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2014年8月29日 第35回労働政策審議会 議事録

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成26年8月29日(金)
10:00~12:00


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○出席者

【公益代表委員】

樋口会長、阿部委員、岩村委員、勝委員、鎌田委員、田島委員、土橋委員、宮本委員、山川委員

【労働者代表委員】

相原委員、逢見委員、神津委員、冨高委員、野田委員、山浦委員

【使用者代表委員】

鵜浦委員、岡田委員、吉川委員、坂戸委員、土谷委員、宮原委員、椋田委員、渡邊委員

○議題

(1)平成27年度労働政策の重点事項(案)について
(2)分科会及び部会等における審議状況について
(3)法案の国会審議結果について
(4)その他

○議事

○樋口会長 
 時間前ですが、御予定の方、皆さんお揃いですので、ただいまから「第35回労働政策審議会」を開催いたします。よろしくお願いいたします。
 議事に入る前に使用者代表委員の交代があり、8月1日付でお手元に配布されております資料1「委員名簿」のとおりであり、新たに委員に就任された方を御紹介させていただきます。一般社団法人日本経済団体連合会専務理事の椋田委員です。

○椋田委員
 経団連の椋田と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。

○樋口会長 
 日本電信電話株式会社代表取締役社長の鵜浦委員です。

○鵜浦委員 
 鵜浦です。よろしくお願いいたします。

○樋口会長 
 本日は欠席ですが、東京ガス株式会社取締役会長の岡本委員も新任されています。続きまして、事務局にも異動がありましたので御報告の程、お願いいたします。

○藤澤労働政策担当参事官 
 7月11日付けで事務局の異動がありましたので、御報告いたします。総括審議官の宮野です。労働基準局長の岡崎です。それから職業安定局長の生田は、今、記者会見をやっておりますので、後ほど遅れてまいります。職業能力開発局長の宮川です。雇用均等・児童家庭局長の安藤です。政策統括官の石井です。

○樋口会長 
 よろしくお願いいたします。
 それでは議事に移ります。本日の議題は、まず第1に「平成27年度労働政策の重点事項(案)について」、第2に「分科会及び部会等における審議状況について」、第3に「法案の国会審議結果について」、第4に「その他」となっております。
 最初に議題1の「平成27年度労働政策の重点事項(案)」につきまして、事務局から説明をお願いします。

○藤澤労働政策担当参事官 
 お手元の資料の資料番号2番をお願いします。平成27年度労働政策の重点事項(案)について、御説明します。1ページですが、重点事項としまして、まず初めに経済及び雇用の認識を書きまして、その後、「日本再興戦略」の改訂版あるいは骨太によりまして、女性や高齢者、あるいは若者の活躍推進、また働き方改革や外国人の活用といったような施策を盛り込んで構成しております。
 さらに、地域の雇用、あるいは正社員雇用の拡大、労働市場インフラの戦略的強化、また監督指導といったような内容について盛り込みまして、重点事項として取りまとめたものです。本日はこちらについて御審議をいただきたいと思います。
 項目ですが、その下に1番の「働き方改革の実現」から10番の「震災復興のための雇用・労働対策」までということで、今年は10項目にわたりまして内容を整理しています。その具体的な内容につきまして2ページ以降で御説明します。
 2ページの大きな1番「働き方改革の実現」を御覧ください。内容は2項目ありますが、初めに(1)で「柔軟で多様な働き方の実現とワーク・ライフ・バランスの推進」ということで、まず一番最初に「労働時間法制の見直し」について掲げました。柔軟で多様な働き方の実現や働き過ぎの防止に向けた労働時間法制の見直し、あるいは「朝型」やフレックスタイム制についての情報発信を行うといった内容です。
 それから2が「『多様な正社員』の普及・拡大」ということで、こちらは有識者会議の報告がまとまりましたので普及・拡大を図っていこうというものです。
 3、有期特措法と呼んでおりますが、先の通常国会で法案が継続審議になっており、成立した場合には体制の整備を図っていくということです。
 4が「ワーク・ライフ・バランスの推進」ということで、これは国会で成立をしました改正次世代法の施行で、認定及び特例認定の取得の促進をしてまいりたいということです。また「働き方・休み方改善指標」の活用・普及、あるいはテレワークの普及、また「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」の周知といった内容を盛り込んでいます。
 5が「過重労働解消に向けた取組の推進」です。過労死防止法が国会で成立をしましたが、調査研究、啓発、相談体制の整備、民間団体の活動に対する支援などに取り組んでまいりたいと考えています。また、過重労働による健康障害防止のための重点的な監督指導などを行ってまいりたいということです。
 大きな1番の(2)が「最低賃金の引上げに向けた取組」ということで、1は、地域別最低賃金の引上げに向けて努めるとともに、中小企業・小規模事業者に対する充実を図ってもらいたいと考えています。3ページ目、併せまして最低賃金の遵守の徹底を図ってまいりたいということです。
 大きな2番として、「女性の活躍促進」です。こちらは内容で全部で4項目盛り込んでおりますが、(1)「女性の活躍促進のための新法の制定」を行うということで、既に労政審の分科会で御審議をしていただいているところです。
 (2)が「女性の活躍推進のための積極的な取組の推進」で、女性の活躍推進に向けた取組を行う企業に対する助成金制度の新設、拡充、あるいは「202030」の達成に向けた体制の普及・拡大、また、企業情報の総合データベース化を図っていくということです。
 (3)が「育児・介護休業法の見直しを含めた仕事と家庭の両立支援」ですが、育児・介護休業法に5年後の見直し規定がありますので、必要な見直しの検討を進める。また「期間雇用者の育児休業取得促進プログラム」の実施をする。育児休業中の代替要員の確保を行う事業主の支援を行う。あるいは育児休業給付金に上乗せをする経済的な支援を行った場合の一部助成を行う。また「イクボスアワード」の実施などを行ってまいります。
 (4)が「女性のライフステージに対応した活躍支援」です。マザーズハローワーク事業の拡充、あるいは女性の再就職を支援するための訓練コースの設定などを行っていきたいと考えています。
 4ページ目の上の3番ですが、「若者の活躍促進・正社員雇用の拡大」を取りまとめています。(1)が「若者の活躍促進」です。法的整備も含めた検討・対応を行っていこうと考えております。2ですが「新卒者等の職業意識の醸成・就職支援の強化」ということで、これは「若者育成認定企業(仮称)」としての認定、あるいは新卒応援ハローワークでの支援、また「高校生の人手不足産業の就職の支援」などを盛り込んでいます。
 3がフリーター・ニート対策ですが、若者ハローワークにおける支援、あるいはサポステの抜本的な強化、また「地域若者支援委員」制度の創設などを盛り込んでいます。
 4が「若者の『使い捨て』が疑われる企業等への対応策の充実強化」ということで、「労働条件相談ダイヤル(仮称)」の設置、それから「労働条件相談ポータルサイト(仮称)」などで支援を行っていく。さらには5ページ目の上ですが、若者の「使い捨て」が疑われる企業等に対して、重点的な監督指導に取り組んでいくということにしています。
 5が「将来を担う人材育成支援」です。地域コンソーシアムを構築し、より就職可能性を高める民間訓練カリキュラムの開発、あるいは技能継承や中核人材の育成、また「目指せマイスター」プロジェクト、更に技能検定の見直し・拡充に取り組んでいくこととしています。
 大きな3番の(2)「『正社員実現加速プロジェクト』の推進」ですが、景気の動きなどを背景に人手不足感が強まっている今がチャンスだろうということで、正社員雇用の拡大・正社員転換の促進のための啓発運動に取り組んでいきたいと考えています。また、「ハローワークにおける正社員就職の実現促進」、あるいは「非正規雇用労働者の正社員転換や処遇改善へ取り組む事業主への支援の拡充」ということで、「勤務地・職務限定正社員」制度を新たに導入する企業の支援などを盛り込んでいます。また、労働者派遣制度の改正につきまして、必要な法制上の措置を講ずるということです。
 5は「非正規雇用労働者能力開発・人材育成」でして、公共職業訓練の実施、あるいは人材育成の更なる支援を盛り込んでいます。
 6ページの(3)「非正規雇用労働者の雇用の安定と処遇の改善」です。その3が「労働者派遣制度の見直しの着実な実施等」、あるいは5が「中小企業への無期転換ルールの定着」、また、6パートタイム労働法の改正(案)が国会で成立しましたので、その周知、指導に取り組んでいくということです。
 大きな4番が「地域に応じた良質な雇用機会の確保・創出」です。その1つ目が、(1)「地域に応じた良質な雇用機会の確保・創出」で、少子化や人口減に対応した雇用のパッケージ事業といたしまして、「地域・しごと創生プラン(仮称)」を盛り込んでいます。内容ですが、地域の自発的な「しごと創生」の取組を総合的に支援する。あるいは就職支援を軸とした地域の人材還流を促す総合的な取組を行う。また「地域創生人材育成プロジェクト」としまして、人材育成に取り組んでいくといった内容を盛り込んだものです。
 7ページの大きな4番の(2)が「人材不足分野における人材確保・育成対策の推進」ということです。4項目ありますが、1が「魅力ある職場づくり」の促進、2が看護・介護・保育、あるいは建設といった分野におきまして、潜在有資格者の掘り起こし、またはマッチング対策の強化を進めてまいります。3が「ものづくり分野における人材確保・育成対策の推進」ですが、魅力発進の強化、事業主等への支援の拡充、ポリテクセンターとの連携の推進の内容も盛り込んでいます。4が、建設、保育、介護等の「人手不足分野における公共職業訓練等の拡充」です。
 大きな5番ですが、「高齢者・障害者等の活躍促進」です。7ページの下の方からが高齢者の就労支援ですが、65歳を過ぎても働けることができるような企業の拡大、あるいはシルバー人材センターの活動範囲の拡充などを考えてまいります。
 8ページの3が「障害者等の就労促進」です。ハローワークにおける障害特性に応じた就職支援体制の充実、障害者委託訓練、あるいは障害者就業・生活支援センターの設置の推進及び同センターに新たに配置するジョブコーチによる定着支援、また改正障害者雇用促進法による障害者の差別禁止や合理的配慮の提供に関する周知広報に取り組んでまいります。
 大きな6番が「労働市場インフラの戦略的強化」でして、訓練、あるいはマッチングの内容を盛り込んでいます。(1)が「職業能力の『見える化』等を通じた人的資本の質の向上」ということで、1「業界共通の『ものさし』としての職業能力評価制度の構築等」に取り組んでまいります。また、2が「産業界のニーズに合った職業訓練のベストミックスの推進」、3が「個人主導のキャリア形成の支援」ということでキャリア・パスポート(仮称)としての制度化などに取り組んでまいります。
 9ページ目の上の大きな6番の(2)が「労働市場全体としてのマッチング機能の強化」です。5項目ありますが、1が「失業なき労働移動の実現」で、労働移動支援助成金の拡充や産業雇用センターの機能強化、2が「民間人材ビジネスの適切な評価と積極的な活用」、3が「労働市場全体としてのマッチング機能の強化」ということで、求職情報の民間職業紹介事業者や地方公共団体に対する提供の仕組みの構築、あるいはハローワークの機能強化のための、各所ごとのパフォーマンスの評価・公表などに取り組んでまいります。また、5が「雇用労働相談センターの設置」を国家戦略特区内に進めるということです。
 大きな7番が「外国人材の活用・国際協力」です。その(1)が「技能実施制度の見直し」です。3点ありますけれども、1が新たな法律に基づく制度管理運用期間の設置などの「管理体制の強化」、2が「技能実習対象職種等の見直し」、3が「技能実習生を含みます外国人労働者の労働条件の確保」ということで、10ページ目の一番上にありますが、労働基準監督機関の体制強化を図ってまいります。
 外国人材の活用の2点目は留学生に対する就職支援体制の強化です。さらに3点目として、ILOを通じて行う日系企業支援の推進に取り組んでまいります。
 大きな8番が「労働者が安全で健康に働くことのできる職場づくり」ということで、全部で4項目あります。「労働安全衛生対策の推進」につきましては、「改正労働安全衛生法の円滑な施行」、あるいは「業種の特性に応じた労働災害防止対策の推進」に取り組んでまいります。「職場のパワハラの予防・解決に向けた環境整備」、「労働保険の未手続事業の一掃対策の推進と労働保険料の収納率の向上」、また、「長期療養が必要な労働者の復職支援」等に取り組んでまいります。
 大きな9番ですが、「重層的なセーフティネットの構築」として、(1)「雇用保険制度・求職者支援制度によるセーフティネットの確保」、(2)が「生活保護受給者等の生活困窮者に対する就労支援の推進等」、2にありますが、「刑務所出所者等に対する就労支援の拡充」に取り組んでまいります。
 最後の大きな10番の「震災復興のための雇用・労働対策」です。「被災者の雇用機会の確保」、あるいは「東京電力福島第一原発の作業従事者等の健康安全・労働条件確保対策」、また「緊急作業従事者に対する疫学的研究の実施」などを行っていくことを考えているところです。
 以上、平成27年度の労働政策の重点事項について御説明を申し上げました。今後、こういった重点事項に基づいて労働政策に取り組んでいくことを考えています。

