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2013年3月19日 第2回「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定検討会 議事録

健康局がん対策・健康増進課栄養指導室

○日時

平成25年3月19日(火) 10:00〜12:00


○場所

厚生労働省専用第23会議室


○出席者

構成員<五十音順・敬称略>

雨海 照祥 (武庫川女子大学教授)
勝川 史憲 (慶應義塾大学スポーツ医学研究センター教授)
河野 雄平 (独立行政法人国立循環器病研究センター生活習慣病部門長)
木戸 康博 (京都府立大学大学院教授)
葛谷 雅文 (名古屋大学大学院教授)
熊谷 裕通 (静岡県立大学教授)
児玉 浩子 (帝京平成大学教授)
佐々木 敏 (東京大学大学院教授)
佐々木 雅也 (滋賀医科大学附属病院栄養治療部病院教授)
柴田 克己 (滋賀県立大学教授)
柴田 重信 (早稲田大学教授)
曽根 博仁 (新潟大学大学院教授)
多田 紀夫 (東京慈恵会医科大学教授)
寺本 民生 (帝京大学教授)
徳留 信寛 (独立行政法人国立健康・栄養研究所理事長)
中村 丁次 (神奈川県立保健福祉大学学長)
菱田 明 (浜松医科大学名誉教授)
深柄 和彦 (東京大学附属病院手術部准教授)

事務局

宮嵜 雅則 (がん対策・健康増進課長)
河野 美穂 (栄養・食育指導官)
芳賀 めぐみ (栄養専門官)
佐藤 礼子 (がん対策・健康増進課長補佐)

○議題

(1)「日本人の食事摂取基準(2015年版)」策定にあたり配慮すべき課題について
(2)その他

○議事

○河野栄養・食育指導官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第2回「『日本人の食事摂取基準(2015年版)』策定検討会」を開催いたします。
 構成員の先生方には、御多忙のところ御出席いただきましてありがとうございます。
 前回御欠席の構成員を御紹介させていただきます。
 東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授、門脇孝構成員でございます。
○門脇構成員 東京大学の門脇でございます。主に糖尿病を専門にしております。よろしくお願いいたします。
○河野栄養・食育指導官 本日は、全ての構成員の先生方に御出席いただいております。
 なお、矢島局長は、国会業務のため、欠席させていただきます。
 引き続き、配付資料の確認をさせていただきます。
 配付資料としまして、資料1「第1回『日本人の食事摂取基準(2015年版)』策定検討会 論点整理」。
 資料2、分厚いホチキスどめの資料になりますが「標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】(案)」。
 資料3以降が各構成員の先生方からの提供資料となります。
 資料3「糖尿病における食事療法の現状と課題」。
 資料4「エネルギー代謝の概論について」。
 資料5「エネルギー消費量の測定と臨床への応用について」。
 資料6「日本人の食事摂取基準(2010年版)におけるエネルギー・主要栄養素の課題について」。
 資料7「高齢者と栄養 −若年者との相違を中心に−」。
 資料8「日本人の食事摂取基準(2010年版)での乳児における課題」。
 資料9「摂食のタイミング(時間栄養学)」となっております。
 このほかに、机上配付ですが「『日本人の食事摂取基準』策定検討会」ということで、ブルーの紙ファイルは第1回の検討会の資料をつづっているものでございます。2回目以降も活用しますので、机上に置いて、お帰りの際にはお願いいたします。
 不足等がございましたら、事務局へお申し出をお願いします。
 それでは、以後の進行につきましては、菱田座長にお願いいたします。
○菱田座長 皆さん、おはようございます。
 それでは、第1回の検討会の論点について、事務局でまとめていただいたものの御説明をお願いいたします。
 また、前回「標準的な健診・保健指導プログラム」の話題も上がっておりましたので、あわせて説明をお願いいたします。
○河野栄養・食育指導官 それでは、資料1に基づきまして、第1回の策定検討会で先生方に御発言いただいた内容を整理したものを説明させていただきます。
 1点目としましては「健康増進及び生活習慣病の発症予防に重症化予防を加えることについて」で、この点につきましては、基本は健康な者とした上で、疾病がある場合はこういう注意が必要、あるいはこう使用すればよいという流れを示してはどうか。
 健康から病気に移行する過程での対応がわかるように作成すべきであり、それぞれで基準値が異なることについても、どう理解し、どう使用するかというコンセンサスをつくっていくべきではないか。
 3点目として、重症化予防は大きなチャレンジ。一方で、患者を対象とすると「病態の改善」と「栄養の改善」が矛盾する場合もあるので、こうした点への配慮も必要。
 さらに、食事摂取基準に、従来の値と重症化予防のための値を併記することで、混乱が生じないよう、示し方や名称については工夫が必要ということで、具体例としてはコレステロールや食塩といった健康人の値と疾患ガイドラインの値に乖離があるものについて、特にこういった混乱が生じないよう、示し方について工夫が必要という御意見をいただきました。
 また2点目の、策定に当たり、重症化予防を加えることについて以外に配慮すべき課題についてということでは「(1)エネルギーと主要栄養素について」としまして、たんぱく質、脂質、炭水化物のエネルギーバランスをどうするか。
 低たんぱく食は、相対的な高炭水化物食または高脂肪食となるが、どう妥協点を探るか。
 さらに、最近、低炭水化物食などが非常に注目を集めている反面、総エネルギー量の重要性がやや軽視されている傾向があることから、個々の栄養素に限定して論じるのではなく、代謝全体の包括的な視野に立って評価する必要があるのではないか。
 (2)として、ライフステージにつきましては、高齢者について、疾病予防より「虚弱予防」に配慮が必要。
 妊産婦・乳幼児については、次世代の健康の観点から重要。
 「(3)その他」としましては、時間栄養学については、現時点ではエビデンスのほとんどが動物実験のデータではあるが、今後につながる視点として重要であるのではないか。
 3点目として「レビューを行うにあたり配慮すべき課題について」は、今後のレビューは、参考文献の「量」より「質」を重視すべきではないか。
 エビデンスレベルが高いところと、低いところがある現状を踏まえて、そういったことがわかるように明記してはどうか。
 また、日本人のエビデンスが少ない部分をどのような手法で策定するか。
 特に4点目にありますように、日本食品標準成分表により栄養素等摂取量は把握できるようにはなってきたが、人側の尿中や血中のビタミン等のデータが非常に少ないため、どのように整理するか。
 こういうところが1回目の検討会でいただいた主な論点になります。
 以上でございます。
○菱田座長 ありがとうございました。前回の論点を簡略にまとめていただいたと思っております。この論点について、どのような結論を出していくのかということが求められるかと思います。
 きょうは、実際にはもう少しいろいろな構成員の方からの御発表をいただくということで、時間的に十分、その議論をするところまで行くかどうかわかりませんけれども、こういう課題が前回あったということを確認をいただければと思います。
 
○河野栄養・食育指導官 その前に、事務局から特定健診・特定保健指導の解説をさせていただきたいと思います。
○佐藤課長補佐 資料2について御説明をさせていただきます。お手元に、資料2を御用意ください。
 他の分野での取り組み事例ということで「標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】(案)」を御紹介をさせていただきます。
 この標準的な健診・保健指導プログラムは、平成20年度から始まりました特定健診・特定保健指導を中心とした健診・保健指導の現場で、健診・保健指導実施者、つまり医師、保健師、管理栄養士等の方々に現場で活用していただくためのマニュアルのような位置づけのもので、平成25年度から第2期医療費適正化計画という期間に入るということで、それに合わせまして標準的な健診・保健指導プログラムの改訂版を作成しているところです。現在、最終的な段階にございますので、まだ(案)という段階ですけれども、年度内に公表する予定でございますので、これにつきまして御説明をさせていただきます。
 ここでは、健診・保健指導の考え方、健診ではどういったことをする必要があるのか、保健指導ではどうなのかということをそれぞれ編に分けて御説明をしておりますが、本日はその中で特に受診勧奨・情報提供に関する部分について御説明を申し上げたいと思います。
 ページをおめくりいただきまして、31ページをごらんいただけますでしょうか。ここは「第2編 健診」の中の「2−2 健診結果やその他必要な情報の提供(フィードバック)について」と題した部分でございます。
 この標準的な健診・保健指導プログラムは、健診・保健指導の在り方に関する検討会という、永井良三先生に座長をお務めいただいておりますけれども、そちらの場での御提言を踏まえて改訂したものです。その御提言の中で、現在の健診・保健指導は、保健指導を重視することはそれはそれで重要なことなのですけれども、受診勧奨・情報提供がまだ不十分であるという指摘をいただきました。その御指摘を踏まえて、この2−2の部分は全体が新規の項目になってございますが、ここで情報提供が非常に重要であるということを御紹介してございます。
 「(1)基本的な考え方」の1つ目の○をごらんいただきたいと思いますが、
○ 生活習慣病は自覚症状を伴うことなく進行することが多い。健診における検査データは、対象者が自分自身の健康課題を認識して生活習慣の改善に取り組む貴重な機会である。こうした効果を最大化するためには、選定・階層化に用いられるか否かに関わらず、個々の検査データに関する重症度の評価を含めた健診結果やその他必要な情報について、健診受診後すみやかに全ての対象者に分かりやすく提供する(フィードバックする)ことが重要である。
としてございます。
 少し飛んでいただきまして、同じページの(2)のところで「具体的なフィードバックの内容」と書いてございます。1行目をごらんいただきたいのですが「フィードバックはすべての健診受診者に対して行われるべきであるが、個々の健診結果によって伝える内容はそれぞれ異なる」。
 どんな内容をフィードバックする必要があるかというところを31ページの下のほうで「?確実に医療機関受診を要する場合」。おめくりいただきまして「?生活習慣の改善を優先する場合」。それから、33ページになりますが「?健診データ上では明らかな問題がない場合」。このそれぞれについて、健診受診者に対してフィードバックするべき内容はあるということで、ここはそれぞれにまとめてございます。
 特に、この中で?のところをごらんいただきたいのですけれども「生活習慣の改善を優先する場合」ということで、上記?というのは「確実に医療機関受診を要する場合」、つまり、すぐに受診が必要ということですが、それほど緊急性はないものの、検査データで異常値が認められ、生活習慣を改善する余地のある者にはこういったものが要るということで書いている部分です。
 例えば下の※のところは、「受診勧奨判定値を超えた場合でも、?度高血圧等であれば、服薬治療よりも、3か月間は生活習慣の改善を優先して行うことが一般的である」とあります。
 少し飛びまして、脂質異常症においても、受診勧奨判定値を超えたからすぐに受診というわけではなくて、まず3カ月から6カ月間の生活習慣改善が必要であるといった形で、つまり受診勧奨判定値を超えればすぐに受診が必要ということではない。ただ、それをどういうふうに表現するのかで苦心いたしまして、その一つの解決策が、これから御紹介する文例集です。31ページにお戻りいただけますでしょうか。「(2)具体的なフィードバックの内容」という1つ目の段落のところで「具体的には、別添資料の文例集を参考に、対象者個々人のリスクの程度に応じて、可能な限りきめ細かく対応することが望ましい」としてございます。
 この別添資料の文例集というものをごらんいただきたいと思うのですが、それが89ページからの数ページにわたって掲載しているものでございます。「健診結果とその他必要な情報の提供(フィードバック)文例集」ということで【利用上の留意事項】が書いてございますが、「健診受診者御本人に対して健診結果を通知する際、情報提供いただきたい内容を文例で示しました。必要に応じて、適宜改変して使用してください」とお示ししています。
 これは、90ページをごらんいただきますとおり、さまざまな研究班の先生方や関係する学会の先生方にも大変御協力をいただきまして作成したものになります。血圧に関するフィードバック、脂質、血糖高値、喫煙、尿たんぱく、クレアチニン、尿酸と、それぞれございます。
 91ページのところに、まず「血圧高値に関するフィードバック文例集」とありますので、こちらを参考例としてごらんいただきたいと思います。表がございますが、ここで【健診判定】という左側の列には「受診勧奨判定値を超えるレベル」「保健指導判定値を超えるレベル」「基準範囲内」という連続した血圧の検査データを示しています。「受診勧奨判定値を超えるレベル」、例えば収縮期血圧ですと、140mmHgを超えますと受診勧奨判定値を超えるとなるわけです。
 ただ、その方々が140mmHgを超えれば全てすぐに医療機関に受診をというわけではないということで、もし140mmHgから160mmHgの間であれば「?生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を」とまとめてございまして、160mmHgを超えるようであれば「?すぐに医療機関の受診を」と整理しています。
 この表の下に続いておりますところをごらんいただきたいのですが、例えば?であれば、どのように対象者に説明するといいのか、通知するといいのかというところを書いています。受診勧奨判定値を超えるレベルであるけれども、すぐに医療機関を受診する必要があるわけではないということを、文章のメッセージとして表現したというのが、今回のこの文例集の趣旨でございます。
 それ以降も、脂質、血糖高値、それぞれございますので、御参考にしていただければと思います。
 資料2の御説明は以上とさせていただきます。
○菱田座長 ありがとうございました。
 今、資料2という形で標準的な健診・保健指導プログラムについての説明がありましたけれども、このことは今回の食事摂取基準作成における重症化予防と関連して、保健指導の場を意識して作成していくのかということと関連するのかどうか、議論があるのだろうと思いますが、何かこの件に関しての御質問とかがありましたら挙手をお願いいたします。
 よろしゅうございますか。
 
