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2013年2月4日 第36回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会議事録

健康局臓器移植対策室

○日時

平成25年2月4日(月) 16:00~18:00


○場所

中央合同庁舎5号館 専用第21会議室(17階)


○議題

1 関係団体からのヒアリング
 (1)公益財団法人 骨髄移植推進財団
 (2)日本さい帯血バンクネットワーク
 (3)日本赤十字社
 (4)一般社団法人 日本造血細胞移植学会
2 その他

○議事

○西脇室長補佐 それでは、定刻を過ぎておりますので、ただいまより第36回「厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会」を開催いたします。
 本日は、お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日は、浅野委員、今村委員、西川委員、野村委員、吉村委員から御欠席との御連絡をいただいております。
 また、本日は参考人として、公益財団法人骨髄移植推進財団理事長の齋藤英彦様、日本さい帯血バンクネットワーク会長の加藤俊一様、日本赤十字社血液事業本部血液事業経営会議委員の田所憲治様に御参加いただいております。
 ここで、健康局長の矢島から御挨拶を申し上げます。
○矢島健康局長 健康局長の矢島でございます。
 委員の先生方には、大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 また、日ごろから、厚生労働行政のいろいろな面で、御支援、御協力をいただいております。この場をおかりいたしまして、厚く御礼を申し上げさせていただきます。
 前回は、骨髄バンク・さい帯血バンクの設立からかかわってこられました方々の熱い思いですとか、患者さんの切実な願いを伺うことができました。その思いを受け止め、我々も一層努力をさせていただきたいと考えております。
 本日は、実際、造血幹細胞移植の実務に携われておられます関係者の方々をお招きいたしまして、率直な意見を伺いたいと考えております。
 本日も限られた時間ではございますが、積極的な御議論をいただければ、大変ありがたいと考えております。
 今後とも造血幹細胞移植を必要とする患者さんに対しまして、適切な造血幹細胞移植が行われますよう、我々はこれからも努力してまいりますので、よろしくお願いいたします。
 本日はよろしくお願いします。
○西脇室長補佐 それでは、資料の確認をさせていただきます。
 お手元の議事次第の「配布資料」に沿って御説明いたします。
 資料1「第34・第35回造血幹細胞移植委員会での主な御意見(概要)」。
 資料2「ヒアリング資料(公益財団法人 骨髄移植推進財団提出資料)」。
 資料3「ヒアリング資料(日本さい帯血バンクネットワーク提出資料)」。
 資料4「ヒアリング資料(日本赤十字社提出資料)」。
 資料5「ヒアリング資料(一般社団法人 日本造血細胞移植学会提出資料)」。
 資料1につきましては、前回もお入れしていますが、議事録とは別にこれまでの御意見を事務局責任にてまとめたものです。お気づきの点がありましたら、御連絡ください。
 お揃いでしょうか。不備等がございましたら、事務局までお伝えください。
 なお、本日、追加資料といたしまして、前回参考人として御参加いただきました長谷川誠様から、御意見をお手紙としていただきましたので、配付いたしております。時間の制限等もあり、十分に思いを伝えられなかったため、御意見をまとめておられます。お読みいただきたいと思います。
 また、机の上に、法律等の参考資料と第34回、第35回造血幹細胞移植委員会の資料をまとめたファイルを置いておりますので、議論の際に参考にしてください。
 なお、ファイルについては、各委員の専用とし、次回以降も使用しますので、会議終了後、机上に残していただきますよう、お願い申し上げます。
 それでは、議事進行を小澤委員長にお願いいたします。
○小澤委員長 それでは、始めたいと思います。
 立て続けではありますけれども、先週の1月28日に引き続きまして、法施行に向けた議論の第3回目となります。よろしくお願いいたします。
 本日は、先ほど御案内がありましたように、関係団体からのヒアリングということで、骨髄移植推進財団、日本さい帯血バンクネットワーク、日本赤十字社、日本造血細胞移植学会の御意見を伺いたいと思います。
 大変御多忙と存じますが、本日は、齋藤先生、加藤先生、田所先生に参考人として御参加いただいております。よろしくお願いいたします。
 特に齋藤先生は、昨年までこの委員会の委員長をなさっていらっしゃいましたので、今回に限らず、今後ともアドバイスをよろしくお願いいたします。
 本日も御意見を伺いました後、引き続いて、委員からの質疑応答という形での議論を団体ごとに4回行います。次々回以降の議論の参考としたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
 それでは、公益財団法人骨髄移植推進財団の御意見をお伺いしたいと思います。15分以内でよろしくお願いします。
 10分経過時点で合図を一度、15分の時点で二度いたしますので、おまとめいただきますよう、よろしくお願いします。
 それでは、参考人の齋藤先生、よろしくお願いします。
○齋藤参考人 齋藤でございます。
 本日はヒアリングの機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 座って説明させていただきます。
 本財団は、21年前の創立以来、善意のドナーの方々、国、地方自治体、日本赤十字社、医療関係者及びボランティアの方々の御協力、御支援によりまして、事業を進めてまいりました。
 非血縁者間で骨髄移植を進めるためには、なくてはならない社会的な仕組みとしての役割が骨髄バンクであると考えております。
 それでは、取り組み状況について、簡単にお話したいと思います。
 お手元にグラビア『骨髄バンクドナー登録希望の方へ』がありますので、これを見ながら、参考にしていただければと思います。
(スライド)
 バンク事業の取り組みは3点ございます。
 1点目が、ドナー登録推進の取り組み。
 2点目が、コーディネート期間短縮の取り組み。
 3点目が、患者負担金軽減の取り組みであります。
(スライド)
 まず最初であります。ドナー登録でありますが、1992年、設立された当時の目標が10万人であります。10万という数が出た根拠は、日本人のHLA型の分布から、10万人のドナープールをつくれば、9割の患者さんに、少なくとも1人はドナーが見つかるであろうという計算でございます。
 そして、1998年には10万人に到達いたしましたので、さらに目標を30万人にいたしました。
 これも2008年には到達いたしまして、昨年末現在のドナー数は、42万5,000人であります。
 もっとも42万人全てがアクティブドナーではなくて、約7万人のいわゆる保留者と呼んでいる方々がございます。後ほど時間がありましたら、説明いたします。
(スライド)
 このグラフが年次推移でございます。ご覧のように、でこぼこがございまして、例えばここで急に上がっているのは、登録の下限を18歳にいたしました。あるいはメンバーが足りないという井原選手のポスターの効果ではないかと思っております。20年度から3年間落ちておりますのは、ACジャパン、公共広告機構が一時的に中断したためでありますが、またこれが復帰しております。
 このように、赤線が累積のドナー数で42万5,000名であります。
(スライド)
 ドナー登録推進のため、ここにございますように、地区普及広報委員・説明員制度による体制の強化を行ってきました。広報委員と言いますのは、バンクのPRあるいは講演を行う委員でありまして、一方、説明員の方は、バンク登録会で受付などを説明する制度でございます。
 2点目が、骨髄バンク普及啓発活動。
 3点目が、行政への働きかけであります。
(スライド)
 順番にお話します。
 現在、地区普及広報委員が約100名、ドナー登録説明員は約1,000名でございます。
 そして、いずれも定期的な研修会を実施しております。
 献血併行型ドナー登録会を増やしまして、2011年度には4,000回以上開催しております。
(スライド)
 次のスライドに、ドナーさんがどういう窓口から登録をするかということを分類してございます。
 一番左側の部分は、赤十字固定と言いまして、そもそも21年前に始まったときは、日本赤十字社の血液センターでのみドナーの登録が可能でありました。それが献血ルーム、保健所、さらには移動式の献血会場でも登録できるようになりまして、ごらんのように、現在ではこの2つが大部分を占めております。保健所とかその他は、ごく小部分になっております。
(スライド)
 普及啓発活動の強化につきましては、パンフレット、ポスターなどがあります。
 先ほど申しました、ACジャパンの支援キャンペーン、これはテレビのコマーシャルを流していただくことで、非常に大きな力を発揮します。
 全国大会を毎年開催しております。
 『骨髄バンクニュース』を年2回発行して、ドナーの方々にお届けしております。
 「かたりべ」活動と言いますのは、骨髄移植を受けた方あるいはドナーの経験者が、学校などへ行きまして、自分の経験を話したりして、骨髄バンク、移植に対する理解を深めてもらうという働きかけでございます。
 企業・団体へのドナー休暇制度導入の働きかけと言いますのは、ドナーになりますと、検査あるいは移植のための入院で、約10日ぐらい会社を休まなければいけません。それをボランティア休暇のように認めてもらう制度でございます。
 巨人軍あるいはバレーボールのVリーグなどのスポーツを通じた普及啓発。これも非常に大きい力を発揮しております。
 さらに生命保険・損害保険のドナー給付金の特約であります。御本人は自分の病気ではないんですが、骨髄移植のための全身麻酔を含む手術を受けるわけでして、そうなると、給付金がいただけるという制度を導入しております。この制度は、このために余分なお金は必要なくて、一般の医療保険、損害保険に1つのおまけとしてつくような形式になっております。
(スライド)
 これが年2回発行しております『骨髄バンクニュース』とポスターでありまして、例えば皆様よく御存じの夏目雅子さんの時代、杉内投手の時代、これが現在のポスターでございます。
(スライド)
 続いて行政への働きかけでありますが、2点ございます。
 診療報酬点数増額であります。これは患者負担金軽減のためと、医師の負担軽減のために、ここにございますClinical transplant coordinator、移植施設において、いろいろなことを手伝っていただける方、そういう制度でございます。
 もう一つは、国庫補助金の確保でございまして、国庫補助金によってITシステムの改修であるとか、あるいは経済的に困っておられる方々の自己負担金の免除費用を確保しております。総額は大体4億数千万でございます。
(スライド)
 2番目の大きな課題は、コーディネート期間短縮の取り組みであります。
 まず検査方法の変化で、初期のころは、HLAの方は血清を使って検査をしていたわけですが、DNAタイピングの導入によって、一度にたくさんの検体を検査することができまして、いろんな節目を経て、現在はHLAのA、B、C、DRB1という4座をDNAタイピングしております。
 それから、コーディネートルールの見直しであります。何とか期間を短縮するために、2つやったことがございます。1つはピンポイント調整であります。これは最終同意の直前になったら、そこですぐに採取予定日を内定して早める方法です。
 迅速コースというのは、あらかじめいつ採取するかということを採取者と話し合って、それに合わせてコーディネートを進める方法でございます。このおかけでかなり短縮しております。
(スライド)
 コーディネートの体制強化としては、先ほど言いましたITシステムでございます。それから、コーディネーターの研修、調整医師の確保。
