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2010年6月21日 第26回社会保障審議会介護保険部会 議事録

○日時

平成22年6月21日(月)15:58~19:11


○場所

砂防会館 別館1階大会議室


○出席者

山崎、石川、岩村、井部、小方(代理:霜鳥参考人)、勝田、川合、河原、北村、
木村、葛原、久保田(藤原参考人)、木間、小林、齊藤(秀)、齊藤(正)、櫻井、
田中、土居、橋本、桝田、三上、結城、吉田の各委員
貝塚、小西、野呂の各委員は欠席

○議事

○大澤総務課長 定刻より若干早いのですが、委員の方々、皆さんおそろいでございますので、ただいまから「第26回社会保障審議会介護保険部会」を開催させていただきます。
 初めに、委員の出席状況について御報告させていただきます。
 本日は、貝塚委員、小西委員、野呂委員が御欠席との御連絡をちょうだいしております。
 それでは、山崎部会長、議事進行方、よろしくお願いいたします。
○山崎部会長 それでは、議事に入りたいと思います。
 本日は、田中滋先生、藤井賢一郎先生をお招きいたしまして、「地域包括ケア研究会報告書」について報告をいただきます。
 また、厚生労働省から「介護保険制度に関する国民の皆様からのご意見募集」、そして「みんなの介護保険意見交換会」についての概要の報告をしていただきます。
 その後、各委員の皆様に御自由な議論をお願いします。
 本日配付している参考資料につきまして、今日の報告との関連でコメントしていただいても結構でございます。
 まずは、田中先生より資料の説明をお願いいたします。よろしくお願いします。
○田中参考人 皆様、こんにちは。今、山崎部会長から御紹介いただきました慶応大学・田中でございます。本日は、介護保険部会の場で地域包括ケア研究会の内容と位置付けを話す機会をちょうだいして、心より御礼申し上げます。
 この研究会は、2年間にわたり合計28回の正式会合のほか、そのための準備の打ち合わせや原稿のやりとりなどの時間を投じてまいりました。また、それぞれの専門の立場から、遠慮のない、時に厳しいやりとりを含む議論を重ねてきました。だれとは言いませんが、介護保険などやめてしまえ、などという意見まで出ていることもありました。報告書は、延べ25名の委員、15名を超えるゲストスピーカー、ゲストプレゼンター、そして事務局の努力によってでき上がったものです。
 2年目は2つの部会に分かれていましたので、人材部会の方については藤井先生に説明をお願いします。
 本日は、5つのパートに分けて、それぞれ簡潔に御説明申し上げます。トータルで20分ほどいただいております。
 最初が介護をめぐる現状分析と未来の方向づくりとしての報告書の位置付けをお話しします。
 2番目に、地域包括ケアの視点から見た現状の課題を指摘します。
 3番目は、2025年、団塊の世代が全員75歳を超えるころに期待される地域包括ケアシステムの理想の姿の描写を試みます。ただし、全くの夢物語ではなく、現実に日本のいろいろな場所で試みられている先進的な取組みからの学び、調査、ヒアリングを基につくり上げた理想の姿です。
 4番目に、現状から今申し上げた理想に至る道筋について、若干の提言を行います。
 最後に、報告書の中身を多少超えて、私なりのコメントで締めくくることにいたします。
 では、お手元のレジュメの順にお話いたしますので、レジュメをごらんください。
 本報告書では、介護分野では、当然ながら理念を大切にしています。最初の行にありますように、高齢者の尊厳と個別性の尊重などを最初の方で強くうたっております。ちなみに、書いてありませんが、先日、OECDから日本の長期ケアについての調査団が私のところにも来ました。皆様方を含むいろいろな研究者あるいは団体にも、きっと行ったのではないかと思います。
 彼らは異口同音に、日本の高齢者ケアの姿は世界でもトップクラスであるとの評価のもとに、何を直したらいいかという議論の立て方をしていました。日本のシステムが大変劣っているからではなく、世界でもトップクラスの国の一つであるからこそ、どうなのだという議論でした。私たちもその立場は崩しておりません。
 次に、地域包括ケアと呼ぶ以上、何らかの定義が必要ですので、文書によって細かくてにをはが違っていたりしますけれども、私がまとめると、ここに書いてあるとおり、「『地域包括ケアシステム』とはおおむね30分以内の日常生活圏域内(すなわち中学校区)において、医療・介護のみならず、福祉・生活支援サービス等が一体的かつ適切に、加えてシームレスにという言葉を入れてもいいかもしれません。相談し、利用できる提供体制、これが地域包括ケアシステムになります。
 逆にここに何が入らないか。中学校区に1つずつ急性期病院があるわけではありませんから、急性期病院医療、専門性の高い外来医療などは、ここには入りません。日常の外来医療は入ります。なお、この地域包括ケアシステムの前提は、ニーズに応じた住宅の提供であります。住宅なくして地域包括ケアシステムはつくれません。
 報告の背景には、自助・互助・共助・公助という4つのそれぞれの支援と役割分担、及び協働があることを、私たちは初年度から強調してまいりました。
 自助とは、自ら働き、または自らの年金などの収入等により自らの生活を支えることです。
 互助は、インフォーマルな相互扶助です。例えば昔からの近隣の助け合いや現代的なボランティア、あるいはアメリカ流の寄附なども含まれるでしょう。
 共助は、制度化された相互扶助で、日本では強い社会保険制度がこれに相当します。
 そして、公助は自助・互助・共助の3つでは対応し切れない、困窮、貧しいなどの状況に対し、所得や生活水準・家庭状況などの受給要件を定めた上で、必要な生活の保障を行う社会福祉などを指します。共助は、経済面の受給要件は特になくて、ニーズ判定があれば受けられるものですが、公助は所得や生活水準、家庭状況などが入ってくるものを言います。この4つの組み合わせと協働があって、社会は初めて生きることを出発点にしております。
 この報告書でも現状の問題点を指摘していますが、問題点の指摘自体は容易です。私もできるどころか、ここにいらっしゃる部会の委員の先生方は、全員、介護分野の問題点を10個挙げろと言ったら、20ぐらい挙げてくるのではないかと思うぐらい、問題点を挙げることは難しいことではありません。ただし、問題点に対して直ちに個別の個々の対応策を並べると、全体の整合性がなくなってしまうおそれが強いことも御理解いただけるとおりです。特に、高齢者のニーズを満たす手段をすべて介護保険に求めて、介護分野の足りないこと、欠点を介護保険の制度だと言って分析を停止してしまうと、実は何も進まなくて、社会資源の有効な配分につながりません。
 そこで、問題点を発見して、すぐ答えをつくるのではなく、あるべき姿を先にトータルに描いて、その上でそこに至る過程の問題を書いています。
 1.5に示した3つの層の区別は重要です。まず、介護現場のケア、在宅にせよ、施設にせよ、この10年間、20年間の進展はすばらしく、私もいろいろ見せていただくたびに、ひたすら見事だな、進化しているなと敬意を払います。
 それから、政策や政治についても、日本は先ほど言いましたように、世界の標準の中でトップクラスと言える国の一つだと、外国に行っても言われます。では何が足りないか。それは現場と政策の真ん中のマネジメントです。ここをさまざまな形で改善していかないといけない。政策体系、それから現場のケアの間のところを私たちは意識しております。
 次に、現状の問題意識がずらっと並んでいます。一個一個は言いませんけれども、これは皆様方、ほとんど共有できることだと思います。何よりも一番大切な点は、重度者の在宅生活を支え切れていない点だと思います。支え切れていないがゆえに、施設に対する見かけ上の需要が多く生じていて、いわゆる待機者の数となってあらわれています。これは経済学の用語を使うと、本当に高齢者の方のニーズを反映しているわけではなく、施設に対する見かけ上の需要も多く含まれているはずです。
 その理由は何よりも不安感です。施設では365日24時間サービスを受けているわけではないけれども、施設には365日24時間の安心感とバリアフリーの環境があります。逆にいえば、在宅でも365日24時間の安心感とバリアフリー環境が提供できれば、住み慣れた地域で住み続けることも可能であるはずです。
 もう少しテクニカルには、在宅者の場合、区分支給限度額をいつも意識している点がありますし、施設ではナースコールを押しても、別にそのたびに追加払いはないけれども、在宅だと回数ごとの支払いがあるとか、複数の事業者と契約する以上、契約書の数など、経済学の専門語で言う取引コストが発生してしまうなどのテクニカルな点もあります。生活を支えるためのこういう問題が存在します。
 2.2は、現状で不足しているサービスの例です。全部は言いませんけれども、訪問介護では巡回と緊急時訪問、随時対応型訪問が、北欧などに比べて回数別で見て少ないことは客観的な事実です。
 また、リハビリテーションが幾つかの場所で強調されています。通所介護におけるリハビリ、施設におけるリハビリが、すべての点で満足できているとは言えないことは、皆様御存じのとおりです。
 認知症についてのたくさんの課題は言うまでもありませんが、少し飛ばしてリハビリは、またわざわざ項目をつくってあります。医療分野のリハビリテーションと生活期リハビリテーションの連携がとれている地域はまだ数えることができます。通所リハビリテーションのレベルもさまざまで、通所介護と区別のつかない通所リハも行われていたりすると聞きます。訪問リハは、全く不足しています。
 昔、介護保険発足前に議論していたころに、1990年代にリハビリテーション前置主義という言葉を使いました。何よりも要介護者には、まずリハビリを組み合わせ、その後でさまざまなサービスがあると考えていたのですが、この言葉は今は一時消えています。しかし、これを復活させるぐらいのつもりでリハビリは重視しております。
 訪問看護については、訪問看護とは何だろうという独自性を改めて打ち出し、経営の非効率性を打ち消して、大きな柱とすることも重要だと思います。
 最後の地域包括支援センターでは、介護保険資源だけではなく、地域の広範な資源の利用、地域のネットワーク構築を期待したいと感じました。運営協議会がせっかくつくられている以上、ここを活用すべきです。
 保険制度の現状については、まさにこの部会の役割だと思いますので、私たちも両論併記的になっています。議論は、この部会にお任せします。
 ニーズがどのぐらいあるか、これは説明は要らないですね。団塊の世代が75歳を超えると、特に都会、都市部において高齢者数が増え、65歳以上の単身者及び夫婦のみ世帯が2025年には1,270万世帯、全世帯の25%になってしまう。大変な数ですね。などと指摘しております。いずれにせよ、現在のケア体制を単に伸ばしていっただけでは、2025年のニーズに対処し切れません。繰り返しますが、単に現在のサービスを伸ばすだけでは対処し切れませんし、現在私たちが気づく欠点に一個一個、個別に対応するだけでは、戦略眼のない仕組みができてしまいます。全体像を構築したい。そのための研究を行ったわけであります。
 3は、2025年の姿です。
 病気や要介護ではあっても、個々人の心身状態にふさわしい、シームレスなサービス…シームレスというのは継ぎ目のないとの意味です。継ぎ目のないサービスの利用により、個人の自立とQOLの追求が可能になっているはずだ。ただし実際のところなっているかどうか予測はできません。なっていなければ、この国はきっと社会がもっていないだろうとの気もちを込めて、つくるという決意を込めて、なっているはずだと書いてあります。
 勿論希望すれば故郷に帰ってもいいのかもしれないので、できる限り住み慣れた地域、あるいは故郷での在宅生活が続けられるようにする。この在宅は、何も旧来の自分の家に限る必要はないかもしれません。地域の中で住みやすい集合住宅に移ることを含めた在宅の意味であります。決して現在住んでいるバリアだらけの古い家に済み続けることがよいとは言っていません。あくまで地域のことを言っています。英語で言うと、エイジング・イン・プレイス。つまり、場所を移らずに、その住んでいるところで自然に年をとっていけるとの意味になります。
 報告書は、施設については、施設にかかわる保険法なり社会福祉法の法律上の類型よりも、それぞれの施設やサービス主体が果たしている機能を重視すべきだと書いています。医療保険施設と違う介護保険施設の本来機能は、繰り返し出てくるリハビリですが、リハビリテーションが充実した在宅復帰支援機能です。
 従来の進化してきたすばらしい介護サービスを提供なさっている施設は、安心できる住まいニーズに対応すべきであります。ここでは、当然ながら住まいニーズが主である以上、サービスは外付けをできる限り使えるようにした、言葉としてはケアが組み合わされた集合住宅という新しい造語を使っていますが、このコアとなり、同時に地域にサービスを展開する。また、高齢者だけではなく、多世代交流の場となる。このようなことを機能としては期待しております。
 幾つか引用が書かれています。読み上げると時間がかかるので読み上げませんが、2~3、引用を書いてあります。
 こういう理想の姿に至るまでに、現在関係者がどのような努力をすべきかが4であります。
 4.1、まず国に対して私たちは提言しております。国の基本原則は、高齢者ケアについて、1.住み慣れた地域や、その住宅が場所としても建築環境としても、現在の家でよければそのままだし、そうでなければ住みかえも含めてですが、住み慣れた地域での生活の継続を図る。そして、家族の希望ではなく、本人の選択が重視されること。および、自己能力を活用することです。自己能力の活用とは、北欧でも起きたのですが、介護サービスが行き渡る前、高齢者の虐待なり高齢者の放置があったがゆえに、サービスをつくっていくときにお世話過剰になってしまう、あるいはお世話志向型の保護型の介護が一時進化します。それをまた、本人の残っている自己能力を使って、社会に参加する方に引き戻す。第3ステージのことを言っています。
 自治体に対しては、今よりも権限移譲を進めるべきだと私たちは訴えています。参酌標準は、当然柔軟化してよいでしょう。参酌標準という名前のかたい規制である意味は、全くないと考えます。自治体は、介護サービスのみならず、居住の安定確保に責任を持っていただきたいです。
 それから、介護保険事業計画なるものがありますが、これは現在では一部の自治体だと思いますけれども、事実上、保険料算定のための計画になってしまっているのではないかとの声がありました。これは結果として保険料算定ができるかもしれませんが、それは目的ではなく、上の基本原則を地域で果たすための計画であるべきです。
 サービスのあり方としては、在宅限界、つまり在宅で、例えば最後の一月は病院に入る場合もあるかもしれないし、重度のサービスのための高機能を持ったところに移る。これは先進国の事例を見てもありえます。しかし、在宅限界が低くて、最後の2年間、3年間、4年間を制限の多い施設という名の場所に移る姿は、国際的に見てかなり異常な日数だと考えます。
 在宅限界を高めるサービスの例として、これから我が国がつくらなければならない代表的なものは、24時間365日、短時間巡回型訪問介護、プラス訪問看護、小規模多機能居宅介護、そして私たちが訴えたい複合型事業所です。
 ケアを標準化すると言うと、福祉畑の方に時々、一人ひとりケアは違うと言われます。誠にそのとおりです。一人ひとり違うけれども、標準値は存在するとの意味で、標準のとおりに全員にするわけではありません。私は教育者でもありますが、教育も全く同じで、全員に同じ教育をしているわけではない。実にばらけています。しかし、標準値がなければ、標準からのずれにかかわる科学的な判断ができません。標準介護は、予防型介護であり、自立支援型介護だと思います。
 それから、介護保険対象の資源のみならず、地域資源をマネジメントしていくことになります。
 同じく、引用が幾つか載っています。一番上だけちょっと読ませてください。
 多数の職員を抱えるような従来型の施設とは異なり…これは多数の職員を内側だけに使うという意味です。軽装備の多様な住宅を前提として、地域の医療や介護などのさまざまな利用者のサービスを、利用者の状態に合わせて、外付けを含めて組み合わせることにより、24時間365日体制のケアシステムを地域単位で実現する。地域包括ケアの構築を国の政策として明示し、合意形成を図っていきたい。
 これはこの部会にもお願いしたいし、さまざまなほかの審議会にもお願いしたいし、自分が今務めているところでは、委員としてこのように発言してまいりたいと存じます。
 1つ飛ばして、ここは我々の新しい提言だと思います。既存の在宅サービス、ホームヘルプ、デイサービス、ショートステイなどの複数のサービスを柔軟に組み合わせて、パッケージ化して提供する複合型事業所の導入を検討したらどうか。これは、取引コストの減少にもなりますし、経営側にとっても経営のリスクを減らすことにもなります。
 次、地域当直医です。日常圏域での医療を支えるために、ここは高度の病院の機能ではなく一次医療の役割ですけれども、一次医療の役割として、地域当直医があることによって、人々は先ほど言った24時間365日の安心感の1つ、いざというときの医療の心配をなくすことができるだろうと考えました。
 次は部会というよりも分科会のテーマかもしれませんが、24時間巡回型や複合型事業所の導入に際して、勿論クオリティーをチェックする条件付きですが、包括型の報酬を採用してはどうかとも言っております。
 最後、5番目、報告書の外側に出ましてまとめを申し上げます。