 それでは、続きまして、前回、曽根構成員から日本糖尿病学会において、食事療法の現状と課題について、整理が行われているというお話をいただきました。先般、その取りまとめが行われたということですので、門脇構成員より御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○門脇構成員 現在、日本糖尿病学会の理事長を務めております、門脇でございます。本日はこのような機会を与えていただき、ありがとうございます。
 資料3をごらんください。これは日本糖尿病学会として昨日発表いたしました「糖尿病における食事療法の現状と課題」であります。
 昨日発表いたしましたのは、一昨日に、去年の8月から日本糖尿病学会の食事療法に関する委員会で検討してきた案で、学会員、関連の団体であります日本栄養士会、日本病態栄養学会、日本動脈硬化学会、日本腎臓学会、日本高血圧学会の先生方にも来ていただきましてディスカッションいたしました。日本糖尿病学会の食事療法に関する委員会の案が基本的に了承され、また、ディスカッションの中でごく一部改訂された形でまとまりましたので、昨日、発表していただいたという経緯であります。
 約10分のお時間をいただいて御説明させていただきたく思います。
 (はじめに)というところからごらんください。また、下にページ数が振ってありますので、それも御参照しながらお聞きいただければと思います。
 まず(はじめに)のところに書いてありますのは、我が国における2型糖尿病の増加が、日本人のインスリン分泌能の低下を来しやすい体質に加えて、いわゆる欧米型の生活習慣を一般化し、内臓脂肪蓄積型肥満によるインスリン抵抗性状態が加わったことが直接の引き金になって起因するところが大きいと考えられております。特に栄養面から見ますと、脂質を中心とする栄養摂取のバランスの崩れがこのようなことにつながっているのではないかという見方が強いわけであります。
 さらに三、四行下がっていただきますと、もう一方、食に対する価値観や食品・食習慣・食環境は、日々多様化してきており、食事指導においても、より柔軟に患者の病態や嗜好性などに対応することが必要になってきているという認識でございます。
 さらに3行下がっていただきますと、最近では、炭水化物について、血糖に対する直接的な影響ばかりでなく、肥満の是正に対する効果などからその摂取量に関心が高まっていますが、各栄養素の意義はエネルギー代謝に関する包括的な視野に立って評価すべきであり、決して個々の栄養素に限定して論じることはできないという立場をとっております。この立場は、先ほど御紹介のありました、この検討会の第1回目の取りまとめの視点とほぼ同じ視点ではないかと考えています。
 特にインスリン作用不足を主病態とする糖尿病にあっては、その治療的な意義はより慎重に論議されなければならないという形で、この本委員会は、現在では学会という見解になっていますけれども、提言を行うということでございます。
 「1.我が国の一般人口における栄養素摂取量の現況」のところです。
 5行ほど行っていただきまして、2010年の調査では、日本人の総エネルギー摂取量は平均1,840kcalとされています。一方、三大栄養素の摂取量を見ると、炭水化物の摂取量は減少し、脂質の摂取量が増加し、2010年の調査では炭水化物と脂質のエネルギー比率はそれぞれ59.4%、25.9%とされています。
 2ページ目に行っていただければと思います。上6行を飛ばしていただきまして、健康な個人または集団を対象として、国民の健康の維持・増進、生活習慣病の予防を目的とし、総エネルギー及び各栄養素の摂取量の基準を示したものが「日本人の食事摂取基準(2010年度版)」でございます。炭水化物摂取量はおおむね50〜70%エネルギー未満を推奨しています。また、この食事摂取基準では健常人の消化性炭水化物の最低必要量はその基礎代謝量の20%とし、およそ100g/日と推計しています。たんぱく質摂取量については推定平均必要量を0.72g/kg/日とし、明確な上限の設定はありませんが、2.0g/kg体重/日未満にとどめることが適当としています。脂質摂取量は30歳以上では25%エネルギーを上限としています。これらの健常人に対する基準は、我が国のデータや海外の文献に基づいて算出されており、コンセンサスとしての社会的価値も高いと思われます。しかしながら、今回の検討会の主な問題意識でございます、疾病を有する個人または集団に対して、必ずしもそのまま当てはめてよいとは言えないという側面も存在することも事実でございます。
 そのようなことを踏まえて「2.糖尿病における栄養摂取指針に関する現況」でございます。
 「1)2型糖尿病における食事療法の意義」について書いてあります。2型糖尿病における食事療法は、総エネルギー摂取量の適正化によって肥満を解消し、インスリン作用から見た需要と供給のバランスを円滑にし、高血糖のみならず糖尿病の種々の病態を是正することを目的としています。忘れられがちなことですが、インスリンの作用は糖代謝のみならず、脂質代謝並びにたんぱく質代謝を円滑につかさどることにももちろん及んでおり、したがって糖尿病のインスリン作用不足の状態ではどの栄養素についても過剰に摂取することは不適切ということは言うまでもございません。
 少し下がっていただきまして、諸外国においても、生活習慣の介入による肥満の是正を重要視し、そのための総エネルギーを調整し、合併症に対する配慮の上で三大栄養素のバランスを図ることが推奨されています。しかし、各栄養素についての推定必要量の規定はあっても、相互の関係に基づく適正な比率を一意に定めるに十分なエビデンスに乏しい。このため、三大栄養素のバランスの目安は健常人の平均摂取量に基づいているのが現状でございます。ただ、糖尿病では動脈硬化性疾患や糖尿病腎症など種々の臓器障害を合併することから、予防のためのそれぞれの食事療法が設定されており、その中で栄養素摂取比率を勘案することが求められています。
 「2)栄養素摂取比率について」です。諸外国における2型糖尿病の推奨栄養素摂取比率は、3ページ目に行っていただきまして、おおむね炭水化物45〜60%、脂質25〜35%、たんぱく質10〜20%とされることが多く、またメタ解析によりましても、そこに示されているような数字が掲載されています。一方、最近では、炭水化物の最低必要量のみを定めるものや、特に一定の数値を示さないガイドラインも散見されるようにもなってきています。まず、脂質摂取量の少ない我が国では、従来から脂肪エネルギー比率の上限として25%を採用することが一般的であり、日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドラインも20〜25%にすべきであるとしています。このことは重視する必要があります。また、日本糖尿病学会における糖尿病治療ガイドでは、たんぱく質を標準体重1kg当たり1.0〜1.2gとするように指示をしています。摂取比率としては20%以下になり、諸外国の推奨値とほぼ一致しているというところであります。
 このように見ますと、糖尿病に推奨される炭水化物の摂取比率は、脂質並びにたんぱく質の推奨摂取比率からも制約を受け、その結果、50〜60%と計算されることになります。実際にその値は日本人の一般的な栄養素摂取比率と合致することから、嗜好性あるいは遵守性を担保すると理解されてきたとも言えます。社会的なコンセンサスを得ている点についても、これは妥当と言えますが、日本人の糖尿病の病態の変化や今日の食に対する価値観の多様性を踏まえて、我が国における新たなエビデンスを構築していく必要があろうかと思っています。
 「3.糖尿病治療における炭水化物制限の意義と課題」です。
 2型糖尿病の治療には、体重の適正化が第一義的な意味を持つことから、古来、減量のために脂質を制限すべきか、炭水化物を制限すべきか、コントロバーシーがあるわけでございます。炭水化物摂取量を50g/日以下とする極端な糖質制限、アトキンスダイエットの是非論にこれは象徴されています。
 その後、幾つかのこの点についての研究やメタ解析について触れてあります。個々について議論はいたしませんが、短期的には低炭水化物食が減量に有用であっても、長期的に有用であるというエビデンスは不足しています。糖質の制限がその場合にもきいているのか、それともカロリー制限がきいているのかということについては極めて不明確でございます。また、糖質制限を行うことによって起こる、たんぱく質あるいは脂質摂取増加の影響については十分に調整されておりませんし、十分に検討されていないのが実情であります。
 最近、我が国から重要なメタ解析の研究結果が発表されています。4ページの下から8〜9行目ほどになりましょうか、国立国際医療研究センターの能登らは、炭水化物摂取量血管疾患のリスク並びに死亡率との関係について従来の研究のメタ解析を行い、低炭水化物食では心血管疾患のリスクは低減せず、総死亡率は有意に増加したという報告も出されています。
 英国糖尿病学会、米国糖尿病学会も、炭水化物制限の意義については、現在のところ、結論を保留している状況でございます。
 5ページ目をごらんください。「4.糖尿病における食事療法の在り方と課題」ということで、これが提言になります。
 「1)糖尿病における炭水化物摂取について」で、肥満の是正は、糖尿病の予防並びに治療において重要な意義を有します。体重の適正化を図るために、運動療法とともに積極的な食事療法を指導すべきであり、総エネルギー摂取量の制限を最優先とすることが重要です。
 数行下がっていただきまして、体重を効果的に減量させるための一つの手段として炭水化物摂取量について議論がされている。しかし、欧米の研究においては対象となるBMIはほとんど全てが30〜35以上であり、肥満度の異なる日本人の糖尿病の病態に立脚した適正な炭水化物摂取量については、いまだ十分なエビデンスがそろっているとは言えず、社会的なコンセンサスを得る上においても、今後、日本糖尿病学会として積極的に調査・研究の対象とすべき課題であると考えています。
 その上で「2)栄養素摂取比率について」でありますけれども、糖尿病における三大栄養素の推奨摂取比率は、一般的には、炭水化物50〜60%エネルギー、たんぱく質20%エネルギー以下を目安とし、残りを脂質とする。この炭水化物の推奨摂取比率は、現在の日本人の平均摂取比率がこの範囲内にあり、他の栄養素との関連からも妥当と考えられますけれども、糖尿病腎症などの合併症の有無や他の栄養素の摂取比率・総エネルギー摂取量との関係の中で、炭水化物の摂取比率を50〜60%からふやしたり減らしたりすることも考慮の対象になると考えます。例えば、身体活動量の多い場合には、炭水化物の摂取比率を60%エネルギー以上に高めることも考慮されますが、その際、食後高血糖や単純糖質の過剰摂取などには十分な注意が必要です。一方、腎障害や脂質異常症の有無に留意して、たんぱく質、脂質の摂取量を勘案し、大きな齟齬がなければ、患者の嗜好や病態に応じて炭水化物の摂取比率が50%エネルギーを下回ることもあり得ると考えます。しかし、その場合にも脂質摂取量の変化とともに糖尿病が増加していること、心血管疾患の増大を考えますと、脂質摂取比率の上限は可能な限り25%エネルギーとすることが望ましいのですが、n-3系多価不飽和脂肪酸の摂取をふやし、トランス脂肪酸の摂取を抑えるなど、脂肪酸構成にも十分な配慮の上で、この糖質摂取量が50%を上回るということも選択肢の一つとしてはあり得ると考えています。たんぱく質の過剰摂取が糖質の制限によって起こらないように留意することも必要であります。
 (結語)には、日本人の病態と嗜好性にふさわしい食事療法の継続的な検討が必要であり、食事療法はあくまでも実行され、継続されてこそ初めて意味を持つという視点をこれまで以上に重視したいと思います。
 また、患者の病態・嗜好性に立脚しながら、医師・管理栄養士などの医療従事者が患者とともに考え、それが有効かつ安全に実践されていることを常にモニターしていく必要があり、その中から、新しいエビデンスを構築していきたいと考えているということを提言いたしました。
 以上です。
○菱田座長 ありがとうございました。
 門脇先生の御発表につきましても、後でまとめて御質問等、議論をしていただきたいと思います。
 それでは、資料1で先ほど論点整理をしていただきました中にありましたの「2.策定にあたり配慮すべき課題について」の中のエネルギー・主要栄養素、ライフステージ、それから、摂食のタイミングについて、関係の各構成員から御説明をいただきたいと思います。
 初めに、エネルギー・主要栄養素における課題について、雨海構成員、佐々木雅也構成員、佐々木敏構成員より御説明をいただきます。
 資料4「エネルギー代謝の概論について」、雨海構成員より御説明をお願いいたします。
○雨海構成員 武庫川女子大の雨海です。「エネルギー代謝の概論について」ということで、基本的で非常に重要なテーマをお話ししろということですので、私がわかる限りでスライドをつくらせていただいて、それをフォローさせていただきたいと思います。
 資料の1ページになりますけれども、まず「エネルギー代謝のフローチャート」。これは正常な健康成人、あるいは健康な小児、健康な人の生体内でエネルギー代謝がどのように行われているかということを左から右に向かってフローチャートで示したものです。
