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2012年11月9日 第40回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録

健康局臓器移植対策室

○日時

平成24年11月9日(金) 15:00~17:00


○場所

厚生労働省 省議室(9階)


○議題

1.開 会

2.議 事

(1) 臓器移植の現状について
(2) 心臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正について
(3) 膵臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正について
(4) 肺移植希望者(レシピエント)選択基準及び心肺移植希望者(レシピエント)選択基準について
(5) その他

3.閉 会

○議事

○加賀山臓器移植対策室長補佐
 定刻になりましたので、ただ今から第40回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会を開催いたします。本日は、相川委員、猪股委員、奥山委員、木下委員が御欠席です。また、本日はオブザーバーとして、心臓移植の基準等に関する作業班、北村惣一郎班長、膵臓移植の基準等に関する作業班、深尾立班長に御出席いただいております。
 事務局に異動がございましたので紹介をさせていただきます。本年9月10日付けで健康局長に矢島が着任しております。
○矢島健康局長
 9月10日付けで健康局長を拝命をいたしました矢島でございます。よろしくお願いいたします。委員の先生方には、大変お忙しいところ、お集まりをいただきましてありがとうございます。また、日頃から臓器移植対策だけではなく、厚生労働行政全般にわたり、いろいろな意味で御支援、御協力、御指導をいただいております。この場をお借りいたしまして、厚く御礼を申し上げます。
 改正臓器移植法が施行されまして2年が過ぎました。脳死下で臓器を提供してくださった方は、改正前は13年間で86名でしたが、改正後の2年2か月で100名を超えました。御本人とその御家族の尊い意思が生かされていると考えております。今後も臓器を提供したいと考える方の意思と、臓器を提供しないと考える方の意思をともに尊重をしながら、臓器移植を待ち望んでいる方々の期待に応えていくということが大変重要だと考えております。
 本日は、レシピエントの選択基準の改正に関する事項について御議論をいただくことになっておりますが、何とぞよろしくお願いをいたします。簡単ですが、私の挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○加賀山臓器移植対策室長補佐
 その他、事務局の異動でございます。4月から着任しております加賀山でございます。
○永井臓器移植対策室専門官
 4月から参りました永井でございます。
○西脇臓器移植対策室長補佐
 8月から着任しております西脇でございます。
○加賀山臓器移植対策室長補佐
 次に資料の確認をさせていただきます。お手元に配付資料として議事次第、委員名簿、参考人名簿、本日の座席表がございます。資料1-1「臓器移植の現状について」、資料1-2「『6歳未満の小児からの脳死下の臓器提供事例(1例目)』について」、資料1-3「検証会議における検証の実施状況」、資料1-3-参「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議による102例の検証のまとめについて」、資料2「心臓移植希望者(レシピエント)選択基準(案)」、資料2-参-1「日本循環器学会 心臓移植委員会からの提案」、資料2-参-2「心臓移植レシピエントの適応」、資料2-参-3「本邦における心臓移植の現況」、資料3「膵臓移植希望者(レシピエント)選択基準(案)」、資料3-参-1「日本膵・膵島移植研究会 提案資料」、資料3-参-2「膵臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正点」、資料4「肺移植希望者(レシピエント)選択基準及び心肺移植希望者(レシピエント)選択基準について」、資料5「法的脳死判定記録書改正(案)」、以上の資料がお手元にございますでしょうか。不備等があるようでしたら事務局までお伝えください。また、机の上には現行の法令・ガイドライン等をまとめた紙ファイルを置いておりますので、議論の際に参考にしていただきたいと思います。なお、この資料は次回以降も使用させていただきますので、会議終了後、持ち帰らず、机の上にそのまま置いていただきますようお願いいたします。
 それでは、以後の進行を永井委員長にお願いいたします。
○永井委員長
 本年2月以来の臓器移植委員会になりますので、よろしくお願いいたします。本日は、臓器移植の現状について事務局に報告をお願いしたあと、心臓及び膵臓の移植希望者選択基準の見直しについて、それぞれ北村班長、深尾班長から御報告をいただいて、それぞれについて御議論をいただきます。そのあと、肺及び心肺移植希望者選択基準について事務局から御説明いただいて、御議論をいただくことになっております。
 では、議事に入ります。本日の始めの議題は、臓器移植の現状についての報告です。事務局から御報告をお願いいたします。
○間臓器移植対策室長
 それでは、私から資料1-1、脳死下での臓器提供者数の推移、年別と書かれた資料から順番に御説明申し上げます。 まず、各年の脳死下での臓器提供者数の推移については御覧のとおりでございまして、昨年、平成23年は44人の方から御提供いただきました。今年はまだ2か月弱残っておりますが、現在38人の方から御提供いただいているという状況です。
全体として申し上げますと、先ほどの矢島健康局長の挨拶の中でも少しありましたが、改正法施行前は、12年10か月かけて86例であったものが、平成22年7月の施行後、2年3か月余りで111例、111人の方から御提供いただいたという状況です。非常に伸びたということを申し上げることができると思います。
 次ページです。心停止下と脳死下の臓器提供の状況はどうかといいますと、この資料の青い部分が心停止下で提供いただいた方の数です。赤い部分が脳死下での臓器提供をいただいた数でございまして、実は合わせますと、ドナー総数としてはあまり変わっていないというのが実情です。従来は心停止下で御家族に御同意いただいたような方が、もっと早い脳死下の段階で御提供いただき、御同意いただいたということだと思われます。ただ、これによって、従来、心停止下では提供ができなかった心臓、肝臓、その他の臓器については、大変提供数が増えたということが言えるかと思います。
 1枚おめくりいただきまして、もう一度脳死下の臓器提供の話に戻ります。これはピンクと赤がありますが、ピンクのほうが本人の意思表示による臓器提供で、赤い部分が本人の意思表示が不明で、御家族に御承諾いただいた臓器提供例です。見ていただきますと、本人の意思表示による臓器提供はあまり増えていないということで、この辺り、やはり大きな課題があるのかなと考えます。どのように生きるか死ぬかというのも、御本人の選択というのは大きいので、本人の意思がイエスであれノーであれ、表示をしていただくということを施策的にも進めていく必要があるのではないかと考えます。
 次ページです。今度は各年の、臓器別に移植がどのぐらい行われたかという実数ですが、増加した部分について、21年から22年、22年から23年にかけて、おおむね右肩上がりの赤い矢印があり増えているのですが、この中で特に申し上げますと、腎臓は21年は182件、22年は186件、23年は182件、24年は途中ですが142件ということで、お待ちの方が1万2,000名余りいらっしゃる中で、移植は増えていないというような状況です。こうしたことから、やはり改めて国民の皆様に対して臓器移植に関して正しい情報をお伝えすること、そして意思表示をしていただくということについての働き掛けが改めて必要だと感じるところです。
 5ページのいちばん上には、従来から取り組んでおりますカード一体型リーフレット、シール一体型リーフレット、その他、臓器提供意思登録システムなど、意思表示の方法についての取組を書かせていただいています。それに加え、毎年10月は臓器移植普及推進月間ということになっており、ここの下に漫画が書かれておりますが、この漫画を書いてくださった方は若い人には非常に著名な漫画家でございまして、課長島耕作シリーズなどをお書きになっている弘兼憲史さんでいらっしゃいますが、こういう方の御協力もいただいて、駅構内などにこのようなものを貼り出しているところでございます。そして、ACの広告などにも御協力をいただいているところでございます。
 次のページを御覧ください。意思表示が可能な15歳以上の方ということで、中学3年生を対象に、毎年普及啓発用のパンフレットを配布しておりますが、今年の3月におきましては、その中身を中学生向けにリバイスしまして、全国の中学3年生にお配りをしています。今後はやはり配るだけではなくて、命の教育などに活かしていただきたいと思っておりますが、学校の先生はなかなか教え方が分からないという話もありますので、そういったことも教育関係のところと協力しながら取り組んでいく必要があると考えています。
 それから、健康保険証と運転免許証の裏面の意思表示ですが、これは平成22年の1月以降、順次、更新の際に免許証、あるいは保険証の裏面に記載欄がございます。この下の右側のほうに丸いステッカーが書いてありますが、今年は免許証の裏の意思表示というのは、こういうステッカーをタクシー会社や教習所の車両などに貼っていただいて、考えていただくきっかけづくりということに取り組んでおります。
