ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会> 第9回 臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会 議事録(2014年11月26日)




2014年11月26日 第9回 臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会 議事録

医政局研究開発振興課

○日時

平成26年11月26日(水)14:00~16:00


○場所

厚生労働省低層棟2階 講堂


○出席者

委員

遠藤座長 桐野座長代理 楠岡委員 児玉委員 近藤委員
大門委員 武藤(香)委員 武藤(徹)委員 望月委員 山口委員
山本委員

事務局

二川局長 (厚生労働省医政局)
福島審議官 (厚生労働省大臣官房)
飯田審議官 (厚生労働省大臣官房)
成田審議官 (厚生労働省大臣官房)
土生課長 (厚生労働省医政局総務課)
神ノ田課長 (厚生労働省医政局研究開発振興課)
城課長 (厚生労働省医政局経済課)
椎葉課長 (厚生労働省大臣官房厚生科学課)
森課長 (厚生労働省医薬食品局審査管理課)
赤川課長 (厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課)
河野治験推進室長 (厚生労働省医政局研究開発振興課)
上野安全使用推進室長 (厚生労働省医薬食品局安全対策課)
平子企画官 (文部科学省高等教育局医学教育課)

○議題

1.報告書(案)について
2.その他

○配布資料

資料1 報告書(案)
参考資料1 第7回臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会議事録
参考資料2 第8回臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会議事録
参考資料3 医療用医薬品の広告の在り方の見直しに関する提言

○議事

○神ノ田課長 定刻となりましたので、ただいまより「第9回臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」を始めさせていただきたいと思います。委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、本検討会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。山本委員が若干遅れているようですけれども、本日は委員の皆様方全員に御出席いただく予定となっております。

 それでは、早速ですが、配付資料の確認をさせていただきます。一枚紙で議事次第と配付資料一覧を記載したものがございますけれども、それに沿って御確認をお願いいたします。議事次第の次に、それぞれ一枚紙で「座席表」「委員名簿」がございます。その後ろに、資料1と参考資料が1から3までございます。不足、落丁等がございましたら事務局までお知らせください。よろしいでしょうか。

 それでは、これより議事に入りたいと思いますので、審議の円滑な実施のため、撮影はここまでとさせていただきます。御協力をよろしくお願いします。以後の進行につきましては、遠藤座長にお願いいたします。

○遠藤座長 それでは、議事に入りたいと思います。まずは議題1「報告書()について」です。本件討会では、これまで、有識者の方々からのヒアリングや海外制度の調査研究班の方々からのヒアリングを重ねてまいりました。それに基づきまして、我が国の臨床研究のあるべき姿について、議論・検討を重ねてまいったわけでございます。前回の開催時には、取りまとめの報告書の骨子案を座長案という形でお示しをいたしまして、委員の先生方には活発な御議論を頂いたところでございます。本日は、前回の骨子案への御指摘を元に、本検討会としての報告書を取りまとめたいと思いますので、御協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、資料1の報告書()について、簡潔に事務局から御説明をお願いしたいと思います。事務局、どうぞ。

○中村補佐 事務局でございます。お手元にお配りしております資料1「臨床研究に係る制度の在り方に関する報告書()」を御覧いただければと思います。最初の2ページは目次です。ページ番号1と振ってあるペーパーから御説明申し上げます。

 「第一 はじめに」、臨床研究とは、医薬品や医療機器の有効性や安全性、手技や手術方法等に関する医学的課題を解決するために、ヒトを対象に行う医学系研究としております。一般に医薬品、医療機器及び再生医療等製品の開発には長期間かつ多額の費用がかかり、その成功確率は極めて低いことが知られています。臨床研究については、こういった医薬品・医療機器等の開発候補物質が実用化可能なものかどうか、といった開発の探索的研究手段として重要なものと考えられています。また、同種同効薬同士の有効性に関する比較研究や、手術と抗がん剤の組合せとの関係で最も効果的な医薬品投与時期の研究など、様々な診療ガイドライン等の検討を行う場面においても、臨床研究が実施されているという現状があります。

 少し省略させていただきまして、こうした中で、ノバルティスファーマ株式会社の高血圧症治療薬ディオバンの市販後大規模臨床研究をはじめとする不適正事案が、昨年来、次々と明らかになっているという現状です。こうしたことを踏まえて平成258月、厚生労働大臣の下に「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」を設置し、本年4月に報告書を公表しています。この報告書の中で、事案の発生の背景を指摘しつつ、我が国の臨床研究の信頼回復のために、臨床研究の質の確保、被験者の保護、製薬企業の資金提供等に当たっての透明性確保などの観点から、臨床研究に対する法制度の必要性について、本年秋を目処に検討を進めるよう提言されているところです。

 このような状況を踏まえまして、厚生労働省は本検討会を本年4月に立ち上げ、11月までの間、関係者の方々からのヒアリングを含めて、精力的に検討を重ねてきたところです。今般、その結果を取りまとめたということで、報告書を公表することにしています。

 続きまして3ページ「第二 検討会における検討の経緯等」ですが、検討会の開催状況、ヒアリングの対象者について記載しております。海外制度の研究班の研究代表者をはじめとしまして、医学界の関係者、各医学領域をそれぞれ代表する方から御説明を頂き、また、製薬企業や医療機器のメーカー等の業界関係者の方々からの御意見等も頂いたところです。

5ページで、「第三 臨床研究に係る国内外の制度の概要」です。これは主に、海外制度に関する研究班の報告に基づいて、国内外の制度の現状を概要としてまとめさせていただきました。

 まず「日本」についてです。我が国においては、これまで「医薬品医療機器等法」で規定されている治験を除き、「臨床研究に関する倫理指針」に基づいて、臨床研究を実施するよう求めてきているところです。この中では、被験者に対するインフォームド・コンセントの実施から、個人情報保護等の研究者の責務や倫理審査委員会での審査等が示されていますけれども、法律に基づく規制ではなく、違反に際しての罰則等はないという状況です。なお、厚生労働科学研究費のような公的研究費が補助されている研究において、倫理指針違反等があれば、研究費の返還等の措置を講じることになっています。

 この倫理指針については、現在、見直しが進められておりまして、モニタリング・監査に関する規定や、資料の保存に関する規定、利益相反に関する規定などを新たに設けることとして、「疫学に関する倫理指針」と統合した上で、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」として年内にも公表し、平成274月から施行される予定となっています。

 一方、治験につきましては、医薬品医療機器等法に基づく省令等の基準に基づきまして、インフォームド・コンセント、倫理審査委員会での審査、モニタリング等、いわゆる欧米における基準、ICH-GCP基準に則った形で適正化が図られています。

6ページで、なお、製薬企業の資金提供等につきましては、我が国では法律に基づく規制は存在しないところであり、現在、日本製薬工業協会または日本医療機器産業連合会において、透明性を確保するためにガイドラインが設けられ、加盟企業は研究開発費等についてホームページ等において情報の公開を行っているところです。

 次に「米国」についてです。アメリカにおいては医薬品に関する臨床研究のうち、未承認薬や適応外薬を対象とした研究用新薬申請制度、IND制度と言われるものですけれども、これが法律に基づいて実施されています。これは治験であるかどうかにかかわらず、対象となる臨床研究を規制するもので、データの信頼性の確保や被験者保護等に関する規定が定められています。また、この制度については未承認薬や適応外薬を対象としたものだけでなく、広告使用目的がある臨床研究についてもIND免除の対象とならず、INDの取得が必要とされているところです。また、手術・手技等については、この規制の対象となっていません。また、医療機器についてもIDE申請制度というものがあり、基本的に医薬品と同様な法規制の対象となっています。

 一方、製薬企業の資金提供等に当たっての透明性確保に関しては、2010年に、いわゆる「サンシャイン・アクト」といわれる法律が成立しまして、製薬企業等は10ドル以上の対価の移動については、医師の名前、対価の額等について政府のウェブサイトで公表することが求められています。

 次に「欧州」についてです。欧州においては「EU臨床試験指令」に基づいて、医薬品・医療機器等に関する原則全ての臨床研究を対象とした法規制が存在します。また、アメリカと同様に、治験であるか否かにかかわらず対象となる臨床研究を規制していて、データの信頼性確保や被験者保護等に関する規定が定められており、手術・手技等については対象となっていないところです。なお、欧州においては、これまでの画一的な規制によってアカデミアの研究活動が衰退したという批判があり、今後、リスクの比較的低い「低介入臨床研究」について、モニタリングの実施や補償の要件を一部簡略化するなど、従来の「指令」に代わって加盟国を直接拘束する「EU規則」が、本年4月に欧州議会等を通過し成立しているところです。

