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2012年10月24日 第68回労働政策審議会職業能力開発分科会議事録

職業能力開発局

○日時

平成24年10月24日(水)13時00分~15時00分





○場所

中央合同庁舎第5号館 厚生労働省専用第14会議室(22階)







○議題

○今野分科会長 時間となりましたので、第68回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催いたします。本日は浅井委員、黒澤委員、高倉委員、豊島委員、上原委員がご欠席です。まず、この分科会に所属される委員の交替がありましたので、報告いたします。交替後の名簿は参考2で配付しております。ご覧ください。
 まず、労働者代表側は、伊藤委員に代わりまして、全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会の冨高委員が就任されました。次に、使用者代表は浦元委員に代わり、キヤノン株式会社の大野委員が、橋本委員に代わり三菱電機株式会社の大隈委員が就任されましたので、よろしくお願いします。
 さらに事務局の人事異動がありましたので、紹介いたします。山田職業能力開発局長、内田審議官、吉本総務課長、内田基盤整備室長、河野実習併用職業訓練推進室長、総務課宇野調査官、能力開発課青山企画官です。事務局が大幅に変わりましたので、局長から御挨拶をいただきたいと思います。

○山田職業能力開発局長 能力開発局の山田でございます。いま御紹介いただきましたように、大幅な人事異動がございました。前任と同様、よろしく御指導、御鞭撻をお願いしたいと思っております。一言だけ申し上げさせていただきたいのですが、御案内のように税と社会保障の一体改革議論、負担と給付の関係は本当に容易ならざる状況になってまいりまして、こういう状況の中でやはりいかに社会的なコストを抑えていくか、あるいは活力ある社会を確保していくかという意味で、就労による生活保障というものの重みは、さらに増していると考えております。そういった意味でミスマッチの解消のための能力開発あるいは社会の活力を高めていくための能力開発は、非常に重要性が増していると思っております。昨年10月から始まりました求職者支援制度あるいはジョブ・カード制度、さまざまな課題に取り組んでおりますが、まだ途上であるというものも非常に多い状況でございます。いろいろ課題はございますが、皆様のお知恵もいただきながら、しっかりと進めてまいりたいと思いますので、是非、よろしくお願いを申し上げます。以上でございます。

○今野分科会長 それでは議題に入ります。資料の1ページの議事次第に沿って進めます。まず、議題1は「平成25年度職業能力開発局重点施策と概算要求の概要について」です。事務局から説明をしていただいてから議論をしたいと思います。よろしくお願いします。

○吉本総務課長 総務課長の吉本でございます。よろしくお願いいたします。資料1の1ページに、「平成25年度概算要求総括表」を付けております。いちばん下の合計、来年度概算要求額1,769億円の要求です。内訳を簡単に御覧いただくと、一般会計が前年比10.1%の増で、これは後から申し上げますように、重点化要望枠で地域若者サポートステーション事業の新規事業を要求している関係です。それから労働保険特別会計は8.2%の減ですが、これは訓練規模全体を最近の求職者の動向等を踏まえた形で見直しをかけた結果としての減です。以下個別に御説明申し上げます。
 まず、2ページの第1「成長分野・ものづくり分野などでの人材育成の推進」について御説明します。その1は「成長分野・ものづくり分野での離職者訓練や在職者訓練の推進」についてで、これが公共職業訓練あるいは求職者支援訓練の予算で、局全体の予算の多くの部分を占めております。いわゆる成長分野での訓練あるいはものづくり分野での訓練、それらを引き続きしっかり実施していきたいということです。在職者については業界のニーズ等も勘案して引き続き実施していきます。
 2の「長期の訓練コースの開発・設定」は新規とありますが、現在の離職者訓練は原則3か月から6か月程度ですが、今回の成長分野などで中核的な役割を担うような、そういう仕上がり像を念頭に置き、より長期の1年ぐらいのコースを試行的に開発・実施したいと考えているものです。
 3の「ものづくり立国の推進」は、再生戦略などでも技能継承の重要性が言われておりますが、そういうことを踏まえて企業OBなどの優れた技能者の方々をものづくりマイスターといった形で認定・登録をして、そうした方々を企業であるとか、訓練機関における若手の実技指導に派遣していく事業を新たに考えております。特に若者のものづくり離れなども言われておりますので、そうした技能に関する関心喚起といった趣旨のイベントなども開催したいと考えています。
 4の「新事業展開地域人材育成支援事業の推進」は、今年度からの継続ですが、地域の業界団体などがこれまでの技能を活かしつつも、新たな事業展開を図るための人材育成が必要なときに、教育訓練機関と一体となってカリキュラム開発・教育訓練の実施などを行うというもので、全国で10カ所程度で引き続き実施したいと考えているものです。
 第2の「重層的なセーフティネットの構築」は、冒頭に申し上げた公共職業訓練、求職者支援訓練の再掲です。第3の「職業生涯を通じたキャリア形成支援の一層の推進」についてご説明します。1の?、政策課題に沿った人材育成の支援についてですが、これは具体的にはキャリア形成促進助成金を、若年者の育成、グローバル人材、成長分野といったような政策課題に対応したものについて、重点的に助成をする形で見直しを図る予定です。特に非正規雇用については、これまでもほかよりも手厚い助成の体系になっておりましたが、今般、後ほど申し上げますが、安定局で非正規全体のキャリアアップのプロジェクトが考えられており、その中に助成金のメニューも位置づけて実施していきたいと考えております。
 4ページ、?の中小企業などでのキャリア形成支援については、これまでも中小企業にキャリア・コンサルタント、社労士の方を派遣して計画的な人材育成のアドバイス等をしておりましたが、そこの労働者、非正規の方、若年労働者が直にキャリア・コンサルティングを受けられるような形にもしていきたいと考えております。後題の部分ですが、ワーキングホリデーなどの海外経験を希望する若者について、将来のグローバル人材の育成のようなことも念頭に置いて、それがキャリア形成に資するようなものになるようにキャリア・コンサルティングなどを実施する事業を考えております。
 2の「キャリア・コンサルティングの活用促進」については、キャリア・コンサルタントの養成、あるいは質の向上のための事業を引き続き実施していきたいと考えております。3「ジョブ・カード制度の推進」についても引き続き「ジョブ・カード普及サポーター企業」の開拓などを実施するほか、昨年に策定した学生用のジョブ・カードの活用促進ということで、大学などとも連携して、好事例の収集・普及などに取り組んでいきたいと思っております。
 第4は「職業能力評価システムの整備」です。1の「職業能力評価基準の整備・活用促進」については、これまで業種ごとに策定をしてきましたが、それらをより使いやすく、分かりやすくするためのツールとして、キャリアマップ、職業能力評価シート、これらの策定を引き続き進めていきたいと考えております。
 2の「技能検定制度の整備」については、後ほどの報告とも関連しますが、過去の事業仕分で予算削減を求められたりなどしておりますが、それに対応しつつ必要な訓練費用の効率化などを図りつつ、制度については着実に整備を進めていきたいと考えております。
 第5、「『望ましい働き方ビジョン』の実現に向けて」については、いわゆる非正規労働者対策です。1にあるプロジェクトが先ほど申し上げた安定局中心で考えております非正規対策のプロジェクトで、非正規の人材育成に関する部分は来年度以降、こちらのプロジェクトの1つとして行っていくものです。
 再掲については割愛して、第6の「『若者雇用戦略』の推進」について御説明します。1の「キャリア教育の推進」は、大学等においてもキャリア・コンサルティングを実施していただくようにということで、そのための専門人材を育成するための事業を引き続き実施していきたいと考えております。
 6ページ、5の「ニートなどの若者の職業的自立支援の強化」です。これはニート対策として、地域若者サポートステーション事業を順次拡充して実施してきておりますが、来年度は更に140カ所ということで拡充したいということです。?が冒頭に申した重点要求の新規の事業ですが、これは生活支援戦略などとの関係もあり、特に貧困の連鎖を立ち切っていこうというようなことで、早い段階、学校にいる段階から必要な方についてはアウトリーチをかけていこう。あるいは中退者についての支援も強化していこうということで、学校との連携をきちんとやっていきたいという事業です。6は「高校中退者などに対する学卒者訓練の受講支援」。これは高校の授業料の無償化に対応して、こうした学卒者訓練については受講料を免除する形の予算措置です。
 第7の「障害者の職業能力開発支援の充実」は、1のところですが、6月に行政事業レビューの公開プロセスで指摘を受けておりますが、それを踏まえた形で障害者の方々、障害者の特性に応じていろいろ委託訓練の形で実施している訓練がありますが、そういった委託先開拓のために、試行的にこの単価を見直すなど、あるいは一貫した支援体制を構築するための見直しなどを考えております。
 最後に第8、「人作りを通じた国際協力の推進等」です。1の「技能実習制度の適切な運用」については、引き続き監理団体や実習実施機関への巡回指導などを通して、適正に制度を運用していきたいというものです。それから2の「技能評価システムの移転など職業能力開発分野の国際協力の推進」については、そうした技能評価システムの開発途上国への移転、あるいはASEAN等に対しての職業訓練、人材育成のための協力を引き続き実施していきます。また、3「日系人などの定住外国人に対する職業訓練の推進」も引き続き実施したいと考えているものです。簡単ですが、以上です。