 もう一つ重要なことは、採取していただく施設や医師に対する働きかけとしまして、病院に対して協力をお願いする文書を出したり、あるいは採取病院、調整医師への感謝状の贈呈であります。
 もう一つ、非常に大きい試みといたしまして、骨髄移植よりもコーディネート期間が短いと考えられる、非血縁者間の末梢血造血幹細胞移植の導入を2010年10月から開始しております。
(スライド)
 これが具体的なコーディネート期間のデータでございます。
 左をご覧になってください。この図は、患者さん側から見たコーディネート期間でありまして、患者さんが登録されてから移植を受けられる日まで、10年前は175日でしたが、だんだん縮まりまして、最近は140日前後であります。
 右図は、ドナーさんの視点から見たもので、ドナーのコーディネートが開始されてから採取までの日にちで、10年前の147日から現在の120日ぐらいであります。ご覧のように、患者登録から移植までが140日で、ドナナーコーディネート開始から採取までが120日です。つまり実際ドナーさんのコーディネートが開始されてから、骨髄が採取できる日までがほとんどを占めるということであります。それ以前の20日間は、短縮できるところまで、財団としてはかなり努力してきたと思います。
(スライド)
 これが実際の実施状況でございまして、93年から徐々に増えてきまして、昨年末で1万5,000例を超えました。
(スライド)
 最後は患者負担金軽減の取り組みであります。
 患者負担金と言いますのは、患者さんが医療保険の自己負担分以外に払うお金であります。これがなぜ必要かというと、日本の医療保険というのは、直接医療に関係する部分はカバーしますけれども、そうでない部分はカバーしません。つまりコーディネートには、色々な時点でお金がかかります。例えばドナーの方の健康被害に対する保険料であるとか、検査料であるとか、色々なお金がかかります。そういうものを含めたコーディネート料がどうしても発生しまして、それが患者負担金でございます。
 今まで医療保険の適用拡大を求める要望を重ねまして、かなり軽減してきました。一番高いところでは、次にグラフが出ますが、平成6年頃の66万円だったんですが、現在は18万9,000円までになっております。
 それから、ここにあります支払困難世帯への支援と言いますのは、生活保護世帯などで患者負担金も払えない、そのために移植が受けられないのは困るということで、それを援助する意味で、基金を財団につくっております。この基金の財源は、国庫補助金と財団への寄付金でございます。ちなみに、このような経済的に支払困難世帯への減免実施は、昨年1年間で8,900万円となっております。
(スライド)
 これが患者負担金の推移でありますが、検査方法が変わったときに下がったり、あるいは先ほどの団体傷害保険の値下げで下がってきました。しかし、一時財政難に陥って、基本財産を取り崩したことがございまして、そのときはやむを得ず少し上げております。それがまた診療報酬の加算であるとか、検査方法の変更によって、徐々に下がってきまして、現在の18万9,000円でございます。
(スライド)
 最後のスライドです。最も大きな課題は、現在、HLA適合率は95%ですが、移植率は6割以下です。
 それから、骨髄移植件数が飛躍的に増加しております。現在、月に100件以上実施されておりまして、そのために骨髄採取をする施設の受け入れが困難になっております。その理由は、全国的に血液内科医が不足しております。さらには麻酔科医も不足しておりますし、病院の手術室は大きな外科手術で満杯でありまして、そこを確保するのは困難であります。また、ベッドも不足しております。
 このような構造的な問題が残る大きな課題であると考えております。
 御清聴、どうもありがとうございました。
○小澤委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御意見に対しまして、委員から、御質問、コメント等がありましたら、お願いしたいと思います。
 3点、お話いただきましたので、まずドナー登録の問題から、御意見、コメント、質問をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 既に目標は超えて、ドナー登録は40万人台です。これは増えていった方がいいのか、あるいはこれぐらいを維持していけばよろしいのでしょうか。
○齋藤参考人 現在、財団の将来検討会議で話し合っておりますが、現時点で具体的な数字を決めるのは難しい点があります。その理由は、将来の需要がどのぐらいあるか。例えば臍帯血移植との関係、末梢血との関係、骨髄との関係で、それぞれの移植方法が一番いい疾患あるいは疾患の病期があるので、現在、その辺のことがよくわからないので、予測が困難であります。1人でも多く登録していただくことによって、層が厚い方が、稀なHLAの方につきましては、見つかるチャンスがそれだけ増えると考えております。
○小澤委員長 ドナー登録につきまして、いかがでしょうか。梅田委員、どうぞ。
○梅田委員 今後、日赤さんが骨髄バンクに対する支援を行う唯一の機関として指定されると想定されておると思いますけれども、このときに、ドナー登録に対して、日赤さんに財団としてどのような支援を期待されているか、お聞きしたいと思います。
○齋藤参考人 今までも日本赤十字社とともに財団がドナー登録をやってきておりまして、今後も基本的な考え方は変わらないと思います。実際、先ほど示しましたように、献血併行型における登録者が非常に多いので、そういう登録者で、日本赤十字社から説明員を少し助けていただくとか、そういうことを一端として考えております。
○梅田委員 ありがとうございます。
 今のドナー登録は、献血併行等々、普及広報委員ですとか、説明員という財団の立場で行っている人というのは、かなりボランティアの立場の方が多いと思います。例えば日赤さんの献血ルームで、日赤さんの職員にドナーの献血のところでもって呼びかけていただけるとか、またはポスターを掲示してもらうとか、普及啓発をしてもらうとか、こういうところがあると、ドナーの方は非常に増えてくると思っているんです。普通の献血併行登録会でも、日赤さんの職員の方に声をかけていただけると、通常、声をかけないと、献血者の10%程度の登録なんですけれども、日赤さんが登録のところで声をかけていただけると、私の経験では30%近辺と非常に高くなるんです。この辺については、財団として、日赤さんに何か要求するようなことはございませんでしょうか。
○齋藤参考人 今、おっしゃったように、確かに日本赤十字社にそういうことまでやっていただければありがたいと思うんですが、我々としては希望です。
○小澤委員長 ほかには何かございますか。よろしいですか。宮村委員、どうぞ。
○宮村委員 前回の委員会で、全国協議会から、できるだけ若い人を集めるということを海外でもやっているし、実際、愛知県などを見ていても、学校に力を入れようということで聞いている、ただ、今までのところは、どちらかというと、医療系というか、看護系とか、そういったところが中心だとは聞いているんですが、先ほどスポーツのことも出ていましたが、今後スポーツ関係の人とか、若い人で男性が多い、そういったところに対しても普及活動をしていくことが大事ではないかと思います。
○小澤委員長 ほかには何か御意見ございますか。張替委員、どうぞ。
○張替委員 実際のドナー登録は増えていても、コーディネート中に複数ピックアップされると、どんどん落ちていってしまうというのは、割と気軽に登録するのかもしれないんですけれども、実際にやるときになると、ちょっと違うということで落ちる場合もあるかもしれないので、説明が結構大事だと思うんですが、コーディネート説明員を日赤と協力するなり何なりして、増やすような方策というのは、何かあるんでしょうか。
○齋藤参考人 そこが難しいところで、実際のデータは、HLAが合ったということでドナーに連絡しても、約半数は初期の過程で脱落します。その理由は、御本人の健康上の理由もありますけれども、多忙であるとか、あるいは家族が反対するとか、いろんな理由があります。日本の場合、ドナーになるために、家族の承認が必要という世界では類がないような、日本の文化・風土に合った方法をとっていますので、そこのところがやはり欧米とは違うところだと思います。したがって、アクティブドナーといいますか、非常に堅い意志のドナーを確保するには、最初のところで十分に説明をして、納得してもらうことが非常に重要だと考えております。
○小澤委員長 今後も家族の了解というのは、やはり継続して必要になるのでしょうか。
○齋藤参考人 そこは、今、将来検討委員会で議論しているところですが、なかなか難しい点だと思います。
○小澤委員長 ドナー説明員を長年されている梅田委員としては、こういう問題はいかがでしょうか。
○梅田委員 今のところの補足というわけではないんですけれども、ドナーの教育というのは、一番初めの説明のほかに、ドナーになった後の再教育みたいなところが結構少ないと思っているんです。そこのところを強化するという観点で、例えば前回の委員会でも言いましたけれども、ホームページですとか、また再講習会ですとか、あるいはドナーのニュースのところで再アピールするとか、何らかの工夫が要る。それから、先ほど出ていたACをうまく活用して、ACのところでも、何かいい放送みたいなものが流せないかと私は思っております。
○小澤委員長 ほかにはございますか。岡本委員、どうぞ。
○岡本委員 齋藤先生の御説明の中に、調整医師というものが出てきました。それから、医師の負担を軽減するという趣旨のことがあったと思います。調整医師は、確かに骨髄バンクが設立されたときに、それを軌道に乗せるということで、医師がかなりボランティアで協力をしてきたという経緯から、それがずっと続いているわけですけれども、ここまで育ってきた骨髄バンクの中で、やはり医師は移植、採取に専念した方がいいのではないかという観点から考えると、調整医師というものをもう一回見直していくということと、採取に関する医学的なアドバイスに関して、財団の中に割と専任に近いメディカルアドバイザーを置くとか、アメリカなどはそうだと思うんですが、そういった形で負担を軽減していくという可能性については、いかがでしょうか。
○齋藤参考人 日本の骨髄バンク活動というのは、ボランティアの方あるいは医療関係者の中でも、特に医師が非常に大きい役割を果たしてきたと思います。しかも、医師は主治医として患者さん側に立った立場であるし、そういう立場の人が調整することも大事ではないかと思います。
 医師の負担が非常に多いことはたしかで、どうやって負担を軽減するかというのは、我々も真剣に考えています。財団に1人常勤のメディカルディレクターという医師を置いても、その人が年間1,300件もある移植のそれぞれに関わることは、実際的に無理だと思います。だから、どうしてもこれだけ増えてきますと、何かいい方策を考えなければいけない。今のシステム以上のものをどうしようかということは、今、一生懸命考えております。
○小澤委員長 岡本委員としては、調整医師の役割を医師以外の人ができる可能性はあると思っていらっしゃるのですか。
○岡本委員 私はあると思うので、その方向にいっていただければと思います。
○小澤委員長 そのほかにいかがでしょうか。鎌田委員、どうぞ。
○鎌田委員 患者の立場から申し上げるとすれば、骨髄移植を待っている患者さんで、ドナー候補者が見つかったというところで、一旦希望を持ってとても喜んで、けれども、その後でドナーさんの都合で受けられなくなるときのショックというか、落胆の思いというのは、本当に深刻ですので、最初の登録者の数を増やすということのみならず、特にこのようにたくさん登録してくださる方が増えた今は、より確実に提供に至るドナーさんを増やすための方法を考えていくことに力を入れていっていただきたいと、切に願います。
○小澤委員長 非常に重要なポイントだと思います。
 時間も押していますので、次にコーディネート期間短縮の問題です。これは一番大きな問題のような感じもしますけれども、採取医療機関がなかなか見つからないところがあると思いますが、この辺について、いかがでしょうか。質問、御意見、コメントはございますか。
