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2012年11月21日 第6回社会保障の教育推進に関する検討会議事録

政策統括官(社会保障担当)付社会保障担当参事官室

○日時

平成24年11月21日(水)
10:00~12:00


○場所

厚生労働省6階 共用第8会議室


○出席者

委員

権丈善一座長 大杉昭夫委員 梶ヶ谷穣委員
細野真宏委員 前田昭博委員 増田ユリヤ委員
宮台真司委員 宮本太郎委員

事務局等

唐澤政策統括官(社会保障担当) 福本参事官(社会保障担当)
込山政策企画官 香取年金局長
須田年金局年金課企画官 西岡年金局数理課長補佐
塩見文部科学省初等中等教育局教育課程課長

○議題

・年金に関するワークシートについて
・社会保障の概念整理のためのワークシートについて
・その他

○配布資料

資料1年金に関するワークシート、ファクトシート(案)
資料1-1年金を題材としたワークシートについて
資料2「社会保障って何?」ワークシート、ファクトシート(案)
資料2-1「政府の役割と社会保障」ワークシート、ファクトシート
資料2-2第5回社会保障の教育推進に関する検討会での宮台委員ご発言要旨

○議事

○権丈座長 ただいまから第6回社会保障の教育推進に関する検討会を開催いたします。
 委員の皆様には、御多忙のところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。第1回以来の久しぶりの全員出席に、もうすぐなるはずです。宮本委員と唐澤統括官は所用により途中で退席されます。
 事務局のほうで人事異動がありましたので、御紹介いただければと思います。よろしくお願いいたします。

○込山企画官 座ったままで恐縮でございます。
 御紹介申し上げます。
 ただいま政策統括官の唐澤はちょっとおくれております。先生方から向かって右から2番目に座る予定でございます。
 私の右隣が、政策統括官付社会保障担当参事官の福本でございます。
 また、本日は、年金のワークシートについても議題となっておりますので、年金局からも須田企画官、西岡補佐が参加しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 大変申しおくれましたが、私は政策企画官の込山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○権丈座長 ありがとうございます。
 それでは、議事に入りたいと思います。その前に、事務局のほうから、本日の議題と配付資料の確認をお願いしたいと思います。

○込山企画官 では、議事について御説明申し上げます。
 今までこの検討会におきましては、「政府の役割と社会保障」というワークシート、また、「公的医療保険って何だろう」というワークシートにつきまして御検討いただいているところでございます。これらのワークシートにつきましては、ホームページで公開するとともに、モデル事業を通じて検証を行っているところでございます。
 本日につきましては、それに続きまして、まず、年金に関するワークシートについて御議論いただきたいと思います。続きまして、そういった社会保障制度の前提となる社会保障の概念整理のためのワークシートというものも案として作成させていただきましたので、そちらについても御議論いただきたいと思います。
 具体的に資料をごらんになっていただきたいと思いますが、まず資料1でございます。こちらは年金に関するワークシートでございます。資料1は全部で5枚になります。ワークシートが2枚でございます。そして、ファクトシートといたしまして、(1)、(2)、(3)と3枚でございます。
 続きまして、資料2でございます。前回の御議論の中で宮台委員から、そういった年金制度などを初めとする制度の前提として、例えば、自助・共助であったり、防貧策・救貧策等々、また、貯金や公的支援のかかわりといった概念整理をきちんとまとめてからこういった制度論に入ることが適当ではないかといった御指摘がございました。その御指摘に応えるような形でワークシートを作成させていただいております。具体的には、資料2、A3の横で2枚、「社会保障って何?」ということで、今、申し上げた趣旨でのワークシートを作成しております。
 資料2-1につきましては、若干関連いたしますけれども、既に公表中の「政府の役割と社会保障」というワークシート2枚でございます。
 今、申し上げました前回の宮台委員の御発言の要旨につきまして、恐縮でございますが、資料2-2という形で添付させていただいております。
 以上でございます。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 それでは、まず、議事の1番目である年金を題材としたワークシートについて、事務局のほうから御説明をお願いいたします。

○込山企画官 御説明申し上げます。
 まず、資料1でございます。先ほど申し上げましたように、ワークシートが2枚、ファクトシートが3枚という構成でございます。
 まず、ワークシートでございますが、「年金制度は、なんのためにあるんだろう?」と題するものが1枚、2枚目に「『私たちの世代』の年金を考えよう」という形でのワークシートを作成しております。
 まず、その1枚目のほうでございますが、ポイントとして4点挙げております。
 まず1つは「おじいちゃん・おばあちゃんの年金」、2つ目は「年金制度ができたのはなぜ?」、3点目は「長生きしたら…」、4点目は「50年先の『お金』の価値」という形になっております。
 まず、第1番目の「おじいちゃん・おばあちゃんの年金」というところでございますが、これは、現在の年金がどういった状況になっているか、また、その財源等々はどういったことになっているかといったものの現状認識をきちんとしていただきたいという趣旨でございます。年金の金額であったり、その年金が皆様の生活にどれだけ重要な役割を果たしているかといったこと、また、その財源がどうなっているかといった基本的なことについての知識の共有でございます。
 2点目でございますが、年金制度がなぜできてきたか。つまるところ、社会状況の変化等々によりまして、扶養の社会化という中で、人類の知恵としてこの年金制度というのが出てきたわけでございますが、その背景について具体的に考えていただきたいというものでございます。
 参考のデータといたしまして、「家族をめぐる代表的な変化」ということで、1960年の状況と現在の状況を掲げさせていただいております。現在のデータが2005年になっておりますが、国勢調査の結果で2010年の最新のデータが出ておりますので、後ほど差しかえと訂正等を申し上げます。口頭で恐縮でございますが、申し上げます。まず、2010年の三世代同居世帯数が244万です。2005年の300万から244万に下がっております。次に、高齢者単身世帯数でございます。2005年は387万とございますが、479万にふえております。家族の人数でございますが、2005年の2.56が2.42というデータになっております。大変失礼いたしました。
 3点目の項目でございますが、それぞれ年金制度が果たしておりますリスクへの対処ということになろうかと思います。1つは、長生きに対するリスク、その長生きリスクをどういうふうに考えるかというのを具体的に考えていただきたいという内容。
 4点目。同様に、年金制度が対処しているリスクの1つで、いわゆる実質的なお金の価値をどういうふうに保障しているかというこの役割を認識していただきたいという内容でございます。
 これらを通して、まとめといたしまして、年金制度がなぜ必要なのか、果たしている役割は何なのかというのを最後に総括的に学んでいただきたいというものでございます。
 2枚目でございます。「『私たちの世代』の年金を考えよう」ということでございます。1枚目で勉強していただいたようなことをもとに、まず、年金制度に対する私たちのイメージというものを書いていただきたいというのが1項目めでございます。いろいろなイメージを持たれていて、また、いろいろ報道されている内容、世に流布している内容からして、余りいいイメージはないのかもしれませんが、その辺のイメージについてまずは率直に書いていただきたいということでございます。
 2点目といたしまして、若い人たちの制度への参加の第一歩として、保険料を払っていただくという関わりが求められることになりますが、そういった制度への参加に躊躇するというか、そこに入らないということ、具体的には保険料を払わないということが皆様にとってどういうことになるのだろうかということを考えていただきたいというものでございます。
 具体的に、今、保険料を払わないということにつきまして、この3つの意見をポンチ絵で掲げております。1つは、現在、納付率が6割とよく言われていますが、これの本当の意味はどういうところなのだろうかということ。2点目として、こういった制度にはもう参加しないで保険料を払わないほうが実は得なのではないかというような若者の御意見もございますが、それが果たしてどうなのかということ。3点目、保険料を払わないということは、将来どうなるのだろうか、また、年金制度自体がどうなるのだろうかということ。これを勉強していただきたいというものでございます。
 これらのお答えにつきましては、ファクトシートの(3)や、ファクトシートの(1)などに具体的なデータ等をもって解説をつけております。
 さらに、右側でございますが、「『私たちの世代』の年金を考えよう」という項目でございます。私たちの世代にとっての一番の大きなプレッシャーというのは、言わば少子高齢化が進むということでございますけれども、その少子高齢化が進む中で、この公的年金制度のあり方を皆様なりに考えていただきたいということ。少子高齢化が進むので年金制度が危うくなってくるのではないかというような御意見がございますが、ここではたと立ちどまって冷静に考えていただきたいという趣旨もございます。
 1つ具体的な例としてこの図で掲げさせていただいておりますが、少子高齢化が進むということは、当然、社会全体にとってもそういうことでございますし、また、個々の御家庭にとってもそういうことであるということ。要するに、社会全体で親世代を扶養するにしても、また個々の御家庭の中で扶養するにしても、子供が少なくなってくる、扶養する対象であるお年寄りがふえてくるというのは言わば同じことである。個々の御家庭の中でいえば、例えば若い世代の方が4人の高齢者の方を支えなければならないといった事態も考えられる。そういったものを社会全体でどういうふうに支えていくのか。そういった支え合いの保険であるということを認識していただきたいというものでございます。
 さはさりながら、少子高齢化が進む中で、給付と負担のバランスみたいなことを考えていかなければいけないわけで、そういった仕組みは、既に年金制度の検討の中でこれまでもいろいろ検討され、また、既にビルトインされているという状況でございます。そういったものをわかりやすく考えていただきたいということでございます。この辺はファクトシートも参考にしながら検討していただきたいというものでございます。
 最後になります。冒頭の繰り返しになりますけれども、皆さんはもうすぐ年金制度に加入しなければいけない年ごろになりますが、その年金制度とどういうふうにかかわっていくのかというのを最後にもう一度改めて考えていただきたいという欄でございます。
 以上がワークシートの内容でございます。
 続きまして、ファクトシートでございますけれども、3枚ございます。(1)につきましては、現在の「公的年金制度の全体像」ということで、もろもろの制度があり、どういう方が加入しなければならないのか、また、保険料の負担はどのくらいか、また、年金を受給するようになりますとどのくらいの金額の年金を受けることができるのかといった制度の内容について概略説明しているものでございます。
 2点目でございますが、こちらは「公的年金制度の理念」ということでございまして、いわゆる世代と世代の支え合い、支え合いの社会化ということになろうかと思います。以前は、それぞれの御家庭の中で親世代を見るという形だったものが、社会全体の中で扶養していくのだという考え方、社会全体での肩がわりという考え方をきちんと認識していただきたいという内容でございます。
 3点目でございます。「公的年金の負担と給付」。いわゆる払い損ではないかといった誤った認識もあるところでございますが、いえいえ、そういうことではございませんよ、本質的には損得論で語るものではございませんけれども、具体的な金額に照らしてみれば、こういったメリットがあるのだということを、これまたきちんと認識していただきたいというものでございます。さらにつけ加えるならば、保険料の支払いにお困りの状態のときに、例えば免除制度を使っていただく、猶予制度を使っていただくといったこと、そういった制度に参加することの大切さというものも認識する。いわゆる免除を受けるということと、ただ払わない単純な未納というのは全く違うものであるということをここできちんと認識していただきたいという内容でございます。
 続きまして、2枚目でございます。さらに、年金制度の仕組みであったり、その目的とするところ、制度の趣旨でございますが、そういったものを勉強していただきたいという内容、これが4の「公的年金の特徴」ということでございます。言わば公的年金制度のメリットということになります。自分で老後に備えて貯蓄すればいいやというようなお考えに対して、果たしてそうなのか、公的年金ならこういったリスクヘッジということができるのですよということを具体的に掲げております。
 代表的なものを3つ掲げてございます。
 1つは、人は何歳まで生きるか予測できない、いわゆる長寿のリスク。どれだけ貯蓄すればよいのか個々人ではわからない。ただ、公的年金制度であれば、終身での受給というのができます。
 2点目でございます。貨幣の価値という問題ですが、50年後の物価や賃金の変動というのはこれからも予測することはできません。貯蓄は大切ですが、将来目減りするかもしれないというリスクがございます。ところが、公的年金制度であれば、インフレにも対応するような形で、実質的な価値を保障された年金を受給できるということでございます。
 3点目、さらに障害リスクであったり、また、配偶者を亡くしてしまうというようなリスクもございます。こちらも公的年金制度では、障害年金、遺族年金という制度を通じて対処している。こういったメリットを掲げさせていただいております。参考といたしまして、昔と今の物価の水準等々、また、実質的な貨幣価値を保障することの意味などにつきまして若干の説明を加えさせていただいております。
 右半分でございますが、5の「少子高齢化への対応」。先ほど申し上げましたように、さはさりながら、少子高齢化が進む中での給付と負担のバランスというのは考えていかなければいけない。ただ、これはもう既に、例えば平成16年改正を代表といたしまして、そういった年金制度の中に組み込まれている、給付と負担のバランスをうまいようにとっていくという仕組みが組み込まれている、こういったことを冷静に御理解いただきたいという内容でございます。
 そういったことで、これらを勉強していただいた上で、最後の枠囲みの中でございます。年金制度そもそもの問題ももちろんございますが、その問題の本質は、もっと広く言えば、社会の問題、経済の問題であるということ、具体的には、年金制度を支える社会・経済というものがしっかりすることが大事だということ、そういった趣旨のことを書かせていただいております。つまるところ、多くの人が元気に働ける社会をつくれば、その年金制度という社会の支え合いの輪の中で支えてくれる人がふえてくる、制度というのが安定してくるのだということをこれまたきちんと認識していただきたいというものでございます。
 若干早口で恐縮でございますが、3枚目でございます。こちらは、そういったお勉強を通じていただいた上で、さらに、若干細かいというか、具体的なデータのおさらいになります。「高校生として必ずおさえておきたい年金の基礎知識」ということを掲げさせていただいております。保険料を払い始めるのはいつですか、また、どうしても払えないときにはどういう制度があるのでしょうか、払えない人が多いと言うけれども、一体どのぐらいなのでしょうかといったこと。また、高齢者世帯にとってこの年金収入というのは非常に大きな支え、柱になっているということをデータをもって認識していただきたいというようなことでございます。
 最後になりますが、「年金受給者の声」ということで、年金機構のほうに寄せていただきましたエッセイ作品がございます。その作品集の中から1つつけさせていただきました。こういった涙の出るようなお話もございます。こういったことについても読んでいただければということで掲げさせていただいております。
 若干早口で恐縮でございました。以上でございます。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 引き続き、この年金について意見交換をしていただければと思います。御意見のある方、いらっしゃいますでしょうか。
 では、前田委員、よろしくお願いいたします。

