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2012年12月12日 第75回厚生科学審議会科学技術部会 議事録

厚生労働省大臣官房厚生科学課

○日時

平成24年12月12日(水) 9:30~12:00


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階)


○出席者

永井部会長
相澤委員 井部委員 今井委員 今村委員
岩谷委員 金澤委員 桐野委員 玉腰委員
野村委員 橋本委員 松田委員 町野委員
南委員 宮田委員 宮村委員 望月委員
山田委員

○議題

1 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針の見直しについて
2 ヒト幹細胞臨床研究について
3 その他

○配布資料

資料1-1「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」見直し案に係る意見募集の結果について
資料1-2指針見直し案に係る意見への対応の主な事項(概要)
資料1-3ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(見直し・最終案)
資料2-1ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について
資料2-2ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について
資料2-3ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について
資料3国立保健医療科学院の評価報告等について
資料4iPS細胞を用いる加齢黄斑変性に対する臨床研究の取扱いについて
資料5戦略研究の事後評価について
資料6「戦略研究に向けた研究実施計画書作成に関する研究」の中間評価について
資料7「国の研究開発評価に関する大綱的指針」改正について(概要)
参考資料1 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿
参考資料2-1「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の見直しについて(概要)
参考資料2-2「現行指針」と「見直し案(パブリック・コメント時点)」と「見直し・最終案」の対照表
参考資料2-3「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の見直しについて
参考資料3ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料
参考資料4平成24年度戦略研究に向けた研究実施計画書作成に関する研究公募要項
参考資料5国の研究開発評価に関する大綱的指針(平成24年12月6日内閣総理大臣決定)

