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2012年10月31日 第51回労働政策審議会障害者雇用分科会 議事録

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成24年10月31日(木) 10時00分〜12時00分


○場所

厚生労働省職業安定局第1・第2会議室(12階)


○出席者

【公益委員】今野委員、岩村委員、武石委員、松爲委員
【労働者代表】桑原委員、杉山委員、斗内委員、冨高委員、南部委員
【使用者代表】栗原委員、塩野委員、高橋委員、中村委員、平野氏
【障害者代表】川崎委員、北原委員、竹下委員
【事務局】岡崎職業安定局長、小川高齢・障害者雇用対策部長、山田障害者雇用対策課長、松永障害者雇用対策課調査官、安達障害者雇用対策課長補佐、境障害者雇用対策課長補佐

○議題

(1)障害者権利条約への対応の在り方についてマル2
 ・ 前回の議論の整理
 ・ 検討すべき具体的論点(「第2 障害を理由とする差別の禁止)
 ・ 検討すべき具体的論点(「第3 職場における合理的配慮の提供」)
(2)その他

○議事

○今野分科会長
 それでは、時間ですので始めさせていただきます。北原委員はいらしてないんですが、おいおいいらっしゃると思います。ただいまから第51回労働政策審議会障害者雇用分科会を開催いたします。
 本日は菊池委員、野中委員、萩原委員、阿部委員が欠席です。欠席の萩原委員の代理として、(株)日立製作所 人材統括本部勤労部労務・雇用企画グループ部長代理の平野健太郎さんに出席をしていただいております。よろしくお願いします。また、岩村委員が所用により途中から退席されるということですので、最初に言いたいことを言っていただければと思います。初めに前回もお願いをしましたが、発言する際には手を挙げていただいて、私が指名をしますので、氏名を名乗ってから発言をしていただきたいと思います。
 それでは議事に入ります。お手元の議事次第を見ていただきますと、前回の議論をしていただいたものの内容を事務局に整理していただいてますので、その点が第1点。その次が具体的な論点として、障害を理由とする差別の禁止と職場における合理的配慮の提供。この2点について今日は議論をしていただければと思います。それでは、さっそく議題の1番目の前回の議論の整理から入りたいと思います。よろしくお願いします。
○障害者雇用対策課長補佐(安達)
 事務局の雇用対策課長補佐の安達です。それでは資料1です。前回の議論を整理させていただいたものです。まず、1つ目の大きな四角ですが、(1)法律上の枠組みということで1つ目の○ですが、労働・雇用分野における障害者権利条約への対応につきましては、労働政策審議会障害者雇用分科会での議論も踏まえ、ほかの労働法令との調整を図りつつ、障害者雇用促進法を改正することなどにより対応を図ることとさせていただいております。また、2つ目の○ですが、これは差別禁止法との整合性の確保に関する論点ですが、分科会での議論も踏まえ、しっかりと内閣府等との調整を図っていくべきである旨を書き込んでいます。
 (2)差別禁止等の枠組みの対象範囲です。マル1障害者の範囲ですが、これは原行の雇用制度の対象よりも、差別禁止等の対象となる障害者は広く捉えるということで、中間取りまとめでも同意いただいていまして、具体的にはここに書いていますように「現時点で障害による職業上の制限等を受けている場合には対象とすべきであること」としております。2つ目の○ですが、過去の障害の履歴を有する方については、前回の分科会でもいろいろ議論があったところです。1つ目のポツですが、現在も職業上の制限等を受けている場合については、対象とすべきであるということ。これは概ね同意が得られたと考えております。2つ目のポツですが、現在は配慮を必要とせず働ける方の取扱いにつきましては、ここで掲げてある問題がありまして、対象とするのは困難であるとの意見があった一方で、過去の障害の履歴を理由に、不利益な取扱いを受けた場合への対応は必要ではないかとの意見があったと書いています。
 3つ目の○は将来発生する障害を有する方。また、障害者を持つ家族の方につきましては同じように、今回の差別の禁止等の対象とするのは困難であるとの意見があった一方で、同様に不利益な取扱いを受けた場合への対応は必要ではないかとの意見があったと記載しているところです。4つ目のには、発達障害者や精神障害者、内部障害の方など、外見から判断しづらい障害者の方について、事業主の判断に迷う場合に、ハローワーク等がアドバイスを行うべきと記載しています。
 マル2事業主の範囲ですが、企業規模によって差を設けず、全ての事業主に差別の禁止や合理的配慮を義務づけることと記載しております。またその際、準備期間を設定するとともに、企業規模等に着目し、実効性を担保するための対応を行う必要があると記載しております。
 派遣労働の取扱いですが、当面、派遣元の事業主に義務を課す流れになったと思います。その上で、なお書きですが、労働者派遣法に基づき、派遣先や責任を負っている事業については、合理的配慮に関する事項であっても責任を負うべきとの意見があったと記載しているところです。
 使用者の取扱いですが、均等法等と同様に、事業主のみを対象とすることと記載しています。事務局からは以上です。
○今野分科会長
 ありがとうございました。何か御意見ございますか。よろしいでしょうか。
○高橋委員
 高橋です。ただいま御説明いただいた資料1の(2)のマル1の2番目の○のところですが、過去に障害の履歴がある者についての初めのポツで「現在も職業上の制限等を受けている場合には、対象とすべきであること」と書いてありますが、これは最初の○において「現時点で障害による職業上の制限等を受けている場合には対象とすべきであること」の中に包含される概念ではないかと思いますので、改めて記載をする必要がないのではないかと思います。
○今野分科会長
 何かありますか。
○障害者雇用対策課長補佐(安達)
 事務局です。おっしゃる通り、これは包含される概念です。ただ前回、指摘の中で過去に障害の履歴のある方についての取扱いについて、整理してくれという発言があったことを踏まえて、あえてこういう形で書き分けているものです。
○今野分科会長
 内容については高橋さんがおっしゃられた通りで、あとは書き方の問題です。これを整理してまた最後にどうするかという議論はやりますので、直してもいいが直さなくてもいいというそんな感じですね。
○高橋委員
 まとめのときに整理してください。
○今野分科会長
 趣旨ははっきりしましたので。ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、今日の本題に入ります。まず、「障害を理由とする差別の禁止」についてについて議論をしていただければと思います。まず事務局から資料の説明をお願いします。
○障害者雇用対策課調査官
 障害者雇用対策課調査官の松永です。いまお話のありました、障害を理由とする差別の禁止についてですが、お配りしている資料2を使って御説明をしたいと思います。
 この差別禁止のところで、残されている論点というものの1つ目はこの差別の範囲です。2年前の分科会の中間的な取りまとめの中では、これを直接差別というものを差別とすることについては異論がなかったところですが、残された論点というのはそこにあるように、直接差別以外のもので、1つは内閣府の差別禁止部会で指摘のあった直接差別以外の不均等待遇、間接差別といったもの。それから合理的配慮の不提供、ハラスメント、能力評価の結果として生じる差といったものをどうするかという問題。それから、もう1つの論点は差別の正当化事由ですとか、私法上の効果というものをどうするかとそういった問題があります。
 まず、これまでの議論を紹介しますと、まず「不均等待遇」ですとか、間接差別の関係ですが、これは先の中間的な取りまとめの中では賛否両論ありまして、「間接差別」というものも含まれるのではないかといった御意見。それから、具体的な判断基準を示すのは困難ではないかといった御意見がありました。それから、先の研究会報告書の中でも賛否両論ありまして、この「間接差別」の問題については、まず具体的な事例の集積を行って要件を確定させることが必要であるといった御意見。それから「間接差別」の基準、要件では明確ではないものの、差別の正当化事由を設けることによって、「間接差別」は規定できるのではないかといった御意見。またこれに対しては、合理的配慮の提供というもので対応することが可能ではないかといった御意見などがありました。
 それから、内閣府の差別禁止部会のほうでは、ここでは不均等待遇と言ってますがこれは直接差別、間接差別、関連差別という3つの類型を位置付けてるものですが、これを禁止されることを明記すべきであるということで言われております。なお、この関連差別というものについては、2ページのほうの最初の1つ目の○になりますが、障害に関連する事由を理由とする差別ということで言われてまして、ここでは例示として車いす等の補装具、補助犬という支援器具の利用や携行。それから介助者の付き添いや同行といった社会的不利を補う代替的移動手段の利用といったものが挙げられているところです。
 次に、「合理的配慮の不提供」の関係のこれまでの議論です。まず、研究会報告書の中では賛否両論ありまして、そこにある3つ目の○ですが、労働・雇用分野における対応としては、まずは、合理的配慮を提供することを事業主に義務づけるということで対応すべきであるといった御意見。それから、条約への批准のためには、合理的配慮の不提供について「差別」と位置付ける必要があるのではないかという御意見がありました。
 あと差別禁止部会の御意見です。そこの2つ目の○ですが、「合理的配慮を提供しない」という差別をしてはならない義務を負うということになる。これは結局のところ、相手方が合理的配慮を提供する義務を負うことになるという形で言われております。