○前田委員 おはようございます。前田です。
 きょうのワークシートを議論する前に、先日、学校教育の現場に行って、政府の役割など社会保障に関するモデル事業を見学しましたので、先に発言させていただきます。
 この教育を今後誰がやるか。学校の先生がやるのか、それとも外部の講師を呼んでやるのか。やはりこれは専門的なことなのですね。この前は学校の先生がこの授業をやっていました。その学校の先生は家庭科の授業でやっていました。社年金など社会保障について詳しい先生でしたので、自分で多くの資料をつくり、子供たちに教えていました。最後に先生と1時間ぐらい懇談したのですが、学校のレベルにもよるのでしょうが、中ぐらいの高校ですと、まず、ワークシートは文字を大きくして文字数は少ないほうがいい。それから、文字だけではなくて、パワーポイントやパソコン、DVD、プロジェクターを使った、視覚に訴えるような形で授業を進めていかなければいけないということ。それから、講義が2コマ、3時間目は体験学習ということで、2時間の授業をしていらっしゃいましたけれども、その2時間の中で教えるのは時間が足りず、議論をするのはなかなか難しいのではなかろうかという話をしていました。先生自身が教える場合、先生が社会保障とか年金に興味がないと、先生は授業を避けて通るし、先生も春休み、夏休みは自前でいろいろと勉強に行っている。この社会保障等が好きであればそういう方向で勉強されるのでしょうけれども、そういうものに特化して勉強する先生はいるのでしょうかというような話をしていました。
 それから、ふだん体験しないこと、生活体験のない事を生徒に教えるので、理解させるのも大変なので、このワークシートをもっとわかりやすくつくってほしいというようなことを現場の先生は言っていました。そういうことを踏まえていくと、このテーマを2時間とか3時間の中で教えていくのが果たして適正なのかどうか。
 例えば高校の教育の中でやるのであれば、年金制度というのは国の根幹を揺るがす問題でもあるので、高校1年時、2年時、3年時と、ある程度組織立ててやっていかないといけないと思うのです。後で少子化の話も出てきますけれども、少子化、少子化と言いますが、では何で子供がふえることを国策として取り上げないのだろうか、そういうところにもつながっていくと思うのです。学校の先生の話を伺いながら、先につくったワークシートというのは現場で取り入れていただくのは現実としては難しいのではないのかということを感想として思いましたので、先に発言させていただきました。
 以上です。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 私もこの前、模擬授業に参加しました。1つつけ加えておきますと、今の高校で社会保障の授業をやるとすると、家庭科の授業の中の消費者教育でやることになるようでして、私たちが見学した授業は、家庭科の先生が、たまたま社会科の教師の免許を持っているからできるような授業だったのですね。「家庭科の免許だけだったらつらいかもしれない」というふうにその先生はおっしゃっていました。いずれそのあたりの議論はどこかでやらなければいけないとは思っております。
 ただ、今日のところは、せっかくこのワークシートを事務局のほうでつくっていただいておりますので、まずは、このワークシートの内容に関しての質問をしていただければと思いますけれども、何かございますか。
 宮台委員、何かないですか。

○宮台委員 確かに、文字が多かったり、ぱっと見たときに全体像をつかむのが難しかったりすると思うのです。こういう場合には、ワークシートの全体とは別に、アイキャッチ、これは読まないとまずいのかもしれないと思わせるようなフェースというか、導入をつけるといいような気がします。
 2つの考え方があって、全体構成についてぱっと見でわかってもらうようにするということ、もう一つは、先ほどのマルバツ。質問があってバツみたいなものがありました。つまり、人々の、あるいはマスメディアに書かれている通念が実はあらかた間違っているということについて最初に印象づけて、「そんなんであなたは大丈夫ですか」みたいにおどし、先生を含めて巻き込んでいく、エンロールしていくようなやり方もあると思います。その辺は工夫次第で、ある程度の分量をこなしていただけるような動機づけを調達できるのではないかと思います。

○権丈座長 宮台委員の第1回目の御発言、どうもありがとうございました。いずれまた、2回目、3回目をお願いいたします。
 ほかに何かございませんでしょうか。年金の中身の話を含めて。
 梶ヶ谷委員はございますか。よろしくお願いいたします。

○梶ヶ谷委員 梶ヶ谷です。よろしくお願いいたします。
 私、公民科の担当なので、現場の教員としてこのワークシートを拝見して、あるいは、この前の、公開授業を拝見した感想も含めまして、ランダムになりますけれども、感想を話させていただきます、よろしくお願いいたします。
 まず、先生方が言われたように、やはりこのワークシートの内容が非常に豊富で、しかも、字が多いということもあり、現場の教員、特に公民の教員、あるいは家庭科の先生もそうかもしれませんけれども、授業の展開が難しいのかなと感じました。ただ、この内容につきましては、つくり方というか、導入の仕方、切り口を変えて工夫をすればうまく授業ができるようになるのではないかなとも思います。社会保障という大変重要な問題ですので、現場の教員としては、こういうものを紙ベースだけで授業をやるというのは結構大変なので、できればDVDとか、そういう映像教材があれば、それをまず生徒に見せて、その後でこのようなペーパー資料で授業を展開するのが、実際に授業を行う現場の先生にとってもそんなに負担にならないし、共通する一般的なことがまず最初に生徒に伝わるのかなと思いました。
 それから、これを実際にやるとすると相当時間が必要で、多分、最大で10時間ぐらいかかってしまうかなと。しっかり、きちんと全部を細やかにやればですが。そうすると、社会保障だけでそんなに時間を費やすことは、シラバスの関係もありますので、事実上不可能です。一番学習させたいところを中心に、うまくめり張りをつけていただくと使いやすくなるのかなと思います。
 それから、これは内容的にはマックスの内容と考えてよろしいわけですね。実際にこれをいただいても、これ全部を学習させるは不可能だと思いますので、特に重要かなと思うところをピックアップされるのではないかと思います。うまく授業計画を立てないとのめり込んでしまいリスクヘッジができなくなって10時間もやってしまう、そのようなリスクが、ないとは思いますけれども、ひょっとしたらあるのかなという気がします。
 それから、このシート等を拝見して、やはり公民だけでやろうとすると結構無理があると思うのです。また増田先生にも伺いたいのですけれども、例えば家庭科の先生とうまく調整をしながら、このあたりは公民で扱う、このあたりは家庭科のほうで扱うということで、指導要領の中身をよく精査しながら、そして内容的にうまく取捨選択をしながら学習させるべきテーマであり、あるいは教科間の連携が可能な学習内容ですし、場合によっては、この年金とか社会保障の問題は、公民あるいは家庭科だけではなく、例えば総合的な学習の時間でホームルームの先生に基本的なことをやっていただくとか、そういう多面的な学習活動ができるのかなとも思います。
 また、公民科の教員だから社会保障に関していろいろな知識があるということではなくて、むしろ教師自らの実体験で、例えば自分の家族を介護されたとか、そういう先生のほうが多分教えやすいというか、身近だと思うのです。そういう先生の体験や経験を生徒たちに話さないのは物すごくもったいないので、そういう体験がある先生、授業をしていただけるような先生が校内には必ず1人か2人おられると思いますので、できればそのような先生が介護の経験や年金あるいは社会保障のことを、例えば教科指導の場面だけではなくて総合的な学習の時間に話してもらうとか、そういう工夫をすれば学校の現場では時間をうまく社会保障の授業に配分できるのかなと。結構、実際には困難だとは思うのですけれども、そういう工夫をすることが必要だと思います。
 それから、教材についてですが、ここでは穴埋めの問題などになっていますが、やはりクイズ的なものを導入したり、そういう生徒が読みたくなるようなスキルを多用しないと、社会保障というテーマが重い問題ですので、生徒が途中で寝てしまったり、聞いてくれなかったり、そのようなリスクが非常に高いと思います。特にワークシート、あるいはファクトシートについても、そういうことを前提に考えていただきながら、うまく編集していただくと、もっともっと使いやすくなるのかなと思います。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 やはりマックスだと思いますね。これから先、要点をピックアップしていって、順番をどう変えていくかということも考えていかなければいけないと思うのです。事務局のほうでつくるとなると、どうしても説明したくなりますね。その点に対する批判も含めていろいろと御意見をいただければと思います。
 大杉委員、よろしいでしょうか。

