ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 人材開発統括官が実施する検討会等> キャリア・パスポート(仮称)構想研究会> 第1回キャリア・パスポート(仮称)構想研究会議事録(2014年5月23日)




2014年5月23日 第1回キャリア・パスポート(仮称)構想研究会議事録

職業能力開発局

○日時

平成26年5月23日 13:00~15:00


○場所

虎ノ門SQUARE(東京都港区虎ノ門1-15-10 名和ビル2F)


○議題

1 現在のジョブ・カード制度の目的、運用の現状・課題
2 ジョブ・カードをめぐる最近の動き等
3 ジョブ・カードの見直しに係る論点

○議事

【議題(1) 現在のジョブ・カード制度の目的、運用の現状・課題】

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

御一人遅れておりますが、定刻となりましたので、ただいまから第1回「キャリア・パスポート(仮称)構想研究会」を開催いたします。本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。私は厚生労働省実習併用職業訓練推進室の田中と申します。

それでは、まず資料のご確認をさせていただきたいと思います。机の上にお配りしてある資料についてです。まず議事次第が一番上にありまして、次に資料1キャリア・パスポート(仮称)構想研究会開催要綱があります。資料2としまして、ジョブ・カード制度についてという資料、資料3としまして、ジョブ・カード制度の現状と課題についてという資料があります。資料4としまして、太字で書いてありますジョブ・カード制度の主な動きという資料がございます。資料5としまして、ジョブ・カードの見直しに係る論点案という資料がございます。資料6としまして、A4の縦になりますけれども、キャリア・パスポート構想研究会のスケジュールというようになっております。それと後、参考資料があります。以上が資料になっております。もし、落丁とかありましたら、近くにいる事務局の方に申し出ていただければと思います。大丈夫でしょうか。

それでは、開会にあたりまして、杉浦職業能力開発局長よりご挨拶を申し上げます。お願いします。

○職業能力開発局長

職業能力開発局長の杉浦でございます。皆様方におかれましては大変お忙しい中、このキャリア・パスポート(仮称)構想研究会にご参集いただきまして、誠にありがとうございます。ご案内の通り、ジョブ・カード制度につきましては、平成20年からスタートして実施をしてきているわけでございます。関係者のご努力によりまして、着実にその普及は図られているということで、現在ジョブ・カードの取得者数で申しますと100万人を超える数までには至っているわけではございますが、後程また説明にもあると思いますが、実質的な活用の仕方をみると、大半がその職業訓練の受講に係る人たちに限られているというところもございまして、まだまだ学生、それから一般の企業の方々に対しての浸透度は、限られておるのではないかといったところの課題もあるところでございます。

こういった状況で、昨年12月に政府の産業競争力会議の雇用・人材分科会の中間整理というものが出されました。その中で、この会議の題名にもあります通り、その名称をキャリア・パスポートという名前にして、学生の段階から職業紹介全般に渡って活用できるような中身、それから方策ということを抜本的に見直してはどうかという提言がなされているわけでございます。

こういった状況を踏まえまして、私どもとしましては、今回この研究会を立ち上げてご検討いただこうと思っております。具体的に、これからどういった形であれば、より活用がなされるのか。さらに、その方法ですとか仕様ですとか、それからいろいろ前々から議論もありましたけれども、例えば、電子化するといったような方策がとることができるのかどうかといったところも含めて、幅広くご検討を賜りたいと思っております。

私どもの都合で申し訳ないのですけども、出来れば、短期間で申し訳ないですが7月くらいを目処に中間的に一度取りまとめをしていただいて、最終的には本年度中の取りまとめをお願いしたいと考えているところでございます。その後、労使、それから関係府省との視点からもいろいろ検討いただきまして、27年度中からは実際にこのキャリア・パスポート、名称も含めてですが、新たな形として移行させていきたいと思っているところでございます。そういったことで、現在のジョブ・カードがより良い形で幅広く使っていただき、職業能力開発施策に大いに貢献する形にしていただけると非常にありがたいと思いまして、皆様方には積極的なご意見を賜りたいと思っております。本日は、関係の府省庁の方々のご出席をいただいておりますけれども、重ねて御礼を申し上げますとともに、是非また積極的にご意見をいただきして、ご協力方々よろしくお願いしまして、挨拶にさせていただきたいと思います。どうか一つよろしくお願いいたします。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

ありがとうございました。それでは、カメラ撮りはちょっとここまでということになりますので、カメラの担当者は御退席をお願いいたします。

それでは、本日は第1回ということで、まずは本研究会の開催要綱について説明いたします。お手元の資料の1番をご覧ください。キャリア・パスポート(仮称)構想研究会開催要綱というものがあります。1番の所で本研究会の趣旨のほうが書かれております。ちょっと読ませていただきます。
産業競争力会議、雇用・人材分科会、中間整理において、ジョブ・カードを、「キャリア・パスポートとして学生段階から職業生活を通じて活用できるものとすることや、企業及び働き手の双方にしっかり浸透する仕掛けとして、雇用保険二事業の助成金支給の必要条件とすること等、労使の理解を得つつ、抜本的に見直す』とともに、『電子化してネット上での共有を図り、円滑な労働移動につなげる等、外部労働市場の構築に資する方策を検討する』こと等とされている。
これを踏まえ、キャリア・パスポートの仕様、活用方法等を検討・研究するため、「キャリア・パスポート構想研究会」以下「研究会」を開催するとなっております。キャリア・パスポートの仕様、活用方法等を検討・研究していただく研究会となっております。

2番目としまして、本研究会の検討事項になりますけれども、まず1番、キャリア・パスポート活用のコンセプト及び具体的な活用方法に関すること。2番としまして、仕様に関すること。3番としまして、電子化・ネット上での共有に関すること。4番目に、その他というふうな形になっております。

3番目、大きな3としまして当研究会の運営です。まず1番、当研究会には座長を置くとなっております。2番としまして、必要に応じて関係者の出席を求めることができるとなっております。3番目としまして、オブザーバーとして関係府省が出席することができるとなっております。

続きまして、ご参集いただきました構成員の皆様方をご紹介したいと思います。お手元にございます資料の頁を捲っていただきまして、構成員名簿のほうをご覧ください。上から順に紹介させていただきます。
まず、中央大学経済学部教授 阿部正浩委員は、少々遅れておられるようでございます。続きまして、福島大学総合教育研究センター教授 五十嵐敦委員でございます。五十嵐委員につきましては、本日欠席でございます。続きまして、学習院大学経済学部経営学科教授 今野浩一郎委員でございます。

○今野委員

よろしくお願いします。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

続きまして、株式会社リクルートホールディングス専門役員・リクルートワークス研究所所長 大久保幸夫委員でございます。

○大久保委員

よろしくお願いします。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

続きまして、独立行政法人労働政策研究・研修機構特任フェロー 小杉礼子委員でございます。

○小杉委員

小杉でございます。よろしくお願いいたします。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

続きまして、株式会社日立製作所 キャリア・コンサルタント 人事教育総務センターキャリアサービスグループ部長代理 小寺亜美委員でございます。

○小寺委員

よろしくお願いします。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

続きまして、独立行政法人労働政策研究・研修機構キャリア支援部門主任研究員 下村 英雄委員でございます。

○下村委員

よろしくお願い申し上げます。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

続きまして、東京労働局職業安定部地方訓練受講者支援課長 根岸栄子委員でございます。

○根岸委員

よろしくお願いします。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

続きまして、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 高度職業能力開発促進センター所長 藤村伸治委員でございます。

○藤村委員

藤村伸治です。よろしくお願いします

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

続きまして、独立行政法人労働政策研究・研修機構キャリア支援部門副統括研究員 松本真作委員でございます。

○松本委員

よろしくお願いいたします。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

この他に、オブザーバーとしまして以下の方にもご出席いただいております。まずは、文部科学省生涯学習政策局参事官付 合田専門調査官です。

○文部科学省

合田です。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

文部科学省生涯学習政策局生涯学習推進課専修学校教育振興室 春田係長です。春田係長はちょっと遅れて来られます。
続きまして、文部科学省高等教育局学生・留学生課 山本専門職です。

○文部科学省

山本でございます。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

あと、経済産業省の方からも本来出席予定でしたが、ちょっと今日は急用がありまして、欠席との連絡をいただいております。次に厚生労働省から職業能力開発局 杉浦局長でございます。

○職業能力開発局長

よろしくお願いします。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

職業安定局主席職業指導官室 永倉中央職業指導官でございます。

○中央職業指導官

 よろしくお願いします。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

職業能力開発局能力評価課 伊藤課長でございます。

○能力評価課長

よろしくお願いします。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

職業能力開発局キャリア形成支援室 藤浪室長でございます。

○キャリア形成支援室長

 よろしくお願いします。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

職業能力開発局実習併用職業訓練推進室 塚本室長でございます。

○実習併用職業訓練推進室長

塚本です。よろしくお願いします。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

続きまして、議事の公開についてですけれども、資料1の1の公開についてのとおりとなっております。この議事の公開についてのペーパーにある通り、本研究会は原則公開ということになっております。ただし、ここに書いてある1から4に該当する場合であって、座長が、非公開が妥当であると判断した場合には、非公開にするとなっております。

続きまして、本研究会の座長についてですけれども、本研究会の座長につきましては、学習院大学経済学部経営学科の今野教授にお願いさせていただければと思います。では、今野座長の方から一言ご挨拶をお願いします。

○今野座長

進行役を担当させていただきます。よろしくお願いします。

○実習併用職業訓練推進室室長補佐

ありがとうございます。それでは、これからの進行は、今野座長にお願いしたいと思います。今野座長よろしくお願いいたします。

○今野座長

それでは、お手元に議事次第がございますので、それに沿って進めたいと思います。まずは「現在のジョブ・カード制度の目的、運用の現状・課題」について説明してもらった上で議論していきたいと思います。よろしくお願いします。

