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2013年2月7日 第10回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会 議事録
医政局総務課医療安全推進室
○日時
平成25年2月7日(木)
○場所
厚生労働省専用第22会議室(18階)
○出席者
会議メンバー(五十音順)
鮎澤純子 (九州大学大学院医学研究院医療経営・管理学講座准教授) |
有賀徹 (昭和大学病院病院長) |
飯田修平 (練馬総合病院病院長) |
岩井宜子 (専修大学法科大学院名誉教授) |
加藤良夫 (栄法律事務所弁護士) |
高杉敬久 (日本医師会常任理事) |
豊田郁子 (新葛飾病院セーフティーマネージャー) |
中澤堅次 (秋田労災病院第二内科部長) |
樋口範雄 (東京大学大学院法学政治学研究科教授) |
本田麻由美 (読売新聞社会保障部記者) |
松月みどり (日本看護協会常任理事) |
山口育子 (NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長) |
山口徹 (国家公務員共済組合連合会虎の門病院病院長) |
山本和彦 (一橋大学大学院法学研究科教授) |
オブザーバー
内閣府 |
消費者庁 |
警察庁 |
文部科学省 |
一般社団法人日本医療安全調査機構 |
厚生労働省
原徳壽 (医政局長) |
神田裕二 (大臣官房審議官) |
吉岡てつを (医政局総務課長) |
田原克志 (医政局医事課長) |
宮本哲也 (医政局総務課医療安全推進室長) |
川嵜貴之 (医政局総務課医療安全推進室長補佐) |
○配布資料
資料1 | 第9回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会議事録 |
資料2 | 「診療に関連した予期しない有害事象(死亡・重大事故)の調査のあり方」 (四病院団体協議会提出資料) |
資料3 | 「診療行為に関連した死亡の調査分析事業のあり方」(一般社団法人日本医療安全調査機構提出資料) |
資料4 | 「全国医学部長病院長会議 大学病院における医療事故対策委員会より」(全国医学部長病院長会議提出資料) |
資料5 | 医療事故死調査の仕組み(案)(中澤構成員提出資料) |
資料6 | 再発防止のあり方について(その2) |
参考資料1 | 再発防止のあり方について(その2) |
参考資料2 | 今後の検討方針について |
○議事
○川嵜室長補佐
定刻になりましたので、ただいまから第10回「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」を開催いたします。
本日は、御多用の中、当検討部会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、里見構成員より御欠席との御連絡を、宮澤構成員、豊田構成員より少し遅れる旨の御連絡をいただいております。
また、12月27日付で、厚生労働大臣政務官に交代がありましたので、御紹介させていただきます。とかしきなおみ厚生労働大臣政務官です。
○とかしき政務官
よろしくお願いいたします。
○川嵜室長補佐
それでは、以降の進行につきましては、山本座長にお願いいたします。
座長、よろしくお願いいたします。
○山本座長
皆様こんにちは。本日も御多用のところお集まりをいただきまして、まことにありがとうございます。本日もどうかよろしくお願いいたします。
それでは、議論に先立ちまして、とかしき大臣政務官より御挨拶をお願いしたいと思います。
とかしき政務官、よろしくお願いします。
○とかしき政務官
このたび厚生労働大臣政務官を拝命いたしましたとかしきなおみでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
皆様におかれましては、御多用の中、検討会に御参加いただきまして、心からお礼を申し上げます。ありがとうございます。
当検討部会におきましては、安全で質の高い医療の提供を目指して、医療事故の研究解明と再発防止を図る仕組みのあり方について御活発に議論いただいております。
実は、私もついこの間まで薬剤師として医療現場で働いておりまして、その医療事故の未然の防止ですとか、再発防止、現場でいろいろ私自身も体験しておりました。その大切さも身をもって思いましたし、さらに、万が一医療事故が起こった場合、国民の皆様に納得いただける調査の仕組みを構築するということがいかに大切であるかということも、現場を歩いていて、実際に声をいただくことも何度もありました、
これまで9回にわたりまして御審議いただきまして、いろいろ活発に御議論いただいたということの報告を受けております。
一通り御議論いただいた後、大きく意見が分かれている点も多々あるというふうに伺っております。
こうした中で、きょうは各団体における本件に関する議論も活発化していると聞いておりますので、今後、さらなる議論につなげていただけるために、きょうは四病院団体協議会、日本医療安全調査機構、全国医学部長病院長会議における医療事故に関する御議論の状況等について、いろいろお話を伺っていきたいと思っております。
構成員の皆様には、引き続き活発に御議論いただきまして、この議論の結果が国民の皆様に役立つ内容になることをお願い申し上げまして、簡単ではございますが御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
○山本座長
ありがとうございました。とかしき政務官におかれては、御公務のため、ここで御退席をされるということです。
○とかしき政務官
ちゃんと拝見しますので。大変申しわけありません。よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
○山本座長
それでは、事務局のほうから資料の御確認をお願いいたします。
○川嵜室長補佐
それでは、お手元の資料の確認をお願いいたします。
まず、「座席表」及び「議事次第」、配付資料といたしまして、資料1、前回の議事録でございます。
資料2「診療に関連した予期しない有害事象(死亡・重大事故)の調査のあり方」(四病院団体協議会提出資料)、これが表紙を入れ3枚です。
資料3、日本医療安全調査機構提出資料「診療行為に関連した死亡の調査分析事業のあり方」、これはクリップどめしてございますけれども、15ページまでの資料と、別冊としまして報告書が11ページまでです。
資料4「全国医学部長病院長会議提出資料」、これは両面で10ページまでです。
資料5「中澤構成員提出資料」、これが表紙を入れて6枚となってございます。
資料6「再発防止のあり方について(その2)」、両面で1枚です。
参考資料1「前回(第9回)までの議論について」、37ページまでございます。
参考資料2「今後の検討方針について」、これが1枚です。
このほか、第1回から第9回の資料について、青色の参考資料ファイルを用意いたしております。
以上でございます。
乱丁、落丁等ございます場合には、事務局までお申しつけください。
○山本座長
ありがとうございました。皆様、資料はおそろいでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、本日の議題に入っていきたいと思いますけれども、最初に参考資料2にありました「今後の検討方針」ということで、最初におまとめをいただいた議論、検討事項については、前回までで一通り御議論をいただいたところであります。
前回の最後にも申し上げましたように、今後は、その中で意見が必ずしも一致していない部分について、さらに深掘りした形で御議論をお願いするということになろうかと思います。
そのような中で、関係団体等におかれましても、医療事故の調査の仕組みに関する議論というのはかなり活発になされているというふうに伺いました。それで、いろいろな提言もされているということでございます。
そこで、本日は、いわば深掘りの第二読会に入る前の段階として、先ほどとかしき政務官のお話にもありましたように、我々がこれから議論を進めていく参考としまして、その提言等を出されている関係団体等からヒアリングをして、御意見をお伺いしたいというふうに考えた次第であります。
それで、中澤先生を入れて四団体からのお話を伺いたいということでありまして、まず最初は、四病院団体協議会の提言についてということで、その協議会の医療安全対策委員会の委員でもあられる飯田構成員のほうから御説明をお願いしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○飯田構成員
それでは、資料2です。四病院団体協議会委員構成は一番後ろの3ページに書いてございますので、省略させていただきます。
それでは、短いので一応全部読ませていただきます。
タイトルは、「診療行為に関連した予期しない有害事象(死亡・重大事故)の調査のあり方」です。
本年1月に四病院団体協議会の医療安全対策委員会でこれが決まりまして、上部でもこれを承認いただいております。
1.目的
(1)診療に関連した予期しない有害事象(死亡ないしは重大事故)の調査機関設立の目的は、診療に関連した予期しない有害事象の要因分析と再発防止、それによる医療の質と安全の向上、および医療の透明性・公明性・信頼性の確保である。
(2)医療の不確実性の中で、医療側が自律的に再発防止のための原因分析に専念するために、医療外紛争処理や補償制度はこの制度とは別枠で検討するべきである。
(3)医療は現在、個人によってなされるものから多職種の連携の上に成り立っている以上、診療に関連した予期しない有害事象の調査は、医療従事者個人の責任追及の結果をもたらすものであってはならない。
(4)医療安全システムのWHOガイドラインに基づき、原因究明のために、院内事故調査委員会が収集・作成した資料及び報告書は、当事者に不利となる使われ方をすべきではない。
2.定義
ここで「診療に関連した予期しない有害事象(死亡ないしは重大事故)」とは、疾病の自然経過や診療行為に関連し、予期しないものをいう。
3.医療機関における医療安全確保及び診療に関連した予期しない有害事象への対応
(1)病院、または診療所の管理者は、医療の安全を確保するための医療安全委員会を常設し、医療の安全を確保するための措置を講じる。
(2)当該医療機関は、診療に関連した予期しない有害事象が発生したときに、患者・患者家族の意志とは別に独立して、院内事故調査委員会を設け、原因を究明する調査を行う(必要に応じて、解剖やAiを実施)。
(3)院内事故調査委員会の設置にあたり、医師会、病院団体や大学等に支援を依頼することができる。
(4)調査報告書に基づき、病院は患者、患者家族への説明を適宜行う。
(5)病院が重要と判断した有害事象発生時には、地方に設置する院外事故調査検証委員会(チーム)へ、患者や患者家族の意志とは関係なく報告する。
(6)院外事故調査検証委員会(チーム)は、第三者を旨とする。各地方で、医師会、病院団体、大学病院等の医療専門職(事故に関係する専門領域の医療関係者を含む)で構成し、院内事故調査委員会の資料を分析・評価する。
(7)院外調査報告書の結果の患者・患者家族への説明は、病院が適宜行う。
(8)院外事故調査検証委員会は、匿名化した上で中央に設けられた中央事故調査機関に報告し、医療関係者以外の意見も加えて、原因究明のための事例収集とともに再発防止に重点を置いた中立性の高い報告書を作成し、広く注意を喚起する。この調査機関として、日本医療機能評価機構等を発展的に活用する。
4.医師法第21条
医師法第21条は、その立法の精神に戻り、拡大解釈しないものとする。
以上です。
つけ加えますと、四病院団体協議会は第2回検討会でも、全日本病院協会の案、図もお示ししておりますが、各団体で微妙に多少ニュアンスが違ったので、やはりこの会でも申し上げましたが、医療界がまとまって、きちんと提言しようという趣旨に基づいて、四病院団体でいろいろ議論し、これだったら合意できるだろうということで、合意を見たものでございます。
それから、WHOのガイドラインに関しては、先ほど申し上げた第2回検討会で私が報告しておりまして、第2回の全日本病院協会の資料の6ページにございますので、内容に関しては割愛させていただきます。
以上でございます。
○山本座長
ありがとうございました。
いろいろと御質問等おありかと思いますけれども、一応四団体の皆さんのお話を全て伺ってから最後にまとめて御質問の時間をとりたいと思います。
それでは、引き続きまして、日本医療安全調査機構の企画部会において、機構が実施する診療行為に関連した死亡の調査・分析事業の今後のあり方について議論がなされ、取りまとめがされたというふうに伺っておりますので、その点について御紹介いただきたいと思います。
日本医療安全調査機構の理事であり、企画部会の副座長でもある樋口構成員から御説明をお願いしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
○樋口構成員
それでは、私に与えられた時間は大体10分程度という話になっていますので、ごく簡単に御説明したいと思いますが、資料としては「参考」というところで、日本医療安全調査機構企画部会、理事会が去年の12月付でまとめた文書があります。これで全部完成しているわけでもなくて、第一歩ということなのですけれども、そのポイントを私のほうで説明するということにしますので、ぜひとも後で、そちらの文書のほうを読んでいただければありがたいと思います。