 一番左が摂食、エネルギー産生栄養素が摂食されるわけですけれども、それが消化・吸収を経て、種々の臓器で代謝をされて、最終的には生活のもととなるエネルギーが産生されて使われるということです。
 その判定方法としては、下に書いてありますように、エネルギーのフローチャートの最初、食事アセスメントには、例えばBDHQなどを用いることを考慮します。また最終的なエネルギーの消費量に関しては、次の佐々木雅也構成員がお話しされると思いますが、間接カロリメトリー法、あるいは日本ではまだ少ないですが、直接カロリメトリー法、あるいは二重標識水(DLW)法も選択肢としてあると思います。
 さらにここで強調したいのですが、特に2010年版食事摂取基準ではとくに非常にたくさんのエビデンスが出されておりますけれども、実際に対象者がどのぐらいの量を摂取されているかという食事アセスメントということも同時に大切だと思われます。この点も2010年版の、活用の基礎理論で非常に丁寧に記載されております。しかし実際に使われることが重要であり、利用者にもその点がよく理解されることが大切であるかということを、ここで強調したいと思います。
 次は2ページです。これは今のスライドのもう一回、消化・吸収・代謝、それから、最後の消費の各フローチャートでの調節因子をまとめております。消化・吸収・代謝に関する調節因子はそれぞれ消化能、溶解能、吸収能です。今回の食事摂取基準の生活習慣病に関しては、これらの調節能は基本的に問題ないと考えられます。
 しかしとくに生活習慣病では、次の利用臓器への取り込み能、あるいは利用臓器での代謝能でいろいろな問題が出てくることが疑われます。
 さらにエネルギー消費量の調節因子に関しても、スライド左最上段に示した年齢・性・身長で、人種は日本人が主になりますので余り影響因子としては今回関係ないかと思いますけれども、それに加えて一番上の体重で、特に体重の中でも、その次に書いてありますような骨格筋の量を身長の自乗で割った骨格筋指数、Fat Free-Mass Index(スライド右列の3段目のFFMI)も調節因子としては非常に注目すべきではないかと思います。
 それから、従来、摂取基準で強調されていますように、4段目の身体活動度(Physical activity level: PAL)、あるいは温度因子としての体温や生活環境の温度。さらに栄養のルート、今回は静脈栄養ルートは入らないと思いますが、全ての対象が経口も含めた経腸ルートであるとすれば、この因子も余り調節因子としては問題にならないかと思います。一方、食事のタイミングあるいは組成に関しては、従来は食事誘発発熱効果(DIT)と同義と思われますThermal effect of food(TEF)も、調節因子として重要ではないかと思います。
 最後に病態として、今回の生活習慣病も含めて、ホルモン・サイトカイン等の炎症性変化も調節因子の観点として重要と思います。
 次、2枚目のスライドへ移ります。エネルギー消費量の内訳をここに示してあります。
 TEEは、その表に書いてありますとおり、総エネルギー消費量とさせていただきます。このTEEは、REE、安静時消費熱量プラスTEFプラス、活動に要するエネルギー量としてのnon-REE、この3つの因子の合計として1日の消費エネルギー量を100%に換算してあります。
 ここでは、この表のTEEは60%がREE、10%がTEF、30%がnon-REEとしております。ここにお示しした%は仮の数字であります。今回の食事施主基準においては、とくに疾病によってはREEが高まったり、場合によっては表記としてREEをFat Free Massで割った場合には、逆に低下することもあります。すなわちTEEの単位が非常に大切になると思いますので、ここでちょっと触れさせていただきました。
 4枚目のスライドになりますが、1枚目のスライドのフローチャートをほかの言葉、すなわちここでは栄養ステージという言葉を仮に使わせていただいていますけれども、そこの表の中の1番から8番まで、食事をとってから栄養素が貯蔵されて、体液量が変化することもある。それから、組織の機能に変化させて、それらが酵素/遺伝子活性に影響し、最終的には身体組成の構築にも影響する、これら一連の栄養ステージを、何がアセスメント指標として大切かというのを表にまとめました。
 1枚目のスライドでも強調させていただきましたけれども、従来の身体計測に加えて、実際に対象がどれだけの栄養素を摂取しているのか、すなわち食事アセスメントの重要性もエネルギー代謝の観点でも重要ではないかと思われますので、このスライドでも8つのステージの一番上に表記させていただいております。
 最後の5枚目に「今後の展望」として、私が考える2015年版の食事摂取基準の基本姿勢というものをここにお示しさせていただきました。
 2015年の段階で、その5年後、場合によっては、これは根拠はありませんが、25年後、四半世紀後の日本の健康あるいは疾患の予測をして、そこで考えられる日本人の栄養における問題点に対して適切な対応ができるような内容、これをエネルギー代謝に関しても目指すべきであるかどうかを検討していただきたい、と考えております。
 その5年から25年の変化の中には、もちろん、御承知のように人口構成の変化があります。少子化あるいは超高齢社会で、従来、摂取基準の場合には、特に超高齢社会では70歳以上の年齢区分が一くくりになっていましたけれども、果たしてそれでいいのかどうか。場合によっては75歳、80歳、85歳以上のほかの年齢区分が必要かどうかも検討していただければとエネルギー代謝に関しても思います。
 疾病予防は二次予防も必要ですし、同時に従来より日本の食事摂取基準が目指してこられた一次予防も当然ですが必要と考えます。
 それから、今回私がいただいたテーマのエネルギー代謝に関して特に考えることが必要ではないかと思うものは、1つ目としてはいままで繰り返してまいりましたなかでもとくに食事アセスメント。この点は2010年版で活用の基礎理論ということで非常に事細かく、非常にわかりやすく記載していただいるのですが、さらに十二分に現場で使っていただくためその使い方をできれば具体的に提示する。例えば、食事摂取基準自体はガイドラインではありませんけれども、場合によってはの褥瘡ガイドラインなどで使っているようなクリニカルクエスチョン(CQ)を具体的に提示して、実際に何が求められているのかというところから掘り起こして、それに対するエビデンスをつけて、わかりやすく説明できるように、この食事摂取基準を作成することも、必要なのかどうかという点も考えていただきたい、と希望いたします。
また食事アセスメントのツールとして、たとえばBDHQなど具体的な食事アセスメントと評価ツールを使用することを考慮して、評価ツールの現場での利用法の検討も必要と考えています。
 さらに先ほどのFat Free Massに代表されますように、体の構成成分の観点からのエネルギー代謝も摂取基準の中で検討が必要性に関してもご討議いただきたいと考えます。
 最後に、今回の新しい2015年版で新たに疾患の重症度の予防ということですので、重症度の評価の一つに、身体計測以外にエネルギー代謝、佐々木雅也先生がこれからお話しになる安静時消費熱量の測定を、現場の管理栄養士さんを中心にして測定を実際にしていただくことの是非ということも検討していただければと思います。
 私のエネルギー代謝の概論は、以上でございます。
○菱田座長 ありがとうございました。
 引き続きまして、資料5「エネルギー消費量の測定と臨床への応用について」ということで、佐々木雅也構成員より御説明をお願いいたします。
○佐々木(雅)構成員 滋賀医大の佐々木です。私のほうから、この「エネルギー消費量の測定と臨床への応用について」ということで、少しお時間をいただきまして御紹介したいと思います。
 「エネルギー代謝の測定法」としましては、今、雨海先生からもお話がありました間接熱量測定というのを病院の現場では用いております。間接熱量計のない施設では、今もHarris-Benedictの式という、この予測式というのも使われております。最近の論文でも、Harris-Benedict式で算出したBEE(基礎エネルギー消費量)を健常人のREEの予測値、すなわちpredictedREEと略して用いられるのが一般的です。このBEEとREEとの比較というものも、今回、御紹介したいと思います。
 まず、この式と実際に測定した値とが健康な方でどれぐらい違うか、あるいは合致するかということにつきまして、もともと男性と女性で式が違うので本来は別に検討すべきなのでしょうけれども、今回は15名でしたので一緒に検討しますと、実際に測定したREEの方が若干ですが、低くなります。大体REEがBEEに比べて6%ぐらい低いというのが私たちの成績だと思います。
 我々は当初、エネルギー代謝が大きく変化する疾患としまして、侵襲を受けたときのエネルギー代謝を検討しておりました。代表的な疾患が重症の急性膵炎ですけれども、重症の初期には大体1.5倍から1.6倍ぐらいにエネルギー消費量が増加します。そこから次第に病勢が安定してくると、REE/BEEが1に近づいていくということですから、このあたりは、この疾患の特性として、エネルギー代謝が刻々と変動することがお分かりいただけると思います。
 次の図表では、このような重症急性膵炎の方も含めて、ICUで治療されるような高度な侵襲を受けたような方についてREEとBEEを比較してみますと、縦軸が実際に測定したREEで、BEEがこの式で出した基礎エネルギー消費量ですが、非常によく相関しまして、REEはBEEに比べて約1.6倍ぐらいにこのREEのは高いことがおわかりいただけると思います。ですから、こういう非常にエネルギー代謝が亢進した場合でも大体5割から6割増しであるというのが私たちの結果です。
 逆に、エネルギー代謝が著しく低下するような疾患もあります。その代表的なものが摂食障害、いわゆる拒食症とかと言われているものです。この場合は健康な人に比べて大体70%程度に代謝が下がる。むしろ、こういう方に急に栄養を入れるとリフィーディング症候群を起こすのが今の現場の問題で、こういうことを知らないで、痩せているからと言って急に栄養を入れてしまうことで逆に問題を起こしていることもあります。
 摂食障害の方と同様にエネルギー代謝が低下するのではないかということで、私たちは電気けいれん療法を受けるような鬱病の方でもエネルギー消費量を測定しましたけれども、健康な人との差はほとんどないという結論でして、やはりこの摂食障害の方には特有の代謝異常があることが分かります。
 次のページからは、私が専門としている、いわゆるIBDの結果です。クローン病とか潰瘍性大腸炎の方は炎症があるので当然エネルギー代謝に変化があるだろうと思うのですけれども、これはちょっとビジーなスライドですが、下から4行目あたりを見ていただきますと、健康な人とほとんど変わりませんし、個体当たりでいきますと、その1つ上の段になりますが、健常人とほとんど変わりません。潰瘍性大腸炎でも同じ傾向です。
 つまり、こういう疾患の方はやはり痩せておられるので、これは先ほど雨海先生はFat Free Massで割るのがいいということをおっしゃっていましたけれども、全例で測れていないので、体重あたりで比較しておりますが、クローン病も潰瘍性大腸炎も健康な方よりはエネルギー代謝が亢進しているのですが、その変化はそれほど大きなものではないことが分かります。
 まとめますと、8枚目のスライドですけれども、少なくとも体重あたりで換算しますと、健康な人に比べてクローン病とか潰瘍性大腸炎の方は若干代謝が亢進していることが分かります。こういう疾患の方が、活動期から病勢が落ち着いた段階、すなわち寛解期というのですが、こういう時にどのように代謝が変わるかということも検討しています。
 興味深いことに、同じIBDでも、この2つの疾患で傾向は違います。潰瘍性大腸炎の方は、非常に炎症が強い時は高く、炎症がおさまると亢進したエネルギー代謝が下がってくる傾向があります。しかし、クローン病のほうは一定の傾向がなく、逆に炎症がひどいときは脂質の燃焼が有意であって、病勢が落ち着くと炭水化物が有意に燃焼されるという、代謝されるエネルギー基質の内容も変わってくるということがこの9枚目、それから10枚目あたりのスライドでおわかりいただけると思います。
 次にがんですが、私たちは、エネルギー代謝が周術期にどのように変化するかということを課題にしておりました。したがいまして、この膵・胆道腫瘍とか食道がんで根治手術ができる方、これはステージでいきますとStageIVの方も入っていますけれども、少なくとも手術適応となるような時期では、健康な人に比べてほとんど代謝の変化はないというのが12枚目と13枚目の結論です。
 食道がんについては、体重で割りますと若干高くなるのですけれども、これはBMIが若干、健常人よりも低いのでこういう傾向に出ておりますが、健常人と大きな差異はないと思います。
 ここで1つ論文を紹介したいと思います。かなり症例数が多くて、しかも日本人と余り体格の変わらないだろうという中国人の方のデータが2年ほど前に論文化されております。がんの方が700名、コントロールの方が640名ぐらいの統計です。
