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2013年2月22日 第8回集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会

○日時

平成25年2月22日(金) 14:00~16:00


○場所

厚生労働省 専用第23会議室(19階)


○議題

(1)検証項目「1.予防接種等の実態」の(4)及び検証項目「4.集団予防接種等によるB型肝炎感染被害発生の把握及び対応」の(2)の都道府県・市町村向けアンケート調査結果報告(最終報告)について  
(2)検証項目「3.B型肝炎に関する医学的知見及びそれに対する関係機関等の
認識について」の(1)から(3)及び検証項目4の(2)の保健所長経験者・
医療従事者向けアンケート調査結果報告(最終報告)について
(3)検証項目1の(4)及び検証項目4(2)の都道府県・市町村ヒアリング調
査並びに検証項目3の(1)から(3)及び検証項目4の(1)及び(3)の
関係学会等ヒアリング調査について
(4)検証項目1の(3)の注射器等製造販売業者向けヒアリング調査の結果(最
終報告)について
 (5)検証項目1の(1)から(3)、検証項目3の(1)から(3)及び検証項目
4の(1)から(3)の文献調査結果(最終報告)について
 (6)検証項目「5.諸外国における予防接種制度及び予防接種に伴う感染防止対
策の実態」の(1)及び(2)の諸外国における予防接種制度及び予防接種に
伴う感染防止対策の実施状況に関する文献調査及びヒアリング調査の結果につ
いて(追加報告)

○議事

○野村B型肝炎訴訟対策室長補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまより第8回「集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会」を開催いたします。
 構成員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただきまして、御礼申し上げます。
 事務局より、本日の構成員の出欠状況について御報告いたします。
 小森構成員、澁谷構成員、丸井構成員、山本構成員から御欠席の御連絡をいただいております。また、?橋構成員から、少々おくれる旨の御連絡をいただいてございます。
 撮影についてはこれまでとさせていただきます。
 ここからは、永井座長に議事の進行をお願いいたします。
○永井座長 では、本日は前回に続きまして、研究班の調査結果の御報告をいただき、皆様方に御検証いただくということにいたします。
 きょうの議題は、配付している議事次第を御確認ください。
 では、議事に先立ちまして、事務局より、資料等の確認をお願いいたします。
○野村B型肝炎訴訟対策室長補佐 資料の確認でございます。
 まず、お手元にお配りしてございます議事次第、構成員名簿、座席表、資料一覧。
 そのほか資料1として、調査書及び内容。
 資料2として、都道府県、市町村アンケート調査報告書。
 資料3として、保健所長、医療従事者アンケート調査報告書。
 資料4で、自治体ヒアリング調査の結果概要(中間報告)。
 資料5で、製造販売業者向けヒアリングの結果。
 資料6-1としまして、文献調査の結果概要。
 資料6-2で、その6-1の別添でございますが、関連資料の一覧。
 資料7-1、海外調査の結果。
 資料7-2、資料7-1の別添資料でございますが、参考文献リスト。
 そして、奥泉構成員、田中構成員、梁井構成員からの御意見書提出資料をお配りしてございます。
 また、前回までの会議の資料をつづりましたファイルを各構成員の席に置かせていただいてございます。不足や乱丁等ございましたら、事務局にお申し出ください。
○永井座長 ありがとうございます。
 では、議題に入ります。
 議題1、都道府県、市町村向けアンケート調査結果報告(最終報告)及び議題2の保健所長経験者及び医療従事者向けアンケート調査結果報告(最終報告)につきまして、研究班からまとめて御報告をお願いいたします。
○多田羅構成員 報告させていただきます。
 自治体向けアンケート及び医療従事者、保健所長向けアンケート調査は、先月の第7回検討会で途中経過を報告させていただきました。その際、構成員の皆さんからいただいた御指摘を踏まえ、さらなる集計作業を行い、研究班で検討を行いまして、最終報告をさせていただきます。
 それでは、詳細については、事務局から御説明いたします。お願いします。
○研究班事務局 それでは、お手元の資料2、資料3に基づいて御説明をさせていただきます。
 まず、資料2、都道府県、市町村アンケート調査報告書をごらんください。
 表紙と目次をめくっていただきまして、1ページ目でございます。最終的な回収数につきましては、都道府県については46件中46件回収ということで、回収率100%となりました。市町村につきましては、1,701の発送数に対して1,149の回収数ということで、67.5%の解収率という結果になりました。今回は、この最終的な集計の結果について御報告をさせていただきたいと思います。
 前回、速報という形で一部御報告させていただいていますので、特に変わったところ、追加的に集計を行ったところ、結果の傾向が変わっているところを中心に御説明をさせていただきます。
 2ページ「2.1 集団予防接種等の手技に関する指導内容」ということで、(1)注射の針についてということでございます。
 ここでは、集団予防接種等の手技について、疾患ごとに状況が異なるということも想定いたしまして、調査票の記入方式としましては、複数回答の形といたしました。
 前回、ディスポーザブルを加熱消毒よりも優先して、加熱消毒をアルコール綿よりも優先するという優先順位で単数回答化した小さい番号を優先した集計を御報告させていただきましたが、今回は大きい番号を優先した集計についても集計を行って御報告をさせていただいております。
 結果につきましては、おおむね前回と同様でございますので、最後のまとめのところで触れさせていただきますが、グラフとしては3ページ目が小さい番号を優先した集計、5ページ目が無回答と「記録がなくわからない」を除いて、状況がわかった中での割合を見た集計。7ページが大きい番号優先で集計をしたもの。さらに8ページが大きい番号を優先にして、かつ無回答と「記録がなくわからない」を除いて状況がわかったもののうちの割合を見たものでございます。
 都道府県調査につきましては、もともとの母集団が小さい上に、なかなか古い時代のことについては記録がなくわからないという回答もございましたので、サンプル数としては非常に小さくなってしまっております。その点、御承知おきいただければと思います。
 23ページ、今回のアンケート調査結果につきまして「2.6 結果のまとめ」ということで整理させていただいております。
 1点目、予防接種に関連する文書の保存期限をおおむね5年と定める自治体が多いということで、古い時代の記録文書は既に残っていないという回答が多く見られておりました。特に昭和44年以前につきましては、8~9割の都道府県が、「記録がなくわからない」という回答でございました。
 記録が残っている自治体が比較的多い52年以降について、無回答と「記録がなくわからない」と回答した自治体を除いた集計で見てみると、集団予防接種等の手技に関する注射の針・筒の指導内容について、昭和52年以降ディスポーザブル製品を使用するように指導した割合がふえてまいりました。昭和63年には6割程度まで増加しているということから、この間に次第にディスポーザブル製品が普及していったと考えてよろしいのではないかと考えております。
 昭和24~63年度及びその前年度の集団予防接種等の手技に関する指導内容、これは針について見ると、小さい番号の優先した集計、大きい番号を優先した集計、どちらも傾向としては余り替わりませんでした。昭和52年度及びその前年度から、おおむねディスポーザブル製品の使用の指導がふえていったということが見られております。また、筒については、昭和63年度及びその前年度からディスポーザブル製品の使用の指導がふえていったということが見られています。
 都道府県調査につきましては、おおむねこのような結果としてまとめさせていただいております。
 24ページ以降が市町村対象調査の結果でございます。
 市町村対象調査につきましても、先ほどの都道府県と同じように、小さい番号優先、大きい番号優先、さらに「記録がなくわからない」を除いた集計を行って、それぞれグラフにして掲載させていただいております。
 26ページが注射の針について、小さい番号優先で集計した結果でございます。やはり古い時代については「記録がなくわからない」というところが多く占めておりまして、おおむね34年ぐらいまでは9割ぐらいのところで「記録がなくわからない」という回答でした。昭和63年では837の回答があり、71.1%がディスポーザブル製品を使用していたというような結果になっております。
 28ページのグラフで、やはり小さい番号優先で、無回答と「記録がなくわからない」を除いて状況がわかる自治体についての割合を見たものでございます。
 一番下の黒いところの割合が昭和52年あたりから始めて、これはディスポーザブル製品の使用をあらわしておりますが、昭和63年には96.3%にまでなっている。一方、昭和44年で多かったのは、斜めの斜線の58.2%、被接種者ごとに交換し、加熱消毒を行ったというようなことがここからわかります。
 その後、30ページが大きい番号を優先した集計、32ページが大きい番号優先で無回答と「記録がなくわからない」を除いたものの集計でございます。
 33ページ、これは新しく御指摘を踏まえまして、地域別にも集計したものでございます。一定のサンプル数が確保できた昭和52年以降について、地域別に集団予防接種等の実施の実態を分析してみました。
 33ページが昭和52年度の集計、34ページが63年度の集計でございます。
 63年度のほうは、ほぼ90%、100%近いところが黒くなっておりまして、これがディスポーザブルの使用ということでございます。
 33ページの52年度は、ディスポーザブルは多少でこぼこがございますが、サンプル数のことも考えますと、それほど明確な地域差があるとは言えないのではないかと考えているところでございます。
 筒について、36ページが小さい番号優先で集計をしたものでございます。やはり古い時代については「記録がなくわからない」という回答が多くを占めているということでございました。
 38ページが同じ集計で、無回答と「記録がなくわからない」を除いたもの。
 以降、同様でございます。結果については後ほどまとめのところでも触れさせていただきますので、省略をさせていただきます。
 43ページ、地域別の分析を針と同様に行ったものでございます。
 43ページが52年度、44ページが63年度ということでございます。
 52年度をごらんいただきますと、九州でやや黒い部分が小さい数字になっております。これはディスポーザブル製品の使用でございますが、52年度の九州地域においてディスポーザブル製品の使用を行っていた市町村が少なかったのではないかということがここから示唆されるかと思います。
 63年度になりますと、九州は逆にほかの地域よりも多いぐらいになっておりますが、おおむね9割かそれ以上の割合でディスポーザブルが使用されていたというような状況がうかがわれます。
 以上の結果をまとめたものを50ページに作成しておりますので、こちらをごらんください。「3.6 結果のまとめ」というところでございます。
 予防接種に関連する文書の保存期限、やはりおおむね5年と定める自治体が多く、古い時代の記録文書は既に残っていないという回答が見られております。特に34年以前は9割の市町村が「記録がなくわからない」、昭和44年でも7~8割程度が「記録がなくわからない」という回答となっておりました。
 記録が残っている昭和44年以降について、無回答及び「記録がなくわからない」と回答した自治体を除いた集計を見ると、まず注射の針については44年度では加熱消毒あるいはアルコール綿で消毒というのが多く行われており、52年度及びその前年度では加熱消毒、ディスポーザブル製品の使用が同程度となってきた。このことから、ディスポーザブル製品が次第に市場に出始めて普及しつつあったと考えてよろしいのではないかと思っています。