○議事

○尾崎研究企画官 
定刻になりましたので、ただ今から「第75回厚生科学審議会科学技術部会」を開催いたします。委員の皆様には御多忙の折、お集まりいただき御礼申し上げます。
 まず、委員の交代について御報告いたします。既に御報告しておりますが、7月に佐藤洋先生が辞任されており、新たに北海道大学大学院医学研究課の玉腰暁子委員に御就任いただいています。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は4名、廣橋委員、川越委員、塩見委員、西島委員から御欠席の連絡をいただいております。また、金澤先生は少し遅れるという連絡をいただいています。委員数23名ですので、出席委員数は過半数を超えております。会議が成立いたしますことを御報告いたします。
 続きまして、本日の会議資料の確認をいたします。お手元にあります「議事次第」を見ていただきますと、半分より下のところに「配布資料」と記載しているものです。配布資料の資料番号だけを申し上げますので、確認いただきたいと思います。資料1-1、資料1-2、資料1-3、資料2-1、資料2-2、資料2-3、資料3、資料4、資料5、資料6、資料7です。参考資料として参考資料1、参考資料2-1、参考資料2-2、参考資料2-3、参考資料3、参考資料4、参考資料5、以上になります。資料の欠落等がございましたら事務局にお申し出ください、よろしいでしょうか。
 それでは永井部会長、議事の進行をよろしくお願いいたします。
○永井部会長 
では、早速審議に入ります。最初に「『ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針』の見直しについて」御討議をお願いします。事務局より説明をお願いいたします。
○尾崎研究企画官 
資料としては資料1-1、資料1-2、資料1-3、参考資料として参考資料2-1、参考資料2-2、参考資料2-3を御用意いただきたいと思います。
 まず、参考資料2-1を御覧ください。「『ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針』の見直しについて」のこれまでの経緯等について説明いたします。1ページ、2「見直しの経緯」を御覧ください。(1)にございますように、前回ヒトゲノム指針については平成16年に全面改正をされているものです。(2)は、解析技術の進展により、より高速かつ簡易に遺伝情報の解読が可能になっているという状況など、それを基にして研究スタイルが多様化しているという状況があるところです。
 続きまして、現行のゲノム指針の施行から5年が経過し、見直しの時期になっているというところです。このため、当部会には平成22年12月にそれを検討するための専門委員会の設置について御了解いただき、平成23年4月より3省に専門委員会を設置し合同開催してきたものです。これにつきましては、本資料の7ページ目を見ていただきたいと思います。それぞれ3省に部会が設置され、合同で検討してきた。メンバーは7ページの2にあるとおりです。この資料の8ページ目、裏になりますが見ていただきますと、専門の合同委員会につきましては、平成23年4月から12月まで9回の検討をいたしました。その検討を受けまして、平成24年1月25日に科学技術部会の了解・了承を得まして、各省の関係の部会の了承も得ましてパブリック・コメントを実施したところです。そのパブリック・コメントの実施を受け、平成24年4月に10回目の3省委員会を開いたという流れになります。
 参考資料2-1の2ページ目を見ていただきたいと思います。1ページ目から2ページ目にかけましては今説明したことが書いてあります。平成24年4月、第10回合同専門委員会で最終的に見直し案をまとめた。(6)に書いてありますように「個人情報保護法等の特別法についても整備する」ということが「社会保障・税番号大綱」において書かれたと。そこで、厚生労働省は内閣官房と連携し、平成24年4月より検討を開始した。来年、平成25年通常国会へ「医療等情報の取扱い等に関する法案」の提出を目指し、夏頃までに法案化にあたっての基本的な論点の整理を行い、報告書をまとめることとされた。このような状況が出てきましたので、ゲノム指針の見直し案についてはその議論の行方を考慮する必要があるかを見極めるために、3省の専門委員会の上位の関係部会への上程を見合わせてきたものです。
 平成24年9月にその報告書がまとめられましたが、特に現時点でゲノム指針の見直し案に具体的に反映する事項はなかったという状況がありましたので、本日、科学技術部会のほうで御検討いただくという流れになっているものです。
 今回のゲノム指針の主な見直し事項につきましては、パブリック・コメントの前のところでも御説明していますが、まず(1)としては、既存の試料等の収集・分譲のあり方というところです。研究機関の一つのゲノム研究が終了後、他の機関がその試料を使って研究ができるようにしたというところです。その場合、遺伝情報・関係情報の保護を図りつつ、もともと試料を持っている研究実施機関(a)へは(b)に対して匿名化を条件に提出、提供できるようにしたというところです。すなわち、連結可能な匿名化の状況でも提供ができるとしたものです。これにより、研究実施機関で保存している試料をより有効に活用ができるようになるということと、研究実施機関(b)は、研究実施機関(a)から試料等の提供者に関した追加情報の入手も可能となるという効果があるというものです。
 (2)は、インフォームド・コンセントに関することです。インフォームド・コンセントを取る際、将来のゲノム研究に当該試料等が利用できる可能性及びその手続きを含めることができるとしたことと、解析の結果であります遺伝情報の開示の方針についても、インフォームド・コンセントの説明事項として明記したというところが二つ目になります。
 この効果としてはそこに書いてありますとおり、「研究者は、自らの研究のために提供を受けた試料等を、将来の別のゲノム研究で利用する場合、その同意の範囲内の研究であれば提供者の再度の同意を受けずに利用が可能となる」。また「提供者は、遺伝情報の開示の方針に基づいて、開示・非開示の判断がより容易になる」ということが関係しているものです。
 (3)遺伝情報の開示の扱いです。これにつきましては、その次の3ページ目を見ていただきたいと思います。解析された遺伝子情報の開示につきましては、今回もいろいろ議論がございましたが原則開示という方針になったものです。ただ、開示の説明において、ここに書いてあるようなことでインフォームド・コンセントが得られている場合は「全部又は一部を開示しないことができる」という項目を追加したものです。
 (4)その他としては、先ほど言いましたように試料などはいろいろ動くわけなので、外部委託(解析等)における遵守事項の具体化というところです。これまでは「適切に監督する」とか「適切に管理する」ということだったのですが、細則等におきまして具体的に、契約により担保する、項目はこういうことということで例示させていただいています。あと、倫理審査委員会の委員に対する教育・研修等の規程を新たに追加したという状況です。
 続きまして資料1-1を御覧ください。この内容のものをパブリック・コメントにかけたという結果です。真ん中辺りにありますが、平成24年2月3日から3月3日までの間、3省のホームページ等を通じて意見を募集した。結果としましては、意見提出者の数は46件、意見数は94件と考えております。いただいた主な意見の概要及びその意見に対する考え方をまとめたものが、この資料1-1です。取りまとめの都合上、意見については要約し、内容により同趣旨の意見は適宜集約するとともに、多くの意見のあった項目や指針の内容の追記・修正を行い、意見等を中心に整理したものです。この意見の考え方につきましては、一番上にありますが、4月16日の3省の専門委員会の合同委員会にも報告し、内容はそこの場所でも了解されているという状況のものです。
 内容ですが、左側に大きくゴシックの数字が振られています。例えば2ページ目を見ていただきますと、4や5にあるような、インフォームド・コンセントの在り方ということで、将来の研究への試料の使用に関する意見や、試料情報の廃棄に関する意見などが明記されているものです。次の3ページ目から4ページ目にかけては、遺伝情報の開示にかけて、不確実なデータの開示に関する意見や、非開示理由に関する意見等が出てきたものです。6ページ目につきましては、既存試料情報の利用というところに関する意見が出てきているものです。7ページ目の20、21の辺りにつきましては、保護すべき個人情報の関係の意見が出てきたところです。その他としては10ページ目の26、倫理審査委員会の教育・研修に関する意見、11ページの28にありますように遺伝子ビジネスの規制に関する意見等々が出てきたものです。
 基本的には、3省の委員会等で出てきたいろいろな意見が同じように出てきたというように理解しておりまして、3省委員会で議論し、また科学技術部会でも議論していただいた内容につきましては、そのままとさせていただいて、そのときの考え方を3省の考え方のところに示しているものです。
 続きまして、資料1-2を御用意いただきたいと思います。先ほど資料1-1の中で意見がいろいろあったということを申しましたが、その中で意見への対応として変更したということ、すなわちパブリック・コメント以降、今日提示している案として変更していることの主な事項についてまとめたものが資料1-2になります。
 まず、資料1-2の1ページ目を見てください。まず1「多設共同研究を行う場合、他の倫理審査委員会への審査依頼の規定の追加について」。これにつきましては、これまでは他の倫理審査委員会の審査依頼につきましてはこの表の左側にあるとおり、小規模であること等により、倫理審査委員会の設置は困難である場合のみだったわけなのですが、共同研究で行う場合についても、左側に書いてあるような条件であれば、倫理審査の規程を追加したほうがいいのではないかという意見に基づき、このように改訂しているものです。
 次のページ、2「説明文書の記載に関する細則において」です。これについては、今回の検討におきましてインフォームド・コンセントの文章に載せるべきことについて、今までの細則では細々いろいろなことが書いてあったので、その内容について基本的なことを中心に整理したものでした。しかし、右側に書いてあるような網掛けの部分については、重要なものであるので復活して書いておくべきだということで、記載させていただきました。また、下のところのもう一つのポツにつきましては、今のパブリック・コメント時点で括弧書きの中が分かりにくいということで、分かりやすくしたところです。
 2ページ目の3「遺伝情報の開示する場合の新たに追加した規程について」です。新たに追加した規程が左側の部分ということで、必要に応じて説明に努めることとしというように書いてあったわけですが、この辺を開示する場合には必要に応じてということではなく、きちんと開示すべきだという話がありましたので、「必要に応じ」ということは消しました。ただ、開示できる範囲や可能な場合、いろいろな場合がありますので、「可能な範囲で」ということを付け加えさせていただきました。
 3ページ目、4の迅速審査の要件です。臨床研究に関する倫理指針等で規定されている要件を追加し、指針間の統一を図ってほしいということです。これについて追加した項目につきましては、右側の網掛け部分、「提供者及び代諾者に対して最少限の危険を超える危険を含まない研究計画の審査」ということについても迅速審査の対象にするという点につきまして、この内容については3省委員会、専門委員会でも、合同委員会でも追加しても問題ないだろうとなりましたので、それを追加したものです。
 なお、裏の4ページを見ていただきますと、この4関係についての「臨床研究に関する倫理指針」や「疫学研究に関する倫理指針」の関係部分について、こういう記載があるというところを参考にさせていただいているものです。