 それから、「ハラスメント」の関係ですが、これも研究会報告書では賛否両論ありまして、差別と位置づけてそれを禁止すべきではないかという御意見と、あとは「間接差別」と同様に、具体的な基準や要件が明確でないことから難しいのではないかという御意見が上がりました。それから、「ハラスメント」の関係では、障害者虐待防止法の中の「マニュアル」において、虐待となる具体例というのが示されてまして、その中で嫌がらせ等の心理的虐待というのを示しているので、まずはこの障害者虐待防止法に基づく措置を講ずるということで対応すべきではないかという御意見もありました。
 それから、内閣府の差別禁止部会の意見ですが、こちらは差別禁止法の運用に当たって、先ほど申し上げた、障害者虐待防止法とも連携した取組みを行うことが求められるとされております。
 次に、差別の正当化事由ですが、研究会報告の中では賛否両論ありまして、間接差別に関連して諸外国の制度を踏まえつつ、職務に本質的かつ重要な要請である場合などには差別に当たらないという差別の正当化事由を設けるべきという御意見と、我が国における雇用慣行や雇用契約の内容と、諸外国におけるそれらの違いを十分考慮して検討すべきという御意見がありました。
 差別禁止部会の方では、正当化事由がある場合においては、不均等待遇の例外として許容されることになると言われております。
 それから、労働能力に基づく差異の関係ですが、これも研究会報告書の中では合理的配慮が提供された上で、労働能力が適切に評価されたものであるならば、結果として差が生じても差別には該当しないのではないかということについては異論が出なかったところです。
 次に「私法上の効果」ですが、まず、中間取りまとめの中では私法上の効果を規定すべきという御意見がありました。それから研究会報告の中では賛否両論ありまして、私法上の効果を明確にすべきという御意見と、あとは特段法律上に規定を置かなくても問題はないのではないかという御意見がありました。それから、差別禁止部会の意見ですが、この中では2つ目の○ですが、何が差別に当たるかを判断する基準というのは差別禁止法が提示するとしても、どのような法的救済が認められるかは、民法等の一般法の定めるところに従って判断されることになるということで言われております。
 そういうことを踏まえた上での具体的な論点が5ページです。まず差別の範囲についてですが、基本的な考え方ということで、禁止すべき差別の範囲のメルクマールを示させていただいてます。まず1つ目は、事業主に法的義務を課すものですので、事業主にとって何が禁止すべき差別に当たるのかが明確であること。それから、均等法の性差別禁止とは異なりまして、障害者の分野では合理的配慮の提供義務が事業主に課されることとの関係にも留意する。こういったことが必要なのではないかということ。その上で直接差別については、これは前の中間まとめでも禁止すべきであるとされたわけですが、その禁止すべき差別の範囲が明確になるように差別に当たる具体的な事例を示すべきではないかということ。それから、車いすや補助犬などの支援器具の利用、介助者の付き添い等の社会的不利を補う手段の利用等を理由とする不利益取扱いについても、直接差別に含まれるものと考えて良いかどうかということについて御議論いただければと思います。それから、間接差別についてですが、この間接差別というのは外見的には中立的な基準でも、結果として差が生じるというものですが、どういうものが間接差別に該当するのかということを明確にできるかどうかということ。それから、間接差別に当たるというものがあったとしても、事業主は合理的配慮の提供義務というのが課されますので、合理的配慮を提供してもなお解消されないものがあるのかどうかということ。それから、間接差別に当たるものがあったとして、その差別を解消するということを考えた場合に、健常者も含めて一律に差別とされた基準そのものを見直すということで良いかどうか。あるいは合理的配慮を提供することによって対応すべきかどうか。そのことについて御議論いただければと思います。それから間接差別の関係で、間接差別の範囲や基準みたいなものが明確でなくても、間接差別を法律上位置付けた上で、事業主に正当化事由があれば差別に当たらないという考え方について、これは事業主にとっての予見可能性ですとか、それから事業主、障害者双方にとっての法的安定性といった観点から、どう考えるかといったことについて御議論いただければと思います。
 次に、合理的配慮の不提供ですが、これは障害者権利条約の中では労働・雇用分野について事業主に合理的配慮の提供義務を課すということで定めていることも踏まえまして、ここは端的に事業主への合理的配慮の提供義務とすれば足りるのではないかということについて御議論いただければと思います。なお、合理的配慮の不提供を差別とするのと、合理的配慮の提供を義務付けるというのはある種、同じことを言っているわけでして、これを両方書くという場合についての法制上にも課題があるということについても御留意いただければと思います。
 次に6ページですが、「ハラスメント」の関係です。これについては、まだ範囲というものは明確ではないので、また、先ほど御説明した障害者虐待防止法の中で、すでに心理的虐待といったことで一定の措置が講じられているところですので、まずは虐待防止法で定める措置の履行確保に努めるべきではないかということ。
 次の労働能力に基づく差異等のところですが、労働能力を適正に評価した結果としての異なる取扱いというのは、差別に当たらないということで良いかどうかということ。それから、次の○はアファーマティブ・アクションの話ですが、今回禁止される差別というのは、障害者への不当な取扱いというもので、障害者を有利に扱うもの、積極的差別是正措置といったものまでは禁止すべき差別としないことについて、どう考えるかといったことについて御議論いただければと思います。
 それから、(2)が私法上の効果の関係ですが、今回の差別については、雇用にかかる全ての事項ということで募集、採用から退職に至るまでの全ての事項を対象とするということを想定していますが、そうしますと差別による行為の効果というものは無効となるものですとか、不法行為として損害賠償となるものといったいろんな私法上の効果もさまざまあります。その中で、内閣府の差別禁止部会の意見書の中でも、どういう救済が認められるかというのは、民法等に従って判断されるとしているということもありますので、これを踏まえて、どう考えるかということについて御議論いただければと思います。
 7ページ以降は、いま御説明した論点に関する参照条文を載せております。それから、今日お配りしている資料の中で参考資料1というのがあるのですが、これは内閣府の調査のほうで障害者の方にした調査で、障害を理由とする差別だと考えてこういうことはして欲しくないと思っている事項というのを整理しているものです。こういった資料も御参考にしていただきながら議論していただきたいと思います。私の方からは以上です。
○今野分科会長
 ありがとうございました。それでは御意見をお願いいたします。
○高橋委員
 いまの議論に入る前段階で、言葉の問題で「不均等待遇」という、余り聞いたことがない言葉が出ています。御承知のとおり、雇用・労働分野では、均等待遇だけではなく、均衡待遇という概念が定着していると思います。これは造語だと思うのですが、不均等待遇というのは、厳密に言うと、均等待遇以外のものを、全て包含する概念のように、文字だけを見ると受け取られかねないような気がします。よく意味が分からないのですが、もし均衡待遇を否定するものであるならば、非常に問題だと思います。誤解を招きかねないので、労働の分野で「不均等待遇」という言葉は余り用いるべきではなく、むしろ、直接的に、障害を理由とする差別的な待遇というような分かりやすい言葉を使っていただくほうが、企業側としても意味がよく分かるのではないかと思います。
○今野分科会長
 分かりにくいのは事実なのです。
○障害者雇用対策課長
 「不均等待遇」という言葉は、差別禁止部会で作られた造語で、直接差別、関連差別、間接差別を包含する概念ということです。もともと差別禁止部会の最初の頃というのは、直接差別、関連差別、間接差別、合理的配慮の不提供ということで議論はしています。それぞれの直接差別、関連差別、間接差別との関係や、個々の事象について、どの差別類型に当たるかという議論を、かなり差別禁止部会で重ねました。結局、個々の事象についても、各委員がそれぞれどの差別に当たるのかについて意見が分かれたりとか、国民に対する分かりやすさということで、そういったものを個々に挙げることは避けて、終盤に不均等待遇という概念が出てきたのだと思います。我々の方としても、高橋委員と同様の思いはあって、やはり議論するときにはそれぞれ直接差別、関連差別、間接差別についてどう考えるかの積み上げをしていくことで、合意形成を図ったほうがいいということで、特段、不均等待遇についてどうした、こうしたという記述をしていないのはそういう意味です。
○今野分科会長
 よろしいですか。たぶん直接差別、関連差別、間接差別をまとめて何か言うかというと、言葉を作らなければいけないので、とりあえず「不均等待遇」という言葉を使ったという程度で、我々は理解しておけばいいので、これを本気になって使うかどうかということになると、それはまた話は別だぞということだと思います。便利な言葉として、まとめて表現するために、とりあえず我々は使っているという程度ぐらいだと思います。ほかにいかがでしょうか。
○竹下委員
 いまの議論の延長線で、少し理解を深めるための発言をしたいと思います。
 いま事務局ないし座長からも話があったように、「不均等待遇」という言葉が、私はそれが造語なのか、どうかも知らないまま向こうの部会で、これでいこうということになったのです。ただ、大事なことが2つあると思っています。
 1つは、直接差別、間接差別、関連差別又はもっと別の言い方をする人、そういう差別の類型なり、分析が必要だという議論は片方にはあります。それは差別の本質を理解するためであったり、正当化事由が認められる場面と認められない場面は、それによって違いが出てくることがあったりするために、差別の類型化は絶対に必要だという強い議論は最後までありました。
