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2011年1月18日 第4回 感染症分科会予防接種部会ワクチン評価に関する小委員会 議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成23年1月18日(火)
          13:00~


○場所

厚生労働省共用第7会議室


○議事

○予防接種制度改革推進室次長(藤井) ただいまより、第4回「厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会ワクチン評価に関する小委員会」を開催させていただきます。本日の委員の出欠状況ですが宮崎先生よりご欠席の連絡をいただいております。それから、座席表には倉田先生のお名前があるのですが、倉田先生から急遽ご欠席という連絡をいただいております。現在、6名中4名の委員にご出席いただいております。
 また、本日は肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(成人用)、水痘ワクチン、おたふくかぜワクチン、B型肝炎ワクチンの各作業チームから、作業報告書についてのご報告をお願いしております。ご説明いただく参考人として、肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(成人用)の作業チームから国立感染症研究所感染症情報センター室長の谷口清州先生にお越しいただいております。水痘ワクチン、おたふくかぜワクチンの作業チームから国立感染症研究所感染症情報センターの室長でいらっしゃいます多屋馨子先生にご出席いただいております。B型肝炎ワクチンの作業チームから、国立感染症研究所感染症情報センターの室長でいらっしゃいます多田有希先生にご出席いただいております。また、医療経済評価に関する参考人といたしまして、東大薬学系研究科助教でいらっしゃいます五十嵐中先生にご出席いただいております。
 なお事務局側ですが、現在、外山局長と三宅課長が出席しておりますけれども、所用のため途中で退席させていただくことをご承知おきいただければと思います。以降の議事進行は岡部委員長にお願いいたします。
○岡部委員長 お忙しいところどうもありがとうございました。いま紹介がありましたように、本日は肺炎球菌、水痘・おたふくかぜ、B型肝炎について、ワーキンググループがいろいろ苦労してまとめていただいているものがありますので、以前に発表したものについて、そこを補足するような形、そのときの議論で宿題事項になっていたような部分について報告をいただきます。本日は、ここで何か決定するわけではないということは一応聞いております。もう1つ、今回は後ろのスケジュールがこの会議等室であるということですから、時間を守ってやらなければいけないということですので、ご協力をよろしくお願いいたします。まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
○予防接種制度改革推進室次長 簡潔にさせていただきます。座席表、議事次第、配付資料一覧があります。時間もありませんので一つひとつは確認いたしませんが、議事の途中で過不足等がありましたらお願いいたします。それから、委員の机上には「ワクチン評価に関する小委員会資料へのご意見」ということで1枚紙を2枚置かせていただいております。本日は誠に恐縮なのですけれども、時間がありませんので、もしご発言の足りない部分がありましたらご記載いただきまして、後ほどご提出いたただければと思います。資料の確認は以上です。
 もう1つは利益相反に関してです。今回も事前に利益相反に関するご申告をいただいております。今回の審議参加に関し、製造販売企業等からの寄附金についてご退席いただく先生はおりません。また、資料作成等に関与された先生もいらっしゃいませんので、すべての先生方にご意見をいただけると考えております。以上です。
○岡部委員長 早速議事に入らせていただきます。先ほど申し上げたような4つの疾病ワクチンについての説明があります。事前にお伝えいただいたと思うのですけれども、ご説明は一人5分少々ということでよろしくお願いいたします。いちばん最初にご説明いただくのは池田先生ですけれども、医療経済ということでいくつか考え方として統一すべき点などもあるということが最初にありましたので、そのことも含めて池田委員にお話をいただきます。
○池田委員 資料4「ワクチン接種の費用対効果推計法改訂版」です。前回もこのようなものをお配りいたしましたが、そして分析方法が特段大きく変わったわけではありませんが、前回書き込んでおりませんでした部分についてやや補足といいますか、追加をしたものです。
 追加した主な点としては、1頁目の「費用項目」「保険医療費」のところに、(2)「ワクチンの接種費用」という項目があります。ワクチンの接種費用に関しては、先行研究を見ますと実際の仕入値であるとか、販売者の希望販売価格であるとか、さまざまな価格が使われておりましたが、今回はワクチンの希望小売価格を基に、そこに技術料を足し、消費税を加えた金額という形ですべてのワクチンについて計算していることを明記いたしました。これまでもこのような計算法でやっておりましたが、こちらを明記いたしました。
 このような方法を使うことにより、ややワクチンの価格については、実際に購入されている金額はより値引きされたものである可能性もあるわけでありますけれども、今回、実際のそうした仕入値の調査が難しいということもありましたので、このようなことで計算をしております。
 また割引率に関しては、1頁目のいちばん下に書いてありますように年率3%で、費用並びに効果の両方について割引きをすることを基本にしておりますけれども、この小委員会でも以前にご指摘がありましたように、お金について割引きをすることについてはともかくとして、生命予後など、予後に関しても割引きをかけるというのはなかなか受け入れにくいというか、考えにくいというご意見もいただいております。それも踏まえて5頁目に割引きの考え方について少し追記をしております。いずれにしても、この割引きに関して、先行研究で古いものでは大体年率5%で割引きをしております。最近の海外のもでは主に3%で割引きをしておりますので、そうした先行研究との整合性も勘案し、今回は3%を基本としております。割引きをしないほうがいいのではないかというご意見もありますので、0%の場合、そして古い論文との結果の整合性を見る上でも5%と、この0~5%の間で値を動かして、そのいずれの場合の結果も示しているという形で対応しております。以上です。
○岡部委員長 ありがとうございました。いくつかの推計法に関するご説明をいただいているのですけれども、ご質問がありましたらお願いいたします。前にも廣田委員からご意見があったと思うのですが、この費用対効果というのはかなり良い指標にはなるけれども、すべての指標ではないということだと思います。私も冒頭に申し上げたように、条件がいっぱいあるときには費用対効果は相当上がってくる可能性は誰が考えてもわかるのですが、ある一定以上クリアしてくると、今度は継続することについて費用対効果を持ち出すと、これは逆にないから要らないのではないかというようなことになるので、あくまで1つの指標であって、これがあるから絶対的にというようなものではないのではないかという気がしているので申し上げました。廣田先生からもご意見がありますか。
○廣田委員 絶対的なものでないと考えておかないと、この費用対効果を研究していらっしゃる先生方に大きな負担をかけます。今後、またこういう分野が健全に発展するのをかえって阻害することになろうかと思いますので、そういう感じで理解していく必要があろうかと思います。
○岡部委員長 予防接種の話のときに、いままでそんなにこういう議論がなされていなかったということで、今回相当議論になっていることは良いことだと思うのですが、いま廣田委員がおっしゃったようなことも考えながら、これについても考える上で取り入れるべき事項としていきたいと思います。各論といいますか、それぞれのワクチンについて、いまの費用対効果も含め、総合的なところの説明と、それについての評価ということでご説明いたただければと思います。最初に肺炎球菌ポリサッカライドワクチンについてですが、PCV7価の小児用とは違って、23価の成人用であるということで谷口委員からご説明をお願いいたします。
○谷口参考人 チームを代表してご報告申し上げます。前回第2回委員会においては、製剤に関する専門的なご質問もいただきましたので、本日は和田先生にもご同席いただきまして、専門的なご質問にご対応いただけるようにさせていただいております。
 前回からの変更点と、前回の議論を主に説明しろということですので、まず前回ご指摘のありました23価ワクチンが、すべてをコンジュゲートにしたり、さらにコンジュゲートワクチンの価を広げることは可能ではないのか、あるいはその費用対効果というお話がありました。23価ワクチンは技術には可能でありますが、その技術と費用の点において現実的ではないことから、現在のところは開発の予定はないということです。
