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2013年3月28日 第5回 救急救命士の業務のあり方等に関する検討会(議事録)

○日時

平成25年3月28日(木)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第22会議室(18階)
東京都千代田区霞ヶ関1-2-2


○議事

○佐久間救急・周産期医療等対策室長 
 それでは、定刻より少し早いですが、構成員の先生方は皆さんいらっしゃっているので、これから「第5回救急救命士の業務のあり方等に関する検討会」を開催いたします。本日は、先生方におかれましては御多用のところ御出席賜りまして、誠にありがとうございます。
 本日の議題に関連して、参考人として厚生労働科学研究費「救急救命士の処置範囲に係る研究」研究分担者である救急振興財団救急救命東京研修所教授の田邉晴山様、東京慈恵会医科大学分子疫学研究室長の浦島充佳様にお越しいただいております。また、関係省庁から消防庁救急企画室の海老原室長、海上保安庁警備救難部救難課の平湯医療支援調整官にお越しいただいております。
 それでは、以降の議事進行は座長の島崎先生にお願いします。よろしくお願いいたします。

○島崎座長 
 おはようございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入りますが、まず事務局から資料の確認をお願いします。

○徳本救急医療専門官 
 カメラについてはここで退室をお願いします。
 資料の確認をします。議事次第とともに止めてある資料で、構成員の名簿、参考人名簿、座席表があります。次に開催要綱です。続いて、資料1「第4回検討会の議論のまとめ」ということで、第4回の議事録より抜粋した論点を記載しております。資料2「救急救命士の処置範囲に係る研究(解析結果)」ということで野口構成員からの提出資料、資料3「実証研究の結果を踏まえた教育カリキュラム(案)について」ということで野口構成員からの提出資料です。そのほか、参考資料として、参考資料1「救急救命士の業務のあり方等に関する検討会報告書」、参考資料2「救急救命士法」、参考資料3「救急救命士法施行規則」、参考資料4「厚生労働省令第74号」、参考資料5「救急救命処置の範囲等について」を準備しております。
 本日、郡山構成員より追加資料として「救急救命士処置拡大試行に関する研究(地域メディカルコントロール協議会の要件)」を提出いただいたので、追加で配布しております。資料は以上です。不足等がありましたら、事務局にお申し付けください。

○島崎座長 
 議事に入ります。議事次第にありますように、議題は1「救急救命士の処置範囲に係る研究報告」、議題2「その他」となっております。前回の議論については、今、徳本専門官からお話があった資料1にまとめておりますので、後で御覧いただければと思います。
 それでは、資料2「救急救命士の処置範囲に係る研究(解析結果)」について、野口先生から説明をお願いします。

○野口構成員 
 前回中間報告をしましたが、かなり回りくどい、簡略化できないような御説明で、今回はそれを基にして若干簡略化したいと思いますが、今日は私どもとしては最終報告になろうかと思いますので、なるべく詳細にお話したいと思いますが、後ほど御意見、御質問を頂ければ幸いです。
 2ページ、「実証研究の概要」です。3ページ、目的は前回と全く同じです。実施主体が先ほど御紹介いただいた厚生科研で、平成23・24年度の補助金でやらせていただいております。分担研究者7名、研究協力者としてかなり多くの方に協力を頂いております。実証研究参加者はMC体制が十分確保された地域として選定した39のメディカルコントロール協議会、消防本部としては129消防本部、参加いただいた救急救命士は2,332名ということで、全国の多くの方々の参加をいただきました。
 4ページです。処置の実施者は次の資格を満たす救命士ということで、アドレナリン投与を行う認定を受けている者、我々研究班が示した教育カリキュラムを履習した者、所管するMC協議会において、新しい処置を適切に実施できると認定された者となっております。対象は20歳以上で、本人又は代諾者から処置の実施と実証研究について書面にて同意が得られた者ということです。研究デザインは、非介入期と介入期の比較を行うhistorical controlと呼ばれる方法です。
 5ページです。これまでの経緯として、平成24年度の7月から10月にかけて非介入期間の開始ということで、10月以降、多くの所が11月からでしたが、実証研究に入りました。平成25年に入って、第4回のあり方検討会で中間報告をし、介入の終了が1月31日まででしたので、実際に解析を開始したのが3月で、我々研究班としても大変厳しい状況の中で解析を行ったということです。
 「結果」です。7ページ、報告例ですが、非介入期が昨年7月から10月まで、介入期が10月から1月31日までということで、救急救命士が救急の現場で「処置の適応」を満たすと判断する。また、調査用紙の提出があったものを報告例としました。低血糖、非介入、介入、喘息、ショックとありますが、数はこのとおりです。ただ、当初我々がもくろんだ例数は、低血糖に関しては25例ずつで50例、喘息が63例ずつで126例、ショックも同じ数でしたが、喘息以外はそれ以上の症例が登録されることになりました。
 8ページです。分析対象として、非介入期間のものは全例、介入期間の報告例においては、「不同意」のほか「同意取得に問題あり」としたもの、あるいは事後判断された傷病者を除外したものを分析対象としております。下の点線の枠で囲ってある同意の取得で「不同意」であった例は110例ですが、これは除いております。事後に「同意取得に問題あり」と判断された4例も除きました。
 9ページからは、?「血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与」に関する例です。傷病者の背景ですが、性別、年齢、時間経過ということで、介入期は男性が55%で、ほぼ差はないということです。年齢は少し高くなっていることと、覚知から到着まで、到着から出発まで、出発から病着までと分けております。トータルの覚知から病着までは8.4分延びています。
 11ページです。傷病者の背景の2番目として、意識の状態に関して介入期と非介入期の差ですが、介入期は比較的意識レベルの悪い傷病者の割合が高くなっています。
 12ページです。血糖値ですが、非介入期は血糖測定をやっていないので、病院へ着いてからの最初の血糖値を測定したものです。横軸は血糖値ですが、御覧のとおり低血糖がほとんどです。右側の介入期は少し様子が変わっていて、これは救急隊が現場で血糖測定したときの値ですが、二層性というか、高血糖の所にもかなり山ができているので、この辺が後ほど検討の材料にもなります。
 13ページです。血糖測定、ブドウ糖投与の処置の実施状況ですが、これは前回お話したものに症例数が加わっているので、数そのものは若干変わってきておりますが、非介入が542例、介入が575例です。全体としては大体同じですが、血糖が測定できなかったのが101例で18%、測定を行ったもののうち低血糖でなかったもの、我々は50で線を引きましたが、それが42%あったということです。それを除いた低血糖が276例で、介入の48%です。それに対して、静脈路を確保できなかったものが39%でした。残りの29%が静脈路が確保できたということです。ただし、それに対しても低血糖が静脈が確保できてブドウ糖投与が行えなかった、あるいは途中で止めてしまった、止めざるを得なかったもの、皮下に漏れたとか患者が動いてしまったというようなものが24%あったということで、最終的にブドウ糖投与ができたのが22%の127例でした。
 14ページ、評価項目の分析結果です。15ページ、意識レベルの改善の有無ということで、非介入のときに改善ありと、非介入でも20%は改善していますが、それが介入では45%に増えたということです。改善なしは、非介入は当然処置をしていないので80%だったものが、介入後は55%が改善なしに低下したということで、有意が検定されました。
 16ページです。これは杉本先生から御指示いただいたもので、意識レベルの改善の有無ということで、PP検定、血糖測定まで実施した例に関して、介入群、改善ありが59%、改善なしが41%ということです。非介入と比較すると、これは有意差ありということでした。ブドウ糖投与まで実施したものを比較すると、これも非介入群と比較して、介入群では改善ありが96%でした。これも有意検定で有意差ありということです。
 17ページ、搬送先の選定への効果です。左側の(ア)ですが、これは処置を実施した救急救命士の評価で、客観的なデータとは言えない可能性があると我々も思いますし、御指摘も頂きましたが、「役立った」という人が97%であったということです。右側はいわゆる病院選定で電話の掛け回しがどうかという評価ですが、これに関しては余り有意な検定結果ではありませんでした。ただ、これはいろいろな因子が入ってくると思います。特に搬送先の病院で、こういう患者に対してはこういう状態ならば二次病院でよいとか、そういうことがきちんとされているかどうかは、地域による差も出てくると考えております。有意な検定はできなかったということです。
 18ページです。副次的評価項目、血糖値に与える影響です。介入すれば、糖を注入するわけですから、非介入に比べて介入の部分では血糖値は上がっていると。ブドウ糖投与前後の値もこのように上がっています。
 19ページ、血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与の付加分析です。当初、これは想定した分析ではありませんでしたが、非介入、介入の間で搬送医療機関が異なる可能性があり、また医療機関での治療内容も不明であるため、我々としては参考データということにさせていただきます。これは杉本教授から御指摘を頂いたことに関しての分析結果です。
 20ページ、入院率に関してですが、単変量解析ではブドウ糖投与によって入院率が上がるという結果が出ておりますが、介入と入院率の増加に正の相関が見られたということです。多変量解析では、傷病者因子を調整して検討すると、高年齢、接触時の意識レベルが低い、血糖値が高いことが入院率の増加に正の相関を示していました。介入自体は、多変量解析でも入院と相関関係を認めておりません。これらが入院率を上げている因子であることは分かりましたが、搬送時間の長短に対しては相関関係は認めていないという結果です。
 21ページです。入院の日数に関しては、単変量解析では相関関係は介入によって差は出てきませんでした。多変量解析で何かあるかということで調べていただいたところ、高齢者が入院日数の増加に正の相関を示しているということです。ただ、全体として多変量解析でも入院日数と相関関係は認めていません。また、搬送時間の長短とも相関関係は認めませんでした。
 22ページ、死亡率です。これも同じ表で、単変量解析では有意差を認めています。死亡率が上がるという結果です。多変量解析を行ったところ、介入自体は死亡率と相関関係は認めておりません。先ほどの搬送時間の長短とも相関関係は認めておりまん。
 23ページです。「血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与」のまとめとしては、主要評価項目の、病院前での「意識レベルの改善」は介入で有意に良かったということです。また、これは実施した人の主観ではありますが、病院選定回数に関しては介入群で有意に多かったということですが、掛け回し等に関しては特に有意な結果は出てきませんでした。病院到着時の血糖値も、介入群で有意に高かったということ、またブドウ糖投与によって血糖値は上昇したということです。付加的に実施した分析では、介入自体は、入院率、入院日数、死亡率との相関関係は認めておりません。ここまでについて御意見を頂ければと思います。