○樋口会長 
 ただいまの説明について、御意見、御質問をお願いします。

○神津委員 
 重点政策が様々ある中で、いの一番に労働時間法制の見直しが掲げられています。これに関しては、「日本再興戦略改訂2014」の中で、労働時間に関わる4つの項目が列挙されています。裁量労働制やフレックスタイム制の見直しなども含まれていますが、4つの項目それぞれに、私どもとしては問題点や懸念点を覚えざるを得ません。とりわけ労働側として問題視しているのは、資料2にも記載がありますが、労働時間の長さと賃金のリンクを切り離した「新たな労働時間制度」を創設するとしている点です。仮にこうした制度が導入されれば、労働時間に関する基本的かつ最低限のルールの保護さえ受けられなくなってしまうため、更なる長時間労働が助長されます。ひいては、過重労働による精神疾患や過労自殺、過労死など、健康・安全を害する事態を招くことになるのは明らかだと思います。
 また、労働時間と賃金のリンクを切り離す要件として、年収のレベルにそれを求めるという点についても全く理解ができません。年収が高ければ過労死するような事態は起きないということは、今の現実を見ても言えないだろうと思います。過日、厚生労働大臣の所にも訪問があったということですが、「東京過労死を考える家族の会」という、実際に過労死、あるいは過労に伴う自殺をされた方の家族の会の代表の方々が来られました。連合にも来られて、「新たな労働時間制度」は導入しないようにという趣旨の要請がありました。
 この代表の方、中原さんの旦那さんは、年収1,000万円以上であったにもかかわらず、長時間労働が原因で自ら命を絶ったということです。私どもとしては、こうした重大な問題点を抱えている内容である以上、「新たな労働時間制度」の創設は断じて認めることはできないと言わざるを得ません。毎年、100名を超える方々が過労死で亡くなってしまう、労災認定を受けているという現実を直視しなければならないと思います。
 また、先の通常国会で「過労死等防止対策推進法」が成立がしました。これらの内容についても真摯に受け止め、今、政府がなすべきことは「残業代ゼロ」ではなく、「過労死ゼロ」だと考えております。労働条件分科会で見直し論議が続けられております。労働者の健康・安全の確保、生活時間の保障を重視する観点での議論が、公労使三者の間で行われるべきだということを強く申し上げておきたいと思います。
 もう1つ補足的に申し上げますが、過労死防止に関して、私どもの組織の中で「連合北海道」が、過日、調査を行いました。中学校の社会科の教科書ですが、採択されているものを全てチェックすると、労働時間に関する基本的な知識、36協定あるいは残業・割増賃金、有給休暇といった項目について記載をしていた教科書は、全部で7つのうち、僅か1つだけという実態でした。2009年2月に厚生労働省が取りまとめた「今後の労働関係法制度をめぐる教育の在り方に関する研究会」の報告書の中では、小学校・中学校・高等学校・大学等においてもそれぞれのレベルに応じた知識の付与を行うことの重要性が指摘されております。今ほど触れた「過労死等防止対策推進法」でも、国民の啓発を行う責務が国に対して課せられたということですので、是非この研究会報告も踏まえながら、学校教育の現場でワークルールに関する知識教育の充実・強化に向けての取組を政府部内でも積極的に進めていきたいということを、併せて要請したいと思います。