○実習併用職業訓練推進室長

実習室の塚本です。私からは、資料2と3、まずこの二つからご説明させていただきたいと思います。

まず資料2をご覧いただけますでしょうか。1頁目、この制度の目的でございますが、これは通達におきまして、ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティング、また実践的な職業訓練、ジョブ・カードを就職活動において活用し、使用することによる求職者と求人企業のマッチングや、また実践的な職業能力の習得を促進し、安定的な雇用への移行を目的としております。

2頁目をご覧いただけますでしょうか。これはジョブ・カードの主な機能と期待される効果で、これをこの研究会で検討していただくために、当室で文献や関係者へのヒアリング等により取りまとめたものでございますので、叩き台という意味でございます。
まず、第1でございますが、キャリア・コンサルティングでの活用によるキャリア形成上の課題、職業訓練の必要性の明確化等です。具体的には、下の(1)(2)に書いておりますように、ジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングにより職業意識、キャリア形成上の課題、職業生活設計の明確化等を図る。また、2つ目でございますが、訓練前にジョブ・カードを活用したキャリア・コンサルティングを行うことにより、訓練の必要性の明確化や訓練受講に向けた動機付けを図ること等が考えられます。
 次の第2でございますが、職業訓練の評価の活用による外部労働市場でも通用する評価、職業能力の所謂「見える化」の促進でございます。具体的には、職業能力評価基準を反映した評価シート、これを用いまして能力評価を記録すること等により、外部労働市場でも通用する評価、また能力の「見える化」の促進が考えられるのではないか。
 第3といたしましては、応募書類としての活用によります企業と求職者等のマッチングの促進。具体的には、ジョブ・カードの情報量が多く構成自体も標準化されている。第三者による中立的な評価が含まれている。訓練の結果等、評価シートにまとめることで、職業能力の「見える化」等、外部労働市場でも通用する評価となっていること。これらを理由に応募書類としての活用、企業と求職者とのマッチング促進を図ること等が期待される効果として考えられます。

次に、具体的なジョブ・カードの仕様でございますが、次の頁をご覧いただけますでしょうか。基本的にはこの4枚のシートから構成されております。標準的なもの、若干説明させていただきますと、次の4頁目をご覧いただけますでしょうか。
履歴シート、これには職務経歴・自己PR・志望動機等から構成され、また6頁目の職務シートには職務の内容、職務の中で学んだこと、得られた知識等の欄から構成されております。次の7頁目のほうになりますが、キャリアシート、職業に関する目標・希望、キャリア・コンサルタントが記入されますキャリア形成上の課題、支援のポイント等が欄としてございます。次に8頁目でございますが、この評価シート、具体的にはここにもありますように、4、次の頁が4-2、更に4-3と分かれておりますが、これは具体的な訓練によって、個々のシートを分けています。

次に12頁目、ご覧いただけますでしょうか。これは求職活動支援書としまして、活用が可能な職業のキャリアの長い方、これらに向けたカードということで、キャリアシートに事業主が再就職援助措置として何をするかを記載するという欄もございます。

次に学生用ジョブ・カード。20頁目からになります。就職活動、インターンシップでの活用を想定しております。具体的には履歴シート、学校活動歴、パーソナリティ/キャリアシート等から構成されております。

これらのカードがどのように活用されるか。これが25頁目にまとめておりますが、まず表の左のほうですが、キャリア・コンサルティングを実施していただいて、職業意識、キャリア形成上の課題等の明確化を行う。その訓練に行かないで就職される方もいらっしゃる。課題を解決するということで、右の訓練にいかれる方もいらっしゃるというようなかたちです。次に、キャリア形成上での課題を踏まえまして、職業訓練を実施し、その次は左側の部分になりますが、訓練終了後に能力評価を行い、ジョブ・カードに記載し、このジョブ・カードを活用して就職というような流れで活用されております。

この最初のキャリア・コンサルティングですが、具体的に概要を26頁目で示しております。左側ですが、キャリア・コンサルティングの一般的な流れということで、自己理解をし、仕事の理解、啓発的な啓発をし、4番目として、今後の職業生活設計、目標に係る意思決定等の流れで行われます。

次に、先程の真中にありました職業能力形成プログラムでございますが、これは28頁目ご覧いただけますでしょうか。求職者の方がキャリアアップを図り、安定的な雇用への移行を促進することを目的といたしました実践的な訓練。職業能力形成プログラムでございますが、現行、雇用型訓練、公共職業訓練としての離職者、学卒者訓練。また、求職者支援訓練がございます。

この部分、29頁次の頁ですが、雇用型訓練に関する助成金については、キャリアアップ助成金、キャリア形成促進助成金が現在ございます。

次に最後の能力評価のほうでございますが、30頁目ご覧いただけますでしょうか。必要な能力、また知識、どのように行動すべきかといった職務遂行能力。これを担当者から責任者までの4つのレベルに分けまして、職業能力の評価基準、これを59職種作成しております。

 次に31頁目、次の頁になりますがご覧いただけますでしょうか。この評価基準をもとに、ジョブ・カードのモデル評価シート、カリキュラム、これを作成し具体的な評価が行われています。

続きまして、33頁目ですが、この評価がどのように行われているかという部分ですが、まず訓練の開始前ですが、評価シートを提示し到達目標等を明確にする。訓練の途中に中間報告・中間評価ということで、まず自らが自己評価し、企業も本人を評価します。その結果のギャップをどうやって埋めるかといった検討等をした後に、最終的には、その達成状況の確認を、またこのシートで行うことになります。具体的には、訓練担当者が評価し、その内容を責任者の方に報告、また異議があれば責任者の方が対応するという一定の流れでございます。

 次に主な取り組みでございますが、34頁目ご覧いただけますでしょうか。推進計画、目標でございます、平成32年までの300万人の交付に向けまして、訓練関係では訓練開始前、訓練中、訓練の終了後にカードの交付・活用を求めております。また、訓練以外での一般求職者関係でございますが、このカードの活用、一般求職者はハローワークでの交付。また、高年齢再就職支援のためのカードの活用、また学生については、平成24年度から学生用カードを開発し普及を進めているところです。在職者につきましては、実務者会議を開催し、昨年5月に取りまとめを行っておりますが、まだ検討結果をいかにするかといった状況にあるかと思います。また、最後の方になりますが、ジョブ・カードの積極的な活用を図る企業ということで、ジョブ・カード普及サポーター企業なるものを設けておりますが、現在1万4千という状況でございます。

次に36頁目、推進体制ですが、これにつきましては、日本商工会議所に委託いたしまして、中央センターを1箇所、地域センターを47箇所、また主な都市にサポートセンターを58箇所設けまして、ジョブ・カードの広報や訓練評価者担当者への研修、また雇用型訓練実施企業の開拓、また先程のジョブ・カード普及サポーター企業の開拓等を行っております。

次の37頁目ですが、都道府県の労働局におきまして、地域の推進計画の作成とか都道府県内での広報・啓発として地域ジョブ・カード運営本部という会議を設け、ハローワークでのキャリア・コンサルティングの実施、また訓練への勧誘等が行われています。

具体的にどうなっているか、これは資料3をもとに説明させていただきたいと思います。まず目標でございますが、先程の新全国推進計画におきましては、平成24年度までに100万人、平成32年度までに300万人。また、広く、求職者、在職者、学生等を対象にカードを普及というふうにしております。それに対しまして、平成24年度までの取得累計87万ということで、目標には達成できておりません。また、平成32年度までの目標300万ですが、現行年間約20万が交付されており毎年約 1 割ずつ取得を増やしていかないと、なかなか300万まで到達しないといった状況です。また、取得者の内訳でございますが、例えば平成24年度の20万の内訳、19万が訓練関係ということで、大半がまさに訓練関係受講者ということで、広く求職者、在職者、学生等に普及しているとは、なかなか言いがたいといった状況にございます。

 次に続きまして、6頁目ご覧いただけますでしょうか。具体的にジョブ・カードを交付する機関についてですが、この内訳、労働局が全体の12%、委託・求職者支援訓練実施機関等が7割弱というように、大半は訓練実施機関での実施といった状況です。

 離職者学卒者の公共職業訓練については、通達で訓練実施機関でのカードの交付を求めておりますが、まだ発足当時の数ということもありますが、例えば、施設内訓練・学卒者訓練の合計の修了者が1.6万に対して、4千の交付という意味では、都道府県での施設でのカード交付体制が不十分ではないか。また、労働局年間約2万の交付がされておりますが、一般求職者約4千ということです。

次に10頁目、ご覧いただけますでしょうか。職業能力形成プログラムの状況でございますが、平成20年度からの累計でございますが、受講者数93万人に対して、修了者が69万人、就職者が53万人といった状況です。

次に17頁目になりますが、簡単にジョブ・カードを取り巻く状況について、ご説明させていただければと思います。18頁目は非正規雇用労働者の推移でございますが、1995年から2005年まで増加、現行2014年では全体の37%、約2千万人。次の頁19頁ですが、不本意非正規雇用の状況、平成25年平均で19万人、ただ25歳から34歳の若い方については30%。20頁目、これは学校卒業後の状況でございますが、平成25年約56万人の卒業者に対して約8万人が進学、就職をしていないといった方です。

次22頁目、学校卒業就職後3年目までの離職率。大卒では31%、高卒では4割弱です。

23頁目ですが、新卒採用時に重視する点はコミュニケーション能力の割合が高く、専門性が12%です。

24頁目、これは中途採用の場合の採用に当っての重視すべき事項ですが、人柄が76%、これに対して技術技能が44%ということで、採用に当っては技術技能よりも人柄、コミュニケーション能力等が重視されているという状況かと思います。

25頁目は、ジョブ・カードをそもそも知っている事業所、これが16%。訓練面接、ここまでやっているところは2%といった状況で、認知状況の改善も大きな課題になるかと思います。

26頁目は、キャリコンの実施状況ですが、行う仕組みのある事業所が正社員34%、非正社員が21%といった状況です。この目的ですが、労働者の自己啓発を図るためというのが最も多く、また労働者の主体的な職業生活設計を支援するため、これが正社員の40%、正社員以外が33%と状況です。

