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2014年9月12日 第1回麻しん・風しん対策推進会議

健康局結核感染症課

○日時

平成26年9月12日(金)13:00~15:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○議題

(1)麻しん・風しんの発生状況について
(2)麻しん・風しん対策への取組状況と評価について
(3)麻しん・風しん排除に向けての最近の動向と今後の取組について
(4)その他

○議事

○難波江課長補佐 ただいまより、第1回「麻しん・風しん対策推進会議」を開催いたします。

 開会に当たりまして、塩崎厚生労働大臣より御挨拶いただきます。

○厚生労働大臣 ただいま御紹介いただきました、先の第2次安倍改造内閣で厚生労働大臣を拝命いたしました塩崎恭久でございます。では、会議に当たりまして一言御挨拶を申し上げたいと思います。

 構成員の皆様方及び参考人の皆様方には、御多用にもかかわりませず御出席をいただき、まことにありがとうございます。また、日ごろから麻しん・風しんを含む感染症対策の推進につきまして御指導をいただいておりますこと、厚く御礼を申し上げたいと思います。

 風しんにつきましては、一昨年、昨年と都市部において成人男性を中心にいたしまして多くの患者が報告をされました。また、妊娠中の方が風しんに罹患したことによりまして、一昨年の秋以降、44名の先天性風しん症候群が報告をされております。

 麻しんや風しんは、妊娠初期の方が感染した場合、おなかの中の赤ちゃんに重大な影響が出てくる可能性がある疾患でございます。現在では全国的な流行は見られておりませんけれども、今後の流行の有無にかかわりませず、中長期的な視点に立って社会全体で対策を進める必要があると考えております。

 このため、麻しんにつきましては平成27年度までに、風しん及び先天性風しん症候群については東京オリンピックが開催されます平成32年度までに国内から排除維持を目標に掲げています。この目標に向けて、指針に基づいた実効性のある対策を講じていくために、皆様方から率直かつ建設的な御意見をいただければと思っております。

 また、昨年から参画いただいております石田純一さん、そして東尾理子さん御夫妻におかれましても、小さなお子様を持つ親の視点から積極的に御意見をいただければと考えているところでございますので、どうぞひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 いずれにいたしましても、きょうもしっかりと皆様方と御議論をいただいて、また前進をさせていただきたいと思いますのでよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

○難波江課長補佐 ありがとうございました。

 それでは、ここで石田構成員、東尾構成員より厚生労働大臣へサイン入りポスターの贈呈をお願いしたいと思います。

(石田構成員、東尾構成員より厚生労働大臣へサイン入りポスター贈呈)

○難波江課長補佐 ありがとうございます。これで、大臣は公務のため退出させていただきます。

(厚生労働大臣退室)

○難波江課長補佐 これより、石田構成員、東尾構成員を交えた意見交換会を行いたいと思います。進行は、厚生労働省がん対策・健康増進課長の正林課長にお願いいたします。

○がん対策・健康増進課長 がん対策・健康増進課長の正林です。

 本日は、石田さん、東尾さん、この会議に御参画いただき、誠にありがとうございます。

 最初に、マスコミの方々はなぜ、がん対策・健康増進課長がこの会の司会をしているかと不思議に思われているかもしれませんが、7月まで私は結核感染症課長をやっていました。昨年までは、麻しんのみの対策会議という形でやらせていただいていて、実は石田純一さんは私の高校時代の野球部の先輩でありまして、その関係で去年の麻しんの会議の構成員をお願いしてお引き受けいただいたということであります。そんな経緯で今日は司会をやらせていただいております。

 実は、昨年もこの会議を開いた時に、風しんのこともやらないでいいのかというサゼスチョンを石田さんからもいただいて、今年から麻しんプラス風しんも扱う形のこういう会議とさせていただきました。

 それでは、しばらく意見交換をしたいと思いますけれども、まず石田さん、麻しんとか風しんということを聞いてどんなイメージを持たれていますか。

○石田構成員 正直申し上げて、麻しん・風しん、それほど怖い病気ではないのではないかということをずっと思っておりまして、特に風しんの方ですけれども、麻しんというのは我々の世代でいうと、はしかという言葉でよく表現していたと思うんですが、いわゆるお互い麻しんや風しんはウイルスで感染する。非常に感染力は強いんですけれども、風邪のような症状が出たりして、そして抗体がなくて、感染した場合でも1週間ぐらいの感じで治るとか、そういうふうなイメージではいたんです。

 ただし、大人になってからかかるとちょっと重いとか、あるいは妊婦がかかると赤ちゃんに重大な疾患が出るときがあるということぐらいのイメージでした。

 ただ、もちろん、麻しんの方がちょっときついかなと。風しんの方は、ちょっとかかっても大丈夫なんじゃないかというイメージはありましたけれども、それでもよく言われるのは5,000人に1人ぐらいは重篤な感じで死に至ることもあるとか、そういうふうに認識しております。

○がん対策・健康増進課長 今日は専門の先生もお呼びしています。中野先生、いかがですか。麻しん・風しんというのはどんなものか。

○中野構成員 ありがとうございます。御指名いただきましたので、石田さんの先ほどのコメントに少し補足させていただいてよろしいですか。

 とても正確にとらえていらっしゃる部分は非常にあると思います。なぜならば、風しんは三日ばしかと呼ばれることもあって、麻しんも風しんも熱と発疹が出る病気なのですが、「三日」とついているのは、麻しんは1週間以上苦労するんですが、風しんは3日ぐらいで治っちゃう方もいるというので「三日」とついています。

 ただし、確かに2つ比べると風しんの方が軽いんですけれども、本当はどちらも子供にも大人にもとても困ったことを起こす病原体です。きっと予防接種がある程度普及して患者さんが減ってきていて、昨年、風しんはすごく大きな流行でしたけれども、それでも10年、20年前に比べたら流行規模は小さかったんです。

 ですから、私たちはその病気の怖さを十分まだ認識していない。認識していないというのは、私たちメッセージを伝えるべき専門職ももっとしっかりしないといけないんですけれども、そういうところがあるのかなという気がいたします。

○石田構成員 先ほど、そこの赤ちゃんのポスターで50%と、何が50%かというのを見てすごくショッキングだったんですけれども、その軽いほう、三日ばしかと言われている、でも先天性風しん症候群にかかると、さっき言いました妊婦さんのときに風しんにかかってしまうと、何と50%以上の確率で耳が聞こえなくなるとか、目が見えにくくなるとか、発達がおくれてしまうとか、例えば脳障害等も含めてかなり厳しい重篤なものにかかってしまうということはすごくショッキングでしたけれども、これは本当に。

○中野構成員 御夫妻もついこの間というか、1年、2年前に御出産を経験され、御妊娠の期間を経験されたからおわかりだと思うんですが、妊娠中というのはお母様にどんな病気にもかかってほしくないじゃないですか。心も体も安定した状態でいていただきたいですよね。風邪ひとつでもひいてほしくないですよね。

 でも、そんな中で風しんに妊娠1か月以内にかかれば50%以上でおなかの赤ちゃんに先天性風しん症候群が起こる。これだけのパーセンテージでおなかの赤ちゃんにそういったことを起こしてしまう病原体はほかにないです。ですから、次の世代に影響を及ぼすという意味でやはり風しんは大変だと思います。

○石田構成員 ということは、母体もそうですけれども、旦那のほうがうつしてしまうということもあるわけですよね。

○中野構成員 感染症は、よく誰がうつしたということばかりがクローズアップされて、誰かを傷つけることになるようなことがよくあります。そうではなくて、人間が一緒に、人も動物も一緒に暮らしている以上は誰だって病原体を持っているわけですから、いつうつるかは誰にもわかりません。予防できる病気があったら予防することに心がけるということが一番、皆が幸せになる方法ではないかなと思います。

○石田構成員 そういう意味では、やはり予防接種以外にはないんですか。

○がん対策・健康増進課長 最も効果的なのは、やはり予防接種だと思います。

 ところで、理汰郎君ももうすぐ2歳ということで、もう予防接種は幾つか受けられていますか。

○東尾構成員 はい。もうたくさんあって、どれから打とうとか、すごく迷ったり、わからなかったりしたんですけれども、とりあえず今1歳10か月になったんですが、今、打たなければいけないものは全て打っていると思っています。麻しん・風しんも打ちました。

○がん対策・健康増進課長 さらに、理子さん御自身も風しんの抗体検査か何かをされたんですか。

○東尾構成員 そうなんです。第2子を授かりたいと思ったときに、まず自分の母体の検査をしたところ、第1子のときは平気だった風しんの抗体が少ないと言われまして、本当に1か月ちょっと前に風しんの予防接種をしてきたところです。

○石田構成員 やはり抗体というのは時の経過とともに少なくなってきたりとか、そういうことはあるんですか。

○中野構成員 抗体というのは、免疫を示す指標の一つですよね。それで、私たちの体はいろいろな刺激を受けて毎日暮らしていますね。今は逆に周りに病原体が減ってきたので、刺激がないと見かけの持っている免疫は減っていく場合があるんです。そうすると、抗体価というので調べると減っている場合もありますけれども、減ったからといって皆さんが全員病気にかかるわけではないですが、一つの目安があってそれ以下だったら、もう一度ワクチンを打っておくというのはそれはすばらしいことだと思います。打っていただいてありがとうございます。

