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2012年4月27日 第26回医療情報ネットワーク基盤検討会議事録

政策統括官付情報政策担当参事官室

○日時

平成24年4月27日(金)10:00~11:30


○場所

厚生労働省 専用第12会議室
(中央合同庁舎5号館 12階11号室 日比谷公園側)


○出席者

構成員

安藤裕構成員 大山永昭座長 河原和夫構成員 喜多紘一構成員
庄本幸司構成員 土屋文人構成員 冨山雅史構成員 福井トシ子構成員
三谷博明構成員 南砂構成員 矢野一博構成員 山本隆一構成員
吉村仁構成員

事務局等


○議題

(1)処方箋の電子化について
(2)その他

○配布資料

資料処方せんの電子化に向けて(案)

○議事

○前原情報政策担当参事官室長補佐 定刻になりましたので、ただいまから第26回「医療情報ネットワーク基盤検討会」を開催させていただきます。
 構成員の皆様には、御多忙のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、初めに会議の開催に当たりまして、政策統括官の香取よりご挨拶を申し上げます。
○香取統括官 おはようございます。政策統括官の香取でございます。
 本日は大変足下の悪い中、御多用のところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。この医療情報ネットワーク基盤検討会は今回で26回を迎えておりますが、本年度は第1回ということでございまして、一言ご挨拶を申し上げます。
 御案内かと思いますが、本年4月から私どもは組織再編をいたしておりまして、情報連携基盤推進室を持っておりましたが、社会保障担当参事官室から独立をいたしまして、新たに情報政策担当参事官というものを設けまして、室を構え、室員も大幅に増員をいたしまして、体制を強化いたしました。省内の情報政策全般について、統括体制をつくったところでございます。
 私どもはこれから15政策全体のとりまとめをしていくわけですが、大きく3点に整理をして進めていきたいと思っております。
 第1点は、私ども行政がさまざまな政策の企画立案というものをしていくに当たりまして、必要で正確な情報を収集分析するという体制が必要だと。これはエビデンスに基づく政策企画立案という観点から、非常に必要な観点でございます。
 もう一点は、国民との間のインターフェースということでございます。各種の届出・申請・対応、機関同士の連携・調整、さまざまな場面での情報処理を正確かつ迅速に行うということ。これは国民に対するサービスの質の向上、あるいは事務の効率化につながるということでございます。
 3点目は、恐らくこれがこれから非常に重要になっていくところでございますけれども、個々の国民が自らの情報、社会保障に関するさまざまな記録、あるいは情報を迅速かつ的確に入手をすることができる体制。情報の提供あるいは国民側から言えば、自己情報へのアクセスあるいはコントロールということになろうかと思います。
 これら3つはフェーズが違いますが、基本的には同じ枠組み、あるいは同じ政策の枠組みの中で、一種整合的・統一的に進めていかなければならないということになるのではないかと考えております。
 私どもとしては、これまでさまざまな各分野で政策を行ってきたわけでございますけれども、そういったものは言わば、いったん集約いたしまして、こういった情報化について国民にわかりやすい形で、具体的な成果の出る形でとりまとめをしていこうと考えているところでございます。
 この医療情報ネットワーク基盤検討会もそういうことで、私どもの室の方で所管をしながら作業を進めていくことになるわけでございますけれども、今回こういった形で新たな体制をもって政策に臨みたいと考えておりますので、引き続き構成員の皆様方、御指導、御鞭撻を賜りますようによろしくお願いいたします。
 簡単でございますが、私からのご挨拶といたします。ありがとうございます。
○前原情報政策担当参事官室長補佐 大変恐縮ではございますが、香取政策統括官は所用により途中退席をさせていただきます。
続きまして、構成員の方々についてでございますが、本日は石川構成員、富田構成員、樋口構成員から欠席の御連絡をいただいております。
 また、本日はオブザーバーといたしまして、内閣官房IT担当室、経済産業省商務情報政策局からも出席いただいておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、資料についての御確認をさせていただきます。一番上から議事次第、次に座席表、その次に資料として「処方箋の電子化に向けて(案)」。
 以上でございます。資料の未配付など不備がございましたら、事務局にお申し出いただきますようお願いいたします。
 それでは、以後の議事進行を大山座長にお願いいたします。
○大山座長 おはようございます。
 ただいま香取政策統括官から、長年の課題であった厚生労働省全般の情報化政策を、昔はよく、局はあって省なしではないかという縦割りのすごさを我々もしばしば目にせざるを得ないことがよくあったのですが、大いに期待できることでありまして、こちらも全力を挙げてお手伝いをさせていただければと、皆さんも思っていただいているのではないかと思います。年度初めに当たって、非常にいいお言葉をいただいたと思います。
 それでは、早速本日の検討に入らせていただきます。今回の議事は、これもまた長いお話でございますが、処方箋の電子化について、今日は1時間半ほどを使いまして、しっかり議論をさせていただければと思います。
 前回の検討会では、処方箋の電子化についての基本的な考え方について、皆さんの御了解をいただいたところであります。その後、この考え方に基づき、作業班において、更に検討を進めていただくということも御了承いただいたと思いますが、今回はその検討のまとめとしての報告書が資料として提示されております。
 本日の検討会では、その内容につきまして御説明をいただき、その後にまた議論を、というふうに思います。作業班の方々を含めて、作業班の班長である山本先生には、非常に御苦労が多かったであろうと推察いたしますが、この資料につきまして、御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○山本構成員 それでは、資料の説明をさせていただきます。
 まず、資料の表紙ですけれども、タイトルが「処方箋の電子化に向けて(案)」となってございます。後で説明申し上げますけれども、平成20年7月に医療情報ネットワーク基盤検討会でこのドラフトの基となったドキュメントが皆さんによってオーソライズされて、公表されております。そのタイトルが「処方せんの電子化について」でした。今回は「ついて」ではなくて、「電子化に向けて」ということで、より実現を強く意識したタイトルに変えさせていただいております。
 それでは、1ページの「1.検討の経緯」から御説明させていただきたいと思います。
 パラグラフで言うと前の4つは、前回の医療情報ネットワーク基盤検討会での「処方箋の電子化について」というドキュメントが出るまでの経緯ですので、ここは省略をさせていただきます。
 平成20年7月に「処方せんの電子化について」というドキュメントをリリースしました。その中身は、現状における実現こそ即座に実現するということは困難であるが、今後の技術や各種施策の進展を見据えつつ、真に有益な処方箋の電子化の実現に向けて、より詳細な検討を行っていくことの必要性があると報告を申し上げたところであります。