 また、製薬企業の資金提供等に当たっての透明性確保については、フランス等の一部の国を除き、業界による自主基準に基づいて行われているという現状です。

 次に8ページ、「第四 臨床研究に係る制度の見直しの方向性」についてです。1「法規制の必要性等について」、これは繰り返しになりますが、現在、我が国においては、治験については医薬品医療機器等法に基づき、国際的に整合された実施基準の遵守等を求めていますけれども、それ以外の臨床研究については倫理指針を告示して、それに基づく対応を行っているということで、法律に基づく規制は行われていないということです。他方、欧米においては、対象範囲はそれぞれ異なるものの、医薬品・医療機器等に関する臨床研究について、治験であるかどうかにかかわらず、法律に基づく規制を行っているところです。このため、昨今の医薬品・医療機器等開発の国際化の進展を踏まえると、我が国においても、5年後・10年後の将来を見越した上で、国際水準の臨床研究が実施できるような制度づくりが必要であるということを記載しております。

 また、昨今の様々な不適正事案が明るみに出たことを踏まえますと、研究の質の確保や被験者保護、製薬企業等から医療機関等へ提供される資金等の透明性の一層の確保を図ることにより、我が国の臨床研究に対する信頼回復を図ることが必要であり、また、事実と異なる臨床研究の結果が広告等を通じて、医療現場の治療方針に大きな影響を与えたことを踏まえた対応も必要であるということです。

 こういった不適正事案が判明した際には、行政当局において、例えば調査、再発防止策の策定、関係者の処分等の迅速な対応が必要となりますけれども、現状の制度では限界があるという指摘もあり、我が国の臨床研究に関する信頼回復のためには、現状の倫理指針の遵守だけでは十分とはいえないと考えられます。

9ページですが、これらのことから、当検討会におきましては、今後の我が国の臨床研究の制度の在り方として、倫理指針の遵守を求めるだけではなく、欧米の規制を参考に一定の範囲の臨床研究について法規制が必要であるとの結論に至りました。

 なお、法規制導入の効果としましては、臨床研究の信頼回復に資するのみならず、適切な産学連携を通じた医学系研究の発展や先進的な医薬品・医療機器等の開発、ひいては患者・国民の健康寿命の延伸に資することが期待されます。研究者には、このような法規制の効果について十分理解を得るとともに、研究者に過度な負担を課すことがないよう、運用面における配慮が必要であろうと考えられます。また、法規制の導入に当たっては、研究現場への影響を十分に考慮し、適切なタイミングを十分に検討するべきであると考えられます。

 次に、2「法規制の範囲について」です。法規制の導入に当たっては、先ほど述べましたような研究者等による自助努力と、法規制とのバランスを図ることが必要であると考えられます。1の「法規制の必要性等について」にお示しした考え方を踏まえると、我が国の制度の在り方としては、全ての臨床研究に一律の法規制等を課すのではなく、欧米の制度を参考に、医薬品・医療機器等に関する臨床研究について、臨床研究に参加する被験者に対するリスクと、加えて、研究結果が医療現場の治療方針に与える影響の度合い等の社会的リスクの双方を勘案した範囲とすることが妥当であると考えます。このことから、法規制の対象範囲としては、未承認又は適応外の医薬品・医療機器等を用いた臨床研究とすることが妥当であり、また、医薬品・医療機器等の広告に用いられることが想定される臨床研究を対象とすることも求められるところです。

10ページで、3「具体的な規制や対策の内容について」を御説明申し上げます。以下につきまして、前回の座長提案の骨子()とほとんど同じ記載については、少し省略をして説明させていただきます。

 まず全体的な内容として、具体的な規制の対策や内容については、欧米の規制の内容等を踏まえて実効性のある制度とすること。また、研究の内容そのものに規制が介入することには慎重を期すべきであると考えます。

(1)倫理審査委員会についてです。倫理審査委員会について、一連の臨床研究の不適正事案に際し、被験者の保護に重要な役割を担っていたにもかかわらず、何ら歯止めとならなかったという御指摘がある一方で、今後、自由な研究環境の確保と信頼性の確保の両立を図るためには、倫理審査委員会の果たす役割は今後ますます重要であると考えられます。

 その際に、倫理審査委員会の果たすべき役割としては、研究の倫理的妥当性だけではなく、科学的妥当性についても十分に審査する能力を有することが必要になってきます。現在、我が国の倫理審査委員会が1,300あると言われていますが、これらについて個々の審査能力や体制が十分でなく、審査の質が確保されていないのではないかという懸念があります。限られた人材を活用しつつ、審査における一定の質を確保するために、将来的には、地域や専門領域等に応じた倫理審査委員会の集約化を図っていくことが必要と考えられます。その際には、倫理審査委員会が適切に審査を行うことができるよう、様々な支援の方策についても併せて検討することが必要と考えられます。

 これらを踏まえまして、当面の対応としては、まずは、対象となる臨床研究について、現行の倫理指針でも、研究計画の妥当性等についてあらかじめ倫理審査委員会の審査を受けることを求めているところですが、その審査等を行う倫理審査委員会が具備すべき委員構成等の要件を設定するなど、その質を確保するための方策を検討することが必要と考えられます。また、その際、倫理審査委員会は、研究の開始時点だけでなく、その途中段階においても、必要な関与を行うことが求められると考えます。

11ページ、(2)臨床研究に関する情報の公開等についてです。これについては、臨床研究の実施状況が適切に公開されることは、臨床研究に対する国民の理解増進に資するものと考えられ、また、行政当局が臨床研究に関する情報を入手できるようにすることは有用なことと考えられる一方で、知的財産保護の関係から、どのような情報を公開するか等についても配慮が必要であるということで、情報公開に当たっては、まず現在、既に存在するデータベースを活用する場合には、検索のしやすさなどの利便性についての更なる工夫が必要であると考えられます。なお、研究者に対しては、研究の内容等について、あらかじめ行政当局等の事前審査を必要とするといった枠組みについては、実施に対して慎重であるべきと考えられます。

12ページ、(3)臨床研究の実施基準についてです。これは、まず先ほども御説明申し上げました欧米の実施基準であるICH-GCPを踏まえて定めることが適当であろうと考えられます。ただ、その際にはモニタリング・監査の手法等について、例えば製薬企業等が、新有効成分の治験において行うモニタリング等の手法をそのまま踏襲することは、必ずしも必要ではないのではないか、その点については、どの程度のモニタリング・監査等が必要なのかについて、一義的には研究責任者の方で、それぞれの研究のリスク等を踏まえて検討するべきものと考えています。

 次に、(4)有害事象発生時の対応について。これも現在、倫理指針の中で一定の予期しない重篤な有害事象等が発生した場合、倫理審査委員会に対する報告等を求めているところですけれども、これについて倫理審査委員会が受けた場合には、研究継続の可否について検討するとともに、必要な措置を講じるよう研究者に対して求める。また、一定のものについては、行政当局に対する報告についても求めるといった仕組みについても検討する必要があると記載しています。

13ページで、(5)行政当局による監視指導及び研究者等へのペナルティーについてです。研究機関は、不適正事案等に関する情報収集に努めるべきであって、情報の受付窓口を設置するとともに、必要な調査・対応を迅速に実施することが求められます。また、昨今明らかになった不適正事案を踏まえると、行政当局は関係者に対して必要な調査を行うとともに、必要な措置を講じさせる等の権限を確保するべきであると考えられます。

 なお、対象となる臨床研究について研究者等の義務違反があった場合には、直ちに法律に基づく罰則を課すということではなく、まずは行政指導や改善命令等による是正を促した上で、なお改善が見られない場合にペナルティーを適用するといったことを原則とするべきであると考えています。

 次に、(6)製薬企業等の透明性確保について。先ほども御説明申し上げましたとおり、現在、製薬企業等が提供する資金等の開示については、業界が自主的な取組を進めているところですけれども、これについて、より一層の努力を求めるとともに、今後、行政としては製薬企業等の取組状況も踏まえて、法的な規制も視野に対応を検討するべきであると記載しています。

 また、労務提供についても、業界による行動指針等の策定が必要です。ただし、医薬品と医療機器とでは、研究開発に際しての企業と研究機関との関係が異なることなども踏まえて、研究開発の促進に影響を及ぼさないような配慮が必要であると考えています。次の14ページで、こういった民間資金や技術力等を活用した産学連携については、イノベーションの推進のために必要不可欠なものであって、こういった点について国民の理解が進むということは、産学連携によるイノベーションの推進にも資するものと考えられます。