○東尾構成員 とんでもないです。

○がん対策・健康増進課長 風しんについては、簡単に検査も受けられます。最近、いしだ 壱成 さんが御結婚されたと聞いておりますけれども、どうでしょうか。風しんの抗体検査などは勧めていただけませんでしょうか。

○石田構成員 もちろん、こういうちゃんとしたデータも示してぜひ、これは当然女性がやはり妊娠するとき、あるいはこれから赤ちゃんをつくろうというときは非常にコンシャスにいろいろ体の状態とかを検査されたりしますが、男は意外と僕も含めてで済みません。先月、これさえも知らずにおりまして、自分の場合は多分、風しんは昔かかっているので抗体があるのではないかと思っておりますが、検査ぐらいはしてこようと思いまして、当然、息子の 壱成君たち、特に旦那のほうがやはりそういう意識が余り高いとは思えないので、そういう話し合いをしてちゃんと言っておこうと思います。

○がん対策・健康増進課長 抗体検査とか予防接種について、ちょっとフリップを出してもらえますか。

 ここに大変興味深い調査の結果があるんですけれども、パートナーである男性には風しんの抗体検査、予防接種を受けてほしいと思いますか、という問いに対して、受けてほしいと思う、46%、できれば受けてほしいと思う、46%、受けてほしいと思わない、8%で、大体受けてほしいと思っていらっしゃる方が9割以上いらっしゃいます。

 ところが、現在過去を問わずパートナーである男性に風しんの抗体検査、予防接種を受けてほしいとお願いしたことがありますか、という問いに対しまして、ない、と答えている方が86%、ある、が14%と、お願いしたことがある方は1割ちょっとしかいなかった。この数字をごらんになって、いかがでしょうか。

 まず、理子さんいかがですか。

○東尾構成員 まさしく石田家もこの指標に当てはまりますね。受けてほしいなとはよぎりましたけれども、それがどれだけ必要なものかというのをまず自分が調べていなかったので、お願いもまだしていませんでした。

○がん対策・健康増進課長 石田さん、どうですか。

○石田構成員 余りロマンチックな話ではないので普通はなかなかしにくいと思うし、それから子供がもう既にいたりすると正直、理子とかすごく忙しいですから、奥さん側が一々それを調べて旦那さんにお願いするということもなかなか難しいのかなと。

 ただ、僕も自覚がちょっと足りなかったかなとは思いますけれども、これだけ怖いんだということがなかなかやはり正直、広まってはいないような気はします。ありとあらゆる予防接種をいっぱい皆さんが考えられて、それでも最小限なのかわかりませんが、している中で、していただくのはありがたいけれども、どうしてしなくちゃいけないんだということがないとなかなか、日本人も納得したらこれが恐らく逆転するようなところまでいくのではないかと思います。

 余り大きなことは言えませんが。

○がん対策・健康増進課長 そういった検査なり、あるいは予防接種の重要性、我々厚生労働省ももっともっと宣伝していかなければいけないなというふうにも感じました。そのためにも、お2人のような大変著名な方々の御協力も必要かと思っておりますので、是非今後ともお力添えをいただけたらと思います。

 それでは、このセッションを終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

 ここで、実はお2人はスケジュールの関係で、3時に会議が終了した後にぶら下がり取材をする時間がありません。マスコミの方々、何か御質問があればこの場でお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○藤本(TBS) お2人に、これから妊娠を希望されている方ですとか、そのパートナーの方に対して呼びかけみたいな形で、今お話を聞いてどうしたほうがいいかとか、何かメッセージを発していただければと思います。

○石田構成員 麻しんとか風しんとかは本当に実は大変恐ろしい病気でもあるということで、例えば風しんでいえば三日ばしかといって3日で治ってしまうぐらいの認識しかないと思うんですけれども、実は妊娠中の、特に妊娠1か月までのお母さんが風しんにかかった場合、かなりお子さんに影響が出る。それも、例えば目が見えにくくなるとか、耳が聞こえにくくなるとか、発達がおくれてしまうとか、そういう恐ろしい結果も50%ぐらいある。

 これは我々も本当に認識していませんでしたけれども、麻しんとか風しんを絶対になめないでといいますか、ちゃんと検査を受けて、ここにありますようにパートナーとも話し合って妊娠をこれから希望される方、あるいはお子さんを予定している方はぜひ、あるいはそれ以外の方でもいつ子供というのはできるかわかりませんので、特に若い人たちはパートナーと話し合って麻しん・風しんの検査を受けてほしい。抗体が自分でどれぐらいあるのかということを、ぜひ皆さんで自覚していただきたいと思います。

○東尾構成員 私自身も、自分が風しんの抗体が妊娠を希望する数値には足りていないということが本当に調べるまでわからなかったので、普段の健康診断の血液検査ではなかなかそこに注目することはないかもしれないんですけれども、特に第1子を授かったので大丈夫だろうと思っていたところ、足りないと言われ、風しんの予防接種をして、女性は風しんの予防接種をした後、2か月間は妊娠をしてはいけないといいますか、先生、何という表現がよろしいのですか。

○中野構成員 2か月は避妊をしていただく。

○東尾構成員 女性は風しんの予防接種をした後、2か月間避妊をしなければいけない。男性はそうとは限らないというふうになりましたので、早目の予防接種でいざというときに備えて自分の体を準備させておくのはすごく大切だと思いますので、ぜひ皆さん予防接種に行ってください。

○石田構成員 人生2回予防接種論というのを今、厚生労働省でも多分推進していると思います。1回だけだと本当に抗体が今、言ったように時とともに、あるいは環境がよ過ぎて抗体が少なくなっていってしまうことも見受けられるので、2回予防接種をするようにということで、結婚は1回で結構ですけれども。

○がん対策・健康増進課長 ほかはいらっしゃいますか。よろしいですか。

○難波江課長補佐 ありがとうございました。

 なお、東尾構成員におかれましては、来る9月30日、青山ダイヤモンドホールで開催される『 きちんと知る 女性のカラダフェスタ2014』において、厚生労働省共催の風しん感染予防セミナーに御出席いただく予定です。

 意見交換会はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。

 ここで、会場設営のため5分間休憩を入れさせていただきます。撮影はここまでとさせていただきます。ありがとうございました。

(午後3時28分休憩)

(午後3時33分再開)

○難波江課長補佐 それでは、再開させていただきます。

 まず、お手元の資料の確認をさせていただきます。

 お手元の資料、クリップどめを外していただきまして、議事次第、座席表、配付資料1から5までございます。それから、参考資料が1から5までございます。不足がございましたら、お申しつけくださいませ。

 続きまして、この会議は昨年までは麻しん対策推進会議でございましたが、ことしより第1回麻しん・風しん対策会議として風しんも一緒に御議論いただくこととなりました。改めて、この会議の構成員を御紹介させていただきます。

 お手元の参考資料2に名簿がございます。こちらをごらんください。

 株式会社スカイコーポレーション、石田純一構成員でございます。

 北里第一三共ワクチン株式会社参事、後藤暢二構成員でございます。

 公益社団法人日本医師会常任理事、小森貴構成員でございます。本日は御欠席でございます。

 愛知県一宮保健所長、澁谷いづみ構成員でございます。

 山口県環境保健センター長、調恒明構成員でございます。

 群馬県立赤城養護学校小児医療センター分校教頭、高橋慶子構成員でございます。

 国立感染症研究所ウイルス第三部長、竹田誠構成員でございます。本日は、御欠席でございます。

 読売新聞医療部、館林牧子構成員でございます。

SSPE青空の会事務局、辻洋子構成員でございます。

 川崎医科大学小児科教授、中野貴司構成員でございます。

 風しんをなくそうの会、西村麻依子構成員でございます。

 株式会社ビー・スクェアード、東尾理子構成員でございます。

 東京都福祉保健局技監、前田秀雄構成員でございます。

 イオン株式会社グループ人事部イオングループ総括産業医、増田将史構成員でございます。

 筑波大学附属病院水戸協同病院感染症科教授、矢野晴美構成員でございます。

 また、本日は参考人として、国立感染症研究所感染症疫学センター長の大石先生にも御出席いただいております。

 続きまして、本会議の概要につきまして、参考資料1をもとに御説明させていただきます。

 本会議の「目的」でございますが、麻しん対策については「麻しんに関する特定感染症予防指針」に基づき、平成27年度までに麻しんの排除を達成し、世界保健機関の排除の認定を受け、かつ、その後もその状態を維持することとされております。

 また、風しん対策については「風しんに関する特定感染症予防指針」に基づき、平成32年度までに排除を達成することを目標として各種の施策を推進しているところでございます。

 本会議は、施策の実施状況に関する評価を行うとともに、その結果を公表し、必要に応じて当該施策の見直しについて提言を行うために開催するものでございます。

 「構成メンバー」は、そちらに記載されているとおりでございます。

 4番目の「座長及び座長代理」でございますが、本会議に座長を置き、座長は議事を整理する。座長は、構成員より互選により選出するとなってございます。

 本会議の座長として、構成員の中からどなたか御推薦いただければと存じております。どなたか、御推薦いただけませんでしょうか。

 澁谷構成員、お願いします。

○澁谷構成員 ウイルス研究と臨床に精通しておられる川崎医科大学小児科教授の中野構成員を推薦いたします。

○難波江課長補佐 ただいま中野構成員の御推薦がございましたが、御意見ございますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○難波江課長補佐 では、中野先生にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 では、座長席に移っていただけますでしょうか。

