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2014年8月8日 第1回 女性医師のさらなる活躍を応援する懇談会

医政局医事課

○日時

平成26年8月8日(金) 16:00~18:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○議題

(1) 女性医師に関する現状について
(2) 女性医師の働き続けやすい環境整備に向けた課題及び環境整備のあり方について
(3) その他

○議事

○北澤医事課長 定刻になりましたので、第 1 回女性医師のさらなる活躍を応援する懇談会を開催いたします。本日は、先生方には御多忙のところ御出席を賜り誠にありがとうございます。本日、田村厚生労働大臣は所用により冒頭のみの出席とさせていただきます。それでは、田村厚生労働大臣より挨拶をよろしくお願いいたします。 

○田村厚生労働大臣 厚生労働大臣の田村でございます。今日は先生方大変お忙しいところこのようにお集まりをいただきまして誠にありがとうございます。また平素より厚生労働行政に何かと御理解と御協力をいただいておりますことに心から厚く御礼を申し上げる次第であります。併せて、この本懇談会の構成員をお受けいただきましたことを、心から感謝を申し上げるところであります。

 さて、安倍内閣でございますけれども、御承知のとおり女性の力、この活用さらには女性の社会の参画、これを推進していくことこそ、強い日本の国・経済を取り戻す、これに不可欠なことである。こういう認識のもと、女性の輝く、そういう社会、国づくりを目指しているわけでございます。本年 6 月に改訂をされました日本再興戦略、この中におきましても女性の活躍の場、これを拡大していくための様々な施策を盛り込ませていただいておるところでありますけれども、その中で女性医師による懇談会を設置し、その報告書と併せまして、復職支援でありますとか、勤務環境の改善でありますとか、さらに育児支援、このようなことを具体的に取り組んでいくこと、これを一体的に推進するということを謳っておるわけでございまして、そのような意味合いから今回この懇談会を開催させていただいたところであります。

 女性の医師の方々も全体の中で 2 割を超えてきておるわけでありますし、医学部の定員等々これも女性が増えてきておるわけであります。さらには、国家試験を受かる方々の 3 分の 1 が女性ということでございますので、そういう意味でやはり今医師不足でありますとか、診療科でのいろんな地域も含めて偏在があると言われる中において、女性の医師の方々の活躍というもの、これはもう日本の医療の発展においては欠かせないわけでございます。そのような中におきまして今般、ここにおります村木厚生労働事務次官のもとに、この会というものを開催させていただきながら、いろいろと女性の医師の方々が働きやすい、そのような環境というものをどのように整備していくか、そういう議論をさせていただければ有り難いなということで開催をさせていただくわけでございます。どうか、忌憚のない御意見をいただく中において、日本の女性医師の方々がさらに医療の現場で活躍できる、そのような環境、そのような医療現場をおつくりいただくのに是非ともお力をお貸しいただきますようによろしくお願いを申し上げまして、本当ですと私も参加をさせていただかなきゃならんのでありますが、明日は長崎での原爆の平和記念式典がございます。台風がきておりますので、今日中に長崎に行くようにというような指示をいただいておりまして、この後私飛行機で長崎に飛ばさせていただくということで、どうかご容赦をいただきますようによろしくお願いいたしたいと思います。それでは、どうかよろしくお願いを申し上げます。ありがとうございます。   

○北澤医事課長 ここで、田村厚生労働大臣は、所用により退室されます。続きまして村木厚生労働事務次官より、本懇談会の開催趣旨を説明いたします。

○村木厚生労働事務次官 厚生労働事務次官の村木です。今日は本当にお忙しい中を御参加いただきましてありがとうございます。私から本会議の開催趣旨について御説明をさせていただきます。お手元の資料の目次をめくりますと、資料 1 で、この会議の開催の要綱があります。先ほど田村大臣からもお話を申し上げましたように、大変女性医師の数が増えてきている、医学生の 3 分の 1 はもう女性ということです。現場でもたくさん女性の医師の方に御活躍をいただいているところですが、これからさらに女性の医師が増える中で、女性が働きやすい環境づくりが日本の医療を支える上で非常に大事になってくるということです。そうした状況を踏まえ、現場で活躍されている女性の医師の方々等にお集まりいただいて、率直な御意見を聞いて、ライフステージを通じて、女性医師が活躍できる環境整備を図りたいということが、この懇談会の開催の趣旨です。

 非常にざっくりとですが、検討課題は、女性医師の働き続けやすい環境整備に向けて、何が課題になっているかという課題の抽出とそれから、それを受けてどうすれば働きやすい環境の整備ができるかという対策等、この辺を御議論いただきたいと思っております。そういったことで、今日お集まりいただいた有識者の皆様方、それから必要に応じて関係者の出席も求めて会議を開催してまいりたいと存じます。

 実は、事務局ですが医政局のほうで担うことになりますが、雇用均等児童家庭局、女性の活躍を担当する部局も協力をしてということで厚生労働省内も縦割りを廃してしっかり省全体で取り組んでいきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。以上です。 

○北澤医事課長 ここで、カメラは一旦退出をお願いいたします。

              ( カメラ退出 )

○北澤医事課長 続きまして構成員の紹介をいたします。資料の右下 2 3 ページを御覧ください。国立国際医療協力局派遣協力第二課医師岩本あづさ構成員です。大阪府立母子保健総合医療センター消化器・内分泌部長惠谷ゆり構成員です。日本医師会常任理事笠井英夫構成員です。岡山大学大学院医歯薬総合研究科地域医療人材育成講座教授片岡仁美構成員です。日本赤十字社医療センター第二産婦人科部長木戸道子構成員です。全国医学部長病院長会議副会長甲能直幸構成員です。理化学研究所発生・再生科学総合研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクトプロジェクトリーダー高橋政代構成員です。あいち健康の森健康科学総合センターセンター長津下一代構成員です。全日本病院協会会長西澤寛俊構成員です。慶応義塾大学医学部内科学 ( 呼吸器 ) 教授別役智子構成員です。名古屋大学医学部附属病院医療の質・安全管理部副部長安田あゆ子構成員です。日本女医会会長山本廣子構成員です。

 また本日は参考人として日本歯科医師会倉治ななえ常任理事です。日本経済団体連合会政治社会本部小川尚子主幹です。以上の皆様に御参加いただいております。続きまして事務局を紹介いたします。まず、村木厚生労働事務次官です、二川医政局長です。福島審議官です。医政局医事課森専門官です。安藤雇用均等・児童家庭局長です。小林雇用均等政策課長です。

 また、オブザーバーとして文部科学省高等教育局医学教育課平子企画官です。申し遅れましたが、私は医政局医事課長の北澤です。よろしくお願いいたします。

 さて、本懇談会の座長ですが事務局といたしましては、日本女医会会長でいらっしゃる山本廣子構成員にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

                                 ( 異議なし )

○北澤医事課長 ありがとうございます。それでは、以降の議事運営につきましては座長にお願いしたいと存じます。山本先生、よろしくお願いいたします。

○山本座長 ただいま御指名いただきました山本でございます。このような大役をお引受けするに当たりまして、非常に肩の荷が重いという感じがいたしておりましたが、本日は御参集の委員の皆様方がとても頼もしい方々ばかりですのできっとうまく纏まると思います。

 男女雇用機会均等法案が成立施行されましてから再来年で確か 30 年になり、そして今回の男女共同参画のこれが施行されてから 15 年になりますのに、まだこのような懇談会を開催する必要があるということは、この問題解決がとても難しいことなのであろうと思っております。

 しかしながらいろいろな施策は、確実に成果を挙げておりまして、特にハード面で院内保育あるいは病児保育が非常に多くの施設に設置されまして、これにより多くの育児中の女性医師が就労可能になっていると思います。第三次男女共同基本計画としては、 2010 年までの 202030 実現達成が周知のことですが、ぜひ計画通りに達瀬して第四次計画を立てなくてもよいようにしたいと思います。皆様方の協力をお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 では議事を進行させてまいりたいと思いますので、よろしく御協力ください。まず、事務局より資料の確認をお願いいたします。

○森医事課医師臨床研修専門官 それでは資料の確認をさせていただきます。お手元の資料を御確認ください。資料 1 、女性医師のさらなる活躍を応援する懇談会開催要綱及び構成員、参考人名簿。資料 2 5 ページ女性医師に関する現状と国における支援策について。資料 3-1 13 ページ木戸構成員提出資料。資料 3-2 27 ページ木戸構成員提出資料。テーブルの先生方には、リーフレットをお配りしております。

 資料 3-3 、リーフレット「妊娠・出産・育児中の女性医師が働きやすい職場づくり」。資料 4-1 片岡構成員提出資料。資料 4-2 片岡構成員提出資料の ( 概要 ) 。資料 5-1 小川参考人提出資料 ( 女性活躍アクション・プラン概要 ) 。こちらもテーブルに A3 でお配りをしております。資料 5-2 小川参考人提出資料 ( アクション・プランの本文 ) になります。資料 6 医学部生等との意見交換について。

 続いて参考資料 1 「日本再興戦略」改訂 2014 。参考資料 2 惠谷構成員提出資料。参考資料 3-1 笠井構成員提出資料。参考資料 3-2 笠井構成員提出資料の ( パンフレット ) 。テーブルにはパンフレットをお配りしております。参考資料 3-3 笠井構成員提出資料 ( 日医総研 ) ワーキングペーパーの調査報告書。冊子をテーブルにお配りしております。参考資料 4 津下構成員提出資料。参考資料 5-1 倉治参考人提出資料。 5-2 倉治参考人提出資料 ( 女性歯科は医師の活動に関する検討委員会答申書 ) 。参考資料 5-3 倉治参考人提出資料 ( 歯科医師会における男女共同参画等に関するモデル意識調査報告書 ) 。参考資料 6 医療機関の勤務環境改善について。以上になりますが、不足資料、乱丁、落丁等がありましたら事務局にお申し付けください。

○山本座長 それでは議題 1. 女性医師に関する現状について、資料 2 から資料 5 までをまとめて御説明いただき、後ほど質問を受けたいと思います。事務局より説明をお願いいたします。

○森医事課医師臨床研修専門官 それではお手元の資料 2 5 ページで、女性医師に関する現状と国における支援策について説明いたします。女性医師に関する現状 6 ページの年次推移について、全医師数に占める女性医師の割合は、増加傾向にあります。平成 24 年時点で 19.7 %を占めております。近年、若年層における女性医師が増加しており、医学部入学者に占める女性の割合は約 3 分の 1 となっております。下の図は各国と比較した割合ですが、日本は OECD のデータ 18 %となっており他の国と比べて低い割合の状況になっております。

