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2013年4月26日 平成25年度 第1回化学物質のリスク評価検討会

○日時

平成25年4月26日(金) 10:00~


○場所

厚生労働省17階専用第18会議室


○議事

○岸課長補佐 本日は、大変お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。定刻を若干過ぎましたが、皆さんおそろいになりましたので、ただいまより「第1回化学物質のリスク評価検討会」を開催します。本日は、津田委員が所用により御欠席です。以下の議事進行を名古屋先生にお願いします。
○名古屋座長 事務局から、資料の確認をよろしくお願いします。
○岸課長補佐 本日、配布している資料は、議事次第の裏側に、「配布資料一覧」として記載しています。資料については、資料1~資料4ということで、各資料の先頭のページの右上に資料番号が付されています。別つづりで参考資料として、1~7を付けています。これについても、右上に資料番号が書いてあるので、不足等がありましたら、お申し出ください。
○名古屋座長 本日の審議に入ります。議事1ということで、平成24年度ばく露実態調査対象物質のリスク評価について、事務局から各物質ごとによろしくお願いします。
○岸課長補佐 事務局の方でこれまでの評価を踏まえてリスク評価書(案)を作っているので、それぞれ担当から説明します。1,2-ジクロロプロパンについては、中西から説明します。
○中西化学物質情報管理官 資料1を御覧ください。3ページを御覧ください。1,2-ジクロロプロパンですが、1「物理化学的性質」ということで、(1)化学物質の基本情報、名称1,2-ジクロロプロパンなどを記載しています。こちらの物質については、労働安全衛生法施行令別表9(名称を通知すべき有害物)第254号です。(2)物理的化学的性状。外観は、特徴的な臭気のある、無色の液体で、沸点96℃、蒸気圧27.9kPa(20℃)においてです。蒸気密度、空気=1に対して3.9です。
 (3)生産・輸入量、使用量、用途については、製造・輸入量1,806トン、こちらについては平成22年度化審法優先評価化学物質届出結果による数値となっています。用途としては、金属用洗浄剤、他の製剤の原料・中間体及び中間体含有物です。製造業者については、情報なしです。
 2「有害性評価の結果」です。詳細については、別添1及び別添2を御参照いただきたいと考えています。(1)重視すべき物質性状とばく露ルート(吸入、経口、経皮)です。1,2-ジクロロプロパンは常温で液体であり、蒸気圧が比較的高く、蒸気の吸入ばく露が問題となり、また、急性ばく露により中枢神経抑制、眼と気道の刺激性あり、溶血性貧血、肝臓及び腎臓の障害が見られるので、注意が必要である。
 (2)重視すべき有害性。?発がん性はあり。こちらの根拠としては、日本バイオアッセイ研究センターのがん原性試験においての結果を根拠としています。内容としては、ラットの雌雄に全身吸入ばく露した試験において、鼻腔腫瘍の発生増加が認められ、ラットに対するがん原性を示す証拠であると結論されています。また、マウスを用いた試験においては、ハーダー腺の腺腫の発生増加が見られ、雄マウスに対するがん原性を示唆する証拠であり、雌の細気管支-肺胞上皮がんを含む肺腫瘍の発生増加は、雌マウスに対するがん原性を示す証拠であると結論された、ということが報告されています。
 (参考)として、なお、以下に示すIARCのグループ3、ACGIHのA4、DFG MAKの3B分類の評価には、厚生労働省が試験結果(日本バイオアッセイ研究センターの試験報告書及び原著論文)は含まれていないというところです。
 閾値の有無ですが、なしということで、本物質はin vitro試験系では、復帰突然変異試験、染色体異常試験、姉妹染色分体交換試験のいずれでも陽性を示している。また、in vivo試験系で小核試験、ラット優性致死試験では陰性であったが、ラット体細胞突然変異試験で陽性を示した。総合的に判断し、遺伝毒性ありと判断という点から閾値のなしとしています。
 ?発がん性以外の有害性です。急性毒性として、吸入毒性、経口毒性、経皮毒性、それぞれラット、マウス、ウサギにおいて数値が示されています。ヒトへの影響としては、急性ばく露により中枢神経抑制、眼と気道の刺激性が見られる。また、溶血性貧血、肝臓及び腎臓の障害が見られるということです。皮膚腐食性、刺激性はありです。眼に対する重篤な損傷性、刺激性はありです。皮膚感作性ありです。5ページです。一番上から、変異原性あり、生殖毒性は判断できないということです。反復投与毒性(生殖・発生毒性/遺伝毒性/発がん性は除く)という点については、それぞれLOAEL、NOAELで数値が報告され、それぞれの根拠が示されています。