○島崎座長 
 23ページに血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液投与の結果のまとめが出ておりますが、いかがでしょうか。

○有賀(徹)構成員 
 11ページと12ページの介入した時期の患者が、非介入した時期の患者とevenではないということですね。ブドウ糖を与えて良かった点、杉本先生がおっしゃったような形で良かった点を挙げて、経過としては良かったという話にしないと、もっとギリギリやれという話になると、全例介入できることを前提にしておいて、封筒を開けてこの患者は介入するとかしないとかということでもしないと、又はブドウ糖を入れているのか生食を入れているのか分からないようにして、入れたことにして運ぶという形にしないと、11ページと12ページの状況について克服することはできません。ですから、今回の結果はこれでまとめるしかないのではないかと思います。

○島崎座長 
 おっしゃるとおりだと思います。介入群のほうが意識レベルも悪いし、12ページの背景が少し異なっているということで、矛盾するようなデータは、この辺りのことや季節的なものもあるかも分かりませんが、そういうものもひっくるめて納得はできるかなと思います。

○横田構成員 
 前回も血糖値の測定とブドウ糖の投与を分けて考えることも必要ではないかということをお話しましたが、そういう意味において、例えば17ページにあるように、血糖を測定したことが搬送先の選定の役に立ったか、あるいは電話の回数が減ったか増えたかというところで血糖値の測定の効果を見ると、右側の(イ)では、血糖値が分かったゆえに受入れが困難になったという結果ですが、これも母集団を取ってきたときに、介入と非介入で医療機関の受入先の格差があったことが反映されていることも考えられないかと。ストレートに血糖値が分かったから取れないというのは、臨床的に違和感があり、そういう意味では有賀構成員がおっしゃるように、そもそもプロフィールの違う集団を比べているのではないのかなと、そういう印象を持ちました。

○島崎座長 
 情報が増えた分だけ、受入側もそういうことなら二次へという話もあるのでしょう。しかし、基本的には納得できますかね。

○杉本構成員 
 話に出た17ページの受入れや回数が増えたという話、あるいはその後の多変量解析の中で、20ページにあるように「血糖値が高いことが入院率の増加に正の相関関係を示した」とありますが、我々は今低血糖に対してのブドウ糖の投与ということで話を進めていますが、介入の受入れの回数が増えたという中に、むしろ高血糖であるがゆえになったというものの見方はされているのでしょうか。低血糖だったら、どこの施設も比較的簡単に対応できることが多いから、普通は受け入れやすいのではないかという想定がされるわけですが、逆に高血糖になっているから、高血糖に伴っていろいろなことが起こってきますが、糖尿病の専門の者がいないから、これは受け入れるのは難しいという話はなかったのかと思うのです。死亡率や単変量、多変量について議論するつもりはありませんが、その辺りをきちんと整理しておかないと、これを行うときに社会的に受け入れられるかどうか、それを1つずつ説明しないといけませんが、どのような説明をするかという問題が起こってくるのではないかと思います。要するに、高血糖と低血糖で受入れがどうなっているのか、高血糖であるがゆえにそういうものに影響を与えるのだということがなかったのか。

○野口構成員 
 私も大変興味がありますが、まだそこまでは調べていません。例数は少ないかもしれませんが、そういう情報はこの研究の中でやられるかもしれません。
 もう1つ、これは分担の研究者の方にお聞きしたほうがいいかもしれませんが、意識障害で、血糖測定の1つの要件としては糖尿病の既往があることという話になって、糖尿病となると高血糖の意識障害もあるので、血糖を測定することによって症状を決めるというところが入っているので、非介入よりも介入のときの高血糖のほうが増えた気がするのです。先生がおっしゃる所は、我々はまだ検討しておりません。

○杉本構成員 
 12ページで2本線になっているのが非介入期と介入期で、年齢等はともかくとしても、これが一番両群で血糖を問題にしようと、それが主たるテーマであるということで、元のケースの中での差が大きく影響しているのではないかと思って質問したのです。
 もう1点、これはグラフの見方の話で、12ページでも7.4、55、403となっていますが、単位はmg/dLですか。

○野口構成員 
 そうです。

○杉本構成員 
 これは片対数ですか。

○野口構成員 
 はい。

○島崎座長 
 この二層性が、入院率や選定に対してそれなりに問題をはらんでいるかも分からないというお話ですね。最後にお話が出るかもしれませんが、今回のデータは個人的にも興味がありますし、世界的にもプレホスピタルのデータとして興味があると思いますので、将来的にペーパーにしていただきたいと思いますが、そのときまでには検討していただきたいと思います。

○野口構成員 
 先ほどの件ですが、17ページの*3で、横田先生のおっしゃったことと重複するかと思って申し上げませんでしたが、血糖測定で、正常化すると高次医療機関が取ってくれなくなるというニュアンスが強いと我々は取っております。それで回数でのフケイが難しくなったということで、まだほかにもいろいろ因子があると思います。

○石井構成員 
 私も地方の神経外科をやっていましたので、専門で当直しているときと、もっと広いカバーで当直しているときと両方ありましたが、例えば意識不明と言われれば否応なしに取りますが、血糖を測って低く、「糖の投与で意識改善傾向です」と言われたら、「ほかを当たったほうがいいのではないでしょうか」と答えるのはある意味当然なのです。そこでアクセスがワンクッション増えるわけですから、良いことか悪いことかということと回数でそれを評価するのは、少し違うのではないかと思います。だから、新しいアルゴリズムのほうがロジカルなのか、ベスト・フィッティングになるのか、それに時間も掛かって結果から見ればそれほど変わりないと考えるのか、そこはこのデータから個別に議論しなければいけないことになると思います。

○島崎座長 
 現場の医療機関とすれば、石井先生がおっしゃったようなことになると思います。しかし、トータルとしては納得がいくというか。

○有賀(徹)構成員 
 東京のMCのルールは、介入した場合にはすべからく三次救急に連れていっていますね。ですから、地域によってMCの状態が違うので、十把一絡げにすると場合によってはミスリーディングが起こり得ると思いますから、この辺りは石井先生がおっしゃったことと併せて、余り深入りしないほうがよろしいのではないかという気がします。

○島崎座長 
 これからはオールジャパンの話になりますから、今言ったようなことも少し是正されるべきだと思います。

○郡山構成員 
 私も皆さんの御意見に賛成なのですが、恐らくこの研究自体が2つの結果を見ているのだと思うのです。医学的な処置の有効性と、それぞれの地域のメディカルコントロールの構造的な問題の2つのことが、結果を左右しているのだと思います。やらなければいけないことは、処置拡大が医学的に有効なのかどうかという評価と、地域のメディカルコントロールを今後作っていくためにどんなことが課題になっていくのか、この2つの作業が今後必要になるのではないかと思います。この2つを明確にすれば、おっしゃるとおり、選定回数が増えたから有効ではないといった話には決してならないはずだと考えます。