(中野構成員 座長席へ移動)

○難波江課長補佐 それでは、これより中野座長に進行をお願いいたします。

○座長 御指名いただきました川崎医科大学の小児科の中野でございます。それでは、私のほうで議事の進行を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 本日の議事でございますけれども、お手元に資料も配付されております。まず、資料1~4までを構成員の方に御説明いただき、1~4までまず最初に全ての方に御説明いただきます。その後、質疑応答を行いたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

 では、まず資料1、「麻しん・風しんの発生状況について」ということで、大石参考人からお願いいたします。

○大石参考人 それでは、「麻しん・風しんに関する疫学情報」ということで、感染症疫学センターのほうでまとめた情報を御紹介いたします。

 まず、麻しんのところからお話をします。3ページですけれども、麻しんは空気感染によって急速に感染伝播し、高熱、全身の発疹などの後に、約3割の患者さんが肺炎・腸炎などで入院し、先進国でも1,000人に1人の方がお亡くなりになるという、決して軽視できる疾患ではないということを示しています。

 次の4ページですけれども、「SSPEをご存じですか?」、これは、亜急性硬化性全脳炎という疾患ですけれども、ウイルスの変異株によって小児期に感染を受けた場合、約2年から10年の長い潜伏期間のうちに発症する病気です。10万人に1人というまれな疾患なんですけれども、このように麻しんで重大な疾患が起こっているということを知っていただきたいがためにこのスライドを示しております。後ほど、SSPE青空の会の辻様のほうから詳細はお話していただけると思います。

 5ページでございますけれども、「麻疹・風疹ワクチン なぜ、2回接種なの?」というところですが、この接種には3つの意義があります。1つ目が、1回で免疫がつかなかった子供さんたちに2回目の接種をする。1回で免疫が弱くなった子供さんたちにも接種をする。また、受けそびれた子供さんたちに接種をする。こういった3つの意義があるというふうに考えております。

2007年に大きな国内流行があったわけですけれども、これを受けまして2007年の12月に「麻しんに関する特定感染症予防指針」が告示されました。その告示は、2010年までに麻しん排除を達成し、その後も維持するということでありました。また、この予防接種の徹底、95%以上をカバーするということ、全数届け出人数ということ、発生時の対応強化、この3点が強調されたわけであります。

 また、その後に201212月には、さらにこの特定感染症予防指針は一部改定されまして、2015年度までに麻しん排除を達成し、WHOによる排除の認定を受け、その後も維持していくという目標を新たに掲げたわけであります。

 さらに次の7ページでございますが、2008年度から2012年度までの5年間の措置として、思春期世代への2回目の予防接種、中学1年生と高校3年生相当、この年齢の方々に5年間の時限措置として予防接種を進めてきたわけであります。

 次に8ページですけれども、その3期、4期の接種の結果、ここにあります2008年の流行の後にその患者さんの報告数はぐっと減ってきているということがわかります。98%減ということがわかります。その効果を示した理由は、10代患者群の消失、もうほとんどいなくなったということがあると思います。

 次のスライド、9ページ目では世界地図を示してありまして、「麻しんウイルスは世界中からやってくる」というタイトルですけれども、要はこうやって日本の中で麻しんが減ってきても、今グローバル社会の中でいろいろな国から旅行し、そしてウイルス株が持ち込まれてまいります。

 ここに中国大陸を中心としましたグリーンで示されているのは、ウイルスのH1というタイプです。そして、ヨーロッパにはD8とか、あるいはヨーロッパにはほかにもB3というのもありますが、アフリカ、アジアにはB3というウイルスのタイプがあります。こういったものが世界中に分布しているということを示しております。

 次の10ページは英語のスライドでちょっとわかりにくいかもしれませんけれども、これはWHOの西太平洋事務局領域の中国を含むアジア、それとパンパシフィック領域ですが、こういった地域の最近のはしか、麻しんの流行の推移を示しています。2008年以降、日本での推移と割と似ていて、報告数がこの西太平洋事務局地域でも大分減少してきているということがわかるかと思います。

 ところが、2014年に入って、2013年の終わりごろですけれども、また報告数が少しふえている。そこで、緑で示されているのがフィリピンなんですけれども、そういったところから報告がふえてきているということがわかるかと思います。そして、そのスライドの右側には2013年と2014年のウイルスのタイプの違いを示しています。先ほど中国ではH1、先ほどは緑で示されていましたが、ここは赤で示されています。中国のH1は余り変わりないのですが、20132014年に茶色で示されたB3、フィリピンで流行がありまして、そのB3株が日本にも入ってきている状況が少し見えているかと思います。

 スライドの11番は、さらにこのWHOの西太平洋事務局の報告であります。地域の流行状況をまとめた図なんですけれども、ジャパンと書いてあるところがあると思いますが、ここで見ると2013年度に比べて2014年度では年単位当たりの値を青で示したところに6.2というのが見えると思いますけれども、ここでは発生頻度が年単位で見ると大分ふえたということが示されています。

 ただ、これは6月までの集計なんですけれども、8月の段階では5.2まで少し下がってきています。その後、日本も減ってきていることを反映しています。それと、周辺の国々を見ていただくとわかるんですけれども、フィリピンはかなりふえている。日本はまだ黄色ですけれども、赤の部分になっていて、韓国などでもかなり増加しているということが見えてとれると思います。

 次のスライドですが、12ページであります。このグラフでは、2014年度の国内の週別の推定感染地域の報告数を示しております。4週から16週にかけて、赤で示す国内被害発生数の増加がわかると思います。ふえているということがわかると思います。その後、ずっと減ってきて、全体の報告数も減少してきているということであります。ことしの年の初めから症例数がふえて、その中にかなり外国から持ち込まれた症例があったということを示しております。

 次の13ページは基本的には同じ情報なんですけれども、これは20132014年の推移を示しております。お手元の資料でちょっと申しわけなかったのは、海外感染例がこの図では茶色になっているんですけれども、実際はこのスライドの中ではグレーの部分であります。国内感染例は青のままですけれども、見てわかりますように2013年からずっと見ていきますと海外感染例、国外から持ち込まれた麻しんはかなり少なかったものが年度末、12月ごろからずっとふえて、1月、2月からかなり症例数がふえていったということであります。この海外感染例のほとんどのケースは、いわゆるフィリピンから持ち込まれたB3のタイプが主体でありまして、今回西太平洋事務局においても2013年度末から発生したフィリピンでの流行がかなり地域に影響を与えているという状況がおわかりになるかと思います。

14ページ目が、「麻しん累積報告数の推移」であります。ことしに入って、例年よりも少し早いスピードでこの症例数、報告数がふえていったわけですけれども、当初から1例発生したら即対応ということで自治体と協力しながら、自治体のほうが積極的に対応していただいて、結果的に症例数の増加が少し抑えられてきているというところであります。2010年と比較すると少し低くなっているということであります。

 次の15ページですけれども、「麻しんの検査診断」についてお示ししております。2014年からいろいろ偽陽性の問題が麻しんの検査診断にはあったんですけれども、検査キットは昨年改良されておりまして偽陽性がぐっと減ってきているということであります。

 ここに示しておりますように、麻しんと臨床診断しましたら発疹出現後7日以内に血液、咽頭ぬぐい液、尿を保健所を通して地方衛生研究所へ搬送し、麻しんウイルス、あるいはウイルス遺伝子直接検出による診断を全例に実施するということをお願いしているところであります。非常に軌道に乗っているというところであります。

16ページにいっていただきますと、ここでは各地域での検査診断の例のまとめを示しておりますけれども、ここでわかりますように、以前、昨年などは臨床診断例では30%ぐらいまで残っていたんですが、それが大分減ってきた。すなわち、検査診断例がかなりふえてきているということを示しているというふうに思います。

 次は17ページですけれども、この図は年齢別の麻しん報告と予防接種歴別についてまとめているものであります。患者は2~5歳です。ピンクで示しているのはワクチン1回定期接種を行っている年齢、そして2040歳までのワクチン1回接種のもの、こういったところで症例が出ているということがわかるかと思います。だから、2回接種が必要だということであります。

 次に18ページであります。この図は、先ほどフィリピンからの輸入例の話をいたしましたけれども、これは名古屋市でフィリピンからの輸入例の報告でありまして、集団発生があったということであります。いずれもタイプB3による感染でありまして、最初フィリピン渡航歴のある3人の子供さんたちから発生して、それが集団住宅内で4家族、計11人に感染が確認されたということの報告であります。

 次の19ページにありますのは、そのウイルスのタイプの報告です。2010年までにありました土着株として日本にもともとあったウイルス株はD5でありましたけれども、最近はこれがなくなりまして現在はフィリピン由来のB3が主体ということであります。

 そういったことで、麻しんは重大な局面に入っているということで20ページにまとめております。フィリピンとか中国、ベトナム、こういったウイルスが輸入されて流行を起こしているというところで、今後の対応が大切であるということを示しております。MRワクチンの徹底及び外来での感染予防強化が大事です。

 次に進みまして、「風しん・先天性風しん症候群」についてお話をします。

23ページですが、2012年から続いていた風しんの流行は昨年の5月がピークでした。昨年は、1万4,000人の報告があったわけであります。御存じのとおり、先ほどお話もありましたように成人、20歳代から40歳代で発症が多かったわけでありますが、これらの発症は予防接種歴に密接に関係しているというところであります。

