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2012年10月31日 第7回感染症分科会予防接種部会日本脳炎に関する小委員会 議事録

○日時

平成24年10月31日(水)10:00~12:00


○場所

厚生労働省省議室(合同庁舎5号館9階)


○議事

○飯野室長補佐 それでは、定刻より少し早いのですが、これにより第7回「厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会 日本脳炎に関する小委員会」を開会いたします。
 本日は御多用のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。
 本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては、御理解と御協力をお願いいたします。
 また、傍聴の方は傍聴に関しての留意事項の遵守をお願いいたします。
 それでは、開会にあたりまして、糸川厚生労働大臣政務官より御挨拶申し上げます。
○糸川厚生労働大臣政務官 おはようございます。このたび厚生労働大臣政務官を拝命いたしました、糸川正晃でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
今日は、御出席の委員の皆様、参考人の皆様方におかれましては、大変御多忙の中、本小委員会に御出席を賜りましたことを心から感謝申し上げます。ありがとうございます。
また、平素より感染症、そして予防接種対策に御理解、御尽力をいただいておりますことを重ねて御礼申し上げます。どうもありがとうございます。
今般、2件の予防接種後の死亡事例の検証と平成21年度から新しいワクチン接種後に関する副反応情報ということで、この副反応情報の抗体保有の状況等のデータ、こういうものの集積を踏まえまして、委員、参考人の皆様方から専門的、科学的な見地から広く予防接種の在り方につきまして、御意見、御議論をいただければと思います。
また、昨日大臣から御公表申し上げましたけれども、当面の対策といたしまして日本脳炎のワクチンにつきましては、死亡や重篤事例の報告があった場合、メーカーを通じて速やかに調査を実施する。そして、調査結果については、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の協力も得て、これまで年1回でありました公開の場での専門家による評価、検討を年3回程度、定期的に実施することといたします。日本脳炎の予防接種で重篤な副反応が生じた場合、迅速な対応を図ってまいりたいと思っております。
予防接種は国民の関心も非常に高く、公衆衛生上も大変重要な施策でございます。厚生労働省といたしましても、予防接種の安全性、有効性に関する十分な検証や適切な情報提供を通じて、より安心で安全な予防接種が実施されるよう真摯に取り組んでまいります。どうぞ引き続き、皆様方の御理解、御協力をお願いします。
私の挨拶と代えさせていただきます。本日はよろしくお願い申し上げます。
○飯野室長補佐 糸川政務官におかれましては、公務の都合上、退席させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。
(糸川厚生労働大臣政務官退室)
○飯野室長補佐それでは、前回の開催以降、委員の交代がありましたので紹介させていただきます。
 保坂委員が退任され、新たに社団法人日本医師会常任理事の小森委員が就任されています。
 次に、本日の委員の御出席の状況について報告させていただきます。岩本委員、宮崎委員からは欠席の御連絡をいただいております。
 また、本日は独立行政法人国立成育医療研究センター器官病態系内科医長の賀籐先生、国立感染症研究所副所長の倉根先生、国立感染症研究所感染症情報センター第三室長の多屋先生、大田区保健所長の永井先生の4名の方に参考人として出席していただいております。
 それでは、これ以降は議事に入りますので、冒頭のカメラ撮りはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

○飯野室長補佐 それでは、以後の進行につきまして、委員長の加藤先生にお願いしたいと思います。
○加藤委員長 おはようございます。では、早速本日の議事を進めさせていただきます。
まず、事務局から審議参加に関します遵守事項につきまして、御報告をお願いいたします。
○飯野室長補佐 日本脳炎に関する小委員会の審議参加に関し、予防接種部会における審議への参加についてに基づき対応いただきますことを御了承願います。
 本日の議題1「日本脳炎の予防接種死亡事例について」に関して、日本脳炎ワクチンの製造販売業者である一般財団法人阪大微生物病研究会、一般財団法人化学及血清療法研究所、武田薬品工業株式会社、田辺三菱製薬株式会社、アステラス製薬株式会社からの過去3年度における寄附金等の受けとり状況及び申請資料作成への関与について申告いただきました。
 本日出席された委員、参考人の方々の申し出の状況から、今回の審議への不参加の委員、参考人はおりません。
○加藤委員長 ありがとうございました。
ただいま事務局から説明がありましたが、審議参加の件についてはよろしゅうございますか。
ありがとうございます。特にないようでございますので、議事を進行させていただきます。
 引き続き、事務局より本日の資料の確認をお願いいたします。
○飯野室長補佐 それでは、資料の確認をいたします。
 議事次第がありまして、座席表、委員名簿。
資料1-1「日本脳炎の予防接種死亡例について」
資料1-2「日本脳炎の予防接種死亡例について(委員限り)」
資料2「日本脳炎の予防接種に関する現状について」
資料3「わが国の日本脳炎に関する疫学情報」
資料4「日本脳炎に関する諸外国の状況」
資料5「積極的勧奨の差し控えに対する対応について」
資料6「厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会日本脳炎に関する小委員会の設置について」
参考資料1「日本脳炎に関する小委員会中間報告」
参考資料2「日本脳炎に関する小委員会第2次中間報告」
参考資料3「日本脳炎に関する小委員会第3次報告」
参考資料4「日本脳炎に関する小委員会第4次報告」
参考資料5「予防接種法施行令(抜粋)」
参考資料6「添付文書(乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン)」
不足や落丁等がございましたら、事務局までお知らせください。
○加藤委員長 ありがとうございました。
 事務的な案件ですけれども、資料6について事務局から御説明いただけますか。
○難波江課長補佐 お手元の資料6をごらんください。
 本委員会の設置規定でございますけれども、他の部会や小委員の設置規定とあわせまして、今回このように改正させていただければと思います。
○加藤委員長 アンダーラインのところが変更ということでよろしゅうございますか。
 各委員の方々、よろしゅうございますか。
特に異議がないようですのでよろしくお願いいたします。
○岡部委員 議事が始まる前にお尋ねしたかったのですけれども、政務官が年1回の予防接種副反応に関する委員会を公開で行われていたとおっしゃっていましたけれど、これは公開でしたか。
○飯野室長補佐 公開で、昨年は感染症研究所の会議室でやらせていただきました。
○岡部委員 わかりました。それから、もう一点です。予防接種の死亡例とおっしゃっていたけれども、その判断はここでこれからやるので、予防接種後に起きた死亡例の検討だと思いますのでよろしくお願いいたします。
○加藤委員長 ありがとうございます。事務方のほう、よろしいですね。
 それでは先に進めましょう。
 議題1「日本脳炎の予防接種死亡事例について」、事務局及び多屋参考人、倉根参考人より資料1~4をもとにそれぞれ御説明をお願いいたします。
 資料1につきまして、専門官よりお願いいたします。
○城予防接種専門官 それでは、私のほうから今回、日本脳炎の予防接種後に死亡された2例について、御説明させていただきます。委員の先生方におかれましては、資料1-2は委員限りになりますけれども、こちらの資料のほうも同時に目を通しながら聞いていただければと思います。
 それでは、まず症例1です。
症例1の患者様ですが、5歳以上10歳未満の小児。今年の夏、平成24年7月に日本脳炎ワクチンを接種されております。医療記録によりますと、接種前の体温は36.7℃。予防接種翌日に、鼻水・咳・体熱感などの感冒症状があったということです。
接種2日後の夜ですけれども、38.9℃の発熱を認めたため解熱剤を使用したということなのですけれども、その後もお熱のほうが続いていたということでした。23時55分、硬直性のけいれんを認めたため病院のほうを受診されております。1時30分、抗けいれん剤等の使用にてけいれんが止まったということだったのですけれども、朝の7時13分、硬直性のけいれんを繰り返すようになったということと、酸素濃度サチュレーションのほうが低下したということもあり、気管内挿管されております。12時にけいれんが継続して重積状態であるということで転院が決定しております。
転院先の病院にて、CT・MRI・髄液検査等行い、急性脳症と診断されております。
まず、髄液のほうなのですけれども、髄液検査は細胞数が4、タンパクが23、糖が46。頭部CTのほうでは出血がなかったということと、頭部MRIでは、左前頭葉、頭頂葉、後頭葉及び右頭頂葉の皮質下白質から皮質にかけてのDWIでの高信号、ADCmapで低信号を認めたということでした。
入院の時点での血液検査のほうですけれども、白血球数1,700、AST834、ALT353、LDH2,288、CRP6.38、凝固脳の異常等が認められており、転院時の時点でDICが認められております。
こちらの患者様なのですけれども、DICの進行と多臓器不全に至ったということもあり、再度転院が決定しております。2度目の転院先の病院にて、呼吸器感染症に伴う急性脳症と診断し、これらに対して人工呼吸管理、血漿交換、CHDF、ステロイドパルス、水分管理による治療を開始しているのですが、接種5日後に瞳孔拡大、対光反射消失、自発呼吸消失し、脳浮腫・脳ヘルニアの進行が考えられました。接種7日後ですが、血圧低下と不整脈を認め、死亡に至っております。
最終的な管理先の病院の主治医によりますと、死因は急性脳症と考えられ、剖検のほうは行われておりません。接種前のお子様の状況なのですけれども(3)にありますように、早産、超低出生体重児、帝王切開にて出生されており、出生時の仮死や呼吸不全のため約2カ月間の人工呼吸管理を行っております。甲状腺機能低下に対して内服治療、発育遅延に対してリハビリを続けていらっしゃったということです。
また、1歳発症のてんかんをお持ちであり、こちらに対しても抗てんかん薬のほうを内服されております。
最終的な搬送先の主治医の意見になるのですけれども、ワクチンとの因果関係についてですが、ウイルス感染を契機に発症した急性脳症と考える。日本脳炎ワクチンと急性脳症との因果関係は不明。ワクチンの関与を積極的に否定する根拠もないことから、因果関係は不明としましたという御発言をいただいております。
こちらの資料をもとに、専門家の先生方に御意見を伺ったので、こちらのほうも説明させていただきます。
まず、A先生です。ワクチン接種と死亡との間に前後関係はあるがワクチン接種が明らかな原因となるだけのはっきりとした因果関係は認められない。主治医は患児の直接的な死因は急性脳症であるとしていることから、ワクチン接種翌日に発症したウイルス感染症が急性脳症の原因となったことも考えられるとおっしゃっております。
B先生です。診断として急性脳症の可能性はあるが確定には至らない。急性脳症であるとした場合、ワクチン接種後2日目の発症は、日本脳炎ワクチンに発症原因を求めるのであれば、時間的に発症まで早過ぎるように思うが、否定を確定するものではない。
