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2013年3月12日 第2回「労災保険の事業の種類に係る検討会」(議事録)

労働基準局 労災補償部 労災管理課 労災保険財政数理室

○日時

平成25年3月12日(火)15:00~15:45


○場所

厚生労働省労働基準局第2会議室(中央合同庁舎第5号館16階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○出席者

参集者(五十音順、敬称略)

岡村 国和、鈴木 博司、竹村 宗哲、山田 篤裕

厚生労働省(事務局)

木暮労災管理課長、中原労災保険財政数理室長、白尾労災保険財政数理室長補佐

○議題

(1)医療業、洗たく、洗張又は染物の事業の労働災害に係る補償状況等
(2)「労災保険の事業の種類に係る検討会」報告書(案)について

○議事

○数理室長補佐 定刻になりましたので、ただいまから第2回「労働保険の事業の種類に係る検討会」を開催させていただきます。委員の皆様にはお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。それでは、座長に進行のほどをよろしくお願いいたします。
○岡村座長 それでは、検討会を始めます。本日の議題は、お手元の資料にあるとおり、2つございます。まず最初に、議題1として、医療保健業、洗たく、洗張又は染物の事業の労働災害に係る補償状況等について、前回、委員の方から御意見等頂いたものにつきまして、事務局から追加の説明があるとのことですので、よろしくお願いいたします。
○数理室長 それでは、説明させていただきます。第1回の検討会におきまして、病院と診療所では、過重労働などによって災害発生状況に違いがあるのではないかということ。分けることによる行政コストの問題もあるけれども、病院と診療所に分けて労働災害の情報を把握することが必要ではないかとの御指摘がございました。また、前回の検討会の後、クリーニング業についての労働災害の発生状況について資料を出してほしいという御要望が委員より出されておりますので、この2つについてまとめて説明させていただきます。
 まず、医療業の過重労働に関してです。資料No.1-1を御覧ください。いわゆる過重労働といわれている、脳・心臓疾患、精神障害といったものの労災補償の状況ですが、医療業で労災認定された事案について個別に分析したものです。脳・心臓疾患につきましては、平成21年度から23年度、件数が10件前後ということできております。医療、福祉は10件前後ですが、医療業がそのうちの4件、3件、6件。内訳を見ますと、病院、診療所等で見ますと、ほぼ同じ程度といった状況です。精神障害は、平成22年、23年度、医療業で20件ということで、21年度と比べ増えておりますが、こちらにつきましては、病院と診療所等を見てみますと、病院のほうが支給決定件数が多くなっているといった状況です。
 一方で、これらの死亡災害に関しては件数は少ないのですが、脳・心臓疾患、精神障害ともにほぼ同じといった状況です。また、この部分が労災保険率に与える影響ということで見てみますと、実際のところ医療保健業の労災保険におきます年間の新規受給者数、大体年間5万人程度といった状況ですので、それと比べると非常に少数ということで、労災保険率への影響は極めてわずかといった状況です。
 続いて資料No.1-2を御覧ください。こちらは全体としての労働災害の状況ということで、労働者死傷病報告により把握しております休業4日以上の労働災害について、病院と一般診療所という区分で集計しております。そちらを見てみますと、件数では病院は一般診療所の10倍ぐらいとなっておりますが、発生率の状況を見ますと、厳密に母集団、分母と分子が合うかという問題がありますが、経済センサスの雇用者数で割ってみますと、病院で1.2~1.3程度、診療所で0.4程度ということで、3倍ぐらいの差といったような状況が出ております。ただ、診療所で非正規労働者の割合が高いといった状況があり、こういったことを考えますと、労働時間、労働密度の関係から、もう少し差は小さくなるのではないかといったことも推測されるところです。
 労働災害の内容を事故の型別にまとめたのが、資料1-2の中段の表です。病院と一般診療所を比べますと、転倒、動作の反動・無理な動作といったところに違いが若干出ておりますが、病院といいますのは、入院設備があるためか、介護施設を含む社会福祉施設に状況が類似しているといった状況がみてとれます。こういったことも含めて見ていくと、病院においては入院病棟と外来診察で違いがあるのではないかと想定されますし、診療所につきましても、有床、無床の所がありまして、そういった部分も病院と診療所の数字の違いに現れているのではないかと。
