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2012年9月19日 第1回児童虐待防止医療ネットワーク事業に関する検討会 議事録

雇用均等・児童家庭局母子保健課

○日時

平成24年9月19日(金)15:00~17:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○出席者

委員

奥山座長、市川委員、今村委員、臼井委員、内海委員、小林委員、桜山委員、佐々木委員、佐藤委員、田中委員代理、寺尾委員代理、平野委員、笠委員

参考人

小穴参考人、溝口参考人

事務局

石井雇用均等・児童家庭局長、桑島母子保健課長、高橋母子保健推進官、堀内課長補佐、山本課長補佐、三平課長補佐、太田虐待防止対策室室長補佐

○議題

1.開  会
2.議  事
 (1)児童虐待防止医療ネットワーク事業等について
 (2)医療機関における児童虐待対応について(事例報告)
 (3)その他
3.閉  会

○議事

○山本課長補佐 定刻となりましたので、ただいまから、第1回「児童虐待防止医療ネットワーク事業に関する検討会」を開催いたします。
委員の先生の皆様方には、本日は、大変お忙しい中、遠方より御出席賜りまして、まことにありがとうございます。
座長選出までの間、私、雇用均等・児童家庭局母子保健課の山本が司会役を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
開催に当たり、雇用均等・児童家庭局長の石井より、御挨拶申し上げます。
○石井雇用均等・児童家庭局長 雇用均等・児童家庭局長の石井でございます。
本日は、大変お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
児童虐待の記事は毎日のように報道されているわけでございますけれども、平成12年に児童虐待防止法が成立してから、早、もう10年以上になるわけでございます。この間、児童福祉法とあわせて児童虐待防止法も改正されておりますし、昨年には、親権の一部制限なども内容とします民法の改正なども行われてきております。その中で、私ども、一生懸命、子どもの虐待について、その発生の予防、早期発見、早期対応、そして、さらには虐待を受けた子どもの保護とか自立に向けた支援などに取り組んできているところでございます。死亡事例が後を絶たない中でございますが、何とかそのノウハウを重ねながら、できるだけいい状態に持っていきたいと思っているところでございます。
こうした状況を踏まえまして、平成24年度から、各都道府県の中核的な医療機関を中心としまして、児童虐待対応ネットワークづくりや保健医療従事者の教育などを行いまして、医療機関における児童虐待の対応の向上を図る、それを内容とします児童虐待防止医療ネットワーク事業を新たにスタートしたところでございます。
この検討会は、その事業の推進のための助言、御指導、評価をいただくために設置させていただいたところでございますけれども、残念にして、各都道府県での取り組みがなかなか進んでおりませんで、今年度は児童虐待の対応に積極的にお取り組みいただいている医療機関の現状などを御報告いただきまして、これらを踏まえて医療機関における児童虐待の早期発見と、それから地域の医療機関との連携強化のための取り組みの考え方を作成させていただきまして、今後の事業、そして各自治体とか、あるいは医療機関の児童虐待の対応にフィードバック、生かしていきたいと考えているところでございます。
本日は、委員の皆様方に事前に御意見も頂戴いたしております。そうした御意見や実際のお取り組み、そして厚生労働科学研究の成果をもとに活発な御議論をお願いしたいと思っておりまして、どうぞよろしくお願いしたいと存じます。
簡単ではございますけれども、開会の挨拶とさせていただきます。失礼いたしました。
○山本課長補佐 続きまして、委員の先生方を御紹介させていただきます。
 資料1の裏側に構成委員名簿をおつけしております。五十音順になりますが、上からご紹介させていただきます。
 北九州市立八幡病院小児救急センター院長、市川委員。
 日本医師会常任理事、今村委員。
 日本赤十字医療センター附属乳児院看護師長、臼井委員。
 日本小児科医会理事、内海委員。
 独立行政法人国立成育医療研究センターこころの診療部部長、奥山委員。
 子どもの虹情報研修センターセンター長、小林委員。
 東京都児童相談センター所長、桜山委員。
 長野県飯田保健所所長、佐々木委員。
 日本歯科医師会常務理事、佐藤委員。
 大阪医科大学小児科准教授、田中委員。
 日本産婦人科医会会長、寺尾委員。
 埼玉県小児医療センターソーシャルワーカー、平野委員。
 杉並区役所保健福祉部子育て支援課保健担当係長、笠委員。
 先ほど代理の先生方には自己紹介いただきましたが、本日、業務の都合により、寺尾委員の代理として田中政信先生、田中委員の代理として、名古屋市立大学の齋藤先生に御出席いただいております。
 また、本日は、参考人といたしまして、小穴参考人、溝口参考人においでいただいております。
 本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 また、資料1の要綱にございますが、本検討会の座長ですが、2の「構成」の(2)「検討会に座長を置き、構成員の互選により定める」とされております。皆様、どなたか座長について御推薦いただけないでしょうか。
 小林委員、お願いします。
○小林委員 国立成育医療センターの奥山委員を推薦させていただきたいと思います。
○山本課長補佐 内海委員。
○内海委員 私も、奥山先生にお願いいたしたいと思います。
○山本課長補佐 小林委員、内海委員から奥山委員を座長に御推薦との御発言がございましたが、皆様、いかがでしょうか。
(拍  手)
○山本課長補佐 それでは、委員の皆様方の御賛同が得られましたので、奥山委員に本検討会の座長をお願いいたしたいと思います。
 