現在の資料だけで判断するのであれば、急性脳症の疑い、日本脳炎との因果関係は不明。
因果関係を積極的に否定する確証はない、資料不足であるとおっしゃっています。
続きまして、C先生です。接種翌日の上気道感染の原因となったウイルスによる急性脳症が死因と判断される。しかし、ワクチン接種翌日から始まった症状であり、普段なら上気道炎で終息するところが、ワクチン接種により何らかの免疫応答の異常をきたし急性脳症を引き起こした可能性を完全に否定することはできない。日本脳炎ワクチン接種と死亡との因果関係を否定することは困難とおっしゃっております。
D先生です。基礎疾患にかなり重篤な脳神経障害があり、何らかの感染、CRPの上昇ありでけいれんが多発した。けいれんではDICや多臓器不全は起こらないので、やはり感染のためと考えるのが妥当で、ワクチンとの因果関係はないと判断するとおっしゃっております。
E先生です。病歴経過と髄液検査所見からワクチン接種後のADEMは否定的、ワクチン接種後の脳炎、つまり髄膜炎合併がないものも可能性は極めて低いと思われる。 
ワクチン接種によるADEMや脳炎は否定的であるので、1.それ以外の可能性としてワクチン接種を直接誘因とするてんかんの増悪やその他の脳症は可能性としてゼロではないが低い。2.ワクチン接種後の発熱は既知の副反応であり、発熱がてんかんを増悪させて可能性がある。ここで問題となるのは、年齢的には問題ないが、体重は極めて小さく、0.5ccのワクチン接種が多かった可能性がある。
それ以外にも、もともとの基礎疾患としてクレチン症等がありましたので、3感染症による発熱とてんかんの増悪、4.その他の感染による脳炎(髄膜症状なしの)による発熱てんかんなどが考えられる。
ワクチンの副反応によって今回の事象が出たかどうかを判断することは容易ではないと結論づけられております。
F先生です。ウイルス感染を契機として発症した急性脳症の可能性があるとしても、一般的に認められるワクチン接種による急性脳症との臨床症状、検査所見等において明確に判別できる根拠となる所見がないのであれば、本件はワクチン接種と副反応及び死因について、因果関係を否定することはできないとおっしゃっております。
まずは症例1においては以上です。
 続きまして、症例2に移らせていただきます。症例2のお子様ですけれども、10歳以上の小児、平成24年10月に日本脳炎を接種されております。接種前の体温は36.8℃でした。
 17時15分に来院され、不安なのか、診察室から出たり入ったりしていたということです。
 17時20分に待合室のソファーにて、お母様が右側、看護師が左側に座り、腕を組むような格好でワクチンを接種されております。その後、ばんそうこうを看護師が貼り、本人は玄関のほうへ数歩歩き、座り込むようにして横になったということです。その後、数回左右に体を揺さぶりながら横になったということでした。
 接種から4~5分後ですけれども、17時25分ごろ、顔が見えない方向の横向きの状態でお母様がおかしいのではないかとお気づきになられています。その時点で顔色不良・反応なしということで、看護師のほうがドクターのほうにけいれんという形で叫んで知らせて、ドクターのほうが患者様の確認にいらっしゃって、その時点で心肺停止状態のため、心臓マッサージを開始され、救急要請をしております。
 17時36分ですけれども、救急隊が現着。モニター装着をしたところ脈がなし、嘔吐もなかったということです。全身観察にて明らかな発疹はなかったということです。こちらは救急隊からの聞き取りですけれども、ショックなアナフィラキシーぽくない。少し口唇にチアノーゼがあったということでした。
 心臓マッサージのほうを続けながら、17時55分に救急搬送されています。
 18時6分に救命センターのほうに到着しております。すぐに挿管し、この時点で血性混じりの水分が多く流出し、吸引しています。心臓マッサージを継続しながら薬事投与を繰り返しているのですが、心電図、心エコー等で心拍確認しつつ進めるも、心拍再開なく、全く心臓に動きがない。AEDはつけていたのですが、心静止の状態であったため、除細動不可であり、ひたすら胸骨圧迫を続けていたということです。約2時の心肺蘇生を行ったのですが、心拍再開は一度もなく、薬に対する反応もなかったということです。
 19時49分、死亡が確認されております。死後CTにて死に直結する明らか異常はなかったということですけれども、腹部所見において肝腫大と脂肪肝は認められておりました。救命センターのほうで異常死と判断され、警察のほうに引き渡しとなっております。
 この方の接種までの状況が(3)にあるのですが、幼児期に広汎性発達障害と診断され、平成23年に現在かかりつけの児童精神科のほうに通院を開始されております。何回か薬剤の変更を経て、平成24年6月からピモジド製剤とアリピプラゾールにて内服のほうを開始されております。これは亡くなられる一番直近の受診ですけれども、9月に前記2剤に塩酸セルトラリンのほうを追加処方し、内服薬が3剤となっておりました。
 ワクチンの接種との因果関係というわけではないですが、救命救急センター長の御意見として、搬送時の状況の御意見をいただいております。
 「普通は若い人は蘇生処置をすると1回は戻ってくる。なんで戻らなかったのか不思議。考えられないこと。バイスタンダーCPRを実施しているのでまず普通は心拍が戻ってくる。仮に5分くらい止まっていても胸骨圧迫をしていて、病院で薬を使えば必ず戻る。唯一、心筋梗塞など心臓そのものに原因がない限りであるが。本当にピクリとも動かなかった。常識的には心臓に異常がなければ起こりえない症例。アナフィラキシーショックは、心臓が悪くなる病気ではない。血管が開いて血圧が下がるものであるため、あまり原因として考えられない」とおっしゃっておりました。
 お子様が内服された処方薬3剤の説明を3番に書かせていただいております。
 (1)アリピプラゾールですが、もともと副作用に心電図異常が添付文書のほうに記載されていて、本剤における治療中原因不明の突然死が報告されているという薬剤になっております。
 (2)ピモジド製剤ですけれども、こちらはSSRIと併用禁忌の薬剤であり、(1)同様、本剤による治療中、原因不明の突然死が報告されている。心電図異常に続く突然死も報告されているので、特にQT部分の変化があれば中止することと添付文書に記載されております。
 9月に追加された(3)塩酸セルトラリン(SSRI)ですけれども、こちらはオーラップ、オーラップというのは(2)ピモジド製剤になりますが、オーラップ投与中の患者にはQT延長を引き起こすことがあるので、投与禁忌であり併用禁忌という薬剤になっております。
 こちらの情報をもとに専門家の意見をまとめさせていただいたので、説明させていただきます。
 まず、A先生です。発疹などのアナフィラキシーショックの際に出現する症状もなかったことから本児にアナフィラキシーショックが生じていた可能性は低い。また、蘇生治療に対して心臓が全く反応しなかったことは小児の突然死としてはまれであり、予防接種実施前から心臓に何らかの異常があった可能性も否定はできない。
 通常は暴れる子供を無理やり押さえつけて予防接種を行ったとしても接種された子供が10分後に心肺停止を来すことは考えられない。しかしながら、死亡した本児か内服していた薬剤3剤については、いずれもQT延長を引き起こす副作用があり、それらの薬剤の相互作用によって心停止が生じた可能性は否定できない。さらに、先天性あるいは薬剤の副作用として患児に重篤なQT延長が生じていた場合、予防接種を実施したことによる強い痛み、刺激が心停止を起こした可能性については現時点では完全には否定できない。
 処方もとの病院に行って患児において心電図検査等が行われていたかという御意見をいただいたのですが、処方医におきましては通院開始から最終受診の9月までの間、血液検査、肝機能等も含めて、心電図検査などは一切行われておりませんでした。心電図のほうですが、学校心電図が残っているのではないかということで、今、市町村を通じて心電図のほうの確認を急いでおりますが、現時点ではまだ手元にございません。
 続きまして、B先生です。急激な心停止が考えられるため、ワクチンによるアナフィラキシーは極めて考えにくいが、全面的に否定できないものではない。使用した薬剤による突然死の可能性、添付文書に記載されているように、あとは併用禁忌の使用による可能性は最も考えられる。血清が保存されており、なおかつ技術的に可能であれば、これらの薬物の血中濃度の測定を行うことは重要であろうということで、資料は不十分ではあるが、現段階では日本脳炎ワクチンの直接的影響は極めて低いと考えられるが、さらなる検討が必要であるとおっしゃっていただいております。
 続きまして、C先生です。日本脳炎ワクチン接種直後の心停止症例で、ワクチン接種との因果関係は強く疑われる。アナフィラキシーではなく、救急隊が蘇生を開始した時点で心音が聴取されないにもかかわらず血圧が110くらいあったということで、この時点では心室頻拍(細動か粗動)であった可能性があるとおっしゃっております。
 心室頻拍を来した可能性としては、痛みや恐怖に伴うカテコラミン誘発性のもの、あるいは今まで湿疹の既往がないことから確定はできないが、先天性あるいは二次性QT延長があり、ワクチン接種による痛み刺激そのものか驚愕により心室頻拍が引き起こされたと推測される。この症例で特に問題となるのは、9月からCYP3A4で代謝されるピモジドと併用禁忌のセルトラリン塩酸塩が処方されていたことで、二次性QT延長があった可能性は考慮しておくべきと思います。
 日本脳炎ワクチンそのものというよりは、ワクチン接種による痛み(あるいは驚愕)刺激によって背景として存在した可能性があるQT延長に伴う心室性不整脈が死因となったと推測するとおっしゃっています。
 続きまして、D先生です。10歳のお子さんに3剤の向精神薬を投与しているので、かなりひどい基礎疾患があったと推定する。ワクチンでアナフィラキシーやショックがなく、突然死しているので、向精神薬の副作用か何かワクチン以外の要因が強いと判断するとおっしゃっております。
 E先生です。アナフィラキシーショックのような血管虚脱に続く経過としては考えにくく、心臓そのものに原因がある。言うまでもなく、向精神病薬は突然死の可能性が添付文書に記載され注意喚起を行っており、ピモジド製剤とSSRI(セルトラリン塩酸塩)との併用はQT延長を引き起こし、これらにより、ときに死を招く危険性があることは添付文書が警告しているとおりである。したがって、これが原因である可能性は否定できない。さらに身体拘束そのものが心停止を惹起する可能性について報告もあり、広汎性発達障害はそれが生じやすいリスクファクターである可能性もあるという報告がございます。このような拘束そのものが心停止を導く可能性があるとするならば、これは必ずしも投与した薬剤が原因とも言いかねないところでもあるとおっしゃっております。
 最後にF先生です。十分な情報が得られておらず、プライトン分類でのアナフィラキシーの症例定義に合致するかどうかは判断できない状態ではあるが、ワクチン接種と突然死との間には前後関係はあり、ワクチン接種と死亡までの時間は密接しているが、基礎疾患のために服用していた薬剤の影響も考慮する必要があり、因果関係は否定も肯定もできないと考えますとおっしゃっております。
 以上です。
○加藤委員長 ありがとうございました。
今、城専門官より症例1と2について御説明がございましたけれども、これを頭の中に入れておいていただきまして、資料2、3、4と先に進めましてから御意見を伺うことにいたします。
 それでは、資料2につきまして、補佐よりお願いします。
○難波江課長補佐 続きまして、お手元の資料2に基づきまして、日本脳炎の予防接種に関する現状について御説明させていただきます。
 1ページ、ワクチンの出荷量。平成21年度~24年度までの出荷量でございまして、現行の細胞培養ワクチンは平成21年6月より定期接種に導入されましたが、現在、阪大微研のジェービックVがシェアの約75%、化血研のエンセバックが約25%となっております。
