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2014年10月31日 児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会(第3回)

雇用均等・児童家庭局総務課虐待防止対策室

○日時

平成26年10月31日(金)17:00~19:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○出席者

委員

松原委員長 秋山委員 泉谷委員 磯谷委員
岡井委員 笹井委員 佐藤委員 菅野委員
辰田委員 浜田委員 藤平委員

オブザーバー

総務省 法務省 文部科学省 警察庁

有識者

黒澤 孝氏 (横浜市こども青少年局児童虐待・DV対策担当部長)
後藤 啓二氏 (弁護士・NPO法人シンクキッズ-子ども虐待・性犯罪をなくす会代表理事)
増沢 高氏 (子どもの虹情報研修センター研修部長)
中板 育美氏 (公益社団法人日本看護協会常任理事)

厚生労働省

安藤雇用均等・児童家庭局長 古川総務課長
川鍋虐待防止対策室長 大津総務課長補佐

○議題

(1)有識者からのヒアリング
(2)「当面の課題・施策の方向について」課題(3)~(5)について

○議事

○大津総務課長補佐

 定刻となりましたので、ただ今から「第3回児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会」を開催いたします。

 本日ご出席の皆さまには、お忙しい中をお集まりいただきまして誠にありがとうございます。加藤委員につきましては、本日欠席とのご連絡をいただいております。

 最初に、資料の確認をさせていただきます。配付資料は、議事次第、資料111となっております。資料の欠落等がございましたら、事務局までお申し付けください。

 注意事項を1点申し上げます。委員の方におかれましては、発言はマイクを通してお願いいたします。傍聴される皆さまにおかれましては、事前にお知らせしている傍聴時の注意事項の遵守をよろしくお願いいたします。

 本日は、まず有識者の方からご意見を伺うこととしておりますので、ご紹介いたします。横浜市子ども青少年局児童虐待・DV対策担当部長の黒澤孝様。

 

○黒澤孝氏

 よろしくお願いいたします。

 

○大津総務課長補佐

 弁護士でNPO法人シンクキッズ-子ども虐待・性犯罪をなくす会代表理事の後藤啓二様。

 

○後藤啓二氏

 どうぞよろしくお願いいたします。

 

○大津総務課長補佐

 子どもの虹情報研修センター研修部長の増沢高様。

 

○増沢高氏

 よろしくお願いします。

 

○大津総務課長補佐

 公益社団法人日本看護協会常任理事の中板育美様。

 

○中板育美氏

 よろしくお願いいたします。

 

○大津総務課長補佐

 それでは、議事に移りたいと思います。委員長、どうぞよろしくお願いいたします。

 

○松原委員長

 お忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。今日は、いろいろな方からご意見を伺いますので早速、議事に入ってまいりたいと思います。事務局から案内がありましたが、本日は議題(1)として930日に行われました「児童虐待防止対策に関する副大臣等会議(第2回)」にご出席いただいた横浜市の黒澤様、後藤様、増沢様と児童虐待防止対策の中でも特に発生予防の面で重要な担い手ということで中板様からお話をいただきたいと思います。

 次に、議題(2)として「当面の課題・施策の方向について」のうち、前回議論した課題を除きました(3)(5)について、ご議論いただきたいと思います。

 それでは、議題(1)の「有識者からのヒアリング」に入ってまいりたいと思います。黒澤様、後藤様、増沢様、中板様の順番にご説明を頂戴し、その後一括で質疑の時間を取りたいと思います。

 では、資料1について、黒澤様、お願いいたします。

 

○黒澤孝氏

 あらためまして、横浜市の黒澤と申します。本日は、横浜市の児童虐待対策をご説明する機会をいただきまして、ありがとうございます。それでは「横浜市における児童虐待対策について」、説明いたします。限られた時間ですので、資料の赤字の部分を主に説明させていただきます。

 まず、配布資料の2ページをご覧ください。本市には18の行政区と四つの児童相談所がございます。本市は人口約370万人、児童人口約59万人を抱える日本で最も大きな基礎自治体でございます。本市では児童虐待対策について八つの施策を柱とし、未然防止から重篤化防止、社会的養護の推進まで施策を総合的に推進しております。本日は赤字でお示ししました五つの取組についてご説明いたします。

3ページをご覧ください。これは本市における児童虐待対応の仕組みを図式化したものでございます。本市では市町村の役割を担う区役所と児童相談所との連携を円滑に行うためのさまざまな工夫を行っております。その一つが中ほどにピラミッドで表した「児童虐待及び不適切養育の共有ランク表」でございます。家庭での養育の状態や緊急度をAE5段階と特定妊婦の合計を六つのランク表で表し、区役所と児童相談所が共通の認識を図るためのツールとして活用しております。また、区役所と児童相談所で把握している要保護児童等を電子システムによる台帳で一元管理し、支援の見落としがないように連携して進行管理を行っております。さらに、区役所と児童相談所の職員が双方向の実地研修を行っており、お互いの業務を具体的に経験することで双方の理解が進み連携がスムーズになるなど効果を上げております。

4ページをご覧ください。実際のランク表はこちらの表になります。横軸に虐待の四つの種別を示し、縦軸には六つの緊急度を示したランクを示しております。それぞれの基準ごとに具体的な状態を示し、支援のコーディネートを担当する主担当機関を決める際の目安としております。

 次に、5ページをご覧ください。「区と児童相談所の連携強化指針・実務マニュアルの作成」について、説明させていただきます。虐待の発生予防から通告対応、区と児童相談所との連携方法等を具体的に示したマニュアルを作成しております。これは平成22年度と平成24年度に市長がメンバーとなり児童虐待対策に関する市長プロジェクトを行ったことによります。市長プロジェクトにおきましても区役所と児童相談所の連携が大きな課題となったため、「横浜市子ども虐待対応における連携強化指針」を策定し、区と児童相談所の役割を明確にするとともに、具体的な連携のあり方を示しました。この指針を基に区役所の実務マニュアルを作成したものです。切れ目なく見落としのないスピーディな支援をしていくために対応方法を業務担当ごとに具体的に分かりやすく示したことが特徴となっております。

 次の6ページ、7ページには母子保健のあらましなどを記載しておりますが、時間の関係もありますので説明は省略させていただきます。

8ページをご覧ください。これは看護師による母子健康手帳交付時の全数面接の流れを示しているものでございます。看護師による一次面接は妊娠届出書・アンケートを基に行っております。アンケートは過去の出産経歴など12項目についてお聞きしています。リスクの高い妊婦をスクリーニングして保健師等による二次面接につなげ、妊娠期からの継続的な支援を開始します。また、必要に応じて特定妊婦登録を行い、進行管理を行っております。要支援家庭を早期に把握し、妊娠期から切れ目なく必要な支援に結び付けることが虐待の発生予防につながると考えております。

 次に、9ページをご覧ください。本市は臨検・捜索を平成23年度に実施いたしましたが、それを振り返ってみますと三つのポイントがあると考えます。まず1点目は「準備」です。臨検・捜索は、正確な事務手続きの理解が必要であり、定期的な研修が重要です。本市では神奈川県警本部の協力を得て、警察学校の模擬家屋を使用した研修を毎年実施しています。2点目の「判断」といたしましては、関係機関から情報を集め、組織的な判断を迅速に行うことが重要であるということです。3点目の「協力」としまして、関係機関との日ごろからの連携が重要であるということでございます。本市では今年も安全確認・安全確保が迅速に行えるよう、引き続き取り組んでまいります。

 次に、「横浜市における居所不明児童対策」について説明いたします。1の「経過」でございますが、本市では庁内プロジェクトを設置し、乳幼児期から学齢期の居所不明児童を早期に把握するための庁内連携の在り方について検討し、平成264月から新たな取組を実施しております。このプロジェクトを行うことになった背景ですが、6歳女児が児童虐待により死亡する事件が昨年4月に発覚いたしました。この事件により、「住民票を移さず転居を繰り返す」「未就学である」という情報が自治体間で共有されていなかったことなど課題が明確になりました。

2の「プロジェクトで整理した庁内連携の仕組みづくり」ですが、学校・区戸籍課・区こども家庭支援課・要保護児童対策地域協議会・児童相談所・警察などさまざまな部署が連携し、情報を共有し調査を行うことにいたしました。特に区戸籍課と要保護児童対策地域協議会の事務局である区こども家庭支援課は、これまでつながりがありませんでした。新たに両課が連携する仕組みとしたことが本市の取組の特徴となっております。

3の「要保護児童対策地域協議会に基づく詳細な調査と進行管理」ですが、各部署が徹底して調査をしても居住実態が把握できない児童は、児童虐待のリスクが高い要保護児童として先ほどの共有ランク表のDランクとして台帳に登録し進行管理を実施いたします。

11ページをご覧ください。4「居所不明児童対策の強化」についてでございますが、居住実態が把握できず、かつ、転出先が分からない子どもの情報について、自治体間で共有する全国レベルの仕組みが必要であることから、国に対して提案を行っているところでございます。提案内容は、全国的な仕組みの創設、「情報共有のルール化」に向けた支援、入国管理局へ出入国記録を照会する際の項目の改善の3点ですが、入国管理局への出入国記録の照会につきましては本当によくご協力いただいており、迅速な回答がいただけるようになっております。ただ、二重国籍を持つ子どもへの配慮が課題として残っております。

 最後になりますが、12ページに「今後の課題」として4点ほど挙げさせていただきましたので、後ほどご覧いただければと思います。引き続き、子どもの最善の利益を守るため、使命感をもって児童虐待対策に取り組んでまいります。横浜市の取組についての説明は以上でございます。ありがとうございました。

 

○松原委員長

 ありがとうございました。引き続いて後藤様から、お願いしたいと思います。

 

○後藤啓二氏

NPO法人シンクキッズ-子ども虐待・性犯罪をなくす会で代表理事をしております後藤と申します。このような場で話す機会を与えていただきまして、ありがとうございます。7分ということでございますので、時間を確認しながら。私からは、この資料を提出しています。最初の3枚は今回初めて出す資料でございまして、残りは930日の「児童虐待防止対策に関する副大臣等会議」で提出した資料でございます。それは適宜ご覧いただければと思います。その資料の後ろの方に付けておりますが、私どもは現在「子ども虐待死ゼロ」を目指す法改正を求める署名活動を行っております。その内容は項目が主に5点ありまして、1点目が児童相談所・市町村・警察が虐待情報を共有し、連携して保護に当たる。2点目が所在不明児童をしっかり探す。3点目が児童相談所の一時保護・解除の適正化を図る。4点目が医師からの子育て困難な妊産婦の通報。5点目が虐待を受けた子どもへの精神的なケアの実施。この5項目を柱に法改正を求める署名活動を行っております。本日提出しました資料につきましては、5項目それぞれにつきまして、これまでの主な虐待死事件を例に挙げながら、問題と課題・考えられる原因・とるべき対策・期待される効果を書いてあるところでございます。時間の関係で全てはできませんが、適宜ご覧いただければと思います。