 以降の議事進行を奥山座長にお願いいたします。
○奥山座長 座長を仰せつかりました奥山でございます。僣越でございますが、座長を務めさせていただきたいと存じます。皆様の御協力をいただいて当検討会の円滑な運営に努めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 では、早速ですが、議事を進めさせていただきます。
 まず、議事に入ります前に、事務局から、お手元にお配りしております資料の確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○山本課長補佐 では、資料の御確認をさせていただきます。
お手元の資料、クリップでとめられておるかと思います。議事次第の下に【配付資料】ということで本日の資料の一覧がございます。クリップを外していただきまして、資料が資料1から資料9まで、参考資料が1から4まであることを御確認ください。
 もしもお手元にない場合は、御用意いたしますので、お知らせください。
 なお、本検討会ですが、資料1の開催要綱にございますが、検討会は公開とされております。また、議事録につきましては、事務局でまとめたものを各委員に追って御確認いただいた上で、厚生労働省のホームページで公表することとさせていただいております。よろしくお願いいたします。
○奥山座長 では、議事1つ目の「児童虐待防止医療ネットワーク事業等について」、事務局よりご説明をよろしくお願いいたします。
○山本課長補佐 それでは、事務局から「児童虐待防止医療ネットワーク事業等について」ということで、資料1から4を用いまして御説明させていただきます。この事業の内容及び検討会については母子保健課から、また、児童虐待防止対策の状況については総務課の虐待防止対策室から御説明させていただきます。
 まず、資料1ですが、本検討会の開催要綱及び裏側に委員名簿になっております。この検討会ですが、先ほど局長の御挨拶にもございましたが、医療機関における児童虐待対応の向上を図る事業として実施されることとなっております児童虐待防止医療ネットワーク事業につきまして、その推進のための助言・評価を行うことを目的として開催されております。
 また、資料2に「今後のスケジュール」をお示ししておりますが、本年度は各自治体による取り組みというのがまだ進んでいないことから本日第1回、あと、11月から12月ごろに第2回、2月から3月ごろに第3回と3回程度検討会を行いまして、医療機関や行政機関の取組のヒアリング、研究成果の報告等に基づき、医療機関における児童虐待の早期発見と地域の関係機関との連携強化のための取り組みの考え方を整理できればと考えております。
 平成25年度以降につきましては、事業実施自治体も出てくるかと思いますので、それらの報告等をいただきまして、助言・評価をいただければと思っております。
資料3は、各都道府県で実施することとなっております補助事業であります児童虐待防止医療ネットワーク事業の実施要綱、裏面にその大まかな概要をお示ししております。
 この事業につきましては、各都道府県の中核的な医療機関を中心として、児童虐待対応のネットワークづくりや保健医療従事者の教育等を行うことで、児童虐待対応の向上を図ることを目的としており、事業の内容としては、児童虐待専門コーディネーターを配置、児童虐待対応に関する相談への助言等、また、児童虐待対応向上のための教育研修、また、その拠点病院自身における児童虐待対応体制の整備というようなことを行う事業となっております。
 続きまして、医療機関の児童虐待に関連する事項としまして、参考資料3と4にその他のもの、臓器移植と医療機能評価機構での取り組みを参考資料としてつけさせていただいております。参考資料3が臓器の移植に関する法律に関する資料になっており臓器の移植に関する法律、附則5項の部分で、政府は、虐待を受けた児童が死亡した場合に当該児童から臓器が提供されることのないよう、移植医療に従事する者が児童に対し虐待が行われた疑いがあるかどうか確認するということになっております。
 それを受けまして、「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)というものが出されておりまして、その中に「虐待を受けた児童への対応等」ということで対応の原則、児童から臓器提供を行うための要件、手続きとして、必要な体制の整備や虐待が行われた疑いの有無の確認、臓器提供を行う場合の対応というようなものが指針として示されております。
 参考資料2の2ページ以降につきましては、そのガイドラインの留意事項や実際のガイドラインをおつけしておりますので、後ほど御確認いただければと思います。
 また、参考資料4の部分では、日本医療機能評価機構が行う病院機能評価事業について、25年4月1日からの第三者評価につきまして、患者が児童虐待、高齢者虐待、障害者虐待、配偶者からの暴力等を受けた疑いのある場合の対応方針や、対応が行われているかどうかというようなことが新たに評価項目に加わることになりましたので御紹介させていただきます。
 母子保健課からの説明は以上になります。
○太田室長補佐 虐待防止対策室の室長補佐の太田と申します。よろしくお願いいたします。
 資料4に基づきまして、「児童虐待防止対策について」御説明させていただきます。先ほど局長の御挨拶の中にもありましたが、一部分、虐待防止対策の経緯のところで重複する部分もございますが、説明させていただきます。
 児童虐待防止対策は、平成12年、児童虐待の防止等に関する法律の成立により、後ろ盾を得た形で大きく進展してまいりました。その後の児童虐待防止法と児童福祉法の数次の改正によって一層の推進が図られてきております。
平成16年の児童虐待防止法及び児童福祉法の改正によりまして、特に市町村の役割の明確化でありますとか要保護児童対策地域協議会の法定化が図られております。
 平成19年には、児童の安全確認のための立入調査、臨検捜索という仕組みを導入いただいております。
さらに、平成20年には、児童福祉法の改正におきまして、乳児家庭全戸訪問事業、養育支援訪問事業などの子育て支援事業の法定化が図られております。
そして、平成23年、本年の4月から施行されておりますが、児童福祉法の改正により、親権停止及び管理権喪失の審判などについて児童相談所長に請求権が付与されております。
少し飛んでいただきまして、4ページをお開きいただきたいと思います。4ページの上の段で示しておりますように、ポンチ絵のほうをごらんいただければと思います。現在、市町村と児童相談所の2層構造で児童虐待の対応をすることとなっております。また、市町村では、市町村の下に書いております子どもを守る地域ネットワーク(要保護児童対策地域協議会)を組織して、児童虐待への対策を行っております。この要保護児童対策地域協議会については、その下の段に詳細を記載しております。要保護児童などの早期発見や適切な保護や支援を図るために、関係機関が当該児童に関する情報や考え方を共有する。また、こういった機関が適切な連携のもとに対応していくために協議会を構成していただいております。
 上の段に戻っていただきまして、この協議会、3つ目の丸のところですけれども、平成23年度4月1日現在で、法定化された、法律に基づく協議会そのものが98%、法律施行以前からのものも含みますと、99.5%の市町村で実施されております。こういった仕組みをもとに児童虐待対策を行っているところであります。
 戻っていただきまして、2ページの下の段をごらんいただきたいと思います。この折れ線グラフは児童相談所が対応した虐待相談件数をあらわしております。毎年、右肩上がりでどんどん増加の一途をたどっております。平成23年度速報値でありますけれども、6万件に肉薄する5万9,862件という状況になっております。
また、その下の表をごらんいただきたいと思います。先般、児童虐待の死亡事例等の検証委員会の報告が第8次報告ということでまとめられました。この報告の中では、平成22年4月1日から23年3月31日に、虐待によって亡くなった子ども98人、その中でも純然たる虐待と言われる部分ですけれども、51人と、それ以外の心中による死亡というのが47人報告されております。後ほど詳細を御説明させていただきます。
 右のページに転じていただきたいと思います。「児童相談所での虐待相談の経路別件数の推移」ということで、各機関を経由して児童相談所にもたらされた件数が記載されております。中央、右の列をごらんいただきますと、医療機関ということでまとめております。相談総数の中の大体4%が医療機関からもたらされているということになります。平成22年度では、2,116件が医療機関からということになっております。
 23年度のデータにつきましては、10月ごろ、詳しいものが出てまいりますので、その詳細版を待たないとこの細かな内訳がございません。22年度の統計で御説明させていただきます。
その下の段は、市町村が対応した虐待相談件数。これは22年度のものしかございません。折れ線グラフで、市町村では6万7,232件ということになっております。よく、児童相談所と市町村の分を足し上げれば日本全国の相談件数とおっしゃる方もおりますが、重複する部分が結構ございますので、足し上げてしまうと正確ではない数になります。
 ただ、その重複の度合いが統計上ちょっと把握できておりませんので、児童相談所と市町村の数ということで御報告させていただきます。
 市町村で対応した件数につきましても、ちょうど同じ列、児童相談所と同じ、下のほうに目を転じていただきますと医療機関がございます。市町村の相談件数の中では約2%前後で推移しております。22年度では2.1%の1,419件ということになっております。
 済みません。前後いたしますが、前ページの上段をごらんいただきたいと思います。これらの対応する機関で対応しております現状が左の列に記載させていただいております。これらの現状を踏まえまして、対応については3つのステージに分けて対応しております。発生予防、早期発見、早期対応、そして、子どもの保護・支援と保護者の支援といった3つのステージに大きく分けて対応策を講じております。
必要な施策については一番右の欄をごらんいただきます。全体は御紹介いたしませんけれども、例えば発生予防のところで、乳児家庭全戸訪問事業などの実施であるとか、あと、虐待防止意識の啓発、そして、相談しやすい体制の整備ということを講じております。
 以下は省略させていただきます。
5ページをごらんください。先ほど御説明させていただきました死亡事例等の検証委員会の第1次報告の概要になります。検証対象といたしました事例の発生した期間、平成22年4月1日から23年3月31日までの12か月間に発生し、または表面化した児童虐待による死亡、82事例、98人を対象といたしました。人数については先ほど説明させていただいたものになります。
下の段をごらんいただきますと、集計結果の分析ということで、特徴となる部分をまとめております。1番の心中以外の虐待死ということで、死亡した子どもの年齢は、0歳が23人、45.1%と最も多く、3歳以下を合わせると43人、84.3%と大部分を占めております。
そして、4の事項に目を転じていただきますと、0歳児の「心中以外の虐待死」ということで、日齢0日の死亡が9人、月齢0か月の死亡が3人、月齢1~11か月の死亡が11人ということで、低年齢の子どもたちの被害が大半であるということです。
 次のページをごらんいただきますと、この検証委員会から地方公共団体と国への提言をいただいております。全体は御説明差し上げませんが、「国への提言」の1番のところ、「虐待の発生及び深刻化予防」ということで、2つ目の○、妊娠期・出産後早期から養育支援を必要とする家庭に関し効果的な支援についての知見の収集及び普及並びに医療機関などの関係機関と連携・協働した支援の促進をしなさいという提言をいただいております。
 この提言をいただきまして、7月26日付で通知を出しております。その通知が参考資料に本文をつけさせていただいております。後ほどごらんいただきたいと思います。
また、その次の7ページをごらんいただきますと、前年の第7次報告を受けて、「妊娠・出産・育児期に養育支援を特に必要とする家庭に係る保健・医療・福祉の連携体制の整備について」という通知を発出しております。
 1つ目の○のところでごらんいただきますように、母親が妊娠期から一人で悩みを抱えていたり、産前産後の心身の不調や家庭環境の問題がある。そのため、妊娠等について相談しやすい体制や、かかわりのある機会を見逃さない体制の整備が必要といった内容の通知としております。この通知本文についても参考資料に掲載しております。
