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2014年8月27日 第11回院内感染対策中央会議(議事録)

○日時

平成27年8月27日(水)9:30~11:30


○場所

厚生労働省 中央合同庁舎5号館 専用第22会議室(18階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)


○議事

○森井地域医療計画課長補佐 それでは、定刻になりましたので、第11回「院内感染対策中央会議」を開催いたします。

 本日は、先生方には御多忙のところ御出席を賜り、まことにありがとうございます。

開催に当たりまして、医政局長の二川より一言御挨拶を申し上げます。

○二川医政局長 おはようございます。医政局長の二川でございます。

 構成員の皆様方におかれましては、御多忙の中お集まりいただき、まことにありがとうございます。また、平素より医療行政の推進につきまして格別の御支援、御協力を賜っていることにつきまして、この場をおかりして厚く御礼申し上げたいと思います。

 さて、院内感染対策中央会議は、平成17年に第1回が開催されたわけでございますけれども、今回で11回目になります。4年ぶりの開催ということでございます。これまでになかったタイプの院内感染や新しい薬剤耐性菌の広がりなど、新たな課題が起こってきているわけでございまして、これらについて御議論をいただきたいといったことで、この会議を開催させていただくことになった次第でございます。

また、御承知のことかと思いますけれども、本年4月、世界保健機関が初めて薬剤耐性菌のグローバルレポートを発表したところでございます。このレポートでは、既存の抗菌薬が役に立たない多剤耐性菌の広がりが先進国、途上国問わず深刻な問題となっており、近代医学の成果が危機に瀕している、こういう警鐘を鳴らしているわけでございます。

また、プラスミドを介したと考えられる多剤耐性菌の院内感染の事例が、我が国におきましても報告されているところでございます。

我が国の院内感染及び薬剤耐性菌の状況は現在のところ、海外の状況に比べれば良好な状態と言えるわけでありますけれども、人や物の流出入が著しいグローバル化が進んだ現代におきましては、このような多剤耐性菌や新しいタイプの院内感染は緊急のリスクであるといったことで、対処していく必要があるというふうに考えているところでございます。

時代に即応した院内感染対策を講ずるため、構成員の皆様におかれましては、どうか忌憚のない御意見、御指摘をいただき、今後の院内感染対策、私どもはいろいろな形で努めてまいりたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

簡単でございますけれども、冒頭私からの挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。


○森井地域医療計画課長補佐 続きまして、構成員の先生方を紹介いたします。

名古屋大学大学院教授、荒川宜親先生。

 京都大学教授、一山智先生。

 東京医療保健大学副学長、大久保憲先生。

 筑西保健所長、緒方剛先生。

 川崎市健康安全研究所長、岡部信彦先生。

 東北大学大学院教授、賀来満夫先生。

 東京医療保健大学学長、木村哲先生。

 国立国際医療研究センター研究部長、切替照雄先生。

 国際医療福祉大学塩谷病院教授、倉田毅先生。

 日本看護協会常任理事、洪愛子先生。

 東京医療保健大学大学院医療保健学研究科長、小林寛伊先生。

 山口県環境保健センター所長、調恒明先生。

 慶應義塾大学病院感染制御センター課長、高野八百子先生。

 なお、本日の議題に関連しまして、参考人といたしまして国立感染症研究所、大石和徳先生。

 国立感染症研究所、柴山恵吾先生。

 大阪大学、朝野和典先生。

以上3名にお越しいただいております。

 私は、医政局地域医療計画課の森井でございます。よろしくお願いします。

 ここでカメラ等は退室をお願いいたします。

続きまして、当会議の座長の選出をお願いいたしたいと思います。選出の方法につきましては、構成員の互選ということで進めたいと思います。座長の推薦をお願いしたいと思います。どうぞ。


○大久保構成員 小林寛伊先生を御推薦申し上げたいと思います。


○森井地域医療計画課長補佐 ただいま小林構成員というお声がかかりましたが、いかがでしょうか。


(拍手)


○森井地域医療計画課長補佐 皆様の御賛同を得ましたので、小林構成員に当会議の座長をお願いしたいと思います。

小林先生に座長席へお移りいただきまして、以降の進行は小林座長にお願いしたいと思います。

小林先生、どうぞよろしくお願いいたします。


(小林構成員、座長席へ移動)


○小林座長 ただいま御指名いただきました小林でございます。構成員の皆様方の御協力をいただきまして当会議の円滑な運営に努めてまいります所存ですので、どうぞよろしくお願いいたします。

 先ほども御紹介があったように、4年ぶりですので、いろいろと課題が山積しているかもしれませんので、御発言は簡明にお願いして、スムーズに進行できるように御協力を賜りたいと思いますし、あらかじめお断りしておきますが、結論が出ない問題がいろいろあると思いますので、それはまた事務局にお願いして整理していただいて、皆様の御意見を賜るような形で、時間どおり進行したいと思っておりますので、よろしく御協力いただきたいと思います。

 それでは、議事に入る前に、いつもどおり当会議の議事進行のこと及び資料の公開の取り扱い等について、そのルールを確認しておきたいと思いますので、事務局から御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。


○森井地域医療計画課長補佐 御説明いたします。当会議は公開で行い、議事録につきましても、事務局でまとめたものを各構成員にお目通しいただいた後、厚生労働省のホームページで公表することとしたいと思いますので、御了解お願いいたします。

引き続きまして、資料の確認をさせていただきます。

本日御用意させていただきました資料の構成は、議事次第に記載のあるとおりでございます。資料の欠落等がございましたら、お申し出ください。


○小林座長 よろしゅうございますでしょうか。

それでは、議事に入りたいと思います。

本日の議事は、お手元の資料にございますように、まず最初に「第11回院内感染対策中央会議の趣旨説明」。

2番目に「プラスミドを介した院内感染事例について」。

3番目の議題が「通知改正について」。この中には2つございまして、「アウトブレイクを疑う基準について」「検査体制について」。この辺がいろいろ議論のあるところだと思いますので、恐らく結論には至らないのではないかと思いますが、よろしく御審議のほどをお願いしたいと思います。

そして、4番目に「各構成員からの御意見」ということで、そのほか何かあれば、その後、5番目の議題といたしたいと思います。

まず、議題1「第11回院内感染対策中央会議の趣旨説明」を事務局からお願いしたいと思います。よろしくお願いします。


○森井地域医療計画課長補佐 説明いたします。まず、資料1をごらんになってください。

11回院内感染対策中央会議は、本年確認されましたプラスミドの伝播による多剤耐性菌の院内感染について、専門家による議論を行い、問題点を把握するとともに、個々の医療機関が迅速な対応を講ずるため、現状の院内感染対策の手順を見直すということを目的としております。

検討課題といたしましては、平成23年6月の課長通知「医療機関等における院内感染対策について」で示されています院内感染のアウトブレイクを疑う基準は、「同一菌種」または「同一菌株」の集積によって判断するとされているものです。これに加えまして、保健所への報告の基準も「同一菌種」の集積によって定めているものです。しかし、プラスミドを介した伝播により複数菌種による大規模な院内感染の事例が発生したところですので、このような事例に対応するため、上記通知の改正を念頭に、新しい基準やそれに関連する問題について御検討いただきたいと思っています。

また、近年議論になっておりますカルバペネム耐性腸内細菌科(CRE)に関して、院内感染上の注意点等につきましても御検討いただければと考えております。

資料2に移りまして、平成23年6月の課長通知の手順に示されている手順をここにサマライズしています。

まず、<アウトブレイクを疑う>というところに関しましては、先ほど申し上げたように、「同一菌種または同一菌株が四週間、三例以上」という基準で定めています。これの場合には疑う。その後、各医療機関が感染対策を行っていただいて、さらには地域のネットワークの専門家に支援を要請していただく。このような中で、感染例が10例を超える、あるいは死亡事例が疑われるという場合には保健所への報告をお願いしているところです。

これに対する課題として、本年3月に、CREの1つであるメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌による院内感染のアウトブレイクが公表されています。感染研等の調査により、これはどうやらプラスミドの伝播によるものだろうということが報告されています。

同一菌種ではなく複数菌種にまたがるアウトブレイクであったという可能性があるので、それについての通知等を見直していただきたいと考えています。

よろしくお願いします。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、引き続いて、議題2「プラスミドを介した院内感染事例について」に移りたいと思います。

柴山参考人から御説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。


○柴山参考人 それでは、プラスミドを介した院内感染事例ということで、私のほうから事例を紹介させていただきます。

 配付資料はございませんので、申しわけございませんが、口頭のみで説明をさせていただきます。

 これは昨年、国内のある医療機関から、ICU、またはそのICUと患者の出入りがある病棟で複数の患者からカルバペネム耐性の腸内細菌科細菌が分離されているのだけれども、菌種がさまざまなのでどのように考えたらよいかという相談が私ども国立感染症研究所にありました。一般的に院内感染というのは同一の菌が伝播することによって起こると認識されておりますし、実際これまでの通知等でもアウトブレイクを疑う基準というのは、そのようなことを念頭に置いて規定されていると思います。

私たちは、この事例については学術的な検討が必要と考え、耐性遺伝子等、詳細な解析を実施いたしました。その結果、複数菌種が分離されていたのですが、それらの菌種のほとんどが同じプラスミドを保有しているということがわかりました。疫学的な解析もあわせると、その耐性遺伝子を持ったプラスミドが病棟内でいろんな菌種に拡散していったと考えられたということであります。

もう少し経過を具体的にここから説明したいと思います。

まず最初は、昨年半ばごろ、この病院の循環器科ICUに長期入院中の小児の尿からカルバペネム耐性の Enterobacter aerogenes が分離されました。病院としては、この病棟に重症患者が多く入院していたということで、病院はしっかりした対策が必要というふうに考えたそうで、国立感染症研究所のほうに菌株解析等の相談がありました。