7 ページの年代別女性医師の割合について、 60 歳以上は 10 %以下という割合で年齢が若くなるにつれ割合が高くなり 29 歳以下の割合は 35.5 %となっております。下の図の診療科別の女性割合について、皮膚科、小児科、産婦人科といった診療科で、女性医師の占める割合が高く、外科、脳神経外科などの診療科では非常に低い割合になっております。参考に歯科の女性医師の割合は、歯科全体で 21.7 %、 29 歳以下で 42.1 %となっております。

8 ページ就業率のデータで、 18 年度の厚生労働各研究のデータになりますが、卒業後年がたつにつれて減少傾向をたどり概ね 36 歳で 76 %と最低となった後、再び就業率が回復していく。いわゆる M 字カーブを描いております。参考として下に一般の就業率を示しておりますが、同じような M 字カーブを描いて、こちらの最低の値として 35 から 39 歳の 66.9 %となっております。 8 ページのデータは、女性医師の雇用状況として、これは病院の医師に対しての調査データになります。全医師数で短時間正規雇用が 2.1 %。非常勤は 18.3 %。女性医師に限って集計すると短時間正規雇用が 4.4 %。非常勤は 24.2 %となっております。下の図で仕事を中断 ( 休職 ) 、離職した「理由」として上げたところ、複数回答で、多いもので出産、子育て。こちらは出産 70.0 %。子育ては 38.3 %となっております。期間として、 6 か月未満で 27.8 %。 1 年未満で集計すると約 60 %といった状況となっております。

10 ページ臨床研修終了者のアンケート調査の結果になります。子育てをしながら勤務を続ける上で必要な条件というものを質問で聞きましたところ、職場の理解や雰囲気、短時間の勤務制度、当直や時間外勤務の免除、勤務先に託児施設が有るか無いか、配偶者や家族の支援といった順に回答が多かった結果になっております。

 続いて国における女性医師支援を行っている主な事業を 3 つ御紹介いたします。 11 ページ女性医師等就労支援事業。こちらは都道府県で行っている相談窓口、病院の研修に対して補助事業を行っております。下のスライドで埼玉県の取組事例を紹介しております。相談窓口、復職する際の研修として小人数での臨床講義を受ける。シミュレターを用いた実習といったものを短期間若しくは長期間、いろいろなコースに分けて行っております。

12 ページで女性医師支援センター事業。こちらは日本医師会のほうへ委託事業として女性医師パンク事業を行っております。求職、求人について登録をしていただきマッチした方について就職を斡旋していく事業になります。こちらは笠井理事の御提供いただきました参考資料にもありますので御参照ください。保育所に対する支援として、下にあるように運営事業。主に保育士の人件費に関する運営費の補助事業。また、施設整備事業として新築、増築等の工事費に関する補助事業こういったものを行っております。資料 2 の説明は以上になります。

○山本座長 ご説明ありがとうございました。どなたか御質問の方いらっしゃいますか。無いようですので次にまいります。木戸構成員から御説明して頂きますが、資料は、 3-1 です。どうぞよろしくお願いいたします。

○木戸構成員 スライドの操作の資料 3-1 について説明させていただきます。私は産婦人科の臨床医ですが、勤務医の働き方、女性医師問題の現場で非常に問題意識を持ちまして、これまで学会、医師会などで取り組んでまいりました。本日は、産婦人科における女性医師問題の取組の経緯と、当院での好事例について御説明したいと思います。

 今日は一般の方もおられると思いますので、女性医師問題の背景について簡単にイラストで御説明したいと思います。日本では、家事や育児のアウトソーシングがなかなか進みません。出産後に仕事を辞める女性医師も先ほど御説明があったように少なからず、おられます。子どもが安心して生活できる防域環境がなかなか確保できないのがやはり大きな理由ではないかと思います。ただ救急やお産などは夜間、休日問わず対応が必要です。だれかがこの時間働かなければいけません。当直やオンコールの呼び出しは勤務医にとっては非常に負担が大きい業務で、子どもを預けられないからといって女性医師が免除となっているところが多くどうしても職場では不公平ということで非常に問題になっております。

 子どもが保育園のうちだけではなくて、小学校に入っても親の仕事は非常に多いです。フルタイムで働き続けるためには、多くの壁を乗り越えなければいけません。小 1 の壁、小 4 の壁たくさんあります。当直開けを朝どう子どものお弁当を作ろうか。そういったことも意外に大きな問題です。

 更に大きくなっても学校行事、教育など仕事と家庭の両立には、多くの悩みがあります。例えば教員が自分の子どもの入学式に参加して論議となったことが最近ありました。長時間勤務があたりまえでは定時に帰るときにも周囲から白い目で見られやすくせっかくの支援制度で短時間勤務、当直免除など勤務の負担が減ったとしてもかえっていづらくなって辞めてしまうような残念なケースも少なくありません。

 家庭と仕事の両立だけでも非常に手一杯なところに更に学会、研究、委員会などプラスアルファの業務までは、とてもではないが手が回りません。責任が増えて時間が取られることを非常にためらうという風潮があり、管理職に就くというところに至る子持ち女性医師は非常に少なく、それは医師に限らないことが日本の社会の特徴かと思います。しかしこうしてみると発言権のある立場として意志決定に参加することはいつまでもできません。現場の声を届けることができないと状況の改善が進まないことになります。

 今、女性医師問題について御説明しましたが、ここからは産婦人科における女性医師問題の取組について御説明したいと思います。産婦人科は先ほどの資料で御説明がありましたように女性医師の非常に多い科です。これは患者さんたちからのニーズが高いことに基づいており特に若い世代ではなんと 20 代では 7 割が女性医師という現状です。ただお産を扱う場合は、当直が多くフルに働き続けることは非常に難しい。これについては後ほど御説明いたします。

 そのため学会、医会など団体が危機感を持って他科に先駆けて早くから対策に取り組んでまいりました。組織としての取組内容に関して以下に列挙したとおりで、以下順次御紹介していきます。まず、女性医師問題に対応する組織を立ち上げました。平成 18 年から専門の委員会を作り、現在はここに示すような男女共同参画委員会が取り組んでおります。私もメンバーとして参加しております。こうした組織でよく見られることで構成員には女性の割合が高く女性の声が取り入れやすくなっております。

 委員会で、アンケート等で現状調査、分析などを行っておりますが、例えば分娩取り扱いの割合が女性の場合、先ほど御説明があった M 字カーブを描いてしまいます。卒後 10 年で半数がお産の現場から離れてしまう。お産が好きで産婦人科医にせっかく入ったのに離れてしまうということが分かりました。本日、笠井構成員のほうから参考資料 3-3 がありますが、最近のデータが示されておりますので後ほど御参照ください。

 産婦人科学会で、こうした現状に危機感を持ちまして、ホームページを利用した支援情報の提供を行っております。女性医師自身の妊娠結果、出産の経験をむしろ生かし診療現場で活躍することができるはずです。先輩の体験談、当直のときにどのように遣り繰りするか、保育園の探し方。そういった情報のリストを掲載しております。

 メンバーでは、メーリングリストも作成しお互いに情報交換ができるシステムを作りました。男女共同参画委員会では、会員全体の問題意識を高める取組としてシンポジウムを定期的に開催しております。これは今年 4 月のもので女性だけではなく男性も交えて共同参画ということでキャリアアップについてディスカッション行ったものです。

 これは本日の先ほど御説明があった配布資料で、女性医師が働きやすい職場作り。女性医師のキャリアデザイン。 2 つのリーフレットです。これは産婦人科医会常務理事の安達知子先生が主任研究者として行いました。厚労科研に基づいて作成されたものです。本懇談会の構成員である安田愛子先生と私もこの研究に協力させていただき一緒にリーフレットを作成しました。是非多くの方に御覧いただきたい内容が盛り込まれており産婦人科医会からのホームページから一般の方にもダウンロードできるようになっております。是非御覧ください。

 女性医師が増えても役員や理事に女性が全くいない学会も非常に多いのが問題です。産婦人科学会でも幸いゼロではないものの本当に数人です。しかしこの度、学会が特認理事として特定の担当を決め 3 人の女性医師を登用したことは、大変注目すべき取組です。

 これらの組織的取組が効果を上げるためには、どのような課題があるかを考察しました。まず委員会に関して、育児中の若手が自分自身の余裕がなく、なかなかメンバーとして参加することができません。どうしても中高年ばかりになってしまいます。そのためネットを利用した Web 会議などで当事者の声を届ける工夫がほしいところです。現状調査を行うことも大切ですが、報告のみで終わってはいけません。やはり 202030 のように数値も目標を掲げて対策の効果についてモニターしていくことが大変大切と考えます。

 メーリングリストを作りましたが、残念ながら運用していてもあまり利用が進みませんし、シンポジウムを開催しても本当に聞いていただきたい若い方にもあまりアプローチしづらく、どうしても子育てが終わった中高年の方が多くなってしまいます。テーマとして偉い先生に成功した体験をいろいろお話頂くことは、非常に若手に夢を与える意義はありますが、ただ自分には無理、おもしろくないという関心を持ってもらえないこともあるので、シンポジウムを行う場合には、テーマや人選にはなかなか注意が必要かと考えます。

 リーフレットも苦労してせっかく作って非常にいい内容ですが、まだ広報をして利用を進めていくには更に一工夫が大切と考えております。理事や管理職を登用することについて、女性を 1 人登用したことでポーズに止まってはいけません。やはり組織としてバックアップをし、お飾りではなく実績を上げていただき、さあ女性ができる。だからもっと登用しようということで、そういった動きに繋がらなければなりません。

 ここからは実際の勤務体制の工夫が、女性医師の活躍に繋がった好事例として、私の勤務先での交代制勤務の事例について御説明したいと思います。私のいる日赤医療センターは、東京都渋谷区にあります。産婦人科では年間 3,000 件を超えるお産を扱っております。わが国では、 3,000 件を超える分娩を扱っているのは 2 件で当院では 2 番目に多い分娩件数となっております。正常分娩ではなく、ハイリスク、救急搬送も多く母体救命対応の周産期センターとしていわゆる周産期の最後の砦といわれる病院です。

 産婦人科医は業務が多いので、 30 名ほどおりますが女性医師が 3 分の 2 。更にその 3 分の 1 が妊娠、育児中という状態です。夜間、休日の業務が増えてお産も多くほとんど睡眠が取れないため、長時間連続勤務が非常に危険で難しくなってまいりました。また、労基署から改善を指示されたこともあり、 2009 年に産婦人科に交代制勤務が導入されました。これにより勤務環境が劇的に改善し結果的に女性医師のさらなる活躍に繋がったという非常に好事例です。これは、夜勤は、夜だけ働くシステムです。昼間連続して働かず夜勤は夜に家族と夕食をとってから 20 時に出勤します。

