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2012年9月18日 第49回労働政策審議会障害者雇用分科会 議事録

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成24年9月18日(火)
16時00分~17時30分


○場所

厚生労働省専用第22会議室(18階)


○出席者

【公益委員】岩村委員、菊池委員、武石委員、野中委員、松爲委員
【労働者代表】杉山委員、斗内委員、冨高委員
【使用者代表】塩野委員、高橋委員、萩原委員
【障害者代表】阿部委員、川崎委員、竹下委員
【事務局】岡崎職業安定局長、小川高齢・障害者雇用対策部長、山田障害者雇用対策課長、松永障害者雇用対策課調査官、安達障害者雇用対策課長補佐、境障害者雇用対策課長補佐

○議題

(1)障害者雇用関係の研究会報告書について(報告)
(2)今後の検討項目及びスケジュールについて
(3)その他

○議事

○岩村分科会長代理
 ただいまから第49回労働政策審議会障害者雇用分科会を開催します。本日は今野分科会長が所用によってご欠席ということです。そこで、労働政策審議会令に基づきまして、分科会長代理の私が議事を進行させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は今野分科会長、桑原委員、南部委員、栗原委員、中村委員、北原委員がご欠席です。なお、高橋委員、塩野委員から、遅刻との連絡をいただいております。
 はじめに分科会の運営に当たり、委員の皆様にお願いがございます。視覚障害、聴覚障害をお持ちの方などへの情報の保障という観点から、ご発言に当たりましては、第1に、発言される方は必ず挙手をしていただく。第2に、挙手をされた発言者に対し、私から指名させていただく。第3に、指名を受けられた発言者は氏名を名乗ってからご発言いただく。そのような運営を行っていきたいと存じますので、よろしくご協力いただきたいと思います。
 議事に入る前に、委員の交代がありましたので、事務局から新たに委員になられた方についてご紹介をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策課長の山田です。参考資料1「労働政策審議会障害者雇用分科会委員名簿」をご参照ください。前回開催以降、新しく委員にご就任された方については、名簿に下線を引いております。上から順にご紹介いたします。
 労働者代表の斉藤千秋委員が辞任され、後任として、全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会中央執行委員の冨高裕子様が新たに就任されました。使用者代表の安田洋子委員が辞任され、後任として富士通株式会社総務人事本部人事労政部シニアディレクターの塩野典子様が、新たにご就任されました。
 なお、事務局にも人事異動がありましたので、ご報告させていただきます。まず、職業安定局長の岡崎局長です。高齢・障害者雇用対策部長の小川部長です。障害者雇用対策課の松永調査官です。障害者雇用対策課の境課長補佐です。どうぞよろしくお願いいたします。
○岩村分科会長代理
 議事に入ります。最初に、岡崎職業安定局長から一言ご挨拶を頂戴します。
○職業安定局長
 ご紹介いただきました、9月10日付けで職業安定局長になりました岡崎でございます。いま課長からも紹介がありましたが、部長以下、何名かが同日付けの人事異動で替わっております。
 私は3年間大臣官房におりましたが、その前の3年間は、この高齢・障害者雇用対策部長をやっておりまして、当時からお世話になっている先生方もおられるわけでありますが、3年間障害者雇用対策につきましても、種々経験させていただいております。そういう中で、また局長という立場でこの問題にかかわることができるというのは、ある意味ではいいことだなと思っていまして、これまでの経験を活かしながら、また先生方のいろいろなご指導もいただきながら、障害者の雇用が進むように努力していきたいと思っております。当時からも、いろいろと施策、対策は取ってきたつもりでありますが、それなりに障害者の方の雇用者数も増えてきているという状況ではあると思っておりますが、まだまだ課題はいろいろあると考えております。
 そういう中で、今日ご報告いたしますが、3つの研究会をやって、有識者の方々からいろいろなご意見もいただいております。主として、1つはご承知のように、障害者権利条約という国連条約がありますが、これに対する対応です。もちろん雇用の分野だけではありませんが、全体としてどうしていくか。雇用の部分は非常に大きな分野の1つと考えております。これにどう対応していくかということは、重要な課題です。
 それから、これも従来からご指摘いただいてきていますが、精神障害者の方々につきまして、雇用した場合には雇用者数としてカウントするけれども、その前提となる法定雇用率の算定に当たっては入れていないという状況になっています。この問題をどうしていくかということを含めて、雇用対策という観点からみて、障害者の方々の範囲とか、そういったものをどうしていくかというものも、1つの課題だろうと思っています。
 それから、これまでもいろいろと手を尽くしてきまして、地域におけるいろいろな障害者の方々の雇用へ向けたチーム支援みたいなものも進んできているのですが、まだまだ課題があるのではないかということも考えております。
 そういったことを含めまして、全体について労使団体あるいは障害者団体の皆様方に入っていただきまして、次の段階をどうするかという議論を進めていければと思っておりますので、是非よろしくお願いいたします。
○岩村分科会長代理
 お手元の議事次第をご覧ください。そこにありますように、本日の議題は3つです。1番目が、「障害者雇用関係の研究会報告書について」ということで、報告案件です。2番目が、「今後の検討項目及びスケジュールについて」、3番目が「その他」です。まず、議題の1番目である障害者雇用関係の研究会報告書について、事務局から報告をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○障害者雇用対策課長
 障害者雇用対策課長の山田です。報告書本体は合計すれば250頁近くありますので、資料1及び資料2-1から資料2-3までの概要でご説明させていただきます。
 最初に資料1です。「障害者雇用対策に関する研究会報告の取りまとめについて」と銘打ってあります。平成23年11月から、各々第1回を開催し、月1回のペースで本年8月3日に、3つの研究会とも報告書が取りまとめられております。これには、有識者、企業関係者、労働組合、障害者団体等の方々にご参集いただいて、それぞれのテーマについて、論点整理をしていただいたというものです。今後、労働者、使用者、障害者、公益、4者の代表によるコンセンサス形成の場である本分科会において、この報告書を1つの素材として、障害者雇用促進制度についての見直しについてご検討いただくという流れになっております。
 第1研究会が、障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会、第2研究会が、労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会、第3研究会として、地域の就労支援の在り方に関する研究会ということで、3つの研究会の話をそれぞれご説明させていただきます。