27頁目は、キャリアに関する相談の利用の要望ですが、正社員は7割強の77%。正社員以外が67%といった状況です。

28頁目は、具体的な訓練の状況ですが、計画的なOJTを実施した事業所については、正社員59%に対して、正社員以外が半分といった状況です。

29頁目は、職業生活設計を考える場の提供ですが、正社員の場合は43%、正社員以外が24%といった状況です。

30頁目は、生活設計を踏まえた人事配置の導入が21%、また次の31頁目になりますが、能力評価を行っている事業所が64%。やはり能力評価の活用方法として最も多いのは、人事考課の判断基準であり、そのほか能力開発の目標が43%といった状況です。

これらを含めて、資料3の11頁目をご覧いただけますでしょうか。これがこの研究会におきまして、ジョブ・カード制度の主な課題等をご検討いただくための資料ということで、当室で取りまとめた、あくまでもたたき台でございます。
まず、求職者関係の課題でございますが、求職活動での活用低調。考えられる主な原因ですが、大部分の企業が応募書類として位置づけていない。応募に際しまして、キャリア・コンサルタントの方の記述欄、場合によっては、非常に不利な記載がなされる場合があるという点。また、ジョブ・カード、一定の様式で固定されているということから、履歴がなかなか書けないような方は、ほとんど空欄になってしまうというような場合、心証が悪くなるという躊躇い。キャリア・コンサルタントに時間を要する。応募書類として活用する利点が十分に周知されていない。企業採用の際には、人柄等を重視しておりますが、ジョブ・カードが出来上がってきますと能力を重視したものであることなどが考えられるのではないか。
 次に、求職者関係の課題の第2ですが、ハローワークで求職者等の紹介・相談等のツールとしての活用の部分です。まず、大部分の企業、応募書類としてジョブ・カードを位置づけていない。2つ目として、企業の応募書類としてジョブ・カードを位置づけていない場合でありましても、ジョブ・カードを作成・交付することにより、求職者の意識の明確化等の利点があるかと思いますが、この点に着目した具体的な活用ノウハウがまだ十分に浸透していないということ等が考えられるのではないかと考えております。3つ目として、外部労働市場での活用が低調であること。考えられる主な原因ですが、企業が求める職業能力を十分に明確にしていないのではないか。評価シートが作成されていない分野も相当程度存在するのではないか。また、中小企業等で能力評価の具体的な活用方法等が十分に浸透していないのではないか。さらには、企業が行った能力評価について、他社でも同様に評価されるような客観性、信頼性。これが必要で、これに対応したツールが十分にまだないのではないか、という点です。

次に訓練関係でございますが、第1が公共職業訓練、訓練実施機関に対して、ジョブ・カードを交付するということになっていますが十分できていない。主な原因でございますが、都道府県における登録キャリア・コンサルタントの確保が十分でないという点等が考えられます。第2が公共職業訓練の受講の際に、ジョブ・カードを活用したキャリコンを訓練前に実施することにより、職業生活設計を踏まえた訓練なのかどうかといった、訓練の必要性をより明確にすることが望ましいところですが、原則として、訓練前のキャリア・コンサルティングは実施されていないということです。考えられる主な原因としましては、キャリア・コンサルティングの体制整備が十分でないのではないかということです。

次に在職者関係の課題でございますが、ほとんどジョブ・カードを活用されていないということです。その主な課題といたしましては、1つ目が労働者の職業生活設計に基づく取組み、個人主体の能力開発が必要といった状況でございますが、在職労働者のジョブ・カードを活用したこれらの取り組み等が十分でないこと。2つ目が在職労働者の実務経験の具体的な評価。これにつきましては、指針等で明確にしておらず、また浸透していない。ジョブ・カード様式もこれに対応していないといった、ジョブ・カードを活用した職業生活設計に基づく具体的な取組方法が明確にされていないのではないかということ。3つ目がキャリア・コンサルタントの確保が十分でないこと。4つ目が「労働者の職業生活設計」に基づく企業の取組み。これは必ずしも企業の利益になるとは限らないといったことなどがあるのではないか。

次に学生の課題ですが、1つ目が大部分の企業が応募書類として活用していないのではないかということ。また、利点等も十分に周知されていないのではないか。2つ目がキャリア教育において活用する利点、方法が十分に浸透、周知されていないのではないか。3つ目が大学でのキャリア・コンサルティングの体制です。

次にその他ということで、周知広報活動でございますが、十分に周知されておらず、また活用がほとんどされていないと。主な原因ですが、利点を含めた周知広報が十分でない点。訓練関係以外のインセンティブが十分でない点等が考えられるのではないかと。

次にジョブ・カードの形態のほうでございますが、記載された情報の検索、加工、これが非常に行われにくいと。原因といたしましては、今現在改竄防止のために、情報化に当たりましては原則PDF化を求めております。この観点からなかなか加工が難しいという点。

次に、登録キャリア・コンサルタントの関係ですが、登録キャリア・コンサルタントの質と量が十分でないのではないか。その原因としましては、登録キャリア・コンサルタントの有識者が少なく、一般に3時間程度の講習のみで登録が可能であり、このため、コンサルティングのスキル・知識等が十分ではないこと。登録後の研修等の機会、フォローアップの場が少ないとの課題があるのではないか。さらに、特に企業とか、先ほどの都道府県の訓練校等での登録キャリア・コンサルタントの確保が十分でないのではないかということです。以上です。

○今野座長

ありがとうございました。それでは、資料についての質問でも結構ですし、ご意見でも結構です。どうぞ、ご自由に。

○小杉委員

まず3点いわせていただきたいと思います。

第1点目ですね。現在のジョブ・カードなり新しいものなりというような、これまでとステージが変わったという認識です。当初は、困難な人を対象にしてというところでしたが、見直しの中でもっと幅広く学生までを含めて新しく入る人たちというのがかなり想定されて、現在の状況は、寧ろ人の移動しやすい社会をつくるそのツールとして必要なときに、必要なある程度これまでの形と違うものを促進するという意味のツールとしての役割というものが、今新しく求められているのではないかと思います。そういう変化を考えたときに、これまでの捉え方でいいのかなとちょっと疑問に思いました。
 要するに、今度の新しいステージというのは、若い人というよりは、ミッドキャリアでキャリアを変えるとか。そういった人たちをかなり想定したものになるかなと思います。求職者という、その求職に来た段階でという捉え方ではなくて、私はこの段階になれば、今度は離職のタイミングに、これを必ずつくるという方向がいいのではないかと思っています。離職にあたって、要するに雇用保険の離職票を出すのと一緒に、企業の方でこれまでの経歴について、ある程度能力を証明するというようなツールですね。離職にあたってつくっていくというか、これは当然企業側も採用にあたって使えるものとなってきますし、この段階で新たなステージが変わったことを考えると、ストラテジーを変えなきゃいけないのではないか。求職で新しい仕事を求めるときにつくるのではなくて、移動するときに必ずセットで付いてくると。そういう仕組みにしていく必要があるのではないかと思いました。これが第1点目です。

第2点目が、これまでの普及の課題は何だったのかという点を考え直さなければならないだろうと。私は、やはりキャリア・コンサルティングというのは非常に大事ですが、キャリア・コンサルティングということと能力評価というものをあまりにも一人のコンサルタントがやることにしてしまったことに課題があるのではないかと思います。コンサルティングというのは基本的には、個人に対するサービスだと思います。個人の視点から、個人のキャリアをサポートする人たちがコンサルタントだと思うのですが、その人たちと能力評価ということをセットにしすぎて、彼らのコメントが次の評価に繋がってしまうというところは、ちょっとこれは負荷をかけすぎた、そういう仕組みだったのではないか。能力評価の方は、もう一方で進められている能力評価基準の方で整理して、そちらの方の仕組みの中で、評価はできてくるものであって、相談というものと評価というものは区別すべきではないか。これが十分に出来なかったのが課題だろうというのが第二点目です。

第3点目に申し上げたいのは、これからのことです。これから、やはり今想定されていますように、もっと電子化していく方向性が考えられています。現在の状況の電子化の中でだと、これまでできなかったものまでできるようになる。こういった良い方向があると思っています。先程の PDF 化ではない方法で加工できる、加工できるものと加工できないものとを分けるとか、或いは必要に応じて編集するというように。キャリアというのは、基本的に私は個人のものだと思います。ただ、それを事実として改竄すべきではないので、改竄しないような形にすることは必要ですが、個人がそれをコントロールすべきだと。つまり、応募書類を作るときに、その個人が選択的にこの企業にはこの点をアピールしたいという形で応募書類をつくり直せるというような、そういう形での運用が必要なので、その辺を含めて、新たな形としては、あくまでも個人の行動において必要な部分をピックアップ出来るようなものをつくっていくべきではないかと思います。以上3点です。

○今野座長

ありがとうございました。ちょっと質問していいでしょうか。2点目ですけど、もうキャリア・コンサルタントには、能力評価をさせるなということでしょうか。

○小杉委員

はい。能力評価の部分はしなくてもいい。サポートする意味ではあると思います。ここまで出来ましたね、良かったねといったコメントは必要です。ただ、コメントを外に出すべき書類として書かなくてもいいのではないか。必要に応じて、外に出してもいいし出さなくてもいいし、そういう個人の情報として、置いておくべきではないかということです。

○今野座長

もうひとつ質問していいでしょうか。求職段階で使うときには、求職者が就職したいから、少なくともつくろうというインセンティブが働くわけですが、離職段階において、各企業にとってのインセンティブはあるのでしょうか。アイデアとして私は面白いと思う。それはどのようにお考えですか。

○小杉委員

それこそ、雇用保険の二事業で付帯に必要なというくらいのことです。離職票を出すのと一緒で離職するからには、これまでやってきたこと、これだけやってきましたよと。本人に求められたら、それに対して判子を押さなきゃならないとかそういう話です。