 (3)許容濃度等についてです。ACGIH、TLV-TWAについては10ppm、SEN、発がん性分類はA4となっています。また、日本産業衛生学会では、情報なしということです。OSHAについては、TWA75ppm、STEL110ppmです。
 (4)評価値です。今回、有害性評価小検討会で御検討いただき、一次評価値は評価値なしです。また、二次評価値は10ppmということで、こちらについてはACGIHが提言しているばく露限界値を二次評価値としたということです。(注)として、日本産業衛生学会において、許容濃度が検討されていることから、今後、同学会の許容濃度が勧告された場合には、必要に応じて追加検討を行う、と記載しています。
 6ページです。3「ばく露評価の結果」です。(1)主なばく露作業です。こちらについては、詳細は別添3に記載しています。平成23年における1,2-ジクロロプロパンの有害物ばく露作業報告は、合計16事業場から、26作業についてなされました。主な用途は、「対象物の製造」「他の製剤等の原料として使用」「洗浄を目的とした使用」であり、主な作業は「サンプリング、分析、試験又は研究の作業」「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」「充填又は袋詰めの作業」でした。
 (2)ばく露実態調査の概要です。有害物ばく露作業報告のあった1,2-ジクロロプロパンを製造し、又は取り扱っている事業場から、「労働者の有害物によるばく露評価ガイドライン」に基づき、ばく露予測モデルを用いてばく露レベルが高いと推定される3事業場と、厚生労働省が指定する1事業場の計4事業場を調査した。対象事業場においては、作業実態の聞き取り調査を行った上で、特定の作業に従事する14人の労働者に対する個人ばく露測定を行うとともに、9地点についてスポット測定を実施したということです。そちらについては、測定分析法、今回、調査した対象事業場における作業の概要をまとめて記載しています。
 測定結果については、6ページの一番最後ですが、労働者14人の個人ばく露測定の結果、8時間TWAの最大値は8.99ppm(ブランケットの払拭洗浄作業)であった。また、信頼率90%で区間推定した上限値(上側5%)は73.64ppm、過去、洗浄又は払拭の業務においては17.66ppmであり、二次評価値を上回ったということです。
 グラフの下に各作業について詳細を記載しています。1,2-ジクロロプロパンの製造に関連する作業については、個人ばく露測定の8時間TWAは最大でも0.44ppmであった。他製剤製造時に副生する1,2-ジクロロプロパンを含有するタールを廃棄する作業については、個人ばく露測定のが8時間TWAは最大でも0.011ppmであったということです。なお、1,2-ジクロロプロパンを洗浄剤として使用する作業については、個人ばく露測定の8時間TWAは最大で8.99ppmでありました。また、この事業場では、スポット測定を実施した6地点のうち4地点で二次評価値を超えており、最大値が100.62ppmと高い気中濃度が見られたということです。
 8ページです。(3)ばく露の高い作業の詳細です。個人ばく露測定の結果、8時間TWAの最大値を示した事業場では、印刷機のブランケットの洗浄・払拭の業務において、1,2-ジクロロプロパンを洗浄剤として使用していた。当該事業場における洗浄・払拭の業務については、1回当たり1~23分間の作業が1日数回行われており、調査日における当該業務に係る作業の総時間数は5~28分であった。なお、局所排気装置が設置されていない屋内で行われていたが、作業者の大半は有機ガス用防毒マスクを着用していたということです。
 調査の結果以外に4として、「大阪府の印刷事業場で発症した胆管がん事案」について、記載を追記していきたいと考えています。(1)模擬実験結果について。こちらについては、独立行政法人労働安全衛生総合研究所が模擬実験を行っているので、そちらの結果を追記したいと考えています。こちらの実験結果について、要約を載せています。1,2-ジクロロプロパン46.4%を含む混合溶液を用いて、過去に行われていた作業を模して、安衛研職員がアルミ板の拭き取り作業を行ったところ、1時間当たり1.75リットルの混合溶剤消費に対し、安衛研職員の個人ばく露濃度は1,2-ジクロロプロパンで60~210ppm、環境濃度は1,2-ジクロロプロパンで30~80ppmであった。個人ばく露濃度は、ACGIHの8時間平均許容濃度の6~21倍程度の高い値を示し、環境濃度はACGIHの8時間平均許容濃度の3~8倍程度であった。個人ばく露濃度は環境濃度と比べ2倍近い値を示したほか、場所によって個人ばく露濃度と環境濃度に高低の不均等が認められたということです。
