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2012年12月14日 第1回がん診療提供体制のあり方に関する検討会議事録

健康局がん対策・健康増進課

○日時

平成24年12月14(金)


○場所

厚生労働省 12階 第15・16会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議題

1 開  会
   
2 議  題 
 (1)がん診療提供体制の現状と課題について
 (2)検討会の今後の論点及び進め方について
3 意見聴取
 (1)二次医療圏を基に医療提供体制を考える
~治療件数からみたがん医療の状況~(高橋参考人、石川参考人)
 (2)患者が求めるがん医療情報と相談の提供(伊東構成員)
 (3)望まれる医療連携システムの構築(緒方構成員)

○議事

出席構成員:伊藤構成員、今村構成員、緒方構成員、神野構成員、北島構成員、佐々木構成員、篠構成員、田村構成員、西山構成員
、堀田構成員、松月構成員、横山構成員、吉川構成員
参考人:石川参考人、高橋参考人

○岡田がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第1回がん診療提供体制のあり方に関する検討会を開催いたします。
 本検討会の開会に当たりまして、厚生労働省健康局長から御挨拶申し上げます。
○矢島健康局長 健康局長の矢島でございます。構成員の先生方、参考人の先生方には、大変お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。また、先生方には日ごろからがん対策を初め厚生労働行政全般にわたりまして、いろいろな意味で御支援、御協力をいただいております。この場をおかりいたしまして厚くお礼申し上げさせていただきます。
 御存じのように、がん対策基本法に基づきまして、平成19年6月にがん対策基本計画ができました。それが今年6月に見直しをされ閣議決定されました、新しいがん対策推進基本計画の中では、拠点病院のあり方についてもいろいろと記載されております。特に、拠点病院の中で大きな格差がある。現在全国に397の拠点病院があるわけでございますけれども、その397のがん診療連携拠点病院についていろいろな意味で格差があるのではないか、差が大きくなっているのではないかという御指摘がございました。
 それから、患者さんにとってわかりやすい情報提供がまだまだ十分ではないのではないかという御議論。いろいろな地域の都道府県の実情に合った形でやっていただいたほうがいいのではないかという御指摘もいただいているところでございます。そういういろいろな課題につきまして、ぜひ先生方に御議論いただきまして、がん診療連携拠点病院の全体のあり方について見直しをしていただくことが大事だと思っておりますし、拠点病院の具体的な要件についても見直しをぜひさせていただきたいと。拠点病院に期待される機能を踏まえて、ぜひそういうものを策定いただきたいということです。
 特に、患者さんの視点というものが重要です。それから、地域連携の視点、地域の実情にあった形でどうやっていくか、都道府県の現場の方々にとって地域の実情に合った形でどうしたらいいかという医療サービスの提供のあり方について、ぜひ先生方にいろいろな意味で御議論、御審議をいただいて、御提言いただければありがたいと思っております。
 ぜひよろしくお願いしたいと思います。
○岡田がん対策推進官 それでは、構成員の皆様方の御紹介をさせていただきます。50音順にて御紹介させていただきます。
 まず、声を聴きあう患者たち&ネットワーク「VOL-Net」代表、伊藤朋子構成員でございます。
 続きまして、遅れて御出席いただくと御連絡をいただいておりますが、社団法人日本医師会副会長、今村聡構成員にも御出席いただきます。
 神奈川県立がんセンター患者会「コスモス」世話人代表の緒方真子構成員でございます。
 社団法人全日本病院協会副会長、神野正博構成員でございます。
 学校法人国際医療福祉大学学長、北島政樹構成員でございます。
 宮城県健康福祉部次長、佐々木淳構成員でございます。
 静岡県立静岡がんセンター薬剤部長、篠道弘構成員でございます。
 学校法人福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科学教授、田村和夫構成員でございます。
 本日は御欠席でございますが、東京大学医学部附属病院放射線科准教授、中川恵一構成員にも御参加いただきます。
 群馬大学医学系研究科医科学専攻病態腫瘍制御学講座病態腫瘍薬理学分野教授、西山正彦構成員でございます。
 本日は御欠席でございますが、京都大学放射線腫瘍学・画像応用治療学教授、平岡真寛構成員にも御参加いただきます。
 独立行政法人国立がん研究センター理事長、堀田知光構成員でございます。
 公益社団法人日本看護協会常任理事、松月みどり構成員でございます。
 新潟県立がんセンター新潟病院院長、横山晶構成員でございます。
 独立行政法人国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター外科系診療部長、吉川幸伸構成員でございます。
 また、本日は、がん医療の状況についてヒアリングさせていただくため、国際医療福祉大学大学院医療系管理分野教授の高橋泰参考人。
 また、KPMGヘルスケアジャパン株式会社マネージャーの石川雅俊参考人にも御出席いただきます。
 続きまして、事務局の紹介をさせていただきます。
 健康局長の矢島でございます。
 健康局がん対策・健康増進課長の宮嵜でございます。
 同じく課長補佐の秋月でございます。
 私、がん対策推進官の岡田でございます。よろしくお願いいたします。
 続きまして、資料の確認をさせていただきます。お手元に配付してございます資料を御確認いただきますよう、お願いいたします。
 まず、座席表と議事次第。
 資料1 「がん診療連携拠点病院のあり方に関する検討会」開催要綱
 資料2 がん医療提供体制の現状と課題(がん診療連携拠点病院を中心に)
 資料3 2次医療圏を基に医療提供体制を考える~治療件数からみたがん医療の状況~
 資料4 患者が求めるがん医療情報と相談の提供
 資料5 望まれる医療連携システムの構築
 資料6 検討会の今後の論点及び進め方(案)
 参考資料1 がん対策推進基本計画
 参考資料2 がん診療連携拠点病院の整備に関する指針
 参考資料3 がん診療連携拠点病院指定一覧
 参考資料4 指定要件に基づくがん診療連携拠点病院の指定の考え方
 資料に不足・落丁等ございましたら、事務局までお申し出ください。よろしいでしょうか。
 続きまして、本検討会の座長を選出したいと思います。本検討会は開催要項にございますとおり、構成員の皆様方の互選によって座長を置くことといたしております。御推薦ございましたら、お願い申し上げます。西山構成員どうぞ。
○西山構成員 北島構成員を座長に推薦させていただきたいと考えております。御存じのように、北島構成員は今まで学会関係におきましても、日本外科学会、日本がん治療学会等々の会長・理事長をお務めで、国外におかれてもさまざまな学会の要職をお務めになられています。また、『New England journal of Medicine』というメジャーなジャーナルのアソシエイテッドエディターもお務めです。さらには、今現在も患者さんを実際に診ておられまして、病院、大学等々の経営にもかかわっておられます。実際を知りながら国民のためになる診療体系をつくっていこうという、本検討会における座長として最も適任であろうと考えております。御考慮いただければ幸いです。
○岡田がん対策推進官 ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
 それでは、北島構成員にお願いするということでよろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○岡田がん対策推進官 構成員の皆様方全員一致のようですので、北島構成員に本検討会の座長をお願いしたいと思います。北島先生、よろしくお願いいたします。
(北島構成員、座長席へ)
○北島座長 ただいま座長に御推薦いただきました北島でございます。非常に重積ということをよくわきまえておりますが、先ほど矢島健康局長様からもお話がありましたように、この検討会はあくまでも我々臨床家あるいは患者さんの代表として患者さんの視点を重要視、さらに、地域の医療という視点も含めて今後、いろいろな課題があると思います。
 実は平成16年、当時の杉村がんセンター名誉総長を座長として、第3次対がん10カ年総合戦略という委員会が立ち上がりました。そのとき私も参加させていただいて、その結果、特に3つの大きな項目を推進しようということになりました。すなわち、がん研究推進、がん予防の推進、それから、がん医療の向上とそれを支える環境整備。その中で、がん拠点病院のあり方を検討してきたわけでございます。したがいまして、その後厚労省や都道府県のお力添えで397の拠点病院が構築され、今それが機能しているわけであります。ただ、やはり創設後時間も経過しておりますので、検討してさらに新しいいいものを、しかも、そこから患者さんに安心と安全ながん医療を提供するということをもう一度見直していこうではないかという趣旨で、この会が立ち上がったものと理解しているわけでございます。
 先生方の忌憚のない御意見を賜って、よりよい拠点病院を構築していきたいと思いますので、御指導のほどよろしくお願いいたします。
○岡田がん対策推進官 北島先生ありがとうございました。
 では、以上をもちまして、カメラはお収めいただきますよう御協力よろしくお願いいたします。
 では、この後の進行は北島座長、よろしくお願いいたします。
○北島座長 それでは、本日の議題に入らせていただきます。まず、資料1の開催要綱を説明いただきまして、続けて資料2について事務局から御説明をお願いしたいと思います。
○事務局(秋月) それでは、資料1『「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」開催要項』について御説明いたします。
 まず「1.趣旨」でございますが、全国どこでも質の高い医療を受けることができるよう、がん医療の均てん化を推進するため、がん診療連携拠点病院の整備が進められ、平成24年4月1日現在397の施設が指定されております。ただ、拠点病院の診療の格差、診療支援の内容がわかりやすく国民に示されていないこと、さらに、高齢化社会やがん患者の多様化するニーズを踏まえ、拠点病院以外の医療機関との連携や、在宅医療、介護サービスの提供も重要となっていることなど、幾つかの課題が指摘されております。
 本検討会では、こうした課題を踏まえ、拠点病院を中心に今後のがん診療提供体制のあり方について、各地の医療提供体制を踏まえて検討することとしております。
 「2.検討事項」ですが、拠点病院の指定要件の見直し、地域におけるがん診療のあり方について、国民に対する情報提供のあり方、拠点病院の客観的な評価等を予定しております。
 「3.その他」でございますが、ここは事務的な話になりますので省略をさせていただきます。
 裏面には今回の検討会の構成員の名簿を載せております。
 続きまして、資料2「がん医療提供体制の現状と課題(がん診療連携拠点病院を中心に)」について説明させていただきます。