 そもそもこの研究会自体を発足させたのは、資料1の裏側の頁を見ていただきますと、平成22年6月に、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」という閣議決定を行っております。この資料には、労働・雇用分野だけを抜粋して入れてありますが、上から2つの内容が、第1研究会の内容に対応していまして、下の2つが第2研究会の内容に対応しています。閣議決定で検討を要するとされた内容について、検討したという位置づけになっております。
 資料2-1の第1研究会からご説明いたします。「障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会」ということで、1頁に趣旨、参集者などが載っていますが、次の頁から、概要を2頁にわたって書いております。
 最初の課題として、まず障害者雇用促進制度全体の障害者の範囲について、2番目の課題は、そのうち雇用率制度における障害者の範囲等についてということで、議論をしていきます。
 最初の、制度全体の障害者の範囲の問題については、最初の○にあるように、基本的にもともと障害者雇用促進法については、「長期にわたる職業生活に相当の制限」を受け、また「職業生活を営むことが著しく困難な者」について対象にしているということから、本来対象とすべき障害者が含まれているという結論になっています。一方で、対象の明確化等については、法制的な検討を行うということは言及されております。
 2番目の○にあるように、就労の困難さに視点を置いた判断を行うことも課題として掲げられております。これについては、2つ目の○の2行目以降ですが、現在の障害者雇用促進法では、医学的判断に加え、「長期にわたる職業生活上の相当の制限」を個別に判断しており、就労の困難さに視点を置いたものとなっていると評価できる、ということになっています。ただ、これもなお書きがありまして、医療、福祉、教育分野の支援機関からの情報や関係者との一層の連携によって、現行の判断の精度を高めることについては言及をされています。
 そういった障害者雇用促進制度の1つの大きな柱になっている、雇用率制度についての障害者の範囲等についての議論が、2番目の議論としてあります。これまで身体障害者、知的障害者が雇用義務の対象になっておりましたが、10年前から精神障害者の雇用義務化について、この分科会でも議論が進んできました。その議論がこの研究会の中では大きな比重を占めていましたが、その話をする前に、そもそも雇用義務制度というのは何なのかについての確認をしているというのが、最初の○になります。
 そもそも日本の経済社会においては、企業の雇入れ自由の原則があるという中で、ある意味、この法定雇用率制度、障害者雇用率制度というのは、非常に特異な存在であります。これは企業に対する採用の自由の原則の大きな例外になるとともに、障害者と就労困難な健常者との関係とも絡んでくる話です。
 そうした中で、まずは雇用義務制度というのは、そういう雇入れ自由の原則の例外であるということから、雇用の場を確保することが極めて困難な者に対して、企業に対して雇用義務を課すということの確認を最初にした上で、その企業が社会的な責任を果たすための前提として、企業がその対象者を雇用できる一定の環境が整っているということがマル1として前提とされ、なおかつ、対象範囲が明確であり、公正、一律性が担保されている必要があるということで、雇用義務制度についての改めての確認をしています。
 この雇用義務制度をめぐっては、前提としては範囲を広げるべきとしつつも、第2研究会の合理的配慮の提供と差別禁止とのバランスを考えた上で、範囲の在り方を検討する必要があるというご意見も、研究会の中では出てきておりました。
 10年来議論に乗っていた精神障害者の雇用義務化については、これまでも継続的に議論されてきたが、精神障害者に対する企業の理解の進展や雇用促進のための支援策の充実など、精神障害者の雇用環境が改善され、義務化に向けた条件整備は着実に進展してきたと考えられることから、精神障害者も雇用義務の対象とすることが適当であるとしています。
 この間、ハローワークの障害者の就職件数が、全体の就職件数の中で占める割合、平成18年度は15.3%であったのが、平成23年度は31.7%と大きく拡大してきている等、データでの説明も報告書には出ています。
 一方で適当であるとはしていますが、その次のパラグラフにありますように、義務化の意味合いは非常に重く、企業の経営環境や企業総体としての納得感という観点からは、実施時期については、精神障害者を雇用義務の対象とすることが適当であるということを踏まえ、慎重に結論を出すことが求められるということも言及されております。もともと精神障害者の雇用義務化については、平成16年の障害者雇用分科会で、将来的には義務制度の対象とすることが考えられるということについては言及され、継続として議論がされてきたという性格のものです。
 3頁です。ここも引き続き精神障害者の雇用義務化についての議論です。義務化に当たっていちばんポイントなのは、企業と外部の支援機関が連携して支援していく体制の充実が必要であるということで、特に身体障害、知的障害者以上に、外部の支援機関との関係が重要だということについては、各委員からご指摘がありました。
 次の○に、精神障害者を雇用義務とする際の対象者の把握・確認方法については、精神障害者の特性やプライバシーの配慮、先ほど雇用義務のメルクマールのところで申し上げましたが、公正、一律性等の観点から、精神障害者保健福祉手帳で判断することが適当であるということになっています。ここまでが精神障害者の関係の話です。
 続きまして、障害者手帳を所持しない発達障害者、難治性疾患患者等に対して言及されています。障害者手帳を所持しない発達障害者、難治性疾患患者に対しても、障害特性に応じた適切な支援が受けられるようにすることが重要である。ただ、現状としては企業が雇用できる一定の環境がまだ整っていない、企業における雇用管理ノウハウの蓄積や企業の雇用環境の改善をさらに進めていくということで、地域の支援の体制づくり、ネットワーク構築を進めていくことが必要であるとされています。
 まず、この問題を議論するに当たって、障害者手帳を所持していれば、身体障害者、知的障害者、精神障害者なりとして、扱われるわけですが、その中で障害者手帳を所持しない発達障害者、難治性疾患患者等に対して、雇用義務のことを検討するに当たっては、義務の対象とすべき範囲が明確でない、公正、一律性がいまは担保されていないということから、職業生活上の困難さを把握・判断するための研究を行っていくことが必要であるということが、最後に書かれております。
 雇用率制度におけるその他の論点として、まず雇用義務制度におけるダブルカウント制度、重度障害者の方は2人とカウントするという現行の制度については、これを否定するご意見もありますが、この研究会では、重度障害者の雇用を促進していくためにも継続することは必要であるとされています。特例子会社制度についても、廃止論のご意見をお持ちの方もおられますが、この研究会では、知的障害者をはじめとした障害者雇用促進に果たしてきた役割が大きいということで、継続していくことが必要であるとされています。