 効果については、いろいろコントラバーシャルであることは、これまでもいろいろな所でご指摘がありましたし、前回第2回のときにも委員の方からご指摘がありました。ただ、WHOなどのメタアナリシスなどにおいては、成人におけるIPD、あるいはオールコーズニューモニアについてその効果を認めております。同じくご指摘がありましたように、その国の実情、あるいは基礎的な過去の感染における免疫、デザイン、あるいは診断の方法、あるいは診断率とかなりたくさんの因子によって影響を受けておりますために、チームとしては日本国内で行われておりました試験に重きを置いて、これを評価いたしております。その効果につきましては、共にインフルエンザワクチンと一緒に使っておりますので、単独のワクチンを否定するものではありませんが、この相乗効果によって、この効果の結果となっていると評価しております。
 また変更箇所としては、10頁において再接種に関する記載をしております。再接種が可能となったことに続きまして、ただし、過去5年以内に接種されたことのある者では、注射部位の局所反応が、初回接種よりも頻度が高い報告があることから、再接種を行う場合には考慮した上で十分な間隔を確保して行う旨が、基本的事項に追加されたという事実を付け加えさせていただいております。
 15頁で供給体制ですが、現在のところ平成23年度は130~180万本の供給が可能との情報を得ております。少なくとも現在65歳の人口は概ね170~180万程度ですので、供給体制については問題ないと評価しております。
 13価の成人用コンジュゲートワクチンについては、17頁の25行目に各国で13価コンジュゲートワクチンの成人に対する治験が開始されている旨を表記させていただきました。以上です。
○岡部委員長 ありがとうございました。肺炎球菌23価についての追加のご説明がありましたが、これについて委員あるいは参考人の方からご意見がありましたらお願いいたします。13価のワクチンのことが追加記入になっておりますけれども、これは将来的にはどういう方向性になると考えられるのですか。
○谷口参考人 前回のご指摘にもありましたが、将来的には7価のコンジュゲートワクチンは、今後小児において接種率が上がってきたと仮定しますと、これは当然成人の感染における血清型にも影響してまいります。また13価ワクチンのほうが、実際に免疫原性という意味では優れている部分もありますので、今後は成人においてもこういうコンジュゲートワクチンを考えていくということにおいて、こういう文言を付け加えさせていただいております。ただ、我が国における13価ワクチンにおけるカバー率というのは今後も検討していかねばならない問題だと思っています。
○岡部委員長 ほかに委員の先生方からご指摘、あるいはご質問がありましたらお願いいたします。いまのはトライアルのところなので、当面の問題にはならないわけで、現在導入されている23価ワクチンについては、十分に導入の価値ありというところだと思うのです。
○岩本委員 ワクチンをすることによって、常在の肺炎球菌のポリサッカライドタイプに影響を与えるような研究結果はありますか。特に情報はないのですか。
○谷口参考人 これまでのところ、PCV7が導入されて以降、それが成人にどう影響を与えるかという詳細な論文は1つ記憶がありますが、ほかにありましたか。
○和田先生 常在の肺炎球菌に影響を与えるかということですが、14価のポリサッカライドワクチンのときになされた研究があります。常在菌に関して影響はない。つまり、侵入菌の感染を防ぐことはできるけれども、常在菌に対する影響はポリサッカライドワクチンにはないことになっています。いま谷口先生が少しお話をなさいましたように、小児に投与されたコンジュゲートワクチンに関しては、小児の常在菌に対して非常に影響が出てくる。それが成人に対する間接効果として現れてくるということです。
○岩本委員 病原性の高いものが減るということですね。
○和田先生 コンジュゲートワクチンに含まれているものに関しては、病原性の高いものも、高くないものも減ります。
○岡部委員長 ほかによろしければ話題を移したいと思います。次は、水痘ワクチン作業チームを代表して多屋先生お願いいたします。
○多屋参考人 国立感染症研究所感染症情報センターの多屋です。水痘ワクチンの作業チームを代表してご報告いたします。当初、10分という予定を伺っておりましたので、10分は過ぎないようにしますけれども、5分は過ぎてしまうことをお許しください。
 水痘・帯状疱疹ウイルスのご専門で、水痘ワクチン製剤担当室室長の井上直樹先生が来てくださっていらっしゃいますので、専門的なことについてご質問等がありましたら一緒にお話させていただきたいと思います。
 まず作業チーム報告書に基づいてお話を進めます。今回は、ファクトシートの追加編のところで、医療経済学的効果のところは、先ほど池田先生からお話がございましたが、水痘ワクチンについては、そのワクチンに使う費用と、そして治療等に使う費用に加えて、社会の視点といったところから、この費用対効果を考えるという点が、水痘に関してはあります。3頁目、そして5頁目からの表があります。例えば5頁の表をご覧いただきますと、現在ワクチンが定期になっていない任意の接種率が低い状態のときと、定期接種1回、定期接種2回にした場合の費用対効果の表となっております。
 社会の視点を鑑みますと、1回接種で4.59、2回接種で2.69というふうに、これは1を超える場合にその効果があるとみなされる部分ですが、非常に高い効果が得られています。表3については、今回新たに、先ほどご説明がありましたように、ワクチンの費用が以前は5,000円と1万円だったのですが、今回は8,694円ということについても計算を加えていただいております。1万円の2回接種においても、非常に高い費用対効果があるという結論でした。
 8頁で集団免疫効果のところに付け加えがあります。ウルグアイの検討なのですが、定期接種が導入された後、水痘の患者さんが減少したことに加えて、接種の推奨される年齢以外の年齢層でも水痘の患者さんが減少したという効果があること。そして米国の論文では、すべての年齢層の水痘の患者さんが減少した。特に1~4歳の入院例も含め、著明に減少したことが論文として報告されています。
 9頁は水痘の症状のところですが、今回新たに付け加えたこととして、昨年5月にジュネーブで開催された第63回世界保健総会において、水痘については先天性風疹症候群などを含めるとともに、TORCH症候群の1つとして、先天性水痘感染の減少が盛り込まれております。後で述べますけれども、妊娠中にお母さんが水痘にかかりますと、先天性水痘症候群の赤ちゃんが生まれる可能性があったり、早くに帯状疱疹を発症する、出産直前直後ですとかなり児が重篤化することもあり、こういうことも盛り込まれています。免疫機能が低下した患者さんが水痘を発症しますと、非常に致死率も高く、かなり重症化いたします。
 10頁目は特に新たに付け加えた部分はないのですが、現在100万人程度の患者さんが毎年発生していて、約4,000人ぐらいの入院患者さんと、10~20人程度の水痘による死亡者が、現状毎年出ているのだということを認識しないといけないと思います。軽症で治っていく患者さんを多く診ていらっしゃいますので、そこではなかなか見えてこない重症の患者さんがいらっしゃることを認識する必要があると思います。感染力は非常に強く、麻疹と同レベルぐらいの感染力があります。空気感染しますので、同じ部屋にいるだけで移ってしまいます。
 治療は、対症療法と、抗ウイルス薬による治療がありますけれども、現在の日本のような先進国であっても、免疫機能が低下した方が水痘を発症しますと、抗ウイルス薬を使ってもかなり重症化している方もいらっしゃいますので、そういう点も重要かと思います。水痘ワクチンは、日本で開発されたという非常に特徴のあるワクチンで、もともとは白血病や免疫機能が落ちた子どもたちを、水痘による死亡と重症化から守るために開発されたワクチンですので、非常に安全性も高く、副反応も健康な方に接種したらほとんど何もありません。
 12頁には集団免疫効果の部分を、先ほどのファクトシート追加編の部分をまとめて付け加えたものです。本人の予防に加えて、定期接種化されて、多くの方が受けてくれるようになると、水痘の流行そのものが抑制され、ワクチンを受けたくても受けることができない、極めて細胞性免疫が低下した方や、妊婦さんを水痘から守るといった側面もあります。
 さらに今回付け加えたのは、帯状疱疹の患者さんの減少ならびに症状軽減効果という【4】の部分です。帯状疱疹の発症や、重篤度を軽減できる効果が期待できるというところで、野生株、普通に水痘にかかったときよりも、水痘ワクチンを接種した場合は、血中のウイルス量も少ないですし、水疱も普通はできません。長期的観点から見れば、水痘ワクチンを定期接種化して、水痘にかからない人たちを増やすことにより、水痘だけではなく、帯状疱疹の減少効果を図る効果も期待できる部分を付け加えさせていただいております。ここは、もともとファクトシートにも、動物実験の結果も含めて書いてあったところなのですが、その部分を追記したような形になっています。
 13頁は、目的と安全性です。先ほども申し上げましたように、重症度については麻疹などに比べると低いのですが、感染力は強く、基礎疾患をもっている方についてはかなり重症化し、毎年死亡者が出ている現状があります。最近では、共働きの家庭も多くなっておりますので、看護に伴う保護者の経済的損失という問題についても重要な部分かと考えられます。帯状疱疹についても、今後高齢化社会に進むにつれて、さらに患者数が増えてくることが予想されますので、そういうところに対する効果も期待されます。安全性は先ほど申し上げたとおりです。
 医療経済学的評価については、いちばん初っぱなに申し上げたとおりです。予防接種にかかる費用増額費が、生産性を含めた社会の視点からも、また医療費だけという観点からも、医療経済性に優れているという結果が得られています。