 まず、3ページ目になりますけれども、がんの現状ということで、がんは非常に多種多様ながんから成るということで、基本的な話を御説明させていただきます。
 がんは、主に腫瘍の位置と病理組織によって分けられますけれども、腫瘍の位置で約100種類、病理でいきますと約2,000種類ということで、がんといえど非常に多くの種類から構成されております。
 下には死亡者数と罹患者数を載せておりまして、死亡者数でまいりますと1位が肺、次に胃、肝臓と続きます。罹患者数は胃が第1位、肺、結腸と続いております。
 4ページ目でございますが、部位別の5年相対生存率。これは地域がん登録の2000~2002年の診断例から集計したものです。見ていただきますとわかりますとおり、例えば、乳房、前立腺や精巣腫瘍といったところは、5年相対生存率が8割を超えておりますけれども、例えば、膵臓ですと10%を切っておりますし、先ほど死亡者数が最も多いと申し上げた肺についても30%弱ということで、非常にがん種によって差があるということでございます。
 5ページ目が、部位別のがん年齢調整死亡率の推移でございます。これを見ますと、胃は下がってきておりますし、ほかのがん種も横ばいからやや下がっているのですけれども、女性の乳房については増加しております。
 6ページ目は、死亡率の数値が低いものをログスケールで示したものですけれども、男女ともに膵臓がんが増加しております。
 7ページ目ですが、がんは種類が多いだけではなくて地域によっても異なるということで、上の表が都道府県別がん75歳未満の年齢調整死亡率になっておりますけれども、各都道府県によって大きく差がございます。
 また、下に日本地図を示しておりますが、例えば、胃がんであると東日本に、肝臓がんであると西日本に多いということで、地域によっても差がございます。
 次のページからが、がん対策推進基本計画、特にがん医療に関することについて御説明させていただきます。
 がん対策基本法は平成19年4月に施行されました。がん対策を総合的かつ計画的に推進するということで、左の枠に囲ってあるとおり、国では、がん対策推進協議会の意見を踏まえて、がん対策推進基本計画を策定し、それと同時に都道府県では、都道府県のがん対策推進計画を策定していただいております。
 法律の中身でございますが、右に囲ってあるとおり、特にがんの予防・早期発見、がん医療の均てん化の促進、研究の推進といったところが盛り込まれております。
 10ページは、今年6月に閣議決定されたがん対策推進基本計画の概要です。今回、重点的に取り組むべき課題として、放射線療法、化学療法、手術療法のさらなる充実と、これらを専門的に行う医療従事者の育成、がんと診断されたときからの緩和ケアの推進、がん登録の推進、今回新しく盛り込まれましたが、働く世代や小児へのがん対策の充実が入りました。
 それから、下は、分野別施策及びその成果や達成度を図るための個別目標ということで、特にがん医療に関する部分を赤く記載しております。また、新しく入ったものとして、特に7、8、9がございますが、小児がん、がんの教育・普及啓発、がん患者の就労を含めた社会的な問題ということで、さらにがん対策で求められているものが幅広くなったという状況でございます。
 11ページですが、がん対策推進基本計画におけるがん医療に関する記載の概要を盛り込んでおります。例えば、チーム医療とがん医療全般に関することということで、チーム医療の推進、セカンドオピニオンの普及、口腔ケア、栄養管理、リハビリテーション等の推進、がん看護体制の強化などが入っています。
 2つ目が、がん医療に携わる専門的な医療従事者の育成。
 3つ目が、がんと診断されたときからの緩和ケアの推進。
 4つ目が、地域の医療・介護サービス提供体制の構築。
 5つ目が、がんに関する相談支援と情報提供。
 そして、その他ではありますけれども、希少がん対策、病理診断・細胞診断の均てん化、
リハビリテーションの推進といったところも入っておりますので、今回の指定要件の見直しに当たっては、こういった基本計画に記載された内容を踏まえて見直しを進めていきたいと考えております。
 次が、がん診療連携拠点病院の現状ということで、まさに今回の検討会で主に御議論いただく内容になるかと思いますが、がん診療連携拠点病院については、平成13年8月に地域がん診療拠点病院の整備に関する指針という通知を出しまして、その後、拠点病院は指定を始めております。
 大きく2回改定しておりまして、1回が平成18年のがん診療連携拠点病院の整備についてということで、さらに平成20年3月にもう一度改定しております。そして、一番下に書いておりますとおり、現在397が指定されております。
 14ページですけれども、平成13年の整備指針ということで概要をお示ししております。拠点病院のそもそもの必要性は、日常の生活圏域の中で全人的な質の高いがん医療を受けることができる体制を確保することが目的ということで、各都道府県において2次医療圏に1カ所程度を目安に拠点病院を指定することといたしました。
 この際の指定要件というのは、まだまだ非常に基本的なところで、専門的ながん医療だとか、緩和医療、がん登録、研修、そして、がん診療情報の提供体制の整備といったところでした。
 その後、平成18年に大きく見直されまして、この際、都道府県のがん診療連携拠点病院を2次医療圏に1カ所整備している拠点病院とは別に整備するということになりました。そして、指定要件も変わりまして、例えば、赤く書いておりますけれども、セカンドオピニオンを提示する機能や、チームによる緩和医療の提供、地域連携クリティカルパスの整備、相談支援センターの設置といったところが新しく加わりました。
 そして、特定機能病院については、平成18年から拠点病院の指定の対象になりまして、腫瘍センター等を設置すること、医療機関への医師の派遣などが追加要件として入っております。
 また、都道府県のがん診療連携拠点病院については、都道府県に1つとりまとめるという意味で整備を進めるということで、研修、診療支援、そして都道府県のがん診療連携協議会の設置が要件となっております。
 15ページ、平成20年からの整備指針ですけれども、主な変更点ということでお示ししております。診療機能の強化については、例えば、外来化学療法室の設置、院内クリティカルパスの整備、緩和ケアチームを組織上位置づけること、外来で専門的な緩和ケアを提供できる体制を整備すること、キャンサーボードの設置などが入っております。
 相談支援、がん登録、地域連携、研修に関することについては、地域連携クリティカルパスが望ましいということではなくて、義務という形で要件として入っております。また、緩和ケア研修の定期的な開催についても入りました。
 特定機能病院、都道府県がん診療連携拠点病院については、幾つか放射線療法部門の設置などが入っております。
 16ページは、御参考までですけれども指定要件の比較ということで、がんセンターの位置づけ、都道府県のがん診療連携拠点病院、地域がん診療連携拠点病院かつ特定機能病院、そして、地域がん診療連携拠点病院の比較を表にして載せましたので、適宜御参照ください。
 17ページですが、拠点病院数と拠点病院のない2次医療圏数の推移でございます。左の図の青線が拠点病院の数で、順調に増えておりますけれども397で、最近はそこで止まっているというような状況です。
 また、拠点病院のない2次医療圏の数も減ってきてはおりますけれども、ここ数年は横ばいということで、現在113の医療圏に拠点病院が整備されておりません。
 右下の図は「人口規模別にみた空白の医療圏」と書いておりますけれども、やはり人口の規模が小さいところでは空白の医療圏が多いということが見てとれるかと思います。
 18ページが、一方で複数の拠点病院が同一の2次医療圏に指定されているところもございます。これはどういったときに複数の拠点病院を認めてきたかを4つ書いております。当該都道府県におけるがん診療の質の向上及びがん診療の連携協力体制の整備がより一層図られることが明確である場合、そして、下の3つは参考資料4にも入れておりますので、適宜御参照いただければと思いますが、当該医療圏や都道府県のがん診療体制に期待される相乗効果が、都道府県の推薦意見書に数値目標などを用い記載されていること、こういった場合に認めてきたという現状がございます。
 下に、現在の複数指定されている医療圏の数を示しております。合計しますと87医療圏。最も多いのが札幌の8病院ということになっております。
 19ページですけれども、日本地図に空白の医療圏がグレーになっていますが、1カ所指定されているところ、2~8カ所まで色別にお示ししております。
 次は、がん診療連携拠点病院への患者さんの集約状況ということで、幾つかスライドを用意いたしました。
 21ページですけれども、全国のがん患者の拠点病院の集約状況ということで、これはがん種別に見た場合です。がん種により差はありますけれども、大体約6割程度が拠点病院で診断しているという状況です。ただ、例えば、赤く囲ってある結腸・直腸、それから、前立腺といったところは5割に満たないという状況である一方、網膜芽細胞腫は国立がんセンターの方で診断しているわけですけれども、頭頚部の腫瘍や軟部の悪性腫瘍、黒色腫といったところは非常に集約が進んでいるということでございます。
 22ページは、これを都道府県別に見た場合でございますが、これも地域によって差はありますが約6割が集約しておりまして、埼玉、東京、神奈川、大阪、鹿児島、沖縄を赤く囲っておりますけれども、こういったところは余り集約が進んでいないのですが、一方で、岩手、福井、島根といったところでは大体9割の患者さんが拠点病院で診られているということでございます。
 23ページは他県からの受け入れ状況です。これは拠点病院診断例に限定したものですけれども、例えば、東京の拠点病院で診断されたがん患者さんのうち、約3割の方は他県の居住者ということになります。
 また、24ページは、逆に他県への流出状況ということで、例えば、埼玉県のがん患者さんのうち3割以上は他県の拠点病院で診断されているということで、もはや医療圏のみならず、県の境界を越えて患者さんはその病院を受診されているということを表しているかと思います。
 その後ですけれども、がん診療連携拠点病院の分野別の診療実績や医療従事者の配置等のグラフを幾つか作成いたしました。
 拠点病院は、非常にさまざまな種類の病院があるということをお示ししているのですけれども、26ページが拠点病院の病床数、入院がん患者数、常勤医師数、常勤看護師数ということでばらつきがあるということ。
 27ページは手術になりますけれども、年間の悪性腫瘍の手術総数、年間病理組織の迅速組織顕微鏡検査数を例示として出しております。非常にばらつきがあることがわかると思います。
 28ページが放射線療法になりますが、体外照射延べ患者数、小線源治療延べ患者数ということで、体外照射についてはリニアックの整備が要件に入っておりますので比較的あるのですけれども、小線源については要件になっておりませんのでゼロというところも多くなっています。
 29ページが化学療法ですけれども、左が入院の化学療法の延べ患者数、右が外来化学療法延べ患者数ということで、入院化学療法などはやや少ないのですけれども、大体1,000ぐらいのところに固まっているのかなと。それから、外来化学療法については同じく1,000ぐらいまでに多くあるのですが、一方で5,000以上やっているような病院もございます。