 さらに、63年度及びその前年度では、ディスポーザブル製品を使用する市町村が大半を占めるようになっております。
 同様に筒については、44年度では加熱消毒と交換・消毒を実施しないというものが一定程度ございました。その後、52年度及びその前年度では加熱消毒が多く行われ、ディスポーザブル製品の利用もふえてきているということでございます。
 63年度及びその前年度ではディスポーザブル製品の使用が多くなり、それ以外の市町村でも、少なくとも筒の加熱消毒が行われるようになっているということです。
 また、地域別に確認をしたところ、針については地域別にそれほど大きな差異は見られませんでしたが、筒については九州地方でディスポーザブル製品の使用が特に55年度、相対的に低いという傾向が見られております。
 以上が都道府県、市町村アンケート調査の結果の御報告でございます。
 続きまして、資料3を用いまして、保健所長、医療従事者アンケート調査の結果を御報告させていただきます。
 表紙と目次をめくっていただいて、1ページをごらんください。
 最終的な回収率については、医療従事者を対象にした調査は37.5%、保健所長を対象にした調査は60.7%という結果となっております。
 まず、2ページ目からが医療従事者対象調査の結果でございます。
 3ページがB型肝炎の病態等に関する認識ということで、重症になる疾病であることについて認識した時期をお伺いする設問です。この傾向は、52~63年が最も多いということで、前回速報として御報告した内容と同様でございます。
 4ページ、同じ設問について、初めて医療あるいは公衆衛生に従事した時期という設問とのクロス集計を行ったものでございます。これを見ますと、斜めのクロス、ハッチがけのところが昭和52~63年の回答でございまして、横軸で見ますと、横軸に初めて医療・公衆衛生に従事した時期を載せております。一番下の帯グラフで見ますと84.5%が52~53年に認識をしたということになりますが、初めて従事した時期をさかのぼるほどこの割合は少なくなっておりまして、もう少し古い時代から認識していたという方がふえております。このことから、初めて臨床に出た時期と認識した時期には相関があるのではないかということで、3ページの先ほどの全体で見たときの59.2%が52~53年に認識していたという結果は、今回のアンケート調査のサンプルでの回答でありまして、その回答の臨床に出た時期の構成に依存するということについては、結果を解釈するときに留意しなければいけない点かなと考えております。
 以降、認識については同様にクロス集計を行っておりますが、どの設問でも同じような傾向が見られておりました。
 少し飛びますが46ページ、被接種者ごとの交換・消毒の実施状況ということで、ディスポ、加熱消毒、アルコール綿を用いた消毒がそれぞれどれぐらいを構成していたかというのを、これは設問が少し分かれておりますので、前回は単純集計の形では御報告できなかったのですが、設問間を組み合わせるような形で集計をし直したものを新しく掲載しております。
 まず、グラフのほうを見ていただくと、横軸が従事していた時期ということで、その時期に針の交換、ディスポーザブルの使用、加熱消毒あるいはアルコール綿を用いた消毒をどれぐらいの割合で実施していたかという人数を集計したものでございます。
 古い時代になりますとサンプル数が少なくなりますので、例えば一番上の帯グラフ、昭和23~29年は、従事していたという回答が5しかなかったので、n=5と記載しております。一定程度サンプル数が得られるのが、例えば34~44年の真ん中の帯をごらんいただきますと、一番左の黒いところがディスポーザブル製品の使用、22.7%、加熱消毒がその次の15.2%、アルコール綿を用いた消毒が7.6%というような結果でございました。以降、44年から、それから52年以降と時代が下るにしたがって、ディスポーザブル製品の黒いところがふえているというようなことが見て取れます。
 同様に、筒について同じ集計を行ったものが50ページでございます。50ページも先ほどと同様に、古い時代についてはサンプル数が少なくなってしまいますが、例えば34~44年のところを見ていただきますと、nが66で、15.2%がディスポーザブル製品を使用していた、10.6%が加熱消毒を行っていたというような回答になっております。また、時代が新しくなるにつれて黒い部分がふえているということは針と同様の傾向でございました。
 以上の結果をまとめたものが56ページでございます。「2.6 結果のまとめ」をごらんください。
 まず、病態及びリスク認識についてというところですが、B型肝炎の病態等に関する認識の時期については、重症化、キャリア化、感染性のいずれの項目も昭和52年4月~63年3月が6割を占めていたという結果でございました。
 また、感染することのリスクについては、針筒のいずれも昭和52~63年が最も多かった。ただ、分布の形を見ますと、針について認識をした時期よりも筒について認識した時期のほうがやや新しい側に分布していたということでございました。
 ただし、先ほど申し上げましたように、この認識した時期については、初めて従事した時期と関連しているということがわかっておりますので、結果の解釈には留意が必要であろうと思います。
 情報の入手経路についてでございます。前回も御報告いたしましたが、情報源としては医学教科書や学術論文、雑誌等という入手経路が最も多く、一方、国の法令から情報を得ているという回答は少なかったということでございました。このことから、医療従事者においては、医師間で流通する情報というのが重要な情報の入手経路になっていると考えてよいのではないかと思っております。
 注射針の加熱消毒、ディスポーザブルの普及についてということですが、サンプル数が一定程度得られた昭和34年以降では、34年、40年、44年、52年と次第にディスポーザブルがふえ始め、52~63年では7割を占めるまでになっております。いずれの期間にも、いずれも実施してないという回答も一定程度存在していました。
 筒についても傾向としては同様でございまして、ディスポーザブルが徐々にふえ始めて、52~63年の期間では6割を占めるという結果になっております。一方で、いずれも実施していないものも一定程度存在していたということでございます。ただ、この割合については、「わからない」あるいは「無回答」というものも含んでおりまして、特に古い時代の回答については結果の解釈に留意が必要であると考えております。
 57ページからが保健所長調査でございますが、保健所長調査は母集団がもともと少なかったこともございまして、なかなかクロス集計をするに足るようなサンプル数が得られなかったということで、結果の御報告としては単純集計のみということで、傾向としては前回と同様の傾向でございます。
 72ページに自由回答の形で寄せられた御回答について整理いたしておりますので、こちらを適宜ごらんいただければと思います。
 74ページに「3.7 結果のまとめ」を掲載しております。
 病態及びリスク認識についてということでは、認識時期は、重症化、キャリア化、感染性のいずれの項目も昭和52~63年が多数を占めているという結果でございました。感染することのリスクについては、針では40~52年、筒では52~63年が最も高いという結果でございました。
 被接種者ごとの注射針の指導の有無については、ディスポーザブル製品の使用が全体の36.4%という結果でした。これはクロス集計ができなかった関係で、時期がいつごろかというところまでは特定できておりません。
 一方、筒については、ディスポーザブル製品の指導が全体の39.4%というような結果でございました。
 また、情報の入手経路については、医学教科書、学術論文、雑誌等という回答が多かったことは医療従事者と同様です。
 国の通知から情報を得ているという回答はそれほど多くはなかったのですが、医療従事者の結果と比較して見ますと、国の通知等から把握した割合は高かったというようなことは見られております。保健所長においても、医療従事者と同様に、医師間で流通する情報が国からの情報とあわせて重要な入手経路になっているということがうかがわれるのではないかとまとめさせていただいております。
 資料2と3の御報告は以上でございます。
○永井座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御報告について、御意見、御質問をお願いいたします。
 どうぞ。
○垣本構成員 垣本と申します。
 精密ないろんな調査をどうもありがとうございました。医療従事者の結果から見ると、かなり早い時期からディスポーザブルの使用ということについて医療従事者の方は行っているわけですね。一番早くは、昭和29年4月から昭和34年度に既に10%の方が使っていて徐々にそれがふえてきているわけですが、実際に都道府県の例を見ますと、結局、昭和63年になるまでそれを待たなくてはならなかったというか、63年で急にふえるというか、かなり多くのところで使われるようになっているわけなのですけれども、そのギャップというか、使われ方が広がらなかった、時間がかかってしまったというのはどういうことによるのでしょうか。
○永井座長 多田羅構成員、どうぞ。
○多田羅構成員 それが研究班の全体の研究仮説でございまして、63年というのは国から針・筒の交換をそれぞれの予防接種を受けることについて実施しなさいという通知が行きましたので、ディスポに多く移行していったと思います。だけれども、なぜそれまでそういう通知がなされなかったのか、結果として予防接種による水平感染が多く起こった、それを今、分析していると言うと逃げになるかもわかりませんけれども、追跡しているところだと御理解いただきたいと思います。
○垣本構成員 ありがとうございました。
○永井座長 23~29年あるいは34年ごろまで、日本にディスポの製品はあったのでしょうか。
○垣本構成員 でも、ディスポがあったのは44年ぐらいからではないですか。
○永井座長 ですから、使っていたと言われるのは本当にそうかどうかはわかりませんね。そこの確認はどうでしょうか。昭和20年代からディスポを使われていたと回答された方がいらっしゃるわけですね。
○多田羅構成員 ディスポは早くても昭和40年ぐらいになると思いますので、20年代、30年代は、もしあるとすれば思い違いという結果になると思います。
○永井座長 ただ、煮沸した注射針を交換していた方はいらっしゃるわけですね。
○多田羅構成員 それはいらっしゃいます。むしろ中心だったと思います。
○永井座長 ほかに。
 どうぞ。
○田中構成員 全国B型肝炎訴訟原告団の田中です。
 今回のまとめですが、とりわけ都道府県、市町村アンケートの調査報告書、資料2のまとめ方なのですが、やはりこの検討会は、なぜ注射器、針、筒の使い回しがされたのかという検証、再発防止策を検討する検討会ですので、まとめの仕方としても、何が問題だったのかともう少し浮き彫りになるようなまとめの仕方とその記載をしていただきたい。
 その理由は、本来ならば被接種者ごとに筒・針を交換するのは当たり前、あるいは時期によっては消毒するのは当たり前なのですが、そうでない時期が見受けられます。都道府県のアンケートにしても、例えば資料2の3ページ、昭和63年度及びその前年度はほとんどディスポを使用するようになっていますが、それでも使用していないところもある。あるいは市町村に至っては、市町村のアンケートは例えば30ページ、昭和63年度、この時期においても30ページの被接種者ごとにアルコール綿で消毒がまだ22件、そして交換・消毒実施せずもまだ3件もある。ここが問題であって、ここはなぜ交換もしなかったのかということが問題であり、ここはぜひとも本当はヒアリングも含めてしてほしい。
 こういった危険性があるにもかかわらず、本来ならばこういうことはないはずなのがあるということが問題であって、そこをぜひまとめの中にも記載していただきたいと思います。
 市町村のところでは、せっかくアンケートで自由記載欄がありました。それが今回のまとめの中では、自由記載のところが載せられていないという問題もありますので、そこの自由記載についてもぜひとも載せていただきたい。やはり今回の検討会の本来の目的に合ったような結果のまとめにしていただきたいということです。
 以上です。
○永井座長 いかがでしょうか。そういうまとめ方は可能でしょうか。