 次に、4「その他」です。(1)人材育成等について、今回の明らかになった臨床研究の不適正事案の背景として、臨床研究の実施機関における生物統計専門家の人材不足など、臨床研究の実施体制が不十分な状況にあったことが指摘されています。このため、生物統計専門家の人材を育成するとともに、医学部・歯学部等に生物統計専門家の教員を配置するなど、医学生等に対する教育の機会を適切に設けることが望ましい旨を記載しています。

(2)医療用医薬品の広告の適正化についてです。医療用医薬品の広告については、従来より、医薬品医療機器等法に基づいて、行政機関が監視・指導を行うとともに、製薬企業及び業界団体において、業界団体の自主規範を基に広告の内容が適正かどうかを審査してきたところです。

 今般の研究不正において、問題となった論文を使用した広告が薬事法第66条の虚偽・誇大広告等の禁止の規定に抵触する事案だったことを踏まえまして、「研究班」の報告において、公的な機関が広告審査を実施する仕組みを設けることも考えられる一方で、それらの事項については憲法上の問題があること、また、公的機関の非効率な肥大化を招くおそれがあること等の観点から、慎重な検討が必要であるということで、まずは製薬企業及び業界団体において、透明性を確保した審査組織において広告審査を行うこととし、行政機関としては、広告の監視・指導を中心に担うとともに、広告違反の端緒を幅広く把握するために、医療従事者による広告監視モニター制度を構築するなど、新たな枠組みを導入するべきであるとされたところです。

 本検討会としましては、このような提言を踏まえまして、製薬企業や業界団体における広告審査の枠組みづくりを進めるとともに、行政機関による監視・指導体制の強化を図ることが妥当であると考えています。

16ページ「第五 結びに」です。我が国政府としましては、本年6月に「日本再興戦略」を閣議決定し、「国民の『健康寿命』の延伸」のテーマの中で、今後の臨床研究及び医薬品・医療機器等の医療分野の研究開発を推進していくという、新たな体制の構築について言及をしているところです。また、7月に閣議決定された「健康・医療戦略」の中においても、国際水準の質の高い臨床研究や治験が確実に実施される仕組みの構築の必要性について言及しています。このように、我が国の成長戦略や国民の健康寿命の延伸の観点から更なる活性化が求められている臨床研究に対して、内外の信頼を著しく損ねる不適正事案が発生したことは重大な問題であると考えています。

 このような状況の中で、本検討会においては、関係者からのヒアリング等を通じて、我が国の臨床研究に係る制度の在り方について議論を行ってきたところです。臨床研究については、医薬品・医療機器等の開発手段としても重要なものであり、開発の国際化が進展している現状を踏まえると、我が国においても、5年後・10年後の将来を見越した上で、国際水準の臨床研究が実施できるような制度づくりが必要と考えられます。また、昨今の不適正事案の発生を踏まえますと、我が国の臨床研究に関する信頼回復のためには、倫理指針に基づく指導だけではなく、我が国においても臨床研究に関する一定の法規制が必要であるという結論に至りました。この際には、臨床研究について法規制による対応のみならず、研究者等による自助努力や法規制によらない対応とのバランスを図ることも重要です。

 こういった、一連の不適正事案によって失われた信頼を回復するためには、制度の整備だけを行っても、研究の現場における対応が変わらなければ意味が乏しく、個々の研究者、研究機関、学会等のアカデミアによる自助努力を行うことが重要であるとともに、製薬企業等の産業界や行政等を含めた臨床研究に係わる全ての関係者が、それぞれの役割に真摯に取り組んでいただく必要があると考えています。こういった取組が、今後の我が国の臨床研究の活性化と、世界をリードする革新的な臨床研究の推進に資するものとなることを期待するという形で、報告書を取りまとめています。

 少し長くなりましたが、事務局から以上でございます。

○遠藤座長 ありがとうございます。報告書案ですので、個別、パートごとに見たほうがよろしいと思います。個別に指定いたしますので、それに関連して御質問、御指摘ください。まず最初は、17ページまで。これは、これまでのヒアリング等の事実について整理したものです。検討会として、意見というところではないので、17ページまでの書きぶりについて、何かコメントがあれば頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。

○楠岡委員 細かいところになりますが、5ページの1825行目にかけて、今、検討されているというか、決定された新指針に関する所で、21行目から「具体的には、モニタリング・監査に関する規定、資料の保存に関する規定、利益相反に関する規定などを新たに設ける」ということが書かれていますが、資料の保存に関する規定と利益相反に関する規定は、臨床研究の全部に係っているのですが、モニタリング・監査に関する規定は、侵襲を伴い介入を行う研究というように、一部、限定された研究のみ求められているので、3つ並列よりも、少しそこは書き分けておいたほうがいいのではないかと思います。そこだけ検討をお願いしたいと思います。

○遠藤座長 ありがとうございます。実態を反映したような書きぶりに修文をしたほうがいいのではないかという、こういう御指摘だったと思います。ほかに何かありますでしょうか。それでは、何かあれば戻ることにして、先に進みます。

 次に、810ページの2行目までで、「第四 臨床研究に係る制度の見直しの方向性」の中の1「法規制の必要性等について」、9ページの2「法規制の範囲について」、という法規制に関連したところ、これについて何かコメントはありますでしょうか。

○山口委員 「法規制の範囲について」、9ページの29行目から、未承認又は適用外の医薬品・医療機器等を用いた臨床研究が妥当であり、そして、広告に用いられること。このことについて何度も話し合って参りました。変更をということではありませんけれども、この検討会が4月に始まって以来、それまでの不正事案から、また新たに4月以降もいろいろなことが起こってきて、そして、ここにきて、臨床研究中核病院においての保険適用外の手術が倫理審査委員会にも諮っていなかったというようなことが問題になっています。そういうことを考えると、今、これをきちんと決めていたとしても、また後からいろいろなことが起こってくるということを考えると、今回はこの対象の範囲で良いと思いますけれども、ここに書くのか、結びに書くのかは別にして、定期的な見直しが必要だという、この法の範囲についても、そういう一言を入れていただけたらと思います。

○遠藤座長 ありがとうございます。ただいまの山口委員の御発言について、何か関連してありますか。そのような具体的な文言をどうするかはともかくとして、どこか適切な場所に入れるということで、同意いただけるということでよろしいでしょうか。では、そのような対応を考えさせていただきたいと思います。ありがとうございました。ほかにありますでしょうか。

○近藤委員 8ページの1316行目に、将来を見越した臨床研究の改善ということを目処とした文章だと思いますけれども、今回、法規制の枠組みだけではなくて、5年後・10年後を見据え、未来志向で臨床研究の水準を高めていく必要があると考えています。そのためには、薬事の知識とか、あるいはレギュラトリーサイエンスの考え方、こういったものを理解する人が増えていくことが不可欠だと思っています。PMDAは、そうした知識や手法を有する数少ない機関であると思っています。今後、PMDAとしては、国や臨床研究機関と協調しながら、言わば、こうした分野の教育研修機関としての役割を果たしていければと考えています。これは、後の14ページの4の人材育成のところにも重なるのかと思います。御検討願いたいと思います。

○遠藤座長 PMDAは、非常にこの分野で重要な働きをされている組織ですが、そのことについて、適切な場所に適切な表現で入れるべきではないかという御指摘です。検討させていただきたいと思います。ほかにありますでしょうか。では、何かあれば戻る形にして、先に進みます。

10ページ、3「具体的な規制や対策の内容について」の(1)倫理審査委員会について、これについては随分議論してきましたが、11ページの4行までですが、何かありますでしょうか。

○山口委員 11ページの7行目に、倫理審査委員会のことについて、「倫理審査委員会が具備すべき委員構成等の要件を設定するなど」とありますが、委員構成の要件だけでは形ばかりになってしまっているということが、この中でも何度か議論されてきたと思いますので、「等」の中に入るのかと思いますが、委員構成や審査内容など、少し踏み込んだ内容を具体的に書いていただいたほうが、今のままの審査委員会では駄目なのだということが、より伝わるのではないかと思いました。そこのところをできればお願いしたいと思います。

○遠藤座長 ありがとうございました。「等」という形にするのではなく、より具体性のあること、これまでこの当検討会で議論されてきた中身に反映することを入れるべきではないかという話です。

○山口委員 少なくとも審査内容の、どのようなことを審査しなければいけないかということは、明確にする必要があるのではないかと思います。

○遠藤座長 はい。ありがとうございます。今、山口委員の御指摘について何か関連でありますか。では、ここの所は「委員構成等」ということを少し踏み込んだ形で修文させていただくことでよろしいでしょうか。特段、反対がなければ、どのような文言にするか、また検討させていただきます。ほかにありますでしょうか。