 私どもが今回最も強調させていただきたいのは、児童相談所・市町村・警察が虐待情報の共有をしておらず、連携しての対応がなされていないということが最も大きな問題ではないかと考えております。主な虐待死事件だけでも、ここに書いているようなものがずらりと並んでいる。この問題を私がフォローし始めたのは、平成16年の岸和田市の中学生餓死寸前事件からですが、それから11年経っておりますが、はっきり言いまして、ほとんど改善していないのではないか。ここに書いておりますように、児童相談所が家庭訪問しない、あるいは間隔が空きすぎて、子どもの安否確認を長期間行わずその間に虐待死させられる。児童相談所から警察への虐待情報の提供がない。警察は児童相談所に通告するのみで、通告後被虐待児の安否確認をしないというような問題がございます。その考えられる原因をここにいろいろ書いてあるわけでございますが、やはり一番大きな問題は児童虐待防止法上、そのようなことが義務付けられていないこと。「情報提供することができる」と書いてありますが、これは所在不明児童問題でも明らかになっておりますように各機関は個人情報保護でありますとか守秘義務ということを理由として情報提供しないというのが全国津々浦々、この問題に限らず明らかになっております。ですから、本当に子どもの命を守るために必要な情報は「情報提供できる」ではなくて義務付ける。そして連携して対応するというところまで義務付けない限り、全く改善はないものと。それは、この11年間にこれだけの事件が続いていることが何よりの証拠ではないかと思っている次第でございます。時間の関係で説明できませんので結論から申し上げますと、今の問題を解決するためには法改正しなければ何も変わらないということでございます。これまで悲惨な虐待死が起こるたびに都道府県に第三者委員会が作られて検証報告書が出されておりますが、そこでこの10年間ほとんど同じようなことが毎回訴えられているわけです。関係機関の連携が足りなかったとか、児童相談所の気付きが足りなかったとか、児童相談所の体制強化が必要だとか、同じことがずっと書かれている。何も変わっていない。厚生労働省や文部科学省も何もしていないと言うつもりはないのですけれども、自治体宛てに通知は出していると。ただ、この自治体宛て通知というのが、いわゆる自治事務ということで何ら強制力はないと。わざわざご丁寧に「この通知は技術的な助言です」ということまで書いて、別に聞かなくてもいいですよというぐらいのことまで書いて通知を出しているということですので、自治体側にしてみれば守る気もしないということだと思います。そこで有効に機能するための<>があるようですが、それはやはり法律で規制するしかないわけでございます。私は弁護士になるまで23年間警察庁に勤務しておりましたが、ストーカー規制法の立案を担当していました。このストーカー対策もストーカー規制法ができてから警察は真面目に取り組み始めた。それまでは「殴られたら、来てください」ということを平気で言っていたわけですけれども、この法律ができて、そこから初めて真面目に取り組むようになったわけであります。ですから、虐待情報の共有とか他機関との連携などは皆さま異論のないところだと思いますけれども、これを本当に機能あるものにするためには、法律で義務付けなければ全く実現しないということは私の23年間のお役所勤務から確信しているところでございますので、ぜひともこの点についてご理解を賜りたいと考えているところです。

 本日お配りしている資料の中に我々のホームページの写しを付けておりますが、そこに「主な賛同団体・賛同者」ということで書いてありますが、賛同団体もかなり増えているのですけれども、こうしたところに今年になってから、こういう問題があるので、こういう改正をしたいと思っていますと話をしに行ったのです。そうすると、全ての団体が二つ返事でオーケーなのです。紹介を受けて初めて会った人が多かったのですが、そういう偉い方が全員、二つ返事で「ぜひ、やりましょう」と言うのです。ですから、こうした方々が、国民の多くが「これは本当に何とかしろよ」と思っておられることは間違いないと思います。ですから、副大臣会議も設置されたのだと思いますし、この会議も設置されたのだと思いますけれども、こういう方々や国民の多くが思っておられるのは、厚木市の理玖ちゃん事件でありますとか横浜市のあいりちゃん事件でありますとか葛飾区の愛羅ちゃん事件でありますとか、ああいう事件が二度と起こらないでほしいと。関係機関の怠慢や制度の不備によって、救えたはずの命が救えなかったということが決してないようにしてほしいということであるわけです。ですから、ぜひ、この専門委員会でもそういう答申を出していただきたい。

 厚生労働省が提示された五つの課題を見て、果たしてそういう観点から作られているのだろうかという気が若干しないでもないのですけれども、ぜひ、私ども国民の多くが求めているのは抽象的なテーマに対する回答ではなくて、いかに理玖ちゃんやあいりちゃん、愛羅ちゃんのような子どもが出ないようにするのか。その有効な対策を求めるということを、もちろん意識しておられると思いますが、ぜひ、それに応えられるような方針をお出しいただきたいと考えているところでございます。

 今回、私どもが提案している案は、児童相談所と市町村・警察が人手を出し合って、虐待情報を共有して人を出し合って対応するということであります。それによって虐待のエスカレートが防げることは確実でありますし、かつ、今の大変多忙な児童相談所の業務がかなり軽減されるという効果もあると思います。それによりまして、養子縁組あっせんでありますとか暴力的になる親への指導でありますとか子どものケアといった本来の児童相談所の得意とする分野にこれまで以上に精を出すことができるようになって、全体として最も有効な効果が出るのではないかと考えている次第でございます。ぜひ、そういう観点からご審議いただければありがたいと思っております。

 最後になりますが、この横長の資料の最後のところに「ご教示のお願い」ということで、厚生労働省・警察庁・総務省に質問しております。これは私どもが考える法改正に関係する部分でありまして、この回答如何によりまして法改正が必要になったり、必要でなかったり、案が変わったりいたしますので、ぜひともご回答をお願いしたいと思います。

 それから、これは書いておりませんが厚生労働省にデータをお示しいただきたいのは、現在、児童福祉司さんは何人おられて、1人当たり何件の虐待案件を抱えておられて、虐待家庭への家庭訪問の実施回数と間隔、何日に1回とか何か月に1回やられているのか。これは、ぜひデータでお示しいただければと思っております。時間の関係で、以上でございます。どうもありがとうございました。

 

○松原委員長

 ありがとうございました。引き続き、お話を伺いたいと思います。増沢様、お願いいたします。

 

○増沢高氏

 子どもの虹情報研修センターの増沢と申します。このような機会をいただきまして、ありがとうございます。アメリカ・イギリス・北欧について、センターで知り得た情報をまとめたものをこれから説明させていただきます。

 まず、1ページと2ページを見ていただけますでしょうか。これは児童虐待に特化したものではないのですけれども、日本・アメリカ・イギリス、そして北欧のスウェーデン・フィンランドの児童虐待を考える上でベースとして押さえておきたいデータ等を示させていただいているものです。時間がありませんので割愛しますけれども、大きく違うのは、やはりアメリカの自己責任・自助努力ということで国民負担率は非常に低いですけれども、そういった社会保障は自己責任。一方でイギリス・北欧は国民負担率は高いですけれども、社会保障は行き届いている。そういった中で合計特殊出生率等を解決してきたという北欧の歴史もあります。また、アメリカも日本も経済大国ではありますけれども、アメリカは皆さんご存じだと思いますが貧困率が非常に高い。子どもの貧困率は非常に深刻で、日本も現在は非常に深刻な問題としてあるということもここで確認しておきたいと思います。

 次のページを見ていただけますでしょうか。これは皆さんおなじみの基本的な児童虐待対応の考え方を絵にしたものですが、国の方策を日本と世界を比較するのはなかなか難しいです。それは基本的な児童虐待に対する考え方や法的な定義の違いということも背景にはありまして、例えば世界的には「他者からの人権侵害行為」は広く児童虐待ととられる世界的な考え方ですが、それに対して日本の法律は保護者からの虐待行為という非常に限定的ということですので、こういったことを押さえて数字等を見ていくことが必要だと思います。そして「発生予防」から二つ目のレベルが「早期介入・保護」そして三つ目のレベルが「介入後の支援」というのが基本的な世界共通の考え方ですが、これから説明させていただきます各国のざっくりとした特徴をいいますと、アメリカはどちらかというと「早期介入・保護」というところに力を入れてきた国。それに対してヨーロッパ、特に北欧は「発生予防」、そして「介入後の支援」にも力を入れてきているということがざっくりとした特徴といえると思います。

 次のページからアメリカについて説明させていただきます。アメリカの児童虐待対応の中心となる機関は日本の児童相談所に当たるCPSという機関ですけれども、ここで扱っているケースは、イギリスもそうですけれども児童虐待対応のデータは非常に細かく統計を取られています。6ページを見ていただけますでしょうか。CPSが対応して虐待が認められた子どもの数は約686,000人ということです。日本は73,765件が一応虐待と認定されたということですので、これが比較対象となりますが、児童人口がアメリカは日本の3倍ですので、それを3倍して比較するとアメリカは大体34倍の児童虐待の数がある。その分類を見ますと、特にネグレクトが非常に多いのも特徴です。そして最後の虐待による死亡児童数が1,640人ということで、日本の場合は年間約100人弱という報告がありますので、ずっと多い数字というのがアメリカの統計上の数字になろうかと思います。

7ページです。アメリカは「早期介入・保護」というところに力を入れているわけですが、日本とは異なる点がございます。それはCPSに通告がきまして調査をしていくわけですが、緊急性の評価をした後、子どもを保護する場合は保護要請を司法、裁判所に委ねていくということです。日本の場合は一時保護を2か月まで児童相談所の権限でということになりますけれども、それは全て司法に委ねられているということです。その後のパーマネンシプランについても、どのように家庭に戻すかという判断も全て裁判所がしていくという仕組みになっています。これはイギリスも同様です。それから、CPS(児童相談所)の体制を日本と比較したときに、圧倒的な差があるということで、ここではロサンゼルスと横浜市の比較をさせていただいております。人口に対してCPSの数、児童相談所の数、ソーシャルワーカーの数を比較したものですので、これを見みれば圧倒的に違うというのは分かっていただけるのではないかと思います。アメリカの場合は警察とCPSが密接に連携しています。一つのケースに対してクロスレポートといった形で同じ書類を共有している。州によってもシステムは違いますが、そういった警察との協働が非常に特徴的です。そして、証拠主義に基づく対応ということで司法が強く関与しているわけですけれども、性的虐待の立件ということで司法面接をタイアップしてきた国ということでもアメリカは特徴的だと思います。支援ですけれども主に里親であるというところが、これはヨーロッパも同様です。近年、アメリカも在宅支援に非常に力を入れるようになっております。そして特に予防的な支援ということで貧困地域を中心に民間が中心となって予防的な支援に力を入れ始めているというのが最近のアメリカの特徴ということになろうかと思います。12ページに今までのところをまとめたものがあります。

 次にイギリスですけれども、まず、イギリスの基本的な児童虐待に対する考え方を14ページに示させていただいております。「支援を必要とする子ども」というのは下から三つ目のところに書かせていただいておりますけれども、その中にChildren Looked Afterということで、これは社会的養護に当たります。そしてその社会的養護と支援を必要とする子どもの中にある黒い丸が児童保護計画ケースということで集中的に支援をしていこうという子どものケースです。そのケース数の推移を15ページの表に載せてあります。2011年のデータでは42,700件がCPPで扱ったケース数ということで、イギリスの児童人口は日本の約半分と考えますと、日本の虐待対応ケースとして出ている約73,000件と比べますと、ずっと多くのケースに濃密な支援を行っていることになろうかと思います。イギリスのソーシャルサービス、児童相談所の配置状況やスタッフ数は充実しているというところを16ページに示させていただいております。また、イギリスの一つの特徴として、支援を行う上でのアセスメントを非常に重視しています。17ページにいろいろな機関と共通して子どもを見ていこうということでアセスメントフレームワークという、こういった表を用意して子どもをアセスメントしています。そして、予防的な支援も充実していて、人生早期から支援を充実させるということでシェアスタートをチルドレンズセンターを中心に展開していますが、今はイギリス全土に展開していて、2011年には3,600か所のチルドレンズセンターでこういった小さいころからの予防的な支援を行っているということです。社会的養護の治療施設についても非常に充実的な取組があるところを1921ページに示させていただいておりますが、説明は省かせていただきます。

 そして北欧ですけれども、北欧の大きな特徴は予防的な支援を小さなエリアで展開しているということです。児童相談所もそのとおりでして、ここに一つの例を書かせていただいておりますけれども、スパガ&テンスタ地区では約35,000人の人口ですが、ここに1か所の児童相談所がある。それと、児童相談所とは別にファミリーセンターがあります。これはフィンランドのネウボラも同様で、子育て支援を充実させていくための機関が設置されています。それは2526ページのところで説明させていただいております。妊娠期から就学までの切れ目のない支援をするというフィンランドのネウボラは、一つのモデル機関ではないかと思いますけれども、タンペレ市という人口約20万人のところにネウボラを30か所設置して、さまざまな職種が協働して妊娠期からの支援に力を入れているということです。スウェーデンのファミリーセンターも同様にマタニティケアから家族相談まで総合的に家族をケアしているということです。