○樋口部会長 
 鵜浦委員、お願いします。

○鵜浦委員 
 私からは、働き方の改革について申し上げます。競争力の源泉は人材であることは言うまでもありません。少子化の進行により労働力人口が減少する中、労働者1人1人に能力を最大限発揮してもらう環境を整えることは、我が国の企業の成長を促し、ひいては雇用機会の確保と処遇改善を実現する上で重要性が増しております。
 働き方の改革について、3点申し上げます。1点目は、過重労働解消のための取組強化です。健康で生き生きと働ける職場環境の整備は、経営者の責務であると同時に、企業活力の源泉でもあります。既に各企業では労使の話し合いにより、恒常的な長時間労働の抑制に向けて様々な取組を行っておりますので、本審議会ではそのための支援策の拡充や年休の取得を促進する方策について、十分な議論をしていきたいと思います。
 2点目は、新たな労働時間制度についてです。研究者や技術者、市場調査担当者、営業企画などの各種専門職の方等を対象に、十分な健康確保措置を手当てしながら、時間ではなく成果で評価できる働き方を選択肢として用意することは、労働者の能力や創造性を発揮させるとともに、個人のキャリアアップにもつながると思います。例えば、サイバー攻撃に対応するホワイトハッカーを育成・確保していくことが、近年大変重要になっております。そのためには、ベンダーの経験をはじめ、様々な企業の現場でキャリアを積むことが必要です。こうした高い能力を有するプロフェッショナルを、成果で評価される新たな労働時間制度の対象として適切に処遇していくことは、今後の我が国の経済社会に必要な人材の育成を後押しするものです。
 3点目は、裁量労働制等についてです。裁量労働制は、適用者の7割が制度に満足している重要な労働時間制度の1つですが、残念ながら十分に活用されていません。対象業務、対象労働者を大幅に拡大するとともに、各種手続の簡素化など、法制上の見直しが必要であると考えております。また、フレックスタイム制についても、実際の業務の繁閑に合わせて労働者が活用できるよう、清算期間の延長が不可欠と考えております。
 以上の3点を含め、労働者のワーク・ライフ・バランスの向上と企業競争力の強化を実現し、ひいては我が国全体の発展へつなげていけるような議論ができればと思います。

○渡邊委員 
 私からも、労働時間法制の見直しについて、2点意見を申し上げます。
 6月に閣議決定された「日本再興戦略」の中で、時間ではなく成果で評価する制度への改革として、「新たな労働時間制度」を創設することが盛り込まれた点については、私としても高く評価しております。私が労働条件分科会の委員を務めていた平成18年にも同様の議論を行い、労働基準法の一部を改正する法律案要綱の答申まで行いましたが、その後の改正法案に盛り込まれないまま今日に至っているわけです。
 当時の分科会でも申し上げましたが、労働基準法が制定された頃、昭和22年よりも、技術的かつ創造的に働く労働者の割合が増加しており、そのような働き方にふさわしい制度として、今回の「新たな労働時間制度」を創設する意義は大変大きいと思っております。
 新聞報道によると、政府は対象の年収基準を少なくとも1,000万円以上とする方針のようですが、働き方が自律的であれば、必然的に適用の対象とすべきであって、年収要件は不要と考えております。仮に年収要件を1,000万円以上とすると、対象労働者は3.8%で、なおかつ管理監督者ではない人となると、対象者がほとんど存在しない制度になってしまいます。将来的に労働力人口の減少が避けられない我が国において、働き手の意欲と能力を最大限に引き出すことが重要であり、その意味でも中小企業を含め、より多くの働き手が対象となるような制度とすることが必要と考えております。
 2点目は、割増賃金制度の見直しについてです。御承知のとおり、現在、労働条件分科会では、月60時間を超える所定外労働に対する割増賃金率を、中小企業についても大企業と同様、5割以上にすることが論議されております。この割増賃金率の引上げは、そもそも長時間労働を抑制することが目的であると思いますが、所定外労働が発生する要因は業種や職種によって様々です。長時間労働を抑制するためには、個々の業種や職種の事情を十分に把握した上で、個別に対策を講じることが必要と考えております。一律に割増賃金率を上げても効果はないと考えております。この点を十分踏まえ、今後、議論をしていただければ幸いです。

○樋口会長 
 労働時間関係で何かありますか。

○神津委員 
 重ねてなので短く申し上げますが、「karoshi」という言葉が英語として定着してしまうとか、先ほど申し上げたように、我が国において過労死と認定されている案件が年間100件以上にも及ぶといったことに、経営側の皆さんも是非、目を向けていただきたいと思います。アメリカやヨーロッパでは、過労死はあるのでしょうか。そういった実態にも是非目を向けていただきたいということだけ付言をさせていただきます。

○岡田委員 
 私からは、女性の活躍促進のための新法の制定に関して意見を述べたいと思います。
 個人的には、官民を挙げた女性の活躍支援の拡大は非常にポジティブに受け止めておりますが、企業としては、女性の活躍は義務付けられて進めるものではなく、企業が厳しい市場競争やグローバル競争を勝ち抜くための経営戦略の1つとして、主体的に推進すべきものと考えております。企業において真の意味で女性の活躍が浸透するためには、経営トップの明確なコミットメント、リーダーシップに加えて、各企業がそれぞれの状況を踏まえた具体的な行動計画を自主的に策定・公表することが重要と考えています。
 このような観点から、経団連は、会員企業に対して女性役員、管理職登用に関する自主行動計画の策定を要請し、これを経団連のWebサイト上で公開する取組を進めています。
 当社においても、男女雇用機会均等法の以前から同一の評価体系、賃金体系を採用して、意欲ある女性の昇進が阻まれることのない企業風土や仕組み作りを進めております。また、今年度は、更にトップの明確な意思の下、管理職比率向上に向けての行動計画を策定中です。大卒女性の積極採用、つまりボリュームの確保と、着実な育成、継続就業のための環境作りや仕組み作りを続けてきた結果、女性管理職の比率も安定して3割を超える数字を維持しております。ただ、弊社においてはそのような状況ですが、例えば技術職の多い業種、企業では、積極的に女性を採用したくても思うようにいかない。それが管理職の登用にも影響しているのではないかと思っております。
 先ほど、女性の活躍促進のための新法の制定について審議を進めるとの報告がありましたが、検討の際には企業のそれぞれの実情を踏まえるとともに企業の自主的な取組を十分に尊重していただき、各企業の創意工夫や努力が生かされるものになるよう御配慮をお願いしたいと考えております。

○冨高委員 
 私からも女性の活躍支援に関して、今の岡田委員のお話と重なる部分で御意見と、1点、質問をさせていただきます。
 もちろん、企業労使の取組で女性の活躍支援が進んでいる所もあるかと思います。しかし、8月22日の毎日新聞の社説にも出ておりましたが、平成25年度の雇用均等基本調査によると、女性管理職の割合が微減しています。また、ポジティブ・アクションに取り組んでいる企業が大幅に減少したということで、取り組む予定もない企業が6割を超えているという話も記載されていました。そう考えると、女性管理職の割合、また女性の活躍そのものの取組はまだまだ不十分なのだろうと、我々としては考えております。
 先ほども、新法に関して御説明いただきましたし、御意見もありました。雇用均等分科会でも議論がスタートされましたが、女性の活躍を阻害する要因は、採用、教育訓練、就業継続、非正規労働の問題、先ほど神津委員がおっしゃった長時間労働の問題、組織・職場の風土・意識改革といった多岐にわたる論点や課題が山積していると考えております。
 ポジティブ・アクションには、クオーター制のような、より積極的な措置もあるかと思いますが、それだけではなくて、男女が平等に力を発揮して公正に報われるために、今、どのような障壁があるのかといったことを明らかにして、労使がその壁を取り除くために必要な対策や計画を策定し、労使自治で実行していくことが含まれていると思っております。今こそ、こういった取組を公労使で進めていかなければならないと考えております。
 公労使と申し上げたのは、もちろん企業の発展の中で女性を活躍させていくことも重要ですが、性差別禁止、人権の観点の取組として大変重要なだけではなく、日本社会の持続的な社会保障制度や経済発展のために必要不可決だと考えております。このことは国内外の様々な所から指摘をされていることで、だからこそ公労使でしっかりと取り組んでいく必要があると思っております。
 先ほど、岡田委員から経団連の取組のお話がありましたが、連合でも「第4次男女平等参画推進計画」を策定しており、女性の更なる活躍を男女平等の観点から進めておりますので、是非、先ほども申し上げたように公労使が議論を重ね、一緒にこの課題に対してしっかり取り組んでいくべきだと考えております。雇用均等分科会の女性活躍支援に関する新法の議論も、三者構成ルールの下でしっかりと論議をして、全ての女性が生き生きとやりがいを持って活躍できるような内容となるように、丁寧な議論を要請したいというのが要望です。
 もう1点、これは質問です。女性の就業継続の部分で、「女性のライフステージに対応した活躍支援」と3ページの(4)に記載していますが、ここは離職した女性の再就職支援を中心に書いていただいていると思います。この取組は、我々の傘下の組合でもかなりやっており、我々も非常に重要だと思っておりますが、そもそも就業継続を促すことが大前提だと考えております。これには皆さん異論はないと思いますが、就業継続については(3)の育児・介護休業法の見直しを含めた仕事と家庭の両立支援の内容で網羅されているので、(4)には入らないという理解でよろしいかということを確認したいと思います。また、連合でも取組課題を把握しておりますが、マタニティ・ハラスメントの防止について、今後、取組を強化する必要もあるのではないかと考えておりますが、この点について基本的なお考え等ありましたら、是非お伺いしたいと思います。