○大杉委員 通常、学校で授業をするときにはあるパッケージがあるのですね。1つは教科書で、1つは資料で、それと指導計画的なものです。これは資料になっています。普及版として、必ず学校で使ってほしいということであれば、教科書見開き2ページで1時間の授業をするというのが前提になっていますから、その教科書とこれがうまく合っているということであれば、学校の先生方は非常に使いやすいと思います。
 そのためにここで必要かなと思うものは、資料1-1「年金を題材としたワークシートについて」というところです。このワークシートあるいはファクトシートをどう使うかという目的やアプローチをもう少し具体化してお示しいただいて、例えば、この資料は教科書のこの部分にマッチしていますよということを学校の先生方に示されると非常に使いやすいと思うのです。かなりコンパクトにまとめられています。答えが書いてありますから、答えを抜くとそんなにたくさんあるというイメージは少なくなるかとは思うのです。先ほど言いましたように、このワークシートを教科書に対応したものとしてうまく説明していただけると非常にいいということです。
 それと、私が教員養成で将来教員になる大学生に指導するとしたら、最後の「政府の役割と社会保障に関するファクトシート」の3「ライフサイクルでみた社会保障の給付と負担のイメージ」は非常にうまくまとめられていて、これで全体がわかるので、例えば90分の授業で学生に「これを1枚使ってどう指導しますか、どんな資料が必要ですか」というようなことが指導できます。もちろん、高校生にも、これをもとにある議論のテーマを与えて指導できるということができるのではないかと思います。個人的には、これを中心にうまくつくっていただきたいというよりも、これが冒頭にあって議論できるような授業が欲しいなという気がします。

○権丈座長 わかりました。どうもありがとうございました。
 ほかに御意見ございますでしょうか。
 増田委員、よろしくお願いできますか。

○増田委員 私も、先週ですが、足立新田高校というところで現場を見てきました。私も社会科の教員をやっていますので、先生の御苦労もすごくよくわかりますし、生徒たちにどう話を聞かせるかというところで、御自身でいろいろ集めたプリント、それから、DVDなどの映像も、これは使えるのではないかというものを事前に御自身でふだんからチェックをしていて、それを使って2時間の授業を展開していました。
 私、授業を見ていて、子供たちがどこで関心を示すのかなと思ったら、「みんな、90歳まで生きるんだよ」とか言ったら、「えーっ、私たち、90歳まで生きるの?」と言ったのですね。彼らというのはそういう数字に反応したりするのです。なので、まず、「みんな、何歳まで生きるつもり?」とか、そのような投げかけをして、今、生活するのにどういうふうにお金がかかっているのかとか、そういうアプローチをしながらこの内容に踏み込んでいくというのも1つの手ではないかと思いました。
 今、大杉委員のほうからお話がありましたけれども、「ライフサイクルでみた社会保障の給付と負担のイメージ」は、前に人生設計で考えたときの資料と同じような感じのイメージではないかと思うのですね。つまり、自分の人生で、私たちが社会のどこで生活が保障されているのかとか、そういうことを具体的に考えるにはどうしたらいいかというアプローチが必要なのだと思います。
 皆さん、最近の家庭科の教科書をごらんになったことはありますでしょうか。自分たちが経験したころとは相当変わっていますので、機会があったら一度ごらんいただきたいと思うのですけれども、本当に生活に根ざしたところからアプローチしようというような工夫も見られる教科書になっています。なので、これが一番問題かと思うのですけれども、やはり教科間の連携ですね。うまくいく場合といかない場合、これは現場の方たちが一番よく御存じだと思うのです。つまり、その問題について先生自身が関心があるかというところとか、協力体制ができているかとか、そのあたりのところをうまくやっていただけるようにこちらからはアドバイスをできれば、教科間にわたってやっていけば、1人の先生が10時間は。私もこれを見て、これをやるのか、1枚1時間では終わらないみたいに、今、正直言って思いましたので、そういう形でのアプローチが、どういうやり方でやればこれがうまく使えるのかというようなことを、このもの自体もそうなのですけれども、やり方としてのアドバイスというのをこちらから提案していくと、こういうものもスムーズに使っていけるのではないかと思いました。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 私も一緒に都立高校のほうに行きました。そこで聞いた話ではないのですけれども、都立高校というのは先生がパソコンを持ち込んではいけないらしいですね。USBも持ち込んではいけないらしい。ということで、我々が幾らいろいろなものをつくってみたとしても、授業で使ってもらうのはなかなか難しい仕組みになっているようで、四方八方、壁だらけというような状況なのですけれども、そのあたりのところもいずれ検討させていただければと思います。
 宮本委員のほうから何かございますか。

○宮本委員 遅刻して来まして申しわけございません。この辺、どうなっているのだろうかということで、二、三お伺いしたい。
 ワークシートを拝見して、非常にうまく構成されていて、もちろん、御指摘が重なっているように、中身がやや濃過ぎるところはあるかもしれませんけれども。これを生徒たちに取り組んでもらうに当たって、教える側が前提にする、あるいはそこで導きの糸にしていく価値観のようなもの、つまり、基本、年金を維持し加入していくことが損か得かという切り口でいいと思うのです。それは、つかみとしては大変大事だと思うのですけれども、先生の側に、そこで終わっていくのか、それともその先に社会保障全体を支える、べたな言い方ですけれども、連帯であるだとか、助け合いであるだとかいったようなところも含めて落としどころを考えていくのか。あるいは、あえてそこまでガイドラインをつくらないで、ぽんとワークシートを投げていくのか。ワークシートの実施にかかわるガイドラインのようなものについて先生方に何か提供するのかどうなのか。恐らく、先生方も、その辺、どういう語り口でこのワークシートを展開していくのかというのはみんなお悩みになると思うのですね。このワークシートが教室でどういうふうに実施されていくのかなということを想像してみると、何が先生の口から語られているのか、次の問いにいってみようというときに、つなぎの論理みたいなところにどういう価値が入っているだろうかというところは意外に大きな問題があるのかなと思います。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 医療のワークシートは、政策の背後にある価値観みたいなところを考えさせるのが含まれているのですけれども、年金はなかなか難しくて、まだそこまで下ろせていないですね。

○宮本委員 後のほうで「社会保障って何だろう?」というところがあって、そこで全体をまとめるような形で、結局は落としどころというのは、合理的な選択であるし、連帯そのものが実は合理的選択だというところですよね。そこをどういうふうに導いていくのかというところ、それぞれのパートとのかかわり。例えば年金のところはあえて損得勘定で言ってみるとか、力点の置き方が違ってくるのかもしれませんし、あるいは、そのあたりのことは最後のほうにまとめて扱うというような設定でもいいのかなというふうにも思います。

○権丈座長 わかりました。これは損得勘定という形で書いているつもりなのかな。これは難しいところですけれども、授業の組み立てとしては、社会保障とは何だろうというところが最初に入る、そして、医療、年金という各論に入るという形のほうが全体としてはいいのではないかという気がするのです。
 先ほどから意見を伺いますと、この資料1「年金」のところでも、後に控えてます資料2「社会保障」の話にもなっていますので、最初に資料2のほうの説明をしていただいて、それで本日配付の資料全部を含めた形で意見交換をしてもらったほうがいいような気もします。事務局の方、それでよろしいでしょうか。
 それでは、お願いいたします。

