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2013年2月21日 第19回原爆症認定制度の在り方に関する検討会議事録

健康局総務課

○日時

平成25年2月21日(木) 10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第14会議室(22階)


○議題

1.開会

2.議事

(1)各方向性のより詳細な検討について

(2)その他

3.閉会

○議事

○榊原室長 開会に先立ちまして、傍聴者の方におかれましては、お手元にお配りしています「傍聴される皆様への留意事項」をお守りくださいますようお願い申し上げます。
 これ以降の進行は、座長にお願いいたします。
○神野座長 それでは、これから、第19回を数えますけれども、「原爆症認定制度の在り方に関する検討会」を開催させていただきます。
 委員の皆様方には、お忙しいところを、また大変お寒い中を御参集いただきまして、本当にありがとうございます。伏して御礼を申し上げる次第でございます。
 それでは、議事に入ります前に、事務局から委員の出席状況の報告と資料の確認をお願いいたします。
○榊原室長 本日の出席状況でございますが、坪井委員、高橋進委員、佐々木委員、三藤委員から欠席との連絡をいただいております。
 また、高橋滋委員、草間委員はおくれて到着されるとの連絡をいただいております。
 次に、お手元の資料について御確認をさせていただきます。
 議事次第、資料一覧に続きまして、資料1「第18回検討会における主な発言」
 資料2「議論のポイントと各方向性の整理表(集約版)」
 資料3「グレーゾーンを巡る議論と対象範囲の考え方」
 資料4「原爆放射線と健康影響」
 資料に不足、落丁がございましたら、事務局までお願いいたします。
○黒木室長補佐 カメラはこれまでにお願いします。
(報道関係者退室)
○神野座長 どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入らせていただきますが、これまでお示しいたしました3つの方向性に基づいて各委員の皆様方から御議論を頂戴し、制度化に向けた具体的な議論を進めてまいった次第でございます。
 前回は、委員の皆様、十分御承知のとおりに、疾病の重篤性の考え方などをめぐって議論を頂戴をいたしました。
 今回は、前回お話を申し上げましたように、「グレーゾーン」という言葉が重要な言葉として出ておりますので、ここについて少し取り上げて議論をさせていただこうと申し上げた次第でございます。この「グレーゾーン」という言葉がやや概念的に、いろいろ使われているような気もいたしますので、事務局にそれを整理いただいて、それを参考にしていただきながら議論を頂戴できればと思っております。
それでは、事務局から資料につきまして御説明いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○榊原室長 まず、資料1は「第18回検討会における主な発言」でございます。各委員におかれまして御確認いただければと思います。こちらを資料2に入れ込んでおりますので、こちらのほうで御説明申し上げたいと思います。
 資料2、A3紙でございますが、1枚おめくりいただきまして、各方向性での議論、特に疾病、要医療性に関する議論でございますが、2ページ、方向性1に関連しまして、被爆者全部の疾病を加算とは言っていない。少なくとも国際的に放射線との関係が認められる疾病を加算対象にしなさいという提案をしている。被爆者の病気を何でも認定しろと言っているわけではない。がんとか白内障とか心筋梗塞だとか、例示という格好でやっている。骨粗しょう症は挙げていない。
また、方向性2、3に共通する意見といたしまして、完全に治癒したら、どこで認定を解除するかという問題が出てくる。重篤度は手当のランクをつけるということで提案したが、重篤度は手当に関係するが認定とは調整関係しないという御意見。
発病から治っていくまでの過程がどういう状況かということまで要件に取り込むという考えはなくはないと思うが、大変。重篤度を常に個人ごとの病状だけの意味に捉えずに、病気そのものの類型的な違いに着目して違った基準に取り込んでいくということではないか。
あるいは、個々の方々の状況は3年に1回の現況届をうまく機能するように見直す必要があると思うという御意見。
重篤性から見て最低限ここまでは認定し、その後手当のほうをどうするかということではないかという御意見。
放射線起因性の濃度を薄めるだけで救済するのは若干無理があるので、要医療性の中で、重篤度という表現が妥当かはわからないが、放射線起因性を若干広げるための理屈が立てられないかという考え方ではないかという御意見。
白内障で手術をしたら治ってしまう人と、ずっと(がんで)転移を続けて亡くなってしまう人が同じように要医療性でよいのか。それを重篤度で言うとすれば、議論の中に入れたほうがいいという御意見。
病気によっては期間限定で、この類型の病気ならばこの程度の期間見てあげればいいということを医学的に仕分けが可能かどうか考えてもよいのではないかという御意見。
ランクづけして、フルにもらっていた方がもらえなくなるだけで終わってしまうのが一番悪い。実際にグレーゾーンのところがうまく取り込まれているのかどうかをある程度考えておかなくてはいけないのではないかという御意見。
判定する行政、申請する被爆者の側にとって余り煩雑にならない制約条件があると思う。また、介護保険の場合は最初から有効期間を設けているので、疾病によってはそういうものを入れてもいいのではないかという御意見。
(グレーゾーンについて)放射線があるかないかという場所のグレーと、疾病をどこまで入れるかのグレーもあるという御意見。
3ページに進んでいただきまして、手当額を階段にするということに関連する議論でございます。方向性2、3共通の議論としまして、可能であれば本当に困っている方あるいは重篤性が強い方について、より手厚くしていくという基本的な考え方はいいと思う。本当に現実的に運用が可能なものかどうかということも、議論するときには十分踏まえてもらいたい。
(グループ分けについて)余り複雑にし過ぎると制度設計が難しくなる。疾病の種類とかに帰着させると、取り込む可能性はあるのではないかという御意見。
疾病を認定するときに、ゼロか13万円でなく、類型化する中で重篤度で判断してする話なので、要医療性とは切り離して考える必要があると思うという御意見。
(グループ分けを)類型化するときに縦軸も横軸も総合的に判断して、両方とも考えなければいけないと思うという御意見。
病気の類型化は、要医療性の要件の中の問題ではなくて、いわゆる原爆症に対する手当の給付の性格づけを考えると、重い病気であるか、軽い病気であるかによって手当の額が違ってしかるべきだろう、一番根本のところの違いだろうと思うという御意見。
早期がんの場合とそうでない場合で、いわゆる重篤度という目で見れば、認定の段階での基準として取り込むには複雑過ぎるという御意見。
グループ1~4は複雑で、ワーカブルな基準にしようとなると、大なたを振るったような基準が必要という御意見。
事務局で、方向性3と2をコンバインした領域で、階段での視点から基準、あるいはグループ分けを使えないかどうか、御検討をいただくと制度化が少し促進されるという御意見。
4ページに進んでいただきまして、方向性2、3、両方に共通するものとして入れさせていただいていますが、被曝量、個体差、実情の差、かっちりと決め切れない部分があるからこそグレーゾーンをつくる。そのグレーゾーンをいかに取り込むかということをここまで議論してきた。
それから、認定は医療の給付なので、グレーゾーンを(制度に)入れたときに、グレーゾーンの人たちの医療費は全部給付するのだということを前提にして議論していることを確認してほしいという御意見。
それから、(医療費について)二種は一種と切り離して、原爆症に準ずる状態として認定するとしており、グレーと割り切って保険と併用する形もあると思うという御意見。
それから、下にまいりまして、3つの方向性に共通するものとしまして、概論的に出すのは難しいのではないか。グレーゾーンについての見解がこういう領域の中で出されているという実態論に基づいたものを出してもらうことになると思うという御意見。
1枚進んでいただきまして、5ページ目でございます。こちらも2、3共通のものといたしまして、医療特別手当の意味を考えると、例えば生命にとって大変危険であるとか、日常生活が困難であるとか、ADLが高いか低いかとか、あるいは5年生存率から再発の危険があるとか、これを重篤度と呼ぶかは別として、こういう要因を入れることで、すごく説明しやすくなる気がするという御意見がございました。
続きまして、資料3について御説明申し上げます。「グレーゾーンを巡る議論と対象範囲の考え方(特に方向性2と3の明確化)」としております。
1枚おめくりいただきまして、1枚目は前回の御議論をある程度整理したものでございます。
重篤性を、生命や日常生活への影響、治癒の可能性、再発の可能性などを踏まえ考えてはどうか。
疾病の重篤性に応じて、段階的に手当額を設定してはどうか。例えば、がんと白内障では、生命・日常生活への影響等が異なり、手当額に差をつけることとしてはどうか。手当額は、例えば、疾病ごとの基準とするなど、なるべく大くくりの基準とすべきではないか。絶えず変化する症状をもとに、細かく設定し直していくのは、受給者の負担、行政事務の簡素化の観点から適当ではないのではないか。症状が変化したり、完治したりすることについては、認定更新や現況届け出をしっかりすることにより対応すべきではないか。疾病によっては、認定期間をあらかじめ限定しておくことも考えられるのではないか。
それから、疾病ごとの要医療性の内容の明確化ということで、現在でも、認定更新や現況届け出により要医療性の状態にあるか否かを把握しているが、要医療性の要件をなるべく明確化するなどの対応が必要ではないか。
以下3枚は、前回の資料をそのまま提出させていただいております。説明は省略させていただきます。