 以上、虐待防止対策室からの説明を終わらせていただきます。
○奥山座長 ありがとうございました。
 今までの事務局からの御説明に関して、御質問、御意見ございますか。
 佐藤委員、よろしくお願いします。
○佐藤委員 ちょっと教えていただきたいのですが、もしかするとすごく初歩的な質問になってしまうかもしれませんが、資料3の件で2つほど。1つは、今回の児童虐待防止医療ネットワーク事業の採択率とそれぞれの予算関係についてお知らせできるものがあったら教えていただきたい。
それから、同じ資料3の裏側にネットワーク事業の体制の絵がございますが、ここにある拠点病院というくくりですが、例えば何かに基づいた拠点化がされた、いわゆる要綱等がある拠点であるのかどうか。
その2点をまず資料3で教えていただきたいのと、それから、資料4で、今の説明で、2ページ目と3ページ目のお話ですが、2ページ目には死亡件数の推移が記載されており、3ページ目には相談対応件数が記載されております。単純に見ていくと、平成22年度の相談件数が6万7,232と。この相談件数から死亡するときの割合の増加というところは、この図のどこで見ていけばいいかちょっと教えていただければと思います。
○奥山座長 まず、佐藤委員の最後のほうの御質問ですけれども、対応件数と死亡事例で、上のほうが対応件数で、下の死亡事例が、22年で言うと98件ということですね。
 では、事務局のほうからお答えをお願いしたいと思います。
○堀内課長補佐 課長補佐の堀内と申します。よろしくお願いします。
 御質問の、まず予算額ですけれども、実は予算額は、児童虐待・DV対策統合補助金という一つの補助金があるのですが、その中にいろんな、虐待とかDV対策の関係のメニュー事業がございまして、それが全体で22億なのです。特に内訳は示してないのですが、このネットワーク事業の補助単価は、1県当たり約460万円で、国庫として2分の1ということになってございます。
 あと、採択率ですけれども、平成24年度は、残念ながら、0件でございます。
 以上です。
○奥山座長 拠点病院ということの何か制約があるかという御質問もあったと思います。
○山本課長補佐 特に拠点病院ということで制約はございませんが、やはりその地域の医療機関の相談への助言ができること、実際にその拠点病院の中で児童虐待の対応体制があるまたは整備できること、教育研修ができるというようなことで、地域の中の拠点を中心として体制をつくっていくという事業になります。
○奥山座長 よろしいでしょうか。
 あと、太田補佐の御説明の、死亡率はどのようにしたらわかるのかということでよろしいですか、佐藤委員。
○佐藤委員 はい。
○太田室長補佐 このまとめられております死亡事例の報告の中の死亡件数が全て児童相談所で相談を受けたものではありませんので、この中には、例えば5割ぐらい、死亡事例の中の5割が児童相談所を経由した時期もありますし、その児童相談所がかかわった率がどんどん下がってきていますので、一概には言えないところがあります。死亡事例が、まさに亡くなったケースが児童相談所や市町村に虐待として相談を受けてないケースがありますので、率を出すのは難しいかなと思います。
○奥山座長 佐藤委員、よろしいでしょうか。
○佐藤委員 はい。ありがとうございます。
○奥山座長 では、ほかに御質問、御意見ございますでしょうか。
佐々木委員、よろしくお願いします。
○佐々木委員 佐藤委員に関連するのですけれども、資料4の2ページですが、死亡数を見ていくと、第4次、5次、6次に非常に死亡数が多くて、それからぐっと減っていますね。でも、相談件数とかは余りこれとは関係なく動いている。その辺は何か今まで、なぜかとか、そのような解析はあるのでしょうか。
○太田室長補佐 死亡ケースと相談件数の因果関係というのはなかなか明確にならない部分があります。相談件数のふえている要因というのは、この間ずっとですけれども、関係機関や地域住民の理解がどんどん進んできた。特に大きな事件があった年とか翌年にはその伸びが大きいです。相談件数については。死亡事例については若干増減を繰り返しながら推移しております。
特に第5次報告のところは、12か月ではなく、ここ15か月の集計になっておりますので、例えば虐待死が78人になっておりますけれども、これを12か月、前年と同じ期間で集計しますと、たしか前年と亡くなった子どもの数は同じ数であったと思いました。今、少しずつ減りながら横ばい傾向にあるのかと思います。それ以上の分析はできていません。
○奥山座長 今村委員、よろしくお願いします。
○今村委員 今の佐々木委員への回答といいますか、私が言うのもおかしいのですけれども、当局としては、そのようなきちっとした回答はできないとずっとおっしゃっていると思います。
私ども、日本医師会及び産婦人科医会での分析結果というのを申し上げれば、死亡事例の中で特に多いのが0日児、産まれたその日の死亡なのですね。産まれたその日の死亡、しかも、その加害者というのは実母というのが8割方なのです。とすると、医療機関の中でお産をした方はそのような事例にはゼロなのですね。医療機関で産まれると、そういうことがあろうはずがない。
この間に何があったかといいますと、実は妊婦検診の公費負担というのが2回から5回になり、5回から14回になった。それから、出産一時金が35万から42万円。要するに、妊婦さんの妊娠並びに分娩に係る経済的負担が非常に少なくなったという背景があるわけですね。そうすると、そのような条件下での虐待、あるいは虐待死というのは、当然のことながら、医療機関にかかることによって減るということで、私どもとしては、厚労省を中心としたこのバックアップというのが、0日児の虐待死亡例というのを減少させ、それがここに載ってきていると思っております。こういうことがより支援を充実させ、そして、そういう支援体制があるのだということを国民が知ることによって、この0日児、あるいは0か月児の死亡例というものを非常に激減させることができるのではないかと思っておりまして、このことについては、私どもは一生懸命、厚労省と一緒にやっていきたいなと考えております。
○奥山座長 死亡事例検証に関しましては、全死亡を扱っているわけではなくて、虐待死のみを扱っております。恐らくチャイルドデスレビューとして子どもの死亡全体を扱ってみないと、どのぐらい本当に虐待死かというのはなかなかわかってこないものだろうとも思いますし、それから、先ほど今村委員のおっしゃったようなことも、今後、その経緯を見ながら、割合がどのぐらい、嬰児殺と乳児殺の比率が変わってくるかというようなことも見ていかなければいけないのだろうと思います。
ほかに、関連すること、関連しないことで御意見ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、議事2つ目の「医療機関における児童虐待対応について」に移らせていただきます。病院での児童虐待対応の取り組みについて、北九州市立八幡病院国立成育医療研究センター、埼玉県立小児医療センターでの取り組みについて御発表いただきたいと存じます。それぞれ10分程度でお願いしたいと思います。
まず、市川委員からお願いするわけですけれども、御質問等は、お三方の御発表が終わってからまとめてしたいと思いますので、よろしくお願いします。
○市川委員 それでは、発表させていただきます。まず、お手元の資料を簡単に説明させていただきたいと思いますけれども、資料5の、通し番号で7ページから33ページまでが院内の各部署に配置しているチェックリストを中心とした虐待の参考書的なものです。これを病院の事務受付、そして診察室、看護婦詰め所、あるいはレントゲン撮影室等々に配置して、誰でも気づいたらチェックを入れて、それがカルテに反映されるようにという形でやっております。もちろん、医療スタッフのボトムアップが目的で2008年の元旦から始めたものです。
(PP)
そのようなものを使いながら、我々のところでは虐待対応をやっているということで、最大の特徴は、350床ぐらいの中くらいの病院でございますので、かなり小回りがきくということで、我々の病院に受診する子ども全て、交通外傷も含めて小児科医が諸療をやります。そういう形をとって、見逃しを少なくしようというふうにやっている状況です。現実的には340床で94床の小児病棟がありますので、かつ、全て、子どもに関しては小児科医が主治医をする、そして、家族との対応をするということをやっておりますので、院内の連携というのは変ですけれども、見逃しに関しては余り要らないというか、小児科医がしっかりしていれば大丈夫だということになります。
(PP)
現実的には、子どもの受診者数は5万9,000弱ぐらいで、救急受診が3万3,000です。先ほどのファイル、あるいはファイルの中に入っているチェックリストを、何かおかしいと思ったら必ずつける。そのカルテにはさみ込みはつけた人がやって、それは必ず口頭で看護師長、小児科医、そして、翌日、もしくは当日にセンター長等に連絡が来るということになっています。
事例検討会等もやっていますし、あと、地域の児相であります子ども総合センターとの連携は、保護児童の診療は24時間体制でやっていますし、保護施設の看護師も、当院救急部のOBが張りついているという状況です。
(PP)
平成18年に医療機関の児童虐待というのが余り好ましくないと思いまして、北九州市内の開業の先生方にアンケートをやりましたところ、虐待診断というのは困難もしくは自分ではできないとおっしゃる方が全体で7割おられたということで、こういう結果を踏まえて、あるいは北九州市の通告頻度が、医療機関が大体5.5%ぐらいで、もっとそれを上げようということで考えて、地域の虐待防止の基幹病院というのをつくりました。
(PP)
基幹病院の条件としては、小児科医が24時間常駐していること、緊急の脳外科手術対応、あるいは整形外科対応ができるというところにざっくり条件としてはしております。
基幹病院は、6個の基幹病院で、開業医の先生が最寄りの基幹病院にすぐに相談できるような体制。これは24時間という形で対応できるという形をとりました。そういう意味で、市の小児科医会、市医師会に委員会をつくっていただいて、開業医の先生方、各診療科それぞれが基幹病院の小児科に連絡ができるようにという形をとらせていただきました。もちろん、基幹病院同士の連携も行っております。
(PP)
それから、関係機関との連携という形をとらせていただいています。こういうネットワークをつくってやりました。もう一つは、市の医師会等にお願いしまして、園医、校医の先生方の虐待に対するボトムアップということで、そういう連携を確実にしようということで、今、同じ図なのですけれども、一番上が園、学校、そこから双方向性で開業医の先生、あるいは園医、校医の先生に不審、あるいは疑問点をお尋ねする。それに関してきちっと医学的な回答をする。それが困難な場合は基幹病院に相談すると。そういうシステムの運用を開始しております。
開業医の先生からの関係機関への直接の相談というのは渋られる方も多いので、基幹病院がかわりに行う、そういう形もとっております。
(PP)
現実的には、この資料の中にありますけれども、マルトリートメント症例(疑い)相談書、あるいは相談依頼・返書という形で文書でやりとりをするという形をとって、医師会の虐待防止医療連携ネットワーク委員会から市の教育委員会に働きかけをして、保育園部会、幼稚園部会、学校部会でそういう相談依頼書等を配置していただく。そこにきちっと医師会のほうはこたえる、そういうシステムをつくって運用しております。
(PP)
現実的には、平成11年度からのプロットですけれども、北九州市の児童相談所への通報件数、18年にどんとふえておりますが、この医療機関ネットワークを策定してというわけではないのですけれども、少しずつ件数が減っている。昨年は若干またふえましたけれども、ある程度の医療機関からの通報を含めたその心構えというのはできつつあるのかなと考えています。
(PP)
北九州市の児童相談所、子ども総合センターへの通報の全体における医療機関の通報率をカウントしてみますと、平成16年から5年間は平均5.6%、19年が4.4%に落ちていますけれども、ネットワークを策定した平成20年から、7%、8.5%、平均して6%台の通報頻度に上がっているということで、このネットワーク事業というのはある程度功を奏しているのではないかと考えております。