○込山企画官 済みません。先ほど資料説明を1点漏らしてしまいまして恐縮です。先ほど御指摘ありました資料1-1でございますが、こちらは、前回の検討会におきまして年金ワークシートの作成方針というような意味で提出させていただいたものでございます。先ほどいただいた御意見も踏まえまして、今後、これをさらにどういうふうに活用していくかというのを考えていきたいと思います。
 続きまして、資料2でございます。
 御指摘ございましたように、こちらは、「社会保障とは」という本質論について作成しているものでございます。冒頭も申し上げましたように、前回の検討会におきまして宮台先生から御発言を頂戴いたしまして、資料2-2につけさせていただいておりますが、いわゆる制度論の前提として租税と保険料というのはそもそもどういう違いがあるのか。その果たしている役割としての救貧策・防貧策というのは一体どういうものなのか。その表現といたしまして、租税を使ったり保険料を使うということがあるけれども、その違いの意味というのは一体何か。また、その公的な扶養というのはそもそもは私的な扶養を補うために存在するものである、その順序関係みたいなものをきちんと認識する必要があるのではないか。さらに言えば、自助における貯金と公的な扶助における所得再分配政策、そういった違いについても理解する必要があるのではないか。こういった概念整理をしてから制度論に入るべきではないかという御指摘をいただきました。それを踏まえまして、この資料2で、社会保障とは何かという形でまとめております。
 それぞれ生徒さんにいろいろお考えいただくということで、自立について考えてみよう、また、その自立の限界ということについても考えていただきたいという内容になっています。それぞれ、例えばということでございますが、初任給でどういった暮らしができるか、必要となる支出はどういったものなのか、自分なりの頭で考えていただきたい。意外と厳しいということがわかるかと思います。
 そうやって頑張ってやりくりしている中で、例えば病気になる、けがをしてしまうといったリスクに直面することもあり得る。また、勤めていた会社が倒産してしまうといったリスクもある。こういったリスクに直面したときにどういう対処があるのだろうか。それは個人の中ででき得るのだろうかといったこと。それが(3)でございますが、そういった誰もが直面し得るやむを得ないリスクに対して、どういう形で社会は対処しなければいけないのかということを考えていただきたいというものでございます。
 そういったことを考えていただいた上で、右半分でございますけれども、個々人の自立を支援するものとして社会保障制度というのがあります。そこにはそれぞれの制度としての考え方がある。簡単に言いますと、自助・共助・公助という形の考え方の整理の中で、それぞれ具体的な制度などが整っているというものでございます。
 まず、自助という部分でございますが、こちらは、自分のお金をもとに貯金をして備える、資産運用して備える、また民間保険への加入も考えてみるといったことがあります。ただ、それだけではなかなか対処し切れないさまざまな困難に対して、先ほどもお話がございましたが、社会連帯の考え方で支え合うという部分が共助である。自立を支えるため、事前にそれぞれみんながともに助け合って準備をしようというもの。具体的には、社会保険料などを中心にして、年金制度、医療保険制度等々が組まれている。これが社会保険制度になります。
 さらに、3番目でございますが、既に困っている人を支えようというところで公助という役割がある。特定のお困りになっている人々の生活を公的に支援する。主な財源として税金を活用してさまざまな福祉制度などが整っている。こういった制度の考え方、順序関係、さらに具体的な内容というのを認識していただきたいというものでございます。
 そういった具体的な制度等を御理解いただいた上で、3としまして、全体論として、「政策としての社会保障制度」というのはどういう意味づけがあるのか。特に市場との関係でどうかということを改めて認識していただきたいというものでございます。
 この図の右半分が市場と個人との関係、左半分が政府と国民との関係ということになろうかと思います。お金の流れであえて申し上げますと、国民それぞれが市場という場で労働力を提供することによって、その対価としての所得の分配を受ける。それぞれの貢献度、能力等々によっていただける所得というのは違いが出てくるだろう。ただ、今度、その所得をもとにして、社会保障制度を通じて社会それぞれにおける必要度に応じて所得をどういうふうに再分配していくのか。その機能の部分が(3)の税金であったり、社会保険料。こういった形で、社会に、また制度に参加していただく。その見返りというかベネフィットとして、社会保障の給付・再分配という形でこれが国民にまた返ってくるという全体の構造というものをこれまた御理解いただきたいということです。
 仮にこういった仕組みづくりがない場合に、社会保障制度がない場合にどういった社会になるのだろうか。逆に、社会保障が手厚過ぎるとどういったことになるのだろうかというのも御自身の頭で考えていただきたい。考え方の例としては、ここに青字で書いてあるようなこともあろうかと思います。
 さらに、若干重複しておりますが、社会保障を通じた共助・公助についてあなた自身がどう考えているか。検討会の中でも御紹介いただきましたが、「What the World Thinks in 2007」の調査で、「自力で生活できない人を政府が助ける必要はない」というような設問に対して、イエスかノーか。日本は「イエス」という回答がいちばん高かったという背景もございます。この点についても考えていただきたいという内容でございます。
 以上がワークシートでございますが、次のページがファクトシートでございます。こちらは、左半分が社会保険のそれぞれの制度の概要を掲げさせていただいております。また、右半分は、参考までに、社会への参加、公への参加という部分の1つの指標として国民負担率という数字がございますが、これの現況、国際比較について理解していただきたいという資料でございます。
 このように「社会保障って何?」という形でのワークシート、ファクトシートを御用意させていただきましたが、先ほどから御議論いただいているように、「医療保険」、「年金制度」、既にできている「政府の役割」ということで、ファクトシート自体が非常に盛りだくさんになっておりまして、ある意味、マックスを超えている部分もあろうかと思います。今後、実際の教育現場の中でこれらをどういうふうに組み合わせて、ピックアップして御活用いただけるかというのは次の御議論になろうかと思いますが、以上、マックスの案として御提示させていただきました。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 これも含めて皆さんの御意見を伺いたいと思います。
 細野委員に年金の話を含めて存分にしていただければと思うのですが、よろしくお願いします。

○細野委員 
まず、年金のワークシートについてです。これは、僕の口からは余り出ない発言かもしれないのですけれども、政府がつくったものとは思えないぐらい、しっかりわかりやすくできているのではないかと思いました。事務局の方が本当に頑張られたのだなと思っています。だけれども、子供目線に立ったときには、やはり難しい(笑)。ただ、これらの要素は、すべて必要な内容ではあるのですね。どれ1つそぎ落とせない。せめてこのぐらいは知っておかないと、大人になってからも損をする。知らないで、誤解していると、不安だけを抱えてしまうので、教育の中で最低でもこの内容はまず教えておかなければいけない。これらを知った上でどう判断するのかは、誰かが縛るものではなくて、それは個人に任せればいい話であると思うのですけれども、こういう話はまず根本的に知らないと判断のしようがないわけですね。その意味で、「天動説、地動説」というのは物すごく重い。普通の人たちはまず「天動説」から入っているから、いろいろな情報を自然と取り間違えてしまうのは当然なのですね。だからこそ、まず「地動説」をちゃんと説明するというのは、そうたやすい話ではないのです。その意味では、「社会保障とか年金という科目をきちんとつくって説明しないといけないぐらい重いことだ」ということの発信が、ようやくこの検討会を通じてどんどん出せてきたところだと思うので、文部科学省さんもぜひそういう御認識で考えていただけると、とてもありがたいなと思っております。
 では、この詰め込み過ぎた内容は、いいのですけれども、子供には少し難しい。何が問題なのだろうかというところで眺めたときに、できればフロアにいるメディアの関係者の方々も一緒に考えていただきたいのですけれども、本当に必要で大事な内容だし、しかも1個1個見ていくと決して難しいわけではないのですね。それでは、どうすればこれがわかりやすくなっていくのかといったときに、一言で言うと、多分、用紙の枚数に縛られているというのが大きな欠点なのではないか。恐らく、「できるだけコンパクトに、あまりたくさん紙を使っちゃいけないぞ」みたいな既成概念が役所にはあるのかもしれない。「おじいちゃん・おばあちゃんの年金」というのが最初のページにありますね。(1)(2)(3)と問いがありますね。僕なら「この問いの(1)(2)(3)だけで半見開きを使って何がいけないの」という感じがするのです。そして、「年金制度ができたのはなぜ?」というのをその隣に持ってきて、それだけで1枚にしてあげれば、同じ話であったとしても、まず、見え方は相当変わってくる。
 このように、1個1個は決して悪くないのであるから、要はまず情報を詰め過ぎている。詰め過ぎて、ぎゅっと1枚に強引に入れてしまっているから、ぱっと見たときに「うわっ」と思ってしまうだけの話だと思うのです。そういった意味合いでは、かなりわかりやすく整理できているから、その見せ方を変えてみたときに、恐らくここにいらっしゃる委員の方々も、メディアの方々も、この教材の見え方はかなり大きく変わってくるのではないかと思います。そこがまず大きな1点目としてある。
 ファクトシートのほうも、基本的な内容としてはもう十分で、あとは、これを「うわっ」と見た目で思わせないぐらいに、情報を強調するところはもっと強調したり、図版はもう少し大きく使おうというようにメリハリをつけ、結果的にこれが10枚になっても、わかりやすければそんなに問題にならないと思うのです。というところを、まずテクニカルな話として事務局に詰めていただきたいです。
 さて、ここで、いろいろな議論を早めるために、あえて時間軸を短縮すべく、やや無謀な提案をしてみたいと思います。
 まず今回の教材は、子供用の話ですね。高校生用なのですけれども、やはり大人も知りたいと思っていると思うのですね。では、どうすれば、この「社会保障の教育」というのが機能していくのかというところで、実際にモデル校で授業をして、その反応を見ている状況なのですけれども、そのペースをさらに速められないか。もっと言うと、この年金のワークシートをもっと広く使ってもらえ、かつ、高校生に実際に教えたときに、より効果が上がるように、かなりの勢いでクオリティーを高められないかなというところが自分の中の課題の1つにあって、それで、「こういう試みをしてみたらいかがですか」という、やや無茶振りをしてみたいと思うのです。
 例えば、前回、高校にモデル授業をしていただいている放送局の方だったり、専門学校の方とか、いろいろな方に来てもらいました。次回の検討会までに、このワークシートをさらにもう少しつくり込んで、「これで完成版だ」というぐらいのものをつくって、高校生に極めて近い大人にそれを事前に読んでもらって、前回のような形で、この場に実際に来てもらって具体的な質疑応答をしてみたらいかがでしょうか。そうすると、「こういうところがわからないのか」という部分がリアルにわかってくるわけです。そういう発想で、どういう人を呼べばいいのかという話になったときに、例えば、僕は3人ぐらい、この人たちを呼んでみたらおもしろいのではないかと思っているのです。
 先日、「なかよしテレビ」というフジテレビの特番に出たときに、みんなに共通していたのは、とにかく国民は知りたがっているのです。「何でこういう社会保障の仕組みとか年金の仕組みとかを教えてくれないのだ」という不満があって、とにかく知りたがっているのです。知りたがっている中にもいろんな種類はあるのですけれども、例えば3人のうちの1人に、えなりかずきさんを呼んでみたらどうかなと思っているのです。えなりさんは、最近、「年金の未納者は損だ」というふうな話をテレビ番組でされているらしいのです。それは、3年ぐらい前ですか、「太田総理」という番組があって、そこでちょっと共演させていただいて、そのあたりから年金に目覚めたみたいで、僕の本とかも読んでいただいて、未納者は損だというようなことをテレビで発信してくれているみたいなのです。そういう感じで、年金についてきちんと勉強しているような方もいらっしゃる。ただ、実際に話を聞いてみると、仕組みは何となくはわかるけれども不安みたいなものがまだあるのですね。その不安の出どころとして、どうも「抜本改革案」みたいなものがあるというふうに信じてしまっているのですね。そこも教育の大きな焦点になってくると思うので、根本的な仕組みの解説と同時に、抜本改革案みたいな幻想に対してどうしていくのか。そこは多分、これから行われるみたいですけれども、新しい社会保障国民会議とか、あちらのほうで議論される話にもなると思うのです。もし実際に3人がこの検討会に来ていただいた場合でも抜本改革案みたいなものに対する意見が出てくると思うのですけれども、私ら委員もそれなりに知識があるので、先生役としていろいろディベートをしながら、効果的な教育の方向性みたいなものが見えてくるのではないかと思っているのです。
 もう一人は、モデルの富永愛さんがとても適任ではないでしょうか。彼女はどういうスタンスかと言ったら、「芸能人だからとりあえず義務感で年金の保険料を払っているけれども、テレビに出るとか、そういうふうな立場でなかったら払いたくない」というようなスタンスなのですね。それで、民間の年金にも入っているみたいなのです。収録中では、多くの人たちと同様に、年金の仕組みがまだよくわかっていない状況でした。そういう人たちが例えば今回の「未納だと実は税金の払い損なんだよね」といったような仕組みを知ったときにどういうふうに考え方が変わっていくのかというのは、1つの重要なサンプルだと思うのです。
 そういった意味合いで、もう一人は、「もっと社会保障の仕組みを教えてくれよ」という感じで声を発していたのが、吉本の芸人で、平成ノブシコブシというコンビの吉村崇さん。吉村さんあたりは、年金の知識はほぼゼロなのですね。ただ、知りたがっている。そういう人たちが実際に国民の代表としてこの高校生の教材を読んだときに果たしてどういうふうに変わっていくのかなというところは非常に興味深いし、そこで、僕らが考えるに当たっての、いろいろな示唆が出てくると思うのです。そこもあわせて組み入れることで、「最強の教材をつくる」ぐらいの意気込みでやっていけば、社会保障教育の意味合いというのが、子供に対してはもちろんのこと、大人に対しても教育効果が大きく出てくると思っています。
 もう一つつけ加えるのならば、とにかく、世の中に政府不信とか官僚不信というのが余りにも大き過ぎると僕は思っています。正直、僕もそうでした。メディアの影響を受け過ぎていて、こんな政府の検討会とかも、冗談じゃないというか、大嫌いで(笑)、絶対に参加するものかぐらいの感じに思っていたのですけれども、2008年の社会保障国民会議のときは、さすがに年金とかがものすごい状況になっていたので、これは社会問題として、どうしても出ていかなくてはいけないなと思って参加してみました。ただ、官僚に対しては、怖くて怖くて仕方がないぐらいの状況で見ていたのです。
 そして、だんだんと見えてきたのは、まさに戦前の「鬼畜米兵」みたいな話ですね。戦時中に言われていたのは、「アメリカの人たちは頭に角がついている」ぐらいの話だったと思うのですけれども、官僚も、バイアスなく普通に話してみると、別に普通の人たちだし、民間が勝手に敷居を上げ過ぎてしまっていると思うのです。そこで、先程の3人のように一般のメディアに出ている人たちに普通にこうやって来ていただいて、そもそも僕ら委員も別に政府側の人間ではないですし、多分、政府にいらっしゃる方も、一生懸命頑張っているけれども、既得権益を守りたいとか、そんなレベルの話じゃないということだと自然と実感できていくと思うのです。
 政府の検討会というと、世の中のイメージとしては、「細野委員はこことこことこれをしゃべって、こうしてくださいね」といった感じの根回しみたいなものが必ずあると思われているのですけれども、実際問題、これっぽっちもないんですから(笑)。多分、事務局の方も、毎回「こいつ、何を言うんだろうな」ぐらいの感じで見られていると思うのですけれども、僕らは自分で正しいと思うことを普通に発言させていただいているだけなのです。
 そういった意味合いで、「中立的な仕組みを伝える教育」を進めると同時に、これからの国に求められる話というのは、「いかに官と民の間の見えない壁を埋めていくのか」ということなんです。そこのギャップや妄想が大きすぎるから、社会保障の教育が進んでいきにくい面もある。つまり、特にメディアは教育の前段階で、「国が言っていることは信用できない」というところから入るので、どんなにわかりやすくて正しい教材をつくったところで、まず跳ね返されてしまうのです。政府とか国というのはそんなに悪だくみをしているわけではない。まず、普通に考えてみましょう。もし社会保障がなかった場合、どうなるのか。かつてそうだったように、家族内で仕送りをきちんとしていって、家族間で支えていくような仕組みが普通にあるはずです。ただ、実際に、核家族化や少子化とか高齢化が進んでいったときに、家族間でかなり格差も生まれて大変になってくるし、経済変動も大きな不安要素としてあるわけです。そこで、国が「社会の仕組み」として社会保障を行なう必要が出てくるわけですね。これはどの国でも共通です。
 教育の重要性というのは、「中長期の目線で見せる」ということが一番の目的だと思うのです。なぜなら、現実的に一般の人は短期的な目線でしか考えない面もあるから、今、デフレであり、低金利であり、それらが「当たり前」のような形で考えてしまっているところがあると思うのです。そういった意味合いでは、このファクトシートの2枚目です。今は確かに低金利で、緩やかですけれども物価も低下している状況が続いている。ただ、それは、歴史の中で見ていったときには、実はほんの1コマにすぎないのだというところを、例えば1970年代の例で見せることによって、物価というのはこんなふうにダイナミックに動くものなのだということを、中長期の目線で見せることができるわけですね。
 最後に1つ。資料で、年金のところは今みたいな感じで基本的にいいと思っています。社会保障を考えるファクトシートのところで「正確な議論のために」で国民負担率を入れているグラフ。これはこれでいいと思っています。ただ、高齢化率もあわせて入れておいてほしいのです。高齢化率が世界で一番進んでいる状況なのに、負担率がこうやって低いというところもあわせて見れば、教育はかなり進んでいくのかなと思います。
 すみません、長くなりました(笑)。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 今の細野委員のお話を聞いて、みなさん、何を何分間話してもいいんだと思われたと思いますので(笑)、これから存分に話に参加していただければと思います。
 先ほど芸能人を呼ぶという話がありましたけれども、いろいろと予算もあると思います。たぶん、この検討会の予算は、文科省が科研費で年金や世代間格差の研究に出してきた十億単位の研究費にははるか遠く及ばないと思いますので、十分に検討させていただければと思います。
 先ほど細野委員のほうから、抜本改革に対する幻想みたいなものはどうにかならないかという話がありました。そのあたりについては実はきのう、私もちょっと予習しましたら、資料1「年金」の2枚目、この右側の「『私たちの世代』の年金を考えよう」というところで、社会保障を通じて社会全体で扶養しても、家族で扶養しても同じなのだよというところは、実は少子化が進み、経済成長率が鈍化すれば、どんな制度をつくっても、扶養のために必要となる負担の総額は同じということを言っていますね。年金の議論では、昔から、我こそは抜本改革を唱えると、いろんな人が登場してくるのですけど、彼らが言っていることは、空を自由に飛べたらいいなというような、ドラえもんのタケコプターのような話をしているだけなんですね。できもしないような絵空事の夢物語を語っているだけ。事務局の人たちには、この、資料1の「『私たちの世代』の年金を考えよう」あたりをもう少し強調していただければと思います。 ほかに。どうぞ、存分にお願いいたします。