 その後、技術の進歩、あるいは社会基盤の変化等がございまして、平成22年の規制・制度改革に係る対処方針でありますとか、情報通信技術利活用のための規制・制度改革に係る対処方針の中で、処方箋の電子化でそれぞれの処方箋の発行にかかる考え方を23年度中に明確化する方針が明記されております。
 そのほか、「『国民の声集中受付月間(第1回)』において提出された提案等への対処方針について」や「新たな情報通信技術戦略工程表」といったところで処方箋の電子化、あるいは電磁的交付について検討することが記載されております。これらの概況の変化、前回のとりまとめから既に3年半を経過しております。ITの世界では3年半というと、ほとんどひと昔に相当しますので、そういったIT技術の進展等を勘案して、厚生労働省を始め、処方箋の電子化に関する実証事業も幾つか行われましたので、そういったことを踏まえて、このドキュメントを見直すことにしたということが、この作業の行った経緯であります。
 「2.紙媒体の処方箋の運用の形態」がございます。これは今更申し上げるまでもなく、皆さんも御存じかと思いますけれども、参考資料として一番最後のページに簡単な絵を入れました「紙媒体の処方箋の運用形態」がございますので、後で議論の際に参照していただければと思います。
 少し飛ばしまして、6ページが処方箋の電子化に関わる文書の本体であります。
 「3.処方箋の電子化を含む医療情報の電子化の進展により実現されること」。3章は全体に、なぜこれを進めるべきかを中心に述べております。最初の処方箋の電子化と今までさまざま進められてきた医療情報化の推進と意味が違うのか、違わないのかということで記載をしております。
 例えば電子カルテの導入といったことは、医療自体の効率化、つまり医療機関等における医療行為の効率化、あるいは医療機関の目で見た地域医療の効率化という観点から電子化を進めてきたということですけれども、この処方箋の電子化というのは、処方箋自体が今、紙の処方箋であったとしても、医療機関等から患者等に交付され、患者等が自ら、自分の意思に基づいて薬局を選択して持参をするという仕組みになっております。
 このことを変えるということは、この処方箋の電子化の中の議論では毛頭ございませんで、この前提で処方箋を電子化するということは、医療機関の視点ではなくて、患者視点、国民視点から医療健康に関わる情報の電子化を進めるという意味の直接的な実現に踏み出すものであって、処方箋の電子化というのは患者視点、国民視点の健康医療情報の情報化の端緒と位置づけることができる。
 最も患者さん等に近い医療情報、健康情報である処方箋の電子化さえもできないのであれば、国民視点での国民に効果が実感できるという医療健康情報の電子化というのは望みがたい。したがって、これは今までの医療機関の合理化、医療機関の医療という行為の合理化ということから離れて、真に国民に利点を実感していただける情報化を進める上では避けがたいといいますか、最初に取り組むべき課題であることを3章の初めのパラグラフで書いてございます。
 それ以外にも社会行政的なメリットでありますとか、処方・調剤情報の突合は御承知のように、現在、処方は一般名処方が増えてきておりまして、患者さんに実際にわたる商品、物としてのお薬と処方としての内容が必ずしも物を識別できるレベルで一致しているわけではない。したがって、医療機関では自分が指示をしたお薬のどれかを患者さんは飲んでいるのですが、どれを飲んでいるかということが容易にはわからない状況になる。
 下世話な話をすれば、先生、あの赤い薬を飲んでから少し調子がおかしいんですけれどもと言われても、医師は赤い薬が何なのかがわからないという状況にあるわけです。これをより容易に処方、指示から調剤の結果が突合できるということが今後求められている。そういったことが処方情報、処方箋自体を電子化することによって容易になるということがございます。
 電子化するということは紙と違いまして、蓄積された情報を二次利用を行うことが極めて容易になります。そのことによって、調剤の結果、例えばある地域に住まわれている住民の方の飲んでいるお薬の状況が全体として把握することが非常に容易になって、先ほど香取政策統括官の方からもお話がございましたけれども、何らかの施策をすることのエビデンスとしての効果も多いに期待できる。
 更に医療安全に関しても、現在、物としてのお薬はバーコード等を用いたトレーサビリティがかなり進捗している状況でありますけれども、実際にそれを指示した処方、あるいは調剤の結果が完全に結び付いているわけではない。こういったことを電子化することによって総合的にとらえることによって、健康被害等の把握あるいは医薬品の回収等が効率化されることが期待されます。これは患者の安全の観点からも非常に大きなメリットと考えられています。
 3—1からは今までどういうことが行われてきたか。あるいはどういうことを行うべきだということが書かれております。
 7ページの真ん中「我が国の現在の法制度に基づき、処方箋を電子化しようとした場合、その実現の根幹に関わる課題」ということで、4つ挙げております。これはすべて完全にできないというわけではなくて、最終的に処方箋の電子化の効果を最大限にするためには、こういったことが避けられないということでありますし、4番の一意性の確保というのは、これができないと処方箋の電子化はできないということにはなりますが、そういう条件を挙げております。
 8ページには前回「処方せんの電子化について」というドキュメントが出されてから行われた実証の取組みを3つ挙げております。これだけではございませんけれども、代表的な3つを挙げております。
 1)が東京大学病院のプロジェクトでありまして、これは処方箋自体を電子化するのではなくて、処方箋にデジタル化された処方情報を二次元バーコードの形で添付をする。具体的には処方箋の英語の紙を倍の大きさにして、反対側にそれを打つという形にして、調剤薬局はその二次元バーコードを読み取ることで、電子化された処方情報を利用することができる。更に調剤結果を薬局ではHL7CDAという、今、国際標準でドキュメントの電子化としては最も多く使われている仕様ですけれども、この構造に変換をして各医療機関に、これは一枚一枚ではなくて、一日一回返す。返された情報がそれぞれの医療機関のオーダリングシステムとか電子カルテとか、処方の結果情報として、それが表示される。したがって、先ほど申し上げました、処方が一般名処方でされていても、実際に患者さんにこのお薬が渡されたということが診療現場で容易に把握ができるようになるという仕組みを平成19年から行って、現在も続けております。
 2)が厚生労働省、経済産業省、総務省の三省連携における浦添市での健康情報活用基盤実証事業の中の一部で、処方箋の電子化プロジェクトがございます。この事業においては、1)の東京大学病院のプロジェクトの調剤を返す仕組み、CDAの仕組みを処方箋にまで拡大をいたしまして、処方箋もこのHL7CDAの仕組みを用いて電子的な形式化をいたしました。
 実際の処方箋の一意性の確保と、その処方箋をどういうふうに流通させるかということで、このプロジェクトではASPサービス、つまり途中に信頼できる処方箋の運搬をするといいますか、処方箋を適切なところに間違いなく一意で送るという仕組みを取り入れまして、電子処方箋の実証事業を行っている。ただし、これは現行法制化で行いますので、紙の処方箋は存在はするのですけれども、薬局はその紙の処方箋と電子的に来る処方箋の内容をチェックして調剤をするということで行われています。