○多田羅構成員 今、田中構成員がおっしゃったことのとおりかと思います。第1次調査として、今の都道府県、市町村の現状あるいは歴史的にそれが断面としてどうであったのか。しかし、なぜそういう事態になったのか、またそういう実施せずというようなことは、ある意味では許されていい事情ではないというようなことがなぜ存在しているか。少なくともアンケートで結果に出てくるというところです。
 それは後のヒアリングの報告に、そこのところをヒアリングで明らかにしていくということになるかと思います。アンケートでは単にそのときの記憶で答えていただいていますので、記憶違いもございますし、不十分なところもございます。その辺のヒアリング調査をやるということで今もやっているのですけれども、ただし、市町村のほうがなかなか応じてくれないとか、時間の設定が難しいというのも現実に存在しているのが現状でございます。今のところ、それができるところの市町村ないしは都道府県のヒアリングはやらせていただいているのですけれども、田中構成員がおっしゃるように、そこのところはまだ十分ヒアリングできていないという現状でございますので、研究班でも、田中構成員からも御指摘いただいて、さらにそういう市町村などにヒアリングできるように努力したいと思います。
○永井座長 どうぞ。
○田中構成員 ぜひ市町村、都道府県、検証項目にもありますが、やはり医療関係者と自治体との関係がどうだったのか、あるいは情報がきちっと伝わっていたのか。それも市町村から都道府県、国にちゃんと伝わっていたのか、そこは市町村、都道府県も含めて国へのヒアリングもする必要があると思うのです。そこもぜひやっていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○永井座長 どうぞ。
○研究班事務局 市町村アンケートの自由記載欄についてでございますが、説明が少し漏れまして申しわけございません。
 資料2で申し上げますと、49ページ、市町村アンケート調査票の自由記載欄として設けている部分は、事例としてどんなものを把握していますかというような設問でございましたが、前回も少し御報告しておりますが、多くは裁判に向けた予防接種の記録の開示請求をもって把握しているということでございましたので、これは一つ一つ電話で照会いたしまして確認して、今回の設問の趣旨と違うものについては回答を修正するというような作業を行っております。
 49ページの上の(1)63年3月以前の把握というところをごらんいただきますと、把握していた記録があると回答したところの記載を見ますと、昭和23年出生男性20歳ごろ、献血でB型肝炎発覚し肝がんで死亡ということで事例を把握していたという回答がございました。これも電話で照会をいたしましたところ、組織として把握していたというよりも、回答した保健師さんに個人的に相談を受けたという事例だったようではございます。
 63年3月以降の把握というところですと、時期:平成元年というところですが、これは札幌市での訴訟の情報をもって把握しているという回答でございました。ですので、当初設問を設定したときに想定していたような、自治体の集団予防接種によるB型肝炎の集団発生を事例として把握しているのではないかという期待でこの設問で設けたわけですが、そういう事例については調査では把握できなかったという結果でございました。
○永井座長 どうぞ。
○新美構成員 新美でございます。
 これは表記の仕方ですけれども、クエスチョネアでB型肝炎の後にかぎ括弧をつけて血清肝炎も含むというような書き方をしていたと思うのですけれども、報告書の中で全部B型肝炎となってしまうのは正確性に欠けると思いますので、まとめの段階でもB型肝炎(血清肝炎も含む)とか、あるいはB型肝炎等ということで血清肝炎も一般的というところもあるのだということをきちんと書いたほうがよろしいのではないかと思います。
○多田羅構成員 わかりました。
○永井座長 どうぞ。
○梁井構成員 B型肝炎訴訟原告団の梁井です。
 先ほど田中構成員のほうからおっしゃいましたけれども、予防接種が問題でこれだけの大きな被害が発生したということですから、やはり問題点が浮き上がってくるようなまとめのやり方をしていただきたい。例えばパーセントで数値をあらわしているのですけれども、自治体の23ページ、ポツの2個目、昭和63年までには6割程度までディスポーザブルがふえていったと、これだけ普及していたというまとめの書き方になっているのですが、割合としては6割ですけれども、これを数字であらわすとまた随分小さい数になっていく。ですから、最初にパーセントともう一つ普通の数字を入れてくれという案も前回か前々回で出たのではないかと思いますので、そうすれば6割程度もふえたというような書き方ではなくなるのではないかと思います。
 あともう一つ、医療従事者、保健所長のところで、中には昭和52年ぐらいから認識がふえているとかの説明としてそのころに従事した人が多いからだという説明があったのですけれども、その説明というのは、まとめのところにも書いていただきたい。まとめだけしか見てもらえないというところもあると思いますので、その辺をもう少し正確にしていただきたいと思います。
 原告団では、ディスポだけだとか、消毒をしないとか、アルコールで消毒とか、いろいろなものを数字を分けて複数回答してくれということをお願いしました。それで前回も田中構成員が小さい数字からだけではなく大きい数字もあらわしてくれと、今回もしていただいているのですけれども、大して数値としては違いがなかったという結論づけでした。
 しかし、そこがどれぐらい違うか、なぜ違うのか、そのあたりまで検討する必要があるのではないかと思うのです。違うということは注射の種類によって手技を変えたということですね。ですから、ディスポもやっていたけれども、もしかしたらアルコール消毒もやっていたと。では、手技が違うというのは、その自治体ではどういう認識があったか。そのあたりからディスポの認識の度合い、重要性とかその辺をどういうふうに思っていたとか出てくるのではないかと思うので、もう少し分析をしていただきたいと思いました。
 以上です。
○永井座長 多田羅構成員、どうぞ。
○多田羅構成員 御指摘のとおりと思います。ただ、今回のここまでの調査報告はアンケートを回収された結果の単純集計に近い、ややクロスもございますけれども、AがAであり、BがBであったという報告にとどまっております。一応そういうレベルで今回この検討会に出させていただいたのですが、今、いただいたような御意見を受けて、研究班のほうでどのように深めていくのか、どういうヒアリングが必要なのかということはまた田中構成員や梁井構成員からも研究班のほうで具体的に御指摘いただいて、研究班のほうで深めていただきたいと思います。
 きょうの検討会、一応今までの集計結果がここまで出ているということで御理解いただきたいと思います。これからの研究班としてこれを深めていくように取り組みたいと思いますので、そのように御理解いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○永井座長 よろしいでしょうか。
 どうぞ。
○位田構成員 位田です。
 先ほどの田中構成員の質問ともかかわるのですが、この調査はどちらかというと事実調査もしくは状況の調査なので、なぜという調査は基本的にないわけですね。
○多田羅構成員 そうなのです。ヒアリングでということになっているのですけれども、このヒアリングは意外と難しいといいますか、相手のある話ということもございまして、そこのところをどうできるかということになっております。
○位田構成員 なぜというのは恐らくこれからの話でしょうし、むしろなぜというのが今後議論しないといけない再発防止の問題にもかかわると思うのです。ここの問題は確かにB型肝炎の話なのですが、基本的に国から通知が行ったものが末端の現場でなぜ実施されなかったかというところをもしヒアリングなどでお尋ねいただければ、そのB型肝炎だけではなくて、一般的に国、厚生労働省から都道府県に行き、そこから市町村に行き、それが現場のお医者さんにどういうふうに伝わっているのか。そこがある程度わかってくると、ほとんどがディスポになっているのにまだやっていないとか、本来国の指示に従うべきことに従われなかった理由というのがわかってくると思うのです。そこがわかれば、そういうふうにならないような仕組みを今後つくっていくということにつなげていかないと、余りここばかりに集中して、あれが足らない、これが足らないということだけでは恐らく切りがないと思いますので、将来的なことを少しこの段階では考える必要があるかなと思います。よろしくお願いいたします。
○多田羅構成員 それもおっしゃるとおりで、私も各市町村にそういう意味でヒアリングに行くのですけれども、各市町村の方も記録がない、記録がないということになってしまうのが現実でございまして、そういうところを明らかにする資料とか当事者、そういう方に会いたいということでもちろん連絡するのですけれども、今の人が会ってくれて思い出しながらわかることを話すというような状況が現実でございます。
 そうも言っておられないところもございますので特に国の文献調査のほうで国の資料が相当明らかになってきましたので、そういうものが具体的になると、これについてはどうだったのかと。ただ、法律はこうだったのにどうだったのかというだけではなくて、そういう点はもう少し踏み込んだ調査ができると期待しているところなのです。市町村、都道府県もなかなかそのところは手ごわいところがございまして、そういう点も御理解いただきたいと思います。おっしゃることはそのとおりと思っていますので。
○永井座長 よろしければ先の御報告をお聞きしたいと思います。議題3のヒアリング調査でございます。
 研究班から報告をお願いいたします。
○多田羅構成員 今、申し上げているヒアリングのことでございますが、都道府県、市町村のヒアリング、関係学会等のヒアリングの調査につきましては、先ほど事務局から報告しましたアンケート調査の結果を踏まえて、今、御指摘いただいた点を明らかにするという目的で実施させていただいているわけでございます。そういう方向でやらせていただくということは、先月の第7回検討会で報告させていただきました。
 その後、対象の自治体等との日程調整の関係で、まだ中途であるということなのですが、昨日まで終了している分につきまして、まだ決して十分なものではないのですけれども、その結果を報告させていただきます。
 それでは、事務局から説明をお願いいたします。
○研究班事務局 それでは、資料4をごらんください。自治体ヒアリング調査の結果概要ということでございます。
 今、お話がありましたように、調査対象のところに記載しておりますが、2月13日現在の状況を報告させていただきたいということでございます。調査の対象としましては、今のところ5つの自治体の実施をもう既にしておりますけれども、13日現在では実施予定のところもあったということでございます。
 まず、Aの自治体でございますが、ここの自治体では、担当の保健師さんが昭和61年に県外から異動していた。その際に、ガラスの注射筒を煮沸消毒しており、感染予防の観点から変更の必要性を感じて、自分で働きかけて予算化を進め、その結果、昭和62年度から針に加えつつもディスポーザブルを採用するに至ったというところでございます。
 Bの自治体でございますが、医師会に設置された予防接種運営委員会が、その自治体における予防接種の内容を主導していて、特に一針一筒に変更したときも、予防接種運営委員会のリードがあったということでございました。
 Cの自治体ですが、昭和36年ごろから続く担当者の備忘録的な申し送りのメモがあり、そのメモに基づいてアンケートに回答していただいたところでした。昭和51年のディスポーザブルを使用しても差し支えないという厚生省通知に沿って、52年度からディスポーザブルを全面採用したという経緯がありました。
 またDの自治体ですが、ここは肝炎の集団発生を経験した自治体ということで、当時を知る職員OBなどにヒアリングをする予定と書いてありますが、既にしたところでございます。
 Eの自治体につきましては、50年以降退職している担当者への聞き取りによりアンケートに回答したということでヒアリングをお願いしたところでございます。
 2ページに結果の概要を整理させていただいております。
 まず、針・筒の交換・消毒の実態ということで、現在及びこれまでの予防接種制度全般への市町村のかかわりという項目。