○宮台委員 今、権丈座長からおっしゃっていただいた、あるいは細野さんから提案された抜本的な改革ができない理由が、実はもう少しその背後まで言えるといいのかなと思ったのです。1つは、グローバル化、資本移動の自由化で、我々は新興国と競争状態に入っているので、もちろん、労働分配率も下がるだけではなくて、法人税や所得税の切り下げ競争が起こっている。ヨーロッパなどは過去40~50年間で法人税が半分に下がっているのも、国境を接して資本が逃げるからですね。これからある種の低成長やデフレ化に向けた圧力は、グローバル化ゆえに回避できないということが非常に重要なポイントです。
 あともう一つ重要なのは、社会学者がよく注目する人口学的ボーナスというもので、産業化を遂げた国は、重化学工業化段階で生産性の増大ゆえに爆発的に人口がふえるのですけれども、その後、現中国が急速に陥っているように、我々がライフスタイルを都市化することで急速に少子化が進む。そうすると、最初、ピラミッド型だったものが中膨れ型になって逆ピラミッド型になっていくのですが、その初期から中期にかけてのプロセスで、実は労働力が非常に潤沢に安く使えるがゆえに経済成長しやすいという状況にある。したがって、歴史はもう日本の場合は二度と繰り返さないのだ、かつてのような経済成長時代は絶対に来ないのだということはまず理解をしてもらわないと、政策次第でまた成長時代が戻ってくるとか、かつての60年代の、あるいは中国のようなという寝ぼけたことを言うような人がまだいるので、それを回避しなければいけない。
 あともう一つ、細野委員がおっしゃったように、このテキスト、ワークシートは非常によくできているのですね。これが学校で2時間しか使われないのは非常にもったいないので、このワークシート、あるいはワークシート的なものの大人バージョンでも構わないのですが、このバージョンでも全然構わないのですけれども。

○権丈座長 このバージョンでいいですよ。

○宮台委員 十分ですね。これを、昔、46年の憲法施行後に文部省が配った「あたらしい憲法のはなし」のようなパンフレットにするというのはいかがでしょうね。「あたらしい憲法のはなし」になぞらえて、「ほんとうの年金のはなし」とかいうパンフレットをつくって、文科省の先ほどのパンフは義務教育課程の生徒全員に配られたのですけれども、そのようにしてもよいし、加えて、役所の窓口に置くのもよいですね。その場合には、本の帯とかフェースに「あなた方は何もわかっていない」みたいな感じ。先ほどのQ&Aのところで我々がよく間違えがちな質問、これは全部バツですみたいな感じで、キャッチな構成にするとどうだろうかと思います。
 あと、僕たちはどうして年金や社会福祉の問題がよく理解できていないのか。先ほど「What the World Thinks in 2007」というのがありましたけれども、国際価値観比較調査という似たようなものがありまして、これに従いますと、細かいデータはいいですが、日本人は政府が貧困家庭を支えるのを物すごく嫌うくせに、同じようなデータで、日本人は権威を嫌うのです。社会の中で権威を重要だと考える人間の割合は、ほかの先進国は大体7割から9割なのですが、日本は3%なのです。これは本当に異常値とも言えるデータで、「貧困家庭を支えてはいけない」というところと「権威を尊重してはいけない」というところで異常値が出るのです。にもかかわらず、何かというと政府にぶうたれるだけのクレイジークレーマーがわんさかいるという奇妙な状況がある。これをどう理解するのかが実はポイントなのですね。
 例えば、孤独死、無縁死、超高齢者所在不明問題とかというのは日本にしかない問題だけれども、ほとんどの人がこれを自分の問題として考えていないのです。なぜかということを推測すると、我々は自立の問題を真面目に考えていないので、自立の危機について事前に十分に考察せず、したがって、自立の危機を何によって補ってもらわなければいけないのか。つまり、自立し続けるためにこそどういうサポートが必要なのかという考え方が存在しないということがあるだろうと推測されます。
 それを補う方法がどこにあるのかなのだけれども、この会議の最初のほうに、当時の香取統括官が、以前、僕も本を書くときに参考にしたスウェーデンの社会科教科書を配付されました。あれが先進各国の社会科教育の標準で、まず、社会がどう回っているのかということを理解した後で、最後に、その社会を支えるために行政がどういう手助けをするのかというふうに出てくるのですね。つまり、社会がどう回っているかがわからない人間が行政の適切性について考えることはできないし、はっきり言えば資格もないのです。社会がどう回っているか知らない人間が、何かというと行政のボタンを押して、あれをしてくれない、これをしてくれないというふうにピーピーぶうたれるというのが日本の状態なのですけれども、ここにこそ教育の問題があるというふうに考えるのが、教科書から見たときの1つのヒントかなと思いました。