 早口で申し訳ございませんが以上、アメリカ・イギリス・北欧の特徴を説明させていただきましたが、世界的な流れを見てみますと、2006年にWHOISPCANが共同で指針を出しております。それを見ると予防的な支援、そして介入後の支援を充実すべきだという指針が出されております。ということで、説明を終わらせていただきます。

 

○松原委員長

 ありがとうございました。引き続きまして中板様から、お願いいたします。

 

○中板育美氏

 公益社団法人日本看護協会の中板と申します。日本看護協会は看護師、助産師、保健師等68万人で構成される団体で、47都道府県で活動しております。資料をご覧ください。「妊娠期から子育て支援までの母子保健活動」ということで、まず保健師ですけれど、1,740市町村に保健師がおりまして現在、市町村の保健師は26,000人になっております。その中で母子保健法に基づく母子保健活動を実施しておりまして、この図のように母子健康手帳の交付から3歳児健診・就学時まで一貫管理と継続関与が実現できる仕組みになっておりまして、これは虐待予防という観点からも非常に好ポジションにあるのではないかと考えております。全国の市町村のかなりの数が母子健康手帳交付の際にアンケート調査等でリスクを抽出しているというのが現実でございます。

2枚目のスライドで「妊娠・出産期のあるべき姿」ということについて説明させていただきます。今回は特定妊婦に少し焦点を当ててお話しさせていただきます。特定妊婦が児童福祉法に規定されまして要保護児童対策地域協議会の対象事例として認められるようになったということは、保健師がこれまで妊娠期から支えてきた親御さんたちを公的にあるいは多機関連携で支えることができるようになったということで、非常に良かったと考えております。WHOは「妊娠・出産期のあるべき姿」というのは、身体的にも精神的にも最善の健康状態で母親として育児に備えることが可能な状況あるいは状態」といっております。この状況を阻むもの、すなわち身体医学的なリスク、あるいは社会心理的なリスク、精神医学的なリスク。これら阻んでいるものについては全てハイリスクであり、支援が必要であるという観点に立つことが必要だということです。妊娠・出産期のあるべき姿に近づけていくための支援ということになりますが、日本ではこれまで「ハイリスク妊婦」という言葉が非常にたくさん使われてきました。しかしながら、日本に「ハイリスク妊婦」の定義というものはなく、これもWHOが定義しておりますが、「妊娠中の高血圧・心臓疾患・糖尿病・貧血などの身体疾患等を発症した妊婦に対して、専門的なケアと治療を提供し、安全なお産を目指す」ということでございます。今回の特定妊婦につきましては、社会心理的・精神医学的なリスクに対して妊娠中から支援することによって、産後の虐待のない関係性を築けることを目指すということが特定妊婦を規定した大きな理由ではないかと考えております。

 次のスライドは、今年改正されました虐待対応の手引きに書かれています特定妊婦のリスクということですが、こちらは省かせていただきます。

 次のスライドは、そういったことを受けまして母子保健の領域の中で国民運動計画として出されています「健やか親子21(2)」の中で重点課題➁として「妊娠期からの児童虐待防止対策」というものが挙げられております。ここに青色の丸と黄色い丸にありますけれども健康診査・産後うつ・心の健康・性の問題・飲酒喫煙といった非常に重要な項目が母子保健の中でチェックしていくということが挙げられております。

 事例を2例ほどご紹介したいと思います。まず事例1は「産婦面接から妊婦面接へ」ということで、病院と保健センターで大変な事例をチェックしていたことをきっかけに、産後すぐの病院に入院している間に連携をするという体制を採っていた自治体がございます。こちらは平成13年からしておりますけれども、産後連携の積み重ねを契機に妊娠期間中から既に自殺未遂・住所不定者への対応・性虐待の可能性といったものが露呈してきておりまして、妊娠期からの支援の方が重要ではないかということで検討されておりました。平成20年を契機に妊婦面接という方向に遡って連携を強めております。その結果、妊娠期、出産、スムーズな退院支援、地域での育児支援という切れ目のない支援が実現しております。

 次のスライドですが、これらの事例を通して、特定妊婦及びその家族を対象として対応する医療機関は決して多くはない中で、心身の合併症、特に精神科疾患を持つ特定妊婦が多い。それから、若年妊婦、未婚妊婦、妊婦健診未受診、救急飛び込み出産といった方たちは、しばしば「望まない妊娠」であり、子育て環境を準備できない、あるいは意欲が希薄な家庭である。当然のことながら出産後の養育不全あるいは虐待生起が予見される家庭であるということは周知のとおりでございます。

 実践事例2です。こちらは埼玉県の事例ですが、「健やか親子21」の看護連絡票というものを埼玉県の看護協会の助産と看護・保健で作っておりまして、これを病院との連携に使うということで活用しておりました。平成20年以降は特定妊婦にも当てはめてこれを作成していただいております。次のスライドです。その中で、今日は少し抜粋しておりますけれども、保健師が把握していて医療機関と連携しながら特定妊婦と関わった事例の一部でございます。これらは全て母子健康手帳を交付せず、妊婦健診未受診という事例でございまして、保健師が以前から関わっていた事例でございます。パーソナリティ障害・てんかん、それからDVによるPTSDで中絶も何度か経験されて、結果的に生まざるを得なくなって、結局離婚。祖母のアルコール依存症のため期待できず、妊娠中から喫煙・飲酒を繰り返す中でお子さんは胎児性アルコール症候群になって出産されております。こういった非常に家族病理が深い事例が非常に多く把握されておりまして、そういった事例を特定妊婦というものが規定されたことによって医療機関とスムーズに連携できるようになりまして、殺害ということから防げているのではないかと考えております。

 次のスライドですけれども、このモデル事業を通しまして医療機関と保健機関、児童福祉との連携で16か月の間に28事例を経験させていただきましたけれども、その中で特定妊婦の報告例が28例中20例ということで、特定妊婦に間口を広げれば非常に多いということ。それから、そのうちの10例は病院からそのまま一時保護またはその後施設保護になっているということ。それから、精神科受診歴のある者は28例中11例で、統合失調症診断を受けている者が2人ほどありましたが、そちらもよく診ればいずれも神経症圏、パーソナリティ障害という被虐待体験をもった方たちということが分かっております。また、妊娠期の飲酒・喫煙、過量服薬等による胎児虐待行為は4例ほど挙げられておりますし、さらに妊娠後期になって自ら子どもをかき出そうとしたり、そういった虐待行為もみられています。

 こういった中で、産科・精神科医療・保健との積極的連携が乏しく,母子保健の枠内で収めがちになっていたことに気づいております。また、医療機関・福祉ともに各々の立場で、連携が乏しかったということに気づいております。また、助産師を中心に先ほどの連絡票など情報交換を行ったりしましたけれども、連携というより丁寧な引き継ぎで終わっていたことに気づき、双方向のやり取り、いわゆる協働という形が乏しかったということが分かってきております。

 まとめですけれども、ぜひ出産前ネットワークの構築ということで、かなり家族病理が認められるケースが少なくないので、医療機関との連携の重要性は改めて実感しているということと、産科病棟・新生児病棟の価値と母子保健の連結ということを無理なくできる仕組みを作っていかなければならないということ。それから、特定妊婦については虐待未生起でありますので「ソフト事例」として保健スタッフが介入する意義は非常に大きいということでございます。以上です。

 

○松原委員長

 ありがとうございました。それぞれ貴重なご意見をいただき、時間の関係であたりで質疑に移りたいと思います。もっと詳しくお話を聞きたいところでもあります。

 それで、後藤様から各省庁に質問が出ておりました。これは事務局で引き取っていただいて、対応をそれぞれ考えていただきたいと思います。

 ここでは、委員からのご質問等を受けてまいりたいと思います。今の4人の方の発表に関してでも結構ですが、何かご質問等があれば受けたいと思いますが、いかがでしょうか。

 

○辰田委員

 ご説明ありがとうございました。1点、質問させてください。横浜市の黒澤さんのスライドの7で「妊娠期からの切れ目ない支援」ということで妊娠届出時に全数面談をということで、91%の妊婦さんと面接していらっしゃるそうですが、残りの9%の方たちへはどのような対応をなされているのか、教えていただけますでしょうか。

 

○横浜市こども青少年局

 母子保健を担当しております近藤と申します。残りの方につきましては、妊娠届出のときにアンケートをとっており、ハイリスクの方や特定妊婦につながるような方をスクリーニングしていますので、このアンケートに基いて個別に電話連絡等をして全数についてフォローアップしています。

 

○辰田委員

 ありがとうございます。

 

○松原委員長

 他は、いかがでしょうか。

 

○浜田委員

 浜田です。同じく横浜市さんに教えていただきたいのですけれども、「横浜市における児童虐待対応の仕組み」の中で、要保護児童等進行管理台帳が電算システムの形になっているというご紹介がございました。「電算システム」という表現の中には、単に電子形態で保存しているという意味合いではなく、電算システムになっていることで例えば共有でありますとか対応のところに何らかの具体的なメリットがあるのではないかと思ってお聞きしていたのですが、何か具体的にこのようなメリットがあるということがあれば、ご紹介いただけないでしょうか。

 

○横浜市こども青少年局

 児童虐待・DV対策担当係長の坂と申します。このシステムを使うことで区役所と児童相談所から、お互いに一つの台帳を見ることができるということと、基盤システム上に他のデータ、母子保健・生活保護等のデータがありますので、必要なデータが集約されるというメリットがあります。

 

○菅野委員

 増沢さんにお聞きしたいのですけれども、虐待に対応する職員の数がかなり多いという話がありましたが、専門職を養成していく教育のシステムで何かご存じのことがあれば教えていただきたいのですが。

 

○増沢氏

 まず、アメリカもイギリスも国家資格を持っている者がソーシャルワーカーになるということなので。それから、実はイギリスも他の国も死亡事例は繰り返し起きているという中で、ソーシャルワーカーの権限が非常に失墜してきたというのがこの十数年の世界の歩みの中であります。それで、なり手がいなくなるということに日本もなりつつあります。それで、イギリスではこれを国家的な問題と認識して、人材育成の体系を作り直したのです。これがこの3年間に国でソーシャルワーカーの改善委員会というものを立ち上げて、そして大学も一つつくり、人材育成の体系、全部で9領域、レベル9まで。学生の育成から、仕事に就いてから指導者になるまで、きちんと明確に記されてそれを研修の中でやっていくということをしております。

 それともう一つ大事なのは、児童虐待に関わる人たち、ソーシャルワーカーだけではなくて教育者も看護師もいろいろおられるのですが、特にイギリスは地域によって特に対人援助職の新人は全員に児童虐待の研修を受けることが義務付けられています。それで共通の認識を持たせる。そういったことで、研修はかなり充実して展開している。それでもまだ課題はあるのですけれども、はるかに先を進んでいるのではないかと思います。

 

○松原委員長

 もっといろいろ伺いたいのですが。それでは、ラストの質問ということで。

 

○岡井委員

 後藤先生にお聞きしたいのですが。法改正の件ですけれども、事前にいただいた資料2-1に第4「必要な法改正の概要」というのがございまして、これを読んでいると、中段に例えば「児童相談所・市町村・警察が」云々と書かれていますが、これはどこの市町村、

地方自治体でもやろうとしていることではあるのですよね。それがなかなか実行できていない部分もあると思いますが、ここに書いてある文章を見ていると、法律の文章ということではなくて日常的なことが書かれているので、今は実際にどうなっていて、それをどのように改正すれば実行可能になるかという具体的なところが分かりにくいのですが。

 

○後藤氏

 虐待情報の共有というのは今、少なくとも児童相談所と警察の間ではやられていませんし、進めようとしているとも見ていません。今、児童虐待防止法では市町村はこういう場合には「情報提供することができる」という規定はありますけれども、こういう場合はこういう情報をこちらに提供してくれと。

 

○岡井委員

 「提供せねばならない」に変えていくということですね。

 