北九州の取り組みは以上でございます。
○奥山座長 市川先生、ありがとうございました。
 引き続きまして、小穴先生のほうから国立成育医療研究センターに関して御説明いただきたいと思います。
○小穴参考人 よろしくお願いします。成育医療研究センターの総合診療部の小穴と申します。
 まず、資料のほうから説明させていただきますけれども、一番最初が、うちの現況についてというのをつけてあります。その次が、2、3、4が平成23年度の実績になります。
(PP)
 まず最初に、その次の5ページからのスライドのほうで、成育医療センターにおける、SCANチームと言っているのですけれども、小児虐待対応チームの状況を御説明させていただこうと思います。SCANというのは、Suspected Child Abuse and Neglectの頭文字をとってSCANと言っています。
当センターが発足してすぐ、救急外来から疑わしい症例があったときに、そのときにはチームがなかったのですけれども、救急外来が非常に対応に困ったということで、このチームが立ち上がったと聞いています。
(PP)
これが年間対応件数、上が対応件数で、下が児童相談所への通告件数なのですけれども、大体どの年も60件ぐらいです。通告件数は30ですけれども、ここに対応件数と通告件数に差があるのは、必ずしも、全例、児童相談所に通告してないということになります。というのは、疑わしいけれども、そうでなかったという症例もたくさん上がってくるようにしてあるということになると思います。言っていることわかりますか。必ずしも通告が必要でなくても、ちょっと心配というだけでも上げてもらえるようなシステムになっているということになると思います。
(PP)
 こういう組織になっているのですけれども、実際には一番下が、SCANチームと書いてありますが、ここが主治医になるのですね。名前がいろいろ変わっているので難しいのですけれども、子ども虐待防止対策室というのがいわゆるSCANというところになります。その上に子どもの虐待防止対策委員会という委員会があって、それは年に2回開かれるのですけれども、実務的には下の主治医チームとその上の赤い部分がいわゆるSCANになりますが、そこのチームで対応していくという形をとっています。
(PP)
 子ども虐待防止対策室、赤いところですけれども、主治医に対してアドバイスしたりいろんなことをしていくチームです。そのチームのメンバーはこのようになっているのですけれども、いろんな職種を入れて、なるべく専門的なアドバイスができるようなメンバーを選んでいる形になりますけれども、全員兼任になっています。
(PP)
 やっていることは、虐待が疑われる症例が相談に上がってくると、それのリスク判定をする。これは通告したほうがいいとか、これは事故防止をしたほうがいいとか、そういうことを判定します。実際に通告、告知するのもそのアドバイザーのチームのほうがやります。月に1回、定例カンファレンスを定期的にやっていて、1か月に上がってくる症例が、多いときで10ぐらいですかね。それを全部チェックしています。画像カンファレンスやデータベースを作成していて、教育や研究に還元できるようにしております。
(PP)
院内のマニュアルが幾つかつくられていて、うちは電子カルテを使っているのですけれども、電子カルテの裏に業務系というサイトがありますが、そこのところからいつでもダウンロードできる、あるいは見られるようになっています。臓器提供時の虐待除外マニュアルとか院内虐待対応マニュアル、用語集、あと、カルテにどういうことを記載したらいいのかというのもすごく大事なことになるので、そういうことがいつでも見えるような状況にしてあります。
(PP)
 実際にどうなっているかというと、カルテ上で、症例がいると、すぐソーシャルワーカーに連絡がいきます。ソーシャルワーカーが総合診療部のオンコールDr.というのに連絡をして、みんなで協議するカンファレンスをすぐ開きます。それで役割分担をして、情報アセスメントをして、リスクアセスメントをして対応していきます。
(PP)
それで、一番職員にとって負担になるのが告知という、虐待者に対して児童相談所に通告しましたよと話すことを告知と言っているのですけれども、その告知をすることがすごく大変だと思うので、主治医チームではなくて、そのアドバイスするチームのほうが告知するという形をとっております。
(PP)
SCANチームがないと、多分、この主治医が自分で告知しなくてはいけなくなると、家族との関係性がうまくなくなると医療が継続できなくなる可能性がすごく高いのですね。でも、SCANチームが、ここにアドバイザーチーム、これがいることによって、この人たちは医療に専念できて、ラポールをずっと続けることができるので、子どもの医療を継続することができるようにしているのですね。
それで、告知をするのはこっちのチームがすることによって、ずうっと医療を継続させて、この人たちと違う人たちがやって、こういうところにカーテンをすっと引いてあげることによって職員を守るという体制をとっています。
うちは小児専門のPICUがあって、24時間365日の小児の救急医療をやっているので、年間3万6,500人ぐらい来るのですけれども、外傷もやっているので、重症例がすごく多いです。そのために、医療をずうっと継続し続けることがすごく大事なので、それにはこのシステムはすごくいいのではないかなと思っています。
(PP)
 SCANチームの利点は、より客観性の高い判断ができるし、責任を共有したり分担することによって職員の負担が軽減する。情報がすごく集約化しているので、いろんな解析ができたり、教育にそれが還元できたり、専門性がすごく高くなっていく職員がいるので、そういうのを養成することができています。あと、役割分担することによって、先ほど話したように、医療をずうっと継続し続けながら社会的な対応をすることができていると思っております。
(PP)
 課題は、逆に医療チームとSCANチームが分断してしまう。「虐待対応している人たちって怖い人たちね」みたいな感じで分断してしまうというところがちょっと問題になっているのと、全て丸投げみたいになってしまって、職員の意識が上がらない場合もあるというところが問題だと。あと、職員がしょっちゅう入れかわるので、その教育が間に合っていないところがあると感じているのと、アドバイザースタッフのチームが結構、告知とかずうっとやり続けるので、すごく疲弊しているというところが問題になっています。
(PP)
 それで、今、少しでもアドバイザーチームの負担感をとるために組織改編をいろいろやっているというのが次のスライドになります。
 資料に戻っていただいて、うちの現況、「成育医療研究センターでの虐待対応体制設立による効果」ですけれども、当該医療機関内では、ケースを発見した場合に、連絡窓口が一本化されていることとか、院内に専門チームが存在することにより、職員は疑い例を気軽に相談できる環境にあって、虐待の早期発見になっているのではないかと思います。
あと、通告等の決定が病院が決定したというシステムになっていますし、告知を行うのも主治医とは違う人が行うので、かなり負担感がとれているのではないかと思います。
 地域からのセカンドオピニオンは、組織的には受けていないのが現状です。
あと、地域医療機関というのですけれども、これは資料の3ページの真ん中を見ていただくとおわかりだと思います。うちはすごくたくさんの地域から症例を受けているのが現状で、一番多いのが世田谷ですけれども、地域との連携をコンスタントにとり続けて、顔の見える連携とかそういうのをつくっていくのはちょっとまだ難しい感じで、何回も何回も初めて会った人みたいな感じになっているところもあります。
 幸いにして、世田谷の児相の方がSCANチームのカンファレンスに出席くださるようになってきて、世田谷との連携はかなりとれてきていると思います。
 済みません。これでうちの成育の取り組みを終わりにします。
○奥山座長 小穴先生、ありがとうございました。
 では、引き続きまして、埼玉県立小児医療センターから平野委員にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○平野委員 埼玉県立小児医療センターの取り組みを御報告させていただきます。初めに、資料の訂正のほうをお願いいたします。
 6ページの「統計にみる虐待相談対応件数の推移」ですが、年度が西暦と元号が混じってしまいまして、98年度は10年度で、3年刻みで、01年度は13年度、04年度が16、07を19、10年度を22年度と訂正をお願いいたします。
それから、次のグラフですが、「虐待類型別年度別推移」は、下に年度がないのですが、上と対比しておりまして、10年度から22年度を指しております。では、よろしくお願いいたします。
(PP)
 「埼玉県における児童虐待件数の推移」をグラフにしたものです。22年度までが正式に数が出ているのですけれども、先ほどの国の統計と同じように、右肩上がりになっております。
(PP)
先ほど、国では大体4~5%ぐらい、医療機関からの通告経路だったと思うのですが、埼玉では、過去何年か見てみますと、医療機関からの通告はわりと少なくて、22年度では3%ぐらいとなっております。
(PP)
県立の小児医療センターの概要ですけれども、場所はさいたま市の岩槻区というところに位置しております小児専門の三次医療機関です。1983年に開設されまして、病床数は現在300床、NICUとGCU合わせまして42床ございます。23年度の病床利用率は75.3%、平均在院日数は15.1日ということでした。
院内の虐待対応チーム、今、プロテクトという言葉がよく使われているのですが、当センターは、立ち上げのときにネイティブの方にも御相談して、Child Abuse Action Teamの頭文字をとってCAATと呼んでいるのですけれども、設立について簡単に御報告します。
 一番大きかったのは、当時、虐待対応で中心的な役割を担っておられたドクターが退職されたこと、それによって、院内でまずどうしようかという状況が起こって、あわせて、非常に重篤な虐待死亡事例が発生したこと。それに対して組織的に対応する必要性があって、2003年の10月にチームが立ち上がりました。
(PP)
当センターの虐待対応体制の概要です。「対応の基本原則」ですけれども、平成15年度に対応チームをつくったときに、こうした基本原則でやっていきましょうということを、当時、5名のスタッフでしたけれども、考えました。1番目として、子どもの安全を第一に考えるということと、2番目が、当センターが一番ほかと違うかなと思うのが、身体的虐待だけではなくて、あらゆる不適切な養育(maltreatment)に対応しましょうということを平成15年のときから基本原則に据えておりました。あわせて、3、4、5、6と6つの基本原則を掲げました。
(PP)
発足当時は内科系の副病院長と総合診療科の医師、精神科の医師、あと、虐待に関心のある看護師とソーシャルワーカーで始まったのですが、現在の構成メンバーはこういった形になっております。外科系、今は脳外科の副病院長、それから、診療科とすると脳外科総合診療科、放射線科、代謝・内分泌科、未熟児新生児科、精神科、整形外科、眼科のドクターが入っております。
あわせて、ベッドコントロールの関係で、看護部は副部長、未熟児新生児科の病棟から、看護師と、あと外来、在宅のソーシャルワーカーということで、今、16名で構成されています。
(PP)
 実際の対応フローですけれども、当センターでも、何かあると、関係機関からの紹介、あるいは他院からの紹介、あと、院内での不適切養育が疑われたとき、あと、まれに、主治医は疑ってないのだけれども、ほかのスタッフがおかしいなという状況があるときには必ずソーシャルワーカーのほうに一報が入り、そうすると、対応チームのほうに情報を流して、ここにあるような虐待の対応とか告知についてどうするかとか、連携をどうするかということを考えて関係機関と連携をとっております。
(PP)
 チームがあることによる効果について御報告します。「CAAT発足からの歩み」です。当センター、15年に発足したのですけれども、こちら、資料にございますのでごらんいただければと思うのですが、立ち上げ当初にかなり入院日数が長いお子さんがいて、埼玉県の本科との調整等を入院患者に対しては行ったりしておりました。体制整備というところでは、2005年から書面による通告を行っていて、2007年には症例の分類を行ったりしました。