 ただ、一方でということでありますのは、せっかく特例子会社が、重度障害者、知的障害者の雇用管理のノウハウを蓄積しているということからすれば、そういったノウハウを他の企業に普及させるといった形で、特例子会社をバージョンアップさせていくという役割は期待されるということが言及されています。
 最後に、派遣労働者の雇用率カウントについてはということで、具体的な内容としては、現行派遣元に1人とカウントされているのですが、これを派遣元と派遣先で、0.5人ずつで分割するということが、数年前から議論の遡上に乗っています。これについては研究会の場でもいろいろなご意見が出て、そこにありますように、派遣労働者としての障害者雇用のニーズの動向等も見た上で、引き続き検討ということになっています。これが第1研究会の報告の内容です。
 続いて、第2研究会の「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」です。趣旨、参集者については、1頁をご覧いただければと思います。
2頁から、概要について2頁にわたって書いています。こちらについては、冒頭、平成21年10月から障害者雇用分科会で議論がされて、中間的な取りまとめが行われているとされていますが、これに先立って平成21年7月に、研究会の中間整理がされて、それを参考にしつつ、平成21年10月からこういう分科会が開かれ、平成22年4月に中間的な取りまとめがされているということが、まず大前提としてあります。
 障害者権利条約への対応については、おそらく霞ヶ関の中で、障害者雇用対策分野はいちばん早くに手を付けていますが、この平成22年4月の中間的な取りまとめにおいて、4者で構成される障害者雇用分科会において、一定のコンセンサス形成はできている状態になっています。ただ、それぞれ4者で意見が割れている部分もありますが、そこの仕分けを、この中間的な取りまとめで一旦行っています。
 障害者雇用分科会の開催に前後して、内閣府において、障がい者制度改革推進本部が設置され、その下に障がい者制度改革推進会議が開催されています。その推進会議の下に、差別禁止部会ができて、そちらで、おおよそ障害者が社会生活をされるすべてのステージにおける差別禁止の議論がされています。これが先週の金曜日に最終回を迎えておりますが、まだ報告の文言調整が終わっていないということなので、今日はその資料はお配りしていませんが、そういった作業が内閣府で行われています。本研究会では、そういった推進会議サイドの議論、いまは推進会議は障害者政策委員会というものになって、その下にある差別禁止部会になっていますが、そうした動向も見つつ、本研究会では議論を行ったということです。
 ある意味、分科会、研究会等で、特に意見が割れている部分について中心的に議論する形に、この研究会についてはしております。
 この研究会の場で、各委員からスタート時点で、全体を考える上で気にしておかなければいけないということで言われた話として、1つは諸外国の状況の議論がありました。これは報告書を見ていただくとわかるのですが、平成24年7月時点で批准している国は117カ国に及んでいますが、正直なところ、各国批准をする上での国内法制での対応状況は非常にばらばらな状態になっているということがあります。ですので、それぞれの立法政策、法体系の違いということによって、権利条約への受容の仕方というのは、各国まちまちであるということは当然踏まえるべきであろうということです。それと、批准していませんが、この権利条約が強く意識した、アメリカのADA(障害を持つアメリカ人法)の動向、特に障害者雇用対策とADAの関係については、気をつけるべきであるということについても、複数の委員からご指摘がありました。その点の詳しいことについては、後ほど申し上げます。
 もう1つ諸外国の状況と併せて、これも第1回、第2回の研究会のときに、障害者団体から委員として入られた方から複数出た意見として、コミュニケーションに障害、困難を抱える障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者の方に対して、後ほど申し上げる「合理的配慮の提供」を徹底できるようにすることを強く意識すべきであることについて、提起がされていました。ややもすれば、ハード面でのバリアフリーといった問題に、合理的配慮の提供の議論が傾きがちであるけれども、知的障害者、精神障害者、発達障害者が、合理的配慮によって職場で働きやすい状態になるようにするためには、むしろソフト面での対応が重要であるということで、そういった話が置き去りにされないようにする必要があることについては、研究会の委員から強く意見が出されていました。
 「基本的な枠組みについて」の最初に、「障害者権利条約に対応するための枠組みについて」ということが書いてあります。まず、現行の障害者雇用促進法には、ハローワーク等による職業リハビリテーションサービスや障害者雇用に関する企業に対する指導・助言の仕組みが規定されているということ、それで労働・雇用分野における障害を理由とする差別の禁止、合理的配慮の提供等の実効性を担保するためには、それを十分に活用していくことが効果的であり、障害者権利条約への対応のうち、労働・雇用分野については、障害者雇用促進法の改正で対応すべきであるということで、整理をしています。
 ただ、2つ目の○にありますように、今後検討が行われる差別禁止法の内容や法律上の位置づけも踏まえ、障害者雇用促進法と差別禁止法とが、整合性の取れたものになるということで、十分に調整をする必要があるということが言及されています。
 冒頭に申し上げましたが、すでに差別禁止部会は先週の金曜日に最終回を迎えています。委員から、最終回で出された意見を反映させる形で、おそらく今週中には報告が確定されて、公表されると思いますが、内閣府に確認したところ、そのあと公聴会という形で、この部会での報告について広く国民に説明をする、意見を聴くという場を設けて、それも踏まえて法案を取りまとめることになっています。我々としては、差別禁止部会の報告は当然として、その後の調整状況も踏まえて、内閣府とは調整したいと考えています。
 次に「障害者雇用率制度の位置づけについて」というのが入っています。障害者雇用の確保に成果を上げており、積極的差別是正措置として、引き続き残すべきであるということが書いてあります。基本的に差別禁止の枠組みというのは、機会の均等を求める政策であって、現行の法定雇用率制度というのは結果の平等を求める政策ということで、政策のベクトルが違っているというものではあります。権利条約においても、差別禁止法制一本でいくという話ではなくて、この積極的差別是正措置というのも、一方での柱として容認をされているということと、この研究会、差別禁止部会でも、そういった議論はあったと思いますが、アメリカのADAが22年前に制定されていますが、アメリカの障害者雇用については、基本的にADA制定以降雇用が拡大しておらず、調査によってはむしろ縮小しているという議論があります。そういったものも踏まえると、差別禁止法制による障害者が働く上での雇用の質の向上と、量の拡大としての法定雇用率制度の両輪があってこそ、うまく進むのではないか。ヨーロッパ各国はそういった形を取っているケースが多いのですが、アメリカとイギリスの場合は、差別禁止法制一本で対応しているという状況です。