 今言ったような地域の仕組みをどうやってつくるのですかと質問をたくさん受けます。私は、答えはないと思っています。唯一無二の答えはありません。だれがつくってもいいと思います。社会福祉法人中核型、医療法人中核型、医師会中核型、市長が頑張る型、市民が頑張る型、どれでもよい。どれでも先導者がそれぞれの地域で活躍していただければよいのであって、これが標準的なパターンという形式は存在しないはずです。
 全国一斉にこういう仕組みをつくるのは大変ではないですかとの質問も受けます。たしかに大変です。不可能です。先進地域ができて、2025年までの15年間にだんだん広がっていけばいい。ある日突然、全国に展開するという考え方をとる限り、地域包括ケアはできないです。保険制度のように強制徴収を伴う場合には、ある日一斉にですけれども、これはサービス提供体制なので、先進的地域があって、それを見習って、いいなと思うところから伸びていけばよろしい。遅れてしまったところは、最後のところを住民が、ああ、うちは遅れていると気付いて、自治体を突き上げればよろしいと思います。
 3番目、高齢者の生活を支えるさまざまな要素が必要です。前のページに記したと思いますけれども、居場所の提供、権利擁護関連の支援、生活支援サービス、家事援助、身体介護、訪問診療、看護、リハビリ等々並べておきましたが、これらのサービスを支える要素の一つ、これらの一部が介護です。見てわかるとおり、すべてが介護ではありません。高齢者の生活を支える何もかもが介護ではない。介護の何もかもが介護保険給付サービスではないという絵をかいて考えるべきです。
 書いてありませんが、最後に文学的な言い方をさせてください。介護保険に頼り過ぎてはいけない。介護保険を孤立させてはならない。介護保険を活用して高齢社会のピーク時を乗り切るべきであると言いたい。これは、介護保険だけではなくて、学校もそうです。子どもの成長を小学校だけに頼り過ぎてはいけない。一方、小学校を社会から孤立させてはいけない。小学校を地域の資源として活用して子どもを育てる。
 全く同じことです。介護保険はとても大切なものです。だから、頼り過ぎてはいけないし、頼り過ぎると逆に不満が生じてしまいますし、介護保険を軽視するようなことがあってはならない。介護保険も活用して高齢社会のピーク、すなわち2025年から40年ぐらい、団塊の世代がこの世を卒業すると高齢者の数は減り始めます。この10年、15年間を乗り切るためには、介護保険も活用して社会を乗り切る。
 そうすると、最後の行に書いてありますように、この地域包括ケアができ上がれば、高齢者だけではなく、障害者についても母子についても、さまざまな生活ニーズについて対応できる仕組みになっているはずです。高齢者のための仕組みで終わるはずがない。そのために一番数が多く、比較的コアな制度でしっかりしている、まずは介護からつくっていけば、でき上がりの地域包括ケア体制は、さまざまなほかの社会ニーズにも対応できることを指摘した内容になっております。
 以上でございます。時間をちょうだいし、ありがとうございました。
○山崎部会長 ありがとうございました。
 続きまして、藤井先生より資料の御説明をお願いいたします。
○藤井参考人 引き続き、御説明申し上げます。日本社会事業大学の藤井でございます。
 田中先生の御発表いただいた全体の地域包括ケアのうち、今年度4回、合同部会の3回を含めまして、計7回、人材に関する検討というものを行ってまいりました。介護の人材不足や資質の問題が社会的にも注目されるということもありまして、地域包括ケアというものをつくっていくために、人材問題を無視することができないということで人材部会を設けられたという認識を持っております。
 ページ数から言いますと、田中先生が4ページで終わりました次のページに、ブルーの横になっておりますけれども、この1枚紙にまとめさせていただきました。本報告書のものを比較的忠実にコンパクトにしたものでございます。見ていただければお分かりのように、人材部会においては、かなり焦点化したことを議論していました。
 田中先生と同様に、位置付け、問題意識、2025年への提言、それから当面の改革の方法という3つのパートに分かれております。
 まず、現状と課題というところでございますが、そもそも2025年になりますと労働力人口の約1割、倍の数が必要になる。これが、医療・介護、全部含めてでございますが、介護だけで言いますと、本報告書の126ページにございます。医療・介護全体で労働力人口の1割が必要になるということ。
 これまでも10年間で介護職員は2倍以上になってきている。これが介護人材の不足が指摘されてきていることの一因であります。
 ただ、不況下で介護分野の有効求人倍率というものは安定化してまいりまして、特に地方部においてはかなり安定してきている。今回の経験でわかりましたことは、経済情勢にかなり介護労働の需給が影響される。しかし、そういったものに影響されないような安定的確保が必要だろうということでございます。
 それから、介護の「一般労働者」、ここで言う「一般労働者」は短時間労働者ではないという意味でこうした用語が使われていますが、良く言われますように、全産業に比較すると、離職率が高い、給与が低い。
 もう一つ、離職率に関していいますと、事業所によってかなり二極化している。また、小規模事業所が多いということが、離職率を高め、給与も低くしている傾向があるのではないか。そうすると、介護の労働の問題というのは、介護全体の問題というよりは、中小・零細事業所問題ではないかといった議論もされました。それから、労働法規を遵守していない事業場も非常に多いということが問題点として指摘されました。
 さらに、単に給与とか離職率の面だけではなく、給与以外の面、やりがい、能力向上、働きやすい職場に対する雇用管理も重要であるといった問題意識の基に、2025年、それから当面ということで、人材部会では課題を大きく3つに分けて議論いたしました。
 課題1でございますが、これは問題意識といいますより、お手元の報告書でいいますと127ページ以降に人材の役割分担という資料が付いておりますけれども、その辺りに基づきます良質なケアを効率的に提供するための人材の役割分担という論点でございます。
 2番目が、事業者側がきちんと雇用管理、組織経営をやっていただく。それをどのようにバックアップするかという論点でございます。
 3番目は、労働市場ととらえたときの労働市場政策あるいは労働環境を整備していくといった問題として考えております。
 課題1というものは、課題2、課題3と少々性格を異にしておりますが、地域包括ケアというものを考えたときに、課題1の問題は非常に大きいということで認識し議論してきたわけであります。
 まず、課題1に関して、2025年の姿ということでは、医師・看護師は急性期の医療機関に重点的に配置されている。訪問看護において、より自律的に医療に携われるようになっている姿、これが望ましいのではないかという考え方です。
 それから、介護に関していいますと、基礎的な医療ケアは、医師・看護職員との連携のもと、介護福祉士が担っているという姿を2025年の姿として描いております。これは、本報告書の35ページにイメージの表が載っております。医師、看護職員、PT、OTを含めまして、現在の状況と2025年の姿ということで書いてございます。
 特に現在では、介護福祉士あるいは介護福祉士以外、あるいは日常生活の支援をされる方々が提供している。介護福祉士・介護福祉士以外が身体介護、家事援助となっておりますが、この家事援助の部分は日常生活の支援の方に大幅にシフトしていただいて、むしろ認知症を有する高齢者等の生活障害に対する支援とか、身体介護と一体的に行う家事援助という方向に介護福祉士がシフトするといった変更とともに、要介護者に対する基礎的な医療ケアの実施と、日常生活における生活機能の維持・向上のための支援、それから日常ケアのスーパーバイズというものを介護福祉士が行える姿を2025年の姿として考えております。
 それから、もとのブルーのまとめた表に戻っていただきまして、介護職員の間口は現在も広く広げられておりますけれども、これが広がり、多様な働き方が実現している一方、キャリアアップする資格制度の見直し等が行われている。専門性を有した介護福祉士といった受けやすい研修制度が確立しているということで、ふもとを広げることによっていただきを高くするという考え方で介護職員というものを確保・養成していってはどうかと議論してきました。
 最後ですけれども、資格に応じた賃金体系、あるいは介護職員、介護福祉士、社会福祉士が相互に資格をとりやすい仕組みが整備されているということが2025年に実現しると考えました。
 それに対して、3番目の当面の改革の方向ということでは、まずは看護職員との連携のもと、特養における介護職員の口腔内吸引等を実施できるようにする。これが特養と書いておりますが、特養以外の施設といった話も議論では出てきておりました。
 それから、介護福祉士が基礎的な医療的ケアを実施するとした場合の条件を検討してはどうかとか、あるいは介護福祉士になるまでの介護職員基礎研修2級課程のあり方の検討が必要であるとか、訪問介護の生活援助については、地域支援事業等を活用いたしまして、人材のすそ野を拡大することが可能なのではないかとか、介護支援専門員の試験・研修の見直し、あるいは研修内容や講師の資質の向上が必要ではないかという議論がなされております。
 ただ、介護支援専門員に関しましては、非常にさまざまな問題を含みますので、この地域包括ケアの人材に関する検討委員会ではすべては取り扱えないということで、別途議論が必要ではないかという指摘になっております。
 それから、地域包括支援センターの3職種の研修を充実させる。役割の拡大に応じて、行政職員の能力拡大や人事のあり方の見直しが必要ではないかということが、課題1に対応するものでございます。
 続いて課題2でございますが、事業者側の雇用管理・組織経営の質を向上していただく、あるいはそれをサポートしていくというものでございます。
 2025年には、介護事業者による労働法規の遵守が徹底されている。勿論、こんなものはすぐ徹底した方がいいに決まっておりますが、徹底できていないのには徹底できていない理由もありますし、現在、一般事業場においても徹底できている事ではありませんので、2025年に目標を置いております。
 このほかにも、取組みに応じて、介護労働者による適切な事業者選択が実現している、これは介護労働者側が労働市場を通じて、より勤めやすい職場を選べるようになっているという考え方でございます。また、夜勤、出産・介護等の労働者の不安・不満が解消されている。
 それから、キャリアパス設定や研修機会の確保により、キャリアアップの取組みが推進されている。事業者、従業員とのコミュニケーションの積極化により、職場環境整備やサービスの質の向上が図られている。それから、事業者規模も、現在の零細な状況からある程度大きくなっていただいて、組織経営の安定化・効率化が実現している。
 ただ、ここは先ほど田中先生のところでございましたけれども、協働・連携していくといったような、単に事業所が大きくなっていくというものではなくして、そういったものを含むといった議論がされております。
 当面というところでは、その下に5点書いてございますが、事業者に対する労働法規遵守の徹底ということで、労働法規に違反あるいは罰則を受けている事業者に対しては、介護保険法の事業者指定を行わない等の措置を検討してはどうかということでございます。これについては、法的な手続をどうし得るのかといった議論がございました。
 それから、事業者の希望に応じて雇用管理データ、これは賃金とか勤務時間とか人材育成の取組み等の公表を検討してはどうか。先ほどありましたように、職員の側が事業所を選べるようなデータを開示することを考えてはどうかということでございます。
 また、介護職員処遇改善交付金のキャリアパスへの取組みが進められているところでございますけれども、この成果を踏まえて事業者の取組みを強化するといった政策を講じてはどうか。あるいは、キャリアアップの好事例の普及を図ってはどうか。
 それから、組織経営の安定化・効率化の目標を勘案し、指定基準・介護報酬の設定を目指してはどうか。複数サービスをパッケージ化した事業所創設を検討すべきではないか。先ほど田中先生の御指摘にあったところでございまして、組織が小さい、不安定であるといったことが、利用者ばかりか、職員に対しても不安な思いをさせているということをどうやって解消していくかという考え方でございます。
 さらに、事業者が行う人材発掘をどう推進していくかということです。
 課題の3番目は、介護労働市場全体の労働環境整備となっております。
 2025年の姿ということでいいますと、他産業からの転職者を含め、参入促進のため実態に応じた職業訓練が実施されている。キャリア開発の推進の観点に立った教育・研修体制が開発されている。労働環境の整備により、働きやすい環境が実現している。地域の実情に応じて、都道府県・市町村が教育・研修等の施策を実現する環境が整備している。
 最後は、この4点とは性格が異なりますけれども、サービスの質に基づいた介護報酬体系が構築され、質の評価に伴い、人員配置基準や設備基準は弾力化されているという形になっております。多少説明いたしますと、質を評価するということで、よい質のサービスを提供する職員をよりよく処遇していくということにもなりますし、現在の人員配置基準あるいは設備基準というものは、質そのものではなくて、質を提供するプロセスを評価しているものであります。
 アウトカム等を含めた質を評価することが可能になれば、必ずしもプロセスあるいは配置といったもので評価しなくても評価し得るのではないかということで、サービス、質に関する検討会というものが別途設けられておりまして、そこからのプレゼンテーションを受けつつ、質の評価を進めるということが介護労働市場全体の労働環境整備につながるだろうということで、2025年の目標として書かれております。
 この労働環境整備ということで、当面の改革の方向性が並んでおりますが、緊急対策の成果を踏まえて支援策を継続すべきである。現場の経験を吸い上げて、キャリア開発に資する教育・研修を作成する仕組みとしてはどうか。あるいは、キャリアを登録・証明する仕組み、ジョブカード、日本型NVQといったものを活用・導入してキャリアを登録・証明する仕組みを導入してはどうかということが議論されました。
 それから、定着促進における国・自治体の役割の整理や協力の仕組みの構築を検討すべきである。あるいは、現任介護職員等の研修支援、介護職員処遇改善交付金といったものが現制度としてございますし、積極的に活用されているところでございますが、これをこの後どうしていくか。いずれも期間が定められているものでございますから、これが積極的に活用されているというのが、現在、雇用が安定してきているところにも寄与しているところがございますが、その後どうするかということを検討すべきであるということ。
 その次に、女性が多いという労働市場の特性を踏まえまして、育児支援等の推進を図るべき。あるいは、夜勤業務負担の雇用管理、身体的負担軽減ということで、福祉用具の活用を進めたらどうかとか、IT積極活用を図ってはどうかということが書かれております。
 それから、意欲を高める職場づくりの検討、事例を普及してはどうか。
 最後に、人材の処遇を改善するための質の評価指標の開発をし、職員がやりがいを感じる取組みやサービスの質ととらえた評価を検討するなどといったことが書かれております。この点については、52ページにサービスの質の評価といいますと、一見、直接人材のことに関係ないかのように思われますけれども、やはりサービスの質が行われていないところに、事業者側が職員をきちんと雇用して教育して高い質を提供しても、あるいは逆に使い捨てのような処遇をなさっていても、全く同じような介護報酬が付いている現状において、職員の側あるいは事業者側の努力というものがなかなか適切に反映していかない。
 この部分は、質の高い者を評価することによって、努力している事業者あるいは職員を評価していかないと、介護労働市場あるいは事業者の雇用管理・組織経営というものを直接的に評価していくことは難しいだろうということで、サービスの質の評価そのものがかなり難しく、大きなテーマではございますけれども、ここが人材に関する検討委員会の中では非常に大きなテーマとして、今後も是非進めていってほしいという議論がなされております。
 以上でございます。
○山崎部会長 ありがとうございました。
 続きまして、事務局より資料の説明をお願いいたします。
○大澤総務課長 続きまして、報告書の次に配付させていただいております「介護保険制度に関する国民の皆さまからのご意見募集」(結果概要について)という縦長の資料に基づきまして、まずは御説明をいたします。
 このご意見募集につきましては、今年2月24日から3月31日までの間、私ども厚生労働省のホームページを通じて広く国民の皆様から募集させていただいた意見の結果をまとめさせていただいたものでございます。
 回答者の概要については、そこにございますように、総数は4,465件、年齢構成で最も多いのは40歳から64歳までの方で、全体の約6割弱でございました。それ以外は、40歳未満の方が全体の約4分の1、65歳以上74歳以下、75歳以上についてはごらんのとおりでございます。
 サービス利用の有無につきましては、利用者御本人の御意見を出された方が270名、利用者の家族が1,440人でございました。
 その他の方々の属性ということでは、介護従事者あるいは事業者の方が全体の4割、そのほか地方自治体の職員が約200名ということでございます。
 1枚めくっていただきまして、まず介護保険制度への評価でございます。
 約6割の方が介護保険制度を評価している。大いに評価する、多少は評価するを含めて、約4割でございます。一方、約2割の方が評価していないということでございました。