○後藤氏

 そういうことです。それで、「児童相談所・市町村・警察が人員を出し合って可能な限り頻繁に家庭訪問して、子どもの安否確認と親への指導・支援を行う」ということを法律に書くべきだと思っています。分かりやすく書くとこうなりますが、法律で書くともっと堅くなりますけれども、ここまで書かないとやらないというのが私の長年の役人勤務によって出た結論です。これを説明したら、皆さん「こんなの当たり前じゃないですか」とか「やればいいじゃないですか」と言われるけれども。

 

○岡井委員

 これをやらない場合は何か罰則があるわけですか。

 

○後藤氏

 罰則までは考えていませんが、例えばストーカー規制法ができて、警察がやるべきとなっているにもかかわらずやらなければ当然、懲戒の対象にもなりますし、クビにもなります。そういう厳しい制裁が時にはかけられることになりますので、法律で書くか書かないかで全く違ってきます。

 

○岡井委員

 ありがとうございました。

 

○松原委員長

 時間の制約もありますので、議題(2)へ移っていきたいのですが。今日、4人の方からいただいたご意見と、短い時間でありましたが今の質疑応答については今後の我々の委員会での議論の参考にさせていただきたいと思います。改めて4人の方に御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 それでは、議題(2)「当面の課題・施策の方向について」、柱の(3)(5)について前回議論をしておりませんので、それに移っていきたいと思います。前回と同様、課題ごとに事務局からの資料説明していただき、委員からご意見を頂戴し意見交換という形で進めてまいりたいと思います。

 なお、本日ご欠席の加藤委員のご意見については次回に伺いますが、資料がございますので、事務局からご紹介いただきます。

 それでは「当面の課題・施策の方向について」の課題(3)「要保護児童対策地域協議会の機能強化」について、事務局からご説明と加藤委員の資料の紹介をお願いいたします。

 

○川鍋虐待防止対策室長

 それでは、資料5をご覧ください。2ページでございますが、課題(3)「要保護児童対策地域協議会の機能強化」について、➀要保護児童対策地域協議会の実効性を高めるための工夫ということで、左側の「実態」としまして一つ目、要保護児童対策地域協議会に要保護児童として登録されていなかったり、登録されていても関係機関間での情報共有や役割分担が十分に行われていない事例が見受けられる。二つ目ですが、進行管理する事例数が年々増加し、個々の事例について十分な検討を行う余裕がない状況にある。三つ目ですけれども、虐待発生リスクが高い家庭であるにもかかわらず、例えば母子保健担当部署から虐待対応担当部署に対する情報提供がなされていない事例があったことがこれまでの検証報告書から分かっております。

 「課題」ですけれども、一つ目は特定妊婦や要保護児童を確実に登録するための工夫というもの。二つ目は、地域における人材に限りがある中で、各事例を丁寧に検討するための工夫について。例えば、ケースごとに支援内容の濃淡をつけることについて、どのように考えるか。三つ目ですが、支援している家庭の状況変化を要保護児童対策地域協議会が確実に把握する仕組みについて。四つ目ですが、把握した情報を踏まえて関係機関が確実に支援につなげる仕組みについて。例えば、調整機関において支援に関する一定の判断をすることをどのように考えるか。例としまして「優先して対応すべき機関を調整機関が指定する等」と書いてありますが、例えば意見が食い違うような場合に、調整機関がまずは保健サイドで当たってくださいと。このような手法をどのように考えていくかというのが一つ目でございます。

3ページですが、➁協議会調整機関の調整機能を高める工夫ということで、「実態」としまして、調整機関の中で、児童福祉司と同様の専門職を配置している自治体の割合は3割程度であり、これに保健師・助産師・看護師等の一定の専門資格を有する者を含めると、これらを配置している自治体の割合は7割弱というのが実態です。それから、個別ケース検討会議等の場で、市町村と児童相談所とが方針を巡って意見対立した場合に、調整する役割を行う者がいないという指摘があります。

 「課題」としましては、一つ目が調整機関に専門職員の配置を促す仕組み。二つ目、職員の専門性を高めるための研修の工夫が課題と考えております。

 続きまして資料6でございますが、本日ご欠席の加藤委員の提出資料でございます。「要保護児童対策地域協議会の機能強化について」ということでご意見をいただいております。要保護児童対策地域協議会の発展に向けての前提として、利用しやすい土壌があること。つまり、機関の存在が周知され、その役割が十分理解されていること。要保護児童対策地域協議会がコーディネートしていけること。関係諸機関が連携して、支援が常に効果的に行えること。支援の結果の評価により、必要な社会資源が開発され、供給していけるようになること。こういった前提に立って、全体のまとめとして3ページになりますけれども「今後について」ということで、17のようなご意見をいただいております。以上です。

 

○松原委員長

 ありがとうございました。事務局の説明に対するご意見・ご質問は、それぞれの委員のご説明の後に行います。このことにつきまして、笹井委員からご説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○笹井委員

 静岡県沼津市の笹井です。私からは市町村・児童家庭相談現場から見た要保護児童対策地域協議会の機能強化について、資料7に基いて意見を述べさせていただきます。まず、要保護児童対策地域協議会の現況について、沼津市の状況を例として説明させていただきます。沼津市は静岡県東部に位置する人口20万人の地方都市で、少子高齢化と人口減少が進んでいることについては全国傾向と同様の状況にあります。児童虐待の状況ですが、児童虐待防止法が施行された平成12年度以降は年間の受付件数については80100件で推移しております。要保護児童対策地域協議会は平成18年に平成12年に設置しておりました児童虐待ネットワークを基に32の機関で設置いたしました。調整機関は市福祉事務所子育て支援課で、要保護児童対策地域協議会「スタートアップマニュアル」にも掲載していただき、家庭児童相談室のモデルとして紹介されることもあります。三層構造の組織で実務者会議は要保護児童と学齢期の要支援児童を扱う児童虐待分科会、乳幼児の要支援児童と特定妊婦を扱う要支援分科会および非行を扱う非行分科会の3分科会に分けており、各分科会の事務局をそれぞれ子育て支援課、保健部局、教育部局とし、全体を調整機関が総括する形で各毎月1回開催しております。また、学校や病院等で開催する個別ケース会議は平成25年度実績で139回となっております。要保護児童対策地域協議会で扱っているケース数は平成25年度で合わせて661件となっており、児童相談所人口の約2%となり、児童相談所から把握目標として聞いています1%を上回っています。なお、障害のある児童については要保護児童対策地域協議会以外のケースとして扱っていますので含まず、児童相談所の単独対応ケース、それから施設入所ケースもその中に含んでおりますので、市内全ての要保護児童を網羅したことになっております。要保護児童対策地域協議会につきましては市町村設置となっているということで、人口規模や業務体制などが違い一様ではありませんが、ある程度の人口規模の都市についてはこれぐらいのイメージのものになっていると考えます。

 要保護児童対策地域協議会は概ねこのようなものであるという認識の下、2番の「要保護児童対策地域協議会の成果と課題」についてですが、要保護児童対策地域協議会が法定化されて10年を迎えようとしています。ほぼ全ての市町村に設置されていますが、要保護児童対策地域協議会設置・運営指針で利点とされたことがどの程度達成できているのかについて考えたいと思います。

 まず[1]の早期発見ですが、各機関・市民への周知が進むことにより、通告数が増加したことや母子保健との連携が進み、早期発見は進んだと考えます。それと同時にケース数が増えているという課題があります。

 [2]の支援が迅速にできるということについては、運営指針等で手法を具体的に示されたことで一定のスキームはできたと考えております。

 [3]の情報共有につきましては、守秘義務規定が明確化されたことで飛躍的に進んだと思います、このことは同一自治体だけでなく他の市町村とのやりとりの際も要保護児童対策地域協議会調整機関という共通の基盤を持てることでケース移管がスムーズになり、転居などを繰り返すケースが多い中で、このことは非常に役立っています。ただ、情報が集まってくるということは、それをどのように管理するのか、また、提供すべき情報は何なのかということについて精査しなければ小さい自治体であればあるほど二次的な問題が生じる危険性があります。単に情報共有すればよいということでなく、情報共有するのはあくまでも子どもの利益のためであることを常に意識しておく必要があると考えます。

 [4]以下の情報共有に基づく役割分担は要保護児童対策地域協議会の連携の基本部分であり、各種会議等を開催する中で責任を持った体制づくりや、より適切な支援につながっていると考えますが、役割の大きい機関に責任が集中してしまうなどの課題があると考えます。

 [7]の分担による事例の関わりで関係機関の限界や大変さを分かち合うことについては、否定はしないものの関係機関の自己満足で自己肯定に留まる危険性を感じます。例えば3か月に一度の安否確認。これができるようになったのは要保護児童対策地域協議会の成果だと思いますが、「安否確認できるようになったのだからよい」と目的化してしまう部分がないか懸念しています。

 次に、(2)「体制上の課題」として、要保護児童対策地域協議会が児童相談所と並列して導入され、あたかも一つの機関のようにみなされることがありますが、あくまでも共有組織であり法にありますように、調整機関の中から一つの調整機関を指定するものですが、ケース数の増加に加えてケース進行管理や学校及び保育所からの毎月の出欠情報提供、今年度につきましては所在不明児調査など調整機関に求められる業務が年々増えています。では、調整機関の体制が整備されてきているのかというと、要保護児童対策地域協議会の調整機関となっている静岡県東部の11市の福祉事務所家庭児童相談室の状況を見ていく中では、要保護児童対策地域協議会の設置が進む中で平成18年度と今年度を比べると、社会福祉主事等の正規職員については5人の増、非常勤の家庭相談員は12人の増と増えていますが、人口20万人以上市で78人、人口510万人市では3人程度で、そのうち4市では正規職員1人配置という状況にあります。さらに正規職員の中に保育士等がおりますが、多くは一般行政職員で、3年程度で異動、家庭相談員については増員されたことが影響していますが半数は経験3年未満という状況にあります。このように、市町村体制は必ずしも整備されているわけではありませんので、要保護児童対策地域協議会の機能強化を考えるときにこのような状況を踏まえないと絵に描いた餅になりかねないと考えます。

 このような認識の下に、3の「地域の子どもたち全てを対象とした要対協に向けて」ですが、課題の措置として要保護児童対策地域協議会が市町村設置となっていることもあって児童相談所の関与が十分でない要保護児童対策地域協議会が少なくないということです。極端に言うと、市町村ケースは要保護児童対策地域協議会で進行管理されているが、児童相談所ケースはそこでは全くされないという要保護児童対策地域協議会が少なくありません。要保護児童対策地域協議会はあくまでもその地域の子どもたち全てを対象とすべきと考えますので、私はもっと児童相談所がコミットを強めるべきだと考えます。具体的には、資料に書かせていただいたことになりますが、この中でもウの児童相談所が当該市町村の保育や子育て支援・母子保健サービスの実態把握していることが大事だと思いますし、エにありますように医療機関など市町村をまたがる利用をされる機関との連携や転居を繰り返すケースなどについて所管市町村間の連携を促進するような取組を児童相談所にしていただければと思います。

 もう一つは、ケース対応に加えて上手にできていない部分がある予防的な取組です。特に乳幼児については、母子保健分野の妊婦健診や乳幼児健診等を踏まえたものを基に要保護児童対策地域協議会あるいはそれ以外で予防的な取組をされている市町村も多数あると認識していますが、そのことを踏まえる中で要保護児童と要支援児童及び特定妊婦を区別して支援することが必要と考えます。また、このことに関して細かい話ですが、養育支援家庭訪問事業の中核機関は要対協調整機関と同一が望ましいとされていますが、調整機関を児童福祉部門で担っている場合、要保護児童対応に追われている状況がありますので、ここは整理する必要があると考えます。次の訪問型支援ですが、沼津市では養育支援家庭訪問事業に育児支援サポーター導入し家事育児のヘルパー業務をしながら保護者に関わることを導入したところ、大きな効果がみられました。育児支援にも高齢者や障害者福祉と同様に訪問型支援メニューがさらに必要だと考えます。