○楠岡委員 11ページの911行目の倫理審査委員会は、研究開始時点だけではなく、途中段階においても必要な関与を行うこととするべきであるということで、この文章に関しては、これでいいかとも思いますが、今度の倫理指針でも途中段階において、今までは倫理審査委員会は受身的で、研究機関の長から諮問されるという形に立っていたのに対して、新しい指針では、倫理審査委員会が自ら調査に乗り出すことが可能なような書きぶりになっていますので、するべきであるという形のほうがいいのか。必要な関与を行うというか、途中段階においても必要な関与を行うようにすべきというか、そこの文章がこのままでもいいのですが、もうちょっと踏み込んでもいいかというような気がしています。

○遠藤座長 ありがとうございます。そういう指針の動きもありますので、それを反映して、ここの書きぶりを少し修文したほうがいいのではないかということですね。了解いたしました。その辺のところも検討させていただきたいと思います。

○楠岡委員 強いて言うと、行うこととするべきではなくて、行っていくべきであるような、能動的な形のほうがいいかもしれない。

○遠藤座長 なるほど。それは、もう、そうしたらここで皆さんが反対がなければ、ここで修文してしまったほうがいいかと思いますが。行って。

○楠岡委員 いくべきである。というか。

○遠藤座長 「必要な関与を行っていくべきである」。このような修文でよろしいでしょうか。では、そのように修文させていただきます。ありがとうございました。ほかによろしいですか。

 それでは次に、(2)臨床研究に関する情報の公開等についてです。1112ページの2行目までです。

○望月委員 2325行にあるように、「既存のデータベースを活用する場合には、検索のしやすさなどの利便性に更なる工夫が必要である」。というのは分かりますが、誰が更なる工夫をやるか、はっきりしないので、既存のデータベースを持っている組織でお互いに話し合って更なる工夫をしてもらう。これが必要かと私は思いますが、いかがですか。

○遠藤座長 ありがとうございます。もう少しこの所を詳しく書くべきではないかということですが。

○山口委員 私が以前に、ポータルサイトが分かりにくいという発言をしましたが、登録先3つの所のそれぞれが分かりにくいのではなく、国立保健医療科学院に3つの情報が集められて、そこがポータルサイトを作っていますので、もし改善をしていただくとすれば、それを公表している国立保健医療科学院になるのではないかと思います。

○遠藤座長 望月委員の御発言の趣旨については、今、山口委員のコメントのとおり考えてよろしいでしょうか。

○望月委員 はい、結構でございます。

○遠藤座長 ありがとうございます。国立保健医療科学院は括弧の中に入っているという扱い方に24行でなっているので、それを25行の修文の中で、どこまで表に出すのかどうかということも若干あるかとは思いますが、検討させていただきたいと思います。ほかにありますでしょうか。

○楠岡委員 11ページの28行目の最後の所で、事前審査を受けることを更に求めることに関しては、慎重であるべきと考えられる。これはこのとおりだと思いますが、事前審査ではない、いわゆる届出のようなもの。すなわちポータルサイトにつながる3つのデータベースのどこかには登録するということ以外に、何かもう1つあまり手間が掛からない形の届出制度を少し入れたほうがいいのではないかという点です。というのは、実際、この法律の対象になる研究がどこで走っているかは、結局、全然分からない状況で、届出がないと分からない状況になってしまうので、あまり手間が掛かない形の届出、もちろん事前審査等を含まない形のものは、やはりあったほうがいいのではないかというのが1つ意見です。これは前のときも少し議論があって、結局ここには入っていない形になっておりますが、これをどうするか検討しておいたほうがいいのではないか。

○遠藤座長 そうですね。届出制については、ここでも議論があったと思います。結局、データベースの話とこんがらがってしまって、何となく届出制というのが消えてしまったかなという感じです。よりそこを明確に記載するべきではないかという理解でよろしいですか。

○楠岡委員 はい。

○遠藤座長 届出制について、何か御意見はありますでしょうか。では、ただいまのような方向で少し考えさせていただき、修文することにさせていただきます。ほかに何かありますか。

 次に、(3)臨床研究の実施基準について、12ページの417行です。これについてはいかがでしょうか。これまでの議論はおおむね反映されているという理解でよろしいでしょうか。何か後ほどお気づきの点があれば振り返ることにいたします。では、近藤委員、どうぞ。

○近藤委員 先ほど御説明の中で、ICH-GCPがあたかも欧米だけで決めているということがあったようですが、それは違いまして、日米欧で決めていることです。ですから、これは日本が積極的に参加していることですので、欧米の言いなりになるわけではないということを皆さんに御理解していただきたいと思うところです。

○遠藤座長 ですから、きちんと守らなければいけないという、そういう意味合いですね。

○近藤委員 はい。

○遠藤座長 ありがとうございます。では、次に(4)有害事象発生時の対応について、12ページ19ラインから28ラインまでです。

○山口委員 非常に細かいところですが、25行目で、「保健衛生上の危害発生や拡大を防止のために必要」とありますが、「防止するために」ではないですか。何か文章として変だと思いましたので。

○遠藤座長 適切な言葉で修文したいと思います。ほかにありますでしょうか。では、次に13ページ、(5)行政当局による監視指導及び研究等へのペナルティーについて。13ページの115行目まで、これについて何かコメントはありますでしょうか。よろしいでしょうか。

 この(5)というのは、ある意味、当検討会のミッションに照らして、非常に重要なポイントの1つになるかと思います。したがって、当検討会でもこの点については、時間をかけて議論をした点の1つだと思いますけれども、議論された内容がある程度反映されているという、こういう理解でよろしいでしょうか。何かお気づきがあれば御指摘ください。

 次に、(6)製薬企業等の透明性確保について、13ページの17行から14ページの6行までです。

○武藤()委員 すごく細かいことなのですが、14ページの23行目の所で、「利益相反の存在を否定するのではなく、適切に管理公表されることが重要である」という、管理公表というか、「管理・公表」なのですか。何をするのかが分からない。適切に管理されるでもいいように思いますが、御検討いただければと思います。

○遠藤座長 ありがとうございます。文言の問題ですね。検討させていただきます。

○山口委員 この利益相反のことについて否定するのではなく、国民に理解してもらうことが必要である。そうすることで理解が進むことによって、更に進んでいくのだということは、これはもちろんそうなのですけれども、書いてあるだけで、どのように公表をするのかというところまでの踏み込みが足りないような気がいたします。国民に理解してもらうことが必要である。そのために何か積極的な対策を講じなければいけないような、もう1歩進むような表現にしていただくことができないかと。必要であるというと、みんな必要だと思っているだけで、どこも手を付けないということになってしまうと、絵に描いた餅になってしまうかなという気がしましたので、そこをもう少し進めていただけたらと思います。

○遠藤座長 そうすると、もう少し具体的なことを表記すると、こういうイメージですか。

○山口委員 国民に理解してもらうことが必要である。そのための方策を、ちょっとどうでしょうか、今、文章まで考えてはいなかったのですが。何か具体的な対策を考えていくべきであるとか。

○遠藤座長 そういう意味合いですね。

○山口委員 はい。

○遠藤座長 ありがとうございます。了解いたしました。

○武藤()委員 今、山口委員がおっしゃったのは、利益相反に関する国民の理解を進める方策という御趣旨ですか。つまり、利益相反ということ自体をどのように理解したらいいかと思うことも、多分、あまり説明がされていないというか、知る機会がないかと思いますが。

○山口委員 まず、利益相反と言われて、具体的に理解している人は、ほとんどいないのではないかと思います。ですので、まず利益相反とは何か。そして、産学共同ということがあたかも悪いことかのように受け止めてしまっているようなところもあるのではないかと思いますので、そうではなく、産学共同で進めていくことが必要なのだと。そのためにどういうことの透明性が図られないといけないのか、ということを丁寧に説明する必要があるのではないかという、そういう趣旨で申し上げました。

○遠藤座長 武藤委員、よろしいですか。

○武藤()委員 はい。

○遠藤座長 ありがとうございました。したがって、そういう趣旨がもう少し踏み込んだ形になるような文言の修正が必要なのではないかという、そういうことですね。いかがでしょうか。では、ただいまの山口委員がおっしゃったような方向で、少し文言について検討させていただくということでよろしいでしょうか。いや、現状で結構だという御意見もあるかもしれない。特段、御意見がないようであれば、検討させていただきたいと思います。ほかに、製薬企業の透明性確保についてありますでしょうか。