 ここで24ページを見ていただくとわかりますように、男女幼児に個別接種1回のとき、男女中学生に医療機関で個別接種1回のとき、そして女性のみ中学校で個別接種1回、そして定期接種の機会がなかった、この年代に非常に症例数が多くなっています。

 そして、「合併症」も報告されています。風しんによる脳炎、そして血小板減少性紫斑病といった症例がかなり報告されています。こういった合併症は5,0006,000人に1人ぐらいの頻度で発症するとされていますし、また、先ほどから話題になっておりました先天性風しん症候群も44例報告されております。

 次の26ページには「なぜ成人男性で流行した?」、20歳代、40歳代で発生したか。先ほど説明いたしましたけれども、この風しんワクチンの接種状況によってかなりその説明ができるわけです。

27ページでお示ししておりますのは2012年度の感染症流行予測調査、これは日本のある地域の住民の健康な人たちの各年齢の抗体調査をしたものであります。このデータでわかりますように男性30代、40代で男女差が大きくなっているところが27ページのスライドでわかると思います。約475万人がまだ抗体が陰性であろうということが、こういったことから推測されるわけであります。

 次のページも、2006年と2013年度の流行予測調査の成績であります。2013年のデータを2006年度と比較していただきますと、10歳代の男性も女性も赤い部分の抗体保有率が大分上がってきているのはわかると思いますけれども、丸で示した青と赤を比較してもらいますと、この部分は減少傾向にある。2013年では減っているんですけれども、依然、抗体陰性者が残っているということを示しております。

 また、次の29ページには「感染原因・感染経路」について示しております。この感染症発生動向調査、2060代の男性風しん患者さんの調査の中で職場関連という報告、記載があったものの中では68.5%と、非常に職場関連の発生が多かったということが示されています。

30ページでありますけれども、さらに2060歳までの女性風しん患者の中で妊婦さんが25例いた。そして、その記載があった588例中職場関連がやはり35%であった。家族では33.5%であったということが示されております。

31ページには、事業所での流行の状況を示しています。非常に長い期間、対策が十分されないと、約11週間にわたって流行がだらだらと続いてしまったということを示しています。

32ページは同じある事業所でのことですけれども、この3月までは発病しても病休として休んだ人は少なかった。4月以降に大分、風しんに対して感染を起こすということの認識が高まって、4月からは発病したら病休する。逆に言うと、3月までは症状が出ても職場を休まなかったということが示されています。3月と4月では、病休までの期間が大分縮まって対策が進んで、結果的に前のページにありましたように5月には流行が治まったということであります。

33ページには、全体の風しんの流行は先ほども言いましたように昨年の5月がピークでした。そして、先天性風しん症候群が44例発生しましたが、そのピークは11月から12月ごろで、風しんと先天性風しん症候群の時間的なずれというのは5ないし7か月あるということは過去の調査でも知られているんですけれども、日本でも同様の結果でありました。

 次のページは風しん症候群、先天性風しん症候群は44名おられたんですけれども、母親の風しん含有ワクチン接種歴については44例のうち9例の20%が接種をされていたんですが、それ以外はなし、あるいは不明であった。妊娠中の風しん罹患率ですが、68%に風しん罹患歴がちゃんとはっきりしていたし、23名はわからない人もいたということであります。

35ページに示しているのは、先ほど言いましたワクチン接種歴のあるお母さんで9名おられたんですけれども、この方々のワクチンの接種時期と種類を示していますが、かなり多くの人は大分過去の接種歴しかなかったということがここで示されているわけであります。

36ページですけれども、これは1回のみ接種した場合には抗体の陰性の部分というのがどうしても5%ぐらい、2回接種すると次の37ページですが、1%ぐらいになるということで、1回接種よりも2回接種することで、より抗体陰性者が減ってくるということを示しており、2回接種が逆に言うと大事であるということを示しています。

38ページですが、今後、風しん・先天性風しん症候群を予防するための予防接種を勧め対象としては定期接種児ですね。子供さん、1回目、2回目の接種をするんですけれども、この定期接種対象児、妊婦の周辺、2040歳代での妊娠を希望する女性、妊婦健診で風しんの抗体価が16以下で低かった女性、そして職業上のリスクがある人、こういった人たちに接種を勧めなければならないというふうに思います。

 次のページですけれども、最後に2014年、ことしの3月に麻しんと同様に風しんに関する特定感染症予防指針が告示されました。この中で、早期に先天性風しん症候群の発症をなくして、オリンピックイヤーである2020年までに風しんを排除することが指針の目標となっております。定期接種対象年齢になったら、すぐこのMRワクチン接種を徹底・維持することが対策の基本となります。

 そういったことで風しんの対策のほうをまとめますけれども、最後にこれまでに「風しんに関するガイドライン」、ここに示しておりますが、「職場における風しん対策ガイドライン」といったものを経団連の代表の方々と一緒に協力してつくりました。そして、「医療機関における風しん対策ガイドライン」といったものをつくっております。いろいろな対策をしてきました。

 そして、次のページには「風しん対策に関する資料等」もまとめをしているところであります。

 こういった皆様からの貴重な情報をもとに、きょうの資料を出させていただきました。この場を借りて御礼を申し上げます。以上でございます。

○座長 大石参考人、ありがとうございました。

 風しんのいろいろなポイントに関しましては、冒頭の意見交換会のときに正林課長からもコメント、メッセージを幾つかいただきました。

 麻しんに関しましては短期的にも長期的にも、短期的な合併症、あとはSSPEという長期的な合併症、非常に重篤な疾患で対策が必要である。日本はことし患者さんが少し多かったけれども、一定の接種率があったから連休明けぐらいには少し患者数が減ってきた。しかし、アジア周辺ではまだ全世界的に患者さんが多いから注意すべきだというお話であったかと思います。

 では、全ての資料を御紹介いただいてから質疑応答に入りたいと思いますので、次は資料2の御説明をお願いしたいと思います。患者さんの会における取り組み事例ということで、麻しんに関しまして辻構成員からお願いいたします。

○辻構成員 改めまして、SSPE青空の会事務局を務めております辻洋子と申します。きょうは高校1年生の息子のカイトを一緒に連れてきました。はしかの撲滅を願う親の会の代表として報告させていただきます。

 まず、SSPEとは何かという説明ですけれども、先ほど大石先生のほうからも御説明いただきましたが、SSPEははしかの変異ウイルスにより起こる脳炎でして、日本語では亜急性硬化性全脳炎と長いので、英語名の頭文字を取ってSSPEと呼ばれています。

 3ページをごらんください。こちらのほうでは5~15歳ぐらいという年齢が書いてありますが、こちらは特定できるものではなく、この時期に発症する件数が多いということで、昨年、事務局のほうに28歳の女性の方が発症したという御相談の連絡がありました。

 4ページにまいりまして「SSPEの発症頻度」になりますと、はしかにかかった子の100万人当たり16人という数字になっております。年齢はこちらにも書いてありますが、幅広いもので、平均すると9歳7か月で発症が多いということです。

 5ページにまいりまして、「SSPEの症状の深刻さ」というのが私たちは一番つらいところなんですけれども、ほとんどの場合、発症後、多くは数か月から1年以内で寝たきりの全介護状態になってしまいます。家庭でも経管栄養や気管切開、人工呼吸器など、医療的ケアが必要となる場合が多くあります。

 次に、7ページをごらんください。SSPEの症状については人それぞれ細かい部分で違いますが、今回は私の息子がSSPEを発症したときのことをお話ししたいと思います。

 実を言いますと、こちらは3年前に読売新聞社主催で厚生労働省が後援となっております「心に残る医療」という体験記コンクールに私が応募しまして入選することができました。そのとき、息子の症状をちょっと細かく書いてありますので、こちらを一部抜粋して読みたいと思います。

 「上の見本どおり書けばいいのに、何で間違って書くの?」、漢字の宿題で急に変な字を書くようになった息子、そして私の言うことを聞かず落ち着きのなくなった息子のカイトをその当時、私は毎日こんなふうに怒っていました。「ちゃんとお母さんの話を聞いて」「何度言えばわかるの?」、私はいら立ちといいようのない不安から、つい手を出して怒ったこともありました。

 それは、カイトが小学校2年生の秋のことでした。それまでは幼稚園から始めたサッカーが大好きで、チームの皆の先頭に立ち、真面目に練習に取り組んでいた息子でした。負けず嫌いで何でも一番じゃないと気が済まない息子は、学校へも朝、校門が開く前から待っていて、教室にいつも一番に登校するのが日課でした。

 そのカイトが、朝なかなか起きられなくなりました。3つ上の姉にも負けたくなくて九九もしっかり覚えていたのに、あるときから九九も必ず間違えるようになりました。そんなカイトの姿は、私を混乱させました。

12月に入ると、サッカーの練習ではいつも攻撃的で友達にぶつかっていっていたのが、おびえて見ているようになりました。そして、1月に入り、上履きも履かずにふらふら歩いていると担任の先生から告げられ、そこに至って、これは脳の病気かもしれないと思い始めました。そして、そこから息子はどんどん重い症状に入っていきました。

 トイレに行っても下着を脱ぐのを忘れて排便したときは、既に予約をしていた検査も待っていられず、大学病院に緊急で受診し、即入院となりました。1か月近くの検査の末、カイトはSSPEと診断されました。