○権丈座長 どうもありがとうございました。今、宮台委員がおっしゃったように、先ほどの資料2のところの「自力で生活できない人を政府が助ける必要はない」という設問に「はい」と答えた人は日本が世界一というのがありますね。実はこういう問題をゆっくりと考えてもらう機会が欲しいですね。年金を論じるにしても、障害年金とか遺族年金があるから、公的年金に参加していたほうが得をしますよという側面と、そういう人たちはみんなで助けましょうという側面は表裏の関係なのですね。その表裏の関係、どっちが表かはわからないのですけれども、子供たちに、世の中にはいろんな人たちがいることを分かってもらい、いろんな人たちがいる世の中をもっと良いものにするにはどうすればいいかを考え始めるきっかけになるような教育を考えていきたいですね。
そういう視点から本日の資料をもう一回見直すと、きょうはまだ完成品と呼べるものにはなっていません。もっとも、私のところにインタビューに来る新聞記者に「これ、事前に勉強しておいてね」と言える大人用のものは、この段階でできると思いますけどね。
 先ほど宮台委員がおっしゃったような教育全体の中で社会保障を考えるというのは、宮本委員も先ほどおっしゃったように理念の問題なのですね。価値観の問題、理念の問題、思想の問題というのが大きくかかわってくる話だと思います。
 ということで、宮本委員のほうから何かございませんか。

○宮本委員 ありがとうございます。少し細かいワークシートの表現などについてもよろしいでしょうか。
 1つは、前回、私、欠席してしまったのですけれども、宮台委員のほうから貴重な御示唆があったということで、この社会保障とは何かというところはかなり具体的に書き込まれたものができ上がっていると思うのです。自立を支援するというイメージをどう伝えるかで、今、むしろ政治の中での議論というのは、自助か公助か共助かみたいな対立軸が全面に随分出てしまって、かつての政権党はそんなことを余り言っていなかったように思うのですけれども、二大政党制のロジックで、向こうが共助と公助なら、こちらは自助だと、そういう構図になってしまいがちなのですね。
 そういう文脈で、きれいに自助・共助・公助と並んでしまうと、そのつながりというか、連携の話はどうなるのかなというところが若干気になるのです。もちろん、連携を論じるためには、それぞれのアイテムがきちっと理解されていなければいけないので、こういう書かれ方はやむを得ないとは思うのですけれども、一番大事な解はその先にあったりする。
 あるいは、防貧と救貧もある程度そうでございまして、今、防貧は社会保険で救貧は公的扶助だと。ところが、防貧でも救貧でもない中間地帯は、普通に働いていても所得の水準が低いから若干上乗せしていくような、給付付き税額控除とか、そうした制度が必要になってきている。確かにハードルは高過ぎるのですけれども、そのあたりをどう伝えていくのかなといったようなことがやや気になります。
 それで、もう一つだけ。共助といった場合、ここは社会保険というふうに並んでいるわけなのですけれども、従来、これはもうちょっとボランタリーな社会活動とか、これを互助というふうに別建てにする議論もありますけれども、一般的に、これはNPОとかいったようなところを含めて言ってきたと思うのですが、そのあたり。つまり、今、地域の中でそういう高齢者とか引きこもってしまった若者たちを相手に何か事業を起こしていくことがとてもおもしろいし、地域の経済もそこで潤っていくみたいな、そういう世界というのをどういうふうに組み込んでいくのかというところはやや気になります。この3本立ての中に4本目を入れてしまうのか、どこかを膨らますのか、いずれにせよ、そういうボランタリーな、同時におもしろい活動の世界というのもどこに入れ込んでいくのかということは若干課題なのかなと思っています。
 最後に、先ほど宮台委員がおっしゃった世界価値観調査等にかかわって、去年、厚生労働省と三菱総研がやった社会保障に関する意識調査のデータを思い出したのですけれども、「所得の格差を縮めるのは政府の責任である」という命題に対して、ドイツとかフランスは支持者が非常に多いのですね。アングロサクソン諸国は支持者が少ないというのは余り説明する必要がないかもしれないけれども、非常におもしろいのは、日本とスウェーデンはどちらかというとともに少ない。つまり、再分配、所得格差の縮小は政府の責任だと考える人がともに少ないのですね。日本とスウェーデンではそこで前提になっているロジックというのは随分違っていて、先ほど言った損得勘定と連帯というのは重なって理解されているのか、別建てになってしまっているのかというその違い。表面上、非常に似通ったデータの背後に大きな価値観の違いがあったりすると思うのですね。このあたりをどういうふうに接近させていくのか。決して価値観を操作するのがワークシートの課題ではありませんけれども、恐らく、そこを別建てに考えたことが、合理的選択と連帯というのはかなり重なっているのだぞというところを、ガイドラインとして、落としどころとして持っておくことが必要なのかなと私は思います。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 資料2の宮台委員の意見に基づいてつくられたものなのですが、この防貧とか救貧というのは、私が学生のとき、大学の先生が防貧機能、救貧機能と言うのを聞くと、「この先生は何を古いことを言ってるんだ」と思っていたのですが、50に到達したこの年齢になると、この社会保険の防貧と生活保護の救貧の根本的な違いをわかっていないと制度設計で間違えてしまうことが、しみじみと分かるようになりましたね。   
年金の給付水準というのは、拠出履歴という過去の問題がかかわっています。今の給付水準は、過去が決めている。だから、今の年金の給付水準が低いからその人たちを、すぐ救済しようとしても、なかなかできないわけです。「貧」という言葉は確かに古いのですが、「防」と「救」という言葉は、決して古くはないわけで。
「防」と「救」の違い、社会保険と生活保護の違いをしっかり押さえておくことが重要というのは、私は、若い頃よりも今の方がそう思うわけです。「防」と「救」の間には、埋めがたい距離があって、そのあたりの認識が欠けると、運用3号とか、三党合意前の「防貧」の社会保険に「救貧」を組み込んだ制度設計を容認することになります。しかし、いずれも、社会保障の防貧機能を救貧機能が浸食しないように、修正が加えられました。
 もう一つ、中間部分があるという話ですね。ここはどうなのでしょうか。市場で前向きに働いている人たちが生活することができない。自助で、懸命に、前向きに生きているのだけれども、その人たちが市場でちゃんとした生活をするだけの糧を得ていない。これに対して政府が防貧と救貧の間で何かをやるということは、昔のスピーナムランド制度みたいな賃金補助の役割を果たす可能性がなきにしもあらずで、これはかなり難しい問題が入ってきますね。その辺を「『自立』を支援する社会保障制度」というところで3つの平面の中にどう描いていけばいいのかというのは、課題として事務局のほうでも考えていただければと思います。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。

○宮台委員 宮本委員がおっしゃっていただいたような危惧を実は僕も抱いておりました。資料2の右上なのですが、自立があって、しかし、自立があるならばどうして共助と公助が必要なのかということを理解することが難しい書き方になっているので、そこで、大杉委員が先ほどおっしゃったような「ライフサイクルでみた社会保障の給付と負担のイメージ」、これですね。以前もお話があったかもしれませんけれども、どこかのワークシートの中にもありましたが、自立しようとしている人間がけがをしたとか、病気になったとか、親が死んだとか、会社がつぶれたとか、そういうことがあったときに、あなたはどうしますか、今、どういう選択肢があり得ますかというふうに、半分、不安をフックにしているわけですが、そういう問いかけによって、自立が簡単には貫徹できないような構造になっているということを納得させることが必要だと思います。
 それにあわせて、これも宮本委員がおっしゃったことなのだけれども、先ほど社会がどう回っているのかということがわからない状態で行政の役割について適切性を判断することはできないという話をしたことにも関連しますが、例えば、排除と包摂という社会福祉学的な二項図式を広めた、もともとはフランスにあったのですけれども、イギリスのブレア政権のもとに社会的排除局という行政機関があって、そこで改めて、行政の役割が社会的に排除されがちな人間をもう一度リエントリーさせること、再参入させることだということが確認されました。これは、東京都の第27期の青少年問題協議会の委員をやらせていただいたときに起草委員として非常に強調したことなのですけれども、困っている人間を助けるという観念が日本では強過ぎて、そうではなくて、困っている人間がもう一度困らない状態になって社会に戻って活動できるようにする。簡単に言えば、自立をし損なってしまった人間をもう一度自立した状態にして社会に戻すことで、労働力あるいは人材の存分な活用もできるし、社会的な結合もそれによって保たれるところがあるので、困ったから困った人を助けるのではなくて、排除されがちな人間をもう一度包摂して社会の中に参加できるようにするということが福祉の理念の基本なのだということを確認する必要があると思います。
 社会がこう回っているから行政はこう働くという、そのロジックの最も重要なところは、社会の中で個人や家族、場合によっては地域が自立を難しくさせるような状況に出遭ったときに、それをサポートしてもう一度自立に持ち込む。言いかえれば、行政に依存したまま永久に依存状態から抜けられないような形にならないようにいかにするのかということが、70年代の社会福祉政策の反省に立った、ブレア政権的に言えば第三の道ということだったような気がしますし、今やそれが国際的な合意だと思います。この書き方だけだと、権丈さんと僕は同じだから、同じころに救貧、防貧という話を聞いたことがあるのですけれども、今は時代が違っているので、それがリアルになってきているということですね。税金でなすべき部分と相互扶助でなすべき部分があり、相互扶助の形態にどういうものがあるのか、相互扶助の形態を分厚くしないと、実は行政が使える金はもともと減るしかないようになっているので、我々の社会がもたないのであるというロジックをどれだけ理解してもらうのかということではないでしょうか。