 こうしたパブリック・コメントに基づいた意見への対応を踏まえ、最終的に本日御議論いただく最終案としてまとめたものが資料1-3になります。繰り返しになりますが、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」につきましては、3省庁の大臣告示という位置づけのものです。この資料1-3をめくっていただきますと、現時点で全体がこういうようになっている状況です。ページをいろいろめくっていただければと思うのですが、いわゆるゴシック体である部分につきまして、今般御了解いただければ官報告示される部分になります。少し小さいサイズ、明朝体の部分などにつきましては、局長通知等で解説として、告示と同時ぐらいに示す内容を特に含めているものです。
 また、下線がいろいろ引いてある部分につきましては現行の指針から追加された項目。現行の指針から削除された項目については、ここには反映させておりません。黒い網掛けの部分につきましては、先ほど主な変更点として報告させていただいたほかに、用語の使用などについて法令上の確認を取っているところですので、現時点での整理、例えば「若しくは」と「又は」の関係とか、その辺を踏まえたところがなっているものですので、この見直し案に基づいて御議論いただきたいと考えています。
 そのほかの資料として、先ほどの参考資料2-1は経緯について、参考資料2-2を見ていただきたいと思います。参考資料2-2は「現行指針」と「見直し案(パブリック・コメント時点)」と今日、先ほど資料1-3で示した「見直し・最終案」の三つを並べたものです。
 もう一つ、参考資料2-3を御覧ください。4月16日の3省の合同専門委員会において、先ほどのパブリック・コメントに関わることや、そこで変更した事項について御検討いただいたということがございます。その中で、3省の検討委員会として、今回まとめるに当たっての意見を1枚の紙にしようということで、それをまとめたものがこれになります。最初はいろいろな経緯などが書いてあり、裏のほうを見ていただきますと「なお」以下のところ、「今後とも検討が進められることを望む」という文章がまとめられておりますので、参考としてここに提出させていただいたというものです。
 説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○永井部会長 
ありがとうございます。事務局から御説明がありましたように、参考資料2-1にゲノム指針の位置づけ、見直しの経緯、今回の見直し事項のポイント等がまとめられております。それでは、委員の皆様から御意見、御発言をいただきたいと思います。
 私が座長を務めさせていただきましたが、今回の見直しの経緯といいますのは、非常に技術が進歩してきて、莫大な情報が短時間で入手できるようになってきた。しかし、その一方で得られた情報が必ずしも正確ではない。また、そうした情報を整理するのも極めて大変な時代になってきた。そういう状況においてゲノム研究の在り方をどうするか。また、被験者からいただいた試料を有効に活用するにはどうしたらいいか。個人情報法との関係の中でどのように対処するのが最も適切であるか。そうした背景を基にして今回の改訂が行われました。
 参考資料2-1にございますけれども、大きな変更点として、これまで研究が終了したあと、ゲノムの廃棄ということが義務づけられておりましたけれども、これを一定の手続きのもと、特に対応表を有することによって、匿名化はしますが、あとでたどれるような形で他の研究機関に提供できるということが非常に大きな変更点になっております。
 また、インフォームド・コンセントの在り方が非常に重要になってまいりまして、そのような試料の他機関への提供であるとか、あるいは遺伝情報の開示・非開示、その辺りのあり方についてもインフォームド・コンセントを十分に行うことが求められます。
 遺伝情報の開示につきましては、先ほどお話したように極めて膨大な試料であるということ、また、そこにかなりの誤り、誤った情報も大量に含まれているということを考慮し、研究業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがあり、かつ開示しないことについての提供者のインフォームド・コンセントを受けている場合は全部又は一部開示しないこともできる。そういう規定になっています。
 そのほか、外部委託における遵守事項の具体化、研究者や倫理審査委員会の委員に対する教育・研修等の規定も追加されています。論点はいろいろあるかと思いますが、およそ主だった項目は以上です。
○今村委員 
今、永井部会長がおっしゃったことは十分に理解します。医学・医療の進歩を日本医師会としても全面的に支援したいと思います。そういう意味で、この見直し案というのは概ね妥当かと思います。
 この見直しについては、経済産業省、文部科学省、厚生労働省、3省が関係しているということだと思います。省の性格として、経済産業省は医療イノベーションの産業化というもの、文部科学省は特に研究の推進というのが省としての大きな役割だと理解します。そういう意味では、厚生労働省はそれに加えて、国民あるいは患者、被験者の権利の擁護、情報の管理というものをきっちりすることも併せて担わされているかと思います。その意味で、いわゆる生命倫理に関わる問題というものは、特に厚生労働省を中心にきっちりやっていただきたいと思います。「その他」のところで掲げてあります倫理審査委員のあり方とか、こういうことについては厚生労働省の方でもう少しきっちりした制度、枠組みというものを決めていただきたいと思います。
○永井部会長 
ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
○宮田委員 
2点あります。まず、ゲノムコホート研究というのは日本でも本格的に立ち上がってまいりました。今回の指針というのは、そういった研究を前に進める妥当な指針の改訂になったと考えています。
 2つ要望します。一つは倫理委員会がきちんと審査をするということが、この指針案の前提になっております。教育・研修などの要望・規定も明示されているということで、非常にいいとは思うのですが、それでは実際にどうやって教育・研修をするのかを考えると、各倫理委員会がどのような判断をしたのかを当面は収集して、全国的な相場感というものを形成すべきだと私は思っています。そういったことは、厚生労働省の科研費の研究の一部として取り上げていただいて、運用が非常にうまく周知徹底されて、それぞれの倫理審査委員会の判断の質が保証されるようになるまで、そういった研究に基づいて情報提供を倫理委員会にフィードバックするというようなことも、是非御検討いただきたいと考えています。
 2番目の要望になります。実は先月、OECDで会議があって、次のバイオ政策をどうしたらいいのだろうと世界中から集まって議論していたのですが、こういったレギュレーションを改訂するスピードが遅すぎないかという議論になっています。今、5年に1度の改訂ということでしょうけれども、私はゲノム研究のスピードから考えると、これは妥当ではないと考えています。少なくとも2年とか、イノベーションが起こったときには1年、そういったもうちょっと柔軟な対応を考えるべきではないか。5年というと、我が国の官僚機構は非常に優秀だから、多分5年でやろうとしますけれども、5年以内、あるいはもうちょっと間隔を短くすることを是非、御検討いただきたいと思います。以上です。
○永井部会長 
ありがとうございます。
○野村委員 
私も素人の立場から言わせてもらいますと、見直しされた事柄そのもの、インフォームド・コンセントや情報の開示など、ここに書かれていることが本当にきちんと、現実にこのとおり正しく行われることを非常に望んでいます。遺伝情報が膨大になって、難しくなって、まだ分からないことが増えてくるとなると、提供者である患者さん本人と医療界との極端な理解の違いがより進むと、結局患者さんの方も「何も分からないからいいわ、お任せで」みたいな感じになりがちな部分があって、そこに今回の指針の進んだ効果とされている部分が、乱暴にそこに乗っていかないことを本当に願っています。将来どのように変わっていくか分からないときに、やはり知らせるべき情報が出てくる可能性があったりするときに、研究に著しく支障があるからということに全部持っていったり、「患者さんにとっては全部難しいだろうからいいや、患者さんのことを考えたら何も説明しない方がいいや」という形、多分ここで書かれているとおりのことが進んでいけばそういった配慮もなされていくと思います。それが乱暴にならないことを、今の時点では望んでいます。
○永井部会長 
ありがとうございます。今回、パブリック・コメントの時間が非常にかかったというのは、医療の個人情報に関する個別法の話が出ていたということもあったかと思います。これについてはまだ見通しが立っていないということで、今回ゲノム指針の改訂を先行させるわけですが、そちらの状況によりましてはすぐ対応できるよう、個別法がもし成立したときには改めて改訂が必要になるだろうということです。
 事務局、改訂の期間というのはいかがでしょうか。今後、定期便のように5年に1度で行うのか、もう少し状況を見て判断していくのか。
○福島厚生科学課長 
本指針には、従来から5年に1度を目途の見直しだけではなく、必要に応じて見直しをするという規定がございます。今、宮田委員から御指摘があったように、永井部会長からのお話にもありましたけれども、今、技術革新のスピードが非常に速い状況においては、それを踏まえながら必要に応じて適宜見直しをしていくことで考えております。一応、どんなに遅くとも5年に1回はという趣旨だというように私も理解しています。そういう面では、必要に応じて適宜見直しはしていきたいと考えています。
○永井部会長 
恐らく、この1、2年にもブレイクスルーが起こって、昔言われた1000ドルシークエンスを数日間でということが本当に実現しそうな状況になっています。それほど高い解析機械ではないということになりますと、いろいろなところで装置が導入されてデータが爆発的に出ていくということになるわけです。そうしたときに被験者への情報の開示をどうするか。先ほどお話したように、それは100%正確な情報ではない。そういう問題を踏まえての進歩だという時代になったということです。ほかに御発言はございますでしょうか。
○相澤委員 
繰り返しですが、永井部会長、宮田委員の御指摘のように、技術展開に伴って、どうもこういうルールというものを作ってしまうと、なかなか直しにくいというのは常にあることです。臨機応変にしていただければと思います。ここの改訂指針でも、見直しの部分を若干書き足していただいたというのは、多分そういう趣旨だというように理解しています。時代に応じて柔軟な改訂をしていただくようにお願いしたいと思います。
○永井部会長 
ありがとうございます、よろしいでしょうか。もし、御発言がないようでしたら、ゲノム指針の見直し案については、科学技術部会として御了承いただいたということにさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。それでは、事務局におかれましては、告示に向けての作業をお願いします。
○尾崎研究企画官 
事務局におきましては、各省においての所要のプロセスを経た後、告示をいたしたいと考えております。告示につきましては、本日御了解いただいたということですので、早ければ12月末から1月中旬ぐらいまでを目途に作業を進めたいと考えております。告示後につきましては見直しの内容、その考え方に基づいてQ&Aの作成などもプラスアルファで進めてまいりたいと考えております。施行につきましては3省とまた検討する必要がありますが、この年末から年初にかけて告示ができれば、平成25年の4月辺りぐらいを頭に置いて施行を考えていきたいと思っています。以上です。