 次に、「差別禁止等の枠組みの対象範囲について」です。1つには、障害者の範囲についてです。差別禁止等の実効性を担保する観点から、事業主にとって予見可能性が十分に担保されるべきであり、障害者雇用促進法第2条の障害者とするのが適当であると。これは先ほど第1研究会で申し上げた、障害者雇用促進制度全体における障害者の範囲ということで、障害者手帳を所持しているとか、そういった条件で制限を掛けていない、長期にわたる職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者という対象範囲とするのが適当であるということが、まず合意点としてあります。
 またポツに、それぞれ意見がありまして、過去の障害履歴や障害者の家族など、可能な限り広く捉えるべきというご意見も、研究会では出ていました。
 それに対して、対象者の予見可能性を担保するために、現時点での障害の有無で、あくまでも判断すべきであるという意見が、一方でありました。
 事業主の範囲については、段階的な実施や十分な準備期間などの措置が重要であるが、原則企業規模による差を設けるものではなく、すべての事業主とすべきであると確認されています。
 次の頁で、差別の禁止の内容の面に入ります。「障害を理由とする差別について」で、障害を理由とする差別についてどう考えるかです。1つには、直接的な差別的取扱い、障害を直接の理由として差別を受ける場合を禁止すべきであるというのは、異論なく合意がされています。一方で、「間接差別」、障害を直接の理由としない場合でも、それによって障害者が差別を受ける場合については、具体的な基準や要件が明確でなく、現段階では実効性のある差別禁止規定を設けることが困難であるとしています。その上で、まずはどのようなものが間接差別に該当するかの基準や要件を確定することが必要であると言及されています。
 これは、後ほど申し上げる合理的配慮の提供の義務と深く関係してきます。障害を理由とする差別の禁止については、男女雇用機会均等法における男女の差別の問題と似ている面はあるのですが、障害者の場合、決定的に枠組みとして違うのは、企業に対して合理的な配慮の提供を義務づける、障害者が働くに当たって、支障となるものを改めていくという合理的な配慮の提供を義務づけることが組み入れられているというのは、男女の問題とは決定的な違いです。ということで、この間接差別と合理的配慮とは非常に密接な関連を持っているということになります。
 次は少し角度が違うのですが、障害者権利条約では、合理的配慮の不提供が差別に当たるとしているが、合理的な配慮の不提供を新たな差別類型として整理できないため、労働・雇用分野においては合理的な配慮を提供することを義務づけるという、作為義務で対応すべきだと結論づけています。
 実は障害者権利条約は、合理的な配慮の不提供を差別として規定する条文がある一方で、雇用労働分野については、合理的な配慮の提供を事業主に義務付けるという作為義務という、不作為義務と作為義務を同じ条約上、2つ重ねている形で構成されています。あとの合理的配慮の提供のところで、そちらの話にはまた言及します。
 「差別が禁止される事項について」です。これは雇用に係るすべての事項を差別禁止の対象とすべきであり、主な対象としては、募集・採用の機会、賃金その他の労働条件云々、最後に、雇用の継続・終了(解雇・雇止め等)まで、雇用にかかわるすべての事項を差別禁止の対象とすべきということについては、合意がされています。
 「合理的な配慮に対する基本的な考え方とその枠組みについて」ということで、先ほど申し上げましたように、合理的な配慮については、事業主に提供を義務付けるという権利条約の第27条の条項に従って、事業主に対する作為義務を掛けている形で整理をしています。それ以降の話は、欧米、先進国も同様ですが、合理的配慮については、障害がどういう状況にあるか、職場がどういう状況にあるかに応じて、どういった配慮を提供すべきかというのは、多様かつ個別性が高いので、法律でそれを事細かに規定するのではなくて、あくまでも概念、枠組みを法律上定めた上で、具体的な中身についてはガイドラインで定めるべきと整理をしています。
 「合理的配慮の提供のための仕組みと実効性の担保について」です。合理的配慮の提供に当たっては、まずは企業内で当事者同士が、相互理解や検討を行った上で提供されることが重要であり、企業内に当事者同士が話し合うことのできる相談窓口などの体制を整備すべきであるということで、雇用する側の使用者、一方で雇用される側の障害者、双方の納得感を得る形で、合理的な配慮の提供をどのような形にするかは決めるべきだとしています。
 合理的な配慮の提供は、後ほど申し上げますように、過度の負担となる場合は提供義務を負わないということにはなっているのですが、これはおそらく使用者側にとっても、障害者側にとっても、ある種の相場観ないしはそれぞれの納得感無しには、おそらく合理的な配慮の提供をどういう水準で、どういったことを提供するのかについては、納得感は得られないということで、ある意味合理的な配慮を決める入り口のところが極めて重要であるということで、1つ目の○で強調してあります。
 また2つ目の○は少し角度が違った議論なのですが、合理的な配慮の提供を事業主に義務づけることになると、努力義務ではなく義務づけということになれば、公的支援が難しくなるという問題が出てくると。これをどう乗り越えるかということを整理したものです。「原則」以降にありますが、あくまでも合理的な配慮の提供というのは事業主の負担であるということで整理をした上で、ただ、現行事業主の経済的な負担を調整するための仕組みとして、納付金制度があります。ここには公費は投入されていませんので、こちらで合理的な配慮の提供に関する事業主間のアンバランスを調整していくということで乗り越えていくということで整理しています。
 「過度の負担について」は、事業主にとって過度の負担となる場合は合理的な配慮の提供を負わないと。これは権利条約にもそう書いてありますが、過度の負担とは一体どういうものになるのかというのは、使用者側にとっても、障害者側にとっても、ここの曖昧さというのは、合理的な配慮を提供する、される上でマイナスになるということで、それがまたポツ以下にありますが、過度の負担の判断基準については、企業規模、業種、従業員数等に加え、経営状況や合理的な配慮に対する経済的な支援も考慮し、それらの項目を類型化した指針などをもとに判断すべきであるということで、これもあくまでも現場での多様性、個別性は非常に強くはあるけれども、それぞれのある種の相場観を形成しなければいけないということで、そもそも合理的な配慮の提供というのは、ある種新しい概念でもありますので、そういったものに対する指針が重要であろうということが、「過度の負担について」に書かれています。
 「権利擁護について」は、まずは企業内での自主的な解決を図るべきであり、解決しない場合には、必要に応じて調停制度における調整的な解決の仕組みを整備すべきであり、現行の紛争調整委員会を活用すべきである。障害者差別禁止をめぐって紛争解決手続きをどういう形にするかというのは、差別禁止部会でも非常に問題になっていますが、幸い労働関係については先行してこういった問題を解決するためのスキームがあるということで、それを活用していくのが適当であろうというのが、最後のところになります。以上が第2研究会です。