 続きまして、介護保険の効果ということで、家族の負担についてでございますけれども、約5割の方が家族の負担が軽くなったと実感されているようでございます。ただし、約2割の方は家族の負担が軽くなったとは思っておられないようです。
 サービスの質につきましては、約3割の方がサービスの質がよくなったと実感されておりますけれども、約1割の方はよくなったとは思っていないということでございます。
 また、サービスや事業者の選択につきましては、約5割の方が選択しやすくなったと実感される一方、約1割の方は選択しやすくなったとは思っておられないようです。
 3点目、介護保険のその他の効果につきましては、ごらんの4つの円グラフを御参照いただければと存じます。
 4点目、介護の希望についてでございますが、まず御自身が介護が必要になった場合の希望でございます。これについて最も多かったのは、家族に依存せずに生活できるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けたいという方が46%。その次が、自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けたいという方が24%ということでございました。
 1枚めくっていただきまして、次に、両親が介護が必要になった場合、どのように希望するかということですが、この場合、最も多かったのは、自宅で家族の介護と外部の介護サービスを組み合わせて介護を受けたいということをおっしゃったのが49%。2位は、家族に依存せずに生活できるような介護サービスがあれば自宅で介護を受けさせたいというのが27%になっておりまして、前の自分の場合と1位、2位が逆転しておりました。いずれにいたしましても在宅の希望が上位を占めておりまして、施設なり医療機関への入院・入所希望は1割弱にとどまっておりました。
 5点目、介護保険制度への御意見・御要望でございます。最も多かったのは、介護人材の確保のため、賃金アップなど処遇改善を図るべき。次に、施設待機解消のための施設整備を促進してほしい。認知症対応のサービスを充実してほしい。また、夜間を含めた24時間対応の在宅サービスを充実してほしいなどの御意見が多く寄せられておりました。
 6点目、費用負担についてでございます。最も多かったのは、現在の介護保険サービス水準を維持するために必要な保険料引き上げであればやむを得ないとお答えになった方が全体の36%。次に、現在以上に介護保険サービスを充実するために、更に保険料が引き上げられてもやむを得ないという方が14%。他方、保険料を現状程度に維持することが重要であり、そのために介護サービスが削減されてもやむを得ないとお答えになった方は全体の7%でございました。
 7点目で、各サービスごとの御意見をまとめております。これは主な意見を抜粋したものでございまして、必ずしもすべての意見を網羅したものではございません。時間の関係もございますので、一つひとつの説明は省略させていただきたいと存じます。
 続きまして、長妻大臣と語る「みんなの介護保険!」意見交換会についてという縦長の資料をごらんいただきたいと思います。
 こちらは、介護保険制度発足10年目を迎えまして、今後の介護保険制度の見直しに向けて幅広く国民の御意見を聴取することを目的といたしまして、去る5月15日土曜日、厚生労働省の講堂において開催した意見交換会でございます。介護保険の利用者及びその御家族を発言者としてお迎えいたしまして、その他一般参加者として、介護職員、介護保険事業者、自治体の職員、学生等の方々に御参加いただきまして、「利用者・家族の立場から、現行サービスの課題・改善点の提起」をテーマに6つのグループで活発な意見交換をしていただきました。参加者数は、全体で68名でございました。
 1枚めくっていただきまして、6つのグループごとの提言のポイントのみ御紹介させていただきたいと思います。各グループごとに、上段にはそのグループで議論された事項、下段にそのグループからの提言の内容をまとめさせていただいております。
 グループAは4つのテーマについて御議論された結果、特に施設整備と在宅サービスのバランスについて御提言をいただいております。
 その内容は、その下の欄にございますように、施設整備は長期的視点で質の向上を重視すべきである。また、地域を育てる中心になって、最期まで暮らせるものにしてほしい。小規模多機能、また宿泊の付いたデイなど、在宅サービスの充実により力を入れてほしい。また、施設・在宅を通じまして、人材育成のための研修の充実を図るべきである。ITの活用を含めて、利用者・家族の声をしっかりと聞いてほしいということでございました。
 次は、グループBからの提言でございますが、5つのテーマのうち、特にこのグループにおいては施設の充実について御提言をちょうだいしております。
 下段にございますように、介護職員のスキルアップなど、介護サービスの質に裏付けられた量の整備が必要である。施設入所(申込)者のサービス必要度を指標化し、その優先順位を明確化することが必要である。施設整備のみならず、在宅サービスもあわせて充実させることが必要である。要介護状態にならないよう、介護予防の取組みを充実させることが必要であろう。施設整備には、税、保険料など費用負担が伴うことについて、被保険者や家族への理解を促進することが必要であるということでございます。
 次のグループCからは、グループホームなどの質・量の確保について御提言いただきまして、人材育成について、ITの活用、成果のフォローなど、研修のあり方についての工夫が必要である。介護報酬の見直し、あるいは福祉税の導入といった財源の確保が必要であるという御提言でございます。
 次にグループDからは、特に家族の負担の軽減につきまして、介護保険から給付できる部分とできない部分を明確にすべきではないか。あるいは給付で対応できないところは、町内会などの地域で支えることが必要であろうということなども御提言されております。
 次にグループEでございますけれども、一番下の注にございますように、「働き続けられるための支援」と「ボランティア・趣味への支援」をまとめて「社会参加への支援」ということで御提言をちょうだいしております。社会参加を促進するために、地域や職場での理解を深め、社会全体で支えるべきである。介護保険の中に、社会参加への支援を取り入れるべきではないか。また、国が率先して就労支援サービス、企業への援助、外出支援などの充実を図るべきであるという御提言でございます。
 最後のグループFからの御提言は、介護予防サービスについてでございます。
 まず、介護予防サービスについての効果を検証した上で、事業所従事者への支援を充実すべきである。あるいは各地域での介護予防に取組めるようにする。あるいは男性が介護予防メニューに参加できる場が必要であるといった御提言をちょうだいしております。
 続きまして、「産業構造ビジョン概要(全体版)」、「産業構造審議会産業競争力部会報告書」という2種類の資料をお配りしておりますが、縦長の報告書に沿って御紹介させていただきたいと思います。
 この報告書は、去る6月3日、産業構造審議会産業競争力部会より、いわゆる産業構造ビジョン2010と銘打ちまして公表されたものでございます。この産業構造審議会では、今後、日本が何で稼ぎ、何で雇用していくのかについて検討が進められ、今般、ビジョンという形でとりまとめをされたと承知しております。
 この審議会では、現在の我が国経済産業の深刻な行き詰まりを直視すると、政府・民間を通じた「四つの転換」が必要であるということで、そのうちの1つとして産業構造の転換について御提言され、そのうち、従来の成長制約要因であった環境、エネルギー、あるいは少子・高齢化を課題解決型産業と位置付けられまして、今後の戦略5分野の一つとして、医療、介護、健康、子育てサービスの強化による成長の牽引について御提言されております。
 そのうち、お手元の報告書の抜粋は、そのうちの医療、介護、健康、子育てサービスについての記述について抜粋しておりますので、若干御紹介させていただきますが、147ページをごらんいただきたいと思います。
 中ほどから?として、多様で質の高いサービスの効率的な供給を目指す医療・介護・高齢者生活支援関連産業創出促進戦略と銘打ちまして、この戦略のコンセプトとして、3行目、すべてのサービス供給を医療・介護機関が行い、その財源も公的保険に依存することは、医療・介護機関及び我が国財政の負担が加速的に大きくなることを意味するが、現実としてその持続性を確保していくことは大きな課題である。
 そのため、今後は、医療・介護機関と健康関連サービス事業者との連携推進等により保険外のサービスを拡大することで、公的保険依存から脱却するとともに、新しいサービスが消費者から相応の対価を得て自律的に成長し、社会保険とうまく連動してシームレスな医療・介護・高齢者生活支援サービスを提供する産業(「生活医療産業」)の創出を促す。こうした産業の創出によって、患者・消費者本位の多様で質の高いサービスが供給されるとともに、医療・介護機関の負担減や医療費の適正化も期待されるとされております。
 その上で、次の148ページから、新たなサービスの創出事例ということで、介護につきましては149ページをごらんいただきますと、介護分野につきましては、介護を中心に総合的な高齢者向けサービスを創出し、かつ充実していくためには、まず介護保険のサービス分野について、新たな民間事業者の参入や事業者の効率的運営を可能にする仕組みなどの環境整備を進めることで、サービス供給を分厚くしていくことが欠かせない。
 少し飛びまして、また、介護保険外のサービス分野についても、個人の多様なニーズに応じたサービス組成が可能となるよう、高齢者のケアプランを作成するケアマネジャーが積極的に介護保険外サービスを活用してケアプランの質を高めていくモチベーションを持てる環境を構築する必要があるとされております。
 最後ですけれども、152ページ、?)新たなサービス産業創出のための環境整備でございます。
 今後、新たなサービス産業を創出するためには、個々人の多様なニーズを把握し、それに応じて医療・介護機関や医療・介護・高齢者生活支援サービス事業者などのさまざまなサービスをアレンジするコーディネーター機能の強化が欠かせない。今後、全国各地において、医療・介護機関、医療・介護・高齢者生活支援サービス事業者及びコーディネーターが参画するコンソーシアムを組成し、そこから制度改革やビジネス環境整備に関する課題の吸い上げが行われるべきである。更に、そこから抽出された新たな制度や課題については、関係省庁が積極的に連携し、解決を図っていくべきであるとされているところでございます。
 説明は以上でございます。
○山崎部会長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明、及び本日、参考資料として用意していただいている委員の方もおられますが、そういったものも含めて各委員の御意見をお願いしたいと思います。前回の御意見、それから今日これからいただきました御意見などを基に、事務局と相談いたしまして、次回以降の検討テーマや論点を整理したいと思いますので、どうぞ御自由な御発言をお願いします。今日は、特に田中先生、藤井先生にもおいでいただいているので、この際、ただいまの報告について質問があれば、それを最優先としたいと思います。
 勝田委員。
○勝田委員 まず、田中参考人にお伺いしたいと思いますが、最後に介護保険に頼り過ぎてはいけない。介護保険を孤立させてはいけない。介護保険も活用して高齢社会を乗り切りたいというコメントで締めくくられました。
 それで、今の地域包括ケア研究会の報告を読ませていただいても、私どもは介護保険というのは公的介護保険として制度化されたものだ。そして今、10年を迎えていると思うのですけれども、今の研究会の中では、私たちは介護保険とか医療保険というのは公助だと思っているのですが、こちらの中では自助、互助という言葉が入ってきて、社会保険というのは共助なのだ。それで救えない人が公助なのだという区分けをしてありますけれども、一体どこでこのような定義付けがされたのか。
 私たちは、公的介護保険なのだ。だから、私たち認知症の人と家族の会というのは、30年間、介護の社会化ということを願って、ずっと訴え続けてきて、ようやく介護保険ができたときに、これはうれしくて社会的な介護が本当に進められるのだということで、この介護保険制度を私たち家族もとても喜んでおりました。
 ただ、この10年間の中でだんだん使いづらく、そして利用しづらくなっておりますけれども、この報告書の中で、例えば24時間365日の巡回型ができれば、在宅も例えば認知症があっても地域で住み続けられるのだという根拠は一体どんなものなのか。その中でも、例えば認知症サポーターが地域に増えれば地域で見守りができる。だから、自律できるのだという論法がありますけれども、そんなに簡単に認知症の介護を考えていけるのかどうか。
 勿論問題点ばかりを挙げつらうのではなくて、みんなで考えていきたいという、この報告書の趣旨は、2025年の姿としては一定の評価ができるところもありますけれども、私たちは必要なサービスを、だれでも、いつでも、どこでも利用できる制度にしてほしいという願いを込めて、この10年間たったところで介護保険制度をもっとよくしていきたい、持続可能なものにしていきたいということですが、この報告の中では、介護保険というのは一部なのだ。もっと保険外にいろいろやりなさい。では、その保険外を何が保障してくれるかというと、地域の町内会とかの皆さんで助け合いをしなさいという受け取り方をしました。
 勿論いろいろなことを想定されておりますし、事務局の方からも、こんなふうにやっていくんだということが出ましたけれども、本当にこれでやっていけるのか。私たちは、この後15年も待てないわけです。勿論そういうことも必要ですけれども、毎日暮らしの中で介護をしているわけです。そういう中で、2012年なり2011年に介護保険法が改正されるわけですけれども、前回の場合は大きく費用抑制という中で利用者負担が増えました。この中にうたってあることはすばらしいことです。だけれども、2025年ではなくて、今どうしてもらえるのか。
 勿論、私たちは頼り過ぎない。だれだって自助・互助も含めて頑張っています。でも、介護の社会化ということを願って介護保険ができて、これを公的介護保険だと思うのですが、この報告書を見ますと、だんだんそれから遠く離れていくのではないかという懸念を抱きます。そういう点では、今日、私たちが2012年の介護保険制度への提言という資料を付けさせていただいております。皆さんのところにも配付させていただいておりますけれども、この10年間の介護保険の総括をしながら、次、どうするのかということを論議するのが、この介護保険部会ではないかと思います。
 そして、この10年たったからこそ、私たちは10年前にこの介護保険制度をつくったときの思いに立ち返るべきではないかと思います。そういう中で必要なサービスを、だれでも、いつでも、どこでも利用できる制度にしたい。そして、10年間、複雑化してきて、プロの方でもわかりにくい。わかりやすい制度にもう一度してほしい。
 そして、財源については、勿論私たちも一緒に考えていきたいと思っておりますけれども、介護保険本来のサービスに使うべきではないか。前回の改定で、介護予防などが介護保険で賄われるのはおかしいのではないかと思っております。何よりも、介護保険というのは公的介護保険だったはずです。そういう点で、きちっと国が責任を持って確保する制度にしていってほしい。
 そして、この10年間の中で必要なサービスをどうやって確保していくかという中では、私たちは今後の介護保険部会の中で詳細に皆さんと討議を重ねていきたいと思っておりますけれども、6つのことを2012年の改正に向けて皆さんに御提案したい。認知症を抱える家族、本人、利用者を代表して、国民の声ということもありましたけれども、私たち家族の会は現在1万人の会員を有しております。そして、現在進行形で毎日介護をしている介護家族です。そういう中で一番大きなことは、これはいろいろ問題があるかと思いますけれども、私たちが話し合った中で、まず要介護認定をもう一遍見直してほしい、廃止してほしいと思っております。
 少し極端な言い方かもしれません。これはまた、説明すれば長くなりますけれども、認定からするのではなくて、暮らしの中で、介護の中で、介護の必要性から、こういうことが当然私たちの願いとしてあります。では、そんなことをしたらどうするのかという不安もあると思いますけれども、現在のサービス担当者会議に保険者も加えて、適正な適切なサービスを供給するということだと思っております。
 また、現在、介護保険サービス情報の公表制度がありますけれども、これは残念ながら家族は見ることがほとんどありませんし、残念ながら選択の自由といった介護保険は、今、選択の自由はほとんどありません。そういう中では、公表制度については廃止してほしい。そして、ここにかかっているお金は、直接的な介護のサービスに充ててほしい。勿論、第三者評価や、そういうことを否定するものではありません。
 そして、現在、サービスの自己負担割合は1割です。本来、私たちは介護保険料を払っているのだから、当然将来的には無料とも思いますが、現在は1割を堅持してほしい。財務省の試算では2割、3割という試算も出ておりますけれども、そういうふうに思っております。
 また、財源のうち公費負担割合。私たちは、介護保険料の公費負担率は今5割ですが、これを6割に引き上げてほしい。これは幾つもの団体の皆さんからも御提言が出ております。