○永井部会長 
ありがとうございます。それでは、議事2にまいります。「人幹細胞臨床研究実施計画の申請について」の審議です。大坂大学医学部附属病院等、3機関の申請につきまして、11月21日に厚生労働大臣より諮問され、11月22日付けで当部会に付議されています。事務局より説明をお願いいたします。
○荒木再生医療推進室長 
研究開発振興課の荒木です。資料2-1に基づき説明いたします。1ページは付議です。当部会に、11月22日付けで付議されたものです。2ページは、諮問書です。記以下に、三つの課題が諮問されています。特に2と3については、共同で研究するということで、実際にこの二つは同じ研究をしていることになります。
 1番の研究計画は、3ページにあります。下部に書いてありますが、ヒト幹細胞臨床研究の課題名ということで、「重症心筋症に対する骨格筋筋芽細胞シート移植による治療法の開発」ということで、大阪大学の澤先生より預っているものです。
 概要ですが、4ページを御覧ください。実施施設及び研究責任者は、先ほども申し上げましたが大阪大学の澤芳樹先生です。対象疾患ですが、重症心筋症で、具体的には拡張型心筋症及び虚血性心筋症となっています。用いますヒト幹細胞の種類ですが、骨格筋筋芽細胞です。実施期間及び対象症例数については、登録期間は3年間、目標症例数として拡張型心筋症(DCM)の症例20例、虚血性心筋症(ICM)の症例20例となっています。
 概要ですが、左心の補助人工心臓の装着を必要とする前段階あるいは年齢などによって、心移植の適応とならないような重症の心筋症患者に対して、自己の骨格筋から単離した筋芽細胞を温度応答性培養皿を用いてシート化し、心臓外壁に移植するというものです。その他のところで書いてありますが、実はこのLVAS装着患者に対する筋芽細胞シート移植の臨床研究については、指針施行以前よりも開始されていまして、総括が行われているところです。さらに2009年8月より第?相試験、安全性の観点という確認の同様の研究が行われていまして、こちらについてはDCM5例、ICM7例についてシート移植を実施し、中間報告として安全性の観点から問題ないということもいただいています。新規性という意味合いであれば、今回は有効性を確認する第?相臨床研究であるということです。
 5ページに、少しビジュアルでどのように骨格筋を取ってきて、そしてそれをCPCにおいて単離・培養し、更に筋芽細胞シートということで、温度応答性培養皿でシート状にして、それを移植するというようなものが概要です。これが、1課題目です。
 次は19ページで、東京女子医大から出されていますヒト幹細胞臨床研究の課題名として、「早期食道癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後食道潰瘍への自家口腔粘膜上皮細胞シート移植の臨床研究」ということで、東京女子医科大学の先端生命医科学研究所の大和教授より出されているものです。
 20ページに概要が書かれています。対象疾患ですが、早期の食道扁平上皮癌で、用いますヒト幹細胞については、自家口腔粘膜上皮細胞です。登録期間は1年半で、目標症例数は10例となっています。
 治療研究の概要ですが、周在性2/3以上の早期食道癌に対してESDをした後、培養上皮細胞シートを移植し、術後の狭窄の予防を行うということです。これは、あとで出てきますが、長崎大学において口腔粘膜組織・自己血液を採取しまして、それを東京女子医科大学に輸送し細胞シートを作製して、また長崎大学に戻してそちらで移植をするというようなことです。その他のところに書いていますが、温度応答性培養皿、先ほどの大阪大学の例でも出ましたが、この培養細胞シートについては、角膜、心臓、心筋、あるいは歯周組織などの再生医療研究について用いられていると。また、東京女子医大においては、指針以前に既にESD後の食道潰瘍に用いられていまして、安全性及び効果は確認をされています。今回は何が新規性かといいますと、ESD後食道潰瘍に用いる細胞シートの遠距離の輸送システムでの安全性の確認をするということです。
 21ページに、これのシェーマが出ています。長崎大学病院の口腔外科で、被験者の口腔粘膜組織を採取すると。こちらを、組織・血清を同時に輸送し、東京女子医大で酵素処理により細胞単離すると。これは当然CPCで行われるのですが、そのあと温度応答性セルカルチャーインサートに細胞播種しまして、15日間の培養と。さらに出荷判定試験を実施した上で、また細胞シートを輸送し、長崎大学でシート移植、温度の管理等もするというものです。
 もう1例が、同様に対応する長崎大学のものです。31ページに申請書があります。課題名は、いまの東京女子医大のものと全く同じで、長崎大学の移植・消化器外科の江口教授から出されているものです。32ページの概要については、全く同じですので、説明については割愛させていただきたいと思います。御審議のほど、よろしくお願いします。
○永井部会長 
いかがでしょうか。これまでヒト幹細胞の臨床研究は、安全性を中心とした申請が多かったわけですが、今回から有効性の検証という課題が出てきています。有効性の場合には、何と比較するかが当然問題になりますので、恐らく今回も委員会の中でそうした議論が行われると思います。
○橋本委員 
大阪大学のスタディーですが、スタディーデザインとしてまず第?相で安全性は証明されたということです。どういう症例かというと、心筋症が2種類です。一つは虚血性で、一つは拡張性心筋症と、全く違うタイプの重症心筋症に対して同時に研究をやるということです。もう一つは、心移植あるいは人工心臓装着に至る少し前の段階、かなり重症で放っておけない状況のところでいろいろな治療を行うわけですね。これは、ここに書いてありますが、左室形成や非常に侵襲のある外科的治療を、ほとんどのケースではやることになると思うのですね。
 その治療法がバイパスであったり、僧帽弁形成術であったり、左室形成術であったり、いろいろなヘテロジニアスな治療法、しかもこれは極めてそれぞれの手術が侵襲性のあるものであり、かつそれをしなければその患者はサバイバルできないだろうというような前提でやる手術が入っている中で、そのようなヘテロジニアスな集団に対して、しかも完全ではないにしてもかなり効果の高いと考えられる治療法をしている中で、その細胞シートを埋め込む。その中で、この細胞シートの有効性をどのように評価するのかが極めて難しいだろうと思いますし、ではほかに何か対応があるのかというと、これは恐らくなかなか現実問題としても難しいとは理解しますが、それでこのスタディーデザインで有効性が証明できるのかが非常に危惧します。
○永井部会長 
御指摘のとおりだと思います。これは、既に一度ヒト幹指針の委員会で議論になりました。正に、そういう点をどうデザインを組むべきかが議論になっています。ほかにいかがでしょうか。
○宮田委員 
質問に近い意見なのですが、多分これはフェーズ?というと、前のほうはドーソを決めるというような、一般的な低分子ですとそのようなスタディーデザインがあるのですが、これは投与する細胞の量や質も絡んでくると思います。それをきちんと規定しないと、多分その次に結果を解釈するのが難しくなってしまうと思っています。しかし、それを今、完全にやれというのはとても難しいことなので、できるだけの努力をお願いするような形で御審議いただけるとありがたいと思います。
○永井部会長 
恐らく、シートの毎数を何層重ねればいいのかという問題になってくると思うのですね。ただ、余り重ね過ぎると、今度は血流が不全でサバイバルできなくなりますので、いろいろな問題があろうかと思います。そのほか、御意見はありませんか。よろしいでしょうか。
 そうしますと、ただ今の意見を踏まえて審査委員会で審査を行っていただいて、結果が報告された時点で、総合的にこの科学技術部会で御判断いただきたいと思います。ただ今の意見については、事務局を通じて審査委員会にお伝えして、併せて検討いただくということにしたいと思います。
 では、続いてヒト幹細胞臨床研究に係る「ヒト幹細胞臨床研究実施計画に係る意見について」の意見をいただきたいと思います。慶應義塾大学医学部について、審査委員会の結果を事務局より説明をお願いします。
○荒木再生医療推進室長 
資料2-2に基づいて、御報告申し上げます。ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会からの意見についてということで、12月12日付けで出させていただいているものです。慶應義塾大学医学部から申請のあった下記のヒト幹細胞臨床研究実施計画について、審査委員会の検討結果をまとめたものです。
 2ページは、こちらの研究の概要です。「角膜上皮幹細胞不全症に対する培養上皮細胞シートの移植」です。申請年月日は、平成24年9月11日となっています。実施施設は、慶應義塾大学医学部で、研究責任者は坪田先生です。対象疾患は、スティーブンス・ジョンソン、あるいは眼類天疱瘡、あるいは先天性無虹彩症となっています。用いますヒト幹細胞については、角膜上皮幹細胞です。実施期間については、意見発出日から2年間、5症例を目途としています。
 治療研究の概要ですが、同種角膜輪部上皮細胞自体については、海外ドナーの角膜由来のものですが、これを採取すると。さらに同種の骨随間葉系幹細胞をフィーダー細胞として、フィブリンコートウェル上で培養し、シート化したものを移植するということです。実は、これは平成21年1月に大臣意見を発出していまして、平成23年1月まで2年間研究を行ったもので、今回はこのフィーダーについて少し変えてやるというようなことで、新規で申請が上がってきたものです。その他に書いてありますように、ヒト幹細胞臨床研究としてこの角膜については、阪大・東北大学において「角膜上皮幹細胞疲弊症に対する自己培養口腔粘膜上皮細胞シートの移植」、あるいは京都府立医大における「難治性角結膜疾患に対する培養自家口腔粘膜上皮シート移植に関する臨床試験」等も施行されているところです。
 3ページには、審議概要が書いてあります。1回の審議でしたが、実際のところは一度目は同じようなプロトコールをやられて、今回はそのフィーダーを変えるところが新規性であるところを中心に議論をしていただいています。4ページは、最終の審査委員会の検討結果として、主として倫理的及び安全性等に係る観点から論点整理を進め、妥当であると判断したということで、こちらについて科学技術部会に報告をさせていただくものです。説明は以上です。
○永井部会長 
ただ今の説明について、御意見、御質問がありましたら発言をお願いします。よろしいでしょうか。もし御意見がありませんでしたら、ただ今の報告について科学技術部会として了承することとして、厚生科学審議会へ報告することとしたいと思います。
 続いて「ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について」、事務局より説明をお願いします。
○荒木再生医療推進室長 
資料2-3に基づいて説明いたします。「ヒト幹細胞臨床研究に関する実施施設からの報告について」、今回は2件あります。1件目は変更報告書ということで、東京女子医科大学から出されています「自己培養歯根膜細胞シートを用いた歯周組織の再建」です。もう一つは重大事態等報告書ということで、大阪大学医学部附属病院から出されています「重症心筋症に対する自己由来細胞シート移植による新たな治療法の開発」の2点です。
 まず1点目の変更報告書について、5ページを御覧ください。繰り返しになりますが、ヒト幹細胞臨床研究の課題名は「自己培養歯根膜細胞シートを用いた歯周組織の再建」です。責任者は、東京女子医科大学の歯科口腔外科の安藤教授です。
 6ページが概要です。大臣意見が申請されたのは、平成22年9月27日です。こちらに対する大臣意見の発出が、平成23年1月になされています。そこからの2年間ということで、平成25年1月まで予定したもので、症例数として10名ということです。概要については、そちらに掲げさせていただいていますので、変更の部分だけを中心に説明をしたいと思います。
 8ページを御覧ください。変更報告で何を変更するかですが、一つは8ページの下部にあります変更後で、今までは2年間としていたのを4年間に研究期間を増やすと。そして、各研究者の役職名、追加した研究分担者がいることは、変更点の2です。変更点の3については、臨床研究中の健康被害に対する補償について、臨床研究の倫理指針と併せて、損害保険会社による保険の設定をされたということです。9ページに変更理由が書いてあります。特に、この2年間を4年間にする理由については、東日本大震災ということで、夏季節電要請対応があったためCPCの長期運営ができなかった部分もあり、10症例をなかなか終了させることが困難であったこともあり、研究期間を延長したということです。それ以外の理由については、以下のとおりになっています。これが、まず変更申請に係る報告です。
 もう一つ、大阪大学から出していただいています重大事態報告書の件です。21ページを御覧ください。ヒト幹細胞臨床研究の課題名ですが、「重症心筋症に対する自己由来細胞シート移植による新たな治療法の開発」ということで、大阪大学の澤教授から出されている報告書です。