○今野分科会長 御質問、御意見をお願いいたします。

○澤田委員 2点質問させていただきます。1つ目は、いま説明のありました概算要求の関係です。先ほど、労働保険特別会計について訓練規模に応じた見直しを行うという説明が少しあったかと思います。概算要求額は、トータルで見て、約140億円の減少になっています。このことが職業能力開発行政の後退・縮小を意味しているものではないということを確認しておきたいと思います。
 併せて、この職業訓練に関して申し上げたいと思います。私どもはものづくり産業の組合ですが、昨今若干の改善の兆しはありますけれども超円高が続いており、最近では事業所の閉鎖がかなり起こってきています。そういう中で、大きな企業では別の事業所に人を異動させるわけですけれども、中には地元を離れられないケースも多くあります。そうなると、その地域で新たな職を探さなければいけないという事態も多々発生してきています。そういう動きがちょっと加速していると受け取っていますので、全体の総枠の予算の中で、そういう事態においても再就職のための職業訓練にきちんと対応できるような体制がとれるのかどうかを確認させていただきたいと思います。
 2つ目は、3ページの「職業生涯を通じたキャリア形成支援の一層の推進」のところですが、「政策課題に沿った人材育成への支援」という視点が提起されています。このこと自体はやるべき事項だと思います。今は厳しい状況にありますけれども、雇用の受け皿としてものづくり産業は重要なポジションにあると思います。そういう中で、政策課題であるグローバル人材を育成していかなければいけないということだと思います。それぞれの企業が行う訓練に具体的に助成をしていくということですので、どういうイメージのところに助成をしていくのかという実例がありましたら少し紹介していただければと思います。

○志村能力開発課長 1点目の訓練規模の見直しとか、その地域で必要とされる訓練についてお答えをさせていただきます。訓練規模については、公的職業訓練ということで、公共職業訓練の施設内訓練と委託訓練と、求職者支援制度とを併せて、平成24年度は約47.4万人を見込んで実施しております。平成25年度要求については、公的職業訓練全体の数字から申し上げますと約33.3万人です。求職者支援制度については16.8万人、残りの16.5万人について、都道府県が実施する施設内訓練とか、民間の委託訓練という構成で平成25年度要求を考えております。
 大きく減っている部分は、主に民間教育訓練機関等が手がける委託訓練とか、求職者支援訓練の要対人員について見直しを行いました。見直しの理由については、共通するところもあるのですが、求職者支援制度については、全体的な求職者の減少傾向ということと、求職者支援制度を1年実施して、実際にハローワークの窓口を通じて支援指示等を行って訓練を実施しているわけですが、その実施状況も踏まえ、平成24年度は24万人でありますが、平成25年度は16.8万人と3割ぐらいの減少で見込んでおります。
 公共職業訓練の委託訓練については都道府県から委託していますが、数年前までは機構のほうから委託をしておりました。この間、順次都道府県からの委託のほうに訓練シフトをしていきました。そのような状況や、求職者の減少傾向を見て、訓練規模を3割程度減らしたということです。
 訓練の予算については、産業分野だとか、その実数で何人が受けるということもあるのですが、例えば事務系の訓練では都道府県によっても訓練期間というのは予算では2か月、3か月を見込んでいても、実際はもう少し長かったりするとかいろいろなファクターを勘案して、平成25年度は見込んでおります。結論としては、いずれにしてもこのような平成25年度の予算要求に伴い、地域の求職者に対して訓練機会が不足することはないように考えております。
 訓練の種類ですが、地域で実際にされる訓練の種類についても、都道府県のヒアリングを通じ、地域においても製造業等の厳しい状況は地方で異なる側面がありますので、そのようなことを都道府県ごとに聞き合わせて予算査定、そして実際の実施においては異論のないようにやっていけるように努めてまいりたいと考えております。

○今野分科会長 2点目はどうですか。

○山本育成支援課長 キャリア形成促進助成金については、政策課題対応型として、新しいメニューを新設し、重点的な助成をする、ということを平成25年度予算要求しております。
 その中で、例えばグローバル人材では海外留学や海外への派遣のために必要な国内での語学、外国文化、商習慣といったものに関する研修に対する助成を行いたいと考えております。また、海外に新たに事業展開していくために必要な研修に対して助成を行いたいと考えております。
 ものづくり分野に関しては、ものづくり分野の人材育成ということで、最近は教える人材が不足しているということもありますので、熟練技能者による指導者の養成、若手社員に対する技能の承継のための訓練に対して助成したいと考えております。

○澤田委員 求職者数が減少傾向となるだろうという読みの下に予算化しているとのことですが、自分たちの職場を見ていると果たしてそうなのかなとも感じます。求職者等の実態に合わせてきちんと対応していただきたいと思います。

○冨高委員 私からも2点ほど質問させていただきます。4ページの「職業能力評価システムの整備」の「職業能力評価基準の整備・活用促進」の箇所について、「職業能力評価基準の策定・改訂を推進する」と書いていただいています。ここで肝心なのは、こうした評価基準を策定するだけでなく、きちんと関係者に活用させていくことだと思っています。ここでの記載内容については、ほかの場でもいろいろ説明をいただいていますが、更に各業界等への周知を徹底いただくことが重要だと思っています。
また、策定だけにとどまらず、こうした評価基準が各業界のニーズに本当に合致しているか、ニーズに真に即しているかというところをきちんと検証していただきたいと思います。現時点でどのような検証をされているか、その検証状況についてお伺いいたします。
 2点目は、5ページの第6「『若年雇用戦略』の推進」の「キャリア教育の推進」のところです。こちらに書いてある「地域キャリア教育支援協議会」ですが、我々労働者側である連合としても、積極的に地方連合会を通じてこの協議会にかかわっていきたいと考えています。しかし、協議会の設置に向けての動きがなかなか見えてきていません。この協議会については、具体的には文部科学省主導で展開されると伺っていますが、厚生労働省としての取組み状況や他省庁の動きを含めた現在の状況が分かれば教えていただきたいと思います。

○今野分科会長 2点質問がありました。

○星能力評価課長 最初の評価基準の関係について御説明申し上げます。委員御指摘のとおり、この評価基準は、策定のみならず活用されることが非常に重要だと考えております。私どもも、これまで業界団体と協力しながら策定し、普及に当たっても、広くホームページ等で提供するとともに、具体的に活用を進める上では、業界団体等を通じて、具体的な相談なども行っていくという手法を中心にやってきたところです。
 しかしながら、結果として10年近くやってきている中で、業種によって広がりが出てきていないのも事実です。個々の企業で活用することになると、企業の能力評価システムなり、人事評価制度にカスタマイズしていく作業が必要になるということで、中小・零細の企業では使い勝手がよくないという御指摘もありました。その辺は逆に言えば業界の方々から、どういう点に活用の面でのボトルネックがあるのかということを確認した中で、現場で短時間の間に具体的に活用できるようなツールが必要なのだという御指摘もあり、キャリアマップや職業能力評価シートのような汎用性のあるツール策定に当たっても業界団体の力をお借りしているところです。
 活用に向けた検証状況ということですけれども、いま申し上げたように具体的な活用の状況を、業界団体に伺いながら、どういう点がネックになっているのかということで、そのネックを解消するという取組みを始めてきている状況です。

○浅野キャリア形成支援室長 もう1点お尋ねの、地域キャリア教育支援協議会の関係です。先ほどおっしゃったとおり、文部科学省のほうが主導で、教育委員会が事務局でこれを設置すべく準備を進めております。
 私ども厚生労働省も、都道府県労働局等が関与しているところです。いまリアルタイムでどういう状態かということまでは把握しているわけではないのですけれども、安定局、文部科学省とキャリア教育関係、若年雇用関係で情報交換する機会もたくさんありますので、そういった機会に状況を把握し、情報提供させていただきたいと考えております。

○今野分科会長 最後の点は、また電話でもして聞いていただければと思います。

○冨高委員 最後の点については対応をお願いします。職業能力評価基準については、先ほど説明いただいたように、特に中小企業ではこういった評価基準が明確になっていないところが多いかと思いますので、是非中小企業にとって使い勝手のよいものを作っていただきたいと思います。