 この1)、2)のプロジェクトの間は後で説明をしますけれども、こういったプロジェクトは一部の地域でできて、ほかの地域で読めないというのでは困るわけですけれども、そういう意味では処方箋に含まれる情報の一部の標準化が不十分でありまして、具体的にはお薬をどう飲むという用法に関しまして、統一された形式を使われていなかったのですが、3)の平成23年度の総務省の事業で、香川県高松市で行われた健康情報活用基盤構築事業で、処方箋の形式やサービスの在り方は、2)の浦添市の事業とほぼ同じで、それをやや改良しているのですが、用法に関して処方オーダリングシステム用標準用法マスタを使いました。この用法マスタは今年の2月16日に日本医療情報学会標準として制定されて、現在公開をされているところであります。
 日本だけ処方箋の電子化を議論しているわけではなくて、欧米等では処方箋の電子化が結構進んでいまして、ヨーロッパもアメリカも7割以上の処方箋がもう既に電子化されている。ただし、欧米の処方箋と我が国の処方箋とは少し意味が違って、欧米の処方箋はあくまでも薬局に対する処方指示であります。我が国の処方箋は医療機関等が患者等に交付するもの。つまり、情報開示の機能も併せて持っていて、なおかつ患者さんが自由に薬局を選択できるということになっております。欧米の場合はあくまでも指示ですので、患者さんに手渡すことが必須ではなくて、医療機関が電話指示で行われることさえあるということであります。
 欧米は御承知のように、隣の国の薬局でお薬をもらうということも、地域によっては普通に行われるわけで、そういうところでは電子化しておく方がはるかに便利であるということで進んでおります。アメリカはそういうことがないのに相当普及しているということからしますと、患者さん等に近い、コンシューマに近い情報の電子化は受け入れられやすいということを示しているのかもしれません。
 3—2以降は当事者のメリットでございまして、前回のドキュメントと余り変わっていないのですが、医療機関等におけるメリット。患者等におけるメリットが記載をされております。メリットは先ほども述べましたけれども、紙の処方箋を薬剤師さんが目で見て、それを調剤レセコンに入れる。あるいは目で見たものによって調剤を進めるということによって間違いが生じる可能性がゼロではないわけですけれども、そういったことが初めから電子化されていることによって、少なくとも誤記、誤読のリスクが減るということになっております。
 現在の紙の処方箋で一意性が確保されているかと言われますと、確かに処方箋の偽造とか再利用という問題は、数は少ないかもしれませんけれども、存在する。こういったことが適切に電子化された場合には、それを防止することができる。それから、電子化を進めることによって、処方箋の電子化自体ではありませんけれども、その情報が患者自らコントロールできる形で蓄積をされることによって、継続した長期の加療とか、そういったことに非常に有用である。あるいは大震災であるとか災害であるとか、そういったときに公共機関がこの情報を管理していることで適切な対応が可能になるというメリットがあると記載をしております。
 11ページの4章になりますが、とは言うものの、明日からできるかというと、そうではない。そういう意味で検討すべき課題を挙げております。
 4—1が検討すべき課題のオーバービューですけれども、必ず留意するというか、おろそかにできないことが、現状の患者さんが処方箋を持って薬局を選択できる。あるいは極端な場合、調剤を受けないことも日本の場合は自由なわけですから、かかったお医者さんに言われたことがどうも納得できないので、今はこの薬を飲めないという判断もしようと思えばできる。選択を自由にするということは、そのことによる医療の質の向上が期待できるわけでして、これは我が国の医療制度の根幹でありますので、ここを変えてまで処方箋の電子化をするということはできない。処方箋の電子化をするに当たっては、これが必須であるということで、実際に検討すべき課題として、11ページの「(1)国による基盤整備」から16ページの「(9)コスト負担」まで9点の課題を整理しております。
 「(1)国による基盤整備」は12ページから具体的に挙げております。
 「i)処方箋の一意性の確保」。先ほどASPを使った実証事業が行われたと申し上げましたけれども、ASPを使う場合は信頼点がASPサービスプロバイダになりますけれども、勿論そのASPサービスプロバイダが最終の信頼点かどうかは別として、幾つかのASPサービスプロバイダが共通の信頼点を持つこともあり得ると思いますが、そういった国民が信頼できる信頼点を用意しなければいけないということでは、これは国が一定の関与をする必要がある。
 あるいはASPを使わないで患者さんが持参をしたICカードに電子処方箋を格納するという方法もあるわけですけれども、この場合もICカードの仕様とかICカードが悉皆的に持たれていること。あるいはICカードがすべての国民によって利用できるという状況を実現する必要があるということになろうかと思います。その一つとして、もしも用いる場合はこのデバイスの配布の問題がございます。
 「iii)患者等による薬剤受取履歴の管理」ということで、これは処方箋の電子化と直接そのものではありませんけれども、処方箋に関わる情報の電子化の中で大きなメリットを生むためには、薬剤受取履歴を患者さんが、あるいは服薬指導情報とか、そういったものを患者さんが自ら管理できる仕組みがあることが、この処方箋の電子化の効果を最大にするということで、これは誰かができて、誰かができないということでは困るわけですから、ユニバーサルなサービスとして実現する必要がある。したがって、国等の積極的な関与が必要であると記載をしております。
 この点に関しましては、処方箋自体ではなくて、言わば、おくすり手帳になるわけですけれども、おくすり手帳の電子化もプロジェクトとしては幾つか行われておりまして、社団法人日本薬剤師会と一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会、JAHISを中心にそのフォーマットの標準化が現在進んでいるところであります。
 国等の整備が必要なiv)として、処方箋の閲覧環境。これは今、紙の処方箋の場合、患者さんに医療機関等から交付されて、封筒に入っているわけでも何でもなくて、患者さんはそこに書かれている情報を自由に見ることができるわけですね。これは患者さんへの処方情報の開示機能として非常に重要な機能ですので、電子化すると電子化情報はそのままでは人間は見ることができないわけですから、何らかの方法でこれを患者さんが閲覧できることを確保しなくてはいけないということになります。最終的には全く紙がない状態では、すべての患者さんが容易に電子情報を見ることができないといけない。これを実現しないといけないということになろうかと思います。
 国等だけではないということで、項を変えて「(2)ネットワーク基盤の整備」。これはASP型の電子処方箋を使う場合には、すべての医療機関、すべての調剤薬局がASP型のサービスプロバイダにネットワーク接続をする必要がある。記名、押印が必要な書類ですので、電子化した場合は電子署名がされるわけですけれども、電子署名が検証できなくてはいけない。検証するためには、その電子署名を見たときに、この署名者の判子、電子署名が有効か有効でないかをということを問い合わせることが必要ですので、これでもネットワーク基盤の整備が必要になるということになります。
 「(3)制度面の対応」で、これは説明は飛ばしましたけれども、2章に数多くの法令が記載しておりますが、それらを整合性を確保しながら、法令というのはそのことによって、国民の安全を確保するためにつくられているわけですので、その整合性を確保した上で、この処方箋の電子化を進めていくための見直し改正が必要になるということになろうかと思います。