○島崎座長 
 皆さん、ほぼ意見が出尽くしたと思いますが、これは今の野口先生からの報告のとおりで、このような形で進めるということでよろしいですね。
(異議なし)

○島崎座長 
 それでは、引き続き、β吸入刺激薬についてお願いします。

○野口構成員 
 24ページ、?「重症喘息に対するβ吸入刺激薬の使用」です。これは中間報告の回でもお話したとおりですが、例数が3例しかなかったという最終結果でした。分析対象としては68例で、非介入が46例、介入が20例、そのうちの17例が投与に至らなかったということです。その理由は、25ページに書いてあるように、添付文書上の制限により投与できなかったものが15例、本人の吸入薬の使用が可能となったために、本人が使用して救命士が関わらなかったものが1例、持っている薬剤の残量がなくて投与できなかったものが1例です。
 26ページです。3例に関して、中間報告後、新たに介入例が出てきました。3例では統計学的にはとても検定にはなりませんが、性別、年齢で非介入と少し差があります。また、時間に関しては覚知から到着までむしろ早くなっているということですが、これも3例なので有意差はありません。
 27ページです。傷病者の状況、β吸入刺激薬を投与した3例の状況です。女性2人、男性1人で、意識レベルの改善、呼吸数の変化、血圧、これは測れていないものもありますが、脈拍、SpO2に関しても3例とも改善したということです。下に非介入期に登録された傷病者の状況を書いておりますが、非介入でもSpO2は救急隊の初期観察では82%だったのが、95%まで上がっているということですが、3例ということで、とても解析するまでには至っていないということです。
 28ページです。まとめですが、当初の想定に比べて処置の適応を満たした傷病者が少なかったこと、満たした症例であっても、所持するβ吸入刺激薬の量がないとか、添付文書の制限により使用できなかったといったものがあって、3例にとどまったということで、結果としては有効性・安全性の評価はできなかったというのが我々の結論です。以上です。

○島崎座長 
 基本的には症例が足りず、結論は出せないということですが、いかがでしょうか。前回から症例数が足りないという話にはなっていて、研究実施期間を延ばすか、あるいは期間内で終わるのかという話をしましたが、一応期間内で終わらせるということで最終結果の症例がこのようになりました。
 27ページの介入群の3例は、3例とも良くはなっているのですね。

○野口構成員 
 そうです。

○島崎座長 
 しかし、とても当初もくろんだ数には足りないということなので、致し方ないかなという気がしますが、いかがでしょうか。

○樋口構成員 
 全体的な話もあるので、もし時間があるようだったら、また後で話をしたいと思いますが、今この場面でこの点にだけ限って申し上げます。これは繰り返し言っていることですが、本人ができて、本人がぼやっとしているのだったら家族がやってくれるような話を救急救命士がやれるかどうかということで問題にしているわけですが、これだけの検証をして、ちゃんと良かったという数字が出てこない限りはやれないという、スキームというか、考え方それ自体がどういうことから来ているのかというと、これは当然医療行為であるという前提です。医者しかできないのだという前提に縛られすぎている。救急救命士は医者ではない。そういう人たちにそれを認めていいのだろうか。しかし、システムというか、法制度のほうから考えていけば、よほどちゃんと救急救命士が医者と相応の、あるいは医者まではいかなくても、医者を補助できるような役割を果たして、患者の安全のために利する有用性という何らかのデータがない限りは、絶対に例外としては認められないという話になっています。
 しかし、患者は実際には家にいて、生活の現場からではどうなっているかというと、苦しくなったら自分で、あるいは家族で話です。そこで同じ問題をこちら側から見ると、むしろ立証責任は、救急救命士にもやらせて、これでものすごく良くなったということを立証するのではなくて、これで救急救命士が介入したことによってとんでもないことが起こっているという話が出てこない限りは、良いのではないかというのが普通の人の感覚だと思うのです。ここの人たちはみんな普通でないと言ってしまったような気がして、そのように受け取られるならそれは訂正しますが、私は法学部にいながらそういうことを言っているのですが、スタートラインをそもそも考え直す必要があるのではないかと。
 どうしてそういうスタートラインに立つのかというと、私の発言が全部憶測みたいなものですが、一番最初のところで医師法の下でこういう話を作っていて、救急救命士法という別の法律があって、やれる範囲を決めておいて、ここまでやっていいのですよというときには、厚労省も消防庁もそうだと思いますが、責任のあることをやらないといけないと、責任感に燃えているわけです。しかし、その責任感というのは個人的な感覚だけではなくて、場合によっては、それで何かあれば責任を問われる立場にあるということの方を気にしている。そういうことがあるとしたら、そのシステム自体を少し考え直す必要があると私は思っています。ここで、3例で特に変な例はなかったというのなら、これでもどうしょうもないではないかという話にはしないで、むしろ普通の患者やβ吸吸刺激薬が必要な方の家族の代表を招いて、どうしてもらいたいかという話を作ったほうがいいと思うのです。何かあった場合どうするかは制度的な問題なので、それはそれとして考えるというのを、本当は最後に言いたいと思っているのです。簡単に言うと、免責法みたいなものをはっきり作ったほうが、むしろ世の中が良くなるのだったら、アメリカでは「善きサマリア人の法」と言いますが、そういう方へ社会を動かしていったほうがいいのではないかと思います。

○横田構成員 
 今、樋口構成員がおっしゃったことに関して、、かねがね疑問に思っていた点があって、それを端的におっしゃっていただいたと。例えば、エピペンが認められてきたプロセスと、今回β吸入刺激薬を検証していこうというプロセスが、真反対側からのせめぎ合いのような形になっています。本人または家族はできることを救急救命士がやっていいのではないかということで承認された代表的例がエピペンなのです。今回のような細かな検討がなされないで、教育委員会や父兄の方が学校現場で必要なのだというところから始まって、とんとんと進んだ経緯がある一方で、β吸入刺激薬については実証検証の数をそろえてから、あるいは効果を見てからやりましょうとおっしゃっている。このプロセスがどう違うのかとかねがね思っていたところを、うまく表現されたので頭の整理は付きました。言い換えると、エピペンのプロセスとこのプロセスはなぜこうなったのか、どこにお話を聞けばいいのかという感覚を持っております。

○島崎座長 
 そのとおりですね。

○有賀(徹)構成員 
 こういう研究の方法論を使いましょうという話になって、ではそこの倫理的な側面を救急学会でもんでくれと、あの頃から樋口先生がおっしゃっているようなこと、また今横田先生がおっしゃったようなことは、問題意識としてはみんな持っているわけです。こういう方法論から見れば、エピペンは天から降ってきたわけですから。しかし、今回はこれでいこうと決めたのです。したがって、これに従った価値規範にのっとって我々は議論して、今ここまで来ているという話です。従って、意味はもっと広いと私は思いますが、現在のこの部屋の中の価値規範はこうなっているということで、これが終わった後に樋口先生のおっしゃったようなことをきちんと議論すべきだと思います。

○石井構成員 
 後でやるべきなのでしょうけれども、責任などが問題ではないかという樋口先生の御指摘は、少し違う部分があるかなと思います。これはメディカルコントロール下の行政責任においてどこまでやるかという範囲なのです、最終責任は行政ですから。
 「Good Samaritan law」はたまたま通り掛かって善意でするという話で、それはこういう網の上でやっているので、その上で皆さんが合意して、ここまでやっても行政的に通るかどうかというもう1つの枠の中で議論すればいいのだと思います。
 これだけほとんど出てこない事象であるということは共通認識です。その上で、ごく稀な事例にどのように対処するかということで、責任問題はメディカルコントロール下の行政責任でどのように受けられるか、しかし一方で薬がどのバリエーションでどのぐらいというのを現場でそう簡単に決められるかどうか、それも含めて頭に入れていただくと、もっと現実的な議論になるかと思います。

○島崎座長 
 おっしゃるとおりで、もしこれをやるとしたら、職業人として救急救命士がこういうことをやるに当たって、責任問題等を含めて、将来的にあらためて検討していただければと思います。我々としては、現場で救急救命士がやったときに、彼らに余計な負担というか、そういうことが起こり得るかどうかを含めてという話ですので、今回は症例が集まらなかったということで、認めていただければと思います。今後こういうものをやるときのあり方、正に市民サイドから上がってきたものを基盤にした処置か、あるいは行政的な面からやったものに対する結果かということで。