続きまして、6ページに進んでいただきまして「グレーゾーン」という資料でございます。グレーゾーンについて、2つの使い方がされているので、分けて考える必要があるのではないか。1つ目としまして、行政認定と裁判における救済事例の乖離を指す場合。もう一つは、もう少しサイエンティフィックに、放射線の影響について、多くの専門家により可能性が示唆されているが、世界的な合意に至っていない状況を指す場合。
これまでの発言をこの2つにある程度分けて整理したものが次の資料でございます。7ページ目でございます。「行政認定と裁判における救済事例の乖離を巡っての主な発言」ということで、総論部分としまして、個々の司法の判断にばらつきがあるので、取り入れるべき判断と、参考にならない部分があって、ある種合理的な判断の分かれ目があるのではないか。
司法と行政の乖離を完全に埋めるに至らなくても、現状を改善できればいいと思う。完全に司法と行政のギャップを解消する方策については、無理という回答もあり得る。
30近い判決の大部分で今の認定のやり方はおかしいという判断をしている。極端に言うと科学的な知見だけに基づく認定だけをやっていると救われない人たちが出てくるので、認定のやり方を考えるべきではないかというのが言外にある。
司法の結果を行政が無視したと言うが、制度運用の認識としてはいかがなものか。新しい審査の方針では放射線の影響に疑問がつくところまで相当広がっている。とりわけ放射線白内障や放射線起因性のある心筋梗塞など。しかし、現在の運用でかなり広げてやっている。
方向性1に関連しまして、乖離を埋めることができないのだから、制度全体が破綻しているのではないか。
あるいは、たくさんの判例で行政が認定できない例があった。それを解消するため法律をどう変えるか議論してきたが、今までの認定制度をそのまま残すということは、何も変えないということになってしまい、解決できない。
司法への申立権は個人の権利なので、司法に訴える現象はずっと起きると思う。
大臣の認定をなくしたら、認定がなくなるので、手当も税金も使えない。そこが最大の問題。
方向性2に関連しまして、「原爆症に準ずる」という文言につきまして、科学的な根拠となると現在の認定でも相当無理をしている部分もあるので、無理をしないでグレーゾーンで拾うということ。
裁判をなくすため全体を見直すべき。グレーゾーンを設けても争いはなくならない。
司法判断を仰がないとする趣旨が、制度見直しの全てだとは思わない。
方向性3に関連しまして、放射線起因性は科学的知見をベースとしつつも純粋な科学で説明できない部分があるものであり、法律上の要件として説明するものではないか。
要件に明確に当てはまらない場合の総合判断は必要で、新しい審査の方針のこういった仕組みを残し、医療分科会の知見を生かしつつ、新しい審査の方針を客観化するために法令で規定をしていくことを考えるべきではないか。
また、司法と行政の間をどう埋めるかについて、司法の判断を丸ごと入れるというより、行政の制度として新しく引き直すという考え方も重要。
疾病対象とはどのような疾病を指しているのか。相当程度固まっているとはどういうことなのかというような御意見がございました。
また、次の9ページでございます。「放射線の影響を巡っての主な発言」でございます。よりサイエンティフィックなものなどでございます。
総論部分に関連しまして、少なくとも放射線に被曝したというときに、疫学的に確立した放射線の影響があったという範囲と、そうとは言えないという非常にグレーゾーンに相当する線量、被曝量というものを1つの基準としてある程度持っていないといけない。
また、2つ目ですが、疫学調査は広島、長崎以外でも行われているが、少なくとも今の3.5キロメートルを変えなければいけないような知見はこれからも出てこないと思う。
3つ目ですが、残留放射線では確定した知見はなかったと思う。判断に限界があることを理解して議論をすればよい。
また、残留放射線の問題は、認定制度の中で、起因性があるかどうか基準に取り込むほど科学的に確立しておらず、補助材料的に使っただけだろという認識。考慮するとすれば、個別に総合判断していくことではないか。
また、長崎では残留放射線に関して相当にデータがある。脱毛が放射線以外の原因で起こり得るのかはわからないが、少なくとも健康に影響を与えるような量が発見されたことはないし、少なくとも国際的には健康影響があるという言い方はされていない。
方向性1に関連しまして、筋として、残留放射線の影響があることは間違いないと言いたいという御意見。
それから、方向性2に関連しまして、手当の対象となる認定については、裁判例などを踏まえ、放射線起因性が無視できないという程度でのグレーゾーンをつくるべきではないか。
高度の蓋然性に対して「中程度の蓋然性」を認めるのか。裁判では「高度」か「ない」かだ。
方向性3に関連しまして、3.5キロメートルは放射線起因性を議論するときの最も遠い距離だと思う。放射線起因性を維持するとしたら、3.5キロメートル以内でグレーゾーンを考えなければいけないと思う。
あるいは、2~3キロメートルの人で放射線降下物の一定の線量を浴びたとしか判断できない人が出てくると思うが、1人もいないということは、(総合的判断を)していないということのあらわれだと思うという御意見。
続きまして、11ページでございます。こうしたこれまでの議論も踏まえまして、「主な論点」ということで資料を整理させていただいております。
行政認定と司法判断の乖離について。行政認定と司法判断の乖離の解消を完全に図ることはできるのか。行政認定と司法判断の乖離をできるだけ小さくするため、どのようなことをすべきか。
放射線起因性の考え方について。放射線起因性の考え方は維持されるべきか。
科学的知見と救済対象の範囲について。科学的知見に基づいて救済対象を設定すべきではないか。科学的知見が必ずしも明らかでない場合について。
12ページでございます。「対象範囲の考え方(特に、方向性2、方向性3の明確化)」。
(1)各方向性共通。どういう考え方に基づいて整理するのか。距離要件、疾病要件の対象範囲をどう考えるのか。一定の外形的な基準に該当する者のみとするのか、一定の外形的な基準に該当しない場合も認定される余地を残すのか。
(2)特に方向性2について。「原爆症に準ずる状態」の意味。特に、現行の特別手当と健康管理手当の間に「蓋然性が否定し切れない」を設けることは可能か。むしろ「グレーゾーン」は現在の基準に含まれているという指摘についてどう考えるか。放射線起因性というより、疾病の重篤度で差をつけるという考え方について。
(3)特に方向性3について。「裁判例や医療分科会の客観的な積み重ねを尊重しつつ、相当程度判断が固まった」の意味。「裁判例や医療分科会の客観的な積み重ね」を中心に考慮すれば足りるのか。「相当程度判断が固まった」とはどの程度の状態を想定するのか。
続きまして、資料4でございます。「原爆放射線と健康影響」、これまでの資料も含めまして、もう一回お出ししております。
まず、2ページ目でございます。こちらは、これまでも何回か出してきている資料でございますが、「原子爆弾による放射線・熱線・爆風の影響」でございます。爆心近くでは、放射線・熱線・爆風、非常に強いものがありますが、3.5キロメートルになりますと、放射線ですと1ミリシーベルト、熱線・爆風についてもかなり爆心とは違ってくるということでございます。
続きまして、3ページ目でございます。「放射線とは何か?」ということでございます。放射線とは、波長が短い電磁波と高速で動く粒子ということでございます。波長が短い電磁波としては、ガンマ線、光などと同じ性質。これ以外に、アルファ線、ベータ線などがございます。
続きまして、4ページ目でございます。「放射線の透過力」でございます。放射線の種類によって、どこまで届くか、どれくらいのパワーがあるかが異なる。特に原子爆弾による人体影響につきましては、ガンマ線が一番影響が大きかったということでございます。これはアルファ線やベータ線に比べ透過力が大きい。また、中性子線は空気中の水蒸気にエネルギーを吸収されてしまうということが原因でございます。
続きまして、5ページ目でございます。こちらも複数回出させていただいております資料です。「原子爆弾により生じる放射線の種類」。初期放射線、いわゆる直接被曝。それから、残留放射線。1つは誘導放射線、初期放射線により放射化された物質よるによるもの。それから、もう一つは放射性降下物ということで、核分裂によって生成したもの、あるいは核物質自体が降ってくるというものでございます。
続きまして、6ページ目でございます。こちらも複数回出させていただいている資料でございます。「DS02に基づく爆心地からの距離と直接被曝線量」でございます。爆心地付近ですと、例えば、長崎ですと35万ミリシーベルト、広島ですと15万ミリシーベルトなど、非常に強い放射線がございました。これは距離の二乗に反比例しまして急速に少なくなっていくということで、2キロメートル地点で、長崎ですと約140ミリシーベルト、広島ですと80ミリシーベルト程度になります。3.5キロメートル地点では1ミリシーベルト程度になるということでございます。
続きまして、7ページでございます。「誘導放射線について」でございます。こちらも計算がなされております。爆心地に原爆投下直後に入りまして、その後ずっと外にい続けた場合の積算線量は、広島で1,200ミリシーベルト、長崎で570ミリシーベルトになります。1日後に爆心地に入り、その後無限時間い続けた場合の積算線量は、広島で190ミリシーベルト、長崎で55ミリシーベルトです。爆心地から1キロメートルの地点に1日後に入って、その後ずっと外にい続けた場合の積算線量は、広島で3.9ミリシーベルト、長崎で1.4ミリシーベルトとなります。これが爆心地から1.5キロメートルの場合ですと、広島で0.1ミリシーベルト、長崎で0.05ミリシーベルトとなります。
続きまして、8ページ目でございます。これも複数回出させていただいている資料でございます。1ミリシーベルトということでございますが、胃のX線の精密検査が5ミリシーベルト程度、それから、1人当たりの年間自然被曝量、1年間に2.4ミリシーベルト、50年ありますと150ミリシーベルト程度の放射線を通常浴びるということでございます。