 (4)として、公開基盤の整備。これは仕組みとしては医療情報ネットワーク基盤検討会で御検討いただいて、HPKI、つまり国家資格を持つ医療従事者の署名及び認証機能というのは、仕様としてはできているんですけれども、実際にすべての医師、すべての薬剤師が電子署名をできる状況にあるかというと、そうではないですね。まだ一部の人しかできない状況でありまして、それを整理を進めていく必要があるということになります。
 医師の場合は、医師であれば、どこで処方しても構わないですけれども、薬剤師は薬局でしか調剤できないということになっておりまして、自宅で処方箋を受け取って調剤してはいけないわけです。したがって、その制度の下で行うのであれば、薬局だけではなくて、今は在宅が加わっていますけれども、いずれにしても一定の場所でないとできないという規則になっていますので、これを実現しようとすると、その一定の場所を検出する。電子的にきちんと評価するという仕組みが必要になります。
 (5)として、標準様式の整備でありまして、これは先ほど説明を申し上げました3つの電子処方箋に関わるプロジェクトでは、ほぼ共通の一つのプロジェクトごとに少しずつ改良はされていますけれども、ほぼ共通の形式で運用ができることは確認をされています。ただ、それはプロジェクトで使ったということですので、これを電子処方箋に関わるステークホルダーがすべて使えるような形にするには、きちんとメンテナンスができている標準としなければいけないということで、これは今その動きが始まってはいますけれども、まだ終了はしていないという意味では、更に進める必要がある。
 国民の方の社会的コンセンサスの形成も非常に重要で、その利点を十分に説明した上で、それをわかりやすい運用体系とすることで、合意を得ていくという努力が必要であろうかと思います。
 (7)が運用スキームの検討。これは先ほどASPで一応運用できることが確認できたと申しましたけれども、本当にこの方式ですべてをカバーするのか、あるいはずっと前回のドキュメントから抱えています患者さんがICカードに確保して持参することとの本当の比較とか、そういったことも進めなくてはいけない。
 「(8)障害時の対応」。これはさまざまな障害が考えられるわけですけれども、紙の処方箋の場合は、少々一部が破れているとか、一部が汚れているという状態であっても問題なく調剤ができるという状況もあるわけですけれども、電子情報の場合、特に電子署名を付加した電子署名の場合は、ごくごく小さな情報の壊れでも中身が全く検出できなくなる可能性があることがございますし、電子情報を扱う上では、何らかの電気を使う装置が要るわけで、停電の場合はどうするかとか、そういったことを十分検討しておく必要がありますし、ネットワーク障害も短期間はともかく、かなりの時間にわたるネットワーク障害であれば、患者さんに全く瑕疵がないにもかかわらず、調剤が受けられないという状況をつくってはいけないという意味では、その対策を考える必要があるということになります。
 コスト負担の問題で、今、幾つか申し上げた基盤整備、その中でも幾つかは後でも申し上げますけれども、処方箋の電子化のためだけにやるものではなくて、さまざまなほかのことにも利用できる基盤整備もございますので、そういったことも含めてコスト負担を考えていく必要がありますし、現在の日本の社会保障の状況を考えれば、コストが上がってしまうことは避けなければいけない。全体として、やはり適切なコストで実現される必要があるということになっております。
 17ページにロードマップを記載いたしました。図ですけれども、現在より少し前に実証事業がされている。更に一定の準備期間が必要である。これはもう最低限決めなければいけないことを決めていかなければいけないということで、一定の準備期間が必要で、一定の準備期間が終わるのが現在プラスX年としております。その次には移行期があります。移行期は実は2つに分かれていまして、移行期1では更に実運用をしながら問題点を、本当に問題がないかということを確認をしていく期間が移行期1でありまして、ネットワーク基盤やHPKIの証明書の普及とかに一定のメドが付くということで、このまま進めても大丈夫ということになれば、これはいよいよ本格的に処方箋の電子化を進めるための移行期2に入ります。
 義務化という多少刺激的な言葉を使っておりますけれども、紙の処方箋と電子処方箋が共存している状態は、その共存することによって幾つかの弊害が考えられますので、最終的には原則どちらかとすべきという意味では、この一番右端の原則義務化という言葉の意味は、ほとんどの処方箋が電子化されているという状態を指しております。これは目標を決めないとなかなか進みませんので、原則義務化という言葉を使っております。
 その下には実際の移行期1の在り方がいきなり日本中から始めるのではなくて、コンセンサスの得られた一定の圏域、例えば二次医療圏単位とかで開始されることが望ましい。これをしながら円滑に運用できることを確認しつつ、進めていくということになろうかと思います。当然ながら電子署名が必要であるということになります。
 18ページ「5.別途検討すべき点」。
 「(1)移行期の運用について」。先ほど、移行期1、移行期2をこのドキュメントでは提案しておりますけれども、混在している状態はどうしても事務手続が繁雑になって、医療機関等あるいは薬局で両方に応需することとなって、事務手続が非常に煩雑になるという意味では、この期間をできるだけ短くすることが求められるということになろうかと思います。ただ、本当に全国的な話になりますので、短いといっても一定の期間はかかるということが考えられますけれども、そういったことを解決する必要があるということになろうと思います。
 (2)は、今の紙の処方箋の制度の下で、新型インフルエンザの流行時には、実際には対面で処方箋を交付することが一定の条件の下で緩和をされて、電話等で確認をして、処方箋を医療機関から薬局にファックス等で送信をして、これで流行終了後に患者さんに原本の処方箋をお渡しして、患者さんがそれを届けるみたいな運用がされたわけです。これはパンデミックだけではなくて、例えば大震災の時でありますとか、そういった時にこういう運用が起こる可能性があるということも十分考慮をした上で、処方箋の電子化の検討をしていかなければならないということになります。
 16ページは結論でありまして、今までのまとめに近いのですが、確かに明日からできるというものではないですけれども、実現不可能な課題はなかったということで、処方箋の電子化の実施が今後とも困難であるとする結論ではない。しかし、実施に至るまでは、課題について相応の検討が必要であって、現時点から検討を進めて国民等の理解を得ていくことが重要であるということであります。
 繰り返しになりますけれども、処方箋の電子化の効果、国民にとっての効果を最も大きくするためというのは、処方箋の電子化だけではないという意味では、例えば調剤情報を国民自身が自分のコントロールで管理できる仕組みとか、そういったものの整備も進めていかなければならないということが書かれております。
 説明は以上です。
○大山座長 ありがとうございました。
 非常に丁寧に説明いただき、また、内容的にもよく整理されているのではないかという印象を受けますが、早速、皆様方から御意見等をいただきたいと思います。ここからは自由に発言をいただいてよろしいかと思いますが、いかがでしょうか。
 最初はなかなか出づらいので、場つなぎとは言いませんけれども、私の方から14ページの下から2つ目の段落です。「処方箋は薬局に提出することとされていることから、薬剤師であれば誰でも処方箋を受取れる環境としてよいか」云々とあります。実態として、その組織としての薬局というのは勿論指定されるのでわかるのですが、例えば薬局の中で自宅と兼業しているときに自宅側で受け取っていいのか。