○新谷委員 いま冨高委員が発言された1点目の「職業能力評価システムの整備」について申し上げます。これは前にも申し上げたことですが、事務当局が言うように、評価基準を作った後でその活用を促進するよう業界団体との調整を図るということでは、物事の順序が逆ではないかといつも思うのです。人材育成や評価について業界にこのようなニーズがあるから国としてはそうしたニーズに合った評価基準を作って支援していく、というのが本来の姿ではないかと思うのです。国が策定したものを後追いで業界で使ってくれというのでは、おかしいではないか。取り組み方の順序を変えるべきだと思います。
 また、この分野では、経済産業省が作った「ITスキルスタンダード」が、業界の活用度から見れば抜群に使われていると思います。これがなぜ成功し、一方で厚生労働省が作られたものはなぜ活用が不十分なのかというところを、分析していただきたいと思います。せっかく国費を投入して作るわけですから、やはり活用されることを目指して良いものを作るよう頑張っていただきたいと思います。

○今野分科会長 ちゃんと分析して、戦略を作っていけということです。専らこちらしか御意見がないのですけれども、左側はいかがですか。

○大久保委員 私も2点質問させていただきます。1点は、「若者雇用戦略の推進」という6番目に掲げてある枠です。これは、もう少しすると若者雇用戦略推進協議会が立ち上がって、具体的に中身を詰めていくことになると思うのです。その中の6番目に、「高校中退者などに対する学卒者訓練の受講支援」が挙げられております。若者雇用戦略の中でも、中退者向けのフォローアップというのは随分時間をかけて議論されたところだと思います。1つお聞きしたいのは、実態として現在高校中退者がどの程度職業訓練のメニューを受けているのか、それを取り込んでいるのかどうか。実態が見えなかったので、それが分かっているところがあれば教えてください。
 若者雇用戦略の中では、高校中退者の問題と併せて、大学に入って早々に中退する人たちが大変多くて、その人たちがうまくキャリアパスが形成されていなくて、いろいろ困難な状態になっているということで、大学の中退者の問題も随分議論されたと思うのです。ここでは大学中退者の視点は入っていないのですが、これについてはどのようにお考えになっているのかという、その中退者問題をお聞きします。
 2点目は、「障害者の職業能力開発支援」のほうで、いま障害者の問題はホットテーマで、大変重要な切り口だと思うのです。障害者雇用の括りの中の、精神障害の人向けの職業訓練というのは、いまどのような感じで取り組んでいるのか。今後職業訓練、職業能力開発メニューを開発するような計画があるのかどうかも含めてお聞きいたします。

○志村能力開発課長 高校中退者の実態ということですが、詳細を把握するのはなかなか難しい状況です。私どもは訓練校のチャネルを通じてこの予算要求を考えており、要対人員的に入学料、受講料を免除していく対象としては、全国で950人程度を考え、これが所要額として計上されています。この辺の実態については、安定局等ともいろいろ連携して探っていき、実際に訓練校の窓口でも把握される状況等を踏まえて注視していく必要があるかと考えております。この950人に対して、入学料は1人当たり5,650円、授業料は年間一人当たり11万8,800円ぐらい取っているということですが、地域によって若干違っている面もあるかと思いますが、大体そのような学卒訓練の実情の中で、無償化を施行していくというものです。
 大学の中退者に対する対策はどうなのかということですが、ここのところは今回の若者については、特に訓練の要素としては入れておりません。実態の把握等も含めて今後の人材育成にかかわる検討の課題なのかと思っております。
 障害者の能力開発のうちの、精神障害のところですけれども、ここは6ページのところで、障害者の能力開発支援の充実ということで平成24年度は55億円計上しておりましたが、公開プロセスにかかった部分はうち15億円程度の委託訓練の予算です。平成25年度は、障害者の職業能力開発の要対人員的には、障害者の訓練校の部分が大体2,300人というオーダーで、委託訓練が大体6,700人ということで、身体・知的・精神の3障害全体で、施設内と委託を含めて大体9,000人のオーダーの訓練規模を見込んでおります。
 障害のある求職者については、いわゆる健常者の求職者の動向とは違って増加傾向にあります。そして増加傾向にある中で、障害の種別で多いのは精神障害です。それに対する対策として、施設内について、障害者校は全都道府県にあるわけではありませんけれども、19校の中で先進的に取り組んでいる学校等のノウハウをうまく水平展開させていく中で対応していきたいと考えています。
 あとは、民間の訓練のほうもNPOとか、事業所とかいろいろな主体に委託してやっているわけですが、そういう中で知的・身体に比べて、精神障害者の訓練においては、ずっと訓練を受け続けていくのに集中力が続かないというような要素も、現場を視察させていただく機会に、そのような話も聞いております。これはほんの一部の話ですけれども、そのような所も含めてしっかり対策を進めていきたいと考えております。

○浅野キャリア形成支援室長 若者雇用戦略と、大学中退者の関係で補足させていただきます。訓練でなくて、ニート対策の方では、「高校中退者等」の「等」の中には、大学を中退した方も当然入っていると考えております。実際に地域若者サポートステーションを利用していただいている方の中には、大学中退者もたくさんいらっしゃいます。そのような方に対して、地域若者サポートステーション経由で訓練校といった、訓練する機会を提供するといったこともあるところです。

○今野分科会長 いまの大久保さんの質問の1点目は非常に単純で、高校中退者、大学中退者を含めてもいいのですが、公共職業訓練の受講の状況はどういう現状になっていますかという質問なのです。お答えは、十分に把握できていないというお答えだと思うのです。こういうことを大久保さんに情報提供してあげるといいいかと思うのですが、予算上950人の根拠を言っていただけると、大体こんなことを考えて950人と設定したと。こういうことというのは、少しは実態を踏まえているわけだから、いかがですか。

○志村能力開発課長 これは、積上的には都道府県等の公共職業訓練施設で、中卒者対象の訓練コースがマックス950人見込める。だから、この施策の対象者が現実に950人いるというわけではなくて、公共の施設内で受けられる訓練のマックスを見込んでいるということです。そういう意味では、いまいる中卒者の実態把握という点では、実数をシミュレートしたものにはなっていないということです。

○今野分科会長 後半の質問は障害者の職業訓練について、精神障害者についてはどういう状況になっていますかということです。増えているとかいろいろお話になっていましたけれども、全体の中では何十パーセントぐらいで、それで年5%ぐらい増えているとか、そういう話を大久保さんは聞きたいと思っているのだと思います。時間のこともありますので、そういう情報があったら整理をして、大久保さんに提供していただければと思います。

○志村能力開発課長 それについては整理した資料がありますので、別途送付致します。

○三村委員 3点おうかがいしたいと思います。高校中退の件ですが、高校中退率というのは、現在、年に約2%です。100人入学したとすると、年に2人、3年経つと6人が辞めていくことになります。この中退者に対するサポートというのは現段階では非常に弱く、今回、「サポートステーションと高校をつなぎながら、中退者を把握する」とありますが、実際にどのような方法で把握するのか。文部科学省との協力もどの程度まで進んでいるのかということを1点お伺いいたします。
 2点目は、その上のジョブ・カードの件ですが、私はかつてから何度も主張しておりますが、高校生にもジョブ・カードを持たせて、切れ目のない支援というのを、特に必要な若年者に続けていくというのは非常に重要ではないか、ということが2点目の質問です。
 3点目はキャリア教育の推進です。これはキャリア・コンサルタントの活用が主かと思うのですが、最初に挙げられている「ものづくり戦略」等を考えますと、特に小学校、中学校辺りにものづくり教育プログラム的なものを開発し、その後のキャリア教育につなげて展開していくという、いわゆる長い目で見た戦略も、このキャリア教育の推進と絡めながら考えていくことも今後はあってもいいかという感じがします。これは意見です。

○今野分科会長 時間もないので、3点目は回答なしということにして、最初の2点についてお願いいたします。

○浅野キャリア形成支援室長 1点目の質問についてお答えいたします。高校中退者の情報を共有し、高校を中退してしまった後も、切れ目のない支援をするというのは非常に重要なことです。地域若者サポートステーションに関しては、9月から今後のあり方について検討会を開始しており、既に3回開催したところですが、この検討会の中には、文部科学省の児童生徒課長もオブザーバーとして入っていて、一緒に中退者情報の共有等も含めた、学校と地域若者サポートステーションの連携強化のためにどういうことをしていくか、といったことについても検討しているところです。実際に検討する中では、個人情報等非常に難しいクリアしなければいけない問題がたくさんありますが、札幌であるとか、いくつかの好事例的な所もありますので、そういう所も参考としながら検討していきたいと考えております。

○今野分科会長 まだ御質問があるかもしれませんが、議題が4つも残っていますので先に行かせていただいて、最後に時間が余ったら全体を通して御意見をいただくことにさせていただきます。議題2は「第9次職業能力開発基本計画フォローアップについて」です。事務局から説明をお願いいたします。