 予防接種の実施ですが、感染力は先ほど申し上げたとおりです。予防接種の感染拡大防止策については、これまでたくさんの論文が出ております。アウトブレイクの事例で、水痘ワクチンによる効果なども論文として多く出ています。予防接種の持続期間は、日本はもちろんそうですが、海外でも10年、20年に及ぶ非常に長い歴史があります。1回接種しただけでは15%弱でbreakthrough varicellaという、流行があると軽く発症してしまう方がいるのですが、2回接種することによって、水痘の発症そのものも抑制されるということ。既に米国とドイツでは2回接種方式で、小児へのユニバーサルワクチネーションが行われていること。そして、これらの国々では水痘の患者さんが激減していることなどが挙げられます。
 供給状況については、日本で開発されたワクチンなのですが、海外でも他社の製品ですが水痘ワクチンが使われています。ただ、日本のワクチンと海外で使われているワクチンについては、ウイルス株の遺伝的な構成などがちょっと違っていること等もあり、日本のワクチンの副反応報告と、海外のワクチンの副反応報告、有害事象の頻度などは違っていると考えなければいけないと思います。供給体制は、例えば2回接種という形で定期接種化を行っても、現時点で十分に供給可能であると聞いております。
 勧奨される具体的なスケジュールのところには、現在の添付文書の内容がずらずらと書いてあるので省略いたします。今後接種スケジュールを考えていく上では、まず広く1回目の接種を導入することで、水痘の患者さんを激減させなければ、私も以前大学病院に勤めておりましたが、悪性腫瘍の子どもたちや、細胞性免疫が極めて低下した子どもたちが多く入院している中でも、検査入院の子どもたちが必ずいらっしゃって、毎年水痘の患者さんが病棟内で発生し、その対応に大変な思いをすることを繰り返してきています。こういう子どもたちを守るためにも、水痘の流行そのものを抑える必要があると考えております。
 最後に結論ですが、一刻も早く、わが国も水痘ワクチンの定期的な接種を推進し、キャッチアップ接種を含め、生後1歳以降の子どもたちから接種する必要があると考えました。上記結論を導いたのには5つのポイントがあります。
 1番は、水痘なんか子どもの軽い病気でしょうと考えられる傾向にありますが、実際には重症化に伴う入院患者さんが多く、適切な感染症対策が必要です。
 2番目は、水痘ワクチンは我が国で開発された、有効かつ安全なワクチンであり、既に国内でも25年の歴史があります。有効性、安全性についても多くの研究結果も出ております。海外でも米国・ドイツなどの定期接種化した国においては、患者さんの減少、重症化した患者さん、死亡者のすべてが激減していることも既に実証されています。
 3番目は、定期接種化については、集団免疫の観点からも必要性が高い、先天性水痘感染の減少という、昨年のWHO総会で盛り込まれた先天性水痘の感染の減少についても、やはり定期接種化による流行の抑制、患者数の減少というところが、まず日本には必要ではないかと思います。
 4番目は、医療経済性にも優れており、5番目として水痘のみならず、帯状疱疹に対しても患者数の減少、重症化軽減の効果が期待できる。以上です。
○岡部委員長 ありがとうございました。水痘のワクチンについての、追加のディスカッションの結果ですけれども、委員の先生方からご質問がありましたらお願いいたします。水痘ワクチンが開発された当初に非常に問題になっていた1つは、帯状疱疹が増えるのではないかということがありました。もう1点は、潜伏感染をするのを、弱毒とはいえワクチンウイルスを体内に入れた場合に、例えば悪性化その他についてどういう影響があるのだろうかというディスカッションがかつて随分行われたと思います。本日のお話を伺うと、帯状疱疹についてはいいということも出てきていますが、その点は今の考え方はどうなっているのでしょうか。
○多屋参考人 その点については、資料の12頁に今回は前回よりもかなり追加して書き加えた部分があります。帯状疱疹の患者さんというのは、水痘のように自然罹患して、身体の中で非常にたくさんのウイルスが増えて、そうすることによって潜伏感染するウイルス量も増えます。水痘ワクチンはウイルス血症、血液の中でもちろん増えますけれども、ウイルス量は少ないので潜伏感染するウイルス量も少なくなりますので、将来的には帯状疱疹の患者さんの減少も期待できます。
 先ほど岡部先生からご指摘のありましたように、患者さんが少なくなってくると、自然感染による免疫増強効果が得られないので、一時的に帯状疱疹の患者さんが増えるのではないかと懸念もされていたのですが、定期接種が既に実施されている米国でも、帯状疱疹の増加は発生していないということ。2つ目の論拠として、免疫を増強させるために、水痘ワクチンを使って、追加免疫という方法がありますので、たとえ自然曝露機会が減っても、それを解決するための方法が存在するという部分を今回付記いたしました。
○岡部委員長 1回接種から2回接種にすると、免疫の増強だけということと、帯状疱疹に対する影響というのは何かデータは出ていますか。
○多屋参考人 1回接種と2回接種については、1回接種だけですとどうしてもbreakthrough varicellaがあるので、2回接種にすることによって発症そのものが起こらない。私も大学のときには2回接種を随分やっていたのですが、2回接種をやった子どもは10何年の歴史の中では誰も発症しなかったという効果もあります。発症しないということは、身体の中でウイルスが増える機会が少ないということイコール、潜伏感染しているウイルスも少ないと推定しています。井上先生から補足がありましたらお願いいたします。
○井上先生 いまのところ疫学的な調査として、2回接種した結果として帯状疱疹がどうなったかということはありません。しかしながら、2回接種によって細胞性免疫及び抗体価の上昇は確認されておりますし、実際にbreak through水痘が起こっていない観点から見ても、帯状疱疹の頻度がより下がると期待できます。
 もう1点は、この1シリーズ前の10何年前に質問のあった、腫瘍迂遠性ということに関しても、その後の調査で腫瘍迂遠性については否定されました。
○谷口参考人 この議論の中で、いま多屋先生がおっしゃいました、帯状疱疹に対するこのワクチンの効果が述べられていますが、この水痘ワクチンの議論の中に、成人に対する帯状疱疹予防としてのワクチンというのは議論に入っているのでしょうか。どちらかというと、入っているといいなということです。
○多屋参考人 現在の水痘ワクチンの添付文書の中では、帯状疱疹の予防は効果・効能の中には入っていないのですけれども、細胞性免疫を増強させるという効果・効能が途中で付け加えられましたので、それはニアリーイコール細胞性免疫を高めることによって、帯状疱疹の発症を予防することが期待できることから、今後はそういう予防にも使っていけるということがかなり期待される効果があると思っています。
○廣田委員 帯状疱疹というと高齢者ということも出てくると思うのですけれども、接種スケジュールとしてはどのような形になるのでしょうか。
○多屋参考人 以前に全国2万カ所ぐらいの、水痘と帯状疱疹をたぶん診れるるであろうという病院の先生に調査をさせていただいたことがあります。入院するぐらいの帯状疱疹の患者さんは、年齢のピークが大体70歳ぐらいのところにありましたので、そこに至る前の、例えば60歳ぐらいで接種をして、細胞性免疫を高めておくというのも1つの方法かとは感じております。
○岩本委員 前に委員会のときに伺ったような気がするのですけれども、アメリカで水痘ワクチンと帯状疱疹ワクチンという、用語の使い分けをしているのはドージスの問題があると伺ったと思うのです。製剤としては別になるのですね。
○多屋参考人 アメリカでは、先生がおっしゃられましたように水痘ワクチンと帯状疱疹ワクチンと2つの予防ワクチンがあります。使っているウイルスは、もともとは全部岡株で一緒なのですけれども、ウイルスの量が水痘ワクチンよりも、帯状疱疹ワクチンのほうが多い製剤となっております。
○岩本委員 帯状疱疹ワクチンのほうが多い。
○多屋参考人 ウイルス量は多いです。
○岩本委員 そうすると、安全性試験とか、そういうことの問題になってくるのですか。
○井上先生 小児に対しては、3,000PFU、大人に対しては約2×104のPFUになっています。我が国の製剤の場合、小児用も含めて1×104から3×104PFUが実際のドーズとして入っています。現在の生物菌の基準では1,500PFU以上あればいいのですけれども、我が国の製剤の場合には副反応が起こらない結果として、たくさんのPFUをドーズとして入れることができます。それに対して米国の製品の場合には3,000PFU以上入れると副反応が非常に出ます。そのために成人と小児を使い分けることになっています。
○岩本委員 そうすると、1個のワクチンで水痘帯状疱疹ワクチンとなる可能性があるということですか。
○井上先生 我が国の場合は可能だと思います。
○岡部委員長 いま議論されている2回接種というのは、あくまで水痘の予防であって、帯状疱疹の予防というのは副次的な目的で、主目的ではないという考え方だと思うのですが、それでよろしいですか。
 それから前にもちょっと言ったかもしれないのですが、私はバイオテロの研究班のほうもやっていて、バイオテロで天然痘が想定される範囲でいちばん多いのですけれども、それの鑑別診断というのは必ず水痘が出てきます。水痘がある限り、水痘が常にバイオテロの鑑別診断に入っているということ。