 また、遅れ馳せながら、実は今月から国家公務員共済組合の組合員証が紙からカード化されるということを併せまして、まず「隗より始めよ」ということで、国家共済組合の方々、まずは厚労省からでございますが、意思表示をしましょうというような働き掛けをしているところです。これを各省にも協力を願っておりまして、順次取り組んでいきたいと思っております。
 次のページです。臓器提供ができる臓器提供施設の状況についてです。毎年公表していますが、これは初めてこの臓器移植委員会で御披露するものです。今年は、いわゆるガイドラインにおいて、高度な医療が行える施設ということで、5つの類型の該当施設の中で、いろいろなマニュアル、その他の体制が整った所が臓器提供施設になれるということになっています。この5類型に該当する施設数が、今年の6月末現在で859施設ございます。昨年と比べ、504から大幅にジャンプアップしておりますが、これは2月の臓器移植委員会でお諮りをいたしました日本脳神経外科学会の専門医制度の変更に伴って、旧A項と呼ばれていたものから「基幹施設又は研究施設」に改まったことに伴い818施設と非常に大きく増えて、合計として859施設になったものです。これに対して、日本救急医学会、日本臨床救急医学会及び日本脳神経外科学会におきましても、法的脳死判定、あるいは臓器提供に携わる医療機関の負担を軽減するために医療機関からの問合せに対応したり、要請に応じて施設に出向き支援する体制を整えていただいております。
 そのようなことを背景として、体制整備がどのぐらいできたかというのが下の表です。18歳以上の方に対しての体制が整っているところは、昨年の380施設から12施設増えまして392施設です。他方、18歳未満につきましては、昨年の158施設から50施設増えまして208施設ということになっております。これは、かなり地道な取組の結果だと受け止めております。このページのいちばん下に、平成23年度の取組ですが、例えば臓器提供施設向けの技術研修が21回、あるいは臓器提供シミュレーションが10回、臓器移植ネットワークで取り組んでおりまして、どのようにやったらよいのか具体的な現場の疑問に応えるような取組の中で、体制を整えていただいているということです。
 次ページです。こちらは平成25年度、来年度の移植対策関係予算の概算要求です。臓器移植ネットワークのコーディネーターについては、国費で基本的な給与をすべて補助しているわけですが、このコーディネーターの増員を図りたいということで、今年度の35人から38人に増やすということです。これにより、提供施設への働き掛け、あるいは家族ケアの充実といったものを、提供事例の増加と併せてしっかり対応していくということを記載しているところです。また、いちばん下の欄にありますが、今年度から関係学会、あるいは移植提供施設に御理解いただきまして、臓器提供か臓器移植に係る診療報酬のうち10%を全体のために使うということで、臓器移植ネットワークのほうに拠出していただくような仕組みが契約によって作られたところです。この資料につきましては以上です。
 続きまして縦の資料1-2を御覧ください。「6歳未満の小児からの脳死下の臓器提供事例(第1例目)について」。これにつきましては、本年6月に国内初の6歳未満のお子さんからの脳死下の臓器提供が行われましたので、それについての情報を記載してございます。2枚目にはその親御さんからいただいたコメントもお付けしています。この事例につきましては、今後検証会議において速やかに検証をお願いしたいと思っております。事例が発生してから検証まで、だいぶ短縮したのですが、大体1年10か月ほどかかっておりますが、他の事例に先駆けて1年以内に検証をしたいと考えています。この件については以上です。
 3番目は、資料1-3「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議における検証の実施状況」です。御存じのように、脳死下での臓器提供の事例については、1例1例検証会議で検証いただいております。現場関係者には大変な御負担をかけつつ、丁寧に検証いただいています。平成23年、24年と、非常に検証のペースを上げていただきまして、丁寧さは変わらず、会議の開催回数を増やして検証を進めていただいています。この2年間でもう既に67例ということなので、これまでの10数年の検証総数125例の半分以上をこの2年間で行っているということでございます。そして、トピック的に申し上げますと、今年は個別の事例を1例1例検証し、その後報告書を作成し、その報告書を御遺族にお送りし、御遺族にこれでいいよとおっしゃっていただけたら公開するということを行っております。ただ、御遺族にいろいろなお気持ちがございますので、実際に公開されている報告書の割合は、件数のうちの半分以下というのが実情です。臓器移植に関しまして、やはりプライバシーの保護が非常に重要なところでございます。他方、やはり国民の皆様に知っていただくという努力は大変重要だと思っておりまして、今年は検証の事例が100例を超えたということもあり、3月に検証会議による102例のまとめなるものを取りまとめさせていただきました。取りまとめた後、委員の皆様に送付させていただいたと思うのですが、その概要がこちらにございます。詳細は長くなりますので省きますが、一体どんな年齢の方、どんな性別の方、どんな原疾患で脳死になられているのか、脳死判定はどのように行われているのか、各数値はどのぐらいだったのか、御家族はどんなお気持ちで同意をされたのか、あるいは移植の成績はどうなっているのか、移植後の御家族のその後、半年、1年経ったときのお気持ちはどうだろうか。こういったことについて丁寧に検証したものをマスとして、ある程度まとまった形で分析をしたものがこの102例のまとめでございます。これは概要でございまして、本物につきましては、委員の皆様のお手元の黄色い冊子の中の参考資料の4に挟んでありますので、もしお時間がありましたら御覧いただきたいと思いますし、必要があれば、また、後ほどお届けをしたいと思っております。これによって、今まで個々は分かっても、全体として臓器移植の状況が分からなかったものが分かるようになったという面がございます。このような報告書を取りまとめている国は恐らくない、ナショナルでまとめた国は恐らくないと思いますので、国際的にも貴重な資料になっているのではないかと思っております。
 御説明の最後になりますが、実はこの検証会議の座長でいらっしゃる藤原研司先生が、去る11月4日御逝去なさいました。藤原先生は、この検証会議の第1回目からずっと座長をお務めいただきまして、12年余りの間、私どもを叱咤激励し、この検証を背負って進めてくださった方でございます。この間の藤原先生の御尽力に心から感謝を申し上げますとともに、御霊に謹んで哀悼の誠を捧げたいと思います。私からは以上です。
○永井委員長
 ありがとうございました。それでは、ただ今の説明に御質問、御意見はいかがでしょうか。
 もし御質問がございませんでしたら、次の議題にまいりたいと思います。心臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正についてです。「心臓移植の基準等に関する作業班」北村班長から御説明をお願いいたします。
○北村参考人
 参考人の北村でございます。どうぞよろしくお願いいたします。心臓移植希望者選択基準の改正について、心臓移植の基準等に関する作業班で議論を行いました。議論の内容を報告させていただきます。お手元の資料では資料2、あるいは資料2-参-1辺りを御参照いただければと思います。今回の議論の経緯としては、まず平成23年の8月に、日本循環器学会心臓移植委員会から心臓移植希望者選択基準等の改正についての提言がなされております。提言の内容は関係学会で定めている心臓移植の適応を、現行の60歳未満から65歳未満に引き上げてはいかがかと。国は60歳未満レシピエントへの心臓移植の機会を奪わぬように、国が定めている移植希望者選択基準の引き上げを行ってくれというものでした。この提言の背景には、2年前の臓器移植改正により、高齢者のドナー、高齢者と申しますと50代、60代以上の増加がございまして、若いレシピエントの方には、利用しづらいという背景もございますし、一方、保険適用になっております補助人工心臓の適応年齢が65歳ということになっておりますので、これは心臓へのブリッジ使用ということから考えますと、心臓移植と人工心臓の適応に5歳の年齢のずれが生じてきたという背景もありました。
 そこで、心臓移植基準等に関する作業班は、本年の2月及び本年の8月の2回にわたり、当該提言について検討してまいりました。特に大きな論点は、移植希望者の間での年齢の違いによる公平性の確保でございました。具体的には60歳未満の心臓移植の機会を奪わないようにしつつも、60歳以上の患者が移植を受ける権利をどのように担保していくかということでございます。議論の中で、つぎの点について確認がなされましたので、申し上げますと、当該提案により60歳以上65歳未満の方にとっては、補助人工心臓の利用が可能になることも含め、65歳に年齢を引き上げることは一歩前進であるということであります。その背景は、先ほど申し上げたところです。現在、本邦における60歳以上の心臓移植の症例は、待機中に60歳を超えたという方以外にはございませんので、症例は少なく、その臨床データが乏しいため、その臨床データを集積するためにも、年齢を拡大してはいかがかということです。しかしながら、これまで移植適応とされてきた60歳未満の移植希望者の移植の機会を減らしてしまうのではないかという危惧から一定の配慮はしてほしいということでございます。