私たちの研究室で耐性遺伝子を調べたところ、IMP-1型のメタロ-β-ラクタマーゼ遺伝子が検出されたわけです。このタイプの耐性菌は、感染対策上、特に注意を要するものですので、病院としては、院内で同様の菌が拡散している可能性を考え、患者さんの便を採取してスクリーニングを行ったそうです。その結果、幾つか菌株が分離されましたので、その菌株について、さらに我々のほうで解析を行ったということであります。

その結果、8名の患者さんから同じIMP-1型のメタロ-β-ラクタマーゼ遺伝子を保有している腸内細菌科の細菌が分離されたということであります。菌株数としては14株。

ここで、分離株の特徴として、複数菌株にわたっていたということがあります。クローナルな菌株を除外したところ、最終的には11株になったのですけれども、これらは全て腸内細菌科で、7菌種にわたっていました。内訳を申しますと、 Enterobacter aerogenes が1株、 Enterobacter cloacae が1株、 Klebsiella pneumoniae が3株、 Klebsiella oxytoca が2株、 Serratia marcescens が2株、 Citrobacter freundii が1株、大腸菌が1株、こういう内訳でした。

これらについて、パルスフィールド電気泳動で遺伝子型別をしたところ、分離されている Serratia marcescens 2株は同一パターンだったのですけれども、ほかに複数分離された Klebsiella pneumoniae Klebsiella oxytoca 、これらは異なる患者さんから分離された株ではバンドパターンが全て異なっておりました。つまり、今回分離さたれ Serratia marcescens 以外の菌株は全て別の菌株だということがわかったわけです。

さらに、我々は、それぞれの菌株のプラスミドDNAS1-PFGEという方法で精製いたしまして、次世代シークエンサーでプラスミドの全塩基配列を決定いたしました。そういたしましたところ、 Enterobacter cloacae だけはちょっと異なっていたのですけれども、それ以外の株のプラスミドは全て同一、または一部に若干挿入配列があるのみで、基本骨格は全く同じということがわかりました。ですので、最終的に6菌種10株が、それぞれ全く別の菌株なのに全て共通するプラスミドを持っていたということが明らかになったわけです。

この病院のほかの病棟の入院患者からは腸内細菌科のメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌というのは分離されておりませんでしたし、あるいは一般的にも国内では腸内細菌科のメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌の分離というのは基本的にはまれですので、これら11株というのは、たまたま外部から患者さんが持ち込んできたという可能性は否定的と考えました。

プラスミドというのは菌種を超えて伝播するということは、学術的にはよく知られていることですので、我々としては今回の事例は、院内でプラスミドが伝播することにより起こった院内感染である可能性が高いというふうに結論づけました。

この医療機関ではその後、対策のためにさらに病棟内の環境調査等を実施したそうです。その結果、流しのブラシから同じプラスミドを持つ菌が検出されました。この病棟は乳児が入院している病棟で、ミルクを調整しているそうなのです。このブラシで調乳器具を洗浄していたそうです。調乳器具で院内感染が起こるということは文献的にも知られておりましたので、病院としては今回の事例についてもこのブラシが感染源になっているというふうに考え、ブラシを使い捨てに交換したそうです。そうしたところ、その当時はその後、新規の感染者が出なくなったというふうに聞いております。

ですので、今回の事例は、プラスミドが異なる菌株間に伝播して耐性菌の拡散が起こったと考えられました。

平成23年の通知ですと、アウトブレイクを疑う基準として、分離される菌種が同一菌種というふうに記載されております。今回の事例で、分離される菌種が異なっていてもアウトブレイクがあるということがわかりました。

また、この事例とは別に、今年に入ってから関西の医療機関でも同様に比較的大規模なアウトブレイクが起こって、それもプラスミドの拡散であるということ、それは研究の途中ですけれども、そういったことも今、明らかになりつつあります。

こういったことは余りまれではなくて、医療現場では比較的頻繁に起こっている可能性があると思いますので、この会議でこの部分、「同一菌種」という記載をどうするかといったことについて御検討をお願いできればと思います。

最後に、補足なのですけれども、今回の事例では患者さんは全て保菌者でした。感染症を起こした患者さんはおりませんでした。ですけれども、この病院は感染対策に非常に力を入れている病院で、1例目の保菌に気づいてから間もなく我々感染研のほうに相談があって、そして保菌調査、環境調査等をしっかり実施されて、病院全体で感染対策に取り組んでおったということです。複数の菌株が分離されてからは保健所のほうにも連絡を入れて、保健所が対策支援を行ったというふうに聞いております。また、保健所が地域の大学に感染対策について相談してアドバイスを受けたというふうにも聞いております。ですので、この病院、自治体、感染研、大学がそれぞれうまく連携して感染対策に当たったという例になると思います。

医療機関によっては、アウトブレイク疑いなどがあっても、行政に相談とか報告をすることに躊躇することがあるというふうに聞いておりますけれども、こういうことがあると、より感染拡大につながる可能性もありますので、自治体がうまく連携して体制をつくっていくというのも重要かなというふうに思います。

私のほうからは以上です。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 ただいまの御報告を受けまして、議事3「通知改正について」に入りたいと思います。

まず、アウトブレイクを疑う基準について議論したいと思います。

先ほど事務局より御説明がありましたが、プラスミドを介した薬剤耐性菌の伝播は、従来の通知では想定しておりませんでしたので、これに対してどのように対応すればよいかということを問われると思いますが、先生方から御意見を頂戴したいと思います。

あわせまして、今の御報告に関して、この議事に関する質問があれば、先生に伺わせていただいてよろしいでしょうか。


○柴山参考人 はい。


○小林座長 そういう形で議事を進めていきたいと思います。賀来先生、どうぞ。


○賀来構成員 柴山先生の御発表で1点だけ確認をいたしたいと思います。患者さんの便のモニタリングなのですけれども、この患者さん方は循環器科というか、同じ診療科に入院している方々の便ということでよろしいでしょうか。それとももっと範囲が広くスクリーニングしたのでしょうか。


○柴山参考人 この病棟と、その病棟と患者さんが行き来している病棟について調べたというふうに聞いております。


○賀来構成員 わかりました。ありがとうございました。


○小林座長 大久保先生、お願いします。


○大久保構成員 大久保です。

プラスミドを介した薬剤耐性菌の伝播ということでしたけれども、これは感受性のパターンが大体同じパターンであったかどうかということです。パターンのアンチバイオグラムといいますか、それでこの辺が察知できるものであったかどうかというところを聞きたいと思います。


○柴山参考人 感受性のパターンにつきましては菌種によって異なって、さまざまでした。菌種によって、カルバペネム耐性についても耐性が高いものから低いものまでさまざまでした。


○大久保構成員 そうしますと、次の議論と関係するかもしれませんが、感受性パターンだけでは察知できなかったということになるのですか。


○柴山参考人 そうですね。今回、カルバペネムに耐性というフェノタイプで菌株、スクリーニングを行ったということです。


○大久保構成員 わかりました。


○小林座長 カルバペネムに対しては、全例耐性だったわけですか。


○柴山参考人 はい。一部ちょっと広目にスクリーニングをいたしましたので、カルバペネムに対して、中間とかいうものもとっておりますけれども、基本的にカルバペネム、あるいは第3世代セファロスポリンの耐性のものを今回は保菌調査ということでスクリーニングをやっております。ですので、カルバペネムに中間か、ちょっとSのものも含まれていたと思います。


○小林座長 カルバペネム以外の抗菌薬で何種類かが同じパターンであるというものはあったのでしょうか。ほかは全くばらばらだったのでしょうか。


○柴山参考人 今回この医療機関で分離された菌株については、カルバペネム以外にはアミノグリコシドが耐性なのですけれども、それ以外については、ほとんどのものが幸い感受性でありました。


○小林座長 どうぞ。


○荒川構成員 先ほど8名の患者さんから11株解析されたというお話ですけれども、一部新聞報道ですと、100人ぐらいの患者さんから最終的に見つかったというようなことが記載されていたように思いますが、それらの株はどういう解析結果だったのでしょうか。それ以外の株については解析されているのかどうか教えてください。


○柴山参考人 恐らく先生がおっしゃっているのは別の事例で、別の病院の事例を今、御紹介しております。今、私が8名と申し上げましたけれども、これは昨年の12月までの段階で解析が終了した分までのデータでして、その後も少し菌株が分離されているようですので、現段階では若干状況が変わっていると思いますが、そんなに大きくは変わっていないと思います。


○小林座長 一山構成員、どうぞ。


○一山構成員 一山です。

保菌者として分離された患者さんが以前に臨床検体で微生物検査をしたときに、感受性菌である、つまり、ホストの菌株かなと思われるような分離状況というのがあったのですか。例えば今回、大腸菌のカルバペネム耐性菌を分離されたのだけれども、それ以前に偶発的か、何でもいいのですが、感受性菌である同一菌種のものが検出されたという歴はあったでしょうか。


○柴山参考人 科学的にはその辺が押さえられると非常にいいと思うのですけれども、今回、その耐性菌が分離される前に同じ感性菌が分離されているかどうか、そこは確認できておりません。


○小林座長 ほかにいかがでございましょうか。

 そうしましたら、議題の通知改正、アウトブレイクを疑う基準というのは非常に課題ではありますけれども、こちらのほうを中心に御意見をいただけたらと思います。いかがでございましょうか。どうぞ。


○荒川構成員 前回もこの委員会で皆さんが御審議されて、前回のアウトブレイクを疑う事例の基準、目安のようなものを皆さんでつくっていただいたと理解していますけれども、これがプラスミドを想定した耐性遺伝子の伝達を考えていなかったということで、そこに若干検討の余地が残るというふうに私は理解していますので、アウトブレイクを疑う事例の文面に「ただし、プラスミドによって薬剤耐性遺伝子が伝達する場合は、異なる菌種であっても複数分離された場合はこういうアウトブレイクを疑って、詳しい解析とか対策が必要だ」という文面を一文加えれば、実用上はそれでよろしいのかなという気はするのですけれども。