その参考資料にも出ているのが、こういう図で何か新しい仕組みをつくったらどうかということなのですが、これを一つ一つ説明していこうということになります。
しかし、本当に骨のところだけを説明させていただきたいと思いますが、まず初めに言わないといけないことは、日本医療安全調査機構というのが今回提言しているのは何なのかというと、簡単に言うと、医療事故に関する第三者機関をつくろう、あるいは自分たちが中心になってやれるではないかという話をまとめたということなのです。もちろんまとまって、すでに案がすべて完成したからこれで我々に任せてくださいというレベルではないのです。
これからいろいろな相談があると思いますけれども、その土台というか、一番基礎的なところの考え方をまとめてみたということです。そのときに、医療事故について、これは言うまでもないことですけれども、全柔連であれ、教育の世界であれ、例えば教育の関係だと、私は、今、大学の教員をやっていますが、大学にも第三者評価機構というものが入ってきまして、私がつけた答案の採点の仕方まで見るのですね。そういうのが常態化している。私自身はどうかなと思ったりすることもありますが、そういう形で教育のところもやり、もちろん原発であれ、何であれ、第三者評価を拒んでという話はもうどの世界にもない。第三者評価を拒むには、拒むなりの理由が必要で、それが医療界だけあるのかというと、それはきっとないだろうと思うのです。
それから、日本医療安全調査機構というのも、まさに第三者機関として自分たちがその任を担う、中核になろうという気概を見せようというような報告書だというふうに考えていただければいいと思います。
それで、かつて厚労省が検討会をつくって、私も実は委員をやらせていただいたのですが、いわゆる大綱案という形で第三者機関をつくろうという話がありました。それが頓挫したわけです。そのときと今回の日本医療安全調査機構の企画案、これはこれから幾らでも細部については検討の余地があって、最後に課題はいっぱい残っているということを申し上げましたけれども、そのときと随分状況が違っているということだけは申し上げたいのです。
それは私の考えによると3点あるのですけれども、第1は医療界のまとまりで、あのときも大綱案がついえたのは、1つには、医療界の一部だと私は思っていますが、相当部分かもしれない、やはりいろいろな異論が医療界の中自体にあってということなのですが、今度はそれを上回るようないろいろなところから一応賛同を得ているという話です。
医療事故の検証に対して、こういう形で検証をしてきたのがこれで8年になります。このような経験自体が重要であるというのを強調しなければなりません。そこから始めて一応経験がありますから、経験を積んだ医療者が中心になって、日本と限らなくていいのですが、真の医療安全学あるいは事故への対策、事故の減少につなげるような話をしたいということであります。そのために、第三者機関というのは必須であろうということなのです。
この第三者機関というのは、今回の企画書では、医療事故の原因究明と再発防止を目的とし、その活動は、日本において医療事故が一体どうなっているのかということをまず知るということですね。
それぞれについて、綿密なといっても限界があるのかもしれませんが、相当詳細な専門家が入った調査をして、報告書を明らかにするということです。
それは、従来、警察が介入して刑事司法が入ってもやはり解明できないようなものを専門家が解明するということにしたいということであります。
大綱案との違いで言うと、日本医療安全調査機構というのは、民間団体、社団法人でありますから、ある意味で当たり前のことなのですけれども、刑事司法や行政処分の話を日本医療安全調査機構でできるわけがないのです。自分たちから行政処分できるわけはないのですし、刑罰を与えるわけでもないですから、そういうものではなくて、医療者がやれることはこれだと、そういうことをはっきりさせる。それは原因究明と再発防止です。
医療というのは、最近の考え方では、病院で亡くなる方がどうして亡くなったのか、問題があれば、死因を究明して説明をするところまでが医療だということなのですから、何か問題があれば、再発防止策を考えるのも医療。だから原因究明と再発防止を医療者が中心になって行うのは当たり前で、そのための機構をつくろう。院内事故調、協働型との関係が大綱案では不十分だったので、その段階では協働型というのはなかったのですが、それも工夫して、今まで以上に時の調査体系を明らかにしました。もう1度いうと、医療界のまとまり具合がはるかに大きくなった、第三者機関としては医療事故の原因究明と再発防止に特化して目的を設定する、そして、院内調査や協働型も取り入れて調査体制を構築するというのが大綱案時代との3つの違いです。
医学界・医療界のまとまりなのですけれども、これは数を数えていただいてもわかります。このスライドが示すのは学会関係です。こういうところ、本当にたくさんの医学会が機構の社員になっていただきました。これは高久先生を初めとして、事務局その他ですが、本当にいろいろな医療の方が、あるいは医療というのはこの場合、医者だけではないのです。看護の方であれ、薬剤師の方であれ、いろいろな方が入ってくださって、とにかくやはり医療事故は我々の問題だというふうに思ってくださったからだと思うのです。
これは団体のほうです。病院団体であれ、薬剤師会であれ、看護協会であれ、理学療法士であれ、病院の会の方も入っていただいている。
医学会がまだ細かくいろいろあって、こんなにたくさんあって、私も数が数えられませんが、まだ本当にこぞってというのではなくて、もちろんこれで全部ではないのですが、すでに圧倒的多数の医療者が賛成してくださっているのではないかなと私は思っております。
それで、今、言ったことの繰り返しになりますが、まさに医療専門家責任を果たすことだという考え方です。第三者機関も、医療者の責任で自主的に運営してみようではないかという話です。
今の調査機構は、年間で1億8,000万円ぐらいの予算でやらせていただいているのですが、そのうち1億2,000万円ぐらいは国庫の予算、つまり税金でお願いしているのですが、6,000万円は医療団体のほうがみずからもちろん拠出してやっているというので、つまり名前だけ出しているのだよという話でもないということであります。
私はこちらのほうが近いのですが、同じ専門職である弁護士と同様に自律的に責任を果たすという体制をつくれたらつくったらいいのではないかということです。
次の刑事司法とか行政処分の話は本当に難題で、しかも日本医療安全調査機構でこういうふうにすればいいという提言はできるかもしれませんけれども、決定することができるわけもないようなものであって、むしろ日本医療安全調査機構は、医療者の願い、そこは患者の願いと一緒だと思っているので、医療事故の減少に関しては我々が責任を負う。そのことと刑事司法とか行政処分は一応全然別の話、我々の関知するのはむしろ医療の問題だというふうに徹底しようということです。
それで、あえて言えば、これは私の意見も入っているのですが、「医療事故に刑事司法的対応は無意味」と書いてしまったのですが、ほとんど意味がないというふうに少し弱めて言ってもいいというふうに考えております。刑事司法がどれだけがんばっても、医療事故の減少にはつながらないということです。
第3点目の、院内事故調、協働型との関係では、旧大綱案でも別に院内事故調を否定していたわけではないですが、そことの関係がやはり十分には明らかではなかったという批判はあるわけです。
そこで今回は、院内事故調のあり方も、日本医療安全調査機構から第三者委員を積極的に派遣して、院内事故調をやっていただく協働型のようなものも含めて、一応リーダーシップはこの第三者機関にとらせていただきたいということです。院内事故調のあり方について疑問視する向きもあります。それはいろいろな形があるからだと思うのですけれども、こういうふうにやったら院内事故調だって信頼されるし、そういうやり方として、今までは成功例はこうなっていますよというようなことまで指導と言うとおこがましいのですが、こういうモデルがありますということを言えるような形にしていくという意味なのです。
しかし、実際に医療事故があった場合には、全部をこういう第三者機関でやることは到底誰も、どこでもできないわけで、普通の事故で、普通の事故というのはないのかもしれませんが、普通の医療で原因が究明できない場合は、まず院内で調査をするというのが当たり前だということは当然だと考えています。
そのあり方について何らかの提言ができれば、それはそれで第三者性が入ってくるということは、その助言を受けるだけでもいいのではないかという話なのです。
これはどういうことかというと、私も医療事故についてだけ特別に何だかという話ではなくて、むしろ第三者機関はどこでもあるものだからというのが初めに申し上げたことなのですが、同時に、医療事故の場合を例えばエレベーター事故と比較するのは乱暴な話だと思うのですけれども、ちょっと違うのではないかということに留意しつつ、それでも第三者性は必要だということであります。まずエレベータ事故と医療事故とでは、2つ少なくとも大きな違いがあって、1つは医療事故のほうがもっと多いということです。
いろいろな調査があります。アメリカにも調査があるし、日本でも調査がありますが、例えば、死亡した例の5%という話が出ている。例えば5%、100回に5回エレベーターが事故を起こしたら大変なことです。残念だけれども、医療事故というのは実はもっと数は多いのです。でも、それはある意味で必然的なものであって、エレベーター事故というのは、やはり「あってはならない」というふうにすぐ言えるのですけれども、医療ではやはり死を賭して手術をするのです。ですから、それで失敗したからといって、つまり結果が悪いからといって、必ず過失があるという話は絶対にあり得ないわけです。
だから、どこからどこまでが事故、あるいは過失のある事故なのかが非常にあいまいで、それは結局専門家でないとわからない。そのときの医療水準でないとわからないような話だということなのだと思うのです。
そうだとすると、専門家を中心とした第三者機関というのがどうしても必要で、それは医療者のためにもなるし、患者のためにもなる、あるいは日本全体の医療のためにもなるというようなものではないかと思っているのです。
こういうことで、それで一体どうやって再教育をするのかとか、失敗を生み出したシステムの再構築化を図るかというのは、本当に大きな課題になると思います。
企画書ではまだ課題もたくさん残っています。そのスライドにも明らかにしているところです。ほかにも細かなことで言うといっぱいあるのです。遺族へのメディエーションというのも、実は調整看護師の方が努力されてやってきたのです。そういうのを今度はどうするのだという話もあるし、医療者が実際に何か失敗をしたとして、それを再教育してもう一回医療の現場に戻ってもらうためにはどうしたらいいのだろうかとか、行政機関・行政処分との関係、刑事司法との関係というのは、本当に難問で、これは安全調査機構だけで決められるものではなくて、ここで集まっておられる先生方や、そのほかの方々とやはり今後詰めていくものであると思います。ただ、日本医療安全調査機構としては、その前のモデル事業を入れて今まで8年の経験があるので、このぐらいのことはできますよということはこの中で少し覚悟を明らかにしており、きょうの資料にはないのですけれども、予算的、人的にもこのぐらいあれば、全国で今10カ所しかやっていないけれども、全国展開というのも何とかできるのではないかと考えています。一つのモデルでは、予算としては5億円ぐらいかかるかもしれない。それからもう一つ、もう少し件数を多くしても8億円ぐらいの話で何とか初めはやってみることができるのではないかというようなことを考えて一応出しているのですけれども、予算とか人的資源のフィージビリティをずっと維持していく必要がありますから、そういう大きな問題が本当に残っていて、これからも知恵をかしていただきたいと思っておるところであります。
今後の道筋としては、日本医療安全調査機構は、この案は本当の骨だけですので、骨のあり方自体も含めてですが、肉をつけていかないといけない。3つの方向での推進体制を構築、推進していくために、つまり自分たちがちゃんとした機関であるということを認められるためにということだと思いますが、年度を超えて4月以降だと思いますが推進委員会を発足させて、医師・他の医療者ともっともっと話をしないといけない。
もちろん、それと同様に患者との連携強化、これは両方のためですから。
それから、こういうことをやっているということをもっと社会やメディアの方にも知っていただくという必要もあって、もちろん厚労省とも連携をとるのは当たり前のことで、新たなシステムの構築を目指したいというようなことを考えております。
済みません。時間が超過したと思いますが、恐縮でした。ありがとうございました。
○山本座長
ありがとうございました。
それでは、引き続きまして、全国医学部長病院長会議の検討状況等につきまして、全国医学部長病院長会議の理事であり、大学病院の医療事故対策委員会の委員長であられる有賀構成員にお願いいたします。
○有賀構成員
では、資料4ということで行きたいと思います。
資料4の最後のページまで10ページです。1枚1分ということで。