 6つ目、これは特に若年認知症の方たちの問題です。介護保険ができた10年前は、寝たきりのお年寄りを、高齢者を中心に介護保険制度は創設されました。認知症の方々を余り前提にしてありませんでした。そういう中で、皆さんも御存じのように、昨今、若年の認知症の方々が物すごく増えています。勿論やれないこともあります。でも、やれることはまだまだあります。介護サービスを利用していても、作業しながら作業報酬を認めてほしい。そのことによって認知症を進行させないということが重要と思っております。
 そういう点では、私たち当事者の声を是非酌み上げていただいて、今後の介護保険部会の中で皆さんの御意見も聞きながら、2025年も含めてですが、認知症があっても安心して暮らせる社会を皆さんと一緒につくっていきたい。そのために介護保険を持続させたいと思っております。
 ありがとうございました。
○山崎部会長 ありがとうございました。田中先生にお願いします。後半は、家族の会からの御意見として、今後の検討課題にしたいと思います。
○田中参考人 こちらに関わることだけお答えします。
 介護を社会化していく、社会全体で支える理念については全く同感でございます。
 2番目、認知症のことについて、研究会の中身では結構議論し、書いてあります。私のバックグラウンドが経済学なものですから、今日の発表では少な目にしゃべってしまったのであって、研究会の動き及び報告書としては、認知症についても専門の方々の意見を、これこそは最も大切な課題であるというトーンは崩しておりませんので、御安心ください。
 最後は言葉遣いの問題なので、公助と呼んでも結構です。公助に2種類あって、ミーンズテストの付かない普遍的な公助と、ミーンズテスト付きの制限的な公助という言葉づかいにしても、それは言葉の定義の問題です。前者を私たちは共助と呼んだだけで、普遍的公助という言葉でも特段に違和感はありません。公助の方が居心地がよければ、そう呼んだらいいと思います。以上です。
○山崎部会長 ありがとうございました。
 ほかに。河原委員、お願いします。
○河原委員 ありがとうございました。何点か確認と感想を述べたいと思います。地域包括ケア研究会の報告書、大変分厚かったのですけれども、私も一読させていただきました。2025年を一つの目標にして、地域を主人公にした日本の風景が変わるのではないかと、少々内容に私は感激して読ませていただきました。私は、10年前に介護保険制度ができたときにも同じような思いでおりましたけれども、介護保険制度は日本の社会を変えていく一つの基点になるのではないかと思っておりました。残念ながら幻想だったのかなと思いますが、まだあきらめてはおりません。
 今回の報告書は、介護だけでなく、地域包括ケアをキーワードに、医療や福祉サービスと連携した非常に安心感のある地域の姿を描き出しているように私は思いました。そんな感想を持ちながら2点確認させていただきたいのですが、この介護保険部会の議論との関係なのですけれども、地域包括ケア研究会の報告内容をよしとして、その構築を目指して我々は議論していくのか、あるいはそれはそれとしておいて、ここの議論でいろいろな難題・課題があるものを解決するために議論するのか、その辺の関わりがよくわかっていない部分がありますので、教えていただきたいと思います。つまり、介護保険制度が地域包括ケアシステムを支えるのか、地域包括ケアシステムが介護保険制度を支えるのか、そういった議論ともどこか関連性があるのかなということも思いました。
 もう一つ、報告書の中で今も出ましたけれども、多様なサービスのあり方として、自助・互助・共助・公助の順番で書かれておりましたけれども、この順番は地域包括ケアを構築するに当たって、重要性の高い順番として並べられたのか、そういう理解をしていいのかということをお聞きしたいと思います。だとするならば、介護も医療も、また福祉サービスも財政的な課題があるとはいえ、制度化された、社会的に責任のある共助を先頭に持ってきて、当てになるようで不安定な互助は順番を後に持ってきたらいいのではないかということを思いましたので、以上2点は、確認というか、質問といいますか、お聞きしたいと思います。
 あと、藤井先生がまとめられた、主に介護の人材に関わるようなことも書かれておりましたけれども、これは私ども、今日皆さんの方にお配りしております、4月1日に長妻厚生労働大臣に直接、20分間だけでしたけれども、お会いして、今まで働いている方たちから意見を吸い寄せまして、事務局の方でまとめた12の提言をお出ししたのですけれども、それとどこかで接点があって、非常にありがたく読ませていただきました。事業者に対する労働法規の遵守というのは、我々は実際やっておりましたら結構あるんです。サービス残業のこともしかりですけれども、細かいことは言いませんが、キャリアを積み上げる仕組みだとか、女性が多い職場環境への配慮だとか、意欲を高めるための職場づくりの検討だとか、非常に整理整とんされておりますので、是非これが実行できるような仕向け方をしていただきたいなと思いました。
 それから、厚生労働省の方のアンケートにつきましては、ちょっと引っかかったのは、6の費用負担については、保険料引き上げを誘導しているような質問で、非常に違和感があったという感想を持ちました。
 それと、アンケート結果の件ですが、いろいろな意見が出ておりましたけれども、これはどこの業界、どこの団体、私たちもそうですけれども、アンケートをとれば必ず出てくる意見が網羅というか、今回も出ているのです。大切なことは、こういった意見を吸い上げただけではなくて、この方たちも回答が欲しいと思いますので、せっかくのアンケートを整理整とんされて、できるもの、できないものにはっきり区分できるかどうかは別にしても、こんなふうに取組むのだとか、これはここでの議論を待たなければいけないのだということを整理整とんして、しっかり返してほしいなと思いました。
 いずれにしましても、人材のことがアンケートにも多く出ておりましたので、持続可能な視点からも、これから処遇のことをどうするかとか、大変重要であると思います。前回も言いましたけれども、これは目標を掲げることが私は非常に重要だと思います。処遇を改善すればいいというアバウトな物の言い方は、もう大分聞き飽きましたので、一体どの辺を目指すのだ。全産業平均と比較してという言葉が時々優しく使われますけれども、とするならば全産業平均を目指すのだと言っていただければわかりやすいですし、こういった位置付けは、介護保険部会の中で具体的な数字はインパクトがあり過ぎて出せないかもしれませんけれども、少なくともそれに近いような目標を掲げてくださるようになればいいなと思いました。
 以上でございます。
○山崎部会長 前半で田中先生に関する質問が少しありました。
○田中参考人 この部会と研究会の関係については、私が決めることではないので、それは座長なり事務局にお答えいただいて、自助・互助・共助・公助、これは強い哲学でこの順番だと考えました。これは、お金の大きさの順ではありません。別にそういう意味ではないです。社会のあり方として、高齢社会を支えるために、勿論介護保険給付サービスの部分は、お金の意味でも、サービスとして大きくなるに決まっています。だけれども、その前に精神として、高齢社会を支えるにあたり高齢者一人ひとりがまず自分のことは自分でできるかぎり責任をもつ。できる能力を使うとの視点もあるし、身体能力とはまた別に、例えば住むこと、食べること、これを介護保険が給付するわけはないですから、自助が先になります。それが最初です。
 次に、互助につきましては、高齢者もまた社会参加を行う。米国のエイジング・イン・プレイスを視察に行きますと、高齢者で要介護であっても地域社会を支えておられる。例えば学童保育を手伝ったり、乳児たちの保育の見守りを手伝ったりなどです。そうした、社会へ参加していく互助の仕組みがないと、わが国の成熟はないとの哲学を込めて、この順だと思っております。
 要介護者に対する専門性の高いサービスについての金銭的な順番は、勿論共助がトップに来るに決まっています。ここで言っているのは、その意味ではないです。金銭的に自助で払え、残りの一部を共助がカバーするとの意味ではありません。社会のあり方論として、この順の方が正しいという意識を込めております。
○山崎部会長 最初の御質問ですが、この研究会の報告書と本部会との関係でございますが、これは一研究会の報告でございまして、部会のもとに置かれたものではございません。ただ、非常によくできた報告書だと私は思っております。介護保険を推進されてきた方々、かなり有力な方もメンバーになっておりますから、参考にはできるものと考えております。
 ほかにございますでしょうか。はい、木村委員。
○木村委員 3点ありますが、一番最初に田中先生のレジュメの3ページ、4.3、サービスのあり方のところに、在宅限界を高めるサービスの例ということで、24時間365日短時間巡回型と小規模居宅介護複合型事業所ということが記載されていて、本文の39ページに同じようなことが書いてあるのですが、具体にイメージしているのは、小規模多機能型の大型化したものなのか、それとも24時間型の訪問介護となると、いまも夜間対応型のサービスもあるわけですよね。これらの今あるサービスを単純に組み合わせて事業化するのか、全く新しい体系で、夜間対応型と訪問看護とショートを付けてやるのか、その辺の議論がどういうことであったのかということを伺いたいと思います。
 2点目は、本文の39ページに、自立支援型のケアマネジメントを推進されるように、居宅介護支援に利用者負担を導入することも検討するべきではないかとありますが、この自立支援型のケアマネジメントが推進されるように評価を考えるとの、今までの介護給付費分科会の議論では加算評価になっていく、むしろ自己負担が増えて逆に走るのではないかとも読めるのですが、その辺のコメントが1つ。
 それと、先ほど藤井先生の資料の中で、本文の35ページにいろいろな職種のことを検討したけれども、介護支援専門員のところは別途やるべきではないか。その別途のどういう議論がされたのかを伺いたいわけです。
 以上3つです。
○山崎部会長 ありがとうございました。後で、5時半ごろ少し休憩をとりたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、田中先生。
○田中参考人 ありがとうございます。
 サービスのあり方は、先ほど言いましたように、これがいいとの単独形態はないので、小規模多機能が中心になっていくところもあるだろうし、違う型もありうる。それから複合型とは、小規模多機能だけでは事業経営ができるわけではないので、それらをサテライトとして置きながら、コアには比較的大きな集合型住宅なり老健があったり、いや、医療機関が中心にあってもいいかもしれません。そういう地域展開をするときの一個一個の出先のとりでの名前がいろいろな名前になっていてもいい。それは、これがいいとの単一パターンの提示ではなくて、組み合わせを考えてください。それこそ、ケアマネジャーがこの地域ならこうだと言っていただければいい。全国一律である必要はないと思います。
 2番目、居宅介護支援に利用者負担を導入することも検討すべきではないか。これは文章の常ですが、こう書いてあるとは、入れろと言っているのではなくて、こういうことも検討した方がいいのではないかとの意見があった。1人だったら書かないかもしれないけれども、何人かが言った場合、検討して、どっちがいいかは、まだ結論は出ないけれども、無視することはできない。そういう検討もあっていい。やや少数だがあったときの書き方の定型だと思ってください。
○山崎部会長 藤井先生、お願いします。
○藤井参考人 報告書の48ページの下の脚注に書いているものを申し上げたのですけれども、ケアマネジャー、ケアマネジメントについても一定程度議論が及んだんですけれども、どうもその問題は非常に大きいのではないかということで、これは私の方から、限られた時間にやるのではなく、きちんと別の場でこれだけを是非議論していただきたい。そして、それを明記していただきたいということで、ここに入っております。
○木村委員 わかりました。まさにケアマネジャーのことは大きい話ですので、どこか1つ検討会でもつくってやっていただいても結構かと思っております。よろしくお願いします。
○山崎部会長 では、結城委員。
○結城委員 田中先生に1つと藤井先生に1つ、よろしくお願いします。
 まず、田中先生の議論で、介護保険というものは、私も社会保険だと思いますけれども、実は10年間徐々に、例えば介護予防が入ってきたり、保険制度が入ったり、あと補足給付とか地域支援事業などの任意事業とか、いろいろな福祉とかヘルスの保健、そういうものが大分融合してきているのではないか。実際、リスクに対しての保険給付が社会保険なのですけれども、その辺の保健・福祉、それから地域福祉といろいろなものがごちゃ混ぜになっているので、介護保険そのもの、社会保険のあり方についての議論があったのか、なかったのかを1点お伺いしたいのが1つです。
 それから、藤井先生には、キャリアアップのところで、専門職は業務独占と名称独占のところが私は重要だと思います。その辺の専門性を高めていく、社会に専門家と認知されているのが、業務独占と名称独占の議論が先生の所属の検討会であったのかどうかを教えていただければと思います。
 以上でございます。
○山崎部会長 私もお聞きしたいような質問を結城さんにしていただきました。
○田中参考人 正直にお答えします。両論ありました。議論を結構いたしました。介護保険が社会保険である以上、保険事故、保険リスクに特化した方が理論的には正しいとの意見も一方にあります。一方、どこかに書きましたけれども、特定高齢者把握に手間とコストがかかり過ぎていて、こんなものは保険ではないという意見もありました。
 それから、補足給付は直ちにやめるべきと唱える強い意見と、少数意見ながら、補足給付は社会を守っているという意見もありました。
 医療保険の場合には、ほとんどの方が保険サービスを使われます。介護保険は、実際のところ、保険料納付をなさっている方のうち2割ぐらいしかサービスを使わないわけです。だから、医療の方が比較的給付を受ける確率、金額的には勿論重い病気の方がたくさん使うけれども、使う率が高い。一方、使う確率で言うと介護の方がずっと低いので、介護保険を支えるためには保険理論には合わないかもしれないけれども、介護予防があった方がいいとの意見もありました。
 それから、公費について。先ほど6割に行っていいとの案がありましたが、今述べた実態から、補足給付があった方が、公費を出させるための理論になるなどの議論が出ました。正直に言って、多数派としては社会保険に純化した方がいい方が多かったと思いますが、1人2人ではない委員が、介護保険の性質上、そういう社会的な支援も含めた方が、むしろ人々が保険料を払ったり、公費を拡大するときの根拠になるのではないかという意見があって、まとめ切れずに両方書いてあります。
○山崎部会長 藤井先生、お願いします。
○藤井参考人 業務独占、名称独占という形での議論はなされておりません。介護職員の処遇をどう上げていくかといったときに、どのように評価されるかという文脈で、2025年には認知症ケアのスーパーバイズができて、リハビリができて、基礎的な医療ができる。そういう資格にしていってはどうかというところで議論がまとまったところでございます。
 これは私、個人的な意見でございますけれども、もしこれを介護福祉士ができるようになった状況を想定しますと、かなり実質的な業務独占みたいなものは生じているのではないか。これはほかの職種との関係とか、いろいろな物のあり方によって違うと思いますが、介護福祉士がいないとできないこと、介護福祉士がいることによって質が上がることができますので、結城先生がおっしゃったことそのものは議論されておりませんけれども、現にどの委員にもそういうことが頭にあって、そのような議論になったのではないかと思っております。
 以上です。
○山崎部会長 手が挙がりましたが、とりあえず田中委員の御質問、御意見を受けて休憩に入りたいと思います。よろしくお願いします。
○田中委員 藤井先生に質問が1つございまして、基本的に今回のまとめは、本当に整理していただいたものと考えております。これまで私どもは、介護福祉士国家資格有資格者と無資格者の業務分担といいましょうか、サービスの提供できる範囲について明確にすべきだということを望んできました。しかし1点どうしてもわからないというか、言及されていない点があります。
 それは、施設、事業所における施設長や管理者といった管理的立場にある方の質の確保に関する問題ですが、現状においては、医療系施設は当然、医療職であることが限定されておりますが、社会福祉法人においてはそういったことがありません。また、株式会社等の経営による事業所においても同じような質に関するものはないわけです。従事者の質の議論のみならず、経営に当たる方々に対しては、私どもとしては医療・保健や福祉、あるいは介護分野の国家資格取得者の方を最低条件として、更に効率的・効果的なサービスを管理・提供するという観点から、マネジメントについても一定の研修や、あるいは資格を取得された方々が望ましいとこれまでも伝えてきたのですが、その辺りの議論はあったのかどうかについてお聞かせいただきたいと思います。
 それから、田中先生についても、私ども、これから団塊の世代を中心とした者が要介護状態になったときに、あるべき姿ということを御提案いただき、本当にすばらしい報告だと思っておりますが、我々社会福祉法人の事業所に多く関係するのですが、生活に困窮されている方々、すなわち単なる低所得者という言い方ではなくて、まさに生活保護という方々が要介護状態になったら、どのようなところで暮らしていけるのか、その姿が見えない。
 なぜならば、現実において、その問題は悲惨なことですが、まさに生活に困窮し、住まいもなく、お金もなく、しかも生活保護における住宅補助というのは限定された額です。現実的には、たまゆら事件のような脱法という言い方をしていいのかどうかわかりませんが、ああいう形でしか住まいや介護の保障がないというのは悲惨なことだと思っております。そういった生活困窮された方々に対する介護のあり方について議論があったのかどうかについてお話いただければと思っております。