○樋口会長 
 御質問ということで、事務局からお願いします。

○安藤雇用均等・児童家庭局長
 女性の関係についてまとめてお答えします。岡田委員から新法の話について御要請がありました。岡田委員には、かねてよりポジティブ・アクションの推進に関して非常に御指導を頂いておりますが、経団連の取組も大変すばらしい刮目すべきものがあると思っております。後ほど御説明しますが、雇用均等分科会において議論が始まっており、様々な御意見を頂いている中で、こうした経団連の取組も含めて、国全体で推進されるような枠組みはどうやって作っていったらいいのかということで、引き続き御議論いただければと思っております。
 冨高委員からも新法についてお話がありました。また、ポジティブ・アクションについては、引き続き社会の理解が深まるような形で推進したいと思っております。新法については、雇用均等分科会での十分な御審議をいただきたいと思っております。
 最後の御質問についてですが、御指摘のように、継続就業できる環境整備は基本中の基本で、非常に重要なことだと考えております。御指摘の重点事項の整理としては、おっしゃられたとおり、希望に応じて就業継続ができる環境作りについては(3)でまとめており、いろいろな事情で離職されたり、キャリア・ブランクが生じてしまった方々に対する対策を(4)でまとめております。整理の問題だと思っていただければ有り難いと思います。
 マタニティ・ハラスメントの防止については、均等法や育児・介護休業法の違反事例に対しては、都道府県労働局雇用均等室において相談を受けたり指導を行ったりしておりますが、中には退職して初めて均等室を訪れる方も多くいらっしゃるので、均等法や育児・介護休業法の履行確保に加え、均等室の相談窓口としての周知にもしっかりと努めていきたいと思っております。いずれにしても、こうした取組も含めて、女性の継続就業についてはしっかりと環境整備ができるような形でやっていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

○坂戸委員 
 重点事項として新規事業、あるいは既存事業の拡充等々に関して御説明いただきましたが、私としてはいずれも労働力人口の維持、労働生産性向上の観点からも必要なことだと理解しております。
 しかし、御説明の中で、その財源についての言及がありませんでした。雇用保険財源を基に実施する事業が少なからずあるのだろうと考えております。雇用保険財源は、言うまでもなく特定の目標のために特定の人たちが拠出するわけですから、この利用に関してはより高い政策効果が求められることになると思います。事業の必要性、規模等を勘案しながら、政策効果の向上に努めていただきたいとお願いいたします。
 併せて、雇用保険財源を利用して得られた政策効果について広く認識が進むよう、この「見える化」にも一層努力をしていただきたいと思っております。
 また、雇用保険二事業については、PDCAサイクルを回す中で適切な運用に努めておられると聞いており、大いに評価できると考えております。現在、アベノミクスにより景気回復が実感されつつあると言われておりますが、中小企業・小規模事業者は円安による原材料の価格の高騰、あるいは電気料金や燃料費の増大、加えて人件費の上昇等々により、いまだ7割に及ぶ中小企業・小規模企業が赤字を余儀なくされているというのが現実です。このような状況の中で、事業主が保険料を拠出していることを重く受け止めていただき、雇用保険二事業の趣旨に当てはまる事業なのか、しっかりと見極めていただき、財源を精査していただきたいとお願いいたします。

○樋口会長 
 雇用保険関連、あるいは財源関連で何かありますか。
 それでは、事務局からお願いします。

○生田職業安定局長 
 坂戸委員から御意見を頂きましてありがとうございます。雇用保険二事業について、政策効果をきちんと把握していくことは非常に大事なことだと思っております。これまでも継続的にPDCAサイクルによる目標管理をやってきて、個々の事業の評価を行い、評価結果を予算編成に反映させるといったこともやっております。評価結果については、厚生労働省のホームページで公開をしております。
 平成27年度についても、評価結果を踏まえて個々の事業の必要性、あるいは役割を検証して、必要な事業に重点化するなどのメリハリの効いた事業運営に努めていきたいと思います。今後とも目標管理については、今の坂戸委員の御意見も踏まえて適正・的確に行っていきたいと考えております。

○樋口会長 
 ほかにいかがでしょうか。

○吉川委員 
 私からは、最低賃金と若者・女性の活躍推進について意見を申し上げます。
 今年度の最低賃金の改定については、再三、報道等もされておりますので御存じだと思いますが、賃金を支払うための原資は、当然のごとく企業の付加価値からですので、企業の業績が良くならなければ引上げに対応することは難しいわけです。大手企業と一部の中堅企業には良い所もありますが、小規模企業はまだまだ大変厳しい状況ですので、法的な強制力のある最低賃金の引上げについては、こうした厳しい層の企業に十分配慮していただきたいと強く思います。
 次に、若者の活躍推進についてですが、ご承知のとおり、平成28年度入社から採用選考活動を後ろ倒しすることになっております。採用選考期間が短くなるために募集人員に満たないという事態が、中小企業に多く生じることが懸念されます。大手企業の採用意欲が好景気によりますます高まっている中で、学生自身も大企業志向が再び強まっているという調査結果もありますので、中小企業にとっては優秀な学生の確保が大変難しい状況になっております。もちろん企業側としても努力することが必要ですが、厚生労働省におかれましては、関係省庁とも連携の上、学生に就職活動の早い段階から中小企業に目を向けていただけるよう御尽力いただきたいと思っております。
 最後に女性の活躍推進について申し上げます。女性はそれぞれものの考え方、価値観が違います。育児休暇を利用しながら継続就労できる環境を整えることも重要ですが、一方で、3歳ぐらいまでは自分でしっかり育てたいと思っている方も多くいらっしゃいます。昨今のいろいろな子供たちの乱れは親の愛情不足ではないかという指摘もありますので、私は一度退職した方の再就職を企業が受け入れる環境をしっかり作っていただくことが、女性活躍の本当の意味での力になるのではないかと思います。その辺りのことも御検討いただけたらと思います。