 最後に、第3研究会で、「地域の就労支援の在り方に関する研究会」です。1頁は、先ほどと同様に、趣旨、参集者の方を掲げています。第1、第2研究会は制度の枠組みそのものの議論でしたが、こちらはそういう意味で、実際にどういう形で企業を支えていくか、職場で働く障害者を支えていくかについて、どちらかというと実務的な内容を中心に議論した場です。ということで、参集者について企業の方、企業を取り巻く各種障害者支援団体、障害者を支援するいろいろな組織の方に集まっていただきまして、第1、第2研究会とは参集者の色合いがやや違っています。
 次の頁で、「研究会報告書の概要」です。この研究会を始めるに当たって、我々の前提となる考え方として、障害者雇用というのは、ある意味量的な拡大はこの8年は過去最高を毎年更新する形で大きく雇用は拡大している状況があります。これは、企業の障害者に対する積極的な雇用意欲があり、一方で、それに応える障害者自身の企業や官公庁等で働こうという強い意欲がマッチして、リーマン・ショック、東日本大震災があったにもかかわらず、障害者雇用は大きく拡大してきたという事実認識はありますが、一方で、この10年の雇用の伸びというのは、大企業が牽引する形で、障害者雇用が大きく拡大してきたと。裏返せば、中小企業の障害者雇用が低迷している状況があります。
 加えて、今年の5月に法定雇用率が1.8%から2.0%へ15年振りの引上げということで、これは来年の4月から施行されます。加えて、第1研究会、第2研究会における障害者雇用義務の範囲の拡大、第2研究会における差別禁止、合理的配慮の提供の義務について、分科会でどういった議論がされるにせよ、そういったことが1つの議論のテーマとして上がっているということです。
 それから、これから新たに障害者を雇用するとなった場合に、これまで雇用が大きく拡大してきたということは、裏返せば、現在労働市場で新たに仕事を求めている障害者の中で、雇用管理が非常に難しいと思われる障害者の割合が相対的に高まっているということから考えると、雇用義務ということで、企業に対して障害者雇用について義務づけをしてお願いするわけではありますが、そういった企業を積極的にバックアップする体制は強化しなければいけないというのが、この研究会の背景にあります。
 この研究会については、平成19年に類似の研究会をしていまして、この報告書の冒頭では、平成19年の報告の手形がいかにきちんと落ちているかどうかの確認をしております。
 平成19年の報告と、今回の研究会の内容、進め方を大きく変えたのは、企業が障害者を雇用する上での不安の克服をどういう形でするのかということで、企業のニーズに起点を置いた形で、全体の報告を取りまとめています。これについて研究会の場では、もう少し障害者のニーズも気にすべきだということで、最終的には報告書の中にそうした点も織り込んでいますが、全体としては企業に対するバックアップを強く意識して、この研究会の報告はまとめています。
 ポイントになるのは、最初の「障害者を取り巻く状況の変化と課題」に集約されています。最初に申し上げましたように、1つは中小企業に対する支援をもっと強化する必要があるということで、これからの地域就労支援の在り方を考える上で重要なポイントになろうというのが、最初の○になります。
 次の○は、精神障害者や発達障害者等、従来の手法で対応が難しい障害者というのが、企業の中でも割合を高めていますし、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、いずれもこういった雇用管理が難しいと言われている障害者の方の割合がどんどん増えているということす。そういった障害者に対する対応を強化していかなければいけないということで、特に精神障害者については、医療機関を利用している場合が多く、これまでも、「教育」から「雇用・就労」へ、「福祉」から「雇用・就労」へという流れというのは、強く我々は言ってきました。もう1つの柱として、「医療」から「雇用」への流れを加速するということが、こういった障害者の方の対策を強化するという意味で重要だろうというのが、2つ目の○になります。
 3つ目の○は、雇用障害者が増加している中で、雇い入れ支援、いわゆるマッチングの支援というのは、ややもすれば中心になりがちであるけれども、実際に障害者の方の雇用が非常に大きく拡大してきた中で、長期にわたって職場に定着していけることに対する支援に、もう少し比重を移していくべきであろうというのが、3番目の○になります。
 4番目については、少し毛色が違いますが、上の3つとも重なり合いますが、企業見学、職場実習というようなツールについて、もう少し重視すべきであるということで、これについては2つの論点があって、すぐにハローワークでこんな仕事がある、あんな仕事があるということで、障害者の人と、ハローワークや支援団体の人が話をできるという段階になれば、それはそれで先に進んでいきますが、いきなりすぐに就職がどうのこうのという話は難しい。ただ、働くということについては、非常に強い意識を持っているような障害者の方に対しては、まずは働くことはどういうことなのか。いまは、以前のように、障害者の方がある種特定の職域に集中しているということが、どんどん崩れていて、障害者がいろいろな仕事をされている現場を見てもらうことが、その人の働く意欲をより喚起するということから、この職場見学や職場実習が重要だという話があります。もう1つ、4つ目の○の1行目の後半にありますように、保護者や支援者の方、支援者というのは福祉施設から雇用につなげていく、その福祉施設の関係者、特別支援学校の先生等、そういった人たちにも、この働く現場を見てもらうことが重要であるということは、この研究会の中でいちばん強く言われた話です。すでに先駆的にやられているようなケースもありますが、障害者自身だけではなくて、その障害者を取り巻く人たちにも、企業でいかに障害者がいろいろな仕事をしているのかを見ていただくことで、全体として、「教育」「福祉」「医療」から「雇用」への流れは加速できるだろうということで、4番目の話として掲げています。
 それ以降については、その4つのポイントについて、ハローワーク、地域障害者職業センター、就業・生活支援センター、就労移行支援事業所、ジョブコーチ等について、先ほど申し上げた中小企業、雇用管理が難しい障害者への対応、職場定着、職場実習、企業見学等、最初の課題で掲げたキーワードをどういう形で盛り込んでいくのかについて、それぞれの就労支援機関ごとに整理をしていることになっています。
 4頁は、特別支援学校、医療機関の送り出し機関に対しても、同じく先ほどの課題を当てて、その課題を意識して、どういう形でこれから進めるべきかについて、取りまとめているということで、整理をしています。以上です。
○岩村分科会長代理
 ありがとうございました。ただいま課長からご報告いただいた障害者雇用関係の研究会報告書についてご質問、あるいはご意見などがありましたらお願いします。
○竹下委員
 報告ですので、意見というよりは質問になるのだろうと思うのですが、2点この議論があったのかどうかも含めてお聞きします。第1研究会における障害者の範囲の議論と第2研究会における雇用率ではなくて、雇用促進における障害者の範囲とは全く同一ということでこの議論が整理されていると理解していいのかどうかについて、ご教授いただきたいのが1点目。2点目は、第2研究会の分野で、雇用の促進という障害者の範囲と、特に差別禁止の対象の部分があると思うのですが、差別の対象となる障害者は同じと考えていいのかどうか。この点についてもし議論があったらお聞きしたい。戻るかもしれませんが、雇用促進という場合の障害者の範囲と法定雇用率の対象となる障害者の範囲を別にした場合に、弊害として、単刀直入に言えば雇用率の対象にならない障害者は負担になるから雇いたくないという事業所は大いに予測されるし、現にその弊害を我々は見聞きするわけですが、その辺の弊害に対する対応についての議論があったかどうかについてご教授いただきたいと思います。以上です。