○宇野調査官 「第9次職業能力開発基本計画フォローアップについて」を御説明いたします。資料2-1のペーパーが、基本計画の概要です。この分科会において、平成22年10月5日から7回御審議いただきました。平成23年3月25日に諮問・答申いただき、4月15日に告示という形で完成しております。計画期間は、平成23年度から平成27年度までの5年間となっております。
 この計画の具体策として、この概要紙の真ん中から下のほうに枠がいくつかあります。これは8つの柱に分かれています。この8つの柱に沿い、現在の進捗状況を整理したものが資料2-2です。資料2-2をかい摘まんで主なところを御説明いたします。1ページで第1の柱として、「成長が見込まれる分野・ものづくり分野における人材育成の推進」です。その前半部分の、成長が見込まれる分野の人材育成ですが、ここにあるとおり介護・福祉、医療、子育て、情報通信、環境・エネルギー分野といった成長分野を中心とした訓練を実施しております。ここにある実績自体は公共職業訓練、求職者支援訓練全体です。
 例えば、求職者支援訓練では、実践コースの枠で、事前に4分の1の25%は介護訓練、15%は情報系の訓練というように、成長分野に配慮した訓練計画としてなっております。実際のカリキュラム開発も?にあるとおり、環境・エネルギー分野等、訓練カリキュラムの開発を職業大を中心として行っております。また、職業大のホームページで広く一般に公開しております。
 2ページでは、民間教育訓練機関の更なる活用、大学等教育機関との連携強化という欄があります。民間については、離職者訓練の70%は民間教育訓練機関となっている状況です。大学のほうも、文部科学省の事業とか、機構が中心となって専修学校等との連携を図ったカリキュラム開発とか、こういう新しい取組みもやっております。
 後半のものづくり分野の人材育成が3ページにあります。これは施設内訓練で実施しております。国のほうは受講者数が3万人、都道府県のほうの受講者数が1万1,000人となっております。
 4ページで、ものづくり分野においても、新しい分野の訓練を行っております。ポリテクカレッジにおいては、全国15カ所で、省エネ技術を活かした電気機械の設計を身に付けられる技術者養成を行っております。また、ポリテクセンターにおいても、住宅の省エネ関連の施工を学べるような課程を新設しております。
 5ページで第2の柱として、「非正規労働者等に対する雇用のセーフティネットとしての能力開発の強化」です。公共職業訓練自体がセーフティネットですけれども、5ページの上段にあるとおり、中央、地方において訓練協議会を開催しております。これは労使、自治体、教育訓練機関が入っていて、ここでニーズに合ったものにするような訓練計画を策定しております。
 (2)にあるように、第2のセーフティネットである求職者支援制度を昨年10月に創設しております。この実施状況は後ほどの議題になっておりますので割愛させていただきます。
 6ページにはジョブ・カードの実績が入っております。非正規労働者等の能力開発のためのツールとして、これまでも活用しておりますけれども、上にあるとおり平成24年4月から、公共職業訓練受講者にはジョブ・カードの交付を必須にしております。また、求職者支援訓練も平成23年10月から交付を必須化しております。学生用ジョブ・カードの開発をしていて、大学等への周知も図っております。企業に対するジョブ・カードの普及については、この真ん中にあるとおりジョブ・カード普及サポーター企業という形で開拓させていただきました。この点に関しては商工会議所に全面的なバックアップをいたただきましたことを改めて感謝申し上げます。
 第3の柱は「教育訓練と連携した職業能力評価システムの整備」です。7ページのいちばん上の箱は、内閣府を中心に、「実践キャリア・アップ戦略(キャリア段位制度)」が推進されているところです。真ん中にあるとおり、職業能力評価基準の普及・促進についても、業種の拡充や周知、活用セミナー等を開催しております。
 8ページは、技能検定制度です。これについては職種の見直し、試験基準の見直し等を行っております。
 9ページは、第4の柱である「職業生涯を通じたキャリア形成支援の一層の推進」です。第4の柱は、個人と企業とキャリア教育の推進の3つに分かれています。個人については9ページにあるとおり、キャリア・コンサルタントの養成を進めていて、真ん中の※にあるように、平成23年度末累計で7万5,000人のキャリア・コンサルタントが養成されております。9ページの下のほうにあるように、労働者個人の主体的な職業生活設計や、能力開発を支援する教育訓練給付制度も引き続き実施しております。
 10ページには、企業による労働者の能力開発の支援があります。キャリア形成促進助成金については、平成23年度の予算では90億円だったものですが、それを上回る171億円の実績額が出ております。(3)のキャリア教育の推進については、平成22年度は高校、平成23年度は中学校、平成24年度は大学というように、キャリア教育に携わる専門人材を計画的に養成しているところです。
 11ページで第5の柱は「技能の振興」です。ここにあるとおり各種技能競技大会を実施しております。とりわけ昨年度の技能五輪国際大会ロンドン大会では、金メダル数が11職種14名となっております。日本以外の開催での金メダル数2桁というのは40年ぶりとのことですので、こういうところでも技能の振興が進んでおります。更に若年者の技能の育成を図るために、11ページの下にあるとおり、「ものづくりマイスター」を認定する新しい事業を考えております。これによって若者への技能伝承を行っていきたいと思っております。
 12ページで第6の柱は「特別な支援を必要とする者に対する職業能力開発の推進」です。これは4つに分かれていて、第1の長期失業者、学卒未就職者に対しては、先ほど申し上げた求職者支援制度の創設により、雇用保険が受給できない求職者であっても、訓練できる機会の制度を作っております。2番目、ニート等の若年者については、地域若者サポートステーション事業を実施していて、就職等進路決定者数を見ますと、前年度の倍近くの実績を上げております。また母子家庭の母については、準備講習つき職業訓練や、託児サービスを付加した委託訓練を実施しております。
 13ページで障害者を見ますと、障害者の訓練については能力開発校で行う訓練、委託訓練、一般校での訓練という形で、さまざまなチャネルを使って障害者の訓練を実施しております。
 14ページで第7の柱は、「職業能力開発分野の国際連携・協力の推進」です。ここでは開発途上国への訓練指導員の派遣、日本型技能評価システム構築の支援、新たな技能実習制度の適切な実施の3つについて、14ページにあるとおりそれぞれ実績を上げております。
 15ページは第8の柱である、「我が国全体の職業能力開発のプロデュース機能(総合調整機能)の強化」です。この中でとりわけ新しいものとして16ページの?に、「訓練に係る情報の提供、品質の確保」という欄があります。先ほど申し上げましたとおり、離職者訓練では民間が7割、求職者支援訓練を加えると全体の9割は民間となります。その意味では情報提供が確実に必要なのですが、プラス品質の確保が必要です。そのために民間訓練機関における職業訓練サービスガイドラインの策定とか、こういうガイドラインをいまホームページや説明会の開催等を通じて周知しております。また、訓練指導員の育成・確保については、後ほどの議題で御説明いたします。
 18ページの?の、「民間教育訓練機関等に対するノウハウの提供」については高障求機構のほうで、就職支援に係るノウハウを都道府県や民間に提供し、その訓練受講者の就職支援の一層の強化を図っていきたいということで実施しているものです。
 以上時間がなくて雑駁な説明で恐縮でしたが、私のほうからの進捗状況についての説明を終わらせていただきます。

○今野分科会長 御意見、御質問をお願いいたします。

○新谷委員 第9次職業能力開発基本計画は、去年のいまごろこの分科会で公労使で真摯な論議を行って策定し今年度から実施されているものですので、この計画の実施状況にはたいへん関心を持っています。その上で3点意見と質問を申し上げます。
 1点目は、大きな柱の2つ目に入っている、5ページの「非正規労働者等に対する能力開発の強化」の箇所についてです。第9次職業能力開発基本計画では、第1の柱が攻めの人材育成で、第2の柱がセーフティネットとしての人材育成であるという区分けを行ったと思います。ここでは特に非正規労働者の人材育成について考えたいのですが、非正規労働者の比率は非常に高まってきており、最新の労働力調査では35.2%にも達しています。そうした中、厚生労働省の能力開発基本調査では、企業での教育投資は正規労働者と非正規労働者とではかなり格差があるという結果が見てとれます。また、今年の労働経済白書でも、非正規労働者への教育の問題が取り上げられ、それが日本全体としての生産性向上を阻害しているおそれがあるといった分析もされていたと記憶しています。
今回の資料では、セーフティネットとしての人材育成について、いくつか施策の実施状況が書かれています。具体的には、1つ目は仕組みの問題としての中央と地方の訓練協議会について、2つ目は第2のセーフティネットとしての求職者支援制度について、3つ目はジョブ・カードについて、書かれています。これらの人材育成の視点がどこにあるかと言うと、在職者に対する訓練というよりも離職者に対する訓練が中心になっているように思います。
先ほど申し上げた非正規労働者の実態と合わせて考えれば、在職中の非正規労働者への教育投資をどのように上げてその人材育成を図っていくのかということは、非常に重要な課題であると思っています。
 そこで、質問させていただきたいのは、非正規労働者の能力開発への取り組みについてです。平成25年度予算の中にも入っていましたが、非正規労働者に対する能力開発については厚生労働省で検討会を立ち上げ、企業内訓練への助成のあり方について検討を始めたと聞いています。この検討会の成果が非常に期待されるところです。以上申し上げたような観点から、非正規労働者に対する企業内訓練について国としての助成のあり方をどのように考えていくのか、現時点で分かっている範囲で聞かせていただきたいと思います。
 2点目は、16ページの「?訓練に係る情報の提供、品質の確保」の?)の箇所に記載されている「品質の確保」についてです。これについては、私も委員をやらせていただき高橋委員も一緒に委員をやられていた検討会において、教育訓練に関するガイドラインが策定され、既にリリースもされているところです。教育訓練の品質を計測するのは難しいですが、このガイドラインでは、ガバナンスとか、苦情のフィードバックのシステムとか、いろいろな視点でのガイドラインが策定されています。
 ここで、国としてやられている訓練の実態を見ると、その9割が民間教育訓練機関による訓練となっています。新たに策定された教育訓練のガイドラインを活用させたいと思っても、民間教育訓練機関にとっては非常に手間のかかる話ですから、何らかのインセンティブがない限りなかなか活用は進まないのではないかと思っています。そういう意味で、訓練の品質のメルクマールとなるように策定したガイドラインが、どうすればより一層活用されていくようになるのかについて、もう少し踏み込んで検討していただきたいと思います。これについての考え方をお聞かせいただきたいと思います。
 最後は、全体的な観点からの質問です。求職者支援制度も恒久化された中、求職活動支援と職業訓練支援とのつながり・連携が非常に強く求められていると思います。ハローワークでの求職者に対して訓練への誘導をしていく場面等を考えると、特に行政の出先機関において両支援機能の連携強化が求められていると思います。いままで労働局やハローワークは職業安定行政の拠点という位置づけでしたが、今後、職業能力開発支援の拠点としての機能強化をどのように行っていくのか、これは予算とも絡む話でありますけれども、お考えがあれば聞かせていただきたいと思います。