 22ページが概要です。これは、先ほどのフェーズ?という有効性の研究評価の前の、安全性の評価をしましたヒト幹指針研究です。こちらについて、重大報告があったということです。
 その概要ですが、24ページを御覧ください。大阪大学から上がってきていまして、重大な事態と判断した理由です。死亡につながるおそれがある、あるいは入院又は入院期間の延長というものです。重大な事態の概要ですが、そこに書いてありますように、患者背景として、2009年7月6日にペーシング機能付きの植込み型除細動を実施し、移植の登録をすると。そのあとに、臨床研究に参加をされていまして、筋芽細胞シート移植を2010年の5月にされています。半年間の研究参加期間を終了しまして、外来にて追跡調査の継続をしていたということです。2010年11月に一応研究期間としては終了しているのですが、その後2012年10月に救急車にて緊急入院されたということです。中段辺りにありますが、9月25日の心臓エコーにおいて僧帽弁閉鎖不全の増悪、あるいはBNPの上昇等が認められ、かなり多臓器不全が出現することによって、体外式の人工心肺を回したということになります。ここに書いてありますが、明確な原因は不明であるが、搬送前日までに連日の飲酒及び睡眠不足があったと。あるいは、全身軽度熱傷のために外来受診をしており、自己管理の油断があったのではないかというような推測は、ここで書かれています。
 25ページは、10月25日時点では、人工気管切開等を行いつつ、鎮静剤を中止し意識レベルの確認を行うとの情報ありということで、まだ入院中で長期呼吸管理を10月25日時点ではされているということです。
 倫理審査委員会の意見ということで、患者コンプライアンス管理の徹底をし、他の被験者についても再度教育を検討すること。また、予測される有害事象に心不全の悪化を追記すべきかと考えられるので検討することということです。エントリーの再開については、可能との判断がなされたということです。
 原因の分析ですが、当初は日常生活あるいは仕事への配慮も十分されいて、コンプライアンスが良好であったと。しかし様々なきっかけにより自己管理が悪化していったのではないかということで、本来、筋芽細胞シート移植というのは心不全を治療するというよりも、心移植あるいは人工補助心臓までの期間をできるだけ先へ延ばす、あるいは心不全の悪化を遅らせるといった側面が強く、そういうことの観点をしっかりと事前のインフォームド・コンセントでも伝えるべきでなかったのだろうか、というようなことをコメントとして出されています。
 次の26、27ページは「要約」ということで、今回の事故も含めてこの研究計画についてはこうなっているというような説明です。説明は以上です。
○永井部会長 
ただ今の2件について、御質問、御意見はありますか。先ほどの有効性評価の研究に進もうとしているわけですが、やはりこの骨格筋細胞シートというのは、今、説明がありましたように心不全を遅らせる治療であるということなのですね。悪化を防止すると。そうすると、そういう目から評価をしないといけないことになるかと思います。また、インフォームド・コンセントも十分気をつけてしていただかないと、過大な期待を患者に持たせてもいけないのではないかと思います。よろしいでしょうか。そうしましたら、ただ今の両大学病院の報告について、科学技術部会の確認及び結果を厚生科学審議会に報告することといたします。
 続いて、「国立保健医療科学院の評価報告等について」の報告です。本日は、国立保健医療科学院の松谷院長に御出席いただいていますので、説明をお願いします。
○松谷院長 
国立保健科学院の院長の松谷です。よろしくお願いします。国立保健医療科学院は、御承知と思いますが、厚生労働省の機関で、保険医療事業あるいは生活衛生に関係する職員ないしはこれに類する者、また社会福祉事業に関係する職員その他これに類する者、そのような方々の養成訓練、研修並びにこれらに関する調査・研究を行っている機関です。今からちょうど10年前、平成14年に旧国立公衆衛生院と旧国立医療・病院管理研究所とが統合しまして、国立保健医療科学院として発足したものです。
 お手元の資料3を御覧ください。3年に一度、機関評価を外部委員の方にしていただいています。1ページに、保健医療科学院長宛、評価委員会の委員長の久道先生からの平成22年度の報告が出ています。これは、平成20、21、22年の3か年の期間にわたる報告です。3ページからが、評価報告書本体となっています。
 31ページを御覧ください。31ページからは、この評価に対する対処方針が示されています。対処方針の前に要約がしてありますので、こちらに沿って説明申し上げたいと思います。評価報告書について、それぞれ段落に分けて説明を申し上げたいと思います。
 1-1「養成訓練の状況と成果」です。当院のミッション、使命の大きな柱の一つは、職員の養成訓練です。これについては、意見の中で評価をいただいていますが、従前の5区分から「研究課程、専門課程、短期研修、国際協力研修」の4区分という形で体系を再構築して、定員の変更等を行っています。これは、実は平成20年に第2回の評価委員会の報告がありまして、そこで指摘されたことに伴い、5区分から4区分に整理・統合して、新しい形にしたものです。また、事業仕分けの結果も踏まえまして、重複研修の統合、それから効率的・効果的な研修の実施について検討して、62コースから42コースと研修数も3割減少させて再編を行ったということで、今回は評価をいただいています。
 対処方針は、評価をいただきましたので、引き続き4区分からなるこの体制を維持して、円滑な運営をしたいと。また、研修の改廃については、応募状況あるいは研修生の意見、自治体や厚生労働省の要望等を総合的に検討して、組織的に決定することとしたい。それから、実際に研修を受けた方々あるいはその派遣元である自治体等について、フォローアップの調査を実施しまして、その結果を研修に活かしていきたいということです。
 1-2ですが、同じく「養成訓練の分野・課程等の選定」についてです。これについても、設置されています「教務会議」が有効に機能しているということで、指摘をいただき、評価をいただいています。科学院でなければ実施できないものに特化する努力が引き続き必要だという指摘です。対処方針としては、養成訓練についてはミッションの柱で、引き続き教務会議を中心に、その下にあります各委員会において調整機能を果たしていくということでやってまいりたいということです。特に、科学院として実施すべきもの、あるいは科学院にしかできないものについて、研修内容の改定につなげていきたいということです。また、新たに開始する研修については、その立案段階でニーズの分析、自治体等に必要な意見聴取を行いまして、適合するように努めるようにしたいということです。
 32ページです。2つ目の大きな柱、調査研究です。調査研究についての意見としては、「研究委員会」が平成21年4月から設置され、その企画・調整を行って、組織横断的な方向性について検討していることに評価をいただいています。対処方針は、評価をいただきましたので、研究委員会を中心に社会や行政のニーズを恒常的に意識しながら推進してまいりたいということです。また、保健医療活動の合理的かつ科学的な根拠、この研究の結果がそのような根拠として役立つよう、公表方法あるいは情報発信の方法について引き続き継続的に行っていきたいということです。
 2-2「調査研究の分野・課題の選定」です。御指摘では、公衆衛生上の問題の所在を幅広く客観的に把握しながら、生活や健康についての横断的な課題を取り扱うということで順位を示すべき。特に、具体的には二つ目の○にありますが、「小子・高齢社会の進展に対応した健康確保」、二つ目に「健康に関する安全・安心の確保」といった二つの問題の課題の解決の進捗について、研究資源を集中して取り組むべきだという御指摘をいただいています。また、その取り組むべき事項について、広く国民に発信することが必要だということです。
 対処方針については、研究委員会を中心に、調査研究課題を合理的に選定をして、研究資源の有効的・効果的な活用を図っていくことをいたす所存です。特にこの二つの課題に向けて集中をする、ということで考えています。また、情報発信については、学術誌『保健医療科学』というものを発刊していますが、年4回から年6回に増やすこととしました。
 次に、3「組織」です。組織については、平成22年度現在で15研究部1センターで組織されており、その下に50研究室があります。過度に細分化された体制で、研究を更に強化する観点からみると、こういった障害になっていることは否めないという御指摘です。
 33ページにまいります。先ほどの二つの課題に集中する体制を構築することを主眼に、組織の再編を行うべきだという御意見をいただいています。研究マネジメントが効果的・円滑に実施されることを目指しています。
 このことから、具体的に三つ目の○ですが、一つには「疾病予防・健康増進に関する分野」、二つ目に「医療・福祉サービスに関する分野」、三つ目に「生活を取り囲む環境因子への対策に関する分野」の三つの研究領域に大別して組織を置いて、総合的に2大課題に取り組むことが適当だろうという御指摘をいただいています。
 四つ目の○ですが、これらの研究領域を超えた対応が必要な機能があるということで、具体的に四つの機能が提言されています。一つが、「政策・施策の評価に関する機能」、二つ目が「健康危機の管理に関する研究機能」、三つ目が「研究情報支援・研究に関する機能」、四つ目が「国際協力に関する研究機能」ということで、これらの研究領域を横断する四つの機能を導入することが適当で、これに対応する組織を設ける必要があるという御指摘です。
 これに対応しまして、平成23年4月から従前の「15研究部、1センター」を大幅に組織改編をしまして、「6研究部、1センター」としまして、室は廃止をすることとしたところです。御指摘の三つの研究領域に対応する三つの研究部、それから横断的な四つの領域、機能に対応して、三つの研究部と1センターを設置したところです。また、併せて調査・研究に関する専門的事項を総括する統括研究官を設置して、機動的な研究活動の促進を図ることとしたところです。これらの機能が、その意とするところを十分に発揮できるように努めてまいりたいと思っています。
 四つ目からは、それぞれ個別の指摘で、倫理規定の整備等です。研究所のFFP、Fabrication、Falsification、Plagiarismの注意をするために、「研究者行動規範」等を独自に作るべきだという指摘です。また、Conflict of Interestsに対して、必要なガイドラインを作成することについて検討すべきという指摘です。
 研究委員会を中心に議論を行い、「国立保健医療科学院研究者行動規範」を制定をして対応したところです。また、Conflict of Interestsについては、既に「国立保健医療科学院利益相反管理規定」がありますが、この趣旨を徹底するとともに、この研究者行動規範の中で利益相反に関する疑義が生じないよう求めるようにいたしています。
 最後に、34ページです。5「共同研究、国際協力等の状況」についての指摘です。国際集団研修あるいはJICA等からの研修生の受け入れ、WPRO、WHOの西太平洋事務局や諸外国の公衆衛生機関等との協力、協定を締結して、積極的に国際協力を行っているという評価をいただいています。これについては、リーダーを育てるtraining for trainersあるいはtop-up trainingなどの概念による実施を提言されています。
 対処としては、この提言を踏まえて、現場のリーダーあるいは途上国の局長級の政策決定の立場にある者について、集中した研修を行うようにしたいと。また、科学院はWHOの研究協力センターとして指定されていますが、西太平洋地域における研究拠点としての役割も併せて果たしていきたいと思っています。
 次に、6「研究者の養成及び確保並びに流動性の促進」です。意見として、原則で任期付、かつ全てが公募によって採用されていまして、研究職員の流動化は図られているという評価です。ただ、流動化を進めるということで欠員ポストが生じやすくなっていまして、欠員ポストについて早急に補充するよう努めるべきであるという指摘です。
 これについては、その補充に努めてまいりたいということですが、例年大幅な定員削減があります。また、一昨年からは新規採用の抑制、これは公務員の新規採用の抑制の一環ですが、それらが課せられるということで、流動化を図る上では若干障害となっているということで、その改善については関係者の理解を求めてまいりたいと思っています。
 「その他」です。保健医療科学院は厚生労働科学研究費補助金の交付事務、いわゆるFunding Agencyの機能を、それまでの「健康安全・危機管理対策総合研究事業」に加えて、平成22年度からは「難治性疾患克服研究事業」についても行うこととなっていまして、その必要な体制のあり方について検討を進める必要があるという指摘でした。
 これについては、必要な事務処理体制、プログラムディレクター、プログラムオフィサーの確保・配置について、本省とも調整・協議を図りながら体制の整備を図って、その機能を発揮してまいりたいと思っています。以上です。