 15枚目のところを簡単に説明しますと、食道がん、胃がん、膵臓がん、肺がん、これについては、個々の安静時の消費エネルギーはコントロールと変わりませんが、先ほどの話にもあったFat Free Massで割ると、この大腸がん以外ではコントロールの方よりも代謝が若干高い傾向にあります。しかし、結腸がん以外にはがんの種類による差はほとんどないというのが結論だと思います。
 それから、ステージ別に検討した場合ですが、StageI、StageII、StageIII、StageIVと進むにつれてだんだん代謝が上がるかというと、そうでもなく、StageI、StageII、StageIIIはほとんど差がない。StageIVになって初めて代謝が亢進するというのがこの結論のようです。
 こういう背景から、私たちの施設で、肺がんで間接熱量測定を施行した成績を少しまとめてみました。これは化学療法を受けているような方で、しかも間接熱量計で測定するとなると、経鼻で酸素を吸収されている方が測定しづらいものですから症例が限られているのですけれども、この結果ではStageIIIbの方に比べてStageIVの方というのは若干代謝が高い。やはりStageIVではエネルギー消費量が増加するのではないかなと考えております。
 最後に、こういう安静時の消費エネルギーだけ見ていると少しピットホールがあるということを、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の方を対象とした測定結果を解析しましたので、御紹介したいと思います。
 COPDについては、奈良医大の米田先生が、COPD、特に体重の痩せているようなCOPDの方で代謝が亢進しているということはすでに報告されているところで、これは17ページのところに紹介してあります。
 最後に私たちの施設で、安静時の消費エネルギーがまだ変化していないような方でも、先ほど雨海先生の話にあったTEF、これはDITとほぼ同義ですが、食事による代謝の変動を見てみますと、COPDの方というのは安静時のエネルギー消費量に変化がないような病期であっても、既にこのDITには変化が出ていることがわかります。
 つまり、健常人ですとDITは15%ぐらい亢進するのですが、COPDのII期、III期であっても最高30%ぐらいまで亢進して、しかもそれが3時間以上持続していることが分かります。
 今回の内容については、19枚目のスライドに「まとめ」として提示しておきました。
 以上です。
○菱田座長 ありがとうございました。
 続きまして、資料6「日本人の食事摂取基準(2010年版)におけるエネルギー・主要栄養素の課題について」ということで、佐々木敏構成員より説明をお願いいたします。
○佐々木(敏)構成員 東京大学の佐々木でございます。
 2010年版の食事摂取基準を土台としまして、2015年版に向けて、エネルギーと主要栄養素について、どのような課題があり、どのような方向を我々は考えていくべきかという視点でまとめたものをつくってまいりましたので、御紹介させていただきます。
 1枚目、表紙の下のスライドでございますが、これはエネルギー・主要栄養素に限らず大原則であると思います。確認のために挿入をさせていただきました。
 食事摂取基準というものは「作る」ために「作る」のではないという当たり前のことであります。「使う」ために、すなわち活用する人たちのことを考え、そのためにつくるものである。とはいいましても、理論を用います。検証をいたします。そして、実践の質及び食事摂取基準の質そのものを上げていく、そのためにつくるのであるということであります。これは研究者というものが、たとえ系統的に、客観的に論文の収集や整理を行ったとしても、どうしても偏ることがあり得ますので、改めて1枚目に挿入をしてみました。
 問題は、特にこのエネルギーと主要栄養素におきまして、存在するエビデンス、現在の研究者の興味と、それから現場、すなわち活用者が必要としているエビデンスとの間に何らかの乖離があるのではないかと思い至りました。
 次のページをお願いいたします。前半で3分の2程度のスライドを使ってエネルギーを、そして後半で3分の1程度のスライドを使って主要栄養素について説明をさせていただきます。
 まずエネルギーですけれども、体格が現在の食事摂取基準では考慮されておりません。そのために、活用していただいている人たちの御意見を伺いますと、個人への活用が難しい。そうすると、実際に使いにくいという声をいただいております。
 その次です。活用目的で、これは後で具体的に整理をしていきますが、活用の主目的の中に食事改善というものがございます。ところが、現行のエネルギーの表示の仕方、説明の仕方では、食事改善にはどうも使いにくいのではないかと考えます。
 それでは、具体的にエネルギーについて考えていきます。エネルギーは、推定エネルギー必要量で与えられます。
 推定エネルギー必要量で、エネルギー必要量というものは体重が一定であれば消費量とイコールである。それは直接測定が研究的には可能であります。この研究的にはというところが重要で、そして、それは二重標識水法を現在は用いているところであろうと思います。
 もう一つは、先ほど既に佐々木先生、雨海先生からのお話も出ましたとおり、性別や年齢、身長や体重、公衆栄養的・公衆衛生的には、そして予防医学的には身体活動レベル等を用いて、そこからの推定をする関数をつくる作業が発生いたします。
 それはさらに、その式を簡単にしますと、基礎代謝量(BMR)と身体活動レベル(PAL)の掛け算になります。
 それでは、研究から見て消費量と基礎代謝と身体活動レベル、どの測定が一番難しいかといいますと、これは身体活動レベルである。なぜ身体活動レベルが必要かというと、基礎代謝だけを求めても、食事摂取基準を活用する人は食事をつくって出したり、食べている量を算定したりということを考えますと、どうしても、この消費量全体の概数が必要になるということであります。研究では、そのPALは消費量を基礎代謝で割ることによって求められます。
 ところが、現場においては逆に移行して式をつくりまして、消費量や必要量の測定はできません。それを推定することになります。そうすると、そこに書きましたように、性別や年齢等、身体活動レベルまで含めた関数が欲しいということになります。または基礎代謝を推定する関数が欲しい。そこに身体活動レベルの測定する方法が欲しいというところになります。これが活用、そして利用者のニーズであろうと私は考えます。
 ページをめくっていただいて、4ページ目をごらんください。「推定エネルギー必要量の活用目的」です。
 食事摂取基準全体の活用目的が、給食の管理、食事の改善というふうに2つに分かれております。しかしながら給食の管理というのは、これは個人的な考えですが、やや狭義の定義でございまして、できれば給食を伴う、または中心とする栄養の管理という文言、または定義、考え方、使い方に発展させていくべきではないかと考えます。ともかく食事摂取基準の活用目的は、現行では給食の管理と食事改善に2大別されているということです。
 給食の管理のほうは、どれぐらいの給食を出すのか、食べていただくのか、つくればよいのか、実際につくったのかというところの測定が入ってございます。これは比較的、測定誤差が小さい。そうすると、推定エネルギー必要量がもしも推定式で与えられれば、個人または集団で推定が可能であれば、ある程度、使えることになります。
 その一方で、食事改善の場合は、前回の検討会でお出ししたスライドの一部をそのままここにコピーをしてまいりましたが、食事改善は食事摂取状態の評価をしなさい、次に計画を立案しなさい、そして実施をしなさいというステップで進めるようにという記述が2010年版の活用のところにございます。
 そうしますと、食事摂取状態を評価する。ところが、先ほど雨海先生がおっしゃったように、その測定が困難であり、また、そのための十分な研究並びに利用できるものまで至っていないのではないか。そうすると、現状としてどれぐらい食べたかの測定誤差が大きい。すると、そのために食事摂取基準は使いにくいということになってしまいます。
 これは食事摂取基準のつくり方の問題ではなく、食事摂取状態の評価のほうの問題になってまいります。しかしながら、食事摂取基準を使うということを考えますと、ここまでを包含した食事摂取基準の考え方、また記述の方法、研究の進め方が必要であろうかと思います。その測定誤差が大きい理由に、主要なものとして、ここに書きましたように、過小申告と日間変動というものがございます。
 次に下のスライド、5枚目で、給食管理に戻りまして、推定エネルギー必要量は使えるのかということを考えております。
 給食管理の現場では、基礎代謝の参照値が少ないこと、特に既にお話が出ておりましたが、高齢者、それから特殊な集団においては身体活動レベルの推定方法が十分に与えられていないこと、これが悩みとなっている。そのために推定エネルギー必要量を推定できない、また、困難であるという問題が生じております。
 それを式にしますと、下のようになるかと思います。推定エネルギー必要量というものは基礎代謝と身体活動レベルの掛け算と考えまして、基礎代謝を何らかの現場が得やすい情報から推定する関数を与える。身体活動レベルを、何らかの誤差は認めたとしても、現場が推定しやすい方法を与える。そして、その掛け算をする。そうすることによって、エネルギーの必要量を個人並びに集団で推定することが可能になり、エネルギーの食事摂取基準が活用されるのではないかと考えます。
 次のページをお願いいたします。6ページ目でございます。そこで問題になってくるのが、まず一番基本的な数字として、体重当たりのエネルギー消費量はどのくらいであるのか。健康人でございます。実は健康人のデータが意外に少なくて、なかなかたくさんのではないのですけれども、諸外国ではかなりの研究が進んでまいりました。また、日本でも徐々に進められております。
 ここでは体重当たりエネルギー消費量を、二重標識水法を用いて測定したものを体重で除することによって与えられた数字をオランダと日本の論文から引用してまいりました。実線がオランダ人で、点線が日本人でございます。このように、60歳ぐらいまでは35から40ぐらいの間に多くの人たちの平均値が入っていることがわかります。
 もしも、このようなデータが、ここでは身体活動レベルに分けられていないのですけれども、身体活動レベル別に蓄積されれば、そのファンクション、関数をつくり、体重をかければ、ある程度、利用可能ではないかと考えられます。しかしながら、同一の対象者に基礎代謝も測定でき、そうするとPALが算出できます。そのために目的が達せられます。しかしながら、この種の濃密な栄養疫学研究の実施は極めて困難でございまして、重要度は高い。それでは、どうするかというところが研究レベルとしては残るかと思います。
 その次です。それでは、この推定エネルギー必要量は使えるかというところは、諸外国はどうしているかというと、これは既に門脇先生から少しだけ御説明があったのですけれども、幾つかの諸外国の食事摂取基準やエネルギーのところは、また疾病のガイドラインのところでいろいろ考えられてございます。
 まず、アメリカ・カナダの食事摂取基準を見ますと、エネルギーのところはやはり二重標識水法をベースとして、このような推定式をつくっています。ここでのポイントは、個人別に年齢、そしてPALをカテゴリーに分けて簡略化しております。そして体重、身長を独立変数として、二重標識水法を用い、エネルギー消費量を相当の人数の集団に測定をし、こういう式が使えるように研究を進めているところでございます。
 次のページをお願いいたします。8ページ目で、食事改善に使えるかです。食事摂取状態の評価から考えてみます。
 このグラフは、実線が推定エネルギー必要量であります。点線が国民健康・栄養調査のエネルギー摂取量申告値の平均値でございます。推定エネルギー必要量のほうは、身体活動レベルの普通を用いております。そうしましたところ、上に2本、実線と点線がございます。これは男性です。かなり大きな乖離があるのがおわかりでしょうか。下の2本が女性でございます。ここも必要量と摂取申告量の間に大きな乖離があるのが見て取れると思います。
 男性におきまして、およそ49歳までが400kcalから500kcal強、女性が270kcalから300kcal強というのが1日当たりで過小に申告されていることがわかります。年齢が上がりますと、この絶対量としての乖離は小さくなりますが、パーセントで見ますと、やはり10%を超える過小申告が起こっていることがわかります。
 そうすると、このような系統誤差が過小申告により起こっている。そうすると、集団であっても個人であっても、このような方法での食事摂取のエネルギー量を活用することはかなり難しいのではないかということが考えられます。ここに何かの方策を与える必要があろうと思われるわけです。
 もう一つです。推定エネルギー必要量は使えるか。食事改善で、下の9枚目のスライドでございます。
 人間が食べるものは日々揺れております。そして食事摂取基準は、ここで重要なキーワードなのですけれども「習慣的な摂取量」を扱っております。したがって、エネルギー、そのほかのすべからく栄養素全てで習慣的な摂取量を把握する必要が出てくるわけでございます。
 このスライドで示しました図は、1日ごとにその人が食べている食事を相当丁寧にはかり取って記録をしたデータでございます。1日ごとに食べた1人のエネルギー量を3人の50歳代の男性について書いてみました。これはFukumotoらのペーパーで使われた67人のサブジェクトの中からランダムに選んできたものでございます。