○野口構成員 
 私も構成員の立場から、これは研究者として報告義務があるので報告しましたが、前回も樋口先生がおっしゃったようなことが検討会のまとめにも出ていて、この結果にかかわらず、あり方委員会としてはこの時期だからこそ余計にここの結論を出していただきたい。もっと研究を続けるなら続けます。ただし、それに対してはいろいろな年齢制限等を全部排除していただかないといけないと思いますので、そういうところまで議論していただかないと、我々もこれで有意差がないから駄目だということに、報告者としてもしてほしくないのです。もっと言えば、あなたたちの設定の仕方が悪かったのではないかという責任回避に使いたいという気もしております。ただ、これもいろいろな制約があっての結果で、無駄なことをやったと言われればいつでも腹は切らせていただきますが、これからの業務がここで終わる、特にβ吸入刺激薬は当分やらないという方向をこの結果で決めるのは、少しお考えいただければと思います。

○島崎座長 
 今回の結果としてはこういうことですが、思いの中にはそういうものがあるのでということで、やるとしたら次に仕切り直しでやっていただくことになりますかね。

○野口構成員 
 後ほど出てきますが、今日は教育プログラムのところまで提案することになっているので、β吸入刺激薬に関してはどういう教育をするのか、外すかということがあるので、僭越ながら申し上げました。

○島崎座長 
 それでは、時間の関係もありますので、この辺りで終わります。今回は症例が少なかったので評価できずということで、なしということにさせていただきます。3番目をお願いします。

○野口構成員 
 29ページ、?「心肺機能停止前の静脈路確保と輸液」ということです。30ページ、これは最終結果で例数ですが、2,468例の分析対象。非介入期は1,465例、介入期は916例で、そのうちの65%が静脈路が確保できなかったということです。前後しますが、処置の適応に関しては薄い黒枠の中にあるショックの判断、長時間の挟圧、クラッシュシンドロームが適応です。介入期の916例のうちの35%は、静脈路が確保できています。そのうちの基本輸液(1秒1滴)が61%、急速輸液(最大滴下)が29%、基本液と急速輸液の両方を途中で変えたものが8%、不明が2%です。
 31ページは傷病者の背景です。性別、年齢、時間経過です。年齢に関しては、介入期のほうが高齢化しています。それから時間、覚知から到着までは差がありません。到着から出発まで2.5分延びている。出発から病着までが1.8分延びている。全体の覚知から病着までが4.2分延びているということでした。32ページも先ほどと同じように、傷病者の背景です。意識レベルに関しては、介入期には比較的意識レベルの高い傷病者の割合が高くなっているということです。
 33ページは、ショックインデックスに関する評価項目です。介入期が1.54、非介入期が1.42です。収縮期血圧に関しても差が出ています。介入期のほうが低いということです。脈拍は、ほぼ変わらない。病着前の心肺停止が3.1%で、介入期、非介入期とも同じです。全体としては、介入期には比較的ショックインデックスの悪い傷病者の割合が多くなったということです。
 34ページです。ショックインデックスの原因は前回御指摘いただきまして、ショックの種類、病態を分けてみたということです。出血性ショックに関して、非介入期と介入期の比較。心原性は全体としては多くを占めています。脱水、敗血症性、神経原性ショック、アナフィラキシーショック、閉塞性ショック、熱傷、その他ということで、その他は記載が曖昧であったものとか、いろいろな組合せのものが混じっていたというものと原因不明なものがここに入っています。
 35ページからは評価項目の分析です。36ページ、ショックインデックスの改善の有無ということで、改善ありが介入期は56%、非介入期は55%、改善なしが45%と44%でほとんど差がないということでした。
 37ページです。輸液、静脈路確保までできたものを集めた介入群を非介入群と比較しています。改善ありが63%で、改善なしに関しては非介入が45%だったのが介入が37%で、一応有意ということでした。急速輸液に関しては、改善ありの非介入が55%、介入群では59%で、これも高い相関ではありませんが、一応こういう結果でした。
 38ページはショックインデックスの改善の有無ということで、多変量解析をしていただきました。これによると、接触時の収縮期血圧が高いこと、心原性ショックであること、ショックインデックスの改善と負の相関があるということです。介入自体は、ショックインデックスの改善と相関関係は認めていないということでした。
 39ページです。副次的評価項目といって、救急隊の人に目で見ていただいた結果ですが、皮膚の蒼白、湿潤・冷汗の改善ということで、改善ありが21%、非改善が非介入群では17%、改善なしが83%から79%に下がっているということでした。微弱な脈拍の改善も11%改善ありだったのが、非介入で改善が22%に上がっています。改善なしも若干下がっている。
 40ページは、当初の想定した分析報告ではなかったものですから、一応付加分析として検討させていただきました。「参考データ」と書いてありますが、非介入、介入で搬送医療機関が異なりますので、搬送医療機関での治療内容が不明ということで、一応参考までに提示させていただきます。
 41ページです。輸液の量とショックインデックスの改善ということで、ゼロから輸液がほとんど入らなかったもの、150まで、150-300、300-500、500-1,000mL。この中で、300-500にショックの改善が77%ということで、下のグラフにこれぐらいの量が入ったものに関してはショックインデックスの改善で有意な差が出ています。
 42ページ、輸液量とショックインデックスの改善ということで、300以上入れたものと非介入で登録されたものとを比較すると、非介入は改善ありが55%だったものが介入輸液を300入れたものに関しては76%と上がっているということです。
 43ページは、松川委員から収縮期血圧との関係を御指摘いただきましたので、それで検討してみました。収縮期血圧の改善に関しては、ITT分析では差は出ておりません。先ほどの300mLの輸液を行ったものに関しては、改善ありが52%から74%に上がりましたということで有意でした。44ページは、これをグラフにしたものですが、ショックインデックスの改善と輸液との関係を視覚的に見ていただくために、こういうものを作らせていただきました。
 45ページです。各静脈路確保と輸液に関しての付加分析として、入院率を単変量解析と多変量解析で解析していただきました。単変量では入院率が0.070ということで有意差は出ていませんが、多変量解析は介入群では入院率が上がるという結果が出てまいりました。それの因子としては、覚知から病着までの時間、収縮時血圧、出血性ショック、心原性ショック、敗血症ショックで入院率を上げているということです。あと、搬送中の心停止、心原性ショックに関しては十分想像できるわけですが、入院率は下がりますよということです。
 46ページは入院日数との関係ですが、単変量解析では入院率は有意差はありません。多変量解析として因子を検討してみると、先ほどの入院率を上げることと大体近いので、心原性ショック、敗血性ショック、閉塞性ショックに関しては入院日数が増えております。ただ、介入自体としては先ほど申し上げたように、多変量解析においても入院日数との相関関係は認められておりません。
 47ページの死亡率に関しても、単変量解析と多変量解析を行っていて、単変量では、死亡率の増加ということに関して相関関係は認めておりません。多変量解析では、介入と死亡率の増加に相関関係を認めておりません。また、搬送時間の長さも死亡率の増加に相関関係を認めていないという結果です。
 48ページは、心原性ショックのみを取り出して死亡率を見てみました。これも単変量解析では、介入によって死亡率の増加には有意差を認めておりません。多変量解析では搬送時間の延長、介入は死亡率に影響しておりません。ただし有意差はありませんが、介入は死亡率を押し上げる傾向にあることは言えると思います。
 49ページです。「心肺機能停止前の静脈路確保と輸液」をまとめると、主要評価項目であるショックインデックスの改善は、非介入期間と介入期間で有意な差は認めませんでした。実施した人の評価によると、「皮膚の蒼白、湿潤・冷汗」と「微弱な脈拍」の改善は、介入期間で有意に高かったということです。付加的に実施した分析では、輸液量を300mL以上実施した場合は、非介入期間に比べて、ショックインデックスが有意に改善していた。もう1つ付加的分析で、介入自体と入院率との正の相関関係を認めております。搬送時間の長さも入院率と正の相関を認めました。介入自体と死亡率は、相関関係を認めておりません。

○島崎座長 
 いかがでしょうか。49ページのまとめがおっしゃったことだと思いますが、300?以上輸液されると有意に良くなっているということですね。

○杉本構成員 
 確認しておきたいのですが、32ページのタイトルは間違いですか。「血糖測定と低血糖」となっていますが、これは単なる間違いですね。

○野口構成員 
 すみません。間違いです。

○杉本構成員 
 これは直していただくとして。34ページはそれぞれの原因分類がされているわけですが、それぞれによって輸液路の確保といっても難易度が違うのかなと思ったりします。30ページで介入期916例のうち、35%に静脈路が確保できたとなっておりますが、この324例というのが34ページで得られているサブグループで分けた場合、それぞれ同じような輸液路の確保の割合があったのかどうか。それをちょっとお聞きしたいのですが。