入院に対する調整というところでは、一時保護委託中のお子さんへのいろんな配慮を行ったり、あと、2008、2009年には、入院がどうしても長期化するケースが多いので、関係機関との全県的な会議を開催したりしております。
 メンバーの変遷というところは、一番下ですけれども、何か事態が起こると、そのたびにメンバーを変えて、ただ、コアのメンバーは基本的に、この発足から10年間、余り大きく変わることはなく、新たにメンバーを呼んできてチームが膨らんでというような経過をたどっています。
(PP)
 院内の虐待相談対応件数の推移ですけれども、平成10年度ぐらいから、中心になっていらした先生、奥山先生が院内で研究会をつくられて、そのころからの統計が残っているのですが、平成15年度にCAATが結成されたことでごらんいただけるように、数はすごくふえています。おおむね右肩上がりで推移しています。
(PP)
 虐待の類型別年度別の推移ですが、一番上が総数で、先ほどの棒グラフと対応しています。当センターでは、身体虐待が非常に数が少ないです。比率とすると少なくて、ネグレクトとか要支援といったケースが非常に多くなっています。早期介入とか予防を、未熟児新生児科のスタッフが入ることで、数が全体的に減っているというようなことがあるかと思います。
(PP)
 「体制整備に伴うセンター内の効果」ですけれども、まず、「maltreatment」、不適切養育全般に対する職員の意識が向上したこと、それから、虐待予防を意識した診療・看護・家族支援ということが、虐待ということを常にスタッフが意識しながら診療に当たっている現状が生まれてきたと思います。あわせて、一時保護委託を、病院のベッドを利用して、入院病床があいているときには、もちろん医療がないとお預かりはしないのですけれども、病床を効果的に利用することで子どもの安全確保を図っています。あわせて、虐待対応に対する個々の職員の負担の軽減、あと、虐待の医学的判断の精度を上げるということが効果として挙げられると思います。
(PP)
 「地域の医療機関との連携」というところですけれども、ほかの医療機関からの紹介、虐待に限らず、原則紹介受診ですけれども、22年度を例にとりますと、CAATの対象児童の大体4割が他院・救急からの紹介患者になっています。あと、実際、メンバーの医師に直接、関係機関、関係医療機関から連絡を受けることが年間5~10件程度あります。医師の判断でお断りしたり、あるいは、必要があるときはCAATのほうに連絡があったりという形で動いています。あと、定期的なカンファレンスは随時行われています。
(PP)
 児童相談所と関係機関との連携についてですけれども、通告件数自体は年間5~15件程度です。全体の1割程度しか通告には至っていません。年間10人前後、児童福祉法33条による一時保護委託を受託していて、1人平均50~100日程度お預かりしている状況があります。
関係機関との連携割合としては、児相とか保健機関が3~4割、医療機関は1~2割程度で、埼玉県も周産期からの虐待予防強化事業ということで、9の周産期施設との、保健機関との連携が図られているのですが、当センターもそこに参加しております。
あと、年間5~10件程度、検察とか警察、県外の児相等から医学的な判断についての専門的な意見書の作成依頼があって、最近はそういったことでの特に医師の時間的な負担とか能力がかなり多い状況がございます。
(PP)
画像を見ながら、こういった形で症例検討が行われていて、奥が放射線技術部のドクターですけれども、若い先生たちもこういった場面に参加して、上のほうで眼底の写真を見ながら説明していただいて、ここに関係機関に参加していただいて説明したりということがございます。
(PP)
先ほどの関係機関との連携会議の写真です。
(PP)
「医療機関から見た虐待対応の課題」ですけれども、入院の長期化に対する後方支援病床がないこと、あと、児童福祉施設との連携システムの構築が必要だと思っています。
あわせて、虐待診断を含めて対応とか予防を推進している医療機関に対して、社会的・財源的な支援がぜひとも必要だなあと思っています。
あと、県内のほかの医療機関と連携した虐待対応の分散化が必要なのですが、実際には診断技術とか対応というところでどうしても意識の違いがすごく大きくて、なかなかうまい連携がとれていない状況があります。
あわせて、職員の育成と継続的なチームの質の担保というのが大きな課題だと思っています。
以上です。
○奥山座長 平野委員、ありがとうございました。
では、お三方の御発表に関しまして、何か御意見、御質問ございますでしょうか。
院内のシステム中心にお話しいただいたところ、それから、院内、院外との連携を中心にお話しいただいたところがございましたが、いかがでしょうか。
○佐々木委員 特に院外との連携をやってみえる医療機関で、紹介した人がどのようになっていっているのかとか、そういうフォローアップをされたようなデータを持っている機関はおありなのでしょうか。
○奥山座長 多分、市川先生のところがかなり院外からお受けになっていらっしゃると思います。
○市川委員 データとして数字はちょっと把握してないのですけれども、ちょっと的が外れた答かもしれませんが、虐待か否かの評価を受けて、虐待の症例、あるいは疑う症例というのは最後まで我々のほう(相談された基幹病院)でフォローアップするという形をとっております。
○奥山座長 市川先生、そのフィードバックはなさっておられますか?
○市川委員 ええ。それは当然やっております。普通の紹介入院時と同じような形です。
○奥山座長 どうぞ。
○佐藤委員 実は日本歯科医師会が都道府県の歯科医師会を通じて各所で一時保護をなさっているところの歯科健診をやったデータがございまして、それを見ると、一時保護の児童が明らかに重症虫歯が多いとか歯肉炎が多いという結果が出ていまして、ですから、一時保護の段階での医療の必要性というのは非常に強く言われているところなのですね。一方で、今の段階では、一時保護を受けている児童は、間違いなく、う蝕、それから歯肉炎というのは多かったという事実はあるのですが、それが多いからといってネグレクトがあるかというレベルまではいってないという現状はあるのですが、間違いなくネグレクトに起因するものであろうというのが歯科関係の通報の一つの段階になっているというのはございます。
その中で、きょうは平野先生のお話にあった中で、例えば埼玉の小児医療センターなどで、当然、それらの対象になっている方たちが同じように、私の調査では確かにう蝕とか歯肉炎の傾向はあったのですが、そのような口腔関連の何か特徴的なことがあれば教えていただきたいのですが。
○平野委員 ありがとうございます。当センターにも歯科医がいまして、一時保護委託中のお子さんとか全員に歯科の健診をするということではないのですけれども、実際、通常の診療の中で、歯科からもお話が上がってくることはとても多くて、やはり「この子、家庭環境どうなの?」ということを歯科衛生士さんとか歯科医の先生からはいただいています。ただ、統計的なことではちょっとデータとして残しているものがないのです。
○奥山座長 よろしいでしょうか。
 ほかにどなたかおられますか。
○笠委員 全国保健師長会から出させていただいております杉並区役所子育て支援課の笠と申します。
 日頃から医療機関をはじめ、関係機関の皆様には大変お世話になっております。医療機関の皆様からは、虐待の疑い等、支援が必要と思われる家庭について、院内での虐待の判断のために地域でのご家庭の様子や支援の状況等について情報がほしいということで、保健センターや子ども家庭センターにお問い合わせいただいております。ご連絡をいただいた場合には状況に応じて、要保護児童地域対策協議会のケースとして、必要な情報提供をさせていただいています。
具体的には保健師や助産師等による乳幼児全戸訪問等のご家庭の様子や乳幼児健診の様子、地区担当保健師や子ども家庭支援センターの担当の支援経過等をお伝えしています。そのほか、保育園に行っていらっしゃるお子さんの場合ですと、保育園での生活の様子等についてお答えする場合もあります。
 先ほどの御報告の中で、予防の効果や早期介入の重要性について御報告がありましたが、最近の事例では、虐待ではないですけれども、自宅での安全がうまく保たれてない、お子さんの成長に伴っての家庭環境が整備や適切な養育ができていないために怪我を繰り返す事例についてご連絡がありました。そのご家庭に対しては、家庭訪問によっておうちでの環境の整備や発達にあった養育等について継続的に支援して、虐待の予防に努めているようなケースもあります。
 そういった気になるケースがあった場合には早目に御連絡をいただけることで虐待予防の視点でもかかわっていけるのではないかと思っております。今後とも地域の保健センターや子ども家庭支援センター等への情報提供等、よろしくお願いしたいと思います。
○奥山座長 ありがとうございました。保健センターと医療機関というのは非常に重要な連携先だと思いますので、ぜひ連携を深めていきたと思うのですけれども、溝口先生、何か。
○溝口参考人 ちょっと話が戻ってしまうようで申しわけないのですけれども、病病連携と病診連携という関係性で少し、市川先生の地域でやられている、KM-CAP-N、クムキャプンというのですか、ちょっとわからないのですけれども、病診連携ということで、地域のネットワークとして、早目に芽を摘むという意味で、開業医さんが行ってくれる役割ってすごく大きいと思っています。
 ただ、日本歯科医が1992年とかに調査したやつで、医療機関からの通告の中の診療所の通告の割合は7%で、92.7%が病院で、圧倒的に病院から通告されていて、開業医さんはなかなか通告に対して障壁が大きいのかなと思っていて、それは20年ぐらい前の調査なので大分状況も変わってきたとは思っているのですが、こういった地域のネットワークをつくることによって、開業医さんがきっかけとなって通告に至るという事例がどの程度ふえてきたものなのかというところをちょっと聞きたいのです。
○奥山座長 市川先生、お願いいたします。
○市川委員 先生の御指摘の部分は、基幹病院がやってくれるので、変ですけれども、嫌なところはお願いしますという形で、逆に減っていますね。前までは自分で通告していたのだけれども、もう先生やってくださいよという感じですので。
○溝口参考人 端緒となった機関が病院だとか診療所だとかいう統計的なものはわからないということですか。
○市川委員 そうですね。
○奥山座長 内海先生、何か御追加ありますか。
○内海委員 日本小児科医会の内海ですが、普通の一般開業医をしております。
通告すると、その子について、第1回目に通告した人だけがカウントされるので、赤ちゃん訪問でひっかかっているよとかそういうのが、開業医で通告してもカウントされないのですね。ですので、実際はしているのだけれども、カウントに出てこないというのもありますね。それから、例えば病院から通告したのがカウントされたときに、病院の先生から見て、当然、かかりつけ医が見つけているはずなのに通告されてないパーセントとか、そういうのが出てこないと、診療所が実際は通告しているけれども、カウントされてないのではないかという、通告するとひっかかっていますという小専の方のあれがあって、小専からかかりつけ医に連絡がないとか、結構穴がぽこぽこあいているというケースもあるので、いろんなネットワークが張ってきたために、開業医に来るところって、今、ワクチンが早くなったので2か月から来ますけれども、それでも赤ちゃん訪問のほうが先に行っていて、もうひっかかってますとかいうこともあるので、この数値が、例えば医療機関からの通告をネットワークを推進することによって数値だけで挙げようとしているのか、どうしようとしているのか、ちょっと企画がよくわからないのですけれども、そういう面もあるのではないかと思います。
○奥山座長 市川先生、その辺、先ほど、逆に嫌なところはこちらで引き受けるということで、減っている、それをよしとしておられるということですよね。ある意味で。
○市川委員 済みません、そうです。地域全体では、結局、医療機関としての役割は担っている、こなしているという考え方でおります。
○奥山座長 ということは、医療機関のネットワーク全体で子どもを救えれば、誰が通告したかは問題ではないのではないかという考え方でよろしいでしょうか。ほかに、そうではないのではないかという御意見ありますでしょうか。
 ぜひ、そういう意味では、ネットワークをつくることによって、余り通告が得意でない方も子どもを助ける一助になれるということを進めていきたいということは皆さんの御意見としてよろしいですか?
 