 冗談みたいな話になりますけれども、その辺の薬局としての認定というか、認めるどうこうについてのお話はわかるのですが、これは後で言うと、薬局という組織の認証機能というときに、組織を認証すると言っても証明書を見るわけではない。証明書の形を取るか、いろいろあるかもしれない。現実の世界だったら、認定されていますという紙を受けるけれども、電子的にはその紙を置いておいても、その紙をほかに持っていったらそのままだし、要するに場所を特定するということについて、どういうふうに考えられたのか。
 言い方を変えると、薬局という組織を認証しないとダメだという理由はどこなのかというのがわからなくて、あえてお聞きさせていただきたいと思います。
○山本構成員 薬局というのは制度上、管理薬剤師でしたか。薬を管理される方がいらっしゃって、薬局内でも調剤区域があって、そこでやらないといけないんですね。ですから、ネットワーク上からそこまでやるというのは多分無理だと思いますけれども、キチんと管理薬剤師がいらっしゃる保険薬局であるということは、ネットワーク的にわかる状態にしておきたいということで、そこから先は現行制度でもこれが調剤区域であって、ここは服薬指導をするところとか分かれていますので、そこは薬局の中の管理体制ということになろうかと。
 先ほどの在宅調剤の場合を考えますと、在宅調剤は一人の何でもない薬剤師さんがやっていいというわけではなくて、これは保険薬局が在宅に行って行うものですから、管理薬剤師さんの監督の下にそれが行われるわけで、そこが確認できることが最低限の要件ではないかと考えています。そこであれば、医療機関等を認証するのと同じことですので、一昨年度でしたか。この医療情報ネットワーク基盤検討会で御検討いただきました組織認証のHPKIの仕組みを使うことで、勿論ルールづくりは必要ですけれども、できるのではないかと考えています。
○大山座長 そうすると、管理薬剤師の方は資格だと思うので、当然、一人の個人ですね。その人がいるから組織として認証されるという前提になると、その人にとって一個人としての行動をするときと、組織として許可を受けていることを示すために、2つ持つ方がいいという考え方から、組織認証になるのか。そういうことでいいのですか。
○土屋構成員 薬局というのは、実は薬剤師でなくても開くことができるんです。経営者という人が必ずしも薬剤師とは限っていないんです。そういう意味で言うと、そのために薬のことについての責任者である管理薬剤師をキチんと設けているわけで、薬局が開設されるときの経営者とそこは離れているものですから、そこのところをキチんとしなくてはいけない。
 なおかつ、前回お話ししましたように、薬事法でいわゆる調剤をする場所ということが決められているということで、薬局あるいは患者さんのお家でやることが現在はOKになっているというような状況ですので、そこのところをどう確認するようにするかということは、現行法で求められていることでもありますので、そういうようなことが通常、皆さんは割とそこら辺はラフにお考えかもしれませんが、そこが構造上違っているということと、平成18年に今まで薬局は薬事法のみで定義されておりましたが、医療提供施設として医療法の中で、これは調剤を行っている薬局となっていますが、その医療法の中で決められた薬局ということであれば、これに該当していくということになります。
○大山座長 余り長く聞いてはいけないとは思いつつ、もう一個だけ今のことで確認ですけれども、自宅で調剤をする在宅の場合を考えると、そこにいる方が薬剤師の資格をお持ちか云々ということよりも、管理薬剤師の方の管理下にいるという証明をしなければならない。あるいはここで言う組織認証の大元の組織に属しているという証明をしなければならないと、そのままだと聞こえるのですが、それで正しいのですか。
○土屋構成員 基本的には、その薬局が出張していって、そこでやっているということを証明することが必要になります。
○大山座長 どこの会社に所属しているという属性の認証のものがほかにもあるんだけれども、それと同じようにやるとしても、今度は法定資格ではそれはないので、認証のルートが変わってしまうのではないかと思います。当該組織がやらなければいけないのではないか。
○土屋構成員 ただ、保険薬局に勤務する人は保険薬剤師の資格が必要であります。
○大山座長 どこに勤めているというのは必要ということですね。そうすると、これは民間の認証業者はやっと出番が出てくるかもしれないと喜ぶのではないか。属性は法定ではない。
○山本構成員 管理薬剤師さんの属性は法定ではないですけれども、今のHPKIには管理薬剤師が入っています。病院長と同じで、それはHPKIの仕組みの中で署名も認証もできるようになっていますので、これは少なくとも確認をするという意味では、あるいは両方を流通するという意味では、管理薬剤師さんの薬局は認証レベルの話で、署名をするのは薬剤師という資格で署名をするわけですから、その組み合わせで実現できるのだろうと思っています。
○大山座長 わかりました。これ以上突っ込むとHPKIオタクとか言われてしまうといけないので、今回はやめたいと思います。
 時間を取ってしまいましたが、皆さん方から何か御意見はございますでしょうか。
 これはこの後の取扱いは、皆さん方には理解いただいた方がいいのではないかと思います。ここで医療情報ネットワーク基盤検討会の4月で案となっていますが、ここで承認いただいて、この案を取るということを今お考えですね。やはりこれは我々の一定レベルの責任を持って出すことになりますので、このまますんなり通っても勿論いいのですが、本当によろしいでしょうか。
○冨山構成員 17ページのロードマップです。義務化が引っかかるわけで、現状としてはさまざまな課題があって、この報告書も出ています。今、医療のIT化が進んでいて、医療機関同士の情報のネットワークはかなり進む方向で行っているわけですが、全国民に対して電子化の部分を共有させるのをクリアーするには、まだまだ時間がかかります。これからいろいろな課題がクリアーして、環境整備が整って国民の合意が得られれば、処方箋の電子化は自然に進んでいく部分ですので、この段階でロードマップの中に原則義務化という言葉を入れるのはいかがなものかなと。自然に達成するのではないかということで、ここは時期尚早ではないかという気がしております。
○大山座長 ここはいかがですか。議論になったんですね。
○山本構成員 議論にはなりました。先ほど申し上げましたように、義務化の意味は、例えばHPKIの証明書の普及が移行期1の2つ目に書かれています。最初はある地域でそこにある種の事業みたいな形で進めていくとか、例えば新卒、新しく国家試験に合格された医師、薬剤師に、そのときにHPKIの証明書を配付するとかいうことで、証明書の普及率は上がっていくだろうと思いますけれども、最後の最後は現在やられている医師、薬剤師さんに取っていただかなくてはいけない。これは費用の問題は別として、取っていただかなくてはいけない。そうすると、能動的なアクションをどうしても起こしていただく必要がある。
 そういう意味では、いつまでにそういうことが終わることが目標であるという、このターゲット、X+Y+Zで二重運用をここで原則やめますということが必要になるわけです。したがって、そういう意味での右の2番目の線の移行期2は、もうデッドエンドが見えているので、このときにまだ対応されていない医師、薬剤師の方は対応をお願いしますということを言う時期であります。
 それが終わった時点で物凄く特殊の場合は残るかと思いますけれども、ほぼすべての処方箋が電子化されて、なおかつ処方箋の電子化だけではなくて、処方箋を電子化することによる利点を多くの国民が享受できているという状況をここで目指すということなので、義務化という言葉、アプリケーションという意味を強調したいわけではなくて、ステップとしてこれが要るだろう。