○山口委員 齊藤先生、ありがとうございます。
 コーディネート期間は、今だと平均4カ月ぐらいかかります。先ほど先生のお話にありましたけれども、末梢血幹細胞移植がこの期間を短縮するのに使える。最後のお話にありましたように、施設というか、採取の施設が混んでいるということも、恐らく末梢血と骨髄をとるところで、施設の使用頻度も大分違ってくると思うので、今後、末梢血と骨髄の両方をどういうふうに兼ね合わせていったらいいのかという話を教えてください。
○齋藤参考人 おっしゃるとおり、末梢血幹細胞移植の場合は、全身麻酔が要りませんので、手術室が要らないとか、麻酔科医が要らないという利点はあります。
 もう一つ大きいのは、骨髄移植の場合、出血が多いので、あらかじめ患者さんの血液を自己血輸血しておくわけです。それもないので、20日ぐらいは短くすることができると思います。
 ただ、一方、末梢血を採取する場所は、血液センターとか、そういうところを、今、徐々に広げようとしています。日本の場合、末梢血幹細胞移植を非血縁者の間に導入するのに、非常に慎重にやっております。御存じのように、欧米では、末梢血幹細胞移植が移植の種類で一番多くなっていますが、そこまでいっておりません。非常に慎重に進めたいと思っておりますが、おっしゃるとおり、これが増えれば20日ぐらいは短縮できると思います。
○小澤委員長 ほかに御意見いかがでしょうか。何かございますか。
 日本造血細胞移植学会理事長の岡本委員としては、採取施設の問題はどうお考えですか。
○岡本委員 後で私のプレゼンテーションに出てまいります。
○小澤委員長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
 最後の患者負担金軽減の試みというテーマでありますけれども、随分、患者負担は減ってきているようでありますが、さらに御意見、コメントはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、全体を通して、追加のコメント、質問等はいかがでしょうか。張替委員、どうぞ。
○張替委員 患者負担金は随分支援しているということで、財源と言いますか、今、財団は診療報酬と補助金とかいろいろ入っていると思うんですけれども、今の運営というのは、財源的にはどのような形で整理しているんでしょうか。
○齋藤参考人 数字を申し上げますと、財団の収入のトータルは、年に15億円ぐらいであります。その内訳は、医療保険収入が約5.7億、国庫補助金が4.5億、患者負担金が3.4億です。つまり医療保険と国庫補助金で7割ぐらいを占めていまして、患者負担金が2割ぐらいで、寄付金が1割ぐらい、それでトータル15億であります。患者負担金の中には、財団の収入というよりも、患者さんの検査料が、実際は検査会社に払われるんですけれども、形式上、財団を素通りしているという部分もございます。
○小澤委員長 ほかによろしいですか。
 最後のスライドの最も大きな課題で、HLA適合率が95%にもかかわらず、移植率が6割以下とありますが、理由というのは、主にドナーの辞退とか、どんなものが多いのでしょうか。
○齋藤参考人 4点ほど挙げることができまして、先ほど言いましたように、適合ドナーが見つかっても提供までいかない理由としては、ドナーさんの健康理由によってコーディネートが終了するとか、あるいは仕事が忙しい。
 もう一つは、登録してから何年後にドナーになるかわからないので、その間、特に若い人は住所がどんどん変わって、気をつけてはいても、連絡不能というものがどうしても出るんです。年に2回バンクニュースを送って、どうしても返事がない場合があます。
 もう一つは、コーディネート期間が長くなると、その間に患者さんの容態が悪くなって、移植のチャンスをなくしてしまう。例えば慢性骨髄性白血病が急性転化するとか、そういうことが理由だと思います。
○小澤委員長 そのほか、臍帯血に流れていくこともあるのですか。
○齋藤参考人 それももちろんあります。
 ちなみに、日本の場合、先ほど言いましたように、患者さんが登録してから移植まで140日ぐらいですが、欧米だと100日ぐらいです。欧米はどこが早いかというと、ドナーが1人に決まってから骨髄を採取するまでが30日ぐらいで、そこが日本の半分以下です。日本は77日ということで、そこが一番大きいネックなのではないかと思っております。
○小澤委員長 よろしいですか。
 それでは、齋藤先生、どうもありがとうございました。
 続きまして、日本さい帯血バンクネットワークの御意見をお伺いしたいと思います。参考人の加藤先生、よろしくお願いいたします。また15分以内でよろしくお願いします。
○加藤参考人 日本さい帯血バンクネットワークの加藤でございます。よろしくお願いいたします。
 お手元に当方で用意いたしました、1枚紙の資料がございます。「これまでの取組状況」と「問題点と今後の対応」ということでまとめてありますが、これからスライドでそれぞれのことのポイントを御報告・御説明したいと思います。
(スライド)
 我が国におきまして、最初に臍帯血移植を行ったのは94年でございます。
 その後、非血縁での臍帯血移植を実現するためにということで、神奈川あるいは全国にローカルのバンクができ上がりまして、最終的に99年に日本さい帯血バンクネットワークとして、当初8バンク、その後3バンク増えまして11カ所、最終的にこの2~3年で3カ所が運営を中止いたしまして、現在8カ所で行っております。
(スライド)
 今年1月1日現在で、公開中の臍帯血は3万件。
 これまで行われた非血縁者間での臍帯血移植は9,000例を超えております。
 臍帯血の採取病院数は、全国に108病院ございます。
 また、移植の登録医療機関として、200病院、248診療科が登録されております。
(スライド)
 これが11あったさい帯血バンクでございますが、このうち3つが、ここ1~2年の間に活動を中止いたしまして、赤が赤十字です。それと日赤系以外のバンクとで行っております。それぞれ4つずつになります。
(スライド)
 この十数年、2000年からここに示してありますが、登録・保存する臍帯血のミニマムの細胞数、有核細胞数というものが、当初は3億個、2004年から6億個、2007年から8億個と定められました。ごらんのように、当初は少ないものが中心でありましたが、やがてだんだんと数の多いものにシフトしておりまして、最近では10億個以上の赤のバーのところが主力になっております。これは細胞数が多ければ多いほど、移植の成績がいいということに裏づけられるものであります。
(スライド)
 青いバーは登録・保存された臍帯血、赤いバーは移植された臍帯血で、ご覧のとおり、10億個を超えますと、利用率がぐっと上がりまして、多いものほど利用率が高いということが一目瞭然であります。
(スライド)
 骨髄バンクとさい帯血バンクは、文字どおり車の両輪でありまして、ブルーの非血縁者間骨髄移植と赤の非血縁者間臍帯血移植は、ここ10年、我が国においては、ほぼ同じ比率で推移しております。累計骨髄移植が1万5,000、臍帯血移植が9,000ということで、今年中には1万を超えるだろうと予想されます。
(スライド)
 これは骨髄移植と臍帯血移植を受ける患者さんの年齢層で比べてみたものであります。一番下のブルーが15歳以下の小児、赤が16歳から50歳未満の若年の成人の方々、緑が50歳を超えた高齢の成人の方々です。
 ご覧いただきますと、臍帯血移植では、高齢の方々の伸びが、2003年以降、非常に著しいことがおわかりいただけるかと思います。
(スライド)
 さらに小児については5歳刻みで、成人については10代、20代、30代と細かく見てまいりますと、骨髄移植の場合、50代、60代の方々がここ10年の間、増えております。これはすぐに御理解いただけると思いますが、団塊世代の方々が50歳代から60歳代に移行していることを反映しているものであろうと思われます。
 臍帯血移植においては、60歳代の方々の増えが50歳代の方々をしのいでおります。その理由は幾つかございますが、いわゆるミニ移植、非骨髄破壊的な移植の普及とともに、コーディネート期間が非常に短い臍帯血移植をとにかく急いで希望される方々の需要がここにあるとおわかりいただけると思います。
(スライド)
 世界的に見ますと、これはWMDAという組織が中心になって、1994年から2011年までの期間の大陸ごとの移植数を集計しているものですが、ピンクのバーがアジアであります。このほとんどは我が国日本であります。ご覧いただいてわかりますように、日本は世界の3分の1の臍帯血移植を実施している、そういう点では、大変ユニークな状況になっております。
(スライド)
 成人及び小児において、この十数年間の間、移植の成績はどのように向上してきたかということを示したものであります。
 右側の小児でありますが、97年から2002年までの5年間、2003年から2005年、2006年から2008年、ご覧のように、確実に、着実に成績は向上しております。
 成人においては、当初余り向上は見られておりませんでしたが、最近になり、少しずつこの向上が確実に認められるようになりました。
(スライド)
 1~2例お示しします。
 小児の急性リンパ性白血病。左側が非血縁者間骨髄移植、右側が非血縁者間臍帯血移植でありますが、それぞれの移植時期における成績をご覧いただきますと、ほとんど同じである。両者は現時点では変わらないということがおわかりいただけると思います。このデータは、日本造血細胞移植学会の一元化登録によって得られているものであります。
(スライド)
 成人におきましては、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病を、生存率、白血病の再発のない生存率で比較したものであります。熱田先生がBlood誌上に報告した論文からとっておりますが、AML、急性骨髄性白血病においては、骨髄移植がやや上回っておりますが、有意差のほとんどない両者が条件をそろえますと、ほぼ匹敵する結果であるということが、おわかりいただけるかと思います。
(スライド)
 次に厚生労働科学研究の中で行いました研究といたしまして、高梨先生がファーストオーサーで書かれたものであります。これは我が国から発信された新しい情報でありまして、患者さんの持っているHLA抗体が、移植される臍帯血と反応する場合、しない場合、抗体が陰性の場合、ご覧のように、抗体が陽性であり、なおかつ移植される臍帯血とそれが反応する場合には、生着率も悪く、また生存率も悪いということが、非常にクリアに示され、我が国はもちろんのこと、世界的に現在では事前にHLA抗体を測定することがルーチンになっております。
(スライド)
 今回の法律を受けまして、今後の課題でありますが、これまでのさい帯血バンクは届出制でありました。これが今回許可制となってまいります。
 保存臍帯血の細胞数の基準、あるいは必要である公開する臍帯血の目標を、我々さい帯血バンクもあるいはこの委員会においても十分議論すべきことであろうと思います。
 技術の標準化、品質評価は、臍帯血移植にとっては、最も根幹の臍帯血の問題でありますので、十分な議論が必要だと思います。
 財政の基盤は、非常に脆弱でありました。診療報酬の改定により、やや改善しておりますが、後ほど御説明いたしますけれども、これも見通しが決して明るいとはまだ言えないところがございます。
 臍帯血の採取、スタートのところは、産科の先生方、産科のスタッフの方々に依存しております。ほぼボランティア的なお仕事として担っていただいておりますが、ここにかなり重点的な施策を講じないと、それでなくとも大変な産科医療に、さらに負担をかけることになってしまうだろうと思います。
 移植を受ける患者さん側から見た場合、骨髄バンクあるいはさい帯血バンクそれぞれが、ばらばらにいろんなコーディネートが進んでいきますが、できればこの法律によって一元化すべきことだろうと思います。
 安全性の向上、情報管理の強化、さらには国際協力もこの委員会で議論されることになっていると思います。
(スライド)