 2ページ、平成12年度~22年度までの接種率。上段が接種率、下段が被接種者数でございます。この統計がやられているのは22年度までとなっております。
 3ページ、副反応報告制度に基づきまして報告された副反応報告の件数と頻度でございます。一番下の注意書きに記載しておりますが、副反応報告書は予防接種との因果関係の有無に関係なく予防接種後に健康状況の変化を来した症例を集計したものであり、これらの症例の中には予防接種によって引き起こされた反応だけでなく、予防接種と関連性が考えられない偶発事象等も含まれている。集計に当たっては、予防接種との因果関係がないと思われるもの、もしくは、報告基準の範囲外の報告等についても排除せず、単純集計としてまとめているという点に御留意ください。
 また、被接種者数につきましては現在集計中でございまして、この資料では暫定的に出荷量に対しまして、平成22年度の出荷量と被接種者数の比率をかけ合わせた数値を用いております。発生頻度でございますが、新ワクチンが平成21年6月から導入されておりますが、21年度で10万接種あたり2.0、22年度で3.4、23年度で2.6と若干、旧ワクチンより高い数字になっております。
 4ページと5ページ、これは平成6年度からの副反応報告の内訳でございます。5ページに新ワクチン導入後の21年度以降の記載がございます。ちなみに23年度につきましては、現在、専門家の先生が評価中でございまして、暫定値となっております。22年度、23年度で一番多く見られるのが発熱でございまして、これが全体の数を押し上げる要因となっております。けいれんも多くなっております。このほか、脳炎脳症が22年度で3、23年度で9となっております。
 お手元の資料番号は7ページとなっているかと思いますが、次は6ページになります。「5.薬事法に基づく、新ワクチンの副作用報告状況」でございます。下にございますが、薬事法に基づく副作用の報告は、予防接種実施要領に基づく副反応報告と基準が異なり、死亡、障害、それらにつながるおそれのあるもの、入院相当以上の重篤症例について報告されますが、必ずしも重篤でないものも重篤として報告されるケースもございます。また、その後の調査等による報告対象でないことが確認され、報告が取り下げられる可能性もございます。
 これが21年6月2日~24年10月29日までの数字となります。右下のほうに書いておりますが、全部で124症例237件となっております。多いものは先ほどの副反応報告と同様、発熱でございまして、発熱けいれん、熱性けいれんになります。そのほか、急性散在性脳脊髄炎ADEMが11報告ございます。ただし、一番下の注意書きがございますが、報告に1件重複報告がございましたので、症例としては10症例となります。
 7ページ、副反応報告に基づく脳炎脳症及びADEMの報告数と報告頻度になります。新ワクチンが導入されて以降の平成21年度で見ますと、脳炎脳症、ADEMが1回、共に125万接種に1回となっております。ただし、この1症例につきましては、その後、健康被害救済審査で否認されまして、学会においてウイルス性の髄膜炎であった可能性が高いと報告された事例であります。
 22年度は脳炎脳症で145万回1回、ADEMはゼロでございました。ただし、脳炎3とございますが、うち1症例は旧ワクチンによるものでございまして、副反応報告は報告ベースで集計されていますので、21年度以前に接種されたものが平成22年度に計上されているということになります。
 23年度は脳炎脳症で9件、うちADEM7件、頻度としては脳炎脳症で62万接種に1回、ADEMで80万に1回となります。
 24年度は脳炎脳症で4件、うちADEMが2件でございまして、頻度で73万回接種に1回、ADEMで147万回接種に1回でございます。この4件と2件でございますが、※3にございますとおり、うち1症例は23年度に報告されている症例の重複報告になります。
 9ページ以降がここに計上された、先ほど申しました症例の概要でございます。御説明させていただきます。
 1番目、平成21年度、脳炎脳症の1件でございます。先ほど御説明させていただきましたとおり、この症例は救済の認定が否認されまして、学会でエコーウイルスが分離されたと。薬事法上、取り下げられている症例でございます。
 22年度、脳炎脳症2件、新ワクチンで2件でございました。概要でございますが、接種7日後に一点凝視、意識レベル低下、両下肢のぴくつきあり。ダイアップ挿入し、救急搬送。搬送時、発熱、意識障害、右下肢の硬直を認めた。CTでは異常が認められなかったが、脳波異常あり、急性脳症と診断され治療。23年8月軽快。
 3例目、予防接種翌日から40℃前後の発熱が見られ、接種2日後に受診してフロモックス内服。接種4日後に解熱、接種5日後に嘔吐、複雑部分発作を認め救急搬送。同日入院。23年3月現在で後遺症にてんかんがある症例でございます。
 10ページ、症例番号4番、23年度の症例でございます。接種7日後に発熱あり、接種8日後にけいれん発作、発語の低下が見られた。接種10日後から意識障害を認め、MRI撮影後、接種12日後にADEMと診断。その後、軽快。
 症例番号5番、接種3週間後、易疲労感。4週間後、転びやすい。2カ月後、下肢の痙性運動障害あり。頭部脊椎MRIにて多発性異常信号を認め、ADEMと診断。ステロイドパルスにより徐々に改善するも、易疲労感やつまづきやすい、手に力が入らない症状が残存。23年12月に軽快したが、長期床上生活に伴う廃用性筋委縮により日常生活の動作のしにくさが残存の症例でございます。
 6症例目、1期2回目の接種後2~3時間経過したころから発熱、頭痛、嘔吐があり再診。対症薬を処方し帰宅。接種1日後に受診し、血液検査に異常なし。接種2日後に39℃台の発熱が続き、頭痛、嘔吐も見られたため再診、入院。接種4日後に撮影したMRI、髄液検査で脳炎の所見あり。回復し接種13日後に退院。
 7症例目、接種12日後から発熱等で近医受診。38日後に頭痛、足の震え、目の斑点あり。39日後からものがゆがんで見える、虹色の見える等の症状があり、眼下で視神経炎、MRIで皮質下に信号変化が散見され、ADEMと診断されて入院。23年9月に回復。
 8症例目、接種2日後に39℃台の発熱。翌朝解熱したが夜間にけいれん発作(意識消失あり)を発症し救急搬送。抵けいれん剤無効のため入院し、低体温量やステロイド療法実施して改善。MRI所見からADEM疑いと診断。
 接種31日後、MRIでほぼ正常に改善したため、接種32日後に退院した軽快。ちなみにこの症例は薬事法上はけいれんとして報告されております。
 9症例目、接種6日後に足底部痛を訴え、接種9日後から発熱。23日後から足を引っ張っての歩行が見られ、29日ごろから口数が減った。31日後から1人で立ち上がることができず、33日後には座位の保持不能。不明熱として28日に受診し、同日入院。MRIで白質、小脳、視床に炎症所見があり、経過、経過所見からADEMと診断した。歩行障害、小脳失調、錐体路障害、意識障害があったがステロイドパルスに反応し、改善傾向にある。23年12月軽快。
 10症例目、接種17日後に傾眠傾向が出現、接種20日後に頭部CTで右側に低吸収域を認め接種22日後に入院した。入院後の頭部MRIでは右側頭葉等にT2での高信号を認めADEMと診断した。ステロイドパルス療法等で症状改善傾向を認めるも、両下肢疼痛や左上肢の筋肉低下があり入院加療中。主治医の観察では後遺症になる可能性が高いと考えられた。23年10月後遺症(上肢運動障害、筋力低下)あり。
 11症例目、接種12日後に発熱、接種13日後に15分間の継続するけいれんがあり。けいれん止めを処方されたが、意識レベルの低下が見られたため、入院となる。MRI及び脳波異常から急性脳症と診断。25日に退院している。平成23年9月回復。
 12症例目、接種4日後に微熱、左上下肢の間代性けいれん(意識あり)が出現。救急受信、ダイアップ挿入するも発疹持続したため、再搬送。転送先では、左上下肢のぴくつきあり、四肢の動きが余り見られず。頭部MRIでADEMが疑われ、加療中との症例でございます。
 11ページ、症例番号13は23年度の症例番号5と同じ症例でございます。
 14症例目、接種翌日、発熱。接種7日後けいれん重積。急性脳症にて入院。入院翌日、ICU入室し、全身麻酔管理。重積状態が続くため、約半年間全身麻酔を行った。24年5月、入院継続中。一般病棟にてリハビリ中であるが、座位困難、意思疎通困難な状態。後遺症(重度心身障害)という症例でございます。
 15症例目、接種17日後、発熱。その後、発語減少し傾眠傾向。22日後、解熱していたものの、項部硬直や髄液細胞数の上昇。脳波での徐波の増加とMRIで右側脳室周囲に高信号域を認め、入院。髄液中MBP上昇からADEMと診断。症状軽症のため無治療にて経過観察。入院3日後、項部硬直消失。入院6日後、歩行可能だが左下肢わずかに引きずる。10日後、歩行の左右差も消失したため、退院。24年5月軽快。
 16症例目、これは先ほど報告しました、7月に死亡された症例でございます。
 17症例目、接種2週間前ころから頭痛あり。接種翌日から少し元気や食欲がなく、37℃程度の微熱あり。接種7日後、うずくまっているのを発見され、受け答え可、嘔気あり。それから約1時間後、左上肢・両上肢から始まる1~5分のけいれん。1時間の間に3~4回けいれんを繰り返す。救急外来にて抗けいれん剤投与にて発作停止。発症後2時間、意識レベル300が続いた。意識回復後、麻痺や局所症状なし。髄液細胞数軽度上昇。このような検査結果であり、脳炎と診断。抗けいれん剤、ステロイド、ACV、抗生剤にて治療開始し軽快傾向の症例でございます。
 12ページ、こちらは副反応報告にはなかった症例で、薬事法上、届出があった脳炎脳症とADEMの症例でございます。
 18症例目、接種から1カ月後、38℃台の発熱。9日後、39.1℃の発熱、倦怠感を認める。臥位で意識は傾眠。呼びかけに応答。項部硬直あり。髄液検査の結果、脳脊髄炎と診断。アシクロビル、ステロイドパルス療法開始。改善し、23年5月軽快。
 19症例目、接種翌日、起床時よりいつもよりハイテンション。夜間にボールをけることのない子、夜間にボールをけっていた。接種2日後、出現時と同様の症状であったが少しましになっていた。接種3日後、いつもの状態に戻っていた。接種8日後、起床時発語なく首を振って合図をしていた。歩行ができず、はいはいで移動。両手を使って立ち上がろうとしてもよろつき、結局はいはいで移動していた。1時間後、おもちゃを買いに行こうかというと歩き出す。その数分後に発語、歩行などはいつもと同じようになった。23年5月回復。
 20症例目、接種翌日、発熱、腹痛、嘔吐が出現し、2日後腸炎の疑いで入院。細菌性髄膜炎疑いとして抗生物質、ステロイド加療開始。3日後、頭部MRI検査を実施したが、明らかな異常所見は認められなかった。脳炎脳症疑いとしてステロイドパルス療法開始。4日後、意識明瞭となり、明らかな神経学的異常所見が認められない。11日後退院で、回復。
 21症例目、接種10日後、発熱。13日後、全身性の麻痺が発現し救急搬送。脳MRIを行ったが、ヘルペス脳炎やADEMに特異的な所見は認められず。1カ月後、退院。24年5月後遺症(てんかん発作、記憶力低下、学習障害)という症例でございます。
 22症例目、接種約2週間から20日後に発熱で一度入院。30日後、一度退院、再発熱で再度入院。ADEMが発現。24年9月現在、未回復という症例でございます。
 13ページ、これまでの報告がございました薬事法と副反応報告、重複症例や取り下げ例を除きまして、新ワクチン導入後、ADEMが11例報告されております。接種日を基準に分類いたしまして、接種回数21、22年度は実数がございますが、23、24年度は推定値でございます。
 発生頻度で見ますと、21年度はゼロ、22年度は146万回接種に1例、23年度は80万回接種に1例、24年度9月末現在で295万回接種に1例と言うことで、合計で131万回接種に1例というものでございます。