 次に、4「その他」に入ります。(1)人材育成等について、14ページ、919行目まで。これについて何か御意見はありますでしょうか。

○大門委員 1517行目まで、アカデミアに生物統計専門家を設置するという旨を入れていただいており、これが本当に実現すれば、生物統計専門家の人材の育成にもつながりますし、生物統計に関する医学生の教育にも大変望ましいことになると思います。

 もう1点重要だと考えられることは、臨床研究の現場に身をおく先生方から、臨床研究に関して、研究者と生物統計家で連携をとれるような環境があれば一番良いと伺うことが頻繁にございます。それで御提案です。例えば、主たる臨床研究の施設に生物統計の専門のスタッフを配置し、研究者と臨床研究に関する連携をとれるような環境を作ることが望ましい、というような文言も入れていただいてもいいかと考えております。いかがでしょうか。

○遠藤座長 もう一度、そこの所だけをおっしゃっていただけますか。

○大門委員 主たる臨床研究施設に、生物統計の専門のスタッフを配置し、臨床研究に関する研究者との連携をとれる環境を整備することが望ましい。これはなかなかすぐには実現が困難なことだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○遠藤座長 つまり、ここでの議論は、もちろん望ましいことが2つあると思います。1つは、どこまで具体的に書くのか。もう1つは、現実的な視点から見て、そこまで踏み込んで書くか書かないかという視点から見て、どのように捉えるかということになるかと思います、何か御意見はありますでしょうか。

○近藤委員 先ほど冒頭で申し上げたことですが、将来に向かって臨床研究が正しく発展できるような環境の中で、今おっしゃられたような生物統計専門家ももちろん重要だと思いますけれども、基本的に薬事に詳しくないと、やはりいびつな研究となることは、私自身よく理解しました。

 つまり、有効性だけで皆さん研究されていた方が多い状況ですが、実は、それに加えて品質、安全性という薬事の最も重要な2点がありますが、そういうところを踏まえた患者さんのためであるとか、社会のためだとか、そこら辺のところを考慮した研究。つまり、これはレギュラトリーサイエンスですが、そのレギュラトリーサイエンスを研究する方を育てていかなければいけないと思っているところです。この人材育成について、恐らく生物統計専門家の先生も、レギュラトリーサイエンスを知らなければできないわけですが、生物統計は特殊で大事な専門家ですので別立てするとしても、やはりレギュラトリーサイエンスという言葉をしっかりと臨床研究の在り方に書き込んでいただくことが必要なのかと思うところです。

○遠藤座長 ありがとうございます。御意見を整理させていただくと。

○望月委員 先ほど近藤先生が、PMDAがここに大きな役割を発揮するというような意見をおっしゃったので、非常に心強いと思います。例えば、15行で、「このため、生物統計をはじめとする薬事レギュラトリーサイエンスの専門家の人材を育成する。」というような形にまとめてはいかがでしょうか。ただ、その前に、「このため」の後に、「PMDA等の関係団体の協力の下、これを進める。」それから、16行目「医学部・歯学部等に生物統計等、薬事レギュラトリーサイエンス専門家」といれる。生物統計は、今、近藤先生がおっしゃったように、やはりレギュラトリーサイエンスの一部だと思います。それで、レギュラトリーサイエンスを全体もっと広く見ていただいたほうが、私はいいかと思いますので、そのように付けさせていただきます。

 「そういう育成というのは、ある程度時間がかかるので、人材育成には長期間を要する。そのため、当面の応急的措置を、いろいろな関係団体、あるいは関係学会の協力の下に検討する必要がある。」ということも、今の段階で必要かという気がします。以上です。

○遠藤座長 3つぐらいのことを少し議論しなければいけません。1つは、まず最初、大門委員がおっしゃったことは、生物統計の専門家に限定されますが、ここの書きぶりでは、医学部・歯学部等というように書いてありますが、そこを主たる臨床研究施設で、というところまで拡大するという、大門委員、そういう意見合いの理解でよろしいですか。

○大門委員 そうですね。

○遠藤座長 そういうことですよね。

○大門委員 はい。

○遠藤座長 だから、「等」ということではなくて、それを主たる臨床研究病院にも配置するということを明確にしてほしいという御意見です。更には、近藤委員、望月委員からは、要するに、それに薬事、あるいはレギュラトリーサイエンスの専門家という人を育成し、なおかつ、そういうところに配置をするということですね。どうしても人材育成のところになると、いろいろとどんどん話が拡大するのでよく分かりますが、それをどこまでこの報告書として入れるかどうかというところが非常にポイントになります。何か御意見はありますでしょうか。では、平子、文部科学省、どうぞ。

○平子企画官 文部科学省医学教育課です。医学教育を所管する立場から、少し事実関係と文科省の取組について御説明を申し上げます。

 疫学や統計あるいは臨床研究などについて、医学教育の分野においても、モデル・コア・カリキュラムなど、カリキュラム上、位置付けられています。医学生などに対する導入教育というレベルですけれども、そこについては確保されているということです。ただ、この学部段階のレベルで教える内容は、基本的な内容に限定をせざるを得ないと。これは、やはり医学教育自体が、相当程度どんどん教える内容が増えているということもあり、また、学部段階でできる時間的な制約もありますので、やはり生物統計や研究倫理などに関する専門家などの高度専門職業人材と申しますか、そういった人材については、社会人における研修、あるいは大学院レベルで取り組むことが必要ではないかというように考えています。

 そういったことから、文部科学省においても、未来医療研究人材養成拠点形成事業、あるいは課題解決型高度医療人材養成プログラムなどにおいて、このような人材の養成に取り組んでいるところです。こういった背景も参考にしていただき、修文のほうを御検討いただければと思います。私からは以上です。

○遠藤座長 貴重な指摘、ありがとうございます。ここでは単純に人材の育成としか書かれていないので。では、桐野座長代理、どうぞ。

○桐野座長代理 委員の先生方がおっしゃられたとおりだと思いますが、実際は生物統計家は非常に重要だと思いますが、そのほかに、本当に3学連携でイノベーションということであれば、多様な人材、場合によっては知財の専門家や起業の専門家まで、本当は抱えていなければできないようなことをここに書いてあるわけです。少なくとも、近藤先生が言われたような「レギュラトリーサイエンス」という言葉は入れていただいたほうがいいと思います。

 それから、教育という観点では、人材を育成し、教員を配置するとなっています。その上の14行目には「臨床研究に係る人材の育成が必要である」と書いてあるのですが、育成しただけでは駄目で、育成して配置しなければ、その人たちはいつまでたっても何だか浮草のようなポジションになってしまうので、その点も少し配慮していただいたほうがいいと思います。ここは本当は、どれぐらい関係するのか分かりませんが、もっと大きな重要なところで、今、各委員の先生方が言われたことは、できるだけ入れていただくようにお願いしたいと思います。

○遠藤座長 ありがとうございます。修文の方針についての御指摘だったと思います。

○山口委員 入れられるとすると、恐らく配慮してくださると思いますが、その「レギュラトリーサイエンス」という言葉を書くのであれば、定義をしっかり日本語で示していただかないと、一般の人には理解できないと思いますので、お願いいたします。

○遠藤座長 定義もなかなか難しいのですよね。

○武藤()委員 人材育成のところは、あまり欲張りは申し上げたくないのですが、しかし、やはり少し申し上げます。今の12行目の「倫理審査委員会における研究倫理等に関する専門家確保も容易ではない」と。もしこの問題意識を前提として、「このため」という章でそれに対する解決策を示されるのであれば、その専門家の養成、それから、倫理審査委員の養成、一般の立場の委員の養成、配置、それは全部必要で、最後に、教育機会の確保については書いていただいているのですが、それを教育できる人材の配置ということが、実は全部要る。

 それから、上の問題意識で書かれていることと下に対する提案が、今ちょっと不整合がありますので、可能な範囲で整理していただかないと、人材育成が必要だと言いながら、教育しろと言われて、誰を、どういう人材を育成したらいいのかというところが、研究倫理に関してはあまり明瞭に書いていないように思いますので、御検討いただきたいと思います。

 私個人としては、もしこの倫理審査委員会における専門家がいないということであれば、やはり、その立場にある委員の教育、あと、一般の立場の方の教育はほとんどなされていないので、それは指針等で一般の立場の方が入るようにと書かれていますので、その方々にどうやって倫理審査に関わっていただくかという教育は必須であろうかと思います。

