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2014年9月10日 第6回医療法人の事業展開等に関する検討会 議事録

医政局

○日時

9月10日(水)9:30~12:00


○場所

厚生労働省専用第23会議室(6階)


○出席者

田中座長 猪熊委員 今村委員 大道委員 梶川委員
川原委員 鶴田委員 西澤委員 橋本委員 日野委員
松井委員 千葉委員代理 瀬古口委員 浦野委員 太田委員

○議事

○田中座長 「第6回医療法人の事業展開等に関する検討会」を開催します。議事に入る前に新しく本検討会に御参加いただく委員の方々と、7月に厚生労働省職員の人事異動がありましたので、事務局から報告をお願いします。

○事務局 前回は代理出席でしたので、改めて御紹介いたします。日本歯科医師会常務理事の瀬古口精良委員です。

○瀬古口委員 ただいま御紹介いただきました日本歯科医師会常務理事の瀬古口でございます。本日より正式に参加させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 次に、事務局を紹介いたします。医政局長の二川です。

○二川医政局長 おはようございます。医政局長の二川でございます。お時間をいただいて、一言御挨拶させていただきます。私は711日付けで医政局長に就任いたしました。この検討会は、前回は6月に開催しておりまして、しばらくぶりの開催でございます。

 現在、厚生労働省におきましては、先の通常国会で成立いたしました医療介護総合確保推進法に基づきまして、効率的かつ質の高い医療提供体制の構築、地域包括ケアシステムの構築を目指しまして、様々な取組を進めております。それに関連する検討会等も行っているところでございます。その一還として、本年6月に閣議決定されました日本再興戦略2014におきまして、非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の創設につきまして検討がまとめられているところです。医療と介護の連携といった全体の流れの中で、より良い仕組みに向けて検討を進めていく必要があるかと考えています。

 また、非営利ホールディングカンパニー型法人制度のほかにも、医療法人の透明性の確保、あるいはガバナンスの強化、社会医療法人の認定要件の見直しなどにつきましても、規制改革、実施計画等で検討がまとめられているところです。そういったことで課題が大変多いのが医療法人の関係だと思います。

 この検討会の皆様におかれましては、引き続き、忌憚のない御議論をいただき、私どもを御指導いただければと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○事務局 続きまして、審議官の福島です。医療経営支援課長の佐藤です。社会・援護局福祉基盤課長の岩井です。最後に、私は医療経営支援課で課長補佐をしております水野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 引き続き、本日の出席状況ですが、長谷川委員、松原委員につきましては欠席との御報告をいただいております。なお、山崎委員は、御都合がつかなかったので代理での御出席です。

○田中座長 次に、事務局より、資料の確認をお願いします。

○事務局 資料の確認をいたします。お手元の資料を御確認ください。本日の資料は、議事次第がありますが、それに加え、資料1「今後の課題及びスケジュール等について」、資料2「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の創設について」、資料3「医療法人の透明性の確保及びガバナンスの強化について」、資料4「社会医療法人の認定要件の見直しについて」、参考資料として、日野委員からの御意見の紙、あとは開催要綱、委員名簿というセットになっております。資料の不備等がありましたら、事務局までお伝えください。

○田中座長 早速、最初の議題に入ります。今後の課題及びスケジュール等についてですが、多くの課題を効率的に議論する観点から、事務局と相談して作成しました。事務局から、資料の説明をお願いします。

○事務局 資料1を御覧ください。「今後の課題及びスケジュー等について」です。1ページの一番上の「これまでの開催状況」です。昨年11月よりスタートして、各種課題をそれぞれにいたしました。第5回は627日です。

 本検討会の検討内容としては、(1)(8)です。(7)までの事項のうち、幾つかについては、既に御議論の結果等をまとめさせていただいて、法改正済、通知改正済という状況になっております。それに加え、詳細については後ほど説明したいと思っておりますが、一番下の3行の「最近の閣議決定等」ということで、日本再興戦略、規制改革実施計画、参議院厚生労働委員会附帯決議が出ており、検討を求められる状況です。

 次ページからは、今ほど申し上げた各種閣議決定です。それぞれの事項については、また後ほど説明させていただきます。

6ページを御覧ください。冒頭で申し上げた検討会の課題とをまとめさせていただいて、今後の具体的な課題について用意いたしました。○が4つあります。一番上の「医療法人等の間の連携の推進について」ですが、初めのポツの「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の創設について」が、今回の検討会の今後の一番大きな課題です。それに加えて、「医療法人の分割について」、「社会医療法人の認定要件の見直しについて」、「医療法人の透明性の確保について」ということで、一定規模以上の医療法人について外部監査を義務付けることについて等々、また一番下の「医療法人制度におけるガバナンスの強化について」ということで、医療法人の理事長及び理事について、忠実義務、損害賠償責任等を課し、責任範囲等を明確化することです。

 次のページを御覧ください。今後のスケジュール案ですが、年内に検討、結論をということですので、今後どうやっていくのかという進行です。第6回、7回、8回と書いておりますが、第6回は「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の創設について」を御議論していただきながら、「医療法人の透明性の確保及びガバナンスの強化について」、併せて「社会医療法人の認定要件の見直しについて」、こういったものを御議論いただければと思っております。第7回については、「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」の話は引き続きですが、先ほどの具体的な課題で残っていたもう1つのほうの「医療法人の分割について」も併せて御議論いただければと思っております。皆様の御都合によれば、大体1か月に1回ぐらいになりますので、第7回は10月上旬、第8回の11月上旬以降には、議論の収束に向けて、取りまとめに向けた議論という形になっていくと考えています。

○田中座長 ただいま事務局から説明がありました「今後の課題及びスケジュール等について」、委員から御質問、御意見があればお願いします。特にありませんか。

 では、ただいま事務局から説明のあったスケジュールで進めてまいります。「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」は名前が長いし、そもそもミスリーディングな名前なので、今後、私は「新型法人」と短く言います。新型法人についてと、その他の課題については、毎回話し合います。その他の課題については、今回と次回で議論します。次々回より「検討会の取りまとめに向けた議論」を行ってまいります。そのような予定ですので、よろしくお願いします。

 次に、2つ目の議題、「新型法人制度の創設について」に移ります。新型法人制度に関わる主な論点については、前回、既に御議論いただきました。その内容の紹介と、更にイメージがもう少し膨らむよう、新型法人の具体的イメージ案を事務局と相談して作成しました。事務局から、資料の説明をお願いします。

○事務局 資料2を御覧ください。新型法人制度の創設について、1ページです。624日に閣議決定した日本再興戦略です。その中で「1」として、医療・介護等を一体的に提供する非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の創設についてです。

 具体的に申し上げれば、2つ目の段落、下線を引いている所ですが、複数の医療法人や社会福祉法人等を社員総会等を通じて統括し、一体的な経営を可能とする「非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)を創設する」です。その制度設計にあたっては、いろいろな論点を次の段落に書いております。その章末の下線を引いてある所ですが、年内に結論を得るとともに、制度上の措置を来年中に講ずることを目指すといった内容です。

2ページです。これは右肩に書いておりますが、627日の検討会で「主な論点」として、「法人の在り方に関する論点」「事業の在り方等に関する論点」について御議論いただきました。

3ページですが、併せまして、第4回と第5回の検討会において、資料として出しましたイメージの一例です。

 それに加え、4ページは、第5回の検討会に今村委員から御提出のあった「統括医療法人(仮称)制度の提案」です。若干、かい摘んでポイントだけ申し上げます。1.「統活医療法人のイメージ」の1ポツ目、医療法に基づく医療法人の一類型である。2ポツ目、参加法人は、医療法人または社会福祉法人であること。3ポツ目、社員総会の議決権は、拠出・出資額、規模等にかかわらず一社員一票とするといった内容です。また、2.「統活医療法人の地域における非営利性の確保」の1ポツ目、統括医療法人の設立・拡大にあたり、外資を含む金融機関等が深く関与し、実質的に支配されることがないよう、行政、地域の関係者等が監視・評価できるよう仕組みを設ける。2ポツ目、都道府県知事は、統括医療法人及びその参加法人が営利性の高い特定の者と関係が強いと認められる場合など、要件を満たさないときは設立を認可しないということです。3.「統括医療法人の適正な運営の確保」ですが、1ポツ目、統括医療法人の設立・合併・解散は、都道府県知事が認可する。2ポツ目、地域の関係者で構成する委員会を設け、必要に応じて、その建議により、医療審議会の審議事項とする仕組みを設ける等々といった内容です。

7ページは、イメージということで、図も出しております。文字で書いてある所は重複する部分ですが、例えば、右側の中段に「情報開示の徹底と事後フォロー」として、財務諸表・事業報告書の開示等々を書いております。

8ページからは、「前回の検討会での議論について」です。今、御紹介いたしました今村委員のペーパーと重複する部分も含めての内容になっております。「1」社員法人の独立性を保障しつつ、新型法人の意思決定等を制度的に共有する仕組みをどのように作っていくかです。左上のブロックから順番に御覧いただければと思いますが、左上ブロックの一番下、2HD法人の社員総会における意思決定について」としては、日本医師会提案の「統括医療法人」のとおり、議決権は、規模等にかかわらず一社員一議決権とすべきではないかといった御意見とか、それに似た御意見が2ページ目にも示されております。右上のブロック(3ページ)ですが、4「社員法人がHD法人の意思決定に従って運営することの制度的な担保措置について」として、社員法人の社員の過半数をHD法人及びその理事が占めることについては、HD法人に支配されるということで、医療又は介護の機能を一方的に処分、分割、再編することなどが行われるおそれがあるという御意見です。5の「脱退に係る仕組みの整備について」としては、社員総会又は理事会の過半数を握られている状態では、現実には脱退は困難であるという御意見です。

9ページの「2」「非営利ホールディングカンパニー型法人及び社員法人の間で、資金の融通を行う仕組みをどのように作っていくか」とか、「3」新型法人における非営利性の確保等をどのように図っていくか」です。例えば、1HD法人が非営利性を確保する」としては、HD法人は配当を行ってはならず、HD法人と社員法人との間などで資金を融通する場合において、剰余金等の配当とみなされる行為を行ってはならないとすべきだというような御意見です。右上のブロックの2HD法人の社員における権利・義務について」ということでは、例えば、個人が社員としてHD法人に参加する場合は、個人立の病院・診療所の開設者を社員としてはどうかということや、3HD法人の社員法人について」としては、国立病院、自治体病院その他公的医療機関等は、いろいろな広域的な組織でありますので、法人本部の意思決定が地域医療ビジョンなどと相容れない場合も考えられるため、本部機能から切り離す必要があるのではないかといった御意見です。