「大学病院における医療事故対策委員会」は、私が今、委員長ですが、前は慈恵医科大学の病院長の森山先生、その前は山形大学の嘉山先生でした。きょうお話しするのは、僕ら大学病院で話している考え方、きょうのようなテーマを考える基本的な背景と、今、お話がありました全国医学部長病院長会議も日本医療安全調査機構に参加しましたが、参加した後の議論がありますので、その議論。究極的には、WHOのガイドラインから見ると日本医療安全調査機構の仕事も今後の発展のためには少し整理していかなければならないだろうねというふうなことでございます。
そうは言いながら、極めてその骨格的な素案というか、こういう道筋で物事を整理するのがいいのではないかというようなことがありますので、その件について、前回の委員会で議論したことを踏まえて、ここで発表したいと思います。
背景その1はこれです。病院医療は、基本的には組織的なもので、チーム医療そのものです。チームとチームはタイトな関係にありますし、全体としては複雑系である。したがって、医療事故はシステム不全だという話になります。これは飯田先生がおっしゃったことと同じです。
これは昭和大学の、前もここで述べたことがありますが、医療は本質的に不確実である。したがって最悪の事態もあると。確実ではないということがあるということですから、このことを理解しないと物事はうまくいかない。エレベーターの事故のことをおっしゃっていますが、私たちの体のほうが相当程度に複雑でよくわからないことが残っているということです。
もう一つは、医師法21条との関係をしばしば議論せざるを得ないというふうなことがあるのですが、医学部長病院長会議では、最初から21条の議論はやめろと。その議論をすると話がいろいろなところに迷入していくので、医療安全の話をしている以上、この件は切り離せという議論で終始来ておりました。今もそういうふうな基本的な論調に違いはございません。
これは、今、言った報告書(案)の段階、昨年の秋でございますが、委員の一人である私が、企画部会の委員長の矢作先生に出した意見の一部でございます。
WHOのガイドラインに沿った議論、医療に関連した死亡の調査・分析事業のあり方という、先ほど樋口先生が御説明くださいましたところの参考資料がありますけれども、それのつくられる途中で、WHOのガイドラインに沿った議論、つまり社会への説明責任を果たすことと患者の安全を向上させることとは違うのだと。一部重なることがあるにしても、基本的には違うということの理解がやはり乏しいのではないかというふうなことと、それから先の説明のように21条の課題を論じることは、やはりあんばい悪かろうという話でございます。
これはWHOのドラフトガイドラインに書いてあるのですが、1つの制度に2つの機能を持たせることは難しいと。「モデル事業・日本医療安全調査機構」の基本的な考え方、もちろん少しずつ経年的にというか、経時的に変化していますので、今も樋口先生の御発表は、当時の秋の話と随分変わってきていますので、少しずつ変わらなければいけないと思うのですけれども、説明責任を目的とした報告システムは、通常は強制的で報告対象は限定的と。予期せぬ死亡、その他などである。
恐らく、そういう意味では対象も限定されるというようなことになります。ですから、今、お金の話、5億とかと出ましたが、ほとんどの監督機関は報告された事象の一部分を検証するほどの人的・物的な資源しか持っていないと。
ですから、そういうふうな意味での学習を可能にするような能力も実は限られていますよというふうなことで、WHOのドラフトガイドラインでは、患者安全を全うするための方法論と説明責任というふうな形での方法論とは違うということなので、その部分についての議論を少し深めていかなければいけないかもしれない。
これは、字が小さいので資料を見ていただければわかりますが、要するに現在、どこの病院も基本的に社会に説明するというようなことについての方法論は、実はあるわけです。6ページですが、要するに社会に説明というようなことで、いわゆる記者会見などを含めて、最近はホームページに載せるというようなことをさっさとやってしまったりしていますけれども、そういうようなものがあると。
もう一方は、厚生労働省の傘下にあるのだと思いますが、日本医療機能評価機構の事故防止センターに重大な事故が起こったときにはそれを報告する。これは特定機能病院や、医療機能評価機構のサーベイを受けて認定をもらっている病院は基本的にはこういうふうな骨格の中に入るわけですが、それを届ける。そうすると、重大で希有ではあるけれども、全国で集めると、年間幾つになる、または5年で幾つになった。分析したらこうなったというようなことがフィードバックされてくる。これは学習するシステムそのものに加わっているという話でございます。
ですから、今、言った説明責任のことと、医療安全を学ぶということと両方あるわけですが、そのようなことは今でもやっている。これを国の仕組みとしてどうやっていくかという話はここでの議論だと思います。
原因究明・再発防止のほうは実はこっちでやって、これはWHOのガイドラインの訳のところから出てきますが、懲罰しないとか、秘密を守るとか、監督官庁などから独立する。基本的に独立することは当然といえば当然ですが、そうしないとどうしてもバイアスが入るとか処分などいろいろあります。
下から2番目に「システム指向性」と書いてあります。つまり、複雑な病院医療の物事を理解しなくてはならない。よくヒューマンエラーと言いますけれども、ヒューマンエラーですら、どうしてその部分でそうなったのかということがあるわけで、注意をすればいいという問題ではないと。
よく家を出た後、鍵をかけ忘れたかなと言ってまた家へ戻るようなことがありますが、あれはルーチンワークをこなしていく中で、ふと失念することがあるというふうなことでございます。
日本医療安全調査機構に医学部長病院長会議入った後の議論を、今、紹介していますが、やはり院内型は学習を目的とした報告制度そのものから発展していると思いますし、第三者型というもともとの日本医療安全調査機構のモデル事業は、やはり説明責任を目的とした報告制度なのだろうなと。協働型という間をとった形も、そういうふうなニュアンスを否めないというようなことがありますので、ここら辺が本当の意味での非懲罰性かつ秘密保持をしながらということとどのような形でうまくいくかどうかがよくわからないということです。
これは、樋口先生が御紹介してくださったところの参考資料の報告書が出るときに、理事会で追記した部分であります。
その理事会には、今、お話しした全国医学部長病院長会議からは嘉山先生が出席されていて、嘉山先生も主張されたと聞いています。要するに2.のところの太字のところですが、「院内型、協働型、第三者型の調査体制のあり方については、『有害事象の報告・学習システムのためのWHOドラフトガイドライン』を参考にしながら、引き続き検討が必要である」というようなことで、今後とも引き続き検討していきたいと思っております。
医学部長病院長会議では、せっかくのモデル事業で行われてきたさまざまな蓄積がございますので、それはやはり何らかの形で持ちたいと。四角の中の下半分の3)のところに、解剖所見も得られるという「地ならし」の部分があると。「日常の作業の延長上にあるクライシスマネジメント」に最も近い道筋のように思われるのだと。そうすると、それは医師会と病理医とが円滑に日常作業に当たっている地域、これは県の医師会のレベルでそういうところはありますので、そのようなことを真似して、全国に日本安全調査機構の事業を広げることも可能だろうと。「モデル事業の経験を踏まえた社会の仕組み」として構築していけるように考えるということで、これは先ほど企画部会による報告書案に関する意見、僕が昨年の秋に書いたというものがありましたが、それの後半部分の一部でございます。
ですから、そういうふうな形で、少しずつ足し算をしながら、上手にいいものをつくっていきたいというふうに考えるというのが医学部長病院長会議の委員会の議論でございます。
これは、「素案をつくれ」という話が委員会で出まして、委員会の後に素案をつくって、委員にはメールで回して意見を聞いて、少しバージョンアップさせながらここまで来ておるわけですけれども、先ほど飯田先生が御説明になった院外事故調査検証委員会(チーム)はかくかくしかじかでありましたが、その部分を利用させていただいて、それを入れ込んだ形になっています。有害事象の発生、予期せぬ死亡事故があれば、主治医が説明します。亡くなっているということであれば、御家族の承諾を得て病理解剖や、場合によってはAiを得る。死亡診断書をつくる。その段階で第三者的な院外事故調査検証委員会なるもの、医学部長病院長会議の委員会の中で私個人としては、やはり日本医師会の傘下にある都道府県医師会の中に基本的につくるのが早いのではないかというふうな議論をしておりますが、そのようなところへ第一報を入れるかどうか。多分入れていくというようなことになるのだとは想像しますが・・・と点で示しています。
その後、院内事故調査委員会を開いて報告書をつくる。これは今までと同じです。
後日、院内事故調査報告書に基づく説明を行う。そのときに主治医から家族へもちろん説明するわけですが、それでもって納得いただければ、そういう意味では一件落着ということになるのだと思います。
希有なるものについてたくさん集めなければいけないということになりますので、報告書を作成した時点で日本医療機能評価機構への報告をし、集積することで安全をより強いものにしていきたい。
くだんの第三者機関でございますが、同時に院外事故調査検証委員会で報告書を作成する。これは各地方で、医師会、病院団体、大学病院等の専門職で構成して、資料を分析・評価するというふうに書いてありますので、そこで評価していただく。その評価結果をもって、場合によっては主治医から家族へ説明して御納得いただければ終了と。
ただし、左の真ん中にありますが、流れ図において「納得→終了」と書いてはございますけれども、そのようでない場合には、民事も刑事もあり得るわけですので、それは別件として取り扱うと。私たちが患者さんと患者さんの御家族と共に医療の始まりから終わりまでやろうというふうなことで、きちんと説明しようと思えばこのような形になるのだろうと思います。
医学部長病院長会議は、基本的に大学病院が集まっていますので、右上にありますように検証委員会の中に、病理学や場合によっては法医学、放射線医学、病院管理学だとか看護学だとかその他のコ・メディカルの人たちも含めた形でのラインナップもできましょうし、下の四病院団体協議会の中の一番右の下にある(社)日本病院会には多くの大学病院が参加していますので、これらの情報を共有しながら先へ進んでいくといいかなと思います。以上が現在の医学部長病院長会議における議論の途中プロセスであります。
以上で終わります。
○山本座長
ありがとうございました。
それでは、引き続きまして、以前からこの部会において御説明を希望されておられました中澤構成員からも資料が提出されておりますので、御説明をいただきたいと思います。
よろしくお願いします。
○中澤構成員
一応私のほうで出させていただいた案を説明させていただきます。
この案は、いろいろひな型ということになるのですが、私、15年ぐらい済生会宇都宮病院というところで大体リスクに関係するような立場にありましたので、そこの経験がもとになっております。
皆さんのお考えの中で、再発防止という言葉をすごく大切にされているということなのですが、私たちももちろん再発防止は大切でないというふうには考えていないのですけれども、ただ、現場の立場からすると、事故が起きたときに、患者さんがその問題についていかに納得していただけるかというところに焦点が行くので、そこがおろそかになってしまうと、全部だめになるだろうなと思います。私案の中で和解ということを新たに使わせていただいたのはそのような経緯がございます。
まず、「医療事故の調査の仕組み」ということですが、私は前から院内調査ということに主眼を置きたいということを申し上げております。理由は幾つかありますが、医療の世界は非常に難しくて、1つのルールが3年後に変わってしまうというようなことがあります。そのようなときに、そういうところまで見込んだ基準を設けて、それで判断するということはできませんので、現時点においての御説明ということが一番重きを置かれるべきと考えております。院内事故調査の設置に関しては、まず患者さんに事故の内容を説明してわかってもらうということが一番の目的です。もちろん内容によってはわかってもらえないものもあり、患者さんのほうでは、やはり人が1人死んで、急に事態が全部変わってしまって、その中でどう折り合いをつけるかということもありますので、以前お話にあった謝罪とか補償も含めて、院内調査でしっかり確認して、もし非があれば謝罪も補償も含めて納得していただくというところに目的を置くことを考えております。
事故調査の組織は、院内に組織され、2ページの4)に「実務」を4項目書いています。御説明させていただきますと、(1)院内調査委員会は、まず事故報告書をつくります。そのときに、いろいろな事情聴取はもちろんしますが、診療担当者の意見を入れるということを重要視して書いています。女子医大事件では院内調査をやっているのですが、報告書を作るときに、診療担当者の意見を入れないで作っており、これにより冤罪が発生して大きな問題になったということがありますので、これを強調するつもりで診療担当者の意見を入れてほしいということでございます。
それから、(2)医療調査機関がやることとして、解剖とか死後のCTを行います。これは機関によってはいろいろ事情もあると思うので、医療が許す限りということを入れさせていただいています。