○権丈座長 どうもありがとうございます。
 どうぞ、お願いします。

○前田委員 今日、御提示いただいたワークシートとファクトシートは、こういう内容でよろしいのではないかと思います。ワークシートは2枚、ファクトシートは2枚といった枠の中でまとめていただいたのでしょう。今まで討議した内容をこういう形で取りまとめていただいたので、これを実際に今後の学校教育のモデル授業という形で使っていくというような内容になっていくのだと思いますね。
 方法論なのですけれども、いずれまたそういう話をする機会はあるのでしょうが、例えば学校の授業が2コマとか3コマをなかなかとりにくいということであれば、30分ぐらいのDVDをつくっていただいて、それを外部講師なのか、学校の先生が使うのか、それを統一していただいて、2コマ目は、今、先生がおっしゃいましたけれども、もし親が死んだらどうするのかとか、病気になったらどうするのかというような簡単な質問形式で討議していく。そうすると、子供たちとしては、実際、親が失業して給料をもらえなくなったらどうやって生活しようかというようなことを本当に真剣に考えていくと思うのですね。そこで、保険料の未納の問題なども討議できると思うのです。
 あと、ここにせっかくいろいろな形で資料ができ上がっていますので、先ほどパンフレットとおっしゃいましたけれども、そういうのをつくって、企業の中には年金委員という方がいらっしゃるわけですから、そういう方々を通じて企業に配付するとか、一番大きいのは、家庭の中でお父さんやお母さんがどうやって年金を理解するかということだと思うのです。そうしますと、お父さん、お母さんから子供に対して、「将来、二十になったらちゃんと年金を払っていかなければだめなのよ」という教育にもなっていくと思うのです。ですから、親に対するそういうような教育の教材でしょうか。
 例えば、最近、子供たちは音楽をいろいろなところからダウンロードして聞いていますね。もしこういう教材がもっとおもしろくできて、子供たちが音楽を聞くような感覚でダウンロードできるような方法が将来的にとれるのであれば、また違うことになっていくのかなと思います。
 例えばDVDをつくるにしましてもいろいろな予算の関係があるのであれば、スポンサーを募るとか。例えば、国道にしましても、いろいろな企業の名前がついて、何とか企業の道路とかとやっていますよね。例えばDVDの表の紙などにそういうスポンサーを募集して、年金に関することを全国に広げるというような形をとれれば、そういう意味では、未払い問題なども解消していくのではないかと思っております。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
先ほど前田委員がおっしゃいましたように年金は国の根幹ですよね。国の根幹、政治の根幹、政局の根幹なのですけれども、細野委員が言ったような国の方針として年金教育をやっていくことは非常に重要な意味を持っていると私は思います。思います中で、配付資料にある「年金制度~親から子への思いやり~」のエッセイにあるように、ちゃんと親から知識をずっと引き継いでいくという形で、年金がどういうふうにして人の人生とかかわっているのかを教えてくれるエッセイはほかにも随分あります。ここに載っているのだけではなくて、私はほかのもいろいろと見ているのですけれどもネットでも読むことができると思いますので、そういうところをもう少し広報していただければなと思っております。
 ほかに何かございますか。
 年金局のほうから、何かつけ足しとかいうようなことがございましたら。

○唐澤統括官 新しい年金局長がおられます。

○権丈座長 ぜひとも年金局長のほうから御意見をいただければと思います。

○香取年金局長 年金局長でございます。この検討会は大変楽しい検討会なので、時間の許す限り傍聴させていただきたいと思っております。
 2つありまして、1つは、資料案についてよくできているという御評価をいただいたのは大変光栄です。ありがとうございました。ただ、お話のあったように、年金の話を短時間でしっかり教えるのはかなり難しいです。医療は、自分は明日病気になるかもしれないということがありますし、わかりやすいわけですけれども、年金は基本的に自分の身の周りに年金制度にかかわっている人がいないとまずわからない。三世代同居も少なくなっていますから。先ほどの問いでも、「おじいさん、おばあさんって年金を幾らもらっていますか」と言っても、そもそもおじいさん、おばあさんに3年ぐらい会ったことがない子どももいっぱいいます。そうすると、どなたかからお話があったように、この資料は一応高校生を想定してつくっていますが、小学校なら小学校、中学校なら中学校、高校なら高校の段階で系統立てて教育するためには、社会保障というのはどういうものなのかとか、自立・自助の考え方とか、ある程度体系立った組み立てをした上で教えていくことがどうしても必要かなと思います。高校生段階になると、大学進学とか就職のことがありますので、自立とか社会に出るとかがある程度かかわりとして出てきますので、こんな感じの内容でもいいと思うのですが、もっと低いレベルだともっとわかりやすく簡単な内容にする。世の中の仕組みとかいうことでなければいけないのではないか。
 あと、これは、この検討会を始めたときにちょっとお話ししたかと思うのですが、本当は、我が省の所管事項ではないのですが、最後は学習指導要領の中で社会保障の問題、もちろん、年金とか医療、個別の問題もありますが、社会保障全体を生活科でも社会科でもいいのですが、ある程度きちんと位置づけていただいて、系統立った指導要領をつくっていただいて、単元の枠をきちんといただくというところまでまず基本的には持っていきたいというのがもともとの発想です。なかなかそこまでいかないのですけれども、そういうことです。
 2つめの点ですが、某政党が今回の一体改革で、自分たちがどういう議論をして、なぜこの改革にかかわったかということを30分ぐらいのDVDにまとめていますが、非常によくできています。そうした視覚教材を用意し、お示しするというのは確かに必要だなと思っています。文科省の予算なのか、それとも厚生労働省の予算なのか、よくわかりませんが。ただ、厚生労働省が社会保障のDVDを持ち込んで、防衛省が防衛のDVDを持ち込んで、国税庁が税金のDVDを持ち込んでとみんながやると、教育現場に各省からDVDが山のように持ち込まれることになるので、どこかで交通整理が要るかと思います。ただ、こういうITの時代なので、教科書とプリントと白板でということだけではない素材の提供の仕方というのも考えなければいけない。それは恐らく、教育だけではなくて、先ほどお話のあった一般の社会人向けの教育とか、広報などでも使えるので、そんなこともちょっと考えたいと思います。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 高校というのは、家庭科の授業は2時間連続でやっているみたいで、我々が見学した模擬授業では、NHKだったのですけれども、ほかのところでつくられているビデオを使って講義が行われていました。こちらのほうでも、DVDとか、視覚的なことを考えていくというのはありではないかなと思いますので、御検討いただければと思います。よろしくお願いします。
 ほかに何かございますか。どうぞ。

○大杉委員 社会科教育を担当していますので、その観点からお話をしたいと思います。
 まず、学習指導要領の内容はよくわかっているのですけれども、政府の役割の中で、社会保障というのはこれまでずうっと一貫して重要な柱になっています。指導要領上、非常に明確に位置づけられている。その次に、教科書とこの資料と指導法という問題になってくると思うのです。今回、こういう資料は、正確にわかるように、そして子供がどういう関心を持ってわかるのかというところまで踏み込んで書かれていますので、非常に有効であると思うのです。
 そのときに考えなければならないのは、仕組みを客観的にわかるという段階と、先ほど損か得かという問題があったと思うのですけれども、自分はどう合理的に生きるか。まあ、得でもいいのですけれども、生きるかという問題と、もう一つは、私たちはどんな社会に住みたいのか。自分は、損得で考えたらこうだけれども、自分の家族とか知り合いとかみんなを含めてどんな社会であったらいいのか考えることが必要だと思うのです。それは、蒲田高校の授業でも出たのですけれども、国民の半分が900万円の年収、あと半分が100万の収入のような社会に住みたいか。国民全員、年収400万円の社会に住みたいか。そういう社会のあり方、この部分を社会科的は追求するほうがいいだろう。家庭科は、賢い消費者を育てるということですから、自立した消費者を育てるというのと役割が少し違うので、各教科の連携の仕方も、先ほど局長がおっしゃられたように、プログラムをよく考えてしたほうがいいかなと思います。

○権丈座長 わかりました。どうもありがとうございます。
 ほかに何かございますか。

○唐澤統括官 済みません。途中で入ってまいりました政策統括官の唐澤でございます。香取の後任でございます。よろしくお願いします。
 実は、私も先日、蒲田高校の授業を拝見させていただきました。蒲田高校の先生はかなり高度なことまで入っていって、今、大杉先生のお話にありましたように、社会のあり方ですね。それは、自分の生活と他人の生活を考えた社会のあり方と、ある意味では活力のような議論まで出た、かなり難しい高度な授業をされたなと思って感心していたのです。私どものこのワークシートもうちの職員も一生懸命つくりました。ただ、御指摘のように、どうしても役所にいると字をたくさん書きたくなってしまう。それから、書いたものは読むべきだという誤った考え方なのですね。読むかどうかは、読む側が決めることなのですが。そういうところと、あと、漢字もちょっと難しいところがあるのですけれども、さらにブラッシュアップして、先ほどお話のありましたように、大人の方、大人といっても大学生とか社会人になりたての人たちに「自分のためになぜ年金が必要か」ということを理解させるのはなかなか難しいですね。漠然と遠い老後というのは、ほとんど霧の中のような状態なので、自分のイマジネーションの近くになかなかないので、それを理解してもらうということは、さらに工夫をしていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○権丈座長 どうもありがとうございました。私も蒲田高校の授業に参加しましたら、記者の方が高校生に「将来、年金は少子化のためにどうにもならないと言われているけれども、不安は感じませんか」と質問をしたら、ひとりの女子生徒が「自分たちが子どもを産んで、将来を支えていく世代を増やしていけば、何の問題もないですよね」と言うので、参観していた大人がみんな目潤ませて感動してしまいました。そのとおりですね。向こう50年ほど、高齢者の数は変えられないけれども、子供の数は変わり得るんですよね。僕らが行った高校では、教育方針として「過去と人は変えられないけれども、未来と自分は変えられる」というのがあるようで、教師がずっとそう教えているみたいで、そういう教育が、彼らの発想の下地になっているんでしょうね。

○唐澤審議官 先生が都の社会科の研究会の事務局長みたいなことをされていましたね。だから、ふだんも活動されて、教え方の工夫をされているのだと思うのですね。

○権丈座長 私は2つの高校に行きまして、2つともすばらしい授業をして頂いたわけですが、ああいう授業というのは先生の力量に相当依存するということも、同時に実感しました。非常に勉強になりました。
 ほかに何かございますか。
 よろしくお願いします。