○樋口会長 
 それでは、若者と最低賃金関連でいかがでしょうか。

○宮原委員 
 全体の話ですが、先ほど御説明のあった重点事項については、「日本再興戦略」の改訂版や「骨太の方針」を踏まえたもので、必要な取組が盛り込まれていると評価したいと思います。その中でも、先ほど鵜浦委員他からも御発言がありましたが、働き方改革の推進は、企業がこれからも活力を維持して成長を続けていくために欠かせない点であろうと思います。着実に施策を講じていただきたいと思います。
 私からは、若者の活躍推進に向けた法的な整備について意見を申し上げます。少子化の進行により、若者の労働力人口が減少し続けている中で、若者の雇用を促進するための新しい法律を策定する。そして、総合的な対策を推進していくことは大変意義があると思います。新法の具体的な内容はまだこれからということで、当審議会で審議することになるだろうと思いますが、これらの審議に当たって留意が必要と思われる視点、ポイントを3つほど申し上げます。
 第1は、新法の策定に当たって、現在展開されている若者雇用対策関連を単に寄せ集めることはしないで、これまでの雇用対策の効果に対する十分な検証を踏まえて、効果が真に見込まれる内容にしていただきたいということです。例えば「新卒応援ハローワーク」などは大きな成果が上がっていると思いますが、こういった成功事例は更に強化する。一方で、そうでないものは廃止を含めた見直しをするというメリハリを効かせることが大事だろうと思います。
 第2に、新法の基本としては、飽くまで若者を雇用する企業の主体的な取組を尊重していただきたい。政府には、側面的な支援の充実をお願いしたいということです。採用や育成などは、各企業のそれぞれの実情により、企業ごとに異なる点が多いので、一律的な対応は求めずに、企業における多様な実態を踏まえたものにしていただきたいと思います。
 第3のポイントは、若干技術的な話になりますが、企業からの様々な情報開示が今後のテーマになっていくかと思います。一般的に求職者がより多くの企業情報を入手できることは望ましいことですが、どのような情報を企業が提供していくかについては慎重な議論が必要であろうと思います。例えば離職率等のデータ、特に従業員数が少ない企業の場合、数値の振れ幅が大変大きくなりますし、残業時間も景気の良し悪しで大きく変動しがちです。それだけが動くとミスリーディングになりますので、提供する情報の内容については企業の裁量に任せるべき点が多いと思います。また、数字が独り歩きしないような配慮をしていただきたいと思います。
 最後に、先ほど吉川委員からも御意見があった来年から始まる採用選考活動の後ろ倒し、3か月遅くなるわけですが、この対応について申し上げます。一般的に、景気回復と人手不足により、新規学卒者の就職環境は改善しつつありますが、この大幅な開始時期の後ろ倒しによって、未内定のまま卒業する学生の増加が懸念されます。「新卒応援ハローワーク」における未内定の学生に対する就職支援については、是非万全を期していただきたいと思います。

○逢見委員 
 私も、若者の活躍促進について御意見を申し上げます。将来を担う若者がそれぞれの能力を伸ばして、働きがいを持って働く、そして安定雇用に就くような支援策を取るといった総合的かつ体系的な若者雇用対策の充実に向けて、法的整備を含めて検討することは意義あることだと思います。
 それに関連して、「若者応援企業宣言」の事業の更なる普及・活用を図るということで、「若者育成認定企業」の認定を行い、それに対する助成措置を行うと出ています。こうしたものに認定されるということは、若者が就職先を選択する場合にも重要な参考資料になるという意味で、意義があると思います。
 同じようなものとして、次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん」などがあって、こうしたマークを取得している企業は、両立支援等に対しても理解があると見られています。ただ、そうしたものについてのチェックやフォローも必要だろうと思います。実際にくるみんマークを取得している企業で働き始めたら、十分な支援がなかったとか、妊産婦に対する保護が十分でなかったというケースも報告されているので、認定した後のチェック、フォローの必要性について要請したいと思います。
 良い所、努力している所を認定して育てていくということもありますが、一方で若者を使い捨てにする、いわゆる「ブラック企業」については、厳しく是正勧告をする必要があると思います。これについては、最近、「すき家」の過重労働を調査した第三者委員会報告が発表され、これがマスコミでも報道されておりました。この中身を見ると、いわゆる過労死ラインとされる月80時間の残業をはるかに超える月間400時間、500時間の労働が常態化していた、あるいはアルバイトで残業させて、かつ残業代の不払い、サービス残業をしていたとアンケートで答えた人が80%以上いたということです。そういう法令違反の実態が報告されております。監督指導も受けており、様々な労働基準法違反等の指摘がなされていたものが数十件に上る。これも単年度ではなく、複数年度にわたって是正指導が労働基準監督署から行われていたということです。
 しかし、こうした問題について経営側は危機意識を全く持っていなかった。この報告書によると、過重労働を是正できなかったのは組織的・構造的な問題をこの企業が抱えていたと指摘しています。こうなると、労働基準監督行政が果たして十分機能していたのかを疑わざるを得ません。このような企業が跳梁跋扈することは、将来を担う若者の働きを失うだけではなく、我が国の労働市場にも悪影響を及ぼす問題だと思います。こうした問題について、きちんとした監督指導が行われるべきです。また、事後的なものだけではなく事前の、例えば求人のときの労働条件の適正な明示、それと実態の乖離が大幅にあったときには、即その問題に対応する姿勢が必要なのではないかと思います。

○山浦委員 
 私からは、今、逢見委員から発言のあった若者の働き方とも関連する非正規雇用労働者の課題と、最低賃金の引上げの取組について、2点発言させていただきます。
 非正規雇用労働者は雇用労働者の36.7%を占め、既に1,906万人を数えております。私ども連合は、非正規雇用労働者の雇用の安定と均等・均衡処遇の実現に向けて、現在、取り組んでおります。連合が実施した2012年「連合パート・派遣労働者生活アンケート」の結果では、現在の働き方を選んだ理由について、「正社員の仕事に就けなかった」という回答が最多で全体の41.1%、正社員への転換希望について「正社員になりたい」と答えた方が42.5%という回答でした。
 非正規雇用で働く人たちからは、正に正社員になりたい、安定して働きたいという声が強く出されているわけです。国は、こうした労働者の声を踏まえた政策を実現していくべきだろうと考えています。
 資料2の5ページには、非正規雇用労働者の正社員転換と処遇改善に取り組む事業主への拡充として、キャリアアップ助成金の拡充が挙げられております。正規雇用労働者に比べ雇用が不安定であり、賃金が低く、能力開発の機会が乏しいといった非正規雇用労働者の問題点が指摘をされる中で、労働契約法による無期労働契約への転換ルールなど関係法令の整備と並んで、キャリアアップ促進のための政府としての助成措置が必要ですし、政策効果が適切に現れるような対応を図ることが極めて重要だろうと思っております。その助成措置として、平成25年には「キャリアアップ助成金」が創設されましたが、本助成は非正規雇用労働者のキャリアアップにつながるものとすべきであって、真に効果が上げられているか、その結果の把握と検証が求められています。
 最近の報道にもありますように、人手不足が顕在化しております。これまでの失われた20年間では、非正規労働者を使い勝手のよい労働者として来ましたが、今後は優秀な人材を確保していかなければ、企業の発展、あるいは日本の発展はないと思っております。非正規雇用労働者、特に正社員として働きたいにもかかわらず非正規雇用で働かざるを得ない労働者を、正規雇用労働者に転換させる取組を確実に促進していただくよう、改めて政府、使用者に強く申し上げたいと思います。
 次に、最低賃金の引上げの取組です。資料2の2ページに、賃金の低廉な労働者の処遇を改善し、賃金の上昇が企業の収益を向上させるという好循環を、低所得者層も含めた社会全ての所得者層で担うことができるような、いわば地域別最低賃金の引上げに向けて努めるということが記載されております。その際、生存権の観点からの賃金水準はもとより、仕事に見合った賃金水準がどうあるべきかについて審議がなされるよう、指導強化をお願いしたいと思います。加えて、中小企業・小規模事業者に対する支援の充実は、関係省庁とも連携しながら、事業者に支援策を周知徹底されるよう努力をしていただきたいと思います。

○土谷委員 
 私からは、安全衛生についてお話させていただきます。今回、いろいろな御提案を頂いていますが、現在、第12次労働災害防止計画に基づいて、業種の特性に応じた災害防止対策が実行されているところだと思います。しかし、労働災害は一朝一夕に減少するものではなく、企業の中に安全文化が根付くことが非常に重要だと思っておりますので、これに関しては屋上屋を架すのではなく、企業が展開している地道な活動を支援いただきたいと思っています。
 それからパワーハラスメントについてです。予防・解決に向けて周知・広報を引き続き実施するということが盛り込まれていますが、この問題については、企業の労使はともに非常に苦労しております。被害者も労働者ですが、加害者も労働者です。その加害者について、無自覚だったり、自覚していても、何度諭しても繰り返してしまうということも起こりがちです。ここについては当然、周知・広報、本人の自覚を促すことが重要だと思っておりますが、ストレスチェック、鬱と同様に、加害者側についても精神的なカウンセリングが今後必要になってくるのではないかと考えております。こういったことについて一歩踏み込んだことを、労使だけではなくて、専門家も含めて取り組んでいかなければこの問題は解決しないのではないかと感じています。
 もう1つ、育児、介護に続く第3の両立である治療と職業生活の両立支援については、非常に重要な課題であると思っております。どのような支援ができるかを慎重に検討していく必要があり、企業としては、自社の労働者は大切であり、大事にして支援したいと思っております。一方で企業は競争にさらされているため、全ての私傷病の労働者に対して特別な支援をすることは容易ではないと言わざるを得ません。今、求められるのは、労働者本人、医療機関、事業者の密接な連携だと思います。ここにおいても、それぞれが担う役割を確認して一緒にやっていくことが、疾病の治療と職業生活の両立の可能性を見出せる唯一の方法であると思っております。いずれにしても一緒にやっていかざるを得ないので、引き続き前向きな検討をお願いしたいと思います。