○山崎部会長 どうぞ。
○藤井参考人 まず、経営品質といいますか、経営者品質のことに関してでございますが、経営者といいますか、経営の問題が介護職員の処遇において非常に大きいという議論は、かなりなされました。ただ、経営者の資格を限定することによって質が上がるという議論はされておりません。むしろ、職員の側からきちんと選んでいくような仕組みができないかどうか、あるいは介護の質を評価するという仕組みができないだろうかという方向の議論がございました。
 介護福祉士の上級的なものを考えていくべきだという考え方の中で、マネジャー層、施設長としてのキャリアの位置づけについても言われてきており、それがこの議論と重なってくる部分はあるのではないかと思います。
ただ、人材の委員会の方では、資格制限によって経営者の質が上がるという議論は、今年のところではなされておりません。
 以上です。
○山崎部会長 田中先生、お願いします。
○田中参考人 先ほど介護保険に頼り過ぎてはいけないなどと言いましたけれども、介護提供体制も同じだと思います。先ほどの結城先生の御質問とも似ていると思いますけれども、困窮された方々、生活保護の方々の居住については介護分野の責任ではないです。その方々に、きちんとしているかどうかは別として、一定の住宅を供給することは社会の責務です。とりわけ自治体の責務だと思います。しかし、介護分野の責任ではない。逆に、たとえ生活保護の方であっても、要介護であれば、そうでない方と同じ介護サービスを提供することは、介護分野の責任であり、介護保険制度の責任だと思います。
 住宅問題と介護問題を、提供体制論においても、財源論においても、セットにしてはいけない。サービスの結果として、そういう方が住んでいる集合住宅にサービスが行くことは勿論です。そういう区分けをして理解いたしました。
○山崎部会長 ありがとうございました。それでは、一たんここで休憩に入りたいと思います。40分に再開いたします。

(休 憩)

○山崎部会長 それでは、再開いたします。
 齊藤委員、手が挙がっておりました。お願いします。
○齊藤(秀)委員 ありがとうございます。
 田中先生に質問させていただきます。
 少し具体の話で恐縮ですが、報告書の39ページで、先ほど木村委員からも御質問があったと思いますが、いわば自立支援型のケアマネジメントを推進する。そのためには、居宅介護支援に利用者負担があってもいいのではないかということですが、私は自立支援型のケアマネジメントをするには、「利用者負担」が必要というのがどうもぴんと頭に入ってこなくて、どういうふうに理解したらいいのかということを感じました。
 少し違った見方で、その2つ上の丸印に、介護支援専門員は利用者や家族の意向を尊重するだけではなくて、目標指向型のケアプランを作成して、利用者・家族に合意形成をする能力を養えと書いている。利用者サイドから見ると、むしろ利用者・家族の意向を尊重して、なおかつこういう方向を目指すと言うならわかるけれども、これは利用者・家族の意向だけ聞いてはいかぬとどうも聞こえなくもないような感じがして、少しへそを曲げて読ませていただきました。そんなことはないだろうと思いますが、補足していただければと思います。
 もう一つ二つございます。
 40ページでございます、区分支給限度額について、上限を超えるサービスを利用している事例について、少し実態を把握する必要があると書いてございまして、私も全くそうだと思います。あわせて、区分支給限度額の全体的なものを見渡しますと、使えるものの半分ぐらいを超したぐらいの活用で十分に利用されていない実態もあります。場合によっては、利用料というものが原因の一つになっているのではないかと、私はかねがね疑問を持っています。あわせて、そのような実態把握をし、情報の共有を行うべきではないかと考えますが、先生はどのようにお感じになられていますでしょうか。
 更に、その下に、新しい考え方の24時間巡回や複合型事業所の導入に際しては、包括報酬を採用するという考え方を出されておりますけれども、私は事業者にとってメリットがないものは、なかなか進まないのではないかと思っておりまして、そういう意味で利用者が本当にいいサービスを包括でということはありがたい部分があるわけでありますけれども、本当にこういうことが成り立つのだろうかと実は疑っていまして、これも御教授いただければと思います。
 もう一つ、42ページでございます。介護保険施設類型の再編のことを書かれておりまして、その中で、特別養護老人ホームの設置主体の制約見直しについて書かれている部分がございます。私は、より公益性の高い社会福祉法人ですら、時として不祥事を起こし、ここに入っている利用者にとっては大変不安を覚えることが、今でも残念ながらございます。これを、ここでは医療法人と書いてございますが、さまざまな議論の中では、もっと広く株式会社にもその参入を認めてはどうかということも出ているわけでありまして、私ども利用者側の方からすると、果たしてそれでいいのかという不安を大きくしておりますが、ここの中で医療法人というお話が出た部分について、少し補足した説明をいただければありがたいと思っております。
 更に、後で事務局の方にお尋ねしたいと思っておりましたのは、アンケート調査についてであります。実はこの回答を見ておりますと、利用者御本人、利用者の家族、それから介護に関わる方々で約80%を占めている回答になっております。介護保険は多くの方々で支えている保険でありますから、いわばこういう直接的な関わりのない人たちの意見も幅広くお聞きしたいと思っておりました。私は、別の方で医療の問題で、高齢者の新しい医療制度について、広く国民に意見を求めるということで、長妻大臣のもとで同じようなアンケート調査の手法をとっておられますが、唯一違いますのは、ホームページ上だけではなくて、広域連合とか、幅広く下におろして、そこから意見を吸い上げるという手法をとっておられる。
 同じ厚生労働省の中で、一方の大事な医療制度の方と同じぐらい大事であります介護保険を、このようにインターネット上だけに限定しておられるというのは、いささか私はどうなのかなという疑問を感じております。市町村の自治体を通して、幾らでもアンケートを広く皆さんから御意見を聴取できるはずでありますし、大臣がグループ討議方式で幅広くこういう御意見を聞いているとすれば、せっかくのアンケートの手法としてどうだったのだろうかということに大変大きな疑問を感じておりまして、この辺は御検討された経緯があろうかと思いますので、是非そこはお聞かせいただきたいと思います。
 以上です。
○山崎部会長 ありがとうございました。では、最初に田中先生の方から。
○田中参考人 39ページは、私たちとしても実は論理が弱いと、痛いところを突かれたと思います。何回も原稿をやりとりしているところで、もうちょっと論理を深めなくてはいけないなと最後まで残っているところです。意味はこういうことです。
 39ページの上から3つ目の丸の、意向を尊重するの「意向」は、客観的ニーズではない望み、英語で言うとウォンツ、欲望に基づくサービス利用があり得るわけです。典型的には、家族がお年寄りを目の前から消したいという欲望を持つ場合があり得ます。
 それから、本当のニーズとしては、リハビリを重視すべきなのに、比較的身体的にも楽な方を選んでは好ましくない。介護分野ではさまざまなサービスが必要ですが、さっき言った自助の意味からすると、苦しくてもリハビリプロセスを通った方がよいかもしれない。そういう客観的ニーズに応じた方がいい場合は、ケアマネジャーがきちんとそういうアドバイスをしたらいかがですかと書いてあります。意向だけだと、場合によっては楽に流れる場合もある。意向が勿論正しければ、きちんと客観的ニーズに基づく意向ならばいいけれどもと、もう少し解説を加えるべきだと私は思っています。大変鋭いところを突かれました。
 それと矛盾するのですけれども、自立支援型ケアマネジメントとはそういう意味であって、客観的ニーズにできるだけ対応するという意味ですが、それをお任せ型のケアマネジメントにしないためには、自分でちょっとでも負担した方が判断できるのではないかとの議論がありました。一方で、お金を払ってしまうと、それこそ楽に流れるケアマネジメントを要求してしまうのではないかとのおそれもあるので、ここは両論併記の意味で、先ほども申し上げたように検証すべきではないかぐらいであって、検討すべきより弱くなっています。要するに、本人の楽さかげん、あるいは家族が楽になるためのケアマネジメントだけになってしまうと、自立支援にならないおそれがある。そういう議論を下手くそに書いたと思ってください。
 もう一つの、社会福祉法人だけではなく医療法人について。これは新自由主義的な方々とは違い、企業とまでは書いてありません。現実に、多くの医療法人は隣に社会福祉法人をつくって、既に特養を経営なさっています。社会福祉法人を医療法人がつくることはそんなに難しくないので、これはむしろ現実の追認に近いのではないかというレベルです。
 サービスは医療と一体化されている方が、介護サービスはうまくいきますので、事実上、ほとんど同じ地域に医療法人と社会福祉法人を同じ理事長が経営なさっているケースがあって、それで特段に悪いといえる事例がたくさんあるわけではない。おっしゃるように、分布の端の方で何か問題がある事態は別として、トータルで見て、それで大きな問題が起きていない以上、堂々とつくったらいかがでしょうかという意味です。
○山崎部会長 あと、40ページの区分支給限度基準額について。
○田中参考人 失礼しました。区分支給限度額があると、在宅の場合、サービスをどこまで使ったらいいかわからない。緊急で呼ぶたびに追加料金を払っていったら、区分支給限度額を超えてしまうのではないかというおそれで、でこぼこができない。施設では、一月間の定額であって、しかも施設にとってみると、必ず給付金額に応じたサービスを全員にしているわけではなくて、何十人かの1年分の収入の中で、そのときニーズが多い人に対応したり、そのときはたまたまニーズが少ない。定時のサービスで済んでいる人がいたり、要介護3でありながら、今月は事実上、50万円分のサービスを提供していたりする。
 だけれども、対象人数が多いし、1年間の毎月の収入がわかっているからサービスを柔軟に組み合わせることができているのです。決して、要介護度3の人には3の分のサービスを毎月ぴったりと行う、そういう施設はないと思います。在宅も同じようにした方が経営は安定するし、利用者側にとっても安心であるのではないでしょうか。
○山崎部会長 よろしいでしょうか、齊藤委員。
○齊藤(秀)委員 はい。
○山崎部会長 では、土居委員、お願いします。
○土居委員 今回から出席させていただきます慶応義塾大学・土居でございます。田中・藤井両先生には、大変きめ細かく報告書を御報告いただき、ありがとうございます。地域包括ケア研究会の報告書、私としても大変賛同できるところが多くて勉強になりました。両先生に1つずつ御質問させていただきたいのと、あと1つ、私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、田中先生のレジュメの3ページに自治体に向けた提言を書かれておられて、特に高齢者の居住を確保するというのは非常に重要なところであると思います。ただ、自治体にできることにもかなり限界がありまして、勿論アレンジをするとか、そういうことは可能なのですが、直接的な住宅供給は、公営住宅というものが今、既にございますが、やはり低所得者向けというところにかなり限られている。しかも、高齢者向けに限定して供給しているわけでも必ずしもない。今後、高齢化が進むだろうとは言われていますけれども、高齢者向けだけということで供給しているわけではない。
 他方、都市再生機構、URもこれまで既にニュータウンなどで住宅を供給している、そしてそのニュータウンの居住者の方々が高齢化するということが今後想像されているわけですが、これは国の機関ということになりまして、ここでおっしゃった、自治体に居住の安定化ということで御提言なさっているところでは、どのようなイメージで高齢者の住宅について提言なさっているのかというのをお伺いしたいと思います。
 それから、藤井先生に対する質問なのですけれども、介護職員の報酬を増やすということは、現状から見ると必ずしも十分な報酬が出されていないのではないかという印象は私も持っておりますが、さはさりながら、無から有は生まれないと申しましょうか、介護職員の給与を高めるということになりますと、何らかのお金がどこからか賄われなければならないということになります。勿論、介護保険料を上げるのか、公費負担を増やすのかという財源はありますけれども、そうなると当然、利用者の納得というものがなければ、それに伴う介護職員の給与引き上げというのはなかなか難しい。
 そういう意味で言うと、私は2つぐらい考え方があるのかなと思っておりまして、ウィリングネス・ツー・ペイ、支払い意志額を実際に利用者の方に調査して、つまりこれぐらいならば払ってもいいと利用者が思っておられる金額と、現状の報酬が不つり合いであるということであれば、その分は当然しかるべき御負担を、保険料なのか自己負担なのか税なのか、それぞれいろいろあるにしても利用者の方にお願いするということで、納得のいく形で報酬が上がるという可能性はあり得るだろう。
 もう一つは、労働生産性向上といいましょうか、より少ない利用でよりよいサービスを提供するということができれば、それだけ介護職員の方々にもより多くの報酬が渡る可能性もあるだろうと思っていますけれども、その辺りの御議論がこの研究会の中で何かなされたかということについてお伺いしたい。
 最後に1点ですけれども、これは直接、研究会と関係ある部分もありますけれども、関係ないかもしれません。公費負担のあり方ということですけれども、公費負担をもう少し上げてはどうか。これは裏返して言うと、保険料の引き上げというものがかなり今後難しいのではないかという認識もあろうかと思いますけれども、結局のところ、公費と言っても税金なわけであります。しかも公費の半分は、都道府県・市町村で地方自治体。お住まいになっておられるところの住民税なりの地方の税金も上がってくる。
 介護保険料は抑えられたかもしれないけれども、結局のところ、地元で住んでいるところの税金が上がる形で返ってくる可能性は十分に考えられるわけですから、単に公費負担を増やせばいい、ないしは介護保険料が上がらないということを期待しながら公費負担を上げるというのは、自分の足を自分で食べているみたいなところがあって、結局は税金が増税されるとかいう形で返ってくる可能性があり得るところは、ケアフルにこの部会でも御議論いただきたいところだと思うわけです。
 勿論、住民税は、高齢者の方々は御負担なさっていない方々が6割いらっしゃるということがあるので、結局のところは介護保険料、特に第1号被保険者の介護保険料を上げないで、税金でということになれば、税金を実際にお支払いになられる方に御負担をお願いすることになるのかもしれませんが、世代間のことを考えると、それは結局は勤労世代の人たちが負担することになるわけでありまして、高齢者の負担を勤労世代に付け回すという短絡的な発想で公費負担を増やす、割合を増やすわけにはいかないだろう。そこはきちんとした納得・論理を持って議論すべきではないか。
 以上です。
○山崎部会長 田中先生、お願いします。
○田中参考人 自治体に住宅をたくさんつくりなさいと言っているつもりはございません。厚労省と国交省が連携することを求めています。同じように、自治体の中の住宅部局と介護担当部局がしっかりと連携することを求めている。お年寄りがどこに住んでいても介護サービスを受けられる体制をつくることによって、要介護ゆえに、要介護対応だけのために特別な住宅をどんどん住みかえたりする必要はなくしたい。
 その人にふさわしい、その状態にふさわしい住みかえニーズがあったときに、自治体の部局がちゃんとこういうものがありますよと示すメニューを持っていて、紹介できる。それによって、もっと重度の施設を早くから使ってしまう、つまり制限の多い場所に移るのを遅らせることができる。そのためには、住宅部局が介護部局と連携してメニューを持っている。あるいは、URも含めて、高齢者専用という意味でないかもしれませんが、若い世代も含めて住みやすい家を地域に持ってくるような努力を自治体はしましょう。それは、持ってくる相手がURではなくて、株式会社でもいいのかもしれません。それも、介護の長期見通しに応じて、こういうバリアフリー住宅が必要だと数を提示する。そういう計画のことを言っていると考えてください。
○山崎部会長 続きまして。
○藤井参考人 介護職員の報酬を増やす際に、どのような手法といいますか、考え方かということで、恐らく選択といいますか、マーケットみたいなものをどううまく使ってという観点から、ウィリングネス・ツー・ペイとか労働生産性の議論をおっしゃったと思います。
 我々の議論の中では、ウィリングネス・ツー・ペイとか労働生産性そのものは扱っていないのですけれども、むしろ介護サービス、質ということをキーワードにして、それを放り込んではどうかという中で、では質とは何かという次の段階で、恐らくウィリングネス・ツー・ペイといったものを検討する余地はあるだろうと思います。質は質で検討部会がございまして、そちらの方でウィリングネス・ツー・ペイの話も多少議論が出ていたように思います。