○山田職業能力開発局長 最初の、非正規の能力開発の抜本強化の検討会ですが、これは企業内の非正規に対するものに限ったことではなくて、まさに離職・転職の場合にどうやってキャリアアップできるのかということも含めて検討しているところです。結論から申しますと、今まさに議論していただいているという、模索中であるということです。何か良いアイディアがあれば是非お教えいただきたいと思っております。
 ですから、非正規の問題については、非正規の中でキャリアアップを図っていくのか、正規に移行していく形の中でやっていくのか、いろいろなパターンがあると思います。非正規の方も、いまの状況に非常に満足している方もいるし、不本意でいる方もいるということで、そこはいろいろ仕分をする形の中で、必要なところにどういう手当てをしていくのかということの絞り込みをしっかりしながら考えていく必要があると思っております。
 確かにおっしゃるように、教育訓練にかかわる民間の委託訓練のウエイトが非常に高まっております。民間で行っている訓練の質の担保の問題は大きな課題であると思っています。ガイドラインということも申し上げましたが、ISOの枠組みの中でこういう評価をしていって、ある種のISOを取っているかどうかというものが、この委託訓練の対象になるのかどうかという枠組みについても議論はしております。具体的にどういう形になっていくのか、その辺のところはよく議論をしていかないといけないと思っております。いずれにしてもこの問題は非常に大きな課題であると我々は認識しておりますので、また御意見をいただきながらやっていきたいと思っております。
 職業訓練にかかわる労働局の関与の問題については、御案内のように昨年10月に求職者支援制度ができ、労働局の中にも能力開発を司る部署が出来、能力開発というものについて労働局がかかわっていく姿が明確になりました。我々としては、求職者支援訓練のみならず、公共職業訓練も、離職者が就職可能性を高めるような訓練を受けられるかどうかというところについては、ハローワークの中で求人ニーズ、求職者ニーズというものを感じながら訓練を実施している所とキャッチボールをしながらやっていくことが非常に重要だと思っております。従来は、労働局と能力開発行政は馴染みがなかったわけですが、労働局にもいろいろな形でコミュニケーションを図りながら、そこのつなぎをしっかりやっていきたいと思っております。

○水町委員 いまの1点目にかかわることで、私も補足的に意見を言わせていただきます。先ほどの概算要求の中の第5でありました、有期・短時間・派遣労働者への安定雇用実現プロジェクトで、企業内の訓練、キャリアアップを助成するという話が、たぶんここと結び付いてきていると思うのです。今野先生が座長をやられた、パートタイムの研究会でもかなり中身に踏み込んだ話をしています。在職している非正規の人については、企業の中で訓練をしてキャリアアップしていくことが大切なのだけれども、それがいちばん有効なのだけれども、働いている人は時間制約があって短時間を選んでいるから、時間制約がある中ではなかなか訓練につながらない。企業としては、比較的雇用期間が短ければ、雇用期間が長い人に比べて、投資をしてキャリアを育てようというインセンティブが働かないので、これは政策的にバックアップしてやることが重要なのだということが、まず1つきちんと認識されなければいけない。
 それでは、どういう手法で。ここで助成すると言っていますけれども、これまでどおりの余り有効でなかった助成金みたいに、形式的な要件・基準を決めて、これに当てはまれば1人につき20万円、30万円の現金を給付しますという形だと、これまでどおりの助成金になってしまうので、そこの手法についてどうインセンティブを働かせるかということが重要だと思います。
 かつ、この予算を見ると雇用勘定21億円で、障害者雇用のところに比べると、こっちは一般会計から41億円入っています。予算の規模とか、これは政府として新成長戦略の一環として政府を挙げて取り組もうということであれば、本当に雇用勘定の21億円だけで、効果的な、実効的な対策が打てるのか。もう3分の1以上が非正規になって、それでも訓練が十分ではないということが認識されているので、予算全体の組み方としてもこれで十分なのかということを、少なくとも職業能力開発という側面では、安定局が中心になってやられているということでも、職業能力開発という関係では、ここの局の関係ですので、この辺を安定局と密に連絡を取りながら、本当に非正規の職業能力開発や、勤続や、キャリアアップにつながるようなルートや手法を開発していただいて、そういう仕組みを法的に作っていただいて、来年度の資料2-1の2.の柱にはそういうことが、もう少し具体的に入ってくるような形になっていただければと思います。以上意見です。

○今野分科会長 意見ですね。今はしっかりやれということか、頑張れということかのどちらかだと思います。使用者側の方から何か御意見はありますか。

○大隈委員 8ページの技能検定制度の見直しについてです。私は中身の詳細は承知していないのですが、129職種を見直していくということです。ただ、技能検定を使うほうとしては、ある程度継続性というのも大事だと思います。これを統廃合したときに、後から見てこの職種は何だっけということのないように、きちんと流れを明記するとか保っておかないと、検定というのはそれぞれの会社とかいろいろな企業が使うものですから、そういう配慮を是非してほしいと。見直しすること自体に異論はないのですが、そういうちょっとした配慮が必要かなと。中身まで承知していないので余り言えませんけれども、そういう意見です。

○今野分科会長 星さん何かありますか。

○星能力評価課長 見直しに当たっては、それぞれ業界の現場の方の意見を聞きながら見直すということで、そういう御指摘に当たらないような形で見直しを進めていきたいと思っております。

○林委員 いま大隈さんが言われた技能検定の話なのですが、私どもの組合でも、一生懸命組合員に技能検定を受検するように呼びかけているのですが、特に若い人たちの反応が鈍いのです。それは、多くの職種の課題が、実際の現場の仕事のやり方とだいぶ食い違っている。例えば、ここには畳屋さんはいないでしょうけれども、畳の技能検定というのは、未だ手縫いで検定しているのです。これは、現場とは全然懸け離れているということがあります。私どもの内部でも50代、60代の人と、30代、40代の人とは意見が違っています。どうしても50代、60代の人たちが力を持っているという言い方は変ですけれども、検定員をやっていますので、なかなかその改善は難しいのです。これは資料5にも関係するのですが、若者に検定を受けられるような促進を是非とも強調していただきたいという意見です。