 また、追記として、(2)印刷事業場で発生した胆管がんの業務上外に関する検討結果について。こちらについては、3月14日に公表された「印刷事業場で発生した胆管がんの業務上外に関する検討会」の報告書を2点抜粋しています。?として、胆管がんは、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露することにより発症し得ると医学的に推定できること、?大阪府の印刷事業場で発生した胆管がんは、1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露したことが原因で発症した蓋然性が極めて高いこと、と報告されている。
 5「リスク評価の結果」です。(1)ばく露限界値との関係。今回、測定を実施した14人において、個人ばく露濃度の最大値は8.99ppmであり、二次評価値を下回った。しかしながら、これら測定値についてばらつきを考慮して区間推定すると、信頼率90%における上限値(上側5%)は73.64ppm(洗浄又は払拭の業務においては17.66ppm)と二次評価値の7倍を超える値となった。なお、個人ばく露測定において最大値を示した洗浄又は払拭の業務について詳しく調べてみると、実際の個人ばく露測定結果は1.86~8.99ppmと大きなばらつきを持っており、作業時間、頻度が少ないとはいえ、スポット測定では二次評価値を大きく超えているものが散見されることから、作業時間や頻度によっては、労働者の高いばく露につながる可能性が示された。
 さらに、安衛研が大阪府の印刷事業場で行った模擬実験においても、場所によって個人ばく露濃度に高低の不均等が認められたことから、洗浄又は払拭の業務においては、高濃度のばく露が生ずるリスクが高いと考えられる。1,2-ジクロロプロパンの二次評価値が10ppmであることを踏まえると、洗浄又は払拭の業務では、労働者の健康障害が懸念されるような高いばく露が発生するリスクが高いと考える。
 一方、1,2-ジクロロプロパンの製造やその他の業務についてですが、今回、二次評価値を下回っていることから、1,2-ジクロロプロパンの製造やその他の業務においては、ばく露によるリスクは低いと考えられる。
 (2)判定結果です。こちらについては、「印刷機の洗浄・払拭のため、当該物質を含む洗浄剤を使用」の区分においては、判定結果としては措置の要否は「要」と案を作成しています。
 6「ばく露要因の解析」です。1,2-ジクロロプロパンは、前述のように、洗浄又は払拭の業務が行われる環境下で適切な発散抑制措置が行われないと、高濃度のばく露を生ずるおそれがあり、ばく露レベルを低減させるための区分が考慮されるべきである。ということで、10ページにある表のように記載をしています。
 7「結論」です。ばく露要因の解析の結果、1,2-ジクロロプロパンを含有する洗浄剤を用いて行う洗浄又は払拭の業務においては、個人ばく露濃度の最大値は二次評価値を下回っているものの、ばらつきを考慮した区間推定では、二次評価値の7倍を超える値となるなど、洗浄又は払拭の業務においては、高濃度のばく露が生ずるリスクが高いと考えられる。
 さらに、大阪府内の印刷事業場で発生した胆管がんは、1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露したことが原因で発症した蓋然性が極めて高いとされたことも踏まえると、1,2-ジクロロプロパンを含有する洗浄剤を使用した洗浄又は払拭の業務については、ばく露による健康障害のリスクが高いと考えられる。したがって、1,2-ジクロロプロパン又は1,2-ジクロロプロパンの含有物を用いて行う洗浄又は払拭の業務については、健康障害防止措置の導入が必要と判断される。
 一方、1,2-ジクロロプロパンの製造をはじめ洗浄又は払拭の業務以外の業務については、個人ばく露濃度が二次評価値を超えるような状況にはないため、ばく露による健康障害のリスクが高いとは言えないものの、大阪府内の印刷事業場で1,2-ジクロロプロパンにばく露した労働者に胆管がんが発症していることに鑑み、1,2-ジクロロプロパンを製造し又は取り扱うその他の業務においても、当該業務に従事する労働者に対する自主的なリスク管理を行うことが望ましい、ということで案を作成しています。
○名古屋座長 ただいまの説明について、御意見、御質問等はありますか。
○花井委員 5ページの(4)の評価値、一次評価値の評価値なしということで、ユニットリスクに関する情報がないため「なし」と書いてあります。例えば、これはデータとして出されていた日本バイオアッセイ研究センターのがん原性試験の結果とか、閾値がないとか、3、4ページに書いてありますが、この辺のデータは何年頃出てきたデータですか。これは、そういうデータがあれば、確かにユニットリスクとして文献に出て公表されてないのが無いにしても、自分たちで評価するということはするべきではないのかと思うのですが。後知恵というか、今さらそういうことを言ってもしょうがない感じはありますが、その辺はどういう位置づけにしているのですか、