○椋田委員 
 私からは、2点申し上げます。
 1つ目は、2ページの(1)の3「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法の円滑な施行」です。今後、法律が成立した後には、基本指針の策定等に関する議論が行われていくものと思っております。この基本指針の内容については、例えば特例の対象者を必要以上に限定すべきではないと思いますし、雇用管理計画の内容についても、多様な取組ができるよう柔軟なものにするということで、企業における労務管理の実態を踏まえたものに是非していただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 もう1点は、8ページの6の(1)「職業能力の『見える化』等を通じた人的資本の質の向上」です。人的資本の質の向上は正に非常に重要な課題で、生産性の向上を通じた企業の成長の中で不可欠なもので、ここに書いてある全体的な施策については評価できるものと思っております。他方、ジョブ・カードの見直しということで、「キャリア・パスポート」とあります。これはまだ仮称だと思いますが、具体的な制度化の検討を進めるに当たっては、企業の実態を十分に踏まえながら審議会で検討を深めることが重要だと考えております。ジョブ・カード制度において課題となった点を克服しながら、企業現場に馴染みやすい現実的なものとしていくという視点が必要だと思います。とりわけ、過剰で煩雑な仕様とすることによって、企業にとって使いにくいものになることがないよう、今後、電子化も検討されると思いますが、特に電子化の検討に当たっては、限られた予算の中でできるだけシンプルなものとしていくことが必要だと思っておりますので、この点も併せてよろしくお願いいたします。

○神津委員 
 労働者派遣法の改正法案に関しては、御案内のように3月11日に国会提出がなされましたが、世論の強い反対と、様々な問題があって、審議未了・廃案となったということですが、資料2の6ページの記載からしても、改めて厚生労働省として法案提出を考えておられると思います。
 私どもとしては、前回の労働政策審議会の場でも詳しく主張してきたとおりですので、ここでは概括的に申し上げますが、2つの点、1つは、派遣労働はあくまでも臨時的・一時的なものであること、もう1つは処遇の問題で、基本は均等待遇ですから、それに向けての処遇改善策という2点で、踏み込み不足ということで、御存知のように1月の建議取りまとめの中でも反対意見を付していただきました。このことの懸念が払拭されることなく改正法案が成立するような事態になれば、これも私どもはかねてより主張しておりますが、既に現実として生涯派遣で低賃金という働き方を余儀なくされる方々がかなりおられるわけで、そのことをむしろ拡大してしまうという懸念が極めて大きいと思っております。したがって、この法案については、労働側としての私どもの反対意見、あるいは世論の状況も十分に斟酌し、慎重に対応していただきたいということを強く要望したいと思います。

○椋田委員 
 この労働者派遣制度は、言うまでもなく、外部労働市場における重要な就労マッチング機能の1つだと理解しています。先の通常国会では、我々としては大変残念ながら、審議されないまま廃案となってしまいましたが、今回の改正法案は派遣事業の許可制への一本化、あるいは派遣労働者の雇用安定に向けた措置の派遣事業者への義務化、派遣労働者のキャリアアップ措置の強化といった大変重要な点が盛り込まれており、派遣事業の一層の健全化、派遣労働者の保護に資するものになっていると思っております。改正法案については、是非、臨時国会での早期成立を期待しております。
 また、成立した暁には、現場で無要な混乱を防ぐために、施行まで十分な周知をお願いしたいと思っております。

○樋口会長 
 以上であれば、厚生労働省には、今後の予算編成作業を進めるに当たって委員の皆様の御意見を反映し、取り組んでいただきたいと思っております。今、いろいろ御説明がありましたように、新法も含め、また労働時間法制の在り方等々についても今後議論が深まっていくと思いますが、その際、是非その法律の趣旨にのっとった運用、あるいは適切な指導・監督が図られるように要望したいと思いますので、御検討のほどよろしくお願いします。
 それでは、議題2「分科会及び部会等における審議状況」、議題3「法案の国会審議結果」について、事務局から説明をお願いします。

○岡崎労働基準局長 
 資料3-1に基づき、労働基準局所管の分科会等の審議状況について御説明いたします。まず1つ目に労働時間法制、先ほどもいろいろ御意見をいただきましたが、御承知のように労働条件分科会において昨年来議論を開始しております。7月には日本再興戦略、6月に閣議決定されましたが、この中身も含め御議論いただくようにということで追加の要請をしているということです。9月以降、本格的な議論が行われるということです。
 2つ目が石綿関係、安全衛生分科会です。石綿関係について既に使用の禁止は行っておりますが、既存のものについての関係で、幾つかの規制の強化をするというような、石綿障害予防規則の改正を行うという審議を行っていただきました。
 同じく安全衛生分科会ですが、安全衛生法関係政令の改正です。有機溶剤等の関係ですが、これらについてリスク評価を踏まえた対応の強化、あるいは有機則から特化則への変更というようなことについて審議をお願いし、答申いただき対応していただきました。
 行政の評価の関係ですが、これにつきましても労働条件分科会及び安全衛生分科会それぞれにおいて御議論いただき、その意見を踏まえながら行政の運営を進めているということです。以上です。

○生田職業安定局長 
 職業安定局の関係です、資料3-2を御覧いただきたいと思います。1ページ目、まず雇用保険制度につきましては、先の通常国会で法改正ができ、その施行ということで、3月28日に中長期的なキャリア形成支援措置の詳細等を内容とする「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案要綱」について諮問させていただきました。同日の雇用保険部会で、「妥当」という結論をいただき、同日の分科会で同様の結論に至りまして答申がなされております。これに基づき、関係省令が改正法とともに4月1日に一部が施行されております。
 次は求職者支援制度です。これにつきましても、昨年12月26日の「雇用保険部会報告」を受け、3月28日に職業訓練受講給付金の支給要件の改正などを内容とする「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱」が諮問されました。3月28日の雇用保険部会で、「妥当」という結論に至り、同日の分科会でも同様の結論になりまして答申がされております。これについて省令は4月1日及び7月1日に施行されております。
 3つ目が障害者雇用対策の検討です。第180回通常国会で「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律」が成立しました。これを受けて、7月4日に除外率設定業種に幼保連携型認定こども園を設定することなどを内容とする「障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱」が諮問されております。同日に障害者雇用分科会が開催され、「妥当」という結論に至り、これに基づき、省令につきましては、改正法とともに来年の7月1日に施行される予定とになっております。
 2013年度の目標の評価、2014年度の目標設定につきましても職業安定分科会と障害者雇用分科会で審議いただき、今後は意見を踏まえて内容が確定していき、その後は公表するということです。
 それ以外ということで、まず、ハローワークの求職情報の提供につきましては、3月28日の職業安定分科会で了承を得た上で、「ハローワークの求職情報の提供に関する検討会」を立ち上げました。その検討会の結果を踏まえ、6月18日に開催されました職業安定分科会において、情報提供の仕組みなどについて報告し、了承を得ているところです。
 各種助成金の見直しを内容とする「雇用保険法施行規則及び建設労働者の雇用の改善等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱」について、3月28日の安定分科会で「おおむね妥当」との結論をいただき、答申されております。これに基づき、省令につきましては、4月1日から施行されております。
 ここに書いておりませんが、先ほど議論されました若者に関する雇用の法的整備の問題については、近々、職業安定分科会の雇用対策基本問題部会で議論が開始される予定です。以上です。