 つまり、X+Yのところに書いてある点線は、デッドエンドを通知するという意味です。X+Y+Zとか、これが処方箋の電子化全体のプロジェクトの一応の完成期であるということなので、実際にこれを義務にするのか、あるいはインセンティブにするのか、ディスインセンティブにするのか、いろいろな議論があろうかと思います。そういう意味で2本の線が引かれているというのが作業班の考えです。
 ですから、適切な言葉があれば、それはそれで検討をしたいと思います。例えば一番右端のX+Y+Z年のところをほぼすべての処方箋が電子化されている状態であって、これは移行期のところをほぼすべての処方箋が電子化される状態の目標の年を定めるということだとは思います。
○大山座長 いかがですか。
○土屋構成員 現実として、ここでの席では皆さんはそういうことを理解した上で、恐らくこういう言葉を使うという意味は十分理解をしておりますし、私もそれでいいのではないかと思います。ただ、これが一旦ここを離れますと、「医療情報ネットワーク基盤検討会は原則義務化を了承」とか、そういうタイトルが付いて、業界紙などで出る。そこは余分な誤解を今、山本先生がおっしゃったような話があって、移行期1の話が極めて重要だよというような話がぶっ飛んで、最後の五文字だけが一人歩きをしてしまうことが多々あるので、そこら辺についてはこの場で使うことについての危惧感は、内容を信じるとかいうことではなくて、意味はよく理解しますけれども、この言葉が一人歩きしてしまうと違ったことが出てくるのかなと。それは持たざるを得ないというのが現状です。
○大山座長 例えば移行完了とか書いてもということですね。最後の最後はインセンティブ、ディスインセンティブを含めて、最後に一押ししないと混在のままで、きっとそのときは効率がいいとか別の面が出ているとは思いますけれども、そうは言っても移行期2があるんだねと。ここだけは今までの例から見ても、100%移動していくというのは、必ずこういうところはあると思いますが、義務化という言葉には確かに反応する方がいらっしゃるのはわかるような気がします。
 ただ、ほかの構成員の皆様からも御意見があればと思いますけれども、いかがですか。この辺のセンシティビティの高い南構成員、どうですか。
○南構成員 お話を伺えれば、こういう言葉でいいかなと思いますが、確かに義務化という言葉が一人歩きする危惧は、要らない混乱を起こすかとも思われるので、今、座長がおっしゃった移行完了みたいな言い方で、移行完了するときには原則的に誰でもみんな使っているということでいいのかなとも思います。
 私も日本の欧米と違う調剤、処方箋の意味とか知らなかったので、今日聞かせていただいたのですが、最後の方で山本先生が、今後は処方箋のIT化ということだけに留まらず、全部がシステムとしていくように、そのためには患者が自己管理できるような仕組みとおっしゃられたのですが、これは具体的には処方箋をもらってきた患者さんが、それを自分で理解するとか、どういった意味合いなのかを教えていただきたいと思います。
○山本構成員 最初に香取政策統括官がおっしゃったように、社会保障に関わる情報を国民が容易に入手できて、それを管理できて、活用できる基盤をつくるというのが政府全体の大きなテーマになっている中の一部として、こういう調剤情報も非常に大きなパートとして考える必要があるし、そのことによって御本人が例えば引っ越したにしても、何にしても、かなり正確で継続的な医療を受けることができるということ。
 それは例えば本当にどうなるかは、まだ完全には見えていませんけれども、マイナンバー法案で検討されているマイポータルの話とか、そういったことを活用した上で、自分の調剤に関わる情報は10年前の情報も確実にチェックができるとか、そのことによって例えば診察券もなくなって、行っていたお医者さんも流されてしまったという状況でも、別のお医者さんに行ったときに、今まで飲んでいたお薬はこうですと。お薬の種類によっては必ずではないですけれども、普通プロの医師が見れば、飲んでいるお薬がわかれば、大体この人がどういう病気かがわかりますので、そのことによって少なくとも大きな問題のない継続的な医療を受けることができるとか、そういったことを実現する必要がある。これは別に調剤だけではないということで、この仕組みは電子処方箋のためだけではないと思いますけれども、そういったことが実現される必要があるということです。
○南構成員 大体はわかったのですが、その前に先立って、医師が処方箋を出しても日本の場合は、それは指示書ではないから、患者さんがその医師を信頼していなければ、それを調剤してもらわないという選択もあるというのはわかるのですが、本筋と違って申し訳ないのですが、今度は医師側から見ると、この患者さんが調剤してもらっていなかったということも勿論わかるわけですか。次にもし仮に来て、その医師を信頼していないから、薬は飲んでいなかったと。
○山本構成員 飲んでいたか、飲んでいなかったかがわかるのはもう一つ別の次元の問題ですけれども、少なくとも薬局に行かれて調剤をしてもらった。あるいは処方箋を出したけれども、4日経ってもどこの薬局にも行っていないということは、一応はわかります。
○南構成員 わかりました。今日は医師会の先生がいらっしゃらないのでわからないのですが、全部が医師にもオープンになり、患者にも自分の調剤の情報はわかる。情報がきちんと受け取れるべき人のところに来るということですね。
○大山座長 どうぞ。
○土屋構成員 やはり一番大事なことは、今は法的に処方箋を出す医療機関側は、どこの薬局に行くかはまず指定してはいけないよというのが法的にあるんです。ですから、フリーアクセスでどこに行ってもいいんだけれども、どこに行ったかどうかはわからないんです。今の紙の処方箋はどういうものかというと、交付したことは記録が医療機関にあるのですが、現行では、それがその先にどうなったかは、医療機関では全くわからないという珍しい書類なんです。しかも、その所在を知ることが医療機関側はできないことがあります。
 そういったことをまずキチんとするというのは、電子化によってメリットが出てくる。あるいは偽造で、電子化だから全くそれができないというわけではないですけれども、少なくとも簡単にコピーをして複数のところに持っていってもわからないとか、そういったことがあります。
 ですから、そういった情報がきちんと記録が取れるようにするということは、これは電子化のメリットとして、患者さんにとってメリット。ただ、医療というものが実はみんな性善説に立っていて、出した薬は飲まれているという前提に立って、次の処方が行われるわけです。そういう意味でいくと、こういう基盤が整備されてくると、飲んだか飲まなかったかという服薬情報がきちんと記録されると、次に本当に効いていないのか、飲んでいなくて効いていないのか。そういうことまでもわかるようになってきます。
 そのことは飲んだふりをしたい人にとっては、かえって不利かもわかりませんけれども、それは記録をしなければいいわけですが、コントロールをしてほしい、管理をしてほしいと思っている人にとって、今はその管理はなかなか難しいのに比べれば、電子化したことによって、そういうことができるようになるというのは、やはりあります。ですから、そこら辺が患者さんにとっては、今は恐らく処方箋をもらっても、それが情報開示だと思っている人はほとんどいなくて、自分は運び屋として薬局へ持っていくものだというように思っている人が多いと思いますが、患者さんのところに行くのは、約定と言われているものは調剤情報なんです。調剤情報と処方情報が合っているかどうかをチェックするというのは、今は実は処方箋は薬局に渡した途端に、もう自分のものでなくなってしまうものですから、そういった意味では確認のすべがないんです。ですから、コピーを取るとかしかない。