 労災保険率の区分として考えますと、労働災害の状況は、病院と診療所の違いというよりも、入院病棟と外来診察との違いということも考えられまして、病院と診療所のそれぞれの機能の濃淡といった違いも考えられるということもありますので、現段階では、医療業一体として区分することでも良いのではないか。労災保険率としては一体でいいのではないかと考えております。
 一方で、災害内容を分析し、労働災害防止行政に活用することは重要なことでございます。そういったものにつきましては、労働者死傷病報告により把握した災害発生状況により、対応は可能といったような状況です。
 続きまして、クリーニング業など、洗たく、洗張又は染物の事業の労災補償の状況です。資料は1-3です。洗たく、洗張又は染物の事業の労災保険の新規受給者数は、年間で1,500~1,800人程度といった状況となっております。災害発生率を、新規受給者数を労災保険の適用労働者数で割ったもので見てみますと、下の表にありますが、洗たく、洗張又は染物の事業については、全業種平均と同程度といったような状況です。その他各種事業の中で比べますと、1.5倍程度と、若干高くなっているということで、業界における労働災害防止の取組が求められるといった状況です。説明は以上でございます。
○岡村座長 ただいまの事務局の説明について、御意見のある方、又は御質問等のある方はいらっしゃいますでしょうか。
○山田委員 前回、私のコメントだと思うのですが、それに対応して詳細な資料を御用意頂きましてありがとうございます。確かに御指摘のように、いわゆる過労死と言われている部分、脳・心臓疾患の労災補償支給決定件数とか、過労と近いと思われる精神障害の労災補償支給決定件数を見ると、件数としては全体で見ても元々少ないのですが、医療業でも少ないということが分かりました。ただ、やはり気になるのは、御指摘のように、労働災害発生件数で見ますと、件数でほぼ10倍近く。先ほども口頭で御説明がありましたように、率で見ますと、ザックリした数字ということではありますが、3倍程度病院のほうが高くなっているということです。ですから、事業細目で、ここで別々にやる必要があるかどうかということであれば、過労死の状況からすれば、件数も少ないので、ということにはなりますが、やはり病院での勤務医の過重労働というのは、実際よく言われていることですし、それに伴って、脳・心臓疾患とか精神障害以外の災害も発生している可能性もありますので、死傷病報告等を用いまして、発生件数、発生率がどうしてこんなに違うのかということについて、引き続き精査していただければとお願います。
 そしてもう1つ、洗たく、洗張又は染物の事業に関する資料ですが、こちらも御用意頂きましてありがとうございます。災害率を拝見しますと、やはり従来より指摘されていたことですが、洗たく、洗張又は染物の事業というのは、災害率は11.5ということで、その他の各種事業と比較すると1.5倍高くなっているということを考えますと、引き続き労災保険率の設定としては、一緒のままということになろうかと思いますが、それは業界の労災の取組があるという前提で、その方向でいいと思いますが、この業界の労災の取組がうまくいかず、これが引き続き下がらないということがありましたら、労災保険率として独立させて見ていかなくてはいけないのではないかというのが、私からのコメントです。以上です。
○岡村座長 そのほかに御意見等ございませんでしょうか。御意見がないようですので、本日の議題2の検討に移らせていただきます。本日の議題2「労災保険の事業の種類に係る検討会報告書(案)」についてです。前回の検討会で皆様に御議論いただいた内容を基に、事務局において報告書(案)を作成していただきました。報告書は1部から6部に分かれており、第1部「はじめに」、第2部「業種の区分に係る検討」、第3部「製造業における業種の区分に係る検討」、第4部「事業の細目(総論)の検討」、第5部「事業の細目(個別)の検討」、第6部「今後の業種の区分等のあり方」という構成になっております。
 まず、報告書について事務局から説明していただきますが、これは大きく2つに分けて検討を進めたいと思います。前半部分は、第1部から第5部までとし、これらは第1回の検討会で説明があった内容と、委員の皆様方の御意見となっております。後半部分は、今回の検討会の結論に当たる、第6部「今後の業種の区分等のあり方」となりますので、今回はそちらを中心に御議論いただくこととしたいと思いますが、このような進め方でよろしいでしょうか。
                  (了承)