 1予防接種の実施に関する市町村における検討体制ということですが、まずAの自治体では、旧町を含む1市6町から成る郡医師会で予防接種が一部の議題になったことがあるが、61年以前は予防接種実施の詳しい報告や議論はなかった。62年から地元医師会と定期的に実施するようになり、医師、保健師、課長が参加していた。現在は定例の会議を設けて、市内の医療機関に対し、予防接種の実施要領・スケジュール、実施内容、対象疾病などの文書で、副反応の報告などを含め周知し、予防接種事業を進めているということでした。
 Bの自治体では、行政と医師会が連携して予防接種に関して検討、実施を行っている。昭和40年代から医師会に予防接種運営委員会が設置され、定期的に開催していた。委員会には行政からも出席して情報共有をしている。また、予防接種行政の先進地への視察を行い、先進事例等の情報収集にも努めてきたということでございました。
 Cの自治体では、51年当時から医師会の母子保健委員会などに出席し、予防接種に協力してもらう医師の調整などをしていた。現在では課長と保健師で年2回会合を持ち、個別接種をしてもらう指定医療機関宛てに説明などをしている。県からの出席はほとんどないが、保健所長にはたまに来ていただくこともあるというような状況だそうです。
 予防接種の実施方法としましては、61年ごろ、学校や保育園などを会場とし、予診票の整理、既往症等の内容チェック、器具の準備・持参、トレイの滅菌、撤収、戻ってからの処理をほぼ全て保健師が行っていた。
 あるいはCのところでは、51年ごろは市の保健師、看護師3名で4人のチームを組んで対応していたというようなことでした。
 3ディスポーザブル注射針・筒の使用状況ということでは、Aの自治体では、先ほど申し上げましたが、61年ごろ他県からの異動で、以前の県ではディスポーザブルを使用していたが、こちらに来たらガラスの筒のみ煮沸滅菌していたので変更の必要性を感じ、予算化を行ったということでした。そのときに県にも情報提供などの報告を行っているということです。
 Bの自治体では、61年からディスポーザブルを用いた一人一針一筒方針となっております。その数年前よりB型肝炎が大きく取り上げられており、感染予防の必要性について予防接種運営委員会で検討されてきた。昭和60年に行政へ要望書を提出し、それを受けて市のほうで予算化を行った。背景として50年ごろのHIV、50年代後半までに得られていた肝炎に関する知見などがあり、血液を介した感染症に関する認識が高まっていた時期であったということでした。先進地視察などを通じてディスポーザブルを用いた一針一筒方式を採用している自治体があることも認識できていたということです。
 Cでは、厚労省の51年のディスポーザブルのものを使用しても差し支えないという通知で52年4月より針・筒ともディスポーザブルを導入したということで、このときの「差し支えない」というのを命令に近いものと解釈したのではないかということでした。
 2)予防接種の手技等の指導への市町村のかかわりということでは、予防接種指導要領など手技に関する規定について、Aでは特段の独自の規定は設けていなかったということでした。一方、Bでは、予防接種に関して医師向けのガイドラインを医師会で作成していたというようなところもございました。
 また、手技等に関する検討ということでは、Cの自治体で特段当時は決まった検討プロセスや検討体制というものはなかったというような回答でした。
 (2)集団予防接種等によるB型肝炎可能性が疑われる具体的な事例ということですが、これはアンケートと同様に、ヒアリングの対象では具体的な事例を把握している自治体は見られなかったという結果でございます。
 (3)B型肝炎ウイルス感染のリスクに関する認識ということで、医学的知見の状況としては、まずAの自治体では、保健師によってもリスク認識には差があった。当時町にいたもう一人の保健師は、そんなに強いリスク認識はなかったのではないかということで、この担当の方が個人的にリスクを感じて動かれたというような事例でした。
 Cでは、51年当時、自身が学校で学習したことがリスク認識の基本としてあったと思うというような御回答をいただいております。
 集団予防接種によるB型肝炎ウイルスの感染リスク認識に関する状況ということでは、Bの自治体、これは自治体というか医師会の医師の方にお話を伺っていますが、56年ごろのHIV、58年にはHIVウイルスが血液を介して感染することがわかっていた。このことが当時の血液の取り扱いに関する意識を急速に高めた一因であったのではないかということでした。また、このころには肝炎に関する知見も得られていて、昭和60年ごろまでが血液に感染する疾患に関する認識が小児科一般に広まってきた時期であったと思うということです。
 このBの自治体では、先ほど申し上げましたように61年から一針一筒に変えていったということで、60年までに認識が高まっていたのではないかというようなお話を伺ってまいりました。
 以上でございます。
○永井座長 ありがとうございます。
 それでは、御質問、御意見、どうぞ。
○野口構成員 全国予防接種被害者の会、野口です。
 御報告ありがとうございました。2点質問があるのですが、2ページのBの行政の方のコメントなのですけれども、昭和40年代から医師会に予防接種運営委員会が設置され始めまして、予防接種行政の先進地への視察を行いと書いてありますけれども、この先進地という表現を使われたということは、この方はこういう表現が適切かどうかわかりませんが、後進もしくは発展途上でもいいのですけれども、こういうふうに認識されて先進と言われたと思うのです。先ほどいろんな構成員から御意見が出ていますが、ここでばらつきが見られているということがある程度この証言で明らかになっていると思うのですけれども、それがなぜかというのをこれから検証していただきたいのですが、特にこの表現が、40年ごろから予防接種運営委員会を設置されたというので、1つは地域ごとの予防接種運営委員会がどのような体制でうまく機能していたのかというところをひとつ検証していただければと思います。
 2つ目ですが、3ページ目、Cの方のコメント、厚生省の51年通知、ディスポーザブルのものを使用して差し支えないというものに対して、ここの行政の方はそうしなさいといった命令に近いと捉えておりまして、ここも先ほど解釈の点があったのですが、ずっと資料を見回して見落としたかもしれませんが、51年通知の全文を拝見したいのです。ここだけぱっとありますとどういう背景かというぐらいが読めませんので、私の見落としかもしませんけれども、51年の通知の全文を拝見したいと思います。
 以上です。
○永井座長 今、資料はわかりますか。後ほど。
○多田羅構成員 それは文書があったと思います。予防接種運営委員会は過去にヒアリングしているのですが、このときは具体的に内容まで聞き込めていないと思いますので、今、御意見をいただきましたので、この市町村はわかっておりますから、もう少し深く。確かにこういうものができていることは非常に貴重な宣伝になると思いますので、確認させていただきます。
○永井座長 どうぞ。
○研究班事務局 少し補足させていただきます。Bの自治体の先進地という表現についてでございますが、実は医師会の中で予防接種運営委員会を設置して行政と連携して検討を行っていたというのはかなり先進的だったと客観的に見ても感じていますし、現地の方々もそういうことでプライドを持っていらっしゃったというお取り組みと理解しております。
 ですので、決して自分たちのところが劣っているから先進地に見に行ったというよりも、むしろ積極的にやっているからこそ、周りのところから情報交換あるいは学習をしてさらに高めようという位置づけであったと思います。
 実際、ヒアリングの中では先進地だということで行ってみたけれども、自分たちのほうが進んでいるところもあったというようなお話もございましたし、そういうことも含めて、ほかの自治体との情報交換の中で自分たちが学べるところを探していたというようなお話でございました。
○永井座長 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。
 位田構成員、どうぞ。
○位田構成員 今の御質問ともかかわるのですが、51年の通知でディスポーザブルのものを使用しても差し支えないというのは、使用しなければならないという通知ではなかったというのがあって、そうすると、これはこの調査の範囲ではないのですけれども、なぜそういうふうな「差し支えない」という表現にとどまっているのかという問題があると思うのです。よくわからないのですが、予防接種に関して、国と地方自治体の権限関係、それがどのようなものであったのかというのがわかればある程度想像できるかなという気はします。
 それが1点ともう一点ですが、医師会との連携というのが幾つか出てくるのですけれども、全国的に日本医師会なら日本医師会が予防接種なりB型肝炎に対してどういうふうな対応を考えていたのかというのも補足的にもし調査できればいいのではないかと思います。
○多田羅構成員 わかりました。その「差し支えない」ですけれども、これは非常に意味深い言葉、消極的、また積極的な意味で、今おっしゃっていただいたように法律で予防接種は市町村の実施義務でございますので、前向きに解釈すると、国がしなさいとは言えないということも思えるのかというふうに、市町村の方などと私との話でもそういうことなので、国が遠慮されたのだろうと。ですから、実質的には我々市町村としては実施しなさいというものとして、この市町村は理解しましたということをここではおっしゃいました。
 そういう意味で、おっしゃっていただいている法律の形は市町村が自治体ですので、国が簡単にやりなさいとは言えないので、差し支えないという消極的な言い方になったのは非常に微妙なところで、解釈の要るところかと思います。
○位田構成員 その点で済みませんが、そうすると、実施主体が市町村であるということは、予算的にも市町村が全部負担をしないといけないということですね。必ずやれというと。
○多田羅構成員 地方交付税でどう回されているかというのはあるかもわかりませんが、基本的には市町村の予算でやるということです。
○永井座長 ほかによろしいですか。
 もしよろしければ、続きまして議題4にまいります。
 研究班から報告をお願いいたします。
○多田羅構成員 これにつきましても非常に重要なデータとして認識しております。注射器等製造販売業者向けヒアリングをそのために行ってきたのですけれども、予防接種に使用する器具等の開発・普及状況について、文献調査の結果を補完するということを目的として実施してきたわけですが、業者側にも古いことなので記録が残っていないということで、具体的な状況が非常に不明であるということを先月の第7回検討会で報告させていただきました。
 しかし、委員の皆様から注射器の普及という問題、それは特に業者レベルにおける実態、生産量であるとか金額であるというものは実態を直接把握するものであるので非常に大事だということから、再度業者に対して調査を行うことはできないのかという提案もいただきましたので、厚生労働省のほうからも、業者に対して趣旨を説明して協力依頼をいただいた上で若干の追加の聞き取りを行いましたので、その結果を報告させていただきます。
 それでは、事務局からお願いします。
○研究班事務局 それでは、お手元の資料5をごらんください。製造販売業者向けヒアリングの結果ということで御報告させていただきます。
 研究班から、改めまして再度製造販売業者へ調査への協力をお願いいたしました。その結果でございますが、前回の検討会議におきましても、社史などのもとになった情報が残っているではないかという御指摘がございました。確認をいたしましたところ、ちょうど本社が移転したという経緯があって、昔の社史の元になった資料が既に保管されていないというような回答でした。
 この業者さんのほうでは、OBへのヒアリングを追加的に実施していただいたということで、以下の情報が得られております。ただし、記録に基づくものではなくて、ヒアリングで個人の記憶に基づくものであるということは御了解いただきたいと思います。
 まず、1970年代の市場の状況についてということで、昭和40年代の医療機関では、ディスポーザブルの注射針、注射器はほとんど普及しておらず、洗浄・乾燥・滅菌の再利用が大半であった。
 昭和50年代に入って、針から大病院を中心に全面ディスポーザブル化が普及し始めた。