そして、次が9ページ目でございます。「自然放射線と被曝形態」ということで、こちらも同じでございますが、自然放射線による年間線量は2.4ミリシーベルト、これは呼吸によるもの、大地によるもの、宇宙から来るもの、食べ物によるものなどがございます。世界で一番年間線量が多いのがブラジルのガラバリというところで、毎年10ミリシーベルトずつ自然に被曝していくということでございます。
続きまして、10ページ目でございます。「100ミリシーベルトで予想される発がんリスク」でございます。100人の方が全員100ミリシーベルトを浴びた場合の発がんリスクの上昇でございます。もともとがんになる方が42名いるとすれば、100ミリシーベルトを100人が浴びると、1人がんになる方がふえるということでございます。
続きまして、11ページ目でございます。「放射性物質の検出について」でございます。放射性降下物の議論に関連する資料でございます。
雨に取り込まれた放射性元素は、染み込んだ地中で土と反応して土に取り込まれる。放射性物質から放出される放射線は、人体に影響を与えないごく微量なものも検出可能です。炭素については、例えば、土器に付着した微量の放射性物質でも年代を推定することができる。
ネバダ、ゴビ砂漠などの核実験による放射性物質が世界中に放出された結果、世界中の土壌で核実験由来の放射性降下物を微量検出できる。しかし、過去数度にわたって放射性降下物について調査した結果、一部地域を除いては、原子爆弾由来の放射性降下物は核実験由来のものに紛れ、明確な痕跡は見出せていない。
続きまして、12ページでございます。「原爆投下後1年以内の残留放射能実測調査」でございます。ここにあります1~7までの調査が、ここに掲げられております時期について行われているところでございます。場所につきましては、場所の欄に記載したとおりの場所で、これだけのサンプルをとっているということでございます。詳細は省略させていただきます。
続きまして、13ページでございます。今度は「昭和50年代以降の残留放射能に関する調査の概要」です。こちらも当検討会に複数回出させていただいております。
昭和51年に広島、長崎で、広島107カ所、長崎98カ所の試料の採取、また、昭和53年には追加的に10地点以上、合計174地点で調査が行われております。また、平成6年には長崎で西山6地区、爆心地から風下東側48地区、放射性降下物の確率の低い16地区などで土壌の採取などが行われてございます。
こうしたさまざまな知見を踏まえまして、14ページでございますが、日米の研究者によりまして「放射性降下物による放射性量の検討」が行われております。
その結果、DS86、結果としては今のDS02に基本的に引き継がれておりますが、放射性降下物は爆心地から3,000メートルの距離で、広島では西方向、長崎では東方向に降下した。
長崎では爆心地より3,000メートル東の西山地区、広島では爆心地から3,000メートル西の己斐・高須地区の放射性降下物がほかより高いことが知られている。長崎における降下物の水準のほうが広島に比べ高いことが報告されている。
DS86では、原爆投下後、比較的早期の放射線の直接測定、それから、土壌中の放射性核種の測定から放射性降下物による被曝線量の推定を行っている。その結果、爆発後1時間後から無限時間そこにい続けた場合の累積被曝線量は、西山地区で120~240ミリシーベルト、己斐・高須地区では6~20ミリシーベルトとされております。
また、西山地区住民に対して、ホールボディカウンターを用いてセシウム137の内部被曝量の測定が行われております。その結果、1945年から1985年までの40年間の内部被曝積算線量は、男性で0.1ミリシーベルト、女性で0.08ミリシーベルトとされたということでございます。
続きまして、15ページです。昨年の12月に放射線影響研究所においても「残留放射線に関する見解」が出されております。
原爆放射線量については、1945年8月から11月までに「残留放射線」量の実測が可能な時期の研究成果がDS86にまとめられている。その結果から集団平均としての「残留放射線」被曝量は「初期放射線」被曝量の推定誤差範囲内であることが示されている。
賀北部隊約250名のうち、原爆投下翌日の8月7日から13日までの間の行動記録が克明に残っていた99名について被曝線量の推定計算を行った結果、最大100ミリシーベルト、平均は13ミリシーベルトであった。また、昭和20年8月から42年間にわたる、この99名の死亡率調査では、全死因とがんに関して全国平均と比べ差は認められなかった。
3つ目の○ですが、寿命調査の一環で、原爆投下後1カ月以内に広島・長崎市内に入市した4,512名についての1950年から1978年までの死因調査があるが、死亡数が増加している証拠はなかった。
4つ目の○は、先ほどと一緒でございますので、省略させていただきます。
最後に、16ページでございます。「放射線の人体影響について」です。放射線が人体に与える影響は、放射線特異的なものではないため、臨床医学、あるいは病理医学などでは十分に証明できず、疫学的な調査結果を積み重ねて、科学的に判断する必要がある。
原爆投下直後から、これまで行われてきた被爆者を対象とした疫学調査からは、低線量被曝、内部被曝による健康影響への関連は認められていないということでございます。
以上でございます。
○神野座長 どうもありがとうございました。
 今、御説明いただきましたように、これまでの皆様方の御議論をまとめた資料1、それから、資料2に加えて、きょうは資料3として「グレーゾーンを巡る議論と対象範囲の考え方(特に方向性2と3の明確化)」、これは、御発言で方向性2と3について明確化すべきだという御指摘もございましたので、このようにさせていただいております。この資料3と、それから「原爆放射線と健康影響」ということで準備していただいた資料4を参考にしていただきながら、このグレーゾーンをめぐる問題等々をいかに制度化を検討する上で考慮していくのかということなどについて、きょうは中心に御議論頂戴できればと思っております。いかがでございましょうか。御議論頂戴いただきたいと思いますので、御発言をお願いできればと思っております。
 田中委員、どうぞ。
○田中委員 御説明の質問なのですけれども、「原爆放射線と健康影響」についてのペーパーの11ページに書いてあります「放射能物質の検出について」の御説明の趣旨はどういうことなのでしょうか。
○神野座長 この資料の趣旨を事務局のほうから。
○榊原室長 なるべくわかりやすくというつもりでつくったものでございます。
○田中委員 例えば、一番上の欄を見ますと、放射線は何でも検出できるみたいな書き方になっていますね。ところが、これは半減期がうんと長くて、固定されたもので測定されるのであって、放射線が何でも測定されるということではないので、誤解を与えるのではないかと思うのですね。例えば、原爆の後のいろいろな放射線は、半減期の短いものは消えてしまいますから、後で測定しようと思っても測定できないわけですね。それがあたかも測定できるような誤解を与えないかと思いましたので、確認をしておきたいと思いました。
○神野座長 ありがとうございます。
その点についてはそれでよろしいですか。ほかに何か。
○田中委員 残留放射線問題は、先日、放影研から発表があったりして、それから、その後、先週ですか、大久保理事長をお呼びして、ジャーナリストたちがいろいろな意見を聞いたり、報告を聞いたりして、詳しいことはわからないのですけれども、残留放射線と個々の被爆者に対する影響の問題については、もう少し正確に考えていただいたほうがいいと私は思っているのです。前からここでも発言しておりました。被爆者1人1人の被曝線量というのは、いろいろな科学的な知見から簡単に導き出されるものではないでしょう。特に残留放射線の影響というのは個人で全部違いますので、簡単に導き出されるものではないでしょう。その辺はこの検討会でもきちんと押さえておいていただきたいということを申し上げましたけれども、先日の会合でも、大久保理事長もそういう趣旨のことをおっしゃったと聞いておりますので、個人の残留放射線の被曝線量を決めるということはほとんど不可能に近いから、もうちょっと詳細に検討を進めていかないといけないということだと思います。
○神野座長 何か事務局からコメントはありますか。いいですか。
 長瀧先生、補足して何かコメントいただければと思います。
○長瀧委員 残留放射能は問題としては大きなことで、グレーゾーンに入れるかどうかということも含めて、非常に大きな問題ですけれども、ここで議論するのかどうかと、何度かお話ししました。今、お話があったように、最近では放影研で見解をホームページに出しまして、それに対していろいろ議論があるという段階です。
ただ、資料について、もし言うとすれば、45年の10月ごろ、長崎の西山地区で直接測定した結果があるのですけれども、それが抜けている。たしか西山地区の高いところは10マイクロシーベルト・パー・アワー以上の放射線が見つかっているということがありますので、それはやはりちゃんと調べたほうがいい。
 もう一つは、これに加えてですけれども、今の残留放射能について、グローバルフォールアウトについて、グローバルフォールアウトというのは、中国、ソ連、アメリカ、国際的な核実験の結果、どれぐらいフォールアウトがあったかということですね。順番に言いますと、国際的なもので言いますと、ANSCEARという国連の機関がまとめて書いてありますけれども、1950年、1960年ぐらいの地上核実験があるときに年間に放出された1人頭の被曝線量が出ておりますし、それが世界各地にたまったということで計算して、北緯40度から50度のところでは、たしか2~3キロベクレル・パー・平方メートルぐらいの蓄積があるという報告が出ております。それにしたがってアメリカは、アメリカ各地、カウンティー別に全部測定いたしまして、ネバダの実験の直後、ソ連、中国の核実験の後の線量が全国として非常に細かく出ているのですね。日本にそういうデータがなかったのです。環境研の結果しかなかったのです。