 これはさい帯血バンクのこれまでの財源であります。赤が国庫補助の運営費、ブルーが施設整備費です。緑で示してあるのが、健康保険から入ってくるものであります。骨髄バンクと違いまして、さい帯血バンクにおきましては、患者さんの負担金が全くございません。その負担は、これまで各バンクが自ら赤字として抱えてきたわけであります。
 今年度から診療報酬の改定に伴い、診療報酬から入る財源は非常に多くなりました。これだけでは必ずしも十分ではないと考えます。
(スライド)
 先ほど申し上げましたが、臍帯血の採取は産科の医療のところで行われます。現在、採取の方法は、胎盤が娩出する前、娩出した後の2つの方法があります。我が国では、主に娩出前の方法をとっておりますが、アメリカなどは娩出後の方法が多くなっております。そのために専任の採取のスタッフを置かなければいけないわけであります。我が国におきましては、これまでそれができる状況ではありませんでしたので、娩出前をとってきたわけであります。このことで象徴されるように、産科の先生方、あるいは助産師さんたちに対する負担をできるだけ少なくしながら、充実したものにしていく必要があるわけであります。
(スライド)
 最後に、先ほど申し上げましたが、患者さん側から見たときに、最初のドナーの検索から移植に至るまでのプロセス、先ほど骨髄バンクのプロセスは齋藤先生から御説明がありましたが、さい帯血バンクにつきましては、8つのバンクにそれぞれ別個の申し込みのルートをとらなければいけません。また、提供も同様であります。患者さんにとっては、両方のバンクに別々に申し込んだり、検索をしたりという手間があります。今回の法律はシングルポイントオブアクセスということを大きな目標にしております。業務あるいはプロセスとしてのコーディネートは、できる限り一元化する。そして、次の段階で事業・組織としてのバンクを一元化する方向に向かうべきというのが、我々が必要としてきたことであり、また患者さんたちが求めているものだと理解いたします。
 以上で私からの御報告・御説明とさせていただきます。
○小澤委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御意見に対して、委員から御質問、コメント等はいかがでしょうか。宮村委員、どうぞ。
○宮村委員 今、加藤先生から8つのバンクの一元化ということがありました。これはかなり前から話がありまして、例えば臍帯血を届ける費用というのは5万から10万ぐらいかかるんですが、それがかからないバンクがあって、一方ではかかるバンクがあったりします。うちの病院もかなりの移植をやっているんですけれども、1人の主治医から見ると、1年に2~3例で、8つのバンクのどこを選ぶか、どういうところか覚えられないんです。ですので、やはり一元化はしていっていただきたいと思います。
 もう一つは、例えばインシデントのレベルだと、これは8つのバンク一つ一つがやっているのか、それとも全体でインシデントとか、そういったものを管理されているのか。それを教えてください。
 加藤参考人 一元化につきましては、先ほど申し上げましたし、また宮村委員がおっしゃられたとおりであると思います。
 インシデントでございますが、各バンク内で管理することは当然のことながら、お互いがそれをシェアするという必要性から、現在、バンク調整委員会などを通じて、ネットワークの中でインシデントをお互いが共有するというシステムがございます。
○宮村委員 骨髄バンクですと、医療委員会というものがあって、どちらかというと、提供した先のいろんなことについて、例えば生着が遅れたり、あるいは細胞数が少ないときは、医療委員会には報告されるわけですけれども、このようなシステムというのは、全体としてはどうなんでしょうか。
○加藤参考人 これまでさい帯血バンクネットワークの一番重要な委員会は、事業運営委員会というところでやってまいりました。もう一つ、事業評価委員会というものがあるわけですが、先生がおっしゃるように、当初、事業運営委員会の中は、移植医の参加が少なかったように思います。順次、移植医の方々にも御参加いただいてきたつもりではあるんですけれども、骨髄バンクにおける医療委員会の様な独立した形の委員会は持っておりません。
○小澤委員長 そのほかはいかがでしょうか。坂巻委員長代理、どうぞ。
○坂巻委員長代理 2点教えていただきたいんですけれども、第1点は、最近、臍帯血も細胞数が多いものが増えているというのは、採取技術が向上したということなんでしょうか。
○加藤参考人 採取技術はいろいろと努力はいたしますけれども、飛躍的に向上するものではありません。これはある意味採取をする医師あるいは助産師さんたちの熱意と熟練に依存しておりまして、また、採取する病院は、当初、いわゆる地域の中核病院として、ベッド数の多いようなところを我々は想定してお願いしてきたわけですが、結果的には規模は小さくとも、固定した医療スタッフがずっと従事してくださるような、そういう病院の方が、安定してより多い臍帯血、細胞数の多いものをとっていただけるということから、今後、採取病院を選定していく際に、どういうスタッフの方々がおられるかということは、重要なファクターになるのではないかと思います。
○坂巻委員長代理 そうすると、昔から採取病院は固定しているわけではなくて、結構変わってきているということですか。
○加藤参考人 固定はしているんですが、増えてきているところがございます。その中で、非常に多い細胞数をとっていただける病院が、少しずつ変化してきていると思います。
○坂巻委員長代理 それから、先生の御説明の中にもありましたように、臍帯血を保存しておく数というのは、現在の需要から見て、このぐらいあればいい、逆に言うと、多過ぎると保存のための費用がかさむというところから、ある程度の目標数というものを大体考えていらっしゃるという気がするんですが、いかがですか。
○加藤参考人 これはなかなか難しいところで、例えばアメリカのさい帯血バンクが15万とか、そういう数字だったと思うんですが、その根拠も余り明確でない。日本もこれまで3万ということで、HLAが1つ違って移植できるという、その頻度から割り出してきた数できたわけですが、HLAの頻度だけでなく、細胞数を加味した保存のあり方が必要になってくると思います。
 今、ご覧いただいているスライドのように、実際に使われることが少ない臍帯血が、デッドストックという言葉がいいかどうかはわかりませんが、現在、眠っているわけです。しかし、眠っている臍帯血があったからこそ、こちらが生きてきたということもございますので、今後これをどういうふうに活かしていくかという議論が必要だろうと思います。
○小澤委員長 武藤委員、どうぞ。
○武藤委員 御説明ありがとうございました。
 先ほどの齋藤先生の骨髄移植のお話では、アクティブドナーの方々をどうするかというのが、ドナー側の問題点としてありましたけれども、臍帯血移植に関しては、産婦さんの御意思をどう尊重するかとか、あるいはそこを増やすという点での御懸念というのは、お持ちでいらっしゃいますでしょうか。
○加藤参考人 幸いなことに、これまで日本における臍帯血に対する妊婦さんたちの理解及び一般国民の方々の理解は、非常にポジティブだと思います。私たちの経験でも90%以上の方々が提供に同意いただけますし、さらには将来ここで議論されるでありましょう、研究用の使用においても、かなり高い同意をいただいております。それは提供される方々に肉体的あるいは精神的な負担が少ない、ほとんどないからだろうと考えられます。その上で、これだけの人を助けられるということが、提供する側の方々にとっては、大きなファクターだと思います。
○小澤委員長 ほかにはございますか。張替委員、どうぞ。
○張替委員 3点ほどございます。
 1つは、先生もおっしゃっていた、産科の先生のインセンティブというか、説明同意もありますし、採取もありますし、そこは完全にボランティアなので、その辺はバンクだけの個別のインセンティブ以外に、診療報酬的に出せるような方策というのは何かありますでしょうか。
○加藤参考人 これは是非お願いしたいんですが、現在、3つの移植があります。骨髄、末梢血、臍帯血、それぞれ採取並びに移植が点数化されているんですが、唯一、臍帯血の採取のところだけが、まだ診療報酬の体系に入っておりません。これを全て診療報酬と認めるには、採取したものの全てが移植されるということではないので、補助金との上手な併用を考えていくべきだろうと思います。
○張替委員 あと、診療報酬化されて、財源が変わってきたというお話ですけれども、2011年まではほぼ同じということで、今後、診療利用報酬がかなり上がったところで、先生がお示しになった国庫補助、健保、その辺の割合というのは、劇的に変わっていくものですか。
○加藤参考人 既に変わっております。今年度から変わり始めたわけですが、ここで是非お知りおきいただきたいことは、先ほど申し上げましたが、表に出ない赤字を非常に抱えてきた。そのために、運営が行き詰まったバンクもおありになるわけです。それは母体の業務、例えば日本赤十字あるいは大学、その他のところの本務を抱えながら、兼務をしている方々、さらには赤十字以外のバンクにおきましては、非常勤の職員、臨時職員に多くを依存しております。そのような形で、質の高い臍帯血の保存を永続的にやるということは、私は難しいと思います。これからは人件費に相当するものを投入していかないと、安定した臍帯血の提供はできないと思っております。
○張替委員 最後に1点です。今、バンクが集約化というか、日赤系と非日赤系に分かれていますけれども、品質の標準化とか、検査とか、先ほどあった出庫などを標準化していく上で、今後、それぞれ母体の違うバンクがいっぱいありますが、どのような形で、どの程度まで集約されるのか。このままの形がいいのか、それともある程度基盤を均一化したものをつくっていった方がいいのか、その辺の御意見はいかがでしょうか。
○加藤参考人 まず技術的な面から言いますと、何と言っても、日本赤十字社の持っておられる人材並びにノウハウは、非常に貴重でありますし、日赤にリードしていただくということは、どうしても必要だろうと思います。それでは全ての日本赤十字社のさい帯血バンクが担うのがよろしいのかどうかというのは、この委員会でも十分に御議論いただきたいんですが、これまで日赤系以外のバンクもかなりの努力をして、貢献してまいりましたので、その活力というものを生かさない手はないだろうと思います。これまでは日赤系のバンクと非日赤系のバンクが一体化して、ネットワークという形で行ってまいりましたが、この法律によって、ネットワークというものは存続しなくなるだろうと思います。バンクそれぞれが個別の事業体でありながら、業務として日本という全体を考えたときには、一体化したものをどのようにして運営していくかということは、課題だと思っております。
 先ほど申し上げましたように、当初は業務の一元化、次に組織の一元化を目指していくべきではないかと思います。これは個々のバンクだけでできるものではなく、やはり国の主導、あるいは国民の方々の考え方に依存するものだと思っております。
○小澤委員長 臍帯血の品質の問題は非常に大切な問題で、サブコミッティーでまた具体的な議論はされると思いますけれども、日本のように、非常にたくさんのバンクがあるのも特殊な状況で、8バンクはかなり多いわけなんですが、移植医の立場からは、品質の問題は微妙な問題ですけれども、バンク間の差で困ったとか、そんなことはありますでしょうか。宮村先生、どうですか。
○宮村委員 なかなか難しい質問ですけれども、現在、基本的には細胞数を中心に選んでおりますので、そういうことはないし、どこかで我々が臨床的に問題だと感じたことはないですが、非常にいい成績を上げているところは、一部のバンクから選んでいるとか、そういったうわさは聞きますが、現実的にそれによって分けるようなことは、うちの病院ではしておりません。
○加藤参考人 今の点でよろしいですか。
○小澤委員長 どうぞ。
○加藤参考人 臍帯血は、新生児、赤ちゃんが生まれた後、胎盤から採取させていただくということで、そもそもスタートにおいて、非常に多様なものであると考えます。細胞数の多い、例えば妊娠持続週数が短ければ、よりポテンシーの高い臍帯血、幹細胞が得られる可能性があるわけでありますが、そのように非常に個人差、個体差があるというスタートがありまして、その先、先生がおっしゃったように、バンクによる技術差は余り大きなものがあってほしくないというのは、当然だと思いますので、この法律によって、そこの底上げ、標準化ということを是非とも実現していきたいと思っております。