○今村委員 この検討会の名称が児童虐待防止となっているので、児童というのの考え方というのですけれども、1歳を超したような小児の場合にはそういうことでよろしいのでしょうけれども、今、事例をずっと報告していただいたのは、全部、ある程度の年齢になって小児科にかかる、あるいは児相に相談するみたいな形ですけれども、それ以前の、先ほど申し上げたような0日児だとか0週だとか0か月だとか、そういう場合の対応というのは、こういうのと全く違う考え方が必要だと思うのですね。
ですから、今おっしゃったような病病連携、病診連携というのは大体、ある程度の大きくなったお子さんに対しての考え方ということで、0日児だとか0週児だとかいうのは主としてお母さんへの対応ということになっていきますので、これとはまた考え方を全然別にして、0歳児、0日児の場合には、産婦人科の医師を中心としたような予防的な考え方というのですかね。要するに、そのベースにある望まない妊娠云々ということをきちっと対応していかなければ、その大きな部分を占める0日児の虐待児というのは防止できないのではないか。だから、今のあれとはちょっと別個な形での対応というのはやはり考えていかないといけない。ネットワークについても同じような考え方が必要だろうと思いますね。
○奥山座長 溝口先生。
○溝口参考人 ありがとうございます。僕も本当にそのように思っていまして、虐待対策というのは本当に広くて深いものではあるので、どのように切り分けて、切り分ける必要があるのかどうも含めて、医療ネットワーク事業というのを、僕は群馬県なので、群馬に戻って県に説明するときに、いわゆる公衆衛生学的な2次予防の観点、要するに、発生してしまった虐待を見逃さずにちゃんと支援につなげる、早期発見機能としてというのをメインに置いているのか、それとも、1次予防的な、予防的なかかわり、もしくは産まれる前からのかかわり、僕は0次予防と勝手に呼んでいるのですけれども、0次予防的なものも含めたネットワークにするのか、ちょっと論点を絞って、これは恐らく2次予防的な観点のネットをまずつくることではないのかなと勝手に説明はしていたのですけれども、母子保健課のほうからそこら辺について御意見というか、御指導というか、いただければ、ちょっと県のほうに持ち帰るときに説明がしやすいかなと思います。
○奥山座長 母子保健課のほうはいかがでしょう。
○山本課長補佐 溝口参考人がおっしゃるように、この事業自体は、臓器移植のガイドラインへの対応もございまして、まだ2次予防の体制の整備や均てん化が図られていないという部分もございますので、まずはそこの底上げということを主目的にはしております。その他の、今、今村委員からの御指摘もあったような児童虐待の0次予防といいますか、早期からの働きかけの重要性は、これまでも虐待室の通知などでも何度かお示しさせていただいているところでございますので、その他のご意見ということで今回の取り組みの考え方には書いていただけるのかとは思っておりますが、この事業自体の主目的は医療機関での2次予防の早期発見、医療機関の児童虐待対応の向上というところにあるかと思います。
○奥山座長 佐々木委員はよろしいですか。
○佐々木委員 医療機関の中だけと余り限定してしまうと、本当にもっと早い時期からやったほうが効果もいいと思うのですね。今うちでやっているのは、助産師さんレベルで、ハイリスクの親のスクリーニングをして、ハイリスクの人に対して地域でかかわり支援をしていくというような体制をやっているのですけれども、その中に当然医療機関も入っていて、医療機関の中だけで完結して、もうちょっと大きくなっても、死亡をとめるというのはすごい大変なのではないかと思うから、もうちょっと早い時期からと、医療機関を中心なのだけれども、保健所長会が呼ばれたのは、そういうことを考えろということで呼ばれたのだと思っていますので、地域、児相だけではなくて、地域の特に保健師さんの力もその病院と結集してやるような体制にしていったほうが最終的な目標には早く到達できるのではないかと思います。
○奥山座長 今村委員、お願いします。
○今村委員 私も、佐々木委員の意見に非常に近いものがございます。実は母子保健課自体が0歳児の取り組みというのは非常に熱心だったのですよ。日本医師会と、それから産婦人科医会、あるいは民間の団体と一緒に事業を進めてきたという経緯もありますし、そのことについては十分理解はされているのでしょうけれども、この検討会自体のフォーカスがちょっと違うということですけれども、もし別の検討会があるのでしたら、妊娠早期、あるいは若い女性の教育というところからこの虐待問題というものを取り上げていただいたら、今、佐々木委員が言われたような、要対協含めて医療機関、あるいは保健師、そういうものが全部一緒になった対応というのができて、非常に効果的なやり方というのができるのではないかと思います。
○奥山座長 笠委員。
○笠委員 今、お話しいただきましたように、妊娠期からの取り組みにつきましては、当区においても産婦人科医会の先生方と検討会等を行い、新しい取組みを進めています。具体的には望まない妊娠も含めた様々な悩みを持つ妊婦さんが少しでも早く相談につながっていただくために「妊婦向けの相談窓口案内カード」を医療機関の待合室やトイレ、薬局の妊娠検査薬の横、区役所のトイレ等に設置しました。また、産婦人科の先生方から支援が必要な妊婦さんについて御連絡をいただくためのリーフレットを作成し、情報提供をお願いする等、特定妊婦への対応を医療機関の皆様と進めているところです。
 医療機関同士の連携と同時に乳幼児親子が病院から地域に戻っていくという視点で、母子保健の事業や地域の保健センター、子ども家庭支援センターがつながっていけるようにいろいろな場面で医療機関と連携していくことができると思います。先ほど今村委員や佐々木委員にお話しいただいた視点も入れながら焦点を絞っていただけるのがいいのではないかと思います。よろしくお願いいたします。
○奥山座長 母子保健課のほうとしては両方入れていくということでよろしいでしょうか。
○山本課長補佐 今後のスケジュールのところで、資料2でおつけしておりますが、医療機関だけで完結しないということは御指摘のとおりだと思いますので、地域の関係機関との連携強化のための取り組みの考え方ということで、今、委員の先生方から御指摘いただいたような点も取り組みの考え方の中に含み得ると考えます。
○奥山座長 ありがとうございます。年齢的にも、特定妊婦さんが要保護児童対策地域協議会の対象になっているということもありますので、特定妊婦さんへの対応に関する連携も入れるということでよろしいでしょうか。それとも、それはちょっと置いておいてほしいということになりますでしょうか。
○山本課長補佐 次回までにもう少し、今回の御意見も踏まえ検討させていただきます。
○奥山座長 わかりました。
○小穴参考人 皆さん方の予防的視点というのは物すごく大事なことで、それが多分、根本的な解決になっていくと思うのですけれども、今実際に虐待を受けている子どもたちがきちんと虐待として報告されていないのではないかという懸念はすごくあるような気がしていて、「こんなことやっちゃだめだよ」ぐらいのことで済んでいるうちに大きなことになっている人もいるような気がするのですね。これは虐待ではないかということをきちっとばしっと言えるという力はまだない気がするのです。僕も成育という大きなバックグラウンドの中で動いているので、そういうことがやりやすい環境にいる人間だと思いますけれども、実際には今すごくつらい子どもたちが見逃されている可能性もあると思うので、そこの底上げはすごく大事なのではないかなと思います。
○奥山座長 ありがとうございました。どうぞ。
○桜山委員 1次予防、あるいは溝口参考人が言われる0次予防については、今、母子保健課の山本課長補佐から発言あったかと思いますが、今の小穴参考人の御発言に関連してなのですが、先ほど市川委員からの御発言で、ネットワーク、つまり、疑いがあった場合の届出、いわゆる2次予防に相当するかと思うのですが、ちょっと確認ですけれども、出しやすいところから報告を出せばいい、あるいは通告すればいいというのはもちろんそのとおりですが、やはり出しにくいところ、つまり、地域の第一線で活躍されている開業医の先生方、内海委員は結構出しているというお話もありましたけれども、中には、病院のほうが組織も大きいし、出しやすいからそっちに任せるという姿勢ですと、やはり何かのときにおくれるとも思いますので、ネットワークというのは、そういう第一線の先生方が迷ったときに報告しやすいようなシステムをつくるというふうに、それも大事だということを御確認いただいたほうがいいのかなと。
私ども、病院からの通告のケース、あるいは開業医の先生からの通告、いろいろかかわり合っておりますが、そういう意味で、私は東京都の児童相談センターですが、東京都の取り組みとしては、医師会や歯科医歯会の御協力をいただいて、できるだけ、こういうのがあったら疑ってください、あるいは、通告を受けた場合、児童相談所はこのように動きますというような研修会をよく開催しているのですが、私ども児童相談所側も努力しなければならないと思うのですけれども、ネットワークの場合に、今度は医療機関同士でサゼッションができるということを目指していただいて、出しやすいところが出すだけではなくて、疑った人がみんな出すというような方向を目指していただくべきかなと思いましたので、ちょっと発言させていただきました。
○奥山座長 その意味でも、連携してどのように行動するかということが非常に重要になってくると思いますので、引き続きまして、溝口参考人のほうから、参考資料1にございます昨年度の厚生労働科学研究で作成いたしました院内虐待対応組織(Child Protection Team)に関するマニュアルについて少し御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○溝口参考人 よろしくお願いします。済生会前橋病院の小児科の溝口と申します。
前橋と聞いて、皆さんどこにあるかというのは、群馬県というところにあるのですけれども、群馬県自体は200万都市ですけれども、年間の通告数が大体600くらいです。御多分に漏れず、医療機関からの通告、5%なので、掛け算すると大体三十数件なのですね。県全体で三十数件しか通告が出ないということは、集約が進んでない地域で、それぞれの病院で言ってしまうと、年間3例とか4例とかそのぐらいしか通告していないという状況で、個々の病院の力をつけて経験を積んでいくということがなかなか難しいといったバックグラウンドがある中で、地域全体としてどうやって医療機関の適正な、求められている機能を発揮するのかという点で考察したことを少しお話しさせてもらいます。