これはお願いなのですけれども、今度の福島で、ヘリコプターでエアボーンの空中線量、空中から測定した線量として日本中の地図ができております。東日本でやめるという話だったのですが、私個人としては、これは原爆にも関係する残留放射能が見つかるかもしれないので、ぜひ日本全部でということで、今、ある程度ホームページに出ていますけれども、ただ、線量が10キロベクレルで切られてしまっているのですね。10キロベクレルが一番低い線量になっている。私個人的にはもっともっと細かいところまで、アメリカのような地図が日本で書けないかと。
現実に、今、福島で、野菜を調べて引っかかっているところで、セシウム137は引っかかるけれども、134はないというような食品が出ていまして、それは恐らくグローバルのフォールアウトの結果だろうということになっておりますので、グローバルのフォールアウトと原爆のフォールアウトはどこかで区別ができないかと思っておりまして、それはぜひ厚労省のほうから、今度の福島で調べた日本全体の地図のフォールアウトの地上の放射線の濃度、発表されたのは10キロベクレルで切られていますけれども、それより低いところをどこまで見たのか。多少、東日本と西日本で正確さが、細かさが違うと、西は余り詳しくやっていないという話もありますけれども、どこまでかというのを私も個人的に余り聞けないものですから、残留放射能に関係があって、現在あるのか、ないかということを日本で一番詳しく調べたものになると思いますので、ぜひそのデータも出していただければと思います。そこであれば、今でも影響があったということになりますし、なければ、少なくともそういう方向での証拠はないということになります。非常に大事なデータだと思いますので、よろしくお願いいたします。
○神野座長 西山地区の、先ほど長瀧委員がおっしゃったのは準備できますか。
○榊原室長 検討させていただきます。
○神野座長 次回までに委員の皆さんあてに。
○榊原室長 その方向で。
○神野座長 それから、次のは、日本でもつくられているわけですね。この間は、まだ準備不足だというお話でしたが、グローバルフォールアウトの日本での作業もある程度行われているということなのなのですね。
○長瀧委員 福島の後、日本中調べていますので、被爆地を特に詳しく見ていただきたいと。
○神野座長 それもできる限り、準備できるようであれば。
○榊原室長 承知いたしました。
○神野座長 あとはいかがでございましょうか。御意見を頂戴できれば。
 どうぞ。
○荒井委員 資料3の6ページに「グレーゾーン」という言葉がいろいろな使い方をされていると、この説明に関連してちょっと言わせていただきたいと思うのですけれども、この囲みの(1)のところに行政認定と裁判における救済事例の乖離を指す場合と。こういう場合を指してグレーゾーンをどうするかという議論があったことは間違いないと思うのですけれども、救済事例の裁判と行政認定との乖離を指す場合というのは少しアバウト過ぎるということなので、乖離のどこを指してグレーゾーンと言っているかということを考えますと、私の理解では、行政認定と裁判の乖離の一番大きいところは、つまり、放射線起因性を認めるか、認めないか、具体的な当該の申し立てをされている方についての放射線の影響性を認めるか、認めないかというところでの乖離なのですね。
それをもう少し細かく言っていくと、つまり、距離とか時間要件でもって、これまでの科学的な知見をもとにして放射線の起因性ありというふうに見ることができるかどうかの一種の推認できる根拠として、時間的、場所的、距離的な要件を使っているわけですね。3.5キロメートルとか、100時間以内とかという、その物差しに当てはまるならば、これまでの科学的知見からして影響性を認めていいだろうと、そういう使い方をされているわけですけれども、そこが裁判の場合には、その他もろもろの要因を考慮して、そこに残留放射線問題も若干加わってくるかと思うのですが、行政認定では否定されたものが裁判で起因性が認められた例があると、これが1つ。つまり、距離的な、時間的な要件をもっと裁判では緩く見ているのではないか、そこをどう見るかと、これが1つあります。
 それから、どういう疾病が原爆症認定対象になるかというので、一応、行政認定では、審査の方針、新しい審査の方針、いずれにしても、ある病気、特定したものを拾い上げております。これも恐らく今までの科学的知見でもって、放射線の影響性がある程度客観的に認められているという病気を拾い上げていると思うのですけれども、そこが裁判の場面では、もう少し行政認定で類型的に拾われている以外の疾病でも拾われている例があると。それを司法と行政とのギャップと言われていて、そこをどうするかという意味でグレーゾーン、グレーゾーンと言われる場面があったと思うのですね。
 そこで、私の意見になってくるのですけれども、今、申し上げた事例のギャップ、乖離のうち、放射線起因性について緩めるか、緩めないかという議論になると、それはやはり科学的な説明が国際的な水準にも照らしてできないところまで広げるべきではないというのが、これまでのここでの議論として整理できるのではないか。つまり、距離的な、時間的な要件に焦点を合わせて言えば、グレーゾーンというのは、これまでの行政認定の、具体的に言いますと新しい審査の方針で考えられている基準ということになりますけれども、あの基準そのものが、3.5キロメートル要件を初めとして、果たして科学的認知に耐えられるかという意味では、もう既にグレーの部分に手を広げてきているという認識だったと思うのですね。そういう意味では、グレーゾーンをどうするかという場合に、今の大きな枠組みの外につくるか、内につくるかという、そこの議論がこれまでもありまして、きょうの資料にもそういう整理が一部出ておりましたが、私の意見としては、グレーゾーンという言い方をするとすれば、それはこれまでの水準の外に設けていくというのは、放射線起因性との関係で言えば、それは非常に難しい、むしろ適当ではないのではないか。
もう一つ残る問題は疾病の問題になるわけですけれども、疾病の問題についても、放射線とのつながりで、これまでの研究である程度、類型的に、定型的に、影響性ありと言われるものが拾われていて、しかし、裁判では、それ以外の疾病について認定されている、認容された例が確かにあるのですね。そこをどうするか。そこは、私、これまでも発言したと思うのですけれども、疾病名については、科学的な知見というものを踏まえながらも、今の新しい審査の方針で考えられている疾病からふやすことのできるものがありはしないだろうか。これは専門家の先生方の御意見をお聞きしなければならないのですが、私、仄聞しているところでは、それはないわけではないだろうと。ただ、ここの在り方検討会でどういう病気まで広げるべきかということまで詰めた議論をするのが適当かどうか、これはまた別問題であると思うのですけれども、疾病については類型的に広げる方向で考えてもらっていいのではないかという気がしております。そういう意味で、乖離をどういうふうな角度から捉えて、かつ、それぞれの意味での乖離をどういうふうに埋めていくことができるかというのは、少し頭を整理してかかったほうがいいかなという意味で発言させていただきました。
○神野座長 ありがとうございました。
 1の場合であっても、中身まで踏み込んで考えていくと、ある程度ブレークダウンして落とせるということですね。下のほうの問題として。かつ、考える場合には、起因性の問題と疾病の問題を少し分けて考えるべきだという御提案があったかと思います。
 長瀧委員、さっき御発言が途中になったかと思います。
○長瀧委員 全く荒井先生のおっしゃるとおりだと思うのですけれども、感覚的に「グレーゾーン」という言葉を正式に使うのか、今、議論の間でグレーゾーンというのが出ているのか。素人として司法のことを考えたときに、疑わしきは罰せずというような意味で、放射線の起因性というときにしょっちゅう議論されますのは、認められるか、認められないかという議論が1つあります。
もう一つは、否定できるか、できないかという議論があります。そうすると、それを認められるから起因性とするというのか、否定されないからという言葉にしたら、今のグレーゾーンの議論がそのまま入るのかなという印象で、そういう意味から言えば、放射線のないところまで否定できないというのは、やはり論理的におかしいので、1つは放射性起因性というからには、少なくとも放射線があるということでなければいけないだろうということで、放射線があれば、少なくとも疑いがある場合、あるいは否定できない場合という言葉を使えば、グレーゾーンまでいくのかなという、余りおかしくなくですね。
ただ、疾患に関しては、今でも相当に議論しなければいけないところがあると思います。少なくとも今までのところは疾患のことは余り具体的な話題になっておりませんので、それはまた別のこととして、少なくとも起因性というときに、放射線があるというところ、それで引っかかっておりましたのが、さっきからの残留放射線があるとすれば、直接の放射線なら距離で、これ以上はないということは言えるのですけれども、残留放射線の影響があるとすると、距離の区別で否定することが難しい。そこをどうするかというのは、私自身は非常に困って、残留放射線の問題をどこかで決めないと、3.5キロメートルというふうな言い方がしにくくなるのではないかということで、ここで何かの形で、あるいは個別的に判断するというふうな言い方で別個にするのか、放射線の起因性というのがどうしてもとれないということであれば。
私は国際的にというお話をしまして、来週また国際会議がございますけれども、原爆の場合は、その当時の日本の状況によって、放射線によるものを補償しようということは初めから起こった。だから、放射線に関して、影響の感覚が無限に広がるし、その結果として現在があるので、例えば、福島に比べて、ある程度、放射線に対する考え方を、グレーゾーンというものがあっても、それは認められるのではないかという態度でお話ししようと思っております。ですから、認められないということは、裁判で言えるのと同じように行政でも言えるものかどうかですね。疑わしきはというような言い方をよく聞きますけれども、それと同じように、否定できないからというふうな言い方が成り立つのかどうか、ここの議論でと思っております。
○神野座長 高橋委員、どうぞ。