 以上の点を踏まえまして、資料のとおり、ドナーが18歳以上であった場合の心臓移植希望者選択基準を改正することを提案したいと思います。具体的にはドナーの年齢が18歳以上の場合、より高度な医学的な介入を必要とする状態であるStatus1の中で、まずは60歳未満の患者の中から優先して移植を受ける人を検索し、これは現在待機中の方々でございますが、次に60歳以上の患者の中から移植を受ける人を検索する。その後、Status2の中から、同様に60歳未満、60歳以上の順番に検索をしていってはどうかということであります。  したがいまして、移植医療そのものは若年者向きの治療であるということは世界的に共通の概念ですので、まずは、従来どおり、やってまいりました60歳未満の方のStatus1を優先して、その中でドナーが大変高齢であるというような場合で、若い人には適応にならなかった場合がございます。そういう方々を60歳以上の人に受けていただこうという形になるわけであります。
 ただし、見直しも必要であろうと。と言いますのは、60歳以上のドナーの心臓を60歳以上のレシピエントが受けた場合の成績がどのようになるかということは、世界的にも明確になっておりません。と申しますのは、米国ではレシピエントの年齢は70歳を超えるものまであります。しかしながら、その70歳のようなレシピエントの方に与えられている心臓の平均年齢が、30歳代と60歳未満の方々のドナーの平均年齢と差がないわけであります。つまり、ドナーの年齢によって、レシピエントの年齢に差をつけていないというのが外国のやり方でございました。ただ、ヨーロッパではその辺は施設によって状況判断をしているようでありますが、ここで私どもが提案いたしますのは、Status1は60歳未満を優先、Status2については60歳以上の方が受けられない場合に回っていくという形になるわけでございます。
 日本循環器学会からの提案は、Status1かStatus2にかかわらず60歳未満を優先してはどうかという御提案でございましたが、18歳未満の方を優先というのを前回行っておりますが、高齢者に対する移植成績については、そのような科学的データが今申しました理由で十分ではございません。今回の提案のほうが、より公平で社会通念に適うものである。つまり、60歳未満であってもStatus2の方よりは、60歳以上65歳未満の人を優先させていただきたいという形の提案になっております。ただし、この提案について、高齢者・高齢者という組合せで提供と移植が行われた成績が明確になっていないということを申しましたが、米国では高齢者ドナーから高齢者レシピエントの対応に対して、人工心臓が大変進んできておりますので、それとランダム比較スタディをすることを、今NIHが提案している状況にもなっておりますので、我々日本におきましても、心臓移植総数が200例、今は大体130を超えておりますから、大体2年ぐらいで達成するのではないかと思いますが、あるいは、この改正が行われてから2年を経過したか、いずれかのときにおいて、その成績をもう一度見直して、適正かどうかを判断したいということです。
 この点につきましては、改正後の見直し、例えば先ほど日本循環器学会の提案の60歳未満、Statusの2の方々が、より下位になるということについてどう対応してくれるのかという質問もございますので、改正後の見直し期間に蓄積したデータを踏まえて検証したいと班のほうでは決定いたしました。その医学的データを詳細に把握する上においても、班長といたしましては、是非とも厚生科学研究費等で、十分なフォローアップ、追跡が、ランダムスタディはできませんが、レトロスペクティヴではあっても、詳細なデータが各施設から取れるような仕組みの厚生科学研究を組んでいただきたいと考えております。報告は以上でございます。
○永井委員長
 ありがとうございました。ただ今御説明いただきました内容について、御質問、御意見をお願いします。
○佐野委員
 直接には関係ないかもしれませんが、実際に北村先生にお聞きしたいのですが、米国やほかの国では、多分、特に高齢者のドナーであれば、CTとかを撮って、冠動脈疾患を合併されている人が多いので、そういう人だとやはり避けますよね。前回、うちにも高齢者のドナーが来られたのですが、日本では撮れないのですね。そういう検査ができないのです。今、高齢者のドナーで60歳以上の方がおられますけれども、その人にいただくというのは、躊躇せざるを得ないですよね。実際には日本ではそういうのはできるようにはならないのですか。先生に御質問するのは申し訳ないかもしれませんが。
○北村参考人
 臓器提供の問題ですので、より適切な方がお答えになられたほうがいいのかもしれませんが、佐野委員のおっしゃるとおりで、脳死の不安定な循環動態下において、冠状動脈造影を行うのは大変なことかもしれませんが、今、造影CTである程度のことが分かりますので、私は、個人的な意見ですけれども、造影CT、造影剤も極力下げないとほかの臓器等への影響もあるかもしれませんが、CTを、あるいは石灰化だけを見るのであれば、単純CTでもいけるかもしれませんので、CTの利用ということは是非考えていただきたいと思います。実際その現状は、心臓を採取させていただく現場において、手による触診等で問題がありという形で、これは心機能その他から総合的に見て、使用しないほうがいいのではないかということになって、利用されなかった心臓もあるやに聞いておりますので、CTぐらいまでは脳死判定中に可能な検査の一つに含めていただきたいとは思っております。これは臓器提供側のほうで、また御検討を賜らねばならないことだと思います。
○佐野委員
 是非、そちらのほうでそういうのも検討していただければ、例えば、高齢者から高齢者への移植も、今だと、もらう側だとするとすごく躊躇するわけですね。そういう検査がされていないので、高齢者の方でそういう冠動脈疾患になるリスクをかなり持っておられる方を、逆に、いただいて、そして移植を受けた方が数年以内に冠動脈疾患になられると、何のために移植をしたのか分からなくなるので、是非そういうことを事前にある程度簡単にチェックできる、今はそのくらいの画像診断は進歩していますので、そういうのができるようにしていただければ、もっと高齢者・高齢者の移植というのも広がると思いますので、その辺、よろしくお願いします。
○北村参考人
 ありがとうございます。この会議の議事録に残していただくことができれば、提供側の意見としても、また議題にかけていただけたらと思います。
○永井委員長
 事務局にお伺いしますが、どこで検討をされるのでしょうか。
○永廣委員
 脳神経外科学会の永廣です。提供側として少し意見を申しますと、検討するのはいいと思いますけれども、提供するまでの間にいろいろな検査をすることにかなり制限があるのは事実です。例えば、以前よくディスカッションがあったような脳循環停止といったことでも、今、CTで見ればかなり分かるとは思うのですが、そういったことをしなくても今は脳死判定をきれいにできるわけですので、余分な検査はなるべくしたくないというのが現場の意見だろうと思います。ですので、この辺は慎重に検討しないといけないと思います。
○永井委員長
 いかがでしょうか。
○小中委員
 移植をなさる先生のおっしゃる部分は、以前からお声を伺っていますのでよくよく分かってはいるのですが、なかなか臓器の提供の現場においては、その方を造影室まで搬送することも大きな問題があります。そういうところから、実を言いますと臓器移植ネットワークには心臓と肺のメディカルコンサルタントという方々が配置されていまして、毎回、臓器の提供の折には、その方々が伺って、その上でエコーをされたり、可能な限り、臓器の評価を行うということで細やかに対応をしているという事実のあることだけ御報告をさせていただきたいと思います。
 また、CTに関しましては、臓器の提供をなさる病院のほうで、撮っていただいている所もありますので、可能な限り現場の中ではそういう対応をしているということだけ付け加えさせていただきます。
○永井委員長
 あくまでも現場の判断でということですね。不可能ということではなくて。
○永廣委員
 不可能ではないと思いますけれども、義務的にすると、非常に難しい問題が起きてくると思います。
○永井委員長
 ほかにいかがでしょうか。
○今村委員
 初めてこの委員会に出させていただいて、プリミティブな質問で恐縮ですけれども、ドナーから摘出された臓器がどの程度、廃棄といいますか、使用されなかったのかということと、その原因は何なのか、もし分かっていたら教えていただきたいのですが。
○北村参考人
 参考資料として、心臓につきましてはありますので、これは事務局のほうでお願いします。
○間臓器移植対策室長
 資料2-参-3、1枚紙の「本邦における心臓移植の現況」というもので、今、北村班長から御示唆いただきましたけれども、たまたまこちらに載っています。ドナーについてということで、全臓器提供者数164例のうち、心臓提供希望のあった者が152例。そして実際に心臓の提供に至った例が123例、提供いたしますと言ってくださったけれども、その臓器の状態から心臓の提供に至らなかったのが29例です。これは心臓ですが、すみません、他の臓器については今、手元にデータがありませんので、心臓で御覧いただければと思います。
○小中委員