○今野座長

要するに強制するということですね。

○小杉委員

はい。

○今野座長

他に何か。事務局は何か意見があれば。無ければ無くていいですよ。他にいかがですか。はい、どうぞ。

○大久保委員

小杉さんと同じく長年やっている人間が先に発言した方が良いかと思いまして。今の小杉さんの指摘は、僕も結構実は考え方が重なっています。もともとのジョブ・カードを立ち上げたときに、原点にあったのは日本版 NVQ のような職業能力評価の新しい仕組みを作ろうということで、職業訓練を受けて、実際にやってみたらどうだったよということを評価してもらって、それを客観的な形で証明できるシートをつくるということでした。訓練の評価だけでなく、就職の場面に持ち込めるように頭のところに履歴書を付ける。こういう発想がジョブ・カードの最初の発想だったと思います。
 つまり、もし本当に個人が自分のキャリアのプランニングや応募行動に使おうと思ったら、個人のものにしなければいけない。それを自分でバージョッアップしながら、書き足していけるものにするというというのが、ジョブ・カードの本来の機能のはずなのですけども、職業能力評価の客観的な証明の方に引っ張られて、全部丸ごとキャリコン任せにしてしまって、個人が管理するというよりも完成したものを渡されると。そういう形にしてしまったので、自ずと応募書類としてではなくて、職業訓練カード的なものに固まった、そういう構造になったと思います。

しかも、長い間ジョブ・カードやっている中で、いろいろな変化がありまして、途中何度も見直しがあってですね。追い風が吹いてみたり、雷が落ちてきたりするような、いろいろなことがあって。いろいろなものを付け足していくうちに、どんどん複雑になって。実際、初めてジョブ・カードシステムに触れた人からは「複雑で分かりにくい」とか、「とても手間がかかる」という印象を持つようなものになってしまったのが、現在の段階だと思いますね。なので、どうすればいいかという話は、結論から言うと小杉さんの提案と僕の提案はほとんど同じです。そこの本質に踏み込んだ議論をしないと。訓練を受けた人以外にも、もっと一般に広げようというようなことは、事業仕分け以降はずっと言い続けてきましたが、基本的に何も変わっていません。だから、そこを変えるのなら、抜本的なところから考え方を転換しないとちっとも前にすすまないと。その前の思い切ったことをやらないと名前を変えただけに近くなってしまい、何の意味もないと思っていますので、そういう前提で議論すべきだと僕は思っています。

○今野座長

先程、事務局から説明があった今回のこの研究会の趣旨にはあまり入っていないでしょうね、今のことは。仕様の変更というので入るかもしれないけれど。他にいかがですか。他の方どうぞ、自由に。

○小寺委員

お二人の発言を聞かせていただいて私も発言させて頂きます。まず私は企業内でキャリア・コンサルタントを実際に行っている立場で今回参加しています。日立製作所というと大企業でもあります。ですから、ある程度のリソースがある中で施策をやっていますので、それが一般的で普遍的かといわれるとちょっと分からない点もあるのですが、企業でキャリア形成・キャリア開発支援を行うのは、社員それぞれの人の力を十分に発揮してもらう、ということがねらいとしてあります。そのことはその人のモチベーションに繋がりますし、成長していくということでエンプライアビリティにも繋がっていきます。そういう観点では、仕事を通じたいろいろな経験から、何を自分として学んできたか、或いは自己理解が深まったかというようなことを確かめるプロセスがとても大切で、そこはキャリア開発支援で行っている部分です。

ですから、今回キャリア・パスポートを学生から社会人、実際に企業で働いている人、求職者だけでなく、企業で働いている人も使うといった観点で考えると、個人が主体で自分のキャリアを考えていく中での振り返りとして、使える要素はあるのではないかと考えました。ただ、そのときには先生方がおっしゃったように、キャリアは個人のものですので、私はジョブ・カードについていろいろ調べさせていただく中で、この用途はどこにあるのだろうと。組織内で使う場合は例えば上司と部下でどうやって使うのだろうかとか、具体的に考えたときに、キャリアは個人のものですから、個人が選択をして上司と会話をする中で使っていく、能力開発をしていくところで使っていくとか個人主体で、自分でコントロールできるような、そんなものであるのかなと考えました。その辺りは先生方のご意見に賛同するなと思っています。

後、もう一点少しお伝えすると、能力という言葉についてですが、例えば企業内では、客観的な評価を見える化することによるメリットはとても大きいと思うのですが、固定化されてしまうという面もあると思います。ですから、例えば企業内でキャリアカードの導入を進めるときには、多様性の風土だとか、違っていていいとか、そういったことへの理解を同時に進めていくということも必要だと思いますので、今回キャリア・パスポートを検討していく中では、そういった風土だとかメンテナンスも必要かと。能力開発や成長にはストレスが伴うという側面もありますから、社員だとか働く人から見るとメンテナンス機能的なそういったところも考える必要があるなと少し考えました。

○今野座長

他にいかがでしょうか。

○根岸委員

東京労働局の根岸です。小杉先生と大久保先生の話は、ちょっと将来的な話でしたので、現場としてハローワークでのジョブ・カードが今なかなか進まない理由について、今事務局から説明がありましたが、一つは応募書類として職務経歴書や履歴書、或いは学生さんで言うとエントリーシートとか企業に向けた自由度の高いものが浸透している中で、結構様式ががちがちに決まっていて、ちょっと自由度が無くてアピールしにくいというものと、それから、小杉先生がおっしゃっていた登録キャリア・コンサルタントにちょっと負荷をかけすぎで、やはり自分の一言がその人の採用の結果に繋がると思うと、なかなか書けないというところがあって、応募書類としてはなかなか浸透していません。
それから二日前現在で、三十五歳未満の東京都局内の有効求人件数が13万6 , 859件で、そのうち、ジョブ・カードでの応募を認めているのは118件。わずか0 . 09%ということで、まだまだ応募書類としては、企業は求めていません。さきほど利点が企業に伝わっていないというのがありましたけど、何が利点なのかをもうちょっと整理しておく必要があるかなと思います。

ただ、職業相談の場面で、ジョブ・カードを今東京労働局は使い出していて、去年、一年前の約3倍、約5 , 000件を交付したのですが、何が良かったかというと、登録キャリア・コンサルタントの養成研修を独自に10回ほど実施しまして、そこでどこの時点でどうやって使うかと割と具体的な使い方について、これは東京労働局のやり方ですけども、示しました。基本的に個別支援でしっかり使っていこうと。そのかわり応募書類としてはあまり意識するなということを割とはっきり示したことで、急激に「つくってみようか」という形になり、そうしてつくったところでお礼を言われたり、文書化されることで、ご本人がいろいろ自らのことを振り返り、これは売りになるということを気づいたり、或いは課題を発見したりということで、これまたひとつ効果があったので、東京労働局としては今それを浸透させていきたいと思っています。ただ、全国的には未だ訓練のものがほとんどです。
 東京は全体の3割が一般の窓口なので、全国平均よりは一般窓口で交付しているような状態です。

○今野座長

それは一言で言えば、あまり正確ではないですが、履歴書に代わる応募書類として使うのではなく、ジョブ・カードはキャリアの棚卸し支援ツールとして使うということですか。

○根岸委員

その方が今現場では進んでいるということです。

○今野座長

そうすると、先程のがちがちの様式というのは、能力評価を客観的に表現しなければならないからだったわけですが、極端にいうとそれはあきらめる。キャリアの棚卸しツールでいいじゃないかということですか、乱暴にいうと。

○根岸委員

極端にいうと、今使ってもらうためには、そういう方向で始めたほうがよいと思います。

○今野座長

今日は自由に発言しましょう。

○下村委員

では、私の方から発言させていただきたいと思いますが、小杉委員が先程おっしゃったように、最初は就職困難層に対するキャリアガイダンスの施策として始まったかと思いますけれども、それがどんどん拡大してく中で、今やキャリアガイダンス論としてみた場合には、生涯に渡る職業的自立を支える生涯キャリアガイダンスシステムの一つとして評価されるのではないかと考えているところでございます。
そうしてみた場合、この施策というのは、ポートフォリオ型のキャリアガイダンスということで、体験や評価といったものをどんどん一つのファイルの中に入れていって、それを適切にキャリアガイダンスに使っていこうという施策だと位置づけられるかと思っております。

さらに、このポートフォリオ型のキャリアガイダンス、何がポイントになるのかということを私の方で考えてみると、やはり何度も見返すものであるところが最大のキーワードというかキーポイントになるのかなと思っています。今までのジョブ・カードは一度使ったら、また何度も見返すというインセンティブといいますか、動機付けといったものが、果たして備わっていたのかといったところで疑問に思う点もございます。一回このカードを使った後には、何回も自分でどうなったか、自分の思う方向に進んでいるのかといった形で見返すような仕組みが必要ではないでしょうか。
例えば、これが一般的な情報支援の仕組み、職業情報やテストが載っていたり、簡単なスキルチェックが載っているサイトと連動し、何度も見返しては、自分の能力を自分で確認していく。そういう仕組みづくりまで含めて議論できれば、一番いいかなと思うところでございます。
ですので、根岸委員がおっしゃったように、必ずしもゴールをエンプロイメント、つまりマッチングそのものに考えるというよりは、寧ろエンプロイアビリティ、そして更にいえば生涯教育といったものに観点をずらしていくことによって、キャリア・パスポートについて、もっと議論すべきことがたくさんでてくるのではないかと思います。

更にもう一点付け加えると、もともと 90 年代オハイオなどで行われたキャリア・パスポートの取組といったものが発端になっているかと思いますけれども、その際我々日本で言うこのキャリアシート的なものというのは、キャリア・パスポートの外に出ていて、 ICP とよく言われますが、個別のキャリアのプランニングのシートは外にでていて、これを作成するためにこそ、キャリア・パスポートを完成させるといったところがあったわけでございます。
大久保先生が先程おっしゃったかと思いますが、もともとこのキャリアシートは、本来キャリア・パスポートの外に出ていないと、おかしくなってくるところがあって、このキャリアシートをみんなでよって集ってといいますか、様々な人が見てこれはこうした方がいいのではないか。ああした方がいいのではないかというものを、いろいろな専門家に見せてはアドバイスをもらい、小寺さんがおっしゃったことでいえば、上司と一緒にこのキャリアシートを見て一緒に議論し合うとか。そういった使い方をするためのものであって、その背景にある情報として、色々な体験をひとつのファイルにまとめていくキャリア・パスポート、ポートフォリオ型のキャリアガイダンスといったそう位置づけが出来るかと考えているところでございます。以上です。