10ページです。「4」として、新型法人の地理的活動範囲を定める地域要件を設けるべきかということです。御意見として、HD法人制度の趣旨は、地域に根差してきた医療法人等の横の連携を強化していくということであれば、地域の概念については、日本医師会提案の「統括医療法人(仮称)」のとおり、地域医療構想の構想区域とすることが最も妥当ではないかという御意見です。「5」新型法人が制度の目的等に従って設立・運営されることを確認するための仕組みとして、どのようなものが考えられるかということです。例えば、HD法人の設立・合併・解散は、都道府県知事が認可すべきではないかという御意見とか、「6」比較的規模が大きくなる新型法人について、その透明性及び適正性の確保を図っていくべきではないかということです。HD法人は、医療法人会計基準における「関連当事者」に関する開示を行うべきではないかということです。「7」仮称とされている新型法人の名前について、どのようなものがよいかということで、統括医療法人、非営利総括医療法人等という御意見をいただいております。「8」「その他」として、もう少し具体的に分かるように説明してほしいとか、まだよく分からないということとか、メリットとしてどういうのがあるのかという御意見もいただいています。

 細かい所まで時間を頂戴して説明させていただきましたが、前回、2か月前の御議論は以上のとおりです。特に最後の「その他」の部分で、「もう少し具体的に」という御意見を一定程度いただいていることもあり、12ページ以降に、たたき台として「新型法人の具体的イメージ案について」を用意いたしました。

13ページを御覧ください。新型法人設立の趣旨・期待できる効果としては、どのようなことが考えられるかということです。「新型法人設立の趣旨」ですが、新型法人を設立し、既存法人の独自性を一定程度保障しながら、グループ全体で意思決定を一元的に行って複数の医療法人等を一体的に運営していくこととすると、地域の医療提供体制における医療法人等間の横の連携を強化し、競争よりも協調を進めることで、病床機能の分化・連携を行い、地域包括ケアをさらに進めていくことができるとともに、医療資源(ヒト・モノ・カネ)を効率的に活用することで医療提供体制を確保することにつながるのではないかということで用意いたしました。さらに、「期待できる効果」ということで、以下の効果が考えられるのではないかということです。医療等サービスの向上(地域包括ケアの推進)と、法人の経営効率の改善等(医療提供体制の確保)に分けております。

 医療等サービスの向上の部分ですが、新型法人において、参加法人を含めた運営方針を決定し、医療資源等を効率的に活用することにより、地域住民に対する医療等のサービスを向上させることです。具体的にはその下のポツで示していますが、当該患者の症状に合ったグループ内医療機関の相談・紹介、グループ内医療機関の患者情報の一元的把握、また前回からお示ししておりますが、退院支援・退院調整ルールの策定、救急受入ルールの策定、介護事業を行う株式会社に出資することによる介護事業の拡充、在宅医療・介護事業に参入の医療法人が事業を新たに実施、この場合はグループ内からノウハウや資金を入手することによって新規事業として拡充してやっていくということです。

 一方で、法人の経営効率の改善等としては、グループの一体的運営によりヒト・モノ・カネを有効活用し、各法人の経営効率を改善させることで、医療提供体制の確保を図るといった内容です。これも具体的に申し上げれば、ヒトの部分では、グループ全体の採用・人事異動、グループ全体での従業者のキャリアパスの構築、ヒトとモノと両方では、管理業務・共通業務の一括実施(統一システム、共同研修、共同物品購入、庶務の共同化)、医薬品等の共同購入・シーツのクリーニング等を一括で行う株式会社に出資して連携を深めていく。また、カネという部分では、グループ内の資金融通(貸付等)の実施とか、それら全体を統合する総合的な意味合いとしては、グループとしてのブランド力(信用力)を獲得していくといった効果があるのではないかと考えております。

14ページです。以上、申し上げた内容を具体化して、適切な制度としてはどうするのかというところで、「新型法人制度のガバナンスとして、どのような仕組みが考えられるか」ということです。今申し上げたような趣旨及び効果を考えるにあたっては、新型法人と、一番下の点線で囲んだ参加法人として、医療法人A、医療法人B、その他の法人があります。そういった所に対し、運営方針の決定ということで、上の新型法人で決定をして、それが参加法人も含めて実施していくという仕組みがあれば、先ほど申し上げたものの実行につながっていくのではないかという趣旨です。

 新型法人としては、これまで議論していく間で、左側の社団型のイメージが多いという感じを受けておりますが、一方で財団型のようなものもあり得るのかと思っております。これは現行の医療法人にも社団と財団とあるということのパラレルです。左側の社団型では、社員総会が意思決定をします。そこに参加法人としての医療法人AB、その他の法人Cが、社員ABCというふうに入っていくということです。ここで決定した事項を理事会(執行機関)に対して指示していくということです。

 一方の財団型は、基本的な枠組みは近いのですが、この場合、自然人が入ることを想定しており、評議員会と理事会があります。理事会が意思決定機関ですが、その上の評議員会が監督機関ということで、一定程度の意見をしていくという位置付けになっております。その中の理事・評議員、それぞれABCを入れておりますが、そこの中には先ほどの一番下の参加法人としての医療法人ABCの中から役員がそれぞれ入っていくということで、事実上、参加法人を縛る形、参加法人の意見が反映する形での評議員及び理事の構成になるのかと思っております。

 それに付け加えて、社団型、財団型とも、地域協議会(地域関係者)の方々に入っていただくことによって、意見を言うような仕組みはこれまでもいただいておりますので、そういう方々も入っていいのではないかという形です。社団型ですと右下に、財団型の場合は評議員の中に続けて書いておりますが、地域の方々の御意見を反映する仕組みも必要ではないかと思っております。

 それに加え、上の新型法人と下の参加法人を結び付けているところで一番大きな部分としては、真ん中の左下の両矢印の形で示していますが、「重要事項の協議・承認」という仕組みが必要ではないかというイメージです。重要事項と申しますのは、その右側の点線の四角の中ですが、予算、借入金、事業計画の決定・変更、定款(寄附行為)の変更、合併、解散、その他重要事項を協議・承認することですし、場合によっては役員の選任、社員の入社・除名なども協議事項に含めて考える。最後の1つは協議事項としないことも考えられるという表現をしておりますが、こういったところで、新型法人と参加法人の結び付きを深めていき、強くしていくということです。13ページの「期待できる効果」のところで申し上げた意思決定ができることの担保、仕組みということで、セットで成り立っていくのではないかということです。以上、たたき台として御用意したものです。

○田中座長 なお、本日は日野委員から新型法人に関わる意見を書面で提出していただいております。日野委員、この資料についての説明をお願いいたします。

○日野委員 先ほどの御説明にあったことですが、この制度を早急に立ち上げなければならないという課題が非常に重いという印象を持っております。何よりもネックになると思われるのは、医療法人制度と社会福祉制度で、そんなに短期間で、これが制度整合はできるのかどうかということが、非常に危惧されるところです。中を読ませていただきます。

 まず、何のために検討するのかということが、会員内でのひそひそ話の段階ですが、よく分からないというのは先ほどの御説明にもあったとおりです。まず、目的が何であるのかをしっかり検討しなければいけないのではないかということです。

 課題として与えられているのは、現況として非常に財政が匹迫しておりますので、どのようにそれを打開していくかという認識を持っております。国の規制を極力排し、地域医療を守る民間の高い責任と、創意工夫を伸ばしていくべき。国民皆保険を守るため、地域で効率的な医療提供体制が構築されるよう論議を促進すべき。国の規制を極力排し、公的なことがいろいろ入ってくると自由にできないということがありますので、地域医療を守る民間の高い責任と創意工夫を伸ばしていくべき。私は民間の代表ですので、民間を評価してほしいという気持ちを持っております。

 地域医療は、民間医療法人の経営責任と互いの切磋琢磨による医療の質の向上で成り立っており、国が法人経営に介入することは極力避けるべき。国は、時勢に応じて過剰となった規制を日頃から見直していく取組が必要である。例えば施設長を理事長にしなければいけないという理事長要件などは、妥当かどうかということを考えていかなければならないと考えます。

 続いて、国の規制を排除し、地域医療を守る民間の高い責任と創意工夫を伸ばしていくべき。非営利ホールディングカンパニー型法人制度は、我々民間医療法人が地域医療に対する高い経営責任と創意工夫を発揮できるものにするべき。国や都道府県といった行政が我々民間医療法人の合併を強制する手段にしてはいけない。また、新たな制度は我々民間医療法人が使いやすいものとしてほしい。持ち分あり医療法人であっても、非営利ホールディングカンパニー型法人に参画できるようにするべきである。これのガバナンスとか表決の問題は、また別の問題として残っております。

5ページの2番です。国民皆保険を守るため、地域で効率的な医療提供体制が構築されるよう議論を促すべき。団塊の世代が75歳以上となる2025年問題があります。地域包括ケアシステムを地域ごとに作っていく必要があります。その一方、64歳以下の人口が急減する中、今までの急性期医療中心の「治す医療」から、住民・患者の生活を支える「支える医療」へ大胆に転換する必要があると思っております。民間病院は診療報酬改定による政策誘導で十分に対応が可能です。舵取りが容易という特徴がございます。課題は、特に医療資源が極端に急性期医療中心になっている県庁所在地の公的・公立病院の構造転換であると考えております。

6ページの2番です。国民皆保険を守るため、地域で効率的な医療提供体制が構築されるよう論議を促すべき。若年人口が急増していたときの県庁所在地の医療提供体制の姿というのは、下の図を見ていただくと分かりやすいと思うのですが、国立、県立、市民などの公立病院、公的病院が同じように急性期医療を担っておりますが、人口構造は変わってきております。

 続いて、7ページの2番です。国民皆保険を守るため、地域で効率的な医療提供体制が構築されるよう論議を促すべき。非営利ホールディングカンパニーをつくり、全ての公立・公的病院を一本に束ねるという、この1つのつながりの図が太い線で結ばれておりますが、この図を御覧ください。

 次は、8ページの2番です。国民皆保険を守るため、地域で効率的な医療提供体制が構築されるよう論議を促すべき。非営利ホールディングカンパニーにおいては、各法人が参加するかしないかは自由意思で決めるべきだと考えており、下の図のように、各々がホールディングカンパニーに所属するという形を採るほうがいいのではないかと考えております。

 最後ですが、9ページ目の「求められる医療機能の再編成」の一番核心的なものはここにあります。現在ある急性期機能というのは医師のロマンでもあるので、たくさんありますが、同じような急性期病院が乱立している現在の状態を左の図に示しております。右の図は、真ん中にあるホールディングカンパニーを中心として、高度急性期機能から慢性期機能まで全てをカバーするということを考えるべきではないかというのが、医療法人協会の考えです。

○田中座長 まず、全体を通して御意見、御質問があればお願いいたします。

○今村委員 今の日野委員の提言については、また後ほど私見を申し上げます。

 まず、前回私ども日本医師会は非営利ホールディングカンパニー型法人構想に対して、対案として統括医療法人(仮称)を提案させていただきました。その趣旨ですが、医療の非営利原則といったものを堅持しながら、地域医療ビジョンの策定により、医療機構の分化・連携を強めるとともに、日本の医療を中心的に担ってきた地域の医療機能が、地域包括ケアシステムの構築に向けて機能を発揮できるよう、健全な育成を推進する。このことは厚生労働省の考え方とも、全く整合するものだと考えております。