○小澤委員長 そのほかにいかがでしょうか。山口委員、どうぞ。
○山口委員 加藤先生、ありがとうございます。
 今、お話にありました技術の標準化とか、品質管理という意味では、日赤が血液治療で培った技術というのは、非常に有用だと思います。それを適用していくのが、一番効率的だという気がします。その点は、今、加藤先生がおっしゃったとおりだと思います。
 もう一つ、バンクの施設というのは、どんどん積み上げれば積み上げるほど、施設の整備は必要となってくる。要するにそこに費用がかさんでくるという話があると思うんですが、実際の採取、運営という話と検査を分けた場合、どちらも統一できる方がいいと思うんですけれども、先ほど先生からはそれはなかなか難しい問題だというお話でしたが、その辺をお願いします。
○加藤参考人 先生の御質問に正しくお答えできるかわかりませんが、後ほど恐らく議論されると思いますが、GMP基準というものをどのようにこの事業の中で位置づけるかということは、大きな課題だと思います。医薬品におけるGMPの基準というものは、均一化・均質を目指す低分子化合物ですから、当然でありますが、こういう細胞治療におきましては、多様性・多型性というものをむしろ求めるわけですので、医薬品におけるGMPと横並びで全く同じものが望ましいのかどうかは十分に議論して、そして、余り高いハードルを持ち込むことによって、角をためて牛を殺すことのないような、そういう政策が必要だろうと思います。
○小澤委員長 加藤参考人、どうもありがとうございました。
 続きまして、日本赤十字社の御意見をお伺いしたいと思います。田所参考人、15分以内でよろしくお願いいたします。
○田所参考人 日本赤十字社の田所と申します。
 本日は骨髄バンク及びさい帯血バンクに対する日本赤十字社のこれまでの取り組み、それから、新たに造血幹細胞移植推進法のもとで、支援機関として期待されているわけですけれども、その辺への考え方についても、述べさせていただきたいと思います。
(スライド)
 骨髄バンクの登録受付についてでございます。
(スライド)
 これは骨髄バンクの体系図でございますけれども、骨髄移植推進財団がバンクの中心組織として、コーディネートと国民への普及啓発を行っております。日本赤十字社はこれに協力する形で、ドナーの登録受付、HLAの検査を主な業務としてまいりました。
(スライド)
 経緯で見ますと、平成3年末に国からの依頼がございまして、翌1月から全国の血液センターに骨髄データセンターを設置して、ドナー登録の受付及びHLA検査を開始しました。この時点では、血液センターでのみ受け付けていたわけですけれども、14年を経て、平成15年からは全ての献血会場で登録の受付を開始しました。
 また、平成17年からはDNA検査を導入し、同時に検査施設を現在の関東甲信越ブロックセンター及び近畿ブロックセンターの2カ所に集約して、効率的に行ってまいりました。
 昨年4月からは、血液事業は広域事業運営体制という新たなシステムに移行しました。
(スライド)
 これに伴い、分担をいたしまして、地域の骨髄データセンターでは、152カ所で登録受付を行い、検体も採取し、これをブロックセンターに送付して、登録者を登録し、検体を管理して、この検体を東京・大阪に送り、それらから得られたHLA情報、ドナー情報を骨髄データセンターのシステムで運用管理して、骨髄移植推進財団の要望に応じて、検索に寄与してきております。
(スライド)
 これは登録者の推移でございます。
(スライド)
 受付窓口でございますけれども、ここに示しますように、日赤の固定施設、ルームや血液センターが約30~40%、献血併行で行われるものが50~60%です。
(スライド)
 平成23年度におきましては、97%が日赤の献血場所で登録がされているということでございました。骨髄ドナーに登録をされようという方は、献血もしようというお気持ちもあり、それもできる方が多くいらっしゃるということです。それらの方々には、献血の登録場所として、ルーム等が非常に便利であるということから、このようなことになっていると思っております。
(スライド)
 次は医療機関からご希望の多いシングルポイントオブアクセス、移植医が簡単に骨髄と臍帯血の両方が検索できるというシステムについてでございます。
(スライド)
 平成21年に新たに造血幹細胞適合検索サービスを開始いたしました。これは骨髄バンクの管理システム及びさい帯血バンクの管理システムから、適合検索に必要なドナー情報、あるいは臍帯血の情報、HLA情報を引き出しまして、医療機関から同時に臍帯血、骨髄について検索ができるというシステムでございます。
(スライド)
 その画面をちょっとお見せしますが、適合検索というところをクリックいたします。
(スライド)
 入力画面にまいります。ここに患者のHLA型、A、B、C、DRについて入れます。
(スライド)
 左側には骨髄検索の結果、右側には臍帯血検索の結果が出まして、ドナーの数あるいは臍帯血の数が表示されます。
(スライド)
 これは臍帯血の画面ですけれども、詳細が示されております。臍帯血におきましては、これを是非使いたいということであれば、右側の方にピンクで書いてありますが、申し込みというところをクリックしますと、ネット上でバンクに対して申し込みができるシステムになっております。
 骨髄については、まだネット上でのものができていないわけですけれども、これを臍帯血と同様にすることで、皆さんの希望されるシングルポイントオブアクセスが、申し込みまでを含めて可能になるということで、現在、骨髄移植推進財団の方々、国とも御相談をさせていただいているところです。
(スライド)
 次はさい帯血バンク事業の取り組みでございます。
(スライド)
 さい帯血バンクにつきましては、血液センターにおきまして、技術協力あるいは研究の一環として、さい帯血バンクが始まりまして、地域の医療機関との協力の中で、さい帯血バンクが発足いたしました。
 これらのさい帯血バンクが、平成11年、国の主導により日本さい帯血バンクネットワークとして発足して、日赤が事務局業務に協力してまいりました。
(スライド)
 これがシステムですけれども、各さい帯血バンクは、採取・調製・分離・保存・供給を行っておりまして、これらのバンクがさい帯血バンクネットワーク、公的さい帯血バンクを構成しております。しかし、さい帯血バンクネットワークは、法人格を持っておりませんでしたので、特に会計上問題がございまして、法人格を持つ日本赤十字社が事務局として、役割を引き受けさせていただいております。
(スライド)
 さい帯血バンクにつきましては、今までお話がありましたように、過誤事例があったり、いろんな事故が起きていたということもあり、品質の問題が大きな問題になっておりました。
 それから、各バンクで、基盤組織になっている施設からの持ち出しで、財政的には赤字で運営せざるを得ないという状況がございまして、これらについて、日赤としても、技術的あるいは財政的に検討を進めてまいりました。従来は各血液センターの自主的な活動としてきたわけですけれども、昨年4月1日より、これを血液事業の関連事業として統一的な方針のもとで実施しようということを決めまして、センターも4つに集約をしようということで、行ってきました。
 また、財政的には、診療報酬の一部と補助金で事業を実施しているわけですけれども、将来的な財源としては、診療報酬を主たる財源とした、きちっとした財政体制を是非つくっていく必要があるだろう。その基礎的な資料というのは、日赤も中心になってつくっていく必要があるだろうと考えて、現在も取り組んでおります。
(スライド)
 今、御紹介があったように、バンクは、日本赤十字社系列のバンクが4つ、それ以外が4つということで、合計8つで動いております。
(スライド)
 日本赤十字社系列のバンクでは、保存数でいうと38.7%、実際の供給数では60.3%ということで、細胞数の多いものを数多く保存しているということから、医療機関からの需要も多いと考えております。
(スライド)
 先ほど申しましたように、臍帯血の品質が問題になってまいりました。
(スライド)
 従来はさい帯血バンクを調製する人たちが、最大の注意を払いながら、この事業に取り組んできたわけですけれども、我々は血液事業の経験を生かして、これを全て調製部門が実施するのではなくて、品質部門を別に置いて、さい帯血バンク内での内部監視体制を強化することで、品質体制を強化しようということを決めました。
(スライド)
 4バンクの担当者の検討によりまして、さい帯血バンクの事業管理総則、あるいは各種の基準書・手順書を作成して、ほぼ作り終えました。今後これらの統一的な手順・基準に基づいて、事業を運営していきたいと考えています。
(スライド)
 また、これについては、各バンクにも御提示して、我々の持っている技術を広げてまいりたいと考えております。
(スライド)
 今回の造血幹細胞移植推進法において、日本赤十字社は、造血幹細胞事業に係る支援業務に携わる支援機関として想定されております。
(スライド)
 造血幹細胞提供支援機関の業務としては、法第45条に定められております。
 第1号では、まず提供する意思がある方の登録受付、従来の登録業務です。それ以外に造血幹細胞事業を行う骨髄・末梢血幹細胞提供あっせん事業、つまり骨髄移植推進財団さんの事業及びさい帯血ネットワークの事業に必要な協力を行うことが求められています。
 第2号では、これらの事業者の連絡調整を行うこと。
 第3号業務では、骨髄あるいは臍帯血の情報を一元的に管理する。システムをきちっと管理して、ドナーから移植に至るまでの統一的なシステムをつくり、それを管理することを求められています。
 第4号においては、造血幹細胞の提供に関する普及啓発を行うことが求められております。
(スライド)
 これまで触れてまいりましたように、日本赤十字社としては、骨髄データセンターとして日本骨髄バンク事業に協力、あるいはさい帯血バンクネットワークの事務局業務に協力、及びさい帯血バンクのある意味中心的な組織として実務を行ってまいりました。
 また、造血幹細胞の適合情報の提供ということで、検索サービスのシステムの構築に携わり、実際の検索情報の提供を行っております。
 さい帯血バンクにつきましては、特にこれを血液事業の関連として、従来の自発的で、各センターばらばらの事業を統一的な方針のもとで、品質管理体制も強化するということを行っております。
 今後、支援機関としては、これまで行ってきたHLA検査や骨髄ドナーの登録、あるいは臍帯血の製造・調製ということは、当然ながら、今後も継続的に行うということがあるわけですけれども、それ以外にもあっせん業である骨髄移植推進財団さん、あるいはさい帯血バンクネットワークに所属するバンクに対しても、協力をしていきたいと考えております。
 特に臍帯血につきましては、先ほど述べましたように、我々自身の品質基準あるいは作業の質を高めると同時に、それらを他のバンクの方々にも提示して、さい帯血バンク全体としての品質の向上に貢献していきたいと考えております。
 以上です。
○小澤委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御意見に対しまして、委員から、御質問、コメント等はいかがでしょうか。梅田委員、どうぞ。
○梅田委員 先ほど財団にも御質問した件と同じになるんですけれども、今後、日赤さんが骨髄バンク・さい帯血バンクの支援を行う唯一の機関として想定されるということで、ドナー登録に対する協力、普及広報がいろいろと求められてくると思うんですが、先ほどもちょっと触れました献血ルームでの広報、さらにはそこでの呼びかけみたいなところ、こんなところに踏み込んでいかれるお考えはないですか。
 例えば今、埼玉でボランティアが説明員として乗り込んで、いろいろと説明しているところがあります。ここはドナー登録という形では、ものすごく伸びているんです。1つ日赤さんで協力をいただけると、ドナー登録という形では、飛躍的に伸びると私は見ております。