 治療に希望を持って入院した新しい病院で、カイトの体は一日、一日衰えていきました。昨日はサッカーボールを蹴れていたのに、きょうは蹴ることができなくなっている。そして、次の日はよろけて転ぶ。そして、次の日はというように、坂を転がるようにどんどん悪くなっていきました。明日に希望を持ちたいけれども、明日がくるのが怖くて仕方ありませんでした。

 入院して1か月半ぐらいの間に歩けなくなり、食べられなくなり、そしてとうとう夜中に強い筋緊張が起こり、「お母さん」と苦しそうに一言、言うと、それっきりもう話すことができなくなりました。高熱で寝たきりの状態になり、時々目を開けてもまばたきもせず、眼球は上を向いたまま私を見ることはありませんでした。もうあの元気でがむしゃらにボールを追いかける息子はいないと思うと、ベッドで寝ているカイトは別の子のようで、私は受け入れることができませんでした。

 ここまでが病状が悪化したときの様子を書かせていただきまして、8ページには元気なときの写真を載せてあります。

 そして、10ページにまいりまして、このような深刻につらい状況の中、私たち家族の支えとなったのが同じ病気の子供を持つ親の会、SSPE青空の会でした。SSPE青空の会のスローガンは、悲劇的な状況を嘆いても仕方ない、互いに励まし合って、明るく、歌い、笑い、遊び、そして社会に主張していこうと、病気の名前にかけてこんな素敵なスローガンを30年前にこの会を立ち上げた親たちが考えました。

11ページで、私たちの会の一番のイベントは、毎年夏に行われるサマーキャンプです。

ことしは、栃木県の馬頭温泉で行われました。患児家族のほか、ドクターやナース、特別支援学校の先生やお友達など、大勢のボランティアさんたちに助けられて実施しています。温泉に入ったり、ゲームをしたり、皆で大騒ぎをして楽しんでいます。

12ページは、最後に撮った集合写真です。皆、はじけてすごく楽しそうですよね。この明るさが病気の子供たちにも伝わって、子供たちも皆いい表情になっています。

13ページにまいります。日常的には、遠く離れた仲間ともインターネットを活用したメーリング・リストで愚痴を言い合ったり、励まし合ったり、療育上の情報交換をしたりしています。このほか、対外的には学会などのブースを利用して病気の説明をしたり、メディアなどにも出て病気のことを広めています。

 ことしの4月には、厚生労働省からはしかの感染者が増加しているという報告があり、それを受けてフジテレビから取材があり、息子と私が取材を受けました。

 また、今月発売になります『地域リハビリテーション』には、SSPEの会の紹介とともにはしかの撲滅を願って、私がまた書かせていただきました。

 最後に、SSPE青空の会としての願いについて述べさせていただきます。15ページになります。最大の願いは、当然のことながらSSPEの根本的な治療法の確立です。症例の少ない病気であり、研究者の数も少ないため、新しい治療法の研究はなかなか進まないのが実情です。

 しかし、発症のメカニズムを解明して、確実な効果のある治療法が一日でも早く実現してほしいと思います。

 一方で、根本原因であるはしかが撲滅できれば、結果SSPEはなくなります。予防接種の副作用を論ずる方もあるようですが、このような過酷な経験をした者から見れば、はしかにかかり、SSPEになるリスクを考えて、絶対予防接種を100%徹底すべきだと思います。

2012年までに麻しん排除を目標に、2008年より行われた麻しん排除計画の5か年は、私たち青空の会も精力的に動きました。私は町田市内に住んでおりますが、町田市内の7つの都立高校のPTAの方々にSSPEの病気のことと予防接種の大切さをお願いしました。そのときのことで、2つ印象に残っていることがあります。

 1つは、保護者のお父さんから、うちの奥さんは看護師だが、予防接種はよくないと言って2人の子供には予防接種は何も打っていない。予防接種は本当に必要なんですかと言われたことです。

 もう一つは、やはりPTAの方で、私の息子の話を聞いて絶対に高校生の息子には予防接種に行かせますと力強く言ってくださったのですが、それから1年して、辻さんに謝らなくてはいけないことがありますと言われました。お母さんがいくら言っても息子さんが病院に行かなかったそうです。

 この2つの話は、任意の予防接種の難しさを教えてくれました。結局、予防接種を受けるのは個人の考えになってしまいます。なお一層の予防接種への正しい啓発活動をお願いいたします。

SSPEという病気の深刻さと、予防接種は自分を守るためであり、ほかの人にもうつさないための大切な手段であることを繰り返し、繰り返し伝えてほしいと思います。

 そして、ぜひ27年度までには麻しん排除の達成をお願いしたいと思います。ありがとうございました。

○座長 ありがとうございました。

 麻しんにかかったときは、誰もその方がSSPEになるかどうかはわかりません。10万人に1人です。ですけれども、ワクチンで病気がなくなればSSPEの患者さんの数は減ってくる。もちろん、SSPEの方の治療法も確立したい。辻さんを初め、SSPE青空の会の皆さんのお気持ちは、短時間でしたけれども、伝えていただけたと思います。

 では、次の資料の御紹介にまいります。次は、同じく患者さんの会における取り組み事例で、風しんに関しまして西村構成員からお願いいたします。

○西村構成員 「風しんをなくそうの会『hand in hand』」共同代表をしております西村麻依子と申します。

 職業は、保育士です。娘は、この流行で生まれた44名のうちの1例目のCRSです。これまでの、取り組みを御紹介いたします。

 共同代表の可児が平成14年に、先天性風しん症候群のことを伝えるホームページと掲示板を開設しました。それらを見て相談をくださる方たちがぽつぽつといたようです。

 平成24年から再び風しんが大流行、そのさなか、私はその10月に娘を出産しました。妊娠中、国内のCRSについての情報がないと医師に何度も言われたのがショックで、自分と娘の経験が一つの事例になればと思い、ブログを始めました。しかし、検索に引っかからないためか、なかなか閲覧数もふえず、皆さんに風しんのことを知ってもらうためにどうしたらよいのか考えておりました。

2013年春、NHKは「ストップ風しんプロジェクト」として風しんの予防啓発活動を開始しており、それに関連して3月にNHKから取材を受け、実名で出演させていただきました。取材をきっかけに、感染症の専門家の先生方や、ほかのCRS児の家族ともつながりができました。「風疹の流行を止めよう緊急会議」という風しん予防啓発活動の中に入れていただき、本格的な啓発活動が始まりました。その活動の中で2013年8月、CRSの当事者の会として「風しんをなくそうの会『hand in hand』」ができました。

 3ページにいきます。「活動目的は大きく3つ」です。1つ目は風しんの流行を繰り返さないためのワクチン接種の啓発活動、2つ目はCRSの情報提供、3つ目はCRSの家族同士が交流できる場所・機会の提供です。

 活動の中で、風しんの流行はこれまでにも何度もあったことを初めて知りました。これまでの対策の反省と、今回の流行がどの世代で起こっていたかの情報を知り、今後、流行を繰り返さないためにはどうしたらいいのかを世間に伝えることの必要性を強く感じました。そのために、風しんにかからないためにワクチン接種が有効であること、ワクチンを打たずに妊娠をしたことでこんなに我が子に大変な思いをさせてしまうのだということ、妊娠中に風しんにかかって出産まで悩んだけれども、出産を決断して生まれた子がたくましく育っているということを合わせて伝えていくことが必要だと感じました。

 また、CRSの子供や当事者、その家族が互いに情報提供することで多くの情報を共有することができ、より当事者が生きやすい環境をつくれるのではないかと思っています。

 4ページ目です。「メディア取材への協力」をしてきました。私たちは多くの方に風しんの予防の必要性を知ってもらうために、数々のメディア取材に協力させていただきました。私たちが伝えたいことと、メディアが伝えたこと、見た側の解釈の違いから多くのバッシングも受け、心が折れそうになったこともありました。しかし、多くの方にワクチン接種の必要性を理解していただけたと考えています。また、たくさんの方に予防接種を打つという行動を起こしていただけたと感じています。

 5ページ目です。ブログやホームページを検索して連絡をとってこられ、会に入られた当事者の皆さんと、支援してくださる専門家の先生方で情報を交換していく中で、私自身も会員の皆さんも助かったことがたくさんありました。また、妊娠中に風しんにかかり、妊娠の継続か中絶かを悩んでいたけれども、私たちの妊娠中の情報や、この流行で生まれたCRS児の様子を知って出産を決意した方がおられたことは非常にうれしかったです。

 6ページ目です。私たちが相談を受ける中で、もっとこんなふうになったらいいのにと思ったことや、これが必要だと感じたことを、患者、当事者を代表して国や行政の方にぜひ知っていただき、改善してほしいと伝えることもしてきました。ことし7月には、前大臣の田村大臣に直接お話を聞いていただきました。

 次のページです。「学会など専門家との連携」も行っております。これまでに関連する医学学会でブース展示をさせていただいたり、セミナーやワークショップで発言する機会を与えていただくこともありました。