 最後に4の「児童相談所と市町村の役割を明確することで要対協機能強化を図る」という観点から意見を述べさせていただきます。制度改正のときに、左図のレッドゾーンとイエローゾーンについては主に児童相談所が、その下のゾーンについては市町村が担うという仕組みであったと思いますが、実はグレーゾーン以下は把握できているわけではなく、健全層としている部分も誰が健全なのかは確認できていたわけではありませんでした。その後、右図のように、新生児全戸訪問事業など母子保健との連携の中で妊婦から乳幼児については全数把握の仕組みが整いつつあり、市町村は早期に発見し支援を開始できるようになり、それに対応する予防的な事業なども行い一定の成果を上げており、今後その蓄積が学齢児童にも波及できるのではないかと考えております。市町村は、児童相談所のように虐待に特化したケースワークの専門性は乏しいですが、住民全体を対象にしたポピュレーションアプローチ手法でのサービス提供と一体となった支援力は有していると考えます。母子保健事業は全ての市町村に共通した業務ですので、ここを起点に支援や介入につなげていくことができるのではないかと考えます。

 この間、市町村の児童家庭相談担当者は市町村がミニ児相化していくのではないかという危惧を持っています。来年度から開始されます「子ども・子育て支援新制度」では、要保護児童対策地域協議会は市町村が実施主体となる子育て支援事業に位置づけられており、他の市町村事業と一体的に実施し子どもの最善の利益の実現を図ることになっているわけですから、市町村の児童家庭相談は児童相談所のように介入型ではなく支援型のスタンスで支えることが大切だと考えます。

 児童福祉は、他の福祉と違い保護者という要素が大きく、特に子どもの利益と保護者の考えが対立する場合には、それぞれの立場に立った対応が必要となり、そういった意味で児童相談所と市町村という二層構造は大切であると考えます。要保護児童対策地域協議会の機能強化に欠かせないのは「児童相談所と市町村の役割と責務を明確にする」ことと「そのことを踏まえて、より緊密に連携できる仕組みを作る」という二つであると考えます。

 そういう意味では、現在国で検討されています「児童相談所全国共通ダイヤル」の三桁化は役割の明確化につながるのではないかと考えますが、その一方で児童虐待防止推進月間の啓発チラシなどに盛り込まれています国民向けメッセージは「通告から日常的な相談まで」児童相談所・子ども家庭支援センターのどちらでもよいとなっております。特に今年の媒体については、読み方によっては子育て支援サービスを利用したいと思ったら児童相談所の全国共通ダイヤルにも、となっています。この後の児童相談所の体制強化の部分と併せて国としての考え方を整理していく必要があると考えます。以上です。

 

○松原委員長

 ありがとうございました。この課題(3)につきまして事務局からは、人材に限りがある中でケースごとに支援内容の濃淡を付けてはどうかということが挙がっていますし、また、把握した情報を踏まえて関係機関が確実に支援につなげる仕組みについて例えば、調整機関において支援に関する一定の判断をすることをどのように考えるかという論点も準備されておりますが、このことに関して、あるいはこのこと以外でもご意見があれば。

 これは、それぞれ1時間でも2時間でも議論したいところですが、まだ残り二つの課題がありますので、時間を区切らせていただいて、たくさんご意見が出るようであれば、後ほどメール等で事務局へお寄せいただくという対応をして進行も考えながら進めてまいりたいと思います。

 ご意見を伺いたいと思います。

 

○泉谷委員

 今、笹井委員からお話があった要保護児童対策地域協議会のところで、図表11で沼津市さんの要保護児童対策地域協議会の構成を説明されているところで私自身勉強させていただきましたが、どうしても地域の中で子どもと関わっていく中で感じていることは、例えば保育園・幼稚園の時代から小学校に上がったとき、小学校から中学校に上がったときという年齢枠を越えていくところをどうやってスムーズにつなげていくかというところが非常に課題かなと感じているところがあります。

 例えば保育園にいくと役所と入所の事務の関係などがありますので保育園の方から子どもの報告が役所へ上がってということがあったり、保育園と小学校は連携が深まっているようなことがありますので、保育園から小学校へ上がる子どもについての情報は連絡票等でかなり充実したものになっているということを実際に小学校の先生方からお聞きしたことがありますけれども、そこでいろいろ課題があると思うのは幼稚園のところで、幼稚園自体もいろいろな運営のところでお考え等があると思いますけれども、幼稚園の方でご家族の状況で実は気になっているということがあったとしても、それが小学校に上がるときの連絡票に情報として上がっていないということもあるのではないかということを危惧しています。

 今、小学校に上がるときに小学校へ情報提供する様式の活用ということがされているかと思いますけれども、幼稚園でお仕事を一緒にさせていただいていたときも、保護者との関係があるので幼稚園としてもどのようなスタンスをとったらよいのかということでご相談をお受けたりすることもありましたので、やはり幼稚園がどのように連携をとっていくのかというところでいろいろ危惧されていたり、分からないこともあるのではないかというところを考えると、幼稚園を管轄している文部科学省の方で幼稚園に対して虐待への取組、例えば小学校に上がるときの様式の活用方法について、もう少し徹底していくということの指導等をしていただくことも、可能であればぜひ取り組んでいただきたいと思っています。以上です。

 

○松原委員長

 笹井委員、何かコメントがおありですか。

 

○笹井委員

 幼稚園の問題については、全く同感です。幼稚園の中には自分たちの幼稚園からそういうものが出てしまうことについては「幼稚園のブランドに非常に傷がつく」といった言い方をしては悪いかもしれませんけれども、そういった形の部分で考えられる幼稚園も少なくはありません。ただ、今後、幼稚園が給付型になって多分、児童福祉部局とお金との絡みですけれども、給付といった形のところで出てきますので、その辺の部分で連携が図っていけるのではないかと思っています。

 

○松原委員長

 ありがとうございました。文部科学省から、何かありますか。

 

○佐々木係長(文部科学省)

 今のご指摘を踏まえまして、幼稚園の状況などを確認させていただければと思います。

 

○松原委員長

 ありがとうございます。他に、いかがですか。

 

○佐藤委員

 要保護児童対策地域協議会ができて10年というところで、笹井委員は非常によく問題をまとめてくださったなと思っています。私自身は専門性を自治体の中でどう担保していくかというのは、これからの虐待対策を考える上での非常に重要なポイントではないかと思っています。例えば母子保健で保健師が全市町村に配置されていますけれども、国家資格であるということと、その事業だけに特化して行っているわけですから、専門性の積み重ねは容易にできます。しかし、要保護児童対策地域協議会に配置される職員につきましては、先ほどの国家資格のところに出てきましたけれども、それ以上に市町村の中で転勤があり得る、積み重ねができない職種に委ねられているところがわが国の場合は非常に大きな問題だと思います。

 前の委員会のところでも申し上げましたが、虐待対策におきましてはアセスメントというところが非常に重要だと思っています。その辺も検証を積み重ねて判断できるようなものといいますと、やはり児童相談所に警察が加わってもよいのかもしれませんが、しっかりアセスメントができるという国家資格で、しかも広域に動けるということと、市町村のサービスを使って、市町村で支援していくという、アセスメント介入型のところと支援のところをそろそろ考えるべきというよりは、小さい市町村にまで要保護児童対策地域協議会にミニ児相化した役割を担わせるのは、この10年間を評価すると少し見直した方が良いのではないかと思う次第です。

 

○松原委員長

 児童相談所の方から、何かコメントがありますか。

 

○菅野委員

 確かに重なる部分がとても多くなっているというのは現実問題です。私もこの後お話をしようと思っています。だから、そこのところはシステムの見直しをしていかないと、要するに児童相談所が例えば厳しめに行って、そこで困っているのであれば市を紹介するから市の人にという、住み分けのようなことが本来できる形だったと思いますが、そこはうまくいっていないと思います。

 それと私が次に発言しようと思っていたことを、ついでに言ってよろしいですか。

 

○松原委員長

 いや。それは次のプレゼンの中で、ぜひお願いします。

 

○菅野委員

 というか、この要保護児童対策地域協議会に関してですけれども、ここで議論される場合に、割と大きな市であるとか、それなりの市や区なのです。私どもの管内を見ると例えば人口7,000人ぐらいの町があります。そこも同じように要保護児童対策地域協議会のシステムをというところで頑張っていろいろなことをされるのですが、うまくいかない。だから、やはり人口規模であるとか社会的リソースであるとか、いろいろなところでモデルが必要ではないかというのは常日ごろ思っています。

 

○松原委員長

 ありがとうございます。他にもいろいろご質問・ご意見等があるかと思いますが、メールでの対応ということでお願いしたいと思います。

 関連しますので課題(4)「児童相談所が虐待通告や子育ての悩み相談に対して確実に対応できる体制強化」に移らせていただきます。まず、事務局から説明をお願いいたします。

 

○川鍋虐待防止対策室長

 それではまた資料5をご覧ください。4ページの課題(4)児童相談所の業務や人員体制についての実態と課題でございます。左側の「実態」ですが、平成25年度における児童相談所の児童虐待相談対応件数は平成11年度に比べて約6.3倍でありますけれども、児童福祉司の配置人数は同期間に約2.3倍。現在の児童福祉司の配置人数は2,829人という状況でございます。

 それから、二つ目ですけれども、これは単純計算です。平成24年度の全相談対応件数、例えば虐待以外の障害相談等の他の相談件数も含めたトータルの全相談対応件数を単純に児童福祉司数で割りますと、1人当たりの平均が143.9ケースとなります。

 三つ目でございますが、児童心理司の配置人数は児童福祉司の配置人数の44.5%となっております。これは平成18年に私どもの検討会におきまして「今後の児童家庭相談体制のあり方に関する研究会報告書」をまとめておりますが、この報告書の中では、児童心理司については、児童心理司:児童福祉司=2:3以上を目安に、さらには児童心理司:児童福祉司=1:1を目指して配置すべきであるとしております。

 四つ目ですけれども、先ほどもありましたが平成27年度予算概算要求で児童相談所全国共通ダイヤルの三桁化に関する予算を要求しております。

 右側の「課題」でございますけれども、一つ目は児童相談所の業務のあり方や人員配置。二つ目は、児童相談所に専門的な人材を確保するための工夫。三つ目、夜間休日の相談に対応できる体制整備。四つ目、児童相談所職員の専門性を高めるための研修の工夫。五つ目は新制度で施行されますが、利用者支援事業などとの役割分担についてどのように考えるか。最後に、児童相談所業務の一部を民間を含めた他の機関と分担することについてどのように考えるか。以上でございます。

 

○松原委員長

 それでは、児童相談所のお二方から。まず、菅野委員お願いいたします。

 

○菅野委員

 そうしましたら、菅野から資料8に基いて説明させていただきます。最初にこの「児童相談所が虐待通告や子育ての悩み相談に対して確実に対応できる体制整備について」というテーマを聞いたときに、こんな大それたことを言ってもよいのかなと思いました。現行システムの矛盾とか欠陥というところがあって、大変なところに手を付けたなと思いました。ですから、小手先の上乗せといった対策で解決できない命題だと思っています。

 まず、2枚目のスライドに「児童相談所の使命」ということを書かせてもらいました。子どもたちの育ちを応援して、大人になって自立して社会の構成メンバーになってもらう。これは市町村の子育てのいろいろなことも同じだと思います。私は、児童相談所は今年で36年目になりますが、その経過の中で社会的課題になるものに対していろいろなことで対応していって、それを社会に還元していったという歴史が児童相談所の中にはあります。児童相談所のモデルであったチャイルド・ガイダンス・クリニックという児童精神科医のいるクリニックですけれども、それが本国アメリカでは幾つかの専門機関に分割していっているという現実があるということをここで述べさせていただいています。

 次のスライド3のところは先ほど増沢さんの説明にありましたので、ここは省略させていただきます。子どもを支援していくときに、これぐらいの要素のことをきちんと把握して見ていける人間が必要でしょうし、できればこのことを家族と共有する。アセスメントワークといいますが、これは家族と子どもと機関が協働で、お互いにこうですよね、こういう課題がありますよねというようなところで共有するアセスメントとして保護者とか子どもたちも知っているのです。そういうことが必要ではないかと思います。