 それから、世界各国からバイオテロではないかということで、「天然痘発生」といったニュースがチラチラと出るのですが、それはまず水痘ですが、写真が送られてくると、確かに水痘との鑑別が難しい例が時にあるのですが、検査をしてみると、やはり水痘ウイルスであることが明らかになっています。ということは、水痘がなくなればこのような悩みはなくなるわけで、水痘ワクチンはバイオテロの脅威に対する対応でもあるとも思っています。
○岩本委員 小児の水痘ワクチンに関してですけれども、ワーキンググループの推奨は、まず1回接種を勧めるのか、最初から2回接種ですか。例えば麻疹のように初めから2回を目指すのですか。
○多屋参考人 これをまとめる中で相談をした内容がここに書いてあるのですけれども、できれば2回接種を推奨していく。ただ、その2回目の接種の時期については、今後検討も必要だろうと思います。まずは1回接種で始めた後、そんなに長く経たずに2回接種で完全に水痘を抑制してしまう方法もあるかと考えております。
○岡部委員長 これは、2回接種というものの考え方は、次のムンプスのところに議論としてはつながると思うのです。
○谷口参考人 そうしますと、目的はエリミネーションと考えていいわけですね。
○多屋参考人 水痘、帯状疱疹ウイルスは潜伏感染するウイルスですので、エリミネーションというと帯状疱疹が残るだけ難しいとは思うのです。可能な限り患者数を減少させるところがその目的かと考えております。
○岡部委員長 それでは、話を次のおたふくかぜワクチンに移していきます。私は、WHOの会議などに出て、よく日本の疫学状況を尋ねられるのですけれども、水痘とおたふくかぜについて数字を述べると、向こうは絶句して全体の地図から日本を外してしまうのです。なぜならば、そんなにたくさんあるはずがないだろうと言うのです。実際は、いまのところほぼ自然発生状況に近いのが水痘ともう1つのムンプスですけれども、これについてお願いいたします。
○多屋参考人 引き続いておたふくかぜワクチンの話を10分弱でさせていただきます。まずファクトの追加編なのですが、これも水痘と同じで社会経済学的な影響のところで、ワクチンの接種の費用について、前回お示ししておりました5,000円と1万円に加えて、新たに6,951円という予防接種費用の計算についても付け加えたものを6頁に掲載しております。こちらも水痘と同じで、支払者の視点というのは医療費にかかった費用、社会の視点というのはいろいろな看護の費用とか、その他それらを含めた費用。社会の視点においても、支払者の視点においても、ワクチンの定期接種化による社会経済学的な効果はあるという結論になっています。
 8頁からについては、前回のファクトシートに付け加えた部分です。流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)による死亡報告数です。人口動態統計に基づきますと、年間大体1~2人の死亡者で過去を調べた中で最も多かったのは1997年の4名でした。
 ワクチンの有効性と安全性については、現在我が国で使われている2つのおたふくかぜ単味ワクチン、星野株・鳥居株のワクチンと、もう1つ臨床治験が終わって承認申請がなされているけれども、まだ承認はされていないM-M-RTM2というワクチンについて、添付文書の内容とか、ファクトシートに付け加える部分として12頁から14頁まであります。これらをまとめたものが15頁からの「評価・分析編」となります。ここから簡単にお話を進めていきます。
 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は水痘と同様に、子どもの軽い病気と思われがちではありますが、大体1~10%程度の無菌性髄膜炎が合併します。ただし、無菌性髄膜炎はそんなに予後の悪い病気ではありません。しかし、一方ムンプス難聴は0.5~0.01%、そしてムンプス脳炎・脳症は0.3~0.02%は極めて重篤で、後遺症を残し予後不良です。ムンプス難聴については、近年、日本からその頻度について小児科の先生方からの非常に貴重なデータ・論文が出ております。
 また思春期を過ぎると精巣炎、精巣炎を合併すると睾丸萎縮、精子数の減少等が報告されており、むしろ不妊の原因となるのはまれであるとの記載があります。そのほかにも膵炎、関節炎、甲状腺炎等々多くの合併症があって、決して子どもの軽い病気とは言えない現実があります。
 次にまん延の状況というか、患者さんの状況ですが、いま岡部先生からお話がありましたように、全国の年間の患者数ですが、水痘は毎年毎年100万人程度患者さんが出ているという、全く変わらない流行パターンを示しています。おたふくかぜについては、毎年流行なのですが、特に5年に1回大きな流行があります。その最も多かった2005年の年間推計は135.6万人、95%信頼機関で127~144万人。最も報告数が少なかった2007年でも43.1万人、95%信頼機関で35~50.8万人と推計されています。
 発症年齢は水痘よりも若干遅く、幼児期にあって4~5歳、3~6歳で全患者の約6割を占めております。不顕性感染も水痘と違って、水痘は不顕性感染はほとんどありませんが、ムンプスは約3割が不顕性感染があります。しかし、不顕性感染の患者さんにおいても、ウイルスは排泄をされていて感染原にはなります。
 次は致命率、致死率ですけれども、ここも水痘と違うのは、水痘は死亡される方が毎年10数人います。おたふくかぜについては死亡者は少ないのですが、脳炎等重篤な合併症を起こす方がいます。それから難聴については不可逆的ですので、そういう後遺症という点からも重篤な病気と考えられるかと思います。
 その調査を、岡部先生の研究班でさせていただいたことがあります。これも同じように、全国約2万カ所の、ムンプスの患者さんが入院するであろう診療科に調査をさせていただきました。入院患者さんの数は、おそらく年間5,000人程度で、水痘と同じぐらい入院されているだろうということがわかりました。死亡の報告はなかったのですが、合併症が多く報告されてまいりました。
 もう1つ、妊婦さんに対するムンプスの影響として、妊娠3カ月までの妊婦さんがかかると25%が自然流産するといった報告があります。先天性奇形は報告されていないのですが、こういう影響もあります。
 感染力については、水痘や麻疹よりは低く、大体風疹と同じぐらいで、1人の患者さんが周りにいる免疫がない方に移す数、基本再生産数R0というのは、研究によってかなりばらつきもあるのですが、17頁の上のパラグラフに書いてあるような数字で報告をされています。治療法は、残念ながら抗ウイルス薬はありませんので、対症療法のみとなります。
 ワクチンの目的、安全性ですけれども、現在、日本では2つのおたふくかぜワクチンが市販されています。以前は、さらに2株、3つの会社でワクチンが作られていて、もう1つは臨床試験が終了した後、承認申請がされているMMRと、こういう種類のワクチンがあります。
 18頁で効果です。中和抗体の陽転率は90%以上と高く、4~5年後に2回目を接種すると、さらに抗体陽性率は95%程度に上昇します。先ほどの岡部先生のご質問にありました、2回接種の効果というのは、かなりたくさんの論文が出てきているのが現状です。ほとんどの先進国では、MMRワクチンの2回接種が定期接種になっている国々が多い現状があります。
 18頁の真ん中のパラグラフにあるように、1回の定期接種をしている国では、ムンプスの患者さんが88%減少し、2回の定期接種している国では99%患者さんの数が減っているというのも報告されています。既に2回の定期接種を14年間行ったフィンランドでは、おたふくかぜによる重篤な後遺症例や死亡例がなく、野生株の排除を宣言するといったことが1996年に行われています。
 ワクチンを受けた方が、自然にその後おたふくかぜを発症されたとしても、その患者さんからのウイルスの分離率は、ワクチンを受けていなくて発症した方の半分と言われていて、分離される期間も非常に短いので、周りの方への感染リスクは、未接種で発症した方よりも低率であると言われています。
 おたふくかぜワクチンの目的は、2回接種を行って患者さんを減少させること。本人にとっては重篤な合併症を予防すること。ワクチンを受けたくても受けられない多くの方々を守るという3つの観点があるかと思います。WHOは、ワクチンによって、麻疹と先天性風疹症候群のコントロールできた国は、おたふくかぜをコントロールすることを勧めています、というのが19頁の上に書いてあります。
 安全性については、水痘ワクチンとは違います。おたふくかぜワクチンによって、以前はMMRワクチンの後の髄膜炎のことが問題になって、これが中止になったという歴史が日本にはあります。おたふくかぜワクチンの接種後にも、当然ムンプスウイルスは神経親和性が高いウイルスですので、理論的にも無菌性髄膜炎という副反応は起こってしまいます。しかし、おたふくかぜワクチンの接種の後に起こった髄膜炎の頻度を、国内でNakayama先生らが『ラクチン』という雑誌に論文を載せておりますけれども、1万人に1人ぐらいと見積もられていて、以前MMRワクチン後の無菌性髄膜炎の頻度として報告されている数よりも随分低い数字になっているということが、19頁の真ん中ぐらいに記載されています。
 しかし、MMRワクチン、Jeryl-Lynn株を使ったMMRワクチンについては、無菌性髄膜炎の頻度は極めて低いということになっています。それが19頁から20頁までに記載されております。