○永井部会長 
それでは、ただ今の説明に関して、御質問、御意見をいただきたいと思います。
○宮村委員 
科学院の周囲から評価されて期待されていたプログラムの一つに、FETP、Field Epidemiology Training Programというのがあります。これは、いちばん最後のページに書いてある共同研究、国際協力というような外から要請されて対応するというのではなくて、Master of Public Healthのクレジットも含めて非常にうまくやっていたが、同時にいくつか研修生のコンスタントに集めるというところで問題があったと思います。これは今、どのようになっていて、将来、保健医療科学院の最も大切な機能であり、期待されているところだと思うのですが、そこはいかがでしょうか。
 それから、「その他」に記載されていますFunding Agencyとして、平成22年度からは新たに難治性疾患克服研究事業という、非常に大事であるが範囲の広い事業についてのFunding Agency化を期待されてスタートされたわけです。それは、例えば将来いろいろなNational CenterやNational Instituteが総合してファンディングに関して米国のNIH的なイントラミュアラルを含めて、実際のFunding Agencyを実際にスタートされて、お宅の研究所から提案することはなかったでしょうか。そして、実際には例えばPD・POというようなキーパーソンをどのように選定をし、うまく機能されているのかについて、伺いたいと思います。
○松谷院長 
まず一つ目のFETPですが、これは疫学の中でも実地の疫学を行う方について、具体的なトレーニングを含めて、技師を含めて養成をしているものです。厚労省の研究機関がいくつかありますが、研修を行うのは当機関だけで、国立保健医療科学院で研修機能は全て一括して行うということで、FETPについては感染症研究所、その他の関係の御協力をいただきながら進めてきたところです。非常に大事な機能なので、これは引き続き進めていきたいと思っています。一巡はしたということで、その内容について再検討する必要があるなとは思っています。ただ、FETPの推進については、引き続き前向きに考えていきたいと考えています。
 それから、Funding Agencyの関係です。これについては、当院から特に各研究機関に、Funding Agencyをそれぞれ強力にこういう形でやるべきだという提言まではしていませんが、これは本省のお仕事だと思います。当院としては、与えられた二つの機能について、研究者の中からプログラムディレクター、主査を選定しまして、最も適切なものについて認定をします。それによって、順調に今のところ動いていると認識をしています。
○永井部会長 
よろしいでしょうか。
○松田委員 
決して批判を申し上げているわけではないのですが、この平成20年度から平成22年度の評価報告書が今の時期に出てくるというのは、私は若干時間がかかり過ぎているのではないかと思います。一般的に言って、この程度の時間軸での作業なのかどうか、お伺いしたいと思います。
○松谷院長 
御指摘のとおり、だいぶ大幅に今回の報告は遅れています。これは二つ事情があります。一つは、一昨年度末に評価委員の方に実際に複数日にわたって来ていただきまして、実際の研究評価の報告も聞いていただき、委員会も開催をする予定でしたが、確か2回目か3回目は3月11日の地震のあとの日程になりまして、それが開催ができなくなった事情が一つです。
 もう一つは、その前にこの中の御指摘にもありますが、ここには具体的な指摘になっていますが、事業仕分けにより組織の改変を求められていました。具体的な改変の方向については、一昨年の3月の段階ではもう既に遅いものですから、その半年前に外部評価委員会に少し先にその部分だけ、組織改変のところだけについて既に御提言をいただいていました。それを踏まえて、先ほどの部の数を半減以下にする等、あるいは室をなくす等の新しい組織改変を昨年度からしたところです。ちょうど、それが4月からスタートして、昨年、新しい組織の中で評価委員会をスムーズに開催することができなかったということがありまして、今年度になったということです。事情はそういうことで、御指摘のとおり少し遅れたのは事実です。
○金澤委員 
保健科学院には、難病、特に難治性疾患のことでお世話になっていますし、意義は大変よく理解しているつもりです。その上で伺いますが、4ページの6番の「対処方針」の中に、例年大幅な定員削減、更に一昨年から新規採用の抑制が課せられていると、これは非常に不思議に思うのですが、必要とあれば本省からもお答えいただきたいと思うのですが。いかがでしょうか。
○松谷院長 
定員削減については、これは閣議が決まっているもので、全公務員について定員削減が課せられました。その年に各機関にも、それぞれどれだけの定員削減をせよということは割り振られている仕組みになっています。また、定員削減はそういう形ですが、増員はなかなか認められないと。組織再編をしました関係上、その関係の増員がなかなか認めていただけなかったというような事情があります。
 それから新規採用の抑制は、これはちょっと別で、新聞等でも報道されていますが、公務員の数を減らすという新たな政治的な観点から、首を切ることができないからということだと思いますが、新規公務員の採用を減らそうということが一昨年から行われています。これも各機関に振られていると。この場合は、定員があっても新規採用ができないということになります。過去の採用実績の何割というような形で、割り振られています。
 通常の公務員ですと、大学を卒業して入って定年までいらっしゃるということで、そう大きくはないのですが、研究所の場合はこれはまさに流動化なのですが、3年経つといなくなるということで、非常に回転が早いです。回転が早いところで採用を制限されると、これは欠員を埋めようがないというような事情があります。そのときにも、いろいろと声は挙げたようですが、なかなかそういう細かいところまで政治的には御配慮をいただいていないのが実情です。
○永井部会長 
ほかに発言はありませんか。よろしいでしょうか。そうしましたら、これは報告事項ですので、どうもありがとうございました。
 続いて、議事の3にまいります。「iPS細胞を用いる加齢黄斑変性に対する臨床研究の取扱いについて」、事務局より説明をお願いします。
○尾崎研究企画官 
資料4「iPS細胞を用いる加齢黄斑変性に対する臨床研究の取扱いについて」、報告いたします。1を見ていただきますと、ヒト幹細胞臨床研究については、臓器機能再生等を通じて、疾病の予防、治療等に重要な役割を果たすことが期待されており、これまで多くのヒト幹細胞の研究が「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に基づく審議の上、実施されているところです。
 一方で、ヒト幹細胞臨床研究のうちiPS細胞を用いる臨床研究については、これまで厚生労働大臣の意見を求める申請は行われていないが、加齢黄斑変性に対する臨床研究につきましては、2、3ページに少し資料がありますが、臨床研究について研究機関における倫理審査を経て、近く申請が行われる可能性があるという状況にまできているところです。このため、申請が行われた場合の審議手続きについて整理する必要があるところです。
 何を整理するかについては、2に書いております。「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」は、iPS細胞を用いる臨床研究も対象としているため、上記1の臨床研究についても、申請が行われた場合は「ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会」において審議されるというものです。
 一方、iPS細胞を用いる臨床研究については、iPS作製過程において遺伝子導入を行うということがありますので、遺伝子を導入した細胞を人の体内に投与するという点では、遺伝子治療ということになるのではないかというところであり、当該遺伝子導入に関する品質・安全の面について、遺伝子治療の専門家による確認の必要性を指摘する意見があるところです。
 そこで三つ目の○ですが、当面の対応として、上記1の臨床研究について、必要十分かつ効率的な審議を行うため、「ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会」に遺伝子導入に関する品質・安全性の評価のための必要な専門家を加えて、審議を行うこととするというところです。
 3「その他」のところを見ていただきまして、iPS細胞を用いる臨床研究を「遺伝子治療臨床研究に関する指針」との関係につきましては、上記1の臨床研究の審議の経験も踏まえまして、今後予定している指針の見直しの際に整理するということで行いたいということで、遺伝子治療臨床研究の作業委員会と、ヒト幹細胞臨床研究審査委員会の先生方と話し合いまして、このような取り扱いにするということで、これを報告いたします。以上です。
○永井部会長 
いかがでしょうか。
○宮田委員 
2点あります。1点は、今までこのように新しい申請があることを見越して、審査をどうやるかという体制を整えたというのは、余り前例がなかったと思うのです。このような、予測して、最新医学研究みたいなものを前向きに進めようという姿勢を非常に高く評価したいと思います。
 加えて一つお願いしたいのは、その先に何があるかということを考えると、臨床研究の先にtranslationalな研究があり、最終的には患者に、薬事審査をしてお返しするような、細胞医薬の誕生があると考えます。その臨床研究の段階でも、是非そういった規制当局である総合機構の方々との情報のやり取りは絶対に必要になりますし、まして世界で誰もiPS細胞の安全性をどう担保したらいいかという議論をやったこともないわけですので、そういった場合には、PMDAの経験というのはとても役に立つと思いますので、審査委員の選考などの折には、是非ともPMDAからお知恵を借りるといったことも御検討いただきたいと思います。
○荒木再生医療推進室長 
貴重な御意見ありがとうございます。2点目の審査に際して、今後の次の見通しということで、現場に持っていくということであれば、PMDAの方も参考として御意見を拝聴したほうがいいのではないかという御意見かと思います。
 今のヒト幹審査のメンバーの中にも、新たにPMDAのセンター所長をされております梅澤先生にも入っていただいておりますので、そういう観点での対応も可能かなと思っています。
○永井部会長 
ほかに御意見はございますでしょうか。御意見がございませんでしたら、この申請のような形で進めさせていただきたいと思います。
 次にいきます。「戦略研究の事後評価について」です。事務局より御説明をお願いいたします。
○福島厚生科学課長 
資料5で「戦略研究の事後評価について」御説明いたします。本日御報告しますのは、昨年度末に終了した「腎疾患重症化予防のための戦略研究」「感覚器障害戦略研究」のうちの聴覚に係るもの、この2件についてです。