2ページの下、スライドの4です。ここでは思いつくことを列挙してみました。「虐待通告」といわれても、これは一括りにできないです。例えば泣き声通告ということで、どこどこで泣き声が何時ごろにずっとあるというところで、どこの赤ちゃんが泣いているか必ずしも特定できない場合があるのです。そういうときには難しいのですが子どもがいるとされている家をしらみつぶしに当たっていかなければならないというところがあります。大半はサポートするレベルなのです。この泣き声通告への対応で訪問された側がものすごく傷つく場合が実際にあります。そこのフォローが全然できていません。そういう課題があります。それから、DV環境の通告です。これは警察からもいろいろいただいていますが、この辺りも加害者と被害者という関係でDV防止法からみればという場合と虐待対応からみればという立場の違いとか、いろいろ難しい問題があります。このように「通告」というところでもいろいろあるということと、右側に移りますけれども「子育ての悩み相談」、これは児童相談所がずっと頑張ってやってきた支援を中心にいろいろなことを開発してきました。

 この虐待対応と悩み相談について次の3ページの表で少し説明を加えています。これは日本子ども家庭総合研究所の山本恒雄さんという研究部長が調査研究で述べられているもので、基本的に虐待の対応の仕方と一般的な相談対応の仕方は枠組みとして異なるものであるということをきちんと認識しておく必要があるだろうというご提言をいただいています。時間がないので、かいつまんでお話ししますが、「目的」は両方ともウェルビーイングです。これは間違いないところだと思います。個人の権利や自己実現が保障されて良好な状態にあることというのがポイントになります。それを達成するための技術的ことになりますが、相談に来られる方のニーズに基いてというのが従来私たちが学んできた相談支援の方法だと思います。それを右側に整理しておきました。左側は虐待対応で「介入的関与」という名前を付けています。両方とも支援なので方法論の違いというところで説明していきます。基本的に相談というのは傾聴・受容・同意・承諾が基本原則にありますが、虐待対応は権限行使によるリスクマネジメントになります。ですから、同意や承諾を必要としない対応、この辺をきちんと意識して仕事ができているかというのが大きいと思います。「守秘」のところをご覧いただいて、従来型の相談ですとカウンセリングの中で語られたことは、そこの中だけの秘密です。安全を保証することで傷つきやすいところをさらけ出したりしながら受け止めてもらって癒やされていくというプロセスがあるわけです。ところが、虐待対応というのは保護者との間でも、私も保護者支援をやってきた経過がありますけれども、悪いことは隠したくなる。虐待は隠したいものだから、秘密と虐待は仲良しです。オープンに話していくということが努力していることの評価であると判断しますと伝えていました。今の現実をスタートラインにして支援していこうと。要保護児童対策地域協議会の枠組みで行われる会議では守秘義務の縛りによって参加機関内で情報を共有するというように、情報の扱い方に関しても大きく異なるということです。分かりにくい部分もあると思いますけれども、方法論が違うということだけここのところで受け取っていただければよいと思います。

 先を急ぎます。次の4ページのところで、先ほど増沢さんの説明があったのはこの辺ではないかと思います。CPSを児童保護局と訳していますけれども、これは児童相談所そのものではありません。児童相談所の介入・調査部門になるのではないかと思います。そこのところで児童相談所と比べると、二桁ぐらい職員数が違うという現状を教えていただいて羨ましいと思いました。支援のところでイギリスの治療機関の説明がありましたが、これもそうですね。こういうものがあれば、もっと毅然として役割分担しながら介入していけるのではないかと思いました。

 次に5ページのスライド9は、今後、現状の中で何とか少しでもうまく業務が進むための工夫ということで、こういうアドバイスをいただいています。これは要するに「告知」です。あなたがやっていることは虐待であるということになると、虐待かどうかを明らかにすることが関係性のスタートラインになりますが、そうすると、虐待なのかしつけなのか事故なのかというところで議論になるわけです。そうなったときに、虐待かどうかではなくて、子どもが安全かどうか。この状況についてどう思うか、というところで関わっていってはどうだろうというアドバイス、提言をいただいています。なるべくこういうものも入れてみたらどうかというところで現場でやったりしています。このように現場のことをよく知っていて調査研究をしていただいてアドバイスをいただけることはとてもありがたい。児童相談所も、昔は厚生労働省も出しておられたのですが事例集というものがあって、こういう社会的課題に対してこのような取組をしているということを全国の児童相談所から事例を集めて出されていたのです。いわゆる研究と共有化ということが行われていたのですが、このご時勢ですので事例集を出すのは難しくなってなくなってしまったという経過もあります。そういう意味で、こういう研究機関でサポートしてもらえるのは非常にありがたいと思っていたのですが、なくなったという話を聞いて残念に思っています。

 スライド10からが一番のポイントではないかと思います。「圧倒的な人手不足と社会資源不足」と書きました。通告の激増ということがあります。通告に素早く対応するシステムにはなっていない。三桁化という話を聞いたときに、どうしても110番・119番がイメージに浮かぶのですが、そうすると総合指令所か何かをつくるのか、パトロールに誰か走っているのか。そういうイメージができてしまうのではないか。それに見合うような体制作りは無理なわけですし、少しドキっとしました。「人手もなければ、手順もスキルも統一されていない」、この辺は1回目のときも少しお話させていただきましたが、警察官の方々というのは例えば執行法があって、どういう手順でどのようにして関わっていくということが決まっているのです。私どもには警察官が退職出向でおられますが、「なんと曖昧な」と言われます。やはり人の権利や権限を制限したり介入していくというところでは、手順や教育を受けたりすることを法律で縛ることも大事でしょうし、必要ではないかと思います。それと、1回目にあまり窮状をしゃべってもという話をしたので、若干窮状についても書いてありますが、「児童相談所に持っていけばどうにかしてくれると思われている」児童相談所の限界というものが実はあるのですが、ないと思われているということがあります。「家に帰ったら叩かれる、虐待されている」と言っている家出少女がいます。児童相談所に何とかしてくれと。親と話すと「そんな子どもはいらないから、そっちでどうにかしてくれ」。こういうことが現実に日々起こっていたりします。かつ、例えば「疑いのレベルでも関わっていかなければならない」というのが児童相談所でありますが、これが事件になって捜査が始まると情報が入ってこなくなるのです。直接取れなくなりますし、私たちと接することが難しいというところがあります。

6ページ、最期のところに書きました。確実に機能するためには、虐待対応と相談支援は別の機関でしていかなければいけないのではないかと思います。30年進んでいるといわれる欧米・北欧の良いところを上手に取り入れていく必要があるのではないかと思っています。標準自治体という話で児童福祉司の枠組みがありますが、人口170万人モデルで、どれぐらいの虐待ケースで、どれぐらいの子どもをどう扱うのかという資料がほしいと思います。なぜこんなことを言うかというと、この36があるせいで、例えば県の中で人員増を要求しても36でしょうと。だったら、ここでしょう。入っていますよね。あなたたちの仕事の仕方が悪いのではないですか。残業が多いのは、手際が悪いのではないですかと見られるということです。こんなことを言うと、また叱られるかもしれませんが。叱られるのは慣れているので言わせてもらいます。

 最後のところで、「日常的な相談と専門相談の階層システム」を基本的に作っていかなければいけないのではないかと思います。小学校区ぐらいに相談窓口を設置し、中学校区ぐらいに相談機関を設置して、それを包括するような形で各種専門相談機関を置くというような、社会資源構造みたいなものを同じような形でもよいですからイメージして皆で進んでいけたら良いのではないかと思っています。ということで、私の発言を終わらせていただきます。

 

○松原委員長

 菅野委員、ありがとうございました。急がせてしまいまして申し訳ありません。

 では、辰田委員、お願いいたします。

 

○辰田委員

 お手元の資料9になります。児童相談所は、区市町村との連携・役割分担を踏まえながら、子どもに関する養育困難、育成、非行、障害などあらゆる相談について、専門的立場から子ども及びその家庭に対し、必要な調査及び適切な診断および総合診断を行い、個々の子どもや家庭等に最も効果的な援助を確保することを目的としています。

 その上で、役割ということがあります。特に虐待相談においては、虐待の未然防止・早期発見・早期対応等を中心に、住民に身近な区市町村に積極的な対応を求めながら、専門的な知識及び技術を必要とする事例への対応や区市町村の後方支援を行ってきました。

 その中にあっては、効果的な援助が期待できるソーシャルワークの技法の開発や確立はもとより、親子の再統合の促進への配慮、児童虐待を受けた子どもが良好な家庭的環境で生活するために、子どものみならず保護者も含めた家庭への時間をかけた支援に取り組んでいます。

 虐待相談においては、早期発見・早期対応の必要性は言うまでもありません。先ほど菅野委員も言っていたようにダイヤルの三桁化に伴い、警察・消防と同じように、ダイヤルインがあれば、昼夜問わず臨場し、安全確認していかねばならないことは認識できます。

 しかし、児童相談所が虐待相談を扱うということは、すべての子どもが心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮することができるよう子ども及び家庭等を援助することが目的であり、継続的な支援や指導並びに子どもの心のケアなどきめ細かく求められることから、長期的な対応が必須であります。

 よって、瞬時に子どもの安全確認をすることに力点を置く三桁化と、児童相談所本来の援助活動を児童相談所だけに求めることは、必ずしも効果的ではないと考えます。全国の警察署と児童相談所の設置数は、警察署が1,270、交番が6,312に対して児童相談所は207か所ですから、その割合は警察署と比較しても6分の1です。都道府県内に2か所の児童相談所の設置もあります。そういったところで警察との連携はきちんとしたいと考えております。

 その中で児童相談所がどのように体制の強化をしていくのかというところで、まず児童相談所の専門性及び組織体制の充実が必要だと思っています。一昨年の3月に児童福祉法施行令が発布され児童福祉司の担当区域について、人口概ね47万人を標準に定められていたところ、平成25年度地方交付税算定額基礎において、人口170万人に対して34人という基準が35人に増員されましたが、ご存じのとおり、児童虐待相談対応件数の増加に伴い、依然として児童福祉司はまだ不足しています。初期対応に追われているというのが現状です。さらに、児童虐待及び非行相談等への対応力の強化、市町村職員の相談業務への支援、保護者支援・指導の重点的対応、児童の権利擁護の推進や里親委託の推進等のためには、スーパーバイズ職員の配置も不可欠であります。児童福祉司の勤務経験年数が3年未満というのが半数を占めており、児童福祉司の育成環境において整備が急務であることから、児童福祉司の増員に加え、スーバーバイズ職員についても算定基礎に盛り込むなど、配置基準のさらなる充実を図り、児童福祉司の増員を図る必要があると思っています。

 次に「専門職の配置基準」についてです。児童心理司、医師、保健師などの専門職の配置基準を、児童福祉司と同様に児童福祉法施行令において明確に定め、地方交付税対象とすることが必要だと考えます。児童心理司については、従来、担ってきた育成相談等に加えて、虐待等の緊急度の高い対応が求められ被虐待児だけでなく、その保護者の見立てを行う上で児童福祉司の役割はとても重要であります。かつ、その対応する件数も増加している現状があります。児童心理司は少なくとも児童福祉司3人に対し、2人の割合で配置を充実させる必要があります。また、児童精神科医及び保健師を全ての児童相談所に最低1人配置することが必要であります。被虐待児や発達障害児等への緊急な医学診断のニーズが年々高まっていることから、「改正少年法」により、警察から児童相談所へ送致される触法少年への診断評価を迅速、かつ、適切に実施する必要があると思っています。