○遠藤座長 ありがとうございます。この際、御要望を全部お聞きしたいと思いますが、皆さんのおっしゃることはそのとおりだと思います。全体の報告書の中の位置付けとして、どういう書きぶりが適切なのかということも踏まえながら、総合的に判断させていただきたいと思いますので、それについては少し、座長預りという形にさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。

(2)に移ります。「医療用医薬品の広告の適正化について」です。

○楠岡委員 この医療用医薬品の広告の適正化については、検討会の結論としては最後の4行、15ページの1114行目という形になっているわけです。前半で法を適用する研究の範囲をどうするかという中に、未承認等の話と同時に、広告に使うことを意図する場合というのが少し。9ページの一番最後の行から次のページに向けて、「医薬品・医療機器等の広告に用いられることが想定される臨床研究を対象とすることも求められる」ということで、この法の対象としては、広告に用いられることを想定するものも一応は入っている。しかし、前回の議論でもありましたように、最初は広告を意図していないとか、あるいは、企業とは全く関係なく独自に行われた研究を後に広告に使う場合には、それは、業界側の自主規制で取りあえずは任せると。もし、それで問題があるようであれば、また改めて考えるという解釈であるということで、この4行があると理解しているのですが、その理解でいいのかどうか確認をしておきたいと思います。

○中村補佐 こちらの9ページの最後のほうから10ページの頭にかけての所ですが、これは医薬品・医療機器の広告に用いられることが想定される臨床研究ということで、確かに、先ほど御指摘がありましたように、最初から広告に用いることを念頭に置いている場合と、事後的に、良い結果が出たので広告に使うという場合の両方があるかと思います。いずれについても、広告に用いられるということが分かった段階で、何らかの、例えば事前に分かっている場合は、あらかじめ何らかの基準の遵守を求めるということがあり得ますし、事後的に分かった場合には、例えば遡ってそれがどういうものだったのか確認するなどの方法もあるのではないかとは考えております。いずれにしましても、そういった広告に用いられる研究が、結果的にきちんと基準を遵守したものになることを確保するということを想定しております。

○楠岡委員 お尋ねしたかったのは、前半の、最初から広告を意図している場合は、この法律の適用に入っているのだけれども、広告とは関係なしに出来上がってきた研究に関して、それを広告に使うことに関しては、今のこの文章では、業界の自主規制に任せるということになっていると思うのです。そうではなくて、法の中に何か、後でチェックすることまで求めるように書き込むのか、そこまでは求めないのか。そこが法律に入るか、入らないか、かなり微妙なところなので、そこはどちらなのかということをお聞きしたかったのです。

○中村補佐 先ほどおっしゃったような、事後的に使いたい場合に、適正に実施されたものかをどういうふうに確認するかというところは、今後の検討ということにはなると思いますが、そういったものについても、きちんとした研究であるということが確認できるような何らかの方法を考えるということではないかと思います。

○遠藤座長 そういう意味で、多少、今後の検討材料ということになっていると、今、聞いたわけですが、いかがでしょうか。

○山口委員 少し確認させてください。今の御説明だと、もともと広告に用いるということが前提であれば、それは法律の対象になるということですが、そもそもこれの発端になったディオバンの場合は、今回の法規制になるような広告を目的とした研究だったということになるのか、それとも違うということなのか、そこを明確にしていただけますか。

○遠藤座長 そうですね。ディオバンのケースはどういうふうに理解をされているかということだと思いますが、いかがでしょうか。

○中村補佐 御指摘のあったディオバン事案のケースはどちらなのかということですが、現状で外形的に、あの件がもともと最初から広告を目的とした研究だったのかということを判断することはなかなか難しいかとは思います。ですので、そういった、最初から広告を目的としているかどうかあやふやな研究への対応も含めて、今後検討してまいりたいと考えております。

○神ノ田課長 この検討会での御指摘を踏まえて、しっかりと適正に広告がなされるようにしたいと思うのですが、法律案については、法制局ともよく詰めないといけないので、どういう形であれば法律に盛り込めるかどうか、その辺りをこちらで検討させていただきたいと思います。

○遠藤座長 この課題はこれまでも随分議論されてきた課題でもありますので、是非、御検討のほど、よろしくお願いします。そういう対応でよろしいですか。

○山口委員 はい。

○遠藤座長 ほかにありますか。それでは、16ページの「第五 結びに」というのがありますが。

○近藤委員 ここで結びに行く前に、1つ気になることがあるのです。新たなテーマとして、医療情報の電子化ということについて少しお話をしたいと思います。臨床研究を進めていく上で、医療情報を電子化して、関連データと比較検討できるようにすることが必要なのではないか。つまり、標準化が遅々として進んでいない現状にあります。臨床研究や薬事申請に関わるような中核的な情報については、標準化を進めることが、臨床研究の質を高めていくことにつながると思いますし、ここでそろそろ国が主導して標準化を進めてもらいたいと思っております。

 現在、PMDA10の大学の医療機関とファーマコビジランスの目的で、医療情報の集約を試みているところです。様々の様式のマッチングをして、大変苦労して、困難で、なかなか答えの出ない部分も随分あります。こういったことを見ていると、そろそろ我が国としては、基本的なところについては診療情報の共有化をすべく、仕組みを作るべきだろう。特に、医療情報として確保しておかなければならないマクロなところは、しっかり作っておかなければいけない。個別のことについては、これは、各いろいろな診療科に任せることになるのかもしれませんが、マクロなところだけは共通化していかないと、まとめきれないのではないかと。今、PMDAが苦労している点からお話申し上げた次第です。

○遠藤座長 それは、もし入るとするとどの辺りがよろしいですか。

○近藤委員 「その他」の(3)で結構です。

○遠藤座長 「その他」に(3)を作って、診療情報の標準化を。

○近藤委員 新たに作っていただいても構わないです。

○遠藤座長 診療情報の標準化というコンセプトが今回出てきたので、少し御説明を頂けますか。どこが標準化されていなくて、あるいは、マクロの標準化という。

○近藤委員 例えば、お医者さんが診察をして、日常的な診療情報を医療情報として書き込んでいくわけですが、それがしっかりといろいろなデータ解析につながるようにしていかなければならないし、各医療機関とも基本的に情報がつながる必要があるのではないかと思っています。

 問題がある例では、「頭痛」と書いてあって、本当に痛いのか、痛くないのか分からない。「腹痛」と書いてあっても、あるのか、ないのか分からない。こういう曖昧な情報は使えない情報になったりしている状況なのです。ですから、そういったことも含めて、せっかく臨床研究をやるのですから、共通化した内容にしていくためには、最低限共通のものがあるといいのではないかと思うのです。

 ただ、多くの診療科があるわけで、それぞれ個別な細かいデータまで全部共有ということはできないと思うのです。それは、その診療科の、例えば学会なりが別のミクロのところを作り上げても構わないと思いますが、少なくとも各科共通のところや大事なところは、こういうものを作るように、これからスタートしてもいいのではないかと思っているところです。

○遠藤座長 ありがとうございます。臨床研究の向上のための1つの手段として、そういうことが基礎的に非常に重要だということですね。

○桐野座長代理 診療情報の標準化は賛成ですが、現実には、いろいろな地方で地域医療ネットワークを作っていて、それは自発的な試みとしてあるのですが、Aの地方、Bの地方、Cの地方、Dの地方、全部違います。それから、例えば電子カルテのベンダーなども、大きな所は大体5つか6つぐらいに集約されていますが、やはりそれぞれが違います。

 恐らく近藤先生がおっしゃっているのは、厚生労働省のSS-MIXなどの形での標準化をしてはどうかということで、私もそういうことは是非賛成だし、そういう方向に行くようにすれば、診療情報を徐々に標準化しやすい。ただし、やはりトップダウンで強制的に1つの方向というのは無理なので、そういう方向を推進するようにできれば、将来的に非常に役に立つので、このような観点から、標準化が非常に有益であるということを盛り込むことについては、無理なく入れば賛成です。

○遠藤座長 ありがとうございます。入れるか、入れないかも含めて、どういう形にするか少し検討させていただければと思います。一応、「その他」で人材育成と医療用医薬品の広告の適正化というのが入っているのは、基本的には広告の問題で今回の問題が起きたということと、生物統計家が少なくて企業に依存したという、これと関連したがために入っていたわけで、実は臨床研究の制度の向上のための検討会ではないというところがあるものですから、どこまでそこを拡大するかということは少し検討させていただければと思います。ただ、非常に重要な御指摘を頂いていると、私は認識しております。どうもありがとうございます。