○名古屋座長 これはリスク評価の小委員会から出てきている案ですが。
○大前委員 これは、後ろにある34ページの、29番、36番、37番、38番、ここら辺の報告書ですから、2003年とか、2006年とか、それほど古いものではない、10年くらい前の結果です。
○花井委員 随分前ですよ。
○大前委員 多分ソフトウエアを使えばユニットリスクは出てこないことはないと思います。計算はしてないのかな。計算してないといいますか。
○花井委員 計算したのですか。
○圓藤委員 はい、BMLでやった計算は、一応リスク評価では参考値としては出しているのですが、ユニットリスクでは出してないので、それでここには出てこないのです。
○花井委員 その直線外挿とか何かはしなかったのですか。
○圓藤委員 BMLで5%の。
○花井委員 値を出している。そこから。
○圓藤委員 はい。そこで数値を出して、0.03でしたか。
○花井委員 要するに、閾値なしの発がん性であるという評価まではしなかったという感じですか。
○圓藤委員 あれは閾値なしでしたか。
○宮川委員 これは多分16ページです。
○圓藤委員 やはりここに載っているのだ。
○花井委員 閾値がない場合とある場合と出して、こういう治験は自分たちでやったデータがあるわけですから、こういうのを積極的にこの評価値の中で使っていかなくてはいけないのではないかと思うのですが、その辺は考え方としてはどうなのですか。そのような外国の報告が出るのを待っていたら、遅くなる一方だと思うのですよね。
○大前委員 今回のように日本独自に実験があって、計算はできるけれども、それを一次評価値に使うかどうかということに関しては、これらも参考みたいな形で出していますが、それを使うかどうかに関しては、使った方がベターだと思うのですが。ただ、はっきりした決まりはないのが現状です。
○花井委員 その決まりそのものをきちんと議論しなくてはいけないのではないかと思うのですが。勝手なことを言っていますが。
○内山委員 今のことに関連するのですが、4ページに参考として、IARC等では、この評価は日本バイオアッセイ研究センターのデータを持ってきてないということで、後半の有害性評価の本文を見れば、設定年度が書いてあるので、ここでも後ろを見なくても、ここのバイオセンターが英文で打ったのが多分2010年だと思うので、それ以前に、それにはまだ見直されていないことが分かるように。というのは、IARCグープ3は1999年。その後ろのを見ると書いてあるので、測定されているのを書いておけば、2010年に公表されたのがまだ反映されていないのが分かればいいと思うのです。
 先ほどの花井先生がおっしゃったのは、例えば環境省の有害大気汚染物質のガイドラインは、バイオアッセイ研究センターがデータを用いて、外国ではまだやってないものの有害性大気汚染物質の指針値を作った例もあるので、多分これはこのリスクのガイドラインを作ったときには、そのユニットリスクはスクリーニングなので、外国のものを持ってきてというのが書いてあったので、こちらではしないということだと思うのですが、せっかく今こういうバイオにいかせるデータをどんどん出しているので、見直すとすれば、今度そちらを対応して基本データがあれば、参考として使っていただく。それをやっていただければと思います。
○名古屋座長 では、ここは年次を入れるようにしていただければ。要するに、報告年次を入れると、年度の古さと新しさが分かる。よろしくお願いします。
○西川委員 結論には異存はないのですが、5ページの反復投与毒性の3つ目の試験で、NOAELが150ppmとなっています。血液の変化として、貧血があるのですが、用量相関性がないので、毒性とみなさなかったということです。21ページの一番下にその試験の概要があるのですが、22ページに2つ目のマウスの13週の試験があって、結論はLOAELが50ppmで、その根拠は血液学的変化とあります。なぜ、5ページの3つ目に1つ目のマウスの試験を特に記載したのでしょうか。有害性小検討会に入っているのですが、おそらく欠席したか何かで全く記憶がないので、確認だけさせていただけますか。
○名古屋座長 これはどうしますか。これは大前先生にお願いしてよろしいですか。
○圓藤委員 これでやめたんですよね。ここには「50ppmであった」と書いてあるのです。
○名古屋座長 上から2行目の所ですね。150と結論したと言っていましたね。
○圓藤委員 これは300以上で何か起こっていたのでしょうね。
○圓藤委員 これは、用量—反応関係がなかったのと違いましたっけ。忘れてしまったな。