 確実な数字を申し上げにくいのですが、摘出いただいて、臓器の提供病院に行って移植ができなかったのは、本当に数は限られています。数例という表現でよろしいかと思うのです。現在までに194人の方が脳死下で臓器提供されており、移植が実際に行われていますのが857例で、その中での数例という状況かと思っております。
○間臓器移植対策室長
 すみません、先ほどちょっと御説明をし損ないました。今、小中委員がおっしゃってくださいましたことに関連するのが、先ほど見ていただいた資料のもう少し下の所に、「心臓提供にいたらなかった理由」とありまして、先ほどの29例の内訳があります。小中委員からも御紹介がありましたメディカルコンサルタントのドクターの方の御判断で適応外だろうと、これはEFがどうだろうというようなものが11例。それから医学的理由によってこれは難しいというのが14例。あっせんの途中で、聞いてはいたけれども、向こうのほうからそれであれば結構ですという話になったのが14例。そして、恐らく今村委員がおっしゃったのはこれかもしれませんが、3次評価、あるいは摘出時に断念に至ったものが4例で、数としてはそう多くはないということです。
○永井委員長
 そのほかいかがでしょうか。よろしいでしょうか。そういたしますと、「心臓移植選択基準」は、御説明のとおり改正するということで御了承いただけますでしょうか。
(各委員了承)
 ○永井委員長
 それでは、当委員会として了承することといたします。北村先生におかれましては御説明ありがとうございました。
 次の議題に入ります。膵臓移植希望者選択基準の改正につきまして、「膵臓移植の基準等に関する作業班」深尾班長から御説明をお願いいたします。
○深尾参考人
 深尾です。膵臓移植の希望者選択基準の改正につきまして、膵臓移植の基準等に関する作業班、それから腎臓移植の基準等に関する作業班で議論を行いました。その結果を御報告いたします。
 まず前提としまして、改正臓器移植法の施行によって、先ほどありましたように脳死下の臓器提供が大変増加しております。これに伴って膵腎同時移植も盛んに増えてまいりまして、その成績もなかなかよろしいという状況です。
 しかし、心停止下及び脳死下臓器提供、両方合わせた臓器提供は非常に少なく、腎臓移植の件数はあまり増加していないのが現状です。今回の議論の経緯としましては、日本膵・膵島移植研究会から、腎臓移植があまり増えていないことを受けまして、膵臓移植希望者選択基準の改正について提言をいたしました。提言は資料3と資料3-参-1及び2です。膵臓希望者に臓器が配分されることが決定された後に、術前の検査で、その患者さんが移植を受けられないという状況にあることが分かった場合とか、あるいは、臓器摘出術後に臓器が使えないことが分かった場合の取扱いについて、膵腎同時移植ではなく、腎移植を行うこととしてバランスを取るように変更することになりました。これは膵腎同時移植が必要な患者さんは非常に重症患者が多く、また、クオリティ・オブ・ライフも大変悪いということから、腎臓移植よりも膵腎同時移植が非常に優先されるような配分の方法となっていましたが、これを改めて膵臓移植に比して圧倒的に待機患者の多い腎臓移植のほうに少し腎臓が回るようにバランスを取るようなことになったわけです。この提言につきましては、まず、膵臓移植の基準等に関する作業班で議論をしていただきまして、研究会からの提案について、改正することに腎臓移植の作業班で同意されました。
 また、この提案に加えて腎の提供事例があった場合には、1事例につき少なくとも1腎を腎移植希望者に移植ができるようにするという再提案が腎作業班から出ました。この再提案について膵臓移植の基準等に関する作業班において検討した結果、再提案の内容についても合意するという結論になりました。結局、場合によっては1腎しかない臓器提供者がいた場合には、必ずその1腎は、膵腎同時移植ではなくて、腎臓移植のほうに回るということになりますけれど、その詳細は、あとで事務局のほうから説明があります。
 最終的にまとめますと、4点について変更すべきとの結論になりました。具体的には膵臓移植を受ける患者が変更されたことによって、既に腎臓移植を受ける準備をしていた患者が移植を受けられなくなるような状態にならないようにする、などの点です。膵臓と腎臓と同時に移植をするかどうか、あるいは膵臓だけの移植をするとか、膵臓移植に関してはいろいろな場合がありますので、なかなか御理解いただきにくいことがあるかと思いますけれども、事務局から分かりやすく説明していただけると思いますので、どうぞよろしくお願いします。
○永井臓器移植対策室専門官
 事務局です。資料3-参-2、図示の資料を御覧ください。ただ今、深尾班長から御説明いただいた点について補足説明いたします。まず、1ページの丸1、変更の1点目です。1事例の腎臓提供事例があった際には、少なくとも1腎は腎臓移植希望者に対して移植が行われるようにするという点です。最も一般的なケースで、この図の上になりますが、膵臓と二つの腎臓がそれぞれ移植できる場合には現在と取扱いは同等です。今回、変更されますのは下の部分になりまして、例えば片方の腎臓しか移植ができないなど腎臓が一人にしか移植できない場合です。これまで膵臓の移植希望者が膵腎同時移植を希望している場合には、その腎臓は膵腎同時移植希望者に移植されていました。改正後は、右になりますが、少なくとも1腎は腎臓移植希望者に移植が行われるということになりますので、膵臓のみの移植を希望している患者さんと腎臓の移植を希望している患者さんのそれぞれに配分されることになります。
 次に2ページの丸2、膵臓のみの移植を希望される患者さんが選定され、移植を受ける意思が確認されたあとに、患者さん側の事情などによって移植が行えないことになった場合の取扱いです。現行、左側になりますが、その患者さんが移植ができなくなったために次の膵臓移植を希望されている患者さんを選定する必要がありますけれども、これまでは全ての膵臓移植希望者の中からもう一度選定していたために、次に選定された患者さんが膵腎同時移植を希望しているような場合には、既に腎臓の術前の準備に入っている腎臓移植の希望の患者さんが移植ができなくなるということがありました。今回の改正によって、右側ですが、腎臓移植を途中で中止する必要がなくなるということになります。
 変更点3、3ページの丸3、臓器の摘出手術の開始以降、膵臓が移植に適さないことが判明した場合の取扱いです。左側の現行です。膵腎同時移植希望者がレシピエントとして選定された場合には、膵臓が使用できないことが判明した場合にも腎臓を移植できるということになっていました。今回、膵臓が移植できない場合には、膵臓の移植は中止となり、腎臓については、腎臓移植希望者の選択基準に従って改めて選定をし直すことになります。
 4ページの丸4、臓器摘出手術の開始以降に腎臓が移植に適さないことが判明した場合の取扱いです。現在膵腎同時移植希望者がレシピエントとして選定されているような場合には、腎臓が移植できないことが判明した場合も膵臓の移植は行えましたが、腎臓移植の希望者が腎臓移植を受けられないということになっていました。今回、改正後、右側ですが、一方の腎臓が移植できない場合には、膵臓移植の希望者は膵臓のみの移植を受けられるようになります。そして腎臓移植希望者も腎臓移植を受けられるということになります。
 今回の改正におきまして、資料3の1ページ目にあるリンパ球交差試験について、これまで要件となっていた直接交差試験以外の新しい方法についても認めるような変更もなされています。説明は以上です。
○永井委員長
 いかがですか、お分かりいただけましたでしょうか。現実に今までこの現行の方法で問題が起こったことはあったのですか。
○間臓器移植対策室長
 腎臓移植を待っておられた方が途中で中止になる例はありました。ただ、シミュレーションをする限りにおきましては、過去これまでの膵腎同時移植のうち、この改正によって腎臓移植に代わる例は恐らく4件程度ではないだろうかと推測しております。
○深尾参考人
 移植希望者数が膵臓と腎臓では全然違いますから、膵臓のほうは比較的早く移植を受ける可能性が高いということもありまして、ここは一つ、腎臓に譲ろうではないかということになったわけですね。
○永井委員長
 いかがでしょうか。
○今村委員
 改正案は十分に理解できます。その背景として、どこかの団体なりグループから不公平感か何かを訴えるようなクレームがあったことはあるのでしょうか。
○深尾参考人
 やはり腎臓グループのほうからある程度不満が出てきたのですね。
○今村委員
 腎臓グループからですか。
○深尾参考人
 腎移植グループのほうから。
○今村委員
 ドクターのほうですね。
○深尾参考人
 ドクターのほうです。
○有賀委員
 自分で考えないといけないことだとは思うのですが、こういう以前のルールと改正されたあとに決まるであろうところのルールと、倫理的に考えたときに何がどうなのだろうということについて、腎臓の先生や膵臓の先生方から何か特別なコメントはあるのですか。
○深尾参考人
 そうですね、倫理的に臓器を待つ立場は両方同じですから、移植待機者という面では同じと考えていいのではないでしょうか。今までどちらかというと、膵腎同時移植が優先されるということのほうが多少問題があると感じられてきたわけですけれども。これは膵腎同時移植待機者のほうがクオリティ・オブ・ライフが非常に悪いと。又は、死というものがかなり近いということで、そこを腎移植グループに納得してもらって、膵腎同時移植を優先させていただいたという経緯があります。そんなところから、今度の改正では、移植待機者という面での倫理的な配慮は多少同等に近くなったのではないかなと思います。