○野口構成員 
 それはできておりません。申し訳ありません。ただ、データはありますので。

○杉本構成員 
 そうでなければ、輸液路が確保できたものだけを見ていくとある状態に関しては非常に有効だけれども、という話になってしまうかなと思って少しお聞きしました。ただし、これは病院前の話ですから、診断できていないということになってしまいますから、そこのところは少しまた話が別だろうと思うのですが、ただ解析する上では一度どれぐらいの輸液路を確保して、成功したものはどういうものかということをやっておいていただいたら、先々の方策を立てる上での参考になるのではないかとは思います。

○野口構成員 
 はい、分かりました。

○島崎座長 
 ほかはいかがでしょうか。

○有賀(徹)構成員 
 まとめだけを読むと、介入すると入院率が高くなってうんぬんとありますよね。これは、もともと重篤なのですよね。

○野口構成員 
 そうです。入院率が上がることは必ずしもあることではないので。

○有賀(徹)構成員 
 まとめしか読まない人が見ると。

○野口構成員 
 ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。

○有賀(徹)構成員 
 これも背景が、救急隊の方たちの心意気が高まっているときには、より重篤なほうへ向かって頑張るということがこういう結果になっているのだと思いますが、まとめだけを読む人にとっても、そういうことはあったのだということが分かるようにしてほしい。

○野口構成員 
 私もしっかり説明できていないのですが、搬送中の心停止というのはかなり大きなファクターで、これになりませんのでということもあります。先生のおっしゃるとおりです。この辺は書きぶりを慎重にさせていただきたいと思います。

○島崎座長 
 傷病者の背景が少し違うので、ということになるのですかね。情報が増えると病院の選定にも時間がかかるし、入院の日数も増えるというのを直接結び付けると変な話になるのですが。

○野口構成員 
 おっしゃるとおり、この辺のところを少し修正させていただきます。例えばアナフィラキシーショックも輸液をしただけで外来で帰れるのがかなりあると思いますので、その辺ももう少し検討できる。データとしてはあると思いますので。神経原性もそうです。全部、統計学的にその辺の結果が出ています。

○島崎座長 
 ほかはいかがですか。

○郡山構成員 
 質問ではありません。1つだけコメントをさせてください。31ページの静脈路確保をした介入期の群が、到着から出発まで+2.5分。救急救命九州研修所での訓練で要している時間からみて、この値はものすごく速いです。恐らくこのために、私どもは全部1人でやるという教育をやっていますが、彼らはチームとして連携をしながら事前に相当な訓練を重ねているのだろうと思います。ですから、今回の全体の試行的研究について、地域のMCと消防は質の高い状況で一生懸命に取り組んでくれたのだろうなと思いますし、2.5分という数値は相当な技量です。

○島崎座長 
 私もこのデータを見て、静脈路を確保してやるだけで普通はもう少し時間がかかるとは思っていたのですが、このデータは驚きました。日頃、郡山先生がおっしゃっている「レベルが低い」というのと逆方向で、非常にいいことだと思います。

○野口構成員 
 でも、これは選ばれたチームだということを頭に入れておいていただきたいです。

○島崎座長 
 けれども30数箇所ですか。

○野口構成員 
 そうです。

○島崎座長 
 それなりに意識レベルの高い、きっちりMCがされている所ということですが、早々特別というわけではないと思いますので、事前によく実証研修地域の救命士をMCが勉強させていただいた結果だと思います。

○野口構成員 
 さらに今、田邉先生が耳打ちされましたが、MCの選ばれた救命士だそうです。それを言えと今おっしゃいました。ただ、やればできるということです。

○島崎構成員 
 今、郡山先生がおっしゃったように、静脈路確保に関しては前もってかなり訓練されたのですか。田邉先生。

○田邉参考人 
 飽くまで、教育カリキュラムでどういった形で訓練をしたかは御紹介をさせていただきますが、研究班でいろいろ現場の救命士の声を集めてみると、こちらで教育カリキュラムを作ってこれをやってくださいといったもののほかに、皆さんなんとかしたいといった思いの中から、日々救急隊の中でこういうことがあったらこうやってやるんだよというのを自主的にトレーニングされていた背景があって、こういういい結果に結び付いているのではないかなと思っております。
 
○島崎座長 
 これは、地域のMCもかなり関わっているのでしょうか。それとも、それぞれの消防本部の中だけでの話しでしょうか。その辺はどうなのでしょうか。

○田邉参考人 
 これはMCが十分に関われる地域ということで選考した過程がありますので、ほかの地域に比べればとても積極的な関与が行われている地域だと思います。

○島崎座長 
 ほかはいかがでしょうか。結論として、これはこういう形で輸液路を取って、ショックの患者に投与するのはそれなりに有効であるということにさせてはいただきます。私が少し気にしているのは、先ほどの病態別に分けた34ページで心原性ショックが20%入っているということです。出血性ショックや低容量性ショックには極めて有効でしょうけれども、心原性には有害あるいは負荷がかかるということになります。心原性ショックだけを別に取り上げてみたデータでは介入自体が増悪させる可能性もあるということが書かれております。これから実際に現場でやっていく場合に、鑑別を含めたそこの担保をどうするか。例えば、明らかに原因として目の前で出血で倒れている状態だと非常に分かりやすいと思いますが、疾病ではおかしい面もあるので、その辺の教育を含めてよく検討していただければと思います。

○野口構成員 
 後ほどそれは触れると思います。

○島崎座長 
 よろしいですか。

○徳本救急医療専門官 
 今の座長のおまとめでいうと、心原性ショックは今回の心肺停止前の輸液の対象からは除く結論と理解してよろしいでしょうか。

○島崎座長 
 これで見るとトータルはOKですが、48ページの「有意差は無いが、介入は死亡率を押し上げる傾向にある」というのは、もっともだと思います。面と向かってそう言われると難しいけれども。

○佐久間救急・周産期医療等対策室長 
 ショックの中にもいろいろな種類があって、その中で特に心原性については診断することが難しいことは先生方は御承知だと思いますが、そこをどうしていくのかが1つ課題としてあると思います。先生がおっしゃられたように、例えば、出血性ショックなど、外傷性のものについては救命士が現場で確認はしやすいと思います。それ以外に、内因性のショックの中で特に心原性をどうやって判断するのか。若しくは、ドクターでも一部難しい部分があるようなところについて、どこまで救命士にやっていただくようにするのかを御議論いただいたほうが良いかと思います。

○島崎座長 
 明らかに心原性ショックだというような診断が付けば、それは駄目ですという話になりますが、実際佐久間さんが言うように現場で医療機関に入ってからも、結構難しいケースがあります。その辺のところを今後の教育プロトコールの中等を含めて、どう対応するかというようなことと。

○石井構成員 
 そういう意味では48ページのこの記載、算数を国語に直したときに少しまずいのではないかなと思うのは、「有意差はないが傾向にある」というのは、有意差がないのですから、「傾向はあるが有意差がない」というのが普通の書き方であって、こう書くと何か色が付いたなという感じがします。
 もう1つは心原性ショックで、補液そのものが役に立たない、しかしそのあと治療するときにはどの道、血管が確保されていなければ治療には制限があるわけですから、血管の確保は必要ですよね。だから救急隊でやる数がずっと前にありましたが、郡山先生が指摘したように30ページの静脈路の確保ができず搬送が65%、確保できたのが35%という、非常に厳しいやれるものならやって搬送しよう、できなかったものはそのまま搬送しようというアルゴリズムで動いていて、そんなにデータが悪くなっていないということになっていると私には読めます。良いことなのだからどんどんやろうといって、この率を無理に上げていけば時間も延びるし、補液の入る量も増えてしまって、あとで戻すこともできないわけで、きちんと搬送するという前提の上で血管の確保をできるものはするという結果がこのデータだと思います。そこでとどまって議論し、余り広げすぎないほうがいいのではないかなと思います。

○杉本構成員 
 先生がおっしゃるとおりですが、ただ、今言いましたように、これは基本的には搬送までの間に、ショックに対して急速輸液をしようということを前提に始めてこられたと思います。そのときに、先ほど私が輸液の確保に成功した事例がどれだけあったか、グループでだいぶ違うだろうと言ったのですが、一般に私の少なくとも今までの臨床的な経験から言えば、ハイポボレミックショックは非常に輸液の確保がしにくいです。だから、逆に心原性はやりやすいから、輸液の確保ができているのは急速輸液をしないものばかりに確保できていることが起こっていたら、この解析が全く違うようになってしまうから、我々のこの委員会でそういう結論を出すには慎重にやってほしいなというので、先ほど聞いた次第です。

○島崎座長 
 それでも300以上がいいというのは。そうそう心原性ショックばかりに輸液路が確保されているということではないような気がします。

○杉本構成員 
 それは予測ですから、きちんとこれだけのデータを得られたわけですから、実際にそれを確認されて、それでどうなのかと考えられたほうがいいのではないかと思います。