 もう片一方で、そうは言ってみても、直接差別、間接差別、関連差別の言葉の概念としての説明は尽きたとしても、具体的に現れる事象をどれに当てはめられるかということになると、ものすごく意見が分かれました。そのためにといいますか、その議論はやめると言ったら怒られますが、そういう関連的になりがちな議論ではなくて、やはり、障害のある人が十分に能力を発揮して、他の就労者、労働者と不利益にならないということを言いたいのだということでは、共通認識を立てるならそれを包含することでいこうとなったのが経過です。
 そこで間接差別も含めて、非常に厄介なのは、例えば、現に京都府の職員採用試験の中で、障害者の別枠雇用制度を設ける。その別枠雇用制度の中であっても、文字が読める人という要件があるわけです。文字が読める人というのは、ごく常識的に、いま文盲という言葉を使うかどうか知りませんが、文盲を排除しようとしたのかと読めるようですが、もっと現実的に視覚障害者は排除されてしまうわけです。現に、視覚障害者が京都府の別枠選考制採用にもし入れても、その要件から駄目だと拒否された事例があったのです。それを類型上どうするのかという議論よりも、現実に差別されているということを考えた場合に、それは障害者差別として位置付けないと、現実には平等な機会は与えられないではないかという議論が出てくるかと思います。
 そういうふうに、一つひとつの具体的な事象、出来事を類型で分けるよりは、不合理なものは改善、調整していこうというところで、「不均等」という言葉を理解していただければよいのかと思っております。以上です。
○岩村委員
 竹下委員、御説明ありがとうございました。ただ、竹下委員も弁護士なので、よくよく御存じだと思いますが、法律家の立場からすると、不均衡というのは、仮にいまの竹下委員の御説明を理解して考えたとしても、何が要件なのかというのが非常に不明確で、そういう意味でルールとしての明確さがどうしても少ないというか、そういう点は否定できないのかなと思います。
 いまここで議論している雇用の場における差別禁止ということを考えたときには、障害者の人たちのみならず、他方で障害者を雇う企業側にとってもルールが明確であるということは非常に重要なことだと思います。そういう意味では「不均等待遇」という極めてフルーで曖昧なものは、やはり理解しにくいし、特に事業主サイドとしては実際に困る場面が多いのではないかと私は思います。
 そういう意味では差別禁止部会の議論は、いま課長からも説明があったし、竹下委員のお話もありましたので、確かに分からなくもないのですが、実際にルールを作って、それを適用しなければいけないということを考えると、従来使ってきて、内容もはっきりしている直接差別とか、そういう概念を使うほうが、より立法政策としては適当なのではないかと私は思います。
○竹下委員
 いまの岩村先生がおっしゃったことに、一般的には何の反論も異論もありません。それはそのとおりだと思います。すなわち概念が曖昧であればあるほど、現実には職場で、あるいは採用場面で、的確で適正な対応が望めないということになりかねないわけですから、岩村先生の御指摘のとおりだと思います。
 ただ、考えておきたいのは、裏返しで例えば直接差別という言葉に限定してしまったときに、先ほど申し上げた1つの例が、「それは直接差別じゃないんだ」と言われてしまったときに、その差別待遇なり、差別取扱いをどう是正するのか。それを今回の議論の中で排斥して良いのかということになると、たぶんそれについてはどなたも「そんなことは言っていない」とおっしゃると思います。
 そうすると、まず物事の概念は分かりやすくすることの安定性や事業主の理解をきちんとしていくために必要だというのは、もっともな意見だと思いますが、その要請を満たしつつ、差別を実際には見逃す、又は配慮してもらえない、平等な扱いに回復してもらえない事態をなくすための概念をここで議論していただければ、それで結果としては足りるのであって、言葉にはこだわる必要はないと思っています。
○岩村委員
 法律家、法律家の議論になると良くないので、2点ほど付け加えておきますと、まず第一に直接差別と言った場合に、日本の直接差別の概念というのは結構広いということを注意しておく必要があるかなと思っています。ある程度、間接差別的なものも直接差別の中で、特に男女雇用均等の場面などでは救ってきているというのが裁判例の傾向であるということは注意する必要があるかと思います。
 もう1つは、いま議論している枠の中では、合理的配慮を事業主に義務付ける形になっています。そうすると、合理的配慮で救える部分が、実はかなり機能的に使えるのではないかと思っています。ですので、差別の問題と、その裏腹としての合理的配慮との適切な組合せによって、障害者の方々が受ける職場における不利益の解消を目指すということで、かなり整理できるのではないかと私自身は思っています。
○今野分科会長
 この不均等待遇の問題だけは整理しておきたいのですが、不均等待遇については、私は議論するつもりはありませんので。間接差別、直接差別、関連差別は今回の資料にありますので、議論しますが、不均等待遇については、先ほど言ったように、3つを合わせたときに何かネーミングするために便利な名前を考えたぐらいにしか考えていません。ですから、この不均等待遇はどうかという議論は、なるべく避けたいと思っていますので、よろしくお願いします。ほかにいかがですか。
○桑原委員
 いまの話に関連しますが、間接差別というものに関して、労働側としては以前から禁止すべき差別の範囲に含めるべきだと主張してきました。ただ、いままでの議論の中で、その定義は何なのかと言ったときに、明確でないというのは十分理解していますし、いま我々が間接差別の具体例を提示することが難しいことも事実です。いま竹下さんの発言にあったとおり、直接差別の範囲から何か漏れるものがあってはまずいということで、間接差別という言葉がある限り、差別の範囲に含めるべきではないかという発想だったのです。
 この分科会の中で、今後、何か定義できるのであれば当然、法改正までに入れるべきだし、定義できなかったとしても、研究会報告にもありますが、具体的な相談事例や裁判例の集積などを続けて、そうしたものが積み上がった段階で定義が明確になったときには、法制上の取扱いを考えていくという対応が必要なのではないかと思っています。以上、意見です。
○今野分科会長
 ほかにいかがですか。
○塩野委員
 差別については定義の問題もあるかと思いますが、事業主側からすると禁止されるべき差別の内容をできるだけ明らかにしていただきたい。例えば、指針などで職場も含めて判断ができるような、できるだけ分かりやすい例示をお願いしたいと思っています。
○今野分科会長
 いまの桑原委員の御発言は、いまの御意見と言い方は違いますが、同じことを言ってるということですよね。
○桑原委員
 そうです。私の意見は定義が明確になった時点で規定すべきだということです。
○今野分科会長
 ほかにいかがでしょうか。
○栗原委員
 重多企業を代表して一言お話させていただきたいと思います。6ページのハラスメントの件で、我々の重多企業でいちばん多く雇用されている障害を持たれた方は知的障害者です。その方々は途中で退職される方はかなり多いのです。なぜかというと、体力的な衰えがいちばん多い。そのときに皆さんがよく言われるのは、この子は、いま非常に体力が落ちてきて危ない。怪我でもするといけない。こういう状況にあっても、本人が働きたい、親が働かせたいと言うと、例えば福祉のほうに移行していただきたくても、それがなかなかできないということで非常に困っているという部分があるらしいのです。
 私どもの会社の1例をお話させていただきます。これを言うとハラスメントとなってしまうのかも分かりませんが、本当に体力的に落ちてきて、周りからいじめではないのですが、周りの障害を持たれた方から、遅いとか何とかというような話が出て、本人は非常に暗くて、会社へ来ても、本当に辛い毎日だったのです。我々も見かねて、親御さんに「福祉のほうの工場へ行かれたらどうですか」という話をしました。本人はここの会社がいいのだ、友だちがいるから離れたくないのだという話だったのですが、半年ぐらいして移行されたのです。
 それから2カ月ぐらいして、俄然明るくなって会社を訪れました。会社では我々一般の労働では非常に作業がきつくて、能力を発揮できない。しかし、福祉のほうへ行ったら、周りの子のレベルからいくと、その子がトップになってしまったのです。そうすると、すごく明るくなって、親御さんも、もっと早く行かせるべきだったと、すごく喜んでくれたのです。我々が無理にそういう話をしたときに、親御さんのほうで、「これはおかしいじゃないか。なぜ辞めろと言うんだ」と言われると、会社の思惑と全然違う方向に流れてしまう。そういうことも危惧されることであるのだというのをお話させていただきました。
○今野分科会長
 ほかにいかがですか。
○南部委員
 別の課題ですが、5ページにある合理的配慮の不提供に関して、確認と意見を申し上げたいと思います。ここで合理的配慮の提供義務を定めることになっていますが、裏を返せば、合理的配慮の不提供を禁止するということと同じという理解でよろしいかどうかです。先ほどの事務局の御説明では同じということでしたが、再度の確認をしたいと思います。
 最終的に提言がまとめられる上では、そのことが分かりやすく記載できている形が望ましいのではないかと思っています。なお書きにありますように、法制上の課題もあると謳われておりますので、課題はあるにしろ、このことが合理的配慮の提供義務を定めるということは、それも含むということであるというのが分かるような形でまとめていただけたらという意見と両方でお願いします。
○今野分科会長
 事務局、いかがですか。
○障害者雇用対策課調査官
 なお書きのところは、まさに委員がおっしゃったとおり、義務づけるということと、提供しないことを差別と位置づけるのは、いわゆる裏表の言い方ではないかというところで問題意識として、ここで書かせていただきました。また、意見書などの書き方等については御議論いただくことになろうかと思います。
○今野分科会長
 2点目について分かりやすく書けというのは、全てについてそうですよね。
○南部委員