 では、交代勤務導入前後の生活について、具体的に比べてみます。導入前は、夜明け前から自分がいなくなる分の家事の段取りをします。保育園に送り出勤します。朝、午後とお産、手術、外来など仕事をして午後に入りそのまま家に帰らず当直勤務に入ります。当直勤務は昼より少ない 2 3 人の人数で病棟、処置、お産、いろいろな救急患者の対応をします。忙しくて眠れない状態であっても、また帰宅することもなく翌朝またそのまま連続勤務に入ります。昼間、診療して外来、お産、手術いろいろな業務があります。夕方までときには夜まで働きます。帰宅すると今度は、自分が不在の間にどっさり溜まった家事の片付け子どもの世話に追われて休むことなくまた深夜まで働き続けます。

 当時 9 歳、 6 歳、 7 か月の 3 人の息子を育てながら当直を、こうした当直は月に 7 回から 8 回やっておりました。こういった鉄人レースのような生活を何とかしなければいけないことで私の現在の活動のきっかけになっております。連続勤務は、 30 時間以上にのぼります。帰宅前後は本当に心身安まる間もありません。交代勤務により生活は非常に大きく変わります。朝は出勤する必要がありませんので、普通に起きて日中はゆっくり家事をしたり、フリーに過ごすことができます。午後もゆっくり過ごして、家事の段取りをして出勤し、夜勤は夜だけ働きます。翌朝は、日勤者に引き継いで帰ります。もちろん夜勤は大変忙しく多いときには、お産が 10 件を超えることもあり救急車も何台もきます。ただ夜勤前後に休養を十分に取ることができますので、勤務時間帯には仕事に集中をし、救急も遠慮なく受けてどんどん働くことができます。フリーの時間は、家事、育児、介護に使うこともでき、研究活動、研究会などの自己研鑽、こういった医師会活動、スポーツ、自分自身の健康管理、様々なことに時間を使うことができます。

30 時間以上の長時間勤務は、非常に難しくても交代勤務であれば多くの人がものすごく無理をしなくても夜間、休日の業務に参加できます。子持ちの方も夜間、休日こういった仕事に参加できることになります。

 今では性別、年齢にかかわらず小さい子どもがいても全ての医局員が同じように勤務を分担しております。女性だから、子どもがいるからといって当直免除、勤務緩和、短時間勤務なので、決して引け目を感じることなく同等に生き生きと働いております。その結果、現在全体の 3 分の 2 が女性医師で、部長 3 人のうち 2 人、副部長 3 人のうち 2 人。なんと厚生と同じ割合で管理職が女性となっております。女性の活用、共同参画、管理職へ登用この 3 つのキーワードが全て上手く実現している好事例と考えられます。非常に参考にしていただけるケースかと思います。

 また、最近では、介護をきっかけに離職をすることが非常に社会問題となっております。例えばこのシステムを使い木曜日と月曜日に夜勤を入れたとして、金曜日の朝、当直明けから月曜日の夜の当直になるまで、比較的長い日数、病院から離れることができます。実際にこの工夫を使い月に何回か九州の親を遠距離介護をしながら仕事を辞めずに病院に勤め続けた女性医師が当院ではおります。まとまったオフが取得でき介護により離職を防止する効果にも繋がるということになります。

 また、何よりも大事なのは、交代勤務なので、勤務時間を短縮することは医療安全上にも非常に良い影響があることが先行研究でも報告されております。疲れてしまうと事故が起こりやすくなります。救急受入率の向上、接遇改善にも短時間勤務は非常に効果が期待されるところです。実際当院でもクレームは激減しました。患者さんに笑顔で接する心のゆとりが生まれております。非常に良いケースです。

 ただ、交代制勤務にもまだまだたくさんの課題があります。当直料がなくなって収入が減少する問題、何よりも非常に大勢の医者が必要です。また、一定の業務量が必要です。全ての施設、全ての診療が、全ての地方でできるわけではありません。ただ、救急や周産期だとやはり夜間、休日のニーズが必然的に発生する分野では必ずそこで働く人が必要です。男性ばかりに押し付けることはできません。人員不足で長時間連続勤務を放置していると安全管理上、大きな問題があります。交代勤務実施に際しまして、一定の範囲でこの度診療報酬に加算が付くようになりました。このため当院だけではなく、更に多くの施設でこういった交代勤務制の導入が進むことが期待されます。

 日本医師会などでも勤務医の健康を守り勤務環境を改善する取組が委員会などで既に始まっております。このようにまず女性医師支援がきっかけになってひいては勤務医全体、そして医師全体の勤務環境の改善に繋がるのは非常に喜ばしいことで大きな意味があると私は考えます。

 最後に女性医師支援に対しこの問題に取り組んできた立場からいくつか課題を提案したいと思います。どのような支援が本当に有効か。現場のニーズを把握するようなシステムが大事です。過去の体験からだけでは状況が変わっているので生の声を聞くシステムが必要かと感じます。非常に大切なのは、女性医師本人が現状に妥協してしまうことが非常に心配です。ほどほどの地位と、ほどほどの収入に満足してしまい、スキルを向上、維持させるモチベーションがなくなってしまうことが一番恐ろしいことです。こういったモチベーションを維持するような支援が非常に大切と思います。

 また上の世代は、子育て体験者等が過去の成功体験や価値観を押し付けてしまいがちです。私も頑張ったから、あなたも頑張りなさい。このように若手にブラックな勤務を強制することは絶対にないようにしなければいけません。仕事を辞めずに細々と何とか女性医師が働けるようにする離職防止策ももちろん大切です。ただ、そうした段階は過ぎた段階と考え、これからは一歩進んだ次のステップとして管理職、リーダーとなる女性医師を育成する次のステップを目指す段階です。より若い世代の教育も有効です。中高生時代からよく男子校で行われているリーダーシップ教育、これを女子学生にもきちんとリーダーとして活躍するという意識を育てていくことも非常に大事ですが、現場でも院内の会議がどうしても夕方になってしまいます。遅くまでかかることもあります。ですので、会議や委員会をなるべく時間内に行うなどして女性医師も参加しやすくするべきです。そうすることによって女性医師がマネージメントの経験を積む機会を増やすことができます。

 また、管理職を目指す人が増えるように非常に輝いているロールモデルと出会えるように様々な管理職どうし若手と管理職の交流会こういったものを企画し開催することは非常に有効ではないかと考えます。

 最後に女性医師の支援に焦点を絞ることももちろん大切なことですが、ただそれが医療安全、医療の質、向上を通じて国民医療、患者さんのためになること、また医師だけではなく女性全体の活躍のために共通する施策となり得ることを国民全体に示しつつ、こういった対策を進めていくことが全体の多くの人のコンセンサスを得られて、ひいては息の長い活動になるのではないかと私は考えます。以上でございます。

○山本座長 木戸先生、ありがとうございました。大変有用なお話を頂きました。また後ほど皆様方から御意見を頂くとしまして、次に片岡委員から御説明を頂きます。

○片岡構成員 本日は、このように大変貴重な機会を頂きまして誠にありがとうございます。私のほうからは、「女性医師が活躍し地域に貢献するシステム作りを目指して - 岡山発女性医師キャリア支援 - 」ということで、発表させていただきたいと思います。岡山大学の片岡と申します。よろしくお願いいたします。

 まず、岡山大学で女性医師のキャリア支援を行ってまいりました経緯について、少し述べたいと思います。我々は平成 19 21 年度、文部科学省の医療人 GP に採択され、「女性を生かすキャリア支援計画」ということで女性医師のキャリア支援に着手いたしました。このとき、文部科学省の医療人 GP は、社会にニーズがある分野の課題解決といった目的の医療人育成プロジェクトを毎年募集していて、平成 19 年度が女性医療人の離職防止と復職支援が課題でした。この時、文部科学省では、教育によって離職防止と復職防止をするというプロジェクトを募集していましたので、我々は、こちらにお示ししましたように最適助言者を紹介するサポートのネットワーク、また家庭と両立可能な復職支援プログラムという二本立てのプロジェクトを行いました。このプロジェクトを介して、 3 年間で 42 ( 大学病院 37 名、地域医療機関 5 ) の方が復職する結果になりました。こういった成果を受けて、平成 22 25 年度には、地域医療再生計画に基づく岡山県からの委託事業として活動を継続しています。活動名は「 MUSCAT プロジェクト」とし、事業の方向性としては、臨床現場の定着、復職といったことのほかに次世代育成、また、いかに地域医療に貢献するかということを目標として活動しています。

 具体的な内容について述べたいと思います。 1 つ目としてアンケートによる現状分析とニーズ調査、これは平成 19 年度に活動を開始するときに、どのようなものが実際に求められているのか、それに合った内容の活動をするために行いました。 2 番目以降がどのような活動をしたのかという具体的な内容になります。

1 のアンケートによる現状分析とニーズ調査について述べたいと思います。ここにお示ししたように、我々は平成 19 年度と 21 年度に、岡山大学医学部卒業生及び入局者 1,400 名に対してアンケートを施行しています。回収率は 29.6 %で約 400 名から回答が得られました。このときに離職経験の有無について聞いています。離職については、その定義によってかなり幅がありますが、我々のアンケートでは、離職の定義として「無給かつ復帰時期が未定で職を離れる」と定義しました。産前・産後休暇・育児休業などの給与が発生したり、復帰時期が決まっている休暇・休業は含んでいません。このように離職を定義したところ、離職経験の有無で「有り」とする方が 46.1 %になりました。その 46.1 (187 ) の離職経験者を対象として、いつの時期に離職したのかを聞いたところ、左のグラフにお示ししましたように、約 92 %が卒後 10 年以内に離職を経験しているという結果になりました。しかしながら、一旦離職した女性医師の約 51 %が 1 年未満に復職しており、離職したままの医師は 3 %でごく少数でした。しかし、復職時に原職復帰できた方は約 30 %にすぎないという結果でした。また、復職のときに不安があったかという問いに対しては、 90 %以上が「不安があった」と回答しています。

 復職を果たした医師を中心に、復職の際に何が必要であったか聞いたのが、右の青いグラフになります。こちらを御覧いただくと、上位 5 番目までが「家族のサポート」「上司の理解」「適切な仕事量」「家族の理解」「同僚の理解」といったソフト面の項目になります。「当直なし」「院内保育」といったハード面、システム面の項目よりも、理解、サポートといったソフト面がいかに重要かという結果ではないかと考えています。また、女性医師支援の活動に求めるものとして、 67.4 %が「復帰しやすい職場」を挙げ、次いで 43.1 %が「病児保育施設の設立」を挙げていました。