○今野分科会長 それでは、次に進みます。議題3「求職者支援訓練の実施状況について」、事務局から御説明をお願いします。

○青山能力開発課企画官 資料3をお開きください。先ほどから何回か出ている求職者支援訓練の実施状況の御報告です。この制度は、雇用保険を受給できない求職者に対して訓練機会の提供、給付金の支給、就職支援といった支援を行う制度として、当分科会での御議論なども経て、昨年10月1日に施行しております。施行から1年経つので、その時点での実績を御説明します。
 1ページです。実施状況1です。これは、今年3月末までに終了した求職者支援訓練の修了者の就職状況です。この訓練は、職種横断的な基礎的能力を習得させる「基礎コース」と、特定の職種を念頭においた実践的能力を、基礎的能力も含めて一括で付与させる「実践コース」に分けて実施しております。基礎コースですが、受講者数が左から2番目の欄で4,355名、就職者が右から3番目の欄で2,801名、就職率を計算式で出すと71.7%となっております。実践コースは、受講者数が9,589名、就職者数が6,510名で、これも所定の形で就職率を出すと73.0%となっております。これについては、欄外の参考にあるように、事業目標をそれぞれ基礎コース60%、実践コース70%としていたところ、これを満たしている結果となっております
 就職の内容ですが、いちばん右の欄を御覧ください。本人に聞いた結果ですが、就職者のうち雇用期間の定めがない、無期の雇用で就職した割合が、基礎コースが64.2%、実践コースが70.5%ということで、実践のほうがやはり高くなっております。
 2ページの表を御覧ください。これは受講者数の数値です。先ほどのように就職状況ではないので、まだ就職状況が分かっていない段階でも数えられるので、これは今年8月までに受講を開始した方の数で出しております。年度に分けており、昨年10月の施行ですから、昨年度というのは10月からの半年間ですが、昨年度分の受講者数が総数合計で5万756名、今年4月から8月までの5か月間で4万3,740名、累計すると9万4,496名となっております。月平均にすると9,000名弱ぐらいで推移しております。基礎コースと実践コースで大体1対3弱ぐらいの割合で受講者数が存在しております。こちらが受講者数ですが、引き続き制度の円滑な実施に努めたいと思っております。
 3ページをお開きください。この制度は、まだ施行されて1年ということで日が浅いですが、施行からの主な運用改善事項を御報告するものです。1つ目の○が震災関係措置です。1つ目の○の下の表の内容は、民間の教育訓練機関が行う訓練コースを認定する際の基準について、被災3県について特例措置を講じたものです。これは省令で措置しているので、本審議会の御議論を経て措置しているものですので、既存の内容ですが、改めて御紹介します。簡潔に言うと、訓練コースを認定する際にさまざまな基準があるうち、過去に実施した訓練における就職率の実績を問うております。その際に、この表のいちばん上の○にあるように、3年間の間に2コース以上、例えば基礎コースで45%を下回った就職率の実績があると、全国で今後不認定となったり、この表のいちばん下の○にあるように、1回でも初めから基礎コースが就職率30%を下回ると、全国で不認定というように足切り的な基準になっていますが、被災3県についてはいま言った全国でというところを緩めて、被災3県に限ってその県でのみ不認定と、不認定の地域的範囲を限った緩和をしております。
 もう1点、表の右上にありますが、コースのカウントを普通は1コースに当たるものを0.5カウントとするということで、いまは2回以上やっては駄目という基準が、4回以上まで大丈夫という形に緩和しております。また、箱の下に※で「震災特例重機訓練」という表現があります。これは、この前身である基金訓練からやっていて、新しくなかったので扱いがこのような形ですが、現在でもやっている措置で、震災の瓦礫処理等のための需要を見込めそうな建設機械を操作するための能力開発の訓練を実施できるように、認定基準の特例、普通の訓練は3か月以上、6か月以内という期間ですが、10日以上1か月以内の短期でやっていいといった認定基準の特例を設けて、こういう訓練の設置を進めております。これらの措置を活用して、現在被災地でも訓練が行われております。
 もう1点は、下の○に「企業実習の設定促進」とあります。これは主に若年者に配慮した措置で、若者のように職業経験が少ない場合には企業実習は有効と考えられますので、訓練コースを設計する場合にも企業実習の設定の促進が図られるよう、一定の配慮をしております。訓練コースを認定する際に、一定の点数化をして、高いところから選んでいきます。主に就職率で点数を付けていくのですが、企業実習についても一定の割合でやれば点数を加点するという措置を講じて、若者向けですので、6月の若者雇用戦略にも盛り込まれております。これは1月の開講コースから適用ですが、もう措置として決めており、今後この方針で認定をしていきます。資料の説明は以上です。
 関連する参考資料を併せて御紹介します。参考1「日本学術会議の提言」という資料があります。これは震災関係で御紹介しますが、学術会議の震災復興支援委員会がさまざまな提言をした中で就業支援について提言をしており、そこで求職者支援についても御提言があります。エッセンスは4ページにありますので、そこを御覧いただければと思います。訓練の認定を受ける際の基準や訓練機関への奨励金について、被災地や被災者について一定の措置を講ずるといった提言がされております。以上です。

○今野分科会長 それでは、御意見、御質問をお願いします。

○水町委員 1つだけ、この求職者支援制度全体の問題として、実際に運用が始まって問題があると思うのは、10万円は高すぎるのではないかという点です。それは2つの意味で、1つは雇用保険など他の制度との関係で、まじめに働いて雇用保険の保険料を納めていた人がもらう雇用保険からの給付が、10万円より安くなってしまうという逆転現象が生じているのか、どれぐらいの範囲で生じているのかという問題です。
 もう1つの問題は、10万円という結構な額をあげるのだから、それに見合うような、それなりにしっかりしたことをやってもらわないといけないというので、それによって、もしかしたら入り口で間口を狭くしているという効果が発生しているかもしれないということです。もう少し中長期的な見直しを考える場合には、10万円をほかの制度とも連続性のあるようなものにしながら、いろいろな能力や水準にある人でもなるべく広く受け入れられるような制度にするのが中長期的な課題だと思いますが、そういう2つの面で弊害が生じていないかどうかも、今後状況を見る中でフォローしていただいて、今後の見直しにつなげていただければと思います。

○青山能力開発課企画官 求職者に払う職業訓練受講給付金のお話かと思うのですが、御指摘は受け止めております。ただ、この制度については、職業能力開発分科会での御議論と雇用保険部会の御議論でそれぞれ共同してやっていた関係で、給付金になると雇用保険部会の話なのかなという気もしますので、職業安定局にもつなげますし、まさに公労使の御議論で、こういう基金訓練の流れもあって設定した要件だと思いますので、私がここでとやかくコメントする状況ではありませんが、本当に大きな課題として御指摘を受け止めたいと思います。

○冨高委員 いま水町委員からもお話がありましたが、求職者支援訓練については、就職率は基礎コース・実践コースともに7割超となっており、また、期間の定めがない就職者が占める割合も同様に高いものとなっており、これは評価できると思います。ただ、求職者支援訓練にかかる財源の7割以上を占めている雇用保険との関係では、恒久的制度としての今後を考えると、例えば求職者支援訓練の受講者のうち雇用保険受給資格者であった人がどの程度を占めているのかといった受講者の属性分析なども行うべきではないかと思います。厚労省としての考え方をお伺いしたいと思います。

○青山能力開発課企画官 現時点で整理された集計はしていないのですが、受講者の属性を把握することは必要だと思います。いまJILPTに職業安定局から受講者のアンケートを依頼しており、そこで雇用保険を受給していたかとか終わったかということも聞いていますので、その結果は関係者の皆様に御提供できるかと思っております。いまの時点では見えないということです。

○大久保委員 求職者支援訓練のコースについて、この制度を作るに当たって随分多様なコースを用意したと思いますが、その中には、受講者が思うように集まらずに開講できなかったものもあると思います。その思うように集まらなかったコースというのは、具体的に何か偏りがあるのでしょうか。特定のコースは人気がなくて集まらないとか。集まらないかどうかという問題と、実際にそれが就業につながらないかどうかは別問題ですが、もし偏って人気のあるコースと人気のないコースに分かれていて、それが有効なコースであるにもかかわらず集まらない傾向があるのだとすれば、何らかの対策が必要だと思うのです。その辺りの分析はどのようにされているのでしょうか。

○青山能力開発課企画官 確かに、受講者が集まらず中止になったコースというのが4分の1ぐらいあるのは事実ですが、分野の偏りはまだ分析しきれていないのが正直なところです。非常に残念なことではあるので、なるべくそういうことが生じないようにしていく必要があるので、そういう意味でもどういうところに過剰が生じているのかは分析したいと思いますし、今後中央訓練協議会でも議論になると思います。そういうことも踏まえて、今後どういう分野に訓練の枠を割り当てるかを考える際にも、いま言ったような御指摘も参考にしたいと思います。

○今野分科会長 いまのコース認定の仕掛けからすると、不人気コースというか、ある民間の事業者がコースを設定するときに、お客さんが集まらなかったら駄目ですね。あるいは、就職率が低ければ外しますね。単純に言うと、あまりにも不人気で、就職率という意味で有効性のない所は、自動的に外す認定の仕掛けにはなっていると思うのです。そう考えると、大久保さんが言われた点で問題に残りそうなのは、人気がなくて有効性の高いものは、人気のない段階でもう排除してしまっているから、そこは拾えないけれども、そこを除けば、仕掛けとしてはいま大久保さんが言われたような状況は、つまり人気のないもの、就職率が悪いという意味で有効性のないものは外すという仕掛けにはなっているのではないかと思います。したがって、統計を取っても、それに沿った形の統計の結果かなと。想像ですが、そうでないと、何のための認定をしたのだという話になりますので。ほかにいかがですか。