○高橋滋委員 私、原子力損害賠償紛争審査会の委員もしておりまして、そこでシーベルトの話も、医学上の専門家ではないですけれども、いろいろとお聞きしているところがあります。そことの比較を申しますと、3.5キロメートル以内について1ミリシーベルトという数字は、我々の感覚からすると、ぎりぎりの拾い上げた線だと思います。今まで紹介していただいた「原爆放射線と健康影響」の話もそうなのですが、いわゆる入市の時間要件とかも、この資料を見る限りは、かなり広い基準だろうと思います。さらに、今の認定基準でも、個別に判断するという部分があるわけです。したがって、今、議論になっている残留放射線の話を個別判断事項に入れて現在の認定の中に折り込めるかどうかということは、どこかできちっと議論しないといけない。ここを回避しては、司法と行政の乖離の話をしても、議論がそれ以上進まないのではないかと思っております。今回、残留放射線の話を御指摘いただきましたが、私自身としては、厚生労働省からの資料では残留放射線の影響はないという結論であるとは認識しております。もちろん、本当にそうなのかどうかについては、私自身は医学の専門家ではないですが、厚生労働省からの資料は議論の出発点としてよろしいのではないか、と思いました。
 また、その上で、グレーゾーンの(2)なのですけれども、上記の観点からすると、このようなゾーンがあるかについては、疑問であるように思いました。医学的に見て、そういう論点が本当にあるのかどうかということを、残留放射線以外にあるのかどうかということを、すなよち、医学の御専門の方にお聞きしたいと思います。結論的には、私は、今までの話を聞くと、残留放射線以外の話について、そういう話はもうないのではないかと思っているのですけれども、そこのところをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
○神野座長 長瀧委員。
○長瀧委員 国際的には、アメリカのネバダで実験を始める前と後と、ずっと各地域の汚染の程度は調べられておりまして、原爆の何十倍という実験がネバダ砂漠で行われたわけですけれども、その後、定期的に汚染の状況を調べていって、原爆のところだけではなくて、むしろアメリカ全部に広がっているというのが大体の感じなのですね。それから、今度、中国、ソ連で大気実験をやったときに、もう世界中に広がっている。アメリカにも日本にも来ている。ですから、そういうグローバルな感覚から言いますと、日本の1つの原爆だけでそれほど放射性降下物が地域的にあるのかというのは、まだ証拠が余りないというのが国際的な感覚であろうと思います。
○神野座長 今の件、いいですか。残留放射線以外の問題で、ここで専門家がということですね。そういうのは何かございますか。
○長瀧委員 まさに今おっしゃる国際的なフォールアウトは、原爆の後、何千発という実験が世界中で行われていて、それが全部フォールアウトになって、世界中に振りまかれたわけですね。それと原爆の残留放射線と比べて区別できるのか、あるいは、後で何千発も起こっている、世界から飛んできた放射線のほうがはるかに多いということで、原爆のものはもう見つけられないという程度なのか、そこから辺が、客観的な、国際的な感覚としては一番理解されやすい方向ではないか。現実にセシウムその他、落ちたものは現在でも残っておりますので、今からでも測定して、あるか、ないかということは言えるのだと。
○神野座長 どうぞ。
○草間委員 まず、行政と司法、との乖離ですけれども、確かに荒井先生が言われるように、疾病の類型というのはもう一度考え直さなければいけない大変重要な問題だと思います。いずれにしましても、司法も放射線起因性についてはもう認めているわけで、この乖離の大きな原因は何かというと、要するに線量評価の違いだと思います。先ほどから議論になっている、直接放射線についてはいいわけですけれども、残留放射線、すなわち誘導放射線、放射性降下物の線量評価をどう考えるかということで、今、司法のほうでは、急性影響があった人たちについては、その急性影響から判断しようという形でやっていて、要するに、線量評価が乖離の大きな原因だというふうに私は認識しています。
そこで大事になってくるのは、先ほどから議論になっている残留放射線をどう考えるかということですけれども、この残留放射線に関しましては、今回、放影研の大久保先生が公表したというのは、原爆の認定だけにかかわらず、疫学調査そのものに結果にも関係してくるわけですね。残留放射線がありますということになりますと。それで今回のような、12月に見解を出して、残留放射線については、直接放射線に比べて、影響としてはそんなに大きくないのではないかと。確かに、これを幾ら議論しても、誘導放射線については比較的短い時間でなくなってしまうわけでして、放射性降下物についても、先ほどから御議論にありますように、大気圏の核実験の影響のほうがずっと大きくて、広島を特化することができないわけですので、ここで結論を出さなければいけないのだろうと思うのですね。もちろん、1人1人判断するというのは、もう既に認定のところでやっていただいているわけですけれども、残留放射線についてどう考えるかというのは結論を出さないと、いつまでたってもわかりませんではいけないのではないかと思います。
先ほどの放射線影響について、どの程度、国際的な合意が得られているかどうかという話ですけれども、少なくとも放射線影響に関しましては、今、大きく、確率的影響と確定的影響、確定的影響は組織反応という言い方をされるのですけれども、2つに分けられておりまして、確定的影響に関しましては、しきい線量がある、これは組織反応メカニズムから言ってあるわけですので、そのしきい線量の値がどうかということについては、新しい知見が出てくると変わってきます。例えば、循環器疾患等については、かつてはかなり高いと言われていたわけですけれども、最近の国際放射線防護委員会の報告等では、0.5Gyぐらいを考えたらどうでしょうというような数値が出てきているので、しきい線量そのものの値は、たくさんのデータが出てくれば変わる可能性がある。水晶体の白内障もそうですけれども、そういう形で変わる可能性があるのですけれども、いずれにしましても、しきい線量があるということは確かです。だから、確定的影響については、そういったしきい線量をどう判断するかということでも国際的な合意が得られる数字というのは出せると思います。
それに対して、がんに関しては、要するにリスクがない、しきい線量のない直線関係、リニア・ノン・スレショルドという考え方をとりますので、被曝がない限り、ゼロということはあり得ないわけです。ただ、放射線防護を考えるときに、しきい線量のない直線関係を考えましょうという形でやっているわけですけれども、実際には、きょう御説明いただいたように、疫学調査等で結果が出されます。その疫学調査等で、大体どのくらいのところで実際にがんが増加しているかが出される。がんがもともとあるから、きょう御説明いただいたみたいに、男性と女性と合わせると40%の方はがんに罹患するわけですので、自然発生の上乗せという形で考えなければいけないので判断が難しいわけですけれども、少なくとも疫学調査の結果では、広島、長崎の12万人の方たちを対象にしてやったときに、100ミリシーベルト前後のところで確かに有意にがんが増加するでしょう、それ以下のところでは出ていないという形で判断されています。だから、そういう意味では、国際的にある程度、合意が得られたものを、もちろん科学的に判断しますということですので、その時々の科学的な、最新の知見を使っていけばいいわけですけれども、国際的に認められたものは出せると判断していいと思います。
○神野座長 潮谷委員、どうぞ。
○潮谷委員 残留放射線の問題については、この会の1回目か2回目のところで私から質問させていただきました。そのとき長瀧先生がおっしゃいましたことは、要約して言えば、資料3の9ページに言われておりますように、大変悩ましい問題であるけれども、確定した知見というものが今のところないというお話と、それから、基準に取り込むほど科学的に確定していないということを、そのときおっしゃったという記憶がございます。
その後に福島の原発の問題を私どもは経験したわけでございますので、この残留放射線の問題は、認定制度の中に今、取り組むということができ上がっていない。しかし、これから疫学調査も含めて、いろいろな知見等々が出てきた場合には、硬直した考え方ではなくて、見直しといいましょうか、あるいは広げていくということも私たちは考えていかなければならないのではないか。ただ、現状の中でと問われると、私は非常に無理があるという思いを、抱いているところです。
 それから、行政認定と司法の乖離というとこですけれども、この乖離が完全になくなるということは今後ともないのではないか。しかし、行政認定、司法の判断の中に、今も申しましたように、硬直したままでいくということではなくて、そのとき新しいものが出てきたことに対して、科学的に検証し、そしてまた判断を広げていったりしていく要素はあるということで、見直すことも今後とも認定制度に関してはあり得るという柔軟性を持っていくことは非常に大事ではないかという思いを持っています。
 それから、放射線起因性については、これまでの論議の中で、3.5という問題、あるいは時間的な問題、これは科学的な根拠として、私たちは現状では納得をしていくということが必要ではないかと思います。しかし、疾病認定についての要件というのは、今後、この会の中で論議するということではないかもしれませんが、専門領域の中にもう少し検討をお願いして広げていくという方法が残っているのではないだろうかという思いがいたします。ただ、そのときに、重篤性によっての手当額の差、これは大変センシティブな問題も含んでくると思いますので、そこの判断については今後とも慎重にしていかなければならない要素があるのではないかというような思いを持っているところです。
 以上です。
○神野座長 どうもありがとうございました。
 関連がありますか。どうぞ。
○草間委員 先ほど発言させていただいたのは、司法と行政の乖離の中で、私は乖離の大きなところは線量評価、特に残留放射線をどう考えるかで、これについては、乖離をなくすような形で判断をしなければいけないと思っています。そういう意味では、残留放射線については決着をつけないと、いつまでたっても同じことが起こってしまうと思います。いずれにしても、乖離が全くなくなるということは多分ないと思いますけれども、今までの乖離の大きなところは線量評価の仕方、要するに急性影響をやりましょうという形でなっているので、その辺の乖離はぜひなくすという方向でいかなければいけないのではないかと思っています。