 下に参考でつけておりますが、旧ワクチンでのADEMの報告頻度は、70万回~200万回接種に1例程度とされておりました。
 資料2は以上でございます。
○加藤委員長 ありがとうございました。
 これも同じように頭に入れておいていただきまして、後ほど議論をいたしたいと存じます。
 資料3、多屋参考人からお願いいたします。
○多屋参考人 国立感染症研究所の多屋です。
 我が国の日本脳炎に関する疫学情報につきましてまとめましたので、報告させていただきます。
 日本脳炎という病気ですけれども、アジア地域における最も重要なウイルス性脳炎で、流行域はここに示すとおりです。小児を中心に世界で毎年5万人が発症し、およそ1万人が死亡しています。我が国のように温帯地域での主たる媒介蚊は水田などで発生するコガタアカイエカで、ブタは効率のよい増幅動物と言われています。野生のイノシシからウイルスが見つかったという報告もあります。人から人に感染する病気ではありません。
 潜伏期は2週間前後。日本脳炎ウイルスに感染しても、ほとんどの人は軽い症状か無症状で終わりますが、一部は髄膜炎、脳炎、脊髄炎を発病します。発病率は日本脳炎ウイルスに感染した100~1,000人に1人程度と考えられています。
 日本脳炎の特徴的な症状はなく、急性脳炎として下記のような症状を認めます。しかし、脳炎症状を起こしますと致死率は18%と高く、回復しても50%に後遺症が残るという国内のデータがございます。
 次に、日本脳炎ワクチンです。1954年の開発以降、1955年から国内で生産されています。従来はマウスの脳内に日本脳炎ウイルスを接種して、このような過程で不活化してワクチンを作成されていました。マウス脳成分による脱髄現象の心配がされていましたが、脳成分は検出限界以下で、ワクチンからは検出されていないものでした。
 その後、アレルギー反応の原因とされたゼラチンが除去され、保存剤とてのチメロサールも除去され、より安全なワクチンが使われていましたが、2005年に積極的勧奨の差し控えが行われまして、接種率が激減したという歴史であります。
 現在はVero細胞由来の日本脳炎ワクチンが開発され、2009年から使用が開始され、2010年度から積極的勧奨が再開されています。
 次に、感染症流行予測調査事業により、ブタの日本脳炎ウイルス感染状況をお示しします。この調査はなぜ行われているかと申しますと、ブタは概ね生後6カ月~9カ月でと畜場に運ばれてまいります。そこで採血させてもらいますので、そのブタが生育していた地域に最近6カ月~9カ月以内に日本脳炎ウイルスがいたということを示すことから、30年来この調査が行われています。
 ここに示す都道府県及び都道府県衛生研究所で実施され、国立感染症研究所に結果が送付され、こちらで集計して厚生労働省の事業として発表しているものです。
 2000年から今年まで、ブタの日本脳炎HI抗体保有状況の年別推移を日本地図で示しました。毎年1つの県で約100頭の豚の調査が行われております。調べたブタの8割以上のブタが抗体を保有していた場合は茶色、調べたブタの半分以上が陽性でしたけれども、8割には届かなかった場合は赤、調べたブタの中に抗体陽性のブタがいたが半分には届かなかった場合は黄色、調べたブタ全てが抗体陰性であった場合は青、調査が行われていない場合を白と記載しております。
 ここに示しますように、年によっては東北・関東まで色が赤、茶色になる年もあれば、関東でも水色、黄色といった年もあって、年による差はありますものの、東日本と西日本では西日本のほうが抗体保有率が高い状況にあります。
 次のスライドは、いつくらいに日本脳炎の抗体保有のブタが出現してくるかを月別に示したものです。7月、8月、9月と今年は抗体を保有するブタが少ない年であるという印象を受けておりますが、例年は7、8、9月と抗体保有するブタの割合が多くなってくるのが毎年の傾向です。
 次に、日本脳炎の患者さんの報告数を示します。日本脳炎は感染症法に基づく4類感染症で、医師は診断後、直ちに報告することが義務づけられている疾患です。
 9ページ、1946年以降の日本脳炎患者さんの報告数の推移です。
 1950年代は数千人を超える患者さんの報告がございました。
 日本では1954年から勧奨接種、1967年から特別対策、1976年から平常臨時接種が行われ、1995年からは定期接種に導入されて現在に至っています。
 1989年にワクチン株が北京株に変わり、現在はこのような状況です。
 1991年~2011年までの日本脳炎の患者さんの報告数の年別推移を示したものが10ページです。全患者数は平成3年が14人、その後は一ケタでしたが、平成19年の10人は発症がその前の年ということがございますので、おおむね10人未満の数字で推移しております。その右にこの中で14歳以下の患者さんの数を示していますが、2004年、積極的勧奨が差し控えられる前までは、ほとんど0~1人で、平均0.29人という状況でした。
 2005年からはしばらくワクチンが接種されない時代が続いておりましたが、近年14歳以下の患者さんの数が2、1、2人と目立つようになってきたところでした。
 その次に、2011年の報告です。2011年は9人報告があり、1歳と10歳のお子さん。それ以外の年齢としては30代~80代の大人の報告となっております。今年は報告数が少なく、70代のお二人が九州から報告されています。
 次にスライドに行きまして、1995年から定期接種が始まっていますが、その前後で日本脳炎の患者さんの報告数を年齢別に示したものです。80年代~90年代までは0-4歳と60代、70代のところに2つのピークを持つ二峰性の患者報告になっておりますが、1993年~2003年は子供の部分がほとんどなくなり、60代、70代を中心とする成人患者さんの報告となっておりました。
 これを地域別に見ますと、14ページのスライドに示すとおりで、北海道、東北地方から過去12年間、患者さんの報告はなく、九州地方に最も多く、中国、近畿、四国、中部、関東地方で報告がある現状です。右は子供の報告を示したものですが、熊本、広島、高知、熊本、山口、沖縄、福岡と九州、中国、四国地方からの報告で、全て予防接種を受けていらっしゃらない方からの報告でした。
 15ページ、同じく感染症流行予測調査事業による人の抗体保有陽性率を示します。
 16ページ、都道府県並びに都道府県衛生研究所で抗体測定が行われ、感染研で集計をしております。
 その次は1990年~2011年度までに、この調査が行われた都道府県を示しております。地域に偏りがないように全国から調査協力をいただいております。
 18ページ、2005年に積極的勧奨差し控えられる前後での抗体保有率を示したものです。我が国では3歳で2回、4歳で1回が標準的な接種スケジュールとして接種が行われております。2004年度は3~4歳は平均62%の抗体保有率で、3歳からワクチンが始まっていたためと考えております。一方、2006年度は積極的勧奨が差し控えられた翌年ですけれども、3歳で50ポイントの低下、4歳で48ポイントの低下とワクチンを受ける人が激減したことがこのグラフからわかります。
 次に、2000年度~2010年度の調査で、日本脳炎ワクチンを受けていない人、1歳~12歳までを集計したものを地域別にまとめたものです。東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州と分けまして、それぞれ抗体陽性を10以上、抗体陰性を10未満として陽性率を出しました。東北地方は0.7%、関東が8.8、中部が3.3、近畿が12.5、中国が26.9、四国が10.8、九州が6.1、全国平均として7.9%という結果が、1歳~12歳までのワクチンを受けていない子供たちの陽性率でした。いわゆる自然感染を受けた人の割合がこのくらいいらっしゃるのではないかと考えております。
 20ページ、今度は予防接種の評価を示したものです。予防接種歴別に日本脳炎抗体保有状況を示しました。まず、未接種者は緑の×、1期3回未接種ということは1回または2回受けた方になりますが青の●、1期3回完了した人が黄色の△、1期3回に2期を接種した人、12歳までですから2期を接種して直後ということになりますが、赤の四角で示しております。
 未接種の方の場合は抗体保有率が極めて低いですが、10以上陽性とすると10%程度ございます。しかし、ここには地域差がございまして、東北・北海道では0.7%、関東・中部では7.1、近畿以西の地方では10.7%と地域差がございます。
 1期1回、2回では85%程度、1期を3回完了すると95%くらいの方が中和抗体10以上を保有します。中和抗体10以上というのは、ウイルスに感染しても脳炎を発症することを予防できる抗体価と考えられております。1期3回プラス2期は12歳までですと、接種してからすぐの調査になってしまいますが、320以上の抗体保有率が高いということがわかります。
 次に、東北地方、関東・中部、近畿以西の各地方を3つに分けて、抗体陽性率を比較したものが21ページ目のスライドです。東北地方では1~12歳までの平均ですけれども、0.7%、中日本では7.1%、西日本では10.7%の陽性率でした。万が一、予防接種が行われなかった場合の日本脳炎の発生リスクを推計してみました。陽性率が0.7、7.1、10.7%で、1~12歳人口を2010年の国勢調査より、このように地域別に求めました。推定発症者数ですが、発症率が感染をした人の中で100人~1,000人という数字をもとに、0.1%の発症の場合は東日本で7、中日本で473、西日本で560人。1%発症とすると、このような数が発症されているだろうと推定されました。
 致命率については国内のAraiらのデータで18%という致死率の数字がございますので、それをもとに推計いたしますと、東日本で1、中日本で85、西日本で101、仮に1%の発症率とすると、ここに示すとおりということが推計されました。ここから発症リスクを推計しますと、最も多かった西日本で934人~9,337人の1人程度発症されるのではないか。そのうち死亡リスクとしては5,187人~51,871人の1人と推計されました。
 23ページ、これは2011年度、去年度の抗体保有率、いわゆる最も直近のものを示したものです。今年度も行われていますが、これが集計されている直近の結果です。勧奨の差し控えが終わり、積極的勧奨が始まりまして3歳の抗体保有率が10%を切っていたものが50%まで回復していますが、7歳~9歳、10歳のところにまだ受けていない人が多いのか、抗体保有率が低い年齢層があり、この年齢層は今年小学校2年生、3年生、4年生で、勧奨が再開されているというのが現状です。一方、大人のほうも50代前半の人で抗体保有率が低くなっております。
 次に、昨年の抗体保有率を予防接種歴別に分けてグラフ化したものが24ページ~28ページまでです。2歳までは通常、予防接種は受けていないわけですが、予防接種を受けていない人の場合、抗体保有率は低く、ただし、5歳以降になりますと自然感染をして抗体を持っている人が出てくるということがわかります。
 次に、1回、2回、3回に分けて色ごとに出しておりますけれども、1回だけですと中和抗体はまだ陽性になっていない方がいらっしゃることがわかります。2回受けるとその割合が減り、1期3回を完了されますと、その割合はさらに減り、4回目2期を受けますと、その割合はさらに減るという形になっております。
 一番最後ですけれども、生年別に抗体保有率をグラフ化したものです。右の生年月日、例えば御自身の生年月日のところを見ていただくといいのですが、1972年~1974年に生まれた人、1975年~1979年に生まれた人と見ていっていただきますと、ワクチンによって獲得した抗体が年齢とともに減衰していっているということがわかります。
 例えば1972年生まれの人は、今36歳~40歳くらいになっていらっしゃると思いますが、一旦抗体保有率が高くなりますが、その後、減衰しているということがわかります。一方、1920年代のお生まれの方につきましては、70歳以上の一番右のところになりますが、抗体保有率は高いまま、維持をされているということがわかります。