○有賀委員
 ありがとうございます。
○永廣委員
 似たような質問ですけれども。提供側には、例えば時間が長くなるとか、こういうプロセスを踏むことによって何か影響がありますでしょうか。
○深尾参考人
 小中さんがお答えされたほうがいいのではないですか。
○小中委員
 提供施設のほうには何ら影響はないです。結局、選択してどの患者さんの所にその臓器がいくかという段階になりますので、ネットワークのほうにおきましては、選択基準の変更ということですので、選定上の手続きの変更が生じます。
○深尾参考人
 今度改正したほうが楽になったのではないですか。膵腎同時移植の途中で何らかの理由で移植が中止になった場合、腎移植候補第2位の患者への移植準備が始まるが、新たな膵腎同時移植候補者が決まると、準備を始めていた第2位の腎移植が急に中止となることなどが今までのシステムだったのですけれど。
○小中委員
 途中で予定していた臓器が駄目になるということからしますと、どちらにしてもかなり注意しながら移植患者さんを選定しないといけないことになるかと思いますが、今日、先生や事務局の方からの御説明の選定方法に、選定するコーディネーターの頭を切り替えるという言い方はおかしいのですが、まず前提となる選定条件を変えることで、可能と思います。
○永井委員長
 ほかに御意見はありますか。
○深尾参考人
 例えば、事務局が説明に使った資料ですと、2ページの左側の現行で、腎移植希望者2位が途中で移植中止になったと。入院、術前準備したのが中止になるとか、あるいは3ページで、そこがいちばん大きいですかね、膵腎同時移植のほうの都合によって、腎臓移植を受けるつもりで準備していた人が、急に途中で移植が中止になるような不都合がなくなるというのが、今度の改正のいいところだと思います。
○間臓器移植対策室長
 若干の補足です。今、深尾先生からお話がありましたように、腎移植の先生の立場からすると、正にもう手術前の検査にまで入っているところで、ある程度の期待が腎移植の患者さんにも出てきている段階で、すみませんなくなりましたということを言わないといけないことが、そう多くはなくてもあったということです。
 もう一つは、膵腎同時移植を待たれる患者さんも腎移植を待たれる患者さんも、どちらも切実な思いで待っておられると思うのですが、実態として、その待機期間の年数を申し上げますと、腎移植は全体で14年ぐらい、大人だけでいくと17年ぐらい平均でお待ちいただいています。膵腎同時移植は3.7年ぐらいです。短いからいいではないかということではもちろんありません。どちらも、そういう中で、今回の御提案で、先ほど永井委員長の御質問に対してお答えしましたように、そんなに大きな数が動くわけではありませんけれども、少しその辺りのバランスを取っていくということ。それから、深尾班長からお話がありましたように、現場で、期待していたのになくなってしまったという、ちょっと言葉が適切ではないかもしれませんけれども、取り上げられたような感じを受けることが、これでなくなっていくという意味においては、バランスが取れているのではないかと考えているところです。
○永井委員長
 この2ページの現行で、移植中止という例はこれまでにあったのでしょうか。
○間臓器移植対策室長
 その4件のうちのどのケースかは分かりませんが、そういうことがあったと、委員の先生からお伺いしております。
○永井委員長
 よろしいでしょうか。
○有賀委員
 例えば3ページを見ると、現行の左側、膵腎同時移植を希望している人は、膵臓が塩梅が悪くても腎臓に関してはスキップしてもらえていたということになるのですね。恐らく、あっせんのルールについて、こういう分かりやすい図が出てきたのは初めてなので、今まで私は、きちんとしたルールでちゃんとやっているから細かいことは知らなくてもいいのかなと思っていたのですが、この3ページだと、完全に腎臓の移植のみ考えただけでも腎臓だけの人がスキップされているわけです。だから肺臓も両肺と片肺とか、今から思うとよく分からないのです。こういう分かりやすい図を全臓器について作っていただいて、あまりそういう場面に接しない人にも分かりやすくしていただきたいと、これを見ながらつくづく思いました。私は理解していなかったということがよく分かったということです。
○永井委員長
 よろしいでしょうか。この件につきまして、御説明のとおり進めることに御異議ございませんでしょうか。
(各委員了承)
○永井委員長
 ありがとうございます。当委員会として了承といたします。深尾先生におかれましては、御説明ありがとうございました。
 次の議題にまいります。肺移植希望者選択基準及び心肺移植希望者選択基準につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○間臓器移植対策室長
 肺移植希望者選択基準及び心肺移植希望者選択基準について、この中の参考数値の数式に誤りがありましたので、お詫びとともに訂正いたしたく、御説明を申し上げます。資料4を御覧ください。肺移植希望者選択基準及び心肺移植希望者選択基準については、改正臓器移植法の施行に伴い、臓器移植委員会での御審議、これは平成22年9月6日でしたが、その御審議を経て平成22年10月に改正され、平成22年12月15日から現在の運用がなされております。現在のルールについては、資料の中ほどの表を御覧ください。肺の移植を行うにあたっては、ドナーとレシピエントの肺の大きさが近似しているということがレシピエント選択の重要な要件となっております。
 肺の大きさの比較方法については、ドナーとレシピエントのいずれもが18歳以上の場合、この表でいくと上のほうですが、予測肺活量を計算して比較しています。その場合の許容範囲は±30%となっています。一方で、ドナーとレシピエントのいずれかが18歳未満の子どもであった場合、表でいくと下のほうですが、その場合には、子どもの成長にはばらつきが大きいですので、年齢よりも体格が近いことを重視して、ドナーの身長とレシピエントの身長の比によって判断することとしております。その場合の許容範囲は、片肺移植では-12%~+15%、両肺移植では-12%~+12%となっています。片肺移植におけるドナーとレシピエントの身長比については、許容範囲の上限を、両肺移植に比べて+15%と、比較的緩やかな設定となっております。
 こうした境界領域のドナーやレシピエントがいらした場合を念頭に、参考指標として、ドナーかレシピエントが6歳以上18歳未満であった場合の予測肺活量、先ほど御覧いただきましたように身長比で決めるわけですが、参考指標として予測肺活量の計算式を示し、参考にすることができるとしております。今回、この計算式中1か所、「+」と記載すべきところを「-」と記載した誤りが判明したため、資料の下の表、訂正の内容にありますように訂正をさせていただきます。移植施設に対しましては、この計算式を使用しないように臓器移植ネットワークを通じて既に通知をいたしております。これは、肺のレシピエント選択の議論をするために事務局が作成した資料の中に、計算式を原典となる論文から転記する、写し替える際に事務局がミスしたもので、平成22年9月6日に臓器移植委員会にお諮りをした際の資料の時点で、既に誤っておりました。誠に申し訳ありません。
 また、この影響の有無について個別に確認したところ、この計算式の対象となるドナーは、この間にはいらっしゃいませんでした。この計算式の対象となるレシピエントは5名の方が延べ10回候補として挙がっていましたが、いずれもこの計算式に基づくようなレシピエント側の理由ではなくて、ドナーの肺の状態を理由としていずれも移植を辞退されており、あくまで結果としてですが、今回の計算式の誤りはレシピエント選択に影響はありませんでした。もとより、このような誤りはあってはならないことで、深くお詫びし、訂正いたしますとともに、今後はこのような誤りのないよう、資料等の作成に一層慎重に対応してまいります。誠に申し訳ありませんでした。
○永井委員長
 経緯をお聞きしますと、どこかの医学部の先生が学生にこの式を使って説明しようとしたら、どうも変な数字が出るということで、マイナスとプラスが違うことに気がつかれたということのようです。これまでこれで影響を受けたことはなかったということですね。よろしいでしょうか。では、この件について御説明のとおり進めるということで、御異議ございませんか。
○有賀委員
 ここには肺臓の方がおられないので、よく分からないのですけれども、こういうふうなものが学術団体からであれ、行政からであれ、いま間室長がごめんなさいとおっしゃっていますが、そういうふうなことは臓器移植に関連する肺臓の方たちは、どうでもよかったということになるのですか。そこら辺がやはり、その筋のエキスパートというか専門家が、専門家としてこの部分をどう考えていたのかという疑問があります。経緯はいいのですが、「そんなのあり?」、というのが素朴な感想です。少なくとも、私は今、日本救急医学会という学術団体の代表をしていますので、そういうことってあまり、「あ、そうですか」というような感じにはならないのです、素直に言うと。そこに心臓の先生がおられるので、いかがですか。隣りの臓器なのですが。
○北村参考人