 私どもの提案というのは、前回までの御意見から、委員の先生方には大筋で御了解、御了承を得ていると判断しております。そういったような意味で、本日の資料に「前回の検討での議論のまとめ方」というのがございますが、これに反映していただいたということです。当局の見識に深く敬意を表します。したがいまして、新型法人に関する本検討会の議論も、今後この方向性に沿って恐らく進められていくと理解をしております。

 ところで、先ほど説明がございましたが、まず法人の在り方に関する論点というのがありました。2ページです。ここで議決権の問題、私ども1社員1票の原則というものを申し上げましたが、そのようにも読み取れるし、そうでもないという感じもございます。そういったようなところで、新型法人の議決権というのは、1社員1票であるということを改めて確認をさせていただきたいと思います。

 それから、新型法人の圏域ですが、これは「事業の在り方に関する論点」の「4」に「地理的活動範囲を定める地域要件を設けるべきか」とありますが、これからの医療については、厚生労働省も提言しているように、地域医療構想区域を単位として、地域医療ビジョンにより機能分化を進めていくことになっておりますし、医療と介護というものは一体的あるいは総合的に確保し、地域包括ケアシステムを構築することになるということです。地域医療ビジョンの構想区域は、おおむね現在の二次医療圏単位と聞いております。また、医療・介護総合確保区域は、都道府県計画では地域医療ビジョンがまだできていないということから、二次医療圏で、そしてそれとほぼ一致する老人保健福祉圏域とされており、市町村計画では市町村単位ということです。したがいまして、日医の統括医療法人案のとおり、新型法人の範囲というのは地域医療構想区域とすべきであると考えております。

 それから、「事業の在り方に関する論点」の「5」に、「制度の目的等に従って設立・運営されることを確認されるための仕組みとして、どのようなものが考えられるのか」、また「6」として、「比較的規模が大きくなる新型法人について、その透明性及び適正性の確保を図っていくべきではないか」とございます。日医の統括医療法人案では、まず情報開示の徹底を求めました。それから、外部のチェック機能として、外部監査の義務付けだけではなく、地域医療ビジョンを推進する「協議の場」、医療審議会によるチェック、それから地域の関係者で構成する委員会を設置し、適正な運営に問題がある場合は、必要に応じて都道府県医療審議会の審議事項として、そういったような仕組みを設けることを提案させていただきました。

 ところで、資料の14ページの図ですが、社団型には、地域関係者からなる「地域協議会」と書いていただいております。まず、この地域協議会の位置付けですが、法人内部に設置される新たな組織なのか、あるいは以前から都道府県や医療圏ごとにある地域医療対策協議会なのか、これをお尋ねしたいと思っております。このことについて、まずお答えいただければと思います。

○田中座長 事務局、今村委員の御質問にお答えください。

○事務局 御意見ありがとうございました。検討会という場ですので、事務局として、どの程度までというのはございますが、特に最後の御質問の関係ですが、地域からの御意見をいただくのが重要ではないかというのは、前回までの御議論の中でもございまして、そういった中で地域関係者から御意見をいただくということで、今回の14ページのイメージ図の中にも、「地域関係者」という文字を入れながら仕組みの中に入れさせていただいたところです。

 これをどのように具体化していくかというのは、当然ながら本日の議論も含めてでございますし、どのような位置づけがいいのかというのは御意見をいただきながら。今のところのイメージとしては、社団型は、理事会に対して地域関係者から意見をいただくというようなことですし、財団型は、評議員ということで、それを最初から中に入れるような形で、それも理事会に意見を言うという位置付けでは同じようなものなかと考えて、その両者の位置付けにしているというのが現状です。

○今村委員 ありがとうございました。当局のお考えでは、必ずしも法人内の組織あるいは地域医療対策協議会というものをまだ確定されていないという感じです。もし、法人内組織の場合であれば、この新型法人はその地域の医療・介護にとって、大きな影響を与えます。適正に運営されるためには、地域医師会等の医療・介護関係団体、行政、学者、そして医療・介護を担う方々で構成すべきと考えております。

 もし、地域医療対策協議会というものであれば、地域医療ビジョンのための協議の場とメンバー構成が重複するかもしれません。しかしながら、「協議の場」というのはあくまでも地域医療ビジョンを推進していくための会議体であって、新型法人の一つ一つを丁寧に見て、議決権あるいは非営利性を損なっていないかどうか、地域医療ビジョンだけではなく、地域に寄り添った医療・介護を提供する視点を失っていないかどうかを、それぞれチェックするというところまでは、なかなかいかないのではないかと考えております。

 次に、この地域協議会の機能というものを見ますと、「新型法人の理事会に意見を述べる」となっておりますが、これだけではどれだけの効果があるのかというように危惧されております。私どもの案では、「行政、地域の関係者等が監視・評価できるよう仕組みを設ける」としておりました。したがいまして、矢印の所は意見ではなく、「監視・評価」としていただきたいと思います。

 さらに私どもの案では、都道府県知事は、統括医療法人及び参加法人が営利性の高い特定のものと関係を持つようになった場合、必要な措置をとることを命じることができる、さらに、それに従わない場合は業務停止命令等ができるとしており、その実効性を担保する機能を、この地域協議会が果たせる仕組みにしていただきたいと思います。

 また、右側の財団型ですが、ここには、「評議員D(地域関係者)」とありますが、評議員のメンバー構成を見ると、チェック機能を果たすべき地域関係者は、one of themにすぎません。評議員への地域関係者の参加に加えて、やはり地域協議会を加えていただきたいと思います。

 それから、資料213ページです。これは私どもの統括医療法人では否定をしておりますが、「介護品の共同購入・クリーニング等を一括で行う会社に出資できる」と書いてあります。やはり医薬品等の共同購入等については、法人グループの枠を超えた既存の有力な選択肢。つまり医師協同組合等を活用すべきであり、非営利性を損なうリスクを抱えてまで、株式会社への出資を認める必要は全くないと考えております。

 最後に、新型医療法人の名称について、非営利ホールディングカンパニー型法人の呼び方を統括医療法人等の別の呼び方に変更していただくことを再度提案いたします。

 先ほど日野委員から御説明のあった御意見についてですが、非常に納得することもございますが、まず何のために検討するかということについては、既に閣議決定等があります。その趣旨、背景等についても述べられており、そしてこの大枠というものを本年中に合意し、来年には制度的な措置を講じるということが決定されていることについて考えてみると、改めてここで最初に戻って、何のためにということを議論するのは、少し時期を逸したとも思います。

 また、国の規制を極力排し、地域医療を守る民間の高い責任と創意工夫を伸ばしていくと。それはそうでございますが、むしろここで問題になっているのは、民間の過剰な規制緩和により地域医療が損なわれる、あるいはまた非営利原則が損なわれる、この2点が危惧されるということだろうと私は考えます。以上です。

○橋本委員 まず、当局からの資料説明、それから日野先生からの御意見、今村先生からの御意見、拝聴させていただきました。

 まず、冒頭に座長から「非ホールディングカンパニーという名前に関してはミスリーディングなので、新型法人という名前で会議内では呼ぶ」という御提案がありましたが、私もその趣旨に賛成です。

 もう1つ、先ほどの日野先生に対して、今村先生の御見解について伺いましたが、私は、むしろこの時点でこそ本質をもう1回確認した上で議論をするということはタイムリーである、決して時期を逸していないと考えます。確かに、閣議決定などにおきましては、この話が出てきたそもそもの根幹は、地域包括ケアシステムを作るという話だと認識しています。

 その点で重要になってくるのが、まず1点、前回も御指摘したのですが、なぜ老健局がこの席にいないのかがよく分かりません。関連局として非常に重要な局が入っていないままで、この議論がされていることが、まず議論の混乱を招いていると思います。

 と申しますのは、先ほど日野先生がおっしゃったように、地域包括ケアシステムで要求されているのは、慢性期も含めてですが、医療の部分だけではなく、生活を支えるための医療・介護的観点からの生活支援というものを含んだ概念だからです。その点から考えた場合、このシステムを動かすことは、医療機関若しくは介護機関だけでできるものでは決してないという認識が、これまでの議論の中で欠けているのではないかと思います。その視点を入れないと、何のために統合的な新型法人というものを必要としているのかという視点が失われるのではないかと思います。その点で、非営利型という形に限定されていますが、これについては、私はむしろ考え直したほうがいいという意見を持っております。と申しますのは、地域によって、医療や介護資源だけではとても生活支援型の地域包括ケアというものを動かすことはできない。その場合には既存の民間企業、それこそ例えばデリバリーチェーンを保つためにコンビニを使うとか、宅配便を使うとか、そういったことも含めて様々な手段を考えなければ、とてもこれは支えていくことができないと思います。

 その点で、現行の非営利と営利の間で大きな壁ができているようなもの、それから非営利の中でも法人の性質によって資金の流れや収益の分配などが制限されているものを緩やかにすることで、地域ごとの様々な創造的なものを作り上げるという視点が、もともとの地域包括ケアの概念にあるということを、ちょうど昨日、他の会議で田中座長が強調されていたところであったと思いますし、日野先生の先ほどのお話にも通じる点だと思います。

 この点もきちんと踏まえた上で、新型法人の在り方の議論を行うべきです。余り個別の細かいところに入り込みすぎてしまうと、その点を見失うのではないかと思いますので、ここで御意見させていただきました。

○田中座長 それぞれのお立場からの自由な御意見を伺った上で、まとめる必要があると思います。

○大道委員 我々医療法人は、民間医療機関は医療法人制度という資金調達の手段ができてから、自院完結型を目指して大きくなってきた歴史があります。ひと頃は総合病院がもてはやされた時代もあったわけですが、昨今は、やはり自院完結型ではなく、お互いに足りない部分を補完しながら地域完結型医療を目指そうという方向にあるのは、皆さん御存じのとおりです。今週、病床機能報告制度が始まり、いずれこれが地域医療ビジョンの根底になるものだと我々は思っております。そのときに、我々の病院の機能、病床機能をどのように持っていくかということが、今、問われているわけです。

 それは院内の事情だけでできるものでは、決してありません。そのことは多くの病院長が肌で感じているところです。それは地域全体の医療機関を見渡した中で、患者さんの中における自院のポジショニングをはっきりさせて、方向性を誤らないように持っていかなければ、恐らく駄目なのだろうと考えています。

 そこで、少し話は変わりますが、大阪にタコ焼きの会というものがございます。大阪らしいネーミングですが、これは病院の地域医療連携室のネットワークです。発足して67年と聞いているのですが、恥ずかしい話ですが、私は病院長でありながら3年前までその存在を知りませんでした。それほど、現場の中でできてきたネットワークなのですが、4050ぐらいの病院が加盟していて、病院の母体は問わず、国立系も、自治体系も、民間病院も入っています。その中で患者さんの連携、患者さんの医療の継続と現場での仕事をスムーズに運ぶため、この2点で彼ら、彼女らは連携を組んでいるわけです。

 実は、こういう連携というのは大阪府内で、あと4つか5つぐらいあるみたいです。年に1回、そのうちの何グループかが集まって、大体300400人ぐらいの規模になるらしいですが、勉強会をやっているというのです。「ちょっとそこに出させてくれ」ということで、今度私は行くのですが、意外と病院長が知らないうちに、もう現場ではそういう話は進んでいるわけです。

