保険の 2 号保険者に該当しない者も多数おります。そのような者も「リハビリの部分においてのみ」、介護保険該当者でなくても、言語障害のある者が全て介護保険者と同じ「利用料の 1 割負担」程度でリハビリを受けられるような特例を設けていただけるとうれしいと思います。

 次は、当事者等の意見を届ける仕組みの確立です。障害者及びその家族の意向に関わる部分、いわゆる認定調査員の市町村の審査会に通知するにあたっては、その認定に関わる障害者及びその家族に対し、事前にその内容を確認する等、当事者の意見を正確に届ける仕組みの確立が必要です。認定調査員がその症状を十分に理解した上で調査に当たられるよう、プロセスを改善していただきたいと思います。

8 ページの意思疎通支援者の制度化です。いずれにしても、そもそも失語症者にとって、他者との意思疎通を図ることは、その基本的人権の確保のために必要不可欠なものであり、全国の普及の実現のみならず、人権保障の観点からも、国が認めた専門職としての失語症者に対する意思疎通支援者の制度を確立していただきたいと思います。

9 ページです。社会生活上では、裁判手続や捜査機関における取調べ等の司法制度においては、失語症に対する意思疎通支援者の派遣等の意思疎通支援制度を確立し、憲法上の権利である裁判を受ける権利や適正手続の保障の観点からもお願いしたいと思います。また、選挙権・被選挙権の行使の場合も、非常時や災害時における支援の在り方についても検討していただきたいと存じます。

1 つ抜かしてしまいました。成年後見制度の件です。失語症は、物事を判断することに障害があるのではなく、言語を語る、操る機能に障害があるのです。失語症者の特殊性を踏まえた、言語のみの能力低下があるような、補助、補佐、そういうレベルを対象とした人たちは後見レベルとは異なる支援が必要ではないかと思います。以上、簡単にまとめさせていただきました。ありがとうございました。

 

○佐藤座長

 ありがとうございました。続きまして、「日本脳外傷友の会」から御意見をお願いします。

 

○脳外傷友の会東川理事長

NPO 法人日本脳外傷友の会の東川と申します。御承知のように、私どもは、若年で脳外傷 (traumatic brain injury) を受けた者たちの会として発足しましたが、その後、続々と、今お話があったような失語症を代表とする高次脳機能障害の会が各地に出て、一緒に運動したものですから、外傷性だけではなく、広く高次脳機能障害の団体、現代は 57 団体で構成しております。そして、国に対して障害認定、その他の働きかけをしたものですから、 2001 年からモデル事業をやっていただいて、国リハを中心に高次脳機能障害支援モデル事業が行われ、そして、現代では「普及」が取れまして、高次脳機能障害及び関連障害支援事業として実施されております。その関連事業というのは、主に失語症、及び、重度、軽度を含む脳損傷者の支援事業という形になっております。今お話になられたように、失語症という言葉がその中に入っていないので、失語症の方たちは大変御不満をお持ちなのですが、現在では各都道府県に支援拠点ができまして、全国に約 120 か所ぐらいの相談機関も設けられております。そして、地域によって格差はありますが、当然ながら、その中で失語症の支援もやっている所もあります。それはまだまだ不十分だというお話でしたが、私たちは今後とも、高次脳機能障害支援事業の中には、失語症、あるいは、そこに書きましたが、 MTBI と、横文字を使ってしまい、これは問題のある書き方だと言われましたので、ここを読み換えていただきたいのですね。「軽度外傷性脳損傷」というふうに置き換えさせていただきたいと思います。外傷性軽度脳損傷等も含む関連事業として、この事業を恒常化してやっていただきたいと。今、やっていただいていますが、いつやめてしまうのか、ちゃんと継続してやっていただけるかどうか、全国で非常に不安に感じております。それは、発達障害の支援事業は予算化されて大きな予算もついており、今年度の概算請求にも高次脳機能障害という言葉は全く登場しなくなっています。各地域生活支援事業費の中から、国リハでは厚生労働科学研究費の一貫としてやることになっておりますから、全国から、いつまで続くのだと、ちゃんと恒久的に続くのかどうか、そこのところをしっかり話してこいと言われておりますので、恒常化した事業として、各都道府県及び政令指定都市、中核市の中でも、例えば、藤沢市が始めておりますが、支援センターを置きました。そういったふうに、中核市にも支援センターを置いて、今お話にありましたように、 50 万人もいると言われておりますから、今後の大事な障害者施策に関わると思いますので、是非継続してやっていただけるよう、それがまず一番のお願いです。