○今野座長

ありがとうございました。今の話ですが、結局はキャリア・パスポートのお客さんは個人であり、棚卸しのツールとして使うものであると。実際の求職の場面では、それをベースにして履歴書を書いたりとかというやり方でいいということですかね。

○下村委員

そうともいえると思いますけれども、企業側のメリットとしては、自己啓発支援みたいなものを公的な枠組みで提供する意味で、余力がない企業にとってはその公的な自己啓発支援、その情報支援みたいなものを代替してあげているという意味で企業の役に立つ形になるかと思います。

○今野座長

それは在職者ですね。

○下村委員

在職者です。

○今野座長

そのように使おうとしても、結局は小寺さんもおっしゃっていたけれど、キャリアは個人の資産であって、極端なことをいうと、在職者であっても個人のキャリアの棚卸しツールでいいと。もし企業が関与するとしたら、支援するという感じでいいということでしょうか。

もう一時間経ちまして、これを放置するとこのまま延々と続くので、まだ議題が二つあありますし、資料の説明をしていただいた後から、またご意見をいただきたいと思います。では、次にジョブ・カードの最近の動きについて説明をお願いします。

 

【課題(2)ジョブ・カードをめぐる最近の動き等 (3)ジョブ・カードの見直しに係る論点】

○実習併用職業訓練推進室長

それでは、資料4をご覧いただけますでしょうか。制度の主な動きでございますが、ジョブ・カード自体、これは平成20年に主に職業能力の形成機会に恵まれない方に対する支援策というかたちで創設されております。平成22年には、新成長戦略の一つとしてカード制度の推進を行い、2020年までに300万人を目標としている。その後、仕分けによりまして、ジョブ・カードの対象となる訓練の拡大等を行い、平成23年度にこれらを反映させた新全国推進基本計画を策定しております。この計画の中では、広く求職者・在職者・学生等を対象として恵まれない方等を重点としております。その後平成24年度には学生用のジョブ・カードの導入、平成25年度には産業競争力会議での中間報告が求められ、現在に至っているという状況でございます。

次に2頁目ご覧いただけますでしょうか。主な最近の計画とか報告書等についてご説明いたします。先ほどの新全国推進基本計画でございますが、ジョブ・カードの安定的な雇用への移行を促すこと、その過程で自ら職業生活設計を行い、生涯を通じたキャリア形成のための支援ツール、または、職業能力を証明するツールとしての活用を謳っております。

日本再興戦略の中では、全ての人材が能力を高め、存分に発揮できる全員参加の社会というのを謳っております。産業競争力会議の中では一部重複しますが、多様な人材がその目的等に応じた雇用機会を得るためには、職業能力等の明確化を図ること。その明確化の上で自己研鑽、キャリアアップにつなげること。また、ジョブ・カード抜本的見直し利用率を向上させ、広く労働者・学生等が活用し、自ら職務・能力等の明確化を図ることを慣習化する。さらに、ジョブ・カードを学生から職業生活まで通して活用できるキャリア・パスポートのツール化。また、企業及び働き手の双方にしっかり浸透する仕掛けということで、雇用保険二事業に助成金支給を必要条件にすること等、労使の理解を得つつ抜本的に見直し、最後に、電子化してネット上での共有を図り、円滑な労働移動につなげる等外部労働市場の構築に資する方策の検討を求められております。
 平成25年の雇用政策研究会の報告書では、多様な働き方の推進、また労働移動支援等の課題の中で、能力の「見える化」の重要性が高まっていると。この中でジョブ・カード、能力の「見える化」に役に立つということからの一層の推進が重要と述べられております。また、研究会の中では、個人主体の能力開発の重要性が高まってくるということも述べられております。
最後に職業能力評価制度の在り方に関する研究会の報告書の中では、教育訓練、職業能力評価の結果とともに、これを蓄積・可視化し、市場で効果的に流通させるとともに、各施策間の連動性を確保する上で、ジョブ・カードが重要な役割を果たすことが期待されております。また、幅広い関係機関の連携の下、職業生涯を通じた活用の基盤を形成、情報の継続的な蓄積・盛り込むべきコンテンツの中身、求職者情報の求人者等への発信、各種支援制度の要件としての活用といった観点からの取組みを進めるべしと謳われております。

次に資料の10頁目ご覧いただけますでしょうか。これは平成26年3月に産業競争力会議雇用・人材分科会が開催されまして、厚労省で説明したペーパーの一部でございますが、この中では、外部労働市場の活性化により、人材の最適配置・最大活用を目指して、外部労働市場全体としてのマッチング機能の強化、業界共通の能力評価の「ものさし」を整備、職業訓練のベストミックスの推進とともに、個人主体のキャリア形成の支援として、このジョブ・カードの抜本的な見直しを考えた等について説明しております。以上が4でございますが、5も続けましょうか。

○今野座長

 そうですね。資料全部やってもらいましょう。議題としては3番目も一緒にやりますので。

○実習併用職業訓練推進室長

 ジョブ・カードの見直しに係る論点案として資料5をご覧ください。まず、ご議論いただきたいことの第1はジョブ・カードの見直しにあたって、学生段階から職業生活を通じ、広く労働者や学生等が一層活用するものとすべきでないか。2つ目としましては、個人主導のキャリア形成のためのツール。3つ目としては、キャリア・コンサルティングを通じ、労働者等が職業生活設計を行う際のツール。4つ目としましては、実務経験、訓練の成果を職業能力評価制度により評価し、能力の「見える化」を図る際のツール。5つ目としましては、外部労働者市場でも通じる企業と求職者等のマッチングを促進するためのツール。6つ目としましては、学生段階での就職活動、キャリア教育、インターンシップ等でのツールとして一層活用すべきではないか。

次の裏面になりますが、生涯を通じたジョブ・カードの活用を念頭に、どのような環境整備のほうが必要か。具体的な仕様につきましても、生涯を通じて活用可能な共通のツールという観点から、長期間情報を蓄積・保存し、様々な場面で活用していくことを想定し、検討していくことが必要という観点から、情報の電子化が必要ではないか。また、電子化する際の具体的な管理方法等の検討はどのようなものか。関係情報を電子化し、SNS等に掲載し活用する際のメリット、デメリット、活用する場合の条件等も検討すべきではないか。ジョブ・カードを見直す際に、今回長期的、継続的に信頼性を持って活用の促進が図られるよう、見直しの制度化での位置づけ、これを検討すべきでないか。
最後になりますが、見直す際の新たな名称として、このような論点を踏まえて、「キャリア・パスポート」なるものが相応しいかどうか等があるのではないかと考えております。以上です。

○今野座長

 ありがとうございました。それでは、先程申しましたとおり、今日の議題でいうと2番目と3番目について、同時に説明して頂きましたので、何でもいいのですが、今までの議論で既に今後どうするかご意見もありましたので、そういうことも含めて、ご自由にご発言ください。

○阿部委員

本日は遅刻しまして大変ご迷惑をお掛けしました。中央大学の阿部でございます。よろしくお願いします。

私は二つ申し上げたいことがあって、まず一つは慣習を変えるのは難しいということと、もう一つは最大公約数をとるのか、それともそうではないのかというところを少々お話したいと思っています。

まず、慣習を変えることなのですが、資料5にも書いてありますけれども、多分ここに書いてあることについて活用すべきではないかと問われると、すべきだろうと答えられるのではないかなと思います。それは私のようにキャリアを専門にしていない者からいってもそうだろうと思いますし、勿論キャリアの専門家でしたらそれは当然だろうと答えるだろう思います。ただ、問題はその解がジョブ・カードだけなのかと問われると、実は代替手段はたくさんあるような気がします。先程おっしゃっていたように職務経歴書もそうでしょうし、ジョブ・カードより自由な書式で書けるものが世の中にはいっぱいあるわけです。だから何故ジョブ・カードにしないといけないのか、或いはジョブ・カードにするメリットって何なのかというところを考えないと進まないと思います。勿論、先程小杉さんがおっしゃたように、二事業で使わせるのならこれを使わなければだめだというやり方もあるかも知れませんけれども、果たしてそれが良い方法かどうかは、ちょっと分かりません。個人からしますと、二事業は関係ないので、個人でやるというインセンティブは働かないわけですから、何故代替手段と比べてジョブ・カードが望ましいのかというのをしっかり議論していかないと、使ってもらえなくなってしまうだろうなと思いました。
なので、今まで活用されて上手くいっているものはたくさんあるかと思います。履歴書もそうですし、職務経歴書もそうだと思いますし。或いは企業によってはエントリーシートが上手くいっているかもしれないし、ちょっとクエスチョンですが。このように今まで上手くいっていたものをどう変えていくかを少し真剣に考えないとジョブ・カードは使ってもらえないのかなと考えます。

それから、もう一つは最大公約数かどうかという話ですけれども、何に使うのかというのは幅広にあるわけですよね。マッチングに使う、訓練に使う、評価に使う、或いはこれから学生層が入ってくれば、学びというところも含めて入ってくるだろうと思いますが、これらを全部やろうとすることは、果たして可能なのだろうかというのが非常に疑問です。多分、それぞれ必要な情報というのは違う形で出てくる可能性があるわけで、その違う形にしていけるかどうか、或いは上手くいえないのですが、全部書かないとジョブ・カードが作れなくなるものにするのかどうか。そういう問題もあるのではないかということと、それからさきほど委員の皆様が色々お話になっていましたが、多分皆さん、それぞれのイメージをお持ちのようですので、どのような形に仕上げていくのかをしっかり議論すべきだろうと思いました。
 さらに、問題はステージを追加していくということで、大学生だとか、或いはミドル層だとか、或いはそれ以降の人も増えていくということになると、さらに変数が増えていくわけです。そういう複雑化をどうやって上手く処理しつつ、先程いったような皆さんに使っていってもらうものにするのか。ちょっと私には良く見えないのですが、そういったところを明らかにする必要があるのではと思いました。