 そういう情報が、我々は病院長として自院の病床をどう持っていくかというのが非常に重要になっていくわけで、最終的にはこれが地域にフィットした機能の分化につながっていくというのが、一番健全な方向だろうと思っております。

 ですから、病院の役割分担であるとか、医療機関の連携に関して、資金供与をするからそれができるのだという方向ではなくて、もっと違う、スマートなやり口があるのではないか。もうこれは恐らく大阪だけの話ではないと思います。全国に、こういうネットワークは数多あると思います。我々が知らないだけだと思いますので、もっとそこに力を入れることによって、お金がかかる話ではないですから、現実的な機能分担というのは進みそうな予感がいたします。

 ですから、新型法人について、何のためにこれがあるのかということを考えるに当たっては、やはり役割分担というものを第一義的に考えるのではなくて、ほかの目的があるのならば、そちらのほうを前面に出されたほうが我々にとってはかえって分かりいいのではないかなと思います。

○田中座長 貴重な現場の御紹介をいただきました。

○浦野委員 この新型法人について、例えばということで先ほども御紹介がありましたが、地域のコンビニエンスストアあるいは宅配業者というところも含めて、ネットワークを作っていくことが、正に地域包括ケアという観点から、極めて重要なのだろうということはよく分かります。

 ただ、よくよく制度設計のときに考えていただきたいのは、主客が転倒してしまい、営利法人が実質的に支配するような構図を作ってしまうと最悪なのだろうと思うのです。そこの歯止めだけは制度設計で十分にやっていただきたいと思います。

 そういう意味で、地域の協議会というものも絵柄として出ておりましたが、これについては今村委員もおっしゃったように、単なる意見でいいのかというと、確かにそれは弱いのだろうと思います。もう少し影響力のある形で、地域の協議会を設置する必要があると思います。

 それと、この地域の協議会というのは確かに今村委員がおっしゃったように、当然医師会の関係者の方たちがお入りになるというのはよく分かるのですが、そういったプロフェッショナルだけではなく、それ以外の人々、むしろユーザーにより近い人たちもきちんと入れていくということが必要なのだろうと思います。プロフェッショナルとユーザーと、どちらも大切なのだろうと思っておりますので、そこも少し御検討いただきたいと思います。

○田中座長 私も委員として確認です。私は「非営利ホールディングカンパニー型法人」のどこに引っ掛かっているかを説明すると「非営利」ではありません。「ホールディング」という言葉が変なのと、「カンパニー」という言葉を入れたくないと言っているので、親法人は非営利であるべきと考えます。橋本先生には少し飛んだ意見を言っていただいたけれども。

○橋本委員 飽くまでも、非営利を中心にして営利と組めるような形を作れという意味で申し上げました。

○田中座長 親法人に営利性を入れようとは、橋本先生も思っていないし、私も思っていません。HDのほうが言葉としてふさわしくないと取ってください。せっかくですので、全員の意見を伺いたいと思います。梶川委員、お願いします。

○梶川委員 私も今の座長のホールディングという、正にこれは、持分権に基づく、支配という言葉はきつすぎますが、影響力を与える概念だということですので、標榜するところがまずそうではないだろうということは1つあると思います。

 その中で、これを考えていく上の基本的な発想として、まずこれは皆様方参加者の自由意思に基づいて、こういう制度設計、組織を作ろうとしているという、この大前提があります。それに基づいて、ある種の持分による統合ではないので、協約とか協定という、かなり自由な約束事の中で作られていく制度なのかなと思います。ここの部分は、物事をこの先考える上で非常に大きいのではないかと思います。

 そこから考えますと、こういう制度ができたためのデメリットの心配が、当事者的には出てくるかもしれませんが、むしろこの制度をいかすためのメリットのほうを強調できる形の制度設計にしていただければなと思います。というのは、これに参加するかしないかは自由意思なわけですから、当事者的なデメリットがという場合には、退社の自由であるとか、退社するときに損失を被らない、自身が今までに供与した何かの経済的便益を損なわないというような制度にされれば、逆に不都合があると思えば外に出られるという意味でいえば、こういうパブリックなサービスを効果的、効率的に提供できる1つの選択肢として制度ができていくと考えられます。この観点は私は非常に大切になるのではないかと。

 そういう意味では、これは組織統合の形では、まず一番上部のガバナンス機関の議決権といってはおかしいのですが、意思決定ルールがどのような形であるか。ただ、これは非営利という大前提があって、持ち分に基づく比例議決権を持たないということですから、基本的にはそこの議決権部分というのは社会的な納得性のある人員構成に基づいて、財団型で言えば評議会かもしれませんし、社団型で言えば社員総会というものが行われるのかなと。

 ただ、そこに関してはそういう社会的な公正性ということで見ていくとしても、その下の理事会とか、更にその事業法人に関する影響力をどのように考えていかれるか。これは前回のときにも少し申し上げたのですが、なかなか各事業法人の当事者の御意見が、非常に民主的に議論されることはすごく大切なのですが、その統合された組織を効率的、効果的に運営するというのは、どうしても運営責任者に一旦、意思決定権限を委ねていかないと、効率的な組織運営はしにくいということはどうしてもあります。特に、例えば人事を交流させたいとか、そういう幾つかの要件の中ではです。そうすると、理事会サイドでは、事業法人に対して一定の影響力を担保する仕組みというものは当然必要になるのではないかと思います。これは生々しく言えば人事権みたいなものになってしまうのかもしれません。これは役員の選任とか、そういうときにどの程度一定の協議なり、ないしは選任できるのかみたいなことというのは、少しお考えいただければと思います。

 私は、どちらかといえば自由意思で参加ということと、信頼感が大前提にあるものですから、効率的な組織運営のためには、一旦、一定の人事に対する影響力を理事会なりに持っていただくということが、組織運営上で重要になるのではないかなと。

 その上で、先ほど来の社会からの関与というものをどのように担保されていくか。先ほど医師会の今村先生がおっしゃられた地域協議会なり何なりを組織内ないしは組織外でどのようにされていくか。さらに広域の従来地域医療協議会のような形ですが、財団の評議会レベルでの組織内部での関与というのは、一義的には割と効果的な部分があるのかなと。ここの段階で、私どもは違う分野から出てきているものですから、本当は組織運営に知見のある方々も、本当は是非入れていただければと思います。もちろん一般の有識者ということもありますし、医療に対する有識者、地域に対するそういう方もありますし、かつ組織運営に知見のある方を入れて評議会等ができていけば、さらに理事の中でもそういう方がおられれば、全体の効果的、効率的な、本来の組織を作る目的に適うのかなという気はしております。前提条件からの認識を含めてお話をさせていただきました。

○田中座長 論点の整理をありがとうございました。

○松井委員 新型法人の前提について、2点お伺いしたいことがございます。どういう目的でこの法人を認めていくのかは、ある程度13ページ等で御説明をいただいているのですが、実際にこれを動かすとなったときに、もともとの趣旨とは違う使われ方をすることが一番怖いのです。その関係で、第1点目として、仮にこの制度を認めた場合、誰がどのような目的でこの法人を作るのかというのが、まず気になるところです。

 このことは、先ほどの今村委員のお話にもございました、社員がどういう議決権を持つかということにも関連してくるのだと思います。例えば、ある地域で事業の重複があったり、あるいは足りないところがあったりして、当事者がそれぞれ補完関係にあるという場合をかんがえてみますこれらの当事者間に良好な関係ができ、自動的にパートナー的なものになり、そして新型法人に移行するというのであれば、非常に美しい形だと言えます。こういう例では、それぞれがそれぞれの認識に応じて合意を行い、法人を設立するでしょう。議決権につきましても、当然、1社員1議決権であるべきですし、それぞれが必要な範囲で新型法人に決定等を委ねればいいという形が考えられます。

 他方で、この法人を認めると、それ以外の使われ方もあり得ると思います。例えば、大病院が規模の相対的に小さな病院をどんどん飲み込んでいく、あるいはある事業者が野心をもって事業を拡大したいときにこれを使うといった、様々な形があると思うのです。ですので、誰がどういう目的で新型法人を設立していくのか、この辺りをどう想定されているのかというのが非常に気になるところです。事務方にお伺いするのがよいのか、現場に近い方にお伺いするのがよいのかはよく分からないのですが、それが1点気になったところです。

 次いで第2点目として、新型法人について、社団型と財団型の2つを御用意いただいているようです。社団型が用意されている理由は比較的理解しやすいのですが、財団型というのは、特にこれを認めなければならない理由、つまり法人を設立するときに財団の型を取らざるを得ない場合というのが、そもそもあるのでしょうか。単体の医療法人で、社団、財団があるというのは比較的分かりやすいのですが、新型法人、いわゆる統括的な法人を作るときに、社団と財団の両方を認めなければいけない理由に何があるのかが気になりました。

○田中座長 事務局、お答えできますか。後者についてはお答えください。

○事務局 まず、後者の財団型の関係です。社団型が、参加法人たちがそのまま社員になるという形で構成していくということで、ある意味で現行の参加法人、医療法人をベースにしたようなイメージで、社団型というのは合意して出来上がっていくのかなというものです。一方で、違う成り立ち方ももちろんあるとは思うのですが、今、申し上げたのが社団型のイメージです。

 財団型でも、今、言ったようなイメージから成り立っていく場合もありますが、今、委員が「野心家」とおっしゃられておりましたが、誰かしらのカリスマ的な方を中心に集まっていくといった場合には、もともとの法人というものが必ずしもない場合があるというところになると、財団型的な発想で、最初は1人なり何人かの自然人たちを中心にして、財団的なものを意思決定していくというパターンもあるのではないかという発想から、そして現行での医療法人は、社団、財団の両方あるところを前提としますと、法人の成り立ちというのはいろいろなやり方があるのかなということです。この新型法人も同じようにパラレルで考えていきますと、同じようにいろいろなパターンがあり得るのではないかということを考えますと、いろいろな方たちの御要望にお応えするという意味で、社団だけではなく財団型のようなパターンもあり得るのかなという思いで、たたき台を御用意させていただいたという趣旨です。

○松井委員 そうすると、自然人等も加わって新型法人である財団を作るという場合、この法人自体が一定の医療事業なり介護事業なり、そういう事業を行う可能性もあるということですか。

○事務局 新型法人の業務をどこまでにするのかというのは、またいろいろと御意見のあるところかとは思いますが、新型法人として参加法人の調整だけを行っていくのか、もう少し自分たちなりに事業を行っていくのかというのは、自分たちで行っていく場合というのも否定する話ではないのかなというような発想です。みんながやりにくいような新規事業をあえて新型法人が直接にやるという場合も、否定するという話ではないのかなということです。もちろん、この検討会の中で、皆さんがどういうようなお考えかで変わってくる部分でもありますので、その点はどうかという話ではないのですが、取りあえず、いろいろなパターンがあり得るという発想から、今回の財団型というパターンも、今、申し上げたようなことも含めて考え得るパターンということでお出ししております。その中からどういう形がいいのかということで御意見をいただければなと考えております。