 これを見ていただきますと、1,500kcalを食べた日から三千数百kcalを食べた日まで非常に大きく揺れていることがおわかりだと思います。これと推定エネルギー必要量をどう組み合わせるのかというところで食事改善を担当されている現場の方は苦慮されていることが見て取れるかと思います。
 次のスライドをお願いいたします。10枚目で、これは先ほどのスライドの補足の図でございます。
 我が国におきましては、食事の記録をしたり、このような摂取量の評価をするときに、従来3日間の食事記録法というものがしばしば用いられてまいりました。そこで、先ほどのデータをそのまま3日間ごとの移動平均を求めてみました。そうすると、当然ながら移動平均になりますので、その振幅は小さくなるのですけれども、それでも3人の方を見ますと500kcalぐらい、どの日、どの3日間を選ぶかで変わってしまうことがわかります。500kcalというのは、食事摂取基準の推定エネルギー必要量から考えますと、かなり大きな値であります。
 そこで、推定エネルギー必要量をどう扱っているかというと、例えばその下のスライドを一例として持ってきました。
 特に個人的に、私はこれをよいとも悪いとも、賛成とも反対ともいう立場でもなく、そのような結論にまで達していないと考えているのですけれども、例えばアメリカの糖尿病患者向けの栄養指導ガイドラインの中では、エネルギーのバランス、過体重、肥満という人に対して、このような記述がありましたが、エネルギーの摂取量、また推奨量、必要量に関しては言及しておらず、数値も示しておらない。これは先ほど門脇先生が引用されたものとほぼ同じところでございます。
 それでは、その次です。以上のような活用の現場における課題を踏まえますと、エネルギーに関して行うべきことは次のようにまとめられるのではないかと考えました。
 まず、質の高い研究計画に基づいて、二重標識水法を用い、エネルギー必要量を正確に測定したデータを蓄積することで、ここでは性別・年齢・身体活動レベル別に代表値が出せるような研究の拡大・拡充が必要であると考えられます。
 しかしながら、それだけでは活用に至れません。質の高い研究計画に基づいた、基礎代謝、身体活動レベルを測定したデータを蓄積すること。
 その次です。活用をしていただくためには、身体活動レベルの簡易測定方法の開発が必要ではないか。それは開発だけではなく、妥当性を検討し、利用可能性の研究を含むことになります。
 根本的な話に戻ってしまうかもしれませんが、推定エネルギー必要量の活用分野とはどうあるべきかを再検討していただく必要もあるかなと考えました。
 次に、主要栄養素でございます。6枚程度で複数ございます主要栄養素、すなわちマクロ栄養素、エネルギー産生栄養素をまとめました。話がスキップしてしまうところがあるかもしれませんが、お許しください。
 まず、主要栄養素としましてたんぱく質、脂質、炭水化物、そしてアルコール、エネルギー産生栄養素というところでアルコールが入ってまいります。この4つの栄養素がターゲットとなります。その中で、たんぱく質だけはほかの栄養素と目的も、つくられ方も、示し方も、使い方も異なると考えまして、たんぱく質は別に考える必要があろうと考えます。
 その次は、脂質、炭水化物、そして一部たんぱく質なのですけれども、それらの栄養素はさらに細分化されます。この細分化をどのようにするのかということを慎重に考えたい。
 その次です。栄養素と疾患の予防、疾病の発症予防、そして重症化予防で考えますと、栄養素と疾患の組み合わせがたくさん出てまいります。この組み合わせの中からどれを選ぶのか。これは非常に重要な問題だと思います。このあたりについて、次の4枚程度のスライドで説明をさせていただきます。
 14枚目をお願いします。主要栄養素(マクロ栄養素・エネルギー産生栄養素)を教科書的に分類しますと、このようになるかと考えました。
 たんぱく質で、必須アミノ酸。これは必須栄養素でございます。これを取り上げるかどうかというところを御検討いただきたい。動物性、植物性という意味ではございません。栄養素から見ると、必須アミノ酸か、非必須アミノ酸かという分け方になると思います。
 次に炭水化物です。これは糖と食物繊維に分かれまして、食物繊維は既に別のものとして食事摂取基準に収載されております。さらに糖が単糖類・二糖類と多糖類(でんぷん)に分けるか。それから、栄養素ではございませんが、健康影響を考えますと、グリセミックインデックス、糖をどう考えるべきかというところも検討の必要があるかなと思います。
 次に脂質でございます。脂質は既に必須脂肪酸、そして幾つかの脂肪酸に分けられて、2010年版も収載がされております。まず必須脂肪酸は、これは必須栄養素でございますので、非常に重要であると考えます。その次は、生活習慣病との関連におきまして、飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸。さらにn-3系とn-6系、α-リノレン酸やEPA、DHAなどに分かれていきます。そして不飽和構造の違いにより、シス型、トランス型の健康影響も論議されております。このあたりを整理をし、できるだけ理解しやすく、つけやすい形での提示ができないものかと考えます。
 そして、必須栄養素ではございませんが、エネルギーを産生する、そして健康影響はエネルギーだけでなく、より直接的な健康影響があり得るということで、アルコールの取り扱いをどうするかということも考えるべきであろう。
 それで基本的な優先度は、この左から右にあると私は考えます。どこまで示すか、その優先順位はどれか、その根拠は何かというところを落ちついて検討していただきたいと考えます。
 そこで、疾患との絡みを考えましてつくられたのが目標量でございます。下の15枚目が目標量です。どの栄養素とどの疾患の組み合わせを選ぶかが重要になってまいります。
 ここでは疾患と栄養素の掛け算になりますので、両方の重要度をそれぞれ勘案する必要がございます。すなわち、疾患は国民全体における重要度の順位はどれか。その次に栄養素の重要度はどれかなのですけれども、栄養素の重要度で忘れてはならないことがあります。それは、単位効果量と摂取量をかけた掛け算の積をもって重要度とすることであります。すなわちグラム当たりで、ある疾患への影響が大きいというのではなく、そこに現在の日本人が、またはターゲットとする集団がその栄養素をどの程度、1日当たり習慣的に摂取しているのかということを掛け算することによって重要度が出てまいります。このようなプロセスに基づいて、疾患と栄養素の組み合わせを検討していただきたいと考えます。
 その下の例は、時間の関係で省略いたします。
 その次、16枚目をお願いします。どの栄養素とどの疾患の組み合わせを選ぶかなのですけれども、例を2つ持ってまいりました。
 この16枚目の例がWHOのNUGAG(Nutrition Guidance Expert Advisory Group)というところが、現在、世界向けのDietary recommendationのガイドラインを作成中でございます。たまたま先週、私は委員の一人で、その会議に出席をして、どのようなことが行われているかというか、討議をしてまいりました。そこでは先ほど説明しましたようなプロセスに基づきまして、重要な組み合わせをまずピックアップをし、その後、系統的レビューを行い、そして、それをもとに委員が検討する形式をとっておりました。
 その中で検討されている主要栄養素としましては、ここに示したものの中で意外に少なく、炭水化物は単糖類・二糖類が体重増加と齲歯にどのような影響を及ぼすのかといったことが、日本という意味では世界的に重要だと考えられております。そして、作業が進められております。
 そして、脂質は体重増加で、脂質の中では飽和脂肪酸が取り上げられておりまして、循環器疾患などとの関連が検討されております。そして、飽和脂肪酸に関連するものとしてトランス型も検討課題として挙げられておりました。
 下をごらんください。17枚目で、どの栄養素を選ぶのかで(例2)でございます。
 栄養成分表示で、これは国民全体への栄養の内容量を提示する意味で非常に重要なものであろうと考えます。これはイギリスのある食品の例なのですけれども、矢印をつけました。ここでは炭水化物、Carbohydrateの中に「of which sugars」と書いてあって、炭水化物の中で消費者側には、このシュガーのところを見てほしい。それ以外は書いていないのです。Fatのところは「of which saturates」と書いてあって、それ以外は書いていない。でも「saturates」と書いてある。これは優先順位を考えて、限られた面積の中で、このようなものが選ばれたのだろうということが考えられます。
 我が国におきましても、国民における重要性を十分にかんがみ、このようなプロセスを踏む、そういうことが含まれるのだということを考えて食事摂取基準を策定するべきだろうと考えます。
 18枚目をお願いします。主要栄養素の課題をまとめてみました。上から読み上げます。
 たんぱく質でございます。必須アミノ酸は含めるべきか否か。それから、長期間の高摂取が健康へ悪影響を及ぼすか否かを検討すべきか否か。
 脂質です。総脂質の目標量、現行の範囲のエビデンスは十分であるか。飽和脂肪酸と各脂肪酸が現在は国民健康・栄養調査の摂取量(中央値)のみに基づいていますが、これでよいか。ほかの検討方法はあるか。そして、類似しますが、脂肪酸をどこまで小分類して表示すべきか。その必要性はあるか。エビデンスは十分にあるか。
 炭水化物であります。総炭水化物の目標量、現行の範囲のエビデンスは十分か。単糖類・二糖類について検討はしなくてよいか。するべきか否か。食物繊維の目標量の算定目的やエビデンスはどうあるべきか。
 重複しますが、エネルギーバランスです。たんぱく質と脂質、炭水化物のバランス、割合、このエビデンスは十分か。そして、その目的は何かです。
 最後、アルコールでございます。必須栄養素ではありませんが、それをどこまで、この食事摂取基準では盛り込むかということも、ある程度は検討すべきではないかと考えます。
 コレステロールについては、必須の栄養素ではございませんが、脂質関連ということで、食事摂取基準では脂質の項の中に含めて記述がされております。
 最後のスライドで、19枚目をお願いいたします。エネルギーと主要栄養素についてまとめさせていただきます。
 ある程度、全てに共通することかもしれませんが、エネルギー並びに主要栄養素で特に、存在するエビデンスや研究者の興味と現場が必要とするエビデンスとの乖離が問題ではないかということを考えました。
 そこで、策定側はエビデンスの多いものを収集をして、そして策定をし、投げる姿勢ではなく、活用側が必要としている課題を何らかの方法で抽出し、ただ、それだけではなく、将来を十分に見据えた上で、それらに応えるエビデンスを構築する。エビデンスを収集し、系統的に研究を推進し、その成果を食事摂取基準に盛り込んでいくべきと考えます。
 以上でございます。
○菱田座長 ありがとうございました。
 続きまして、?ライフステージについて、葛谷構成員と児玉構成員より説明をいただきます。
 初めに、資料7「高齢者の問題」につきまして、葛谷構成員からお願いをいたします。
○葛谷構成員 名古屋大学の葛谷です。よろしくお願いいたします。主に高齢者の栄養について思ったことを用意してまいりました。
 資料7の1ページです。これは平成23年度の国民健康・栄養調査からの肥満と痩せの年齢階級別の頻度をあらわしています。
 肥満はBMI25以上で、痩せはBMI18.5未満を基準としています。肥満は上のほうで、男性、女性とも、男性と女性と分布幅は違いますが、男性では60歳以降から少しずつ肥満の割合は減ってまいりますが、一方、女性では70歳以上まで少しずつ増加をしています。痩せのほうは、男性ですと60歳以上で少しずつふえてきて、女性でも中年から少しずつ痩せの頻度は増加しているということです。
 次の2ページですけれども、これは日本人のBMIと死亡に関して、高齢者を含めたデータは余りなかったのですが、最近少し出てきています。これはTamakoshi先生らが2010年に御発表になったデータをお借りしてきています。両方とも黒く塗ってしまっているのでわかりづらいですが、多少薄いほうは男性で、濃いほうが女性です。BMI20.0〜22.9をレファレンスとして、11年間のフォローアップで生命予後のリスクをあらわしています。
 ごらんになってわかるとおり、BMIの30以上という肥満で、女性のリスクは少し上がっておりますが、あとはほとんど、BMIが上がっても生命予後に関しては余り関係がないということですが、一方、20を切ったところから生命予後に関してはリスクは上がっているということを見ていただきたいと思います。
 それから、3ページはメタボリックシンドロームで、これは残念ながら日本のデータでなくて、ヨーロッパのデータでありますが、メタボリックシンドロームの年齢階級別の有病率をあらわしています。メタボリックシンドロームの定義は、IDFとATP IIIを使っています。
 男性、女性とも加齢になるに従って有病率は上がってまいります。多少頭打ちはしておりますが、それでも80歳代でもそこそこの有病率を示しています。