 我々は、「復帰しやすい職場」を目指して必要なこととして、このようにオーダーメイドの柔軟な勤務体制の構築を行いました。平成 20 年度よりこの制度を導入していて、当初は当直・オンコールの調整が可能の週 4 日勤務という勤務体制で、定員 5 名でスタートしました。なお、当直・オンコールは免除ということではなく、行ってもよいが調整ができるといった体制にしています。当初はどの程度の希望者がおられるか手探りで始めましたが定員はすぐに埋まり、むしろ柔軟な勤務に大きなニーズがあることが分かり、同年途中よりオーダーメイドで勤務日数や勤務時間を設定できる勤務体制を確立いたしました(キャリア支援制度)。こういったことができるようになった背景には、トップの病院長の決断が非常に大きかったと思っています。導入当初、利用対象者は出産・育児を行う女性医師となっていましたが、平成 22 年度より介護も利用の理由に加え、男性医師も利用できる制度に変更しています。

 一方、我々も単に離職しない、復帰しやすいということを目的にする制度ではなく、いかにキャリアの支援をするか、いかに社会に貢献できる医師をサポートするか、そういったことが非常に重要と考えています。それまでは制度の利用期間を特に設定しておらず、子供が小学校を卒業するまでが制度の利用が可能でしたが、平成 24 年度からは利用期間を子供 1 名につき 3 年間に定めました。一方で、復職コーディネーターが積極的に関与することによるキャリア支援を強化しています。コーディネーターは現在 2 名おりますが、コーディネーターの 2 人ともがこの制度を通じて復職した女性医師です。復帰希望の方がおられたら、まずヒアリング、 1 年間の目標設定を行います。して大学病院であれば医局、また地域の医療機関であれば担当者とコーディネーターが調整を行っていきます。そして実際に復帰するまでに準備教育として、例えば就業前の電子カルテの操作、急変時のシミュレーションといったトレーニングを積みます。実際に復帰した後は E- ポートフォリオや、定期的な面談、そして評価を行っていきます。また、下にお示ししたように、 1 週間のスケジュール、目標設定、評価はどのようにするかといったことも最初の時点で定めています。そして 3 年間の支援枠の修了のときには修了式も行っています。

 このような我々のキャリア支援についてのアンケートも行っています。制度利用者へのアンケートとしてキャリア支援制度の利点を挙げてもらいましたが、当直・日直が調整できるところがいいという意見は確かに多くあります。また時間や日数が選べる、短時間勤務といったことが上位に挙がっています。「キャリア支援制度がなかったら、どのように働いたか」、これは制度を利用した 66 名に聞いていますが、特筆すべきは、「働いていなかった」という方が 18.2 (12 ) おられたということで、こういった柔軟な勤務枠は底上げという意味で非常に大きな意味があると考えています。

 岡山大学病院において実際に復職した方を、職場で受け入れている上司・同僚へのアンケートも行っています。「周知度」に関しては、ほぼ 90 %弱の方が制度を御存知です。「キャリア支援制度は制度利用者にとって有用であるか」については、上司から見ると約 90 %弱、同僚から見ても 80 数パーセントの方が有用であると考えています。

 このような勤務体制だけでなく教育も非常に重要と考えていて、我々はこのようなトレーニングコースによるスキルアップを行っています。これは復職前のスキルアップもありますし、復職後の定期的なスキルアップも同時に行っています。平成 19 26 年度で、写真で示したようなシミュレーショントレーニングの参加者は 162 名、各種講習会参加者は 569 名、各種講演会参加者 1,374 名となっています。右の上にお示ししましたように、現在では出張シミュレーショントレーニングも行っています。大学病院でのみならず、地域の医療現場に我々が出向き、そこでのトレーニングコースの開催によって地域医療に貢献したいという女性医師にも学びの場の提供をしっかりと行っています。ジェネラリスト養成セミナー、あるいはジェネラリスト・スキルトレーニングも、約 1 年前から行っています。女性医師の中には出産・育児といった経験を経て、より患者さんの生活に近い医療を求める方もおられます。そういった方には、よりジェネラルなトレーニングの場が求められています。

 その他の取組としては、緩やかなネットワークの構築を目指し、オンラインやインターネットを通じて、あるいは直接会って話せるロールモデルと出会う機会を多彩に設定しています。私たちは、「先輩から後輩へ知識と経験を伝える」をキーワードにしていますが、これはプロフェッショナリズムの継承ということではないかと思っています。様々な上の世代の先生からいろいろなことを学ぶメンター・メンティー交流会は、 70 歳代以上の先生方から下は高校生までということで、医療に従事している方、これから従事したいと思っている方など非常に多くの世代の方が集まる機会になっています。

 我々の活動のもう 1 つの柱である次世代育成支援については、以下のような状況になっています。最初のアンケートでも病児保育ルームの設立は非常にニーズが高く、平成 21 年に大学病院内に病児保育ルームを設立しています。下のグラフは利用者の数になりますが、コンスタントに利用者が増えており、働くお母さんだけでなく働くお父さん、そして全ての職種の方に非常に求められている取組ではないかと思います。また育児支援というのは、そういったハード面だけではないと思っています。我々はキッズセミナーとして、小学生、中学生、高校生を対象に、お父さん、お母さんが医療従事者である方のお子さん、あるいはこれから医療職を目指したいとする中高生に向けて、様々な医療の現場体験の機会を提供しています。

 続いて、我々が岡山県からの事業委託を頂き、特に地域へどのように発信し連携して貢献しているかについて少し述べたいと思います。こちらが岡山県の取組を模式化したものですけれども、左上が我々の岡山大学医療人キャリアセンターで、我々の長所としては同窓会や医局のネットワーク、復職プログラムが充実している点です。岡山県では、お示しするように岡山県医師会、岡山県保健福祉部、岡山県病院協会といった様々な方たちが女性医師の支援に取り組んでいます。我々は定期的な情報交換を行い、強みを生かした相互協力を行っています。平成 22 年に医師会の一室をお借りして岡山県女性医師等支援委員会が定期的に開催されるようになりました。現在では勤務医等環境整備事業関係者会議として意見交換を行っています。

 地域との連携ということで、こういった取組は単に 1 つの大学病院だけで行うことでは全く足りないと我々は思っています。離職する方の離職理由の 1 番は育児でしたが、 2 番は夫の転勤です。ある施設でうまくいっていても、それが転勤によって途絶えてしまうことは往々にして見られますので、岡山県内を中心に、こういった活動に参画して協力いただける施設を募集したところ、地図にお示ししたように非常に多くの施設に手を挙げていただきました。そういった施設には協力施設ということで、こういった楯もお送りしています。大学病院を介して地域に戻る方もいますが、最近地域の施設に直接復職する方も増えてきています。このように新聞でも女性医師支援の活動は大きく取り上げてもらっています。

 最後に、キャリア支援のアウトカムについて述べたいと思います。我々は平成 20 年度にキャリア支援制度を導入し、女性医師数は平成 19 年度の 87 名から、現在は 170 名まで増加しています。その増分として著しいのはキャリア支援制度を利用している方で 0 名から 29 名に増加しています。また、岡山大学病院の医師全体に占める女性医師の割合は 18.4 %から 26.1 %に増加しています。キャリアアップという点に関しては、もともと女性医師の助教は 10 名でしたが、現在では 30 名に増加していて、 30 名中キャリア支援制度修了者 6 名が活躍しています。

 右下が、支援制度利用後の勤務について平成 25 年度に調べたものです。この時点で回答があった 48 名のうち、続けて岡山大学に勤務している者が 25 %、地域の医療機関に勤務している者が 56 %という内訳になっています。これらの方のうち常勤勤務をしている方は約 50 %で、キャリア支援制度が地域医療にも貢献するものであることを示すものではないかと思っています。

 我々の活動は単に女性のためということではなく男性も、あるいは全体が働きやすくということを目指して行っています。このように多様なバックグラウンドの働く人を受け入れることができる職場は、医療現場として温かい医療現場なのではないかと思います。我々は患者さんという非常に多様な一人一人に対して医療を行っているので、医療人自身がお互いの多様なバックグラウンドを受け入れることができるならば、患者さんにも、より一人一人に合った医療を提供できる素地になるのではないかと思っています。また実際に地域の医療機関に復職し、社会への貢献を直接的に行うことは女性医師のキャリア支援が地域医療への貢献という意味でも意義深いではないかと考えています。ありがとうございました。

○山本座長 片岡先生、ありがとうございました。ソフト面の充実を図らなければならないということが分かりましたが、また後でこのことにつきまして皆様方の御意見を頂きたいと思います。続きまして、小川参考人より企業における取組について御説明頂きたいと思います。

○小川参考人 日本経済団体連合会という、日本の主に大企業を中心に 1,300 社ほどの企業が加盟している総合経済団体で、女性の活躍推進を担当しております小川と申します。今日はよろしくお願いいたします。本日の会合で 1 人、非常に畑違いの参加になりまして若干緊張しています。企業と病院とでは業務の内容や組織の形がかなり違うのではないかと想像していて、そうした中で私たちの考えていることや取組がどの程度お役に立つか、若干、不安なところも正直ありました。ただ、今、お二方の先生方のプレゼンテーションを聞かせていただき、思った以上に似たような悩みを抱え、似たような取組に一生懸命努力されていることが分かり非常に心強く、お話することが少しでも御参考になればと思った次第です。

 本日は、私どもが、この 4 月に発表した「女性活躍アクション・プラン」を中心に御説明しようと思っています。お手元に A3 の概要版があるかと思いますので、そちらを中心にお話しますけれども、まず、こちらを作るに至った経緯について簡単に御説明したいと思います。企業においても雇用機会均等法以来、少しずつ女性総合職の採用を始めました。ただ、 90 年代は採用人数が少なかったことや両立支援の制度が不十分であったこと。また組織の中で女性をどう使っていいか分からないといった戸惑いもあり、実は初期の多くの女性総合職の方々が離職してしまったという経験があります。ただ、 2000 年以降、いろいろと両立支援の制度も整ってきて、また女性総合職として入る人数もかなり増え、そのあたりから本格的に総合職が定着するようになってきたというのが、ざっくりとした共通認識なのかなと思います。また、増えてきたら増えてきたで企業は悩みを抱えていたりして、本当に試行錯誤、山あり谷ありの連続であったように思います。