(3)事情聴取に当たり、管理者は、事故の責任は病院が持つということをまず担当者に説明します。それから、故意による犯罪ではない限り、診療担当者及び関係者の責任は問わないということを最初から明言しております。これによって、本当のことを言ってもらおうというつもりでございます。
(4)は次のシステムに関係するのですけれども、院内では結論を出すことができない課題があるとき、それをサポートしてくれる施設を院外につくりたいというのが私たちの願いでございます。それは、医学的なものの専門的な部分もございますし、患者さんの死に対する哲学的な部分もあります。他にもいろいろあるのですけれども、そのようなシステムをほかにつくりたいということです。第三者機関は、要するに判定を主にした機関という感じですけれども、これは院内調査を補完していただく機関というふうな形でお考えいただきたいと思います。
あと、これに係る院内調査の費用なのですが、これは全く医療機関がやることで、先ほどのお話で5億円という話がありましたが、これは要らないということになります。
あとは事故の説明ですけれども、詳細な説明をしなければいけないというところがあり、それともう一つは、わかりやすく説明しなければいけないということがあります。これは患者の権利というところでうたわれている部分なのです。担当者だけで難しければ、そこにメディエーターを入れるというようなこともできるのではないかと考えております。
私案では和解が一番大きい問題なのですけれども、調査をしていく中で、医療側のミスがはっきりわかるということがあります。これは第三者に入っていただかなくても、それから6カ月時間をかけていただかなくても、一週間もかければすぐどちらが悪いかぐらいのところはわかりますので、それをもとにして問題解決も相当の部分までできるのではないかということです。それをもとに患者さんにお話しするということで、理解していただけるという部分もふえるというふうに考えます。
ただ、そのような院内調査については、正当性があるのかとか、透明性があるのかということをよく言われます。それについて、これはこの委員会に出てからいろいろ考えた中で出てきたわけなのですけれども、再調査委員会という様なものをどこかに設けたらいいのではないかという形にしております。これが骨格です。
2頁の2に、医療事故調査支援システムのことを書きました。これは、院内調査の精緻化に協力する院外の施設で一つのまとまった機関ではなくて、いろいろな専門ごとに専門家が集まり機能として持っていていただければいいことではないかというふうに考えております。内容としては、専門的な技術、例えば非常にまれな事故であって、それは院内では一例しか報告がないのだけれども、たくさんの報告の中ではどういうふうな位置づけになるのかというようなことを教えてくれるような機関ということになります。ただ、そのときには丸投げでこのケースについて判断してくださいということではなくて、こういう問題について回答をいただいて、それによって院内で判断して決めて患者さんに説明しますという意味の上で考えられております。
2番の常識的倫理的支援というのは、やはり死ということについての考え方が患者さんによっても物すごく違います。それから、医療が関係する死というのが非常に特殊でありまして、要するにメディアの取り扱いだけでどんどん先行してしまうと、やはり死の姿がゆがめられて伝わることがあると思います。本当に静かな死ということもたくさんあるわけで、そういうようなところへ焦点を置いた死生観ということについても逃げないで考えてくれる人がほしい。もし第三者がやるのだったら、その辺まで責任を持ってもらわないと、死の姿をゆがめてしまうことではないかというふうに考えているわけです。
それから、法律的支援ですが、補償の問題はお金しかありません。お金や障害が起きた後の後始末をどこで責任をとるかというようなことになるので、賠償に詳しい、弁護士の方々が専門家でいらっしゃるわけですから、その方々の意見を聞けば問題解決も進むのではないかというふうな感じでございます。
それからもう一つは、先ほど樋口先生の御発表にもありましたが、患者さんが事故で障害を抱えてしまった場合、障害に向き合うというときに医療機関は非常に複雑な立場に置かれます。というのは、これは医療側がやったことだということをもとに話を進みますので、聞いてもらえないという提言も非常に難しい情況になります。この辺についてもカウンセラーとかそういう人たちがかかわることによって、患者さんの人生の中で少しでも事故の影響を少なく、やっていただければありがたいなというような感じも含めて書かせていただきました。
もう一つ、先ほど公平性を確保するために何をするかという中で出てきた問題で、再調査委員会というのを設置するということを言っております。再調査委員会は、院内調査で結論が出なかった問題を再調査委員会で結論を下すということではなくて、院内調査の内容を報告書を見て妥当な調査をしているのか、妥当な考えをしているのかということを第三者として判断してもらうということになります。
それで、もし妥当ではないということであれば、こういう調査を加えたらどうかとか、こういう視点でもう一回考えたらどうかということにはなりますが、現場にやってもらうことになりますので、それを現場に戻す形になると思います。
それでは大した効果がないのではないかという考えもあるとは思いますが、効果は私は十分あると思います。
ということは、そういった和解も含めた上で、非常に精緻な報告書ができて、患者さんにお渡しするわけですから、患者さんはそれを持ってどこへ行ってもいいわけです。私たちがそれをどこかに諮ろうとすると、患者さんのプライバシーがかかわるので、全てを洗いざらいに話すというわけにはゆきません。被害を受けた患者さんがその結果についていろいろな機関に持っていくということであれば、プライバシーの問題というのは全然クリアされるということになりますし、私たちが届け出る先の信頼性を気にしたり、第三者の受け付けに線引きが入った場合には、難しい問題を感じますが、患者さんが届け出るということであれば、それはスムーズにいくと思います。患者さん本位のところに視点を置くことで、問題解決が楽になるのではないかと考えております。
あと、理念とかいろいろなことを書きましたが、これはまた時間があればお話ししたいと思います。
それから、再発防止のあり方ということは一番問題にされておりますし、これも重要なことだと思います。これは4ページの一番下から入っています。再発防止には2つ考え方がありまして、病院の中で再発防止をやらなければいけないし、それだけで十分であって、ほかの病院にはかかわりがないことも随分あります。
それを中央でやるよといった場合に、病院の実態とかインフォームドコンセントの内容を本当に理解してやっていただけるのか、いいシステムができたとしても、それがまた現場に戻されたときに果たして動くのかどうかということも当然かかわりがあり、場合によっては御指導いただいたシステムを入れるということでまた新しいリスクが発生するというようなことは経験しているところでございます。事例の集積と、それをインフォメーションするということは重要だと思いますが。新しい手段が講じられるときには、やはり現場の専門的な見方というのを重要視していただいたほうがいいのではないかと思います。
例えて言えば、トヨタの自動車製造業の製造ラインで発見されたことをおかしいと言ったときに、トヨタの場合は、現場でやれということで、現場はなぜなぜを5回繰り返すとかと言って一生懸命再発を防ぐような仕事をします。ですから、そこに工場長が出て行って、呼びつけて、どこが悪いかなんていうことを指導することはないわけです。
ましてや、日産とかホンダの技術者が出て行って、トヨタのやり方がいい、悪いということはないし、そんなことで技術が発展するということではありません。そういうようなことはやはり現場に根づいてやるべきではないかということが基本になっております。
あとは中央の組織がどういう形をとるかということなのですが、医薬品の副作用については中央の組織ができ上がっておりますが、こういうことはやはり集めてみないといろいろなことはわかりませんし、対策もわからないので、これは中央の関与が必要だと思います。
例えば、インフルエンザ、SARSのときも、中央が責任を持って対応するべきことですし、あと公害とか、原発事故にかかわるような疾患が出てきた場合には、これは当然、中央が関係しなければいけないことだと思いますが、中央の問題というのは、個別の問題とは別に存在するのではないかと私は思っていて、今の厚生労働省の対応が悪い、いいということではないのですが、中央特有の問題解決の方向性というのは、やはり中央で持ってほしいなという考えでございます。
最後に、業務上過先致死の届け出、これは先ほどお話ししましたように、届け出するということについて問題が発生します。医療者が業務上過失を問われるということは、法律上そういうふうになっているので、仕方のないところなのですけれども、少なくとも届けを出してそれが処分につながるということについては、マイナスのベクトルに働くということをちょっと意識していただきたいと思うのです。マイナスのベクトルに働くことを1つの車の両輪というふうに言ってしまうと、これはもう話が行かないので、もし処分というような問題と再発防止がかかわるのであれば、処分についてどうするかということを取り上げていただいて、この委員会として結論を出していただいたほうがいいのではないかと思います。
最後に、補償についてなのですが、補償は別物にしろという皆さんの御意見ですが、私は補償は中で考えておりますので、その辺が違うかと思います。その中で我が国の補償制度ということを考えたときには、犯罪があるかどうか、あるいはミスがあったかどうかというところに焦点が置かれます。ですから、ミスがなくて障害が起きてしまったということについては、患者さんが受ける補償というのがないわけです。
もちろん、それは障害が起きれば障害者的な補償ということにも行くので、それは悲惨なことではないということは理解できますが、やはりミスがあったかどうかということに線が引かれるので、勢いその線を引くということは、グレーゾーンの多い医療の中では、論議を生むし、長いことの検討も必要だし、それからクレームもいろいろな立場から出るという問題もあります。過失無過失にかかわらず補償されるということになると、事故調の仕組みも楽になってくると思います
以上です。ちょっと長くなりました。申しわけありません。
○山本座長
ありがとうございました。
続きまして、日本医師会におかれても、医療事故の調査の仕組みに関する御議論を始められたというふうに伺っておりますので、現状について、御報告をいただきたいと思いますが、高杉構成員、よろしいでしょうか。
○高杉構成員
本日資料は用意しておりませんけれども、会議の最初のころに基本的提言として日本医師会の基本的な姿勢はお示しいたしました。きょうは樋口委員が説明されましたけれども、その前さばきというか、院内事故調査委員会をきちんとやる。それから、医療安全にしっかり取り組む。これが基本中の基本でありまして、院内事故調査委員会で、これは中小病院といえども、診療所といえどもやろうという姿勢で行っていくとしております。
それが、調査の限界を超えたとき、能力以上のもののときには、第三者機関に届けて調査をお願いする。できるだけ地区医師会あるいは大学の御協力、あるいは基幹病院の協力をいただいて、Aiあるいは解剖までこぎつけて死因の解明を行う。その判断ができない場合に、そのデータをもって第三者機関で検証をしていただくということを基本にしています。
ただ、この問題の複雑性があるところでありまして、それについて、ではどのような範囲を届けるか、あるいは届けた後はどうなるか、いろいろな議論がしばしば起こっています。9月の医師会の代議員総会でも相当に質問の嵐にさらされました。
それから、10月の全国医師会会長会議でも、もうちょっと検討するべきことがあるということで、第二次のプロジェクト委員会を昨年の暮れに、今度は2月、3月になるべくまとめる方向には行きたいと思っています。
ただ、きょうもいろいろな先生方の御意見を聞きましたけれども、基本的にはそう変わらないのだろうと。要するに患者さんの不幸な死をどのように説明していくかということを医療から自律的にやっていこうということの盛り上がりこそが私は大切だと思っています。
○山本座長
ありがとうございました。
それでは、これまで御説明をいただきました点につきまして、御質問あるいは御意見、御自由にお出しをいただければと思います。
どうぞ。
○中澤構成員
できれば、この案についてどうかというふうにまとめていただいたほうが議論が進みやすいと思うのです。
○山本座長
それぞれの案についてですか。
○中澤構成員
ですから、四病協についてどんな御意見がありますかみたいな聞き方をしていただいたほうが。
○山本座長
そうですか。ただ、かなり重なり合っていて、この問題についてそれぞれのという御質問はあるのではないかと思うのです。
○中澤構成員
それはお任せしますけれども、できればという意味です。わかりやすくする意味で。
○山本座長
その議論の進め方としてですね。
○中澤構成員
それは座長にお任せします。
○山本座長
それでは、加藤構成員、どうぞ。
○加藤構成員
御報告ありがとうございました。
幾つか確認、私のコメント、質問とかがあるので、順次お時間をいただきたいと思います。