 そうです。ということは、合理的配慮の提供義務を定めるということは、その裏腹の合理的配慮の不提供を禁止すべき差別とすることとも同じという理解でよろしいでしょうか。
○障害者雇用対策課調査官
 まさにそういう御理解でよろしいかと思います。
○今野分科会長
 ほかにいかがですか。
○平野氏(萩原委員代理)
 ただいまの合理的配慮の提供あるいは不提供についてですが、企業で配慮すると言ったときに、簡単にすぐ配慮できるものと、投資なども必要で、ある程度配慮に時間がかかるようなもの、あるいは企業体力等を踏まえたときに、配慮に限界があるようなものもあるのではないかと思います。そういったところはどのように考えればいいのか、むしろ、そういう現実があるわけで、それらも踏まえた指針や、方向性が必要なのではないかと感じております。
○障害者雇用対策課長
 まさにその点が、今日の後半のセッションで合理的な配慮の提供そのものをどう考えるかというところがありますので、そちらでいまのような御意見を言っていただければと思います。いまはとりあえず差別の関係でという整理が先行していますが、後半で御議論いただければと思います。
○今野分科会長
 ほかにいかがですか。
○高橋委員
 関連差別に関して質問があります。5ページの(1)の3番目の○に、社会的不利を補う手段の利用等を理由とする不利益取扱いというのは、具体的にはどのようなものなのかを教えていただければと思います。
○障害者雇用対策課長補佐(安達)
 事務局です。障害であること、そのものではなくて、分かりやすい例でいきますと、例えば車いすの利用に関して何らかの不利益な取扱いというか、雇用の場で何らかの取扱いをした場合については、障害に着目したことそのものではないので、障害に関連する事由ということで関連差別の類型に入るのではないかと考えられるという御意見だったと思います。
○高橋委員
 何らかの不利益という、それをまさに質問しているのですが。
○岩村委員
 的確にお答えできるかどうか分かりませんが、あるいは竹下委員のほうが適切なのかもしれませんけれども、例えば車いすの利用ということを考えたときに、いちばん分かりやすいのは後発的障害のケースを考えて、いままである職場で働いていたところ、事故、その他によって結局車いすを使うようになったというときに、いちばん考えられるのは、「うちの会社はそもそも車いすは入れないので、あなたは辞めてちょうだい」というのは、ある意味でここでいちばん端的に考えられるようなものですよね。
○高橋委員
 いま岩村先生がおっしゃったことは直接差別ではないのでしょうか。
○岩村委員
 ですから、そこのところは私個人は直接差別だと思いますが、そうではないのだという議論をされる方もいらして、これは要するに、障害そのものを理由としていないという議論があるので。私自身はそれは完全に直接差別だと思っています。先ほど申し上げたように、日本の直接差別の概念というのは広いので、日本であれば、これは直接差別に当たると思いますが、障害そのものではなくて、車いすというのに着目したものだと考える考え方もあるので、そうすると、これは直接差別ではなくて、間連差別だという整理をされる方もいらっしゃるということです。これがたぶん先ほど竹下委員が言われた、どれに入るのだというのを巡るいろいろな議論の話になるのかと想像いたします。繰り返しますが、私は直接差別だと思っています。
○今野分科会長
 我々はたぶん一般的にというか、共有しているのは、障害があって仕事をしようとしたときに、不可欠に用意しなければいけないことがありますよね。例えば、車いすというのは障害のある方が仕事をしようとしたときに必ずなければいけないもの。その範囲は、みんな直接差別と、我々はずっと思っているわけです。もし、我々がそのように考えているとすると、それを超えた何かがあるのかということになりますね。
○竹下委員
 別に議論するつもりはないのですが、私の理解で、いまの話題にプラスするとしたら2つあります。例えば、視覚障害者で盲導犬を連れている方が最近増えています。そうすると、全盲の人は入ってもいい、でも犬は駄目だと言ったときに、それを障害者に対する差別と言うのか言わないのかという、そこに1つは出発点があったりするわけです。
 もう1つ別の形で言いますと、例えば、うつの患者であろうが、統合失調であろうが、精神障害の方が定期的に通院する必要があったとします。そのときに「通院はちゃんと配慮しましょう。しかし、通院した分だけ当然賃金は減ります」と言ったとします。それは当然のことによると、障害者に対する配慮は、それでしたことになるのかという議論もあります。
 あと具体的にいろいろ議論があった例では、どうしても直接差別と言ったときに、「あなたは目が見えないから駄目だよ」とか「耳が聞こえない人は駄目だよ」と言うのは分かりやすいのですが、それ以外を直接差別の範疇に加えたら、それで日本の場合は解決するのだという岩村先生の指摘でいけば、いま言った例も全部、直接差別の範疇だと言えば、その議論も要らなくなるということなのかもしれません。
○高橋委員
 ただいま御説明いただいた事例で、盲導犬の例にしても、職場によっては動物を入れることがなかなか難しいという職場もあり得るかもしれませんので、一律に盲導犬だから駄目だということではなくて、合理的な配慮をどうやって提供するかによって解決を図っていくこともあり得ると思います。ですから、一律に車いすだから差別だとか、補助犬だから差別だという形の立法というのは非常に難しいのではないかと私は思っています。
○岩村委員
 いまの竹下委員の最後の点に補足しますと、日本の場合は、いずれにしろ、私のほうでは労働委員会がやっているので、「お前は組合員だからクビだ」と言う使用者はいないことはないのですが、あまりいません。何やかや、理由を付けて解雇するといったときに、日常的にやっているのは、結局解雇を巡るさまざまな諸事情というものをベースにしつつ、「いろいろ使用者は言っているが、これは、やはり組合員であることを理由とする解雇だよね」というようにやるのを差別だということです。
 そうすると、障害者のケースについても先ほど出てきたような盲導犬の例なども、結局、直接的に「いや、あなたは視覚障害者だから入ることができない、入れない」と仮に言わなくても、周辺の事情を見たときに、盲導犬を入れないということになれば、結局、視覚障害者は入れないということですよねと。そうすると、これはいろいろなそういう事情を考えると、やはり本当の理由は視覚障害者だから入れないということだよねと認定するということは、現実にそういう例が裁判所であるかどうかはともかくとして、日常的に実は差別の事例では裁判所あるいは労働委員会などで使っている手法なので、そういう意味では直接差別という形で拾うというか救済することは、私は可能だろうと思っています。
○川崎委員
 家族会の川崎です。いろいろ専門家の方が御説明なさっている直接・間接関連の差別についてです。家族として本当に単純な発想ですが、こういう類型別にする必要があるのかなと感じておりまして、直接差別というところで、先ほど竹下委員が言われた精神科の通院の問題で、それは合理的配慮で、例えばこの人は2週間に1回通院する必要があるから、それはしっかりと合理的配慮の中に入れるというところで解決できて、間連差別などというのは一体何なのかと思うように、非常に難しい設定ではないかと思い、そういうことを感想として申し上げました。
○今野分科会長
 ほかにいかがですか。
○松爲委員
 直接・間接と少し外れますが、先ほど栗原委員がおっしゃった事例ですが、あれが非常に大きな問題になるのではないかと思っています。つまり、企業側が本人のいろいろな状況を考えて、この人の将来展望を考えたときに「福祉の世界へ行ってみたらどうですか」と言われたときに、親がそれに対して反論したときにハラスメントに当たるのかどうかです。特に中小企業あるいは重多企業の人たちは、長い間障害者を継続して雇用していますから、障害を持った人の特性とか、その人のキャリアとか、全体をよく把握している人たちなのです。そういう人たちの善意的なことを考えてきますと、いまの形について、皆さんどう扱えばいいのか、私はよく分からないので、皆さんの御意見を伺いたいと思います。
○今野分科会長
 皆さんの御意見を欲しいということですが。抽象的にいうと、栗原委員の言われたことは合理的な理由があったらいいですよね。では、個々の事例で合理的でなくて、そういうことをするケースも考えられるので、個々の事象は非常に多様なので、そういう問題を解決するような仕掛けを作って対応していくということになろうかと思います。
○松爲委員
 現実的な形に即しますと、こういった事例が特にこれから障害者の高齢化が入ったときに、ものすごく起きますし、私自身も企業の方々に関しては、非常に善意的な格好で、きちんとこういった状況では、障害者雇用に関しては本気になって真面目に取り組んでいる人たちが多いと思います。そういう人たちが不利益を被らないような法制上の問題で「あなたは差別ですよ」と言われないような、そういった仕組みが必要だと思います。あとのほうの議論になりますが、そういった意味では第三者の相談機関等々をしっかり作ってもらいたいというのが私の意見です。
○今野分科会長
 ほかにいかがですか。全く違うことでも結構です。
○杉山委員
 先ほど来、議論になっていた間接差別、直接差別はどういうカテゴリーかということについて、詰めていけば合理的配慮の中身になるのだろうと理解しています。つまり、ここで何が直接で、何が間接かという議論をしていくよりは、どういう配慮がされたほうがいいのか、どういう配慮が認められるのか、受けられるのかといった事例をできるだけたくさん出していくという営みの中で対応するほうが適切かなという気がします。
 その上で、前回も申し上げたのですが、今日お配りいただいた参考資料6の5ページに中間取りまとめや、研究会、差別禁止部会それぞれの意見が記載されており、差別禁止部会の内容は資料2のほうが詳しく書いてあるかと思いますが、この中で労働側としては従来から、例えば解雇といった状況になったときの差別禁止における私法上の効果を規定すべきだという意見を述べてきました。