○岩村分科会長代理
 課長、お願いします。
○障害者雇用対策課長
 第1、第2、第3についてはそれぞれ関連する部分もあったので、それぞれの研究会に対して、ほかの研究会での動向について折々にご報告させていただきました。第1研究会と第2研究会における範囲の議論については、3つのカテゴリーがあって、第1研究会における範囲の問題については、障害者雇用促進法全体の障害者の範囲問題と、そのうち法定雇用率制度における障害者の範囲の議論。第2研究会では差別禁止と合理的配慮の提供となる障害者の範囲の3つがどのように折り重なっているかという議論かと思います。
 第1研究会の障害者雇用促進制度全体の議論については、先ほど申し上げましたように「長期にわたり、職業生活上に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」ということを位置づけていて、例えば手帳を所持しない発達障害者の方や難病患者についても対象範囲に入るということで、現行でもそう整理していますが、そういった整理の仕方でいいでしょうということが研究会の結論になっています。
 一方で、雇用義務制度について、現行は基本的に手帳を所持する身体障害者、知的障害者を雇用義務の対象にしていて、第1研究会において、精神障害者の雇用義務化について対象とすることが適当であるとされています。これも手帳を所持する精神障害者を対象にするということになっておりますので、障害者雇用促進制度全体からすれば、法定雇用率制度における障害者の範囲のほうが狭くなっています。
 差別禁止の問題に関しての第2研究会における障害者の範囲については、基本的に最初に申し上げた障害者雇用促進制度全体における障害者の範囲、障害者雇用促進法第2条の範囲と一致させることについては合意がされていますが、先ほどなお書き的に申し上げましたが、これに加えて、過去の障害履歴や障害者の家族についても幅広く障害者の範囲として捉えるべきであるというご意見がありました。それに対して、予見可能性を担保する観点からは、あくまでも障害者雇用促進法第2条の障害者とするのが適当であるというご意見もありました。雇用率制度から外れる障害者に対する対処については、これは第1研究会と第2研究会でオーバーラップする部分ですが、1つは合理的配慮の提供の義務を徹底することによって救済される部分はあるのではないかというご意見とか、助成金とか行政サービスを手厚くするということで対応できる部分があるのではないかといったご意見がありました。
 今回の合理的配慮の提供や差別禁止法との関係があった関係で、雇用率制度単体としてのものとしてではなく、あえて差別禁止法の関係でどう考えるかという視点が入っていたこともあって、研究会のメンバーの中では、合理的配慮の提供の義務とセットで範囲を逆に縮小させるということも将来的には考えられるというご意見だったと思いますが、そういったご意見も出ていました。たぶん、合理的配慮の提供がまだ法律上義務づけされていない、そういったものが実際本当に企業にどう根付くのかということがあるので、ただ合理的配慮の提供の義務が新たに障害者雇用対策上入ってきた場合については、そういったことも考えることもあり得なくないというご意見があったということです。
○岩村分科会長代理
 ありがとうございました。竹下委員、いかがですか。
○竹下委員
 わかりました。
○岩村分科会長代理
 ほかにいかがですか。報告書の内容についてはよろしいですか。ありがとうございました。
 次の議題に進みます。先ほどご紹介しました議事次第にありますように、2番目の議題は「今後の検討事項及びスケジュールについて」です。まず、これについて事務局から説明をいただきます。よろしくお願いします。課長補佐、お願いします。
○障害者雇用対策課長補佐(安達)
 障害者雇用対策課長補佐の安達です。まず、お手元に資料3「労働政策審議会障害者雇用分科会での検討項目(案)」をご用意ください。検討項目の案ですが、3つの研究会においてご議論いただいた事項をもとに整理しております。
 「障害者雇用促進制度における障害者の範囲等について」「労働・雇用分野における障害者権利条約の対応について」です。それぞれ研究会でご議論いただいた主な検討事項をここで3つずつ掲げております。これらの事項について、当分科会においても引き続き議論を深めていただきたいということで、それぞれ○として検討項目を挙げさせていただいております。なお、労働・雇用分野における障害者権利条約への対応に関する検討については※として記載しています。
 先ほど課長からの説明にもありましたとおり、平成22年4月において、当分科会でも一度中間的な取りまとめをいただいているところです。スケジュールのところで説明を別途行いますが、このようにすでに分科会で一度一定の整理を行ったこと等も踏まえ、第2回以降、まずはこの項目に関する検討から行っていただければと考えております。この部分に関する検討に当たっては、中間取りまとめ結果に加えて、その後の研究会等での議論や報告書なども踏まえつつ、さらに分科会の場において検討いただければと考えております。
 さらに、「その他」の事項として、地域の就労の支援の在り方に関する事項のほか、最後に「等」とついておりますが、等としてその他の検討項目も読み込めるようにしております。検討項目に関する説明は以上です。
 資料4をご覧ください。検討のスケジュール(案)です。本日、第1回目ということで、研究会報告書や検討事項、スケジュールについてご審議いただければと思っております。第2回からはそれぞれの検討項目に沿って具体的な議論に移っていただきたいと考えております。10月から11月にかけて先ほど申したとおり、まずは障害者権利条約への対応に関する検討事項についてご議論いただいたあと、11月から障害者雇用促進制度等における障害者の範囲等について3回程度かけてご検討いただく予定とさせていただいております。第7回からは、第6回までの議論の進捗等を踏まえて、ご相談させていただきながら、分科会としての意見書の取りまとめについて検討いただくスケジュールとさせていただいております。事務局からは以上です。
○岩村分科会長代理
 ありがとうございました。ただいま、資料3の今後の検討事項と資料4のスケジュール(案)に基づいて説明いただいたところですが、これについて、ご質問、あるいはご意見がありましたら頂戴したいと思います。
○竹下委員
 確認ないし質問になるかと思うのですが、まず第1クールといいますか、権利条約への対応のところで、3つの項目そのものには検討項目として異論はないのですが、1つ疑問は障害者差別禁止の対象となる事業者は、当然障害を持った方も対象にするとすれば、公務所、あるいは自治体も対象になるのかと思うので、報告書を読んでいる限りは、それが意識されていないと読み取れたのです。この点について、これを含むという形で議論がされるのかどうかについて、とりわけ合理的配慮の部分かなと思っているのですが、土俵というか、設定の1点目の質問です。