 以上です。
○加藤委員長 どうもありがとうございました。
 続きまして、資料4に基づきまして、倉根参考人より御説明をお願いいたします。
○倉根参考人 それでは、資料4に基づきまして、日本脳炎に関する諸外国の状況を御説明いたします。
 1ページ、これはスイスの研究者Tobias先生という方がEmg Infc Disにまとめたものでありましたので、非常によくまとまっていると思いましたので、これを見ながら御説明いたします。
 まず、左側に国名がございます。初発例というのは初めて日本脳炎がその国で患者として見つけられた年であります。それぞれ国によって違うのがおわかりかと思います。大体1950年代あたりからそれぞれの国で日本脳炎として見つけられているということであります。
 左から3番目の曝露地域の人口は、どうやって出したかはきちんと書いておられないのですが、まず単位でありますから10の3乗、1,000人であります。ですから、日本は4,396万ということになります。これはウイルスが存在していることがわかっている地域のルーラル、田舎の人口を示してあります。括弧がそのパーセント。これはなぜ都市部でない人口を示しているかというと、一般的には日本脳炎は比較的都市部でないところで発生が多いような病気であります。しかし、都市部でもありますが、この著者はルーラルを入れておるということでございます。
 年間発生数でありますが、日本、オーストラリアは10以下、中国、インドが非常に多くて、韓国が20人以下、そのほかにマレーシア、ネパール、フィリピン、シンガポール、スリランカという数が出ております。ここでごらんいただくとわかりますが、圧倒的に多いのが中国であります。もう一つはインドであります。それから、タイ、ベトナムが多いということがおわかりかと思います。
 ただ、この中で日本脳炎としてはっきり実験して、診断をして出てきているのは、恐らく日本と韓国、ここに載っておりませんが台湾、中国のほぼ全部ということかと思います。ほかの国につきましては、夏季あるいは暑いときのウイルス脳炎は日本脳炎として出てきたり、発生の集計の問題がありますので、必ずしも正しい数とは言えないということであります。ですから、インドの4,000人がどこまで4,000人かと言われると、正直なところ疑問な部分もございます。いずれにしましても、アジア各国に患者が発生しているというのがおわかりかと思いますし、タイ、ベトナム、ネパール等でもかなりの患者が出ているということであります。
 発生のトレンドと書いてありますが、ふえているか、減っているかということでありますが、もちろん先ほど申しましたように、日本脳炎の診断自体が各国で違っておりますが、増加のところが多い。安定と出ておりますところもありますが、これはほとんどの国でワクチンを打っている国。例えば日本、オーストラリア。中国はワクチンを打っているので減少、韓国も安定ということであります。日本脳炎予防接種はしていない国は比較的増加傾向が見られるというのがここの表の読み方かと思います。
 2ページ、韓国における日本脳炎患者発生状況を示しております。なぜ韓国かといいますと、韓国はきちんとラボラトリー、実験室診断もしておりますし、統計そのものも日本脳炎として出てきておりますし、気候的にも日本と非常に合っていることから、ワクチンの接種率も日本と非常に似通っているという状況であります。
 3ページ、韓国も日本の患者数の動きと非常によく似ておりまして、1960年代に数千人の時代が続いた。ワクチンを1968年くらいから打ち始めておったのですが、1982年に1,000人程度の患者さんが出てきている。その後、NIPは国の予防接種施策をきちんと定めて打ち始めたということでありますが、ずっと非常に少ない数で推移しております。右上のほうに1984年からの数をスケールを変えて入れております。大体10人以下の患者数がずっと続いておったのですが、2010年に25人を超える患者が報告されたということであります。
 4ページ、2001年~2010年までの患者発生地域の分布を見ております。大体全土にわたって出ております。ふえた2010年においても少し北のほうが多いかと思いますが、全国に分布しているということであります。
 5ページ、これは韓国において、民間が日本脳炎の検査をしていないということで、ほとんどの急性脳炎、少なくとも日本脳炎が疑われるサンプルについては、韓国のCDCにサンプルが来るということだそうであります。これはHan先生という韓国CDCの先生のデータでございます。
 そうすると、疑いで来た中で表がありまして、年度が書いてあります。患者として確定された数が書いてあります。6、1、0、6と書いてあります。依頼されたサンプル数が書いてあります。そうしますと7年、8年、9年、10年を見ていただきますと、疑われた方の40人に1人、あるいは50人に1人が日本脳炎と確定されているということであります。ウイルス性の急性脳炎として来たものの中でということであります。2010年は患者数がふえましたので、パーセントもふえておりますけれども、こういうことになっております。
 これを見ますと、韓国においても2回ほど、患者数がある年に急にふえるという現象が起こっているということであります。これが何によるかははっきりわからないのでありますけれども、1980年代のものについては少し接種率が下がってきたのが原因ではないかというのがHan先生の御意見でございます。はっきりしたものではありません。
 2010年についても、なぜふえたかというのは、実際には不明でありますけれども、予防接種のワクチンの主要のドーズがその数年前に少し減ってきているというデータがありますので、それが原因かもしれませんが、そこははっきりとしたものではありません。
 以上です。
○加藤委員長 どうもありがとうございました。
 資料1~資料4まで御説明をいただきました。それでは、頭を元に戻していただきまして、最初に発表がございました2例の死亡例と予防接種の因果関係につきまして、議論に入りたいと存じます。資料1に頭を戻してください。このところで追加の御発言、そのほかございましたら、まず伺います。どうぞ。
○賀藤参考人 賀藤でございます。
 確認させていただきたいことがございます。症例2の6ページにC先生が言われたことで上から3行目「(17時25分)、心音が聴取されないにもかかわらず血圧が110くらいあった」と記載があります。症例2の17時25分だと4ページには「顔が見えない方向の横向きで」云々と書いてあります。
 確認したいのですが、心音は聴取されないにもかかわらず血圧が110というのは、この血圧の測定方法は何でしょうか。
○加藤委員長 事務局、お願いします。
○城予防接種専門官 こちらのほうは申しわけありません。救急隊ではなく接種医のカルテ記録に残っているものです。接種医が駆けつけた時点で心音は聴取できないけれども、血圧が110というメモ書きが残っていて、どのような形で血圧を測定したかに関しては、今すぐにはお答えできない状況です。
○賀藤参考人 もう一点で、救急隊員が17時36分に着いていますが、多分そのときにモニター装着で脈なしと記載がありますが、これは申請時ということでよろしいですか。
○城予防接種専門官 そのように救急隊員の記録に残っております。
○加藤委員長 よろしいですか。
 ほかに何か追加事項等はございませんか。
○城予防接種専門官 済みません。私のほうから、解剖検査の結果が届いております。
○加藤委員長 どちらのですか。
○城予防接種専門官 1例目の方は解剖は行われておりませんので、2例目の方、10月に亡くなられたお子さんの解剖結果が、途中経過の報告になりますけれども、届いております。3点ポイントがあると思うので、そちらのほうだけ簡単に御説明をさせていただきます。
 まず、心臓はマクロの解剖においてもミクロの解剖においても明らかな異常は認められなかった。ただし、だからといって不整脈等を否定できるような状況ではないということは御理解いただきたいというコメントをいただいております。
 腹部の所見ですが、死後CTで既に脂肪肝、肝腫大のほうも認められていたのですが、解剖のほうにおきましても、肝臓のほうに脂肪性の肝障害を認めたと。それなりの肝機能障害があったのではないか。詳細な記録については委員の先生方の書類のほうに書いておりますので、そちらのほうを一読いただければと思います。ですので、肝障害はあったという状況です。
 また、アレルギーに関してです。肉眼的観察や組織学的検査でアレルギーの存在は確認できていない。しかし、これも心臓同様、だからと言ってアナフィラキシーを否定できるというものではないが、明らかなものはなかったというようなコメントをいただいております。
 以上です。
○加藤委員長 賀藤先生、参考人としてこの第2例目の方ですけれども、心臓の専門家から考えまして、この死亡について、心臓との兼ね合いはどのような御意見がございますか。
○賀藤参考人 まず最初に、症例の検討への参加の依頼を受けたときに経過だけ聞かせていただきました。きょう初めて飲んでいた薬の情報をいただいたのですが、その薬の情報を全く知らないでこの経過だけを聞いたときは、QT延長症候群による突然死だろうと考えました。典型だろうという印象を持ちました。
○加藤委員長 QT延長というのは、どういう条件のときに起きてということは関係なくて、いつ何時に起きてもおかしくはないということですか。
○賀藤参考人 QT延長症候群は先天性と後天性であるのですが、基本的には小児のいろいろなきっかけがあります。タイプ別できっかけがありますが、一番有名なのは水泳の最中に起きる。あとはこの症例のようにストレス、不安、激昂、そういう感情のストレスに起きやすいもの。あとはびっくりしたとき。誰かの携帯電話のベルが鳴ったときに突然なってしまう。子供で心配なのは寝ている最中に起きてしまう。安静時に起きる。情動ストレスがきっかけで起こるものとしては有名です。
○加藤委員長 ありがとうございました。
 そうすると、もしワクチンと関連づけるとしても、ワクチン成分によって起きたというよりも、お薬を飲んでいるか、飲んでいないかというのは情報がないということで置いておきまして、そのストレス、不安というようなことが注射と関係するとすれば、そういうところであって、注射の中身との兼ね合いまでは言えないということでよろしいですか。
○賀藤参考人 全く薬の情報がないという状況で申し上げますと、多分こういうお子さんというのは、どの子もそうですが、注射というストレスが少なからずありますので、それで起こった経過を今、確認させていただきましたが、20分ごろには注射をされて、その後、玄関方向に数歩歩いて座り込むようにして横になる。
 かつ25分くらいになると約5分の経過でおかしいと気づかれて、接種した医師が少なくとも一番客観的に信用できるのは心音が聴取できなかったというものだろうと思います。血圧はもし機械ではかっていたとすると、余りあてになる値ではない。そのときには多分心室細動か重症な心室頻拍になっていた可能性があります。
 25分から11分後の36分に救急隊が来たときには、モニターの装着にて脈なしと書いてありまして、心静止ですので電気的な動きがなかったということですので、そうすると接種後16分でこのような結果をたどるということは、心原性の不整脈しか考えられないということです。それが起こる原因としては、一番典型的だろうと思います。
○加藤委員長 ありがとうございました。
 今、2例目の方についてお話が出ておりますが、各委員の方でとりあえず2例目の方について御意見がございましたら、岡部委員、廣田委員、小森委員、どうぞ。
○小森委員 1点確認をさせていただきたいのですが、2例目の方で司法解剖になっているにもかかわらず、ここで中間報告という形で報告をいただいたとうのは、ある意味画期的かと。厚生労働省、警察庁、法務省が連携をされたということは非常に大切なことだと思っておりますが、司法解剖までされておられるということになりますと、あくまでも現時点で中間報告ということでございますので、中間報告という段階でどこまで議論をしていいのかも懸念をされるところでございます。そのあたりのことについて、どのように考えたらいいのか、先生方の御意見をお聞きしたいと思います。