 昭和45年ごろ、ディスポーザブルでなく再使用ができる金属製の注射針を販売していたそうですが、その後、1~2年で販売中止になったということで、次第にディスポーザブルに置き換わっていったというのもこのころと考えてよいのではないかと思います。
 昭和52年ごろ、大病院では針は全面ディスポ化、一方、注射の筒はどの医療機関でもガラス製を洗浄・乾燥・滅菌しての再利用が主であった。
 検査センターが採血用としてディスポーザブル注射器を開業医に昭和40年代前半から無償配布を行っていたというような話も伺いました。
 また、予防接種におけるディスポーザブル注射器の使用は、特に新聞報道などで肝炎の感染が問題化し、その対策として一針・一筒の必要性が言われ始めた1970年代中ごろ、昭和50年ごろ以降に官公庁を中心に普及が進んだというような情報がございました。
 参考として、このヒアリングでは70年代のディスポの価格についても、そこに記載しておりますように発言があったということでございました。
 以上でございます。
○永井座長 ありがとうございます。
 これは1社だけ調べたということでしょうか。製造業者はほとんど1社だったということですか。
○研究班事務局 最初に日本で販売を開始した事業者ということで1社。
○永井座長 ただ、大学病院はもう40年代、私は昭和49年の卒業ですけれども、ほとんどの大学病院はもうディスポを使っていましたし、市中病院でも中核的なところはもう全てディスポ、注射針、注射器とも使っていました。
○多田羅構成員 それは医療のほうですね。
○永井座長 はい。これは予防注射ですね。
○多田羅構成員 予防注射は医療より少しおくれたのではないかと思うのです。
○永井座長 いかがでしょうか。
 どうぞ。
○位田構成員 70年当時の10円、20円、もしくは60円、40円というのは、どの程度の高価格というのか低価格というのかわかりませんが、例えば大卒の初任給、1970年でどの程度なのかもし御存じだったら。私も永井先生と恐らく同じ年代なので、友人が就職するときに、たしか初任給が2万とか3万とかぐらいの時期だったと思いますので、その当時の1本10円で使い捨てというのは、感覚的には高額なのかなとも思いますし、先ほど御質問したように、地方自治体がこれを予算化してやるとするとかなり大きな負担かなという気がするのです。もし初任給がわかればお教えいただければと思います。
○多田羅構成員 次回以降、このところは少しそういう客観的指標がわかる材料を入れるようにいたします。当時の物価とかですね。
○永井座長 学食のランチが100円とか120円。
 どうぞ。
○新美構成員 予防接種用のディスポと一般医療用のディスポが分けてあるのですが、これは同時に製造販売したのでしょうか、あるいは時間差があるのでしょうかというのはお聞きになってらっしゃいますか。
○研究班事務局 ヒアリングの中ではそこまで伺っておりません。そこまでは把握してございません。
○岡部構成員 実態として、特に予防接種用の注射針であったり注射筒であったり医療用のという区別は全くありません。
○新美構成員 ここでは1CCと10CC違って書いてあるものですから。
○岡部構成員 それは予防注射の量によっても違うだろうと思いますし、医療用でも1CCを使います。
○新美構成員 ありますか。わかりました。
○永井座長 どうぞ。
○垣本構成員 値段についてお聞きしたいのですけれども、現在はお幾らなのか教えてください。高いものなのか。参考までにどんなふうかと思ったものですから。
○多田羅構成員 ちょっと済みません。
○野口構成員 全国予防接種被害者の会の野口です。
 位田構成員のほうからも出ました価格の面ですが、私のほうはどちらかというと価格差を知りたくて、ディスポと非ディスポの価格差です。後のほうの文献にも出てきているのですけれども、これがどれぐらいの倍なのか、2倍なのか、3倍ぐらいなのか。これを当時の普及率を上げたと試算した場合、どれぐらいの規模の予算になるのか。全体でも結構です。例えば10億本としたらそれがどうなのか。当時の想定される接種者も数値としては得られると思うのです。そんな感じでシミュレーションというのでしょうか、正確性のところはあれですけれども、それが各行政へどれぐらいの負担だったかというのを知りたいと思います。
○多田羅構成員 各市町村にとってどれぐらいになるかですね。わかりました。できる範囲でやってみたいと思います。
○永井座長 よろしいでしょうか。
 それでは、次に文献調査結果についてでございます。
 研究班から報告をお願いいたします。
○多田羅構成員 文献調査につきましては、検証項目1に関するものは昨年10月の第4回検討会において、また検証項目3に関連するものは昨年11月の第5回検討会の際に報告をさせていただいております。
 その際いただいた御指摘を踏まえ、追加して行った調査の結果について報告させていただきます。また、今回の課題でございました国が保管している資料についても調査が終了いたしましたので、その結果についても御報告させていただきます。
 ということで、研究課題になっておりました文献調査につきましては、国の調査が終了したということで、一応、今回が最終報告となるということで御了解いただきたいと思います。
 今回の文献調査の結果につきまして、事務局から説明いたします。
○研究班事務局 それでは、お手元の資料6-1、6-2をごらんください。
 6-1のほうが結果のまとめでございまして、6-2は関連する資料を一覧に整理したものでございます。
 これまで文献調査の結果、御報告させていただいておりますものに追加的に記載しておりまして、6-1では前回までに御報告した分について、追加部分に下線を付して表現しております。
 まず1ページ、調査方法についてですが、今回、国のほうで保管されている文書等についても収集整理を行ったところでございます。これについては、国立公文書館のデータベースを用いるとともに、国が保管している文書については、「公文書等の管理に関する法律」及び同法律に基づく「厚生労働省文書管理規則」に基づき作成された行政文書ファイルの管理簿、データベース化されておりませんのでキーワード検索はできませんが、これと同法及び同規則に基づき厚生労働省が保管している資料等全てについて提出を受け、提出を受けた資料は同法及び同規則の行政文書管理方法、保存年限等によるものである。研究班事務局において提出を受けた資料の中から関連する資料を抽出し、整理したということでございます。
 結果の御報告につきましては、検証項目ごとにまとめを作成しておりますので、主にそちらを中心に御報告をさせていただければと思います。
 まず、検証項目1についてでございますが、15ページ「検証項目1に関する文献調査結果のまとめ」というところでございます。
 日本では、戦後一定の期間GHQの指導もあり、予防接種の実施に力を入れ、特に結核、痘そう、インフルエンザ、ポリオなどの感染症への対策を行ってきた。これらの疾患の予防接種対象患者数の減少は、戦後の衛生環境や栄養状態の改善等とあわせて予防接種の効果があらわれていると考えられます。
 予防接種の実施件数は、40年代まで年間延べ6,000万~1億5,000万の水準で推移をしていたと統計からは見てとれます。
 1948~53年に「予防接種施行心得」が出され、注射器及び注射針の煮沸消毒と被接種者ごとの注射針の消毒が明記されております。また、58年の予防接種実施規則では、注射針を被接種者ごとに取りかえることに加え、接種用器具について「乾熱、高圧蒸気又は煮沸による滅菌」が義務づけられております。
 さらに76年には「予防接種の実施について」において、「注射針、注射器、接種用さじ等の接種用具はディスポーザブルのものを使用して差し支えない」とされているところでございます。これは先ほど御質問がありました昭和51年のものでございます。
 1988年には「予防接種等の接種器具の取扱いについて」において、注射針だけでなく注射筒も被接種者ごとに取りかえるよう指導するよう通知されたところでございます。
 48年以降の「施行心得」あるいは59年以降の「実施要領」ともに、医師1人当たりの接種者数の目安というものが示されておりまして、種痘では医師1人当たり1時間に80人程度、その他の予防接種では100~150人程度とされているところでございます。1人当たりに換算しますと、45秒あるいは36秒で一接種ということになります。
 ディスポーザブルの注射器について、米国では1958年ごろに販売が開始されております。当時から日本へも輸入されていたということでございます。1963年には国内発のプラスチック製のディスポーザブル注射筒の発売が開始されております。また64年にはプラスチック製針基のディスポーザブル注射針の販売が開始されております。70年にはディスポーザブル注射筒、注射針の製造基準が定められ、標準化が図られたということでございます。
 ディスポーザブルの注射の針・筒は、40年代後半から大病院を中心に普及が始まったと文献からは読み取ることができます。昭和50年代に一般への普及が進み、昭和58年ごろまでには一般的になっていったのではないかと考えられます。
 これは薬事工業生産動態統計でディスポーザブルの区分ができたのが58年なので、一般的であったのだろうと考えたところです。
 58年時点のディスポーザブルの針と筒の生産量の比は6.2倍、この時期にはガラスの注射筒を使用して、針だけをディスポーザブルとして交換していたというような使い方がなされていたのではないかと推測されるところでございます。
 また、これは今回新しく追加した部分でもありますが、昭和40年代初頭には接種能率の向上のため、自動噴射式注射器というものが一部普及しておりました。国のほうでは1967年の段階では慎重な使用を求めており、その後も継続して安全性や効果に関する検討が行われ、昭和60年代初頭には、海外の事例から、この自動噴射式注射器によるB型肝炎感染のリスクの存在が確認されておりました。1987年になって、これは末梢神経麻痺を起こす危険性がまれにあるというようなことから、予防接種において使用しないということとされたところでございます。
 続きまして、検証項目の3でございます。23ページをごらんください。
 「検証項目3に関する文献調査結果のまとめ」でございます。
 日本では1940年ころから輸血による黄疸の発生が報告されてきたという文献がございます。1950年ごろにはウイルスによる感染性疾患であると考えられること、流行性肝炎と血清肝炎の2種類に区別できることなどが知られていたようです。また、この時期には、海外の研究論文などを引用する形で、針・筒の消毒の必要性についても指摘されておりました。
 1970年ごろ、B型肝炎ウイルスが特定され、抗原の検出が可能となって以降、B型肝炎の感染様式、発症機序、病態等に関する研究が大きく進展したと言って差し支えないと思います。
 B型肝炎ウイルスのスクリーニングが可能となるまで、輸血による血清肝炎を予防する手段がなく、現実的には輸血による感染を回避することが困難でした。それがウイルスの特定により、1972年から日赤の血液センターで献血中のHBs抗原のスクリーニングが行われるようになっております。このころまでの肝炎の感染経路としては、輸血が多くを占めており、そのため対策として売血から献血への転換であるとか、B型肝炎スクリーニングなどにより、輸血による感染は大きく減少したと言われています。
 輸血による感染が大きく減少した後に母子感染、性行為、歯ブラシ、かみそりの共用といった感染経路が着目されるようになり、1985年、昭和60年に母子感染防止対策事業が開始されたところです。
 慢性化に関する知見についてですが、流行性肝炎あるいは血清肝炎が遷延化あるいは慢性化することは臨床的には1950年代から見られていたと考えられます。ただし、1960年代ごろは肝炎の予後は一般に良好で、肝障害を残すものが少数であると考えられていたという記述がございます。その後、肝機能検査の発達や肝生検の普及もあり、60年以降、慢性肝炎に関する知見が蓄積され、その後、1967年、昭和42年に第1回犬山シンポジウムが開催され、慢性肝炎の分類が提唱、これにより慢性肝炎の概念が整理されたということで、このころからウイルス性肝炎の慢性化についての認識が広まったと考えてよいのではないかと思います。
 重症化することについての認識ですが、1964年ごろ、慢性肝炎が一部肝硬変に移行することが実証されたと報告する文献があります。ほかの文献を見ましても、遅くとも1970年代前半までには慢性肝炎から肝硬変に移行するということが認識されていたと考えられます。また、この時期には、肝硬変から肝がんになる可能性も指摘されていました。遅くとも1970年には肝がんとの関係が明らかになっていたということが言えるかと思います。