 2点目は、権利擁護について3項目に掲げられているのはこれでいいのですが、例えば報告書等で書かれているように、困難事例であったり、合理的配慮の類型化の問題であったりする作業が今後大いに重要となるわけでありますが、その関係で、調査ないし理解・啓発の推進という両面から権利擁護だけではなくて、制度を推進する、ないしは実態把握のための調査機関については権利擁護のところに含めて考えるのか、それとも内閣府の障害者政策委員会に丸投げで考えていることなのかについてご質問したいというのが2点目。
 3点目は、この順番で議論したとき、気になったのは1番目のクールで差別の対象となる障害者の範囲の問題が議論されると思うのですが、第2クールでやれる障害者雇用促進のところでの障害者の範囲、先ほど質問したわけですが、これが本当に全く同一になるのか、ずれが生じるのかが気になっています。内容について今日は異論を申しませんが、その関係でこういうクールを完全に分けた場合に、その部分の調整はどういう形でされるのかについて、事務局としてご説明いただけるのならお聞きしたいと思います。以上です。
○岩村分科会長代理
 課長、お願いします。
○障害者雇用対策課長
 ご質問の第1点目の公務員については、確かに報告書では言及はしていません。公務員に対する権利条約の批准に向けた対応については、基本的には公務員制度の所管部局において行っていただくことになると思います。我々のほうとも必要な調整を行ってまいりたいと思います。差別禁止法全体としてどういう位置づけにするのかということについては、内閣府とも話をしていかなければいけないかなと思います。
 2番目の権利擁護の調査とか理解・啓発に関しては、もともと労働・雇用分野ということもあり、差別禁止、合理的配慮の提供を考える上での一分野に過ぎないと言えば過ぎないのですが、障害を持つ方と障害を持つ方を雇用する方が面と向かってずっといるというのが、ある意味、労働・雇用分野とほかの分野と比べて異なっている。それであるが故に、我々が独自に検討する場を設定しなければいけないと理解しております。逆に労働・雇用分野において、特有の問題とか、そういったものがあるのであれば、いまの段階で、具体的な調査や理解・啓発のためにどうするかといったことについては、我々のほうからやる・やらないということを申し上げませんが、折々、もしかして第3回目の権利擁護以外の部分でも出てくるかもしれませんので、そのところはいろいろご意見をいただければと思います。内閣府のほうと調整をしつつ考えていきたいと思います。
 3点目の範囲について、第1セッションと第2セッションの関係でのずれが起きる可能性があるということについては、議論の都合で一つひとつテーマをある程度のところの合意点まで持ってきて次のテーマに移りたいという部分があります。最終的には、いちばん最後に意見書の取りまとめということで、全体を総括した形でしますので、そういったところで調整をすることになろうかと思います。現行でも、障害者雇用促進法全体の範囲と雇用率制度における範囲はずれていますので、理屈上は権利条約の対応、差別禁止合理的配慮の提供における障害者の範囲がずれてくる可能性はあり得なくないのです。いま現在は研究会報告レベルでは同じになっていますが、そちらについて、もしそういった食い違い、ずれ自体が問題であるということであれば、そういったところである意味整理し直すということができないことはないと思います。まずは、合理的な配慮の提供、差別禁止ということを考える上で、障害者の範囲はいかにあるべきかについて、最初のセッションで議論を詰めていただきたいと思います。
○岩村分科会長代理
 ありがとうございました。竹下委員、いかがですか。
○竹下委員
 いまの課長の説明は私が理解できなかったのか、あるいは私の聞いた理解で正しければ納得できないのですよね。少なくとも障害者雇用促進法は公務員に適用ありが前提ですよね。ましてや、労基法の関係も公務員に適用がないという議論がないわけですよね。だとすれば、第1クールの議論のところで、とりわけ私は合理的配慮の1の障害者差別禁止は不利益取扱いの問題にはならないと思うのですが、合理的配慮の部分で事業所の中に公務所といいますか、自治体を含めることは、あるいは独立行政法人等も含めることは、いわば体系として当たり前だと思っているわけですが、今回の第1クールの議論では自治体、あるいは独立行政法人等々への合理的配慮の問題はここでは議論しない。こういう趣旨なのでしょうか。
○岩村分科会長代理
 課長補佐、お願いします。
○障害者雇用対策課長補佐(安達)
 公務員に対する適用についてはご議論いただいて構わないと考えております。ただ、この部分について、実際に、仮に公務員法制度の中で適用するとなれば、それぞれ所管する部局に対応いただく場面も法制的には出てきますので、その辺りの調整が別途必要であるということを申し上げたということです。
○岩村分科会長代理
 課長、お願いします。
○障害者雇用対策課長
 いま、まさに補佐が言ったとおり、我々だけで決められないという意味で、そういうものの言い方をしました。話としては、いま補佐が言ったとおりです。
○岩村分科会長代理
 竹下委員、いかがですか。
○竹下委員
 納得しました。
○岩村分科会長代理
 よろしいですか。ほかにいかがですか。
○高橋委員
 今後の検討スケジュールについて質問させていただきたいのですが、このような形で当面障害者権利条約の対応を先行して議論していくことについては、私も適当ではないかと考えています。マル1、マル2、マル3と付していますが、まず基本的な枠組みを1回目に議論することは当然ですが、資料3にあるように、権利条約の対応として3つの○がありますが、マル1、マル2、マル3はそれぞれ1回目に最初の○、2回目に2番目の○、3回目に3番目の○というように分割して議論していくことを想定されているのか。今後の議論の範囲といいますか、進め方といいますか、現時点においてお考えになってらっしゃる進め方について教えていただければと思います。
○岩村分科会長代理
 課長、お願いします。
○障害者雇用対策課長
 先ほど資料3に掲げた権利条約への対応についての3つの○を、そのままマル1、マル2、マル3にするかどうかまだ事務局として決めていないのですが、大きなテーマでやるのは事実としてあります。今週中に差別禁止部会の報告が公表されることになると思います。おそらく次回については、それのご紹介をする時間も必要になってきますので、個々の論点、特に前回の中間的な取りまとめで合意がされていない部分について、この3回にどう貼り付けていくのかについては、もう少し事務局で検討させていただきたいと思います。当然、事前にこういう形で第2回目はやるということについては各委員にお知らせします。もう少し事務局内で検討させてください。
○岩村分科会長代理
 高橋委員、いかがですか。よろしいですか。
○高橋委員
 結構です。
○岩村分科会長代理
 ありがとうございました。そのほか、この検討項目、スケジュールについてありますか。よろしいですか。ありがとうございました。次回以降は、ただいま説明のありました検討項目とスケジュール、より細かいことは、いま課長の説明にもありましたように、もう少し検討を必要とするということですが、大きな流れとしては、先ほどの説明のとおり議論をしていきたいと存じます。
 議事次第にありますように、議題3「その他」です。事務局から報告があると伺っておりますので、説明をいただきたいと思います。
○障害者雇用対策課長補佐(安達)