○小林座長 ありがとうございます。

 ただ、その現場ですぐプラスミドの解析ができるわけではないと思います。しかも、アンチバイオグラムがかなりばらばらであったという事例の御紹介がありましたので、そうすると、まず現場でどういうことを基準にアウトブレイクを考えたらよろしいか、御意見をいただけませんでしょうか。どうぞ。


○一山構成員 前回の3株とか3例という数字を示すというのはかなり難しいかなという気はしますね。であるから、拾い上げる目安として、皆さんがわかりやすいようなものをつくって、そこから地域連携でレファレンスの施設へ相談する、このきっかけがどういうところかというところをわかりやすくということかなと思います。

例えば菌種、あるいはアンチバイオグラムで何があったときにというふうなところから絞り込んで、わかりやすくということかと思います。私も、では、何株、どれほどという具体的なことは非常に難しくてわからないのですけれども。


○小林座長 ありがとうございます。

 取っつきといいますか、最初の糸口として、例えば余り具体的なことは決められないかと思いますが、何と何を。カルバペネムの感受性ということが1つポイントにはなるでしょうけれども、これもいろいろあると聞いております。先生が今、一、二例お挙げくださいましたけれども。


○一山構成員 カルバペネム耐性という、検査室で実際に拾い上げられるのは、それがSかRかという検査施設が大半なのです。MICをきちっとはかっているというところよりも、SとRで切っているところもあるので、カルバペネム耐性ということはキーワードだと思います。

 中には感受性で見落としてしまうということがあり得るのですけれども、それをやり出すと線の引きようがないので、そういったところかなということ。

菌種について言えば、今のところは腸内細菌科と非発酵菌というところが取っかかりかなと思います。


○小林座長 ありがとうございました。大変クリアカットに整理していただいたと思うのですが、カルバペネムの感受性もばらつきはあるのでしょうけれども、まずはカルバペネム耐性であるということ。菌種としては、腸内細菌科、または非発酵菌等を一つの狙いとするというような具体的な案をお示しいただきましたけれども、ほかの先生方、いかがでございましょうか。大久保先生。


○大久保構成員 そうしますと、ESBLは、カルバペネムが感受性だと思うのですが、それはチェックできませんね。


○一山構成員 できませんね。


○小林座長 どうぞ。


○一山構成員 ESBLも非常に重要な問題なので、確かにそれを無視するというのもちょっと難しい。やはりそうかなと思いますので、そこはちょっと議論が必要かと思います。


○小林座長 そういう株が、アンチバイオグラムが一致するような形でスペシーズを超えてあり得るでしょうか。


○大久保構成員 数は少ないのですけれども、集計してみますと、ESBL産生の場合には、アンチバイオグラムは、菌種が変わってもそのパターンを見ると大体察知できるというデータはあるのですが、メタロ-β-ラクタマーゼ遺伝子を保有している腸内細菌科の細菌の場合にどうも通用しないという柴山先生の御発言があったものですから、ちょっとその辺はわからないと思います。


○小林座長 ただ、そういう事例もありますけれども、アンチバイオグラムが一致すれば、菌種を超えてプラスミドの伝播があったということを疑って調べるという一つの糸口になりますでしょうか。どうでしょうか。


○大久保構成員 それは糸口になると思いますが、もう少し議論を前にといいますか、前回、4年前の発端を見ますと、あのときに多剤耐性アシネトバクター・バウマニの都内でのアウトブレイクが実際にあって、そこへ業務上過失致死罪というような形での捜査が入ろうとしたということがあったものですから、アウトブレイクを定義しなければいけない、さらに報告の義務といいますか、報告する基準をつくらなければいけないということで、現在のこの基準ができたわけですので、科学的な根拠というより、むしろ一般の病院が早く行動するようにという意味でできた数字ですから、その辺を変えていくべきかどうかという議論からしなければいけないと考えます。


○小林座長 検査体制については後で議題として議論していただきますが、今、大久保先生がおっしゃったように、現場で疑う基準としてどういうことを追加していったらいいかというあたりを議論、御提案いただけたらと思うのですが。


○荒川構成員 先ほどの補足ですけれども、メタロ-β-ラクタマーゼの遺伝子も、あるいはESBLの遺伝子もプラスミドによって媒介されているというのが特徴だと思うのです。プラスミドかどうかの検査とか解析は、当然一般の病院ではできませんので、そこまで全ての病院にお願いするというのは無理がありますけれども、そういう遺伝子がプラスミドによって媒介されているということは、その分野の多くの方々は既に知っておられますので、プラスミド媒介性の耐性遺伝子を持っているということが疑われるような耐性菌の場合は、菌種が異なっても同じような、例えばカルバペネム耐性とか、セファロスポリン耐性とか、そういう菌株が複数の患者さんからたくさん出た場合は、やはりアウトブレイクを疑って必要な検査とか対策をすることが大事だと。そういう内容の基準としてまとめればよいと思います。実際に詳しい解析は、地域の連携病院とかレファレンスセンター的なところ、あるいは感染研、地方衛生研究所のほうでアウトブレイク事例について解析支援をしてもらう、そういう形が一番進めやすいのではないかと思います。


○小林座長 ありがとうございました。

 今まで幾つか出ました御意見、最初の糸口をどこにするか、その幾つかの事例を提示することによって、一般の病院である程度の判断をできる糸口になるのではないかと思いますので、その辺、さらにこんなものがあるというような御意見はいかがでしょうか。どうぞ。


○一山構成員 柴山先生から説明がありましたけれども、あるいは大久保先生の質問と賀来先生の質問ですか、患者さんのいる場所が疫学的にどうかという情報も1つつけ加えておくことが大事かなと思います。


○小林座長 同じ病室なり、同じICUNICUにいる患者の中でそういうことが起こっているという。


○一山構成員 何かそういうキーワードがあるとですね。


○小林座長 それも非常に重要なことだと思います。ありがとうございます。

 ほかにいかがですか。岡部先生。


○岡部構成員 柴山先生にちょっとお尋ねしたいのですけれども、この医療機関でどうして最初にこれがおかしいと思ったのか。そこのヒントは、一般病院でなかなか気づかないところだと思うのですが、それをどこでも気づくようにできるのか、あるいは特殊なところであればできるのかということで、ちょっと教えていただきたいのですけれども。


○柴山参考人 今回の事例に関しては、最初の第1例目の菌株が Enterobacter aerogenes なのですが、これがカルバペネムにRだったのです。フェノタイプとしてRでありましたので、これも医療機関の検査値でわかるものですので、カルバペネム耐性の腸内細菌というのは比較的まれなものですので、それで、医療機関としては感染研のほうに相談したということです。

ですので、1株出たので、保菌調査等もやったということです。


○小林座長 どうぞ。


○岡部構成員 かなり高度の院内感染とか耐性に対して知識を持っているところでできたのであって、一般病院でそこまでできるかどうかというのはちょっとどうかなと思うのです。ただ、それを一般病院に普遍化して、どうすればどこでも気がついてもらえるかというところがキーになるのではないかなと思っています。


○柴山参考人 私の個人的な意見ですけれども、今回はカルバペネム耐性の腸内細菌科の細菌でしたので、いわゆるCREに限って言えば、これは基本的にまれなものですので、CREというのは、どこの医療機関でも基本的には検出できると思うのです。ですので、私の個人的な意見ですが、1株出れば、それは対策をとっていただくということにするのがいいのではないかと思います。


○小林座長 ありがとうございます。

 賀来先生、どうぞ。


○賀来構成員 先ほど一山先生、大久保先生、荒川先生も意見を言われたのですけれども、私も同じように思うのですが、アウトブレイクを疑うときに、4年前と違うのは、ESBLが非常にふえているということと、カルバペネム耐性が増えている可能性があるということだと思います。プラスミドかどうかというのは一般病院ではなかなかわからないのですが、フェノタイプとしては、カルバペネム耐性の腸内細菌ということについては、やはりアウトブレイクを疑う基準の中に組み入れていく必要があると思います。ですから、これは同一菌種ではないのですけれども、例えば「4週間以内、同一菌種による下記の感染症」に加え、「カルバペネム耐性、あるいはESBL産生を疑わせるような菌種については」というような表現の文章をもう一つ加える必要があると思われます。最終的にはプラスミドの解析になると思うのですが、最初の段階では「同一菌種」、加えて、別途「カルバペネム耐性、ESBL産生を疑わせるといったものについては」という文章を加えるべきだろうと思います。


○小林座長 ありがとうございました。

 いろんな条件が皆さんから出て、これを整理していただいて、幾つかの箇条書きみたいなものを後でまとめていただいて、それに対してまた改めて御意見を賜るということで、できるだけ最初の判定、糸口になるような条件の御提案をいただければと思います。

 大石先生、どうぞ。


○大石参考人 感染症疫学センターの大石です。

先ほど一山先生がおっしゃったアウトブレイクが起こっている場所ということなのですが、現在、実地疫学調査を行っている対象の病院では、非常に規模が大きくて、初期の段階では割と狭い領域で起こっていたのかもしれないのですけれども、比較的時間が経過することでかなり広範な場所から発生しておりました。また、病院内で患者が交差するするポイントがあって、そこで伝播している可能性が疫学調査の中で少し見えてきております。まだ結論には至っていないところなのですが、最初から1カ所だけをアウトブレイクの場所として絞り込むのは難しい場合もあると感じております。


○小林座長 どうもありがとうございます。

 1カ所で複数例起これば、それはそこでのアウトブレイクを疑っていいのではないかと思うのですけれども、今、先生が御説明いただいたのは時間的にも長い期間、しかも、かなり広い範囲で。


○大石参考人 そのICU1カ所でなければということでなくて、かなり広範の病棟にも。


○小林座長 人の動きはいかがでしょうか。


○大石参考人 患者さんが交差するポイントが有る場合、患者が同一の時期に同じ病棟にいるなど、長い経過を見ていくことで患者間の接点があり、かなり広い場所で感染が広がっている事例があると思われます。