 もう一点は、労働者側の方が選択するということで、今回の給料の確保の問題で言いますと、景気がよくなると、人材が必要なところは給与とか処遇をよくしてでも確保しようとすると。ところが、介護の側でいいますと、介護報酬が変わらない限り、それをアップできない。そこの部分が市場に組み込まれていながら組み込まれていないところでございますので、その辺りをどういう形で組み込まれている部分を調整していくかといった部分は、今後も重要な検討・研究分野だろうと思います。
 ただ、今の交付金という形で、必要な分だけお金が出るという形が終わった際には、介護報酬という形にして、そのときは質を評価するという形の方向性ではないのだろうかという議論はなされました。
 以上です。
○山崎部会長 ありがとうございました。
 では、橋本委員、お願いします。
○橋本委員 橋本でございます。幾つか感想、それからお聞きしたいことがございます。
 今回のこの報告書、全体的に大変に示唆的であると感じますし、将来の2025年のあるべき姿、こうなるだろうという予測がある程度出てくるわけですが、しかしながら現実の今の状況を考えて、現状をこの中でどの様に理解していくかということには、多少違和感を持つ部分もあります。
 まず、実態的に現在の介護保険利用者の方のニーズがどういうところにあるのかということだろうと思っています。私も認定審査会に出ていて、最近の傾向で感じるのは、支援2、介護1、2の軽・中度の方が大変多い。これはデータも出ていることであります。それから、家族の状況として老老介護が多いです。老人世帯で世話をしているのだけれども、自分も弱くなってきてということを考えてみると、居宅介護を支える家族の状況が非常に変わってきているということが、実は報告書の背景から必ずしも読み取れない。そういう意味では、あるべき姿像という机上のモデルということをどうしても感じてしまうわけです。それが、現在、特養の待機者が40数万人と言われる背景でもあるのではないかという感じもするわけです。
 介護保険は自立支援と言うわけでありますけれども、ひょっとすると今、私どもが考えなければいけないのは、できる方の自立支援ということは当然そうでありますけれども、それができなくなった方々への支援とか介護サービスの提供ということは、どういう意味を持っているか、目的があるのかというところだと思います。それは自立支援というよりは、生活全体を支えてあげて、そして最後に看とるまでのことを考えるということだと思います。全部の介護のケースを自立支援という考え方だけで整理するには、やはり現実から離れた感じを持たざるを得ないと思います。
 そういう意味では、レジュメの2ページに、介護保険施設の本来機能とは、リハビリテーションが充実した在宅復帰支援機能とお書きになっていらっしゃいます。これは言われてきたことではありますけれども、このことは老健施設はそういうことがあるかなと思いつつ、療養型の医療施設においても、また最近は特に特別養護老人ホームの大きな機能のひとつは、最期の看とりのところなのです。看とりが実はすごくしにくい状況があるということは承知かと思います。
 現実的に医療施設で、利用者の方が延命治療をされて施設に戻る。その方々のケアが非常に大変であったりするわけで、私どもが見ていて、この方御本人は何を望まれているのかなということを常に感じるわけであります。そういうふうに重度の認知症になったり、重介護になった人たちに対しても介護を考えていかなければいけない。
 1年間に亡くなる方の数は110万人を超えるわけであります。その方は85%ぐらいは65歳以上の高齢者の方です。実は、その方々はどこでどう亡くなれるか、全然ここから読み取れないわけであります。自立支援とか在宅復帰とか、前向きなことはよくわかるし、それが大事だということもわかるのですけれども、私どもは生活を包括的というか、全体的な人間の生活を考えて、最期のところをどう考えていこう。最期をどう看とってあげられるか、それを支えるにはどうしたらいいか、そこが必要だということです。
 それが一方で、老老介護とか認認介護とか認知症でひとり暮らし、その方々の最期の看とりまで在宅でしていくのか。100万人近い方を、そういうところまで踏み込んで考えられているか、それがあったかどうかをお聞きしたいということが1つでございます。
 実はもう一つ、私の立場から言うと気になりますのが虐待の問題であります。地域包括支援センターができて、虐待問題に対応する機関ができたわけであります。そこに社会福祉士が配置され、全体的にも虐待予防のことが大きなテーマになっておりますが、実はこの報告で余りそこに触れていらっしゃいません。虐待も、実は今、私が申し上げた家族の機能の低下といいましょうか、家族が介護に耐えられなくなって起こす虐待ということは、本当に辛く悲しいものです。子どもの虐待と高齢者の虐待は全然質が違うもので、そういうことの深刻さであります。介護保険ができても以後400人とか、ひょっとしたらもっと多い介護事件が起こっているのにつながっているわけであります。そういうことも論議になっていたか、お伺いしたいということでございます。
 もう一点、労基を守る、労働条件のこと、これはそのとおりであると思います。今、加算のことも含めて、いいケアをしている者には加算をして、そういうことをした費用は見ているという理屈もあるわけでありますが、実態的に介護報酬が介護保険等で求めている働きに対して人件費を含めて、適切な額なのかどうか。事業所が労基を守られる、守ることができる。多くはサービス残業等にかかってくると思うのですけれども、それができるだけの介護報酬なのかどうか。
 この報告を読むと、非常に厳しい感じで事業者に対しての要求が出ています。私は当然だと思います。でも、それには、やはり公的なサービスであれば、それを担保する保障、報酬がなければ、事業者は本当に首が締まっていってしまうし、結局しわ寄せは働く人に来るのだと思います。労基の要求は厳しく、それに対応できる介護報酬はないでは事業者は本当に立つ瀬がなくなってくるだろう。その辺りの御検討があったかどうかをお聞きしたいと思います。
○山崎部会長 最後の労働条件、介護報酬等につきましては藤井先生ですね。
○橋本委員 ええ。
○山崎部会長 では、藤井先生からお願いします。
○藤井参考人 おっしゃるとおり、労基の部分は報告書には資料があると思いますが、サービス残業のことの指摘が中心でございまして、まさに報酬が十分でないがために払えないという問題も含んでいる可能性はあると思います。
 ただ、一方で、守っているというところも2割以上あるという現実の中で、恐らく1つは地域別にどうかという問題はあろうかと思います。この中で、更になぜ守れていないのか。守ってもらうにはどうすればいいかというところまで踏み込んでの議論はなくて、そもそも守られていないという現状は、これは何としても守っていただかなければいけないという議論でとどまっております。
 以上です。
○山崎部会長 では、田中先生。
○田中参考人 報告書に書いていないことがこんなにあるではないかとのご指摘は、全部正しいです。つまり、問題点として私たちも理解するけれども、議論した末、消したわけではなくて、議論する時間がなかったので載っていない。2025年までには時間がありますから、次の研究会をつくっていただく。つまり、28回、更にそのための準備で使った時間からして、先生のおっしゃった権利擁護、みとり、あるいは介護の質については、私たちとしては問題があることはわかっているけれども、残念ながら触れる時間がなかった。したがって、先生の御指摘は全部正しいと思います。多くは触れておりません。
○山崎部会長 続きまして、桝田委員。
○桝田委員 報告書の32ページの地域包括ケアシステムの部分で、市町村または都道府県の地域の自主性の問題ですね。主体性に基づいて、独自の基準・報酬設定を行うという、かなり踏み込んだ御意見なのですけれども、この前段階として、今の保険者として市町村が行っている保険者機能というものがかなりの格差を生んできている。そこの格差についての議論はされていたのか。身近なところでいろいろな設定をするのが必要な部分と、財源問題が絡んでくると、市町村単位であるがゆえにサービス提供が結び付いていかないという実態が出てきている。
 ですから、そこのギャップ、サービス提供については細かにするほどいいのですけれども、財源問題が絡むと難しいという部分を議論されたのか。
 市町村単位の独自報酬設定というのは、今、少し問題になってきているのは、地域密着型のサービスで、基準解釈が市町村単位でかなり異なってきていて、事業所側では少し大変なことが起こってきている。Aという市で行っているサービスと、Bで行っているサービスと、それこそ職員の配置の仕方も、場合によったら基準違反だと言われて返還命令が出てくるケースが起こってきたり、市町村単位におりてくると事業所側もかなり大変なことが起こっているのですけれども、独自解釈が入ってくると、もっと混乱の原因が起こるのではないか。そこの議論をされたかどうかお聞きしたいのと。
 42ページで施設サービスについて触れられているのですけれども、施設の一元化の問題。最終的には住宅として位置付けをして、介護サービスも医療サービスも外付けという問題。現実の特別養護老人ホームの実態を見て、介護サービスを本当の意味で外付けにするのが可能かどうか。医療(治療)はもともと外付けになっていますけれども、特に重度者ばかりの施設に今、変わってきていて、それが例えば30分以内云々という問題から考えていくと、現実問題、不可能なことが起こってきている。要介護度の軽い方が住まわれる施設系・住宅系の場合には、外付けサービスでも利用者の方は生活が継続できるだろうと思いますけれども、要介護4・5の方が果たしてそれで安心して、そこのサービスを選べるのかどうか。特に家族がいない場合は不可能だと思って、外付けサービスが本当に可能なのか、その辺を再度確認したいのですけれども、お願いします。
○山崎部会長 田中先生。
○田中参考人 お答えします。橋本先生からも大変厳しい、ここは書いていないとのご指摘に対するお答えは、さきほどと全く同じで、書いてないことはあまり議論していないのです。つまり、もう1年いただいて、もう何百万円かいただければ議論いたしますとご理解いただきたい。つまり責任を持って議論したことしか書けないです。書いていないことは議論したのかと聞かれたら、議論していません。しないとはは、意識してしなかったのではなくて、する余裕がございませんでしたとの意味です。
 介護保険の自治体の格差については議論いたしました。三位一体改革と自治体の平成の大統合によって自治体機能が非常に弱まっている。一部の自治体では、昔に比べるときめ細かなサービスを住民に対してできなくなっている。これは大きな問題であることは、専門の委員から強く主張がありました。それから、介護保険ができ上がって以来、自治体がかつて行ってきたさまざまな居住者・高齢者に対するサービスが、介護保険だけにかまけてしまって薄くなっている。それも指摘がありました。それは、多分トーンとしては出ているはずです。
 それから、外付けについては、全部外付けにしろなどと言っているわけではなくて、外付けも利用できるようにしたいとの意味です。例えば、看護師の夜間の配置を、比較的小型の施設で全部一個一個持っているよりは、地域包括ケアである以上、地域の中に看護師が何人かいる、地域の中の、例えば病院にいてもいいし、老健にいてもいいのですが、地域の1万人の人口対比を見るべきと考えました。比較的数が少ないタイプの職種の場合、すべての一個一個の施設で中に置くと形はコストがかかるし、稼働率の問題もあるし、疲れてしまうかもしれない。それよりも、もう少し地域単位で人員配置を考える職種もあっていいとの意見です。
 介護の人たち、ヘルパー、あるいは介護福祉士のような方は、当然施設の内付けでなければ特養ではないと思いますので、それを外付けにしろとの意味ではありません。
○山崎部会長 よろしいでしょうか。それでは、こちらから。三上委員、お願いします。
○三上委員 済みません、幾つかお伺いしたいのですが、先ほど理念のところで自助・公助・共助の自助の部分の話が書かれておりました。事務局の方から産業構造審議会の報告書が提出されておりました。ここの中で、健康関連サービス事業者との連携で、保険外サービスの拡大という。市場原理的な発想での報告書だと思いますけれども、田中先生の御意見をいつも伺っていると、わかっているつもりなのですけれども、そういった部分に社会保障が交代しながら、何となく高齢者施策をやっていこうという方向に行かないのかどうかということをまず確認させていただきたいと思います。
 もう一つは、2025年の姿として、レジュメの2ページにあります在宅の考え方が、集合住宅として外付けで医療や介護を付けようという話が、桝田委員の話とも重なりますが、ありました。その中で、厚生労働省の国民の意見の意識調査の中で、両親あるいは御本人が介護が必要になったときにどうしたいかといいますと、多くの方が自宅で何らかの外部サービスが受けられたら自宅で介護を受けたいということであって、いわゆる集合住宅のような、高専賃とか有料老人ホームで受けたいと言われる方は、7%とか12%とか、非常に少ない数だった。
 特に先ほどありました独居の方あるいは老老世帯の方々は、これから1,000万人を超えようという形になっておりますし、そういった方々が自宅ということはほとんど難しいのではないかと思います。更に、認知症の方、高齢者の5%以上が日常生活でいくと3以上の、介護、見守りが常に必要な方が多いということになりますと、介護や医療が内在するような施設系のサービスというのも考える必要があるのではないか。そういったところも強化していくことが必要ではないかと思いますけれども、その辺のところをどう考えるかということをお伺いしたいと思います。
 それから、この報告書、全体的に介護を中心とした視点で書かれている気がいたしまして、医療が非常に少ない中で、訪問看護のことも藤井先生のところに少し書かれていました。その中で1つ気になったのが、課題1の一番最初の黒ポツの中で、訪問看護をより自律的に医療に関わるようになるということは、医師の指示のもとでなく、訪問看護の看護師さんに裁量権があるというか、医師との連携がなくても自由に行けるということを書かれているのかどうかということを確認させていただきたいと思います。
 それから、基礎的な医療ケアを介護職、特に介護福祉士ができるようにする。専門的な介護福祉士という言い方がありますが、この部分につきましては、現在、特養における介護職員の議論をしている最中ですけれども、医療の中の特定看護師やUTなどのように、業務独占の問題を議論して、なかなか微妙なところなのですが、我々としては業務独占部分を増やすという、新たな職種をつくっていくということは、現在やられているさまざまなファジーな部分でやっている部分は、逆に窮屈になって、例えば専門の介護福祉士でなければできない、一般の介護福祉士ではできないというところで、窮屈になるのではないかという危惧があるのですけれども、その辺のところについて少しお伺いしたいと思います。
 それから、地域包括支援センターのことについて1つ申し上げます。これを活性化させることは非常にいいことなのですが、地域の広範な資源の利用の中で、これは医療資源の利用については詳しく書かれていないということが1つ気になりますし、現在、医政局が進めております在宅医療推進支援事業、在宅医療推進支援センターをつくって、その中に地域包括支援センターを含む在宅医療ネットワークを包含していくということが、現在、モデル事業として進められていますが、この辺との関係についてはどうお考えかということをお伺いしたいと思います。
○山崎部会長 では、お願いします。
○田中参考人 おっしゃるとおり、自助はいろいろな人がいろいろな使い方をします。先ほど公助について、勝田委員から大変強い指摘がありました。自助も同じで、全く市場経済原理的な意味で使う方もいます。ここでは、お金を使いたい人が使うのをとめる気はありませんが、自助とは軽度の要介護であっても、自分の持っている力を使って生きる部分を大切にしましょうという金銭ではない理念論の方を強く意識しています。
 例えばすごく単純な比喩で申しわけないですが、男性がひとり暮らしになったときに、料理ができないがゆえに自立できないことがあってはならないと思います。団塊の世代が75歳になったとき、体は要介護1、2ぐらいで済んでいるならば、料理は自分でつくりましょうという意味の自助も含めています。決して市場経済原理だけの意味ではありません。
 それから、施設志向、ケアが欲しいとの要望は当然です。これも理念レベルで答えると、この報告書全体のトーンは、ケア付きコミュニティをつくろうと言っています。ケア付きの施設をつくろうと言っているのではなくて、1万人の地域がどこにいてもケアが使えるケア付きコミュニティというコンセプトができれば、何も今の意味での施設に入らなくてもいい。
 橋本先生が言われたみとりのところについては、当然諸外国の例を見ても、最期の一月二月をいわゆる高機能のところに入る例はありますけれども、普通のもっと長い虚弱状態、つまりみとり、後ろから数えて3年前、4年前から、強い制限を伴う高機能の施設に入る必要がない。地域で暮らしていける。それが、ケア付きコミュニティの意味であって、施設ではないところではケアが足りない状態をなくしたいとの主張です。
 医療については、これも先ほども同じで、認知症関連を除き余り議論していません。ただし、後見人の医療同意のような話は出ました。認知症の方で家族もおられない場合に、医療行為が必要になったときに後見人がきちんと同意できる仕組みは必要ではないかと議論はいたしましたし、去年書いたと思います。
○山崎部会長 よろしいでしょうか。それでは、吉田委員、お願いします。
○吉田委員 田中先生には、エイジング・イン・プレイスについて御質問したいと思います。