まず、確認したい点は、きょう発表された皆さんは、多分、院内であれ、第三者機関であれ、医療事故調査報告書は患者さん及び遺族に返すべきもの、要するに、レポートとしてお渡しすべきものであるという点は共通しているという認識でよろしいですねということがまず第1点の確認です。
意見として若干述べさせていただきたい点は、有賀構成員のほうの発表の中のスライド2のところなのです。このように医療が本質的に不確実な部分を持っているとか、最悪の事態にもなることがあるとか、そういうことは一般論としては承知をしているつもりなのですけれども、私どもが日ごろ医療事故で見ているものの多くは、極めてまれなこと、予想もつかないことが起きたというよりも、さまざまな不適切な医療が積み重ねられてついに死亡という事態に至ったというふうになったケースが多いのではないかという感想は持っております。
また、医療機関ごとに診療の力量というのは相当の差があったり、医師によっても診断や治療の能力に差がある。特に、通常、手術をしまして、患者さんが健康を取り戻すということになっているのは、通常は、胆石の手術をするにしても何でもそうなのですが、多くの場合、よくなるから手術をしている。プロセスの中で、例えば小さな血管を切ってしまったというミスがあったとしても、通常は直ちにそれが死亡につながるのではなくて、カバーをしてそのことから最悪の事態を避けている。
基本的には、標準的な治療というものが確立をしている部分もあって、そういうことで安全性というのは確保されているのだけれども、中には医療水準といいましょうか、標準的な治療を下回るレベルの診療行為をしてしまって、医療事故で死亡事故が発生しているという現実があるのではないかというふうに感じておるところであります。
そうした場合に、国民の立場からしますと、患者さんや遺族に不具合な事象というのを正直に本当のことを伝える、それがたとえ自分に不利益なことになろうとも、患者さんには申しわけないという気持ちから、本当のことを伝えたいという気持ちになっているお医者さんに国民はかかっていきたいというふうに考えているのだろうと思うのです。
次に、質問の部分に入るのですけれども、樋口構成員のスライドで11枚目の発表の中で、アスタリスクがついて、「医療事故に刑事司法的対応は無意味」とされた部分、これは多分、日本医療安全調査機構の総意ではなくて、樋口構成員の個人的な見解を書かれたという説明だったかと思いますけれども、その点については、無意味というのは訂正する、ほとんど意味がないというふうな言い方をされたかと思いますが、どういう場合にそういう意味があるというふうに考えておっしゃっているのかというのをお知らせいただければと思いました。
とりあえず以上です。
○山本座長
ありがとうございました。
それでは、まず第1点ですが、調査報告書の患者さんあるいは御遺族に戻すというか、それをお渡しするということは、いずれの方も前提にされているのかという御質問だったかと思いますが。
○加藤構成員
だから、特に違えばおっしゃってください。
○山本座長
もし違えば。飯田構成員、どうぞ。
○飯田構成員
四病協では、報告書に基づいて説明するというところまでで、渡す、渡さないということはまだ決めておりません。
○山本座長
基づいて説明するのですね。
○飯田構成員
そうです。
○山本座長
ほかはどうでしょうか。有賀先生。
○有賀構成員
基本的には、今、飯田先生がおっしゃったことと同じです。
各医療機関に任せるというのは、多分団体としての基本的な考え方になるのだろうと想像します。
○山本座長
渡すか渡さないか。
○有賀委員
渡す、渡さないは。私たちの病院でも、基本的には決まっていません。何とか書という膨大なものをつくるほどのことは今までありませんでしたので、基本的には報告書を見せながら説明するというふうなことで、それをみんなよこせと言われたことは、私が副院長を含めて11年ぐらいいますが、よこせと言われたことはありません。
カルテ全体をくださいという話は山ほどあります。
○山本座長
ほかはどうですか。
○中澤構成員
一応書いてお渡しするということは原則というか、要求があればしていたということになります。
でも結構複雑なケースは患者さんのほうから文書でくださいという話になるので、それは書くということになる。もちろん話の中ですんなりわかっていただけるようなケースについては書かなかったと思います。ただ、込み入ればほとんどは書いて渡しております。でも、書いていて思うのですが、やはり書いたことで論点がはっきりするし、書いたものをほかのところに持って行っていただいて、弁護士さんの意見を聞くということも恐らくやっていただいていると思うので、それで話がこじれてしまって大きくなったということよりは、大抵はそれでおさまっているというような印象は受けます。
○樋口構成員
日本医療安全調査機構では、みずからが関与したものについては調査報告書をつくるのですけれども、病院側と、死亡事故に今までのところ限っていますから、遺族の方に同じ場所で同じ説明をして、同じ文書を持って行っていただくという形にしております。
○山本座長
ありがとうございました。
よろしいですか、今の件は。
医師会のほうはまだあれですか。
○高杉構成員
同じです。
○山本座長
同じですか。よろしいですか、加藤先生。
○加藤構成員
当然、御遺族はなぜ亡くなったのだろうという事実経過と、それから医学的な評価と再発防止策、そういうものがきちんと検討されるということは、とても願っていることだろうと思うのです。そのレポートをほしいといった場合に、お渡ししないという積極的な御意見というか、ほしいといった場合には、お渡ししていいものだ。あるいは渡すべきものだというふうにはまとめることはできないのでしょうか。御異論はあるのでしょうか。
○有賀構成員
別に異論があるわけではありませんが、少なくともきょうの発表の中でそこまで言及するほどに実はもんでないので、組織としてもし決めるのだとすれば、各医療機関で決めることではないでしょうかという話ですよね。
個人的なレベルでいきますと、東京都医師会傘下の比較的小さな病院の医療事故で事故調査に参加したことがあります。今、加藤委員によれば結構荒っぽい医療者が荒っぽい結果を導いてしまってというような話がありますけれども、少なくとも私が接する限りにおいては、そういうふうなものではなかった。小さな病院でしたが、医学的な背景の複雑な、結構難しい病気だったのですけれども、亡くなった。荒っぽい話と荒っぽい結果というふうな言われ方は、私の個人的な経験からすると、そんなに多くはないのです。むしろ、やはり地域の先生方が一生懸命やっても、こういう病気の最終的にはこんな結末なのだなという話になって、その場合は、もともと患者の御遺族のほうから報告書をつくってくださいねという話がありましたので、でき上がったものは渡っているはずです。
○山本座長
わかりました。どうぞ、飯田構成員。
○飯田構成員
私もいろいろ、今、厚生科学研究費をいただいて、サーベイをやって、きょうも午前中に行ってきたところなのですが、いろいろな病院がありまして、事故報告書をまとめて患者あるいは遺族に渡している病院もあれば、それに基づいてお見せしながら説明している病院もあれば、あるいは渡そうと思ったところ、突然差し押さえられ、それから弁護士から質問書が来て、報告書ではなくて、それに対して文章を書いたというのがあるなど、さまざまなので、報告書の扱いは各病院で判断すべきだというふうに私は同じように思っています。
○山本座長
今の点は、今のようなお答えということで。
それからもう一点、樋口構成員の御質問だったと思いますが、この無意味ということで、意味があるときはどういう場合かという。
○樋口構成員
私も余計なことを言いましたね。11枚目のスライドというところの、今度の日本医療安全調査機構として何ができるかということを考えるときには、刑事司法とか行政処分という話は、つまり自分たちの能力を超えた話なのです。しかし、我々のところがしっかりすれば、そちらには影響があるだろうということはもちろん考えているわけです。
ただし、その中で医師法21条の問題だけはやはり逃げないで、これが医療事故の第三者機関を作ろうという話のそもそもの契機にはなっているものですから、一応取り上げているのです。それで、先ほど私が言ったことがもしかして誤解を呼んでいるなら、つまり樋口だけがこんなことを考えているのだろうというのではなくて、参考資料の2ページ目のところに、A案、B案と。そこは細かいので紹介しないのですけれども、つまり、刑事司法との関係については、日本医療安全調査機構の企画部会、理事会としてこのように考えているというふうにこれから読むところを考えてください。
これはもちろん加藤先生には釈迦に説法のようなことなのですが、診療関連死について、医師法21条による警察届け出の実質的廃止を基本原則として打ち出すのも、これはモデル事業の今までの8年間の経験に基づいているということです。「現在、医師法21条によって届けられ、警察の捜査対象になって、司法解剖が行われている事案で医療事故の関連事例の多くはまさに我々が専門的な調査分析を行ってしかるべき事案である」。警察による捜査は、中澤さんもおっしゃったと思うのですが、医療事故の加害者を特定し、あるいは限定し、システムどころか、自然人でないと普通は逮捕もできないものですから、それは彼らに刑事制裁を加えるという役割を果たすものであるが、医療安全のための調査分析を専門的に行うものではもちろんないわけです。
それは警察だってもちろんそう思っているわけです。医療事故の全貌を把握し、同様の事故の再発防止を図るには、医師法21条という通り道で警察のほうへ誘導していくのではなくて、こちらの第三者機関に届け出て調査分析を行う必要がある。そのためにも、こういう医師法21条については何らかの変更が必要であると書いてあるので、医療事故について、刑事司法的対応は無意味というのは、ほとんど意味がないというふうに少し和らげていいと思っているのですけれども、それは私だけの認識ではないと私は思っているということです。あるいはこの文章には明らかではないかと。
ほとんどというのはどういうことかというと、この後は私の意見になりますけれども、典型的なものは改ざんです。医療事故があった後で、今の加藤さんの話もありましたけれども、実際その立場になって、自分が非難される立場になったときに、私が悪うございましたと常に自分が一生ずっと言えるかというと、私には自信がないということをここで独白しなくてもいいと思いますけれども、やはりみんなそういう人間ばかりだったら、ありとあらゆる事件は起きないわけですね。やはりそういう人間ばかりではないわけで、私だってごく普通に見えると思いますけれども、異常な人間には見えない。しかし、そういう誘惑にかられないとも限らないわけですね。
実際にそれがあったわけでしょう。それは加藤先生の経験でも、カルテの改ざんであれ、何であれ。だから、そういうようなものは刑事司法的対応で、これは公文書か文書偽造か証拠隠滅みたいな話で刑事司法的対応が必要になるだろうし、事故の原因がアメリカでたまにあるのですけれども、実際にアル中だったり、薬中だったりするお医者さんがいるのです。そういう状態で手術をする。これは幾ら何でもという話があるので、これが日本的に言えば重過失の典型になるのですけれども、そういうものまで、これはちょっとということはあるかなということです。故意はもちろんですけれども、故意は論外なので言うまでもないというようなつもりなのです。そういう場合に、それはいかんでしょうと。それは刑事責任を問うのは当たり前なのではないでしょうかということが私の考えです。
○山本座長
ありがとうございました。
では本田構成員、お願いします。
○本田構成員
すみません。まず質問なのですけれども。
○中澤構成員
今の件についていいですか。
○山本座長
いいですけれども。では手短かに。
○中澤構成員
私は、刑事事件に使うということについては、医療側についてはすごくマイナスなところが多くて、ですから届け出をするときに、自分が訴えられる確率を考えながら出さなければいけないというのが物すごくプレッシャーになるので、それは意味がないというよりは、むしろマイナスの意味のほうが大きいというふうに考えています。
○山本座長
ありがとうございました。
それでは、本田構成員、どうぞ。
○本田構成員
質問で確認なのですけれども、まず四病協さんの資料の2ページ目のところの3の(5)で病院が重要と判断した有害事象発生時には、患者や患者家族の意志とは関係なく報告するというところの理解の仕方なのですけれども、患者や家族からの訴えとか異議申し立てとか、何もなくても病院が重大と判断した場合には報告するというふうに読んでいるのですけれども、それは、もちろん病院がこれを報告する必要がないと思っていたとしても、患者、遺族側から何かしら申し立てがあって、ああそうかということで報告するモデル事業的なところも含むという理解なのか、それは違うということなのか、同じように全国に。
○飯田構成員
そのとおりで、趣旨としては患者家族の申し立てがなくても事故調査をして説明しますという趣旨です。では何を重大と判断するかということに関しては、四病協では細かくは議論しておりませんが、全日病の案として出したものに基づいて、まだそこまで細かくは議論しておりませんが、私はそういうふうに考えています。
どこまでやるかというと、ここでもコンセンサスは得たのだと思いますが、死亡事故に関してはやりましょう。それ以外の重大事故は全部やれるか、リソースの問題がありますので、できるところからやりましょうと、段階的という意味で考えていますので、どこまでやるかという細かい事項に関しては四病協ではまだ議論していません。全日病では議論しましたが、よろしいですか。