 30ページ、領域別診療実績、緩和ケアのほうですけれども、緩和ケアの外来の患者数、緩和ケアの診療加算の件数。緩和ケアの外来患者の数などは、まだまだ少ないのかなという印象でございます。
 31ページが、5大がん以外の診断数ということで、がん診療連携拠点病院は主に5大がんについて標準的な治療ができることが要件になっているわけですけれども、5大がん以外のものを幾つかピックアップして診断数を示したものです。
 最後ですけれども、都道府県が指定するがん医療機関の現状ということでお示ししております。国が指定している拠点病院は397ありますけれども、これとは別に都道府県のほうで指定している名前はいろいろですが、拠点病院がございます。
 33ページにあるとおり、現在、独自に指定を行っている都道府県の数は36、医療機関数が272。上位5都府県をとりますと、大阪、東京、島根、鹿児島、千葉ということになっております。
 補助金については20の自治体で行っております。また、国と同じ要件はそのうち9カ所ということになります。国の要件と一部異なるところが27あるのですが、どういうところが違うかと申しますと、放射線治療に関する要件、5大がんの集学的治療を緩和、これはがん種別に指定しているところもございます。それから、入院患者数は拠点病院は年間1,200というラインを一応引いているわけですが、ここを緩和しているところが多いようです。
 34ページですけれども、都道府県から拠点病院の制度について意見をいただきました。最も多いのは、地域の事情を考慮した指定要件の検討を行ってほしいということで、これは空白の医療圏の対応を含むわけですけれども、例えば、準拠点病院の指定であるとか、隣接する圏域の拠点病院との連携や県域内の複数の病院の連携による拠点病院の指定、5大がんの一部に特化した専門医療機関の指定、医療圏により人口規模や医療資源が異なるため地域の実態に応じた要件や運用が必要。また、放射線機器の設置を満たしていないため消化器がんに強い病院であっても指定されていないといった御意見が寄せられております。
 次に多かったのが、これは地域の実情に応じてというところと通じるものがあるのですけれども、2次医療圏に原則1カ所を見直してほしいという御意見が多くありました。
 それから、拠点病院と都道府県指定病院の役割についても、やや曖昧なのではないかということで御意見をいただいております。
 35ページは、こういった現状を踏まえまして、がん診療提供体制の課題ということで、事務局からお示ししております。
 拠点病院の目的、これまでがん医療の均てん化を目指して、主に5大がんの集学的治療を行う医療機関を2次医療圏に原則1つを目指して整備してまいりました。ただ、現状と課題として、397指定されていますけれども、拠点病院の格差が大きいということ、そして、いまだに113の医療圏で拠点病院が整備されていない。さらに、都道府県指定の拠点病院もあって患者にとってわかりづらいのではないかということ。
 都道府県のほうからは、地域の実情に応じた拠点病院制度が求められております。
 事務局からは以上でございます。
○北島座長 ありがとうございました。
 短時間に非常に膨大な資料を御説明いただいて、いろいろ今後議論していかなければいけない問題点も最後の35ページで御指摘いただきました。短時間で説明頂きましたが、今の説明につきまして御質問があったらお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 このデータは、いわゆる拠点病院のがん登録を基盤としたデータと理解してよろしいですか。
○事務局(秋月) 拠点病院に関するデータは2つリソースがありまして、1つは院内がん登録という、これは拠点病院の要件で義務づけているものです。もう一つは、現況報告という形で、年に一度、診断した症例だけではなくて人員の配置であるとか、あるいは診療報酬料の加算がどれくらいとれているかとか、緩和ケアチームの実績がどうなっているかといった内容を現況報告として提出していただいておりまして、その両方のデータをもとに作成した資料ということになります。
○北島座長 やはり一番の問題点は、今御説明いただいたのは、国の指定と都道府県指定、いろいろな指定の拠点が397あって、それをすべて包括した御説明だったと思いますが、その辺が国と都道府県の指定でどう違うのかとか、それから、都道府県から見ていろいろな拠点によって格差があるのではないかといういろいろな御意見がこれから出てくるのではないかと思います。そういう意味で、今御説明いただいた中で、こういうところを確認しておきたいという御意見がありましたら。
 田村構成員どうぞ。
○田村構成員 都道府県指定の拠点病院が、今2次医療圏の空白地帯を埋めるためにつくられているのか、それとも指定要件にほぼマッチするところがたくさんあるので、都市部を中心に指定されているのか、そのあたりのディストリビューションがわかれば教えていただきたいと思います。
○事務局(秋月) 配置については、医療圏の関係という観点からまだ見られていないので、そこは見たいと思いますけれども、ただ、聞いている限りでは、必ずしも空白の医療圏を埋めるというだけではなくて、要は2次医療圏に原則1つとなっているので、先にどこかが指定された場合に、それと同等のあるいはそれ以上の機能を持っているにもかかわらず指定がされていなかったり、あるいは地域の事情でなるべく多くの病院に、がんの行政施策にも携わっていただきたいということで指定をしているとか、いろいろな事情があると聞いています。
○北島座長 ほかにございますか。神野構成員どうぞ。
○神野構成員 これから高齢化に伴いがんの患者さんが非常にたくさん増えてくるわけです。同じように「拠点病院」として、災害拠点病院がありますよね。あれが実は3・11の後でいろいろなところに見直しがかかっています。すなわち、拠点病院だけでは大量の被災者の方に対応できないのではないか、拠点病院の次に来る病院も役割を担うべく整備すべしというような観点があります。同じように、これから高齢化が進んできた中で、がん患者さんがたくさん増えてきた中で、その方全部に対応するのは拠点病院だけでいいのか。その中で、今お話がありましたように、都道府県における準拠点病院的な役割をもうちょっと重要視すべきだと思います。その中で、各都道府県での基準というのがどの程度違うのかとか、分布の割合といったデータは今後出てくる可能性があるのかということを御質問したいと思います。
 実は、私は能登半島で病院をやっていますけれども、いわゆる空白医療圏です。一応県からは、いわゆる準拠点病院としてやりなさいと言われております。その基準というのがなかなかはっきりしないものですから、よその県と比べてどうなのかというのはなかなかわからない。その中で、もしかしたら拠点病院でいいのではないかという思いをしながらやっているところもございます。
○事務局(秋月) 都道府県のほうからは、都道府県が独自に指定しているものについて今年の4月時点ではあるのですけれども、どこが要件として具体的に違うのかとか、どこに指定されているのかというのはアンケート調査をしておりますので、それも少し詳しく分析して、また次回御提出させていただきたいと思います。
○北島座長 堀田構成員どうぞ。
○堀田構成員 地域がん診療連携拠点病院はもともと2次医療圏におおむね1つ、事情によっては複数でよいという仕切りになっていると思いますが、2次医療圏そのものが200万、300万で1つの2次医療圏のところと、10万程度のところまであるという、この物すごい格差の中にどう押し込めていくかということで考えられてきましたが、そもそも2次医療圏ということにこだわるのはそろそろやめたほうがいいのではないかというのが私の個人的な意見です。いずれにしても、県が独自に指定する拠点病院というのか、協力病院がどのくらい患者さんを捕捉しているかということになりますと、現在、院内がん登録でいわゆる国指定の拠点病院が捕捉しているのが大体65%弱だと思います。そうすると、あと35%は恐らくそういうところがカバーしているということになります。拠点病院とそれ以外のがん医療ををどのように全体として面として組み込んでいくかというのが今後の大きな問題だと思いますので、そのあたりの実情がもう少し詳しくわかればと思います。
○北島座長 今、貴重な御意見をいろいろお伺いしましたけれども、やはり先ほどの神野構成員の御意見にもありましたように、時代背景の中で超高齢化時代、4人に1人が65歳以上になってくる、それから、がん種に関してはいろいろ御報告がありましたし、さらに、2次医療圏と規定して、そこに1拠点病院でいいのかという御意見もございます。その中で地域、都道府県の人口構成とか年齢構成ということを考えながら、今後これが本当にがん拠点病院としていいのかどうか、あるいは拠点病院のないところでは準拠点病院のようなものをこれから構築していく必要があるのかどうか、幾つか、問題提起していただいたと思います。
 そこで、恐らく今後の議論の中で参考になるのではないかと思いますが、本日は高橋、石川両参考人をお招きしております。そのお二人に資料3を用いていただいて、がん医療全体について医療施設調査やDPC病院、このデータをもとに分析された結果をこれから御説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
○高橋参考人 まず、国際医療福祉大学の高橋から1分間だけ前振りをさせていただきます。
 昨年1月11日に、きょう参考人で来ております石川と私とウェルネスという会社で2次医療圏データベースをインターネット上で公開いたしまして、その2次医療圏データベースをもとに『社会保険旬報』で昨年12回連載を行いました。その8~11回までは今から説明する石川君が博士論文の一部分という形でまとめたものを発表しました。その中の第9回の連載が、がん治療でありまして、今、北島座長から御紹介がありましたように、主にDPCデータと2次医療圏のデータ等を結びつけまして、2次医療圏を中心にどのような形でがん拠点病院等が分布しているか、それから、治療の集約化が進んでいるかというようなことを評価いたしました。これをがん対策室が注目していただきまして、本日この連載の内容を中心に説明をしろという御指示をいただきまして参りました。
 石川君の仕事ですので石川君に説明をしてもらうという形で、私はどちらかという父兄参観の親代わりということできょうはついてまいりました。
 では、石川君、頑張ってください。
○北島座長 石川参考人、親代わりがついておりますので、安心してわかりやすく説明をお願いします。
○石川参考人 本日は、貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。私はがんの専門家ではございませんけれども、医療提供体制の分析であるとか、あるいは病院の経営支援に関与する立場からお話をさせていただければと思っております。
 資料3の2ページでございますけれども、先ほど高橋のほうからお話をさせていただきましたが、2次医療圏データベースというものを昨年公開させていただきまして、今回はそれに関して、右側でございますが、『社会保険旬報』に投稿した論文を踏まえまして、特に右下の治療件数の動向や中核病院の所在、2次医療圏の格差といったところ、マクロ的な視点でございますけれども、今後の検討に御参考になればということで情報提供できればと考えております。