○数理室長 それでは、検討会報告書(案)について説明いたします。資料2になります。委員の皆様には、この案文について事前に御覧いただいていたところですが、先ほど議題となりました医療業の病院と診療所の部分を第6部の所で一部ペンディング扱いで書き加えております。それと、一部表現ぶりなど修正しておりますが、医療業で書き加えた部分以外につきましては、基本的な方向性は変わっておりませんので、あらかじめ申し上げておきます。
 それでは、報告書について御説明させていただきます。第1部から第5部まで、ポイントを説明します。第1部「はじめに」は、今回、御検討いただきました項目として、業種区分を見直すための基本的な方針、製造業に係る業種区分の整理、事業の細目の再編等を検討した等のことを書いております。
 続きまして、第2部です。第2部、「業種の区分に係る検討」では、現状として、前回検討会の資料の内容を書いているのと、主な意見として、労災保険では、災害率により業種を区分して保険率を設定していることの効果は分かるが、アスベストの一般拠出金は全業種一律の保険率となっている。災害率が高い産業があるからこそ、日本全体の産業が成り立っているのだから、危険な産業の分の保険料を、ある程度ほかの産業が負担するという考え方もある。保険集団の規模が小さいと、労災保険率が上下しやすくなる。業種の区分の検討に当たっては、労災事故の発生が1,000人というベンチマークが参考となる等を記載しております。
 続きまして、第3部です。第3部は3枚目の裏です。第3部、「製造業における業種の区分に係る検討」です。こちらでの課題は、製造業の中に幾つかある保険規模が小さい、あるいは新規受給者が少ない業種の区分について、①労災保険率がほぼ同じであること、②作業態様や労災の種類の類似性、③労働災害防止に係る業界団体の活動状況等の観点から、統合できる業種の区分を調査分析したところ、たばこ等製造業と食料品製造業を整理統合する案があるが、その案で妥当かといったところです。主な意見として、たばこ等製造業が、独立した業種の区分のままとする特別な理由がなければ、小さな保険集団であるので、食料品製造業とたばこ等製造業を統合したほうが良いといったことを記載しております。
 続きまして、第4部「事業の細目(総論)の検討」です。現状ですが、「労災保険率適用事業細目表」において、事業の細目ごとに4桁番号を付すことによって、分離・新設すべき業種の区分、労働災害防止行政の推進に必要な労働災害に係る情報を得ることが可能となっているということ、また、第3次産業に係る労災保険の適用事業場・労働者数が増加していること、適用事業場数が少なくなっている事業の細目が存続していることによって、実務上、不必要な事業の細目が多く、区分が分かりづらくなっている等のことを記載しております。
 主な意見としては、事故に係るデータの区分を、どこまで細分して保持するのかということにつきましては、民間保険でも共通の問題であるが、事故の頻度、事故の大きさ(損害額)及び事故の態様が追って分析可能となるように区分して収集・蓄積する必要がある。製造業に係る事業の細目を再編しても、行政運営上、死傷病報告によって必要なデータが収集できるのであれば、その再編は事業主側、行政側とも事務コストの削減となる。事業の細目の区分を改定するに当たっては、労災保険率の公平性と、新たな区分にスムーズに移行できるかということが問題となると思う等のことを記載しております。
 続きまして、第5部です。第5部、「事業の細目(個別)の検討」では、情報サービス業、医療保健業、認定こども園等、洗たく、洗張又は染物の事業について記載をしております。情報サービス業につきましては、主な意見として、労働者が増加している医療・福祉・情報サービス業等について、情報を収集する意味では良いと思う。IT産業、高齢者の介護産業などの成長産業では、時系列で事故発生のトレンドが変わる可能性があるので、情報を蓄積することには意義がある等を記載しております。
 2番の医療保健業では、現状のほうで、介護療養型医療施設、介護老人保健施設のうち、それぞれの開設主体の8割程度が医療法人となっているということ。また、主な意見として、介護と医療では災害発生率が違うのではないかと思う。診療所と病院では過重労働の実態が異なると思うので、診療所と病院とに分けて、事業の細目を設定したほうが良いが、その設定に当たっては、行政コストを勘案する必要があるといったことを記載しております。
 3番、認定こども園等です。現状として、幼稚園は教育業、保育所は医療保健業の事業の細目を適用している。認定こども園は、事業の細目を適用するに当たっては、単に名称だけではなく、どちらが主たる事業であるかを各施設などの実態を把握して適用しているということを記載しております。また、主な意見等としましては、労災保険を分かりやすくするため、認定こども園の区分を設定したほうが良いと記載しております。