○島崎座長 
 おっしゃるとおりです。48ページの、今石井先生がおっしゃった、ただし以下は有意差がなかったら有意差がないよという話で、メディカルには完全にそういうことで、有意差はないがうんぬんということは絶対に言わないですよね。文章にするとこうなりますが、「少なくとも押し上げる傾向にあるけれども有意差はない」とか、「有意差はない」のどちらか。どうしますか。先生の言われる「死亡率を押し上げる傾向にあるけれども有意差はない」、あるいは「有意差はない」のままにするか。

○浦島参考人 
 有意差はありませんでした。ただ、これは多変量解析でやっているわけですが、全ての因子に関して調整できているかどうかには疑問がありますし、非介入、介入期間で不均一にバイアスが入っている可能性もあり、介入にまつわる交絡も補正しきれていない可能性もあるので、その判断は慎重であるべきだと思います。また、心原性ショックに限って解析したため、差を検知するには症例数が不十分だった可能性もあります。
 表現は難しいですが、どちらを先に言って、どちらを後に言うかというのは、そのデータを解釈する側の自由だろうと思うので、どちらかが統計学的に正解というものはないと思います。ですから、石井先生のおっしゃるような表現をすることも正解だと思いますし。

○島崎座長 
 「押し上げる傾向にあるが、有意差はない」のほうが無難といいますか、そちらのほうがいいですかね。

○有賀(徹)構成員 
 今の説明だったらそちらですよね。

○島崎座長 
 有意差がある、ないとはっきり言うには、いろいろな諸事情があるということを先生はおっしゃったような。

○浦島参考人 
 そういうことです。

○有賀(徹)構成員 
 今言ったみたいに傾向はあるけれども、諸事情によって有意差はないという話でしょう。

○杉本構成員 
 一般に、それが良い結果であるというときに関しては、今の理屈、理論は成り立つと思います。死亡率は改善する傾向にあるが、有意差は認めないという場合には今の理論も成り立つと思いますが、この死亡ということは非常に重要な問題になってくるから、統計学的に同じであるということを言うことは難しくて、差があるということは言えると思いますが、これは死亡率を押し下げるのではなしに押し上げる傾向にあるとなっていますから、ここは有意差がある、ないというようなことで済まさず、これは十分に慎重にやっていく必要があるだろうと思います。

○島崎座長 
 先生は注意喚起の意味で、このままの文章のほうがいいだろうということですね。

○杉本構成員 
 別にこれがいいと言っているわけではないですが、文章はともかくとして、これをどう解釈するかという中での物の見方としては、しっかりと自分たちの視点を定めておかないと、特に死亡に関わることですから、慎重にやっていただきたいなと思います。

○島崎座長 
 文章はこのままにしますか。どうですか。座長に任せてもらえますか。杉本先生。

○杉本構成員 
 私が決めることではないですから。

○島崎座長 
 では、これはあとは任せていただいて、単なる表現の違いも含まれますので。それから、各ショックの患者に輸液路を確保して行うことの有効性というか、石井先生が少しおっしゃいましたが、結局心肺停止状態に患者がなっていく過程での処置としてそういうのも捉えると、その前に輸液路を確保しておいて心呼吸停止になったときにエピネフィリン投与を含めて、かなり早い時期から心肺停止前患者に処置ができるという意味合いもあって、そういう意味でもいいのかなと思っています。心臓の患者に対しても。議論が長くなりましたが、そのようにさせていただきます。
 「有害事象等の分析」を簡単にお願いできますか。

○野口構成員 
 51ページです。基本的には中間報告のところと変わりはありませんが、例数が少し増えたということです。活動中に心肺停止に陥ったもの、活動中に呼吸停止に陥ったもの、プロトコールに反した事例があったもの、血糖測定のための穿刺を行うも、血液の流出がうまく測定できなかった。静脈路の確保に関連する報告としては、留置針が抜けてしまった。外筒を進めることができず抜去したものとか、外筒がねじれて抜去したとか、皮下出血を来したとか、輸液が漏れてしまったものとか、血管走行が確認できずに穿刺できなかったもの、血管が細くて静脈路を確保できなかったもの。2回までとプロトコールでは決めておりましたのが、3回穿刺を行ったというのがあります。こういうのを一応有害事象として報告していただきます。
 52ページです。搬送途上での心停止ということで、前回の中間報告ではこれが低血糖の心停止でしたかね。非介入低血糖は心停止が1例、介入も1例、喘息はゼロです。ショックは心停止が非介入で45例、介入では28例でした。
 点線の括弧内を読ませていただきます。オンラインで医師より血糖測定の指示を受けたあと、血糖測定を行うまでの間に車内で心停止に陥った例。処置をしなかった例に関しては、家族に説明の途中に傷病者の状態が悪化し、その後心停止に至った例。傷病者若しくは代諾者から同意を得てから処置を実施する前に心停止に至った例。ドクターカーなどの医師の到着により処置を実施しなかった例。オンラインでの医師からの指示で、搬送を優先して処置を実施しなかった例。処置中に心停止に至った例が2例。穿刺後にラインを接続しようとした際に、痙攣状態となりCPAに容態が変化した例。処置後に心停止に至った例が1例。胸痛後のショックの傷病者が病院到着時に心停止となった例があったということです。MC協議会での事後検証において、処置が直接の原因で心停止に至ったと判断された症例は今のところ報告されていないということで、若干数箇所で検証途中のものがあるとお聞きしておりますので、数例増えるかもしれませんということは申し添えたいと思います。
 53ページです。有害事象その他ということで、血糖測定後の呼吸停止が1例。救急車収容後に血糖測定を実施した。血糖値は180台だった。その後、呼吸停止に至ったということです。点滴漏れの事例は複数ありましたが、ショックの判断で車内に収容したあと、家族から同意を得た後に医師のオンラインでの指示の下に、右足背静脈に20Gにて穿刺した。バックフローがあり、滴下するも腫れ漏れがあり抜去した。右手背静脈に20Gにて静脈路を確保し、基本輸液で搬送した。血糖測定し、低血糖を確認した傷病者にてブドウ糖溶液を投与したが、皮下に漏出した。医療機関では、血糖の上昇を確認できなかったということで、静脈外への漏出に関して医療機関では特段の処置は行われなかった。その後も特に問題はなかったということです。
 54ページです。プロトコールから逸脱した事例が先ほどお話しましたが、(ア)は2回までと決められていたのを3回行ってしまった。その地域でのメディカルコントロール協議会では、3回まで穿刺がいいということで勘違いされたということでした。(イ)は重症喘息に対するβ吸入刺激薬の使用で、SpO2が95%未満とプロトコールでは決めておりましたが、99%のSpO2であったものにβ吸入刺激薬を使用したということです。これは救命士自体も実証研究外と認識していましたが、状況を連絡して、メディカルコントロール協議会の医師から症状が改善しないならば、吸入の指示があったということで、実際には吸入できていなかったという報告がきております。(ウ)は、書面上での同意の取得を原則としておりましたが、ボイスレコーダーでの同意の取得の記録も可という地域があったわけで、ボイスレコーダーでの同意は、取得の記録で処置を実施した例は、我々の研究班のこの解析からは全例除外させていただきました。
 全体のまとめとして、「血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与」は、当初想定した意識レベルの改善効果が確認でき、救急救命士からは疾患の鑑別や搬送先の選定に有用であるとの評価を得ました。付加分析では、入院期間の短縮、生存退院率の改善等の予後の改善は確認できなかった。想定された以上の有害事象の発生は報告されていないのではないかと考えております。「重症喘息に関するβ吸入刺激薬の使用」は、先ほど御審議いただいたように症例数が少ない。安全性・有効性の評価はできておりません。
 3番目の「心肺機能停止の静脈路確保と輸液」に関しては、ショックインデックスの改善効果については確認できておりません。救命救急士からは皮膚の蒼白、湿潤・冷汗と微弱な脈拍に有用であるとの評価を得ております。付加分析で、介入自体と入院率との正の相関関係は認められています。想定された以上の有害事象の発生は、報告されなかったのではないかと今のところはそう考えております。これが全体のまとめです。以上です。
 最後になりますが、是非我々研究班の皆様からお伝えしてほしいというのは、謝辞です。本実証研究に参加いただいた39のMC協議会、129の消防本部、2,332人の救命救急士の皆様をはじめ、研究の実施に当たり御理解、御協力を賜った検討委員会、行政機関、医療関係団体、学術団体の多くの皆様に心より感謝いたしますということで、心からこう思います。報告までです。ありがとうございました。

○島崎座長 
 総まとめがまとめということになりますが、いかがでしょうか。55ページの最後に「想定された以上の有害事象の発生は報告されなかったのではないか」と書いてありますが、「報告されなかった」にしておいてもらえますか。びっくりするような有害事象はなかったですよということですね。