 それから、献血併行登録会でも、先ほどもちょっと述べましたけれども、受付の窓口で一言声をかけてもらえると、ドナー登録という形では3倍近く増えるはずです。
 あと、普及広報という形では、日赤さんのホームページ、ドナーの通信みたいなものがあるんですけれども、そこのところでもドナー登録という言葉に触れていただけると、ドナー登録という観点では、非常に伸びるのではないかと見ているんですが、その辺のお考えをお聞かせていただきたいと思います。
○田所参考人 今後のドナー増大のために、そのような要望があるということは、重々認識しております。もちろんこれまで財団が中心となって、ボランティアの方も協力して、この問題については取り組んでいますので、その方々と十分に相談の上で、どのような形で取り組んでいけるのか、何を引き継いでいけるのか、そこは慎重に、なおかつ前向きに検討していきたいと考えています。
 ただ、血液センターも血液事業は血液事業としてやっておりますので、そういった新たな事業として取り組む場合は、やはり事業として成り立つような形を、それもあわせて考えていきたいと思います。
○梅田委員 是非とも前向きな方向での検討をいただきたいと思います。
○小澤委員長 ほかにはいかがでしょうか。張替委員、どうぞ。
○張替委員 アフェレーシスとしては、赤十字社というのは、十分なテクニックがあると思うんですけれども、今後、末梢血幹細胞の採取に日赤として取り組むかどうかということに関しては、いかがでしょうか。
○田所参考人 それも幾つか要望が述べられている点ではありますけれども、今のままですぐにできるかというと、実はできない。末梢血幹細胞の採取機器というのは、献血ルームにはありません。採取機器が違うということが1つと、実際の採取に掛かる時間とか、リスクというのは、通常のアフェレーシスに比べるとちょっと高いところがあって、今、病院でやられている場合は、いろんな後方施設があって、何かあれば、そちらでもバックアップできるという体制があるんですが、そこら辺をどうするかという点は、今後、医療機関での経験の蓄積が行われて、対応策がきちっとできてくる中で、もう一回検討してみる価値があると思っています。現時点で簡単にできますという状況ではないと思います。今、言ったような問題点を解決した上で、どう考えるか、及び日本においてどれぐらい末梢血幹細胞移植の需要があるのかという点も踏まえて、考えていかなければいけないと思います。
○小澤委員長 フェレーシスの機械・機器がそろえばいいという単純な問題ではないということですね。
○田所参考人 そうですね。機器は買えば済むだけの問題ですけれども、ドナーの方の安全上のバックアップとか、そういうことも含めて、少し検討する必要がある。常時配置できる医師をどのように置くかという問題もあるかと思います。
○小澤委員長 ほかにはいかがでしょうか。何かございますか。
 ワンポイントアクセスの問題もお話されましたけれども、この辺は、今、円滑に動いていて、余り問題はないということでよろしいのでしょうか。坂巻委員長代理、移植医の立場からすると、この辺の状況はいかがでしょうか。
○坂巻委員長代理 ワンポイントでいけるシステムを、もうちょっと進めてほしいと思っております。ただ、前よりも、インターネット上を通じてのものは、随分改善されてきてはいると思います。
 あと、移植医の立場で言うと、確かに先ほど宮村委員からありましたように、移植医の間ではバンク間に品質の差があると言われていたことがございました。それは品質の問題というよりは、測定上の問題ではないかと、個人的には思っているんですが、そういうものも含めて、基準を統一化していただければ、こういう問題も解決されていくのではないかと思っております。以前よりは随分アクセスの仕方も改善はしていると思いますが、今後さらに統一できるように御努力いただければと思っております。
○小澤委員長 具体的にはどの辺を使いやすくしてほしいのですか。
○坂巻委員長代理 我々のところでは、まだ各バンクに直接依頼しないといけない。ただ、それぞれのバンクが別々にある段階では、それはやむを得ないだろうという気はするんですが、あとはシッピングの問題だと思っています。
○田所参考人 恐らくシッピングのときにも、受けていただけるところで、条件が違うことがあるんですが、基本的な考え方として、シッピングから先は、今のところ医療機関の責任になっています。ただ、その上で、サービスとして紹介をされるという格好で、各バンクが協力しているという形であるという前提が1つあって、なおかつ、そこをもうちょっとやりやすくするにはどうしたらいいかという問題は、受託業者さんのやり方がそれぞれによって違うようですので、そこを統一していただくようにお願いするということがあろうかと思います。
 最終的には、いつ送るかとか、病院の都合もあって、各バンクとの直接の話し合いというのは、どうしても避けられない問題があろうかと思いますので、現状、決定まではネット上でできますから、その先はいろんな手順、運送業者の方のやり方を統一していただく中で、なるべく均一のものにしていく。しかし、直接の連絡はしていただかざるを得ないのではないかと思います。間に誰かが入ると、かえって混乱する可能性もあり得ると思います。
○小澤委員長 ほかにはございますか。宮村委員、どうぞ。
○宮村委員 私はセカンドオピニオンとか、患者さんに説明する上で、新しい検索システムというのはものすごく有用であり、その場でイメージとして、さい帯血バンクと骨髄バンクの両方を一遍に患者さんと一緒にディスカッションできる非常にすばらしいシステムで、なおかつこれを利用して、今後そこの画面から骨髄の方もアクセスできるようなことも考えているのは、非常にありがたく思っております。
 私の質問は、先ほど加藤先生から、さい帯血バンクは、日赤系が4つと、日赤系以外が4つで、その2つがあっていいのではないかという御意見だったと思います。日本赤十字社の観点からすると、日赤系と日赤系以外というのは、最終的には全部日赤系になっていった方がいいのか、それとも別々にあった方が、お互い競争して、アクティビティーが上がるのか、そこら辺のお考えはどうなんでしょうか。
○田所参考人 それについては、今までそれぞれのバンクが努力をされて、貢献もしてきましたので、そこからどういう選択をするのかは、それぞれのバンクで決定されていくことになろうかと思います。ただ、我々としては、今後、求められるかなりハードルの高い品質基準で、それぞれ認可を受けていく、ある基準の中で認可を受けていくという点では、日赤にとっても楽なことではないと思っていますので、それに対応できるべく、日赤自身は努力をしてまいりたいし、ほかのバンクにも協力はしていきたいと思っています。
 私の立場から、1つがいいのかというお話は、先ほど申しましたように、各バンクに決定していただくことだと思います。
○小澤委員長 よろしいですか。
 田所参考人、どうもありがとうございました。
 続きまして、一般社団法人日本造血細胞移植学会の御意見をお伺いしたいと思います。岡本委員に15分以内でお願いしたいと思います。
○岡本委員 日本造血細胞移植学会理事長の岡本です。
 きょうは日本造血細胞移植学会と移植医療の立場から、どういったことができるか、どのようなことを要望したいかということをお話申し上げます。
(スライド)
 これは先ほど出ましたスライドなので割愛いたしますが、このように、日本では非血縁者骨髄・臍帯血は、着実にその件数を伸ばしているというスライドです。
(スライド)
 この中で、加藤先生のスライドにもありましたように、移植がどういう方向に向いて増えているかということですけれども、左が急性骨髄性白血病、右側が骨髄異形成症候群で、いずれも移植以外の治療がほとんどない状況でございます。
 治療の進歩がない状況でございますけれども、そういった中で、年次別に見てまいりますと、移植件数が着実に増えています。ブルーのバーで示している55歳以上の高齢者の増加が、この10年間の移植件数の増加につながっていると言えると思います。言葉を変えて言いますと、今の移植は患者さんの高齢化が進んでいるということです。
(スライド)
 これは説明いたしますが、同種造血幹細胞移植を受けた後の方たちの死亡のリスクがどうなっているかということです。この方たちは、病気が再発する方もいらっしゃいますけれども、左側が急性骨髄性白血病、右側が骨髄異形成症候群です。5、10、15、20と書いてあるのは、年齢、性別を一致された普通のポピュレーションの方たちの死亡の危険・リスクに関して、どれぐらいこの方たちが死亡のリスクが高いかということを示しています。確かにだんだんに下がってまいりますけれども、10年を過ぎていきますと、また上がってくる。特に骨髄異形成症候群では、途中から上がってきているという状況がおわかりいただけるかと思います。
 何を意味しているかというと、移植をすることによって、病気は治したけれども、その後の合併症等々によって、致命的なことが起こってくる可能性があるということです。二次性の後期の合併症が問題になることと、死亡には至らないまでも、障害を受けることによって、通常の社会復帰等々ができない可能性があることが、今後、十分に懸念されるということです。特に患者さんが高齢化することによって、それは大きく考えなくてはいけない問題と理解をしています。
(スライド)
 ここまでの移植の現状をまとめますと、移植を受けるチャンスは確実に拡大しました。移植後の長期生存者の患者さんも着実に増加しています。先ほどの加藤先生のスライドにありましたように、移植成績は若干進歩しておりますけれども、もとの数が増えていますので、長期生存者は全ているわけです。
 しかし、今後の移植の方向性としては、全体を増すではなくて、個々の患者さんの移植で治る確率をどう上げるかということと、その治癒の質をどう担保するかということがすごく大切です。ですから、造血細胞移植の今後の大きな課題は、今の移植を最適化、オプティマイジングする、どのようにうまく使っていくかということが、重要だと思います。これがそのイメージです。
(スライド)
 日本造血細胞移植学会では、ここに書いてありますように、こういった方向に向けて、さまざまな情報の共有、患者さん・ドナーのデータを収集する、患者さん・ドナーの登録事業です。
 そのデータを用いて、さまざまな情報を発信し、それを用いた臨床研究を行っております。
 日本の場合には、移植施設が多数存在しますので、その質とレベルを担保するということで、さまざまなガイドラインを作成し、移植医療の質の均てん化に努めております。
 ドラッグ・ラグの問題に対して、新規薬剤技術、情報の導入・収集といったことについても力を入れています。
 さらに重要なことは、移植医、移植医療を支えるパラメディカル、看護師、PT、後で出てまいります、トランスプラントコーディネーター(HCTC)、データコレクター等々のパラメディカルの育成ということにも力を入れておりますし、海外の移植関連組織、アメリカ、アジア、全世界等々のここに書いてあるような関連組織との連携を、今、図っているところです。これが今の私たちの活動です。
(スライド)
 今日、強調したいことは2つなんですけれども、1つはデータセンターです。これは現在の私たちの学会のデータセンターがどのようになっているかということですけれども、移植施設から学会のデータセンターにデータが入りまして、それが造血細胞移植学会、あるいは日本小児・がん学会、骨髄移植推進財団、日本さい帯血バンクネットワークにデータが移るわけですが、以前はこのデータが4つのところにばらばらに存在していた。これらをまとめることによって、今、この学会としては、かなり追い風にはなってきているという状況であります。なぜこのようなデータセンターが必要かということなんですけれども、移植にとっても極めて重要なシステムになります。
(スライド)
 例えば今、骨髄、末梢血、臍帯血移植の選択があって、前処置も骨髄破壊的移植、非破壊的移植、年齢は撤廃をされて、さまざまな年齢まで移植ができるようになったということで、移植の適用というのは、かなり多様化してきたわけです。