○今野座長

ありがとうございます。今のお考え方ですが、上手くいくかどうかは別として、阿部さんがおっしゃった後者については、広めていくということを前提にやっている。訓練にも使える、学生にも使える、在職者にも使える、求職者にも仕える、広げる線ですよね。もし、これをフィックスすると、広めて使えるジョブ・カードを設計しないといけないということになりますよね、別に答えを言っているわけじゃないですけど。ということは、共通性が高いスペックを作ることになるので、個別の分野の特殊性を反映するという方向は薄まるかもしれないということになりますね。

○阿部委員

ただですね。どちらにいくかは分からないのですが、今の形でいくとかなり複雑になるだろうと思うのですが。

○今野座長

いや、複雑にするか単純化するか。

○阿部委員

単純化すると使えなくなることがありますので、そこは議論のしどころなのですけども、例えば、デジタル化をしていくということになると、それぞれの用途に応じてデータを切り出したり、或いは貼り付けたりするということは、不可能ではないと思います。
だから、詳細に聞いておいてその切り出し方を考えていくというやり方もあるのではないかと思っています。ただ、どちらにいくのかというのは、多分ここでいろいろ議論していかないといけないと思います。

○今野座長

電子化についても、先程のみなさんのご意見では、ジョブ・カードは例えば、就職の際に、企業に出す書類の一歩前の自分の棚卸しで使いなさいといった傾向が強い。ということは、皆さんの議論ではジョブ・カード自身は社会的に流通しないのが前提になります。だから皆さんのいうことを追求すると、電子化してもいいけど流通するためではなく書き直しをするためであり、つまり個人の持っている情報を本人がなくすかもしれないから、どこかのクラウドに置いておいて、その都度引き出すという程度になりますよね。皆さんの言ったことを踏まえると。

○小杉委員

二つの側面が今両方ごっちゃになっているかと思いました。

一つは、要するにキャリア・コンサルティングで本人が自分を棚卸しするというツールの部分ですね。この効果については、皆さんが異口同音に効果があると認めて、どんな調査やってもそうですけれども。

もう一つは能力の証明という部分ですよね。その証明の部分が、外に出るか出ないかというところで問題になってくる。棚卸しの部分は出なくてもいいと思いますね。証明の部分は、多分市場の横断化といった話になるときに大事になってくるので、この部分というのは、今あまり議論されてこなかったというか、今の話からだと皆さんの議論では出てこなかった。ここが多分これまでのネックのひとつだと思うので、これは別に切り分けて議論したほうがいいのではないかと思います。

○今野座長

そうするとひとつのやり方は、皆さんの話を聞いていると、能力の証明にもキャリア・コンサルティングへの依存が大きかった、それはもう難しいということを少し乱暴に延長すると、ジョブ・カードから能力評価を取るようにしろと聞こえて仕方なかったのですが。さきほどの話では、それは別のツールでやるように聞こえたのですが、どうでしょうか。大久保さん。

○大久保委員

ジョブ・カードを絞りに絞っていくと、能力の客観的評価機能に行き着くのだろうなと思っていて、逆に言うとそれがないのならば、ジョブ・カードが存在する意味はあるのか疑問だと思っています。

ただ、能力の客観的評価をする方法にはいろいろな方法があって、一つは学校が出す成績証明書類みたいなものもあるし、例えば資格をとれば資格の運営元が出している資格証書があります。ただ、それだけでは実際に就職するときに「それだけではよくわからん」と企業は思うわけですね。だから、訓練を受けたとか実習を受けたとかいう色々なものに関して実際にやりましたよ、或いはその時どんな出来栄えでしたよということを証明するものをくっつけようという話が出てきた。
さきほど小杉さんがおっしゃっていたとおり、本当はそれ以外に例えば転職であれば、もともと在籍した企業でどれだけ業績をあげたのかを好き勝手に書く人もいるので、それは企業が証明をした上で、もともとの応募書類である履歴書に添付するというのが、本当の形だと思います。
 キャリア・コンサルティングをコミットさせるということになって、キャリア形成支援シート的な要素が加味されてきたというプロセスになってきたと思うのですが、実際にはキャリア形成支援シート的な部分は、おっしゃるとおり表に出るものではなくて、応募するときには履歴書プラス能力証明書が出されるというものだと思うのです。新しいキャリア・パスポートは、一体何をするものかという議論ですが、能力の客観的評価をあきらめてしまうと、ジョブ・カードというものをキャリア・パスポートと名前を変えようとも維持していくことの意味はあまりないというのが、僕の意見です。

○今野座長

別に決めたわけではないです。皆さんの意見を聞くとそのように聞こえますということです。

○松本委員

能力の評価にも多少関係あると思いますが、システム化するときに、より使い易くするということですね、自分の履歴書を自動的に書いてくれるソフトとか、或いはジョブディスクプリクションを少しサポートしてくれるシステムがありますが、あのような形で何か自分のジョブ・カードに関係あることを支援してくれるようなものですね。そういうものがつくれるのではないかと思います。それがあれば使う人にもメリットになりますし、企業側にも多少はメリットになるのではないかと思います。
記述するときにある程度標準的な基準とか、或いは標準的な用語ですね。そういうものが使われれば、お互い同じ標準的な用語を使って話が通じるということで、メリットもあるのではないかと思います。
 ですから、能力を証明することについてどこまで証明するか、そして証明されたからといって、それを本人が出したいと思うかというのがかなり疑問に思いますけれども、能力とか経歴について標準的な用語、標準的な書き方、或いは書き方の例みたいなものですね。そういったものをシステム化することによって、併せて提供されれば今よりはかなり使われるのではないかと思います。

○今野座長

大久保さんの意見からすると、前半の意見と最後の意見を踏まえると、キャリア・コンサルタントは、棚卸しの部分だけ関与すればいい、能力についてはもう関与しなくていいと。そうやって負荷を減らせいう結論になりますね。それと松本さんの意見は、能力の証明は必要だけど客観化するとか表現するにはいろいろな方法があって、いい例ではないですけれども「あいつは優秀だ」の優秀という言葉が、みんなが標準的な言葉として共通していれば、優秀と書けばいいという、そういう表現の共通性でどうにかなるのではないかということですね。
大久保さんはもっと厳密ですよね、多分。この仕事ができるとかできないとか。そこには色々な方法が有り得る。私はまとめているだけですので、どうぞ。

○藤村委員

藤村です。今の議論の中でちょっと注意しないといけないのが一点。

ジョブ・カードという名前が従来の様式を覆い隠していまして、実際ジョブ・カードの様式1というのは、従来から議論されている単なる履歴書と職務経歴書です。私が今年の三月まで大学生とか求職者を支援した中では、エントリーシートを含めて、他に代替できる様式、手段は、私の経験では見当たりません。

それから、次にキャリア・コンサルタントの関与ですが、現状今日説明された内容だと非常に複雑になってしまったので皆さん見えなくなるのですが、訓練の評価としての結果は、キャリア・コンサルタントが関与した方が、効果があることは分かっています。これは雇用型訓練の中の有期実習、それから実践型人材育成システムにおいて、現実に私が現場で確認をしたときに、キャリア・コンサルタントが入った方がその訓練の効果は高く、そして正社員への登用が多くなったということが事例としても報告されています。

それから、能力評価でのキャリア・コンサルティング、これは全く話が違ってきます。職業能力評価にキャリア・コンサルタントが関与する意味は最初からありません。

それから次に、職業能力評価ですが、全職種全職務、業種で本来ならやられていれば良いのですが、実はそれは我々の思いだけであって、例えば分かり易い一つの事例でお話ししますとパン屋さんがあります。ある有名な大手チェーンストアのパン屋さんで働いておられる方々は、ほとんどパートさんです。前は正社員の方がいました。ところが、正社員がほとんどいなくなって、正社員の方は、エリアマネージャーと称して変貌します。その正社員さんの方がおられたときは、パートの方に対してパン屋で働くための能力評価と研修をその会社さんはやっていました。ところが、他店との競争の中で生き残るために人件費を削減するため、能力評価と研修を一切やめてしまわれました。

一方で、スーパーマーケットの中の職務を細かく分けまして、その一つ一つに能力評価を実施し、ネームカードのところにその結果を貼り付けて、この人 何ができるかという能力のシールを貼って、職業能力評価と研修を一生懸命やろうという中堅どころのスーパーがあります。
つまり、どちらが正しいかというより、そういう風にダイナミックに社会の中で事業を経営する方が判断をして職務能力評価をして、事業の拡大をいろいろな方向で目論んでいますから、やり方が変わってくるわけです。

ですから、みんなが採用する職業能力評価というのはありえないので、まずその業界で必要だと思われる職能力評価をひとつずつ作成していけば、職業能力評価の標準化が行われ、その結果が出てまいります。
 例えば、最近の話でしたら、シティホテル業界とかは、業界標準の能力評価制度に非常に熱心に自ら取り組んでおられます。本日参加されている委員の方々は、ものづくり系ではないと思いますが、ものづくり系の場合には、技能検定というのを持っていますと、学生の場合はほぼ100%で就職できます。つまり、その業界で認知されている業界標準的な能力評価制度があるお陰で就職が非常にやり易くなります。結構ものづくり系方以外の議論を聞いていますと、業界標準的な能力評価の基準が無いような業界が多いものですから、能力が曖昧で就職のときに困っている方が多いです。

一つ最後にお話しますと、これは大久保委員が中心的に関わっておられたキャリア段位制度もいい例だと思うのですが、介護の世界においては、キャリア段位制度が非常に今有効に働いていると私は思っています。キャリア段位制度により能力評価をきちんとすれば、転職も上手くいきますし、或いは一旦離職されて、何年かしてまた職場に復帰するときもそういう評価結果が有効に効いてきていると思っています。つまり、業界ごとに職業能力評価を活用するという土壌ができれば、後は上手く機能していくのではないかと思っています。

以上のようなことで、ちょっとまとめてみましたが、私はキャリア・コンサルタントと能力評価、キャリア・パスポートごとに区分し、そこに必要な要件をまとめて、様式それから役割、機能を整理すべきだと思っています。以上です。