○大前委員 今はっきりしたことを覚えていないのですが、NOAELが150ですね。これはLOAELが120を超えるということだったのですが。逆に、22ページの2つ目の欄のLOAELは血液学的変化により50と、これはディスカッションして確か認めなかったと思うので、そこら辺のことをもう一度チェックしたいと思います。これは取らないで、結局、評価表にも150と125と言っていたので、これはキャンセルしたデータだと思います。
○名古屋座長 これはまた小検討会のときにしていただいて、もし変わるようであれば、この記載も変えるという形でよろしくお願いします。それでよろしいですか。
○西川委員 はい、結構です。
○名古屋座長 そうしたら、よろしいですか。
○櫻井委員 リスク評価の結果の一番次に(1)で「ばく露限界値との関係」と書いてあるのは、むしろ「評価値との関係」と書いておくべきではないかと思うのですが。ばく露限界値の方が一般性のあるものだけれども、そこまでの数値ではないと思います。
○名古屋座長 そうですね、リスクの評価結果ですからね。
○櫻井委員 はい。
○名古屋座長 では、これは「評価値」という形で修正をお願いします。
○大前委員 あと、マイナーな点を幾つかよろしいですか。
○名古屋座長 はい。
○大前委員 8ページの18、19行目、「ACGIHの8時間は平均許容濃度」とありますが、これはTLV-TWAにした方がいいと思います。
 10ページの15行目、「又は1,2-ジクロロプロパンの含有物を用いて行う」というのは文章がおかしいので、「1,2-ジクロロプロパンを含む溶剤」ですか、「洗浄剤」ですか、この場合は「洗浄剤」ですね、「洗浄剤を用いて行う」と。
○名古屋座長 あとはよろしいですか。そうしたら、1,2-ジクロロプロパの件は、従来の評価の流れと違っていますので、その経緯を事務局から説明をしておいた方がいいかと思うのですが、これは初期リスク評価からポンと飛んで詳細リスク評価に行かずにこの委員で詳細リスク評価として検討するに至った経緯を若干説明してあげた方がいいと思っています。よろしいでしょうか。今まで初期リスク評価、詳細リスク評価は、今回は初期リスク評価だけでここに持ってきている。多分、胆管がんのことがあるからだと思うし、その辺を若干説明しておかれればいいかと思います。
○岸課長補佐 ジクロロプロパンについては、ばく露報告対象にしてリスク評価を行っていたわけですが、昨今の大阪府内の印刷事業場で発生した胆管がんの事案を踏まえ、現にヒトに対する有害性も出ているわけですので、今回の場合は初期評価と詳細評価を一体として、胆管がん事案も含めて評価結果として取りまとめて結果としたいということです。
○名古屋座長 そういうことで、ほかとはちょっと違いましたが、そういう事例があるという形でこうなったということです。よろしいでしょうか。そうしたら、この結論にあるように、ジクロロプロパンについては、健康障害防止措置の導入が必要だということでよろしくお願いします。ありがとうございました。
 次の物質、フェニルヒドラジンについて、またよろしくお願いします。
○角田科学物質評価室長 それでは、「フェニルヒドラジン」について御説明いたします。資料2の41ページを御覧ください。物質の1「物理科学的性質」ということで、性状としては、1の(2)にあるとおり、無色~黄色の油状液体又は結晶ということで、融点が19.5℃となっております。(3)の用途は、染料・顔料中間体ということで利用されております。
 2の「有害性評価の結果」です。(1)発がん性については、ヒトに対して恐らく発がん性があるとEUの分類において整理されております。閾値の有無の判断については、変異原性を確認した試験結果がありますので、それを踏まえて、閾値なしと整理しております。
 42ページ、(2)発がん性以外の有害性については、急性毒性、皮膚刺激性、皮膚感作性や遺伝毒性があることを記載しております。(3)許容濃度等については、ACGIHが0.1ppmということで、TLV-TWA、0.1ppmで勧告しております。また、経皮吸収性についても言及をしております。(4)評価値については、有害性の評価の小検討会で御議論を頂いたところです。一次評価値は、評価値なしということで、ユニットリスクに関する情報がないため、評価値なしということです。二次評価値は、0.1ppmというところで、ACGIHが提言しているばく露限界値を二次評価値としております。
 3は「ばく露評価の結果」です。(1)主なばく露作業については、平成20年度におけるフェニルヒドラジンの有害物ばく露作業報告は、3事業場から計3作業について報告があります。用途は主に「対象物の製造」と「他の製剤等の原料として使用」ということで、作業の種類としては「充填又は袋詰めの作業」「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」でした。取扱量の合計は延べ998.5tで、当該作業従事労働者数の合計は延べ5人でした。3作業のうち、作業時間が月当たり20時間以下の作業が100%で、局所廃棄装置が設置されている作業は100%です。