 この中でどういった移植をすればいいかということは、なかなか難しいことで、実際に私たちが移植の現場で日々直面している問題は、どういった移植を、どういった細胞を使って、どういった前処置でやれば一番ベストなのかということについての答えがほしいということです。
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 このような答えに関して、基本的に化学療法であれば、その薬を使うか、使わないかという無作為比較試験というものがゴールドスタンダードで、それによって、この薬がいいか、悪いかという結論が出るわけです。
 実際にそれが移植という現場において成り立つかということですけれども、これはアメリカで行われた研究で、非血縁者の骨髄移植と末梢血幹細胞移植はどちらがいいんでしょうかということを、2004年から2009年まで5年かかって、患者さんとドナーを無作為に割りつけて行ったスタディーです。550人を無作為に割りつけました。あれだけ臨床研究のシステムが整っているアメリカでさえ、5年かかった研究です。
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 結論は、ここにありますように、末梢血も骨髄も非血縁の場合には、全く同等の成績ですということがわかりました。でも、この5年間に世の中は随分進歩しました。これは骨髄破壊的移植を用いた白血病、あるいはそれに準ずる病気に関するものです。でも、実際に私たちが知りたいのは、良性疾患についてはどれがいいんでしょうか、年齢がもっと高い方はどうでしょうか、病気がもっと進んでいる方ではどうなんでしょうかということになるわけですが、比較的移植症例は少ないですし、移植の領域において、造血幹細胞に関しては、無作為比較試験は無理な相談になるわけです。
 そこでレジストリーデータというものが必要になるわけですが、この5年かかってつくったデータは、アメリカが5年前につくったデータと全く同じデータです。つまりレジストリーデータを使って結論を出したものと、全く同等のデータを彼らは得ているということで、言葉を変えて言うと、レジストリーデータは、そういった意味では、極めて重要ということです。
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 これは先ほど加藤先生がお示しになったスライドです。英語で申しわけないですが、急性骨髄性白血病のときに、骨髄を使う方がいいですか、臍帯血を使う方がいいですかということを、レジストリーのデータを使って解析したものです。2年の生存率を見ると、骨髄の方がよくて、どちらかというと、臍帯血の場合には、移植の関連の死亡が多いようですという結論になっています。
 これを見て、どちらがいい、悪いということもありますけれども、臍帯血の場合には、こういった問題点を克服することによって、その利用価値を高めることができる。さまざまな解釈ができてくるわけですけれども、こういった情報が極めて貴重な情報だと思います。
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 もう一つ例を示しますが、前回のヒアリングのときに、若いドナーがいいという話がありました。これはEBMTというヨーロッパのデータですけれども、50歳以上のMDSの患者さんをとってきて、その方たちがMUD、HLA適合の非血縁者30歳未満、30歳以上、HLA適合のドナー、これは患者さんが高齢者なので、ドナーの方も高齢ですけれども、どういうふうに成績が違うかを示したものです。単純には言えないですけれども、このデータを見ますと、若い非血縁者のドナーは、年をとった非血縁者のドナーよりも成績は明らかによさそうだ。血縁者よりもひょっとしたらいいかもしれないということから、彼らは前回の連絡協議会の野村さんから説明があったような方向に話を切りかえたわけです。
 こういったことも、日本の中で本当にどうなのかということを出していく。単に患者さんだけではなくて、ドナーに関するデータ等々も非常に重要なことが、このデータセンターからは得られるということです。
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 今、学会では、これまで私たちが自主的に行ってきたドナーデータ、移植成績データの登録、データセンターをさらに充実させて、研究者、医療者に質の高いデータを提供するとともに、患者相談に有用な共通なデータを提供するデータセンターの設立について、内部で話を進めているところです。極めて重要な問題だと思います。
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 次の問題は、先ほど来出ております血液内科医の負担です。これは血液内科医が今やっている業務を示してありますが、さまざまな書類とか、その他の雑用等々が非常に多くて、血液内科医がデータを入力するわけですけれども、本来、移植・採取に忙しい中、的確にデータを打ち込むことはなかなか難しい。彼らの負担を減らして、しっかりとしたデータを入れておくことが、データセンターのデータの質を担保するのに、極めて重要だと御理解いただきたいと思います。
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 これは私たちがよく使うスライドですけれども、これが移植医で、トキと同じで絶滅危惧種と言われております。トキは国の厚い保護を受けておりますが、移植医は国の保護を受けておりません。そういうところも十分に御理解いただきたいと思います。
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 もう一つ重要なことは、日本の年齢分布ですけれども、20~60歳、特に若いところがだんだん減ってまいります。患者さんも高齢化するとともに、移植医も高齢化しております。移植医の高齢化も考えあわせますと、若い移植医をしっかりと育てていくことは、これからの学会の急務と理解をしています。
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 もう一つ、移植をうまく成功させるためには、タイムリーに造血幹細胞をとって移植をする必要があります。ですから、先ほど来出ております、コーディネート期間の短縮は急務です。これに関して、先ほども窓口の一体化、今はできておりませんけれども、その後のコーディネーションプロセスに関しても、ワンストップアクセスで話が進むことは、移植医の負担が随分減りますし、それによって、その労力を採取・移植に向けることができます。
 さらにもっと大切なのは、何点か指摘されましたように、ドナーをリクルートしたり、リテンションレート、いかに気持ちを維持していって、最後までもっていくかということ。どんなにドナーがあっても、半分以上だめになってしまうということは、よく経験することです。これは絶対に避けたいと思います。
 それから、HCTCというコーディネーター、コーディネーションのプロセスを助ける職種をつくることによって、そこをしっかりと担保していく必要があると思います。
(スライド)
 学会として、採取をどう効率化させるかですけれども、採取施設は、前回センター化という話も出ましたが、余り現実的ではありません。ただ、移植施設の中には、採取のための手術枠が確保されている病院があります。現在、その枠がフルに利用されているかというと、必ずしもそうではありません。緊急のキャンセル等があります。そこをうまく充実させていくことによって、採取はある程度効率よく行える可能性があります。
 ドナーの方は、今、なかなか地域を動きませんけれども、動くような体制をつくつていただくことも重要です。
 それから、繰り返しますけれども、医師の負担軽減です。
 現時点では、末梢血幹細胞採取を同じ施設がオーバーラップして行っているという現状がございます。今、田所先生は、末梢血はなかなか難しい問題があるというお話をなさいましたけれども、それに向けて、末梢血の方に進んでいくことが、将来の需要はともかくとして、アクセス数を迅速に広げていくということに関しては、急務ではないかと思っています。
 そして、若い医師の育成です。
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 これがまとめになりますけれども、次世代の移植医の育成。
 研究費の確保。
 臨床研究を支えるシステムの充実。
 繰り返しますが、移植医の負担軽減に寄与するシステムの構築とリソースの確保。
 移植医療の標準化と質の向上。
 それから、アクレディテーションです。
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 これは1,000万の人口に対して行われている移植が、どれぐらいかということを示します。日本ではかなり盛んに行われております。盛んに行われている日本をもって、現在、日本はアジアをリードして、ヨーロッパのEBMT、アメリカのCIBMTRとともに、APBMTというアジアの移植をリードする立場にあります。
 これがなぜ大切かというと、今、出てきたアクレディテーションですけれども、日本はこれだけの技術を持っていながら、良好な移植成績を出していながら、臍帯血、骨髄バンク等のアクレディテーション、あるいは移植施設のグローバルアクレディテーションに必ずしも合致しているわけではありません。今後はそれを目標として体制を整えていくことが大切です。
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 これは移植チームの配置を示してありますけれども、きょうお話になった団体がここにあります。私たちの学会はここにありますし、移植医はここにあります。
 ここにお話に来ていただいた団体の方々は、今までお互いにスクラムを組んでいましたけれども、インディペンデントであったものが、今回の法律によって、お互いの壁がなくなりまして、移植に大切なチームの構図にうまくフィットしていくことが、極めて大切だと理解をしています。
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 そういった中で、もう一つ、日本造血細胞移植学会の立場としては、私たちはある意味本当に中立な立場にありますので、さまざまな団体の方の議論をリードしていって、最適な方向にこの法律の施行もっていくという使命があるのではないかと理解しています。
 最後にこれが理想的なチームということです。
 どうもありがとうございました。
○小澤委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御意見に対しまして、委員から、御意見、コメント等はいかがでしょうか。難しい問題が多いですね。
 坂巻委員長代理、どうぞ。
○坂巻委員長代理 今のプレゼンテーションの中で、岡本先生は、移植医の現場の負担軽減ということを大分強調されていたと思います。私もまさにそのとおりだと思っております。データを入れるだけではなくて、日常の診療の中で、血液内科医に限らず、臨床の現場での負担というのはかなり大きいんですが、日本造血細胞移植学会として、方策とリソースの確保を挙げていらっしゃいますが、具体的にどういうことを考えていらっしゃいますか。
○岡本委員 今、行っているのは、コーディネーターの育成になります。
 それから、近い将来考えなくてはいけないのは、データを入力する方の育成も重要だと思います。まず教育をして質の担保をすることと、そういったパラメディカルを育てていって、それを制度の中においてしっかりと整備していくこと、しっかりと進めていくことが、学会として必要かと考えています。
○坂巻委員長代理 それに対してインセンティブがつかないと、施設としては、そういうものをつけにくいという現状があると思うんですけれども、それについては、いかがですか。
○岡本委員 まさにそのとおりで、病院としては、そういったものを雇うことに抵抗があります。今もボランティアで、医師あるいは一部看護師がやっているものは、本来の業務ではないと思いますので、そういったことをボランティアでこのまま続けるのではなくて、これだけ大切なレジストリーですから、診療報酬は難しいかもしれませんが、何らかの形で、しっかりとした制度としてつくっていくことが必要かと思います。