○新谷委員 2点申し上げたいと思います。1点目は、先ほど水町先生から御指摘いただいた職業訓練受講給付金の10万円の在り方についてです。この金額は高いのではないかという御指摘でしたが、それよりも私は以前から申し上げているように、雇用保険制度との整合性をどう考えるかということが気になっています。今回の求職者支援訓練制度の財源の7割以上は雇用保険の労使負担によって賄われているということをどのように考えるかということです。
 これも例を出して申し上げたところですが、隣近所で労働者がいて、そのうち1人は専業主婦でずっと雇用保険をかけていない方、もう一方はパートで働いている方で7~8万円の収入があったとします。ここで二人とも失業してハローワークに同じように行ったとき、専業主婦の方は10万円の訓練給付金がもらえるのに、雇用保険をかけていた方は月収の8割ぐらいしかもらえないということになる。そこで、訓練給付金よりも先に雇用保険から失業給付を受給するようにしなさいというのが厚労省の説明ですが、これはどこかおかしいと思います。つまり、求職者支援訓練制度の財源を負担している人がそれぐらいの金額しかもらえないのに、財源をかけていない人は10万円もらえるということです。この整合性をどう考えるかは、制度が発足して1年経っていますので、先ほど事務局から答弁がありましたように、これからJILPTで受講者の属性調査をされるのであれば、その辺の整合性についての分析というものも是非やっていただきたいと思います。これが1点です。
 もう1点は、先ほどの資料3のいちばん下にあった若者雇用戦略との関係で、求職者支援訓練における企業実習の設定促進のための措置が運用改善事項の1つとして出ています。その資料の裏面には今年6月にまとめられた若者雇用戦略の抜粋が書かれていますが、下から3行目に書かれているように、求職者支援訓練の施策のうちの1つである「学卒未就職者訓練の実施」が若者雇用戦略に入っているわけです。
本当に残念なことに、学校を出られても職とのマッチングがうまくできなくて職に就けなかった若者がおり、こうした人をいろいろなチャネルで救済しようとしていますが、そうしたチャネルの1つとして求職者支援訓練も期待されているわけですので、是非、学卒未就職者向けの訓練コースの在り方について、運用改善といった施策の強化をお願いしたいと思います。
 その際には、求職者支援訓練制度の受講者には、非常に多様な層の方が受講されていることに留意いただきたいと思います。学校から初めて社会に出ていく学卒未就職者といった若者について、これからの長い職業生活の中で持っておくべき職業観を考えたうえで非常にきめの細かいケアをしなかった結果、働くとはこういうものかと簡単に思われてもいけないと思います。したがって、訓練の設定に際しては是非きめの細かい対応をお願いしたいと思います。

○今野分科会長 いまの御質問の第1点目は、既にお答えいただいて、これからも非常に重要な問題なので検討しますという話だったので、2番目の点についてお願いします。

○青山能力開発課企画官 若者雇用戦略には、学卒未就職者訓練の実施についても言及されています。確かに、若者支援のためということで、学卒未就職者向け訓練の設定促進はやっています。今年4月以降の開講で進めてきましたので、まだ訓練実施中などの状況で、全国で20を超えるコースがこれまでに実施されているはずです。まだ就職状況が見えないので、ちゃんと時期をはかって、実施状況等を分析して、今後の在り方を検討したいと思っております。貴重な御意見として受け止めて、今後の検討に活かしたいと思います。

○高橋委員 ただいま御説明いただいた件ですが、今年の3月末に終了したものですので、数的にはまだそれほど多くないので、現在の御報告としてはこれでよろしいかと思いますが、この分科会としては、今後定期的に求職者支援制度の結果をウォッチしていくに当たって、ミニマムとなる重要なチェック項目のようなものを一度議論することも大事なのではないかと考えております。とりわけ、この制度は就職率がいちばんの肝です。今回は全体での就職率でしたが、例えば都道府県ごとはどうなのかとか、開講コースごとはどうなのか、あるいは先ほど御議論がありましたが、属性ごとに見た場合、例えば、雇用保険の被保険者だった方とそうでない方の就職率はどうなのかとか、同じ就職率を取り出してみてもいろいろな見方ができると思いますし、いずれ統計が蓄積した段階では、少しバラエティに富んだ指標で見ながら、我々としても議論をしたいと思います。また、就職率以外のもの、定性的なものでも結構ですから、受講者のニーズや声、評価、あるいは委託されている訓練校の声なども適宜拾っていただきながら、この分科会に御報告いただければと思います。

○今野分科会長 大変重要な御指摘ですので、そういう方向で頑張ってください。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 次は議題4「職業能力開発総合大学校の見直しの進捗状況」についてです。御説明をお願いします。

○志村能力開発課長 資料?4「職業能力開発総合大学校の見直しの進捗状況について」ということで、5枚資料を用意しております。1枚目が見直しの進捗状況の全体像です。2~5ページは、2番目のハイレベル訓練についてもう少し細かく説明した資料です。
 まず、1ページ目1「小平キャンパスへの集約化」です。今年度末までに、職業能力開発総合大学校小平キャンパスへ移転を完了する予定です。移転にかかる学生生活への保証については、次年度予算に計上しております。また、次年度以降、同大相模原キャンパスの売却手続に移行するということです。 続いて2「ハイレベル訓練の実施」です。これまでの新規高卒者等を対象とした4年制訓練の長期課程に替え、都道府県等に指導員候補として採用された民間経験者、あるいは工科系大卒者等を対象に、1か月から2年間のハイレベル訓練を平成26年度から実施します。そのため、昨年度から長期課程は募集を停止し、来年度からハイレベル訓練の募集を開始いたします。現在、職業能力開発総合大学校を中心に訓練カリキュラムが検討されており、今後、都道府県、認定施設等の関係者からなる専門調査委員会で訓練基準を検討し、今年度末に省令改正予定です。
 2ページ以降を御覧ください。ハイレベル訓練の詳細については、基本的には学士教育に加えて指導技法を付加したこれまでの長期課程を見直し、高度な専門知識と実践的な指導力を合わせ持った指導員養成課程に移行するものです。
 3ページを御覧ください。仕上がり像としては、指導員経験3年程度の能力、つまり即戦力として活躍するために必要な能力を付与するものです。そのために必要な能力としては7つあります。1番目が幅広い世代に的確に指導できる「職業能力開発指導力」、2番目が就職支援に欠かせない「キャリア・コンサルティング力」、3番目が企業開拓に必要な「コーディネート力」や「イノベーション力」、4番目が技術支援等に直結する「マネジメント力」と「問題発見解決力」、5番目が一連の製造工程をこなせる「技能・技術力」の、大別して7つの能力の強化が不可欠です。
 訓練コースについては、「長期コース」と「短期コース」に大別しております。長期コースですが、7つの能力を取得するためには、2年間で3,600時間相当の訓練時間が必要です。ただし、それまでの本人の履修状況に応じて、1年に短縮可能となっております。長期コースの特色ですが、技能検定1級程度の技能習得、キャリア・コンサルティング能力の習得、長期実習による実践力の習得、長期コース修了者(4専攻)への指導員免許付与等です。
 4ページです。コースの教科目は、能力開発科目、訓練業務実技科目、先端技術科目、安全衛生科目、生産マネジメント科目、専門学科科目、専門実技科目の7つに区分しております。具体的なカリキュラムについては今後詰めていく予定です。
 短期コースについては、1か月及び3か月訓練を想定しております。1か月当たり144時間相当の訓練時間が必要です。コースの特色としては、多様な経歴の人材に対して必要な教科目を選択でき、また、短期コース修了者で能力審査に合格した者には指導員免許を付与といったものです。コースの教科目については、長期コースで設定した教科目の中で、受講生の必要とする能力により選択・組合せが可能なものとなっております。
 5ページです。詳細は省略しますが、生体工学やインテリジェント電気設備技術等の先端技術、安全衛生科目を掲げております。
 1ページに戻ります。3「スキルアップ訓練」です。今いる職業訓練指導員にしっかり訓練を実施するというものです。スキルアップ訓練については、今年度より開始済みです。また、全国の公共職業訓練施設の指導員全員が、毎年1週間程度のスキルアップ訓練を実施できるように、段階的に拡充をしていきます。以上です。

○今野分科会長 それでは、御意見、御質問等がありましたらお願いします。
 なければ、私から1つだけ申し上げます。3ページのいちばん上に「仕上がり像」という言葉がありますが、気分よくなくはないですか。物を作っているみたいなので、今後変えませんか。

○志村能力開発課長 このハイレベル訓練に限らず、公共職業訓練においては、都道府県等の訓練でも「仕上がり像」という言葉を使っていて、ある程度定着しているものですが、いずれにしても訓練内容を広報・周知していく上での実務概念ですので、より適切なものを模索・検討させていただきたいと思います。