 でも、それが先ほどのお話で、自分に処方された情報が記録されていて、調剤された情報が記録され、患者さんが希望すれば、服薬する情報も記録するということなると、今度は薬の安全性、医薬品の安全性から見たときに、実は飲んだ薬の量が安全性、有害事象の発生とか、大きな意味で言えば薬害とかの防止という点から言っても、それは大きいです。
 そういった意味で、その基盤整備がキチんとされていくことは、結果として患者さんにはすごくメリットがあることではありますが、その前提となる基盤整備はなかなか難しいし、昔は書かれていたものと物は名前が一緒だったんです。ところが一般名処方が出てきた関係で、処方箋に書かれている名前と調剤された薬の名前は一致しない。内容的には一致しているんですけれども、そういったことが出てきていますので、そこら辺が今後、今までの機能に更にプラスして、そういうことをちゃんと確認できるような仕組みが必要になってきたということです。
○大山座長 どうぞ。
○冨山構成員 報告書の9ページの3-2の上のところに、「費用を含めた効率化を目指すべき電子化に、効率化による効果を遥かに上回るコストを投入することとなっては本末転倒である」という言葉があります。それに関してですけれども、処方箋を電子化するに当たりまして、紙の処方箋のメリットはかなりあるわけです。すぐに見てわかる、患者さんにとっても便利な部分があります。単純にペーパーレスということだけを考えると、決してコストが安くなるとは考えられない部分があります。ただし、医療全体のシステムとして電子化する中の一つとしての処方箋という位置づけで考えれば、このIT化によって全体の医療の質が向上するということで考えても十分なメリットがあると考えています。
 ただし、この処方箋を電子化するに当たって、先ほどの御説明でも、例えば二次元バーコードを使うとか、ICカードを使うという話がございました。どこでもMY病院構想の場合は、そこに携帯電話を使うとか、いろいろなデバイスの選択肢があります。ただ、このデバイスでいろいろなシステムがたくさん増えてしまいますと、余計コストがかかる。ICカードを無くせば再交付がかかる。共通番号制やおくすり手帳も含めまして、デバイスの問題は非常に重要だと思います。コストの部分も利便性も考えて、そこの部分は統一する形を是非考えていただきたいと思っております。
○山本構成員 義務化の話ですけれども、確かにこのまま出ていくと多少物議を醸す可能性はゼロではないという御意見がございますので、この原則義務化と書いたところを移行完了として、義務化予告と書いてあるところを移行完了時期の決定としてもよろしゅうございますか。
○大山座長 皆さん、いかがですか。下にせっかく※があるから、その※のところに、移行期2には努力義務等を含むと書いてしまうとまずいですか。さっきの話は、努力義務だったらいいような気がするんです。
○山本構成員 移行期1の検討の方がボリュームがありますので、それは今後の検討でいいのではないでしょうか。
○大山座長 この義務化に相当思いがあるのかなと思ったので、今、申し上げたのですが、もし作業班の方でも班長がそう言っていただけて、皆さん方が御了解をいただけるのであれば、そのような形にさせていただきたいと思いますが、よろしいですか。
 では、その件はそのように修正いたします。
○山本構成員 このドキュメントをその変更でお認めいただいての話ですけれども、移行準備期間とか移行期において、医療情報ネットワーク基盤検討会として検討すべきテーマがたくさんございますので、もしよろしければ、引き続き作業班に指示をいただければ、検討を続けていきたいと思っています。
○大山座長 時期的に今がいいかどうかは別の話がありますが、先ほどお話をいただいた、いろいろなデバイスにしろ、メディアをどう使うかにしても、統一的な話は全くそのとおりだと思います。ここは技術的な面等で作業班の方でやっていただくのは勿論、私としてはいいことだと思いますけれども、全体の調整は厚生労働省を超える話にもなるかと思うので、そこは事務局側で政府全体の流れの中で、どういうふうに位置づけるかをお考えいただければと。そのためにも作業班の方に技術的なことを含めて、作業の指示が下りるということになると思いますが、その辺については皆さん方、いかがですか。
 第26回ですけれども、第27回がいつになるかということを私も伺っていないのですが、26回で終わることではなさそうということは、今の状況だとはっきりするかと思います。時期等については作業の進行状況もあるでしょうから、そういうことで進みたいと思います。
 先ほど来、申し上げております「処方箋の電子化に向けて」の図1について一部修正が入りましたが、そのほかについてはよろしいですか。
○土屋構成員 1つは文章を直す必要はないと思いますが、15ページの上から3つ目のパラグラフで、「一般名による記載を考慮したコードセットの開発が望まれる」とありますが、現在のHOTコードは8けた目と9けた目を00にすると、すべて一般名になるように、もう既にできておりますが、そこのところは実は標準コードとは違うので、別にしてあるんです。今回のような一般名処方については、標準コードは既に対応済みということでございまして、恐らくこれから先は一般名を書いて、今は一般名と剤型とその他の記載をしておりますが、そうではなくてということになると、それをまとめるという意味でのあれが必要なので、この文章を変えることはないかと思いますが、一応標準コードは既にもう5年以上前から一般名に対応するような仕組みは持っているということを補足させていただきます。
 それから、13ページの上から2つ目「なお、おくすり手帳の電子化に関して」で、社団法人日本薬剤師会は今回、公益社団法人日本薬剤師会となりました。公の文書でございますので、そこのところは御訂正をいただきたいと思います。
○山本構成員 ATS001の一般名に対応したコードであるということはそのとおりですので、開発というのは問題があるかと思いますけれども、要するに運用上の整備ですね。もう一つは、ボキャブラリーとしての一般名の整備は要るのではないかと思いますので、そこは一般名による記載を考慮したというところを一般名表記及び一般名による記載を考慮したコードセットの整備を望まれるという形に変更することでよろしいでしょうか。
○土屋構成員 結構です。
○大山座長 今の修正で大丈夫ですね。土屋先生の言われた15ページの文章が変わりますが、これでいいですか。勿論、議事録にも御発言が残りますが、変えなくてもというお話が最初にあったので、そこについては変えるという形でよろしいですか。
○土屋構成員 それで結構でございます。
○大山座長 ありがとうございます。
 三谷構成員、どうぞ。
○三谷構成員 13ページ「iv)電子化した処方箋の閲覧環境の整備」で、患者国民が自分の情報にアクセスできるところを踏まえた記述だと思いますが、「患者等が容易にアクセス可能な場所に、電子化した処方箋を閲覧できる環境を整備する」というのは、患者がインターネット等を使って自宅からとか、あるいは端末を設置した公的施設等で情報を閲覧できるということかと思いますが、もう少しわかりやすい表現があればと思います。
○大山座長 何か例示を加えろということですね。
○三谷構成員 具体的な場所。