○加藤委員長 わかりました。今の御質問について、私も不明ですが、事務局からこの件についてお答えになれますか、
○城予防接種専門官 病理解剖は小森先生が今おっしゃったとおりで、まだ途中経過になっております。ミクロの詳細な検査のほうはまだ行われている状況です。こちらのほうに途中経過のレポートは提出いただいたのですが、資料に関しましては、きょうはお配りしていないように、現時点では全面を委員等に公表することは控えていただきたいというということで、こちらの情報としていただいております。
 ただし、この3点、心臓と肝臓と皮膚アレルギー所見、粘膜所見につきましては、このような発言をしてもよろしいかという確認をいただいた上で、この3点に関しては発言をさせていただいておりますので、病理の詳細なレポートにつきましては、まだ委員の先生方にお配りできるような状況ではないということでございます。
○加藤委員長 ありがとうございました。
 ほかの委員の方、どうでしょうか。
○岡部委員 今、小森委員がおっしゃったように、私も当初、司法解剖であるがためのデータの不足、入手困難ということは非常に懸念をしたのですが、そういう意味で迅速に、全面的ではないにせよ、死因解明のための資料が得られたということは、多分いろいろなところでの話し合いが行われたことではないかと思います。それについては大変ありがたいことであると思います。
 現時点で最終的な死因まではなかなか言えないと思いますが、参考人の先生のほうからいただいたように、心原性であるということは心臓の専門家ではなくても、ある程度そうではないかと十分納得するところです。
 そうであるとすると、通常ワクチンで数分後にこういったような状態が起きることは非常に考えにくいので、委員長がさっきおっしゃったワクチン液の問題か、接種行為の問題かということについは、少なくとも液の問題ではないだろうと考えます。そうであると、日本脳炎ワクチンの安全性ということで言うならば、日本脳炎ワクチンとは関係ない可能性のほうが高い。こういうような状況が集積するとか、あるいは今後大いに懸念すべきことであるということではなくて、極めてまれな例であると考えます。
 ただし、死因についてはもう少しミクロの所見が必要かと思います。私は肝障害があるのが気になるところですけ。また、もし可能であるならば、薬物の血中濃度などがわかれば、さらに死因を考えるためのアプローチがしやすくなるのではないか、と思います。したがって、そこら辺は今後の検討が必要であるという考えです。
○加藤委員長 ありがとうございました。
 それでは、1例目の方について御意見を伺いたいと存じます。1例目の方は厚労省のほうで何人かの専門家の先生方に御意見を伺ったということがございまして、それを参考にした上で各委員から御意見がありましたらお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 廣田委員、何か御意見はございませんか。
○廣田委員 ございません。
○加藤委員長 それでは、小森委員はこのケースについて、いかがですか。
○小森委員 私は1人の医師としては、1例目の方についてはその後の発熱等、感染の発症の後に起こってきているという、いわゆる急性脳症の可能性が高いと思っておりまして、明確にお答えすることはできませんけれども、ワクチンの液そのものの影響については比較的否定的に考えていいのではないかという印象を持っております。
○加藤委員長 ありがとうございました。
 岡部委員、いかがですか。
○岡部委員 私も急性脳症という診断については、恐らくそれでいいのではないかと思います。これが仮に予防接種の原因であろうかという議論になったときに、そうではないと言うためには何かほかの証拠がないと、違うものであるということは確定できないので、そこがわからない以上、可能性が否定できないという言い方にはなります。しかしその可能性が厚いか薄いかということで言えば、極めて薄いだろうと思います。
 ただ、髄液等々が一部残されているのではないかという話も伺っていますので、もしそうであるならば、さらに現在ではこの主治医の先生が疑っているようなウイルス性の何か変化があったのではないかとか、これもさらなる調査ができると思うので、そこら辺は結論をペンディングにしたい部分だと思います。ただし、これも集積するかどうかというところで、その次のワクチンの対応に考えるわけですが、必ずしも集積しやすいものではない。非常に濃厚な関連があるということではないので、日本脳炎ワクチンに関する対応としては現状のままでいいのではないかと思います。この1例について考えた場合です。
○加藤委員長 ありがとうございました。
 事務局、どうぞ。
○難波江課長補佐 この症例に関しましては、髄液、血液は残っていましたので、これから検査を進めるところでございます。
○加藤委員長 ありがとうございます。
 参考人の方の中で、特に何か御発言がございましたら許可いたしますけれども、いかがでしょうか。
 廣田委員、どうぞ。
○廣田委員 今、賀藤先生から、投薬のことを考えないならという前置きがありました。
○加藤委員長 それは2例目の方ですね。
○廣田委員 2例目の方です。
○加藤委員長 今、委員から質問が出ましたので、ちょっとだけ戻りましょうか。
○賀藤参考人 薬の情報がない状況で、QT延長症候群によるものだろうと考えました。このような情報をいただきまして、QT延長症候群であるだろうと確信しました。
○加藤委員長 よろしいですか。
 1例目の方について、倉根参考人、どうぞ。
○倉根参考人 1例目の方につきましては、通常ウイルス性の疾患と疑われたものであったとしても、もちろんその原因が、ある病原体が確定できるということもありますが、必ずしも全てで確定できるわけではありません。それは現在の方法を用いてもそうではない。しかし、特に感染が疑われる症状がある。さらにその前にワクチンを打って症状が出たというのであれば、それをきちんと調べることは非常に重要だろうけれども、100%病原体がわかるかと言われると、わからないことも多いということはここで述べておきたいと思います。
○加藤委員長 ほかの方で御意見がどうしてもある方はおられますか。よろしいですか。
 それでは、各委員の御意見を簡略にまとめさせていただきますと、第1例目の方でございますけれども、これは厚労省のほうで専門家からのいろいろな御意見をいただいておるようです。それも参考にした上で、7月の事例につきましては予防接種との因果関係は明らかではない。要するに不明であろうと。したがって、先ほども出ましたが、髄液をとっておるということもありますので、引き続き調査、検討を要するのではなかろうかと考えます。
 もう一つの10月の事例についてでございますが、接種行為がいずれにいたしましも、先ほどのお薬の件にも関連するかもしれせんし、賀藤参考人からの御意見では、そうでなくてもQT延長ということがありました。すなわち接種行為そのものが関与した可能性もあるかどうか。それは不明なところではあるけれども、ワクチンそのものとの関連性はどうも低そうではないか。こういう御意見が多かったように感じます。
 したがいまして、他の要因による影響が10月の例におきましては、大きいのではなかろうか。しかしながら、剖検をしておりますので、その結果を十分に精査するというようなことも含めまして、さらなる検討が必要ではなかろうかと私自身としてはとりまとめたい。
 したがいまして、先ほど政務官から2例の重大な死亡事例が起きたことについて、慎重な審査をしていただきたいというような御意見がございましたけれども、この2例の死亡だけをもちまして、日本脳炎のワクチンの接種を直ちに中止するという必要性は、きょうの各委員からの御意見からは、その必要性はないのではないかというように拝察いたしましたけれども、各委員の方々、それでよろしゅうございますか。
○岡部委員 賛成です。
○加藤委員長 小森委員、よろしいですか。
○小森委員 はい。
○加藤委員長 では、そのように私の意見として、とりまとめていただきますので、事務局のほうはよろしくお願いいたします。
 続きまして、これまでの副反応の報告や日本脳炎の発生状況等を踏まえまして、日本脳炎のワクチンの定期接種の取扱いをどうしたらいいかということも含めまして、いろいろと資料をいただきましたので、御意見をいただきたいと存じます。どうぞ忌憚のない御意見をお願いいたします。
 廣田委員、どうぞ。
○廣田委員 資料2の7ページです。通常こういった症状、副反応が接種回数何回ごとに1回という表現をされるのですが、各個人が複数回受けますので、接種された人何人あたりという数値は出るのでしょうか。
○加藤委員長 課長補佐、今の御質問はいかがですか。
○難波江課長補佐 今の統計の中では、人数のデータを出すのは難しいです。接種回数当たりになります。
○廣田委員 大体大ざっぱに接種回数の2分の1になるとか3分の2くらいになるとか、そのくらいだろうというようなお考えはありますでしょうか。
○難波江課長補佐 大ざっぱに申しますと、1期の1回目と2回目は間隔が1週間~4週間の間隔でとなっておりますので、大体1カ月以内に完了されると。追加はさらにその1年後になりますので、各年で見ると1期の初回はそれぞれが同じ人数が入っているということは考えられるかと思います。
○加藤委員長 よろしいでしょうか。どうぞ。
○小森委員 平成17年に一時差し控えということが行われたわけですけれども、一方で明らかに当然でございますが、ワクチンの非接種者が増えますと抗体の保有率も減少する。我が国だけではなくて、今は非常に広い広域圏の中で子供さんのみならず、特に流行中であります中国とは多くの人的な交流がされている中で、このワクチンの接種について対応を軽々に考えることは非常に問題であると思っております。
 ここで確認をさせていただきたい点は、21年度以降の脳炎脳症等について、診断名については急性脳症ADEMとなっておりますが、このことについて本当に確定診断をどこまでしているのかということについて、確認をする必要があると思います。そのことについて、レトロスペクティブに不幸にもそういった事例の方々のことについて、きちんとした判定をしなければいけないと思っております。
 したがって、今、提出された資料の診断名の信憑性と言うと問題があるかもしれませんが、それをどの程度見るかということについての考え方について、事務局はどのように思っておられるのでしょうか。
○加藤委員長 それでは、この副反応の報告の仕方ですね。先ほど政務官のほうからも若干意見が出まして、岡部先生からも御質問が出ましたが、現在、健康局で行われている副反応報告のシステムがどのようなシステムになっているかを御説明していただくと、小森委員のお答えになると思いますので、事務局から御説明ください。
○難波江課長補佐 現在の副反応報告書でございますが、接種後に副反応が発生したとした場合は、特に因果関係を問わずに医療機関のほうから任意で自治体に上げていただき、自治体から国に報告をいただくという制度になっておりまして、こちらで集計をしているのはそこに書かれている診断名をそのまま記載しているものでございます。どのような検査が行われていたか、そういったものまでは精査しておりません。そのまま集めているというものでございます。
○加藤委員長 今の小森委員の御意見は、副反応報告の診断名に関して、その診断の信頼性があるかどうかという御質問ととらえてよろしいですね。メカニズムはそういうメカニズムになっているというお答えでしたが、どうぞ。
○小森委員 昨日、厚生労働大臣が日本脳炎ワクチンの副反応調査についてはPMDA等を活用して、さらに詳細にこれを検討することを記者会見で報告なさったそうですが、PMDA等を活用する、また年に1回を3回にしてということは予防接種部会で第二次提言にもそれぞれ書き込まれていることでございまして、これを早急に立ち上げて、一人一人の方々はもともと大変な御苦心、御苦労になっておられる方々でございますので、お一人方お一人方には本当に心からお気持ちを寄せたいと思いますけれども、御協力をいただいてADEMなのかどうか等については明確に検証していくことを早急にしないといけないと強く感じています。