○宮川職業能力開発局長 
 資料3-3を御覧ください、職業能力開発分科会における審議状況について御報告申し上げます。
 内容として項目ごとに御説明させていただきます。能開法施行令・施行規則の改正に関する諮問案件ですが、指定試験機関に行わせることができる技能検定職種の追加(機械保全)について追加し諮問・答申がなされ、了解が得られました。また、職業訓練基準等の見直しも併せて行い、同様に諮問・答申がなされ、施行することとなりました。
 2番目、求職者支援制度の見直しについては、職業能力開発分科会におきましても職業訓練の認定基準、奨励金支給要件の改正を行うものにつき、諮問・答申がなされたところです。
 また、中長期的なキャリア形成支援措置としての教育訓練給付の拡充について、それぞれ省令案要綱あるいは指定基準について諮問・答申がなされたところです。
 2013年度の実績評価・2014年度の年度目標ですが、それぞれ御意見をいただき審議を行ったところです。今後はその御意見を踏まえ内容を確定・公表という運びになっております。
 その他としては、キャリアアップ助成金に「人材育成コース」の創設を行うなどの「省令案要綱」について、諮問・答申がなされたほか、7月31日の職業能力開発分科会において、職業能力開発の今後の在り方に関する研究会中間取りまとめ、及び職業能力開発行政改革検討チーム報告について報告がなされ、議論が行われたところです。
 これらにつきましては、今後、この分科会において様々な議論を行い、年末に向けて職業能力開発行政の今後の在り方について分科会としての意見を取りまとめていただこうと考えているところです。以上です。

○安藤雇用均等・児童家庭局長 
 資料3-4をお開きいただきたいと思います。まず1点目として改正次世代育成支援対策推進法の施行についてです。先の通常国会において次世代育成支援対策推進法の改正法が成立したところです。この施行期日につきましては、法律の有効期限の延長については公布日である平成26年4月23日、その他については平成27年4月1日となっております。この下で、特例認定制度の基準等を定める省令及び行動計画策定指針の一般事業主行動計画部分につきまして、7月1日及び7月17日の雇用均等分科会において御議論いただき、現在パブリック・コメントにより意見を公募しているところです。省令指針の改正については10月中の公布を目指し、9月に諮問させていただきたいと考えております。
 2点目として改正パートタイム労働法の施行についてです。これも先の通常国会において改正法が成立し、7月1日の雇用均等分科会において施行日政令を、また17日の均等分科会において改正省令及び改正指針の諮問をさせていただき、答申をいただいております。これを受け7月9日に施行日政令を公布、24日には改正省令・指針を告示しておりまして、施行通達を発出したところです。
 3点目として、先ほど来、議論もありました女性活躍推進に向けた新法についてです。本年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2014において、女性の更なる活躍推進のために女性にとって働きやすい職場環境を整備するとともに、指導的地位に占める女性の割合の増加に向けて、総合的かつ集中的に取り組む必要があるとされており、女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組みを検討することが盛り込まれております。
 このうちの新たな法的枠組みにつきましては、7月25日の日本経済再生本部において総理から、秋の臨時国会に向けて法案を準備していきたいという表明がなされたところです。これを受けまして、8月7日の雇用均等分科会において女性の活躍推進に向けた新たな法的枠組みの構築について議論を開始していただき、今年10月までに一定の結論を得るために引き続き御検討いただくことにしております。
 具体的には、別紙3の「日本再興戦略」改訂2014の下線部の所にあります。対象としては、国・地方公共団体も対象に入っておりますので、法案全体につきましては内閣府等の関係省庁と協力して作っていくことになります。私どもとしては民間事業主関係について所掌する仕組みになっております。
 次に、雇用均等分科会の目標設定について御議論いただきましたのが、8月26日の分科会です。2013年度の評価及び2014年度の目標について御審議いただき、御意見を踏まえて内容を確定し、公表させていくという段取りになっております。
 その他として3点並んでおります。両立支援等助成金について、ポジティブ・アクション能力アップ助成金の創設などに伴う雇用保険法の改正について、3月20日の雇用均等分科会において諮問させていただき、御答申いただいたところです。また、家内労働部会については、3月24日に家内労働概況調査結果及び第11次最低工賃新設・改正計画の進捗状況について、報告をさせていただきました。また、女性労働基準規則の一部改正につきまして、8月7日の分科会において、労働安全衛生規則の改正に伴う女性則の一部改正を諮問させていただき、御答申をいただきましたので、8月25日に公布、11月1日施行予定で進めているところです。以上です。

○樋口会長 
 それでは、資料4について藤澤参事官からお願いします。

○藤澤労働政策担当参事官 
 最後に資料4をお願いいたします。先の186回通常国会における法案審議結果ですが、いずれも労政審の各分科会などで御審議いただきましたあとに政府提案で国会に提出し、その審議の成り行きです。
 1つ目の雇用保険法、2つ目の次世代法、3つ目のパートタイム労働法、最後の6つ目の労働安全衛生法につきましては成立いたしました。4番目の有期特措法については継続審議、また5つ目の労働者派遣法につきましては審議未了により廃案となったところです。以上です。

○樋口会長 
 ただいまの説明につきまして、御質問、御意見をお願いしたいと思います。

○逢見委員 
 議題1でまだ発言すべきところがあります。申し訳ありませんが、発言してもよろしいでしょうか。

○樋口会長 
 はい。

○逢見委員 
 地域に応じた良質な雇用機会の確保・創出ということで、今、報道によりますと、政府が今度の内閣改造で地方創生担当大臣を置き、それを支える「まち・ひと・しごと創生本部」を政府内に作ると伝えられています。ここに「しごと」という言葉がありますので、地域創生の中に雇用の問題も含まれるのだろうと理解しています。
 地域雇用というのはそれぞれ地域の様々な特性がありますので、地方自治体や各地域の労使など、地域関係者が創意工夫をいかして地域雇用対策を推進することが必要だと思っております。資料2の中で「地域しごと創生プラン」というものが出されておりますが、中身を読みますと自発的な雇用創造の取組みを支援するという内容になっています。これは評価できると思っています。ただ、こうした施策というのは、やはりどういう結果であったのかが重要です。結果の把握と評価がないと看板倒れに終わってしまう可能性がありますので、こうしたことについてはしっかりしたフォローを行っていくべきだと思っております。
 人材不足分野における人材確保・人材育成対策の推進も、昨今の人手不足の中でこうした問題が非常に課題になっています。魅力ある職場づくりとかいろいろ書いておりますが、人材が不足している職場の労働条件が相対的に低位にあることが、募集してもなかなか人が採れないということにつながっているのではないかと思います。
 厚生労働省が行った「平成18年転職者実態調査結果」で転職する人を見ると、やはり賃金が大きく減少しています。労働移動を促進しようという政策を取っても、実際に一人一人から見ると、転職による生活の質の低下ということが課題としてあるわけです。こうしたことを考えますと、人材不足分野においては労働条件の改善が図られないと、結果として不安定な、あるいは低劣な労働条件の労働者を増やすだけになってしまうことが懸念されます。量的問題だけでなく、労働の質の確保の必要性を指摘しておきたいと思います。

○野田委員 
 大変申し訳ありません、私からも少し労働政策の重点事項の課題について述べさせていただきます。私からは外国人労働者の課題について少しコメントさせていただきたいと思います。資料2ですと9ページになるのですが、下段以降で技能実習制度に関する記述があります。技能実習制度については国際貢献が制度の本旨、主旨だと思っておりますけれども、現状は逸脱して、低賃金労働者の受入れ手段として悪用されている実態があると思っています。
 8月8日の厚生労働省からの報道発表にもありましたように、昨年労働基準監督署などが監督指導した実習機関のうち、約8割に法令違反があったという結果からも、その実態は明らかだと思っております。
 加えて、アメリカ国務省が6月に公表しております2014年版の人身売買報告書においても、昨年に引き続いて強制労働の温床であるとの指摘がなされています。技能実習制度は国際的にも大きな批判の的となっているということを、十分注視すべきだと思っているところです。
 こうした状況を踏まえて、労働側としては、この労政審の場でも技能実習制度を適正化するよう訴えてきたところであり、今回資料2の9ページ以降にあるとおり、管理体制の強化などの適正化に向けた見直しを行うという掲載がありますけれども、この点については高く評価したいと思っております。その上に立って、6月に閣議決定されました「日本再興戦略改訂2014」では技能実習制度に関し、実習期間の延長などの制度拡充についても言及があるところです。今後の見直しに際しては、労働法令の保護が十分に及んでいない実習生の実態を直視するというのが大事だと思っておりますし、制度の適正化を最優先に進めていくことを是非強く申し上げておきたいと思います。
 なお、今回の見直しの具体策として示されております、新たな法律に基づく制度管理運用機関の設置などの管理監督の在り方などに関しては、現時点で労政審での議論は行われていないと認識しております。厚生労働省が国際研修協力機構(JITCO)への委託を通じて行っております指導・監督体制を見直すような新法提出などを意味しているということであれば、是非労政審の場で論議する必要があるということを申し上げておきたいと思います。
 また、「日本再興戦略改訂2014」では建設・造船・介護分野における外国人材の活用ですとか、国家戦略特区における家事支援人材の受入れなども提起がされているところです。国内労働市場への影響、更には外国人労働者の保護の在り方などを検討することなく、拙速に外国人受入れ拡大の方向性のみを打ち出しました政府の姿勢については、若干乱暴過ぎると思っております。提起された内容は機関投資家対策というところが色濃く出ている内容でして、国民の生活とはほど遠い改革と言わざるを得ないと、我々としては思っております。言うまでもなく、日本は就業者の9割が雇用労働者でして、雇用社会であることを十分認識した今後の政策提起とその上での実践が大事だろうと思っているところです。したがって今やるべきこと、行うべきことは外国人労働者の権利保護、そして人手不足と言われる分野における処遇改善策をはじめとする基本的な国内人材確保策の確立であって、低賃金の外国人労働者の受入れではないと思っております。厚生労働省におかれましては、この点に十分留意をして、今後の政策作りをお願いしたいと思っているところです。あわせて、厚生労働省には、前の逢見委員の意見とともに、今後の予算編成作業を進めるに当たっても反映し、取り組んでいただきたいと思います。