 二つ目の「児童虐待防止等に関する取組の強化について」です。幾つか委員からもお話がありました「児童虐待への調査権の法制化」です。刑事訴訟法・弁護士法では「法務省又は公私の団体に対し報告を求めることができる」と規定されています。しかし、虐待防止法では「地方公共団体の機関に対し、資料・情報を求めることができる」と限定的な規定となっています。児童の安全確保をはじめ、児童虐待防止に関する業務を円滑に実施するために必要な情報等を迅速に入手できるよう、虐待防止法の規定に、区市町村または児童相談所が「児童虐待の調査について、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」という内容を明文化し、児童虐待への調査権を法制化することが重要であると考えます。

 次に「保護者指導への司法等の関与」についてです。在宅指導でも、その後児童福祉司指導等をかけても、なかなか指導に乗らないというケースが多々あります。虐待を行った保護者に対する援助の効果を上げ虐待の再発を防ぐためには、保護者が虐待の事実を認知し、かつ、児童相談所の援助を受ける動機付けが認められるかによります。しかし、虐待を行った保護者が虐待の事実を認めず、児童相談所の援助を拒むことが多々あり、特に、児童相談所が強制的介入を実施した場合については、将来の家族再統合に向けた援助活動に支障をきたしています。それによってまた再保護となると施設入所又は重篤な事件等につながっている部分もあります。そこについて保護者指導に保護者が応じない場合は裁判所から保護者への勧告等がなされ、保護者指導の動機付けや実効性を高める仕組みの検討を進める必要があると思っています。

 次に「精神科病院への一時保護委託」についてです。重篤な虐待ケースが増加する中で、通常の一時保護所では対応できない精神科医療を必要とする子どもたちが増えてきています。そういった子どもへの治療や医療的ケアを迅速・適切に行う必要があることから、親権者の同意が得られない場合には、児童相談所長、施設長の同意による医療保護入院及び円滑な一時保護委託が可能となるよう、引き続き精神保健福祉法との整含性を図り、取扱いを定めることが必要であると考えています。

 三つ目に「一時保護機能の充実」として、子どもの安全・安心を図ることから一時保護所の体制の強化・整備というものが必要であります。一時保護が必要な児童について、その年齢構成は幼児から思春期まで、また、一時保護を要する背景も非行、虐待あるいは発達障害などさまざまであり、一時保護に関してはそこうした一人一人の児童の状況に応じた適切な援助を確保することが必要であります。適切な一時保護所運営が確保できるよう、職員配置について現行の児童養護施設準拠を改め、学習機会の保障を含めた一時保護所独自の最低基準を制定するとともに、施設整備や事業に要する経費、一時保護委託費等の改善が求められます。

 四つ目、その他としまして(2)の「居所不明児童の対応」についてです。前回の本委員会でも話が出ていましたが、児童相談所が虐待として援助中又は継続調査中のケースにおいて、転居先が不明な居所不明児童については、全国児童相談所長会申し合わせに基づくCA情報連絡システムを活用していますが、このシステムについてもまだまだ改善が必要な部分があり、それで全て把握できるまでには至っておりません。従って、居所不明児童への対応については、現在、国において実施している「居住実態が把握できない児童に関する調査の結果を基に、児童相談所のみならず、都道府県、市町村、学校、警察等の関係機関が情報交換できる仕組みを構築する必要があると考えます。

 加えて、重篤な虐待事案など児童相談所のみで対応を図れることは少なく、警察との連携が必要であることは言うまでもありません。東京都においても児童相談所の法的対応力強化に向けて警察官OB等の警察での実務経験者を児童相談所に配置しておりますが、そういった虐待事案等に対して連携して、より迅速・適切な対応をしていくために常に児童相談所と警察署は要保護児童対策地域協議会等を活用し虐待ケースについての情報共有、意見交換を進めて関係構築の拡大に努めていく必要があろうかと思っております。以上です。

 

○松原委員長

 ありがとうございました。児童相談所の大変な状況がお二方の報告の中から伝わってきますが、事務局の課題の中に機能を一部民間に移すというような課題提起がありますが、そのことについてお二方、菅野委員、辰田委員のコメントを伺いたいのですが。それはすべきではないということもあるし、もし移すとしたらどこだという話もあるかと思いますので、お願いします。

 

○菅野委員

 移せる場所があればというところで言えば、支援の部分になるのではないかと思います。ただ、私ども管轄エリアを考えると社会資源がないですね。だから、NPOとか企業などの活動が活発なところや都市部など社会資源の豊かなところはよいのですけれども、取り残されるエリアがどうしても出てくるということがあるのではないかと思います。

 

○松原委員長

 では、ここの課題をめぐって、ご意見・ご質問があればお伺いします。既に想定している進行表から30分遅れていますが、もっといろいろご意見を伺わなければいけないので、もったいないと思うのですが、委員の方々については次回にそれぞれのご説明を受けて議論を深める機会もありますので、今日ご出席いただいている方にご発言いただく機会の方を優先したいと思いますので、課題(5)について事務局から説明していただき、お二方からお話を伺いたいと思います。

 

○川鍋虐待防止対策室長

 それでは、資料5の最後のところですが課題(5)の「緊急時における安全確認、安全確保の迅速な実施について」ということで、出頭要求から臨検・捜索に至る手続きを迅速に実施する工夫ということですが、まず「実態」としまして、この制度は平成20年から施行されており、この6年間での実施数ということで出頭要求は187事例(出頭要求を経た立入調査は40事例)、再出頭要求は19事例、臨検・捜索は7事例でございます。臨検・捜索事例7件の、出頭要求から臨検捜索までの日数はさまざまでございまして170日という形になっております。

 「課題」としましては、出頭要求から臨検・捜索に至る手続きを迅速に実施する方策ということで、考えております。以上でございます。

 

○松原委員長

 ありがとうございます。この課題につきましては磯谷委員と浜田委員からご説明いただきたいと思います。まず、磯谷委員から、10分間ぐらいでお願いいたします。

 

○磯谷委員

 私に与えられたお題は「緊急時における安全確認及び安全確保」ということで、具体的には「臨検・捜索」ということですけれども、基本的にはこのお題を守りながら、最後の方に少し付け足しをしたいと思っております。

 この臨検・捜索について、制度そのものに着目するだけでは足りないのです。やはり、具体的な実務の中ではまず必要な情報をきちんと迅速に集めるということ。それから、その情報をきちんと評価する。その上で、立入調査や臨検・捜索が必要だということになったら、その対応を迅速にする。このような形になると考えます。

 そうすると、順に見ていきますと、まず「情報収集」ですけれども、現在は個人情報保護の考え方が浸透したことによって個人情報を集めることが難しくなっているという現状があります。例えば要保護児童対策地域協議会というのは個人情報を共有する一つの枠組みではありますけれども「関係機関、関係団体及び児童の福祉に関連する職務に従事する者」といったところについては、十分かどうかはともかく一応個人情報共有の仕組みがあるわけですけれども、それ以外の、特に民間の病院や民間の企業については、現場からの情報収集が難しいといわれています。ここについては先ほど、辰田委員から調査権限の話が出ていました。確か全国児童相談所長会も以前に調査権限が必要だという提言をされていたのではないかと記憶しておりますけれども、これは以前から必要だと申し上げていますが、理由はよく分かりませんが進展がないということなので、ここはぜひ、刑事訴訟法を一つここに参考までに載せておきましたけれども、こういった照会の権限というものを明記していただく必要があるだろうと思います。一般に刑事訴訟法の解釈としても、これに基いて報告した場合には原則として守秘義務に違反しないと解されていますので、そういうものがあれば民間団体等についても情報を出しやすいだろうと思います。

 次に、情報を取った後でそれを分析・評価するといったところでは、何といっても重要なのは児童福祉司の専門性というところですけれども、これも先ほど児童相談所から話があったように現在は経験の浅い児童福祉司の数が非常に多くなっております。私は子どもの虹情報研修センターで新任児童相談所長の研修をさせていただいていますけれども、そこでの経験年数を見ても、非常に経験年数が少ない方もよくいらっしゃいます。そういうことを考えると、児童相談所における人材育成というのは、これは増沢さんの専門だと思いますけれども、人材育成が非常に重要になっていると思います。それから、もう一つ強調したいのは、実際に児童相談所の現場で見ていますと、「緊急介入」というと初めて通告を受けて動き始めるというイメージを持ちがちですが、実際にはそうではなくて、長い間関わってはいるのだけれど、だんだん状況がままならなくなってきて、ついに介入が行われるということがよくあるのです。そうすると、そこに至るまでに実は担当の児童福祉司は保護者との間や関係機関との間でいろいろなしがらみに囚われていることがあるわけです。もちろん人間ですからいろいろミスをすることもあります。そうすると、親の方は巧みにそこをとらえて「児童相談所はこんなミスをしたじゃないか。児童相談所は自分のミスを棚に上げて、なぜ他人の家のことを言えるんだ」などと堂々と言うわけです。そうすると、担当の人は非常に躊躇してしまうということがあります。あるいは、経過の中で期待がもてる情報が少しあると、それに過度に傾斜してしまって目が曇るということもあります。要するに長い関わりがあるだけに評価の目が曇るということがあるのです。それを見ていると、一つはスーパーバイズの重要性ということがありますけれども、児童相談所は所詮小さい組織で、スーパーバイズをする例えば係長なども親の前でいろいろ言ったりしているわけです。だから、本当の意味でのスーパーバイズなのかどうかよく分からないですけれど、それだけではなくて、介入するところと平時に保護者や子どもと向き合ってケアをしたり支援したりする人を分ける必要があるだろうと。それは児童相談所の中で分けるのか、別の機関にするのかは以前から議論がありますけれども、いずれにしても同じ児童福祉司が親と対峙しながらケアをやるというのは、見ていても限界を感じています。そういうようなことで、この体制そのものを見直さなければいけないのではないかという話です。

 それから、「臨検・捜索の迅速性」については、先ほど事務局からも出頭要求から70日というケースもあるというお話がありましたけれども、恐らく実務ではかなり段取りを組んで、これをやって駄目だったらこれをやってという形でやっているとは思います。ただ、本当にもし緊急なケースがあった場合にも、どうしても時間がかかってしまうというところはある。ですから、ケースによっては立入調査のステップを踏まなくても、直ちに臨検・捜索することができるような制度にすることが必要だろうと思います。

 今、臨検・捜索を中心に児童相談所の体制についてもお話ししてきましたけれども、こういった強制的な権限を行使するためには、それを支える組織や人材、あるいは人員といったものが必要になってくる。先ほど触れられていた児童福祉司の増員といった問題や外部との連携といったところも意識していかないと結局、作った制度もうまく使えないということになると思います。

 それから、レジュメの第2「その他」のところですけれども、一つは「裁判例の分析」のところです。児童福祉法28条や親権停止等の裁判が全国で起こっているわけですが、それについての情報収集が非常に弱いと思います。児童相談所は各都道府県でばらばらですので、また厚生労働省は自治体がやることだから情報収集は憚られるのかもしれませんが、これは本当はきちんと情報収集して、一体どのような審判なりが行われているのか。それを見て必要な改正が何かあるのか。あるいは、その中で学ぶものがあるでしょうし、この裁判例の分析は絶対に必要だと思っています。これまでは一応最高裁判所が抽出したケースを家庭裁判月報へ掲載していたということがありました。児童相談所もそれを参考にしていたところもあると思いますけれども、ご承知かと思いますが、今年の3月でこの家庭裁判月報は廃刊になっておりまして、そういう意味でも、この裁判例の収集・分析というのは特に期待をしたいところです。

 それから、二つ目のところは「検証」の問題で、これも最初のときにも申し上げましたけれども、やはり十分な検証をして初めて、まさにこのような議論ができるのだと思います。ところが、現実には地方公共団体から十分な情報が上がってこなかったり、あるいは地方公共団体も十分な情報が取れなかったりして、私の目からは十分な検証ができていないと思っています。この点についても、検証に必要な情報を収集する権限をどこかの機関にきちんと与えて収集ができるようにする必要があると思っています。