 医療経済学的な評価については、いちばん初めにご紹介いたしましたのと同じで、これも水痘と同じように家族が看護や付添いで、仕事や家事を休むことによる負担、生産性損失を含めた、社会の視点の分析結果は、1回1万円で、1歳と5歳の2回接種した場合においても、罹患にかかる費用減少額が、予防接種にかかる費用増加額を上回ると推計されていて、定期接種化については医療経済学的観点から導入の根拠はあると考えられています。
 予防接種の実施ですが、感染力は麻疹よりは弱く、ほぼ風疹と同じぐらいの感染力と言われています。集団免疫効果も、水痘と同様にあります。接種率が3~6割ぐらいのときは、部分的に排除されます。そして患者さんの年齢が高年齢にシフトする。接種率を85~90%にすると罹患危険率が0となって流行が終息すると言われていますので、やはり接種率を高く維持することはとても大事だと思います。抗体保有率が85~90%になると、herd immunityにより、ムンプスの流行は阻止できると予測されています。
 予防接種の持続期間は、ワクチンを接種して1年後に約2%、4年後に約4%、8年後に約8%と4年ごとにワクチンを受けてもかかる人が増えていくのですが、抗体の半減期は約4年ということからこういうことがあります。しかし、それはワクチン接種後数年間の半減期で、それ以降になると抗体化はプラトーに達するという報告があります。
 現在の日本のムンプスの流行は、幼児期の3~6歳児が全体の患者さんの約6割を占めることから、1歳になったらワクチンの接種を始めることで十分発症を予防できる。また高く維持することで、ムンプスウイルスの流行の連鎖を断ち切れると予想されています。
 米国では、1977年から定期の接種が始まって、1989年から2回接種が導入されていますが、多くの先進国、多くの国々がこの方法に倣って接種が行われていて、少なくとも12歳までに追加接種をしたほうがよいとまとめております。
 供給状況については、現在2つの単味ワクチンがあって、承認申請されているワクチンがある状況です。
 対象者については23頁で、先ほどの水痘とも重なりますが、現在の添付文書では、生後24~60月の間に接種することが望ましいと記載されていて、今後我が国で導入される場合のスケジュールとしては、次のような考え方として現在MMRワクチンが1期、2期、1歳と小学校入学前1年間のところに接種されていますので、それとの同時なども考慮の1つかと思います。
 総合的な評価です。結論としては、ワクチンの有効性と安全性、ここが水痘と違うところなのですが、ワクチンの有効性と、それからワクチンによる有害事象、副反応のことを理解して、そしておたふくかぜの疾病としての重症度と一緒に、まず正しく理解してもらうことが必要ではないかと考えています。現在は、重症化例が毎年数千人の単位で出ておりますので、この状況は一刻も早く解消すべく、我が国も遅滞なく直ちに定期的な接種を推進して、キャッチアップも含めて1歳以上の子どもたちから接種する必要があると考えました。この結論を導いたには3つのポイントがあります。
 1番目のポイントは、おたふくかぜは子どもの軽い病気と考えられている傾向にありますが、罹患後の不可逆的な合併症は決して軽視できるものではありません。難聴は不可逆性ですし、合併する脳炎は極めて重篤です。
 2番目のポイントは、定期接種化は集団免疫の観点からも必要性が高い。海外ではほとんどの国々がMMRワクチンの2回接種という形で多いのですけれども、世界的におたふくかぜの発生件数は激減し、現在もなお流行を繰り返しているのはエジプトとリビア以外のアフリカ諸国と、日本を含む東アジア地域の一部の国だけに限られているのが、先ほど岡部先生が海外に行かれると、そういうふうに言われるというところかと思います。
 3番目のポイントは、集団免疫効果もありますので、ワクチンを受けたくても受けることができない基礎疾患をもつ方や、妊婦さんを守ることになるかと思います。しかし、水痘と同じですけれども、患者さんの年齢を上げることになりますので、中途半端な接種率はよくないため、定期接種化等により高い接種率を確保する必要があると考えています。既におたふくかぜワクチンは、MMRワクチンを使った歴史があって、その時期はムンプスの流行が抑制されるというか、既に国内で証明されています。医療経済性についても、水痘ワクチン同様優れている結果が出ておりますので、今回の論点としました。
 検討すべき課題として今回挙げたところに2つあります。定期接種化については、やはり受けやすい環境づくり、これはほかのワクチンも同じですが、できれば2回接種が望ましい。2つ目の観点はおたふくかぜワクチンに特徴的な部分だと思うのですが、現在流通している国産の単味のワクチンでまず開始するのですが、もし多価ワクチンが使用できるようになった場合などは、有効性や安全性を複数のワクチンで正しく理解した上で、どれを利用するかを検討する必要があると考えています。
 検討事項としては、自然感染後の無菌性髄膜炎の合併は非常に高いものなのですが、ワクチン接種後の合併率はワクチンの株によって異なっています。Jeryl-Lynn株が最も髄膜炎の合併頻度が低いのですが、現在国内で使われている星野株、あるいは鳥居株の無菌性髄膜炎の合併頻度は10万接種当たり、25頁に挙げているような数となっております。
 一方、免疫原性については、国産のおたふくかぜワクチンのほうが、Jeryl-Lynn株を含むMMRワクチンより高いと言われています。MMRワクチンは、どうしても麻疹が含まれていますので、熱が出るのは麻疹ワクチンによるものが多くを占めるわけです。単味のワクチンと、MMRワクチンの発熱率についても違いがありますので、こういうことを考えながら接種スケジュールを考えていく必要があります。以上がおたふくかぜワクチンです。
○岡部委員長 ありがとうございました。おたふくかぜワクチンについてのご説明をいただきましたので、委員の先生方からご質問がありましたらお願いいたします。
○岩本委員 おたふくかぜワクチンの副反応に関しては、髄膜炎は減ってあまり心配はなさそうだということですね。しかし、難聴を起こす頻度が、国産のものと海外輸入ワクチンの間で有意差があるということですか。
○多屋参考人 ワクチンによって起こる難聴は極めて低い。自然感染、自然にムンプスにかかったときに、難聴が、いままで1、2万人に1人と言われていたのが、もっと高い頻度でムンプス難聴が起こっていることを、最近、日本の先生が論文にされていまして、片方なので気が付かれなかったようなことが最近の問題点として挙がっています。
○岩本委員 MMRで使われている外国産の麻疹ワクチンと国産のものとの発熱に関する差ですけれど、ウイルス株による差の原因はどこにあるか、わかっているのですか。
○多屋参考人 原因というか、麻疹のウイルスそのものの性質が、やっぱりどうしても熱が出てしまうので、あると思うのですけれども、国産のMMRワクチンと比べると、これぐらいの差はありますということは、情報としてはあるかと思います。
○岡部委員長 それも、私の知っている限りでは、比較するワクチン株によって違うみたいで、FF8などでやるとあまり差がなくなってしまうという報告もあるようです。 それから、私も質問ですけれども。髄膜炎は、残念ながらワクチンによっても起きてしまうときがあるのですが、その髄膜炎の予後、もともとムンプスの髄膜炎というのは、自然感染でもそんなに悪くはないのですけれども、ワクチン株による髄膜炎の予後はどうですか。
○多屋参考人 それも以前、全国調査をしましたときに、自然感染したムンプスによる髄膜炎、それからワクチンによって副反応として起こった髄膜炎の両方を調査したのですが、そちらのほうが、例えば、入院期間が長いとか、重症であるとか、そういったことは出ていないので、ワクチンによる髄膜炎のほうが重症ということは、いままで報告されていないと思います。
○岡部委員長 それと、数万から十万に1例というと、比較的珍しいと言っていいと思うのですが、でも、Jeryl-Lynnの他でも起きるわけですね。それがあまり外国で問題になっていないというのは、MMRがこれだけやってあるのに、あまり無菌性髄膜炎についてはそれほど問題になっていないのは、多屋先生、何か情報がありますか。
○多屋参考人 情報というのは、ここに挙げた以外はちょっとないのですけれども。ただ、髄膜炎というのは、先生はもちろんご存じだと思うのですが、髄液検査をしてしまうと、どうしても細胞数増多はありますので、検査をする頻度が高くなれば、細胞増多の頻度としては多く出てしまうとは思います。ただ、無菌性髄膜炎として発症した頻度について見ると、若干、株によっての頻度の違いは出ているかなと思います。
○岡部委員長 廣田先生は何かご質問ありますか。
○廣田委員 考えているところです。
○岡部委員長 ムンプス、つまりおたふくかぜの場合、非常に疫学状況が、水痘もそうですけれども、先ほど申し上げたように、自然に近い状況で、目立たないけれども合併症のある方も結構いるということが、できれば予防したほうがいいという、1つの大きい根拠だと思うのです。水痘とムンプスの大きい違いは、結論のところでも述べられているように、副反応がなく完全に抑えられるワクチンでは残念ながらない。髄膜炎も起こり得るのですけれども、そのレベルが、自然に放っておいた場合の髄膜炎の発生、あるいは難聴の発生に比べれば、ワクチンを行った場合の副反応としてのそういう発生は非常に少なくなる。そこは十分な理解を持って進めないと、副反応が出たのではないか、となってしまうのでないかと思います。ポリオがそういったような形で、ポリオがいちばん最初に日本で流行していたときは、5,000、6,000例のポリオがあって、その麻痺を防ぐために生ワクチンを導入して、それできれいに自然のポリオはなくなったけれども、ワクチンによる、1年か2年かに1遍出るワクチンによる麻痺例、これももちろんあってはよくないので、なくそうという努力があるわけです。ムンプスは、導入すると、もしかするとそういう状況にはなり得ると思うのです。そういうところも承知した上で、必要であるという判断をするならば判断をすることになると思うのです。