 そうした中で昨年、安倍政権が女性の活躍ということを掲げ、これは本当に急いで進めなければいけない、経済界としても加速化しなければならないということで、まずは現状をしっかりと認識して、どういうふうに取り組めばいいか改めて整理して考えてみたいと思いました。ということで、経団連の中に女性の活躍推進部会という、 30 社ぐらいの企業から成る検討枠組みを設けました。一口に企業と言いましても業種によってかなり差があります。もともと女性が多かった小売、金融といったところと、逆にほとんど女性がいなかったインフラ関係、重たい産業と、それぞれに抱えている問題も違って置かれている状況も違うという感じですから、業種バランスに配慮しながら 30 社選び、できれば女性の役員に自ら参加してもらうということで、経団連の部会としては非常に異例なことに 3 分の 1 が女性という形になっていました。ジェンダーバランスも取れて非常に活発な議論ができたのではないかと思います。少し余談になりますが、女性が会議に多く入ってくると想定外のことも起こり、議論が刺激されて活発化し、結果的には良いものを生み出せたのではないかと思っています。その女性活躍推進部会の検討結果ということで、半年ぐらい集中的に議論した結果として、このアクション・プランをまとめています。本当に表面をなぞるだけになってしまうと思いますが、ざっと御説明したいと思います。

 最初に、企業が女性の活躍を進めるのは一体何のためにやるのかということを、はっきりさせておこうと思いました。それで掲げたのが、女性の活躍というのは女性のためではないということです。女性のためと言っている限り、企業の中の女性以外の人にとっては自分のことになりません。また女性自身も特別扱いをされたくないといった反発が生まれてしまって、結果として今までなかなか進まなかったというのがダイバーシティ推進室の悩みではないかと思います。そうではなく、女性の活躍を進めるのは企業自身の価値を高めるためであるということを、しっかり認識しようということになりました。今は非常にグローバル競争も激しく、企業も常にイノベーションを続けていかなければ生き残れない時代になっています。マーケットの状況、ビジネス環境が変化していくときに、均質的な組織ではなかなかイノベーションが起こりにくく、そうした環境に対応していくことができません。そういうときに女性だけではないのですが、いろいろなバックグラウンドを持った多様な人材が組織の中でしっかり活躍していることが、これからの時代を乗り切っていくときに企業の体力を強化し、競争力を強化するということだと思います。また、より大きな目で見ますと、日本の経済全体をこれからも持続的に成長させていくためには、人口減少等の問題もありますので男女を問わず、とにかく優秀な人は能力を発揮すべきであるということも認識しておかなければならないと思います。

 そうした認識に立ち、さて現状はどうなっているかと申しますと、先ほどもお話しましたとおり、 2000 年代に入ってから徐々に定着はするようになってきています。これは大企業の話という前提ではありますけれども、出産・育児を経ても戻って来ることがほぼ常識になりつつあるということかと思います。もちろん、保育所が見つからなくて復帰できなかったという問題もありますので、引き続き待機児童の解消というのは非常に大事な問題だと思います。これは病院も同じかと思いますが、業種によっては休日、早朝、夜間の勤務が当然という業種もありますから、より多様な保育ニーズといった問題もあります。また全国展開している企業、海外展開している企業にとっては、今、転勤が継続就業の上で一番の問題になっています。キャリア形成上、どうしても本人の転勤が必要なのですが、それが女性の場合は家族を置いてというのは難しいといった問題、あるいは配偶者が転勤になったときに、着いて行くので辞めてしまうといったことがあります。日本の企業の場合はまだなかなか流動性がありませんので、一旦、そうした形で辞めてしまうと、元のような身分で社会に復帰するのが難しいというのが悩みどころです。

 そうした問題はあるものの、一応、辞めずに済むということにはなってきていますけれども、一方で管理職への登用がなかなか進んでいません。いわゆる指導的地位と言われる課長職以上の管理職の割合は、企業においてまだ 1 桁台にとどまっています。諸外国に比べても相当低いほうになっています。先ほど人数も増えてきたと言ったのですが、特に女性の社員が多く、早くから女性の活用に取り組んできた企業の今の悩みどころは、残ってはくれているけれどもやる気を出さない。管理職になりたくないという、あまり言葉はよくないですが、ぶら下がり社員が増えてしまって困っているといった、第 2 フェーズの悩みも出てきているように聞いています。ということで、これから企業の取組の重点は辞めさせないということの次に、引き上げて管理職に登用していくところに移りつつあるのかなと思っています。

 なぜ管理職登用が進まないかというのは、いろいろな問題が絡まっているのですが、議論の結果、大きく 4 つぐらいの要因に分けて考えてみました。 1 つ目が、よく言われる女性自身の意識の問題です。女性はなかなか管理職になりたくないということです。個人差はありますけれども、一般的に女性は控え目で、まだまだ私にそんなことは勤まりませんと控え目に考えがちのところがあります。こういったあたりはロールモデルを示すとか、研修をして意識づけをするといったことで、ある程度は対応が可能ですし、実際に企業でもそうした取組を進めています。また女性は職場の中でまだまだ少数派で、部署の中にぽつんと 1 人ということがあります。仲間が少ないのでネットワーキングが有効だという意見が多く聞かれます。ロールモデルと言うときにも、あまりにも初期の頃の女性の先輩ですとちょっと着いて行けない。プライベートを全て犠牲にして仕事に邁進してきましたみたいな女性の先輩だと、かえって「私は、ああはなりたくない」と逆効果になってしまうこともあるようです。

 一口に女性と言っても、結婚している人やしていない人、子供がいる人やいない人、子供がいても両親のサポートの有無など、いろいろと状況が違いますので、ロールモデルが 1 人ですと「私には当てはまらない」とすぐになってしまうようです。ですから、むしろ大きなネットワークを作り、その中から自分にふさわしいロールモデルを見つけさせることが有効ではないかと、最近言われてきています。

2 つ目の問題としてキャリア形成の問題があります。表面上は均等に扱っているということですが、目に見えないところで、恐らく男性も女性も無意識のうちにキャリア形成に差が付いていることがあるようです。何となくですが、花形の仕事があって、その仕事をすると管理職登用につながっていくといった重要な任務が、無意識に男性に割り振られている。あるいは大きくて厄介で骨の折れる取引先は男性に任され、女性はそれほどでもない所を任されるといったことが、信じられないですが未だに結構あるということです。こういったことは自然に任せていてはなかなか無くならないので、先進的な企業はここに相当程度人事が介入し、現場の管理職と一緒になって、この管理職候補の女性に対してはどういう任務を割り振るか、この先、どういうふうに異動して経験を積ませるかといった、個別の育成計画を相当綿密に立てて実行させることもしています。それぐらいのポジティブ・アクションが、この点については必要な時期かと思います。当然、いずれはそういったことが必要でなくなることが理想ではありますが、一定程度管理職登用が進むまでは、そのぐらいのポジティブ・アクションが必要ではないかということです。

 いわゆるキャリア形成において 30 歳前後ぐらいが、企業ではひとつの正念場というか、ここで大きな仕事を任されて経験を積むということがあります。それはチームリーダーを任されることであったり、転勤であったり、業種によっては海外転勤であったりということですが、そこがどうも女性の出産・育児に重なりがちであり、そうすると女性は、そこでどうしても遅れをとってしまいます。そういう大きな経験を積む前に出産・育児に差し掛かってしまうと、その後、戻って来るときのモチベーションが上がりにくいこともあります。

 それで企業によって工夫しているのが、少し早目にその経験をさせるということです。 20 代のうちに、例えばこれは小売の例ですが小さな店舗の店長を任せてみる。これは女性に限らず男女ともにということですが、そこで成功体験を積むと、本人も「仕事って面白いかもしれない、出産・育児で大変な思いをしても、あのときの成功体験があるから戻って来て、より上を目指そう」とモチベーションが上がりやすい。周りにとっても「あの人は 1 回、実績を上げているのね」ということで、一旦、お休みをしていても「彼女なら絶対にできるに違いない」といった目で見てくれやすい。そのような効果があるということです。そういったキャリア形成の工夫も必要だと思います。

3 つ目が直属の上司の力です。今のところ上司は男性が多いので、究極のところは男性と女性のコミュニケーションの難しさということだと思います。昨今、いろいろとプライバシーの尊重とかセクハラということもあり、なかなか個別の事情を聞きにくいという問題があるかと思います。そうすると、どうしても女性を大切にしなければならないという意識が結構浸透してきているので、子供がいるから早く帰ったほうがいいとか、子供がいるから大変で遅くなる仕事は任せないほうがいいねと勝手に解釈し、上司が軽い仕事しか与えないといったことがあると、これが逆にモチベーションの低下につながってしまう例がよくあります。これも先ほど言いましたように、子供がいるからといって早く帰らなくてはならないとは限らないわけです。親と同居しているかもしれませんし、ベビーシッターを活用してでも遅くまで働くといったやる気のある人もいます。そうでない人ももちろんいますので、そのあたりは上司と部下がよくコミュニケーションをとり、どこまでならできるのか、どこまでやりたいのかをきっちり把握した上で、個別のマネジメントをしていくことが必要だろうと思います。その上で、できれば上を目指す意欲を引き出していけるマネジメントが、これからの管理職には求められているのだろうと思います。 そういったことは、職場としても地道に繰り返すしかないということで、管理職を対象にしたセミナーや一般の管理職研修など、あらゆる機会を捉えてこういったものを入れていくことで徐々に意識改革を行っています。その際の気付きですけれども、男性は意外と言われていなくて気付いていなかっただけだったということもあるようで、研修やセミナーにおける働きかけが案外効果的だという話も聞いています。

4 つ目の点ですが、長時間労働が常態化している職場ではなかなか女性は活躍しにくいことは、先ほど来の話にもありましたように企業でも当てはまります。これは二重の意味でハンディキャップになると思います。 1 つは、職場において長時間働いている人と時間で帰らなくてはならない人がいる場合、どうしてもそれで競争するのは厳しいということがあります。家に帰れば夫は長時間労働していて家事・育児はできない。家事・育児はほとんど妻のほうが被ってしまうので、家庭でも職場でもやりにくいといった二重のハンディキャップを背負う状態になってしまいます。ですから、ここは女性だけの問題ということではなく、男女ともに働き方を見直し、長く働けばいいというものではなく決められた時間内に効率的に働く働き方に、全体で改めていかなくてはならないと思います。

 家事・育児の問題に象徴されますけれども、男女の固定的な役割分担意識がまだまだ根強いように感じています。このあたりは企業のほうでも男性の育児休業取得キャンペーンの形で、企業によっては 100 パーセント取得させている所もあります。そういった働きかけも必要だと思いますし、会社に入る前の子供の頃からキャリア教育の中で、女性にキャリア意識を持たせるのと同等に、男性にも家事・育児に男女共同参画という教育を、これからしていくべきではないかと考えています。

 最後に、理工系女性人材については製造業に特化した問題ですので割愛させていただきます。簡単に言いますと、理系を目指す女子が少なく、その中でも医療系に取られてしまって、工学系はなかなか人材確保に苦労しています。トレードオフの関係になるかもしれませんが、全体として理科系に興味を持つ女子を増やすというところでは、医療界の皆様とも協力させていただく余地があるのではないかと考えています。