 43ページ、(2)ばく露実態調査の概要です。平成24年度の調査を上記3事業場に対して行う予定でしたが、2事業場は既に対象物質を取り扱っていなかったということで、試薬として、小分け作業等を行っている1事業場のみに対して調査を実施しております。対象事業場におけるフェニルヒドラジンの取扱作業は、500mL入り試薬ビンから100mL又は25mLの試薬ビンに小分けして、空となったビンを洗浄するもので、この作業について個人ばく露を測定するとともに、2地点についてスポット測定を実施した次第です。個人ばく露測定結果については「労働者の有害物によるばく露評価ガイドライン」に基づいて、8時間加重平均値を算定しております。
 測定分析法は、サンプリングはマイクロインピンジャーで捕集して、HPLC-UV法で分析するものです。測定結果については、「対象物質の実測データは、1点のみ定量下限値「0.00035」未満」と書いてありますが、この数字「0.00035」を削除してください。0.00035というのは、実測値から計算したTWA8時間の値ですが、この表現では0.00035が定量下限値と読めてしまうものですから。統計的な最大ばく露濃度の推定値は得られないが、ばく露評価ガイドラインの規定(区間推定上側限界値又は最大測定値の高い方の値を最大値とする)に準拠して、0.00035ppmとするのが妥当と判断されております。スポット測定においても高い濃度は確認されなかったということです。
 4の「リスク評価の結果」については、フェニルヒドラジンについては、個人ばく露測定の結果、測定値の最大値は二次評価値(0.1ppm)を下回っておりますので、当該調査結果からは、0.1ppmを超える高いばく露が発生するリスクは低いと考えられます。以上から、フェニルヒドラジンの製造・取扱事業場におけるリスクは低いと考えられますが、当該物質はヒトに対して、恐らく発がん性があるとされている物質ですので、事業者は当該作業に従事する労働者等を対象として、自主的なリスク管理を行うことが必要と考えるということです。以上です。
○名古屋座長 ただいまの説明について、御意見、御質問等はありますか。個人ばく露も著しく低いということですので、表現等に何かありますか。よろしいですか。
○花井委員 42ページの「ばく露評価」のところで、「3事業場から計3作業」と書いてありますが、もっと使っている所は多いのではないかという気がするのですが、こんなものですか。
○荒木氏(中災防) 調査の平成20年の報告があったうちの3件を当たったのですが、実際には、平成24年度の調査のときには、試薬の小分けというのは、国内では多分製造されていなく、輸入したものを小分けしている状況だと思います。その試薬として流通しているのが主で、それがなくなった時点で、メーカーはその都度合成するか、それとも輸入して国内で販売しているのではないかと思います。
○花井委員 今はもう作ってないということですか。分かりました。
○名古屋座長 ほかにありますか。よろしいでしょうか。そうしましたら、ここに書いているように、自主的な管理は必要ということですが、今までの慣例に従いますと、初期リスク評価で終了ということでよろしいでしょうか。
(異議なし)
○名古屋座長 次は「ナフタレン」について、よろしくお願いします。
○岸室長補佐 続きまして「ナフタレン」について御説明いたします。資料3を御覧ください。化学物質の基本情報としてはナフタレンということで、主な性状としては、外観が特徴的な臭気のある白色固体です。密度は1.16、蒸気圧は11Pa、蒸気密度は4.42ということで、空気より重いものです。融点は80℃です。
 生産・輸入量等については、生産量は、2009年のデータでは14万8,141トンです。輸入量は、1~10万トン未満。用途は、染料の中間体、合成樹脂、爆薬、防虫剤、有機顔料、テトラリン、デカリン、ナフチルアミン、無水フタル酸、滅菌剤等、燃料、色素等で使用されております。
 有害性評価ですが、発がん性については、IARCが2B、ヒトに対して発がん性の可能性を疑われるということです。産衛学会については設定なし。EUについてはCat.3。NTPについてはR。ACGIHについてはA4です。閾値の有無については判断できないということです。
 発がん性以外の有害性については、急性毒性で、吸入毒性でLC50が65の値を示しております。その他の数字は記載のとおりです。そのほか、皮膚刺激性/腐食性があり、眼に対する重篤な損傷性/刺激性があり。反復投与毒性ありということで、LOAELが10ppmということです。