参考資料としては、参考資料1の、単純に訳すとCPT構築・機能評価・連携ガイドというものがございます。かなり量が多いといろいろなところから文句を言われたのですけれども、目指すところは、アメリカは、2006年に子ども病院のネットワークが「病院におけるチャイルドプロテクションチームの役割についての定義づけ」という定義を発行したのですが、それに準じて日本でもそういったディスカッションが起こってくれないかなということで、少し冗長かもしれないけれども、多目に言いたいことを書いたというようなガイドとなっています。それを本当にざっくりA4の2枚にまとめたものが資料8になります。
 資料8の文章をつらつら読むとなかなかしんどいので、スライドを用意したので、そちらのほうで発表させていただきます。
(PP)
 まず、「医療機関の役割」ですけれども、本当にざっくり言ってしまうと、先ほど0次予防、1次予防、2次予防、そしてもう既に虐待を受けていろいろな精神的、心理的な障害を受けた方に対してのリハビリテーション的な3次予防、そして、死亡事例検証を4次予防と、虐待について論じるときに分けたほうがわかりやすいなあとは思っているのですけれども、僕の発表自体は2次予防に絞った形で少しお話しさせてもらいます。
医療機関、虐待の2次予防という観点から言うと、当然のことながら、子どもと接する機会が多い、いわゆる通告義務者ですね。一般的な通告義務者なのだけれども、ただ、医療機関というのは、子どもが医療的な症状を呈するに至ってしまった重篤の事例というのを発見する立場にあるという、わりかしほかの機関に比べると特殊な立ち位置にあると思います。
 ということは、その時点で医療機関が見逃しをしてしまうと、その子どもの虐待がもっともっと悪くなって、時には死に至ってしまう、非常に、ゲートキーパーというか、最終的なとりでとしてすごく大事な位置にあると思っています。
あともう一つ、ほかの機関では発揮し得ない機能としては、医学的な知識に基づいて医学的な診断評価を行って、子どもを一次保護すべきなのか、それとも分離までするべきなのか、それとも在宅で見守っていくべきか、それの判断を誤るというのは、やはりそれも非常に子どもの予後に直結するものなので、それに対して関連機関が正確に客観的な判断ができるように医学的な知識を提供する。これはやはり医師免許を持った医師にしかできない行為ですので、非常に特殊な役割を担っていると思います。
 大ざっぱに言ってしまうと、上のほうは広く医療機関全体が認識を共有してやっていくべきもの、下のほうは、みんながみんな専門的なそういったことができるようになるわけではないので、そういった役割を担う立場の医療職が専門性を深めていく、そういった、広げる、深めるというその2点が非常に重要なのかと思っております。
(PP)
 いわゆる虐待が起こった子どもを振り返ってみると、死亡事例の7割は何らかの形で医療機関とかかわっていたとされています。もちろん、これは直接的な虐待の見逃しが7割あったという意味ではありません。振り返って考えてみて、「あの家庭、少し何か不安だと思っていたんだよね」というレベルも含めるとという意味で、何らかの形で地域で医療機関がかかわっている限りは、どこかで必ずそういった子どもたちと御家族とのかかわりを持って、医療機関と何らかの形で接している可能性というのはすごく高いのですね。そこが虐待の発見の感度を上げて、つなげるということが非常に重要だと思います。
 そして、そういった見逃された事例についての原因というのを堺市が分類していた。ちょっと古くて申しわけないのですが、これは2005年で7年前のデータなのですけれども、虐待を疑うことなくスルーされてしまったというのが19件中8例です。いわゆる知識不足ということでスルーされてしまうのが大体そのぐらいで、その下は、うまくネットワークが働かずに、結局のところは、気づいていながらスルーしてしまった、そういった事例が相当程度やはりいるということです。一旦疑うけれども、医療者自身が否認に転じてしまうとか、虐待を疑ったのだけれども、確信が持てないということでそのままになってしまった。あとは、疑って、ここに行きなさいと言って指示しっぱなしで、どうなったのか、転帰を見ずにそのままになってしまった。虐待と診断したのだけれども、それをどうやって支援に生かすかと、そこのルートが途絶していた。ハイリスクと診断していたのだけれども、それに対して、いわゆるスピーディな対応ができずに後手に回ってしまった。そして、不安だからまた来てくださいねという指示をしたけれども来なかったとか、怪しいと思っていた情報がほかに伝わらなかったとか、こちらは本当にネットワークの問題なのですね。
 ですから、これに関して言えば、ネットワークをつくることによって改善できるし、一番上の、虐待を疑うことがないという、そういったものも啓発教育によって改善していくべきものだと思います。
(PP)
 次に、実際に医療機関の、主に医師ですかね。医師以外も当然接しますけれども、どうやって被害児と接するかというと、1つは、気づいてしまったというやつですね。言葉を悪くすると、気づいてしまった。言葉をよくする、もしくは機能が高まったところであれば、育児支援という観点で親子を見つめて、この家庭には支援が必要ではないかということで気づく、そういった気づきも含めて、それまで、この子たちに接して、虐待かもねということをたまたま気づいた。要するに、きのうまではそんなことを自分で対応するとは思ってなかったという人たちがAccidentalに遭遇するという、そういうAccidentalなパターンと、あともう一つはPurposefulのほうで、これはあらかじめ虐待の子どもたちが来るということ、それは自分たちの仕事として認識して、プレパレーションを、ある段階で虐待児が来たので評価していこうと。そういった、あらかじめ対応することが予見されるというPurposefulな接点というのがあると思います。
これも、上のほうは広く誰でも接する機会があるわけですから、一般化の問題で、2番のPurposefulの接点というのも、専門家ということで言葉が整理できるかと思っています。
 市川先生のお話もあったのですが、こういった専門的な評価をする機関というのが後ろに控えているということがあって初めて、?でたまたま気づいた医療職が、僕はSentinelと言っているのですけれども、要するに虐待のある可能性を見つける「見張り番」として、医療者が適切にスクリーニング、要するに、適切にSentinelとして働くことができると思っています。
もちろん、そのSentinelさんが直接対応するというのもそうですけれども、ただし、そういった自分たちで完結して何かを、全て終わらせなければいけないと思ってしまうと、すごく負担に感じて、いや、やはり虐待でないかもしれないぞとか、虐待であったとしてもすごく軽いとか、否認とか矮小化という機構が働いてしまうので、やはり?というバックグラウンドがあって初めて?がスクリーニングシステムとして、心理的負担というのが少なく動けるのではないかと僕は思っています。
(PP)
 この?のPurposefulな対応をするというのが、病院の機関内で言うと、チャイルドプロテクションチームということになります。チャイルドプロテクションチーム、虐待対応組織で、CPTと略しますけれども、先ほどからさまざま出ていましたとおり、CAATと呼ぶところもあるし、CAPSと呼ぶところもあるし、SCANと呼ぶところもあるし、いろいろですけれども、それをひっくるめて総称したタームとしてCPTとちょっとここでは略させてもらいます。
 CPTを置くメリットというのは、当然、消耗が非常に激しい個人的対応から組織的対応になるということで、心理的負担、実利的な負担というのが低減する。そして、あらかじめルートが決まっているので、役割分担は明確化して、関係機関との円滑な連携ができるということ。そして、ルールを定めて、組織としてそれを発布して、統一した形で対応することができる。そして、集約化することによってスタッフのスキルが向上していく。そういったさまざまなメリットがあると思っています。
 ただし、CPTを設置すれば自動的にこういったことの機能がどんどん向上していくかといったら、そういうわけではなくて、とりまとめてエンジンとなる人間がいないとやはりCPTとしての機能は向上しないと思っています。そして、機能させていくための最小単位がコーディネーターでありリーダー医師であると思っています。
 コーディネーターというのは、要するに院内の関係機関との調整をする役、そして院外に転じると、他機関とのコーディネートする役、そして、そういったものに最も適任なのがいわゆる医療ソーシャルワーカーさんということになります。そして、その医療ソーシャルワーカーさんが、上で言っていた一般化、要するに院内の啓発を進めて、ボトムアップするという役割を主に担って、リーダー医師さんはいわゆる専門家の部分で医療機関として提供する医療診断技術の向上を図るという、そういった2つのエンジンがあって初めて機能するCPTになるのかなと思っています。
 CPTの形態としては、真ん中で示したtype1という、リーダーとコーディネーターがコアとなって、そのほかの関連他科がいて、そして、いわゆる院長さん、副院長さんという形の、病院の責任をとる立場という方がチェアマンになるという、病院全体の取り組みとしての真ん中のCPTです。
 ただ、こういった形で整備するとなかなか難しいところは、コーディネーターとリーダー医師がいれば、そこを最小単位のCPTとして、事例が生じたときにほかの関連他科と連携したりとか、こういった活動をしていますということを管理者に説明して承認を得るという、こういったtype2という形でのCPTをとっている組織もあると思います。
 そして、もっと言ってしまうと、type1という形でCPTを整備していて、ただし、緊急性のある事例に対してはtype2的な形でワーキンググループを設置して迅速性を担保しているという、先ほど成育医療センターがそのようにやっていたと御報告なさっていましたけれども、そういったところもあります。
 ただ、残念ながら、リーダー医師という人を用意するのが非常に大変なのです。ここが多分、CPTをやっていく上での肝になると思うのですけれども、それがいない場合であっても、コーディネーターさんがしっかり連携機能を果たすことによって最低限の円滑化を図れるのではないかということで、準備段階ということで、これをtype3と僕は呼んでいます。
(PP)
 実際のCPTの日本の設置率ですけれども、平成23年度のアンケートで、いわゆる5類型病院ですね。臓器の提供施設となり得る病院で、これはニアリーイコールで地域の中核となっている病院です。これが大体500病院ぐらいあります。そこの調査をしたところで、平成23年の8月の段階で、ざっくり言ってしまうと6割を超えています。ようやくそこまで至って、過半数を超えてきたというところです。