 平成25年度障害者雇用施策関係予算概算要求のポイントについて説明させていただきます。お手元に資料5「平成25年度障害者雇用施策関係予算概算要求(案)」及び参考資料3「平成25年度障害者雇用施策関係予算概算要求のポイント」をご用意ください。
 参考資料3の1頁の冒頭に「施策の概要」として、今回の予算要求の背景が書かれております。障害者雇用の現状です。先ほどから説明がありますとおり、ハローワークの新規求職申込件数とか就職件数等々が過去最高になっている状況にあります。そうした中で、平成25年4月に法定雇用率の引上げが見込まれる等々の中での中小企業への支援の強化。障害特性に応じた支援の強化等の課題に対応することが求められております。概算要求においては、これらの課題に対応を図ったものとなっているところです。また、地域の就労支援の在り方に関する研究会報告書においても障害者雇用を巡る課題について、さまざまなご指摘をいただいたところです。報告書での指摘事項については、本概算要求にも要求事項として可能なものについては反映させていただいているところです。
 さて、それぞれの要求内容について資料5に沿って概略を説明させていただきます。初めに、平成25年度要求額ですが、右上に書いてありますとおり226億円、前年度比7億円増となっているところです。
 具体的な内容ですが、ローマ数字1で中小企業への支援等の強化や地域の就労支援の更なる強化となっております。1番目の項目ですが、ハローワークを中心とした地域の関係機関との連携による「チーム支援」とか就職面接会の充実などによる中小企業への支援の強化を挙げているところです。2つ目の四角ですが、職場実習の推進に関する事項です。労働局に専門のコーディネーターを新たに配置し、関係機関と連携して職場実習の推進、セミナーや企業見学の実施を行う事業を新たに行うこととしております。3つ目の四角ですが、地域の就労支援機能の強化に関連する事項です。障害者就業・生活支援センターの設置箇所数の拡充とセンターの機能強化として、精神障害者、発達障害者等の職場定着支援の強化を図ることとしております。
 ローマ数字2の柱は障害特性に応じた支援策の充実・強化です。白括弧の1つ目と2つ目の項目が精神障害者の特性に応じた支援策の充実・強化に関連する項目です。1つ目がハローワークに配置している「精神障害者雇用トータルサポーター」による総合的かつ継続的な支援を行うということです。新たな取組として、さらに2つ目の項目として、医療機関における就労支援・連携を促進するモデル事業を行うということを掲げさせていただいているところです。3つ目の四角ですが、発達障害者の就労支援の強化に関連する施策として、ハローワークにおける発達障害者の支援として行っている「若者コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」について、全都道府県で実施すべく要求を行っております。4番目は難病患者への取組みです。ハローワークに新たに「難病患者就職サポーター(仮称)」を配置し、ハローワークと難病相談支援センターの連携を強化することにより、難病患者の就労支援の強化を行うこととしております。2つ目の黒い四角ですが、ハローワークや労働局において、精神障害者を雇用する「チャレンジ雇用」について、さらに一層の推進を図ることとしております。
 ローマ数字3については、障害者の職業能力開発支援に関する事項を要求しております。
 ローマ数字4が障害者雇用促進対策の在り方について、現在当分科会において議論をいただいているところです。その検討結果を踏まえて必要な見直しを行うことに伴う経費についても要求させていただいているところです。
 具体的な内容については適宜参考資料をご覧になっていただければ幸いです。以上、駆け足ですが、平成25年度障害者雇用施策関係予算概算要求の概要の説明を終わらせていただきます。
○岩村分科会長代理
 ありがとうございました。ただいま、ご説明いただきました概算要求の関係について、ご質問などありますか。
○竹下委員
 今度の予算要求の中で、ローマ数字2の障害の特性に応じた支援のところで、障害者自身、あるいは当事者の協力もこういう支援体制の強化の中に含まれた構想として予算要求をされているのかどうかについて教えてください。
○岩村分科会長代理
 課長、お願いいたします。
○障害者雇用対策課長
 障害者自身と企業の障害者雇用促進を促す方向のものと、例えば障害者自身に直結することになりますと、障害者就業・生活支援センターにおける障害者の職場定着、就労支援の実施については、一旦就職した障害者について、それ以降職場に定着できるようにいろいろな相談にのったりするためのスタッフを増強するとか、ここには明示的に書いていないのですが、精神障害者対策として、精神障害者雇用安定奨励金のメニューで、既に在職されている障害者がほかの精神障害者に対する相談、精神障害者同士での相談をするための担当者を配置した場合に、障害者を配置したことに対して助成するというものがあります。
○岩村分科会長代理
 今日の資料では、非常に概括的なポイントだけを掲げていただいているということで、どちらかというと新規要求に的を絞って今日ご説明いただいているということです。従来からやっているものは、今日の資料の中には細かく出ていないということでご理解いただければと思います。また、もし竹下委員のほうで必要があれば、個別に事務局にご質問をいただければと思います。そのほか、いかがですか。よろしいですか。
 こちらで用意した議題は以上です。本日の分科会はこれで終了させていただきます。終わるに当たりまして、小川高齢・障害者雇用対策部長からご挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○高齢・障害者雇用対策部長
 本日ご説明させていただきましたとおり、今後各委員の皆様方におかれましては、障害者権利条約の対応など、今後の障害者雇用対策の在り方についてご審議いただくことになります。短期間のスケジュールのご審議になりますが、どうぞよろしくお願いします。最後に今後とも、障害者雇用については万全の対策を期していく所存ですので、委員の皆様におかれましても引き続きご指導、ご助言を賜わりますようにお願い申し上げるとともに、改めて次回以降のご審議についても活発なご議論をよろしくお願いします。本日はご審議ありがとうございました。
○岩村分科会長代理
 ありがとうございました。最後に、今後の分科会の日程について事務局からご説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○障害者雇用対策課長補佐(安達)
 机上に次回以降の日程調整表を配付させていただきました。本日、このあと事務局に提出いただくか、又は明後日20日までにファックスで提出いただければと思っております。日程調整が終わり次第、次回以降の日程を連絡させていただきます。
○岩村分科会長代理
 お忙しいところ申し訳ありません。日程調整についてご協力いただければと思います。それでは、本日の分科会はこれで終了させていただきます。議事録の署名ですが、労働者代表については杉山委員に、使用者代表については塩野委員に、障害者代表については阿部委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。


(了)

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