 許容濃度等については、ACGIHがTWAで10ppm、STELで15ppmを定めております。日本産衛学会では情報なし。NIOSHでもTWAは10ppm。OSHAにおきましても、TWAは10ppmということです。
 評価値については、3月27日の「有害性評価小検討会」で御検討を頂いたところ、一次評価値については、評価値なし。二次評価値については、ACGIHのばく露限界値を参考にし10ppmということです。
 「ばく露実態評価」についてです。平成21年におけるナフタレンの有害物ばく露評価報告は、合計152の事業場から、505の作業についてなされたところです。作業従事労働者は延べ9,151人です。対象物質の取扱量は、合計4,530万トンでした。主な用途としては、「他の製剤等の原料として使用」「顔料、染料、塗料又は印刷インキとして使用」等です。主な作業としては「計量、配合、注入、投入又は小分けの作業」、また「サンプリング、分析、試験又は研究の作業」でした。505の作業のうち、作業時間が月20時間未満である作業が61%、局所排気装置の設置がなされている作業は56%、保護手袋を使用しての作業が88%、防毒マスク着用での作業が50%。保護眼鏡の着用が71%ということで、それぞれ半数以上の措置がとられております。
 ばく露実態調査結果については、報告のあった製造・取扱いの事業場のうちから、ばく露評価ガイドラインに基づき、コントロールバンディングを用いて、ばく露が高いと推定される7事業場を選定したところです。これらの事業場のうち、31人の労働者に対する個人ばく露測定を行うとともに、1単位作業場において、作業環境測定のA測定を行うとともに、45地点についてはスポット測定を実施しました。また、ばく露測定値については、8時間TWAに基づいて加重平均を算定し、また最大値の推定等も行っております。測定分析法で、個人ばく露測定については、スチレンジビニルベンゼン捕集管による捕集。分析法については、ガスクロマトグラフ法による分析を行っております。
 7事業場のナフタレンのそれぞれの用途は、こちらに書かれているとおりです。「当該物質を小口包装し、殺虫剤とする事業場」を初めとして、あとはナフサ系のコールタールなどの取扱いの中で発生するナフタレンの取扱いが残りのものです。ナフタレンのばく露の可能性のある主な作業としては、「梱包」「充填」作業であり、一部では局所排気装置の設置がなされていない屋内作業がありました。
 16人の労働者に対する測定結果のうち、8時間TWAの最大値は充填作業での7.549ppmでした。信頼率90%で区間推定した上限値については、14.583ppmであったことから、推定ばく露最大値は14.583ppmとしました。発散抑制装置については、ばく露作業報告の結果でも、半数近くが設置しているように、測定を行った事業場におきましても、屋内の作業場については半数近くが局所排気装置を設置しており、屋内外を問わず、ほぼ半数が有機ガス用防毒マスクを着用しておりました。
 スポット測定結果においては、溶媒として使用している事業場で、梱包または充填作業で9.24ppmとなっており、作業時間は1日8時間でした。ばく露測定の結果、8時間TWAの最大値は二次評価値(10ppm)を下回っておりますが、区間推定上側限界値(信頼率95%、上側5%)で、14.583ppmを上回っておりました。
 判定については、以上の結果を踏まえ、区分ごとの評価値を比較し判定したところ、下記の表になったということです。殺虫剤の原料としての取扱いをしている作業場におきまして高い値が出ているところから、この部分での評価値超えで判定しております。
 今後の対応です。ナフタレンについては、今後、更に詳細なリスク評価が必要であり、その際には、取扱う作業のうち、特に濃度が高かった充填、梱包作業を行う事業場に対して、当該作業に係る追加調査を行い、当該作業工程に共通した問題が何かをより詳細に分析する必要がある。また、詳細なリスク評価の実施を問わず、当該物質は発がん性が疑われる物質であるため、事業者は製造・取扱い作業に従事する労働者を対象として、自主的なリスク管理を行うことが必要と考えております。説明は以上です。
○名古屋座長 ただいまの説明につきまして、御意見や御質問等ありますか。ばく露濃度は、若干、評価値より低いですが、区間推定値が高いということで、そういうことで詳細リスク評価にもっていこうという感じだと思いますが、何かありますか。
○小嶋委員 非常に細かい点で恐縮ですが、63ページの10行目、密度1.16のあとの単位が違っています。?3だと思います。また細かいことですが、66ページの1行目、「コークス炉ガスら得られる」は脱字だと思います。「ガスから」。
○名古屋座長 ありがとうございました。あとお気付きの点はありますか。