 移植医はどんなに採取が大変でも、どんなに移植が大変でも、決してへこたれる人種ではないと思います。それをやりたいんだけれども、やたら雑用が多いということで疲弊をして、去っていくという、この構図を何とかしないといけないと思います。
○小澤委員長 そのほかに御意見ございますか。山口委員、どうぞ。
○山口委員 先ほどの齋藤先生の話にもあったんですけれども、末梢血幹細胞移植は、日本は割と慎重にやってきたせいか、骨髄の方にばかりいってしまっているところがあると思うんですが、岡本先生はこれを進めるべきだろうというお話だと思うんですが、これを進める上で、今、課題になっていること、要するになぜこれがなかなか末梢血の方に行かないのかということが、もしありましたら、お願いします。
○岡本委員 それは多分宮村先生がお答えになられると思うんですけれども、1つは、慎重に事を進めるという、いつもの日本のパターンです。現状で移植を必要としている患者さんはどんどん増えている。採取施設に関しては、学会としては、少しキャパシティーを広げられるけれども、それでは多分十分ではない。ですから、末梢血が問題となるような合併症に対する施策をうまく打っていくことによって、それも同時に使っていくということをしていかないと、今まで慣れてきたから、これでいきたいということではなくて、やはりそちらの方向に世の中は流れていくと、私は理解しています。楽ですし、お隣の韓国はほとんど末梢血になってしまいましたし、そういった方向性になっていくと思います。
 宮村先生、いかがですか。
○宮村委員 なぜ増えないかということを1点だけ申し上げます。現在、こちらが末梢血と骨髄のどちらでもいいですとお願いをしても、ドナーさんが1時間以内に採取施設に行けることが今の骨髄バンクの基準となっていて、これは世界にはない、ドナーさんの安全を第一にしたことなんです。このために約90%のドナーさんが、採取施設が近くにないということで、できないんです。
 現在、ちょうどアンケートを出したところですけれども、全国の施設で、うちは骨髄移植しかやらないけれども、末梢血のドナーさんが近くにおり、いざというとき面倒を見ますということが可能であれば、末梢血が採れます。そうすると、一遍に10倍ぐらいに増えると思います。
○小澤委員長 採取施設の不足の問題は、末梢血幹細胞移植を増やすことで、何とかなるという理解でよろしいですか。
○岡本委員 ある程度は解消されると思います。
○小澤委員長 それでも骨髄採取施設は、もう少し増やす必要があるということですか。
○岡本委員 骨髄採取を中心に行う施設というのは、なかなか難しいと思います。
○小澤委員長 増やすのは、現実的には難しいということですね。
○岡本委員 今の現実は、移植をやると同時に採取をやっている。ヨーロッパはそうですが、アメリカは全くそれが違って、採取は採取の病院、移植は移植の病院と分かれています。同じところもありますが、分かれているわけです。採取をすることによって、かなりのインセンティブがあるわけです。日本の場合、実際に移植をやっているんだけれども、その分、採取をしてあげようというモチベーションで動いている限りにおいては、劇的に採取施設を増やすことは難しいと思いますし、まして採取施設といったものを独立させることによって、そこに果たしてどんな移植医が来るのか。多分誰も行かないと思います。
○小澤委員長 日本ではほとんどの施設が移植もできなくてはいけないという感じですから、移植施設の数が圧倒的に多いですね。
○岡本委員 そうですね。
○小澤委員長 ですから、結局両方、採取もやらざるを得ないという形になっているのでしょうか。
○岡本委員 そういう形で始まったわけです。
○小澤委員長 ほかに御意見はございますか。どうぞ。
○武藤委員 御説明ありがとうございました。
 大変勉強になったんですが、先生方が自主的にされている移植患者さん、ドナーのデータの登録の件で1つお伺いしたいんですが、国内で行われているものは、全部カバレージできているという理解でよろしいんでしょうか。登録漏れみたいなものはないんでしょうか。
○岡本委員 大多数はカバーできていると思います。
○武藤委員 もう一つ、追跡期間をお伺いしたいんですけれども、これは日本のインフラの問題で、死亡と死因まで全部入れた、本当にきれいなデータを持っているところは、いろいろな疾患でなかなかないのが現状なんですが、先生方のところでは、追跡期間はどれぐらいとられていますか。
○岡本委員 1年に1回です。
 今、移植のデータで、長いのは10年を超えていると思います。
○武藤委員 そうしますと、通院されている間はずっとということですか。
○岡本委員 はい。それが逆に日本の強いところで、各移植を行った施設でフォローすることが多いです。確かに移りますけれども、非血縁者間骨髄移植が始まったときに、移植に関係する病院というのは、お互いに骨髄をやりとりする。あるときはとるし、あるときは受けるということで、かなりネットワークがあります。そういった意味では、連携が非常によくなっているんです。ですから、施設を移るときも、関連施設の中からお願いしますという形になってくると、欧米に比べると、かなりフォローアップの体制は整っていると思います。
○武藤委員 死亡日と死因をどうとるかというのが、追跡できれいなデータをとるときに、いつも問題になるところなので、それでお伺いしました。ありがとうございます。
○小澤委員長 坂巻委員長代理、どうぞ。
○坂巻委員長代理 その点はとても重要です。今、岡本委員が説明しましたように、各施設が努力して患者さんをフォローアップしているんですが、それでも追跡し切れない患者はどうしても出てきます。本来は地域がん登録を使って補足すれば、もっと補足率は上がるはずなんです。ところが、残念ながら、地域がん登録のシステムがまだ不十分なので、それが十分に使えないんですが、そういうものと兼ね合わせれば、予後の補足率はぐっと上がるはずなんです。だから、そういうものと一緒にやっていくと、より正確なデータになると期待しています。
○小澤委員長 宮村委員、どうぞ。
○宮村委員 今の坂巻委員長代理の御発言に対して追加なんですけれども、もう一つの方法としては、小児科あるいは一部我々もやっているんですが、患者さんが生涯持っていく手帳に、どういう前処置で、放射線をどのぐらい受けたかとか、これまでどういう薬を使っていたか等の記載があれば、いずれ20~30年経って病気になったときに非常に大事な情報になる。そういうものを与えると同時に、そこにこの患者さんについての情報が何かありましたら、もとの病院までお知らせくださいという、生涯持っていく手帳なども候補の1つだと思います。
○小澤委員長 ほかにはいかがでしょうか。鎌田委員、どうぞ。
○鎌田委員 患者の立場から3点申し上げたいと思います。
 1点は、移植ができるかどうかということだけでなく、移植した後、その先を見据えていくというお話にはとてもありがたく思いますし、そういう時代になったんだということを、とても感慨深く思います。
 もう一つ、データの一元化についても、私たち自身が受けてきた治療も、それまでにたくさんの患者、生きている患者さんも、亡くなってしまった患者さんもいるわけですが、そういう患者さんたちの経験、存在と、その患者さんたちを救おうと思って、先生方や医療者の方々が努力してこられた歴史があっての治療だと思うので、それが個々の先生方や施設での経験として残るだけでなく、一元化されて、全部データとしてきちんと残っていくというのは、私たちにとってもありがたいですし、これから先の医療に生かされていくであろうということで希望が持てますし、それもすごく心強い試みだと思いますので、是非頑張っていただきたいと思います。
 あと、そういったことを実現していく上で、私が治療を受けている中でも、先生方の御負担がすごく重い、先生方のハードな生活というのはずっと見ていました。いろいろな負担のあり方というものも、仕組みを考えるとか、そういった工夫が非常に大事だと思います。それこそがまた患者さんに還元されていく、よりよい治療につながっていくと思います。法律の施行に当たっても、そういったことに少しでも役立てる何かを見つけていけるといいと思いました。
○小澤委員長 ほかにはいかがでしょうか。
 1つ、これまでもたびたび問題になっている移植施設のセンター化の問題があります。これはいろいろなスケールで、意味合いが変わってくるかもしれませんけれども、全国に2~3カ所のような大きなセンター、あるいは拠点病院のようなイメージのところ、そういうものを設置することについては、学会としては、どうお考えでしょうか。必要と考えますでしょうか。
○岡本委員 センター化というのは、アメリカの状況ではないかと思います。アメリカはセンターという形でしたが、今、かなりいろんな施設ができてまいりまして、彼らもセンターだけでやっているわけではなくて、さまざまな施設が入ってきています。ですから、それを今度はCIBMTRとか、そういった形のグループをつくり出してきたわけです。それでも施設の数が限られているということは、患者さんは、移植にはこの病院に行くけれども、実際その患者さんにはもとの主治医がいて、そちらに戻ってくるわけです。そこで縁が切れるわけではないんです。そこで移植施設がとってしまうことは、自分たちのチャージができる患者さんをとられてしまうということなので、そこら辺の役割分担はかなりはっきりしているわけです。
 日本の場合には、そういった風土が余りないですし、ドクターフィーがありませんので、そういった制度の違いからも、余りフィットはしない。ですから、先生のお答えとして、どんどんそちらの方向にいくというわけではないですが、こういった法律を整えていく中で、地域の中でのある程度の統合みたいなものは出てくるかもしれません。でも、あまりドラスティックにはならないと思いますし、多分それはゴールかもしれませんけれども、進む方向としては、ステップ・バイ・ステップで進んでいく。もし集約化を目指すのであれば、そういったやり方が望ましいのではないかと思います。だから、現時点で、いきなりセンター化をすることは、まず不可能だと思います。
○小澤委員長 ほかには何か御意見ありますか。
 血液内科医の減少を食い止めるのが一番難しいような感じがしますけれども、どうもありがとうございました。
 それでは、本日の議事は以上になりますけれども、最後に事務局から連絡をお願いいたします。
○西脇室長補佐 本日は活発な御議論をいただきまして、ありがとうございました。
 また、参考人として御参加いただきました3名の皆様、貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。
 次回、法施行に向けた議論の第4回目は、平成25年2月22日16時からを予定しております。
 また、法施行に向けた議論の第5回目は、平成25年3月15日10時からを予定しております。
 先生方におかれましては、お忙しいところ、恐縮ではございますが、日程の確保に御協力いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。
 なお、机上のファイルにつきましては、各委員の専用とし、次回以降も使用しますので、会議終了後、机上に残していただきますよう、お願いいたします。
 以上です。
○小澤委員長 追加資料としまして、今後の審議スケジュールの案が書かれています。第37回は2月22日になりますけれども、そこに書いてありますようなことについて、いよいよ本格的な議論が始まりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の会議を終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)
<<照会先>>

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代表 : 03(5253)1111
内線 : 2362 ・ 2363

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