○今野座長

今の話でちょっと理解できなかったのですが、前半の方でキャリア・コンサルタントが能力評価に関与した方が効果が大きいといわれたのですか。

○藤村委員

OJT を含めた職業訓練の場で、ですね。

○今野座長

その場合に質問したいのは、キャリア・コンサルタントは細かい専門の仕事とか能力は分からないはずですが、どういう形で関与するのでしょうか。

○藤村委員

分からなくても、キャリア・コンサルタントの方はその方の思いを引き出しながら、そして会社の方の或いは職業訓練施設との思いを上手く引き出しながらマッチングをして、そしてそこに訓練意欲、学習意欲を高めるということがあります。
 もっと具体的にいえば、広島のある会社ですけれども、雇用型訓練で最初訓練をやっておられました。最初、会社の方だけでずっと訓練をやって、正社員に登用というのをやっていたのですが、会社の方はその個人個人のキャリア・コンサルティングができないわけですね。ただ単に訓練をやっている。ところが、キャリア・コンサルタントの方はその人の思いを引き出す方法も知っていますし、そしてその職業へのマッチングの仕方もある程度勉強されていますから、会社の方は関与しない、第三者の方が関与することによって、その方の悩みを聞いてあげてまた会社に伝えて、間の橋渡しを上手くしてあげるのですね。そこで、訓練意欲が低下せずに、寧ろ向上して、こんな能力が見出すことができたのかと会社の方が驚くような、一つの触媒のようなコンサルティングをされて、有効に機能したことがありました。
 もし機能しないという例がある場合には、キャリア・コンサルタントの方のスキルが低い場合が多いです。ある程度スキルが高い方がやられますと、訓練中のコンサルティングは必ず有効に機能すると私は思っています。

○今野座長

そのときにイメージされているのは、この技能がこの人は高いとか低いとかそういったことではないですよね。

○藤村委員

人との比較は一切してはいけないのですね。その個人の能力が、会社が求める能力にどこまで近づくかといったところで、アドバイス、助言をしてあげることになっています。

○今野座長

まだ整理できてないのですが、小杉さん、大久保さんも言われましたけど、ジョブ・カードの機能を棚卸し的な機能と能力評価機能とに大雑把に分けると、今のはかなり前者に入るかなという感じで聞いていました。
それから、もう一つだけ質問させてください、職業能力評価については、結局会社によってばらばらだから、業界で共通の一般的なスキルだけで評価すればいいじゃないかということだということでしょうか。

○藤村委員

業界標準を突き詰めれば、世界標準にもなる可能性が出てきます。

○今野座長

いずれにしても、企業はそれぞれの企業で工夫があるので、求められるスキルはみんな多様だと思いますが、同じ業界の中で企業を超えて共通的な部分があるから、そこの部分だけ能力評価をしてあげればいいじゃないかということですよね。

○藤村委員

そう思います。現状だとそうなっています。

○今野座長

そうすると、評価表はあまり細かくなくていいということですね。

○藤村委員

評価表はあくまでツールですので、それを様式の中に入れるのではなくて、結果を最後に出せばいいと思いますけども。

○今野座長

はい。他にどうぞ。

○下村委員

小杉さんがあの職業能力評価の問題は切り離すべきだと、そして大久保さんの方でこれは不可欠であると発言をされたと思いますが、多分その小理屈を述べればというか学問的に純粋に言えば、客観的な能力評価といったものがなかなか難しいという認識から、こういうジョブ・カード的なものは、出発しているのではないかと思います。
 例えば、公な機関若しくは国が、この人はこの職業能力が何点であるという客観的な数値というものが、まず出しにくく、それが業界を横断して共有しにくく、若しくは企業を横断して共有しにくいと。なので、そういう公的な職業能力評価はなかなか難しい。だから、様々な体験であるとか、これまでその人が経験してきたものであるとか、履歴であるとかそういったものを全部ポートフォリオに一つにまとめて、それを示すことによって、その人の職業能力評価といったものを示そうじゃないか。これが多分その小理屈というのでしょうか、多分アカデミックに説明したときのジョブ・カードの能力評価ということだと思います。
 なので、すごく乱暴に言えば、公的な職務能力評価基準みたいな職務能力評価はもう駄目で、こういうジョブ・カードやキャリア・パスポートというのは、もともと最初は体験ベースの履歴書と文献に書かれてあったくらいなので、こういったもので職業能力を示すのが良いのだと、それが一番乱暴にいったときの説明になるかと思います。

もっと温厚に言えば、 NVQ 的な客観的な公的な職業能力評価というものが、一方であるので、こっちはそれを補完するような質的な体験ベースの職業能力評価の示し方であると言い方になると思うわけです。
なので、客観的で確固とした職業能力評価といったものはそもそも馴染まず、もともと質的でその人の経験といったものを上手く示し、これをもって職務能力の証明とするといったようなツールであったのではないかと理解しておりますが、いかがでしょうか。

○小杉委員

大久保さんが最初におっしゃったとおりなのですが、そもそも NVQ をモデルとして認識しながらつくられて、確かに日本の現状の中で横断的な市場ができていない、職業能力評価基準が浸透していないという現状の中で、それを少しずつ形成しつつ、つくっていくというので、最初から客観的な評価基準が有り得ないというような形でつくられたものではないというところですね。現実的にはそういう見方が見えるかもしれませんが、それを少しずつつくっていく。現場の実践的なものを活かしながら、それを横断的なものにまとめていく、そのきっかけという意味もあったと思います。
 それを国が定めるというよりは、寧ろ業界の現場をベースにして、現場にかなりウェイトを置いて、その中で共通できるところをつくっていく。そういう段階的なものだと思っています。
なので、キャリア・パスポートという発想とジョブ・カードという発想は全く違うと思います。

○今野座長

今の小杉さんの話を延長すると藤村案になるわけだよね、多分。いろいろな経験を能力評価しても会社によって違うから徐々に共通的なものを引き出していこうかとなると藤村案になるよね。それで評価すればいいじゃないかとか、そういう話。

○大久保委員

今までの話について、能力の客観的評価の話ですけども、もともと技能検定というのがあったり、国家資格があったり様々なものがあったりとそういうものによって、ある程度その人がどのくらい仕事を採用したらできるのかということを証明したりとか伝えたりする方法は幾つかあった。
 でも、確立されている職域がそれほど広くなくて、そういうものが機能していない職域というのが随分多くて。そういうところに何かしらの能力を伝えるための方法論をつくるのではないかなということで、ジョブ・カードが書式と評価の部分両方に関わるというのでつくられたわけです。その評価というとこでつくられたので、どちらかというとジョブ・カードだけではなくて、色々な能力の証明の方法はあると思いますが、その中の一つとしてジョブ・カードというものがつくられた。それを応募するときにも使えて、そこをみてもらうようにすればいいではないのかなということだと思いますね。そういう意味で能力評価と言うのは、そういうものの一つですね。

先程、藤村さんがおっしゃったような訓練のときに、キャリコンを込みにすることでパフォーマンスが上がったというのは、僕はそのとおりだと思います。ただ、僕がちょっと懸念しているのは、要するに登録キャリア・コンサルタントでしかジョブ・カードを発行出来ないという形にして、全体的にキャリア・コンサルタントを被せていく。これはもう能力開発行政全体的にいえることですが、何でもキャリコンをセットだとなりすぎると、ちょっとキャリア・コンサルタントに期待し過ぎ、オーバースペックになりすぎて、ちゃんとキャリア・コンサルタントが、パフォーマンス出来る部分とそうでない部分とは分けた方がいいというように思っております。そういう中で、こういったジョブ・カードとキャリコン関係は見直したほうがいいと思っています。

○今野座長

他にいかがでしょうか。

○能力評価課長

議題の一から、能力評価・職業能力見える化については、繰り返しご指摘をいただいておりますので、職業能力評価を担当する立場で、この研究会のテーマであるジョブ・カードについて、どういう問題意識を持っているのかという観点で少しだけ申し上げたいと思っております。

先程から、各委員から出ておりますように、ジョブ・カードには、キャリア形成支援の棚卸しツールという側面、それから能力評価・能力証明、こういう二つの側面があって企画・運用されている。これは全くそのとおりでございます。そういった中で全体としては、能力証明・能力評価の個別ツールが、労働市場施策全体として、或いはジョブ・カードに付帯する形でも必ずしも十分ではない中で、このジョブ・カードを活用した一連の支援の中心的な担い手として位置づけられているキャリア・コンサルタントが、職業能力評価の部分でもツールが無いが故に、個別すり合わせ型、或いは職人型でその部分にも手出しをしないと、ジョブ・カード作成・交付が完結をしないという立場を余儀なくされています。そこで、ある種のオーバースペック・オーバーロードが発生してきたというまず側面があるのではないかという問題意識を一点持っております。