 要介護者への総合的な生活保障という点では、私どもは今、介護サービスの提供と住まいの機能を充実すべきだと考えております。その方法としては、先ほど土居先生の質問に対する田中先生のお答えで、大体のイメージを持つことができたのですが、地域レベルにおいて分離した介護保障と住宅政策をどのように再統合といいますか、連携をとっていくのか。中央政府による指導なのか。
 言いかえますと、こちらの報告書の18ページにNORC、自然発生的なコミュニティのことを事例として示しているのですが、介護保険制度の中でケア付きコミュニティというものを誘導していく。例えば介護報酬とかで誘導していく方法について具体的な御提言がありましたら、是非お聞きしたいと思います。
 もう一点、藤井先生の御担当分野の方で、労働法規遵守については、河原委員の方からの提言書の中に、労働関係法規に抵触するような悪らつな介護事業者に対しては、指定を取り消すなどの指導を強化すべきだとされているように、私どもも事業者に対する労働法規遵守についてはいま以上に徹底すべきだと考えております。今日の藤井先生のレジュメの下に、賃金とか勤務時間、人材育成についても情報公開の事項の中に含めていくべきだと御提言されていまして、この点についてももっともだと思っています。
 ただ、初めに、事業者の希望に応じてという条件が付けられております。例えば介護市場がいま以上に成熟した労働市場になって、需要の方が多いというすっきりした労働市場になった場合は、より優秀な人材を確保するという点で、事業者の希望に応じて、そのような事項を公表の中に含めることは重要であると思いますが、現在、求められていることは、今の介護職員の労働環境を整理するということが今一番必要であると考えています。
 その点では、事業者の希望に応じてという条件付きではなくて、一律に公表すべき情報の中に、このような雇用管理データについても含めていくべきだと感じております。その点で、藤井先生の方には、なぜこの事業者の希望に応じてという条件が入ったのか、研究会での議論について、是非お聞かせ願えればと思います。
 以上です。
○山崎部会長 ありがとうございます。では、田中さん。
○田中参考人 それぞれ皆さん、いい質問をありがとうございます。
 ケアと住宅を最初分離と書いていたのですが、ケアと住宅の分離と組み合わせが正しい答えだと思います。つまり、ケアと住宅が必ずセットになっているものがあり、全く別のものが一方にあるという二極化はおかしいのであって、その間の連続的な姿として、先ほどの外付け、内付け論もそうですが、サービスの8割が内付けになっている集合的な住宅もあれば、1割が外もある。つまり、いろいろな組み合わせがあっていいと言いたいのです。
 必ず分離しろとの強い主張をしているわけではない。分離して、その上で組み合わせて、ケアがかなり内付けになっているところがあってもいいし、かなり外付けになっているところもいい。その組み合わせは、まさに地域ごとに決めるべきです。一つの市の中でも、新住民が多いところと戦前から住んでいる家族が多いところでは違う実情にかかわる勉強も、私たちはさせていただきました。地域ごとに、ここで言っている日常生活圏域ごとに組み合わせのあり方は変わっていいはずです。それはどのようなインセンティブがあるか、それはこれから検討です。まだ私たちの段階ではできておりません。
○藤井参考人 御質問いただきました点は2点、論点があると思います。
 1つは、法規上、法制度上、それが果たして強制し得ることであろうかどうかという問題、倫理的な問題はさておいてですね。介護報酬あるいは基準上で労働法規を守っていないところを取り消す云々のことに関しては、やはり慎重な議論が必要だろうということと。情報公表の際に、それを掲載する、しないは、別途以前に検討会をやりましたときに参加したのですが、これは法的になかなかクリアーできない問題だという法制度上の問題が1点。
 それから、先ほど橋本委員から御指摘ございましたが、各事業所ごとに事情がございまして、単にルールを守っていないということを罰する形になって、事業者いじめになるというのもおかしな話でございまして、どうして守れていないのか、守っていただくにはどうするか。どうしていい処遇ができているのか、いい処遇をしていただくにはどうするかというところも、きちんとやらないといけないと思っております。
 ただ、現にここに事業者の希望に応じて載せるというところは、自信があるところが載ることになります。そうしますと、載せているところは、良質な働きやすい職場かもしれないというシグナルを従事者に送ることになるかもしれないなと思っております。
 以上です。
○山崎部会長 お待たせしました。川合委員、お願いいたします。
○川合委員 ありがとうございます。
 実は、この報告書、本当に感嘆しております。自由裁量権をもっと下におろすべきだという考え方と、全体像をまずつくろうよという考え方。これは、田中先生と介護給付費分科会でいろいろ御議論させていただいたように、制度がおかしいでしょうというところで、まず全体像から考えていきましょうという提案に敬意を表します。いろいろな委員の方々が今おっしゃいましたように問題点はいろいろあると思います。
 そこで問題提起として自由裁量権を認めるべきではないかということには大賛成です。憲法第25条と関連して、私も前回も申しましたけれども、哲学的な観点で自助・互助・公助を言われたということに、私は本当に敬服いたします。本当にありがとうございます。そのことをまず基本において、3点、確認したいことがございます。
 まず第1点は、1ページの四角の一番下に、急性期病院医療を除くということと、4ページの引用の4つ目の矢印で、地域での一次医療を担う「地域当直医」の整備と普及という2つは、きちっと我々医療サイドから読めば簡単に理解できることなのですが日医が雑誌で6月号に在宅医療という特集を出されました。私は、今回在宅介護も主目的の1つということを目指されるのであれば、医療と介護は不可分だから、視野の片隅にはきちっと医療のことを入れていただきたい。それを前提にしていただかないと、介護、介護と言われても、老人は医療が不必要なのですかという考え方になりますので、それが1つ。
 2つ目の問題として、実は問題意識の2.2に現状:不足するサービスの例ということ、これは単に順番からこう出されたと思いますが、訪問看護が充実してこそ、私は医療との連携、看護との連携、介護との連携が可能になると考えています。在宅を目指すのであるならば、日本で圧倒的に少ないのは訪問看護職であります。介護職も少ないですけれども、まず充実すべきは訪問看護職。訪問看護職をきちっと整備するということを第一義的に置かないことには、決して介護を軽視しているわけでもなく、医療を軽視しているわけでもないですけれども、やはり圧倒的に欧米と違う点はそこだという点が2つ目のポイント。
 もう一つ、これは確認でありますが、3ページの提言の4.3、非常にすばらしい文章だと思うのですが、1点確認したい。24時間365日短時間巡回型と小規模多機能居宅介護複合型事業所というのは、どこにポツが入るのでありましょうか。私、小規模多機能居宅介護複合型事業所と1行で読んでしまうと、こんなことはあり得ない、不可能だと思いますけれども、どこかポツが入るのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
 いずれにしましても、藤井先生の報告書も含めまして、私、自由裁量権というものをもっと現場に与えるべきだと、私どもがかねがね主張したことに賛同いただけたことを感謝いたします。
○山崎部会長 質問に関する部分について、回答をお願いします。
○田中参考人 最後の点は、小規模多機能で切ってください。巡回介護と小規模多機能、そしてそれらを一体的に経営する事業者が複合的な経営を行うとの意味です。
○山崎部会長 川合委員、よろしいですね。
○川合委員 結構です。
○山崎部会長 北村委員、お願いします。
○北村委員 ありがとうございます。
 今の話にもありました24時間365日体制の地域ケアシステム、特に地域巡回型訪問介護サービスにつきましてですが、既に今年度の健康増進等事業でも検討されるということでございますけれども、今の報酬体系でいきますと、昼間とか夜間・早朝は30分程度。介護保険制度施行の以前も巡回型というのはその程度で行っておりました。深夜部分は大体20分ぐらい。そうすると、1日マックス58回程度の介護が可能となる形になりまして、1日に5~6回のサービス提供とすると利用者が10名とか15名という中で、当然、施設系・居住系もそうですけれども、夜勤帯の勤務者、夜間の勤務者の確保がなかなか難しいということもあります。それと施設系とかグループホームもそうですけれども、1対9で可能でありますけれども、訪問介護巡回型でやった場合には、なかなかそれが難しいというところがあることをご理解いただきたい。
 コストのところは、私が単純に試算しても、今の支給限度額とか包括点数化しても高くなっていって、超えてしまうような気がします。それを包括的にすると、もっと超えていくのかなという気がしておりまして、このサービス全体、在宅で安心・安全のためにシームレスなサービスが必要だと思っておりますので、そこの検討を是非いただきたいと考える次第です。
 研究会の中で、そういったコストパフォーマンスも少しお話があったのか。具体的に件数・回数等の話があったのかどうかということをお聞きしたいと思います。
 もう一点が、35ページにございます役割分担で、介護職などの介護職員が身体介護、それから下の部分で日常生活の支援。ここは民間事業者、NPOというところで家事援助と分けられておりまして、それを少し前の方に戻りますと、25年のあるべき姿の中で、30ページの中断、軽度者については生活行為向上に資するというものがありまして、地域のニーズに応じて市町村が柔軟に提供している。そのまま読み取りますと、委託事業とかで若干別の方法をとられていると読み取れるのですけれども、そこは分けるということと理解してよろしいのでしょうか。
 それと、今の資格制度でいきますと、介護福祉士以外といいますと、2級ヘルパー、基礎研修もありますけれども、その部分をどういうふうにイメージされたかということを少しお尋ねしたいと思います。
○山崎部会長 田中さん。
○田中参考人 さきほどから同じ答えですが、書いていないことはあまり検討していません。次の報酬改定に向かって検討すべきことは、ぜひ分科会の方でおっしゃってください。
○藤井参考人 35ページの表の介護福祉士以外というのは、おっしゃるとおり2級基礎研修ですが、その辺りをどうしていくかということもあわせて、ここに書いておりますので、介護福祉士、今でいうと2級基礎研修、あるいは資格を持たない人という意味であります。
 それから、30ページの家事援助を含む生活支援サービスは、地域ニーズに応じて市町村が柔軟に提供しているというので、これはかなり議論になった部分でありますが、やはり軽度の方の生活支援というものが介護保険に入っているというのは、制度をわかりにくくしている。しかも、そこに教育が必要な専門性の高い方が入られるということは、果たして効率的なサービスなのだろうかという観点で、このような表現になっております。
 逆に、身体介護と一体的に行う家事援助といったものは、介護福祉士のところに、あるいは介護福祉士以外の介護職に残っているという形の整理になっているのは、この表を見ていただければそのとおりです。
○勝田委員 ちょっと確認なのですけれども。
○山崎部会長 一言で済みますか。
○勝田委員 はい。先ほど、今後の介護保険部会と今日の包括の研究会の報告書との関係を伺ったときに、座長さんはこれは参考なのですよとおっしゃいました。ただ、既に今ほどもおっしゃいましたけれども、24時間365日の検討会が立ち上がってなさっていますよね。それから、地域包括の方たちを集めた検討会も、どうやって養成していくかということも既に始まっております。これは事務方に聞くことかもしれませんが、この後の進め方として、関連性としてはどうなのか。
 もう一つ、これは事務方にお願いすることなのですけれども、そういう検討会のメンバーはほとんど学者の方ばかりです。例えば24時間365日の場合に、委員の方に、担うヘルパーさんだとかが入っていませんし、利用者も全く入っていない。新政権もそういうことを今後とても大切にするとたしかおっしゃっていたと思いますが、そういうことについてはどういうふうに考えていけばいいのでしょうか。
○山崎部会長 これは事務局の方からお願いします。飛び入りの質問でございます。あとお待ちいただいている方もたくさんいらっしゃるのですが。
○勝田委員 ごめんなさい。
○大澤総務課長 地域ケア研究会報告書と介護保険部会の関係については、部会長がおっしゃっていただいたとおりだと事務局も承知しております。
 一方、いろいろな具体的な施策の検討を別途やっておりますけれども、そういう検討を行うに際しましては、私どももこの研究会の報告書を参考にしながらやらせていただいておりますが、いずれにしても、介護保険法の改正、その他の事項については、当介護保険部会で御議論いただくべき性格のものだと思いますので、いずれこの部会において御議論いただければと思います。
○山崎部会長 お待たせしました。では、木間委員、お願いします。
○木間委員 先ほど齊藤委員から、報告書40ページの支給限度額の上限を超えてサービスを利用している事例について、実態把握を行うべきではないかという御発言がございましたが、そのとおりと思います。ただ、それだけで支給限度額の問題は把握できないと思います。支給限度額について意見を申し上げた上で、田中先生に質問いたします。
 支給限度額については、限度額に対する平均利用割合や限度額を超えている人の割合といったことが議論されがちですが、世帯や個人といったミクロレベルで、つまり各家計は介護費用をどのぐらい負担しているかを明らかにすることによって、適切なサービスの利用を推進していけるのではないでしょうか。
 岩田正美先生たちは、家計単位で介護にかけている費用や介護費用が家計に与える影響などの調査研究をしておられます。調査対象は高齢者夫婦世帯であり、家計簿方式による家計調査と意識調査を行っています。
 意識調査では、「保険料を支払っているにもかかわらず、なぜ保険によるサービス利用を拒否あるいは我慢しているのか」尋ねています。利用していない理由の第1は、経済的負担が大きいことです。次いで、本人が嫌がる、他人を家に入れたくないとなっています。
家計調査を見ますと、介護費用は所得の高低に関わらず、要介護度が高まるほど拡大しています。このため、低所得層では他の消費支出の縮小を余儀なくされています。他方、高所得層は介護保険以外のサービスも利用して、月10万円を超えている世帯もあります。つまり、平均利用割合や限度額を超えている人の割合といった数値だけで支出限度額の問題を判断することは、適切なサービスの利用の実現を困難なものにするおそれがあると思います。
 支出限度額に関しては、消費者相談から見えてくることがあります。特に有料老人ホームの選択について相談をしてくる消費者は、これから先、何年生きるかわかりませんから、在宅生活を続ける場合、限度額を超えた全額自己負担分が幾らになるかわからない。そのことに不安を抱き、生涯かかる費用が明らかな有料老人ホームやグループホームや施設などへの入居を希望していることがうかがえます。
 ここから田中先生への質問になります。在宅の場合にも包括報酬が採用され、介護費用が幾らかかるかがわかれば利用者の安心につながると思います。しかし、現在、事業所数が少ない事業者が非常に多いと思います。そういう事業所は複合型事業所にはなりにくい、なり得ないかもしれません。特に地域で訪問介護などを行っている小さな事業所やNPOの事業者は、どのようになるとお考えなのでしょうか。
○田中参考人 区分支給限度額についてさまざまな学問的ベースを持った検討をすべきであるとのご指摘は、おっしゃるとおりです。
 区分支給限度額については1つ強く主張していて、訪問看護とリハビリについては別枠で考えないと普及しない点です。これは意見が一致したので強く書いてあります。
 区分支給限度額をずっと超えてしまう例については、補助が絶対に必要です。ただし、1年間ほとんどは超えないけれども、ある月だけたまたま超えるような事例については、包括報酬で対応できます。そのときに事業者が小さい場合には、それはコンソーシアムを組んでいただければいいのであって、中の分配は介護保険の先の話なので、別に1つの事業者がたくさん持っていないと、この対象にならないことはなくて、連合を組んでいただければできるのではないでしょうか。そのような理解を広めたいと思います。
○山崎部会長 ありがとうございました。
 葛原委員、お願いいたします。
○葛原委員 今日から参加させていただきました。今日、非常にいろいろと私自身も知らないことが多かったと思い、今日の御意見を聞いていました。私は、勤務医としてずっと大学病院とか老人病院、国立病院というところで働いていました。
 最初、田中先生から紹介されました仕組みは非常によくできていると感じました。私は、この10年間、医療崩壊という現場の中でおりましたので、介護保険だけは医療崩壊の二の舞を演じないようにしていただきたいと切に思っております。医療崩壊、現場から見ると何が問題だったかというと、1つは、病院が持っている人的あるいは物的あるいは経済的な資源に対して、患者さんのニーズが大き過ぎて、結局それは全部個人の負担にかかってきたので、みんな逃げ出してしまったというのが一つの理由だったと思いますし、もう一つは、人とかたくさん機械を備えなければいけないような公立病院の報酬が非常に安くて、余りそういうものが必要でない施設の方が医療報酬が高いという仕組みのために、ニーズに見合う、あるいは実際やっていることに見合う経済的な裏付けが全くなかったということが、恐らく一番の理由だと思います。