○河野治験推進室長 ありがとうございます。今の御指摘については、これまでの議論で無かったことでもありましたので、どのような書きぶりができるかについては事務局で考えたいと思います。

1点、少し戻っていただいてもよろしいでしょうか。1112ページの「臨床研究に関する情報の公開等について」という所です。先ほど楠岡委員から、届出などの方策などについて検討してはいかがかといった御指摘がありました。先生の御趣旨としては恐らく、研究を補足するための方法としてどういった方法があるのかということも含めて、よく考えてくださいという趣旨だと思いますし、実効性ということも、やはりよく考える必要があろうかと思いますので、例えば、「研究を補足する方法としてどのような方法が適切かについても検討を要する」といったような修文方法もいかがだろうかと思っておりますので、コメントいたしました。

○楠岡委員 プロトコールの具体的なことに関しては、登録システムがあって、そこに書かれているわけで、場合によっては国内のデータベースではなくて、海外のClinicalTrials.govなどに登録するものもあるので、必ず日本のに登録しろとかというのは、ある意味、逆に阻害要因になってしまう。そうすると、海外と国内と二重登録しないといけないようなものも出てきたりするということもあるので、どこかに登録するのは必須として、どこに登録したのかとか、登録番号は何番かなどというようなものの届出は、この法律に該当すると。

 これは自己判断であって、気付かない方もおられるかもしれないし、過剰に捉えて、そうではないものも登録してくる方もいるかもしれないのですが、そういう届出というか、登録の場があれば、具体的にこの法律の対象になるような研究がどれぐらい走っているのかとか、場合によっては、どこの倫理審査委員会が審査したかぐらいまで把握があれば、もし何か問題が起こったときに、いろいろな対応をするのにやりやすいのではないか。何も細かいことを求めるのではなくて、キーになる情報だけを、それこそ4つか5つぐらい入れておいていただければ、行政的にもかなり役に立つのではないかという考え方です。また、それが臨床研究としてどれぐらい進んでいるかを把握する基にもなると思いますので、そういう観点からも含めて、届出制のようなものも検討していただきたいというところで、先ほど少し申し上げたということです。

○児玉委員 キーワードを3つほど。取りわけ今検討されておられる、人を対象とする医学系研究の倫理指針との関係で、言葉の使い方等を少し検討しておいたほうがいいのではないかと思い、コメントないし御質問を申し上げます。「リスク」と「監査」と「利益相反」という3つの言葉です。事務局から御教示いただいてコメントも頂きたいと思っております。

1つ目は「監査」です。この間、こちらの検討会でも、倫理指針の検討会のほうでも、「モニタリング・監査」や「モニタリングと監査」と、合わせて言葉を使われてきたのですが、こちらの検討会の参考人にも来ていただいた田代先生や磯部先生などからの御報告で、「モニタリング」という言葉についてはそれほど異論はないのだけれども、諸外国の制度と比較して、「監査(audit)」がやや多義的に使われていて、かえってオーバーレギュレーションの懸念があるということで、削除の方向で調整されているようなことをお聞きしています。こちらの報告書では「監査」という言葉が、取り分け12ページに「モニタリング・監査」と何度か出てきていますし、その他の所でも「モニタリング・監査」という言葉が出てきていますので、この辺りのすり合せ等の状況を教えていただければと思います。あと2つを一遍に言うとたくさんになるので、まずこの1点をお願いします。

○中村補佐 「監査」については、確かに倫理指針の検討の際にも、欧州で言うところのauditの意味するところが少しいろいろ幅があるという御指摘があり、例えば、今の日本の治験の枠組みの中で行われているような監査と、欧州で行われている監査とは意味合いが違うのではないかという御指摘もありまして、指針のほうでは、監査については、必要に応じて行うものという形で記載される方向になっております。削除ということではなく、必要に応じて、リスクの程度などに応じて実施するかどうかやその程度について決めるという仕組みにすることになっております。

○楠岡委員 治験においても、監査とモニタリングは必ずしも同じレベルの確認をしなければいけないものではなくて、正に必要に応じてということです。企業治験において、モニタリングはすべての参加施設に対して実施されますが、監査については受けない施設もあります。同様に、臨床研究の統合指針では監査をどこかで必ずしなければならないということを求めているわけではないので、ここで「モニタリング・監査」と2つが並んでいるところが全く同等かというと、そこは少し意味合いは違う。場合によってはそこは少し書き分けて、「モニタリング及び必要に応じては監査」ぐらいにしたほうがいいのかもしれないと思います。

○児玉委員 2点目で、「リスク」という言葉についてです。その場所を指摘できなくて申し訳ないのですが、従前の案では、患者さんに対する侵襲や医学的副作用等のリスクのみを、要するに健康被害をリスクと捉えるのではなくて、例えば、投薬行動に大きな影響を与えてゆがみが生じるというような社会的リスクも含めて「リスク」と捉えられていたように思うのです。むしろ個人的には、こちらの検討会でそういう考え方が議論の中で示されてきたことが良いことだと思っているのですが、これまでの倫理指針の成り立ちの経緯から言っても、人を対象とする医学研究の倫理指針等では、必ずしも社会的なリスクというところまで射程が及んでいない部分があるように思われます。その辺りについて、今回のドラフトではどのような取扱いになるか、また、医学系研究の倫理指針のほうとのすり合せをどのようにお考えかというのを教えていただけると助かります。

○中村補佐 「リスク」という言葉については、確かにこちらの臨床研究に関する検討会では、9ページにありますが、「臨床研究に参加する被験者に対するリスクと、その結果が医療現場の治療方針に与える影響の度合い等の社会的リスクの双方を勘案した範囲とする」と記載しております。前者のほうは、先生がおっしゃった最初のいわゆる健康被害をもたらすものという意味でのリスクという意味合いで、後者については、その結果が直接的に被験者の方に与えた健康被害等のリスクだけではなくて、医療現場の患者さんに対して与えた影響というような意味で、少しリスクという言葉を幅広く記載しております。

 倫理指針のほうでは、確かに前者の安全性等のほうに主に着目した意味でリスクという表現を用いているかと思いますが、今回の検討会のほうでは、ディオバンの事案を踏まえて、それが社会的に与えた影響というような、少し広めの意味で社会的リスクという表現をさせていただいております。

 両者で整合が取れていないのではないかという御指摘だと思いますが、ただ、倫理指針のほうでも、ディオバンの事案で、実際の被験者だけではなくて、患者さんへの影響があったというところも踏まえて、例えば利益相反に関する規定などの被験者さんへの説明などの事項も盛り込まれていますので、臨理指針のほうで社会的リスクの部分を全く評価していないわけではないことは御理解いただければと思っております。

○児玉委員 あと1点は「利益相反」という言葉の使い方についてです。医学系研究のほうの倫理指針では、非常にファジーな言い方をしていて、「個人の収益等、当該研究に係る利益相反に係る状況について」というようなくだりがあり、利益相反について明瞭に定義をしている部分は必ずしもなく、かえって、指針ではないのですが、厚生労働科研における利益相反について平成20331日の厚生科学課長の決定があります。その中では、利益相反について「外部の経済的利害関係等によって公的研究に必要とされる公正かつ適正な判断が損なわれる又は損なわれるのではないかと第三者から懸念される状態」という定義の仕方をしています。

 私見を述べて大変恐縮なのですが、どうもこの「利益相反」という言葉について、私的企業から利益を受けること自体が利益相反という誤った理解の仕方がかなり広がっているようです。研究者自身のPrivate Interest(個人の利益)と、Patient Interest(患者の利益)Conflictを起こしている場合と、それから、公的な研究あるいは公務員の立場としてのPublic InterestConflictを起こしている場合と、類型が2つあると私は思っておりますし、また、英米の文献等にもそういう記載があって、大きい理解のところでConflict of Interestについて、今回ここに書き込むべきとまでは思いませんが、必ずしも厚生労働科研における利益相反のようなものだけ、あるいは患者との関係における利益相反だけではなくて、両者を含むような利益相反の広がりを視野に入れて議論をしているのだろうと思います。

 現在の段階で「利益相反」をどう定義するかということについては、必ずしもこの検討会でも、あるいは倫理指針の検討会でも、明瞭な定義は示されておらず、今後、広く検討していくというスタンスなのだろうと私は理解しているのですが、そういうことでよろしいでしょうか。