その上で、今ほど各委員からご指摘されています、もとより職業能力について、ただ一つのツールによって十全に証明するということが不可能である、これは当然でございますけれども、今野先生にもまとめていただいた職業能力評価研究会の中でもさまざまな議論を整理していただいたように、企業特殊能力があり、業種職種横断共通的な能力あり、さらにその下の基盤共通的能力、その幾つかのエリア・ドメインに焦点を当てた場合には、一定の工夫を講ずることによって、標準性のある職業能力についてのその評価方法というのは、有り得ないわけではないと思います。技能検定は、まさにものづくり技能分野の業種職種横断能力では、まだ十全ではないかもしれませんが、藤村委員にもご指摘いただいたように、一定の社会的評価も得ています。
 今までそういったツールが存在しなかった、対人サービスの分野等においても、様々な工夫を講ずることによって、業種職種共通能力についての一定標準性を備えたツール開発の可能性があるのではないかということで、先の評価研究会の中で提言をまとめていただいたわけでございます。こういったことも踏まえてドメイン整理をした上で、ある種の能力評価のモジュールというものをやはり詰めていくことが必要なのだと、能力評価を担当する立場としては考えております。
 そういう問題意識で、今申し上げました対人サービス分野における業種職種共通能力という意味では、業界主体・業界標準の業界検定といった仕組みもございましょうし、技能検定に関して言えば、外部労働市場といった観点でのバージョンアップもございましょうし、もしかしたら基礎能力についても同じようなアプローチがあるかもしれません。
 そのモジュールを整理し、さらに検定以外の客観性を持った能力評価のツールとして、大久保委員からお話があった成績であったりとか、もしかしたら作品であったりとか、前職での仕事ぶり・評価。そういったポートフォリオを整備した上で、キャリア・コンサルタントに関して言うのであれば、私も狭い意味での職業能力評価に直接コミットする立場ではないと思っております。と同時に、その企業の中でその人が持っている客観的な能力の市場価値であるとか、それから職業能力以外の労働条件に係る希望、その他の観点も踏まえた求職活動の方向付けといいますか、的確性判断という機能は、当然キャリア・コンサルタントが担っているわけでございまして。
 出来る限りモジュール化で客観化した上で、キャリア支援の専門家として、いわばそれら俯瞰する形で求職者であれ、今後在職者や学生等に対しても広げていくというそういう観点も含めてキャリア支援という観点で、このジョブ・カード、或いはキャリア・パスポートとして展開する。これをキャリコンのツール、さらには労働市場で一貫して使えるある種のビークル、乗り物として有効活用していくようなイメージで、今までご議論いただいているのは、こういう役割分担をきちんと行い、その中で能力評価の部分で更なるツール・仕組みの整備が必要ということであると考えております。
 ジョブ・カード自体については様式、或いは活用方法について、こういう整理が必要という議論の枠組みなのかなというイメージを持ちながら、能力評価についてはもう既に一定の提言をいただいていますので、これを踏まえた更なる具体化を図りつつ、ジョブ・カード或いはキャリア・パスポート、或いはその中でのキャリア・コンサルタントが担うべき役割という部分に特化した議論をいただき、それを私ども事務局が、いろいろな他課室にまたがるわけでございますけども、交通整理をしていくべきなのかなと。今ほどの各委員のご指摘ご示唆を伺いながら、事務局の立場で問題意識として持っているところでございます。

○今野座長

今ここでされた議論のポイントは、検定でできるもので済むのであれば、別にこの資格を取りましたと書いておけばいいだけという話ですよね。それと、それを超えた部分についての能力評価をジョブ・カードでするのか、しないのか。するのであれば、どの程度まで、するのかが論点だということですね。

○能力評価課長

 モジュール化できない部分はどうしても残るでしょう。

○今野座長

 一つは、しないでいいのではないかという人がいらっしゃる。それはちゃんとしないといけないという人もいるでしょうし、もしかしたらまだちゃんと詰めてないですけど、それを段々にやればいいじゃないかという意見もあるでしょうし、徹底的にやれという意見もあるでしょうし、いずれにしてもその辺が一つのポイントだろうと思います。

○阿部委員

今の話でいくと、僕の個人的な感想ですけれど、確かにその業種内とか職種内だったら見える能力評価、或いは能力というのは既存の制度でも分かるかもしれません。ただ、業種を超える、職種を超えるといったときに、どうすればいいのかというのは、もしかしたら大きな問題になるかもしれません。だからその上に積み上げる。或いは、今まで身につけたものは今までいた業種・職種では評価されるけど、他の職種・業種にいったときにどうなるのかというのは、もし必要であれば考えておくべきなのでしょうか。

○今野座長

そうなると、例えば技能検定は駄目ですね。後、業界検定も駄目ですね。そうすると仕事を超えて、産業を超えて非常に普遍的な能力を評価する。例で言うと、問題解決能力とか対人関係能力とか。そうすると、これをもしこの中に入れ込んで、より重視して従来どおりキャリア・コンサルタントに依存すると、彼らはそれを評価してくれるということになる。大変そうだな。そういうことになりますかね。それが、先程いった検定とか越えた部分の一つの重要な領域かと思います。

○下村委員

なので、ポートフォリオ型のキャリア開発として考えると、もともと一人のキャリコンの方の評価で固定化するというのが問題なのであって、これが多くの専門家によって四方八方から評価がなされれば、一人のキャリコンの方の負荷も減りますし、また多面的な評価も可能になると思います。

恐らく私の理解では、こういったポートフォリオ型のキャリアガイダンスから発展したもう1つの重要なものとして、例えばチーム支援的なものがあると思うのですが、ここでいうところのジョブ・カードとか、一つのポートフォリオを見ながら様々な専門家、様々な連携し得る人たちが、いろいろなアドバイスをしていくという、そういうチーム戦的なものがここから発展していったのだと思います。現在まで続く有効な支援の1つだと思うのですが、そうしたことが可能になるような仕組みをつくればいいのだと思うわけです。
今は一人の人、しかも8時間しか研修を受けていない登録キャリコンに重い責任が与えられているので、書く方も書かれたほうも負担が大きいわけですけれども、これはみんなで見て、様々な専門家がチェックしあい、アドバイスしあうものとしていけばいいのだと思います。それこそ、まさに業種、若しくは企業等を超えるある種の抽象的なスキルの評価ということにつながっていくのではないかなと考えます。 360 度評価的なニュアンスですね。

○今野座長

多分、その点についてはあまり疑問に感じられている方はいらっしゃらないと思います。問題は資源ですよね。じゃあ、一人について5人のキャリコンをつけるとなると5倍の負荷がかかるわけですよね。だから、そことの関係ですよね。資源をどう使うか。資源であれば、今の下村さんの案を適用するとしたら、どこかターゲット層を狙うか、そこだけ厚くするか、或いはもう一つの方法は、厚生労働省が予算を3~5倍に増やすかのどっちかですよね。

企業外の人たちからの提案がありますが、企業内の立場からすると何そんな話となるのでしょうか。

○小寺委員

私がちょっとついていけていないのだと思いますが、キャリア・コンサルタントが関わることが支援となって、その人の能力がより客観的に評価されるというのは当然あると思うのですが、その支援対象が誰なのかというところで。そもそもジョブ・カードが就職困難な方々をまず支援するという形でスタートするというのは、当然だと思っていますが、その中にはキャリア・コンサルタントの関わりが常に必要な方とそうじゃない方がいらっしゃると思いますので、本当に支援が必要な方に注力するということであれば、資源の使い方にも工夫できる点があるのかなと思って聞いておりました。

 あと、私の理解が足りなかったのかも知れませんが、能力というのが、ある程度定義されていて、見える形になっていると、自分でそれを見て書き込める人も当然いらっしゃるわけですよね。キャリア・コンサルタントが関わるというのは、自分の能力を言語化できないとか、気づいていないとか、あるいは業界が違うので横断的なスキルが自分にあるのかどうかも分からない方を支援するということだと考えると、そこにキャリア・コンサルタントが関わる意味があると思っています。なので、どなたを対象にしているのかというのが私がついていけていない部分であります。

○今野座長

大丈夫です。皆さん、対象は意識していないです。

○小杉委員

私が最初に申し上げたかった、対象は誰なのかという話で、これから 300 万人と話の対象は、特別に支援が必要ではない人に対して、要するに市場のツールとしていくという意味の評価だと思いますね。
ですから、私は基本的には評価基準なので、つくれたものがあれば、そのつくれたものでいいと思います。汎用的な、能力的な、コンピテンシー的なものについて、それを盛り込むのは中々難しいので、それは普通の人といいますか、一般に市場を動く人たちには、それこそ企業が面接すればよいという話なので、そこまで書き込む必要はないのではないかと。
特定のかなり支援が必要な方に対しては様々な資源をかけて、一般的に使われるものというのは、表現できるものをきちんと表現して、それが認証してある形で表現してあるという形でいいのではないか。
だからこそ、最初に言った、企業が経歴をきちんと評価してそれをお墨付きで出せば、それはもう新しいタイプのジョブ・カードになるのではないかと思ったのは、そういうことです。

○今野座長

 どうも離職時点で企業が出すというのがイメージできないのです。例えば、勝手に辞めた人に何故そんなことをやらないといけないのかということになりませんかね。

○小寺委員

 私はイメージできます。考え方としては、企業にとっては社員にこの会社でエンゲージメントを高めて働いてもらうというのが一番理想ですが、やはり個人からみると自分が働くフィールドは多様ですよね。ですから、社外も当然ありますと。エンプライアビリティの向上を施策でも取り上げて、企業でもやっていますが、エンプロイアビリティは本人自身が力をつけていくということなので企業内での仕事経験の履歴が使えればいいと思います。ただ、当然社外秘の情報もあるので、そこを考慮した上で出せる情報を使うという形で。或いは、企業側もその人のキャリアを考えて社外に出ることを尊重する、ということもあるかと思います。そのときの支援として、企業がその人の経歴やスキルを証明するというのは理想としてはあると思います。だから、企業に対して強制で絶対やりなさいというのではなく、違う流れがあるのかなと。キャリア開発支援の一環ということだと思います。理想論かもしれませんが。

○今野座長

本当でしょうか。それほど会社は優しいでしょうか。

○根岸委員

離職するときに、ジョブ・カードを発行するというのは、誰がつくるのか。日立製作所のような大きなところは、キャリコンさんもいるでしょうし、いろいろなインフラ・資源があるかと思いますけど、ほとんどのハローワークにいらっしゃる企業さんでは、それを作れるような体制がないので、そこをどうカバーするのかが思いあたらないですね。

○大久保委員

ちゃんとこの会社で仕事してきましたよねということを書いたときに、間違っていませんとサインすることぐらいは、会社はできると思うし、そういうことについては、今の会社の考え方やキャリア支援の考え方の中では、受け入れる会社は結構あると思います。何かをつくるのではなく、間違っていませんとサインするのが精一杯でしょうけど、それぐらいのことは十分にできると思います。

○今野座長

いろいろ考えましょうね。いいことであればサインすると思うけど、悪いことでサインはしてもらえるのでしょうか。といったところで、もう時間なのでやめます。今日はいろいろな意見をいただいて、大変アイデアがいっぱいで事務局が今後整理する上で大変参考になったと、私は信じています。上手に整理してください。それでは、今日は第1回目でした。今日はこれくらいにしたいと思います。

 


(了)

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