 また、合理的配慮を求めたことによる不利益な取扱いに対しても私法上の効果が必要であるとしてきました。研究会の中では明確にすべきとの意見に対して、特段法律に規定しなくても問題ないのではないかという御意見も受けましたし、まとめの中では高齢法における60歳定年規定のような対応もできるのではないかという御意見もいただきました。
 その上で先ほどあったとおり合理的配慮を求めたことによる不利益に対しては、当事者間の話し合いなどの取り組みによって理解し合えるのではないかと思っていますが、それが解雇、雇止めとなると合理的配慮の話ではなくなってしまうわけです。それは総論というか、差別禁止に係る全体の枠組みの中で規定しておく必要があるのではないかと考えています。
 質問と確認をさせていただきたいと思うのは、参考資料6の5ページの真ん中の枠の下の3.その他の2つ目の○の下2行で、「法律上に規定を置かなくとも私法上の効果をもつ規定として機能させることもできるのではないかとの意見もあった」という記載があるのですが、具体的にこれはどのような形で機能させることができるのか。そこを再度確認をさせていただきたいと思います。以上です。
○今野分科会長
 いかがですか。
○障害者雇用対策課長補佐(安達)
 この部分については法律上、特段に明記しなくても、行政上の解釈として何らかの通達等で明記することによって私法上の効果を持つ規定として機能させることも考えられるということで述べていると御理解いただければと思います。
○今野分科会長
 杉山さんの御質問は、そういうことだったら、そうなるかをちゃんと明確にしておけということです。そういうことですね。
○杉山委員
 そうです。
○今野分科会長
 ということは、それでいいから、こうこうこうで大丈夫と明確にしろということですね。
○杉山委員
 そうです。
○今野分科会長
 それともう1つ、杉山さんの御意見の前半ですが、合理的配慮を求めたら雇止めになったとか解雇になったということがないようにというぐらいを、ここで扱っている法律の中で言及ぐらいしておいて欲しいという趣旨ですか。
○杉山委員
 冒頭に言った合理的配慮を求めたことによる不利益取り扱いの禁止については、資料3の後段の部分に論点が示されていて、先走ってそちらの話をするのはいかがなものかと思ったので、簡単に触れておきました。また後ほどそちらのほうでお話いたします。
○高橋委員
 いま杉山委員のおっしゃられたことに関連して、例えば解雇とか雇止めを考えると、解雇でしたら労働契約法の16条で解雇権濫用法理が明文化されています。雇止めについては来年4月1日から施行される改正労契法第19条で雇止め法理が明定化されますので、十分に客観的で合理的な理由と社会通念上の相当性が求められるわけです。いま御指摘いただいたようなことも、そうした客観的な合理性、社会通念上の相当性に照らして判断をするということでよろしいのではないかと私は思っています。
 また、私法上の効果と一般的に言われても、今後は合理的な配慮の提供が絡んできますので、その提供度合いによって、どのような効果を特定していくのかというのは非常に難しい形になると思います。それが特定できないと、法技術的に私法上の効果を付与するという考え方もなかなか難しいのではないかと私は思っているところです。
○今野分科会長
 それでは、今日はもう1つ論点がありますので、そちらに移らせていただいて、時間が余ったら全体で時間を取ります。次は「職場における合理的配慮の提供」について議論していただきたいと思います。事務局から説明をお願いします。
○障害者雇用対策課調査官
 本日お配りしております資料3で説明いたします。
 「合理的な配慮」の関係で残された論点の1つは、合理的配慮の枠組みをどうするかということです。これまでの議論を紹介します。まず、中間的な取りまとめの中では、枠組みとしての例示ですが、施設・設備の整備、人的支援、職場のマネジメントや医療に関する配慮などの枠組みで考えるべきではないかといった御意見をいただいています。あとは、各論になりますが、募集・採用の機会は合理的配慮の中に入るのではないか、教育訓練も対象になるのではないかという御意見と、逆に、通勤時の移動支援などは入らないのではないかといった御意見をいただいています。
 研究会報告書では、まず、雇用・労働分野では、採用から雇用期間中、退職といったそれぞれの時点において異なる配慮が必要になることにも留意すべきだという御意見がありました。各論では、訓練の機会、特別休暇の提供、福利厚生施設における施設や制度も対象になるのではないか、職員への研修や啓発、職場環境の整備、相談体制の整備なども入るのではないかという御意見がありました。通勤時の移動に関しては、福祉サービスで対応すべきではないか、関係府省庁を跨いで積極的な検討を行うべきといった御意見もありましたので、それらも踏まえて引き続き検討すべき課題とされています。
 その他、障害特性を踏まえた合理的配慮ということで、精神障害者の方に対しては、働き方の柔軟な仕組みなども対象になるのではないか、発達障害の方については、職場の理解や人間関係の調整、精神的に安定できるスペースの確保なども対象になるのではないかなどの御意見をいただいています。内閣府の差別禁止部会では、事業主や障害のある労働者にも分かりやすい具体例を伴うガイドラインが必要であろうとされています。
 その下の四角囲みは、具体的な論点です。合理的配慮については、「中間的な取りまとめ」の中でも内容が多様かつ個別性が高いものであるため、法律では合理的配慮の概念を定めて、具体的な配慮の内容等は指針として定めることが適当であるとされています。今回は大きな枠組みについて中心に御議論いただきたいと思います。
 先ほども申し上げた中間取りまとめの中で、マル1施設・設備の整備、マル2人的支援、マル3職場のマネジメント及び医療に関する配慮という、3つの枠組みで考えてはどうかという御意見がありました。これらについて御議論いただきたいと思います。具体的な合理的配慮の内容等については指針で定めるわけですが、その際には、労働者・使用者・障害者・公益代表の参画の下で検討を行うべきではないかということ、そのほか合理的配慮の内容を検討するに当たって留意すべき事項があるかどうかについて御議論いただきたいと思います。
 3ページは、残された論点の2つ目は、合理的配慮の提供のための仕組みと実効性担保についてです。マル1は、「実効性担保と企業での仕組み」で、ここでの論点は、障害者の請求権をどうするか、合理的配慮を求めた障害者に対する不利益取扱いをどうするか、企業での相談体制の具体的仕組みをどうするか、これらについての議論です。これまでの議論を紹介します。まず、請求権の関係です。研究会報告の中では、請求権については賛否両論ありまして、請求権として私法上の効果を持たせるべきである、請求権とした場合にはどういう配慮が必要かを障害者側で特定する必要があるため慎重に考えるべきであるなどの御意見がありました。また、合理的配慮を求めたことにより不利益な取扱いを受けることがないようにすべきだという御意見もいただいています。
 次に、相談体制についてのこれまでの議論です。分科会の中間的な取りまとめの中では、当事者間の話合いや第三者が入ってのアドバイスの中で、必要なものを個別に考えることが適切であるといった御意見をいただいています。研究会報告の中でも同様に、企業内に当事者同士が話合うことのできる相談窓口などの体制整備をすべきだということ、さらに、事業主には相談に応じることも義務付けられるべきだという御意見もありました。それから、企業内での相談に当たりましては、企業内に専門家を配置する、企業規模等に応じて外部の専門家を活用する、ハローワーク等の公的な機関による適切な助言・指導が受けられるような仕組みとすべきである、また企業内での管理者や担当者に対する研修などによって障害への理解を促す仕組みを整備する、ハローワーク等の公的機関の職員の専門性の向上に努めるべきであるなどの御意見をいただいています。内閣府の差別禁止部会での意見としては、雇用の場における合理的配慮が迅速に実現するためには事業所の内部に実現に向けた仕組みが用意されて置くことが望ましいとされています。
 具体的な論点です。まず、請求権の問題については2つの論点があります。1つは、例えば、ある目的を果すための合理的配慮の方法としてAとBの2つの手段があるとして、障害者がAの合理的配慮を求めた場合に、事業主がAの合理的配慮を提供する義務を負うべきものと考えるかどうかという論点。もう1つは、合理的配慮というのは、障害者が具体的な中身を求めて初めて事業主に提供義務が生ずるものだと考えるべきかどうかという論点です。これらの論点で御議論いただきたいと思っています。
 1つ目の○にありますように、中間的な取りまとめの中でも、合理的配慮の内容は当事者間の話合いの中で必要なものを個別に考えていくことが適切であるとされています。先ほどの1つ目の論点になりますが、障害者又は使用者のどちらかが一方的に予め提供すべき合理的配慮の内容を定めることは適当ではなく、当事者間の相互理解のもとで提供されることが望ましい。また、具体的にどういう配慮が必要かということを、障害者御本人が意思表示できない場合には合理的配慮が提供されなくなることがあることも踏まえて、請求権の問題について御議論いただければと思います。
 それから、障害者が合理的配慮について相談したことにより不利益な取扱いを受けないようにすべきではないかということについても御議論いただきたいと思います。
 5ページは、企業の相談体制です。まず1つ目は、企業内での仕組みとして、企業内に相談窓口などの体制整備、企業が障害者からの相談に応じることを義務付けること、企業内での管理者や現場の担当者には研修などによって障害特性の十分な理解を促す仕組みとすることが必要ではないかということです。また、企業外での支援体制としましては、ジョブコーチなどの外部の専門家の活用、ハローワーク等の公的機関の適切な助言・指導が受けられるような仕組みとすること、こうしたことができるような体制整備や専門性の向上に努めること、これらが必要ではないかということについて御議論いただきたいと思います。