○遠藤座長 そこは、当検討会では厳密な議論はしていなかったわけですが、この内容について事務局にお尋ねするという御質問だということでよろしいですか。

○児玉委員 そうです。

○中村補佐 御指摘にありましたとおり、ここで「利益相反」と簡潔に書いておりますが、その具体的な内容が患者さんの利益との関係なのか、それとも、それ以外のパブリックなものも含めての利益相反なのかというところは、御指摘があったとおりだと思っております。この内容について、どういったものが利益相反と考えられるのかというところも含めまして、報告書にどのように書くかということは、また座長との御相談かとは思っておりますが、できるだけ分かりやすくするように心掛けたいと思っております。

○児玉委員 ありがとうございました。

○遠藤座長 重要な御指摘をありがとうございます。今の3つのキーワードについては、それなりの対応ができるだろうということで、検討させていただきたいと思います。

○武藤()委員 10ページの倫理審査委員会の所で、先ほど少しもやもやしていて発言できなかったのですが、お伝えしたいと思います。17行目ですが、倫理審査委員会が何ら歯止めとならなかったという指摘がある一方で、自由な研究環境の確保と研究の信頼性確保の両立のために、ますます重要だと。倫理審査委員会は、本当にこの両立のためにあるのだろうかというところの根拠がちょっと分からなくて、特に「自由な研究環境の確保」というのが、すごく広い意味合いであって、自由な研究環境とは一体何だろうなどとずっと考えていたのです。これは、学問の自由の確保と研究の信頼性の確保というような趣旨ですか。

 それであれば、「研究環境」と言うと、何か、本当に自由に臨床研究を好きなようにしていいとなってしまうようなイメージがあるので、そうではなくて、もう少しはっきり絞って書かれてもいいのではないかと思ったのです。事務局に真意を確認させてください。

○中村補佐 先ほどおっしゃったとおり、ここで言う「自由な研究環境の確保」というのは、正にその学問の自由との関係で、適切な、どういった研究をやるのかというところも含めて、何を研究したいかというところを、まずは研究者の方の考えで、きちんとした質に基づいてやっていただくということを想定しております。何でもやっていいということを想定しているわけでは全くありません。そこはおっしゃるとおりだと思います。

○武藤()委員 そうであれば、是非そうしていただけるといいと思います。そうすれば、そういう理念を持った、役割を持っている組織が倫理審査委員会なのだということが伝わり、それで、先ほど山口委員が指摘されていた11ページの、では具体的にどう書き込むかという検討事項のところの7行目ですが、「審査を行う倫理審査委員会が具備すべき委員構成等の要件」という所は、確かにいきなりすごくつまらない形式的なところがあるので、むしろ「責務」であるとか「役割」と。人の医学系研究に関する倫理指針の案では、「責務」「役割」という表現を使われていましたので、そういったところをきちんと書いて、それに基づいて運営の具体的な方針や構成などを決めていくという順番なのではないかと思います。

 これはあくまで、これから法律にしていくということですので、むしろ倫理審査委員会は何のためにあって、どういう機能を果たすべきかというところがしっかり書いてあるほうがいいのではないかと思います。

○遠藤座長 ありがとうございます。なかなか難しい課題で、ここであまり議論はされていなかったと思いますので、どこまで整理して書けるかというのは微妙なところではありますが、検討させていただきたいと思います。非常に重要な御指摘を頂いたと思います。

○武藤()委員 全体的なことであまり重要なことではないのですが、気になりましたので一言申し上げます。ずっと読んでいくと、やたらに「等」が出てくるのです。注意して読むと、やたらと気になります。我々の業界では、「等」という曖昧な言葉は使うなと教育されてきたし、教育してきた立場としては、気になり出すと、やたら気になるのです。何でこの「等」が必要かというと、これはお役所の言葉では非常に重要な意味を持つことも存じていますが、単純にエトセトラの意味で使われる場合と、非常に広汎に意図的に使う場合と、どうも両方あるらしいのです。本当にこれだけ必要なのかというのが疑問です。

 例えば14ページの9行目に「人材育成等」と書いてありますが、その後で14行目に「人材の育成」と「等」が抜けるのです。「の」が入ると「等」が抜けるという。こういうことがあります。例えば今日頂いた報告書の概要の一番最後から2番目に、1つのセンテンスに「等」が4つも出てくるのです。「生物統計等の専門家養成、医学生等に対する早期の倫理教育等の人材育成等が必要」と。これはいちいち、この「等」は本当に必要かどうか、どういう意味かということを伺いたいのですが、その時間もないですし、その必要もないと思いますが、是非、これを全部まとめられるときに、本当に必要な「等」と、除いてもいい「等」をちゃんと区別されて、なるべく少なくされたほうがいいのではないか。これは英語に訳せばet ceteraですから、極めて曖昧な言葉なので、やはりそれをなるべく少なくしていただきたい。これは私の希望です。

○遠藤座長 ありがとうございます。どうしても文章を短くするためには全部羅列できないという意味合いで「等」を使っている所もあったりするわけですが、中には不適切な使い方もあるかもしれませんので、その辺りはチェックをしたいと思います。貴重な御指摘、ありがとうございます。ほかにありますか。

 御意見は大体承ったと思います。本日は非常に貴重な御意見を数多く賜りました。ただ、全体の構成を覆すようなことは特段なかったと理解いたしますので、基本的には部分的な修正、修文で対応させていただければと思います。そういう意味で、基本的には座長預りという形でさせていただいて、私のほうで、皆様方の御意見を反映できるように、事務局と相談しながら修文させていただきたいと思います。その過程で、もしかすると、御発言の趣旨の確認ということが事務局からあるかもしれませんが、もしあった場合には御対応のほど、よろしくお願いいたします。

 修文したものにつきましては、今一度、委員の皆様にも書面にて最終的な確認をお願いしたいと思います。その確認が終了次第、報告書として公表させていただく。そういう段取りで対応したいと思いますが、よろしいでしょうか。

 ありがとうございます。次の議題2として「その他」というのがあるのですが、これについて事務局から何かありますか。

○中村補佐 特にございません。

○遠藤座長 それであれば、本日で9回目ですが、当検討会、非常に活発な議論を頂きまして、このような形でほぼ報告書がまとまったということです。皆様方の御協力を心より感謝したいと思います。本日の検討会はこれで終了したいと思いますが、事務局から何かありますか。

○二川局長 またこれから字句の修正がありますので、事務局と各委員の先生方と御連絡をさせていただきます。最終的には皆様に御確認いただいて、取りまとめ、公表という段になるかと思います。検討会としましては、おおむねのところ、ここでおまとめいただいたということで、私のほうから御礼の御挨拶をさせていただきたいと思います。

9回にわたり、臨床研究の制度の在り方について精力的に御議論いただきまして、誠にありがとうございました。皆様は御存じのとおり、本年6月には「日本再興戦略2014」、7月には「健康・医療戦略」、これらを閣議決定しており、我が国の成長戦略、国民の健康寿命延伸の観点から、国際水準の質の高い臨床研究あるいは治験が確実に実施されることが期待されております。

 こうした中、様々な臨床研究の不正事案が明るみに出たということは、大変遺憾なことですが、本検討会におきましては、法制化を含めた臨床研究の制度の在り方について、非常に御議論を頂き、信頼回復に関する当面の対応方策の御提言を取りまとめていただいただけでなく、また、今後の5年後あるいは10年後を見越した目指すべき姿についても、御議論を頂いたということで感謝を申し上げたいと思います。

 今後、厚生労働省といたしましては、国会の審議の中で大臣も答弁申し上げているところですが、本日、御議論を頂いた報告書を踏まえまして、本日の議論にもありましたとおり、法制局と相談をするなどといった政府内の調整も進めたいと思っておりますし、また、与党とも相談させていただくといった過程を経て、最終的に法制化に向けた検討を進めてまいりたいと思っております。

 厚生労働省といたしまして、御提案いただいた取組を通じて、我が国の臨床研究に対する信頼回復、あるいは臨床研究の更なる活性化といったところに努めてまいりたいと思います。今後も引き続き御支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。

○神ノ田課長 追加の事務連絡をさせていただきます。本日の御議論を踏まえまして、遠藤座長と相談して、必要な修正をさせていただきたいと思います。座長の了解を得た上で、また、委員の皆様方にお送りさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 また、本日の議事録については、作成次第、委員の皆様方に御確認をお願いし、その後、公開させていただきますので、併せてよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

○遠藤座長 ありがとうございます。それでは、私のほうから皆様に改めて、御協力いただきましてありがとうございました。感謝申し上げたいと思います。

 先ほど来、局長がお話されましたように、この報告書の内容が、我が国の今後の臨床研究の信頼を回復して、更なる質の高い臨床研究が進むことに大いに寄与していくことを期待したいと思います。本日はどうもありがとうございました。これにて閉会いたします。


(了)

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