○小林座長 どうもありがとうございました。それも非常に重要な点だと思います。

切替先生、どうぞ。


○切替構成員 柴山先生の御提示いただいた例で、最初の段階、1例目で気がつかれたというお話だったと思うのですが、全く違う例で恐縮なのですが、やはりCREのひとつであるカルバペネム耐性エンテロバクター・クロアカに関して、ある病院で半年間に3例の血流感染が発生しました。カルバペネムは全部がRでなくて、I、ちょうど中間ぐらいの例でした。たまたま研修医の方が非常に優秀で、3例続けて血流感染があるのはおかしいなという気づきをしまして、その後、分子疫学的な手法で調べてみましたら、IMPタイプのメタロ-β-ラクタマーゼ産生のエンテロバクター・クロアカが原因でありました。この例のように必ずしも一般病院だけでなく、かなり大きな病院でも、CREを早期に検知するというのはなかなか難しいかもしれないなという印象を持ちました。


○小林座長 ありがとうございます。

 どうぞ。


○森井地域医療計画課長補佐 事務局から1点補足いたします。どのようなきっかけで疑うかということが議論になっていると思いますが、現行の23年6月の課長通知におきましても、資料2をごらんになっていただければと思いますが、アウトブレイクを疑うという大きな箱の中に、同一医療機関の中では、同一菌種ではなくて同一菌株と思われる感染症例の集積によって定めています。これは必ずしもパルスフィールドをやるということを想定しているものではありませんで、感受性のパターン等からそれを推定するということが既に23年6月の課長通知の中にも実は盛り込まれていますので、同様の発想があってもよいのかなというふうには考えています。


○小林座長 ありがとうございます。

 賀来先生。


○賀来構成員 そうすると、一般の方も耐性菌についての情報については、かなり詳しくはなっていると思うのですけれども、ただし書きということで、いわゆるESBLとかカルバペネム耐性の腸内細菌については特に留意するといったような文章を追加していただくと、もっとわかりやすくなると思います。

 あともう一点、これは23年の通知のときに「多剤耐性アシネトバクター・バウマニ」というように、アシネトバクター・バウマニをある程度特定していましたけれども、参考資料2で一山先生が報告されているように、現在、アシネトバクター属はさまざまな菌種がわかってきて、バウマニ以外の耐性株もかなり報告されているので、バウマニと特定してしまわないほうがよいかと思いますし、そういったことも今後改定の大きなポイントになると思います。


○小林座長 どうぞ。


○森井地域医療計画課長補佐 ただいまいただきました御意見につきましては、実は感染症法での多剤耐性のアシネトバクターの報告に関しましても、「アシネトバクター属」となっておりますので、今後、医政局の通知もそれに合わせて考えていってもよいというふうに思っています。


○小林座長 ほかにいかがでしょうか。

 特に300床未満の御施設というのは80%ちょっとあるのです。多くは自分のところで検査ができないような状況にあるのも現実の問題点だと思います。そういうところでの何らかの糸口もできることなら示してあげればと思いますので、それも含めて御発言いただければと。もうちょっと時間をとれるかと思います。どうぞ。


○切替構成員 ちょっと違うかもしれないのですが、例えばカルバペネム耐性エンテロバクター・クロアカというような言葉を言っても、医師を含めて現場の医療従事者がなかなかぴんとこないところがあると思います。

カルバペネム耐性菌を検出することは重要だと思いますが、医療従事者が周知するような対策、例えば柴山先生が御説明したアウトブレイクをきちっと周知して、菌種として覚えていただくことも重要かと思います。


○小林座長 ありがとうございます。

 本当のアウトブレイクになる前にリスクのある株を見つけるということも非常に重要なことだと思いますので、今の御発言も非常に大切なことだと思います。

いかがでしょうか。

すぐに結論が出る問題ではないと思いますので、いろいろ頂戴した御意見を事務局でまとめていただいて、それに対して皆様の御意見、または新しい提案をいただくというような進め方でいかがでしょうか。よろしゅうございますか。


○森井地域医療計画課長補佐 そうさせていただきます。


○小林座長 構成員の皆様方、いかがでしょうか。どうぞ。


○荒川構成員 先ほど小林先生がおっしゃった、多くの病院が300床以下で、自力でアウトブレイクの検出、あるいはそれに気づくのがなかなか難しいような施設も多いということなのですけれども、そういうところについては、多くは検査センターのほうにそういう解析や検査を依頼していると思うのです。ですから、そこで扱う菌株の疫学的な解析などもしている検査センターが多いと思いますので、もし特定の病院でこういうカルバペネム耐性株が何株か出たり、ESBL産生株で同じようなパターンのものが多いという場合は、その結果の報告書の中に単なるS、I、Rの結果だけではなくて、アウトブレイクを疑わせるような事例が起きていますよという情報を少しつけてもらうようなことを依頼していくとか、どういう形で依頼するかは別ですけれども、そうすると、小さな中小病院でも気がつきやすいのかなという気がします。


○小林座長 どうもありがとうございました。非常に貴重な御意見だと思います。

僕は不勉強なのですが、そういう検査センターというのは大小いろいろあるのでしょうけれども、日本にどのぐらいあるものなのでしょうか。


○荒川構成員 中小まで入れるとすごい数がありますが、大手は4社ぐらいでかなりの部分をカバーしている。あるいはその4社の下請をやっている会社まで入れると、かなりの部分が大手のそういう会社、三菱化学あるいはエスアールエルとか、ほかの会社も含めて、西のほう、東のほうでいろいろありますけれども、かなり疫学的な解析をしているという話は聞きますので、そういう検査会社の協力を得られれば、ある程度はそのあたりがカバーできるのかなという気がします。


○小林座長 ありがとうございます。大きいところの下に小さいのがあれば、その大もとのところの協力が得られれば、かなり情報源になり得るということですね。

 ほかに何か御意見ございませんでしょうか。

またそれに関連した御意見があればお出しいただくということで、ここで一山先生のアシネトバクターの事例を御紹介いただけますでしょうか。


○一山構成員 それでは、我々が経験したことと、それから海外の文献で同じようなことがあったので、参考までにお話ししたいと思います。

参考資料2「 Acinetobacter 属におけるメタロβラクタマーゼ(MBL)遺伝子の伝播」ということで、2ページ目をめくっていただきますと、約15年ほど前から京慈地区でサーベイランスを行っておりまして、耐性菌をスクリーニングしているわけです。

京大病院を含む5病院から Acinetobacter 属というふうに自動同定されたものをスクリーニングして、遺伝子の保有を検討したのです。

この当時ですので、今回の事例よりも10年ぐらい前からこういうことがあったのだなと思いますけれども、48株のうち41株がIMP-19。その構造を調べてみましたが、こういう構造で41株ありました。

4株がこのような菌種で、IMP-1です。

3株がIMP-11というものがありました。

特にIMP-1941株というのは非常に多い数でしたので、次のスライドにありますように、菌種を遺伝子学的に同定しまして、このように同一のIMP-19遺伝子が少なくとも3種類の菌種に広がっているのだと。

カラーで示しているのが1つの施設ですので、例えば A.pittii ST119)という株が複数の施設に広がっているということでありました。したがって、同一の遺伝子を持ったものが菌種を超えて、施設を超えて、かつパルスフィールドでやってみて同一のもの、違うものにも広がるということでありますので、菌株間、菌種間を自由に行き来するような状況が推測されたわけです。

まとめでありますけれども、IMP-19の遺伝子が菌種、菌株、施設を超えて広がっている。プラスミド上にあるものと思われますけれども、ここの解析はまだ済んでおらなくて、恐らくそうであろうと思います。

こういうことが約10年ほど前から Acinetobacter 属には見られたということです。

次は土井先生のピッツバーグからの報告でありますけれども、「KPC遺伝子の菌種を超えた伝播」ということです。これは症例が44歳の女性で、KPC Klebsiella 、大腸菌、 Serratia という順番に同一の患者さんから経時的に検出されてくるということの報告です。

遺伝子解析を行いまして、この遺伝子がプラスミドを介して伝播されたということが推測されました。

ディスカッションには、抗菌薬治療の使用歴があるので、これらの抗菌薬の選択圧がこういったことに関与している可能性があるというふうにありました。

以上で、海外でも国内でも以前からこういうことがあったのだなということであります。


○小林座長 どうもありがとうございました。

何か御意見、御質問等ございますでしょうか。

貴重なお話をありがとうございました。

それでは、次の議題、検討内容に進めながら、また何かあれば戻ってくださっても結構ですが、先ほどの柴山先生の御説明は、11例は全て保菌者であったということですね。今後のカウントといいますか、カルバペネム耐性の腸内細菌科の株に対して、保菌者をどう扱っていくかという問題に話を進めたいと思います。柴山先生の事例だと、保菌者であって、特別なことをしないで問題なく経過したのでしょうか。


○柴山参考人 はい。特に治療ということは行っていないというふうに聞いております。


○小林座長 消えたわけですか。


○柴山参考人 最終的に消えたかどうかというところまではフォローしていないのですけれども、恐らく保菌したまま退院されているケースが結構あるのではないかと。


○小林座長 少なくとも周辺には問題が起こっていないと。


○柴山参考人 はい。


○小林座長 いかがでしょうか。どうぞ。


○荒川構成員 皆さん、御意見を出しにくいようですので、私から。

 当然感染症を起こしている患者さんの場合は菌量も多くて、周りにその菌を広げる可能性が高いと思いますが、保菌者の場合であっても感染制御上は感染源になり得ますので、カルバペネム耐性菌とか、特異な耐性菌の場合は、保菌者の場合もその患者さんから隣の患者に広がらないような対策を講じていくことが必要だと思います。


○小林座長 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。


○朝野参考人 大阪大学の朝野です。

 保菌者の件に関しまして、今回、大阪で大規模なアウトブレイクがあり、退院がなかなかできないということが出てきますので、保菌者の扱いを余り厳密に定義していただくと、その方が退院するというときに、引き受けてもらえないということにもなります。一方で、米国などでは施設も伝播源として問題となっておりますので大事なところなのですけれども、そのあたりの取り扱いにつきましては少し御考慮いただければと思います。