○本田構成員
すみません。私が理解できなかったのですけれども、その場合、病院側がそれは重要だと判断していなかったとしても、モデル事業のような場合は、患者、家族側から申し立てがあればというルートもありますね。そのルートももちろん確保しているという理解でいいのでしょうか。
○飯田構成員
予定はしておりません。まず、院内事故調査が最初で、それももちろん疑義があれば、調査はどうしてもせざるを得ないと思うのです。ですからそれはやりますということです。
○本田構成員
それは資料からすると、全国医学部長病院長会議のほうの資料でも読み取れなかったので、そこら辺のことを教えてください。
○有賀構成員
基本的には今の飯田先生と一緒ですね。要するに、患者さんまたは患者さんの御家族どちらでもいいのですが、基本的に、言いたいことがあれば、それは病院の中で言う仕組みがございますので、つまり医療安全に関して意見のある方はどうぞこの窓口へ行ってくださいというふうな入り口もありますし、それから直接僕のところにどなり込んでくる人もいるわけですし。
ですから、病院の中にそれなりの道筋を持って、今のようなことが起これば、それに対応することができるわけです。その中からこのような仕組みに乗せなければいけないというふうなものが出てくれば乗せますね。
ただ、御家族の言うことが全てこれに乗るかと言えば、いろいろな家族がいますので、そうは問屋が卸さないということもあります。
つまり、そういう意味では御家族からすれば門前払いなのかもしれませんが、これはこうですので、これでよろしいと思いますと。医療の内容としてはこうですよと。だから医療とは別のところで憎らしいから訴えてやるというようなことがもしあれば、それはそれで別でやってくださいという話になりますので、訴えがあれば全部この仕組みに乗せるというようなことにはならないと私は思います。
○山本座長
よろしいですか。では山口構成員
○山口(育)構成員
私も、今、本田委員がご指摘されたところが気になりました。患者側からの全ての申し立てを採用しなければいけないとは思っていないのですけれども、第三者機関である以上は、やはり患者側からの申し立てが可能にしておくべきではないでしょうか。もちろん、申し立てられた内容を選別することは必要だと思います。先ほど本田委員がモデル事業は患者からの申し立てが可能とおっしゃったのですけれども、今のところは病院からの申し立てしかないと思うのです。ですので、今回のご発表のなかで患者側からの申し立てが想定されているかどうかということを、四病協を含めてお聞きしたいと思ったことが1つです。さらに、2つ目の質問として、四病協で第三者機関のところに、日本医療機能評価機構を発展的に活用すると2ページの(8)に書いてあるのですけれども、これは、現在機構で行われている産科医療補償制度の分析のようなことを新たに立ち上げるというイメージなのかというのを具体的に教えていただきたいと思います。
そして、3つ目の質問として、これは事務局に確認させていただきたいのですが、前回の消費者庁からのヒアリングの中で、消費者庁の中に医療の問題も扱う調査機関を設けているとありました。その中で、医療の問題を取り出してほかで第三者機関をつくるとすれば、それは内閣府や厚労省のような公的な機関でないと無理だというような御発言だったように私は理解をしています。そうすると、これまでどういう機関で設置するのかという議論をしてきたことがどうなるのかなと疑問を感じた記憶がございます。
今回出ている日本医療機能評価機能にしても、日本医療安全調査機構にしても、位置づけとしては民間機関だと思うのですが、そういう第三者機関ということが、そもそも認められるのかどうかというところを事務局には確認させていただきたいです。その3つをお願いいたします。
○山本座長
ありがとうございました。
まず第1点のところですけれども、患者側、患者遺族側からの直接の申し立てみたいなものを認めるのかということですが、これは四病協と医学部長病院長会議の先ほどのあれだとそれは認めないというふうに理解してよろしいですね。
○有賀構成員
認めないということを言っているわけではない。実はいろいろな場合があるのです。
例えば、第三者機関がないからなのかもしれませんが、あっても同じことが起こると思いますけれども、東京都の衛生部門に電話が入って、こういうふうなことがあるので「ちょっとやってください」というような形である病院が言われているという情況があって、「有賀さん、ちょっと助けてあげてちょうだいね」みたいなことはないわけではないのです。
ですから、どの病院も患者さんないし患者さんの御家族、場合によっては遺族の方たちの申し出を門前払いしようなんて実は思っているわけではないのです。ただ、全部が全部そういうルートでやらなければいけないのかというふうな話になると、それは違うのではないかという意見なのです。
だから、医学部長病院長会議では、まだ最後の素案の図をようやくつくったところまでなので、これから、今、御質問のようなところも議論しなくてはいけませんが、樋口先生の御発表になった日本医療安全調査機構の分析のあり方の最後のところには、遺族から直接機構事務局に要望があった場合の取り扱いについても、ガイドラインを参考にしながら引き続き検討していきましょうというふうになっております。
これは、私の責任ではなくて、日本医療安全調査機構の理事会の責任でそのような追記をしているのだと私は思いますので、本件が、ある機構では比較的敷居が低くて、ある組織においては比較的敷居が高そうに見えるというふうな現状の認識については、認識ですので、そういうふうにお思いかもしれませんが、基本的に善良な市民の方たちが困るような仕組みを地域社会にしろ、国の仕組みであれつくるというのはやはりまずいと私は思います。ですから、そういう意味ではちゃんとした議論がこれからも必要だと思います。
ただ、やみくもに患者さんの言う通りになるかと言えば、いわゆる文句というのは物すごくあります。とてつもなくあります。医療者を守るために病院長はそれと毎日闘っているようなところがあるのです。ですから、そういうふうなことを簡単に全部こちらでやりますよなんていう話は、ここでは委員長としても言いにくいですし、それから医学部長病院長会議ではそこまでは議論していない。ただ、日本医療安全調査機構の見解に対して、もうちょっと検討しましょうねというふうなことを理事会で議論されていて、その部分については理事の1人の嘉山先生が発言されたというふうに認識しています。
○山本座長
飯田構成員。
○飯田構成員
先ほどはっきりやりますと明言しなかったのは、全く同じ考えなのです。
四病協もそこまで明確に議論していないというか、途中までしましたけれども、これは決められない。各病院の判断だろうというのが本音です。
先ほどから、医療従事者はけしからん者が多いというお話がありましたが、そういう方もいると思います。ただ、患者側はとてつもなく毎日、昼でも夜でもとんでもない方が多くて、現場は非常に困っているわけです。それを全てここで挙げて機能するとなるとまず実務としてできません。
ですから、その中で、私も病院長ですが、病院長として判断してこれは事故と思えば分析させます。また、委員会があります。そうでないものは、事故ではなくて、リスクマネジメントをして対応することがありますので、そこの判別をしてからでないと実務的にも難しいと思っています。
以上でございます。
○山本座長
樋口構成員。
○樋口構成員
日本医療安全調査機構の報告書なるものが参考というところで出ているわけです。こちらのほうが正確なのですが、遺族の問題というのは、3ページの本文の真ん中のところなのです。そうすると、そこへ「遺族から診療行為に関連した予期しない死亡の原因を究明する調査を求められた場合、当該医療機関から資料の提出を受け、意見を聞いたうえで調査の要否をこの第三者機関で判断」しますということにしているのです。
ただ、これだけで動くかという話もあるので、一番最後のほうで付属的な意見も出ているということなのですが、第三者機関をつくるからには、そういう駆け込み寺というのがいい言葉かどうかはわからないけれども、どうしようもない場合が、今、飯田先生からおっしゃられたように、私も患者なのであえて患者についてから言いますけれども、私みたいなどうしようもない患者もいるわけです。しかし、やはりそれは同じようにどうしようもない医者もいるわけです。だから、そういうときに、駆け込み場所を第三者機関としてはつくっておくというのは、意義のあることだと思うのです。つまり、少なくとも受け付けるのですから、受け付けて、それでちゃんと調べますよという話で、こちらのほうの医療機関の話を聞いた上で、これはしかし第三者機関が出て行くような話ではありませんねということをやはり伝えると思うのです。
だから、今までなら第三者機関がないところだと、それぞれの当事者のところでそれこそ朝も昼も電話がかかってきてという話になる。そういう人はきっとこれからもやめないかもしれないのだけれど、しかし、そういう人も第三者機関のところでもちゃんとこういう話になっていますという話になるのですね。
だから、そういうことでは、第三者機関をつくるというのはある意味では大変なことで、しかし、第三者機関が関与する余地というのがありますよ、それでも大丈夫です、我々医療界はという話をつくったほうが、全体としての社会としていいのではないかなというふうに考えているということです。
それから、山口さんの質問に私が答えるのは出過ぎなので、多分後で事務局の方がきちんと説明してくださると思いますが、日本医療安全調査機構のような民間団体が何ができるかという権限の話です。もちろん、この機構もできれば本当は法律的にも公益法人という形になったほうがいいかもしれない。公益法人ではないのですね。ちょっと私がそれを知らないのではいけない。
○加藤構成員
一般社団法人です。
○樋口構成員
今のところは一般社団法人ですが、しかしすごく公的なものであることは間違いないのです。やっていることも営利事業でも何でもないのですから。
とにかくそういう民間機関に何らかの権限を委譲する例というのが医療にあるかというと、少なくとも2つある。もっとあるのかもしれないです。
1つは日本医師会に母体保護法の指定医資格を認めるというのをずっと昔から歴史上何十年もやってきているのです。医師会というのは民間なのですよね。それはそうですね。立派な団体なのですけれども、それからもう一つが、きょうも話が出たように、日本医療機能評価機構というところに、いわゆる大学病院など機能病院というのですか、そういう病院については、こういう医療事故あるいはヒヤリハットというような事例についての報告を求めることができるという権限を委譲している例はあるので、同じような仕組みを日本医療安全調査機構に、もちろん国の予算も何と言ってもつけているのですから、当然、権限と監視もいるかもしれないですが、そういうものは可能なのではないかと私は思っているのですけれども、それは事務局がちゃんとした答えをしてくださると思います。
○山本座長
中澤先生のお考えで患者側が第三者機関に直接言えるのかという御質問だと思いますが。
○中澤構成員
患者さんの訴えというのがやはり基準になるというか、患者さんが訴えるということは問題がはっきりしているから、処理の対象になるという名目が立つのですけれども、ただいろいろな人が来て、これは対象になる、ならないというのを決めるとなると、決める人の権限とか、資格ということが問題になってきてしまうので、それは刑罰に属するとか、問題が大きくなれば大きくなるほど、そういうことが大きくなってくるので、それよりは患者さんの訴えに反応するというふうな組織をつくったほうがいいのではないか。
ただ、今、議論の中でぶれてしまったかなと思うことは、あくまでも、今、問題にしているのは死亡事故です。だから、患者さんの訴えが大変で、いろいろな患者さんがいっぱいいるというのは、死亡事故の中でいるかどうかという話をしなければいけない。死亡事故だと、医療側から見れば妥当性があるのだけれども、患者さんが納得していないということは、やはり1つの解決しなければいけない問題なので、それに反応するようなシステムをつくったほうが楽だろうなという気はします。
あとは、死亡事故のように大きいところについては、ひとつひとつ説明して納得していただかないと、問題が大きいところだけ、第三者機関で別な考えになってしまうということは、医療側にとってもきつい話になるのではないかと私は思っています。
○山本座長
ありがとうございました。
飯田構成員。今の関連ですね。
○飯田構成員
山口構成員の御質問に答えたいと思います。
産科医療補償制度と同じだという話、それでいいですか。
○山本座長
どうぞ。
○飯田構成員