 したがって、この段階でそこを早急に明確にするという上でないと、確定的な議論はできない部分が残されているのかなと思っています。
○加藤委員長 ありがとうございます。
 この件に関して岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 小森委員と全く同じ意見です。現在のことよりも課題という意味では、よく副作用という言葉でかつて表されていたわけですが、これはあるものについて相当因果関係が深い。薬などを飲めばそういうことが出るのですが、ワクチンの場合はしかるべき反応としての発熱であるとか腫脹などもあるので、副反応という言葉を使い出しました。
 ところが現在は欧米でも世界的に有害事象という形で、ある行為、つまり予防接種をした後で何らかの健康の障害が起きたものは関連あるなしについて、全部きちんとした数として入れようという動きがあります。厚生労働省が今おやりになっている副反応報告は予防接種との因果関係の有無に関係なく、つまり有害事象をとらえながら副反応という言葉を使い、現場の医師のほう、私も予防接種は長い間やっていたときに、これは予防接種との関係は違うからもう届けない。つまり有害事象だけれども届ける必要はないという判断が動いたりしました。つまり現在の届け出システムはいろいろなものが種々雑多になっていると思います。
現時点のことで本日の事例についてどうするかということであるならば、先ほどのように小森先生がおっしゃったような、これについては詳細な検討をもう少し行った上での対応策としての判断が必要ではないかと思います。
 繰り返しになりますけれども、加藤先生が委員長をやられている予防接種部会でも、これの対応のやり方とは副反応のモニターをもう少し早く速やかに行って、それに対する評価を行う。その代わりに届けていただくのは有害事象、といったようなことについて、議論が重ねられています。これには法律の改正が必要なのでしょうけれども、早急にやっていただきたいところをあえて重ねての強調しておきたいと思います。
 以上です。
○加藤委員長 ありがとうございました。
 ADEMの話が出ましたけれども、感染研としてはデータをお持ちかどうかはわかりませんが、日本脳炎のワクチンに限ってもよろしいのですが、ADEMというのは、岡部先生はきょうの午後に分科会があるのですが、そこでもよく出てくる症例です。日本脳炎に限らずADEMというのは、有害事象か副反応化は別として必ず出てまいりますが、ワクチンとADEMは例えば何百万人にやると1例で出ますとか、そんなようなデータで、国際的なデータは感染研はお持ちですか。
○多屋参考人 感染研が持っているということではありませんが、海外の論文では、ワクチン全般で考えて50万~100万人に1人の頻度でADEMは報告されております。Journal of Clinical Neuroscienceという論文に記載されております。
○加藤委員長 ワクチンの種類ですか。
○多屋参考人 ワクチンの種類にかかわらずです。For most vaccines, incidence rates are as low as 0.1 to 0.2 per 100,000 vaccinated individuals.ですので、多くのワクチンで50万~100万人に1人です。
○加藤委員長 associatedですか。それは因果関係のありなしは関係なくという表現ですか。
○多屋参考人 そうですね。ポストワクチン、ワクチン接種後の頻度です。
○加藤委員長 それが50万~100万。
○多屋参考人 はい。
○加藤委員長 ありがとうございます。
○倉根参考人 今回の事例というよりは、前回のマウス脳ワクチンを使っておったときにADEMということが非常に問題になりまして、岡部班でADEMは通常他の要因感染であり、ほかのワクチンでも当然起こり得るということも参考人しながらも、時期的にそれが最も疑われるということで、当時ですからマウス脳ワクチンがADEMを起こす原因が見つかるかということでやりました。
 しかし、結論から申しますと、マウス脳コンポーネントは残っていてどうのこうのという原因を突き止めることはできませんでした。当時のマウスのワクチンによってADEM類似のものができるかできないかというのもできませんでした。
 ただ、そのときにはマウス脳から離れてVeroになれば、少なくともマウス脳のコンポーネントについては、理論的には問題なかろうということでありましたが、その当時も私自身は、個人としての言い方でございますが、一つはADEMというものが通常あるのであるから、Veroとしても時期的に重なるもの。ワクチンを打っても時期的に重なるものが出てくることはあるだろうという意見は述べておりました。
 もちろんVero細胞由来の日本脳炎ワクチンであったとしても、それはワクチンとしての何か絶対にそれが起きないのだということは理論的には難しかろう。ただ、脳のコンポーネントがないという意味では、それは理論的によかろうということだと思います。ですから、当時のマウス脳由来にせよ、Vero細胞由来にせよ、その因果関係を免疫学的に突き止めろというのは、現在でも非常に難しいと思います。恐らくわからないのではないかと思います。
○加藤委員長 わかりました。ありがとうございます。2~3年前のときの議論のおさらいをしていただいたということですね。
 ほかに御意見はございますか。
 多屋参考人、どうぞ。
○多屋参考人 事務局のほうでまとめていただきました資料2の脳炎脳症の発症例という数だけを見ますと、年によって大きな差があると思います。一方、日本脳炎ワクチンの非接種者回数については定期接種ですので勧奨が再開されますと、ほぼ一定した数であるにもかかわらず、年度によって差があるということは、ADEMという病気はワクチン接種後だけではなくて、いろいろな感染の後で起こってくることがありますので、その年に何かそういうことを起こすような感染症が流行していたということも一つ考えられるのではないかと。同じワクチンによって一定頻度で起こるのであれば、年に差があるというのは少し考えにくいのではないかと感じております。
○加藤委員長 岡部委員、どうぞ。
○岡部委員 今の頻度はまさしく私も申し上げようと思ったところですが、データとしてばらつきがあるということ。前回の勧奨接種を中止にしたときに、いかにも唐突に起きたという印象を多くの方は持たれていると思いますし、実際にその決断は唐突に行われたのでありますが、しかしその前に既に1年以上をかけて日本脳炎ワクチンとADEMの関係、これは前々から理論的な可能性として言われていたことなので、それに対してどうしようかということは当時の厚生労働省の中で有識者会議といいますか、検討会議のようなかたちで検討したりしていたということがあります。
 つまり、かなりの一つ一つの症例に対する分析であるとか、バックグラウンドであるとか、そこは相当慎重にきちんと見て、もちろん、不安をお持ちの方があるということは承知の上ですけれども、そこはできるだけ科学的に正しいものに近づける。全て100%までは至らないわけですが、できるだけそういう努力をやって、もう一回結論を出すというふうにしたほうがいいのではないかと思います。
○加藤委員長 取りまとめは何ですか。
○岡部委員 先走った議論なのかもしれませんけれども、私のところにもその対応はどうするのであるかと。つまり以前のように接種勧奨止めるのがいいのか悪いのかという御質問もあったので、今まとめての回答になるのですが、前回の勧奨の中止のときも、かなりの回数を重ねて議論を行っていた中での事例として決断が行われた。
 今回はADEMに関して言えば、急激に何か起きているというよりも、1年間あるいは24年度、23年度の例についての状況なので、年によるプラスマイナスもあるので、もうちょっとADEMという病気、あるいはその診断、関連性、その他を含めて、こういう場ではなくて、もうちょっと専門的な立場での議論をさせていただければと思います。
○加藤委員長 ありがとうございます。
 私から倉根先生によろしいですか。韓国で症例がふえたということで、理由がはっきり判明していないと。しかし、韓国は日本とは違ってというと語弊がありますが、国で診断しているので発症したものは確実であるという御発言だったと思います。
 岡部委員、日本では脳炎と髄膜炎と、どちらが全数報告でしたか。
○岡部委員 急性脳炎・脳症については全数届出です。例えばヘルペス脳炎とかインフルエンザ脳症は、急性脳炎脳症として全数報告になります。細菌性及びウイルス性髄膜炎は基幹病院定点からの報告ですが、これについては近々対象疾患について変更の可能性があると聞いております。
○加藤委員長 そうすると急性脳炎は全数報告だけれども、その中に場合によっては日本脳炎という病気が入っているか、入っていないかに関してはどうですか。
○岡部委員 事務局のほうが詳しいと思いますが、除く日本脳炎となっているので、日本脳炎というカテゴリーで届け出対象になります。
○加藤委員長 日本脳炎は別になっているということですね。
○岡部委員 そうです。
○加藤委員長 わかりました。ピントの外れた質問になってしまいましたが、私はその中に日本脳炎がもしかしたら紛れ込んで、急性脳炎の中に入っているのかなということで質問をしたのですが、別なのですね。
○倉根参考人 実はいわゆる日本脳炎疑いとして我々のところに来るサンプル数は、恐らく年に20くらいであります。ですから、ほかのもので日本脳炎以外というときに、どこまで日本脳炎以外をどうやっているのかは実はわからないです。
○岡部委員 関連してですけれども、日本脳炎はでき上がった脳炎の病気であって、日本脳炎ウイルスの感染症としては、その手前の髄膜炎症状であったりすることもあるので、日本脳炎として届けられるのは感染して脳炎が確認された例であって、不明の髄膜炎で後で検査をしてみると日本脳炎ウイルス感染であったというようなレポートもあります。
○加藤委員長 私が御質問をしたのは、多屋先生の御報告で日本を疫学的に見てみますと、自然に感染している例があるという御発表でした。したがいまして、その中に今、私がお話をしたような例が今後入ってくる。今まではないと思いますが、そういう可能性もあるのではないかと思って、倉根先生に御質問をしたわけです。
○多屋参考人 今の御質問に関連してですけれども、急性脳炎としての全数報告は毎年250人くらいございます。しかし、その中で原因、病原体がわかっているものが約半分くらいしかございませんので、残り半分は原因不明の急性脳炎として御報告をされているという現状にあります。その原因不明の方が皆さん、日本脳炎を鑑別に入れて否定されているかどうかは、若干されていない方もいらっしゃるのではないかとは感じております。
○加藤委員長 そうすると報告だけの話になってしまいますが、急性脳炎として、その方の髄液をいただいて検査をするところまでには至っていないと考えてよろしいですね。
○多屋参考人 はい。急性脳炎は全数報告ですが、感染拡大をするおそれがあるときは全国の地方衛生研究所でもその原因究明をされることがありますが、そういうことでは考えられない場合、なかなか全国でされていることは難しいときがございますので、日本脳炎の鑑別がされていない場合もかなり多いのではないかと感じております。
○加藤委員長 ありがとうございます。
 廣田委員、どうぞ。
○廣田委員 このADEMがもとで、かつて積極的勧奨を差し控えています。現在ちょっと見たところ多いのではないかという数字が表れています。これはバックグラウンドの数値と比較しなければならないので、このバックグラウンドの数値がどうかということをしっかりさせないといけないと思います。