○土生総務課長 今の先生の御指摘に十分に答えられるかというのはあるのですが、前回の第5回の資料の20ページを御覧ください。具体的なイメージというか、誰が中心となるかということで例示を出させていただいております。これだけかどうかということと、若干きれい事になっている部分もあるのかなという感じはいたしますが、自治体中心型、これは自治体が何らかの出資をするようなことも含めてイニシアティブを取っていくということです。それから、野心家というのか、地域の中でカリスマ的なもの、あるいは中核を担っている医療者ということで申し上げますと、中核病院中心型ということで書いています。それから、誰が中心というか、医師会、団体の中で、こういう法人が必要だというようなことでできてくるものが、地域共同設立型ということで、こういったイメージで事務局では議論をしているということです。

 社団、財団の話ですと、医療法人の多くは社団というのが現実ですが、財団でやっておられるところもあるわけですし、こういったイメージの中で申し上げますと、例えば自治体が出資をして中核的に形づくっていくということになりますと、地域を代表するような方を中心としながら最高意思決定機関を構成していくこともあり得るのかなということで、そういった意味で社団型、財団型というイメージを、今回提出させていただいたということでございます。

 多くは、社団が中心になるのかなと思いつつも、財団型というのも選択肢としてはあり得るのではないかという程度で、事務局では議論しておりますので、また様々なお立場から御意見をいただければと思っています。補足をさせていただきました。

○今村委員 先ほど松井委員が言われたことで、いわゆる善意と言っていいのでしょうか、皆が足りないところを補完するような形で融通し合って、地域医療の再構築に寄与するといったところでやれれば、この問題は何もないのです。そうではない危惧があるから、こうやって検討しているということで、この問題については、当初は私も日野委員と同じように、この考え方自体をやめたらどうかと申し上げました。メディアに向かっても申し上げましたが、それにもかかわらず、この検討会というのはどんどん進んでいく。そして、先ほど今後のスケジュールでも言われたように、年末には取りまとめという、引き返しのできないところまできているのです。

 その中で、厚生労働省も提唱している地域医療構想をどのように考え方と整合させていくか。悪貨が良貨を駆逐するような状況にさせないためにも、医療の非営利性というものをどのように担保するかということを提言しているのであって、このもともとの考え方をくつがえす時期ではないのです。だから、日医としても、当初はただ参加して、議論の行方を見守るということにしていたのですが、そのスケジュール観を見て、これは大変なことになるということで、私どもも総力を挙げて私どもなりの判断をして、提案をさせていただいているという状況です。日野先生のもともとの御提言というのが、3回前ぐらいの日医の考え方でもあったわけです。そのことは申し上げたいと思います。

○猪熊委員 新法人を作ることになった場合、新法人設立の趣旨は、13ページに書いてありますが、地域の医療提供体制で横の連携を強化して、競争よりも協調を重視する、病床機能の分化・連携、地域包括ケアの推進、医療資源の効率的な活用を図るということで、趣旨としてはこういうものだろうと思います。趣旨を考えると、圏域をどうするかという問題は、地域ごとに定めるということをはっきりさせておいたほうがいいだろうと思います。極端に言うと、全国1本でよいなどということではなく、きちんと圏域は地域であるということをクリアにしていおいたほうがいいと思います。

 それと、利用者や患者、家族の声が、やはり、よく反映されるような形にしていかなければと思います。病床機能の再編という話になると、自分の住んでいる地域で、急性期病院をどこに置くかとか、今まで通っていた急性期の病院が慢性期に変わらなければならないなど、結構厳しい話も出てくると思うので、地域住民の合意が非常に重要になってくると思います。利用者、患者、もしくは、そういうことをよく分かっている方が、地域協議会の中に入って、意見をきちんと反映させるようなシステムにすることが大事だと思います。

 非営利性の話は、先ほどお話があったように、コンビニなどの民間企業の力を入れることも必要ですが、しかしながら、医療と介護というのは正に準市場(クアジマーケット)で、純粋な営利で運営していくものではないので、非営利性というところの確認はきちんとしておいたほうがいいと思います。

 名前なのですが、どういう名前がいいかはなかなか難しいのですが、そもそも「地域包括ケアシステム」という言葉一つとっても、一般の人から見るとかなり難しいという話があります。特に、「包括」という言葉が一般の人にはなじみにくいという声を聞きます。そこで、東京都武蔵野市などは、「地域包括ケアシステム」を「まちぐるみの支え合いの仕組みづくり」と独自に言い替えています。「統括」や「包括」といった難しい漢字をできるだけ使わない、良い名前ができないかと思います。

 あと、2点。先ほど老健局がないのはなぜかという話がありました。社会・援護局の方はここに出席していますが、老健局、あるいは、今度、医療介護連携政策課という部署が保険局内に出来たと思います。ここは、医療法人の事業展開等に関する検討会であり、医療中心ではあるのですが、地域包括ケアシステムをきちんとやろうということであれば、これは、医療、介護、本当は住宅も含んだ大きな話ですので、私も何らか、そういった担当部署をここに呼べればと思います。

 最後に、新法人への参加は自由ということなのですが、将来の日本の医療財政を考えると、新法人が理念通りにうまく進むようなら、拡充する必要も出てくると思います。現時点で、法人に手を挙げてもらうようなインセンティブは、どのようなものがあるのか。以前開かれた社会保障制度改革国民会議のときには、基金でインセンティブを付けるという話もあったかと思うのですが、この新法人が実際にスタートする場合に、どのようなインセンティブが考えられているのかということを事務局にお尋ねしたいと思います。

○田中座長 インセンティブについて考えているかという御質問がありました。

○事務局 我々は当面、現状として考えさせていただいているのは、先ほどのメリットというところで、13ページの「期待できる効果」ということです。いろいろな効果の中で、例えば法律を新たに策定することによってできるという内容も含んでいます。ある意味、この一つ一つがメリットになっていくのではないかと考えておりました。

 御指摘のような話であれば、例えば、税制優遇的なものについても何かしらのものが用意できないかなどという点では、税務当局とも相談をさせていただいている部分ではあります。そういった中で、先ほどの法律改正、法律制定による新しく出来るインセンティブであったりすることなども含めて、ある意味、メリットというか、参加していただくことができるような仕組みにできればと考えております。

○西澤委員 これから議論するための幾つかの疑問というか論点を述べたいと思います。今までの話の中で、メリットの1つは、きちんとした地域でのネットワークを作ることだというのですが、そのためには、この新型法人がなくても今はネットワークは出来ているわけですから、あえて作る必要はないのではないかという疑問が1つあります。そうすると、このネットワークを作るということと、一体的な経営を可能とする法人というものを、個々で議論して、それをどうやってうまくミックスして持っていくか。これは非常に難しいのですが、そこをはっきりしないと、この制度はうまくいかないと感じております。

 それから、やはりこの新型法人自体の経営は解りますが、基本的には一つ一つの社員法人があって、そこがそれぞれ経営しているということですよね。これはすごく大事なことで、何となく新型法人全体が良ければに見えますが、そのときに、個々の社員法人全てが良い方向に行くのかどうか。その辺りも議論が必要ではないかと考えております。

 それから、1つの地域の幾つかの法人が集まって新型法人を作るのですが、例えば私の法人などでも、病院は小病院なのですが、介護事業所を入れると、やはり、札幌だけでも10数事業あります。このような法人が10集まれば、事業所だけでも3桁の事業所になります。そういう中で、どうやって調整していいのかというのは非常に疑問に思いました。特に介護というのはすごく小さい事業で、同じ狭い地域で競合しています。そういう問題も、これから議論が必要ではないかと思っています。

 それから、新型法人が地域に幾つか出来たら、新型法人の中では競争よりも協調なのですが、逆に、新型法人同士の競争というものが出てきたら、これは余り意味がないのではないか。その辺りはどのように考えたらいいのか。医療圏と言いますが、実は今、医療圏を超えて事業所を持っている法人が、特に民間医療法人には非常に多いです。そういう場合はどうか。

 例えば、北海道では21医療圏がありますから、医療圏をまたがった病院を複数持っている法人があります。そのような法人はどういう扱いになるのか。それぞれの医療圏ごとで、そこでやっている事業だけでなるのか。そうであれば、法人単位の参加では無理ではないか。そういう議論も必要ではないかと思います。以上、今回新型法人をしっかりしたものにしていくために、是非議論していただきたいということで申し上げました。

○田中座長 今のは質問ではなくて、そういう論点で議論せよということでよろしいですか。

○西澤委員 質問ではなく、そういうことです。

○田中座長 ありがとうございます。

○川原委員 少々細かい論点でもよろしいでしょうか。13ページです。いろいろな役割がこの新型法人には求められているということで、「期待できる効果」に幾つか記載されています。これらのことをきちんとやろうとしていった場合には、基本的には本部機能がきちんとコントロールできていないと、なかなかこれらが絵に描いた餅にならざるを得ないと思います。本部機能を充実させるためには、現在、「資金の融通」のところに、寄付、貸付、保証債務、債務の引受の4つが例示されていますが、本当にこれらで足りるのかというところは1度議論していただきたいと思います。

 なぜかと言うと、この中で一番やりやすいのは寄付だと思うのですが、寄付についても税務上の損金算入限度額などのいろいろな制約があったりしますので、それらの制約をどういうふうにするか。先ほど、税制上のインセンティブをというお話がありましたが、それらがあったにしても、もう少し資金融通ができて、きちんと本部機能を果たせるような仕組みは検討していただきたいと思います。

 続いて名称なのですが、猪熊委員も難しいとおっしゃられたところです。ただ、名は体を表すというところで、これは私見なのですが、地域連携医療法人などといった辺りはいかがでしょうか。地理的要件での「地域の」といったところでの「地域」と、あと、設立の趣旨のところでも「連携を強化」という記載がありますので。少し思ったことを述べさせていただきました。

3点目です。先ほど自治体中心型というお話があったのですが、自治体病院がこの中でどう取り扱われるのかという辺りを最後にお聞きしたいと思います。

○田中座長 自治体病院に関する御質問にお答えください。

○事務局 自治体病院の取扱いということですが、14ページの図を御覧ください。法人形態と自治体病院自体が必ずしも同じでない。自治体病院が法人でない場合にどうするのかという疑問であれば、その辺りについては現在検討中というか、どういった形があり得るのかというのは、今後考えていかなければいけないと思っております。14ページでお示ししているのは、その参加法人で、「その他の非営利法人C」というものを設けておりますが、法人を前提としたような形で、新型法人制度全体をイメージしております。御指摘のような話は確かにあり得ますので、どういった形でやるのが一番整合性が取れるのかということも含めて、また御意見をいただきながら、事務方としても検討していきたいと思っております。

○田中座長 地域の医療連携の上で、自治体病院は大切ですから。ただ、法人になっていない自治体直営病院の場合にどういう形で入るか、大変良い御指摘です。これは地方独法ならばこの図に適うのですか。