私は、全くそれは考えておりません。産科医療補償制度、私も運営委員その他を今やっていますが、いろいろ問題がありまして、先ほどから何回も言っていますが、同じ枠組みの中の2つの目的を持ってやっているもので、うまくいかないところということです。ここでも同じことを言っています。ただ、日本医療機能評価機構は公益財団法人になっていますから、そこが受け皿には一番いいだろうと思ってそう書いています。ほかにもあり得るので「等」にしたのです。そこで受けるので、今のままでは無理です。やはり人もお金も拡充しなければいけません。それに対しては、もちろん国のお金も必要だろうし、我々病院団体、職能団体、学会も拠出するのが望ましいと思います。原因分析、再発防止に限定してやってほしいということを前も言っていまして、先ほどから、中澤構成員の意見もありますが、そういうものが重要でないと言いません。非常に重要です。それは別の枠組みで並行してやればいいのです。否定はしませんけれども、きちんとここでそういう目的を、何回も議論が行ったり来たりしてきょうは残念なのですが、それに限定してやれば、そんなお金もある程度かければできます。しかも日本医療機能評価機構には、医療事故の情報はたくさん集まっていますから、そのノウハウも持っていますし、それを死亡事故に関してどうするかということをもう少し緻密な枠組みをつくらなければいけませんけれども、やれば十分可能だと思っています。
○山本座長
どうぞ。
○吉岡総務課長
消費者庁の調査等の業務から医療を外せるのかどうかということでありますけれども、これはまさしく同等の体制であるということが求められるということで、これが必ずしも公的な組織である必要があるのかどうか、民間でも一定の要件が満たされたら外せるのかどうか。これは現時点では恐らく消費者庁も判断がつかないというふうに思います。
したがって、この場でどういう第三者組織をつくるのかということを決めていただいた上で、最終的にそれは消費者庁に協議、確認するということになるのだろうというふうに思っています。
これと同様のことは医師法21条との関係についても同じことが言えるのだろうというふうに思っておりますので、この2つの話は最終的に御議論、御確認いただくということでお願いできればというふうに思っています。
○山口(育)委員
実績からして、日本医療安全調査機構をさらに発展させていく形が実現可能なのかなと私は個人的に考えていましたので、先ほどの質問をしました。一番最初の質問に関して、有賀構成員がおっしゃったように、私もたくさんの電話相談をお聞きしてまいりましたので、本当にいろいろな意見や考え方があることと、それを全部実現していたら、大変なことになるということは、とても理解しているつもりです。
ただ、ここに出てこられている構成員の方が直接関与していらっしゃる医療機関のように、しっかり院内調査をされたり、それに対して何か不服があれば門戸を開いたりされている医療機関ばかりだとすれば、それで本当に十分だと思うのですけれども、やはり中には、先ほど樋口構成員がおっしゃったように、いろいろな医療機関が存在すると思います。どうしてもそこでは受け付けてもらえないという方のためにも一定の選別は必要だと思いますけれども、やはり第三者機関である以上、患者、家族の立場から申し立てる門戸を開いておくべきではないかなという思いがあったので、申し上げました。
○山本座長
どうぞ。
○本田構成員
私も山口委員とはまた違う立場で、常に患者さんから電話をいただいている立場ではないのですけれども、メディアとして取材している立場とか、私自身も患者の立場で、確かにいろいろな患者さんがいて、クレーム的なことから本当に重大なことまでいろいろあるとは思うのです。ただ、再発防止とか、医療事故調査の部分と、患者さんとか社会というものの納得というものを完全に切り離すということは、医療が社会資源である以上、なかなかそれは難しいのではないか。社会が納得していて、医療を応援するという意味でも。
そういう意味では、先生方のおっしゃることも大変理解できるし、一定の選別というのは山口委員と同じように私も必要だとは思っているのですけれども、発生した重大な事故なり何なり、原因を調べて、適切な調査報告をする。患者さんからやはりどうしても納得が得られないものはルートを確保しておくというふうなことは、やはり社会への納得という意味でも必要なのではないかなというふうに、私個人としてはすごく感じています。
○有賀構成員
現に、幾つかの県医師会のレベルで先駆的にここで議論されているようなことをやっているのです。そのような場所に行きますと、そこの県民である患者さんがきちんとそう言って、そしてそのまま病院側とどうするかという仕組みはあるみたいなのです。
だから、この手の話を議論する中で、それは全く別だというような絵そらごとを僕らは言っているわけではないのです。
何を言っているかというと、こういうふうな仕組みをつくる中で、今のようなことも同時進行でできてくるに違いないということを言っているわけです。つまり、もう既にそういうふうなことをやっているところがあるわけですから。だから、そういうところをメディアとして取材に行くと、行く先ではこういうふうなことでやっているのだなというふうな話が少し見えて、そういうふうな目でこの議論を聞くと、ああ有賀さんが言っているのはそういうことだというふうになるのかもしれません。
だから、そういうふうな多角的なものの考え方をしないと、あそこはつくると言っている、ここはつくると言っていないみたいな、そういうステレオタイプな、まさに机上の空論みたいな話になりますので、ちょっと気をつけてお願いしたいと思います。
○山本座長
どうぞ。
○本田構成員
有賀先生のおっしゃることもとてもわかるのですけれども、やはりそういうものがあるよとか、民間のいろいろな自発的な取り組みだとか、そういうものとかがあることは事実で、そういうことは応援していくべきだと思うし、多角的にみるというのもとても大事だと思うのですけれども、やはり日本の医療の仕組みというのはある一定の部分でそういう部分も仕組みとして担保する部分があることが医療への信頼、また先生方もそのほうが安心という部分もあるかもしれませんし、そういうこともやはり仕組みとして考えていくというのも重要なのではないかなと思うので、そういう部分を否定しているわけではないのです。
○有賀構成員
だから、その仕組みをつくるのはここの議論ではないのでしょうか。
○中澤構成員
私も随分考えたのですけれども、今の御議論の中で出てくるのは、第三者機関に問題を投げると出てくる問題なのですよ。だから、今、先ほど社会が納得とおっしゃいましたけれども、やはり医療事故は私は本当に個別的。何回も言いますけれども、要するに、何の患者さんに誰がかかわって、どういうことをやって、どういうことが起きたということの中で起きている問題なので、それを社会的に意味を持たせて解決しようというと無理が出てしまうのではないかというので、院内調査で個々の問題を解説して、いろいろな共通項が出たら、それは社会の問題としていくという仕組みでないと、問題が起きるのではないかというので、私が院内事故調をしっかりしろというのは、そういう意味があります。全て第三者機関が入ると、資格がどうのとか、お前その立場なのかと必ず話が出てしまうし、そういう問題と、やはり個別の問題というのは分けて考えないといけないのではないかと思います。
○本田構成員
中澤先生のおっしゃっていることは、本当に私も共感する部分が多くて、全てを第三者機関でやれると私も思っていませんので、やはり院内事故調をしっかりするというのは基本だと思うのです。そこのどこがどう、どっちがどこをどう担当するかとか、協働の仕方とか、その辺はいろいろな考え方があるので、私自身もこれがいいというふうに、今は言えませんけれども、そこはすごく理解しているのと、あと社会の納得というのは、一々一つ一つを全部プライバシーも関係なく、全部言って社会がそれについて1つずつ納得するということではないです。安心感・信頼感という意味の納得感です。
○山本座長
松月構成員。
○松月構成員
第三者機関の意味は医療者の責任を果たすことです。例えば、患者さんの納得を得られるかどうかは別の問題として、日本中の医療者の良心として、そういう機関を作ってもらいたいというところがスタートになります。その機関にある程度権限が付与されて、必ずしも望ましいとは言えないような病院がジャッジされるという機能は今後の議論の中でついてくるものではないかと思います。ジャッジし、排除するというものではないと考えております。
○山本座長
高杉構成員。
○高杉構成員
日本医師会の高杉です。私はまさに本田委員も松月委員もおっしゃるように、院内事故調査、現場が一番大切。現場で解決できないことになったら、これは第三者機関にお願いする。この第二段階、第三段階が大切だと。院内事故調査委員会も、医療者だけで解決することもありますけれども、ここに第三者的委員会がある場合、それはセカンドステージの院内事故調査委員会と申しておりますけれども、その上で、なおこういうシステムがあったら、国民の皆さんは安心するだろうと。それがまさにモデル事業の1つの結実した形であります。
しかし、モデル事業、今の第三者機構で、必ずしもスムーズに行っていないとか、時間がかかるとか、これを解決していかなければ、今の形でそのまま行くとも思いません。
それからもう一つは、医療機関、あるいは各県、各大学、やっぱり差があるのですね。これを一応、どこでもきちんと説明できる。あるいは究明できる、予防につなげられるようなシステムをやっぱり医療人がつくるべきだと。その点では、この日本医療安全調査機構の企画部会に私も参加しておりますけれども、ここにたくさんケースが挙がってくるようでは困るとパンクする。逆に言ったら、ここでは検証する、あるいはそれを集計して予防につなげる。ここで一々出番があるようでは、やはり医療現場が相当荒れていると私自身は思っています。
したがって、その前さばきのシステムを、これは県医師会なり、各大学なり、基幹病院がきちんとやっていくということが必要。だから、この前の院内事故調査委員会を我々は大きく広げて、第三者機構に行くのは小さくしてというシステムをつくっていきたいと思っています。
○山本座長
申しわけございません。御発言をいただいていない方に。
○鮎澤構成員
申しわけありません。何点かありまして、まず1点事務局に確認をさせていただき、次に飯田構成員に御質問させていただき、その次に樋口構成員、有賀構成員のお話にかかわることについて御質問させてください。
先ほど、山口構成員の御質問に対して、実は私も消費者庁のスキームからどういうふうになると外れることができるのかということを具体的にイメージしながらいろいろと考えていたのですけれども、先ほどの御回答では、必ずしも、例えば国土交通省になければいけないというように、どこかの行政監督官庁に入っていることがスキームから外れる必要条件ではないのだと。逆に、どうやればいいのかということをここで提言することができるのだということで、お返事をいただいたようにも思うのですが、それでよろしいのでしょうか。
○吉岡総務課長
私どもとして、必要条件なのかどうなのかは、現時点ではわかりかねるというのが正直なところでありますので、そこは仮に民間であっても、どういうことがあれば外すことができるのか、できないのかというのは、恐らく、現時点で判断できないと思いますので、そこは最終的に御確認いただくことかなというふうに思っております。
○神田審議官
余り議論を誘導するつもりは全くないのですけれども、自然体で最終的にはこの案が固まった上で、消費者庁と行政部内で協議をすることだとは思うのですけれども、一般的には、消費者安全調査委員会のものというのは、今、外されているのは運輸安全委員会の調査対象となったものは外していると。それから法制的には立ち入り調査とか、検査とか報告調書について罰則で担保された調査権限というのがあるので、同等の強制力を持った調査ができるという前提で調整されているとすると、民間では外れない可能性ももちろんあるとは思うのです。
ただ、前回、私が聞かせていただいて思ったのは、消費者庁には必ずしもそんなに調査安全委員会、余力があるわけではなくて、体制を組みながらやっているということですので、実行がしっかりと立ち上がったものができれば、消費者庁があえてここに精力を割くだけの体制を組んでいるというふうには受け取っていません。ただ、できた第三者機関の調査というのが、やはり強制権がないことによって十分解明できないとか、消費者たる患者さんの納得が十分得られないという実態があれば、結局、調整として外されていないので出てくる可能性は否定できないと。ただ、しっかりとしたものができれば現実的にはこれがメーンになって、仮に万一そういうことがあったとしても、前回お聞きしたあれですと、ほかの行政機関等による調査の結果の評価ということですので、あくまでも専門家がちゃんと分析したものがあれば、それをまた評価をするというような関係になるのではないかと。
したがって、まずこちらがしっかりしたものができるということが非常に大事ではないかと、実行上はそういうことではないかというふうに思います。
○鮎澤構成員
ありがとうございます。
改めてしっかりしたものをつくらなければいけないのだという気持ちを新たにいたしました。
飯田構成員に。先ほどのお話にも絡むのですが、スライドの2ページ目に(8)日本医療機能評価機構等のところで、「等」は産科の補償制度のことなのかというお話がありましたが、その後にお話があった日本医療安全調査機構は、この中には入らないのでしょうか。発展的に活用していくという中に、だんだんいろいろなオプションが出てきていると思うのですけれども、そこに何かお考えがあればお聞かせいただきたいと思いました。
○飯田構成員
その議論もいたしました。あえて日本医療機能評価機構等としたのです。
ですから、ほかは否定はしませんが、ここに書いてある日本医療機能評価機構が最適だろうという認識であります。