○野口構成員 
 我々の結論は、ここで……させていただきます。

○島崎座長 
 いかがでしょうか。総まとめのような結論でよろしいですか。
 続いて、新しく処置拡大を行った場合の追加講習、行うことにほぼ決まりましたが、その追加講習とカリキュラムの中身を検討していただいております。これは野口先生からですね。

○野口構成員 
 それではカリキュラムに関しまして、2ページの検討材料として、実証研究で実施した教育カリキュラムに対するアンケート、これは参加していただいた方々にお願いをいたしました。2番目として実証研究での救急救命士の判断の適否の状況。それから実証研究での救急救命士の処置の成否の状況です。
 まず3ページ、教育カリキュラムについてのアンケートです。調査に関しては、研究班が実証研究に参加した全てのMC協議会に実施させていただきました。対象は、MC協議会の研修実施者。これは消防本部にお答えいただきました。まず概要に関しては、講義実習時間については、「現状で良かった」が69%。講義については、「現状で良かった」が83%。実習時間については、「現状で良かった」が57%程度、「より長い時間が必要だった」という方も31%います。講義・実習時間の総単位数のうち医師1名以上が参加した割合が80%未満のMC地域が全体の24%に存在した。
 自由記載で、今回先発メンバーだから実施できたが、今後の研修ではもっと教育時間が必要ではないかという御意見、トラブル対策や医療倫理に関しての研修時間が欲しいというのもありました。
 4ページ、これは実証研究に参加した1MC協議会が、研修対象者に実施したもので、1MCからのお答えです。研修を受けた救急救命士52名で、実習期間については85%の方が「短い」ということでした。「ちょうどよい」が15%、「長い」という意見はありませんでした。増やしてほしいカリキュラムとして「シミュレーション実習」が46%、「実習」が33%、「同意取得関係」の教育が27%、「トラブル対応」に関してが12%です。このお答えいただいたMCは、研究班がお示ししたカリキュラムに13単位追加して、トータル5日間35単位で研修をしていただいた地域です。
 次の5ページ、救急救命士の判断の適否の状況は、先ほど見ていただきましたけれども、血糖測定が低血糖を疑うも低血糖であった確率が高いとは必ずしも言えない、50mg/dLのいわゆる高血糖もかなりあったことは、先ほど我々が示したとおりです。
 6ページ、心原性ショックでは輸液による効果は期待できないことから、ショックの原因の鑑別について、より重点的な教育が必要であるということで、先ほど御審議いただいたこととも関連すると思います。
 右側にちょっと細かいのですが、出典は書いてありませんけれども、ここへの記載は許可をいただいていると田邉先生からお聞きしていますが、東京消防庁のデータだと思います。大変しっかり教育されている一例ではないかと。このマッチングと言うのですか、有賀先生から説明いただいたほうがいいかもしれませんが、救急救命士の病態の判断ということでずっと名前が書いてあります。マッチングは○△で示してありますけれども、このような判断が教育をするとこれくらいできるという証ではないかと思います。より充実した研修を行った地域では、ショックの原因の鑑別を高い確率で行えるようになるという説明です。
 7ページ、処置の成否の現状は、先ほどもまず血糖測定ができなかったというのがありましたし、ブドウ糖溶液投与の中断というのが、静脈路の確保がきちんとできなかったということで、高い確率で実施できるとはとても言えないという結果でした。
 8ページ、処置の成否に関しても、静脈路が確保できていないというのが大変多い。「静脈路確保と輸液の手技」については、実は今回の実証研究にあたって手技の講習会はやっておりません。それは以前から心肺停止の静脈路確保でトレーニングされているという前提の下でやりました。そういうことで静脈路の確保に関しては、さらなる手技の上達を図らなければならないということです。
 それで研修カリキュラムの修正案として、「意識障害をきたす疾患とその鑑別」に関して、「ショックの原因別の分類・鑑別と輸液の効果」に関して、「傷病者への説明と医療倫理」の講義をより充実させてはどうか。2番目として「心肺停止前の静脈路確保と輸液の手技」について実習を加えてはどうか。「血糖測定と低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与」と「心肺機能停止前の静脈路確保と輸液」のシナリオ訓練について、トラブル対応を含めた実践的なシミュレーション実習を充実させてはどうか。研修の実施に関しては、医師の確保、シミュレーション人形の確保などについて、一定の要件を求めてはどうかという提案をいたしました。
 このような結果を踏まえて、前回お示しした教育カリキュラムに少し修正を加えたものがここに書いたものでありまして、トータル30単位、これは御覧いただければと思います。以上でございます。

○島崎座長 
 はい、ありがとうございました。9ページの研修カリキュラムの意見を聞かれた後の修正案と、最後のページのこういう教育カリキュラムを組みたいということですが、いかがでしょうか。

○松月構成員 
 実証研究の総まとめが55ページにありますが、重症喘息患者に対する吸入β刺激薬の使用に関しては「評価はできなかった」となっています。一方、教育カリキュラムではモジュール1-2、2-2、3-2に重症喘息患者に対する吸入β刺激薬の使用に関することが入っています。これはこの結果からどのようにひも付けてこれをやるのかということについて、どういうふうにシナリオを書くのでしょうか。

○島崎座長 
 はい、おっしゃるとおりで、これは入れるのですか、省くのではないですか。

○野口構成員 
 はい、それを先ほど主題にしてここで御議論、御意見をいただければと思っています。

○島崎座長 
 いかがでしょうか。10ページのモジュール1-2、2-2、3-2は、いるのかどうかという話です。

○野口構成員 
 我々としては結論が出ませんでしたので、ここで喘息に関してどうするかの結論をいただいた上で。

○島崎座長 
 それはそうですね。

○野口構成員 
 その方向性が分からないとここではちょっと。

○島崎座長 
 今までの議論では、現場ではβ吸入剤はさせないということですけれど、それを踏まえて研究班長としては。

○野口構成員 
 もう一度確認させていただきますけれど、今回の研究結果は我々がここにお示ししたとおりですけれども、その上でこの3項目に関しての結論を先生からお示しいただければ、実際にはやらないのだけれど教育だけはしなさいというような指示がいただけるかもしれませんので、曖昧な格好にしてあります、すみません。

○島崎座長 
 皆さんの御意見を聞いてみましょう。いかがでしょうか。

○有賀(徹)構成員 
 野口先生、研究のグループにそもそもこのような方法論でおまとめくださいと研究していただいた結果に従って、とりあえずどうするかを決めていくという話で、初めからそういうルールを決めてやってきましたよね。今回の現時点において重症の喘息に対するβスティミュラントについては、やるということは決められなかったのですよね。もちろん未来永劫やらないということをここで決めているわけではないのですけれども。それでは松月委員が言われたみたいに、今回の結果を踏まえて新しいジャンルに向かって救急救命士に頑張ってくれという話で、カリキュラムを組むのであれば、それは外すのが話の筋だと、私は思います。

○島崎座長 
 はい、ほかにいかがでしょうか。

○横田構成員 
 先ほども少し話はしましたが、この実証研修の結果は結果として、これはデータとしては評価できないということでいいと思います。先ほど来、樋口先生のおっしゃっている考えでいきますと、既に処方されている薬剤を御自身ができない、あるいは家族ができない状況で、救急隊がやることに、果たして急変したことに対する救急隊員が介入できないということを、必ずしも否定する根拠にはこの結果はならないと思うのです。
 私の言いたいのは、エピペンのような流れで来たということがあるのであれば、エピペンと同じような議論をこれについてやることも必要という前提で言えば、今回の実証検証とは分けて議論を進めて行く必要があるのかという気がします。ですから実証検証は実証検証の答で出しておいたらいいと思うのです。一旦、俎上に載ってこういう治療で既に処方された薬を急変を起こした患者さんに、救急救命士が介助してやるという、そういう面から進めていくことを、この検討会はどう取るかということも補足的に意見を出しておくべきではないでしょうか。

○杉本構成員 
 私も吸入に関してはむしろ横田先生と同じような考え方なのです。と言いますのは、これは呼吸器学会からは是非やってほしいという推奨もありましたし、それともう1つは一番侵襲性というか手技的にも難しくない、簡単にできる。要するに吸入だけですからね。そういう意味合いでのコストという意味、教育のためのコストがかかるでしょうけれども、例えば挿管のように一人1回いくらというようにものすごくお金がかかって時間がかかるということも少ないですから、そういう意味合いではこの3つの中だったら、私はこれをやるのが一番いいのではないかと、私はむしろ思っているのです。