○岩本委員 やっぱり、髄膜炎は一度社会問題になったので、社会的にセンシティブな部分だと思います。株がいくつかありますね、その中で、恐らく株というのはメーカーがパテントをかけて自社製品を用いるのでしょうけれども、そういうものについて、安全性の高いものを共有していくような方向はないのですか。
○多屋参考人 現在、使えるワクチンは、いまのところ市販されているのは2つの株です。その2つの株は、その効果についても副反応の頻度にしても変わらない状況にあります。ただ、以前、MMRのときの頻度よりは、ここにもちょっと書いて、市販後の調査などもあるのですが、1万とか1万2千人に1人ぐらいの頻度で報告されていますので、以前に言われた、千数百人に1人よりは頻度がもしかすると低いのではないかと、論文を読んで思っているところです。
○岡部委員長 座長側から説明してはいけないのですけれども。髄膜炎の発症率は高いけれども、免疫原性から言うと、国産と海外は、これはまた違いがありますよね。
○多屋参考人 はい、その点も、今回の最後の結論のところで、結構、おたふくかぜは、いろいろなところを比較して書いた部分があって、副反応は低いけれども、有効性については現在の国産ワクチンはより高いと言われています。ですので、発熱率、髄膜炎の発症率、そしてその効果について、理解した上で、自然感染による重症化と比較して、接種をやはり進めていく方向なのかなと考えているところです。
○廣田委員 集団免疫のところ、妊婦の流産を防ぐところですが。この中に、3カ月までに罹患すると25%が自然流産という報告がありますが、これはどのようにして調べてあるのですか。
○多屋参考人 ちょっと、調べ方は、すみません、いますぐにはあれなのですが。恐らく、妊娠初期に罹患して流産された方が。すみません、調査方法は、論文があるので調べてきたいと思いますけれど、そのような記載になっております。
○岡部委員長 あとは、よろしいでしょうか。ムンプスという病気は、後ろの方に対する説明なのですが巷では、不妊の原因になる、特に男がかかると危ないという印象が非常に強いのではないかと思います。いまだにそういう質問をいただくのですけれども。統計上はそういう問題点は意外に少なくて、それよりも難聴などのほうがはるかに多く、しかし隠れており、特に、多屋先生が説明したように、片方だけなので気付きにくいけれども、結局、それは学習であるとか、通常の生活に若干の影響が出てくると思うのです。多屋先生、そこは何かありますか。
○多屋参考人 難聴につきましては先生がおっしゃられたとおりです。ここにも記載しているのですが、なかなか気付かれることが少ないので、学習効果についても影響が出ることがある、などのことも記載されたものがあります。
○岡部委員長 はい、ありがとうございました。
 では、次に話題を移したいと思います。次は、いままでの水痘あるいはムンプス、小児を中心とした病気、それから成人の肺炎球菌と、ちょっとまたニュアンスが違ったものです。この検討会でもいちばん最初に出たと思いますが、これは基本的には癌を防ぐワクチンであるというところでスタートしているB型肝炎です。これについては、多田参考人からお願いします。
○多田参考人 前回のHPVと同じように15分と思っていたら10分と言われ、今日初めて5分と言われたので、申し訳ありませんが、10分を目指します。
○岡部委員長 大丈夫です。もう少し時間があるので、10分なら大丈夫そうです。
○多田参考人 B型肝炎ワクチンの作業チームは小児科医、内科医、公衆衛生医、また、医療経済学者の方、それと、ウイルスとワクチンの専門家の方の7名になっています。今日は、ウイルスとワクチンの専門の石井先生にご同席いただいています。
 それでは、B型肝炎ワクチンの報告書について、評価・分析編の項目の順に従ってご説明します。まず、対象疾患の影響ですが、新しく図を改めましたので、1ページの図1をご覧ください。今回、ファクトシートの図を改めています。HBV感染によって一過性感染となるか持続感染となるかは、感染した年齢によって異なります。5歳以上では、HBVに感染曝露した感受染者のうち持続感染となるのは1%未満で、ほとんどは一過性感染となります。そのうち20~30%が急性肝炎を発病し、残りの70~80%が不顕性感染で終わります。1~2%で劇症肝炎となることを除けば、多くの場合の予後は良好です。一過性感染の感染径路としては、主に感染者との性的接触が挙げられます。一方、持続感染ですけれども、こちらは主な感染径路は母親からの垂直感染であり、また、新生児、乳幼児期の水平感染も原因となる。1歳未満に感染した場合には90%、1~5歳未満では20~50%が持続感染、即ちHBVのキャリアとなります。持続感染の最も大きな問題は、慢性肝炎と進んだ場合に、その10%未満ですが、肝硬変・肝癌へ進行することになります。
 3ページの【7】、遺伝子型についてです。臨床経過はウイルスの遺伝子型により差があることがわかっています。遺伝子型はAからJの8つに分類されますが、従来日本ではBとCが主体であって、これは急性肝炎から慢性肝炎への移行がまれとされているウイルスでした。しかし、現在は遺伝子型AのHBV感染による急性肝炎が性感染症として急速に広がりつつあります。この遺伝子型Aというウイルスは、これで急性肝炎になると発病後の抗ウイルス量の期間が長くて、遷延化、持続感染化する確率が高いため大きな問題となっています。その下の記載ですが、これまで血清のHBs抗源が消失した場合には治癒したとみなされていました。急性肝炎は治ったと言われていたのですけれども、実際にはこのような場合でも、ウイルスが微量に肝臓内に残ることがあって、免疫の障害される状況下においてウイルスの再活生化が生じ、ウイルスが増殖して強い肝炎を引き起こす場合があることが最近わかってきました。これも今回、新たな問題点と言えると思います。
 次に、疫学状況については16ページ、評価・分析編で説明したいと思います。まず、B型の急性型肝炎です。これは1999年4月。
○予防接種制度改革推進室次長 すみません。先生がお持ちのものと配付資料とページが1ページずつずれているようです。
○多田参考人 気が付かなくてすみません。
○岡部委員長 項目のタイトルを言っていただければわかりますから。
○多田参考人 大変失礼しました。こんなことで時間を取って。
 17ページの28行目からになります。まず、B型の急性肝炎です。感染症法に基づく全種届出疾患となっています。診断した医師には義務が課されていますが、報告書は減少傾向にあって2007年以降は200例を下回る状況です。1年間にB型急性肝炎の患者さんは200例になります。しかし、ほかの調査などからしますと、年間5,000人程度と推定されます。急性肝炎の発症者が一過性感染の20%から30%とすると、感染している人は年間2万人程度いると推定されます。一方、慢性肝炎の発症状況は、症状もないことから難しい状況ですけれども、先ほどご説明したように、急性肝炎で遺伝子型Aが増えてきているのと同様に、慢性肝炎でも遺伝子型Aによるものが多くなっている状況が調査からわかっています。
 次に19ページ、治療です。急性肝炎は自然治癒の傾向が強いので特別な治療を要しません。慢性肝炎では、現在のところ厚生労働科学研究班による治療ガイドラインに従う治療が多く行われているのですが、これに多く用いられている2つの薬、インターフェロンとエンテカビルの2剤ですが、これらにはそれぞれに、副作用など結構大きな問題点もあり、できれば慢性肝炎の患者さんも減らしたいと思います。
 次に20ページ、予防接種の効果・目的・安全性についてです。ワクチン製剤は、遺伝子組換え技術を利用した不活化ワクチンです。ポイントとしては、日本ではHB単独のワクチンしか使われていませんが、海外ではB型肝炎以外のワクチンと組合わせた混合ワクチンも認可されています。接種回数は不活化なので3回接種が必要です。接種体制を含めた効果を見ますと、多くの国で全ての小児を対象とした接種、いわゆるユニバーサルワクチネーションが行われています。これによってキャリア率の低下、及び急性肝炎の減少に大きな効果が上がっています。一方、日本を含むいくつかの国では、HBVのキャリアから生まれたお子さんを対象としたセレクティブワクチネーションが行われていますが、こちらではキャリア化率の低下にとどまっていて、急性肝炎の減少という効果は得られていない状況が見られます。ワクチンに含まれているウイルスと遺伝子型が異なる場合の効果については、世界的にも日本においても、この違いによって何か問題があったことはありません。ちなみに、現在日本で使用されているワクチンは、遺伝子型がCのものとAのものです。持続時間で見た効果は20年以上続くと考えられています。