 これは岡部先生の研究班でもされていますし、4つか5つくらいの報告があって、10万人当たり0.3~0.8くらいまで、調査によって幅がございます。各調査を私も詳しくは見ておりませんけれども、当然長所,短所はあるでしょうし、それなりの偏りとか全てあるでしょうから、例えば小委員会の下にワーキンググループみたいなものをつくって、その一つひとつのスタディーの特色を明らかにして、可能であれば、全部のスタディーをブールして、大体このくらいと。信頼区間はどのくらいと。そういった作業をして、その数値が明らかにできればと思います。
○加藤委員長 先生がおっしゃるバックグラウンドという意味は、ワクチン、associateでないADEMがあるという御意見ですね。
○廣田委員 はい。
○加藤委員長 ほかに御意見はございますか。
 永井参考人、中に御意見はございますか。
○永井参考人 特にございません。
○加藤委員長 ほかにいかがでしょうか。特に御発言はございませんか。ありがとうございます。
 それでは、私なりにきょういただきました資料並びに各委員からの御意見をメモいたしまして、少しまとめてみますので御意見をいただけたらと存じます。日本脳炎ウイルスは多屋先生の御発表のとおり、ブタの間で流行しておりまして、また、ワクチンを接種していない小児が先ほどの例で行きますと数%が一定程度、自然感染していること。それがもし発症した場合の致死率は、かなりのすごい数が出てびっくりしましたけれども、致死率を考えると現在でも日本脳炎という病気は脅威の病気であると考えざるを得ないと感じました。
 一方、副反応報告ですが、小森委員からの御発言も出ましたが、一定程度のADEMの報告が認められておりますけれども、これは厚労省からの御報告のとおり、そもそも現在の副反応報告と申しますものは因果関係を問わずに収集しているものでございまして、症例の概要を見ますと、これはきょうの症例でも出てまいりましたけれども、これがADEMかどうかを確定的に診断できるものではありません。ADEMという診断が上がってきたものをそのまま報告例としてADEMとしているというようなことがございますので、事によるとADEMでないような疾病もADEMとして入っている可能性もなきにしもあらずであろう。
 先ほど多屋先生のほうから、いろいろな国際的な論文を見てみると、各種のワクチンによってADEMが生じてくる確率が50万~100万ドーズに1例くらいは出てくる。これはかなりきちんとしたエビデンスを持ったデータが公表されているというところから勘案いたしますと、今回かなりの数のADEMまたは脳炎脳症が挙がってきてはおりますが、きょうの各委員の御意見をお聞きいたしましたところを統括いたしますと、それをもとに直ちにすぐに現在の日本脳炎ワクチンの接種を中止する必要性を私は感じとらないと判断いたしました。
 ただし、きょういろいろと御意見をいただきましたとおり、予防接種制度、その自身の信頼性を高める必要があります。部会でもやっております。したがいまして、今回報告されました脳炎脳症も含めまして、小森委員のお話のとおり、できる限り早く情報を収集いたしまして、因果関係の評価を行う必要があろうかと考えております。その上でどの程度の副反応の報告があれば、このワクチンは危険なワクチンなので中止をすべきであろうかというような一定の基準もどこかの場で決めておいたほうがよろしいのではないかと私自身は考えているところでございます。
 これは私のきょうの取りまとめの意見として申し述べましたが、各委員の方々。何か異論がございましたら訂正いたしますけれども、よろしゅうございますか。
(「はい」と声あり)
○加藤委員長 ありがとうございます。
 では、そのように取りまとめましたので、事務方のほうはよろしくお願いいたします。
 議題の1はここまででよろしゅうございますね。そうすると議題2に入ります。
 議題2につきまして、専門官からお願いいたします。
○喜多ワクチン対策専門官 お手元の資料5でございます。タイトルが「積極的勧奨の差し控え(平成17年5月~22年3月)に対する対応について」でございます。
 本日、死亡の2事例と副反応について、日本脳炎の疫学について御議論をいただきましたが、これは平成17年5月30日~平成22年3月31日まで積極的勧奨を差し控えていたことで、当時勧奨の対象となっていた年齢のお子さんで勧奨ができなかったというお子さんのために、その後、政令の改正をいたしまして、平成7年6月1日~平成19年4月1日生まれのお子さんについては、20歳未満まで日本脳炎の定期接種として行えるということで、政令対象者を変更して対応しているところでございます。
 これについて、当時対応が平成17年5月30日から行われたということで、十分に勧奨の期間がない方ということで6月1日生まれの方からということにしていたところでございますが、同じ学年で対応が異なるということで不公平であるという声もございまして、これについては6月1日生まれ以降ではなくて、平成7年4月2日以降に拡大すべきではないかという意見が寄せらせておりますので、これについては今後課題として考えていただかないといけないということでございます。
 2番については積極的勧奨の差し控えの時期で勧奨ができていなかったことで、現在第2期接種の積極的勧奨については当時できなかった方も含めて、現在行っていないところでございますが、先ほど御議論をいただきましたような副反応の状況ですとか、日本での日本脳炎の疫学の状況などを含めて、前回、平成23年2月の日本脳炎に関する小委員会第4次中間報告ということでこの裏にございますが、第2期接種の機会を逃した者についての第2期接種の積極的勧奨についてはワクチンの確保状況等を踏まえ、適切な時期に判断を行うということでございますので、今後第2期接種の勧奨も必要かどうか。必要であるのであれば、現在は来年度18歳、高校3年生になる学年のお子さんが対象の年齢の方としては一番年長にお子さんになるものですから、そういった方たちへの第2期の積極的勧奨が必要かどうかも今後御議論をいただく必要があるということでございます。
○加藤委員長 ありがとうございました。
 大体1年半くらい前のときに、この議論をこの委員会でいたしまして、第2期接種の方々の積極的な勧奨の年齢がそろそろ高校3年生になってしまうので、その件について、そろそろ決める時期が来ましたということでございます。本日ここで決定するのではなくて、各委員共通の認識を持っていただきまして、この件については次回以降に検討していくということでよろしゅうございますか。
○喜多ワクチン対策専門官 そういうことでございます。
○加藤委員長 事務局がそのような意向でございますので、今後の共通の認識にとどめまして、次回にこの件については検討をいたしたいと考えます。
 ここで議題1と2は終了でございますが、そのほかにつきましては委員から何か特別な御意見はございますか。
○岡部委員 今回は本当に不幸な事例が起きていると思いますけれども、特に日本脳炎で急死された方についてはいろいろな議論が行われました。その事例が直接どうであったかということではないのですが、いろいろなワクチンの手引き書、あるいはハンドブックみたいなものに書いてありますように、ワクチン接種の現場で救急用具を備えておくことが重要です。アナフィラキシー対応が中心にはなりますが、接種後30分間は様子を見てくださいというのはいろいろなところで出ていますが、そういったようなアナウンスであるとか、ワクチン接種に伴う安全性の確保をもう一回アナウンスをしていただいたほうがいいと思います。これは決して今の事例がそうだった、こうだったということではありませんけれども、再確認を是非よろしくお願いいたします。
○加藤委員長 ありがとうございました。
 どうぞ。
○倉根参考人 私が先ほど言ったことで誤解されると困るのでもう一度申し上げますが、ワクチンを打って、その後に種々の症状が出た場合には、当然それは原因究明をすべきで、ウイルス感染にせよ、バクテリア感染かもしれせん。それがわかることによって、真の姿が見えてくるという意味では、当然すべきだと思います。
 ただ、先ほど申し上げましたのは、実験室の検査は必ずしもそれがオールマイティーではなくて、わからないときも科学的には当然あるということを申し上げたまででございます。
○加藤委員長 ありがとうございます。
○岡部委員 ここで議論をすべきことではないのかもしれませんが、多屋参考人が先ほども触れていたように、予防接種にかかわって何か事故が起きたときに、どこが検査等々を引き受けるかということは実は確定されていなくて、私は今、地方衛生研究所にいるのですが、感染症法に定められたものならば行政検査としてできるけれども、こういったような事例の検査は実は受け入れる余地がない。そういった検査をどうするかということも課題として挙げておいていただければと思います。きょうで解決の問題ではないのですけれども、そういう課題があるということの解決策をぜひ御検討いただければと思います。
○加藤委員長 それでは、事務方のほうはテークノートしておいていただいければと思います。
 ほかに御意見はございますか。どうぞ。
○小森委員 きょう審議をされたお二人のお子様は、ワクチン液そのものとの因果関係はあくまで不明と言わざるを得ないわけですが、心からお悔やみを申し上げたいと思います。国民の方々にこの際広く、よりワクチンというものが子供さんを中心とした大切な命を守るものであると。ただし、その理解をしていただくためには、こういった原因を明らかに正しく、国を挙げての調査、公開、透明性ということがあって初めてできていくものだと思いますので、このことを契機として一層、国の方々にはさらなる人員の配置、予算の投与、公開について、私たちも医療者の一員として、日本医師会としても積極的にとり組んでいきたいと思いますが、このことについて建設的な前向きな、一人一人の命を大切にする制度がより進化する本当にいいきっかけにしなければ、お亡くなりになられた方々に対しても失礼だと思いますので、そのような態度で今後も我々は臨んでいきたいと思いますので、国の方々にもぜひよろしくお願いしたいと思います。
○加藤委員長 貴重な御意見をありがとうございました。
 本日の議題につきましては、本委員会からの経過報告という形で予防接種部会のほうに報告をさせていただくということにいたしたいと存じます。御協力をいただきまして、大体の時間以内に議論が終了いたしまして、ありがとうございました。
 事務局のほうから御発言がございましたら、厚労省側としての意見がございましたら、ぜひよろしくお願いいたします。
○正林結核感染課長 きょうはどうもありがとうございました。特に最後の小森先生のコメントにレスポンスをしたいのですが、ことしの5月に予防接種部会から御提言をいただいて、特に副反応報告についてはもっと改善をするようにという内容の御提言をいただいています。これを実現するために一刻も早く予防接種法の改正に取り組みたいと考えています。
 昨日、大臣が会見で申し上げました。先ほど政務官からも御紹介がありましたけれども、日本脳炎については一件一件、特に死亡とか重篤なケースについては、きちんと調べて評価をして公表していくということを早速とりかかりたいと思っております。
 きょうの会議においては、結論としては今、行われている日本脳炎のワクチンについては、直ちに接種を中止する必要はないという結論だったと思いますので、この結論については将来、これから幹部にも上げて、厚生労働省としてもどういうスタンスでこれからやるのかを決めていきたいと思います。
 きょう幾つか宿題をいただきましたので、次回の小委員会に間に合うように改めて整理して、資料を御提供したいと思っております。日程については委員長と皆様方の御都合を聞きながら進めていきたいと思います。
 きょうはどうもありがとうございました。
○加藤委員長 それでは、事務局のほうはよろしいですか。
 それでは、本日の小委員会は終了でございます。御多忙中のところをどうも本当にありがとうございました。


(了)

照会先 健康局結核感染症課予防接種係(03-5253-1111 内線:2383、2100)

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