 キャリア化についてですが、1965年のオーストラリア抗原の発見以降、HB抗原が持続陽性となる症例が報告されるようになったということで、オーストラリア抗原が発見されたことで、その抗原が持続的に陽性になる症例が報告されたということでございます。
 免疫反応の観点から、免疫機能が十分でない乳幼児の場合に、HBVが持続性感染を起こし、無症候性HBVキャリアーとなるということが文献上見出されるのは肝臓の専門家の論文で1980年ごろ、医学教科書では1984年以降ということでした。
 感染性に関してですが、輸血以外の感染経路に着目されたのは1972年の献血におけるスクリーニングで、輸血の感染リスクが低下して以降であるということです。1970年代後半には、医療従者の針刺し事故によるB型肝炎感染が注目されるようになり、その結果、1980年には肝炎連絡協議会B型肝炎研究班による「B型肝炎医療機関内感染対策ガイドライン」が出され、ここにおいて注射針の再使用の禁止と注射筒の滅菌について記載されるようになっております。
 続きまして、検証項目4について、32ページをごらんください。
 まず、感染事例の把握についてですが、B型肝炎の感染事例と思われる報告は、1950年ごろから複数、現状見られております。しかし、注射器を感染経路とした報告が見られるのは、1980年、昭和55年以降ということでした。
 血清肝炎については1960年代から、B型肝炎についても少なくとも1970年代には厚生省による調査研究が進められています。1980年代からは肝炎対策を検討するための会議体、肝炎対策推進協議会が創設されています。このことから、1960年代以降、肝炎研究は国を中心に積極的に推進されているということ、あるいは研究レベルを見ても国際的に見ても高いレベルにあったと言って差し支えないのではないかと考えています。
 こういった一連の研究報告において、1980年、昭和55年度、昭和56年度の「厚生省肝炎研究連絡協議会」の研究報告により、注射の針やメス等の連続使用によるB型肝炎の感染の危険性と実態が報告されていたということがわかります。こうした報告を受け、特に昭和56年度の報告書では、注射針の単独使用は極めて重要な予防対策であると指摘され、ディスポーザブル注射器の使用の重要性が議論されています。
 また、この論文の記載によると、この時期に予防接種において一人一針の方針が徹底されるようになった市町村が複数あるということがわかります。
 主に医療従事者の針刺し事故防止を目的とした1980年の「B型肝炎医療機関内感染対策ガイドライン」において、針の再使用の禁止と筒の滅菌が勧告されています。
 国で保管されていた資料を見ますと、海外の知見のうち、少なくとも1962年のWHO総会における討議の報告書「伝染病予防対策における予防接種の役割」においては、血清肝炎の危険を避けるために筒と針を注射ごとに新たに滅菌する必要があるということが報告されておりますが、こういった報告書であるとか、1984年のWHOウイルス性肝炎対策、ウイルス性B型肝炎に関するWPROの第二次特別委員会報告といったものが把握されていたということがわかっております。
 資料6-1については以上でございます。
○永井座長 ありがとうございました。
 それでは、御質問、御意見をお願いいたします。
 どうぞ。
○奥泉構成員 B型肝炎訴訟弁護団の奥泉です。
 この文献調査に関して、事前に提出している意見書にも若干書いてあるのですが、確認を何点かさせていただきたいと思いまして、ここで述べさせていただきます。
 まず、1点は、文献調査の接種に関するいろいろな規則ですが、先ほど15ページで報告いただいた点で、それぞれの年代で手技のやり方が書かれているのですが、昭和25年のツベルクリン、BCGの一人一針の告示がここに載っていないのです。ツ反、BCGの問題については、後で意見書でも述べますけれども、大きな問題だと考えておりまして、事実上は特にツ反については昭和63年まで針の交換さえ徹底されていなかったということなのですが、ただ、実態として昭和25年に針を変えなさいという厚労省の告示がされています。この点は以前の私のほうの報告で資料もつけさせていただいたのですけれども、その点、重要だと思いますので、ここに載せていただきたいというのが1点です。
 国の文献調査の収集方法で、先ほど1ページの国が保管している文書については以下のとおりということで報告されましたけれども、「公文書等の管理に関する法律」及び同法律に基づく「厚生労働省文書管理規則」に基づいて保管しているものは全て提出を受けたと書かれているのですが、この文献集には先ほど関連あるものを取り上げたということなので、文献自体はもっとたくさんあるのかなと思いました。ですので、どういうものがあったか自体も確認ができればと思いますので、その提出を受けた文献そのもののリストをぜひとも開示いただければと思います。
 今回報告をいただいた国の文献の中で、それぞれの通知や告示あるいは接種規則の制定の背景、どうしてそういう通知や通達などを決めたのかというところの理論状況や背景を示すものが残念ながらないように思います。ですから、そこの議論状況がわかるものというのは本当にないのか、一般であれば例えば会社であれば稟議書とか決裁書というのがあるのかと思うのですけれども、そういうものが厚生省の当時の記録ではあるのではないかと思うのですが、それはないということであればどうしてないのだろうかというところが疑問なものですから、その点、明らかにしていただければと思います。
 もう一点、最後の32ページの一番上で、B型肝炎の感染事例と思われる報告が昭和50年代から複数見られるが、注射器を感染経路とした報告は昭和55年以降であるということで、確かに明確に注射や採血の器具でという報告は今回挙がっていないようなのですが、24ページの文献の報告の中で、「1)関係学会、医療関係者による把握および対応」の○の3つ目ですが、昭和45年の鳥羽市の小・中学校に集団発生した肝炎の事例が報告されているということで、経口感染の確証が得られなかったということが書かれているのですが、これは非常に重要かなと思うのですが、この報告の中では、そういう注射器具なり医療行為の関連とか、そういうところの示唆というのはなかったのかどうかというところです。それについて教えていただければと思います。
 以上です。
○永井座長 どうぞ。
○多田羅構成員 ただいま4点御指摘いただきました。
 まず、昭和25年の告示につきましては、我々の報告では落ちておりますので、確認させていただきます。文献の全体がどういうものがあるのか、そういう中でどれを調査したのかという御指摘ですが、一応事務局に国のほうの具体的これが文献だというところに案内いただいて、そこにある段ボールに入っているのが主なものでございますが、かなり膨大な資料を事務局が総力を挙げて調査、分析した結果が本日御報告させていただいたものでございます。
 ですので、これをリストにするというのは、かなりの労力にもなるような気がするのです。何か取り組んでくれているらしいのですけれども、一応御要望を受けて、その方向で全体のリストをこの機会につくるという部分も含めて取り組ませていただいているということで御理解ください。時間がかかるかもわかりません。
 3点目の通知、告示、規則については、今、申し上げていますように、ありのままの段ボールの中の実態としては、きょう御報告したのが全てでございますので、それを特段、落としているとか、出していないということはございません。ですから、今のところ、これがどういう格好で稟議されたり会議を持たれたのかという議事録としては残されていない。結果の通知である告示はもちろん公文書でございますので残っておりますが、それに至る課内、省内等の議事録については、結果として残っていないということでございます。
 24ページの真ん中ほどにある鳥羽市鏡浦小・中学校、私もこの報告は読んでおります。当時の小学生、中学生にツベルクリン反応の検査をした後、肝炎、当時はまだBと明確になっていない時期でございますが、当時もう既にそういう観点からの指摘もございまして、報告書が県から出されております。
 その中にありますのは、針とか注射等という言葉はございません。ただ、ツベルクリン反応はそうした感染者の子供の共通の要因であるというところまでは指摘がございます。しかし、だからどうしたということは、当時の内容としては触れておりません。むしろこれはA抗原とか、そういうBであるとか、ウイルスの形についての議論の1つの根拠にはなっているようでございますが、感染というところで針と注射ということは触れていませんが、ツベルクリン反応検査を受けているということが共通の要因であるというところまでは文章化されております。
 以上でございます。
○永井座長 ほかに。
 どうぞ。
○丸木構成員 教えてほしいのですけれども、30ページのところに、1985年に保険医療局感染対策課長からの通知が紹介されていまして、恐らく垂直感染の防止をやったときの通知ではないかなと思うのですけれども、垂直感染を防止して、これを読むと事実かどうか教えていただきたいのは、HBe抗原陽性であっても感染力の弱いウイルスであるために、血液付着物の後始末、血液の取り扱いに注意する限り感染はほとんど成立しないと考える。こういう文句があるのですけれども、これは事実なのか、それとも当時のHBeは弱いという認識があってこういうのが出されていたのか、その辺の事実認識。ひょっとして、例えばそういうディスポにしなさい、変えなさいという指示を出したところで、現場がこういう感染力が弱くてというのであれば数値もなかなか徹底しなかったのではないかと推測されましたものですから、ぜひ御説明をいただければと思います。
○多田羅構成員 そこのところは1つの課題でございます。これはありのままの記録をここに記載しておるのですが、御指摘のとおり、BウイルスはAよりもはるかに強力な、10倍ぐらい協力であるという話も聞きましたけれども、非常に強力なウイルスでございまして、結果的に予防接種で感染する、A、Cは感染しないという種類のものでございますので、この感染力の弱いというのは、非常に間違った認識による文書として出されております。
○永井座長 どうぞ。
○岡部構成員 岡部です。
 全く間違っているわけではなくて、HBeの抗原の中に非常に感染力の強い抗原、これをe抗原というのですけれども、early抗原、それの場合には本当に1滴でも感染すると言われていますけれども、それ以外の抗原も分けられていまして、その場合には抗原陽性であるけれども、感染力としては極めて弱いというのは医学的に認められているところです。
 ですから、垂直感染予防でもHBeのe抗原の陽性の人の場合は、子供に対して非常に注意をするのですけれども、そうではない場合には感染力は余り強くないので、通常の注意で大丈夫であるといったようなことはあります。
○丸木構成員 わかりました。
○永井座長 ほかにいかがですか。
 どうぞ。
○野口構成員 野口です。
 2点あるのですが、15ページの○の5つ目の1人当たりの接種時間の目安ですけれども、これは後の資料にも当時の厚労省の方のコメントで、注射筒を各人ごとに変えることは煩にたえないと出ているのですけれども、これは接種の時間のことをずっと気にされていたなとうかがえるのですが、実施するほうは、一方で、コストと時間という制約の中でやっていたと思うのですが、この接種の目安はいつまで続いたのでしょうか。これは途中でこれはこれで気にしなくていいという文章は出ましたでしょうか。
○研究班事務局 確認しないと正確なお答えはできないですが、恐らくこれ以降、これを改正するようなものというのはなかったのではないかと思っています。
○野口構成員 では、もう一点なのですけれども、全く別の質問でして、検証項目4のところで被害者の実態もカバーしていると思いましたので、予防接種の健康被害の統計を以前お願いしておりましたが、また今回漏れておりましたので、追加でお願いいたします。○多田羅構成員 文献調査ですか。
○野口構成員 そうですね。被害実態のところで過去の予防調査。
○多田羅構成員 とりあえず被害者の方の実態調査は今やっていますね。
○野口構成員 はい。それと同時に過去の予防接種の健康被害がどの程度あったかという時系列を出していただきたいということ。