 それから、最後に一つ申し上げたいのは、最近、読売新聞でしたか居所不明児、特に住民登録が抹消されている子どもの実態について報道がありまして、18歳未満の子どもで住民登録がないのが940人という報道がありました。住民登録上の住所に住んでいない住民の登録をそのまま残すわけにはいかないので、それを消すのは仕方がないのですが、ただ消すだけということになりますと、結局どこの地方公共団体も責任を負わないということになってしまいますので、やはりこういった職権消除をするような場合に、きちんと児童福祉の担当部署あるいは母子保健の担当部署と例えば情報の共有をして、「この家族は今はここにいないから住民登録を消除せざるを得ないけれども、あとをどのように対応するのか考えてほしい」というような形で連携する必要があるし、ひいては国のレベルでそういった状況を支援する必要があるだろうと思います。本来のお題からすると余計なところもお話ししましたけれども、私の話は以上です。

 

○松原委員長

 ありがとうございました。それでは、浜田委員お願いします。

 

○浜田委員

 私もレジュメに基づきまして、若干お話をさせていただきたいと思います。緊急時における安全確認、安全確保を迅速に実施するということですけれども、まず前提として臨検・捜索が数としては少ない。これの理由が果たして明らかになっているだろうかということを指摘しておきたいと思います。私が知らないだけであればよいかもしれませんけれども、件数としては極めて少ない。これの理由が一体どこにあるのかということは、我々としては知っておくべきことではないかと思います。例えば立入調査等で既に目的を達成しているから、臨検・捜索に行く必要がないのか。それとも、本当はやりたいのだけれども臨検・捜索の手続きや要件があまりに重装備で使いにくいために件数が少ないのか。それとも、まだ他に理由があるのかというところの実態は知っておいた上で、これの整理に手入れをするということが必要ではないかと思います。

 関連しますが、次の(2)です。迅速に行われていないという前提があるとして、そのことによって実際にどのような弊害が生じているのかというところも我々として知っておくべきだと思います。そこに書きましたけれども、時間を要したのでこういう被害が起きた、でありますとか、迅速に行うことができなかったために臨検・捜索自体を諦めたという事案があるのかないのかというところも興味深いところではないかと思っています。要するに、効果的な施策を立案していくためには、その実態の正確な把握がまずは必要ではないかということを申し上げたいということでございます。

 続いて、では迅速化するために必要な方策としてどのようなことが考えられるかということを考えてみました。まず、手続自体が確かにややこしい手続ではありますので、手続の全体像や標準的な流れを簡潔に示したマニュアルのようなものがあればよろしいかと思います。法改正ができれば、それに越したことはないのかもしれませんが、もし法改正を要しない中での運用の改善を図るというのであれば、現場でその業務に当たる児童相談所の職員がこの制度の全体像を理解して、それぞれの手続がどのような順番でどのような意味合いで進んでいくのかということをしっかりとご認識いただくことが必要であろうと思われます。期間が長い短いというお話がありましたけれども、標準的な進行スケジュール、もちろんケース・バイ・ケースなわけですけれども、一つの考え方として標準的な進行スケジュールを示すことも、一つ検討の余地があるのではないかと思います。

 それから、臨検・捜索の許可状は裁判所に対する請求の形で行うわけで、これについては所定の書式というのはお示しいただいているところであります。ただ、具体的にどのような事情をどの程度記載する必要があるのか。また、最低限提出されるべき資料としてどのようなものがあるのか、ということは私の思う限りはまだ十分に明らかになっていないように思います。もちろん、これはケースの個別性、それぞれ違うということからいたしますと致し方ないことといえますけれども、例えば必ず検討して出さなければいけないものをチェックボックスの形で網羅してしまって書式の中に入れ込んでしまうということも検討の漏れでありますとか提出の漏れなどを防ぐ意味合いでは有用ではないかと考えます。

 次に必要なものとして提案を差し上げたいのは、Q&Aです。臨検・捜索が認められるための要件を法律の条文から引っ張ってくると、そこに書いてあるようなものです。さらに、再出頭要求ができるための要件として立入調査を拒み、妨げ、又は忌避したことが必要だということになっています。下線を付してお示ししているところが典型ですけれども、そのような文言が実際にどのような場面で満たすというのか、いかなるときに要件を満たしているのかという点については、必ずしも特に現場の職員にとって明確ではない部分があるのではないかと思います。そこで、こういった点については実際の職員のためのQ&Aが整理されることが必要ではないかと思います。例えば、以下のような項目をちょっと考えてみましたけれども、よくある話でオートロックのマンションで他の人が入ったときに、すっと後ろからついていってもよいかということもそうですし、少し下の方ですけれども、部屋の中に人影が見えることは見える。玄関チャイムを鳴らしても出てこない。そのときに、正当な理由なく保護者が職員の立入り又は調査を拒んだといえるかどうか。そこにいるのが保護者かどうか分からないわけです。そういった状態で拒んだと言ってしまってよいのかどうか。また、保護者が在宅していないようなときに、出頭を求める書面を玄関ドアに挟み込むことだけで、本当に出頭することを求めたといってよいのかどうか。それを保護者が認識していないかもしれない。というような、こじつけのようであったり、屁理屈のように聞こえるかもしれませんが、現場で職員が困るのは、もしかしたらこういうところではないかと思うわけであります。そうなってきますと、これはなかなか網羅することは難しかろうとは思いますが、ご判断の参考になるような資料をお示しできるとよいのではないかと考えています。このQ&A等をもし作ることが可能であれば、それを現場で周知徹底していただくために必要な研修等を行うことが有用ではないかと思います。今日、横浜市からご紹介がありました実際の模擬家屋を使っての研修という形は極めて有効で、それはぜひとも参考にできるとよいと思っております。

 それから、少し視点は変わりますけれども、法律専門職、具体的には弁護士ですが、実効的な活用がもっとなされるべきであろうと思います。調査をされたところで見ますと、児童相談所における弁護士との協力・連携状況は、全ての児童相談所において「整えている」という結果を拝見いたしました。ただ、弁護士側から思いますのは、恐らくその実態の中にはさまざまなレベルのものがあって、必ずしも全ての児童相談所で必要な、十分な連携体制がとられているとまではいえないのではないかと危惧しています。臨検・捜索許可状の請求は裁判所への申立てという法的手続ですので、その後も何らかの形で弁護士が関与することが有用であろうと思います。これは実は弁護士側の問題でもあるので、難しいところもあるかもしれません。

 最後に指摘しておきたいのは、安全確認に係る制度を全体として検討する必要があるのではないかということです。臨検・捜索の迅速化を目指す場合に立入調査との役割分担と申しますか、使い分けをどのように考えるかということが一つあるように思います。すなわち、臨検・捜索を使いやすい形に整理が進んでいくと、極端な話ですが司法審査がないような立入調査をなしにしてしまえということも立法論としてはあり得なくはないと思います。ただ、実際のところ、手続の迅速性や柔軟な対応ということでいくと、現実的には立入調査の方がむしろ使いやすいということは当然あり得るところかと思います。そうしますと、立入調査を含めた全体としての枠組みとして、どのような制度が望ましいかということを大きな枠組みで捉えることも必要であろうかと思います。

 最後は、また最初に書いたことと同じことを申しますけれども、実態としてどのような問題があるのか、どのような工夫がされているのかということを広く検証することが制度の改善のための前提として、やはり必要であろうと思いますので、最後にこの点をもう一度指摘いたしまして私からの報告を終わらせていただきます。以上です。

 

○松原委員長

 ありがとうございました。出頭要求から臨検・捜索に至る手続きを迅速に実施するということが、安全確認・安全確保の迅速な実施の核に当たると思いますが、このことをめぐってまたご意見をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 児童相談所の方々、よろしいですか。

 

○菅野委員

 迅速というところと絡むと思いますが、情報の取り方とか情報の正確性というところが、どこまで担保できるのか。児童相談所の感覚でいくと、全部、疑いのレベルでも、何でもやりなさいと言われている。これは、やはりものすごいことになる可能性もはらんでいるんですよね。「カギを壊して入ってみたけれど、何にもなかった」それで済む話ではないような気がしていて。もちろん早くというところは大事ですけれど、手順とかいろいろなこともあるでしょうけれど、精度を高くするというところとか、確認してというところが大事ですね。もちろん、子どもの安全にとっては大事なことですが、生活とか人生というところで介入していきます。介入された子どもも、ある意味介入されたこともトラウマになって、それも抱えながら生きていくという支援もしていかなければいけない。だから、入り口の話がありますけれども、出口というか、その後の支援のことも絶対にセットにしてもらわないと、安心して介入していけない現実があるというところもお伝えしたいと思いました。

 

○松原委員長

 ありがとうございました。磯谷委員も情報収集のことと、その後の分析の重要性を指摘されていたかと思います。他の委員の方、いかがでしょうか。

 そうしましたら、今日の三つの課題全般をめぐって、ちょっと私が急ぎましたので、ここは実はコメントしておきたかったということがあれば。今日の3本の柱それぞれについて言い残したこと等があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

 

○磯谷委員

 逆に、3本の柱のところは次回でも話ができると思いますが、今日せっかくいらっしゃった方にお尋ねしたいと思います。中板さんにお尋ねしたいのですが、先ほどのご報告の中で、ネットワークが非常に重要だと。また、保健が関わる必要性が高いというお話があって、全くそのとおりだと思いますけれども、今、思いつく範囲で構いませんが、何がそういったことを妨げているのか、何が連携や関わりをうまくいかないようにしているのか。その辺りで何かお考えのことがあれば、聞かせていただきたいと思います。

 

○中板氏

 今日の事例を通して言わせていただければ、医療機関との連携ということで、院内CAPSというのは医師も看護師も助産師もケースワーカーも皆さん虐待事例が入ると本務を一時、ある意味投げ出してチームを組むわけです。そういう中ではプラスアルファの部分がありまして、かなり個人努力といいますか、社会正義といいますか、まさに社会貢献で成り立っているということが1点。

 それについては、医療機関の中での院内CAPSについても診療報酬等である程度のインセンティブを付けていかないと、なかなか医療機関内の多科連携を含めて進まないと思っています。

 それから、特定妊婦が規定されたことによって、かなり産科医療の観察がスムーズになったというのは実感しているところで、精神科医療についてもまだまだ不十分ではありますけれども、また、通知も出していただいていますので、その通知も含めて医療機関も情報を提供していくということも少しずつは広まってきているのではないかと。それはもっと広めていかなければならない部分ではあると思っています。精神科については、やはり親との関係性というか患者さんとの関係性がとても重要になるので、どうしても情報提供はかなり憚られるといったことはよく聞きます。しかしながら、やはり子どもの安全、あるいは子どものこれからの将来ということを考えると、精神科もそこは関与していかなければならないといった方たちも増えてきているので、精神科においての虐待の問題も連携という意味でこれからも進めていかなければと思っています。

 それから、児童福祉の関係で今回、医療機関と保健と児童福祉という形での要保護児童対策地域協議会を病院の中で実施するという形で特定妊婦についても何回も重ねて検討しているわけですけれども、やはり児童福祉の領域の方たちと医学用語ですとか医療的知識という部分での共有がまだ難しい。そういったところはこれから事例を重ねながら付けていくのかなと。その中でも保健師は医療職でもあるので、そういう意味では通訳の機能も果たせるのではないかと思っているところです。とにかく、院内のインセンティブをしっかり付けないといけないと思っています。連携としては、そういうところです。

 

○松原委員長

 ありがとうございました。他に、いかがですか。

 それでは、今日は予定の時間をオーバーしましたが、有識者の4人の方を含めて非常に貴重な刺激的なご意見をいただいておりますので、これは次回で議論を深めていくときの大きな土台になると思っております。もし、追加意見等がございましたら、メール等で115日までに事務局にお寄せいただきたいと思います。

 それでは次回以降の日程について、事務局からお願いいたします。

 

○大津総務課長補佐

 次回以降の専門委員会の日程につきましては現在調整中でございますので、決まり次第ご連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。

 

○松原委員長

 委員の皆さまもお忙しいので、なかなか調整がつかないようですが。

 それでは、本日の専門委員会はこれにて閉会といたします。ご出席の皆さま、どうもありがとうございました。


(了)

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