 駆け足でしたが、そういった課題を抱えていて、そういった取組を企業としては進めようとしています。後ろのアクション・プラン本体の 24 ページ以降に、これらの取組で企業が取り組んでいる具体的な事例を記しています。非常に具体的、かつ、あまり外には出していなかったお話まで今回は出していただきましたので、何らかの御参考になればと思います。こういったことを企業の中で進めていく上で、先ほど冒頭にも申しましたように、これは会社全体の問題だというところが重要だと考えています。企業の経営トップがしっかりコミットして、リーダーシップを執って全体で進めていくことが重要だと考えています。

 それを進めるために経団連としては、今、会員企業に自主行動計画を策定してもらっています。女性の管理職、役員登用に関する目標を定めて、それを達成するための取組を計画に記してくださいとお願いしています。既に 7 月に先行的に 50 社ほど発表してもらい、経団連のホームページに載せていますので、是非、御覧いただければと思います。また、より一層裾野を広げていくため、会員企業 1,300 社に今年の年末までに公表を目指し、策定をお願いして努力しているところです。簡単ですが以上です。

○山本座長 ありがとうございました。企業でのいろいろな取組につきまして、あまり細かく拝聴する機会がありませんでしたが、大変詳しく御説明頂きましてありがとうございました。小川参考人につきましては、この後、所用のため少し早目に席を立たれるということですので、ただいまの小川参考人のお話につきまして御質問のある方は、是非、ここでお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。無いようですので、私から質問させて頂きます。この企業というのは外資系も含まれていますでしょうか。もし含まれていましたら、日本の企業と外国の企業で何か違うところがあるか教えていただきたいと思います。

○小川参考人 部会 30 社の中には何社か、外資系企業の日本法人も含まれています。議論していますと相当程度前提条件が違いまして、まず終身雇用というところが一番違うかと思います。外資系のほうが流動性が高いので、そのあたりが議論していても前提条件が違うかなと思いました。

○山本座長 女性の活用の部分では、日本系と外資系とではかなり差がありますか。

○小川参考人 差はあります。ただ、外資系の日本法人ということですので、グローバル全体を見れば女性の活躍は進んでいるのですが、その中でも日本法人は一番最下位です。

○山本座長 ありがとうございました。ほかに御質問のある方はいらっしゃいませんか。では小川参考人、ありがとうございました。ここで、まだお話頂いていない方々に御意見を伺いたいと思います。 2 分程度ですが、いろいろとお考えになられていること、あるいは只今のご発表についての御感想などお聞かせ下さい。また資料を御提出頂いた先生は、それについての御説明でも結構です。あいうえお順でまいりたいと思いますので、最初は、岩本委員からどうぞ。

○岩本構成員 国立国際医療研究センターの岩本と申します。よろしくお願いいたします。私は国際保健という分野で女性医師が世界で仕事をするときに、どのような特徴があるのかということを簡単にお話させていただきます。まず国際保健という現場で働くときに困ることですが、 2 点挙げられます。 1 つ目は本当に基本的な生活の面です。私たちの多くが開発途上国と呼ばれる国で仕事と生活をするわけですが、何年間も滞在する生活が日本とは大きく異なります。自分や家族、特に小さいお子さんがおられるときに直面するのが、健康の維持、妊娠・出産、子育て、保育でお子さんを預ける場合、もう少し大きくなると教育環境等の問題です。特に、安心して受診できる医療機関のある国が少ないので、自分や家族が病気になったときに大変苦労します。また、先ほどもお話が出たように、自分あるいは配偶者が単身赴任となった場合、両親あるいは家族の介護が生じた場合には、この職種に限らないと思いますが、大変苦労することが多いです。

2 つ目に困ることとして、女性のライフコースに配慮した人生計画が立てにくいという点が挙げられます。卒後研修は臨床研修を行う場合が多いですが、専門医取得の後に 5 6 年、グローバルヘルスと現在呼ばれる世界、公衆衛生のほかに例えば人類学、経済学、異文化コミュニケーション、開発、環境、もっと言うと気候変動など地球規模の新しい世界に入っていくという、新たな専門性を得るキャリア構築が必要になります。

 もう 1 つ、数年ごとに転勤が生じてきます。これは途上国間であったり、あるいは日本と開発途上国を行き来したりする。それと関連して、将来的に日本国内でまた医師としての仕事に戻りたいという思いがある場合に、開発途上国に赴任中は臨床や基礎研究に関する最新技術や知識の入手は、国にもよりますが難しい面があって、例えばネット環境が不備だったり、ちょっと図書館に行くといっても日本とは質が非常に違ったりします。

 一方で、恵まれていることも結構あるという 3 点を挙げたいと思います。 1 点目は、多くの開発途上国で働くときに、私たちはカウンターパートと呼んでいる相手国の方と一緒に仕事を進めていくのですが、家族や子供を非常に大事にして最優先するという文化がまだまだ息づいているので、カウンターパートの方にとって女性が家庭や子どもを大事にしながら仕事とするということへの理解度が、かなり高い場合が実は多いです。また先ほど木戸先生が言われた家事・育児のアウトソーシングというのは、実は開発途上国で進んでいる点もあります。子育ては、核家族でお母さんだけがやるのではなく、大家族や地域の人たちみんなで担うという文化も息づいていますし、出産後の職場復帰、勤務継続、あるいは子連れで仕事をする方も、私たちが一緒に仕事をする開発途上国の方にはかなり多いです。

2 点目は、開発途上国では女性が要職に就いて活躍している例も実はかなり多くです。 1 例を挙げると、現在、女性の保健大臣で女性医師である場合とない場合がありますが、例えばアフガニスタン、インドネシア、ベトナム、モンゴル、セネガル、南アフリカなどは現在、女性の保健大臣が活躍しておられます。

 最後に 3 点目ですが、国際協力というのは国際保健分野に限らず、日本人女性が非常に元気に活躍している分野です。この場合、国際保健分野で働く日本人女性を対象にすると、例えば国連職員の男女比は大体半々だったり、世界保健機関 (WHO) における日本人職員の数も、 2012 年現在で 40 人中 17 人と、半数よりちょっと少ないぐらいはおられて、国際協力機構 (JICA) の青年海外協力隊員は 4 6 で女性のほうが多いです。私の職場である国立国際医療研究センターも、開発途上国に長期派遣されている 15 人中 7 人が女性です。これは看護師さん、助産師さんも含めています。

 最後に、 WHO 等の国際機関においてはワークライフバランスを考えたり、男女ともに育児休暇を取る、授乳環境に配慮するなど、私たちがもっともっと参考にしたい職場環境が整っている状況があります。以上です。

○山本座長 岩本先生、ありがとうございました。不公平になるといけませんが、以後、岩本先生の半分の長さでお願いしたいと思います。次は惠谷先生にお願いいたします。

○惠谷構成員 大阪府立母子保健総合医療センターの消化器・内分泌科の惠谷と申します。よろしくお願いいたします。「小児」と付いていないので誤解があるかもしれませんが、我々の病院は小児センターですので、小児科医として本日は参加させていただきました。小児科で参考資料を用意しておりますので御覧ください。 5 ページの上のスライドを御覧ください。小児科医はとても女性が多いです。全体の 3 割が女性ですが、特に若い世代はほぼ半分近くが女性医師となっております。赤い丸を付けていますが、これは 5 年ごとに世代がスライドしていくデータです。濃い赤色の所が女性医師の割合で、年々減っていくのです。やはり、子育てをすることで、子供が好きなので小児科を選んでいるわけですが、それなのに辞めないといけない。子育てがハンディになるということで小児科があっていいのか、ということが私の問題意識としてあり、ずっと女性医師のことに関わってきました。

7 ページ、実際、小児科学会では女性医師が頑張っているかといいますと、実は理事は非常に少ない、教授も少ないという現状があります。その辺は今後の課題だと思っております。資料は後日御覧ください。

 小児科のほうで、私は小児科学会の男女共同参画委員会の副委員長をしておりますので、このような会に参加させていただき、小児科学会として幾つか取り組んでいることを御紹介します。資料の 24 ページ、 1 つは小児科医バンクというものを作っております。これは学会としてさほどお金があるわけではないのでホームページに載せているだけです。小児科学会のホームページからリンクしているのですが、全くお金がかからないのです。フリーで小児科医を募集している医療機関が載せることができる。その中に、労働時間のことや、産休が取れるかとか、急に休まなければいけないときに代理が頼めるかとか、比較的働く女性にとって重要な情報を載せていただけるようなテンプレートを作って募集を掛けていただく。それを休職中の女性医師が自分で見て、自分の責任でアクセスして雇用を成立してもらう形です。やはり、数例ですが、雇用が成立したことがあり、今も継続しております。本当であれば、もっと手を掛けてフォローできればいいのですが、なかなかそれだけのマンパワー、あるいはお金がなくても、こういうことはできるということです。

27 ページに小児科学会のホームページにリレーコラムがありますが、実際に頑張っている、子育てしながらやっている男性、女性のコラムを載せて、若い先生方に見ていただくということもやっております。

28 ページは、私が個人的に大阪地区で子育て支援会をずっと続けてきましたので、その辺のことも資料として載せております。私自身は大阪大学の医局に所属しているのですが、やはり、実際にメンターと会う機会が大事だという御指摘がありましたが、なかなか若い先生方が医局の中で発言することは難しいので、医局とは別に顔が見える環境を作ろうということで声をかけて集まっております。最近は阪大系だけではなく、大阪市大系や、さらに知り合いを通じて、全く関係のない先生が御参加いただくこともあります。特に初期研修が始まってから医局に属さない先生方が出ているので、そういう若いキャリアの段階で産休、育休に入ってしまうと非常に孤立されるのです。どことも縁がない。どこからも連絡が来ないというまま埋もれてしまう方が問題になっております。実際、我々の母子医療センターもそうですし、大阪地区では大阪市立総合医療センターという大きいセンターがあるのですが、そういう所で研修医、あるいはローテーターの段階で休まれてしまうと、誰の声も届かなくなることに危機感を感じております。

 こういう支援会を通じて、小児科医のメーリングリストなどもあるのですが、そういうところに流すことも考えているのですが、是非、若く、しかし声が届きにくい人たちをどう拾い上げるかということを課題にしたいと考えております。

 岡山大学や日赤から非常に先進的な取組を御紹介いただいて大変参考になったのですが、やはり規模があるからできることというのがあると思うのです。小児科医の病院は 2 人、 3 人の勤務の所がたくさんあり、そういう所で救急などをやっていると、全く産休や育休は取れないということがあります。それで 1 次救急をまとめるということを大阪地区ではやっておりますし、病院の規模を拡大していくことも必要であるということで、小児科学会では小児医療体制委員会や、地域振興小児科をどうやって盛り上げるかという取組もしております。また機会がありましたら、その辺もこちらの懇談会で御紹介できたらと思います。以上です。