 それと同時に、主な障害の原因は、私どもの息子のように、交通事故に遭った、あるいは、八島さんのように、脳卒中や脳血管障害になられたことによって中途で障害になるものですから、いろいろな機関を経て世の中に出てくるわけです。医療保険、介護保険、年金、自動車保険、労災保険、それから、雇用保険、生命保険とか、いろいろな事業に関わってまいりますが、そういう救済制度も全部、申請主義ですから、それを熟知したコーディネーターの存在によって支援が滞りなく行われるような専門性を持ったコーディネーターが是非必要だと思います。

 今の支援事業の中では、国リハのコーディネーター研修会があると、大体 200 人ぐらいの方が参加されるようになりましたが、専門性が非常にバラバラなのですね。精神保健福祉士の方だったり、医療福祉士の方だったり、看護職であったり、言語聴覚士であったり、あるいは行政の担当者であったり、非常にバラバラなのです。すると、情報がきちっと伝わらない、御存じない、あるいは、非常勤であったりするわけです。専門職を持った常勤の方々にきちんとコーディネイトをお願いしたいという強い要望を持っております。

 恒常的な事業として、高次脳機能障害を是非、明文化していただきたい。厚労省がよくお使いになる、地域包括支援事業の中で、こんな支援がありますよと、図式がいろいろ書かれておりますが、その中に、精神に入ることになってしまいましたから、一括で支援が行われていますよという形で。発達障害の言葉は出てくるのですが、高次脳機能障害という言葉が図式の中に登場していないのですね。ですから、各地方自治体に相談に行っても、そんな障害は知りませんよというような回答が帰ってきてしまう。是非これからは、図の中に、高次脳機能障害を含むというような図式を作っていただきたいのと、あるいは、全国課長会議などをやるときに、ひとことでもいいから、高次脳機能障害を含むということをおっしゃっていただきたいと思います。それが主たる要望です。

 あと、論点についてです。障害者等の移動の支援、就労の支援、その他の福祉サービスの在り方についてですが、移動支援の支給決定は地方自治体によって全然バラバラで、移動支援が使えている所と全く使えない所があります。この支給決定の仕組みの中に高次脳機能障害者も是非入れていただきたいと思います。

 それから、障害支援区分の支給決定の在り方ですが、本人がベラベラしゃべって、何でもできるように答えてしまう人が多いのです。ところが、実際には何もできないと。ですから、本人のみならず、家族の意見も十分に聞いた上で支給決定を決めていただきたいと思います。それから、成年後見制度の利用の仕方についても、意思決定の支援は、先ほどからいろいろ出ておりますが、それをしっかり重視して、支援をしながら成年後見制度の有効な利用を図っていただきたいと思います。

 あとは高齢の問題。これもほかの団体からも全部出ておりますが、 65 歳を過ぎると介護保険へ移行だよと、一概にそうではないと厚労省はお答えになっているのですね。でも、その情報がほとんど伝わっておりません。ですから、そういう大事な情報をきちんと伝えていただきたいと思います。

 それから、例えば、中途障害で、休職中に B 型の作業場を使えるかどうかもよく話題になります。リハビリの一貫として B 型の作業場を使う方が多いのですが、使えるそうですね。ですが、使えないと言われた件もあって、そういう情報が錯綜してしまっているのですね。この間初めて、使えるんだと知りました。そういう情報をきちんと伝えていただきたい。都道府県任せではなく、国のほうできちんと周知徹底をしていただきたいと思います。以上でございます。

 

○佐藤座長

 ありがとうございました。それではヒアリングの最後になりますけれども、日本精神科病院協会の御意見をお願いします。

 

○日精協櫻木委員長

 日本精神科病院協会の櫻木でございます。本日はこのような意見表明の機会をお与えいただきまして、ありがとうございます。それでは、事前にお配りをしている資料に沿った形でお話をさせていただきます。