 2枚の写真ですが、右は、去年6月にDCCで開かれた「風疹の流行を止めよう緊急セミナー」で、娘と一緒にお話をさせていただいたときのものです。

 左は、ことし7月に千葉で開かれた日本周産期・新生児学会でブース展示をさせていただいたときのものです。この学会では、ワークショップで発表もさせていただきました。専門家の先生と連携をとることで、私たち自身が勉強をして専門性を高めたり、私たちでは相談に答え切れないことに対して正しいアドバイスをしていただいたりしています。逆に、医療者や行政の方に私たちの経験してきたことを知ってもらい、もし目の前にCRSの家族がきたときに適切な治療、アドバイス、指示を出せるようお願いをしています。

 会の活動としての専門家との連携で、非常に助けられた事例をお話しします。実は、これは私自身の経験です。8ページ目です。まだCRSの診療マニュアルやQ&Aが公開される前のことです。CRS児は長期間ウイルスの排泄があるという特徴から受診拒否されたことがありました。

 また、保育園入園について相談に行ったときに、担当者がCRSという疾患だけではなく風しんの流行すら知らないということがあり、全く相談ができなかったこともありました。そのため、復職もおくれ、経済的にも大変な思いをしました。

 保育士として復職した後は、ウイルス排泄のある子供の母親だということで、保育園にウイルスを持ち込み流行させるおそれがあると誤解され、保育業務から外されるということもありました。

 私は、この活動をしていたことから、専門家の先生方にメーリング・リストなどで相談させていただき、解決法を掲示していただいたり、アドバイスをいただいたりして解決してこられました。

 しかし、これが会に入っていなかったり、相談できる相手がいない人だったらと考えたときに、当事者の会のつながりの有難さを感じるとともに、各マニュアルやQ&Aの周知がされていれば、当事者の会のつながりがなくても困ることはないのではないかとも思いました。

 9ページ目になります。会では、都道府県と政令指定都市に向けて、先天性風しん症候群のQ&Aに関する周知についてのアンケートを201311月に行いました。大変有難いことに、ほぼ100%の回答をいただきました。

 しかし、都道府県では約40%、政令指定都市でも約30%が先天性風しん症候群のQ&Aについて周知の予定がないという結果でした。行政窓口の担当者が何も知らない状況が多くあるのではないかという悲しい現実がありました。

 私たちは、私たちの活動を知ってもらうために、こういったポスターやパンフレットもつくり、順次配布しております。

 最後になります。「これからの課題」です。今後の課題としましては、2020年までに風しんの流行をなくすため、個人個人に訴え、対策を徹底すること。

 保育士を初めとするハイリスクの職業に対してVPDワクチンを打って、防げる病気に関する情報提供を行っていくこと。

 3番目、先天性風しん症候群児の追跡調査を行い、具体的なケア・サポートや今あるマニュアルの見直しや改訂をすることが必要だと考えております。以上です。

○座長 ありがとうございました。御自身の体験も含め、風しんをなくそうの会の活動を詳細に御報告いただきました。昨年は風しんの流行があって、風しん対策ということが大分、皆さんの頭にもあったかと思うんですが、流行が小さくなってきてもそれを忘れてはいけないというメッセージであったかと思います。

 では、次の資料の御紹介にまいりたいと思います。次は資料4、「企業での取組事例」ということで増田構成員からお願いいたします。

○増田構成員 イオン株式会社で産業医をしております増田と申します。

 私は、4月1日に公開された職場における風しん対策ガイドラインを取りまとめる検討委員会に日本経団連からの依頼で使用者団体側として参画しました。その経緯で、こちらの検討会にも同様の立場で参画させていただいております。

 「企業の取組事例」ということで、御紹介させていただきます。

 資料の2枚目をごらんください。そうはいいましても、それほど胸を張れるような取り組みが行われているとは毛頭考えておりません。一部の企業では、全員ワクチン接種を実施するといった先進的な取り組みがなされているようですが、ちょっとそこまでの取り組みには至っていないかと思います。世間一般の企業の普通の水準の活動として、どんなことをやっているかという感じでお聞きいただければと思います。

 私が所属している本社の人事労務部門におきまして、安全衛生とか従業員の健康管理に関する対策を立案しまして、グループ各社は全部で240社ほどあるのですが、そのうち主要会社に対して具体的な対応について指示、あるいは助言指導といったことを行っております。

 私の役職名である総括産業医というのは、その会社の方針としての安全衛生の施策立案、それに特化した役職というふうになっております。

 風しんにつきましても、本社で情報を集約して、グループ各社に情報を下ろして対応を促すということをやっております。

 風しん関連の本社での対応としましては、お手元の資料にございますように周知・啓発、お金のかからないところからやっております。上の右上の2つは厚生労働省のリーフレット、右下は林修氏のドヤ顔ですね。「子ども健康倶楽部『風しん流行ストップ』」というところから著作権フリーで出ているものがありますので、こういったものをインターネットに掲載されているURLとか、あるいはPDFファイルで送信したり、会社のイントラネットの掲示板に掲載するといった形で周知を行っております。

 あとは、本社の安全衛生委員会で昨年5月の流行時と、それから今年4月のガイドラインの作成を受けまして、私が安全衛生委員会で風しんに関する講話を実施しております。安全衛生委員会の議事録と資料につきましてもイントラネット上に掲載していますので、理論上はグループ会社20万人ぐらいが閲覧できる状態にはなっております。もちろん、見てくれればの話ということで、そこからが課題かと思っています。

 このような取り組みの結果、ある程度反響がございまして、従業員から本社に風しんに関しての問い合わせが入ったりしています。出産や結婚を間近に控えて、実は調べてみたら抗体価が低かったとか、あるいは50歳代の男性の従業員から、今度娘が結婚するんだけれどもといった形で問い合わせがありまして、従業員の関心は比較的高いのではないかと感じております。

 風しんが心配で会社を休みたいと申し出てきた従業員がおりまして、この後の事例でちょっと紹介したいと思います。

 他方、情報提供以外の人事、福利厚生施策としまして、例えば抗体価の測定とか、ワクチン接種補助とか、そういった対策があるとは思うのですが、いずれも整備されておりません。弊社は8時間換算で、海外まで含めますと従業員が42万人おりまして、全て公平に提供するというのがコスト的には厳しいということで、現時点では今後の検討課題というところでとどまっております。

 最後のダイバーシティ、女性の活躍ですが、2013年から取り組んでおりまして、女性の健康管理増進という観点でも力を入れていかないといけない。その中の一つの課題として、感染症対策というものが入ってくるのではないかと考えております。

 3枚目以降の資料は、個別対応事例です。個人特定されないように、実際とは違う内容に少し脚色しておりますが、概要を御紹介したいと思います。20歳代の女性で、弊社のグループ会社の従業員です。とある地方のお店に勤めている従業員です。ちょうど風しんが流行した時期にたしか妊娠2か月だったと思うのですが、妊娠が判明しまして、抗体価が低かった。風しんに対する免疫はないということがわかって、接客業ですのでお客様から風しんをもらってCRSの子供が生まれたらどうしようと心配になって、接触を避ける上で産休を取りたいという申し出がありました。職場上司とその会社の人事も対応はどうしたらいいのだろうということで本社に問い合わせがありまして、本社産業医、私と本社の人事とで対応を協議することになりました。

 4枚目に進みます。人事の側としましては、やはり突然休まれても困るとか、感染防止対策をやって勤務を継続させることができないかと尋ねてきました。私からは、妊娠中はワクチンが打てません。御案内のとおりですね。手洗いやマスクで万全に防ぐということもできない。接客を伴わない業務に変更ができないかと尋ねました。すると、人事からは、スーパーですので基本的には接客のために雇っているのでそれはなかなか難しい。接客がないとなると、逆に体に負担のかかる業務だったり、専門性の高い業務だったり、余り現実的ではない。

 勤務地限定なので、本社への異動も難しい。仮に本社に異動してもマイカー通勤を本社は認めていませんので、公共交通機関での通勤で、では満員電車の中で風しんをもらったらどうするか。かえってよくないことになるのではないかというようなことも会社側からは提示されました。

 産業医からは、どうしてもだめならやはり申し出に沿った形で対応すべきじゃないだろうかということで、この方は遠方の方だったので直接お会いはできなかったのですが、電話でお話をしましていろいろ聞いたところ、やはりお休みを取るという形で対応したいということを申し出されました。

 5枚目に進みます。では、休みに当たってその取扱いをどうするかということで本社で協議をしました。産休とした場合は、産前休暇としますと出産手当金というものが必要になる。それを一例認めてしまうと今後全て対応しなければならないというところで難色を示されました。私傷病欠勤という扱いですとそもそも診断書の提出が必要になるのですが、病気ではございませんということで、人事発令にして人事部長付としまして、特別事由による休職扱いという形で対応した。このような顛末となっています。

 この対応でよかったかどうかにつきましては、この後、御出席の皆様方から御意見等をいただければと思いますが、実際にこのような対応を行ったし、世間一般でも恐らくこのようなことが行われているのではないだろうかという形で紹介させていただきました。

 ちょっと駆け足ですが、私からの取り組み事例紹介は終わりたいと思います。

○座長 ありがとうございます。個別の対応事例も含めて御紹介いただきました。

 今、資料の1~4まで御説明いただきました。この御説明の中で、きょう御出席の参考人の構成員の皆様から御意見があれば頂戴したいと思いますけれども、いかがでしょうか。

 では、矢野構成員どうぞ。

○矢野構成員 皆様方の御説明を伺いまして、大変感銘を受けました。少し専門的かもしれないのですが、大石先生にお伺いしたいのですけれども、これまでの接種率でなかなか統計の正確さを維持するのが難しいという御事情があったかと思うのですけれども、先ほど接種対象者が分母になっていて、接種を実際にした人というのは、追跡が一致しているかどうかというのは先生がおわかりになる範囲でお伺いしたいのですが、その打った人というのが対象ではない人もカウントされていますと、分母分子の関係で接種率というのは大きく変わってくるかと思うのですが。