○多田羅構成員 予防接種全般ですね。
○野口構成員 そうです。
○永井座長 どうぞ。
○?橋構成員 会議におくれて気おくれしていたものですから、タイミングを逸しまして。
 先ほど告示とか規則しか残っていなくて、それ以外の過程についての文書は残っていないのではないかという御質問があったのですが、私は公文書管理も専門なのですけれども、我が国の公文書管理法ができる前の文書管理のいろいろな問題点があるのですが、そのうちの1つとして、公文書管理法制定前の文書管理規則で、いわゆる政令等について保存年限がある場合について、それだけを結局捉えて保存年限というのを指定していた。それに関連する意思形成過程情報を残せという文書管理規定になっていなかったのです。それが問題であるということで現行の公文書管理法は、いわゆる意思形成の過程を含めてきちんと残しなさいという形で対応したという経緯がございまして、そういう意味では全く残っていない、つまり、一番長いものについてだけがぽつぽつ残っていて、それの意思形成の過程を証するものが抜け落ちているという文書管理の現状というのは、厚労省だけではなくて、公文書管理法が制定される前の日本の行政全般の非常に大きな問題点だったということを御解説しておきたいと思います。
 以上です。
○永井座長 どうぞ。
○垣本構成員 今、説明があったのですけれども、資料6-1の1ページに書いてある厚生労働省が保管している資料等の全てについて資料の提出を受けたとあるのですけれども、そうすると、一番古いものとかそういうのは何年くらいのものかわかるのでしょうか。つまり、保管はおおむね5年というのを先ほど伺ったのですけれども、今の説明もあって、この全てについて資料を受けた中で一体何年くらいからのものが手に入れられたのでございましょうか。
○多田羅構成員 事務局が先ほど申し上げましたように、全般の資料のリストをつくっておりますので、そのとき、その形で御報告させていただきたいと思います。
○垣本構成員 ありがとうございました。
○永井座長 よろしいでしょうか。先へ進ませていただきますが、どうぞ。
○田中構成員 全国B型肝炎訴訟原告の田中です。
 今の文献調査結果の概要の最後の32ページの文献調査結果のまとめの最初の1行目がどうも理解できないのです。つまり、感染事例と思われる報告は50年代から複数見られるが、注射器を感染経路とした報告は1980年以降であるということは、1980年までは報告はなかったということなのですか。
○永井座長 どうぞ。
○研究班事務局 具体的には24ページの「1)関係学会、医療関係者による把握および対応」のすぐ下のところからごらんいただきたいのですが、最初の○が例えば1952年ですが、これも注射器が感染経路となった可能性を指摘してはいますが、結論として何が感染源だったかというようなところには至っていないという報告です。それ以降、62年、70年、74年などの文献が見出されていますが、いずれも感染経路が特定できていないという報告でして、先ほどの鳥羽市鏡浦にあったように、ツベルクリン反応検査が共通要因であるという記述があるものもありますが、結論としては、それを最終的な感染源としてはいない。ほかにもいろいろ要因を見ていますので、そういうことでございます。
 文献上、我々が確認できた範囲で注射器が原因だったのが1980年のところ、これは知友者の針で耳介を穿刺したという検査のときに、針を変えずに感染をしたという事例が報告されています。いずれも、それ以前のものも注射器が要点ではないかというような記載がないわけではないのですが、結論としてはそこまで至っていなかったということです。
○田中構成員 そうすると、少なくとも海外の知見等々では、例えば資料6-1の29ページ、国のガイドライン等でも1953年にWHOの報告書、ここに言及しているし、1957年の厚生省防疫課の『防疫必携』にも、ウイルスを含んだ患者血液あるいは血液製剤を注射すれば感染が起こるという認識はあったけれども、国には1980年以降しか報告が上がっていなかった。先ほどの医療従事者だとか市町村のアンケートなどでは、恐らく注射器でなったであろうというのがあるのではないかと思うのですが、それも国くには報告がなかったという事実でしょうか。
○永井座長 どぞ。
○研究班事務局 1点確認させていただきたいのは、ここの24ページの1)は、研究文論からの報告でして、必ずしも国で保管されていた資料だけではないということです。文献調査の方法でサーベイをした結果、こういう文献が見出されたということです。
○永井座長 29ページの患者血液あるいは血液製剤を注射というのは、静脈注射とか輸血とか、そういうイメージではないでしょうか。予防注射までこのときの注射に入っているかどうか。輸血によって肝炎が広がるというのは知られていたわけですね。予防注射との関係、特に予防注射のシリンジ、針という報告が1980年ということですか。
○研究班事務局 ここで取り上げておりますのは、いわゆる疫学的な調査でして、集団発生があったときに疫学調査に入って、その原因を探るというものだと思います。これは先生方の前で私が申し上げるまでもないかもしれませんが、疫学調査の原因の特定というのはかなりいろんな要因があって難しいということなのかなと理解しております。
 特に肝炎に関する知見が十分でない、あるいはウイルスが特定できないであるとか、B型、A型、C型が区別できないというような時代には特にそうだったのではないかなと思います。
○永井座長 外国の事情について、その後でまた報告がありますので、それを先に御説明いただいてよろしいですか。文献調査及びヒアリング調査時の結果(追加報告)について、研究班から報告をお願いします。
○梁井構成員 済みません、先ほどの意見に追加なのですけれども、今の23ページの検証項目3に関する文献調査結果のまとめですが、○の4個目に、このころまでの肝炎の感染経路云々と書かれています。全く今おっしゃられたような注射器による感染がほとんどこの中には書かれていないのですけれども、別添の22ページの中には例えば1958年に血清肝炎で汚染された注射筒、針などで感染するということは十分書かれているわけですね。ですから、感染の1つとして注射で感染するのだということがもう文献としても上がっているということは、この欄には記入していただきたいと思います。
○多田羅構成員 今おっしゃっているのは、22ページのどのところですか。
○梁井構成員 別添のほうです。22ページ、1958年、村上省三さんの分です。
○多田羅構成員 資料6-2ですよね。
○梁井構成員 はい。
○多田羅構成員 20ページですね。
○梁井構成員 はい。1958年です。
○永井座長 この汚染された注射と注射針が予防接種の注射と注射針を含むかというところなのですね。注射筒であることは認識されていたと思う。
○梁井構成員 そうです。ですから、そういうこともまとめのところに知見として挙げていただきたいと、注射のことが一言も書かれていないというのがおかしいのではないかと思いました。
○永井座長 そういうことでよろしいですね。
○多田羅構成員 わかりました。
○永井座長 では、時間が押してきましたので、議題5の追加報告をお願いいたします。
○多田羅構成員 諸外国の文献調査でございます。イギリス及びアメリカの調査結果については既に報告させていただきました。その後、7回の検討会でヨーロッパのほかの国の調査の実施についてもやってはどうかという御要望をいただきましたので、今回ドイツについて追加調査を行いましたので、その結果を御報告させていただきます。
 資料7-1をごらんいただきたいと思います。ドイツでございます。
 2ページ、まず根拠法令という点でございますが、ドイツ帝国時代に帝国接種法が制定され、1976年まで天然痘に対しては予防接種義務が存在しました。同法6条によれば、地区ごとに子供たちが特定の日に特定の場所に集められ、無料で予防接種が行われたとされています。
 そして、その後、1900年に帝国疫病法が制定され、6つの代表的な感染症の発生についても報告義務が定められ、全国に適用されました。ただし、予防・撲滅策は州ごとに実施されるものとされております。
 1961年に、さらに連邦疫病法が公布され、62年から施行されております。
 3ページの上から7~8行目のところですが、2000年には連邦疫病法にかわって感染症保護法が公布され、2001年から施行されているというのがドイツの法体系でございます。
 次の観点としまして、実施体制でございますが5ページをごらんください。ポイントだけでございますが、1971年には連邦レベルで国民が受けるべき予防接種の勧告を行う専門組織を設立することが合意され、これを受け1972年に連邦組織として常任予防接種委員会(Standige Impfkommission、STIKO)が発足しました。同委員会が予防接種の種類及び実施計画を勧告し、それが各州の決定の土台となって実施されております。
 7ページのほうに、強制か任意かという観点でございます。
 7ページの下のドイツのところで、ドイツでは予防接種を受けるかどうかは原則自主性に任されている。予防接種義務は、身体的無損傷という基本権を侵すことになることから、この義務を課すには、疾病の経過が重篤で、またこれが疫学上広まる危険がある場合であって、連邦または州の法規命令によってのみ命じることができると連邦感染法に規定されているということでございます。
 天然痘は1847~1967年、文献によっては79年までというのもありますが、その期間、全国規模で予防接種が義務化されておりました。第二次大戦直後、一部の州で義務化された予防接種もありましたが、1962年から施行された連邦疫病法により天然痘以外は原則任意となっております。
 集団接種か個別接種かという点ですが、9ページの下のほうにございますが、19世紀末から20世紀初めの状況をまとめたHessという先生の論文によりますと、天然痘の強制予防接種が無料にて集団を対象にして当時は行われておったという報告があります。
 10ページ、第二次大戦後は保健所が中心となって予防接種を実施しておりましたが、反面、当時から個別に小児科医や家庭医、開業医にて行われることも多かったようであります。また、学校で行われるということもあったようでございます。
 1980年以降は、公的医療保険、医療保険制度のほうですね。それが公というのは州だと思いますが、州に勧告した予防接種に対し、任意で給付するような契約を州の保険契約医、保険医の代表、保険協会と結ぶようになり、これにより接種実施における保健所の役割は補足的なものとなり、実際上、医療保険医が予防接種を今日もドイツで行っているという形がこのころから始まったということであります。
 注射針・注射筒の消毒・交換という点ですが、12ページにドイツの報告がございます。1947年にミュンスター大学病理学研究所の研究者が「感染型肝炎と類似形の黄疸についての新しい見識」という論文の中で、「血清肝炎」をその他の肝炎と区別した上で、さまざまな実験・観察、イギリス等の外国も含むが黄疸の原因が感染源に汚染されたワクチンや注射器であることを示しているということを47年に報告しております。また、当時の標準的な注射針消毒法では感染を十分に防げないことも指摘しております。
 このノルトライン・ヴェストファーレン州(NRW州)には、1950年の時点で既に肝炎の感染を防ぐために注射器の滅菌に関するガイドラインも存在していたと報告されております。
 14ページのディスポーザブル製品の普及状況のドイツの状況でございますが、17ページ、RKI、Robert Koch-Institute、医師向けの情報によりますと、B型肝炎の感染経路に集団予防接種は情報では含まれていないということでございます。そして、同じくRKIの調査報告、2012年では、感染源について明らかなB型肝炎の感染者、87年を対象にした感染経路の統計を出しておりますが、最も多いのが性行為で49%、感染者と住居を共にしただけで感染というのが24%、麻薬使用が17%となっております。残りは透析、母子感染2%、血液製剤1%などと報告されております。
 18ページの健康被害救済制度の状況でございますが、19ページにドイツの報告を挙げさせていただいております。予防接種被害とは、予防接種により引き起こされた通常の予防接種への反応を超える健康被害の健康上及び経済上の結果を示すものであります。必要な治療・療法の提供に並び、連邦援護法により請求権が認められれば、稼得能力減少により生じた損失の考慮のもと、年金額が定められているとされております。