○事務局 その他の非営利法人という形で今は書いておりまして、社会福祉法人を例にしていますが、「等」という中でそういったものも含んでやり得ることはあるのではないかと思っております。これもまた、どういう範囲がいいのか、そして、それが制度としてきちんと成り立つのかも、また引き続き御意見をいただきながら検討していきたいと思っております。

○今村委員 参加する社員の問題で、前回、私どもは社会福祉法人なり何なりにしろ、その法人自体が医療をやっていることが前提だと申し上げました。というのも、そのほかの介護事業等については、既に非営利性は担保されないというか、それを目的で事業展開している状況なので、医療機関を経営していない社会福祉法人を新型法人の参加法人として認めることについては、そもそもの考え方と矛盾が出てくるということで、いろいろな社会福祉法人が参画するにしても、その法人自体が医療をやっていることを前提とするべきだと考えます。

○橋本委員 それに関しては、多分、御意見があるのではないかと思います。もともと、地域包括ケアということを考えている中の1つは、医療と介護をどうくっ付けるかという話があると思います。先ほどから私は、何か今村先生に反発しているようにばかり見えてしまっているかもしれないので、図として御理解いただきたいこととしては、要は、この議論が、もともと地域包括ケアという非常に大きいタームを実現するために、というところは、皆、完全に理解できているのだけれども、まず冒頭で田中先生もおっしゃったように、ホールディングカンパニーという名前がミスリーディングであるために、経営統合の話のようになって議論が混乱し、だけれどもその言葉に縛られる形でスケジュールだけがどんどん進行していく過程の中で、本質的な議論が途中で飛ばされたり戻ったりを繰り返している形で、ここまで議論が来ているということを共有しておく必要がある。ちょうど人事異動もあったので、是非、この会において二川局長と福島審議官にも御理解いただいた上で、残りのスケジュールで何が達成できるのかということを少し現実的に見ていただく必要があるということを、1つ申し上げたかったというところです。

○田中座長 整理をありがとうございます。

○山崎委員(千葉委員代理) ひととおり、前回までの資料は目を通してきたつもりなのですが、なかなか難しいところがたくさんあって、少し見当違いがあるかもしれません。もともとのところは、医療と介護の包括ケアという話がありますが、この新型法人がそのまま地域包括ケアとイコールではないと思うのです。地域包括ケアの一部を構成するものなのです。

 では、それはどこまでの範囲なのだといえば、例えば、コンビニ、宅配などのいろいろなものは、ある意味、地域包括ケアの中の地域福祉の部分なのであって、医療、介護、福祉の福祉の部分までがこの中に入ってくる話なのか。つまり、ここの構成員たる法人が、社会福祉法人、医療法人等となっていますが、この「等」が、一般法人、一般社団やNPOといったものまで含めていくとなると、どんどんとそういったところまで広がっていく。また、一般法人等であれば、つまり、医療や福祉でない事業もたくさんしている。社会福祉法人にしてみても、介護でない障害福祉の部分等も行っている。その辺りの所は、事業内容のどこまでが、この新型法人の適用なのかということは、やはり整理されるべきだと思うのです。

 それから、私が分からないのは、一人医師医療法人のところはどのように整理をされていたのだろうと。つまり、診療所の医療法人です。地域包括ケアのことを考えれば、在宅診療等の中核になっているのは正しくそういう一人医師医療法人の診療所等です。その辺りのところもここの中に、医療法人として枠付けとして入ってくるのかどうなのかというところです。その辺りの整理はどうなっているのだろうと。今後、そこもきちんと整理しないと、地域包括ケアということを考えた場合には、整理すべき点が残っているように思います。

○田中座長 ありがとうございました。一人医師医療法人についてはいかがですか。

○事務局 一人医師医療法人も医療法人という形態ですので、現在、この14ページの一番下の中の医療法人ABに該当するということを念頭には置いておりました。それもまた、いろいろな御意見をいただきながら、今後どういった形でやっていくのかは考えていきたいと思っております。

○梶川委員 少し技術的な観点になってしまうかもしれませんが、こういう法人は、営利と非営利の理念的な形はすごく大きいと思うのです。その理念的な部分を、では、どういう形で営利性等の介入が起こり得るかという、少し技術論での整理も当然要ると思います。

 その場合には基本的に、この組織として介入が起こり得るのは、1つは持ち分権の話と、もう1つは取引条件の話だと思います。非営利が営利を持ち分として持った場合は、営利からの影響は余り受けようがない。単なる資金運用の果実を得てもいいかどうかということかもしれません。ですから、基本的には営利が非営利を持った場合に一番介入が起こるのですが、ここの大前提の中で、これは今、余り議論になっていない部分があるかもしれない。特にそれは、持ち分権で支配権を持った形で持つことが前提なので、その営利事業体にいた方が、そこの協議委員になるとか、社員になったとしても、それをもって、自然人が営利事業体にいた人は別の世界の人だという話でない限りは、それは別の話かなという気がします。

 重要なのは、その取引関係の第三者性と公平性をどのように担保するか。これは多分、次の議題にも関係するのですが、いわゆる非営利の世界と営利の世界を結ぶパイプの部分の公平性なり第三者性なりが担保されれば、当然ながら、社会的に不審感を持たれるようなことは、どちらからの意味でもない。税制特例優遇を受けているという非営利の世界と、営利の世界。ですから、これは関連関係当事者のような話が出たり、また、いわゆる財務の透明性や、監視機構の外部監査などがあるのですが、そこは技術論ではあるのですが、すごく大きな理念に対しての具現化の整理にはなるのではないか。先ほど、そこだけ申し忘れたものですからお話できればと思いました。

 これはMS法人など、家族的だなどと世間に俗にある批判は、そこが公平な取引ではないということが大きな形で見えるということだと思いますので、そこのところは、具体的に御整理いただきながら、営利からの介入というものをどうしたら防げるかということもあるとは思います。

○田中座長 分かりやすい整理をありがとうございました。

○浦野委員 先ほど今村委員から、社会福祉法人は病院、若しくは老健をやっている所に限るべきだというお話がありました。このお考えについて多少異論がありますので申し上げたいと思います。

 社会福祉法人が来なくても地域包括ケアは十分にできるのだというお話であれば、そういう議論もあり得るのではないかと思いますが、正に医療と介護をセットで考えましょうと言っているときに、介護事業の大きな担い手である社会福祉法人を、門前払いにした仕組みとして出来ていくのだろうかと、いささか疑問に思います。

 特に、特別養護老人ホームであれ、デイサービスセンターであれ、相当数の社会福祉法人がやっていますし、ホームヘルプ事業も社会福祉法人がやっているものは少なからずあります。地域の中で、社会福祉法人が一切やっていませんという地域はほとんどないだろうと考えると、そもそも、この議論の出発点で、社会福祉法人は病院と老健だけだということになると、ちょっと土台が崩れてしまう議論ではないかと思っております。

 もう1点です。先ほど松井委員がインセンティブの話で、美しい話とそうでない話のようなことをおっしゃいましたが、これは、是非とも、絶対に美しい話だけにしなければいけないと思うのです。美しくない話が絶対に起きないように、相当きっちりと仕組み作りをしないと、結局、特定の人が地域一円を支配するだけの仕組みでしたみたいなことは絶対に起こしてはいけない話ですので、仕組みは相当精緻に考える必要があると思います。

○瀬古口委員 私は本日初めて参加させていただきました。過去のスケジュールを見たところ、本日6回目ということで、残りの予定をみますと今後のスケジュール案が、第8回、第9回という終わりが見えている中で、現在のこの論議を行っているのは、スケジュール的に非常に厳しいものがあると思っております。

 先ほど松井委員、梶川委員、今村委員も言われたように、やはり、美しいと言われていましたが、この制度を最後に取りまとめて、これを取りまとめたからこれでオーケーというわけでなく、確かにそこに入り込んでくる、野心家とも言われましたが、そういうところをいかに防ぐかというのが、今回の中でも大きなポイントになろうかと思いますので、是非ともこの議論をきちんと進めていただきたいと考えております。

○松井委員 いろいろご議論を伺いまして、制度的に3点ほど、ポイントになるのではないかというところを申し上げます。

 第1に、社員の議決権のあり方です。前回第5回の資料の20ページに、新型法人の具体的な使われ方のイメージを御提示くださっているのですが、様々な使われ方があるわけです。様々な参加者のニーズに応えるとなると、議決権の在り方は多様化できるほうがいいのだと思うのです。例えば、社員の中に中核になる者がおり、この者が、ある政策的な目的をもって、この新型法人を使う場合を考えてみます。そして、この法人が地域のニーズに合わせて事業目的等を掲げていたところ、これに合致しないようなことが起こりそうになったとします。この場合、その中核になる者が拒否権を発動できるようにするなど、何らかの特定の政策目的を担っている社員が特殊な議決権を持っているほうが、やりやすいのだと思います。

 ただ、このような特殊な議決権を認めると、濫用の恐れが出てきます。つまり、ここはトレードオフが存在しているわけです。今村委員が最初におっしゃったように、1社員1議決権であれば、そういう問題は非常に起こりにくい、すなわち濫用の恐れが非常に少ない制度になりますが、参加者の多様なニーズには応えにくくなる。他方、多様なニーズに応じるためには、議決権を柔軟化したほうがいいのだけれども、濫用の恐れが出てくる。1つの解決方法としては、1社員1議決権を原則としつつ、定款による別段の定めを認める、という方法があろうかと思います。ただし、定款による別段の定めが置かれた場合については、公的なチェックをかけるなど、何らかの調整手段を設けることが必要かもしれません。

 第2に、資金調達の問題です。先ほど、新型法人自体が一定の事業を行うとか、あるいは社員になっている法人等から一部の機能を請け負う可能性が示唆されておりました。このように新型法人自体が一定の医療事業なり介護事業等を行うことになると、資金需要が生じることになります。そうすると、新型法人自体の資金の確保の手段を制度的に考えておかなければいけない気がします。もちろん設立のときに出資を受ける、あるいは、外からファイナンスを受けるということがあるのでしょうが、本当に制度的にそれで足りるのかどうか、という問題です。例えば、社員である参加法人の機能を一部引き受けるのであれば、当該参加法人からの一定の資金の追加的な徴収の道を認めるのか、認めないのか。協同組合には経費の賦課という制度があるのですが、こういったものを認めるのか、認めないのか。新型法人において、このような制度を必ず認めるべきだとは申し上げませんが、そういった制度の必要性は、一応、検討しておいたほうがいいだろうという気がします。

 最後に第3として、この新型法人が参加法人をどれだけグリップするかという問題があります。14ページでは、「重要事項の協議・承認」と書いておられ、「協議・承認」の横の右の四角には、「新型法人への協議事項として考えられるもの」ということで、「協議」という表現を使っておられます。ここは、本当に、単に協議をすればいいというイメージなのでしょうか。あるいは、やはり新型法人の承認を取らないと、この四角の中に書かれている事項はやれないことになるのでしょうか。その法的な効果は、一応、設明できるようにしておいたほうがいいのではないかと思います。