 有賀先生のお気持ちはよく理解できますが、肺のほうはこういうややこしい式を使ってまして、やはりこういう選択基準はシンプルかつ科学的根拠に基づいたものであるということなので、科学的根拠に基づかせようとすると、こういう難しい式が出てくるのだと思います。実質的にはこういうのはノモグラムか何かができているのではないですか。1回、1回こういうふうに計算するのですかね。ノモグラムか何かで体重と身長を入れれば、変数としては身長と年齢だけですのでね。これでノモグラムができていてやっているので、実質的問題があったのかどうか分かりませんが、ただ、有賀委員がおっしゃる気持ちは十分、もうちょっとしっかりせいという気持ちはあると思います。あまり言いますと、肺の人から怒られるか分かりませんけれども、おっしゃることはよく理解できます。数式としてはこれ、実際はノモグラムがあるのではないですか。どうなのですか、御存じないですか。
○間臓器移植対策室長
 具体的なことについては存じません。もともと論文があって、専門家の先生からこのような論文、算式があるというのを御示唆いただいて、それを引用する際に誤ったということです。この算式自体、御覧いただいてお分かりのように、これでもって論理的にこうなるという、プラス、マイナスも含めて言うものではなくて、先ほどの心臓選択基準であれば論理的にどうかということで多分御覧いただけると思うのです。これは年齢と身長による予測肺活量の相関関係を回帰させて出てきた統計的に処理された数字なものですから、この数値にとっても、プラス、マイナスについても、特にそれに意味があるわけではなくて、こういう結果なのだということなのです。
 そういう意味でいくと、やはりこれは事務局が責めを負うべきと私は思う部分があるのです。こういう論文を引用したらこうだったのですと言われると、専門家の先生でも直ちにはそれだけでは、「あ、そうなんだ、ちゃんと引用したのだね」ということになってしまうのだろうと。
 ただ、最初に永井委員長からお話がございましたように、今回発見してくださったのは、移植とは全く関係のない医学教育に従事されている先生でした。その方が、予測肺活量を学生に教えるときにこの算式をやってみて、実際に数を代入してみたようなのです。そうすると、どうも少ないなと。例えば、どれぐらいかと言いますと、ここで影響があるのは年齢の2乗です。この部分だけですので、例えば年齢が10歳ですと、100掛けるので、それでプラスマイナスの差が0.3Lぐらい違う。15歳ですと0.7Lぐらい違うということで、そこのところに入れてみて分かるということなのかなと感じております。
 実は、これは臓器移植委員会の前の肺の作業班にお出しした時点で、既に私どもが間違っておりましたので、その意味でも幾重にもお詫びをしなければいけないと思っています。いずれにしても、せっかくの文献を御示唆いただいても、このような間違い方をしては元も子もありませんので、改めて留意をしていきたいと思っております。
○永井委員長
 そうなのですね、年齢の二乗×0.0168が0.37ですか。ですからプラスかマイナスかで0.74L違ってくるのですね。意外と気がつかないかもしれませんね。よろしいでしょうか。
 では、この点につきまして御説明いただきました内容で進めるということで、御異議ございませんでしょうか。
(各委員了承)
○永井委員長
 では、当委員会として了承したということにいたします。一言、事務局におかれましては、今後このような誤りのないことを是非お願いしたいと思います。また、同時に、基準の改正をよろしくお願いいたします。
 それでは、その他の報告事項につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○間臓器移植対策室長
 ここからは報告事項でして、次回以降の臓器移植委員会のやや前ぶれのようなお話になります。お手元に、資料5、表題が「法的脳死判定記録書兼法的脳死判定のチェックシート」という資料がございます。実は、こういう法的な書類としての法的脳死判定記録書の様式を今回改めたいと思っており、今後、関係学会あるいは現場の先生方と調整の上、できれば次回の臓器移植委員会で正式な書類としてお諮りをしたいと思っています。
 これについては背景がありまして、先ほど少しだけ御説明申し上げました検証会議の102例のまとめの中で、過去、脳死判定において小さなエラーはいくつもありました。例えば、体温を測る際に深部温で測るというルール、直腸温や膀胱温で測るべきものを、腋窩温で脇の下で測っているというようなものとか、あるいは無呼吸テストにおいて2、3分おきに血圧を測ることになっているものが、例えば5分、6分経ってから測っていたりとかということで、医学的に、結果的には問題がなかった事例ばかりなのですが、そのプロセスをちゃんと守るという意味ではそういうエラーはないほうがいいと考えています。やはり適用施設の先生方も忙しいですし、とにかく急に脳死下の臓器提供事例が出たということになりますと、マニュアル片手に全部やるというわけにはいかないので、現場で使える、もっとエラーの少なくなるような、ヒューマンエラーを減らすような仕掛けが要るのではないかということで、これの前身にあたるようなチェックシートというものを検証会議として御提案になっています。要するに、記録のところに、体温で何度と書くのですが、そこは深部温に限るということを書いておけば、記入をするときに、腋窩、脇の下ではいけないのだということが分かるわけでして、そういうエラーを減らすような様式を提案し、関係学会には御了解をいただいて、関係学会のホームページにも載せていただき、現在運用を行っているところです。
 今度の提案はそれを踏まえて、検証会議などで国に御報告をいただくときの「脳死判定記録書」そのものの様式にも盛り込み、わざわざ転記、書き写していくような手間を減らしていこうと。ミスを減らすということと、その手間を減らすということ、正確に、負荷を小さくやっていくために、このような様式に変えてはどうだろうかというものです。もちろん、ここで記載すべき事項について、従来のルールを減らすというものではありません。記載すべきものはしっかり記載していただくわけですが、そのような工夫をして、できるだけ円滑に、しかし確実に脳死下で臓器提供が行われるように努力したいということです。今後、これについて関係学会との調整を進めてまいりたいということです。これが1点です。
 もう1点は、肺のレシピエント選択基準について今回訂正をしましたが、学会のほうからも分割肺の取扱いについて今度ルールを決めてほしいという御提案もありましたので、今後、作業班とで議論を進め、まとまった段階で、また臓器移植委員会にお諮りをしたいと思っているところです。以上でございます。
○永井委員長
 報告事項です。何かこの際、御質問等ございませんでしょうか。
○横田委員
 確認させていただきたいのが、この判定記録書とチェックリストを兼用で書式を整えましたということですが、従来の判定の項目について、変更点というのはないのですね。
○間臓器移植対策室長
 ございません。
○横田委員
 それはないのですね。漏れがないように、注意を喚起できるように分かりやすく書いたと理解してよろしいのですか。
○間臓器移植対策室長
 おっしゃるとおりでございます。
○横田委員
 ありがとうございました。
○見目委員
 いまの件とちょっと関係ないと思うのですけれども、一つ教えていただきたいのです。私、今日初めて出席する患者団体の見目でございます。先般の法改正のいちばんの目的の一つは、小児の移植ですね。特に心臓移植、これをどうやって増やすかということでの法改正の目的が一つあったと思うのです。現在の実態というのは、ニュースなどで見ている限りではあまり進展をしていないと。これについて今後どういうふうに手を打っていこうとしているのか、その辺について分かる範囲で教えていただければと思うのですが。
○間臓器移植対策室長
 この点については、いわゆる王道はないと思っております。基本的には、一つは、まずいちばん大事なのはやはり国民の皆さんの理解ですので、国民の理解が進むように努力していく必要があると。それは、要するに臓器移植というものをちゃんと語れるような、話題になっていくような環境を作るというのもあると思います。それから、きちんと情報を出すということだと思うのです。先ほど御紹介しました資料の中にも入っております102例のまとめの一つの意味は、個人情報とかプライバシーに配慮しつつ、全体としてどうなのか、どんなお気持ちで皆さん考えておられるのかということであれば、この事例は出せないとかこの事例は出せるではなくて、全ての事例を包含した、総括したような形で語ることができますので、これも大事な情報提供なのだろうと思っています。
 もう一つは、この臓器移植の提供施設のほうの体制整備というのもあるかと思います。今日のいちばん最初の資料1-1の7ページに、こういう臓器提供施設がどうなったかということがあったかと思うのですが、今回その可能な施設が158施設から208施設に、50施設、だいぶ大きく増えております。これも、先ほど申し上げましたが、勢いでやっているのではなく、非常に地道な、脳死判定というのはどうなのか、そのマニュアルはどうなのかということについてのいろいろな地道な勉強、地道な取組、働き掛けがあってこうなったということで、こういうことも大事だと思っています。