○小林座長 ありがとうございます。今の御意見も非常に大切なことだと思います。

ほかにいかがでございましょうか。

今後の展開にもよるだろうと思うのですが、MRSAとは性質が違いますけれども、北欧でかつては保菌者でも隔離するような対策をとって抑えていたけれども、結局、最近はかなりふえてきたというような話も聞いております。日本では最初から保菌者を隔離したり、対策を対応するような状況ではなかったわけで、その辺との対比から考えて、今後どういうふうに対応したらよろしいか、何か御意見がございましたら、よろしくお願いします。どうぞ。


○一山構成員 2年ほど前に移植外科でメタロ-β-ラクタマーゼ緑膿菌でアウトブレイクがあって、京大でお二人亡くなったのですね。HCUという6床の病室でそういうことがあって、それ以降は、メタロの緑膿菌が出た場合は接触予防策、基本的に隔離ということ、診療科、外科系とか免疫不全者が多いところにおいては特にそのようにしているのが我々の現状なのです。

施設が全てそれに当てはまるかどうかというところが議論になるかと思うのですけれども、そういうものを経験して、現在はそういうことをしておるところです。

このカルバペネム耐性の腸内細菌あるいは非発酵菌というものは、まだそんなに多くないので、その辺のところをどのようにするかという議論が必要かと思います。


○小林座長 現状はまだ症例が多くないから、保菌者対策というか、対応も余り。


○一山構成員 逆ということもあり得るので、やろうと思えばできるわけなのですね。MRSAは、これほど広がってしまってなかなかしにくい場合もあるのですけれども、そういう意味では、数が少ないので、例えばVREにしても、少ないような耐性菌に対してどうするか。やりやすいという面もあると思うので、両方の視点から議論できると思います。


○小林座長 そういう症例の少ないものを徹底的に早い時期に防いでいこうという考え方ですね。


○一山構成員 という考え方もあると思いますね。


○小林座長 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。


○一山構成員 朝野先生がおっしゃったように、保菌の状態だけで退院される人は結構あるわけですね。それはある意味やむを得ないと思うのです。退院していただいて構わないわけですので。少なくとも入院中は院内で拡散を防ぐという考え方のもとにということですね。


○小林座長 今の御意見は、結局、病院内はコンプロマイズドホストもかなりいるから、万一クロスインフェクションが起こると、クロスコンタミネーションでも問題になる可能性があるので、病院内では十分な対応をとるほうが安全ではないかという御意見だと思うのです。

どうぞ。


○大久保構成員 朝野先生が言われたのは、二次施設、転院先が受け入れてくれないということをおっしゃられたのではないですか。


○朝野参考人 そのとおりです。


○大久保構成員 それは非常に問題です。MRSAのときにもそういう議論がありましたけれども、それは言ってみれば、その施設の感染対策がうまくいっていないことを自分たちで表明しているようなものになりますので、その辺はこういう会議できちっと明文化して、なおかつもとの病院はその情報を全部知らせるということはもちろん重要ですが、その対策まできちっと指導しながら、施設で受け入れていただけるような形を国としてもやっていかないと。現実にはまだMRSAで困っている状況がありますので、受入先の対応ということですね。


○小林座長 どうぞ。


○朝野参考人 特にCREに関しましては、CDCとか、アメリカのほうもかなり広がってきて、それは病院ではなくて施設の問題だということが言われています。そうすると、もちろん後方病院のほうに転院していただく場合には情報をちゃんとつけて、接触感染対策は多分可能だと思うのですが、後方病院ではなくて施設に行くときにそれができるかということになりますと、そこのところの問題がありますので、厚労省としても、今回、こういうCREの問題が出ましたので、施設における感染対策ということも含めて大きな枠で議論をしていただければと思います。


○小林座長 ありがとうございます。

森井先生、何か資料を御紹介いただくのはございませんか。


○森井地域医療計画課長補佐 今の御議論に関連してということですけれども、日本でどれぐらいCRE、あるいは多剤耐性のアシネトバクター等が現状あるかということに関しまして、JANISのほうでデータをとっていただいています。それを二、三御紹介差し上げます。

MDRPに関しましては、分母を Pseudomonas aeruginosa にした場合のカルバペネム耐性は、日本では17%です。多剤耐性のアシネトバクターは、日本では0.4%です。

いわゆるCREに関しても今、かなり少ない、1%を切る状況というふうに伺っています。これは先ほど局長の挨拶にもありましたが、海外の状況に比べれば、かなり恵まれた状況というふうに言えまして、ことしの4月にWHOがグローバルレポートを出していますが、国によっては50%を超えるCRE。レポートに書かれているのは Klebsiella pneumoniae だけですけれども、50%を超えるヨーロッパの国、あるいは60%を超える国も1つありますが、そのような形になっておりますので、かなり恵まれた状況ということになっています。

参考資料4にアシネトバクターの海外の事例が載っていますので、朝野先生、御紹介いただけますか。


○朝野参考人 これはアシネトバクターのカルバペネム耐性について、調べたデータでございます。その国の全体というわけではなくて、それぞれの国の幾つかの論文を引いてまいりました。ごらんになってわかりますように、世界的にはほぼ半数以上のアシネトバクター・バウマニがカルバペネム耐性になっているという状況の中で、日本はJANISのデータですけれども、日本では2~3%というところで今、推移している。院内感染対策が非常に有効に働いているところだと思います。

ただし、アシネトバクターは院内感染で広がりますけれども、CREは恐らくそういう施設、あるいはESBLは市中で広がっていくということで、それらのことについての対策というのはそれぞれ異なると思いますが、いずれにしろ、日本の現状というものを考えた場合にはこの状況を維持したいというふうに考えております。

もう一つは、この耐性菌が今、集中しているところはどこかというと、先進国よりはむしろ中進国に集中しているということもつけ加えさせていただきたいと思います。

以上です。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 何かございますでしょうか。

 それでは、少し先に進ませていただきます。

議事の「3-2)検査体制について」に進んでいきたいと思います。新しい基準に応じた検査の体制に関して、多くの医療機関はプラスミドの検査を自施設において実施することが難しいというのは、既にいろんな方が御発言されていることであります。現在の通知では、アウトブレイクを疑った場合、まず自施設で院内感染対策を行い、それでも新たな感染例が出た場合には地域のネットワークの専門家に支援を要請するということになっております。

さらに、先ほど事務局から御説明がありましたが、死亡例とか10例以上のアウトブレイクがあったようなときは、保健所や大学病院を含めた地域専門家の支援を求めなければならないような状況になるだろうということですが、この検査体制について、いかがでしょうか。どうぞ。


○賀来構成員 この検査体制については、規模の小さな病院については、プラスミドの検出も含めてなかなか対応できないのではないかということで、私どもの臨床微生物学会で地域支援レファレンスセンターというものを立ち上げようと計画しています。本日御出席の、荒川先生の名古屋大学でも、京都大学の一山先生のところでも、すでに他の施設からの菌株を解析されておられます。

大学と限るわけではありませんけれども、地域支援レファレンスセンターを所掌する委員会がちょうど立ち上がってきているところで、本日御出席の荒川先生に委員長になっていただき、国立感染症研究所の柴山先生とも連携をし、また、加えて、本日御出席の調先生、地域の衛生研究所の方々とも連携し、役割分担を行いながら、できるだけ中小の病院の検査室から菌株を送っていただいて、支援していこうという動きになっています。

また、検査センターも大手の2社の方に委員に入っていただいて、検査センターで解析されたデータをどういうふうにフィードバックしていくのか、そのようなことも含め、これから始めようとしております。これは一つの試みということです。


○小林座長 ありがとうございました。

 調先生、何かありましたら御発言いただけますか。


○調構成員 資料を用意しておりますので、資料に基づいて説明をさせていただきます。参考資料3というところです。「薬剤耐性菌の検査対応について」というタイトルにしております。

耐性菌の検査につきましては、今回のCREのような新規の薬剤耐性菌の検査と、それから継続的に地域における耐性菌の検査を行って公衆衛生対策に役立てる、そういう2つの側面があるかと思います。

最初の新しい事例に対する対応につきましては、大学の役割というのが非常に大きいと思うのですけれども、継続的な地域における調査を行って、公衆衛生対策として地域全体の対策に反映させるという意味においては、公的機関、保健所、地方衛生研究所、感染研の役割というのは非常に大きなものがあると思っております。

下の2番です。検査につきましては、1番、2番、3番と書いていますけれども、薬剤耐性のパターンは医療機関でできると思いますが、さらに専門的な解釈などにつきましては、大学、感染研の役割というのが大きいと思います。

遺伝子検査は、PCRを行って、さらに塩基配列を決定して詳しい同定を行うということも必要になってまいりますし、それからNGSNext Generation Sequencer)、次世代シークエンサーを使った解析が有効だということであります。これらにつきましては、大学、地衛研、感染研の役割が非常に大きいと思います。ただし、地衛研は各都道府県、政令市、特別区に現在79カ所設置されておりますが、法的根拠に乏しいことから、人員とか技術力も自治体によってまちまちという問題を抱えております。また、予算もなかなか難しい。

行政依頼検査ということで検査を行うのですけれども、自治体の判断によるところが非常に大きいというところがございます。

3番「複数の菌株の遺伝的同一性の確認」ということですけれども、これは院内感染におきましては非常に重要だと思います。PFGENGSを使った解析になると思いますが、院内感染の証明と、一山先生が京都で行っておられるような地域における耐性菌の広がりを把握していくにはこういった技術が必要になってくる。それは、もちろん大学で行っているところもございますけれども、やはり地衛研とか感染研の役割が大きいのだろうと思います。

それでは、地衛研はその検査技術を持っているのかどうかということなのですけれども、私が一昨年アンケート調査を行いました結果を3に示しております。MRSAVREMDRAについて、遺伝子検査とPFGEの検査実績、技術があるかどうかというところです。VREの遺伝子検査につきましては、vanAvanBの遺伝子のPCRは6割の自治体の地衛研が既にその実績を持っているという結果でございました。技術的には80%のところが可能である。都道府県47カ所ですので、ほとんどの都道府県における地衛研は対応の実績があるというふうに考えてよろしいかと思います。