 ところが、次の4ページですが、これは平均7.9年間、メタボリックシンドロームと心血管死と全死亡の関係を示したもので、これも残念ながら日本のデータではありませんが、上の段が心血管死で、下が全死亡でありますけれども、ちょっと黒い線がメタボリックシンドロームのプラスということであります。
 60歳未満は見事にメタボリックシンドロームがあることによって死亡のリスクが、これはカプラン・マイヤーですが、死亡が非常にふえているのが見て取れますが、60歳以上だとほとんど線は重なって、有意な差はありません。
 これから、高齢者の過栄養の問題としては、成人で注目される、生命予後でありますとか、動脈硬化性疾患への関与というのは加齢とともに少しずつ減少しています。
 しかし、もちろん問題がないわけではなくて、成人とは異なる病態との関連性がある可能性があります。それは身体機能障害と虚弱、ここの2つは要介護状態に直結をいたします。
 次のページです。6ページは、これも日本のデータでなくて恐縮ですが、BMIで3群に分けております。
 右の上に体重減少云々という5つありますが、これはFriedらの虚弱の定義であります。虚弱というのはいろいろな定義があるのですが、身体的虚弱として、この5つの項目の3つがあるときには虚弱と定義しましょうというのが恐らくほとんどインターナショナルに認められている定義でありますが、BMIがふえると一番黒抜きのFrail、Prefrailというのは先ほどの5つの項目の1つから2つが当てはまる定義になりますが、BMIが上がるとやはりFrailの割合、有病率が上がるというデータであります。
 あと、下の7ページで「肥満高齢者は身体能力が低い」という題目が挙がっていますが、これはちょっと複雑で申しわけないのですけれども、このサルコペニアというのは後でまた出てまいりますが、サルコペニアのあり、なしと、肥満のある、なしで4群に分けています。
 この図のYはPhysical capacityですから、身体能力と考えてください。上に行けば身体能力は高いと考えていただいて、マルで囲んである2つというのはObesityがあるということで、サルコペニアがあろうと、なかろうと、肥満者というのは身体活動能力が低いというデータであります。この2つから、前に言いましたように、高齢者においての肥満というのは、ちょっと若年者と違う視点で考えなければいけない。身体機能障害とか虚弱との関連ということでも考えなければいけないかなと思います。
 次の8ページです。高齢者の食事・栄養摂取の問題としては、真ん中にあります、高齢者の栄養を考えるときのゴールというのは、当然、健康寿命の延長で、健康寿命を延長するには2つ、疾病予防と虚弱予防があります。
 疾病予防に関しては、成人とそれほど変わらないのですが、ちょっと違う視点を持たなければいけないということと、あとは、高齢者特有としては虚弱予防、これはもっと簡単に言うと介護予防につながると思うのですが、この視点が非常に大事であると思います。
 9ページですが、これは平成23年度国民健康・栄養調査のデータからです。上が男性、女性で、摂取エネルギー量とたんぱく質の量で、男性と女性も70歳以上でたんぱく質の摂取量ががくんと落ちるのがおわかりいただけると思います。
 下の段で、男性、女性とも年とともに、どういう栄養素でエネルギーを補充しているかというと、炭水化物の比率が少しずつ上がってきて、動物性たんぱく質の比率、脂質エネルギーの比率というのが、少しずつですけれども、減ってきているのが見て取れます。
 次に、10ページです。これも先生方御存じだと思うのですが、当然、加齢に伴って体の組成が変化をしてまいります。
 これは25歳から75歳までを簡単に図式化したもので、もちろん、こんなふうに直線的に描けるわけはないのですが、筋肉量が徐々に低下をして、その分、脂肪で置きかわるのが大体、加齢現象であります。
 11ページで、これは2008年に報告されたデータで、普通の健康な高齢者を3年間フォローして、登録時に食事調査をして、たんぱく摂取量を見て、それを5分位にして、3年間のLean Body Massの変化を見ています。
 Quintile 1というのが最もたんぱく摂取が少なくて、Quintile 5というのが最もたんぱく摂取が多い群であります。高齢ですので、多い群にしてもLean Body Massは3年間で減ってまいります。ところが、その減り具合もやはりたんぱく摂取量が低い群が最も強く減っているのがわかります。大体換算すると、一番下に書いてあります総たんぱく摂取は、一番低いもので0.7g/kg/day、一番高いもので1.2g/kg/dayという値であります。
 次をお願いします。12ページです。これは今の2010年度版の日本人の食事摂取基準の抜粋であります。これはたんぱく質の摂取に関してのところを引っ張ってきています。
 先ほどもちょっと出てまいりましたが、この表記は1日当たり何g必要かという形であらわしています。推奨量を見ていただくと、男性ですと12歳から70歳以上が同じ値で表示されています。女性も18歳から70歳以上まで同じような値で記載をされています。
 ここの中の窒素バランスに関して、先ほど木戸先生から御指摘を受けて、絶対値で示す表示がなかったので、ここは後で私、また訂正させていただいて、提出させていただきたいと思います。
 13ページで、サルコペニアを回避するには、現在のたんぱく質量でいいかどうかというのは、私どもの分野でかなり大きな議論になっています。それで、この3つの論文を出してきました。
 1番で、10名の高齢者にタンパク質0.8g/kg体重で14週間介入をしています。それで、0.8g/kg体重では窒素バランスは負であった。それで、実際にLean Body Massは減少したという報告が出されています。
 次に、若年者と高齢者でそれぞれ3つのパターンでたんぱく質を18日間投与したときに、窒素バランスで評価をしているのですが、たんぱく質の必要量としては若年者も高齢者も差がないということで、最低必要たんぱくは0,85/kg/dayですけれども、これでは恐らく筋肉量を保てないのだろうという結論を書いていました。
 次は、2007年にWHOが出しているものですが、多くの窒素平衡を使用した研究では、高齢者では若年者と同程度の体重当たりのたんぱく質摂取が必要であることが明らかであるけれども、総カロリーに対するたんぱく質量はひょっとすると高齢者のほうが多いのではないかということを報告をしています。
 私が体重当たりの表記が必要なのではないかなと思っているのは、これは2010年のデータで、アメリカで行われている縦断調査のもとで、体重というのは加齢とともにすごく変わることをあらわしています。
 これは3つのコホートのデータですが、いろいろなコホートのデータを取り出してみても、やはり体重はかなり年とともに変わってくるということであります。
 実は15ページ、最後のスライドですが、体重よりも実は身長がもっと大きく変わります。
 これもボルティモアの長期縦断調査からとってきたものでありますが、これも大分昔のスライドですが、身長は男性、特に女性の場合は30歳代から、例えば80歳代と比べると10cmも縮んでしまうということです。当然、もし体重が一定だとしても、その値からはBMIは大きく変動することは想像できることだと思います。
 以上です。
○菱田座長 ありがとうございました。
 続きまして、資料8「乳幼児の課題」について、児玉構成員よりお願いいたします。
○児玉構成員 帝京平成大学の児玉でございます。よろしくお願いいたします。資料8に沿いまして、日本人の食事摂取基準(2010年版)での乳児における課題についてお話しさせていただきます。
 1ページ目の下のスライドをごらんください。
 乳児では、推定平均必要量を決定するための実験は不可能でございます。したがいまして2010年版では、健康な乳児が摂取する母乳の質と量が乳児にとって望ましいものである前提に立ち、母乳中の栄養素濃度と、これは母乳を集めて分析されていますので、あとは乳児の母乳摂取量を掛けて目安量として算出したものが示されています。
 例えばスライド1の下の表で、これは食事摂取基準(2010年版)から抜粋したものでございます。生後0〜5カ月の乳児は乳汁のみが栄養源で、今、申し上げました方法で算出されたものが目安量として示されています。6〜11カ月は0〜5か月児及び1〜2歳児の値から外挿法で求められた目安量が示されています。また、2010年版では乳児の栄養は母乳栄養が基本であるという考えで、母乳での目安量のみが掲載されております。
 次のスライド2をごらんください。
 上段の図は、平成17年度の乳幼児栄養調査で乳児の栄養方法を調査した結果です。上の網掛けは母乳栄養児で、下の薄い網掛けが人工栄養児、いわゆる母乳ではなく乳児用調製粉乳を飲んでいる乳児です。真ん中の白のところが混合栄養で、混合栄養というのは母乳と乳児用調製粉乳の両方を飲んでいる乳児でございます。
 その図からおわかりになりますように、0カ月では母乳栄養の人が48.6%、約半数ですが、年齢が減るにつれ人工栄養児の割合が増加しています。生後4〜5カ月ぐらいでは母乳栄養、混合栄養、人工乳の乳児の割合がそれぞれ約3分の1であることがおわかりになるかと思います。母乳栄養が基本であることは変わりませんが、このような現状を見ますと、課題としてスライド2に示しますように、乳児の食事摂取基準というのは、母乳栄養児以外の栄養方法を考慮しなくてもよいかということを今後検討していく必要があるだろうと思います。
 この点に関しましては、スライド3と一番最後のページに別表1、別表2を添付させていただいておりますが、それに沿って御説明させていただきます。
 別表1、最後のプリントの裏側です。別表1は、母乳と乳児用調製粉乳の成分組成を示したものです。
 表の「成熟乳」は、お母さんが分娩した後の14日以降の母乳です。乳児用調製粉乳の規格というのは、表の右に示しますように「表示の許可基準」というものがございます。真ん中の「市販の乳児用調製粉乳」は、この基準に合わせて調製されております。右端の「表示の許可基準」の欄で「未設定」と記載した栄養素は、日本人の食事摂取基準(2010年版)では目安量が示されていますが、許可基準には示されていないものです。
 2015年版で、もし乳児用調製粉乳の子供の目安量を示すことになれば、この未設定の栄養素をどのように取り扱うかが一つの課題になります。また、母乳の成分組成に関しましても、2010年版で引用されている論文の多くは調査年が1990年代のものですので、最近の母乳の成分分析も必要であろうかと思います。
 一番最後のページの別表2をごらんください。別表2は、乳児用調製粉乳のみを摂取した場合の各栄養素の1日当たりの提供量を示したものです。それぞれの栄養素で値に幅がありますが、これは市販されている乳児用調製粉乳は数種類あり、含有量がそれぞれ多少異なりますので、このような幅を持って示させていただきました。
 このそれぞれの栄養素の提供量を、右端の食事摂取基準(2010年版)の値と比較いたしますと、大体の栄養素は食事摂取基準の目安量よりむしろ多いと言えます。しかし、ビオチン、ヨウ素、セレンを見ていただくと、薄く網掛けをしたところですが、食事摂取基準の目安量を満たさないと推定される栄養素があります。特にビオチン、ヨウ素、セレンですが、欠乏症の報告は見当たりませんが、別表1で示した表示の許可基準を含めて今後検討すべき課題と考えられます。
 もう一つの課題といたしまして、先ほどのスライドの3番の下の5.で、治療乳を必要とする乳児に関することでございます。
 治療乳とは、それぞれの病態に応じて調製されたミルクで母乳または通常の乳児用調製乳にかわるものです。近年、治療乳を必要とする乳児がふえてきているというデータがあります。
 その下に示していますが、先天代謝異常症用の特殊ミルク、あと、難治性てんかん患者用のケトンフォーミュラ、MCTミルク、低カリウム・中リンフォーミュラ、これらのミルクを使用している患者さんは、大まかに推定しますと、合計で年間700人強であろうと考えられます。
 その先天代謝異常症の下に、牛乳アレルギー乳児の大体の頻度、これも推定しておりますが、今、アレルギー患者さん、乳児が非常にふえてきております。牛乳アレルギー患者さんは、0歳児では全乳児の約1.5%いるだろうと推定されております。
 その次の4枚目のスライドをごらんください。
 近年、このような治療乳を授乳している乳児で、ビオチン、ヨウ素、セレン、カルニチンなどの欠乏症が報告されております。最近、とみにそういう報告がふえてきております。症状を見ますと、重篤な皮膚炎、体重増加不良、心機能低下、あと、甲状腺機能低下症、低血糖など、非常に深刻な症状でございます。
 その理由を考えますと、その下のスライド5にお示ししますが、ミルクアレルギーとか、無乳糖、ケトン食用、糖原病用、このようなミルクというのはビオチン、ヨウ素、セレン、カルニチンがほとんど含まれていないことがおわかりになると思います。
 上段の「CODEX規格」というのは、CODEXが2007年に発表した乳児用調製粉乳及び治療乳の成分規格の値です。その下に我が国の通常の乳児用調製粉乳、これも幅は各メーカーによって少しずつ含有量が異なりますのでこのような幅になっておりますが、我が国の通常の乳児用調製粉乳においてもビオチンとヨウ素というのはCODEXの基準より少ないものがあります。