 3ページからは手術治療の動向ということで、全国の手術件数の推移というのを左側の表でお示ししております。これは悪性腫瘍全体になりますけれども、全体としては年率6%の増加率で増加しております。こちらは医療施設調査、厚生労働省様が作成されております調査を用いております。基本的には公開データを用いた分析とさせていただいております。
 続いて、右側の図表でございますけれども、実施施設数を病床の規模別に推移を見ていますが、病床規模で見ますと小規模病院、青の薄いところですけれども、200床未満の病院が実施施設数としては多い。ただし、近時、減少傾向にあるということでございます。
 続いて、4ページは手術件数の視点でございます。左側の表でございますが、手術件数の推移を見ますと、先ほど事務局の話でもありましたけれども、やはり拠点病院あるいは中・大規模病院に症例が集約しているということで、左の赤い丸で囲った平成23年で87%が中・大規模病院で手術が行われていると。これは全身麻酔で約8割ですので、がんにおきまして手術が大規模病院に集約しているという傾向がございます。
 5ページでございますけれども、今度はがん種別に比較しております。要点だけ申し上げますと、手術件数の少ないがん種ほど一定の病床規模を有する病院、これはがん拠点病院を含めてですが、実施されている割合が高いと。専門医の配置状況ですとか、治療の専門性等が影響していると考えております。
 一方で、特に大都市部におきましては、例えば甲状腺の伊藤病院のように、小規模でも専門病院という形である程度の症例数を確保しているような病院もあるというところは留意を必要とすると考えております。
 6ページからは放射線治療の動向ということで、同じように実施施設数、治療件数をまとめております。
 6ページは医療施設調査を用いております。注記で「対外照射」となっておりますが「体外照射」でございます。状況としては、手術治療は大規模病院を中心に実施されているということが見られると思います。
 右の表ですが、手術実施施設数に対する比率ということで、大規模病院では手術と放射線治療を両方行っている病院が多いのに対して、診療所、中規模病院に関しては、放射線治療を具備していない病院も多いと想定されますので、放射線治療の適応のある患者さんに関しては、オレンジボックスのところで書いておりますけれども、放射線治療が可能な医療機関に対して連携を推進する仕組みも重要になってくるのではないかと書かせていただいております。
 7ページは放射線治療件数の推移でございます。左側の表は、中・大規模病院に97%の症例が集約しているということで、手術治療以上に大規模病院への集約が進んでいることが見られます。こちらの掲載している患者数は延べ数でございまして、実際の患者数ではございません。恐らく医療施設調査は照射回数ですとか、照射録の枚数で計算されているものですので、そこは留意を願えればと思います。
 8ページからは手術件数の多い病院の所在ということで、先ほどがん拠点の話がありましたけれども、がん拠点病院以外の病院も含めた形でDPCデータを用いたものになります。ここも申し上げたいことは、人口規模が大きいほど一定の治療件数を確保する病院は多いということでございます。ただし、人口規模が多い医療圏であっても、がん手術では仮に年間1,000件以上の実施病院数を見ているのですけれども、東京の区中央部医療圏ですとか、あるいは大阪のように、そういった病院が10カ所程度あるような医療圏がある一方で、人口が100万程度あっても、全くそういった病院がないような医療圏もあるということで、そちらは先ほど話が出ましたが、どのくらいの人口規模に対して拠点病院を幾つ置いていくのかといったところは、まさにこのあたりの手術件数の実績も踏まえながら考えていく必要があるのかなと見ております。
 一方で、表の下を見ますと、やはり人口規模が小さいところは一定の症例数を確保する病院は限定的であるということで、ここは準拠点病院の配置も含めた検討の一つ参考材料になればと思っております。
 9ページは、先ほどの話と関連しまして、年間1,000件以上の病院が、特に人口規模が大きいのに少ない医療圏というのをあえて抽出してきております。見ていただきますと、やはり東京、大阪、名古屋といった3大都市圏が多いということが見てとれるかなと思います。こういった形で個別具体的な医療圏を挙げた議論というのも必要ではないかということで、挙げさせていただきました。
 続いて10ページでございますけれども、ここは表がごちゃごちゃしておりまして恐縮ですが、要点だけ申し上げますと、ここからは治療供給の2次医療圏格差ということでお話ししたいと思います。人口10万人当たりの手術件数という指標を用いております。こちらは、その医療圏で実施された手術件数を医療圏の人口で割っておりまして、本来は患者さんの流出入であるとか、あるいは受療率あるいは罹患率といったところが医療圏ごとに違いますので、本来その辺も踏まえる必要があるのですけれども、あくまでざっくりとした指標として見ていただければと思います。
 ここでの1つのポイントとしましては、左下の表ですけれども、大都市、地方都市、その他ということで分けておりますが、その他は人口規模が小さかったり、人口密度が低い医療圏になるのですけれども、そういった医療圏では人口当たりの手術件数が少ない医療圏が多いということで、相当程度人口規模の大きいところに患者さんが流出している、医療圏を超えた受診行動というものが起こっているのではないかと見ております。
 ちょうど神野先生がいらっしゃいますけれども、能登の医療圏を見ますと、奥能登、能登の北部は白くなっておりまして、一番人口当たりの手術件数は少ない。恐らく能登中部の恵寿総合病院様であるとか、あるいは金沢のほうに患者さんが流出しているということも、こういった形で視覚的に見ることができるのではないかということで御紹介させていただいております。
 続いて、11ページでも治療供給の2次医療圏格差ということで左の表をごらんいただきたいと思います。ここでは人口10万人当たりの横軸が手術件数、縦軸が放射線治療件数ということで見ております。ばらつきがあるということが見られると思いますけれども、特に放射線治療が行われていない医療圏というのも、この調査では88医療圏で放射線治療がゼロ件ということで、これは治療機器がないのか、あるいは治療医が不在なのかわかりませんが、そういったところがあるということです。
 右の表でお示ししておりますのは、こういった医療圏のばらつきを仮にセグメンテーションで分けた場合に、右上に行くほどバランス型ということで、手術、放射線それぞれが行われているということで、恐らくこういったバランスがとれた形に持っていくというのも、一つの目標ということでは考えられるのではないかということで掲載させていただいております。
 12ページでございますけれども、今度は横軸は人口10万人当たりの手術件数ですが、縦軸は1病院当たりの手術件数という指標を挙げさせていただきました。これは1病院当たりの生産性という言い方もできるかもしれませんが、医療資源というのは全国専門医、医療機器、有限の中で生産性という観点も考えられるのではないかということで掲載させていただきました。
 右側の表は、右上に行くほど症例が集約していて、かつ、人口当たりの手術件数も多いということで、ほかの医療圏からも流入しているのではないか。
 一方で、右下ですと、少し症例が分散しているのではないかといったところも見てとれますので、こういった医療圏の特徴を見ていくということもできるということで掲載させていただいております。
 13ページは、がん治療とは直接はかかわらないところかもしれませんが、将来の人口動態がまさに需要動向と関係してくると思いまして掲載しております。
 左の表ですが、横軸が総人口の増加率、縦軸が65歳以上の増加率、高齢人口の増加率ということになります。やはり、がんは高齢者に多い疾患ということで考えますと、今後の需要増加というのは、特に高齢人口の増加が多いところで大きいのではないかということが、この表からも推察されます。特に、人口増加率が高いところというのは3大都市圏を中心に高いということが言われておりまして、3大都市圏というのは当然、人口規模も大きいわけですから、高齢人口の増加の絶対数ということで言いますと相当程度多いということになってまいりまして、こういった需要急増地域に対する重点的な医療資源配分、拠点病院の配置ということも一つ考え方としてあっていいのではないかということで掲載しております。
 14ページ、最後でございますけれども、総括ということで簡単に書かせていただきました。ここでは問題提起ということで、本当に治療内容、がん種、医療圏ごとに相当程度状況、ばらつきが異なっているということで、それを踏まえた医療提供体制のあり方について検討を要するということを書かせていただいております。
 また、2点目でございますが、最終的な目標といったときに、これは先生方に申し上げるのは恐縮なのですけれども、ヘルスケアの価値、患者視点、患者中心で治療を行っていく場合に、地域単位での診療情報の統合・可視化が求められているのではないかと。今がん登録ですとか、ナショナルデータベースが整備されておりますけれども、下はイメージ図ではありますが、左側の需要に対して患者さんのフロー、治療の組み合わせであるとか、そこに対する機器の生産性、人的生産性を踏まえた資源配分、方針の考え方であるとか、そこを地域としてあるいは病院単位で評価していく視点であるとか、そういったところが今後求められていくのではないかということで書かせていただいております。
 この中では恐らく拠点病院だけではなくて、検診であるとか、あるいは在宅、診療所等の役割も当然大きくなっていくということも考えられるということで、そういったことも含めて書かせていただきました。
 以上でございます。
○北島座長 ありがとうございました。
 高橋参考人、何か追加することがございましたら。
○高橋参考人 今までの議論を聞いておりまして、医師会の方から今村先生が来られましたけれども、私は今年11月2日に、各県10ページで、各医療圏ごとに高度医療と高齢者医療の整備をどうするかという500ページぐらいのレポートを医師会のワーキングペーパーということで発行いたしました。がんの話に関しても今までの議論を聞いていると、県別で状況を評価して、さらに各2次医療圏ごとにどうすべきかという評価のレポートがないと、なかなか具体的な議論ができないのではないかと感じましたので、我々のほうも先に精神科をやらないといけないのですけれども、がんのほうも来年取り組んでもいいのかなと感じております。
○北島座長 ありがとうございました。
 それでは、ただいまの資料3についての御質問をお伺いしたいと思います。
 西山構成員どうぞ。
○西山構成員 まずは、スペシフィックな質問ですけれども、治療供給の2次医療圏格差にかかわる統計は、がんを対象にしたものだけなのでしょうか。10ページ以降、治療供給の2次医療圏格差とありますけれども、ここでのデータは疾患全体をとられているのでしょうか、それともがんのみなのでしょうか。
○石川参考人 こちらは悪性腫瘍の手術件数を対象にしております。