○山本座長 ありがとうございました。続いて、笠井先生、お願いいたします。

○笠井構成員 私のほうは資料をお届けして、いつかまたお読みいただければと思います。多岐にわたる事業をやっており、そろそろアウトカムを考えなければならないということです。国からの補助も頂いておりますし、その成果が 10 年となっております。その 1 つが、今日入れたさらに支援するパンフレット、あるいはデータでどういうアウトカムがあるかを見ていただければお分かりいただけると思います。ただ、単に支援するばかりではなりませんので、その結果が大事だろうと思って頑張っております。多岐にわたりますから、余り説明をたくさん申し上げるととても 2 分では終わりませんので、簡単に現状を申し上げます。

1 つは、私どもの医療の現場においていろいろな御発表があり少し変わってきていると思うのが、女性外来というのが大きな病院にも出来上がってきたということです。やはり、これは患者、受容側にも少し意識の変化が来ているという現実を感じております。皆さん方が御苦労なさっている中で、そういう結果が出ていることも少々説明させていただきたいと思います。

 あらゆるところですが、一般的に国にも少しお願いをしていきたいなと思っていることは、女性が出産や育児ということで、生涯の労働効率という問題があるわけです。これは社会全体、あるいは医業界全体ですが、これを当然として受け入れる社会の構築という制度設計みたいなものをそろそろ日本国でもやっていただきたいと思います。これから 30 %を超えますし、そういうことを考えると、それをやっていかない限り。ここに 1 つ簡単に私どものワーキングペーパーを作っているのですが、「男女共同参画による男性医師の意識調査報告書」というのがあります。このようにパートナーが十分に考えて、あるいは男性がどういうふうに考えているかということも少し提言していきたいと思います。簡単に言えば以上です。

○山本座長 どうもありがとうございました。先生は日医の男女共同参画の御担当の理事でいらっしゃいますので、連携などどうぞよろしくお願いいたします。それでは、左側の方からお話を頂きましたので、右側の先生方に移ります。甲能先生、どうぞよろしくお願いいたします。

○甲能構成員 私は杏林大学で病院長をしております甲能と申します。本日は全国医学部長、病院長会議として参加をさせていただいておりますので、当初、病院長会議でこの問題に対する活動の概略をお話しようと思ったのですが、とても時間がタイトであるというお話で、今日、いろいろお話を伺った中の印象を述べさせていただきます。

 木戸先生のお話は、女性が活躍できる勤務体系を構築する上で非常に有効であったのが交代勤務であったと思います。

 岡山大学の片岡先生のお話では、女性が離職した後に復職する条件として、特にソフト面の周囲の理解、サポートというものが重要で、その中でも、オーダーメイドの勤務体系は院長の理解が非常に必要であったというお話でした。勤務体系、勤務時間ということは、余り組織の体系をいじることなく変えられる 1 つの良い方法ではないかと思います。ただ問題点として、惠谷先生が小児科のような少人数の科では、なかなか交代勤務とか、勤務時間のオーダーメイドというのは作りにくい。したがって、周辺のいろいろな医療機関との連携が大切である。そういう連携を取ることによって、少人数の科でも勤務体系の工夫ができるのではないかというお話を頂いたと思います。

 この問題は奇しくも、経団連の小川さんも労働時間ということで、働き方の見直しをしないといけないとおっしゃっていたと思います。これは業種によりいろいろな差があるというお話にもありますが、正に医療界もオーダーメイドの勤務体系、交代勤務というのは、先ほどの小児科の実例でもありましたが、導入しやすい診療科、導入しにくい診療科があると思いますので、そういうようなところを見直して、導入しにくい診療科に対しては、そういう連携を進めていくことを提言していくことが非常に重要ではないかと感じました。以上です。

○山本座長 どうもありがとうございました。続きまして、高橋先生、お願いいたします。

○高橋構成員 理化学研究所の高橋と申します。現在、研究主体の変わった形態ですが、昔、病棟責任者などもやっておりましたので、少し感想を述べさせていただきます。

 眼科でもよくこういう問題を話し合って、結局行き着くところは、男性の働き方も合わせて考えないとねという結論になってくるわけです。ですから、男性も合わせて働きやすい交代勤務にしてもということにいつも帰結してしまうところです。

 大きな制度、いろいろ素晴らしい制度を作られていることに感激しました。実際ソフト面の理解が一番重要だというコメントもありましたのが、あと我々の経験でも、ソフト面で、お金を使わなくてもいろいろ工夫できるかと思っております。

 例えば、男女共同参画の話をしていて、ある教授に「会議を勤務時間内にしてください。女性は朝と夕方は忙しい」といった場合に、「それは無理ですね」と言われたのです。ところが、私が病棟の責任者をやったときは、患者さんが食事をしている夕方に、 5 時ぐらいに術前カンファレンスとか、やろうと思えばできるわけですが、朝にやったり、夜にやったりが多くて、子持ちの女性が出られないフレックスタイムでも、みんなが集まる、勉強する会議に出られないというのはモチベーションがすごく低くなりますので、そういうことはお金を使わなくてもできるであろうと。病児保育にしても、病院を超えて何人かのグループを作ってシッター会社と契約して、毎日、保険のように 1 人を確保して、病気が出た子供の家に行ってもらうという形を取っておりました。

 あと聞いた話でいいなと思うのは、小さい子供のいる女性には優先して病院の駐車スペースを与えるという工夫があります。これは助かるのです。本当に細かい、お金のかからないことでいろいろできると思います。

 あとアメリカ留学中に、子供を学校に行かせていたときに、アメリカでは学校もお母さんが働いているという前提があったので、参観日や行事は全部夜か土日でしたので、あれも非常に良かったと思います。ですから、お金を使わないソフト面の工夫。もうひとつ大きいのは、上におられる男性の奥さんが専業主婦でない、共働きの男性が多くなれば、だいぶ理解が進むのではないかと考えております。以上です。

○山本座長 どうもありがとうございました。続きまして、津下先生、お願いいたします。

○津下構成員 あいち健康の森健康科学総合センターの津下と申します。私は内科で糖尿病内分泌内科の臨床を 15 年ぐらいやりまして、その後、医局から検診や保健指導、生活習慣介入の仕事をしないかということで、当初、 2 年程度のつもりでいたのですが、男性が余り関心を持たない分野で、女性でかなりやれる部分があると。その当時、予防とか糖尿病の早期の介入ということには、余り臨床医に関心を持たれにくいところでしたが、私たちの視点で見ると、かなりいろいろやれることがあると分かりまして、健康政策や予防の仕事にだんだんシフトしていきました。最初から健康科学や公衆衛生をやろうと思っていたわけではなく、その場その場で考えながら動いてきた結果、この仕事が重要と考えるようになったというのが実感です。

 そういう中で、まず、モチベーションということですが、学生さんも私たちの所へよく研修に来られたりしますが、モチベーションの高い学生と、親から、そんなに働かなくてもいいと言われている学生もおります。お医者さんの彼氏を見つけたら、もういいんじゃないみたいな話も、実際に言っている学生もあるわけです。やはり、高校生のときから女性が生涯、やりがいをもって働けることを目指して、医学部を受けていただくという取組が必要かと思います。それから、学生時代は私も続けられるかすごく不安でした。当時は眼科とか皮膚科へ行かれる先生が多かったのですが、女性で内科医として働いている先生がいると聞けば、一度話を聞きに行ったりすると。私も大学の研究室の先生の奥さんが医師の仕事を辞められた方で、とても残念がっているので、あなた続けたほうがいいよと言っていただいたというのが、私にとっては内科でやりたいと思ったきっかけだと思っています。

 次に保育所についてですが、私にとって保育所は子供を育ててくれた所で、保育所がなければ子育てがうまくいかなかっただろうと思うぐらい、子供を育てる環境としては、社会の目を育てるという意味では非常に有用な所だったかと思います。

 親の都合で預けていて後ろめたいのではなく、子供も良い時間を過ごしている保育所なのだと。私の親も 3 歳まで預けるのはかわいそうではないかとよく言いましたが、保育園を一緒に見に行ったりしている中で、子供たちが元気にしている姿を見て、「保育所っていいよね」とだんだんと理解が得られたのが 1 つ大きかったかと思います。

 私の所にも女性の医師が、私のほかに 3 人おりまして、産後

一時的に離職していた人もいましたが、最初アルバイトから嘱託、常勤、役職とキャリアアップした人もいます。と言うのも、内科の医師はまだ少なくて育休が取れないので、産休ですぐ戻ってくるならば席を空けておくけれども、育休を取るなら男性の医師にという雰囲気が、十数年前ですがまだまだありました。今でも続けにくい雰囲気が、男性が多い科ではよくあることかと思います。そういう意味で、働き方としては離職しても戻れるし、融通し合う。学校行事の話もありましたが、学校行事は年間行事を最初にできるだけ入手して、やりくりをして休みを調整し合うということで、できるだけ子供に、「お母さんが働いていてかわいそうだよね」と言われない環境を作ることを協力し合ってやることも大切かなと思います。

 私の専門である生活習慣病、糖尿病の管理についても、患者教育とチーム医療で、コメディカルの方々をしっかりと教育するということで夜間のコールをかなり減らすことができます。そういう意味では、保育園仲間の看護師さんたちとのネットワークやり、昼間にしっかりと準備をすることで夜のコールをできるだけ減らすという対策が、チーム医療につながっていくという面もあるかと思います。私は本当にその場でできるだけ皆さんに助けてもらいながら続けてきたほうだと思っておりますが、医師だけのチームではなく、看護師さんや様々なコメディカルな方々と一緒にチームを組んでいくことで、かなり負担軽減もできると思いますし、より良い医療にもつながると考えております。以上です。

○山本座長 ありがとうございました。続きまして、西澤先生、お願いいたします。

○西澤構成員 私はどちらかというと中小病院の開設者、管理者の代表で来ていると思っております。今日の資料を基にして幾つかの感想を述べたいと思います。

7 ページの資料の「平成 24 年度年代別女性医師の割合」で、いわゆる 2025 年、あるいは 2030 年に、団塊の世代、あるいは 60 歳以上がリタイアしたときにどうなるのかを見ると、その年代ではせいぜい 10 %以下ですが、いなくなって 2 コマずつずれれば一気に女性医師が 30 %になる時代がもうすぐ来ています。ということでは、今の女性医師の数ではなく、それを想定しながら検討しなければならないと思いました。