今の枠組みもあるし、今までの医療事故調査の長年の経験もあるし、データベースもあるし、いろいろな公表する仕組みもできております。ただ、重要事故があった場合には、訪問サーベイ、実際に現地でやっている事例もありますので、私は個人的にも四病協としても最適だと思っています。ですから他を否定するわけではありませんが、あそこにも、こちらにもつくる必要はないだろうと思います。
○鮎澤構成員
ありがとうございます。
それでは、次に樋口構成員と有賀構成員のお話にもかかわるところなのですが、日本医療安全調査機構が協働型というものを提案されていて、この協働型、私自身はいろいろなオプションのひとつとして十分検討されるべき形だと思っているのです。皆さんがお話になられている院内の事故調査がまず大事だと。そのことにも全く賛成で、事案や地域や専門性によっては、必ずしも専門性、公正性を担保できる外部の第三者を準備できないものもあるので、
そのときには、こういったところがサポートしてくださるというのは,特に中小病院などにとっては、とても心強いものだと思っているのです。ただ、この協働型に対して、有賀構成員のメモには、「スライドに協働型と称して乗り込んでくる」というメモもあって、協働型という字面がとても優しげなので期待も誤解もしてしまうのかもしれませんが、一体どちらが主体になって動いていこうとしているのがこの協働型なのか、これからの議論に関わるかもしれないので、お考えをお聞かせいただければと思っています。
○樋口構成員
場合によっては男のほうの山口先生にちょっと補助もいただきたいと思いますが、どちらがというのは本当に協働型なのです。ここにあるように、第三者機関から1名だけではなくて、数名派遣しというので、その典型的な形は、今、鮎澤さんがおっしゃってくださったように、自分のところの院内だけでは、まず担当医がその分野では1人しかいないというのだと、自分について自分を判断するというお話にもなりますし、そうするともう一人別の専門員をというのはその院内にはいない。どこかからお願いしたいと。医師会へというようなこともあるのですけれども、こういう協働型で、今、やっているのは、この日本医療安全調査機構には、さっきもいろいろ学会の名前をずらっと並べましたけれども、外科学会であれ、何であれ、いろいろなところの学会の方が協力してくださって協力医のリストまでできているのですね。だから、そういう人の中から、利害関係がもちろんない人で、一番ちゃんとした人を推薦してというようなことなので、乗り込んでいって何とかしようというようなことではないので、原因究明を一緒にやろうというようなことだと私は理解しております。
○山本座長
山口構成員。
○山口(徹)構成員
男の山口として発言させていただきますけれども、やはりモデル事業も基本的に院内の事故調査委員会は、それを脇に置いておいて、第三者が判断をするというふうに考えていたわけでは決してありません。
大綱案が出た当時から、やはり院内の事故調査委員会をちゃんとやってくれと。その結果も一応レビューするということも必ず大きな仕事だというふうに考えています。
協働型が出てきたのも、やはり大きな流れは、基本的に病院の院内事故調査委員会にちゃんとしっかりしてもらいたいと。だけれども、今、モデル事業に依頼があるほとんどの事例は、やはり病院に御遺族のほうに不信感がある。ここでは困る、どこかほかでやってくれないかという流れのところにあったので、第三者機関としてモデル事業が引き受けるという形できましたけれども、しかし院内の事故調査委員会がちゃんと機能している病院も結構あるのだから、やはり基本はそちらに任せて、そこへ外部から委員として参加をして、最終的に、今、実際に行われているのも、それの結果をまとめて、報告書をまとめる作業も、全て院内の人がおやりになっています。
その会議に、外部からそれぞれの領域の専門家を推薦し、出てもらうという形になっているので、その基本の流れは、やはり院内の事故調査委員会が主導をしてやるという形で行っていますから、その先には当然院内事故調査委員会がやって、その結果をレビューするというシステム、多くの病院がその形で引き受けられればそれで十分ではないか。最終的に恐らくモデル事業をやっている第三者機関の日本医療安全調査機構も出番がなくなればなくなるほど世の中が進歩したという話だというふうに思うのですが、ただ、現在、8,600ぐらい病院がある中で、400床以上の病院は10%にすぎません。200床以下の病院が実に70%を占めているわけですから、本当に200床以下の病院で、院内で全てやることができるかと。そのときに誰か手を貸してサポートをする機関が要るのではないか。恐らく第三者機関の大きな役割はそういうところにあって、何とか院内の事故調査委員会の活動をむしろサポートしていく。それで必要になったら委員を推薦し、委員会に参加してもらうということがやはり大きな役割になっていくのではないかと。
そういうものの構成として、大きな提案をしてきたというふうに思っています。
○中澤構成員
ちょっとよろしいですか。
○山本座長
ちょっと時間あれなのですが、有賀構成員にも御質問だと。
○有賀構成員
質問されたことになっているのでしょう。
今、山口先生がおっしゃったことでおわかりだと思いますけれども、モデル事業そのもののキャラクターから出発しながら、日本医療安全調査機構も少しずつ進化していることは間違いないのです。
ただ、進化はしているその状況そのものを十二分に理解した上で、説明責任を果たすようなメカニズムと、病院の医療安全をより強くしていくというメカニズムはやはり方法論が違うのですね。
ですから、今、言った違う方法論がある中で、片一方は実はそういうふうなモデル事業で出発している。やはり患者さんの御家族と対峙してしまっているような局面から出発しているというふうなキャラクターのままに、院内の事故調査委員会を助けるのだという形で入ってくるのはどういうふうになってしまうのだろうというようなことがあるので、したがって、医学部長病院長会議は、樋口先生のこの機構に参加しますけれども、この部分については、私たちの委員会でつくった言葉ですが、「乗り込む」ような形でのそれは多くの医療者はちょっと違うのではないかと言うのではないでしょうかということなのです。
ですから、先ほどの図も、ここに樋口先生が御説明になったパワーポイントのこの図と資料の中で出てくる図は、院内型の面積がたしか違うのです。院内型の面積が違うということは、院内型のものをどういうふうな形で日本の国の仕組みの中に入れ込んでいくかというふうな議論は、今、進化しているというふうなことなのです。
だから、違うのですけれども、高杉先生がおっしゃるようにあらかた似ていて、何とかまとめていきたいというふうなことについては、そういうふうなことなのだというふうに理解しないといけないと思う。
だからこれは立体的に理解しなければいけないという意味では三次元ですけれでも、時間のファクターが入ってきますから、これは四次元の世界なのです。
ですから、資料を見ながら、昔はそうだったのだなというふうなことばかりが資料の語るところみたいなところがあります。
中澤先生がこれからおっしゃろうとすることは、多分、もっと先には、原点の部分がきっとあるはずだとおっしゃりたいのではないかと思うのですね。
○山本座長
では一言だけ。
○中澤構成員
ちょっと違う話になってしまうかと思うのですけれども、要するに今のお話の中で、小規模の病院の問題をどうするかということを第三者機関に求めるということなのですけれども、ただそれになると、今、私らは恐らく院内調査を一生懸命やってきて、これでいいのではないかというふうに思っている中から言うと、いろいろな問題が出てきて、全部捨てなければならなくなってしまう。例えば、院内でやるから、全部責任持つから、あなた言ってくださいということを前提に調査に入るわけですけれども、その中に第三者機関が入ったら、どう説明するかということになりますね。第三者機関が責任を持ってくれるのだったら話は別ですけれども、責任はまだ医療機関にあるわけですから、だからそういうことで、非常に難しくなってきてしまうということがあるので、今、質の悪いところをどうするかということは、ちょっと別な問題にしていただかないと、今、一生懸命やっているところは全部ゼロからまた始まってしまって、みんな第三者機関の言うことを見るような、言葉は悪いですけれども、本当に指示待ちで自分たちでは何もしないというような風土になっていってしまうのではないかと気がします。実はそういう方向性が多いのです。決めてくれればそちらに従うけれども、自分たちでは考えないというのが。だから、これはやはり医療に関しては、ちょっと問題が大きくなっていってしまうのではないかという気がするので、議論をするのだったら、別でお願いします。
それからもう一つ。
○山本座長
御発言をいただいていない方に。
○高杉構成員
今の質問に。
○山本座長
高杉構成員。
○高杉構成員
既に福岡方式というのが始まっていますけれども、診療所といえども、中小病院といえども、これは医師会、大学が応援して院内調査委員会をつくろうと。いきなり第三者委員会が入るのではないということで、ちゃんといろいろなところで述べております。
したがって、それは誤解。各県でやれると思います。
○山本座長
それでは、加藤先生、一言だけ。
○加藤構成員
やはり、院内の事故調査について重要な位置づけをしようとする以上、きょう皆さんの意見を聞いていてとても心配になりました。突然の医療事故で家族を失って病理解剖するというのは大変なことなのです。
解剖して、いろいろな負担を感じながら遺族が協力するわけなのですけれども、真相究明、再発防止のために行われた営みの最終的な調査結果の報告書を遺族に渡さないという病院があってもいいような物の考え方というのは根本的に間違っていると僕は思うので、それを改めていただきたいということは一言言っておかなければいけないと思いました。
○山本座長
わかりました。
豊田構成員。
○豊田構成員
すみません。今日はもう時間がないから、思っていることを全部言えないので、また次回にお願いしたいのですけれども、まず日本医療安全調査機構の取り組みをもっとよりよくして発展させていただきたいと願っている遺族の一人としてお伝えしたいのが、なぜ願うかというと、調整看護師のような立場の方が、患者家族にもしっかり聞き取りをしてくれて、記憶や事実関係の整理をしてもらえるということがすごく大きいです。それは後にわかり合うための過程で必ず必要だと思うのですけれども、多分、院内で事故調査委員会を立ち上げられても、そこの部分まで踏み込んでやられているところがまだまだ少ないのではないかと思いますし、そこからさらにきちんと報告書をつくって、それを当該の医療機関と遺族の両方にしっかりフィードバックしているという仕組みが、やはり遺族の方々が一番願っていることだと思うのです。
ですので、今、加藤構成員がおっしゃったように、報告書を作成したのに渡さないというのは、私たちには考えにくい話だと思いました。
あと、院内でしっかりやっていただきたいのは当然願っていることなのですけれども、毎日のように苦情が来たりして、聞き切れないというのは、大きな病院ほど大変なのは、私もそういう仕事をしていますので、よくわかるのですけれども、亡くなられたような医療事故や重い事例の場合には、一度しっかり意見を聞いていただくという体制が院内にないと、それを聞き切れないということで終わらせられてしまったら、それはやはり紛争化してしまうと思います。
昨年から患者サポート体制の充実を求められ、診療報酬にも点数がつくようになっていますので、院内にしっかり話を聞く人材を配置した上で、そこからまたどういう体制をつくったり、どういう調査をしていったらいいのかというのをしっかりやっていく仕組みをつくっていただかないと、今の段階では院内を中心にとおっしゃられても、その辺を整備していただかないと受け入れられないと思いました。
協働型については、私も、有賀構成員のおっしゃったことはすごくよく気持ちがわかって、私自身も今の協働型だと不安だなと思うところが実はあります。でもこれは、決して悪いことになる方向ではもちろんないので、私たちのように現場の中でそういう対応を経験している者の話を聞いていただいて、いい部分を取り入れていただきたいと思いますし、今、懸念されていることは、私も同じように思っていることが幾つかありますので、そこについては、また日本医療安全調査機構のほうで聞いていただいて、よりよく改善していただければいいことだと思います。モデル事業の取り組みは、これからも応援させていただきたいと思います。
○山本座長
ありがとうございました。
それでは、既に時間をかなり大幅に超過してしまいまして、まことに申しわけありませんが、大変活発な御議論をいただいて、次回以降、議論を深掘りしていく手がかりというのは、相当程度出てきたものと、有意義な議論であったというふうに考えております。
本日は、さらに資料6についても御確認をいただく予定でしたが、これはもう時間がありませんので、申しわけございません。次回に回させていただきまして、最後に今後の予定等について事務局のほうからお願いします。
○川嵜室長補佐
次回の検討部会の日程につきましては、調整の上、後日連絡させていただきます。
また、お手元の参考資料ファイルは机上に置いたままお帰りください。
○山本座長
ありがとうございました。
それでは、本日はこれで閉会いたしたいと思います。
長時間にわたる御議論どうもありがとうございました。
<照会先>
医政局総務課医療安全推進室
室 長: | 宮本 内線2570 |
室長補佐: | 川嵜 内線4105 |
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