 6ページは、事業主の負担に対する助成の在り方についてです。ここでは、事業主への合理的配慮の負担に対する助成の在り方をどうするかという問題、現行の納付金制度の活用についてなど、御議論いただきたいと思います。
 これまでの議論を紹介します。まず、分科会の中間的な取りまとめの中では、何らかの助成の在り方を検討すべきではないかという御意見をいただいています。研究会の報告書では、具体的な助成の在り方を考えるに当たり、2つ目の○にあるとおり、現行の障害者雇用納付金制度の中の事業主間の経済負担の調整の一環として、合理的配慮に係る経済的な負担を支援することは可能であり、その仕組みを活用することが考えられるとされています。7ページですが、現行の納付金の大枠は変えない範囲で、合理的配慮の導入に伴い、対応可能な部分について見直しを図るべきであるということです。
 7ページの真ん中は、具体的な論点です。合理的配慮の提供は事業主に義務付けられるものですが、企業規模や財政状況等によっては合理的配慮が十分に提供されない可能性については、どう考えるか、現行では障害者雇用率に連動する形での障害者雇用納付金制度がありますが、そうした事業主間の経済負担の調整の一環として、合理的配慮にかかる経済的な負担を支援することは可能であり、こうした仕組みを活用することが考えられるのではないかということを御議論いただきたいと思っています。
 残された論点の最後は、「過度の負担」の議論です。ここでは、過度の負担か否かの判断基準をどうするか、公的な助成と過度の負担かどうかの判断との関係をどう考えるか、これらの御議論になります。これまでの議論です。まず、分科会の中間的な取りまとめでは、使用者側委員からは、仮に指針で判断基準を記載するとしても、これはあくまでも1つの参考情報としての位置付けで、今後基準に対応した事例の集積を待つことが適切であるだという御意見。また、過度の負担か否かの判断要素として、企業規模、企業が置かれている財政状況、経営環境全般が考慮されるべきであるとの御意見がありました。また、障害者や労働者代表からは、企業が提供可能な合理的配慮の限界や、過度の負担に該当するかどうかについては、使用者がまず説明すべきではないか、公的な助成を考慮した上で過度の負担か否かを判断すべきではないか、などの御意見をいただいています。研究会報告の中では、過度の負担の判断基準について、企業規模、業種、従業員などに加えて、企業の置かれている経営状況や合理的配慮に対する経済的な支援を考慮すべきだということをいただいています。
 内閣府の差別禁止部会では、過度の負担であるかどうかの判断に当たっては、諸外国における立法例・運用例を踏まえる、経済的・財政的なコスト面のほかに、業務遂行に及ぼす影響を考慮する必要があるとした上で、経済的・財政的なコスト面では事業主の性格、業務の内容、公共性、不特定性等が考慮されるべきだということ。また業務の遂行に及ぼす影響の面では、業務に著しい支障が生じるかどうかなどが判断されなければならないとされています。過度の負担の立証の問題については、措置を求められた者に立証責任を負わせるなど、立証責任の配分の在り方に配慮する必要があるとされています。
 9ページは、それらを踏まえた具体的な論点です。まず、過度の負担を判断するに当たっては、企業規模、企業の置かれている財政状況、経営環境、合理的配慮に対する経済的な支援等を考慮すべきであり、これらの項目を類型化した指針を基に判断すべきではないか、また、過度の負担に当たるかどうかは合理的配慮の提供が事業主への義務付けであることも踏まえて使用者側に説明責任があるということでよいかどうか、これらについて御議論いただきたいと思います。また、過度の負担についての指針を定めるとしていますが、その際には、労働者、使用者、障害者、公益委員の参画の下で検討を行うとすべきではないかについても御議論いただきたいと思います。
 次に、参考資料です。本日お配りした参考資料2〜4の3枚が、この議論に関する参考資料です。まず、参考資料2です。これも内閣府の委託調査で、その中で、障害者が配慮や工夫をして欲しいとして挙げているものを、先ほどの論点の中で示した枠組みに当てはめて整理したものです。
 参考資料3は、現行の障害者雇用納付金制度の概要です。
 参考資料4は、最後に説明しました「過度の負担」の判断要素の関係で、これまでの分科会の中間取りまとめ、研究会報告、差別禁止部会の意見で、判断要素として言及があったものや、諸外国でもアメリカのADA法での例をまとめたものです。これらの資料も参考にしていただきながら御議論いただきたいと思っています。説明は以上です。
○今野分科会長
 まず、平野委員から、今お聞きになって、改めての御意見をいただけますか。
○平野氏(萩原委員代理)
 先ほどお話させていただいた合理的配慮については、中間的な取りまとめにもありますように、障害者の方によっても多種多様であり、どこまでが必要となるのかは、仕事にもよりますし、人にもよって違ってくることを踏まえた対応が求められると思います。それから、企業体力も含めて考えるべきことだろうと思っています。
○今野分科会長
 先ほど杉山委員が、言いたいとおっしゃっておられたので、どうぞ。
○杉山委員
 4ページの、請求権・不利益取扱いの禁止の項について意見を述べておきたいと思います。まず、ここにある請求権の考え方です。資料にもありますし、研究会でも議論されてきたとおり、合理的配慮そのものは個別性、多様性が非常に高い。合理的配慮の中身を決めるのには、それは請求して回答するというものではなくて、第三者、支援者を含めた相談の中で、何ができるかという合意を高めて実現していくのが望ましいのではないかという話もしました。したがって、そういう考え方からすると、いわゆる請求権という形が馴染むのかどうかについては、整理ができているわけではありません。ただ今回、合理的配慮が事業主に義務付けられますので、事業主を含めた相談体制の中で、今後策定する合理的配慮に関する指針等も参考にしながら、これぐらいは求めていこうとなったときに、事業主側から一方的に「それはできない」と言われた場合にどうするのか。そうなればもう今度は調停するなど、外に出て行かなければいけなくなると思うのです。あとは司法の場で解決しなければいけない。その際の根拠となる請求権はやはり担保しておく必要があるのではないかと思っています。
 それから、この論点の中で、障害者本人が意思表示や請求をできないケースが書かれています。そこは先ほどの相談体制を活用することで対応できるのではないかと思っています。是非、そのような受止めをしていただきたいと思います。
 最後に、先ほども申し上げました不利益な取扱いの禁止、これは是非入れて欲しいと思っています。相談体制を敷くという前提で話をしていますが、それ以外の方も含めて、合理的配慮を正当に求めて、どのような合理的配慮になるか分かりませんが、求めたことによってさまざまな不利益な行為を受けるということは明確に禁止する規定を載せるべきだと考えています。
○今野分科会長
 今、2つおっしゃいましたが、前半についてお聞きしたいことがあります。結局、例えば調停や司法的な手続に持っていけるような請求権はきちんと担保しておけということですか。
○杉山委員
 そうです。
○今野分科会長
 そんなこと書かなくても持っていけるのではないですか。そう思うのでが。
○竹下委員
 私も結論は杉山委員とほぼ同じ意見です。請求権というと強い法的効果を持つものというイメージが強いからそこに抵抗があるかもしれませんが、そうだけではないと思います。結論から先に言えば、現に労働者が求めることができるという規定がないと、例えば不服申立てはそこから発生しないのです。もともと求めることができる地位又は権利がないのに、不服申立てという次の段階は法的にはイメージできないのではないかと思うのです。
 もう1つの問題は、事務局から出ている論点の考え方の、例えば請求のところで、労働者がAという配慮を求めて事業主がBという配慮内容を考えたときに、請求権を想定した場合には、労働者がAを求めたことに拘束されるのかという問題を提起しましたが、これは極めて重要です。例えば、視覚障害者の例で言うと、「あなたには音声のパソコンを与えたから、もうそれで職場介助者は要らないでしょう」と言われたとします。そうすると、その労働者としては、自分の求めている配慮はそこでは否定されて、使い勝手が良いか悪いかも含めて、自分の労働能力を発揮するには不適切であるというものが、残念ながらそこでは土壌に乗らないということになってしまいます。そのことは労働以外でも現に問題になっています。裁判例で言いますと、岐阜県の中津川で、音声障害者が議会で発言しようとしたときに、自分が書いたペーパーを自分のアシスタントに朗読させようとしたら、「それは駄目だ」と。その代り、「あなたがパソコンで打ったものを音声で発語させなさい」と限定されてしまう。要するに、本人が望んだ表現手段、あるいは本人が望んだ労働能力を発揮するための配慮が土壌に乗らないということは良くないのではないかと思うのです。
 それから、もう1つここで大事なのは、確かに本来ならば、話合いが全ての前提だと思います。事業主側や、ときには公益委員を入れたり、労働組合の人たちも入れたり、そういう関係者の話合いによる解決が大事だということは誰も否定する人はいないと思います。そうは言ってみても、現実に、1人の労働者が自分の職場における配慮を求めるときに、そのことを外部に持ち出せない。どなたでも、そこまでは言っていないと言うと思うのですが、外部に持ち出すかどうかも重要ですし、その本人が私法に結び付く可能性を持っているかどうかによって、本人の要求したい、実現したい内容の本人の意識と言いますか、極端に言えば、諦めてしまうかどうかの判断に関わるということが重要ではないかと思います。
○岩村委員
 連合の杉山委員のおっしゃったことと竹下委員のおっしゃったことの中で、まず、とにかく事業主と当該の障害者及び支援する第三者との間で、当該事情に応じた合理的配慮の中身について相談して決めるということが重要だということ、これはもう私も全くそのとおりだと思っています。多分ここはもうコンセンサスの得られる場所だと思います。ですので、具体的な制度設計に当たっては、事業主の合理的配慮をする義務を明定化しつつ、そのようなプロセスが事前にくるという仕掛けにうまく制度を作ることが、まず大事なのだろうと思います。