 4番、洗たく、洗張又は染物の事業についてです。クリーニング業の取次店について、直営の取次店のほとんどが事業の独立性がなく、労災保険関係の事務は工場部門と一体として取り扱われている、独立した保険集団として扱うには小さいということ、クリーニング業の作業態様や労災保険率を勘案しても、他と統合できるような業種の区分がないこと等を現状のほうに記載しております。また、主な意見としまして、クリーニング業の取次店は、同様の作業をやっていて、直営店かフランチャイズ店かによって労災保険率が異なるということになると、公平性という観点で問題があるので、現状のまま据え置きが妥当ではないかと思うといったことを記載しております。第5部までのポイントについて説明いたしました。
○岡村座長 今、事務局より報告書(案)について説明していただきました。それでは、検討に移ります。まず、報告書全体の構成、そして第1部から第5部までの箇所について、何か御意見等ある方はいらっしゃいますでしょうか。
 よろしいでしょうか。それでは、特に意見がないということですので、後半の第6部に移ります。事務局より、第6部について説明をお願いいたします。
○数理室長 第6部についても、検討会の提言という意味合いをもっていますので、考え方も含めながら、基本的に読み上げさせていただきます。第6部、「今後の業種区分等のあり方」。上から6枚目です。第1、業種の区分数。業種の区分の多寡により、次のような効果がある。(1)業種の区分数が多いほど、区分ごとの事業のリスクが反映されて、より精緻な労災保険率が設定されること。(2)事業の区分数が少ないほど、①区分ごとの保険規模が大きくなり保険財政が安定し、労災保険率の変動が少なくなること。②被保険者にとって分かりやすく、業種の区分の仕方が簡便な制度となること。③システムを開発する事務経費や、どの業種の区分に該当するかの当てはめ、又は解釈する時間が軽減されること。④労災保険が、社会保険として相互扶助する仕組みにより近づくこと。
 第2、業種の区分の再編。こちらは、区分の再編のあり方などについて、本検討会として追加して考えたことなどもまとめています。業種の区分の再編は、「労災保険率の設定に関する基本方針」を基本とし、具体的には次のことも考慮すべきである。なお、製造業以外の産業では、①業種の区分数が少ないこと、②産業の分類内の労災保険率に著しい差があることから、現状では、製造業内での業種の区分の再編を図るべきである。
 (1)業種の区分の分離。①その他の各種事業は、平成18年度の業種区分の再編以降も、適用事業場数の3分の1を占めているが、このような大きな保険集団を分離する時には、関係業界団体等の組織・活動状況が労働災害防止活動を期待できるような状況であること。②新たに分離した業種の労災保険率が、労働災害防止のインセンティブを事業主に喚起させるような労災保険率であること。(2)業種の区分の統合。①労災保険率は、災害の重篤さも含めた災害率に該当するものであることから、統合する対象の業種双方の労災保険率がほぼ同等であること。②統合する対象の業種における作業態様が類似していること。③統合により、関係業界団体等の労働災害防止活動が停滞しないように、組織・活動状況等を斟酌すること。④統合する業種の区分の対象に、小さな保険集団をできる限りなくすため、年間の新規受給者が1,000人未満の業種の区分が含まれていること。⑤統合した業種の区分に係る災害率を経年的に把握・分析すること。
 第3、製造業の業種の区分の再編。製造業において、新規受給者数が少数、労災保険率が同等、作業態様が類似といった業種区分で、関係業界団体等の災害防止活動の現状を踏まえ、食料品製造業とたばこ等製造業は、次のような現状であることから、両者を統合すべきである。①たばこ等製造業における年間の新規受給者数が241人、適用事業場数が2,000と小数であり、労災保険率の改定のたびに保険率が上下を繰り返し不安定な状態であること。②労災保険率が平成21~23年度の間、食料品製造業が6.5/1,000、たばこ等製造業が5.5/1,000であったが、平成24年度以降、6.0/1,000で同一であること。③たばこ等製造業には製茶業が含まれ、食料品製造業と作業態様が類似しているものもあること。