 それと、広島、長崎の疫学調査の結果は、残留放射線も含めて放射線全部を考えているので、残留放射線に関連した疫学調査とか、こういったことは多分ない、別だと考えていただいたほうがいいかなと思いましたので、発言させていただきました。
○神野座長 石先生、どうぞ。
○石委員 医学的な知識がないという方はここにもいっぱいいらっしゃるわけで、私もその典型なのですけれども、結局、そういう者の立場からいろいろ考えると、やはり科学的知見という漠とした言い方ですけれども、これをやはりどうしても尊重せざるを得ないのです。恐らく、今、出ている議論というのは、放射線起因性については外形標準が割り切るしかないだろう。3.5とか、時間軸だとか、1ミリシーベルトとか、それはそれで割り切って、今後の物差しにするしかないということは、大体のコンセンサスができているのだと思うのですね。
重篤性については、まだ詰めが足りないから、疾病について類型別にしてということは、まだ作業としては残っているだろうとは思います。
3番目の残留放射線の問題をどうするかということで、今までいろいろな議論があって、きょう、どうなるかと思ったのですが、2012年12月の放射線影響研究所の見解というのは最新の話ですね。ここで出てきた資料というのは、残留放射線の要因というのはそれほど多くないよと。これは高橋さんも言われたけれども、メッセージではないかと思うのですが、そう受けとめれば、ある程度方向性は出てくるのだけれども、私の質問は、極めてアベイラブルな見解として我々の審議会で全面的に受け入れて、これでいきましょうというぐらいに言っていいのかどうか。ほかにこの種の影響度評価なり、残留放射線についての見解がかなり違ってくるような見解が将来出てくるということになると、大きな問題を投げかけてしまうのだと思うので、素人考えで言うと、事務局が整理してくれたということは、現段階においてアベイラブルなデータはなかったのだと思いますけれども、現段階において全面的に受け入れるのだったら、方向性はある程度出てくると思います。私などは、これ以外にないから、これを信用するしかないと思うし、長瀧先生のところ、一番の権威のところがやられていて、昨年の1月に出てきた話ですからね。当然、我々としては受け入れるべきではないかと思いますけれども、その辺について、本当にそういうふうに全面的に受け入れる方向で考えていいかどうかというところが実は疑問であり、質問なのですよ。どんなものですかね、これ。そうなると、ある程度方向が出てきますね。
○長瀧委員 恐らく、ここで決めても、いや、あるのだという主張は絶対になくならないだろうということは当然、予想される状況です。
○石委員 具体的に出してもらって、タイムリミットというのはこの種の議論では必ずあるわけですからね。これに匹敵するような、これを覆すような見解があり得るかどうかということは、ある時期で我々が判断しなければいけないわけですね。私は、この研究所の見解から言うと、これ以上覆ることはあるのかなという気がするのです。
○長瀧委員 去年、やはり残留放射線のことが主になった裁判では、残留放射線があることは否定されています。ですから、必ずしも裁判が全て残留放射線を認めたというわけではなくて、裁判によって今は意見がまだ割れているところもある。一番最近のものは否定されているという格好の判決がございます。まだそういう状況で、いわゆる科学的にという立場から言えば、放影研の声明で、大体国際的にも。
○石委員 決着がつく。
○長瀧委員 だと思うのですが、現実に被曝した方々、あるいは支援される方々の運動はずっと続くでしょうし、それに近いデータは出されてくるのではないかと思うのです。ただ、それの科学的な評価といいますか、評価を客観的に、国際的に動かせるほどのデータがなかなか出てこないので、そういう声明になっているという状況は正しい言い方かなと思います。
○神野座長 草間委員、どうぞ。
○草間委員 去年の12月に出されたものに関しては、今回、残留放射線等を研究している物理学者等が集まってシンポジウムなどが行われた、そういったものも含めて、こういう形で出てきたのだろうと思うのです。残留放射線をどう評価するかについても、世界的と書いてあるけれども、私は国際的という言葉のほうが合うと思うのですが、国際的に認められた現時点での科学的な知見を尊重して判断するとすべきだと思いますと、さまざまな研究者がそれぞれ研究していただくというのはすごく大事なことで、やっていただければいいわけですけれども、とりあえず国際的なコンセンサスが得られたときにはもう一度見直せばいいわけでして、とりあえず残留放射線については、今回、放射線影響研究所が出したこの見解というのは、去年のシンポジウムの結果等も含めて、こういった見解を出したのだろうと思うのですね。
そうしないと、広島、長崎の疫学調査の結果にも関係してくるわけですね。残留放射線がこんなにあります、ありますということの議論になったら、今、少なくとも寿命調査の対象者の方たちに関しては、直接放射線をもとにしてリスクを評価しているわけですので、LSSのスタディーそのものの結果にも関係してくるので、こういう形で、放射線影響研究所は残留放射線についてはこういうふうに判断しますと言って、これはこれで私は1つの国際的なコンセンサスが得られた科学的な知見であると考えていいのではないかと思います。そうしていかないと、いつまでたってもわかりませんと言ったら、今、新たな、例えば、広島の先生方、物理の先生方、いろいろ測定してくださっています。だけれども、もともと試料が得られないわけですね。なぜ得られないかというと、グローバルな核実験の影響のほうがずっと大きいわけです。そこの中で広島、長崎の影響を特化しようとしても、きょう御説明いただいたように、なかなかできない。そういうふうになってくると、ここで1つの判断を私はすべきだと思うのです。
○神野座長 ありがとうございました。
 田中委員、どうぞ。
○田中委員 これは難しいのだと思うのです。一番基本的なのは、原爆の後の残留放射線がきちっと測定されなかったというのが禍根だと思うのですね。それから、残留放射線の場合は、降下物なので、ある範囲できちんと決めることができないという問題があります。今、福島もそうですけれども、風の方向だとか、さまざまな条件が入ってスポットができます。だから、そのスポットをきちんと押さえることは非常に困難だということだと思うのです。そういう意味で、科学的な知見というのできちっと確定できるものがこれからもできないのだというふうに私は思っているのですね。
実際に体験した人間からすると、いろいろな格好で被爆者が移動したわけです。1カ所にとまっていたのではなくて、移動しているのですね。だから、その1人1人はどれだけの放射線を浴びたかといっても、なかなか難しい。特に残留放射線の場合は難しい。ですから、外形要件というのですか、そういう格好で残留放射線の影響を決めないと認定が難しくなるのではないかと私は思います。
長瀧先生もおっしゃいましたけれども、私は長崎の被曝ですけれども、長崎の放射線はプルトニウムがずっと東のほうに流れていったのですね。だけれども、今、東の遠いところはほとんど問題にされていない。実際に患者はそこからいっぱい出ていますのでね。そういうことをどう私たちは判断したらいいかということがあって、どう言ったらいいのでしょうね、認定の場合には、この人はどういう行動をとっているか、被曝後どういう行動をとったかということで、これだけの残留放射線を浴びたかもしれない。例えば、3キロメートルにいても、すぐ中心地に入っている人たちは、誘導放射線の高いのを浴びているわけですね。その人が直後に救援に中心地に入っていったということがどこかで押さえられていれば、その人の放射線を高く評価しておかなくてはいけないという問題もありますし、西山地区なら西山地区に爆発直後に何時間か滞留していたということがわかれば、それはやはり高い放射線を浴びたというふうに判断するということがないといけないのだと思うのですね。そういうのを認定の場合、どうしましょうかというのが、私が何回も言っている残留放射線をどうしますかということだったのです。残留放射線があるかないかではないのですね。1人1人の被爆者がどういうふうに浴びる可能性があるか、可能性があるとしたら、それをどういうふうに認定の中に生かしたらいいかということを考えないといけないというのが私のずっと言いたかったことだったのです。
○神野座長 ありがとうございます。
 山崎委員、どうぞ。
○山崎委員 放影研の昨年末の見解が現時点で最も有力な見解であるとすれば、それを一たん受け入れて、それから、潮谷委員もおっしゃいましたように、新たな知見が得られれば、それを取り入れるという見直しのルールの中で弾力的に運用していくことにする以外ないのではないかと思います。
 それと、もう一つ、疾病についても同じだろうと思いまして、医療の世界で言いますと、保険診療に採用するかどうかという問題がいつもありまして、一定の有効性が認められて、普及した段階で保険診療に入れるというルールがあるわけでございまして、そういったことをこの原爆症の認定の中にも取り入れてはどうかと思います。とりあえず、これだけ審議してきたわけですから、今時点での科学的な知見を尊重しつつ、あとは個別、総合的に認定するという余地を相当残さざるを得ないのではないかと思います。
 それから、疾病につきましては、長瀧先生がここで我々だけで審議してもとおっしゃるとおりでございまして、多くは医学的な素人でございますから、別途そういう検討の場を設けていただいて、その結果をこちらに上げていただくというようなことを考えていただかないといけないのではないかという気がいたします。
 以上です。
○神野座長 ありがとうございます。
 潮谷委員、どうぞ。