 杉山委員と竹下委員がおっしゃったのは、実はそのもう1つ先の話です。話合いのステップをしたけれどもうまくいかなかったときに、最終的に事業主が一方的に決めることに対して、障害者の方が、「いや、それでは困る」「自分が求めているのとは違う」という話になって、そのいわば当事者間の紛争をどう解決するかという、もう1つまた別の話になります。
 この場合のポイントはまず第1に、紛争解決の機関として何を使うかも関係しますが裁判所は横に置いておいて、いずれにしろ紛争になったときには、障害者の側で紛争処理機関に対して申立の道があるということを制度上に仕組んでおけばそれでいい。とりわけ、このレベルになれば、若干議論があった請求権云々はあまり問題にならないだろうと思います。最初からそのように制度を作っておけばよいということだと思います。最後のギリギリになってそれでも決着がつかないとなると、最後は司法判断を仰がざるを得ないとなったときにどうするのかということが、多分、竹下委員がおっしゃった議論ではないかと思います。これはいくつか構成が考えられるので、あまり法律の議論をするのもどうかと思いますが、請求権という構成をどこかで作っておくことも1つの手です。もう1つは、使用者側に合理的配慮の義務付けがあるので、特定の合理的配慮、自分がして欲しいと思う合理的配慮を受けることのできる地位の確認などの形で裁判所に持っていくようなこともやり方ではないかと思います。これは非常に専門テクニックの話になるのでこれ以上深入りしませんが、そういう考え方もあるだろうという気がしています。
 恐らく、今お話した第1フェーズと第2フェーズのところは皆さんのコンセンサスは取れるのではないかと思います。
○今野分科会長
 いかがでしょうか。
○栗原委員
 ただ今の岩村先生の言われたことは非常に分かりやすい内容だと思っています。障害者の職場における合理的配慮の提供は、基本的には障害者の雇用が進み、安心して働けるようにするということが根底にあるのではないかとは思うのです。この中で、請求権云々という、きつい言葉と言っていいかどうか分かりませんが、言葉が入りますと、今は中小企業は障害者の雇用が進んでいないと言われています。新たにこれからどんどん進めなければいけない中であまりきつい言葉が出ると、入口を閉ざすのではないかと、私はそういう危惧をしています。
○川崎委員
 家族会の川崎です。合理的配慮の提供のための仕組みについてです。精神疾患、知的の人とか発達障害とかメンタル系の人にとりましては、人的支援ということを私は前から申し上げています。その仕組みづくりとしても、相談の体制づくりが、先ほどの私法に繋がるというような大きなことでなくても、日常的に毎日のちょっとしたことで、例えば精神の人が次の日に行かれなくなるとか、そういうときの相談支援体制と言いますか、相談にしっかりと本人に寄り添うような仕組み作りが必要だと思っています。精神障害者の雇用義務化の方向性が出ていて職場に定着できるかどうかも、やはりこういう支援体制があるかないかで大きく変わってくると思いますので、相談支援体制の充実を願いたいのです。企業内における相談支援体制として、私が知っている企業では、雇用現場の担当者がしっかり理解しなくてはいけないということで、自分で勉強して社会福祉士や精神保健福祉士の資格を取って障害者に対応しているという話を聞いています。全ての企業がそのようにできるとは思っていませんので、やはり企業外の支援体制、私は前から地域での就労支援体制の充実を言っていますが、本人が住んでいる地域で本人に寄り添うような就労支援体制があって、就労してから定着の支援をするに当たっては本人と企業のパイプになるような、ちょっとしたことでもそこで解決できるような仕組み作りが必要だと思っています。ハローワークやナカポツセンターでは今は対応できていないと思います。是非とももっともっと細かな、地域での就労支援体制作りを仕組みとして作っていただきたいと思っています。
○今野分科会長
 ほかに、いかがでしょうか。
○北原委員
 障害者制度改革が進んでいますが、その中で今いちばん我々が関心を持っているのは、私は育成会なのですが、特に知的や発達障害の皆さん方に対する意思決定支援なのです。これは制度改革の中の障害者基本法や今回できた総合支援法の中で、意思決定支援がクローズアップされてきたのです。最初は、きちんと相談に乗ってやりなさい、相談体制を強化しなさいということから、総合支援法の中では、障害福祉サービスを提供している現場の事業者にも、障害のある人たちに対する意思決定の支援に努めなさいと変わって、現場がだんだんと高まっているわけです。働く場における合理的な配慮についても相談支援体制をどう構築していくかはこれからなのでしょうけれども、やはり第三者的な相談支援体制だけではなくて、先ほどのように、社会福祉事業者の中では職場で意思決定を一緒にやっていこうという研修などは始まっているのです。職場で知的障害・発達障害の皆さん方の意思決定を支援していただく仕組み作りが、だんだん合理的な配慮に繋がっていくのではないかと思っています。これは偏に、川崎委員からもお話がありましたように、しっかり現場で人材、マンパワーを育成することが非常に大事ではないか。単に第三者的な相談機関で相談を受けるだけでは、働く場でなかなか意思の疎通は難しいのではないかと思います。現に私たちも、知的障害のある人たちが多く働いている現場を知っていますが、働く従業員と使用者側との意思疎通、あるいは意思決定に対する支援の体制が整えば、もう少し充実した職場での生活を送れるし、社会にも繋がっていくという印象を持っています。
 請求権とかいろいろとありますが、合理的配慮の対象をどこまでにするのか、その範囲や深さなど諸々が関わってきますので、これから、合理的配慮の対象として意思決定支援の在り方について検討していただきたいと思います。
○今野分科会長
 私の勉強不足で申し訳ありませんが、職場における意思決定支援というのは、具体的にはどういうことが想定されるのですか。
○北原委員
 例えば、知的障害の特性としては、自分では判断能力がないとは言いませんが、乏しい人もいるし、まあまあの人もいるし、いろいろな方がいらっしゃるわけで、働き手としてはさまざまな人がいらっしゃるわけです。その障害特性として、判断する力が欠けている人が多いので、言われたことにすぐ「イエス」と、ほとんど全部言ってしまうのです。「自分はこう思います」「こういう意見を持っているのです」と、持っているのですけれども、なかなかそれを表出できないというところがあります。現実的には、福祉の現場でもそういうことを言えなくて、現実としては、職員が意思決定の代行決定をしている。家族でも、親が本人の意思の代行決定をしているということがあるのです。それは職場で働いている障害者の皆さん方からも見て取れます。いろいろなものを労使間で話し合うにしても、知的障害のある人の意思決定を支えるという配慮、それから仕組みもこれから必要になってくるのではないかと思っています。
○今野分科会長
 ほかに、いかがでしょうか。
○斗内委員
 労働側の斗内です。今までの議論の流れを聞いていまして、労働側としましては、相談体制によって解決できればよいのですが、そうでなければ、先ほど岩村先生がおっしゃったような解決する仕組みが非常に大事だろうと思っています。その中で、冒頭で平野さんからありましたが、過度の負担について少し触れたいと思います。資料の9ページの四角で説明されているとおりですが、基本的に、いろいろな合理的配慮をしていかなくてはならないことは理解していただいた上で、どうしてもそれは過度だということがあるとすれば、それは何らかの類型化をするという方向で、労働側として異論はないと言えると思います。ただし、先ほどから議論になっていますように、合理的配慮の義務付けを一部免除することになりますので、そういう意味で、どうしてこのことができないのか、合理的配慮が過度な負担なのかという説明責任はやはり事業主側にあるべきだということを意見として付していただきたいと思います。
○竹下委員
 まず、先ほど杉山委員がおっしゃった、合理的配慮を求めたことによって不利益取扱いを受けないというのは、私は是非必要だと思っているのです。その理由は2つあります。1つは、先ほど栗原委員もおっしゃいましたが、請求権と言ったら中小企業の方は余計二の足を踏むということ。そのことは私は感覚として分かります。それをもっと押し進めると、障害者が職場で合理的配慮を求めること自体、二の足を踏みかねないのです。要するに、自分がこういうことをして欲しいと要求したために嫌われてクビになるのではないか、そう思うと自分の要求を出せなくなるのです。そう思うと、やはり不利益取扱いは受けない、事業主に義務があるということが大前提であっても、そういう不利益を受けないことの明文化は、障害者が自分の働きやすさを声に出せる大きなバックボーンになるということが1点目です。
 もう1点です。高橋委員がおっしゃったように、労働契約法16条はよく指摘されるとおりで大事だと思います。そのとおりなのですが、不利益取扱いをしてはならないという明文があるとないとでは、16条の権利濫用の判断においても大きなファクターとしての違いが出ることは重要だと私は思っています。その点からも、是非こういう規定はお願いしたい。
 それから、過度の負担のところで少し気になることは、過度の負担を考えるときに、助成金による事業主間の平等実現、あるいは負担軽減についてです。助成金制度によって過度の負担となる場合を防ぐということは分かるのですが、それだけでいいのかと強く思うのです。そうではなくて、公的支援も含めて考えないと、中小企業を含めて合理的配慮を実現するには大きな壁があると思うのです。例えば合理的配慮を実行することによって減税措置を受けられるとか、そうした公的支援も併せて考えることが必要ではないかと思っています。
○松爲委員