 先ほど木戸先生の発表の、学会の入会は 7 割が女性、ということを考えると、特に産婦人科領域では真剣に考えないと大変だと思いました。

 木戸先生の話で、交代制勤務がいいということですが、なるほどと思いましたが、これは非常に医者が多く必要という辺りが、これから医者の数も限られている中でどうするのかと悩みながら考えました。また、女性医師だけ考えたら駄目で、やはり、男性医師も一緒の勤務体制にすべきだと。あるいはほかの職種のことも考えないと、女性医師だけを対象にやってしまうと、ほかの職種に負担がかかり、これはうまくいかない。ということで、総合的に考える必要があるのではないかと思いました。

 片岡先生のお話は岡山大学の話かと思いましたが、 41 ページを見ますと、キャリア支援のアウトカムで再就職のところは、地域の病院が 5 割以上ということです。ああ、こういうことかと。やはり、地域できちんとしたシステムを作ればいいのだなと思いました。

 後で片岡先生に教えてもらいたいのですが、 39 ページの病児育児の数がどんどん伸びていますが、これは女性医師だけなのか、あるいは職員全てなのか教えていただければと思います。

 私の病院の話ですが、勤務している男性医師の奥さんも医師でほかの病院で勤務しているのですが、帰る時に「今日は僕がお風呂に入れる番です」と言っていましたが、非常にうまくやっているなと思います。あるいは前にいた先生で、休暇を取るときに参観日に行きますという話がありました。初め聞いたときに、何だろう、これはと。私はどちらかというと封建的な人間で、私はそういう時、 1 回も行ったことがない人間なので少しカルチャーショックを受けましたが、今の若い方々は、このようなことが普通の時代になってきているということでは、こういう対策をしても非常にうまくいくのではないかという気もしております。以上です。

○山本座長 ありがとうございました。では別役先生、お願いいたします。

○別役構成員 慶應義塾大学内科・呼吸器内科の別役です。私は内科というところ、さらに呼吸器内科というのは臨床の現場ではきつい職業と言われており、非常に緊急入院も多いですし、また病棟で亡くなる患者さんも多いということで、大変ハードな内科であると思いますが、女性医師もたくさん仕事をしております。

 制度というところで、なかなか工夫をして作っていくというのは難しいのですが、私たちの科でも試行錯誤の上、組織の中からは決めてほしいと。こういう制度で、うちは女医さんの対策をするということを決めてほしいという要望もあったのですが、私は試行錯誤の段階で、みんなで決めてごらんという形に 1 回下に下ろして、女医さんは出産・育児を通じて、どういうふうにみんなで守って、助けていったり、あるいは不公平にならないようにするかということを、逆に決めさせると。テンポラリーな試みかもしれませんが、自分たちがうまくやれる方法を工夫してごらんという形で今は進めています。

 この制度は、今のやり方が 10 年続くとは思わないのですが、そのときそのときによって女性医師の人数も変わりますし、またその社会も変わりますので、良いか悪いかは別として、自分たちで現状をどうするかということを話し合わせるというのも、 1 つの試みかなと今は考えながら進めているところです。以上です。

○山本座長 どうもありがとうございました。最後に安田委員、お願いします。

○安田構成員 私は呼吸器外科が専門で、呼吸器外科専門医です。まず、プライベートの話をしますと、一番下の息子が今年ようやく小学校に入って、保育園からようやく脱したという感じで、 3 人息子がいるのですが、支援が必要な世代の代表ということで、今日はここに座っているのかなとは思っております。

 キャリアのことで言いますと、息子が 3 人いることと分けて考えることはなかなかできないですが、呼吸器外科医としての診療をやって、その後研究留学を経験し、その後行政も経験させていただいて、今は大学のマネジメント業務をやっております。

 そのキャリアの変遷は、私が自ら選んだものと、そうでないものがあるとは思いますが、今現在やっているのは、その病院の医療の質向上と患者安全のマネジメントが中心です。それとは別に行政時代からずっとパートタイマーの外科医として診療を続けるということもやっております。多分、それが、私がこの女性医師問題を見ているフレームになると思います。

 私が女性医師の問題ということで今回呼ばれておりますが、やはり、ここは医療の中における女性医師の話をする所であり、医療としてのアウトカムを考えますと、やはり、医療の質を向上させないといけない。患者さんの安全を保たなければいけないというところは、どの分野の方たちも共通して思うところです。病院で起こることを見ていますと、最近患者安全の分野で非常に大きく問題として取り上げられているのは、人と人とのつなぎ目のところでいろいろな問題が起こっていることが言われております。チーム医療と言いますと、多職種がとかくクローズアップされますが、医者と医者との間、同じ診療科内でもつなぎ目のところでいろいろなインシデントが起こっていることが注目されており、チームトレーニングや、安全文化を醸成することがクローズアップされています。

 女性医師の問題は、先ほどからいろいろな先生が、いろいろな言葉で言われているように、私たちが医療に対して、患者さんの命に対して、大きな責任を負っていることを、 1 人で負うというよりは、大勢で、チームで負うことにもう少し転換して、そのほうがより安全なシステムであることは間違いないと思いますので、そういうことを女性医師という切り口で考えていただけたらと思います。

○山本座長 どうもありがとうございました。お時間も余りありませんが、今日参考人としてお越し頂いている倉治さんにお願いいたします。

○倉治参考人 このような発言の機会を与えていただきまして誠にありがとうございます。私は日本歯科医師会という歯科の団体からまいりました常務理事の倉治と申します。日本歯科医師会はほとんどが開業医の団体で、全国で約 6 5,000 人の会員がおります。全国の歯科医師の約 20 %が女性歯科医師ですが、日本歯科医師会 6 5,000 人会員のうちの約 8 %が女性会員で、 2013 年にようやく 9 %に達しましたが、約 30 年間は 8 %台という割合でした。現在、日本歯科医師会の女性役員は、 27 人中私だけですので、女性の役員比率は 3.7 %ということになっております。また、都道府県歯科医師会の女性役員の割合は 2.5 %であり、目下の私の課題は自分の後進となる女性役員をいかにして育てていくかということでございます。やはり、組織の中に女性が入らないと、例えば国民の半数を占める女性の皆様に歯と口の健康をお届けするにしても、常に男性目線での女性への歯科医療情報の提供ということになりますので、女性から見ると何か違うな、ということもございます。是非、女性歯科医師が組織に参画して、国民の皆様の歯と口の健康に寄与していきたいと願っております。参考資料として 163 ページから 237 ページまで準備いたしましたが、その中で 1 点御紹介させていただきます。過去に、男女共同参画推進検討委員会があり、その中で幾つかアンケートを取ったことがございます。なぜ、女性が歯科医師会に入らないのかといった視点からのアンケートですが、 213 ページを御覧いただきますと、少し答えが見えてきます。こちらは「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきですか」という、固定的性別役割分担意識の世界共通のアンケートです。 213 ページの一番下が、日本歯科医師会の男性会員の意識で、日本全体の男性の意識と比べますと、わずかですが、女性は働いたほうがいいというふうには思っており、あとはほぼ、国民と同じような意識です。

 ところが、 215 ページの上のグラフでは、「あなたは今後、女性も歯科医師会の役員になるべきだと思いまか」という設問に対し、女性よりも多くの 94 %の男性が、女性も役員になるべきだと回答いたしました。しかしながら、約 50 %弱の方が妻には家に居てほしいと回答しておりますので、なかなかに矛盾した結果であろうといったこともあり、このあたりにも女性が活躍できない特有のメンタリティの問題があるように感じております。詳しくは、後ほどお読み取りいただければ幸いです。しかしながら、私どもは歯科医師会会員に女性が増えることで、すべての国民の皆様に歯と口の健康を提供できるだけではなく、日本全体の女性の皆様が活躍できるような素地が作れることで貢献できるのではないか、と考えております。以上でございます。

○山本座長 どうもありがとうございました。本来ですと、ここで女性医師の働き続けやすい環境整備に向けた課題及び環境整備のあり方について 30 分ほどお話を頂く予定でしたが、非常に熱意のこもった先生方の御発言で、全く時間がなくなりました。しかし、只今の先生方のお話の中から何となく環境整備の課題やあり方が見えてきたように思います。本日配布されました膨大な資料を参考にして今日の各先生方のお話から、次のステップをお考えいただければ幸いです。

では次に移らせて頂きます。それでは「その他」について、事務局より御説明をお願いします。

○森医事課医師臨床研修専門官 それではお手元の資料 6 79 ページ、「医学部生等との意見交換について」です。この懇談会の開催趣旨である「女性医師がライフステージに応じて活躍できる環境整備に向けた課題及び環境整備の在り方」について、この懇談会だけではなく、これから医療・医学の現場を実際担っていくもっと若い世代、医学部生や若い医師、そういった方々の意見を聞き、懇談会の委員の先生方と共に考えることを目的として、シンポジウムを開催したいと考えております。

 日時は 8 24 ( )14 時~ 16 時、国際医療研究センターで行う予定です。参加対象者は一般に公開しておりますが、特に若い医学部生や若い医師に向けて、案内をしているところです。プログラムとしては、この懇談会の委員の先生方にも御協力を頂いて惠谷委員、安田委員、山本委員、津下委員、山本座長により基調講演をいただきます。後半は意見交換として、懇談会に御出席いただいた先生方と参加者との自由な意見交換の場を設けたいと考えております。

 後ろに参考でチラシを付けておりますので、是非、委員の先生方、周囲の方々、また、傍聴の皆様方にもこういったシンポジウムがあるということを御周知いただければ大変有り難く存じます。資料については以上です。

○山本座長 ありがとうございました。ただいま御説明の医学生・若手医師との意見交換会について御意見がありましたら、お願いします。この会に御参加の若手を集めるのが、今大変難しい状況にあるのではないかと思います。と言いますのは、夏休みに入って、なかなか学生との連絡が取りにくい状況ですので、今日ここに御参加の委員の先生方は、若い方たちとの御交流も大変深いと思いますので、是非、先生方のほうからもお声をかけて頂きまして、多数の方にお集まり頂けましたら大変嬉しく存じます。よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

ここで事務局より、今後の進め方について御連絡をお願いします。

○森医事課医師臨床研修専門官 本日の御議論や、先ほど御紹介した 8 24 日開催予定のシンポジウムでの御意見等を踏まえて、この懇談会としての報告書をこれからまとめていきたいと考えております。報告書は、今日提出いただいた資料や好事例、工夫された点といろいろ挙げていただきましたが、こういったものを事例集の形でまとめていったらどうかと考えております。また、委員の先生方には御相談していきたいと思います。次回の懇談会の日程については、追って事務局から御連絡させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○山本座長 これをもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。大変暑い最中ですので、皆様方におかれましては是非御健康にご留意下さいまして、益々の御活躍をお願い申し上げます。

本日はどうもありがとうございました。


(了)

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