○潮谷委員 田中委員がおっしゃった、人は一定の場所にとどまってはいないということは私もとても共感するところです。ここは原爆のことについての論議ですけれども、水俣病の場合も、必ずしも国が認めている地理的なところの中で在住して魚を多食したということではなくて、行商の人から山の上の方たちが絶えず買って食べていたというような事例等々もあるわけなのですね。ですから、田中委員がおっしゃることにとても共感します。
ただ、それが認定という範囲の中で、どのように立証していくのかということの難しさがあるということも事実でありまして、地理的な要件を広げていくときに、どのように考えていくのか、距離的な問題を含めて、どういうふうに考えていくのかというのは非常に個別性が出てくるという、そんな感じがしていまして、ですから、私は共感はものすごくしますけれども、制度として設計するときに、やはり1つの客観的な根拠性というのは、私たちがこれまで論議したことに基づいて、大変大事な部分だろうと思います。しかし、疫学的にきちっと当初のところで証明をされていない、そういったことの影響を受けている人たちがいないとは言えないわけですので、その方々に対しては、やはり認定の中で個別性としてこれは考慮をしていくという部分、裁量的な部分が出てきてもいいのではないか。それは非常にレアなケースですね。
 それと、もう一つ、地理的な、距離的な要件というところで、幾ら言っても、それを立証してくださる人はいるのですかとか、あるいは客観的な資料はありますかと、こういう求められ方をするというのは、税金を使っている以上、ある意味では、これは本当に残念と言っていいのか、どうしても求められてくる要件になっていくのではないか。だから、そういった個別性を持っている方々の認定ということについては、行政のところでも、案件によって考慮するような、そういった裁量権が働くような制度があってもいいのではないかと、私は田中委員の意見と水俣病の問題等々あわせながら、ちょっと感じたところでした。
 以上です。
○神野座長 どうもありがとうございました。
 草間委員、どうぞ。
○草間委員 今の原爆の認定制度はすごく画一的に行われているようなイメージが持たれているとすると、これはちょっと違って、分科会ではそれぞれ個別に判断しているというふうに私は認識しています。特に、どう立証するかというのはすごく難しいですけれども、一応、申請してきた方たちが、原爆投下後の行動等について申請してきた、それ以上のことを立証するというのは難しいので、申請してきた行動を勘案して、爆心地に直後に入りましたと、これは多分、あり得ないだろうというような判断もしながら、個別に判断しているというのは御理解いただかなければいけないと思います。だから、今、判断している基準が余りにも雑駁なのか、あるいはもうちょっと詳細に分けるべきかという議論は必要だと思いますけれども、個別に判断しているというのは、これは御理解いただかないと。行政のほうで、3.5キロメートル以内だったらがんに関しては認めるという形でやっているわけですので、これはすごく雑駁ですけれども、そのほかに関しては、かなり個別に判断しているという御理解はいただかなければいけないのではないかと思います。だから、ここをもうちょっと細かくするかどうかの問題で、これは実際に基準をつくるときの問題だと思います。
 もう一つ、主な論点の11ページの中に抜けているのは、科学的知見の中に入るかどうか、ちょっとわからないのですけれども、要医療性をどう判断するかというのは1つ入れておかないといけないのではないか。この資料はどちらかというと放射線起因性について中心に書かれているので、要医療性について、どこでどう判断していくかということについては、論点の中に入れておいていただく必要があるのではないかと思いました。
○神野座長 どうもありがとうございました。
 潮谷委員。
○潮谷委員 先生、大変失礼な言い方になったかもしれませんけれども、委員の皆さんたちが雑駁にというようなことではありませんので、一言申し上げさせていただきたいと思いました。
 以上です。
○草間委員 非常に先生方、御努力されておられるので。
○神野座長 どうぞ。
○田中委員 草間先生おっしゃったのですけれども、実際は1人当たり1分か2分なのです。その前に行政でいろいろ選別しているかもしれないのですけれども、委員の先生の目に触れていって認定するのは、そんなに時間はかかっていないというのが被爆者にあるのですね。だから、大変申しわけないのですけれども、委員の先生方がきちんと判断をしていらっしゃるというふうにはほとんど思っていないのですよ。現に、前から何回も言っていますけれども、心筋梗塞だとか、白内障などにしても、しきい値内の距離で決めてありますね。それは一般的にいいのです。白内障は1.2キロメートル以内で被曝しないと、これはないというのは、直接放射線についてはたしかそんなしきい値があると思うのです。直後にそこに行っている人たちがいるわけです。行った人はいないとおっしゃるのですけれども、家族などがそこにいるときは、数百メートルまでみんな近寄っていっているわけですね。直後ぐらいに。火災の中は行けませんけれども、周辺からずっと入っていっているわけですよ。その人たちはかなりの放射線を当日受けている。だから、そういうことをきちんと押さえていかないといけないかなということ。これは行政に対してもお願いしたいところです。この認定をしていくとすれば、その人の行動を温かい目で、この人は2キロメートルで被曝しているのだから起こるはずがないというのではなくて、その後、近距離のどこら辺まで入っていっているかということまで調べていただきたいというのが私の気持ちです。
○神野座長 荒井委員。
○荒井委員 先ほど来、何人かの先生方から出ている残留放射線問題については、結論といいますか、ある程度コンセンサスを確認していいのではないか。それは、基準、物差しとして取り込むのは無理がある。将来的な検討を続けていくことについては必要ではないかというあたりが、私も全く同感でございます。将来的なことは別として、現時点でできることと言えば、個別の検討を大事にしていくということしかないと思うのですね。
実は、裁判も、残留放射線を考慮すべきであるという一般的なルールを宣言しているわけではないのですね。放射線の影響によって当該の原告なら原告の方の病気が起こっているかどうか、その起因性を判断していくときに、行政認定で考慮されなかったかもしれないけれども、残留放射線の影響がないとは言えないだろうという、そういう考え方で、個別に影響性があるというふうに認定した例がある。要するに、裁判もやはり個別判断なのですね。
実は、今の認定制度の中でも、総合的、個別的に判断するという枠組みはちゃんとつくってあります。田中先生の目からごらんになると、残留放射線について考慮した具体的な例があるかという疑問がおありかもしれないけれども、考え方としては、影響したかどうかのいろいろな要因を拾う仕組みができているのですね。それは大事にしていかなければならないし、それ以上に一般化した基準に取り込んでいくのは無理があるのではないかという気が私はしているわけです。
 さて、そこで、分科会の認定がどうかという話が出ましたが、ちょっと私、かかわりを持たせてもらっていますので。確かに田中さんのおっしゃったように、1件当たり1時間、2時間かけているかという意味では、時間的にはそうかもしれない。ただ、あそこの場は専門家の集まりなのですね。それぞれの専門の先生方は、医学の分野でなくても、ある程度の知識、経験に基づいて、見ればわかるというところは、素人としては、素人というか、私を含めて門外としては考えなければならない。ただ時間をかけるというものではなくて。のみならず、20人、30人の医療分科会の前に専門分野ごとに部会というものがあって、そこでもんだ上で全体会議にかけている仕組みなのですね。そういう検討過程を経ていますので、分科会で1分、2分だということで、何かラフな検討だというふうに見るのは、そういう方はないと思いますけれども、当たらないと思います。
 それから、もう一つ、多少実質的なことに触れさせていただきますけれども、私はもちろん医学の分野ではございませんで、司法にかかわっていたという立場と、それから、場所的、時間的な該当性ということについて、幾らか自分の経験が生かせるかという目で、そういう場面に焦点を合わせてやっているわけですけれども、医療分科会の先生方、あるいはそれに携わる事務局の方々は、はっきり言って、何とか今の基準で拾えないか、救えないかという考え方で当たっていることは間違いないですね。
早い話が、裁判でしたら、今の基準のどれに当てはまるから認定されたいというふうに書いてくるわけですけれども、そうではありませんよ。何しろ自分はどういう病気になっていて、原爆症認定を申請するということで、例えば、入市の要件に当たるということを書いていない申し立てというのは幾らもあります。そうすると、事務局のほうで、まず入市要件に当てはまるかどうかということをあらゆる資料を点検して、御本人が意識していなくても、そこを拾い上げる努力をしているのですよ。
例えば、担当医の前で入市のことをしゃべったことがお医者さんの作成文書にちょっと出ている、あるいは今回の申請の前に手帳申請の段階でいろいろ申し立てをしたり、資料が残っていますね。そこで入市のことに触れられておれば、必ずこれは拾うという姿勢でやっています。時間的、あるいは距離的な要件でも、4キロメートルだとか何だとか言っているのだけれども、実は、よくよく調べてみたら、具体的にどこで被曝したか、お寺の階段で被曝したなどというのが出てきます。そうすると、お寺の所在地まで確認をして、そこを実測すると、実は3.4キロメートルだなどという例が幾らもあるわけですよ。そういうぐあいで、総合認定というところに直接は関係しないですけれども、今の要件に当てはまるかどうかということについて、御本人が意識していないところまで掘り下げた形で、かなり緻密な認定作業が行われているということはわかっていただいていいのではないでしょうか。
○神野座長 ありがとうございます。
 石委員、どうぞ。