○大石参考人 その調査については、各自治体のほうから情報を上げていただいておりますので、各年齢の対象に対しての接種率が報告されていると思うんですけれども、わかりますか。

○氏家課長補佐 事務局のほうでお答えさせていただきます。

 麻しん・風しんの対策については2008年から国も力を入れて、各自治体から現在は半年に1回、接種対象者、つまり1歳の方と就学前の1年間ということなので5~6歳の方ですね。各自治体からこの対象者への定期接種の実施状況、実施した実施数というものを全ての自治体から上げていただいております。

 定期接種実施率の分母につきましては、人口動態統計のほうからその年に該当する全国の人口というものを分母にとって、各自治体から上げていただいた接種実施数というものを分子にとって接種実施率として毎回報告をしているところでございます。

 資料5で事務局からの説明資料の中でも、最後のところに参考資料として昨年度の実施率を提供させていただいております。

○座長 ありがとうございました。矢野構成員、よろしいでしょうか。

 ほかにいかがでしょうか。では、石田構成員どうぞ。

○石田構成員 CRSの患者の方々から、先ほど西村構成員からウイルスを排泄しているということを伺いましたけれども、それはどれぐらいの期間で、どの程度で、そしてそれを防ぐ方法というのはあるのか。実際にいろいろなうわさとか、それから差別みたいなものがあるとは思いますけれども、その実態と防ぐ方法がもしあれば。

○座長 これは、医学的なことはまず大石参考人からコメントいただきましょうか。

○大石参考人 これまでの先天性風しん症候群の子供さんたちの情報から知られていることは、やはりその機序はよくわからないんですけれども、感染したときにウイルスがずっと赤ちゃんから排泄されるということがわかっておりまして、大体生後1年以内でそれは消失する。早い人はもっと早く消失することもあるんですけれども、病院で出産されるわけですのでCRSの赤ちゃんの感染管理という意味でも、そういう排泄については体制をきちんと整えて調査していかなければならないということで、研究班のほうでそういった子供さんたちの調査については対応しているところであります。

 その実態について、やはりまずウイルス排泄があるかどうかを知った上で対策をとるということが大事ですので、何でもかんでも危険だ、危険だという話ではなくて、検査データに基づいた対応をとるということが一番効率的な対応だろうと考えております。

○座長 1年排泄する場合もあるし、個人差もあるので一概にどうということは言えないということでよろしいですか。

 ほかはよろしいですか。何かございますか。よろしいでしょうか。

 では、ちょっと時間も押していますので、まず事務局から麻しん・風しん対策への取り組み状況と評価についてということで御紹介いただいて、その後にまた少し質疑応答の時間をつくっておりますのでよろしくお願いいたします。

○氏家課長補佐 資料5を御用意ください。「麻しん・風しん対策への取組状況と評価について」ということで御説明させていただきます。

 まず、この麻しん・風しんの国の対策ということにつきましては、参考資料の3と4に示されております麻しん・風しんに関する特定感染症予防指針というものに取り組みの方針について規定がございます。この指針というものが、麻しんは2007年度、そして風しんが昨年度策定されたものでございまして、これに基づいて対策がとられているという状況について御説明させていただきます。

 2ページ目、前回麻しんの対策推進会議を開催しましたのが昨年の3月になりますが、それ以降、昨年の風しんの流行、そして昨年末から今年の春にかけて麻しんの患者報告数が増加したというような事態を受けまして、ここに記載があるような通知、または事務連絡、こういったものを発出することで対応を行ってきたところでございます。

 3ページ目でございますが、これは「ワクチンの需給状況」を示したものでございまして、少しわかりにくいのですが、MRというのが麻しん・風しん、Mが麻しん・そしてRが風しんを示したものでございまして、上段のMR+Mと書いてあるのが麻しんを含んだワクチンのこと、MR+Rと書いてあるものが風しんを含んだワクチンのことでございますが、どれぐらいそのワクチンを任意で接種していただいているのかということを推計するための表でございます。

 Aに関しましては、卸売業者の方に情報提供いただいて、医療機関に1年間で納入したワクチンの数というものを示してございます。そして、先ほど矢野構成員からも御質問のあった、定期接種で行っている1年間の実施数というものをBに示してございます。医療機関に搬入してそれが定期接種として使われたものがBですので、その医療機関に同じ数だけ在庫が毎年残っているというふうに仮定を置けば、AマイナスBというのが大体1年間に任意で接種を受けていただいた数ということになってくるかと思います。

 平成24年度から風しんの流行が見られてございますが、24年度のA-Bというのが大体麻しんだと8万7,000本くらい任意の接種があったというふうに推計されるところ、風しんがその倍近く任意接種者数がありまして、風しんの流行を受けた数字というふうに考えられます。

 また、昨年1年間で風しんの流行があったことを受けて、その任意接種者数というものが大体130万本ということで、かなりの方に昨年度、任意の接種を受けていただいた結果による数字ではないかと考えてございます。

 また、使用していただくワクチンは、昨年は麻しんと風しんのMRワクチンを使用していただくということをお願いしていまして、指針の中にもこのMRワクチンを麻しんの対策も風しんの対策も同時に行っていただくという観点で使用していただくということを国としてもお願いしているところでございます。

 続きまして4ページ目ですが、風しんの抗体検査といいまして、免疫の状態を調べるための簡易な検査キットがございます。これがどれぐらい企業のほうで出荷を行っているかということを聞き取り調査した結果に基づくグラフでございます。毎年4月に出荷数のピークがくるわけでございますが、平成25年の4月を見ていただきますと、昨年の流行を受けてこれは健康診断とか、発症者の診断ということにも使われるかと思いますが、かなりの数が出荷されたという状況がございました。今年の26年4月を見てみますと、流行のあった昨年と比べるとその出荷数が少し落ちているというふうな状況でございますが、平成23年、24年のピークと比べてみますと数が少し多いというような状況でございまして、現在、国と自治体でも行っています風しんの抗体検査の費用の助成事業、抗体検査により免疫があるかどうかといったものを確認した上で、必要な方に予防接種を検討していただくというような事業を行っていることの影響ということも考えられるかと思います。

 続きまして5ページですが、厚生労働省のほうではこれまで麻しん・風しんにつきまして普及啓発を行うためにさまざまな資材を提供しているところでございますが、このたび風しんの抗体検査の事業を行っていることを受けて、今回新たに赤ちゃんの先天性風疹症候群のリスクを示したポスターというものも作成しまして、広く国民の方にこういった問題について知っていただき、抗体検査を受ける取り組みなどを検討していただきたいと考えているところでございます。

 6ページ目へいきまして、それ以外にも国を挙げて今回の風しんの抗体検査の広報というものを行っているところでございまして、政府のインターネットテレビでの動画、そしてラジオ音声の公開、そのほか特設のホームページ等を公開しているところでございます。

 指針ですが、7ページ目の麻しんに関する特定感染症予防指針、これが昨年改正がございまして、「目標」としましては冒頭で塩崎大臣のほうからも御説明がありましたとおり、平成27年度までに麻しんの排除の達成を目指してさまざまな取り組みを行っているところでございます。

 ページをめくりまして、9ページ目に飛ばさせていただきます。昨年の風しんの流行を受けまして予防接種法、そして感染症法のもとに風しんの特定感染症予防指針を策定するために、風しんに関する小委員会というものを設置し、計5回の審議を行ってまいりました。

 その結果、10ページ目に概要を示した「風しんに関する特定感染症予防指針」というものが策定されまして、今年度からこの指針に基づいた風しんの対策というものが実施されているところでございます。

 「目標」としましては、平成32年度までに風しん及び先天性風しん症候群の発生を国内からなくすということを目標に掲げているところでございまして、大事な観点としましては現在、定期接種として行っている1歳と5歳、6歳に対する予防接種を95%以上の方に受けていただきたいということを明記してございます。そのほか、免疫のない成人、特に男性の方、女性の方も一部ございますが、免疫があるかどうか、そのワクチンの接種歴や罹患歴を確認した上で、それがはっきりわからないというような場合には、免疫があるかどうかの抗体検査、または予防対策としての予防接種といったものを推奨しているところでございます。

 また、風しんに関しましては先天性風しん症候群の問題等もございますので、そうした方々への医療等の提供についても記載がされてございます。

11ページ目でございますが、風しんが麻しんと比べるとまだ免疫のない感受性者というものが特に成人層に多く見られているというようなことが知られていますが、こういった推計というのはなかなか難しいところでございます。毎年、感染研のほうで行っていただいています流行予測調査という免疫がある方の割合を調べた結果、そして総務省統計局で公表しています人口推計、こういったものから昨年度の感受性者の数を推計したところ、昨年度には20代~40代の男女では412万人、そして50歳以下、1歳以上49歳までの方であれば495万人の感受性者がまだ国内にいるということが推計されます。ただ、これは年々減少傾向にありまして、指針に基づいた取り組みを続けていくことで再度の流行を予防していきたいと考えてございます。