 特に問題になりそうなものとして、最初の「借入金及び重要な資産の処分」が挙げられます。仮に新型法人では、ある参加法人の保有している特定の資産について、処分してもらっては困ると思っているとします。例えば、参加法人の運営している病院は重要な病院だから、我々のグループの中に置いておきたいといった場合です。ところが、参加法人の側では、もうこの病院は不要だと思っている、あるいは何らかの事情で外に切り出したいと思っている、とします。このとき、参加法人は当該病院を処分しようとしても、新型法人は承認しないでしょう。あるいは、協議をしたとしても、快い返事を出してくれない、ということになるでしょう。では、この時に参加法人が当該法人限りの判断で処分してしまった場合、これはどうなるのでしょうか。単なる協議をすればよい、ということだと、かりに協議の結果と反することを参加法人がしたとしても、何らかの法的効果にはつながらなさそうです。他方、病院の処分が承認事項に該当し、新型法人がこれを承認しなかったにも関わらず、参加法人限りでこれを処分した場合、これにはもう少し強い法的効果——場合によっては当該処分を無効とする——が認められるような気がします。ですので、この新型法人の持っている権限が、参加法人に対してどういう効果を及ぼすのか、今後の議論の中でもう少し明確にしていったほうがいいのではないかという気がいたしました。

○田中座長 今後の明確にすべき点を言っていただきました。

○日野委員 とにかくタイムリミットが目前に迫っていますので、何らかの話をまとめなければならないという立場で考えると、たくさんの意見が出ているように、費用にかかる問題、資本と言っていいのか、経済的な問題に関しては、私は今回は棚上げにして、図に示したように、各参加法人は自由に参加、あるいは退出を認める。それで、独立採算性にすると。ホールディングカンパニーとして1つにまとまることによって、実は金銭的なメリットは受けることができなくても、現在は、「パス」という制度は動いています。病院あるいは診療所にとって、大病院からの患者さんを紹介してもらえるという、これは大変大きなメリットです。

 それから、先ほどに戻りますが、資金面でどうのこうのと言うことになると、保障の問題や、あるいは財政問題に手を突っ込むという問題が起きますので、これは今回は差し控えておいたほうがいいと思います。それを1つの申し合わせにしておいて、緩やかな連合であって、1つのモデルケースとして新型法人を立ち上げてみて、緩やかに運営をしてみて、徐々に修正をしていくということでないと、意見はまとまらないのではないかと思います。

 もう1つ、社会福祉法人についての話がありましたが、これは、社会福祉法人を包括しないでこの話を進めるのは無謀だと思います。少し具体的な話になりすぎて、最初の話と矛盾しますが、このホールディングカンパニーのCEOというものの存在を仮定すると、そこがいわゆるコングロマリットの法人で、病床数もたくさんあって、なおかつ社会福祉法人も運営しているという所が長になれば、その問題もある程度解決が付くのではないかと考えます。

○今村委員 先ほど松井委員から外部資金の調達の問題と、そして、その事業体、新型法人自体が行う事業についてのお話がありましたが、これで、いわゆる営利的な事業を行うとすれば、外部資金の調達ということについては、非常に危惧があります。その新型法人自体が別の事業を行うことについては、外部資金に、そういう非営利の原則や地域医療ビジョンを壊すおそれがあるので、これは極めて慎重にやらなければいけないと私は思います。

○田中座長 あと議題が2つありますので、議題2はここまででよろしいでしょうか。新型法人の創設については、本日頂いた様々な貴重な御意見あるいは論点を踏まえて、次回の検討会において、取りまとめに向けて議論を更に行います。そのため、これまでの議論を柱立ての形で整理することを含めて事務局と相談し、また、資料を用意する予定です。次回もよろしくお願いいたします。

 次に、3つ目の議題「医療法人の透明性の確保及びガバナンスの強化について」に入ります。事務局から資料の説明をお願いします。

○事務局 資料3、「医療法人の透明性の確保及びガバナンスの強化について」を御覧ください。1ページですが、規制改革実施計画は本年6月に閣議決定されたものです。その中で何を求められているかと申しますと、中段の下辺りに黒ポツで3つあります。1つ目が、社会的に影響の大きい一定規模以上の医療法人について、外部監査を義務付けること、2つ目が、一般社団法人及び一般財団法人と同様に、医療法人の理事長及び理事について、忠実義務、損害賠償責任等を課し、責任範囲等を明確化すること、3つ目が、メディカルサービス法人と医療法人との関係の適正化など医療法人が法令遵守体制を構築するための方策です。

2ページが国会からの要請です。「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案に対する附帯決議」ということで、本年617日の参議院厚生労働委員会で決められたものです。

 最後が「国民皆保険の下で行う医療事業の経営の透明性を高めるために、一定の医療法人の計算書類の公告を義務化することについて検討すること」と言われているところです。3ページは今のものを、主な論点という形でそれぞれ文章化したものです。

4ページを御覧ください。先ほど申し上げた外部監査の状況で、各法人制度における現状はこうなっているということです。株式会社の場合は、資本金5億円以上又は、負債200億円が対象になっています。学校法人は、1,000万円以上の助成を受けている場合です。公益社団法人・公益財団法人の場合、負債については50億円以上、一般社団法人・一般財団法人は、負債200億円以上というのが現行制度です。社会福祉法人は通知に基づく望ましい形ですので、ほかとは若干違っており、資産100億円、負債50億円、収支決算額10億円といったものが対象になっております。我々医療法人関係ですが、2つ目の社会医療法人については、社会医療法人債を発行する場合は義務付けとなっております。一方、医療法人については通知ということで外部監査が望ましいのと、※で書いてありますように、負債100億円以上だと望ましいというのが現状の制度です。

2つ目の論点として挙げられているのが、一般社団法人・一般財団法人における理事の忠実義務等と同様の規定の検討です。5ページを御覧ください。現行の一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の中の規定を、まずは御紹介させていただければと思います。第83条は忠実義務です。理事は法令等々を遵守し、一般社団法人のため忠実にその職務を行わなければならないと規定されております。第84条は競業及び利益相反取引の制限ということで、理事はそういった取引をする場合において、社員総会でその事実を開示し、その承認を受けなければならないと規定されております。6ページがその続きとして第85条ということで、理事の報告義務が課せられており、理事は、一般社団法人に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事項を社員に報告しなければならないとなっております。

 もう1つは第111条の損害賠償責任です。「理事、監事又は会計監査人(役員等)は、その任務を怠ったときは、一般社団法人に対して、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」ということです。いずれの関係も理事たち役員の責任を明確化するために、一般社団法人法において記載されています。

 メディカルサービス法人(MS法人)との関係の適正性と言われてきましたが、7ページは、それも含めた現行での関連当事者との取引について、各法人制度がどうなっているかを示したものです。それがどういう形で公表しているのかということですけれども、医療法人は飛ばして、社会福祉法人は財務諸表に注記、公益法人も株式会社も同じです。学校法人は、更にそれに加えて役所への事業報告も含まれております。

 一方、医療法人ですけれども、社会医療法人については事業報告という形でそれぞれいただいており、医療法人について財務諸表注記ということになっております。ただ、注記ということでの関係は、「各法人制度における会計基準の適用について」という題名で書いておりますが、注記すべき基となる医療法人の会計基準というのは、医療法人においては通知(任意)という形になっておりますので、上では「注記」と書いております。しかしある意味、任意のような形になっております。

 それと連動しますので、ほかの制度も御説明します。会計基準の適用は、一番下の段のそれぞれです。幾つかは省令でやっております。また、一方で公益法人のように任意でやっている所もあります。社会福祉法人については通知でしたけれども、法令への格上げを検討中という状況です。こういった場合、医療法人会計基準がどういうものなのかというのが8ページにあります。統一的なものという形で、現在最新のものでできているのが、本日代表の方にそれぞれ御出席いただいております四病院団体協議会で、本年2月にまとめていただいたものです。「医療法人会計基準に関する検討報告書のポイント」ということで、2ページにわたって書いております。内容は細かい所まではあれですけれども、医療法人会計基準については、ほかの法人制度の扱いも含めて参考にしながら、どういったものにして、どういう位置付けが適切なのかというのも、併せて御議論いただければと思っております。

 最後の10ページが、「各法人制度における財務諸表の公告等について」です。基本的なイメージは、インターネットのホームページで公開するという意味での「公告」という表現です。一般社団、公益社団はそれぞれ下の欄に○印が付いています。右端の株式会社も同じです。社会福祉法人については通知ですけれども○印ということで、公告を求めている中で、医療法人、社会医療法人について、どういう形でやっていくのが適切なのかという検討が求められています。

○田中座長 ただいまの事務局の説明に対して、質問や御意見があればお願いいたします。特に3ページに示されている論点についての御意見を頂戴できればと思いますが、いかがですか。

○橋本委員 論点の3つ目、「MS法人と医療法人との関係の適正化など方策について」という所です。これは具体的にはどの辺のものを想定しての議論をされているのか、現状での事務局側のお考えを聞かせていただければと思います。例えば、連結会計を求めるところまでお考えかどうか、そこら辺についてお考えをお聞かせください。

○事務局 どこまでかというのは当然、この場での御議論次第です。7ページで御紹介している部分が関連当事者ということで、株式会社も含めて他の非営利的な法人を表にさせていただいております。こういった所を横並びで見ますと、財務諸表注記や事業報告といった形で、医療法人でも似たような形を取り入れている部分もあります。ただ、それをどういうレベルでやっているのか、義務付けをしているのかどうか、対象をどうするのかという御議論もあるかと思っております。まだ7ページの状況が現状ですので、単純に話せば、医療法人にこれを義務化していくという話でいいのかどうかということになっていきますけれども、どういった形で考えていけばいいのか。検討する際の視点など、御意見を頂ければと思っております。

○梶川委員 そういう意味で少し技術論的なところがあると思いますので、私の立場から申し上げます。今言われた関連当事者取引というのは、前の議論のときに申し上げたように、医療法人の世界では非常に重要なテーマだと思います。正にここが営利と非営利のつなぎ目になりますから。逆にこれを営利の所まで合わせて財務諸表を作るという、橋本先生がおっしゃった連結と言うよりは、その取引関係自身の透明度をどれだけ上げるか、また、ここを単に開示するだけではなく、開示する目的というのが市場取引と比べて公平性があるかということです。

 営利でもそれがテーマですけれども、それをもって関連当事者だからこそ、特定の優遇なり、逆に言えば特定の損失の押し付けがないかということです。そこが本日のこの論点で言えば外部監査の義務付けという中で、そこに更に重点的な着目点として財務諸表も開示し、更にその監視機能を強化するということで、皆様方の御心配の点というのは社会に向かっても、当事者に向かっても、かなり整理を付けられるものではないかという気がいたします。