○石井構成員 
 先ほど樋口先生の話に続いて申し上げたことですけれど、問題なのは、やり過ぎても困るのですが、足りないのであれば是非やってあげたい、そして薬の種類、用量、その辺がうまくガイドできるものになるかどうか、できるのであればよろしいのではないでしょうか、というのが私の先ほどの意見の補足です。それができるかどうかというのは、むしろ専門的によく考えていただければと思います。

○有賀(徹)構成員 
 実証研究の結果を踏まえた教育カリキュラムということでいけば、これはこれでやっておいて、樋口先生やほかの先生方がおっしゃるようなものの考え方に沿って考えるのは、別の場所、別の人たちによって、つまりやり過ぎのことも含めて議論すべきと思います。
 東京のMCでは、これを外したのはもう既に御家族がやっている、そこに輪をかけてやることによって、例えば不整脈がどうしたとかいろいろな議論が百出して、それならとりあえずはきっと行けそうなところから行こうという、ものの順序です。ですから杉本先生のおっしゃるのはある意味ものの順序ですけれども、私たちはそのように言ったということです。

○島崎座長 
 そういう意味では、実証研究の結果を踏まえれば、このモジュール1-2、2-2、3-2はいらない。けれども討論を踏まえればいるだろうということで、結果を踏まえたのであれば私は省いていいのではないかという気がするのです。やることに対しての問題というのは全然ないわけで、別のことでちゃんと入れて教育するというのは必要かと思います。討論を踏まえたという話になれば、入れておいてもいいですけれども、題が結果を踏まえたということであれば、私は今回は抜いてもいいのかなという気がします。

○郡山構成員 
 この検討会が始まったときに、私は資料を提出しましたけれど、そもそも病院前救護の救急救命士が行う処置で有効でありそうなもの、杉本先生がおっしゃるように、例えば吸入が一番簡単であり、しかも事前に処方されているというようなことなどを踏まえると、冠拡張薬なども自動的に入ってくるというものを一旦お示ししたのです。そういうものについて、論理的にいいところと悪いところを今後検討していく必要があるのだと。今回の処置拡大は差し当たりというか、現場から出てきた声としてこの3つがまず出てきて、それに対して医学的に有効か否かを文献的に調査をしたら2つ出てくる。であれば我が国の現状を踏まえながら実証研究でやってみようというのが、今回のまさにエポックメイキングなところであったと思うのです。
 それを踏まえれば、こういう結果が出たのだから、現状でこの3つの行為のうち2つについてはどうもやる価値がありそうだということであれば、その2つについてやるべきだと思います。その上で本来的には、ほかの処置拡大についても検討すべきではないかということを、一番最初のこの検討会で資料として提出しましたので、それについて引き続き何かの形でやっていくべきだと、私は思います。

○島崎座長 
 はい、いかがでしょうか。そういうところですか。では今回はこの1-2、2-2、3-2の6単位は省くということで、きちんとほかのことも含めて教育全体のカリキュラムは今後検討していくということにしたいと思いますが、よろしいですか。このスプレーは、脳症では3回までですね。たしかドライブインジャパンでは。

○佐久間救急・周産期医療等対策室長 
 ただ、薬の種類によって違うと思うのですが、一般的には3回のほうが多いですね。

○島崎座長 
 救急救命士のやる処置拡大に伴って、知識の範囲もどんどん増えていくと思うので、そういう教育カリキュラムも今後検討していく必要はあろうかと思います。有機リン系薬剤を含むテロなどの場合にはどうするかとか。気管支喘息重積発作にはエピネフリン投与がどうして入ってこないのかとか。では省いた形にしたいと思います。よろしいでしょうか。それから今日の御議論のまとめを検討会報告書に足して検討いたしたいと思うのですけれども、その中身に関しては検討会の報告書に足した後、最終結果は皆さんに、その辺はどうされるのですか。

○佐久間救急・周産期医療等対策室長 
 今、御議論いただきましてそれぞれの講義についての方向性、カリキュラムについての方向性をいただきました。それで今までの御議論を踏まえまして、事務局におきまして報告書の案を作らせていただきます。それを構成員の皆様方に御意見をいただいた上で、最終的に報告書として取りまとめていきたいと思います。ただ、またこういう形で開催するのがいいのかという議論もあると思いますので、できれば報告書の中身については先生方には十分に御意見をいただいた上で、最終的には座長に取りまとめをお願いしたいと思っています。

○島崎座長 
 そのようにさせていただいてよろしいですか。ではそのようにさせていただきます。それから最後に、郡山先生が資料を1部、MC協議会の要件ということで。では先生、簡単に説明をお願いします。

○郡山構成員 
 すみません、今日の途中でも発言をさせていただきましたけれども、もし処置拡大をするとなれば、今日途中で申し上げました医学的な有効性ということと、地域のMC体制というこの2つが非常に重要になります。今回医学的な有効性ということについて、ある一定の見解を得たと思っています。同時に、地域のMC体制の条件は2つあって、1つは先ほどの2.5分間ぐらいで静脈路確保ができるようになったという、消防による技術訓練で解決できる問題、それともう1つ、MCによる指示、その後の解析力を含めたフィードバック体制ができるかという問題に整理できると私は思っています。
 そこで、私が持って参りましたこのペーパーの図2、図3を見ていただきますと、同じ重症度であっても、搬送時間に対する処置時間が長いか短いかが、患者さんの予後にとって良いか悪いか分かれてくると思うのです。図3のところで、恐らく非常に病院が近いということであれば、病院前救護の課題はCPA対応ということだけになるのだろうと思いますけれども、10分から20分ぐらいかかるのであれば、やはり搬送選定ということが非常に重要になる。同時に、例えば40分もかかるというのであれば、処置をやらなければいけないことになるのだろうと思います。
 現状、我が国の傷病者発生地点から二次医療機関まで、どれくらい時間がかかるかというのを全国の消防にアンケートをした結果では、大体10分以内で着くというのは34%、10~20分が45%、20分以上が21%となっています。最後の5ページですが、県の中で搬送時間がどれぐらいかかるかという、極めて大きくまとめたものですけれども、北海道では47.5%の消防本部が20分以上かかる。一方東京では、もちろん搬送選定などが1回で終わるという仮定ですけれども、10分以内で着く。というようにこれだけ地域の格差があるわけです。となると最終的にこの処置拡大は、医学的に有効であることと同時に、地域のMCがきちんとできるという要件を踏まえた上で行われることが重要なのではないかと思います。以上です。

○島崎座長 
 はい、ありがとうございました。これから新しい業務の拡大を行っていく上で、こういう因子が非常に重要であるということだと思います。よろしいですか。それでは今日の話で、今回は教育カリキュラムを含めてただいま御議論があったような内容を、最終の報告書に、盛り込んでいくようにいたしたいと思います。ちょうど時間となりまして、本日はこれで終わりたいと思いますが、事務局から説明をお願いします。

○佐久間救急・周産期医療等対策室長 
 先ほど申し上げたとおり、報告書案を私どもで作成させていただいて、構成員の先生方に御意見をいただくようにしたいと思います。本日は御議論をおまとめいただきましたので、検討会自体は今回で閉会という形にさせていただきたいと思います。最後に医政局長より一言挨拶を申し上げたいと思います。

○原医政局長 
 構成員の皆様、熱心な御討議ありがとうございました。今回の検討会は平成21年3月に第1回を開いたということで、その間実証研究もございましたので、かれこれ4年間に渡る長い御議論だったと聞いております。
 いずれにしても救急救命士の業務、病院に来る前の処置をどうするかというのは、非常に患者さんの命を救うための重要なファクターであるということは十分承知しておりますが、それを患者さんのために有効に、また効果がある形でやっていただく。そのために先ほど出ましたけれどもMC体制という病院の中ではない外での形といいますか、そういう体制も併せて重要ではないかと思っています。また併せて救急救命士そのものの研鑽ということも必要だと思いますけれども、今回の御意見を踏まえまして報告書の案を作成して、また後ほど先生方に見ていただいて最終報告書をとりまとめたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。長期に渡ります御検討、大変ありがとうございました。

○島崎座長 
 はい、ありがとうございました。これで終了させていただきたいと思います。最後にこの報告書のまとめが、先ほど佐久間さんから皆さま方に、いつ頃になりますか。

○佐久間救急・周産期医療等対策室長 
 作業はこれからですのでいつ頃と申し上げにくいのですが、出来るだけ早く皆さま方にお知らせ出来るようにしたいと思います。

○島崎座長 
 では、これで本日が最終ということで終わらせていただきます。長きに渡ってこの検討会で御議論いただいて、本当にありがとうございました。それから先ほどの謝辞の中に書いておられましたけれども、関係各位の皆さま方に改めて深くお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました、お疲れさまでした。


(了)
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