○石委員 大分時間もたってきたのですが、きょうの資料の3の11ページで、主な論点が3点出ていますね。今、荒井先生の実態論まで、あるいは草間さんの実態論までお聞きしていると、大分情報も明確になってきたのですけれども、放射線起因性については、さっき申し上げたように、外形標準というのをある程度とらなければいけないだろうということと、科学的知見と救済範囲の科学的知見というのは、今、ここで議論しているのは、恐らく残留放射線の問題でしょう。それについて、先ほど来、認めるというか、影響研究所の成果を踏まえて、そこである決断をしなければいけないという意味では、この2と3については、ある程度の方向は、ある程度の結論めいたものは出ていると思いますね。
問題は、行政認可と司法判断の乖離というところで、これはある程度まだ議論が分かれているかもしれませんが、私は、完全に解消を図るというのは無理だと思います。そもそも違った次元の判断をしているわけだから、元来、物差しは2つあっていいと思っているのですよ。どういうことかといいますと、大雑把な物差しを、恐らく行政認定というのは外形標準を踏まえてやっているはずですから、さらに個別の判定もやっているというお話でありますから、そういう大きな方向性を示す行政認定というのは一番有力な武器になる。
ただ、田中さんが言われましたように、個別のケース、ケースというのは、大きな尺度、物差しでははかれないのですね。そして、恐らく訴訟が起こるのですよ、不満のときは。これはあらゆる意味でそういうことです。例えば、税法というのがあって、不満があれば不服審判所に申し出る。例示がいいかどうかわかりませんけれども、それと同じように考えれば、私は当然のこと、行政認定で不服の方は司法判断に委ねて、そこで幾つかのケースが出てくる。司法判断の結果が行政認定を覆すというのはまた別の話で、だからこそ行政認定はおかしいというのは、話が逆立ちしているなと思っているのですね。
そういう意味で、これを完全になくすということ、それから、乖離をできるだけ小さくするという、小さくするということ自体も、事柄の性格上難しいでしょうね。私はそういう意味で割り切っているのですよ。ある意味ではかなり思い切ったことを言っているかもしれませんが、恐らく2つの物差しを使い分ける、その使い分け方で、多くの方々がより納得してくれるかという使い方のもうちょっと改善を考えれば、この問題は解決すると思います。解決しなくてもしようがないなという割り切りをするかどうかですね。
○神野座長 ありがとうございます。
 あと、特に御発言ございませんでしょうか。田中委員。
○田中委員 ということで、グレーゾーンというのはそもそも何だったかというのはまだよくわからないのですけれども、グレーゾーンは何かの枠をつくっていこうということと考えてよろしいのですか。グレーゾーンについて、認定の問題と、疾病の問題と、起因性の問題とありますね。そういう要件はグレーゾーンでどうするかというのは、まだよく私には。
○神野座長 また次回御議論していただくにしても、私の印象としては、グレーゾーンという1つの制度をつくるということで皆さん合意はされていないと、そういう理解ではないというふうに考えています。
○山崎委員 それは無理でしょうと多くの方がおっしゃるので、従います。
○山崎委員 つまり、荒井委員のお考えをもう少し幅を広げる、科学的知見を取り入れつつ広げることができれば、それでいいのではないかと思っております。ですから、特に疾病、あるいは病態というものを組み込んで、3.5キロメートルの範囲内で階段をつけるということになるのかなと思っております。荒井委員の御提案では階段がついていないのですが、そこのところでグレーゾーンと言われているものを拾えば拾うということになるのかなと思います。
○神野座長 次のステップに入っていく課題は出てきたと思いますが、私の理解では、今までグレーゾーンについて、少しイメージの違いがあったかもしれないけれども、きょうの最初の荒井委員の発言から、中身をそれぞれ見ていって潰していくと、先ほどの距離要件等々、時間要件等々の起因性にかかわる問題と、それから、疾病の範囲の問題などが出てきて、そういう中身を検討していった結果として、ある程度の御議論が、大体重ね書きができるような形でできたかなということは、先ほど山崎委員にもおまとめいただいたように、意識しておりますので、このテーマの結論というよりも、そもそもグレーゾーンという言葉がいいかどうかは別として、これをテーマにきょう議論していただいたことの中で、これまでグレーゾーンという言葉を使って議論してきたことについてのある程度の方向性は出てきたと、こういうふうに理解しています。
○山崎委員 要するに、あいまいなものをどう受けとめるかということだったのですが、長瀧委員も3.5キロメートルの範囲内であれば、ぎりぎり国際的にも説明がつくのではないかということでございますから、それであれば、あえてグレーゾーンと言わないで、原爆症というくくりでいいのではないかと私は思います。
○神野座長 どうぞ。
○田中委員 ところが、さっきから問題になっています心筋梗塞だとか、甲状腺だとかいうのは、前に「放射線起因性が認められる」という言葉がついているのですね。そのことの理解がよくわからない。いろいろな人が聞いてもわからない。結局、しきい値だというふうに推測してしまうわけですけれども、被爆者の人たちはそういうことはわかりませんから、3.5キロメートルで心筋梗塞だと、当然認定されると思う被爆者が圧倒的に多いわけですよ。で、どんどん却下される。しかも、却下された理由が、あなたは該当しませんみたいな簡単な却下理由になっているものだから、それが不満といいましょうかね、では、もう裁判したいというふうになってきてしまうので、そこのところをもう少し、グレーゾーンならグレーゾーンで明らかにしておかないと、放射線起因性というのは何かということも明らかにしていかなくてはいけないかなと思います。
○神野座長 起因性が、きょうの議論では、もう一つ御指摘いただいた問題。
○田中委員 基準の3.5キロメートルと100時間と、別にあるわけですね。
○神野座長 だから、疾病にかかわる問題というふうに御指摘いただいた問題ですね。その問題を含めて、次回以降、まだ時間ございますので、承りにして、草間委員、どうぞ。
○草間委員 3.5キロメートルの範囲内でやっていく、これはぜひお願いしたいと思うのですけれども、3.5キロメートルというのが国際的なコンセンサスが得られた数値かどうかというと、決してそうではないと私は思っております。だけれども、既に3.5キロメートルという形で認定が行われてきているので、私は3.5キロメートルというのが1つの基準でいいと思います。しかし、これ以上拡げることは避けるべきだと思います。先ほど高橋委員からも御発言ありましたように、原爆だけではなくて、さまざまな放射線の認定のところ、これからまた福島もあるでしょうし、職業病認定とか、さまざまなところに広がっていく可能性があるので、3.5キロメートルが国際的に必ずしもコンセンサスの得られた数値ではないので、その辺のことに関しては、ここの議論はそれでいいのですけれども、最後のまとめのところにそういうようなニュアンスを書いていただかないと。3.5キロというのはあくまでも原爆の認定で用いられる数値だというのはしっかり書いておいていただかないといけないかなと思います。
○荒井委員 今の草間先生の御発言に関連するのですけれども、私、この在り方検討会のかなり早い段階で、行政認定の基準を、今、新しい審査の方針という、医療分科会の申し合わせみたいな形で運用されておりますね。3.5キロメートルの話を含めて、それは専門家の方々から言うと、広がり過ぎているのではないかというお気持ちがかなり強いように私は伺っているのですよ。そういう気持ちを持ちながら認定制度を担当していく専門家の方々のお気持ちというのは、これは余り健全ではないですね。しかし、裁判の積み重ねも含めて、そういう1つの基準が出てきている。それは、もう少し基準を、分科会での基準というよりも、まさにそこをこれまでの積み重ねを尊重しながら、法令でそこの枠組みを決めていくということがあっていいのではないかということを発言したと思うのですが、そこは草間委員のお気持ちにも一部沿うのではないかと思いますのは、科学的知見というのは非常に大事で、原爆症の認定制度の一番支えになるべき知見だろうと思うのですね。しかし、一方で、それは単なる科学的判断だけではないのだということもこの制度の根幹にあるのだろうと思います。それをあらわす方法として、医療分科会というところでの考え方というのではなくて、法律なり、政令なり、省令なりというレベルでそこを明らかにしていくということで、より客観性が持てるのではないか。のみならず、科学のお立場の方々から言っても、それは法令で決まっているのだからということで、科学だけではないという説明も、足りないときにも、あるいはできるかもしれないということで、そういうことを含めて、3.5キロメートルを大事にしていくということだろうと思います。
○神野座長 ありがとうございます。
 ほかはいかがでございましょうか。よろしいですかね。それでは、そろそろ時間でもございますので、本日のこの検討会はこれにて終了いたしたいと思います。極めて生産的に、建設的に御議論を頂戴した点を深く感謝申し上げる次第でございます。きょういただきました議論を踏まえて、かなりのところで、起因性、科学性、その他の問題について、ある程度の共通の認識が生まれたのではないかと思っていますし、逆にまた今後やるべき論点とか、ここの検討会でどこまで深めるべきかという問題もございますが、深めるべき論点なども明らかになってきたと思いますので、引き続き、きょう残された論点などを、次回に議論をさせていただきたいと思っておりますので、それに関連する資料について、事務局と準備をさせていただければと思っております。さらにまた、宿題としての資料などの要望もございましたので、これも事務局と相談をして、可能な限りお出しするようなことを考えていきたいと思っております。
 それでは、これにて本日の検討会は終了したいと思いますが、事務局のほうで何か補足すべき点、連絡事項ございましたら、よろしくお願いいたします。
○榊原室長 次回の日程につきましては、日程を調整の上、追って御案内いたしますので、よろしくお願いいたします。
○神野座長 それでは、大変建設的な御議論を頂戴いたしたことを深く感謝いたします。どうもありがとうございました。


(了)
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