 次に、この予防接種を導入する場合の目的です。3点挙げました。1点目は、急性肝炎を減らすことです。これは、急性肝炎を発症すると、自然治癒傾向が強いとはいっても長期入院が必要となり、時に劇症化して致死的となります。それから、遺伝子型Aが増えてきていますので慢性化の増加が懸念されます。性的接触を感染径路とした成人層の感染拡大も懸念されています。それらが理由となります。次に、持続感染キャリアを減らすことです。これは現在も行われている理由ですので省略します。それと今回の3点目として、再活性化の方たちも今後増えることも懸念されますので、これも目的の1つに付け加えてみました。ワクチンの安全性ですけれども、これは長く世界中で使用されていますが大きな問題となったことはありません。
 医療経済評価についてご説明します。今回これをかなり書き替えましたので、ファクトシートのファクト追加編で少しご説明したいと思います。5ページになります。先進国において、今回、国が導入すべきはユニバーサルワクチネーションなのかあるいはセレクティブ、いまのままなのかを論点として、ほかのワクチンと同様に、文献的考察と厚生科学研究班による分析の2つを行っています。
 まず、文献検索ですけれども、先進国においては、過去10年間に既にユニバーサルワクチネーションが導入されているか、あるいは、有病率の低さからユニバーサルワクチネーションは効果的ではないと判断されていることから、あまり文献が多くはありません。日本と同じくセレクティブワクチネーションが行われているアイルランドでの報告があり、それでは、セレクティブだけ行っていますが、近年HBV感染者の増加が見られていて、ユニバーサルにしたほうが費用対効果がよいとしている報告が見られました。
 次に、厚生科学研究班による分析です。先行研究を基に、7ページの図2に示す、感染とその後の進展についてのマルコフモデルを構築して、100万人の出生コホートを設定し、分析期間を一生涯として分析しました。表2に示しているのですが、ワクチン接種費用は当然増えるのですが医療費は下がります。現行のセレクティブからユニバーサルとした場合の増分費用効果比は、1 QALY当たり8,681,752円。これは閾値として設定している500万円を超えてしまいますので、このままだとユニバーサル化の費用対効果はよくないという結果になってしまっています。しかし、分析では、3回接種で18,696円という値段を使っているのですが、これは保険点数なのですが、これが接種費用が10,500円以下にすることができれば、1QALY当たりの増分費用効果比は500万円以下にできることを試算しました。これを示しているのが図3のグラフですので、ご興味のある方はご覧ください。
 さらに、図4と図5をご覧ください。今回用いたモデルからHBV感染に起因する肝硬変・肝癌の生涯リスクを推定したものをお示ししました。実際、肝癌も肝硬変もともにそれほど患者数は多くはないのですが、それでもユニバーサルワクチネーションを導入すると、現行のセレクティブと比べ、肝硬変を9分の1に、肝癌を7分の1程度に減らすことができると試算されました。なお、本分析に当たっては、疫学情報、医療費の情報など、少し少ない部分があることと、再活生化の発生状況の算出ができていないことを付け加えます。
 予防接種の実施について、24ページでご説明します。目的を果たすための接種率としては、80~90%程度が必要で30%では不十分と考えました。ワクチンの供給については、これから私たちが述べる接種対象者の分は現行量ではカバーできませんが、将来的な増産は可能であるとの回答をメーカーから得ています。
 次に、私たちが勧奨したいスケジュールです。アとウにそれぞれの理由を、イとエに具体的な対象者年齢を書いています。まず、1つのグループは乳児を対象とした接種です。これは具体的には出生時、1カ月健診時、生後3~6カ月時の3回接種が望ましいと考えました。十分な接種率とする意味で、現行、HBs抗原陽性のお母さんから生まれた出生児を対象に行っているのは、生後2、3、5カ月ですけれども、これだと受診回数が多くなるので、出生時に1回やってしまう方法を考えました。
 次に、思春期です。これは急性肝炎患者さんが減っていないことや、遺伝子型Aの急性B型肝炎ないし性感染症として広がりつつあることから、こちらでもカバーしておいて早急に減少させることを目的としています。こちらは、具体的には、HPVワクチンと同様に、初交年齢前での接種が望まれるところです。
 以上のところから総合的な評価として、我々としては、我が国でHBワクチンの定期接種化を進めるべきと判断しました。
 最後に、検討すべき課題として残った点です。B型肝炎ウイルス感染者の同居家族に対する接種。それと、混合ワクチンの導入と患者数の実態把握。また、補足ですけれど、同時に接種率の把握も必要であることも付け加えたいと思います。そのほか、新たなワクチンの開発、生産量に応じた検定の対応を可能とする、それらのことを課題として付け加えさせていただきました。以上です。
○岡部委員長 どうもありがとうございました。それでは、B型肝炎についてご質問がありましたらお願いします。
○廣田委員 1点、教えてください。不顕性感染を減らすという目的は、このワクチンでは全く期待できないのですか。
○多田参考人 抗体を保有してしまう方に。
○石井先生 不顕性感染を減らす目的に関しましては。
○廣田委員 単純にそれでは、感染を減らすで結構です。
○岡部委員長 感染全体を減らすという意味ですね。
○石井先生 それがこのワクチン接種の目的だと理解してよろしいのではないかと思うのですけれども。
○廣田委員 この中では、急性肝炎を減らすということが前面に出ておりますので。
○岡部委員長 書き方の問題ですね。最大の目的は肝臓癌と肝硬変の減少なのです。でも、その次には、感染を減らすわけですけれど、感染は、当然、不顕性感染も減らしていくことになると思うのです。私の考えは間違っていますか。
○石井先生 このワクチンは、あくまでいちばん基本は、B型肝炎ウイルスの感染を予防するというのが第1の目的でありまして、その結果として、発癌を予防することになるわけですから、感染を減らすという目的にも合致していると考えています。
○多田参考人 ページも間違えているようなので、ちょっと慌ててしまったのですけれども。安全性の前の、23ページの23行目辺りに、目的として、感染そのものを減らすことも言いたいということをちょっと書いています。すみません。
○廣田委員 ありがとうございます。
○岡部委員長 キャリアを減らしていくということは不顕性感染を減らすことになるのではないですか。
○多田参考人 はい。
○岡部委員長 この場合、ワーキンググループで、定期接種化、あるいは定期接種的なという言葉も使われていますが、そういうものの導入がふさわしいというのは、ユニバーサルワクチンのことを強くリコメンデーションしているのか、あるいは、思春期のことも含めてやっているのか、あるいは、そこに少し、リズムに差があるのか、そのところはどうでしょうか。
○多田参考人 欲張ってあれなのですけれど、やはり、急性肝炎そのものを減らすという目的もありますし、ここになぜ思春期を挙げたかという理由も書きましたけれども、ユニバーサルという意味では、定期的な接種は2つの年齢層。思春期のほうは、こちらが追いつけばおしまいにするということで、2つの年齢層を同時に動かしてやりたい、それを勧奨しました。
○岡部委員長 できれば2つのほうがいいのは、そうだと思うのですけれど、2つ同時が必須なのか、あるいは、場合によってはステップを分けることがいいのか。ユニバーサルを先にやっておいて、思春期は後にやる。いろいろな条件があると思うのです。どっちみち両方とも必要なことはわかるのですけれども。
○多田参考人 同時に進めて、思春期をやめるということです。先にやめる、追いついたらやめるということで、スタートは同時。
○石井先生 つまり、キャッチアップといいますか、要するに、ユニバーサルだけで始めますと効果が出るのにかなり長い時間がかかりますので。正にいま麻疹でやっているのと同じような考え方だと考えていただければ。
○岩本委員 2つの年齢層というのは、思春期と幼児期、そういう意味ですか。
○多田参考人 幼児に。
○岩本委員 それで、もし、思春期のワクチンをやめた場合の質問ですが、乳幼児のときにユニバーサルを受けていても、思春期までに抗体価が下がってプロテクティブではなくなってしまう、ということはないのですか。
○石井先生 それについては、やはり、今後調査が必要になると思います。つまり、乳幼児期に射ったものが、どれだけ抗体価が持続するかに関しまして、約20年は持続すると言われているのですけれども、これがいわゆるいちばん性的活動の活発な20代から30代辺りまで、きちんと抗体価が持続しているかに関しましては、今後きちんと調べて、抗対価がこの年齢まで、例えば、乳幼児期に射ったものがどれぐらい維持されているかについて調査が必要になってくると考えています。
○岩本委員 自分たちの臨床経験から言うと、免疫不全者に対していまのHBVワクチンはつきにくい。一般的に、健常者は抗体価が陽転しやすいのですが、免疫不全のある方には、いまのワクチンのドーズ、ドーズだけなのかどうかははっきりしませんけれど、非常につきにくい、そういう問題も将来的には考えていただきたいと思います。
○岡部委員長 それは疾患としての免疫不全者という意味ですね。ありがとうございます。
○多田参考人 そういうことも踏まえて、問題点の4点目に挙げさせていただいています。
○岡部委員長 いままでのセレクティブイミュナイゼーションに何か欠点があってこちらに移行するということではなくて、それなりの役割は相当果たしたと思うのです。たしかキャリア率も新生児で見れば0.2%ぐらいだったか、0.02%とか0.01%ぐらいまで下がっているので、それ自体は、外国からもユニバーサルワクチンじゃなくても、ここまでできるという証明はされ理解されているのです。それを1歩踏み込んだB型肝炎対策のための必要性という意味だと私は理解しているのです。