○細野委員 
先ほどは長くなりましたので短目に。
 まず、宮台委員がおっしゃっていたことで、教材を効果的に、よりキャッチにというところでの工夫をやる余地は僕もまだまだあると思っています。その例を1つだけお話ししたいのですけれども、社会保障の根底は、未納が増えれば年金が破綻するとかのイメージは、そもそも「天動説」から入っているのだから仕方ないなと思うのですけれども、よくよく考えてみたときに、あれっと思わせるひっかけ、フックになるところが必要だと思うのですね。その例を1つだけお話したいと思います。
 例えば、いつもテレビの街頭インタビューを見ると、「こんな年金ではとても暮らしていけない」みたいな声があるわけですね。そこが実は誤解の根底にあるところだと思っていて、つまり、今の若い世代が払った保険料ともらえる年金で見たときに、厚生年金でも国民年金でも、給与明細の家計簿ベースで実際に払った保険料よりは多くの年金をもらえることになっている。少なくとも今、インタビューに答えている高齢者の方は、自分が払った保険料と、もらえている年金で見たときには圧倒的に多くもらえているわけですね。ここでちょっとおかしな現象だということに気づいてほしいのです。つまり、年金は、払った保険よりも増えている、たくさんもらえている状況なわけですね。「増えているのに少ない」というのはよくわからない状況ですよね。ここに、実は物すごく重要な「ひっかけ問題」があるのですね。「増えているのに少ないって、何だ、それは」と、本来疑問に思わなくてはいけないのですけれども、その矛盾したような事象に誰も気づかず、メディアでもスルーされてしまっているのです。そこが語られることなく、何となくイメージだけで、年金は少ない。「少ない理由」は、よくわからないけれども、国がむだ遣いしたからだとか何となくのイメージとしてあって出てくると思うのですけれども、客観的な事実として、増えているのは事実なわけです。でも、少ない。結局、そこの一見矛盾するような「ひっかけ問題」の答えというのは何なのかといったら、実はすごくシンプルな話で、要は、負担が少ないという話なのです。もともと払っている負担が少ないから、だから、増えたところでそれが小さいというだけの話なのです。つまり「負担と給付」という概念が世の中の議論からすっぽり抜け落ちてしまっているのです。実はその意味では社会保障とかは物すごくシンプルな話のはずなのですけれども、ここまで誤解が広まっているのは、本当のベースの「負担と給付」という、あたり前の話が抜け落ちてしまっているのです。そこに至る過程には、国の不信とかいろいろなものがあるのですけれども、そんな不信を押しのけても、そこの軸をとにかく見せるというところまでできれば、教育がようやく機能しはじめ、そこからようやく社会保障の教育が始まると思うのです。その負担と給付をいかにわかりやすく見せるのかというところのフックとして今の話は出せると思うのです。
 だから、僕はこの教材でもミスリードがあると思っています。それは、年金制度を理解するためのファクトシートの(3)なのですけれども、「誰のための制度なの?」というところで、「今、高齢者にとって年金は実際問題、生活の支えになっている」というところの具体的なデータがこうやって入っているのです。これはデータとしては正しい話なのですけれども、ここが若干ミスリードも起こり得るのかなと思います。つまり、「公的年金が高齢者世代における6割ぐらいの収入になっている」という話で、これはそのとおりなのですけれども、よくよく考えてみれば、高齢者世代というのは仕事をしている人も割合としては少ないので、基本的に収入と言えば年金だろうというところで、ある意味、当たり前の話でもあるのですね。ここを余り強調し過ぎてしまうと国民の中で幻想が生まれてしまうと思うのです。つまり、多分「年金だけで老後は十分暮らしていける、それを保障しているものだ」くらいの印象を持ってしまうと思うのです。そもそも年金というのはそれだけで暮していけるような設定になっていないよという話はきちんと説明するべきで、しょせんは、「死ぬまで食べていけるようなお弁当なのだ」ぐらいの例を示しながら、まず、年金の位置づけというものを国民の中にしっかり提示して、そこの軸を見せるということが非常に重要なのではないかと思います。だから、この教材について唯一問題点があるとしたらそこのところですね。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 今、細野委員から御指摘がありました年金のファクトシートの(3)のところで、「約6割の高齢者世帯が年金収入だけで生活」はちょっとミスリードになる可能性がありますね。
 年金局の方からなにかございますか。どうぞお願いいたします。

○西岡課長補佐 年金局数理課の西岡でございます。今、細野委員から御指摘のあった点ですけれども、確かにそのとおりで、ミスリードのところがあるかなと。高齢者の家計全体を家計調査などで見ると、一般的な高齢世帯ではマイナスの収支になっていて、実収入よりも支出のほうが大きくなっている。細野委員が週刊文春に書いていた中にも、毎月3万円とか4万円ぐらいマイナスがありますといったようなこと。要するに、高齢者には貯蓄、資産があって、それを取り崩しながら暮らしているのですよといったあたりは補足しておいてもいいのかと思います。

○権丈座長 お願いいたします。
 それと、この検討会では、年金は払った保険料の2.3倍になるとか1.何倍になるとかいうことは言っていないと思います。「公的年金は、自分が直接払う保険料と同額の金融商品を購入するよりはお得ですよ」という話は、恐らくここら辺のファクトシートの(2)にも含まれていうるでしょうけど、例えば、事業主の負担をどちら側にのせて計算をした結果こうなりますということはこの検討会では言っていないですね。3月にまとめた報告書「社会保障制度の“世代間格差”に関する論点」の中には、事業主負担の転嫁先は「よくわかりません」という表現になっていますね。仮定の置き方で計算結果はおもしろいほどに大きく変わりますが、事業主負担分が完全に賃金に転嫁されるというのも、逆に、まったく転嫁されないというのもあり得ない話で、どっちもどっちでよくわからないので、これを確定して議論することは余り意味のあることではありませんとなっていると思います。もし、完全に賃金に転嫁されるのが常識だという経済学者がいるのであれば、それならば、社会保険料を100%事業主に負担してもらっても、完全に転嫁されるのだから、良いんですね?と聞きたくなるところですが、まぁ、このあたりのはなしはこのあたりにしておいて。
 それから、この実質のところ、普通の保険は800万円を払いますとか、名目なのだけれども、年金は実質の議論をしていますというのは、ちょっと難しいですね。このあたりは、すごく大きな意味があるなのですが、ここは細野委員のお知恵を拝借して、もっとわかりやすく説明する方法を考えていただければと思います。
 あと、1、2名御意見を伺うことができるのですけれども、何かございますか。
 よろしくお願いします。

○宮台委員 僕の教え子の学生たちも年金制度を全くわかっていなくて、いつも頭を抱えますが、その割に、就職活動を含めて、特に大学2、3年生あたりぐらいから将来計画というか、自分の人生を考えるということになっているのですね。そのときに、年金のネの字ぐらいは入ったほうがよいと思うのですね。本気で若い人たちが将来のことを考えるチャンスに「おっ、ちょうどパンフレットがあるな」という感じにならないとだめですね。あるいは、DVDもそうで、運転免許更新のときに、違反点数があったり、免停とかがあると、暗い映像を見せられて結構衝撃を受けたりしますけれども、あれは無理やり見せられないと見たくないものですね。もちろん、何らかのペナルティーを帳消しにすることと引きかえにそういうものを見せるということもあるかもしれませんけれども、やはり何らかの将来不安に駆られてどうしたらいいのかなと考える、ちょうどその時期に見ることができるような仕組みをつくるとよいかな。今、半数以上が大学に行っているということがあるので、その意味でいい場所なのかなと思いました。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 ほかに何かございますか。
 お願いします。

○増田委員 先週なのですが、足立新田高校に行った翌日に、私は1回目の蒲田高校の授業は見ていないのですけれども、その蒲田高校の生徒たちが1回目の授業を踏まえてデイサービスセンターに実習に行きました。彼らの興味の中心は、そこで働いていたセンター長の女性の方がいたのですけれども、「どうしてこの仕事に入ったのですか」と。やはり高校2年生で将来のことを考えるということで非常に重要な時期に差しかかっているのですね。そうしたら、そのセンター長の女性の方から、「自分が子供のころに父親が脳出血で倒れて、その10年後、高校生のときに亡くなった。だから、こういうセンターの仕事というのは非常に重要だと思っていてやっている」というような話を聞いたのですね。実際にそこでやっていたやり方というのは、病気になろうと何をしようと、自分で健康で長く生活できることが非常に重要だということを中心に考えて、午前中2時間体操、午後も帰るときにラジオ第一・第二を全員でやるという非常に厳しい。「あなたたちもやってごらんなさい」と言われて、私たちも足に重りをつけたりしていろいろやったのですけれども、それを高校生にわかりやすく説明してくれました。麻痺がどうだということは、「軍手をきき手に2つはめて、片方に1つはめて、それで紙を配ってください」と言ったら、子供が軍手を外そうとしたのですごくおかしかったのですけれども、そういう方法で実体験として非常にいい体験ができました。
 DVDを配っていただくということも非常に重要だと思います。ただ、実体験として何か1つやっておくと、それは子供たちにとって、変わるというか、物事を考えるきっかけになると思います。この検討会の実習をどうするかといったときに、私が実習を入れてくださいというようなことを言って入れていただいて、実際に見に行って、やはり効果はあるのですね。ただ、どこで実習をするか、大勢の人数をどこに連れていくかというところで足かせといいますか、非常に大変な部分が出てきますので、そのあたりのところで、学校自体でできること。例えば、きょうの今の時間には足立新田高校は出前授業をしてもらっています。歯医者さんに来てもらって、やわらかいものを食べてみようとか、かたいものはどうだろうとか、今、そういう時間のはずなのですね。ですから、いろいろな形でそういう子供たちに体験というのをさせてあげられると思いますので、そういうことも少し考慮していただけたらと思っています。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 時間になりました。最後、1つフロアの方々に説明しておきますと、「年金制度をより理解するためのファクトシート(2)」というのがありますね。その5番目のところに「少子高齢化への対応」というのがあります。そこに、右と左に分銅がついた「はかり」がありますね。私のように年金のバランスシートにかかわってきた人間から見ると、これは非常に興味深いものがあって、左のほうの「負担」というところに「保険料」が入っています。普通入りますよね。これを入れない公的年金のバランスシート論議が過去この国でなされていたというのがあって、スウェーデンの年金のバランスシートは当然ここにある図の方法で計算されます。日本の場合は、これを100年先まで見越した上で制度設計している、その間の少子高齢化からいろいろなものはもう織り込み済みで制度設計されているということがこの図の中に描かれています。それぐらいの深い意味があるものだと御理解いただければと思います。
 時間になりましたので、本日の議論を踏まえて事務局のほうでいろいろと整理していただければと思います。物すごくたくさんの意見が出ていましたが、よろしくお願いいたします。
 本日議論した教材案については、これまでと同様に、途中段階のものはホームページで掲載しないでいくという方針を考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 では、ありがとうございました。本日の議事が終了しましたので、連絡事項があれば、事務局のほうからお願いいたします。

○込山企画官 本日は、長時間にわたりまして大変ありがとうございました。
 次回につきましては、別途、日程調整表をメールでお送りさせていただきます。引き続き御協力のほどよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○権丈座長 どうもありがとうございました。
 次回以降について、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上で第6回検討会を終了させていただきます。本日は、貴重な御意見をありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官(社会保障担当)付社会保障担当参事官室

政策第三係: 03(3595)2159

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