 ドイツからの報告は以上でございます。
○永井座長 よろしいでしょうか。御質問、御意見をお願いいたします。
 どうぞ。
○野口構成員 野口です。
 12ページ、イギリスのところで前回見落としていたかと思うのですが、今回のインタビュー調査から得られたというところの4つ目の点なのですが、ディスポーザブル注射針・筒はヘルスオーソリティから提供されたと。このヘルスオーソリティというのは。
○多田羅構成員 これは州の連邦保険局でございます。
○野口構成員 自治体レベルですね。
○多田羅構成員 自治体の保険部と思っていただければ。自治体から一応若干独立しているのですけれども、大きくは自治体と思っていただいて。
○野口構成員 自治体の予算ということですね。
○多田羅構成員 そう思っていただいて。正確に言えばNHSかもわかりませんけれども、ナショナルサービスという国の全体の予算を持っておりますので。要するに税金であり、実際使っているのは自治体レベルと理解いただければと思います。
○野口構成員 先ほどから自治体のコストの問題が出ていますので、そのコストの負担が誰だったのかというところが割と重要なので、そこがわかるといいと思います。自治体の中の既にあったものなのか、それともNHSと呼ばれたのだったら。
○多田羅構成員 NHSだと国になるのですけれども、そこがこの場合は75年ですから、ヘルスオーソリティとして独立していますので、NHSと思っていただいたほうがいいと思います。だから、地方税ではないでしょう。
○野口構成員 国の予算ですか。
○多田羅構成員 この場合は国の予算です。
○永井座長 ほかにいかがですか。
 どうぞ。
○新美構成員 今の点で補足しておきますと、NHSというのは全ての医療費をここで面倒見るということですから、予防接種だけとかそういうものではないということを理解しておく必要があるのだと思います。
○永井座長 どうぞ。
○位田構成員 教えていただきたいのですが、アメリカもそうですけれども、ドイツは連邦制なので、医療関係は基本的に州の権限になっているのだろうかという点。
○多田羅構成員 基本はそうなのですけれども、医療保険でやっています。税金でやっていませんので、いわゆる州というのは一応基本としては税金単位の話になりますね。医療保険の場合は全国組織で医療保険を運営しておれば州を超えている可能性があると思います。州単位の保険もある、地区保険等がありますけれども、全国単位の保険も企業単位である可能性があります。
○位田構成員 費用の点ではそうすると全国的であるかもしれないけれども、実質。
○多田羅構成員 健康保険制度ですので、日本で健康保険制度は全国の形がありますし、国保もありますね。
○位田構成員 実際に予防接種をどういうふうにするかどうかという話は州の権限になっているわけですね。
○多田羅構成員 それは全て州です。間違いございません。
○位田構成員 いろんな医学情報などは、ロバートと書かれているのは非常に英語読みだと。ローベルト・コッホと表記したほうがいいと思いますが、そこに全部集まると理解していいのですか。
○多田羅構成員 そこでやっているということです。
○位田構成員 ありがとうございました。
○永井座長 よろしいですか。本日の議事は大体予定は以上でございますが、要望書が出てごさいますね。奥泉構成員からどうぞ。
○奥泉構成員 奥泉です。
 「検証作業の進捗状況と今後の進め方についての意見(2)」というものを事前に配付させていただきまして、既に議論されたところはありますけれども、意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず「第1 はじめに」ですが、今回、検証作業の結果として、自治体アンケート、医療従事者・保健所長経験者アンケートの最終報告が出されました。また、文献調査として国(国立感染症研究所を含む)に対する調査結果が報告され、また諸外国の調査としてドイツの報告が付加されるなどしました。膨大な資料を整理、検討された研究班に改めて敬意を表し、感謝したいと思います。
 それぞれの報告が大部であり資料も膨大でありますから、今後、十分時間をかけて検討しなければならないと考えております。
 ただ、今後の検討会の進め方に関する範囲において、検証作業の現状と課題について意見を述べさせていただきます。
 第2については既に議論がありましたので割愛いたしまして、第3の3ページにいきたいと思います。「第3 検討会の課題」については、既に申すこともないとは思うのですが、改めて紹介させていただきたいと思います。
 平成18年最高裁判決は、「我が国において、遅くとも昭和26年当時には血清肝炎が人間の血液内に存在するウイルスにより感染する病気であり・・注射の際に、注射針のみならず注射筒の連続使用した場合にもウイルス感染が生じる危険があることについて、医学的知見が形成されていたから、被告(国)においては、集団予防接種の際、注射針、注射筒を連続して使用するならば、被接種者間に血清肝炎ウイルスが感染するおそれがあることを当然に予見できたと認めるのが相当である。・・集団予防接種を実施するに当たっては、注射器(針・筒)の一人ごとの交換又は徹底した消毒の励行等を各実施機関に指導してB型肝炎ウイルス感染を未然に防止すべき義務があったにもかかわらず、これを怠った過失がある」として国の責任を断罪しました。そして、基本合意及びB型肝炎特措法では、昭和23年以降の国の賠償責任を認めているところです。
 本検討会は、この国の責任を前提として、注射器の連続使用の実態を明らかにし、そのような実態をつくり出し、放置していた原因を明らかにすること、そしてこのような感染被害を二度と発生させないための再発防止のための対策を検討し、提言することにあります。
 この観点から、私たちが明らかにしなければならない論点・問題点は、おおよそ次の点ではないかと考えます。
 (1)としまして、予防接種等の接種方法の規定として、昭和23年から「針の一人ごとの消毒」が指示され、昭和33年から「針の一人ごとの交換」が定められました。しかし、「注射筒」の連続使用の禁止は、昭和63年の通知までなされませんでした。これはなぜなのでしょうかというのが第1点です。
 2点目として、これは(1)と関連するのですが、ツベルクリン反応検査については、針の交換さえ徹底されず、昭和63年の通知により、ようやく「針及び筒」の一人ごとの取かえが指示されました。この点についてもなぜなのでしょうか。
 さらに、前述しましたけれども、昭和25年の告示で「針の取り換え」が一旦指示されています。この告示が出された経過及びその告示がその後の予防接種行政の中で無視された経過を明らかにしなければならないと考えます。
 (3)としまして、次に、このような接種方法に関する厚生省の指示自体が、各自治体の現場で守られていたのかどうかという点です。そして、守られていなかったのであれば、その理由はなぜかということです。自治体側の問題なのか国側の問題なのか、予防接種行政の従事者の認識の問題なのか制度上の問題なのか、この点の解明が必要だと思います。
 さらに、現実に、B型肝炎あるいは血清肝炎の感染の事例はなかったのかどうか。あるいは感染の危険を探知できるような事例がなかったのかという点です。あったとすれば、それはどのように調査・検討されたのでしょうか。そして、その後の予防接種行政に生かされたのでしょうか、それとも生かされなかったのでしょうか。この点も明らかにする必要があると思います。
 「第4 検討会の今後の進め方について」ですが、以上のような検討会の課題、問題意識からして、現状の到達点を考えますと、まだまだ検証作業は十分ではありません。今後、なお必要な作業として考えつくところを挙げますと、(1)としまして、接種の実態の調査の徹底、針の交換さえされていなかった事実が明らかになっていますが、その実態の徹底調査とその理由の探求です。この調査のために、自治体や医療従事者等へのヒアリングを徹底する必要があると思います。
 現在、アンケート回答自治体からピックアップしてヒアリングを実施しているということですが、自治体関係者の中でも予防接種の実施には保健師さんの関与も多かったと思われます。ヒアリング対象者に保健師さんも加えて実施されることをまた検討していただきたいと思います。
 (2)としまして、また、この調査において、予防接種の予算関係の観点からの調査が不可欠であると思います。先ほど議論に出ましたけれども、予防接種を行うに当たり、自治体は十分な予算の確保ができれば人員の配置や器具の整備を行って、一人一針・一筒の実施ができたのではないかと思います。自治体の実施ということで、第一には自治体ということなのでしょうけれども、先ほども述べましたけれども、地方交付税などでそれが補填されるという形になっていると思いますので、実際に予防接種の費用の負担割合や予算がどのようなものであったか、この点の解明をぜひ意識的に行う必要があると考えます。
 (3)としまして、次に国の担当者への調査についてです。
 前述しましたとおり、解明すべき問題点、論点については文献調査では解明されていません。これらの論点・問題点の回答を経るためには、国の担当者へのヒアリングが不可欠です。接種方法に関する規則や通達、告示等を発したそれぞれの時期において、それらの事務を担当された方を名簿化し、ヒアリング可能かどうかを調査し、可能な方について直接ヒアリングを行うべきであると考えます。
 さらに、国立感染症研究所についても、同研究所が厚生省の付属研究機関として公衆衛生向上のための諸研究を行ってきた機関であることからも、どのような研究がされてきたのかヒアリングを行うべきであると思います。
 なお、このヒアリングは責任追及ではなく、あくまで真相究明のためのものです。この点について十分理解をしていただいて進める必要があると考えます。
 以上のように、今後、行うべき調査・検証作業は多々あります。
 これらの調査・検証作業を行い、その結果をもとに再発防止の対策を検討し、提言していくためには、本年度内では到底時間が足りません。これまでの報告の内容を把握・検討するための期間、今後さらに必要な調査・検証を実施するための期間、それら調査・検証作業をまとめる期間、そしてその結果の検討と再発防止策の検討と提言のまとめのための期間等を考えますと、来年度中いっぱい程度の期間が必要なのではないかと考えます。
 構成員の先生方におかれましては、ぜひとも御理解、御協力いただきたいと思います。
 以上です。
○永井座長 ありがとうございます。
 研究班としてもまだヒアリングは続けるということでよろしいですね。国の担当者も対象に含めると。
○多田羅構成員 はい。前回研究班でもその点を検討いたしまして、国の文献調査の結果、国の当時の担当者へのヒアリングは必要なのではないかという議論はさせていただいております。
○永井座長 ただ、いつまで行うかですね。来年度いっぱいかかるのか、もう少し早くまとめられるのか、これは事務局の都合もあると思うのですが、予算の関係等について教えてください。
○小澤B型肝炎訴訟対策室長 この点については、研究班との御相談ではございますが、これから研究班で対象者を決定することになりますため、ヒアリングの実施は、本日が2月22日ですので3月になると思います。年度をまたぐことは想定されますが、事務局としては、その後、速やかに検討会としての報告書をまとめていきたいとは考えております。
○永井座長 いつまでということは、今の時点では言えないということですか。とりあえず調査研究班でヒアリングを続けていただいて、その結果を見ながら、どこでまとめるか御相談したいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、本日はこれで終了いたします。
 事務局から連絡事項をお願いします。
○野村B型肝炎訴訟対策室長補佐 本日の御議論を踏まえまして、一応3月に調査をし、年度をまたぐことを想定しつつ、速やかに検討会としてのまとめの作業を行うことになるかと思います。
 次回の日程につきましては、こうした状況でございます本日の御議論を踏まえまして調整の必要がありますので、また追って御連絡をさせていただきたいと思います。
 本日は長時間にわたり、どうもありがとうございました。
○永井座長 どうもありがとうございました。


(了)

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