 2ページにあるように、事後評価における評価指標というのは、専門的・学術的観点からの評価、行政的観点からの評価、総合評価、この三つの観点で評価を行うものです。
 3ページから11ページまでが、「感覚器障害戦略研究」の聴覚に係るものについての報告です。まず「研究目的」ですが、聴覚障害児の日本語言語発達に影響を与える因子を明らかにして、発達を保障する手法を確立する。その際に、難聴の早期発見、あるいは児の持つ認知的な偏りが与える影響について、国際的なレベルのエビデンスを確立し、より良好な言語発達をもたらす方策の普及を目指すことを目的として行うものです。
 4ページに「研究デザイン」があります。二つの研究からなっていまして、まず言語発達、特に言語性のコミュニケーション能力に影響するような因子を明らかにするということで、ケースコントロールスタディを行う。そして、さらにケースコントロールスタディで用いた日本語言語発達評価によって、介入がどのように言語発達に影響していくかを見る介入研究の二つからなっています。症例対照研究については平成20年度と平成21年度、介入期間については平成22年度から平成23年度について行ったというものです。
 5ページ目が、ケースコントロールスタディの実施内容です。全国36都道府県、130の施設に御参加いただき、当初781名中、638名が解析対象になりましたが、聴力レベルが70dB以上の聴力損失、難聴が確定している子供で、4歳から12歳のお子さんで、言語発達検査が実施可能な方を対象として症例対照研究を行っています。
 6ページに結果があります。言語性コミュニケーション能力についての説明変数として、二つありまして、新生児聴覚スクリーニングの受検、早期療育開始です。有意なものが早期療育開始で、生後6か月以内の補聴を開始したものについては、オッズ比で3.23となっています。そして、早期療育開始について、どういうものが有効であるかに関しては下で、新生児聴覚スクリーニングを受けていることが、オッズ比は20.21と極めて高くなっていまして、スクリーニングを受けているかいないかは、早期療育の開始に極めて有効であることが分かります。
 その際に、言語発達評価方法、この研究で用いた評価方法については、これまで言語発達評価については、それぞれの地域でバラバラだったものについて、この標準化ができたことも効果として挙げられます。
 次のページは介入研究です。左側が介入群、右側が対照群になります。標準化された指導について言語発達評価を行い、どういう領域に問題があるか、課題があるかを明らかにして、プログラム手順書に基づいて実際に指導して、最終評価を行っていくという一連のパッケージです。6か月間、12回の指導を行って、家庭学習と併行して行ったというものです。これが介入で、従来の介入については、右側の対照群で行ったものです。
 8ページに結果があります。それぞれの領域における介入については、介入前後で、その言語発達は有意の上昇が見られていると。右側の介入群と対照群でも、1か月当たりの変化量で、介入群の方が有意な変化量があるという結果になっています。9ページは、これをグラフ化したものです。10ページが、研究目的の達成状況で、これを研究論文の形でパブリッシュしたものについての御紹介です。
 最終的な評価が11ページにあります。「専門的・学際的な観点からの評価」では、このマニュアルの整備、ALADJINという評価手法についても、言語指導を実施した効果を検証したことが大きいということとなっています。「行政的観点からの評価」は、まず、全国規模の疫学データが得られたということが、基礎資料としても有効であるということです。そして、短期間でも言語聴覚療法を実施することで訓練効果が上がっているということで、通常の小学校に通う障害児についての言語発達を図る選択肢が増えたと言えると。「総合評価」については、ここにあるように、この療法をまとめたことです。
 次の12ページから20ページまでは、二つ目の「腎疾患重症化予防のための戦略研究」です。これは末期腎不全に対する血液透析の新規導入患者数を減少させるためのものということで、地域におけるCKD(慢性腎疾患)、腎臓病の啓発活動、あるいはかかりつけ医における腎機能検査、尿蛋白検査の再評価により、診断・受療の向上を目指すということ。そして、かかりつけ医に通院するCKD患者への受診促進支援、栄養指導、生活習慣改善指導等を行って、新規透析導入患者の減少へつながる施策を見い出すということを目的として行ったものです。
 ここについては、13ページに研究デザインがありますが、少し飛びまして、14ページに参加していただく医師会を選び、かかりつけ医を登録し、参加者を登録して、それぞれ生活指導をする支援組織を立ち上げて、A群、B群と分けていますが、一般的なサポートをするA群、それぞれ下にあるような濃厚な指導を行うB群とに分けて、介入を行っております。
 15ページに全体としての図がありますが、最終的に観察終了までは、A群で1,107ケース、B群では1,029人の方に御参加いただいています。参加いただいたドクターの数は559名ということで、非常にたくさんの皆さんの御協力で実施できたものです。
 16ページは、食事指導への参加状況です。12回全てに参加した方が46%、11回に参加が22.5%、10回参加が4.5%で、B群では73%の方は10回以上の指導を受けています。
 17ページです。まず評価項目として受診継続率ですが、一般的な指導をするA群と、B群とで比較しますと、受診継続率はA群で84.6%、B群が89.6%と、有意な差を示しています。連携の達成率ですが、これについてもB群の方が高い連携達成率を示しています。
 18ページに、介入開始時からのeGFRの推移を示していますが、予測される低下速度よりもはるかに緩徐な傾向であるということです。19ページに、研究発表論文の御紹介です。
 20ページが、研究成果の結果の評価です。かかりつけ医に通院するCKD患者に対する大規模な前向き研究というのは世界でも例がなく、本研究の意義は大きいということです。行政的な観点では、この研究で整備された生活・食事指導マニュアル、あるいはネットワークという仕組みそのものが、今後腎疾患患者のステージ進行の抑制によるQOL悪化の防止を見込める。総合評価です。こういう仕組みについては、腎疾患に対する有効性を持つ可能性が示唆されたと。また、今後のことですが、両群について、想定より進行が遅く、介入効果が十分に解析できていないという懸念が研究班から示されていますが、これについては、更にフォローアップをしていただきたいということになっています。戦略研究の事後評価については以上です。
○永井部会長 
ただ今の御報告に御意見をいただけますでしょうか。
○福井部会長代理 
今の戦略研究のうち、腎臓病重症化予防のための戦略研究については、この研究期間は全部でどれぐらいの研究費を使っているのでしょうか。
○福島厚生科学課長 
腎疾患対策に関しては、トータルで約12億円です。
○岩谷委員 
最初の聴覚障害児の療育のための言語能力等の発達の研究ですが、これは障害の療育という点から見ますと大変画期的な研究でありまして、つまりアウトカムを言語発達というところで取ったということで非常に評価が高い研究であります。
 実際に聴覚障害児の大きな問題は、「9歳の壁」というのがございまして、9歳以降は抽象的な概念がなかなか発達しないということが、非常に大きな問題で、それが社会参加の非常に障害になっているということが知られているものですから、この言語発達がうまくいったという結果を、最終的には9歳の壁が突破できるかどうかというところにかかってくるのだと思うのです。ですから、是非この研究を長期的に見ていただきたい。それをするとなると、教育現場とのつながりというのが必要になってくると思います。
 それと、もう一つ大きな、これは社会的な問題ですが、ろう者社会の手話の話とが、またこれが複雑に関係してきますので、余りこれを強調しますと、本当にろう者の方々との軋轢も危惧されるところですので、非常に大きな成果として評価しつつ、この評価を施策として進めていく上には、かなり慎重にやっていただきたいと希望いたします。
○福島厚生科学課長 
障害担当部局が実践の面等では担当していく部分ですが、御指摘の点を踏まえて対応するように伝えたいと思います。
○金澤委員 
1ページを見ていただきますと、過去のものでありますが「自殺対策のための戦略研究」というのが平成22年3月に終わっています。私はこの出発のところでかなり関係していたのですが、いつ3万人を切るかということを盛んに考えていたのですが、なかなか切りませんでした。終わったあとしばらく経って、平成24年度に3万人を切りました。つまり、今の岩谷さんのことと少し似ているのですが、終わったあとすぐとか、1年、2年で評価をするのではなくて、少なくとも数年は見ていかないといけないなという思いです。
 そのことは慢性の腎疾患についても同じで、目標が「新規透析導入患者の減少につながる」という、大変大事なことを言っていらっしゃるので、これは数年、場合によっては10年ぐらい見ないといけない。これは非常に大事なことですので、今後も続けてフォローをしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○松田委員 
それをフォローする意見ですが、その際の研究班なり研究費というのは、どういう形でカバーされるのでしょうか。
○福島厚生科学課長 
一般には戦略研究後のフォローアップについては、競争的研究資金の中で考えていかざるを得ないのではないかと考えています。
○福井部会長代理 
フォローアップという場合に、恐らく2種類考えなければならないと思っています。一つは、研究対象になった対象者をそのままフォローするというのと、研究の結果を日常診療に落としていって、それが日本全国でどのぐらい役に立ったか。こういう二つのフォローアップが必要だと思っています。
○桐野委員 
今いくつかフォローアップについて御意見が出たのですが、確かに、例えば自殺と同じ時期に行われた「糖尿病予防のための戦略研究」も期間内に全部は終了できなくて、そのあと2年ほど続けたと思いますけれども、一生懸命やっても、これは研究者が悪いというだけではなく、いろいろな事情で少し遅れるのです。遅れるのですが、そのあと我慢して、長くフォローアップするといい結果が出ることもあるので、予定より少し長くなった場合の取り扱い方については、今後、是非検討していただいた方がいいと思います。もったいないと思います。
○福島厚生科学課長 
特に腎などは効果が出るのは長くかかります。腎疾患については、指定研究でフォローアプしていることについて併せて報告させていただきます。
○福井部会長代理 
本流から少し離れるかもしれませんが、糖尿病予防の戦略研究は2年延ばして、それでも結果が、外国のデータと比べると余りにも日本人の結果が良すぎて、エンドポイントを、発症する患者が余りにも少ないために、ついこの間、更に4年延長することを決めたということです。