○西山構成員 そうしますと、全体の限られた医療資源の中で、がんの特徴を見るということはなかなか難しいと思うので、全体の医療の配置、要するに診断数、患者数、病院数等々と、がんに限って見た場合と、その間に大きな違いがあるということは、こういう統計の中で経験されていらっしゃるでしょうか。要するに、(該当地域全体の)医師の数は非常に少ないが、がんに対する連携拠点病院は多くて死亡率が改善している、あるいはその逆というようなこと、がんという疾患に対する対策と成果がほかの全体像と比べて大きく変わっているというデータみたいなものはございますか。
○高橋参考人 私のほうは、今御質問があった全体像のレポートをやって全2次医療圏を偏差値化しているのですけれども、その数値とがんの個別のデータの突き合わせというのはまだしておりません。先ほど言ったのはむしろ、まさに先生の御指摘のような形で、各2次医療圏ごとにそれを評価しないとどうすればいいかというのはなかなか見えないし、全国同じ物差しではかって、それをやる必要があるのかなということを感じたということで、残念ながら現在のところはないということでございます。
○北島座長 ほかにございますか。
 やはり14ページの総括が、今後の我々の議論のポイントになってくるのではないかと思います。治療内容あるいはがん種、それから、医療圏ごとに状況が異なる環境下でいろいろながん医療が提供されているということと、スキーマーが非常にわかりやすく書かれていて、いわゆる患者さんのフローがいろいろな診断から治療、それから、緩和ケアに入っていって、そこに限られた費用や財政の中で医療の質とか費用を評価していかなければいけないという必要性などです。この辺が将来、非常に大事なポイントになってくるのではないかと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 それでは、次に、今回検討会には2名の患者さんの代表の方に御参画いただいております。そこで、先ほども局長からお話がございましたが、患者さんの視点ということで、がん医療に何を求めるのか、そういう御意見を本日まとめていただきまして御発表いただくことになっております。
 それでは、まず伊藤構成員より、資料4についての御説明をお願いしたいと思います。
○伊藤構成員 私、乳がんの患者会、声を聴き合う患者たち&ネットワーク「VOL-Net」の代表をしております伊藤朋子と申します。
 当会の活動が始まりましてから約10年、ちょうどがん医療がいろいろ大きく変わってきたところにいろいろな場面で携わらせていただいたこともございまして、乳がんのことだけではなくて他の患者会様とも連携の活動をさせていただいておりまして、そこでお聞きしている声なども織り込みながらお伝えできればと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 私どもの患者会は10年活動させていただいておりますけれども、特に創設当時とすごく変わってきたなと思う患者の行動としましては、とみにこの2~3年大きくなってきているのですけれども、検査から告知、特に初期の段階では本人もしくは御家族の方のインターネットでの情報収集、そして、それを通した知人への情報収集という行動が非常に多くなっているなということを実感しております。ですので、10年前は情報がなくて困っていたのが、最近は情報があり過ぎて困るというのが現実ではないかと思っております。これは恐らくインターネットという媒体の特性でもありますけれども、首都圏は首都圏なりに困る、地方は地方なりに困るという情報だと思います。だから、地方の方は選択肢が少なくても悩むんですよね。首都圏の方は、逆に選択肢が多過ぎて困る。でも、実際は何で情報収集活動をしているかというと、治してというのが恐らく本音だと思います。私の病気を治してくれる病院や先生はどこにいるのというのが、一番最初の行動の源泉の根っこのところではないかと思います。
 ただ、残念ながら、患者にとっては未知の領域に入っていくようなもので、初めてのことなので何がどうなっているか全然わからない中で情報収集していきますので、何となく自分のことを治してくれるいい病院、よくない病院があるようだとか、自分のことを治してくれる、よくテレビに出ていますカリスマ、神の手などと言われているすごくいい先生と、治してくれないわけのわからない先生がいるみたいだみたいな感覚の中で右往左往しているというのが、恐らく現実にちょっと近い感じではないかと思っております。
 その中で、実際におかげさまでというか、この何年か本当に御専門家の方たちのお力もありまして、がん対策の法律が成立して以降いろいろなものが整備されていて、相談支援センターのようなものもできて、情報もいろいろな形でそろって、体制もいろいろな形で整えられてきているのですが、なぜそこに患者はこんなにつながれないのだろうという素朴な不全感というのが非常にあるんです。
 実際の患者側から見ると、本当に必要な情報は何なのか、自分が困ることが何かも実はわからないままのスタートであるということもありますし、それがわかっても必要なものはどこにあるのかという戸惑いという、二重苦、三重苦のような状態であるのかなというのがございまして、がん治療に入ることというのが、ほとんどの患者にとって未知の世界へ踏み出すことだと書かせていただいておりますけれども、この視点から診療提供体制をつくるということを検討していただけると非常にうれしいなと思っております。
 初期段階での診断の確定、それにかかわって病院の決定、治療の決定、そういう選択をしていくことに関して、実は治療のことだけを考えていればいいというわけではなくて、患者にとってはがんを治すことが人生ではなくて、がんとともに生きていくことがメーンでございますので、例えば、病院の選択にしても、治療の選択にしても、仕事や年代によっては介護、子育てをどうするかという生活の中でどうしていくかということを考えながらやっていかなければいけない。ただ、それを考えていくに当たって、何も知らない国ですので、地図もなければ、ガイドブックもなければ、それを教えてくれる添乗員さんもいなければ、通訳もいないという状況ですので、その中でどこに頼らなくてはいけないかというと結局、主治医になってしまうわけです。頼る気持ちもあるのですけれども、今モンスターペイシェントなどと言われていますが、そんなのはごく一部で、実は多くの患者は忙しい主治医をおもんぱかって御相談できなかったりとか、そういう方も多い。また、知らないから聞けないということもございますので、ぜひ、この間をつないでくれるようなシステムだとか人員配置を考えていただければと思います。今、主治医の方が手いっぱいなのは患者はみんな知っています。ですので、いろいろあるリソースを効率的に活用するためにも、患者や医療従事者の負担軽減のためにも、これだけあるリソースを実際にどう患者に届けるかという視点でのシステムも踏まえた診療体制をつくっていただくことが、双方の幸せにつながるのではないかと思います。
 未知の世界に踏み込んでいくことが不安で、そのこと自体がQOLを減らしていますし、私ごとではありますが、臨床心理士もやっておりまして、自分なりのいろいろな調査の中で、実は、未知のものから情報やサポートを得ることで、これは自分が対処できるものなんだという認識ができることで非常にQOLが上がるということがありまして、実はそのことは自分の活動の中でも実感として感じていることです。
 正直いろいろなところに私も出させていただいて資源の問題、費用の問題、もちろん財政の問題を含めまして、何かに全部を投入するというのは無理だと思います。無理だからこそ、今ここまで積み上げてきたリソースをいかに本当の意味で患者につなげるかという視点を、ぜひ皆様方に考えていただきながら御検討いただきたいと思います。皆様の先ほどからの意見をお聞きしていても、いいことをやってもらっているというのはすごくわかるんです。でも、恐らく初めて患者という立場になった一個人の方々には、そのことが何かすらわからないのが現実だと思います。ナビゲーション役、船頭さん役、どんな表現になるかわかりませんけれども、そういう方がうまくつながるような仕組みをよろしくお願いしたいと思っております。
 以上でございます。
○北島座長 伊藤構成員、ありがとうございました。
 引き続いて、緒方構成員から御説明いただいた後に御質問いただきたいと思います。緒方構成員、よろしくお願いいたします。
○緒方構成員 神奈川県立がんセンターで患者会「コスモス」の世話人の代表をしております緒方真子と申します。きょうはよろしくお願いいたします。
 私自身が2度のがんを体験しております。1度目は、ほぼ20年前なのですが、アメリカのカリフォルニア州で子宮頸がんの手術を受けました。2度目は肝臓がんでございます。これは原発ではあったのですけれども、神奈川県立がんセンターのほうで手術を受けました。2度のがん体験、それから、患者会コスモスで見たり聞いたりしたこと、そのようなことを通して、ここで発表させていただきたいと思います。
 患者視点でがん医療に求めることという御提示がございましたので、私は、望まれる医療連携システムの構築ということでお話をさせていただきたいと思います。退院後の空白を埋める医療、それがとても大切ではないかと思われます。
 退院後の患者の現状は、今、皆さんも御存じのように、大変入院日数が短くなっておりますので、退院後の医療の空白が出ています。入院日数のことをとやかく言う気持ちは今は全くございません。入院日数が短くなって不満に思う患者はたくさんいます。しかしながら、よしとしている患者も少なからずいます。体調の許す限り、事情の許す限り家にいたい、それから、事情が許せば仕事の量を加減しながらでも社会で活躍したいと思っている人にとっては、これはありがたい傾向です。でも、よしとする人にとっても不満に思う人にとっても必要なのは、退院後の医療です。とても不安な状態です。なぜならば、入院していればケアしてもらえるつらい症状、痛みだけではありません。便通の問題、しびれの問題、ふらふらするとかさまざまな身体的な不安がケアされないまま退院しています。
 また、再発するのだろうか、いつになったら私は社会復帰、もしくは自分復帰ができるのだろうかといったことへの相談も早々と退院しては、なかなか受けられないものがあります。
 病院の中にいれば囲われた状況ですから、なかなかチャンスがないのですが、家に帰りますと怒濤のように民間療法や健康食品の勧誘が始まります。インターネットでも山ほど情報があふれています。その取捨選択に戸惑いがあるのも現状です。
 そして、入院日数か短くなったからこそ通院治療が今は増えています。先ほどもお話にありましたように、高齢化していて運転もままならない家族もいます。もちろん本人もできない場合、また、病院までが非常に距離があるという場合もあって、通院への心身の負担は本当に大きくなっています。それに寄り添う医療や相談先が不在の状態です。特に、今ひとり暮らしの人、若い人にもひとり暮らしの人がたくさんいます。そういう人たちにとっての不安は今、深刻です。そういう人たちにとって何が必要かといいますと、退院後の医療連携が必要なんです。
 退院後の医療連携の現状を言いますと、全く不十分です。考えられることを3つ掲げました。訪問看護、ほとんど今現状では末期患者のためのみです。でも、訪問看護を必要としている人は末期患者だけではありません。一時的とは言いながらも必要としている人はたくさんいます。