 ただ、今までの経緯をグラフであらわすと、虐待相談処理件数がブルーで、CPTの設置数が赤ですけれども、医療機関、大分おくれをとっていたなあというところが正直な感想です。そして、いわゆるCPTの設置というのが医療機関でのシステム対応の指標の一つだとすると、教育の指標の一つとして、医学部で卒前にどれだけ教育を行っていたかというのも調べて、ここのグラフには載せてないのですけれども、2000年の虐待防止法施行前に、1コマ以上虐待を教えていたという医学部が6校だったのですね。2010年の段階でもう一回調べて、1コマ以上教えているところが6校で、全く変わってなかったのですね。ですから、医療機関として虐待に対応するシステムも少しおくれていたし、教育体制も少しおくれていた。もちろん、6割を超えて、これからどんどん発展していくと思うのですけれども、現段階ではこういう状況にあります。
 そして、平成23年の段階で6割超えたと言っていますけれども、改正臓器移植法が施行されて、それでCPTをつくることが半ば条件になってどっとできたのです。ですから、その施行前と施行後で比べると、4割は施行後にできて、まだ経験年数が1年ぐらいのところというのが実情です。
もっとさかのぼって5年前から区切ったとすると、8割は5年以上の経験がないところなのですね。先ほどから出ていた北九州八幡とか成育医療センター、埼玉小児というのはいわゆる老舗で、経験も豊富で、すごく技量も高いところ。だけれども、圧倒的なほとんどの地域のCPTというのは経験年数に乏しくて、まだ専門性がなかなか備わっていないというのが実情です。
(PP)
 それで、CPTの会議、実際にどのぐらい会合を開いているのかということを2010年に調べたものですけれども、半数以上は事例が生じたときに開催という状況です。定期的に開催しているというのが3分の1強ぐらいですね。3分の1ぐらいは無回答だったので、単純に言ってしまうと、半分は事例が生じた際に開催して、年間何回ぐらいやっているのかというと、ほとんどが0か1~2というところで、年間数で片手で足りるぐらいなのですね。ですから、単純に言ってしまうと、年間50例以上、週1回以上対応しているという形をとっているところは非常に機能としてすぐれているところだけれども、そこまで至っている施設というのは80%以下ということになります。
(PP)
 そのために、地域で機能しているところを拠点病院と定めて、そこがさまざまなコンサルト体制をしくということが望まれると思っています。ただ、もちろん、拠点病院だけを用意しても、結局、二次医療機関を2つも3つもまたいで拠点病院に行きなさいというわけにはいかないですから、地域の二次医療機関で入院対応を行ってくれる中核的な病院というのもあわせて設置する必要があると思います。
 そうすることによって、CPTのないところ、診療所というところが、いざとなったときにいつでも入院させられるのが自分の二次医療機関の中核病院という形で定まっていて、そこでなかなか対応が困難なところというのは拠点病院に相談すればいいと。こういった連携ネットワークをつくることによって虐待医療の均てん化が図れるのではないかと思っています。
(PP)
 コーディネーターさんというのがその中でキーになるのですけれども、さまざまな医療機関で事例が発生して、発見したときに、それを地域につなげるまでにいろいろな段階があるわけですね。その段階段階でマニュアルを整備して、どういったときにはどうするということを明瞭化してということはコーディネーターさんの役目の一つになると思います。
あともう一つは、事例が発生したときの受け皿、窓口になる。窓口になって、回答をコーディネーターの判断でできるものはするし、これは持ち帰ってCPTとして検討するべきである、もしくは、医療コーディネーターさんは基本的にはワーカーさんですから、医学診断ということは職責にないですから、診断に関しての相談であれば、やはりCPTに持ちかけて、それを医療コーディネーターさんが窓口として返す。その場合に、入院精査が望ましいのではないかという回答であれば、それを受ける地域の中核病院が用意されている。そういったことが地域を守るために必要なのではないかと思っています。
(PP)
 教育に対しても非常に重要で、ただ、教育は一つのパターンで全てを網羅するわけにはいかないですから、1つは一般医療職の啓発、2つ目はいわゆる地域のチャイルドプロテクションチーム、小児科医師に対しての教育、そしてもう一つは本当に専門性の高い医師のピアレビューというその3段階があると思います。そのうちの一般医療職の啓発というのは、やはりコーディネーターさんが主任になって、Stage2のCPTの医師の教育というのは医師が担うべきと、そういったお互いの連携体制を教育においてもつくっていくことが大事かなと思います。
(PP)
 結局は、多機関で本当に緊密に連携していかない限り、重篤な身体的虐待、重篤なネグレクト、性虐待、代理ミュンハウゼン症候群、医療ネグレクトという、医療が深くかかわるものに対して的確な情報を関連機関に送ることはできなくなるので、ですから、こういったことをしっかり果たしていくことが緊密な連携体制を日本に構築していくことにもつながりますし、全ての医療機関でそれを個々の自発的な努力でやっていくというのはなかなか難しいですから、ネットワークが必要なのではないかと思っています。
 以上です。
○奥山座長 溝口先生、ありがとうございました。
 本日は、医療ネットワークとして、病院のネットワーク、そして病院側から見たネットワークということで会議を持ってきたわけですけれども、それをうまくまとめていただけたと思います。先ほど、3施設からの発表の後に皆さんにかなり突っ込んだ御議論をいただきましたので、それをもとにこれからの検討会を進めていくこととなると思いますけれども、まだ御意見をおっしゃっておられない先生で、ぜひともという方がおられましたら、御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
 小林先生。
○小林委員 私自体は、少し前まで大阪府立母子保健総合医療センターというところにおりました。先ほどの成育医療センターの紹介のところの表にあるように、北里病院の次に古い院内組織をつくっています。ただし、母子保健総合医療センターは周産期センターから始まっています。当初からフォローアップで虐待が頻発するためにつくり、ほかのところのと違うのは、発生予防から始まりました。20年以上の経過がありますが、通告はCAPS症例の1割ぐらいしかありません。けれども、長期的予後では4割が施設入所しています。そして、児童相談所との連携が5割ぐらい、保健機関との連携は8割ぐらいで、院内の院内組織とほかの機関との連携で予防を進めています。実感としては、このシステムで重篤な虐待は減っている、死亡は減ったと思っています(H8-H18年のCAPS事例のH19年末の転機)。
 そういう入り方からも、院内組織は本当に重要だと思っています。もう一つ、予防から始めた立場からしますと、予防から始めたことで結果的に病院の職員全員が関心を持つようになりました。そして、重篤な事例だけだと、一部の人が対応してくれる、あるいは、「かなわんなあ」という反応がたくさん出てくるのですけれども、予防という形で取り組むと、結果的にみんなが携わるようになって、すると、見る目がどんどんとそれぞれにできていって、妊娠期からハイリスクを把握することが産科でも進んでいますし、いろんな診療科で見つけることがふえています。予防から入ることが、むしろ広く医療関係者が関心を持ち、結果的に見る目を育てていくのではないかと思っています。
 もう一つ、そのことに関しましてです。虐待に関し医者のいろんな会で私は30年近く講演させていただいてきています。その中で、重篤な虐待の話をすると、「それはうちはないよねえ」と他人事として学ばれることが多いのですが、「私たちは日ごろそういう人に会わないけどもっとできることはないのですか?」という率直な質問もあったのですね。
 この頃、私は、医療関係者には予防が大事、予防で医療にできることがいっぱいあるとお話ししています。すると、皆さんの関心度がうんと違います。そして、先ほど母性のお話も出ていましたけれども、小児科の開業の先生も結構予防の取組をされているのですね。それは、ハイリスクのファミリーの育児相談に多くの時間を割いたり、日常の診療で生活状況や親の様子に配慮しながら診療しているというかたちで展開されています。そのことを通して、子どもの虐待への関心が高まっています。例えば大阪府女医会は、取組のテーマとして虐待予防を続けておられます。
虐待を見る目が広がっていき、関心が広がっていくのではないかと思っています。この虐待の医療ネットワークを予防のネットワークをつくることや、在宅の子どもの長期の健康支援も含めると医療ができることがたくさんあり、結果的に医療の虐待の取り組みを進めることになるのではないかなと思っています。
 以上でございます。
○奥山座長 ありがとうございました。
コアな虐待対応の部分は大切だと思うのですけれども、加えてその予防、それから、産科と小児科の連携というのはかつてからかなり話題になっているところでもありますし、この虐待ということを通しての産科、小児科の連携とかそういうこともそのうち議論が深まっていけばいいのではないかと思います。
また、要保護児童対策地域協議会も特定妊婦ということで取り上げておりますけれども、なかなかそのノウハウは確実になってきている段階ではないと思いますし、先ほど小林委員がおっしゃっていました在宅支援というのもまたこれからの大きなテーマであろうと思います。それら全てが予防につながっていくとも思いますので、2次予防から1次、0次の予防ということも含めて、どのような連携がなされていくのか、それらはこの事業のコアでないとしても、議論はぜひ検討会の中で少し深められたらなあと思いました。 ぜひ母子保健課さんとしても御検討いただければと思います。
定刻になってまいりましたので、バトンを事務局のほうにお渡ししたいと思います。本日は闊達な御議論をどうもありがとうございました。
○山本課長補佐 本日はありがとうございました。今回いただいた妊娠期とか、あと小児科、産科の連携、在宅支援の点についてどのように検討していくかということも含めて少し整理させていただければと存じます。次回につきましては11月をめどに別途日程調整を、11月といいましてもあと2か月ぐらいしかございませんので、近日中にさせていただければと思っております。
また、本日の議事録につきましても、作成できましたら御確認をお願いいたしますので、よろしくお願いいたします。
それでは、これをもちまして第1回の検討会を終了させていただきます。本日は、お忙しい中、ありがとうございました。


(了)
<照会先>

雇用均等・児童家庭局母子保健課母子保健係

電話: 03-5253-1111(内線7938)

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