MDRAについては、技術的にはあるのですが、検査実績は比較的少ないという結果がございます。これは後で説明いたします。

次に、説明の順番を変えまして、5番目「検査と耐性菌把握のながれ」というところです。「将来像」と書いてありますのは、必ずしもこういう体制が既に確立されているというわけではなくて、近い将来こういうことを大学と地衛研、感染研が調整して役割分担をし、地域ごとにこういう体制をつくっていくべきだろうと考えております。

地衛研、感染研が検査を行うには行政依頼検査ということになるのですけれども、前の4番の資料に戻っていただきまして、行政依頼検査は自治体の判断によるのですが、これは法的な根拠が必要になってまいります。法律は医療法と感染症法が考えられると思うのですけれども、これはいろいろ議論があるかと思いますが、医療法におけるこの検査の位置づけというのは必ずしも明確ではないと思っておりまして、自治体が判断の根拠にするのは、恐らく感染症法における感染症発生動向調査事業の病原体サーベイランスによるところが大きいのではないかと思っています。

感染症サーベイランスは、1)と2)に分けていますが、感染症患者数の把握と、病原体、実際に病原菌株、検体を扱うサーベイランス、この2つがあります。

感染症の把握につきましては、先ほどからありますように、全数把握と定点把握。定点把握というのは、定点医療機関に患者さんが発生した場合に報告義務があるということ。これは感染症法によってそういうことが規定されております。

全数把握はVRSAVRE。定点把握はこの4つの耐性菌感染症。保菌ではなくて、感染症の患者さんが発生した場合に報告義務が課せられております。

一方、病原体サーベイランスは、法律で決まっているのではなくて、厚生労働省がつくった感染症発生動向調査事業実施要綱によって行われていまして、その中に書いてあるのはVRSAVREのみであります。今、感染症法の改正が検討されておるということでございますけれども、MDRACREが全数把握になるというふうに伺っておりますので、この改正により全数把握ということで、患者数が上がってくるということなのですが、患者の報告があったときに、自治体が行政依頼検査をするためには、MDRACREをその実施要綱の中に病原体サーベイランスの対象として入れていくということが重要なのではないかと思っております。

最後の6番、まとめになります。薬剤耐性の同定には専門性が必要で、大学、地衛研、感染研がお互いに協力して全国的な体制を築いていくことが非常に重要であると思っております。特にVREとかCREなど保菌状態で地域に拡散していく可能性のある薬剤耐性菌につきましては、患者さんが出たときに菌株を確保して、PFGEで同一性を時間的に把握していく。複数の医療機関から同一のパターンのものが得られた場合は、やはり公衆衛生的な対策をとっていくということが必要ではないかと思っております。

行政依頼検査は法的な根拠に基づいて行われますので、法的な整備が必要であろうということになります。

地衛研は自治体によってさまざまですけれども、VREにつきましてはかなりの検査実績があるということからも、予算や人員の問題がありますが、そういう体制をつくっていくことは恐らく可能であろう。その際、感染研から技術的な支援を受けるということが非常に重要で、また、地衛研は各支部ごとにレファレンスセンターというのを、今、代表となる12の感染症について設置しておりますが、薬剤耐性菌についても、そういうレファレンスセンターをつくって対応していくということを今後検討していくべきだと思っております。

以上です。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 緒方先生、保健所のお立場で御発言ございませんか。


○緒方構成員 いろいろと議論を聞かせていただいてありがとうございます。

 保健所は、行政依頼検査における自治体の判断というのは、一次的には受けつけます。ですから、CREなどある程度制度的に変えられれば、それはそれでいいと思うのです。が、先ほどの話から言いますと、ESBLなどについても検討の課題となりますので、特に大きな病院は、私どもがもちろん御指導いただくような立場なのですけれども、先ほど座長からお話があった中小病院の場合には、いろいろと相談があったときに、まだ保健所の力が不足しておりますので、対応するためには資質を向上しなければいけないということが1点だと思います。

 あと、もう少し専門家の先生方の御支援をいただきたいということで、こういった場合について、よろしく御支援をお願いしたいと思っております。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 ほかに何か御意見ございませんでしょうか。どうぞ。


○洪構成員 保健所の機能ですが、多くの施設は、例えば学会がされるレファレンスセンターとか地方衛生研究所、あるいは国立感染研まで直接連絡するというのはかなり限られていると思いますので、そうすると、200床未満とかそういった施設にとって一番身近な存在が保健所であって、何かあったら報告をしなければならないところでもあるわけですから、必要なリソースにつないでいただくような、そういう役割をぜひ保健所がとっていただきたいところだなと思います。


○小林座長 どうぞ。


○緒方構成員 ノロウイルスとかインフルエンザについては、私どもも非常になれているのですけれども、薬剤耐性菌というと、今の段階ではESBLと言われて何のことかわからない職員もたくさんいると思います。ですから、最終的には専門家の先生に御相談するとしても、私どもが中小病院から電話があったときに間違いのないような対応をするためには、相当資質の向上が必要だと思いますし、そのために先生方にはぜひ御支援をいただきたい。

 実際にネットワーク、加算1とかもありますけれども、半分ぐらいの病院はまだ加算をとっていないのです。ですから、相談先の見つからないところもたくさんございますので、よろしく御理解をお願いしたいと思います。


○小林座長 どうも貴重な御意見ありがとうございました。

 ここで一山先生、検体の扱いのことで御発言。


○一山構成員 このように行政からいただいた依頼については、それはそれで行うのですけれども、何か新しい発見があって、これを研究にというときに、いただいた施設と依頼を受けた研究機関で話し合いをして、オーサーシップの問題とかそういったところがスムーズにいくような仕組み、申し合わせというものがあるといいなと思います。


○小林座長 ありがとうございます。

 賀来先生、先ほど学会の動きを御紹介いただきましたが、検体をどういう流れにして、どういうふうにまとめていくかということは検討されておられるのでしょうか。


○賀来構成員 実はこの委員会がようやく立ち上がった段階であり、荒川先生に委員長をお願いをし、また、委員の中に検査センターの方、調先生、感染研の柴山先生にも入っていただくことになっています。まさに今、調先生のご発言で、将来像として、大学、地方衛生研究所、国立感染症研究所、また、本日は切替先生も出席されておられますが、国立国際医療研究センターなどの専門機関との役割分担、実際に菌株をいただくときのいろいろな取り決めとか、どういうふうに公表していくのかとか、そういったかなり細やかなところを決めていかなければなりませんし、今、洪先生からもまさに重要な御指摘をいただきましたが、実は保健所も含めてどういうふうに連絡体制をとるのかということを今後、委員会の中で議論をさせていただくことにしたいと思います。地域支援レファレンスセンターの委員会がまさにできたところですので、そこで今、申し上げたようなことを詰めていきたいと思っています。


○小林座長 どうもありがとうございました。かなり横断的な組織を考えておやりになっているわけですね。


○賀来構成員 はい。できるかぎり横断的に、どのように連携してどう組み上げていけるかということを検討したいと思っています。


○小林座長 荒川先生、何か御発言ございますか。


○荒川構成員 これから検討する内容なのですけれども、大学関係と検査センターの方に入っていただいて組織を立ち上げることを最初は計画しておりますが、当然地方衛生研究所の方にも加わっていただいて、大学関係と地方衛生研究所のレファレンスセンターをうまく連携できるような形をとっていければ、より実際的かなというふうに考えております。


○小林座長 ありがとうございます。

 大石先生、柴山先生、何か御意見ございませんか。


○柴山参考人 感染研では、これまでは地衛研、自治体の皆様と特に連携して耐性菌対策、各医療機関で分離された菌株の解析等を行ってきておりました。地方衛生研究所でも非常に熱心にやられているところもあるのですが、一方で、先ほどからお話が出ていますように、予算とか人員の点でなかなか難しいところもあるので、ぜひ大学の先生等も一緒に連携してやれればいいと思います。

ただ、先ほど調先生がちょっと御指摘されたように、これは公衆衛生学的な観点で継続的にやっていく必要がありますので、大学の先生とその辺はうまく体制を組めればというふうに思います。

以上です。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 ほかに何か御意見ございますでしょうか。どうぞ。


○倉田構成員 今の支援センターの考えはわかるのですが、そこへ物を送れば調べるよというのでなくて、個々の病院にそういうことを調べる能力をつけろと。それが基本的にないと、どこがとは言いたくないのですが、要するに、院内でかかる費用について厳しくみる方々からは、ときに検査そのものへの対応についても「法律?」といった疑問が出ることもありうるわけです。法律ではないよ、でも、こうしなければこの問題は解決できないと。法律ならやるけれども、法律でないならどこかで調べてもらえという話になってしまうのです。個々の検査だけすればいいと。これだと病院の質は上がらないですね。

 そういう点があちこちに非常にあるのではないかと思うのですが、そこを法律でなければだめだと言うのだったら、国民を守るための法律にするしかないと思うのです。そういう考え方があってもいいと私は思うのですよ。それは随分考えました。だから、その辺もぜひ検討してください。

そういう意味では、支援センターは、これがわからないからこうやって送っているけれどもという話でやってしまったら意味がないのです。そこにやる人がちゃんといて、それを指導していただくという専門家ならいいのですね。そこのところが、支援と言うと検査センターにしてしまってはいけないと思っているのです。そこだけちょっとお考えいただく必要があるかなと。だめなら法律をつくるということではないでしょうか。ぜひそれを考えていただきたい。


○賀来構成員 ありがとうございました。とても重要な御指摘だと思います。また、臨床微生物学会のレファレンスセンターもそうなのですけれども、今、環境感染学会では地域の支援拠点施設ということをいろいろ取り上げていますので、できれば学会同士でも連携しながら今、先生が言われた法律的なことも含めていろいろ考えてみたいと思います。御指摘ありがとうございました。