 精神・保健分野における医療・福祉に関しての制度改正ですけれども、昭和 25 年に「精神衛生法」が制定されまして、専ら医療の分野における様々な制度がそこで進んできました。昭和 62 年に「精神保健法」になって、そこから様々な福祉の問題、例えば社会復帰施設に関することであるとか、あるいは精神障害者の地域生活援助事業というようなことも始まったわけです。平成 7 年になって「精神保健福祉法」という名称に変わることによって、例えば福祉手帳制度が創設されるとか、あるいは社会復帰施設が法定化されるといったような形で、福祉がかなり増進されてきたわけです。平成 17 年の「障害者自立支援法」のところで、もともとの法律から福祉の法律のほうに移行するというようなことで、少々制度の錯綜というようなことがございました。

 精神障害者の福祉の特徴、それから現行体系の不備ということに関して言いますと、そういった経緯からも分かるように、例えば身体障害、あるいは知的障害といった他の障害と異なって、精神障害の場合には医療、精神科医療サービスの基盤の上に地域生活が成り立っているという特徴がございます。そのために精神疾患の不安定さ、あるいは脆弱性さというようなことによって、その状態であるとか、あるいは能力の程度というのが非常に大きく変動いたします。そのために、福祉的なサービスと医療的なサービスとが重層的に切れ目なく、症状の軽重を問わない支援の体制が必要であることが言えます。現行の支援制度、サービス体系は、そういった医療的なサービスと福祉的なサービスが重層的に提供されるところに関しての配慮が若干欠けているといった基盤があります。したがいまして、精神障害者に必要な新たなサービス体系に関して言えば、現行の体系に付加するような形で、地域における医療サービスをどういうように評価していくかということが必要だと考えております。

 現在、入院の患者さんは 1 年間に 40 万人余りの方が新たに入院をされます。そのうち大体 88 %の方は 1 年以内に退院をされるわけですけれども、現状でも 1 年以上入院をしておられる精神障害者の方は 20 万人いらっしゃることが言えます。その 20 万人の方が、毎年 5 万人ずつ退院をされるということですので、その翌年まで 15 万人余りの方が入院を継続される。その中には、例えば重度慢性の患者さんであるとか、あるいは身体合併症をお持ちの患者さんというような、より高密度な治療が必要な方と同時に、例えば要介護状態で入院を継続をされているとか、あるいは生活障害が重度なために入院を継続されているというような方もいらっしゃって、これが今後、退院を促進する対象になると考えられます。

 また、現在、平成 23 年のデータですけれども、入院患者さんの 50 %が 65 歳以上の高齢者になっている。退院者の状況を鑑みましても、 1 年未満の入院期間の患者さんに関して言えば、 71.4 %が在宅に復帰されておりますが、 1 年以上 5 年未満の患者さんに関して言えば、例えば転院あるいは院内の転科あるいは高齢者の福祉施設あるいは、残念ながらお亡くなりになる方というのが合わせて 66.2 %。これが 5 年以上になりますと、その比率は 81.1 %ということで、その地域移行ということが一層、困難になってきております。

 長期入院精神障害者の方の地域移行の方策に関して言いますと、検討会が結論として出しているのは、 1 つは病院の構造改革ということもございますが、この方が地域に移行した場合に、地域生活をどのように支援していくかというようなことで、例えば居住の場の確保であるとか、あるいは地域生活を支える新たなサービスの確保等々が提言をされております。これまでの精神障害者福祉の整備における基本的な認識の確認と共有ということに関して言いますと、我々民間の精神科医療機関がかなり地域生活施設あるいは就労訓練施設の整備については努力をしてきたということなのですが、それにも限界があるということです。

 精神障害者に必要な地域福祉のサービス形態ということに鑑みますと、先ほどお話をした精神疾患の特性というようなことに鑑みて、やはり医療サービスも福祉サービスと同様に提供される必要があるだろう。その中でも、障害の程度が中等度から重度の精神障害者の方々には精神疾患の病状管理、そのための症状などをケアする特別な専門的な支援、例えば看護師であるとか、あるいは作業療法士といった専門職による対応が常時必要であろうと考えます。障害の程度が重い精神障害者の方の地域生活サービスとして、現在のサービス類型にこういった医療的な背景を持った機能を付加して、その精神疾患の特性に合致したサービスとする必要が出てくると考えます。重度の精神障害者の方が今後地域移行して、地域で生活を維持するためには、現在の障害福祉サービスでは対応ができない。新たなサービス体系、あるいは現在のサービス体系に付加する、つまり専門職の配置を可能とするような体系が必要になってくる。生活支援のみではなく、医療あるいは看護の面から疾病管理やリハビリテーションを行うことができるサービスを構築する必要がある。疾病は時間をかけても緩やかに回復する可能性がありますけれども、回復のための治療的な対応あるいはリハビリテーションが非常に重要な要素になってくると考えます。