 それから、緩和ケア外来に相談に行く、もしくはかかるということも選択肢にあると思いますが、これも不十分です。緩和ケア外来が緩和ケア病棟、ホスピスへの審査機関になってしまっているというところも少なからずあります。
 それでは身近な病院やかかりつけ医に連携してはどうだろうか。これも全く徹底していません。がんが、かかりつけ医のところで見つかるケースはあります。そして、拠点病院に紹介されることはあっても、その逆の連携は余り聞いたことがありません。そして、患者や家族に全くその概念すらないというのも連携が不十分な原因ではないかと思われます。
 望まれるのは退院後の空白を埋めるシステムです。退院と同時に必要とする患者に自動的に届く医療連携が必要だと思います。私が医療者に、そのことをちょっと相談したことがありました。そうしますと、その医療者は言いました。緒方さん、それ、できるのよ、できたのよ。では、どうして私が知っている多くの患者には届かなかったのでしょう。できるのに届かない、それは患者に自動的に届く医療連携というシステムができ上がっていないからだと思われます。
 先ほどもお話ししましたように、連携先としては訪問看護、緩和ケア外来、かかりつけ医、身近な病院、そういうところにしっかり連携されることで、安心して短い入院日数に患者は身を委ねられると思います。
 そのメリットとしては、当然ながら短い入院日数への不安が軽減します。そして、社会復帰、自分復帰への支えになります。どこまで頑張れば社会復帰できるのか、どこまで頑張れば旅行に行けるのか、それはとても大事なことです。そして、残念ながら終末医療に移行しなくてはならなくなった人にとっても、週末医療へのハードルが低くなると思います。終末期でなくてもつながっている医療から自然な形で週末医療に移行することで、ハードルが低くなると思います。
 最後に、私のことを少し話させてください。ほぼ20年前に、私は広汎性子宮全摘手術というのをアメリカで受けました。当時、入院日数はわずか5泊6日でした。私は、尿の管が体に挿入されていて、バッグがついていて、そこに尿がたまるというような状態で退院させられました。私はまだいいほうで、点滴などをしている人もたくさんいます。それでもアメリカ人たちは、その短い入院日数を受け入れています。なぜなのか。私のケースを言いますと、退院した次の日に訪問看護を受けることができました。それは、まるで入院しているのと同じか、それ以上に安心で、心地のいいものでした。
 以上をもって、私の発表を終わらせていただきます。御静聴ありがとうございました。
○北島座長 どうも貴重な御意見、お考えをお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
 伊藤構成員からもお話がありまして、まさしくこれは患者さんの視点から見た御意見だと思います。患者さんと医療をつなぐシステムの欠如が今、一番問題になっていると思いますが、伊藤構成員がスライドの中で、コーディネーターという言葉を使っていると思いますが、確かに、システムあるいは組織が日本には欠如しています。実は私自身、がん医療だけではなくて移植医療にも携わってまいりました。移植医療にはコーディネーターが絶対に必要なんです。そのコーディネーターが患者さんと家族とドクターをうまくコーディネートして、スムーズな医療をしていきます。これをがん医療にも持っていくべきだということで、現在、西山構成員が日本がん治療学会の理事長でリーダーシップを発揮し、がんのコーディネーター育成を推進しているということですので、ちょっと意見をお願いしたいと思います。
○西山構成員 先ほどの構成員お二方のお話・提案は、実は3年、4年前から多くの患者さんからもいただいております。これに対応するにはどうすればよいか。要するに、がん治療やがんに関わる問題で苦しむ方の悩み・苦しみというのは病院内では完結しない。それから、医療という場だけでも完結しない。多くの情報量を自分でどうすればいいか、悩みすらも自分で把握できないという状況で、しかも、個人個人で経済的なバックグラウンドやがんの病期もみんな違う。当然のことながら求めるものも違う。これらに対して適切に1人の生涯として全体を考え、フォローアップしてくれるような水先案内人というか、コンシェルジュが欲しいというお話を伺いました。今年で3年目になりますけれども、そうしたことを実現するには、医療機関に属さず、ちょっと離れた立場でないと退院した病院に相談に行くのがなかなか難しいということで、新しい概念のがん医療コーディネーター制度というものを検討し始めております。ただし、この資格者が際医療介入を行ったり、特定の医療機関だけを推薦するということのないように、公平性を保つことを第一義とするような教育システムをしっかりつくりたいと考えています。今、最終的なまとめの段階にあります。ただ問題になるのは、その方たちは全部ボランティアでやらなければいけないのかということであります。少なくとも求めには早く応じなければいけないし、その教育を始めなければいけない。ここ1~2年の間にそうした制度を学会としてしっかりした形で立ち上げようと思っています。今年の10月にありました日本癌治療学会学術集会で、患者さん教育に参加していただいた患者さんと話し合った結果、どんどんやっていこうということになっておりますので、もう少ししたら外形が示せるのではないかと思っております。
○北島座長 伊藤構成員、よろしいですか。
○伊藤構成員 ぜひ期待しております。よろしくお願いしたいと思います。
 もし、一言言わせていただけるとしたら、それはすごくいいことだなと私どもも考えておりますので進めていただきたいのと、それと並行して、前半からのお話の中でもありましたけれども、恐らくそういうものが届くのは首都圏からだろうなという感覚を持っておりまして、地方で医療自体の選択肢が少ない医療圏等で悩まれている患者さんにどう対応されていくのかというも、国全体のことを考えるシステムの中でぜひ見ていっていただければと思います。
○北島座長 緒方構成員の御意見で、緩和ケア外来の不足とかいろいろお話がありましたけれども、やはり拠点病院の中で「緩和」という言葉も避けて通れないのですが、今、厚生労働省では緩和の推進検討委員会が実際に行われております。ですから、そこでこの検討会とその辺の整合性を持たせるように将来的に議論を進めていきたいと思っております。
 今村構成員どうぞ。
○今村構成員 遅参して参りました日本医師会の今村と申します。
 前段の議論を伺っていなくて、今の伊藤構成員と緒方構成員の御意見に関してのみ、感想と今後の考え方を申し上げたいと思います。
 私ども日本医師会は、かかりつけ医を多くの国民の方に持っていただきたいと。そして、合わせてかかりつけ医の機能を強化しなければいけないということで取り組んでまいりました。今、西山構成員のような専門的なコンシェルジュの役割を担っていただく方を養成するのはとても大事なことだと思いますが、既に10万人ぐらいのかかりつけ医というものが全国に、これは都会も地方も問わずいるわけです。
 今回はがんの診療提供体制に関する検討会ですけれども、がんという診断がつく前に日ごろから御自分の健康に対していろいろ注意を払っていただくということで、がんに限らず生活習慣病も含めて健康診断等も受けて、そういった中で自分の健康について相談できるかかりつけ医を常に持っていただくと。医療は先ほどからお話があるように、非常に情報の非対称性が大きいものですから、患者さんが直接インターネット等からさまざまな情報をとっても判断できないということがあって、そこで相談役としてのかかりつけ医を利用していただきたいという思いがあります。もう一つは、急性期医療が終わった後で地域に戻ってきたときに、ケースによっては終末期医療というかたちでの対応になる方もいれば、そうではなく日ごろのケアをかかりつけ医で受けていただき、定期的あるいは増悪時に専門医療機関を受診していただくというような医療連携での対応のケースもあります。かかりつけ医を通して病院に行っていただいた場合には、病院からちゃんと紹介書や診療情報提供書のやりとりがあれば、医療情報を共有できるわけですけれども、いきなり病院に行ってしまうとなかなか患者さんも、そのあと、地域のどの医療機関を受診していいかわからないという問題もありますので、かかりつけ医の機能の強化につきましては、我々も当然努力しますけれども、ぜひ厚生労働省としてもそういう対応について御検討いただければと思っています。
○北島座長 ありがとうございました。
 医師会のほうでかかりつけ医という議論を長年やっていたことは、私自身も前に参加したことがありますので知っておりますけれども、かかりつけ医の定義というか、開業されている先生もかかりつけ医、大学の勤務医もかかりつけ医という議論がありましたね。ですから、その辺の先生方のかかりつけ医の定義をもうちょっと具体的に教えていただけますか。
○今村構成員 今、総合医とか総合診療医というような言葉の定義の議論もいろいろございますけれども、私どもが考える「かかりつけ医」とは、要するに御本人の病気だけではなくて、健康面の相談、家族の相談、先ほど訪問看護の話もありましたが、さまざまな地域の資源の活用、例えば介護や福祉サービスとの連携とか、その疾病だけを見るのではなくて、その方個人に対して全人的に対応していこうということでかかりつけ医としています。ただ、患者さんからすると、主治医的にとられがちなのですけれども、その病気だけの話ではないという概念でとらえていただければと思います。
○北島座長 もう少し包括的にエモーショナルとかそういうこともすべて含めてということですね。
 では、緒方構成員どうぞ。
○緒方構成員 今村構成員のお話に私は大賛成です。実は、患者というか市民の意識もすごく低いと思います。私たちは基本的にかかりつけ医の患者であり、そのかかりつけ医のコーディネートの中で専門医にかかるという考え方が普及すると、もっと戸惑いも少なくなると思います。確かに、コーディネーターも大事だと思いますけれども、ホームドクターがしっかりしていると、かなりの部分のコーディネートがそこで行われるのではないかと思います。でも、それはかなりエネルギーの要ることだし、まだまだ先の現実だと思います。そういう意味ではコーディネーターが今、一時的にというか、役割は大きいと思います。
○北島座長 ありがとうございます。
 やはり、かかりつけ医がいろいろな面で重要だということだと思いますけれども、将来的には病診連携がありますよね。そこが本当にきっちりやられているかどうかということが一つ緒方構成員の不安な面もあるのではないかと思いますし、かかりつけ医あるいは訪問看護といっても、1つのチーム医療の中でそういうものが構築されていかなければいけないと考えております。
 神野構成員どうぞ。
○神野構成員 先ほど災害拠点との比較の話をしましたけれども、救急などもそうですが、3次があって、2次があって、1次がある。先ほどの議論では、地域のがん診療連携拠点病院があって、都道府県別の準がある。もしかしたら、もう一つ下ではないですが、いわゆるプライマリーのところで身近な病院または身近な診療所があって、そこでチームとしてどういう体制がありますかというあり方を、もしできれば今後この場でも検討していただいて、がんのプライマリー的なところをやる病院・診療所のあり方、チーム医療のあり方を提示すると、今の話に対して非常にわかりやすくなるのではないかという気がいたしました。