 小児の場合には、もう一つ特徴的なのが虐待の関係で、虐待を受けた疑いのある子どもからの臓器提供は行わないということになっております。虐待の有無の確認というのが非常に重要です。この点については、ルール上は院内の組織で判断、チームで判断するということで、その判定委員会をちゃんと作るとか、虐待防止のマニュアルを整備するとか、そういうような体制の下で行えばいいということになっております。病院サイドの願いとしては、虐待情報を持っている行政機関に問合せをしたいというような御希望を持っています。端的に言うと、児童相談所がその最たるものです。ところが、その児童相談所に問い合わせてみても、いや、個人情報保護条例があるので答えられませんということになりますと、病院側としては、自分たちとしてはないと思うけれども、確証が持てないということも起こり得るわけです。全国各県の課長を集めた会議がございまして、今年のその会議の場でも、私のほうから、医療機関から児童相談所に問合せがあった場合に答えられるような体制整備をやってほしいと。具体的には、要するにそういう事例が起きたときに、いちいち県庁本庁が判断するのではなくて、あらかじめ、こういうような事例、例えば、医療機関から小児の臓器提供の可能性があるということで問合せがあった場合には答えてもいいと、個人情報保護条例の担当の審議会にあらかじめ諮問して包括的に了承を取っておくとかいうことであれば、現場の児童相談所の職員が安心して対応できるわけです。そういった体制整備を今年の1月にお願いをしております。これについては毎年働き掛けをしていきたいと思っています。段々とそういうような体制が整っている県が増えていると、私どもは認識しているところです。
 いずれにしても、最後は、御本人もそうですが、やはり親御さんの気持ちというのがございますので、今回、6歳未満の小児の事例において、親御さんの心情あふれるコメントがあったことは、ある程度多くの国民の皆さんの心にも届いたのかなと思います。こういうドナーあるいはドナーの御遺族に対して、また別の形で鞭打つようなことがあってはならないと思っていまして、情報の開示と個人のプライバシーの保護ということについても併せて努力をしていかなければいけないと思っているところです。
 こういったことも総合的にやっていくしかないと思っております。まだ不十分な点もあるのかもしれませんが、この1年、2年、そういったことについて努力をしてきているところです。今後、事例が出るかどうかについては、それぞれの個別ケースの判断ですので、難しゅうございますが、仮にそういうようなお気持ちを持ってくださった方がいらっしゃった場合に適切に対応できる体制はしっかりやっていきたいと思っています。
○有賀委員
 昔からあるルールで、臓器移植のことだけを目的にした転院搬送はやらないでほしいというのがありますよね。どちらの施設も、そんなにしょっちゅう経験することではないと思うのです。私が経験したのは、御家族に医療関係者、ドクターがおられて、たまたま大学の関係で直接相談があって、今いるところでは臓器移植ができないけれど昭和大ならできるのだろうと、だから移してほしいと言うのですね。治療をより深くやるのならばお引き受けしますと。現にお引き受けをして、結局敗血症で亡くなったので臓器提供にならなかったのです。昔であれば4類型でないところで、ドナーカードがこんなに出ていますよということと似たような話ではないかと思うのです。本件、つまり移植用臓器の摘出を目的にして5類型に運ぶことは、その昔の、かつてのそういうことがあってはいけないというようなことよりは、人々の、国民のと言ったらいいのでしょうか、市民の一般感覚から見て、そこで最期を看取られるのであれば、臓器提供になってもいいのではないかなというふうなことでいけば、近隣の中核的な病院に運んでというようなことはあってもいいのではないかなと思うのですけれども。
 厚生労働省のこの件に関する見解というのは、どういうふうに今後変わっていくのか、それとも変わらないのか、教えていただけますか。私はそうやって、治療した後どうなるかは私たちに任せてください、と言って引き受けたのですけれども。
○間臓器移植対策室長
 現場のいろいろな御苦労があるのだろうと思っています。前から有賀先生からもお伺いしていますので、承知しているつもりでございます。やはり臓器移植を行う場合の最も重要な前提は、最善の治療を尽くしたということだと思います。しかし、それでも救えない命があるというのは現実でございます。その中で臓器提供というオプションがあるということだと思っています。したがって、そこのところに疑いが生じないようにすることは非常に重要なことかと思っております。より高度な医療を行い得るところに搬送することはあり得るかもしれません。やはり私どもの立場としては、臓器移植のためだけに搬送することについては、適切ではないのではないかと言わざるを得ないということです。国民の皆さんの期待は、やはり助けてほしいと。もちろん助かる命もある中で、そこについては、精一杯救急の先生方がやってくださったことが非常に大きな納得材料になっていることは大事なことかと思っているところです。その意味では、この辺りはやはり、国民の意識がどう動いていくかということを踏まえて、慎重に判断しなければいけないことではないかと思っております。
○有賀委員
 追討ちを掛けるような言い方で御気分を害するかもしれませんが、もしそうだとすると、そうではないところに、実は交通事故などで運ばれているということを認めているということですね。つまり、精一杯の治療ができないところに交通事故などで患者さんが運ばれているという現実を、そのとおりだと思っているわけですね。私たちは、少なくとも脳神経外科的な治療がきちっとできるような施設は、脳死の判定ができるという前提に立って、最初から4類型の決め方には、個人的にも、仲間のかなりの人たちも反対していたのです。なぜかというと、どの小さい施設でも、脳神経外科の専門医がきちっと治療はしているというようなことがあれば、それは脳死の判定ができるのだと。当時の日本救急医学会の理事長だった大塚先生は、「国民が一定の水準で理解が進むまでは、有賀君、これでしょうがないのだ」と。「これは医学ではなくて、社会学なのだ」とおっしゃっていたのです。だから、それはそれで納得しましょうということで、今日に至っているのです。
 やはり私は5類型は大事で、5類型ですら皆ができているわけではないので、小さな所に一気に広げろとは言いませんが、そういう方が出てきたときに、しょうがない、運んでくれというふうなことがないような形で何とかならないかなとは思うのです。だから、もし必要だったら、例えば昭和大から何人かそこに行って助ける。要するに、脳死の判定も含めて誰か助けに行って、そこで小中さんたちが来るとかね。そういうふうなことは、多分これから先、考えていかなくてはいけないと思うのです。十二分な治療をしていないから臓器提供ができないのだということを露骨に言い続けるのは、私は間違っていると思うのです。ちょっと言い方が強過ぎかも知れませんが。
○永廣委員
 救急医学会の有賀先生とは少し意見が違うのですが、今度5類型になった脳神経外科の施設は800ぐらいあるのです。そこで、確かに高度な医療をやっていると思います。ただ、やはり脳神経外科医が3人しかいない、そういうところの病院で、患者さんが脳卒中で運ばれて来る。そこにはその病院しかないということで一生懸命やっているわけですが、では脳死判定ができるかと。こういう臓器提供ができるかというと、そういう体制はまだできていないというのが今の社会の状況だと思うのです。ですから、先生が言われるように、簡単にはいかないと思っています。社会がこの臓器提供、脳死判定といったところに理解が進めば、あるいはもっと体制が整えば、いろいろなところが脳死判定を行うようになれるだろうし、提供もできるようになると思うのです。今の状況では、確実にこの医療を提供していくことを考えると、一気に増やしたりとか、運んだりとか、そういうことはあまり好ましくないと脳外科学会では思っています。だから、先生と少し意見は違うかもしれません。
○有賀委員
 でも、正しい医療は間違いないですよね。
○永廣委員
 それはそうです。
○有賀委員
 だから私は言っているのですよ、正しい医療ではないから、だから何類型だという話が出発点にあるのかもしれないと言っているのです。先生は正しい医療をやっていますよね。
○永廣委員
 その正しい医療と、この脳死判定、臓器提供というのは、少し乖離がやはりあるのだと思うのですね。
○有賀委員
 乖離は、社会的にあることは認めているのです。ただ、そういうところから運ばれたいという患者がいたので、やはりあちらこちらにはきっとあるのではないかなと。もし、先生がそういうふうにおっしゃるのであれば、そういうふうなところでやはりできるようにするような、そういう社会の仕組みを作るのが大事なのではないかという話をすべきだと、私は思います。
○永廣委員
 そうですね。それは、学会の中でも実際にやっていかなくてはいけないことで、日本脳神経外科学会でも、先生が言われたような脳死判定の支援とか、わざわざ出ていってやろうという仕組みは作っていこうと思っているわけです。その中で少しずつ認められていくのかなとは思っています。
○有賀委員
 私は文句を言っているわけではない、意見が違うところがあったということです。
○宮坂委員
 今の問題は、多分小児でも結構深刻なことだと思うのです。特に、6歳未満の提供の少ないことの背景にあります。臓器施設、提供状況が18歳未満で括られていますが、この中の多くの施設は18歳未満といっても恐らく6歳ぐらいまでのことを想像しているわけですよね。でも、もっと小さな6歳未満の患者さんを実際に治療するときに、有賀先生がおっしゃったように、いちばんの前提の最善の治療をするというのが、この300の病院でできると現実には思えない。そうすると、やはりある段階で、小児集中治療をずっとやって所に運ぶわけですが、運べなくているのです。その段階では脳死移植ということを全く考えていなくても、重症になってから運んだら、いろいろ言われるのではないかということを懸念してしまうと、実際言われています。