○今野分科会長 育成する人材像なのでしょう。民間企業の中で、仕上がり像なんて聞いたことがありますか。気になったものですから、考えてください。

○志村能力開発課長 はい。

○高橋委員 今回ハイレベル訓練が導入されることによって、民間企業や工科系大学卒の方、優秀な方の養成の道を開くというのは大変よろしいことだと思うのですが、そのためにも、そうした方々が学ぶためのインセンティブというか、修士課程のようなものを総合大の中に設置してマスターの資格を取れるということについても、是非前向きに検討していく必要があろうかと思います。これはあくまで意見です。

○志村能力開発課長 学位については、学位授与機構、あるいは文部科学省といろいろ調整の余地がありますので、今後の検討課題としてしっかり受け止めて検討していきたいと思います。

○三村委員 今の件ですが、いわゆる専門職大学院的な位置づけかと思いますが、特に実習について、実習の受入先の要件と実習のプログラムの開発、さらに実習の評価といった辺りが、こうした修士レベルのクラスではとても重要だと思いますが、その辺りについてお聞かせいただければと思います。実習の体系など、さまざまなところに「実習」という言葉が出てきますが、どう実習機関と連携し、評価していくのか、その流れについてお聞かせいただければと思います。

○志村能力開発課長 この実習にしても、基本的には機構、あるいは訓練校等で実務指導していくということですので、機材的な関係もありますし、技術、能力、資質等も、また、いわゆる産業ニーズ等も変化しますし、そういったものも踏まえて高度かつ実践的なものをしっかり習得できるようにし、いわゆるPDCAをしっかり評価して、改善につなげていきたいと考えております。

○今野分科会長 まだ具体的にそこまでは、いままだ検討中ということですね。

○志村能力開発課長 そういうことです。

○今野分科会長 私からお聞きしますが、長期課程を止めると、止めたときに、1年生の子には1年に入ったときに約束した教育をしなければいけないですね。そうすると、ずっと残りますね。留年をしたら更にまた1年とか、その辺の対応は、パッと止めてしまうので、どうですか。

○志村能力開発課長 本年度から、いわゆる1年次の受入れを停止しております。現在入っている者については、引き続き長期課程ということで訓練を実施します。だんだん規模は縮小していきますが、必要な期間しっかりと当初の約束したプログラムを実施していきます。

○今野分科会長 ほかにいかがでしょうか。すごく大変だと思いますね。留年生で1人残ってもやらなければいけないから。
 それでは、このテーマはここで終わって、最後に議題5「技能検定等技能振興の在り方に関する検討会報告について」の御説明をお願いします。

○星能力評価課長 資料5として、この検討会報告の概要を入れておりますので、これに沿って御説明します。
 この検討会では、ものづくり技能を取り巻く状況が、昨今の国際競争の激化、あるいは若者の技能離れといった変化に直面する中で、技能振興施策の充実や技能検定制度の基盤強化をいかに図っていくかという観点で御議論いただいたものです。委員の名簿は3ページに入れてあります。その結果、今後とも我が国が持続的な発展を遂げていくためには、ものづくり産業が果たす役割の意義を国民が共有して、引き続き強みを発揮していくことが重要であることから、ものづくり人材の育成支援、技能の円滑な継承、技能尊重機運の醸成が必要であるとともに、技能検定については一層自立的・安定的制度とする必要があるとされております。
 具体的な中身ですが、技能振興施策については、(1)として、企業OB等の優れた技能を有する方を指導員として、技能競技大会の課題を活用した人材育成支援や、技能の暗黙知を形式知化して保存する取組み、更には学校等と連携した技能啓発事業等の推進といったことにより、技能の継承や若者の関心喚起の取組みを行っていく必要があるということが提言されるとともに、(2)として、ものづくり人材の育成については、ものづくり分野の技能の継承、あるいは成長分野等の政策課題に沿った訓練への助成の重点化、在職者訓練の新規成長分野における展開、また、応用力を持った人材育成の推進、職業能力評価基準の活用等に向けて、地域のネットワークを活かした関係者による連携が重要とされております。
 大きな2点目として、技能検定制度については、労働者の技能向上のツールとして有効に活用されてきているが、国の補助金が平成25年度を目途に平成22年度の概算要求額から2分の1程度縮減されることが求められている中で、自治体あるいは業界団体においても非常に厳しい財政状況にある。2ページです。技能検定を自立的・安定的に維持するためには、その基盤強化が不可欠とした上で、(1)として、受検者数の拡大に向けて現場ニーズを踏まえた作業・等級等の新設、あるいは受検資格の緩和、更には受検機会の拡大方策の検討、受検促進に向けた一層の働きかけといったことを進める必要がある。
 また、(2)費用の効率化については、今後とも不断の取組みが求められるとした上で、実技試験費用については職種間・地域間でばらつきが見られることから、試験水準の維持を前提として課題や材料調達の見直し、また人件費等管理費についても、受検者数を勘案し、更なる縮減が期待するとされたところであります。これらの取組みに当たっては、国は情報提供、あるいは試験課題の見直し等により、都道府県あるいは都道府県の職業能力開発協会の取組みを支援するとともに、技能検定は業界団体、企業等のネットワークによる有形無形の協力を得て実施されているということに留意すべきだとされております。
 (3)手数料については、制度の自立的・安定的存続のためには見直さざるを得ないとされておりますが、まずは費用削減を前提とすべきということです。また、手数料の設定については、収支構造にばらつきのある多くの職種の試験の安定的な実施という観点から、職種間の差を設けないことが適当とされております。
 最後に、これら御提言いただいた取組みについては、関係者の連携による着実な実施と国による必要な環境整備が求められているところでございます。以上が技能検定等技能振興の在り方に関する検討会の報告書の概要です。なお、この報告書で御提言いただいている内容については、先ほど来御説明しているように、予算措置が必要となる事項については平成25年度の予算要求に反映させるとともに、制度あるいは運用改善等の事項については順次検討を進め、今後の施策に反映していきたいと考えております。以上です。

○今野分科会長 それでは、御質問、御意見はいかがでしょうか。

○新谷委員 2点申し上げたいと思います。ものづくり技能の振興やものづくり人材の育成は非常に重要なことであると、私どもも認識しています。日本の財の輸出の9割は、いわゆる製造業の製品が担っており、ここを支える人材を作っていくことは非常に重要な政府の施策であると思っています。そういった意味で、「技能検定等技能振興の在り方に関する検討会」での検討は時宜を得たものであると思っています。
 その上でお聞きしたいのですが、これは皆さんも御覧になったかもしれませんが、8月26日付の日経新聞に、経済産業省がものづくりマイスター制度を創設するという記事が出ておりました。一方、今日ご説明があった平成25年度予算案には厚労省の予算としてものづくりマイスターが出ています。これについて、経産省と厚労省との関係が一体どうなっているのかをお聞きしたいと思います。職業能力開発を所管する厚労省が経産省よりも先に前に行って中心的な役割を担っていただきたいという応援のエールも込めて、その辺の役割認識を聞きたいということが1つです。
 もう1つは、それと関連することですが、国が認定する技能士の社会的認知度を上げていくという意味で、2ページのアの2つ目の○に「技能士の社会的認知向上のため、顕彰の検討やロゴマークの作成普及等が必要」と書いてあって、こういう仕組みを使って技能士としての認知度を上げていくのだという内容がまとめられております。先ほどのものづくりマイスター制度との関連も含めて、社会的認知の引上げのための方策をどのようにお考えになっているかについて、お聞かせいただきたいと思います。

○星能力評価課長 最初の経産省との関係ですが、政府部内では経産省、文科省、私どもと、それぞれ連携しながらこういった施策を進めていく必要があるだろうということで、ものづくりマイスター制度について取り組んでおりますが、いま新谷委員から御指摘がありましたように、技能の継承、製造業における国際競争力の強化という意味で、人材育成の部分では私どもが先頭に立ってやっていく必要があるだろうと思っておりますので、いただいたエールを背中で受け止めて、しっかり取組んでいきたいと思っております。
 2点目につきましては、技能の重要性、技技能のすばらしさといったものを国民に訴えかけるとともに、そういったものをしっかり認知してもらう、あるいは技能士の方にも自信を持って、胸を張って自分はこういった技能を持っているのだということで取り組んでいただくという意味で、検討会でも御指摘があったロゴマーク、あるいは複数のすばらしい技能を持った方に対する何らかの顕彰の意味でのマーク、あるいはバッジといったものを、引き続き私どもとしても検討し、また皆さんの意見を伺いながら、世の中できちんと評価されるような仕組みを作っていきたいと考えております。

○今野分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、この議題は終わりにして、全体を通して何か御意見、御質問があればお伺いします。よろしいですか。その他、事務局から何かありますか。特にありませんか。
 次回以降の分科会の日程等については、また改めて事務局から連絡をさせていただきます。本日の議事録の署名ですが、労働者側の林委員、使用者側の河本委員にお願いをいたします。
 それでは、終了いたします。ありがとうございました。

(了)

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