○北島座長 学会では、教育指定病院の下に準教育指定病院ということがよくやられているので、恐らく拠点病院もそういう意味ではないかと思いますが、よろしいでしょうか。
 では、松月構成員どうぞ。
○松月構成員 日本看護協会の松月でございます。
 先ほど拠点病院に集約されているのは実は6割で、4割はそれ以外の病院で治療が行われていること、それから、集約されている疾患、同じがんでも、がん種により非常に差があるということでした。ということは、既に日本の今のがん治療というのは、拠点病院だけではなく、一般的なというと言い方が適切ではないかもしれませんが、例えば、直腸、結腸というようなものは拠点病院でなくてもやれるような状況になっている。これらのことも踏まえまして、今後2025年に向かっては、高齢人口の増加率に差があり、これからは居住者がいなくなる地域も出てくるというのが、先ほど治療供給の2次医療圏格差の中の日本地図の白黒のグラフが表しているのかなと感じることを踏まえて、今の患者さんの声というのは非常に貴重で身に染みました。
 私は今、緩和ケアの検討会にも参加しておりますが、情報連携には、高度ながん治療または緩和ケアと、基本的ながん治療と緩和ケアというように、2つの種類があると思っております。その中で、今年から、がんの専門看護師、認定看護師が、拠点病院から訪問看護ステーションの看護師と一緒に地域にいる患者さんを診ると診療報酬がつくようになりました。これは、専門性の高い医療であるとか、アドバイスというものを直接届ける一つの方法であると私は考えております。
 拠点病院の要件を決めるに当たっては、従来は2次医療圏に対して1つということで整備し、まだ113か所空白の地域残っておりますが、そうした考え方がもう限界なのかということになれば、別の視点といたしましては、どうすれば患者さんのところにがん医療が届くのかということを拠点病院の要件を見直す中の一番のゴールに設定して、そのための情報ネットワークであるとか、病診連携または病院・地域の連携といった、ネットワークを、要件の中に盛り込めたらよいなと、今日の議論を聞いていて感じたところでございます。そして、先ほどコーディネーターの養成という話もございましたが、今日、御参加の患者会の皆様もそのリソースであり、そういう方との連携も含めて検討していけたらと思います。
 以上でございます。
○北島座長 ありがとうございました。
 ネットワークの構築の中に、患者会のような組織も入っていただいて、そこでネットワークを構築していくということになれば、患者さんの視点からという意見が吸収されると思います。
 堀田構成員どうぞ。
○堀田構成員 私ども国立がん研究センターは、がん情報あるいはがん対策の情報提供の中核を担うということが位置づけられておりまして、がん対策情報センターでいろいろなツール、たとえば『患者必携がんになったら手にとるガイド』をはじめ、再発したときとか、あるいは身近な人ががんになったときとか、あるいはそれぞれのがんに対する基本的な知識だとか治療法の解説とか、恐らく今日本でわかり得る最良の情報を提供しています。しかし、なかなかそれが患者さんやご家族に届いていないというところをどう考えるかということが問題です。これまで私どもは、情報提供がどうしても拠点病院を中心になっていまして、都道府県拠点病院あるいは地域拠点という形で階層性を持って提供していくと、途中で情報が途切れてしまうところに問題があるのかなと思っています。
 つい先月ですが、情報提供・相談支援部会というものを都道府県がん拠点の中につくりまして、そういった問題を議論しようと。患者の代表の方にも来ていただいて、現状報告していただいたり、あるいは評価していただくということをしています。現状のの拠点病院というのは単独でスタンドアローンです。拠点が点なんです。都道府県の拠点にしても、地域連携拠点にしても、みんなその中で自己完結しているような医療を提供しているところに問題が多分あるのだろうと思います。それは指定要件の根幹にかかわることで、要件べてを満たさないと指定しないと言うものだから、結局、特徴のある診療を提供していても、そこは拠点病院とはつながっていないという現実です。このことに対して、もう少しグループとして、あるいは面として地域で完結できるような提供体制のあり方が必要なのではないかと思っている次第です。
○北島座長 要件の中に、すべて要件が充足されていなくても、特別ながん医療を提供できるところを組み込んでいくとよろしいと思います。そこへさらに患者会の意見も組み込むと、末梢まで到達するということですね。
 田村構成員どうぞ。
○田村構成員 質問と意見を言わせていただきたいのですけれども、地域がん診療連携、うちもそうなんですけれども、相談支援部門というのがありまして、そこで専従の看護師と専任の看護師をつけて対応しているわけですが、相談支援の3割ぐらいは我々の病院で診ている患者さんでない方からの相談です。先ほどからお話を聞いていますと、情報がかなりたくさんあって整理するのがなかなか大変だということですが、会員の方たちからの意見として、がん診療連携拠点病院の相談支援部門の位置づけはどのようになっているのかということがありました。それだけ活用していただいていると思っているのですけれども、その活用度というものはどうなのでしょうか。
○北島座長 では、まずそれをお伺いしましょうか。伊藤構成員と緒方構成員どうぞ。
○伊藤構成員 とても残念ながらなのですけれども、余り認知度は高くないなというのが実感としてありまして、あるのは何となく知っているのだけれども、とても敷居が高い感じがしたりとか、こんなことを相談しに行っていいのだろうかという二の足を踏んでいるところがあるような気がするんです。済みません、この言い方は失礼なのかもしれませんが、何をどうしてくれるところなのかよくわからないと。
 私が病院内でいろいろ活動させていただいていることもあって、そこから見ていくと、患者は主治医から言われると、そういうところに行ってみようかなというところもあるのですが、恐らく主治医の先生も、例えば、私どもは乳がんの患者会ですけれども、生活のことでいきなり下着のことを聞かれたりとか、就労のことを聞かれたりとか、かつらのことを聞かれたりしても困ると思うんですよね、正直。困っているだろうなと思っていたときに、では、こういうところに相談に行ってみるといいよというような一言が主治医からあれば行けると思うのですけれども、何せ患者はよくも悪くも主治医依存の部分がすごくありますので、主治医がいるのに主治医以外のところに相談に行くということ自体の抵抗もあるのかなというのは何となくですが、お話をしていて感じるところではあります。ほかのところに相談に行くと、裏切った的な感覚もあると。
○緒方構成員 私の場合は伊藤構成員と違って、神奈川県立がんセンターに支えられて10年来た患者会です。まだ患者会という名前とか概念すらないときから、神奈川県立がんセンターでは支えてもらっています。
 実は、患者会は相談室の中に組み込まれているというか、相談室で支えてもらっています。そして、患者会は実は4割の方は県立がんセンターではない方たちなのですが、相談室に相談する必要のある方たちは、がんセンターの患者でなくても相談を受けています。相談室はソーシャルワーカーの人たちもいらっしゃいまして、連携のことだとか、セカンドオピニオンだとか、場合によっては先生とうまくいっていない、先生から叱られてしまったといったことでうまくいかない、場合によっては先生を代えてもらいたいとか、そういった相談なども相談室は受けとめてくれています。がんセンターは、電話相談専門という部署もありまして、そういう意味では、いろいろな人につながっているのではないかと思います。
○北島座長 田村構成員どうぞ。
○田村構成員 御意見ありがとうございました。我々のところも同じような状況なのですけれども、意見としては、今のシステムの中である程度機能し得るとなると、相談支援部門をさらに発展させて充実させていくのが一番手っ取り早いのかなと私は思っていますので、ここに人材と資金面の援助があれば、もっとよくなるのではないかと思います。
 それから、もう一つは、かかりつけ医の話で、病診連携というのは相談支援部門の中から見えてくることなのですけれども、もう一つ、緩和ケアの研修がありますよね。見ていますと、かかりつけ医と思われるような開業医の先生の参加がなかなか少ない。需要もありまして、必ずしも先生がおっしゃるように医師会の中での十分なコンセンサスが得られていないのかなということで、そこの努力はかなり必要だろうと思っています。
 3つ目ですが、文部科学省が今度新規のがんプロの中で、地域がん医療を担う専門医を育成するということで、かなりの人材がこれから出てくる可能性があります。こういった中で、ぜひ患者会の方たち、それから、医師会も含めて、我々も医師を育てていきますし、一緒に育てていただきたいなと思っています。
○北島座長 今村構成員どうぞ。
○今村構成員 まず、今の緩和ケアの話ですけれども、私はもともと専門は麻酔科で、手術中に大量に麻薬を使うような立場にいた人間ですけれども、いざ在宅の場で実際に緩和ケアの中で麻薬を使うということになると、さまざまな副作用等が起こってくることへの適切な対応が必要です。マニュアルだけを読めばできるという話では全くないので、従来はマニュアルをつくるということで、こういう緩和ケアを取り入れますということで行政も進んできたと思います。やはり実際の患者さんを通して学んでいかない限り、なかなか参加してくる方たちは少ない。そういった意味で、病診連携の中で実際に患者さんを診療するなかで、やはりかかりつけ医も学んでいくことがある、そういう機会を増やしていかなければいけないと感じています。
 先ほどのお話の中で、面で見ていく、病診連携あるいは病病連携が大事だということですが、現状としてがん診療連携拠点病院の中でどのくらい連携、いわゆる逆紹介がされているのか、恐らく地域性だとかいろいろありますけれども、実態が今どうなっているかがわからないと、今後それをどう増やしていくのかということもできないと思いますが、そういうデータはあるのでしょうか。
○事務局(秋月) 紹介率が出せるかどうかわからないのですけれども、現況報告の中で今、拠点病院について地域連携パスを整備することというのが要件に入っています。これがどの程度、どういったがん種について、どういった病態についてどの程度運用されているかというデータはあるので、集計に多少時間がかかるのですけれども、そこは整理することは可能だと思います。
○今村構成員 ぜひ今後の議論の中で、そういうデータをお示しいただければと思います。
○北島座長 地域においてクリティカルパスを病診連携で共有しようという動きはあるんです。ですから、これからクリティカルパスを推進して、それを例えば病診連携で活用していくというのは非常に重要なことなんですね。情報を共有するという意味で。ですから、これからぜひ、そちらの方向を推進していただきたいと思います。田村構成員、それでよろしいですか。
○田村構成員 はい、ありがとうございました。
○北島座長 西山構成員どうぞ。