 例えば、私みたいな立場は、そういう病院に行って、むしろ治療を指導してあげなくてはいけないのです。この子どもは早く、例えば成育医療センターに運んだらいいのではないかと。でも、何か皆さんが、脳死判定目的で搬送してはいけないことを恐れて運べない。そういうことがないようにして、本当に最善の医療ができるようにしなくてはいけないと思います。有賀先生の御意見に賛成です。
○渡邊委員
 レシピエント側にも考えなくてはいけないことがあるのかなと思ったのですが、レシピエントサイドの施設のほうの理由で移植を断念したという症例など、せっかくの臓器が提供できなかったというようなこと、これも今後検討していかなくてはいけないのかと。ほかに適合する方がいなくて、臓器はそのまま摘出に至らなかったことがあったようなので、今後そういうのも検討していかなくてはいけないのではないかと思っております。
○佐野委員
 子どものことが出ましたので、今まで言われたことは確かなのですが、もう一つ多分あると思うのは、大人であれば、今の大人の、例えば心臓移植は、ほぼ100%、人工心臓を付けて何百日という日にちを待たないと移植していただけない。ところが子どもであれば、20キロ以下とか、そういう子、5、6歳以下ぐらいの子どもであれば、現実的に日本で使える補助心臓、人工心臓というのはないのですね。現実問題として、私のところでも何回かありましたが、移植となると、実際にそういうものを付けていますということができないので、結局外国に行きますかとなってしまうのです。実際にベルリンハートの治験が進んでいますが、非常にありがたいのですが、やはり超スローペースだと思うのです。ベルリンハートにしても、日本で多分治験が3例で終わって、検証があってどうこうとなると、使えるようになるのにまだ1年とか2年単位、もっとかかるかもしれない。世界はジャービックの小型のものでもっといいのが出ているのですね、アメリカとかヨーロッパでは。だから、日本でそういうふうな治験をしている間に、アメリカは次の世代に、もう2世代ぐらい進んでいるわけです。
 だから、そういうのも早く、ある程度治験を組んでいただいたり、外国のデータを参考にしていただいて、早く進めていただくようになると、もう少し現場のほうにとっても現実味を帯びてくる。もちろん小さい子どものドナーが出ないといけませんが、そちらのほうの問題も結構大きいのですが、受ける側もやはり同じように、体制が整わないと、いざ悪くなって、小さい子どもであれば急激に悪くなることがあるので、そうしたときに大人と同じように人工心臓を付けられればと。もし出ないのであれば、そこから外国に頼むこともできるかもしれません。現実的に、それで半年とか1年待てれば、そこで実際に小さい子どもの移植が進めば、社会の方々がそういうことにもっと関心を持っていただいて、もっと増える可能性があると思うのです。その辺をこの委員会ではないのですが、是非、厚生労働省のほうで早急に検証、それから治験とかいうのを進めるようにしていただければ、そちらのほうからはもう少し早く進むのではないかと思います。
○間臓器移植対策室長
 もちろん直接の担当ではないのですが、いま佐野先生がおっしゃってくださったように、移植の話だけではなく、医療機器の審査なども含めて、医療イノベーションという枠組みの中で早期に審査して、世界に伍してやっていけるようにすることは大テーマになっております。創薬のほうもそうですが、この辺りは医薬食品局が中心です。そういったものも政府を挙げて取り組むという大テーマになっておりますので、いまのお話も関係部局に伝えながら努力していきたいと思っております。
○佐野委員
 もう一つ言わせていただければ、例えば、私のところで今再生医療をやっておりまして、7例で思ったよりも、すごくよく心不全が治っているのです。悪い子は、駆出力が22%ぐらい増えています。それも3か月ぐらいであっという間に増えています。逆に、子どもであれば、できればそういう心筋症とかに応用できればいいなと思っているのです。お聞きすると、厚生労働省の中では異例のスピードで第2相とかに行かせていただいているのですが、それもやはり諸外国に比べるとまだ遅いかなという気がするのです。是非そういうようなものもできるだけ早くしていただければ、もっと早い段階で多くの子どもたちが、もっと先進医療の恩恵を受けられるので、是非そういうのを考慮していただければと思います。
○深尾参考人
 参考人が発言していいのかどうか分からないのですが、移植に使わなかった臓器は焼却処分にしろという決まりがあるのです。これを何とか研究用に使えるようにできないか。この委員会で審議することだと思って、提案します。最近iPS細胞研究に関係してくる法律(移植に用いる造血幹細胞の適切な提供推進のための法律)において、臍帯血移植用に提供された細胞を研究に使ってもいいという法律ができました。しかし、臓器移植用に提供された臓器に関しては使わなかった臓器は全て焼却しろという省令に従って動いています。是非、人を助けるために使ってもらいたいという善意の下に提供された臓器、そしてまた、臓器提供施設の先生方は非常に努力をされて臓器提供をして頂いた大事な臓器です。いろいろな理由、医学的理由その他で使えなかったという臓器は、何とか、提供家族の同意があれば研究にも使っていいと、省令を変えていただきたいと思います。
 それではそういったヒトの組織はどういう研究に使うかと言いますと、今、創薬、製薬会社、あるいは大学研究機関では、ヒトの組織を使わなければヒトの薬理動態などが分からないという沢山の研究があります。また、そういった研究を踏まえなければ臨床に進めない薬もたくさんありますので需要が非常に多い。日本では、私が関係していますHAB研究機構がアメリカで、移植用に提供されたが使われなかった臓器を無償で送っていただいて、それを実費だけでいろいろな研究機関に配分しております。需要があるにもかかわらず、せっかくの臓器を焼却処分にしなくてはいけないというのはおかしい。省令ができた当時の状況は分かりますが、現在ではやはり一歩踏み出して、臍帯血移植用に提供されたものはiPS細胞などの研究に使っていいという法律ができたのですから、それに合わせて法律を変えていただきたいと思います。是非この委員会で検討していただきたいことでございます。
○永井委員長
 今の点、事務局いかがですか。
○間臓器移植対策室長
 今、深尾先生がおっしゃってくださって、御紹介いただいた造血幹細胞移植の法律は、実は当臓器移植対策室所管になります。そのような規定を議員立法で今回作っていただいたわけです。いまの御提案の点については、大きな意味で検討していかなくてはいけないことなのだろうと思っています。
 ただ、一方で、二つありまして。脳死下の臓器移植という、非常に議論を呼んだ、この分野から最初にやるのがいいのか、それとも、議員立法で、献体などの関係も含めて、あるいはサージカルトレーニングをどうするのだとかいうことも含めて、いろいろ検討されている動きがありまして、そういった動向を見ながらちゃんと考えていく必要があるのだろうと。
 もう一つ気になりますのは、この検証会議の102例のまとめでも出てきておりますが、御家族が同意された理由というのは、ほかの人に確かに役に立ちたい、立ってほしいというのもあるのですが、もう一つは、これは日本的な考え方だと思いますが、臓器がほかの人の中で生き続ける、命が続いていくみたいな形の思いを持っている方は結構多くいらっしゃいます。全てが全てではないかもしれません。だから全て駄目だということでもないのですが、研究の話がすぐオーケーなのかどうかというのは必ずしも分からないと思っています。ただ、いずれにしても全体の脳死下の臓器提供の事例に限らず、献体も含めて、全体の議員立法の動きを見ながら、この問題については考えていきたいと思っています。そういうような御要請があることは、実はほかの方面からもお伺いしており、御提案として受け止めたいと思います。
○永井委員長
 まだいろいろ御意見がおありかと思いますが、そろそろ時間になりました。いずれにしましても、ただ今いただいた御意見、事務局におかれましては引き続き御検討いただきたいと思います。では、事務局から連絡事項等をお願いいたします。
○加賀山臓器移植対策室長補佐
 本日は活発な御議論、貴重な御意見をたくさんありがとうございました。次回以降の開催については、委員長とも調整をさせていただき、各委員の日程調整をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○北村参考人
 北村ですが、今日御承認いただきました改正を、局長通達かどうか、運用開始になるのが何年何月になるか、教えていただきたいのですが。
○間臓器移植対策室長
 これは今日御了解いただいたということですので、これから臓器移植ネットワークのレシピエント選択のプログラム改正が要るものですから、周知期間も考慮して、通知自体はできるだけ速やかに発出をして、施行は年明けの2月目処ぐらいになるのかなと思っています。いずれにしてもその辺りはネットワークのほうとよく相談をしていきたいと思います。ちなみに、肺の誤りについても即日実施をしたいと思っています。
○永井委員長
 よろしいですか。これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
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代表 : 03(5253)1111
内線 : 2362 ・ 2365

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