 ついでに、私どもは、もちろんこの論点にほとんど賛成です。こういう公的な組織体ですので、信頼性の担保という観点から、今回、外部監査というものをかなりリアルな議論としてしていただいているわけですけれども、非常に重要ではないかと思います。そういう意味で一定程度というところでも、普通の営利企業というのは、ある意味でステークホルダーが限られていて、消費者は普通に市場で取引するわけですから、嫌なら買わなければいいという部分があるわけです。これは福祉も同じかもしれませんけれども、全体の体系が公益な料金体系になっていて、全体的にパブリックなサービスの提供という意味では、全体の法人の中で、どのぐらいのカバレッジが効くかということも考え、水準を少しお考えいただくというのは、今の社会情勢からすごく重要かと思います。

 それから、これはもう私どもが言わないとということで、会計基準の話です。作成の点で、これは病院協会のほうでお作りいただいている部分ではあるのですが、会計基準というのは国際的な潮流で、ステークホルダーを少し多く入れてオーソライズしていくという流れがあります。それが前提で監査をさせていただくことになりますので、並行的にステークホルダーを少し入れて、もちろん行政もオブザーブしながら。今の基準が悪いという意味では全くなく、更なるオーソライズのリプロセスというものを是非取っていただければという気がいたします。

○田中座長 先ほどは非営利性が論点になっていましたが、むしろこちらは公益性ですね。社会保険制度、社会保障制度が財源である以上、世間に対する公示等は原則進めていくべきである、が時代の趨勢ですね。おっしゃるとおりです。それでは「医療法人の透明性の確保及びガバナンスの強化について」も、本日いただいた意見を踏まえて、改めて事務局に整理していただきます。

 最後の4つ目の議題、「社会医療法人の認定要件の見直しについて」に移ります。事務局から資料の説明をお願いします。

○事務局 資料4、「社会医療法人の認定要件の見直しについて」を御覧ください。まず1ページです。「日本再興戦略」が6月に閣議決定しましたが、その中で検討を求められている事項があります。点線の中の一番最後の行にありますように、「社会医療法人の一層の普及を図るため、地域の実情を踏まえた認定要件とする」ということで、これをどのように考えていくかというのが主な論点になっております。

2ページですが、今言った地域の事情はどういったイメージなのかということで、産業競争力会議の中でも御意見、御議論があったので、それらを御紹介させていただきます。増田寛也元総務大臣の主査としての御発言ですけれども、社会医療法人の認定の要件の中に数字的に求めているものがあります。3行目の終わりからありますように、例えば救急医療の関係では、年間750件の夜間休日搬送をやります。これが地域によって状況が違うのではないかと。数字自体は同じかもしれないけれども、都心部での750件と地方部での750件はハードルが違うのではないかといった観点も含めて検討してはいかがだろうかという御趣旨と理解しております。

 それ以外に御提言のあった話として、3ページを御覧ください。地方分権の関係です。かなり細かい論点になってしまうのですけれども、御紹介させていただきます。九州地方知事会からの御要望です。右側のブロックの支障事例の所を御覧ください。複数の県に医療施設がある場合、厚生労働大臣が社会医療法人の認定をします。これが来年4月以降は都道府県知事になるわけですが、複数の県にまたがっている場合、全てそれぞれの県の知事の認定が必要になってくるわけです。これ自体は全国規模の法人もありますので、そのためのハードルとして設けている部分ですけれども、今回の提案で言っているのは、ある1つの県に95%か99%ぐらいの事業があるにもかかわらず、その端境、県境でちょっと向こう側の隣の県に1%か数パーセントだけやっている場合に、事実上、主たるところの県が認定すれば従たる部分、ほんの僅かな部分にまで社会医療法人の認定の要件を掛けるというのは、過剰な規制になってなってはいないかという御意見です。それをどういった形で考えていくのか。それも一理あるような感じがしますので、その辺を御検討いただければということです。

 もう1つは、は4ページを御覧ください。これも当然社会医療法人の認定要件の関係です。「求める措置の具体的内容」を御覧ください。へき地医療も社会医療法人の要件の1つとしておりますけれども、その場合、へき地診療所に医師を派遣したというのが数値基準になっているのです。へき地診療所そのものでなく、その近くの都市にあるへき地医療拠点病院に医師を派遣する場合についても、本来は、そこから拠点病院の巡回診療とか、へき地に対する医師の派遣をやっている病院なので拠点病院になっているのですから、そういった所に派遣する場合も結果的に見ると、へき地医療への支援につながっているのであれば、それを同一視することも可能ではないかというお話をいただいています。

 その次が参考資料ということで、「社会医療法人の概要」です。また、次のページが今申し上げた認定要件について簡単にまとめたものです。その先が実際の認定件数、最後の方が実際に認定された全法人の一覧表、合計224法人というのを付けております。社会医療法人というのは非課税ですので、そこをどう考えていくのか、認定要件としてもどうするのか。今回、地域事情を踏まえたというのは、どのような地域の事情を踏まえていくのが検討の視点になっていくのかということに御意見をいただければと思っております。

○田中座長 事務局が最後に指摘したように非課税ですから、それに関わる社会医療法人の課税の公平性とのバランスを意識しながら、要件の緩和を見直す必要があると考えます。ただいまの事務局の説明に対して、委員の皆様からの質問あるいは御意見をお願いいたします。

○橋本委員 社会医療法人というのは、公益性というものを非常に重視されていると理解します。かつ、公益性というものをどうやって測るか、医療上、救急医療等の事業に関する要件となっています。いわゆる政策医療的なものにどれだけ貢献してくれているかを見て、その財政的負担等も考えて、非課税などの措置を行うという形で理屈が付けられていたと理解しております。その上で、この要件に関して今後医政局全体の方針として病院の機能というものを測定し、今後その機能分類を作っていくという大きな流れがある中で、これをどう整合性を持たせるような形でやっていくのかというのは、緩和要件を検討する際に1つ必要な視点ではないかと考えております。その点で現在ある要件の中身で、いわゆる政策医療的な機能というものの測定指標と矛盾する、若しくは数値的に合わないものがあるかどうかについて、御検討されたことがあったら教えていただければと思います。

○田中座長 検討状況があれば御説明いただきたいとのことでした

○事務局 社会医療法人の認定要件制度ができた平成20年から、ずっとこの数字、この要件でやっております。基本的に設立当時の状況を踏まえ、政策医療という5つの課題に向けて、それを中心的にやっていただくための法人として、どういうものを認定すべきかということで検討して、この数字と基準になっております。社会医療法人自体、非課税と連動するところもありますので、この数字を上げ下げするには慎重な検討をしていかなければいけないのではないかと考えております。そうは言っても必要な部分はあるのかもしれないという話もあろうかと思います。御意見を踏まえて検討していきたいと思いますので、何かございましたら幅広く言っていただければと思います。

○橋本委員 質問の趣旨としては、病院の機能評価に関して幾つかの要件の検討が、既に別途医政局でなされていると思うのです。そちらと、ここに挙げられている要件との間で余り乖離があると、今後、病院の機能評価という視点と大きくずれてしまいかねないので、そういう矛盾がない範囲内で、もし要件の緩和を考えるのであれば、そういうものとの整合性も踏まえた議論をしたほうがいいのではないかと思って御質問申し上げました。

○山崎委員(千葉委員代理) 要件についてです。特に救急医療などは数を要件として、実績ではありますけれども、本来的には実績の基準ではなく、その準備をしているという機能基準であるべきだろうと思います。そういう体制を取って常に待機している、それに対応できるだけの準備があるということについては、もちろんそれだけのコストも掛かり、体制整備も必要としているわけで、そこの部分について評価をしているのが社会医療法人だと思います。

 例えば社会医療法人がすぐ隣にできた場合に、その地域での救急の数は分断されていくというか、半分になるわけです。また、精神科の場合は3年間で人口1万に対して7.5という数字ですが、これが全県1区なのか二次医療圏なのか、その辺も全く決められていない。ここのところは県によって、まちまちな解釈をしております。

 また、精神医療に限って言いますと、常時の精神医療の充実が図られれば、夜間・休日等の精神科の救急は減ってくるのが当然です。この辺は身体科の救急とは違って、24時間、急に発症する精神疾患は余り多いわけではありません。そういった意味で、これを数で決めているというのも、実情に合っていないと思います。むしろ政策医療としての精神科の救急等、あるいは医療観察法等、精神科に課せられている政策的な問題等についての部分を評価されることが必要であろうかと思います。

2点目は、実は災害医療の中に精神科の拠点病院は位置付けられておりません。よって、3年前の東日本大震災のとき、精神科病院からの移送の間でかなり新聞を賑わすような、福島県の事例がありました。完全孤立無縁にさせられるといったこともあります。そういった意味では災害医療の面でも、もう少しそういう所の拠点化と、それに社会医療法人としての役割を果たさせるといったことも考えていただくという新たな要件の見直し、追加を、是非今回行っていただきたいと思います。

3点目は、取消要件についても認定取消時の課税遡りの要件についても是非、きちんとした解決を行っていただきたいと。認定要件を満たしている時期まで遡って取消しになった場合に課税が戻ることについては、大変不当ではないかと思われます。ほかの法人等に照らし合わせてという国税の解釈とお聞きしていますけれども、認定されるべき要件を満たしていて、そういうサービスをきちんとしていたにもかかわらず、その時期まで遡って様々な税優遇の部分を戻せという形では、社会医療保険の認定を受けて社会のために尽くそうという意思のある病院や医療機関が、二の足を踏んでいく大きな要件になってしまいます。また、このことが社会医療法人の数が増えてこないことにも、直接的につながっているように思われます。よってこの辺についても是非、今回税当局とのじっくりとした打合せをしていただきたいと思いました。

○川原委員 少々細かい論点になってしまうのですが、社会医療法人の認定要件の参考資料の「2.公的な法人運営に関する要件」の上から3つ目のマルに、「社会保険診療に係る収入金額が全収入金額の8割を超えること」という要件があります。最近、弊社のクライアントでも出てきているのですが、介護保険事業の中で社会保険診療等に含まれる事業と、そうでない事業が区別されています。対象ではない介護保険事業をやってしまうと、もしかしたら8割以下になってしまう可能性のある所が出てきております。それによって医療と介護の一体的推進を図ろうと思っても、なかなか二の足を踏んでいるというケースがあります。これは特定医療法人にも同様の要件があります。ここら辺も検討されるのであれば併せて検討していただくと、医療と介護の両方を更に進めていこうというような医療法人にはプラスになるのではないかと思います。

○田中座長 ほかに御指摘、御質問はございますか。皆様も御理解のように、社会医療法人の認定要件の見直しについては、税務当局とすり合わせ、税務当局の意見を聞く必要があります。その作業は事務局にお任せしますので、次回までに進めてください。その結果を踏まえながら今後の方向性について、再度、皆様と御議論したいと存じます。

 最後に何か御意見はございますか。では、本日はここまでといたします。事務局より次回の説明をお願いします。

○事務局 本日はありがとうございました。次回は10月上旬で調整中ですので、改めて御連絡いたします。また、本日議論した論点について時間の関係上発言できなかった御意見等がありましたら、随時、適宜に事務局まで御連絡いただければと思います。

○田中座長 本日は2時間半と、ちょっと長かったですが、皆様、活発な御議論をどうもありがとうございました。これにて終了いたします。


(了)

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