 そういう点から言いますと、この報告書でかなり強調されていることは、自助・公助も含めて、働いている人たちにどれだけのことができるかということを考えていらっしゃると思いますし、また報酬に関しても、無制限に広がるところに関してはある程度歯どめがかかっているのではないかと思いましたので、是非そのスタンスは貫いていただきたいと思います。
 特に、公的な補助がどのぐらいかという割合でいいますと、私は前に都立の老人病院にかなり長く勤めておったのですが、あの当時は老人医療が無料化のときでして、ただほど高いものはないというものを実感いたしました。利用する側も施設側も、効率的な運用を考えるときには、何にどれだけかかっていて、自分が何をそこで負担しているかということをよく考えながら使う仕組みを是非とっていただきたいと思いますし、だれかがおっしゃいましたが、介護保険を上げなければ地方税が上がるとか税金が上がる、そこに降りかかって、ただではないということを非常に強調していただきたいというというのが私の第1点です。
 2つ目として、今回は介護保険のことが問題になっていますし、最近、私自身、患者さんを診ていて、介護保険の中から生活支援部分がどんどん減っているような気がします。実際の場合は、児童福祉法であっても、自立支援法であっても、介護保険であっても、障害はみんな同じで、病気の種類が違うとか年齢が違うだけということなので、これは厚労省の担当かもしれませんが、こういう介護とか生活援助ということは、できる限り法律を一体化して運営していただくような形にしていただきたいという、これが私の希望です。
 というのは、ある年を超えたら途端に制度が変わるということをまま見ておりますし、今日は若年性認知症の話が出ていましたが、あれはたまたま認知症という高齢者の病気だから、若年でも介護保険の対象になるのですが、実際は同じような障害を持っていても、指定されていないと年が若いと全く介護保険の対象にならない。非常に困っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃると思います。
 あと、ちょっと質問なのですが、ある程度費用の変化があることになりますと、これは田中先生に質問なのですけれども、介護保険でどれだけのことを最低限保障して、やや自由診療的というか、混合診療的な面も入ってくると思うのですが、個人の保険とか限度額を超えたもので自己負担というのはどこら辺に線を引いていらっしゃるかということについて、ある程度のラインがあればお聞きしたいと思います。
 あと、藤井先生への質問なのですが、いい施設にはそれなりの報酬が高くなるようなことをしていきたい。また、そのことによって、そこの人たちの人件費なども保障できるとおっしゃっていたのですが、そういう質のいいところにお金を呼び込むには、具体的にはどういう仕組みで担保できるとお考えなのかについてお聞きしたいと思います。
 最後に、さっきからある程度人件費を確保するために、業務独占とか名称独占の話が出ておりましたけれども、私はこの独占ということを余り強調するのは制度の運用をゆがめる可能性があります。例えば、現在たんの吸引がヘルパーさんに認められているのは、筋萎縮性側索硬化症の患者さんだけのために、同じ症状があっても脳卒中や寝たきりの人とかほかの病気の人には全くできないので、家族の負担がすごく重くなっていることがあるわけです。ですから、むしろ研修などをしっかりすることによって、医療とか介護の施設の人はできる限りいろいろなことができるような形の仕組みをとられた方がいいのではないかと思っています。
 以上です。
○山崎部会長 質問の部分だけお願いします。
○田中参考人 研究会というよりも、私の個人的な見解になります。大変重要な質問です。
 医療については、時の医学が定める世界標準の最適な治療を提供する。これでないと医療保険を人々は信用できません。実験段階の医療やアメニティーを除いて、あとは差額を上乗せしろとの混合診療論は医療保険制度としては絶対入れてはならないと私は強く主張しております。
 一方、介護保険は、最適というコンセプトが、理論的・経済学的にも成り立ちませんので、人々が人権を守るに足るミニマムな給付をする役割を与えられています。ミニマム以上、あとはどのくらい保険給付するかは、どのくらい保険料を払うかとの線引きを社会が決めるしかないと思います。今日のレジュメの3ページ、3.3で多様なサービスを並べておきました。このうちどこまでを介護保険給付すべきか、ミニマムラインをどこに引くか。ミニマムよりもう少し上に引くかどうかは、社会が保険料をどこまで負担するか、税金をどこまで負担するかの合意によってしか結論をつくれない。医療に比べると介護の方が幅はどこにでも引ける。ミニマムの合意はできると思いますが、ミニマムを超えた部分をどこまで給付したらいいかとは、理論的には出てこないと考えます。
○山崎部会長 時間が余りなくなってきましたが、小林委員、お願いします。
○小林委員 報告書の件ではございませんが、介護保険制度を考える上では、利用者の視点は勿論重要でありますが、制度を支えている被保険者、保険料負担者全体としての考え方が尊重されるべきであると考えております。
 先ほどの資料「介護保険制度に関する国民の皆さんからの意見募集」について御説明いただきましたが、5ページの費用負担について、36%の方が現在の介護保険サービス水準を維持するために必要な保険料引き上げであればやむを得ないとありました。先ほど齊藤委員からもお話がありましたが、この回答者の概要を見ますと、サービスの利用者とその御家族、それから介護事業の関係者が大半を占めているということであります。また、これは保険料引き上げを誘導しているのではないかと、先ほどどなたかご意見がございました。
ここには余り出ておりませんが、介護保険制度を支える立場として保険料を負担しているが、サービスは利用していない人たちの意見についても、よく見ておく必要があるのではないかと思っております。これから議論を積み重ねていく上で、サービスを利用する人も保険料を負担する人も含めて、バランス感覚を持って制度全体を考えていく必要があると考えますので、一言意見を申し上げます。
 以上です。
○山崎部会長 これは先ほど齊藤委員からもお話があったのですが、インターネットによる調査は非常に手っ取り早いのですが、回答者に偏りが生じやすい。その辺のことはどうお考えでしょうか。
○大澤総務課長 先ほども齊藤先生から御指摘があったと思いますが、私ども、とりあえずインターネットで調査をさせていただきましたのは、速報性というか、なるべく早く感じをつかみたいということもあって調査させていただきましたが、その後、大臣と語る会という意見交換会という形では、利用者御本人あるいは御家族の方から生の声をお聞きしたいということで、ああいう手法をとらせていただきました。
 今、両委員から御指摘ありましたように、より広くサービスを利用していない方も含めた形での世論調査的なものについても、本日の御意見も踏まえまして、どういうやりようがあるかについては十分検討させていただきたいと思います。
○山崎部会長 よろしくお願いします。
 遅くなりました。井部委員、お願いします。
○井部委員 先ほど川合委員からコメントいただきましたので、ここで黙っていては女がすたると思いまして発言いたします。
 私は、この報告書でああ、そうなのかと思いましたのは、「地域包括ケアシステム」の定義を最初にしていただいたことです。おおむね30分以内の日常生活圏域内において、医療・介護のみならずということで、福祉・生活支援サービスなどが一体的かつ適切に相談・利用できる提供体制ということで、この中では介護と福祉、生活支援サービスがメインで描かれている印象があるわけです。
 先ほど指摘がありましたけれども、医療についてはほとんど言及されていない。地域包括ケアシステムの中に医療の部分が、当然のことながら介護保険部会なので限界はありますが、現在、病院の中では退院調整とか退院支援ということで看護職が役割を担っています。退院支援や退院調整をして受け皿となるところが、介護施設や在宅サービスになるのではないかと思います。
 そういう意味では、訪問看護師が担う部分が非常に大きいと思います。私は訪問看護ステーションは名前を変えて、地域健康ステーションといったような、地域の医療と介護を結ぶ拠点になるべきではないかと思っています。この報告書は随所に看護のことも書いていただいてはいるのですけれども、少し残念だと思いましたのは、35ページの地域包括ケアを支える各人材の役割分担のイメージ表です。
 上に医療・リハビリと介護職員がありまして、現在、法律では診療補助と療養上の世話というのが看護師の業務となっているわけですけれども、2025年を見ますと、症状観察、それから夜間を含む急変時の対応、看取りという書き方になっています。一方、介護福祉士を見ますと、アンダーラインで幾つか書いてあるわけですが、例えば上から3つ目の認知症を有する高齢者等の生活障害に対する支援、その下の基礎的な医療ケアは勿論のこと、日常生活の生活機能の維持・向上、認知症のケアといったことは、看護職がになっている非常に重要な機能であると思うのですが、それが下に移動されて、看護職員の役割が非常に矮小化されていると思います。これは大変残念な社会の認識であると私は思っています。
 2025年は看護の役割を余り期待していないと、とらえられて、このようなイメージ図になっているのか、そこを率直な御意見をお聞かせいただきたいと思います。
○藤井参考人 決してそういうことではございません。先ほど議論がありましたけれども、33ページには、自律的に医療・訪問看護を担っていただいているという表現もございます。ただ、この表になっていますのは、やはり介護の人材ということが中心でございまして、看護も社会福祉士もケアマネジャーもと、いろいろ出てきたのでございますけれども、介護というものをどう見ていくかという議論が中心になりまして、看護のところは十分議論していないということでございます。先ほど田中委員がおっしゃったとおり、議論できていないだけでございまして、そういう念を抱かせたとすれば大変申しわけございません。
○齊藤(正)委員 済みません、いいですか、しゃべらせてください。
○山崎部会長 では、齊藤委員。
○齊藤(正)委員 終わってしまいそうだったので、済みません。質問というか、ちょっと不安に思ったのは、この部会でどこまでのことを議論するのか、果たしてこのままのペースで終わるのかというのをまず1点思いました。
 それから、地域包括ケア研究会は二度ほどプレゼンテーターで出させていただいたので、内容に関しては理解しているつもりですし、私のところでやっていることも、前回には入れていただいているので納得しているのですが、複合型のニーズは地域によって大分違うと思います。どういう複合型が必要かということ。それに関しては、柔軟性を持って運営できるようにしなければいけませんが、先ほど出てきた地域格差の問題もありますから、地域ごとにどういう職種がどれぐらい必要かということは、やはりある程度データ出していかなければいけないのではないかと思います。
 また、サービス提供機関が、私どもでも体制を整えているのですが、前回もお話ししたように、医療型の小規模多機能のようなことをやっているのですけれども、行き着くところ、一人ひとりのケアの内容というか、質が高くないと、幾ら体制を整えても求められているサービスが提供できないという課題はあるので、教育なり、研修なり、プロジェクトなりというのは、並行してどんどん進めていくべきではないかというのが思っていることです。
 実は、先週ドイツに行ってきました。ドイツのバイエルン州のMDKのハンス・ゲルバーさん、皆さん御承知だと思いますが、要介護認定に関わっている方とディスカッションする機会があったのでお話ししたのですが、ドイツでも認知症のことが一番大きな課題で、やっと2008年に認知症の方に対する手当みたいなものは出せるようになったけれども、評価が非常に難しい。認知症に対する基本的な評価をどうするかということを最重要に考えているのだという話が非常に印象的でした。要介護認定についても見直しを考えていかなければいけないということを言っていらっしゃって、本日、とても時間がないのでお話できませんが、ゲルバーさんから資料をいただいたので、どこかでプレゼンテーションする時間をいただければと思います。
 最後になりますが、重度の人に対しては、医療型の小規模多機能というのはどうしても必要になってくると思うので、そういうものも今後考えていかなければいけないと思いますし、介護度の重い方というのは認知症の方も入りますから、日中なり夜なり、そういう時間帯に家族の負担軽減も十分考えたサービスの構築というものが必要だろう。ボランティアや相談窓口を多く持つことも大事ですが、それだけでは御家族の負担軽減にはつながらない。実質的な軽減の策が必要だろうと思います。
○山崎部会長 御意見として。
○斎藤(正)委員 意見です。
○山崎部会長 どうしてもという方、いらっしゃいますか。岩村委員、簡単にコメントをお願いいたします。
○岩村委員 それでは、時間が過ぎているので、ごく簡単に一言二言だけ。
 介護保険というのは、今日の議論の中にもありましたけれども、もともとすべての介護の需要というか、ニーズというものをカバーするということではできていないので、したがって介護保険でカバーできるものとカバーできないものが制度当初から想定されている。それに見合う保険料と公費の投入という形で制度設計が組まれているということが出発点かと思います。勿論、それを改めるべきだという形での議論はあると思いますけれども、制度そのものとして、そういう形になっているということは、出発点として押さえておく必要があるだろうということが1点。
 それから、社会保険というスタイルをとっていますが、他方で介護予防事業とか、そういったものがいろいろ入り込んでいて、リスクと対応していないものが入っていることはたしかです。ただ、日本の社会保険というのは、もともとそういう特色を結構持っています。ほかの社会保険でもそういうものが昔からあるわけですし、恐らく日本の社会保険の一番の大きな特徴というのは、公費が非常にたくさん入っているということでありまして、そのこととリスクというものに厳密に対応しないようないろいろな事業というものが社会保険の中で行われているということが、ある程度結び付いているのだろうと思っています。
 もう一つは、これは田中先生も今日おっしゃっていましたし、それからほかの方もおっしゃっていましたけれども、保険という仕組みで給付を行うことを維持していくということであれば、利用者の方の主観的な御希望なり、感じておられる必要性に対応した形での給付というものは行えないのであって、客観的に把握できる必要性で給付をしないと、介護保険というのは成り立っていかないと思います。
 それから、業務独占、名称独占の議論もありましたが、憲法22条1項が保障する職業選択の自由との関係で何のための業務独占、名称独占かというところから出発すべきで、処遇の改善というために業務独占、名称独占というのは議論の筋が違います。
 さらに、労働法規の遵守とは、うちの会社はもうかっていないから、悪いけれども、サービス残業してくれというのは、許さないというものです。介護報酬の水準が十分でないからサービス残業してね、それを防ぐために介護報酬を上げてねというのは、おかしな議論です。
 最後ですが、公費負担については前回、私も申し上げたのですが、法律家がわかりにくい形で申し上げたので、きょう、土居先生と葛原先生に非常に明快に説明していただいて、大変ありがたかったと思います。
 事務方にお願いですけれども、今日いろいろ出てきた議論に関係する資料、たとえば、区分支給限度額基準の使い道が実際どうなっているかとか、地域の予防事業の実情とか、その有効性とか問題点ということについて、もし資料を持っておられるようでしたら、多分今後の議論に役立つと思いますので、まとめて御提出いただければと思います。
 以上、ありがとうございました。
○山崎部会長 ありがとうございました。普通は御意見がないようですから、ここで終えますと言うのですが、まだ御意見がありますか。
○結城委員 要望だけ。
○山崎部会長 では、一言で。
○結城委員 公費負担の割合で事務局にお願いがありまして、今、50%公費が入っていると思いますけれども、交付金と第4期介護保険料の是正の、元舛添大臣の緊急経済対策の介護保険の金が予算化されていると思いますけれども、それを混ぜると50%を超えるような気がするのですけれども、それはどのぐらいの額だというのはお示しできるのでしょうか。
○大澤総務課長 いずれ整理したいと思います。
○山崎部会長 まだまだ御意見ございますでしょうが、時間が少々オーバーしておりますから、ここで終わりたいと思います。
 冒頭申し上げましたように、これまでの議論を踏まえまして、事務局と相談して、次回は今後の検討事項等について議論したいと思います。その場合には、特に介護給付費分科会等との仕分け、分担についても事務局と相談してお出ししたいと思っております。
 このほか、事務局で何かございますでしょうか。
○大澤総務課長 本日はどうもありがとうございました。
 次回は、7月26日月曜日午後4時から、今日と同じこの会場で開催する予定にしております。
 なお、次回以降、各委員におかれましては、もし文書で御意見を提出されたいという御意向がおありの方々は、事前に事務局まで登録をしていただければと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○山崎部会長 ありがとうございました。それでは、本日はこれで終了したいと思います。どうもお疲れさまでした。


照会先
厚生労働省老健局総務課総務係
加藤(内線3913)
(代表)03-5253-1111


(了)

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