○山本構成員 必ずしもインターネットを使って自宅で閲覧することを想定しているわけではなくて、例えば病院の外来でそれを容易に見ることができるとか、あるいはそれこそ病院と薬局以外でも、例えば役所であるとか、そういったところでもこういう情報にアクセスできるということを想定していますし、あるいはそうではなくて、ひょっとすると紙かもしれないということもあり得ると思います。こういった環境が本当に整備されるというのは、相当時間のかかる話になります。例えば移行期の間にしてもそうですが、そのお薬の内容をメモとして患者さんにお渡しするというのもあり得る話ですので、そういったことを含めて、ここは検討するということですので、これ以上具体的に書くと、それに限定されてしまいそうな気がして、このような表現になっているということです。
○大山座長 いかがですか。
○三谷構成員 この辺は、国民が自分の情報にアクセスできるというところと関連する部分だと思いますので、そこのところの例示を何か記された方がいいのではないかと思ったのですが、これで十分だというのであれば、結構です。
○大山座長 わかりました。そこは山本班長を含めて、例示を加えるとすれば、可能性は何かを対応させていただきたいと思います。
 ほかにいかがですか。
○河原構成員 18ページの(2)高病原性インフルエンザの3行目の「地域感染期」というのが、一般の人がわかりにくいのではないかと思います。その次のパラグラフが医療体制の説明だと思いますけれども。
○山本構成員 これはもともとの意見書に書いてある言葉なので、それを変更するのはちょっと。
○大山座長 できるとすると、解説のような形でいいですか。
○河原構成員 用語としてあるのだったら、それで結構です。
 それから、18ページの下の方の最後の段落「このような致死性の高い伝染病」は「感染症」に変えて、もう一点は10ページの?の2行目「したがって、生活習慣病や悪性疾患」、この悪性疾患というのは、いわゆる三大死因という意味でいいですか。「生活習慣病など」でもいいのかなと思ったんですけれども、悪性疾患がイメージとしては、がんとかわかるのですが、用語としてはどうかと思いました。
○大山座長 では、ここは「生活習慣など」で「悪性疾患」を取るということでよろしいですね。
 ほかはいかがでしょうか。こういうのは皆さんからまだ出てきますか。事務局側はどうですか。いつまでに後ろを切りたいとかは勿論あるとは思いますけれども、明日からゴールデンウィークですしね。
○西村情報政策担当参事官 ここで細かい字句まで最終的に決まらなくてもいいのですが、ここはこういうふうに直すということを御了解いただいて、座長に御一任いただくところまでお願いしたいと思います。そうでないと終わりませんので。
○大山座長 それはわかるのですが、今日この時間で、もっと時間をよこせという人がいなければいいんですけれども、大丈夫ですか。ほかに気づいたところがおありでしたら、御指摘をいただきたいと思いますが、皆さんよろしいですか。
 それでは、録音を含めて、議事録で起こすことが十分にできるようになっていると思いますので、私も今、幾つ修正があるかを読み上げることはできないのですが、事務局側との間で適切な修正を山本班長の協力を得て、最終的にはやらせていただきたいと思います。
 そういう形で「処方箋の電子化に向けて(案)」でありますが、この(案)を最終版では取らせていただくということについて、御了承はいただけるかどうかをお諮りいたします。いかがでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○大山座長 それでは、4月と書いてあるから今月中なので、何とかさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 山本先生、申し訳ありませんが、最終的な調整のところにお力添えをお願いします。
○山本構成員 引き続き、いろいろな課題について検討するということもよろしゅうございますか。
○大山座長 そこもお諮りいたしますが、引き続き、作業班で必要な検討を進めていただくことになりますが、御了承いただけますでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○大山座長 ありがとうございます。そのようにさせていただきます。
 では、山本先生、よろしくお願いいたします。
 それでは、以上で終わりになりますが、その他として、何か事務局からありますか。
○西村情報政策担当参事官 本日はこの「処方箋の電子化に向けて」ということでまとめていただきまして、本当にありがとうございました。先生方には平成20年のペーパーを今回ベースにして直していただく作業をしていただいたわけでございますが、特に作業班の先生方には大変何度も会合をいただきまして、本当にありがとうございました。
 今回、タイトルも「電子化に向けて」ということで、大変前向きな報告書にしていただいたと思います。また、ロードマップの絵も付けていただきましたので、移行完了に向けて前向きに行くということがはっきりと出たのではないかと思います。
 しかし、かなり難しい条件をはっきり整理していただいたということも一方でございますので、これについては今ほど座長からもございましたように、引き続き検討をしていかなければいけない課題がいっぱいあるということだろうと思います。特にこの結論のところにございますように、国の積極的関与が必要であるということが幾つも書いてございます。これについては、私どもとしてもしっかり受け止めさせていただきたいと思います。制度を変えなければいけない部分もありますので、これについては技術的なものと並行して、私どもの担当各部局においても検討を進めなければいけない問題だと思います。
 特に単に処方箋の電子化だけではなくて、医療情報全体のIT化の推進というものが背景にあって、例えば公開鍵基盤とか、単にこの処方箋の電子化にとどまらない医療の情報化が進まなければいけないという部分もありますので、こういった部分についても関係のところと努力をしていかなければいけないと思います。また、特に現場で実際に進めていくとなると、実施していかなければいけない関係者の方々の御理解も得る努力をしていかなければいけないと考えます。
 今回実現に向けてということで前向きになりましたので、後は一番の課題は時間軸ということだろうと思います。このロードマップにはX、Y、Zとしか書いてありませんので、この時間軸をどうしていくかという検討が今後、最大の課題になろうかと思います。前に向けて、引き続き、この検討会でも作業班でも検討いただけるということでございますので、実際に会議を作業班なり検討会なりで開くのは、どういうタイミングになるかは、ほかのいろいろなところの検討とも整合性を取っていかなければいけないと思いますので、また御相談をさせていただきたいと思いますが、引き続き、先生方には御協力をいただきたいと思います。
 まずはこの報告書をまとめていただいたことのお礼と、政府として受け止めさせていただくということを申し上げさせていただきます。ありがとうございました。
○大山座長 ありがとうございました。
 結構記念日になるかもしれませんね。一歩前進するという表明をいただいたということだと思います。
 ほかに構成員の皆さん方から何かございますか。事務局側からはもうよろしいですか。次回以降の話は改めて調整ということだと思いますが、その時期が来てからだと思いますが、よろしいですね。
 それでは、これで第26回「医療情報ネットワーク基盤検討会」を終了いたします。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官付情報政策担当参事官室
情報政策係長 米村(内線7703)
主査        菊地(内線7419)

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