 提言書のほうです。提言のその 1 点目として、精神障害者の居住の場の確保ということを挙げさせていただいております。高齢化に伴い、精神症状は安定したものの、生活障害が目立ち、要介護状態にある精神障害者の方の受入れに係る課題の解消に向けて、グループホームにおける専門職員の配置が可能となるような財政措置を要望いたします。また、ケアホームとかグループホームの一元化に伴い創設されたサテライト型住居については、その普及が進んでおりません。今後、その普及に向けた一層の経済的な措置を要望いたします。

2 点目として、精神障害者の地域生活を支えることのできるサービスの確保が必要です。医療機関の外来やデイケアでの適切な医療を受けながら地域生活を送れるよう、外来医療体制の整備や充実、医療と福祉の協働が図れる体制の構築が必要だと考えます。入院中から連続した地域移行支援・地域定着支援、デイケアへの導入を推進することや、あるいは短期入所、自立支援訓練の活用ということを提案いたします。

3 点目として、地域生活支援の基幹的なセンター施設としての、仮称ですけれども「多機能型地域支援センター」の創設を提案いたします。医療と福祉の有機的連携を確保しつつ、生活支援を実践し、併せて地域での生活を支え、家族の負担を軽減するレスパイトケア、あるいはショートステイを充実させることが不可欠です。更に、症状悪化時の常時対応型の危機介入センター機能を医療機関との連携の下に行うことや、就労支援、社会生活訓練、サービス事業者の研修、家族支援等を総合的に行うセンター施設の創設を提案いたします。

4 点目として計画相談支援の充実を提案いたします。障害者総合支援法の完全施行となる平成 24 4 月からは、支給決定を行う際には全ての利用者にサービス等利用計画書が必要となります。平成 26 6 月の時点では、障害福祉サービスの利用者は 71.2 万人と推計されています。しかしながら、現状では、サービス等利用計画案の普及は低く、各市町村自らが作成をしているケースもあるようです。「きめ細かな計画相談」となるよう、経済的な評価の在り方も含めて、今後普及が高まるような施策の実施を要望いたします。以上です。

 

○佐藤座長

 ありがとうございました。お三方からの意見表明が終わりましたので、これから質疑、御意見の交換ということで、残った時間を進めてまいりたいと思います。一応予定は 12 時半までということになっていますので、 15 分から 20 分ぐらいの時間が残っております。それでは、どちらからでもどうぞ。

 

○東内作業チーム構成員

 和光市の東内と申します。どうぞよろしくお願いします。私のほうもどちらかというと、高齢者の経験が長くて。ただ、高齢者のほうでも、今日お話を聞いていると、とても課題となるべきところが多いのですね。「地域包括ケア」という言葉は、 A さんや B さんが、いろいろな課題を今日みたいに抱えている場合に、多制度多職種を連結していくといったところがあるのですけれども、まず高次脳機能障害の関係でお聞きしたいのです。直球で聞くのですが、高次脳機能障害専門の通所介護だとか、高次脳機能障害の方の専門の訪問介護だとかというのが必要と考えているか、お聞きしたいのですけれども。高次脳機能障害の方の専門という名前が付いたデイサービスみたいなものが必要か、もしくは高次脳機能障害専門という訪問介護みたいなものが必要か。

 今、和光市でも介護保険であるとか障害とかをベストミックスして、高次脳機能障害の方などにサービスを提供しているのですが、その団体として、会としてそういうサービスが専門的に必要かどうかというのを、お聞きしたいのです。

 

○脳外傷友の会東川理事長

 本当は、あれば望ましいですけれども、なかなかそれは望み得ることでもないので。現実に、家ほ族会が、確か全国で 19 箇所ぐらい、高次脳機能障害の地域生活活動センターとか、 B 型作業所、 A 型をやりだした所もありますが、作っております。家族会がやっているのは、高次脳機能障害に特化してやっていますが、でも、法律的にはなかなか高次脳機能障害だけでは難しい。発達障害の方を受け入れたりも最近始めているようです。逆に、介護保険の事業所さんに通っている高次脳機能障害の方もおります。とにかく本人に合う場所であれば望ましいということで、現行の制度の中では難しいと思いますので、特化しなくてもよろしいかと思いますが。