 先ほど岩村委員がおっしゃった、フェーズ1、フェーズ2は大事だと思うのです。フェーズ1というのは、事業所内で企業の人たちが実際に面を突き合わせてやっていく話です。そういうことがどうしても解決しないときは、フェーズ2としての、企業外の支援体制をどう作るかです。問題は、そこが今はどういう格好になっているのか。紛争解決云々とは違って、専門家の人たちあるいは支援する人たちが実際に入ってできるような体制をどうやって作るかを、きちんと制度の中で設計しておいてもらいたいと思います。第一義的には確かに企業の人たちが一緒に話すのがよいのですけれども、企業内当事者同士とは違って、専門家が、障害を持った立場から議論する。しかも、事業所と当事者と両方からいつでも相談を受けられるような、そういった受入れの窓口が作られるようなシステムが是非とも欲しいと思っています。
○栗原委員
 先ほど、北原さん、竹下さんからお話を伺いました。今は障害者を雇用している企業さんには職場指導員というのがいるはずなのです。専任か兼任か企業によって違うと思いますが、その方に相談すればある程度できるという制度があるはずなのです。大体の企業さんで、雇用しているところはいらっしゃるはずなのです。そこで声を出せるとか、相談するとか、私はこういうことをやりたいとか、こういう悩みがあるとか、そういうことは皆さん相談員にお話していただければ。また相談員が、この人は何か悩んでいると思えば話を聞いてくれるとか、それが生活面かもしれませんが、いろいろな面で相談を受ける制度があります。ですから声が通らないということは、まずないのではないかと私は思うのですが、いかがでしょうか。
○今野分科会長
 皆さんが合意されているのは、先ほどの岩村さんの言葉でいうと、フェーズ1で相談体制はきちんとしましょう、そのためのいろいろな仕掛けを考えて良いものを作りましょうということで、栗原委員が言われたのもそういう趣旨だと思います。その辺は合意ができているのだろうと思うのです。あとは、具体的にどういう仕掛けかという話になります。そこがいちばん重要で、請求権については、全体的には少し消極的な意見が多かったと思いますが、請求権の問題も含めて、フェーズ1で本当に相談できるような仕掛けを作っていきましょうということが、ここで合意できればよいのではないかと私は思っています。その辺についてはあまり御異論はないだろうと思います。あとは、個別の制度を設計するときには良いアイディアがあったほうがよいので、いろいろな御意見をいただければ制度設計のときに参考になると思います。
○桑原委員
 合理的配慮の枠組みについて質問させていただきたいと思います。合理的配慮の枠組みの中の論点として、資料3の2ページに、中間取りまとめにあった3つの切り口でどうかということがありました。3つというのは、施設・設備の支援、人的支援、職場マネジメント及び医療です。1ページの(1)の(3)「合理的配慮の内容」には、募集・採用の機会を入れることに対しては異論がなかったということ、公益委員から教育訓練についても対象とするべきではないかという意見があったとあります。先ほどのものは枠組みで今言ったのは内容なので、少し切り口は違いますが、質問としては、先ほどの枠組みの中にこれらの内容も入るのかということです。先ほどの枠組みは、どう見ても就業中、要するに、就職して実際に働くときの切り口に見えます。採用について言えば、例えば採用試験の出題や回答方法に配慮するというようなことを、3つの切り口に無理矢理入れることもできるかもしれませんが、少し違う切り口なのではないかと感じたのです。募集・採用の機会における合理的配慮の提供も3つの枠組みに入るのかという質問と、その辺りに対する御意見を伺いたいということです。
○障害者雇用対策課長補佐(安達)
 まさにそうした観点で、前回の中間取りまとめの際に、募集・採用をどう取り扱うのかという話がありました。今おっしゃったような、募集・採用の試験における配慮なども含めて合理的配慮の中に入れてもいいのではないかということで、中間取りまとめにおける分科会では異論がなかったことが指摘されています。それを踏まえて、この場では入れるかどうかの御判断をいただくのだと思っています。
○桑原委員
 それであれば、我々労働側としては、募集・採用についても合理的配慮の枠組みに入れるべきだと思っていますので、よろしくお願いいたします。
○今野分科会長
 何かこれは、理論的なというか、整理の仕方としては、何に対して何を通して支援するかということだと思います。採用や配置などは、何に対してですね。何を通して支援するかというのが、先ほどの3つのコミュニケーションなどです。それが実際では組合せと考えられているのですね。ですから、まあまあ良い線いっているのではないかと思っています。もちろん、それ以外に良いアイディアがあれば追加していくということだと思います。ほかにいかがでしょうか。
○中村委員
 枠組みの中の「医療に関する配慮」のところの確認です。障害者の方の通院のための有給、早退、遅刻などへの配慮ということなのでしょうか。医療そのものまでの提供を事業主に求めているものではないと理解してよいのか、その辺を教えてもらいたいと思います。
○今野分科会長
 そうだと私は思っていますけれども、どうぞ。
○障害者雇用対策課長補佐(安達)
 事務局です。まさに、そういうことで議論されていたと承知しています。
○中村委員
 そういうことであれば、マネジメントの問題なので、医療の配慮とは離したほうがいいのではないかと思います。意見です。
○今野分科会長
 なるほど、分かりました。そうすると、人材マネジメントでいいということですね。
○中村委員
 そのように考えますがいかがでしょうか。
○冨高委員
 「事業主負担に対する助成の在り方」について、まだ触れられていないので、意見をいくつか言わせていただきたいと思います。ここは多分同じだと思いますが、合理的配慮の提供に伴う経済的負担というのは、基本的に個々の事業主によって負担されることがベースになるのだろうと思います。ただ、そう言いながらも参考資料2で提示されているように、場合によっては施設を作りなど、費用がある程度かかるものもあることを考えると、特に今回、中小にも裾野を広げる視点での取組みだと思いますので、事業主に対しては何らかの助成の仕組みが必要だと思っています。御提示いただいている資料の論点を見ますと、納付金制度をう活用する枠組みの中で助成を行うということで、もちろんそこを否定するのではありませんが、納付金制度の枠組みを使うかどうかを考えるに当たっては、財政的に本当にそれだけで足りるのかなど、裏付けをきちんと踏まえた上で検討するべきなのではないかと思っています。基本的に今言われているのは納付金制度の枠組みを活用するということですので、一定程度の試算等が必要ではないかと考えています。その辺りをもし考えているのであればお示しいただいた上で我々も検討したほうがいいのではないかと思います。
 それから、助成するに当たっては、個別性や多様性が高い合理的配慮について、どのような場合に助成の対象とするのかの基準をある程度明確にしておくことが必要ではないかと思います。意見として述べさせていただきます。
○今野分科会長
 事務局で何か意見はありますか。
○障害者雇用対策課長
 今の御意見は恐らく合理的配慮の内容を具体的にどう設定するかということと裏腹の議論で、合理的配慮の提供についても過度の負担についても指針で具体的な議論をすることに今しているのは、それが連動しているからです。さらに、過度の負担をどう設定するかが助成をどういう形にするのかに繋がると思いますので、その3つが連動して決まるものではないかと思っています。いま現在どうかということをアプリオリに決めることはできませんが、そういう視点が大事だということは理解しています。
○平野氏(萩原委員代理)
 ただ今の課長のお答えに繋がる話なのかもしれません。これから合理的配慮の範囲とか、何が過度の負担に該当するのかを整理していくということでしょうから、説明責任が企業側にあるのかどうかということは、まだ今の段階では決められないのではないか。課長のおっしゃったとおり、指針に関する具体的な議論の中で決まってくることの1つではないかと思います。
○川崎委員
 今の医療に関する配慮は恐らく精神障害者が、かなりこれには引っ掛かってくるのではないかと思います。通院のことだけではなく、仕事をしている中で、再発まではいきませんけれども、状態が悪くなったときに、企業側として一体どうしたらいいかということが問題になるのではないかと思います。このことも支援体制の中にしっかりと組込んでいくこととして、ここには別枠で医療の配慮は載せなくてもよいのではないかと思いました。
○今野分科会長
 そろそろ時間ですので、最後に言い足りない方がいらっしゃればどうぞ。
○高橋委員
 たくさん申し上げたいことがありますが次回に回します。本日議論になった点で1点だけ指摘させていただきます。合理的な配慮を求めたこと、あるいは相談したことによる不利益取扱いの禁止という御意見がありましたが、その不利益取扱いとは一体何なのか。どういうものが不利益取扱いなのかが分からないまま禁止規定を入れることについては、理解が難しいのではないかと思っています。まずは、どういうものが不利益取扱いになるかの事例の集積をしていただくべきであり、何が何でも法定化すべきだというようなスタンスについては疑問なしとはしないということだけ申し上げたいと思います。
○今野分科会長
 よろしいですか、大丈夫そうですね。多分、本日は両論併記のトピックスも多かったのではないかと思います。これで本日は終りにさせていただきます。ありがとうございました。最後に、その他について事務局から説明してください。
○障害者雇用対策課長補佐(安達)
 次回は11月13日火曜日10〜12時、場所は19階の専用第23会議室です。開催案内は各委員の卓上に既に配付しています。議題は、「障害者権利条約への対応の在り方」の3回目として、本日の議論の整理、権利擁護等を予定しています。
○今野分科会長
 議事録の署名は、労働者代表は斗内委員、使用者代表は中村委員、障害者代表は北原委員にお願いいたします。それでは、終りにいたします。ありがとうございました。


(了)

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