 第4、事業の細目(総論)。1 業種の区分が同じであれば、事業の細目がどれであっても労災保険率が同じであり、事業主の費用負担には有利不利が生じないので、事業の細目を削減することによって、事業主にとっては、事業の細目を申告する手間が省けるなどの効果が認められる。例えば、「食料品製造業」では、製造する食べ物の種類によって、11の事業の細目に振り分けているが、事業の細目がなくなれば、その作業が削減される。2 製造業では次のような現状があることから、原則として製造業の事業の細目については、業種の区分数と同一となるよう再編すべきである。①製造業全体として、保険規模が縮小している現状では、今後とも、新たな業種の区分を新設する可能性が低いこと。②事業の細目を160まで分類しているが、労働災害統計をそこまで分類して活用する例がないこと。③労災保険実務の簡素化につながること。なお、事業の細目の再編に当たっては、将来の事業の細目の設定や統合の効果を把握・分析するため、例外的に「その他の製造業」の事業の細目や、統合される業種の区分は、そのまま事業の細目として残すべきである。
 第5、事業の細目(個別)です。1 情報サービス業については、日本標準産業分類の中分類のように2つではなく、1つの事業の細目として、次のとおり新たな事業の細目を新設すべきである。「情報サービス業」、この分類にはソフトウェア業、情報処理・提供サービス業及びインターネット付随サービス業の事業が該当する。2 医療保健業。この項については、先ほど冒頭で病院と診療所を区分すべきかといった話もありましたので、ペンディング扱いで仮の提言を記載しておりましたが、先ほどの議論を踏まえ、ペンディング(P)を外したものとして扱わせていただければと考えております。
 2 医療保健業。社会福祉・介護事業の労働人口が拡大していることから、労働災害防止の行政の推進に必要な労働災害情報を把握・分析するために、医療保健業から社会福祉・介護事業を独立させて、事業の細目を設定すべきである。病院と診療所に係る労働災害の発生状況(労働者死傷病報告)を見ると、両者には差異があることがうかがえるので、その内容を詳細に分析する必要があるが、一般的には、病院では多くの病床の入院施設を有し、診療所では外来診療を基本としており、労働災害の差異は、その医療機能の相違と考えられる。病院においても外来診察が行われ、有床診療所において入院施設を有していることから、現状では、医療業として一体で考えるべきである。
 医療保健業については、医療業と社会福祉・介護事業に分けて、次のとおり事業の細目を設定すべきである。なお、医療業と社会福祉・介護事業の業種の区分については、事業の細目を設定して労働災害に係る情報を収集すべきであるが、両者の各施設では、次のような現状があることから、現段階では、両者の業種の区分を別々のものとして労災保険率を設定することについては、慎重であるべきである。①介護を行う施設である介護療養型医療施設及び介護老人保健施設において、医学的管理下における介護その他の世話及び機能訓練、その他必要な医療も行っていること。②介護療養型医療施設及び介護老人保健施設の開設主体のほとんどが医療法人であり、医療業と社会福祉・介護事業が混在していること。
 医療業と社会福祉・介護事業の定義です。「医療業」の分類には、病院、療術業等の医療及び保健衛生に関するサービスを行う事業が該当する。「社会福祉・介護事業」の分類には、社会福祉及び介護に関するサービスを行う事業が該当する。
 3 認定こども園等です。幼稚園、保育所及び認定こども園については、労災保険実務の簡便性と斉一性を確保するため、次のとおり、3つの事業の細目を新設すべきである。定義です。「幼稚園」の分類には、幼稚園の事業が該当する(認定こども園を除く)。「保育所」の分類には、保育所の事業が該当する(認定こども園を除く)。「認定こども園」の分類には、認定こども園の事業が該当する。
 4 洗たく、洗張又は染物の事業です。「洗たく、洗張又は染物の事業」は、次のような現状により、現状どおり、「その他の各種事業」として適用することが適当である。①仮に、「洗たく、洗張又は染物の事業」を、「その他の各種事業」から分離・独立させた場合、クリーニング事業者直営の取次店のほとんどは事業の独立性がないことから、クリーニング工場(洗たく、洗張又は染物の事業)の労災保険率が適用されることになるが、フランチャイズの取次店のみを行っている事業場は「その他の各種事業」となるので、同じ取次店でも、直営店かフランチャイズ店かで業種の区分が相違することとなり、保険料負担の不公平が生じかねないこと。②労働基準法等では、クリーニング工場は製造業として取り扱われているが、日本標準産業分類では、取次店とともに「生活関連サービス業、娯楽業」に格付けられていることから、社会保険の性格も持つ労災保険の区分は、国民にとっては、従来どおりサービス産業の区分である「その他の各種事業」のほうが分かりやすいこと。なお、「洗たく、洗張又は染物の事業」は「その他の各種事業」の中では比較的災害率が高いことから、業界団体における労働災害防止活動を、さらに一層浸透させていくことが望まれる。説明は以上です。