○小林座長 どうぞ。


○大石参考人 先ほど朝野先生がおっしゃったことにも関連することで、今、まだ手つかずではないかと思われるのが介護施設の院内感染対策だと思うのですが、緒方先生なり賀来先生に、施設からの菌株の収集の体制がどうなっているのか教えていただければと思うのです。保健所が対応されているでしょうか。


○小林座長 どうぞ。


○朝野参考人 施設のほうは、市役所等の地方行政の管轄になって、保健所の管轄にはなっていないのです。ですから、今、例えば大阪の北摂地域では、大阪府立公衆衛生研究所の研究費を使って施設の耐性菌を調べますよということも行われております。CREというのは施設が大事だと思います。日本にはまだエビデンスがありませんけれども、そういう施設内感染対策に対する費用、あるいは施設内における菌の分離・同定等をどこかでサポートしないといけないと思います。それはレファレンスセンターでもどこでもよろしいのですが、それを御考慮いただきたい。全体の感染の広がりをストップするためには、施設の感染対策はキーとして置いておかないといけないところかと思います。


○小林座長 どうぞ。


○緒方構成員 この辺は地域差もあると思うのですが、福祉サイドでは、例えば10例以上のアウトブレイクであれば保健所に一応相談しなさいということになっております。

うちの県などは、福祉でもアウトブレイクがあれば保健所で、基本的には福祉行政の管轄下にあるのですけれども、保健所が連携をしているのですね。私どもは福祉施設への研修とか、診療所もそうですが、あとは在宅医療というのもあるのですけれども、そういったものも一応やっております。が、おっしゃるように、そこは全国的に統一されていないので、その辺をどうするかというのが一つの課題だと思います。もちろん、MDRPとかCREとかで、保健所に相談があれば、当然衛研とは連携をさせていただきたいと思っています。


○小林座長 どうぞ。


○調構成員 先ほど賀来先生のほうからレファレンスセンターのお話があったのですけれども、それはCREを対象にした体制ということでしょうか。


○賀来構成員 特にCREだけに限ってということではなくて、いろんな検査室がなかなかプラスミドの同定ができないとか、さらに薬剤耐性菌のいろんな検査をしたいという要望もあると思うのです。もちろん、CREをある程度ターゲットという形には置きたいと思うのですけれども、これまた荒川先生にもいろいろ御議論いただきますが、もうちょっと幅広く、いわゆる各病院の検査室の支援というような形で考えています。検査センターも入っていただいたのは、検査室を持っていない病院もたくさんあるものですから、そういった検査センターとの連携も考えています。


○小林座長 ほかに。どうぞ。


○荒川構成員 臨床微生物学会の地域レファレンスセンターについて、私の個人的な考えでは、何でもかんでも解析を請け負うということではなくて、先ほど倉田先生が御懸念されておられましたように、検査センターではないので、基本的には解析あるいは検査はその病院が自分の責任でやるというのが原則で、ただ、新しい耐性菌とか特殊な解析法を使わないとはっきり特定できないようなものについては、その技術的なサポートを地域レファレンスセンター、あるいは地衛研のレファレンスセンター等と協力してバックアップしましょうということなので、検査センター的な何でもかんでも引き受けますよというものではないというふうに私は考えています。

 それから、もしそういうことをやる場合、まれな菌、あるいは特殊な耐性菌についての解析をする場合は、当然遺伝子の解析も含めてやらなければいけませんので、経費が発生します。その経費の出所もあわせて考えていかなければいけないなと考えています。


○小林座長 どうぞ。


○調構成員 地方衛生研究所も例えば1人の個人の患者さんに還元するための検査というのは基本的に行うものではないと思っていまして、要するに、地域の公衆衛生対策であるとか、そういったことに役立つような検査の場合のみ、パブリックのために行う施設なので、スタンス的には非常によく似ていると思うのですけれども、我々は公衆衛生対策としてやっていくということで、新規性がなくても継続的な調査という意味で地域の検査をある程度やっていく必要があるかなと思っております。


○小林座長 どうぞ。


○岡部構成員 岡部です。

私も今、衛生研究所に身を置いているのですけれども、例えばある特定の患者さんで疑いがあって検査をするというのは、受け入れができるのですが、では、環境中に疑いの菌が出ているかとか、あるいは集団感染があるかもしれないので、例えばいくつかの病棟などを全部検査するということは、それを行う根拠としてはできていない。また、その費用が計上されていないわけですね。

今、市立病院などともやりとりをしているのですけれども、スクリーニング的なのは無理だけれど、ある程度のものは大きい病院のほうで検査していただいて、問題点があるのはこちらで確認検査として引き受けるという方式ができつつあるのですが、問題点は中小病院で、市立病院とか県立病院クラスであれば、ある程度のところはできるのですけれども、一番問題になるのは、朝野先生がおっしゃっているような施設や、あるいは中小で、自分のところでできないけれども、ぎりぎりのベッド数があるというところの対策をどうするか。これは大きな課題ではないかと思いますので、検討していく事項だろうと思います。


○小林座長 どうもありがとうございました。非常に重要な点を御指摘いただいていると思います。

 ほかにいかがでしょう。検体、検査のネットワークをつくるということは非常に重要ですし、特に中小の病院にとってもこれは非常に必要なことだと思うのですが、学問的な価値があるか、そうでなければ、経費が確実になければ、なかなかそういったことができないのも現状だと思いますので、いろいろいいネットワークの案は出てきますけれども、それを実現することにはいろいろな困難がこれからあると思いますので、この会としては今後の課題として整理して、それをもう少し継続的に検討していくということになり、あわせて学会としての動きが実現していけば、そこにいろんなことをお願いできるような形になるだろうと思うのですが、そんな方向で進めていくことでいかがでございましょうか。

森井先生、何か御意見。

木村先生、どうぞ。


○木村構成員 先ほどの柴山先生のお話でスクリーニングを広げた場合、インターメディエートと出たり、センシティブと出たりする場合もあるとのことでしたが、どれくらいIとかSに出るのですか。


○柴山参考人 今、そのデータを持ち合わせていないのですけれども、SのものもIのものも数株あったというふうに記憶しております。それは第3世代セファロスポリンで広くスクリーニングをかけたので、カルバペネムではかると、SであるとかIと。


○木村構成員 臨床現場はカルバペネム、主にイミペネムで見ると思うのですけれども、数株となると、全部で11株プラスアルファ株ですから。。。


○柴山参考人 はい。


○木村構成員 そうすると、何十%かになるのですね。そういう意味でしょうか。


○柴山参考人 何十%とおっしゃいますのは。


○木村構成員 11株プラスアルファ株のうち数株がIとかSと出るとなると。


○柴山参考人 今、データがないのですが、11株中の1株、2株、あるいはもうちょっとだったかもしれませんけれども、それぐらいがSかIだったというふうに記憶しております。


○木村構成員 1株か2株ということですか。


○柴山参考人 SかIに入るのはそれぐらいだったというふうに記憶しております。


○木村構成員 同じプラスミッドでも、そういう感受性のパターンが感性に出てしまうというようなことがどれぐらいあるのか、それを完全にネグレクトしていいのかどうか。疑わしいときにうまくRと出るような方法があるのかないのか、その辺もこれから検討していただけると、より高感度にプラスミドの耐性伝播を検出できるのかなと思うのですけれども。


○柴山参考人 そうですね。今、先生がおっしゃいましたように、スクリーニング法、指標薬剤を何にしたらいいのか、あるいはカットオフをどこにしたらいいかという問題なのですけれども、感度をとるのか、特異度をとるのかとか、いろんなものがあると思いますので、その辺は例えば臨床微生物学会、あるいは関連学会等でもぜひ御議論いただければと思います。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 荒川先生、どうぞ。


○荒川構成員 今の木村先生の御質問に関連して、これはイミペネムとメロペネムと両方Sと出てしまう、あるいはIと出てしまうのですか。それともメロペネムでやるとRになるのですか。


○柴山参考人 これはイミペネム、メロペネム両方ほとんど同じです。


○荒川構成員 そうですか。


○小林座長 ほかにいかがでしょうか。

 検査の体制はそういうことで、継続の審議の課題として残させていただくとして、それでは、議事4「各構成員からの御意見」ということで、資料があるものもございますので、まず大久保先生から。


○大久保構成員 それでは、私のほうから。

本日話題となりましたCRE等の耐性菌は、医療機材を通して感染することがしばしばあります。きょう、小林先生のほうからシングルユースのデバイスのリユースの状況についての資料がありますけれども、その前に、最近、「消化器内視鏡のマルチソサエティガイドライン」というものを日本消化器内視鏡学会と日本消化器内視鏡技師会と日本環境感染学会が共同して出しました。これはそもそも2008年に初版を出したのですが、昨年の7月に改訂版を出しました。

消化器内視鏡というのはいろんな種類がありますし、いわゆる管路、細い管の中をどこまできれいにできるかという問題も非常に多い。それからもう一つは、機材の表面に傷がついていたりする場合には、こういう耐性菌などが感染を起こす可能性がある。すなわち、高水準消毒薬で処理しても十分に殺菌し切れていないということもありますので、今回のこのガイドラインは、日本環境感染学会のホームページからダウンロードできますから見ていただきたいと思います。

これはどういう趣旨で出したかといいますと、一般の診療所等で不十分な処理をされている場合があって、そういうところを少しボトムアップといいますか、注意を促すという意味が主な目的でこの新しいガイドラインを出させていただきました。

このガイドラインは、中華人民共和国では規範という形で国の規則になっていますし、モンゴル人民共和国でも国のガイドラインとして、全く同じものを訳した形で利用されていますので、御報告させていただきたいと思います。

シングルユースデバイスのリユースの件は、先生からお話しになられますか。


○小林座長 先生からお話しいただいても。


○大久保構成員 つい最近出ました日本医療機器学会誌の資料がきょうの資料の最後のほうについていますけれども、先月の19日でしたか、厚労省のほうから特段の理由がない限り再使用しないという趣旨の通知が出ました。それに関連して、小林先生が中心となって、全国の医療機関に対してリユースの状況を調査されたものがこの表です。これによりますと、かなりの率でリユースがなされています。その辺の検討を何らかのこういう委員会等でもう少し煮詰めていけたらということを感じています。そういう形で先生が出していただいたと思いますので、紹介しておきます。