 それと、これはここでの問題ではないのですけれども、2、300例の発生というのは非常にこれは少ない数で、本来はもっとB型肝炎発生がたくさんあるのではないかと思うのです。これは医師側、医療側の問題で、届出という制度がまだまだ十分に伝わっていなくて、なかなかB型肝炎の届出自体が難しいところもあるのです。これは、サーベイランスをやる側としては、もっと強くいろいろなところで説明していきたいと思います。ほかにご意見がありますでしょうか。
 それから、海外では、B型肝炎ワクチンの同時接種をやっているのは、これは意見書についてもう少し何か加えることはありますか。石井先生、何かありますか。
○石井先生 海外では例えばアメリカですと、混合ワクチンのほうがむしろ主流ですし、接種もDPTと同時に接種する形を取られています。それに対して日本では、いまのところHBはHBのワクチンしかありませんで、しかもスケジュールが異なっています。それで煩雑ということもありますので、我々としては、できれば接種スケジュールを変えて、DPTなどと同時に射てるようにしていきたい。それも1つの提言としてご理解いただきたいと思います。
○岡部委員長 同時接種についてはいろいろと学会でも検討が進められて、厚労省側も、通知文書などでは決して妨げるわけではないのですけれども、それについて、例えば、小児科学界ではその説明か何かを出そうということになっています。近々それは出てくると思いますので、それも参考にしていただきたいと思います。
○廣田委員 血清型が異なった場合の交差反応の件ですけれども。これはもう、ほぼ十分な交差反応が得られるのでしょうか。
○石井先生 実は、きちんとした調査などはないのですが、現在まで結果的には問題はないと考えられています。例えば、日本の場合ではも、ずっとB型・C型が主流だったわけですが、万有のワクチンはA型でしたが、使われていて特に問題はなかったこともありまして、特に、交叉反応性に関しては、現在のところは問題はないと理解されています。
○岡部委員長 ありがとうございました。それでは各論については前回に引き続いて、いずれもワーキンググループからのご意見は、このワクチンは日本の子どもたち、あるいは大人にとっても必要なワクチンであることの、いずれも同じような結論はあるのですが、それをどうやって導入するかは今後の問題だとは思います。これは少なくとも、こういうワクチンは不要であるということでは全然なくて、まだまだ日本では、このワクチンを使うことによって多くの人々の健康を守れるのではないか。ただ、ワクチンの種類によっては、現在たくさんある病気だから必要だというものもあれば、病気としては全体数は少ないけれども病気のインパクトとして、例えば、髄膜炎が多いとか、そのために、少数の重症者だけれども全体がやる必要がある、あるいは、少数の重症の病気だけれども全体の病気を減らすというような、いくつかのニュアンスの違いがあるので、それらも斟酌していただいて最終的に報告書をまとめることになっていくと思います。一応、これまでワーキンググループから提出していただいた報告書を基に、事務局でサマリーをまとめていると思うので、これについて事務局からご説明をお願いします。
○予防接種制度改革推進室次長 前回にも出したのですけれども、今回は資料6-1から4まで、いまの作業チームのご報告を受けまして、これが小委員会の取りまとめの一部になると理解していますが、サマリー本を作らせていただいています。いまのご説明の中で、特に内容についてのご意見はなかったと思いますが、まずはこの内容を、事前にも送らせていただいていますので、ご意見がありましたらお願いします。それから、前回の3つのワクチンも念頭に置いていただきまして、それらとの違い等々につきまして、何かご発言いただけましたら、また、小委員会のまとめの際に記載する内容、留意するべき点等々につきましてご意見をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○岡部委員長 これは各委員、今日欠席の委員も含めて、もう1回見ていただいて、これについて意見があったら、全体も含めてご意見があったら、意見を提出していただく。この用紙がここにあるので、これにお願いします。
 今日は全体に話を進めていっているのですけれども、その他のことでもしご意見がありましたら、どうぞおっしゃってください。いままで委員会で検討をしようということになっていたものが、これに加えて、百日咳ワクチン、特に思春期層、成人層の百日咳をどうするかという問題。それから、近年、社会問題化している様相も見せているのですけれども、IPV導入の問題について、引き続き討議していくことになると思うのです。これからの予定について、事務局からどうぞお伝えください。
○予防接種制度改革推進室次長 資料1、これはご説明を割愛させていただいたのですけれども、この1ページの下のほうにスケジュールを書かせていただいています。本日が1月18日で4つのワクチンについてご議論いただきました。次々回と書いてありますが、もう今日は済んでいますので次回になりますけれども、次回は百日咳とポリオにつきまして、本日と同様にご議論いただいた上で、これで全て作業チームからのご報告をいただいた形になりますので、それを受けまして全体の考え方についての取りまとめをお願いしたい。そういうスケジュールでお願いしたいと思っています。
○岡部委員長 この次は、この各論の2つに加えて全体の取りまとめをやることになりますか。
○予防接種制度改革推進室次長 可能であれば、その準備をさせていただきたいと思います。
○岡部委員長 それをまとめて部会に報告しなくてはいけないのですが、そこのスケジュールは何かお考えはありますか。
○予防接種制度改革推進室次長 はい。この次の回での取りまとめ状況にもよりますけれども、恐らく小委員会でまとめていただいたことイコール部会の取りまとめ内容と、当然ながら踏まえてのことだと思いますけれども、そのほかのこともあると思いますので、その間をあまり空けないように考えたいと思っています。
○岡部委員長 ありがとうございました。委員あるいは参考人の方から、進め方、その他について何かありますか。
○谷口参考人 資料6-1、つまり、サマリーですが、これは、ここの部分をこう変えていただきたいというのは可能なのですか。
○予防接種制度改革推進室次長 もちろん、最終的に、これは小委員会の取りまとめの部分、恐らく、作業チームのご報告書は参考文献として付けさせていただくのですが、一般の方に見ていただくときにサマリーが必要なので作成させていただいているものです。当然、内容については委員等のご意見を伺って、これから修正をさせていただきます。
○岡部委員長 ですから、わかりやすさとして、いまこれはまとめてあるけれども、括弧付きで(案)と書いてあるように、あくまで案であって、これは最終ペーパーではないので、修正その他もちろん可能ですし、これは絶対的なものではないという認識でいいと思います。よろしいでしょうか。
○岩本委員 医療経済の話で、今日のB型肝炎ワクチンのところです。ワクチン接種費用が変わった場合に費用対効果が変わりますという話がありましたけれど、もし、任意接種のワクチンが定期接種になれば、これは国民にとってトータルで見た医療費あるいは健康に対する経費がすごく上がるわけではないですか。我々は病気の専門家であっても、経済や国の仕組みの専門家ではないので、よくわかりません。しかし、経費の枠組みをどう考えていくのかというのは、国のワクチン行政と大きく関係すると思います。
○岡部委員長 これは事務局から何かありますか。
○予防接種制度改革推進室次長 にわかに、いまお答えはできないのですけれども、部会でも全体の、医薬品としてのワクチン行政と、健康対策としての予防接種策は連携を取っていきましょうというご議論をいただいていますので、何らかの形で連携を取っていく手段につきましては、今後ご相談していきたいと思っています。
○岡部委員長 全体的な部分を考えなくてはいけないということでは、例えば、ムンプスなどもそうなのですが、ムンプスワクチンで起こした髄膜炎に対する、仮に、補償あるいは訴訟の問題が返ってきた場合には、これは医療経済に反映されていないと思うのです。しかし、それでも専門家として、この病気のディジーズバードンも考えて、どうそれを取り入れていくかということを、我々側の意見で、専門委員会としての意見ではないかと思うのですが、その後は、バランスの問題もあると思うので、最終的なところはいろいろな方面からの検討だと思います。ほかにご意見はありますか。よろしいでしょうか。
 先ほどちょっと言いかけたのですが、参考人の先生方には、10分になり、5分になったり、短かくなって申し訳なかったのですけれども、割にうまくまとめていただいたし、議論も出てきたので、一応、ちょっと早目ではありますが、この後の会場のこともありますので、これで今日この会議は終了です。次回のアナウンスは、先ほど予定もありましたが、これでマイクをお返ししますからよろしくお願いします。
○予防接種制度改革推進室次長 また日程調整をさせていただきまして、決定し次第ご連絡申し上げますのでよろしくお願いします。本日はありがとうございます。


(了)

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