 先ほどから申し上げている風しんの抗体検査事業に関しましては、昨年度の補正予算で先天性風しん症候群の予防を目標に、妊娠を希望する女性とそのパートナーを主な対象とした検査費用の助成を現在多くの自治体で実施していただいているところでございます。詳細につきましては、最寄りの保健所にお問い合わせいただくということで御紹介を行ってございます。

 最後に13ページ目ですが、今後の対策として皆様方にもいろいろな課題、そしてその方法等を御意見いただきたいところでございますが、今年、大きな風しん・麻しんの流行が見られない中で、なかなか国民の方々からの関心が薄れているというような状況もあり、この中でいかに対策を進めていくか。こういったことが課題になってございます。

 麻しん・風しんの定期接種率は95%を目標に掲げてございますが、この後ろについている数字、昨年度の1期、2期の接種率を見てみますと、昨年度が95.5%、第2期に関しては93.0%と、1期は目標を達成していますが、2期がまだわずかに達成できていないというようなことがございまして、しっかりとこの定期接種を維持向上していくということが重要であると考えてございます。 

先ほどから申し上げている抗体検査費用の助成事業、これは昨年度の補正予算事業でございますので、まずは今年度しっかりとその事業を進めていく必要があると考えてございます。

 さらには、麻しんの指針の目標でもある麻しん排除の認定、これが来年度までの目標というふうに迫っているところでございますので、こういった取り組みについても厚生労働省として支援を実施していきたいと考えているところでございます。

 残りは先ほど申し上げた昨年度の定期接種の接種率、そして実施数というものを示したものでございますが、一部の県に修正がございます。最後の再々改訂表2というふうに最後のページに書いてあるものが最新の状態でございます。これらの資料については更新したものをホームページのほうに公開してございますので、御注意していただきたいと思います。事務局からは、以上でございます。

○座長 ありがとうございました。現在の麻しんと風しんという2つの疾患への対策の取り組み状況と評価について御紹介いただきました。

 では、フロアの皆様から御質疑、御意見などがございましたらお願いいたします。

 どうぞ、館林構成員。

○館林構成員 麻しんのほうなのですけれども、麻しんはもう排除されるのかなと一時期思っていたのですが、また小流行があったようなのですが、こういう持ち込み例の小流行を防ぐにはどういう対策が必要なのか、医学的にわかれば教えていただきたいと思います。

○座長 大石参考人、いかがですか。

○大石参考人 なかなか難しい問題でありまして、排除に近くなればなるほど、接種率を高く保つということは一つの重要なポイントだろうとは思うのですけれども、5%未満のほんの一部の方々、きょう2013年の冬から2014年にかけてのフィリピンからの輸入例の話がありましたけれども、そのうちの特殊な方々といいますか、日本国籍を持っておられる方々だと思いますが、そういった方々の子供さんたちの予防接種率が低かったりすることもあるのかもしれません。

 そういったところをやはりしっかり対応していくことが大事ではないか。少なくともそこは大事なポイントかと思いますし、全体的に予防接種率を95%以上に高めていくということが2点目のポイントかと思います。

○座長 事務局からもお願いします。

○氏家課長補佐 ありがとうございます。麻しんの流行ですが、海外渡航者による海外の流行地からのウイルスの持ち込みということが発端になるということが知られているところでございまして、指針のほうでも海外渡航者ですね。海外に行かれる方につきましては対策を強化して、そういった流行があるような地域に行かれる方については御自身の接種歴や罹患歴といったことについて確認をいただくように指針の中でもお願いをしているところでございます。

 また、昨年度末から今年度春にかけて患者数がふえたことにつきましては、大石参考人の資料でもありましたように日本だけではなくて西太平洋、東南アジア、東アジア、こういった全体での流行を受けて、やはりたくさんの方が海外を行き来する時代でございますから、国際的な感覚を持って社会全体で対策に当たっていく必要があると考えてございます。

○座長 ありがとうございました。館林さん、よろしいでしょうか。

 ほかにいかがですか。では、石田構成員どうぞ。

○石田構成員 私はお願いというか、経験上、例えば我々が舞台とか映画をやっているよというのはなかなか知られないわけですね。それで、例えばテレビとかで知ることになる、あるいはインタビューを受けて雑誌や新聞でということなんですけれども、先ほど事務局の資料5の5ページのところに普及・啓発資料というものがありまして、こうやって見ると今回のポスターもとても印象的だし、ある意味ショッキングですごくわかりやすいんですね。そして、センスがいい。

 普通、こういうものはなかなか見る気もしないポスターも多いんですけれども、こういうものをいわゆる公共の駅とか、あるいは車両、それから区役所や税務署や保健所など、そして銀行とかホテルとか、そういうところに、別にこれを置いておいても全然違和感がある感じはしないし、先ほど増田構成員のところのイオンとかは全国にありますし、若い人たちは大体イオンに行くと思うんですね。そういうところに張ってあったりすると、こういうものがあるのかということが告知される。これは知られるまでがなかなか大変だと思うので、こういうものを置いて張ってあると、もう一度言いますけれども、とてもできがいいと思うので、邪魔にもならないし、すごくいいのではないかと思います。

 そして、新聞や何かでももちろん広告を取るのが御商売のうちの一つでしょうけれども、なるべく安く官公庁だからやってくれるのかなと、読売新聞などでも特集されているとは思いますが、新聞などでも結構大きく、ぼんとあると、たまには広告が出ない日とかもあると思うんですけれども、そういうときには本当に10万円とか20万円くらいのものでも、どんと全国紙に載せていただいたりするとすごくいいのかなと思いました。

○座長 ありがとうございます。とても貴重なコメントで、私が医師になった30年前はこのようなポスターはほとんどなかったんですけれども、本当に最近は国を初め、またはもちろん各種メディアの方、それと学校関係、いろいろなところの御協力によってこういったものが一般の方の目に触れるようになってきたのはすばらしいことだと思いますので、とても貴重なコメントだと思います。

 前田構成員、お願いします。

○前田構成員 先ほどの館林構成員の御質問に絡むのですが、私は大石参考人からの御説明の18ページの麻しんの集団感染事例ですが、実は東京都内にも同様な事例が幾つかございまして、非常に衝撃を受けているところでございます。

 日本国内では接種率が95%を超えたとはいえ、やはり非常に接種率の低い集団が存在するということが今回改めて明らかになっていますので、余り偏見とか差別につながらないような形で市町村に対してこういう状況があるんだということはもう少ししっかりお伝えして、こういう方たちにある程度ターゲットを絞った形での普及啓発、具体的には予防接種についての制度の周知をしていく対策をとるべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○座長 これは、事務局から何かお答えはございますか。

○氏家課長補佐 貴重な意見をありがとうございます。確かに、社会全体で対策が進められる中で、その残された方々にどういった特徴があるかということは大切な観点だと理解してございます。昨年度の風しんも、やはり職場の方であるとか、今後妊娠を希望する女性が対策において重要となるということで、参考資料の5のほうにもリーフレットをつけてございますが、どういった方々に重点的に流行の情報提供や必要な対策等の介入を実施していくのかということは大事な観点かと思いますので、実際にどういった方法があるか、事務局でも検討を続けていきたいと考えてございます。

○座長 ありがとうございます。時間もまいりましたので、先ほどのコメントも踏まえて座長のほうからまとめをさせていただきたいと思います。

 もしテストで95点を取ったら、これはいい点数ですね。でも、ワクチンの接種率が95%というのはどうなんでしょうか。100万人の人口、100万人の子供がいたとしたら、95%の接種率でも5万人はその病気に守られていない人たちがいるということなんです。そこをぜひ忘れずにいていただきたいと私は思います。

 最後に事務局が出していただいた資料5の最後のページです。九十何%という数字は出ていますが、伸び率を見ますと1期のワクチン、1歳になったときのMRワクチン、幼稚園、保育園の年長さんの2期のワクチン、各県とも接種率としては下がっているところがほとんどなんですね。これは、やはりのど元を過ぎればその病気の恐ろしさを忘れるということで、こういうことを多分数年ずっと繰り返していってどんどん接種率が下がってきて感受性者が集積してくるとすごい患者発生につながる。それが世界の感染症の歴史であると私は思っています。ぜひこのことを念頭に置いていただいて、ワクチンで予防できる病気だということを日本、もちろん世界、全ての方々にメッセージとして送ることが、私たち推進会議の目的ではないかと思っています。

 この麻しん・風しん対策推進会議というのは、麻しん対策についてはお手元の参考資料にもございますが、平成1912月に策定されました麻しんに関する特定感染性予防指針に基づいて行われています。風しん対策は平成26年3月、ことしの3月に策定された風しんに関する特定感染症予防指針に基づいて自治体ごとの状況分析や接種率の向上を視野に入れた取り組みを検討してきています。

 これまでの会議においても、都道府県、学校、医療機関などの関係者の方々からこの両疾患に対する取り組み状況に関しまして御報告、課題などをいただいています。今後も全関係者一体になって取り組みをすることによって、麻しん・風しん対策がさらに推進されることを期待したいと思っています。本日はどうもありがとうございました。

 最後に、事務局から何かございますでしょうか。

○難波江課長補佐 本日はありがとうございました。次回の会議については、改めて御連絡させていただきます。

○座長 ありがとうございます。

 それでは、本日は長時間にわたり御議論いただきましてまことにありがとうございました。これをもちまして閉会といたします。どうもありがとうございました。


(了)

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