 

○東内作業チーム構成員

 もう 1 点だけよろしいですか、精神の関係で。介護というのは医療と介護の連携とか叫ばれて、地域医療連携とか垂直統合とかやっているのですけども。今お話聞くと、やはり基本は同じですよね。入院・地域移行・定着計画といった中で、精神のほうの会議で、いわゆる地域移行して定着して、その中で住まいの確保であるだとか、そこから就労なのか、 A なのか、 B なのか、もしくは地域活動支援センターなのか、そういったところも会としてのベストプランというか、実態論に即するようなベストプランのモデルみたいなものって、あるのでしょうか。

 

○日精協櫻木委員長

 精神の特性といいますのは、その疾病と障害が共存しているということですので、当然、医学的な関与というのがどうしても必要になります。ですから、一般的な障害福祉と言うと、何か疾病自身はある程度固定化をしている中で、地域移行あるいは地域定着を進めていくことになりますが、やはりそこで増悪をしたりとか、あるいは不適応な状態で症状が悪くなることがありますので。今であれば、例えば外来のデイケア機能とか、あるいは自立支援訓練というようなことで、ある程度医療も関与したような形で行ってはいるのですけれども、なかなかそれが十分には進んでない部分があったり、あるいは新たに追加をされた様々な福祉的な部分というのが十分に、いわゆる医療との連携が図れていないということですので、そこの部分というのは、例えば診療報酬上の問題であるとか、あるいは障害福祉サービスの報酬の問題で縦割りになっている部分がありますから、そこをもう一遍、整理をし直すというような考え方も必要ではないかと考えております。

 

○東内作業チーム構成員

 分かりました。

 

○失語症協議会園田副理事長

 今の件に関してなのですけれども、失語症に関しましては失語症という特性上、一般のデイサービスではなかなか受け入れていただけない。受け入れていただいたとしても、さっきどちらかがおっしゃってました、放っておかれる存在になる。つまり、失語症の方、高次脳機能障害の一部であるのですが、失語症の方には特化した居場所が必ず必要だということです。それも更に言語訓練を兼ねた、居場所。つまり失語症というのは 1 年、 2 年では改善しません。 10 年、 20 年、長いときには 30 年、そういうレベルで改善していきます。リハビリをやめれば、そのリハビリをやったところからどんどん能力が衰退していきます。ですから、常にそういう特化されたような施設が設けられれば、もう万歳ということでございます。よろしくお願いします。

 

○佐藤座長

 ありがとうございます。はい、どうぞ。

 

○田村構成員

 田村です。よろしくお願いいたします。まず、失語症協会の方に 1 点お伺い、教えていただきたいのですが、成年後見制度の話が出てきたかと思います、付け足しの形でおっしゃっていただいたかと思います。実際には成年後見、後見が必要でない可能性がある方が、現行のサービスでは足りなくて後見制度になってしまって、かえって御本人の意思がいろいろあるのに、それが抑えられてしまうとか、そういう問題の御指摘だったのかなと思うのですが、そういう解釈でよろしいですか。

 

○失語症協議会園田副理事長

 明確な統計は出ていないのですが、やはり失語症の方が御高齢になって、御家族が意思が通じないから、どうせ喋べれないのだからいいやって、成年後見制をつけてしまうというような相談が何件かございます。でも、それはちょっと違うのではないかと、協議会としては御返答はしておりますが、国に、そういう確固たる段階というのが、私どもには見えておりませんので、なかなか支援ができない状態にあります。

 

○田村構成員

 成年後見制度の制度自体の課題のことと、それから失語症の方の意思決定というか、意思を引き出す関わり方の体制がまだ足りないという御指摘かなと受けとめました。ありがとうございます。

 日精協さんのほうにお伺いしたいことが 2 つあります。 1 つは居住の場の確保のところで、グループホームにおける専門職員の配置が可能となるような財政措置ということなのですけれども、具体的にはどういう専門職員がいることが望ましいとお考えかをお聞かせいただきたいと思います。

 それから 2 点目に、御指摘がありましたように、精神障害者の方たちは医療と福祉が両方必要だと、私も思います。医療に期待されるところというのは、とても大きいと思うのですね。一方で、福祉が遅れてきたこれまでの歴史的な背景があるので、医療が丸抱えで福祉的なところもやってきたと、これまでの中では一定程度整理がついているかと思います。今現在は 3 障害統合されて、そして総合的に障害者を支援していこうという法律がある中で、その障害福祉サービスでは医療側から見て、まだ精神の障害に対しては福祉サービスのここが不十分だとか、その支援の方法でもいいですし、それから具体的なサービス内容ということでもいいのですが、御意見をお聞きしたいと思います。