○西山構成員 ただいままでの議論を聞いておりまして、私が認識しているのは、現状を見る限りにおいて、これだけ2次医療圏でいろいろな医療や内容の格差があるということです。非常にうまくいっているところ、うまくいっていないところ、病病連携、ピアサポーター、そうしたものがある反面、全く手に届いていないところがあるというのが現実です。ですから、今後の議論は、地域による格差をまず理解した上で、現状に活を入れられるような新しいシステムづくり。医療コーディネーターもちょっと話題になりましたけれども、あれは医療コーディネーターがすべてをやるわけではなくて、かかりつけ医とも相談し、ソーシャルワーカーとも相談し、その時点、その時点で患者さんがわからないことに対して客観的にある程度の方向性を示唆してくれる人をチームの一員として新たに養成するというものなんです。ですから、拠点病院の評価・見直しを行うときに、むしろ2次医療圏の医療実態の見直しを行う、医療機関の評価に限定せず、そうした地域でのチーム医療に必要なもの、さらに、今よりももっと全国均一に医療レベルを上げられる効率的な対策を考えるという形での議論のほうが建設的なように思っております。
 以上です。
○北島座長 ありがとうございました。
 吉川構成員どうぞ。
○吉川構成員 我々の施設は地域で3次救急まで対応している施設なのですが、3次救急といっても実際には風邪やら虫さされなどの1次救急までやっています。これは、がん診療においても同じことが言えると思いますが、要求されることが満たされる施設からわざわざいらっしゃる患者さんが、がん拠点病院だからということでいらっしゃる患者さんもいますので、がん拠点病院の要件等についても、すべてのことができるというわけではなく、それぞれの特殊性があると思いますので、それをきちんと見定める必要もあるでしょうし、それをまた患者側にしっかりと伝えることが必要ではないかと思います。
 それともう一点、地域連携パスのことですが、地域連携パスについては、実際につくって運用している立場から言いますと、すべての患者さんがそのパスに乗るわけではないので、その辺のことを留意しないと、残念ながら今の地域連携パスというのは、パスに乗せやすい患者さんを乗せているというのが現実だと思いますので、今後はもう少し詰めて、できればすべての患者さんが乗るようなパスに広げていく必要があるのではないかと思います。
 以上です。
○北島座長 ほかにございますか。堀田構成員どうぞ。
○堀田構成員 少し論点の違うお話ししてもよろしいでしょうか。今後の論点整理のために、少し問題提起という形で行いたいと思います。というのは、これまではどちらかというと均てん化に向けて、どこでも標準的な治療が受けられるというところにかなり絞ってやってきて、それでも格差があるという問題はありますが、以前に比べれば相当整備されたと思います。一方で、希少がんであるとか、難治がんというのは、ある程度症例を集積して経験知を積まないと、いい医療が提供できないという特性があります。したがって、今後はそういったものに対して集約化を図るべきかどうか、あるいはそういう仕組みをつくるかどうかということが、かなり重要なポイントになろうかと思います。ですから、いわゆる均てん化と集約化をどう折り合いをつけていくかという問題が1つ。
 それから、もう一つは、これまで拠点病院というのは、標準的治療を均てんするための装置であって、そこで何かを生み出していくというようにはなっていないんです。しかし、昨今は、分子標的治療とか非常に専門的な知識も要るような治療法も増えてまいりました。新しい抗がん剤ができたときに、それをいきなり全国どこでも使えるという話にすると、未知の重篤な副作用などの対応に問題が起こる可能性があります。そこで、拠点病院でまず一定程度使って、そこから副作用といったものをきちんと把握して、その安全性情報をPMDAに渡して、安全に使用できることを確認しったときに広げるというような仕組みを、すなわち研究的な面を拠点病院に付与してもいいのではないかと思います。そういうところでもうちょっと発展すれば、適応外の薬や医療機器を保険診療に使えるかどうかということも、そこで評価できるのではないかと思います。これは都道府県拠点がまず先行すべきことかもしれませんが、拠点病院に研究機能を付与していただきたいと思います。
○北島座長 ありがとうございます。
 堀田構成員の話は、かなり飛躍していることは飛躍しているのですが、日本におけるがんの臨床研究、臨床治験が進まないということは皆さんおわかりだと思いますが、そういうのもをどうやって克服していくかという一つのサジェスチョンだと思います。これからの拠点病院の機能のあり方を、もう少し拡大してもいいのではないかという意見だと思いますが、これは個人的にですけれども、私もぜひ、そういうことは必要ではないかと思います。何で日本で臨床研究が進まないのか、これは大きな要因があります。統計学の問題もあるし、臨床研究のリサーチャーのキャリアパスにもならない。そういうところでいろいろな案があると思いますが、今後の拠点病院の一つのあり方としてサジェスチョンは非常に貴重だと思います。ありがとうございました。
 もう一つ、伊藤構成員に、相談支援がどう機能しているか、どこにあるのということではなくて、やはり医療側と患者さんもこれから積極的に情報を共有するために教えられる、いわゆる受動的なことではなくて、もうちょっと能動的な啓発・啓蒙をぜひやっていただきたいなと思います。病院側から見ると、一々パンフレットを持って患者さんに相談支援センターがありますよというのではなくて、患者さんからももっとアクティブに病院に入り込んでいただきたい。神奈川県立がんセンターのように、相談センターの中に患者会があるという形が望ましいと思います。
○伊藤構成員 それは本当に私どもの今までの課題でもありまして、がんセンターさんのほうでも今までいろいろなトライアルをやっていただいて、患者サロンのつくり方で、相談支援センターの担当者の方たちと患者会のメンバーが御一緒させていただいたりというような、いろいろな試みに今までも参加させていただいておりますので、ぜひそれは私どももやらせていただきたいと思っております。こういう患者会が今は本当に増えてきていますが、まだやはり、済みません、人のせいにしたくはないのですけれども、どうも医療関係者の方々は、まだ患者会だとか患者を身近に寄せることについて非常に危惧を抱かれて、ちょっと怖いという印象を持っていらっしゃる方もいるようです。進んでいる病院は結構取り入れてくださっているのですけれども、恐らく大多数の病院は、まだ患者さんの存在を何をしでかすかわからないやからというようなイメージで、ただ要求をぶち上げる権利団体のようなイメージを持っていらっしゃるところも残念ながら、ほかの患者会や地方の患者会のお声を聞くとあるんですね。おかげさまで私どものような首都圏の患者会は、結構いろいろな病院さんと組ませていただいたりとか、意見交換の機会があるのですけれども、地方に行けば行くほどまだまだ壁は高いという声は聞いておりますので、この機会にぜひそういうことも含めて、仕組みの中で提言させていただけたらうれしいなと思っております。
○北島座長 ありがとうございます。
 冒頭に矢島健康局長が、あくまでも患者さんの視点からと強調されていると思います。ですから、この検討会はやはりそういう視点で今後議論していくことにしたいと思います。そうすると、伊藤構成員も安心されるのではないかと思いますので、ぜひ、よろしくお願いいたします。
 本日は、将来この検討会で拠点病院のあり方をいろいろ変えていく上で、非常に示唆に富んだ御意見を多数いただきました。次回からこの意見を生かしていきたいと思いますので、ぜひ、よろしくお願いしたいと思います。
 次の議題に移りたいと思いますが、今後の検討会の進め方について、今いろいろな御意見をいただきましたけれども、そういうことを踏まえて事務局より資料6の説明をお願いしたいと思います。
○事務局(秋月) それでは、資料6について御説明いたします。
 今後の検討会の論点または進め方ということでお示ししております。1~4まで段階分けにしておりますけれども、まず、第1段階として、がん診療提供体制の現状、課題、きょうたくさんの御意見をいただきましたけれども、こういったことを踏まえて、特に今後のがん診療連携拠点病院のあり方、具体的には2次医療圏に原則1つや、今後の空白医療圏の問題、もちろん地域連携の話もございますけれども、まず、全体像について御議論いただきたいと考えております。
 第2段階にまいりまして、こういった全体像、方向性をまとめた上で、がん対策推進基本計画を踏まえて、がん診療連携拠点病院の具体的な要件の案を策定したいと思います。
 幾つか留意点がございまして、1つ目が、要件の見直しは検討会で大きな方向性を示した後、個別具体的な要件については、検討会のもとに小規模なワーキンググループをつくって、実際に作業をしながら検討してはどうかと考えております。ただ、ワーキンググループに落とす前に、やはり重要な分野、きょう指摘のあった地域連携の部分や、あるいは相談支援といったところは検討会でも重点的に議論してはどうかと考えております。
 また、3点目ですけれども、緩和ケアに関する拠点病院の要件案については、先ほど座長からも御指摘がありましたように、緩和ケア推進検討会でも議論しております。議論が重複してもあれでございますので、この検討会では主に緩和ケア以外の分野について要件案を議論したいと考えております。
 それから、要件案の策定に当たっては、がん対策推進協議会、これは基本法に基づいて設置されている協議会でございますけれども、そこでも今2カ月に1回議論しておりますので、こういったところの意見を踏まえることもしたいと思います。
 第3段階として、ワーキンググループで拠点病院の要件案を策定している間この検討会では何をするかという話ですけれども、拠点病院の要件以外の課題もございます。例えば、拠点病院の評価の話あるいはもう少し広くとって、がん医療の質の評価、あるいは情報提供、ここは御提案いただければと思いますけれども、そういった要件には必ずしも該当しなくても非常に重要な分野については議論したいと考えております。
 最終的に、第4段階でワーキンググループの策定した拠点病院の要件案をこの検討会で御議論いただいて、最終案としてとりまとめていただきたいと考えております。
 以上です。
○北島座長 ありがとうございました。
 今、今後の方向性をお示しいただきました。幾つか議論がございましたけれども、2次医療圏、いろいろ時代背景で高齢化が進んできたり、人口密度等がいろいろ変化していきますので、そういう状況の中で2次医療圏に原則1つという決め方がいいのかどうか。これも大きな議論の一つになると思います。
 それから、今後、検討会を有効かつ速やかにやるためにワーキンググループを設置して、そこで議論していただいたものをさらにこの検討会で議論を進めていく。総論あるいは各論の面から、この検討会が入っていきたいと思います。
 それから、緩和ケア推進検討会あるいはがん対策推進協議会でも同じような議論もあるのではないかと思いますが、そういういろいろな検討会の議論もここで議論して整合性を持たせるということをやりたいと思います。
 ワーキンググループがいろいろ病院の要件案を議論している中で、我々はもっと大局的に拠点病院の評価とか、がん医療の質の評価、情報提供、情報の共有というものについてこの検討会でぜひ貴重な御意見を賜りたいと思っております。
 何か最後にこれだけは発言しておきたいという方はいますか。よろしいですか。
 それでは、長時間にわたりまして貴重な御意見をありがとうございました。どうも御苦労様でした。


(了)
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