○内山委員 記憶が余りはっきりしないのですが、WHOの「インドア・エアクオリティガイドライン」というのが2、3年前に出されて、再評価されていると思いますので、前にあったWHOの「エアクオリティガイドライン」とそれほど変わりなかったと思うのですが、詳細ごとのツールをもう少し引用していただければと思います。
○名古屋座長 はい。詳細リスクのときに、評価したものを入れておくということですね。
○内山委員 ただ、このガイドラインに、WHOの「インドア・エアクオリティガイドライン」の値を採用することは、多分、今までなかったと思うのです。今後も段階的にやっていこうということで、第1物質として、10物質ぐらいが設定されて、その中にナフタレンがあるので。
○名古屋座長 そうですね。ガイドラインを作ったときは、余りそういうのはなかったので、やっぱり時代から、いろいろな情報が入ってくるので、そこに入れるという形で、言われたところの改正等はあとで考えたいと思います。一応、詳細リスクのときは、WHOの情報も少し入れていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○西川委員 細かい点ですが、64ページの15行目に「反復投与毒性:あり」とありますが、反復投与毒性は、通常、毒性の出る量を高い用量に設定しますので、「あり・なし」の表現はおかしいと思います。「あり」は削除したほうがいいと思います。
○名古屋座長 よろしいですか。反復毒性の濃度だけということですね。
○櫻井委員 ちょっと小さいことですが、73ページの致死性の表ですが、ラットで吸入、LC50が65ppm/1Hばく露で、65ppm以上。その下は100ppm/8H以上と書いてありますが、「以上」と言うと、その数値を含むことになりますよね。
○名古屋座長 そうです。
○櫻井委員 そうすると、その数値で致死性があるということになってしまいますね。
○名古屋座長 そうですね。
○櫻井委員 そうしたら、超えるとしたほうがいいのではないですか。実際はLC50の数値は、これよりもはるかに上だと思いますが。
○名古屋座長 そうですね。これは「未満」のところは、以上のような形ですよね。分かりました。
○櫻井委員 未満を超える。これだと、超える値ぐらいにしておく。
○名古屋座長 その値よりは、近くなので上にあるよということですよね。そんなところではないよということですよね。
○櫻井委員 はい。ただ、こういう書き方は、割合汎用されているならば、それでもいいかなと思いますが、知らない人は誤解する可能性があると思います。
○花井委員 この65とか100というのは、具体的な意味はない数字なのですか。
○櫻井委員 そういうことですよね。
○花井委員 暴露時間とのの関係から言って、逆かなと思って、ちょっと不思議だなと思っていたのです。
○櫻井委員 はるかに高い数字であることを意味しています。
○花井委員 それで分かりました。
○名古屋座長 それでは、そこは超える形に直しておいてください。
○櫻井委員 これは68ページの別添1の表の中で、同じ表現があると思います。
○名古屋座長 よろしいですか。それでは「ナフタレン」につきましては、そこに書かれているように、ばく露評価は低いですが、区間推定値から考えると、詳細リスク評価にいく必要があるということで、あとは詳細リスク評価のときに、そういう作業を充填していて、ほかのところを追加して、より詳細なデータが入る形を調査していただければ有り難いということだと思います。3つ終わりましたが、何かほかにありますか。若干、「ジクロロプロパン」のところは、用語の訂正や文章の訂正がありますが、そこをお願いするということで、健康障害防止措置のほうに導入する必要がある形にします。「フェニルヒドラジン」につきましては、初期リスク評価で終了ということです。「ナフタレン」につきましては、詳細リスク評価に持っていく形で終わりました。3物質終わりましたが、事務局から何かありますか。今後の予定等、よろしくお願いします。
○岸室長補佐 今御審議いただきました案については、これで評価したとさせていただきます。あと事務局のほうで、若干修文等、表現ぶりを修正する可能性がありますので、その点については御承知おきください。
 今後の予定は、リスク評価の合同検討会としては、資料4にありますが、5月24日(木)15時30分から、第2回目を行います。第3回目は、6月21日(金)15時30分からを予定しております。また参考までに、有害性評価小検討会が5月2日(金)1時半から開催することとしておりますので、御参集のほどよろしくお願いいたします。
○名古屋座長 以上をもちまして、本日の「リスク評価検討会」を閉会させていただきます。本日はどうもありがとうございました。


(了)

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