○相原委員 
 議題2の関係、資料3-3、職業能力開発分科会の審議状況に関して2点御意見を申し上げたいと思います。1点目は、資料3-3の14ページに概要が示されておりますが、今回の御報告にありました、職業能力開発の今後の在り方に関する研究会中間取りまとめに関してです。14ページにもありますとおり、上から2つ目の箱の中に、今後、職業能力開発に取り組む3つの観点が掲げられております。1つ目には、企業内育成の機会に恵まれにくい労働者に対しての重点的な支援なども含まれており、全体として評価をしたいと考えております。
 ただ、一方で、ここに記載はありませんが、平成25年度の厚生労働省の能力開発基本調査を見てみると、大企業の非正規労働者と中小企業の正社員でキャリアアップの比較をしたところ、やはり様々な条件が異なりますので、中小企業の正社員の方においてキャリアアップの機会になかなか恵まれないということも明らかになっておりますので、それらに対する支援も念頭に置くべきではないかと考えております。また、今年10月から施行されます中長期的キャリア形成支援措置に大きな予算、890億円の支出増ということで、職業能力開発行政の年間予算の約半分で、予算規模としてもかなり大がかりなものとなるわけですが、今回、中間取りまとめには必ずしもそのあたりが盛り込まれておりません。資料3-3の8ページにもあるとおりの基本的な事柄や考え方の明示については、最終の取りまとめ段階ではもちろん、その位置づけを明確にしたものとして取りまとめられることが望ましいと考えます。
 2つ目の点ですが、同じ資料の15ページに、職業能力開発行政改革検討チームの報告書の概要が載っています。15ページの右上の所には目指すべき方向性、そのマル2として本省の職業能力開発局の権限を労働局に一部委任するということと、労働局に指揮命令できるような形で組織体制にしていくという辺りが述べられております。
 一方、中長期的キャリア形成支援措置は先ほど申し上げたとおり大変大がかりな仕組みとなっており、円滑に施行を進めるためにも地方における職業能力開発行政の拠点の強化が求められているのだろうと考えます。現在、都道府県の労働局には求職者支援制度の創設を契機とした求職者支援室が設けられておりますけれども、なかなか現行の体制では十分と言えないのではないかと考えております。私どもとしては、職業能力開発行政が職業安定行政とより連携を深めていくという観点とともに、行政の効率化を両立させるということから、ハローワークを拠点とした全国ユニバーサルサービスとしての展開を実施し、体制を確立すべきではないかと考えております。行政の肥大化を排除しながら政策効果が実行できて、人的資本の蓄積に資するような取組を今後とも進めていただきたいと考えております。

○椋田委員 
 技能実習制度について意見がありましたので、一言コメントさせていただきたいと思います。技能実習制度の健全な運用を図る上で、制度の適性化が大変重要であるということについては、全く同意見であります。
 ただ、去る6月に取りまとめられました「日本再興戦略」の改訂版では管理監督体制の強化を前提に、技能実習制度を拡充するということが書かれております。こうしたことを踏まえ、見直し後の制度は、制度の適正な利用拡大に資する必要があると思います。
 具体的な制度設計に当たりましては、企業による制度の利活用が萎縮することがないように十分留意して、適正化とともに、制度の拡充をバランスよく進めていくことが基本だと思っています。
 併せまして、制度の利活用推進には関係者の制度に対する理解の向上というのは大変重要だと思っております。是非、制度に対する広報や啓発、あるいは助言等の取組を維持、強化していくことも併せて御検討いただければと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

○樋口会長 
 ほかによろしいでしょうか、逢見委員、野田委員、相原委員、椋田委員から御意見をいただきましたが、御意見と承ってよろしいですか。事務局から何かありますか。

○宮川職業能力開発局長 
 技能実習制度についてお話がありましたので一言御説明申し上げたいと思います。技能実習制度の見直しにつきましては、「日本再興戦略」の中で管理監督体制の強化を前提に技能実習制度を拡充することとされております。本来の趣旨を徹底するため、管理監督体制の抜本的強化と制度の拡充は言わば車の両輪ですが、その両方をやらなければならない。来年度の予算におきましても、新たな法律に基づく制度管理運用機関の設置ということについて予算の中で要求しているところです。
 技能実習制度につきましては、制度そのものは入管法に基づく制度でして、御承知のようにその見直しにつきましても本年6月に取りまとめられました入管懇の分科会報告書を踏まえて行われたものです。現在、その内容につきましては、この分科会の報告書を踏まえた形で政府部内で調整中です。労政審での対応については今後検討してまいりたいと思いますが、技能実習制度に関する問題について、平成21年の入管法改正の際には職業能力開発分科会の報告という形をとっており、これらの経緯等を踏まえ適切に対処してまいりたいと思います。
 併せましてもう1点、能力開発行政の関係で幾つか相原委員からありました。これらの点につきましては、私どもも十分御意見等を踏まえ、次回の研究会におきましても御意見などを御紹介させていただいた上で観点の盛り込み等、適切に対処してまいりたいと思います。また、体制の整備につきましても、来年度、専門実践教育訓練の施行体制の強化に向けての予算要求、それから改革検討チームの報告書を踏まえた形での組織再編、あるいは人員増員要求ということを行っておりますので、御指導のほど、今後もよろしくお願いしたいと思います。

○樋口会長 
 よろしければ次の議題、議題4の「その他」です。事務局から説明をお願いします。

○青山労政担当参事官 
 資料5をお開きください。タイトルに「労働政策審議会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会の設置について」とあります。まず、部会名にもあります「電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律」は、一定の電気事業における停電ストなどの争議行為を禁止することなどを内容とした法律です。いわゆる「スト規制法」と我々は呼んでおります。
 これに関わる電気事業そのものについて、電力システム改革が行われておりますが、その一環である「電気事業法等の一部を改正する法律案」が今年の通常国会で審議されましたが、その採決の際の附帯決議において、先ほど申しましたスト規制法に関し、電力システム改革に関する法体系の整備に合わせ、有識者や関係者等からなる意見聴取の場を設け、法律の今後の在り方について検討を行うとされました。これを受け、本労働政策審議会に標記にあるような部会を設置させていただくものです。
 スケジュールとしては、電力システム改革と言いますのは更に第3弾として来年、平成27年の通常国会への法案提出が目指されております。その法整備に合わせスト規制法の在り方について検討を行い、結論を得ることを想定をしております。この部会は全10名の公・労・使、三者構成で今後審議をお願いしたいと思っております。

○樋口会長 
 その他、ほかに事務局はいいですか。それでは、皆様から御意見をいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 ほかに御意見・御質問がないようでしたら、本日はこのあたりで閉会としたいと思います。最後、本日の会議に関する議事録につきまして、本審議会の運営規程第6条において会長のほか、2人の委員に署名をいただくことになっております。つきましては労働者代表委員は逢見委員、使用者代表委員は吉川委員に署名をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 本日の会議は以上で終了いたします、どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官付労働政策担当参事官室
調整第2係 内線(7716)
代表: 03-5253-1111

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