 最後の資料です。CODEXで示されている栄養素を列記させていただきました。
 下線をつけている栄養素は、我が国での乳児用調製粉乳で規格が示されているものでございます。先ほどの治療乳でも紹介しましたように、ビオチン、ヨウ素、セレンなどは治療乳にほとんど含まれていません。そのような必須の栄養素というのは必要量を添加する必要があるだろうと思います。
 事実、最後のスライドに※でつけ加えさせていただきましたが、諸外国の育児用調製乳及び治療乳というのは、CODEXに準ずるように、合うように必須の栄養素が添加されています。
 しかし、日本ではいわゆる母乳代替食品、すなわち乳児用調製粉乳や治療乳は特別用途食品または乳製品に分類されて、これらの栄養素を添加することができません。現在、日本小児科学会から母乳代替食品へのビオチン添加に関する要望書を厚生労働省に提出し、検討していただいているところでございます。
 最後に示しました課題は、この策定検討会だけで解決できる問題ではございませんが、策定検討会で問題点を明らかにすることも必要だろうと考えております。
 以上です。
○菱田座長 ありがとうございました。
 最後に、摂食のタイミングについて、柴田重信構成員より御説明をお願いいたします。
○柴田(重)構成員 大分遅くなっておりますが、5分いただいておりますので、簡単にお話ししたいと思います。
 体内時計は、哺乳動物から遺伝子がクローニングされてちょうど15年たつのですが、その間に結構いろいろな研究が進みまして、薬とか栄養食と体内時計の関係というのが議論されてきました。
 それで、お手元の資料の1ページのところに書いておりますが、従来は時間薬理学という言葉がかなり定着してきておりまして、例えばスタチン系の薬なんかは夕方飲むと、コレステロールの合成酵素阻害剤ですので有用ですよとか、あるいはこれはラメルテオンを書いておりますが、メラトニン系の薬というのは時差ぼけにもいいですよということで、体内時計を動かし得る、あるいは体内時計がいわゆる薬物動態あたりに作用することによって薬の効き方を変える、こういう考えがあったのですが、それは食べ物とか栄養でも起こり得るのではないかというのが左側の絵でありまして、実際、食べ方を変えると体内時計は動くのではないか。あるいは体内時計がいろいろな、先ほどから栄養物の吸収・代謝等の議論が出ておりましたが、あるいは入り口・出口ですが、そういったものに影響するのではないかということが考えられるようになりました。
 したがいまして、大きく2つの視点がありまして、体内時計に対する食べ方の影響、今度は逆に体内時計が栄養素の入力とか出力、エネルギーの入力とか出力に影響する、そういう2つの視点があると思います。
 次のページをお願いします。
 それで実際、私、発言しましたように、ネズミの実験がかなりでありまして、ヒトの実験というのはほとんどないということで、特に食べ方が体内時計にどう影響するかというのはなかなか研究がされない、研究しにくい。その理由は後で説明します。
 1例で、例えばこれはネズミで、このようにIVISというin vivoイメージングで時計遺伝子を、生きたまま肝臓とか腎臓とかで経時的に見ることが確立されるように去年あたりからなりました。
 そういったものを使ってやられた研究で、4ページを見ていただきますと、ネズミの実験ですが、ネズミは夜行性なのですが、普通、自由に食べさせると夜食べるのですが、これを昼間の12時間だけ食べられる。ですから、基本的には絶対量は不足していないはずなのですが、食べる時間だけを昼間の12時間にするか、夜の12時間にするかということをしてみますと、このいろいろな、kidney、liver、それから顎下腺が書いてありますが、そういったもののリズムの位相が変わる。要するに、ネズミは夜に食べますが、今まで夜型の時計を見ていたのが昼間に動かすことができる。つまり、食べ方によって時計を変える。これが将来的に、例えばシフトワークとかで食べ方が変わっていると、ひょっとしたら時計が変わっていくのではないか。そういうことにつながるわけです。
 5ページを見ていただきますが、問題点があります。
 特にこの体内時計は、食べ方あるいは栄養が作用するかという研究は、ヒトではデータがほとんどございません。その理由は、簡単に言いますと、体内時計遺伝子の発現は簡単に測定できないということでございます。先ほどもお見せしましたように、ネズミですといわゆるレポーター系が非常に充実していますのですぐに見られますが、ヒトの場合、現在、有力でいいだろうというのは、ひげの毛根のところの部分を、RNAを抽出して見るという、結構大変な方法ですので、なかなか難しい。
 論文もありませんが、学会で1つだけ、ヒトで給餌性リズムを発現できるかというのが去年ちょうど発表されていましたが、この場合も指標はコルチゾールの分泌リズムで、体内時計遺伝子を直接見ているわけではございませんので、コルチゾールは御存じのように、いろいろなファクターで影響を受けますので、時計そのものを見たかと言われるとわかりにくいということでございます。
 次をお願いいたします。6ページでございます。
 今度はもう一点の視点で、時間栄養学です。これは先ほども言いましたように、食べ方に対して時計がどれぐらい影響するかということですが、食事の回数、各食事のウエート、各食事の食事内容。つまり、例えば3食食べる場合、2食食べる場合、もっと食べる場合、あるいは夜食はどうか。これは先ほど、この標準的な健診・保健指導ということで、最近、問診のところに、あなたは朝御飯を抜きますか、夜食を食べていますか、あるいは夕方遅い食事時間ですかという調査が始まっておりますが、それを見ますと、やはり朝御飯を抜いていると太りやすくて、夜食を食べる習慣がつくと太りやすい。それから、夜遅い食事もよくない。そういうことが大分わかってきております。
 こういったものはかなりヒトの研究も進んでおりまして、例えば8ページを見ていただきますと、まず食事回数でございますが、それでは、3食あるいは2食とかいろいろあると思いますけれども、これはいろいろ調べていましても、いいという論文もあるのですが、反論もありまして、直接的なきちんとした証拠というのは現在まだ余り得られていないようでございます。
 しかしながら、食事の回数が多いとこのTotal cholesterolやLDLを全体的に減らせますねという論文は少しありまして、これはあり得るかもわかりません。
 3つ目に、いわゆる食事時間を守って食事する。つまり、3食はいいのだけれども、ばらばらに3食をとるのではなくて、きちんと同じ時間に3食とっているとどうでしょうかということでしますと、かなりそういうことで、不規則な食事パターンの人が規則的にやることによって、例えばエネルギー摂取量が低下し、コレステロール低下で、インスリンの感受性も増大した、そういう研究もございます。
 続きまして9ページで、各食事のウエートです。これがいわゆる朝食とか夕食の問題でございます。
 これも先ほど言いましたように、朝食の欠食、あるいは少ない朝食というのは、体重増加、肥満、BMIが上昇するという、これはかなりの論文、しっかりした論文がございまして、有力でございます。これはただ、原因がどうしてそうなるかというのがいろいろなディスカッションがあるわけで、朝食べないから昼間に過食することによるものか。スナックをより食べるようになるのではないか。あるいは朝食を習慣的に食べない人は全体的に運動量が少な目であるとか、そういったこと。そうではなくて、1日の摂取カロリー全体で見るとそんなに差はないという論文もありますので、こういったものが複雑に絡んで、結果としてはいい方向にはなるだろう。つまり、朝食を欠食していると悪い方向になるだろうということでございます。
 それではというので、これはアメリカの論文がほとんどでありまして、いわゆるシリアルを食べさせるとどうだろうかということで、実際に欠食している人、普通の朝食をしている人、それから、シリアル食をとっている。そうするとシリアル食を、ここは「ready –to-eat-cereal」と書いてありますが、5,000名程度の論文で、これはかなり論文がしっかりしておりますが、やはりよろしいという結果がございます。
 それから、朝食時にどういった食べ物がいいか。脂質がいいのか。炭水化物、たんぱく質、どれがいいか。これも調べてみますと、余りございません。論文が1個出てきまして、ある程度、朝食時にたんぱく量をふやしていると、いわゆる食事のモチベーションが全体的に減って、いわゆる過食が減って、過体重・肥満を改善できるということがございます。
 4番目ですが、夕食のウエートが多いとBMIが上昇する。これも論文が幾つかございます。
 次のページを見ていただきたいのですが、10ページでございます。
 これは私、出張の関係で、原文そのものは見ることができていませんので、香川先生からいただいた資料をあれしていますが、ただ、このデータを見ますと、ごらんのように、先ほどお話ししましたように、夕食時刻が遅い場合、あるいは夕食時にエネルギーを過多にとっていて、特に中年から高齢者の方はオッズ比が上がりまして、先ほどお話ししましたように、やはり肥満傾向になりやすい。
 最後ですが、実際、こういったレビューはたくさんありまして、時計に影響を与える。遺伝的要因、環境要因、生理要因ですが、特に最近はシフトワークなんかが問題になっておりますが、そういう方はいろいろな時計が出力として出ていくところにいろいろな問題がある。
 例えば腫瘍の問題で、不眠症とか感情障害というのは割と考えやすいのですが、睡眠障害を伴うもので、ただ、腫瘍、メタボリックシンドローム、あるいはアレルギー・炎症といったものに対しましてすごく悪さをしやすくなるということで、時計を整えることが重要であろうということです。
 次に12ページで、実際、動物実験ではかなりこういう研究がございまして、体内時計のリズム異常が肥満・糖尿病を引き起こしやすいのではないか。いわゆる時計のミューテーションのかかったネズミはたくさんいます。それから、シフトワークのネズミもいますが、なりやすい。
 逆に、例えば肥満・糖尿病のモデルマウスがいろいろいますが、そういったものを調べますと、時計がおかしくなっているのが多いということで、相互に非常に関係があるだろう。
 それで、下に『Science』の、ちょっと古いのですが、実際、これは時計のモレキュラーのネットワークと代謝系のネットワークが描いてありまして、以前はこれにつながりが余りなかったのが、だんだん非常に強いつながりが出てきた。つまり、これは研究でやられていますが、遺伝子のうちの大体15%ぐらいは時計振動している。ですから、低く見積もっても3,000種類ぐらいの遺伝子は変動するということで、こういうことは非常に起こり得るだろうということです。
 結論で、まだ十分なエビデンスはございませんが、先ほどからお話ししましたように、食べ方で朝食とか夕食の問題、これはかなりエビデンスがそろいつつあるのではないか、そういう印象でございます。
 以上です。
○菱田座長 ありがとうございました。各構成員からは、この摂取基準を作成する上で非常に重要なポイントをたくさん御指摘いただきました。
 いろいろと御意見あろうかと思うのですが、残り時間が少なくなってしまいました。短い時間、本当に5分未満ぐらいしかありませんけれども、この場で発言をどうしてもということがございましたら短くお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
 私から1つだけ、佐々木構成員、きょう提示していただいた中で、対象者をどうするか、どこで利用するかという問題ですが、学校給食の場合や、病院の中、病気の人の指導の場で用いることがあるとは思いますがそれ以外の利用者というのは何か考えておられますか。
○佐々木(敏)構成員 食事摂取基準というのは、直接的利用と間接的利用があると考えます。直接的利用というのは、今、菱田先生がおっしゃられたようなことで、給食は学校にとどまらず職員等の給食もありますし、福祉施設等という施設の給食もあります。当然、病院もあります。それから、食事の改善のほうの直接は、おっしゃられたように、特定保健指導のようなもの、またはそれに類するものがあろうかと思います。また、病院の外来での食事指導等もあろうかと思います。
 もう一つ、間接的な利用のされ方があると私は考えております。それは食事摂取基準が基礎となりまして、例えばきょうは1枚だけお見せしましたが、加工食品の栄養成分表示などは食事摂取基準が直接にそれを決めるものではございません。これは別のところで決められるものでございますが、しかしながら、食事摂取基準の記述を重要な、これは利用者側が決めることかもしれませんが、基準として参照し、活用するということがあると思います。
 それから、例えばもっと一般的なところで、現在、厚生労働省や農林水産省等が勧めておられる食事バランスガイドというものもございます。それから、食生活指針というものもございます。そういうものは、直接ではございませんが、食事摂取基準を主たる、または主要なもののうちの一つとしての基準、ガイドラインとして用いる。したがって、食事摂取基準策定に当たっては、それらへの利用のされ方、してもらい方ということを視野に入れて策定をするべきであろうと考えています。
○菱田座長 ありがとうございました。
 