 そこに関連してなのですが、今相談支援事業所等が医療機関の同一法人で設置されている所も結構多いかと思いますが、なかなかその経営的に成り立ちづらくて、医療機関の中に、相談支援事業が引き戻されているというか、病院が直接相談支援事業を始めるところも、この 1 2 年増えてきているかなと思うのですけれども。そのことによって、また以前と同じように、医療の中に福祉を引き込みすぎてしまうことも懸念するところです。その辺りについて、先生のお考えをお聞かせいただければと思います。

 

○日精協櫻木委員長

 ありがとうございます。まず、グループホームの専門職の配置ということですけれども、一般的に考えられるのは、精神障害の特性をよく熟知している。それから医療が必要な場合に、取りあえずその医療と連携をするまでの期間どういうふうにつないでいくかということが、能力として必要だろうと考えます。

 ですから、例えば具体的に言えば、看護職の方はそういった精神障害の様々な症状の把握であるとか、あるいは医療ときちんと連携がとれるまでの間をどうつないでいくかというようなことについてはかなり習熟をされているのではないかと考えます。あるいは、病院で勤務の経験があるような、例えば PSW さんなどでもそういったことは可能ではないかなと。ただし、今のグループホームの仕組みで言うと、そういった専門職の方を配置をするというのは非常に困難だということがあります。あるいは、 24 時間対応ということはなかなかできないので、いわゆる夜間あるいは休日はどうしても医療機関と、ある程度連携を取ったような形で運営をしていることがあります。

 医療機関と社会復帰施設あるいは福祉の仕組みというのが、ひとまとまりになっていて、先ほどの先生の表現をお借りすると、医療が福祉を引き込んでいるというような表現になってしまうのかなと思いますけれども、そこはある程度我々としても節度を持ちながら、そういった社会復帰施設、福祉施設を自立していただくような形でやっていきたいのですけれども、どうしてもいわゆる危機対応というようなことに関してはやはり医療機関との連携を持っていることが不可欠だろうと思います。

 従来、医療機関のほうは地域連携機能、地域連携室というような形でセクションを持っていて、それに関しては診療報酬上の裏付けもあるということで、そういったものが備わっています。社会復帰施設のいろいろな不足している部分、あるいはおっしゃいましたように、相談支援事業所がなかなか財政的に成り立たないような部分があって。母体になった医療法人がそういったものを設立しても、なかなかそこの部分というのが自立できないところがある。どうしてもそこの部分は、医療機関のほうが援助をするというような形が、今出てきています。医療がもう一度福祉を自分の中に引き込む、あるいはまる抱えにするというような意図はないにしても、そういったことが起こっているのは実情だと。ですから、地域の相談支援事業所が、ある程度自立できるような仕組み、報酬上の評価ということは、今後の課題になってくるのではないかと考えています。

 

○佐藤座長

 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。

 

○寺島構成員

 寺島ですが、高次脳機能障害の方です。私も最近経験したのですが、先ほど言っていただきましたように相談機関は 120 ぐらいになって、すごく充実してきたと思うのですが、訓練機関が不足しているのではないかと思うのです。今のお話とは逆な話になるのかもしれないのですが、例えば精神病院などで、そういう方を受け入れることが可能なのか。そういうことについて、どう考えられるかというのを、お二人にお聞きしたいのです。

 最初に、日本脳外傷友の会のほうから、精神病院などで受け入れることが、可能であれば良いとか悪いとか、そういう何か意見をいただけませんでしょうか。

 

○脳外傷友の会東川理事長

 病院に入院という形だと、よほど急性期で、行動障害が激しくて、医療的な投薬などが必要な方については必要かもしれませんが、やがて社会に出していくわけで。そういう人たちについては、入院はちょっとまずいと思います。