○小林座長 ありがとうございます。

 ちょうど厚労省の通知が出る直前に雑誌のほうにアクセプトされた形で、その辺のかみ合いがうまくないところがあるかもしれないのですけれども、現実はかなりの施設でシングルユースがリユースされているということ。これはまだ歴史が浅いのです。アメリカが一番最初に問題にしたのが1999年で、2000年2月にドラフトガイドラインを出して、その8月にガイダンスがつくられて、2年の猶与をもってかなり厳しい条件をつけたりしているわけです。その間のいろんな流れの中で2000年から調査をし、厚労省からも薬務のほうから2001年に単回使用のものは添付文書にその旨を書くようにという通知が出ました。それが動きとしては一番最初のものです。アメリカは2000年に動いて、2001年にすぐ動いているわけですから、非常に反応が早かったのです。その後、いろんな動きがあって今日になっているのです。

1つの問題は、シングルユースをリユースしないということもあるのですが、要するに、メーカーなり企業が申請してシングルユースとして認められているわけで、使用者側がそこの段階で介入していないのではないかと思うのです。したがいまして、再使用品でもいいようなものも全てシングルユースになってしまっている危険性がありますので、経済効果を考えると、その辺の仕組みを今後、少し考えていただければ、経済効果という面でも少し問題が解決していくのではないか。そちらの観点からの課題も残されていると思います。

それと、アメリカのように何らかの厳しい条件をつけてシングルユースをリユースできる道を残すのかどうかということもこれからの検討課題ではないかと思っております。

 どうぞ。


○森井地域医療計画課長補佐 事務局から補足いたします。日本でどのような形でシングルユースについて定めているかと申しますと、先ほど先生に御紹介いただきました通知に加えて、平成16年と19年に単回使用の添付文書を遵守するようにということを医薬局と連名通知で出させていただいます。

加えて、6月19日にそれらの周知の再周知という形で、特段の合理的理由がない限りは添付文書を遵守してくださいというお願いをしたところです。


○小林座長 そういうことで、特に中小の病院で今後どういう動きになるかを含めて皆さんにお考えいただかなければいけない問題かと思っております。

 今、方向性が出るわけではありませんけれども、今後の課題として検討していただければと思います。

どうぞ。


○緒方構成員 御質問なのですけれども、この対象施設というのは、どの程度の規模の病院なのでしょうか。


○大久保構成員 当初のアンケートは滅菌技師が存在する病院に対し実施しました。


○緒方構成員 大きい。


○大久保構成員 大きいとは限りませんが、中央材料部でのスタッフがそろっているところということですね。


○小林座長 バックグラウンドはちょっと変わってきているのです。2013年は第1種の滅菌技師のいる病院を対象にしたのですが、それまでは300床以上の約1,500施設の中から500施設を無作為に抽出して調査しています。


○緒方構成員 要するに、保健所は毎年全病院を立入るのですけれども、中小病院に関して言うと、これと率がかなり違うなという印象を持っております。


○小林座長 もっと再使用されているということですか。


○緒方構成員 はい。


○小林座長 その辺の現状を踏まえまして、今後どういうふうに日本の安全を確保していくかというのは非常に大きな課題ではないかと思っています。

 どうぞ。


○洪構成員 そのことと絡むのですけれども、今回、柴山先生のほうから報告された内容で、最初に1例の患者さんに尿混濁があって、検査をして、その検査の結果がどうもおかしいなといった検査技師さんの気づきと、その気づきがその方だけにとどまらず、チームの中でしっかりと問題共有されたというコミュニケーションの良さは、大変スムーズな動きにつながったと思うのです。多くの病院では検査をしていない場合のほうが多いので、特に200床未満などを考えますと、検査室もない、検査もしていないという状況を考えると、標準予防策をより徹底して行わないといけないということ。特に手指衛生とか手袋、マスクはかなり徹底されてきたと思うのですが、器具の再処理、再使用といった問題は現場で適切な取扱いが徹底されていません。今回の事例でもそういったことが伝播の原因になっていたということもありますので、何らかの検討が必要だと思います。


○小林座長 どうぞ。


○一山構成員 このアンケートでリユースをしてしまう理由というのは、まずはもったいないからということかと思うのですけれども、それ以外に何か理由があるのかどうか。昔からやっているからとか、そういったことも結構あるのではないかなと。例えば継ぎ足しの消毒薬であるとか、自分のところで綿球をつくる。結局、コストはそちらのほうがかかってしまうので、そういったところも、リユースをやってもそんなによくないよということをこちらからちゃんと示してやるということが必要かなと。


○小林座長 ありがとうございます。

 どうぞ。


○大久保構成員 再使用するに当たっては、再使用のための隠れた費用、何か事故が起きた場合のいろんな費用を考えると、シングルユースのものはシングルユースのほうがいいというのは当然かもしれませんけれども、安全性が保証できるような体外式に使うものとか、資源の有効利用とか廃棄物の削減とか、そういう観点もちょっと念頭に入れて、経済性も入ってくると思いますが、そういう検討がもう一度なされるべきではないかなと思っています。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 一山先生の御指摘のむしろシングルユースのほうが安いのではないかというのは、まさに綿球などはその典型的なものですし、外科で使う創処置のセットなどもシングルユースにして、セット化されたもののほうが経済性は高い。そういうものも確かにあるのです。大きい病院、大学病院等ではシングルユースのリユースはやっていないようなのですが、まさに先ほど緒方先生もちょっとおっしゃいました小さな中小の病院では昔のままの形が残っているというのが現状ではないかと思いますので、洪先生もおっしゃいましたように、患者の安全性を配慮した方向というのを重視していかなければいけないことだと思っています。

 もう一つ、高野先生、御用意くださった御発言。


○高野構成員 現場で感染対策をとっている者として、いろんな議論で感じたことなのですけれども、施設とか中小病院だけでなく、大きな病院でも普通の便培養などを実際とろうとすると、費用が病院の持ち出しになります。先ほどからも出ていますように、保菌者ばかりだった、感染症を起こしていなかったということですから、便培養を採取することは少なく、見つけるのは本来厳しいはずです。ICNでしたら、薬剤耐性菌を発見した時には、対策につなげることができるので、そのまま気づかないままでおかずにすんでよかったという経験があると思うのです。ですから、中小病院の方にしても、もしかしたら検査をしていないから見つかっていないだけかもしれないので、いつでも自分の施設で起きているということを考えながら対策を今後検討していかなければいけないなということをまず1つ感じました。

先ほどのこれは変だと思うところ、アウトブレイクを察知するところが話題になっていました。感染対策チームにはいろいろな職種がいるのですが、専任でやっているのは看護師の場合がとても多いと思います。看護師がまずこれは変だ、薬剤感受性まで見て毎日活動しているナースはなかなかいないと思うのですが、そういうことにもきちっと目を配って、現場の対策と直結させていくように私たちが心していかなければいけないかなと思いました。

問題になっているのが、腸内細菌ということですから、感染経路となりやすい排泄介助ですとか経管栄養の管理をしているのが看護師です。例えば看護師のやり方が悪かったとか、看護師の管理の仕方が悪かったから今回のアウトブレイクが起きたということがいつでも起きるかもしれません。そのことを私たち看護師は心して対策に励まなければいけないと思いますし、また、ICNもそれを現場によく指導し、対策を講じなければいけないと思いました。

看護師以外の職種の方にお願いしたいのは、シングルユースの話が今、話題になりましたけれども、物や設備の管理というのは看護師だけがしていることではなくて、施設として考えていかなければならないことなので、感染経路が例えば排泄介助という単純なこと1点に集中せずに、病院として検査体制から物や設備の管理まで全体を通して感染対策に取り組んでいかなければいけないと考えます。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 余り時間がなくなってしまいましたけれども、議題5「その他」ということで、全体を通しての御意見があればお伺いします。どうぞ。


○岡部構成員 済みません、手短にしますが、資料の中にWHOの資料などが入っていますが、この院内感染対策中央会議でこういう世界的な動向というのはこれまで取り上げられていないので、こういった情報は今後は提供していただければと思います。

 もう一つはこれからの課題になると思うのですけれども、我が国においてもメディカルツーリズムということがこのごろあちこちで言われている中で、例えば先ほどのアシネトバクター・バウマニの海外の状況を見ても、我が国にとっては海外の耐性菌状況というのは非常に脅威的なことで、普通の院内感染対策とは別に、これに対する対応というのは何らかの手を打っておかないといけないのではないかと思います。今後の検討課題にしていただければと。

 もう一つだけ。この院内感染対策中央会議のリコメンデーションがきっかけで院内感染対策のためのワクチンというのが随分話題になりまして、環境感染学会のほうからガイドラインを以前出しましたけれども、これが9月に改訂版を公表しますので、ごらんいただければと思います。

ありがとうございました。


○小林座長 どうもありがとうございました。

 事務局、何かございますでしょうか。


○森井地域医療計画課長補佐 ただいま岡部先生からいただきました世界の動向ということに関しまして、ことしの5月に出ましたWHOの決議を資料として入れさせていただいております。この中で加盟国に対してさまざまなことが求められていますが、例えば薬剤耐性菌のサーベイランス等、日本は大変進んでいるという状況だと思いますけれども、より包括的な薬剤耐性菌対策をとるようにということをWHOのほうから求められておりますので、これにつきましては、今後も関係省庁と連携しながらやっていきたいと考えています。

以上です。


○小林座長 ありがとうございました。

 ちょうど予定の時間になりましたので、結論出ずで申しわけございませんけれども、今後の課題としてまたいろいろ御意見を頂戴しながら進めていくようにしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 では、どうもありがとうございました。


(了)
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医政局地域医療計画課救急・周産期医療等対策室
直通電話: 03-3595-2194

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