 多田構成員、どうぞ。
○多田構成員 多田です。
 先ほど雨海先生がお話しされましたエネルギー摂取の概論は、非常に大事なことだと私は思っているのです。ここに実際、疾病をどのように張りつけていけばいいか。それから、そのためにどのような要素とかデータが必要になってきて、どのようにそれをとりに行けばいいか、ここは非常に困難をきわめると思うのです。そこのあたりはとにかく明確にするべきである。それから、重症度をどのように対応していくかということももう一つの課題であると思うのです。エネルギー代謝も全てのところに基本でありますので、そこを疾病として、重症度を減らすために捉えていくためにどうすればいいかという方法論があれば私は非常にうれしいのですけれども、そのあたりがまた、その視点として、ここで討議してつくっていかなくてはいけないと思います。
 もう一つは、その後に話されたエネルギー消費の問題なのですけれども、例えば拒食症といいますか、摂食障害の話が出てきましたが、これは代謝障害が出てくる。つまり、甲状腺機能低下症がこの病態ではありますから、そういったことで理解できる、そういうものなのか。それと、疾病そのものの問題なのか。それから、COPDの話がありましたけれども、これは、私は脂質代謝を専門にしていますけれども、HDL効率が上がってくる。つまり息苦しいので、マラソンをやっていると同じようなことなのです。そういうことでエネルギーを使っていく。どういうふうに、疾病そのものの問題なのか、病態とのかかわりでどういうふうに捉えればいいか、ここのあたりが一つのポイントの、やはり解決しなくてはいけない問題ではないかと思っていますけれども、そのあたりもいろいろ教えていただければ非常にありがたいと思っております。
○菱田座長 ありがとうございました。
 門脇構成員、どうぞ。
○門脇構成員 葛谷構成員のプレゼンテーション、非常に感銘を受けました。
 高齢社会で、内臓脂肪蓄積などは高齢者で多いけれども、筋肉の量は少ないという、メタボの状態と、もう一つは虚弱、サルコペ二アの状態が共存している場合が多いと思っています。したがってメタボを解消し、またサルコペ二アを解消するようなことが今後、高齢社会で重要になっていくのではないか。そういったことについては、この検討会の非常に重要な議論になっていくのではないかと思います。
○菱田座長 ありがとうございました。
 最後に、徳留構成員どうぞ。
○徳留構成員 健康・栄養研究所の徳留でございます。
 多田先生のディスカッションとも関連するのですが、重症化予防の定義を明確にしていただきたい。もし、2.5次予防的なものであるならば、一次予防を目指す食事摂取基準(2015年版)のなかでどのように整合性よくカバーするのか、医師・保健師・管理栄養士などの専門職が理解しやすいように如何に盛り込むのかという検討をぜひ次回以降やっていただきたいと思います。
 それから、資料1の論点整理に関することなのですが、1.の2つ目のポツなのですけれども、「それぞれで基準値が異なること」と書いてあるのですが、基準値はあくまでも健常者を対象にして、エビデンスベースドで求めた参照値、基準値群、あるいはスタンダード群なのです。それぞれで基準値が異なるのではなくて、基準値はひとつのエンティティを持っている数値だと思います。いっぽう、今のディスカッションにありますとおり、疾病・症候群を持っている方に対してのガイドライン値とか指針値、特定健診・特定保健指導あるいは食事バランスガイドのガイドライン値はいろいろ異なるわけです。
 以上です。
○菱田座長 ありがとうございました。
 きょう、重症化予防のことについての議論は時間の関係で省いておりますけれども、たくさんの問題があることは前回の議論で承知しておりますので、次回、そういうことの議論が必要と思います。
 それでは、少し終了の時間がおくれて大変申しわけございませんでしたが、ここで本日の議論を終了させていただきたいと思います。最後に、本日いただいた意見からの課題を整理して、策定方針の方向性を次回以降に整理したいと思います。よろしくお願いいたします。
 議題の「(2)その他」について、事務局のほうから御説明をお願いいたします。
○河野栄養・食育指導官 今後の日程についてでございますが、次回検討会は4月8日の月曜日15時から17時に開催いたしますので、よろしくお願いします。会場等については追ってお知らせさせていただきます。
○菱田座長 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。プレゼンテーションしていただきました構成員の方々、本当にありがとうございました。
 皆様、ありがとうございました。


(了)

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