○岡村座長 事務局の説明の中で、第5、2の医療保健業の中で、下線が引いてあり(P)ペンディングのマークが付いていたのですが、これを取り外すということも含めて、第6部について何か御意見等がある方はいらっしゃいますか。
○山田委員 前回私が発言した所に関わるペンディングの部分を外すことについては、外してくださっていいと思います。ポイントとしては、下線が引かれている2番目の内容、病院での労災率があんなに高いのはなぜなのかということをもう少し詳細に事務局でも分析していただきたいということで、それを念頭に外していただくのは結構だと思います。それから質問なのですが、情報サービス業で日本標準産業分類の中分類のように2つではなく1つの事業の細目とした理由をもう一度復習させていただければと思います。
○数理室長 こちらの区分については、前回全て説明し切れていない部分もあるかもしれません。情報サービス業とインターネット附随サービス業という中分類があります。実は、情報サービス業の中のソフトウェア業が非常に大きなウエイトをもっている状況があります。その中の職業別の状況を見ていきますと、やはりソフトウェア業についてはSEが非常に多い状況があります。またインターネット附随サービス業については、情報サービス業ほどSE比率は高くないのですが、ほかの業種と比べるとかなり高い状況があります。具体的に申し上げますと、全産業平均でシステムエンジニア(SE)の雇用者に占めるウエイトは、1.4%の所が、情報サービス業で55.4%と圧倒的に多く、インターネット附随サービス業は16.9%ということで、ほかと比べてかなり高い状況になっている、職種構成がそういう状態になっていること、情報サービス業、ソフトウェア業はそれに付随するような状況であるといったことを考え合わせて、1つの分類でいいのではないかという判断をしているところです。
○山田委員 分かりました。もし可能であれば、本日がこの報告書を決める最終回ということで、座長一任ではありますが、その辺りの説明も適当な範囲で書き込んでいただければと思います。また、インターネット附随サービスの雇用者数は、5万6,000人ということでかなり大きいのです。もちろん、御指摘がありましたように、情報サービス業の雇用者数105万人に比べると少ないのですが、SE比率が高いのもそうですが、一応この2つの中分類で見ると一定の差もありますので、死傷病報告などで、労災率に差がないのかということも引き続き注視していただければと思います。この時点で細目を2つ新設するというのは、行政コストの問題などがいろいろあると思いますが、本当に1つのままでいいのかどうかは、長期的に、労災率をもし中分類で分けた場合に、一体どういう推移をしているのかということを注視していただければと思います。
○岡村座長 そのほかにありませんか。それでは、全体を通じた御意見等でも構いませんので、もしあれば出していただきたいと思います。
○竹村委員 経済情勢や産業構造の変化を捉えた形で、今回のように、保険率や業種区分等を定期的に合理的な形で見直していくことが、今後ますます必要になってくると考えます。労働災害防止のインセンティブを高めるサイクルを回していく必要がありますが、それには、この定期的な見直しが非常に有効だと考えます。
○岡村座長 ほかにありませんか。それでは、本日頂いた情報サービス業等に関する御意見を反映した形で、報告書を取りまとめたいと思います。具体的な修正については、私に御一任いただけますでしょうか。
                 (了承)
○岡村座長 では、そのようにさせていただきます。今回取りまとめた報告書の今後の取扱いについて、事務局から説明をお願いします。
○数理室長 今回、業種区分に係る様々な問題を御検討いただいたことについて、感謝申し上げます。今後取りまとめました報告書については、3月27日に開催予定の労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会に報告させていただきたいと考えております。また、この報告書を基に今後必要な事業細目の改定を行っていくこととしております。また、検討会報告書、資料、議事録については、厚生労働省のホームページで公開することとなっておりますので、御了承いただきたいと思います。
○岡村座長 それでは、本日の議事は以上とさせていただきます。議事の進行について御協力ありがとうございました。以上をもちまして、本検討会は終了とさせていただきます。


(了)
<照会先>

労働基準局 労災補償部 労災管理課 労災保険財政数理室

(担当)室長補佐 白尾: 03-5253-1111(内線5453)

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