 逆に、高次脳機能障害であることが分からずに、ずっと 30 年も精神病院に入院していたという人が最近わかりまして、その原因は交通事故だったと。あるいは、どこかから転落したことが発症の原因だったということが分かって、やっと高次脳機能障害だったんだというふうに分かって、出てきている人がいるのですね。そういう社会的入院の原因になってしまうような入院の仕方では非常にまずいと思いますので、急性期に精神科にかかって、投薬調整などをしていただくことは絶対に必要だと思います。あるいは、出てきたときに精神障害の方を主とした作業所なんかに通って、ぴったりはまる人もいるのですね。ですから、それはケースバイケースで、その人に応じた必要な支援がある所であったら、可能だと思います。

 

○寺島構成員

 入院ということは考えていなくて、例えば、精神関係で SST をやっておられるような機関がたくさんあると思うのですけれども、そういった所に通って訓練が受けられれば、社会資源が増えるのではないかなと、単純に思っているのですけれど。

 

○脳外傷友の会東川理事長

 なくはありません、そういう所を利用している人もおります。でも、そこにずっと永久にということだったら、非常に困るなと思いますので。先生のお考えは、いかがでございましょうか。

 

○寺島構成員

 永久ではなくて、訓練なので、リハビリテーションの話です。

 

○日精協櫻木委員長

 病院の入院機能を使うかどうかということに関しては、今お話があったように、極めて限定的に捉えるべきだろうと考えます。精神医学の世界も、いわゆる統合失調症を中心とした内因性の障害の治療だけではなくて、最近は脳の機能、器質性の障害、特に認知機能の問題、認知症をはじめとして、そういったものに関しても治療の幅が広がってきている。そういった部分ができてきていると思いますので、例えばある程度精神医療機関というのは地域にもかなり存在しております。地方の人口が少ないような所にも存在していますから、例えばそういった所で高次脳機能障害の方がリハビリテーションあるいは地域生活の支援を受けるということは有用ではないかと考えています。

 

○脳外傷友の会東川理事長

 全く同じです。

 

○寺島構成員

 どうもありがとうございました。

 

○佐藤座長

 それでは、そろそろ時間もきたところですが、私も 1 点だけ、数字のことだけなのですが、教えていただけたらと思います。精神病院の先ほど示していただいたデータによりますと、新規入院が年間 40.2 万人ということですが、これは再入院とか、あるいはもっと頻回に入院を繰り返している方を除くと、全くの新規入院という方だけで言うと、どのぐらいになりますか。

 

○日精協櫻木委員長

 そうではなくて、そういった再入院とかも含んで、新たにその 1 年間に入院される方です。

 

○佐藤座長

 ですから、その比率はどれぐらいですか。全く新たに。

 

○日精協櫻木委員長

 つまり、全く新たな方と、それから何回か繰り返している方の比率ですか。

 

○佐藤座長

 それは正確なデータが。

 

○日精協櫻木委員長

 正確なデータはちょっと今持ち合わせがありません。

 

○佐藤座長

 分かりました。ありがとうございます。もう 1 つ、数字のことなのですが、長期入院の方が 5 万人退院されているということですが、この 5 万人の方の中で再び入院される方というのはどれぐらいおられるのでしょうか。

 

○日精協櫻木委員長

 再入院の方の比率ですか。

 

○佐藤座長

 はい。この長期入院をされている方が 5 万人。

 

○日精協櫻木委員長

1 年以上入院をされている方が 1 年間トータルで、 20 万人いらっしゃって。その中から 5 万人ずつ退院をされると。

 

○佐藤座長

 そうですね、毎年約 5 万人が。

 

○日精協櫻木委員長

 すると、 5 万人退院された方で、次に再入院をされる方がどのぐらいいらっしゃるかと。

 

○佐藤座長

 そうです、はい。

 

○精神・障害保健課尾崎課長補佐

 精神障害保健課の調査を基にしたものなので事務局から補足させていただきますと、 1 年以上入院されていて退院した 5 万人の中で、転院又は院内でほかの科に移られた方が約 2 万人、 1 9380 人というのが、平成 23 年の調査から推計される数字となっております。以上です。

 

○佐藤座長

 今のところそれだけしか資料がないということ、ありがとうございます。時間も過ぎましたので、今日はここで終了したいと思いますが、よろしいでしょうか。

 それでは意見表明いただいた皆さん、ありがとうございました。また、委員の皆さん、御苦労さまでした。そちらにお返しします。

 

○福井企画課課長補佐

 本日は長時間にわたり、どうもありがとうございました。次回につきましては来週 1 30 日の金曜日、 14 時から、こちらのホールの 10B で、隣りですが、開催いたしますので、よろしくお願いいたします。


(了)

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