○永井部会長 
不老不死だということのようなのですね。よろしいでしょうか。
 続きまして、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」改正について、事務局から御説明をお願いいたします。
○福島厚生科学課長 
その前に、資料6の「『戦略研究に向けた研究実施計画書作成に関する研究』の中間評価について」。
○永井部会長 
開発の中間評価の方ですね。資料6をお願いします。
○福島厚生科学課長 
資料6です。これは来年度実施を想定している戦略研究に関する、その研究実施計画書作成に関する研究として、今年度行っている研究の中間報告、中間評価です。
 「『市町村における生活習慣病予備群の発症予防対象者の抽出と保健指導等の予防介入システムの効果に関する研究』のための研究実施計画書作成に関する研究」となっていまして、鉤括弧の中が、来年度以降の戦略研究として実施をすることについて、今、検討しているものです。
 住民の健康リスクに応じた被介入者の抽出、それから対象者への保健指導プログラムの開発、それに基づいて構築される予防介入システムを地域に導入して、効果を検証することを目的とした戦略研究の実施計画書を作成するということですが、これについて、戦略研究企画調査検討会で、下にあるような検討課題があるという御指摘をいただいております。
 内容としては、自治体における保健指導プログラムの効果検証として、比較可能性が最も高い研究デザインとなるようなものを選ぶ。それから、研究の対象となる自治体の要件、その根拠について、客観性が担保されるようにすること。保健指導プログラムについて、最も適切な理論的根拠を明確にした上で、介入内容の標準化をすること。4番目として、戦略研究の実施期間を考慮した上で、介入の内容に対して最も適切に評価できるような評価項目を設定すること。先ほどの議論ではありませんが、効果が表れるものについて、できるだけ効果が表れる評価指標にしてほしいと。こういう御指摘がございまして、今、研究班ではこれを踏まえた見直しがされているということです。
 今後、戦略研究企画調査専門検討会で、研究実施計画書案の評価を継続して実施して、本年度中に来年度からの戦略研究の実施に関する最終評価を行うこととしております。以上です。
○永井部会長 
ただ今の御説明に、御意見、御質問をいただきたいと思います。
○今井委員 
私が分からないだけかもしれないのですが、生活習慣病予備群というか、生活習慣病自身の病名、症状、事象というのは確定されているのですか。メタボリックシンドロームですと、症状、病名、事象は確定されているので、一人ひとりを取ってみると、どこまでをいうかというのがよく分からないのです。
○永井部会長 
いかがでしょうか。発症というのもよく分からないところがありますね。この辺の定義はどうなっていますでしょうか。
○福島厚生科学課長 
これは研究班で検討されていますが、脳卒中、心疾患等のリスクファクタになり得る指標について、どういう数値を基準値として選定していくのかについて、今、正に研究班で検討している段階です。例えばコレステロール値、あるいは中性脂肪であるとか、腎機能検査等について、いくつかの指標の中で一定の基準値を超えた人について、対象を選んでいくというような考え方で整理しています。
○今井委員 
脳にしろ、心疾患にしろ、血管系の疾患に関しては分かりやすいと思うのですが、がんも中に入っていますよね。
○福島厚生科学課長 
今回のこの研究の中では、がんを対象としたものはリスクファクタとしては。最終的なターゲットとする疾患については、心筋梗塞、脳卒中、人工透析等をターゲットとする介入をしていこうと考えていますので、がんに関するリスクファクタについては対象としていないということです。ですから、血圧、HbA1C等の指標による対象者の選定を考えているということです。
○今井委員 
そうしますと、今回のものは、2004年から始まった中高齢者の生活習慣病の予防対策として、数値目標を決めてやるという10年計画の評価とは違うのですね。要するに、そのときに入っていた疾患名とはだいぶ違うので。
○福島厚生科学課長 
それは「健康日本21」のことではないかと思いますが、それとは別に、その中でも特に心筋梗塞、脳卒中を中心としたもので、その中で更にそれに至るリスクが高いリスクファクタをお持ちの方を対象とする。いわゆる特定検診、特定保健指導の対象者よりも更に治療に結び付けるべきような方を対象とした内容のもの、そういう介入を想定しながら、研究班で検討が進められているということです。
○永井部会長 
合併症、重症化予防、いわゆるイベントと言われるものを予防したいということだと思いますが。
○今井委員 
そうですよね。そうしますと、疾患若しくはそれぞれのリスクファクタを決めるのも、まだということでよろしいのですか。まだ決まっていませんという話ですか。要は、特定健康診査だの何だのの人たちを、地方自治体の中からピックアップしてではなくて、新たに被験者自身も決めていかないと出来上がらないですよね。
○福島厚生科学課長 
現在考えられているところでは、特定検診の受診者から選び出していくわけですが、その中でも、更に重症化ハイリスクの方に対する介入ということです。だから、特定保健指導よりも、リスクが高いような方に対する濃厚な介入を考えているということです。入り口のエントリーとしては、特定検診を入り口とするということで考えています。
○岩谷委員 
今回の対象疾患というのは、内科的な疾患を想定しておられるのだと思うのですが、実際に、骨折というのは年間に10数万人いるわけです。これは極めて大変な医療費がかかっているという現実からしますと、ある意味で生活習慣病というentityには、脆弱性の骨折予備群というのは十分に入り得るのではないかと私は思うのですが。そのことを同時に含めてやっていくというようなことは、生活習慣病という概念を少し広げるようなことで、可能ではないのでしょうか。
○福島厚生科学課長
私どもも骨折の問題は非常に大きな問題であるという認識は持っておりますが、来年度から始める研究では射程には置いていないところです。御指摘の骨折についての介入、あるいはどういうリスクファクタがあるかということについても、重要な問題と考えておりますので、今後少し研究させていただきたいと思います。
○野村委員 
今、岩谷先生も骨折のことをおっしゃいましたが、骨折だけではなくて、この文書の「住民の健康リスクに応じた優先被介入者の抽出及び当該対象者への保健指導プログラムを開発し、これらに基づいて構築される一連の予防介入システムを地域に導入し」というのを読むと、この方式を導入していくことで、今後の高齢保健指導、高齢者の孤立の問題とか、そういうことへの介入にも活かしていけるようなデータ、介入方法、システムを得られるような気がしているので。
 戦略研究だから特定のものしかできないのか、戦略研究だからこそ、そういった形の、どうせこのシステムによっていろいろなことが測れるのであれば、そういったことを活かしていくことこそが戦略研究のあり方の一つなのかなと思うので、せっかくこういうシステムを地域に導入できるような研究を始められるのであれば、その後の福祉、更にほかの保健指導に活かしていけるようにつなげていかれるような施策をとっていっていただきたいと思っています。
○永井部会長 
この本格的な研究は来年度以降からですね。ですから、また担当者といろいろ御相談いただければと思います。例えばいろいろな副次的なイベントがどのぐらいあったかとか、そういうデータが得られるだけでも、非常に貴重なものになるのではないかと思いますが。
○宮田委員 
内容はともかく、この中間評価の書き方がよく理解できなくて、当たり前の御題目が並んでいるという感じになっているのですが。要するに、中間評価という以上、研究はある程度進められているはずなので、どのような形で研究が進んでいて、ここまでは何となく見えてきているのだけれども、ここから先の最終的な研究の結果が出るまではこれだけの課題があって、検討中であるというような書き方があれば、こちらも知恵を貸しようがあるのですが、こういう当たり前のことを羅列されていても、それはそうだろうなとしか思えないので。
○永井部会長 
まだ計画書作成の研究なのですね。
○宮田委員 
ですから、どういうステップでいくのかというような。実はこの戦略研究の計画書を作ることが重要だという認識で、これが始まっているのだと思いますけれども、そういう意味では、今、論議が噴出したように、中途半端な露出をされるといろいろな意見が出ると思うので。今のこの書き方はもう少し工夫されて、例えばここで我々が議論して、多少この計画書の策定を前に進めることに役に立つような議論ができるような形の報告書という工夫をしていただきたいです。そうでないと、普通のことが書いてあるとしか思えないので、申し訳ありませんが、今後そういうことを気を付けていただきたいと思います。
○福島厚生科学課長 
次回お出しするときに、もう少し詳細なところがお出しできると思います。御指摘の点は、また次回以降の資料作成に活かさせていただきたいと思います。
○永井部会長 よろしいでしょうか。次にいきます。「『国の研究開発評価に関する大綱的指針』改正について」、御説明をお願いいたします。
○福島厚生科学課長 
資料7です。参考資料5が全体の本文ですが、資料7の概要、ポンチ絵で御説明させていただきます。
 「国の研究開発評価に関する大綱的指針」というものがありますが、これにのっとって、評価の仕組みがどうなっているかということです。まず、この大綱的指針というのは、科学技術基本計画に基づいて一番最初に平成9年に作られたものです。科学技術基本計画の改定のタイミングに合わせて、段階的な改定をされてきているというもので、今回も平成23年8月の科学技術基本計画の見直しに伴って、この12月6日に国の研究開発評価に関する大綱的指針が改定されて、内閣総理大臣決定がされたということです。
 これで改定された大綱的指針に基づいて、各府省の研究開発評価指針の見直しを行う、そして研究機関等の評価ルールの見直し等を行っていくということになりまして、それに従って新しい形で評価を行っていくということになります。
 2ページが「大綱的指針のポイント」です。1「改定の経緯」のところで、先ほど言いましたように、二つ目のポツに書いていますが、第4期の科学技術基本計画(平成23年8月19日決定)、科学技術イノベーション政策におけるPDCAサイクルの確立ということがうたわれております。そのための研究開発評価システムの改善、そして充実が必要だということです。
 2「課題の方向性」です。現状の研究開発が施策の目標に対する研究開発課題の位置づけ、あるいは関連づけが不明確であるということ。その結果として、各研究開発課題の総体としての効果が十分に発揮しているとはいえない状況にあるということで、今後は政策課題を解決し、イノベーションを生み出していくためには、研究開発課題や研究資金制度というものをプログラム化し、それに対する適切な評価を実施する。それによって、次の研究開発につなげていくことが重要であるという基本的な方向性です。そのために、具体的には3にあるように、研究開発プログラムの評価の導入、そしてアウトカム指標による目標の設定の促進を進めていくというのが、今回の改定のポイントになっています。
 3ページです。今のポイントの一つ目の、「研究開発プログラムの評価の導入」です。中程に、「研究開発プログラムの設定の基本的考え方」というのがあります。これは、研究開発プログラムにより解決すべき政策課題、そしてその時間軸を明確にした評価指標による目標設定を行って、そういうことによって上位の階層にある施策における位置づけが明確になる。?にあるように、研究開発課題等によって構成され、目標達成した工程表が明示されている。?にあるように、プログラムの推進主体と、個々の研究開発課題の実施、推進主体との役割分担、責任の所在が明確であるということが必要である。こういう基本的な考え方に立っています。
 また、「研究開発プログラムの評価」に関しては、評価部門の独立性に配慮して行うこと、そして追跡評価・追跡調査の実施をすることが書かれています。
 今後ですが、先ほど言いましたように、この指針の改定内容を踏まえて、厚生労働科学研究開発評価に関する指針の見直しを行いたいと考えています。今日は、この大綱的指針の見直しの概要についての御報告ですが、今後また私どもの評価に関する指針の改定については、この科学技術部会において御議論いただくということにしておりますので、また改定案ができた段階で御議論いただくようにお願い申し上げます。以上です。
○永井部会長 
ただ今の御説明に、御質問、御意見はいかがでしょうか。
○宮田委員 
国の閣議決定した方針の研究開発というものの定義を知りたいです。こういうようなやり方の研究は、どちらかというと開発に近いものであって、好奇心によって研究するようなものには馴染まないのではないかと思っています。そうなりますと、厚生科学研究費の中にも、政策課題を解決するための先ほどの戦略研究のようなものと、もう少し基礎的な研究の色合いもあるものがあると思うのですが、どのように研究開発という言葉の定義を考えたらよろしいのでしょうか。
○福島厚生科学課長 
研究開発というものについては、もともとはそれぞれの個別の研究班のこと指しておりまして、そういう面では基礎的な研究も含めてこの対象にはしているのですが、元になっている科学技術基本計画そのものが、若干イノベーション指向になっているということを踏まえて、PDCAサイクルを回していくのだという考え方をキートーンにして整理されているように、私どもは認識しております。
 厚生労働科学研究自体が、文科の科研費に比べると、もう少し現場指向、あるいは目的指向のものですが、確かに御指摘のように、知の集積としての研究をどう考えていくのかという問題は、その前提としての研究というものをどう捉えていくのか、我が国において、研究というものをどういう位置づけで行っていくのかということそのものによっていくのだと思いますので、これはここで議論をしたいところではあるのですが、私どもとしては、こういう考え方に従ってやっていくとなっておりますが、非常に基礎的な、ベーシックな研究ももちろん大事にはしていきたいという姿勢でおります。
○三浦技術総括審議官 
補足的に少し申し上げると、国全体のコンセプトというものについて、大枠というものが大綱的指針という形で決まってきたとして、各省の持っている政策課題というのは、今、宮田委員が言われたとおり様々でありますし、その研究開発に向けた手法も、ライフサイエンスをやっているところ、あるいはほかの科学分野、それぞれ特徴的な手法もあるのではないかと思います。
 そういう意味で、これを一つの軸にしつつ、各省がどれだけそれぞれの研究課題と言いましょうか、政策課題に適合したルールを作っていくかというのが、私どもに課せられた課題であって、そのために、今後こういうテーマについて、この部会でも御議論いただく機会があるのではないかと考えています。
○金澤委員 
お二方のお話、よく分かりました。私が言いたかったのは、評価というのは、その国の研究の全体の方向を決める非常に大事なものだと思っておりまして、確か2年ほど前でしょうか、日本学術会議で評価に関する議論を始めていただいて、最近報告が出たと思うのです。それを、是非皆さん、特に行政の方々には読んでほしいと思っています。
 基本的に日本の場合は非常に真面目ですので、内閣がこうというと、それーっということになってしまう危険性があって、大変心配をしております。余り好きではないのですが、アメリカは評価に関する先進国だと思うのですが、彼らはそろそろ反省の時期に入ってきていて、例えば具体的に『NATURE』に出ていましたから、御存じの方も多いと思いますが、何年までにこの病気が克服されるというような言い方はやめようということは明確に出てきているのです。ですから、それを敷衍しますと、何年までにというプログラムというのは非常に危ないものがあるのです。これは承知の上で、内閣が決めてしまいましたからしようがないので、運営のところでうまくやっていただきたいというのがお願いです。
○橋本委員 
この課題は議論をしたら、いくら時間があっても解決しない一種だと思います。私も関わっているようないろいろなプロジェクトの中で、全体的に、余りにも近視眼的な研究になりすぎているのではないかという意見が強いです。そういうことを是正する意味でも、基盤、基礎体力は大事だという意見、私もそれは非常に大事だと思っています。だけれども、この引っ張り合いをやっても、どちらが正しいかみたいなことになってしまうのですが。
 私は山中先生がノーベル賞をおもらいになったというのは、ああいうことがあると基礎研究は大事だと、一時的にマスコミもそういう論調になることがあるのですが、あの研究は極めてアウトプットが明確で、目的指向の研究だと思うのです。ですから、どんなに基盤でも、基礎でも、アウトプットを明確にすれば、それに至るまでのプロセス、時間がかかるということを許容するような、そういうほうが私は現実的だと思うのです。ですから、そういうことを念頭に入れて、今後対処していただきたいと思います。
○福井部会長代理 
私も総合科学技術会議の下の評価専門調査委員会の委員なのですが、そこで私もよく知らなかったのですが、言葉の使い分けをしていまして、アウトプットとアウトカムを使い分けしているのです。その会議に出るまで知りませんでして、アウトプットというのは例えば山中先生の場合でしたら、iPSを作ったというのがアウトプットです。アウトカムというのは、それを臨床の現場で患者に役立てて、病気が治ったというのがアウトカムだそうでして、そういう言葉の使い分けをして、評価もどれを評価するかということで、目的を明確にしておかないと誤る可能性があると思います。
○永井部会長 
本日の議事は以上です。事務局から連絡事項等をお願いいたします。
○三浦技術総括審議官 
委員の皆様方におかれましては、平成23年2月にこの科学技術部会の委員に御就任いただき、その後、本日に至るまで、熱心な、また精力的な御審議をいただいてまいりました。本日の議題にありますように、ヒトゲノムの問題、あるいは幹細胞に関する臨床研究など、ライフサイエンスの根幹に関わる議論、あるいは最新の技術開発の推進に関わる御議論をいただいてきたという意味では、ライフサイエンスについてのエンジンというものを、この部会で御議論いただいてきたのではないかと思っております。
 とはいえ、時は過ぎまして、委員の任期が2年ということになっております。間もなく今期の任期が終了するという段になりました。この2年間の様々な御指導、御助言、これにつきまして、この事務局を預かる者といたしまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。また、この部会の委員に再任される可能性のある先生方もおられると思いますし、また、今期がいろいろな規定などによりまして、最後だというような先生方もおられると思いますが、この審議会の委員として、また審議会の委員を今期限りの先生方においては、この審議会の外から、私どもを応援いただき、また御指導いただければと思っております。この間の御指導に厚く御礼を申し上げまして、この会の事務局としての御挨拶とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
○永井部会長 
本日はこれで終了いたします。この2年間ありがとうございました。


(了)
<【問い合わせ先】>

 厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:情報企画係(内線3808)  電話:(代表)03-5253-1111      (直通)03-3595-2171

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